4−[(E)−2−(5,6,7,8−テトラヒドロ−5,5,8,8−テトラメチル−2−ナフタレニル)−1−プロペニル]安息香酸類似体及びその製造方法と使用
4-[(E)-2-(5,6,7,8-テトラヒドロ-5,5,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル)-1-プロペニル]安息香酸の類似体、その製造方法並びに癌の予防及び治療で使うため等のその使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔優先出願〕
米国特許法第120条によって、2006年6月30日出願の米国特許出願第60/695,564号に対し、その全開示に関して優先権の利益を主張する。
【0002】
〔関連特許及び関連同時係属出願〕
本発明は、米国特許第6,117,845号;第5,663,377号;第5,599,953号;第5,574,177号;及び第5,516,792号に関連し、これら特許は参照によって本明細書に組み込まれる。本発明は、2006年5月3日出願の同時係属米国特許出願第11/416,907号にも関連し、この出願も参照によって本明細書に組み込まれる。
【0003】
〔発明の分野〕
本発明分野は、5,5,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル)-1-プロペニル]安息香酸の類似体、その製造方法、並びに癌の予防及び治療で使うため等のその使用を包含する。
【0004】
〔発明の背景〕
乳癌は毎年数千人の女性の死亡原因である(A Snapshot of Breast Cancer, National Cancer Institute (August 2005)参照)。外科的措置が多くの女性の命を救っている。しかし、根治的及び部分的乳房切断は身体的及び感情的に衰弱させうる。化学療法と併用する外科的措置は、未だ患者を再発の可能性にさらしうる。
乳癌を治療及び/又は予防するための薬物及び他の療法(放射線、免疫療法及びワクチン等)の研究開発に大量の研究努力が向けられている。レチノイン酸はビタミンAの既知代謝物である。レチノイン酸とその特定の類似体は、正常な上皮組織の分化の維持に必要らしい。レチノイン酸の該類似体は、ビタミンA欠乏上皮組織におけるハムスター気管の異形成状態を逆転させうる(Newton et al., Cancer Res 40:3413-3425 (1980)参照)。レチノイン酸及びその特定のアミド類似体も化学療法薬として使うために研究されている(Moon et al., Cancer Res 39:1339-1346 (1979)参照)。他のレチノイン酸類似体、例えば酢酸レチニル、13-シス-レチノイン酸及びグルクロニド類似体も乳癌予防活性といった何らかの癌予防活性を示すことが分かっている(Hill DL et al., Ann Rev Nutrition, 12:161-181 (1992)参照)(Mehta RG et al., Oncology, 48:1505-1509 (1991)も参照されたい)。レチノイン酸のスチルベン誘導体は腫瘍学での使用に可能性のある薬剤として示唆されている(Simoni D et al.,“分化及びアポトーシスの強力な誘導物質としてのレチノイン酸と類似体:腫瘍学で前途有望な新しい化学的予防薬及び化学療法薬(Retinoic Acid and Analogs as Potent Inducers of Differentiation and Apoptosis: New Promising Chemopreventative and Chemotherapeutic Agents in Oncology)”, Pure Appl Chem, 73:1437-1444 (2001)参照)。レチノイン酸の芳香族類似体、例えば4-[(E)-2-(5,6,7,8-テトラヒドロ-5,5,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル)-1-プロペニル]安息香酸(“TTNPB”)もSimoniらによって開示された。
レチノイン酸(“RA”)の構造を以下に示す。
【0005】
【化1】
【0006】
レチノイド化合物は、増殖、分化及びアポトーシス等の種々多様な細胞プロセスの調節に関与する。レチノイド化合物は癌の化学療法薬として使うために研究されているが、望ましくない副作用の問題がある。アロチノイド(arotinoid)化合物は芳香族レチノイド化合物の1種である。アロチノイド化合物は高い生物活性を有するが、望ましくない毒性も与える。例えば、TTNPBの構造も以下に示す。
【0007】
【化2】
【0008】
しかし、毒性はレチノイン酸とその類似体の開発に重大な障害だった(Biesalski HK, Toxicology, 57:117-161 (1989)参照)。観察される副作用として、催奇形性、肝毒性、血液脂肪異常性、うろこ状皮膚、脱毛及び頭痛が挙げられる。癌予防薬として使うための高い効力及び/又は低い毒性を有する新しいレチノイン酸類似体を発見するため、他の研究が求められている。例えば、N-(4-ヒドロキシフェニル)レチンアミド(“4-HPR”)は乳癌に対して化学的予防活性を示すことが報告されている(Moon et al., Cancer Res, 39:1339-1346 (1979)参照)。4-HPRとグルカル酸カルシウムの併用が発癌物質誘発ラット乳癌において高く相乗的な化学的な乳癌予防活性を有することも報告されている(Abou-Issa HM et al., Proc Natl Acad Sci USA, 85:4181-4184 (1988)参照)。しかし、4-HPRは未だラット、マウス及びウサギの研究で催奇形の可能性を示している(Kenel MF et al.,“ラット及びウサギにおけるN-(4-ヒドロキシフェニル)-全-トランスレチンアミドの催奇形性(Teratogenicity of N-(4-hydroxyphenyl)-all-trans Retinamide in Rats and Rabbits)”, Teratogenesis, Carcinogenesis and Mutagenesis, 8:1-11 (1988)参照)(Kochhar DM et al.,“レチンアミド:妊娠マウスにおける催奇形性に寄与するレチノイルグルシンのレチノイン酸への加水分解性変換(Hydrolytic Conversion of Retinoylglycine to Retinoic Acid in Pregnant Mice Contributes to Teratogenicity)”, Teratology, 45:175-185 (1992)も参照されたい)。4-HPRがヒト患者に夜間視力を与えることも報告されている(Kaiser-Kupter MI et al.,“フェンレチニド、合成レチノイドレンレチニド(HPR)と関連する異常な網膜機能(Abnormal Retinal Function Associated with Fenretinide, A Synthetic Retinoid Renretinide (HPR))”, Eur J Cancer Clin Oncol, 25:805-808 (1989)参照)。
4-HPRの構造を以下に示す。
【0009】
【化3】
【0010】
4-HPRのケトン類似体が4-HBRである。4-HBRの構造を以下に示す。4-HBRの特性(及びその合成)は、Clagett-Dameらに対する米国特許第6,117,845号に開示されており、この特許は4-HBRの種々の糖-類似体の合成も開示している。
【0011】
【化4】
【0012】
4-HBRとその類似体は抗-新生物活性を有し、乳房における新生物の成長の予防(すなわち、予防的治療)及び/又は治療に有用である。
レチノイン酸の安定した活性類似体の合成の最近の進歩にもかかわらず、レチノイン酸及びTTNPBのさらに強力かつ低毒性の類似体と誘導体、特に乳癌を含め、多くの癌の予防的治療及び治療に有用な該薬物が要望されている。
【0013】
〔発明の概要〕
本発明の一局面は、下記式の化合物である。
【0014】
【化5】
【0015】
本化合物はその医薬的に適切な塩又は溶媒和物でもよく、乳癌の予防的治療のため、又は乳癌を治療するため、該4-HBTTNPB化合物又はその医薬的に適切な塩若しくは溶媒和物をヒトに投与することができる。
本発明の別の局面は、下記式の化合物である。
【0016】
【化6】
【0017】
本化合物はその医薬的に適切な塩又は溶媒和物でもよく、乳癌の予防的治療のため、又は乳癌を治療するため、該4-HPTTNPB化合物又はその医薬的に適切な塩若しくは溶媒和物をヒトに投与することができる。
本発明の別の局面は、下記式の化合物である。
【0018】
【化7】
【0019】
本化合物はその医薬的に適切な塩又は溶媒和物でもよく、乳癌の予防的治療のため、又は乳癌を治療するため、4-HPTTNPB化合物の該3-プロピル類似体又はその医薬的に適切な塩若しくは溶媒和物をヒトに投与することができる。
下記式の化合物、並びにその塩、エステル及び溶媒和物。
【0020】
【化8】
【0021】
(式中、Lは、単結合、CH2、及びOから成る群より選択されるメンバーであり、かつ、R1は、アルドース成分、下記基、
【0022】
【化9】
【0023】
及びC1-6直鎖若しくは分岐鎖アルキル基から成る群より選択されるメンバーである。)
好ましくは、前記アルドース残基成分は以下のとおりである。
【0024】
【化10】
【0025】
本化合物はその医薬的に適切な塩、エステル又は溶媒和物でもよく、乳癌の予防的治療のため、又は乳癌を治療するため、該化合物又はその塩、エステル若しくは溶媒和物をヒトに投与することができる。LがOの場合、前記C1-6直鎖若しくは分岐鎖アルキル基は-CH3、-CH(CH3)2又は下記基でよい。
【0026】
【化11】
【0027】
〔好ましい実施形態の詳細な説明〕
4-[(E)-2-(5,6,7,8-テトラメチル-2-ナフタレニル)-1-プロペニル]安息香酸(TTNPB)の構造を図1Aに示す。TTNPB及びレチノイン酸の他の類似体は、代謝に対する耐性を示し、かつ細胞の増殖とアポトーシスを調節する有意な化学療法活性 を有する。TTNPBはレチノイン酸の強力であるが、毒性の芳香族類似体である。TTNPBは選択的にレチノイン酸受容体(“RAR”)に結合する。しかし、TTNPBはレチノイドX受容体(“RXR”)に結合しない。それ自体で、TTNPBは選択的にRARに結合するという点でレチノイン酸より有利である。しかし、レチノイン酸は異性化してRXRに結合する。
レチノイン酸分子中のカルボン酸基がパラ-ヒドロキシフェニルアミンに共有結合(アミド結合によって)することによって、4-ヒドロキシフェニルレチンアミド(“4-HPR”)が生じる。4-HPRは乳癌に対する化学的予防-化学療法活性を有する。4-HPRは、レチノイン酸より有意に低毒性でもある。培養中、4-HPRは、アポトーシスによって癌細胞の増殖を阻害する。対照的に、レチノイン酸及びTTNPBは、分化を引き起こすことによって増殖停止をもたらす。4-HPRはRAR-非依存性活性をも示しうる(米国特許第6,117,845号参照)。
【0028】
図2に示されるように、TTNPBのカルボン酸基がパラ-ヒドロキシフェニルアミンに共有結合する(アミド結合によって)ことによって4-HPTTNPBが生じる。図3に示されるように、TTNPBの3-プロピル類似体と4-HPTTNPBを合成した(後述する化合物11及び12参照)。如何なる理論にも拘泥しないが、4-HPTTNPBの3-プロピル類似体(化合物12)は化合物11にin vivo加水分解された場合でさえ、RARに結合しないようである。さらに、同じ理由で4-HPTTNPBの3-プロピル類似体はRARタンパク質に結合しないと理論づけられる。4-HPTTNPBの3-プロピル類似体は、RAR又はRXRタンパク質に結合しないので、それ自体、ヒトの医薬用途で十分無毒である(すなわち、医薬的に適する)。
【0029】
これとは別に、化合物20、21、22、23(4-HBTTNPB)、25(4-HBTTNPBの酸素-連結型グルクロニド)、29(4-HBTTNPBのメチレン-連結型グルクロニド)、30(4-HBTTNPBのメチレン-連結型グルコース)、及び33(4-HBTTNPBの酸素-連結型グルコース)のケトン基は、4-HPTTNPB中のアミド基と同様に作用すると理論づけられる。グルコース成分は、単糖類等のアルドース、モノカルボン酸、ジカルボン酸、ポリヒドロキシアルコール又はアルデヒド酸から誘導される種々成分のいずれでもよいと解釈される(Morrison and Boyd, Organic Chemistry, 3rd:1075 (1973)参照)。例えば、アルドース誘導体のファミリー内では、グルクロン酸はグルクロニド誘導体成分を形成するアルデヒド酸である。ケトン基もRAR又はRXRタンパク質に結合しないだろう。化合物20はE-4-[2-メチル-2-(1,1,4,4-テトラメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタ-7-イル)-ビニル]フェニル-2'-(4'-メトキシフェニル)-1'-エタノンである。化合物21はE-4-[2-メチル-2-(1,1,4,4-テトラメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタ-7-イル)-ビニル]-フェニル-2'-(4'-イソプロポキシフェニル)-1'-エタノンである。化合物22はE-4-[2-メチル-2-(1,1,4,4-テトラメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタ-7-イル)-ビニル]-フェニル-2'-(4'-ベンジルオキシフェニル)-1'-エタノンである。これらケトン含有化合物は、本明細書で後述するように合成され、かつ腫瘍細胞の増殖を阻害する強力な活性を示すので、乳癌の予防的治療及び乳癌の治療に好適である。予想外にも、糖含有類似体化合物25、29、30及び33も溶解性、バイオアベイラビリティー及び低毒性等の望ましい特性を向上させた。
【実施例】
【0030】
種々のレチノイン酸誘導体の合成と特徴は、米国特許第6,117,845号;第4,578,498号;及び第4,326,055号に記載されており、これら各特許は参照によって全開示が本明細書に組み込まれる。さらに、本出願の図2〜8は、本明細書で開示する種々の新規化合物を製造するためのさらなる合成法を示す。
2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジオールとプロピルベンゼンはAldrich Chemical Company, Milwaukee, Wisconsinから市販されている。他の試薬は、とりわけSigma-Aldrich, St. Louis, Missouri及びAldrich Chemical Companyから商業的に入手可能である。既知手順を用いて、又は本明細書で述べるように該試薬を調製した。
Bruson H et al., J Am Chem Soc, 62:36 (1940)に記載の公知手順を用い、50gの2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジオール(化合物1)と1Lの濃塩酸を使用して2,5-ジクロロ-2,5-ジメチルヘキサン(化合物2)を合成した。定量的に収率を測定した。化合物2の特性はBrusonらが報告したものと一致した。
Brusonらが述べた公知手順を用いて1,1,4,4-テトラメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン(化合物3)を合成した。この手順ではフリーデル-クラフツ反応を用い、36gの2,5-ジクロロ-2,5-ジメチルヘキサン(化合物2)、78gのベンゼン、及び16gの塩化アルミニウムを混合して、60%の収率という結果になった。化合物3の特性はBrusonらが報告したものと一致した。
Wood TF et al., Org Chem, 28(9):2248 (1963)に記載の公知手順を用いて7-アセチル-1,1,4,4-テトラメチルテトラリン(化合物4)を合成した。16gの1,1,4,4-テトラメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン、7.4gの塩化アセチル及び13.6gの塩化アルミニウムを使用して92%の収率という結果になった。1H NMRを用いて化合物3の生成を確認した。
Dawson M et al., J Org Chem, 49:5265 (1984)に記載の公知手順を用いてE-4-[2-メチル-2-(1,1,4,4-テトラメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタ-7-イル)-ビニル]-安息香酸エチル(化合物5)を合成した。この手順では、30mLの1.0M NaCH2SOCH3(つまり27mmol)を10gのp-カルボキシエチルベンジルホスホン酸に撹拌しながら添加した。0.5時間後、ホスホン酸アニオンの赤褐色溶液を、45mLのMe2SO中の3.45gの7-アセチル-1,1,4,4-テトラメチルテトラリン(化合物4)に加えた。反応混合物を4時間撹拌した。次に、9mLの2.0M NaOEt(つまり18mmol)(EtOH中)を加え、赤褐色反応混合物を一晩撹拌した。反応混合物を10%のNaHCO3水溶液(900mL)に注ぎ;Et2Oで抽出し;食塩水で洗浄し;かつMgSO4上で乾燥させることによって仕上げた。
ろ過及びEt2Oの除去後、残留物を6mLのヘキサンに懸濁させ、4〜6時間放置してゴム状結晶を生じさせた。20%のヘキサン/CH3OHからの再結晶により無色固体の4.68g(収率83%)のE-4-[2-メチル-2-(1,1,4,4-テトラメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタ-7-イル)-ビニル]-安息香酸エチル(化合物5)を得た。化合物5の特性はDawsonらが報告したものと一致した。HPLC(オクタデシルシラン4.6×250mmカラム、CH3OH/H2O 85:15、UV 310nm、流速1.0mL/分、tr=44.5分)。
E-4-[2-メチル-2-(1,1,4,4-テトラメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタ-7-イル)-ビニル]安息香酸エチル(化合物5)を6MのKOH水溶液中で加水分解してE-4-[2-メチル-2-(1,1,4,4-テトラメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタ-7-イル)-ビニル]-安息香酸(TTNPB;化合物6)を合成した。収率は90%だった。Mpは247〜248℃(酢酸から)だった。HPLC(オクタデシルシラン4.6×250mmカラム、CH3OH/H2O 85:15、UV 310nm、流速1.0mL/分、tr=8.5分):1H-NMR(300 MHz, (CD3)2SO), δ 1.21 (s, 6H), 1.25 (s, 6H), 1.62 (s, 4H), 2.21 (s, 3H), 6.83 (s, 1H), 7.28 (s, 2H), 7.44 (s, 1H), 7.70 (AB, 4H, JAB = 8.06 Hz)、酸のOHが溶媒由来のH20と交換する。
E-4-[2-メチル-2-(1,1,4,4-テトラメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタ-7-イル)-ビニル]-安息香酸4-ヒドロキシアニリド(4-HPTTNPB;化合物7):3.1g(8.91mmol)の化合物6と0.86mL(10.7mmol)のピリジンの30mLの無水テトラヒドロフラン中の懸濁液に、0.78mL(10.7mmol)の塩化チオニルを加えた。混合物を室温(RT)で2時間撹拌した。生じた沈殿物をろ別し、20mLのテトラヒドロフラン中の2.91g(26.7mmol)の4-アミノフェノールの懸濁液に母液を加えた。RTでさらに20時間撹拌を続けた。反応混合物を70mLの水中で撹拌した。混合物を2Nの塩酸で酸性にした。生じた沈殿物をろ別し、酢酸から再結晶させて3.64gのE-4-[2-メチル-2-(1,1,4,4-テトラメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタ-7-イル)-ビニル]-安息香酸4-ヒドロキシアニリド(化合物7)を無色の針晶の形で得た。Mp=252〜253℃。HPLC(オクタデシルシラン4.6×250mmカラム、CH3OH/H2O 85:15、UV 310nm、流速1.0mL/分、tr=14分);UVmax(DMSO), 297 (88 500); 1H-NMR (300 MHz, (CD3)2CO), δ 1.27 (s, 3H), 1.31 (s, 3H), 1.70 (s, 4H), 2.29 (s, 3H), 6.89 (s, 1H), 7.22 (AB, 4H, JAB = 8.96 Hz), 7.33 (s, 2H), 7.62 (s, 1H), 7.76 (AB, 4H, JAB = 8.32 Hz), 8.13 (s, OH), 9.30 (s, NH); 13C-NMR (75 MHz, (CD3)2CO), δ 17 (C30), 34.2 (C26, C27, C28, C29), 34.9 (C2, C3), 36.5 (C1, C4), 127 (C12), 145.1 (C11), 198 (C19), 116.5, 123.1, 124, 124.9, 122.1, 122.5, 123.2, 129.9, 132.5, 133.8, 142.8 (Car)。
