説明

HCVNS3プロテアーゼ阻害剤としてのマクロ環式キノキサリン化合物

本発明は、式(I)のマクロ環式化合物、そのC型肝炎ウイルス(HCV)NS3プロテアーゼ阻害剤としての使用、及びHCV感染症の治療又は予防における使用に関する。
式(I)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、C型肝炎ウイルス(HCV)NS3プロテアーゼの阻害剤として有用であるマクロ環式化合物、かかる化合物の合成、及び、HCV感染症を治療するため及び/又はHCV感染症の可能性若しくは重篤性を低減するためのかかる化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
C型肝炎ウイルス(HCV)感染症は、かなりの数の感染個体において、肝硬変及び肝細胞癌のような慢性肝疾患をもたらす、健康上の重要な問題である。HCV感染症の現在の治療法は、組換えインターフェロン−αを、単独で又はヌクレオシド類似体リバビリンと組合せて用いる免疫療法を包含する。
【0003】
メタロプロテアーゼ(NS2−3)、セリンプロテアーゼ(NS3)、ヘリカーゼ(NS3)、及びRNA依存RNAポリメラーゼ(NS5B)を含む、いくつかのウイルスにコードされた酵素は、治療的介入のための、推定される標的である。NS3プロテアーゼは、NS3タンパク質のN−末端ドメインに局在する。NS4Aは、NS3活性のコファクターを供給する。
【0004】
HCV感染症のための可能性のある治療法は、バルサノ、「Mini Rev.Med.Chem.」、2008年、第8巻、第4号、p.307−318、ローン(Ronn)ら、「Current Topics in Medicinal Chemistry」、2008年、第8巻、p.533−562、シェルドン(Sheldon)ら、「Expert Opin.Investig,Drugs」、2007年、第16巻、第8号、p.1171−1181、及びデフランチェスコ(De Francesco)ら、「Antiviral Research」、2003年、第58巻、p.1−16を含む、様々な参考文献において議論されてきた。
【発明の概要】
【0005】
発明の要旨
本発明は、式(I)のマクロ環式化合物、及びその薬学的に許容される塩に関する。当該化合物及びその塩は、HCV NS3プロテアーゼ阻害剤である。当該化合物及びその塩は、治療用及び研究用に適用することができる。
【0006】
したがって、本発明の第1の態様は、式(I):
【0007】
【化1】

【0008】
の化合物、又はその薬学的に許容される塩と記載される。
【0009】
本発明はまた、本発明の化合物を含有する医薬組成物、及びかかる医薬組成物を調製する方法も包含する。本発明はさらに、HCV感染症の可能性又は重篤性を、治療又は低減する方法を包含する。
【0010】
本発明の別の実施態様、態様、及び特徴は、続く記載、実施例、及び添付のクレームにおいてさらに記載されるか、又は、明らかとなるであろう。
【0011】
発明の詳細な記載
本発明は、式(I)の化合物、及びその薬学的に許容される塩を包含する。当該化合物及びその薬学的に許容される塩は、HCV NS3プロテアーゼの阻害、HCV感染症の治療、及び/又は、HCV感染症の可能性若しくは重篤性を低減することにおいて有用である。予防的使用は、例えば、輸血、体液の交換、咬傷、事故穿刺、又は外科手術の間の患者血液への暴露(exposure)といった手段により、HCVに対する過去の暴露が疑われた後の治療を包含する。
【0012】
医薬組成物の成分として、当該化合物及び塩は、主要な活性治療剤であってよい。適宜、当該化合物を、他のHCV抗ウイルス剤、抗感染剤、免疫調節剤、抗生物質、又はワクチンを包含するがこれに限定されない、別の治療剤と組合せてもよい。
【0013】
NS3阻害剤はまた、抗ウイルス化合物のスクリーニングアッセイの、調製及び実施においても有用である。例えば、かかる化合物を使用して、より強力な抗ウイルス化合物のための優れたスクリーニングツールである、酵素変異体(enzyme mutant)を単離し得る。さらに、当該化合物を使用して、他の抗ウイルス剤のHCVプロテアーゼに対する結合部位を、例えば、競合的阻害により確定又は測定してもよい。
【0014】
実施例2においてさらに記載されるように、式(I)の化合物を、WO2008/057209の実施例110及び118の化合物に比較した場合、いくつかの利点がある。WO2008/057209は、クレームされた本発明に対し、先行技術として認められるものではない。
【0015】
I.組成物及び方法
種々の実施態様は、以下を包含する:
(a) 有効量の式(I)の化合物と、薬学的に許容される担体とを含んでなる医薬組成物。
【0016】
(b) HCV抗ウイルス剤、免疫調節剤、及び抗感染剤からなる群より選択される、第2の治療剤をさらに含んでなる、(a)の医薬組成物。
【0017】
(c) HCV抗ウイルス剤が、HCVプロテアーゼ阻害剤及びHCV NS5Bポリメラーゼ阻害剤からなる群より選択される抗ウイルス剤である、(b)の医薬組成物。
【0018】
(d) (i)式(I)の化合物と、(ii)HCV抗ウイルス剤、免疫調節剤、及び抗感染剤からなる群より選択される、第2の治療剤とである、薬学的組合せであり;ここで、式(I)の化合物及び第2の治療剤は、各々、HCV NS3プロテアーゼを阻害するため、又は、HCV感染症を治療するため及び/又はHCV感染症の可能性若しくは重篤性を低減するために、この組合せを有効にする量で使用される。
【0019】
(e) HCV抗ウイルス剤が、HCVプロテアーゼ阻害剤及びHCV NS5Bポリメラーゼ阻害剤からなる群より選択される抗ウイルス剤である、(d)の組合せ。
【0020】
