説明

CD31の発現を阻害する手段

本発明は、二本鎖構造を含む核酸分子に関し、該二本鎖構造は、第1鎖および第2鎖を含み、該第1鎖は、隣接したヌクレオチドの第1ストレッチを含み、該第1ストレッチは、標的核酸に少なくとも部分的に相補的であり、該第2鎖は、隣接したヌクレオチドの第2ストレッチを含み、該第2ストレッチは、該第1ストレッチに少なくとも部分的に相補的であり、該第1ストレッチは、配列番号1の核酸配列のヌクレオチドコア配列に少なくとも相補的である核酸配列を含み、該ヌクレオチドコア配列は、配列番号1のヌクレオチド位置1277〜1295;配列番号1のヌクレオチド位置2140〜2158;配列番号1のヌクレオチド位置2391〜2409のヌクレオチド配列を含み、該第1ストレッチは、さらに、該ヌクレオチドコア配列の5’末端に先行する領域、および/または該ヌクレオチドコア配列の3’末端に続く領域に少なくとも部分的に相補的である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CD31の発現を阻害するのに適した二本鎖核酸およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
癌形成は、多段階の生物学的プロセスとして、Foulds(1958)によって説明され、現在では、遺伝子の損傷の蓄積によって発生することが知られている。分子レベルでは、腫瘍形成の多段階のプロセスは、正および負の調節エフェクターの崩壊を伴う(Weinberg,1989)。ヒトの結腸癌腫に関する分子機序は、Vogelsteinとその共同研究者ら(1990)によって仮定され、多くの癌遺伝子、腫瘍抑制遺伝子および修復遺伝子が関与する。同様に、網膜芽腫の発症へと導く欠陥は、別の腫瘍抑制遺伝子に結びついている(Lee et al.,1987)。さらに他の癌遺伝子および腫瘍抑制因子は、様々な他の悪性腫瘍において同定されている。不運なことに、治療可能な癌の数は不十分なままであり、癌の影響は破滅的であり、米国だけでも年間50万を超える死の原因となっている。
【0003】
癌は、根本的には遺伝的疾患であり、細胞のDNAへの損傷が細胞増殖を調節する正常なメカニズムの崩壊をもたらす。腫瘍抑制因子がゲノムの完全な状態を維持するための2つのメカニズムの作用は、細胞停止によるものであり、それによって、損傷したDNAの修復、またはアポトーシスによる損傷したDNAの除去を可能にする(Ellisen and Haber,1998;Evan and Littlewood,1998)。アポトーシスは、他には「プログラム細胞死」と呼ばれ、不可逆的に損傷した細胞を除去することを目的とした細胞の自殺プログラムとして作用する生化学的事象の入念に制御されたネットワークである。アポトーシスは、腫瘍壊死因子の結合、DNA損傷、増殖因子の回収、およびFas受容体の抗体による架橋を含む多様な方法で誘発され得る。アポトーシスのプロセスにおいて役割を果たすいくつかの遺伝子が同定されているが、アポトーシスへと導く経路は、十分には解明されていない。多くの研究者らは、アポトーシスを促進する新規遺伝子が患者の癌を治療するために新生細胞においてアポトーシスを選択的に誘導する手段を提供するという観点からこのような遺伝子を同定しようと試みた。
【0004】
癌を治療する別のアプローチは、Endostatin(商標)または抗VEGF抗体などの薬剤で血管形成を抑制することを伴う。このアプローチでは、その目的は、原発腫瘍の更なる脈管化を阻止し、場合によっては、実質的に血管の増殖なしに新生細胞の生存を支持し得る転移病巣のサイズを抑圧することである。
【0005】
CD31またはPECAM−1とも呼ばれる血小板内皮細胞接着分子は、内皮細胞および好中球上に見られるタンパク質であって、内皮を通過する白血球の移動に関与することが示されている。血栓症、血管閉塞および発作などの心臓血管状態の治療、血栓症などの血流を塞ぐ疾患の治療または減少、止血の発生の治療または減少のためにCD−31の活性の調節は、WO03055516A1に開示されている。PECAM−1はまた、炎症性プロセスに関与し、抗PECAM−1モノクローナル抗体は、インビボで、好中球動員をブロックすることが報告されている(Nakada et al.(2000)J.Immunol.164:452−462)。CD31のノックアウトマウスが報告され、正常の白血球移動、血小板凝集、および血管発生を有するようであり、CD31の喪失を補うことができる余分な接着分子が存在することを暗示する(Duncan et al.(1999)J.Immunol.162:3022−3030)。CD31のモノクローナル抗体は、腫瘍移植モデル(Zhou et al.(1999)Angiogenesis 3:181−188)およびヒトの皮膚移植モデル(Cao et al.(2002)Am.J.Physiol.Cell Physiol.282:J1181−C1190)におけるマウスの内皮管形成および脈管化の関連する指示物質をブロックすることが報告されている。しかしながら、腫瘍血管形成におけるPECAM−1の役割は、たとえあったとしても、特定されないままである。
【0006】
抗血管形成戦略を用いて癌および腫瘍の転移を阻害する多大な努力にもかかわらず、これまで、血管形成の阻害のみによって、癌を治療するために承認され、市販された薬物はない。実際に、新生組織形成および転移のプロセスにおいて、CD31を含む種々の接着分子の特定の役割は知られていない。
【0007】
この観点から、腫瘍性疾患の治療のための手段に関して、当該技術分野において持続的な必要性が存在する。非常に多数の腫瘍性疾患の根底にあるメカニズムを考慮すると、より具体的には、血管形成、より具体的には腫瘍性疾患の根底にある病理学的なメカニズムに関与する血管形成に作用するのに適した手段が必要である。
【発明の開示】
【0008】
本発明の根底にある課題は、第1の態様では、二本鎖核酸分子によって解決されることであり、
二本鎖構造は第1鎖および第2鎖を含み、
第1鎖は隣接したヌクレオチドの第1ストレッチ(stretch)を含み、該第1ストレッチは標的核酸に少なくとも部分的に相補的であり、および
第2鎖は隣接したヌクレオチドの第2ストレッチを含み、該第2ストレッチは第1ストレッチに少なくとも部分的に相補的であり、および
標的核酸はCD31をコードするmRNAである。
【0009】
好ましい実施形態では、前記核酸は、リボ核酸である。
【0010】
本発明の根底にある課題はまた、第2の態様では、二本鎖構造を含む核酸分子によって解決されることであり、
二本鎖構造は第1鎖および第2鎖を含み、
第1鎖は隣接したヌクレオチドの第1ストレッチを含み、該第1ストレッチは標的核酸に少なくとも部分的に相補的であり、および
第2鎖は隣接したヌクレオチドの第2ストレッチを含み、該第2ストレッチは第1ストレッチに少なくとも部分的に相補的であり、
第1ストレッチは配列番号1の核酸配列のヌクレオチドコア配列に少なくとも相補的である核酸配列を含み、
ヌクレオチドコア配列は、
配列番号1のヌクレオチド位置1277〜1295;
配列番号1のヌクレオチド位置2140〜2158;
配列番号1のヌクレオチド位置2391〜2409
のヌクレオチド配列を含み、
第1ストレッチは、さらに、該ヌクレオチドコア配列の5’末端に先行する領域、および/または該ヌクレオチドコア配列の3’末端に続く領域に少なくとも部分的に相補的である。
【0011】
第2の態様のある実施形態では、第1ストレッチは、ヌクレオチドコア配列に相補的である。
【0012】
第1および第2の態様のある実施形態では、第1ストレッチは、さらに、ヌクレオチドコア配列の3’末端に続く領域に相補的である。
【0013】
第1および第2の態様のある実施形態では、第1ストレッチは、18〜29ヌクレオチド、好ましくは19〜25ヌクレオチド、より好ましくは19〜23ヌクレオチドの標的核酸に相補的である。
【0014】
第1および第2の態様の好ましい実施形態では、ヌクレオチドは連続したヌクレオチドである。
【0015】
第1の態様のある実施形態では、第1ストレッチおよび/または第2ストレッチは、18〜29の連続したヌクレオチド、好ましくは19〜25の連続したヌクレオチド、より好ましくは19〜23の連続したヌクレオチドを含む。
【0016】
第1および第2の態様のある実施形態では、第1鎖は第1ストレッチからなり、および/または第2鎖は第2ストレッチからなる。
【0017】
本発明の根底にある課題はまた、第3の態様では、二本鎖構造を含む、核酸分子、好ましくは第1および第2の態様の核酸分子によって解決され、二本鎖構造は第1鎖および第2鎖によって形成され、該第1鎖は隣接したヌクレオチドの第1ストレッチを含み、第2鎖は隣接したヌクレオチドの第2ストレッチを含み、第1ストレッチは、第2ストレッチに少なくとも部分的に相補的であって、
第1ストレッチは、配列番号2のヌクレオチド配列からなり、第2ストレッチは、配列番号3のヌクレオチド配列からなり;
第1ストレッチは、配列番号4のヌクレオチド配列からなり、第2ストレッチは、配列番号5のヌクレオチド配列からなり;
第1ストレッチは、配列番号6のヌクレオチド配列からなり、第2ストレッチは、配列番号7のヌクレオチド配列からなり;
第1ストレッチは、配列番号8のヌクレオチド配列からなり、第2ストレッチは、配列番号9のヌクレオチド配列からなる。
【0018】
第1、第2および第3の態様のある実施形態では、第1ストレッチおよび/または第2ストレッチは、2’位で修飾を有する修飾ヌクレオチドの複数の群を含み、該ストレッチ内で、修飾ヌクレオチドの各群は、ヌクレオチドのフランキング群によって片側または両側でフランキングされ、ヌクレオチドのフランキング群を形成するフランキングヌクレオチドは、非修飾ヌクレオチドであるかまたは修飾ヌクレオチドの修飾とは異なる修飾を有するヌクレオチドであって、好ましくは、第1ストレッチおよび/または第2ストレッチは、少なくとも2つの群の修飾ヌクレオチドおよび少なくとも2つのフランキング群のヌクレオチドを含む。
【0019】
第1、第2および第3の態様のある実施形態では、第1ストレッチおよび/または第2ストレッチは、修飾ヌクレオチドの群のパターン、および/またはヌクレオチドのフランキング群のパターンを含み、該パターンは、好ましくは位置パターンである。
【0020】
第1、第2および第3の態様のある実施形態では、第1ストレッチおよび/または第2ストレッチは、3’末端でジヌクレオチドを含み、このようなジヌクレオチドは好ましくはTTである。
【0021】
第1、第2および第3の態様の好ましい実施形態では、第1ストレッチの長さおよび/または第2ストレッチの長さは、19〜23ヌクレオチド、好ましくは19〜21ヌクレオチドからなる。
【0022】
第1、第2および第3の態様のある実施形態では、第1ストレッチおよび/または第2ストレッチは、3’末端で1〜5ヌクレオチドの突出を含む。
【0023】
第1、第2および第3の態様の好ましい実施形態では、二本鎖構造の長さは、約16〜24ヌクレオチド対、好ましくは20〜22ヌクレオチド対である。
【0024】
第3の態様のある実施形態では、第1鎖および第2鎖は、互いに共有結合され、好ましくは第1鎖の3’末端は第2鎖の5’末端に共有結合されている。
【0025】
本発明の根底にある課題はまた、第4の態様では、第1、第2および第3の態様に係る核酸とリポソームとを含むリポプレックスによって解決される。
【0026】
第4の態様のある実施形態では、
リポソームは、
a)約50mol%のβ−アルギニル−2,3−ジアミノプロピオン酸−N−パルミチル−N−オレイル−アミド三塩酸塩、好ましくは(β−(L−アルギニル)−2,3−L−ジアミノプロピオン酸−N−パルミチル−N−オレイル−アミド三塩酸塩);
b)約48〜49mol%の1,2−ジフィタノイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DPhyPE);および
c)約1〜2mol%の1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−ポリエチレン−グリコール、好ましくはN−(カルボニル−メトキシポリエチレングリコール−2000)−1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミンナトリウム塩
からなる。
【0027】
第4の態様の好ましい実施形態では、リポプレックスのゼータ電位は、約40〜55mV、好ましくは45〜50mVである。
【0028】
第4の態様のある実施形態では、リポプレックスは、QELSによって測定されるように、約80〜200nm、好ましくは約100〜140nm、より好ましくは約110nm〜130nmのサイズである。
【0029】
本発明の根底にある課題はまた、第5の態様では、第1、第2および第3の態様に係る核酸を含むかまたはコードするベクター、好ましくは発現ベクターによって解決される。
【0030】
本発明の根底にある課題はまた、第6の態様では、先行する態様のいずれか1つに係る核酸または第5の態様に係るベクターを含む細胞によって解決される。
【0031】
本発明の根底にある課題はまた、第7の態様では、第1、第2および第3の態様に係る核酸、第4の態様に係るリポプレックス、第5の態様に係るベクターおよび/または第6の態様に係る細胞を含む組成物、好ましくは医薬組成物によって解決される。
【0032】
第7の態様のある実施形態では、組成物は、場合により医薬として許容されるビヒクルをさらに含む医薬組成物である。
【0033】
第7の態様の好ましい実施形態では、組成物は医薬組成物であって、該医薬組成物は、血管形成に依存した疾患、好ましくは、不十分な、異常なまたは過剰な血管形成によって特徴付けられるかまたは引き起こされる疾患の治療用である。
【0034】
第7の態様のより好ましい実施形態では、血管形成は、脂肪組織、皮膚、心臓、目、肺、腸、生殖器、骨および関節の血管形成である。
【0035】
第7の様態の実施形態では、疾患は、感染症、自己免疫障害、血管奇形、アテローム性動脈硬化症、移植動脈症、肥満、乾癬、いぼ、アレルギー性皮膚炎、持続性過形成硝子体症候群、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、加齢性黄斑疾患、脈絡膜血管新生、原発性肺高血圧症、喘息、鼻ポリープ、炎症性腸疾患および歯周疾患、腹水、腹膜癒着、子宮内膜症、子宮出血、卵巣嚢胞、卵巣、卵巣過刺激、関節炎、滑膜炎、骨髄炎、骨棘形成を含む群から選択される。
【0036】
第7の態様の実施形態では、医薬組成物は、腫瘍性疾患、好ましくは癌疾患、より好ましくは固形腫瘍の治療用である。
【0037】
第7の態様の実施形態では、医薬組成物は、骨癌、乳癌、前立腺癌、消化器官の癌、結腸直腸癌、肝臓癌、肺癌、腎臓癌、泌尿器癌、膵臓癌、下垂体癌、精巣癌、眼の癌、頭頸部癌、中枢神経系の癌および呼吸器系の癌を含む群から選択される疾患の治療用である。
【0038】
本発明の根本的な課題はまた、薬剤を製造するための、第1、第2および第3の様態に係る核酸、第4の態様に係るリポプレックス、第5の態様に係るベクターおよび/または第6の態様に係る細胞の使用によって解決される。
【0039】
第8の態様の実施形態では、薬剤は、本発明に係る医薬組成物の種々の実施形態と関連して規定されるいずれかの疾患の治療用である。
【0040】
第8の態様の好ましい実施形態では、薬剤は、1またはいくつかの他の治療、好ましくは抗腫瘍治療または抗癌治療と併用して用いられる。
【0041】
第8の態様のより好ましい実施形態では、治療は、化学療法、凍結療法、発熱療法、抗体療法および放射線療法を含む群から選択される。
【0042】
第8の態様のさらにより好ましい実施形態では、治療は、抗体療法、より好ましくは抗VEGF抗体を用いた抗体療法である。
【0043】
本発明の様々な態様においてさらに好ましい実施形態では、mRNAは、CD31のヒトmRNAである。さらにより好ましい実施形態では、標的核酸は、配列番号1の核酸配列を有するmRNAである。配列番号1のヌクレオチド配列を有するmRNAと比較して、種々の個体または個体群、好ましくは集団におけるmRNAにおいて1またはいくつかの単一ヌクレオチドの変化があってもよいことは、当業者に認識されるべきである。配列番号1の核酸を有するmRNAと比較して、1またはいくつかの単一ヌクレオチドの変化を有するこのようなmRNAはまた、好ましくは本明細書中で使用するとき、用語標的核酸によって含まれるべきである。なお更なる実施形態では、本発明の種々の態様に係る核酸分子は、CD31およびそれをコードするmRNAの発現を阻害するのに適している。より好ましくは、このような発現は、RNA干渉または転写後の遺伝子サイレンシングと呼ばれるメカニズムによって阻害される。このようにして、本発明に係るsiRNA分子およびRNAi分子それぞれは、好ましくは標的分子のmRNAのノックダウンをもたらすRNA干渉応答を誘発するのに適している。この限りにおいては、この種の核酸分子は、mRNAレベルでの発現を減少させることによって、標的分子の発現を減少させるのに適している。また、本出願によって包含されるべきCD31をコードするmRNAがさらに存在してもよいことは、当業者に認識されるものである。より具体的には、配列番号1を参照することにより、本明細書中で同定されている特定のヌクレオチド部位は、本明細書中において提供される技術的教示に基づいて、当業者によってこのような更なるmRNAにおいて同定され得る。
【0044】
本発明のこの態様に係る二本鎖核酸は、この種の核酸分子のために、本明細書に記載されている設計のいずれかを有してもよいことはまた認識されるべきである。さらに、上述したメカニズムはまた、好ましい実施形態において、種々の態様および本明細書において下位の態様として言及されてもいる設計原理と関連して、本明細書に開示されている核酸に適応可能であることは認識されるべきである。
【0045】
