説明

ATM用サーバのMIB統合管理方法

【課題】 ATMスイッチ本体のCPU処理にかかる負荷を低減させ、SNMP以外の他の機能の処理能力に与える影響を最小限に抑える。
【解決手段】 同一ATMスイッチ装置内に複数のサーバを搭載し、ネットワーク管理システム(NMS)11からATMスイッチ12に対してSNMP手順によって、サーバの管理情報ベースにアクセスする場合において、複数のサーバの中の一つをマスターサーバ13、その他をスレーブサーバ14a、14b・・・に設定し、ATMスイッチ12からSNMP手順によってマスターサーバに対して代表してアクセスし、マスターサーバからその他のスレーブサーバへはVC(仮想コネクション)にてアクセスする。ATMスイッチとマスターサーバ間の通信にはPVCを用い、マスターサーバとスレーブサーバとの通信にはSVCを用いる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、非同期転送モード(Asynchronous Transfer Mode:以下「ATM」と記す)ネットワークを利用して、ATMセルを送受信する装置において、複数のATM通信用サーバに備えられたMIB(Management Information Base)を統合的に管理する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来技術には、次のような問題点があった。第1の問題点は、同一ATMスイッチ装置内に、様々なATM通信用サーバモジュールを搭載する環境において、ATMスイッチ本体がすべてのサーバモジュールとの間でSimple Network Management Protocol(SNMP)通信を行うと、ATMスイッチ本体のCPUの処理に高負荷がかかってしまい、SNMP以外の他の処理に悪影響を与えてしまう点である。
【0003】第2の問題点は、同一ATMスイッチ装置内に、様々なATM通信用サーバモジュールを搭載する環境において、ATMスイッチ本体のCPUとサーバのCPUの間のSNMP通信に、ローカルプロセッサ通信を用いると、ローカルプロセッサ通信にかかるトラフィックの負荷が増大し、SNMP通信以上に重要な通信、例えば実装状態管理や装置障害管理の通信に悪影響を与える点である。
【0004】第3の問題点は、仮に上記の第2の問題点が解決され、仮想コネクション(Virtual Connection:以下「VC」と記す)通信によりSNMP通信を行う場合にしても、すべてのVCを相手固定接続(Permanent Virtual Connection:以下「PVC」と記す)にしてしまうと、常時必要なVCリソースが消費され、リソースの無駄が多いという点である。
【0005】第4の問題点は、ATMスイッチにSNMPインタフェースが実装され、サーバモジュールにMIB取得インタフェースが実装されることで、サーバモジュールのアプリケーションMIBに追加/変更が行われる度に、ATMスイッチのSNMPインタフェースにも追加/変更が必要となる密結合システムであった点である。
【0006】一方、特開平7−226777号公報及び特開平7−319793号公報には、階層的にネットワークを管理する方法として、統合マネージャとサブマネージャとエージェントとをネットワーク上に別装置として分散配置し、マネージャとエージェント間の通信をSNMPにて行う方法が開示されているが、これは、SNMPを用いてはいるが、ネットワークを介して外部装置間でSNMP通信を行うものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、同一ATMスイッチ装置内に複数のサーバを搭載し、ネットワーク管理システムからATMスイッチに対してSNMP手順によって、サーバの管理情報ベースにアクセスする場合において、ATMスイッチ本体のCPU処理にかかる負荷を低減させ、SNMP以外の他の機能の処理能力に与える影響を最小限に抑えることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、同一ATMスイッチ装置内に複数のサーバを搭載し、ネットワーク管理システム(Network Management System:以下「NMS」と記す)からATMスイッチに対してSNMP手順によって、サーバのMIB(Management Information Base)にアクセスする方法において、複数のサーバの中の一つをマスターサーバ、その他をスレーブサーバに設定し、ATMスイッチからSNMP手順によってマスターサーバに対して代表してアクセスし、マスターサーバからその他のスレーブサーバへはVCにてアクセスすることを特徴とする。
