説明

FRPサンドイッチ成形物及びその製造方法

【課題】 心材のスニップ先端部の樹脂溜まりや強化繊維布の皺などの発生を防ぐことができ、良好な端部形状を有するFRPサンドイッチ成形物及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 2つの繊維強化表皮材1、2と、これらの繊維強化表皮材1、2の間に介在された心材3と、この心材3のスニップ先端部に配置された樹脂含浸性の充填材4とを有し、樹脂が含浸されて先端部は前記2つの繊維強化表皮材を重ね合わせた積層部5とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、FRPサンドイッチ成形物及びその製造方法に関し、特にFRPサンドイッチ成形物の端末部の構造及びその端末部の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のサンドイッチパネルの端部構造については、図5に示すようなものが知られている(例えば、非特許文献1参照)。図5に示す4つのタイプは、いずれも端末部をテーパ状に形成する方法であり、(a)は上下2つの表皮材21、22の間に介在される心材23の端部にテーパを設けたもの、(b)は例えばハニカム状のアルミニウムからなる心材23の端部のコアをつぶし、この部分に接着剤24を充填してテーパ部に成形したもの、(c)は心材23の端部に三角形状のフォーム25を入れて成形したもの、(d)は硬質発泡材26等を用いて心材23の端部にテーパを設けたものである。
また、上述のように心材の端部をテーパ状や曲面状に先細りに形成する、つまり心材端部をスニップする場合の端部角は一般的に20〜45度程度することが多い。
【0003】
【非特許文献1】宮入浩夫著「サンドイッチ構造の基礎」日刊工業新聞社出版、1999年1月29日、p276−277
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ガラス繊維布や炭素繊維布などの強化材をサンドイッチ心材のスニップ端部などの角部に密着させようとする場合、必ず曲率を伴った屈曲変形をするため、心材の端部に存在する角部に密着できず、無理に密着させようとすると、強化繊維布に皺やつっぱりが生じて、凸部では樹脂の含浸不足、凹部では樹脂溜まりなどの欠陥が生じることがある。
特に、ドライの強化繊維布を積層して真空バッグで覆って真空状態にして樹脂を含浸させる真空補助含浸成形を行う際は、ドライ状態の強化繊維布を重ねてから真空バッグフィルムで覆い、内部を真空にして型に密着させる際、強化繊維布の層間に存在していた空隙がなくなる際に皺が発生しやすい。
また、スニップ先端部に樹脂溜まりが存在すると、応力が発生した際にその樹脂部分に亀裂が生じやすくなり、発生した亀裂の先端での応力集中部が起点となって強化繊維布の層間に亀裂が進展しやすくなるなど、構造物の強度が低下する。
また、心材の端部を滑らかな曲面形状とするためにパテを使うこともあるが、真空含浸補助成形法を採用する場合には、パテなどドライな強化繊維布に染み込んでしまう物質は使用できない。
【0005】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、心材のスニップ先端部の樹脂溜まりや強化繊維布の皺などの発生を防ぐことができ、良好な端部形状を有するFRPサンドイッチ成形物及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るFRPサンドイッチ成形物は、2つの繊維強化表皮材と、これらの繊維強化表皮材の間に介在された心材と、この心材のスニップ先端部に配置された樹脂含浸性の充填材とを有し、樹脂が含浸されて先端部は前記2つの繊維強化表皮材を重ね合わせた積層部となっているものである。
【0007】
また、本発明のFRPサンドイッチ成形物は、前記2つの繊維強化表皮材のうち、一方または両方の繊維強化表皮材は端部が曲面形状またはテーパ部を含む曲面形状に形成されて前記積層部に連続しているものである。
【0008】
また、前記充填材は、不織布を用いて略三角形断面に形成されていることが好ましい。
【0009】
