説明

DPFのPM堆積量推定装置

【課題】給気流量計(31)に異常が認められた場合であっても、従来よりもPM堆積量を精度よく推定できるDPF(7)のPM堆積量推定装置を提供すること。
【解決手段】排気通路(3)に排出されたPM排出量を算出する排出量算出手段(51)と、DPF(7)において自然再生されたPM再生量を算出する自然再生量算出手段(52)とを有し、PM堆積量推定手段(50)において、排出量算出手段(51)にて算出されたPM排出量と、自然再生量算出手段(52)にて算出されたPM再生量との差分から、DPF(7)におけるPM堆積量を推定するように構成されている。そして、給気流量計(31)に異常が認められたときには、給気流量計(31)で測定される給気流量を用いずに、二酸化窒素によるPM再生量を算出し、DPFにおけるPM堆積量を推定するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジンの排ガス中に含まれるパティキュレートマター(排気微粒子、以下PMと略す)を捕集するためのディーゼルパティキュレートフィルター(以下、DPFと略す)に堆積したPM堆積量を推定するためのPM堆積量推定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンの排ガス中に含まれるPMの除去に有効な技術として、DPFが知られている。
DPFはフィルタを用いたPM捕集装置であり、排気通路に設置され、エンジンから排出されるススなどのPMをフィルタで捕集し、排ガスから除去する装置である。DPFで捕集されたPMの一部は、運転中のエンジンから排出される高温の排ガスによって燃焼するが(自然再生)、残りのPMはDPFのフィルタに堆積していく。そして、PMの堆積が過度に進行すると、PM捕集能力の低下、エンジン出力の低下などを招来する。このため、DPFにおいては、フィルタに堆積しているPMを強制的に燃焼させてフィルタを再生させる強制再生を適切なタイミングで実施する必要がある。
【0003】
強制再生を実施する適切なタイミングを把握するためには、フィルタのPM堆積量を精度よく推定する必要がある。PM堆積量を過少に評価した場合は、強制再生のタイミングが遅くなり、PMの過堆積によるPM捕集能力の低下やエンジン出力の低下等が生じるほか、強制再生時の過昇温によってDPFが損傷する可能性がある。また逆に、PM堆積量を過剰に評価した場合は、強制再生の頻度が多くなり、燃費の悪化やオイルダイリュージョン等の問題が発生してしまう。
【0004】
ここで、DPFのフィルタに堆積するPMの堆積量の推定式は、一般に下記式(1)のとおり表される。
PM堆積量=PM排出量−PM再生量 ・・・ (1)
(ここで、PM排出量とは、エンジンから排出された排ガス中に含まれるPM量のことである。また、ここでいうPM再生量とは、特に自然再生量を意味しており、強制再生時ではなく、通常運転時のエンジンから排出された高温の排ガスによって燃焼したPM量を意味している。)
【0005】
上述したPM排出量は、エンジン回転数と燃料噴射量を入力データとするマップによって算出される。一方、PM再生量は、エンジン回転数と燃料噴射量のほか、温度センサ、圧力センサ、給気流量計(エアフローメータ)等の各種センサの計測値に基づいて算出される。このため、エアフローメータ等のセンサ類が故障した場合には、PM再生量の推定が困難となる。
【0006】
特許文献1には、PM再生量の推定に必要なエアフローメータ等のセンサ類が故障した場合に、上記(1)式においてPM再生量の減算は行わずに、PM堆積量≒PM排出量としてPM堆積量を算出することで、PM堆積量の過少推定を防止し、フィルタにPMが過堆積するのを回避する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−316746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した特許文献1では、PM堆積量を算出する際に、PM再生量が全く考慮されないため、PM堆積量が過大に推定されることとなる。したがって、DPFの強制再生の実施頻度が高くなり、燃費の悪化やオイルダイリュージョン等の問題が発生してしまう。また、エアフローメータ、特に熱線式のエアフローメータは、汚れなどによって不具合を起こすことがあり、他のセンサ類に比べて異常をきたすことが多いとの問題がある。
【0009】
