説明

4−ヒドロキシピペリジン誘導体を有効成分とする呼吸器疾患治療剤

下記式(I)


(式中、Aは基:L−W(Lは結合又はCH、WはO、SOn(nは0〜2)、−NR−(RはH、低級アルキル))、G、Gは(CH)r(rは0〜2)、nが1のときGとGは低級アルキレンで架橋されてもよく、Yは低級アルキレン、(置換)ベンジリデン、Zは結合又はO、Zが結合のときYはベンゼン環のCとともに5〜6員環を形成してもよく、RはNO、低級アルコキシカルボニル、(置換)カルバモイル、(保護)水酸基、(保護)カルボキシル、(保護)N−ヒドロキシカルバモイル等、R,RはH、ハロゲン、(ハロゲン化)低級アルキル、(ハロゲン化)低級アルコキシ、NO、R、RはH、ハロゲン、(ハロゲン化)低級アルキル、CN、低級アルキルスルホニル等、RはH、低級アルキル。)の化合物、その塩、溶媒和物を有効成分とする呼吸器疾患の予防・治療剤。鎮咳効果を目的として、肺癌、かぜ症候群、肺結核、肺炎、急性気管支炎、慢性気管支炎等の呼吸器疾患の予防・治療剤として優れた効果を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、4−ヒドロキシピペリジン誘導体またはそれらの製薬学的に許容される塩を有効成分として含有することを特徴とする呼吸器疾患の予防及び/または治療剤、とりわけ鎮咳剤に関する。また、本発明は新規な4−ヒドロキシピペリジン誘導体またはその塩、その製造方法、および該誘導体の少なくともひとつを有効成分として含有することを特徴とする医薬組成物、特に呼吸器疾患治療剤、とりわけ鎮咳剤に関する。
【背景技術】
呼吸器とは、呼吸に関係している臓器および組織の総称であり、必要な酸素を取り入れ、物質代謝の結果生じた炭酸ガスを排出するという生命維持のために重要な働きを行っている。
呼吸器疾患のうち、咳嗽症状を呈する代表的な疾患として、例えば肺癌、癌性リンパ管症、肋骨骨折、自然気胸、かぜ症候群、肺結核、間質性肺炎、胸膜炎、肺炎、急性気管支炎、慢性気管支炎、肺気腫症、塵肺、気管支拡張症、びまん性汎細気管支炎、気管支喘息、肺塞栓、肺梗塞症などが挙げられる。
咳は、深い吸気によって肺が拡張し、喉門が閉じ、次いで呼吸筋の強い収縮により肺内圧が高まり、突然喉頭筋が弛緩して喉門が開き空気が急速に呼出される現象をいう。このとき気道内の分泌物が吐き出される。気道粘膜に分泌物、異物がたまったり、胸膜、肺、横隔膜などに異常があると、そこからの刺激が延髄の後側部にある咳中枢に達し、反射的に咳発作が起こる(最新薬理学、10.3鎮咳薬、藤野澄子、1990年、講談社)。
咳の原因の主なものは、気道粘膜からの分泌過剰、煙およびガスなどの化学的刺激、異物、気道の炎症、アレルギー反応、胸腔内腫瘍などによる気管支の圧迫、心因性などである。この咳症状の悪化および慢性化は、呼吸筋のエネルギーを消費させて体力を消耗させ、基礎疾患の回復を妨げる結果となる。
鎮咳薬には、咳中枢を遮断することにより鎮咳作用を発揮する中枢性鎮咳薬と末梢の咳受容体への刺激を軽減することにより鎮咳作用を発揮する末梢性鎮咳薬がある。リン酸コデインを代表とする中枢性鎮咳薬は、一般的に切れ味は良いが、副作用として呼吸抑制、便秘、悪心、嘔吐、頭痛、眠気、発疹などが起こる。また、反復使用により耐性、依存性が生じることも知られている。メチルエフェドリンを代表とする末梢性鎮咳薬は、軽度の鎮咳作用しか発揮できない。近年、オピオイドδ受容体に選択的な拮抗薬が鎮咳薬として開発されているようであるが、δ受容体は精神および情動行動に深く関わっていることが示唆されており、副作用が懸念される(ネーチャー・ジェネティックス(Nat.Genet.)25巻、2号、195頁、2000年)。従って、より効果が高く副作用の少ない鎮咳薬が求められている。
4−ヒドロキシピペリジン誘導体としては、ウエジ(Huegi)らが論文(ジャーナル・オブ・メディシナル・ケミストリー(J.Med.Chem.)26巻、42頁、1983年)に、鎮痛活性を有する化合物を報告しているが、これらの化合物はオピエート受容体に親和性を持つモルヒネ様の中枢性鎮痛薬であり、本発明化合物とは構造が異なる。また、国際公開WO00/61557号公報に抗不整脈作用を有する4−ヒドロキシピペリジン誘導体、及び国際公開WO00/61558号公報にニューロパシー性疼痛治療剤として有用な4−ヒドロキシピペリジン誘導体が、ナトリウムチャネルに作用し、一過性のナトリウム電流に比して選択的に持続性ナトリウム電流を抑制する物質として開示されているが、本発明化合物とは構造が異なっている。
4−(フェノキシメチル)ピペリジン−4−オール誘導体については、特開昭60−163861号公報に、抗抑うつ、抗不整脈あるいは血圧降下作用を有するアリールオキシメチルピペリジノール誘導体として開示があるが、本発明化合物とは構造が異なっており、鎮咳作用についての開示はない。また、国際公開WO93/02052号公報に、抗虚血剤としての2−(4−ヒドロキシピペリジノ)−1−アルカノール誘導体が開示されているが、本発明化合物とは基本的な構造が異なっており、鎮咳作用についての開示がない。
国際公開WO00/06545号公報に、ノシセプチン受容体のアゴニストとして鎮咳作用を有するピペリジン誘導体が記載されているが、本発明化合物とは構造が異なっている。
国際公開WO00/06544号公報に、タキキニン拮抗作用を有する環状アミン誘導体(ピペリジン誘導体)が記載されている。また、この誘導体は、タキキニンが関与する喘息、咳、疼痛などに使用可能であることが記載されているが、本発明化合物が特定の置換基を有する点で構造が異なっている。
また、WO02/22572号公報には、ドパミン・セロトニンもしくはノルエピネフリン受容体やトランスポーターの調整作用を有する3−置換アゼチジン誘導体、3−置換ピロリジン誘導体、或いは3−置換ピペリジン誘導体が開示されており、不安、鬱、勃起不全、アルツハイマー病、精神病、尿失禁、ニューロパシー性疼痛等として有用であることが記載されているが、鎮咳作用について開示はない。
医薬品開発においては、目的とする薬理活性のみでなく、長期にわたる安全性が要求される。さらに吸収、分布、代謝、排泄等の各種の面で厳しいクライテリアを満たすことが要求される。例えば、薬物相互作用、脱感受性ないし耐性、経口投与時の消化管吸収、小腸内への移行速度、吸収速度と初回通過効果、臓器バリアー、蛋白結合、薬物代謝酵素の誘導、排泄経路や体内クリアランス、適用方法(適用部位、方法、目的)等において種々の検討課題が要求され、これらを満たすものはなかなか見出されない。安全域がより広く、薬物動態学的特性により優れた薬剤が望まれている。
呼吸器疾患治療薬についてもこれら医薬品開発上の総合的課題は常にある。そして、呼吸器疾患治療薬、例えば、鎮咳薬については、加えて、先述した現在用いられている中枢性鎮咳薬、末梢性鎮咳薬或いはオピオイドδ受容体に選択的な拮抗薬などよりもさらに副作用が少なく、且つ有用性の高い鎮咳薬が求められているのである。
【発明の開示】
本発明の課題は、優れた鎮咳作用を有し、副作用の少ない安全性の高い新規な化合物を提供することである。また、それらの製造方法、それらを含有する医薬及び医薬組成物を提供することである。特に、前述のような従来技術における問題点、より具体的に言えば、中枢性鎮咳薬が有する呼吸抑制、便秘、悪心、嘔吐、頭痛、眠気、発疹などの副作用或いは反復使用による耐性や依存性等、オピオイドδ受容体に選択的な拮抗薬に懸念される精神および情動行動に関わる副作用等においても、少なくとも一つ以上克服したヒトを含む哺乳動物に対して経口投与可能な薬剤、特に、呼吸器疾患の予防及び/または治療剤、とりわけ鎮咳剤を提供することである。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、優れた鎮咳作用を有し、安全性が高い薬剤を得るべく、鋭意研究を重ねてきた結果、4−ヒドロキシピペリジン誘導体およびその塩が、クエン酸誘発モルモット咳嗽モデルにおいて鎮咳作用を有すること、さらに副作用が少なく、安全性が高いことを見出し、本発明を完成した。
本発明の第1の態様は、下記式(I)

(式中、Aは基:L−W(Lは結合またはメチレンを表し、Wは酸素原子、基:SOn(nは0から2の整数を表す)または基:−NR−(Rは水素原子もしくは低級アルキル基を表す)を表す)を表し、G、Gは各々独立して(CH)r(rは0から2の整数を表す)を表し、また、GとGにおいてともにrが1を表すときGとGとが更に低級アルキレン基により架橋されてもよく、Yは低級アルキレンまたはRで置換されていてもよいベンジリデン基を表し、Zは結合、または酸素原子を表し、またZが結合を表す時Yはベンゼン環上の炭素原子とともに5ないし6員環を形成していてもよく、Rは、ニトロ基、低級アルコキシカルボニル基、低級アルキル基でモノ−もしくはジ−置換されていてもよいカルバモイル基、保護されていてもよい水酸基、保護されていてもよいカルボキシル基、保護されていてもよいN−ヒドロキシカルバモイル基、保護されていてもよい水酸基で置換された低級アルキル基、保護されていても良いカルボキシル基で置換された低級アルキル基またはテトラゾリル基を表し、R,Rは各々独立して水素原子、ハロゲン原子、ハロゲンで置換されていてもよい低級アルキル基、ハロゲンで置換されていてもよい低級アルコキシ基またはニトロ基を表し、R、Rは、各々独立して水素原子、ハロゲン原子、ハロゲンで置換されていてもよい低級アルキル基、ハロゲンで置換されていてもよい低級アルコキシ基、シアノ基または低級アルキルスルホニル基を表し、Rは水素原子もしくは低級アルキル基を表す。但し、Wが基:SOn(nは0から2の整数を表す)である時には、Rはニトロ基または保護されていてもよい水酸基である場合を除く。)で表される化合物、または製薬学的に許容されるその塩またはそれらの溶媒和物を有効成分として含有することを特徴とする呼吸器疾患の予防及び/または治療剤である。
第1の態様において、上記式(I)で表される化合物において好ましい置換基、またはそれらの組み合わせを以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
は、ニトロ基、低級アルコキシカルボニル基、低級アルキル基でモノ−もしくはジ−置換されていてもよいカルバモイル基、保護されていてもよいカルボキシル基、またはテトラゾリル基であることが好ましく、カルボキシル基であることがより好ましい。
の置換位置は、Aが結合している炭素原子に対してオルト位、メタ位、パラ位が挙げられ、パラ位(4位)であることが好ましい。
としては、Aのパラ位に結合したカルボキシル基であることがより好ましい。
は、シアノ基であることが好ましい。
の置換位置は、Zが結合した炭素原子に対してオルト位、メタ位、パラ位が挙げられ、パラ位であることが好ましい。
としては、パラ位に結合したシアノ基であることがより好ましい。
Wは、基:−NR−であることが好ましい。
は、低級アルキル基であることが好ましく、メチル基またはエチル基であることがより好ましい。
、Gは、各々n=0または1である場合が好ましい。
本発明の第2の態様は、前記式(I)で表される化合物、または製薬学的に許容されるその塩またはそれらの溶媒和物を有効成分として含有することを特徴とする鎮咳剤である。
本発明の第3の態様は、前記式(I)で表される化合物、または製薬学的に許容されるその塩またはそれらの溶媒和物を有効成分として含有することを特徴とする乾性咳嗽改善剤である。
第2及び第3の態様において、上記式(I)で表される化合物において好ましい置換基、またはそれらの組み合わせは、第1の態様と同じである。
本発明の第4の態様は、下記式(II)

(式中、A’は基:L−W’(Lは結合またはメチレンを表し、W’は酸素原子または基:−NR−(Rは水素原子もしくは低級アルキル基を表す)を表す)を表し、Yは低級アルキレンまたはRで置換されていてもよいベンジリデン基を表し、Zは結合、または酸素原子を表し、またZが結合を表す時Yはベンゼン環上の炭素原子とともに5ないし6員環を形成していてもよく、Rは、ニトロ基、低級アルコキシカルボニル基、低級アルキル基でモノ−もしくはジ−置換されていてもよいカルバモイル基、保護されていてもよい水酸基、保護されていてもよいカルボキシル基、保護されていてもよいN−ヒドロキシカルバモイル基、保護されていてもよい水酸基で置換された低級アルキル基、保護されていても良いカルボキシル基で置換された低級アルキル基またはテトラゾリル基を表し、R,Rは各々独立して水素原子、ハロゲン原子、ハロゲンで置換されていてもよい低級アルキル基、ハロゲンで置換されていてもよい低級アルコキシ基またはニトロ基を表し、R、Rは、各々独立して水素原子、ハロゲン原子、ハロゲンで置換されていてもよい低級アルキル基、ハロゲンで置換されていてもよい低級アルコキシ基、シアノ基または低級アルキルスルホニル基を表し、Rは水素原子もしくは低級アルキル基を表す。但し、R,Rが同時に水素原子である時には、Rは保護されていてもよいN−ヒドロキシカルバモイル基、または保護されていても良いカルボキシル基で置換された低級アルキル基である場合に限られ、或いはW’が基:−NR−である時には、Rは保護されていてもよい水酸基または保護されていてもよい水酸基で置換された低級アルキルである場合を除く。)で表される化合物、その塩、またはそれらの溶媒和物である。
第4の態様において、上記式(II)で表される化合物において好ましい置換基、またはそれらの組み合わせを以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
は、ニトロ基、低級アルコキシカルボニル基、低級アルキル基でモノ−もしくはジ−置換されていてもよいカルバモイル基、保護されていてもよいカルボキシル基、またはテトラゾリル基であることが好ましく、カルボキシル基であることがより好ましい。
の置換位置は、A’が結合している炭素原子に対してオルト位、メタ位、パラ位が挙げられ、パラ位(4位)であることが好ましい。
としては、A’のパラ位に結合したカルボキシル基であることがより好ましい。
は、シアノ基であることが好ましい。
の置換位置は、Zが結合した炭素原子に対してオルト位、メタ位、パラ位が挙げられ、パラ位であることが好ましい。
としては、パラ位に結合したシアノ基であることがより好ましい。
W’は、基:−NR−であることが好ましい。
は、低級アルキル基であることが好ましく、メチル基またはエチル基であることがより好ましい。
本発明の第5の態様は、前記式(II)で表される化合物、または製薬学的に許容されるその塩またはそれらの溶媒和物を有効成分として含有することを特徴とする呼吸器疾患の予防及び/または治療剤である。
本発明の第6の態様は、前記式(II)で表される化合物、または製薬学的に許容されるその塩またはそれらの溶媒和物を有効成分として含有することを特徴とする鎮咳剤である。
本発明の第7の態様は、前記式(II)で表される化合物、または製薬学的に許容されるその塩またはそれらの溶媒和物を有効成分として含有することを特徴とする乾性咳嗽改善剤である。
第5、第6及び第7の態様において、上記式(II)で表される化合物において好ましい置換基、またはそれらの組み合わせは、第4の態様と同じである。
本発明の第8の態様は、下記式(III)

(式中、Aは基:L−W(Lは結合またはメチレンを表し、Wは酸素原子、基:SOn(nは0から2の整数を表す)または基:−NR−(Rは水素原子もしくは低級アルキル基を表す)を表す)を表し、Gは(CH)m(mは0または1)を表し、Yは低級アルキレンまたはRで置換されていてもよいベンジリデン基を表し、Zは結合、または酸素原子を表し、またZが結合を表す時Yはベンゼン環上の炭素原子とともに5ないし6員環を形成していてもよく、Rは、ニトロ基、低級アルコキシカルボニル基、低級アルキル基でモノ−もしくはジ−置換されていてもよいカルバモイル基、保護されていてもよい水酸基、保護されていてもよいカルボキシル基、保護されていてもよいN−ヒドロキシカルバモイル基、保護されていてもよい水酸基で置換された低級アルキル基、保護されていても良いカルボキシル基で置換された低級アルキル基またはテトラゾリル基を表し、R,Rは各々独立して水素原子、ハロゲン原子、ハロゲンで置換されていてもよい低級アルキル基、ハロゲンで置換されていてもよい低級アルコキシ基またはニトロ基を表し、R、Rは、各々独立して水素原子、ハロゲン原子、ハロゲンで置換されていてもよい低級アルキル基、ハロゲンで置換されていてもよい低級アルコキシ基、シアノ基または低級アルキルスルホニル基を表し、Rは水素原子もしくは低級アルキル基を表す。)
で表される化合物、その塩、またはそれらの溶媒和物である。
第8の態様において、上記式(III)で表される化合物において好ましい置換基、またはそれらの組み合わせを以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
は、ニトロ基、低級アルコキシカルボニル基、低級アルキル基でモノ−もしくはジ−置換されていてもよいカルバモイル基、保護されていてもよいカルボキシル基、またはテトラゾリル基であることが好ましく、カルボキシル基であることがより好ましい。
の置換位置は、Aが結合している炭素原子に対してオルト位、メタ位、パラ位が挙げられ、パラ位(4位)であることが好ましい。
としては、Aのパラ位に結合したカルボキシル基であることがより好ましい。
は、シアノ基であることが好ましい。
の置換位置は、Zが結合した炭素原子に対してオルト位、メタ位、パラ位が挙げられ、パラ位であることが好ましい。
としては、パラ位に結合したシアノ基であることがより好ましい。
Wは、基:−NR−であることが好ましい。
は、低級アルキル基であることが好ましく、メチル基またはエチル基であることがより好ましい。
は、m=0である場合が好ましい。
本発明の第9の態様は、前記式(III)で表される化合物、または製薬学的に許容されるその塩またはそれらの溶媒和物を有効成分として含有することを特徴とする呼吸器疾患の予防及び/または治療剤である。
本発明の第10の態様は、前記式(III)で表される化合物、または製薬学的に許容されるその塩またはそれらの溶媒和物を有効成分として含有することを特徴とする鎮咳剤である。
本発明の第11の態様は、前記式(III)で表される化合物、または製薬学的に許容されるその塩またはそれらの溶媒和物を有効成分として含有することを特徴とする乾性咳嗽改善剤である。
第9、第10及び第11の態様において、上記式(III)で表される化合物において好ましい置換基、またはそれらの組み合わせは、第8の態様と同じである。
本発明の第12の態様は、下記式(IV)

