説明

GPS機能付鍵システム、及び、GPS機能付錠

【課題】安全性を向上させた移動体のためのGPS機能付鍵システム等を提供する。
【解決手段】移動体3の錠5を施錠する際、位置情報入力装置7により利用者は錠5の開錠を許可する位置情報を入力する。位置情報入力装置7は、移動体3の錠5と通信し、入力された位置情報を送り、移動体3の錠5は位置情報入力装置7から受信した位置情報をメモリ23の登録緯度32、登録経度33に記憶する。移動体3の錠5を開錠する場合、利用者が鍵9を用いて錠5を開錠しようとすると、錠5の制御部21は、GPS機能部22によりGPS衛星11からの電波を受信し、現在の位置を計算する。移動体3の錠5の制御部21は、計算した現在位置情報と、メモリ23の登録緯度32、登録経度33を比較し、一致するかどうか判定し、一致した場合は錠5の制御部21は開錠するが、一致しない場合は開錠しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体のためのGPS(Global Positioning System)機能付鍵システム等に関する。
【背景技術】
【0002】
個人情報を記憶したメディアを格納するジュラルミンケース、現金輸送のためのケース、あるいは旅行用のスーツケースのような移動体では、従来、物理的な鍵を使用していた。
近年、紛失や盗難のおそれがある物理的な鍵を用いないで電子的な操作で錠の開閉を行う電子錠の使用が増加し、予め登録された暗証番号を用いることによって施錠や開錠が行われる方法も増加している。しかし、暗証番号を用いた方法では、例えば、暗証番号が盗まれたり、あるいは、暗証番号を探し出したりすることにより開錠できることがあるため、安全性の点において問題がある。
【0003】
特許文献1では、ボックスの電子錠の制御システムにおいて、利用者は暗証番号や個人ID(identification)情報等を格納した識別カードを保持し、利用者の個人ID情報とその個人ID情報にリンクする個人識別情報と電子錠の状態管理情報とを格納し、通信ネットワークを介して電子錠の開閉の状態を監視し、格納されている電子錠の状態管理情報に基づいて、電子錠を備えたボックスの制御部でIDカードリーダ等により読み取った個人ID情報等を用いて電子錠の開閉の条件を指示するという方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−323696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、個人を識別する識別カードや暗証番号が盗まれてしまった場合、電子錠を開錠されてしまう。また、悪意のある関係者は、任意の場所で開錠することができてしまい、安全性が高いとはいえない。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、安全性を向上させた移動体のためのGPS機能付鍵システム等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するために、第1の発明は、GPS機能を持つ錠を有する移動体と、位置情報入力装置とからなるGPS機能付鍵システムであって、前記位置情報入力装置は、前記移動体の前記錠の開錠を許可する位置を示す登録位置情報を入力する手段と、前記登録位置情報を前記錠に送る手段と、を具備し、前記錠は、前記登録位置情報を保持する手段と、GPS衛星からの信号を受信し、現在位置情報を計算する手段と、前記現在位置情報と前記登録位置情報とが、GPSの誤差の範囲内で一致する場合、開錠を許可する手段と、を具備することを特徴とするGPS機能付鍵システムである。第1の発明によって、不正な場所で移動体を開錠することを防止することができる。特に、錠が登録位置情報を保持する手段を備えることで、開錠処理では他の装置と登録位置情報の送受信を行う必要がなく、安全である。
【0008】
前記位置情報入力装置は、例えば、緯度、経度を入力することにより前記登録位置情報を入力する。また、記位置情報入力装置は、例えば、地図データを表示し、前記地図データ上で指定された位置を登録位置情報として入力する。これによって、ユーザは、地図データを確認しながら、登録位置情報を入力することができる。
【0009】
第2の発明は、移動体のGPS機能付錠であって、位置情報入力装置から受信した開錠を許可する位置を示す登録位置情報を保持する手段と、GPS衛星からの信号を受信し、現在位置情報を計算する手段と、前記現在位置情報と前記登録位置情報とが、GPSの誤差の範囲内で一致する場合、開錠を許可する手段と、を具備することを特徴とするGPS機能付錠である。第2の発明によって、不正な場所で移動体を開錠されないGPS機能付錠を提供することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、安全性を向上させた移動体のためのGPS機能付鍵システム等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係るGPS機能付鍵システム1の概要を示す図
【図2】移動体3の錠5のハードウエア構成の一例を示す図
【図3】移動体3の錠5のメモリ23の詳細を示す図
【図4】位置情報入力装置7のハードウエア構成の一例を示す図
【図5】GPS機能付鍵システム1における移動体3の錠5の施錠の処理を示すフローチャート
【図6】GPS機能付鍵システム1における移動体3の錠5の開錠の処理を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に基づいて本発明に係るGPS機能付鍵システムの実施形態を詳細に説明する。