公知手順(Boehm M et al., J Med Chem, 37:2930 (1994)参照)により、20gの2,5-ジクロロ-2,5-ジメチルヘキサン(化合物2)、26.37gのプロピルベンゼン、及び0.2gの塩化アルミニウムを用いて1,2,3,4-テトラヒドロ-1,1,4,4-テトラメチル-6-プロピルナフタレン(化合物8)を合成し、9%の収率を得た。特性はBoehmらの記載と一致した。
公知手順(Wood TF et al., J Org Chem, 28(9):2248 (1963)参照)を用いて7-アセチル-6-プロピル-1,1,4,4-テトラメチルテトラリン(化合物9)を合成し、20%の収率を得た。
1H NMRを用いて生成物を同定した。
それぞれ化合物5について本明細書で述べた手順に従ってE,Z-4-[2-メチル-2-(6-プロピル-1,1,4,4-テトラメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタ-7-イル)-ビニル]-安息香酸エチル(化合物10)を合成した。結果混合物を仕上げ、シリカゲルと10%のEtOAc/90%のヘキサンを用いてクロマトグラフ処理して化合物10を含有する混合物を無色油として収率16%で得た。1H-NMRを用いて生成物を特徴づけた。
6M KOH水溶液中でのエチル化合物10の加水分解によって、E-4-[2-メチル-2-(6-プロピル-1,1,4,4-テトラメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタ-7-イル)-ビニル]-安息香酸(化合物11)を合成し、収率80%を得た。1H NMRを用いて生成物の同一性を確認した(Frickel F et al., 米国特許第4,578,498号参照)。これにより、HPLCは以下の材料と装備を含んだ:オクタデシルシラン4.6×250mmカラム、CH3OH/H2O 85:15、UV 310nm、流速1.0mL/分、及びtr=24分。
本明細書の手順に従ってE-4-[2-メチル-2-(6-プロピル-1,1,4,4-テトラメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタ-7-イル)-ビニル]-安息香酸4-ヒドロキシアニリド(化合物12)を合成した。結果混合物を仕上げ、エーテルで抽出し、食塩水で洗浄し、MgSO4上で乾燥させた。Et2Oの除去後、シリカゲル及び50% EtOAcと50% ヘキサンの混合物を用いて残留物をクロマトグラフ処理してE,Z-4-[2-メチル-2-(6-プロピル-1,1,4,4-テトラメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタ-7-イル)-ビニル]-安息香酸4-ヒドロキシアニリドの混合物を無色油として得た。この油をメタノールに懸濁させて無色の針晶を生じさせた。50% EtOH/50%の水から再結晶させて白色沈殿を収率30%で得、オクタデシルシラン212×250mmカラムを用いて分取用HPLCで精製した。オクタデシルシラン4.6×250mmカラム、85:15のCH3OH/水、310nmのUV、1.0mL/分の流速、及びtr=21分を含む分析用HPLCも使用した。COSY、HMQC、及びNOEの差異(diff)を用いて構造を確認した。特徴づけデータは以下のとおりである:1H-NMR (300 MHz, (CD3)2CO), 0.93 (t, 3H, J = 7.4 Hz), δ 1.27 (s, 6H), 1.28 (s, 6H), 1.62 (m, 2H), 1.69 (s, 4H), 2.21 (d, 3H), 2.59 (m, 2H), 6.40 (s, 1H), 7.13 (s, 1H), 7.2 (s, 1H), 7.24 (AB, 4H, JAB = 8.69 Hz), 7.76 (AB, 4H, JAB = 8.32 Hz), 8.23 (s, OH), 9.35 (s, NH)。
4-ヒドロキシフェニル酢酸(化合物13)と4-メトキシフェニル酢酸(化合物19)はAldrich Chemical Company of Milwaukee, WIから商業的に入手可能である。
4-ヒドロキシフェニル酢酸メチル(化合物14)を以下のとおりに調製した。化合物13をメタノール中、硫酸でエステル化して定量的収率で化合物14を得た。生成物の特性はKuchar M et al., Collection of Czechoslovak Chemical Communications, 42:1723 (1977)で報告されている当該特性と一致した。
3gの化合物14をDMF中2.36gの2-ブロモプロパンと1.66gの炭酸カリウムで処理して60%の収率60%で4-イソプロポキシフェニル酢酸メチル(化合物15)を合成した。1H-NMR (300 MHz, CDCl3), δ 1.30 (d, 6H, J = 6 Hz), 3.54 (s, 2H), 3.66 (s, 3H), 4.50 (sept. 1H, J = 6 Hz), 7.00 (AB, 4H, JAB = 8.78 Hz)。
DMF中2.47gの化合物14を3.82gの臭化ベンジルと4.11gの炭酸カリウムで処理して48%の収率で4-ベンジルオキシフェニル酢酸メチル(化合物16)を合成した。特徴づけデータは以下のとおり:1H-NMR (300 MHz, CDCl3), δ 3.55 (s, 2H), 3.67 (s, 3H), 5.04 (s, 2H), 7.05 (AB, 4H, JAB = 8.6 Hz), 7.28-7.43 (m, 5H)。
化合物15を6MのKOH水溶液中で加水分解して、90%のヘキサン/10%の酢酸エチルから無色の針晶として化合物17を92%の収率で得ることによって、4-イソプロポキシフェニル酢酸(化合物17)を合成した。その特性は、G Solladie et al., Tetrahedron, 59:3315 (2003)で報告されている当該特性と一致した。
【0031】
一般的方法はPCT公開第WO/99/02509号(1999)(参照によって本明細書に組み込まれる)に開示されており、この方法により通常の変更を加えて以下の化合物を調製しうる:
E-4-[2-メチル-2-(1,1,4,4-テトラメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタ-7-イル)-ビニル]-フェニル-2'-(4'メトキシフェニル)-1'-エタノン(化合物20)、
E-4-[2-メチル-2-(1,1,4,4-テトラメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタ-7-イル)-ビニル]-フェニル-2'-(4'-イソプロポキシフェニル)-1'-エタノン(化合物21)、及び、
E-4-[2-メチル-2-(1,1,4,4-テトラメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタ-7-イル)-ビニル]-フェニル-2'-(4'-ベンジルオキシフェニル)-1'-エタノン(化合物22)。
乾燥テトラヒドロフラン(“THF”)中の1.25当量の4-置換フェニル酢酸を撹拌しながらゆっくり2Mのリチウムジイソプロピルアミド(THF中)2.45当量に室温で加えた。反応混合物を室温で1.5時間撹拌してから撹拌しながらゆっくり1.0当量の化合物5の溶液(THF中)に室温で加えた。反応を室温で一晩撹拌してから撹拌しながらゆっくり6Mの塩酸に室温で加えた。有機相を分け、1.2Mの炭酸ナトリウム水溶液と水で洗浄してから1/5の体積に濃縮した。この熱溶液を5体積のイソプロパノールで希釈した。混合物を0℃に冷却し、生成物をろ過で収集し、冷イソプロパノールで洗浄して化合物20を無色の針晶の形で(酢酸から)30%の収率で得た。構造をCOSYとHMQCで確認した。オクタデシルシラン4.6×250mmカラム、CH3OH/水 85:15、UV 310nm、流速1.0mL/分及びtr=39分を用いるHPLC:1H-NMR (400 MHz, (CD3)2SO), δ 1.23 (s, 6H), 1.27 (s, 6H), 1.63 (s, 4H), 2.24 (s, 3H), 3.70 (s, 3H), 4.29 (s, 2H), 6.84 (s, 1H), 7.02 (AB, 4H, JAB = 8.69 Hz), 7.31 (s, 2H), 7.46 (s, 1H), 7.78 (AB, 4H, JAB = 8.32 Hz); 13C-NMR (75 MHz, (CD3)2SO), δ 18 (C31), 32.2 (C27, C28, C29, C30), 34.2 (C2, C3), 35 (C1, C4), 44.1 (C20), 55.7 (C32), 125.4 (C12), 158 (C11), 197 (C19), 114.2, 123.8, 124.2, 127, 127.5, 128.7, 129.4, 130.9, 134.4, 139.8, 140.3, 143, 144.2, 144.6 (Car)。
酢酸から無色の針晶として化合物21を収率43%で得た。HPLCがtr=49分にて同一性を確証した(オクタデシルシラン4.6×250mmカラム、CH3OH/水 85:15、UV 310nm及び流速1.0mL/分):1H-NMR (400 MHz, (CD3)2SO), δ 1.21 (d, 6H, J = 6 Hz), 1.23 (s, 6H), 1.26 (s, 6H), 2.25 (s, 3H), 4.22 (s, 2H), 4.51 (sept. 1H, J = 6 Hz), 6.84 (s, 1H), 6.98 (AB, 4H, J = 8.67 Hz), 7.29 (s, 2H), 7.49 (s, 1H), 7.75 (AB, 4H, J = 8.42 Hz); 13C-NMR (75 MHz, (CD3)2SO), δ 17.9 (C31), 32.1 (C27, C28, C29, C30, C33, C34), 34.8 (C2, C3), 35.9 (C1, C4), 44.9 (C20), 70.2 (C32), 127 (C12), 157.8 (C11), 197 (C19), 116.5, 124.2, 124.8, 126.6, 127.3, 129.3, 130.1, 131.4, 135.5, 140.7, 141.6, 144.1, 145.1, 145.3 (Car)。
酢酸から白色粉末として化合物22を収率60%で得た。HPLC(オクタデシルシラン4.6×250mmカラム、CH3OH/水 85:15、UV 310nm及び流速1.0mL/分、tr=66分):1H-NMR (400 MHz, (CD3)2SO), δ 1.18 (s, 6H), 1.21 (s, 6H), 1.58 (s, 4H), 2.18 (s, 3H), 4.23 (s, 2H), 5.00 (s 2H), 6.80 (s, 1H), 7.00 (AB, 4H, JAB = 8.42 Hz), 7.25-7.42 (m, 8Hの合計), 7.72 (AB, 4H, JAB = 8.23 Hz); 13C-NMR (75 MHz, (CD3)2SO), δ 17 (C38), 31.9 (C34, C35, C36, C37), 34.2 (C2, C3), 34.2 (C2, C3), 34.9 (C1, C4), 44.1 (C20), 69 (C27), 123.9 (C12), 157.3 (C11), 197.9 (C19), 115.1, 123.5, 125.9, 126.8, 127.6, 127.9, 128, 128.7, 128.9, 129.5, 130.9, 134.3, 137.4, 139.7, 140.4, 143, 144.2, 144.5 (Car)。
【0032】
20mLの乾燥CH2Cl2中の0.46g(0.965mmol)の化合物21の溶液を-20℃で撹拌することによってE-4-[2-メチル-2-(1,1,4,4-テトラメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタ-7-イル)-ビニル]-フェニル-2'-(4'-ヒドロキシフェニル)-1'-エタノン(化合物23)を合成した。この溶液に0.28g(2.413mmol)のBCl3を滴加した。反応混合物を室温に戻して30分撹拌した。混合物を氷水に注ぎ、NaClで飽和させて30mLのジエチルエーテルで抽出した。有機層をNa2SO4上で乾燥させ、5mLに濃縮した。生じた沈殿物をろ別し、乾燥させて化合物23を酢酸から無色の針晶として得た。化合物23の構造をCOSY、HMQC及びNOEの差異を用いて確認した。
HPLC(オクタデシルシラン4.6×250mmカラム、CH3OH/水 85:15、UV 310nm、流速1.0mL/分、tr=22分);UVmax (DMSO), 322.5 (52 100); 1H-NMR (400 MHz, (CD3)2CO), δ 1.29 (s, 6H), 1.33 (s, 6H), 1.72 (s, 4H), 2.31 (s, 3H), 4.26 (s, 2H), 6.90 (s, 1H), 6.98 (AB, 4H, JAB = 8.50 Hz), 7.35 (s, 2H), 7.56 (s, 1H), 7.81 (AB, 4H, JAB = 8.34 Hz); OHが溶媒由来の水と交換する;13C-NMR (75 MHz, (CD3)2CO), δ 18.1 (C31), 32.3 (C27, C28, C29, C30), 35.2 (C2, C3), 36.2 (C1, C4), 45.3 (C20), 127.2 (C12), 157.2 (C11), 198 (C19), 116.3, 124.6, 125.2, 126.8, 127.7, 129.7, 130.3, 131.7, 135.9, 139.9, 141.9, 144.2, 145.3, 145.7 (Car)。
【0033】
【化12】
【0034】
ブロモ化合物24の構造を上に示し、公知手順で合成した(See Bollenback GN et al., J Am Chem Soc, 77:3310 (1955)参照)。
【0035】
【化13】
【0036】
化合物23と化合物24から化合物25を合成した。まず酸化銀と反応させてから炭酸カリウム及びメタノールと反応させた。次に、反応生成物をメタノールと水の混合物中の水酸化ナトリウムで処理して化合物25を得た。
以下のように2,3,4,6-テトラ-O-(メトキシメチル)-D-グルコン酸-δ-ラクトン(化合物26.2)を合成した。アルゴン雰囲気下で炎乾燥させたフラスコに7.38g(41.4mmol)のδ-グルコノラクトン(化合物26.1)を400mLのCH2Cl2と混ぜた。化合物26.1は、Sigma-Aldrich, St. Louis, MOから入手可能である。この懸濁液を氷浴で冷却したらすぐに、ジイソプロピルエチルアミン(57.6mL,331mmol)を滴加した。次に、添加ロートでクロロメチルメチルエーテル(50g,621mmol)を慎重に加えた。反応容器内に有意量の白色煙が生じた。固体のヨウ化テトラブチルアルミニウム(50g,134mmol)を加え、該溶液を室温に戻した。反応を暗所で48時間撹拌すると、溶液は徐々に赤色に変化した。容器を0℃に冷却後、NH4Cl飽和水溶液(75mL)を加えた。次に、混合物を食塩水で希釈し、混ぜ合わせた水層をCH2Cl2で抽出した(3×)。混ぜ合わせた有機層をMgSO4上で乾燥させ、ろ過かつ濃縮した。次に、固体をエーテルを用いて摩砕し(4×)、エーテルを濃縮した。結果として生じた油をシリカゲル上でクロマトグラフ処理(1:1 ヘキサン/酢酸エチル)して12.04g(収率83%)の清澄油を得た。[α]D 118.4 (c 2.15, CH2Cl2); IR (cm-1) 2948 (s), 2885 (s), 1757 (s), 1464 (m), 1443 (m), 1213 (s), 1150 (s), 1035 (s), 912 (m), 1H NMR (CDCl3) δ 3.36-3.42 (m, 12H), 3.77 (dd, 1H, J = 3.8, 11.3 Hz), 3.82 (dd, 1H, J = 2.8, 11.3 Hz), 3.99-4.05 (m, 2H), 4.29 (d, 1H, J = 6.6 Hz), 4.55-4.56 (m, 1H, 4.65 (s, 2H), 4.69-4.92 (m, 7H), 13C NMR (CDCl3) δ 55.42, 56.05, 56.11, 56.22, 66.12, 73.69, 74.77, 78.43, 96.56, 96.66, 96.78, 96.91, 97.13, 168.70; HRMS (ES) C14H26O10 (M+Na)の計算値377.1424, 実測値377.1408。
【0037】
ジメチルチタノセンCp2Ti(CH3)2(Petasis試薬)の調製:アルゴン雰囲気下で炎乾燥させたフラスコに二塩化チタノセン(14.63g,58.8mmol)と無水エーテル(300mL)を加え、10℃に冷却した。暗所で添加ロートにてメチルリチウム(100mL,140mmol,1.4M)を慎重に加えた。冷浴を除去し、赤色溶液を10分撹拌した。溶液を0℃に冷却し、氷水(25mL)を慎重に加えて未反応メチルリチウムをクエンチした。層を分け、水層をエーテルで抽出した(2×)。混ぜ合わせた有機層をアルゴン下Na2SO4上で1時間乾燥させ暗所で20℃にて濃縮して12.4gの橙色固体を得た。乾燥トルエン(100mL)を加え、この試薬を4℃で貯蔵し、特徴づけせずに使用した。
2,6-アンヒドロ-1-デオキシ-3,4,5,7-テトラ-O-(メトキシメチル)-D-ブルコ-ヘプタ-1-エニトール(化合物26.3)の調製:アルゴン雰囲気下で炎乾燥させたフラスコに糖ラクトン化合物26.2(10.05g,28.4mmol)を加え、添加ロートを介して乾燥トルエン(140mL)に溶かした。ジメチルチタノセン(12.4g,59mmol)のトルエン溶液を添加ロートで滴加して赤色溶液を得た。フラスコに還流冷却管を取り付けて70℃に加熱し、暗所で18時間撹拌した。結果として生じた黒色溶液を冷ましてヘキサン(約500mL)に注いだ。生じた沈殿物をCeliteでろ過した。上清を濃縮して赤色油を得、シリカゲル上でクロマトグラフ処理(4:1→2:1のヘキサン/酢酸エチル)して8.66g(収率87%)の黄色がかった油を得た。[α]D 46.8 (c 2.33, CH2Cl2); IR (cm-1) 2940 (m), 2895 (m), 1750 (w), 1440 (w), 1154 (s), 1032 (s), 918 (m), 1H NMR (DMK-d6) δ 3.31-3.37 (m, 12H), 3.64-3.71 (m, 2H), 3.78-3.83 (m, 2H), 3.88-3.89 (m, 1H) 4.12 (d, 1H, J = 5.4 Hz), 4.35 (s, 1H), 4.51 (s, 1H), 4.62 (s, 2H), 4.66-4.84 (m, 6H), 13C NMR (DMK-d6) δ 55.15, 55.87, 56.04, 56.19, 67.50, 75.42, 76.68, 77.36, 81.08, 93.43, 95.35, 97.23, 97.64, 97.81, 156.39; HRMS (ES) C15H28O9 (M+Na)の計算値375.1631、実測値375.1628。
2,6-アンヒドロ-1-デオキシ-1-[4-(ヒドロキシメチル)-フェニル]-3,4,5,7-テトラ-O-(メトキシメチル)-D-グリセロ-D-グロ-ヘプチトール(化合物26.4)の調製:アルゴン雰囲気下で炎乾燥させたフラスコに、乾燥THF(100mL)に溶かした環外オレフィン(化合物26.3)(3.75g,10.6mmol)を加えた。9-ボラビシクロ[3.3.1]ノナン(53.2mL,26.6mmol,0.5M)を添加ロートで加えた。フラスコに還流冷却管を取り付け、75〜80℃に加熱し、4.5時間還流させた。混合物を室温に冷ましてからK3PO4(10mL,3M)を加え、反応を10分撹拌した。DMF(100mL)に溶かしたp-ブロモベンジルアルコール(3.98g,21.3mmol)とPdCl2(dppf)(0.686g,0.85mmol)を添加ロートで加えた。反応を18時間撹拌した。反応を水とエーテルで希釈した。層を分けた。有機層を水と食塩水で洗浄した。混ぜ合わせた水層をエーテルで抽出した(3×)。有機層を混ぜ合わせてMgSO4上で乾燥させ、濃縮し、クロマトグラフ処理(1:1→1:2のヘキサン/酢酸エチル)して3.29g(収率67%)の橙色油を得た。[α]D -26.2 (c 1.15, DMK); IR (cm-1) 3470 (w), 2932 (m), 2887 (m), 1692 (m), 1444 (w), 1150 (s), 1101 (s), 1024 (s), 918 (m); 1H NMR (DMK-d6) δ 2.60 (dd, 1H, J = 9.4, 14.4 Hz), 3.18-3.42 (m, 5H), 3.25 (s, 3H), 3.35 (s, 3H) 3.40 (s, 3H), 3.44 (s, 3H), 3.54-3.61 (m, 2H), 3.73 (dd, 1H, J = 1.8, 11.3 Hz), 4.51-4.58 (m, 4H), 4.70 (d, 1H, J = 6.5 Hz), 4.77-4.85 (m, 4H), 4.93 (d, 1H, J = 6.5 Hz), 7.25 (s, 4H); 13C NMR (DMK-d6) δ 38.35, 55.04, 56.45, 56.55, 64.44, 64.57, 67.42, 77.97, 79.07, 80.32, 81.63, 84.83, 97.20, 99.01, 99.19, 99.32, 127.15, 130.11, 138.75, 141.03; HRMS (ES) Ca22H36O10 (M+Na)の計算値483.2206、実測値483.2188。