【0009】ATMスイッチとマスターサーバ間のSNMP通信はVCにて行う。この場合、ATMスイッチとマスターサーバ間の通信にはPVC(Permanent Virtual Connection)を用い、マスターサーバとスレーブサーバとの通信にはSVC(Switched Virtual Connection)を用いる。
【0010】マスターサーバとスレーブサーバとのSVCによるセットアップにおいて、スレーブサーバがタイマを起動させてその設定時間にてリトライする。
【0011】マスターサーバにおいて、スレーブサーバの管理にインデックス情報を用い、マスター・スレーブ間でインデックス更新通知/応答を行う。インデックス収集フェーズにおいては、スレーブサーバからマスターサーバへのインデックス更新の際に、応答のタイムアウト監視を行う。インデックス更新応答がタイムアウトした場合は、インデックス更新通知の再送処理を行う。
【0012】SNMP動作フェーズにおいて、ATMスイッチ本体がマスターサーバと通信する際に、Get/Set共通関数を用いて、MIBグループ単位で通信する。また、SNMP動作フェーズにおいて、ATMスイッチとマスターサーバ間、およびマスターサーバとスレーブサーバ間で、Get/Set応答のタイムアウト監視を行う。
【0013】マスターサーバ障害時に、ATMスイッチ本体が自動的に障害を検出してスレーブサーバに伝え、マスター・スレーブ動作を停止する。また、スレーブサーバ障害時に、ATMスイッチ本体が自動的に障害を検出してマスターサーバに伝え、マスターサーバが管理しているスレーブインデックス番号の登録を削除する。
【0014】本発明の特徴を図を参照して概説すると、図2において、NMS11からATMスイッチ12に対して、Simple Network Management Protocol(SNMP)の手順によって、サーバのMIBへのアクセス(S21)が行われる場合に、ATMスイッチ12から配下の全てのサーバへSNMPアクセスするのではなく、マスターサーバ13に対して代表してアクセス(S22)し、マスターサーバ13からその他のスレーブサーバ14へアクセスする。また、ATMスイッチ12とマスターサーバ13間、および、マスターサーバ13とスレーブサーバ14間のSNMP通信には、図4の4B、4D、図5の5C、5Fに示す通り、VCによる接続を用い、ATMスイッチ12とサーバのローカルプロセッサ間通信を使用しない。
【0015】これにより、ATMスイッチ本体にかかる負荷が低減し、SNMP以外の他の機能の処理能力に与える影響を最小限にとどめることが可能となる。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施例を図面により説明する。図1は、本発明の前提となる機器構成例を示している。本構成例は、ネットワーク管理システム(Network Management System:以下「NMS」と記す)11と、ATMスイッチ12と、複数のATM通信用サーバとを含む。このATM通信用サーバは、MIB(Management Information Base)管理上の役割に応じてマスターサーバ13と、スレーブサーバ14に分類でき、複数あるスレーブサーバはそれぞれ14a〜14dとして表してある。
【0017】NMS11は、SNMP(Simple Network Management Protocol)の手順によって、ATMスイッチ12とサーバ13、14に搭載されているMIBにアクセスし、管理用のデータを書き込んだり、読み出したりする。サーバ13、14はATMスイッチ12の装置内に搭載され、NMS11からサーバ13、14へのアクセスは全て、ATMスイッチ本体12のSNMPインタフェース経由で行われる。
【0018】ここで、ATM通信用サーバの種類は本発明で規定するところではないが、下記のようなものを想定している。
(1) ATM Forum "LAN Emulatin Over ATM Version 2" (AF-LANE-0084.000)
LAN Emulation Server(LES)