RNA干渉は、低分子干渉RNA(siRNA)によって媒介される動物における配列特異的な転写後の遺伝子サイレンシングのプロセスをいう(Fire et al.,1998,Nature,391,806)。植物における対応するプロセスは、転写後の遺伝子サイレンシングまたはRNAサイレンシングと呼ばれ、真菌ではクエリング(quelling)とも呼ばれている。転写後の遺伝子サイレンシングのプロセスは、通常、多様な植物相および門によって共有される外来遺伝子の発現を防ぐために用いられる進化的に保存された細胞の防御メカニズムであると考えられている(Fire et al.,1999,Trends Genet.,15,358)。外来遺伝子の発現からのこのような保護は、ウイルス感染由来の二本鎖RNA(dsRNA)の産生、または相同な一本鎖RNAもしくはウイルスゲノムRNAを特異的に破壊する細胞応答を介した宿主ゲノムにトランスポゾンエレメントのランダムな組み込みに応答して進化し得る。細胞内のdsRNAの存在は、まだ十分には特徴づけられていないメカニズムを介してRNAi応答を誘発する。また、動物細胞、特に哺乳動物の細胞にも存在しているメカニズムは、リボヌクレアーゼLによってmRNAの非特異的な切断をもたらすプロテインキナーゼPKRおよび2’,5’−オリゴアデニル酸シンターゼのdsRNA媒介による活性化に起因するインターフェロン応答性とは異なっているようである。
【0046】
siRNA分子またはRNAi分子の基本設計は、大部分はサイズが異なるものであり、基本的には、核酸分子が二本鎖構造を含むようにする。二本鎖構造は、第1鎖および第2鎖を含む。より好ましくは、第1鎖は、隣接するヌクレオチドの第1ストレッチを含み、第2鎖は、隣接するヌクレオチドの第2ストレッチを含む。少なくとも第1ストレッチおよび第2ストレッチは、本質的には、互いに相補的である。このような相補性は、典型的には、Watson−Crick塩基対または当業者に知られている他の塩基対メカニズム、例えば、限定されないが、Hoogsteen塩基対および他のものに基づいている。このような二本鎖構造の長さに依存して、塩基の相補性の観点で完全な適合は必ずしも必要でないことは、当業者に認識されるものである。しかしながら、このような完全な相補性は、一部の実施形態では好ましい。特に好ましい実施形態では、相補性および/または同一性は、少なくとも75%、80%、85%、90%または95%である。代替の特に好ましい実施形態では、相補性および/または同一性は、相補的および/または同一の核酸分子が、本発明に係る核酸分子の鎖の1つにハイブリダイズし、より好ましくは下記の条件下で2つのストレッチの1つにハイブリダイズするようなものであり、下記の条件下で標的遺伝子の転写物の一部とハイブリダイズすることができるようなものである。400mM NaCl、40mM PIPES pH6.4、1mM EDTA、50℃または70℃、12〜16時間のハイブリダイゼーション、続く洗浄。それぞれの反応条件は、とりわけ、欧州特許第EP1230375号に記載されている。いずれの場合でも、本発明に係る核酸分子は、それらが遺伝子サイレンシングに適し、より具体的にはRNA干渉を誘発するのに適切であるように設計されるかまたは具体化される。
【0047】
主に、二本鎖構造がRNA干渉メカニズムを誘発するのになお適切であり、好ましくは、このような二本鎖構造が、細胞、組織および臓器を含むかまたは主に含む、それぞれ、細胞、組織および生命体において広がるような生理学的条件下でなお安定に形成しているという条件で、ミスマッチは認容され得る。より好ましくは、二本鎖構造は、生理学的なバッファー中、37℃で安定である。本発明にかかる核酸分子がコア領域と異なる位置に、この種のミスマッチが、好ましくは含まれ得ることは、当業者に認識されるものである。
【0048】
第1ストレッチは、典型的には、標的核酸に少なくとも部分的に相補的であり、第2ストレッチは、特に、それぞれ、第1ストレッチと第2ストレッチと間の関係を与え、塩基の相補性の点で、少なくとも部分的には標的核酸と同一である。標的核酸は、好ましくはmRNAであるが、hnRNAなど他のRNAの形態もまた本明細書に開示される核酸分子の目的に適している。
【0049】
RNA干渉は、それぞれ数十および時としてさらに数百のヌクレオチドおよびヌクレオチド対を含む長い核酸分子を用いる場合に観察され得るが、より短いRNAi分子が一般には好ましい。第1ストレッチおよび/または第2ストレッチの長さのより好ましい範囲は、約18〜29の連続的なヌクレオチド、好ましくは19〜25の連続的なヌクレオチドおよびより好ましくは19〜23の連続的なヌクレオチドである。より好ましくは、第1ストレッチと第2ストレッチは同じ長さである。更なる実施形態では、二本鎖構造は、好ましくは16〜29、好ましくは18〜25、より好ましくは19〜23、最も好ましくは19〜21の塩基対を含む。
【0050】
本発明によれば、原則として、CD31をコードするmRNAのいずれの部分も、それぞれ、このようなsiRNA分子およびRNAi分子の設計に用いることができるが、本発明者らは、驚くべきことに、配列番号1のヌクレオチド配列を有する配列番号1のmRNAのヌクレオチド位置1277、2140、および2391から開始する配列が、RNA干渉を媒介する分子によって対処されるには特に適していることを見出した。
【0051】
より具体的には、本発明者らは、驚くべきことに、これらの配列および開始点はCD31の発現阻害に特に好ましい配列ではあるが、この限りにおいては、特に効果的であるこれらの配列の周辺にヌクレオチドのコアが存在することを見出した。このコアは、一実施形態では、上記に特定されたヌクレオチド配列の約9〜11の最後のヌクレオチドからなる配列である。そこから開始されて、このコアは、機能的に活性な二本鎖核酸分子が得られるように伸長され得て、好ましくは、CD31の発現阻害に影響を及ぼすのに適している機能的に活性な手段である。このような目的のために、mRNAの対応する部分に本質的に同一である第2ストレッチ、即ちコア配列は、このようにして、5’末端で1個、好ましくはいくつかのヌクレオチドによって伸長され、それによりこのようにして付加されたヌクレオチドは、対応する位置での標的核酸に存在するヌクレオチドに本質的に同一である。また、このような目的で、標的核酸に本質的に相補的である第1鎖は、このようにして、3’末端で1個、好ましくはいくつかのヌクレオチドによって伸長され、それによりこのように付加されたヌクレオチドは、対応する位置、即ち5’末端で標的核酸に存在するヌクレオチドに本質的に相補的である。
【0052】
この設計原理に従って、本発明に係るコア配列は、下記、
5’cauccagaa3’、
5’acuccaaca3’、および
5’agaacggaa3’
のように要約することができる。
【0053】
その更なる実施形態では、コア配列は、本発明に係る二本鎖核酸分子の第2ストレッチのヌクレオチド配列と同一であり、第1ストレッチは、本質的には、それに相補的である。なおさらに好ましい実施形態では、本発明に係る二本鎖核酸分子の長さは、それぞれ種々の態様および下位の態様と関連して、本明細書に開示されている制限内にある。
【0054】
siRNA分子およびRNAi分子の具体的な設計は、それぞれ現在および将来の設計原理に従って変更可能であることは当業者に理解されるものである。当面は、下記により詳細に検討され、本発明に係る核酸分子の第1の態様の下位の態様または下位の態様と呼ばれるいくつかの設計原理が存在する。1つの特定の下位の態様に対して記載された全ての特徴および実施形態はまた、本発明に係る核酸のいずれかの他の態様および下位の態様に適用可能であり、このようにして本発明のそれぞれの実施形態を形成することは本発明の範囲内である。
【0055】
第1の下位の態様は、本発明に係る核酸に関し、ここで、第1ストレッチは、2’位での修飾を有する修飾ヌクレオチドの複数の群を含み、該ストレッチ内で、修飾ヌクレオチドの群は、各々、ヌクレオチドのフランキング群によって片側または両側にフランキングされ、ヌクレオチドのフランキング群を形成するフランキングヌクレオチドは、非修飾ヌクレオチドであるかまたは修飾ヌクレオチドの修飾とは異なる修飾を有するヌクレオチドである。このような設計は、とりわけ、国際公開第WO2004/015107号パンフレットに記載されている。この態様に係る核酸は、好ましくはリボ核酸であるが、いくつかの実施形態において概説されるが、2’位での修飾は、純粋な化学的観点からは、もはやリボヌクレオチドではないヌクレオチドをもたらす。しかしながら、このような修飾リボヌクレオチドは、リボヌクレオチドとして、およびリボ核酸としてこのような修飾リボヌクレオチドを含む分子として、本明細書においてみなされ、対処されることは、本発明の範囲内である。
【0056】
本発明の第1の下位の態様に係るリボ核酸の実施形態では、リボ核酸は、二本鎖構造の片側または両側で平滑端である。より好ましい実施形態では、二本鎖構造は、18〜25、より好ましくは19〜23、あるいは18〜19塩基対を含む。さらにより好ましい実施形態では、核酸は、第1ストレッチおよび第2ストレッチのみからなる。
【0057】
本発明の第1の下位の態様に係るリボ核酸の更なる実施形態では、第1ストレッチおよび/または第2ストレッチは、修飾ヌクレオチドの複数の群を含む。更なる好ましい実施形態では、第1ストレッチはまた、ヌクレオチドの複数のフランキング群を含む。好ましい実施形態では、複数の群は、少なくとも2つの群を意味する。
【0058】
本発明の第1の下位の態様に係るリボ核酸の別の実施形態では、第2ストレッチは、修飾ヌクレオチドの複数の群を含む。更なる好ましい実施形態では、第2ストレッチはまた、ヌクレオチドの複数のフランキング群を含む。好ましい実施形態では、複数の群は、少なくとも2つの群を意味する。
【0059】
さらに好ましい実施形態では、第1ストレッチおよび第2ストレッチは、複数の修飾ヌクレオチドの群およびヌクレオチドのフランキング群を含む。より好ましい実施形態では、複数の修飾ヌクレオチドの群およびヌクレオチドのフランキング群は、第1ストレッチおよび/または第2ストレッチ上でパターン、好ましくは規則的なパターンを形成し、このようなパターンは、第1ストレッチおよび第2ストレッチの両方で形成されることがさらにより好ましい。好ましい実施形態では、このようなパターンは、空間的または位置的パターンである。この第1の下位の態様に従って空間的または位置的パターンとは、(a)ヌクレオチドが二本鎖構造を形成する鎖/ストレッチのヌクレオチド配列内の位置に依存して修飾されることを意味する。したがって、修飾されるヌクレオチドがピリミジンであるかまたはプリンであるかは問題ではない。むしろ、(a)非修飾ヌクレオチドと比較して、したがって、それぞれ5’末端および3’末端と比較して、このようなヌクレオチドの相対的位置が、その限りにおいては、決定的である。したがって、個々の鎖/ストレッチに沿ってみられる修飾は、このようにして、このような鎖/ストレッチに沿う個々のヌクレオチドの化学的性質に依存せず、さらにそれによって駆動されないが、個々のヌクレオチドの位置に依存している。したがって、本発明のこの第1の下位の態様の技術的教示によれば、修飾パターンは、修飾される配列には関係なく絶えず同じである。
【0060】
本発明の第1の下位の態様に係るリボ核酸の好ましい実施形態では、修飾ヌクレオチドの群および/またはフランキングヌクレオチドの群は、多数のヌクレオチドを含み、ここで、その数は、1ヌクレオチド〜10ヌクレオチドを含む群から選択される。本明細書中で特定されるいずれかの範囲と関連して、各範囲は、範囲を定義している2つの数字を含む範囲を定義するために用いられるそれぞれの数字の間のいずれかの個々の整数を開示することは理解されるべきである。この場合には、このようにして、群は、1ヌクレオチド、2ヌクレオチド、3ヌクレオチド、4ヌクレオチド、5ヌクレオチド、6ヌクレオチド、7ヌクレオチド、8ヌクレオチド、9ヌクレオチド、および10ヌクレオチドを含む。
【0061】
本発明の第1の下位の態様に係るリボ核酸の別の実施形態では、第1ストレッチの修飾ヌクレオチドのパターンは、第2ストレッチの修飾ヌクレオチドのパターンと同じである。
【0062】
本発明の第1の下位の態様に係るリボ核酸の好ましい実施形態では、第1ストレッチのパターンは、第2ストレッチのパターンと一致する。
【0063】
本発明の第1の下位の態様に係るリボ核酸の代替の実施形態では、第1ストレッチのパターンは、第2ストレッチのパターンと比べて1以上のヌクレオチドによってシフトされる。
【0064】
本発明の第1の下位の態様に係るリボ核酸の実施形態では、2’位での修飾は、アミノ、フルオロ、メトキシ、アルコキシおよびアルキルを含む群から選択される。
【0065】
本発明の第1の下位の態様に係るリボ核酸の別の実施形態では、二本鎖構造は平滑端である。
【0066】
本発明の第1の下位の態様に係るリボ核酸の好ましい実施形態では、二本鎖構造は、二本鎖構造の両側で平滑端である。
【0067】
本発明の第1の下位の態様に係るリボ核酸の別の実施形態では、二本鎖核酸は、第1鎖の5’末端および第2鎖の3’末端によって特定される二本鎖構造側で平滑端である。
【0068】
本発明の第1の下位の態様に係るリボ核酸のさらに別の実施形態では、二本鎖構造は、第1鎖の3’末端および第2鎖の5’末端によって特定される二本鎖構造側で平滑端である。
【0069】
本発明の第1の下位の態様に係るリボ核酸の別の実施形態では、2つの鎖の少なくとも1つは、5’末端で少なくとも1つのヌクレオチドの突出を有する。
【0070】
本発明の第1の下位の態様に係るリボ核酸の好ましい実施形態では、突出は、少なくとも1つのデオキシリボヌクレオチドからなる。
【0071】
本発明の第1の下位の態様に係るリボ核酸の更なる実施形態では、鎖の少なくとも1つは、3’末端で少なくとも1つのヌクレオチドの突出を有する。
【0072】
第1の下位の態様のリボ核酸の実施形態では、二本鎖構造の長さは、約17〜25、より好ましくは19〜23塩基対または18もしくは19塩基対である。
【0073】
第1の下位の態様のリボ核酸の別の実施形態では、第1鎖の長さおよび/または第2鎖の長さは、互いに独立して、約15〜約23塩基対、19〜23塩基対および18または19塩基対の範囲を含む群から選択される。
【0074】
本発明の第1の下位の態様に係るリボ核酸の好ましい実施形態では、第1鎖と標的核酸との間の相補性は完全である。
【0075】
第1の下位の態様に係るリボ核酸の実施形態では、第1鎖と標的核酸との間に形成される二重鎖は、少なくとも15ヌクレオチドを含み、ここで、二本鎖構造を形成する第1鎖と標的核酸との間には1つのミスマッチまたは2つのミスマッチがある。
【0076】
第1の下位の態様に係るリボ核酸の実施形態では、第1鎖および第2鎖の両方は、各々、少なくとも1つの修飾ヌクレオチドの群および少なくとも1つのヌクレオチドのフランキング群を含み、修飾ヌクレオチドの群は、各々、少なくとも1つのヌクレオチドを含み、ヌクレオチドのフランキング群は、各々、第2鎖上のヌクレオチドのフランキング群と一致した第1鎖の修飾ヌクレオチドの各群を含む少なくとも1つのヌクレオチドを含み、第1鎖の5’最末端ヌクレオチドは、修飾ヌクレオチドの群のヌクレオチドであり、第2鎖の3’最末端ヌクレオチドは、ヌクレオチドのフランキング群のヌクレオチドである。好ましい実施形態では、第1鎖および第2鎖は、各々、修飾ヌクレオチドの少なくとも2つの群およびヌクレオチドのフランキング群の少なくとも2つの群を含む。さらにより好ましい実施形態では、各々のおよびいずれかの個々の群は、単一ヌクレオチドからなる。
【0077】
第1の下位の態様に係るリボ核酸の好ましい実施形態では、修飾ヌクレオチドの群は、各々、単一ヌクレオチドからなり、および/またはヌクレオチドのフランキング群は、各々、単一ヌクレオチドからなる。
【0078】
第1の下位の態様に係るリボ核酸の更なる実施形態では、第1鎖上で、ヌクレオチドのフランキング群を形成するヌクレオチドは、修飾ヌクレオチドの群を形成するヌクレオチドと比較して、3’方向に配列される非修飾ヌクレオチドであり、第2鎖上で、修飾ヌクレオチドの群を形成するヌクレオチドは、ヌクレオチドのフランキング群を形成するヌクレオチドと比較して、5’方向に配列される修飾ヌクレオチドである。
【0079】
第1の下位の態様に係るリボ核酸の別の実施形態では、第1鎖は、修飾ヌクレオチドの8〜12、好ましくは9〜12の群を含み、第2鎖は、修飾ヌクレオチドの7〜11、好ましくは8〜10の群を含む。
【0080】
上記で特定されたものはまた、それぞれ第1ストレッチおよび第2ストレッチに適用可能であることは、本発明の範囲内である。これは、該鎖がストレッチのみからなる実施形態について特に当てはまる。
【0081】
このような第1の下位の態様に係るリボ核酸分子は、第1鎖で、本明細書中では未修飾5’OH−基とも呼ばれる未修飾5’ヒドロキシル基を有するように設計されてもよい。未修飾5’OH−基は、第1鎖を形成する最末端のヌクレオチドが存在し、したがって、修飾されておらず、特に末端修飾によって修飾されていないことを意味する。典型的には、第2鎖の末端5’−ヒドロキシ基はまた、それぞれ、修飾されずに存在する。より好ましい実施形態では、また、第1鎖および第1ストレッチの3’末端は、それぞれ、本明細書中では未修飾3’OH−基と呼ばれる未修飾OH−基を与えるように修飾されておらず、5’末端ヌクレオチドの設計は、前述した実施形態のいずれかのものである。好ましくは、このような未修飾OH−基はまた、それぞれ、第2鎖および第2ストレッチの3’末端で存在する。本発明に係る前述されるリボ核酸分子の他の実施形態では、第1鎖および第1ストレッチの3’末端のそれぞれ、および/または第2鎖および第2ストレッチの3’末端のそれぞれは、3’末端で末端修飾を有していてもよい。
【0082】
本明細書中で使用するとき、用語未修飾5’OH−基および未修飾3’OH−基はまた、OH−基を示す二本鎖構造を形成する、それぞれポリヌクレオチドの5’末端および3’末端でそれぞれ最末端ヌクレオチド、即ち、核酸または鎖およびストレッチのいずれかが存在することを示す。このようなOH−基は、核酸の糖部分、より好ましくは5’OH−基の場合には5’位および/または3’OH−基の場合には3’位から、またはそれぞれの末端ヌクレオチドの糖部分に結合したリン酸基から生じてもよい。リン酸基は、原則として、ヌクレオチドの糖部分のいずれかのOH−基に結合してもよい。好ましくは、リン酸基は、未修飾5’OH−基または3’OH−基と称されるものをなおも提供する、未修飾5’OH−基の場合には糖部分の5’OH−基、および/または未修飾3’OH−基の場合には糖部分の3’OH−基に結合される。
