説明

6次の自由度の統合コイルAC磁気トラッカー

【課題】6次の自由度を有するトラッキング(追跡)を広く利用可能にする。
【解決手段】磁気トラッカーの市販品供給業者から得られた3軸磁場源コイルと3軸センサコイルが、駆動及び検知回路と一体化され、2つのモジュール内に完全な6次の自由度のトラッカーを与える。即ち、センサモジュールと磁場源モジュールにより、同一の設計の少なくとも第2のセンサを有し、追跡できる。基本的トラッカーモジュールの一方又は両方は、それぞれの印刷回路基板上に取り付けても良く、磁場源モジュールは、ハードウェアを減らすため、デジタル波発生と、同調コイルドライバとを利用しても良い。コイルの組の一方又は両方は、非同心でも良く、ホストコンピュータにP&Oアップデートを提供するための出力は、ホストコンピュータから電力を受取るUSB/USB2等のコネクタを利用しても良い。システムのコストを更に減らすため、センサコイルが受取った信号を増幅するのに使用する回路は、磁場源基板上のプロセッサの制御の下で複合化しても良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は磁気トラッカーに関し、より特定的には、経済的で且つ正確な結果を与える2モジュールのトラッカーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のAC磁気トラッキングシステムでは、典型的には3軸磁場源(ソース)、3軸磁場センサ(センサ)、システム電子ユニット(SEU)、及び電源の4つの基本的な構成部品があった。図1は、典型的なAC磁気トラッカーを示し、3つの直交するコイル1が駆動されて、磁場を提供し、その磁場が同様の3軸直交コイル2に結合し、この全てのコイルは、プログラム可能システム電子ユニット(SEU)により駆動4され、検出6される。SEUは、計算を実行して、磁場源とセンサとの間の相対的位置と方向(P&O)を示す。
【0003】
磁場源は、SEUにより駆動されるとき、3次元AC双極子磁場を生成する。これらの磁場はセンサに結合し、その信号は、SEUにより、増幅され、同期してサンプリングされ、公知の特性ファイルに適合されて、磁場源とセンサの間の相対的場所の位置と方向(P&O)を計算するための信号マトリックスを生成する。P&Oの結果は、3D用途の多くに使用される高速バス上をホストコンピュータに提供される。勿論、パワーモジュールが、トラッカーを動作させるのに要求されたDCバイアス電圧を提供する。これは、典型的なシングルセンサAC磁気トラッカーシステムである。
【0004】
広く広がったトラッカーの使用の主な問題は、顧客の品目に一体化するシステムの大きさである。他の欠点は、電子ゲームパーソナルコンピュータなどのこれらの品目の比較的低いコストと比較してコストが高いことである。購入価格は、一般に数千USドルである。これまでに利用できるようになった入手可能なトラッカーは、典型的には、傾きセンサ等の劣った技術アプローチを使用し、これは、重力による加速度から他の加速度を区別できないので、動的な設定では大きい誤差を生じる傾向がある。消費者用の3Dトラッカーシステムが広く受入れられるためには、サイズとコストと性能の問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
サイズ/コストが増大する1つ要因は、直交する3軸コイル自体であり、これまで特別の装置と特許方法により作成されてきた。他のコストが増す要因は、異なる機能を少なくとも3つのユニットに完全に分けるので、許容可能な結果を得るためには特別仕様のより合せケーブルが必要なことである。他は、特別の回路基板とハウジングの設計と構造である。更に他の問題としては、数ワットの電力と、通常は複数のDCバイアス電圧が可能な電源が必要である。それゆえ、高レベルの統合、より良い効率、速度、融通の利く処理、低コストの部品の全ての加大を同時に達成する必要があり、これらの課題が達成されれば、6次の自由度を有するトラッキング(追跡)を広く利用可能にし、価値ある前進をすることができるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、3軸磁場源コイルと3軸センサコイルを、駆動及び検知回路と統合し、完全な6次の自由度のトラッカー(追跡装置)をセンサモジュールと磁場源モジュールの2つだけのモジュール内に入れることにより、現存するAC磁気トラッカーを改善する。
【0007】
