ＦＲＰ中空成形品の内圧成形法
【課題】本発明の課題は、外観の綺麗なＦＲＰ中空成形品を容易に得るための内圧成形法を提供することにある。
【解決手段】プリプレグを用いて内圧成形法によりＦＲＰ中空成形品を成形するに際し、先ず、該成形品の賦形型に、該成形品の表層部形成用のプリプレグ以外のプリプレグを敷設・積層して、内部に内圧バッグを有する賦形物を作成し、次いで、該賦形物を、前記表層部形成用のプリプレグを内表面に敷設した金型にセットし、その後、該金型を型締めし内圧成形法により成形することを特徴とするＦＲＰ中空成形品の内圧成形法。
【解決手段】プリプレグを用いて内圧成形法によりＦＲＰ中空成形品を成形するに際し、先ず、該成形品の賦形型に、該成形品の表層部形成用のプリプレグ以外のプリプレグを敷設・積層して、内部に内圧バッグを有する賦形物を作成し、次いで、該賦形物を、前記表層部形成用のプリプレグを内表面に敷設した金型にセットし、その後、該金型を型締めし内圧成形法により成形することを特徴とするＦＲＰ中空成形品の内圧成形法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、繊維強化プラスチック（ＦＲＰ）の中空成形品の内圧成形法に関する。
【背景技術】
【０００２】
ＦＲＰは、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂や、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ＰＰＳ、ＰＥＥＫ等の熱可塑性樹脂のマトリックス樹脂と、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維等の強化繊維からなるものであり、軽量で且つ強度特性に優れるため、近年、航空宇宙産業から一般産業分野に至るまで、幅広い分野において利用されている。
【０００３】
ＦＲＰを管状ないし中空状の中空部材に成形する方法としては、遠心成形法、プルトルージョン成形法、フィラメントワインディング成形法、内圧成形法等が知られている。このうち内圧成形法は、金型キャビティ内に筒状の成形素材を配置し、これを筒の内側から圧力を与えて金型に密着させた状態にて加熱硬化させる方法であり、マトリックス樹脂が熱硬化性であっても熱可塑性であっても適用可能であり、通常の中空管状のＦＲＰ製品を成形するのに適している（例えば、特許文献１〜４参照）。
【０００４】
内圧成形法で中空のＦＲＰ製品を成形するには、通常、プリプレグを用い、金型キャビティ内表面に積層したプリプレグの内部に、膨張性を有するバッグやチューブ等（以下、内圧バッグという）を入れる。次いで、圧縮空気等を用いて内圧バッグをふくらませ、型の内側から圧力をかけてプリプレグを型の内壁面に押しつけ、この状態でプリプレグを加熱硬化させ成形を行う加圧バッグ成形法が、一般的に用いられている。そして、加熱硬化の手段としては、従来、硬化炉、オートクレーブ、ホットプレス等を用いて外部から加熱する方式が取られている。また、特許文献４では、加圧用バッグの加圧に加熱媒体を用いる方法も提案されている。
【０００５】
【特許文献１】特開昭６１−２３０９２５号公報
【特許文献２】特開平６−１５５５９５号公報
【特許文献３】特開２００３−３３４８３５号公報
【特許文献４】特開２００６−１３０８７５号公報
【０００６】
ところが、金型キャビティ内表面にプリプレグを敷設・積層して、あるいは、金型の上型下型にそれぞれレイアップ品をセットして、金型の型締めを行う場合、内圧バッグが上下型のプリプレグのオーバーラップ部に噛み込み、成形後の内圧バックの除去が困難になるという問題があった。予め、レイアップ品で内圧バックを包み込んで成形すれば、内圧バックの除去は可能であるが、賦形品の形を崩す為、成形品の端部の欠損や表面シワが発生するという新たな問題が発生した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００７】
本発明の課題は、前記のような問題が改善されたＦＲＰ中空成形品の内圧成形法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【０００８】
本発明の請求項１に記載された発明は、プリプレグを用いて内圧成形法によりＦＲＰ中空成形品を成形するに際し、先ず、該成形品の賦形型に、該成形品の表層部形成用のプリプレグ以外のプリプレグを敷設・積層して、内部に内圧バッグを有する賦形物を作成し、次いで、該賦形物を、前記表層部形成用のプリプレグを内表面に敷設した金型にセットし、その後、該金型を型締めし内圧成形法により成形することを特徴とするＦＲＰ中空成形品の内圧成形法である。
