説明

H2S抑止剤含有硫黄ペレット

少なくとも1種のHS抑止剤を含有する硫黄ペレット。(a)混合ユニット中で元素状硫黄、1種以上のHS抑止剤、及び任意に充填剤を混合して、混合物を得る工程、(b)該混合物をペレット化ユニット中で造形及び/又はペレット化する工程を含む該硫黄ペレットの製造法。(i)ビチュメンを140〜180℃の温度に予備加熱する工程、(ii)骨材を140〜180℃の温度に予備加熱する工程、(iii)該熱ビチュメンと熱骨剤とを混合ユニット中で混合する工程の少なくとも1つにHS抑止剤含有硫黄ペレットを添加する、硫黄含有アスファルト舗装用混合物の製造法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は硫黄ペレットに関する。更に本発明は、硫黄ペレットの製造方法に関する。また本発明は、本発明による硫黄ペレットを用いて、硫黄含有アスファルト鋪装用混合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
道路建設及び道路鋪装工業では、砂、砂利、砕石又はそれらの混合物のような骨材を熱流動ビチュメンで被覆し、被覆材をなお熱いうちに、道路床又は既に作った道路上に均一な層として広げ、この均一層を重いローラーでならして圧縮し、平坦な表面の道路を形成するのは、よく行われる方法である。
【0003】
ビチューメンと、砂、砂利、砕石又はそれらの混合物のような骨材とを組合わせたものは“アスファルト”とも言われている。“アスファルトバインダー”とも言われるビチューメンは、通常、アスファルテン、樹脂及び溶剤を含む液体バインダーである。ビチューメンは、例えば残留油、タール、ピッチ又はそれらの混合物のような石油残留物に由来する高熱混合物を含有する。
【0004】
硫黄をビチューメンと混合して、道路建設及び道路鋪装工業に利用できることは当業界で公知である。ビチューメンへの硫黄添加の改良に向けた研究は、例えばGB 1,528,384に記載されている。更に最近では、ビチューメン混合物への硫黄の使用に関する研究から、硫黄変性ビチューメンが使用可能であることが判っている。硫黄変性ビチューメンは、従来のバインダーの幾つかを元素状硫黄で置換して配合される。
【0005】
ビチューメンに硫黄を使用する際に起こる問題の一つに、ビチューメンと硫黄との高温での脱水素反応により、望ましくないHSが生成することである。
【0006】
硫黄含有アスファルトからHSの放出が少なくても、この硫黄含有アスファルトは、硫黄変性ビチューメン(該ビチューメンの一部と置換するのに元素状硫黄を使用した)を用いて配合したアスファルトを意味するので、道路鋪装プロジェクトで放出物公害を起こす。これは、貯蔵庫に貯蔵中や鋪装地域にトラック輸送中、隙間のある鋪装混合物の気泡中でHSガスの濃度が徐々に高水準に上がるからである。この“貯蔵”ガスは、混合物がトラックから降ろされたり、機械的に混合されて、混合物中のエアポケットが開いた時に解放される。
【0007】
特に硫黄−ビチューメンの重量比が例えば1:1のように高い硫黄含有アスファルトでは、相当量の硫黄を使用していることから見て、HSの放出は重大な問題である。したがって、硫黄含有アスファルトから望ましくないHSの生成及び放出を低減する必要がある。
【0008】
熱流延硫黄−アスファルト混合物からのHS放出を低減する一つの方法は、US 3,960,585に記載されるように、硫黄−ビチューメン混合物の製造法において、HS抑止剤を添加することで、この方法は、添加したHS抑止剤の存在下に硫黄及びビチューメントを混合、加熱して行われる。
【0009】
US 3,960,585に記載の方法の欠点は、液体HS抑止剤を混合プラントでの鋪装混合物に噴射しなければならないことである。したがって、噴射装置は、混合プラントに配置し、保守しなければならず、プロセスが厄介でコスト高となる。他の欠点は、比較的大きな固体−液体混合物に比較的少量の液体HS抑止剤を添加すると、鋪装用混合物中でHS抑止剤の均質な分布を得るのが困難なことである。
【特許文献1】GB 1,528,384
【特許文献2】US 3,960,585
【特許文献3】WO 92/10270
【特許文献4】US 4,081,500
【特許文献5】US 4,043,717
