説明

Akt活性の阻害剤

本発明は、Akt活性を阻害する化合物を提供する。特に、開示された化合物はAktイソ型の1又は2種を選択的に阻害する。また、本発明は、この種の阻害性化合物を含む組成物、癌の治療を必要とする患者に前記化合物を投与することによりAkt活性を阻害する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セリン/スレオニンキナーゼ、Akt(PKBとしても知られている;本明細書において「Akt」という)の1種以上のイソ型の活性の阻害剤である化合物に関する。本発明は、また、この種の化合物を含む医薬組成物、及び癌の治療における本発明の化合物の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アポトーシス(プログラム化された細胞死)は、胚発生、及び退行性神経性疾患、循環器疾患、及び癌等の種々の疾患の発症において重要な役割を果たしている。最近の研究では、プログラム化された細胞死の制御又は実行に関与する種々のアポトーシス促進、及び抗アポトーシス遺伝子産物を同定した。Bcl2又はBclx等の抗アポトーシス遺伝子の発現により、種々の刺激によって誘発されるアポトーシス細胞死が阻害される。一方、Bax又はBad等のアポトーシス促進遺伝子の発現のため、プログラム化された細胞死が誘発される(Adamsら、Science,281:1322−1326(1998))。プログラム化された細胞死の実行は、カスパーゼ3、カスパーゼ7、カスパーゼ8及びカスパーゼ9等の、カスパーゼ1関連プロテイナーゼによって媒介される(Thornberryら、Science,281:1312−1316(1998))。
【0003】
ホスファチジルイノシトール3’−OHキナーゼ(PI3K)/Akt経路は、細胞生存/細胞死の制御にとって重要であると思われる(Kulikら、Mol.Cell.Biol.17:1595−1606(1997);Frankeら、Cell,88:435−437(1997);KauffmannZehら、Nature 385:544−548(1997);Hemmings Science,275:628−630(1997);Dudekら、Science,275:661−665(1997))。血小板由来成長因子(PDGF)、神経成長因子(NGF)及びインシュリン様成長因子−1(IGF−1)等の生存因子は、PI3Kの活性を誘導することによって、種々の条件下で細胞の生存を促進する(Kulikら、1997,Hemmings 1997)。活性化PI3Kにより、ホスファチジルイノシトール(3,4,5)−トリホスフェート(PtdIns(3,4,5)P3)の産生が誘導され、それが、次には、プレクストリン相同(PH)ドメインを含む、セリン/スレオニンキナーゼAktに結合し、活性を促進する(Frankeら、Cell,81:727−736(1995);Hemmings Science,277:534(1997);Downward,Curr.Opin.Cell Biol.10:262−267(1998),Alessiら、EMBO J.15:6541−6551(1996))。PI3K、又はAktのドミナントネガティブな突然変異体の特異的阻害剤によって、これらの成長因子又はサイトカインの生存促進活性がなくなる。PIK3の阻害剤(LY294002又はワートマニン)が、上流キナーゼによるAktの活性化を阻害することが既に開示されている。更に、構成的に活性化されたPI3K又はAkt突然変異体を導入することで、細胞が正常にアポトーシス性細胞死を受ける条件下で、細胞の生存が促進される(Kulikら、1997,Dudekら、1997)。
【0004】
セカンドメッセンジャー制御セリン/スレオニンプロテインキナーゼのAktサブファミリーの3種のメンバーが同定され、Akt1/PKBα、Akt2/PKBβ、及びAkt3/PKBγとそれぞれ命名された(以下、本明細書において、「Akt1」、「Akt2」及び「Akt3」という)。そのイソ型は、特に、触媒ドメインをコードする領域で相同的である。Aktは、P13Kシグナル伝達に応じて発生するリン酸化現象によって活性化される。PI3Kは細胞膜イノシトールリン脂質をリン酸化し、セカンドメッセンジャーである、ホスファチジル−イノシトール3,4,5−トリホスフェート及びホスファチジルイノシトール3,4−ビスホスフェートが生成し、これらが、AktのPHドメインに結合すると考えられてきた。Akt活性化の最新のモデルでは、上流キナーゼによるAktの調節部位のリン酸化が発生する、3’−リン酸化ホスホイノシチドによる細胞膜への酵素の動員が提案されている(B.A.Hemmings,Science 275:628−630(1997);B.A.Hemmings,Science 276:534(1997);J.Downward,Science 279:673−674(1998))。
【0005】
Akt1のリン酸化は、2箇所の調節部位、すなわち、触媒ドメイン活性化ループ内のThr308、及びカルボキシ末端近くのSer473上で起こる(D.R.Alessiら、EMBO J.15:6541−6551(1996)及びR.Meierら、J.Biol.Chem.272:30491−30497(1997))。同等の調節性リン酸化部位が、Akt2及びAkt3に存在する。活性ループ部位でAktをリン酸化する上流キナーゼがクローニングされ、3’−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ1(PDK1)と命名された。PDK1はAktをリン酸化するのみでなく、p70リボソームS6キナーゼ、p90RSK、血清及び糖質コルチコイド調節キナーゼ(SGK)、及びプロテインキナーゼCをリン酸化する。カルボキシ末端近くのAktの調節部位をリン酸化する上流キナーゼはまだ同定されていないが、最近の報告では、インテグリン−結合キナーゼ(ILK−1)、セリン/スレオニンプロテインキナーゼ、又は自己リン酸化についての役割が示唆されている。
【0006】
ヒト腫瘍中のAkt濃度の解析によって、多くの卵巣(J.Q.Chengら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.89:9267−9271(1992))及び膵臓癌(J.Q.Chengら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.93:3636−3641(1996))において、Akt2が過剰発現していることが示された。同様に、Akt3が、乳癌及び前立腺癌細胞株において過剰発現していることが発見された(Nakataniら、J.Biol.Chem.274:21528−21532(1999))。
【0007】
腫瘍抑制因子PTEN(PtdIns(3,4,5)−P3の3’ホスフェートを特異的に除去する、タンパク質及び脂質ホスファターゼ)は、PI3K/Akt経路の負の調節因子である(Liら、Science 275:1943−1947(1997),Stambolicら、Cell 95:29−39(1998),Sunら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.96:6199−6204(1999))。PTENの胚性突然変異は、カウデン病等のヒトの癌症候群の原因である(Liawら、Nature Genetics 16:64−67(1997))。PTENは、大部分のヒト腫瘍において消失しており、機能的なPTENを有しない腫瘍細胞ラインのため、活性化されたAktの濃度の上昇が示された(上述したLiら、Guldbergら、Cancer Research 57:3660−3663(1997),Risingerら、Cancer Research 57:4736−4738(1997))。
【0008】
これらの観察は、PI3K/Akt経路が腫瘍化において細胞生存又はアポトーシスを調節するための重要な役割を果たすことを証明する。
【0009】
Aktの活性化及び活性の阻害は、LY294002又はワートマニン等の阻害剤を用いてPI3Kを阻害することによって達成することができる。しかし、PI3K阻害は、3種の全てのAktイソ酵素に無差別に影響を及ぼすのみならず、チロシンキナーゼのTecファミリー等のPdtIns(3,4,5)−P3に依存する、他のPHドメイン含有シグナル伝達分子にも影響を及ぼす。更に、Aktが、PI3kに依存しない増殖シグナルによって活性化され得ることが開示されている。
【0010】
更に、上流キナーゼPDK1の活性を阻害することによって、Akt活性が阻害される。特異的なPDK1阻害剤は公開されていない。また、PDK1の阻害は、その活性がPDK1に依存する、異型性PKCイソ型、SGK、及びS6キナーゼ等の、複数のプロテインキナーゼの阻害につながる(Williamsら、Curr.Biol.10:439−448(2000))。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、Aktの阻害剤である、新規な化合物を提供することである。
【0012】
また、本発明の目的は、Aktの阻害剤である、新規な化合物を含有する医薬組成物を提供することである。
【0013】
また、本発明の目的は、このようなAkt活性の阻害剤を投与することを含む、癌の治療方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の要約
本発明は、Akt活性を阻害する化合物を提供する。特に、開示された化合物は、1又は2種のAktを選択的に阻害する。本発明は、また、この種の阻害性化合物を含有する組成物、及び癌の治療を必要とする患者に、前記化合物を投与することによってAkt活性を阻害する方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の詳細な記載
本発明の化合物は、セリン/スレオニンキナーゼAktの活性を阻害するのに有用である。本発明の第一の実施態様においては、Akt活性の阻害剤は、式A:
【0016】
【化1】

【0017】
(式中、aは0又は1であり;bは0又は1であり;mは0,1又は2であり;nは0,1,2,3又は4であり;pは0,1,2,3,4又は5であり;tは2,3,4,5又は6であり;
u,v,w及びxは、独立してCH及びNから選択され;
y及びzは、独立してCH及びNから選択されるが、但し、y及びzの少なくとも1つがNであり;
環Kは、(C−C)シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール及びヘテロシクリルから選択されるが、但し、環Kはフェニルではなく;
は、独立して、オキソ、(C=O)(C−C10)アルキル、(C=O)−アリール、(C=O)(C−C10)アルケニル、(C=O)(C−C10)アルキニル、COH、ハロ、OH、O(C−C)パーフルオロアルキル、(C=O)NR8、CN、(C=O)(C−C)シクロアルキル、S(O)NR、S(O)−(C−C10)アルキル及び(C=O)−ヘテロシクリルから選択され、前記アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、及びヘテロシクリルは、Rから選択される1個以上の置換基で置換されてもよく;
は、独立して、オキソ、(C=O)(C−C10)アルキル、(C=O)−アリール、(C=O)(C−C10)アルケニル、(C=O)(C−C10)アルキニル、COH、ハロ、OH、O(C−C)パーフルオロアルキル、(C=O)NR、CN、(C=O)(C−C)シクロアルキル、S(O)NR、S(O)−(C−C10)アルキル及び(C=O)−ヘテロシクリルから選択され、前記アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、及びヘテロシクリルは、Rから選択される1個以上の置換基で置換されてもよく;
及びRは、独立してH、(C−C)アルキル及び(C−C)パーフルオロアルキルから選択されるか、又は、R及びRが一緒になって、−(CH−を形成し、ここで、炭素原子の1個が、O、S(O)、−N(R)C(O)−、及び−N(COR)−から選択される部分によって置換されてもよく;
は、NRから選択され;
は、(C=O)−C10アルキル、(C=O)アリール、C−C10アルケニル、C−C10アルキニル、(C=O)ヘテロシクリル、COH、ハロ、CN、OH、O−Cパーフルオロアルキル、O(C=O)NR、オキソ、CHO、(N=O)R、S(O)NR、S(O)−(C−C10)アルキル又は(C=O)−Cシクロアルキルから選択され、前記アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、ヘテロシクリル、及びシクロアルキルは、R6aから選択される1個以上の置換基で置換されてもよく;
6aは、(C=O)(C−C10)アルキル、O(C−C)パーフルオロアルキル、(C−C)アルキレン−S(O)、オキソ、OH、ハロ、CN、(C−C10)アルケニル、(C−C10)アルキニル、(C−C)シクロアルキル、(C−C)アルキレン−アリール、(C−C)アルキレン−ヘテロシクリル、(C−C)アルキレン−N(R、C(O)R、(C−C)アルキレン−COC(O)H、及び(C−C)アルキレン−COHから選択され、前記アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、及びヘテロシクリルは、R6bから選択される3個までの置換基で置換されてもよく;
6bは、(C=O)(C−C10)アルキル、O(C−C)パーフルオロアルキル、(C−C)アルキレン−S(O)、オキソ、OH、ハロ、CN、(C−C10)アルケニル、(C−C10)アルキニル、(C−C)シクロアルキル、(C−C)アルキレン−アリール、(C−C)アルキレン−ヘテロシクリル、(C−C)アルキレン−N(R、C(O)R、(C−C)アルキレン−CO、C(O)H、及び(C−C)アルキレン−COHから選択され、前記アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、及びヘテロシクリルは、R、OH、(C−C)アルコキシ、ハロゲン、COH、CN、O(C=O)(C−C)アルキル、オキソ、及びN(Rから選択される3個までの置換基で置換されてもよく;
及びRは、独立してH、(C=O)(C−C10)アルキル、(C=O)(C−C)シクロアルキル、(C=O)−アリール、(C=O)−ヘテロシクリル、(C−C10)アルケニル、(C−C10)アルキニル、SO、及び(C=O)NR,から選択され、前記アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、アルケニル、及びアルキニルは、R6aから選択される1個以上の置換基で置換されていてもよく、又は、R及びRはそれらが結合する窒素と一緒になって、各環に3〜7個のメンバーを有する、単環式又は二環式複素環(窒素に加え、N、O及びSから選択される1又は2個の付加的なヘテロ原子を含んでもよい。)を形成し、前記単環式又は二環式複素環は、R6aから選択される、1個以上の置換基で置換されてもよく;
は、(C−C)アルキル、(C−C)シクロアルキル、アリール、又はヘテロシクリルであり;及び
は、H、(C−C)アルキル、アリール、ヘテロシクリル、(C−C)シクロアルキル、(C=O)(C−C)アルキル、又はS(O)である。)又はその医薬として許容される塩又は立体異性体によって示される。
【0018】
本発明の第二の実施態様においては、Akt活性の阻害剤は、式B:
【0019】
【化2】

【0020】
(式中、qは、0,1,2,3又は4であり;
Qは、独立してヘテロシクリルから選択され、該ヘテロシクリルは、R6bから選択される1〜3個の置換で置換されてもよく;及び
他の全ての置換基及び変数は第一の実施態様において定義された通りである。)又はその医薬として許容される塩又は立体異性体によって示される。
【0021】
本発明の第三の実施態様においては、本発明の阻害剤は、式C:
【0022】
【化3】

【0023】
(式中、他の全ての置換基及び変数は第二の実施態様において定義された通りである。)又はその医薬として許容される塩又は立体異性体によって示される。
【0024】
本発明の第四の実施態様においては、本発明の阻害剤は、式D:
【0025】
【化4】

【0026】
(式中、他の全ての置換基及び変数は第二の実施態様において定義された通りである。)又はその医薬として許容される塩又は立体異性体によって示される。
【0027】
本発明の第五の実施態様においては、本発明の阻害剤は、式E:
【0028】
【化5】

【0029】
(式中、他の全ての置換基及び変数は第二の実施態様において定義された通りである。)又はその医薬として許容される塩又は立体異性体によって示される。
【0030】
本発明の第六の実施態様においては、本発明の阻害剤は、式F:
【0031】
【化6】

【0032】
(式中、他の全ての置換基及び変数は第一の実施態様において定義された通りである。)又はその医薬として許容される塩又は立体異性体によって示される。
【0033】
本発明の第七の実施態様においては、本発明の阻害剤は、式G:
【0034】
【化7】

【0035】
(式中、R及びRは、独立してH又は(C−C)アルキルであり、前記アルキルは、OH及びハロから選択される3個までの置換基で置換されてもよく、R及びRは一緒になって(C−C)シクロアルキルを形成してもよく;及び
他の全ての置換基及び変数は第一の実施態様において定義された通りである。)又はその医薬として許容される塩又は立体異性体によって示される。
【0036】
本発明の第八の実施態様においては、本発明の阻害剤は、式G(式中、R及びRは、独立してH又は(C−C)アルキルであり; 他の全ての置換基及び変数は第一の実施態様において定義されたとおりである。)、又はその医薬として許容される塩又は立体異性体によって示される。
【0037】
本発明の特定の化合物には、5−メトキシ−2−(4−{[4−(5−ピリジン−2−イル−4H−1,2,4−トリアゾール)ピペリジン−1−イル]メチル}フェニル)−3−(2−チエニル)−1,6−ナフチリジン(1−7);
2−(4−{[4−(5−ピリジン−2−イル−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピペリジン−1−イル]メチル}フェニル)−3−(2−チエニル)−1,6−ナフチリジン−5(6H)−オン(1−8);
1−{4−[4−(3−ピリミジン−5−イルキノキサリン−2−イル)ベンジル]シクロヘキシル}−1,3−ジヒドロ−2H−ベンズイミダゾール2−オン(1−9);
3−[3−(4−{[4−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−ベンズイミダゾール1−イル)シクロヘキシル]メチル}フェニル)キノキサリン−2−イル]チオフェン−2−カルバルデヒド(1−10);
1−(4−{4−[3−(1H−ピラゾール−5−イル)キノキサリン−2−イル]ベンジル}シクロヘキシル)−1,3−ジヒドロ−2H−ベンズイミダゾール−2−オン(1−11);及び
2−[4−(1−アミノ−1−メチルエチル)フェニル]−3−(2−チエニル)−1,6−ナフチリジン−5(6H)−オン(2−7)、又はその医薬として許容される塩又は立体異性体が含まれる。
【0038】
本発明の化合物の具体例には、下記化合物のTFA塩、又はその立体異性体が含まれる。
5−メトキシ−2−(4−{[4−(5−ピリジン−2−イル−4H−1,2,4−トリアゾール)ピペリジン−1−イル]メチル}フェニル)−3−(2−チエニル)−1,6−ナフチリジン(1−7);
2−(4−{[4−(5−ピリジン−2−イル−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピペリジン−1−イル]メチル}フェニル)−3−(2−チエニル)−1,6−ナフチリジン−5(6H)−オン(1−8);
1−{4−[4−(3−ピリミジン−5−イルキノキサリン−2−イル)ベンジル]シクロヘキシル}−1,3−ジヒドロ−2H−ベンズイミダゾール2−オン(1−9);
3−[3−(4−{[4−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−ベンズイミダゾール1−イル)シクロヘキシル]メチル}フェニル)キノキサリン−2−イル]チオフェン−2−カルバルデヒド(1−10);及び
1−(4−{4−[3−(1H−ピラゾール−5−イル)キノキサリン−2−イル]ベンジル}シクロヘキシル)−1,3−ジヒドロ−2H−ベンズイミダゾール−2−オン(11)。
【0039】
本発明の化合物は、不斉中心、キラル軸及びキラル面を有していてもよく、すべての取りえる異性体(光学異性体を含む)及びそれらの混合物を含む、ラセミ化合物、ラセミ混合物、及び個々のジアステレオマーとして存在し(E.L.Eliel 及びS.H.Wilen,炭素化合物の立体化学、John Wiley&Sons,New York,1994,1119−1190頁に記載されたように)、これらすべての立体異性体は、本発明に含まれる。
【0040】
更に、本明細書に開示された化合物は互変異性体として存在してもよく、唯一の互変異性構造が表現されていたとしても、両方の互変異性型が本発明の範囲に含まれることを意図する。例えば、以下の化合物Aに対するいずれの請求の範囲も、互変異性構造Bを含み、またその逆のみならず、それらの混合物を含むと理解される。ベンズイミダゾロニル部分の2種の互変異性型は、また、本発明の範囲内である。
【0041】
【化8】