また、本発明に係るFRPサンドイッチ成形物の製造方法は、成形型の成形部に、被成形物として、下面側の繊維強化表皮材、テーパ状の端部を有する心材、該心材のスニップ先端部に配置される充填材、および上面側の繊維強化表皮材を載置し、前記被成形物を第1の真空フィルムで覆い、前記心材のスニップ先端部に対応する屈曲部上に前記第1の真空フィルム上から通気性を有する柔軟な押し当て材をあてがい、さらに前記第1の真空フィルムおよび押し当て材上を第2の真空フィルムで二重に覆い、前記第1の真空フィルムの内部および前記第1の真空フィルムと第2の真空フィルムの間を脱気し、この脱気の過程で前記成形部に樹脂を注入することにより前記被成形物に樹脂を含浸させるものである。
【0010】
また、本発明のFRPサンドイッチ成形物の製造方法においては、前記押し当て材に、砂袋を用いるのが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、心材のスニップ先端部に樹脂含浸性の充填材を配置したので、該スニップ先端部に樹脂溜まりが発生することがなく、また繊維強化布を用いた繊維強化表皮材に生じやすい皺の発生も防ぐことが可能となる。また、本FRPサンドイッチ成形物の端部形状を滑らかな曲面に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明のFRPサンドイッチ成形物の断面図である。図2は心材のスニップ先端部に配置される充填材の例を示す説明図、図3は本発明のFRPサンドイッチ成形物の製造方法を示す工程図である。
【0013】
図1において、このFRPサンドイッチ成形物10は、2つの繊維強化表皮材1、2と、これらの繊維強化表皮材1、2の間に介在された心材3と、心材3のスニップ先端部に配置された樹脂含浸性の充填材4とを有し、樹脂含浸により成形されており、先端部は、一方の繊維強化表皮材1と他方の繊維強化表皮材2が上下両面を重ね合わせて接着された積層部5となっている。また、心材3の端部角θは一般に20〜45度程度にされる。
【0014】
このFRPサンドイッチ成形物10の端部は滑らかな曲面形状、または図1のようにテーパ部を含む曲面形状に形成される。すなわち、この例では、上面側の繊維強化表皮材1は、平坦な平面部1aから丸みを帯びた角部1b、およびテーパ部1cを介して所要の曲率をもつ屈曲部1dに連続し、さらに平坦な平面部1eへと続いて、この平面部1eにおいて下面側の平坦な繊維強化表皮材2と積層部5を形成する構成となっている。なお、下面側の繊維強化表皮材2も曲面形状またはテーパ部を含む曲面形状に形成することができる。
このような良好な、FRPサンドイッチ成形物10の端部形状に形成するために、心材3の端部は、テーパ状に形成され、さらに上部の角部は丸みをつけた(あるいは成形時に押圧して丸みをつける)滑らかな曲面に形成される。心材3としては、バルサ材や塩化ビニル発泡材、ウレタン発泡材などのプラスチックフォーム等が用いられる。
【0015】
心材3のスニップ先端部に設置される樹脂含浸性の充填材4は、例えばポリエステル短繊維による不織布にガラスマイクロバルーンを混在させてなる心材用素材(商品名「コアマット」と呼ばれる不織布)などを使用して、例えば図2に示すように、断面がほぼ三角形状に形成されたものを用意する。そしてこれを真空含浸補助成形の際に三角形の頂部が図1において下向きになるように心材3のスニップ先端部に設置する。なお、充填材4は、樹脂含浸性で軟質のものであれば特に材料は限定されるものではなく、プラスチックフォーム等でもよい。
【0016】
図2(a)は、幅の異なる複数枚(ここでは3枚)の上記コアマットのシート4a、4b、4cを用いて、接着により三角形断面(山形状)に形成したものである。この場合、各シートの厚さは同じでもよいし、異なっていてもよい。図2(b)は、一枚のコアマットのシート4aを折り畳んで接着により三角形断面(山形状)に形成したものである。もちろん、充填材4として、(c)のようにあらかじめ三角形断面に成形したプラスチック発泡材や不織布等の成形品を用いてもよい。そして、これらのシートや成形品からなる充填材4を上述のように真空含浸補助成形の際に三角形の頂部が図1において下向きとなるようにスニップ先端部に設置する。真空含浸補助成形の際、樹脂がこの充填材4に浸透したときに心材厚さ方向の圧縮変形が生じてスニップ先端部に存在する三角形状の空隙を充填材4が埋め、上下の繊維強化表皮材1と2を充填材4を介して強固に接合する。したがって、心材3の先端部は充填材4により鋭角な三角形状に形成され、かつ心材先端部の樹脂溜まりの発生を防ぐことができる。