【0083】
第1の下位の態様のいずれかの実施形態において本明細書中で使用するとき、用語末端修飾とは、第1および/または第2鎖の5’または3’最末端ヌクレオチドに付加される化学物質を意味する。このような末端修飾の例には、限定されないが、とりわけ、欧州特許第0586520B1号または欧州特許第0618925B1号に記載されるように、逆方向(デオキシ)脱塩基(abasic)、アミノ、フルオロ、クロロ、ブロモ、CN、CF、メトキシ、イミダゾール、カルボキシレート、チオエート、C〜C10低級アルキル、置換された低級アルキル、アルカリルもしくはアラルキル、OCF、OCN、O−、S−、またはN−アルキル;O−、S−、もしくはN−アルケニル;SOCH;SOCH;ONO;NO;N;ヘテロジルコアルキル;ヘテロジルコアルカリル;アミノアルキルアミノ;ポリアルキルアミノまたは置換されたシリルが挙げられる。
【0084】
本明細書中で使用するとき、アルキルまたは「アルキル」を含むいずれかの用語は、1〜12、好ましくは1〜6、より好ましくは1〜2個のC原子を含むいずれかの炭素原子鎖を意味する。
【0085】
更なる末端修飾は、ビオチン基である。このようなビオチン基は、好ましくは、第1および/または第2鎖の5’もしくは3’最末端ヌクレオチドまたはその両方に結合されてもよい。より好ましい実施形態では、ビオチン基は、ポリペプチドまたはタンパク質に結合される。ポリペプチドまたはタンパク質が他の前述の末端修飾のいずれかを介して結合されることも本発明の範囲内である。ポリペプチドまたはタンパク質は、本発明の核酸分子に更なる特徴付けを与えることができる。とりわけ、ポリペプチドまたはタンパク質は、別の分子に対するリガンドとして作用することができる。該他の分子が受容体である場合、受容体の機能および活性は、リガンドの結合によって活性され得る。受容体は、リガンドに結合した本発明の核酸分子の効果的なトランスフェクションを可能にする内在化活性を示すことができる。本発明の核酸分子に結合されるリガンドの例はVEGFであり、対応する受容体はVEGF受容体である。
【0086】
様々な種類の末端修飾を有する本発明のRNAiの種々の可能性のある実施形態が、下記の表1に提示されている。
【0087】
【表1】

【0088】
本明細書に開示される種々の末端修飾は、好ましくは、リボ核酸のヌクレオチドのリボース部分に位置される。より具体的には、末端修飾は、限定されないが、2’OH、3’OHおよび5’OH位を含む、リボース部分のOH−基のいずれかに結合するかまたは置換されてもよく、ただし、このように修飾されたヌクレオチドは、末端のヌクレオチドである。逆方向脱塩基は、核酸塩基部分を有さないデゾキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドのいずれかのヌクレオチドである。この種の化合物は、とりわけ、Sternberger et al.,2002に記載されている。
【0089】
前述した末端修飾のいずれかは、表1に示されるRNAiの種々の実施形態と関連させて用いることができる。これに関連して、好ましくは、末端修飾、より好ましくは5’末端修飾を有することによって、不活性化されるセンス鎖を有する、本明細書中に開示されているRNAi形態または実施形態のいずれかが、特に有利であることは留意されるべきである。これは、本明細書に記載されているリボ核酸の第2鎖に対応するセンス鎖の不活性化に起因するものであり、さもなければ細胞中の無関係な一本鎖RNAに干渉してしまう。このようにして、発現およびより具体的には細胞のトランスクリプトームの翻訳パターンは、より特異的に影響を受ける。この効果は、オフターゲット効果とも呼ばれる。表1に言及すると、実施形態7および8として示される実施形態は、上記の意味において特に好都合であるが、これは、修飾によって、(標的非特異的な)RNAi(第2鎖である)部分が不活性化され、その結果、本発明に係るRNAiが、それぞれ特定のリボ核酸およびタンパク質をノックダウンするために用いられる細胞系または類似の系において、一本鎖RNAと第2鎖とのいずれかの非特異的な相互作用を減少させるためである。
【0090】
更なる実施形態では、第1の下位の態様に係る核酸は、リボ核酸の5’末端で突出を有する。より具体的には、このような突出は、原則として、本発明に係るリボ核酸の第1鎖および第2鎖のいずれかまたはその両方に存在し得る。該突出の長さは、1ヌクレオチド程の短さであり、2〜8ヌクレオチド程の長さであり、好ましくは2、4、6または8ヌクレオチド程の長さあってもよい。5’突出は、本出願に係るリボ核酸の第1鎖および/または第2鎖に位置し得ることは本発明の範囲内である。突出を形成するヌクレオチドは、デゾキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチドまたはそれらの組み合わせであってもよい。
【0091】
突出は、好ましくは、少なくとも1つのデゾキシリボヌクレオチドを含み、1つのデゾキシリボヌクレオチドは、好ましくは5’最末端のものである。本発明のリボ核酸のそれぞれの対鎖の3’末端は突出を有しておらず、より好ましくはデゾキシリボヌクレオチド突出を有していないことは本発明の範囲内である。ここでもう一度、本発明のリボ核酸のいずれかは、表1と関連して概要される末端修飾スキーム、および/または本明細書中で概要される末端修飾を含んでもよい。
【0092】
隣接しているヌクレオチドのストレッチを考慮すると、ストレッチを形成するヌクレオチドの修飾パターンは、単一ヌクレオチドまたは標準的なリン酸ジエステル結合、または少なくとも部分的にはリン酸チオエート結合を介して互いに共有結合するヌクレオチド群がこのような種類の修飾を示すような実施形態で実現されてもよい。このようなヌクレオチドまたは修飾されたヌクレオチド群として本明細書中で呼ばれてもいるヌクレオチド群が該ストレッチの5’末端または3’末端を形成しない場合、ヌクレオチドまたはヌクレオチド群は、先行するヌクレオチドまたはヌクレオチド群の修飾を有しないヌクレオチドの両側に続く。しかしながら、この種のヌクレオチドまたはヌクレオチド群が、異なる修飾を有してもよいことに留意すべきである。この種のヌクレオチドまたはヌクレオチド群はまた、本明細書では、ヌクレオチドのフランキング群とも呼ばれる。それぞれ、修飾ヌクレオチドおよび修飾されたヌクレオチド群、および非修飾もしくは別々に修飾されたヌクレオチドまたは非修飾もしくは別々に修飾されたヌクレオチド群からなるこの配列は、1回または複数回繰り返されてもよい。好ましくは、この配列は、1回を超えて繰り返される。明瞭性のために、一般に、修飾ヌクレオチドの群または非修飾ヌクレオチドの群を参照して、下記により詳細に検討されるが、前記の各群は、実際には、1ヌクレオチド程度のヌクレオチドを含んでもよい。非修飾ヌクレオチドは、本明細書中で使用するとき、それぞれのヌクレオチドもしくはヌクレオチド群を形成するヌクレオチドに前述の修飾のいずれも有しないか、またはそれぞれ修飾ヌクレオチドおよびヌクレオチド群とは異なる修飾を有することを意味する。
【0093】
また、非修飾ヌクレオチドが、実際には、修飾ヌクレオチドの修飾とは異なる方法で修飾される非修飾ヌクレオチドの修飾が、該非修飾ヌクレオチドを形成する種々のヌクレオチドまたはヌクレオチドの種々のフランキング群に関して、同じであるかまたは異なっていてもよいことは、本発明の範囲内である。
【0094】
修飾ヌクレオチドおよび非修飾ヌクレオチドのパターンは、鎖またはストレッチの5’末端ヌクレオチドがヌクレオチド修飾群から開始されるかまたはヌクレオチドの非修飾群から開始されるようなものであってもよい。しかしながら、代わりの実施形態では、5’末端ヌクレオチドは、ヌクレオチドの非修飾群によって形成される可能性もある。
【0095】
この種のパターンを、干渉RNAの第1ストレッチもしくは第2ストレッチ、またはその両方で実現され得る。これは、同等に、それぞれ第1鎖および第2鎖に当てはまる。siRNA二重鎖の標的相補鎖上の5’リン酸エステルは、siRNA機能に必要とされ、これは、細胞が未修飾5’OH(リン酸化され得る)を介してsiRNAの真偽性をチェックし、このような真性のsiRNAだけを標的RNAの破壊に指向できるようにすることを示唆している(Nykanen,2001 #94)。
【0096】
好ましくは、第1ストレッチは、ある種のパターンのヌクレオチド修飾群および非修飾群、即ち、修飾ヌクレオチド群およびヌクレオチドのフランキング群のパターンを示す。一方で第2ストレッチはこの種のパターンを示さない。これは、第1ストレッチがRNAの干渉現象を受ける標的特異的分解プロセスにとって実際により重要であり、これにより、特異性の理由から、第2ストレッチは、RNA干渉の媒介に機能的でないように化学的に修飾され得る限りにおいて有用である。これは、同等に、それぞれ第1鎖および第2鎖に当てはまる。
【0097】
しかしながら、第1ストレッチおよび第2ストレッチはともにこの種のパターンを有することもまた本発明の範囲内である。好ましくは、修飾および非修飾のパターンは、第1ストレッチおよび第2ストレッチの両方で同じである。これは、同等に、それぞれ第1鎖および第2鎖に当てはまる。
【0098】
好ましい実施形態では、第2ストレッチを形成し、第1ストレッチのヌクレオチドの修飾群に対応するヌクレオチドの群も修飾され、第2ストレッチのまたは第2ストレッチを形成するヌクレオチドの非修飾群は、第1ストレッチのまたは第1ストレッチを形成するヌクレオチドの非修飾群に対応する。別の代替案は、それぞれ第2ストレッチおよび第2鎖の修飾パターンと比較して、それぞれ第1ストレッチおよび第1鎖の修飾パターンの位置シフトが存在するということである。好ましくは、このシフトは、第1ストレッチのヌクレオチドの修飾群が第2ストレッチのヌクレオチドの非修飾群に対応するものであり、その反対も同様である。また、修飾パターンの位置シフトは完全ではないが重複していることも本発明の範囲内である。これは、同等に、それぞれ第1鎖および第2鎖に当てはまる。
【0099】
好ましい実施形態では、それぞれ鎖およびストレッチの末端にある第2ヌクレオチドは、非修飾ヌクレオチドであるかまたは非修飾ヌクレオチドの群の先頭である。好ましくは、この非修飾ヌクレオチドまたはヌクレオチドの非修飾群は、それぞれ第1鎖および第2鎖、さらにより好ましくは第1鎖の5’末端に位置される。さらに好ましい実施形態では、非修飾ヌクレオチドまたはヌクレオチドの非修飾群は、それぞれ第1鎖および第1ストレッチの5’末端に位置される。好ましい実施形態では、このパターンは、交互に1個ずつの修飾ヌクレオチドおよび非修飾ヌクレオチドからなる。
【0100】
本発明のこの態様のさらに好ましい実施形態では、対象とする干渉リボ核酸対象は、二本鎖を含み、このとき2’−O−メチル修飾ヌクレオチドおよび非修飾ヌクレオチド、好ましくは2’−O−メチル修飾されていないヌクレオチドは両方の鎖に交互になるように組み込まれ、第2ヌクレオチドごとに2’−O−メチル修飾ヌクレオチドと非修飾ヌクレオチドとなることを意味する。これは、第1鎖では、1つの2’−O−メチル修飾ヌクレオチドの後に非修飾ヌクレオチドが続き、順に2’−O−メチル修飾ヌクレオチドが続くことを意味する。2’−O−メチル修飾および非修飾の同一の配列が第2鎖に存在し、このとき第1鎖の2’−O−メチル修飾ヌクレオチドが第2鎖の非修飾ヌクレオチドと塩基対合し、その逆も同様になるような位相シフトがあることが好ましい。この特別な配置、即ち両鎖の2’−O−メチル修飾ヌクレオチドと非修飾ヌクレオチドとが塩基対合することは、低分子干渉リボ核酸、即ち短い塩基対合の二本鎖リボ核酸の場合に特に好ましいが、それは、本発明者らが本発明を特定の理論と結びつけることを望むわけではないが、2’−O−メチル修飾ヌクレオチドが2塩基対合するとその間にいくらかの反発力が働き、かかる二本鎖、特に短い二本鎖を不安定にすると推定されるからである。特別な配置に関しては、アンチセンス鎖が5’末端で2’−O−メチル修飾ヌクレオチドから開始し、従って第2ヌクレオチドが非修飾型の場合は、第3、第5、第7といったヌクレオチドは再び2’−O−メチル修飾され、一方、第2、第4、第6、第8といったヌクレオチドは非修飾ヌクレオチドである。この場合も特定な理論と結びつけることを望まないが、いずれの修飾も含まないとするアンチセンス鎖の5’末端にある第2、場合によっては第4、第6、第8および/または同様の位置は、特別重要であるのに対し、5’最末端ヌクレオチド、即ちアンチセンス鎖の最初の5’末端ヌクレオチドはかかる修飾を示すものであり、アンチセンス鎖の第1、場合により第3、第5および同様の奇数位置は修飾され得る。更なる実施形態では、修飾および非修飾ヌクレオチドそれぞれの修飾および非修飾それぞれは、本明細書に記載のいずれのものでもよい。より具体的な実施形態では、本発明の係る二本鎖核酸分子は、19〜23の連続ヌクレオチドの第1鎖と19〜23の連続ヌクレオチドの第2鎖とからなり、このとき第1鎖および第2鎖は、本質的には互いに相補的であり、より好ましくは同一の長さである。さらに、該より具体的な実施形態では、二本鎖構造は、両端で平滑端である。標的核酸に本質的に相補的である第1鎖、即ち、CD31をコードするmRNAは、5’末端で、2’OH基で2’O−Me基を形成するようにメチル化されるヌクレオチドから開始する。この第1鎖の第2ヌクレオチドごとに同じ修飾を有し、即ち2’OH基でメチル化される。したがって、第1、第3、第5など、即ち第1鎖のいずれかの奇数のヌクレオチド位置はこのように修飾される。第1鎖の奇数位置のヌクレオチドは、非修飾ヌクレオチドまたは修飾ヌクレオチドであって、このとき修飾されている場合、修飾は第1鎖の奇数のヌクレオチド位置の修飾とは異なっている。第2鎖は、好ましくは第1鎖と同数のヌクレオチドを含み、5’−>3’である、本明細書において通常カウントする方法とは対照的に、3’−>5’から、または3’−>5’でカウントする場合の第2、第4、第6など、即ちいずれかの偶数のヌクレオチド位置で修飾ヌクレオチドを有する。他のヌクレオチドのいずれか、即ち奇数のヌクレオチド位置のヌクレオチドは、非修飾ヌクレオチドまたは修飾ヌクレオチドであり、このとき修飾されていれば、この修飾は、第2鎖の偶数のヌクレオチド位置の修飾とは異なっている。したがって、第2鎖は、5’末端で、上記センスの非修飾ヌクレオチドから開始する。より好ましい実施形態では、第1鎖および第2鎖の修飾ヌクレオチドの修飾は同じであり、第1鎖および第2鎖の非修飾ヌクレオチドの修飾もまた同じである。好ましい実施形態では、アンチセンス鎖の5’末端は、細胞、好ましくは標的細胞において好ましくはリン酸化されてもよいOH−基を有し、その場合、本発明の核酸分子は、活性であるかまたは機能的であるべきであり、またはリン酸基を有する。センス鎖の5’末端はまた、好ましくは修飾され、より好ましくは本明細書に開示されるように修飾される。3’末端のいずれかまたは両方は、ある実施形態では、末端リン酸基である。
【0101】
二本鎖構造は、2つの別々の鎖によって、即ち第1鎖と第2鎖によって形成されることは本発明の範囲内である。しかしながら、また、第1鎖と第2鎖とは互いに共有結合されることは本発明の範囲内である。このような結合は、それぞれ第1鎖および第2鎖を形成するヌクレオチドのいずれかの間で起こってもよい。しかしながら、両鎖間の結合は二本鎖構造の一端または両端に近づけるように生じさせることが好ましい。このような結合は、共有結合または非共有結合によって形成可能である。共有結合は、好ましくはメチレンブルーを含む基および二官能性基から選択される化合物によって、それぞれ1回または数回、1のまたは複数の位置で両鎖を結合させることによって形成することができる。このような二官能性基は、好ましくは、ビス(2−クロロエチル)アミン、N−アセチル−N’−(p−グリオキシベンゾイル)シスタミン、4−チオウラシルおよびソラレンから選択される。
【0102】
本発明の第1の下位の態様のいずれかに係るリボ核酸の更なる実施形態では、第1鎖および第2鎖はループ構造によって結合される。
【0103】
本発明の第1の下位の態様に係るリボ核酸の好ましい実施形態では、ループ構造は、非核酸ポリマーで構成される。
【0104】
その好ましい実施形態では、非核酸ポリマーは、ポリエチレングリコールである。
【0105】
本発明の第1の下位の態様に係るリボ核酸の実施形態では、第1鎖の5’末端は、第2鎖の3’末端に結合される。
【0106】
本発明の態様のいずれかに係るリボ核酸の更なる実施形態では、第1鎖の3’末端は、第2鎖の5’末端に結合される。
【0107】
ある実施形態では、ループは核酸からなる。本明細書中で使用するとき、ElayadiとCorey(2001)Curr Opin Investig Drugs.2(4):558−61.総説;Orum and Wengel(2001)Curr Opin Mol Ther.3(3):239−43に記載されているLNA、およびPNAは核酸と見なされ、ループ形成ポリマーとして用いてもよい。基本的には、第1鎖の5’末端は、第2鎖の3’末端と結合されてもよい。あるいは、第1鎖の3’末端は、第2鎖の5’末端に結合されてもよい。該ループ構造を形成しているヌクレオチドの配列は、一般的には重要とは考えられていない。しかしながら、順にこのようなループを形成するヌクレオチド配列の長さ、またはこのようなヌクレオチド配列を形成する単位は立体上の理由から重要と思われている。したがって、最低長の4ヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体は、必要とされるループ構造を形成するのに適切であると考えられている。原則的には、ハイブリダイズする両ストレッチ間または両鎖間のヒンジまたは結合を形成するヌクレオチドの最大数に制限はない。しかしながら、ポリヌクレオチドが長くなるほど、二次および三次構造が形成されやすくなり、その結果、ストレッチに求められる配向に影響が出てくる。好ましくは、ヒンジを形成するヌクレオチドの最大数は約12ヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体である。上記のいずれかの設計が、本明細書に開示され、それぞれ当該技術分野において知られている他の設計とのいずれかと、即ち、二本鎖をループ構造または同様の構造を通して折り返すことができるように共有結合により結合することによって組み合わせることができることは本明細書の開示の範囲内である。