最初に、図1、2、3、4を参照しながら、本発明に係るGPS機能付鍵システム1について説明する。
図1は、本発明に係るGPS機能付鍵システム1の概要を示す図、図2は、移動体3の錠5のハードウエア構成の一例を示す図、図3は、移動体3の錠5のメモリ23の詳細を示す図、図4は、位置情報入力装置7のハードウエア構成の一例を示す図である。
【0013】
図1に示すように、GPS機能付鍵システム1は、個人情報や機密情報等を記憶したメディアを格納したジュラルミンケース、現金輸送用ケース、旅行用スーツケース等の移動体3を責任者が監視していない場所で不正に開くことを防止するもので、移動体3は、GPS機能を持つ錠5を有する。また、GPS機能付鍵システム1は、移動体3の錠5に位置情報を入力するための位置情報入力装置7、移動体3の錠5を開錠するための鍵9、移動体3の錠5に現在位置を送信するGPS衛星11を有する。
移動体3の錠5を施錠するとき、位置情報入力装置7を用いて、錠5を開くことを許可する位置を登録する。移動体3の錠5は鍵9を用いて開錠するが、その際、錠5はGPS衛星11から現在の位置を取得し、錠5を開くことを許可するために登録した位置と現在の位置が一致するかどうか確認する。一致した場合は開錠し、一致しない場合は開錠しない。尚、現在の位置が登録した位置と一致したかどうかは、GPS機能の誤差を考慮して判断する。
【0014】
図2に示すように、移動体3の錠5は、制御部21、GPS機能部22、メモリ23、表示部24、音声出力部25、インタフェース部26等を有する。
制御部21は、錠5の全体の動作を制御するもので、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等で構成される。
CPUは、ROM等に格納されるプログラムをRAM上のワークメモリ領域に呼び出して実行し、GPS機能付鍵システム1が行う後述する処理(図5、6等参照)を実現する。
ROMは、不揮発性メモリであり、CPUが実行するプログラム、データ等を恒久的に保持している。
RAMは、揮発性メモリであり、ROM等からロードしたプログラム、データ等を一時的に保持するとともに、制御部21が各種処理を行う為に使用するワークエリアを備える。
GPS機能部22は、制御部21の指示によりGPS衛星11からの電波を受信し、現在の位置情報を計算する。得られる位置情報は、緯度、経度である。
【0015】
メモリ23は、錠5の開錠処理に必要となるデータを保持する。
図3に示すように、メモリ23は、鍵ID31、登録緯度32、登録経度33等を有する。
鍵ID31は、鍵9を示すIDである。
登録緯度32、登録経度33は、錠5の開錠を許可する位置の緯度、経度を示すもので、錠5を施錠する際、位置情報入力装置7により入力される。
錠5のメモリ23に登録緯度32、登録経度33を記憶することで、錠5の開錠処理では、他の装置と登録緯度32、登録経度33の送受信を行う必要がなく、安全である。
【0016】
表示部24は、液晶パネル等の表示装置で、位置情報入力装置7により錠5の開錠を許可する位置情報を入力したときに、入力された位置情報を表示したり、錠5の開錠時にエラーメッセージ等を表示したりする。表示部24への登録した位置情報の表示は、安全性のため、位置情報入力装置7により入力されたときに限る。
音声出力部25は、通知音や警告音等を出力する装置である。例えば、位置情報入力装置7により錠5に開錠を許可する位置情報を入力したとき、「ピピ」というような通知音を出力したり、位置情報入力装置7により登録された位置以外で錠5を開錠しようとしたとき、「ピッピー」というような警告音を出力したりするようにしてもよい。
錠5は、表示部24及び音声出力部25の両方を備える必要はなく、いずれか一方を備えればよい。
インタフェース部26は、錠5を位置情報入力装置7、鍵9等と接続して通信を行う。
【0017】
位置情報入力装置7は、移動体3の錠5に開錠を許可する位置情報を入力する装置で、移動体3の錠5との接続は、有線でも無線でもよい。また、位置情報入力装置7は、移動体3に付属する形態でもよい。
位置情報入力装置7は、制御部41、入力部42、表示部43、インタフェース部44等を有する。
【0018】
制御部41は、位置情報入力装置7全体の動作を制御するもので、CPU、ROM、RAM等で構成される。
CPUは、ROM等に格納されるプログラムをRAM上のワークメモリ領域に呼び出して実行し、位置情報入力装置7が行う処理を実現する。
ROMは、不揮発性メモリであり、CPUが実行するプログラム、データ等を恒久的に保持している。
RAMは、揮発性メモリであり、ROM等からロードしたプログラム、データ等を一時的に保持するとともに、制御部41が各種処理を行う為に使用するワークエリアを備える。
【0019】
入力部42は、移動体3の錠5の開錠を許可する位置情報を入力するもので、キーボード、タッチパネル等の入力装置を有する。
表示部43は、液晶パネル等の表示装置である。
入力部42がキーボードの形式の場合、位置情報は緯度、経度の数字を入力して指定する。入力部42がタッチパネルの形式の場合、例えば、表示部43に地図データを表示し、表示部43の画面上で移動体3の錠5の開錠を許可する位置をタッチすることにより位置情報を入力するようにしてもよい。
インタフェース部44は、錠5等と接続し、通信を行う。
【0020】
鍵9は、通常の物理的な鍵の形式でもよいし、ICカード(Integrated Circuit)の形式でもよい。