(式中、Aは基:L−W(Lは結合またはメチレンを表し、Wは酸素原子、基:SOn(nは0から2の整数を表す)または基:−NR−(Rは水素原子もしくは低級アルキル基を表す)を表す)を表し、Yは低級アルキレンまたはRで置換されていてもよいベンジリデン基を表し、Zは結合、または酸素原子を表し、またZが結合を表す時Yはベンゼン環上の炭素原子とともに5ないし6員環を形成していてもよく、Rは、ニトロ基、低級アルコキシカルボニル基、低級アルキル基でモノ−もしくはジ−置換されていてもよいカルバモイル基、保護されていてもよい水酸基、保護されていてもよいカルボキシル基、保護されていてもよいN−ヒドロキシカルバモイル基、保護されていてもよい水酸基で置換された低級アルキル基、保護されていても良いカルボキシル基で置換された低級アルキル基またはテトラゾリル基を表し、R,Rは各々独立して水素原子、ハロゲン原子、ハロゲンで置換されていてもよい低級アルキル基、ハロゲンで置換されていてもよい低級アルコキシ基またはニトロ基を表し、R、Rは、各々独立して水素原子、ハロゲン原子、ハロゲンで置換されていてもよい低級アルキル基、ハロゲンで置換されていてもよい低級アルコキシ基、シアノ基または低級アルキルスルホニル基を表し、Rは水素原子もしくは低級アルキル基を表す。)
で表される化合物、その塩、またはそれらの溶媒和物である。
第12の態様において、上記式(IV)で表される化合物において好ましい置換基、またはそれらの組み合わせを以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
は、ニトロ基、低級アルコキシカルボニル基、低級アルキル基でモノ−もしくはジ−置換されていてもよいカルバモイル基、保護されていてもよいカルボキシル基、またはテトラゾリル基であることが好ましく、カルボキシル基であることがより好ましい。
の置換位置は、Aが結合している炭素原子に対してオルト位、メタ位、パラ位が挙げられ、パラ位(4位)であることが好ましい。
としては、Aのパラ位に結合したカルボキシル基であることがより好ましい。
は、シアノ基であることが好ましい。
の置換位置は、Zが結合した炭素原子に対してオルト位、メタ位、パラ位が挙げられ、パラ位であることが好ましい。
としては、パラ位に結合したシアノ基であることがより好ましい。
Wは、基:−NR−であることが好ましい。
は、低級アルキル基であることが好ましく、メチル基またはエチル基であることがより好ましい。
本発明の第13の態様は、前記式(IV)で表される化合物、または製薬学的に許容されるその塩またはそれらの溶媒和物を有効成分として含有することを特徴とする呼吸器疾患の予防及び/または治療剤である。
本発明の第14の態様は、前記式(IV)で表される化合物、または製薬学的に許容されるその塩またはそれらの溶媒和物を有効成分として含有することを特徴とする鎮咳剤である。
本発明の第15の態様は、前記式(IV)で表される化合物、または製薬学的に許容されるその塩またはそれらの溶媒和物を有効成分として含有することを特徴とする乾性咳嗽改善剤である。
第13、第14及び第15の態様において、上記式(IV)で表される化合物において好ましい置換基、またはそれらの組み合わせは、第12の態様と同じである。
本発明の第16の態様は、下記式(I)

(式中、A、G、G、Y、Z、R、R、R、R、R、およびRは前記と同一の意味を表す。)で表される化合物またはその塩の製造方法であって、以下の(a)法、(b)法、(c)法、(d)法、(e)法、(f)法、(g)法または(h)法の工程を用いる方法である。
(a)法
下記式(XXIII)

(式中、R、Rは前記と同一の意味を表し、A’’は基:L−W’’(Lは結合またはメチレンを表し、W’’は酸素原子、基:SOn(nは0から2の整数を表す)または基:−NR7’−(R7’は水素原子もしくは低級アルキル基もしくは低級アルカノイル基を表す)を表す)を表し、R1’はニトロ基、低級アルコキシカルボニル基、低級アルキル基でモノ−もしくはジ−置換されていてもよいカルバモイル基、保護されていてもよい水酸基、保護されていてもよいカルボキシル基、保護されていてもよいN−ヒドロキシカルバモイル基、保護されていてもよい水酸基で置換された低級アルキル基、テトラゾリル基、シアノ基、またはホルミル基を表す。)で表されLが結合を表す化合物を、下記式(XXIV)

(式中、G、G、Y、Z、R、Rは前記と同一の意味を表す。)で表される化合物に付加させた後、A’’が低級アルカノイル基で置換されたアミノ基の場合は還元反応により低級アルカノイル基を低級アルキル基とした後、必要に応じてR1’をRに変換する工程。
(b)法
下記式(XXIII)

(式中、A’’、R,R、R1’は前記と同一の意味を表す。)で表されLが結合を表す化合物を下記式(V)

(式中、G、Gは前記と同一の意味を表し、Pはアミノ基に用いられる保護基を表す。)で表される化合物に付加させ、A’’が低級アルカノイル基で置換されたアミノ基の場合は必要に応じて還元反応により低級アルカノイル基を低級アルキル基とした後、脱保護反応を行うことにより得られる下記式(VII)

(式中、A’’、G、G、R,R、R、R1’は前記と同一の意味を表す)で表される化合物に、下記式(VIII)

(式中、Z、R、Rは前記と同一の意味を表し、QはそれぞれRで置換されていてもよいフェニル基で置換されてもよい、ハロゲン化アルキル基、メタンスルホニルオキシアルキル基、p−トルエンスルホニルオキシアルキル基等のアリールスルホニルオキシアルキル基またはホルミル基、Rで置換されていてもよいベンゾイル基、ホルミルアルキル基、ベンゼン環がRで置換されていてもよいベンゾイルアルキル基またはカルボキシル基、カルボキシアルキル基を表し、またはZが結合のときQはベンゼン環の炭素とともに5ないし6員環を形成するハロゲン化アルキレン基、オキソアルキレン基を表す。)で表される化合物を、QがそれぞれRで置換されていてもよいフェニル基で置換されてもよい、ハロゲン化アルキル基、メタンスルホニルオキシアルキル基またはアリールスルホニルオキシアルキル基、またはZが結合のときQがベンゼン環の炭素とともに5ないし6員環を形成するハロゲン化アルキレン基、を表す場合には塩基存在下もしくは非存在下で反応させるか、Qがホルミル基、Rで置換されていてもよいベンゾイル基、ホルミルアルキル基、ベンゼン環がRで置換されていてもよいベンゾイルアルキル基またはZが結合のときQがベンゼン環の炭素とともに5ないし6員環を形成するオキソアルキレン基を表す場合には酸触媒存在下もしくは非存在下還元条件下で反応させるか、またはQがカルボキシル基またはカルボキシアルキル基を表す場合には縮合剤を用いて反応させた後還元反応を行い、得られる化合物を必要に応じてR1’をRに変換する工程。
(c)法
下記式(IX)

(式中、R1’、R、Rは前記と同一の意味を表し、XはF等のハロゲン原子を表す。)で表される化合物を、下記式(X)

(式中、G、G、Y、Z、R、R、R、A’’は前記と同一の意味を表す。)で表される化合物に反応させた後、A’’が低級アルカノイル基で置換されたアミノ基の場合は還元反応により低級アルカノイル基を低級アルキル基とした後、必要に応じてR1’をRに変換する工程。
(d)法
下記式(IX)

(式中、X、R,R、R1’は前記と同一の意味を表す。)で表される化合物を、下記式(XI)

(式中、A’’、G、G、P、Rは前記と同一の意味を表す。)で表される化合物に反応させた後、脱保護反応を行うことにより得られる下記式(VII)

(式中、A’’、G、G、R,R、R、R1’は前記と同一の意味を表す。)で表される化合物に、下記式(VIII)

(式中、Q、Z、R、Rは前記と同一の意味を表す。)で表される化合物を、QがそれぞれRで置換されていてもよいフェニル基で置換されてもよい、ハロゲン化アルキル基、メタンスルホニルオキシアルキル基またはアリールスルホニルオキシアルキル基、またはZが結合のときQがベンゼン環の炭素とともに5ないし6員環を形成するハロゲン化アルキレン基、を表す場合には塩基存在下もしくは非存在下で反応させるか、Qがホルミル基、Rで置換されていてもよいベンゾイル基、ホルミルアルキル基、ベンゼン環がRで置換されていてもよいベンゾイルアルキル基またはZが結合のときQがベンゼン環の炭素とともに5ないし6員環を形成するオキソアルキレン基を表す場合には酸触媒存在下もしくは非存在下還元条件下で反応させるか、またはQがカルボキシル基またはカルボキシアルキル基を表す場合には縮合剤を用いて反応させた後還元反応を行い、得られる化合物を必要に応じてR1’をRに変換する工程。
(e)法
下記式(XII)

(式中、R、R、R1’、Wは前記と同一の意味を表す。)で表される化合物を、下記式(XIII)

(式中、G、G、Y、Z、R,R、Rは前記と同一の意味を表し、Q’はハロゲン化アルキル基、メタンスルホニルオキシアルキル基、p−トルエンスルホニルオキシアルキル基等のアリールスルホニルオキシアルキル基またはホルミル基、ホルミルアルキル基、カルボキシル基またはカルボキシアルキル基を表す。)で表される化合物に反応させた後、必要に応じてR1’をRに変換する工程。
(f)法
下記式(XII)

(式中、R、R、R1’、Wは前記と同一の意味を表す。)で表される化合物を、下記式(XIV)

(式中、G、G、P、Q’、Rは前記と同一の意味を表す。)で表される化合物に反応させた後、脱保護反応を行うことにより得られる下記式(XVI)

(式中、A’’、G、G、R,R、R、R1’は前記と同一の意味を表す。)で表される化合物に、下記式(VIII)

(式中、Q、Z、R、Rは前記と同一の意味を表す。)で表される化合物を、QがそれぞれRで置換されていてもよいフェニル基で置換されてもよい、ハロゲン化アルキル基、メタンスルホニルオキシアルキル基またはアリールスルホニルオキシアルキル基、またはZが結合のときQがベンゼン環の炭素とともに5ないし6員環を形成するハロゲン化アルキレン基、を表す場合には塩基存在下もしくは非存在下で反応させるか、Qがホルミル基、Rで置換されていてもよいベンゾイル基、ホルミルアルキル基、ベンゼン環がRで置換されていてもよいベンゾイルアルキル基またはZが結合のときQがベンゼン環の炭素とともに5ないし6員環を形成するオキソアルキレン基を表す場合には酸触媒存在下もしくは非存在下還元条件下で反応させるか、またはQがカルボキシル基またはカルボキシアルキル基を表す場合には縮合剤を用いて反応させた後還元反応を行い、得られる化合物を必要に応じてR1’をRに変換する工程。
(g)法
下記式(XVII)

(式中、R、R、R1’は前記と同一の意味を表し、A’’’は基:SOn(nは0から2の整数を表す)または基:−(C=O)NR−(Rは水素原子もしくは低級アルキル基を表す)を表す。)で表される化合物を、下記式(XVIII)

(式中、G、G、Y、Z、R,Rは前記と同一の意味を表す。)で表される化合物に反応させた後、必要に応じてR1’をRに変換する工程。
(h)法
下記式(XVII)

(式中、A’’’、R、R、R1’は前記と同一の意味を表す。)で表される化合物を、下記式(XIX)

(式中、G、G、Pは前記と同一の意味を表す。)で表される化合物に反応させた後、脱保護反応を行うことにより得られる下記式(XXI)

(式中、A’’’、G、G、R、R、R、R1’は前記と同一の意味を表す)で表される化合物に、下記式(VIII)

