説明

Chlamydiatrachomatisのための免疫原性組成物

本発明は、Chlamydia trachomatisの血液型亜型にまたがる改変体LcrE配列および/または改変体Lcr配列の組み合わせを提供する。Chlamydia trachomatisの血液型亜型にまたがるLcrE遺伝子型におけるこのような変化は、LcrE表現型における変化、詳細には免疫原性における変化と対応する可能性が高い。本発明はまた、アミノ酸置換を包含するかまたはアミノ酸置換に関連するペプチド、詳細には、Chlamydia特異的な細胞媒介性免疫応答を誘発し得るB細胞および/またはT細胞のエピトープ領域である可能性が高い、高頻度に変異したアミノ酸位置または超可変領域を包含するかそれに関連するペプチドを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2005年5月12日に出願された米国仮特許出願第60/680,725号の利益を主張し、その全体が本明細書中に援用される。
【0002】
本出願は、2つの複製CD−ROMの各々の内容を参照として援用する。各CD−ROMは「Sequence Listing for 2441_199.txt」とラベルされた同一の95kBファイルを含み、本出願についての配列表を含む。このCD−ROMは、2006年5月3日に作成された。
【0003】
本明細書中に引用されるすべての文書は、その全体が参照として援用される。
【0004】
(技術分野)
本発明は、免疫原性およびワクチン学の分野にある。詳細には、これは、Chlamydia trachomatis由来の抗原および免疫におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0005】
(背景技術)
Chlamydiaeは、真核生物細胞の偏性の細胞内寄生生物であって、風土病的な性感染症および種々の他の疾患症候群を担う。それらは、排他的な真正細菌の生理学的な分科であって、いかなる他の公知の生物体に対しても密接な関係を有さない分科を占める。Chlamydiaeの特定の特徴は、それらの固有のライフサイクルであって、ここでは細菌が以下の2つの形態学的に別個の形態の間で交代する:細胞外感染型(基本小体、EB)および細胞内非感染型(網状体、RB)。ライフサイクルは、RBのEBへの再組織化で完了し、さらなる細胞に感染する準備ができている破壊された宿主細胞を放出する。
【0006】
歴史的に、Clamydiaeは、単一の科(Chlamydiaceae)から構成され、次に単一の属を含む(ChlamydiaはChlamydophilaとも呼ばれる)、それ自体の目(Chlamydiales)に分類されている。さらに最近では、この目は、少なくとも4つの科に分割されており、これは、Chlamydia trachomatisceae,ParaChlamydia trachomatisceae、WaddiaceaeおよびSimkaniaceaeを含む。さらに最近の分類では、このChlamydiaceaeの科は、Chlamydia属内の種である、ChlamydophilaおよびChlamydia trachomatisの属、Chlamydia trachomatisを含む。引用文献1(非特許文献1)を参照のこと。
【0007】
少なくとも5つのChlamydia trachomatisまたはchlamydophila種のゲノム配列が現在公知である−C.trachomatis、C.pneumoniae、C.muridarum、C.pecorumおよびC.psittaci(引用文献2、8を参考のこと)。現在少なくとも18の血液型亜型が存在する、種々のC.trachomatis株が、ポリクローナル抗血清またはモノクローナル抗血清との血清学的反応性(すなわち、「血液型亜型(serovars)」に従って分類され得る。これらの血液学的な相違は代表的には、C.trachomatisのMOMP(Major Outer Membrane Protein)における相違に起因して検出される。
【0008】
C.trachomatisのヒト血液型亜型(「serovars」)は、2つのバイオバリアント(biovariants)(「biovars」)に分割される。血液亜型L1、L2およびL3は、性感染性の全身感染である浸潤性リンパ肉芽腫(LGV)の因子である。LGVは、先進工業国では一般的ではないが、アフリカ、アジア、オーストラリアおよび南アメリカでは高頻度である。これは、リンパ組織に優先的に影響するが、また明白なリンパ節転移も感染部位での組織反応もない急性の症候性感染症としても生じ得る。急性のLGVは、女性よりも男性においてより高頻度で5回を超えて報告される。C.trachomatisの他の生物型(バイオタイプ)としては、トラコーマ、眼の感染条件に関連する血液型亜型A、B、BaおよびCが挙げられる。
【0009】
血液型亜型A〜K(D、E、F、G、H、I、JおよびK)は代表的には、生殖器官の疾患に関連している。詳細には、血液型亜型D、E、F、HおよびKは、生殖器官感染の85%近くを占める(例えば、WO02/065129を参照のこと)。血液型亜型A−Kは、主に眼の組織(A〜C)または泌尿器官(D〜K)において上皮性感染を誘発する。現在までの研究ではまた、米国および欧州における性感染性の感染または疾患(STIまたはSTD)を担う4つの血液型亜型(または血清型)は、D〜K、好ましくはD、E、FおよびIであることが示されている。
【0010】
Chlamydiaの性感染性の感染の4百万を超える新規な症例が、米国のみで毎年診断されており(8)、そしてそれらの処置の費用は、毎年四十億ドルと評価されており、80%が女性の感染および疾患に起因している(9)。
【0011】
Chlamydia感染自体が疾患を生じるが、ある患者での症状の重篤度は、事実上、異常な、または変更された宿主免疫応答に起因していることが考えられ、この免疫応答は、(i)血液型亜型の間で変化し得るChlamydia生物体に侵入するという性質、または(ii)侵入された被験体の性質(例えば、患者プロフィールの性質)のいずれかに起因し得る。感染を消去することができなければ、永続的な免疫刺激が生じ、宿主を助けるのではなく、これは、生殖不能および失明を含む重篤な結果を伴う慢性感染をまねく。例えば、引用文献9を参照のこと。さらに、自然のChlamydial感染によって付与される防御は一般には、不完全、一過性、かつ株特異的である。
【0012】
Chlamydia感染は、いくつかの抗生物質で処置され得るが、雌性感染のほとんどが無症候性であって、抗菌療法は、特に衛生学的な条件が劣る国では、長期の続発症を予防するには遅いかまたは不十分であるかもしれない。Chlamydiaの多剤抗生物質耐性株も報告されている(Somani,ら、2000)。さらに、抗生物質の処置は、後に再活性化され得る、異常または変更された型のC.trachomatisの形成をもたらし得ることが示唆されている(非特許文献3)。
【0013】
不幸にも、Chlamydiaの病因の主な決定因子は、この病原体とともに作用する内因性の困難性、およびその遺伝子操作のための十分な方法がないことにほとんど起因して、複雑であって、現在ではまだ明らかでない。詳細には、病原と宿主の相互作用における本質的な区画であり、そして防御的な免疫応答を惹起し得る抗原を担持する可能性が高い、基本小体表面の抗原性組成物についてはほとんど知られていない。
【0014】
疾患の重篤な性質に起因して、適切な免疫原性組成物、例えば、浸潤性Chlamydia株および/またはChlamydia浸潤性株の異常もしくは変更型における対立遺伝子のバリエーションから生じ得る、異常なまたは変更された宿主細胞免疫応答に対処するワクチンなどを提供することが所望される。これらの免疫原性組成物は、(a)Chlamydialの感染に対する、もしくはChlamydia誘発性疾患に対する免疫(予防的なワクチン接種)のため、または(b)樹立された慢性Chlamydia感染の根絶(治療的なワクチン接種)のために有用であり得る。しかし、細胞内寄生生物である細菌は一般には、抗体媒介性免疫応答を回避し得る。
【0015】
種々の抗原性タンパク質が、C.trachomatisについて記載されており、そして細胞表面が詳細には、詳細な研究の標的であった。例えば、引用文献10を参照のこと。これらとしては、例えば、Pgp3(引用文献11、12および13)(非特許文献5、特許文献1、2)、MOMP(引用文献14)(非特許文献6)、Hsp60(GroEL)(引用文献15)(非特許文献7)およびHsp70(DanK様)(引用文献16)(非特許文献8)が挙げられる。これらの全てが有効なワクチンであると証明されているわけではないが、さらなる候補物が特定されている。引用文献17(特許文献3)を参照のこと。
【0016】
B型肝炎ウイルス、ジフテリアおよび破傷風のような病原体に対するワクチンは代表的には、単一のタンパク質抗原(例えば、HBV表面抗原、または破傷風トキソイド)を含む。対照的に、無細胞百日咳ワクチンは代表的には、少なくとも3つのB.pertussisタンパク質を有し、そしてPrevnarTM肺炎球菌ワクチンは、重篤な別の結合体化糖類抗原を含む。他のワクチン、例えば、細胞性百日咳ワクチン、はしかワクチン、不活化ポリオワクチン(IPV)および髄膜炎菌OMVワクチンは、多数の抗原の極めて自然な複雑な混合による。タンパク質が単独の抗原によって、少数の規定の抗原によって、または未規定の抗原の複雑な混合物によって惹起され得るかは、従って、該当の病原体に依存する。
【特許文献1】欧州特許第0499681号明細書
【特許文献2】国際公開第95/28487号パンフレット
【特許文献3】国際公開第03/049762号パンフレット
【非特許文献1】Bush,R.M.およびEverett,K.D.E. Molecular Evolution of the C.trachomatis trachomatisceae. Int.J.Syst.Evol.Microbiol. 2001年、51、203〜220
【非特許文献2】Ward Apmis.1995年、103、769〜796
【非特許文献3】Hammerschlag M.R. The intracellular life of Chlamydia trachomatis Semin.Pediatr.Infect.Dis.2002年、13、239〜248
【非特許文献4】Moulder、Microbiol Rev 1991年、55(1)、143〜190
【非特許文献5】Comanducciら、Infect Immun 1994年、62(12)、5491〜5497
【非特許文献6】Murdinら、Infect Immun 1993年、61、4406〜4414
【非特許文献7】Cerroneら、Infect Immun 1991年、59(1)、79〜90
【非特許文献8】Raulstonら、J.Biol.Chem.1993年、268、23139〜23147
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
Chlamydial疾患および/または感染に対する免疫を得るために、さらなるおよび改善された免疫原性組成物を提供することが本発明の目的である。詳細には、本発明の目的は、異常な、または変更されたChlamydia血液型亜型株(例えば、対立遺伝子改変体株のような株)に対する免疫を提供するための改善された免疫原性組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の免疫原性組成物は、1つ以上(例えば、2つ以上)のC.trachomatis抗原の組み合わせに基づく。免疫原性組成物は、異なるChlamydia trachomatis血液型亜型由来の1つ以上の同じChlamydia trachomatis抗原、および/または異なるChlamydia trachomatis血液型亜型由来の1つ以上の同じかもしくは異なるChlamydia trachomatis抗原を含んでもよい。
【0019】
(本発明の要旨)
引用文献5のC.trachomatisゲノムについて記載された約900のタンパク質のなかで、本出願人らは、Low Calcium Response Element(LcrE)タンパク質が存在し、そして感染性EB型の表面上で抗体にアクセス可能であり、従ってこのタンパク質が可能性のあるワクチン候補物として記されるということを初めて示した。本出願人らは、この時点で、Type Three SectionまたはTTSオルガネラ(LcrEが一部である)の効率的なブロックが、LcrE陰性の調節因子を「凍結させること(freezing)」によって感染プロセスを次に阻害し得るということを仮説した(Montigianiら、Infection and Immunity(2002)70(1);368〜379)。出願人らは、LcrEタンパク質が実際、C.trachomatis感染のハムスターモデルにおいて有意に防御的な免疫応答を誘発し得ることを引き続いて実証している(Sambriら(2004)22(9〜10)1131〜7を参照のこと)。LcrEのこれらの免疫防御的な結果はまた、他にでも確認されており(例えば、WO03/41560における実施例9を参照のこと)そして、C.trachomatis感染の予防および/または処置および/または診断のための良好な候補物としてLcrEの価値を示す。
【0020】
8つの異なるC.trachomatis血液型亜型の代表である14のC.trachomatisの臨床的単離体におけるLcrE遺伝子についての対立遺伝子改変体を評価する過程では、本出願人らは、(i)血液型亜型(Serovar)D由来の参照Chlamydia trachomatisのLcrE配列、および(ii)他の免疫原性Chlamydia trachomatis抗原について見出されるLcrE配列に対して、C.trashomatisの血液型亜型にまたがる単一のアミノ酸置換のより多くの予想数が、LcrE抗原について観察されたということを確認した。
【0021】
この極めて予測されておらず、かつ驚くべき知見によって、以下のことが示唆される:
(i)LcrEタンパク質は、他の免疫原性Chlamydia trachomatis抗原よりも大きい免疫学的圧力に曝され得る;そして
(ii)アミノ酸置換を含むペプチドはエピトープ領域(抗体−抗原(Ab−Ag)相互作用に関与するB細胞エピトープ、および/またはChlamydia特異的な細胞媒介性応答を惹起し得るT細胞エピトープ)である可能性が高い。
【0022】
出願人の知見は、全てさらに驚くべきである。なぜなら、これらの遺伝子型決定研究のために用いられるChlamydia単離体は、2つの異なる大陸(北アメリカおよび欧州)から、そして異なる時点にまたがって(最低30年前対5〜8年前)単離された、2つの極めて相違する免疫学的供給源に由来したからである。
【0023】
それほど最近単離されたのではないATCC血液型亜型E由来のLcrE配列は、最近単離されたイタリアの血液型亜型E由来のLcrE配列と同じ数の変異体を有し得るということは驚くべき事であると考えれば、8つの変異体の性質は、両方の配列由来の両方のLcrE配列において同じであることさえ、極めて驚くべきであってかつ予想されないことである。両方のLcrEの血液型亜型E変異体配列が同じであるという事実は、これらの8つの変異が本当であって、かつランダムまたは任意の変異と反対の真の変異であるという知見を指している。これらの変異は、特定の標的群に対するLcrE免疫原性組成物を仕立てるために用いられ得る。
【0024】
出願人らはまた、2つの高頻度の変異ポイントまたは超可変領域を、血液型亜型にまたがるLcrE配列におけるアミノ酸残基64および162で同定した。アミノ酸残基64では、14の異なるChlamydia単離体にまたがって、グリシン(G)からグルタミン酸(E)の7つの変異が存在するが、162位置では、また14のChlamydia単離体にまたがってトレオニン(T)からアラニン(A)の7つの変異も存在する。2つの高頻度の変異ポイントまたは超可変領域の存在(例えば、LcrE配列の残基64および162で)は、驚くべきでかつ予想されず、そして被験体において免疫原性応答を惹起し得るT細胞および/またはB細胞のエピトープ領域の存在と関連している可能性が高い。これらの高頻度変異は、特異的な標的群に対するLcrE免疫原性組成物を仕立てるために用いられ得る。
【0025】
出願人はまた、Chlamydia trachomatis血液型亜型にまたがる他の改変体Chlamydia抗原配列および/または改変体Chlamydia抗原配列の組み合わせを同定した。これらのChlamydia抗原としては、限定はしないが、OpmH様(CT242)、ArtJ(CT381)、DnaK(CT396)、Hypothetical(仮説)(CT398)およびPapA(CT045)抗原が挙げられる。Chlamydia trachomatis血液型亜型にまたがるこれらのChlamydia抗原の遺伝子型において観察されたアミノ酸変化は、Chlamydia抗原表現型における変化と、詳細には、免疫原性の変化と一致する可能性が高い。アミノ酸置換を含むかまたはそれに関連するペプチド、詳細には、高頻度に変異されたアミノ酸位置または超可変領域を含むかまたはそれに関連するペプチドは、抗体−抗原(Ab−Ag)相互作用に関与するB細胞エピトープ、および/またはChlamydia特異的な免疫原性応答、詳細には細胞媒介性免疫応答を惹起し得るT細胞エピトープのいずれかであるエピトープ性の領域である可能性が高い。
【0026】
(配列の簡単な説明)
以下の表によって、13の単離されたChlamydia trachomatis血液型亜型にまたがって見出されたChlamydia trachomatisのLcrE配列(配列番号1〜13)の簡単な説明が得られる。これらの血液型亜型のうち、7つの血液型亜型がATCCから得られ、そして6つの血液型亜型は、イタリア(Cevenini)コレクションから得た。LcrE配列(配列番号14〜配列番号27)の14×30マーのコンセンサス配列がまた提供される。配列番号28は、LcrE配列に相当し、ここでは10の全ての変異ポイント(64、126、157、162、179、207、217、220、275および420)がChlamydia trachomatisのLcrE血液型亜型にまたがって見出された。配列番号29〜45は、変異体配列の周囲で見出された同定されたエピトープ領域に相当する。配列番号46は、血液型亜型D/UW−3/CX由来の参照LcrE血液型亜型D配列であって、それに対して、他の配列との比較を行った。配列番号181、182、183および184は、残基64および162で高頻度変異ポイントと関連するエピトープ領域と対応する。
【0027】
【化1】

(本発明の局面の要約)
本発明はChlamydia trachomatis血液型亜型にまたがって見出されるChlamydia trachomatisのLcrE配列における改変に関する。Chlamydia trachomatis血液型亜型にまたがるChlamydia trachomatisのLcrE配列における改変は、Chlamydia trachomatisのLcrE血液型亜型D/UW−3/CX配列(配列番号46)に対して測定する。以下の段落(単数または複数)を提示しており、これが本発明の種々の局面を説明する。さらなる詳細が、付随する開示に提供される:
本発明においては、以下が提供される:
1.配列番号46のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ただしこのアミノ酸配列が1つ以上の変異を含むことは除外し、この1つ以上の変異(単数または複数)が、64、126、157、162、179、207、217、220、275および/または420からなる群より選択されるアミノ酸残基(単数または複数)を含む、タンパク質。
【0028】
2.上記変異が独立して置換、挿入または欠失であって、好ましくは、表7に列挙される1つ以上の変異を含む、段落1に記載のタンパク質。
【0029】
3.上記1つ以上の変異体(単数または複数)が、タンパク質の免疫原性を変更する、段落1または段落2に記載のタンパク質。
【0030】
4.上記タンパク質が、配列番号1、4、6、8、11、12、13、16、18、19、20、21、23および/または27からなる配列の群より選択される1つ以上の変異された配列を含む、段落1〜3のいずれか1段落に記載のタンパク質。
【0031】
5.配列番号11、4または6を含む、段落4に記載のタンパク質。
【0032】
6.配列番号13または8を含む、段落4に記載のタンパク質。
【0033】
7.配列番号12または1を含む、段落4に記載のタンパク質。
【0034】
8.アミノ酸残基64および/または162で変異を含む、段落2に記載のタンパク質。
【0035】
9.配列番号16、18、19、20、21、22、23または27を含む段落4に記載のタンパク質。
【0036】
10.段落1〜9のいずれか1段落に記載のタンパク質のアミノ酸配列を含むタンパク質、または段落1〜9のいずれか1段落に記載のタンパク質の少なくとも7連続するアミノ酸の1つ以上のフラグメント(単数または複数)。
【0037】
11.上記1つ以上のフラグメント(単数または複数)が、64、126、157、162、179、207、217、220、275および/または420からなる群より選択されるアミノ酸残基(単数または複数)を包含する1つ以上の変異を含む、段落10に記載のタンパク質。
【0038】
12.段落1〜11のいずれか1段落に記載のタンパク質に結合する抗体。
【0039】
13.段落1〜11のいずれか1段落に記載のタンパク質をコードする核酸。
【0040】
14.段落13に記載の核酸を含むベクター。
【0041】
15.段落14に記載のベクターで形質転換された宿主細胞。
【0042】
16.医薬としての使用のための、段落1〜11のいずれか1段落に記載のタンパク質、段落12に記載の抗体、または段落13に記載の核酸。
【0043】
17.免疫原としての使用のための段落16に記載のタンパク質または核酸。
【0044】
18.診断試薬としての使用のための、段落1〜11のいずれか1段落に記載のタンパク質、段落12に記載の抗体、または段落13に記載の核酸。
【0045】
19.Chlamydia trachomatis感染を予防または処置するための医薬の製造における、段落1〜11のいずれか1項に規定されるようなタンパク質、段落12に記載の抗体、または段落13に記載の核酸の、使用。
【0046】
20.Chlamydia trachomatisの存在またはChlamydia trachomatisに対して惹起された抗体の存在を検出するための診断試薬の製造における、段落1〜11のいずれか1項に規定されるようなタンパク質、段落12に記載の抗体、または段落13に記載の核酸の、使用。
【0047】
21.Chlamydia trachomatisに対する抗体を惹起し得る試薬の製造における、段落1〜11のいずれか1項に規定されるようなタンパク質、段落12に記載の抗体、または段落13に記載の核酸の、使用。
【0048】
22.段落1〜11のいずれか1段落に記載のタンパク質、段落12に記載の抗体、または段落13に記載の核酸の治療上有効な量を被験体に投与する工程を包含する、被験体を処置するための方法。
【0049】
23.段落1〜11のいずれか1段落に記載のタンパク質、段落12に記載の抗体、または段落13に記載の核酸を生成するためのプロセスであって、タンパク質発現を誘発する条件下で段落15に記載の宿主細胞を培養する工程を包含する、プロセス。
【0050】
24.段落1〜11のいずれか1段落に記載のタンパク質、段落12に記載の抗体、または段落13に記載の核酸を生成するためのプロセスであって、このタンパク質または核酸が、化学的な方法を用いて部分的にまたは全体的に合成される、プロセス。
【0051】
25.段落13に記載の核酸を検出するためのプロセスであって、(a)核酸プローブと生物学的なサンプルとをハイブリダイズ条件下で接触させて二重鎖を形成する工程と、(b)この二重鎖を検出する工程とを包含する、プロセス。
【0052】
26.段落1〜11のいずれか1段落に記載するタンパク質を検出するためのプロセスであって、(a)段落12に記載の抗体と生物学的なサンプルとを抗体−抗原複合体の形成に適した条件下で接触させる工程と、(b)この複合体を検出する工程とを包含する、プロセス。
【0053】
27.段落12に記載する抗体を検出するためのプロセスであって、以下の工程:段落1〜11のいずれか1段落に記載されるタンパク質と生物学的なサンプルとを、抗体−抗原複合体の形成に適した条件下で接触させる工程と、(b)この複合体を検出する工程とを包含する、プロセス。
【0054】
28.段落25〜28のいずれか1段落に記載されるプロセスにおける使用に適した試薬を含むキット。
【0055】
29.段落1〜11のいずれか1段落に記載のタンパク質、実施例12に記載の抗体、または実施例13に記載の核酸、および免疫学的に受容可能な賦形剤を含む免疫原性組成物。
【0056】
30.1つ以上の抗原(単数または複数)をさらに含む、段落29に記載の組成物。
【0057】
31.1つ以上のアジュバント(単数または複数)をさらに含む、段落29または段落30に記載の組成物。
【0058】
32.医薬としての使用のための段落29〜31のいずれか1段落に記載の組成物。
【0059】
33.細菌感染を予防または処置または診断するための医薬の製造における段落29〜31のいずれか1段落に記載の組成物の使用。
【0060】
34.上記細菌感染がChlamydia trachomatis感染である、段落33に記載の使用。
【0061】
35.配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44および45、49〜98、99〜180、181、182、183、および/または184からなる配列の群より選択される、少なくとも2つのタンパク質を含む、免疫原性組成物。
【0062】
36.上記組成物が配列番号1および配列番号12を含む、段落35に記載の組成物。
【0063】
37.上記組成物が配列番号13および配列番号46を含む、段落36に記載の組成物。
【0064】
38.段落35〜37のいずれか1段落に記載の組成物であって、(a)1つ以上のさらなる抗原(単数または複数)、および/または(d)1つ以上のさらなるアジュバント(単数または複数)を含む、組成物。
【0065】
39.医薬としての使用のための、段落35〜38のいずれか1段落に記載の組成物。
【0066】
40.細菌感染を予防または処置または診断するための医薬の製造における段落35〜38のいずれか1段落に記載の組成物の使用。
【0067】
41.上記細菌感染がChlamydia trachomatis感染である、実施例40に記載の使用。
【0068】
42.段落29〜31または35〜38のいずれか1段落に記載の組成物を被験体に投与する工程を包含する、被験体において免疫応答を誘発する方法。
【0069】
43.配列番号29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44および45、47〜98、99〜180、55、66、109、110、111、181、182、183および/または184からなる群より選択される少なくとも7連続するアミノ酸、好ましくは少なくとも9連続するアミノ酸の1つ以上のフラグメント(単数または複数)とを含む、ポリペプチド。
【0070】
44.配列番号1、12、13、45および7を含むタンパク質を有する段落35に記載の組成物。
【0071】
46.配列番号54、66、109、110、111、181、182、183および184からなる群より選択される1つ以上のペプチドを含む免疫原性組成物。
【0072】
47.配列番号181、182、183および/または184からなる群より選択される1つ以上のペプチドを含む免疫原性組成物。
【0073】
48.免疫原としての使用のための段落43に記載のポリペプチドもしくは段落46または47に記載の組成物。
【0074】
49.上記使用が、Chlamydiaによって生じる疾患および/または感染を防御または処置するために十分である体液性および/または細胞傷害性のT細胞リンパ球応答を惹起させるための免疫原としてである、段落48に記載のポリペプチド。
【0075】
50.哺乳動物における免疫応答を惹起させる方法であって、上記哺乳動物に対して段落43に記載のポリペプチド、または段落46もしくは47に記載の免疫原性組成物を投与する工程を包含する、方法。
【0076】
51.上記免疫応答が、Chlamydiaによって生じる疾患および/または感染を防御または処置する、段落50に記載の方法。
【0077】
52.診断剤としての使用のための、段落43に記載のポリペプチド、または段落46もしくは47に記載の組成物。
【0078】
53.患者におけるChlamydia感染を診断する方法であって、患者由来のT細胞を段落43または46または47に規定されるようなポリペプチドとともにインキュベートする工程と、T細胞増殖のその後の有無を検出する工程とを包含する、方法。
【0079】
54.細菌感染、好ましくはChlamydia感染の予防もしくは処置における使用のための医薬の調製における、段落43に記載のポリペプチド、もしくは段落46または47に記載の組成物の使用。
【0080】
55.配列番号14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26および27を含むタンパク質または免疫原性組成物。
【0081】
56.配列番号185を含むタンパク質または免疫原性組成物であって、X1の位置のアミノ酸残基が、グリシン(G)またはグルタミン酸(E)からなる群より選択され;アミノ酸が残基X2でアスパラギン酸(D)またはグルタミン酸(E)またはアスパラギン(N)からなる群より選択され;アミノ酸が残基X3でグリシン(G)またはアルギニン(R)からなる群より選択され;アミノ酸が残基X4でトレオニン(T)またはアラニン(A)からなる群より選択され;アミノ酸が残基X5で、バリン(V)またはイソロイシン(I)からなる群より選択され;アミノ酸が残基X6でフェニルアラニン(F)またはロイシン(L)からなる群より選択され;アミノ酸が残基X7でアラニン(A)またはアスパラギン酸(D)からなる群より選択され;アミノ酸が残基X8でヒスチジン(H)またはアルギニン(R)からなる群より選択され;アミノ酸がX9残基でアスパラギン(N)またはアスパラギン酸(D)からなる群より選択され、そしてアミノ酸残基がX10の位置でセリン(S)またはプロリン(P)からなる群より選択され、このタンパク質は配列番号46ではない、タンパク質または免疫原性組成物。
【0082】
57.段落16〜27のいずれか1段落に記載の使用のための段落56に記載のタンパク質または免疫原性組成物。
【0083】
LcrE配列改変体の詳細な説明
配列番号1〜146の各々は、下にさらに詳細に記載される。
【0084】
配列番号46=血液型亜型D(D−UW−3/CX)由来のChlamydia trachomatisのトラコーマ症LcrE(CT089)参照配列
非変異LcrEタンパク質は、引用文献17において配列番号61&62として開示される{GenBankアクセッション番号:AAC67680、GI3328485;「CT089」;配列番号46下記}。
【0085】
配列番号46
【0086】
【化2】