(f) 式(I)の化合物の有効量を患者に投与することを含んでなる、HCV NS3プロテアーゼを、そのことを必要とする患者において阻害する方法。
【0021】
(g) 式(I)の化合物の有効量を患者に投与することを含んでなる、そのことを必要とする患者において、HCV感染症を治療する、及び/又は、HCV感染症の可能性若しくは重篤性を低減する方法。
【0022】
(h) 式(I)の化合物が、HCV抗ウイルス剤、免疫調節剤、及び抗感染剤からなる群より選択される、少なくとも1つの第2の治療剤の有効量と組合せて投与される、(g)の方法。
【0023】
(i) HCV抗ウイルス剤が、HCVプロテアーゼ阻害剤及びHCV NS5Bポリメラーゼ阻害剤からなる群より選択される抗ウイルス剤である、(h)の方法。
【0024】
(j) (a)、(b)、若しくは(c)の医薬組成物か、又は、(d)若しくは(e)の組合せを、患者に投与することを含んでなる、HCV NS3プロテアーゼを、このことを必要とする患者において阻害する方法。
【0025】
(k) (a)、(b)、若しくは(c)の医薬組成物か、又は、(d)若しくは(e)の組合せを患者に投与することを含んでなる、このことを必要とする患者において、HCV感染症を治療し、及び/又は、HCV感染症の可能性若しくは重篤性を低減する方法。
【0026】
(l) 医薬における使用のため、HCV感染症の予防又は治療における使用のため、又は、(i)(a)HCV NS3プロテアーゼの阻害、又は(b)HCV感染症の治療及び/又はHCV感染症の可能性若しくは重篤性の低減における使用、(ii)(a)HCV NS3プロテアーゼの阻害、又は(b)HCV感染症の治療及び/又はHCV感染症の可能性若しくは重篤性の低減用の医薬としての使用、又は(iii)(a)HCV NS3プロテアーゼの阻害、又は(b)HCV感染症の治療及び/又はHCV感染症の可能性若しくは重篤性の低減用の医薬の調製における使用のための、式(I)の化合物。これらの使用においては、本発明の化合物を、HCV抗ウイルス剤、抗感染剤、及び免疫調節剤から選択される、1種以上の第2の治療剤と組合せて使用してもよい。
【0027】
これらの実施態様の全てにおいて、当該化合物は、薬学的に許容される塩の形態で使用してもよい。
【0028】
用語「又は」は、本明細書で用いるとき、適宜に組合せてもよい選択肢を示す。したがって、用語「又は」は、列記された個々の選択肢を、個別に、並びに、それらの組合せが互いに排反でない限りそれらの組合せも包含する。
【0029】
1つの化合物に対する言及はまた、安定な水和物のような、該化合物の安定な複合体も包含する。「安定な」化合物は、調製及び単離が可能であり、かつその構造及び特性が、本明細書に記載の目的(例えば、患者への治療的又は予防的投与)のために該化合物を使用させておくのに充分な期間に渡り、本質的に変化しないで残るか又は残らせるようにすることができる化合物である。
【0030】
II.投与及び組成物
用語「投与」及びその変形(例えば、化合物を「投与すること」)は、化合物又は該化合物のプロドラッグを、治療を必要とする個体に与えることを意味する。本発明の化合物
又はそのプロドラッグが、1種以上の他の活性薬剤(例えば、HCV感染症の治療に有用な抗ウイルス剤)と組合せて投与される場合、「投与」及びその変形は、各々、当該化合物又は塩と他の薬剤との、同時の、及び連続した供給を包含するものと理解される。
【0031】
本発明の化合物は、薬学的に許容される塩の形態で投与してもよい。用語「薬学的に許容される塩」は、活性をもつ親化合物の塩を指し、かつ生物学的に又は別の意味で、望ましくないものではない(例えば、その受容者にとり、毒性でもなければ有害でもない)。適当な塩は、酸付加塩を包含し、これは、例えば、化合物の溶液を、塩酸、硫酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、又は安息香酸のような、薬学的に許容される酸の溶液と混合することにより生成してもよい。酸性の基をもつ化合物は、適当な薬学的に許容される塩と混合されて、例えば、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム又はカリウム塩)、アルカリ土類金属塩(例えば、カルシウム又はマグネシウム塩)、及び、第四級アンモニウム塩のような適当な有機リガンドを用いて生成される塩を生じてもよい。また、酸(−COOH)又はアルコール基が存在する場合には、薬学的に許容されるエステルを使用して、化合物の溶解性又は加水分解特性を修飾してもよい。
【0032】
本明細書で用いる場合、用語「プロドラッグ」は、それが投与される個体の体内で、酵素、化学物質、又は代謝プロセスの作用により、活性薬剤型又は化合物へ変換される不活性な薬剤型、又は化合物を包含することが意図される。
【0033】
本明細書で用いる場合、用語「組成物」は、特定の成分を含んでなる生成物、並びに、特定の成分の組合せから、結果として直接又は間接的に生じる任意の生成物を包含することが意図される。
【0034】
「薬学的に許容される」により、医薬組成物の成分が、互いに適合性であり、かつその受容者に対し有害であってはならないことが意味される。
【0035】
用語「患者」(subject)(代替え的に本明細書では「patient」と称する)は、本明細書で用いるとき、治療、観察、又は実験の対象となってきた、動物、好ましくは哺乳類、最も好ましくはヒトを指す。
【0036】
用語「有効量」は、治療的又は予防的効果を及ぼすのに充分な量を示す。HCVに感染した患者では、有効量は、以下の効果の1つ以上を達成するのに充分な量である:HCVの複製能を低減する、HCV負荷を低減する、及びウイルスクリアランスを増大する。HCVに感染していない患者では、有効量は、以下の効果の1つ以上を達成するのに充分な量である:HCV感染症の罹病性の低減、及び感染性のウイルスが慢性疾患に向けて持続感染を確立する能力の低減。