本発明はこのような従来の課題に鑑みなされた発明であって、給気流量計(エアフローメータ)に異常が認められた場合であっても、従来よりもPM堆積量を精度よく推定できるDPFのPM堆積量推定装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上述したような従来技術における課題及び目的を達成するために発明されたものであって、
本発明のDPFのPM堆積量推定装置は、
内燃機関から排気通路に排出された排ガス中の排気微粒子(PM)を捕集するディー 内燃機関から排気通路に排出された排ガス中の排気微粒子(PM)を捕集するディーゼルパティキュレートフィルター(DPF)と、該DPFに堆積したPM堆積量を推定するPM堆積量推定手段と、を備えたDPFのPM堆積量推定装置において、
前記排気通路に排出されたPM排出量を算出する排出量算出手段と、前記DPFにおいて自然再生されたPM再生量を算出する自然再生量算出手段とを有し、前記PM堆積量推定手段は、前記排出量算出手段にて算出されたPM排出量と、前記自然再生量算出手段にて算出されたPM再生量との差分から、DPFにおけるPM堆積量を推定するように構成されており、
前記自然再生量算出手段は、前記排ガスに含まれる酸素によるPM再生量と、前記排ガスに含まれる二酸化窒素によるPM再生量とを合算して前記自然再生されたPM量を算出するように構成され、該二酸化窒素によるPM再生量の算出に必要なデータの少なくとも一部は、前記内燃機関へ空気を送給する給気通路に設置された給気流量計で測定された給気流量に基づいて算出されるようになっており、
前記給気流量計に異常が認められたときには、該給気流量計で測定された給気流量を用いずに前記二酸化窒素によるPM再生量を算出し、前記DPFにおけるPM堆積量を推定するように構成されていることを特徴とする。
【0011】
このような本発明では、酸素によるPM再生量と二酸化窒素によるPM再生量とに分けて、自然再生されたPM再生量を推定する。この際、二酸化窒素によるPM再生量の算出に必要な排ガスの流量データは、給気流量計で測定された給気流量から算出される。一方、酸素によるPM再生量の算出には、給気流量計で測定された給気流量は使用されない。そして、給気流量計で測定された給気流量に異常が認められたときには、給気流量計で測定される給気流量を用いずに、二酸化窒素によるPM再生量を算出する。そして、このようにして算出した二酸化窒素によるPM再生量と、酸素によるPM再生量とを合算することで、DPFにおけるPM堆積量を算出(推定)する。
【0012】
したがって、このように構成される本発明のDPFのPM堆積量推定装置では、給気流量計に異常が認められた場合であっても、少なくとも酸素によるPM再生量は継続して算出されるため、従来と比べて、PM堆積量を精度よく推定することができるようになっている。
【0013】
上記発明において、給気流量計に異常が認められたときには、給気流量計に代わる他の代替手段によって給気流量を算出して二酸化窒素によるPM再生量を算出し、DPFにおけるPM堆積量を推定することが望ましい。
【0014】
この際、上記発明において、前記代替手段を、前記内燃機関の上流側に接続されている給気マニホールド部の圧力および温度を測定する圧力・温度測定手段と、該測定された圧力および温度から給気流量を算出する給気流量算出手段とから構成することができる。このように構成することで、給気流量計に異常が認められた場合であっても、従来と比べてPM堆積量をより高い精度で推定することができる。また、上記圧力・温度測定手段としては、給気マニホールド部に設置されているEGR制御用の圧力センサおよび温度センサ等を好適に利用することができる。
【0015】
またこの際、上記発明において、前記代替手段を、前記内燃機関のエンジン回転数および燃料噴射量を測定する回転数・噴射量測定手段と、前記内燃機関のエンジン回転数および燃料噴射量と給気流量との関係からなるマップから給気流量を算出する給気流量算出手段とから構成することができる。このように構成することで、給気流量計に異常が認められた場合であっても、従来と比べてPM堆積量をより高い精度で推定することができる。また、上記回転数・噴射量測定手段としては、内燃機関を制御するために設置されている各種のセンサ類を好適に利用することができる。
【0016】