(配列番号1)ゲノム:ATCC−E(8変異:対立遺伝子−5)
ゲノムATCC−E(血液型亜型E)LcrE配列(配列番号1)は、血液型亜型DのLcrE参照配列(配列番号46)に対して8つの変異を有する。ゲノムATCC−Eは、血液型亜型Eと関連する。ゲノムATCC−Eの配列は、配列番号1として開示される(下を参照のこと)。
【0087】
配列番号1:
【0088】
【化3】

ゲノムATCC−EとLcrE Chlamydia trachomatis抗原とのアラインメントは以下のとおりである:
【0089】
【化4】

(2)ゲノム:ATCC−F(変異なし:対立遺伝子−1)
ゲノムATCC−F(血液型亜型F)のLcrE配列(配列番号2)は、血液型亜型DのLcrE参照配列(配列番号46)に対して変異を有さない。ゲノムATCC−Fは、血液型亜型Fと関連する。ゲノムATCC−Fの配列は、配列番号2として開示される(下を参照のこと)。
【0090】
配列番号2:
【0091】
【化5】

(3)ゲノム:ATCC−G(変異なし:対立遺伝子−1)
ゲノムATCC−G(血液型亜型G)LcrEは、血液型亜型DのLcrE参照配列(配列番号46)に対して変異を有さない。ゲノムATCC−Gは、血液型亜型Gと関連する。ゲノムATCC−Gの配列は、配列番号3として開示される(下を参照のこと)。
【0092】
配列番号3:
【0093】
【化6】

(4)ゲノム:ATCC−H(3変異:対立遺伝子−4)
ゲノムATCC−HのLcrE配列は、血液型亜型DのLcrE参照配列(配列番号46)に対して3つの変異を有する。ゲノムATCC−Hは、血液型亜型Hと関連する。ゲノムATCC−Hの配列は、配列番号4として開示される(下を参照のこと)。
【0094】
配列番号4:
【0095】
【化7】

ゲノムATCC−HとLcrE Chlamydia trachomatis抗原とのアラインメントは以下のとおりである:
【0096】
【化8】

(5)ゲノム:ATCC−I(変異なし:対立遺伝子−1)
ゲノムATCC−IのLcrE配列は、血液型亜型DのLcrE参照配列(配列番号46)に対して変異を有さない。ゲノムATCC−Iは、血液型亜型Fと関連する。ゲノムATCC−Iの配列は、配列番号5として開示される(下を参照のこと)。
【0097】
配列番号5:
【0098】
【化9】

(6)ゲノム:ATCC−J(3つの変異:対立遺伝子−4、Cev−5として)
ゲノムATCC−JのLcrE配列は、血液型亜型DのLcrE参照配列(配列番号46)に対して3つの変異を有する。ゲノムATCC−Jは、血液型亜型Jと関連する。ゲノムATCC−Jの配列は、配列番号6として開示される(下を参照のこと)。
【0099】
配列番号6:
【0100】
【化10】

ゲノムATCC−JとLcrE Chlamydia trachomatis抗原とのアラインメントは以下のとおりである:
【0101】
【化11】

(7)ゲノム:ATCC−K(変異なし:対立遺伝子−1)
ゲノムATCC−IのLcrE配列は、血液型亜型DのLcrE参照配列(配列番号46)に対して変異を有さない。ゲノムATCC−Iは、血液型亜型Iと関連する。ゲノムATCC−Iの配列は、配列番号7として開示される(下を参照のこと)。
【0102】
配列番号7:
【0103】
【化12】

(8)ゲノム:Cev−1、serJ(4つの変異:対立遺伝子−3)
ゲノムCev−1(血液型亜型J)配列は、血液型亜型DのLcrE参照配列(配列番号46)に対して4つの変異を有する。ゲノムCev−1は、血液型亜型Jと関連する。ゲノムCev−1の配列は、配列番号8として開示される(下を参照のこと)。
【0104】
配列番号8:
【0105】
【化13】

ゲノムCev−1とLcrE Chlamydia trachomatis抗原とのアラインメントは以下のとおりである:
【0106】
【化14】

(9)ゲノム:Cev−2、serG(変異なし:対立遺伝子−1)
ゲノムCev−2(血液型亜型G)配列は、血液型亜型DのLcrE参照配列(配列番号46)に対して変異を有さない。ゲノムCev−2は、血液型亜型Gと関連する。ゲノムCev−2の配列は、配列番号9として開示される(下を参照のこと)。
【0107】
配列番号9:
【0108】
【化15】

(10)ゲノム:Cev−4、serH(変異なし:対立遺伝子−1)
ゲノムCev−4のLcrE配列は、血液型亜型DのLcrE参照配列(配列番号46)に対して変異を有さない。ゲノムCev−4は、血液型亜型Hと関連する。ゲノムCev−4の配列は、配列番号10として開示される(下を参照のこと)。
【0109】
配列番号10:
【0110】
【化16】

(11)ゲノム:Cev−5、serJ(3変異:対立遺伝子−4)
ゲノムCev−5の配列は、血液型亜型DのLcrE参照配列(配列番号46)に対して3つの変異を有する。ゲノムCev−5は、血液型亜型Jと関連する。ゲノムCev−5の配列は、配列番号11として開示される(下を参照のこと)。
【0111】
配列番号11:
【0112】
【化17】

ゲノムCev−5とLcrE Chlamydia trachomatis抗原とのアラインメントは以下のとおりである:
【0113】
【化18】

(12)ゲノム:Cev−8、serF(8つの変異:対立遺伝子−5)
ゲノムCev−8のLcrE配列は、血液型亜型DのLcrE参照配列(配列番号46)に対して8つの変異を有する。ゲノムCev−8は、血液型亜型Fと関連する。ゲノムCev−8の配列は、配列番号12として開示される(下を参照のこと)。
【0114】
配列番号12:
【0115】
【化19】

ゲノムCev−8とLcrE Chlamydia trachomatis抗原とのアラインメントは以下のとおりである:
【0116】
【化20】

(13)ゲノムGO/86 serD(4変異:対立遺伝子−2)
ゲノムGO−86のLcrE配列は、血液型亜型DのLcrE参照配列(配列番号46)に対して4変異を有する(64、126、162および420位置で)。ゲノムGO/86は、血液型亜型Dと関連する。ゲノムGO/86の配列は、配列番号13として開示される(下を参照のこと)。
【0117】
配列番号13:
【0118】
【化21】

ゲノムGO/86とLcrE Chlamydia trachomatis抗原とのアラインメントは以下のとおりである。
【0119】
ゲノム:GO/86 serD(4変異:対立遺伝子−2)
【0120】
【化22】

コンセンサス配列(配列番号14〜27)
LcrE Chlamydia trachomatis抗原の主要配列またはコンセンサス配列は30マーのペプチドセグメントで決定した。
【0121】
コンセンサス配列の最初のセグメントの30アミノ酸残基(残基1〜30)は、以下のように配列番号14として開示される。
【0122】
配列番号14
【0123】
【化23】

コンセンサス配列の第二のセグメントの30アミノ酸残基(残基31〜60)は、以下のように配列番号15として開示され。
【0124】
配列番号15
【0125】
【化24】

血液型亜型DのLcrE参照配列(配列番号46)に対して、配列番号14でも配列番号15でもいずれでも変異は同定されなかった。
【0126】
コンセンサス配列の三番目のセグメントの30アミノ酸残基(残基61〜90)は、以下のように配列番号16として開示される。
【0127】
配列番号16
【0128】
【化25】

配列番号16の4位置でのアミノ酸残基は、観察された単離体の半分ではグルタミン酸(E)であって、観察された単離体のもう半分ではグリシン(G)である。従って、LcrE抗原のコンセンサス配列の61〜90残基のセグメントの4位置のアミノ酸残基(すなわち、コンセンサス配列全体の64残基=高頻度の変異ポイント)は、ここではXと記す。
【0129】
コンセンサス配列の四番目のセグメントの30アミノ酸残基(残基91〜120)は、以下のように配列番号17として開示される。
【0130】
配列番号17
【0131】
【化26】

血液型亜型DのLcrE参照配列(配列番号46)に対して、残基91〜120の配列の一部ではLcrE Chlamydia trachomatis抗原のセグメントで単離物中において変異は観察されなかった。
【0132】
コンセンサス配列の五番目のセグメントの30アミノ酸残基(残基121〜150)は、以下のように配列番号18として開示される。
【0133】
配列番号18
【0134】
【化27】

残基121〜150由来のコンセンサス配列セグメントの6位置のアミノ酸残基(全体的な残基=126)は、単離物13のうち10ではアスパラギン酸であって、単離物13のうち2ではグルタミン酸であって、単離物13のうち1ではアスパラギンであった。
コンセンサス配列の6番目のセグメントの30アミノ酸残基(残基151〜180)は、以下のように配列番号19として開示される。
【0135】
配列番号19
【0136】
【化28】

配列番号19の12位置でのアミノ酸残基(全体的残基=162=高頻度変異ポイント)は、観察された単離体の半分ではアラニン(A)であって、観察された単離体のもう半分ではトレオニン(T)である。従って、LcrE Chlamydia trachomatis抗原のコンセンサス配列の151〜180残基のセグメントの12位置のアミノ酸残基(すなわち、コンセンサス配列全体の162残基)は、ここではXと記す。
【0137】
コンセンサス配列の7番目のセグメントの30アミノ酸残基(残基181〜210)は、以下のように配列番号20として開示される。
【0138】
配列番号20
【0139】
【化29】

残基181〜210由来のコンセンサス配列セグメントの27位置のアミノ酸残基(全体的な残基=207)は、単離物14のうち12ではフェニルアラニン(F)であって、単離物14のうち2ではロイシン(L)であった。
【0140】
コンセンサス配列の8番目のセグメントの30アミノ酸残基(残基211〜240)は、以下のように配列番号21として開示される。
【0141】
配列番号21
【0142】
【化30】

残基211〜240由来のコンセンサスセグメント(配列番号21)において、全体的なコンセンサス配列の217および220位置で、2つの変異が観察された。
【0143】
コンセンサス配列の9番目のセグメントの30アミノ酸残基(残基241〜270)は、以下のように配列番号22として開示される:
配列番号22
【0144】
【化31】

血液型亜型DのLcrE参照配列(配列番号46)に対して、配列番号22では変異は同定されなかった。
【0145】
コンセンサス配列の第10番目のセグメントの30アミノ酸残基(残基271〜300)は、以下のように配列番号23として開示される。
【0146】
配列番号23
【0147】
【化32】

残基271〜300由来のコンセンサス配列セグメントの5位置のアミノ酸残基(全体的な残基=275)は、14の単離物のうち12ではアスパラギン(N)であって、14の単離物のうち2ではアスパラギン酸(D)であった。
【0148】
コンセンサス配列の11番目のセグメントの30アミノ酸残基(残基301〜330)は、以下のように配列番号24として開示される。
【0149】
配列番号24
【0150】
【化33】

コンセンサス配列の12番目のセグメントの30アミノ酸残基(残基331〜360)は、以下のように配列番号25として開示される。
【0151】
配列番号25
【0152】
【化34】

コンセンサス配列の13番目のセグメントの30アミノ酸残基(残基361〜390)は、以下のように配列番号26として開示される。
【0153】
配列番号26
【0154】
【化35】

配列番号24、25または26のいずれでも、血液型亜型DのLcrE参照配列(配列番号46)に対して変異は同定されなかった。
【0155】
コンセンサス配列の14番目のセグメントの30アミノ酸残基(残基391〜420)は、以下のように配列番号27として開示される。
【0156】
配列番号27
【0157】
【化36】

残基391〜420由来のコンセンサス配列セグメントの30位置のアミノ酸残基(すなわち、全体的なコンセンサス配列の420位置)は、14の単離物のうち9ではセリン(S)であって、14の単離物のうち5ではプロリン(P)であった。
【0158】
観察された全ての単離物では、アミノ酸残基は421位置ではプロリンであった。
【0159】
Chlamydia trachomatis株D/UW−3/CX由来のLcrE参照配列は、配列番号28(下)として提供し、これはまた、種々のChlemydia trachomatis血液型亜型単離物において検出された対立遺伝子変異ポイントの全てのまとめを示す:ポイントミューテーションを囲む配列番号28における下線の領域は、B細胞および/またはT細胞のエピトープのペプチド領域のいずれかに対応する可能性が高い。
【0160】
配列番号28
【0161】
【化37】

配列番号185
【0162】
【化38】

表2は、Chlamydia trachomatisのトラコーマ症LcrEタンパク質の17個の抗原決定基(または配列番号29〜45として示されるエピトープ性のペプチド)を示す。
【0163】
【化39】

