説明

A−D変換装置

【課題】電圧−周波数変換方式のA−D変換装置の精度を向上する。
【解決手段】2つの等価な鋸波発生回路18Aおよび18Bと、その2つの鋸波発生回路18Aおよび18Bを交互に切り替えるスイッチ回路19と、を含む電圧制御型発振器24を有する、電圧−周波数変換回路を備える。好ましくは、第1の周期の周期信号を出力する第1の電圧制御型発振器と、第1の周期と異なり、かつ第1の周期と一定の比を保つ第2の周期の周期信号を出力する第2の電圧制御型発振器とを備え、サンプリング周期内に含まれる第1の周期信号の波数に基づいて、入力であるアナログ信号に対応するディジタル信号の上位ビットを算出し、サンプリング信号の活性化時点から第1および第2の周期信号の位相が一致する時点までの間に含まれる周期信号の波数に基づいて、デジタル信号の下位ビットを算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、A−D変換装置に関する。より詳しくは、電圧−周波数変換回路を備えるA−D変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1には、電圧−周波数変換(以下、V−F(Voltage-Frequency)変換という)を利用したA−D変換器(アナログ−ディジタル変換器)が示されている。この型のA−D変換器においては、アナログ信号たる入力電圧の大小に応じて、V−F変換部から出力されるパルス信号の周波数が変動し、そのパルス信号に含まれるパルス数をカウンタにて計数することにより、ディジタル信号が生成される。
【0003】
電圧−周波数変換を利用したA−D変換器であって、変換周波数を高めることなく、高精度にA−D変換を行うことが可能なものを実現する技術が提案されている(特許文献1)。特許文献1の技術は、二本のVCOを設け、両VCOの周期差を利用して主VCOの周期未満のV−F変換値を求める。主VCOから出力されるパルス信号のパルス数をカウンタ4にて計数することにより、ディジタル信号の上位ビットを生成する。一方、下位ビットについては、第3レジスタ10並びに第2および第3減算器11、12により、サンプリング周期ごとに、現在のサンプリング信号Psの活性化時点から主VCOおよび副VCOの出力の位相一致時点までの間に含まれる、主VCOの出力のパルス数に基づいて、サンプリング周期内初頭から主VCOの出力のサンプリング周期内最初のパルス発生までの位相差を算出することにより生成する。
【0004】
一方、非特許文献2に、電流制御発振器を用いたΔΣ−AD変換器の技術が記載されている。非特許文献2の技術は、入力の電流を容量C1とC2に交互に充電し、パルスを得るマルチバイブレータ方式の電流制御型の発振器である。
【0005】
また、特許文献2には、鋸波電圧を生成する技術が記載されている。特許文献2の鋸波発生回路は、基準電圧を決定する電圧源と、電圧源の基準電圧と鋸波の出力電圧とを比較する比較回路と、比較回路の比較結果に応じて交互に充放電を繰り返す2つのコンデンサと、鋸波の発振周波数を決定する大きさの電流により2つのコンデンサを充電する定電流回路と、2つのコンデンサに対して、それぞれ放電回路を形成するスイッチ回路と、2つのコンデンサを交互に充電するように定電流回路にそれぞれ接続するスイッチ回路とを備える。出力端子からは、上下の基準電圧に応じて所定の振幅を有する鋸波電圧を発生することができる。
【0006】
【特許文献1】特許第3701668号公報
【特許文献2】特開2004−282352号公報
【非特許文献1】ANALOG DEVICES AN-277 APPLICATION NOTE,III INSTRUMENTATION APPLICATIONS,Analog-to-Digital Conversion,Fig.9、インターネット<URL:http: //www.analog.com/UploadedFiles/Application_Notes/511072672AN277.pdf>
【非特許文献2】電子情報通信学会総合大会講演論文集、Vol.2000年.エレクトロニクス,No.2(20000307) p. 135、社団法人電子情報通信学会
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電圧−周波数変換方式のA−D変換装置では、分解能は周波数で決定され、電圧制御発振器の電圧−周波数特性の直線性が重要である。電圧−周波数特性が直線でなくても、予め特性がわかっていれば補正することは可能であるが、補正処理のための回路が必要であり、また、補正処理の分、応答が遅くなる。特許文献1の技術では、発振器の周波数を高めることなく、分解能を向上できる。しかし、電圧制御発振器の電圧−周波数特性の直線性が重要であることは変わりない。
【0008】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、電圧−周波数変換方式のA−D変換装置の精度を向上することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係るA−D変換装置は、2つの等価な鋸波発生回路と、その2つの鋸波発生回路を交互に切り替えるスイッチ回路と、を含む電圧制御型発振器を有する、電圧−周波数変換回路を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、電圧−周波数変換の直線性を向上できる。その結果、電圧−周波数変換方式のA−D変換装置の精度を向上できる。
【0011】
好ましくは、前記電圧−周波数変換回路は、第1の周期で発振する第1の周期信号を出力する第1の前記電圧制御型発振器と、前記第1の周期と異なり、かつ、前記第1の周期と一定の比を保つ第2の周期で発振する第2の周期信号を出力する第2の前記電圧制御型発振器と、を備え、前記第1の電圧制御型発振器は、自走により前記第1の周期信号の発振を開始し、前記第2の電圧制御型発振器は、A−D変換のサンプリング周期を示すサンプリング信号の活性化を契機として、前記第2の周期信号の発振を開始し、前記サンプリング周期内に含まれる前記第1の周期信号の波数に基づいて、入力であるアナログ信号に対応するディジタル信号の上位ビットを算出する上位ビット算出手段と、前記サンプリング信号の活性化時点から前記第1および第2の周期信号の位相が一致する時点までの間に含まれる前記第1または第2の周期信号の波数に基づいて、前記ディジタル信号の下位ビットを算出する下位ビット算出手段と、を備える。
【0012】
その結果、変換周波数を高めることなく、高精度にA−D変換を行うことが可能である。
【0013】
好ましくは、前記第1および第2の電圧制御型発振器の入力電圧をそれぞれ、同一の電圧を抵抗分割した電圧で与えることを特徴とする。
【0014】
それによって、入力信号の電圧値によらず、2つの周期信号の周期比を一定に保つことができるので、A−D変換の精度を向上させることができる。
【0015】
好ましくは、前記2つの鋸波発生回路を有する電圧制御型発振器において、前記スイッチ回路は、Nチャンネルトランジスタのシングル構成の反転回路を用いるフリップフロップから構成されることを特徴とする。
【0016】
Nチャンネルトランジスタのシングル構成の反転回路を用いることによって、電圧制御型発振器の2つの鋸波の切替動作を速くすることができる。その結果、よりよい周波数特性のA−D変換が得られる。
【0017】
好ましくは、前記2つの鋸波発生回路を有する電圧制御型発振器において、鋸波電圧の基準電圧と比較した結果に応じて充放電動作を行うコンデンサと放電電圧端子との間に前記コンデンサと直列に、補償用のトランジスタを備えることを特徴とする。
【0018】
これによって、充放電動作を行うコンデンサの放電基準電圧を少し高くし、2つの鋸波の切替動作の時間を補正して、電圧制御型発振器の電圧−周波数特性の直線性を向上することができる。