安全性を高めるため、移動体3の錠5を開錠するときに暗証番号等を入力するようにしてもよいし、利用者の指紋等の生体情報等を記録し、生体認証を行うようにしてもよい。
【0021】
次に、図5、6を参照しながら、本発明に係るGPS機能付鍵システム1の実施形態について詳細に説明する。
図5は、GPS機能付鍵システム1における移動体3の錠5の施錠の処理を示すフローチャート、図6は、GPS機能付鍵システム1における移動体3の錠5の開錠の処理を示すフローチャートである。
【0022】
移動体3の錠5を施錠する際、位置情報入力装置7により利用者は錠5の開錠を許可する位置情報を入力する(ステップS101)。
例えば、移動体3を支店等に輸送する場合、その支店の緯度、経度を指定する。位置情報入力装置7の入力部42がキーボードの形式の場合、その支店の緯度と経度を検索し、緯度、経度を数字で入力する。位置情報入力装置7の入力部42がタッチパネルの形式の場合、その支店の近辺の地図データを表示部43に表示し、GUI(Graphical User Interface)によりその支店の場所をタッチして、位置情報を入力する。
また、安全性を高めるため、位置情報入力装置7により位置情報を入力する前に暗証番号等の入力を要求し、利用者の認証を行うようにしてもよい。
【0023】
位置情報入力装置7は、移動体3の錠5と通信し、入力された位置情報を送る(ステップS102)。
移動体3の錠5は、位置情報入力装置7から受信した位置情報をメモリ23の登録緯度32、登録経度33に記憶する(ステップS103)。
このとき、錠5の制御部21は、確認のために登録緯度32、登録経度33を表示部24に表示するようにしてもよいし、あるいは、音声出力部25により「ピピ」等の通知音を出力するようにしてもよい。
【0024】
移動体3の錠5を開錠する場合、利用者が鍵9を用いて錠5を開錠しようとすると、錠5の制御部21は、GPS機能部22によりGPS衛星11からの電波を受信し、現在の位置を計算する(ステップS201)。
利用者が鍵9により錠5を開錠しようとする際、暗証番号等の入力を要求するようにしてもよいし、鍵9がICカードの場合は、ICカードに記憶した生体情報を用いて生体認証を行うようにしてもよい。
【0025】
移動体3の錠5の制御部21は、計算した現在位置情報と、メモリ23の登録緯度32、登録経度33を比較し、一致するかどうか判定する(ステップS202)。ただし、GPSの誤差を許容する範囲で一致するかどうかを判定する。
現在位置情報と登録した位置情報が一致した場合、錠5の制御部21は開錠するが(ステップS203)、一致しない場合は開錠しない(ステップS204)。一致しない場合、錠5の制御部21は音声出力部25により、例えば「ピッピー」という警告音を出力するようにしたり、表示部24にエラーメッセージを表示したりするようにしてもよい。
【0026】
以上説明したように、本発明に係るGPS機能付鍵システムでは、移動体の施錠時に開錠を許可する場所の位置情報を錠のメモリに記憶させ、移動体の開錠時にGPS機能により現在位置を取得し、登録された位置情報と現在位置情報を比較することにより、移動体を開錠してよいかを判定する。これにより、移動体を盗難された場合、例え移動体と一緒に鍵を盗んだり、暗証番号を盗んだりしていても開錠することはできず、安全性が向上する。また、移動体を発送者が意図しない場所で開錠することも不可能となる。
【0027】
以上、添付図面を参照しながら、本発明に係るGPS機能付鍵システム等の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0028】
1………GPS機能付鍵システム
3………移動体
5………錠
7………位置情報入力装置
9………鍵
11………GPS衛星

【特許請求の範囲】
【請求項1】
GPS機能を持つ錠を有する移動体と、位置情報入力装置とからなるGPS機能付鍵システムであって、
前記位置情報入力装置は、
前記移動体の前記錠の開錠を許可する位置を示す登録位置情報を入力する手段と、
前記登録位置情報を前記錠に送る手段と、
を具備し、
前記錠は、
前記登録位置情報を保持する手段と、
GPS衛星からの信号を受信し、現在位置情報を計算する手段と、
前記現在位置情報と前記登録位置情報とが、GPSの誤差の範囲内で一致する場合、開錠を許可する手段と、
を具備することを特徴とするGPS機能付鍵システム。
【請求項2】
前記位置情報入力装置は、緯度、経度を入力することにより前記登録位置情報を入力することを特徴とする請求項1記載のGPS機能付鍵システム。
【請求項3】
前記位置情報入力装置は、地図データを表示し、前記地図データ上で指定された位置を登録位置情報として入力することを特徴とする請求項1記載のGPS機能付鍵システム。
【請求項4】
移動体のGPS機能付錠であって、
位置情報入力装置から受信した開錠を許可する位置を示す登録位置情報を保持する手段と、
GPS衛星からの信号を受信し、現在位置情報を計算する手段と、
前記現在位置情報と前記登録位置情報とが、GPSの誤差の範囲内で一致する場合、開錠を許可する手段と、
を具備することを特徴とするGPS機能付錠。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−74597(P2011−74597A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−224475(P2009−224475)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】