【発明を実施するための最良の形態】
【0164】
(発明の詳細な説明)
本発明を詳細に記載する前に、本発明は、特に例示された分子またはプロセスパラメーターに限定されず、従って当然ながら変化してもよいことが理解されるべきである。本明細書において用いられる専門用語は、本発明の特定の実施形態を記載する目的でしかなく、限定を意図はしないということも理解されるべきである。さらに、本発明の実施は、他に示さない限り、その全てが当業者の技術の範囲内であるウイルス学、微生物学、分子生物学、組み換えDNA技術および免疫学の従来の方法を使用する。このような技術は、文献に詳細に例示される。例えば、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第2版、1989);DNA Cloning:A Practical Approach,第I&II巻(D.Glover編);Oligonucleotide Synthesis(N.Gait編,1984);A Practical Guide to Molecular Cloning(1984);ならびにFundamental Virology,第2版、第I&II巻(B.N.FieldsおよびD.M.Knipe編)を参照のこと。
【0165】
上記であろうと下記であろうと、本明細書に引用される全ての刊行物、特許および特許出願は、その全体が参照によって本明細書に援用される。本明細書においておよび添付の特許請求の範囲において用いられる場合、単数形「1つの(a)、(an)」および「この、その(the)」は、その内容が明確に他を示すのでない限り、複数の言及を包含するということが注意されるべきである。本出願に用いられる全ての科学用語および技術用語は、他に特定しない限り当該分野で通常用いられる意味を有する。本出願に用いられる場合、以下の単語および句は特定された意味を有する。
【0166】
「含む(comprising)」という用語は、「包含すること(including)」および「からなる、から構成される(consisting)」を意味し、例えば、Xを「含む(comprising)」組成物は、排他的にXから構成されてもよく、または何かをさらに含んでもよい、例えば、X+Y。
【0167】
「約、およそ、ほぼ(about)」という用語は、数値xに関して、例えばx±10%を意味する。
【0168】
2つのアミノ酸配列の間の配列同一性パーセンテージという言及は、整列された場合、アミノ酸が、その2つの配列を比較して同じであるパーセンテージを意味する。このアラインメントおよび相同性パーセントまたは配列同一性は、当該分野で公知のソフトウェアプログラム、例えば、Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubelら編、1987)Supplement30のセクション7.7.18に記載されるプログラムを用いて決定されてもよい。好ましいアラインメントは、12というギャップオープンペナルティーおよび2というギャップ伸長ペナルティー、62というBLOSUMマトリックスを用いるアフィン・ギャップ・サーチを用いて、Smith−Waterman相同性検索アルゴリズムによって決定される。Smith−Watermanの相同性検索アルゴリズムは、Smith & Waterman(1981)Adv.Appl.Math.2:482〜489に開示される。
【0169】
IUPAC−IUB Biochemical Nomenclature Commissionによって推奨される1文字アミノ酸記号を、参照の目的でも提供する3文字コードと一緒に下に示す。
A Ala アラニン
C Cys システイン
D Asp アスパラギン酸
E Glu グルタミン酸
F Phe フェニルアラニン
G Gly グリシン
H His ヒスチジン
I Ile イソロイシン
K Lys リジン
L Leu ロイシン
M Met メチオニン
N Asn アスパラギン
P Pro プロリン
Q Gln グルタミン
R Arg アルギニン
S Ser セリン
T Thr トレオニン
V Val バリン
W Trp トリプトファン
Y Tyr チロシン
他に言及しない限り、本明細書に用いられる用語法は、当業者によって理解されるその正常な意味を与えられるべきである。本発明の理解を促進するために、本明細書において多数の規定の用語を用いて、本発明の特定の要素を命名する。そのように用いられる場合、以下の意味が意図される:
これも上で注記されるとおり、8つの異なるChlamydia trachomatis血液型亜型を代表する14のChlamydia trachomatis臨床単離体におけるLcrE遺伝子の対立遺伝子改変体を評価する過程で、本出願人らは、C.trachomatis血液型亜型にまたがる単一アミノ酸置換の予想数よりも多くが、(i)血液型亜型Dの参照Chlamydia trachomatisのLcrE配列、および(ii)他の免疫原性Chlamydia trachomatis抗原について見出される配列に対して、LcrE抗原について観察されたということを確認した。
この極めて予想されず、かつ驚くべき知見によって、以下が示唆される:
(i)LcrEタンパク質は、他の免疫原性Chlamydia trachomatis抗原よりも大きい免疫学的圧力に供され得る;そして
(ii)アミノ酸置換を囲むペプチドは、エピトープ領域(抗体−抗原(Ab−Ag)相互作用に関与するB細胞エピトープ、および/またはChlamydia特異的細胞媒介性応答を惹起し得るT細胞エピトープのいずれか)である可能性が高い。
出願人の知見は、全てがさらに驚くべきである。なぜなら、これらの遺伝子型決定研究のために用いられるChlamydia単離物は、2つの異なる大陸(北アメリカおよび欧州)から単離され、かつ異なる時点にまたがる(最小30年前対5〜8年前)、2つの極めて多様な免疫学的供給源に由来するからである。
【0170】
(対立遺伝子改変体)
本明細書において用いる場合、「対立遺伝子改変体(allelic variant)」という用語は、染色体上の同じ位置(遺伝子座)を占める一連の2つ以上の異なる遺伝子のうちのいずれか1つを指す。例えば、本明細書において核酸配列が提供される核酸分子または領域の「対立遺伝子改変体」とは、別のまたは第二の単離物のゲノム中の同じ遺伝子座で本質的に生じる核酸分子または領域であって、例えば、変異または組み換えによって生じる天然の改変体に起因して、類似であるが同一ではない核酸配列を有するものである。コード領域対立遺伝子改変体は、比較されている遺伝子によってコードされるタンパク質の免疫学的活性に対して同じ免疫学的活性を有する必要はないが類似の生物学的活性を有するタンパク質をコードし得る。下に考察されるとおり、遺伝子型における変異または変化の性質は、生物学的な表現型および/または免疫学的な表現型において得られた機能的な影響または変化に影響し得る。対立遺伝子改変体はまた、調節性制御領域においてのように、遺伝子の5’または3’非翻訳領域における変化を含んでもよい(例えば、米国特許第5,753,235号を参照のこと)。
【0171】
(変異体)
本明細書において用いる場合、「変異体(mutant)」という用語は、1つ以上の相違(変異)を有することによって参照配列とは異なる配列をいう。これは、置換であっても、欠失であっても、または挿入であってもよい。変異体は、機能的な効果を有しても有さなくてもよい。例えば、本発明の対立遺伝子改変体または変異体における、参照の配列番号46と比較した、1つ以上の相違が、保存的なアミノ酸置換、例えば、1アミノ酸の関連の側鎖を有する別のアミノ酸での置換を包含するならば、この変異された配列は、この参照配列に対して機能的な生物学的影響を示し得ない。これに関して、遺伝子コードされたアミノ酸は一般に4つのファミリーに分けられる:(1)酸性、すなわち、アスパラギン酸、グルタミン酸;(2)塩基性、すなわち、リジン、アルギニン、ヒスチジン;(3)非極性、すなわち、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン;そして(4)非荷電の極性、すなわち、グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、トレオニン、チロシン。フェニルアラニン、トリプトファンおよびチロシンは、時に、芳香族アミノ酸としてまとめて分類される。一般には、これらのファミリー内の単一のアミノ酸の置換は、生物学的な活性にも免疫学的な活性にも大きな影響を有さない。
【0172】
他方では、本発明の対立遺伝子改変体または変異体における、参照の配列番号46と比較した1つ以上の相違が非保存的なアミノ酸置換を含むならば、この置換は、例えば、抗原配列、例えばLcrEの免疫原性の変更のような、表現型の変化を生じる機能的な影響を有し得る。例えば、タンパク質に対する実験的に決定された抗原部位からのデータの分析によって、疎水性の残基Cys、LeuおよびValが、もしタンパク質の表面上に存在すれば、抗原性部位の一部である可能性がより高いということが示唆される(KolaskarおよびTongaonkar(1990)FEBS Lett 276(1−2)172〜4)。本発明の配列番号28および配列番号185に強調される10の変異に関して、4つの変異は、「保存的(conservative)」とみられ、そして6つの変異は、「非保存的(non−conservative)」とみられた(例えば、実施例4の表4を参照のこと)。保存的なまたは非保存的な変異体の性質の対立する見解(例えば、種々の進化基準に対する、アミノ酸側鎖の性質と比較した物理的または化学的な特徴の相違)があることを考えれば、出願人らは、被験体における免疫原性応答、例えば、体液性および/または細胞媒介性の免疫応答を惹起し得るT細胞および/またはB細胞のエピトープ領域の存在に関連する可能性が高い配列内の超可変領域の有用なマーカーの1例として高頻度変異の存在を用いた(例えば、LcrE配列の64位置および162位置で)。
【0173】
さらなる説明のために、出願人は、LcrEの血液型亜型配列においてアミノ酸残基64および162で2つの高頻度変異ポイントまたは超可変領域を同定した。アミノ酸残基64では、14のChlamydia単離物にまたがってグリシン(G)からグルタミン酸(E)への7つの変異があるが、162位置では、14のChlamydia単離物にまたがってトレオニン(T)からアラニン(A)への7つの変異がある。2つの高頻度変異ポイントまたは超可変領域の存在(例えば、参照配列の残基64および162における)は、極めて驚くべきであって、かつ予想されない知見であり、そして被験体において免疫原性応答の変化を惹起し得るエピトープ領域の存在に関連している可能性が高い。
【0174】
Chlamydia trachomatisのトラコーマ症株D/UW−3/CX由来のLcrE参照配列は、配列番号46および配列番号28および配列番号185として提供される。後者の配列によってまた、種々のChlamydia trachomatis血液型亜型単離体で検出された全ての対立遺伝子変異ポイントまたは対立遺伝子改変ポイントのまとめが得られる:ポイントミューテーションを囲む配列番号28および配列番号185の下線の領域は、B細胞および/またはT細胞のエピトープペプチド領域に相当する可能性が高い。
【0175】
(エピトープ)
本明細書において用いる場合、「エピトープ(epitope)」という用語は一般に、T細胞レセプターおよび/または抗体によって認識される抗原上の部位をいう。好ましくは、これは、タンパク質抗原由来の短いペプチドまたはタンパク質抗原の一部である。しかし、この用語はまた、グリコペプチドおよび炭水化物エピトープを有するペプチドを含むものとする。いくつかの異なるエピトープが、単一の抗原性分子によって担持されてもよい。「エピトープ」という用語はまた、生物体全体を認識する応答を刺激するアミノ酸または炭水化物の改変された配列を含む。この選択されるエピトープは、感染性疾患を生じるChlamydia trachomatis細菌のような、感染性因子のエピトープであることが有利である。
【0176】
このエピトープは、ペプチドまたはポリペプチドのアミノ酸および対応するDNAの配列の知識から、ならびに特定のアミノ酸の性質(例えば、サイズ、電荷など)およびコドン・ディクショナリー(codon dictionary)から、過度の実験なしに得ることができる。例えば、Ivan Roitt,Essential Immunology,1988;Kendrew、前出;Janis Kuby,Immunology,1992、例えば、pp79〜81を参照のこと。あるタンパク質が応答を刺激するか否かを決定するいくつかのガイドラインとしては、以下が挙げられる:ペプチド長さ−好ましくは、このペプチドはMHCクラスI複合体に適合するため約8または9アミノ酸長、そしてクラスIIのMHC複合体に適合するため約13〜25アミノ酸長である。この長さは、MHC複合体に結合するペプチドについて最小である。これらの長さよりも長いことがペプチドには好ましい。なぜなら細胞がペプチドを切断し得るからである。このペプチドは、免疫応答を生じるために十分高い特異性を有する種々のクラスIまたはクラスIIの分子に結合し得る、適切なアンカーモチーフを含んでもよい(Bocchia、M.ら、Specific Binding of Leukemia Oncogene Fusion Protein Peptides to HLA Class I Molecules,Blood 85:2680〜2684;Englehard,VH,Structure of peptides associated with class I and class II MHC molecules Ann.Rev.Immunol.12:181(1994)を参照のこと)。これは、目的のタンパク質の配列を、MHC分子に関連したペプチドの公表された構造と比較することによって、過度の実験なしに行なわれ得る。従って、当業者は、タンパク質配列と、タンパク質データベースに列挙される配列とを比較することによって、目的のエピトープを確認し得る。
【0177】
(T細胞エピトープ)
好ましくは、本発明の抗原、詳細には、本発明のLcrE抗原(単数または複数)は、1つ以上のT細胞エピトープを含む。
【0178】
本明細書において用いる場合、「T細胞エピトープ(T cell epitope)」という用語は一般に、T細胞応答を誘導し得る、ペプチド構造の特徴を指す。これに関して、T細胞エピトープが、MHC分子のペプチド結合間隙内で伸展した高次構造を想定する直線的なペプチド決定基を含むということが当該分野で認められている(Unanueら(1987(Science 236:551〜557)。
【0179】
本明細書において用いる場合、T細胞エピトープとは一般に、少なくとも約3〜5アミノ酸残基、好ましくは少なくとも5〜10またはより多く連続したアミノ酸残基、好ましくは少なくとも8〜10のアミノ酸の連続したアミノ酸残基、好ましくは少なくとも10〜14連続したアミノ酸残基、より好ましくは少なくとも9連続したアミノ酸残基を有するペプチドである。
【0180】
しかし、本明細書において用いる場合、「T細胞エピトープ(T cell epitope)」という用語は、任意のMHCクラスIまたはMHCクラスII制限ペプチドを包含する。特定のT細胞エピトープがCMI応答を刺激/増強もしくは変更する能力は、多数の周知のアッセイによって、例えば、リンパ増殖(リンパ球活性化)アッセイ、CD8+T細胞の細胞傷害性細胞アッセイによって、または感作された被験体におけるエピトープに特異的なTリンパ球をアッセイすることによって決定され得る。例えば、Ericksonら、(1993)J.Immunol.151:4189〜4199;ならびにDoeら(1994)Eur.J.Immunol.24:2369〜2376またはCD8+T−cell ELISPOT assays for measuring Interferon gamma production(Miyaharaら、PNAS(USA)(1998)95:3954〜3959)を参照のこと。
【0181】
(CD8+T細胞エピトープ)
好ましくは、本発明の抗原、詳細には本発明のLcrE抗原(単数または複数)は、1つ以上のCD8+T細胞誘導エピトープを含む。CD8+T細胞誘導エピトープとは、宿主被験体への投与後、特異的なCD8+T細胞の形成を刺激するか、その活性を増大するか、またはその活性を変更し得るエピトープである。
【0182】
本明細書において用いる場合、CD8+T細胞エピトープは一般には、少なくとも約3〜5アミノ酸残基、好ましくは少なくとも5〜10またはより多く連続したアミノ酸残基、好ましくは少なくとも8〜10の連続したアミノ酸残基、好ましくは少なくとも10〜14連続したアミノ酸残基、より好ましくは少なくとも8または少なくとも9連続したアミノ酸残基を有するペプチドである。
【0183】
CD8+T細胞エピトープは、種々の異なる形態、例えば、1つまたは2つ以上のエピトープの組み換えストリング(string)で提供されてもよい。CD8+T細胞エピトープは、同定されており、そして多くの異なる疾患について、文献において見出され得る。このようなCD8+T細胞エピトープを含む任意の選択された抗原に対するCD8+T細胞応答を生じるためのエピトープストリングを設計することが可能である。有利には、CD8+T細胞誘導性エピトープは、不必要な核酸物質を回避するように、介入する配列なしに一緒に結合される複数のエピトープのストリングで提供されてもよい。
【0184】
(Tヘルパーエピトープ)
好ましくは、本発明のLcrE抗原(単数または複数)は、1つ以上のヘルパーTリンパ球エピトープを含む。本明細書に従う使用のために適切なTヘルパー細胞エピトープを特定するには種々の方法が利用可能である。例えば、ペプチド配列の両親媒性は、それがヘルパーT細胞誘導因子として機能する能力に影響することが公知である。ヘルパーT細胞誘導性エピトープの詳細な考察は、参照によって本明細書に援用される米国特許第5,128,319号、そして下のさらなる考察に示される。
【0185】
本明細書において用いる場合、ヘルパー(またはCD4+)T細胞エピトープは一般に、少なくとも約3〜5アミノ酸残基、好ましくは少なくとも5〜10またはより多く連続したアミノ酸残基、好ましくは少なくとも8〜10のアミノ酸残基、好ましくは少なくとも9連続したアミノ酸残基を有するペプチドである。より好ましくは、少なくとも10〜14連続したアミノ酸残基。
【0186】
(エピトープの組み合わせ)
好ましくは、本発明の抗原、詳細には、本発明のLcrE抗原(単数または複数)は、CD8+T細胞エピトープおよびB細胞エピトープの混合物を含む。本明細書において用いる場合、「B細胞エピトープ(B cell epitope)」という用語は一般に、特定の抗体分子が結合する抗原上の部位を指す。
【0187】
本明細書において用いる場合、B細胞エピトープは一般に、少なくとも約3〜5連続のアミノ酸残基、好ましくは少なくとも5〜10またはより多く連続したアミノ酸残基、好ましくは少なくとも8〜10連続のアミノ酸残基、好ましくは少なくとも10〜14連続のアミノ酸残基、より好ましくは少なくとも8または少なくとも9連続のアミノ酸残基を有するペプチドである。
【0188】
抗体応答を惹起し得るエピトープの同定は、当該分野で周知の技術を用いて容易に達成される。例えば、Geysenら(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:3998〜4002(所定の抗原の免疫原性エピトープの位置を決定するためにペプチドを迅速に合成する一般的な方法);米国特許第4,708,871号(抗原のエピトープを同定および化学的に合成するための手順);およびGeysenら(1986)Molecular Immunology 23:709〜715(所定の抗体に高い親和性を有するペプチドを同定するための技術)を参照のこと。
【0189】
本発明の好ましい実施形態では、本発明の抗原、詳細には、本発明のLcrE抗原またはLcrE抗原の組み合わせは、CD8+T細胞誘導性エピトープおよびヘルパーT細胞誘導性エピトープの混合物を含む。当該分野で周知のとおり、T細胞およびB細胞誘導性のエピトープは高頻度にお互いに別個であり、そして異なるペプチド配列を含み得る。従って、タンパク質のペプチド鎖の特定の領域は、T細胞またはB細胞エピトープのいずれかを保有し得る。従って、CD8+T細胞エピトープに加えて、CD8+T細胞エピトープによって生成される免疫応答を増強するためには、ヘルパーT細胞によって認識される1つ以上のエピトープを含むことが好ましいかもしれない。
【0190】
(免疫優勢(イムノドミナント)エピトープ)
個体が、抗原もしくは抗原の組み合わせ、または標的抗原の複数のエピトープをコードするヌクレオチド配列もしくはヌクレオチド配列の組み合わせで免疫される場合、多くの場合に、ほとんどの応答性のTリンパ球が、その標的抗原由来の1つ以上の直鎖状のエピトープに特異的であり、そして/またはほとんどの応答性のBリンパ球が、抗原または抗原の組み合わせについての1つ以上の直鎖状のまたは立体配置的なエピトープに特異的である。本発明の目的については、次いで、このようなエピトープが、「免疫優勢エピトープ」と呼ばれる。いくつかの免疫優勢エピトープを有する抗原では、単一のエピトープが、命令性の特異的なT細胞および/またはB細胞の応答の観点から最も優勢であり得る。
【0191】
(本発明のT細胞および/またはB細胞のエピトープを含むペプチド)
本発明は、配列番号1〜184からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドを提供する。
【0192】
このポリペプチドは好ましくは、80アミノ酸長未満(例えば、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10など)である。
【0193】
本発明のいくつかの細胞エピトープ(例えば、配列番号181、182、183および184)は、9マーとして同定されているが、それより短いペプチドがHLA分子と高い親和性で相互作用し得ることが周知であり、そのため本発明はまた、配列番号1〜184からなる群より選択されるアミノ酸配列の7または8のアミノ酸フラグメントを含むポリペプチドを提供する。このポリペプチドは好ましくは、80アミノ酸長未満(例えば、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11など)である。例えば、少なくとも2つの7マーのフラグメントおよび少なくとも1つの8マーのフラグメントを表2に示す。
【0194】
必要に応じて、これらの7マーおよび8マーの配列は本発明に従って用いられ得る。
【0195】
同様に、少なくとも3つの10マーのフラグメントが表2に示される。必要に応じて、10マーのフラグメントが、本発明に従って用いられ得る。
【0196】
好ましくは、本発明は、配列番号29〜45からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドを提供する。
【0197】
好ましくは、本発明は、配列番号47〜98からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドを提供する。
【0198】
好ましくは、本発明は、配列番号99〜184からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドを提供する。
【0199】
さらに好ましくは、本発明は、配列番号54、109、110および111からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドを提供する。
【0200】
それよりさらに好ましくは、このポリペプチドは、配列IKKKGEKFE(配列番号181)またはIKKKEEKFE(配列番号182)を含む。
【0201】
これらの9マーおよび15マーのポリペプチドは、特に有利である。なぜなら、それらは、図2の血液型亜型配列アラインメントにみられるように、血液型亜型D(配列番号54)由来の、そして血液型亜型E(配列番号109、110および111)由来のLcrE配列の残基64、および他の血液型亜型単離体における等価な領域で、第一の高頻度変異ポイントまたは超可変領域を囲むかまたはそれに関係するN末端セグメントを含むからである。
【0202】
さらに好ましくは、本発明は、配列番号66、129および130からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドを提供する。
【0203】
それよりさらに好ましくは、このポリペプチドは、配列KLKSTLIQA(配列番号183)またはKLKSALIQA(配列番号184)を含む。
【0204】
これらの9マーまたは15マーのポリペプチドが特に有利である。なぜなら、それらは、図2の血液型亜型配列アラインメントにみられるように、血液型亜型D(配列番号66)由来の、そして血液型亜型E(配列番号129および130)由来のLcrE配列の残基162、および他の血液型亜型単離体における等価な領域で、超可変領域を含むからである。
【0205】
(Th1Th2免疫応答)
上記のとおり、本発明の抗原配列、例えば、LcrE配列におけるアミノ酸置換を囲むペプチドは、エピトープ領域(Ab−Ag相互作用に関与するB細胞エピトープおよび/またはChlamydia trachomatis特異的な細胞媒介性免疫応答、例えば、Th1またはTh2細胞免疫応答を惹起し得るT細胞エピトープのいずれか)である可能性が高い。好ましくは、これらの領域に関連するB細胞エピトープおよび/またはT細胞エピトープは、単独で、または他の抗原および/もしくは免疫調節性因子と組み合わせてのいずれかで、増強された免疫応答を誘発する。
【0206】
Chlamydia trachomatis感染は、細胞内感染であるので、現在受け入れられるパラダイムの1つは、有効な抗Chlamydial免疫が、適切なT細胞応答および高い血清レベルの中和抗体の両方に必要であるということ、そして「理想的なワクチンは、持続性(中和)抗体およびChlamydia trachomatisに対する曝露の際に急速に応答し得る細胞媒介性免疫を誘導するはずである」ということである。時に、いくつかの相反する研究によって、CD4+TおよびCD8陽性T細胞の両方とも、Chlamydiaのクリアランスにおいてある役割を果たすということが示されている(LoomisおよびStarnback(2002)Curr Opin Microbiol 5:87〜91)。実際今や、特異的なCD4+細胞およびB細胞が、細胞内のChlamydia trachomatisの完全なクリアランスに、そしてChlamydia trachomatis感染に対する想起的な免疫を媒介するために重要であるという有力なコンセンサスとなると考えられる(Igietseme,BlackおよびCaldwell(2002)Biodrugs 16:19〜35およびIgietsemeら(1999)Immunology 98:510〜519)。しかし、さらに最近では、例えば、1つ以上のT細胞エピトープを含む免疫原性組成物のような、T細胞ワクチンも、実現可能であるという証拠が提出されている(例えば、Websterら(2005)PNAS 102(13)4863〜4841を参照のこと)。
【0207】
(T細胞)
本発明は、本発明のT細胞エピトープに結合し得るT細胞を提供する。本明細書において用いる場合、「T細胞(T−cell)」という用語は、胸腺において成熟し、そしてCD3およびT細胞レセプターを発現するリンパ球細胞をいう。これは、ナイーブな細胞、記憶細胞およびエフェクター細胞を包含する。本発明のエピトープに特異的に結合し、そしてこの相互作用によって活性化されるT細胞から生成された細胞の集団は、2つのタイプである:エフェクター細胞および記憶細胞。エフェクター細胞は、本発明のエピトープによって活性化されて、サイトカインを産生し、そして感染した細胞を殺傷する。エフェクター細胞のある割合は、記憶細胞として生存し得る。記憶細胞は、より長期にわたって生存し、そして、このエピトープが、本発明のエピトープの再投与、またはChlamydiaによる感染のいずれかによって再遭遇されるとき、新規なエフェクター細胞集団を生成するように誘導され得る。本発明のエピトープに特異的な記憶およびエフェクターT細胞集団の生成には、その増殖およぶ分化に必要な因子(例えば、インターロイキン−2のようなサイトカイン)を提供するヘルパーT細胞の関与を必要とし得る。ヘルパーT細胞の活性化は、多数の標準的なアプローチを通じて達成され得る。例えば、本発明のエピトープは、1つ以上のヘルパーT細胞エピトープに結合し得、またはヘルパーT細胞エピトープは、同時送達され得る(例えば、核酸ベクターによる)。
【0208】
2つのタイプのT細胞、ヘルパーT細胞(またはCD4+細胞)および細胞傷害性(またはCD8+細胞)が、一般には、細胞媒介性免疫および体液性免疫を開始し、および/または増強するために必要であると考えられる。細胞傷害性T細胞は、CD8同時レセプターを発現し、そして一般に細胞傷害性Tリンパ球(CTL)またはCD8+細胞と呼ばれる。細胞傷害性T細胞は、クラスIのMHCタンパク質の状況において標的細胞によって提示される場合T細胞エピトープを認識するT細胞レセプターを有しており、これによって、クラスIのMHC分子内の本発明のT細胞エピトープを提示する標的細胞の溶解を生じる。細胞傷害性T細胞は、インビトロに位置されても、またはインビボに位置されてもよい。宿主へのこのようなT細胞の移入は、免疫を移入するために用いられ得る(「養子免疫療法(adoptive immunotherapy)」。種々の方法が、本発明のT細胞を獲得および/または検出するために用いられ得る。
【0209】
CD4T細胞は、CD4共レセプター(co−receptor)を発現し得、そして一般にヘルパーT細胞と呼ばれる。CD4T細胞は、MHCクラスII分子に結合する抗原性ペプチドを認識し得る。MHCクラスII分子との相互作用の際、CD4細胞は、サイトカインのような因子を分泌し得る。これらの分泌されたサイトカインは、B細胞、サイトカインT細胞、マクロファージ、および免疫応答に関与する他の細胞を活性化し得る。ヘルパーT細胞またはCD4+細胞は、2つの機能的に別個のサブセットにさらに分割され得る:サイトカインおよびエフェクターの機能が異なる、TH1表現型およびTH2表現型。
【0210】
活性化されたTH1細胞は、細胞免疫を増強し(抗原特異的なCTL産生の増大を含む)、従って、細胞内感染に対する応答において特に有用な細胞である。活性化されたTH1細胞は、1つ以上のIL−2、IFN−γおよびTNF−βを分泌し得る。TH1免疫応答は、マクロファージ、NK(ナチュラルキラー)細胞およびCD8細胞傷害性T細胞(CTL)を活性化することによって局所免疫反応を生じ得る。TH1免疫応答はまた、IL−12を用いてB細胞およびT細胞の増殖を刺激することによって免疫応答を拡大するように機能し得る。TH1刺激性B細胞はIgG2aを分泌し得る。
【0211】
活性化されたTH2細胞は、抗体産生を増強し、従って、細胞外感染に対する応答において有用なものである。活性化されたTH2細胞は、IL−4、IL−5、IL−6およびIL−10の1つ以上を分泌し得る。TH2免疫応答は、将来の防御のためにIgG1、IgE、IgAおよび記憶B細胞の産生を生じ得る。
【0212】
免疫応答は、1つ以上のTH1免疫応答およびTH2免疫応答を包含し得る。
【0213】
TH1免疫応答は、CTLの増大、TH1免疫応答に関連するサイトカイン(例えば、IL−2、IFN−γおよびTNF−β)の1つ以上における増大、活性化マクロファージにおける増大、NK活性における増大、またはIgG2aの産生における増大のうちの1つ以上を包含し得る。好ましくは、増強されたTH1免疫応答は、IgG2a産生の増大を包含する。
【0214】
TH2免疫応答は、TH2免疫応答に関連するサイトカイン(例えば、IL−4、IL−5、IL−6およびIL−10)のうちの1つ以上の増大、またはIgG1、IgE、IgAおよび記憶B細胞の産生における増大のうちの1つ以上を包含し得る。好ましくは、増強されたTH2免疫応答は、IgG1産生の増大を包含する。
【0215】
Tヘルパー細胞誘導性因子によってインビボのCD8+T細胞誘導性の応答を誘発する機構は、完全には明らかでない。しかし、理論によって拘束されないが、免疫活性化因子は、それがヘルパーT細胞を誘発する能力のおかげで、特定のCD8+T細胞のクローン増殖および播種を補助するのに必要なサイトカインのレベルの増大を生じる可能性が高い。背景にある機構にかかわらず、ヘルパーT細胞の混合物および本発明のCD8+T細胞誘導性抗原の組み合わせの使用は、CMI応答を誘発するのを補助するということが想定される。特に適切なヘルパーT細胞エピトープは、異なるHLAタイプの個体において活性であるエピトープ、例えば、破傷風由来のTヘルパーエピトープ(それに対してほとんどの個体が既にプライムされている)である。これはまた、B細胞応答および抗体産生を刺激するためのB細胞エピトープを包含するのに有用であり得る。合成ヌクレオチド配列はまた、以下の2つのタイプの免疫応答を生成するために構築され得る:T細胞のみ、およびB細胞応答と組み合わされたT細胞。
【0216】
本発明の免疫原性組成物、詳細には、本発明の1つ以上のLcrE抗原(単数または複数)を含む免疫原性組成物は、単独で用いられてもよいし、または他のLcrE抗原(単数または複数)および/または他のChlamydia抗原もしくは性的感染症(STD)に関連する他の抗原と、随意的にTh1および/またはTh2応答を惹起し得る免疫調節性因子と組み合わされてもよい。
【0217】
本発明はまた、免疫原性組成物を含み、これは1つ以上の免疫調節性因子、例えば、鉱塩、例えば、アルミニウム塩およびCpGモチーフを含むオリゴヌクレオチドを含む。最も好ましくは、免疫原性組成物は、アルミニウム塩およびCpGモチーフを含むオリゴヌクレオチドの両方を含む。あるいは、免疫原性組成物は、ADPリボシル化毒素、例えば、解毒化ADPリボシル化毒素およびCpGモチーフ含有オリゴヌクレオチドを含む。好ましくは、1つ以上の免疫調節性因子は、アジュバントを含む。アジュバントは、下にさらに考察される、TH1アジュバントおよびTH2アジュバントからなる群のうちの1つ以上のから選択され得る。アジュバントは、以下からなる群より選択され得る
本発明の組成物は好ましくは、細胞媒介性免疫応答、および体液性免疫応答の両方を誘発して、Chlamydia trachomatis細胞内感染に効率的に取り組む。この免疫応答は好ましくは、持続性(例えば、中和)抗体、およびChlamydia trachomatisに対する曝露の際に迅速に応答し得る細胞媒介性免疫を誘導する。
【0218】
実施例においてさらに考察されるとおり、鉱塩、例えば、アルミニウム塩およびCpGモチーフを含有するオリゴヌクレオチドの組み合わせの使用によって、免疫応答の増強を得ることができる。免疫調節性因子のこのような組み合わせを用いる改善された免疫応答の達成は、全く予想されないものであって、いずれかの因子単独の使用からは予想できなかった。従って、本発明は、CpGモチーフを含有するオリゴヌクレオチド、アルミニウム塩のような鉱塩、および性的感染症(STD)に関連する抗原、例えば、LcrE抗原のような、Chlamydia trachomatisの抗原を包含する。限定はしないがCT242、CT381、CT396、CT398および/もしくはCT045のようなChlamydia抗原、ならびに/または性的感染症(STD)に関連する抗原のさらなる例は、さらに下にそして実施例に考察される。
【0219】
本発明はまた、医薬としての使用のための本発明の組成物を提供する。この医薬は好ましくは、哺乳動物において免疫応答を惹起し得(すなわち、これは免疫原性組成物である)、そしてさらに好ましくはワクチンである。本発明はまた、哺乳動物において免疫応答を惹起するための医薬の製造における本発明の組成物の使用を提供する。この医薬は好ましくはワクチンである。
【0220】
免疫応答は、TH1免疫応答およびTH2免疫応答のうちの一方であっても、または両方であってもよい。好ましくは、免疫応答は、増強されたTH1応答および増強されたTH2応答のうちの一方または両方を提供する。
【0221】
免疫応答は、改善された、または増強された、または変更された免疫応答であってもよい。
【0222】
免疫応答は、全身および粘膜の免疫応答のうちの1方であっても、または両方であってもよい。好ましくは、免疫応答は、増強または変更された全身性の免疫応答、および増強または変更された粘膜の免疫応答のうちの一方または両方を提供する。好ましくは、この粘膜の免疫応答は、TH2免疫応答である。好ましくはこの粘膜の免疫応答は、IgAの産生の増大を含む。
【0223】
本発明はまた、Chlamydia trachomatis抗原、詳細にはLcrE抗原の組み合わせを含む第一の成分を含むキットを提供する。Chlamydia trachomatis抗原の組み合わせは、本発明の免疫原性組成物のうちの1つ以上であってもよい。このキットはさらに、以下のうちの1つ以上を含む第二の構成要素を含んでもよい:説明書、シリンジまたは他の送達デバイス、アジュバントまたは薬学的に受容可能な処方溶液。
【0224】
本発明はまた、本発明の免疫原性組成物で予め充填された送達デバイスを提供する。
【0225】
本発明はまた、哺乳動物において免疫応答を惹起するための方法を提供し、この方法は、本発明の組成物の有効量を投与する工程を包含する。免疫応答は好ましくは、防御的であって、好ましくは、抗体および/または細胞媒介性免疫に関与する。好ましくは、免疫応答は、TH1免疫応答およびTH2免疫応答のうちの1方または両方を包含する。この方法は、ブースター応答を惹起し得る。
【0226】
哺乳動物は好ましくはヒトである。ワクチンが予防的な用途の場合、ヒトは好ましくは、小児(例えば、幼児または乳児)または十代である;ワクチンは治療用途のためであり、ヒトは好ましくは十代または成人である。小児を意図するワクチンはまた、成人に、例えば、安全性、投薬量、免疫原性などを評価するために投与されてもよい。好ましくは、ヒトは十代である。より好ましくは、ヒトは青年期前の十代である。それよりさらに好ましくは、ヒトは青年期前の女性または男性である。好ましくは、この青年期前の男性または女性はほぼ9〜12歳齢である。好ましくは、青年期の男性または女性はほぼ15〜19歳齢である。好ましくはこの男性または女性はほぼ20〜49歳である。好ましくはこの男性または女性は49歳を上回る。好ましくはこの標的患者のプロフィールは、同性愛者および性風俗従業員(例えば、売春婦)からなる群より選択される。
【0227】
(免疫応答の有効性を決定するための試験)
本発明の免疫原性組成物の成分のタンパク質の免疫原性を評価する1方法は、タンパク質を組み換え的に発現すること、およびイムノブロットによって患者の血清または粘膜分泌をスクリーニングすることである。タンパク質と患者血清との間の陽性の反応によって、患者は、該当のタンパク質に対する免疫応答を以前にもよおしたこと、すなわち、このタンパク質が免疫原であることが示される。本発明はまた、免疫優勢な(イムノドミナント)タンパク質および/またはエピトープを特定するために用いられ得る。
【0228】
治療的な処置の有効性をチエックする別の方法は、本発明の組成物の投与後のC.trachomatis感染をモニタリングする工程を包含する。予防的な処置の有効性をチエックする1方法は、この組成物の投与後に本発明の組成物中のChlamydia trachomatis抗原に対する免疫応答を全身的に(例えば、IgG1およびIgG2a産生のレベルをモニタリングすること)、および粘膜的に(例えば、IgA産生のレベルをモニタリングすること)の両方でモニタリングする工程を包含する。代表的には、血清Chlamydia trachomatis特異的な抗体応答を、免疫後だがチャレンジの前に決定し、一方で、粘膜Chlamydia trachomatis特異的な抗体応答は、免疫後でかつチャレンジ後に決定する。
【0229】
これらの用途および方法は好ましくは、Chlamydia trachomatisによって生じる疾患(例えば、トラコーマ、骨盤内感染症、精巣上体炎、乳児肺炎など)の予防および/または処置のためである。この組成物はまた、C.pneumoniaeに対して有効であり得る。
【0230】
本発明のワクチン組成物は、宿主、例えば、ヒト投与の前にインビトロおよびインビボの動物モデルで評価され得る。例えば、Petersonら(1988)によるインビトロの中和は、Chlamydia trachomatisに対するワクチン組成物を試験するために適切である。
【0231】
このようなインビトロ試験の1例は、以下に記載されるとおりである。過免疫抗血清を補体供給源として、5%モルモット血清含有PBS中で希釈する。Chlamydia trachomatis(10IFU;封入体形成単位)を抗血清希釈液に添加する。この抗原−抗体混合物を37℃で45分間インキュベートして、接種前にPBSで2回洗浄しているガラスバイアル(例えば、15×45mm)に含まれる、二重のコンフルエントなHep−2またはHeLa細胞単層中に接種する。この単層細胞を、1000×gで1時間の遠心分離、その後の37℃で1時間の静置インキュベーションによって感染させる。感染した単層を48または72時間インキュベートして、固定し、Chlamydia trachomatis特異的抗体、例えば、抗MOMPで染色する。封入体保有細胞を、200×の倍率で10の視野でカウントする。中和力価とは、コントロールの単層/IFUに比較した場合50%阻害を与える希釈とする。
【0232】
本発明の免疫原性組成物の有効性はまた、免疫原性組成物を用いて、Chlamydia trachomatis感染の動物モデル、例えばモルモットまたはマウスをインビボでチャレンジすることによって決定され得る。この免疫原性組成物は、チャレンジ血液亜型と同じ血液亜型に由来してもよいし、それに由来しなくてもよい。好ましくは免疫原性組成物は、チャレンジ血液型亜型と同じ血液型亜型から誘導可能である。さらに好ましくは、この免疫原性組成物および/またはチャレンジ血液型亜型は、D、E、F、H、IおよびK、ならびに/またはそれらの組み合わせからなる生殖器官血液型亜型の群から誘導され得る。それよりさらに好ましくは、この免疫原性組成物および/またはチャレンジ血液型亜型は、D、E、FおよびIからなる生殖器官の血液型の群から導くことができる。それよりさらに好ましくは、この免疫原性組成物および/またはチャレンジ血液型亜型は、D、EおよびFからなる生殖器官の血液型亜型の群から導くことができる。女性では、この血清型DおよびFは、無症候性の感染に関連しているが、血清型Eは、症候性および無症候性の感染の両方に関連している。他の男性の感染に一般に関連する可能性のある血液型亜型としてはLGV血液型亜型が挙げられる。本発明の血液型亜型は、臨床的な単離物から、または培養収集物、例えば、American Tissue Culture Collection(ATCC)から入手可能である。