【0042】
テトラゾールは、1H/2H互変異性体の混合物として存在する。テトラゾール部分の互変異性型も、本発明の範囲内である。
【0043】
【化9】

【0044】
任意の変数(例えば、R,R,R6b等)が、任意の構成要素において1回以上使用される場合、各使用におけるその定義は、全ての他の使用の場合とは独立している。また、置換基及び変数の組み合わせは、この種の組み合わせが安定した化合物をもたらす場合に限り、許容される。置換基から環構造にひかれた線は、示された結合がいずれかの置換可能な環上の原子と結合してもよいことを示す。環構造が二環式である場合、その結合は、二環式部分のいずれかの環上の安定な原子のいずれかに結合することを意図する。
【0045】
本発明の化合物における置換基及び置換パターンは、化学的に安定で、かつ、容易に入手できる出発材料から、当業界で公知の技術及び後述する方法によって容易に合成することができる化合物を得るように、当業者によって選択することができると理解される。置換基自身が2個以上の置換基で置換されている場合、安定構造が得られる限りは、これらの複数の置換基は同一の炭素又は異なる炭素上に存在してもよい。「1個以上の置換基で置換されてもよい」なる語句は、「少なくとも1個の置換基で置換されてもよい」なる語句と同等であり、このような場合には好ましい実施態様は0〜4個の置換基、更に好ましい実施態様は0〜3個の置換基を有する。
【0046】
本明細書で用いられるように、「アルキル」は、特定の数の炭素原子を含む、分枝鎖状及び直鎖状の両方の飽和脂肪族炭化水素基を含むことを意図する。例えば、「(C−C10)アルキル」の場合のC−C10は、直鎖状又は分枝鎖状配列中に1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個の炭素を有する置換基を含むと定義される。例えば、「(C−C10)アルキル」には、特に、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル等が含まれる。
【0047】
「シクロアルキル」なる用語は、特定の数の炭素原子を有する、単環式飽和脂肪族炭化水素基を意味する。例えば、「シクロアルキル」には、シクロプロピル、メチルシクロプロピル、2,2−ジメチルシクロブチル、2−エチル−シクロペンチル、シクロヘキシル等が含まれる。
【0048】
「アルコキシ」は、酸素橋を通じて結合した、表示された数の炭素原子の環状、又は非環式アルキル基を表わす。従って、「アルコキシ」は、上述したアルキル及びシクロアルキルの定義を含む。
【0049】
炭素原子数が特定されない場合、「アルケニル」なる用語は、直鎖状、分枝鎖状又は環式の、2〜10個の炭素原子と、少なくとも1個の炭素−炭素二重結合とを含む、非芳香族炭化水素基を意味する。好ましくは、1個の炭素−炭素二重結合が存在し、4個までの非芳香族炭素−炭素二重結合が存在してもよい。従って、「(C−C10)アルケニル」は、2〜10個の炭素原子を有するアルケニル基を意味する。アルケニル基には、エテニル、プロペニル、ブテニル、2−メチルブテニル及びシクロヘキセニルが含まれる。置換されたアルケニル基が示される場合、アルケニル基の直鎖状、分枝鎖状又は環状部分は二重結合を含んでもよく、また、置換されてもよい。
【0050】
「アルキニル」なる用語は、2〜10個の炭素原子と、少なくとも1個の炭素−炭素三重結合とを含む、直鎖状、分枝鎖状又は環式の炭化水素基を意味する。3個までの炭素−炭素三重結合が存在してもよい。従って、「(C−C10)アルキニル」は、2〜10個の炭素原子を有するアルキニル基を意味する。アルキニル基には、エチニル、プロピニル、ブチニル、3−メチルブチニル等が含まれる。置換されたアルキニル基が示される場合、アルキニル基の直鎖状、分枝鎖状又は環状部分は三重結合を含んでもyく、置換されてもよい。
【0051】
特定の具体例において、置換基は、(C−C)アルキレン−アリール等のように、0を含む炭素数の範囲を用いて定義できる。アリールがフェニルであるとみなされる場合、この定義には、フェニル及び−CHPh,−CHCHPh,CH(CH)CHCH(CH)Ph等が含まれる。
【0052】
本明細書で用いられるように、「アリール」は、各環中に7個までの原子を含み、少なくとも1個の環が芳香族である、安定な単環式又は二環式炭素環のいずれかを意味することを意図する。このようなアリール基の具体例には、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、インダニル及びビフェニルが含まれる。アリール置換基が二環式であり、1個の環が非芳香族であるケースにおいては、結合は芳香環によると理解される。
【0053】
本明細書で用いられるように、「ヘテロアリール」なる用語は、各環中に7個までの原子を含み、少なくとも1個の環が芳香族であり、O、N及びSからなる群から選択される1〜4個のヘテロ原子を含む、安定な単環式又は二環式環を表わす。この定義の範囲内のヘテロアリール基には、アクリジニル、カルバゾリル、シンノリニル、キノキサリニル、ピラゾリル、インドリル、ベンゾトリアゾリル、フラニル、チエニル、ベンゾチエニル、ベンゾフラニル、キノリニル、イソキノリニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、インドリル、ピラジニル、ピリダジニル、ピリジニル、ピリミジニル、ピロリル、テトラヒドロキノリンが含まれるがこれらに限定されない。以下のヘテロ複素環の定義と同様、「ヘテロアリール」には、また、窒素含有ヘテロアリールのいずれかのN−オキシド誘導体が含まれることが理解される。ヘテロアリール基が二環式であり、1個の環が非芳香族であるか、ヘテロ原子を含まない場合においては、結合は、芳香環を通じて又は環を含むヘテロ原子を通じてであることが理解される。置換基Qについてのこのようなヘテロアリール基には、2−ベンズイミダゾリル、2−キノリニル、3−キノリニル、4−キノリニル、1−イソキノリニル、3−イソキノリニル及び4−イソキノリニルが含まれるが、これらに限定されない。
【0054】
本明細書で用いられるように、「複素環」(heterocycle)又は「ヘテロシクリル」(heterocyclyl)なる用語は、O、N及びSからなる群から選択される1〜4個のヘテロ原子を含む、3〜10員環の芳香族又は非芳香族複素環を意味し、二環式基を含むことを意図する。従って、「ヘテロシクリル」には、上述したヘテロアリールと同様、そのジヒドロ及びテトラヒドロ類似体が含まれる。「ヘテロシクリル」のさらなる具体例には、以下の、ベンゾイミダゾリル、ベンゾイミダゾロニル、ベンゾフラニル、ベンゾフラザニル、ベンゾピラゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾチオフェニル、ベンゾオキサゾリル、カルバゾリル、カルボリニル、シンノリニル、フラニル、イミダゾリル、インドリニル、インドリル、インドラジニル、インダゾリル、イソベンゾフラニル、イソインドリル、イソキノリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、ナフトピリジニル、オキサジアゾリル、オキサゾリル、オキサゾリン、イソオキサゾリン、オキセタニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリドピリジニル、ピリダジニル、ピリジル、ピリミジル、ピロリル、キナゾリニル、キノリル、キノキサリニル、テトラヒドロピラニル、テトラゾリル、テトラゾロピリジル、チアジアゾリル、チアゾリル、チエニル、トリアゾリル、アゼチジニル、1,4−ジオキサニル、ヘキサヒドロアゼピニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピリジン−2−オニル、ピロリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ジヒドロベンゾイミダゾリル、ジヒドロベンゾフラニル、ジヒドロベンゾチオフェニル、ジヒドロベンゾオキサゾリル、ジヒドロフラニル、ジヒドロイミダゾリル、ジヒドロインドリル、ジヒドロイソオキサゾリル、ジヒドロイソチアゾリル、ジヒドロオキサジアゾリル、ジヒドロオキサゾリル、ジヒドロピラジニル、ジヒドロピラゾリル、ジヒドロピリジニル、ジヒドロピリミジニル、ジヒドロピロリル、ジヒドロキノリニル、ジヒドロテトラゾリル、ジヒドロチアジアゾリル、ジヒドロチアゾリル、ジヒドロチエニル、ジヒドロトリアゾリル、ジヒドロアゼチジニル、メチレンジオキシベンゾリル、テトラヒドロフラニル、及びテトラヒドロチエニル、及びそれらのN−オキシドが含まれるが、これらに限定されない。ヘテロシクリル置換基の結合は、炭素原子又はヘテロ原子を通して存在し得る。
【0055】
当業者によって認識されるように、本明細書で用いられるように、「ハロ」又は「ハロゲン」は、クロロ(Ch)、フルオロ(F)、ブロモ(Br)及びヨード(I)を含むことを意図する。
【0056】
一実施態様において、式:
【0057】
【化10】

【0058】
によって示される部分は、単に具体例を示し限定的でない、下記の構造を含み、更に、二環式構造内に含まれるいずれかの適当な炭素及び/又は窒素は、Rから選択される、1、2又は3個の置換基で置換されててもよい。
【0059】
【化11】

【0060】
他の実施態様においては、式:
【0061】
【化12】

【0062】
によって示される部分は、
【0063】
【化13】

【0064】
から選択され、上記式中、二環式構造内のいずれかの適当な炭素及び/又は窒素は、Rから選択される、1〜3個の置換基で置換されてもよい。
【0065】
他の実施態様においては、式:
【0066】
【化14】

【0067】
によって示される部分は、
【0068】
【化15】

【0069】
から選択され、上記式中、二環式構造内のいずれかの適当な炭素及び/又は窒素は、Rから選択される、1〜3個の置換基で置換されてもよい。
【0070】
一実施態様においては、環Kは、ヘテロシクリルから選択される。
【0071】
一実施態様においては、環Kは
【0072】
【化16】

【0073】
から選択される。
【0074】
一実施態様においては、nは0,1,2又は3である。
【0075】
更なる実施態様においては、nは0,1又は2である。
【0076】
他の実施態様においては、nは1である。
【0077】
一実施態様においては、pは0,1,2又は3である。
【0078】
更なる実施態様においては、pは0,1又は2である。
【0079】
他の実施態様においては、pは1である。
【0080】
一実施態様においては、y及びzはNである。
【0081】
他の実施態様においては、yはNであり、zはCHである。
【0082】
他の実施態様においては、yはCHであり、zはNである。
【0083】
一実施態様においては、Qは、R6bから選択される1〜3個の置換基で置換されてもよい、ベンゾイミダゾリル、ベンゾイミダゾロニル、ベンゾフラニル、ベンゾフラザニル、ベンゾピラゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾチオフェニル、ベンゾオキサゾリル、カルバゾリル、カルボリニル、シンノリニル、フラニル、イミダゾリル、インドリニル、インドリル、インドラジニル、インダゾリル、イソベンゾフラニル、イソインドリル、イソキノリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、ナフトピリジニル、オキサジアゾリル、オキサゾリル、オキサゾリン、イソオキサゾリン、オキセタニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリドピリジニル、ピリダジニル、ピリジル、ピリミジル、ピロリル、キナゾリニル、キノリル、キノキサリニル、テトラヒドロピラニル、テトラゾリル、テトラゾロピリジル、チアジアゾリル、チアゾリル、チエニル、トリアゾリル、アゼチジニル、1,4−ジオキサニル、ヘキサヒドロアゼピニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピリジン−2−オニル、ピロリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ジヒドロベンゾイミダゾリル、ジヒドロベンゾフラニル、ジヒドロベンゾチオフェニル、ジヒドロベンゾオキサゾリル、ジヒドロフラニル、ジヒドロイミダゾリル、ジヒドロインドリル、ジヒドロイソオキサゾリル、ジヒドロイソチアゾリル、ジヒドロオキサジアゾリル、ジヒドロオキサゾリル、ジヒドロピラジニル、ジヒドロピラゾリル、ジヒドロピリジニル、ジヒドロピリミジニル、ジヒドロピロリル、ジヒドロキノリニル、ジヒドロテトラゾリル、ジヒドロチアジアゾリル、ジヒドロチアゾリル、ジヒドロチエニル、ジヒドロトリアゾリル、ジヒドロアゼチジニル、メチレンジオキシベンゾイル、テトラヒドロフラニル、及びテトラヒドロチエニル、及びそれらのN−オキシドから選択される。ヘテロシクリル置換基の結合は、炭素原子又はヘテロ原子を通して存在し得る。
【0084】
更なる実施態様においては、Qは、R6bから選択される1〜3個の置換基で置換されてもよい、2−アゼピノン、ベンズイミダゾリル、ベンズイミダゾロニル、2−ジアザピノン、イミダゾリル、2−イミダゾリジノン、インドリル、イソキノリニル、モルホリニル、ピペリジル、ピペラジニル、ピリジル、ピロリジニル、2−ピペリジノン、2−ピリミジノン、2−ピロリジノン、キノリニル、テトラゾリル、テトラヒドロフリル、テトラヒドロイソキノリニル、及びチエニルから選択される。ヘテロシクリル置換基の結合は、炭素原子又はヘテロ原子を通して存在し得る。
【0085】
更なる実施態様においては、Qがヘテロシクリルである場合、Qは、R6bから選択される1〜3個の置換基で置換されてもよい、
【0086】
【化17】

【0087】
から選択される。
【0088】
更なる実施態様においては、Qがヘテロシクリルである場合、QはR6bから選択される1個の置換基で置換されてもよい、
【0089】
【化18】

【0090】
から選択される。
【0091】
一実施態様においては、Rは、オキソ、(C=O)(C−C10)アルキル、(C=O)−アリール、(C=O)(C−C10)アルケニル、(C=O)(C−C10)アルキニル、COH、ハロ、OH、O(C−C)パーフルオロアルキル、(C=O)NR8、CN、(C=O)(C−C)シクロアルキル、S(O)NR、S(O)−(C−C10)アルキル及び(C=O)−ヘテロシクリルから選択され、前記アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、及びヘテロシクリルは、R、OH、(C−C)アルコキシ、ハロゲン、COH、CN、O(C=O)(C−C)アルキル、オキソ、及びN(Rで置換されてもよい。
【0092】
他の実施態様においては、Rは、オキソ、(C=O)(C−C10)アルキル、COH、ハロ、OH、CN、(C−C)アルコキシ、O(C=O)(C−C)アルキル、及びN(Rから選択される。
【0093】
他の実施態様においては、Rは、オキソ及びO(C−C)アルキルから選択される。
【0094】
一実施態様においては、Rは、オキソ、(C=O)(C−C10)アルキル、(C=O)−アリール、(C=O)(C−C10)アルケニル、(C=O)(C−C10)アルキニル、COH、ハロ、OH、O(C−C)パーフルオロアルキル、(C=O)NR、CN、(C=O)(C−C)シクロアルキル、S(O)NR、S(O)−(C−C10)アルキル及び(C=O)−ヘテロシクリルから選択され、前記アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル及びヘテロシクリルは、R、OH、(C−C)アルコキシ、ハロゲン、COH、CN、O(C=O)(C−C)アルキル、オキソ、及び(Rで置換されてもよい。
【0095】
他の実施態様においては、Rは、オキソ、(C=O)(C−C10)アルキル、COH、ハロ、OH,CN、(C−C)アルコキシ、O(C=O)(C−C)アルキル、(C−C10)アルケニル及びN(Rから選択され、前記アルケニルは、オキソで置換されてもよい。
【0096】
一実施態様においては、R及びRは、H及び(C−C)アルキルから選択される。
【0097】
他の実施態様に置いては、R及びRはHである。
【0098】
一実施態様においては、QがR6bで置換されている場合、前記R6bは、R、OH、(C−C)アルコキシ、ハロゲン、COH、CN、O(C=O)(C−C)アルキル、オキソ及びN(Rから選択される3個までの置換基で置換されてもよいヘテロシクリルである。
【0099】
他の実施態様においては、QがR6bで置換されており、前記R6bは、オキソ、OH、N(R、ハロゲン及びO(C−C)アルキルから選択される1〜3個の置換基で置換されてもよい、
【0100】
【化19】

【0101】
から選択される。
【0102】
一実施態様においては、Rは、独立してH又は(C−C)アルキルから選択される。
【0103】
式Aの一実施態様においては、環Kはヘテロシクリルであり;Rは、オキソ、(C=O)(C−C10)アルキル、COH、ハロ、OH、CN、(C−C)アルコキシ、O(C=O)(C−C)アルキル及びN(Rから選択され;Rは、オキソ、(C=O)(C−C10)アルキル、COH、ハロ、OH、CN、(C−C)アルコキシ、O(C=O)(C−C)アルキル、(C−C10)アルケニル及びN(Rから選択され、前記アルケニルは、オキソで置換されてもよく;R及びRはHであり;Qは、独立してヘテロシクリルから選択され、該ヘテロシクリルは、R6bから選択される1〜3個の置換基で置換されてもよく;R6bは、R、OH、(C−C)アルコキシ、ハロゲン、COH、CN、O(C=O)(C−C)アルキル、オキソ、及びN(Rから選択される、3個までの置換基で置換されてもよいヘテロシクリルであり;Rは、独立してH又は(C−C)アルキルから選択され;他の全ての置換基及び変数は、前述した式Aにおいて定義した通りである。
【0104】
式Dの一実施態様においては、環Kはヘテロシクリルであり;Rは、オキソ、(C=O)(C−C10)アルキル、COH、ハロ、OH、CN、(C−C)アルコキシ、O(C=O)(C−C)アルキル及びN(Rから選択され;Rは、オキソ、(C=O)(C−C10)アルキル、COH、ハロ、OH、CN、(C−C)アルコキシ、O(C=O)(C−C)アルキル、(C−C10)アルケニル及びN(Rから選択され、前記アルケニルは、オキソで置換されてもよく;R及びRはHであり;Qは、独立してヘテロシクリルから選択され、該ヘテロシクリルは、R6bから選択される1〜3個の置換基で置換されてもよく;R6bは、R、OH、(C−C)アルコキシ、ハロゲン、COH、CN、O(C=O)(C−C)アルキル、オキソ、及びN(Rから選択される、3個までの置換基で置換されてもよいヘテロシクリルであり;Rは、独立してH又は(C−C)アルキルから選択され;他の全ての置換基及び変数は、前述した式Dにおいて定義した通りである。
【0105】
式Eの一実施態様においては、環Kはヘテロシクリルであり;Rは、オキソ、(C=O)(C−C10)アルキル、COH、ハロ、OH、CN、(C−C)アルコキシ、O(C=O)(C−C)アルキル及びN(Rから選択され;Rは、オキソ、(C=O)(C−C10)アルキル、COH、ハロ、OH、CN、(C−C)アルコキシ、O(C=O)(C−C)アルキル、(C−C10)アルケニル及びN(Rから選択され、前記アルケニルは、オキソで置換されてもよく;R及びRはHであり;Qは、独立してヘテロシクリルから選択され、該ヘテロシクリルは、R6bから選択される1〜3個の置換基で置換されてもよく;R6bは、R、OH、(C−C)アルコキシ、ハロゲン、COH、CN、O(C=O)(C−C)アルキル、オキソ、及びN(Rから選択される、3個までの置換基で置換されてもよいヘテロシクリルであり;Rは、独立してH又は(C−C)アルキルから選択され;他の全ての置換基及び変数は、前述した式Eにおいて定義した通りである。
【0106】
式Gの一実施態様においては、環Kがヘテロシクリルから選択される。
【0107】
式Gの一実施態様においては、pが0であり、環Kが
【0108】
【化20】