(式中、Q、Z、R、Rは前記と同一の意味を表す。)で表される化合物を、QがそれぞれRで置換されていてもよいフェニル基で置換されてもよい、ハロゲン化アルキル基、メタンスルホニルオキシアルキル基またはアリールスルホニルオキシアルキル基、またはZが結合のときQがベンゼン環の炭素とともに5ないし6員環を形成するハロゲン化アルキレン基、を表す場合には塩基存在下もしくは非存在下で反応させるか、Qがホルミル基、Rで置換されていてもよいベンゾイル基、ホルミルアルキル基、ベンゼン環がRで置換されていてもよいベンゾイルアルキル基またはZが結合のときQがベンゼン環の炭素とともに5ないし6員環を形成するオキソアルキレン基を表す場合には酸触媒存在下もしくは非存在下還元条件下で反応させるか、またはQがカルボキシル基またはカルボキシアルキル基を表す場合には縮合剤を用いて反応させた後還元反応を行い、得られる化合物を必要に応じてR1’をRに変換する工程。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の各式中の基の定義において
「低級」とは、特に断らない限り、炭素数1ないし4個のいずれかを有する直鎖、分枝状、または環状の炭素鎖を意味し、「C1−4」とも表記される。従って、「低級アルキル基」としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基等が挙げられる。
「低級アルコキシカルボニル基」とは、アルコキシ基の炭素数が1ないし4個のいずれかを有するC1−4アルコキシカルボニル基を意味し、メトシキカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、シクロプロピルオキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、sec−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、シクロブチルオキシカルボニル基等が挙げられる。
「低級アルキル基でモノ−もしくはジ−置換されていてもよいカルバモイル基」とは、カルバモイル基の窒素原子上の一つ又は二つの水素原子が前記「低級アルキル基」で置換されていてもよいカルバモイル基を意味する。具体的には、カルバモイル基、メチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基、プロピルカルバモイル基、イソプロピルカルバモイル基、シクロプロピルカルバモイル基、ブチルカルバモイル基、イソブチルカルバモイル基、sec−ブチルカルバモイル基、tert−ブチルカルバモイル基、シクロブチルカルバモイル基、ジメチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基、ジプロピルカルバモイル基、ジイソプロピルカルバモイル基、ジシクロプロピルカルバモイル基、ジブチルカルバモイル基、ジイソブチルカルバモイル基、ジsec−ブチルカルバモイル基、ジtert−ブチルカルバモイル基、ジシクロブチルカルバモイル基、エチルメチルカルバモイル基、メチルプロピルカルバモイル基、エチルプロピルカルバモイル基、ブチルメチルカルバモイル基、ブチルエチルカルバモイル基、ブチルプロピルカルバモイル基等が挙げられる。
「低級アルキレン基」とは炭素数が1ないし4のアルキレン基を意味し、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等があげられる。
「低級アルキレン基により架橋されてもよい」とは環を構成する炭素間を前述の低級アルキレンで架橋する場合を意味し、例えばピペリジン環を架橋する場合はトロパン等を示す。
「オキソアルキレン基」とは前述のアルキレン基の1個のメチレンがカルボニル基に変換されたものを意味する。
本明細書中の「保護されていてもよい水酸基」の保護基としては、メチル基・tert−ブチル基・ベンジル基・トリチル基・メトキシメチル基等のアルキル系保護基、トリメチルシリル基・tert−ブチルジメチルシリル基等のシリル系保護基、ホルミル基・アセチル基・ベンゾイル基等のアシル系保護基、メトキシカルボニル基・ベンジルオキシカルボニル基等のカルボネート系保護基が挙げられる。
本明細書中の「保護されていてもよいカルボキシル基」の保護基としては、メチル基・エチル基・tert−ブチル基・ベンジル基・ジフェニルメチル基・トリチル基等のアルキルエステル系保護基、トリメチルシリル基・tert−ブチルジメチルシリル基等のシリルエステル系保護基等が挙げられる。
「保護されていてもよいN−ヒドロキシカルバモイル基」の保護基としてはテトラヒドロピラニル基等があげられる。
「保護されていてもよい水酸基で置換された低級アルキル基」としては、前記低級アルキル基に水酸基が置換した場合を包含する。具体的には、「保護されていてもよい水酸基で置換されたC1−4アルキル基」として、例えばヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基、1−ヒドロキシ−1−メチルエチル基、1−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、1−ヒドロキシ−1−メチルプロピル基、1−ヒドロキシブチル基、2−ヒドロキシブチル基、3−ヒドロキシブチル基、4−ヒドロキシブチル基、1−ヒドロキシシクロプロピル基、1−ヒドロキシシクロプロピルメチル基等が挙げられる。
「Zが結合を表す時Yはベンゼン環上の炭素原子とともに5ないし6員間を形成していてもよく」とは、Zが結合であり、Yが低級アルキレン基である場合に、その1つの炭素原子とベンゼン環上の炭素原子が低級アルキレン基で結合した場合を意味し、例えば、Yがエチレン基であり、エチレン基の窒素原子と隣接する炭素原子とベンゼン環上の炭素原子とが、メチレン基もしくはエチレン基を介してつながった場合である。具体的には、2−インダニル基、1,2,3,4−テトラヒドロ−2−ナフチル基等が挙げられる。
「保護されていても良いカルボキシル基で置換された低級アルキル基」としては、前記低級アルキル基及びそのアルキル基にカルボキシル基が置換した場合を包含する。具体的には、「保護されていてもよいカルボキシル基で置換されたC1−4アルキル基」として、例えばカルボキシメチル基、1−カルボキシエチル基、2−カルボキシエチル基、1−カルボキシ1−メチルエチル基、1−カルボキシプロピル基、2−カルボキシプロピル基、3−カルボキシプロピル基、1−カルボキシ1−メチルプロピル基、1−カルボキシブチル基、2−カルボキシブチル基、3−カルボキシブチル基、4−カルボキシブチル基、1−カルボキシシクロプロピル基、1−カルボキシシクロプロピルメチル基等が挙げられる。
「ハロゲン原子」としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
「ハロゲン原子で置換されていても良い低級アルキル基」としては、前記低級アルキル基及びそのアルキル基にハロゲン原子が置換した場合を包含する。具体的には、「ハロゲン原子で置換されたC1−4アルキル基」として、例えば、フルオロメチル基、1−フルオロエチル基、2−フルオロエチル基、1−フルオロ−1−メチルエチル基、1−フルオロプロピル基、2−フルオロプロピル基、3−フルオロプロピル基、1−フルオロ−1−メチルプロピル基、1−フルオロブチル基、2−フルオロブチル基、3−フルオロブチル基、4−フルオロブチル基、1−フルオロシクロプロピル基、1−フルオロシクロプロピルメチル基、トリフルオロメチル基等;クロロメチル基、1−クロロエチル基、2−クロロエチル基、1−クロロ−1−メチルエチル基、1−クロロプロピル基、2−クロロプロピル基、3−クロロプロピル基、1−クロロ−1−メチルプロピル基、1−クロロブチル基、2−クロロブチル基、3−クロロブチル基、4−クロロブチル基、1−クロロ−シクロプロピル基、1−クロロ−シクロプロピルメチル基、トリクロロメチル基等;ブロモメチル基、1−ブロモエチル基、2−ブロモエチル基、1−ブロモ1−メチルエチル基、1−ブロモプロピル基、2−ブロモプロピル基、3−ブロモプロピル基、1−ブロモ−1−メチルプロピル基、1−ブロモブチル基、2−ブロモブチル基、3−ブロモブチル基、4−ブロモブチル基、1−ブロモシクロプロピル基、1−ブロモシクロプロピルメチル基、トリブロモメチル基等が挙げられる。好ましくは、トリフルオロメチル基が挙げられる。
「低級アルコキシ基」としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、3−ペンチルオキシ基、tert−ペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、2−メチルブトキシ基、1,2−ジメチルプロポキシ基、1−エチルプロポキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロプロピルメチルオキシ基、1−シクロプロピルエチルオキシ基、2−シクロプロピルエチルオキシ基、シクロブチルメチルオキシ基、2−シクロブチルエチルオキシ基、シクロペンチルメチルオキシ基等が挙げられる。
「ハロゲン原子で置換されていても良い低級アルコキシ基」としては、前記低級アルコキシ基及びそのアルコキシ基にハロゲン原子が置換した場合を包含する。具体的には、「ハロゲン原子で置換されたC1−4アルコキシ基」として、例えば、フルオロメトキシ基、1−フルオロエトキシ基、2−フルオロエトキシ基、1−フルオロ−1−メチルエトキシ基、1−フルオロプロポキシ基、2−フルオロプロポキシ基、3−フルオロプロポキシ基、1−フルオロ−1−メチルプロポキシ基、1−フルオロブトキシ基、2−フルオロブトキシ基、3−フルオロブトキシ基、4−フルオロブトキシ基、1−フルオロシクロプロピル基、1−フルオロシクロプロピルメチル基、トリフルオロメトキシ基等;クロロメトキシ基、1−クロロエトキシ基、2−クロロエトキシ基、1−クロロ−1−メチルエトキシ基、1−クロロプロポキシ基、2−クロロプロポキシ基、3−クロロプロポキシ基、1−クロロ−1−メチルプロポキシ基、1−クロロブトキシ基、2−クロロブトキシ基、3−クロロブトキシ基、4−クロロブトキシ基、1−クロロ−シクロプロポキシ基、1−クロロ−シクロプロピルメトキシ基、トリクロロメトキシ基等;ブロモメトキシ基、1−ブロモエトキシ基、2−ブロモエトキシ基、1−ブロモ−1−メチルエトキシ基、1−ブロモプロポキシ基、2−ブロモプロポキシ基、3−ブロモプロポキシ基、1−ブロモ−1−メチルプロポキシ基、1−ブロモブトキシ基、2−ブロモブトキシ基、3−ブロモブトキシ基、4−ブロモブトキシ基、1−ブロモシクロプロポキシ基、1−ブロモシクロプロピルメトキシ基、トリブロモメトキシ基等が挙げられる。好ましくは、トリフルオロメトキシ基が挙げられる。
「低級アルキルスルホニル基」とは、基:−SO−(C1−4アルキル基)であり、「C1−4アルキルスルホニル基」とも表す。例えばメチルスルホニル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基、イソプロピルスルホニル基、ブチルスルホニル基、イソブチルスルホニル基、sec−ブチルスルホニル基、tert−ブチルスルホニル基等が挙げられる。
「低級アルカノイル基」としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基等が挙げられる。
本発明に用いられる化合物中の置換基の定義において好ましいものの態様は以下の通りである。
は、ニトロ基、低級アルコキシカルボニル基、低級アルキル基でモノ−もしくはジ−置換されていてもよいカルバモイル基、保護されていてもよいカルボキシル基、またはテトラゾリル基であることが好ましく、ニトロ基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、カルバモイル基、ジメチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基、カルボキシル基、またはテトラゾリル基であることがより好ましく、カルボキシル基であることが更に好ましい。
の置換位置は、Aが結合している炭素原子に対してオルト位、メタ位、パラ位が挙げられ、パラ位(4位)であることが好ましい。
は、Aのパラ位に結合したカルボキシル基であることがより好ましい。
は、シアノ基、または低級アルキルスルホニル基であることが好ましく、シアノ基、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基、イソプロピルスルホニル基またはブチルスルホニル基であることがより好ましく、シアノ基であることが更に好ましい。
の置換位置は、Zが結合した炭素原子に対してオルト位、メタ位、パラ位が挙げられ、パラ位であることが好ましい。
としては、パラ位に結合したシアノ基であることがより好ましい。
Wは、基:−NR−であることが好ましい。
は、低級アルキル基であることが好ましく、メチル基またはエチル基であることがより好ましい。
、Gは、各々n=0または1である場合が好ましい。
本発明の式(I)、(II)、(III)もしくは(IV)の化合物は、酸付加塩を形成する場合がある。また、置換基の種類によっては塩基との塩を形成する場合もある。かかる塩としては、製薬学的に許容しうる塩であれば特に限定されないが、具体的には、塩酸、臭化水素酸、よう化水素酸、硫酸、硝酸、りん酸等の鉱酸類;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、エナント酸、カプリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、乳酸、ソルビン酸、マンデル酸等の脂肪族モノカルボン酸、安息香酸、サリチル酸等の芳香族モノカルボン酸、しゅう酸、マロン酸、こはく酸、フマル酸、マレイン酸、りんご酸、酒石酸等の脂肪族ジカルボン酸、くえん酸等の脂肪族トリカルボン酸などの有機カルボン酸類;メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸等の脂肪族スルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等の芳香族スルホン酸などの有機スルホン酸類;アスパラギン酸、グルタミン酸等の酸性アミノ酸類等との酸付加塩、及びナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム等のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属等の金属との塩、メチルアミン、エチルアミン、エタノールアミン、ピリジン、リシン、アルギニン、オルニチン等の有機塩基との塩や、アンモニウム塩等が挙げられる。
これらの塩は常法,例えば、当量の本発明化合物と所望の酸あるいは塩基等を含む溶液を混合し、所望の塩をろ取するか溶媒を留去して集めることにより得ることができる。また、本発明化合物またはその塩は、水、エタノール、グリセロールなどの溶媒と溶媒和物を形成しうる。
また、本発明化合物の塩には、モノ塩およびジ塩が含まれる。或いは本発明化合物は側鎖の置換基によっては、酸付加塩と塩基の塩の両方を同時に形成しうる。
更に本発明は、式(I)、(II)、(III)もしくは(IV)で表される化合物の水和物、製薬学的に許容可能な各種溶媒和物や結晶多形のもの等も含まれる。尚、当然ながら本発明は、後述実施例に記載された化合物に限定されるものではなく、式(I)、(II)、(III)もしくは(IV)で示される化合物または製薬学的に許容される塩の全てを包含するものである。
次に、本発明の化合物の製造方法を示し、各反応工程について説明する。以下の<製造法1>、<製造法2>、<製造法3>および<製造法4>において反応式および説明中の式(I)、式(VI)、式(VII)、式(XV)、式(XVI)、式(XX)、式(XXI)で表される化合物中のA、A’’、A’’’、L、W、W’’、Z、Y、G、G、R、R1’、R、R、R、R、R、R、R7’、P、X、YおよびZの定義は、特に断らない限り、前記と同一である。
本発明化合物である式(I)で表される化合物またはその塩は、文献公知または市販の化合物から容易に製造することが可能である式(XXIII)(式中RおよびZは前記と同一の意味を表す)、式(XXIV)、式(V)(式中Pは前記と同一の意味を表す)、式(VIII)、式(IX)(式中Xは前記と同一の意味を表す)、式(X)、式(XI)、式(XII)、式(XIII)、式(XIV)、式(XVII)、式(XVIII)、式(XIX)で表される化合物から以下に述べる<製造法1>、<製造法2>、<製造法3>および<製造法4>の各製造法またはこれらに準じて製造することができる。なお、A、A’’、A’’’、L、W、W’’、Z、Y、G、G、R、R1’、R、R、R、R、R、R、R7’、P、X、YおよびZの定義は、特に断らない限り、前記と同一である。各製造法において、原料、中間体、生成物は、必要に応じて塩として扱うこともできる。
以下、各製造法を詳細に説明する。
<製造法1>
式(I)で表される化合物またはその塩は、式(XXIII)で表される化合物および式(XXIV)で表される化合物あるいは式(V)で表される化合物から<反応式1>の各製造工程に従い製造することができる。尚、式(XXIII)においてはA’’中に定義されるLは結合を表す。

<工程1> 式(I)で表される化合物またはその塩は、式(XXIII)で表される化合物および式(XXIV)で表される化合物から製造することができる。式(XXIII)で表される化合物および式(XXIV)で表される化合物を過塩素酸リチウム・トリフルオロメタンスルホン酸スカンジウム(III)・トリフルオロメタンスルホン酸ランタン(III)等のルイス酸を含む酸触媒あるいは塩基触媒存在下または非存在下、18−クラウン−6等のクラウンエーテル存在下または非存在下、ジクロロメタン・クロロホルム等のハロゲン系溶媒、ジエチルエーテル・テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、トルエン・ベンゼン・ヘキサン等の炭化水素系溶媒、ジメチルホルムアミド・ジメチルスルホキシド等の極性溶媒、メタノール・エタノール等のアルコール系溶媒、アセトニトリル、アセトン、水または酢酸等の反応に関与しない溶媒中もしくはこれらの任意の混合溶媒中または溶媒を用いずに、0℃から反応混合物が還流する温度で反応させた後、A’’が低級アルカノイル基で置換されたアミノ基の場合は還元反応により低級アルカノイル基を低級アルキル基とした後、必要に応じてR1’をRに変換することにより製造することができる。また、式(XXIII)で表される化合物および式(XXIV)で表される化合物をガリー・エイチ・ポスナー(Gary H.Posner)らのジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・ケミカル・ソサイティー(Journal of the American Chemical Society)99巻、8208−8214頁、1977年に記載の方法に準じ、中性アルミナ存在下ジエチルエーテル中室温で反応させ反応させた後、A’’が低級アルカノイル基で置換されたアミノ基の場合は還元反応により低級アルカノイル基を低級アルキル基とした後、必要に応じてR1’をRに変換することにより製造することができる。また、式(XXIII)で表される化合物および式(XXIV)で表される化合物またはその塩を、β−シクロデキストリンなどのシクロデキストリン類の存在下または非存在下にメタノール、エタノール等のアルコール系溶媒または水等の反応に関与しない溶媒で反応させた後、A’’が低級アルカノイル基で置換されたアミノ基の場合は還元反応により低級アルカノイル基を低級アルキル基とした後、必要に応じてR1’をRに変換することにより製造することもできる。
付加反応により生成する3級水酸基のアルキル化は、ジメチルホルムアミド・ジメチルイミダゾリドン等の反応に関与しない溶媒中、水素化ナトリウム等の塩基存在下、−20℃から反応混合物が還流する温度、好ましくは氷冷下から室温でヨウ化メチルに代表されるハロゲン化アルキル、硫酸ジメチルに代表される硫酸ジアルキルなどのアルキル化剤を用いて行うことができる。
式(I)で表される化合物またはその塩は、以下に示す<工程2>、<工程3>、<工程4>に従って製造することもできる。
<工程2> 式(VI)で表される化合物は、式(XXIII)で表される化合物および式(V)で表される化合物から、<工程1>の方法に従って製造することができる。保護基Pとしては、ジョン・ウイリー・アンド・サンズ(John Wiley and Sons)出版のティー・ダブリュ・グリーン(T.W.Greene)およびピー・ジー・エム・ウッツ(P.G.M.Wuts)編、プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス(Protective Groups in Organic Synthesis)第3版、1999年の総説に記載の適当な保護基、例えばベンジル基・トリチル基・メトキシメチル基等のアルキル系保護基、tert−ブトキシカルボニル基・ベンジルオキシカルボニル基等のカルバメート系保護基などが挙げられる。
<工程3> 式(VII)で表される化合物は、式(VI)で表される化合物のピペリジンの1位を脱保護することにより、製造することができる。
式(VI)で表される化合物のピペリジンの1位の脱保護は、前記のプロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス(Protective Groups in Organic Synthesis)第3版、1999年の総説に記載の方法に準じて行うことができる。例えば、式中の保護基Pがベンジル基、ベンジルオキシカルボニル基等の場合、パラジウム−炭素・酸化白金等を触媒として、メタノール・エタノール等のアルコール系溶媒、酢酸エチル、酢酸、水等の溶媒中、水素雰囲気下あるいはギ酸アンモニウムの存在下、0℃から反応混合物が還流する温度で脱保護を行うことにより、式(VII)で表される化合物を製造することができる。また、保護基Pがtert−ブトキシカルボニル基等の場合は、アニソールの存在下または非存在下、トリフルオロ酢酸、塩酸等の酸を用い、0℃から反応混合物が還流する温度で脱保護を行うことにより、式(VII)で表される化合物を製造することができる。
<工程4> 式(VII)で表される化合物と式(VIII)で表される化合物との反応は、Qの種類により以下の方法で行うことができる。得られた化合物を必要に応じてR’をRに変換することにより式(I)で表される化合物またはその塩を製造することができる。
(A法)
QがそれぞれRで置換されていてもよいフェニル基で置換されてもよい、ハロゲン化アルキル基、メタンスルホニルオキシアルキル基またはp−トルエンスルホニルオキシアルキル基等のアリールスルホニルオキシアルキル基、またはZが結合のときQがベンゼン環の炭素原子とともに5ないし6員環を形成するハロゲン化アルキレン基を表す場合には、式(VII)で表される化合物と式(VIII)で表される化合物を、トリエチルアミン・ピリジン等の有機塩基、炭酸カリウム等の無機塩基の存在下あるいは非存在下、ジクロロメタン・クロロホルム等のハロゲン系溶媒、ジエチルエーテル・テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、トルエン・ベンゼン・ヘキサン等の炭化水素系溶媒、ジメチルホルムアミド・ジメチルスルホキシド等の極性溶媒等の反応に関与しない溶媒中、0℃から反応混合物が還流する温度で反応させた後、得られた化合物を必要に応じてR1’をRに変換することにより、式(I)で表される化合物を製造することができる。QがRで置換されていてもよいフェニル基で置換されてもよいハロゲン化アルキル基、またはZが結合のときQがベンゼン環の炭素原子とともに5ないし6員環を形成するハロゲン化アルキレン基の場合、触媒としてよう化ナトリウム等を用いることもできる。
(B法)
Qがホルミル基、Rで置換されていてもよいベンゾイル基、ホルミルアルキル基、ベンゼン環がRで置換されていてもよいベンゾイルアルキル基またはZが結合のときQがベンゼン環の炭素とともに5ないし6員環を形成するオキソアルキレン基を表す場合には、式(VII)で表される化合物と式(VIII)で表される化合物を、トルエン・ベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、ジクロロメタン・クロロホルム等のハロゲン系溶媒、メタノール・エタノール等のアルコール系溶媒等の溶媒中、酢酸、塩酸等の酸触媒の存在下あるいは非存在下、適当な還元剤を用いて反応させた後、得られた化合物を必要に応じてR1’をRに変換することにより、式(I)で表される化合物を製造することができる。一般的にイミノ基をアミノ基に還元可能な還元剤は全て使用することができるが、中でも好ましくはトリアセトキシ水素化ほう素ナトリウム、水素化ほう素ナトリウム、水素化ほう素リチウム、水素化ジイソブチルアルミニウム、シアノ水素化ほう素ナトリウム等の還元剤が好ましく、−78℃から室温で、好ましくは室温で反応が十分進行する時間、具体的には3時間から12時間で反応を行うことができる。
(C法)
Qがカルボキシル基またはカルボキシアルキル基を表す場合には、式(VII)で表される化合物と式(VIII)で表される化合物を、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(水溶性カルボジイミド塩酸塩、WSC・HCl)・ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)等の縮合剤を用い、ジクロロメタン・クロロホルム等のハロゲン系溶媒、ジエチルエーテル・テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、トルエン・ベンゼン・ヘキサン等の炭化水素系溶媒、ジメチルホルムアミド・ジメチルスルホキシド等の極性溶媒等の反応に関与しない溶媒中、0℃から反応混合物が還流する温度で反応させることによりアミド体を合成し、生成したアミド結合を水素化リチウムアルミニウム、水素化ジイソブチルアルミニウム、ボラン−硫化メチル錯塩・ボラン−テトラヒドロフラン錯塩を代表とするボラン錯塩等の還元剤を用い、ジエチルエーテル・テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、トルエン・ベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒等の反応に関与しない溶媒中、0℃から反応混合物が還流する温度で反応させた後、得られた化合物を必要に応じてR1’をRに変換することにより、式(I)で表される化合物またはその塩を製造することができる。
式(VII)で表される化合物と式(VIII)で表される化合物の反応は、オキシ塩化リン等の脱水剤等を用い、ピリジン・トリエチルアミン等の塩基存在下、塩化メチレン・クロロホルム等のハロゲン系溶媒、ジエチルエーテル・テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、トルエン・ベンゼン・ヘキサン等の炭化水素系溶媒等の反応に関与しない溶媒中、−20℃から反応混合物が還流する温度で行うこともできる。
また、式(VII)で表される化合物と式(VIII)で表される化合物との反応は、式(VIII)で表される化合物を塩化チオニル等を用いて酸クロリドとした後、トリエチルアミン・ピリジン等の有機塩基、炭酸カリウム等の無機塩基の存在下、ジクロロメタン・クロロホルム等のハロゲン系溶媒、ジエチルエーテル・テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、トルエン・ベンゼン・ヘキサン等の炭化水素系溶媒等の溶媒中、あるいはピリジン・トリエチルアミン等の塩基性溶媒中、−20℃から反応混合物が還流する温度で行うことも可能である。
<製造法2>
式(I)で表される化合物またはその塩は、式(IX)で表される化合物および式(X)で表される化合物あるいは式(XI)で表される化合物から<反応式2>の各製造工程に従い製造することができる。

<工程1> 式(I)で表される化合物またはその塩は、式(IX)で表される化合物および式(X)で表される化合物を、塩基触媒存在下または非存在下に、ジクロロメタン・クロロホルム等のハロゲン系溶媒、ジエチルエーテル・テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、トルエン・ベンゼン・ヘキサン等の炭化水素系溶媒、ジメチルホルムアミド・ジメチルスルホキシド等の極性溶媒等の反応に関与しない溶媒中または溶媒を用いずに、0℃から反応混合物が還流する温度で反応させた後、必要に応じてR’をRに変換することにより製造することができる。
式(I)で表される化合物またはその塩は、以下に示す<工程2>、<工程3>、<工程4>に従って製造することもできる。
<工程2> 式(VI)で表される化合物は、式(IX)で表される化合物および式(XI)で表される化合物を、塩基触媒存在下または非存在下、ジクロロメタン・クロロホルム等のハロゲン系溶媒、ジエチルエーテル・テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、トルエン・ベンゼン・ヘキサン等の炭化水素系溶媒、ジメチルホルムアミド・ジメチルスルホキシド等の極性溶媒等の反応に関与しない溶媒中または溶媒を用いずに、0℃から反応混合物が還流する温度で反応させることにより製造することができる。
<工程3> 式(VII)で表される化合物は、式(VI)で表される化合物から、<製造法1>の<工程3>に従って製造することができる。
<工程4> 式(I)で表される化合物またはその塩は、式(VII)で表される化合物および式(VIII)で表される化合物から、<製造法1>の<工程4>に従って製造することができる。
<製造法3>
式(I)で表される化合物またはその塩は、式(XII)で表される化合物および式(XIII)で表される化合物あるいは式(XIV)で表される化合物から<反応式3>の各製造工程に従い製造することができる。