【0233】
インビボの有効性モデルとしては、限定はしないが以下が挙げられる:(i)ヒトChlamydia trachomatis血清型、例えば、血清型D、E、F、H、IおよびKを用いるマウス感染モデル;(ii)マウス適合性Chlamydia trachomatis株、例えば、Chlamydia muridarumとしても公知のChlamydia trachomatisマウス肺炎(MoPn)株を用いるマウスモデルである、マウス疾患モデル;ならびにヒトChlamydia trachomatis単離物を用いる霊長類モデル。MoPn株は、マウスの病原体であるが、ヒトChlamydia trachomatis血清型、例えば、血清型D、E、F、H、IおよびKは、ヒト病原体である(例えば、Brunhamら(2000)J Infect Dis 181(補遺3)S538〜S543;Murdinら(2000)J Infect Dis 181(補遺3)S544〜S551およびReadら(2000)NAR 28(6);1397〜1406を参照のこと)。この実施例が実証するとおり、ヒトChlamydia trachomatis血清型、例えば、血液型亜型Dは、マウスモデルで用いられ得るが、それらは通常は、プロゲステロンの高接種または事前処置を必要とする。プロゲステロンが一般に用いられる。なぜなら、それらは、クラミジアの感染に対して生殖器の上皮をより感受性にさせると考えられるからである(Palら、2003 Vaccine 21:1455〜1465を参照のこと)。他方では、マウス組織からもともと単離されたMoPnは、天然のマウス病原体であると考えられ、従って、宿主−病原体の相互作用の分析のために進化的に適応した病原体を提供する。MoPn血液型亜型は、ヒトChlamydiaの血液型亜型に対して高い程度のDNA相同性を有すると考えられるが、これはまた、いくつかの固有の特性を有し得る(例えば、Palら(2002)Infection and Immunity 70(9);4812〜4817を参照のこと)。
【0234】
例えば、インビボのワクチン組成物チャレンジ研究は、Chlamydia trachomatisのマウスモデルで行われ得る(Morrisonら、1995)。このタイプのアプローチの1例の説明は以下のとおりである。7〜12週齢の雌性マウスに、膣感染の10日前および3日前に、2.5mgのデポプロベラ(depoprovera)を皮下に与える。ワクチン接種後、マウスを、1,500封入体形成単位のChlamydia trachomatisを含む5mLのスクロース−リン酸塩−グルタミン酸塩緩衝液、pH7.4を用いて生殖器官に感染させる。感染の経過を、Chlamydia trachomatis特異的な抗血清での間接的な免疫蛍光によって、または感染したマウスの生殖器官から剥離するギムザ染色したスメアによって、封入体保有細胞の割合を決定することによってモニターする。マウスの血清における抗体力価の存在を、酵素結合イムノソルベントアッセイによって決定する。本発明の免疫原性組成物は、限定はしないが、筋肉内(i.m.)、腹腔内(i.p.)、鼻腔内(i.n.)、皮下(s.c.)または経皮(t.c.)経路のような多数の異なる免疫経路を用いて投与され得る。一般には、所望の免疫応答が必要な粘膜表面(単数または複数)で達成される条件であれば、任意の投与経路が用いられてもよい。同様に、チャレンジ血液型亜型は、多数の異なる経路によって投与され得る。代表的には、このチャレンジ血液型亜型は、限定はしないが、生殖器のチャレンジまたは鼻腔内(i.n.)チャレンジのように粘膜に投与される。
【0235】
別のインビボの有効性モデルとしては、モルモットのモデルが挙げられる。例えば、Chlamydia trachomatis感染のモルモットモデルにおいてインビボのワクチン組成物チャレンジ研究を行なってもよい。このタイプのアプローチの1例の説明は以下である。450〜500gと秤量される雌性モルモットを、環境管理した部屋において12時間の明−暗サイクルで飼育して、種々の免疫経路を介してワクチン組成物で免疫する。ワクチン接種後、モルモットに、モルモット封入体結膜炎(guinea pig inclusion conjunctivitis)(GPIC)の因子を生殖器官に感染させ、これをHeLaまたはMcCoy細胞で増殖させた(Rankら(1988))。各々の動物に、0.05mlのスクロース−リン酸塩−グルタミン酸塩緩衝液、pH7.4に含まれる約1.4×10封入体形成単位(IFU)を投与する(Schacter,1980)。感染の経過を、GPIC特異的な抗血清での間接的な免疫蛍光法によって、または生殖器官から剥離するギムザ染色したスメアによって、封入体保有細胞の割合を決定することによって、モニターする(Rankら、1988)。血清中の抗体力価は、酵素結合免疫吸着アッセイによって決定する。
【0236】
あるいは、インビボのワクチン組成物チャレンジ研究は、Chlamydia trachomatisのマウスモデルで行ってもよい(Morrisonら、1995)。このタイプのアプローチの1例の説明は以下である。7〜12週齢の雌性マウスに、膣感染の10日前および3日前に2.5mgのデポプロベラを皮下に与える。ワクチン接種後、マウスを、5mlのスクロース−リン酸塩−グルタミン酸塩緩衝液、pH7.4に含まれる約1,500封入体形成単位(IFU)のChlamydia trachomatisを生殖器官に感染させる。感染の経過は、Chlamydia trachomatis特異的な抗血清での間接的な免疫蛍光法によって、または感染したマウスの生殖器官から剥離するギムザ染色したスメアによって、封入体保有細胞の割合を決定することによって、モニターする。マウスの血清における抗体力価の存在は、酵素結合免疫吸着アッセイによって決定する。
【0237】
(エピトープマッピング)
限定はしないが、LcrE血液型亜型改変体のような血液型亜型改変体のエピトープマッピングは以下のとおり行なう:WO05/002619に記載されるような生殖器官感染のマウスモデルを用いる。全ての血液型亜型改変体、例えば、LcrE改変体は、組み換えタンパク質として発現され、この方法論についてもWO05/002619に記載される。マウスを組み換えLcrE改変体で免疫する(Chlamydia trachomatisチャレンジの有無)。次いで、免疫されたマウス由来の脾臓(Chlamydia trachomatisチャレンジの有無)を、単離して、CT LcrE特異的なペプチド(実施例2の配列番号29〜45、実施例3の配列番号47〜98、および実施例4の配列番号99〜180、181、182、183および/または184に示されるとおり)でパルスする。次いで、このCT LcrE特異的なペプチドの各々に対する脾臓細胞応答を、脾臓細胞増殖の有無、メディエーターの応答に関して、例えば、Th1またはTh2細胞の応答などについて、上記の種々の試験によって決定されるように評価する。
【0238】
本発明の組成物は一般に、患者に直接投与される。直接送達は、非経口注射(例えば、皮下、腹腔内、静脈内、筋肉内、または組織の間質腔へ)によって、または粘膜的に、例えば、直腸、経口(例えば、錠剤、スプレー)、膣、局所、経皮(例えば、WO99/27961を参照のこと)または経皮(例えば、WO02/074244およびWO02/064162を参照のこと)、鼻腔内(例えば、WO03/028760を参照のこと)、眼、耳、肺または他の粘膜投与によって、達成され得る。
【0239】
本発明は、全身および/または粘膜の免疫を誘発するため、好ましくは増強された全身性および/または粘膜の免疫を誘発するために用いられ得る。
【0240】
好ましくは、この増強された全身性および/または粘膜の免疫は、増強されたTH1および/またはTH2の免疫応答に反映される。好ましくは、この増強された免疫応答は、IgG1および/またはIgG2aおよび/またはIgAの産生の増大を含む。
【0241】
用量処置は、単回投与スケジュールであっても、または複数回投与スケジュールであってもよい。複数用量は、一次免疫スケジュールで、および/またはブースター免疫スケジュールで用いられ得る。複数用量のスケジュールでは、種々の用量を、同じまたは異なる経路によって、例えば、非経口プライムおよび粘膜ブースト、粘膜プライムおよび非経口ブーストなどによって、与えてもよい。
【0242】
Chlamydia感染は、身体の種々の領域に影響し、そのため本発明の組成物は、種々の形態で調製され得る。例えば、この組成物は、注射可能として、液体溶液または懸濁液のいずれかとして調製され得る。注射前の液体ビヒクルでの溶液のために、または懸濁液のために適切な固体型も調製され得る(例えば、凍結乾燥組成物、または噴霧凍結乾燥された組成物)。この組成物は、局所投与のために、例えば、軟膏、クリームまたは粉末として調製され得る。この組成物は、経口投与のために、例えば、錠剤またはカプセルとして、スプレーとして、またはシロップとして調製され得る(必要に応じて香味付けされる)。この組成物は、肺投与のために、例えば、吸入器として、微細な粉末またはスプレーを用いて調製されてもよい。この組成物は、坐剤または膣坐薬として調製されてもよい。この組成物は、鼻腔、耳、または眼の投与のために、例えば、液滴(ドロップ)(drops)として調製されてもよい。この組成物は、併用組成物が患者への投与の直前に再構成されるように設計されたキット型であってもよい。このようなキットは、1つ以上の抗原を液体型で、そして1つ以上の凍結乾燥型抗原を含んでもよい。
【0243】
ワクチンとして用いられる免疫原性組成物は、免疫学的に有効な量の抗原(単数または複数)、ならびに任意の他の成分を必要に応じて含む。「免疫学的に有効な量(Immunologically effective amount)」とは、その量のある個体への、単回用量でのまたは一連の一部としての投与が、処置または予防に有効であるということを意味する。この量は、処置される個体の健康および肉体的な状態、年齢、処置される個体の分類群(例えば、非ヒト霊長類、霊長類など)、この個体の免疫系が抗体を合成する能力、所望される防御の程度、ワクチンの処方、医学的状態の処置医による評価、および他の関連の要因に依存して変化する。この量は、慣用的なトライアルを通じて決定され得る比較的広範な範囲におさまると予想される。
【0244】
(この組成物のさらなる成分)
本発明の組成物は代表的には、上述の成分に加えて、1つ以上の「薬学的に受容可能なキャリア(pharmaceutically acceptable carriers)を含み、これは、それ自体が、その組成物を投与される個体に対して有害な抗体の産生を誘導しない任意のキャリアを包含する。適切なキャリアとは代表的には、大きく、緩徐に代謝される高分子、例えば、タンパク質、ポリサッカライド、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、重合体のアミノ酸、アミノ酸コポリマー、および液体凝集物(例えば、油滴またはリポソーム)である。このようなキャリアは当業者に周知である。このワクチンはまた、希釈剤、例えば、水、生理食塩水、グリセロールなどを含んでもよい。さらに、補助物質、例えば、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝物質などが存在してもよい。薬学的に受容可能な賦形剤の全体的な考察は引用文献18にみることができる。
【0245】
(免疫調節性因子)
本発明のワクチンは、他の免疫調節性因子と組み合わせて投与され得る。詳細には、組成物は通常アジュバントを含む、本発明での使用のためのアジュバントとしては、限定はしないが、下に示される1つ以上が挙げられる:
(A.鉱物含有組成物)
本発明におけるアジュバントとしての使用に適切な鉱物含有組成物としては、鉱塩、例えば、アルミニウム塩およびカルシウム塩が挙げられる。本発明は、鉱塩、例えば、水酸化物(例えば、オキシ水酸化物)、リン酸塩(例えば、ヒドロキシリン酸塩、正リン酸塩、硫酸塩など(例えば、Vaccine Design...(1995)編Powell &Newman.ISBN:030644867X.Plenum.の第8および9章を参照のこと)、または異なる鉱物化合物の混合物(例えば、リン酸塩および水酸化物アジュバントの混合物、必要に応じて過剰のリン酸塩と)を包含し、そしてこの化合物は、任意の適切な形態(例えば、ゲル、結晶、非結晶など)をとること、そしてこの塩への吸着が好ましい。この鉱物含有組成物はまた、鉱塩の粒子として処方されてもよい(WO00/23105)。
アルミニウム塩は、Al3+の用量が1用量あたり0.2〜1.0mgであるように本発明のワクチンに含まれ得る。
【0246】
好ましくは、このアジュバントはミョウバン、好ましくはAlOHである。
【0247】
(B.オイル−エマルジョン)
本発明のアジュバントとしての使用のために適切なオイル−エマルジョン組成物としては、スクアレン−水エマルジョン、例えば、MF59(マイクロフルイダイザー(microfluidizer)を用いてμm未満の粒子に処方される、5%のスクアレン、0.5%のTween80、および0.5%のSpan85)が挙げられる。WO90/14837を参照のこと。また、Freyら、「Comparison of the safety, tolerability, and immunogenicity of MF59−adjuvanted influenza vaccine and a non−adjuvanted influenza vaccine in non−elderly adults」、Vaccine(2003)21:4234〜4237も参照のこと。MF59は、FLUADTMインフルエンザウイルス三価サブユニットワクチンにおいてアジュバントとして用いられる。
【0248】
組成物における使用のために特に好ましいアジュバントは、μm未満の水中油型エマルジョンである。本明細書における使用のための好ましいμm未満の水中油型エマルジョンは、必要に応じて種々の量のMTP−PEを含有するスクアレン/水エマルジョン、例えば、4〜5(w/v)%のスクアレン、0.25〜1.0(w/v)%のTween80TM(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)、および/または0.25〜1%のSpan85TM(ソルビタン トリオレアート)、および必要に応じてN−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1’−2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミン(MTP−PE)を含有するμm未満の水中油型エマルジョン、例えば、「MF59」としても公知のμm未満の水中油型エマルジョンである(国際公開番号WO90/14837;その全体が参照によって本明細書に援用される、米国特許第6,299,884号および同第6,451,325号;およびOttら、「MF59−Design and Evaluation of Safe and Potent Adjuvant for Human Vaccines」Vaccine Design:The Subunit and Adjuvant Approach(Powell,M.F.およびNewman,M.J.編)Plenum Press,New York,1995,pp.277〜296)。MF59は、4〜5%(w/v)のスクアレン(例えば、4.3%)、0.25〜0.5%(w/v)Tween80TM、および0.5%(w/v)のSpan85TMを含み、そして必要に応じて、Model 110Yマイクロフルイダイザー(Microfluidics,Newton,MA)のようなマイクロフルイダイザーを用いてサブミクロン粒子に処方される、種々の量のMTP−PEを含む。例えば、MTP−PEは、約0〜500μg/用量、より好ましくは0〜250μg/用量、そして最も好ましくは、0〜100μg/用量の量で存在し得る。本明細書において用いる場合、「MF59−0」という用語は、MTP−PEを欠く、μmを超える水中油型エマルジョンを指すが、MF59−MTPという用語は、MTP−PEを含む処方物を示す。例えば、「MF59−100」は、1用量あたり100μgのMTP−PEを含むなど。本明細書における使用のための別のμm未満の水中油型エマルジョンMF69は、4.3%(w/v)のスクアレン、0.25%(w/v)のTween80TM、および0.75%(w/v)のSpan85TMおよび必要に応じてMTP−PEを含む。さらに別のμm未満の水中油型エマルジョンは、SAFとしても公知のMF75であり、これは10%のスクアレン、0.4%のTween80TM、5%のプルロニック・ブロック(pluronic−blocked)ポリマーL121およびthr−MDPを含み、またμm未満のエマルジョンにマイクロフルイダイズされる。MF75−MTPは、1用量あたり100〜400μgのMTP−PEのような、MTPを含むMF75処方物、を示す。
【0249】
μm未満の水中油型エマルジョン、これおよび免疫刺激因子、例えばムラミルペプチドを、組成物中における使用のために、作製する方法は、その全体が参照によって本明細書に援用される、国際公開番号WO90/14837および米国特許第6,299,884号および同第6,451,325号に詳細に記載される。完全フロイントアジュバント(CFA)および不完全フロイントアジュバント(IFA)も、本発明におけるアジュバントとして用いられ得る。
【0250】
(C.サポニン処方物)
サポニン処方物はまた、本発明におけるアジュバントとして用いられ得る。サポニンは、広範な植物種の樹皮、葉、茎、根および花でさえ見出されるステロールグリコシドおよびトリテルペノイドグリコシドの異種の群である。Quillaia saponaria Molinaの木の樹皮由来のサポニンは、アジュバントとして広範に研究されている。サポニンはまた、Smilax ornata(sarsaprilla)、Gypsophilla paniculata(brides veil)、およびSaponaria officianalis(サボンソウ根、ソープ・ルーツ(soap root))から商業的に入手可能である。サポニンアジュバント処方物としては、精製された処方物、例えば、QS21、ならびに液体処方物、例えばISCOMが挙げられる。
【0251】
サポニン組成物は、高性能薄層クロマトグラフィー(High Performance Thin Layer Chromatography(HP−LC)および逆相高性能液体クロマトグラフィー(Reversed Phase High Performance Liquid Chromatography(RP−HPLC)を用いて精製した。これらの技術を用いる特異的な精製画分が同定されており、これには、QS7、QS17、QS18、QS21、QH−A、QH−BおよびQH−Cが挙げられる。好ましくは、サポニンはQS21である。QS21の産生の方法は、米国特許第5,057,540号に開示される。サポニン処方物はまた、ステロール、例えば、コレステロールを含み得る(WO96/33739を参照のこと)。
【0252】
サポニンおよびコレステロールの組み合わせは、免疫刺激複合体(ISCOM)と呼ばれる固有の粒子を形成するために用いられ得る。ISCOMは代表的にはまた、リン脂質、例えば、ホスファチジルエタノールアミンまたはホスファチジルコリンを包含する。任意の公知のサポニンが、ISCOMで用いられ得る。好ましくはISCOMとしては1つ以上のQuil A、QHAおよびQHCが挙げられる。ISCOMはさらに、欧州特許0109942、WO96/11711、およびWO96/33739に記載される。必要に応じて、ISCOMは、さらなる界面活性剤を欠いてもよい。WO00/07621を参照のこと。
【0253】
サポニンをベースとするアジュバントの開発の概説は、Barrら、「ISCOMs and other saponin based adjuvants」、Advanced Drug Delivery Reviews(1998)32:247〜271に見出され得る。Sjolanderら、「Uptake and adjuvant activity of orally delivered saponin and ISCOM vaccines」、Advenced Drug Delivery Reviews(1998)32:321〜338を参照のこと。
【0254】
(D.ビロソームおよびウイルス様粒子(VLPs))
ビロソームおよびウイルス様粒子(VLPs)も、本発明におけるアジュバントとして用いられ得る。これらの構造は一般的には、リン脂質と必要に応じて組み合わされるか、またはリン脂質を用いて処方されるウイルス由来の1つ以上のタンパク質を含む。それらは一般に、非病原性、非複製であって、一般には、任意の天然のウイルスゲノムを含まない。このウイルスタンパク質は、丸ごとのウイルスから組み換え生成されても、または丸ごとのウイルスから単離されてもよい。ビロソームまたはVLPにおける使用に適切なこれらのウイルスタンパク質としては、インフルエンザウイルス由来のタンパク質(例えば、HAまたはNA)、B型肝炎ウイルス(例えば、コアまたはカプシドタンパク質)、E型肝炎ウイルス、はしかウイルス、シンドビスウイルス、ロタウイルス、口蹄疫ウイルス、ロタウイルス、ノーウォークウイルス、ヒトパピローマウイルス、HIV、RNA−ファージ、Qβ−ファージ(例えば、コートタンパク質)、GA−ファージ、fr−ファージ、AP205ファージ、およびTy(例えば、レトロトランスポゾンTyタンパク質p1)が挙げられる。VLPは、さらにWO03/024480、WO03/024481およびNiikuraら、「Chimeric Recombinant Hepatitis E Virus−Like Particules as an Oral Vaccine Vehicle Presenting Foreign Epitopes」、Virology(2002)293:273〜280;Lenzら、「papillomavirus−Like Particles Induce Acute Activation of Dendritic Cells」、Journal of Immunology(2001)5246〜5355;Pintoら、「Cellular Immune Responses to Human Papillomavirus(HPV)−16 L1 Healthy Volunteers Immunized with Recombinant HPV−16 L1 Virus−Like Particles」、Journal of Infectious Diseases(2003)188:327〜338;ならびにGerberら「Human Papillomavirus Virus−Like Particles Are Efficient Oral Immunogens when Coadministered with Escherichia coli Heat−Labile Entertoxin Mutant R192GまたはCpg」、Journal of Virology(2001)75(10)4752〜5760に考察される。ビロソームは、さらに、例えば、Gluckら「New Technology Platforms in the Development of Vaccines for the Future」Vaccine(2002)20:B10〜B16にさらに考察される。免疫増強性再構成インフルエンザビロソーム(immunopotentiating recomstituted influenza virosomes)(IRIV)は、サブユニット抗原送達系として、鼻腔内三価INFLEXALTM製品{MischlerおよびMetcalfe(2002)Vaccine 20 補遺5:B17〜23}およびINFLUVAC PLUSTM製品において用いられる。
【0255】
(E.細菌または微生物の誘導体)
本発明における使用に適切なアジュバントとしては、以下のような細菌または微生物の誘導体が挙げられる:
(1)腸内細菌のリポ多糖の非毒性の誘導体(LPS)
このような誘導体としては、モノホスホリル脂質A(MPL)および3−O−脱アセチル化MPL(3dMPL)が挙げられる。3dMPLは、3−De−O−アセチル化モノホスホリル脂質Aと4,5または6アセチル化鎖との混合物である。3De−O−アセチル化モノホスホリル脂質Aの好ましい「小粒子(small particle)」形態は、欧州特許0689454に開示される。3dMPLのこのような「小粒子」は、0.22ミクロンの膜を通して滅菌濾過されるのに十分小さい(欧州特許0689454を参照のこと)。他の非毒性のLPS誘導体としては、モノホスホリル脂質A模倣物、例えば、アミノアルキル・グルコサミニド・リン酸塩誘導体、例えば、RC−529が挙げられる。Johnsonら(1999)Bioorg Med Chem Lett 9:2273〜2278を参照のこと。
【0256】
(2)脂質A誘導体
脂質A誘導体としては、OM−174のようなEscherichia coli由来の脂質Aの誘導体が挙げられる。OM−174は、例えば、Meraldiら「OM−174,a New Adjuvant with a Potential for Human Use,Induces a Protective Response with Administered with the Synthetic C−Terminal Fragment 242〜310 from the circumsporozoite protein of Plasmodium berghei」、Vaccine(2003)21:2485〜2491;ならびにPajakら、「The Adjuvant OM−174 induces both the migration and maturation of murine dendritic cells in vivo」、Vaccine(2003)21:836〜842に記載される。
【0257】
(3)免疫刺激性オリゴヌクレオチド
本発明におけるアジュバントとしての使用のために適切な免疫刺激性オリゴヌクレオチドとしては、CpGモチーフを含むヌクレオチド配列(非メチル化シトシン、続いてグアノシンを含み、リン酸結合によって結合される配列)が挙げられる。パリンドロームまたはポリ(dG)配列を含む細菌の二重鎖RNAまたはオリゴヌクレオチドも、免疫刺激性であることが示されている。
【0258】
CpGは、ホスホロチオエート修飾のようなヌクレオチド修飾/アナログを含んでもよく、そして二本鎖であっても一本鎖であってもよい。必要に応じて、グアノシンは、2’−デオキシ−7−デアザグアノシンのようなアナログで置換され得る。Kandimallaら、「Divergent synthetic nucleotide motif recongniton pattern:design and development of potent immunomodulatory oligodeoxyribonucleotide agents with distinct cytokine induction profiles」、Nucleic Acids Research(2003)31(9):2393〜2400;可能性のあるアナログ置換の例については、WO02/26757およびWO99/62923を参照のこと。CpGオリゴヌクレオチドのアジュバント効果はさらに、Krieg、「Cpg motif:the active ingredient in bacterial extracts?」,Nature Medicine(2003)9(7):831〜835;McCluskie, et al,「Parenteral and mucosal prime−boost immunization strategies in mice with hepatitis B surface antigen and CpG DNA」,FEMS Immunology and Medical Microbiology(2002)32:179〜185;WO98/40100;米国特許第6,207,646号;米国特許第6,239,116号および米国特許第6,429,199号にさらに考察される。
【0259】
CpG配列は、TLR9、例えば、モチーフGTCGTTまたはTTCGTTに関し得る。Kandimalla,et al.,「Toll−like receptor 9:modulation of recognition and cytokine induction by novel synthetic CpG DNAs」,Biochemical Society Transactions(2003)31(パート3):654〜658を参照のこと。CpG配列は、CpG−A ODNのようなTh1免疫応答を誘導するために特異的であり得、またはこれは、CpG−B ODNのようなB細胞応答を誘導するためにさらに特異的であり得る。CpG−AおよびCpG−B ODNは、Blackwellら、「「CpG−A−Induced Monocyte IFN−gamma−Inducible Protein−10 Production is Regulated by Plasmacytoid Dendritic Cell Derived IFN−alpha」,J. Immunol.(2003)170(8):4061〜4068;Krieg,「From A to Z on CpG」,TRENDS in Immunology(2002)23(2):64〜65、およびWO01/95935に考察される。好ましくは、CpGはCpG−A ODNである。
【0260】
好ましくは、CpGオリゴヌクレオチドは、5’末端がレセプター認識のためにアクセス可能であるように構築される。必要に応じて、2つのCpGオリゴヌクレオチド配列は、それらの3’末端で「イムノマー(immunomers)」を形成するように結合され得る。例えば、Kandimalla,et al.,「Secondary structures in CpG oligonucleotides affect immunostimulatory activity」,BBRC(2003)306:948−953;Kandimalla,et al.,「Toll−like receptor 9:modulation of recognition and cytokine induction by novel synthetic GpG DNAs」,Biochemical Society Transactions(2003)31(パート3):664〜658;Bhagat et al,「CpG penta−and hexadeoxyribonucleotides as potent immunomodulatory agents」BBRC(2003)300:853〜861およびWO03/035836を参照のこと。
【0261】
好ましくはこのアジュバントはCpGである。それよりさらに好ましくは、このアジュバントは、AlumおよびCpGまたはAlOHおよびCpGである。
【0262】
(4)ADP−リボシル化毒素およびその解毒された誘導体
細菌のADPリボシル化毒素およびその解毒誘導体は、本発明におけるアジュバントとして用いられ得る。好ましくは、このタンパク質はE.coli由来である(すなわち、E.coli熱不安定性エンテロトキシン「LT」)、コレラ(「CT」)、または破傷風(「PT」)。粘膜アジュバントとしての解毒されたADPリボシル化毒素の使用は、WO95/17211に、そして非経口アジュバントとしての使用はWO98/42375に記載される。好ましくは、このアジュバントは、解毒されたLT変異体、例えば、LT−K63、LT−R72およびLTR192Gである。このADPリボシル化毒素およびその解毒された誘導体、特にLT−K63およびLT−R72のアジュバントとしての使用は各々がその全体が本明細書において参照として特に援用される、以下の引用文献に見出され得る:Beignon,et al.,「The LTR72 Mutant of Heat−Labile Enterotoxin of Escherichia coli Enahnces the Ability of Peptide Antigens to Elicit CD4+ T Cells and Secrete Gamma Interferon after Coapplication onto Bare Skin」,Infection and Immunity(2002)70(6):3012〜3019;Pizza,et al.,「Mucosal vaccines:non toxic derivatives of LT and CT as mucosal adjuvants」,Vaccine(2001)19:2534〜2541;Pizza,et al,「LTK63 and LTR72,two mucosal adjuvants ready for clinical trials」Int.J.Med.Microbiol(2000)290(4〜5):455〜461;Scharton−Kersten et al.,「Transcutaneous Immunization with Bacterial ADP−Ribosylating Exotoxins,Subunits and Unrelated Adjuvants」,Infection and Immunity(2000)68(9):5306−5313;Ryan et al.,「Mutants of Escherichia coli Heat−Labile Toxin Act as Effective Mucosal Adjuvants for Nasal Delivery of an Acellular Pertussis Vaccine:Differential Effects of the Nontoxic AB Complex and Enzyme Activity on ThI and Th2 Cells」Infection and Immunity(1999)67(12):6270〜6280;Partidos et al.,「Heat−labile enterotoxin of Escherichia coli and its site−directed mutant LTK63 enhance the proliferative and cytotoxic T−cell responses to intranasally co−immunized synthetic peptides」,Immunol.Lett.(1999)67(3):209〜216;Peppoloni et al.,「Mutants of the Escherichia coli heat−labile enterotoxin as safe and strong adjuvants for intranasal delivery of vaccines」,Vaccines(2003)2(2):285〜293;ならびにPine et al.,(2002)「Intranasal immunization with influenza vaccine and a detoxified mutant of heat labile enterotoxin from Escherichia coli(LTK63)」J.Control Release(2002)85(1−3):263−270。アミノ酸置換の数的な参照は好ましくは、その全体が参照によって詳細に本明細書に援用される、Domenighini et al.,Mol.Microbiol(1995)15(6):1165〜1167に示されるADPリボシル化毒素のAサブユニットおよびBサブユニットのアラインメントに基づく。
【0263】
好ましくは、このアジュバントは、LTK63である。好ましくはこのアジュバントは、LTK72である。
【0264】
(F.生体接着および粘膜接着性物質)
生体接着物質および粘膜接着性物質も、本発明におけるアジュバントとして用いられ得る。適切な生体接着性物質としては、エステル化されたヒアルロン酸マイクロスフェア(Singh et al(2001)J.Cont.Rele.70:267−276)または粘膜接着性物質、例えば、ポリ(アクリル酸)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリサッカライドおよびカルボキシメチルセルロースの架橋誘導体が挙げられる。キトサンおよびその誘導体もまた、本発明におけるアジュバントとして用いられ得る。例えば、WO99/27960。
【0265】
(G.微小粒子)
微小粒子もまた、本発明におけるアジュバントとして用いられてもよい。生分解性でかつ非毒性である物質(例えば、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリカプロラクトンなど)と、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)から形成される微小粒子(すなわち、約100nm〜約150μMの直径、より好ましくは約200nm〜約30μmの直径、そして最も好ましくは、約500nm〜10μmの直径の粒子)が好ましく、必要に応じて、負に荷電された表面(例えば、SDSで)または正に荷電された表面(例えば、陽イオン性界面活性剤、例えば、CTABで)を有するように処理される。
【0266】
(H.リポソーム)
アジュバントとしての使用のために適切なリポソーム処方物の齢は、米国特許第6,090,406号、米国特許第5,916,588号および欧州特許0626169号に記載される。
【0267】
(L.ポリオキシエチレンエーテルおよびポリオキシエチレンエステル処方物)
本発明における使用に適切なアジュバントとしては、ポリオキシエチレンエーテルおよびポリオキシエチレンエステルが挙げられる。WO99/52549。このような処方物はさらに、ポリオキシエチレンソルビタンエステルサーファクタントを、オクトキシノール(WO01/21207)と組み合わせて、そしてポリオキシエチレンアルキルエーテルまたはエステルサーファクタントを、少なくとも1つのさらなる非イオン性サーファクタント、例えば、オクトキシノール(WO01/21152)と組み合わせて含む。
【0268】
好ましいポリオキシエチレンエーテルは、以下の群から選択される:ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル(ラウレス(laureth)9)、ポリオキシエチレン−9−ステロイルエーテル、ポリオキシエチレン−8−ステオリルエーテル、ポリオキシエチレン−4−ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン−35−ラウリルエーテルおよびポリオキシエチレン−23−ラウリルエーテル。
【0269】
(J.ポリホスファゼン(PCPP))
PCPP処方物は、例えば、Andrianov et al,「Preparation of hydrogel microspheres by coacervation of aqueous polyphophazene solutions」,Biomaterials(1998)19(1〜3):109〜115、およびPayne et al,「Protein Release from Polyphosphazene Matrices」,Adv.Drug.Delivery Review(1998)3j,(3):185〜196に記載される。
【0270】
(K.ムラミルペプチド)
本発明におけるアジュバントとしての使用に適切なムラミルペプチドの例としては、N−アセチル−L−トレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アセチル−ノルムラミル−1−アラニル−d−イソグルタミン(nor−MDP)、およびN−アセチルムラミル−1−アラニル−d−イソグルタミニル−1−アラニン−2−(1’−2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミンMTP−PE)が挙げられる。
【0271】
(L.イミダゾキノロン化合物)
本発明におけるアジュバントとしての使用に適切なイミダゾキノロン化合物の例としては、Stanley,「Imiquimod and the imidazoquinolones:mechanism of action and therapeutic potential」Clin Exp Dermatol(2002)27(7):571〜577およびJones,「Resiquimod 3M」,Curr Opin Investig Drugs(2003)4(2):214〜218にさらに記載される、Imiquamodおよびその相同体が挙げられる。
【0272】
本発明はまた、上記で規定される1つ以上のアジュバントの局面の組み合わせを含んでもよい。例えば、以下のアジュバント組成物が、本発明において用いられ得る:
(1)サポニンおよび水中油型エマルジョン(WO99/11241);
(2)サポニン(例えば、QS21)+非毒性のLPS誘導体(例えば、3dMPL)(WO94/00153を参照のこと);
(3)サポニン(例えば、QS21)+非毒性のLPS誘導体(例えば、3dMPL)+コレステロール;
(4)サポニン(例えば、QS21)+3dMPL+IL−12(必要に応じて+ステロール)(WO98/57659);
(5)3dMPLと、例えば、QS21および/または水中油型エマルジョンとの組み合わせ(欧州特許出願0835318,0735898および0761231を参照のこと);
(6)SAF、10%スクアラン、0.4%のTween80、5%のプルロニック−ブロックポリマーL121、およびthr−MDPを含有するSAF、μm未満のエマルジョンにマイクロフルイダイズされるか、またはより大きい粒子ザイズのエマルジョンを生成するようにボルテックスされる。
(7)RibiTMアジュバント系(RAS)、(Ribi Immunochem)であって、2%のスクアレン(Squalene)、0.2%のTween80、および1つ以上の細菌細胞壁成分を、モノホスホリルリピドA(MPL)、トレハロース・ジミコレート(TDM)および細胞壁骨格(CWS)、好ましくはMPL+CWS(DetoxTM)からなる群より含むアジュバント系;ならびに