また、上記発明において、他の代替手段によって給気流量を算出して二酸化窒素によるPM再生量を算出するのではなく、二酸化窒素によるPM再生量を0として算出し、DPFにおけるPM堆積量を推定するように構成することもできる。本発明の自然再生量算出手段は、酸素によるPM再生量と二酸化窒素によるPM再生量とを合算して、自然再生されるPM量を算出するため、二酸化窒素によるPM再生量を0として算出しても、酸素によるPM再生量は算出されることから、従来よりも高い精度で自然再生されるPM量が算出される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、給気流量計(エアフローメータ)に異常が認められた場合であっても、従来と比べてPM堆積量を精度よく推定でき、強制再生の頻度が多くなることによる燃費の悪化やオイルダイリュージョン等の問題を回避することができるDPFのPM堆積量推定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】DPFを備えるディーゼルエンジンの全体構成図である。
【図2】本発明の排出量算出手段を示したブロック図である。
【図3】本発明の自然再生量算出手段を示したブロック図である。
【図4】第1の実施形態における自然再生量算出手段の制御フローを示したフロー図である。
【図5】本発明のエアフローメータの異常判定手順を示したフロー図である。
【図6】本発明のエアフローメータの復帰判定手順を示したフロー図である。
【図7】第2の実施形態における制御フローを示したフロー図である。
【図8】第3の実施形態における制御フローを示したフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいてより詳細に説明する。
ただし、本発明の範囲は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に記載がない限り、本発明の範囲をそれにのみ限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0020】
図1は、DPFを備えるディーゼルエンジンの全体構成図である。まず、図1を参照して、本発明のPM堆積量推定装置をディーゼルエンジンに適用した場合の全体構成について説明する。
【0021】
図1に示すように、ディーゼルエンジンの内燃機関1の下流側には、排気マニホールド29を介して排気通路3が接続されている。排気通路3には、DOC(酸化触媒)5と、該DOC5の下流側にあるDPF7とからなる排ガス後処理装置9が設けられている。DOC5は、排ガス中の炭化水素(HC)や一酸化炭素(CO)を酸化除去するとともに、排ガス中の一酸化窒素(NO)を酸化して二酸化窒素(NO)を生成する機能を有する。DPF7は、上述したように、排ガス中に含まれるススなどのPMをフィルタで捕集し、排ガスから除去する装置である。
【0022】
また、内燃機関1の上流側には、給気マニホールド18を介して給気通路13が接続されている。そして、給気通路13と排気通路3との間には、排気ターボ過給機11が設けられている。この排気ターボ過給機11は、排気通路3に配置されている排気タービン11bと、給気通路13に配置されているコンプレッサ11aとを有しており、該コンプレッサ11aは排気タービン11bによって同軸駆動されるようになっている。また、給気通路13にはインタークーラ15および給気スロットルバルブ17が設けられている。そして、コンプレッサ11aから吐出された空気26は、インタークーラ15で冷却された後、給気スロットルバルブ17で給気流量が制御され、その後、給気マニホールド18を介して内燃機関1の各シリンダ内の燃焼室(不図示)に流入するようになっている。
【0023】
また、内燃機関1においては、燃料の噴射時期および噴射量を制御してシリンダ内の燃焼室に噴射するコモンレール燃料噴射装置(不図示)が設けられている。そして、該コモンレール燃料噴射装置のコモンレールから燃料噴射弁に対して、所定の噴射時期に所定量の燃料が供給されるように、ECU19からコモンレール燃料噴射装置に制御信号が入力されるようになっている。図中の符号21は、ECU19からコモンレール燃料噴射装置へと入力される制御信号の入力位置を示している。
【0024】
また、排気通路3の排気マニホールド29の直下流位置からEGR管23が分岐している。そして、EGR管23は、給気スロットルバルブ17の下流側に位置している給気マニホールド18に接続している。また、EGR管23には、EGRバルブ25が配置されている。そして、EGRバルブ25を開閉制御することにより、内燃機関1から排出された排ガス27の一部が、EGR管23を通って内燃機関1を再循環するようになっている。