【0037】
HCV NS3プロテアーゼを阻害すること、及びHCV感染症を治療すること及び/又はHCV感染症の可能性又は症状の重篤性を低減するという目的のためには、本発明の化合物は、塩の形態であってもよいが、活性薬剤と該薬剤の作用部位との接触をもたらす手段によって投与してもよい。それらは、医薬品に関する使用のために利用し得る通常の手段により、個別の治療剤として、又は治療剤の組合せとして投与してもよい。それらは単独で投与し得るが、典型的には、選択された投与経路及び標準的薬学のプラクティスに基づき選択された、薬学的担体とともに投与される。
【0038】
化合物は、例えば、1つ以上の以下の経路;経口的、非経口的(皮下注射、静脈内、筋肉内、胸骨内注射、又は輸液法を包含する)、吸入により(例えば、スプレー型)、又は経直腸により、当該化合物の有効量と、通常の非毒性の薬学的に許容される担体、アジュバント、及びビヒクルとを含有する、医薬組成物の単位剤形の形態で投与してもよい。経口投与に適した液体製剤(例えば、懸濁液、シロップ、エリキシルなど)は、当該技術分野において既知の技術に従って調製してよく、水、グリコール、油、アルコールなどといった任意の通常の媒体を使用してもよい。経口投与に適した固形製剤(例えば、粉末、ピル、カプセル、及び錠剤)は、当該技術分野において既知の技術に従って調製してよく、デンプン、糖、カオリン、潤滑剤、結合剤、崩壊剤などといった、固形の賦形剤を使用してもよい。非経口用組成物は、当該技術分野において既知の技術に従って調製してよく、典型的には無菌水を担体として、また任意で他の成分、例えば溶解補助剤を使用する。注射用の溶液は、当該技術分野において既知の技術に従って調製してよく、ここで、担体は、生理食塩水、グルコース溶液、又は生理食塩水とグルコースとの混合物を含有する溶液を含んでなる。本発明の医薬組成物の調製における使用に適した方法についての、また前記組成物における使用に適した成分についてのさらなる手引きは、「レミントンの薬剤化学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)」、第20版、(ジェナーロ(A.R.Gennaro)編、Mack Publishing Co.、2000年)に提示されている。
【0039】
本発明の化合物は、経口的に、1日当たり、哺乳類(例えば、ヒト)の体重当たり、0.001ないし1000mg/kgの用量範囲で、1回量又は分割量で投与してもよい。1回の用量範囲は、経口的に、1回量又は分割量で、1日当たり、体重当たり、0.01ないし500mg/kgである。別の用量範囲は、経口的に、1回量又は分割量で、1日当たり、体重当たり、0.1ないし100mg/kgである。経口投与用には、当該組成物を、1.0ないし500mgの活性成分、特に、治療されるべき患者への投与量の対症調節のため、1、5、10、15、20、25、50、75、100、150、200、250、300、400、500、及び750mgの活性成分を含有する、錠剤又はカプセルの形態で提供してもよい。任意の特定の患者のための、具体的な用量レベル及び投薬頻度は異なってもよく、使用する特定の化合物の活性、代謝安定性、及び該化合物の活性の長さ、年齢、体重、全身の健康、性別、食事、投与の様式及び時間、排出速度、薬剤の組合せ、特定の症状の重篤性、及び受容者の受けている療法を包含する、多様な因子に依存するであろう。
【0040】
III.併用療法
本明細書に記載したキノキサリンマクロ環式化合物は、1種以上の追加の治療剤を含む、併用療法において使用してもよい。追加の治療剤は、また、HCVを標的とするもの、様々な疾患誘発因子を標的とするもの、又は免疫系を強化するものを包含する。免疫系を強化する薬剤は、免役系の機能を全般的に増強するもの、及びHCVに対する特異的な免疫応答を発生させるものを包含する。HCVを標的とする追加の治療剤は、NS3を標的とする薬剤、NS5A及びNS5Bのような別のHCV活性を標的とする薬剤、及びHCV複製に関与する宿主細胞の活性を標的とする薬剤を包含する。
【0041】
様々なHCV阻害剤が、種々の刊行物において記載されている。阻害剤として有用な、マクロ環式化合物、HCVプロテアーゼ阻害剤は、WO06/119061、WO7/015785、WO7/016441、WO07/148135、WO08/051475、WO08/051477、WO08/051514、WO08/057209に記載されている。追加のHCV NS3プロテアーゼ阻害剤は、国際特許出願公開 WO98/22496、WO98/46630、WO99/07733、WO99/07734、WO99/38888、WO99/50230、WO99/64442、WO00/09543、WO00/59929、WO02/48116、WO02/48172、英国特許第GB2 337 262号、及び米国特許第6,323,180号に開示されている。
【0042】