【0108】
本発明者らは驚くべきことにループをアンチセンス鎖、即ち、本発明のリボ核酸の第1鎖の3’に配置すると、この種のRNAiの活性がアンチセンス鎖の5’にループを配置した場合に比べ高くなることを見いだした。したがって、アンチセンス鎖およびセンス鎖、即ち、それぞれ第1鎖および第2鎖に対する特別なループの配置が重要であり、したがって、このことは配向が関連しないと言われている先行技術で表明されていた理解とは対照的である。しかしながら、このことは、本明細書に示される実験結果を考えれば真実ではないと考えられる。先行技術で表明されている理解は、RNAiがその間にループによらず結合されるRNAiが生成されるプロセッシングにかけられるという想定に基づいている。しかしながら、たとえそうであっても、アンチセンスの3’に配置されたループを有する構造に明瞭に観察される活性増加を説明することができない。この限りにおいては、この種の低分子干渉RNAiの5’から3’方向における好ましい配置は、第2鎖−ループ−第1鎖である。各構築物は適切なベクター系に組み込んでもよい。好ましくは、ベクターはRNAiの発現のためのプロモータを含む。好ましくは、各プロモータは、pol IIIであり、より好ましくは、プロモータはGood et al.(1997年)Gene Ther、4、45−54に記載のU6、H1、7SKプロモータである。
【0109】
本発明の第1の態様に関する第2の下位の態様は、本発明に係る核酸に関し、このとき第1ストレッチおよび/または第2ストレッチは、3’末端でジヌクレオチドを含み、このようなジヌクレオチドは好ましくはTTである。好ましい実施形態では、第1ストレッチおよび/または第2ストレッチの長さは、18〜23ヌクレオチドからなり、より好ましい二本鎖構造は、18〜23、より好ましくは19〜21の塩基対を含む。この下位の態様に従う核酸の設計は、より詳細には、国際公開第WO01/75164号パンフレットに記載されている。
【0110】
本発明の第1の態様に関する第3の下位の態様は、本発明に係る核酸に関し、このとき第1および/または第2ストレッチは、3’末端で1〜5ヌクレオチドの突出を含む。この下位の態様に従う核酸の設計は、より詳細には、国際公開第WO02/44321号パンフレットに記載されている。より好ましくは、このような突出は、リボ核酸である。好ましい実施形態では、各鎖、より好ましくは、本明細書に定義される各ストレッチは、19〜25ヌクレオチドの長さを有し、このときより好ましくは、この鎖は、ストレッチからなる。好ましい実施形態では、本発明による核酸の二本鎖構造は、17〜25の塩基対、好ましくは19〜23の塩基対、より好ましくは19〜21の塩基対を含む。
【0111】
本発明の第1の態様に関する第4の下位の態様は、本発明に係る核酸に関し、このとき第1および/または第2ストレッチは、3’末端で1〜5ヌクレオチドの突出を含む。この下位の態様に従う核酸の設計は、より詳細には、国際公開第WO02/44321号パンフレットに記載されている。
【0112】
本発明の第1の態様に関する第5の下位の態様では、本発明に係る核酸は、二本鎖核酸であり、それは、化学的に合成された二本鎖低分子干渉核酸(siNA)分子であり、CD31 mRNAの切断を、好ましくはRNA干渉を介して指向し、ここで、該siNA分子の各鎖は、長さにして18〜27または19〜29ヌクレオチドであり、該siNA分子は、少なくとも1つの化学的に修飾されたヌクレオチド非ヌクレオチドを含む。この下位の態様に従う核酸の設計は、より詳細には、国際公開第WO03/070910号パンフレットおよび英国特許第2397062号に記載されている。
【0113】
その好ましい一実施形態では、siNA分子は、リボヌクレオチドを含まない。別の実施形態では、siNA分子は、1以上のヌクレオチドを含む。別の実施形態では、化学的に修飾されたヌクレオチドは、2’−デオキシヌクレオチドを含む。別の実施形態では、化学的に修飾されたヌクレオチドは、2’−デオキシ−2’−フルオロヌクレオチドを含む。別の実施形態では、化学的に修飾されたヌクレオチドは、2’−O−メチルヌクレオチドを含む。別の実施形態では、化学的に修飾されたヌクレオチドは、ホスホロチオエートヌクレオチド間の結合を含む。更なる実施形態では、非ヌクレオチドは脱塩基部分を含み、このとき好ましくは脱塩基部分は、逆方向デオキシ脱塩基部分を含む。別の実施形態では、非ヌクレオチドはグリセリル部分を含む。
【0114】
更なる実施形態では、第1鎖と第2鎖とは、リンカー分子を介して接続される。好ましくは、リンカー分子は、ポリヌクレオチドリンカーである。あるいは、リンカー分子は、非ヌクレオチドリンカーである。
【0115】
第5の下位の態様に係る核酸の更なる実施形態では、第2鎖のピリミジンヌクレオチドは、2’−O−メチルピリミジンヌクレオチドである。
【0116】
第5の下位の態様に係る核酸の更なる実施形態では、第2鎖のプリンヌクレオチドは、2’−デオキシプリンヌクレオチドである。
【0117】
第5の下位の態様に係る核酸の更なる実施形態では、第2鎖のピリミジンヌクレオチドは、2’−デオキシ−2’−フルオロピリミジンヌクレオチドである。
【0118】
第5の下位の態様に係る核酸の更なる実施形態では、第2鎖は、5’末端、3’末端または5’末端と3’末端の両方に末端キャップ部分を含む。
【0119】
第5の下位の態様に係る核酸の更なる実施形態では、第1鎖のピリミジンヌクレオチドは、2’−デオキシ−2’−フルオロピリミジンヌクレオチドである。
【0120】
第5の下位の態様に係る核酸の更なる実施形態では、第1鎖のプリンヌクレオチドは、2’−O−メチルプリンヌクレオチドである。
【0121】
第5の下位の態様に係る核酸の更なる実施形態では、第1鎖のプリンヌクレオチドは、2’−デオキシプリンヌクレオチドである。
【0122】
第5の下位の態様に係る核酸の更なる実施形態では、第1鎖は、第1鎖の3’末端でホスホロチオエートヌクレオチド間の結合を含む。
【0123】
第5の下位の態様に係る核酸の更なる実施形態では、第1鎖は、第1鎖の3’末端でグリセリル修飾を含む。
【0124】
第5の下位の態様に係る核酸の更なる実施形態では、第1鎖と第2鎖の両方の約19ヌクレオチドは塩基対合し、ここで、好ましくは、siNA分子の各鎖の少なくとも2つの3’末端ヌクレオチドは、他の鎖のヌクレオチドに塩基対合しない。好ましくは、siNA分子の各鎖の2つの3’末端ヌクレオチドの各々は、2’−デオキシ−ピリミジンである。より好ましくは、2’デオキシ−ピリミジンは、2’デオキシ−チミジンである。
【0125】
第5の下位の態様に係る核酸の更なる実施形態では、第1鎖の5’末端はリン酸基を含む。
【0126】
特に、本発明に係る核酸の第5の下位の態様に関する一実施形態では、本発明のsiNA分子は、RNAiを媒介する能力を維持している修飾ヌクレオチドである。修飾ヌクレオチドは、インビトロまたはインビボの特徴、例えば安定性、活性、および/または生物学的利用能を改善するために用いることができる。例えば、本発明のsiNA分子は、siNA分子に存在するヌクレオチドの総数の割合として修飾ヌクレオチドを含むことができる。そのようなものとして、本発明のsiNA分子は、一般に、約5%〜約100%の修飾ヌクレオチド(例えば、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%の修飾ヌクレオチド)を含むことができる。所定のsiNA分子に存在する修飾ヌクレオチドの実際の割合は、siNAに存在するヌクレオチドの総数に依存するものである。siNA分子が一本鎖であれば、修飾の割合は、一本鎖siNA分子に存在するヌクレオチドの総数に基づくことができる。同様に、siNA分子が二本鎖であれば、修飾の割合は、センス鎖、アンチセンス鎖、またはセンス鎖とアンチセンス鎖との両方に存在するヌクレオチドの総数に基づくことができる。
【0127】
限定されない例では、特に本発明に係る核酸の第5の下位の態様の核酸分子への化学的に修飾されたヌクレオチドの導入は、外部から送達される天然のRNA分子に固有のインビボの安定性および生物学的利用能の潜在的な制限を克服する強力なツールを提供する。例えば、化学的に修飾された核酸分子の使用は、所定の治療効果のために特定の核酸分子の低用量を可能にでき、これは、化学的に修飾された核酸分子が血清中で長期の半減期を有する傾向にあるためである。さらに、ある種の化学的修飾は、特定の細胞もしくは組織を標的にし、および/または核酸分子の細胞により取り込みを改善することによって、核酸分子の生物学的利用能を改善することができる。したがって、化学的に修飾された核酸分子の活性が、天然の核酸分子と比較して、例えば全てのRNA核酸分子と比較した場合に減少したとしても、修飾核酸分子の全活性は、天然の分子の活性よりも大きくなり得て、それは、改善された分子の安定性および/または送達に起因している。天然の非修飾siNAとは異なり、化学的に修飾されたsiNAはまた、ヒトにおいてインターフェロンを活性化する可能性を最小限にすることができる。
【0128】
好ましくは、本発明に係る核酸の第5の下位の態様と関連して、本発明のsiNA分子のアンチセンス鎖、即ち第1鎖は、該アンチセンス領域の3’末端でホスホロチオエートヌクレオチド間の結合を含むことができる。アンチセンス鎖は、該アンチセンス領域の5’末端で約1〜約5のホスホロチオエートヌクレオチド間の結合を含むことができる。本発明のsiNA分子の3’末端ヌクレオチド突出は、核酸の糖、塩基または骨格で化学的に修飾されるリボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドを含むことができる。3’末端ヌクレオチド突出は、1以上のユニバーサル塩基リボヌクレオチドを含むことができる。3’末端ヌクレオチド突出は、1以上の非環状ヌクレオチドを含むことができる。
【0129】
特に、ヌクレオチドで作製されたループを含む本発明の実施形態は使用され、ベクターによる発現に適していることは、当業者に認識されるものである。好ましくは、ベクターは発現ベクターである。このような発現ベクターは、いずれかの遺伝子治療アプローチに特に有用である。したがって、このようなベクターは、本明細書に開示されている疾患の治療に好んで用いられる医薬の製造に用いることができる。しかしながら、いずれかの天然に存在していない修飾を含む本発明に係る核酸のいずれかの実施形態は、ベクター、および細胞、組織、臓器および生物などのこのようなベクターのための発現系における発現のために直ぐに用いることはできないことも当業者に認識されるものである。しかしながら、修飾は、ベクターによって核酸を発現した後に、本発明による誘導されたベクターまたは核酸を発現したベクターに加えられるかまたは導入されてもよいことは、本発明の範囲内である。特に好ましいベクターは、プラスミドベクターまたはウイルスベクターである。発現ベクターにおけるsiNA分子およびRNAi分子の使用方法に関する技術的教示は、例えば、国際公開第WO01/70949号パンフレットに記載されている。このようなベクターは、治療または診断のいずれかの方法に好ましくは有用であることは当業者に認識されるものであり、この場合、本発明に係る核酸の持続的な存在がそれぞれ望まれ、有用であるのに対し、本発明に係る非ベクター核酸、特に本発明に係る化学的に修飾されたまたは化学的に合成された核酸は、特に有用であり、この分子の一時的な存在が望まれるかまたは有用である。
【0130】
本明細書に記載されている核酸分子の合成法は、当業者に知られている。このような方法は、とりわけ、Caruthers et al.,1992,Methods in Enzymology 211,3−19、Thompson et al.,PCT国際公開第WO99/54459号、Wincott et al.,1995,Nucleic Acids Res.23,2677−2684、Wincott et al.,1997,Methods Mol.Bio.,74,59、Brennan et al.,1998,Biotechnol Bioeng.,61,33−45、およびBrennan,米国特許第6,001,311号に記載されている。これらは全て、参照により本明細書中に援用される。
【0131】
更なる態様では、本発明は、本発明に係る核酸を含むリポプレックスに関する。このようなリポプレックスは、1または数個の核酸および1または数個のリポソームからなる。好ましい実施形態では、リポプレックスは1つのリポソームと数個の核酸分子からなる。
【0132】
リポプレックスは下記のように特徴付けることができる。本発明に係るリポプレックスは、約40〜55mV、好ましくは約45〜50mVのゼータ電位を有する。本発明に係るリポプレックスの大きさは、約80〜200nm、好ましくは約100〜140nm、より好ましくは約110nm〜130nmであり、これらは、動的光散乱(QELS)、例えば製造業者の推奨に従って、Beckman CoulterのN5サブミクロン粒子サイズ分析機の使用によって測定される。
【0133】
本発明に係るリポプレックスの部分を形成するようなリポソームは、好ましくは、正に電荷したリポソームであって、
a)約50mol%のβ−アルギニル−2,3−ジアミノプロピオン酸−N−パルミチル−N−オレイル−アミド三塩酸塩、好ましくはβ−(L−アルギニル)−2,3−L−ジアミノプロピオン酸−N−パルミチル−N−オレイル−アミド三塩酸塩、
b)約48〜49mol%の1,2−ジフィタノイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DPhyPE)、および
c)約1〜2mol%の1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−ポリエチレン−グリコール、好ましくはN−(カルボニル−メトキシポリエチレングリコール−2000)−1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミンナトリウム塩
からなる。
【0134】
リポプレックスおよびリポソームを形成する脂質組成物は、好ましくは担体に含まれる。しかしながら、リポプレックスはまた、凍結乾燥の形態で存在し得る。担体に含まれる脂質組成物は、通常、分散形態である。より好ましくは、担体は、さらにまた本明細書中で特徴付けられるように、水性媒体または水溶液である。脂質組成物は、典型的には、担体中のリポソームを形成し、このときこのようなリポソームはまた、好ましくは内部に担体を含む。
【0135】
担体に含まれる脂質組成物および担体は、それぞれ、好ましくは、約50〜600mosmole/kg、好ましくは約250〜350mosmole/kg、より好ましくは約280〜320mosmole/kgの浸透圧を有する。
【0136】
リポソームは、好ましくは、第1の脂質成分、場合によりまた第1のヘルパー脂質によって、好ましくは第1の脂質成分と組み合わせて形成され、好ましくは、約20〜200nm、好ましくは約30〜100nm、より好ましくは約40〜80nmの粒子サイズを示す。
【0137】
さらに、粒子サイズは、ある種の統計的分布に従うことは認識されるものである。
【0138】
本発明に従って、脂質組成物の更なる任意の特徴は、担体のpHが好ましくは約4.0〜6.0であるということである。しかしながら、他のpH範囲、例えば4.5〜8.0、好ましくは約5.5〜7.5、より好ましくは約6.0〜7.0も本発明の範囲内である。
【0139】
これらの具体的な特性を実現するために、種々の測定が採用されてもよい。浸透圧を調整するために、例えば、糖または糖類の組み合わせが、特に有用である。この限りにおいて、本発明の脂質組成物は、下記の糖類、ショ糖、トレハロース、グルコース、ガラクトース、マンノース、マルトース、ラクツロース、イヌリンおよびラフィノースの1または数個を含むことができ、このときショ糖、トレハロース、イヌリンおよびラフィノースが特に好ましい。特に好ましい実施形態では、糖の添加によって主に調整される浸透圧は、約300mosmole/kgであり、これは、270mMのショ糖溶液または280mMのグルコース溶液に対応する。好ましくは、担体は、このような脂質組成物が投与される体液と等張である。本明細書中で使用するとき、浸透圧が主に糖の添加によって調整されるという表現は、少なくとも約80%、好ましくは少なくとも約90%の浸透圧が該糖または該糖の組み合わせによって与えられることを意味する。
【0140】
本発明の脂質組成物のpHが調整される場合、これは、例えば、当業者に基本的には知られているバッファー物質の使用によって行われる。好ましくは、カチオン性脂質、より具体的には、カチオン性頭部基のアンモニウム基の塩基性特性を補うのに適した塩基性物質が用いられる。それぞれ塩基性アミノ酸および弱塩基などの塩基性物質を添加する場合、上記の浸透圧は考慮されなければならない。このような脂質組成物およびこのような脂質組成物によって形成されるリポソームの粒子サイズは、好ましくは、動的光散乱、例えば製造業者の推奨に従って、Beckman CoulterのN5サブミクロン粒子サイズ分析機の使用によって測定される。
【0141】
