説明

4−(1H−イミダゾール−4−イルメチル)ピリジンの新規な医薬として許容される塩及びその治療上の使用

本発明は、イムメスリジン、特に新規な医薬として許容されるこの塩、例えばイムメスリジンの二シュウ酸塩の新規な医薬組成物、並びにその治療上の使用及び新規な調製方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イムメスリジン、特に新規な医薬として許容されるこの塩、例えばイムメスリジンの二シュウ酸塩の新規な医薬組成物、並びにその治療上の使用及び新規な調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒスタミンH3受容体(H3R)の活性化因子は、脳又は消化管においてそのストアからの内在性ヒスタミンの放出を抑制する傾向がある。これは、CNSにおける種々の障害、例えば睡眠障害又は精神神経疾患、及び末梢組織、例えば胃腸系又は心血管系における障害の治療のための重要な薬物候補である(Celanire S. et al. in "The Third Histamine Receptor D. Vohora, ed., CRC Press, 2009, pp. 103〜165)。
【0003】
しかしながら、従来周知のH3R活性化因子、すなわちヒスタミンの完全又は部分アゴニストは、イミダゾール誘導体であり、イミダゾール核の存在に起因した多数の欠点を示す。
【0004】
第1に、これらはヒスタミン自体と同様、ヒトの肝臓に大量に存在する代謝酵素であるヒスタミンN−メチルトランスフェラーゼ(HMT)の良基質である。HMTは遠位メチル基の転移を介して、これらの化合物の初回通過を高い効率で不活性化する。N−メチルトランスフェラーゼ酵素は、ヒトを含む動物種の脳中の主要な代謝酵素である。これらが局在化すると、イミダゾール含有H3R活性化因子の作用が防止され、又は少なくとも短縮される傾向がある。
【0005】
第2に、イミダゾール含有薬の多くはチトクロムP450酵素の強力な抑制剤及び/又は誘導剤である。P450チトクロムの抑制又は誘導は、共治療(co-treatment)を複雑化する潜在的な薬物−薬物相互作用を生じるため、治療適用上の欠点となる。従って、この数十年の間、H3Rリガンド分野における医薬品化学者の努力は、イミダゾール非含有化合物の発見に向けられてきた(Celanire et al. ibid.)。
【0006】
第3に、H3R活性化因子の一部は、薬物としての使用に適合しない、或いは適合し難い物理化学的特性、例えば、化学的不安定性又は吸湿性を示す場合がある。
【0007】
上記の欠点によって、なぜイミダゾール含有H3R活性化因子がいずれもヒトにおける治療上の適用レベルに達しなかったのかが説明される。
【0008】
4−(1H−イミダゾール−4−イルメチル)ピリジン(別名イムメスリジン)は、van der Stoel等のRed. Trav. Chem., Pays-Bas, 102, 364〜367, 1983によって開示された。そのH3R活性は、Celanire S.等(XXXVth Annual Meeting of the European Histamine Research Society, Delphi, Greece, 2006, Poster P5)、Wijtmans等(15th Noordwijkerhout-Camehno Symposium, Noordwijkerhout, the Netherlands, 2005, Poster)によって報告された。対応する二臭化水素酸塩は、Kitbunnadaj R.等(J. Med. Chem. 2004, 47, 2414〜2417)によって教示された。
【0009】
α2アドレナリン活性を有する一連の関連化合物をさらに記載する特許出願もある(US6,465,486)が、イムメスリジンの塩及びそのH3R活性は記載も示唆もされていなかった。
【0010】
4−(1H−イミダゾール−4−イルメチル)ピリジンのインビトロ(in vitro)でのH3活性は、Celanire等及びWijtmans等によって報告されたが(上記参照)、著者等はこの化合物を薬物候補としてではなく、単にツールとして考えていた。その原因はおそらく、上述した技術常識に基づき、このようなイミダゾール含有骨格には上記欠点があると予測したためであろう。より具体的に、Celanire等により、肝臓のHMT活性が低い種であるラットの腹腔内に投与した場合でさえ、この薬物はインビボ(in vivo)において低活性であることが示された。脳においてヒスタミンを中程度に減少させるのに、10mg/kgほどの高用量を要することが分かった。これによって、非常に高いHMT活性を有する種のヒトにおいては、肝臓の初回通過が著しく不活性化されるため、経口投与された薬物はさらに効果が低下することが示唆された。いずれの事例も、イムメスリジンのHMTとの相互作用及び著しい毒性の欠如は報告しておらず、当該薬物のヒトの治療における臨床応用のための可能性を明らかにするものではない。
【0011】
つまり、この先行技術の教示によれば、イムメスリジンを薬物候補とみなすことはできず、単にリサーチツールとして使用できるにすぎない、ということになる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
今回本発明者等は、予想に反して、驚くことに、イムメスリジンまたは医薬として許容されるその塩が、以前に予測されなかった適用を含む、ヒトの治療に適していることを発見した。特に、イムメスリジンの塩がインビボ(in vivo)において非常に強力なH3R活性化因子となる予想外の特性を示し、驚くことに上記欠点がなく、ヒトの治療に使用し得る薬物となることを発見した。
【0013】
より正確には、イムメスリジンの塩、例えば4−(1H−イミダゾール−4−イルメチル)ピリジンのシュウ酸塩、特に二シュウ酸塩は、イムメスリジン又はイムメスリジンの他の塩に比べて、予想外の特性、例えば安定性、低吸湿性及び精製能を示し、かつ、ヒトの治療の複数の分野に有用な超強力な薬物の条件となる特性の全てを示すことが見出された。
【0014】
従って、本発明の目的の1つによれば、本発明は、イムメスリジン又は医薬として許容されるその塩の1つを含む、好適には医薬として許容されるイムメスリジンの塩、より好適にはイムメスリジンのシュウ酸塩、特に式(I):
【化1】

