説明

CVD自立ダイヤモンド膜及びその製造方法

本発明は、互いに重ねて積層された複数のダイヤモンド層(8)を含むCVD自立ダイヤモンド膜であって、各ダイヤモンド層(8)の下面は、第1の平均結晶粒径が2〜50nmであるダイヤモンドから形成され、ダイヤモンド層(8)内の平均結晶粒径はダイヤモンド層(8)の下面から上面へと増大し、上面の領域の第2の平均結晶粒径が50〜500nmであるCVD自立ダイヤモンド膜に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CVD自立ダイヤモンド膜に関する。本発明は、さらに、CVD自立ダイヤモンド膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
欧州特許公報第0666338号(特許文献1)は、CVD自立ダイヤモンド膜の製造方法を開示している。それによって、凸状変形の可能性がある潜在的凸状ダイヤモンド層と、凹状変形の可能性がある潜在的凹状ダイヤモンド層とをCVD法によって連続的に交互に堆積させる。潜在的凸状層と潜在的凹状層とが交互に配置されるので、内部応力が補償され、それによって自立ダイヤモンド層の変形を引き起こすことがある。このように製造された自立ダイヤモンド膜は本質的に平坦である。
【0003】
欧州特許公開公報第0574263号(特許文献2)は、CVD法によって製造されたダイヤモンド膜を開示している。ダイヤモンド膜の製造時には、均質に実施されたダイヤモンド層内の平均結晶粒径が1μm未満になるような条件が選択される。それと共に、自立ダイヤモンド膜の望ましくない屈曲も避けられる。
【0004】
欧州特許公開公報第0561588号(特許文献3)は、CVD法によって何層かのダイヤモンド層から製造されるダイヤモンド膜を開示しており、この場合は金属製の核がダイヤモンド層の間に組み込まれる。この文献では、ダイヤモンド層を形成するダイヤモンド結晶の平均結晶粒径については何も言及されていない。
【0005】
従来の方法では実際には、比較的小さいCVD自立ダイヤモンド膜又はダイヤモンド膜しかそれぞれ製造できない。例えば直径が10cmを超える大面積のダイヤモンド膜には通常は望ましくない湾曲があり、及び/又は破壊し易い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許公報第0666338号
【特許文献2】欧州特許公開公報第0574263号
【特許文献3】欧州特許公開公報第0561588号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、先行技術による欠点を取り除くことにある。特に、できるだけ容易でコスト効率よく実行可能であることにより、大面積のCVD自立ダイヤモンド膜の製造を可能にする方法が開示される。本発明の別の目的により、取り扱いに対して強固な大面積のCVDダイヤモンド膜が開示される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は、請求項1、10及び13の特徴によって達成される。本発明の好ましい実施形態は、請求項2〜9、11、12、並びに14〜24の特徴から生じる。
【0009】
本発明により、自立ダイヤモンド膜が提案され、該自立ダイヤモンド膜は、互いの上面に積層された複数のダイヤモンド層を含み、
各ダイヤモンド層の下面は、第1の平均結晶粒径が2〜50nmであるダイヤモンドから形成され、
ダイヤモンド層の内部の平均結晶粒径は、ダイヤモンド層の下面から上面へと増大し、
上面領域の第2の平均結晶粒径は、50〜500nmである。
【0010】
提案されるCVD自立ダイヤモンド膜は、互いの上面に積層された複数のダイヤモンド層から構成される。各々のダイヤモンド層は段階的である。すなわちダイヤモンド層を形成するダイヤモンド結晶の平均結晶粒径は、ダイヤモンド層の下面からその上面へと増大する。それによって、下面領域の第1の平均結晶粒径は2〜50nmであり、ダイヤモンド層の上面領域の平均結晶粒径は50〜500nmである。ダイヤモンド層の上面には、次に続くダイヤモンド層の別の下面が積層される。上面と次に続くダイヤモンド層の別の下面との間に、例えば金属核などの異質性の核は組み込まれない。これによって、提案されるCVD自立ダイヤモンド膜を使用して半導体を製造する可能性も開かれる。
【0011】
提案されるCVD自立ダイヤモンド膜は驚くほど極めて強固である。直径が10cmを超えるディスクを製造することができる。製造されたディスク又はダイヤモンド膜は、優れた平坦性を特徴とする。