【０００９】
そして、請求項２に記載された発明は、表層部形成用のプリプレグとして、１又は２枚（層又はplyと同義）のプリプレグを金型の内表面に敷設することを特徴とする請求項１記載のＦＲＰ中空成形品の内圧成形法である。
【発明の効果】
【００１０】
本発明によれば、品質の優れたＦＲＰ製の中空成形品を、内圧成形法により容易に成形することができる。金型の上下型に表層部形成用のプリプレグを１又は２枚敷設し、一方、内圧バッグは残りのプリプレグで包み込んだ方式を取ることで、内圧バックの噛み込みを防ぐことができ、外観の向上したＦＲＰ中空成形品が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１１】
本発明においては、プリプレグを用いて内圧成形法によりＦＲＰ中空成形品を成形するに際し、先ず、該成形品の賦形型に、該成形品の表層部形成用のプリプレグ以外のプリプレグを敷設・積層し、内部に内圧バッグを有する賦形物を作成する。一方、それとは別に、
金型の内表面に、成形品の表層部を形成するプリプレグを敷設しておく。この際、敷設されるプリプレグとしては、１又は２枚（層又はply）のプリプレグで十分である。そして、作成された賦形物を、前記表層部を形成するプリプレグを内表面に敷設した金型にセットし、この金型を型締めした後、内圧バッグを加圧し内圧成形法により成形する。
【００１２】
このように、金型の上下型に表層部形成用のプリプレグを１又は２枚敷設し、一方、内圧バッグは残りのプリプレグで包み込んで、内部に内圧バッグを有する賦形物（内層レイアップ品）を形成しておき、両者を組み合わせて金型にセットすることで、内圧成形に際して内圧バックの噛み込みを防ぐことができ、得られる成形品の外観・見栄えも向上するものである。
【００１３】
本発明の内圧成形法の一例を図面を用いて説明する。図１において、１は内圧バッグ、２は金型の上型、３は金型の下型、２ａと３ａはそれぞれ上型と下型に敷設された表層部形成用のプリプレグ、４は表層部形成用のプリプレグ以外のプリプレグであり、１と４を合わせたものが賦形物である。図１は、成形品の賦形型で作成された内部に内圧バッグ１を有する賦形物を、表層部形成用のプリプレグ２ａ、３ａをそれぞれ内表面に敷設した金型の上型２と下型３の間にセットしたものを、型締めするときの様子を示している。
【００１４】
図１のように型締めするとき、敷設したプリプレグの上面と下面の接合部は、それぞれの層ごとに接合の位置がずれていることが必要である。ずらし方は、階段形状でもジグザグ形状でも良い。
【００１５】
本発明における内圧成形法とは、金型キャビティ内にプリプレグ等の成形素材を配置し、これを筒の内側から圧力を与えて金型に密着させた状態にて加熱硬化させる方法を意味する。例えば、ナイロンやシリコンゴムのような、可撓性があり且つ耐熱性に優れた材料で形成した内圧バッグ（加圧用バッグ）に、プリプレグ等の成形素材を巻き付け、あるいは、賦形型を用いて予備成形した成形素材の中心にこのバッグを配置したものを、金型キャビティ内に配備し、バッグ内に加圧媒体を送り込んでバッグを膨張させ、成形素材を金型内面に押し付けて加熱成形する方法である。通常は、加圧媒体として圧縮空気等が用いられ、加熱には、硬化炉、オートクレーブ、ホットプレス等が用いられる。あるいは、加圧用バッグに加熱媒体を導入し、加圧と加熱を同時に行っても良い。後者の場合には、加熱・硬化のための特別な設備・装置は必要としない。
【００１６】
本発明は、ＦＲＰ中空成形品を成形するものであるが、中空成形品とは、中空である限り断面形状はどんなものでも構わない。また、ＦＲＰは、繊維強化材に、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂などのマトリックス樹脂を含浸・硬化させて得られるものであるが、本発明においては、用いられる繊維強化材やマトリックス樹脂に関しては特に制限はい。繊維強化材としては、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、金属繊維等が挙げられる。炭素繊維が好ましい。
【００１７】