2,6-アンヒドロ-1-デオキシ-1-[4-(メトキシメチル)フェニル)-3,4,5,7-テトラ-O-(メトキシメチル)-D-グリセロ-D-グロ-ヘプチトール(化合物26.5)の調製:アルゴン雰囲気下で炎乾燥させたフラスコに、乾燥THF(100mL)に溶かした化合物26.4(2.44g,5.3mmol)(C-グリコシドベンジルアルコール)を加えた。フラスコに水素化ナトリウム(0.63g,26.5mmol)を加え、該懸濁液を1.5時間撹拌した。THF(10mL)に溶かしたヨードメタン(4.5g,31.7mmol)をカニューレで反応混合物に挿入し、反応を18時間撹拌した。氷浴で冷却後、水を慎重に加えて過剰のNaHをクエンチした。混合物をエーテルで抽出し(3×)、有機層を混ぜ合わせ、洗浄し、MgSO4上で乾燥させ、濃縮してからクロマトグラフ処理(1:1→1:2のヘキサン/酢酸エチル)して2.37g(収率94%)の清澄油を得た。[α]D -27.0 (c 4.70, DMK); IR(cm-1) 2981 (s), 2883 (s), 1701 (w), 1513 (m), 1444 (m), 1378 (m), 1301 (m), 1158 (s), 1105 (s), 1028 (s), 918 (s); 1H NMR (DMK-d6) δ 2.61 (dd, 1H, J = 9.4, 14.4 Hz), 3.19-3.42 (m, 5H), 3.24 (s, 3H), 3.30 (s, 3H) 3.35 (s, 3H), 3.40 (s, 3H), 3.44 (s, 3H), 3.54-3.64 (m, 2H), 3.73 (dd, 1H, J = 2.6, 13.5 Hz), 4.38 (s, 2H), 4.50 (d, 1H, J = 6.4 Hz), 4.54 (d, 1H, J = 6.4 Hz), 4.70 (d, 1H, J = 6.5 Hz), 4.77-4.85 (m, 4H), 4.93 (d, 1H, J = 6.5 Hz), 7.21 (d, 2H, J = 8.0 Hz), 7.28 (d, 2H, J = 8.0 Hz); 13C NMR (DMK-d6) δ 33.39, 55.05, 56.47, 56.49, 56.57, 57.97, 67.46, 74.84, 78.00, 79.10, 80.23, 81.66, 84.86, 97.20, 99.01, 99.21, 99.32, 128.15, 130.19, 137.23, 139.45; HRMS (ES) Ca23H38O10 (M+Na)の計算値497.2363、実測値497.2384。
2,6-アンヒドロ-7-デオキシ-7-[4-(メトキシメチル)フェニル]-3,4,5-トリ-O-アセチル-L-グリセロ-L-グロ-ヘプチノン酸(heptinoic acid)メチルエステル(化合物26.6)の調製:MOM-保護グルコシド化合物26.5(2.43g,5.12mmol)をメタノール(500mL)に溶かして室温でフラスコに入れた。HCl水溶液(6N,26mL)を加え、溶液を18時間撹拌した。次に、混合物を濃縮乾固させた。別のフラスコで、KBr(2.42g,20.38mmol)とTEMPO(3.19g,20.41mmol)を飽和NaHCO3溶液(400mL)に加えて20分0℃で撹拌した。NaOCl水溶液(11.2mL,1.6〜2.0M)を加えて混合物を10分撹拌した。脱保護した糖(上述したように、MOM-保護糖化合物26.5をメタノール中でHClと反応させて生成した)を飽和NaHCO3溶液(100mL)に溶かし、TEMPO混合物を含有するフラスコに添加した。この新しい全混合物を45分0℃で撹拌した。反応をEtOH(50mL)でクエンチし、反応混合物を分液ロートでエーテルにて洗浄した。水層を濃縮乾固させ、残留固体を徹底的にメタノールと摩砕した。メタノールを濃縮し、乾燥させた。乾燥残留物をDMF(180mL)に懸濁させた。DMF(10mL)に溶かしたヨードメタン(6.4g)を加え、反応混合物をアルゴン下で室温にて20時間撹拌した。反応混合物に無水酢酸(40mL)、ピリジン(20mL)、及びDMAP(15mg)を補充して18時間撹拌した。反応混合物を水で希釈し、酢酸エチルで抽出した(3×)。有機層を水と食塩水で洗浄し、結果物をMgSO4上で乾燥させ、濃縮し、クロマトグラフ処理(2:1→1:1のヘキサン/酢酸エチル)して1.90g(収率82%)の化合物26.6を清澄油として得、放置すると凝固した。融点=84〜86℃。[α]D -13.04 (c 1.15, DMK); IR (cm-1) 2956 (w), 2818 (w), 1750 (s), 1440 (m), 1370 (m), 1211 (s), 1105 (m), 1028 (m); 1H NMR DMK-d6) δ 1.94 (s, 3H), 1.94 (s, 3H), 1.95 (s, 3H), 2.74-2.81 (m, 1H), 2.90 (dd, 1H, J = 3.4, 7.3 Hz), 3.30 (s, 3H), 3.65 (s, 3H), 3.94-3.99 (m, 1H), 4.18 (d, 1H, J = 9.8 Hz), 4.38 (s, 2H), 4.90 (t, 1H, J = 9.8 Hz), 5.05 (t, 1H, J = 9.8 Hz), 5.29 (t, 1H, J = 9.8 Hz), 7.22 (s, 4H); 13C NMR (DMK-d6) δ 20.39, 20.52, 20.60, 38.12, 52.67, 58.03, 70.62, 72.53, 74.09, 74.73, 76.41, 78.62, 128.25, 130.16, 137.43, 137.76, 168.40, 169.89, 170.07, 170.30; HRMS (ES) Ca2H28O10 (M+Na)の計算値475.1580、実測値475.1577。
2,6-アンヒドロ-7-デオキシ-7-[4-(ブロモメチル)フェニル]-3,4,5-トリ-O-アセチル-L-グリセロ-L-グロ-ヘプチノン酸メチルエステル(化合物26.7)の調製:CaSO4乾燥管を備えた乾燥フラスコに、0℃の酢酸中の30% HBr(5mL,25mmol)と共にC-グルクロニドメチルエーテル化合物26.6(462mg,1.02mmol)を加えた。混合物を30分0℃で撹拌し、室温に戻して18時間撹拌した。混合物を塩化メチレンで希釈し、慎重に水及びNaHCO3の飽和溶液で洗浄した。有機層をMgSO4上で乾燥させ、濃縮し、クロマトグラフ処理(2:1→1:1のヘキサン/酢酸エチル)して440mg(収率86%)の白色泡を得、エーテルを用いて結晶化した:融点=116〜117℃。[α]D -12.03 (c 5.57, DMK); IR (cm-1) 3026 (w), 2952 (w), 1754 (s), 1440 (m), 1370 (m), 1215 (s), 1101 (m), 1036 (m); 1H NMR DMK-d6) δ 1.93 (s, 3H), 1.94 (s, 3H), 1.95 (s, 3H), 2.76-2.83 (m, 1H), 2.92 (dd, 1H, J = 3.5, 7.3 Hz), 3.64 (s, 3H), 3.96-3.99 (m, 1H), 4.20 (d, 1H, J = 9.7 Hz), 4.62 (s, 2H), 4.90 (t, 1H, J = 9.7 Hz), 5.05 (t, 1H, J = 9.7 Hz), 5.29 (t, 1H, J = 9.7 Hz), 7.25 (d, 2H, J = 8.2 Hz), 7.36 (d, 2H, J = 8.2 Hz); 13C NMR (DMK-d6) δ 20.40, 20.52, 20.63, 34.37, 38.12, 52.69, 70.58, 72.52, 74.04, 76.35, 78.43, 129.88, 130.68, 137.26, 138.67, 168.39, 169.91, 170.09, 170.29; HRMS (ES) C21H25BrO9 (M+Na)の計算値523.0580、実測値523.0602。
【0038】
2,6-アンヒドロ-1-デオキシ-1-[4-(メトキシメチル)フェニル]-3,4,5,7-テトラ-O-アセチル-D-グリセロ-D-ガロ-ヘプチトール(化合物26.8)の調製:MOM-保護グルコシド化合物26.5(0.643g,1.35mmol)をメタノール(34mL)に溶かし、室温でフラスコに入れた。HCl水溶液(6N,6.7mL)を加え、溶液を18時間撹拌した。混合物を濃縮乾固させた。このペーストに無水酢酸(4mL)とピリジン(3mL)を触媒量のDMAPと共に加え、混合物を室温で18時間撹拌した。反応混合物を水で希釈し、酢酸エチルで抽出した(3×)。有機層を混ぜ合わせて水と食塩水で洗浄し、MgSO4上で乾燥させ、ろ過し、濃縮し、クロマトグラフ処理(1:1のヘキサン/酢酸エチル)して570mg(収率90%)の化合物26.8を白色固体(融点=120〜122℃)の形で得た。[α]D -4.0 (c 0.78, DMK); IR (cm-1) 2940 (w), 2862 (w), 1750 (s), 1436 (w), 1370 (m), 1224 (s), 1105 (m), 1032 (m); 1H NMR CDCl3 δ 1.96-2.02 (m, 12H), 2.78 (s, 2H, J = 5.8 Hz), 3.36 (s, 3H), 3.52-3.57 (m, 2H), 4.02 (dd, 1H, J = 2.3, 12.2 Hz), 4.20 (dd, 1H, J = 5.3, 12.2 Hz), 4.40 (s, 2H), 4.92 (t, 1H, J = 9.6 Hz), 5.03 (t, 1H, J = 9.6 Hz), 5.15 (t, 1H, J = 9.6 Hz), 7.16 (d, 2H, J = 8.0 Hz), 7.23 (d, 2H, J = 8.0 Hz); 13C NMR (DMK-d6) δ 20.55, 20.57, 20.65, 38.08, 58.02, 63.05, 69.70, 72.81, 74.76, 74.86, 76.05, 78.60, 128.20, 130.21, 137,65, 137.75, 170.04, 170.16, 170.37, 170.59; HRMS (ES) C23H30O10 (M+Na)の計算値489.1737、実測値489.1727。
【0039】
2,6-アンヒドロ-1-デオキシ-[4-(ブロモメチル)フェニル]-3,4,5,7-テトラ-O-アセチル-1)-グリセロ-D-グロ-ヘプチトール(化合物26.9)の調製:乾燥管を備えた乾燥フラスコに、C-グリコシドメチルエーテル化合物26.8(0.54g,1.16mmol)を0℃の酢酸中の30% HBr(5mL,25mmol)と共に加えた。混合物を30分0℃で撹拌した。混合物を室温で18時間撹拌した。混合物を塩化メチレンで希釈し、慎重に水と飽和NaHCO3溶液を加えた。有機層をMgSO4上で乾燥させ、濃縮し、クロマトグラフ処理(2:1→1:1のヘキサン/酢酸エチル)して593mg(収率97%)の化合物26.9を白色固体(融点=141〜142℃)として得た。[α]D -4.67 (c 2.57, DMK); IR (cm-1) 2993 (w), 2952 (w), 1754 (s), 1440 (w), 1374 (m), 1224 (s), 1105 (w), 1052 (m); 1H NMR (DMK-d6) δ 1.92-1.98 (m, 12H), 2.72 (dd, 1H, J = 7.3, 8.6 Hz), 2.88 (dd, 1H, J = 3.2, 7.3 Hz), 3.77-3.85 (m, 2H), 4.00 (dd, 1H, J = 2.4, 6.1 Hz), 4.21 (dd, 1H, J = 5.9, 6.1 Hz), 4.63 (s, 2H), 4.86 (t, 1H, J = 9.6 Hz), 4.97 (t, 1H, J = 9.6 Hz), 5.22 (t, 111, J = 9.6 Hz), 7.25 (d, 2H, J = 8.2 Hz), 7.37 (d, 2H, J = 8.2 Hz); 13C NMR (DMK-d6) δ 20.49, 20.60, 34.32, 38.07, 63.03, 69.73, 72.82, 74.85, 76.07, 78.40, 129.72, 130.68, 137.12, 138.92, 169.97, 170.10, 170.30, 170.52; HRMS (ES) C22H27BrO9 (M+Na)の計算値537.0736、実測値537.0724。
アルデヒド化合物27の調製(図8参照):乾燥THF中のエチルエステル化合物5の溶液を-78℃に冷却した。アルゴン下の乾燥THF中のDIBAL(1当量)をアルゴン下で反応に加えて4時間撹拌した。反応混合物を室温に戻して18時間撹拌した。減圧下でTHF溶媒を除去した。残留物を酢酸エチルと2N HClに分配した。酢酸エチル層を食塩水で洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、ろ過かつ濃縮した。溶媒を除去した。結果生成物を標準的な精製法で精製してアルデヒド化合物27を得た。
アルデヒド化合物27からtert-ブチル-ジメチルシリルシアノヒドリン(化合物28)の調製:アルゴン雰囲気下で炎乾燥させたフラスコに乾燥CH2Cl2(50mL)中の化合物27(3.62mmol)の混合物を加えた。触媒量のEt3N(0.1mL)を添加した。CH2Cl2(10mL)に溶かしたtert-ブチルジメチルシリルシアニド(1.0g.7.08 mmol)をカニューレで加えた。反応を20時間撹拌した。次に、溶液を濃縮し、クロマトグラフ処理し(95:5のヘキサン/酢酸エチル)、アルゴン下、Na2SO4上で乾燥させ、一晩真空に供して化合物28を得た。
【0040】
化合物29の調製:アルゴン雰囲気下で炎乾燥させたフラスコにTHF(40mL)をLiHMDS(ヘキサン中1.0M,3.8mL,3.8mmol)と共に加えた。混合物を-78℃に冷却した。THF(15mL)中の化合物28(2.54mmol)をカニューレでフラスコに添加した。溶液を-78℃で30分撹拌した。THF(15mL)中の結晶性ブロモグルコロニド(化合物26.7)(2.78g,5.56mmol)をフラスコにカニューレで挿入し、混合物を-78℃で3時間撹拌した。フラスコを冷浴から除去し、1M NH4Cl(10mL)でクエンチした。混合物を酢酸エチルで抽出し(3×)、有機層を混ぜ合わせ、食塩水で洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、ろ過し、濃縮し、クロマトグラフ処理(2:1のヘキサン/酢酸エチル)してアルキル化生成物といくらかの回収化合物26.7を得た。アルキル化生成物を1%のTHF水溶液(200mL)に取り、0℃に冷却した。フッ化テトラ-n-ブチル-アンモニウム(309mg,1.18mmol)を加えると、溶液が暗くなった。この溶液を1時間撹拌した。反応混合物を水で希釈し、酢酸エチルで抽出した(3×)。有機層を混ぜ合わせ、食塩水で洗浄し、NaSO4上で乾燥させ、濃縮し、クロマトグラフ処理(2:1のヘキサン/酢酸エチル)して化合物29の保護されたメチルエステルを得た。
化合物29の保護されたメチルエステル(1.64mmol)をメタノール(500mL)に溶かしてフラスコに添加した。混合物を4℃に冷却した。炭酸カリウム(136mg,0.98mmol)をフラスコに加えて20時間撹拌した。25〜30℃で反応混合物を約200mLに濃縮した。メタノールで元の体積に調整後、1N KOH(14mL,14mmol)を加えた。4℃で20時間撹拌後、反応混合物を温め、室温で5時間撹拌した。反応混合物を0℃に冷却し、4N HClを用いてpHを7に調整した。反応混合物を25〜30℃で約100mLに濃縮し、1N HClを用いてpHを3に調整した。この懸濁液を酢酸エチルで抽出した。有機層を混ぜ合わせ、アルゴン下、Na2SO4上で2時間乾燥させ、かつ濃縮した。残留物を逆相シリカゲル上でクロマトグラフ処理(勾配 70:30→85:15のメタノール/水)して化合物29を得た。
【0041】
化合物30の調製:アルゴン雰囲気下で炎乾燥させたフラスコにTHF(10mL)とLiHMDS(ヘキサン中1.0M,0.78mL,0.78mmol)を加えた。混合物を-78℃に冷却した。THF(5mL)中の化合物28(0.51mmol)をカニューレでフラスコに添加した。この溶液を-78℃で30分撹拌した。THF(5mL)中の化合物26.9(277mg,0.53mmol)をカニューレでフラスコに挿入した。混合物を-78℃で2時間撹拌した。フラスコを冷浴から除去し、1M NH4Cl(1mL)でクエンチした。反応混合物を酢酸エチルで抽出し(3×)、有機層を混ぜ合わせ、食塩水で洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、ろ過し、濃縮し、クロマトグラフ処理(2:1のヘキサン/酢酸エチル)してアルキル化生成物といくらかの回収化合物26.9を得た。アルキル化生成物を1%のTHF水溶液(20mL)に取り、0℃に冷却した。TBAF(134mg,0.51mmol)を加えると溶液が暗くなった。暗溶液を室温に戻しながら一晩撹拌した。反応混合物を水で希釈し、酢酸エチルで抽出した(3×)。有機層を混ぜ合わせ、食塩水で洗浄し、NaSO4上で乾燥させ、ろ過し、濃縮し、クロマトグラフ処理(2:1のヘキサン/酢酸エチル)して化合物30の酢酸-保護類似体を得た。
化合物30(0.18mmol)の酢酸保護類似体をメタノール(75mL)に溶かしてフラスコに添加した。混合物を4℃に冷却した。炭酸カリウム(25mg,0.18mmol)をフラスコに加え、反応を20時間撹拌した。反応混合物を0℃に冷却し、pHを1N HClで5に調整した。混合物を酢酸エチルで抽出し、有機層を混ぜ合わせ、アルゴン下、Na2SO4上で2時間乾燥させ、濃縮した。残留物を逆相シリカゲル上でクロマトグラフ処理(勾配 70:30→85:15のメタノール/水)して化合物30を得た。
【0042】
Cheng H et al., J Med Chem, 48(2):645 (2005)に記載の手順に従い、図8Bに示した合成経路を参照して、定量的収率でグリコシルトリクロロアセトイミダート(acetimidate)(化合物31)を合成した。NMR 1H.
E-4-[2-メチル-2-(1,1,4,4-テトラメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタ-7-イル)-ビニル]-フェニル-2'-(4'-テトラ-O-アセチル-β-D-グルコピラノシルオキシフェニル)-1'-エタノン(化合物32)の調製:10mLの乾燥CH2Cl2中の0.14g(0.319mmol)の化合物23を0.236g(0.479mmol)の化合物31と4Åの分子ふるいに加えた。反応混合物を室温で30分撹拌した。-20℃に冷却後、7.85μL(0.0638mmol)のBF3Et2Oを加え、連続的に2時間撹拌した。分子ふるいをろ別し、ろ液を飽和NaHCO3と食塩水で洗浄してから無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、ろ過かつ濃縮した。結果として生じた油をシリカゲル上でクロマトグラフ処理(1:1のヘキサン/酢酸エチル)して0.07g(収率28%)の白色沈殿を得た。NMR 1H.
E-4-[2-メチル-2-(1,1,4,4-テトラメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタ-7-イル)-ビニル]-フェニル-2'-(4'-β-D-グルコピラノシルオキシフェニル)-1'-エタノン(化合物33)の調製:5mLのメタノール中0.070g(0.091mmol)の化合物32の溶液に0.126g(0.91mmol)のK2CO3を加えた。反応混合物を18時間撹拌した。反応混合物を濃縮し;中身を酢酸エチルに溶かし、水と食塩水で洗浄し、MgSO4上で乾燥させ、濃縮乾固させて0.018g(収率33%)の白色沈殿を得た。NMR 1H.