【0019】
好ましくは、前記2つの鋸波発生回路を有する電圧制御型発振器において、前記スイッチ回路は、反転回路ループのフリップフロップを備えることを特徴とする。
【0020】
これによって、電圧制御型発振器の回路の構成を簡単にし、ゲート数を減少させて、電圧制御型発振器の2つの鋸波の切替動作を速くすることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明のA−D変換装置によれば、電圧−周波数変換方式のA−D変換装置の精度を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0023】
(実施の形態1)
図1は、本発明の一実施の形態に係るA−D変換装置20の構成を示すブロック図である。図1に示すように、A−D変換装置20は、アナログの信号を入力する入力端子21と、電圧制御発振器24(VCO(Voltage Controlled Oscillator)ともいう)と、カウンタ25と、レジスタ26と、サンプリングクロック発生部23と、ディジタル値を出力する出力端子22とから構成される。A−D変換装置20は、サンプリング周期ごとに、入力端子21から入力されたアナログ信号に対応するレベルのディジタル値を、出力端子22から出力する。
【0024】
サンプリングクロック発生部23は、A−D変換の基準となるサンプリング周期Tを有する周期信号であるサンプリングクロックを発生する。サンプリング周期Tは、アナログ信号をディジタル値に変換する所定の周期である。
【0025】
電圧制御発振器24は、入力信号の電圧に比例した周波数の周期信号を発生する。カウンタ25は、サンプリング周期Tごとに電圧制御発振器24から出力される周期信号の波数を計数し、計数した値(ディジタル値)をレジスタ26に出力する。レジスタ26は、サンプリング周期Tの間、入力したディジタル値を保持し、出力端子22に出力する。その結果、入力のアナログ信号のサンプリングクロックごとの電圧に比例したディジタル値が出力される。
【0026】
A−D変換装置20の分解能は、入力電圧に対して電圧制御発振器24が生成する周期信号の周波数で決定される。同じ入力電圧に対して周波数が高ければ、それだけ分解能が高くなる。アナログ信号を正しくディジタル値に変換するには、電圧制御発振器24が生成する周期信号の周波数が、入力電圧に比例することが必要である。入力電圧−周波数の特性が直線からずれると、A−D変換の精度が低下する。
【0027】
図2は、実施の形態1に係る電圧制御発振器24の構成の例を示すブロック図である。電圧制御発振器24は、入力端子27の入力電圧に応じた周期の鋸波を発生し、その鋸波の周期ごとにパルス(周期信号)を発生して、出力端子28に出力する。鋸波を発生する基本部分は、電流源29と、2つのコンデンサ32A、32Bと、コンデンサ32A、32Bを電流源29に接続するスイッチ31A、31Bと、コンデンサを放電電位(接地34)に接続するスイッチ33A、33Bから構成される。コンデンサ32A、32Bの特性は同じである。電圧制御発振器24は、定電圧源35と、コンパレータ36と、T−フリップフロップ37とを備える。また、入力端子27に接続する2つのコンパレータ38A、38Bと、AND回路39A、39Bを備える。
【0028】
電圧制御発振器24は、2つの鋸波発生回路18A、18Bを備える。すなわち、電流源29と、コンデンサ32Aと、スイッチ31A、33A、接地34によって1つの鋸波発生回路18Aを形成し、同じく、電流源29と、コンデンサ32Bと、スイッチ31B、33B、接地34によってもう1つの鋸波発生回路18Bを形成している。図2では、電流源29と接地34は共通なので、理解を容易にするため鋸波発生回路18A、18Bを示す枠の外に記載している。
【0029】
スイッチ33Aを開いた状態で、スイッチ31Aを閉じて電流源29からコンデンサ32Aに充電すると、端子電圧V1はコンデンサ32Aに蓄えられた電荷量に比例して上昇する。スイッチ31Aを開いて、スイッチ33Aを閉じると、コンデンサ32Aの電荷は接地34に流れ、コンデンサは放電される。充電電流に比べて放電電流は大きいので、充電時間より放電時間のほうが短い。その結果、コンデンサ32Aの端子電圧V1は鋸波を呈する。コンデンサ32Bについても同様に、スイッチ33Bを開いた状態でスイッチ31Bを閉じて充電し、スイッチ31Bを開きスイッチ33Bを閉じて放電することによって、コンデンサ32Bの端子電圧V2は鋸波状になる。電圧制御発振器24は、2つの鋸波発生回路18A、18Bを交互に用いて、放電時間に無関係な連続する鋸波を発生する。
【0030】
定電圧源35、コンパレータ36、T−フリップフロップ37、コンパレータ38A、38B、およびAND回路39A、39Bは2つの鋸波発生回路18A、18Bを切り替えるスイッチ回路19を構成する。スイッチ31Aおよび31Bの電流源29側は、コンパレータ36の一方の入力に接続している。コンパレータ36の他方の入力は、定電圧源35に接続している。定電圧源35の電圧はVである。コンパレータ36の出力は、T−フリップフロップ37に接続している。コンパレータ36は入力を比較して、スイッチ31A、31B側が電圧VHよりも小さいときは0、電圧VH以上のときに1を出力する。T−フリップフロップ37は、端子Tに1パルスが入力されるごとに、出力Qの状態が1から0へ、または0から1へ切り替わる。
【0031】
出力Qはスイッチ31AとAND回路39Bに接続している。図2では、上線つきQで表示されている出力Qの反転であるnotQは、スイッチ31BとAND回路39Aに接続している。したがって、スイッチ31Aとスイッチ31Bは交互にONになり、一方が閉じているときは他方は開いている。
【0032】
コンデンサ32A、32Bの端子からコンパレータ38A、38Bの一方の入力にそれぞれ接続している。コンパレータ38A、38Bの他方の入力は、入力端子27に接続している。定電圧源35の電圧VHは、入力の最大電圧より高く設定されている。コンパレータ38A、38Bの出力は、それぞれAND回路39A、39Bの他方の入力に接続している。AND回路39A、39Bの出力は、それぞれスイッチ33A、33Bに接続している。コンパレータ38A、38Bはそれぞれ、コンデンサ32A、32Bの端子側が入力電圧より低い場合に0、入力電圧以上の場合に1を出力する。
【0033】
AND回路39A、39Bは、2つの入力がともに1のときに1を、それ以外は0を出力する。したがって、Qとコンパレータ38Bの出力がともに1のときに限り、スイッチ33Bが閉じる。また、notQとコンパレータ38Aの出力がともに1のときに限り、スイッチ33Aが閉じる。
【0034】
スイッチ31A、31Bの電流源29側はパルス発生器30に接続している。パルス発生器30は鋸波の立ち下がりエッジでパルスを発生し、出力端子28に出力する。
【0035】
つぎに、電圧制御発振器24の作用を説明する。まず、T−フリップフロップ37の出力Qが1であったとする。出力Qが1なので、スイッチ31Aが閉じ、スイッチ31Bは開いた状態である。notQは0なので、スイッチ33Aは開いた状態である。この状態で、コンデンサ32Aは電流源29の電流によって充電され、端子電圧は上昇する。そのとき、コンデンサ32Bの端子電圧が入力より高ければ、スイッチ33Bが閉じてコンデンサ32Bは放電する。
【0036】
コンデンサ32Aの端子電圧が上昇して、Voutが電圧VH以上になると、コンパレータ36の出力が1になり、T−フリップフロップ37の出力Qが0になる。すると今度は、スイッチ31Aが開いて、スイッチ31Bが閉じる。そして、スイッチ33Bは開いた状態になる。このとき、コンパレータ36の出力は0に戻る。この状態で、コンデンサ32Bは電流源29の電流によって充電され、端子電圧は上昇する。
【0037】