のイムメスリジンの二シュウ酸塩を含む医薬組成物に関する。イムメスリジンの医薬として許容される塩は、臭化水素酸塩、塩酸塩、硫酸水素塩(hydrogenosulfate salt)、トルエンスルホナート塩、カンファースルホン酸塩、ベンゼンスルホナート塩、リン酸塩、メタンスルホナート塩、α−ケトグルタル酸塩、シュウ酸塩、硫酸塩から、モノ又はジ付加塩として選択され、中でも特に、イムメスリジンのニ臭化水素酸塩、二塩酸塩、硫酸二水素塩、トルエンスルホナート、ジトルエンスルホナート、ジカンファースルホナート、ジベンゼンスルホナート、ホスフェート、ジメタンスルホナート、α−ケトグルタル酸、一シュウ酸塩、二シュウ酸塩、一硫酸塩から選択される。
【0015】
本発明のさらなる目的によれば、本発明はまた、上記のイムメスリジンの新規な塩、特に二塩酸塩、硫酸二水素、トルエンスルホナート、ジトルエンスルホナート、ジカンファースルホナート、ジベンゼンスルホナート、ホスフェート、ジメタンスルホナート、α−ケトグルタル酸、一シュウ酸塩、二シュウ酸塩、一硫酸塩、中でも特に、イムメスリジンのシュウ酸塩、例えばイムメスリジンの一シュウ酸塩又は二シュウ酸塩、好適にはイムメスリジンの二シュウ酸塩に関する。
【0016】
イムメスリジンの二シュウ酸塩は、MW=339.26gの白色結晶粉末である。本明細書ではこれをBP1.5375の二シュウ酸塩と呼ぶ。
【0017】
本明細書において、イムメスリジンの塩とは、イムメスリジンの付加塩、及び水和物を含むこの溶媒和物、並びにこの塩の多形及び/又は(水和物を含む)この溶媒和物の多形を意味する。
【0018】
実施例から明らかなように、イムメスリジン二シュウ酸塩の3つの多形が本発明者等によって確認された。本明細書ではこれらをI型、II型及びIII型と呼ぶ。図1のX線回折図(X ray diffractogram)に対応するイムメスリジン二シュウ酸塩の多形IIIが、特に好ましい。イムメスリジン二シュウ酸塩のこの多形IIIは、X線回折による16.6°の特徴的なピークを含む。
【0019】
さらなる目的によれば、本発明はまた、新規なイムメスリジンの塩、例えばイムメスリジンのシュウ酸塩、例えば二シュウ酸塩の調製方法に関する。当該方法は、イムメスリジンを対応する酸、例えばシュウ酸と反応させる工程を含む。好適には、反応は、適当な有機溶媒(例えば、プロパン−2−オール又は他の適当なアルコール、アセトン又は他の適当なケトン等)中で行う。一般的に、イムメスリジンと酸(例えばシュウ酸)との濃度比は、所望の塩化度(salification degree)に応じて異なる。特に、一シュウ酸塩を目的とする場合、等モル量のイムメスリジン及びシュウ酸が使用される。二シュウ酸塩を目的とする場合、イムメスリジンの2倍のシュウ酸が使用される。
【0020】
イムメスリジンは、任意の周知の方法、例えば米国特許第6,465,486号、Kitbunnadaj等、J. Med. Chem. 2004, 47, 2414〜2417、J. Med. Chem. 2003, 46, 5445〜5457、Wijtmans等, 15th Noordwijkerhout-Camerino Symposium, Noordwijkerhout, the Netherlands, 2005、Poster, Vaccaro等、BMCL 2006, 16, 395〜399、Alcalde等、Tetrahedron 52, 48, 15197〜15208, 1996に開示される方法を応用又は採用することによって調製することができる。
【0021】
好適な側面によれば、本発明の方法は、式(II):
【化2】

の化合物を式(III)
【化3】

の化合物とカップリングすることによってイムメスリジンを調製し
(式中、Halは、ハロゲン原子、例えばヨウ素を表し、Pgは、アミノの保護基、例えばトリチル(トリフェニルメチル)、ジメチルスルファモイル等を表す)、
これによって式:
【化4】

の化合物を得て、続いて得られた化合物(III)から保護基を脱酸素化/脱保護化する工程を含む。
【0022】
上記カップリングは、標準的な手順に従って、EtMgBrの存在下で、金属交換反応に従って通常行う。一般的に、試薬は−20℃〜0℃の温度で添加し、続いて反応混合物を室温で温める。
【0023】
上記脱酸素化/脱保護化は、好適には任意の好適な脱酸素化/脱保護化手段、例えばHI(ヨウ化水素酸)、触媒としての遷移金属、例えばPd(OH)、トリエチルシラン/トリフルオロ酢酸、ボラン/ジメチルスルフィド又はNaBH/トリフルオロ酢酸を使用した水素付加によって、好適にはHIによって行う。
【0024】
反応は、室温から反応混合物の還流温度までの温度で通常行われる。
【0025】
この脱酸素化/脱保護化は、カップリング反応によって得られた生成物を単離した後に行うのが有利である。
【0026】
次のスキームは、本発明の方法の好適な一実施形態を説明するものである。
【化5】

【0027】
本発明の方法はまた、所望の式(I)の化合物の任意の単離及び/又は精製工程を含む。
【0028】
出発物質及び/又は試薬は、市販のものでもよいが、当業者であれば、以下の実験部に開示の手順を応用又は採用することによって、容易に調製することもできる。
【0029】
当該薬物の工業合成に関する他の興味深い特徴は、シュウ酸塩の結晶化時における精製は、二臭化水素酸塩と比べてより簡単なことである。本発明者は、驚いたことに、イムメスリジン合成時に副生する主たる混入物であるイミダゾールは、以下の実験部から明らかな通り、二臭化水素酸塩を形成した場合よりも二シュウ酸塩を形成した場合の方が、より一層除去されることを発見した。
【0030】
本発明はまた、医薬として許容される担体と、治療有効量の医薬として許容されるイムメスリジンの塩とを含む医薬組成物を供する。本明細書において、用語「患者」とは、本明細書に記載する1又は2以上の疾患及び状態に罹患している、又は罹患している可能性がある、温血動物、例えば哺乳類、好適にはヒト又はヒトの子供を意味する。
【0031】
本明細書において、用語「治療有効量」とは、本明細書に記載の疾患及び状態の症状を軽減、除去、治療又は制御するのに有効な本発明の化合物の量を意味する。用語「制御する」とは、本明細書に記載の疾患及び状態の進行に遅延、妨害、抑止、又は停止が生じ得るあらゆるプロセスを意味することを意図する。但し、必ずしも全疾患及び状態の症状が完全に除去されることを意味するものではなく、予防治療及び慢性使用も含む意である。
【0032】
本明細書において、用語「医薬として許容される」とは、適正な医学的判断の範囲内において、ヒト及び動物の組織との接触に適しており、過度の毒性、刺激作用、アレルギー反応、又は他の問題となる合併症を有さず、妥当なベネフィット/リスク比に相応する本願の化合物、材料、組成物、又は剤形を意味する。
【0033】