組合せて存在してもよい治療剤の追加の例は、リバビリン、レボビリン、ビラミジン、チモシンアルファ−1、インターフェロン−β、インターフェロン−α、ペグ化インターフェロン−α(ペグインターフェロン−α)、インターフェロン−αとリバビリンとの組合せ、ペグインターフェロン−αとリバビリンとの組合せ、インターフェロン−αとレボビリンとの組合せ、及び、ペグインターフェロン−αとレボビリンとの組合せを包含する。インターフェロン−αは、組換えインターフェロン−α2a(ホフマン・ラロシュ(Hoffman−LaRoche)、ナットレー、NJから市販されているロフェロン(ROFERON)インターフェロン)、ペグ化インターフェロン−α2a(ペガシス(PEGASYS))、インターフェロン−α2b(例えば、シェリング社(Schering Corp.)、ケニルワース、NJから市販されているイントロン(INTRON)−Aインターフェロン)、ペグ化インターフェロン−α2b(ペグイントロン(PEGINTRON))、組換えコンセンサスインターフェロン(例えば、インターフェロン−アルファコン−1)、及び精製されたインターフェロン−α製品を包含する。アムジェン(Amgen)の組換えコンセンサスインターフェロンは、商品名インフェルゲン(INFERGEN)を有する。レボビリンは、リバビリンのL−エナンチオマーであり、リバビリンと同様の免疫調節活性を示すことが示されてきた。ビラミジンは、WO01/60379に開示されたリバビリンの類似体に相当する。組合せの個々の成分は、治療のコースの間の異なる時間に別々に、又は分割して若しくは一度に組合せた形態で、同時に投与してもよい。
【0043】
リバビリン、レボビリン、及びビラミジンは、細胞内酵素であるイノシン一リン酸脱水素酵素(IMPDH)の阻害を介して、グアニンヌクレオチドの細胞内プールを調節することにより、その抗HCV効果を及ぼしてもよい。IMPDHは、ドゥノボ(de novo)のグアニンヌクレオチド生合成における、生合成経路の律速酵素である。リバビリンは、細胞内で容易にリン酸化され、かつその一リン酸誘導体がIMPDHの阻害剤である。したがって、IMPDHの阻害は、HCV複製の阻害剤発見のための、別の有用な標的を意味する。それ故、本発明の化合物はまた、IMPDHの阻害剤、例えば、国際特許出願公開 WO97/41211及びWO01/00622に開示されているVX−497;別のIMPDH阻害剤、例えばWO00/25780に開示されたもの;又は、ミコフェノール酸モフェチルと組合せて投与してもよい。アリソン(A.C.Allison)及びユーギ(E.M.Eugui)、「Agents Action」、1993年、第44巻(付録)、p.165参照。
【0044】
HCV感染症の治療用には、本発明の化合物はまた、抗ウイルス剤であるアマンタジン(1−アミノアダマンタン)と組合せて投与してもよい。この薬剤についての包括的な記載は、キルシュバウム(J.Kirschbaum)、「Anal.Profiles Drug Subs.」、1983年、第12巻、p.1−36を参照。
【0045】
HCV感染症の治療用には、本発明の化合物はまた、抗ウイルス剤 ポリメラーゼ阻害R7128(ロシュ(Roche))と組合せて投与してもよい。
【0046】
本発明の化合物はまた、HCV感染症の治療のため、ハリー・オウクル(R.E.Harry−O‘Kuru)ら、「J.Org.Chem.」、1997年、第62巻、p.1754−59;ウォルフェ(M.S.Wolfe)ら、「Tet.Lett.」、1995年、第36巻、p.7611−14;米国特許第3,480,613号;及び、国際特許出願公開 WO01/90121、WO01/92282、WO02/32920、WO04/002999、WO04/003000、及びWO04/002422(これらの各々の内容は、その全てが参考として本明細書に含まれる)に開示された、抗ウイルス剤 2’−C−分枝リボヌクレオシドと併用してもよい。かかる2’−C−分枝リボヌクレオシドは、これに限定されないが、2’−C−メチル−シチジン、2’−C−メチルウリジン、2’−C−メチルアデノシン、2’−C−メチルグアノシン、及び9−(2−C−メチル−β−D−リボフラノシル)−2,6−ジアミノプリン、及び、リボースC−2’、C−3’、及びC−5’ヒドロキシルの、対応するアミノ酸エステル、及び、5’−ホスファート誘導体の、対応する任意に置換された環式1,3−プロパンジオールエステルを包含する。
【0047】
本発明の化合物はまた、HCV感染症の治療用に、抗HCV特性をもつ別のヌクレシド、例えば、国際特許出願公開 WO02/51425、WO01/79246、WO02/32920、WO02/48165、及びWO2005/003147(R1656、(2’R)−2’−デオキシ−2’−フルオロ−2’−C−メチルシチジン(第77頁に化合物3−6として示された)を包含する);WO01/68663;WO99/43691;WO02/18404、及びWO2006/021341、及び米国特許出願公開 US2005/0038240(4’−アジドヌクレオシド、例えばR1626、4’−アジドシチジンを包含する);米国特許出願公開 US2002/0019363、US2003/0236216、US2004/0006007、及びUS2004/0063658;及び国際特許出願公開 WO02/100415、WO03/026589、WO03/026675、WO03/093290、WO04/011478、WO04/013300、及びWO04/028481(これらの各々の内容は、その全てが参考として本明細書に含まれる)に、開示されたものと併用してもよい。
【0048】
HCV感染の治療用には、本発明の化合物はまた、HCV NS5Bポリメラーゼの阻害剤である薬剤と組合せて投与してもよい。そのような、併用療法として使用してもよいHCV NS5Bポリメラーゼ阻害剤は、これに限定されないが、国際特許出願公開 WO02/057287、WO02/057425、WO03/068244、WO2004/000858、WO04/003138、及びWO2004/007512;米国特許第6,777,392号、及び米国特許出願公開 US2004/0067901(これらの各々の内容は、その全てが参考として本明細書に含まれる)に開示されたものを包含する。別の、かかるHCVポリメラーゼ阻害剤は、これに限定されないが、バロピシタビン(NM−283;イデニクス(Idenix)、及び2’−F−2’−ベータ−メチルシチジンを包含する(WO2005/003147も参照)。
【0049】