【0025】
内燃機関1から排出された排ガス27は、排気マニホールド29および排気通路3を通って、上述した排気タービン11bを駆動してコンプレッサ11aを同軸駆動させる。そして、排気通路3を通った後、上述した排ガス後処理装置9のDOC5およびDPF7へと流れるようになっている。
【0026】
給気通路13には、コンプレッサ11aへ流入する空気流量を検出するエアフローメータ31(給気流量計)、吸気温度センサ33が配置されている。そして、該エアフローメータ31にて測定された給気流量、および該吸気温度センサ33で測定された吸気温度に関する信号が、ECU19へと入力されるようになっている。
【0027】
また、排気通路3には、DOC入口温度センサ35、DPF入口温度センサ37、DPF差圧センサ38、およびDPF出口温度センサ39が配置されている。そして、これらセンサ類で測定されたDOC入口温度、DPF入口温度、DPF出口温度などに関する信号が、ECU19へと入力されるようになっている。
【0028】
また、ECU19では、不図示のクランクセンサ、カムセンサ、アクセルセンサ、スロットルセンサ等の各種センサからの入力信号を基に、エンジン回転数および燃料噴射量が算出されるようになっている。
【0029】
また、給気スロットルバルブ17の下流側には、給気マニホールド18内の温度および圧力を測定する給気温度センサ41および給気圧力センサ43が配置されている。そして、該給気温度センサ41にて測定された給気温度、および該給気圧力センサ43で測定された給気圧力に関する信号が、ECU19へと入力されるようになっている。そして、ECU19において、これら給気温度、給気圧力などに基づいて最適なEGR量を算出することで、EGRバルブ25の開閉制御が行われるようになっている。
【0030】
ECU19は、中央処理装置(CPU)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、およびI/Oインターフェイスなどからなるマイクロコンピュータで構成されている。上述したセンサ類からの各種信号は、I/Oインターフェイスを介してCPUに入力される。CPUでは、ROMに記憶されている制御プログラムに従って、各種制御を実行するように構成されている。そして、図1に示すように、該ECU19によって、本発明のPM堆積量推定手段50、排出量算出手段51、および自然再生量算出手段52が構成されている。
【0031】
排出量算出手段51では、内燃機関1から排出される排ガス中に含まれるPM量(PM排出量)が算出される。排出量算出手段51におけるPM排出量の算出は、図2に示したように、エンジン回転数と燃料噴射量を入力データとするPM排出量マップ55によって行われる。このPM排出量マップ55は、実験等を行うことによって作成され、予めECU19のROMに記憶されている。
【0032】
自然再生量算出手段52では、自然再生量、すなわち、強制再生時ではなく、通常運転時の内燃機関1から排出された高温の排ガスによって燃焼したPM量(PM再生量)が算出される。このPM再生量は、図3に示すように、酸素(O)によるPM再生量と、二酸化窒素(NO)によるPM再生量とをそれぞれ算出し、これらを合算することによって算出される。
【0033】
酸素によるPM再生量は、DPF入出口平均温度と酸素濃度を入力データとするO再生量マップによって算出される。この際、酸素濃度は、Oセンサなどによって測定することも可能であるが、本実施形態では、排ガスの圧力や温度、燃料噴射量、EGR還流率などを基に、ECU19で算出している。
【0034】
二酸化窒素によるPM再生量は、DPF入出口平均温度、給気流量(排ガス流量)、DOC温度、エンジン回転数、燃料噴射量、DPF入出口温度を入力データとするNO再生量マップによって算出される。この際、排ガス流量は、上述したエアフローメータ31で測定した給気流量から算出されるようになっている。また、後述するように、エアフローメータ31に異常が認められたときには、エアフローメータ31に代わる他の代替手段60によって、給気流量が算出されるようになっている。
【0035】
上述したO再生量マップおよびNO再生量マップは、実験等を行うことによって作成され、予めECU19のROMに記憶されている。
【0036】
そして、PM堆積量推定手段50では、排出量算出手段51で算出したPM排出量と、自然再生量算出手段52で算出したPM再生量との差分から、下記式(2)に基づいて、PM堆積量を算出(推定)する。