脂質組成物が1または数個の核酸を含む場合、このような脂質組成物は、通常、リポプレックス複合体、即ちリポソームと核酸からなる複合体を形成する。好ましい等張の270mMのショ糖または280mMのグルコース中の全脂質含量のより好ましい濃度は、約0.01〜100mg/ml、好ましくは0.01〜40mg/ml、より好ましくは0.01〜25mg/mlである。適度なストックを調製するように、この濃度を典型的には2〜3倍に増加させ得ることは認識されるべきである。これに基づいて、希釈物が調製され、このときこのような希釈物は、浸透圧が、典型的には、上記で規定した範囲内にあるようになされることも本発明の範囲内である。より好ましくは、希釈物は、脂質組成物と関連している用いられる担体と同一であるか、または機能およびより具体的には浸透圧の観点でそれに類似している担体、あるいは脂質組成物が含まれる担体中に調製される。脂質組成物がまた核酸、好ましくは機能性核酸、例えば、限定されないが、siRNAを含む本発明の脂質組成物の実施形態では、脂質組成物中の機能性核酸、好ましくはsiRNAの濃度は、約0.2〜0.4mg/ml、好ましくは0.28mg/mlであり、全脂質濃度は、約1.5〜2.7mg/ml、好ましくは2.17mg/mlである。核酸画分と脂質画分との間のこの質量比が特に好ましく、電荷比に関してもこのようにして実現されることは認識されるべきことである。本発明の脂質組成物のいずれかの更なる濃度または希釈と関連して、この特定の実施形態において実現される質量比および電荷比はそれぞれ、このような濃度または希釈にもかかわらずに、好ましくは維持されることが好ましい。
【0142】
例えば医薬組成物に用いられるこのような濃度は、適量の媒体、好ましくは生理学的に許容されるバッファーまたは本明細書に記載されるいずれかの担体に脂質を分散させることによって得られるか、または適切な手段によって濃縮することができる。このような適切な手段は、例えばクロスフロー限外ろ過を含む限外ろ過法である。ろ過膜は、1,000〜300,000Daの分子量カット(MWCO)または5nm〜1μmの細孔幅を示してもよい。特に好ましいのは、約10,000〜100,000Da MWCOの細孔幅である。また、本発明に従う脂質組成物、より具体的にはリポプレックスが、凍結乾燥形態で存在してもよいことは、当業者に認識されるものである。このような凍結乾燥形態は、典型的には、リポプレックスの保管期間を増加させるのに適している。とりわけ、適切な浸透圧を与えるために加えられる糖は、抗凍結剤としてそれに関連して用いられる。それに関連して、浸透圧、pH、およびリポプレックス濃度の前述の特徴は、担体中の脂質組成物を溶解し、懸濁しまたは分散させた形態を意味し、このときこのような担体は、原則として、本明細書に記載されるいずれかの担体であり、典型的には、水または生理学的に許容されるバッファー、好ましくは等張バッファーまたは等張溶液などの水性担体である。
【0143】
これらの特定の調合物とは別に、本発明に係る核酸分子はまた、当該技術分野において知られている医薬組成物に調合されてもよい。
【0144】
したがって、本発明に係る核酸分子は、好ましくは、単独でまたは他の治療と組み合わせて、医薬および診断薬としての使用に適合可能である。例えば、本発明に係る核酸分子は、リポソーム、被験者に投与するために、担体および希釈剤および/またはそれらの塩を含む送達ビヒクルを含むことができ、および/または医薬として許容される製剤に存在することができる。核酸分子の送達に関する方法は、例えば、Akhtar et al.,1992,Trends Cell Bio.,2,139;Delivery Strategies for Antisense Oligonucleotide Therapeutics,ed.Akhtar,1995,Maurer et al.,1999,Mol.Memb.Biol.,16,129−140;Hofland and Huang,1999,Handb.Exp.Pharmacol.,137,165−192;およびLee et al.,2000,ACS Symp.Ser.,752,184−192に記載され、これらは全て参照により本明細書中に援用される。Beigelman et al.,米国特許第6,395,713号、およびSullivan et al.,PCT第WO94/02595号は、核酸分子の送達に関する一般法をさらに記載している。これらのプロトコールは、実質的にいずれの核酸分子の送達に利用することができる。核酸分子は、当業者に知られている種々の方法により細胞へ投与することができ、限定されないが、リポソームへのカプセル化、イオントフォレシスによる、または他のビヒクル、例えばハイドロゲル、シクロデキストリン(例えば、Gonzalez et al.,1999,Bioconjugate Chem.,10,1068−1074)、生分解性ナノカプセル、および生体接着性マイクロスフェアによる、またはタンパク性ベクター(O’Hare and Normand,PCT国際出願第WO00/53722号)によるものが含まれる。あるいは、核酸/ビヒクルの組み合わせは、直接的な注射または注入ポンプの使用によって局所的に送達される。本発明の核酸分子の直接注射は、皮下、筋肉内または皮内であれ、標準針およびシリンジ方法論を使用して、またはConry et al.,1999,Clin.Cancer Res.,5,2330−2337およびBarry et al.,PCT国際公開第WO99/31262号に記載されているもののような無針技術により行われる。本発明の分子は、医薬品として用いることができる。好ましくは、医薬品は、被験者の疾患状態を予防し、その発現を調節し、また治療する(症状のある程度、好ましくはすべての症状を緩和する)。
【0145】
したがって、安定化剤、バッファーなどの許容される担体に本発明にかかる1以上の核酸を含む医薬組成物が提供される。本発明のポリヌクレオチドまたは核酸(例えば、RNA、DNAまたはタンパク質)は、安定化剤、緩衝化剤などと共にまたはなしで、医薬組成物を形成するためのいずれの標準手段によって被験者に投与し、導入することが可能である。リポソーム送達メカニズムを使用することが望まれる場合、リポソームの形成のための標準プロトコールに従うことができる。本発明の組成物はまた、経口投与のための錠剤、カプセルまたはエリキシルとして、直腸投与のための坐剤として、注射可能投与のための無菌溶液、懸濁液として、または当該技術分野において知られている他の組成物として調合および使用することができる。
【0146】
本発明に係る核酸分子の医薬として許容される製剤もさらに提供される。これらの製剤は、上記の化合物の塩、例えば、酸付加塩、例えば、塩酸、臭化水素酸、酢酸およびベンゼンスルホン酸の塩、を含む。
【0147】
薬理学的組成物または製剤とは、細胞または被験者、例えば、ヒトへの投与、例えば、全身投与に適した形態の組成物または製剤を意味する。適した形態は、一部では、使用または侵入の経路、例えば、経口、経皮、または注射に依存する。このような形態は、標的細胞(即ち、負に電荷した核酸の送達が望まれている細胞)へ組成物または製剤が到達することを妨げるべきではない。例えば、血流内へ注射された薬理学的組成物は、可溶性でなければならない。他の因子は当該技術分野において知られ、毒性、およびその効果の発揮から組成物または製剤を妨げる形態のような考慮が含まれる。
【0148】
「全身投与」とは、血流中の薬物のインビボの全身吸収または蓄積、続いての全身を通した分布を意味する。全身吸収へと導く投与経路には、限定されないが、静脈内、皮下、腹腔内、吸入、経口、肺内および筋肉内が含まれる。これらの投与経路の各々は、本発明のsiNA分子、siRNA分子を、到達できる疾患組織へ曝露する。本発明の核酸分子などの薬物の循環内への侵入の速度は、分子量またはサイズに依存することが示されている。本発明の核酸を含むリポソームまたは他の薬剤坦体の使用は、例えば、新生物組織などある種の組織タイプに薬物を潜在的に局在化させることができる。薬物と、リンパ球およびマクロファージのような細胞の表面との会合を容易にするリポソーム製剤もまた有用である。このアプローチは、新生物組織を形成する細胞などの異常細胞のマクロファージおよびリンパ球免疫認識の特異性を利用することにより、標的細胞への薬物の増強された送達を提供することができる。
【0149】
「医薬として許容される製剤」とは、好ましくは、本発明に係る核酸分子の有効な分布を、それらの望まれる活性に最も適した物理的位置で可能にする組成物または製剤を意味する。本発明に係る核酸分子との製剤に適した薬剤の非制限な例には、下記が含まれる。CNS内への薬剤の侵入を増強することができるP−糖タンパク質阻害剤(Pluronic P85など)(Jolliet−Riant and Tillement,1999,Fundam.Clin.Pharmacol.,13,16−26);脳内移植後の徐放性放出送達のためのポリ(DL−ラクチド−co−グリコリド)マイクロスフェアなどの生分解性ポリマー(Emerich,DF et al.,1999,Cell Transplant,8,47−58)(Alkermes,Inc.Cambridge,MA);および血液脳関門を通過して薬物を送達することができ、神経細胞取り込みメカニズムを改変可能である、ポリブチルシアノアクリレートから作製されたものなどの装填ナノ粒子(Prog Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry,23,941−949,1999)。本発明の核酸分子についての送達戦略の、他の非制限な例には、Boado et al.,1998,J.Pharm.Sci.,87,1308−1315;Tyler et al.,1999,FEBS Lett.,421,280−284;Pardridge et al.,1995,PNAS USA.,92,5592−5596,;Boado,1995,Adv.Drug Delivery Rev.,15,73−107;Aldrian−Herrada et al.,1998,Nucleic Acids Res.,26,4910−4916;およびTyler et al.,1999,PNAS USA.,96,7053−7058に記載されている材料が含まれる。
【0150】
ポリ(エチレングリコール)脂質を含む表面修飾リポソーム(PEG修飾、または長期循環リポソームまたはステルス(stealth)リポソーム)を含む組成物の使用も提供される。これらの処方は、標的組織における薬物の集積を増加させる方法を提供する。この種の薬物担体は、オプソニン化および単核食細胞系(MPSまたはRES)による除去に抵抗し、それによりカプセル化薬物の、より長い血液循環時間および亢進した組織曝露を可能にする(Lasic et al.,Chem.Rev.1995,95,2601−2627;Ishiwata et al.,Chem.Pharm.Bull.1995,43,1005−1011)。このようなリポソームは、おそらく新たに血管新生された標的組織での浸出および捕捉により、腫瘍に選択的に集積することが示されている(Lasic et al.,Science 1995,267,1275−1276;Oku et al.,1995,Biochim.Biophys.Acta,1238,86−90)。長期循環リポソームは、特にMPSの組織に集積することが知られる慣用的な陽イオンリポソームと比較して、DNAおよびRNAの薬物動態学および薬力学を亢進する(Liu et al.,J.Biol.Chem.1995,42,24864−24780;Choi et al.、国際公開第96/10391号パンフレット:Ansell et al.,国際公開第96/10390号パンフレット;Holland et al.,国際公開第96/10392号パンフレット)。長期循環リポソームはまた、肝臓および脾臓など、代謝が盛んなMPS組織での集積を避ける該リポソームの能力に基づき、陽イオンリポソームと比較して、より大きな程度でヌクレアーゼ分解から薬物を保護するようである。
【0151】
さらに、医薬として許容される担体または希釈剤に、本発明に係る核酸分子などの所望の化合物の医薬として有効な量を含む貯蔵または投与のため調製される組成物が提供される。治療的使用に許容される担体または希釈剤は、医薬の分野において周知であり、例えば、参照により本明細書中に援用されるRemington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.(A.R.Gennaro監修、1985)に記載される。例えば、保存剤、安定化剤、染料および香味剤が提供されてもよい。これらには安息香酸ナトリウム、ソルビン酸およびp−ヒドロキシ安息香酸のエステルが含まれる。さらに、酸化防止剤および懸濁剤を用いてもよい。
【0152】
医薬として有効な用量は、疾患状態を予防し、その出現を阻害し、または治療する(症状をある程度、好ましくはすべての症状を緩和する)のに必要な用量である。医薬として有効な用量は、疾患の種類、用いられる組成物、投与経路、治療される哺乳動物種、考慮する特定の哺乳動物の身体特性、共存する投薬、および医療の分野における当業者が認識する他の要因に依存する。一般的に、1日当たり、有効成分の0.1mg/kgおよび100mg/kg体重の間の量が、負電荷ポリマーの効能に依存して投与される。
【0153】
本発明に係る核酸分子およびその製剤は、経口、局所、非経口、吸入またはスプレイ、または直腸に、慣用的な非毒性な医薬として許容される担体、アジュバントおよび/またはビヒクルを含む服用量単位製剤で投与され得る。用語非経口には、本明細書中で使用するとき、経皮、皮下、血管内(例えば静脈内)、筋内、または髄腔内注射もしくは注入技術などが含まれる。さらに、本発明の核酸分子および医薬として許容される担体を含む医薬製剤が提供される。本発明に係る1以上の核酸分子は、1以上の非毒性な医薬として許容される担体および/または希釈剤および/またはアジュバント、所望により他の有効成分と関連して存在することができる。本発明に係る核酸分子を含む医薬組成物は、経口的使用に適した形態、例えば、錠剤、トローチ、ロゼンジ、水性もしくは油性懸濁液、分散性粉末もしくは顆粒、エマルジョン、硬質もしくは軟質カプセル、またはシロップもしくはエリキシルであってもよい。
【0154】
経口使用の対象となる組成物は、医薬組成物の製造について当業者に知られているいずれかの方法に従って調製することができ、このような組成物は、医薬として洗練され、口当たりの良い調製物を提供するために、1以上のこのような甘味剤、香味剤、着色剤または防腐剤を含むことができる。錠剤は、錠剤の製造に適している非毒性な医薬として許容される賦形剤と混合して有効成分を含む。これらの賦形剤は、例えば、不活性な希釈剤;例えば炭酸カルシウム、炭酸ナトリム、ラクトース、リン酸カルシウムまたはリン酸ナトリム;造粒剤および崩壊剤、例えばコーンスターチ、またはアルギン酸;結合剤、例えばスターチ、ゼラチンまたはアカシア;および潤滑剤、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルクであってもよい。錠剤は、被覆されていなくてもよく、または既知の技術によって被覆されてもよい。ある場合には、このような被覆は、胃腸管での崩壊および吸収を遅延させるために、既知の技術によって調製可能であり、それにより、より長期間の持続的作用を提供する。例えば、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリルグリセリルなどの時間遅延材料を採用することができる。
【0155】
また、経口使用のための製剤は、硬質ゼラチンカプセルとして示すことができ、有効成分は、不活性な固体希釈剤、例えば炭酸カルシウム、リン酸カルシウムまたはカオリンと混合され、あるいは軟質ゼラチンカプセルとしては、有効成分は、水または油性媒体、例えばピーナッツ油、流動パラフィンまたはオリーブ油と混合される。
【0156】
水性懸濁液は、本発明に係る核酸などの活性な材料を水性懸濁液の製造に適切な賦形剤と混合して含まれる。このような賦形剤は、懸濁化剤、例えばカルボキシメチルセルロースナトリム、メチルセルロース、ヒドロプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントガムおよびアカシアガムである;分散剤または湿潤剤は、天然に存在しているホスファチド、例えばレシチン、または脂肪酸を有するアルキレン酸化物の縮合生成物、例えばステアリン酸ポリオキシエチレン、または長鎖脂肪族アルコールを有するエチレン酸化物の縮合生成物、例えばヘプタデカエチレンオキシオクタノール、または脂肪酸とヘキシトールに由来の部分エステルを有するエチレン酸化物の縮合生成物、例えばモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビトール、または脂肪酸とヘキシトール無水物に由来の部分エステルを有するエチレン酸化物の縮合生成物、例えばモノオレイン酸ポリエチレンソルビタンであり得る。また、水性懸濁液は、1以上の防腐剤、例えばp−ヒドロキシ安息香酸エチルもしくはp−ヒドロキシ安息香酸n−プロピル、1以上の着色剤、1以上の香味剤、および1以上の甘味剤、例えばショ糖またはサッカリンを含むことができる。
【0157】
油性懸濁液は、植物油、例えばラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油もしくはココナッツ油、または鉱油、例えば流動パラフィンに有効成分を懸濁させることによって調合することができる。油性懸濁液は、増粘剤、例えば蜜蝋、硬質パラフィンまたはセチルアルコールを含むことができる。甘味剤および香味剤は、口当たりの良い経口調合物を与えるために添加することができる。これらの組成物は、アスコルビン酸などの抗酸化剤の添加によって保存可能である。
【0158】
水の添加によって水性懸濁液を調製するのに適した分散性粉末および顆粒は、有効成分を分散剤または湿潤剤、懸濁剤および1以上の防腐剤と混合して提供される。適切な分散剤もしくは湿潤剤または懸濁剤は、すでに上述されるものによって例示されている。追加の賦形剤、例えば甘味剤、香味剤および着色剤も存在してもよい。
【0159】
本発明の医薬組成物はまた、水中油型乳剤の形態であってもよい。油相は、植物油もしくは鉱油またはそれらの混合物であり得る。適切な乳化剤は、天然に存在しているガム、例えばアカシアガムまたはトラガカントガム、天然に存在しているホスファチド、例えば大豆、レシチン、および脂肪酸とヘキシトールに由来のエステルまたは部分エステル、無水物、例えばモノオレイン酸ソルビタン、およびエチレン酸化物を有する該部分エステルの縮合生成物、例えばモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンであってもよい。乳剤はまた甘味剤および香味剤を含むことができる。