好適な実施形態では、センサモジュールは、1組のセンサコイルと、センサコイルが受信した信号を増幅する回路とを含む。磁場源モジュールは、1組の磁場源コイル及びコイルドライバと、センサモジュールから増幅された信号を受信するための入力と、受信した信号に基づいてセンサモジュールの位置と方向(P&O)を計算するためのプロセッサと、ホストコンピュータにP&Oのアップデートを提供するための出力とを含む。ケーブルを使用して、2つのモジュールを相互接続し、増幅されたセンサ信号をP&Oの計算のためにプロセッサに引渡す。センサコイルにより受信された信号を増幅するのに使用する回路のおかげで、相互接続ケーブルは、標準接続の経済的な部品でもよい。
【0008】
1方又は両方のモジュールは、それぞれの1つの印刷回路基板上に取り付けることができ、磁場源モジュールは処理電子回路と一体化でき、1つのモジュールに入れ、DC5Vの同調コイルドライバを利用して、ハードウェアを減らすことができる。1方又は両方のコイルの組は、同心でなく、ホストコンピュータにP&Oのアップデートを提供する出力は、ホストコンピュータから電力を受取るためのUSB/USB2コネクタ等のコネクタを利用することができる。更にシステムのコストを減らすために、センサコイルにより受信した信号を増幅するのに使用する回路は、磁場源の基板上のプロセッサの制御の下で、多重化しても良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
6次の自由度のAC磁気トラッカーのサイズとコストを減らすためには、幾つかの要因を同時に取扱う必要がある。上述したように、高性能のトラッカーを得るために直交する軸上に同心でコイルを巻くことは、多く行われていない。その結果、多くの手動の操作と特許の方法が必要である。他の特許の方法が使用されて、最良の校正と性能の均一性を達成する。
【0010】
今日の電子工業においては、自動化高速技術により、多くのコイルが大量生産され、通信回路、電源、信号フィルター、その他の多くの用途に使用される。直交非同心の機構内に3つのコイルを配置して使用すれば、コストを削減し又おそらくサイズも小さくなるであろう。しかし、次のような問題は残る。1) 十分な信号を得るための十分な有効面積;2) 過度の機械的取り付けなしに複数の面上への取り付け(コスト削減を帳消しにする);3) トラッカーに使用されるよりずっと上の自己共振周波数。隠れた要因は、位置を計算するためのこのようなコイルの非同心性であるが、出願人の所有する米国特許第5,307,072号が、非同心性に対する数学的解決を教示する。
【0011】
図3に示すように、コイルは小さい回路基板(PCB)上に位置し、同心でなく、直交取り付けすることができる。この小さいPCBにケーブルを取り付けることができるが、信号が低レベルなので、シールドしたより対線(ツイストペア線)等の非常に特殊なより合せケーブル(ケーブリング)を必要とするであろう。従って、本発明によれば、信号を上げるため、PCB上に小さい低ノイズプリアンプ回路が取り付けられるので、より一般的な多心ケーブルを使用することができる。更に、標準のコネクタがPCBに取り付けられ、容易に入手できる予め終端を設けた(pre-terminated)日常的なケーブルを使用できれば、更に節約することができる。電話工業で使用されるようなケーブルは、電子的シールドを有するより対線ではなく平行線であるが、コイルとアンプとラインの駆動を正しく組合わせれば、これらの目標と要求を満たすことができる。
【0012】
このアプローチを使用して、図2に示すようなアンプ出力における設計の仕切りが可能である。このアプローチが信頼できることを確認するため、実験を行い、非同心コイル及び回路と、商業的に入手可能なコネクタとを近接して配置し、集中した特性付けプロセスと、許容可能なP&O結果が可能であることを確認した。ケーブルの長さには限度があるが、数フィート以上でも動作が可能であることが明らかになった。
【0013】
残りの回路ブロック(図2の「SEU」)は、AC磁場信号と、センサ信号処理と、システム制御と、P&Oの計算と、ホストコンピュータへの出力とを提供し、少なくとも60Hzの速度でアップデートを提供なければならない。図3のセンサコイルと同様に取り付けられた大きい商用コイルを調達することができる。しかし、磁場源コイルを駆動し、全ての制御と処理の操作を実行するのに要求される回路は、センサコイルを有する小さいアンプの何倍も大きい。回路を小さくするための多くの負担は、使用するマイクロプロセッサと、全てのこれらの要求を満たすため十分迅速に埋め込まれたコードを実行するマイクロプロセッサの能力にかかる。
【0014】