LAN Emulation Configuration Server(LECS)
Broadcast and Unknown Server(BUS)(2) ATM Forum "Multi-Protocol Over ATM Version 1.0" (MPOA: AF-MPOA-0087.000)MPOA Server(MPS)
Next Hop Server(NHS)
(3) IETF "Classical IP and ARP over ATM" (RFC1577)ARP Server
【0019】この他、ATM通信を実現するための、クライアント・サーバ方式における「サーバ」は全て本発明の適用範囲内とする。
【0020】次に、図2を用いて、各構成機器間のSNMP通信の概要について説明する。NMS11からサーバのMIBに対してSNMPの手順によるアクセスをする際、MIBに対するデータ読み出しはGet Request、データ書き込みはSet Requestメッセージ(S21)を、まずATMスイッチ12に対して送信する。ATMスイッチ12は、この要求をマスターサーバ13に転送する(S22)。要求を受信したマスターサーバ13は、第1のスレーブサーバ(14a)に対してGet/Set Request(S23)を送信し、返答としてGet/Set Response(S24)を受信する。
【0021】続いてマスターサーバ13から、第2のスレーブサーバ(14b)に対してGet/Set Request(S25)を送信し、返答としてGet/Set Response(S26)を受信する。この際、ATMスイッチ本体12とスレーブサーバ14の間でSNMPメッセージを直接やりとりすることはない。スレーブサーバ14の返答をすべて受信したマスターサーバ13は、その返答をまとめてATMスイッチ12へ送信し(S27)、最終的にNMS11へ送信される(S28)。
【0022】マスターサーバ13とスレーブサーバ14の間の通信は、ATMスイッチ本体12の情報処理能力に影響を与えないために、VC(Virtual Connection)による通信を採用する。また、サーバの搭載状況やモジュール数は変動するため、あらかじめVCを固定的に設定しておくことはできない。
【0023】したがって、SVC(Switched Virtual Connection)により、サーバ間の通信の必要性に応じてVCを確保する。サーバ間でSVCを設定するためには、ATMシグナリング手順(ATM Forum "ATM User-Network Specification Version3.1"他)を用いる必要があり、そのために、マスターサーバ13とスレーブサーバ14にそれぞれシグナリング終端用のATMアドレスを割り当てなければならない。
【0024】図3は、マスターサーバ13とスレーブサーバ14に対するATMアドレスの割当て方法を表している。管理コマンドによって「マスター設定」をサーバに対して行うと、図3(a)のように、Network Prefix(NP)部はATMスイッチと同様の13バイト、End System Identifier(ESI)部は製造者識別番号4バイト+"ffff"固定の計6バイト、セレクタ(SEL)部は"ff"固定1バイトをそれぞれ割り当てる。これに対し、管理コマンドによって「スレーブ設定」をサーバに対して行うと、図3(b)のように、NP部はATMスイッチおよびマスター設定と同様の13バイト、ESI部はサーバのハードウェア固有のMACアドレス(IEEE LAN SpecificationsのMedia Access Control protocol)6バイト、SELはATMスイッチ装置内における該当サーバの実装位置(スロット番号やモジュール番号など)1バイトを割り当てる。
【0025】マスターサーバ13のATMアドレスは、スレーブサーバ14から見ると固定的に決定しているため、シグナリング手順はスレーブサーバ14側からのSETUP要求で始まる。また、スレーブサーバ14が複数モジュール存在しても、MACアドレスと実装位置がユニークに割り当てられているため、同一ATMアドレスが割り当てられることがない仕組みである。マスターサーバ13における全スレーブサーバ14のMIBの一元管理は、このSVCによる1対多の双方向通信により実現される。
【0026】以上のように、マスターサーバ13が、全スレーブサーバ14のMIB管理を、統合的に行えるような構成になっている。