<工程1> 式(I)で表される化合物またはその塩は、式(XII)で表される化合物および式(XIII)で表される化合物から<製造法1>の<工程4>に従って反応させた後、必要に応じてR’をRに変換することにより製造することができる。
式(I)で表される化合物またはその塩は、以下に示す<工程2>、<工程3>、<工程4>に従って製造することもできる。
<工程2> 式(XV)で表される化合物は、式(XII)で表される化合物および式(XIV)で表される化合物から、<製造法1>の<工程4>に従って製造することができる。
<工程3> 式(XVI)で表される化合物は、式(XV)で表される化合物から、<製造法1>の<工程3>に従って製造することができる。
<工程4> 式(I)で表される化合物またはその塩は、式(XVI)で表される化合物および式(VIII)で表される化合物から、<製造法1>の<工程4>に従って製造することができる。
<製造法4>
式(I)で表される化合物またはその塩は、式(XVII)で表される化合物および式(XVIII)で表される化合物あるいは式(XIX)で表される化合物から<反応式4>の各製造工程に従い製造することができる。

<工程1> 式(I)で表される化合物またはその塩は、式(XVII)で表される化合物を式(XVIII)で表される化合物に付加させた後、生成した水酸基を必要に応じてアルキル化することにより、さらにA’’’が−(C=O)NRの場合にはアミド結合を還元することにより製造することができる。
付加反応は、ジエチルエーテル・テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、ベンゼン・ヘキサン等の炭化水素系溶媒等の反応に関与しない溶媒中、−100℃から室温で、式(XVII)で表される化合物をリチウムジイソプロピルアミド・リチウムヘキサメチルジシラジド・カリウムヘキサメチルジシラジド等の金属アミド試薬、スズ(II)トリフラート等に代表される有機金属試薬と反応させて金属エノラートとした後、−100℃から室温で式(XVIII)で表される化合物と反応させることにより行うことができる。
アミド結合の還元は<製造法1>の<工程4>(C法)に従って行うことができる。
付加反応により生成する3級水酸基のアルキル化は、ジメチルホルムアミド・ジメチルイミダゾリドン等の反応に関与しない溶媒中、水素化ナトリウム等の塩基存在下、−20℃から反応混合物が還流する温度、好ましくは氷冷下から室温でヨウ化メチルに代表されるハロゲン化アルキル、硫酸ジメチルに代表される硫酸ジアルキルなどのアルキル化剤を用いて行うことができる。
式(I)で表される化合物は、以下に示す<工程2>、<工程3>、<工程4>に従って製造することもできる。
<工程2> 式(XX)で表される化合物は、式(XVII)で表される化合物および式(XIX)で表される化合物から、<工程1>の方法に従って製造することができる。
<工程3> 式(XXI)で表される化合物は、式(XX)で表される化合物から、<製造法1>の<工程3>の方法に従って製造することができる。式(XX)で表される化合物においてA’’’が−(C=O)NRの場合には工程の後にアミド結合を還元せずに<工程4>を行うこともできる。
<工程4> 式(I)で表される化合物またはその塩は、式(XXI)で表される化合物および式(VIII)で表される化合物から、<製造法1>の<工程4>の方法に従って反応した後、A’’’が−(C=O)NRの場合にはアミド結合を還元して製造することができる。
以上の各製造法により合成した各化合物は、以下に示す方法に準じて、製造工程の各段階で変換することもできる。
WまたはW’’が基:−NH−を表す場合はハロゲン化低級アルキル、メタンスルホニルオキシ低級アルキル、アリールスルホニルオキシ低級アルキル、低級アルキルアルデヒド、低級アルキルカルボン酸を用いて、<製造法1>の<工程4>に準じてRが低級アルキル基である基:−NR−に変換することもできる。また、ホルマリンを用いて、硫酸存在下にテトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒等の反応に関与しない溶媒中または溶媒を使用しないで水素化ほう素ナトリウム等の還元剤と反応させることにより基:−N(CH)−とすることもできる。
また、WまたはW’’が基:−S−または−SO−を表す場合はジクロロメタン・クロロホルム等のハロゲン系溶媒、メタノール等のアルコール系溶媒等の反応に関与しない溶媒中m−クロロ過安息香酸、過よう素酸ナトリウム等の酸化剤と反応させることにより、基:SOまたは−SO−とすることもできる。
また、置換基として低級アルコキシカルボニル基を有する場合には、公知の方法、たとえばメタノール・エタノール等のアルコール系溶媒中、水酸化リチウム・水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液存在下に室温から反応混合物が還流する温度での加水分解、ジメチルホルムアミド(DMF)またはヘキサメチルホスホルアミド(HMPA)等の極性溶媒等の反応に関与しない溶媒中、リチウムアルキルチオラートとの反応、またはテトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒もしくはtert−ブタノール等のアルコール系溶媒等の反応に関与しない溶媒中、カリウム tert−ブトキシド、カリウムトリメチルシラノラート等との反応、等によりカルボキシル基へと変換することができ、さらに前述の<製造法1>の<工程4>の(C法)に記載した方法に準じて縮合反応を行うことにより低級アルキル基でモノ−もしくはジ−置換されていてもよいカルバモイル基へと変換することができる。また、カルボキシル基はテトラヒドロピラニル基等で保護されていてもよいヒドロキシルアミンと前述の<製造法1>の<工程4>の(C法)に記載した方法に準じて縮合反応を行うことにより保護されていてもよいN−ヒドロキシカルバモイル基とすることもできる。
さらに、上記の各方法により製造される各化合物のうち、芳香環上に置換基としてホルミル基を有する場合には、公知の方法、メタノール・エタノール等のアルコール系溶媒等の溶媒中、水素化ほう素ナトリウム、トリアセトキシ水素化ほう素ナトリウム、シアノ水素化ほう素ナトリウム等の還元剤を用いて反応させることにより、ヒドロキシメチル基に変換することもできる。
また、芳香環上に置換基としてシアノ基を有する場合には、公知の方法、たとえば塩酸または硫酸等の酸または水酸化ナトリウム等の塩基の存在下での加水分解等によりカルバモイル基に変換することもできる。
さらに、上記の各方法により製造される各化合物のうち、芳香環上に置換基としてハロゲン原子、好ましくは臭素原子を有する場合には、公知の方法、たとえばシアン化銅(I)・シアン化カリウム等を用い、ジメチルホルムアミド・ジメチルスルホキシド・ジメチルイミダゾリドン等の極性非プロトン性溶媒等の反応に関与しない溶媒中で室温から反応混合物が還流する温度で反応させることによりはハロゲン原子をシアノ基へと変換することができる。この反応は、触媒として酢酸パラジウムに代表されるパラジウム錯体やテトラキストリフェニルホスフィンニッケルに代表されるニッケル錯体等の遷移金属錯体を用いることもできる。
上記の各製造法により合成した各化合物に置換基として水酸基、アミノ基、カルボキシル基等の反応性基がある場合には、各製造工程においてこれらの基を適宜保護し、適当な段階で当該保護基を除去することもできる。こうした保護基の導入・除去の方法は、保護される基あるいは保護基のタイプにより適宜行われるが、例えば前述のプロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス(Protective Groups in Organic Synthesis)第3版、1999年の総説に記載の方法により行うことができる。
上記各製造法で使用する中間体のうち、式(XVIII)で表される化合物は、たとえば、4−ピペリドンまたはその等価体と式(VIII)で表される化合物とを<製造法1>の<工程4>に記載した方法に準じて反応させるか、下記式(XXII)

で表される化合物から、例えばウエジ(Huegi)らの論文(ジャーナル・オブ・メディシナル・ケミストリー(J.Med.Chem.)26巻、42頁、1983年)に準じて反応を行うか、1,3−アセトンジカルボン酸誘導体とのMannich反応の後、脱炭酸反応を行うこと等により得られる。
また、式(XXIV)で表される化合物は、例えば式(VIII)で表される化合物に、塩基の存在下ジメチルスルホキシド等の極性溶媒等の反応に関与しない溶媒中でよう化トリメチルスルホキソニウム・臭化トリメチルスルホキソニウム等を反応させることにより得ることができる。また、式(XXIV)で表される化合物は式(XVIII)で表される化合物にエーテル・ジオキサン・テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、ジメチルホルムアミド・ジメチルスルホキシド等の極性溶媒等の反応に関与しない溶媒中メチレントリフェニルホスホラン等を反応させることによりカルボニル基をメチレン基とした後、ジクロロメタン・クロロホルム等のハロゲン系溶媒等の反応に関与しない溶媒中m−クロロ過安息香酸等と反応させることにより酸化し、N−オキシドが生じた場合はN−オキシドのみを選択的に還元することにより得られる。
また、式(V)で表される化合物は、たとえば市販または公知の方法により容易に製造することが可能である下記式(XIX)

(式中、G1、G2およびPは前記と同一の意味を表す)で表される化合物に、塩基の存在下ジメチルスルホキシド等の極性溶媒等の反応に関与しない溶媒中でよう化トリメチルスルホキソニウム・臭化トリメチルスルホキソニウム等を反応させることにより得ることができる。また、式(V)で表される化合物は式(XIX)で表される化合物にエーテル・ジオキサン・テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、ジメチルホルムアミド・ジメチルスルホキシド等の極性溶媒等の反応に関与しない溶媒中メチレントリフェニルホスホラン等を反応させることによりカルボニル基をメチレン基とした後、ジクロロメタン・クロロホルム等のハロゲン系溶媒等の反応に関与しない溶媒中m−クロロ過安息香酸等と反応させることにより酸化し、N−オキシドが生じた場合はN−オキシドのみを選択的に還元することにより得られる。
また、式(X)で表される化合物または式(XI)で表される化合物は、たとえばA’’−Hが水酸基の場合はそれぞれ式(XXIV)または式(V)で表される化合物を水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基を用いてジオキサン・テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、ジメチルホルムアミド・ジメチルスルホキシド等の極性溶媒等の反応に関与しない溶媒中で加水分解することにより製造することができる。また、たとえば式(X)で表される化合物または式(XI)で表される化合物においてA’’が低級アルキルで保護されてもよいアミノ基の場合は、それぞれ式(XXIV)または式(V)で表される化合物とアンモニアまたは低級アルキルアミンを塩基の存在下または非存在下にジオキサン・テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、ジメチルホルムアミド・ジメチルスルホキシド等の極性溶媒等の反応に関与しない溶媒中で反応させることにより製造することができる。得られた化合物でA’’がアミノ基の場合はさらに<製造法1>の<工程4>の(C法)に記載した方法に準じてA’’が低級アルカノイル基で置換されたアミノ基または低級アルキル基で置換されたアミノ基である式(X)で表される化合物または式(XI)で表される化合物を製造することもできる。
実験例
以下に実験例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
実験例1−1 [クエン酸誘発モルモット咳嗽モデルに対する抑制効果]
一晩絶食したモルモットをプレスチモグラフに固定し、プレスチモグラフ(体部側)内圧の変化を差圧トランスデューサ(日本光電工業、TP−602T)および呼吸用アンプ(日本光電工業、AR−601G)を介してインク書き記録紙(日本光電工業、WI−642G)に記録した。20W/V%クエン酸水溶液をネブライザー(オムロン、NE−U12)を用いてプレスチモグラフ(頭部側)内に2分間(約1mL/min)噴霧し、噴霧開始から15分間の咳嗽反応の発現回数を観測、計測した。
被験化合物経口投与の3時間前および1時間後に咳嗽反応の測定を実施した。なお、投与前の測定で咳嗽反応の発現回数が5回以下の個体には投与を行わなかった。そして、投与前後の咳嗽反応発現比(Post/Pre×100)を算出し、被験化合物のクエン酸誘発による咳反射に対する抑制率を次式により求めた。


以上により、本発明化合物は、経口投与によりクエン酸誘発による咳嗽を抑制した。同時に、一般症状に何ら異常が認められなかったことから、本発明化合物の低い毒性が示された。
実験例1−2 [クエン酸誘発モルモット咳嗽モデルに対する抑制効果]
一晩絶食したモルモットを小動物用鼻吸入曝露装置(株式会社M・I・P・S)に設置し、20W/V%クエン酸水溶液をネブライザー(株式会社M・I・P・S)を用いて2分間(約1mL/min)噴霧し、噴霧開始から15分間の咳嗽反応の発現回数を観測、計測した。
被験化合物経口投与の3時間前および1時間後に咳嗽反応の測定を実施した。なお、投与前の測定で咳嗽反応の発現回数が5回以下の個体には投与を行わなかった。そして、投与前後の咳嗽反応発現比(Post/Pre×100)を算出し、被験化合物のクエン酸誘発による咳嗽反応に対する抑制率を次式により求めた。