コンデンサ32Aの端子電圧はVH以上で、入力電圧VLより高いので、コンパレータ38Aの出力は1である。notQが1でAND回路39Aの出力が1になり、スイッチ33Aが閉じるので、コンデンサ32Aは放電する。コンデンサ32Aの端子電圧が入力電圧VLより低くなると、コンパレータ38Aの出力は0になり、AND回路39Aの出力が0になって、スイッチ33Aは開く。したがって、コンデンサ32Aの端子電圧は入力電圧VL以下になったところで保持される。
【0038】
コンデンサ32Bの端子電圧が上昇して、Voutが電圧VH以上になると、コンパレータ36の出力が1になり、T−フリップフロップ37の出力Qが1になる。すると最初の状態に戻って、スイッチ31Bが開いて、スイッチ31Aが閉じる。このとき、コンパレータ36の出力は0に戻る。この状態で、コンデンサ32Aは電流源29の電流によって充電され、端子電圧は上昇する。
【0039】
コンデンサ32Bの端子電圧はVH以上で、入力電圧VLより高いので、コンパレータ38Bの出力は1である。Qが1でAND回路39Bの出力が1になり、スイッチ33Bが閉じるので、コンデンサ32Bは放電する。コンデンサ32Bの端子電圧が入力電圧VLより低くなると、コンパレータ38Bの出力は0になり、AND回路39Bの出力が0になって、スイッチ33Bは開く。したがって、コンデンサ32Bの端子電圧は入力電圧VL以下になったところで保持される。
【0040】
以上の動作を繰り返し、スイッチ31A、31Bの電流源29側は、下の電位がVLで上の電位がVHの鋸波を呈する。充電電流は電流源29の電流によって一定なので、コンデンサ32A、32Bの端子電圧が上昇する速さは一定である。入力電圧VLが高いときには、コンデンサ32A、32Bの端子電圧がVLからVHになるまでの時間は短く、入力電圧VLが低いときには長くなる。したがって、鋸波の周波数は入力電圧VLに比例する。
【0041】
パルス発生器30によって、鋸波の立ち下がりエッジでパルスを発生する。コンデンサ32A、32Bの特性は同じで、電流源29は共通なので、鋸波の形状は両者で同じである。すなわち、両者の鋸波の周期は等しい。従って、電圧制御発振器24は入力電圧に比例した周波数のパルスを出力する。
【0042】
図3は、実施の形態1に係る電圧制御発振器24の異なる構成の例を示すブロック図である。電圧制御発振器24は、2つの鋸波発生回路18A、18Bを備える。すなわち、電流源である電圧−電流アンプ17と、コンデンサ32Aと、スイッチ31A、33A、接地34によって1つの鋸波発生回路18Aを形成し、同じく、電圧−電流アンプ17と、コンデンサ32Bと、スイッチ31B、33B、接地34によってもう1つの鋸波発生回路18Bを形成している。図3では、電圧−電流アンプ17と接地34は共通なので、理解を容易にするため鋸波発生回路18A、18Bを示す枠の外に記載している。電流源である電圧−電流アンプ17は、入力端子27の電圧に比例した電流を発生する。
【0043】
図3の電圧制御発振器24では、コンデンサ32A、32Bを充電する電流は一定ではなく、入力電圧に比例する。鋸波のピーク電位(VH)はトランジスタ41A、41Bのスイッチング電圧で決定される。反転回路42と43は、反転回路ループを構成している。鋸波発生回路18A、18Bの切替には、図2のT−フリップフロップ37に代えて、反転回路ループを用いる。
【0044】
コンデンサ32A、32Bの端子電圧V1、V2がトランジスタ41A、41Bのスイッチング電圧(VH)より高くなると、トランジスタ41A、41Bが導通して反転回路ループの端子を低電位にするので、反転回路ループの両側の電位が切り替わる。反転回路ループの両側は、図2におけるT−フリップフロップ37の出力QおよびnotQに相当する。
【0045】
充電電流は入力電圧に比例し、コンデンサ32A、32Bを切り替えるピーク電圧VHと放電電圧(接地34)は一定なので、入力電圧が高いと、それだけ速く充電されて速くピーク電圧に達して切り替わり、入力電圧が低ければゆっくり充電されて、ピーク電圧に達するのが遅くなる。したがって、鋸波の周期は入力電圧に反比例し、周波数は入力電圧に比例する。
【0046】
図2の回路では充電電流が一定なので、鋸波の立ち上がり傾斜は同じ角度であり、入力電圧が変化すると鋸波はほぼ相似形で変化する。図3の回路では、充電電流が入力電圧に比例しピーク電圧が一定なので、鋸波の高さが一定で周期が変化する。図4は1つの鋸波発生回路に着目して、2つの電圧制御発振器24の鋸波の違いを示す。図4(a)は、2つの回路のある入力電圧における鋸波の波形を代表して示す。図4(b)は、図2の電圧制御発振器24において、入力電圧が2倍になったときの鋸波の波形を示す。図4(c)は、図3の電圧制御発振器24において、入力電圧が2倍になったときの鋸波の波形を示す。図4(b)に示すように、図2の回路では、鋸波は相似形で変化する。図4(c)に示すように、図3の回路では、鋸波は高さが一定で周期が変化する。いずれも、入力電圧に比例した周波数の周期信号を生成する。
【0047】
図5は、実施の形態1に係るパルス信号生成の例を示すタイムチャートである。T−フリップフロップ37の出力Qの状態が切り替わるごとに、充電されるコンデンサが切り替わることが示されている。パルス発生回路の入力であるVoutの電圧は、コンデンサの放電時間を除いた、充電時間だけからなる鋸波になっている。
【0048】
コンデンサ32A、32Bの充電電流が充電時間の間一定であるのに対して、放電電流は一定ではなく、放電時間は電源電圧VHと入力電圧VLの電位差に比例しない。また、放電するスイッチのON抵抗によっても変化する。すなわち、図5のV1およびV2の鋸波の立ち下がり時間は、電圧には比例しない。したがって、電圧制御発振器(VCO)24の出力の周期にコンデンサの放電時間を含む場合は、周波数は正確には入力電圧に比例しないことになる。本実施の形態では、VCO24出力の周期にコンデンサの放電時間を含まないので、周期信号の周波数は入力電圧に比例し、電圧−周波数特性が直線に近くなる。その結果、A−D変換の精度が向上する。
【0049】
また、図3の回路では、フリップフロップに反転回路ループを用いるのでゲート数が少なく、スイッチング動作が速い。そのため、2つの鋸波発生回路18A、18Bの切替動作が速くなる。その結果、電圧制御発振器24の電圧−周波数特性の直線性が向上する。
【0050】
(実施の形態2)
実施の形態2は、V−F変換を利用したA−D変換装置20であって、二本のVCOを備え、両VCOの周期差を利用して主VCOの周期未満のV−F変換値を求めることにより高精度にA−D変換を行うものである。
【0051】
図6は、本発明の実施の形態2に係るA−D変換装置20のブロック図である。図6に示すように、このA−D変換装置20は、入力端子21に入力されるアナログ信号である電圧Vinをディジタル信号に変換するA−D変換装置20であって、周期Tbaseで発振するパルス信号を出力する電圧制御発振器1(以下、BASE−VCO(Voltage Controlled Oscillator)という)と、周期Tbaseとは異なる周期Tjawで発振するパルス信号を出力する電圧制御発振器2(以下、JAW−VCOという)とを備えている。BASE−VCO1およびJAW−VCO2は、それぞれ実施の形態1で用いた電圧制御発振器24と同様の構成である。すなわち、それぞれ2つの等価な鋸波発生回路18A、18Bを備え、2つの鋸波発生回路18A、18Bを交互に用いて、放電時間に無関係な連続する鋸波を発生する。
【0052】
また、このA−D変換装置20は、位相差判定回路3と、上位桁算出部であるカウンタ4および第1レジスタ5と、上下桁合成部6と、第2レジスタ7と、第1減算器8と、動作制御回路9と、下位桁算出部たる第3レジスタ10および第2および第3減算器11、12とを備えている。位相差判定回路3、上位桁算出部(カウンタ4および第1レジスタ5)、上下桁合成部6、第2レジスタ7、第1減算器8、動作制御回路9、並びに、下位桁算出部(第3レジスタ10、第2および第3減算器11、12)は、協同してディジタル値算出部として機能する。