【0027】次に、図面を参照して本実施例の動作について詳細に説明する。
1. 初期化フェーズ初期化フェーズでは、ATMスイッチ本体12とマスターサーバ13間、マスターサーバ13とスレーブサーバ14間のVCを確立し、それぞれの間でSNMP通信を行うための準備をする。
【0028】1.1 コマンド設定による初期化図4を用いて説明する。いま、ATMスイッチ12にサーバが2つ搭載されており、一方をマスターサーバ13、他方をスレーブサーバ14として設定する。管理者がコマンドによって「MASTER設定」を行うと、その設定がマスターサーバ13の設定データ(実装位置情報)としてATMスイッチ本体12に保存される(4A)。この設定データを以下「局データ」と呼ぶ。局データが設定されると、ATMスイッチ12からマスターサーバ13に対して、プロセス間通信でMASTER指示(S41)が送信され、マスターサーバ13は自身がマスターとして動作することを知る。その後、ATMスイッチ12とマスターサーバ13間にPVC(Permanent Virtual Connection)(4B)を確立し、SNMP通信に備える。
【0029】その後、マスターサーバ13は、図3(a)で示した自身のATMアドレスを、ATMスイッチ12にダイナミックルーティング登録(S42)する。このダイナミックルーティング情報は、後程スレーブ側からSVC(Switched VirtualConnection)確立のためのSETUPメッセージをマスター側へ転送するために必要となる。この時点でマスターサーバ13は、スレーブサーバ14からのSETUP待ちとなる。
【0030】管理者がコマンドによって「SLAVE設定」を行うと、その設定がスレーブサーバ14の局データ(実装位置情報)としてATMスイッチ本体12に保存され(4C)、プロセス間通信でSLAVE指示(S43)がスレーブサーバ14へ送信される。SLAVE指示を受けたスレーブサーバ14では、ATMスイッチ12経由でマスターサーバ13へT1[sec]周期でSETUPを送信(S44)し、マスターサーバ13へSVCを確立できるまで再試行(S47)する。
【0031】スレーブサーバ14は、図3(b)で示したATMアドレスを用い、マスターサーバ13の宛先ATMアドレスに対してダイナミックルーティングによってSETUPが送信される。SVC確立のシグナリング手順に成功すると、マスターサーバ13に対してConnect Indication(S45)を通知し、SVC要求元のスレーブサーバ14に対してSet Response(OK)(S46)を返送することにより、SVCが確立する(4D)。
【0032】1.2 Power-On再開、またはサーバ挿入による初期化図5を用いて、ATMスイッチ装置全体の電源投入時や、ATMスイッチ運用中のサーバモジュール挿入の初期化処理を説明する。
【0033】マスターサーバ13が起動し、再開処理(5A)が完了すると、ATMスイッチ12に対してUP通知(S51)を行う。ATMスイッチ12は、UP通知送信元のサーバの局データを展開し(5B)、マスターサーバ13であることがわかると、MASTER指示(S52)を行う。以下は「コマンド設定による初期化」と同様に、PVC確立(5C)とダイナミックルーティング登録(S53)が行われる。
【0034】同様に、スレーブサーバ14が起動し、再開処理(5D)が完了すると、ATMスイッチ12に対してUP通知(S54)を行う。ATMスイッチ12は、UP通知送信元のサーバの局データを展開し(5E)、スレーブサーバ14であることがわかると、SLAVE指示(S55)を行う。以下は「コマンド設定による初期化」と同様に、SETUP(S56)、Connect Indication(S57)、Set Response(OK)(S58)のやりとりを経て、SVCが確立される(5F)。
【0035】なお、サーバ起動時に、マスターとスレーブの局データ設定がまだ存在しない場合には、管理者によるコマンド入力によって初めて、図4と同様の初期化処理が行われる。
【0036】2. インデックス収集フェーズマスターサーバ13は、その管理下にある全てのスレーブサーバ14のインデックスを管理する。図6のように、スレーブサーバ14上のアプリケーション(以下「APL」と記す)に対するコマンド投入による設定データ追加/削除や、APL動作にともなう状態遷移によるMIBの追加/削除時には、マスターサーバ13へインデックス更新通知(S61)し、同期させる必要がある。インデックス更新通知を受けたマスターサーバ13はインデックス更新(6A)し、スレーブサーバ14へインデックス更新応答(S62)を返す。