【0109】
から選択される。
【0110】
式Gの一実施態様においては、pは0であり、Kは
【0111】
【化21】

【0112】
である。
【0113】
本発明に含まれるものは、式Aのフリー体のみならず、その医薬として許容される塩及び立体異性体である。本明細書に例示される、分離されたいくつかの特定の化合物は、アミン化合物のプロトン化された塩である。「フリー体」なる用語は、非塩形態のアミン化合物を意味する。包含される医薬として許容される塩は、本明細書に開示される特定の化合物について例示される分離塩のみならず、式Aの化合物のフリー体の通常の医薬として許容される塩をも含む。開示された特定の塩化合物のフリー体は、当業界で公知の技術を用いて分離することができる。例えば、フリー体は、希釈NaOH水溶液、炭酸カリウム、アンモニア及び重炭酸ナトリウム等の、適切な希釈塩基溶液を用いる、塩処理によって再生することができる。フリー体は、極性溶媒中の溶解度等の特定の物性においては、個別の塩形態とはいくぶん異なっているが、酸及び塩基塩は、その他の点では、本発明の目的のためにそれぞれのフリー体と薬学的に等価である。
【0114】
本発明の化合物の医薬として許容される塩は、通常の化学的方法によって、塩基性又は酸性部分を含む本発明の化合物から合成することができる。一般に、塩基性化合物の塩は、イオン交換クロマトグラフィーによるか、又は適当な溶媒中、又は種々の溶媒の組み合わせ中でフリーの塩基を所望の塩形成無機酸又は有機酸の化学量論的量又は過剰量と反応させるのいずれかによって調製される。同様に、酸性化合物の塩基は、適当な無機塩基又は有機塩基との反応によって形成される。
【0115】
従って、本発明の化合物の医薬として許容される塩には、塩基性の本発明の化合物を、無機又は有機酸と反応させることにより形成されるような、本発明化合物の通常の非毒性塩が含まれる。例えば、通常の非毒性塩には、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸、等の無機酸から誘導される塩;酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2−アセトキシ−安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタン二スルホン酸、シュウ酸、イセチオン酸、トリフルオロ酢酸(TFA)等の有機酸から誘導される塩が含まれる。
【0116】
本発明の化合物が酸性である場合、適当な「医薬として許容される塩」は、無機塩基及び有機塩基を含む、医薬として許容される非毒性塩基から製造される塩を意味する。無機塩基から由来する塩には、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、第二鉄、第一鉄、リチウム、マグネシウム、マンガン塩、マンガン、カリウム、ナトリウム、亜鉛等が含まれる。特に好ましくは、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、カリウム及びナトリウム塩である。医薬として許容される有機非毒性塩基から由来する塩には、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミン等の、一級、二級及び三級アミン、天然由来の置換アミン、環状アミン及び塩基性イオン交換樹脂を含む、置換アミンが含まれる。
【0117】
上述した医薬として許容される塩、及び他の典型的な医薬として許容される塩の調製は、Bergら,“薬学的塩”J.Pharm.Sci.,1977:66:1−19に更に十分に開示されている。
【0118】
生理的条件下で、化合物の脱プロトン化された酸性部分、例えば、カルボキシル基は陰イオン性であり、この電荷は、四級窒素原子等のプロトン化された又はアルキル化された塩基部分の陽イオン電荷に対してバランスをとるかもしれないので、本発明の化合物は、潜在的に内部塩又は両性イオンであることが明記されよう。
【0119】
有用性
本発明の化合物はAktの活性の阻害剤であり、従って、癌、特に、Akt活性における不規則性、及びAktの下流の細胞標的に関連する癌の治療に有用である。この種の癌には、卵巣、膵臓、乳及び前立腺癌、及び腫瘍抑制因子PTENが突然変異した癌(膠芽細胞腫を含む)が含まれる(Chengら、Proc.Natl.Acad.Sci.(1992)89:9267−9271;Chengら、Proc.Natl.Acad.Sci.(1996)93:3636−3641;Bellacosaら、Int.J.Cancer(1995)64:280−285;Nakataniら、J.Biol.Chem.(1999)274:21528−21532;Graff,Expert.Opin.Ther.Targets(2002)6(1):103−113;及びYamada及びAraki,J.Cell Science.(2001)114:2375−2382;Mischel及びCloughesy,Brain Pathol.(2003)13(1):52−61)。
【0120】
本明細書に提供される化合物、組成物及び方法は、特に癌の治療に有用であると思われる。本発明の化合物、組成物及び方法によって治療することのできる癌には、心臓:肉腫(血管肉腫、線維肉腫、横紋筋肉腫、脂肪肉腫)、粘液腫、横紋筋腫、線維腫、脂肪腫及びテラトーマ;:気管支癌(扁平上皮細胞、未分化小細胞、未分化大細胞、腺癌)、肺胞(細気管支)癌、気管支腺腫、肉腫、リンパ腫、軟骨性過誤腫、中皮腫;胃腸:食道(扁平上皮癌、腺癌、平滑筋肉腫、リンパ腫)、胃(癌、リンパ腫、平滑筋肉腫)、膵臓(導管腺癌、膵島細胞腺腫、グルカゴン産生腫瘍、ガストリン産生腫瘍、カルチノイド、ビポーマ)、小腸(腺癌、リンパ腫、カルチノイド腫瘍、カポシ肉腫、平滑筋腫、血管腫、脂肪腫、神経線維腫、線維腫)、大腸(腺癌、管状腺腫、絨毛腺腫、過誤腫、平滑筋腫):尿生殖器官:腎臓(腺癌、ウィルムス腫瘍[腎芽腫]、リンパ腫、白血病)、膀胱及び尿道(扁平上皮癌、移行上皮癌、腺癌)、前立腺(腺癌、肉腫)、睾丸(精上皮腫、テラトーマ、胎児性癌、奇形癌、絨毛癌、肉腫、間質細胞癌、線維腫、線維腺腫、類腺腫瘍、脂肪腫);肝臓:肝臓癌(肝細胞癌)、胆管癌、肝芽腫、血管肉腫、肝細胞腺腫、血管腫;:骨原性肉腫(骨肉腫)、線維肉腫、悪性線維性組織球腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、悪性リンパ腫(細網肉腫)、多発性骨髄腫、悪性骨巨細胞腫瘍脊索腫、オステオクロンフローマ(osteochronfroma)(骨軟骨性外骨症)、良性脊索腫、軟骨芽細胞腫、軟骨粘液腫様線維腫、骨腫及び巨細胞腫瘍;神経系:頭蓋骨(骨腫、血管腫、肉芽腫、黄色腫、変形性骨炎)、髄膜(髄膜腫、髄膜肉腫、神経膠腫症)、脳(星状細胞腫、髄芽細胞腫、神経膠腫、上衣細胞腫、未分化胚細胞腫[松果体腫]、膠芽細胞腫、多形性膠芽腫、希突起膠細胞腫、シュワン細胞腫、網膜芽腫、先天性腫瘍)、脊髄神経線維腫、髄膜腫、神経膠腫、肉腫);婦人科:子宮(子宮内膜癌)、頚部(子宮頚癌、腫瘍前子宮頚部異形成)、卵巣(卵巣癌[漿液性嚢胞腺癌、粘液性嚢胞腺癌、未分類癌]、顆粒膜卵胞膜細胞腫、セルトリ−ライディッヒ細胞腫瘍、未分化胚細胞腫、悪性奇形腫)、外陰部(扁平上皮癌、上皮内癌、腺癌、繊維肉腫、黒色腫)、膣(明細胞癌、扁平上皮癌、ブドウ状肉腫(胎児性横紋筋肉腫)、ファローピウス管(癌);血液学的:血液(骨髄性白血病[急性及び慢性]、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病、骨髄増殖性疾患、多発性骨髄腫、脊髄形成異常症候群)、ホジキン病、非ホジキン性リンパ腫[悪性リンパ腫];皮膚:悪性黒色腫、基底細胞癌、扁平上皮癌、カポシ肉腫、モル形成異常母斑、リンパ腫、血管腫、皮膚線維腫、ケロイド、乾癬;及び副腎:神経芽細胞腫が含まれるが、これらに限定されない。従って、本明細書で示される「癌性細胞」なる用語は、上記に定義された病状のいずれか1つによってわずわされる細胞を含む。
【0121】
本発明の化合物、組成物及び方法によって治療することのできる癌には、乳癌、前立腺癌、大腸癌、肺癌、脳癌、睾丸癌、胃癌、膵臓癌、皮膚癌、小腸癌、大腸癌、咽喉癌、頭部及び頸部癌、口腔癌、骨癌、肝臓癌、膀胱癌、腎臓癌、甲状腺癌及び血液癌が含まれるが、これらに限定されない。
【0122】
Aktシグナル伝達は、血管形成における複数の重大な段階を調節する(Shiojima及びWalsh,Circ.Res.(2002)90:1243−1250)。癌の治療における血管形成阻害剤の有用性は文献で公知である(例えば、J.Rakら、Cancer Research,55:4575−4580,1995及びDredgeら、Expert Opin.Biol.Ther.(2002)2(8):953−966を参照)。癌における血管形成の役割は、多数のタイプの癌及び組織:すなわち、乳癌(G.Gasparini及びA.L.Harris,J.Clin.Oncol.,1995,13:765−782;M.Toiら、Japan.J.Cancer Res.,1994,85:1045−1049);膀胱癌(A.J.Dickinsonら、Br.J.Urol.,1994,74:762−766);結腸癌(L.M.Ellisら、Surgery,1996,120(5):871−878);及び口腔癌(J.K.Williamsら、Am.J.Surg.,1994,168:373−380)において示されている。他の癌には、進行性の腫瘍、ヘアリー・セル白血病、メラノーマ、進行性頭部及び頸部癌、転移性腎臓癌、非−ホジキンリンパ腫、転移性乳癌、乳腺腺癌、進行性メラノーマ、腎臓癌、胃癌、膠芽細胞腫、肺ガン、卵巣癌、非小細胞肺癌、前立腺癌、小細胞肺癌、腎細胞癌、種々の固形腫瘍、多発性骨髄腫、転移性前立腺癌、悪性神経膠腫、腎臓癌、リンパ腫、難治性転移性疾患、難治性多発性骨髄腫、子宮頚癌、カポシ肉腫、再発性異型性グリオーマ、及び転移性大腸癌が含まれる(Dredgeら、Expert Opin.Biol.Ther.(2002)2(8):953−966)。従って、本明細書に開示されたAkt阻害剤は、これらの血管形成関連癌の治療にも有用である。
【0123】
新血管新生を起こす腫瘍では、転移の可能性が増加することが示される。実際、血管新生は、腫瘍の成長及び転移に必須である(S.P.Cunninghamら、Can.Research,61:3206−3211(2001))。従って、本明細書に開示されたAkt阻害剤は、腫瘍細胞の転移を予防又は減少するのに有用である。
【0124】
更に、本発明の範囲には、このような治療を必要とするほ乳類に、治療に有効な量の本発明の化合物を投与することを含む、血管形成が関与する疾患を治療及び予防する方法が含まれる。眼性新生血管疾患は、結果として生じる組織損傷の多くが眼内血管の異常な浸潤に起因し得る状態の具体例である(2000年6月2日に公開されたWO 00/30651を参照)。好ましくない浸潤は、糖尿病性網膜症、網膜症、網膜静脈閉塞等によって引き起こされるような虚血性網膜症によって、又は年齢関連性黄斑変性において観察される脈絡膜血管新生等の消耗疾患によって誘発され得る。従って、本発明の化合物の投与による血管形成の阻害により、血管浸潤が予防され、また、血管形成が関与する疾患、例えば、網膜血管化、糖尿病性網膜症、年齢関連性黄斑変性等の眼疾患が予防又は治療される。
【0125】
更に、本発明の範囲には、血管形成が関与する非悪性疾患(眼疾患(網膜血管化、糖尿病性網膜症及び年齢関連性黄斑変性等)、アテローム性動脈硬化症、関節炎、乾癬、肥満症及びアルツハイマー病等を含むが、これらに限定されない)の治療又は予防方法が含まれる(Dredgeら、Expert Opin.Biol.Ther.(2002)2(8):953−966)。他の実施態様においては、眼疾患(網膜血管化、糖尿病性網膜症及び年齢関連性黄斑変性等)、アテローム性動脈硬化症、関節炎、乾癬等の血管形成が関与する疾患の治療又は予防方法が含まれる。
【0126】
更に、本発明の範囲には、再狭窄、炎症、自己免疫疾患及びアレルギー/喘息等の過増殖性疾患の治療方法が含まれる。
【0127】
更に、本発明の範囲には、ステントをコーティングするための本発明の化合物の使用、従って、再狭窄の治療及び/又は予防のためにステントをコーティングするための本発明の化合物の使用が含まれる(WO03/032809)。
【0128】
更に、本発明の範囲には、変形性関節症の治療及び/又は予防のための本発明の化合物の使用が含まれる(WO03/035048)。
【0129】
更に、本発明の範囲には、インシュリン過剰症の治療方法が含まれる。
【0130】
本発明の化合物は、また、前述した疾患、特に癌の治療に有用な医薬の製造に有用である。
【0131】
本発明の一実施態様においては、本発明の化合物は、阻害効果がPHドメインに依存する選択的阻害剤である。この実施態様においては、PHドメインを欠く、先端を切断されたAktタンパク質に対するインビトロにおける阻害活性の減少を示すか、又は示さない。
【0132】
更なる実施態様においては、本発明の化合物は、Akt1の選択的阻害剤、Akt2の選択的阻害剤、及びAkt1及びAkt2の両方の選択的阻害剤からなる群から選択される。
【0133】
他の実施態様においては、本発明の化合物は、Akt1の選択的阻害剤、Akt2の選択的阻害剤、Akt3の選択的阻害剤、及び3種のAktのイソ型のうちの2種の選択的阻害剤からなる群から選択される。
【0134】
他の実施態様においては、本発明の化合物は、全ての3種のAktのイソ型の選択的阻害剤であるが、PHドメイン、ヒンジ領域、又はPHドメイン及びヒンジ領域の両方を欠失するように修飾された、かかるAktのイソ型のうち、1、2種又は全ての阻害剤ではない。
【0135】
更に、本発明は、薬学的に有効な量の本発明の化合物を、それを必要とするほ乳類に投与することを含む、Akt活性の阻害方法に関する。
【0136】
本発明の化合物は、標準的な薬学のプラクティスに従い、医薬組成物中で、単独で、又は医薬として許容される担体、賦形剤又は希釈剤と組み合わせてヒトを含むほ乳類に投与されてもよい。本発明の化合物は、経口的又は非経口的に投与され、これらは、静脈注射、筋肉内注射、腹腔内注射、皮下注射、直腸投与、局所投与を含む。
【0137】
活性成分を含有する医薬組成物は、例えば、錠剤、トローチ、薬用ドロップ、水性又は油性懸濁液、分散性粉末又は顆粒、エマルジョン、硬又は軟カプセル剤、又はシロップ又はエリキシル剤等の経口投与に用いるのに適した形態であってもよい。経口用途を意図する医薬組成物は、医薬組成物の製造についての分野で公知の任意の方法に従って調製することができ、このような組成物は、薬学的な優雅さ及び味の良さを与えるために、甘味剤、着香料、着色剤及び保存剤からなる群から選択される1種以上の薬剤を含んでいてもよい。錠剤は、錠剤の製造に適している非毒性の医薬として許容される賦形剤と混合された活性成分を含有する。これらの賦形剤は、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、乳糖、リン酸カルシウム又はリン酸ナトリウム等の不活性賦形剤;微結晶性セルロース、クロスカルメロースナトリウム、コーンスターチ又はアルギン酸等の造粒剤及び崩壊剤;デンプン、ゼラチン、ポリビニル−ピロリドン又はアラビアゴム等の結合剤;ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸又はタルク等の滑沢剤であってもよい。錠剤は、コーティングされていなくてもよく、又は好ましくない味をマスキングし、又は崩壊、胃腸管における吸収を遅らせ、その結果、長期間にわたった持続的作用を提供するために公知の技術によってコーティングされていてもよい。例えば、ヒドロキシプロピル−メチルセルロース又はヒドロキシプロピルセルロース等の水溶性のマスキング材料、エチルセルロース、セルロースアセテートブチレート等の時間遅延材料が用いられてもよい。
【0138】
経口用途のための製剤は、また、その活性成分が、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム又はカオリン等の不活性固体賦形剤と混合されている硬カプセル剤として、又はその活性成分が、ポリエチレングリコール等の水溶性担体、又はピーナッツ油、流動パラフィン又はオリーブ油等の油媒体と混合されている軟カプセル剤として存在してもよい。
【0139】
水性懸濁液は、水性懸濁液の製造に適した賦形剤と混合された活性物質を含有する。このような賦形剤は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル−セルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガントゴム及びアラビアゴム等の懸濁剤であり;分散剤又は湿潤剤は、レシチン等の天然由来のホスファチド、又はアルキレンオキシドと脂肪酸との縮合物(例えばステアリン酸ポリオキシエチレン)、又はエチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合物(例えばヘプタデカエチレンオキシセタノール)、エチレンオキシドと脂肪酸由来の部分エステル及びモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビトール等のヘキシトールとの縮合物、又はエチレンオキシドと脂肪酸由来の部分エステル及びモノオレイン酸ポリエチレンソルビタン等のヘキシトール無水物との縮合物であってもよい。水性懸濁液は、また、エチル、又はn−プロピルp−ヒドロキシ安息香酸等の1種以上の保存剤、1種以上の着色剤、1種以上の着香料、及びショ糖、サッカリン又はアスパルテーム等の甘味剤を含んでいてもよい。
【0140】
油性懸濁液は、活性成分を、ラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油又はやし油等の植物性油脂、又は流動パラフィン等の鉱油中に懸濁することによって製剤化である。油性懸濁液は、蜜ろう、固形パラフィン又はセチルアルコール等の増粘剤を含んでいてもよい。味の良い経口製剤を得るために、上述した甘味剤、着香料を加えてもよい。これらの組成物は、ブチル化ヒドロキシアニソール又はα−トコフェロール等の抗酸化剤の添加により、保存され得る。
【0141】
水の添加により水性懸濁液の調製に適した分散性粉末及び顆粒により、分散剤又は湿潤剤、懸濁剤及び1種以上の保存剤と混合された活性成分が得られる。適当な分散剤又は湿潤剤及び懸濁剤は、既に上述したものによって例示される。また、追加の賦形剤、例えば甘味剤、着香料及び着色剤も存在してもよい。これらの組成物は、アスコルビン酸等の抗酸化剤の添加によって保存してもよい。
【0142】
本発明の医薬組成物は、また、水中油系エマルジョンの形態であってもよい。油相は、オリーブ油、ラッカセイ油等の植物性油脂、又は流動パラフィン等の鉱油又はそれらの混合物であってもよい。適切な乳化剤は、大豆レシチン等の天然由来のホスファチド、モノオレイン酸ソルビタン等の、脂肪酸及びヘキシトール無水物由来のエステル又は部分エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート等の前記部分エステルとエチレンオキシドとの縮合物であってもよい。エマルジョンは、また、甘味剤、着香料、防腐剤及び抗酸化剤を含んでいてもよい。
【0143】
シロップ及びエリキシル剤は、グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール又はショ糖等の甘味剤と一緒に製剤化できる。このような製剤は、また、鎮痛剤、防腐剤、香料及び着色剤及び抗酸化剤を含んでいてもよい。
【0144】
医薬組成物は、無菌の注射用水溶液の形態であってもよい。前記許容される賦形剤及び溶媒の中で、水、リンゲル液及び等張性塩化ナトリウム溶液を使用することができる。
【0145】
無菌の注射製剤は、活性成分が油相に溶解している無菌の注射用水中油型マイクロエマルションであってもよい。例えば、活性成分を、最初に大豆油及びレシチンの混合物に溶解してもよい。次いで、油溶液を水及びグリセロールの混合液に入れ、マイクロエマルションを形成する処理を行なう。
【0146】
注射製剤又はマイクロエマルションは、局所大量注射によって患者の血流に注入してもよい。また、本発明の化合物の一定の血中濃度を維持するような方法で、溶液又はマイクロエマルションを投与することが有利である。このような一定の濃度を維持するために、連続静脈内配送システムが利用され得る。このような装置の具体例は、Deltec CADD−PLUS(登録商標)モデル5400静脈内ポンプである。
【0147】
医薬組成物は、筋肉内又は皮下投与のための無菌注射用水又は油脂性懸濁液の形態であってもよい。この懸濁液は、前述した、適切な分散剤又は湿潤剤及び懸濁剤を用いて、当業界で公知の方法に従って製剤化され得る。無菌注射製剤は、また、非毒性の非経口的に許容される希釈液又は溶媒中の無菌注射溶液又は懸濁液、例えば1,3−ブタンジオール中の溶液であってもよい。更に、無菌の不揮発性油は、溶媒又は懸濁媒体として通常に用いられる。このため、合成モノ−又はジグリセライドを含む任意の無菌の不揮発性油が、用いられる。更に、オレイン酸等の脂肪酸が、注射液の調製において用いられる。
【0148】
式Aで表される化合物は、また、薬物の直腸投与のための坐剤の形態で投与されてもよい。これらの組成物は、薬物と、通常の温度では固体であるが、直腸温度で液体であって、直腸で溶解して薬物を遊離する、適切な非刺激性賦形剤とを混合することによって調製することができる。このような材料には、カカオ脂、グリセリンゼラチン、硬化植物油、種々の分子量のポリエチレングリコールの混合物及びポリエチレングリコールの脂肪酸エステルが含まれる。
【0149】
局所利用のために、式Aで表される化合物を含む、クリーム、軟膏、ゼリー、溶液又は懸濁液等が使用される(この応用の目的のため、局所的応用は、口内洗浄剤及びうがい薬を含む)。
【0150】
本発明の化合物は、適切な鼻腔媒体及び送達装置の局所的使用によって鼻腔内形態で、又は当業者に周知の経皮的皮膚用パッチ剤の形態を用いた経皮経路によって投与することができる。経皮的送達システムの形態で投与するために、もちろん、投与量は、投与計画を通じた断続的よりもむしろ連続的であろう。本発明の化合物は、また、カカオ脂、グリセリンゼラチン、硬化植物油、種々の分子量のポリエチレングリコールの混合物及びポリエチレングリコールの脂肪酸エステル等の塩基を使用した坐剤として提供されてもよい。
【0151】
本発明の化合物をヒトの患者に投与する場合、一日の投与量は、年齢、体重、性及び個々の患者の反応、及び患者の症状の重症度に従って一般的に変化するが、処方する医師によって通常決定される。
【0152】
一実施態様においては、癌の治療を受けているほ乳類に、Aktの阻害剤の適切な量が投与される。1日あたり、約0.1mg/体重1kg〜約60mg/体重1kg、又は0.5mg/体重1kg〜約40mg/体重1kgの量の阻害剤の投与が行われる。本発明の化合物を含有する別の治療用量は、Aktの阻害剤約0.01mg〜約1000mgである。他の実施態様においては、用量は、Akt阻害剤約1mg〜約1000mgである。
【0153】
本発明の化合物は、また、公知の治療薬及び抗癌剤との組み合わせに有用である。例えば、本発明の化合物は、公知の抗癌剤との組み合わせに有用である。本明細書に開示された化合物と、他の抗癌剤又は化学療法剤との組み合わせは、本発明の範囲内である。このような薬物の具体例は、V.T.Devita及びS.Hellman(編集)による、腫瘍学における、癌の原理及び実践、第6版(2001年2月15日)、Lippincott Williams&Wilkins Publishersに見出される。当業者は、薬物及び関与する癌の特性に基づき、どの組み合わせが有用であるかについて判断することができる。このような抗癌剤には、以下の、エストロゲン受容体モジュレーター、アンドロゲン受容体モジュレーター、レチノイド受容体モジュレーター、細胞障害性/細胞分裂停止薬剤、抗増殖剤、プレニル−タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤及び他の血管形成阻害剤、HIVプロテアーゼ阻害剤、逆転写酵素阻害剤、細胞増殖及び生存シグナル伝達の阻害剤、及び細胞周期のチェックポイントに干渉する薬剤が含まれるが、これらに限定されない。本発明の化合物は、放射線療法と共に治療するのに特に有用である。
【0154】