以上により、本発明化合物は、経口投与によりクエン酸誘発による咳嗽を抑制した。同時に、一般症状に何ら異常が認められなかったことから、本発明化合物の低い毒性が示された。
実験例2 [毒性試験]
6週齢のWistar Hannoverラットの雌に実施例36の化合物を40mg/kg経口投与したところ、一般症状に異常は認められず、死亡例も認められなかった。
6週齢のWistar Hannoverラットの雌に実施例26の化合物を400mg/kg/日の用量で1日1回14日間強制経口投与したところ、最終回投与終了後24時間まで死亡例はなく、一般症状観察、体重および摂餌量測定においても異常は認められかった。また、血液学的検査、血液生化学的検査、主要器官の重量測定及び病理組成学的検査においてもめだった毒性的所見は観察されなかった。
3年齢の雄性アカゲザルに実施例36の化合物を20mg/kg/日、実施例26の化合物を40mg/kg/日の用量で、各々1日1回14日間強制経口投与したところ、最終回投与終了後24時間まで死亡例はなく、体重および一般症状にも異常は認められなかった。また、血液学的検査、血液生化学的検査、主要器官の重量測定及び病理組成学的検査においてもめだった毒性的所見は観察されなかった。
4年齢のホルターを装着した雄性アカゲザルに、実施例36の化合物を40mg/kgの用量及び実施例26の化合物を80mg/kgの用量で、経口投与したところ、心電図に対する影響は認められなかった。
実験例3 [ファーマコキネティクス]
3または4年齢の雄性アカゲザルを用いて、実施例36の化合物及び実施例26の化合物は、経口単回投与後の血漿中濃度の推移を検討したところ、いずれの化合物もバイオアベイラビリティは極めて良好であり、投与量にほぼ比例して、最高血漿中濃度(Cmax)及びAUCはいずれも増加し線形性を保つ特性を有していた。また、いずれの化合物もヒト薬物代謝酵素に対する阻害作用は認められなかった。さらに、ヒト、サル、イヌ及びラットの肝ミクロソーム及び遊離肝細胞において代謝を受けにくかった。従って、肝代謝による初回通過効果を受けにくいと考えられる。
以上の実験結果から、本発明化合物は、経口投与で、クエン酸誘発モルモット咳嗽モデルにおいて抑制効果を示した。また、毒性試験において何ら異常が認められかったことから、本発明化合物の極めて低い毒性が示された。さらに、本発明化合物は良好な薬物動態学的特性を有することが示された。
また、本発明化合物には、心電図のPQ間隔やQRS幅に対する影響もほとんどないことから心臓に対する毒性も低いことが示された。また、血圧等の循環系に対する影響も認められない。
従って、本発明の化合物は、動物の咳嗽モデルで優れた鎮咳効果を有すること、また安全性が高く、良好な薬物動態学的特性も有することから、優れた鎮咳剤として期待できる。
本発明化合物は、鎮咳効果を目的として以下の呼吸器疾患、例えば、肺癌、癌性リンパ管症、肋骨骨折、自然気胸、かぜ症候群、肺結核、間質性肺炎、胸膜炎、肺炎、急性気管支炎、慢性気管支炎、肺気腫症、塵肺、気管支拡張症、びまん性汎細気管支炎、気管支喘息、肺塞栓、肺梗塞症などに使用できる。これらの呼吸器疾患において、咳症状の悪化および慢性化は、呼吸筋のエネルギーを消費させて体力を消耗させ、基礎疾患の回復を妨げる結果となることから、咳症状を軽減させることでこれら疾患の治療を促進することが可能である。従って、本発明の化合物は、呼吸器疾患の予防及び/または治療剤として使用することが可能である。しかしながら、それらに限定されるわけではない。
咳は、湿性咳嗽と乾性咳嗽に分類されている。湿性咳嗽は、気道で増加した分泌物が気道を刺激し、痰を喀出するために生じる咳である。また、乾性咳嗽は、喀痰を伴わない、気道の過敏によって起こる咳であり、コンコンと乾いた咳がみられることから「空咳」とも呼ばれている。本発明に用いられる化合物は、いずれの咳にも有効であるが、とりわけ乾性咳嗽に用いるとその症状を改善でき、前記呼吸器疾患を治療することも可能である。
本発明の医薬は、医薬組成物の形態で投与される。
本発明の医薬組成物は、本発明の式(I)、(II)または(III)で表される化合物の少なくとも一つ以上を含んでいればよく、医薬上許容される添加剤と組み合わせてつくられる。より詳細には、賦形剤(例;乳糖、白糖、マンニット、結晶セルロース、ケイ酸、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン)、結合剤(例;セルロース類(ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC))、結晶セルロース、糖類(乳糖、マンニット、白糖、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール)、デンプン類(トウモロコシデンプン、バレイショデンプン)、α化デンプン、デキストリン、ポリビニルピロリドン(PVP)、マクロゴール、ポリビニルアルコール(PVA))、滑沢剤(例;ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、カルボキシメチルセルロース)、崩壊剤(例;デンプン類(トウモロコシデンプン、バレイショデンプン)、カルボキシメチルスターチナトリウム、カルメロース、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポピドン)、被膜剤(例;セルロース類(ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、メタクリル酸コポリマーLD)、可塑剤(例;クエン酸トリエチル、マクロゴール)、隠蔽剤(例;酸化チタン)、着色剤、香味剤、防腐剤(例;塩化ベンザルコニウム、パラオキシ安息香酸エステル)、等張化剤(例;グリセリン、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、マンニトール、ブドウ糖)、pH調節剤(例;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、塩酸、硫酸、リン酸緩衝液などの緩衝液)、安定化剤(例;糖、糖アルコール、キサンタンガム)、分散剤、酸化防止剤(例;アスコルビン酸、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、没食子酸プロピル、dl−α−トコフェロール)、緩衝剤、保存剤(例;パラベン、ベンジルアルコール、塩化ベンザルコニウム)、芳香剤(例;バニリン、l−メントール、ローズ油)、溶解補助剤(例;ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリソルベート80、ポリエチレングリコール、リン脂質コレステロール、トリエタノールアミン)、吸収促進剤(例;グリコール酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、アシルカルニチン類、リモネン)、ゲル化剤、懸濁化剤、または乳化剤、一般的に用いられる適当な添加剤または溶媒の類を、本発明の化合物と適宜組み合わせて種々の剤形とすることが出来る。
種々の剤形とは、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、丸剤、エアゾール剤、吸入剤、軟膏剤、貼付剤、坐剤、注射剤、トローチ剤、液剤、酒精剤、懸濁剤、エキス剤、エリキシル剤等があげられる。また、経口、皮下投与、筋肉内投与、鼻腔内投与、経皮投与、静脈内投与、動脈内投与、神経周囲投与、硬膜外投与、硬膜下腔内投与、脳室内投与、直腸内投与、吸入等により患者に投与し得る。
本発明化合物の投与量は、通常成人1日当たり0.005mg〜3.0g、好ましくは0.05mg〜2.5g、より好ましくは0.1mg〜1.5gであるが、症状あるいは投与経路に応じて適宜増減できる。
全量を1回あるいは2−6回に分割して経口または非経口投与することや、点滴静注等、連続投与することも可能である。
つぎに、本発明をさらに詳細に説明するために実施例をあげるが、本発明はこれに限定されるものではない。
核磁気共鳴スペクトル(NMR)はジェオルJNM−EX270(JEOLJNM−EX270)FT−NMR(データに*を表示、日本電子(株)製)、ジェオルJNM−LA300(JEOLJNM−LA300)FT−NMR(日本電子(株)製)またはジェオルJNM−AL300(JEOLJNM−AL300)FT−NMR(日本電子(株)製)を、赤外吸収スペクトル(IR)はホリバ(HORIBA)FT−720((株)堀場製作所製)を、融点はメトラー(Mettler)FP900サーモシステム(メトラー・トレド(株)製)をそれぞれ用いて測定した。
【実施例1】
4−({1−[2−(4−シアノフェニル)エチル]−4−ヒドロキシピペリジン−4−イルメチル}メチルアミノ)安息香酸の合成
<工程1> 4−シアノフェニルアセトアルデヒドの合成
塩化(メトキシメチル)トリフェニルホスホニウム(392g)を無水テトラヒドロフラン(1.3L)に懸濁させ、窒素雰囲気下−20℃〜−15℃でカリウムtert−ブトキシド(128g)の無水テトラヒドロフラン(1.3L)溶液を滴下し、同温で10分間、0℃で80分間攪拌した。4−シアノベンズアルデヒド(100g)の無水テトラヒドロフラン(600mL)溶液を−20℃〜−15℃で滴下し、同温で10分間攪拌した後、90分間で室温まで昇温した。反応液に水(1L)を加えて攪拌後、食塩およびエーテルを加えて分液した。有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下に溶媒を留去して得た残渣にヘキサン:エーテル(1:1、1L)を加えて、不溶物を濾去して濾液を減圧濃縮した。得られた油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[クロマトレックスNHTM;ChromatorexNHTM](溶出液;ヘキサン:酢酸エチル=49:1〜4:1)にて精製して、油状物(118g)を得た。
この油状物(115g)のアセトン(460mL)溶液に2N塩酸(230mL)を加えて、窒素雰囲気下に80分間加熱還流した。放冷後、反応液にエーテルおよび食塩を加えて分液して、さらに水層をエーテルで抽出した。有機層を合わせて飽和食塩水で洗浄した(水層のpHが4程度になるまで)後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下に溶媒を留去して、標記化合物(105g)を油状物として得た。
<工程2> 1−[2−(4−シアノフェニル)エチル]ピペリジン−4−オンの合成
工程1で得られた化合物(13.2g)および4−ピペリドン塩酸塩一水和物(10.0g)のメタノール(500mL)溶液に氷水冷下でトリアセトキシ水素化ほう素ナトリウム(41.4g)を2.5時間かけて加え、同温で1時間攪拌した。反応液を減圧濃縮して得た残渣に1N塩酸(220mL)およびジクロロメタンを加えて分液して、水層を酢酸エチルで洗浄した。水層を炭酸カリウムでpHを9以上に調整した後、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下に溶媒を留去した。残渣を2−プロパノールにて結晶化したのち濾取して、標記化合物(9.07g)を結晶として得た。
<工程3> 1−[2−(4−シアノフェニル)エチル]ピペリジン−4−スピロ−2’−オキシランの合成
無水ジメチルスルホキシド(42mL)に60%水素化ナトリウム(1.89g)を加えて窒素雰囲気下、室温で10分間攪拌した。10〜19℃で、よう化トリメチルスルホキソニウム(10.4g)を徐々に加えた後、8〜10℃で30分間、室温で60分間攪拌した。10〜12℃で、工程2で得られた化合物(9.00g)の無水ジメチルスルホキシド(42mL)溶液を滴下した。室温で1.5時間攪拌後、反応液を氷水(250mL)中に攪拌しながら少しずつ注いだ。酢酸エチルで抽出し、有機層を合わせて水および飽和食塩水で順に洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下溶媒を留去して、残渣をヘキサンで結晶化し濾取して標記化合物(8.61g)を結晶として得た。
<工程4> 4−({1−[2−(4−シアノフェニル)エチル]−4−ヒドロキシピペリジン−4−イルメチル}メチルアミノ)安息香酸の合成
工程3で得られた化合物(500mg)、4−メチルアミノ安息香酸(343mg)および無水アセトニトリル(10mL)の混合物に氷水冷下トリフルオロメタンスルホン酸スカンジウム(609mg)を加え、窒素雰囲気下室温で68時間攪拌した。水(50mL)およびアセトニトリル(10mL)を加え、炭酸水素ナトリウム粉末でpHを9以上に調整した後、不溶物を濾去して濾液を減圧濃縮した。残渣にエタノールを加えて共沸により水分を留去した後、残渣中の可溶成分をエタノールに溶解して不溶物を濾去した。濾液を減圧濃縮した後、残渣を水(50mL)に溶解して希塩酸でpHを7に調整した。沈殿を濾取して水、酢酸エチルの順で攪拌下に洗浄し、濾取後乾燥して標記化合物(524mg)を粉末として得た。
【実施例2】
4−({1−[2−(4−シアノフェニル)エチル]−4−ヒドロキシピペリジン−4−イルメチル}メチルアミノ)安息香酸の合成
実施例1の工程3で得られた化合物(26.0g)および4−メチルアミノ安息香酸(17.8g)をメタノール(260mL)および水(260mL)に溶解させ、窒素雰囲気下に40℃で13時間攪拌した。40℃以下にてメタノールを減圧留去した。沈殿を濾取して水(200mL)で洗浄して風乾した。濾液を室温にて静置したのち、沈殿を濾取して水(100mL)で洗浄して風乾した。得られた沈殿を合わせて、酢酸エチル(1.0L)に懸濁させて室温で1時間激しく攪拌した。不溶物を濾取して酢酸エチル(200mL)、tert−ブチルメチルエーテル(100mL)の順で洗浄したのち乾燥して標記化合物(20.3g)を粉末として得た。得られた化合物の物性データは、実施例1の化合物のものと一致した。
【実施例3】
4−({1−[2−(4−シアノフェニル)エチル]−4−ヒドロキシピペリジン−4−イルメチル}メチルアミノ)−3−メチル安息香酸の合成
<工程1> 4−アミノ−3−メチル安息香酸メチルの合成
4−アミノ−3−メチル安息香酸(5.0g)およびメタノール(50mL)の混合物に塩化チオニル(2.64mL)を加えて、80℃で14時間攪拌した。反応液を室温まで冷却後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で中和して、減圧下で濃縮したのち酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水の順で洗浄して、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧下で留去して標記化合物(5.50g)を結晶として得た。
<工程2> 4−ホルミルアミノ−3−メチル安息香酸メチルの合成
工程1で得られた化合物(5.50g)のジクロロメタン(55mL)溶液にぎ酸(4.98mL)を加えた。5℃で1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(9.48g)を5分かけて加えた後、室温で3時間撹拌した。反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(30mL)を加え、1N水酸化ナトリウムでpHを10とした後、分液した。水層をジクロロメタンで抽出したのち、有機層を合わせて水および飽和食塩水の順で洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧下で留去して得た残渣を、ジイソプロピルエーテルで洗浄して標記化合物(6.23g)を結晶として得た。
<工程3> 3−メチル−4−メチルアミノ安息香酸メチルの合成
工程2で得られた化合物(6.23g)の無水テトラヒドロフラン(65mL)溶液に5℃でボラン−硫化メチル錯塩(10M;9.67mL)を徐々に加え、窒素雰囲気下室温で2時間攪拌した。発泡に注意しながらメタノール(10mL)を滴下後、2.5M塩化水素−メタノール溶液(20mL)を加えて2時間加熱還流した。減圧下に溶媒を留去して、残渣に炭酸水素ナトリウム水溶液(150mL)を加えて酢酸エチル(150mL×1、50mL×2)で抽出した。有機層を合わせて水および飽和食塩水の順で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下に溶媒を留去して標記化合物(5.78g)を結晶として得た。
<工程4> 3−メチル−4−メチルアミノ安息香酸の合成
工程3で得られた化合物(5.78g)のエタノール(130mL)溶液に水酸化ナトリウム(1.80g)および水(0.5mL)を加えて5時間加熱還流した。減圧下に溶媒を留去して得た残渣を水(30mL)に溶解後、エーテル(50mL)で洗浄した。水層を1N塩酸でpH5〜6に調整して、酢酸エチル(50mL×3)で抽出した。有機層を合わせて飽和食塩水で洗浄して、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下に溶媒を留去して得た残渣をメタノールで再結晶した。結晶をジエチルエーテルで洗浄したのち乾燥して標記化合物(3.22g)を結晶として得た。
<工程5> 4−({1−[2−(4−シアノフェニル)エチル]−4−ヒドロキシピペリジン−4−イルメチル}メチルアミノ)−3−メチル安息香酸の合成
トリフルオロメタンスルホン酸スカンジウム(2.68g)の無水アセトニトリル(5.0mL)溶液に、氷水冷下で実施例1の工程3で得られた化合物(2.63g)の無水アセトニトリル(5.0mL)溶液および工程4で得られた化合物(1.50g)の無水アセトニトリル(15mL)懸濁液を窒素雰囲気下で15分かけて滴下して、室温で2日間攪拌した。反応液を氷水(25mL)に注いでメタノール(25mL)を加えたのち、1N水酸化ナトリウムでpH7に調整して、さらに炭酸ナトリウムでpHを9以上に調整した。高粘性の不溶物を濾別して濾液を減圧下で濃縮した。残渣を水−メタノール混合溶媒(1:1、25mL)に懸濁させてから、炭酸ナトリウムで再度pHを9以上に調整して1時間攪拌したのち、不溶物を濾別した。不溶物に対して再度同様の操作を行ったのち、これらの操作で得られた濾液を合わせて減圧下で濃縮した。残渣にエタノール(12mL)を加えて水分を共沸留去したのち、残渣をエタノール(25mL)に懸濁させて1時間攪拌して不溶物を濾去した。濾液を減圧下で濃縮して得た残渣に水(25mL)を加えて攪拌したのち、不溶物を濾去した。濾液を希塩酸でpH7に調整、溶媒を減圧下で留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[クロマトレックスNHTM;ChromatorexNHTM](溶出液;酢酸エチル:メタノール=2:1〜メタノール)にて精製したのち、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液;酢酸エチル:メタノール=7:1)にて精製した。得られた結晶を酢酸エチル(15mL)、tert−ブチルメチルエーテル(15mL)の順で洗浄したのち、乾燥して標記化合物(0.41g)を結晶として得た。
【実施例4】
4−({1−[2−(4−シアノフェニル)エチル]−4−ヒドロキシピペリジン−4−イルメチル}メチルアミノ)−3−メトキシ安息香酸の合成
<工程1> 4−アミノ−3−メトキシ安息香酸メチルの合成
4−アミノ−3−メトキシ安息香酸(5.00g)を用いて、実施例3の工程1と同様にして標記化合物(5.37g)を得た。
<工程2> 4−ホルミルアミノ−3−メトキシ安息香酸メチルの合成
工程1で得られた化合物(5.37g)を用いて、実施例3の工程2と同様にして標記化合物(6.00g)を得た。
<工程3>3−メトキシ−4−メチルアミノ安息香酸メチルの合成
工程2で得られた化合物(6.00g)を用いて、実施例3の工程3と同様にして標記化合物(5.72g)を得た。
<工程4> 3−メトキシ−4−メチルアミノ安息香酸の合成
工程3で得られた化合物(5.70g)を用いて、実施例3の工程4と同様にして標記化合物(3.02g)を得た。
<工程5> 4−({1−[2−(4−シアノフェニル)エチル]−4−ヒドロキシピペリジン−4−イルメチル}メチルアミノ)−3−メトキシ安息香酸の合成
工程4で得られた化合物(1.50g)および実施例1の工程3で得られた化合物(2.41g)を用いて、実施例3の工程5と同様にして標記化合物(0.579g)を得た。
【実施例5】
2−クロロ−4−({1−[2−(4−シアノフェニル)エチル]−4−ヒドロキシピペリジン−4−イルメチル}メチルアミノ)安息香酸の合成
<工程1> 4−アミノ−2−クロロ安息香酸メチルの合成
4−アミノ−2−クロロ安息香酸(5.00g)を用いて、実施例3の工程1と同様にして標記化合物(5.26g)を得た。
<工程2> 2−クロロ−4−ホルミルアミノ安息香酸メチルの合成
工程1で得られた化合物(5.26g)を用いて、実施例3の工程2と同様にして標記化合物(5.15g)を得た。
<工程3> 2−クロロ−4−メチルアミノ安息香酸メチルの合成
工程2で得られた化合物(5.15g)を用いて、実施例3の工程3と同様にして標記化合物(4.96g)を得た。
<工程4> 2−クロロ−4−メチルアミノ安息香酸の合成
工程3で得られた化合物(4.96g)を用いて、実施例3の工程4と同様にして標記化合物(2.06g)を得た。
<工程5> 2−クロロ−4−({1−[2−(4−シアノフェニル)エチル]−4−ヒドロキシピペリジン−4−イルメチル}メチルアミノ)安息香酸の合成
工程4で得られた化合物(1.50g)および実施例1の工程3で得られた化合物(2.34g)を用いて、実施例3の工程5と同様にして標記化合物(0.680g)を得た。
【実施例6】
3−クロロ−4−({1−[2−(4−シアノフェニル)エチル]−4−ヒドロキシピペリジン−4−イルメチル}メチルアミノ)安息香酸の合成
<工程1> 3−クロロ−4−ホルミルアミノ安息香酸メチルの合成
4−アミノ−3−クロロ安息香酸メチル(5.00g)を用いて、実施例3の工程2と同様にして標記化合物(6.14g)を得た。
<工程2> 3−クロロ−4−メチルアミノ安息香酸メチルの合成
工程1で得られた化合物(6.00g)を用いて、実施例3の工程3と同様にして標記化合物(6.03g)を得た。
<工程3> 3−クロロ−4−メチルアミノ安息香酸の合成
工程2で得られた化合物(6.00g)を用いて、実施例3の工程4と同様にして標記化合物(2.90g)を得た。
<工程4> 3−クロロ−4−({1−[2−(4−シアノフェニル)エチル]−4−ドロキシピペリジン−4−イルメチル}メチルアミノ)安息香酸の合成
工程3で得られた化合物(500mg)および実施例1の工程3で得られた化合物(590mg)を用いて、実施例3の工程5と同様にして標記化合物(302mg)を得た。
【実施例7】
5−クロロ−4−({1−[2−(4−シアノフェニル)エチル]−4−ヒドロキシピペリジン−4−イルメチル}メチルアミノ)−2−メトキシ安息香酸の合成
<工程1> 4−アミノ−5−クロロ−2−メトキシ安息香酸メチルの合成
4−アミノ−5−クロロ−2−メトキシ安息香酸(10.0g)を用いて、実施例3の工程1と同様にして標記化合物(10.5g)を結晶として得た。
<工程2> 5−クロロ−4−ホルミルアミノ−2−メトキシ安息香酸メチルの合成
工程1で得られた化合物(10.5g)を用いて、実施例3の工程2と同様にして標記化合物(10.6g)を結晶として得た。
<工程3> 5−クロロ−2−メトキシ−4−メチルアミノ安息香酸メチルの合成
工程2で得られた化合物(10.6g)を用いて、実施例3の工程3と同様にして標記化合物(5.32g)を結晶として得た。
<工程4> 5−クロロ−2−メトキシ−4−メチルアミノ安息香酸の合成
工程3で得られた化合物(5.32g)を用いて、実施例3の工程4と同様にして標記化合物(4.14g)を結晶として得た。
<工程5> 5−クロロ−4−({1−[2−(4−シアノフェニル)エチル]−4−ヒドロキシピペリジン−4−イルメチル}メチルアミノ)−2−メトキシ安息香酸の合成
工程4で得られた化合物(2.00g)および実施例1の工程3で得られた化合物(2.70g)を用いて、実施例3の工程5と同様にして標記化合物(0.83g)を粉末として得た。
【実施例8】
4−({1−[2−(4−シアノフェニル)エチル]−3−ヒドロキシピロリジン−3−イルメチル}メチルアミノ)安息香酸tert−ブチルの合成
<工程1> 1−ベンジルピロリジン−3−スピロ−2’−オキシランの合成
60%水素化ナトリウム(0.81g)の無水ジメチルスルホキシド(25mL)懸濁液に、よう化トリメチルスルホキソニウム(7.4g)を10〜15℃で30分かけて加えて、窒素雰囲気下室温で1時間攪拌した。1−ベンジル−3−ピロリドン(4.9g)の無水ジメチルスルホキシド(25mL)溶液を10〜15℃で20分かけて加えて、10〜24℃で1時間攪拌した。氷水冷下で水(50mL)および酢酸エチル(50mL)を加えて、振とう分液した。水層を酢酸エチル(50mL×2)で抽出して先の有機層と合わせた。有機層を水(30mL×3)および飽和食塩水(50mL)で順に洗浄して、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下で溶媒を留去することにより得た残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液;ヘキサン:酢酸エチル=1:1)にて精製して標記化合物(2.64g)を油状物として得た。
<工程2> 4−メチルアミノ安息香酸tert−ブチルの合成