【0043】
〔生物活性〕
方法:
核レチノイド受容体(RAR/RXR)結合:in vitroリガンド結合アッセイを用いて、RARα、RARβ及びRARγへの結合についてレチノイドと[3H]-全-トランス-RAの競合、並びにRXRγへの結合についてレチノイドと[3H]-9-シス-RAの競合を決定した(Clagett-Dame et al.,“大腸菌及び昆虫細胞表現系からのレチノイド受容体の生成及び特徴づけ方法(Methods for generating and characterizing retinoid receptors from E. coli and insect cell expression systems)”, Meth. Enzymol., 282:13-14 (1997)参照)。組換えヒトRARαを大腸菌内で融合タンパク質として発現させた(Repa JJ et al.,“全-トランスレチノールはレチノイン酸受容体のリガンドである(All-trans retinol is a ligand for the retinoic acid receptors)”, Proc Natl Acad Sci USA, 90:7293-7297 (1993)参照)。ヒトRARγ(Robarge MJ et al.,“レチノイドO-グルクロニドのN-連結類似体:潜在的な癌の化学的予防-化学療法薬(N-linked abalogs of retinoid O-glucuronides: Potential cancer chemopreventive-chemotherapeutic agents)”, Bioorg Med Chem Lett, 4(17):2117-2122 (1994)参照)、マウスRARβ(Repa JJ et al.,“全-トランス3,4-ジデヒドロレチノイン酸はひな鳥のニューロン発生の支援における全-トランスレチノイン酸に相当する(All-trans 3,4-didehydroretinoic acid equals all-trans retinoic acid in support of chick neuronal development)”, FASEB J, 10:1078-1084 (1996)参照)及びマウスRXRγ(Munder M et al.,“ビタミンD受容体によるDNA配列認識を可能にするブタの腸付属因子の同定(Identification of porcine intestinal accessory factor that enables DNA sequence recognition by vitamin D receptor)”, Proc Natl Acad Sci USA, 92:2795-2799 (1995)参照)タンパク質を、昆虫細胞内で、バキュロウィルス発現ベクターによる感染によって発現させた後、核抽出物を調製する。競合リガンドの濃度上昇がない場合とある場合で放射標識リガンドを受容体含有抽出物に添加後、ヒドロキシルアパタイト(HAP)アッセイを用いて、受容体に結合したリガンドを溶液中で自由なリガンドから分けた。
【0044】
細胞増殖の阻害及びTUNELアッセイ:MCF-7乳癌細胞を文献(Chapman JS et al.,“生体内では4-HPRのatRAへの加水分解が起こるがレチンアミンド-誘発アポトーシスには必要ない(Hydrolysis of 4-HPR to atRA occurs in vivo but is not required for retinamide-induced apoptosis)”, Arch Biochem Biophys, 419:234-243 (2003))の記載どおりに維持した。12-ウェルプレートに50,000細胞/ウェルで細胞を蒔いた。ウェルに可変量のレチノイド化合物を与えた。細胞収集時、ヨウ化プロピジウムを添加した。代謝的に活性な細胞による切断によって蛍光生成物を生じさせるフルオレッセインジアセテートを添加後、半分の細胞を用いて生細胞と死細胞の数を決定した。残り半分の細胞を4%のパラホルムアルデヒドで固定し、アミノシラン被覆スライドガラス上で乾燥させ、TUNEL及びヨウ化プロピジウム染色を決定するために使用した。
【0045】
レポーター遺伝子アッセイ:F9-RARE-lacZ受容体細胞系(Wagner M et al., Development, 116:55-66 (1992)参照)を血清フリーL15培地で培養し(15,000細胞/ウェル);レチノイド化合物又はビヒクルを与え;文献(Chapman JS et al.,“生体内では4-HPRのatRAへの加水分解が起こるがレチンアミンド-誘発アポトーシスには必要ない(Hydrolysis of 4-HPR to atRA occurs in vivo but is not required for retinamide-induced apoptosis)”, Arch Biochem Biophys, 419:234-243 (2003))の記載どおりに化学発光についてアッセイした。Bradford MM, Anal Biochem, 72:248-254 (1976)に記載の方法を用いて全タンパク質についてデータを正規化した。
化合物の催奇形性の評価:雌ラット(Harlan Sprague-Dawley, Madison, WI:体重約200〜250g)を通常の実験室用ラットの固形飼料で養い、同系統の正常ラットと番わせた。妊娠ラットに、単一の経口大量瞬時投与量の、Wesson(登録商標)トウモロコシ油に溶かした化合物を与えた。各用量は60〜100μLだった。日9.25に該用量を与えた。胎日21.5の安楽死まで、各用量を標準的な実験室条件下で維持した。胎仔を除去した。心拍のある胎仔を生きていると決めた。生胎仔と死胎仔の数を記録した。再吸収部位の数も記録した。生胎仔を肉眼で見える外部の奇形について調べた。Wisconsin-Madison大学の動物管理委員会(University of Wisconsin-Madison animal care committee)で承認されているプロトコルに準拠して全動物を維持した。
【0046】
催奇形性データを下表1に示す。
表1.胎仔の奇形
*解剖時に生きていた胎仔だけ肉眼で見える奇形について数えた
**na=適用不可;解剖時に生きている胎仔なし
【0047】
〔結果〕
核RAR結合:レチノイン酸受容体α型、β型及びγ型と相互作用する化合物の能力を競合結合アッセイを用いて試験した。atRA(全-トランスレチノイン酸)は商業的に入手可能であり、Eastman Kodak (Rochester, NY)から得た。TTNPBは、すべてのRARへの結合について[3H]-全-トランス-RAとの競合で非常に有効であったが、4-HPRは弱い競合を示しただけだった(すなわち、3〜4桁小さい効力)。同様に、4-HPTTNPBと4-HBTTNPBは両方ともヒトRARへの[3H]atRA結合に対して不十分にしか競合しなかった(図9、10及び11参照)。
核RXR結合:レチノイドX受容体γ型と相互作用する化合物の能力を競合結合アッセイを用いて試験した。コントロールの合成RXRリガンド、LGD1069(Boehm MF et al.,“新規なレチノイドX受容体-選択性レチノイドの合成及び構造と活性の関係(Synthesis and structure-activitiy relationships of novel retinoid X receptor-selective retinoids)”, J Med Chem, 37:2930-2941 (1994)参照)は、RXRγへの結合について[3H]-9-シス-RAとの競合で非常に有効だった(Ki,36nM)。TTNPBは、10-6Mを超える濃度で非常に弱い競合を示したが(10-4.5Mで44%)、4-HPTTNPBと4-HPRは、高濃度でヒトRXRγへの結合について[3H]-9-シス-RAとほとんど競合を示さなかった(図12参照)。
【0048】
レポーター遺伝子アッセイ:F9細胞受容体アッセイは、atRA又は同様のトランス活性化ポテンシャルを有するいずれかの化合物への細胞の曝露に応じたβ-ガラクトシダーゼ活性を与えた。この活性は、RARに結合するリガンドから生じる。また、プロモーター/エンハンサーカセットの上流に位置するβRAREエンハンサー(ホルモン応答)要素に結合しているレチノイド受容体複合体によるβ-ガラクトシダーゼの活性化によっても生じる。atRAとTTNPBは両方とも当該アッセイで活性を非常に活発に生じさせた;両化合物はRARと十分に相互作用する(0.2〜5nMの範囲のKi値)。4-HPRは、レポーター系の活性化においてatRAとTTNPBより約1000倍効力が低かった。4-HPTTNPBは、レポーター系の活性化においてatRAとTTNPBより約100倍効力が低かった。4-HPTTNPBは、RARタンパク質への如何なる有意な結合も示さなかったので、レポーター遺伝子アッセイにおけるその活性は、4-HPTTNPBから、この系で活性なTTNPBへの部分的な加水分解に起因するかもしれない(図13)。
細胞増殖阻害アッセイ:アッセイの開始時点でMCF-7細胞を可変濃度のレチノイドで処理し、72時間培養中で維持後、生きている(生存能力のある)細胞と総(生+死)細胞の数を決定した。マイクロモル用量の4-HPRに対する細胞の反応は細胞死だったが、TTNPBは細胞死を引き起こすにはほとんど無効だった。濃度を増やした4-HPTTNPB又は4-HBTTNPBへの細胞の曝露は、72時間後に生細胞の総数の用量依存性減少をもたらした(図14参照)。
【0049】
DNAフラグメンテーション:TUNELアッセイ(DNAフラグメンテーションを測定する)を用いて、いずれの試験化合物についても細胞のアポトーシスを誘発するか決定した。ヨウ化プロピジウム染色(TNEL標識の非存在下)を用いて、壊死又は後期アポトーシスを示す細胞数を測定した。前述したように、4-HPRは、試験した濃度でMCF-7細胞の高度のアポトーシスを誘導した(Chapman JS et al.,“生体内では4-HPRのatRAへの加水分解が起こるがレチンアミンド-誘発アポトーシスには必要ない(Hydrolysis of 4-HPR to atRA occurs in vivo but is not required for retinamide-induced apoptosis)”, Arch Biochem Biophys, 419, pp. 234-243 (2003)参照)。対照的に、TTNPBは72時間後のDNAフラグメンテーションの誘導で無効だったが、最高用量の4-HPTTNPBと4-HBTTNPBは両方とも72時間後のアポトーシスの誘導で非常に活性だった(図15参照)。従って、当該様式のTTNPB分子の改変は、生物学的特徴及び活性の劇的かつ予想外の優れた改善をもたらした。
催奇形性試験:レチノイド化合物の投与によって発生が非常に混乱させられる時である胚形成の段階で妊娠ラットに単一の経口量の化合物を与えることによって、化合物が胎仔の奇形を誘発する能力を評価した。0.66μモル/kg用量の4-HPTTNPBを単一の経口大量瞬時投与量として3匹の妊娠ラットに胎日9.25で投与した。該投与は、すべての動物の妊娠の結果に深遠な作用をもたらした。非常に高いパーセンテージ(>80%)の胎仔が胎日21.5で死亡又は再吸収された(表1参照)。生きている数匹の動物はすべて大いに奇形していた(例えば、開いた神経管、口蓋裂及び人魚体奇形)。対照的に、同じモル濃度かつ妊娠中の正確に同じ時に投与した非加水分解性類似体である4-HBTTNPBは、如何なる同様の副作用も生じさせず、かつE21.5において、ビヒクル処理したコントロール胎仔と区別できない胎仔の生産をもたらした。死亡及び再吸収胎仔の数もビヒクル群と4-HBTTNPB群では差がなかった。従って、このような用量の4-HBTTNPBは観察できる如何なる催奇形性活性もなかった。
総じて、これらデータは、4-HPTTNPBはTTNPBと4-HPRが本来持っているいくつかの特徴を共有するが、4-HBTTNPBは非加水分解性の4-HPR類似体、4-HBRと非常に似ていることを示唆している。如何なる理論にも拘泥しないが、細胞培養におけるTTNPB様活性は、小量のTTNPBを遊離させる4-HPTTNPBの加水分解に起因するかもしれない。さらに、4-HPTTNPBは、元のままの4-HPTTNPB又はその未知の代謝物の活性を反映する(4-HPRと同様の活性を写す)細胞アポトーシスを誘導するかもしれない。このことは、同様の濃度でアポトーシスを誘導するが、TTNPBを遊離させられない非加水分解性類似体、4-HBTTNPBの活性によって支持される。最後に、催奇形作用の生成に及ぼす4-HPTTNPBの強力な作用及び4-HBTTNPBによるこのような作用の完全な非存在は、TTNPB様のin vivo活性は、小量のTTNPBを遊離させるための4-HPTTNPBの加水分解から生じるという仮説(sypothesis)を支持する。
【0050】
細胞培養:ヒト乳癌細胞系、MCF-7は米国菌培養収集所(American Type Culture Collection)(Mannassas, VA)から得られる。4g/Lのグルコース、3.7g/Lの炭酸水素ナトリウム及び10%のウシ胎児血清で補充したDMEM(Sigma-Aldrich)培地でMCF-7細胞を維持してよい。
細胞増殖阻害のアッセイ:フラスコ/組織培養皿のウェルに細胞を蒔く。24時間後、細胞に本発明の化合物を可変濃度で与え、72時間後に細胞をフラスコ/プレートから除去して数える。蛍光(フルオレッセインジアセテートによる細胞の染色のため)を用いて生細胞の数を数える。位相差顕微鏡を用いて細胞の総数を数える。
本明細書で述べた手順を用いて化合物12、23、25、29、30及び33の抗-増殖活性(MCF-7ヒト乳癌細胞培養モデルに対する)を決定した。データは、各化合物がMCF-7細胞の増殖を用量依存様式で阻害することを示すだろう。データは、各化合物の癌細胞の増殖を阻害するための有用性をも実証するだろう。
化合物23(4-HBTTNPB)、12(4-HPTTNPBのプロピル類似体)、25(4-HBTTNPBのO-連結型グルクロニド)、29(4-HBTTNPBのCH2-連結型グルクロニド)、30(4-HBTTNPBのCH2-連結型グルコース)及び33(4-HBTTNPBのO-連結型グルコース)を用いて、本明細書で述べたとおりに競合結合アッセイを行い、これらの結果を4-HPTTNPBについて得られた結果と比較して、競合結合研究を行うこともできる。
RARに対する競合結合:化合物12及び23は非常に弱くRARに結合するだけなので、4-HPTTNPBと類似する。化合物25、29、30及び33は、RARへの結合について、4-HPTTNPBよりわずかに良いだけである。
RXRに対する競合結合:化合物12及び23は4-HPTTNPBに類似するので、わずかな結合競合を示すだけである。化合物25、29、30及び33は、RXRに対する結合において4-HPTTNPBより良くない。
化合物23(4-HBTTNPB)、12(4-HPTTNPBのプロピル類似体)、25(4-HBTTNPBのO-連結型グルクロニド)、29(4-HBTTNPBのCH2-連結型グルクロニド)、30(4-HBTTNPBのCH2-連結型グルコース)及び33(4-HBTTNPBのO-連結型グルコース)を用いて、本明細書で述べたとおりにレポーター遺伝子アッセイ研究を行うこともできる。後述する4-HPTTNPBについて得られたデータと結果を比較することができる。
レポーター遺伝子アッセイ:化合物23は4-HPTTNPB(加水分解を受けられない)より活性が低いかもしれない。化合物12も4-HPTTNPBより低活性かもしれず、化合物12はRAR結合で不活性な代謝物を遊離させうる。化合物25、29、30及び33は4-HPTTNPBより低活性だろう。
化合物23(4-HBTTNPB)、12(4-HPTTNPBのプロピル類似体)、25(4-HBTTNPBのO-連結型グルクロニド)、29(4-HBTTNPBのCH2-連結型グルクロニド)、30(4-HBTTNPBのCH2-連結型グルコース)及び33(4-HBTTNPBのO-連結型グルコース)を用いて、本明細書で述べたとおりに細胞増殖阻害アッセイを行うことができる。後述する4-HPTTNPBに関するデータと結果を比較することができる。
細胞増殖阻害アッセイ:化合物23は活性が4-HPTTNPB(加水分解を受けられない)と同様である。化合物12は4-HPTTNPBより低活性かもしれず、化合物12は結合において不活性なRARである代謝物を遊離させうる。化合物25及び29は4-HPTTNPBより低活性であり、化合物30及び33は、活性が4-HPTTNPBと同様である。
化合物23(4-HBTTNPB)を用いて、本明細書で述べたとおりにDNAフラグメンテーション研究を行うことができる。DNAフラグメンテーション研究では、化合物23は4-HPTTNPBと同様の活性を有しる。化合物25及び29は4-HPTTNPBより低活性であり、化合物30及び33は活性が4-HPTTNPBと同様である。
化合物23(4-HBTTNPB)、25(4-HBTTNPBのO-連結型グルクロニド)、29(4-HBTTNPBのCH2-連結型グルクロニド)、30(4-HBTTNPBのCH2-連結型グルコース)及び33(4-HBTTNPBのO-連結型グルコース)を用いて、DMBA-誘発乳癌の阻害を調べる研究を行うことができる。化合物23、25、29、30及び33は活性であり、たとえあるとしてもほとんど毒性はないことを示す。
化合物23(4-HBTTNPB)、25(4-HBTTNPBのO-連結型グルクロニド)、29(4-HBTTNPBのCH2-連結型グルクロニド)、30(4-HBTTNPBのCH2-連結型グルコース)及び33(4-HBTTNPBのO-連結型グルコース)を用いて、催奇形の可能性を調べる研究を行うことができる。驚くべきことに、データは、化合物23、25、29、30及び33は、観察できる胚毒性をたとえあるとしてもほとんど持たないことを実証する。
本発明の化合物は、乳癌などの細胞の増殖性障害の治療に有用である。
本明細書で引用したすべての参考文献は、参照によって、本明細書で完全に述べたかのようにその全体がすべての目的のため明確に本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1A】本明細書で言及する種々の化合物の構造を示す。
【図1B】4-HBTTNPBの酸素連結型糖及びメチレン連結型糖の構造を示す。
【図2】TTNPBと4-HPTTNPBの合成の反応スキームを示す。
【図3】TTNPBのプロピル類似体と4-HPTTNPBの合成の反応スキームを示す。
【図4】4-HBTTNPBの合成の反応スキームを示す。
【図5】4-HBTTNPBの酸素連結型糖類似体の合成の反応スキームを示す。
【図6】4-HBTTNPBのCH2-連結型(メチレン-連結型)糖類似体の合成の反応スキームを示す。
【図7】4-HBTTNPBのCH2-連結型糖類似体の別の合成の反応スキームを示す。
【図8A】4-HBTTNPBのCH2-連結型糖類似体の別の合成の反応スキームを示す。
【図8B】4-HBTTNPBの別の酸素-連結型糖類似体の合成の反応スキームを示す。
【図9】競合結合アッセイで決定した場合のRARα受容体と相互作用する種々の化合物の能力を比較するグラフである。
【図10】競合結合アッセイで決定した場合のRARβ受容体と相互作用する種々の化合物の能力を比較するグラフである。
【図11】競合結合アッセイで決定した場合のRARγ受容体と相互作用する種々の化合物の能力を比較するグラフである。
【図12】競合結合アッセイを用いて決定した場合のRXRγ受容体と相互作用する化合物の能力を比較するグラフである。
【図13】F9遺伝子レポーターアッセイで得た結果のグラフであり、レチノイド濃度の対数の関数として相対発光量をプロットする。
【図14】細胞増殖阻害アッセイから得た結果のグラフであり、このアッセイでは、MCF-7細胞をレチノイドの濃度を変えて1回処理し、72時間後に細胞増殖を阻害する各化合物の相対効力を決定する。
【図15】単用量の種々のレチノイド化合物に72時間曝露後のMCF-7細胞における細胞アポトーシスを調べるためのTUNELアッセイを用いて得たデータを示すグラフである。
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔優先出願〕
米国特許法第120条によって、2006年6月30日出願の米国特許出願第60/695,564号に対し、その全開示に関して優先権の利益を主張する。
【0002】
〔関連特許及び関連同時係属出願〕
本発明は、米国特許第6,117,845号;第5,663,377号;第5,599,953号;第5,574,177号;及び第5,516,792号に関連し、これら特許は参照によって本明細書に組み込まれる。本発明は、2006年5月3日出願の同時係属米国特許出願第11/416,907号にも関連し、この出願も参照によって本明細書に組み込まれる。
【0003】