【0012】
有利な実施形態によれば、第1の平均結晶粒径は、2〜30nm、好ましくは5〜20nmである。第2の平均結晶粒径は、好適には200nm未満である。さらに、ダイヤモンド層の層厚を10nm〜5μmの範囲、好ましくは100nm〜2μmの範囲にすることが好適であることが実証されている。上記のダイヤモンド層から形成されたCVD自立ダイヤモンド膜は特に強固である。これを100cmを超えるサイズで製造可能である。
【0013】
さらに、CVD自立ダイヤモンド膜の全層厚を20μm〜200μmの範囲、好ましくは40μm〜100μmの範囲にすることが好適であることが実証されている。提案される全層厚のCVD自立ダイヤモンド層は機械的に安定しているので取り扱い易い。
【0014】
別の有利な実施形態によれば、CVD自立ダイヤモンド膜の外面の最大凹凸段差Rは0.01μm〜4.0μmである。CVD自立ダイヤモンド膜の少なくとも外面の表面は特に平滑であるため、その耐折損性は増大する。提案されるCVD自立ダイヤモンド膜は特に安定しており、取り扱い易い。
【0015】
ここで、「最大平均凹凸段差R」とは、DIN EN ISO 4287が定義する粗さプロファイルの最大段差を意味するものと理解される。これは、サンプリング長さ内の粗さプロファイルの最大山部Rpの高さと最大谷部Rvの深さの合計である。
【0016】
【表1】

【0017】
最高輪郭点から最深輪郭点までの垂直距離として、Rは粗さの座標値の分散領域の尺度である。Rは粗さプロファイルの5つのサンプリング長さlrの最大輪郭高さからの算術平均として決定される。
【0018】
提案されるCVD自立ダイヤモンド膜は、半導体素子の製造にも適している。この目的のため、少なくとも1つのダイヤモンド層にn型ドーピングを施すことができる。n型ドーピングが施されたダイヤモンド層はドーピングとして窒素、硫酸、又はリン酸を含むことができる。さらに、少なくとも1つのダイヤモンド層にp型ドーピングを施すことができる。p型ドーピングが施されたダイヤモンド層はドーピングとしてホウ素、水素、インジウム、アルミニウム又はガリウムを含むことができる。
【0019】
p−n遷移部を製造するため、n型ドーピングを施されたダイヤモンド層とp型ドーピングを施されたダイヤモンド層とを互いに重ねて堆積することができる。特に有利な実施形態によれば、ダイヤモンド層は100ppm〜20,000ppm、好ましくは500ppm〜2,000ppmのホウ素を含有することができる。
【0020】
別の実施形態によれば、CVD自立ダイヤモンド層全体をn型導電性又はp型導電性のみにすることもできる。すなわち、この場合、ダイヤモンド層全体にn型ドーピング又はp型ドーピングを施すことができる。
【0021】
本発明によるCVD自立ダイヤモンド膜の2面のうちの少なくとも1面に、好ましくはスパッタリングによって金属製の金属層を被覆することができる。この種の金属層を施すことによって、溶接、特に電子ビーム溶接、レーザー溶接などによってCVD自立ダイヤモンド膜の接合が可能になる。
【0022】
さらに、本発明によれば、CVD自立ダイヤモンド膜が少なくとも1つの構成要素の表面に塗布される構成要素が提案される。したがって、CVD自立ダイヤモンド膜を施した構成要素の表面領域の構成要素のトライボロジー特性を大幅に向上させることができる。
【0023】
ダイヤモンド膜を表面に貼着するために、接続層を設けることができる。接続層は、CVDダイヤモンド層と構成要素との間に熱的に誘発された張力が補償されるように好適に設計されている。この目的のため、接続層を多層方式で実施することも可能である。特に、例えば熱膨張率が高い層を互いに重ねることによって、自立ダイヤモンド膜と比較した構成要素の熱膨張率の大きな差を補償することができる。
【0024】
本発明によれば、構成要素の表面を別のCVD自立ダイヤモンド膜の別の外側に配することもできる。すなわち、本発明によるいくつかのCVD自立ダイヤモンド膜を、例えば炭化物形成金属層を介在させるか、又はホットプレスによって互いに接合することができる。特に、p型導電性及びn型導電性ダイヤモンド膜を互いに接合することができる。これによって熱電素子の製造が可能になる。
【0025】
本発明の有利な実施形態によれば、接続層は第1の金属から製造される。第1の金属は半田であってもよい。
【0026】