【非特許文献1】Perry’s Chemical Engineers’ Handbook,第20章(1997年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
発明の概要
硫黄含有アスファルト鋪装用混合物の製造方法においてHS抑止剤含有硫黄ペレットが首尾よく使用できることが今回、見い出された。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、少なくとも1種のHS抑止剤を含有する硫黄ペレットを提供する。本発明の硫黄ペレットは、HSの生成及び放出の抑止を達成することを目的とするいかなる方法に使用しても、HS抑止剤が既にHS生成源、即ち、硫黄に近接しているので、HS抑止剤の効率が一層高いと言う利点がある。
【0012】
本発明は更に、
(a)混合ユニット中で元素状硫黄、1種以上のHS抑止剤、及び任意に充填剤を混合して、混合物を得る工程、
(b)工程(a)で得られた混合物をペレット化ユニット中で造形及び/又はペレット化して、HS抑止剤含有硫黄ペレットを得る工程、
を含む、少なくとも1種のHS抑止剤を含有する硫黄ペレットの製造方法を提供する。
【0013】
また本発明は、
(i)ビチュメンを140〜180℃の温度に予備加熱する工程、
(ii)骨材を140〜180℃の温度に予備加熱する工程、
(iii)該熱ビチュメンと熱骨剤とを混合ユニット中で混合する工程、
を含む硫黄含有アスファルト鋪装用混合物の製造方法であって、工程(i)、(ii)又は(iii)の少なくとも1つの工程、好ましくは工程(iii)において、請求項1〜6のいずれか1項に記載のHS抑止剤含有硫黄ペレットを添加することを特徴とする該方法も提供する。
【0014】
本発明の硫黄ペレットを使用すると、比較的大きな固体−液体混合物に比較的少量の液体HS抑止剤を添加する代りに、HS抑止剤を一構成成分の一部として添加するので、HS抑止剤が硫黄含有アスファルト鋪装用混合物中に一層均質に導入されると言う利点がある。
【0015】
なお更に重要な利点は、HS抑止剤を硫黄ペレットに導入した際、得られる硫黄含有アスファルト鋪装用混合物中でHS抑止剤が硫黄に近接して存在することである。したがって、以下に説明するように、HS抑止剤の効率は一層高い。
また本発明は、HS抑止剤を含有する硫黄含有アスファルト鋪装用混合物を道路の鋪装に使用する方法も提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
発明の詳細な説明
用語“ビチューメン−骨材”は、用語“アスファルト”と互いに交換可能に使用する。ここで使用する用語“ビチューメン”とは、バインダーを言う。
【0017】
ここで言うペレットとは、いずれかのタイプに成形した硫黄のことである。成形硫黄は、元素状硫黄を溶融状態から或る種の規則的な大きさの粒子、例えばプリル(prill)、グラニュール、ナゲット(nugget)及びパステル(pastille)、又は半鞘サイズの硫黄のようなフレーク、スレート又は球状硫黄に注型したものである。
【0018】
通常、硫黄ペレットは、元素状硫黄をペレットの全重量に対し60〜100重量%、好ましくは75〜100重量%、更に好ましくは90〜100重量%(いずれも100重量%を含む)の範囲で含有する。
【0019】
ここで言うHS抑止剤とは、HSの生成又は放出を抑止できる化合物のことである。一般的なHS抑止剤は、フリーラジカル禁止剤及びレドックス触媒の群から選ばれた1種以上の化合物である。好ましいHS抑止剤は、テトラ−アルキル−チウラムジスルフィド、ジチオカルバメート、特にジアルキルジチオカルバミン酸亜鉛、アミン化合物、沃素、銅塩、銅酸化物、コバルト塩、コバルト酸化物、鉄塩及び鉄酸化物の群から選ばれる。
【0020】
好ましい鉄塩は、鉄塩化物化合物、特に塩化第二鉄、水和塩化第二鉄、塩化第一鉄及び水和塩化第一鉄の群から選ばれたこれら鉄塩化物化合物である。水和塩化第一鉄は、HS抑止剤として効率が高く、また非侵食性なので、最も好ましい。
【0021】
本発明のHS抑止剤含有硫黄ペレットは、HS抑止剤を全ペレットに対し、0.02〜10%(w/w)、好ましくは0.05〜6.5%、更に好ましくは0.1〜2.0%の範囲の量で含有する。