本明細書において、用語「医薬として許容される塩」とは、開示される化合物の誘導体であって、親化合物が修飾されて酸又は塩基性塩を形成したものを意味する。医薬として許容される塩には、例えば、無毒性の無機又は有機酸から形成された親化合物の従来の無毒性の塩又は四級アンモニウムの塩が含まれる。
【0034】
例えば、これらの従来の無毒性の塩としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸等から生じる無機酸;及び有機酸、例えば酢酸、プロピオン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、グルクロン酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、トルエンスルホン酸、シュウ酸、フマル酸、マレイン酸、硫酸水素(hydrogenosulfate)、カンファースルホン酸、α−ケトグルタル酸、シュウ酸等から調製される塩が挙げられる。更なる付加塩としては、アンモニウム塩、例えばトロメタミン、メグルミン、エポラミン等や、金属塩、例えばナトリウム、カリウム、カルシウム、亜鉛又はマグネシウム塩等が挙げられる。当該用語は、好適には、イムメスリジンの一シュウ酸塩及び二シュウ酸塩、中でも特にイムメスリジンの二シュウ酸塩を意味する。
【0035】
本発明の医薬として許容される塩は、塩基性又は酸性部分を含む親化合物から従来の化学的方法によって合成することができる。一般的に、水又は有機溶媒、或いはこれらの混合物中で、これらの化合物の遊離の酸又は塩基形態を化学量論量の適当な塩基又は酸と反応させることによって、これらの塩を調製することができる。一般的に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、又はアセトニトリル等の非水性媒体が好適である。適当な塩のリストは、Remington's Pharmaceutical Sciences, 17th ed., Mack Publishing Company, Easton, PA, 1985, p.1418、及び、P. H. Stahl, CG. Wermuth, Handbook of Pharmaceutical salts -Properties, Selection and Use, Wiley-VCH, 2002に掲載されている。これらの開示はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0036】
さらなる目的によれば、本発明はまた、H3R受容体を活性化するための、特にストレス、疼痛、心身症、不眠症、片頭痛、呼吸器、アレルギー又は炎症性状態(喘息, 気管支炎, 鼻炎, 気管炎等)、心臓疾患(心筋機能不全及び梗塞)、これらの抗分泌性及び抗炎症性作用の結果としての胃腸疾患(胃潰瘍及び十二指腸潰瘍、胃食道逆流、潰瘍性大腸炎、クローン病、過敏性腸、便失禁、等)、泌尿生殖器系疾患(膀胱炎, 子宮炎, 月経前緊張症, 前立腺の炎症, 尿失禁, 生殖器障害)及び皮膚系疾患(じん麻疹, そう痒)、関節炎及び他のリウマチ性疾患、結膜炎及び他の眼炎症、流涎症、分泌、炎症、睡眠及びサーカディアンリズム障害、痙攣、視床下部下垂体分泌障害、うつ状態、脳循環障害、免疫系障害、アレルギー性疾患を含むH3R関連障害を治療及び/又は予防するための、上記のイムメスリジンの医薬として許容される塩に関する。
【0037】
特に、本発明の化合物は、向精神薬、睡眠薬、睡眠制御剤及び/又は麻酔のアジュバントとして使用することができる。
【0038】
予想外にも、本発明者はまた、イムメスリジンの医薬として許容される塩が、驚くことに、薬物、例えばGABA−A受容体の正のモジュレーター、アルコールの慢性使用と関係した有害事象、及び/又は例えば睡眠開始潜伏期を含む睡眠パターンの障害、熟睡の減少、サーカディアンリズム障害、相対的な不眠症、不安症を予防することを発見した。なお、度々「退薬症候群」とも呼ばれる上記有害事象は、これらの慢性使用の急激な中断が主たるトリガーとなる。
【0039】
これらのGABA−A受容体の正のモジュレーターは、睡眠薬、例えばベンゾジアゼピン、イミダゾピリジン、例えばゾルピデム、バルビタール系薬物、鎮静薬、アルコールを含む。
【0040】
従って本発明は、離脱症候群、退薬症候群、及び/又はアルコール依存症、物質依存症、ベンゾジアゼピン受容体アゴニスト依存症の予防及び/又は治療のための、イムメスリジンの医薬として許容される塩を提供する。
【0041】
本発明のさらなる目的によれば、医薬として許容されるイムメスリジンの塩を含む、GABA−A受容体の正のモジュレーターとの組合せもまた提供する。
【0042】
本発明のさらなる目的によれば、上記疾患又は障害を治療及び/又は予防するための治療方法であって、医薬として許容されるイムメスリジンの塩の有効量を投与することを含む方法に関する。
【0043】
本明細書に記載の疾患及び状態の治療を必要としている対象の識別は、十分当業者の能力及び知識の範囲内である。当技術分野の臨床医は、臨床試験、理学的検査及び病歴/家族歴の使用によって容易にこれらの治療を必要としている対象を識別できる。
【0044】
治療有効量は、当業者たる担当診断医であれば、従来の技術の使用、及び類似環境下で得られた結果の観察によって容易に決定することができる。治療有効量の決定に際して担当診断医が考慮する因子は多数存在する。例としては、対象の種;体格、年齢、及び総体的な健康状態;関係する特異疾患;疾患の関与又は重症度の程度;各個体の応答;投与される具体的な化合物;投与方法;投与される製剤のバイオアベイラビリティ上の特徴;選択される投与計画;併用薬の使用;及び他の関連した環境が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0045】
所望の生物学的効果を達成するために必要な本発明の化合物の量は、投与される薬物の投薬量、使用される化合物の化学的特徴(例えば、疎水性)、化合物の効力、疾患の種類、患者の病気の状態、及び投与経路等の多数の因子に応じて異なる。
【0046】
通常、本発明の化合物は、非経口的投与の場合、0.1〜10% w/vの化合物を水性の生理的緩衝液中に含む溶液として供することができる。典型的な用量は、一日当り0.1μg/体重1kg〜0.1g/体重1kgの範囲であり;好適な用量は、一日当り0.001mg/体重1kg〜1mg/体重1kg、好適には一日当り0.001mg/体重1kg〜0.1mg/体重1kgの範囲である。ヒトの成人の好適な一日量は、例えば1、5、50、100及び200μgであり、ヒトの子供の場合も等用量である。投与する好適な薬物の投薬量は、疾患又は障害の進行のタイプ及び程度、具体的な患者の全身健康状態、選択される化合物の相対的な生物学的効力、及び化合物賦形製剤、並びにその投与経路等の変数に依存するであろう。