【0053】
本実施の形態においても基本的には、実施の形態1のA−D変換装置20と同様、BASE−VCO1から出力されるパルス信号のパルス数をカウンタ4にて計数することにより、ディジタル信号を生成する。BASE−VCO1からの出力信号は、カウンタ4のクロック入力端Tに入力されており、カウンタ4はBASE−VCO1の発振回数を計数することができる。
【0054】
すなわち、BASE−VCO1の電圧制御信号としてアナログ信号たる入力電圧VinがBASE−VCO1に与えられる。そして、入力電圧VinによりBASE−VCO1の周期Tbaseは制御される。
【0055】
入力電圧Vinが高いほどBASE−VCO1が高速動作をするため、その周期Tbaseが小さくなる。周期Tbaseが小さければ、単位時間当たりにBASE−VCO1から出力されるパルス信号のパルス数は多くなる。一方、入力電圧Vinが低いほどBASE−VCO1が低速動作をするため、その周期Tbaseが大きくなる。周期Tbaseが大きければ、単位時間当たりにBASE−VCO1から出力されるパルス信号のパルス数は少なくなる。
【0056】
よって、サンプリングクロック発生部13が生成する所定の期間(=1サンプリング周期)中にBASE−VCO1から出力されるパルス信号のパルス数をカウンタ4にて計数すれば、その計数値の大小がアナログ信号たる入力電圧Vinの大小を示し、計数値そのものがアナログ信号たる入力電圧Vinのディジタル信号への変換値に相当することになる。この計数値を出力すれば、V−F変換を利用したA−D変換が実現できる。なお、A−D変換装置20の分解能はBASE−VCO1の発振周波数とサンプリング周波数とを用いて、A−D分解能=log (BASE−VCO1の発振周波数/サンプリング周波数)として求められる。例えばBASE−VCO1の発振周波数=50[MHz]、サンプリング周波数=44[kHz]の場合、分解能は10bitと算出される。
【0057】
しかし、上記課題にて述べたように、BASE−VCO1のパルス信号をカウントするだけでは、パルス信号に含まれるパルス数がそもそも少ない場合等において、カウンタ4における計数値にほとんど変動が見られず、高精度なA−D変換を行うことができない。
【0058】
より具体的には、例えば入力電圧Vinが4[V]以上5[V]未満のときにBASE−VCO1から1サンプリング周期中に出力されるパルス信号のパルス数が4個であり、入力電圧Vinが3[V]以上4[V]未満のときには1サンプリング周期中のパルス数が3個であるとすれば、入力電圧Vinが4.2[V]であっても4.8[V]であっても、計数されるパルス数は4個とされるし、入力電圧Vinが3.5[V]であっても3.9[V]であっても、計数されるパルス数は3個とされる、ということである。
【0059】
すなわち、パルス数を計数してA−D変換を行う場合、計数するパルス数の小数部分まで区別することができないので、4.2[V]と4.8[V]のようにアナログ電圧において微小な相違を有するにも拘らず、いずれの場合も変換後のディジタル信号においては“4”との数値が出力されてしまうのである。もちろん、V−F変換の変換周波数を高める、すなわち、BASE−VCO1の発振周波数を高める(上記数値例の場合、例えば4[V]以上5[V]未満のときのパルス数を40〜49個のように高める)ことができれば、A−D変換の高精度化は可能である(上記数値例の場合、例えば42個と48個のように区別可能である)。しかし、変換周波数は、回路の製造プロセス条件や許容周波数ジッター値等の制限により、容易に高められるものではない。
【0060】
そこで、本実施の形態では、BASE−VCO1に対して周期差を有するJAW−VCO2を用意し、両VCO出力の位相差を計測してBASE−VCO1の周期Tbase未満のV−F変換値を求める。V−F変換を利用したA−D変換において変換精度を高めるということは、BASE−VCO1から出力されるパルス信号のパルス数では計数しきれない、計数の小数部分を計測するということであり、このパルス数の小数部分計測のために、本実施の形態においてJAW−VCO2を採用するのである。
【0061】
なお、アナログ信号たる入力電圧Vinは、JAW−VCO2の電圧制御信号としても機能する。そして、入力電圧VinによりJAW−VCO2の周期Tjawも制御される。ここで、周期Tbaseと周期Tjawとの比をA:B(A≠B)とすると、このA:Bの比を保ったまま、入力電圧Vinにより周期TbaseおよびTjawの各値は制御される。
【0062】
BASE−VCO1の周期とJAW−VCO2の周期の比を一定に保つには、例えば、図6のように、一方のVCOへの入力を抵抗14および15によって、入力端子21と接地16との電位差を抵抗分割して他方のVCOに入力する。入力の電圧が変化しても、2つのVCOに入力される電圧の比は一定である。VCOの特性が同じであれば、周期比は一定に保たれることになる。その他、増幅回路によって一定の比の入力を生成してもよい。
【0063】
本実施の形態では、出力すべきディジタル信号の上位ビットについては、BASE−VCO1から1サンプリング周期中に出力されるパルス信号のパルス数に基づいて算出する。一方、ディジタル信号の下位ビットについては、ディジタル信号のサンプリング周期を示すサンプリング信号Psの活性化時点からBASE−VCO1のパルス信号の位相とJAW−VCO2のパルス信号の位相とが一致する時点までの間に含まれる、BASE−VCO1またはJAW−VCO2のパルス信号のパルス数に基づいて算出する。
【0064】
周期TbaseおよびTjawを異なる値としておくと、BASE−VCO1およびJAW−VCO2の2つのVCOの発振出力の位相が一定間隔で一致する。この間隔をMとする。BASE−VCO1については、自走によりその出力パルス信号の発振を開始させる。一方、JAW−VCO2については、サンプリング信号Psの活性化に伴って発振開始させる。すなわち、このJAW−VCO2については、サンプリング信号Psの活性化と同時に発振を開始させ、サンプリング信号Psの活性化時点をJAW−VCO2の発振起点とする。
【0065】
図7は、BASE−VCO1のパルス信号とJAW−VCO2のパルス信号との一例を示すタイミングチャートである。図7では、サンプリング信号Psの活性化時点(すなわちJAW−VCO2の発振起点)が、ちょうどBASE−VCO1のあるパルスの立ち上がりと同時であって、また、BASE−VCO1のパルス数9個に対してJAW−VCO2のパルス数が8個となる場合を示している。この場合、周期Tbaseと周期Tjawとの比A:Bは8:9である。
【0066】
また、図8は、BASE−VCO1のパルス信号とJAW−VCO2のパルス信号との他の一例を示すタイミングチャートである。図8でも、サンプリング信号Psの活性化時点(すなわちJAW−VCO2の発振起点)が、ちょうどBASE−VCO1のあるパルスの立ち上がりと同時である場合を示しているが、図8では、BASE−VCO1のパルス数8個に対してJAW−VCO2のパルス数が9個となる場合を示している。この場合、周期Tbaseと周期Tjawとの比A:Bは9:8である。
【0067】
本実施の形態においては、BASE−VCO1とJAW−VCO2との間での周期差を、図7のようにJAW−VCO2の周期Tjawが大きくなるように設定してもよいし、図8のようにBASE−VCO1の周期Tbaseが大きくなるように設定してもよい。ただし、JAW−VCO2の周期TjawをBASE−VCO1の周期Tbaseよりも大きくする方が、両VCO出力の位相差の検出が容易となるので、以下では、図7のように、BASE−VCO1のパルス数9個に対してJAW−VCO2のパルス数が8個となる場合を例に採って、説明を行う。