PM堆積量=PM排出量− PM再生量
=PM排出量−(OによるPM再生量+NOによるPM再生量)
・・・ (2)
【0037】
<第1の実施形態>
以上の構成において、DPF7とPM堆積量推定手段50とを備える本発明のDPFのPM堆積量推定装置の第1の実施形態について、以下に説明する。図4は、第1の実施形態における自然再生量算出手段の制御フローを示したフロー図である。
【0038】
図4に示したように、開始後、まずエアフロ−メータ(AFM)の異常判定が行われる(S1)。そして、AFMが正常に作動していれば(S1においてYESの場合)、AFMによって給気流量を測定し(S2)、NOによるPM再生量を算出する(S3)。そして、別途算出したOによるPM再生量を合算してPM再生量を算出する(S4)。
【0039】
一方、上述したエアフローメータ(AFM)の異常判定において、AFMに異常が認められた場合(S1においてNOの場合)は、運転者などに警告した後(S5)、EGRバルブ25を全閉する(S6)。そして、ECU19において、給気温度センサ41および給気圧力センサ43によって測定された給気マニホールド18内の温度および圧力によって、予めROMに記憶されている下記式(3),(4)に基づいて、給気流量を算出する(S7)。そして、この給気流量から排ガスの流量データを算出し、NOによるPM再生量の算出を行う(S3)。
cyl=(ρ・Vstrk・N/60)・(2/Icyc)・Ncyl・E
・・・(3)
ρ=P/RT ・・・(4)
(ここで、Gcylは給気流量、ρは給気密度、Pは給気マニホールド部の絶対圧力、Tは給気マニホールド部の温度、Rは気体状態定数、Vstrkは一気筒当りの行程容積、Nはエンジン回転数、Icycはストローク、Ncylはシリンダ数、Eは体積効率で別途マップから算定される。)
【0040】
すなわち、第1の実施形態では、上述した給気流量計に代わって給気流量を算出する他の代替手段60が、給気マニホールド18の圧力および温度を測定する給気温度センサ41および給気圧力センサ43(圧力・温度測定手段)と、該測定された圧力および温度から給気流量を算出するECU19(給気流量算出手段)とから構成されている。
【0041】
次に、図4に示したAFMの異常判定(S1)の詳細な判定手順について、図5および図6を基に説明する。図5は、本発明におけるエアフローメータの異常判定手順を示したフロー図、図6は、本発明におけるエアフローメータの復帰判定手順を示したフロー図である。
【0042】
図5に示すように、AFMの異常判定では、先ずイグニッションスイッチのON/OFFを判定し(S8)、イグニッションスイッチがONの場合には、異常経過時間のカウントをスタート(S9)した後、AFMで測定した給気流量が所定の閾値範囲に収まっているかを判定する(S10)。この閾値範囲の設定は、例えば、所定のエンジン回転数に対応する通常時の給気流量の範囲を予め実験等で算出しておくことで設定することができる。そして、AFMの測定流量が所定の閾値範囲に収まっていない場合(S9においてYESの場合)は、異常経過時間が予め設定された異常判定時間を超えているかを判定し(S11)、YESの場合はAFMが異常であると判定して異常フラグをONとして(S12)、異常経過時間をリセットする(S13)。一方、AFMの測定流量が所定の閾値範囲に収まっている場合(S10においてNOの場合)は、そのまま異常経過時間をリセットする(S13)。また、S11において異常経過時間が異常判定時間を超えていない場合は、異常経過時間をカウント(S14)した後、再度S10におけるAFMの測定流量の異常判定を繰り返す。
【0043】
また図6に示すように、AFMの復帰判定では、先ず異常フラグのON/OFF状態を判定し(S14)、異常フラグがONの場合には、復帰経過時間のカウントをスタート(S15)した後、上述したS10と同様に、AFMで測定した給気流量が所定の閾値範囲に収まっているかを判定する(S16)。そして、AFMの測定流量が所定の閾値範囲に収まっている場合(S16においてNOの場合)は、復帰経過時間が予め設定された復帰判定時間を超えているかを判定し(S17)、YESの場合はAFMが異常状態から復帰したと判定して異常フラグをOFFとして(S18)、異常経過時間をリセットする(S19)。また、S17において復帰経過時間が復帰判定時間を超えていない場合は、復帰経過時間をカウント(S20)した後、再度S16におけるAFMの測定流量の異常判定を繰り返す。