【0047】
本発明の化合物は、単位用量形態で投与することができる。ここで用語「単位用量」とは、患者に投与可能且つ取扱い及び包装が容易な一回用量であって、後述のように、活性化合物を単独で、又は医薬として許容される組成物として含む、物理的且つ化学的に安定な単位用量として存在するものを意味する。この場合、典型的な好適である一日量は、0.001〜0.1mg/体重1kgの範囲である。大まかな目安として、ヒトの単位用量は、一日当り0.01mg〜3mgの範囲である。好適には、単位用量は、0.005〜5mgを1日に1〜4回投与する範囲であり、より好適には0.01mg〜1mgを1日に1回投与する範囲である。本明細書において供される化合物は、1又は2以上の医薬として許容される賦形剤と混合することによって、医薬組成物として製剤化できる。これらの組成物は、経口投与において、特に錠剤、被膜錠剤、口腔内崩壊剤、例えばリオック(Lyoc)(登録商標)製剤、又はカプセル剤の形態での使用;又は非経口的投与で、特に溶液、懸濁液又は乳濁液の形態での使用;或いは鼻腔内に、特に粉体、点鼻薬、又はエアロゾルの形態での使用;或いは経皮的に、例えば、局所的に又は経皮パッチを介して又は眼投与、或いは膣内又は子宮内投与、特にペッサリーの形態での投与或いは直腸投与用に調製することができる。
【0048】
かかる組成物は、単位剤形で投与するのが好適であり、例えばRemington:The Science and Practice of Pharmacy,20th ed.;Gennaro,A.R.,Ed.;Lippincott Williams&Wilkins:Philadelphia,PA,2000に記載される医薬品分野で周知の任意の方法によって、調製することができる。医薬的に適合性のある結合剤及び/又はアジュバント材料を組成物の一部として含んでいてもよい。経口組成物は、通常不活性希釈剤担体又は食用担体を含む。
【0049】
錠剤、丸剤、散剤、カプセル剤、口腔内崩壊剤、トローチ等は、1又は2以上の任意の以下の成分、又は同様の性質の化合物:結合剤、例えば微結晶性セルロース、又はガムトラガカント;希釈剤、例えばデンプン又はラクトース;崩壊剤、例えばデンプン及びセルロース誘導体;潤滑剤、例えばステアリン酸マグネシウム;流動促進剤、例えばコロイド性二酸化ケイ素;甘味剤、例えばスクロース又はサッカリン;または香味料例えば、ペパーミント、又はサリチル酸メチルを含んでいてもよい。カプセル剤はハードカプセルでもソフトカプセルでもよい。これらは通常ゼラチン混合物から作製されるが、任意により可塑剤が混合される場合もある。また、デンプンカプセル剤でもよい。さらに、用量単位形態は、用量単位の物理形状を変更する様々な他の材料、例えば、糖被覆剤、セラック、又は腸溶剤を含んでいてもよい。他の経口剤形のシロップ又はエリキシル剤は、甘味剤、保存剤、色素、着色剤、及び香料を含んでいてもよい。さらに、活性化合物を、速溶性、放出調節又は徐放性の調製物及び製剤に組み込んでもよい。徐放性製剤は、バイモダル(bi-modal)であることが好ましい。
【0050】
好適な製剤としては、本発明の化合物を経口又は非経口投与用に製剤した医薬組成物、より好適には、本発明の化合物を錠剤として製剤した医薬組成物が挙げられる。好適な錠剤は、ラクトース、コーンスターチ、ケイ酸マグネシウム、クロスカルメロースナトリウム、ポビドン、ステアリン酸マグネシウム、又はタルクを任意の組合せで含む。本願開示の別の側面として、本発明の化合物を食品や液剤に組み込んでもよい。
【0051】
投与のための液体調製物は、無菌の水性又は非水性溶液、懸濁液、及び乳濁液を含む。液体組成物は更に、結合剤、緩衝剤、保存剤、キレート化剤、甘味剤、香料及び着色料等を含んでいてもよい。非水性溶剤としては、アルコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、アクリル酸コポリマー、植物油、例えばオリーブ油等、及び有機エステル、例えばオレイン酸エチル等が挙げられる。水性担体としては、アルコールと水の混合物、ハイドロゲル、緩衝媒体、及び生理食塩水が挙げられる。特に、生体適合性、生分解性ラクチドポリマー、ラクチド/グリコリドコポリマー、又はポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマーは、活性化合物の放出を制御するための有用な賦形剤である。静脈内ビヒクルとしては、流動性且つ栄養性の補充剤(replenisher)、電解質補充剤、例えばリンガーデキストロース系のもの等が挙げられる。これらの活性化合物に有用に使用し得る他の非経口送達系としては、エチレン酢酸ビニルコポリマー粒子、浸透圧ポンプ、埋め込み型注入システム、及びリポソームが挙げられる。
【0052】
別の投与方式としては、吸入用製剤、例としては乾燥散剤、エアロゾル、又は点滴剤等の手段が挙げられる。これらは、例えばポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル、グリココール酸及びデオキシコール酸塩等を含む水溶液であってもよく、点鼻薬や鼻腔内投与用ゲルとして投与される油性溶液であってもよい。頬内投与用の製剤としては、例えば、ロゼンジ、リオック(Lyoc)(登録商標)又はトローチが挙げられる。また、スクロース又はアカシア等の香味料や、グリココール酸塩等の他の賦形剤を含んでいてもよい。直腸投与に適した製剤は、例えばココアバター等の固系担体を用い、単位用量の坐薬として供することが好ましい。また、サリチル酸塩を含んでいてもよい。皮膚局所投与用の製剤としては、軟膏、クリーム、ローション、ペースト、ゲル、スプレー、エアロゾル、又は油剤の形態とするのが好ましい。使用可能な担体としては、ワセリン、ラノリン、ポリエチレングリコール、アルコール、又はこれらの組合せが挙げられる。経皮投与に適した製剤は、分離したパッチとして供してもよく、或いは、ポリマー又は粘着剤に溶解及び/又は分散させた親油性乳濁液又は緩衝水溶液とすることができる。
【0053】
他の投与としては、眼投与に適した溶剤、軟膏又は他の製剤も挙げられる。
【0054】
特定の側面によれば、本発明の化合物は、上記の皮膚、眼性又は吸入経路によって投与することができる。
【0055】