【0022】
通常、HS抑止剤は硫黄ペレット中に均質に分布する。
Sの生成は硫黄に由来する。本発明によるHS抑止剤含有硫黄ペレットの重要な利点は、HS抑止剤を硫黄ペレットの不可欠部分として添加すること、更にHS抑止剤を既にHS生成源、即ち、硫黄に近接して配置したことから、HS生成の抑止が一層効率的なことである。
【0023】
本発明は更に、本発明による硫黄ペレットの製造方法を提供する。本発明によるHS抑止剤含有硫黄ペレットの製造方法の(a)工程では、混合ユニット中で元素状硫黄を1種以上のHS抑止剤、及び任意に充填剤と混合して、混合物を得る。
【0024】
好ましいHS抑止剤は、前述のように、フリーラジカル禁止剤及びレドックス触媒の群から選ばれた1種以上の化合物である。好ましくはHS抑止剤は、好適な溶剤に溶解した溶液として、更に好ましくは好適な溶剤に溶解した濃厚溶液として添加する。通常、溶剤は水である。通常、HS抑止剤の導入は、リザーバーユニットから溶液を混合ユニットに送入して行われる。
【0025】
通常、混合は大気圧下、高温で行う。混合は100〜130℃、好ましくは115〜121℃又は113℃以上で行うことができる。
元素状硫黄は、混合ユニット中に多くの方法で導入できる。好適には、硫黄は、硫黄粉末として、又は溶融硫黄流として、或いは水及び硫黄粒子のスラリーとして添加する。
【0026】
好ましい一方法では、元素状硫黄は水及び硫黄粒子のスラリーとして導入する。
通常、硫黄粒子は、スラリー中に分散又は懸濁させる。好ましくは粒子の粒度は、約0.5〜約150μ、好ましくは約1.0〜約100μの範囲である。本方法の後段階で過剰な水の除去を避けるため、硫黄スラリー中の水含有量は、通常、できるだけ少なく、好ましくは混合物の全重量に対し、約10〜40%、更に好ましくはスラリーの全重量に対し、15〜30%の範囲に維持する。硫黄粒子をスラリー中に懸濁する場合、硫黄スラリーは、製造プロセスに導入する前にスラリーを均質化するため、好適な装置で撹拌又は混合することが好ましい。
【0027】
好ましい実施態様では硫黄スラリーは、水に分散した硫黄粒子を含有する。したがって、このタイプのスラリーは、分散又は乳化した硫黄スラリーと言い、水に硫黄粒子を分散して構成されるか、好ましくは水に微小サイズの硫黄粒子を分散して構成される。硫黄粒子は、好適な乳化剤の添加により、分散状態で維持するのが好適である。好適な乳化剤は当業界で公知であり、本発明では重要ではない。分散硫黄粒子を使用する利点は、硫黄粒子の沈澱が最小限に維持され、しかも硫黄が一層均質に水中に分布することである。したがって、反応ユニットに硫黄スラリーを導入する前に、撹拌又は混合する必要は少なくなる。通常、スラリーの導入は、硫黄スラリーリザーバーユニットからスラリーを反応ユニットに送入して行われる。スラリーは、工程(a)の混合ユニットに導入する前に、好適な装置で撹拌又は混合することが好ましい。
【0028】
他の好ましい実施態様では、元素状硫黄は、工程(a)の混合ユニットに溶融硫黄として導入される。溶融硫黄は、好適な融解装置、例えば融解管で融解して得られる。
【0029】
溶融硫黄を使用すると、硫黄が工業的プロセスから溶融状態で得られる際、有利である。天然ガスから望ましくない硫黄を除去する方法では、硫黄は、通常、溶融状態で生成するので、このような溶融硫黄を直接、硫黄ペレット製造方法に使用すれば、硫黄スラリーを得るための硫黄の乾燥、粉砕工程のような追加工程の必要がなくなる。溶融硫黄の使用による更なる利点は、製造プロセスに別途に水を導入しないことである。元素状硫黄を溶融状態で添加する際、硫黄含有混合物の温度は、硫黄を確実に溶融状態に維持するため、硫黄の融点より高温、好ましくは115〜121℃の温度に維持することが好ましい。
【0030】