4−メチルアミノ安息香酸(20.2g)とtert−ブタノール(100g)の混合物に1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(25.6g)と4−ジメチルアミノピリジン(134mg)を加え、室温で5時間攪拌した。溶媒を減圧下に留去して得た残渣を酢酸エチルで抽出した。有機層を水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水の順で洗浄して、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下に溶媒を留去して標記化合物(16.0g)を油状物として得た。
<工程3> 4−[(1−ベンジル−3−ヒドロキシピロリジン−3−イルメチル)メチルアミノ]安息香酸tert−ブチルの合成
工程2で得られた化合物(4.6g)の無水テトラヒドロフラン(15mL)溶液に、n−ブチルリチウム−ヘキサン溶液(1.57M;13mL)を氷水冷下窒素雰囲気中で20分かけて滴下して、同温で1時間攪拌した。工程1で得られた化合物(2.6g)の無水テトラヒドロフラン(15mL)溶液を氷水冷下で20分かけて滴下して、室温で終夜攪拌した。氷水冷下で水(100mL)を加えて、酢酸エチル(100mL、40mL×2)で抽出した。有機層を合わせて飽和食塩水(50mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下で溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[クロマトレックスNHTM;ChromatorexNHTM](溶出液;ヘキサン:酢酸エチル=6:1)にて精製して、標記化合物(4.42g)を結晶として得た。
<工程4> 4−[(3−ヒドロキシピロリジン−3−イルメチル)メチルアミノ]安息香酸tert−ブチルの合成
工程3で得られた化合物(2.0g)のメタノール(20mL)溶液に10%パラジウム−炭素(0.20g)を加えて、水素雰囲気中室温で4時間攪拌した。触媒をセライトで濾去して、濾液を減圧下で濃縮したのち、残渣にtert−ブチルメチルエーテル(20mL)を加えて固化した。この固体を乾燥することにより標記化合物(1.64g)を無定形固体として得た。
<工程5> 4−({1−[2−(4−シアノフェニル)エチル]−3−ヒドロキシピロリジン−3−イルメチル}メチルアミノ)安息香酸tert−ブチルの合成
工程4で得られた化合物(0.68g)、実施例1の工程1で得られた化合物(0.64g)および酢酸(0.50mL)をジクロロメタン(25mL)に溶解して、氷水冷下でトリアセトキシ水素化ほう素ナトリウム(1.88g)を加えた後、窒素雰囲気下室温で4時間攪拌した。反応溶液に水(20mL)を加えたのち、1N水酸化ナトリウムでpH10に調整して分液した。水層をジクロロメタン(20mL×3)で抽出した。合わせた有機層を水(30mL)、飽和食塩水(30mL)の順で洗浄したのち、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下に溶媒を留去して得た残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液;酢酸エチル)にて精製して標記化合物(560mg)を無定形固体として得た。
【実施例9】
4−({1−[2−(4−シアノフェニル)エチル]−3−ヒドロキシピペリジン−3−イルメチル}メチルアミノ)安息香酸tert−ブチルの合成
<工程1> 1−ベンジルピペリジン−3−スピロ−2’−オキシランの合成
1−ベンジル−3−ピペリドン塩酸塩水和物(5.0g)およびよう化トリメチルスルホキソニウム(5.3g)の無水アセトニトリル(220mL)懸濁液に細かく粉砕した85%水酸化カリウム(5.2g)を加えて窒素雰囲気下、50℃で2.5時間攪拌した。室温まで冷却したのち、不溶物を濾去して濾液を減圧下で濃縮した。残渣に酢酸エチル(100mL)および水(50mL)を加えて、振とう分液した。有機層を水(50mL)および飽和食塩水(50mL)で順に洗浄して、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下で溶媒を留去することにより標記化合物(4.07g)を油状物として得た。
<工程2> 4−[(1−ベンジル−3−ヒドロキシピペリジン−3−イルメチル)メチルアミノ]安息香酸tert−ブチルの合成
工程1で得られた化合物(2.0g)および実施例8の工程2で得られた化合物(3.3g)を用いて、実施例8の工程3と同様にして標記化合物(3.0g)を得た。
<工程3> 4−[(3−ヒドロキシピペリジン−3−イルメチル)メチルアミノ]安息香酸tert−ブチルの合成
工程2で得られた化合物(3.0g)を用いて、実施例8の工程4と同様にして標記化合物(1.76g)を結晶として得た。
<工程4> 4−({1−[2−(4−シアノフェニル)エチル]−3−ヒドロキシピペリジン−3−イルメチル}メチルアミノ)安息香酸tert−ブチルの合成
工程3で得られた化合物(1.0g)および実施例1の工程1で得られた化合物(0.90g)を用いて、実施例8の工程5と同様にして標記化合物(1.32g)を得た。
【実施例10】
4−({1−[2−(4−シアノフェニル)エチル]−3−ヒドロキシアゼチジン−3−イルメチル}メチルアミノ)安息香酸メチルの合成
<工程1> 1−(ジフェニルメチル)アゼチジン−3−スピロ−2’−オキシランの合成
60%水素化ナトリウム(0.651g)の無水ジメチルホルムアミド(30mL)懸濁液に氷水冷下でよう化トリメチルスルホキソニウム(3.58g)および無水ジメチルスルホキシド(1.15mL)を加えて窒素雰囲気下、同温で1時間攪拌した。−35〜−30℃で1−(ジフェニルメチル)アゼチジン−3−オン(3.86g)の無水ジメチルホルムアミド(30mL)溶液を30分で滴下した後、同温で10分間攪拌した。30分かけて0℃まで昇温して、0〜5℃で30分攪拌した。反応液を氷水(300mL)中に攪拌しながら少しずつ注いで、酢酸エチル(80mL×3)で抽出した。有機層を合わせて水、飽和食塩水の順で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥して減圧下に溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液;酢酸エチル:ヘキサン=1:4〜1:3)で精製することにより標記化合物(1.41g)を結晶として得た。
<工程2> 4−ホルミルアミノ安息香酸メチルの合成
4−アミノ安息香酸メチル(90.0g)を用いて、実施例3の工程2と同様にして標記化合物(88.7g)を結晶として得た。
<工程3> 4−(1−ジフェニルメチル−3−ヒドロキシアゼチジン−3−イルメチルアミノ)安息香酸メチルの合成
工程1で得られた化合物(1.20g)および工程2で得られた化合物(0.941g)のアセトニトリル(24mL)溶液に無水炭酸カリウム(3.63g)を加えて、窒素雰囲気下で10時間加熱還流した。不溶物を濾去した後、濾液を減圧下に濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液;ヘキサン:酢酸エチル=2:1)で精製することにより標記化合物(1.55g)を無定形固体として得た。
<工程4> 4−[(1−ジフェニルメチル−3−ヒドロキシアゼチジン−3−イルメチル)メチルアミノ]安息香酸メチルの合成
3M硫酸(25.3mL)と37%ホルムアルデヒド水溶液(0.566mL)の混合物に氷水冷下で水素化ほう素ナトリウム(0.718g)と工程3で得られた化合物(1.53g)のテトラヒドロフラン(30.6mL)懸濁液を30分で添加して、同温で激しく90分攪拌した。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液に注いだ後、炭酸水素ナトリウム粉末でpH9に調整して、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下に溶媒を留去して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液;ヘキサン:酢酸エチル=2:1〜1:1)にて精製して、標記化合物(1.52g)を無定形固体として得た。
<工程5> 4−[(3−ヒドロキシアゼチジン−3−イルメチル)メチルアミノ]安息香酸 一塩酸塩の合成
工程4で得られた化合物(720mg)のメタノール(38mL)溶液を10%塩化水素−メタノール溶液でpH2に調整後、10%パラジウム−炭素(144mg)を加え、水素雰囲気中室温で18時間攪拌した。触媒をセライトで濾去して、濾液を減圧下に濃縮した。残渣をヘキサンで洗浄後、減圧乾燥することにより標記化合物(530mg)を無定形固体として得た。
<工程6> 4−({1−[2−(4−シアノフェニル)エチル]−3−ヒドロキシアゼチジン−3−イルメチル}メチルアミノ)安息香酸メチルの合成
工程5で得られた化合物(500mg)および実施例1の工程1で得られた化合物(506mg)を用いて、実施例8の工程5と同様にして標記化合物(530mg)を結晶として得た。
【実施例11】
4−[(2−{1−[2−(4−シアノフェニル)エチル]−4−ヒドロキシピペリジン−4−イル}エチル)メチルアミノ]安息香酸tert−ブチルの合成
<工程1> 4−(アセチルメチルアミノ)安息香酸tert−ブチルの合成
実施例8の工程2で得られた化合物(15.3g)のトルエン(150mL)溶液に水冷下無水酢酸(7.66mL)を加え、室温で終夜攪拌した。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて1時間攪拌した後、分離したトルエン層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水、飽和食塩水の順で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下に溶媒を留去して得た残渣をヘキサンで洗浄したのち濾取して、標記化合物(17.5g)を結晶として得た。
<工程2> 4−{[2−(1−ベンジル−4−ヒドロキシピペリジン−4−イル)アセチル]メチルアミノ}安息香酸tert−ブチルの合成
ジイソプロピルアミン(10mL)の無水テトラヒドロフラン(100mL)溶液に、窒素雰囲気下−30℃以下でn−ブチルリチウム−ヘキサン溶液(1.57M;50mL)を滴下したのち、0℃まで昇温した。工程1で得られた化合物(17.5g)の無水テトラヒドロフラン(50mL)溶液を−30℃以下で滴下して、同温で10分攪拌した。1−ベンジル−4−ピペリドン(13mL)の無水テトラヒドロフラン(50mL)溶液を−30℃以下で滴下したのち、室温で終夜攪拌した。水を加えて酢酸エチルで抽出したのち、酢酸エチル層を水、飽和食塩水の順で洗浄して無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下に溶媒を留去して得た残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液;酢酸エチル)にて精製して、標記化合物(28.8g)を得た。
<工程3> 4−{[2−(1−ベンジル−4−ヒドロキシピペリジン−4−イル)エチル]メチルアミノ}安息香酸tert−ブチルの合成
工程2で得られた化合物(28.5g)の無水テトラヒドロフラン(100mL)溶液に氷水冷下でボラン−硫化メチル錯塩(10M;26mL)を加えた後、室温で7時間攪拌した。メタノールを加えて1時間攪拌した後、終夜室温で放置した。N、N、N’、N’−テトラメチルエチレンジアミン(11mL)を加えて1時間攪拌した後、30分加熱還流した。減圧下に溶媒を留去して得た残渣に水を加えて、酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル層を水、飽和食塩水の順で洗浄して無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下に溶媒を留去して得た残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[クロマトレックスNHTM;ChromatorexNHTM](溶出溶媒;ヘキサン:酢酸エチル=2:1)にて精製した後、ヘキサンで洗浄して標記化合物(18.5g)を結晶として得た。
<工程4> 4−{[2−(4−ヒドロキシピペリジン−4−イル)エチル]メチルアミノ}安息香酸tert−ブチルの合成
工程3で得られた化合物(18.5g)のメタノール(300mL)溶液に10%パラジウム−炭素(1.0g)を加え、水素雰囲気中室温で終夜攪拌した。触媒をセライトで濾去して濾液を減圧下に濃縮した後、再度メタノール(300mL)に溶解して10%パラジウム−炭素(1.0g)を加え、水素雰囲気中室温で終夜攪拌した。触媒をセライトで濾去して濾液を減圧下に濃縮した後、残渣をエーテルで結晶化させることにより標記化合物(14.6g)を結晶として得た。
<工程5> 4−[(2−{1−[2−(4−シアノフェニル)エチル]−4−ヒドロキシピペリジン−4−イル}エチル)メチルアミノ]安息香酸tert−ブチルの合成
工程4で得られた化合物(400mg)、実施例1の工程1で得られた化合物(260mg)および酢酸(0.40mL)をジクロロメタン(8mL)に溶解し、氷水冷下トリアセトキシ水素化ほう素ナトリウム(1.01g)を加えた後、窒素雰囲気下同温で60分、室温で2時間攪拌した。実施例1の工程1で得られた化合物(260mg)のジクロロメタン(1.6mL)溶液およびトリアセトキシ水素化ほう素ナトリウム(1.01g)を氷水冷下で追加して、同温で60分、室温で15時間攪拌した。反応溶液に炭酸水素ナトリウム水溶液を加えてpH9に調整後、分液して水層をジクロロメタン(10mL×2)で抽出した。合わせたジクロロメタン層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下に溶媒を留去して得た残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液;酢酸エチル:メタノール=97:3〜9:1)にて精製して、標記化合物(460mg)をガム状物として得た。
【実施例12】
4−({1−[2−(4−シアノフェニル)エチル]−4−ヒドロキシピペリジン−4−イルメチル}メチルアミノ)安息香酸メチルの合成
実施例1の工程3で得られた化合物(139g)、実施例10の工程2で得られた化合物(113g)、炭酸カリウム(120g)、アセトニトリル(570mL)の混合物を窒素雰囲気下で23時間加熱還流した。不溶物を濾去して濾液を減圧下に濃縮して粗製中間体(250g)を油状物として得た。
粗製中間体(250g)の無水テトラヒドロフラン(2.0L)溶液に氷水冷下にボラン−硫化メチル錯塩(10M;148mL)を30分で滴下して、窒素雰囲気下同温で30分、室温で終夜攪拌した。氷水冷下に反応液にメタノールを少しずつ加えた後、10%塩酸−メタノールを加えてpHを1以下に調整し、室温で30分攪拌後2時間加熱還流した。溶媒を減圧下に留去して、残渣に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(900mL)を加え、炭酸カリウムを用いてpHを10に調整した。ジクロロメタンで抽出し、有機層を合わせて飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧下に留去した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[クロマトレックスNHTM;ChromatorexNHTM](溶出液;ヘキサン:ジクロロメタン=1:1〜1:2)にて精製した。得られた粗製生物をエーテルに懸濁させて洗浄後、濾取して標記化合物(33.3g)を粉末として得た。
【実施例13】
4−{1−[2−(4−シアノフェニル)エチル]−4−ヒドロキシピペリジン−4−イルメトキシ}安息香酸メチルの合成
<工程1> 1−ベンジルピペリジン−4−スピロ−2’−オキシランの合成
無水ジメチルスルホキシド(400mL)に60%水素化ナトリウム(25.4g)を加えて窒素雰囲気下、室温で攪拌した。20〜28℃で、よう化トリメチルスルホキソニウム(140g)を徐々に加えた後、室温で60分間攪拌した。室温で、1−ベンジル−4−ピペリドン(100g)の無水ジメチルスルホキシド(400mL)溶液を滴下した。室温で60分間攪拌後、反応液を氷水(2.0L)中に攪拌しながら少しずつ注いだ。酢酸エチルで抽出し、有機層を合わせて水(4回)および飽和食塩水で順に洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液;酢酸エチル:ヘキサン=1:9〜1:1)で精製することにより標記化合物(86.7g)を油状物として得た。
<工程2> 1−ベンジル−4−ヒドロキシメチルピペリジン−4−オールの合成
85%水酸化カリウム(40.6g)を水(615mL)に溶解し、ジオキサン(103mL)と混合した。窒素雰囲気下に工程1で得られた化合物(25.0g)のジオキサン(103mL)溶液を90℃で60分間かけて滴下し、同温で20分間攪拌した。反応液を氷水で冷却しつつ濃塩酸でpHを9に調整し、食塩を飽和するまで加えてから、酢酸エチルで抽出した。有機層を合わせて無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下溶媒を留去した。残渣をヘキサン:エーテルで結晶化、濾取して標記化合物(24.6g)を結晶として得た。
<工程3> 1−ベンジル−4−(4−シアノフェノキシメチル)ピペリジン−4−オールの合成
工程2で得られた化合物(1.66g)の無水ジメチルホルムアミド(8mL)溶液に60%水素化ナトリウム(0.30g)を氷水冷下で加えて、窒素雰囲気下室温で30分間攪拌した。4−フルオロベンゾニトリル(0.91g)を加え室温で2日間攪拌した。水(30mL)に注ぎ酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下に溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[クロマトレックスNHTM;ChromatorexNHTM](溶出液;酢酸エチル:ヘキサン=1:1)で精製することにより標記化合物(2.2g)を油状物として得た。
<工程4> 1−ベンジル−4−(4−カルボキシフェノキシメチル)ピペリジン−4−オールの合成
工程3で得られた化合物(4.27g)をエタノール(38mL)に溶解し、4N水酸化ナトリウム(33mL)を加えて8時間加熱還流した。約40mLまで減圧濃縮し、氷水冷下に12N塩酸(11mL)を加えた。析出した結晶を濾取し、乾燥して標記化合物(3.7g)を結晶として得た。
<工程5> 1−ベンジル−4−(4−メトキシカルボニルフェノキシメチル)ピペリジン−4−オールの合成
工程4で得られた化合物(0.86g)をメタノール(10mL)に溶解し、2Mトリメチルシリルジアゾメタン−ヘキサン溶液(1.3mL)を加えた。反応終了後、溶媒を減圧留去した残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[クロマトレックスNHTM;ChromatorexNHTM](溶出液;酢酸エチル:ヘキサン=1:19〜1:9)で精製することにより標記化合物(0.8g)を結晶として得た。
<工程6> 4−(4−メトキシカルボニルフェノキシメチル)ピペリジン−4−オールの合成
工程5で得られた化合物(25g)のメタノール(200mL)溶液に10%パラジウム−炭素(2.5g)を加え、水素雰囲気中室温で終夜攪拌した。触媒をセライトで濾去して、濾液を減圧下に濃縮することにより標記化合物(18.7g)を結晶として得た。
<工程7> 4−{1−[2−(4−シアノフェニル)エチル]−4−ヒドロキシピペリジン−4−イルメトキシ}安息香酸メチルの合成
工程6で得られた化合物(17.7g)および実施例1の工程1で得られた化合物(19.4g)のジクロロメタン(450mL)溶液に室温で酢酸(11.5mL)を加え、同温で30分攪拌した。氷水冷下でトリアセトキシ水素化ほう素ナトリウム(56.6g)を加え、同温で30分さらに室温で5時間攪拌した。減圧下に溶媒を留去して、残渣に水(250mL)および酢酸エチル(250mL)を加えて析出した不溶物を濾取した(16.1g)。得られた不溶物(13.0g)に水(50mL)および飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(150mL)を加えて酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下に溶媒を留去した。得られた残渣をエーテル−ヘキサンで結晶化して標記化合物(10.3g)を結晶として得た。
【実施例14】
4−({1−[2−(4−シアノフェニル)エチル]−3−ヒドロキシピロリジン−3−イルメチル}メチルアミノ)安息香酸の合成
実施例8で得られた化合物(1.00g)を6N塩酸(2.5mL)に溶解して、室温で終夜攪拌した。炭酸ナトリウム粉末でpH7に調整したのち、沈殿を濾取して水で洗浄した。乾燥して標記化合物(0.355g)を得た。
【実施例15】
4−({1−[2−(4−シアノフェニル)エチル]−3−ヒドロキシピペリジン−3−イルメチル}メチルアミノ)安息香酸の合成
実施例9で得られた化合物(1.26g)を用いて、実施例14と同様にして標記化合物(0.80g)を得た。
【実施例16】
4−[(2−{1−[2−(4−シアノフェニル)エチル]−4−ヒドロキシピペリジン−4−イル}エチル)メチルアミノ]安息香酸の合成
実施例11で得られた化合物(430mg)を用いて、実施例14と同様にして標記化合物(368mg)を得た。
【実施例17】
4−({1−[2−(4−シアノフェニル)エチル]−3−ヒドロキシアゼチジン−3−イルメチル}メチルアミノ)安息香酸の合成
実施例10で得られた化合物(500mg)の無水テトラヒドロフラン(20mL)溶液に氷水冷下で90%カリウムトリメチルシラノラート(470mg)を加えて、窒素雰囲気下同温で20分、室温で54時間攪拌した。反応液に氷水冷下で食塩水(30mL)を加えて酢酸エチルで洗浄した。酢酸エチル層を食塩水で抽出して先の水層と合わせた。合わせた水層を希塩酸でpH7に調製後、生じた沈殿を濾取して水で洗浄した。この濾液と洗液を合わせて希塩酸でpH5に調整後、生じた沈殿を濾取して水で洗浄した。得られた沈殿を合わせてメタノール(2mL)中で攪拌洗浄した後、濾取乾燥して標記化合物を(163mg)を結晶として得た。
【実施例18】
4−{1−[2−(4−シアノフェニル)エチル]−4−ヒドロキシピペリジン−4−イルメトキシ}安息香酸の合成
n−オクタンチオール(2.04g)を無水テトラヒドロフラン(10mL)および無水ヘキサメチルりん酸トリアミド(HMPA)(5mL)に溶解し、窒素雰囲気下、氷水冷下に1.59Mn−ブチルリチウム−ヘキサン溶液(8.74mL)を滴下した。同温で15分間攪拌した後、実施例13で得られた化合物(2.50g)の無水テトラヒドロフラン(10mL)および無水HMPA(5mL)溶液を10分間で滴下した。同温で30分攪拌した後、室温で17時間攪拌した。反応終了後、氷水冷下に氷水(20mL)を加え酢酸エチル(25mL×2)にて洗浄した。水層に氷水冷下に攪拌しながら3N塩酸を少しずつ加えてpH5.6に調整した。析出した結晶を濾取して、水およびエタノールで順に洗浄した。得られた結晶をメタノール(50mL)および水(10mL)に懸濁し、30分間加熱還流した。放冷後、結晶を濾取してメタノールで洗浄した。減圧下に乾燥して、標記化合物(1.83g)を結晶として得た。
【実施例19】
4−{1−[2−(4−シアノフェニル)エチル]−4−ヒドロキシピペリジン−4−イルメトキシ}安息香酸メチルの合成
実施例1の工程3で得られた化合物(0.24g)と4−ヒドロキシ安息香酸メチル(0.15g)の混合物を窒素雰囲気下100℃で3時間加熱攪拌した。放冷後固化した残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[クロマトレックスNHTM;ChromatorexNHTM](溶出液;酢酸エチル:ヘキサン=1:9〜3:17)で精製することにより標記化合物(0.074g)を結晶として得た。得られた化合物の物性データは、実施例13の化合物のものと一致した。
【実施例20】
4−{[1−(4−シアノベンジル)−4−ヒドロキシピペリジン−4−イルメチル]メチルアミノ}安息香酸メチルの合成
<工程1> 4−[(1−ベンジル−4−ヒドロキシピペリジン−4−イルメチル)メチルアミノ]安息香酸メチルの合成
実施例13の工程1で得られた化合物(90.0g)および実施例10の工程2で得られた化合物(79.3g)の無水アセトニトリル(300mL)溶液に、炭酸カリウム(92.0g)を加えて窒素雰囲気下で30時間加熱還流した。放冷後この混合液をセライトで濾過して濾液を減圧下に濃縮して粗製中間体(164g)を油状物として得た。
粗製中間体(164g)のテトラヒドロフラン(120mL)溶液に窒素雰囲気下、氷冷下にボラン−硫化メチル錯塩(10M:83.7mL)を20分かけて滴下した後、室温で3時間撹拌した。氷水冷下に反応液にメタノール(400mL)を少しずつ加えた後、2.5M塩化水素−メタノール溶液(400mL)を加えてpHを1以下に調整して、2時間加熱還流した。溶媒を減圧下に留去して、残渣に酢酸エチル(2L)および飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(1L)を加え、1N水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを10に調整して分液した。水層を酢酸エチルで抽出して、酢酸エチル層を合わせて水、飽和食塩水で順次洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧下に留去した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液;酢酸エチル:メタノール=20:1〜10:1)精製して粗製結晶(125g)を得た。この粗製結晶を再度シリカゲルカラムクロマトグラフィー[クロマトレックスNHTM;ChromatorexNHTM](溶出液;ヘキサン:酢酸エチル:テトラヒドロフラン=4:4:1)にて精製して、標記化合物(67.7g)を結晶として得た。
