説明

CVTエレメントの加工用治具、加工方法、修正用治具および仕上げ用治具

【課題】一度に複数のCVTエレメントのサドル面の修正およびバリの除去を行うことが可能なCVTエレメントの加工用治具および加工方法を提供する。
【解決手段】第一押さえ部材210および第二押さえ部材220を備えるとともにCVTエレメント1・1・・・のサドル面2a・2a・・・を揃えて固定することが可能な修正用治具200、並びに、ガイド部材310およびスライド部材320を備えるとともにスライド部材320の所定の位置に所定の姿勢でCVTエレメント1・1・・・を保持した状態でスライド部材320をガイド部材310に係合させて摺動することによりCVTエレメント1・1・・・のサドル面2a・2a・・・をガイド部材310に形成された研磨面に当接させて研磨する仕上げ用治具300、を具備する加工用治具100を用いて、CVTエレメント1・1・・・のサドル面2a・2a・・・を加工する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CVTエレメントに加工を施し、所定の寸法精度を達成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の燃費の向上およびショックのないスムーズな変速を可能とする技術の一つとしてCVT(Continuously Variable Transmission)、特にベルト式のCVTが知られている。
ベルト式のCVTは無端状のリングおよび当該リングに隙間無く係合された多数のCVTエレメントを有するCVTベルトと、CVTベルトが巻回される入力側および出力側の二つのプーリと、を具備する。
ベルト式のCVTを構成する二つのプーリのうち少なくとも一方は、いわゆる「割プーリ」からなる。割プーリはCVTベルトが巻回される際に当接するV字状の溝を境界として二つの部材に分割されたプーリであり、これら二つの部材の軸線方向の距離(間隔)が変化することにより、実質的な直径(プーリに巻回されるCVTベルトの曲率半径)を変更することが可能である。
ベルト式のCVTは入力側および出力側の二つのプーリのうち割プーリとなっているものの実質的な直径を変更することにより、入力側および出力側の二つのプーリの間の実質的な直径比を変更し、変速を行う。
【0003】
一般に、CVTエレメントは入力側および出力側の二つのプーリ(厳密には、これらのプーリに形成された溝)に当接する部分であるサドル部およびサドル部をCVTベルトを構成する無端状のリングに係合させるための係合部を備える。CVTエレメントの大まかな形状は、出発材たる高強度鋼等の板材に打ち抜き加工を施すことにより成形される。
従って、打ち抜き加工が施された直後のCVTエレメントのサドル部の端面は打ち抜き方向(打ち抜き加工時に打ち抜き刃が移動する方向)に対して平行ではなく、打ち抜き方向に対してわずかに(例えば、1°未満程度)傾斜している(抜き勾配を有している)。また、CVTエレメントのサドル部の端面には打ち抜き加工により生じるバリが残る場合がある。
【0004】
無端状のリングに係合したCVTエレメントのサドル部の端面のうち、リングに対向する端面であるサドル面はCVTの動作時に無端状のリングに強い力で押し付けられる。
このとき、サドル面が打ち抜き方向に対して傾斜したままの状態、あるいはサドル面にバリが残ったままの状態であれば、サドル面の二つのエッジ(サドル部の板面との境界部分)のうち鋭角となる方のエッジあるいはバリが無端状のリングに食い込み、無端状のリングの劣化を早める(無端状のリングの寿命を低下させる)要因となる。
よって、従来は打ち抜き加工が施された直後のCVTエレメントを一つづつワイヤー式の放電加工機にセットし、CVTエレメントのサドル面に放電加工を施すことによりCVTエレメントの一対の板面とサドル面との成す角度を直角に修正し、さらに放電加工機から取り外したCVTエレメントのサドル面を作業者が手作業で一つづつヤスリ等を用いて研磨することによりバリを除去する、という一連の作業を行うことにより、サドル面を所望の形状(CVTエレメントの一対の板面とサドル面との成す角度が直角であり、かつバリが除去された形状)としていた。
しかし、一本のCVTベルトに使用されるCVTエレメントの個数は非常に多い(数百個程度)ため、上記の如くCVTエレメントを一つづつ加工する方法は作業効率が良くない(作業に要する時間および労力が過大となる)という問題点を有する。
【0005】
CVTエレメントのサドル面を加工する技術としては、上記方法の他に特許文献1に記載の装置および特許文献2に記載の方法が知られている。
【0006】
特許文献1に記載の装置は、無端状のリングが係合する部分であるCVTエレメントのサドル部と係合部との間の隙間(凹部)を開放した状態でCVTエレメントを保持する保持手段と、CVTエレメントを保持している保持手段をCVTエレメントの厚み方向に移動させる移動手段と、移動手段により移動されるCVTエレメントの凹部の内部に一端縁部が進入自在に形成された砥石と、凹部の底縁に砥石の一端縁を弾発的に圧接させる弾性部材と、を備える。
特許文献1に記載の装置は弾性部材により砥石の一端縁を凹部の底縁に圧接させることにより、凹部の底縁に形成されたバリを除去する。
しかし、特許文献1に記載の装置は、回転駆動された円盤状の砥石の外周面にCVTエレメントの凹部の底を当接させて研磨することが前提となっている。そのため、複数のCVTエレメントを同時に研磨することが実質的に不可能であり、作業効率が良くないという問題点を有する。
【0007】
特許文献2に記載の方法は、CVTエレメントと、各頂点が丸みを帯びかつ各辺が内側に窪んだ形状の一対の端面を有する略三角柱形状のメディアと、が混合した状態でバレル研磨を行うことにより、CVTエレメントの表面仕上げとバリの除去とを同時に行う。
しかし、特許文献2に記載の方法はそもそも統計学的な不確実性を含むため、CVTエレメントのサドル部に形成されるバリの態様(位置、大きさおよび形状)が多種多様である場合には種々の態様のバリが確実に除去されたことを保証することが困難である。
すなわち、特許文献2に記載の方法は、バリが確実に除去されていることを保証するために研磨後のCVTエレメントを一つづつ目視で確認する作業を要し、全体としては作業が煩雑となる。
また、バレル研磨の時間を長く設定すればその分だけ種々の態様のバリを除去することも可能であるが、作業に要する時間が長くなるので結局は作業効率が良くないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−138193号公報
【特許文献2】特開2003−231053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、一度に複数のCVTエレメントのサドル面の修正およびバリの除去を行うことが可能なCVTエレメントの加工用治具、一度に複数のCVTエレメントのサドル面の修正およびバリの除去を行うことが可能なCVTエレメントの加工方法、一度に複数のCVTエレメントのサドル面を修正することが可能なCVTエレメントの修正用治具、および一度に複数のCVTエレメントのサドル面のバリを除去することが可能なCVTエレメントの仕上げ用治具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0011】
即ち、請求項1においては、
サドル部および前記サドル部に延設されるとともにCVTリングに係合する係合部を備え、前記サドル部には一対の板面、前記一対の板面の両端部に配置される一対の基準面、および前記係合部が係合した前記CVTリングに当接するサドル面が形成され、前記一対の板面の一方には嵌合突起が形成されるとともに前記一対の板面の他方には嵌合穴が形成されるCVTエレメントの加工に用いられるCVTエレメントの加工用治具であって、
前記CVTエレメントの嵌合突起を隣接する別の前記CVTエレメントの嵌合穴に嵌合するように積層された複数の前記CVTエレメントの基準面に当接する当接面、および積層された複数の前記CVTエレメントの一端に位置するCVTエレメントの一対の板面のうち隣接する他のCVTエレメントと当接しない板面に当接する第一押さえ面が形成される第一押さえ部材と、前記第一押さえ部材に着脱可能に固定され、前記第一押さえ部材に固定されたときに積層された複数の前記CVTエレメントの他端に位置するCVTエレメントの一対の板面のうち隣接する他のCVTエレメントと当接しない板面に当接する第二押さえ面が形成される第二押さえ部材と、を具備し、前記第一押さえ面および前記第二押さえ面の一方には前記CVTエレメントの嵌合穴に嵌合可能な治具側嵌合突起が形成され、前記第一押さえ面および前記第二押さえ面の他方には前記CVTエレメントの嵌合突起が嵌合可能な治具側嵌合穴が形成され、前記第一押さえ部材および前記第二押さえ部材の少なくとも一方はCVTエレメントの加工装置に着脱可能に固定されるCVTエレメントの修正用治具と、
研磨面を有する係合突起が形成されたガイド部材と、前記係合突起に係合しつつ前記係合突起の長手方向に摺動可能、かつ複数の前記CVTエレメントを所定の位置に所定の姿勢で保持可能なスライド部材と、を具備し、前記研磨面は前記係合突起の長手方向に平行であり、前記スライド部材が前記係合突起に係合しているとき、前記スライド部材に保持されている複数の前記CVTエレメントのサドル面が前記研磨面に当接するCVTエレメントの仕上げ用治具と、
を具備するものである。
【0012】
請求項2においては、
サドル部および前記サドル部に延設されるとともにCVTリングに係合する係合部を備え、前記サドル部には一対の板面、前記一対の板面の両端部に配置される一対の基準面、および前記係合部が係合した前記CVTリングに当接するサドル面が形成され、前記一対の板面の一方には嵌合突起が形成されるとともに前記一対の板面の他方には嵌合穴が形成されるCVTエレメントを、
前記CVTエレメントの嵌合突起を隣接する別の前記CVTエレメントの嵌合穴に嵌合するように積層された複数の前記CVTエレメントの基準面に当接する当接面、および積層された複数の前記CVTエレメントの一端に位置するCVTエレメントの一対の板面のうち隣接する他のCVTエレメントと当接しない板面に当接する第一押さえ面が形成される第一押さえ部材と、前記第一押さえ部材に着脱可能に固定され、前記第一押さえ部材に固定されたときに積層された複数の前記CVTエレメントの他端に位置するCVTエレメントの一対の板面のうち隣接する他のCVTエレメントと当接しない板面に当接する第二押さえ面が形成される第二押さえ部材と、を具備し、前記第一押さえ面および前記第二押さえ面の一方には前記CVTエレメントの嵌合穴に嵌合可能な治具側嵌合突起が形成され、前記第一押さえ面および前記第二押さえ面の他方には前記CVTエレメントの嵌合突起が嵌合可能な治具側嵌合穴が形成され、前記第一押さえ部材および前記第二押さえ部材の少なくとも一方はCVTエレメントの加工装置に着脱可能に固定されるCVTエレメントの修正用治具と、