更に他の好ましい実施態様では、生物学的に製造した元素状硫黄が使用される。ここで生物学的に製造した元素状硫黄とは、硫化物又はHSのような硫黄含有成分を生物学的転化により元素状硫黄に添加する方法で得られる硫黄のことである。生物学的転化は、硫化物酸化性細菌を用いて好適に行なえる。好適な硫化物酸化性細菌は、例えばThiobacillus属及びThiomicrospira属の公知の自主栄養(autotropic)好気性培養から選択できる。本発明方法に好適な生物学的に製造した元素状硫黄を得るための好適な生物学的転化法の一例は、WO 92/10270に記載されるように、ガスを水性洗浄液で洗浄し、この洗浄液に硫化物酸化性細菌処理を施して、ガスから硫黄化合物を除去する方法である。生物学的に製造した元素状硫黄は親水性を有する。生物学的に製造した元素状硫黄の利点は、この親水性により設備の汚染又は閉塞が実質的に減少するか、除去されることさえあることである。生物学的に製造した元素状硫黄は、固体硫黄として、スラリー(分散又は乳化した硫黄を含有する)として、又は溶融硫黄として、製造プロセスに導入できる。
【0031】
硫黄中にHS抑止剤を更に均質に分布させるには、HS抑止剤及び元素状硫黄を予備混合し、スラリーとして又は液体として工程(a)の混合ユニットに導入するのが好ましい。
任意に、充填剤を工程(a)に添加できる。好適な充填剤としては、カルシウム系無機充填剤(例えば水酸化カルシウム)のような無機充填剤がある。無機充填剤を添加すると、硫黄の使用量を少なくでき、またペレットの温度安定性向上の助けとなる。
【0032】
ペレット中の充填剤の量は、ペレットの全重量に対し、好適には0.1〜30%(w/w)、好ましくは0.5〜20%、更に好ましくは1〜10%の範囲である。
工程(a)後、硫黄、1種以上のHS抑止剤及び任意に充填剤を含む混合物が得られる。この混合物は、工程(b)において、ペレット化ユニット中で造形及び/又はペレット化され、HS抑止剤含有硫黄ペレットが得られる。
【0033】
好適なペレット化ユニットは、Perry’s Chemical Engineers’ Handbook,第20章(1997年)に記載されるような顆粒又はペレットの形成用ユニット、或いは例えばUS 4,081,500又はUS 4,043,717に記載されるように、硫黄含有液体混合物を、冷却後、硫黄ペレットが形成されるように、一表面に噴霧又は流延できるユニットである。ペレット化ユニットは、グラニュレーター、ドラムグラニュレーター、又は回転ドラム、或いは溶融硫黄噴霧用装置が好適である。
【0034】
好ましい方法では、硫黄及びHS抑止剤含有混合物は液体で、元素状硫黄は溶融状態である。
好ましい一実施態様では、ペレット化ユニットは回転ドラムを有する。この実施態様では、工程(a)で得られた硫黄、HS抑止剤及び任意に充填剤を含む液体混合物は、回転ドラムの外側で冷却、固化される。冷却混合物は回転ドラムから剥れて、HS抑止剤含有硫黄ペレットのフレークとなる。
【0035】
他の好ましい実施態様では、ペレット化ユニットは輸送手段を有し、ペレット化は、工程(a)で得られた液体混合物の液滴を形成し、これら液滴を輸送手段、例えばコンベアベルト上に沈着させて行われる。液体混合物は、噴霧ヘッドからコンベアベルト上に噴霧するのが好適である。冷却後、液滴はペレットとなる。
【0036】
更に他の好ましい実施態様では、ペレット化ユニットはグラニュレーターを有し、ペレット化は、工程(a)で得られた液体混合物の連続被覆を、工程(a)で得られた固化粒子に適用して行われる。この被覆は、得られるペレットが所望の径に達するまで行うのが好適である。通常、工程(a)で得られた液体混合物は、グラニュレーター中に噴霧し、これにより固化粒子を被覆する。
【0037】
更に他の実施態様ではペレット化ユニットは、噴霧装置を備え、硫黄ペレットは、工程(a)で得られた液体混合物を水含有タンク中に噴霧して、液体混合物をペレットに冷却することにより成形される。或いは工程(a)で得られた液体混合物を塔頂から上向きの流れ又は空気に向かって噴霧して、ペレットに冷却することにより成形される。
【0038】
任意に、工程(a)で得られたHS抑止剤含有硫黄ペレットは乾燥し、好適には空気乾燥するか、乾燥ユニットで乾燥する。好適な乾燥ユニットとしては、湿潤固体と熱ガスとの直接接触により、乾燥のための熱伝達を行う乾燥ユニットがある。通常、乾燥ユニットは回転式乾燥器である。
本発明は更に、硫黄含有アスファルトとも言われる硫黄含有ビチューメン−骨材混合物の製造方法も提供する。
【0039】
この方法の工程(i)ではビチューメンは、通常、120〜180℃、好ましくは130〜150℃、更に好ましくは140〜150℃の温度に加熱する。