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ビニルエステル樹脂、シアン酸エステル樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、フェノキシ樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、マレイミド樹脂とシアン酸エステル樹脂の予備重合樹脂から選ばれる樹脂がある。これらは１種又は２種以上の混合物として用いることもできる。熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、芳香族ポリアミド、芳香族ポリエステル、芳香族ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、ポリアリーレンオキシド、熱可塑性ポリイミド、ポリアミドイミドがある。これらの樹脂は、２種以上併用しても良い。
【００１８】
繊維強化材は、通常、例えば、平織、綾織、朱子織等の経糸と緯糸から構成されるものの他、繊維束を一方向に引き揃えシート状としたもの、あるいは、これを直角方向にステッチ糸で縫合した一軸織物、一方向に引き揃えたシート状物を角度を変えて複数積層し、これを直角方向にステッチ糸で縫合した多軸織物等の形で用いられる。
【００１９】
内圧バッグの加圧又は加圧・加熱媒体としては、例えば、空気、加熱空気、水、熱水、水蒸気、あるいはポリオキシアルキレングリコールやシリコーンオイル等の熱媒オイルが挙げられる。加熱媒体の温度は、ＦＲＰ用として使用するマトリックス樹脂の種類によって異なるが、通常、５０〜２００℃の範囲である。
【００２０】
内圧バッグの加圧は、成形素材が金型に密着させられる状態になる程度であれば十分であり、成形品の形状にもよるが、通常、４〜９ｋｇ／ｃｍ２程度である。具体的には、内圧バッグの押圧がこの範囲になる様に、加圧媒体を内圧バッグに導入すれば良い。
【実施例】
【００２１】
図１に示したように、断面が扁平な楕円形状の中空成形品を成形した。アルミ製の金型を用い、金型の上型下型の内面に、プリプレグ（東邦テナックス社製、Ｗ−３１０１／Ｑ−１１２、平織物使用、エポキシ樹脂を４０％含有）を１枚（１ply）積層した。これは、成形品の最外層を形成する。
【００２２】
前記金型の相似形で形のより小さい賦形型を用い、賦形型の上型に成形品の２ply目から、敷設・積層していった。２ply目は、前記１plyより小さい寸法にし、次のplyはさらに小さくしながら積層していった（階段形状）。賦形型の下型には、上型で小さくした分、プリプレグの寸法を大きくし、賦形型の上型と下型の面を合わせた際に、それぞれ対応する層が面位置になるようにした。また、上面と下面を合わせる際に、上面と下面の間に挿入する内圧バッグが、上面と下面のラップ部に噛み込まないようにラップさせた。なお、成形品の最外層は金型に直接敷設するため、賦形型にはそれより内層のプリプレグを必要枚数敷設・積層する。
【００２３】
賦形型に敷設・積層し賦形した上面と下面を合わせる際に、内部に、ナイロンバッグ（ＷＲＩＧＨＴＬＯＮ＃７４００、ＡＩＲＴＥＣＨ社製）を挿入して内部に内圧バッグを有する賦形物を得た。
【００２４】
前記で得られた賦形物を、前記のとおり別に準備しておいた、上型下型の内面にプリプレグを１枚（１ply）敷設しておいた金型にセットし、型締め後、９０℃から１３０℃で１気圧から５気圧の圧力をかけ、３０分から１時間成形を行った。脱型して得られた中空成形品は外観が綺麗な高品質のものであった。
【産業上の利用可能性】
【００２５】
本発明は、外観の綺麗なＦＲＰ中空成形品を、内圧成形法により、容易に成形することができるので、その産業上のメリットは大きいものがある。
【図面の簡単な説明】
【００２６】
【図１】本発明の内圧成形法の一例を説明するための図である。
【符号の説明】
【００２７】
１ 内圧バッグ
２ 金型の上型
２ａ、３ａ 金型に敷設したプリプレグ（表層部形成用のプリプレグ）
３ 金型の下型
４ 表層部形成用のプリプレグ以外のプリプレグ
【技術分野】
【０００１】
本発明は、繊維強化プラスチック（ＦＲＰ）の中空成形品の内圧成形法に関する。
【背景技術】
【０００２】
ＦＲＰは、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂や、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ＰＰＳ、ＰＥＥＫ等の熱可塑性樹脂のマトリックス樹脂と、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維等の強化繊維からなるものであり、軽量で且つ強度特性に優れるため、近年、航空宇宙産業から一般産業分野に至るまで、幅広い分野において利用されている。