「エストロゲン受容体モジュレーター」は、メカニズムに関係なく、エストロゲンの受容体への結合を妨害又は阻害する化合物を意味する。エストロゲン受容体モジュレーターの具体例には、タモキシフェン、ラロキシフェン、イドキシフェン、LY353381、LY117081、トレミフェン、フルベストラント、4−[7−(2,2−ジメチル−1−オキソプロポキシ−4−メチル−2−[4−[2−(1−ピペリジニル)エトキシ]フェニル]−2H−1−ベンゾピラン−3−イル]−フェニル−2,2−ジメチルプロパノエート、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン−2,4−ジニトロフェニル−ヒドラゾン、及びSH646が含まれるが、これらに限定されない。
【0155】
「アンドロゲン受容体モジュレーター」は、メカニズムに関係なく、アンドロゲンの受容体への結合を妨害又は阻害する化合物を意味する。アンドロゲン受容体モジュレーターの具体例には、フィナステライド及び他の5α−レダクターゼ阻害剤、ニルタミド、フルタミド、ビカルタミド、リアロゾール及び酢酸アビラテロンが含まれる。
【0156】
「レチノイド受容体モジュレーター」は、メカニズムに関係なく、レチノイドの受容体への結合を妨害又は阻害する化合物を意味する。レチノイド受容体モジュレーターの具体レーには、ベキサロテン、トレチノイン、13−シス−レチノイン酸、9−シス−レチノイン酸、α−ジフルオロオルニチン、ILX23−7553、トランス−N−(4’−ヒドロキシフェニル)レチナミド、及びN−4−カルボキシフェニルレチナミドが含まれる。
【0157】
「細胞障害(傷害)性/細胞分裂停止薬剤」は、細胞の機能を直接に妨害するか、細胞の有糸分裂を阻害又は妨害することにより、主として細胞死を引き起こすか、又は細胞増殖を阻害する化合物を意味し、アルキル化剤、腫瘍壊死因子、インターカレーター、低酸素症活性化化合物、微小管阻害剤/微小管安定化剤、有糸分裂キネシン阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、有糸分裂の進行に関与するキナーゼの阻害剤、成長因子及びサイトカインシグナル伝達経路に関与するキナーゼの阻害剤、代謝拮抗剤;生体応答物質;ホルモン性/抗ホルモン性治療薬、造血性成長因子、モノクローナル抗体標的治療薬、トポイソメラーゼ阻害剤、プロテアソーム阻害剤、ユビキチンリガーゼ阻害剤、及びオーロラキナーゼ阻害剤を含む。
【0158】
細胞障害性/細胞分裂停止薬剤の具体例には、サーテネフ(sertenef)、カケクチン、イホスファミド、タソネルミン、ロニダミン、カルボプラチン、アルトレタミン、プレドニマスチン、ジブロモズルシトール、ラニムスチン、フォテムスチン、ネダプラチン、オキサリプラチン、テモゾロミド、ヘプタプラチン、エストラムスチン、インプロスルファントシレート、トロフォスアミド、ニムスチン、塩化ジブロスピジウム、プミテパ、ロバプラチン、サトラプラチン、プロフィロマイシン、シスプラチン、イロフルベン、デキシフォスファミド、シス−アミンジクロロ(2−メチル−ピリジン)白金、ベンジルグアニン、グルフォスファミド、GPX100、(トランス、トランス、トランス)−ビス−mu−(ヘキサン−1,6−ジアミン)−mu−[ジアミン−白金(II)]ビス〔ジアミン(クロロ)白金(II)〕テトラクロライド、ジアリジジニルスペルミン、三酸化砒素、1−(11−ドデシルアミノ−10−ヒドロキシウンデシル)−3,7−ジメチルキサンチン、ゾルビシン、イダルビシン、ダウノルビシン、ビサントレン、ミトキサントロン、ピラルビシン、ピナフィド、バルルビシン、アムルビシン、抗新生物薬、3’−デアミノ−3’−モルホリノ−13−デオキソ−10−ヒドロキシカルミノマイシン、アナマイシン、ガラルビシン、エリナフィド、MEN10755、4−デメトキシ−3−デアミノ−3−アジリジニル−4−メチルスルホニル−ダウノルビシン(WO 00/50032を参照)、Rafキナーゼ阻害剤(例えば、Bay43−9006)及びTOR阻害剤(例えば、Wyeth’s CCI−779)が含まれるが、これらに限定されない。
【0159】
低酸素症活性化化合物の具体例は、チラパザミンである。
【0160】
プロテオソーム阻害剤の具体例には、ラクタシスチン及びMLN−341(ベルカーデ)が含まれるが、これらに限定されない。
【0161】
微小管阻害剤/微小管安定化剤の具体例には、パクリタクセル、硫酸ビンデシン、3’,4’−ジデヒドロ−4’−デオキシ−8’−ノルビンカロイコブラスチン、ドセタキソール、リゾキシン、ドラスタチン、イセチオン酸ミボブリン、オーリスタチン、セマドチン、RPR109881、BMS184476、ビンフルニン、クリプトフィシン、2,3,4,5,6−ペンタフルオロ−N−(3−フルオロ−4−メトキシフェニル)ベンゼンスルホンアミド、無水ビンブラスチン、N,N−ジメチル−L−バリル−L−バリル−N−メチル−L−バリル−L−プロリル−L−プロリン−t−ブチルアミド、TDX258、エポチロン(例えば、米国特許第6,284,781号及び第6,288,237号明細書を参照)及びBMS188797が含まれる。一実施態様においては、エポチロンは、微小管阻害剤/微小管安定化剤に含まれない。
【0162】
トポイソメラーゼ阻害剤のいくつかの具体例は、トポテカン、ヒカプタミン、イリノテカン、ルビテカン、6−エトキシプロピオニル−3’,4’−O−エキソ−ベンジリデン−カルトリューシン(chartreusin)、9−メトキシ−N,N−ジメチル−5−ニトロピラゾロ[3,4,5−kl]アクリジン−2−(6H)プロパナミン、1−アミノ−9−エチル−5−フルオロ−2,3−ジヒドロ−9−ヒドロキシ−4−メチル−1H,12H−ベンゾ[デ]ピラノ[3’,4’:b,7]−インドリジノ[1,2b]キノリン−10,13(9H,15H)ジオン、ラートテカン(lurtotecan)、7−[2−(N−イソプロピルアミノ)エチル]−(20S)カンプトテシン、BNP1350、BNPI1100、BN80915、BN80942、リン酸エトポシド、テニポシド、ソブゾキサン、2’−ジメチルアミノ−2’−デオキシ−エトポシド、GL331、N−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−9−ヒドロキシ−5,6−ジメチル−6H−ピリド[4,3−b]カルバゾール−1−カルボキサミド、アスラクリン、(5a,5aB,8aa,9b)−9−[2−[N−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−N−メチルアミノ]エチル]−5−[4−ヒドロキシオキシ−3,5−ジメトキシフェニル]−5,5a,6,8,8a,9−ヘキソヒドロフロ(3’,4’:6,7)ナフト(2,3−d)−1,3−ジオキソール−6−オン、2,3−(メチレンジオキシ)−5−メチル−7−ヒドロキシ−8−メトキシベンゾ[c]−フェナントリジニウム、6,9−ビス[(2−アミノエチル)アミノ]ベンゾ[g]イソギノリン−5,10−ジオン、5−(3−アミノプロピルアミノ)−7,10−ジヒドロキシ−2−(2−ヒドロキシエチルアミノメチル)−6H−ピラゾロ[4,5,1−デ]アクリジン−6−オン、N−[1−[2(ジエチルアミノ)エチルアミノ]−7−メトキシ−9−オキソ−9H−チオキサンテン−4−イルメチル]ホルムアミド、N−(2−(ジメチルアミノ)エチル)アクリジン−4−カルボキサミド、6−[[2−(ジメチルアミノ)エチル]アミノ]−3−ヒドロキシ−7H−インデノ[2,1−c]キノリン−7−オン、及びディメスナである。
【0163】
有糸分裂キネシン、特にヒト有糸分裂キネシンKSPの阻害剤の具体例は、PCT出願、WO 01/30768、WO 01/98278、WO 03/049527、WO 03/049679、WO 03/050064、WO 03/050122、WO 03/049678及びWO 03/39460に開示されている。一実施態様においては、有糸分裂キネシンの阻害剤には、KSPの阻害剤、MKLP1の阻害剤、CENP−Eの阻害剤、MCAKの阻害剤及びRab6−KIFLの阻害剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0164】
「ヒストンデアセチラーゼ阻害剤」の具体例には、SAHA、TSA、オキサムフラチン、PXD101、MG98及びスクリプタイドが含まれるが、これらに限定されない。他のヒストンデアセチラーゼ阻害剤の更なる参考文献は以下に、すなわちMiller,T.A.ら、J.Med.Chem.46(24):5097−5116(2003)に見出される。
【0165】
「有糸分裂の進行に関与するキナーゼの阻害剤」には、オーロラキナーゼの阻害剤、ポロ様キナーゼの阻害剤(PLK;特にPLK−1の阻害剤)、bub−1の阻害剤及びbub−R1の阻害剤が含まれるが、これらに限定されない。「オーロラキナーゼ阻害剤」の具体例は、VX−680である。
【0166】
「抗増殖剤」には、G3139、ODN698、RVASKRAS、GEM231、及びINX3001等のアンチセンスRNA及びDNAオリゴヌクレオチド;エノシタビン、カーモフュア(carmofur)、テガフール、ペントスタチン、ドキシフルリジン、トリメトレキセート、フルダラビン、カペシタビン、ガロシタビン、シタラビンオクホスフェート、フォステアビンナトリウム水和物、ラルチトレキセド、パルチトレキシド、エミテファー(emitefur)、チアゾフリン、デシタビン、ノラトレキシド、ペメトレキセド、ネルザラビン、2’−デオキシ−2’−メチリデンシチジン、2’−フルオロメチレン−2’−デオキシシチジン、N−[5−(2,3−ジヒドロ−ベンゾフリル)スルホニル]−N’−(3,4−ジクロロフェニル)尿素、N6−[4−デオキシ−4−[N2−[2(E),4(E)−テトラデカジエノイル]グリシルアミノ]−L−グリセロ−B−L−マンノ−ヘプトピラノシル]アデニン、アプリジン、エクテイナシジン、トロキサシタビン、4−[2−アミノ−4−オキソ−4,6,7,8−テトラヒドロ−3H−ピリミジノ[5,4−b][1,4]チアジン−6−イル−(S)−エチル]−2,5−チエノイル−L−グルタミン酸、アミノプテリン、5−フルオロウラシル、アラノシン、11−アセチル−8−(カルバモイルオキシメチル)−4−ホルミル−6−メトキシ−14−オキサ−1,11−ジアザテトラシクロ(7.4.1.0.0)−テトラデカ−2,4,6−トリエン−9−イル酢酸エステル、スワンソニン、ロメトレキソール、デキスラゾキサン、メチオニナーゼ、2’−シアノ−2’−デオキシ−N4−パルミトイル−1−B−D−アラビノフラノシルシトシン、3−アミノピリジン−2−カルボキシアルデヒドチオセミカルバゾン及びトラスツズマブ等の代謝拮抗剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0167】
モノクローナル抗体標的治療薬の具体例は、細胞障害性薬剤、又は癌細胞特異的又は標的細胞特異的モノクローナル抗体に結合する放射性同位元素を有する治療薬である。具体例にはベクザーが含まれる。
【0168】
「HMG−CoAレダクターゼ阻害剤」は、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAレダクターゼの阻害剤を意味する。用いられるHMG−CoAレダクターゼ阻害剤の具体例には、ロバスタチン(MEVACOR(登録商標);米国特許第4,231,938号、第4,294,926号及び第4,319,039号明細書を参照)、シムバスタチン(ZOCOR(登録商標);米国特許第4,444,784号、第4,820,850号及び第4,916,239号明細書を参照)、プラバスタチン(PRAVACHOL(登録商標);米国特許第4,346,227号、第4,537,859号、第4,410,629号、第5,030,447号及び第5,180,589号明細書を参照)、フルバスタチン(LESCOL(登録商標);米国特許第5,354,772号、第4,911,165号、第4,929,437号、第5,189,164号、第5,118,853号、第5,290,946号及び5,356,896号明細書を参照)、アトルバスタチン(LIPITOR(登録商標);米国特許第5,273,995号、第4,681,893号、第5,489,691号及び第5,342,952号明細書を参照)、及びセルビスタチン(リバスタチンとしても知られている、BAYCHOL(登録商標);米国特許第5,177,080号明細書を参照)が含まれるが、これらに限定されない。本発明の方法で用いることのできる、これらの化合物及び追加のHMG−CoAレダクターゼ阻害剤の構造式は、Chemistry&Industry,pp.85−89(1996年2月5日)のM.Yalpani「コレステロール降下剤」の87頁、及び米国特許第4,782,084号及び第4,885,314号明細書に開示されている。本明細書で用いられるように、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤なる用語には、HMG−CoAレダクターゼ阻害活性を有する、全ての医薬として許容されるラクトン及び開放酸性型((open−acid form)、すなわち、ラクトン環が開いてフリーの酸を形成する場合)、及び化合物の塩及びエステル型が含まれ、従って、このような塩、エステル、開放型及びラクトン型の使用は本発明の範囲内である。
【0169】
「プレニル−タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤」は、ファルネシル−タンパク質トランスフェラーゼ(FPTアーゼ)、ゲラニルゲラニル−タンパク質トランスフェラーゼタイプI(GGPTアーゼ−I)、及びゲラニルゲラニル−タンパク質トランスフェラーゼII型(GGPTアーゼII、Rab GGPTアーゼとも呼ばれる)を含む、プレニル−タンパク質トランスフェラーゼ酵素の1種又は任意の組み合わせを阻害する化合物を意味する。
【0170】
プレニル−タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤の具体例は、以下の文献及び特許公報、すなわち、WO 96/30343、WO 97/18813、WO 97/21701、WO 97/23478、WO 97/38665、WO 98/28980、WO 98/29119、WO 95/32987、米国特許第5,420,245号明細書、米国特許第5,523,430号明細書、米国特許第No.5,532,359号明細書、米国特許第5,510,510号明細書、米国特許第5,589,485号明細書、米国特許第5,602,098号明細書、欧州特許出願公開第0 618 221号明細書、欧州特許出願公開第0 675 112号明細書、欧州特許出願公開第0 604 181号明細書、欧州特許出願公開第0 696 593号明細書、WO 94/19357、WO 95/08542、WO 95/11917、WO 95/12612、WO 95/12572、WO 95/10514、米国特許第5,661,152号明細書、WO 95/10515、WO 95/10516、WO 95/24612、WO 95/34535、WO 95/25086、WO 96/05529、WO 96/06138、WO 96/06193、WO 96/16443、WO 96/21701、WO 96/21456、WO 96/22278、WO 96/24611、WO 96/24612、WO 96/05168、WO 96/05169、WO 96/00736、米国特許第5,571,792号明細書、WO 96/17861、WO 96/33159、WO 96/34850、WO 96/34851、WO 96/30017、WO 96/30018、WO 96/30362、WO 96/30363、WO 96/31111、WO 96/31477、WO 96/31478、WO 96/31501、WO 97/00252、WO 97/03047、WO 97/03050、WO 97/04785、WO 97/02920、WO 97/17070、WO 97/23478、WO 97/26246、WO 97/30053、WO 97/44350、WO 98/02436、及び米国特許第5,532,359号明細書に見出される。プレニル−タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤の血管形成における役割の具体例については、European J.of Cancer,Vol.35,No.9,pp.1394−1401(1999)を参照されたい。
【0171】
「血管形成阻害剤」は、メカニズムに関係なく、新規な血管の形成を阻害する化合物を意味する。血管形成阻害剤の具体例には、チロシンキナーゼ受容体Flt−1(VEGFR1)及びFlk−1/KDR(VEGFR2)等のチロシンキナーゼ阻害剤、表皮由来、線維芽細胞由来、又は血小板由来成長因子の阻害剤、MMP(マトリクスメタロプロテアーゼ)阻害剤、インテグリン遮断薬、インターフェロン−α、インターロイキン−12、ペントサン多硫酸、アスピリン及びイブプロフェン等の非ステロイド性抗炎症剤(NSAIDs)を含むシクロオキシゲナーゼ阻害剤、及びセレコキシブ及びロフェコキシブ等の選択的シクロオキシゲナーゼ−2阻害剤((PNAS,Vol.89,p.7384(1992);JNCI,Vol.69,p.475(1982);Arch.Opthalmol.,Vol.108,p.573(1990);Anat.Rec.,Vol.238,p.68(1994);FEBS Letters,Vol.372,p.83(1995);Clin,Orthop.Vol.313,p.76(1995);J.Mol.Endocrinol.,Vol.16,p.107(1996);Jpn.J.Pharmacol.,Vol.75,p.105(1997);Cancer Res.,Vol.57,p.1625(1997);Cell,Vol.93,p.705(1998);Intl.J.Mol.Med.,Vol.2,p.715(1998);J.Biol.Chem.,Vol.274,p.9116(1999))、ステロイド性抗炎症剤(例えば、コルチコステロイド、鉱質コルチコイド、デキサメタゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレド、ベタメタゾン)、カルボキシアミドトリアゾール、コンブレタスタチンA−4、スクワラミン、6−O−クロロアセチル−カルボニル)フマギロール、サリドマイド、アンジオスタチン、トロポニン−1、アンジオテンシンIIアンタゴニスト(Fernandezら,J.Lab.Clin.Med.105:141−145(1985)を参照)、及びVEGFに対する抗体(Nature Biotechnology,Vol.17,pp.963−968(1999年10月);Kimら,Nature,362,841−844(1993);WO 00/44777;及びWO 00/61186を参照)が含まれるが、これらに限定されない。
【0172】
血管形成を調節又は阻害し、本発明の化合物と組み合わせて用いてもよい他の治療薬には、凝固及び線維素溶解システムを調節又は阻害する薬剤が含まれる(review in Clin.Chem.La.Med.38:679−692(2000)を参照)。凝固及び線維素溶解経路を調節又は阻害する、このような薬剤には、ヘパリン(Thromb.Haemost.80:10−23(1998)を参照)、低分子量ヘパリン及びカルボキシペプチダーゼU阻害剤(活性化トロンビンの活性化可能な線維素溶解阻害の阻害剤[TAFIa]としても知られている)(Thrombosis Res.101:329−354(2001)を参照)が含まれるが、これらに限定されない。TAFIa阻害剤は、PCT出願WO 03/013,526に記載されている。
【0173】
「細胞周期チェックポイントに干渉する薬剤」は、細胞周期チェックポイントシグナルを伝達し、その結果、DNA傷害(損傷)剤に対して癌細胞を感作する、プロテインキナーゼを阻害する化合物を意味する。このような薬剤には、ATR、ATMの阻害剤、Chk1及びChk2キナーゼ阻害剤、及びcdk及びcdcキナーゼ阻害剤が含まれ、特に7−ヒドロキシスタウロスポリン、フラボピリドール、CYC202(サイクラセル)及びBMS−387032によって例示される。
【0174】
「細胞増殖及び生存シグナル伝達経路の阻害剤」は、細胞表面受容体の下流にカスケードするシグナル伝達を阻害する化合物を意味する。このような薬剤には、セリン/スレオニンキナーゼの阻害剤(WO 02/083064,WO 02/083139,WO 02/083140,WO 02/083138,WO 03/086279,WO 03/086394,WO 03/086403,WO 03/086404及びWO 04/041162に記載されたようなAktの阻害剤を含むが、これらに限定されない)、Rafキナーゼの阻害剤(例えば、BAY−43−9006)、MEKの阻害剤(例えば、CI−1040及びPD−098059)、mTORの阻害剤(例えば、Wyeth CCI−779)、及びPI3Kの阻害剤(例えば、LY294002)が含まれる。
【0175】
前述したように、NSAIDの組み合わせは、強力なCOX−2阻害剤である、NSAIDの使用に関する。この明細書の目的のため、細胞又はミクロソームアッセイによって測定される、COX−2の阻害についての1μM以下のIC50を有する場合、NSAIDは強力である。
【0176】
本発明は、また、選択的COX−2阻害剤であるNSAIDとの併用を含む。この明細書の目的のため、COX−2の選択的阻害剤であるNSAIDは、細胞又はミクロソームアッセイにより評価される場合、COX−1についてのIC50に対するCOX−2についてのIC50の比によって測定されるとき、COX−1阻害に対するCOX−2の阻害は、少なくとも100倍超える選択性を有するものとして定義される。このような化合物には、米国特許第5,474,995号明細書、米国特許第5,861,419号明細書、米国特許第6,001,843号明細書、米国特許第6,020,343号明細書、米国特許第5,409,944号明細書、米国特許第5,436,265号明細書、米国特許第5,536,752号明細書、米国特許第5,550,142号明細書、米国特許第5,604,260号明細書、米国特許第5,698,584号明細書、米国特許第5,710,140号明細書、WO 94/15932、米国特許第5,344,991号明細書、米国特許第5,134,142号明細書、米国特許第5,380,738号明細書、米国特許第5,393,790号明細書、米国特許第5,466,823号明細書、米国特許第5,633,272号明細書、及び米国特許第5,932,598号明細書に開示されたもの(全てが本明細書に参考文献として組み入れられる)が含まれるが、これらに限定されない。
【0177】
本発明の治療方法において特に有用なCOX−2の阻害剤は、3−フェニル−4−(4−(メチルスルホニル)フェニル)−2−(5H)−フラノン;及び5−クロロ−3−(4−メチルスルホニル)−フェニル−2−(2−メチル−5−ピリジニル)ピリジン;又はそれらの医薬として許容される塩である。
【0178】
COX−2の特異的阻害剤として記載され、その結果本発明において有用である化合物には、パレコキシブ、BEXTRA(登録商標)及びCELEBREX(登録商標)又はそれらの医薬として許容される塩が含まれるが、これらに限定されない。
【0179】
血管形成阻害剤の他の具体例には、エンドスタチン、ウクライン、ランピルナーゼ、IM862、5−メトキシ−4−[2−メチル−3−(3−メチル−2−ブテニル)オキシラニル]−1−オキサスピロ[2,5]オクタ−6−イル(クロロアセチル)カルバメート、アセチルジナナリン、5−アミノ−1−[[3,5−ジクロロ−4−(4−クロロベンゾイル)−フェニル]メチル]−1H−1,2,3−トリアゾール−4−カルボキサミド、CM101、スクワラミン、コンブレタスタチン、RPI4610、NX31838、硫酸化マンノペンタオースホスフェート、7,7−(カルボニル−ビス[イミノ−N−メチル−4,2−ピロロカルボニルイミノ[N−メチル−4,2−ピロール]−カルボニルイミノ]−ビス−(1,3−ナフタレジスルホネート)、及び3−[(2,4−ジメチルピロール−5−イル)メチレン]−2−インドリノン(SU5416)が含まれるが、これらに限定されない。
【0180】
上記で用いられたように、「インテグリン遮断薬」は、αβインテグリンに対する生理学的リガンドの結合を選択的に拮抗し、阻害し、又は妨げる化合物;αβインテグリンに対する生理学的リガンドの結合を選択的に拮抗し、阻害し、又は妨げる化合物;αβインテグリン及びαβインテグリンの両方に対する生物学的リガンドの結合を拮抗し、阻害し、又は妨げる化合物;及び毛細管内皮細胞で発現する特定のインテグリンの活性を拮抗し、阻害し、又は妨げる化合物を意味する。該用語は、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ1、αβ及びαβインテグリンのアンタゴニストを意味する。該用語は、また、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ及びαβインテグリンの任意の組み合わせのアンタゴニストを意味する。