研磨面を有する係合突起が形成されたガイド部材と、前記係合突起に係合しつつ前記係合突起の長手方向に摺動可能、かつ複数の前記CVTエレメントを所定の位置に所定の姿勢で保持可能なスライド部材と、を具備し、前記研磨面は前記係合突起の長手方向に平行であり、前記スライド部材が前記係合突起に係合しているとき、前記スライド部材に保持されている複数の前記CVTエレメントのサドル面が前記研磨面に当接するCVTエレメントの仕上げ用治具と、
を具備するCVTエレメントの加工用治具を用いて加工するCVTエレメントの加工方法であって、
積層された複数のCVTエレメントを前記第一押さえ部材に対して所定の位置に所定の姿勢で配置する積層エレメント配置工程と、
前記第二押さえ部材を前記第一押さえ部材に固定し、前記積層された複数のCVTエレメントを前記積層された複数のCVTエレメントの積層方向に押さえることにより、前記積層された複数のCVTエレメントを前記修正用治具に対して所定の位置に所定の姿勢で固定するエレメント固定工程と、
前記積層された複数のCVTエレメントが固定された前記修正用治具をCVTエレメントの加工装置に固定し、前記積層された複数のCVTエレメントのサドル面を同時に修正するサドル面修正工程と、
前記スライド部材に前記複数のCVTエレメントを保持させるエレメント保持工程と、前記スライド部材を前記ガイド部材に係合させる係合工程と、
前記スライド部材を前記ガイド部材に対して所定の摺動方向に摺動させることにより、前記複数のCVTエレメントのサドル面を研磨し、バリを除去するサドル面仕上げ工程と、
を具備するものである。
【0013】
請求項3においては、
サドル部および前記サドル部に延設されるとともにCVTリングに係合する係合部を備え、前記サドル部には一対の板面、前記一対の板面の両端部に配置される一対の基準面、および前記係合部が係合した前記CVTリングに当接するサドル面が形成され、前記一対の板面の一方には嵌合突起が形成されるとともに前記一対の板面の他方には嵌合穴が形成されるCVTエレメントの修正に用いられるCVTエレメントの修正用治具であって、
前記CVTエレメントの嵌合突起を隣接する別の前記CVTエレメントの嵌合穴に嵌合するように積層された複数の前記CVTエレメントの基準面に当接する当接面、および積層された複数の前記CVTエレメントの一端に位置するCVTエレメントの一対の板面のうち隣接する他のCVTエレメントと当接しない板面に当接する第一押さえ面が形成される第一押さえ部材と、
前記第一押さえ部材に着脱可能に固定され、前記第一押さえ部材に固定されたときに積層された複数の前記CVTエレメントの他端に位置するCVTエレメントの一対の板面のうち隣接する他のCVTエレメントと当接しない板面に当接する第二押さえ面が形成される第二押さえ部材と、
を具備し、
前記第一押さえ面および前記第二押さえ面の一方には前記CVTエレメントの嵌合穴に嵌合可能な治具側嵌合突起が形成され、
前記第一押さえ面および前記第二押さえ面の他方には前記CVTエレメントの嵌合突起が嵌合可能な治具側嵌合穴が形成され、
前記第一押さえ部材および前記第二押さえ部材の少なくとも一方はCVTエレメントの加工装置に着脱可能に固定されるものである。
【0014】
請求項4においては、
サドル部および前記サドル部に延設されるとともにCVTリングに係合する係合部を備え、前記サドル部には一対の板面、前記一対の板面の両端部に配置される一対の基準面、および前記係合部が係合した前記CVTリングに当接するサドル面が形成され、前記一対の板面の一方には嵌合突起が形成されるとともに前記一対の板面の他方には嵌合穴が形成されるCVTエレメントの仕上げに用いられるCVTエレメントの仕上げ用治具であって、
研磨面を有する係合突起が形成されたガイド部材と、
前記係合突起に係合しつつ前記係合突起の長手方向に摺動可能、かつ複数の前記CVTエレメントを所定の位置に所定の姿勢で保持可能なスライド部材と、
を具備し、
前記研磨面は前記係合突起の長手方向に平行であり、
前記スライド部材が前記係合突起に係合しているとき、前記スライド部材に保持されている複数の前記CVTエレメントのサドル面が前記研磨面に当接するものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載のCVTエレメントのサドル面加工用治具は、一度に複数のCVTエレメントのサドル面の修正およびバリの除去を行うことが可能である、という効果を奏する。
請求項2に記載のCVTエレメントのサドル面加工方法は、一度に複数のCVTエレメントのサドル面の修正およびバリの除去を行うことが可能である、という効果を奏する。
請求項3に記載のCVTエレメントのサドル面修正用治具は、一度に複数のCVTエレメントのサドル面を修正することが可能である、という効果を奏する。
請求項4に記載のCVTエレメントのサドル面仕上げ用治具は、一度に複数のCVTエレメントのサドル面のバリを除去することが可能である、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係るCVTエレメントの加工用治具の実施の一形態を示す図。
【図2】本発明に係るCVTエレメントの修正用治具の実施の一形態を示す斜視図。
【図3】本発明に係るCVTエレメントの修正用治具の実施の一形態の第二押さえ部材を取り外した状態を示す斜視図。
【図4】(a)本発明に係るCVTエレメントの修正用治具の実施の一形態における第二押さえ部材を示す斜視図、(b)本発明に係るCVTエレメントの修正用治具の実施の一形態における第二押さえ部材を示す左側面図。
【図5】(a)本発明に係るCVTエレメントの修正用治具の実施の一形態を示す要部平面図、(b)本発明に係るCVTエレメントの修正用治具の実施の一形態の第二押さえ部材を取り外した状態を示す要部平面図。
【図6】本発明に係るCVTエレメントの修正用治具の実施の一形態の第二押さえ部材を取り外した状態を示す左側面断面図。
【図7】本発明に係るCVTエレメントの修正用治具の実施の一形態を示す左側面断面図。
【図8】本発明に係るCVTエレメントの仕上げ用治具の実施の一形態を示す斜視図。
【図9】本発明に係るCVTエレメントの仕上げ用治具の実施の一形態におけるベース部材を示す斜視図。
【図10】本発明に係るCVTエレメントの仕上げ用治具の実施の一形態における胴体部材を示す平面図。
【図11】本発明に係るCVTエレメントの仕上げ用治具の実施の一形態におけるスライド側係合部材を示す平面図。
【図12】本発明に係るCVTエレメントの仕上げ用治具の実施の一形態における蓋部材を示す平面図。
【図13】本発明に係るCVTエレメントの仕上げ用治具の実施の一形態における摺動支持部材を示す斜視図。
【図14】本発明に係るCVTエレメントの仕上げ用治具の実施の一形態におけるスライド部材を示す左側面断面図。
【図15】(a)本発明に係るCVTエレメントの仕上げ用治具の実施の一形態におけるスライド部材を示す正面図、(b)本発明に係るCVTエレメントの仕上げ用治具の実施の一形態におけるスライド部材の図15におけるA−A矢視正面断面図。
【図16】本発明に係るCVTエレメントの加工方法の実施の一形態を示すフロー図。
【図17】CVTエレメントの実施の一形態を示す斜視図。
【図18】CVTエレメントの実施の一形態を示す正面図。
【図19】(a)CVTエレメントの実施の一形態を示す左側面図、(b)CVTエレメントの実施の一形態の図18におけるX−X矢視左側面断面図。
【図20】CVTエレメントの実施の一形態を複数個積層した状態を示す左側面断面図。
【図21】CVTエレメントの別実施形態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、図17乃至図20を用いてCVTエレメント1について説明する。
以下のCVTエレメント1の各部の説明では、図17乃至図20中の上下方向、前後方向および左右方向を用いて行うこととする。
なお、図17乃至図20中の上下方向、前後方向および左右方向はCVTエレメント1の各部を説明するために便宜上定められた方向であって、図2乃至図7中の上下方向、前後方向および左右方向、並びに図8乃至図15中の上下方向、前後方向および左右方向とは異なる点に注意を要する。
【0018】
図17乃至図20に示すCVTエレメント1は、本発明に係るCVTエレメントのサドル面加工用治具によるサドル面の加工の対象物であり、本発明に係るCVTエレメントのサドル面加工方法によるサドル面の加工の対象物であり、本発明に係るCVTエレメントのサドル面修正用治具によるサドル面の修正の対象物であり、本発明に係るCVTエレメントのサドル面仕上げ用治具によるサドル面の仕上げ(バリの除去)の対象物である。
【0019】
CVTエレメント1は金属製の板材を出発材とし、当該金属製の板材に打ち抜き加工、外形の修正、表面の仕上げ、熱処理(窒化等の表面処理を含む)等を施すことにより得られる。
図17、図18および図19に示す如く、CVTエレメント1は外側の面として表面1a、裏面1bおよび基準面1c・1cを有する板状の部材である。
表面1aはCVTエレメント1の前面を成す面である。表面1aの上下中途部には段差1dが形成される。図17および図19に示す如く、表面1aのうち段差1dよりも上方となる部分は表面1aのうち段差1dよりも下方となる部分よりも前方に突出している。
図19に示す如く、裏面1bはCVTエレメント1の後面を成す面である。裏面1bは、表面1aのうち段差1dに対応する部分を除いた部分に対して平行な平面である。
【0020】
図17、図18および図19に示す基準面1c・1cはそれぞれ表面1aおよび裏面1bの両側端部に配置されCVTエレメント1の左右側面を成す面であり、CVTエレメント1の製造過程におけるCVTエレメント1の各部の寸法の基準となる面である。
基準面1c・1cはCVTを構成する入力側および出力側の二つのプーリにCVTベルトを巻回したときに当該二つのプーリに形成される溝の壁面に当接する面である。