【0017】
このFRPサンドイッチ成形物10は、上述のように構成されているので、端部を滑らかな曲面形状(テーパ部を含む曲面形状)に形成することができるとともに、心材3のスニップ先端部に樹脂含浸性の充填材4を設置することによって、スニップ先端部を鋭角な形状に形成することでき、かつ充填材4を介して上下の繊維強化表皮材1と2を強固に接合することができる。したがって、スニップ先端部に従来のような樹脂溜まりを生じることがないので、応力がかかった場合でもスニップ先端部に亀裂などを生じることがなく、強度の更なる向上を達成することができる。
【0018】
このような樹脂含浸性の充填材4が無い場合には、図4(a)に示すように心材3のスニップ先端部が欠けたりして樹脂溜まりが生じることがあり、そうなると心材端部に応力がかかった場合に樹脂溜まり部に作用する応力集中により亀裂が生じ、次第にこの亀裂が進展してFRPサンドイッチ成形物の強度が低下する。また、上部の角部に適当な丸みがないと樹脂の含浸不足が生じたりして角部で繊維強化表皮材1の厚みが薄くなることもある。また、真空含浸補助成形の際に図4(b)のようにスニップ先端部や上部の角部において繊維強化表皮材1に皺などが生じて外形形状が著しく損なわれる。
【0019】
次に、図3の工程図に基づいて、本発明のFRPサンドイッチ成形物10の製造方法を説明する。
【0020】
(a)まず、成形型50の成形部上に、下面側の繊維強化表皮材2として複数枚の強化繊維布を重ねて載置する。もちろん強化繊維布は一枚でもよいものであり、厚みや強度を出すためには複数枚使用するのが普通である。
なお、成形型50の材質は、鋼、FRP、木材などであり、特に限定されない。強化繊維布は、ガラス繊維、アラミド繊維、炭素繊維などの織物やマットが使用される。
【0021】
(b)次に、上記の下面側強化繊維布2の上に、端部をテーパ状に形成した心材3と、心材3のスニップ先端部に上述のように製作した三角形断面の不織布からなる充填材4を載置する。
【0022】
(c)ついで、これらの心材3及び充填材4を覆うように、複数枚の上面側強化繊維布(上面側の繊維強化表皮材)1を載置する。もちろん上面側強化繊維布1も上述の下面側繊維強化布2と同様に一枚でもよいものである。材質についても同じでもよいし、異なっていてもよい。いずれにしても上下の強化繊維布1、2の枚数、材質の組み合わせは任意である。
【0023】
(d)ついで、第1の真空フィルム51で被成形物(上面側強化繊維布1、心材3、充填材4、及び下面側強化繊維布2からなる成形対象物)の全体を覆い、第1の真空フィルム51の周辺部を第1のシール材52でシールする。そして、樹脂供給ホース53と第1の脱気ホース54を第1の真空フィルム51の内部に挿入する。樹脂供給ホース53と第1の脱気ホース54は、それぞれ第1のシール材52を貫通(貫通部はシールする)して挿入する。
【0024】
(e)ついで、スニップ先端部に対応する屈曲部に、例えば砂袋のごとき柔軟な通気性のある押し当て材55をあてがった後に、第2の真空フィルム56で第1の真空フィルム51上を二重に覆い、第2の真空フィルム56の周辺部を第2のシール材57でシールする。そして、第2の脱気ホース58を第1、第2のシール材52、57を貫通(少なくとも外側の第2のシール材57の貫通部はシールする)させて第1の真空フィルム51と第2の真空フィルム56の間に挿入する。
【0025】
以上の準備段階が終了した後、図示しないブロワにより第1、第2の脱気ホース54、58から吸引脱気すると、第1、第2の二重の真空フィルム51、56がほぼ大気圧で成形型50に押し付けられる。また、この脱気過程において、樹脂供給ホース53から適宜の樹脂を成形部に注入する。注入された樹脂は、被成形物の全体に浸透し含浸される。なお、注入樹脂としては、被成形物のマトリックス樹脂となるものであり、主に、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂が用いられる。