接続層は、ポリマー、セラミック又はガラスから製造することもできる。ポリマーがプレセラミックポリマーであれば特に好適であることが実証されている。したがって、製造し易い特に強力な接続層を自立ダイヤモンド膜と構成要素の表面との間に製造できる。
【0027】
本発明によってさらに、本発明によるCVD自立ダイヤモンド膜の製造方法が提案され、以下のステップ、すなわち、
基板の表面にダイヤモンド核を貼着するステップと、
ダイヤモンド核を貼着した基板をCVDデバイスの反応室に挿入するステップと、
CVD法によってダイヤモンド層を堆積させるステップと
を含み、
反応室内での1〜10時間の第1の滞留時間中に炭素質ガスの所定の第1の濃度が調整され、
別のダイヤモンド層を製造するため、以下のステップ、すなわち、
a)炭素質ガスの濃度を20〜600秒の第2の滞留時間だけ所定の第2の濃度へと高めるステップと、
b)炭素質ガスの濃度を所定の第1の濃度まで低減し、第1の滞留時間だけ第1の濃度を維持するステップと
が連続して実行される。
【0028】
別のダイヤモンド層を製造するための提案される方法は、特に容易でコスト効率よく実行可能である。驚くべきことには、ステップa)で提案されているパラメータを維持することによって、ダイヤモンド層の比較的粗い結晶面上に、微結晶方式で実施された下面を有する次に続くダイヤモンド層を再び製造することができることが判明している。従来の知識レベルとは異なり、このような目的のために、例えば金属製の異質な核をダイヤモンド層の表面上に施す必要がない。
【0029】
ステップa)及びb)は、数回反復することができる。自立ダイヤモンド膜が11〜50のダイヤモンド層、好ましくは16〜30のダイヤモンド層を有するように、ステップa)及びb)を10〜50回、好ましくは15〜30回反復することが好適であることが実証されている。
【0030】
第1の滞留時間は、1〜4時間であってもよい。さらに、第1の濃度を2.8〜4.0%、好ましくは3.0〜3.8%にすることが好適であることが実証されている。それによってメタンが炭素質ガスとして好適に使用される。
【0031】
さらに、基板として銅、モリブデン、タングステン又はシリコン、好ましくはシリコンウェーハの基板を使用することが好適であることが実証されている。特にシリコンウェーハを使用することで、自立ダイヤモンド膜の取り除きが特に容易になる。
【0032】
さらに、ガス雰囲気に曝される基板表面の最大平均凹凸段差Rが、0.01〜4.9μm、好ましくは0.1〜0.5μmであることが好適であることが実証されている。基板の冷却中、基板上に堆積されたダイヤモンド層を特に迅速且つ容易にこのタイプの表面から取り除くことができる。そこで、自立ダイヤモンド膜の表面向きの一方の外面が特に平滑に実施される。その最大平均凹凸段差は基板の最大平均凹凸段差に対応する。
【0033】
別の有利な処理ステップによれば、自立ダイヤモンド膜を酸素含有雰囲気中で少なくとも500℃の温度での熱処理に曝すことができる。このようにして、水素を自立ダイヤモンド膜の表面から除去することができ、酸素の吸収によって極性親水性表面を製造できる。この方法で改質された表面は、極性接着剤に接合するのに特に適している。提案される熱処理は、さらに、表面の拡張に貢献する。ひいては、これによって接着剤の機械的及び/又は化学的結合が補助される。
【0034】
本発明の方法の別の実施形態によれば、自立ダイヤモンド膜の2つの外面のうち少なくとも1つの面に、好ましくはスパッタリングによって第1の金属製の金属層が被覆される。このタイプの金属層を、電極として、又は例えば構成要素の金属表面に接合するための接続層としても使用できる。例えば「ホットワイヤCVD法」では、タングステン製の発熱抵抗体又はフィラメントが1,700℃〜2,400℃の範囲の温度まで加熱される。その結果、ダイヤモンド層の堆積中の基板の温度は、600℃〜1,000℃、好ましくは800℃〜900℃であることが好適である。それによって基板は、例えばメタン、水素、酸素及びその他のガスを含むことができる炭素質ガス雰囲気中にあることになる。ホットワイヤCVD法の代わりに、マイクロ波CVD法を使用することもできる。
【0035】
さらに、本発明により1つの自立ダイヤモンド膜をそれぞれ基板の前面と後面で同時に製造することが好適であることが実証されている。このようにして提案される方法の効率は2倍になる。
【0036】
以下に本発明の実施形態を図面を参照してより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】自立ダイヤモンド膜及びこれを被覆した構成要素の製造工程を示す図である。