【０００３】
ＦＲＰを管状ないし中空状の中空部材に成形する方法としては、遠心成形法、プルトルージョン成形法、フィラメントワインディング成形法、内圧成形法等が知られている。このうち内圧成形法は、金型キャビティ内に筒状の成形素材を配置し、これを筒の内側から圧力を与えて金型に密着させた状態にて加熱硬化させる方法であり、マトリックス樹脂が熱硬化性であっても熱可塑性であっても適用可能であり、通常の中空管状のＦＲＰ製品を成形するのに適している（例えば、特許文献１〜４参照）。
【０００４】
内圧成形法で中空のＦＲＰ製品を成形するには、通常、プリプレグを用い、金型キャビティ内表面に積層したプリプレグの内部に、膨張性を有するバッグやチューブ等（以下、内圧バッグという）を入れる。次いで、圧縮空気等を用いて内圧バッグをふくらませ、型の内側から圧力をかけてプリプレグを型の内壁面に押しつけ、この状態でプリプレグを加熱硬化させ成形を行う加圧バッグ成形法が、一般的に用いられている。そして、加熱硬化の手段としては、従来、硬化炉、オートクレーブ、ホットプレス等を用いて外部から加熱する方式が取られている。また、特許文献４では、加圧用バッグの加圧に加熱媒体を用いる方法も提案されている。
【０００５】
【特許文献１】特開昭６１−２３０９２５号公報
【特許文献２】特開平６−１５５５９５号公報
【特許文献３】特開２００３−３３４８３５号公報
【特許文献４】特開２００６−１３０８７５号公報
【０００６】
ところが、金型キャビティ内表面にプリプレグを敷設・積層して、あるいは、金型の上型下型にそれぞれレイアップ品をセットして、金型の型締めを行う場合、内圧バッグが上下型のプリプレグのオーバーラップ部に噛み込み、成形後の内圧バックの除去が困難になるという問題があった。予め、レイアップ品で内圧バックを包み込んで成形すれば、内圧バックの除去は可能であるが、賦形品の形を崩す為、成形品の端部の欠損や表面シワが発生するという新たな問題が発生した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００７】
本発明の課題は、前記のような問題が改善されたＦＲＰ中空成形品の内圧成形法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【０００８】
本発明の請求項１に記載された発明は、プリプレグを用いて内圧成形法によりＦＲＰ中空成形品を成形するに際し、先ず、該成形品の賦形型に、該成形品の表層部形成用のプリプレグ以外のプリプレグを敷設・積層して、内部に内圧バッグを有する賦形物を作成し、次いで、該賦形物を、前記表層部形成用のプリプレグを内表面に敷設した金型にセットし、その後、該金型を型締めし内圧成形法により成形することを特徴とするＦＲＰ中空成形品の内圧成形法である。
【０００９】
そして、請求項２に記載された発明は、表層部形成用のプリプレグとして、１又は２枚（層又はplyと同義）のプリプレグを金型の内表面に敷設することを特徴とする請求項１記載のＦＲＰ中空成形品の内圧成形法である。
【発明の効果】
【００１０】
本発明によれば、品質の優れたＦＲＰ製の中空成形品を、内圧成形法により容易に成形することができる。金型の上下型に表層部形成用のプリプレグを１又は２枚敷設し、一方、内圧バッグは残りのプリプレグで包み込んだ方式を取ることで、内圧バックの噛み込みを防ぐことができ、外観の向上したＦＲＰ中空成形品が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１１】
本発明においては、プリプレグを用いて内圧成形法によりＦＲＰ中空成形品を成形するに際し、先ず、該成形品の賦形型に、該成形品の表層部形成用のプリプレグ以外のプリプレグを敷設・積層し、内部に内圧バッグを有する賦形物を作成する。一方、それとは別に、
金型の内表面に、成形品の表層部を形成するプリプレグを敷設しておく。この際、敷設されるプリプレグとしては、１又は２枚（層又はply）のプリプレグで十分である。そして、作成された賦形物を、前記表層部を形成するプリプレグを内表面に敷設した金型にセットし、この金型を型締めした後、内圧バッグを加圧し内圧成形法により成形する。
【００１２】