【0068】
図9は、BASE−VCO1とJAW−VCO2とを用いることで周期Tbase未満のV−F変換値が求められる原理を説明するタイミングチャートである。
【0069】
V−F変換を利用したA−D変換装置20で生成されるべきディジタル値は、サンプリング信号Psの1サンプリング周期内におけるBASE−VCO1からのパルス数の、整数および小数を含めた総パルス数である。図9を参照すれば、サンプリング信号Psの第1番目におけるサンプリング周期内には、サンプリング信号Psの活性化時点(すなわちサンプリング周期内の初頭)からサンプリング周期内のBASE−VCO1の最初のパルス発生(BASE−VCO1の第“2”番目のパルスの立ち上がり時点)までの小数(i)、サンプリング周期内のBASE−VCO1の最初のパルス発生(BASE−VCO1の第“2”番目のパルスの立ち上がり時点)から次のサンプリング周期開始までのBASE−VCO1のパルス数(正の数、ii)、および、サンプリング周期内のBASE−VCO1の最後のパルス発生(BASE−VCO1の第“5”番目のパルスの立ち上がり時点)から次のサンプリング周期開始までの小数(iii)、という3部分が含まれていることが分かる。
【0070】
図9のうち、正の数たるiiの部分については従来技術と同様、BASE−VCO1のパルス数を計数することで求めることができる。一方、本発明では、従来技術では求められなかった図9の小数たるiおよびiiiの部分をも計数可能となる。
【0071】
図9のiの部分は、周期Tbaseと周期Tjawとの周期差をTdiffとすると、例としてTdiff×5の期間となっている。また、iiiの部分は、例としてTdiff×7の期間となっている。なお、周期差Tdiffは、図8に示されているように、Tbase=A×Tdiff=8×Tdiff、および、Tjaw=B×Tdiff=9×Tdiffとの関係を満たしている。よって、図9のiの部分は、周期Tbaseの5/8の期間となっている。また、図9のiiiの部分は、Tdiff×7の期間、すなわち、周期Tbaseの7/8の期間となっている。
【0072】
図9のiないしiiiの部分を全て足せば、その値が1サンプリング周期内におけるBASE−VCO1からのパルス数の、整数および小数を含めた総パルス数となる。すなわち、この値が、より高精度化されたA−D変換値となる。図9における最初のサンプリング周期においては、iの部分=5/8、iiの部分=3、iiiの部分=7/8であるので、iないしiiiの総計は正の数4と小数4/8となる。同様に、図9における二回目のサンプリング周期においては、iの部分=1/8、iiの部分=4、iiiの部分=4/8であるので、iないしiiiの総計は正の数4と小数5/8となる。同様に、図9における三回目のサンプリング周期においては、iの部分=4/8、iiの部分=4、iiiの部分=0/8であるので、iないしiiiの総計は正の数4と小数4/8となる。
【0073】
ここで、最初のサンプリング周期に示したように、iとiiiの部分が小数であっても、両者の合計に桁上がりが発生することがある。この場合、iiの部分だけを用いてパルス数の判定を行うわけにはいかない。そこで、このような桁上がりも含めた計数方法が必要となる。以下に、その方法を説明する。
【0074】
まず、N回目のサンプリングにおいて、iにあたる部分については、N−1回目のサンプリングにおけるiiiの数値を用いて、(1−[iiiの数値])として計算できる。例えば、図9における最初のサンプリング周期においては、iの部分=1−3/8=5/8として計算でき、二回目のサンプリング周期においては、iの部分=1−7/8=1/8として、三回目のサンプリング周期においては、iの部分=1−4/8=4/8として、それぞれ計算できる。
【0075】
そして、N回目のサンプリングにおいて、iないしiiiの総計は、BASE−VCO1のN+1回目のサンプリングにおける計数値にN回目のiiiの部分の小数値を加えた値と、BASE−VCO1のN回目のサンプリングにおける計数値にN−1回目のiiiの部分の小数値を加えた値との差により計算することができる。
【0076】
例えば、図9における最初のサンプリング周期においては、二回目のサンプリング開始時におけるBASE−VCO1の計数値“5”および最初のサンプリング周期におけるiiiの部分の小数値“7/8”の総計から、最初のサンプリング開始時におけるBASE−VCO1の計数値“1”およびその1つ前のサンプリング周期(最初のサンプリングの前なので存在しないが)におけるiiiの部分の小数値“3/8”の総計を差し引くことによって、(5+7/8)−(1+3/8)=4+4/8と計算できる。
【0077】
同様にして、図9における二回目のサンプリング周期においては、三回目のサンプリング開始時におけるBASE−VCO1の計数値“10”および二回目のサンプリング周期におけるiiiの部分の小数値“4/8”の総計から、二回目のサンプリング開始時におけるBASE−VCO1の計数値“5”およびその前のサンプリング周期におけるiiiの部分の小数値“7/8”の総計を差し引くことによって、(10+4/8)−(5+7/8)=4+5/8と計算でき、三回目のサンプリング周期においては、四回目のサンプリング開始時におけるBASE−VCO1の計数値“15”および三回目のサンプリング周期におけるiiiの部分の小数値“0/8” の総計から、三回目のサンプリング開始時におけるBASE−VCO1の計数値“10”およびその前のサンプリング周期におけるiiiの部分の小数値 “4/8”の総計を差し引くことによって、(15+0/8)−(10+4/8)=4+4/8と計算できる。
【0078】
すなわち、1サンプリング周期ごとに、BASE−VCO1の計数値とiiiの部分の小数値とのペアを生成し、N+1回目のペアの値からN回目のペアの値を減じることで、高精度にA−D変換されたディジタル値を生成することができる。そして、このように差分を計算することにより、A−D変換装置20が有する入力電圧に対するディジタル値の変換誤差を低減する効果もある。N+1回目のペアの有する誤差とN回目のペアの有する誤差とが同じ量であるので、減算により誤差が帳消しとなるからである。
【0079】
次に、図9におけるiiiの数値の算出方法について述べる。図9のうち、小数たるiiiの部分を求めるには、サンプリング開始時の直前のBASE−VCO1の活性化時点と、サンプリング開始時点との間の位相差を計測すればよい。
【0080】
例えば、図9におけるサンプリング信号Psの最初の活性化時点は、BASE−VCO1の第“1”番目のパルスの途中に存在する。すなわち、サンプリング信号Psの最初の活性化の直前のBASE−VCO1の活性化時点は、第“1”番目のパルスの発振時点であり、サンプリング信号Psの最初の活性化時点は、BASE−VCO1の第“1”番目のパルスの発振時点より周期Tbaseの3/8の期間だけ遅れた位置に存在する。この3/8との数値は、iの期間たる5/8の補数にあたる。
【0081】
JAW−VCO2は、サンプリング信号Psの活性化と同時に発振を開始するので、サンプリング信号Psの最初の活性化時点において、JAW−VCO2も発振することとなる。図8を参照すると、BASE−VCO1の立ち上がりに対して、JAW−VCO2の立ち上がりが周期Tbaseの3/8の期間だけ遅れた位置に存在するのは、ズレ量“3”と示されたパルスP3である。
【0082】
図8において、この、ズレ量“3”と示されたパルスP3の立ち上がりをJAW−VCO2の発振開始時点とみなせば、パルスP3から、両VCOのパルス信号の位相が一致する時点(ズレ量“8”または“0”と示された時点)までの間に含まれるパルス数は、BASE−VCO1およびJAW−VCO2のいずれにおいても、5個である。この数値は、最初のサンプリング周期におけるiの期間たる5/8の分子“5”に相当する。また、この5/8との数値は、その1つ前のサンプリング周期(最初のサンプリングの前なので存在しないが)におけるiiiの期間たる3/8の補数にあたる。