図17に示す如く、基準面1c・1cは表面1aおよび裏面1bに対して垂直である。また、基準面1c・1cは当該二つのプーリに形成される溝の壁面に極力広い面積で当接するために、正面視でV字状となるように配置される(左側の基準面1cは右下がりであり、右側の基準面1cは左下がりであり、左側の基準面1cの上端部から右側の基準面1cの上端部までの距離は左側の基準面1cの下端部から右側の基準面1cの下端部までの距離よりも大きい)。
【0021】
図17、図18および図19に示す如く、CVTエレメント1はサドル部2および係合部3・3を備える。
【0022】
サドル部2はCVTエレメント1の胴体に相当する部分である。本実施形態では、サドル部2はCVTエレメント1の下半部を成す。
サドル部2の形状は板状である。サドル部2の一対の板面は、それぞれ表面1aの下半部および表面1aの下半部を成す。
【0023】
サドル部2にはサドル面2aが形成される。サドル面2aはサドル部2の上面を成す平面であり、サドル面2aは上下方向に対して垂直(表面1aおよび裏面1bに対して垂直)である。
なお、CVTエレメント1が出発材となる金属製の板材から打ち抜かれた時点では、図19の(b)に示す二点鎖線の如く、サドル面2aは打ち抜き方向(打ち抜き刃の移動方向であり、本実施形態では表面1aおよび裏面1bに対して垂直な方向)に対して平行ではなく、打ち抜き方向に対して所定の角度θ(通常は0.5°〜1.0°程度)を成す。
【0024】
図17、図18および図19に示す如く、本実施形態では、表面1aのうちサドル部2に対応する部分の上下中途部となる位置に段差1dが配置される。
また、表面1aの左右略中央部かつ段差1dよりも下方となる位置には略円柱形状の嵌合突起2bが形成され、裏面1bのうちサドル部2に対応する部分の左右略中央部かつ上下中途部となる位置には嵌合穴2cが形成される。
【0025】
係合部3・3はCVTエレメント1のうちCVTリング10・10(図19参照)に係合する部分である。係合部3・3はそれぞれサドル部2の左上端部および右上端部に延設される。
図17および図18に示す如く、係合部3・3の形状はいずれも鉤爪状であり、互いに左右対称である。より詳細には、サドル部2の左上端部に延設される係合部3(左側の係合部3)の形状はサドル部2の左上端部から上方に伸び、次いで屈曲して右方に伸びた形状であり、サドル部2の右上端部に延設される係合部3(右側の係合部3)の形状はサドル部2の右上端部から上方に伸び、次いで屈曲して左方に伸びた形状である。
左側の係合部3の左側面は左側の基準面1cの上半部を成し、右側の係合部3の右側面は右側の基準面1cの上半部を成す。
【0026】
図18に示す如く、二本のCVTリング10・10はそれぞれ左側の係合部3および右側の係合部3に係合する。CVTリング10は金属製の無端状のリングである。
本実施形態のCVTリング10は、矩形の金属製の板材の対向する一対の端面を溶接して筒状に成形したものを輪切りにすることにより複数の金属製の無端状のリングを成形し、次いで当該複数の金属製の無端状のリングを半径方向に積層することにより得られる。
二本のCVTリング10・10がそれぞれ左側の係合部3および右側の係合部3に係合したとき、サドル面2aはCVTリング10・10の内周面に当接する。
【0027】
図20に示す如く、二つのCVTエレメント1・1のうち、一方のCVTエレメント1の表面1a(の上半部)に他方のCVTエレメント1の裏面1bを当接させたとき、一方のCVTエレメント1の表面1aに形成された嵌合突起2bは他方のCVTエレメント1の裏面1bに形成された嵌合穴2cに嵌合する。
このように、隣り合うCVTエレメント1・1の一方の嵌合突起2bを他方の嵌合穴2cに嵌合させることにより、複数のCVTエレメント1・1・・・を容易に整列した状態(正面視で複数のCVTエレメント1・1・・・が完全に重なる状態)で積層することが可能である。
また、複数のCVTエレメント1・1・・・を積層したときに、各CVTエレメント1が隣接するCVTエレメント1に対して上下方向および左右方向にずれることを防止することが可能である。
【0028】
以下では、図1乃至図16を用いて本発明に係るCVTエレメントの加工用治具の実施の一形態である加工用治具100について説明する。
加工用治具100はCVTエレメント1の加工に用いられる治具である。
図1に示す如く、加工用治具100は修正用治具200および仕上げ用治具300を具備する。
【0029】
以下では図2乃至図7を用いて修正用治具200について説明する。
修正用治具200は本発明に係るCVTエレメントの修正用治具の実施の一形態であり、CVTエレメント1の修正、より厳密にはCVTエレメント1のサドル面2aの修正に用いられる治具である。
ここで、「CVTエレメントのサドル面の修正」とは、厳密にはCVTエレメントのサドル面に研磨を施すことにより、サドル面をサドル部の一対の板面(本実施形態では、表面1aの下半部および表面1aの下半部がこれらの板面に相当する)に対して垂直な状態とすることを指す。
図2に示す如く、修正用治具200は第一押さえ部材210および第二押さえ部材220を具備する。
以下では、図2乃至図7中の上下方向、前後方向および左右方向に基づいて修正用治具200の各部の説明を行う。
図2乃至図7中の上下方向、前後方向および左右方向は互いに垂直である。また、図2乃至図7中の上下方向、前後方向および左右方向は修正用治具200の説明のために便宜上定められた方向であって、図8乃至図15中の上下方向、前後方向および左右方向、並びに図17乃至図20中の上下方向、前後方向および左右方向とは異なる点に注意を要する。
【0030】
第一押さえ部材210は本発明に係る第一押さえ部材の実施の一形態である。
図2および図3に示す如く、第一押さえ部材210はベース部材211、当接部材212、固定ネジ213・213・213・213および位置決めピン214・214を具備する。
【0031】
ベース部材211は第一押さえ部材210の下半部を成す部材である。
ベース部材211は上面、下面、前面、後面、左側面および右側面を有する概ね直方体形状の部材である。
【0032】
ベース部材211には第一ワイヤー通し溝211aが形成される。
第一ワイヤー通し溝211aはベース部材211の前面に開口するとともにベース部材211の上面および下面に達する溝である。
第一ワイヤー通し溝211aの上端部はベース部材211の上面に開口し、第一ワイヤー通し溝211aの下端部はベース部材211の下面に開口する。
図3および図5に示す如く、第一ワイヤー通し溝211aは平面視で左右方向の幅が一定に保持されたままベース部材211の開口部(前端部)から後方に向かって伸び、底部(後端部)において左右方向の幅が大きくなる形状を有する。
【0033】
図3に示す如く、ベース部材211には略円柱形状の治具側嵌合突起211bが形成される。
治具側嵌合突起211bはベース部材211の上面かつ第一ワイヤー通し溝211aの上端部のやや後方となる位置に配置される。
【0034】
当接部材212は第一押さえ部材210の上半部を成す部材である。
図2および図3に示す如く、当接部材212は上面、下面、前面、後面、左側面および右側面を有する概ね直方体形状の部材である。
当接部材212の左側面から右側面までの距離はベース部材211の左側面から右側面までの距離と略同じである。また、当接部材212の前面から後面までの距離はベース部材211の前面から後面までの距離よりも短い。
【0035】
図3および図5に示す如く、当接部材212にはエレメント嵌合溝212aが形成される。
エレメント嵌合溝212aは当接部材212の前面に開口するとともに当接部材212の上面および下面に達する溝である。エレメント嵌合溝212aの上端部は当接部材212の上面に開口し、エレメント嵌合溝212aの下端部は当接部材212の下面に開口する。
エレメント嵌合溝212aは底面212bおよび側面212c・212cを有する。
底面212bはエレメント嵌合溝212aの底を成す面である。底面212bは当接部材212の前面よりも後方となる位置に形成され、当接部材212の前面および後面に対して平行である。
側面212c・212cは当接部材212の前面と底面212bとを繋ぐ平面である。
側面212c・212cは互いに平行ではなく、側面212c・212cの前端部(当接部材212の前面との境界となる端部)間の距離は側面212c・212cの後端部(底面212bとの境界となる端部)間の距離よりも大きい。
【0036】
図3および図5の(a)に示す如く、当接部材212にはネジ孔212dが形成される。
ネジ孔212dは当接部材212の上面から下面まで貫通する孔である。ネジ孔212dの内周面には雌ネジが形成される。
【0037】
図2および図3に示す固定ネジ213・213・213・213は当接部材212をベース部材211に固定するネジである。
固定ネジ213・213・213・213をそれぞれ当接部材212の上面から下面まで貫通する四つの貫通孔に貫装するとともにベース部材211の上面に開口する四つのネジ孔(不図示)に螺装することにより、当接部材212がベース部材211に固定される。
【0038】
固定ネジ213・213・213・213により当接部材212がベース部材211に固定されたとき、当接部材212の下面がベース部材211の上面に当接し、当接部材212の左側面およびベース部材211の左側面、当接部材212の右側面およびベース部材211の右側面、並びに当接部材212の後面およびベース部材211の後面は面一となる(それぞれ段差が無い一つの平面を成す)。
図3および図5に示す如く、当接部材212の前面は平面視でベース部材211の前面よりも後方となる位置に配置され、エレメント嵌合溝212aは平面視で第一ワイヤー通し溝211aよりも後方となる位置に配置される。また、図3に示す如く、治具側嵌合突起211bは平面視で第一ワイヤー通し溝211aの底部(後端部)と底面212bとで挟まれる位置に配置される。
本実施形態では、「ベース部材211の上面のうち当接部材212により覆われていない部分」が本発明に係る第一押さえ面の実施の一形態に相当する。
【0039】
図3および図5に示す如く、位置決めピン214・214は細長い円柱形状の部材である。
位置決めピン214・214は、当接部材212の上面においてエレメント嵌合溝212a(底面212b)よりも後方かつネジ孔212dよりも前方となる位置(エレメント嵌合溝212aとネジ孔212dとで挟まれる位置)に固定される。