このように、金型の上下型に表層部形成用のプリプレグを１又は２枚敷設し、一方、内圧バッグは残りのプリプレグで包み込んで、内部に内圧バッグを有する賦形物（内層レイアップ品）を形成しておき、両者を組み合わせて金型にセットすることで、内圧成形に際して内圧バックの噛み込みを防ぐことができ、得られる成形品の外観・見栄えも向上するものである。
【００１３】
本発明の内圧成形法の一例を図面を用いて説明する。図１において、１は内圧バッグ、２は金型の上型、３は金型の下型、２ａと３ａはそれぞれ上型と下型に敷設された表層部形成用のプリプレグ、４は表層部形成用のプリプレグ以外のプリプレグであり、１と４を合わせたものが賦形物である。図１は、成形品の賦形型で作成された内部に内圧バッグ１を有する賦形物を、表層部形成用のプリプレグ２ａ、３ａをそれぞれ内表面に敷設した金型の上型２と下型３の間にセットしたものを、型締めするときの様子を示している。
【００１４】
図１のように型締めするとき、敷設したプリプレグの上面と下面の接合部は、それぞれの層ごとに接合の位置がずれていることが必要である。ずらし方は、階段形状でもジグザグ形状でも良い。
【００１５】
本発明における内圧成形法とは、金型キャビティ内にプリプレグ等の成形素材を配置し、これを筒の内側から圧力を与えて金型に密着させた状態にて加熱硬化させる方法を意味する。例えば、ナイロンやシリコンゴムのような、可撓性があり且つ耐熱性に優れた材料で形成した内圧バッグ（加圧用バッグ）に、プリプレグ等の成形素材を巻き付け、あるいは、賦形型を用いて予備成形した成形素材の中心にこのバッグを配置したものを、金型キャビティ内に配備し、バッグ内に加圧媒体を送り込んでバッグを膨張させ、成形素材を金型内面に押し付けて加熱成形する方法である。通常は、加圧媒体として圧縮空気等が用いられ、加熱には、硬化炉、オートクレーブ、ホットプレス等が用いられる。あるいは、加圧用バッグに加熱媒体を導入し、加圧と加熱を同時に行っても良い。後者の場合には、加熱・硬化のための特別な設備・装置は必要としない。
【００１６】
本発明は、ＦＲＰ中空成形品を成形するものであるが、中空成形品とは、中空である限り断面形状はどんなものでも構わない。また、ＦＲＰは、繊維強化材に、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂などのマトリックス樹脂を含浸・硬化させて得られるものであるが、本発明においては、用いられる繊維強化材やマトリックス樹脂に関しては特に制限はい。繊維強化材としては、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、金属繊維等が挙げられる。炭素繊維が好ましい。
【００１７】
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ビニルエステル樹脂、シアン酸エステル樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、フェノキシ樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、マレイミド樹脂とシアン酸エステル樹脂の予備重合樹脂から選ばれる樹脂がある。これらは１種又は２種以上の混合物として用いることもできる。熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、芳香族ポリアミド、芳香族ポリエステル、芳香族ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、ポリアリーレンオキシド、熱可塑性ポリイミド、ポリアミドイミドがある。これらの樹脂は、２種以上併用しても良い。
【００１８】
繊維強化材は、通常、例えば、平織、綾織、朱子織等の経糸と緯糸から構成されるものの他、繊維束を一方向に引き揃えシート状としたもの、あるいは、これを直角方向にステッチ糸で縫合した一軸織物、一方向に引き揃えたシート状物を角度を変えて複数積層し、これを直角方向にステッチ糸で縫合した多軸織物等の形で用いられる。
【００１９】
内圧バッグの加圧又は加圧・加熱媒体としては、例えば、空気、加熱空気、水、熱水、水蒸気、あるいはポリオキシアルキレングリコールやシリコーンオイル等の熱媒オイルが挙げられる。加熱媒体の温度は、ＦＲＰ用として使用するマトリックス樹脂の種類によって異なるが、通常、５０〜２００℃の範囲である。
【００２０】