【0083】
すなわち、サンプリング信号Psの活性化時点からBASE−VCO1およびJAW−VCO2のパルス信号の位相が一致する時点までの間に含まれるBASE−VCO1またはJAW−VCO2のパルス信号のパルス数に基づいて、N+1回目のサンプリングにおけるiの期間、および、N回目のサンプリングにおけるiiiの期間としての、周期Tbase未満の小数部分を計測することができる。
【0084】
図9の最初のサンプリング周期におけるiiiの部分を求めるには、次の第2回目のサンプリング信号Psの活性化時点からBASE−VCO1およびJAW−VCO2のパルス信号の位相一致時点までの間に含まれるBASE−VCO1またはJAW−VCO2のパルス数を計数して、第2回目のサンプリング信号Psにおける小数たるiの部分を上記と同様に求め、1よりその値を差し引けばよい。
【0085】
図9におけるサンプリング信号Psの第2回目の活性化時点は、BASE−VCO1の第“5”番目のパルスの途中に存在する。すなわち、サンプリング信号Psの第2回目の活性化時点は、BASE−VCO1の第“5”番目のパルスの発振時点より周期Tbaseの7/8の期間だけ遅れた位置に存在する。この7/8との数値は、第2回目のサンプリング周期の初頭に位置する小数の期間たる1/8の補数にあたる。
【0086】
JAW−VCO2は、サンプリング信号Psの活性化と同時に発振を開始するので、サンプリング信号Psの第2回目の活性化時点において、JAW−VCO2も発振することとなる。図8を参照すると、BASE−VCO1の立ち上がりに対して、JAW−VCO2の立ち上がりが周期Tbaseの7/8の期間だけ遅れた位置に存在するのは、ズレ量“7”と示されたパルスP7である。
【0087】
図8において、この、ズレ量“7”と示されたパルスP7から、両VCOのパルス信号の位相が一致する時点(ズレ量“8”または“0”と示された時点)までの間に含まれるパルス数は、BASE−VCO1およびJAW−VCO2のいずれにおいても、1個である。この数値は、第2回目のサンプリング周期におけるiの期間たる1/8の分子に相当する。また、この1/8との数値は、その1つ前のサンプリング周期(最初のサンプリング周期)におけるiiiの期間たる7/8の補数にあたる。
【0088】
すなわち、サンプリング信号Psの活性化時点からBASE−VCO1およびJAW−VCO2のパルス信号の位相が一致する時点までの間に含まれるBASE−VCO1およびJAW−VCO2のパルス信号のパルス数を計数することにより、そのパルス数に基づいて、周期Tbase未満の小数部分(N+1回目のサンプリングにおけるiの期間、および、N回目のサンプリングにおけるiiiの期間)を計測することができる。
【0089】
上記を一般的に説明すると、以下のようになる。Tbase:Tjaw=A:Bなので、Tjaw/Tbase=B/A、よってTjaw・A=Tbase・B=Mとなり、JAW−VCO2の出力パルス信号の周期TjawのA周に対して、BASE−VCO1の出力パルス信号の周期TbaseのB周目ごとに、2つのVCOの位相が一致する。
【0090】
JAW−VCO2の出力パルス信号の発振開始が、その直前のBASE−VCO1の出力パルス信号の発振開始よりTdiff・Xだけ遅れた場合を考える。この遅延を伴って、JAW−VCO2の出力パルス信号がX回発振した時、図8を参照すれば、Tjaw・(A−X)+Tdiff・X = Tjaw・A−(Tjaw−Tdiff)・X=Tjaw・A−Tbase・X=Tbase・(B−X)と表せる。よって、両VCOの位相が一致するまでのパルス信号の計数値は、BASE−VCO1の出力パルス信号を用いての計数でB−X、JAW−VCO2の出力パルス信号を用いての計数でA−Xとなる。
【0091】
なお、Tbase=Tdiff・Aより、Xの最大値XmaxはA−1である。X=AとなるとX=0の場合と区別できないからである。最大値Xmaxの値が大きいほど、A−D変換の分解能は高くなる。また、TbaseやTjawの数値例としては例えば、Tbase=32[nsec]、Tdiff=2[nsec]、Tjaw=34[nsec]としたり、Tbase=16[nsec]、Tdiff=2[nsec]、Tjaw=18[nsec]とすればよい。前者の場合はA:B=16:17となり、後者の場合はA:B=8:9となる。
【0092】
次に、図7のA−D変換装置20の動作について、図10を用いて説明する。図10は、本実施の形態に係るA−D変換装置20の動作を示すタイミングチャートである。まず、BASE−VCO1の出力パルス信号は自走により発振し、カウンタ4はその発振数を計数する。図10においては、カウンタ4の計数値が“8”〜“23”まで変化する様子が示されている。
【0093】
JAW−VCO2には、サンプリング信号Psが入力される。そして、JAW−VCO2は、サンプリング信号Psの活性化に伴って発振を開始する。なお、BASE−VCO1の発振出力の周期TbaseとJAW−VCO2の発振出力の周期Tjawとの比A:Bは、図8の場合と同様、8:9とされている。
【0094】
上位桁算出部たるカウンタ4および第1レジスタ5は、サンプリング信号Psのサンプリング周期ごとに、BASE−VCO1の出力パルス信号の発振の開始から現在のサンプリング信号Psの活性化時点までにおけるBASE−VCO1の出力パルス信号のパルス数を上位桁(図7では“上位ビット”と表示)として算出する。具体的には、第1レジスタ5のデータ入力端Dにはカウンタ4の出力が与えられ、第1レジスタ5のクロック入力端Tにはサンプリング信号Psが与えられており、サンプリング信号Psの活性化に伴って、第1レジスタ5はサンプリング信号Psの活性化時点におけるカウンタ4の出力値を保持する。
【0095】
図10においては、カウンタ4の計数値が“10”のときにサンプリング信号Psが活性化しているので、第1レジスタ5には“10”の情報が保持される。すなわち、第1レジスタ5は、1サンプリング周期ごとにサンプリング信号Psの活性化時点におけるカウンタ4のパルス数を保持して、上位桁として出力する。
【0096】
一方、下位桁算出部たる、第3レジスタ10並びに第2および第3減算器11、12は、サンプリング周期ごとに、現在のサンプリング信号Psの活性化時点からBASE−VCO1およびJAW−VCO2の出力パルス信号の位相が一致する時点までの間に含まれる、BASE−VCO1の出力パルス信号のパルス数に基づいて、BASE−VCO1の出力パルス信号のサンプリング周期内の最後のパルスからサンプリング周期の終点までの位相差(すなわち図9のiiiの部分)を、下位桁(図7では“下位ビット”と表示)として算出する。
【0097】
位相差判定回路3は、BASE−VCO1およびJAW−VCO2の出力パルス信号の立ち上がりの位相の一致を検出し、検出時にその出力を活性化させる回路である。位相差判定回路3は、一般的なS−R(Set-Reset)フリップフロップ回路にて構成される。また、動作制御回路9は、サンプリング信号Psの活性化に伴ってその出力S1を活性化し、位相差判定回路3におけるBASE−VCO1およびJAW−VCO2の出力パルス信号の位相一致検出に伴って、その出力S1を非活性化する回路である。動作制御回路9も、一般的なS−Rフリップフロップ回路にて構成される。
【0098】
第3レジスタ10のデータ入力端Dにはカウンタ4の出力が与えられ、第3レジスタ10のクロック入力端TにはBASE−VCO1の出力パルス信号が与えられている。また、第3レジスタ10のイネーブル入力端enableには、動作制御回路9からの出力S1が与えられる。