<工程2> 4−[(4−ヒドロキシピペリジン−4−イルメチル)メチルアミノ]安息香酸メチルの合成
10%パラジウム−炭素(3.9g)をメタノール(480mL)に加え水素雰囲気下に室温で1時間撹拌した。工程1で得られた化合物(67.7g)のメタノール(200mL)溶液を加え、水素雰囲気下に室温で30時間攪拌した。セライトを用いて触媒を濾別し、濾液を減圧下に濃縮して油状物(58.6g)を得た。この油状物にエーテルを加えて結晶化させ、結晶を濾取した。減圧下に乾燥して標記化合物(51.6g)を結晶として得た。
<工程3> 4−{[1−(4−シアノベンジル)−4−ヒドロキシピペリジン−4−イルメチル]メチルアミノ}安息香酸メチルの合成
工程2で得られた化合物(2.12g)および4−シアノベンズアルデヒド(2.00g)のジクロロメタン(67mL)溶液に酢酸(1.45mL)を室温で加えて30分間攪拌した後、同温でトリアセトキシ水素化ほう素ナトリウム(6.47g)を少しずつ加えた。窒素雰囲気下に室温で2時間攪拌後、反応液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(30mL)に少しずつ加えた。分液後、水層を1M水酸化ナトリウム水溶液にてpHを10としてジクロロメタン(20mL×2)で抽出した。合わせた有機層を食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウム水溶液で乾燥した。減圧下溶媒を留去した残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[クロマトレックスNHTM;ChromatorexNHTM](溶出液;酢酸エチル)にて精製して、標記化合物(2.53g)を白色粉末として得た。
【実施例21】
4−({1−[3−(4−シアノフェニル)プロピル]−4−ヒドロキシピペリジン−4−イルメチル}メチルアミノ)安息香酸メチルの合成
<工程1> 4−({1−[3−(4−シアノフェニル)プロピオニル]−4−ヒドロキシピペリジン−4−イルメチル}メチルアミノ)安息香酸メチルの合成
実施例20の工程2で得られた化合物(3.62g)および3−(4−シアノフェニル)プロピオン酸(2.50g)のジクロロメタン(50mL)懸濁液に1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(2.74g)を加え、窒素雰囲気下室温で終夜攪拌した。反応液を0.5M塩酸(30mL)にあけジクロロメタン(50mL)を加えて分液した。水層をジクロロメタンにて抽出した後、有機層を合わせて飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下溶媒を留去して得た残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液;酢酸エチル)にて精製して、標記化合物(3.66g)を白色粉末として得た。
<工程2> 4−({1−[3−(4−シアノフェニル)プロピル]−4−ヒドロキシピペリジン−4−イルメチル}メチルアミノ)安息香酸メチルの合成
工程1で得られた化合物(2.94g)を用いて、実施例3の工程3と同様にして標記化合物(1.98g)を得た。
【実施例22】
4−({1−[2−(4−シアノフェノキシ)エチル]−4−ヒドロキシピペリジン−4−イルメチル}メチルアミノ)安息香酸メチルの合成
<工程1> 4−({1−[2−(4−シアノフェノキシ)アセチル]−4−ヒドロキシピペリジン−4−イルメチル}メチルアミノ)安息香酸メチルの合成
2−(4−シアノフェノキシ)酢酸リチウム(2.70g)のジクロロメタン(28mL)懸濁液に1.0M塩化水素−エーテル溶液(14.8mL)を加えた。実施例20の工程2で得られた化合物(3.73g)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(2.83g)およびジメチルホルムアミド(14mL)を加えて、窒素雰囲気下に室温で終夜攪拌した。反応液に水(50mL)を加えて分液した。水層をジクロロメタンにて抽出した後、有機層を合わせて0.5N塩酸、飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下に溶媒を留去して得られた残渣にエーテルを加えて固化させて、粉砕したのち濾取して標記化合物(2.71g)を得た。
<工程2> 4−({1−[2−(4−シアノフェノキシ)エチル]−4−ヒドロキシピペリジン−4−イルメチル}メチルアミノ)安息香酸メチルの合成
工程1で得られた化合物(2.59g)を用いて、実施例3の工程3と同様にして標記化合物(1.40g)を得た。
【実施例23】
4−({1−[2−(4−シアノフェニル)エチル]−4−ヒドロキシピペリジン−4−イルメチル}メチルアミノ)−N−(テトラヒドロピラン−2−イルオキシ)ベンズアミドの合成
実施例1で得られた化合物(0.80g)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(0.47g)および1−ヒドロキシベンゾトリアゾール一水和物(0.39g)の無水ジメチルホルムアミド(20mL)溶液に、窒素雰囲気中氷水冷下でO−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)ヒドロキシルアミン(0.36g)の無水ジメチルホルムアミド(5mL)溶液を滴下して、同温で20分攪拌したのち室温で2日間攪拌した。水を加えてから飽和炭酸水素ナトリウム水溶液でpH8に調整して、酢酸エチルで抽出した。有機層を合わせて水および飽和食塩水の順で洗浄したのち、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下で溶媒を留去して得た残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液;酢酸エチル:メタノール=4:1)にて精製したのち、エーテルで結晶化することにより標記化合物(620mg)を結晶として得た。
【実施例24】
4−({4−ヒドロキシ−1−[2−(4−トリフルオロメチルフェニル)エチル]ピペリジン−4−イルメチル}メチルアミノ)安息香酸メチルの合成
<工程1> 4−({4−ヒドロキシ−1−[2−(4−トリフルオロメチルフェニル)アセチル]ピペリジン−4−イルメチル}メチルアミノ)安息香酸メチルの合成
実施例20の工程2で得た化合物(1.20g)および4−トリフルオロメチルフェニル酢酸(0.97g)を用いて、実施例21の工程1と同様にして標記化合物(1.93g)を結晶として得た。
<工程2> 4−({4−ヒドロキシ−1−[2−(4−トリフルオロメチルフェニル)エチル]ピペリジン−4−イルメチル}メチルアミノ)安息香酸メチルの合成
工程1で得た化合物(1.91g)を用いて、実施例3の工程3と同様にして標記化合物(1.39g)を結晶として得た。
【実施例25】
4−({1−[2−(4−シアノフェニル)エチル]−4−メトキシピペリジン−4−イルメチル}メチルアミノ)安息香酸メチルの合成
実施例12で得られた化合物(6.0g)をDMF(50mL)に溶解し、氷水冷下に60%水素化ナトリウム(0.65g)を加え、同温で1時間攪拌した。反応液を−40℃に冷却し、ヨードメタン(2.09g)を20分間かけて滴下した。−40℃で1時間、−20〜−15℃で4時間攪拌後、−12℃で終夜放置した。反応液を−20℃に冷却して氷水(100mL)を加えた後、室温に戻した。酢酸エチルにて抽出後、有機層を水、飽和食塩水で順次洗浄後無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下に溶媒を留去して得た残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[クロマトレックスNHTM;ChromatorexNHTM](溶出液;ヘキサン:酢酸エチル=3:1〜1:1)にて精製して、標記化合物(0.643g)を白色固体として得た。
【実施例26】
4−({1−[2−(4−シアノフェニル)エチル]−4−ヒドロキシピペリジン−4−イルメチル}メチルアミノ)安息香酸 一塩酸塩の合成
実施例1で得られた化合物(22.0g)をエタノール(264mL)および水(176mL)に懸濁させて加熱還流しておき、還流を保ちながら1N塩酸(58.7mL)を滴下して完全に溶解させた。反応液を室温まで放冷静置して、析出した結晶を濾取した。2−プロパノール(50mL×3)、tert−ブチルメチルエーテル(50mL×3)の順で洗浄して風乾した。減圧下で乾燥して標記化合物(21.1g)を結晶として得た。元素分析の結果、この化合物は一水和物であることが判明した。
元素分析:C2328ClN・HOとして
計算値: C:61.67 H:6.75 N:9.38
実測値: C:61.64 H:6.83 N:9.21
粉末X線回折(2θ[°]):6.20、15.16、15.92、18.52、19.20、21.72、22.36、25.00、26.16、29.04、31.40
実施例26と同様にして以下の化合物を合成した。
【実施例27】
3−クロロ−4−({1−[2−(4−シアノフェニル)エチル]−4−ヒドロキシピペリジン−4−イルメチル}メチルアミノ)安息香酸 一塩酸塩
【実施例28】
5−クロロ−4−({1−[2−(4−シアノフェニル)エチル]−4−ヒドロキシピペリジン−4−イルメチル}メチルアミノ)−2−メトキシ安息香酸 一塩酸塩
【実施例29】
4−({1−[2−(4−シアノフェニル)エチル]−3−ヒドロキシピロリジン−3−イルメチル}メチルアミノ)安息香酸 一塩酸塩
【実施例30】
4−({1−[2−(4−シアノフェニル)エチル]−3−ヒドロキシピペリジン−3−イルメチル}メチルアミノ)安息香酸 一塩酸塩
【実施例31】
4−[(2−{1−[2−(4−シアノフェニル)エチル]−4−ヒドロキシピペリジン−4−イル}エチル)メチルアミノ]安息香酸 一塩酸塩
【実施例32】
4−({1−[2−(4−シアノフェニル)エチル]−4−ヒドロキシピペリジン−4−イルメチル}メチルアミノ)−3−メチル安息香酸 一塩酸塩の合成
実施例3で得られた化合物(310mg)の水(15mL)懸濁液に加熱還流下で1N塩酸(3.0mL)を加えて溶解した。冷却したのち減圧下で溶媒を留去して乾固させた。残渣を細粉化したのち減圧乾燥して、標記化合物(274mg)を粉末として得た。
【実施例33】
2−クロロ−4−({1−[2−(4−シアノフェニル)エチル]−4−ヒドロキシピペリジン−4−イルメチル}メチルアミノ)安息香酸 一塩酸塩の合成
実施例5で得られた化合物(105mg)の水(6.0mL)懸濁液に加熱還流下で1N塩酸(516μL)を加えて溶解した。放冷して終夜冷蔵保存する間に析出した結晶を濾取したのち、乾燥して標記化合物(83.5mg)を粉末として得た。
実施例33と同様にして以下の化合物を合成した。
【実施例34】
4−({1−[2−(4−シアノフェニル)エチル]−3−ヒドロキシアゼチジン−3−イルメチル}メチルアミノ)安息香酸 一塩酸塩
【実施例35】
4−({4−ヒドロキシ−1−[2−(4−トリフルオロメチルフェニル)エチル]ピペリジン−4−イルメチル}メチルアミノ)安息香酸 一塩酸塩の合成
実施例24で得られた化合物(1.18g)のメタノール(30mL)溶液に2N水酸化ナトリウム(5.3mL)を加えて3時間加熱還流した。減圧下に溶媒を留去して、残渣にエーテル、水を加えて分液した。水層をエーテルで洗浄して、残った水層を3N塩酸でpHを5〜7に調整して、5℃で30分攪拌した。沈殿を濾取して水で洗浄後、減圧下に乾燥して結晶(1.23g)を得た。得られた結晶(1.19g)を2N水酸化ナトリウム(6.0mL)および水(20mL)に溶解した。5℃に冷却して3N塩酸でpH3〜4に調整して、同温で30分攪拌した。沈殿を濾取して水で洗浄したのち、減圧下に乾燥して標記化合物(1.13g)を結晶として得た。
【実施例36】
4−{1−[2−(4−シアノフェニル)エチル]−4−ヒドロキシピペリジン−4−イルメトキシ}安息香酸 一塩酸塩の合成
実施例19で得られた化合物(200mg)のメタノール(10mL)溶液に2N水酸化ナトリウム(0.25mL)を加え、5時間加熱還流した。減圧下に溶媒を留去して、残渣を少量の水に溶解し、得られた水層を酢酸エチルで洗浄した。残った水層を希塩酸でpH3に調整して析出物を濾取することにより、標記化合物(69mg)を結晶として得た。
【実施例37】
4−({1−[2−(4−シアノフェニル)エチル]−4−ヒドロキシピペリジン−4−イルメチル}メチルアミノ)−N−ヒドロキシベンズアミド 一塩酸塩の合成
実施例23で得られた化合物(0.60g)のメタノール(20mL)溶液に10%塩化水素−メタノール溶液(5.0mL)を加えて攪拌した。減圧下で溶媒を留去したのち、残渣をメタノールに溶解させてから、再度減圧下で溶媒を留去した。残渣に酢酸エチルを加えて固化したのち、固形物を細粉化して濾取した。得られた粉末を水(60mL)に溶解してから、減圧下で溶媒を留去して乾固させた。残渣を細粉化したのち減圧乾燥することにより、標記化合物(447mg)を粉末として得た。
【実施例38】
4−{[1−(4−シアノベンジル)−4−ヒドロキシピペリジン−4−イルメチル]メチルアミノ}安息香酸 一塩酸塩
実施例20で得られた化合物(2.00g)の無水テトラヒドロフラン(50mL)溶液に氷水冷下で90%カリウムトリメチルシラノラート(1.63g)を加えて、窒素雰囲気下同温で30分、室温で5日間攪拌した。溶媒を減圧下に留去した後、残渣に酢酸エチルを加えて攪拌して、不溶物を濾取した。この不溶物をエタノール(25.4mL)および水(17mL)に溶解後、加熱還流下で1N塩酸(25.4mL)を加えてpH1に調整した。放冷したのち終夜冷蔵保存した。析出物を濾取して2−プロパノール、tert−ブチルメチルエーテルの順で洗浄した後、減圧下で乾燥して標記化合物を(1.47g)を粉末として得た。
実施例38と同様にして以下の化合物を合成した。
【実施例39】
4−({1−[3−(4−シアノフェニル)プロピル]−4−ヒドロキシピペリジン−4−イルメチル}メチルアミノ)安息香酸 一塩酸塩
【実施例40】
4−({1−[2−(4−シアノフェノキシ)エチル]−4−ヒドロキシピペリジン−4−イルメチル}メチルアミノ)安息香酸 一塩酸塩
【実施例41】
4−({1−[2−(4−シアノフェニル)エチル]−4−メトキシピペリジン−4−イルメチル}メチルアミノ)安息香酸 一塩酸塩
【実施例42】
4−{1−[2−(4−シアノフェニル)エチル]−4−ヒドロキシピペリジン−4−イルメチルチオ}安息香酸メチルの合成
4−メルカプト安息香酸(5.14g)のメタノール(30mL)懸濁液に氷冷下で塩化チオニル(3.7mL)を加えて、10時間加熱還流した。放冷したのち析出した結晶を濾取した。結晶をメタノールで洗ってから乾燥して結晶性生成物(3.70g)を得た。得られた結晶(0.17g)、実施例1の工程3で得た化合物(0.24g)、無水炭酸カリウム(0.70g)および無水ジメチルホルムアミド(1.0mL)の混合物を窒素雰囲気下に100〜110℃で20時間攪拌した。氷水(10mL)に注ぎ、酢酸エチルで抽出した。有機層を合わせて飽和食塩水で洗浄したのち、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下に溶媒を留去して、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[クロマトレックスNHTM;ChromatorexNHTM](溶出液;ヘキサン:酢酸エチル=1:1)にて精製して、標記化合物(0.25g)を結晶として得た。
【実施例43】
4−{1−[2−(4−シアノフェニル)エチル]−4−ヒドロキシピペリジン−4−イルメチルチオ}安息香酸ナトリウムの合成
実施例42で得られた化合物(248mg)を50%メタノール−水混合溶媒(10mL)に懸濁させて、2N水酸化ナトリウム(0.3mL)を加えて、10時間加熱還流した。溶媒を減圧下に留去して、得られた残渣に酢酸エチルを加えて結晶化した。結晶を濾取したのち乾燥して、標記化合物(200mg)を結晶として得た。
【実施例44】
4−{1−[2−(4−シアノフェニル)エチル]−4−ヒドロキシピペリジン−4−イルメチルスルフィニル}安息香酸メチルの合成
実施例42で得られた化合物(411mg)のメタノール(10mL)および水(2mL)の溶液に、氷水冷下でメタ過よう素酸ナトリウム(235mg)を加えて、室温で1時間攪拌した。さらにメタ過よう素酸ナトリウム(64mg)を追加して、室温で2時間攪拌した。10%炭酸カリウム水溶液(10mL)および酢酸エチル(20mL)を加えて、攪拌したのち不溶物を濾去した。濾液を分液して、水層を酢酸エチルで抽出した。有機層を合わせて飽和食塩水で洗浄したのち、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下に溶媒を留去して、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[クロマトレックスNHTM;ChromatorexNHTM](溶出液;ヘキサン:酢酸エチル=3:1〜酢酸エチル)にて精製して、標記化合物(180mg)を結晶として得た。
【実施例45】
4−{1−[2−(4−シアノフェニル)エチル]−4−ヒドロキシピペリジン−4−イルメチルスルフィニル}安息香酸塩酸塩の合成
実施例44で得られた化合物(150mg)の無水テトラヒドロフラン(8mL)および無水ジクロロメタン(8mL)の溶液に室温で90%カリウムトリメチルシラノラート(125mg)を加えて、窒素雰囲気下同温で4時間攪拌した。不溶物を濾取してジクロロメタンで洗浄したのち風乾した。この不溶物を水(1mL)に溶解したのち、1N塩酸を加えてpH5〜5.6に調整した。析出物を濾取して、水で洗浄したのち風乾した。析出物をメタノールに懸濁させて、10%塩化水素−メタノール溶液を加えて室温で攪拌したのち、減圧下で溶媒を留去した。残渣をアセトニトリルに懸濁させて、40〜50℃で1時間攪拌洗浄したのち濾取した。減圧下で乾燥して標記化合物を(58mg)を結晶として得た。
【実施例46】
4−{1−[2−(4−シアノフェニル)エチル]−4−ヒドロキシピペリジン−4−イルメチルスルホニル}安息香酸メチルの合成
<工程1> 4−[1−(tert−ブトキシカルボニル)−4−ヒドロキシピペリジン−4−イルメチルチオ]安息香酸メチルの合成
4−メルカプト安息香酸(5.0g)のメタノール(32mL)懸濁液にジメチルホルムアミド(10滴)を加えて、氷水冷下に塩化チオニル(3.5mL)を滴下した。室温で5分攪拌したのち2時間加熱還流した。不溶物を濾取してメタノールで洗浄したのち乾燥して、結晶(4.50g)を得た。得られた結晶(2.00g)および1−(tert−ブトキシカルボニル)ピペリジン−4−スピロ−2’−オキシラン(2.23g)の4−メチル−2−ペンタノン(26mL)溶液に無水炭酸カリウム(4.34g)を加えて、窒素雰囲気下で9時間加熱還流した。氷水(50mL)を加えて酢酸エチルで抽出した。有機層を水、飽和食塩水の順で洗浄して、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下に溶媒を留去して、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[クロマトレックスNHTM;ChromatorexNHTM](溶出液;ヘキサン:酢酸エチル=19:1〜1:1)にて精製したのち、ヘキサン−エーテル(5:1)で結晶化して標記化合物(2.55g)を結晶として得た。
<工程2> 4−[1−(tert−ブトキシカルボニル)−4−ヒドロキシピペリジン−4−イルメチルスルホニル]安息香酸メチルの合成
工程1で得られた化合物(2.5g)のジクロロメタン(25mL)溶液に、−10℃で70%m−クロロ過安息香酸(4.0g)を徐々に加えて、同温で30分攪拌した。氷水冷下でよう化カリウム水溶液を加えたのち、飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液をよう素の色が消えるまで加えた。ジクロロメタン(70mL)および10%炭酸カリウム水溶液(50mL)を加えて、振とう分液した。水層をジクロロメタンで抽出して、先の有機層と合わせた。有機層を水、飽和食塩水で洗浄したのち、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下に溶媒を留去して得られた残渣に、エーテルを加えて結晶化させた。ヘキサン−エーテル(1:1、30mL)で結晶を洗浄したのち乾燥して、標記化合物(2.00g)を結晶として得た。
<工程3> 4−(4−ヒドロキシピペリジン−4−イルメチルスルホニル)安息香酸メチル塩酸塩の合成
工程2で得られた化合物(1.95g)の酢酸エチル(8.0mL)懸濁液に、氷水冷下で3M塩化水素−酢酸エチル溶液(8.0mL)溶液を滴下して、同温で10分、室温で2時間攪拌した。減圧下に溶媒を留去して得た残渣を酢酸エチルで洗い、濾取したのち乾燥して標記化合物(1.60g)を結晶として得た。
<工程4> 4−{1−[2−(4−シアノフェニル)エチル]−4−ヒドロキシピペリジン−4−イルメチルスルホニル}安息香酸メチルの合成
工程3で得られた化合物(800mg)、実施例1の工程1で得られた化合物(665mg)およびジクロロメタン(15mL)の混合物を室温で30分攪拌したのち、トリアセトキシ水素化ほう素ナトリウム(1940mg)を加えて、同温で1時間、室温で終夜攪拌した。氷水冷下に1N塩酸(20mL)を加えて攪拌したのち、水層を分液した。有機層を減圧下に濃縮して、残渣にエーテルおよび1N塩酸を加えて振とう分液して、得られた水層を先の水層と合わせた。合わせた水層を再度エーテルで洗浄したのち、炭酸カリウムでpH9以上に調整した。ジクロロメタンで抽出して、有機層を飽和食塩水で洗浄したのち、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下に溶媒を留去して得た残渣をエーテルで結晶化したのち、濾取して標記化合物(568mg)を結晶として得た。
【実施例47】
4−{1−[2−(4−シアノフェニル)エチル]−4−ヒドロキシピペリジン−4−イルメチルスルホニル}安息香酸ナトリウムの合成
実施例46で得られた化合物(70mg)のメタノール(2.0mL)溶液に2N水酸化ナトリウム水溶液(0.080mL)を加えて、室温で3日間攪拌した。溶媒を減圧下に留去して、得られた残渣に酢酸エチル(4mL)を加えて1時間攪拌した。不溶物を濾取して乾燥することにより、標記化合物(56mg)を結晶として得た。
【実施例48】
4−({1−[2−(4−シアノフェニル)エチル]−4−ヒドロキシピペリジン−4−イルメチル}メチルアミノ)安息香酸 一メタンスルホン酸塩の合成
実施例1で得られた化合物(7.2g)の水(50mL)懸濁液にメタンスルホン酸(1.42mL)を加えて、溶解するまで昇温攪拌したのち室温まで放冷しながら攪拌した。結晶を濾取して水(50mL)から再結晶した。結晶を濾取してアセトンで洗い、減圧下に乾燥して標記化合物(7.6g)を結晶として得た。
【実施例49】
4−({1−[2−(4−シアノフェニル)エチル]−4−ヒドロキシピペリジン−4−イルメチル}メチルアミノ)安息香酸 一塩酸塩の合成
実施例26で得られた化合物(2.00g)の2−プロパノール(40mL)懸濁液を窒素雰囲気下で8時間加熱還流したのち、終夜放冷静置した。結晶を濾取して2−プロパノール(5mL×3)、tert−ブチルメチルエーテル(5mL×2)で洗浄した。減圧下で乾燥することにより標記化合物(1.85g)を結晶として得た。元素分析の結果、この化合物は無水物であることが判明した。
元素分析:C2328ClNとして
計算値: C:64.25 H:6.56 N:9.77
実測値: C:64.18 H:6.60 N:9.61
粉末X線回折(2θ[°]):7.96、11.96、15.96、17.80、18.12、19.48、24.52、25.08、26.80、30.36
IR(KBr、cm−1):2229、1657、1604、1523、1381、1261、1097、960
【実施例50】
4−({1−[2−(4−シアノフェニル)エチル]−4−ヒドロキシピペリジン−4−イルメチル}メチルアミノ)安息香酸の合成
実施例1の工程3で得られた化合物(2.00g)および4−メチルアミノ安息香酸(1.37g)をアセトン(8mL)および水(32mL)に溶解させ、室温で3日間攪拌した。析出物を濾取し、水(40mL)で洗浄の後、風乾した。得られた粉末を酢酸エチル(40mL)に懸濁させ室温にて2時間攪拌後、濾取して酢酸エチル(20mL)で洗浄し、乾燥することで標記化合物(2.37g)を粉末として得た。得られた化合物の物性データは、実施例1の化合物のものと一致した。
実施例1ないし48の化合物の物性データを表2、各実施例化合物の中間体の物性データを表3に示した。表3中、実施例番号1−1とは実施例1の工程1を表す。





