1つの実施態様においては、本HCV NS3プロテアーゼ阻害剤と併用して使用される、ヌクレオシドHCV NS5Bポリメラーゼ阻害剤は、以下の化合物から選択される:4−アミノ−7−(2−C−メチル−β−D−アラビノフラノシル)−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン;4−アミノ−7−(2−C−メチル−β−D−リボフラノシル)−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン;4−メチルアミノ−7−(2−C−メチル−β−D−リボフラノシル)−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン;4−ジメチルアミノ−7−(2−C−メチル−β−D−リボフラノシル)−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン;4−シクロプロピルアミノ−7−(2−C−メチル−β−D−リボフラノシル)−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン;4−アミノ−7−(2−C−ビニル−β−D−リボフラノシル)−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン;4−アミノ−7−(2−C−ヒドロキシメチル−β−D−リボフラノシル)−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン;4−アミノ−7−(2−C−フルオロメチル−β−D−リボフラノシル)−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン;4−アミノ−5−メチル−7−(2−C−メチル−β−D−リボフラノシル)−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン;4−アミノ−7−(2−C−メチル−β−D−リボフラノシル)−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−5−カルボン酸;4−アミノ−5−ブロモ−7−(2−C−メチル−β−D−リボフラノシル)−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン;4−アミノ−5−クロロ−7−(2−C−メチル−β−D−リボフラノシル)−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン;4−アミノ−5−フルオロ−7−(2−C−メチル−β−D−リボフラノシル)−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン;2,4−ジアミノ−7−(2−C−メチル−β−D−リボフラノシル)−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン;2−アミノ−7−(2−C−メチル−β−D−リボフラノシル)−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン;2−アミノ−4−シクロプロピルアミノ−7−(2−C−メチル−β−D−リボフラノシル)−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン;2−アミノ−7−(2−C−メチル−β−D−リボフラノシル)−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4(3H)−オン;4−アミノ−7−(2−C−エチル−β−D−リボフラノシル)−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン;4−アミノ−7−(2−C,2−O−ジメチル−β−D−リボフラノシル)−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン;7−(2−C−メチル−β−D−リボフラノシル)−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4(3H)−オン;2−アミノ−5−メチル−7−(2−C,2−O−ジメチル−β−D−リボフラノシル)−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4(3H)−オン;4−アミノ−7−(3−デオキシ−2−C−メチル−β−D−リボフラノシル)−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン;4−アミノ−7−(3−デオキシ−2−C−メチル−β−D−アラビノフラノシル)−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン;4−アミノ−2−フルオロ−7−(2−C−メチル−β−D−リボフラノシル)−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン;4−アミノ−7−(3−C−メチル−β−D−リボフラノシル)−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン;4−アミノ−7−(3−C−メチル−β−D−キシロフラノシル)−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン;4−アミノ−7−(2,4−ジ−C−メチル−β−D−リボフラノシル)−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン;4−アミノ−7−(3−デオキシ−3−フルオロ−2−C−メチル−β−D−リボフラノシル)−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン;及び対応する5’−トリホスファート;又はその薬学的に許容される塩。