【0037】図7は、スレーブサーバ14に、LAN Emulation Server(LES)が搭載されているときの例である。スロット番号5と2にスレーブサーバモジュールが搭載されており、2つのモジュール上にLESのMIBエントリ"lesConfEntry"が合計5個存在する。これら5個のMIBに対して、インデックス番号1〜5が割り当てられている。
【0038】2.1 再開時のインデックス更新図8を用いて、スレーブサーバ再開時のインデックス更新について説明する。ここでは、動作説明のため、スレーブサーバ14をスレーブタスク15とAPL16に分ける。スレーブサーバ14が再開(8A)すると、スレーブタスク15からAPL16に対してインデックス通知要求(S81)を送る。APL16は、この後インデックス更新が完了するまで、MIB登録/削除処理ルーチン(8B)に入る。APL16からスレーブタスク15にインデックス通知(S82)が送られると、スレーブタスク15はフレーム生成(8C)を行い、マスターサーバ13へインデックス更新通知(S83)を送る。マスターサーバ13でインデックス更新が完了すると、スレーブタスク15に対してインデックス更新応答(S84)を送信し、さらにスレーブタスク15からAPL16へRETURN(S85)が送られる。
【0039】S82からS85までの処理は、APL16上に存在する全インデックス番号分繰り返し処理され、完了すると、MIB登録/削除処理ルーチン(8B)が終了する。
【0040】2.2 APLコマンドによるインデックス更新図9を用いて、APLコマンドによるインデックス更新について説明する。スレーブサーバ14のAPL16に対して、管理者がコマンド入力により設定追加/削除(S91)を行うと、MIB登録/削除処理ルーチン(9A)が起動する。この後は、前述した図8の8B以降の処理と同様にインデックス更新が行われる。(図9の9A、S92〜S95)
【0041】2.3 APL状態遷移によるインデックス更新図10を用いて、APL状態遷移によるインデックス更新について説明する。スレーブサーバ再開や、APLコマンド入力以外の要因により、スレーブサーバ14のAPL16の状態に変化が起こり、スレーブサーバ登録状態を更新する必要がある場合は、この処理が行われる。APL16の状態が遷移(10A)すると、MIB登録/削除処理ルーチン(10B)が起動する。この後は、図8の8B以降および図9の9A以降の処理と同様にインデックス更新が行われる。(図10の10B、S101〜S104)
【0042】2.4 インデックス更新タイマー監視スレーブサーバ14がマスターサーバ13に対して、インデックス更新通知を送信すると、インデックス更新応答が返送されてくるまで、スレーブサーバ14のスレーブタスク15は応答待機状態となる。インデックス更新通知の時点からある特定時間経っても更新応答がない場合は、マスター側の障害と判断できるように、タイムアウト監視処理を設ける。
【0043】2.4.1 正常処理図11を用いて、インデックス更新タイマー監視の正常処理について説明する。スレーブタスク15が、APL16からインデックス通知(S111)を受信すると、スレーブタスク15上では、スレーブタスク処理(11A)が起動する。インデックス更新フェーズで説明した通り、スレーブタスク15は、フレーム生成(11B)を行い、マスターサーバ13にインデックス更新通知(S112)を行う。スレーブタスク15上では、タイムアウト監視(11C)がスタートし、規定時間T2[sec]内にインデックス更新応答(S113)が受信できるか監視する。受信すると、インデックス更新が正常に処理されたとみなし、タイムアウト監視(11C)を解除し、APL16に対してRETURN(S114)を送信する。
【0044】2.4.2 タイムアウト処理図12を用いて、インデックス更新タイマー監視のタイムアウト処理について説明する。正常処理の時と同様、スレーブタスク15が、APL16からインデックス通知(S121)を受信すると、スレーブタスク処理(12A)が起動し、フレーム生成(12B)を行い、マスターサーバ13にインデックス更新通知(S122)を行う。スレーブタスク15上では、タイムアウト監視(12C)がスタートし、規定時間T2[sec]内にインデックス更新応答が受信できるか監視する。T2[sec]経過後、更新応答未受信であれば、再送処理(12D)を行い、インデックス更新通知を再送(S123)する。再送は決められた回数n回行われる。