【図2】所定の形状を有する自立ダイヤモンド膜を示す図である。
【図3】自立ダイヤモンド膜を被覆した構成要素の概略断面図である。
【図4】自立ダイヤモンド膜の表面の電子顕微鏡画像である。
【図5】自立ダイヤモンド膜の下面の電子顕微鏡画像である。
【図6】自立ダイヤモンド膜の層構造の電子顕微鏡画像である。
【図7】ダイヤモンド層の下面のラマンスペクトルのグラフである。
【図8】ダイヤモンド層の上面のラマンスペクトルのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1a〜図1dは、自立ダイヤモンド膜の製造工程を概略的に示す。先ず、金属銅、又は銅合金、又はシリコンウェーハからなる基板1が提供される(図1a)。基板1の少なくとも2つの大きい表面の平均凹凸段差Rは、例えば0.2μmである。このタイプの平均凹凸段差Rは、例えば従来の研削、ラッピング及び研磨方法によって製造できる。
【0039】
次に、従来の方法で、基板1の表面が超音波浴内で平均結晶粒径が数ナノメートルの範囲にあるダイヤモンド核2で覆われる(図1bを参照)。基板1の表面上へのダイヤモンド核2の貼着は、基板表面へのイオン加速によって、例えば「バイアシング」によって行うこともできる。ダイヤモンド層を堆積するために使用される基板1は、均一な基板1である必要はない。基板1は不均一な三次元形状のものであってもよく、それによって基板に堆積されたCVD自立ダイヤモンド膜4を取り除くことが可能になる。このようにして、例えば、積層のための補助などの役割を果たすことができる突起を有する円錐状のリング状自立ダイヤモンド膜4を製造することができる。
【0040】
CVD反応室(ここでは図示せず)のホットワイヤ3が被覆される基板1の両面にほぼ平行に延びるように、例えばシリコンウェーハなどのダイヤモンド核2を被覆した基板1がCVD反応室内に配置される(図1c参照)。ホットワイヤ3は、好ましくはW−WC(タングステン、炭化タングステン)製である。次に、CVD反応室で基本的にメタン及び水素を含む雰囲気が調整される。それによるメタンの第1の濃度は、3.0〜4.3%、好ましくは3.4〜4.0%である。発熱抵抗体3は、2,000℃〜2,400℃の温度まで加熱される。その結果、いずれの場合も、ダイヤモンド層8がCVD反応室内にある炭素質雰囲気から基板1の両面上に堆積される。ホットワイヤCVD法では、ダイヤモンド層8を形成するダイヤモンド結晶の平均結晶粒径が、好ましくは下面の2〜30nmから上面の100〜200nmへと増大するようにパラメータが選択される。被覆工程中の基板1の温度は、約800℃〜1000℃である。堆積速度は、毎時0.1μmを超える。ダイヤモンド層8が1〜10μmの範囲の所定の厚さに達すると即座に、全ガス成分に対する炭素質ガスの濃度は少なくとも1%、好ましくは少なくとも1.5%だけ上昇する。例えば、60〜180秒の滞留時間の間、4.5〜5.5%のメタン濃度が調整される。それによって、平均結晶粒径が2〜50nmの超微細粒のダイヤモンド結晶が形成され、これが次に続くダイヤモンド層の下面を形成する。次に、炭素質ガスの濃度が再び第1の濃度まで低減される。そこで、メタンの第1の濃度は、再び3.0〜4.3%、好ましくは4.3〜4.0%に設定される。それによって堆積されるダイヤモンド結晶の第2の平均結晶粒径は、50〜500nmの範囲にある。一方、これらの条件で堆積された別のダイヤモンド結晶の厚さは、1〜10μmである。このようにして、それぞれの下面の第1の平均結晶粒径が2〜50nmである互いに重ねて積層された複数のダイヤモンド層を堆積させることができ、この平均結晶粒径は、各々のダイヤモンド層の上面に向かって増大し、50〜500nmの範囲の第2の平均結晶粒径となる。好ましくは、表面上の第2の平均結晶粒径は僅か150〜250nmである。このようにして、20〜200μm、好ましくは40〜100μmである全体の厚さが達成されるように、互いに重なった10〜30のダイヤモンド層を堆積させることができる。
【0041】
次に、基板1が周囲温度まで冷却される。基板1の両面上に形成されたダイヤモンド膜4が取り除かれる。これらは、例えばNd:YAGレーザーによって所定の幾何形状に切断することができる(図1e)。例えば、図1e及び図1fに示す矩形の膜部分5を製造することができ、これは、次に、例えばポリマーによって構成要素6に貼着される(図1f)。