【0181】
チロシンキナーゼ阻害剤のいくつかの具体例には、N−(トリフルオロメチルフェニル)−5−メチルイソオキサゾール4−カルボキサミド、3−[(2,4−ジメチルピロール−5−イル)メチリデニル)インドリン−2−オン、17−(アリルアミノ)−17−デメトキシゲルダナマイシン、4−(3−クロロ−4−フルオロフェニルアミノ)−7−メトキシ−6−[3−(4−モルホリニル)プロポキシル]キナゾリン、N−(3−エチニルフェニル)−6,7−ビス(2−メトキシエトキシ)−4−キナゾリナミン、BIBX1382、2,3,9,10,11,12−ヘキサヒドロ−10−(ヒドロキシメチル)−10−ヒドロキシ−9−メチル−9,12−エポキシ−1H−ジインドロ[1,2,3−fg:3’,2’,1’−kl]ピロロ[3,4−i][1,6]ベンゾジアゾシン−1−オン、SH268、ゲニステイン、STI571、CEP2563、4−(3−クロロフェニルアミノ)−5,6−ジメチル−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジンメタンスルホネート、4−(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)アミノ−6,7−ジメトキシキナゾリン、4−(4’−ヒドロキシフェニル)アミノ−6,7−ジメトキシキナゾリン、SU6668、STI571A、N−4−クロロフェニル−4−(4−ピリジルメチル)−1−フタラジンアミン、及びEMD121974が含まれる。
【0182】
抗癌化合物以外の化合物との組み合わせも、本発明の方法に含まれる。例えば、本願の請求項の化合物と、PPAR−γ(すなわち、PPAR−ガンマ)アゴニスト及びPPAR−δ(すなわち、PPAR−デルタ)アゴニストとの組み合わせは、特定の悪性腫瘍の治療に有用である。PPAR−γ及びPPAR−δは、核ペルオキシソーム増殖因子−活性化受容体γ及びδである。内皮細胞上でのPPAR−γの発現及び血管形成における関与は文献に報告されている(J.Cardiovasc.Pharmacol.1998;31:909−913;J.Biol.Chem.1999;274:9116−9121;Invest.Ophthalmol Vis.Sci.2000;41:2309−2317を参照)。最近、PPAR−γアゴニストが、インビトロにおいてVEGFに対する血管形成応答を阻害すること;トログリタゾン及びマレイン酸ロシグリタゾンの両方が、マウスにおいて網膜新血管新生を阻害することが示された(Arch.Ophthamol.2001;119:709−717)。PPAR−γアゴニスト及びPPAR−γ/αアゴニストの具体例には、チアゾリジンジオン(例えば、DRF2725、CS−011、トログリタゾン、ロシグリタゾン、及びピオグリタゾン)、フェノフィブレート、ゲムフィブロジル、クロフィブレート、GW2570、SB219994、AR−H039242、JTT−501、MCC−555、GW2331、GW409544、NN2344、KRP297、NP0110、DRF4158、NN622、GI262570、PNU182716、DRF552926、2−[(5,7−ジプロリル−3−トリフルオロメチル−1,2−ベンズイソオキサゾール6−イル)オキシ]−2−メチルプロピオン酸(WO 01/60807)、及び2(R)−7−(3−(2−クロロ−4−(4−フルオロフェノキシ)フェノキシ)プロポキシ)−2−エチルクロマン−2−カルボン酸(WO 02/026729)が含まれるが、これらに限定されない。
【0183】
本発明の他の実施態様は、癌の治療のための遺伝子治療との組み合わせにおける本発明の化合物の使用である。癌の治療に対する遺伝的戦略の概要については、Hallら(Am J Hum Genet 61:785−789,1997)及びKufeら(Cancer Medicine,5th Ed,pp 876−889,BC Decker,Hamilton 2000)を参照されたい。遺伝子治療は、任意の腫瘍抑制遺伝子を送達するために用いられ得る。このような遺伝子の例には、組換型ウィルス媒介遺伝子トランスファーによって送達され得るp53(例えば、米国特許第6,069,134号明細書を参照)、uPA/uPARアンタゴニスト(uPA/uPARアンタゴニスト抑制血管新生依存腫瘍の成長のアデノウィルスが媒介する配送及びマウスにおける播種、Gene Therapy,August 1998;5(8):1105−13)、及びインターフェロンガンマ(J Immunol 2000;164:217−222)が含まれるが、これらに限定されない。
【0184】
本発明の化合物は、また、固有の多剤耐性(MDR)の阻害剤、特に、高濃度のトランスポータータンパク質と関連するMDRの阻害剤と組み合わせて投与してもよい。このようなMDR阻害剤には、LY335979、XR9576、OC144−093、R101922、VX853及びPSC833(バルスポーダー)等のp−糖タンパク質(P−gp)が含まれる。
【0185】
本発明の化合物は、本発明の化合物を単独又は放射線療法と共に用いることにより引き起こされるかもしれない、急性、遅延型、遅発性及び予測的嘔吐を含む、吐き気又は嘔吐を治療するために、抗催吐薬と共に用いてもよい。嘔吐の予防又は治療について、本発明の化合物は、他の抗催吐薬、特に、ニューロキニン−1受容体アンタゴニスト;オンダンセトロン、グラニセトロン、トロピセトロン、及びザチセトロン等の5HT3受容体アンタゴニスト;バクロフェン等のGABAB受容体アゴニスト;デカドロン(デキサメタゾン)等のコルチコステロイド;ケナログ、アリストコート、ナサリデ、プレフェリド、ベネコーテン又は米国特許第2,789,118号明細書、第2,990,401号明細書、第3,048,581号明細書、第3,126,375号明細書、第3,929,768号明細書、第3,996,359号明細書、第3,928,326号明細書及び第3,749,712号明細書に開示された他の薬剤;フェノチアジン(例えば、プロクロルペラジン、フルフェナジン、チオリダジン及びメソリダジン);メトクロプラミド又はドロナビノール等の抗ドーパミン作用薬とともに用いられてもよい。他の実施態様においては、ニューロキニン−1受容体アンタゴニスト、5HT3受容体アンタゴニスト及びコルチコステロイドから選択される抗催吐薬との連結治療法が、本発明の化合物の投与の結果である嘔吐を治療又は予防するために開示される。
【0186】
本発明の化合物と組み合わせて用いられるニューロキニン−1受容体アンタゴニストは例えば、米国特許第5,162,339号明細書、第5,232,929号明細書、第5,242,930号明細書、第5,373,003号明細書、第5,387,595号明細書、第5,459,270号明細書、第5,494,926号明細書、第5,496,833号明細書、第5,637,699号明細書、第5,719,147号明細書;欧州特許出願公開第0 360 390号明細書、第0 394 989号明細書、第0 428 434号明細書、第0 429 366号明細書、第0 430 771号明細書、第0 436 334号明細書、第0 443 132号明細書、第0 482 539号明細書、第0 498 069号明細書、第0 499 313号明細書、第0 512 901号明細書、第0 512 902号明細書、第0 514 273号明細書、第0 514 274号明細書、第0 514 275号明細書、第0 514 276号明細書、第0 515 681号明細書、第0 517 589号明細書、第0 520 555号明細書、第0 522 808号明細書、第0 528 495号明細書、第0 532 456号明細書、第0 533 280号明細書、第0 536 817号明細書、第0 545 478号明細書、第0 558 156号明細書、第0 577 394号明細書、第0 585 913号明細書、第0 590 152号明細書、第0 599 538号明細書、第0 610 793号明細書、第0 634 402号明細書、第0 686 629号明細書、第0 693 489号明細書、第0 694 535号明細書、第0 699 655号明細書、第0 699 674号明細書、第0 707 006号明細書、第0 708 101号明細書、第0 709 375号明細書、第0 709 376号明細書、第0 714 891号明細書、第0 723 959号明細書、第0 733 632及び第0 776 893号明細書;PCT国際公開WO 90/05525、90/05729、91/09844、91/18899、92/01688、92/06079、92/12151、92/15585、92/17449、92/20661、92/20676、92/21677、92/22569、93/00330、93/00331、93/01159、93/01165、93/01169、93/01170、93/06099、93/09116、93/10073、93/14084、93/14113、93/18023、93/19064、93/21155、93/21181、93/23380、93/24465、94/00440、94/01402、94/02461、94/02595、94/03429、94/03445、94/04494、94/04496、94/05625、94/07843、94/08997、94/10165、94/10167、94/10168、94/10170、94/11368、94/13639、94/13663、94/14767、94/15903、94/19320、94/19323、94/20500、94/26735、94/26740、94/29309、95/02595、95/04040、95/04042、95/06645、95/07886、95/07908、95/08549、95/11880、95/14017、95/15311、95/16679、95/17382、95/18124、95/18129、95/19344、95/20575、95/21819、95/22525、95/23798、95/26338、95/28418、95/30674、95/30687、95/33744、96/05181、96/05193、96/05203、96/06094、96/07649、96/10562、96/16939、96/18643、96/20197、96/21661、96/29304、96/29317、96/29326、96/29328、96/31214、96/32385、96/37489、97/01553、97/01554、97/03066、97/08144、97/14671、97/17362、97/18206、97/19084、97/19942及び97/21702;及び英国特許出願公開第2 266 529号明細書、第2 268 931号明細書、第2 269 170号明細書、第2 269 590号明細書、第2 271 774号明細書、第2 292 144号明細書、第2 293 168号明細書、第2 293 169号明細書及び第2 302 689号明細書に完全に開示されている。このような化合物の製造法は、参考文献として組み入れられる、上記特許及び公開公報に完全に開示されている。
【0187】
一実施態様において、本発明の化合物と組み合わせて用いられるニューロキニン−1受容体アンタゴニストは、米国特許第5,719,147号明細書に開示されている、2−(R)−(1−(R)−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)−フェニル)エトキシ)−3−(S)−(4−フルオロフェニル)−4−(3−(5−オキソ−1H,4H−1,2,4−トリアゾロ)メチル)モルホリン、またはその医薬として許容される塩から選択される。
【0188】
本発明の化合物は、また、貧血の治療に有用な薬剤とともに投与してもよい。このような貧血治療薬は、このような治療薬としては、例えば、連続的な赤血球形成受容体活性化因子(例えばエポエチンアルファ)がある。
【0189】
本発明の化合物は、また、好中球減少症の治療に有用な薬剤とともに投与してもよい。このような治療薬は、例えば、ヒト顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)等の、好中球の生産及び機能を調節する造血成長因子である。G−CSFの具体例にはフィルグラスチムが含まれる。
【0190】
本発明の化合物は、レバミゾール、イソプリノシン及びザダキシン等の免疫増強剤とともに投与してもよい。
【0191】
本発明の化合物は、ビスホスフォネート(ビスホスフォネート、ジホスフォネート、ビスホスホン酸及びジホスホン酸を含むと理解される)と組み合わせて、骨癌を含む癌の治療又は予防に有用であり得る。ビスホスフォネートの具体例には、いずれかの及び全ての医薬として許容される塩、誘導体、水和物及びそれらの混合物を含む、エチドロネート(Didronel)、パミドロネート(Aredia)、アレンドロネート(Fosamax)、リセドロネート(Actonel)、ゾレドロネート(Zometa)、イバンドロネート(Boniva)、インカドロネート又はシマドロネート、クロドロネート、EB−1053、ミノドロネート、ネリドロネート、ピリドロネート及びチルドロネートが含まれるが、これらに限定されない。
【0192】
従って、本発明の範囲は、エストロゲン受容体モジュレーター、アンドロゲン受容体モジュレーター、レチノイド受容体モジュレーター、細胞障害性/細胞分裂停止薬剤、抗増殖剤、プレニル−タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤、HIVプロテアーゼ阻害剤、逆転写酵素阻害剤、血管形成阻害剤、PPAR−γアゴニスト、PPAR−δアゴニスト、固有の多剤耐性の阻害剤、抗催吐薬、貧血の治療に有用な薬剤、好中球減少症の治療に有用な薬剤、免疫強化剤、細胞増殖及び生存シグナル伝達の阻害剤、ビスホスフォネート、及び細胞周期チェックポイントに干渉する薬剤から選択される第二の化合物と組み合わせた、本明細書の請求の範囲の化合物の使用を含む。
【0193】
本発明の化合物に関連して、「投与」なる用語、及びその変形(例えば、化合物を「投与する」)は、治療の必要な動物の系に、化合物又は化合物のプロドラッグを導入することを意味する。本発明の化合物又はそのプロドラッグを、1種以上の他の活性薬剤(例えば、細胞障害性薬剤)と組み合わせて与える場合、「投与」及びその変形は、化合物又はそのプロドラッグ及び他の薬剤の同時及び経時的導入を含むことが理解される。
【0194】
本明細書で用いられるように、「組成物」なる用語は、特定の成分を特定の量で含有する製品、及び特定の成分の特定の量での組み合わせから直接又は間接に由来する製品を含むことを意図する。
【0195】
本明細書で用いられるように、「治療的に有効な量」なる用語は、研究者、獣医、医師又は他の臨床家によって決められた、組織、システム、動物又はヒトにおける生物学的又は医学的反応を誘発する、活性化合物又は医薬の量を意味する。
【0196】
「癌を治療する」又は「癌の治療」なる用語は、癌性状態に苦しんでいるほ乳類への投与、及び癌性細胞を死滅させることによって癌性状態を軽減する効果を意味するのみならず、癌の増殖及び/又は転移の阻害を引き起こす効果を意味する。
【0197】
一実施態様において、第二の化合物として用いられる血管形成阻害剤は、チロシンキナーゼ阻害剤、上皮由来成長因子の阻害剤、線維芽細胞由来成長因子の阻害剤、血小板由来成長因子の阻害剤、MMP(マトリックスメタロプロテアーゼ)阻害剤、インテグリン遮断薬、インターフェロン−α、インターロイキン−12、ペントサン多硫酸、シクロオキシゲナーゼ阻害剤、カルボキシアミドトリアゾール、コンブレタスタチンA−4、スクワラミン、6−O−クロロアセチルカルボニル)−フマギロール、サリドマイド、アンギオスタチン、トロポニン−1、又はVEGFに対する抗体から選択される。一実施態様において、エストロゲン受容体モジュレーターは、タモキシフェン又はラロキシフェンである。
【0198】
請求の範囲には、また、放射線療法と組み合わせて、及び/又はエストロゲン受容体モジュレーター、アンドロゲン受容体モジュレーター、レチノイド受容体モジュレーター、細胞障害性/細胞分裂停止薬剤、抗増殖剤、プレニル−タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤、HIVプロテアーゼ阻害剤、逆転写酵素阻害剤、血管形成阻害剤、PPAR−γアゴニスト、PPAR−δアゴニスト、固有の多剤耐性の阻害剤、抗催吐薬、貧血の治療に有用な薬剤、好中球減少症の治療に有用な薬剤、免疫強化剤、細胞増殖及び生存シグナル伝達阻害剤、ビスホスフォネート、及び細胞周期チェックポイントに干渉する薬剤から選択される第二の化合物と組み合わせて、式Aで表される化合物の治療的に有効な量を投与することを含む、癌の治療方法が含まれる。
【0199】
また、本発明の更なる実施態様は、パクリタクセル又はトラスツズマブと組み合わせて、式Aで表される化合物の治療的に有効な量を投与することを含む、癌の治療方法である。
【0200】
更に、本発明は、COX−2阻害剤と組み合わせて、式Aで表される化合物の治療的に有効な量を投与することを含む、癌の治療又は予防方法を含む。
【0201】
本発明は、また、式Aで表される化合物の治療的に有効な量、及びエストロゲン受容体モジュレーター、アンドロゲン受容体モジュレーター、レチノイド受容体モジュレーター、細胞障害性/細胞分裂停止薬剤、抗増殖剤、プレニル−タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤、HIVプロテアーゼ阻害剤、逆転写酵素阻害剤、血管形成阻害剤、PPAR−γアゴニスト、PPAR−δアゴニスト:細胞増殖及び生存シグナル伝達阻害剤、ビスホスフェート、及び細胞周期チェックポイントに干渉する薬剤から選択される第二化合物を含有する、癌の治療又は予防に有用な医薬組成物を含む。
【0202】
確認される、全ての特許、出版物及び継続中の特許出願は、本明細書に参考文献として組み入れられる。
【0203】
化学の記述、及び以下の実施例において用いられる略語は、AEBSF(p−アミノエチルベンゼンスルホニルフルオライド);Atm(気圧);BSA(ウシ血清アルブミン);Boc(tert−ブトキシカルボニル);BuLi(n−ブチルリチウム);CDCl(クロロホルム−d);CuI(ヨウ化銅);CuSO(硫酸銅);DCE(ジクロロエタン);DCM(ジクロロメタン);DEAD(ジエチルアゾジカルボキシレート);DMF(N,N−ジメチルホルムアミド);DMSO(ジメチルスルホキシド);DTT(ジチオスレイトール);EDTA(エチレン−ジアミン−四酢酸);EGTA(エチレン−グリコール−四酢酸);EtOAc(酢酸エチル);EtOH(エタノール);HOAc(酢酸);HPLC(高速液体クロマトグラフィー);HRMS(高分解能質量スペクトル);LCMS(液体クロマトグラフ−質量分析計);LHMDS(リチウムビス(トリメチルシリル)アミド);LRMS(低分解能質量スペクトル);Me(メチル);MeOH(メタノール);MP−B(CN)H(マクロ多孔性シアノボロハイドライド);NaHCO(炭酸水素ナトリウム);NaSO(硫酸ナトリウム);Na(OAc)BH(トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム);NHOAc(酢酸アンモニウム);NBS(N−ブロモスクシナミド);NMR(核磁気共鳴);PBS(リン酸緩衝食塩水);PCR(ポリメラーゼ連鎖反応);Pd(dppf)([1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム);Pd(Ph(パラジウム(0)テトラキス−トリフェニルホスフィン);POCl(オキシ塩化リン);PS−DIEA(ポリスチレンジイソプロピルエチルアミン);PS−PPh(ポリスチレン−トリフェニルホスフィン);TBAF(テトラブチルアンモニウムフルオライド);THF(テトラヒドロフラン);TFA(トリフルオロ酢酸);及びTMSCH(トリメチルシリルジアゾメタン)である。
【0204】
本発明の化合物は、文献において公知であるか、実験手順に例示した、他の標準的操作に加え、以下の反応スキームに示すような反応を用いることによって製造することができる。従って、以下に図示した反応スキームは、記載された化合物、又は説明の目的のために用いられた特定の置換基によって限定されない。スキーム中で示されるような置換基の番号は、請求項で用いられるものと必ずしも相関せず、明確にするため、しばしば、上述した式Aの定義において複数の置換基が許容される化合物に結合する、単一の置換基が示される。
【0205】
本発明の化合物を生成するために用いられる反応は、文献において公知であるか、実験手順に例示した、エステル加水分解、保護基の切断等の標準的操作に加え、反応スキームI−Xに示されるような反応を用いて調製される。
【0206】
これらの反応は、順次実行において用いられ、本発明の化合物を与えるか、または、反応スキームに記載されたアルキル化反応によって引き続き結合されるフラグメントを合成するために用いられてもよい。
【0207】
反応スキームの概要
以下の反応スキーム、反応スキームI−VIIによって、本発明の化合物の二環式部分を製造するための有用な説明が提供される。アリール基は、以下の反応スキームVIII−IXに従う複素環で置換されていてもよい。
【0208】
必須の中間体は、いくつかのケースにおいて市販されているか、文献の手順に従って製造することができる。反応スキームIに示すように、適切に置換されたフェニルアセチリドが、ヨウ化銅と反応し、対応する銅アセチリドI−1が生成し得る(例えば、Sonogashira,K.;Toda,Y.;Hagihara,N.Tetrahedron Lett.1975,4467を参照)。次いで、中間体Iが適切に置換された求電子部分と反応し、非対称的置換体I−2を得る。NBSとの反応に続く加水分解によりI−3が生成する(例えば、Yusybov,M.S.;Filimonov,V.D.;Synthesis 1991,2,131を参照)。種々の置換及び非置換アリール及びヘテロシクリルは、また商業的に入手することができる。
【0209】
反応スキームIIは、適切な置換体II−1から開始する、化合物の製造を示す。この中間体は、適切に置換されたアミンと反応し、中間体II−2が得られ、これが、適切なアリール又はヘテロアリールジアミンと反応し、本発明のレジオ異性体(regioisomeric)混合物を生成することのでき、この混合物は、通常はクロマトグラフ的に分離することができる。
【0210】
反応スキームIIIは、「y」がCHであり、「z」がNである化合物の合成を示す。
【0211】
反応スキームIVは、適切に置換された4−アミノ−3−ニトロベンゾニトリルIV−Iから開始する、化合物の製造を示す。この中間体を、マイクロ波促進[3+2]環付加反応に付して、テトラゾールIV−IIを得る。ヨウ化メチル等の求電子試薬で酸性のテトラゾールをアルキル化することで、アルキル化テトラゾールの2−メチル(IV−III)/1−メチル(IV−IV)の混合物が得られ、これらは、カラムクロマトグラフィーで分離できる。IV−IIIをRa−Ni水素化することで、ジアミンIV−Vが生成する。更なる合成は、前記反応スキームに記載されている通りである。
【0212】
反応スキームVは、化合物の合成について図示している。適切に置換されたアリール又はヘテロアリールアミノアルデヒドを、適切に置換されたケトンとフリードレンダー環化縮合することで、式V−1の中間体が生成する。カルボン酸官能基をアルデヒド官能基への変換することにより、中間体V−2が生成するが、これは、当業者に周知の方法で行われる。適切に置換されたアミンを用いる還元的アルキル化により、式V−3の化合物が得られる。
【0213】
反応スキームVIは、中間体V−2の別の合成を図示している。
【0214】
反応スキームVIIは、文献(Renault,O.;Dallemagne,P.;及びRault,S.Org.Prep.Proced.Int.,1999,31,324)に従って製造されたケトンVII−1から開始する、化合物の合成を図示している。VII−1のN,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタールとの縮合により、ケトエナミンVII−2が生成し、これが、2−シアノアセトアミドと環化し、ピリドンVII−3が得られる、VII−3をオキシ塩化リンで処理することによって、クロロピリジンVII−4が生成する。ラジカル臭素化、それに続く、適切に置換されたアミンによる置換により、アミンVII−5が生成する。それに続く、クロロニコチノニトリルVII−5と種々のビス求核試薬との反応により、環化された構造のVII−6が生成する。
【0215】
【化22】