本発明の他の特徴は、以下の代表的な実施例の説明により明らかになるであろう。以下の実施例は本発明の説明のために供するものであり、これらに限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】図1は、実施例15、16、17、18及び20の二シュウ酸塩の3つの多形(1型、2型及び3型と呼ぶ)、イムメスリジン二シュウ酸塩の非化学量論水和物(x H2O)及びイムメスリジン二シュウ酸塩の一水和物(1 H2O)のX線回折図を表す。
【図2】図2は、実施例19において、様々な温度で水和物から無水和物へ変化させた、非化学量論のイムメスリジン二シュウ酸塩の粉末X線回折図を表す。
【実施例】
【0057】
実施例1:BP1.5375(イムメスリジン)の調製
ピリジン−4−イル−(1−トリチル−1H−イミダゾール−4−イル)−メタノール
温度計が取り付けられた三つ口丸底フラスコを、アルゴン下で4−ヨード−1−トリフェニルメチル−1H−イミダゾール(5 g, 11.5 mmol)及び無水ジクロロメタン(30 mL)で充填し、−10℃まで冷却した。エチルマグネシウムブロミド(Et2O中、3.82 mL, 11.5 mmol, 3M)の添加後、混合物を−10℃で90分間撹拌した。続いて、4−ピリジンカルボキシアルデヒド(0.972 mL, 10.3 mmol, 0.9 当量)を液滴でシリンジを介して−10℃で添加した。−10℃での30分間の撹拌後、溶液を室温で温め、再度30分間撹拌した。NHCl及び水の飽和溶液でのクエンチ後、混合物をジクロロメタンで2度抽出した。結合した有機層を乾燥させ(MgSO4)、減圧下で濃縮した。残渣をiPrOで倍散し、濾過し、オーブン乾燥させ、ピリジン−4−イル−(1−トリチル−1H−イミダゾール−4−イル)−メタノールを、さらなる精製なく使用される灰色がかった白色の固体として得た。
【0058】
4−(1H−イミダゾール−4−イルメチル)−ピリジン
還流器(refluxer)を備えた丸底フラスコを未精製のピリジン−4−イル−(1−トリチル−1H−イミダゾール−4−イル)−メタノール及び57wt%HI水溶液(75 mL)で充填した。混合物をオーバーナイトで還流し、室温まで冷却しクラッシュアイス及び数グラムのNaHSO上に注いだ。混合物のジクロロメタンでの抽出(2回)によって、形成されたトリフェニルメタンを除去した。水溶液を固体のKCOで塩基性化し、数回ジクロロメタン及び酢酸エチルで抽出した。結合した有機層を乾燥させ(MgSO4)、減圧下で濃縮し、未精製の4−(1H−イミダゾール−4−イル−メチル)−ピリジンを淡黄色の固体として得た。
【0059】
実施例2:BP1.5375ニ臭化水素酸塩の調製
プロパン−2−オール(1 mL)中の4−(1H−イミダゾール−4−イル−メチル)−ピリジン(100 mg)の溶液に、48%の臭化水素酸水溶液(142 μL)を添加した。1時間の撹拌後、塩をプロパン−2−オール(1 mL)で希釈し、濾過しそして真空オーブン中で乾燥し、BP1.5375ニ臭化水素酸塩(185 mg)を、融解温度310℃(dec)の白色の固体として得た。
【0060】
実施例3:BP1.5375二塩酸塩の調製
プロパン−2−オール(5 mL)中の4−(1H−イミダゾール−4−イル−メチル)−ピリジン(454 mg)の溶液に、5Nの塩酸(5 mL)溶液を添加した。2時間の撹拌後、塩を濾過し真空オーブン中で乾燥した。続いて未精製の塩をエタノール(15 mL)中で再結晶化し、BP1.5375二塩酸塩(384 mg)を、融解温度270℃の淡黄色固体として得た。
【0061】
実施例4:BP1.5375硫酸二水素の調製
プロパン−2−オール(4 mL)中の4−(1H−イミダゾール−4−イル−メチル)−ピリジン(80 mg)の溶液に、硫酸(60 μL)を添加した。1時間の撹拌後、塩を濾過し真空オーブン中で乾燥し、BP1.5375硫酸二水素(135 mg)を淡黄色吸湿性固体として得た。
【0062】
実施例5:BP1.5375トルエンスルホナートの調製
プロパン−2−オール(5 mL)中の4−(1H−イミダゾール−4−イル−メチル)−ピリジン(159 mg)の溶液に、最少のプロパン−2−オール中に溶解したP−トルエンスルホン酸、一水和物(181 mg)を添加した。2時間の撹拌後、塩を濾過し真空オーブン中で乾燥し、BP1.5375トルエンスルホナート(200 mg)を、融解温度140℃の白色固体として得た。
【0063】
実施例6:BP1.5375ジトルエンスルホナートの調製
プロパン−2−オール(5 mL)中の4−(1H−イミダゾール−4−イル−メチル)−ピリジン(159 mg)の溶液に、最少のプロパン−2−オール中に溶解したp−トルエンスルホン酸、一水和物(381 mg)を添加した。2時間の撹拌後、塩を濾過し真空オーブン中で乾燥し、BP1.5375ジトルエンスルホナート(416 mg)を、融解温度169℃の白色固体として得た。
【0064】
実施例7:BP1.5375ジカンファースルホナートの調製
プロパン−2−オール(5 mL)中の4−(1H−イミダゾール−4−イル−メチル)−ピリジン(159 mg)の溶液に、最少のプロパン−2−オール中に溶解したカンファースルホン酸(465 mg)を添加した。1時間の撹拌後、溶液を真空下で濃縮しアセトンで希釈した。さらに1時間の撹拌後、塩を濾過し真空オーブン中で乾燥し、BP1.5375ジカンファースルホナート(573 mg)を、融解温度232℃の白色の固体として得た。
【0065】
実施例8:BP1.5375ジベンゼンスルホナートの調製
プロパン−2−オール(5 mL)中の4−(1H−イミダゾール−4−イル−メチル)−ピリジン(159 mg)の溶液に、最少のプロパン−2−オール中に溶解したベンゼンスルホン酸(317 mg)を添加した。2時間の撹拌後、塩を濾過し真空オーブン中で乾燥し、BP1.5375ジベンゼンスルホナート(431 mg)を、融解温度159℃の白色固体として得た。
【0066】
実施例9:BP1.5375ホスフェートの調製
プロパン−2−オール(4 mL)中の4−(1H−イミダゾール−4−イル−メチル)−ピリジン(159 mg)の溶液に、最少のプロパン−2−オール中に溶解したリン酸(95 mg)を添加した。1時間の撹拌後、塩を濾過し真空オーブン中で乾燥し、BP1.5375ホスフェート(125 mg)を、融解温度154℃の白色固体として得た。
【0067】
実施例10:BP1.5375ジメタンスルホナートの調製
プロパン−2−オール(4 mL)中の4−(1H−イミダゾール−4−イル−メチル)−ピリジン(159 mg)の溶液に、メタンスルホン酸(130 μL)を添加した。1時間の撹拌後、塩を濾過し真空オーブン中で乾燥し、BP1.5375ジメタンスルホナート(277 mg)を、融解温度182℃の白色固体として得た。
【0068】