(8)1つ以上の鉱塩(例えば、アルミニウム塩)+LPSの非毒性の誘導体(例えば、3dPML)。
アルミニウム塩およびMF59は好ましくは、注射可能なインフルエンザワクチンとの使用のためのアジュバントである。細菌毒素および生体接着物質は粘膜送達ワクチン、例えば、経鼻ワクチンとしての使用のための好ましいアジュバントである。
【0273】
(M.ヒト免疫調節因子)
本発明におけるアジュバントとしての使用に適切なヒト免疫調節因子としては、サイトカイン、例えば、インターロイキン(例えば、IL−I、IL−2、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−12、など)、インターフェロン(例えば、インターフェロン−γ)、マクロファージコロニー刺激因子、および腫瘍壊死因子が挙げられる。
【0274】
(融合タンパク質)
本発明において用いられるChlamydia trachomatis抗原は、個々の別のポリペプチドとして組成物に存在してもよい。一般には、本発明の組み換え融合タンパク質は、GST−融合タンパク質および/またはHis−タグ化融合タンパク質として調製される。
【0275】
しかし、好ましくは、この抗原のうちの少なくとも2つ(すなわち、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20)が、単独のポリペプチド鎖として発現される(「ハイブリッド(hybrid)」ポリペプチド)。ハイブリッドポリペプチドは、2つの主な利点をもたらす:第一にそれ自体不安定であるかまたは発現が劣り得るポリペプチドは、この問題を克服する適切なハイブリッドパートナーを加えることによって補助され得る;第二に、市販の製品は、唯一の発現として簡易化されており、両方とも抗原的に有用である2つのポリペプチドを生成するためには、精製を行わなければならない。
【0276】
以下の考察に照らして、引用文献によって、血液型亜型Eは第一の血液型亜型群とされ、血液型亜型Dが第二の血液型亜型群とされ、血液型亜型Kが第三の血液型亜型群とされ、血液型亜型Fが第四の血液型亜型群とされ、血液型亜型Gは第五の血液型亜型群とされ、血液型亜型Hが第六の血液型亜型群とされ、血液型亜型Iが第七の血液型亜型群とされ、そして血液型亜型Jが第八の血液型亜型群とされる。
【0277】
このハイブリッドポリペプチドは、第一の血液型亜型群由来の2つ以上のポリペプチド配列を含んでもよい。従って、本発明は、第一のアミノ酸配列および第二のアミノ酸配列を含む組成物を包含し、この第一および第二のアミノ酸配列は、第一の血液型亜型群の、Chlamydia trachomatis抗原またはそのフラグメント、例えばLcrE抗原から選択される。好ましくは、このハイブリッドポリペプチドにおける第一および第二のアミノ酸配列は異なるエピトープを含む。
【0278】
このハイブリッドポリペプチドは、第二の血液型亜型群から2つ以上のポリペプチド配列を含んでもよい。従って、本発明は、第一のアミノ酸配列および第二のアミノ酸配列を含む組成物を包含し、この第一および第二のアミノ酸配列は、第二の血液型亜型群の、Chlamydia trachomatis抗原またはそのフラグメント、例えばLcrE抗原から選択される。好ましくは、このハイブリッドポリペプチドにおける第一および第二のアミノ酸配列は異なるエピトープを含む。
【0279】
このハイブリッドポリペプチドは、第一の血液型亜型群由来の1つ以上のポリペプチド配列、および第二の血液型亜型群由来の1つ以上のポリペプチド配列を含んでもよい。従って、本発明は、第一のアミノ酸配列および第二のアミノ酸配列を含む組成物を包含し、この第一のアミノ酸配列は、第一の血液型亜型群由来の、Chlamydia trachomatis抗原またはそのフラグメント、例えばLcrE抗原から選択され、そしてこの第二のアミノ酸配列は、第二の血液型亜型群由来の、Chlamydia trachomatis抗原またはそのフラグメント、例えばLcrE抗原から選択される。好ましくは、このハイブリッドポリペプチドにおける第一および第二のアミノ酸配列は異なるエピトープを含む。
【0280】
このハイブリッドポリペプチドは、本発明の1つ以上の抗原、例えば、Chlamydia trachomatisの血液型亜型にまたがるLcrEポリペプチド配列(単数または複数)を含んでもよい。従って、本発明は、第一のLcrEアミノ酸配列および第二のLcrEアミノ酸配列を含む組成物を包含し、この第一のアミノ酸配列はLcrEChlamydia trachomatis抗原またはChlamydia trachomatisの血液型亜型E由来のそのフラグメントから選択され、そしてこの第二のアミノ酸配列はChlamydia trachomatis抗原またはChlamydia trachomatisの血液型亜型D由来のそのフラグメントから選択される。好ましくはこのハイブリッドポリペプチドにおける第一および第二のアミノ酸配列は異なるエピトープを含む。
【0281】
2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つまたは10のLcrE Chlamydia trachomatis抗原に由来するアミノ酸配列からなるハイブリッドが好ましい。詳細には、2つ、3つ、4つ、または5つのLcrE Chlamydia trachomatis抗原由来のアミノ酸配列からなるハイブリッドが好ましい。
【0282】
異なるハイブリッドポリペプチドは、単一の処方物中にまとめて混合され得る。このような組み合わせのうち、Chlamydia trachomatis抗原は、2以上のハイブリッドポリペプチドで、および/または非ハイブリッドポリペプチドとして存在し得る。しかし、抗原はハイブリッドとして、または非ハイブリッドとして存在するが、両方で存在するのではないことが好ましい。
【0283】
ハイブリッドポリペプチドは、式NH−A−{−X−L−}−B−COOHによって提示され得、ここでXは、第五の血液型亜型群、第二の血液型亜型群または第三の血液型亜型群由来のChlamydia trachomatis抗原またはそのフラグメントのアミノ酸配列であり;Lは任意のリンカーアミノ酸配列であり;Aは、任意のN末端アミノ酸配列であり;Bは、任意のC末端アミノ酸配列であり;そしてnは2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15である。
【0284】
−X−部分が、その野性型でリーダーペプチド配列を有する場合、これは、ハイブリッドタンパク質に含まれてもよいし、または省略されてもよい。ある実施形態では、このリーダーペプチドは欠失されるが、ただしこれは、ハイブリッドタンパク質のN末端に位置するX部分のリーダーペプチド、すなわちXのリーダーペプチドが保持されるが、X...Xのリーダーペプチドが省略されないことを除いてである。これは、全てのリーダーペプチドを欠失すること、およびXのリーダーペプチドを−A−部分として用いることと等しい。
【0285】
{−X−L−}の各々のnの場合、リンカーアミノ酸配列−L−は、存在してもしなくてもよい。例えば、n=2である場合、ハイブリッドは、NH−X−L−X−L−COOH、NH−X−X−COOH、NH−X−L−X−COOH、NH−X−X−L−COOHなどであってもよい。リンカーアミノ酸配列(単数または複数)−L−は代表的には短い(例えば、20以下のアミノ酸、すなわち、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1)。例としては、クローニングを容易にする短いペプチド配列、ポリ−グリシンリンカー(すなわち、Glyを含み、n=2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上)、およびヒスチジンタグ(すなわち、Hisであって、n=3、4、5、6、7、8、9、10以上)を含む。他の適切なリンカーアミノ酸配列は、当業者に明白である。有用なリンカーは、GSGGGG(配列番号1)であって、このGly−Serジペプチドは、BamHI制限部位から形成され、従って、クローニングおよび操作を補助し、そして(Gly)テトラペプチドは、代表的なポリ−グリシンリンカーである。
【0286】
−A−は、任意のN末端アミノ酸配列である。これは代表的には、短く(例えば、40以下のアミノ酸、すなわち、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1)である。例としては、タンパク質輸送を指向するリーダー配列、またはクローニングもしくは精製を容易にする短いペプチド配列が挙げられる(例えば、ヒスチジンタグ、すなわち、Hisであって、n=3、4、5、6、7、8、9、10以上)。他の適切なN末端アミノ酸配列は当業者に明白である。Xがそれ自体のN末端メチオニンを欠く場合、−A−は好ましくはオリゴペプチド(例えば、1、2、3、4、5、6、7または8アミノ酸を有する)であり、これはN末端メチオニンを提供する。
【0287】
−B−は、任意のC−末端アミノ酸配列である。これは代表的には、短い(例えば、40以下のアミノ酸、すなわち、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1)。例としては、タンパク質輸送を指示する配列、クローニングまたは精製を容易にする短いペプチド配列(例えば、ヒスチジンタグ、すなわちHisを含み、ここでn=3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上)、またはタンパク質の安定性を増強する配列が挙げられる。他の適切なC末端アミノ酸配列が、当業者に明らかである。最も好ましくはnは2または3である。
【0288】
本発明はまた、本発明のハイブリッドポリペプチドをコードする核酸を提供する。さらに、本発明は、好ましくは、「高ストリンジェンシー(high stringency)」条件下(例えば、65℃で0.1×SSC、0.5%SDS溶液中で)で、この核酸にハイブリダイズし得る核酸を提供する。
【0289】
本発明のポリペプチドは、種々の方法(例えば、組み換え発現、細胞培養物からの精製、化学的合成など)によって、そして種々の形態(例えば、天然で、融合物、非グリコシル化、脂質化された、など)で、調製されてもよい。それらは好ましくは、実質的に純粋な形態で(すなわち、他のChlamydialまたは宿主細胞のタンパク質を実質的に含まず)調製される。
【0290】
本発明に従う核酸は、多くの方法(例えば、化学的合成によって、ゲノムまたはcDNAのライブラリーから、生物体自体からなど)によって、そして種々の形態(例えば、一本鎖、二本鎖、ベクター、プローブなど)で、調製されてもよい。それらは好ましくは、実質的に純粋な形態で(すなわち、他のChlamydialまたは宿主細胞の核酸を実質的に含まず)調製される。
【0291】
「核酸(nucleic acid)」という用語は、DNAおよびRNAを、そしてまたそれらのアナログ、例えば、修飾された骨格を含むもの(例えば、ホスホロチオエートなど)、およびまたペプチド核酸(PNA)なども包含する。本発明は、上記の核酸に相補的な配列(例えば、アンチセンスまたはプローブの目的のため)を含む核酸を包含する。
【0292】
(本発明の生成物を作成するためのプロセス)
本発明はまた、本発明のポリペプチドを産生するためのプロセスを提供し、このプロセスは、ポリペプチド発現を誘導する条件下において、本発明の核酸で形質転換された宿主細胞を培養する工程を包含する。
【0293】
本発明は、本発明のポリペプチドを産生するためのプロセスを提供し、このプロセスは、化学的な手段によってこのポリペプチドの少なくとも一部を合成する工程を包含する。
【0294】
本発明は、本発明の核酸を産生するためのプロセスを提供し、この核酸は、化学的な合成によって(少なくとも一部は)調製される。
【0295】
本発明は、本発明の核酸を賛成するためのプロセスを提供し、このプロセスは、プライマーに基づく増幅方法(例えば、PCR)を用いて核酸を増幅する工程を包含する。
【0296】
本発明は、本発明のタンパク質複合体を産生するためのプロセスを提供し、このプロセスは、クラスIMHCタンパク質と本発明のポリペプチドまたはそのフラグメントとを接触させる工程を包含する。
【0297】
本発明は、本発明のタンパク質複合体を産生するためのプロセスを提供し、このプロセスは、本発明のポリペプチド、またはそのフラグメントをある被験体に投与する工程を包含する。このプロセスは、被験体から複合体を精製するさらなる工程を包含してもよい。
【0298】
本発明は、本発明のポリペプチドおよび/または核酸と、薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤とを混合する工程を包含する、組成物を生成するためのプロセスを提供する。
【0299】
(本発明のポリペプチドの一般的な特徴)
本発明のポリペプチドは、種々の形態(例えば、天然、融合物、グリコシル化、非グリコシル化など)で調製され得る。
【0300】
本発明のペプチドは、固体支持体に結合されてもよい。
【0301】
本発明のペプチドは、検出可能な標識を含んでもよい(例えば、放射性または蛍光の標識、またはビオチン標識)。
【0302】
本発明のポリペプチドは、T細胞エピトープに加えてB細胞エピトープを含んでもよい。
【0303】
(株)
本発明の好ましいポリペプチドは、C.trachomatis血液型亜型Eにおいて、または1つ以上の疫学的に蔓延している血液型亜型見出されるLcrEアミノ酸配列を含む。
【0304】
本発明の好ましいポリペプチドは、C.trachomatis血液型亜型Dにおいて、または1つ以上の疫学的に蔓延している血液型亜型見出されるLcrEアミノ酸配列を含む。
【0305】
本発明の好ましいポリペプチドは、C.trachomatis血液型亜型Kにおいて、または1つ以上の疫学的に蔓延している血液型亜型見出されるLcrEアミノ酸配列を含む。
【0306】
ハイブリッドポリペプチドが用いられる場合、ハイブリッド内の個々の抗原(すなわち、個々の−X−部分)は、1つ以上の株由来であってもよい。n=2である場合、例えば、XはXと同じ株由来であっても、または異なる株由来であってもよい。n=3である場合、この株は、(i)X=X=X、(ii)X=X≠X、(iii)X≠X=X、(iv)X≠X≠X、または(v)X=X≠X、などであり得る。
【0307】
(異種宿主)
本発明のポリペプチドの発現は、Chlamydia trachomatisにおいて行われ得るが、本発明は好ましくは、異種宿主を利用する。この異種宿主は、原核生物(例えば、細菌)であっても、または真核生物であってもよい。これは好ましくはE.coliであるが、他の適切な宿主としては、Bacillus subtilis、Vibrio cholerae、Salmonella typhi、Salmonella typhimurium、Neisseria lactamica、Neisseria cinerea、Mycobacteria(例えば、M.tuberculosis)、酵母などが挙げられる。
【0308】
(免疫原性組成物および医薬)
本発明の組成物は好ましくは免疫原性組成物であり、そしてより好ましくは、ワクチン組成物である。この組成物のpHは好ましくは6〜8。好ましくは約7である。このpHは、緩衝液の使用によって維持され得る。その組成物は、無菌および/または発熱物質なしであり得る。この組成物は、ヒトに対して等張性であり得る。
【0309】
本発明によるワクチンは、予防的(すなわち、感染を予防するため)、または治療的(すなわち、感染を処置するため)のいずれであってもよいが、代表的には、予防的である。従って、本発明は、Chlamydiaの感染に感受性の動物においてChlamydia trachomatis感染の治療的または予防的な処置のための方法を包含し、この方法は、本発明の免疫原性組成物の治療的または予防的な量をこの動物に投与する工程を包含する。好ましくは、この免疫原性組成物は、Chlamydia trachomatisの改変体変異の組み合わせを含み、この組み合わせは、異なるChlamydia trachomatis血液型亜型にまたがって見出される2、3、4、5、6、7または8つ全てのChlamydia trachomatisのLcrE抗原変異からなる群より選択される。それよりさらに好ましくは、この組み合わせは、異なるChlamydia trachomatis血液型亜型にまたがって見出される、8つ全てのChlamydia trachomatisのLcrE抗原改変体または変異体からなる。
【0310】
例えば、本発明の組成物は、Chlamydia trachomatis trachomatisの抗原の組み合わせを含んでもよく、この組み合わせは、以下からなる群より選択される少なくとも1つのLcrE抗原を含む:(1)ゲノムGO/86;(2)ゲノムGev−1;(3)ゲノムCev2;(4)ゲノムCev4;(5)ゲノムCev5;(5)ゲノムCev8;(6)ゲノムATCC−E;(7)ゲノムATTC−F;(8)ゲノムATTC−G;(9)ゲノムATTC−H;(10)ゲノムATTC−I,(11)ゲノムATTC−Jおよび(12)ゲノムATTC−K。この組み合わせはさらに、免疫調節性因子(単数または複数)、例えば、AlumおよびCpGまたはAlOHおよびCpGと組み合わされ得る。本発明の組成物はさらに、Chlamydia trachomatis trachomatisに加えて1つ以上の性感染症に由来する抗原を含んでもよい。好ましくは、この抗原は、以下の性的感染症のうちの1つ以上に由来する、例えば、N.gonorrhoeae、ヒトパピローマウイルス、Treponema pallidum、単純疱疹ウイルス(HSV−1またはHSV−2)、HIV(HIV−1またはHIV−2)、またはHaemophilus ducreyi。
【0311】
1つの好ましい実施形態では、本発明は、特定の変異体の免疫原性組成物を仕立てるのではなく、血液型亜型にまたがるChlamydia trachomatisのLcrEのような、抗原の変異の範囲にまたがり得る免疫原性組成物を提供する。例えば、Chlamydia trachomatisのLcrEの血液型亜型Eの免疫原性組成物は、血液型亜型Eの5つ全ての対立遺伝子にまたがる8つ全ての変異を含むLcrE配列を含んでもよい。あるいは、異なるChlamydia trachomatis血液型亜型対立遺伝子にまたがる変異体の混合物は、血液型亜型Eおよび血液型亜型E以外の血液型亜型における変異にまたがり得、従って血液型亜型に交差する防御を付与し得る。1例として、8アミノ酸置換基は、J血液型亜型にみられる4アミノ酸置換を含んでもよい。
【0312】
1つの特に好ましい実施形態では、この免疫原性組成物は、中和抗体応答を誘発する1つ以上のChlamydia trachomatis抗原(単数または複数)、および細胞媒介性免疫応答を誘発する1つ以上のChlamydia trachomatis抗原(単数または複数)を含む。この方法では、この中和抗体応答は、最初のChlamydia trachomatis感染を予防または阻害するが、細胞媒介性免疫応答は、増強されたTh1細胞応答を誘発し得、これが感染を大きくすることおよび/または伝播させることを予防する。好ましくはこの免疫原性組成物は、1つ以上の表面抗原および1つ以上の細胞質抗原を含む。好ましくはこの免疫原性組成物は、1つ以上のLcrE抗原など、およびTh1細胞応答を誘発し得る、細胞質抗原、例えばpgp3などのような1つ以上の他の抗原を含む。
【0313】
(さらなる抗原)
本発明の組成物はさらに、Chlamydia trachomatisに加えて1つ以上の性的感染症に由来する抗原を含み得る。好ましくは、この抗原は、以下の性的感染症のうちの1つ以上に由来する:N.gonorrhoeae{例えば、19、20、21、22};ヒトパピローマウイルス;Treponema pallidum;単純ヘルペスウイルス(HSV−1またはHSV−2);HIV(HIV−1またはHIV−2);ならびにHaemophilus ducreyi。封入のためのさらなる抗原は、例えば、以下であってもよい:
−N.meningitidisの血清型A、C、W135および/またはY由来の糖類抗原、例えば、引用文献23血清型C{引用文献24も参照のこと}に開示されるオリゴ糖または引用文献25のオリゴ糖。
−Helicobacter pylori由来の抗原、例えばCagA{26〜29}、VacA{30、31}、NAP{32、33、34}、HopX{例えば、35}、HopY{例えば、35}および/またはウレアーゼ。
−Streptococcus pneumoniae由来の糖類抗原{例えば、36、37、38}。
−Streptococcus pneumoniae由来のタンパク質抗原{例えば、39}。
−A型肝炎ウイルス、例えば、不活性化ウイルス由来の抗原{例えば、40、41}。
−B型肝炎ウイルス、例えば、表面および/またはコア抗原由来の抗原{例えば、41、42}。
−C型肝炎ウイルス由来の抗原{例えば、43}。
−ジフテリア抗原、例えば、ジフテリアトキソイド{例えば、引用文献44の第3章}、例えば、CRM197変異体{例えば、45}。
−破傷風抗原、例えば、破傷風トキソイド{例えば、引用文献44の第4章}。
−Bordetella pertussis由来の抗原、例えば、百日咳ホロ毒素(PT)およびB.pertussis由来の線維状赤血球凝集素(FHA)、必要に応じて、またパータクチン(pertactin)および/または凝集原2および3{例えば、引用文献46および47}と組み合わせて;全細胞百日咳抗原も用いられ得る。
−Haemophilus influenzae B由来の糖類抗原{例えば、24}。
−ポリオ抗原(単数または複数){例えば、48、49}例えば、OPVまたは好ましくはIPV。
−N.gonorrhoeae由来の抗原{例えば、50、51、52、53}(例えば、Ng13、Ng576(PPIaseまたはMip)またはNgpIIII)
−(例えば、WO99/57280、WO00/66791、WO02/79243、およびWO04/112832を参照のこと)
−N.meningitidis血清型B由来のタンパク質抗原{例えば、引用文献54〜65}
−N.meningitidis血清型B由来の外膜小胞(OMV)調製物、例えば、引用文献66、67、68、69などに開示される調製物。
−Chlamydia trachomatisまたはChlamydia pneumoniae由来の抗原{例えば、引用文献70〜76}
−(例えば、Chlamydia trachomatis pneumoniaのLcrE等価物であるCpn0324)
−Porphyromonas gingivalis由来の抗原{例えば、77}。
−Treponema pallidum由来の抗原。
−狂犬病抗原(単数または複数){例えば、78}例えば、凍結乾燥された不活化ウイルス{例えば、79、RabAvertTM}。
−麻疹、おたふく風邪および/または風疹の抗原{例えば、引用文献44の第9、10および11章}。
−インフルエンザ抗原(単数または複数){例えば、引用文献44の第19章}、例えば、赤血球凝集素および/またはノイラミニダーゼ表面タンパク質。
−パラミクソウイルス、例えば、呼吸器合胞体ウイルス(RSV{80、81})および/またはパラインフルエンザウイルス由来の抗原(単数または複数)(PIV3{82})。
−Moraxella catarrhalis由来の抗原{例えば、83}。
−Streptococcus pyogenes(A群連鎖球菌)由来の抗原{例えば、84、85、86}。
−Streptococcus agalactiae(B群連鎖球菌)由来の抗原{例えば、87}。
−Staphylococcus aureus由来の抗原{例えば、88}。
−Bacillus anthracis由来の抗原{例えば、89、90、91}.
−例えば、任意のHPV型由来のパピローマウイルス抗原。
−例えば、HSV−1またはHSV−2由来の単純ヘルペスウイルス抗原。
−フラビウイルス科(フラビウイルス属)のウイルス由来の抗原、例えば、黄熱病ウイルス、日本脳炎ウイルス、デングウイルスの4つの血清型、ダニ媒介脳炎ウイルス、西ナイル熱ウイルス由来の抗原。
−HIV由来の抗原、例えば、HIV−1またはHIV−2。
−ロタウイルス由来の抗原。
−ペスチウイルス抗原、例えば、豚コレラウイルス、牛ウイルス性下痢症ウイルスおよび/またはボーダー病ウイルス由来。
−例えば、パルボウイルスB19由来のパルボウイルス抗原。
−例えば、SARSコロナウイルス由来のコロナウイルス抗原。
−ガン抗原、例えば、引用文献92の表1に、または引用文献93の表3および4に列挙される抗原。
【0314】
この組成物は、1つ以上のこれらのさらなる抗原を含んでもよい。この組成物は、少なくとも1つのさらなる細菌抗原および/または少なくとも1つのさらなるウイルス抗原を含んでもよい。抗原の組み合わせは好ましくは、共有される特徴、例えば、呼吸器疾患に関連する抗原、腸疾患に関連する抗原、性的感染症に関連する抗原などに基づくべきである。
【0315】
好ましい組成物は以下を含む:(1)第一の血液型亜型群または第二の血液型亜型群のいずれかに由来する少なくともt個のChlamydia trachomatis抗原であって、tが2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12または13であり、好ましくはtが5である、抗原;(2)別の性感染症由来の1つ以上の抗原。好ましくは、この性感染症は、単純ヘルペスウイルス、好ましくはHSV−1および/またはHSV−2;ヒトパピローマウイルス;N.gonorrhoeae;Treponema pallidum;およびHaemophilus ducreyiからなる群より選択される。従って、これらの組成物は、以下の性的感染症に対する防御を提供し得る:Chlamydia trachomatis、陰部ヘルペス、陰部疣贅、淋病、梅毒および軟性下疳(引用文献94を参照のこと)。
【0316】
糖類または炭水化物抗原を用いる場合、免疫原性を増強するためにキャリアタンパク質に結合体化することが好ましい{例えば、引用文献95〜104}。好ましいキャリアタンパク質は、細菌毒素またはトキソイド、例えば、ジフテリアまたは破傷風トキソイドである。CRM197ジフテリアトキソイドが特に好ましい{105}。他のキャリアポリペプチドとしては、N.meningitidis外膜タンパク質{106}、合成ペプチド{107、108}、熱ショックタンパク質{109、110}、百日咳タンパク質{111、112}、H.influenzae由来のタンパク質D{113}、サイトカイン{114}、リンホカイン、ホルモン、増殖因子、C.difficile由来の毒素AまたはB{115}、鉄取り込みタンパク質{116}などが挙げられる。ある混合物が、血清型群AおよびCの両方由来の莢膜糖類を含む場合、MenA糖類:MenC糖類の比(w/w)が1より大きい(例えば、2:1、3:1、4:1、5:1、10:1またはそれ以上)であることが好ましいかもしれない。異なる糖類は、同じタイプのキャリアタンパク質に結合体化されても、または異なるタイプのキャリアタンパク質に結合体化されてもよい。必要に応じて、任意の適切なリンカーとの任意の適切な結合反応が用いられ得る。
【0317】
毒素タンパク質抗原は、例えば、百日咳毒素の解毒を必要とする場合、化学的および/または遺伝的な方法によって解毒されてもよい。
【0318】
ジフテリア抗原が組成物に含まれる場合、破傷風抗原および百日咳抗原を含むことも好ましい。同様に、破傷風抗原が含まれる場合、ジフテリアおよび百日咳抗原を含むことも好ましい。同様に、百日咳抗原が含まれる場合、ジフテリアおよび破傷風抗原を含むことも好ましい。
【0319】
この組成物における抗原は代表的には、少なくとも各々1μg/mlの濃度で存在する。一般には、任意の所定の抗原の濃度が、その抗原に対する免疫応答を誘発するのに十分である。
【0320】
本発明の組成物においてタンパク質抗原を用いる代わりに、この抗原をコードする核酸を用いてもよい{例えば、引用文献117〜125}。従って、本発明の組成物のタンパク質成分は、タンパク質をコードする核酸(好ましくは、DNA,例えば、プラスミドの形態で)によって置換されてもよい。
【0321】
(併用療法)
本発明の免疫原性組成物は、抗生物質処置レジメンと組み合わせて投与され得る。1実施形態では、この抗生物質は、本発明の抗原、または本発明の抗原を含む組成物、例えば、LcrE免疫原性組成物の投与の前に投与される。別の実施形態では、この抗生物質は、本発明の抗原、または本発明の抗原を含む組成物、例えば、LcrE免疫原性組成物の投与に引き続いて投与される。Chlamydia trachomatisの処置における使用のために適切な抗生物質の例としては限定はしないが、WO98/17280に記載されるアジトロマイシンもしくはその誘導体、またはWO04/047759に示されるようなサイクロスポリンが挙げられる。
【0322】
好ましくは、免疫原性組成物は、1つ以上の改変体Chlamydia trachomatis Type Three Secretion System(TTSS)タンパク質(単数または複数)を含む。
【0323】
好ましくは、免疫原性組成物は、1つ以上の改変体Chlamydia trachomatis Type Three Secretion System(TTSS)タンパク質(単数または複数)と、配列番号29〜45または配列番号1〜13または配列番号17〜45または配列番号47〜180または配列番号54、109、110または111または配列番号66、129もしくは130あるいは配列番号181、182、183および/もしくは184からなる群より選択されるアミノ酸配列とを含む。
【0324】
背景情報の目的で、TTSSは、複雑なタンパク質分泌および送達の機械または装置であり、基本小体(EB)上に位置し得、そして生物体、例えば、例えば、細菌のエフェクタータンパク質(抗宿主病原性決定基として作用し得る)のようなタンパク質を、真核生物細胞の細胞質内に注射することによって、Chlamydiaを、その細胞内ニッチに維持して細菌感染を確立して、宿主細胞機能を調節することを可能にする。これらの注射されたタンパク質(TTSSエフェクタータンパク質)は、宿主細胞に対して種々の影響を有し得、この影響としては、限定はしないが、アクチンおよび他の構造的なタンパク質の操作ならびに宿主細胞シグナル伝達系の改変が挙げられる。この注入された(または転位した)タンパク質またはTTTS系の基質はまた、MHC−クラスI分子によって処理されて提示され得る。
【0325】
全てではないがIII型の分泌系によって分泌されるタンパク質は、宿主細胞に送達されるかまたはエフェクター機能を有する。例えば、いくつかのIII型タンパク質は、分泌プロセス自体、その調節、または宿主細胞膜を通るエフェクタータンパク質の転位に関与する。例えば、CT089はまた、Low Calcium Response Element(LcrE)またはCoPn(これはChlamydiaのYopの外部タンパク質ホモログ(uter rotein homologue)である)としても公知であり−宿主細胞由来の適切なシグナルの非存在下で分泌(可能性のある事前に合成されたタンパク質の)を予防する末梢性に関連する調節因子として作用すると考えられる。事実上、これは、誘導的なシグナルが受容されるまで分泌系の末端を「栓をする、プラグをする(plugs)」。基本小体(EB)は、「代謝的に不活性である(metabolically inert)」とみなされるが、(EB)に位置されるChlamydialのTTS系は、膜接触によって誘発され、そして予め形成された「ペイロード(payload)」タンパク質を遊離し得ると想定されている。III型分泌系(Type Three Secretion System)(TTSS)が、宿主細胞の細胞質へのタンパク質の分泌のため、および封入膜へのクラミジアタンパク質(Incセット様)の挿入のために、クラミジアの複製サイクルの細胞内相の間に活性になり、宿主細胞の細胞質から成長しているクラミジアのマイクロコロニーを分泌するというのが現在の仮説である(Montigiani et al(2002)Infection and Immunity 70(1);386〜379を参照のこと)。
【0326】
例えば、LcrE(CT089)タンパク質は、細菌および真核生物細胞膜を直接横切って標的細胞の細胞質へエフェクタータンパク質を注入するある種の「分子シリンジ(molecular syringe)」として働くと考えられる。空胞に結合した膜に残留するChlamydia細菌は、封入体と呼ばれ、これによってまた、ChlamydiaのTTSSがおそらく液胞膜(すなわち、封入体膜)および原形質膜(例えば、Stephens et al 1998 Science(282);754〜759を参照のこと)へ、またはそれを横切って、またはそれを通じてタンパク質を転位するということが想定されている。イムノブロット分析によって、CopN(CT089)およびScc1(CT088)の両方とも、感染20時間後にクラミジアの発達型および全培養物溶解液の両方で存在することが示される。間接的な免疫蛍光による、感染された単層の分析によって、CopNは、細菌および封入体膜の両方に位置するが、Scc1は、クラミジアでのみ検出されたということが明らかになる。これらの観察に基づいて、CoPnは直接クラミジア感染症と関連するが、これはまた、分泌され得、そして封入体膜と会合し得ると思われる(FieldsおよびHackstadt(2000)Molecular Microbiology 38(5);1048〜1060を参照のこと)。
【実施例】
【0327】
本発明は、単なる例として規定される。本発明は、単なる例として記載されてきたが、本発明の範囲および趣旨内にあるままで改変がなされ得るということが理解される。
【0328】
(実施例1)
(実施例1の目的:)
(i)8つの異なるChlamydia血液型亜型に対応する13のChlamydia trachomatisの臨床単離物における可能性のあるChlamydiaのワクチン候補物の対立遺伝子改変体の程度を評価すること;および
(ii)今まで主要な外膜タンパク質(MOMP)改変体にのみ基づいて分類されている、Chlamydial単離物における抗原性改変の程度を評価すること
(試験した単離物)
8つの単離物は、ATCC(American Type Culture Collection)から入手した。ATCCのカタログに従って、これらの株は米国で1959〜1974年にまたがって患者の生殖器または眼のスワブから単離した。
【0329】
5つの異なる優勢なChlamydiaの血液型亜型に属する6つのイタリアの単離物も試験した。これらのChlamydialの株は、Chlamydia感染にともなう炎症症状を有する患者であって、ほぼ1998〜2001年の時点でイタリアのボローニャのPoliclinico St.Orsolaで試験されている患者から単離した。
【0330】
これらの単離物は、タンパク質MOMP(主要な外膜タンパク質(major outer membrane protein))をコードする遺伝子omp1内の配列改変を評価する、記載されるRFLP(制限フラグメント長多形性(restriction fragment length polymorphism))法によって血清型分類される。
【0331】
以前に言及したように、MOMPは、Chlamydia trachomatis(CT)感染における主な免疫原であって、CT株の血清型または血液型亜型の分類の基礎を提供する。
【0332】
(方法論)
ゲノムDNAをEBまたはCT感染した細胞から抽出し、そして研究される遺伝子を含むと予想されるDNAセグメントをPCRによって増幅した。この増幅したセグメントを精製して、正常なDNA配列決定手順に従って自動DNAシーケンサーにおいて配列決定した。GCGパッケージを含む、ある範囲の専門的なソフトウェアを用いた。
【0333】
そのようにして得た配列によってコードされたタンパク質配列を、公的なデータベースにおいて利用可能な唯一の完全に配列決定された、C.trachomatisの血液型亜型Dのゲノム(D−UW−3/CX)から報告されたタンパク質配列と比較した。
【0334】
各々の遺伝子によってコードされるタンパク質でのアミノ酸置換を、C.trachomatisの唯一の完全に配列決定されたゲノムにおける、すなわち、血清型D株UW−3Cx由来の参照ゲノムにおける対応する対立遺伝子に対してスコア付けした。
【0335】
(血清型割り当て)
RFLP技術の使用とは別に、血清型割り当てはほとんど、モノクローナル抗体分類によって行った。上記の言及したとおり、モノクローナル抗体分類(すなわち、標準的な血清型特異的なモノクローナル分類)は、PCR技術が利用可能になる前に用いられた主な血清型分類手順であった。
【0336】
(結果)
表3は、血液型亜型にまたがる異なるChlamydia trachomatis抗原について見出され得る対立遺伝子改変体を図示する。例えば、表3は、8つの異なる血液型亜型を含む14の異なるCT臨床的単離体における6つの遺伝子の対立遺伝子改変体の評価を図示している。表3に示すとおり、ほとんどの対立遺伝子改変体は、E血液型亜型におけるLcrE(CT089)について見出され、ここで最大8つのアミノ酸置換ポイントを有する5つの対立遺伝子が421アミノ酸配列にまたがって見出されたということがわかった。8アミノ酸置換を有する対立遺伝子5は、2つの単離物(Cev8血液型亜型EおよびATCCのE)において同一であることが見出され、これは、これらの2つのE血液型亜型(ヨーロッパおよびアメリカ)が多くの多様な起源を有することを考えれば、極めて驚くべきであってかつ予想されなかった。
【0337】
少なくとも対立遺伝子改変体は、OmpH−様(CT242)、ArtJ(CT381)、DnaK(CT396)および仮説(Hypothetical)(CT398)の抗原で見いだされ、ここでは最大1〜2のアミノ酸置換ポイントを有する2つの対立遺伝子改変体のみが見出された。中間体の対立遺伝子改変体は、PepA(CT045)に見出され、ここでは499アミノ酸配列にまたがって最大4アミノ酸置換ポイントを有する3対立遺伝子が見出された。
【0338】
(結果の要旨)
異なるコレクションであるATCCコレクションおよびイタリア(Cevenini)のコレクション由来の血液型亜型から遺伝子型決定を行った。ATCCおよびCeveniniのコレクションは、供給源も時間も無関係であった(ATCCコレクションは約30〜40歳齢だが、Ceveniniのコレクションは約5歳齢である)。2つのコレクションの間のこれらの地理的および時間的な相違を考慮すれば、ATCC血液型亜型E(配列番号1)由来のLcrEのアミノ酸配列がLcrEのイタリア(Cevenini)血液型亜型E(cev−8)(配列番号12)由来のアミノ酸配列においてみられるアミノ酸配列と同じ8つの変異を有することは驚くべきでかつ予想されないことであった。
【0339】
異なる供給源由来および異なる時点由来であって、異なる免疫学的圧力に曝されているアミノ酸配列が、LcrE血液型亜型Eの配列において8つの変異のうち同じセットを生じることは全く予想されなかった。ATCC血液型亜型J由来のLcrE(配列番号6)が、LcrEイタリア(Cevenini)血液型亜型J(cev−5)(配列番号11)においてみられるのと同じ3つの変異を有することも発見された。同様に、ATCC血液型亜型H由来のLcrE(配列番号4)は、ATCC血液型亜型J(配列番号6および配列番号11)と同じ3つの変異を有することが発見された。これらの配列はまた、異なる供給源、異なる時点、および異なる免疫学的圧力に由来するが、この変異は、各々の対合で同じである。同一の変異の無い配列でさえやはり、同様であった。例えば、GO86血液型亜型Dおよびイタリア(Cevenini)血液型亜型J(cev−1)由来のLcrEは、予想外にも4つの変異のうち3つで適合した。
【0340】
ATCC血液型亜型F、G、I、K、Cev−2(血液型亜型G)Cev−4(血液型亜型H)、またはコンセンサス配列14、15、17、22、24、25、および26由来のLcrEにおいて変異は見出されなかった。これも、異なる配列がまた、異なる時点にまたがる異なる地理的な位置において、異なる免疫学的圧力に曝されたという事実に照らせば、予想外の知見であった。
【0341】
(全体的な結果の要旨)
全体として、8つの異なるChlamydia血液型亜型に相当する13の単離物にまたがる6つのChlamidya抗原の遺伝子型決定の結果によって、限られた量の固有の単一アミノ酸置換に起因する対立遺伝子改変体で、特に同じ血液型亜型内で、高い程度のアミノ酸配列保存が示される。
【0342】
しかし、LcrE(CT089)の場合、期待される数の単一のアミノ酸置換よりも多い数が観察され、このことは、LcrEタンパク質が、評価された他のChlamydia抗原(これらはCT242、CT381、CT396、CT398およびCT045である)よりも免疫学的に高い圧力に供される可能性、およびこれらのアミノ酸置換を囲むペプチドがエピトープ領域(Ab−Ag相互作用に関与するB細胞エピトープ、および/またはChlamydia trachomatis特異的な細胞媒介性免疫応答を誘発し得るT細胞エピトープのいずれか)である可能性が高いということを示す。詳細には、LcrE配列の残基64および162における2つの高頻度の変異ポイントの存在は、驚くべきであってかつ予想されず、そして被験体の免疫原性応答を誘発し得るエピトープ領域の存在に関連する可能性が高い。
【0343】
免疫原性の血液型亜型特異的な変更は、異なる患者プロフィール(例えば、限定はしないが、思春期の少女、性風俗従事者(例えば、売春婦)、同性愛者などを含む)について特定の診断または治療的な(例えば、免疫学的な)処置を仕立てるために利用され得る。
【0344】
(実施例2:LcrEエピトープマッピング)
Chlamydia trachomatisの株D/UW−3/CX由来のLcrE参照配列は、配列番号28(下)として示され、これはまた、種々のChlamydia trachomatis血液型亜型単離体において検出された対立遺伝子変異ポイントの全てのまとめを示している:このポイントミューテーションを囲む配列番号28の下線の領域は、Bおよび/またはT細胞エピトープペプチド領域のいずれかに相当する。残基64の最初の変異ポイント(以下のエピトープ領域KKKEKで下線を付した)は、高頻度の変異ポイントまたは超可変領域に相当し、そしてまたTおよび/またはB細胞のエピトープ領域に関連する可能性が高い。
【0345】
配列番号28
【0346】
【化40】