この方法の工程(ii)では骨材は、通常、120〜180℃、好ましくは130〜150℃、更に好ましくは140〜150℃の温度に加熱する。
【0040】
工程(iii)では熱ビチューメン及び熱骨材は、混合ユニットで混合する。通常、混合は120〜180℃、好ましくは130〜150℃、更に好ましくは140〜150℃の温度で行う。通常、混合時間は10〜60秒、好ましくは20〜40秒である。
【0041】
S抑止剤含有硫黄ペレットは、工程(i)、(ii)又は(iii)の少なくとも1つの工程で添加する。
S抑止剤含有硫黄ペレットの添加後、更なる時間、混合することが好ましい。更なる混合時間は、通常、5〜600秒、好ましくは10〜100秒である。
【0042】
好ましい実施態様では、熱骨材を熱ビチューメンと混合し、この熱ビチューメン−骨材混合物にHS抑止剤含有硫黄ペレットを添加する。この実施態様では、強力な硫黄−アスファルト混合強度が得られる利点がある。
【0043】
更に他の実施態様では、熱ビチューメンをHS抑止剤含有硫黄ペレットと混合し、得られた熱ビチューメン硫黄混合物を熱骨材と混合して、硫黄含有アスファルト混合物が得られる。
【0044】
通常、ビチューメン−骨材(アスファルト)混合物に添加するHS抑止剤含有硫黄ペレットの量は、約1:0.5〜1:5、好ましくは約1:1〜1:4の重量比の硫黄及びビチューメンを含有する混合物が得られるような量である。
【0045】
通常、ビチューメン/骨材混合物は、ビチューメンを混合物の全重量に対し少なくとも2重量%含有する。ビチューメンを約1〜約10重量%含有する混合物が好ましく、特に好ましくは混合物の全重量に対しビチューメンを約3〜約6重量%含有する混合物である。
【0046】
こうして得られた硫黄含有アスファルト鋪装用混合物は、例えばこれを舗装機械で道路に塗布し、次いで、通常、所望の密度に達するまで、ローラーで緻密化することにより、道路の舗装に使用できる。
【0047】
S抑止剤含有硫黄ペレットを使用すると、HS抑止剤を別途に添加する方法と比べて、ビチューメン−骨材混合プラントにおいて注入設備の設置及び保守の必要がなくなると言う利点が得られる。
【0048】
本発明HS抑止剤含有硫黄ペレットの他の利点は、感水性無機骨材からのビチューメン膜の分離、いわゆる“剥がれ”の防止を援助できることである。これは、特にアスファルト混合物に水和石灰を添加した場合、重要である。水和石灰にアスファルト混合物を添加すると、水和石灰がビチューメンと反応して、酸素含有ビチューメン成分を除去し、強力な結合を形成するので、有用である。しかし、硫黄含有アスファルト混合物では水和石灰を添加すると、問題が生じる。若干の石灰はCaO状態であって、硫黄と反応して合成石膏を形成する可能性がある。この合成石膏は水溶性なので、水の存在下では硫黄−ビチューメン−骨材の崩壊を起こす恐れがある。本発明のHS抑止剤含有硫黄ペレットでは、HS抑止剤がビチューメン−骨材の崩壊を遅らせて、無機骨材から崩壊を防止できるので、この問題を解決する。
【0049】
本発明HS抑止剤含有硫黄ペレットの更に他の利点としては、HS抑止剤は硫黄ペレット中に導入するので、最終アスファルト混合物中の硫黄に隣接して存在し、HSの剥離前に、硫黄から発生するHSの生成を抑止できることである。
【実施例】
【0050】
例1(比較例)
以下の方法で混合物を製造した。骨材及びビチューメンをオーブン中、165℃に加熱した。骨材にビチューメンを加え、Hobartミキサーで30秒間、混合した。HS抑止剤無添加の元素状硫黄パステルを加え、更に150秒間、混合した。混合物の温度は混合後、約145℃であった。以下の組成:骨材3535g、ビチューメン132g(3.5%)、元素状硫黄87g(2.3%)の混合物約3700gを、恒温制御器で加熱した容器に注入した。
【0051】
容器中のHS濃度は、混合物の表面上、約30mmの所で、HSを引き入れる内蔵ポンプを備えたガスメーターで周期的に測定した。測定は、(a)初期混合後及び引き続き、容器のカバーを外して手で硫黄含有アスファルトを種々な時間で再混合後、及び(b)容器内にガス濃度を蓄積するため、容器上にカバーを置いて、種々の時間後、行った。
【0052】