【0045】なお、最終回の再送後T2[sec]経過しても更新応答が受信できない場合は、マスターサーバ13において何らかの障害や処理遅延が発生したものとみなし、APL16へタイムアウトのRETURN(S124)を送信し、APL16に対してインデックス更新が失敗したことを通知する。この時点でタイムアウト監視(12C)を解除する。
【0046】タイムアウト監視解除後に、S125のようにインデックス更新応答を受信した場合は、無効とみなされ、スレーブタスク15においてフレームが破棄される。
【0047】3. SNMP動作フェーズNMS11、ATMスイッチ本体12、マスターサーバ13、スレーブサーバ14それぞれの間のメッセージのやりとりは、SNMPのプロトコルに従って行われる。以下でSNMP動作フェーズの正常処理とタイムアウト処理の説明を行う。
【0048】3.1 正常処理図13を用いて、SNMP動作フェーズの正常処理について説明する。ATMスイッチ12では、SNMPエージェントが管理している管理オブジェクトのインスタンス値に対するGet要求やSet要求(S131)がNMS11からあった場合、Get/Set共通関数(13A)において、VarBind毎にマスターサーバ13に対してオブジェクト値のGet/Set要求(S132)を行う。マスターサーバ13においては、ATMスイッチ本体12とは別に、独自のGet/Set要求関数(13B)を持っている。
【0049】以下、図13中のATMスイッチ12、マスターサーバ13、スレーブサーバ14それぞれの間のGet/Set要求/応答について説明する。なお、初期化フェーズで説明した通り、ATMスイッチ12とマスターサーバ13間の通信はPVCを用い、マスターサーバ13とスレーブサーバ14間の通信はSVCを用いる。
【0050】(1)ATMスイッチからマスターサーバへ(S132)
ATMスイッチ12でデコードされたGet/Set要求(S131)は、OID, OID長, offsetなどの情報全てをフレーム化し、PVCを通じてマスターサーバ13へ送信(S132)される。このGet/Set要求(S132)は、MIBグループ単位で行われたものが送信される。ここで、「MIBグループ単位」とは、例えばLANエミュレーションの場合、atmfLanEmulationツリー配下では、leClientMIB/elanMIB/lesMIB/busMIB単位で共通Get/Setインターフェースを用意することを意味する。
【0051】(2)マスターサーバからスレーブサーバへ(S133)
Get/Set要求(S132)のフレームを受信したマスターサーバ13では、Get/Set要求関数(13B)において、OIDを内部IDに変換し、インデックステーブルを検索する。これにより、要求OIDを持つスレーブサーバ14の実装位置(スロット番号)が判明し、該当スレーブサーバ14へSVCで、MIBのGet/Set要求(S133)を送信する。
【0052】(3)スレーブサーバからマスターサーバへ(S134)
Get/Set要求(S133)を受信したスレーブサーバ14では、APL16のMIB取得/設定処理(図10の10Bを参照)操作を行ない、取得データ/設定状態などの応答情報をSVCでマスターサーバ13へGet/Set応答(S134)として送信する。マスターサーバ13では、Get/Set要求(S133)からGet/Set応答(S134)までの間、T3[sec]のタイムアウト監視を行う。
【0053】(4)マスターサーバからATMスイッチへ(S135)
スレーブサーバ14からのGet/Set応答(S135)をマスターサーバ13が受信すると、内部ID/OID変換を行うのみで応答情報をGet/Set応答(S135)としてPVCを通じてATMスイッチ12へ返信する。ATMスイッチ12ではGet/Set要求(S132)からGet/Set応答(S135)までの間、T4[sec]のタイムアウト監視を行う。マスターサーバ13からの応答が規定時間T4[sec]内に返ってくれば、NMS11にGet/Set応答(S136)として正常に値を返却する。