当接部材212の上面に固定された位置決めピン214・214の長手方向はいずれも上下方向に対して平行である。また、位置決めピン214・214は互いに左右方向に所定の間隔を空けて配置される。
【0040】
第二押さえ部材220は上面、下面、前面、後面、左側面および右側面を有し、かつ上下方向に薄い概ね直方体形状の部材である。
【0041】
図2および図4に示す如く、第二押さえ部材220には第二ワイヤー通し溝221が形成される。
第二ワイヤー通し溝221は第二押さえ部材220の前面に開口するとともに第二押さえ部材220の上面および下面に達する溝である。
第二ワイヤー通し溝221の上端部は第二押さえ部材220の上面に開口し、第二ワイヤー通し溝221の下端部は第二押さえ部材220の下面に開口する。
図2および図4に示す如く、第二ワイヤー通し溝221は平面視で左右方向の幅が一定に保持されたまま第二押さえ部材220の開口部(前端部)から後方に向かって伸び、底部(後端部)において左右方向の幅が大きくなる形状を有する。
【0042】
第二押さえ部材220の下面には窪み222が形成される。
窪み222は第二押さえ部材220の下面の前後中央部に形成され、第二押さえ部材220の下面に開口するとともに第二押さえ部材220の左側面および右側面に達する。
従って、第二押さえ部材220の下面は、窪み222を挟んで前後に二分割されることとなる。第二押さえ部材220の前側の下面は本発明に係る第二押さえ面の実施の一形態に相当する。
【0043】
第二押さえ部材220には貫通孔223が形成される。
貫通孔223は第二押さえ部材220を上面から下面(厳密には、窪み222の底面)まで上下に貫通する孔であり、第二押さえ部材220の平面視略中央部(前後略中央部かつ左右略中央部)に配置される。
【0044】
第二押さえ部材220には位置決め孔224・224が形成される。
位置決め孔224・224は第二押さえ部材220を上面から下面(厳密には、窪み222の底面)まで上下に貫通する孔であり、前後方向において第二ワイヤー通し溝221の底部(後端部)と貫通孔223とで挟まれる位置に配置される。
また、位置決め孔224・224は互いに左右方向に所定の間隔を空けて配置される。
【0045】
第二押さえ部材220には治具側嵌合穴225が形成される。
治具側嵌合穴225は第二押さえ部材220の前側の下面の左右略中央部に開口する穴である。
【0046】
押さえネジ230は第二押さえ部材220を第一押さえ部材210に固定し、ひいては複数のCVTエレメント1・1・・・を修正用治具200に固定する部材である。
押さえネジ230は専用品でも良いが、市販のネジ等を押さえネジ230として用いても良い。
【0047】
以下では、図2、図5、図6、図7および図16を用いて修正用治具200を用いたCVTエレメント1の修正方法について説明する。
【0048】
図16に示す如く、修正用治具200を用いたCVTエレメント1の修正方法は本発明に係るCVTエレメントの加工方法の実施の一形態の前半部分に相当する。
修正用治具200を用いたCVTエレメント1の修正方法は積層エレメント配置工程S1100、積層エレメント固定工程S1200およびサドル面修正工程S1300を具備する。
【0049】
積層エレメント配置工程S1100は、積層された計五個のCVTエレメント1・1・・・を第一押さえ部材210に対して所定の位置に所定の姿勢で配置する工程である。
より詳細には、積層エレメント配置工程S1100において、まず計五個のCVTエレメント1・1・・・が積層される(図20参照)
次に、図5の(a)および図6に示す如く、積層された計五個のCVTエレメント1・1・・・が第一押さえ部材210のエレメント嵌合溝212aに嵌合される。
【0050】
積層された計五個のCVTエレメント1・1・・・が第一押さえ部材210のエレメント嵌合溝212aに嵌合されたとき、以下の(A)、(B)および(C)の状態が達成される。
(A)図5の(a)に示す如く、積層された計五個のCVTエレメント1・1・・・の基準面1c・1c・・・は、それぞれエレメント嵌合溝212aの側面212c・212cに当接する。
(B)図6に示す如く、積層された計五個のCVTエレメント1・1・・・のうち端となるCVTエレメント1であって表面1aが他のCVTエレメント1と当接しているもの(以下、「最下層のCVTエレメント1」という。)の裏面1bは、「ベース部材211の上面のうち当接部材212により覆われていない部分」に当接する。
(C)図6に示す如く、治具側嵌合突起211bは、最下層のCVTエレメント1の嵌合穴2cに嵌合する。
【0051】
上記(A)および(C)の状態が達成されることにより、第一押さえ部材210に対する積層された計五個のCVTエレメント1・1・・・の前後方向および左右方向の位置が一義的に定まる。
また、上記(A)の状態が達成されることにより、第一押さえ部材210に対する上下方向の軸を中心とする計五個のCVTエレメント1・1・・・の回転(姿勢の変更)が規制される。
上記(B)の状態が達成されることにより、第一押さえ部材210に対する積層された計五個のCVTエレメント1・1・・・の上下方向の位置が一義的に定まるとともに、水平面に平行な軸を中心とする計五個のCVTエレメント1・1・・・の回転(姿勢の変更)が規制される。
このように、上記(A)、(B)および(C)の状態が達成されることにより、積層された計五個のCVTエレメント1・1・・・の第一押さえ部材210に対する位置および姿勢(向き)は一義的に定まる。
【0052】
積層エレメント配置工程S1100が終了したら、積層エレメント固定工程S1200に移行する。
【0053】
エレメント固定工程1200は、第二押さえ部材220を第一押さえ部材210に固定し、積層された計五個のCVTエレメント1・1・・・をCVTエレメント1・1・・・の積層方向に押さえることにより、積層された計五個のCVTエレメント1・1・・・を第一押さえ部材210、ひいては修正用治具200に対して所定の位置に所定の姿勢で固定する工程である。
より詳細には、エレメント固定工程1200において、まず、図7に示す如く、第二押さえ部材220の位置決め孔224・224にそれぞれ第一押さえ部材210の位置決めピン214・214を貫装する。
次に、積層された計五個のCVTエレメント1・1・・・のうち端となるCVTエレメント1であって裏面1bが他のCVTエレメント1と当接しているもの(以下、「最上層のCVTエレメント1」という。)の表面1aに第二押さえ部材220の前側の下面を当接させるとともに、第一押さえ部材210の当接部材212の上面に第二押さえ部材220の後側の下面を当接させる。
続いて、押さえネジ230を第二押さえ部材220の貫通孔223に貫装し、押さえネジ230を第一押さえ部材210の当接部材212に形成されたネジ孔212dに螺装して締め付けることにより、第二押さえ部材220を第一押さえ部材210に固定する。
【0054】
本実施形態では、第二押さえ部材220が第一押さえ部材210に固定されたとき、上記(A)、(B)および(C)に加えて、以下の(D)および(E)の状態が達成される。
(D)第二押さえ部材220は第二押さえ部材220の後側の下面を支点、貫通孔223(押さえネジ230が貫装される部分)を力点、第二押さえ部材220の前側の下面を作用点とする梃子と同様に動作し、第二押さえ部材220の前側の下面が最上層のCVTエレメント1の表面1aに当接する。
このとき、積層された計五個のCVTエレメント1・1・・・の厚さの合計(表面1aから裏面1bまでの距離を五倍したもの)は当接部材212の上下方向の厚さよりも僅かに大きく、かつ第二押さえ部材220の下面の前後中途部には窪みが形成されるので、押さえネジ230による締め付け力は第二押さえ部材220の前側の下面および第二押さえ部材220の後側の下面にのみ作用し、積層された計五個のCVTエレメント1・1・・・は第二押さえ部材220により下方向(CVTエレメント1・1・・・の積層方向)に押し付けられることとなる。
(E)最上層のCVTエレメント1の嵌合突起2bは、第二押さえ部材220の前側の下面に形成された治具側嵌合穴225に嵌合する。
【0055】
上記(D)の状態が達成されることにより、積層された計五個のCVTエレメント1・1・・・の上下方向の移動が規制される。
上記(D)および(E)の状態が達成されることにより、最下層のCVTエレメント1に形成された嵌合穴2cへの治具側嵌合突起211bの嵌合、隣り合うCVTエレメント1・1のうち上側のCVTエレメント1に形成された嵌合穴2cへの下側のCVTエレメント1に形成された嵌合突起2bの嵌合、治具側嵌合穴225への最上層のCVTエレメント1に形成された嵌合突起2bの嵌合、ならびに積層された計五個のCVTエレメント1・1・・・の基準面1c・1c・・・のエレメント嵌合溝212aの側面212c・212cへの当接が保持される。その結果、積層された計五個のCVTエレメント1・1・・・の前後方向および左右方向への移動、並びに計五個のCVTエレメント1・1・・・の姿勢変更が規制される。
このように、上記(A)、(B)、(C)、(D)および(E)の状態が達成されることにより、積層された計五個のCVTエレメント1・1・・・が第一押さえ部材210、ひいては修正用治具200に対して所定の位置に所定の姿勢で固定される。
【0056】
積層エレメント固定工程S1200が終了したら、サドル面修正工程S1300に移行する。
【0057】
サドル面修正工程S1300は、積層エレメント固定工程S1200において積層された計五個のCVTエレメント1・1・・・が固定された修正用治具200をCVTエレメント1の加工装置(本実施形態では、ワイヤー式の放電加工機)に固定し、積層された計五個のCVTエレメント1・1・・・のサドル面2a・2a・・・を同時に修正する(放電加工によりサドル面2a・2a・・・をCVTエレメント1・1・・・の表面1a・1a・・・および裏面1b・1b・・・に対して垂直な状態とする)工程である。
【0058】
図7に示す如く、積層エレメント固定工程S1200が終了した時点では、積層された計五個のCVTエレメント1・1・・・のサドル面2a・2a・・・は揃っている(計五個のCVTエレメント1・1・・・のサドル面2a・2a・・・がいずれも修正用治具200の前方を向いており、かつ、修正用治具200の前後方向および左右方向の位置(座標)が同じである)。