【0099】
第3レジスタ10は、イネーブル入力端enableにおける信号がHiからLowへと切り替わった時にワンショット的に動作可能となり、かつ、BASE−VCO1の出力パルス信号の発振に伴って、第3レジスタ10はBASE−VCO1の出力パルス信号の立ち上がり時点におけるカウンタ4の出力値を保持する。
【0100】
図10においては、JAW−VCO2の出力パルス信号の発振開始が、その直前のBASE−VCO1の出力パルス信号の発振開始よりTdiff・Xだけ遅れたときの各場合(X=0〜7)を、Delay0〜Delay7として示している。
【0101】
いま、X=4とすると、カウンタ4の計数値が“15”のときに、BASE−VCO1およびJAW−VCO2の出力パルス信号の立ち上がりの位相が一致する。よって、このときBASE−VCO1の出力パルス信号は立ち上がり、かつ、イネーブル入力端enableにおける信号S1がHiからLowへと切り替わるので、第3レジスタ10は、カウンタ4の出力するパルス数“15”を保持する。
【0102】
下位桁算出部の他の構成要素たる第2減算器11は、第3レジスタ10に保持された計数値“15”から第1レジスタ5に保持された計数値“10”を差し引く。よって、第2減算器11の出力値は、この場合、15−10=“5”となる。なお、第2減算器11の出力値は、Delay0〜Delay7の各場合に応じて変動し、例えばDelay0の場合は第3レジスタ10での保持値が“19”となるため、その値は19−10=“9”となり、Delay7の場合は第3レジスタ10での保持値が“12”となるため、その値は12−10=“2”となる。
【0103】
そして、下位桁算出部の他の構成要素たる第3減算器12は、所定の数値“9”(この“9”との数値は、比A:B=8:9の“9”からである)から第2減算器11で算出された値“5”を差し引く。よって、第3減算器12の出力値は、X=4の場合、9−5=“4”となる。この第3減算器12の出力値が、BASE−VCO1の出力パルス信号のサンプリング周期内の最後のパルスからサンプリング周期の終点までの位相差(すなわち図9のiiiの部分)、すなわち下位桁となる。
【0104】
なお、第3減算器12の出力値は、Delay0〜Delay7の各場合に応じて変動し、例えばDelay0の場合は第2減算器11の値が“9”となるため、その値は9−9=“0”となり、Delay7の場合は第2減算器11の値が“2”となるため、その値は9−2=“7”となる。
【0105】
上下桁合成部6は、第1レジスタ5から出力される上位桁の情報、および、第3減算器12から出力される下位桁の情報を合成して、合成値を生成する。具体的には、上下桁合成部6は例えばシフトレジスタで構成され、その下位ビット側に下位桁の情報を保持し、その上位ビット側に上位桁の情報を保持する。この下位ビット側が、図9のiiiの部分の小数値に相当し、上位ビット側が、図9のサンプリング信号Ps活性化時点でのBASE−VCO1の計数値に相当する。
【0106】
図10においてX=4の場合、上位桁は“10”であり、下位桁は“4”であるため、上下桁合成部6における合成値は“10+4/8”となる。この合成値が、サンプリング信号Psの活性化時に第2レジスタ7に保持される。
【0107】
第2レジスタ7のデータ入力端Dには上下桁合成部6の出力が与えられ、第2レジスタ7のクロック入力端Tにはサンプリング信号Psが与えられており、サンプリング信号Psの活性化に伴って、第2レジスタ7は、N回目のサンプリング時における合成値“10+4/8”を保持する。なお、合成値“10+4/8” の保持前は、第2レジスタ7にはN−1回目のサンプリング時における合成値として“5+7/8”の情報が保持されている。これらの値は、図9における二回目のサンプリング周期における各数値に対応している。
【0108】
そして、第1減算器8は、現在より一つ前のサンプリング周期(N−1回目のサンプリング周期)における第2レジスタ7の保持値“5+7/8”と、現在の合成値“10+4/8”との差分値“4+5/8”を、上位ビットおよび下位ビットで構成されるディジタル信号として出力する。
【0109】
なお、サンプリング周期内のBASE−VCO1の最後のパルス発生から次のサンプリング周期開始までの小数(iii)を、BASE−VCO1とJAW−VCO2の周期が最後に一致した時点から次のサンプリング周期開始までの、BASE−VCO1またはJAW−VCO2のパルス数で計測してもよい。2つのVCOの周期が最後に一致した時点からのパルス数によって、最後のパルスの位相差を知ることができる。また、次のサンプリング周期開始と、2つのVCOのパルスのいずれかとが一致するとは限らない。サンプリング周期開始とVCOのパルスの差は、量子化誤差である。
【0110】
本実施の形態においては、A:Bの比を保ったまま、入力電圧VinによりBASE−VCO1の周期TbaseおよびJAW−VCO2の周期Tjawの各値が制御される。2つのVCOのアナログ入力電圧Vinに対する感度が例えば1次式であれば、両VCOの周期差Tdiffの感度もまた1次式である。そして、この周期差Tdiffが、下位ビットの最小分解能に相当する。アナログ入力電圧Vinに応じて周期Tbaseの幅は変化するが、周期差Tdiffの幅も同じ感度で変化するため、Tbase/Tdiffの値はアナログ入力電圧Vinの値に関わらず一定となり、下位ビットの分解能はアナログ入力電圧Vinに関わらず一定となる。
【0111】
(実施の形態の変形例1)
実施の形態1および2で用いた電圧制御発振器24の動作について、図5で示すように、入力VLと定電圧源35の電圧VHとの間で振動する鋸波を生成するように説明したが、実際は、コンパレータ36とT−フリップフロップ37などのスイッチング時間だけ、鋸波形はオーバーシュートまたはアンダーシュートする。一般に、オーバーシュートまたはアンダーシュートの時間は入力電圧に比例しないので、電圧−周波数特性はそれだけ直線から偏差を生じることになる。したがって、スイッチングの時間は短いことが望ましい。
【0112】
そこで、変形例1としてスイッチングにかかわる回路、特にフリップフロップの反転回路に、Nチャンネルトランジスタのシングル構成の反転回路を用いる。図11は、反転回路の構成の一例を示す回路図である。一般には反転回路(インバータ回路)として、PチャンネルのトランジスタとNチャンネルのトランジスタを用いるCMOS(Complementary MOS)インバータ回路が使用されることが多い。図11に示す回路は、CMOSインバータのPチャンネルトランジスタに代えて抵抗Rを用いる構成である。
【0113】
入力IがグランドGに対して高電位のときは、トランジスタNがオンになってソース−ドレイン間が導通し、抵抗Rの電流による電圧降下で出力Oは低電位になる。入力Iが低電位のときは、トランジスタNがオフで導通せず、出力Oは電源電圧VDDに近い高電位になる。すなわち、出力Oは入力Iの反転になっている。
【0114】
Nチャンネルトランジスタのシングル構成によると、トランジスタNのキャリアは電子のみであり、移動度が大きく、スイッチング動作が速い。その結果、図2および図3のいずれの電圧制御発振器24においても、2つの鋸波生成回路の切替に要する時間を短くできる。
【0115】
(実施の形態の変形例2)
図12は、電圧制御発振器24の異なる例を示すブロック図である。図12の電圧制御発振器24では、充放電動作を行うコンデンサと放電電圧端子との間にコンデンサと直列に、補償用のトランジスタ40A、40Bを備える。前述のとおり、鋸波のピーク電圧(VH)では、スイッチング時間だけオーバーシュートする。オーバーシュートする時間に相当する電圧だけ、コンデンサの基準電位を高くしておくと、充電時間がそれだけ短縮されるので、オーバーシュートの時間と相殺して、電圧−周波数特性を補償することができる。
【0116】