【0044】
このように構成される本発明のDPFのPM堆積量推定装置では、エアフローメータ31に異常が認められた場合であってもPM再生量の算出が継続して行われるため、従来と比べてPM堆積量を精度よく推定することができるようになっている。また、代替手段60における圧力・温度測定手段として、EGR制御用の給気温度センサ41および給気圧力センサ43を利用することで、新たにセンサ類を必要とすることなく、代替手段60を構成することができるようになっている。
【0045】
<第2の実施形態>
次に、本発明のDPFのPM堆積量推定装置の第2の実施形態について、以下に説明する。図7は、第2の実施形態における自然再生量算出手段の制御フローを示したフロー図である。なお、この図7に示した第2の実施形態の制御フローは、上述した第1の実施形態の制御フローと基本的には同様の構成からなっており、同一のステップには同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0046】
この第2の実施形態は、図7の(A)に示すように、AFMが異常と判定された場合(S1においてNOの場合)に、給気マニホールド部の圧力・温度から給気流量を算出する(S7)代わりに、給気流量マップ61によって給気流量データを算出する(S7´)ように構成されている点が、上述した第1の実施形態と異なっている。給気流量マップ61は、図7の(B)に示すように、エンジン回転数および燃料噴射量を入力データとするマップになっている。エンジン回転数および燃料噴射量は、上述したように、クランクセンサ、カムセンサ、アクセルセンサ、スロットルセンサ等の各種センサからの入力信号を基に、ECU19にて算出される。また、給気流量マップ61は、実験等を行うことによって作成され、ECU19のROMに予め記憶されている。
【0047】
すなわち、第2の実施形態では、上述した給気流量計に代わって給気流量を算出する他の代替手段60が、エンジン回転数および燃料噴射量の算出の必要な各種センサおよびECU19(回転数・噴射量測定手段)と、このエンジン回転数および燃料噴射量と給気流量マップ61とから給気流量を算出するECU19(給気流量算出手段)とから構成されている。
【0048】
このように構成される本発明のDPFのPM堆積量推定装置では、エアフローメータ31に異常が認められた場合であってもPM再生量の算出が継続して行われるため、従来と比べてPM堆積量を精度よく推定することができるようになっている。また、代替手段60における回転数・噴射量測定手段としては、内燃機関1を制御するために設置されている各種のセンサ類を利用することができるため、新たにセンサ類を必要とすることなく、代替手段60を構成することができるようになっている。
【0049】
<第3の実施形態>
次に、本発明のDPFのPM堆積量推定装置の第3の実施形態について、以下に説明する。図8は、第3の実施形態における自然再生量算出手段の制御フローを示したフロー図である。なお、この図8に示した第3の実施形態の制御フローは、上述した第1の実施形態の制御フローと基本的には同様の構成からなっており、同一のステップには同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0050】
この第3の実施形態は、図8に示すように、AFMが異常と判定された場合(S1においてNOの場合)に、給気マニホールド部の圧力・温度から給気流量を算出(S7)して、NOによるPM再生量を算出(S3)する代わりに、NOによるPM再生量を0に設定する(S3´)ように構成されている点が、上述した第1の実施形態と異なっている。
【0051】
すなわち、上述した(2)式において、NOによるPM再生量を0とし、PM再生量≒OによるPM再生量とした下記式(2´)に基づいて、PM堆積量を推定している。
PM堆積量=PM排出量−PM再生量
=PM排出量−OによるPM再生量 ・・・ (2´)
【0052】
このように、NOによるPM再生量を0として算出しても、本発明の自然再生量算出手段は、OによるPM再生量とNOによるPM再生量とを合算して自然再生されるPM量を算出するため、PM再生量としてOによるPM再生量は考慮される。よって、この場合であっても、従来よりも高い精度で自然再生されるPM量が算出されるようになっている。
【0053】