また、図5の(a)および(b)に示す如く、積層エレメント固定工程S1200が終了した時点では、積層された計五個のCVTエレメント1・1・・・のサドル面2a・2a・・・は、第一ワイヤー通し溝211aの底(後端部)および第二ワイヤー通し溝221の底(後端部)のいずれよりも前方となる位置に配置される。
従って、放電加工機のワイヤーの長手方向と修正用治具200の上下方向とが平行となるように修正用治具200を放電加工機に固定し、放電加工機のワイヤーを第一ワイヤー通し溝211aおよび第二ワイヤー通し溝221に通すことにより、放電加工機のワイヤーを(修正用治具200に当接させることなく)CVTエレメント1・1・・・の表面1a・1a・・・および裏面1b・1b・・・に対して垂直な姿勢でサドル面2a・2a・・・に同時に当接させることが可能であり、ひいてはサドル面2a・2a・・・を同時に修正(切削)することが可能である。
放電加工機によるサドル面2a・2a・・・の修正が終了したら、修正用治具200を放電加工機から取り外し、次いで押さえネジ230を緩めることにより計五個のCVTエレメント1・1・・・を修正用治具200から取り外す。
このようにして、サドル面2a・2a・・・が修正された計五個のCVTエレメント1・1・・・が得られる。
【0059】
以上の如く、修正用治具200は、
サドル部2およびサドル部2に延設されるとともにCVTリング10・10に係合する係合部3・3を備え、サドル部2には一対の板面(本実施形態では、表面1aおよび裏面1cのうちサドル部2に対応する部分が一対の板面に相当する)、当該一対の板面の両端部に配置される一対の基準面1c・1c、および係合部3・3が係合したCVTリング10・10に当接するサドル面2aが形成され、一対の板面の一方(本実施形態では、表面1aのうちサドル部2に対応する部分)には嵌合突起2bが形成されるとともに一対の板面の他方(本実施形態では、裏面1bのうちサドル部2に対応する部分)には嵌合穴2cが形成されるCVTエレメント1の修正に用いられるCVTエレメントの修正用治具であって、
CVTエレメント1の嵌合突起2bを隣接する別のCVTエレメント1の嵌合穴2cに嵌合するように積層された複数のCVTエレメント1・1・・・の基準面1c・1c・・・に当接する当接面(本実施形態では、当接部材212に形成されたエレメント嵌合溝212aの側面212c・212cが当接面に相当する)、および積層された複数のCVTエレメント1・1・・・の一端に位置するCVTエレメント1の一対の板面のうち隣接する他のCVTエレメント1と当接しない板面(本実施形態では、最下層のCVTエレメント1の裏面1b)に当接する第一押さえ面(本実施形態では、ベース部材211の上面のうち当接部材212により覆われていない部分が第一押さえ面に相当する)形成される第一押さえ部材210と、
第一押さえ部材210に着脱可能に固定され、第一押さえ部材210に固定されたときに積層された複数のCVTエレメント1・1・・・の他端に位置するCVTエレメント1の一対の板面のうち隣接する他のCVTエレメント1と当接しない板面(本実施形態では、最上層のCVTエレメント1の表面1a)に当接する第二押さえ面(本実施形態では、第二押さえ部材220の前側の下面が第二押さえ面に相当する)が形成される第二押さえ部材220と、
を具備し、
第一押さえ面および第二押さえ面の一方(本実施形態では、第一押さえ面)にはCVTエレメント1の嵌合穴2cに嵌合可能な治具側嵌合突起211bが形成され、
第一押さえ面および第二押さえ面の他方(本実施形態では、第二押さえ面)にはCVTエレメント1の嵌合突起2bが嵌合可能な治具側嵌合穴225が形成され、
第一押さえ部材210および第二押さえ部材220の少なくとも一方(本実施形態では、第一押さえ部材210および第二押さえ部材220の両方)はCVTエレメント1の加工装置(本実施形態では、ワイヤー式の放電加工機)に着脱可能に固定される。
このように構成することは、以下の利点を有する。
すなわち、修正用治具200は複数の(本実施形態では計五個の)CVTエレメント1・1・・・のサドル面2a・2a・・・を揃えて固定することが可能であるため、修正用治具200で複数のCVTエレメント1・1・・・を固定した状態で修正用治具200をCVTエレメント1の加工装置に固定することにより、一度に複数のCVTエレメント1・1・・・のサドル面2a・2a・・・を同時に修正することが可能である。
従って、修正用治具200を用いれば、CVTエレメント1のサドル面2aを修正する作業の効率が良い(作業に要する時間が短く、労力が小さい)。
また、CVTエレメント1のサドル面2aが修正されることにより、CVTベルトの耐久性の向上(長寿命化)に寄与する。
【0060】
本実施形態では第一押さえ部材210の第一押さえ面に治具側嵌合突起211bが形成され、第二押さえ部材220の第二押さえ面に治具側嵌合穴225が形成されるが、本発明はこれに限定されない。すなわち、第一押さえ部材の第一押さえ面に治具側嵌合穴が形成され、第二押さえ部材の第二押さえ面に治具側嵌合突起が形成されていても良い。
【0061】
以下では図8乃至図15を用いて仕上げ用治具300について説明する。
仕上げ用治具300は本発明に係るCVTエレメントの仕上げ用治具の実施の一形態であり、CVTエレメント1の仕上げ、より厳密にはCVTエレメント1のサドル面2aに残留するバリの除去に用いられる治具である。
図8に示す如く、仕上げ用治具300はガイド部材310およびスライド部材320を具備する。
以下では、図8乃至図15中の上下方向、前後方向および左右方向に基づいて仕上げ用治具300の各部の説明を行う。
図8乃至図15中の上下方向、前後方向および左右方向は互いに垂直である。また、図8乃至図15における上下方向、前後方向および左右方向は仕上げ用治具300の説明のために便宜上定められた方向であって、図2乃至図7中の上下方向、前後方向および左右方向、並びに図17乃至図20中の上下方向、前後方向および左右方向とは異なる点に注意を要する。
【0062】
ガイド部材310は本発明に係るガイド部材の実施の一形態である。
図8および図9に示す如く、ガイド部材310はベース部材311、ガイド側係合部材312およびラッピングフィルム313を具備する。
【0063】
ベース部材311はガイド部材310の下半部を成す部材である。ベース部材311は上面、下面、前面、後面、左側面および右側面を有し、概ね前後方向に長い直方体形状の部材である。
ベース部材311の上面の左右略中央部には前後方向に延びた凸条311aが形成される。凸条311aにより、ベース部材311の上面は左右に二分割される。
【0064】
ガイド側係合部材312は上面、下面、前面、後面、左側面および右側面を有し、前後方向に長く上下方向に薄い板状の部材である。
ガイド側係合部材312の前後方向の長さはベース部材311の前後方向の長さと略同じである。ガイド側係合部材312の幅(左右方向の長さ)はベース部材311の幅より狭く、かつ凸条311aの幅より広い。
ガイド側係合部材312はネジ(不図示)によりベース部材311の凸条311aの上面に固定される。ガイド側係合部材312が凸条311aの上面に固定されたとき、ガイド側係合部材312の前面および後面はそれぞれベース部材311の前面および後面と面一である(平行かつ前後方向の位置が一致する)。また、ガイド側係合部材312の左側面は凸条311aの左側面よりも左方に突出し、ガイド側係合部材312の右側面は凸条311aの右側面よりも左方に突出する。
本実施形態では、ベース部材311の凸条311aおよびガイド側係合部材312を合わせたものが本発明に係る係合突起の実施の一形態に相当する。
【0065】
ラッピングフィルム313は酸化アルミニウムあるいはシリコンカーバイド等の研磨粒子が表面にコーティングされた樹脂製のフィルムである。ラッピングフィルム313はガイド側係合部材312の上面に貼り付けられる。ラッピングフィルム313の上面はCVTエレメント1のサドル面2aを研磨する面であり、本発明に係る研磨面の実施の一形態に相当する。
本実施形態ではラッピングフィルム313の上面がガイド部材310の研磨面を成すが、本発明はこれに限定されない。すなわち、紙ヤスリや金属製のヤスリ等、CVTエレメントのサドル面を研磨し得るものは本発明に係る研磨面を成すことが可能である。
【0066】
スライド部材320は本発明に係るスライド部材の実施の一形態である。
図8、図14および図15に示す如く、スライド部材320は胴体部材321、スライド側係合部材322・322、蓋部材323、計五個の摺動支持部材324・324・・・および計五個の付勢部材325・325・・・を具備する。
【0067】
図8、図10、図14および図15に示す胴体部材321はスライド部材320の主たる構造体を成す部材である。胴体部材321は上面、下面、前面、後面、左側面および右側面を有し、前後方向にやや長い概ね直方体形状の部材である。胴体部材321の幅(左右方向の長さ)はガイド部材310のベース部材311の幅と同じである。
【0068】
図8、図14および図15に示す如く、胴体部材321の下面には退避溝321aが形成される。退避溝321aは左側壁面、右側壁面および底面を有し、正面視で横長の長方形状の断面を成す溝である。
退避溝321aは胴体部材321の下面に開口するとともに胴体部材321の前面および後面に達する。退避溝321aの前端部は胴体部材321の前面に開口し、退避溝321aの後端部は胴体部材321の後面に開口する。
図15の(a)および(b)に示す如く、退避溝321aの幅(左右方向の長さ)はガイド側係合部材312の幅よりも大きく、退避溝321aの深さ(上下方向の長さ)はガイド側係合部材312の厚み(上下方向の長さ)よりも大きい。
退避溝321aにより、胴体部材321の下面は左右に二分割される。
【0069】
図10、図14および図15に示す如く、胴体部材321には計五つのエレメント摺動溝321b・321b・・・が形成される。
計五つのエレメント摺動溝321b・321b・・・は、いずれもCVTエレメント1を摺動可能に収容する溝である。図10および図14に示す如く、計五つのエレメント摺動溝321b・321b・・・は、前後方向に等間隔で並ぶように配置される。
本実施形態では計五つのエレメント摺動溝321b・321b・・・は互いに同じ形状であることから、以下では計五つのエレメント摺動溝321b・321b・・・のうちの一つのエレメント摺動溝321bについて説明する。
【0070】