実施例11:BP1.5375α−ケトグルタル酸の調製
プロパン−2−オール(4 mL)中の4−(1H−イミダゾール−4−イル−メチル)−ピリジン(159 mg)の溶液に、最少のプロパン−2−オール中に溶解したα−ケトグルタル酸(145 mg)を添加した。1時間の撹拌後、塩を濾過し真空オーブン中で乾燥し、BP1.5375α−ケトグルタル酸(218 mg)を、融解温度152℃の白色固体として得た。
【0069】
実施例12:BP1.5375一シュウ酸塩の調製
プロパン−2−オール(4 mL)中の4−(1H−イミダゾール−4−イル−メチル)−ピリジン(159 mg)の溶液に、最少のプロパン−2−オール中に溶解したシュウ酸(88 mg)を添加した。1時間の撹拌後、塩を濾過し真空オーブン中で乾燥し、BP1.5375一シュウ酸塩(187 mg)を、融解温度155℃の白色固体として得た。
【0070】
実施例13:BP1.5375一硫酸塩の調製
プロパン−2−オール(4 mL)中の4−(1H−イミダゾール−4−イル−メチル)−ピリジン(159 mg)の溶液に、硫酸(53 μL)を添加した。1時間の撹拌後、塩を濾過し真空オーブン中で乾燥し、BP1.5375一硫酸塩(203 mg)を、融解温度214℃の淡黄色固体として得た。
【0071】
実施例14:BP1.5375二シュウ酸塩の調製
BP1.5375:4−(1H−イミダゾール−4−イルメチル)−ピリジン、二シュウ酸塩
プロパン−2−オール(4 mL)中の4−(1H−イミダゾール−4−イル−メチル)−ピリジン(159 mg, 1 mmol)の溶液に、同じ溶剤(1 mL)中のシュウ酸(180 mg, 2 mmol, 2 当量)溶液を添加した。室温での1時間の撹拌後、生じた塩を濾過しオーブン乾燥させ、純粋な4−(1H−イミダゾール−4−イルメチル)−ピリジン二シュウ酸塩を得た。
【0072】
【表1】

【0073】
実施例15:BP1.5375二シュウ酸塩I型の調製
BP1.5375:4−(1H−イミダゾール−4−イルメチル)−ピリジン、二シュウ酸塩I型
60℃の水中の4−(1H−イミダゾール−4−イル−メチル)−ピリジン二シュウ酸塩の20%(wt/wt)溶液を、急速に20℃まで冷却する。アセトン(水1Lあたり2.8L)を添加する。混合物を20℃で1時間、続いて0℃で1時間撹拌し、濾過し、アセトンですすぎそして乾燥し、図1に示されるように、特徴的な粉末X線回折スペクトルを示す4−(1H−イミダゾール−4−イルメチル)−ピリジン、二シュウ酸塩I型が得られる。
【0074】
実施例16:BP1.5375二シュウ酸塩II型の調製
BP1.5375:4−(1H−イミダゾール−4−イルメチル)−ピリジン、二シュウ酸塩II型
アセトン中の4−(1H−イミダゾール−4−イルメチル)−ピリジン、二シュウ酸塩I型の10%(wt/wt)の懸濁液を、室温で5日間撹拌する。固体を濾過し、アセトンですすぎ、乾燥し、図1に示されるように特徴的な粉末X線回折スペクトルを示す4−(1H−イミダゾール−4−イルメチル)−ピリジン、二シュウ酸塩II型が得られる。
【0075】
実施例17:BP1.5375二シュウ酸塩III型の調製
BP1.5375:4−(1H−イミダゾール−4−イルメチル)−ピリジン、二シュウ酸塩III型
20℃の水中の4−(1H−イミダゾール−4−イルメチル)−ピリジン、二シュウ酸塩の10%(wt/wt)溶液に、アセトンを徐々に添加する(最終組成、水 / アセトン 10 / 90 wt/wt)。懸濁液を24時間室温で撹拌する。固体を濾過し、アセトンですすぎ、乾燥し、図1に示されるように特徴的な粉末X線回折スペクトルを示す、4−(1H−イミダゾール−4−イルメチル)−ピリジン、二シュウ酸塩III型が得られる。
【0076】
実施例18:BP1.5375二シュウ酸塩X水和物の調製
BP1.5375:4−(1H−イミダゾール−4−イルメチル)−ピリジン、二シュウ酸塩X水和物
20℃の水中の4−(1H−イミダゾール−4−イルメチル)−ピリジン、二シュウ酸塩の10%(wt/wt)溶液に、アセトンを徐々に添加する(最終組成、水 / アセトン 65.5 / 34.5 wt/wt)。懸濁液を室温で12時間撹拌する。固体を濾過し、アセトンですすぎ乾燥し、特徴的な粉末X線回折スペクトルを示す4−(1H−イミダゾール−4−イルメチル)−ピリジン、二シュウ酸塩X水和物が得られる。この相は、非化学量論水和物である。
4−(1H−イミダゾール−4−イルメチル)−ピリジン、二シュウ酸塩X水和物の51℃以上の加熱は、水の部分喪失を生じ、図1に示されるように特徴的な粉末X線回折スペクトルを示す他の非化学量論水和物を生じる。
【0077】
実施例19:BP1.5375二シュウ酸塩I型の調製
BP1.5375:4−(1H−イミダゾール−4−イルメチル)−ピリジン、二シュウ酸塩I型
非化学量論の水和物である、4−(1H−イミダゾール−4−イルメチル)−ピリジン、二シュウ酸塩X水和物の61℃以上の加熱によって、生成物は完全に脱水され、そして図2において様々な温度で特徴的な粉末X線回折スペクトルを示す4−(1H−イミダゾール−4−イルメチル)−ピリジン、二シュウ酸塩I型が得られる。
【0078】
実施例20:BP1.5375二シュウ酸塩一水和物の調製
BP1.5375:4−(1H−イミダゾール−4−イルメチル)−ピリジン、二シュウ酸塩一水和物
4−(1H−イミダゾール−4−イルメチル)−ピリジン、二シュウ酸塩I型を撹拌した20℃の水に添加する(最終組成、12 / 88 wt/wt)。急速な溶解後、結晶化が自然に生じる。懸濁液を室温で4日間撹拌する。固体を濾過し、乾燥し、図1に示されるように特徴的な粉末X線回折スペクトルを示す、4−(1H−イミダゾール−4−イルメチル)−ピリジン、二シュウ酸塩一水和物が得られる。
【0079】
実施例21:イムメスリジン二シュウ酸塩の特性:
4%のイミダゾールを含む未精製のベースのバッチは、水性のイソプロパノール中の二シュウ酸塩の1回の結晶化後、わずか0.7%のイミダゾール塩を含む塩に繋がる。一方、ニ臭化水素酸塩は、水性のイソプロパノール中で結晶化しない。乾燥イソプロパノール中では、ジイソプロピルオキシドで処理され得られたニ臭化水素酸塩には、1.35%のイミダゾールがコンタミする。さらに、イソプロパノール中での臭化水素酸の作成は、潜在的に発がん性のある、イソプロピルブロミド、アルキル化剤の形成に繋がる。
【0080】
これを80℃で1週間加熱した場合、明らかな分解はHPLC分析によって検出されず、安定な化合物である。一方、イムメスリジンは黒色化し、安定性の欠如を示す。さらに、(室温の水飽和雰囲気で数日放置した場合に、重量の50〜130%まで吸湿し、頻繁に潮解する)吸湿性のある、イムメスリジン及びそのニ臭化水素酸塩と対照的に、イムメスリジン二シュウ酸塩は、同様の厳しい条件下でせいぜい13〜15%の水しか吸収せず、これは医薬品製造工程の機会の観点において顕著に優れていることを示している。