〔発明の分野〕
本発明分野は、5,5,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル)-1-プロペニル]安息香酸の類似体、その製造方法、並びに癌の予防及び治療で使うため等のその使用を包含する。
【0004】
〔発明の背景〕
乳癌は毎年数千人の女性の死亡原因である(A Snapshot of Breast Cancer, National Cancer Institute (August 2005)参照)。外科的措置が多くの女性の命を救っている。しかし、根治的及び部分的乳房切断は身体的及び感情的に衰弱させうる。化学療法と併用する外科的措置は、未だ患者を再発の可能性にさらしうる。
乳癌を治療及び/又は予防するための薬物及び他の療法(放射線、免疫療法及びワクチン等)の研究開発に大量の研究努力が向けられている。レチノイン酸はビタミンAの既知代謝物である。レチノイン酸とその特定の類似体は、正常な上皮組織の分化の維持に必要らしい。レチノイン酸の該類似体は、ビタミンA欠乏上皮組織におけるハムスター気管の異形成状態を逆転させうる(Newton et al., Cancer Res 40:3413-3425 (1980)参照)。レチノイン酸及びその特定のアミド類似体も化学療法薬として使うために研究されている(Moon et al., Cancer Res 39:1339-1346 (1979)参照)。他のレチノイン酸類似体、例えば酢酸レチニル、13-シス-レチノイン酸及びグルクロニド類似体も乳癌予防活性といった何らかの癌予防活性を示すことが分かっている(Hill DL et al., Ann Rev Nutrition, 12:161-181 (1992)参照)(Mehta RG et al., Oncology, 48:1505-1509 (1991)も参照されたい)。レチノイン酸のスチルベン誘導体は腫瘍学での使用に可能性のある薬剤として示唆されている(Simoni D et al.,“分化及びアポトーシスの強力な誘導物質としてのレチノイン酸と類似体:腫瘍学で前途有望な新しい化学的予防薬及び化学療法薬(Retinoic Acid and Analogs as Potent Inducers of Differentiation and Apoptosis: New Promising Chemopreventative and Chemotherapeutic Agents in Oncology)”, Pure Appl Chem, 73:1437-1444 (2001)参照)。レチノイン酸の芳香族類似体、例えば4-[(E)-2-(5,6,7,8-テトラヒドロ-5,5,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル)-1-プロペニル]安息香酸(“TTNPB”)もSimoniらによって開示された。
レチノイン酸(“RA”)の構造を以下に示す。
【0005】
【化1】
【0006】
レチノイド化合物は、増殖、分化及びアポトーシス等の種々多様な細胞プロセスの調節に関与する。レチノイド化合物は癌の化学療法薬として使うために研究されているが、望ましくない副作用の問題がある。アロチノイド(arotinoid)化合物は芳香族レチノイド化合物の1種である。アロチノイド化合物は高い生物活性を有するが、望ましくない毒性も与える。例えば、TTNPBの構造も以下に示す。
【0007】
【化2】
【0008】
しかし、毒性はレチノイン酸とその類似体の開発に重大な障害だった(Biesalski HK, Toxicology, 57:117-161 (1989)参照)。観察される副作用として、催奇形性、肝毒性、血液脂肪異常性、うろこ状皮膚、脱毛及び頭痛が挙げられる。癌予防薬として使うための高い効力及び/又は低い毒性を有する新しいレチノイン酸類似体を発見するため、他の研究が求められている。例えば、N-(4-ヒドロキシフェニル)レチンアミド(“4-HPR”)は乳癌に対して化学的予防活性を示すことが報告されている(Moon et al., Cancer Res, 39:1339-1346 (1979)参照)。4-HPRとグルカル酸カルシウムの併用が発癌物質誘発ラット乳癌において高く相乗的な化学的な乳癌予防活性を有することも報告されている(Abou-Issa HM et al., Proc Natl Acad Sci USA, 85:4181-4184 (1988)参照)。しかし、4-HPRは未だラット、マウス及びウサギの研究で催奇形の可能性を示している(Kenel MF et al.,“ラット及びウサギにおけるN-(4-ヒドロキシフェニル)-全-トランスレチンアミドの催奇形性(Teratogenicity of N-(4-hydroxyphenyl)-all-trans Retinamide in Rats and Rabbits)”, Teratogenesis, Carcinogenesis and Mutagenesis, 8:1-11 (1988)参照)(Kochhar DM et al.,“レチンアミド:妊娠マウスにおける催奇形性に寄与するレチノイルグルシンのレチノイン酸への加水分解性変換(Hydrolytic Conversion of Retinoylglycine to Retinoic Acid in Pregnant Mice Contributes to Teratogenicity)”, Teratology, 45:175-185 (1992)も参照されたい)。4-HPRがヒト患者に夜間視力を与えることも報告されている(Kaiser-Kupter MI et al.,“フェンレチニド、合成レチノイドレンレチニド(HPR)と関連する異常な網膜機能(Abnormal Retinal Function Associated with Fenretinide, A Synthetic Retinoid Renretinide (HPR))”, Eur J Cancer Clin Oncol, 25:805-808 (1989)参照)。
4-HPRの構造を以下に示す。
【0009】
【化3】
【0010】
4-HPRのケトン類似体が4-HBRである。4-HBRの構造を以下に示す。4-HBRの特性(及びその合成)は、Clagett-Dameらに対する米国特許第6,117,845号に開示されており、この特許は4-HBRの種々の糖-類似体の合成も開示している。
【0011】
【化4】
【0012】
4-HBRとその類似体は抗-新生物活性を有し、乳房における新生物の成長の予防(すなわち、予防的治療)及び/又は治療に有用である。
レチノイン酸の安定した活性類似体の合成の最近の進歩にもかかわらず、レチノイン酸及びTTNPBのさらに強力かつ低毒性の類似体と誘導体、特に乳癌を含め、多くの癌の予防的治療及び治療に有用な該薬物が要望されている。
【0013】
〔発明の概要〕
本発明の一局面は、下記式の化合物である。
【0014】
【化5】
【0015】
本化合物はその医薬的に適切な塩又は溶媒和物でもよく、乳癌の予防的治療のため、又は乳癌を治療するため、該4-HBTTNPB化合物又はその医薬的に適切な塩若しくは溶媒和物をヒトに投与することができる。
本発明の別の局面は、下記式の化合物である。
【0016】
【化6】
【0017】
本化合物はその医薬的に適切な塩又は溶媒和物でもよく、乳癌の予防的治療のため、又は乳癌を治療するため、該4-HPTTNPB化合物又はその医薬的に適切な塩若しくは溶媒和物をヒトに投与することができる。
本発明の別の局面は、下記式の化合物である。
【0018】
【化7】
【0019】
本化合物はその医薬的に適切な塩又は溶媒和物でもよく、乳癌の予防的治療のため、又は乳癌を治療するため、4-HPTTNPB化合物の該3-プロピル類似体又はその医薬的に適切な塩若しくは溶媒和物をヒトに投与することができる。
下記式の化合物、並びにその塩、エステル及び溶媒和物。
【0020】
【化8】
【0021】
(式中、Lは、単結合、CH2、及びOから成る群より選択されるメンバーであり、かつ、R1は、アルドース成分、下記基、
【0022】
【化9】
【0023】
及びC1-6直鎖若しくは分岐鎖アルキル基から成る群より選択されるメンバーである。)
好ましくは、前記アルドース残基成分は以下のとおりである。
【0024】
【化10】
【0025】
本化合物はその医薬的に適切な塩、エステル又は溶媒和物でもよく、乳癌の予防的治療のため、又は乳癌を治療するため、該化合物又はその塩、エステル若しくは溶媒和物をヒトに投与することができる。LがOの場合、前記C1-6直鎖若しくは分岐鎖アルキル基は-CH3、-CH(CH3)2又は下記基でよい。
【0026】
【化11】
【0027】
〔好ましい実施形態の詳細な説明〕
4-[(E)-2-(5,6,7,8-テトラメチル-2-ナフタレニル)-1-プロペニル]安息香酸(TTNPB)の構造を図1Aに示す。TTNPB及びレチノイン酸の他の類似体は、代謝に対する耐性を示し、かつ細胞の増殖とアポトーシスを調節する有意な化学療法活性 を有する。TTNPBはレチノイン酸の強力であるが、毒性の芳香族類似体である。TTNPBは選択的にレチノイン酸受容体(“RAR”)に結合する。しかし、TTNPBはレチノイドX受容体(“RXR”)に結合しない。それ自体で、TTNPBは選択的にRARに結合するという点でレチノイン酸より有利である。しかし、レチノイン酸は異性化してRXRに結合する。
レチノイン酸分子中のカルボン酸基がパラ-ヒドロキシフェニルアミンに共有結合(アミド結合によって)することによって、4-ヒドロキシフェニルレチンアミド(“4-HPR”)が生じる。4-HPRは乳癌に対する化学的予防-化学療法活性を有する。4-HPRは、レチノイン酸より有意に低毒性でもある。培養中、4-HPRは、アポトーシスによって癌細胞の増殖を阻害する。対照的に、レチノイン酸及びTTNPBは、分化を引き起こすことによって増殖停止をもたらす。4-HPRはRAR-非依存性活性をも示しうる(米国特許第6,117,845号参照)。
【0028】
図2に示されるように、TTNPBのカルボン酸基がパラ-ヒドロキシフェニルアミンに共有結合する(アミド結合によって)ことによって4-HPTTNPBが生じる。図3に示されるように、TTNPBの3-プロピル類似体と4-HPTTNPBを合成した(後述する化合物11及び12参照)。如何なる理論にも拘泥しないが、4-HPTTNPBの3-プロピル類似体(化合物12)は化合物11にin vivo加水分解された場合でさえ、RARに結合しないようである。さらに、同じ理由で4-HPTTNPBの3-プロピル類似体はRARタンパク質に結合しないと理論づけられる。4-HPTTNPBの3-プロピル類似体は、RAR又はRXRタンパク質に結合しないので、それ自体、ヒトの医薬用途で十分無毒である(すなわち、医薬的に適する)。
【0029】
これとは別に、化合物20、21、22、23(4-HBTTNPB)、25(4-HBTTNPBの酸素-連結型グルクロニド)、29(4-HBTTNPBのメチレン-連結型グルクロニド)、30(4-HBTTNPBのメチレン-連結型グルコース)、及び33(4-HBTTNPBの酸素-連結型グルコース)のケトン基は、4-HPTTNPB中のアミド基と同様に作用すると理論づけられる。グルコース成分は、単糖類等のアルドース、モノカルボン酸、ジカルボン酸、ポリヒドロキシアルコール又はアルデヒド酸から誘導される種々成分のいずれでもよいと解釈される(Morrison and Boyd, Organic Chemistry, 3rd:1075 (1973)参照)。例えば、アルドース誘導体のファミリー内では、グルクロン酸はグルクロニド誘導体成分を形成するアルデヒド酸である。ケトン基もRAR又はRXRタンパク質に結合しないだろう。化合物20はE-4-[2-メチル-2-(1,1,4,4-テトラメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタ-7-イル)-ビニル]フェニル-2'-(4'-メトキシフェニル)-1'-エタノンである。化合物21はE-4-[2-メチル-2-(1,1,4,4-テトラメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタ-7-イル)-ビニル]-フェニル-2'-(4'-イソプロポキシフェニル)-1'-エタノンである。化合物22はE-4-[2-メチル-2-(1,1,4,4-テトラメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタ-7-イル)-ビニル]-フェニル-2'-(4'-ベンジルオキシフェニル)-1'-エタノンである。これらケトン含有化合物は、本明細書で後述するように合成され、かつ腫瘍細胞の増殖を阻害する強力な活性を示すので、乳癌の予防的治療及び乳癌の治療に好適である。予想外にも、糖含有類似体化合物25、29、30及び33も溶解性、バイオアベイラビリティー及び低毒性等の望ましい特性を向上させた。
【実施例】
【0030】
種々のレチノイン酸誘導体の合成と特徴は、米国特許第6,117,845号;第4,578,498号;及び第4,326,055号に記載されており、これら各特許は参照によって全開示が本明細書に組み込まれる。さらに、本出願の図2〜8は、本明細書で開示する種々の新規化合物を製造するためのさらなる合成法を示す。
2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジオールとプロピルベンゼンはAldrich Chemical Company, Milwaukee, Wisconsinから市販されている。他の試薬は、とりわけSigma-Aldrich, St. Louis, Missouri及びAldrich Chemical Companyから商業的に入手可能である。既知手順を用いて、又は本明細書で述べるように該試薬を調製した。
Bruson H et al., J Am Chem Soc, 62:36 (1940)に記載の公知手順を用い、50gの2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジオール(化合物1)と1Lの濃塩酸を使用して2,5-ジクロロ-2,5-ジメチルヘキサン(化合物2)を合成した。定量的に収率を測定した。化合物2の特性はBrusonらが報告したものと一致した。
Brusonらが述べた公知手順を用いて1,1,4,4-テトラメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン(化合物3)を合成した。この手順ではフリーデル-クラフツ反応を用い、36gの2,5-ジクロロ-2,5-ジメチルヘキサン(化合物2)、78gのベンゼン、及び16gの塩化アルミニウムを混合して、60%の収率という結果になった。化合物3の特性はBrusonらが報告したものと一致した。
Wood TF et al., Org Chem, 28(9):2248 (1963)に記載の公知手順を用いて7-アセチル-1,1,4,4-テトラメチルテトラリン(化合物4)を合成した。16gの1,1,4,4-テトラメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン、7.4gの塩化アセチル及び13.6gの塩化アルミニウムを使用して92%の収率という結果になった。1H NMRを用いて化合物3の生成を確認した。
Dawson M et al., J Org Chem, 49:5265 (1984)に記載の公知手順を用いてE-4-[2-メチル-2-(1,1,4,4-テトラメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタ-7-イル)-ビニル]-安息香酸エチル(化合物5)を合成した。この手順では、30mLの1.0M NaCH2SOCH3(つまり27mmol)を10gのp-カルボキシエチルベンジルホスホン酸に撹拌しながら添加した。0.5時間後、ホスホン酸アニオンの赤褐色溶液を、45mLのMe2SO中の3.45gの7-アセチル-1,1,4,4-テトラメチルテトラリン(化合物4)に加えた。反応混合物を4時間撹拌した。次に、9mLの2.0M NaOEt(つまり18mmol)(EtOH中)を加え、赤褐色反応混合物を一晩撹拌した。反応混合物を10%のNaHCO3水溶液(900mL)に注ぎ;Et2Oで抽出し;食塩水で洗浄し;かつMgSO4上で乾燥させることによって仕上げた。
ろ過及びEt2Oの除去後、残留物を6mLのヘキサンに懸濁させ、4〜6時間放置してゴム状結晶を生じさせた。20%のヘキサン/CH3OHからの再結晶により無色固体の4.68g(収率83%)のE-4-[2-メチル-2-(1,1,4,4-テトラメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタ-7-イル)-ビニル]-安息香酸エチル(化合物5)を得た。化合物5の特性はDawsonらが報告したものと一致した。HPLC(オクタデシルシラン4.6×250mmカラム、CH3OH/H2O 85:15、UV 310nm、流速1.0mL/分、tr=44.5分)。
E-4-[2-メチル-2-(1,1,4,4-テトラメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタ-7-イル)-ビニル]安息香酸エチル(化合物5)を6MのKOH水溶液中で加水分解してE-4-[2-メチル-2-(1,1,4,4-テトラメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタ-7-イル)-ビニル]-安息香酸(TTNPB;化合物6)を合成した。収率は90%だった。Mpは247〜248℃(酢酸から)だった。HPLC(オクタデシルシラン4.6×250mmカラム、CH3OH/H2O 85:15、UV 310nm、流速1.0mL/分、tr=8.5分):1H-NMR(300 MHz, (CD3)2SO), δ 1.21 (s, 6H), 1.25 (s, 6H), 1.62 (s, 4H), 2.21 (s, 3H), 6.83 (s, 1H), 7.28 (s, 2H), 7.44 (s, 1H), 7.70 (AB, 4H, JAB = 8.06 Hz)、酸のOHが溶媒由来のH20と交換する。
E-4-[2-メチル-2-(1,1,4,4-テトラメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタ-7-イル)-ビニル]-安息香酸4-ヒドロキシアニリド(4-HPTTNPB;化合物7):3.1g(8.91mmol)の化合物6と0.86mL(10.7mmol)のピリジンの30mLの無水テトラヒドロフラン中の懸濁液に、0.78mL(10.7mmol)の塩化チオニルを加えた。混合物を室温(RT)で2時間撹拌した。生じた沈殿物をろ別し、20mLのテトラヒドロフラン中の2.91g(26.7mmol)の4-アミノフェノールの懸濁液に母液を加えた。RTでさらに20時間撹拌を続けた。反応混合物を70mLの水中で撹拌した。混合物を2Nの塩酸で酸性にした。生じた沈殿物をろ別し、酢酸から再結晶させて3.64gのE-4-[2-メチル-2-(1,1,4,4-テトラメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタ-7-イル)-ビニル]-安息香酸4-ヒドロキシアニリド(化合物7)を無色の針晶の形で得た。Mp=252〜253℃。HPLC(オクタデシルシラン4.6×250mmカラム、CH3OH/H2O 85:15、UV 310nm、流速1.0mL/分、tr=14分);UVmax(DMSO), 297 (88 500); 1H-NMR (300 MHz, (CD3)2CO), δ 1.27 (s, 3H), 1.31 (s, 3H), 1.70 (s, 4H), 2.29 (s, 3H), 6.89 (s, 1H), 7.22 (AB, 4H, JAB = 8.96 Hz), 7.33 (s, 2H), 7.62 (s, 1H), 7.76 (AB, 4H, JAB = 8.32 Hz), 8.13 (s, OH), 9.30 (s, NH); 13C-NMR (75 MHz, (CD3)2CO), δ 17 (C30), 34.2 (C26, C27, C28, C29), 34.9 (C2, C3), 36.5 (C1, C4), 127 (C12), 145.1 (C11), 198 (C19), 116.5, 123.1, 124, 124.9, 122.1, 122.5, 123.2, 129.9, 132.5, 133.8, 142.8 (Car)。
公知手順(Boehm M et al., J Med Chem, 37:2930 (1994)参照)により、20gの2,5-ジクロロ-2,5-ジメチルヘキサン(化合物2)、26.37gのプロピルベンゼン、及び0.2gの塩化アルミニウムを用いて1,2,3,4-テトラヒドロ-1,1,4,4-テトラメチル-6-プロピルナフタレン(化合物8)を合成し、9%の収率を得た。特性はBoehmらの記載と一致した。