エレメント摺動溝321bは前壁面、後壁面、左壁面および右壁面を有し、胴体部材321の上面から下面(厳密には、胴体部材321の左側の下面から退避溝321aの左側壁面、底面および右側壁面を経て胴体部材321の右側の下面まで跨る形で)開口する。
図10に示す如く、エレメント摺動溝321bの平面視形状は左右方向に長く前後方向に短い長方形状である。
図14に示す如く、エレメント摺動溝321bの厚み(前後方向の長さ)はCVTエレメント1の厚み(表面1aのうち係合部3・3に対応する部分から裏面1bまでの距離)よりもわずかに大きい。
また、図15の(b)に示す如く、エレメント摺動溝321bの幅(左右方向の長さ)はCVTエレメント1の幅(一対の基準面1c・1cの係合部3・3側の端部間の距離)よりも大きい。
【0071】
図10、図14および図15に示す如く、胴体部材321には計五つの突起摺動溝321c・321c・・・が形成される。
本実施形態では計五つの突起摺動溝321c・321c・・・は互いに同じ形状であることから、以下では計五つの突起摺動溝321c・321c・・・うちの一つの突起摺動溝321cについて説明する。
突起摺動溝321cは前壁面、左壁面および右壁面を有し、エレメント摺動溝321bの前壁面に開口するとともに胴体部材321の上面および下面(厳密には退避溝321aの底面)に達する。突起摺動溝321cの上端部は胴体部材321の上面に開口し、突起摺動溝321cの下端部は胴体部材321の下面(厳密には退避溝321aの底面)に開口する。突起摺動溝321cにより、エレメント摺動溝321bの前壁面は左右に二分割される。突起摺動溝321cの平面視形状は概ね左右方向に長い長方形状である。
図14に示す如く、突起摺動溝321cの深さ(前後方向の長さ)はCVTエレメント1の嵌合突起2bの突出量(表面1aのうち係合部3・3に対応する部分から嵌合突起2bの頂面までの距離)よりもわずかに大きい。
また、図15の(a)に示す如く、突起摺動溝321cの幅(左右方向の長さ)はCVTエレメント1の嵌合突起2bの幅(外径)よりも大きい。
【0072】
図14に示す如く、エレメント摺動溝321bにCVTエレメント1が収容されたとき、CVTエレメント1の表面1aのうち係合部3・3に対応する部分はエレメント摺動溝321bの前壁面に当接し、CVTエレメント1の裏面1bはエレメント摺動溝321bの後壁面に当接する。
従って、エレメント摺動溝321bにCVTエレメント1が収容されたとき、CVTエレメント1の前後方向の移動は規制されるが、上下方向の移動(摺動)は許容される。
【0073】
また、エレメント摺動溝321bにCVTエレメント1が収容されたとき、CVTエレメント1の嵌合突起2bは突起摺動溝321cに嵌合する。
突起摺動溝321cの長手方向は上下方向に対して平行であるため、嵌合突起2bが突起摺動溝321cに嵌合することに起因してエレメント摺動溝321bに収容されたCVTエレメント1の上下方向の移動が阻害されることはない。
【0074】
図10に示す如く、胴体部材321には計四つのネジ孔321d・321d・・・が形成される。計四つのネジ孔321d・321d・・・はそれぞれ胴体部材321の四隅(左前部、右前部、左後部および右後部)において胴体部材321の上面から下面まで貫通する孔であり、その内周面には雌ネジが形成される。
【0075】
図8、図11、図14および図15に示すスライド側係合部材322・322は上面、下面、前面、後面、左側面および右側面を有し、前後方向に長く、上下方向に薄い板状の部材である。
スライド側係合部材322・322の前後方向の長さは胴体部材321の前後方向の長さと同じである。スライド側係合部材322・322の幅(左右方向の長さ)は胴体部材321の左側の下面および右側の下面よりも大きく、かつベース部材311の左側の上面および右側の上面よりもわずかに小さい。スライド側係合部材322・322の厚み(上下方向の長さ)はベース部材311の凸条311aの高さ(上下方向の長さ)よりもわずかに小さい。
【0076】
図11に示す如く、左側のスライド側係合部材322には貫通孔322a・322aが形成される。貫通孔322a・322aはそれぞれ左側のスライド側係合部材322の前端部および後端部において胴体部材321の上面から下面まで貫通する孔であり、左側のスライド側係合部材322の上面から下面に向かって拡径している。
【0077】
二本の皿ネジ(不図示)をそれぞれ左側のスライド側係合部材322に形成された貫通孔322a・322aに貫装し、次いで胴体部材321の左側の下面に開口しているネジ孔321d・321dに螺装することにより、左側のスライド側係合部材322が胴体部材321の左側の下面に固定される。
図14および図15の(b)に示す如く、左側のスライド側係合部材322が胴体部材321の左側の下面に固定されたとき、左側のスライド側係合部材322の前面、後面および左側面はそれぞれ胴体部材321の前面、後面および左側面と面一となる。
【0078】
図11に示す如く、左側のスライド側係合部材322には、計五つのエレメント摺動溝322b・322b・・・が形成される。
左側のスライド側係合部材322に形成される計五つのエレメント摺動溝322b・322b・・・は、前後方向に等間隔で並ぶように配置される。
本実施形態では左側のスライド側係合部材322に形成される計五つのエレメント摺動溝322b・322b・・・は互いに同じ形状であることから、以下では左側のスライド側係合部材322に形成される計五つのエレメント摺動溝322b・322b・・・のうちの一つのエレメント摺動溝322bについて説明する。
【0079】
図11に示す如く、左側のスライド側係合部材322に形成されるエレメント摺動溝322bは前壁面、後壁面、および左壁面を有し、左側のスライド側係合部材322の右側面に開口するとともに左側のスライド側係合部材322の上面および下面に達する。
左側のスライド側係合部材322が胴体部材321の左側の下面に固定されたとき、左側のスライド側係合部材322に形成されるエレメント摺動溝322bの前壁面、後壁面および左壁面はそれぞれ胴体部材321に形成されたエレメント摺動溝321bの前壁面、後壁面および左壁面と面一となる。
【0080】
図11に示す如く、右側のスライド側係合部材322には貫通孔322a・322aが形成される。貫通孔322a・322aはそれぞれ右側のスライド側係合部材322の前端部および後端部において胴体部材321の上面から下面まで貫通する孔であり、右側のスライド側係合部材322の上面から下面に向かって拡径している。
【0081】
二本の皿ネジ(不図示)をそれぞれ右側のスライド側係合部材322に形成された貫通孔322a・322aに貫装し、次いで胴体部材321の右側の下面に開口しているネジ孔321d・321dに螺装することにより、右側のスライド側係合部材322が胴体部材321の右側の下面に固定される。
右側のスライド側係合部材322が胴体部材321の右側の下面に固定されたとき、右側のスライド側係合部材322の前面、後面および右側面はそれぞれ胴体部材321の前面、後面および右側面と面一となる。
図11に示す如く、右側のスライド側係合部材322には、計五つのエレメント摺動溝322b・322b・・・が形成される。
右側のスライド側係合部材322に形成される計五つのエレメント摺動溝322b・322b・・・は、前後方向に等間隔で並ぶように配置される。
本実施形態では右側のスライド側係合部材322に形成される計五つのエレメント摺動溝322b・322b・・・は互いに同じ形状であることから、以下では右側のスライド側係合部材322に形成される計五つのエレメント摺動溝322b・322b・・・のうちの一つのエレメント摺動溝322bについて説明する。
【0082】
図11に示す如く、右側のスライド側係合部材322に形成されるエレメント摺動溝322bは前壁面、後壁面、および右壁面を有し、右側のスライド側係合部材322の左側面に開口するとともに右側のスライド側係合部材322の上面および下面に達する。
図14および図15の(b)に示す如く、右側のスライド側係合部材322が胴体部材321の右側の下面に固定されたとき、右側のスライド側係合部材322に形成されるエレメント摺動溝322bの前壁面、後壁面および右壁面はそれぞれ胴体部材321に形成されたエレメント摺動溝321bの前壁面、後壁面および右壁面と面一となる。
【0083】
図8、図12、図14および図15に示す如く、蓋部材323は上面、下面、前面、後面、左側面および右側面を有し、上下方向に薄い板状の部材である。
蓋部材323の前後方向の長さは胴体部材321の前後方向の長さと同じである。蓋部材323の幅(左右方向の長さ)は胴体部材321の幅と同じである。
【0084】
図12に示す如く、蓋部材323には計五つのピン支持孔323a・323a・・・が形成される。計五つのピン支持孔323a・323a・・・はいずれも蓋部材323の上面から下面まで貫通する孔である。
【0085】
蓋部材323には計四つの貫通孔323b・323b・・・が形成される。計四つの貫通孔323b・323b・・・はいずれも蓋部材323の上面から下面まで貫通する孔であり、それぞれ蓋部材323の四隅(左前部、右前部、左後部および右後部)に形成される。
【0086】
図8に示す如く、蓋部材323の計四つの貫通孔323b・323b・・・に計四つの固定ネジ326・326・・・をそれぞれ貫装し、次いで胴体部材321に形成された計四つのネジ孔321d・321d・・・(図10参照)に螺装することにより、蓋部材323は胴体部材321の上面に固定される。
図14に示す如く、蓋部材323が胴体部材321の上面に固定されたとき、ピン支持孔323a・323a・・・の下端部はそれぞれ胴体部材321に形成されたエレメント摺動溝321b・321b・・・に対向する位置(平面視でエレメント摺動溝321b・321b・・・に重なる位置)に配置される。
【0087】
図13、図14および図15の(b)に示す摺動支持部材324は、エレメント摺動溝321bに収容されたCVTエレメント1を支持することによりCVTエレメント1の姿勢を安定させるとともにエレメント摺動溝321b内におけるCVTエレメント1を上下方向に円滑に摺動させるための部材である。
図13に示す如く、摺動支持部材324は摺接部材324aおよびピン324bを具備する。図14および図15の(b)に示す如く、摺動支持部材324はエレメント摺動溝321bに収容される。
【0088】
図13に示す如く、摺接部材324aは前面、後面、上端面、下端面、左側端面および右側端面を有し、前後方向に薄い概ね長方形状の板材である。