【0054】3.2 タイムアウト処理図14のように、ATMスイッチ12がマスターサーバ13へGet/Set要求(S142)を送信してから、規定時間T4[sec]内にマスターサーバ13からのGet/Set応答が受信できない場合は、Get/Set共通関数(14A)においてタイムアウトと判断し、NMS11へエラー(S146)を返却する。タイムアウト後に応答(S145)が返ってきた場合は、ATMスイッチ12のGet/Set共通関数で破棄する。
【0055】同様に、図15のように、マスターサーバ13がスレーブサーバ14へGet/Set要求(S153)を送信してから、規定時間T3[sec]内にスレーブサーバ14からのGet/Set応答が受信できない場合は、Get/Set要求関数(15B)においてタイムアウトと判断し、ATMスイッチ12へエラー(S155)を返却する。タイムアウト後に応答(S154)が返ってきた場合は、マスターサーバ13のGet/Set要求関数で破棄する。
【0056】4. 障害処理4.1 マスターサーバ障害時図16のように、マスターサーバ13において障害が発生(S161)した場合、ATMスイッチ本体12において、SSCOP断(リンク断)を検知し、さらに装置管理処理により障害認識される(16A)。その後、ATMスイッチ12からスレーブサーバ14へDelete Indication(S162)が通知され、マスタースレーブ動作が停止する。
【0057】4.2 スレーブサーバ障害時図17のように、スレーブサーバ14において障害が発生(S171)した場合、ATMスイッチ本体12において、SSCOP断(リンク断)を検知し、さらに装置管理処理により障害認識される(17A)。その後、ATMスイッチ12からマスターサーバ13へDelete Indication(S172)が通知され、マスターサーバ13はスレーブインデックス登録を削除する(17B)。
【0058】
【発明の効果】本発明の第1の効果は、すべてのスレーブサーバとのSNMP(Simple Network Management Protocol)通信を、マスターサーバにまかせることにより、ATMスイッチ本体のCPU処理にかかる負荷が低減し、SNMP以外の他の機能の処理能力に与える影響を最小限にとどめることが可能となる点である。
【0059】第2の効果は、ATMスイッチ本体−マスターサーバ−スレーブサーバの間のSNMP通信において、ローカルプロセッサ間通信を使用せず、VC接続による通信を用いることにより、ローカルプロセッサ間通信トラフィックを低減させることができ、SNMP以外の他のローカルプロセッサ間通信に与える影響を最小限にとどめることが可能となる点である。
【0060】第3の効果は、マスターサーバとスレーブサーバの間の通信をSVC化することにより、常時PVCで接続する場合と比べ、消費リソースが最小限にとどめることが可能となる点である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例の機器構成図である。
【図2】図1の各構成機器間のSNMP通信の概要を示すシーケンスチャートである。
【図3】サーバへのATMアドレス割当て方法の解説図である。
【図4】コマンド設定による初期化のシーケンスチャートである。
【図5】Power-On再開、またはサーバ挿入による初期化のシーケンスチャートである。
【図6】インデックス収集フェーズを示すシーケンスチャートである。
【図7】LAN Emulation Serverのインデックス番号テーブルの一例を示す図である。
【図8】再開時のインデックス更新のシーケンスチャートである。
【図9】APLコマンドによるインデックス更新のシーケンスチャートである。
【図10】APL状態遷移によるインデックス更新のシーケンスチャートである。
【図11】インデックス更新タイマー監視(正常処理)のシーケンスチャートである。
【図12】インデックス更新タイマー監視(タイムアウト処理)のシーケンスチャートである。
【図13】SNMP動作フェーズ(正常処理)のシーケンスチャートである。
【図14】SNMP動作フェーズ(タイムアウト処理)のシーケンスチャートである。
【図15】SNMP動作フェーズ(タイムアウト処理)の図14とは異なるシーケンスチャートである。
【図16】マスターサーバ障害時の動作のシーケンスチャートである。
【図17】スレーブサーバ障害時の動作のシーケンスチャートである。