上記実施例で得られた本発明化合物の構造式を図表1〜図表5に示した。構造式中に用いた置換基の略号でMe−はCH−を、Buはtert−ブチルを表す。





実施例1ないし46の化合物の中間体の構造式を以下の図表6〜図表10に示した。実施例1−1は、実施例1の工程1で得られる化合物である。構造式中に用いた置換基の略号でMe−はCH−を、Buはtert−ブチルを表す。





(製剤例)
次に、本発明の化合物を含有する製剤例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
製剤例1 錠剤
実施例26の化合物 100g
乳糖 137g
結晶セルロース 30g
ヒドロキシプロピルセルロース 15g
カルボキシメチルスターチナトリウム 15g
ステアリン酸マグネシウム 3g
上記成分を秤量した後,均一に混合する。この混合物を打錠して重量150mgの錠剤とする。
製剤例2 フィルムコーティング
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 9g
マクロゴール6000 1g
酸化チタン 2g
上記成分を秤量した後,ヒドロキシプロピルメチルセルロース、マクロゴール6000を水に溶解、酸化チタンを分散させる。この液を、製剤例1の錠剤300gにフィルムコーティングし、フィルムコート錠を得る。
製剤例3 カプセル剤
実施例36の化合物 50g
乳糖 435g
ステアリン酸マグネシウム 15g
上記成分を秤量した後、均一に混合する。混合物をカプセル封入器にて適当なハードカプセルに重量300mgずつ充填し、カプセル剤とする。
製剤例4 カプセル剤
実施例26の化合物 100g
乳糖 63g
トウモロコシデンプン 25g
ヒドロキシプロピルセルロース 10g
タルク 2g
上記成分を秤量した後、実施例26の化合物、乳糖、トウモロコシデンプンを均一に混合し、ヒドロキシプロピルセルロースの水溶液を加え、湿式造粒法により顆粒を製造する。この顆粒にタルクを均一に混合し,適当なハードカプセルに重量200mgずつ充填し,カプセル剤とする。
製剤例5 散剤
実施例35の化合物 200g
乳糖 790g
ステアリン酸マグネシウム 10g
上記成分をそれぞれ秤量した後、均一に混合し、20%散剤とする。
製剤例6 顆粒剤、細粒剤
実施例41の化合物 100g
乳糖 200g
結晶セルロース 100g
部分α化デンプン 50g
ヒドロキシプロピルセルロース 50g
上記成分を秤量した後、実施例41の化合物、乳糖、結晶セルロース,部分α化デンプンを加えて均一に混合し、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)の水溶液を加え、湿式造粒法により顆粒又は細粒を製造する。この顆粒又は細粒を乾燥し、顆粒剤又は細粒剤とする。
製剤例7 注射剤
実施例48の化合物 2g
プロピレングリコール 200g
注射用蒸留水 適量
上記成分を秤量した後、実施例48の化合物をプロピレングリコールに溶解する。注射用滅菌水を加えて全量を1,000mLとし、濾過滅菌後10mLアンプルに5mLずつ分注し、熔封して注射剤とする。
製剤例8 乾燥粉末吸入剤
実施例35の化合物 5g
ラクトース 95g
実施例35の化合物をラクトースと均一に混合した後に、この混和物を乾燥粉末吸入器に加える。
【産業上の利用可能性】
本発明に用いられる化合物は、経口投与でクエン酸誘発モルモット咳嗽モデルにおいて優れた抑制効果を示し、毒性試験において何ら異常が認められかったことから、既存の薬剤とは異なり、優れた鎮咳効果を有するだけでなく、良好な薬物動態学的特性を有し、安全性にも優れた副作用の少ない薬剤として使用できる。
本発明の医薬組成物は、鎮咳効果を目的として以下の呼吸器疾患、例えば、肺癌、癌性リンパ管症、肋骨骨折、自然気胸、かぜ症候群、肺結核、間質性肺炎、胸膜炎、肺炎、急性気管支炎、慢性気管支炎、肺気腫症、塵肺、気管支拡張症、びまん性汎細気管支炎、気管支喘息、肺塞栓、肺梗塞症などに使用でき、優れた呼吸器疾患の予防及び/または治療剤として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)

(式中、Aは基:L−W(Lは結合またはメチレンを表し、Wは酸素原子、基:SOn(nは0から2の整数を表す)または基:−NR−(Rは水素原子もしくは低級アルキル基を表す)を表す)を表し、G、Gは各々独立して(CH)r(rは0から2の整数を表す)を表し、また、GとGにおいてともにrが1を表すときGとGとが更に低級アルキレン基により架橋されてもよく、Yは低級アルキレン基またはRで置換されていてもよいベンジリデン基を表し、Zは結合、または酸素原子を表し、またZが結合を表す時Yはベンゼン環上の炭素原子とともに5ないし6員環を形成していてもよく、Rは、ニトロ基、低級アルコキシカルボニル基、低級アルキル基でモノ−もしくはジ−置換されていてもよいカルバモイル基、保護されていてもよい水酸基、保護されていてもよいカルボキシル基、保護されていてもよいN−ヒドロキシカルバモイル基、保護されていてもよい水酸基で置換された低級アルキル基、保護されていても良いカルボキシル基で置換された低級アルキル基またはテトラゾリル基を表し、R,Rは各々独立して水素原子、ハロゲン原子、ハロゲンで置換されていてもよい低級アルキル基、ハロゲンで置換されていてもよい低級アルコキシ基またはニトロ基を表し、R、Rは、各々独立して水素原子、ハロゲン原子、ハロゲンで置換されていてもよい低級アルキル基、ハロゲンで置換されていてもよい低級アルコキシ基、シアノ基または低級アルキルスルホニル基を表し、Rは水素原子もしくは低級アルキル基を表す。但し、Wが基:SOn(nは0から2の整数を表す)である時には、Rはニトロ基または保護されていてもよい水酸基である場合を除く。)で表される化合物、または製薬学的に許容されるその塩またはそれらの溶媒和物を有効成分として含有することを特徴とする呼吸器疾患の予防及び/または治療剤。
【請求項2】
請求項1に記載の式(I)で表される化合物、またはその塩、またはそれらの溶媒和物を有効成分として含有することを特徴とする鎮咳剤。
【請求項3】
下記式(II)

(式中、A’は基:L−W’(Lは結合またはメチレンを表し、W’は酸素原子または基:−NR−(Rは水素原子もしくは低級アルキル基を表す)を表す)を表し、Yは低級アルキレンまたはRで置換されていてもよいベンジリデン基を表し、Zは結合、または酸素原子を表し、またZが結合を表す時Yはベンゼン環上の炭素原子とともに5ないし6員環を形成していてもよく、Rは、ニトロ基、低級アルコキシカルボニル基、低級アルキル基でモノ−もしくはジ−置換されていてもよいカルバモイル基、保護されていてもよい水酸基、保護されていてもよいカルボキシル基、保護されていてもよいN−ヒドロキシカルバモイル基、保護されていてもよい水酸基で置換された低級アルキル基、保護されていても良いカルボキシル基で置換された低級アルキル基またはテトラゾリル基を表し、R,Rは各々独立して水素原子、ハロゲン原子、ハロゲンで置換されていてもよい低級アルキル基、ハロゲンで置換されていてもよい低級アルコキシ基またはニトロ基を表し、R、Rは、各々独立して水素原子、ハロゲン原子、ハロゲンで置換されていてもよい低級アルキル基、ハロゲンで置換されていてもよい低級アルコキシ基、シアノ基または低級アルキルスルホニル基を表し、Rは水素原子もしくは低級アルキル基を表す。但し、R,Rが同時に水素原子である時には、Rは保護されていてもよいN−ヒドロキシカルバモイル基、または保護されていても良いカルボキシル基で置換された低級アルキル基である場合に限られ、或いはW’が基:−NR−である時には、Rは保護されていてもよい水酸基または保護されていてもよい水酸基で置換された低級アルキル基である場合を除く。)で表される化合物、またはその塩、またはそれらの溶媒和物。
【請求項4】
前記式(II)中のRが、ニトロ基、低級アルコキシカルボニル基、低級アルキル基でモノ−もしくはジ−置換されていてもよいカルバモイル基、保護されていてもよいカルボキシル基またはテトラゾリル基である請求項3に記載の化合物、その塩、またはそれらの溶媒和物。
【請求項5】
前記式(II)中のRが、シアノ基である請求項3または4に記載の化合物、その塩、またはそれらの溶媒和物。
【請求項6】
前記式(II)中のW’が基:−NR−である請求項3、4または5に記載の化合物、その塩、またはそれらの溶媒和物。
【請求項7】
請求項3〜6に記載の化合物、その製薬学的に許容される塩、またはそれらの溶媒和物を有効成分とする医薬組成物。

【国際公開番号】WO2004/048326
【国際公開日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【発行日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−555031(P2004−555031)
【国際出願番号】PCT/JP2003/015005
【国際出願日】平成15年11月25日(2003.11.25)
【出願人】(000181147)持田製薬株式会社 (62)
【Fターム(参考)】