図14に示す如く、摺接部材324aの厚み(前後方向の長さ)はエレメント摺動溝321bの厚みよりもわずかに小さい。また、図15の(b)に示す如く、摺接部材324aの幅(左右方向の長さ)はエレメント摺動溝321bの幅よりもわずかに小さい。
従って、摺動支持部材324がエレメント摺動溝321bに収容されたとき、摺動支持部材324の前後方向および左右方向の移動および姿勢変更(上下方向、前後方向および左右方向に平行な軸を中心とする回転)は規制されるとともに、摺動支持部材324の上下方向の移動(摺動)は許容される。
【0089】
図13に示す如く、摺接部材324aにはエレメント嵌合溝324cが形成される。
エレメント嵌合溝324cは摺動支持部材324にCVTエレメント1を嵌合するための溝であり、摺接部材324aの下端面に開口するとともに摺接部材324aの前面から後面まで達する。
エレメント嵌合溝324cは底面324dおよび当接面324e・324eを有する。
【0090】
底面324dはエレメント嵌合溝324cの底を成す面である。底面324dは摺接部材324aの上端面および下端面に平行であり、上下方向において摺接部材324aの上端面および下端面で挟まれる位置に配置される。
当接面324e・324eは底面324dの端部と摺接部材324aの下端面とを繋ぐ平面である。当接面324e・324eは互いに平行ではなく、当接面324e・324eの上端部(底面324dとの境界部)間の距離は当接面324e・324eの下端部(摺接部材324aの下端面との境界部)間の距離よりも短い。
エレメント嵌合溝324cにより、摺接部材324aの下端面は左右に二分割される。
【0091】
図15の(b)に示す如く、摺動支持部材324がエレメント摺動溝321bに収容されるとともにCVTエレメント1が摺接部材324aのエレメント嵌合溝324cに嵌合されたとき、CVTエレメント1の基準面1c・1cがそれぞれ当接面324e・324eに当接するとともにCVTエレメント1は底面324dに当接しないので、CVTエレメント1の左右方向の移動および姿勢変更(前後方向に平行な軸を中心とする回転)は規制される。
その結果、CVTエレメント1の摺動支持部材324に対する姿勢、ひいてはCVTエレメント1の胴体部材321に対する姿勢が安定する。
【0092】
図13に示す如く、ピン324bはその軸線方向が上下方向に対して平行となる円柱形状の部材である。ピン324bの下端部は摺接部材324aの上端面の左右略中央かつ前後略中央となる位置に固定される。
図14および図15の(b)に示す如く、摺動支持部材324がエレメント摺動溝321bに収容されたとき、ピン324bは蓋部材323に形成されたピン支持孔323aに上下方向に摺動可能に嵌装される。
【0093】
図14および図15の(b)に示す如く、付勢部材325・325・・・はそれぞれ対応する摺動支持部材324・324・・・を下方に付勢する部材である。
本実施形態の付勢部材325は巻きバネであり、ピン324bに外嵌される。ピン324bに外嵌された付勢部材325の上端部は蓋部材323の下面に当接し、付勢部材325の下端部は摺接部材324aの上端面に当接する。
付勢部材325の弾性力により、エレメント摺動溝321bに収容された摺動支持部材324、ひいてはエレメント嵌合溝324cに嵌合されたCVTエレメント1は下方に付勢される。
【0094】
図15の(a)および(b)に示す如く、左側のスライド側係合部材322のうち退避溝321aの左側壁面よりも右方に突出している部分をベース部材311の左側の上面、凸条311aの左側面およびガイド側係合部材312の下面の左端部で囲まれる空間に進入させるとともに、右側のスライド側係合部材322のうち退避溝321aの右側壁面よりも左方に突出している部分をベース部材311の右側の上面、凸条311aの右側面およびガイド側係合部材312の下面の右端部で囲まれる空間に進入させることにより、スライド部材320がガイド部材310に前後方向に摺動可能に係合する。
スライド部材320がガイド部材310に係合しているとき、エレメント摺動溝321bに収容されたCVTエレメント1は付勢部材325の弾性力により下方に付勢され、CVTエレメント1のサドル面2aはガイド側係合部材312の上面に貼り付けられたラッピングフィルム313の上面、すなわちガイド部材310の研磨面に所定の力で押し付けられる形で当接する。
ガイド部材310の研磨面はスライド側係合部材322の長手方向、すなわちスライド部材320の摺動方向に対して平行である。
従って、スライド部材320をガイド部材310に対して前後方向に摺動させると、計五個のCVTエレメント1・1・・・のサドル面2a・2a・・・はいずれもガイド部材310の研磨面により研磨され、サドル面2a・2a・・・に残留するバリが除去される。
【0095】
以下では、図8、図14および図16を用いて仕上げ用治具300を用いたCVTエレメント1の仕上げ方法について説明する。
【0096】
図16に示す如く、仕上げ用治具300を用いたCVTエレメント1の仕上げ方法は本発明に係るCVTエレメントの加工方法の実施の一形態の後半部分に相当する。
仕上げ用治具300を用いたCVTエレメント1の仕上げ方法はエレメント保持工程S1400、係合工程S1500およびサドル面仕上げ工程S1600を具備する。
【0097】
エレメント保持工程S1400はスライド部材320に計五個のCVTエレメント1・1・・・を保持させる工程である。
本実施形態では、図14に示す如く計五個のCVTエレメント1・1・・・をそれぞれエレメント摺動溝321b・321b・・・に収容することにより、計五個のCVTエレメント1・1・・・がスライド部材320に対して所定の位置に所定の姿勢で保持される。
エレメント保持工程S1400が終了したら、係合工程S1500に移行する。
【0098】
係合工程S1500は図8に示す如くスライド部材320をガイド部材310に係合させる工程である。
係合工程S1500が終了したら、サドル面仕上げ工程S1600に移行する。
【0099】
サドル面仕上げ工程S1600はスライド部材320をガイド部材310に対して前後方向に摺動させることにより、計五個のCVTエレメント1・1・・・のサドル面2a・2a・・・を研磨し、バリを除去する工程である。
サドル面仕上げ工程S1600が終了したら、スライド部材320をガイド部材310から取り外し、次いでエレメント摺動溝321b・321b・・・に収容された計五個のCVTエレメント1・1・・・を取り出す。
このようにして、サドル面2aのバリが除去された計五個のCVTエレメント1・1・・・が得られる。
【0100】
以上の如く、仕上げ用治具300は、
CVTエレメント1の仕上げに用いられるCVTエレメントの仕上げ用治具であって、
研磨面(本実施形態では、ラッピングフィルム313の上面が研磨面に相当する)を有する係合突起(本実施形態では、ベース部材311の凸条311aおよびガイド側係合部材312を合わせたものが係合突起に相当する)が形成されたガイド部材310と、
係合突起に係合しつつ係合突起の長手方向(本実施形態では、仕上げ用治具300の前後方向)に摺動可能、かつ複数のCVTエレメント1・1・・・を所定の位置に所定の姿勢で保持可能なスライド部材320と、
を具備し、
研磨面は係合突起の長手方向に平行であり、
スライド部材320が係合突起に係合しているとき、スライド部材320に保持されている複数のCVTエレメント1・1・・・のサドル面2a・2a・・・が研磨面に当接する。
このように構成することにより、仕上げ用治具300を用いれば、複数の(本実施形態では計五個の)CVTエレメント1・1・・・のサドル面2a・2a・・・を同時に研磨し、ひいてはサドル面2a・2a・・・に残ったバリを除去することが可能である。
従って、CVTエレメント1のサドル面2aに残ったバリを除去する作業の効率が良い(作業に要する時間が短く、労力が小さい)。
また、CVTエレメント1のサドル面2aに残ったバリが除去されることにより、CVTベルトの耐久性の向上(長寿命化)に寄与する。
【0101】
以上の如く、加工用治具100は、
修正用治具200と、
仕上げ用治具300と、
を具備する。
このように構成することにより、加工用治具100を用いれば、CVTエレメント1のサドル面2aを修正する作業およびCVTエレメント1のサドル面2aに残ったバリを除去する作業の効率が良い(作業に要する時間が短く、労力が小さい)。
また、CVTエレメント1のサドル面2aが修正され、CVTエレメント1のサドル面2aに残ったバリが除去されることにより、CVTベルトの耐久性の向上(長寿命化)に寄与する。
【0102】
以上の如く、本発明に係るCVTエレメントの加工方法の実施の一形態は、
修正用治具200と、
仕上げ用治具300と、
を具備する加工用治具100を用いてCVTエレメント1を加工する方法であって、
積層された計五個のCVTエレメント1・1・・・を第一押さえ部材210に対して所定の位置に所定の姿勢で配置する積層エレメント配置工程S1100と、
第二押さえ部材220を第一押さえ部材210に固定し、積層された計五個のCVTエレメント1・1・・・をCVTエレメント1・1・・・の積層方向に押さえることにより、積層された計五個のCVTエレメント1・1・・・を修正用治具200に対して所定の位置に所定の姿勢で固定するエレメント固定工程1200と、
積層された計五個のCVTエレメント1・1・・・が固定された修正用治具200をCVTエレメント1の加工装置(本実施形態では、ワイヤー式の放電加工機)に固定し、積層された計五個のCVTエレメント1・1・・・のサドル面2a・2a・・・を同時に修正するサドル面修正工程S1300と、
スライド部材320に計五個のCVTエレメント1・1・・・を保持させるエレメント保持工程S1400と、
スライド部材320をガイド部材310に係合させる係合工程S1500と、
スライド部材320をガイド部材310に対して所定の摺動方向(本実施形態では前後方向)に摺動させることにより、計五個のCVTエレメント1・1・・・のサドル面2a・2a・・・を研磨し、バリを除去するサドル面仕上げ工程S1600と、
を具備する。
このように構成することにより、CVTエレメント1のサドル面2aを修正する作業およびCVTエレメント1のサドル面2aに残ったバリを除去する作業の効率が良い(作業に要する時間が短く、労力が小さい)。
また、CVTエレメント1のサドル面2aが修正され、CVTエレメント1のサドル面2aに残ったバリが除去されることにより、CVTベルトの耐久性の向上(長寿命化)に寄与する。