【符号の説明】
11 ネットワーク管理システム(NMS)
12 ATMスイッチ
13 マスターサーバ
14a〜14d スレーブサーバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】同一ATM(Asynchronous Transfer Mode)スイッチ装置内に複数のサーバを搭載し、ネットワーク管理システムからATMスイッチに対してSNMP(Simple Network Management Protocol)手順によって、サーバのMIB(ManagementInformation Base)にアクセスする方法において、前記複数のサーバの中の一つをマスターサーバ、その他をスレーブサーバに設定し、前記ATMスイッチからSNMP手順によって前記マスターサーバに対して代表してアクセスし、マスターサーバからその他のスレーブサーバへはVC(Virtual Connection)にてアクセスすることを特徴とする、ATM用サーバのMIB統合管理方法。
【請求項2】ATMスイッチとマスターサーバ間のSNMP通信はVCにて行うことを特徴とする、請求項1記載のATM用サーバのMIB統合管理方法。
【請求項3】ATMスイッチとマスターサーバ間の通信にはPVC(Permanent Virtual Connection)を用い、マスターサーバとスレーブサーバとの通信にはSVC(Switched Virtual Connection)を用いることを特徴とする、請求項2記載のATM用サーバのMIB統合管理方法。
【請求項4】マスターサーバとスレーブサーバとのSVCによるセットアップにおいて、スレーブサーバがタイマを起動させてその設定時間にてリトライすることを特徴とする、請求項3記載のATM用サーバのMIB統合管理方法。
【請求項5】マスターサーバにおいて、スレーブサーバの管理にインデックス情報を用い、マスター・スレーブ間でインデックス更新通知/応答を行うことを特徴とする、請求項1、2、3又は4記載のATM用サーバのMIB統合管理方法。
【請求項6】インデックス収集フェーズにおいて、スレーブサーバからマスターサーバへのインデックス更新の際に、応答のタイムアウト監視を行うことを特徴とする、請求項5記載のATM用サーバのMIB統合管理方法。
【請求項7】インデックス更新応答がタイムアウトした場合に、インデックス更新通知の再送処理を行うことを特徴とする、請求項6記載のATM用サーバのMIB統合管理方法。
【請求項8】SNMP動作フェーズにおいて、ATMスイッチ本体がマスターサーバと通信する際に、Get/Set共通関数を用いて、MIBグループ単位で通信することを特徴とする、請求項1、2、3、4、5、6又は7記載のATM用サーバのMIB統合管理方法。
【請求項9】SNMP動作フェーズにおいて、ATMスイッチとマスターサーバ間、およびマスターサーバとスレーブサーバ間で、Get/Set応答のタイムアウト監視を行うことを特徴とする、請求項8記載のATM用サーバのMIB統合管理方法。
【請求項10】マスターサーバ障害時に、ATMスイッチ本体が自動的に障害を検出してスレーブサーバに伝え、マスター・スレーブ動作を停止することを特徴とする、請求項1、2、3、4、5、6、7、8又は9記載のATM用サーバのMIB統合管理方法。
【請求項11】スレーブサーバ障害時に、ATMスイッチ本体が自動的に障害を検出してマスターサーバに伝え、マスターサーバが管理しているスレーブインデックス番号の登録を削除することを請求項1、2、3、4、5、6、7、8又は9記載のATM用サーバのMIB統合管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図13】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2000−332768(P2000−332768A)
【公開日】平成12年11月30日(2000.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−135008
【出願日】平成11年5月14日(1999.5.14)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【出願人】(391043424)九州日本電気通信システム株式会社 (1)
【Fターム(参考)】