【0050】
本発明の化合物はまた、HCV感染症の治療用に、HCVポリメラーゼの非ヌクレオシド阻害剤、例えば、国際特許出願公開 WO01/77091;WO01/47883、WO02/04425;WO02/06246;WO02/20497;WO2005/016927(特に、JTK003)(これらの各々の内容は、その全てが参考として本明細書に含まれる)に開示されたもの;及びHCV−796(ビロファーマ社(Viropharma Inc))と組合せてもよい。
【0051】
1つの実施態様においては、本発明のHCV NS3プロテアーゼ阻害剤と組合せて使用される非ヌクレオチドHCV NS5Bポリメラーゼ阻害剤は、以下の化合物から選択される:14−シクロヘキシル−6−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−7−オキソ−5,6,7,8−テトラヒドロインドロ[2,1−a][2,5]ベンゾジアゾシン−11−カルボン酸;14−シクロヘキシル−6−(2−モルホリン−4−イルエチル)−5,6,7,8−テトラヒドロインドロ[2,1−a][2,5]ベンゾジアゾシン−11−カルボン酸;14−シクロヘキシル−6−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−3−メトキシ−5,6,7,8−テトラヒドロインドロ[2,1−a][2,5]ベンゾジアゾシン−11−カルボン酸;14−シクロヘキシル−3−メトキシ−6−メチル−5,6,7,8−テトラヒドロインドロ[2,1−a][2,5]ベンゾジアゾシン−11−カルボン酸;メチル({[(14−シクロヘキシル−3−メトキシ−6−メチル−5,6,7,8−テトラヒドロインドロ[2,1−a][2,5]ベンゾジアゾシン−11−イル)カルボニル]アミノ}スルホニル)アセテート;({[(14−シクロヘキシル−3−メトキシ−6−メチル−5,6,7,8−テトラヒドロインドロ[2,1−a][2,5]ベンゾジアゾシン−11−イル)カルボニル]アミノ}スルホニル)酢酸;14−シクロヘキシル−N−[(ジメチルアミノ)スルホニル]−3−メトキシ−6−メチル−5,6,7,8−テトラヒドロインドロ[2,1−a][2,5]ベンゾジアゾシン−11−カルボキサミド;3−クロロ−14−シクロヘキシル−6−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−7−オキソ−5,6,7,8−テトラヒドロインドロ[2,1−a][2,5]ベンゾジアゾシン11−カルボン酸;N’−(11−カルボキシル−14−シクロヘキシル−7,8−ジヒドロ−6H−インドロ[1,2−e][1,5]ベンゾオキサゾシン−7−イル)−N,N−ジメチルエタン−1,2−ジアミニウムビス(トリフルオロアセテート);14−シクロヘキシル−7,8−ジヒドロ−6H−インドロ[1,2−e][1,5]ベンゾオキサゾシン−11−カルボン酸;14−シクロヘキシル−6−メチル−7−オキソ−5,6,7,8−テトラヒドロインドロ[2,1−a][2,5]ベンゾジアゾシン−11−カルボン酸;14−シクロヘキシル−3−メトキシ−6−メチル−7−オキソ−5,6,7,8−テトラヒドロインドロ[2,1−a][2,5]ベンゾジアゾシン−11−カルボン酸;14−シクロヘキシル−6−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−3−メトキシ−7−オキソ−5,6,7,8−テトラヒドロインドロ[2,1−a][2,5]ベンゾジアゾシン−11−カルボン酸;14−シクロヘキシル−6−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−7−オキソ−5,6,7,8−テトラヒドロインドロ[2,1−a][2,5]ベンゾジアゾシン−11−カルボン酸;14−シクロヘキシル−7−オキソ−6−(2−ピペリジン−1−イルエチル)−5,6,7,8−テトラヒドロインドロ[2,1−a][2,5]ベンゾジアゾシン−11−カルボン酸;14−シクロヘキシル−6−(2−モルホリン−4−イルエチル)−7−オキソ−5,6,7,8−テトラヒドロインドロ[2,1−a][2,5]ベンゾジアゾシン−11−カルボン酸;14−シクロヘキシル−6−[2−(ジエチルアミノ)エチル]−7−オキソ−5,6,7,8−テトラヒドロインドロ[2,1−a][2,5]ベンゾジアゾシン−11−カルボン酸;14−シクロヘキシル−6−(1−メチルピペリジン−4−イル)−7−オキソ−5,6,7,8−テトラヒドロインドロ[2,1−a][2,5]ベンゾジアゾシン−11−カルボン酸;14−シクロヘキシル−N−[(ジメチルアミノ)スルホニル]−7−オキソ−6−(2−ピペリジン−1−イルエチル)−5,6,7,8−テトラヒドロインドロ[2,1−a][2,5]ベンゾジアゾシン−11−カルボキサミド;14−シクロヘキシル−6−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−N−[(ジメチルアミノ)スルホニル]−7−オキソ−5,6,7,8−テトラヒドロインドロ[2,1−a][2,5]ベンゾジアゾシン−11−カルボキサミド;14−シクロペンチル−6−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−7−オキソ−5,6,7,8−テトラヒドロインドロ[2,1−a][2,5]ベンゾジアゾシン−11−カルボン酸;14−シクロヘキシル−5,6,7,8−テトラヒドロインドロ[2,1−a][2,5]ベンゾジアゾシン−11−カルボン酸;6−アリル−14−シクロヘキシル−3−メトキシ−5,6,7,8−テトラヒドロインドロ[2,1−a][2,5]ベンゾジアゾシン−11−カルボン酸;14−シクロペンチル−6−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−5,6,7,8−テトラヒドロインドロ[2,1−a][2,5]ベンゾジアゾシン−11−カルボン酸;14−シクロヘキシル−6−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−5,6,7,8−テトラヒドロインドロ[2,1−a][2,5]ベンゾジアゾシン−11−カルボン酸;13−シクロヘキシル−5−メチル−4,5,6,7−テトラヒドロフロ[3’,2’:6,7][1,4]ジアゾシノ[1,8−a]インドール−10−カルボン酸;15−シクロヘキシル−6−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−7−オキソ−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−インドロ[2,1−a][2,6]ベンゾジアゾニン−12−カルボン酸;15−シクロヘキシル−8−オキソ−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−インドロ[2,1−a][2,5]ベンゾジアゾニン−12−カルボン酸;13−シクロヘキシル−6−オキソ−6,7−ジヒドロ−5H−インドロ[1,2−d][1,4]ベンゾジアゼピン−10−カルボン酸;及びその薬学的に許容される塩。
【0052】
IV.化合物の評価
本明細書に記載の化合物を、種々の活性、例えば、HCV NS3活性、HCVレプリコン活性、及びHCV複製活性、の阻害能について、当該技術分野において周知の技術(例えば、キャロル(Carroll)ら、「J.Biol.Chem.」、2003年、第278巻、p.11979−11984参照)を使用して評価してもよい。
【0053】
かかるアッセイの1つは、以下に、またマオ(Mao)ら、「Anal.Biochem.」、2008年、第373巻、p.1−8、及び国際特許出願公開 WO2006/102087に記載されたような、HCV NS3プロテアーゼ時間分解蛍光(TRF)アッセイである。NS3プロテアーゼアッセイは、例えば、50mM HEPES、pH7.5、150mM NaCl、15%グリセロール、0.15%トリトンX−100,10mM DTT、及び0.1% PEG8000を含有する、アッセイ緩衝液中の最終体積100μl中で行なってよい。NS3及びNS4Aプロテアーゼを、DMSO中の種々の濃度の阻害剤と、30分間プレインキュベートする。反応は、TRFペプチド基質(最終濃度100nM)を添加することにより開始する。NS3に媒介される基質の加水分解を、室温で1時間後に、500mM MES(pH5.5)100μlでクエンチする。生成物の蛍光を、VICTOR V2又はFUSION蛍光光度計(パーキン・エルマー・ライフ(Perkin Elmer Life)及びアナリティカル・サイエンシズ(Analytical Sciences))のいずれかを使用して、340nmでの励起、及び615nmでの発光により、400μsのディレイで検出する。種々の酵素型の試験濃度を、10ないし30のシグナル対バックグラウンド比(S/B)を得るべく選択する。IC50値は、標準的な4パラメータフィットをデータに使用して導き出す。K値は、IC50値から、以下の式、
【0054】
【数1】

【0055】
[式中、[S]は、反応における基質ペプチドの濃度であり、Kは、ミカエリス定数である]を使用して導き出す。ガリナリ(P.Gallinari)ら、「BIOCHEM.」、1999年、第38巻、p.5620−32;ガリナリ(P.Gallinari)ら、「J.Virol.」、1998年、第72巻、p.6758−69;タリアニ(M.Taliani)ら、「ANAL.BIOCHEM.」、1996年、第240巻、p.60−67;マオ(Mao)ら、「Analytical.Biochemistry」、2008年、第373巻、p.1−8参照。
【0056】
V.全般的な化合物製造
本発明はまた、式(I)の化合物を製造するプロセスも包含する。本発明の化合物は、以下の反応スキーム及び実施例、又はそれらの変法に従い、容易に入手可能な出発物質、試薬、及び通常の合成法を使用して、容易に調製することができる。これらの反応においては、それ自体が当業者には公知の変形を利用することも可能である。本発明の化合物を調製するための別の方法は、以下の反応スキーム及び実施例を鑑みれば、当業者には容易に明らかであろう。別に示さない限り、全ての変数は、上記に定義した通りである。以下の反応スキーム及び実施例は、本発明及びその実施を例示するためのものにすぎない。
【0057】
オレフィンメタセシス触媒は、以下のルテニウムベース種を包含する:ミラー(F.Miller)ら、「J.AM.CHEM.SOC.」、1996年、第118巻、p.9606;キングスバリー(G.Kingsbury)ら、「J.Am.Chem.Soc.」、1999年、第121巻、p.791;スコール(H.Scholl)ら、「ORG.LETT.」、1999年、第1巻、p.953;米国特許出願公開 US2002/0107138;フルストナー(K.Furstner)ら、「J.ORG.CHEM.」、1999年、第64巻、p.8275。閉環メタセシスにおけるこれらの触媒の有用性は、文献において周知である(例えば、トゥルンカ(Trnka)及びグラブス(Grubbs)、「ACC.CHEM.RES.」、2001年、第34巻、p.18。
【0058】
以下の実施例は、本発明及びその実施を例示するためのものにすぎない。実施例は、本発明の範囲及び趣旨を限定するものと理解されるべきではない。
【0059】
【化2】