補償用のトランジスタ40A、40Bは、スイッチング時間をちょうど補償するように設定する。なお、図12の回路についても、図11のNチャンネルトランジスタのシングル構成の反転回路を用いてもよい。図12の回路では、図2の電圧制御発振器24を例に補償用のトランジスタ40A、40Bを備える構成を示すが、図3の電圧制御発振器24についても同様に、補償用トランジスタ40A、40Bを備えても同様の効果を得る。
【0117】
(実施の形態の変形例3)
図13は、電圧制御発振器24の異なる例を示すブロック図である。図13は、2つの鋸波発生回路18A、18Bを左右対称に記載している。2つの鋸波発生回路18A、18Bは、図1の電圧制御発振器24と同じである。図13の回路では、鋸波のピーク電位(VH)はトランジスタ41A、41Bのスイッチング電圧で決定される。反転回路42と43は、反転回路ループを構成している。図2のT−フリップフロップ37に代えて、反転回路ループを用いる。
【0118】
コンデンサ32A、32Bの端子電圧V1、V2がトランジスタ41A、41Bのスイッチング電圧(VH)より高くなると、トランジスタ41A、41Bが導通して反転回路ループの端子を低電位にするので、反転回路ループの両側の電位が切り替わる。反転回路44、45、46、47は、スイッチ31A、31BおよびAND回路39A、39Bを駆動するためのものである。反転回路ループの両側は、図2におけるT−フリップフロップ37の出力QおよびnotQに相当する。図13の回路のコンパレータとAND回路の構成は、図2と同じである。
【0119】
図13の回路では、フリップフロップが反転回路ループでゲート数が少なく、スイッチング動作が速い。そのため、2つの鋸波発生回路18A、18Bの切替動作が速くなる。その結果、電圧制御発振器24の電圧−周波数特性の直線性が向上するのである。コンデンサ32A、32Bに充電する電流を入力電圧に比例して変化させる回路について、反転回路ループを用いる構成は図3に示すとおりである。
【0120】
図13の回路においても、反転回路にNチャンネルトランジスタのシングル構成を用いると、さらにスイッチング動作を速くする効果がある。またさらに、コンデンサと放電電圧端子との間に、補償用のトランジスタ40A、40Bを備えてもよい。
【0121】
なお、各実施の形態で説明したA−D変換装置20の回路構成は一例であり、任意に変更および修正が可能である。電圧制御発振回路13Aないし13C等の構成は、実施の形態で示したものがすべてではなく、これらに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】本発明の実施の形態1に係るA−D変換装置の構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態1に係る電圧制御発振器の構成の例を示すブロック図である。
【図3】実施の形態1に係る電圧制御発振器の異なる構成の例を示すブロック図である。
【図4】2つの電圧制御発振器の鋸波の違いを示す図である。
【図5】実施の形態1に係るパルス信号生成の例を示すタイムチャートである。
【図6】本発明の実施の形態2に係るA−D変換装置の構成を示すブロック図である。
【図7】BASE−VCOのパルス信号とJAW−VCOのパルス信号との一例を示すタイミングチャートである。
【図8】BASE−VCOのパルス信号とJAW−VCOのパルス信号との他の一例を示すタイミングチャートである。
【図9】VCOの周期未満のV−F変換値が求められる原理を説明するタイミングチャートである。
【図10】実施の形態2に係るA−D変換装置の動作を示すタイミングチャートである。
【図11】反転回路の構成例を示す回路図である。
【図12】補償用トランジスタを用いる場合の電圧制御発振器の構成例を示すブロック図である。
【図13】反転回路ループのフリップフロップを備える電圧制御発振器の構成例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0123】
1 BASE−VCO
2 JAW−VCO
3 位相差判定回路
4 カウンタ
5 第1レジスタ
6 上下桁合成部
7 第2レジスタ
8 第1減算器
9 動作制御回路
10 第3レジスタ
11 第2減算器
12 第3減算器
13 サンプリングクロック発生部
14、15 抵抗
16 接地
17 電圧−電流アンプ
18A、18B 鋸波発生回路
19 スイッチ回路
20 A−D変換装置
21 入力端子
22 出力端子
23 サンプリングクロック発生部
24 電圧制御発振器
25 カウンタ
26 レジスタ
27 入力端子
28 出力端子
29 電流源
30 パルス発生器
31A、31B スイッチ(充電)
32A、32B コンデンサ
33A、33B スイッチ(放電)
34 接地
35 定電圧源
36 コンパレータ
37 T−フリップフロップ
38A、38B コンパレータ
39A、39B AND回路
40A、40B 補償用トランジスタ
41A、41B トランジスタ
42、43 反転回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの等価な鋸波発生回路と、
その2つの鋸波発生回路を交互に切り替えるスイッチ回路と、
を含む電圧制御型発振器を有する、
電圧−周波数変換回路を備えることを特徴とするA−D変換装置。
【請求項2】
前記電圧−周波数変換回路は、
第1の周期で発振する第1の周期信号を出力する第1の前記電圧制御型発振器と、
前記第1の周期と異なり、かつ、前記第1の周期と一定の比を保つ第2の周期で発振する第2の周期信号を出力する第2の前記電圧制御型発振器と、
を備え、
前記第1の電圧制御型発振器は、自走により前記第1の周期信号の発振を開始し、
前記第2の電圧制御型発振器は、A−D変換のサンプリング周期を示すサンプリング信号の活性化を契機として、前記第2の周期信号の発振を開始し、
前記サンプリング周期内に含まれる前記第1の周期信号の波数に基づいて、入力であるアナログ信号に対応するディジタル信号の上位ビットを算出する上位ビット算出手段と、
前記サンプリング信号の活性化時点から前記第1および第2の周期信号の位相が一致する時点までの間に含まれる前記第1または第2の周期信号の波数に基づいて、前記ディジタル信号の下位ビットを算出する下位ビット算出手段と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載のA−D変換装置。
【請求項3】
前記第1および第2の電圧制御型発振器の入力電圧をそれぞれ、同一の電圧を抵抗分割した電圧で与えることを特徴とする請求項2に記載のA−D変換装置。
【請求項4】
前記2つの鋸波発生回路を有する電圧制御型発振器において、前記スイッチ回路は、Nチャンネルトランジスタのシングル構成の反転回路を用いるフリップフロップから構成されることを特徴とする請求項1に記載のA−D変換装置。
【請求項5】
前記2つの鋸波発生回路を有する電圧制御型発振器において、鋸波電圧の基準電圧と比較した結果に応じて充放電動作を行うコンデンサと放電電圧端子との間に前記コンデンサと直列に、補償用のトランジスタを備えることを特徴とする請求項1に記載のA−D変換装置。
【請求項6】
前記2つの鋸波発生回路を有する電圧制御型発振器において、前記スイッチ回路は、反転回路ループのフリップフロップを備えることを特徴とする請求項1に記載のA−D変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−118362(P2009−118362A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−291472(P2007−291472)
【出願日】平成19年11月9日(2007.11.9)
【出願人】(300034529)株式会社フュートレック (16)
【Fターム(参考)】