【0081】
実施例22:生物学的活性
1.インビトロ(in vitro)におけるデータ
・BP1.5375は、ヒトH3Rの、つまりHEK293細胞中で発現される組換え型hH3R上の強力な活性化因子であり、これは〜1nMのEC50及びヒスタミンと比較して0.75の固有活性を有して[35S]GTPγS結合を活性化する。一方、βアレスチントランスロケーションの活性化因子として、これは〜17nMのEC50及びヒスタミンと比較して固有活性0.5を有しそれほど強力でなく、同じ受容体を脱感作する能力が低いことがわかる。
【0082】
・BP1.5375は、hERGカリウムチャネルと相互作用しない。実際、最大10μMの濃度のBP1.5375は、hERGカリウムチャネルを安定的に発現しているHEK−293細胞を使用した2つの試験で、[H]ドフェチリド結合アッセイ及び機能パッチクランプ解析のカリウムhERG電流を阻害しないことがわかる。この特性は、心電図のQT延長に関係する心毒性がないことを保障するために不可欠である。
【0083】
・予想以上に、H3RアゴニストとしてのBP1.5375が、ヒトHMTの不適当な基質である。このことは、フレッシュなヒト肝細胞のサイトゾルを酵素源として、20μMの(S)−アデノシルメチオニンをメチルドナーとして、またBP1.5375を塩基形態として、そして濃度増加させた様々な塩(又はヒスタミン若しくは(R)α−メチルヒスタミン)を基質として使用して証明され、つまり、0〜90分までのインキュベーションから形成される対応のteleメチル誘導体を分離し、HPLC−MSによって定量化し、そしてデータのラインウィーバーバーク分析によってミカエリス定数及び最大速度を算出した。表1は、特異性定数、すなわちVm/Kmの比を算出することができるこれらのデータを示し、ヒスタミン、(R)α−メチルヒスタミン及びBP1.5375(ベース及び様々な塩)それぞれに関して、生理的pH7.4において0.048、0.034及び0.0003〜0.0012であった。
【0084】
【表2】

【0085】
これは、塩基形態としてのBP1.5375及びその様々な塩が、ヒスタミン又はプロトタイプのH3Rアゴニスト(R)α−メチルヒスタミン各々の約1/50〜1/150の低さである、非常に低比率でメチル化されることを示す。
【0086】
2.インビボ(in vivo)におけるデータ
i)HMTリッチな組織であるマウスの脳における、メチル基転移によって減少されたBP1.5375のインビボ(in vivo)における不活性化は、1 mg/kgの経口投与後の不変化及びteleメチル化された誘導体のAUCの測定によって示し:不活性代謝物は親薬物の23%のみ示した。(R)α−メチルヒスタミンはそれ自体によって脳中に透過しにくいが(Yamazaki et al., J. Pharm. Pharmacol., 1994, 46, 371〜74)、マウス血液中のteleメチル化(R)α−メチルヒスタミンに関するその相当する割合は、150%であった(Rouleau et al., JPET, 1997, 281, 1085〜94)。
【0087】
同様の実験によって、単位に近い脳/血液AUCの比で、BP1.5375が血液脳関門をある程度よく通過することが示された。Sprague−Dawley系統ラットにおいて、1mg/kgの薬物の経口投与されているラットのデータは、同様の結果が導かれ:脳中の代謝物/不変薬物のAUCの比はたった19.6%であり、脳/血液比は2.6であった。
【0088】
ラット又はマウスに経口投与したBP1.5375は、脳中で非常に強力なH3Rの活性化因子であることが示され:これは、主要な細胞外の代謝物である、teleメチルヒスタミンのレベルの低下によって評価される、ヒスタミン作動性ニューロンの活性の減少を生じ、〜30マイクログラム/kgほど低いED50値を有する。この応答は、7日以上の反復投与で維持され、ヒトにおいて慢性治療の効能が予想されることを示している。ベース及び様々なイムメスリジンの塩をマウスに0.3 mg/kgで経口投与し、対照のヒスタミンH3受容体アゴニストのイメチットによって誘発される最大の減少と同様のteleメチルヒスタミンの脳レベルの低下を誘発した(Garbarg M. et al. J. Pharmacol. Exp. Ther., 1992, 263, 304〜310)。次の表を参照されたい:
【0089】
【表3】

【0090】
(Louis et al., J. Neurosci. Methods, 2004,133, 71 〜80に記載の24時間記録が分析される)EEG記録装置を慢性的に備えたラットに、明期の開始30分前に同一の非常に低用量で薬物を投与した場合、薬物は深いSWS(徐波睡眠)期間の持続を顕著に増強した。
【0091】
複数の他のH3Rアゴニストの睡眠促進活性が以前に説明されているが(Lin et al., Brain Res., 1990, 523, 325〜330; Monti et al., Neuropsychopharmacology, 1996, 15, 31〜35)、この効果を得るためには100〜1000倍以上の多くの用量が必要であった。さらに、1日に1回の投与の数日以上に渡る反復で、BP1.5375による睡眠促進効果は減退せず;この耐性の欠如は、現在使用されるベンゾジアゼピンサイトリガンドであるゾルピデムの睡眠薬効果に対して(同一のラットにおいて、わずか数日で)急速に発生する耐性と対照的であることが発見された。
【0092】
さらに、BP1.5375は、反復治療の中断で反跳現象を生じないことが発見されている。従って、当該薬物の経口の0.3 mg/kgでのラットの6日間の治療の中断後、治療以前の通りに睡眠パターンが再確立されることが確認されている。これは、ベンゾジアゼピン又はイミダゾピリジン、例えばゾルピデムでの反復治療の中断で生じるサーカディアンリズムの持続性の障害、すなわち相対的な不眠症と対照的である。従って、20 mg/kgの経口のゾルピデムでのラットの15日間の治療の中断後の休薬症状は、睡眠開始潜伏期の増加、熟睡の減少から成る。
【0093】
これらの休薬総体症状は、ヒトにおいても発生し、ベンゾジアゼピン及びGABA−A受容体機能の他の正のモジュレーター、例えば睡眠薬効果のあるイミダゾピリジン、バルビタール系薬物又はアルコールへの確立された薬物依存症の原因であることが知られている。
【0094】