【0160】
シロップおよびエリキシルは、甘味剤、例えばグリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール、グルコースまたはショ糖を用いて調合することができる。このような製剤はまた、粘滑剤、防腐剤および香味剤および着色剤を含んでもよい。医薬組成物は、無菌の注射可能な水性または油性懸濁液の形態であってもよい。この懸濁液は、上述された適した分散剤または湿潤剤および懸濁剤を用いて知られている技術に従って調合可能である。無菌の注射可能な調合物は、例えば1,3−ブタンジオールの溶液として非毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒の無菌の注射可能な溶液または懸濁液であってもよい。許容されるビヒクルおよび溶媒の中で採用され得るのは、水、リンガー溶液および等張塩化ナトリウム溶液である。さらに、無菌の不揮発性油は、溶液または懸濁液として慣用的に採用されている。このために、合成モノまたはジグリセリドを含む無菌の不揮発性油が採用され得る。さらに、オレイン酸などの脂肪酸は、注射物質の調製における使用を見出す。
【0161】
本発明の核酸分子はまた、坐剤の形態で、例えば薬物の直腸投与のために投与され得る。これらの組成物は、常温では固体であり、直腸温度では液体であり、したがって、直腸内で融解し薬物を放出する適切な無刺激性賦形剤とともに薬物を混合することによって調製可能である。このような材料には、ココアバターおよびポリエチレングリコールが含まれる。
【0162】
本発明の核酸分子は、無菌媒体中で非経口的に投与することができる。薬物は、使用されるビヒクルおよび濃度に依存して、ビヒクル中に懸濁または溶解可能である。好都合には、局部麻酔薬、防腐剤および緩衝剤などのアジュバントがビヒクル中に溶解され得る。
【0163】
医薬および医薬組成物の服用量レベルは、それぞれ、日常的な実験によって当業者により決定することができる。
【0164】
いずれかの特定の被験者に対する特定の服用量レベルは、採用される特定の化合物の活性、年齢、体重、一般的な健康状態、性別、食事、投与時間、投与経路、および排出速度、薬物の組み合わせ、および治療を受ける特定の疾患の重症度を含む様々な因子に依存することは理解される。
【0165】
本発明に係る医薬の、ヒト以外の動物、例えばイヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、マウス、ラット、ハムスターおよびモルモットへの投与に関して、組成物は、好ましくは、動物の餌または飲料水に添加することも可能である。動物の餌と飲料水の組成物を調合することは便利であり得て、それにより、動物は、食事と一緒に治療的に適切な量の組成物を摂取する。また、餌または飲料水への添加に関して、前もって混合したものとして組成物を与えることは便利であり得る。
【0166】
本発明の核酸分子はまた、全体の治療効果を増加させるために、他の治療化合物と組み合わせて被験者に投与することもできる。適応症を治療するための複数の化合物の使用は、副作用の存在を減少させながら有益な効果を増加させることができる。
【0167】
一実施形態では、特定の細胞型への本発明に係る核酸分子の投与に適した組成物が提供され、このときこのような組成物は、典型的には、1または数個の下記の原則および分子それぞれを組み込む。例えば、アシアロ糖タンパク質受容体(ASGPr)(Wu and Wu,1987,J.Biol.Chem.262,4429−4432)は、肝細胞に独特であり、分岐したガラクトース末端の糖タンパク質、例えばアシアロオロソムコイド(ASOR)に結合する。別の例では、葉酸受容体は、多くの癌細胞に過剰発現している。このような糖タンパク質、複合糖質、または葉酸の受容体への結合は、オリゴ糖鎖の分岐の程度に強く依存する親和性のために起こり、例えば、三本鎖構造は、二本鎖または一本鎖よりも大きな親和性のために結合する(Baezniger and Fiete,1980,Cell,22,611−620;Connolly et al.,1982,J.Biol.Chem.,257,939−945)。Lee and Lee,1987,Glycoconjugate J.,4,317−328は、糖質部分としてN−アセチル−D−ガラクトサミンの使用を通じてこの高い特異性を得て、これは、ガラクトースと比較して、受容体に対する親和性が高い。この「クラスター効果」はまた、マンノシル末端の糖タンパク質または複合糖質の結合および取り込みについて説明されている(Ponpipom et al.,1981,J.Med.Chem.,24,1388−1395)。細胞膜を横切って外因性化合物を運搬するためのガラクトース、ガラクトサミン、または葉酸に基づく複合体の使用は、例えば、肝疾患、肝臓の癌、または他の癌の治療への標的化された送達アプローチを提供することができる。生物複合体の使用はまた、治療のために必要とされる治療化合物の必要な用量の減少を提供することができる。さらに、治療的な生物学的利用能、薬理学、および薬物動態パラメータは、本発明の核酸生物複合体の使用を通じて調節され得る。このような生物複合体の非制限的な例は、Vargeese et al.,2001年8月13日に出願された米国特許出願第USSN10/201,394号;およびMatulic−Adamic et al.,2002年3月6日に出願された米国特許出願第USSN60/362,016号に記載されている。
【0168】
本発明に係るそれぞれの実施形態における核酸分子、該核酸分子を含むベクター、細胞、医薬、組成物、および特に医薬組成物、本発明に係る、このような核酸分子を含む組織および動物は、治療的使用ならびに診断および研究分野において用いることができる。
【0169】
下記の疾患に関与する種々の組織および血管内皮におけるCD1の分布に起因して、本発明に係る核酸分子は、該疾患の治療および/または予防に用いることができる。
【0170】
したがって、本明細書に開示されている核酸、および該核酸を含む医薬および医薬組成物は、不十分な、異常なまたは過剰な血管形成によって特徴付けられるかまたは引き起こされる疾患を含むプロおよび抗血管形成治療のために用いることができる。このような疾患には、感染症、自己免疫障害、血管奇形、アテローム性動脈硬化症、移植動脈症、肥満、乾癬、いぼ、アレルギー性皮膚炎、持続性過形成硝子体症候群、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、加齢性黄斑疾患、脈絡膜血管新生、原発性肺高血圧症、喘息、鼻ポリープ、炎症性腸疾患および歯周疾患、腹水、腹膜癒着、子宮内膜症、子宮出血、卵巣嚢胞、卵巣癌、卵巣過刺激、関節炎、滑膜炎、骨髄炎、骨棘形成および発作、潰瘍、アテローム性動脈硬化症および関節リウマチが含まれる。
【0171】
更なる疾患は、新生物組織に関与するかまたはそれによって特徴付けられるものである。好ましくは本明細書中で使用するとき、用語新生物組織とは、生じることが意図されていない生物、このような生物の組織または細胞によって生じる組織、病気であると思われ、即ちこのような疾患に苦しんでいない被験者には存在しない組織をいう。また、好ましくは本明細書中で使用するとき、新生物疾患は、新生物組織の存在から直接的または間接的に生じるいずれかの疾患であり、このとき好ましくは、このような新生物組織は、ある/その組織の規制されていないかまたは調節されていない、好ましくは自律的な増殖から生じる。用語新生生物疾患はまた、好ましくは、良性および悪性の新生生物疾患を含む。より好ましくは、新生生物疾患は、例えば、骨、乳房、前立腺、消化器系、結腸直腸、肝臓、肺、腎臓、泌尿器、膵臓、睾丸、眼、頭頸部、中枢神経系、および呼吸器官に癌を含む群から選択される。
【0172】
更なる特定の疾患は、原則として、本発明に係るこのような脂質組成物およびリポプレックスそれぞれを含む、本発明に従う医薬組成物および医薬を用いて治療され得るものであり、下記のリスト、急性リンパ芽球性白血病(成人)、急性リンパ芽球性白血病(小児)、急性骨髄性白血病(成人)、急性骨髄性白血病(小児)、副腎皮質癌、副腎皮質癌(小児)、AIDS関連癌、AIDS関連リンパ腫、肛門癌、星状細胞腫(小児)、脳の小脳星状細胞腫(小児)、肝外胆管癌、膀胱癌、膀胱癌(小児)、骨癌、骨肉腫/悪性線維性組織球腫、脳幹グリオーマ(小児)、脳腫瘍(成人)、脳腫瘍、脳幹グリオーマ(小児)、脳腫瘍、小脳星状細胞腫、(小児)、脳腫瘍、大脳星細胞腫/悪性グリオーマ、(小児)、脳腫瘍、上衣細胞腫、(小児)、脳腫瘍、髄芽細胞腫、(小児)、脳腫瘍、テント上原始神経外胚葉性腫瘍(小児)、脳腫瘍、視覚伝導路および視床下部膠腫(小児)、脳腫瘍(小児)、乳癌、乳癌、(小児)、乳癌、男性、気管支腺腫/カルチノイド(小児)、バーキットリンパ腫、カルチノイド腫瘍(小児)、消化管カルチノイド腫瘍、未知の原発性癌種、中枢神経系リンパ腫、原発性、小脳星状細胞腫(小児)、小脳星状細胞腫/悪性グリオーマ(小児)、子宮頸癌、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄増殖性疾患、結腸癌、結腸直腸癌(小児)、皮膚T細胞リンパ腫、子宮内膜癌、上衣細胞腫(小児)、食道癌、食道癌(小児)、腫瘍のユーイング肉腫、頭蓋外胚細胞腫瘍(小児)、頭蓋外胚細胞腫瘍、肝外胆管癌、眼癌、眼内メラノーマ、眼癌、網膜芽腫、胆嚢癌、胃(gastric)(胃(stomach))癌、胃(胃)癌(小児)、消化管カルチノイド腫瘍、胚細胞腫瘍、頭蓋外(小児)、胚細胞腫瘍、生殖腺外、胚細胞腫瘍、卵巣、妊娠絨毛性腫瘍、グリオーマ(成人)、グリオーマ(小児)脳幹、グリオーマ(小児)大脳星細胞腫、グリオーマ(小児)視覚伝導路および視床下部、毛様細胞白血病、頭頸部癌、肝細胞(肝臓)癌(成人)(原発性)、肝細胞(肝臓)癌(小児)(原発性)、ホジキンリンパ腫(成人)、ホジキンリンパ腫(小児)、下咽頭癌、視床下部および視覚伝達路グリオーマ(小児)、眼内メラノーマ、島細胞癌(膵臓内分泌部)、カポジ肉腫、腎臓(腎細胞)癌、腎臓癌(小児)、喉頭癌、喉頭癌、(小児)、白血病、急性リンパ芽球性、(成人)、白血病、急性リンパ芽球性(小児)、白血病、急性骨髄性(成人)、白血病、急性骨髄性(小児)、白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性、白血病、毛様細胞、唇および口腔癌、肝臓癌(成人)(原発性)、肝臓癌(小児)(原発性)、肺癌、非小細胞、肺癌、非小細胞、リンパ腫、AIDS関連、リンパ腫、バーキット、リンパ腫、皮膚T細胞、リンパ腫、ホジキン(成人)、リンパ腫、ホジキン(小児)、リンパ腫、非ホジキン(成人)、リンパ腫、非ホジキン(小児)、リンパ腫、原発性中枢神経系、マクログロブリン血症、骨のワーデンストローム悪性線維性組織球腫/骨肉腫、髄芽細胞腫(小児)、メラノーマ、メラノーマ、眼内(目)、メルケル細胞癌腫、悪性中皮腫(成人)、中皮腫(小児)、潜伏原発性の転移性偏平頸部癌、多発性内分泌腫瘍症候群(小児)、多発性骨髄腫/形質細胞腫、菌状息肉腫、骨髄異形成症候群、骨髄異形成疾患/骨髄増殖性疾患、骨髄性白血病、慢性、骨髄性白血病(成人)急性、骨髄性白血病(小児)急性、骨髄腫、多発性、骨髄増殖症候群、慢性、鼻腔および副鼻腔癌、鼻咽腔癌、鼻咽腔癌(小児)、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫(成人)、非ホジキンリンパ腫(小児)、非小細胞肺癌、口腔癌(小児)、口腔癌、唇および口腔咽頭癌、骨肉腫/骨の悪性線維性組織球腫、卵巣癌(小児)、上皮性卵巣癌、卵巣胚細胞腫瘍、卵巣低悪性潜在性腫瘍、膵臓癌、膵臓癌(小児)、膵臓癌、島細胞、副鼻腔および鼻腔癌、副甲状腺癌、陰茎癌、褐色細胞腫、松果体芽細胞腫およびテント上原始神経外胚葉性腫瘍(小児)、下垂体部腫瘍、形質細胞腫/多発性骨髄腫、胸膜肺芽腫、妊娠および乳癌、妊娠およびホジキンリンパ腫、妊娠および非ホジキンリンパ腫、原発性中枢神経系リンパ腫、前立腺癌、直腸癌、腎細胞(腎臓)癌、腎細胞(腎臓)癌(小児)、腎盂および尿管、移行細胞癌、網膜芽腫、横紋筋肉腫(小児)、唾液腺癌、唾液腺癌(小児)、肉腫、ユーイング、肉腫、カポジ、肉腫、軟組織、(成人)、肉腫、軟組織、(小児)、肉腫、子宮、セザリー症候群、皮膚癌(非メラノーマ)、皮膚癌、(小児)、皮膚癌(メラノーマ)、皮膚癌腫、メルケル細胞、小細胞肺癌、小腸癌、軟組織肉腫(成人)、軟組織肉腫(小児)、扁平上皮細胞癌、潜伏原発性の偏平頸癌、転移性胃(stomach)(胃(gastric))癌、胃(胃)癌(小児)、テント上原始神経外胚葉性腫瘍(小児)、皮膚T細胞リンパ腫、睾丸癌、胸腺腫(小児)、胸腺腫および胸腺癌腫、甲状腺癌、甲状腺癌(小児)、腎盂および尿管の移行性上皮癌、絨毛性腫瘍、妊娠、腎盂および尿管、移行性上皮癌、、尿道癌、子宮癌、子宮内、子宮肉腫、膣癌、視覚伝導路および視床下部グリオーマ(小児)、外陰癌、ワルデンストロームマクログロブリン血症、ウィルムス腫瘍から採用することができる。
【0173】
本発明に係る医薬組成物が使用される治療および予防のための本明細書に記載されている種々の疾患はまた、本明細書に記載されている医薬が使用可能である予防および/または治療のための疾患でもあり、その反対でもあるということは認識されるべきである。
【0174】
本明細書中で使用するとき、用語疾患の治療はまた、このような疾患の予防も含むものである。
【0175】
更なる特徴、実施形態および利点は、下記の図面から採用されてもよい。
【0176】
(実施例1:材料および方法)
(抗体)
下記の抗体をこの試験で用いた。ウサギ抗PTEN(Ab−2、Neomarkers)、ヤギ抗CD31およびウサギ抗CD34(Santa Cruz Biotechnology)、ウサギ抗リン酸化Akt(S473)(Cell Signaling Technology)、免疫組織化学特異的ウサギ抗リン酸化Akt(S473)(Cell Signaling Technology))、抗CD31/PECAM−1(Santa Cruz Biotechnology)(または低温切開片ラットCD31用、Pharmingen)、およびラットモノクローナル抗CD34(Cedarlaneヤギポリクローナル)。
【0177】
(細胞株)
PC−3細胞株は、American Type Culture Collectionから入手し、ATCCの推奨に従って培養した。ヒトヘパトーマ細胞株HuH−7は、MDC(ベルリン)から入手可能であった。癌遺伝子RasV12を発現しているラット3Y1細胞は、記載される(Leenders et al.,2004)ように、誘導できるRasV12の形質導入によって生成させた。トランスフェクションおよびイムノブロッティング用のタンパク質抽出は、前述される(Santel et al.,2006)ように行った。
【0178】
腫瘍を有するマウスにおけるsiRNA−Cy3リポプレックスの送達
蛍光標識したsiRNA−Cy3リポプレックスを用いたインビボ送達実験は、1.88mg/kgのsiRNA−Cy3および14.5mg/kgの脂質の最終用量で200μlの溶液の1回の尾静脈注入を通じて静脈内にsiRNAリポプレックスを投与することによって行った。マウスは、注入してから4時間後に屠殺し、ホルマリン固定し、パラフィン包埋した組織切片について、蛍光取り込みを顕微鏡によって試験した。
【0179】
(組織学的分析および顕微鏡)
培養細胞における免疫蛍光分析は、記載される(Santel et al.,2006)ように行った。組織を直ぐに、4.5%の緩衝させたホルマリン中で16時間固定し、標準的なプロトコールによってパラフィン切片用に処理した。組織切片は、抗CD31または抗CD34を用いて染色し、パラフィン切片において内皮細胞を視覚化した。ヘマトキシリン対比染色ならびにヘマトキシリン/エオシン染色(H+E)を用いた免疫組織化学は、標準的なプロトコールに従って行った。蛍光標識したsiRNAのインビボ取り込み試験については、パラフィン切片は脱パラフィン化され、Sytox Green色素(Molecular Probes 100nM)を用いて対比染色し、エピ蛍光顕微鏡(Zeiss Axioplan顕微鏡)または共焦点顕微鏡(Zeiss LSM510 Meta)によって試験した。
【0180】
(微小血管密度(MVD)の測定)
微小血管密度の数は、単一の腫瘍断片の3〜8の無作為に選択された領域のCD31−/CD34−ポジティブな血管をカウントすることによって測定された(Fox and Harri,2004)。血管単位としての血管数は、形状、分岐点および内径のサイズとは無関係に評価された(「血管の数」と称する)。さらに、血管密度は、Axiovision 3.0ソフトウェア(Zeiss)を用いて、CD31−/CD34−ポジティブな血管構造の全長(「血管長の総量」と称する)の測定によって評価された。カウントは、Zeiss Axioplan光学顕微鏡を用いて、200×の倍率で腫瘍断片をスキャンすることによって行った。
【0181】
(腫瘍異種移植片実験)
雄性Hsd:NMRI−nu/nuマウス(8週齢)をこの試験に用いた。確立した腫瘍異種移植片に関する腫瘍治療実験については、全体で5.0×10腫瘍細胞/100μl PBS(50%マトリゲルの存在下の3Y1−RasV12)を皮下に移植した。腫瘍体積は、カリパスを用いて測定し、式:体積=(長さ×幅)/2に従って計算した。腫瘍治療実験に関して、siRNA−リポプレックス溶液を低圧、低容積の尾静脈注射によってi.v.投与した。確立した3Y1−RasV12腫瘍マウスは、30gのマウスについては、1日2回、200μlの注入を受けた(単回用量1.88mg/kgのsiRNAおよび14.5mg/kgの脂質)。同所腫瘍モデルでは、2.0×10PC−3細胞/30μl PBSは、全身麻酔下にある前立腺の左背外側葉(dorsolateral lobe)に注射した(Stephenson et al.,1992)。確立した前立腺腫瘍を有する30gのマウスは、上述したストック溶液(2.17mg/kgのsiRNAおよび21.6mg/kgの脂質の用量に同等である)の300μl注射を受けた。動物を術後50日で屠殺し、腫瘍体積(前立腺)および局所転移(尾、腰部および腎臓リンパ節転移)は、上述されるように測定した。肝内適用のために、2.0×10細胞/20μlのPBSを肝臓の左側葉に直接注射によって適用した。この試験における全ての動物実験は、承認されたプロトコールおよびLandesamt fur Arbeits−,Gesundheitsschutz und technishe Sicheheit Berlin,Geremany(No.G0264/99)のガイドラインに従って行った。