公知手順(Wood TF et al., J Org Chem, 28(9):2248 (1963)参照)を用いて7-アセチル-6-プロピル-1,1,4,4-テトラメチルテトラリン(化合物9)を合成し、20%の収率を得た。
1H NMRを用いて生成物を同定した。
それぞれ化合物5について本明細書で述べた手順に従ってE,Z-4-[2-メチル-2-(6-プロピル-1,1,4,4-テトラメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタ-7-イル)-ビニル]-安息香酸エチル(化合物10)を合成した。結果混合物を仕上げ、シリカゲルと10%のEtOAc/90%のヘキサンを用いてクロマトグラフ処理して化合物10を含有する混合物を無色油として収率16%で得た。1H-NMRを用いて生成物を特徴づけた。
6M KOH水溶液中でのエチル化合物10の加水分解によって、E-4-[2-メチル-2-(6-プロピル-1,1,4,4-テトラメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタ-7-イル)-ビニル]-安息香酸(化合物11)を合成し、収率80%を得た。1H NMRを用いて生成物の同一性を確認した(Frickel F et al., 米国特許第4,578,498号参照)。これにより、HPLCは以下の材料と装備を含んだ:オクタデシルシラン4.6×250mmカラム、CH3OH/H2O 85:15、UV 310nm、流速1.0mL/分、及びtr=24分。
本明細書の手順に従ってE-4-[2-メチル-2-(6-プロピル-1,1,4,4-テトラメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタ-7-イル)-ビニル]-安息香酸4-ヒドロキシアニリド(化合物12)を合成した。結果混合物を仕上げ、エーテルで抽出し、食塩水で洗浄し、MgSO4上で乾燥させた。Et2Oの除去後、シリカゲル及び50% EtOAcと50% ヘキサンの混合物を用いて残留物をクロマトグラフ処理してE,Z-4-[2-メチル-2-(6-プロピル-1,1,4,4-テトラメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタ-7-イル)-ビニル]-安息香酸4-ヒドロキシアニリドの混合物を無色油として得た。この油をメタノールに懸濁させて無色の針晶を生じさせた。50% EtOH/50%の水から再結晶させて白色沈殿を収率30%で得、オクタデシルシラン212×250mmカラムを用いて分取用HPLCで精製した。オクタデシルシラン4.6×250mmカラム、85:15のCH3OH/水、310nmのUV、1.0mL/分の流速、及びtr=21分を含む分析用HPLCも使用した。COSY、HMQC、及びNOEの差異(diff)を用いて構造を確認した。特徴づけデータは以下のとおりである:1H-NMR (300 MHz, (CD3)2CO), 0.93 (t, 3H, J = 7.4 Hz), δ 1.27 (s, 6H), 1.28 (s, 6H), 1.62 (m, 2H), 1.69 (s, 4H), 2.21 (d, 3H), 2.59 (m, 2H), 6.40 (s, 1H), 7.13 (s, 1H), 7.2 (s, 1H), 7.24 (AB, 4H, JAB = 8.69 Hz), 7.76 (AB, 4H, JAB = 8.32 Hz), 8.23 (s, OH), 9.35 (s, NH)。
4-ヒドロキシフェニル酢酸(化合物13)と4-メトキシフェニル酢酸(化合物19)はAldrich Chemical Company of Milwaukee, WIから商業的に入手可能である。
4-ヒドロキシフェニル酢酸メチル(化合物14)を以下のとおりに調製した。化合物13をメタノール中、硫酸でエステル化して定量的収率で化合物14を得た。生成物の特性はKuchar M et al., Collection of Czechoslovak Chemical Communications, 42:1723 (1977)で報告されている当該特性と一致した。
3gの化合物14をDMF中2.36gの2-ブロモプロパンと1.66gの炭酸カリウムで処理して60%の収率60%で4-イソプロポキシフェニル酢酸メチル(化合物15)を合成した。1H-NMR (300 MHz, CDCl3), δ 1.30 (d, 6H, J = 6 Hz), 3.54 (s, 2H), 3.66 (s, 3H), 4.50 (sept. 1H, J = 6 Hz), 7.00 (AB, 4H, JAB = 8.78 Hz)。
DMF中2.47gの化合物14を3.82gの臭化ベンジルと4.11gの炭酸カリウムで処理して48%の収率で4-ベンジルオキシフェニル酢酸メチル(化合物16)を合成した。特徴づけデータは以下のとおり:1H-NMR (300 MHz, CDCl3), δ 3.55 (s, 2H), 3.67 (s, 3H), 5.04 (s, 2H), 7.05 (AB, 4H, JAB = 8.6 Hz), 7.28-7.43 (m, 5H)。
化合物15を6MのKOH水溶液中で加水分解して、90%のヘキサン/10%の酢酸エチルから無色の針晶として化合物17を92%の収率で得ることによって、4-イソプロポキシフェニル酢酸(化合物17)を合成した。その特性は、G Solladie et al., Tetrahedron, 59:3315 (2003)で報告されている当該特性と一致した。
【0031】
一般的方法はPCT公開第WO/99/02509号(1999)(参照によって本明細書に組み込まれる)に開示されており、この方法により通常の変更を加えて以下の化合物を調製しうる:
E-4-[2-メチル-2-(1,1,4,4-テトラメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタ-7-イル)-ビニル]-フェニル-2'-(4'メトキシフェニル)-1'-エタノン(化合物20)、
E-4-[2-メチル-2-(1,1,4,4-テトラメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタ-7-イル)-ビニル]-フェニル-2'-(4'-イソプロポキシフェニル)-1'-エタノン(化合物21)、及び、
E-4-[2-メチル-2-(1,1,4,4-テトラメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタ-7-イル)-ビニル]-フェニル-2'-(4'-ベンジルオキシフェニル)-1'-エタノン(化合物22)。
乾燥テトラヒドロフラン(“THF”)中の1.25当量の4-置換フェニル酢酸を撹拌しながらゆっくり2Mのリチウムジイソプロピルアミド(THF中)2.45当量に室温で加えた。反応混合物を室温で1.5時間撹拌してから撹拌しながらゆっくり1.0当量の化合物5の溶液(THF中)に室温で加えた。反応を室温で一晩撹拌してから撹拌しながらゆっくり6Mの塩酸に室温で加えた。有機相を分け、1.2Mの炭酸ナトリウム水溶液と水で洗浄してから1/5の体積に濃縮した。この熱溶液を5体積のイソプロパノールで希釈した。混合物を0℃に冷却し、生成物をろ過で収集し、冷イソプロパノールで洗浄して化合物20を無色の針晶の形で(酢酸から)30%の収率で得た。構造をCOSYとHMQCで確認した。オクタデシルシラン4.6×250mmカラム、CH3OH/水 85:15、UV 310nm、流速1.0mL/分及びtr=39分を用いるHPLC:1H-NMR (400 MHz, (CD3)2SO), δ 1.23 (s, 6H), 1.27 (s, 6H), 1.63 (s, 4H), 2.24 (s, 3H), 3.70 (s, 3H), 4.29 (s, 2H), 6.84 (s, 1H), 7.02 (AB, 4H, JAB = 8.69 Hz), 7.31 (s, 2H), 7.46 (s, 1H), 7.78 (AB, 4H, JAB = 8.32 Hz); 13C-NMR (75 MHz, (CD3)2SO), δ 18 (C31), 32.2 (C27, C28, C29, C30), 34.2 (C2, C3), 35 (C1, C4), 44.1 (C20), 55.7 (C32), 125.4 (C12), 158 (C11), 197 (C19), 114.2, 123.8, 124.2, 127, 127.5, 128.7, 129.4, 130.9, 134.4, 139.8, 140.3, 143, 144.2, 144.6 (Car)。
酢酸から無色の針晶として化合物21を収率43%で得た。HPLCがtr=49分にて同一性を確証した(オクタデシルシラン4.6×250mmカラム、CH3OH/水 85:15、UV 310nm及び流速1.0mL/分):1H-NMR (400 MHz, (CD3)2SO), δ 1.21 (d, 6H, J = 6 Hz), 1.23 (s, 6H), 1.26 (s, 6H), 2.25 (s, 3H), 4.22 (s, 2H), 4.51 (sept. 1H, J = 6 Hz), 6.84 (s, 1H), 6.98 (AB, 4H, J = 8.67 Hz), 7.29 (s, 2H), 7.49 (s, 1H), 7.75 (AB, 4H, J = 8.42 Hz); 13C-NMR (75 MHz, (CD3)2SO), δ 17.9 (C31), 32.1 (C27, C28, C29, C30, C33, C34), 34.8 (C2, C3), 35.9 (C1, C4), 44.9 (C20), 70.2 (C32), 127 (C12), 157.8 (C11), 197 (C19), 116.5, 124.2, 124.8, 126.6, 127.3, 129.3, 130.1, 131.4, 135.5, 140.7, 141.6, 144.1, 145.1, 145.3 (Car)。
酢酸から白色粉末として化合物22を収率60%で得た。HPLC(オクタデシルシラン4.6×250mmカラム、CH3OH/水 85:15、UV 310nm及び流速1.0mL/分、tr=66分):1H-NMR (400 MHz, (CD3)2SO), δ 1.18 (s, 6H), 1.21 (s, 6H), 1.58 (s, 4H), 2.18 (s, 3H), 4.23 (s, 2H), 5.00 (s 2H), 6.80 (s, 1H), 7.00 (AB, 4H, JAB = 8.42 Hz), 7.25-7.42 (m, 8Hの合計), 7.72 (AB, 4H, JAB = 8.23 Hz); 13C-NMR (75 MHz, (CD3)2SO), δ 17 (C38), 31.9 (C34, C35, C36, C37), 34.2 (C2, C3), 34.2 (C2, C3), 34.9 (C1, C4), 44.1 (C20), 69 (C27), 123.9 (C12), 157.3 (C11), 197.9 (C19), 115.1, 123.5, 125.9, 126.8, 127.6, 127.9, 128, 128.7, 128.9, 129.5, 130.9, 134.3, 137.4, 139.7, 140.4, 143, 144.2, 144.5 (Car)。
【0032】
20mLの乾燥CH2Cl2中の0.46g(0.965mmol)の化合物21の溶液を-20℃で撹拌することによってE-4-[2-メチル-2-(1,1,4,4-テトラメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタ-7-イル)-ビニル]-フェニル-2'-(4'-ヒドロキシフェニル)-1'-エタノン(化合物23)を合成した。この溶液に0.28g(2.413mmol)のBCl3を滴加した。反応混合物を室温に戻して30分撹拌した。混合物を氷水に注ぎ、NaClで飽和させて30mLのジエチルエーテルで抽出した。有機層をNa2SO4上で乾燥させ、5mLに濃縮した。生じた沈殿物をろ別し、乾燥させて化合物23を酢酸から無色の針晶として得た。化合物23の構造をCOSY、HMQC及びNOEの差異を用いて確認した。
HPLC(オクタデシルシラン4.6×250mmカラム、CH3OH/水 85:15、UV 310nm、流速1.0mL/分、tr=22分);UVmax (DMSO), 322.5 (52 100); 1H-NMR (400 MHz, (CD3)2CO), δ 1.29 (s, 6H), 1.33 (s, 6H), 1.72 (s, 4H), 2.31 (s, 3H), 4.26 (s, 2H), 6.90 (s, 1H), 6.98 (AB, 4H, JAB = 8.50 Hz), 7.35 (s, 2H), 7.56 (s, 1H), 7.81 (AB, 4H, JAB = 8.34 Hz); OHが溶媒由来の水と交換する;13C-NMR (75 MHz, (CD3)2CO), δ 18.1 (C31), 32.3 (C27, C28, C29, C30), 35.2 (C2, C3), 36.2 (C1, C4), 45.3 (C20), 127.2 (C12), 157.2 (C11), 198 (C19), 116.3, 124.6, 125.2, 126.8, 127.7, 129.7, 130.3, 131.7, 135.9, 139.9, 141.9, 144.2, 145.3, 145.7 (Car)。
【0033】
【化12】
【0034】
ブロモ化合物24の構造を上に示し、公知手順で合成した(See Bollenback GN et al., J Am Chem Soc, 77:3310 (1955)参照)。
【0035】
【化13】
【0036】
化合物23と化合物24から化合物25を合成した。まず酸化銀と反応させてから炭酸カリウム及びメタノールと反応させた。次に、反応生成物をメタノールと水の混合物中の水酸化ナトリウムで処理して化合物25を得た。
以下のように2,3,4,6-テトラ-O-(メトキシメチル)-D-グルコン酸-δ-ラクトン(化合物26.2)を合成した。アルゴン雰囲気下で炎乾燥させたフラスコに7.38g(41.4mmol)のδ-グルコノラクトン(化合物26.1)を400mLのCH2Cl2と混ぜた。化合物26.1は、Sigma-Aldrich, St. Louis, MOから入手可能である。この懸濁液を氷浴で冷却したらすぐに、ジイソプロピルエチルアミン(57.6mL,331mmol)を滴加した。次に、添加ロートでクロロメチルメチルエーテル(50g,621mmol)を慎重に加えた。反応容器内に有意量の白色煙が生じた。固体のヨウ化テトラブチルアルミニウム(50g,134mmol)を加え、該溶液を室温に戻した。反応を暗所で48時間撹拌すると、溶液は徐々に赤色に変化した。容器を0℃に冷却後、NH4Cl飽和水溶液(75mL)を加えた。次に、混合物を食塩水で希釈し、混ぜ合わせた水層をCH2Cl2で抽出した(3×)。混ぜ合わせた有機層をMgSO4上で乾燥させ、ろ過かつ濃縮した。次に、固体をエーテルを用いて摩砕し(4×)、エーテルを濃縮した。結果として生じた油をシリカゲル上でクロマトグラフ処理(1:1 ヘキサン/酢酸エチル)して12.04g(収率83%)の清澄油を得た。[α]D 118.4 (c 2.15, CH2Cl2); IR (cm-1) 2948 (s), 2885 (s), 1757 (s), 1464 (m), 1443 (m), 1213 (s), 1150 (s), 1035 (s), 912 (m), 1H NMR (CDCl3) δ 3.36-3.42 (m, 12H), 3.77 (dd, 1H, J = 3.8, 11.3 Hz), 3.82 (dd, 1H, J = 2.8, 11.3 Hz), 3.99-4.05 (m, 2H), 4.29 (d, 1H, J = 6.6 Hz), 4.55-4.56 (m, 1H, 4.65 (s, 2H), 4.69-4.92 (m, 7H), 13C NMR (CDCl3) δ 55.42, 56.05, 56.11, 56.22, 66.12, 73.69, 74.77, 78.43, 96.56, 96.66, 96.78, 96.91, 97.13, 168.70; HRMS (ES) C14H26O10 (M+Na)の計算値377.1424, 実測値377.1408。
【0037】
ジメチルチタノセンCp2Ti(CH3)2(Petasis試薬)の調製:アルゴン雰囲気下で炎乾燥させたフラスコに二塩化チタノセン(14.63g,58.8mmol)と無水エーテル(300mL)を加え、10℃に冷却した。暗所で添加ロートにてメチルリチウム(100mL,140mmol,1.4M)を慎重に加えた。冷浴を除去し、赤色溶液を10分撹拌した。溶液を0℃に冷却し、氷水(25mL)を慎重に加えて未反応メチルリチウムをクエンチした。層を分け、水層をエーテルで抽出した(2×)。混ぜ合わせた有機層をアルゴン下Na2SO4上で1時間乾燥させ暗所で20℃にて濃縮して12.4gの橙色固体を得た。乾燥トルエン(100mL)を加え、この試薬を4℃で貯蔵し、特徴づけせずに使用した。
2,6-アンヒドロ-1-デオキシ-3,4,5,7-テトラ-O-(メトキシメチル)-D-ブルコ-ヘプタ-1-エニトール(化合物26.3)の調製:アルゴン雰囲気下で炎乾燥させたフラスコに糖ラクトン化合物26.2(10.05g,28.4mmol)を加え、添加ロートを介して乾燥トルエン(140mL)に溶かした。ジメチルチタノセン(12.4g,59mmol)のトルエン溶液を添加ロートで滴加して赤色溶液を得た。フラスコに還流冷却管を取り付けて70℃に加熱し、暗所で18時間撹拌した。結果として生じた黒色溶液を冷ましてヘキサン(約500mL)に注いだ。生じた沈殿物をCeliteでろ過した。上清を濃縮して赤色油を得、シリカゲル上でクロマトグラフ処理(4:1→2:1のヘキサン/酢酸エチル)して8.66g(収率87%)の黄色がかった油を得た。[α]D 46.8 (c 2.33, CH2Cl2); IR (cm-1) 2940 (m), 2895 (m), 1750 (w), 1440 (w), 1154 (s), 1032 (s), 918 (m), 1H NMR (DMK-d6) δ 3.31-3.37 (m, 12H), 3.64-3.71 (m, 2H), 3.78-3.83 (m, 2H), 3.88-3.89 (m, 1H) 4.12 (d, 1H, J = 5.4 Hz), 4.35 (s, 1H), 4.51 (s, 1H), 4.62 (s, 2H), 4.66-4.84 (m, 6H), 13C NMR (DMK-d6) δ 55.15, 55.87, 56.04, 56.19, 67.50, 75.42, 76.68, 77.36, 81.08, 93.43, 95.35, 97.23, 97.64, 97.81, 156.39; HRMS (ES) C15H28O9 (M+Na)の計算値375.1631、実測値375.1628。
2,6-アンヒドロ-1-デオキシ-1-[4-(ヒドロキシメチル)-フェニル]-3,4,5,7-テトラ-O-(メトキシメチル)-D-グリセロ-D-グロ-ヘプチトール(化合物26.4)の調製:アルゴン雰囲気下で炎乾燥させたフラスコに、乾燥THF(100mL)に溶かした環外オレフィン(化合物26.3)(3.75g,10.6mmol)を加えた。9-ボラビシクロ[3.3.1]ノナン(53.2mL,26.6mmol,0.5M)を添加ロートで加えた。フラスコに還流冷却管を取り付け、75〜80℃に加熱し、4.5時間還流させた。混合物を室温に冷ましてからK3PO4(10mL,3M)を加え、反応を10分撹拌した。DMF(100mL)に溶かしたp-ブロモベンジルアルコール(3.98g,21.3mmol)とPdCl2(dppf)(0.686g,0.85mmol)を添加ロートで加えた。反応を18時間撹拌した。反応を水とエーテルで希釈した。層を分けた。有機層を水と食塩水で洗浄した。混ぜ合わせた水層をエーテルで抽出した(3×)。有機層を混ぜ合わせてMgSO4上で乾燥させ、濃縮し、クロマトグラフ処理(1:1→1:2のヘキサン/酢酸エチル)して3.29g(収率67%)の橙色油を得た。[α]D -26.2 (c 1.15, DMK); IR (cm-1) 3470 (w), 2932 (m), 2887 (m), 1692 (m), 1444 (w), 1150 (s), 1101 (s), 1024 (s), 918 (m); 1H NMR (DMK-d6) δ 2.60 (dd, 1H, J = 9.4, 14.4 Hz), 3.18-3.42 (m, 5H), 3.25 (s, 3H), 3.35 (s, 3H) 3.40 (s, 3H), 3.44 (s, 3H), 3.54-3.61 (m, 2H), 3.73 (dd, 1H, J = 1.8, 11.3 Hz), 4.51-4.58 (m, 4H), 4.70 (d, 1H, J = 6.5 Hz), 4.77-4.85 (m, 4H), 4.93 (d, 1H, J = 6.5 Hz), 7.25 (s, 4H); 13C NMR (DMK-d6) δ 38.35, 55.04, 56.45, 56.55, 64.44, 64.57, 67.42, 77.97, 79.07, 80.32, 81.63, 84.83, 97.20, 99.01, 99.19, 99.32, 127.15, 130.11, 138.75, 141.03; HRMS (ES) Ca22H36O10 (M+Na)の計算値483.2206、実測値483.2188。