混合物は、測定時間から次の測定時間まで十分、撹拌し、次いで容器内にHSガスを蓄積するため、容器上に短時間、通常、5分間カバーを置いた。次いでHS濃度を5分間隔で測定した。HS濃度は、145℃の混合温度で5分後、37ppmであることが判った。
【0053】
例2(実施例)
S抑止剤含有硫黄ペレットを全ペレットに対しHS抑止剤濃度6.5%で用いた他は、比較例に記載の方法を用いて混合物を製造した。
【0054】
得られた混合物は以下の組成:骨材3535g、ビチューメン132g(全混合物重量に対し3.5%)、元素状硫黄87g(全混合物重量に対し2.3%)及び塩化第二鉄6g(水和物重量20g)を持っていた。HS濃度は、混合物温度149℃で5分後、14〜20ppmであることが判った。
これらの結果から、HS抑止剤含有硫黄ペレットを用いると、HSが殆ど生成しないことが明らかである。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
S抑止剤を含有する硫黄ペレット。
【請求項2】
元素状硫黄をペレットの全重量に対し60〜100重量%の範囲で含有する請求項1に記載の硫黄ペレット。
【請求項3】
S抑止剤がフリーラジカル禁止剤及びレドックス触媒の群から選ばれた1種以上の化合物である請求項1又は2に記載の硫黄ペレット。
【請求項4】
S抑止剤が沃素、アミン化合物、銅塩、銅酸化物、鉄塩、鉄酸化物、コバルト塩及びコバルト酸化物の群から選ばれる請求項1〜3のいずれか1項に記載の硫黄ペレット。
【請求項5】
鉄塩が鉄塩化物化合物であり、好ましくは塩化第二鉄、水和塩化第二鉄、塩化第一鉄及び水和塩化第一鉄の群から選ばれる請求項4に記載の硫黄ペレット。
【請求項6】
S抑止剤を硫黄ペレットに対し、0.02〜10%(w/w)、好ましくは0.05〜6.5%、更に好ましくは0.1〜2.0%の範囲の量で含有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の硫黄ペレット。
【請求項7】
(a)混合ユニット中で元素状硫黄、1種以上のHS抑止剤、及び任意に充填剤を混合して、混合物を得る工程、
(b)工程(a)で得られた混合物をペレット化ユニット中で造形及び/又はペレット化して、HS抑止剤含有硫黄ペレットを得る工程、
を含む、少なくとも1種のHS抑止剤を含有する硫黄ペレットの製造方法。
【請求項8】
元素状硫黄が溶融硫黄として導入され、好ましくは混合物の温度が113℃より高温に保持される請求項7に記載の方法。
【請求項9】
S抑止剤がフリーラジカル禁止剤及びレドックス触媒の群から選ばれた1種以上の化合物である請求項7又は8に記載の硫黄ペレット。
【請求項10】
(i)ビチュメンを140〜180℃の温度に予備加熱する工程、
(ii)骨材を140〜180℃の温度に予備加熱する工程、
(iii)該熱ビチュメンと熱骨剤とを混合ユニット中で混合する工程、
を含む硫黄含有アスファルト鋪装用混合物の製造方法であって、工程(i)、(ii)又は(iii)の少なくとも1つの工程、好ましくは工程(iii)において、請求項1〜6のいずれか1項に記載のHS抑止剤含有硫黄ペレットを添加することを特徴とする該方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法で得られる、HS抑止剤を含有する硫黄含有アスファルト鋪装用混合物。


【公表番号】特表2007−514034(P2007−514034A)
【公表日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−543546(P2006−543546)
【出願日】平成16年12月8日(2004.12.8)
【国際出願番号】PCT/EP2004/053357
【国際公開番号】WO2005/059016
【国際公開日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(390023685)シエル・インターナシヨネイル・リサーチ・マーチヤツピイ・ベー・ウイ (411)
【氏名又は名称原語表記】SHELL INTERNATIONALE RESEARCH MAATSCHAPPIJ BESLOTEN VENNOOTSHAP
【Fターム(参考)】