【0103】
本発明に係る修正用治具、仕上げ用治具、および加工用治具が同時に取り扱うCVTエレメントの個数は本実施形態の修正用治具200、仕上げ用治具300および加工用治具100がCVTエレメント1を同時に取り扱う個数(五個)に限定されない。
【0104】
本発明に係る修正用治具が固定されるCVTエレメントの加工装置は本実施形態の如きワイヤー式の放電加工機に限定されず、他の加工装置(例えば、NC旋盤、マシニングセンタ等)でも良い。
【0105】
本発明に係るCVTエレメントの加工用治具、加工方法、修正用治具および仕上げ用治具は本実施形態のCVTエレメント1に対してだけ適用されるのではなく、図21に示す如きCVTエレメント51に対しても適用可能である。
CVTエレメント51はCVTエレメント1とは形状が若干異なるが、(1)サドル部52およびサドル部52に延設されるとともにCVTリング(不図示)に係合する係合部53を備えること、(2)サドル部52には一対の基準面51c・51c、一対の板面(表面51aおよび裏面51c)、および係合部53が係合したCVTリング(不図示)に当接するサドル面52a・52が形成されること、(c)一対の板面の一方(本実施形態では、表面51a)には嵌合突起54が形成されるとともに一対の板面の他方(本実施形態では、裏面51b)には嵌合穴55が形成されること、という点においてCVTエレメント1と共通する。
【符号の説明】
【0106】
1 CVTエレメント
1a 表面(CVTエレメントの一対の板面の一方)
1b 裏面(CVTエレメントの一対の板面の他方)
1c 基準面
2 サドル部
2a サドル面
2b 嵌合突起
2c 嵌合穴
3 係合部
10 CVTリング
100 加工用治具(CVTエレメントの加工用治具)
200 修正用治具(CVTエレメントの修正用治具)
210 第一押さえ部材
211b 治具側嵌合突起
212c 側面(当接面)
220 第二押さえ部材
225 治具側嵌合穴
300 仕上げ用治具(CVTエレメントの仕上げ用治具)
310 ガイド部材
320 スライド部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サドル部および前記サドル部に延設されるとともにCVTリングに係合する係合部を備え、前記サドル部には一対の板面、前記一対の板面の両端部に配置される一対の基準面、および前記係合部が係合した前記CVTリングに当接するサドル面が形成され、前記一対の板面の一方には嵌合突起が形成されるとともに前記一対の板面の他方には嵌合穴が形成されるCVTエレメントの加工に用いられるCVTエレメントの加工用治具であって、
前記CVTエレメントの嵌合突起を隣接する別の前記CVTエレメントの嵌合穴に嵌合するように積層された複数の前記CVTエレメントの基準面に当接する当接面、および積層された複数の前記CVTエレメントの一端に位置するCVTエレメントの一対の板面のうち隣接する他のCVTエレメントと当接しない板面に当接する第一押さえ面が形成される第一押さえ部材と、前記第一押さえ部材に着脱可能に固定され、前記第一押さえ部材に固定されたときに積層された複数の前記CVTエレメントの他端に位置するCVTエレメントの一対の板面のうち隣接する他のCVTエレメントと当接しない板面に当接する第二押さえ面が形成される第二押さえ部材と、を具備し、前記第一押さえ面および前記第二押さえ面の一方には前記CVTエレメントの嵌合穴に嵌合可能な治具側嵌合突起が形成され、前記第一押さえ面および前記第二押さえ面の他方には前記CVTエレメントの嵌合突起が嵌合可能な治具側嵌合穴が形成され、前記第一押さえ部材および前記第二押さえ部材の少なくとも一方はCVTエレメントの加工装置に着脱可能に固定されるCVTエレメントの修正用治具と、
研磨面を有する係合突起が形成されたガイド部材と、前記係合突起に係合しつつ前記係合突起の長手方向に摺動可能、かつ複数の前記CVTエレメントを所定の位置に所定の姿勢で保持可能なスライド部材と、を具備し、前記研磨面は前記係合突起の長手方向に平行であり、前記スライド部材が前記係合突起に係合しているとき、前記スライド部材に保持されている複数の前記CVTエレメントのサドル面が前記研磨面に当接するCVTエレメントの仕上げ用治具と、
を具備するCVTエレメントの加工用治具。
【請求項2】
サドル部および前記サドル部に延設されるとともにCVTリングに係合する係合部を備え、前記サドル部には一対の板面、前記一対の板面の両端部に配置される一対の基準面、および前記係合部が係合した前記CVTリングに当接するサドル面が形成され、前記一対の板面の一方には嵌合突起が形成されるとともに前記一対の板面の他方には嵌合穴が形成されるCVTエレメントを、
前記CVTエレメントの嵌合突起を隣接する別の前記CVTエレメントの嵌合穴に嵌合するように積層された複数の前記CVTエレメントの基準面に当接する当接面、および積層された複数の前記CVTエレメントの一端に位置するCVTエレメントの一対の板面のうち隣接する他のCVTエレメントと当接しない板面に当接する第一押さえ面が形成される第一押さえ部材と、前記第一押さえ部材に着脱可能に固定され、前記第一押さえ部材に固定されたときに積層された複数の前記CVTエレメントの他端に位置するCVTエレメントの一対の板面のうち隣接する他のCVTエレメントと当接しない板面に当接する第二押さえ面が形成される第二押さえ部材と、を具備し、前記第一押さえ面および前記第二押さえ面の一方には前記CVTエレメントの嵌合穴に嵌合可能な治具側嵌合突起が形成され、前記第一押さえ面および前記第二押さえ面の他方には前記CVTエレメントの嵌合突起が嵌合可能な治具側嵌合穴が形成され、前記第一押さえ部材および前記第二押さえ部材の少なくとも一方はCVTエレメントの加工装置に着脱可能に固定されるCVTエレメントの修正用治具と、
研磨面を有する係合突起が形成されたガイド部材と、前記係合突起に係合しつつ前記係合突起の長手方向に摺動可能、かつ複数の前記CVTエレメントを所定の位置に所定の姿勢で保持可能なスライド部材と、を具備し、前記研磨面は前記係合突起の長手方向に平行であり、前記スライド部材が前記係合突起に係合しているとき、前記スライド部材に保持されている複数の前記CVTエレメントのサドル面が前記研磨面に当接するCVTエレメントの仕上げ用治具と、
を具備するCVTエレメントの加工用治具を用いて加工するCVTエレメントの加工方法であって、
積層された複数のCVTエレメントを前記第一押さえ部材に対して所定の位置に所定の姿勢で配置する積層エレメント配置工程と、
前記第二押さえ部材を前記第一押さえ部材に固定し、前記積層された複数のCVTエレメントを前記積層された複数のCVTエレメントの積層方向に押さえることにより、前記積層された複数のCVTエレメントを前記修正用治具に対して所定の位置に所定の姿勢で固定するエレメント固定工程と、
前記積層された複数のCVTエレメントが固定された前記修正用治具をCVTエレメントの加工装置に固定し、前記積層された複数のCVTエレメントのサドル面を同時に修正するサドル面修正工程と、
前記スライド部材に前記複数のCVTエレメントを保持させるエレメント保持工程と、
前記スライド部材を前記ガイド部材に係合させる係合工程と、
前記スライド部材を前記ガイド部材に対して所定の摺動方向に摺動させることにより、前記複数のCVTエレメントのサドル面を研磨し、バリを除去するサドル面仕上げ工程と、
を具備するCVTエレメントの加工方法。
【請求項3】
サドル部および前記サドル部に延設されるとともにCVTリングに係合する係合部を備え、前記サドル部には一対の板面、前記一対の板面の両端部に配置される一対の基準面、および前記係合部が係合した前記CVTリングに当接するサドル面が形成され、前記一対の板面の一方には嵌合突起が形成されるとともに前記一対の板面の他方には嵌合穴が形成されるCVTエレメントの修正に用いられるCVTエレメントの修正用治具であって、
前記CVTエレメントの嵌合突起を隣接する別の前記CVTエレメントの嵌合穴に嵌合するように積層された複数の前記CVTエレメントの基準面に当接する当接面、および積層された複数の前記CVTエレメントの一端に位置するCVTエレメントの一対の板面のうち隣接する他のCVTエレメントと当接しない板面に当接する第一押さえ面が形成される第一押さえ部材と、
前記第一押さえ部材に着脱可能に固定され、前記第一押さえ部材に固定されたときに積層された複数の前記CVTエレメントの他端に位置するCVTエレメントの一対の板面のうち隣接する他のCVTエレメントと当接しない板面に当接する第二押さえ面が形成される第二押さえ部材と、
を具備し、
前記第一押さえ面および前記第二押さえ面の一方には前記CVTエレメントの嵌合穴に嵌合可能な治具側嵌合突起が形成され、
前記第一押さえ面および前記第二押さえ面の他方には前記CVTエレメントの嵌合突起が嵌合可能な治具側嵌合穴が形成され、
前記第一押さえ部材および前記第二押さえ部材の少なくとも一方はCVTエレメントの加工装置に着脱可能に固定されるCVTエレメントの修正用治具。
【請求項4】
サドル部および前記サドル部に延設されるとともにCVTリングに係合する係合部を備え、前記サドル部には一対の板面、前記一対の板面の両端部に配置される一対の基準面、および前記係合部が係合した前記CVTリングに当接するサドル面が形成され、前記一対の板面の一方には嵌合突起が形成されるとともに前記一対の板面の他方には嵌合穴が形成されるCVTエレメントの仕上げに用いられるCVTエレメントの仕上げ用治具であって、
研磨面を有する係合突起が形成されたガイド部材と、
前記係合突起に係合しつつ前記係合突起の長手方向に摺動可能、かつ複数の前記CVTエレメントを所定の位置に所定の姿勢で保持可能なスライド部材と、
を具備し、
前記研磨面は前記係合突起の長手方向に平行であり、
前記スライド部材が前記係合突起に係合しているとき、前記スライド部材に保持されている複数の前記CVTエレメントのサドル面が前記研磨面に当接するCVTエレメントの仕上げ用治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2010−184322(P2010−184322A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−30331(P2009−30331)
【出願日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】