2,6-アンヒドロ-1-デオキシ-1-[4-(メトキシメチル)フェニル)-3,4,5,7-テトラ-O-(メトキシメチル)-D-グリセロ-D-グロ-ヘプチトール(化合物26.5)の調製:アルゴン雰囲気下で炎乾燥させたフラスコに、乾燥THF(100mL)に溶かした化合物26.4(2.44g,5.3mmol)(C-グリコシドベンジルアルコール)を加えた。フラスコに水素化ナトリウム(0.63g,26.5mmol)を加え、該懸濁液を1.5時間撹拌した。THF(10mL)に溶かしたヨードメタン(4.5g,31.7mmol)をカニューレで反応混合物に挿入し、反応を18時間撹拌した。氷浴で冷却後、水を慎重に加えて過剰のNaHをクエンチした。混合物をエーテルで抽出し(3×)、有機層を混ぜ合わせ、洗浄し、MgSO4上で乾燥させ、濃縮してからクロマトグラフ処理(1:1→1:2のヘキサン/酢酸エチル)して2.37g(収率94%)の清澄油を得た。[α]D -27.0 (c 4.70, DMK); IR(cm-1) 2981 (s), 2883 (s), 1701 (w), 1513 (m), 1444 (m), 1378 (m), 1301 (m), 1158 (s), 1105 (s), 1028 (s), 918 (s); 1H NMR (DMK-d6) δ 2.61 (dd, 1H, J = 9.4, 14.4 Hz), 3.19-3.42 (m, 5H), 3.24 (s, 3H), 3.30 (s, 3H) 3.35 (s, 3H), 3.40 (s, 3H), 3.44 (s, 3H), 3.54-3.64 (m, 2H), 3.73 (dd, 1H, J = 2.6, 13.5 Hz), 4.38 (s, 2H), 4.50 (d, 1H, J = 6.4 Hz), 4.54 (d, 1H, J = 6.4 Hz), 4.70 (d, 1H, J = 6.5 Hz), 4.77-4.85 (m, 4H), 4.93 (d, 1H, J = 6.5 Hz), 7.21 (d, 2H, J = 8.0 Hz), 7.28 (d, 2H, J = 8.0 Hz); 13C NMR (DMK-d6) δ 33.39, 55.05, 56.47, 56.49, 56.57, 57.97, 67.46, 74.84, 78.00, 79.10, 80.23, 81.66, 84.86, 97.20, 99.01, 99.21, 99.32, 128.15, 130.19, 137.23, 139.45; HRMS (ES) Ca23H38O10 (M+Na)の計算値497.2363、実測値497.2384。
2,6-アンヒドロ-7-デオキシ-7-[4-(メトキシメチル)フェニル]-3,4,5-トリ-O-アセチル-L-グリセロ-L-グロ-ヘプチノン酸(heptinoic acid)メチルエステル(化合物26.6)の調製:MOM-保護グルコシド化合物26.5(2.43g,5.12mmol)をメタノール(500mL)に溶かして室温でフラスコに入れた。HCl水溶液(6N,26mL)を加え、溶液を18時間撹拌した。次に、混合物を濃縮乾固させた。別のフラスコで、KBr(2.42g,20.38mmol)とTEMPO(3.19g,20.41mmol)を飽和NaHCO3溶液(400mL)に加えて20分0℃で撹拌した。NaOCl水溶液(11.2mL,1.6〜2.0M)を加えて混合物を10分撹拌した。脱保護した糖(上述したように、MOM-保護糖化合物26.5をメタノール中でHClと反応させて生成した)を飽和NaHCO3溶液(100mL)に溶かし、TEMPO混合物を含有するフラスコに添加した。この新しい全混合物を45分0℃で撹拌した。反応をEtOH(50mL)でクエンチし、反応混合物を分液ロートでエーテルにて洗浄した。水層を濃縮乾固させ、残留固体を徹底的にメタノールと摩砕した。メタノールを濃縮し、乾燥させた。乾燥残留物をDMF(180mL)に懸濁させた。DMF(10mL)に溶かしたヨードメタン(6.4g)を加え、反応混合物をアルゴン下で室温にて20時間撹拌した。反応混合物に無水酢酸(40mL)、ピリジン(20mL)、及びDMAP(15mg)を補充して18時間撹拌した。反応混合物を水で希釈し、酢酸エチルで抽出した(3×)。有機層を水と食塩水で洗浄し、結果物をMgSO4上で乾燥させ、濃縮し、クロマトグラフ処理(2:1→1:1のヘキサン/酢酸エチル)して1.90g(収率82%)の化合物26.6を清澄油として得、放置すると凝固した。融点=84〜86℃。[α]D -13.04 (c 1.15, DMK); IR (cm-1) 2956 (w), 2818 (w), 1750 (s), 1440 (m), 1370 (m), 1211 (s), 1105 (m), 1028 (m); 1H NMR DMK-d6) δ 1.94 (s, 3H), 1.94 (s, 3H), 1.95 (s, 3H), 2.74-2.81 (m, 1H), 2.90 (dd, 1H, J = 3.4, 7.3 Hz), 3.30 (s, 3H), 3.65 (s, 3H), 3.94-3.99 (m, 1H), 4.18 (d, 1H, J = 9.8 Hz), 4.38 (s, 2H), 4.90 (t, 1H, J = 9.8 Hz), 5.05 (t, 1H, J = 9.8 Hz), 5.29 (t, 1H, J = 9.8 Hz), 7.22 (s, 4H); 13C NMR (DMK-d6) δ 20.39, 20.52, 20.60, 38.12, 52.67, 58.03, 70.62, 72.53, 74.09, 74.73, 76.41, 78.62, 128.25, 130.16, 137.43, 137.76, 168.40, 169.89, 170.07, 170.30; HRMS (ES) Ca2H28O10 (M+Na)の計算値475.1580、実測値475.1577。
2,6-アンヒドロ-7-デオキシ-7-[4-(ブロモメチル)フェニル]-3,4,5-トリ-O-アセチル-L-グリセロ-L-グロ-ヘプチノン酸メチルエステル(化合物26.7)の調製:CaSO4乾燥管を備えた乾燥フラスコに、0℃の酢酸中の30% HBr(5mL,25mmol)と共にC-グルクロニドメチルエーテル化合物26.6(462mg,1.02mmol)を加えた。混合物を30分0℃で撹拌し、室温に戻して18時間撹拌した。混合物を塩化メチレンで希釈し、慎重に水及びNaHCO3の飽和溶液で洗浄した。有機層をMgSO4上で乾燥させ、濃縮し、クロマトグラフ処理(2:1→1:1のヘキサン/酢酸エチル)して440mg(収率86%)の白色泡を得、エーテルを用いて結晶化した:融点=116〜117℃。[α]D -12.03 (c 5.57, DMK); IR (cm-1) 3026 (w), 2952 (w), 1754 (s), 1440 (m), 1370 (m), 1215 (s), 1101 (m), 1036 (m); 1H NMR DMK-d6) δ 1.93 (s, 3H), 1.94 (s, 3H), 1.95 (s, 3H), 2.76-2.83 (m, 1H), 2.92 (dd, 1H, J = 3.5, 7.3 Hz), 3.64 (s, 3H), 3.96-3.99 (m, 1H), 4.20 (d, 1H, J = 9.7 Hz), 4.62 (s, 2H), 4.90 (t, 1H, J = 9.7 Hz), 5.05 (t, 1H, J = 9.7 Hz), 5.29 (t, 1H, J = 9.7 Hz), 7.25 (d, 2H, J = 8.2 Hz), 7.36 (d, 2H, J = 8.2 Hz); 13C NMR (DMK-d6) δ 20.40, 20.52, 20.63, 34.37, 38.12, 52.69, 70.58, 72.52, 74.04, 76.35, 78.43, 129.88, 130.68, 137.26, 138.67, 168.39, 169.91, 170.09, 170.29; HRMS (ES) C21H25BrO9 (M+Na)の計算値523.0580、実測値523.0602。
【0038】
2,6-アンヒドロ-1-デオキシ-1-[4-(メトキシメチル)フェニル]-3,4,5,7-テトラ-O-アセチル-D-グリセロ-D-ガロ-ヘプチトール(化合物26.8)の調製:MOM-保護グルコシド化合物26.5(0.643g,1.35mmol)をメタノール(34mL)に溶かし、室温でフラスコに入れた。HCl水溶液(6N,6.7mL)を加え、溶液を18時間撹拌した。混合物を濃縮乾固させた。このペーストに無水酢酸(4mL)とピリジン(3mL)を触媒量のDMAPと共に加え、混合物を室温で18時間撹拌した。反応混合物を水で希釈し、酢酸エチルで抽出した(3×)。有機層を混ぜ合わせて水と食塩水で洗浄し、MgSO4上で乾燥させ、ろ過し、濃縮し、クロマトグラフ処理(1:1のヘキサン/酢酸エチル)して570mg(収率90%)の化合物26.8を白色固体(融点=120〜122℃)の形で得た。[α]D -4.0 (c 0.78, DMK); IR (cm-1) 2940 (w), 2862 (w), 1750 (s), 1436 (w), 1370 (m), 1224 (s), 1105 (m), 1032 (m); 1H NMR CDCl3 δ 1.96-2.02 (m, 12H), 2.78 (s, 2H, J = 5.8 Hz), 3.36 (s, 3H), 3.52-3.57 (m, 2H), 4.02 (dd, 1H, J = 2.3, 12.2 Hz), 4.20 (dd, 1H, J = 5.3, 12.2 Hz), 4.40 (s, 2H), 4.92 (t, 1H, J = 9.6 Hz), 5.03 (t, 1H, J = 9.6 Hz), 5.15 (t, 1H, J = 9.6 Hz), 7.16 (d, 2H, J = 8.0 Hz), 7.23 (d, 2H, J = 8.0 Hz); 13C NMR (DMK-d6) δ 20.55, 20.57, 20.65, 38.08, 58.02, 63.05, 69.70, 72.81, 74.76, 74.86, 76.05, 78.60, 128.20, 130.21, 137,65, 137.75, 170.04, 170.16, 170.37, 170.59; HRMS (ES) C23H30O10 (M+Na)の計算値489.1737、実測値489.1727。
【0039】
2,6-アンヒドロ-1-デオキシ-[4-(ブロモメチル)フェニル]-3,4,5,7-テトラ-O-アセチル-1)-グリセロ-D-グロ-ヘプチトール(化合物26.9)の調製:乾燥管を備えた乾燥フラスコに、C-グリコシドメチルエーテル化合物26.8(0.54g,1.16mmol)を0℃の酢酸中の30% HBr(5mL,25mmol)と共に加えた。混合物を30分0℃で撹拌した。混合物を室温で18時間撹拌した。混合物を塩化メチレンで希釈し、慎重に水と飽和NaHCO3溶液を加えた。有機層をMgSO4上で乾燥させ、濃縮し、クロマトグラフ処理(2:1→1:1のヘキサン/酢酸エチル)して593mg(収率97%)の化合物26.9を白色固体(融点=141〜142℃)として得た。[α]D -4.67 (c 2.57, DMK); IR (cm-1) 2993 (w), 2952 (w), 1754 (s), 1440 (w), 1374 (m), 1224 (s), 1105 (w), 1052 (m); 1H NMR (DMK-d6) δ 1.92-1.98 (m, 12H), 2.72 (dd, 1H, J = 7.3, 8.6 Hz), 2.88 (dd, 1H, J = 3.2, 7.3 Hz), 3.77-3.85 (m, 2H), 4.00 (dd, 1H, J = 2.4, 6.1 Hz), 4.21 (dd, 1H, J = 5.9, 6.1 Hz), 4.63 (s, 2H), 4.86 (t, 1H, J = 9.6 Hz), 4.97 (t, 1H, J = 9.6 Hz), 5.22 (t, 111, J = 9.6 Hz), 7.25 (d, 2H, J = 8.2 Hz), 7.37 (d, 2H, J = 8.2 Hz); 13C NMR (DMK-d6) δ 20.49, 20.60, 34.32, 38.07, 63.03, 69.73, 72.82, 74.85, 76.07, 78.40, 129.72, 130.68, 137.12, 138.92, 169.97, 170.10, 170.30, 170.52; HRMS (ES) C22H27BrO9 (M+Na)の計算値537.0736、実測値537.0724。
アルデヒド化合物27の調製(図8参照):乾燥THF中のエチルエステル化合物5の溶液を-78℃に冷却した。アルゴン下の乾燥THF中のDIBAL(1当量)をアルゴン下で反応に加えて4時間撹拌した。反応混合物を室温に戻して18時間撹拌した。減圧下でTHF溶媒を除去した。残留物を酢酸エチルと2N HClに分配した。酢酸エチル層を食塩水で洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、ろ過かつ濃縮した。溶媒を除去した。結果生成物を標準的な精製法で精製してアルデヒド化合物27を得た。
アルデヒド化合物27からtert-ブチル-ジメチルシリルシアノヒドリン(化合物28)の調製:アルゴン雰囲気下で炎乾燥させたフラスコに乾燥CH2Cl2(50mL)中の化合物27(3.62mmol)の混合物を加えた。触媒量のEt3N(0.1mL)を添加した。CH2Cl2(10mL)に溶かしたtert-ブチルジメチルシリルシアニド(1.0g.7.08 mmol)をカニューレで加えた。反応を20時間撹拌した。次に、溶液を濃縮し、クロマトグラフ処理し(95:5のヘキサン/酢酸エチル)、アルゴン下、Na2SO4上で乾燥させ、一晩真空に供して化合物28を得た。
【0040】
化合物29の調製:アルゴン雰囲気下で炎乾燥させたフラスコにTHF(40mL)をLiHMDS(ヘキサン中1.0M,3.8mL,3.8mmol)と共に加えた。混合物を-78℃に冷却した。THF(15mL)中の化合物28(2.54mmol)をカニューレでフラスコに添加した。溶液を-78℃で30分撹拌した。THF(15mL)中の結晶性ブロモグルコロニド(化合物26.7)(2.78g,5.56mmol)をフラスコにカニューレで挿入し、混合物を-78℃で3時間撹拌した。フラスコを冷浴から除去し、1M NH4Cl(10mL)でクエンチした。混合物を酢酸エチルで抽出し(3×)、有機層を混ぜ合わせ、食塩水で洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、ろ過し、濃縮し、クロマトグラフ処理(2:1のヘキサン/酢酸エチル)してアルキル化生成物といくらかの回収化合物26.7を得た。アルキル化生成物を1%のTHF水溶液(200mL)に取り、0℃に冷却した。フッ化テトラ-n-ブチル-アンモニウム(309mg,1.18mmol)を加えると、溶液が暗くなった。この溶液を1時間撹拌した。反応混合物を水で希釈し、酢酸エチルで抽出した(3×)。有機層を混ぜ合わせ、食塩水で洗浄し、NaSO4上で乾燥させ、濃縮し、クロマトグラフ処理(2:1のヘキサン/酢酸エチル)して化合物29の保護されたメチルエステルを得た。
化合物29の保護されたメチルエステル(1.64mmol)をメタノール(500mL)に溶かしてフラスコに添加した。混合物を4℃に冷却した。炭酸カリウム(136mg,0.98mmol)をフラスコに加えて20時間撹拌した。25〜30℃で反応混合物を約200mLに濃縮した。メタノールで元の体積に調整後、1N KOH(14mL,14mmol)を加えた。4℃で20時間撹拌後、反応混合物を温め、室温で5時間撹拌した。反応混合物を0℃に冷却し、4N HClを用いてpHを7に調整した。反応混合物を25〜30℃で約100mLに濃縮し、1N HClを用いてpHを3に調整した。この懸濁液を酢酸エチルで抽出した。有機層を混ぜ合わせ、アルゴン下、Na2SO4上で2時間乾燥させ、かつ濃縮した。残留物を逆相シリカゲル上でクロマトグラフ処理(勾配 70:30→85:15のメタノール/水)して化合物29を得た。
【0041】
化合物30の調製:アルゴン雰囲気下で炎乾燥させたフラスコにTHF(10mL)とLiHMDS(ヘキサン中1.0M,0.78mL,0.78mmol)を加えた。混合物を-78℃に冷却した。THF(5mL)中の化合物28(0.51mmol)をカニューレでフラスコに添加した。この溶液を-78℃で30分撹拌した。THF(5mL)中の化合物26.9(277mg,0.53mmol)をカニューレでフラスコに挿入した。混合物を-78℃で2時間撹拌した。フラスコを冷浴から除去し、1M NH4Cl(1mL)でクエンチした。反応混合物を酢酸エチルで抽出し(3×)、有機層を混ぜ合わせ、食塩水で洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、ろ過し、濃縮し、クロマトグラフ処理(2:1のヘキサン/酢酸エチル)してアルキル化生成物といくらかの回収化合物26.9を得た。アルキル化生成物を1%のTHF水溶液(20mL)に取り、0℃に冷却した。TBAF(134mg,0.51mmol)を加えると溶液が暗くなった。暗溶液を室温に戻しながら一晩撹拌した。反応混合物を水で希釈し、酢酸エチルで抽出した(3×)。有機層を混ぜ合わせ、食塩水で洗浄し、NaSO4上で乾燥させ、ろ過し、濃縮し、クロマトグラフ処理(2:1のヘキサン/酢酸エチル)して化合物30の酢酸-保護類似体を得た。
化合物30(0.18mmol)の酢酸保護類似体をメタノール(75mL)に溶かしてフラスコに添加した。混合物を4℃に冷却した。炭酸カリウム(25mg,0.18mmol)をフラスコに加え、反応を20時間撹拌した。反応混合物を0℃に冷却し、pHを1N HClで5に調整した。混合物を酢酸エチルで抽出し、有機層を混ぜ合わせ、アルゴン下、Na2SO4上で2時間乾燥させ、濃縮した。残留物を逆相シリカゲル上でクロマトグラフ処理(勾配 70:30→85:15のメタノール/水)して化合物30を得た。
【0042】
Cheng H et al., J Med Chem, 48(2):645 (2005)に記載の手順に従い、図8Bに示した合成経路を参照して、定量的収率でグリコシルトリクロロアセトイミダート(acetimidate)(化合物31)を合成した。NMR 1H.
E-4-[2-メチル-2-(1,1,4,4-テトラメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタ-7-イル)-ビニル]-フェニル-2'-(4'-テトラ-O-アセチル-β-D-グルコピラノシルオキシフェニル)-1'-エタノン(化合物32)の調製:10mLの乾燥CH2Cl2中の0.14g(0.319mmol)の化合物23を0.236g(0.479mmol)の化合物31と4Åの分子ふるいに加えた。反応混合物を室温で30分撹拌した。-20℃に冷却後、7.85μL(0.0638mmol)のBF3Et2Oを加え、連続的に2時間撹拌した。分子ふるいをろ別し、ろ液を飽和NaHCO3と食塩水で洗浄してから無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、ろ過かつ濃縮した。結果として生じた油をシリカゲル上でクロマトグラフ処理(1:1のヘキサン/酢酸エチル)して0.07g(収率28%)の白色沈殿を得た。NMR 1H.
E-4-[2-メチル-2-(1,1,4,4-テトラメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタ-7-イル)-ビニル]-フェニル-2'-(4'-β-D-グルコピラノシルオキシフェニル)-1'-エタノン(化合物33)の調製:5mLのメタノール中0.070g(0.091mmol)の化合物32の溶液に0.126g(0.91mmol)のK2CO3を加えた。反応混合物を18時間撹拌した。反応混合物を濃縮し;中身を酢酸エチルに溶かし、水と食塩水で洗浄し、MgSO4上で乾燥させ、濃縮乾固させて0.018g(収率33%)の白色沈殿を得た。NMR 1H.