【0026】
また、スニップ先端部に対応する屈曲部上に第2の真空フィルム56上から、砂袋のごとき通気性を有する柔軟な押し当て材55を設置することにより、スニップ先端部を所望の曲率の曲面に容易に形成することができる。砂袋はコスト的に安価にでき、かつ長いものも簡単につくることができる。砂袋の砂の代わりにビーズ等の小粒子を入れたものでもよい。
また、三角形断面を有する樹脂含浸性の充填材4をスニップ先端部に設置することにより、スニップ先端部に樹脂溜まりを生じることがなく、さらにこの充填材4により皺発生の原因となる上面側強化繊維布1の余分な長さを吸収するため、屈曲部の皺発生が抑制され、屈曲部を滑らかな曲面に形成することができる。
【0027】
(f)注入樹脂の硬化後に、第1、第2の真空フィルム51、56を剥がして製品すなわち本FRPサンドイッチ成形物10を脱型する。本FRPサンドイッチ成形物10は、この例では両端部に繊維強化表皮材1と2の積層部5を有しており、そしてきわめて良好な端部形状となっている。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示すFRPサンドイッチ成形物の断面図。
【図2】心材のスニップ先端部に配置される充填材の例を示す説明図。
【図3】本発明のFRPサンドイッチ成形物の製造方法を示す工程図。
【図4】充填材が無い場合の欠陥の例を示すFRPサンドイッチ成形物の断面図。
【図5】従来のサンドイッチ構造物の断面図。
【符号の説明】
【0029】
1 繊維強化表皮材
2 繊維強化表皮材
3 心材
4 充填材
5 積層部
10 FRPサンドイッチ成形物
50 成形型
51 第1の真空フィルム
52 第1のシール材
53 樹脂供給ホース
54 第1の脱気ホース
55 押し当て材
56 第2の真空フィルム
57 第2のシール材
58 第2の脱気ホース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの繊維強化表皮材と、これらの繊維強化表皮材の間に介在された心材と、この心材のスニップ先端部に配置された樹脂含浸性の充填材とを有し、樹脂が含浸されて先端部は前記2つの繊維強化表皮材を重ね合わせた積層部となっていることを特徴とするFRPサンドイッチ成形物。
【請求項2】
前記2つの繊維強化表皮材のうち、一方または両方の繊維強化表皮材は端部が曲面形状またはテーパ部を含む曲面形状に形成されて前記積層部に連続していることを特徴とする請求項1記載のFRPサンドイッチ成形物。
【請求項3】
前記充填材は、不織布を用いて略三角形断面に形成されていることを特徴とする請求項1記載のFRPサンドイッチ成形物。
【請求項4】
成形型の成形部に、被成形物として、下面側の繊維強化表皮材、テーパ状の端部を有する心材、該心材のスニップ先端部に配置される充填材、および上面側の繊維強化表皮材を載置し、前記被成形物を第1の真空フィルムで覆い、前記心材のスニップ先端部に対応する屈曲部上に前記第1の真空フィルム上から通気性を有する柔軟な押し当て材をあてがい、さらに前記第1の真空フィルムおよび押し当て材上を第2の真空フィルムで二重に覆い、前記第1の真空フィルムの内部および前記第1の真空フィルムと第2の真空フィルムの間を脱気し、この脱気の過程で前記成形部に樹脂を注入することにより前記被成形物に樹脂を含浸させることを特徴とするFRPサンドイッチ成形物の製造方法。
【請求項5】
前記押し当て材に、砂袋を用いることを特徴とする請求項4記載のFRPサンドイッチ成形物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−130873(P2006−130873A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−325061(P2004−325061)
【出願日】平成16年11月9日(2004.11.9)
【出願人】(502116922)ユニバーサル造船株式会社 (172)
【Fターム(参考)】