磁場源モジュールの要件の主要な点は、コイルの軸を駆動するためのサイン波を作成する電子回路である。コイル駆動のため必要なサイン波を作成するための入力は、テーブルに記憶することも、埋め込まれたコードを使用して動的に生成することもできる。どちらの方法でも、デジタルアナログコンバータ(DAC)へ、次に駆動回路へ、次にコイルの同調回路へ、デジタルサンプルが与えられる。同調回路は、効率を改善し、デジタル入力から生じる小さいデジタルステップを滑らかにする。
【0015】
センサ信号をデジタル化し処理する回路もまた、マイクロプロセッサにより頼む。再度、センサモジュールにおいて、3つのセンサコイル間で1つのチャンネルが、時分割されれば、この回路は最小化することができる。本発明によれば、センサにおいて、1つのプリアンプ/ラインドライバの前にアナログマルチプレクサを挿入して、マイクロプロセッサで切り換えを行うことができ、センサを小さく簡単に維持することができる(図4)。マイクロプロセッサは、全てのシステムの同期を与えなければならないが、1つのセンサプリアンプの多重化は容易に取り扱うことができる。
【0016】
センサアンプを時分割することには、回路を節約する以外の利点がある。即ち、同じゲインチャンネルを通して3つの全てのコイル信号を通すことにより、1つのチャンネルの他のチャンネルに対するドリフトは考慮しなくてよい。1つのチャンネルがドリフトしても、センサの範囲の僅かな変化が起こるだけである。これにより方向は影響を受けないので、範囲の僅かな変化が許容可能であれば、センサの動的な校正は必要なくなる。
【0017】
磁場源コイルが、マイクロプロセッサ及び他の回路と共にうまく存在できれば、この組立ては、集中した特性付けプロセスが可能であり、同時に許容可能なP&O性能が得られる。この性能を達成するためには、小さいサイズと最小の電力使用と設置面積が、重要である。
【0018】
残っている課題は、ホストコンピュータへのP&Oデータの出力と、電力を得ることであり、このため過去においてしばしば追加のモジュールが必要になった。これら2つの問題は、1つの解決策で解決される。パーソナルコンピュータとの標準USB(ユニバーサルシリアルバス)接続は、高いデータ速度だけでなく、DC5Vの1/2アンペアの電流を提供することができる。より小さく低い電力回路用の半導体工業における技術を利用して、ここに述べた完全なトラッカーは、標準USB接続から2.5ワットの電力を得られ、そのため、追加のトラッカーモジュールの必要はない。
【0019】
更に、DC5VのUSB電力により動作し、DACを通って、簡単なドライバーへ行くという磁場源コイル駆動のアプローチによれば、過去のAC磁気トラッカーの高電圧バイポーラ駆動なしでこの設計に十分であり、簡単さと効率は保持される。従って、図2のI/Oバスは、標準USB接続で実行され、このため、コネクタにより占められるスペースは非常に小さく(用途により磁場源コイルからはなれている場合を除いて、センサとI/Oのみ)安価な標準より合せケーブルを容易に使用できる。
【0020】
要約すると、本発明は、簡単な磁場源とセンサのAC磁気トラッカーのサイズとコストの両方を減らすのに有効である。サイズの減少は、回路の簡単化と、磁場源を電子回路と統合するなどの高度のシステム統合により達成される。高性能で低出力の半導体により、ホストPCにより電力を提供することが可能になる。容易に入手できる商用コイルの形式を使用することと、出願人の所有する非同心コイルの特許を利用することにより、コストの減少が達成される。用途に特有の集積回路(ASIC)もまた、更にサイズとコストを減少できるかもしれない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】従来のAC磁気トラッカーを示すブロック図である。
【図2】本発明によるAC磁気トラッカーシステムを示すブロック図である。
【図3】直交取り付けが、小さい印刷回路基板上に位置することを示す図である。
【図4】多重化したセンサコイルを有するAC磁気トラッカーシステムのブロック線図である。
【符号の説明】
【0022】
1 磁場源
2 センサ
3 システムプロセッサ
4 磁場源ドライバ電子回路
5 校正電子回路
6 センサ信号調整とデジタル化
11,21 磁場源
12,22 センサ
13,23 信号デジタル化&システムプロセッサ
14,24 磁場源ドライバ電子回路
15,25 校正電子回路
16,26 センサ信号調整

【特許請求の範囲】
【請求項1】
AC磁気トラッキングシステムであって:
a) 少なくとも1組のセンサコイルと、
前記センサコイルが受信した信号を増幅する回路と、
を含むセンサモジュールと;
b) 1組の磁場源コイルとコイルドライバと、
前記センサモジュールから増幅した信号を受信するための入力と、
受信した信号に基づいて、前記センサモジュールの位置と方向(P&O)を計算するためのプロセッサと、