【0182】
(統計分析)
データは、平均±s.e.m.として表す。統計の有意差はMann−Whitney U検定によって決定した。P値<0.05は、統計的に有意であると考えられた。
【0183】
(実施例2:CD31 siRNA分子)
この試験で用いられた、使用されたsiRNA分子(AtuRNAi、表1を参照されたい)は(Czauderna et al.,2003a)に記載され、BioSpring(Frankfurt a.M.,Germany)によって合成された。
【0184】
【表2】

【0185】
CD31−8asおよびCD31−8sによって形成され、CD31−6asおよびCD31−6sによって形成され、CD31−1asおよびCD31−1sによって形成される二本鎖は、3’突出が欠けていて、両鎖上の2’−O−メチル糖修飾を変更することによって化学的に安定化され、このとき非修飾ヌクレオチドは、反対鎖上の修飾ヌクレオチドと直面する(表1)(Czauderna et al.,2003a)。これらの二本鎖はまた、本明細書中では、CD31−8、CD31−6およびCD31−1と呼ばれ、これらは全て、本発明に従う核酸分子の特に好ましい実施形態である。
【0186】
(実施例3:CD31特異的siRNA分子のリポプレックス調合)
新規なカチオン性脂質AtuFECT01(β−L−アルギニル−2,3−L−ジアミノプロパン酸−N−パルミチル−N−オレイル−アミド三塩酸塩、Atugen AG)、中性リン脂質1,2−ジフィタノイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DPhyPE)(Avanti Polar Lipids Inc.,Alabaster,AL)、およびPEG脂質N−(カルボニル−メトキシポリエチレングリコール−2000)−1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−エタノールアミンナトリウム塩(DSPE−PEG)(Lipoid GmbH,Ludwigshafen,Germany)は、全脂質濃度が4.34mg/mlになるように、300mMの無菌RNaseフリーのショ糖溶液中で脂質薄膜再水和によってモル比50/49/1で混合した。30gのマウスについて1回のi.v.注射は、1.88mg/kgのsiRNAおよび14.5mg/kgの脂質の標準的な服用量で行った。
【0187】
(実施例4:腫瘍内皮への調合したsiRNAの送達)
この実験の目的は、癌の治療的介入のために調合したsiRNAの適用性を分析することである。この目的のために、実施例2に記載された19merのsiRNAを用い、これらの分子は、実施例3に記載されたsiRNA−リポプレックスにカチオン性リポソームとともに調合され、腫瘍治療のためのインビボ適応性は、種々の腫瘍異種移植片モデル(PC−3、HuH−7、3Y1−RasV12)を採用するこの研究で試験された。
【0188】
反応条件は下記の通りであった。リポプレックス化siRNA−Cy3は、1回のi.v.注射によるi.v.投与後に、腫瘍を有するマウスに投与された。注射して4時間後の腫瘍組織断片を顕微鏡によって分析した。結果を図1に示す。様々な確立した腫瘍の内皮細胞は、siRNA−Cy3−リポプレックスで標的化された(矢印)。取り込みは、各腫瘍型について少なくとも2つの独立した異種移植片実験において5つの断片において試験された。上段の列は、皮下で増殖したPC−3腫瘍(左パネル)およびRasV12で形質転換した3Y1ラット線維芽細胞腫瘍(中央パネル)または肝内で増殖したHuH−7腫瘍(右パネル)の断片の蛍光画像を示す。下段の列は、HuH−7腫瘍の内皮細胞に送達されたsiRNA−Cy3の検出である。腫瘍内皮細胞は、それらの薄い細胞質および突出した核(矢印)によって特徴付けられるH+E(ヘアトキシリン/エオシン染色;左パネル)によって示される。連続した断片は、対応するsiRNA−Cy3蛍光(赤、中央パネル)および内皮細胞の抗CD34免疫染色(右パネル)をそれぞれ示す。
【0189】
3つの実験的な腫瘍異種移植片(2つの皮下、s.c.、およb1つの肝内、i.hep.)では、本発明者らは、腫瘍血管系における有意な蛍光シグナルを検出した(図1、上段パネル)。対照的に、i.v.注射によって投与された同量の調合していないsiRNAは、全てが腫瘍血管に送達したわけではなかった(データ示さず)。腫瘍脈管系の内皮層によるリポプレックス化siRNA−Cy3の取り込み(HuH−7、i.hep.)は、内皮細胞マーカーである抗CD34抗体を用いた対比染色によって確かめられた(図1、下段パネル)。内皮によるそのままのsiRNA−リポプレックスの取り込みは、さらに、蛍光的に標識した脂質を用いて確かめられた((Santelra,2006)データ示さず)。併せて考えると、これらのデータは、カチオン性脂質系のsiRNAの調合物は、肝臓および腫瘍における血管の内皮細胞へのsiRNAの優れた取り込みを可能にすることを示す。
【0190】
(実施例5:CD31のインビボ遺伝子サイレンシングと腫瘍増殖に対するその効果)
CD31(血小板−内皮−細胞接着分子1(PECAM−1))は、適切な標的として選択され、直接的に、この発現は内皮細胞に主として制限されるので、インビボsiRNA媒介の遺伝子サイレンシングを示す。マウスとヒトの誘導された内皮細胞株(HUVEC、EOMA)における、実施例2(表1)に記載される2’−O−メチル修飾siRNA分子のスクリーニングは、いくつかの強力なヒトとマウスの特異的なCD31−siRNA分子の同定へと導いた(図2a)。治療的アプローチのために選ばれたsiRNA分子は、特異的なsiRNACD31−8およびsiRNAPTEN、ならびに対照分子として無関係なsiRNA配列(ルシフェラーゼ特異的なsiRNALuc)を含んでいた(本発明者らは、下記のテキストにおいてsiRNACD31について述べる場合、siRNACD31−8に言及する)(図2b)。
【0191】
腫瘍脈管系におけるCD31発現の阻害を指示する結果を図2に示す。(a)有効なCD31ノックダウンについて強力に安定化されたsiRNAの同定。HUVECおよびマウスEOMA細胞は、4つの異なるヒト、マウス特異的siRNA標的CD31(CD31−1、−2、−6、−8)および対照PTEN−siRNAを用いてトランスフェクトされた。特異的なタンパク質のノックダウンは、siRNACD31−8分子の最大効果を示す抗CD31および抗PTENを用いてイムノブロッティングによって評価された。(b)HUVECにおける全身治療のために用いられるリポプレックス化されたsiRNAのインビトロでの品質管理および効力試験。抗CD31抗体を用いたイムノブロッティングは、対照のsiRNAPTENではなく、siRNACD31−8の場合にCD31の濃度依存的なノックダウンを示した。CD31の減少は、siRNAPTEN対照と比較して、Aktリン酸化状態(P−Akt)をモニターすることによって示されるように、PI3−キナーゼシグナリングに効果はなかった。CD34タンパク質レベルは、影響を受けなかった。(c)肝臓酵素(AST、ALT)に対するsiRNAPTEN−およびsiRNACD31−リポプレックス処置の効果は、最終のi.v.処置後の24時間または72時間で測定した。免疫コンピテントマウスは、連続6日間、1.88mg/kgのsiRNA、14.5mg/kgの脂質の毎日の服用で処置された。マウス(n=7)からの平均値(±s.e.m.)を示す。(d)全身性siRNA−リポプレックス処置は、免疫コンピテントマウスにおけるインターフェロン−α血清レベルを増加しない。雄性C57BL/6マウスは、ポリ(I:C)の1回注射を受けるかまたはsiRNA−リポプレックス溶液を必要とした(上記の服用量を参照)。注射をして24時間後に血液を回収し、IFNαレベルをELISAによって測定した。
【0192】
要約すると、インビボの効力試験のために用いたsiRNACD31−およびsiRNAPTEN−リポプレックスは、インビボ実験前に、HUVECに用量依存的なトランスフェクション実験において試験された。これらのsiRNA−リポプレックスの機能性および効能を示す代表的なイムノブロットを図2bに示す。CD31タンパク質のノックダウンは、これらの調合物を用いて、低いナノモル範囲でsiRNACD31によって達成された。siRNACD31を媒介した遺伝子サイレンシングの特異性は、PTEN、リン酸化AktおよびCD34に対して探査することによって示された。siRNAPTENによるトランスフェクションとは異なって、Aktのリン酸化状態は、CD31の減少によってはHUVECにおいて影響はなかった。CD34タンパク質レベルは、未処理の対照と比較した場合、両方のリポプレックスによって変化しなかった。siRNALuc−リポプレックスを用いた処理は、2つの標的遺伝子CD31およびPTENの発現に効果はなかった(データ示さず)。
【0193】
次に、本発明者らは、投与計画を確立し、異なるリポプレックスの1日量を用いて、マウスの繰り返しの全身治療を可能にした。異なる全用量は、1日1回または1日2回の、200μlのリポプレックス溶液の尾静脈注射の投与によって達成された(単回用量1.88mg/kgのsiRNA;14.5mg/kgの脂質)。本発明者らは、肝臓の酵素AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)およびALT(アラニン・アミノトランスフェラーゼ)のレベル(図2c)または一般的な健康状態の総合マーカーとしての体重(図4a、下段パネル)の変化をモニターすることによって評価されるように、繰り返しの服用後の動物の健康状態に対する重大な毒性効果を観察しなかった。ASTおよびALT酵素は、siRNAPTEN処置群においては僅かに増加しているように見えるが、この効果は、時間とともに元に戻るように思われる。さらに、ポリ(I:C)−リポプレックス(ポリイノシン酸−ポリシチジル酸)とは対照的に、3種類のsiRNA−リポプレックスで処理した動物の血液中におけるサイトカイン・インターフェロン−α(IFN−α)の誘導は検出されず(図3d)、これは、siRNA−リポプレックスの適用により非特異的な免疫応答がないことを示唆した。総合すれば、これらのデータは、siRNAリポプレックスが重大である非特異的な毒性副作用なしに繰り返して投与可能であることを示唆する。
【0194】
その後、本発明者らは、腫瘍増殖阻害に対するsiRNACD31−リポプレックスの効力試験における1日1回または1日2回のi.v.処置を代表する2つの投与計画を分析した。
【0195】
実験条件を下記に示した。図3aは、siRNACD31−リポプレックス処置によるs.c.異種移植片腫瘍成長の阻害を示す。確立したPC−3異種移植片の成長は、指示されるように(標準的な服用量 1.88mg/kg/日のsiRNA;24.5mg/kg/日の脂質;矢印)処置されたsiRNALuc−リポプレックス(三角形)または等張ショ糖(黒丸)と比較して、siRNACD31−リポプレックス(菱形)を用いて有意に阻害さえた。体重の変化は、下記の対応する図に示されるように処置中にモニターされた。3Y1−RasV12腫瘍異種移植片は、ヌードマウス(7匹のマウス/群)において確立した。確立した3Y1−RasV12腫瘍の成長は、siRNAPTEN−リポプレックス(三角形)または等張ショ糖(黒丸)と比較した場合、siRNACD31−リポプレックス(菱形)によって有意に阻害された。1日2回の処置計画(1回の標準用量)は、二重矢印によって指示される。データは、毎日の腫瘍体積±s.e.m.の平均を表す;統計的有意性は、アスタリスクによって示される。処置による体重変化は、下段パネルに示される。図3bは、siRNACD31−リポプレックスを用いて全身的に処置した3Y1−RasV12腫瘍を有するマウスにおけるCD31タンパク質のノックダウンが、抗CD31抗体および抗PTEN、ならびに抗CD34を用いた腫瘍からの抽出物のイムノブロット分析により確認した。図3cに示されるように、CD31、タンパク質減少は、等張ショ糖、siRNACD31−リポプレックス、およびsiRNAPTEN−リポプレックスで処置したマウスからの腫瘍切片における抗CD31抗体を用いた免疫染色によって直接的に評価された。連続断片をそれぞれ抗CD31抗体および抗CD34抗体で染色し、腫瘍の脈管系を視覚化した。CD34ではなく、CD31に対する染色強度の減少は、siRNACD31−リポプレックスで処理したマウスからの腫瘍断片において見られた。MVD定量化は、CD31またはCD34ポジティブの血管それぞれの計数(下段の図)および全長(上段の図)によって測定された。
【0196】
要約すると、両方の治療計画は、腫瘍成長に対する明確な阻害効果をもたらした。リポプレックス化されたsiRNACD31を用いた緩やかに成長しているs.c.PC−3腫瘍異種移植片の全身治療は、siRNALucおよびsiRNAPTEN対照とは対照的に、腫瘍成長における有意な遅延を引き起こした(図3a、左図)。体重測定によって評価されるように、治療中には毒性副作用は観察されなかった。確立した、急速に成長している3Y1−RasV12s.c.異種移植片の成長はまた、リポプレックス化されたsiRNACD31を用いた1日2回の治療によって、いかなる毒性効果もなしに阻害された(図3a、右図)。観察された阻害は、siRNAPTEN−リポプレックス、ならびにショ糖処理の対照群と比較すると、統計的に有意であった。注目すべきことに、CD31タンパク質レベルの有意な減少は、対照マウスにおいて観察された変化がなかったタンパク質レベルとは対照的に、連続2日間のsiRNACD31−リポプレックスを用いて治療されたマウスの3Y1−腫瘍溶解物において検出された(図3b)。特異性および均等荷重について試験するために、本発明者らは、同時に、これらの溶解物中のCD34のタンパク質レベル、別の内皮細胞マーカータンパク質、およびPTENを分析した。さらに、CD31発現の減少はまた、インサイチュ(in situ)で、異種移植片腫瘍マウスモデルにおける内皮マーカーであるCD31およびCD34について、微小血管密度(MVD)における差異を測定することによって表された。MVD測定は、腫瘍血管形成の代理マーカーであり、CD31またはCD34特異的抗体を用いて血管を免疫組織化学的染色することによって分析される(Fox and Harris,2004;Uzzan et al.,2004;Weidner et al.,1991)。MVDは、それぞれCD31およびCD34抗体を用いた免疫染色後の連続切片間で比較された。リポプレックス化されたsiRNACD31で処理されたマウスは、血管の全体数および血管長によって測定されるように、CD31ポジティブな血管の全量において統計的に有意な減少を示した(図3c)。CD34特異的な抗体による染色は、さらに特異的なCD31サイレンシングを指示するMVDの変化を示さなかった。対照群であるsiRNAPTENと等張ショ糖処理の両方は、CD31またはCD34染色のいずれかによるMVD評価において差異を示さなかった。タンパク質のノックダウンに関する分子データとともに、この結果は、siRNACD31−リポプレックス処理によるCD31発現における特異的な減少を指示する。
【0197】
(実施例6:同所腫瘍モデルにおける全身投与されたsiRNACD31−リポプレックスの効果)
全身投与されたsiRNACD31−リポプレックスの潜在的な治療効果はまた、同所PC−3腫瘍異種移植片を有するマウスにおいて調べられた(Czauderna et al.,2003b;Stephenson et al.;1992)。これは、siRNACD31−リポプレックス処理の治療可能性を確認するために、ヒトの前立腺癌に対するより臨床的に関連したモデルであるように考えられる。この同所腫瘍モデルについて、ヒトPC−3前立腺癌細胞は、マウスの前立腺に直接的に移植され、マウスを屠殺し、移植してから50日後に、腫瘍およびリンパ節転移体積について分析した。
【0198】
実験条件は下記の通りである。実験設計および処置スケジュールを図4aに示す。より具体的には、実験設計は、同所PC−3前立腺腫瘍およびリンパ節転移モデルにおけるsiRNACD31−リポプレックス処置の有効性を分析することである。図4bは、指示されたsiRNA−リポプレックスまたはショ糖による処置後のマウスにおける前立腺PC−3腫瘍およびリンパ節転移からの体積の阻害を示す。処置開始前の腫瘍および転移体積は、左に示される(d35、対照)。統計的有意性は、アスタリスクによって示されている。図5cは、後の定量的TaqMan RT−PCRによって表されるように、対照群(ショ糖、siRNALuc−リポプレックス)とは対照的に、対応するsiRNA−リポプレックスを用いて処理されたマウスにおけるCD31およびTie2 mRNAレベルの減少を示す。
【0199】