さらに、GABA−A受容体の正のモジュレーターでの反復治療を中断する場合に、このような環境下でBP1.5375の投与は休薬症状の発生を予防し、一方で投与しない場合は休薬症状を生じることが発見された。従って、1日に1回ゾルピデム20 mg/kgで、続いてBP1.5375を経口で0.3 mg/kgで18日間処理したラットは、翌日に睡眠開始の遅延及び熟睡の減少を特徴とするサーカディアンリズム障害を示さなかった。
【0095】
ii)BP1.5375はまた、100 mg/kgの高用量でげっ歯類においていずれの明らかな毒性徴候も誘発せず、良好な一般的耐性を示し、1000倍以上の「安全域」を示す。
iii)多くのイミダゾール含有誘導体とは対照的に、3A4、2D6及び2C9のアイソフォームにおけるBP1.5375のIC50値はそれぞれ29.3、100及び3.1マイクロモル濃度であり、組換え型ヒトチトクロムP450のアイソフォームのこれらの主要なクラスと、BP1.5375はそれほど顕著に相互作用を生じない。これらの値は、治療用量における期待される血漿中濃度又は組織濃度より1000倍高い。
【0096】
また、当該化合物はヒトCYP450のアイソフォーム(3A4, 2C9, 2E1, 2B6)及び抱合酵素であるUGTに対する誘導能の低さもまた示し、期待される治療薬物濃度より1000倍以上高い濃度でもこれらはヒト肝細胞において誘導されない。
【0097】
これらの発見は、BP1.5375がこれらの様々な化合物の慢性投与に関係する退薬症候群の効率的な治療を示し:様々な睡眠薬による不眠症の治療の中断で発生する離脱症候群の予防において有利に使用され、またアルコール中毒の治療を促進することができることを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イムメスリジン、又は、その医薬として許容される塩、その水和物を含む溶媒和物、並びにその塩の多形及び/又はその(水和物を含む)溶媒和物の多形のうち何れかを含む医薬組成物。
【請求項2】
イムメスリジンが医薬として許容される塩の形態である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
イムメスリジンがシュウ酸塩の形態である、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
イムメスリジンが、式:
【化1】

の二シュウ酸塩の形態である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
イムメスリジンの二塩酸塩、硫酸二水素塩、トルエンスルホナート、ジトルエンスルホナート、ジカンファースルホナート、ジベンゼンスルホナート、ホスフェート、ジメタンスルホナート、α−ケトグルタル酸塩、一シュウ酸塩、一硫酸塩、及びその水和物を含む溶媒和物、並びにその塩の多形及び/又は水和物を含むその溶媒和物の多形から選択されるイムメスリジンの塩。
【請求項6】
式(I):
【化2】

のイムメスリジンの二シュウ酸塩である、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
X線回折によって16.6°に特徴的なピークを含むイムメスリジンの二シュウ酸塩の多形IIIである、請求項5又は6に記載の化合物。
【請求項8】
有機溶媒中でイムメスリジンを対応する酸と反応させる工程を含む、請求項5〜7のいずれか1項に記載の化合物の調製方法。
【請求項9】
式(II)
【化3】

(式中、
Halがハロゲン原子を表し、
Pgが保護基を表す)
の化合物を式(III)
【化4】

の化合物とカップリングさせることによってイムメスリジンを調製する工程、及びそれに続く上記保護基Pgの脱酸素化/脱保護化工程をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
H3R関連障害を予防及び/又は治療するための、イムメスリジン、又は、その医薬として許容される塩、その水和物を含む溶媒和物、並びにその塩の多形及び/又はその(水和物を含む)溶媒和物の多形。
【請求項11】
シュウ酸塩の形態である、請求項10に記載のイムメスリジン又はその医薬として許容される塩。
【請求項12】
イムメスリジンの二シュウ酸塩である、請求項10又は11に記載のイムメスリジン又はその医薬として許容される塩。
【請求項13】
ストレス、疼痛、心身症、不眠症、片頭痛、呼吸器、アレルギー又は炎症性疾患(喘息, 気管支炎, 鼻炎, 気管炎等)、心臓疾患(心筋機能不全及び梗塞)、これらの抗分泌性及び抗炎症性作用の結果としての胃腸の疾患(胃潰瘍及び十二指腸潰瘍, 胃食道逆流, 潰瘍性大腸炎, クローン病, 過敏性腸, 便失禁等)、泌尿生殖器系疾患(膀胱炎, 子宮炎, 月経前緊張症, 前立腺の炎症, 尿失禁, 生殖器障害)及び皮膚系の疾患(じん麻疹, そう痒)、関節炎及び他のリウマチ性疾患、結膜炎及び他の眼炎症、流涎症、分泌、炎症、睡眠又はサーカディアンリズム障害、痙攣、視床下部下垂体分泌障害、うつ状態、脳循環障害、免疫系障害、アレルギー疾患を治療及び/又は予防するための、請求項10〜12のいずれか1項に記載のイムメスリジン又はその医薬として許容される塩。
【請求項14】
向精神薬、睡眠薬、睡眠制御剤及び/又は麻酔アジュバントとしての、請求項10〜12のいずれか1項に記載のイムメスリジン又はその医薬として許容される塩。
【請求項15】
離脱症候群、退薬症候群、並びに薬物、ベンゾジアゼピン受容体アゴニスト及び/又はアルコールに由来する依存症の予防又は治療のための、請求項10〜12のいずれか1項に記載のイムメスリジン又はその医薬として許容される塩。
【請求項16】
イムメスリジンの医薬として許容される塩、その水和物を含むその溶媒和物、並びにその塩の多形及び/又はその(水和物を含む)溶媒和物の多形と、GABA−Aの正のモジュレーターとの組合せ剤。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−527422(P2012−527422A)
【公表日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−511261(P2012−511261)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【国際出願番号】PCT/EP2010/056824
【国際公開番号】WO2010/133598
【国際公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(501379856)
【Fターム(参考)】