内圧バッグの加圧は、成形素材が金型に密着させられる状態になる程度であれば十分であり、成形品の形状にもよるが、通常、４〜９ｋｇ／ｃｍ２程度である。具体的には、内圧バッグの押圧がこの範囲になる様に、加圧媒体を内圧バッグに導入すれば良い。
【実施例】
【００２１】
図１に示したように、断面が扁平な楕円形状の中空成形品を成形した。アルミ製の金型を用い、金型の上型下型の内面に、プリプレグ（東邦テナックス社製、Ｗ−３１０１／Ｑ−１１２、平織物使用、エポキシ樹脂を４０％含有）を１枚（１ply）積層した。これは、成形品の最外層を形成する。
【００２２】
前記金型の相似形で形のより小さい賦形型を用い、賦形型の上型に成形品の２ply目から、敷設・積層していった。２ply目は、前記１plyより小さい寸法にし、次のplyはさらに小さくしながら積層していった（階段形状）。賦形型の下型には、上型で小さくした分、プリプレグの寸法を大きくし、賦形型の上型と下型の面を合わせた際に、それぞれ対応する層が面位置になるようにした。また、上面と下面を合わせる際に、上面と下面の間に挿入する内圧バッグが、上面と下面のラップ部に噛み込まないようにラップさせた。なお、成形品の最外層は金型に直接敷設するため、賦形型にはそれより内層のプリプレグを必要枚数敷設・積層する。
【００２３】
賦形型に敷設・積層し賦形した上面と下面を合わせる際に、内部に、ナイロンバッグ（ＷＲＩＧＨＴＬＯＮ＃７４００、ＡＩＲＴＥＣＨ社製）を挿入して内部に内圧バッグを有する賦形物を得た。
【００２４】
前記で得られた賦形物を、前記のとおり別に準備しておいた、上型下型の内面にプリプレグを１枚（１ply）敷設しておいた金型にセットし、型締め後、９０℃から１３０℃で１気圧から５気圧の圧力をかけ、３０分から１時間成形を行った。脱型して得られた中空成形品は外観が綺麗な高品質のものであった。
【産業上の利用可能性】
【００２５】
本発明は、外観の綺麗なＦＲＰ中空成形品を、内圧成形法により、容易に成形することができるので、その産業上のメリットは大きいものがある。
【図面の簡単な説明】
【００２６】
【図１】本発明の内圧成形法の一例を説明するための図である。
【符号の説明】
【００２７】
１ 内圧バッグ
２ 金型の上型
２ａ、３ａ 金型に敷設したプリプレグ（表層部形成用のプリプレグ）
３ 金型の下型
４ 表層部形成用のプリプレグ以外のプリプレグ
【特許請求の範囲】
【請求項１】
プリプレグを用いて内圧成形法によりＦＲＰ中空成形品を成形するに際し、先ず、該成形品の賦形型に、該成形品の表層部形成用のプリプレグ以外のプリプレグを敷設・積層して、内部に内圧バッグを有する賦形物を作成し、次いで、該賦形物を、前記表層部形成用のプリプレグを内表面に敷設した金型にセットし、その後、該金型を型締めし内圧成形法により成形することを特徴とするＦＲＰ中空成形品の内圧成形法。
【請求項２】
表層部形成用のプリプレグとして、１又は２枚のプリプレグを金型の内表面に敷設することを特徴とする請求項１記載のＦＲＰ中空成形品の内圧成形法。
【請求項１】
プリプレグを用いて内圧成形法によりＦＲＰ中空成形品を成形するに際し、先ず、該成形品の賦形型に、該成形品の表層部形成用のプリプレグ以外のプリプレグを敷設・積層して、内部に内圧バッグを有する賦形物を作成し、次いで、該賦形物を、前記表層部形成用のプリプレグを内表面に敷設した金型にセットし、その後、該金型を型締めし内圧成形法により成形することを特徴とするＦＲＰ中空成形品の内圧成形法。
【請求項２】
表層部形成用のプリプレグとして、１又は２枚のプリプレグを金型の内表面に敷設することを特徴とする請求項１記載のＦＲＰ中空成形品の内圧成形法。
【図１】
【公開番号】特開２００８−２４６６７５（Ｐ２００８−２４６６７５Ａ）
【公開日】平成２０年１０月１６日（２００８．１０．１６）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００７−８７０７３（Ｐ２００７−８７０７３）
【出願日】平成１９年３月２９日（２００７．３．２９）
【出願人】（０００００３０９０）東邦テナックス株式会社 (246)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２０年１０月１６日（２００８．１０．１６）
【国際特許分類】
【出願日】平成１９年３月２９日（２００７．３．２９）
【出願人】（０００００３０９０）東邦テナックス株式会社 (246)
【Ｆターム（参考）】
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