従って、この単離物で検出された変異ポイントは、位置64、126、157、162、179、207、217、220、275および420(表7を参照のこと)であった。この単離物で観察される変異に基づいて、抗原性ペプチドは、その全体が本明細書において援用される、KolaskarおよびTongaonkarの方法(Kolaskar et al,「A semi−empirical method for prediction of antigenic determinants on protein antigens」,FEBS Lett.1990 Dec 10;276(1−2):172〜4)を用いて決定した。要するに、予想は、実験的に公知のセグメント的なエピトープにおけるアミノ酸残基の出現を反映する表に基づく。セグメントは、それらが8残基という最小サイズを有する場合にのみ報告される。この方法の報告された正確性は約75%である。この方法を用いて、LcrE Chlamydia trachomatis抗原の配列における17の抗原性決定基を、上記の表2に従ってまとめるとおりに決定した。
【0347】
【化41】

(実施例3:Chlamydia抗原(例えばLcrE)についてのエピトープマッピング)
全てのLcrE血液型亜型改変体のエピトープマッピングは以下のように行う:上記でそしてWO05/002619に記載されるような生殖器官感染のマウスモデルを用いる。全てのLcrE改変体が組み換えタンパク質として発現され、その方法論もWO05/002619に記載される。マウスを組み換えLcrE改変体で免疫する(Chlamydia trachomatisのチャレンジは有無)。次いで、免疫したマウス(Chlamydia trachomatisのチャレンジは有無)由来の脾臓細胞を単離して、下の配列番号47〜98に示されるLcrE特異的なペプチドでパルスする。次いで、各々のLcrE特異的なペプチドに応答するこの脾臓細胞を、脾臓細胞増殖の有無、上記される種々の試験によって決定されるようなメディエーター応答、例えば、Th1またはTh2細胞応答に関して評価する。被験体において、脾臓細胞をパルスするため、そして体液性および細胞性の免疫応答を評価するための特に好ましいペプチドは、下の配列番号54に示す。この15マーのペプチドは、13のChlamydia血液型亜型にまたがって評価した場合、LcrEアミノ酸配列における残基64で同定した第一の高頻度(7/14)変異ポイントまたは超可変領域を囲むN末端セグメントに対応する領域を含む。脾臓細胞をパルスするため、そして被験体における体液性および細胞免疫応答を評価するための第二の特に好ましいペプチドは、下の配列番号66に示す。この15マーのペプチドは、13のChlamydia血液型亜型単離体にまたがって評価した場合、LcrEアミノ酸配列における残基62で同定した第二の高頻度(7/14)変異ポイントまたは超可変領域を囲むセグメントに対応する領域を含む。他の特に好ましいペプチドとしては、配列番号29〜45(表2を参照のこと)および配列番号181、182、183および/または184に示されるエピトープを含むペプチドが挙げられる。
【0348】
これらのペプチド、詳細には、配列番号54および/または配列番号66ならびに/あるいは配列番号181、182、183および/または184は、実施例5に記載される免疫スケジュールにおいて、それらの予防的および治療的な有効性を評価するために、そして当然ながら、診断目的のために用いられ得る。同様の方法論を、限定はしないが、CT242、CT381、CT396、CT398およびCT045のような他のChlamydia抗原のエピトープをマッピングするためにあてはめてもよい。
【0349】
エピトープマッピングのためのLcrEペプチド
血液型亜型D/UW−3/CX由来のLcrE血清型D参照株(対立遺伝子1)
【0350】
【化42】