【0216】
【化23】

【0217】
【化24】

【0218】
【化25】

【0219】
【化26】

【0220】
【化27】

【0221】
【化28】

【0222】
本発明の化合物を生成するために用いられる反応は、文献において公知であるか、実験手順に示した、エステル加水分解、保護基の切断等の他の標準的操作に加え、反応スキームVIII及びIXに示されるような反応を用いて調製される。
【0223】
反応スキームの更なる概要
反応スキームVIIIは、1,6−ナフチリジン−6(5H)−オン化合物の製造を図示している。合成は、市販のカルボン酸(VIII−1)から始まり、それが、ワインレブ(Winereb)アミド(VIII−2)に変換される。n−ブチルリチウムと臭化アリールとのリチウム−ハロゲン交換反応により得られた、アリールリチウム試薬とアミドを反応させることで、ケトン(VIII−3)が得られる。水酸化ナトリウム又はナトリウムメトキシド等の塩基の存在下での、この置換ケトンを4−アミノニコチンアルデヒドと縮合させることで、1,6−ナフチリジン(VIII−4)が得られる。フェニル基上のR置換基は、(シリル)保護ヒドロキシメチル、マスクされたアルデヒド(すなわち、アセタール)又はカルボン酸等の官能基であってもよい。この化合物は必須のアルデヒドVIII−4に変換され得る。R基がヒドロキシメチルである場合、活性化過酸化マンガン等の試薬との酸化により、アルデヒドVIII−4が生成する。Rがアセタールである場合、穏やかな酸加水分解により、アルデヒドが生成する。ホウ化水素を用いて、混合無水物を還元することを介するカルボン酸基の還元によっても、アルデヒドVIII−4が生成する。次に、このアルデヒドは、様々な配列のアミン(例えば、4−置換ピペリジン)及びホウ化水素との還元的アミノ化を受けて、1,6−ナフチリジン−5(H)−オン(VIII−5)が生成し得る。150℃において(VIII−5)を塩酸ピリジニウムで処理することで、最終生成物(VIII−6)が得られる。
【0224】
反応スキームIXは、C3−位に複素環を導入する他の方法を図示している。反応は、市販のジクロロベンゾピラジンから開始し、それが、パラジウム触媒の存在下でアリールボロン酸とカップリングし得る(Suzuki反応)。次に、同じ反応条件で、他の複素環ボロン酸を用いて、この反応を繰り返して最終生成物が得られる。
【0225】
反応スキームXは、1,6−ナフチリジン−5(6H)−オン化合物の別の製造を図示している。このスキームにおいて、ワインレブアミドVIII−2が、臭化アリールX−1(ここで、Rが保護された、マスクされたアミノメチル誘導体、例えば、1−(1−アジド−1−メチルエチル)である、)から生成した、アリールリチウム試薬と反応し、ケトンX−2が生成する。ナトリウムメトキシドの存在下における、このケトンと、tert−ブチル(2−クロロ−3−ホルミルピリジン−4−イル)カルバメートとの縮合により、1,6−ナフチリジンX−3が得られる。この場合、水素によるパラジウム触媒還元により、アミンを脱保護するか又はアンマスキングすることで、アミンX−4が得られる。X−4を塩化水素で処理して、1,6−ナフチリジン−5(6H)−オンX−5が得られる。
【0226】
【化29】

【0227】
【化30】

【0228】
【化31】

【0229】
(実施例)
提供される実施例及びスキームは、本発明の更なる理解を助けることを意図する。用いられる特定の材料、種及び条件は、本発明の更なる説明のためのものであり、本発明の合理的な範囲を限定するものではない。
【0230】
【化32】

【0231】
(5−メトキシ−2−(4−{[4−(5−ピリジン−2−イル−4H−1,2,4−トリアゾール)ピペリジン−1−イル]メチル}フェニル)−3−(2−チエニル)−1,6−ナフチリジン(1−7)及び2−(4−{[4−(5−ピリジン−2−イル−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピペリジン−1−イル]メチル}フェニル)−3−(2−チエニル)−1,6−ナフチリジン−5(6H)−オン(1−8))
(N−メトキシ−N−メチル−2−(2−チエニル)アセトアミド(1−1))
撹拌子を備えた25mLのRBフラスコを、2−チオフェン酢酸(2.84g,2ミリモル)、次いで無水DMF(10mL)で満たした。1,1’−カルボニルジイミダゾール(3.24g,2ミリモル)を一部加え、著しいガスの放出が発生した。混合物を40℃に加温した。30分後、N,O−ジメチルヒドロキサミン塩酸塩(2.14g,2.2ミリモル)を一部加えた。飽和塩化アンモニウム溶液(100mL)で希釈する前に、混合物を23℃で30分間撹拌し、1:1酢酸エチル/ヘキサン(100mL)で2回抽出した。粗混合物を、シリカゲルのカラムクロマトグラフィー(0−25%酢酸エチル/ヘキサン)によって精製し、N−メトキシ−N−メチル−2−(2−チエニル)アセトアミド(1−1)を得た。H NMR(CDCl,ppm)δ7.20(m,1H),6.96(m,2H),3.91(s,2H),3.70(s,3H),3.25(s,3H).
【0232】
(1−[4−(1,3−ジオキソラン−2−イル)フェニル]−2−(2−チエニル)エタノン(1−2))
撹拌子を備えた25mLのRBフラスコを1−ブロモ−4−(1,3−ジオキソラン−2−イル)ベンゼン(243mg,1.0ミリモル)、次いで無水THF(5mL)で満たした。混合物を−78℃に冷却し、n−ブチルリチウム(ヘキサン中の1.6M溶液の687μL)を2分以上かけて滴下して加えた。−78℃で15分間撹拌した後、N−メトキシ−N−メチル−2−(2−チエニル)アセトアミド(1−1)(185mg,1ミリモル)を一部加えた。−78℃で更に30分放置後、飽和塩化アンモニウム溶液(20mL)で混合物の反応を停止させ、酢酸エチル(10mL)で2回抽出した。一緒にした有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、シリカゲルによるカラムクロマトグラフィー(0−50%酢酸エチル/ヘキサン)によって精製し、1−[4−(1,3−ジオキソラン−2−イル)フェニル]−2−92−チエニル)エタノン(1−2)を得た。H NMR(CDCl,ppm)δ:7.98(d,J=8.25 Hz,2H),7.45(d,J=8.25 Hz,2H),7.15(d,J=5.15 Hz,1H),6.86(m,1H),6.83(m,1H),5.77(s,1H),4.38(s,2H),4.01(m,4H)
【0233】
tert−ブチル(2−クロロ−3−ホルミルピリジン−4−イル)カルバメート(1−3)
4−アミノ−2−クロロピリジン(30.0g,243ミリモル)のCHCl溶液(500mL)に、トリエチルアミン(38mL)、ジ−tert−ブチル−ジカルボネート(58.0g)、及びDMAP(10.0g)を加えた。反応混合物を一晩撹拌し、減圧下に濃縮し、1:1のヘキサン/EtOAcを用いたシリカゲルによりクロマトグラフによる精製を行った。得られた固体をCHCl/EtOAc(1:1)で粉砕し、N−BOC−4−アミノ−2−クロロピリジンを得た。H NMR:(500MHz,CDCl)δ8.19(d,1H),7.53(d,1H),7.25(br s,1H),7.20(dd,1H),5.80(s,1H),1.52(s,9H)
【0234】
−78℃で、N−Boc−4−アミノ−2−クロロピリジン(14.4g,63ミリモル)のTHF溶液(200mL)に、1.7M のtert−ブチルリチウム溶液(100mL)を10分以上かけて滴下して加え、溶液を2時間撹拌した。次いで、DMF(15mL)を加え、反応物を3時間かけて室温に到達させた。飽和NHClを用いて慎重に反応を停止させ、EtOAcで抽出し、有機相をHO及び食塩水で洗浄し、MgSOで乾燥し、ろ過し、減圧下に濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(10−25% EtOAc/ヘキサン)によって精製し、白色固体として、tert−ブチル(2−クロロ−3−ホルミルピリジン−4−イル)カルバメート(1−3)を得た。H NMR:(500MHz,CDCl)δ10.98(br s,1H),10.49(s,1H),8.35(d,1H),8.28(d,1H),1.52(s,9H).
【0235】
(4−[5−メトキシ−3−(2−チエニル)−1,6−ナフチリジン−2−イル]ベンズアルデヒド(1−5))
撹拌子を備えた25mLのRBフラスコを、1−[4−(1,3−ジオキソラン−2−イル)フェニル]−2−(2−チエニル)エタノン(1−2)(80mg,0.29ミリモル)、tert−ブチル(2−クロロ−3−ホルミルピリジン−4−イル)カルバメート(1−3)(90mg,0.35ミリモル)及び無水メタノール(2mL)で満たした。次いで、ナトリウムメトキシド(25%w/wのメタノール溶液)を一部加え、混合物を65℃で4時間加熱し、濃いオレンジ色の懸濁液を得た。ロータリーエバポレーターによって溶媒を除去し、1M塩酸(10mL)を用いて混合物を酸性化し、酢酸エチル(10mL)で2回抽出した。粗製の混合物をシリカゲルによるカラムクロマトグラフィー(0〜50%酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、2−[4−(1,3−ジオキソラン−2−イル)フェニル]−5−メトキシ−3−フェニル−1,6−ナフチリジン(1−4)を得た。
【0236】
2−[4−(1,3−ジオキソラン−2−イル)フェニル]−5−メトキシ−3−フェニル−1,6−ナフチリジン(1−4)を、THF(4mL)及び1M HCl(4mL)の混合溶液に溶解し、TLCにより検出して出発物質が存在しなくなるまで、23℃で2時間撹拌した。反応混合物を、飽和重炭酸ナトリウム溶液(10mL)で希釈し、酢酸エチル(10mL)で2回抽出した。一緒にした有機抽出物を濃縮し、4−[5−メトキシ−3−(2−チエニル)−1,6−ナフチリジン−2−イル]ベンズアルデヒド(1−5)を得た。H NMR(CDCl,ppm)δ:9.93(s,1H),8.54(s,1H),8.12(d,J=6.0 Hz,1H),7.75(d,J=8.2 Hz,2H),7.40(d,J=8.2 Hz,2H),7.19(d,J=5.0 Hz,1H),7.03(d,J=3.5 Hz,1H),6.82(d,J=3.6 Hz,1H),6.69(s,1H),4.13(s,3H)
【0237】
(5−メトキシ−2−(4−{[4−(5−ピリジン−2−イル−4H−1,2,4−トリアゾール)ピペリジン−1−イル]メチル}フェニル)−3−(2−チエニル)−1,6−ナフチリジン(1−7))
撹拌子を備えた25mLのRBフラスコを、4−[5−メトキシ−3−(2−チエニル)−1,6−ナフチリジン−2−イル]ベンズアルデヒド(1−5)(62mg,0.18ミリモル)、続いて、2−(3−ピペリジン−4−イル−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イル)ピリジンジヒドロクロライド(1−6)(82mg,0.36ミリモル)、無水DMF(1.0mL)、トリエチルアミン(72mg,0.716ミリモル)、及び酢酸(107mg,1.79ミリモル)で満たした。次いで、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(76mg,0.36ミリモル)を一部加え、得られた淡黄色の溶液を23℃で一晩撹拌した。混合物を、飽和塩化アンモニウム溶液(10mL)で希釈し、酢酸エチル(10mL)で2回抽出した。粗混合物をシリカゲルによるカラムクロマトグラフィー(0〜30%メタノール/ジクロロメタン)で精製し、5−メトキシ−2−(4−{[4−(5−ピリジン−2−イル−4H−1,2,4−トリアゾール)ピペリジン−1−イル]メチル}フェニル)−3−(2−チエニル)−1,6−ナフチリジン(1−7)を得た。H NMR(CDCl,ppm)δ:8.54(bs,1H),8.51(s,1H),8.10(d,J=6.0 Hz,1H),8.01(d,J=7.8 Hz,1H),7.68(t,J=7.7 Hz,1H),7.42(d,J=8.0 Hz,2H),7.37(d,J=6.9 Hz,1H),7.29(d,J=8.0 Hz,2H),7.25(t,J=3.4 Hz,1H),7.19(d,J=5.1 Hz,1H),7.15(s,1H),6.81(t,J=3.6 Hz,1H),6.68(d,J=3.1 Hz,1H),4.05(s,3H),3.98(s,2H),3.35(s,1H),3.25(bs,2H),3.02(bs,2H),2.75(bs,2H),2.19(bs,2H).
【0238】
(2−(4−{[4−(5−ピリジン−2−イル−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピペリジン−1−イル]メチル}フェニル)−3−(2−チエニル)−1,6−ナフチリジン−5(6H)−オン(1−8))
撹拌子を備えた10mLのRBフラスコを、5−メトキシ−2―(4−{[4−(5−ピリジン−2−イル−4H−1,2,4−トリアゾール)ピペリジン−1−イル]メチル}フェニル)−3−(2−チエニル)−1,6−ナフチリジン(1−7)(40mg,0.7ミリモル)及び塩酸ピリジニウム(738mg,6.4ミリモル)で満たした。溶解した混合物が黄色の溶液になるまで、混合物を150℃で10分間加熱した。冷却することによって再び凝固した混合物を、飽和重炭酸ナトリウム溶液(10mL)で中和し、酢酸エチル(10mL)で2回抽出した。一緒にした有機抽出物を濃縮し、シリカゲルによるカラムクロマトグラフィー(0−30% メタノール/ジクロロメタン)で精製し、2−(4−{[4−(5−ピリジン−2−イル−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピペリジン−1−イル]メチル}フェニル)−3−(2−チエニル)−1,6−ナフチリジン−5(6H)−オン(1−8)を得た。H NMR(CDCl,ppm)δ:8.69(s,1H),8.51(s,1H),8.40(d,J=6.0 Hz,1H),8.03(d,J=7.8 Hz,1H),7.76(t,J=7.7 Hz,1H),7.39(d,J=8.0 Hz,2H),7.27(m,4H),7.22(d,J=4.4 Hz,1H),6.78(d,J=5.1 Hz,2H),3.55(s,2H),2.95(d,J=11.6 Hz,2H),2.83(bs,1H),2.14(m,2H),1.97(m,2H),1.87(m,2H).
【0239】
以下の表1中の化合物を、スキーム1に示し、及び反応スキームに示したのと同様の方法で製造した。
【0240】
【表1】