【0042】
図2は、Nd:YAGレーザーによって歯車の形状に切断されたダイヤモンド膜4を示す。
【0043】
図3は、図1fによる構成要素の概略断面図を示す。膜部分5は、ポリマー接着剤層7によって構成要素6上に貼着される。ポリマー接着剤層7の代わりに、半田などを使用することもできる。さらに、金属基板を接合するために、例えばスパッタリングによってダイヤモンド膜4の片面に金属層を設けることが可能である。次に、この金属層は、例えば超音波溶接によって金属基板に接合される。本発明によるダイヤモンド膜4を拡散溶接によって、例えば金属基板、特にアルミニウム又は本発明による別のダイヤモンド膜に直接接合することもできる。
【0044】
図4は、ホットワイヤCVD工程中にホットワイヤ3の方向に向いた自立ダイヤモンド膜の面を示す。この場合は、ダイヤモンド膜の上面がダイヤモンド結晶から形成されていることが分かり、その平均結晶粒径は100〜400nmの範囲にある。
【0045】
図5は、ホットワイヤCVD工程中にホットワイヤ3と反対方向を向いた自立ダイヤモンド膜の下面を示す。したがって、この面は基板1との接触面である。ダイヤモンド膜4のこの面は、本質的に基板1の形態を形成する。すなわち基板1の結晶境界がそこに形成される。
【0046】
図6は、自立ダイヤモンド膜の層構造の電子顕微鏡画像である。例えばシリコンウェーハでよい基板1上に複数のダイヤモンド層8が積層される。ダイヤモンド層8の厚さは1〜7μmの範囲にある。この場合、全ダイヤモンド層8の全体の層厚は約50μmである。
【0047】
図7及び図8は、自立ダイヤモンド膜4のラマンスペクトルを示す。ラマンスペクトルは、波長が514.5nmのアルゴンイオンレーザーを用いて記録されたものである。
【0048】
図7は、基板1上に貼着されたダイヤモンド核2を用いて製造された第1のダイヤモンド層8のラマンスペクトルを示す。スペクトルは、基本的に、約1358cm−1及び1550cm−1である2つの強度最大値を示す。
【0049】
図8は、ダイヤモンド層8の最上面で記録されたラマンスペクトルを示す。上記の強度最大値に加えて、この場合は更なる強度最大値、特に1135cm−1、1332cm−2及び1475cm−1が認められる。
【符号の説明】
【0050】
1 基板
2 ダイヤモンド核
3 ホットワイヤ
4 ダイヤモンド膜
5 膜部分
6 構成要素
7 ポリマー接着剤層
8 ダイヤモンド層
凹凸段差

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに重ねて積層された複数のダイヤモンド層(8)を含むCVD自立ダイヤモンド膜であって、各ダイヤモンド層(8)の下面は、第1の平均結晶粒径が2〜50nmであるダイヤモンドから形成され、前記ダイヤモンド層(8)の内部の平均結晶粒径は前記ダイヤモンド層(8)の前記下面から上面へと増大し、前記上面の領域の第2の平均結晶粒径が50〜500nmであるCVD自立ダイヤモンド膜。
【請求項2】
前記第1の平均結晶粒径が、2〜30nm、好ましくは5〜20nmである、請求項1に記載のCVD自立ダイヤモンド膜。
【請求項3】
前記第2の平均結晶粒径が、200nm未満である、請求項1又は2に記載のCVD自立ダイヤモンド膜。
【請求項4】
前記ダイヤモンド層(8)の厚さが、10nm〜5μmの範囲、好ましくは100nm〜2μmの範囲にある、前記請求項のいずれか1項に記載のCVD自立ダイヤモンド膜。
【請求項5】
全層厚が、20〜200μmの範囲、好ましくは40〜100μmの範囲にある、前記請求項のいずれか1項に記載のCVD自立ダイヤモンド膜。
【請求項6】
1つの外面の最大平均凹凸段差Rが、0.01〜4.0μmである、前記請求項のいずれか1項に記載のCVD自立ダイヤモンド膜。
【請求項7】
少なくとも1つのダイヤモンド層(8)にn型ドーピングが施される、前記請求項のいずれか1項に記載のCVD自立ダイヤモンド膜。
【請求項8】
少なくとも1つのダイヤモンド層(8)にp型ドーピングが施される、前記請求項のいずれか1項に記載のCVD自立ダイヤモンド膜。
【請求項9】
前記ダイヤモンド層のすべてにn型ドーピング又はp型ドーピングが施される、前記請求項のいずれか1項に記載のCVD自立ダイヤモンド膜。
【請求項10】
前記請求項のいずれか1項に記載の自立ダイヤモンド膜(4)が、少なくとも1つの構成要素の表面に貼着される構成要素。
【請求項11】