要約すると、ネガティブ対照であるsiRNALuc−リポプレックスだけでなくsiRNATie2−リポプレックスも、ショ糖対照群と比較した場合、腫瘍および転移体積におけるごく僅かではあり、統計的には有意でない減少を示した(図4b)。しかしながら、非常に有意なsiRNACD31特異的な腫瘍成長阻害、およびリンパ節転移の体積の減少は、リポプレックス化されたsiRNACD31による全身処置に対して観察される(図4b)。前処理の対照群(35日目に屠殺した9匹の無作為なマウス)との比較は、腫瘍および転移の更なる増加は、siRNALuc−およびsiRNATie2−リポプレックス処理により観察され、siRNACD31で処理したマウスでは観察されないことを示す。本発明者らは、腫瘍組織の内皮細胞における定量的RT−PCRによって標的mRNA発現レベルを測定することを意図したが、おそらくは、この特異的な腫瘍型の脈管系由来のmRNAが非常に定量であるため、mRNAを正確に定量することができなかった。したがって、本発明者らは、有効性の実験において用いた種々の処置群の対応するマウスからの肺組織におけるCD31、Tie2およびCD34の発現レベルの変化を測定することに焦点を当てた(図4b)。本発明者らは、以前に、肺内皮がこの技術によって効率的に標的化することができ、CD31 mRNAのノックダウンがこの組織において実験的に示されることを観察した((Santer et al.,2006)を参照)。siRNATie2−およびsiRNAC31−リポプレックスで処理したマウスは、PC−3同所有効性試験において適用されたsiRNA−リポプレックスの機能性を示す、配列特異的なように対応するmRNAレベルの有意な減少を示した(図4c)。対照的に、siRNALuc−リポプレックスで処理した対照マウスは、CD31およびTie2レベルにおける阻害を示さなかった。さらに、内皮特異的に発現される遺伝子CD34の量は、いかなる処置群いも影響を及ぼさなかった。総合すると、インビボ異種移植片実験の両方は、腫瘍/転移増加がsiRNACD31−リポプレックスの繰り返しの全身投与によって選択的に抑制されることを示す。これらのデータは、非古典的な薬物標的であるCD31(PECAM−1)がRNAiに基づく抗血管形成の治療的介入のための適切な遺伝子標的となり得ることを意味する。
【0200】
(実施例7:23merのsiRNAの標的特異性と19merのsiRNAの標的特異性の比較)
この実験の目的は、ヒトの23merのsiRNACD31−8が対応する19merのsiRNACD31−8と同じ効力を示すという証拠を与えることである。
【0201】
実験手法は、基本的には、上記の実験で概説したものに対応する。より具体的には、HUVECは、AtuFECT01とともに、20nMでそれぞれのsiRNAを用いてトランスフェクトされた。タンパク質のノックダウンは、トランスフェクションして72時間後にウェスタンブロットによって評価した。その結果を図6に示す。
【0202】
ウェスタンブロットから分かるように、ヒトのCD31に対して特異的に指向され、23塩基対または19塩基対のいずれかの長さを有するsiRNAは、ノックダウンCD31において非常に効果的である。使用されるこの分子およびその一本鎖はまた、図6において特定され、ここでは、23塩基対を含むCD31のヒトの配列に対して特異的に指向されるsiRNA分子は、CD31 23merと呼ばれ、19塩基対を含むCD31のヒトおよびマウスの配列に対して特異的に指向されるsiRNA分子は、CD31 hm 19merと呼ばれる。
【0203】
いかなる場合でも、文字「h」は、配列が、標的mRNAのヒト配列に特異的であることを指し、文字「hm」は、配列が、標的mRNAのマウスおよびヒト配列の両方に特異的であることを指す。ボールドで印刷されたヌクレオチドは、2−O’−Me−修飾されている。
【0204】
図5に示されるウェスタンブロットにおいて、siRNALucは、ネガティブ対照として役割をした(ut:未処理)。このルシフェラーゼ特異的なsiRNA分子の特定の配列は、下記の通りである。
Luc−siRNA−1B
cguacgcggaauacuucga
Luc−siRNA−1A
ucgaaguauuccgcguacg
【0205】
本明細書中で特定される19merおよび23merの二本鎖核酸の両方がCD31のmRNAのノックダウンに効果的であるという実験的証拠を提供することとは別にして、種特異性もまた示されている。このような目的のために、ヒトの23merは、それぞれマウスおよびラットのホモログの対応する23−merと比較される。それぞれの鎖はまた、図5に指示され、CD31−8−m−23Aは、アンチセンス鎖(5’−>3’方向)を示し、CD31−8−m−23−Bは、マウスのセンス鎖(5’−>3’方向で示される)を示し、CD31−8−r−23−Aは、ラットのアンチセンス鎖(5’−>3’方向で示される)を示し、CD31−8−r−23−Bは、ラットのセンス鎖(5’−>3’方向で示される)を示す。
【0206】
参考文献
本明細書において先行技術の種々の文献に言及されるという程度で、このような文献は、それらの包括的な書誌的情報が下記の通り読まれ、参照により全体として本明細書に援用される。
【表3A】

【表3B】

【0207】
明細書、特許請求の範囲、配列表および/または図面に開示されている本発明の特徴は、別個およびそのいずれかの組み合わせの両方が、種々の形態で発明を実現する材料となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0208】
【図1】様々の樹立された腫瘍の内皮細胞の共焦点顕微鏡写真を示す。
【図2a−b】種々のCD31特異的siRNA分子(a)および様々な量の別個のC31特異的siRNA分子(b)を用いたノックダウン実験のウェスタンブロット分析の結果を示す。
【図2c】種々のsiRNA分子の投与に応じた種々の肝臓の酵素の活性を示す図を示す。
【図2d】種々のリポプレックスの全身投与に応じたIFN−α応答を示す図を示す。
【図3a】細胞チャレンジ後の日数の関数として、それぞれ2つの異なる腫瘍の体積および体重に対する種々の薬物の効果を例証する図を示す。
【図3b】種々のリポプレックスを用いた腫瘍を有するマウスにおけるノックダウン実験のウェスタンブロット分析の結果を示す。
【図3c】種々のリポプレックスを用いて処置したマウスの腫瘍切片における抗CD31抗体を用いた免疫染色の結果(左パネル)、および種々のリポプレックスを用いた処理に応じたフィールド当たりの各血管の量および血管の数を指示する図を示す。
【図4a】実験設計の図式を示す。
【図4b】種々のリポプレックスによる処理に応じたそれぞれ前立腺癌およびリンパ節転移の体積を示す。
【図4c】種々のリポプレックスによる治療に対する肺組織におけるmRNAノックダウンを示す。
【図5】標的のノックダウンに対する標的特異的な23merのsiRNAまたは標的特異的な19merのsiRNAを用いたウェスタンブロット分析の結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二本鎖構造を含む核酸分子であって、
前記二本鎖構造は、第1鎖および第2鎖を含み、
前記第1鎖は、隣接したヌクレオチドの第1ストレッチを含み、前記第1ストレッチは、標的核酸に少なくとも部分的に相補的であり、
前記第2鎖は、隣接したヌクレオチドの第2ストレッチを含み、前記第2ストレッチは、前記第1ストレッチに少なくとも部分的に相補的であり、
前記第1ストレッチは、配列番号1の核酸配列のヌクレオチドコア配列に少なくとも相補的である核酸配列を含み、
前記ヌクレオチドコア配列は、
配列番号1のヌクレオチド位置1277〜1295、
配列番号1のヌクレオチド位置2140〜2158、
配列番号1のヌクレオチド位置2391〜2409
のヌクレオチド配列を含む核酸分子であって、
前記第1ストレッチは、さらに、前記ヌクレオチドコア配列の5’末端に先行する領域、または前記ヌクレオチドコア配列の3’末端に続く領域に少なくとも部分的に相補的である核酸分子。
【請求項2】
前記第1ストレッチは、前記ヌクレオチドコア配列に相補的である請求項1に記載の核酸。
【請求項3】
前記第1ストレッチが、さらに、前記ヌクレオチドコア配列の3’末端に続く領域に相補的である請求項1〜2のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項4】
前記第1ストレッチは、18〜29ヌクレオチド、好ましくは19〜25ヌクレオチド、より好ましくは19〜23ヌクレオチドの標的核酸に相補的である請求項1〜3のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項5】
前記ヌクレオチドは連続したヌクレオチドである請求項4に記載の核酸。
【請求項6】
前記第1ストレッチまたは第2ストレッチは、18〜29の連続したヌクレオチド、好ましくは19〜25の連続したヌクレオチド、より好ましくは19〜23の連続したヌクレオチドを含む請求項1に記載の核酸。
【請求項7】
前記第1鎖が前記第1ストレッチからなり、または前記第2鎖が前記第2ストレッチからなる請求項1〜6のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項8】
二本鎖構造を含む核酸分子、好ましくは請求項1〜7のいずれか一項に記載の核酸分子であって、前記二本鎖構造は第1鎖および第2鎖によって形成され、前記第1鎖は隣接したヌクレオチドの第1ストレッチを含み、前記第2鎖は隣接したヌクレオチドの第2ストレッチを含み、このとき前記第1ストレッチは、前記第2ストレッチに少なくとも部分的に相補的であって、
前記第1ストレッチは、配列番号2のヌクレオチド配列からなり、前記第2ストレッチは、配列番号3のヌクレオチド配列からなり、
前記第1ストレッチは、配列番号4のヌクレオチド配列からなり、前記第2ストレッチは、配列番号5のヌクレオチド配列からなり、
前記第1ストレッチは、配列番号6のヌクレオチド配列からなり、前記第2ストレッチは、配列番号7のヌクレオチド配列からなり、
前記第1ストレッチは、配列番号8のヌクレオチド配列からなり、前記第2ストレッチは、配列番号9のヌクレオチド配列からなる核酸分子。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の核酸分子であって、前記第1ストレッチまたは第2ストレッチは、2’位に修飾を有する修飾ヌクレオチドの複数の群を含み、前記ストレッチ内で、修飾ヌクレオチドの各群の片側または両側には、ヌクレオチドのフランキング群が隣接され、ヌクレオチドのフランキング群を形成するフランキングヌクレオチドは、非修飾ヌクレオチドであるかまたは修飾ヌクレオチドの修飾とは異なる修飾を有するヌクレオチドであって、好ましくは、第1ストレッチまたは第2ストレッチは、修飾ヌクレオチドの少なくとも2つの群およびヌクレオチドの少なくとも2つのフランキング群を含む核酸分子。
【請求項10】
前記第1ストレッチまたは第2ストレッチは、修飾ヌクレオチドの群のパターン、またはヌクレオチドのフランキング群のパターンを含み、前記パターンは、位置パターンである請求項1〜9のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項11】
前記第1ストレッチまたは第2ストレッチは、3’末端でジヌクレオチドを含み、このようなジヌクレオチドは好ましくはTTである請求項1〜10、好ましくは請求項1〜8のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項12】
前記第1ストレッチの長さまたは第2ストレッチの長さは、19〜23ヌクレオチド、好ましくは19〜21ヌクレオチドからなる請求項11に記載の核酸。
【請求項13】
前記第1ストレッチまたは第2ストレッチは、3’末端で1〜5ヌクレオチドの突出を含む請求項1〜10、好ましくは請求項1〜8のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項14】
前記二本鎖構造の長さは、約16〜24ヌクレオチド対、好ましくは20〜22ヌクレオチド対である請求項13に記載の核酸。
【請求項15】
前記第1鎖および第2鎖は互いに共有結合しており、好ましくは第1鎖の3’末端と第2鎖の5’末端とが共有結合している請求項1〜14のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の核酸とリポソームとを含むリポプレックス。
【請求項17】
前記リポソームは、
a)約50mol%のβ−アルギニル−2,3−ジアミノプロピオン酸−N−パルミチル−N−オレイル−アミド三塩酸塩、好ましくは(β−(L−アルギニル)−2,3−L−ジアミノプロピオン酸−N−パルミチル−N−オレイル−アミド三塩酸塩)、
b)約48〜49mol%の1,2−ジフィタノイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DPhyPE)、および
c)約1〜2mol%の1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−ポリエチレン−グリコール、好ましくはN−(カルボニル−メトキシポリエチレングリコール−2000)−1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミンナトリウム塩
からなる請求項16に記載のリポプレックス。
【請求項18】
リポプレックスのゼータ電位は、約40〜55mV、好ましくは45〜50mVである請求項17に記載のリポプレックス。
【請求項19】
前記リポプレックスは、QELSによって測定されるように、約80〜200nm、好ましくは約100〜140nm、より好ましくは約110nm〜130nmのサイズである請求項17または18に記載のリポプレックス。
【請求項20】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の核酸を含むかまたはコードするベクター、好ましくは発現ベクター。
【請求項21】
請求項1〜20のいずれか一項に記載の核酸または請求項1〜20のいずれか一項に記載のベクターを含む細胞であって、好ましくは前記細胞がヒト細胞である場合、前記ヒト細胞は単離された細胞である細胞。
【請求項22】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の核酸、請求項16〜19のいずれか一項に記載のリポプレックス、請求項20に記載のベクターまたは請求項21に記載の細胞を含む組成物、好ましくは医薬組成物。
【請求項23】
前記組成物は、場合により医薬として許容される媒体をさらに含む医薬組成物である、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
前記組成物は医薬組成物であって、前記医薬組成物は、血管形成に依存した疾患、好ましくは、不十分な、異常なまたは過剰な血管形成によって特徴付けられるかまたは引き起こされる疾患の治療用である請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記血管形成は、脂肪組織、皮膚、心臓、目、肺、腸、生殖器、骨および関節の血管形成である請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項26】
前記疾患は、感染症、自己免疫障害、血管奇形、アテローム性動脈硬化症、移植動脈症、肥満、乾癬、いぼ、アレルギー性皮膚炎、持続性過形成硝子体症候群、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、加齢性黄斑疾患、脈絡膜血管新生、原発性肺高血圧症、喘息、鼻ポリープ、炎症性腸疾患および歯周疾患、腹水、腹膜癒着、子宮内膜症、子宮出血、卵巣嚢胞、卵巣、卵巣過刺激、関節炎、滑膜炎、骨髄炎、骨棘形成を含む群から選択される請求項24または25に記載の医薬組成物。
【請求項27】
腫瘍性疾患、好ましくは癌疾患、より好ましくは固形腫瘍を治療するための請求項23〜26のいずれか1項、好ましくは請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項28】
骨癌、乳癌、前立腺癌、消化器官の癌、結腸直腸癌、肝臓癌、肺癌、腎臓癌、泌尿器癌、膵臓癌、下垂体癌、精巣癌、眼の癌、頭頸部癌、中枢神経系の癌および呼吸器系の癌を含む群から選択される疾患の治療のための請求項23〜26のいずれか1項、好ましくは請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項29】
薬剤を製造するための、請求項1〜15のいずれか一項に記載の核酸、請求項16〜19のいずれか一項に記載のリポプレックス、請求項20に記載のベクターまたは請求項21に記載の細胞の使用。
【請求項30】
前記薬剤は、請求項24〜28のいずれか1項に定義される疾患のいずれかを治療するためのものである請求項29に記載の使用。
【請求項31】
前記薬剤は、1またはいくつかの他の治療と併用して用いられる請求項30に記載の使用。
【請求項32】
前記治療が、化学療法、凍結療法、発熱療法、抗体療法および放射線療法を含む群から選択される請求項31に記載の使用。
【請求項33】
前記治療は、抗体療法、より好ましくは抗VEGF抗体を用いた抗体療法である請求項32に記載の使用。

【図3a】
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【図4a.b】
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【図1】
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【図2】
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【図3b.c】
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【図4c】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−535018(P2009−535018A)
【公表日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−505788(P2009−505788)
【出願日】平成19年4月20日(2007.4.20)
【国際出願番号】PCT/EP2007/003495
【国際公開番号】WO2007/121946
【国際公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【出願人】(505047256)サイレンス・セラピューティクス・アーゲー (13)
【氏名又は名称原語表記】SILENCE THERAPEUTICS AG
【Fターム(参考)】