【0043】
〔生物活性〕
方法:
核レチノイド受容体(RAR/RXR)結合:in vitroリガンド結合アッセイを用いて、RARα、RARβ及びRARγへの結合についてレチノイドと[3H]-全-トランス-RAの競合、並びにRXRγへの結合についてレチノイドと[3H]-9-シス-RAの競合を決定した(Clagett-Dame et al.,“大腸菌及び昆虫細胞表現系からのレチノイド受容体の生成及び特徴づけ方法(Methods for generating and characterizing retinoid receptors from E. coli and insect cell expression systems)”, Meth. Enzymol., 282:13-14 (1997)参照)。組換えヒトRARαを大腸菌内で融合タンパク質として発現させた(Repa JJ et al.,“全-トランスレチノールはレチノイン酸受容体のリガンドである(All-trans retinol is a ligand for the retinoic acid receptors)”, Proc Natl Acad Sci USA, 90:7293-7297 (1993)参照)。ヒトRARγ(Robarge MJ et al.,“レチノイドO-グルクロニドのN-連結類似体:潜在的な癌の化学的予防-化学療法薬(N-linked abalogs of retinoid O-glucuronides: Potential cancer chemopreventive-chemotherapeutic agents)”, Bioorg Med Chem Lett, 4(17):2117-2122 (1994)参照)、マウスRARβ(Repa JJ et al.,“全-トランス3,4-ジデヒドロレチノイン酸はひな鳥のニューロン発生の支援における全-トランスレチノイン酸に相当する(All-trans 3,4-didehydroretinoic acid equals all-trans retinoic acid in support of chick neuronal development)”, FASEB J, 10:1078-1084 (1996)参照)及びマウスRXRγ(Munder M et al.,“ビタミンD受容体によるDNA配列認識を可能にするブタの腸付属因子の同定(Identification of porcine intestinal accessory factor that enables DNA sequence recognition by vitamin D receptor)”, Proc Natl Acad Sci USA, 92:2795-2799 (1995)参照)タンパク質を、昆虫細胞内で、バキュロウィルス発現ベクターによる感染によって発現させた後、核抽出物を調製する。競合リガンドの濃度上昇がない場合とある場合で放射標識リガンドを受容体含有抽出物に添加後、ヒドロキシルアパタイト(HAP)アッセイを用いて、受容体に結合したリガンドを溶液中で自由なリガンドから分けた。
【0044】
細胞増殖の阻害及びTUNELアッセイ:MCF-7乳癌細胞を文献(Chapman JS et al.,“生体内では4-HPRのatRAへの加水分解が起こるがレチンアミンド-誘発アポトーシスには必要ない(Hydrolysis of 4-HPR to atRA occurs in vivo but is not required for retinamide-induced apoptosis)”, Arch Biochem Biophys, 419:234-243 (2003))の記載どおりに維持した。12-ウェルプレートに50,000細胞/ウェルで細胞を蒔いた。ウェルに可変量のレチノイド化合物を与えた。細胞収集時、ヨウ化プロピジウムを添加した。代謝的に活性な細胞による切断によって蛍光生成物を生じさせるフルオレッセインジアセテートを添加後、半分の細胞を用いて生細胞と死細胞の数を決定した。残り半分の細胞を4%のパラホルムアルデヒドで固定し、アミノシラン被覆スライドガラス上で乾燥させ、TUNEL及びヨウ化プロピジウム染色を決定するために使用した。
【0045】
レポーター遺伝子アッセイ:F9-RARE-lacZ受容体細胞系(Wagner M et al., Development, 116:55-66 (1992)参照)を血清フリーL15培地で培養し(15,000細胞/ウェル);レチノイド化合物又はビヒクルを与え;文献(Chapman JS et al.,“生体内では4-HPRのatRAへの加水分解が起こるがレチンアミンド-誘発アポトーシスには必要ない(Hydrolysis of 4-HPR to atRA occurs in vivo but is not required for retinamide-induced apoptosis)”, Arch Biochem Biophys, 419:234-243 (2003))の記載どおりに化学発光についてアッセイした。Bradford MM, Anal Biochem, 72:248-254 (1976)に記載の方法を用いて全タンパク質についてデータを正規化した。
化合物の催奇形性の評価:雌ラット(Harlan Sprague-Dawley, Madison, WI:体重約200〜250g)を通常の実験室用ラットの固形飼料で養い、同系統の正常ラットと番わせた。妊娠ラットに、単一の経口大量瞬時投与量の、Wesson(登録商標)トウモロコシ油に溶かした化合物を与えた。各用量は60〜100μLだった。日9.25に該用量を与えた。胎日21.5の安楽死まで、各用量を標準的な実験室条件下で維持した。胎仔を除去した。心拍のある胎仔を生きていると決めた。生胎仔と死胎仔の数を記録した。再吸収部位の数も記録した。生胎仔を肉眼で見える外部の奇形について調べた。Wisconsin-Madison大学の動物管理委員会(University of Wisconsin-Madison animal care committee)で承認されているプロトコルに準拠して全動物を維持した。
【0046】
催奇形性データを下表1に示す。
表1.胎仔の奇形
*解剖時に生きていた胎仔だけ肉眼で見える奇形について数えた
**na=適用不可;解剖時に生きている胎仔なし
【0047】
〔結果〕
核RAR結合:レチノイン酸受容体α型、β型及びγ型と相互作用する化合物の能力を競合結合アッセイを用いて試験した。atRA(全-トランスレチノイン酸)は商業的に入手可能であり、Eastman Kodak (Rochester, NY)から得た。TTNPBは、すべてのRARへの結合について[3H]-全-トランス-RAとの競合で非常に有効であったが、4-HPRは弱い競合を示しただけだった(すなわち、3〜4桁小さい効力)。同様に、4-HPTTNPBと4-HBTTNPBは両方ともヒトRARへの[3H]atRA結合に対して不十分にしか競合しなかった(図9、10及び11参照)。
核RXR結合:レチノイドX受容体γ型と相互作用する化合物の能力を競合結合アッセイを用いて試験した。コントロールの合成RXRリガンド、LGD1069(Boehm MF et al.,“新規なレチノイドX受容体-選択性レチノイドの合成及び構造と活性の関係(Synthesis and structure-activitiy relationships of novel retinoid X receptor-selective retinoids)”, J Med Chem, 37:2930-2941 (1994)参照)は、RXRγへの結合について[3H]-9-シス-RAとの競合で非常に有効だった(Ki,36nM)。TTNPBは、10-6Mを超える濃度で非常に弱い競合を示したが(10-4.5Mで44%)、4-HPTTNPBと4-HPRは、高濃度でヒトRXRγへの結合について[3H]-9-シス-RAとほとんど競合を示さなかった(図12参照)。
【0048】
レポーター遺伝子アッセイ:F9細胞受容体アッセイは、atRA又は同様のトランス活性化ポテンシャルを有するいずれかの化合物への細胞の曝露に応じたβ-ガラクトシダーゼ活性を与えた。この活性は、RARに結合するリガンドから生じる。また、プロモーター/エンハンサーカセットの上流に位置するβRAREエンハンサー(ホルモン応答)要素に結合しているレチノイド受容体複合体によるβ-ガラクトシダーゼの活性化によっても生じる。atRAとTTNPBは両方とも当該アッセイで活性を非常に活発に生じさせた;両化合物はRARと十分に相互作用する(0.2〜5nMの範囲のKi値)。4-HPRは、レポーター系の活性化においてatRAとTTNPBより約1000倍効力が低かった。4-HPTTNPBは、レポーター系の活性化においてatRAとTTNPBより約100倍効力が低かった。4-HPTTNPBは、RARタンパク質への如何なる有意な結合も示さなかったので、レポーター遺伝子アッセイにおけるその活性は、4-HPTTNPBから、この系で活性なTTNPBへの部分的な加水分解に起因するかもしれない(図13)。
細胞増殖阻害アッセイ:アッセイの開始時点でMCF-7細胞を可変濃度のレチノイドで処理し、72時間培養中で維持後、生きている(生存能力のある)細胞と総(生+死)細胞の数を決定した。マイクロモル用量の4-HPRに対する細胞の反応は細胞死だったが、TTNPBは細胞死を引き起こすにはほとんど無効だった。濃度を増やした4-HPTTNPB又は4-HBTTNPBへの細胞の曝露は、72時間後に生細胞の総数の用量依存性減少をもたらした(図14参照)。
【0049】
DNAフラグメンテーション:TUNELアッセイ(DNAフラグメンテーションを測定する)を用いて、いずれの試験化合物についても細胞のアポトーシスを誘発するか決定した。ヨウ化プロピジウム染色(TNEL標識の非存在下)を用いて、壊死又は後期アポトーシスを示す細胞数を測定した。前述したように、4-HPRは、試験した濃度でMCF-7細胞の高度のアポトーシスを誘導した(Chapman JS et al.,“生体内では4-HPRのatRAへの加水分解が起こるがレチンアミンド-誘発アポトーシスには必要ない(Hydrolysis of 4-HPR to atRA occurs in vivo but is not required for retinamide-induced apoptosis)”, Arch Biochem Biophys, 419, pp. 234-243 (2003)参照)。対照的に、TTNPBは72時間後のDNAフラグメンテーションの誘導で無効だったが、最高用量の4-HPTTNPBと4-HBTTNPBは両方とも72時間後のアポトーシスの誘導で非常に活性だった(図15参照)。従って、当該様式のTTNPB分子の改変は、生物学的特徴及び活性の劇的かつ予想外の優れた改善をもたらした。
催奇形性試験:レチノイド化合物の投与によって発生が非常に混乱させられる時である胚形成の段階で妊娠ラットに単一の経口量の化合物を与えることによって、化合物が胎仔の奇形を誘発する能力を評価した。0.66μモル/kg用量の4-HPTTNPBを単一の経口大量瞬時投与量として3匹の妊娠ラットに胎日9.25で投与した。該投与は、すべての動物の妊娠の結果に深遠な作用をもたらした。非常に高いパーセンテージ(>80%)の胎仔が胎日21.5で死亡又は再吸収された(表1参照)。生きている数匹の動物はすべて大いに奇形していた(例えば、開いた神経管、口蓋裂及び人魚体奇形)。対照的に、同じモル濃度かつ妊娠中の正確に同じ時に投与した非加水分解性類似体である4-HBTTNPBは、如何なる同様の副作用も生じさせず、かつE21.5において、ビヒクル処理したコントロール胎仔と区別できない胎仔の生産をもたらした。死亡及び再吸収胎仔の数もビヒクル群と4-HBTTNPB群では差がなかった。従って、このような用量の4-HBTTNPBは観察できる如何なる催奇形性活性もなかった。
総じて、これらデータは、4-HPTTNPBはTTNPBと4-HPRが本来持っているいくつかの特徴を共有するが、4-HBTTNPBは非加水分解性の4-HPR類似体、4-HBRと非常に似ていることを示唆している。如何なる理論にも拘泥しないが、細胞培養におけるTTNPB様活性は、小量のTTNPBを遊離させる4-HPTTNPBの加水分解に起因するかもしれない。さらに、4-HPTTNPBは、元のままの4-HPTTNPB又はその未知の代謝物の活性を反映する(4-HPRと同様の活性を写す)細胞アポトーシスを誘導するかもしれない。このことは、同様の濃度でアポトーシスを誘導するが、TTNPBを遊離させられない非加水分解性類似体、4-HBTTNPBの活性によって支持される。最後に、催奇形作用の生成に及ぼす4-HPTTNPBの強力な作用及び4-HBTTNPBによるこのような作用の完全な非存在は、TTNPB様のin vivo活性は、小量のTTNPBを遊離させるための4-HPTTNPBの加水分解から生じるという仮説(sypothesis)を支持する。
【0050】
細胞培養:ヒト乳癌細胞系、MCF-7は米国菌培養収集所(American Type Culture Collection)(Mannassas, VA)から得られる。4g/Lのグルコース、3.7g/Lの炭酸水素ナトリウム及び10%のウシ胎児血清で補充したDMEM(Sigma-Aldrich)培地でMCF-7細胞を維持してよい。
細胞増殖阻害のアッセイ:フラスコ/組織培養皿のウェルに細胞を蒔く。24時間後、細胞に本発明の化合物を可変濃度で与え、72時間後に細胞をフラスコ/プレートから除去して数える。蛍光(フルオレッセインジアセテートによる細胞の染色のため)を用いて生細胞の数を数える。位相差顕微鏡を用いて細胞の総数を数える。
本明細書で述べた手順を用いて化合物12、23、25、29、30及び33の抗-増殖活性(MCF-7ヒト乳癌細胞培養モデルに対する)を決定した。データは、各化合物がMCF-7細胞の増殖を用量依存様式で阻害することを示すだろう。データは、各化合物の癌細胞の増殖を阻害するための有用性をも実証するだろう。
化合物23(4-HBTTNPB)、12(4-HPTTNPBのプロピル類似体)、25(4-HBTTNPBのO-連結型グルクロニド)、29(4-HBTTNPBのCH2-連結型グルクロニド)、30(4-HBTTNPBのCH2-連結型グルコース)及び33(4-HBTTNPBのO-連結型グルコース)を用いて、本明細書で述べたとおりに競合結合アッセイを行い、これらの結果を4-HPTTNPBについて得られた結果と比較して、競合結合研究を行うこともできる。
RARに対する競合結合:化合物12及び23は非常に弱くRARに結合するだけなので、4-HPTTNPBと類似する。化合物25、29、30及び33は、RARへの結合について、4-HPTTNPBよりわずかに良いだけである。
RXRに対する競合結合:化合物12及び23は4-HPTTNPBに類似するので、わずかな結合競合を示すだけである。化合物25、29、30及び33は、RXRに対する結合において4-HPTTNPBより良くない。
化合物23(4-HBTTNPB)、12(4-HPTTNPBのプロピル類似体)、25(4-HBTTNPBのO-連結型グルクロニド)、29(4-HBTTNPBのCH2-連結型グルクロニド)、30(4-HBTTNPBのCH2-連結型グルコース)及び33(4-HBTTNPBのO-連結型グルコース)を用いて、本明細書で述べたとおりにレポーター遺伝子アッセイ研究を行うこともできる。後述する4-HPTTNPBについて得られたデータと結果を比較することができる。
レポーター遺伝子アッセイ:化合物23は4-HPTTNPB(加水分解を受けられない)より活性が低いかもしれない。化合物12も4-HPTTNPBより低活性かもしれず、化合物12はRAR結合で不活性な代謝物を遊離させうる。化合物25、29、30及び33は4-HPTTNPBより低活性だろう。
化合物23(4-HBTTNPB)、12(4-HPTTNPBのプロピル類似体)、25(4-HBTTNPBのO-連結型グルクロニド)、29(4-HBTTNPBのCH2-連結型グルクロニド)、30(4-HBTTNPBのCH2-連結型グルコース)及び33(4-HBTTNPBのO-連結型グルコース)を用いて、本明細書で述べたとおりに細胞増殖阻害アッセイを行うことができる。後述する4-HPTTNPBに関するデータと結果を比較することができる。
細胞増殖阻害アッセイ:化合物23は活性が4-HPTTNPB(加水分解を受けられない)と同様である。化合物12は4-HPTTNPBより低活性かもしれず、化合物12は結合において不活性なRARである代謝物を遊離させうる。化合物25及び29は4-HPTTNPBより低活性であり、化合物30及び33は、活性が4-HPTTNPBと同様である。
化合物23(4-HBTTNPB)を用いて、本明細書で述べたとおりにDNAフラグメンテーション研究を行うことができる。DNAフラグメンテーション研究では、化合物23は4-HPTTNPBと同様の活性を有しる。化合物25及び29は4-HPTTNPBより低活性であり、化合物30及び33は活性が4-HPTTNPBと同様である。
化合物23(4-HBTTNPB)、25(4-HBTTNPBのO-連結型グルクロニド)、29(4-HBTTNPBのCH2-連結型グルクロニド)、30(4-HBTTNPBのCH2-連結型グルコース)及び33(4-HBTTNPBのO-連結型グルコース)を用いて、DMBA-誘発乳癌の阻害を調べる研究を行うことができる。化合物23、25、29、30及び33は活性であり、たとえあるとしてもほとんど毒性はないことを示す。
化合物23(4-HBTTNPB)、25(4-HBTTNPBのO-連結型グルクロニド)、29(4-HBTTNPBのCH2-連結型グルクロニド)、30(4-HBTTNPBのCH2-連結型グルコース)及び33(4-HBTTNPBのO-連結型グルコース)を用いて、催奇形の可能性を調べる研究を行うことができる。驚くべきことに、データは、化合物23、25、29、30及び33は、観察できる胚毒性をたとえあるとしてもほとんど持たないことを実証する。
本発明の化合物は、乳癌などの細胞の増殖性障害の治療に有用である。
本明細書で引用したすべての参考文献は、参照によって、本明細書で完全に述べたかのようにその全体がすべての目的のため明確に本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1A】本明細書で言及する種々の化合物の構造を示す。
【図1B】4-HBTTNPBの酸素連結型糖及びメチレン連結型糖の構造を示す。
【図2】TTNPBと4-HPTTNPBの合成の反応スキームを示す。
【図3】TTNPBのプロピル類似体と4-HPTTNPBの合成の反応スキームを示す。
【図4】4-HBTTNPBの合成の反応スキームを示す。
【図5】4-HBTTNPBの酸素連結型糖類似体の合成の反応スキームを示す。
【図6】4-HBTTNPBのCH2-連結型(メチレン-連結型)糖類似体の合成の反応スキームを示す。
【図7】4-HBTTNPBのCH2-連結型糖類似体の別の合成の反応スキームを示す。
【図8A】4-HBTTNPBのCH2-連結型糖類似体の別の合成の反応スキームを示す。
【図8B】4-HBTTNPBの別の酸素-連結型糖類似体の合成の反応スキームを示す。
【図9】競合結合アッセイで決定した場合のRARα受容体と相互作用する種々の化合物の能力を比較するグラフである。
【図10】競合結合アッセイで決定した場合のRARβ受容体と相互作用する種々の化合物の能力を比較するグラフである。
【図11】競合結合アッセイで決定した場合のRARγ受容体と相互作用する種々の化合物の能力を比較するグラフである。
【図12】競合結合アッセイを用いて決定した場合のRXRγ受容体と相互作用する化合物の能力を比較するグラフである。
【図13】F9遺伝子レポーターアッセイで得た結果のグラフであり、レチノイド濃度の対数の関数として相対発光量をプロットする。
【図14】細胞増殖阻害アッセイから得た結果のグラフであり、このアッセイでは、MCF-7細胞をレチノイドの濃度を変えて1回処理し、72時間後に細胞増殖を阻害する各化合物の相対効力を決定する。
【図15】単用量の種々のレチノイド化合物に72時間曝露後のMCF-7細胞における細胞アポトーシスを調べるためのTUNELアッセイを用いて得たデータを示すグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式の化合物、又はその塩、エステル又は溶媒和物。
【化1】
(式中、Lは、単結合、CH2及びOからなる群より選択されるメンバーであり、かつ、
R1は、アルドース成分、下記基、
【化2】
及びC1-6直鎖若しくは分岐鎖アルキル基からなる群より選択されるメンバーである。)
【請求項2】
Lが、Oであり、かつ、
R1が、アルドース成分である、
請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記アルドース成分が、下記成分からなる群より選択される成分である、
請求項2に記載の化合物。
【化3】
【請求項4】
Lが、CH2であり、かつ、
R1が、アルドース成分である、
請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
前記アルドース成分が、下記成分からなる群より選択される成分である、
請求項4に記載の化合物。
【化4】
【請求項6】
前記アルドース成分が、下記成分である、請求項3に記載の化合物。
【化5】
【請求項7】
前記アルドース成分が、下記成分である、請求項3に記載の化合物。
【化6】
【請求項8】
前記アルドース成分が、下記成分である、請求項5に記載の化合物。
【化7】
【請求項9】
前記アルドース成分が、下記成分である、請求項5に記載の化合物。
【化8】
【請求項10】
Lが、Oであり、かつ、
R1が、C1-6直鎖若しくは分岐鎖アルキル基である、
請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
前記C1-6直鎖若しくは分岐鎖アルキル基が、-CH3及び-CH(CH3)2からなる群より選択される基である、請求項4に記載の化合物。
【請求項12】
Lが、Oであり、かつ、
R1が、下記基である、
請求項1に記載の化合物。
【化9】
【請求項13】
Lが、単結合である、請求項1に記載の化合物。
【請求項14】
下記式の化合物、又はその塩又は溶媒和物。
【化10】
【請求項15】
下記式の化合物、又はその塩又は溶媒和物。
【化11】
【請求項16】
下記式の化合物、又はその塩又は溶媒和物。
【化12】
【請求項17】
ヒトの乳癌の予防的治療の方法であって、治療的に有効な量の請求項1〜16のいずれか1項に記載の化合物を前記ヒトに投与することを含む方法。
【請求項18】
ヒトの乳癌の治療方法であって、治療的に有効な量の請求項1〜16のいずれか1項に記載の化合物を前記ヒトに投与することを含む方法。
【請求項1】
下記式の化合物、又はその塩、エステル又は溶媒和物。
【化1】
(式中、Lは、単結合、CH2及びOからなる群より選択されるメンバーであり、かつ、
R1は、アルドース成分、下記基、
【化2】
及びC1-6直鎖若しくは分岐鎖アルキル基からなる群より選択されるメンバーである。)
【請求項2】
Lが、Oであり、かつ、
R1が、アルドース成分である、
請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記アルドース成分が、下記成分からなる群より選択される成分である、
請求項2に記載の化合物。
【化3】
【請求項4】
Lが、CH2であり、かつ、
R1が、アルドース成分である、
請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
前記アルドース成分が、下記成分からなる群より選択される成分である、
請求項4に記載の化合物。
【化4】
【請求項6】
前記アルドース成分が、下記成分である、請求項3に記載の化合物。
【化5】
【請求項7】
前記アルドース成分が、下記成分である、請求項3に記載の化合物。
【化6】
【請求項8】
前記アルドース成分が、下記成分である、請求項5に記載の化合物。
【化7】
【請求項9】
前記アルドース成分が、下記成分である、請求項5に記載の化合物。
【化8】
【請求項10】
Lが、Oであり、かつ、
R1が、C1-6直鎖若しくは分岐鎖アルキル基である、
請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
前記C1-6直鎖若しくは分岐鎖アルキル基が、-CH3及び-CH(CH3)2からなる群より選択される基である、請求項4に記載の化合物。
【請求項12】
Lが、Oであり、かつ、
R1が、下記基である、
請求項1に記載の化合物。
【化9】
【請求項13】
Lが、単結合である、請求項1に記載の化合物。
【請求項14】
下記式の化合物、又はその塩又は溶媒和物。
【化10】
【請求項15】
下記式の化合物、又はその塩又は溶媒和物。
【化11】
【請求項16】
下記式の化合物、又はその塩又は溶媒和物。
【化12】
【請求項17】
ヒトの乳癌の予防的治療の方法であって、治療的に有効な量の請求項1〜16のいずれか1項に記載の化合物を前記ヒトに投与することを含む方法。
【請求項18】
ヒトの乳癌の治療方法であって、治療的に有効な量の請求項1〜16のいずれか1項に記載の化合物を前記ヒトに投与することを含む方法。
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公表番号】特表2008−545013(P2008−545013A)
【公表日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−520299(P2008−520299)
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【国際出願番号】PCT/US2006/025507
【国際公開番号】WO2007/005568
【国際公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(500517248)ウイスコンシン アラムニ リサーチ ファンデーション (18)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【国際出願番号】PCT/US2006/025507
【国際公開番号】WO2007/005568
【国際公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(500517248)ウイスコンシン アラムニ リサーチ ファンデーション (18)
【Fターム(参考)】
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