【0241】
【化33】

【0242】
(2−[4−(1−アミノ−1−メチルエチル)フェニル]−3−(2−チエニル)−1,6−ナフチリジン−5(6H)−オン(2−7))
(2−(4−ブロモフェニル)プロパン−2−オール(2−2))
−30℃で、臭化メチルマグネシウム溶液(75:25のトルエン:THF中1.4M,20mL,28ミリモル)を、4−臭化安息香酸エチル(2−1,2.52g,11.0ミリモル)に加えた。2時間後、塩化アンモニウムで混合物の反応を停止し、エーテルで抽出した。有機相を、1:1の食塩水:水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、濃縮して淡黄色のオイルとして標記の化合物を得た(J.Am.Chem.Soc.1971,93,6877)。
【0243】
(1−(1−アジド−1−メチルエチル)−4−ブロモベンゼン(2−3))
−5℃まで冷却した、2−(4−ブロモフェニル)プロパン−2−オール(2−2,2.33g,10.8ミリモル)及びアジ化ナトリウム(1.42g,21.8ミリモル)の混合物のクロロホルム溶液(10mL)に、TFA(4.4mL,45.0ミリモル)のクロロホルム溶液(10mL)をゆっくりと加え、温度を0℃未満に維持した。冷却浴を除去し、混合物を室温で一晩撹拌した。塩基性(湿ったpH試験紙)になるまで、濃水酸化アンモニウムを加えた。有機相を、1:1の食塩水:水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮して淡黄色のオイルとして標記の化合物(2.51g)を得た。LRMS m/z(M−N)計算値:197.0,実測値 197.1
【0244】
(1−[4−(1−アジド−1−メチルエチル)フェニル]−2−(2−チエニル)エタノン(2−4))
−78℃で、1−(1−アジド−1−メチルエチル)−4−ブロモベンゼン(2−3,1.03g,4.28ミリモル)のTHF溶液(20mL)に、nBuLi(1.6M ヘキサン中、2.88mL,4.60ミリモル)を滴下して加えた。15分後、N−メトキシ−N−メチル−2−チエン−2−イルアセトアミド(1−1,0.78g,4.18ミリモル)のTHF溶液(1mL)を加えた。−78℃に更に30分放置した後、飽和塩化アンモニウム溶液で反応を停止し、酢酸エチルで抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、濃縮してオイルを得た。粗生成物を、シリカゲルによる自動化フラッシュカラムクロマトグラフィー(5%CHCl,0−10%EtOAc/ヘキサン、30分以上)によって精製し、黄色のオイルとして標題の化合物を得た。
LRMS m/z(M+1)計算値:286.1,実測値 286.2
【0245】
(2−[4−(1−アジド−1−メチルエチル)フェニル]−5−メトキシ−3−(2−チエニル)−1,6−ナフチリジン(2−5))
1−[4−(1−アジド−1−メチルエチル)フェニル]−2−(2−チエニル)エタノン(2−4,95mg,0.33ミリモル)及びtert−ブチル(2−クロロ−3−ホルミルピリジン−4−イル)カルバメート(1−3,100mg,0.39ミリモル)の撹拌したメタノール(2mL)中の混合物に、ナトリウムメトキシド(メタノール中、25重量%、0.23mL)を加え、65℃に2時間加熱した。混合物を室温に冷却し、EtOAcで希釈し、1N HClで酸性化した。水相を酢酸エチルで抽出し、一緒にした有機相を1:1の食塩水:水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、濃縮して黒っぽい半固体を得た。粗生成物を自動化シリカゲルクロマトグラフィー(5% CHClを含むヘキサン中、0−45%EtOAc、30分以上)によって精製し、琥珀色のオイルとして標題の化合物を得た。LRMS m/z(M+1)計算値:402.2,実測値 402.2
【0246】
(2−{4−[5−メトキシ−3−(2−チエニル)−1,6−ナフチリジン−2−イル]フェニル}プロパン−2−アミン(2−6))
2−[4−(1−アジド−1−メチルエチル)フェニル]−5−メトキシ−3−(2−チエニル)−1,6−ナフチリジン(2−5,78mg,0.194ミリモル)及び10% Pd/C(9mg)の混合物を、エタノール(5mL)中で、1気圧の水素下で2時間撹拌した。混合物をセライトでろ過し、濃縮して、透明なオイルとして標題の化合物を得た。LRMS m/z(M+1)計算値:376.1,実測値 376.2
【0247】
(2−[4−(1−アミノ−1−メチルエチル)フェニル]−3−(2−チエニル)−1,6−ナフチリジン−5(6H)−オン(2−7))
2−{4−[5−メトキシ−3−(2−チエニル)−1,6−ナフチリジン−2−イル]フェニル}プロパン−2−アミン(2−6,66mg,0.176ミリモル)のTHF溶液(10mL)に、濃HCl(1mL)を加え、室温で5時間撹拌した。揮発性成分を減圧下に蒸発させ、残渣を、飽和重炭酸ナトリウム溶液及び酢酸エチルでの間で分配した。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、濃縮して、灰色がかった白色の固体として標題の化合物を得た。LRMS m/z(M+1)計算値:362.1,実測値362.2
【実施例1】
【0248】
ヒトAktイソ型及びΔPH−Akt1のクローニング
pS2neoベクター(2001年4月3日にATCC PTA−3253として寄託されている)を以下のようにして調製した:pRmHA3ベクター(Nucl.Acid Res.16:1043−1061(1988)に開示されたように調製)をBglIIで切断し、2734塩基対の断片を分離した。また、pUChsneoベクター(EMBO J.4:167−171(1985)に開示されたように調製)をBglIIで切断し、4029塩基対のバンドを分離した。これらの2種の分離した断片を共に結合し、pS2neo−1と命名されたベクターを生成させた。このプラスミドは、メタロチオニンプロモーター及びアルコールデヒドロゲナーゼポリA付加部位の間にポリリンカーを含む。また、それは、熱ショックプロモーターによって駆動するネオ耐性遺伝子を有する。pS2neo−1ベクターを、Psp5II及びBsiWIで切断した。2つの相補的なオリゴヌクレオチドを合成し、次いで、CTGCGGCCGC(配列番号:1)及びGTACGCGGCCGCAG(配列番号:2))をアニーリングした。切断したpS2neo−1、及びアニーリングしたオリゴヌクレオチドを共に結合し、第二のベクター、pS2neoを生成した。S2細胞へのトランスフェクションに先だって、直線化に利用されるNotI部位は、この転化によって加えられた。
【0249】
ヒトAkt1遺伝子を、5’プライマー:5’CGCGAATTCAGATCTACCATGAGCGACGTGGCTATTGTG 3’(配列番号:3)及び3’プライマー:5’CGCTCTAGAGGATCCTCAGGCCGTGCTGCTGGC3’(配列番号:4)を用い、ヒト脾臓cDNA(Clontech)からPCR(Clontech)によって増幅した。5’プライマーは、EcoRI及びBglII部位を含む。3’プライマーは、クローニングの目的のためのXbaI及びBamHI部位を含む。得られたPCR産物を、EcoRI/Xba I断片として、pGEM3Z(Promega)にサブクローニングした。発現/精製の目的のため、PCRプライマー:5’GTACGATGCTGAACGATATCTTCG 3’(配列番号:5)を用いて、全長Akt1遺伝子の5’末端にミドルTタグを加えた。得られたPCR産物は、昆虫細胞発現ベクターpS2neoを含むビオチンタグを有するフレーム内に断片をサブクローニングするために用いられる、5’KpnI部位及び3’BamHI部位を含んでいた。
【0250】
Akt1の欠失した(Akt1のヒンジ領域の一部の欠失を含むΔaa 4−129)変形プレクストリン相同ドメイン(PH)の発現のために、鋳型としてpS2neo中のAkt1全長遺伝子を用いて、PCR欠失突然変異誘発を行った。5’末端に、欠失を含み、また、5’及び3’フランキングプライマー(KpnI部位及びミドルTタグを含む)を含む、内部で重複するプライマー(5’GAATACATGCCGATGGAAAGCGACGGGGCTGAAGAGATGGAGGTG 3’(配列番号:6)及び5’CCCCTCCATCTCTTCAGCCCCGTCGCTTTCCATCGGCATGTATTC 3’(配列番号:7))を用いて、2段階でPCRを実施した。最終的なPCR産物をKpnI及びSmaIで消化し、欠失した変形を有するクローンの5’末端を効率的に置き換えて、pS2neoの全長Akt1のKpnI/SmaI 切断ベクターに結合させた。
【0251】
アミノ末端オリゴプライマー5’GAATTCAGATCTACCATGAGCGATGTTACCATTGTG 3’(配列番号:8);及びカルボキシ末端オリゴプリマー5’TCTAGATCTTATTCTCGTCCACTTGCAGAG 3’(配列番号:9)を用いて、成人の脳のcDNA(Clontech)のPCRによって、ヒトAkt3遺伝子を増幅した。これらのプライマーは、クローニングのための、5’EcoRI/BglII部位及び3’XbaI/BglII部位を含んでいた。得られたPCR産物を、pGEM4Z(Promega)のEcoRI及びXbaI部位にクローニングした。発現/増幅の目的のため、PCR プライマー:5’GGTACCATGGAATACATGCCGATGGAAAGCGATGTTACCATTGTGAAG 3’(配列番号:10)を用いて、全長Akt3クローンの5’末端にミドルTタグを付加した。得られたPCR産物は、昆虫細胞発現ベクター、pS2neoを含むビオチンタグを含むフレームクローニングを可能にする、5’KpnI部位を含んでいた。
【0252】
アミノ末端オリゴプライマー:5’AAGCTTAGATCTACCATGAATGAGGTGTCTGTC 3’(配列番号:11);及びカルボキシ末端オリゴプライマー:5’GAATTCGGATCCTCACTCGCGGATGCTGGC 3’(配列番号:12)を用いて、ヒト胸腺cDNA(Clontech)からのPCRによって、ヒトAkt2遺伝子を増幅した。これらのプライマーは、クローニングの目的のための、5’HindIII/BglII部位及び3’EcoRI/BamHI部位を含んでいた。得られたPCR産物を、pGem3Z(Promega)のHindIII/EcoRI部位にサブクローニングした。発現/精製の目的のため、PCRプライマー:5’GGTACCATGGAATACATGCCGATGGAAAATGAGGTGTCTGTCATCAAAG 3’(配列番号:13)を用いて、全長のAkt2の5’末端にミドルTタグを付加した。得られたPCR産物を、前述したように、pS2neoにサブクローニングした。
【実施例2】
【0253】
ヒトAktイソ型及びΔPH−Akt1の発現
pS2neo発現ベクター中にクローニングされた、Akt1、Akt2、Akt3及びΔPH−Akt1遺伝子を含むDNAを精製し、リン酸カルシウム法によってショウジョウバエS2細胞(ATCC)にトランスフェクトするために用いた。抗生物質(G418,500μg/ml)耐性細胞のプールを選択した。細胞を、1.0Lの容量(〜7.0×10 /ml)に広げ、ビオチン及びCuSOを、それぞれ、50μM及び50mMの最終濃度に成るように加えた。細胞を27℃で72時間増殖させ、遠心によって集めた。細胞のペーストを、必要になるまで−70℃に凍結した。
【実施例3】
【0254】
ヒトAktイソ型及びΔPH−Akt1の精製
実施例2に記載した、S2細胞の1リットルからの細胞ペーストを、バッファーA(50mM Tris pH 7.4,1mM EDTA,1mM EGTA,0.2mM AEBSF,10μg/ml ベンズアミジン,各5μg/mlのロイペプチン、アプロチニン及びペプスタチン、10%グリセロール及び1mM DTT)中の1%CHAPSを50ml用いた超音波処理によって溶解した。可溶性画分は、9mg/mlの抗−ミドルTモノクローナル抗体を装填したプロテインGセファロースファーストフローカラム(Pharmacia)で精製され、25%グリセロールを含むバッファーA中の75μMのEYMPME(配列番号:14)ペプチドで溶出された。Akt/PKBを含む画分をプールし、タンパク質の純度をSDS−PAGEによって評価した。精製したタンパク質を、標準的なブラッドフォードプロトコールを用いて定量した。精製されたタンパク質を、液体窒素で急速冷凍し、−70℃に保存した。
【0255】
Akt及びS2細胞から精製されたAktのプレクストリン相同ドメインの欠失は活性化を要した。Akt及びAktのプレクストリン相同ドメインの欠失は、10 nM PDK1(Upstate Biotechnology,Inc.)、脂質媒体(10μM ホスファチジルイノシトール−3,4,5−三リン酸−Metreya,Inc,100μM ホスファチジルコリン及び100μM ホスファチジルセリン−Avanti Polar lipids,Inc.)、及び活性化バッファー(50mM Tris pH7.4,1.0mM DTT,0.1mM EGTA,1.0μM ミクロシスチン−LR,0.1mM ATP,10mM MgCl,333μg/ml BSA及び0.1mM EDTA)を含む反応物中で活性化された(Alessiら、Current Biology 7:261−269)。反応物を22℃で4時間インキュベートした。一定量を液体窒素中で急速冷凍した。
【実施例4】
【0256】
Aktキナーゼアッセイ
活性化Aktイソ型及びプレクストリン相同ドメイン欠失構築物を、GSK−由来ビオチニル化ペプチド基質を用いてアッセイした。ペプチドのリン酸化の程度を、ペプチドのビオチン部分に結合する、ストレプトアビジン結合アロフィコシアニン(SA−APC)蛍光プローブと組み合わせて、リンペプチドに特異的なモノクローナル抗体が結合したランタニドキレート(Lance)を用いた、均一時間分解蛍光(HTRF)によって測定した。Lance及びAPCが近接する場合(すなわち、同じリンペプチド分子に結合)、非放射性エネルギー移動がLanceからAPCに起こり、665nmにおいてAPCからの光の放射が起こる。
【0257】
アッセイに必要な材料:
A.活性化Aktアイソザイム、又はプレクストリン相同ドメイン欠失構築物
B.Akt ペプチド基質:GSK3α(S21)ペプチド #3928 ビオチン−GGRARTSSFAEPG(配列番号:15),高分子供給源
C.Lance標識抗−ホスホGSK3α モノクローナル抗体(Cell Signaling Technology,clone#27).
D.SA−APC(プロザイムカタログ番号.PJ25S lot#896067).
E.Microfluor(登録商標)B U Bottom マイクロタイタープレート(Dynex Technologies,カタログ番号.7205).
F.Discovery(登録商標)HTRFマイクロプレートアナライザー,Packard Instrument Company.
G.100 X プロテアーゼ阻害剤カクテル(PIC): 1mg/ml ベンズアミジン,0.5mg/ml ペプスタチン,0.5mg/ml ロイペプチン,0.5mg/ml アプロチニン
H.10X アッセイバッファー:500mM HEPES,pH7.5,1% PEG,mM EDTA,1mM EGTA,1% BSA,20mM α−グリセリンリン酸
I.クエンチバッファー:50mM HEPES pH7.3,16.6mM EDTA,0.1% BSA,0.1% Triton X−100,0.17nM Lance標識モノクローナル抗体クローン# 27,0.0067mg/ml SA−APC
J. ATP/MgCl 希釈標準溶液:1X アッセイバッファー,1mM DTT,1X PIC,125mM KCl,5% グリセロール,25mM MgCl,375 ΤM ATP
K. 酵素希釈標準溶液:1X アッセイバッファー,1mM DTT,1X PIC,5% グリセロール,活性化Akt.最終酵素濃度は、アッセイが直線的な反応であるように選択される。
L.ペプチド希釈標準溶液:1X アッセイバッファー,1mM DTT,1X PIC,5% グリセロール,2 ΤM GSK3 ビオチニル化ペプチド# 3928
【0258】
反応物を、96穴のマイクロタイタープレートの適当なウェルに、16TLのATP/MgCl 希釈標準溶液を加えることによって、集める。阻害剤又は媒体(1.0Tl)を加え、次いで10Tlの希釈標準溶液を加える。13Tlの酵素希釈標準溶液を加え、混合することによって反応を開始する。50分間反応させ、60TlのHTRFクエンチ溶液を加えることによって反応を停止する。停止した反応物を、少なくとも30分間室温でインキュベートし、ディスカバリー装置で読み取る。
【0259】
ストレプタビジンフラッシュプレートアッセイの手順
工程1
試験化合物の100%DMSO溶液1μlを、20μlの2Xの基質溶液(20uM GSK3ペプチド,300μM ATP,20mM MgCl,20μCi/ml[γ33P]ATP,1Xアッセイバッファー,5% グリセロール,1mM DTT,1X PIC,0.1% BSA及び100mM KCl)に加えた。2Xの酵素溶液(6.4nM 活性なAkt/PKB、1X アッセイバッファー、5% グリセロール、1mM DTT、1X PIC及び0.1% BSA)の19μlを加えることにより、リン酸化反応を開始した。次いで、反応物を室温で45分間インキュベートした。
【0260】
工程2
170μlの125mM EDTAを加えることにより反応を停止した。200μlの反応が停止した反応物を、ストレプトアビジンフラッシュプレート(登録商標)プラス(NEN Life Sciences,カタログ番号.SMP103)に移した。プレートシェーカーを用いて、プレートを室温で10分間以上インキュベートした。各ウェルの内容物を吸引し、各ウェルを200μlのTBSで2回洗浄した。次いで、洗浄工程の間、プラットフォームシェーカー上でプレートを室温でインキュベートしながら、各ウェルについて200μlのTBSで5分間、3回洗浄した。
【0261】
プレートをシールテープで覆い、フラッシュプレート中の[33P]をカウントするために適切に設置されたPackard TopCountを用いてカウントした。
【0262】
ストレプトアビジンフィルタープレートアッセイの手順
工程1
前述のストレプトアビジンフラッシュプレートアッセイの工程1で記載されたような酵素反応を実施する。
【0263】
工程2
20μlの7.5M塩酸グアニジンを加えることによって反応を停止した。50μlの反応が停止した反応物を、ストレプトアビジンフィルタープレート(SAM(登録商標)Biotin Capture Plate,Promega,カタログ番号:V7542)に移し、減圧する前に、反応物を、1〜2分間、フィルター上でインキュベートした。
【0264】
次いで、プレートを下記のようにして減圧装置を用いて洗浄した:1)ウェルあた200μlの2M NaClで4回;2)ウェルあたり200μlの、1% HPOを含む2M NaClで6回;3)ウェルあたり200μlのdiH0で2回;及び4)ウェルあたり100μlの95%エタノールで2回。次いで、シンチラントを加える前に、膜を完全に風乾させた。
【0265】
プレートの底を、白いバッキングテープで密封し、ウェルあたり30μlのMicroscint 20(Packard Instruments,カタログ番号6013621)を加えた。プレートの上端を透明なシールテープで密封し、次いで、液体シンチラントを含む[33P]のために適切に設置されたPackard TopCountを用いてカウントした。
【0266】
ホスホセルロースフィルタープレートアッセイの手順
工程1
基質として、ビオチン−GGRARTSSFAEPGに代え、KKGGRARTSSFAEPG(配列番号:16)を用いて、ストレプトアビジンフラッシュプレートアッセイ(前述)の工程1に記載されたように、酵素反応を実施した。
【0267】
工程2
20μlの0.75% HPOを加えることによって反応を停止した。50μlの反応が停止した反応物を、フィルタープレート(UNIFILTER(登録商標),Whatman P81 Strong Cation Exchanger,White Polystyrene 96 Well Plates,Polyfiltronics,カタログ番号7700−3312)に移し、減圧する前に、反応物を1〜2分間、フィルター上でインキュベートした。
【0268】
次いで、プレートを下記のようにして減圧装置を用いて洗浄した:1)ウェルあたり200μlの0.75% HPOで9回;及び2)ウェルあたり200μlのdiH0で2回。プレートの底を、白いバッキングテープで密封し、ウェルあたり30μlのMicroscint 20を加えた。プレートの上端を透明なシールテープで密封し、次いで、液体シンチラント及び[33P]のために適切に設置されたPackard TopCountを用いてカウントした。
【0269】
PKAアッセイ
各PKAアッセイは以下の成分からなる。
A.5X PKAアッセイバッファー(200mM Tris pH7.5,100mM MgCl,5mM β−メルカプトエタノール,0.5mM EDTA)
B.水で希釈した、50μMのケムプチド(Sigma)のストック
C.200Tlの非標識ATPの50μMのストックで、1.0μlの33P−ATP[10mCi/ml]を希釈することによって調製された33P−ATP
D. 0.5mg/ml BSAで希釈した、10μlの、PKA触媒サブユニット(UBI カタログ番号#14−114)の70nMのストック
E. PKA/ケムプチド希釈標準溶液:等量の5XのPKAアッセイバッファー、ケムプチド溶液及びPKA触媒サブユニット
【0270】
96穴のディープウェルアッセイプレートに、反応物を集めた。阻害剤又は媒体(10Tl)を、10Tlの33P−ATP溶液に加えた。各ウェルに、30TlのPKA/ケムプチド希釈標準溶液を加えることによって、反応を開始させた。反応物を混合し、室温で20分間インキュベートした。50Τlの100mM EDTA及び100mMピロリン酸ナトリウムを加え、混合することによって反応を停止させた。
【0271】
P81ホスホセルロース96穴フィルタープレート(Millipore)上に、酵素反応産物(リン酸化されたケムプチド)を集めた。プレートの調製のために、p81フィルタープレートの各ウェルを、75mMリン酸で満たした。フィルターを通して、プレートの底部に減圧を適用することによって、ウェルを空にした。リン酸(75mM,170μl)を各ウェルに加えた。各停止したPKA反応からの30μlの一定量を、リン酸を含むフィルタープレートの対応するウェルに加えた。減圧の適用後にフィルター上にペプチドを捕捉し、フィルターを75mMリン酸で5回洗浄した。最後の洗浄の後、フィルターを風乾した。シンチレーション液体(30μl)を、各ウェルに加え、TopCount(Packard)上でフィルターをカウントした。
【0272】
PKCアッセイ
各PKCアッセイは以下の成分からなる:
A.10X PKC共活性化バッファー:2.5mM EGTA,4mM CaCl
B.5X PKC活性化バッファー:1.6mg/ml ホスファチジルセリン,0.16mg/ml ジアシルグリセロール,100mM Tris pH7.5,50mM MgCl,5mM β−メルカプトエタノール
C. 100μlの非標識ATPの100μMのストックで、1.0μlの33P−ATP[10mCi/ml]を希釈することによって調製された33P−ATP
D.水で希釈したミエリン塩基性タンパク質(350μg/ml,UBI)
E. 0.5mg/ml BSAで希釈したPKC(50ng/ml,UBIカタログ番号#14−115)
F. PKC/ミエリン塩基性タンパク質希釈標準溶液:5倍量の各PCK共活性化バッファー及びミエリン塩基性タンパク質と、10倍量の各PKC活性化バッファー及びPKCとを混合することによって調製。
【0273】
分析試料を、96穴のディープウェルアッセイプレートに集めた。阻害剤又は媒体(10Τl)を、5.0ulの33P−ATPに加えた。PKC/ミエリン塩基性タンパク質希釈標準溶液を加え、混合部することによって反応を開始させた。反応物を30℃で20分間インキュベートした。50Τlの100mM EDTA及び100mMピロリン酸ナトリウムを加え、混合することによって反応を停止させた。リン酸化されたミエリン塩基性タンパク質を、96穴フィルタープレート中のPVDF膜上に集め、シンチレーションカウントにより定量した。
【0274】
スキーム1及び表1に記載された本発明の化合物を前述のアッセイで試験し、それらは、Akt1、Akt2及びAkt3の1種以上に対して50μM以下のIC50を有することがわかった。
【実施例5】
【0275】
Akt/PKBの阻害を検出するための細胞をベースとしたアッセイ
100mMシャーレ中で細胞(例えば、活性なAkt/PKBを有するLnCaP又はPTEN(−/−)腫瘍細胞株)を培養した。細胞が、約70〜80%コンフルエントである時に、細胞に、5mlの新鮮な培地及び溶液中に加えた試験化合物を再供給した。コントロールは、それぞれ処理していない細胞、媒体で処理した細胞、及び20μM又は200nMのLY294002(Sigma)又はワートマニン(Sigma)で処理した細胞を含む。細胞を2、4、6時間培養し、培地を除去し、細胞をPBSで洗浄し、解体し、遠心管に移す。それらを沈殿させ、再度PBSで洗浄した。最後に、細胞の沈殿物を溶解バッファー(20mM Tris pH8,140mM NaCl,2mM EDTA,1% Triton,1mM ピロリン酸ナトリウム,10mM α−グリセロールリン酸,10mM NaF,0.5mm NaVO,1μM ミクロシスチン,及び1x プロテアーゼ阻害剤カクテル)に再懸濁し、氷の上に15分間置き、ゆっくりと撹拌して細胞を溶解させた。Beckmanの卓上超遠心中で、100,000rpmで20分間4℃で回転させた。上清のタンパク質を標準的ブラッドフォードプロトコール(BioRad)で定量し、必要になるまで−70℃に保存した。
【0276】
以下のようにして、清澄な溶解物からタンパク質を免疫沈降(IP)させた。Akt1/PKBΙについて、溶解物をNETN(100mM NaCl,20mM Tris pH8.0,1mM EDTA,0.5% NP−40)中のSanta Cruz sc−7126(D−17)と混合し、プロテインA/Gアガロース(Santa Cruz sc−2003)を加えた。Akt2/PKBβについて、溶解物を抗−Akt2アガロース(Upstate Biotechnology #16−174)と共にNETN中に混合し、Akt3/PKBΚについては、抗−Akt3アガロース(Upstate Biotechnology #16−175)と共にNETN中に混合した。IPを4℃で一晩インキュベートし、洗浄し、SDS−PAGEで分離した。
【0277】
全Akt、pThr308 Akt1、pSer473 Akt1、及びAkt2及びAkt3の対応するリン酸化部位、及びAktの下流標的を解析するために、特異的抗体(Cell Signaling Technology):抗−全Akt(カタログ番号9272)、抗−ホスホAktセリン473(カタログ番号9271)、及び抗−ホスホAktスレオニン308(カタログ番号9275)を用いて、ウェスタンブロットを使用した。PBS及び0.5%脱脂粉乳(NFDM)で希釈した適当な一次抗体で4℃で一晩インキュベートし、ブロットを洗浄し、PBS及び0.5% NFDM中のセイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)−標識二次抗体で室温で1時間インキュベートした。ECL試薬(Amersham/Pharmacia Biotech RPN2134)でタンパク質を検出した。
【実施例6】
【0278】
ヘレグリン誘導Akt活性
MCF7細胞(PTEN+/+であるヒト乳癌細胞株)を、100mMプレートあたり1x10細胞で培養した。細胞は70〜80%コンフルエントである時に、5mlの血清を含まない培地を再供給して一晩インキュベートした。次の日の朝、化合物を加え、細胞を1〜2時間インキュベートし、その後、(Aktの活性を誘導するために)ヘレグリンを30分間加え、細胞を前述したようにして解析した。
【実施例7】
【0279】
腫瘍増殖の阻害
癌細胞の増殖の阻害のインビボにおける効果を、当業界で周知のいくつかのプロトコールによって確認できる。
【0280】
0日目に、PI3K経路の調節解除を示すヒト腫瘍細胞株(例えば、LnCaP,PC3,C33a,OVCAR−3,MDA−MB−468等)を、6〜10週齢のメスのヌードマウス(Harlan)の左の横腹に皮下注射する。マウスを、溶媒、化合物、又は併用両方の群に、無作為に割り当てる。1日目に、毎日の皮下注射を開始し、実験の期間続けた。また、阻害剤試験化合物を、持続性輸注ポンプによって投与してもよい。化合物、化合物併用又は溶媒を、0.2mlの全容量で与える。溶媒処理した全ての動物が、通常は、細胞を注入した4〜5.5週後に直径0.5〜1.0cmの病変を示す場合、腫瘍が発生し、重くなる。各細胞株についての各処置グループにおける腫瘍の平均重量を計算する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式A:
【化1】