エピトープマッピングのためにLcrE配列をペプチドに分割することは、個々のペプチドの長さを変えること、および重複の程度を変化させることによっていくつかの方法で行われ得る。CT LcrEの公開された参照配列に基づく1例、および8つのアミノ酸残基ずつ漸次シフトされる重複する15nマーを用いるための選択は以下のように示される。
【0351】
8残基ずつシフトされる、51個の重複する15nマー、プラス1最後−14nマーのスプリット
【0352】
【化43】

(実施例4:Chlamydia抗原(例えば、LcrE)についてのエピトープマッピング)
全てのLcrE血液型亜型改変体のエピトープマッピングを以下のように行う:上記の、そしてWO05/002619に記載されるような生殖器官感染のマウスモデルを用いる。全てのLcrE改変体は、組み換えタンパク質として発現され、その方法論もWO05/002619に記載される。マウスを組み換えLcrE改変体で免疫する(Chlamydia trachomatisのチャレンジは有無)。次いで、免疫したマウス(Chlamydia trachomatisのチャレンジは有無)由来の脾臓細胞を単離して、下の配列番号99〜180に示されるLcrR特異的なペプチドでパルスする。次いで、各々のLcrE特異的なペプチドに応答するこの脾臓細胞を、脾臓細胞増殖の有無、上記される種々の試験によって決定されるような、メディエーター応答、例えば、Th1またはTh2細胞応答に関して評価する。被験体において、脾臓細胞をパルスするため、そして体液性および細胞性の免疫応答を評価するための3つの特に好ましいペプチドは、下の配列番号109、110および111に示される。これらの15マーのペプチドは、13のChlamydia血液型亜型にまたがって評価した場合、LcrEアミノ酸配列における残基64で同定した第一の高頻度(7/14)変異ポイントまたは超可変領域を囲むN末端セグメントに対応する領域を含む。脾臓細胞をパルスするため、そして被験体における体液性および細胞免疫応答を評価するための他の特に好ましいペプチドは、下の配列番号129および130に示す。これらの15マーのペプチドは、13のChlamydia血液型亜型単離体にまたがって評価した場合、LcrEアミノ酸配列における残基162で同定した第二の高頻度(7/14)変異ポイントまたは超可変領域を囲むセグメントに対応する領域を含む。他の特に好ましいペプチドとしては、配列番号29〜45(表2を参照のこと)および配列番号181、182、183および/または184に示されるエピトープを含むペプチドが挙げられる。
【0353】
これらのペプチド、詳細には、配列番号109、110および111および/または配列番号129、130ならびに/あるいは配列番号181、182、183および/または184は、実施例5に記載される免疫スケジュールにおいて、それらの予防的および治療的な有効性を評価するために、そして当然ながら、診断目的のために用いられ得る。同様の方法論を、限定はしないが、CT242、CT381、CT396、CT398およびCT045のような他のChlamydia抗原のエピトープをマッピングするためにあてはめてもよい。
【0354】
(serEマッピングのためのLcrEペプチド)
血清型E株で見出されたLcrE(LcrE対立遺伝子5)。
【0355】
対立遺伝子5は、血液型亜型Dの配列決定されたゲノムの公開されたLcrEに比較して8つのアミノ酸変化を有する。また、これらの変化のうち2つが、「保存的(conservative)」とみなされるが、この変化のうち6つが「非保存的(non−conservative)」とみなされる(下の表4を参照のこと)。
【0356】
血清型E株において見出されるLcrE(LcrE対立遺伝子5)
【0357】
【化44】

以下の実施例は、5アミノ酸残基ずつ漸次シフトされる重複する15nマーを用いることを選択することによるエピトープマッピングのための血液型亜型E LcrE配列のペプチドへの分割を示す。
【0358】
5残基ずつシフトされる、81個の重複する15nマー、プラス1最後−16nマーのスプリット
【0359】
【化45】

【0360】
【化46】

【0361】
【化47】

(実施例5:LcrE抗原またはその組み合わせでの免疫)
LcrE単独、および種々のChlamydia trachomatis血液型亜型由来のLcrEとの組み合わせ、そして/あるいは他のChlamydia trachomatisのタンパク質および/または1つ以上の他のSTD抗原(単数または複数)と組み合わせて、単独で、免疫調節性因子の有無のいずれかでの免疫。以下の実施例は、マウスモデルにおけるCT LcrE抗原の種々の組み合わせでの免疫を図示する。組み換えCT LcrE抗原は、例えば、WO05/002619およびFinco et al(2005)Vaccine 23;1178〜1188およびSambri et al(2004)Vaccine 22(9〜10);1131〜7)に記載される手順を用いて調製および特徴付けされる。
【0362】
この実施例では、上記のように調製された種々のChlamydia trachomatis血液型亜型由来の1または2または3または4または5のLcrE抗原の組み合わせでの免疫が示される。この抗原が発現され、そして精製される。次いで、1組成物あたり1または2または3または4または5のLcrE抗原を含む(そして1組成物あたり各々の抗原の15μgを含む)、抗原組み合わせの組成物を調製する。
【0363】
CD1マウスを7つの群に分け(1群〜6群について1群あたり5〜6匹のマウス;5、6、7、8および9群について3〜4匹のマウス)、そして以下のとおり免疫する。
【0364】
【化48】

マウスを2週間隔で免疫する。最後の免疫の2週後、全てのマウスを、適切なChlamydia血液型亜型、例えば、限定はしないが、Chlamydia trachomatis血液型亜型Dでの膣内感染によってチャレンジする。粘膜免疫(例えば、鼻腔内(intra−nasal)(in))を用いる場合、動物モデルをまた粘膜チャレンジして、粘膜免疫の防御効果を試験する。
【0365】
(実施例6:LcrE抗原またはその組み合わせでの免疫)
以下の実施例は、LcrE単独で、または異なるChlamydia trachomatis血液型亜型由来のLcrEとの組み合わせ、および/または他のChlamydia trachomatisのタンパク質と組み合わせて、単独で、免疫調節性因子の有無のいずれかでの免疫を示す。
【0366】
詳細には、この実施例では、上記のように調製された、異なるChlamydia trachomatis血液型亜型由来の1または2または3または4または5のLcrE抗原の組み合わせでの免疫が示される。この抗原が発現され、そして精製される。次いで、1組成物あたり1または2または3または4または5の抗原を含む(そして1組成物あたり各々の抗原の15μgを含む)、抗原組み合わせの組成物を調製する。
【0367】
【化49】