前記ダイヤモンド膜(4)が、接続層(7)によって前記構成要素の表面に貼着される、請求項10に記載の構成要素。
【請求項12】
前記構成要素の表面が、請求項1〜9のいずれか1項に記載の別のCVD自立ダイヤモンド膜の別の外面である、請求項10又は11に記載の構成要素。
【請求項13】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のCVD自立ダイヤモンド膜(4)の製造方法であって、以下のステップ、すなわち、
基板(1)の表面にダイヤモンド核(2)を貼着するステップと、
前記ダイヤモンド核(2)を貼着した前記基板(1)をCVDデバイスの反応室に挿入するステップと、
CVD法によってダイヤモンド層(8)を堆積させるステップと
を含み、
反応室内での1〜10時間の第1の滞留時間中に炭素質ガスの所定の第1の濃度が調整され、
少なくとも1つの別のダイヤモンド層(8)を製造するため、以下のステップ、すなわち、
a)炭素質ガスの濃度を20〜600秒の第2の滞留時間だけ所定の第2の濃度へと高めるステップと、
b)炭素質ガスの濃度を所定の第1の濃度まで低減し、第1の滞留時間だけ第1の濃度を維持するステップと
が連続して実行されることを特徴とするCVD自立ダイヤモンド膜(4)の製造方法。
【請求項14】
前記ステップa)及びb)が数回反復される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の滞留時間が1.5〜4時間である、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の濃度が、2.8〜4.0%、好ましくは3.0〜3.8%である、請求項13乃至15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
炭素質ガスとしてメタンが使用される、請求項13乃至16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記基板(1)の温度が、600℃〜1,000℃である、請求項13乃至17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
基板として銅、モリブデン、タングステン又はシリコン、好ましくはシリコンウェーハが使用される、請求項13乃至18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
ガス雰囲気に曝される前記基板(1)の表面の最大平均凹凸段差Rが、0.01〜4.0μm、好ましくは0.1〜0.5μmである、請求項13乃至19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記自立ダイヤモンド膜が、酸素含有雰囲気中で少なくとも500℃の温度で熱処理に曝される、請求項13乃至20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記CVD自立ダイヤモンド膜(4)の2つの外面のうち少なくとも一方に、好ましくはスパッタリングによって第3の金属製の金属層が被覆される、請求項13乃至21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
CVD法としてホットワイヤCVD法又はマイクロ波CVD法が用いられる、請求項13乃至22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の自立ダイヤモンド膜(4)のそれぞれの1つが、ホットワイヤCVD法を用いて前記基板(1)の前面と後面とに同時に製造される、請求項23に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−519774(P2012−519774A)
【公表日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−552466(P2011−552466)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【国際出願番号】PCT/EP2010/052840
【国際公開番号】WO2010/100261
【国際公開日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(511123636)ディアッコン ゲーエムベーハー (3)
【氏名又は名称原語表記】DiaCCon GmbH
【Fターム(参考)】