ホストコンピュータにP&Oのアップデートを提供するための出力と、
を含む磁場源モジュールと;
c) 増幅したセンサ信号を前記プロセッサに転送して、P&Oを計算するため、前記2つのモジュールを接続する相互接続するケーブルと;
を備えることを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記ケーブルは、コネクタを通って前記モジュールの1方又は両方にインターフェースされる請求項1に記載のAC磁気トラッキングシステム。
【請求項3】
前記磁場源モジュールは、デジタル波発生と、同調コイルドライバとを使用する請求項1に記載のAC磁気トラッキングシステム。
【請求項4】
前記モジュールの1方又は両方は、それぞれ1つの印刷回路基板上に取り付けられる請求項1に記載のAC磁気トラッキングシステム。
【請求項5】
前記コイルの組の1方又は両方は、非同心である請求項1に記載のAC磁気トラッキングシステム。
【請求項6】
ホストコンピュータにP&Oのアップデートを提供するための出力は、前記ホストコンピュータから電力を受取る接続を使用する請求項1に記載のAC磁気トラッキングシステム。
【請求項7】
前記センサコイルが受信した信号を増幅する回路は、前記磁場源モジュール内の前記プロセッサの制御の下で、コイルごとに多重化されている請求項1に記載のAC磁気トラッキングシステム。
【請求項8】
AC磁気トラッキングシステムであって:
a) 1組のセンサコイルを含むセンサモジュールと、
b) 1組の磁場源コイルとコイルドライバと、
前記センサモジュールから信号を受信するための入力と、
受信した信号に基づいて、前記センサモジュールの位置と方向(P&O)を計算するためのプロセッサと、
ホストコンピュータにP&Oのアップデートを提供するための出力と、
を含む磁場源モジュールと、を備え;
前記磁場源モジュールは、デジタル波発生と、同調コイルドライバとを使用する、ことを特徴とするシステム。
【請求項9】
前記モジュールの1方又は両方は、それぞれ1つの印刷回路基板上に取り付けられる請求項8に記載のAC磁気トラッキングシステム。
【請求項10】
前記コイルの組の1方又は両方は、非同心である請求項8に記載のAC磁気トラッキングシステム。
【請求項11】
前記センサコイルが受信した信号を増幅する回路は、前記磁場源モジュール内の前記プロセッサの制御の下で、コイルごとに多重化されている請求項8に記載のAC磁気トラッキングシステム。
【請求項12】
AC磁気トラッキングシステムであって:
a) 1組のセンサコイルを含むセンサモジュールと、
b) 1組の磁場源コイルとコイルドライバと、
前記センサモジュールから信号を受信するための入力と、
受信した信号に基づいて、前記センサモジュールの位置と方向(P&O)を計算するためのプロセッサと、
ホストコンピュータにP&Oのアップデートを提供するための出力と、
を含む磁場源モジュールと、を備え;
前記出力は、前記ホストコンピュータから電力を受取るコネクタを使用する、ことを特徴とするシステム。
【請求項13】
前記ケーブルは、コネクタを通って前記モジュールの1方又は両方にインターフェースされる請求項12に記載のAC磁気トラッキングシステム。
【請求項14】
前記磁場源モジュールは、デジタル波発生と、同調コイルドライバとを使用する請求項12に記載のAC磁気トラッキングシステム。
【請求項15】
前記モジュールの1方又は両方は、それぞれ1つの印刷回路基板上に取り付けられる請求項12に記載のAC磁気トラッキングシステム。
【請求項16】
前記コイルの組の1方又は両方は、非同心である請求項12に記載のAC磁気トラッキングシステム。
【請求項17】
前記センサコイルが受信した信号を増幅する回路は、前記磁場源モジュール内の前記プロセッサの制御の下で、コイルごとに多重化されている請求項12に記載のAC磁気トラッキングシステム。
【請求項18】
前記プロセッサは、2つのセンサの出力を作動的に処理し、1つのセンサに送られるのと同じ多重化信号を使用してセンサのプリアンプを制御する請求項12に記載のAC磁気トラッキングシステム。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−323854(P2006−323854A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−161561(P2006−161561)
【出願日】平成18年5月15日(2006.5.15)
【出願人】(506197912)オルケン インコーポレイテッド ディービーエイ ポールヘマス (1)
【Fターム(参考)】