CT防御抗原のインビボスクリーニングのためのマウスモデル:CT抗原のインビボ防御効果を決定するためのChlamydia trachomatisの生殖器感染のマウスモデル(初回Chlamydia trachomatis感染の解決)を用いた。用いたモデルは、以下のように記載される:Balb/c雌性マウス4〜6週齢を用いた。このマウスを、1または2または3または4または5の組み換えCT抗原、例えば、限定はしないが、上記の表5または6に記載されるような、LcrEの混合物を用いて腹腔内(i.p.)免疫した。これらのCT抗原は、FACS陽性および/または中和性であることが確認された。3用量の1または2または3または4または5つのLcrE抗原混合物を、1用量あたり15μgの濃度で与えた。マウスには、2.5mgのDepoProvera(酢酸メドロキシプロゲステロン)のチャレンジの5日前にホルモン療法を与えた。
【0368】
試験チャレンジ:マウスには、最後の免疫投与の2週後、10IFUの精製EB(血液型亜型D)を膣内にチャレンジした。チャレンジ後、7日毎に28日目まで膣のサンプルを綿球採取する。以下のアッセイもチャレンジ前の血清に対して行った:血清学的分析:FACS、WB、中和アッセイおよびELISA。ELISAは、各々の組み換え抗原でプレートをコーティングすること、および1または2または3または4または5のCTLcrE抗原の組み合わせで免疫した単独のマウス由来のチャレンジ前の免疫血清の反応を試験することによって行った。このデータは、平均ELISA単位として表される各々の群について計算した平均値として表す。Chlamydia trachomatis特異的な抗体のタイプ(IgG、IgAなど)およびアイソタイプを、免疫後だが、チャレンジ前の血清でチエックした。血清研究の目的は、CTLcrE抗原の組み合わせでの免疫に対してマウスがどのように応答したかを決定することであった。膣洗浄の目的は、Chlamydia trachomatis細菌チャレンジに対してマウスがどのように応答したかを決定することであった。抗体のタイプ(IgGおよびIgA)および抗体のサブタイプに関するChlamydia trachomatis特異的な抗体分析も、膣洗浄液で行った。ネガティブコントロール:用いたネガティブコントロールは、免疫調節性因子単独(例えば、CFAまたはAlOHおよび/またはCpG)であった。
【0369】
陽性の「生きた(live)」EBコントロール:用いたポジティブコントロールは、生きたChlamydia trachomatis基本小体(Elementary Bodies)(EB)から抽出した。ここでマウスを、試験CT組み合わせ抗原が投与されるのと同じ時点で生きたChlamydia trachomatis EBで感染させた。この「生きた」EBポジティブコントロール動物は、約1.5ヶ月間(すなわち6週)感染させた(なぜなら、3用量のCT抗原の組み合わせを2週ごとに(すなわち、全部で6週にわたって)投与したからである)。「生きた」EBで感染させた動物(マウス)は、自然免疫を生じ、そして感染を解消させた(なぜならマウスでのChlamydia感染は一過性感染であるからである)。マウスに、CT抗原の組み合わせをワクチン接種し、次いで「生きた」EBでチャレンジしたとき、ポジティブコントロールの「生きた」EBマウスにまた、再チャレンジもした(すなわち、それらには、「生きた」EBの第二の投与を与えた)。「生きた」EBポジティブコントロール群は自然免疫を生じたので、それらは、第二の再チャレンジを迅速に除去した。
【0370】
感染コントロール:この群では、マウスは「陽性の生きたEBコントロールを再チャレンジし、そして試験CT群をチャレンジしたのと同じ時点で「生きた」EBのみをチャレンジした。このコントロール群の目的は、ネガティブコントロール群(すなわち、免疫調節性因子単独で免疫した群)由来の潜在的な防御効果をチエックすることであった。
【0371】
(実施例7:CD4 Th1応答を誘導する抗原の分泌のためのインビトロモデル)
Th1型サイトカイン、例えば、IL−12およびIFN−γは、クラミジアの感染の解決のために重要であることが提唱されている。実際、IFN−γを欠くマウスは、生殖器官でのクラミジアの感染を全身へのChlamydia伝播として制御できない[126.127]。
【0372】
Chlamydia特異的なIFN−γ産生CD4T細胞を誘導し得るChlamydia抗原を特定する2つの免疫学的スクリーニングアプローチが考案されている:1)Chlamydia trachomatisでの実験的なマウス感染後、および2)Chlamydia組み換えタンパク質でのマウス免疫後。これらの抗原は、CD4媒介性防御を付与する最も見込みのある候補である。
【0373】
第一のアプローチでは:EB(基本小体)感染の際のCD4 Th1刺激):LPSのない精製組み換え表面抗原を、それらが、マウスからTリンパ球を産生するCD4+/IFN−γを刺激して、最初のCt感染を解決し、それによってさらなる感染に対して防御する能力についてスクリーニングする。このアプローチによって、自然な感染の間にCD4 Th1応答を誘導する抗原の同定が可能になる。
【0374】
第二のアプローチでは:CT組み換え抗原:精製組み換え抗原での免疫の際のCD4 Th1誘導を用いて、マウスを免疫し、そして抗原特異的なCD4T細胞応答を、CtEB、およびLPSなしの抗原で脾臓細胞を刺激することによってエキソビボで分析する。このアプローチによって、EBの認識に潜在的に関与し得るインビボの抗原特異的なCD4−Th1細胞のプライミングが可能になる。
【0375】
第一のアプローチでは、6〜7週齢の雌性BALB/cマウスを5日目に、2.5mgの酢酸メドロキシ−プロゲステロン(Depo−Provera)で前処置し、次いで、10IFUのC.trachomatis血液型亜型Dを含有する15mlのSPG(250mMのスクロース、10mMのリン酸ナトリウム、5mMのL−グルタミン酸)を与えることによって0日目に膣内で感染させた。感染後7日間、感染の経過を、膣の円蓋をスワブすること、および間接的な免疫蛍光を用いてLL−CMK2細胞単層上で回収されたIFUの数を測定することによって、モニターした。
【0376】
脾臓細胞は、Chlamydia trachomatisを感染させたマウス(感染10日後)および非感染コントロールの脾臓から調製した。各々群のマウスの脾臓をプールして、手技的に分散させた。脾細胞は、25mMのHEPES緩衝液、100UI/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン、50μMの2−メルカプトエタノール、0.15mMのL−グルタミン、ピルビン酸ナトリウム、ビタミン、非必須アミノ酸のカクテルおよび2.5%の熱不活化ウシ胎仔血清を補充したRPMI 1640培地中で培養した。
【0377】
感染マウスおよび非感染コントロールから新鮮に調製した脾細胞を、1μg/mlの抗CD28の存在下で20μg/mlの種々のChlamydia trachomatis組み換え抗原を用いて丸底96ウェルプレート中で4時間刺激した。刺激のポジティブコントロールとして、1μg/mlの抗CD3および10μg/mlの熱不活化した丸ごとのC.trachomatis基本小体を用いた。抗原誘導性細胞内サイトカイン発現の分析のために、2.5μg/mlのBrefeldin−A(Sigma)を一晩添加した。刺激期間の終わりに、細胞を2%のパラホルムアルデヒドで固定し、引き続きPBS−1%BSA−0.5%サポニンで透過化処理した。固定された細胞を、以下の抗体を用いて室温で30分間染色した:抗CD4−FITC、抗CD8−PerCp、抗IFNg−APCおよび抗IL5−PE(全てがBD Pharmingen)。
【0378】
染色した細胞をDIVAソフトウェアを用いてLSRIIサイトメーターでサイトカイン産生について分析した。
【0379】
第二のアプローチでは、マウスは、適切なアジュバントを用いて組み換えクラミジアタンパク質のパネルで1日、14日および28日に筋肉内免疫した。最後の免疫の1週後、PBMCを単離して、同系の放射線照射APCの存在下で、上記のように脾臓回収によって評価した。エキソビボの刺激は、丸ごとのChlamydia trachomatis EBおよびLPS−なしの抗原を用いて24時間行った。刺激後、細胞を、上記のように、サイトカイン産生(IFN−γおよびIL−5)について分析した。
【0380】
第二のアプローチについて、脾細胞を組み換え抗原(3用量の20μg、AlOH+CpGを含む)で免疫したマウスおよびアジュバントで免疫したマクスの脾臓から調製した。各々の群のマウスの脾臓をプールして、手技的に分散させた。脾細胞は、25mMのHEPES緩衝液、100UI/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン、50μMの2−メルカプトエタノール、0.15mMのL−グルタミン、ピルビン酸ナトリウム、ビタミン、非必須アミノ酸のカクテルおよび2.5%の熱不活化ウシ胎仔血清を補充したRPMI 1640培地中で培養した。
【0381】
第二のアプローチに関する抗原誘導性サイトカイン発現のフローサイトメトリー分析を、この場合、特異的なCD4T細胞応答を、CtEBおよびLPSなしの抗原で脾臓細胞を刺激することによってエキソビボで分析した以外は、第一のアプローチと同じ方法で行った。
【0382】
両方のスクリーニングとも、マルチ−パラメトリックなFACS分析を用いて行って、抗原特異的なTh1細胞のサイトカイン発現プロフィールを評価する。
【0383】
第一のアプローチからの結果によって、試験した70の抗原のうち13が、CD4−Th1誘導因子(CT681、CT823、CT043、CT587、CT153、CT480、CT016、CT341、CT372、CT396、CT600、CT601、CT711)であることが見出されたことが示された。これらのCT4−Th1誘導性因子のなかでも注目すべきはCT396である。
【0384】
第二のアプローチの結果によって、CT396およびCT381は、強力な抗原特異的応答およびChlamydia特異的応答を誘導し得ることが示された。
【0385】
第一および第二のアプローチの結果は、EBまたは抗原自体のいずれかによる刺激の際、抗原(アジュバントとしてLTK63+CpGとともに処方された)で免疫されたマウスの脾細胞に由来する10000個のCD4+細胞におけるEB特異的および抗原特異的なCD4−IFNγ+リンパ球の頻度に関して、アジュバントで免疫したマウスから得られたリンパ球の頻度と比較して表す。
【0386】
CT381については、EB特異的なおよびCT381特異的なCD4−IFNγ+Tリンパ球の頻度は、それぞれ450(アジュバント免疫したマウスの131に対して)そして109(アジュバントで免疫したマウスの17に対して)である。
【0387】
CT396については、EB特異的なおよびCT396特異的なCD4−IFNγ+Tリンパ球の頻度は、それぞれ612(アジュバント免疫したマウスの309に対して)そして488(アジュバントで免疫したマウスの17に対して)である。
【0388】
これらの結果によって、ArtJ(CT381)およびDnaK(CT396)の両方とも、IFN−γを産生し得る細胞の高頻度の産生を可能にするChlamydia抗原の例であることが示される。
【0389】
(全体的なまとめ)
本発明は、Chlamydia trachomatis血液型亜型にまたがる改変LcrE配列および/または改変LcrE配列の組み合わせを提供する。Chlamydia trachomatis血液型亜型にまたがるLcrE遺伝子型におけるこのような変化は、LcrE表現型における変化、詳細には免疫原性における変化と対応する可能性が高い。本発明はまた、アミノ酸置換基を囲むかそれに会合するペプチド、詳細には、高頻度変異アミノ酸位置または超可変領域を囲むかまたはそれに会合するペプチドであって、Chlamydia特異的な細胞媒介性免疫応答を誘発し得るB細胞および/またはT細胞のエピトープ領域である可能性が高いペプチドを提供する。改変LcrE配列および/または改変LcrE配列の組み合わせおよび/または改変LcrE配列に関連するエピトープ領域は、Chlamydia感染を予防するか、および/または処置するか、および/または診断するための免疫原として、および/または免疫原性組成物の調製において有用である。
【0390】
本発明はまた、Chlamydia trachomatis血液型亜型にまたがる改変Omp−H様配列および/または改変Omp−H様配列の組み合わせを提供する。Chlamydia trachomatis血液型亜型にまたがる改変Omp−H様遺伝子型決定におけるこのような変化は、Omp−H様表現型における変化と、詳細には免疫原性における変化と対応する可能性が高い。本発明はまた、アミノ酸置換基を囲むかそれに会合するペプチド、詳細には、高頻度変異アミノ酸位置または超可変領域を囲むかまたはそれに会合するペプチドであって、Chlamydia特異的な免疫応答を誘発し得るB細胞および/またはT細胞のエピトープ領域である可能性が高いペプチドを提供する。改変Omp−H様配列および/または改変LcrE配列の組み合わせおよび/または改変Omp−H様配列に関連するエピトープ領域は、Chlamydia感染を予防するか、および/または処置するか、および/または診断するための免疫原として、および/または免疫原性組成物の調製において有用である。
【0391】
本発明はまた、Chlamydia trachomatis血液型亜型にまたがる改変PepA配列および/または改変PepA配列の組み合わせを提供する。Chlamydia trachomatis血液型亜型にまたがるPepA遺伝子型決定におけるこのような変化は、PepA表現型における変化と、詳細には免疫原性における変化と対応する可能性が高い。本発明はまた、アミノ酸置換基を囲むかそれに会合するペプチド、詳細には、高頻度変異アミノ酸位置または超可変領域を囲むかまたはそれに会合するペプチドであって、Chlamydia特異的な免疫応答を誘発し得るB細胞および/またはT細胞のエピトープ領域である可能性が高いペプチドを提供する。改変PepA配列および/または改変PepA配列の組み合わせおよび/または改変PepA配列に関連するエピトープ領域は、Chlamydia感染を予防するか、および/または処置するか、および/または診断するための免疫原として、および/または免疫原性組成物の調製において有用である。
【0392】
本発明はまた、Chlamydia trachomatis血液型亜型にまたがる改変ArtJ配列および/または改変ArtJ配列の組み合わせを提供する。Chlamydia trachomatis血液型亜型にまたがるArtJ遺伝子型決定におけるこのような変化は、ArtJ表現型における変化と、詳細には免疫原性における変化と対応する可能性が高い。本発明はまた、アミノ酸置換基を囲むかそれに会合するペプチド、詳細には、高頻度変異アミノ酸位置または超可変領域を囲むかまたはそれに会合するペプチドであって、Chlamydia特異的な免疫応答を誘発し得るB細胞および/またはT細胞のエピトープ領域である可能性が高いペプチドを提供する。改変ArtJ配列および/または改変ArtJ配列の組み合わせおよび/または改変ArtJ配列に関連するエピトープ領域は、Chlamydia感染を予防するか、および/または処置するか、および/または診断するための免疫原として、および/または免疫原性組成物の調製において有用である。
【0393】
本発明はまた、Chlamydia trachomatis血液型亜型にまたがる改変DnaK配列および/または改変DnaK配列の組み合わせを提供する。Chlamydia trachomatis血液型亜型にまたがるDnaK遺伝子型決定におけるこのような変化は、DnaK表現型における変化と、詳細には免疫原性における変化と対応する可能性が高い。本発明はまた、アミノ酸置換基を囲むかそれに会合するペプチド、詳細には、高頻度変異アミノ酸位置または超可変領域を囲むかまたはそれに会合するペプチドであって、Chlamydia特異的な免疫応答を誘発し得るB細胞および/またはT細胞のエピトープ領域である可能性が高いペプチドを提供する。改変DnaK配列および/または改変DnaK配列の組み合わせおよび/または改変DnaK配列に関連するエピトープ領域は、Chlamydia感染を予防するか、および/または処置するか、および/または診断するための免疫原として、および/または免疫原性組成物の調製において有用である。
【0394】
本発明はまた、Chlamydia trachomatis血液型亜型にまたがる改変仮説(Hypothetical)(CT398)配列および/またはDnaK配列の組み合わせを提供する。Chlamydia trachomatis血液型亜型にまたがる仮説(CT398)遺伝子型におけるこのような変化は、仮説(CT398)表現型における変化と、詳細には免疫原性における変化と対応する可能性が高い。本発明はまた、アミノ酸置換基を囲むかそれに会合するペプチド、詳細には、高頻度変異アミノ酸位置または超可変領域を囲むかまたはそれに会合するペプチドであって、Chlamydia特異的な免疫応答を誘発し得るB細胞および/またはT細胞のエピトープ領域である可能性が高いペプチドを提供する。改変配列および/または改変仮説(CT398)配列の組み合わせおよび/または改変仮説(CT398)配列に関連するエピトープ領域は、Chlamydia感染を予防するか、および/または処置するか、および/または診断するための免疫原として、および/または免疫原性組成物の調製において有用である。
【0395】
上述の本明細書に言及された全ての刊行物は、本明細書において参照によって援用される。本発明の記載された方法およびシステムの種々の改変およびバリエーションは、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく当業者に明白である。本発明は、特定の好ましい実施形態を参酌して記載されているが、特許請求される本発明は、このような特定の実施形態に不当に限定されるべきではないことが理解されるべきである。実際、本発明を行うための記載された様式の種々の改変であって、分子生物学または関連の分野において当業者に明白である改変は、本発明によって包含されることが意図される。
【0396】
【化50】

【0397】
【化51】

【0398】
【化52】

【0399】
【化53】

【0400】
【化54】

【0401】
【化55】

【図面の簡単な説明】
【0402】
以下の本発明は、単なる例としてここでさらに記載されており、ここでは以下の図面が参照される。以下の例は、単に本発明を例示するために、そして当業者が本発明を行うことおよび用いることを補助するために示している。この実施例は、本発明の範囲を決して限定するものではない。用いる数(例えば、量、温度、など)に関しては正確性を保障する労力が払われているが、ある程度の実験的な誤差および逸脱が当然ながら認められる。
【図1−1】図1は、C.trachomatisの異なる臨床単離物において見出されたLcrEの対立遺伝子のアミノ酸配列を示す。配列を血液型亜型D株UW−3/Cxの完全に配列決定されたゲノムにおいて報告される参照配列と比較する。従って、アミノ酸変化は、対立遺伝子1として恣意的に同定された、参照の血液型亜型D配列と比較して解釈される。
【図1−2】図1は、C.trachomatisの異なる臨床単離物において見出されたLcrEの対立遺伝子のアミノ酸配列を示す。
【図1−3】図1は、C.trachomatisの異なる臨床単離物において見出されたLcrEの対立遺伝子のアミノ酸配列を示す。
【図1−4】図1は、C.trachomatisの異なる臨床単離物において見出されたLcrEの対立遺伝子のアミノ酸配列を示す。
【図2−1】図2は、参照のChlamidiaのLcrE血液型亜型D(D/UW−3/CX)血液型亜型に対する、8つの異なるChlamydia血液型亜型に対応する14のChlamydia単離体由来のLcrE配列のアラインメントを示す。各々の30マーのアラインメントの上の「主要(Majority)」配列は、「コンセンサス(consensus)」配列に相当する。その事象では、超可変領域は等しい数の置換を有し(例えば、アミノ酸残基64および162で7/14の置換)、次いで、この高頻度変異ポイントは、「いずれか一方、二者択一(either or)」置換ではなく「アスタリスク(asterisk)=*」と示される。
【図2−2】図2は、参照のChlamidiaのLcrE血液型亜型D(D/UW−3/CX)血液型亜型に対する、8つの異なるChlamydia血液型亜型に対応する14のChlamydia単離体由来のLcrE配列のアラインメントを示す。
【図2−3】図2は、参照のChlamidiaのLcrE血液型亜型D(D/UW−3/CX)血液型亜型に対する、8つの異なるChlamydia血液型亜型に対応する14のChlamydia単離体由来のLcrE配列のアラインメントを示す。
【図2−4】図2は、参照のChlamidiaのLcrE血液型亜型D(D/UW−3/CX)血液型亜型に対する、8つの異なるChlamydia血液型亜型に対応する14のChlamydia単離体由来のLcrE配列のアラインメントを示す。
【図2−5】図2は、参照のChlamidiaのLcrE血液型亜型D(D/UW−3/CX)血液型亜型に対する、8つの異なるChlamydia血液型亜型に対応する14のChlamydia単離体由来のLcrE配列のアラインメントを示す。
【図2−6】図2は、参照のChlamidiaのLcrE血液型亜型D(D/UW−3/CX)血液型亜型に対する、8つの異なるChlamydia血液型亜型に対応する14のChlamydia単離体由来のLcrE配列のアラインメントを示す。
【図3】図3は、8つの異なる血液型亜型を含む14のChlamydia trachomatisの臨床単離物における6つの遺伝子の対立遺伝子改変体を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号46のアミノ酸配列からなるタンパク質であって、ただし該アミノ酸配列が1つ以上の変異を含むことは除外し、該1つ以上の変異が、64、126、157、162、179、207、217、220、275および420からなる群より選択されるアミノ酸残基を含む、タンパク質。
【請求項2】
前記変異が独立した置換、挿入または欠失であって、好ましくは、表7に列挙される1つ以上の変異を含む、請求項1に記載のタンパク質。
【請求項3】
前記1つ以上の変異が、タンパク質の免疫原性を変更する、請求項1または2に記載のタンパク質。
【請求項4】
前記タンパク質が、配列番号1、4、6、8、11、12、13、16、18、19、20、21、23および/または27からなる配列の群より選択される1つ以上の変異された配列を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項5】
配列番号11、4または6を含む、請求項4に記載のタンパク質。
【請求項6】
配列番号13または8を含む、請求項4に記載のタンパク質。
【請求項7】
配列番号12または1を含む、請求項4に記載のタンパク質。
【請求項8】
アミノ酸残基64および/または162で変異を含む、請求項2に記載のタンパク質。
【請求項9】
配列番号16、18、19、20、21、22、23または27を含む、請求項4に記載のタンパク質。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のタンパク質のアミノ酸配列を含むタンパク質、または請求項1〜9のいずれか1項に記載のタンパク質の少なくとも7連続するアミノ酸の1つ以上のフラグメント。
【請求項11】
前記1つ以上のフラグメントが、64、126、157、162、179、207、217、220、275および/または420からなる群より選択されるアミノ酸残基を包含する1つ以上の変異体を含む、請求項10に記載のタンパク質。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載のタンパク質に結合する抗体。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれか1項に記載のタンパク質をコードする核酸。
【請求項14】
請求項13に記載の核酸を含むベクター。
【請求項15】
請求項14に記載のベクターで形質転換された宿主細胞。
【請求項16】
医薬としての使用のための、請求項1〜11のいずれか1項に記載のタンパク質、請求項12に記載の抗体、または請求項13に記載の核酸。
【請求項17】
免疫原としての使用のための請求項16に記載のタンパク質または核酸。
【請求項18】
診断試薬としての使用のための、請求項1〜11のいずれか1項に記載のタンパク質、請求項12に記載の抗体、または請求項13に記載の核酸。
【請求項19】
Chlamydia trachomatis感染を予防または処置するための医薬の製造における、請求項1〜11のいずれか1項に規定されるようなタンパク質、請求項12に記載の抗体、または請求項13に記載の核酸の、使用。
【請求項20】
Chlamydia trachomatisの存在またはChlamydia trachomatisに対して惹起された抗体の存在を検出するための診断試薬の製造における、請求項1〜11のいずれか1項に規定されるようなタンパク質、請求項12に記載の抗体、または請求項13に記載の核酸の、使用。
【請求項21】
Chlamydia trachomatisに対する抗体を惹起し得る試薬の製造における、請求項1〜11のいずれか1項に規定されるようなタンパク質、請求項12に記載の抗体、または請求項13に記載の核酸の、使用。
【請求項22】
請求項1〜11のいずれか1項に記載のタンパク質、請求項12に記載の抗体、または請求項13に記載の核酸の治療上有効な量を被験体に投与する工程を包含する、被験体を処置するための方法。
【請求項23】
請求項1〜11のいずれか1項に記載のタンパク質、請求項12に記載の抗体、または請求項13に記載の核酸を生成するためのプロセスであって、タンパク質発現を誘導する条件下で請求項15に記載の宿主細胞を培養する工程を包含する、プロセス。
【請求項24】
請求項1〜11のいずれか1項に記載のタンパク質、請求項12に記載の抗体、または請求項13に記載の核酸を生成するためのプロセスであって、該タンパク質または核酸が、化学的な方法を用いて部分的にまたは全体的に合成される、プロセス。
【請求項25】
請求項13に記載の核酸を検出するためのプロセスであって、(a)核酸プローブと生物学的なサンプルとをハイブリダイズ条件下で接触させて二重鎖を形成する工程と、(b)該二重鎖を検出する工程とを包含する、プロセス。
【請求項26】
請求項1〜11のいずれか1項に記載するタンパク質を検出するためのプロセスであって、(a)請求項12に記載の抗体と生物学的なサンプルとを抗体−抗原複合体の形成に適した条件下で接触させる工程と、(b)該複合体を検出する工程とを包含する、プロセス。
【請求項27】
請求項12に記載の抗体を検出するためのプロセスであって、以下の工程:請求項1〜11のいずれか1項に記載されるタンパク質と生物学的なサンプルとを、抗体−抗原複合体の形成に適した条件下で接触させる工程と、(b)該複合体を検出する工程とを包含する、プロセス。
【請求項28】
請求項25〜28のいずれか1項に記載されるプロセスにおける使用に適した試薬を含むキット。
【請求項29】
請求項1〜11のいずれか1項に記載のタンパク質、実施例12に記載の抗体、または実施例13に記載の核酸、および免疫学的に受容可能な賦形剤を含む免疫原性組成物。
【請求項30】
1つ以上の抗原をさらに含む、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
1つ以上のアジュバントをさらに含む、請求項29または請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
医薬としての使用のための請求項29〜31のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項33】
細菌感染を予防または処置または診断するための医薬の製造における請求項29〜31のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項34】
前記細菌感染がChlamydia trachomatis感染である、請求項33に記載の使用。
【請求項35】
配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44および45、49〜98、99〜180、181、182、183、および/または184からなる配列の群より選択される、少なくとも2つのタンパク質を含む、免疫原性組成物。
【請求項36】
前記組成物が配列番号1および配列番号12を含む、請求項35に記載の組成物。
【請求項37】
前記組成物が配列番号13および配列番号46を含む、請求項36に記載の組成物。
【請求項38】
請求項35〜37のいずれか1項に記載の組成物であって、(a)1つ以上のさらなる抗原、および/または(d)1つ以上のさらなるアジュバントを含む、組成物。
【請求項39】
医薬としての使用のための、請求項35〜38のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項40】
細菌感染を予防または処置または診断するための医薬の製造における請求項35〜38のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項41】
前記細菌感染がChlamydia trachomatis感染である、実施例40に記載の使用。
【請求項42】
請求項29〜31または35〜38のいずれか1項に記載の組成物を被験体に投与する工程を包含する、被験体において免疫応答を惹起する方法。
【請求項43】
配列番号29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44および45、47〜98、99〜180、55、66、109、110、111、181、182、183および/または184からなる群より選択される少なくとも7連続するアミノ酸、好ましくは少なくとも9連続するアミノ酸の1つ以上のフラグメントと含む、ポリペプチド。
【請求項44】
配列番号1、12、13、45および7を含むタンパク質を有する請求項35に記載の組成物。
【請求項46】
配列番号54、66、109、110、111、181、182、183および184からなる群より選択される1つ以上のペプチドを含む免疫原性組成物。
【請求項47】
配列番号181、182、183および/または184からなる群より選択される1つ以上のペプチドを含む免疫原性組成物。
【請求項48】
免疫原としての使用のための請求項43に記載のポリペプチドもしくは請求項46または47に記載の組成物。
【請求項49】
前記使用が、Chlamydiaによって生じる疾患および/または感染を防御または処置するために十分である体液性および/または細胞傷害性のT細胞リンパ球応答を惹起させるための免疫原としてである、請求項48に記載のポリペプチド。
【請求項50】
哺乳動物における免疫応答を惹起させる方法であって、前記哺乳動物に対して請求項43に記載のポリペプチド、または請求項46もしくは47に記載の免疫原性組成物を投与する工程を包含する、方法。
【請求項51】
前記免疫応答が、Chlamydiaによって生じる疾患および/または感染を防御または処置する、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
診断剤としての使用のための、請求項43に記載のポリペプチド、または請求項46もしくは47に記載の組成物。
【請求項53】
患者におけるChlamydia感染を診断する方法であって、患者由来のT細胞を請求項43または46または47に規定されるようなポリペプチドとともにインキュベートする工程と、T細胞増殖のその後の有無を検出する工程とを包含する、方法。
【請求項54】
細菌感染、好ましくはChlamydia感染の予防もしくは処置における使用のための医薬の調製における、請求項43に記載のポリペプチド、もしくは請求項46または47に記載の組成物の使用。
【請求項55】
配列番号14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26および27を含むタンパク質または免疫原性組成物。
【請求項56】
配列番号185を含むタンパク質または免疫原性組成物であって、X1の位置のアミノ酸残基が、グリシン(G)またはグルタミン酸(E)からなる群より選択され;アミノ酸が残基X2でアスパラギン酸(D)またはグルタミン酸(E)またはアスパラギン(N)からなる群より選択され;アミノ酸が残基X3でグリシン(G)またはアルギニン(R)からなる群より選択され;アミノ酸が残基X4でトレオニン(T)またはアラニン(A)からなる群より選択され;アミノ酸が残基X5で、バリン(V)またはイソロイシン(I)からなる群より選択され;アミノ酸が残基X6でフェニルアラニン(F)またはロイシン(L)からなる群より選択され;アミノ酸が残基X7でアラニン(A)またはアスパラギン酸(D)からなる群より選択され;アミノ酸が残基X8でヒスチジン(H)またはアルギニン(R)からなる群より選択され;アミノ酸がX9残基でアスパラギン(N)またはアスパラギン酸(D)からなる群より選択され、そしてアミノ酸残基がX10の位置でセリン(S)またはプロリン(P)からなる群より選択され、該タンパク質は配列番号46ではない、タンパク質または免疫原性組成物。
【請求項57】
請求項16〜27のいずれか1項に記載の使用のための請求項56に記載のタンパク質または免疫原性組成物。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図1−3】
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【図1−4】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図2−3】
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【図2−4】
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【図2−5】
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【図2−6】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−544745(P2008−544745A)
【公表日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−511422(P2008−511422)
【出願日】平成18年5月12日(2006.5.12)
【国際出願番号】PCT/US2006/018504
【国際公開番号】WO2006/138004
【国際公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(506361100)ノバルティス ヴァクシンズ アンド ダイアグノスティクス, インコーポレイテッド (44)
【Fターム(参考)】