以上、本発明の好ましい形態について説明したが、本発明は上記の形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない範囲での種々の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明によれば、DPFに堆積するPM堆積量を精度よく推定することのできるDPFのPM堆積量推定装置として、ディーゼルエンジンなどに好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0055】
1 内燃機関
3 排気通路
5 DOC
7 DPF
9 排ガス後処理装置
11 排気ターボ過給機
11a コンプレッサ
11b 排気タービン
13 給気通路
15 インタークーラ
17 給気スロットルバルブ
18 給気マニホールド
19 ECU
23 EGR管
25 EGRバルブ
26 空気
27 排ガス
29 排気マニホールド
31 エアフローメータ(給気流量計)
33 吸気温度センサ
35 DOC入口温度センサ
37 DPF入口温度センサ
38 DPF差圧センサ
39 DPF出口温度センサ
41 給気温度センサ
43 給気圧力センサ
50 PM堆積量推定手段
51 排出量算出手段
52 自然再生量算出手段
55 PM排出量マップ
60 代替手段
61 給気流量マップ



【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関から排気通路に排出された排ガス中の排気微粒子(PM)を捕集するディーゼルパティキュレートフィルター(DPF)と、該DPFに堆積したPM堆積量を推定するPM堆積量推定手段と、を備えたDPFのPM堆積量推定装置において、
前記排気通路に排出されたPM排出量を算出する排出量算出手段と、前記DPFにおいて自然再生されたPM再生量を算出する自然再生量算出手段とを有し、前記PM堆積量推定手段は、前記排出量算出手段にて算出されたPM排出量と、前記自然再生量算出手段にて算出されたPM再生量との差分から、DPFにおけるPM堆積量を推定するように構成されており、
前記自然再生量算出手段は、前記排ガスに含まれる酸素によるPM再生量と、前記排ガスに含まれる二酸化窒素によるPM再生量とを合算して前記自然再生されたPM量を算出するように構成され、該二酸化窒素によるPM再生量の算出に必要なデータの少なくとも一部は、前記内燃機関へ空気を送給する給気通路に設置された給気流量計で測定された給気流量に基づいて算出されるようになっており、
前記給気流量計に異常が認められたときには、該給気流量計で測定された給気流量を用いずに前記二酸化窒素によるPM再生量を算出し、前記DPFにおけるPM堆積量を推定するように構成されていることを特徴とするDPFのPM堆積量推定装置。
【請求項2】
前記給気流量計に異常が認められたときには、給気流量計に代わる他の代替手段によって給気流量を算出し、前記二酸化窒素によるPM再生量を算出して、DPFにおけるPM堆積量を推定するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のDPFのPM堆積量推定装置。
【請求項3】
前記代替手段が、前記内燃機関の上流側に接続されている給気マニホールド部の圧力および温度を測定する圧力・温度測定手段と、該測定された圧力および温度から給気流量を算出する給気流量算出手段とから構成されていることを特徴とする請求項2に記載のDPFのPM堆積量推定装置。
【請求項4】
前記代替手段が、前記内燃機関のエンジン回転数および燃料噴射量を測定する回転数・噴射量測定手段と、前記内燃機関のエンジン回転数および燃料噴射量と給気流量との関係からなるマップから給気流量を算出する給気流量算出手段とから構成されていることを特徴とする請求項2に記載のDPFのPM堆積量推定装置。
【請求項5】
前記給気流量計に異常が認められたときには、二酸化窒素によるPM再生量を0として算出し、DPFにおけるPM堆積量を推定するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のDPFのPM堆積量推定装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−104416(P2013−104416A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251049(P2011−251049)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】