(式中、aは0又は1であり;bは0又は1であり;mは0,1又は2であり;nは0,1,2,3又は4であり;pは0,1,2,3,4又は5であり;tは2,3,4,5又は6であり;
u,v,w及びxは、独立してCH及びNから選択され;
y及びzは、独立してCH及びNから選択され、y及びzの少なくとも1つがNであり;
環Kは、(C−C)シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール及びヘテロシクリルから選択されるが、但し、環Kはフェニルではない;
は、独立して、オキソ、(C=O)(C−C10)アルキル、(C=O)−アリール、(C=O)(C−C10)アルケニル、(C=O)(C−C10)アルキニル、COH、ハロ、OH、O(C−C)パーフルオロアルキル、(C=O)NR8、CN、(C=O)(C−C)シクロアルキル、S(O)NR、S(O)−(C−C10)アルキル及び(C=O)−ヘテロシクリルから選択され、前記アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、及びヘテロシクリルは、Rから選択される1個以上の置換基で置換されてもよく;
は、独立してオキソ、(C=O)(C−C10)アルキル、(C=O)−アリール、(C=O)(C−C10)アルケニル、(C=O)(C−C10)アルキニル、COH、ハロ、OH、O(C−C)パーフルオロアルキル、(C=O)NR、CN、(C=O)(C−C)シクロアルキル、S(O)NR、S(O)−(C−C10)アルキル及び(C=O)−ヘテロシクリルから選択され、前記アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、及びヘテロシクリルは、Rから選択される1個以上の置換基で置換されてもよく;
及びRは、独立してH、(C−C)アルキル及び(C−C)パーフルオロアルキルから選択されるか、又は、R及びRが一緒になって、−(CH−を形成し、ここで、炭素原子の1個が、O、S(O)、−N(R)C(O)−、及び−N(COR)−から選択される部分によって置換されてもよく;
は、NRから選択され;
は、(C=O)−C10アルキル、(C=O)アリール、C−C10アルケニル、C−C10アルキニル、(C=O)ヘテロシクリル、COH、ハロ、CN、OH、O−Cパーフルオロアルキル、O(C=O)NR、オキソ、CHO、(N=O)R、S(O)NR、S(O)−(C−C10)アルキル又は(C=O)−Cシクロアルキルから選択され、前記アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、ヘテロシクリル、及びシクロアルキルは、R6aから選択される1個以上の置換基で置換されてもよく;
6aは、(C=O)(C−C10)アルキル、O(C−C)パーフルオロアルキル、(C−C)アルキレン−S(O)、オキソ、OH、ハロ、CN、(C−C10)アルケニル、(C−C10)アルキニル、(C−C)シクロアルキル、(C−C)アルキレン−アリール、(C−C)アルキレン−ヘテロシクリル、(C−C)アルキレン−N(R、C(O)R、(C−C)アルキレン−COC(O)H、及び(C−C)アルキレン−COHから選択され、前記アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、及びヘテロシクリルは、R6bから選択される3個までの置換基で置換されてもよく;
6bは、(C=O)(C−C10)アルキル、O(C−C)パーフルオロアルキル、(C−C)アルキレン−S(O)、オキソ、OH、ハロ、CN、(C−C10)アルケニル、(C−C10)アルキニル、(C−C)シクロアルキル、(C−C)アルキレン−アリール、(C−C)アルキレン−ヘテロシクリル、(C−C)アルキレン−N(R、C(O)R、(C−C)アルキレン−CO、C(O)H、及び(C−C)アルキレン−COHから選択され、前記アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、及びヘテロシクリルは、R、OH、(C−C)アルコキシ、ハロゲン、COH、CN、O(C=O)(C−C)アルキル、オキソ、及びN(Rから選択される3個までの置換基で置換されてもよく;
及びRは、独立してH、(C=O)(C−C10)アルキル、(C=O)(C−C)シクロアルキル、(C=O)−アリール、(C=O)−ヘテロシクリル、(C−C10)アルケニル、(C−C10)アルキニル、SO、及び(C=O)NRから選択され、前記アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、アルケニル、及びアルキニルは、R6aから選択される1個以上の置換基で置換されていてもよく、又は、R及びRはそれらが結合する窒素と一緒になって、各環に3〜7個のメンバーを有する、単環式又は二環式複素環(窒素に加え、N、O及びSから選択される1又は2個の付加的なヘテロ原子を含んでもよい。)を形成し、前記単環式又は二環式複素環は、R6aから選択される、1個以上の置換基で置換されてもよく;
は、(C−C)アルキル、(C−C)シクロアルキル、アリール、又はヘテロシクリルであり;及び
は、H、(C−C)アルキル、アリール、ヘテロシクリル、(C−C)シクロアルキル、(C=O)(C−C)アルキル、又はS(O)である)で表される化合物、又はその医薬として許容される塩又は立体異性体。
【請求項2】
式B:
【化2】

(式中、qは、0,1,2,3又は4であり;
Qは、独立してヘテロシクリルから選択され、該ヘテロシクリルは、R6bから選択される1〜3個の置換で置換されてもよく;及び
他の全ての置換基及び変数は請求項1において定義された通りである)で表される、請求項1記載の化合物、又はその医薬として許容される塩又は立体異性体。
【請求項3】
式C:
【化3】

(式中、他の全ての置換基及び変数は請求項2において定義された通りである)で表される、請求項2記載の化合物、又はその医薬として許容される塩又は立体異性体。
【請求項4】
式D:
【化4】

(式中、他の全ての置換基及び変数は請求項2において定義された通りである)で表される、請求項3記載の化合物、又はその医薬として許容される塩又は立体異性体。
【請求項5】
式E:
【化5】

(式中、他の全ての置換基及び変数は請求項2において定義された通りである)で表される、請求項4記載の化合物、又はその医薬として許容される塩又は立体異性体。
【請求項6】
式F:
【化6】

(式中、他の全ての置換基及び変数は請求項1において定義された通りである)で表される、請求項1記載の化合物、又はその医薬として許容される塩又は立体異性体。
【請求項7】
式G:
【化7】

(式中、R及びRは、独立してH又は(C−C)アルキルであり、前記アルキルは、OH及びハロから選択される3個までの置換基で置換されてもよく、そして、R及びRは一緒になって(C−C)シクロアルキルを形成してもよく;及び
他の全ての置換基及び変数は請求項1において定義された通りである)で表される、請求項6記載の化合物、又はその医薬として許容される塩又は立体異性体。
【請求項8】
5−メトキシ−2−(4−{[4−(5−ピリジン−2−イル−4H−1,2,4−トリアゾール)ピペリジン−1−イル]メチル}フェニル)−3−(2−チエニル)−1,6−ナフチリジン;
2−(4−{[4−(5−ピリジン−2−イル−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピペリジン−1−イル]メチル}フェニル)−3−(2−チエニル)−1,6−ナフチリジン−5(6H)−オン;
1−{4−[4−(3−ピリミジン−5−イルキノキサリン−2−イル)ベンジル]シクロヘキシル}−1,3−ジヒドロ−2H−ベンズイミダゾール2−オン;
3−[3−(4−{[4−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−ベンズイミダゾール1−イル)シクロヘキシル]メチル}フェニル)キノキサリン−2−イル]チオフェン−2−カルバルデヒド;
1−(4−{4−[3−(1H−ピラゾール−5−イル)キノキサリン−2−イル]ベンジル}シクロヘキシル)−1,3−ジヒドロ−2H−ベンズイミダゾール−2−オン;及び
2−[4−(1−アミノ−1−メチルエチル)フェニル]−3−(2−チエニル)−1,6−ナフチリジン−5(6H)−オンから選択される、請求項1記載の化合物、又はその医薬として許容される塩又は立体異性体。
【請求項9】
5−メトキシ−2−(4−{[4−(5−ピリジン−2−イル−4H−1,2,4−トリアゾール)ピペリジン−1−イル]メチル}フェニル)−3−(2−チエニル)−1,6−ナフチリジン;
2−(4−{[4−(5−ピリジン−2−イル−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ピペリジン−1−イル]メチル}フェニル)−3−(2−チエニル)−1,6−ナフチリジン−5(6H)−オン;
1−{4−[4−(3−ピリミジン−5−イルキノキサリン−2−イル)ベンジル]シクロヘキシル}−1,3−ジヒドロ−2H−ベンズイミダゾール2−オン;
3−[3−(4−{[4−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−ベンズイミダゾール1−イル)シクロヘキシル]メチル}フェニル)キノキサリン−2−イル]チオフェン−2−カルバルデヒド;及び
1−(4−{4−[3−(1H−ピラゾール−5−イル)キノキサリン−2−イル]ベンジル}シクロヘキシル)−1,3−ジヒドロ−2H−ベンズイミダゾール−2−オンから選択される、請求項1記載の化合物のTFA塩又はその立体異性体。
【請求項10】
薬学的担体、及びその中に分散された、治療的に有効な量の請求項1記載の化合物を含有する、医薬組成物。
【請求項11】
治療を必要とするほ乳類において、癌の治療又は予防に有用な医薬を製造するための請求項1記載の化合物の使用。

【公表番号】特表2008−530111(P2008−530111A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−555241(P2007−555241)
【出願日】平成18年2月10日(2006.2.10)
【国際出願番号】PCT/US2006/004715
【国際公開番号】WO2006/091395
【国際公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(390023526)メルク エンド カムパニー インコーポレーテッド (924)
【氏名又は名称原語表記】MERCK & COMPANY INCOPORATED
【Fターム(参考)】