【0060】
中間体の合成
中間体A
【0061】
【化3】

【0062】
中間体B1:3−メチル−N−({[(1R,2R)−2−ペンタ−4−エン−1−イルシクロプロピル]オキシ}カルボニル)−L−バリン
【0063】
【化4】

【0064】
工程1:[(1E)−ヘプタ−1,6−ジエン−1−イルオキシ](トリメチル)シラ
【0065】
【化5】

【0066】
THF(1.4当量)中のブテニルマグネシウムブロミドの溶液(0.5M)を、−78℃で、Cu(I)Br.SMe(0.05当量)及びHMPA(2.4当量)で処理した。混合物を10分間攪拌し、次いでTHF中の、アクロレイン(1当量)及びTMSCl(2当量)の溶液(1M)を、1時間にわたり添加して、内部温度が−68℃未満のままであるようにした。得られた混合物を、−78℃で2時間攪拌し、次いで過剰のEtNで処理し、そしてヘキサンで希釈した。室温に達した後、混合物を少量のHOで処理し、そしてセライトを通して濾過した。濾液をHOで10回、そして次に食塩水で洗浄した。有機層を乾燥し、揮発性物質を除去して、残渣を減圧下で蒸留した(20ミリバール)。80ないし86℃で収集された分画は、標題化合物(58%)を、無色の液体として含有していた。
H NMR(400MHz,CDCl)δ6.19(d,J=11.6Hz,1H)、5.85−5.75(m,1H)、5.02−4.92(m,3H)、2.08−2.02(m,2H)、1.94−1.88(m,2H)、1.46−1.38(m,2H)、0.18(s,9H)。
【0067】
工程2:トランス−2−ペンタ−4−エン−1−イルシクロプロパノール
【0068】
【化6】

【0069】
ヘキサン中の上記の化合物の溶液(0.45M)を、トルエン中のEtZn(1.2当量)の溶液(15%)で処理し、得られた溶液を氷浴中で冷却した。ジヨードメタン(1.2当量)を滴下添加し、次に溶液を1時間攪拌した後、20℃に温めた。ピリジン(6当量)を添加し、スラリーを15分間攪拌し、次いで石油エーテルに注入した。混合物を、セライトを通して、透明な溶液を得るまで繰り返し濾過した。この混合物を、100ミリバールに濃縮し、残留した溶液(これは、トリメチル{[(トランス)−2−ペンタ−4−エン−1−イルシクロプロピル]オキシ}シラン、トルエン、及びピリジンを含有した)を、THFでさらに希釈した。混合物を0℃に冷却し、次に、THF中のTBAF(1.2当量)の溶液(1M)を滴下添加して処理した。10分後、混合物を20℃に温め、そしてさらに1時間後、HOに注入した。水相をEtOAcで抽出し、合わせた有機抽出物を食塩水で洗浄し、次いで乾燥した。揮発性物質を除去して、残渣を得て、これをフラッシュクロマトグラフィー(溶出液0−66% EtO/石油エーテル)により精製して、標題化合物(71%)を無色の液体として得た。
H NMR(400MHz,CDCl)δ 5.85−5.75(m,1H)、5.00(dd,J=17.1,1.6Hz,1H)、4.94(br d,J=10.4Hz,1H)、3.20(見かけ上dt,J=6.4,2.5Hz,1H)、2.10−2.04(m,2H)、1.52−1.44(m,2H)、1.29−1.19(m,1H)、1.15−1.07(m,1H)、0.95−0.87(m,1H)、0.71−0.66(m,1H)、0.31(見かけ上q,J=6.0Hz,1H)。
【0070】
工程3:メチル3−メチル−N−(オキソメチレン)−L−バリナート
【0071】
【化7】

【0072】
飽和NaHCO水溶液及びCHClの2:1混合物中のメチル3−メチル−L−バリナートの溶液(0.39M)を、氷浴中で冷却し、迅速に攪拌した。混合物をトリホスゲン(0.45当量)で一度に処理し、得られた混合物を0.5時間攪拌した。反応をCHClで希釈し、そして層を分離した。水相をCHClで抽出し、次いで、合わせた有機物質を食塩水で洗浄し、そして乾燥した。溶媒を除去して、標題化合物を透明な油として得て、これを真空下(0.1ミリバール)で12時間保持し、そして次の工程に直接使用した。
H NMR(400MHz,CDCl)δ 3.79(s,3H)、3.75(s,1H)、1.00(s,9H)。
【0073】
工程4:メチル3−メチル−N−({[(1R,2R)−2−ペンタ−4−エン−1−イルシクロプロピル]オキシ}カルボニル)−L−バリナート及びメチル3−メチル−N−({[(1S,2S)−2−ペンタ−4−エン−1−イルシクロプロピル]オキシ}カルボニル)−L−バリナート
【0074】
【化8】

【0075】
トルエン中のトランス−2−ペンタ−4−エン−1−イルシクロプロパノールの溶液(0.45M)を、メチル3−メチル−N−(オキソメチレン)−L−バリナート(1.1当量)で、そして次にDMAP(1当量)で処理した。得られた混合物を、還流下で12時間加熱し、次に20℃に冷却した。HO及びEtOAcを添加し、有機層を分離し、1N HCl、食塩水で洗浄し、そして乾燥した。揮発性物質を除去して、残渣を得て、これをフラッシュクロマトグラフィー(溶出液0−30% EtO/石油エーテル)により2回精製した。最初の分画は、メチル3−メチル−N−({[(1R,2R)−2−ペンタ−4−エン−1−イルシクロプロピル]オキシ}カルボニル)−L−バリナート(38%)を、油として含有した。
MS(ES)m/z298(M+H)
【0076】
後の分画は、メチル3−メチル−N−({[(1S,2S)−2−ペンタ−4−エン−1−イルシクロプロピル]オキシ}カルボニル)−L−バリナート(28%)を、油として含有した。
MS(ES)m/z298(M+H)
【0077】
工程5:3−メチル−N−({[(1R,2R)−2−ペンタ−4−エン−1−イルシクロプロピル]オキシ}カルボニル)−L−バリン
【0078】
【化9】

【0079】
MeOH/HOの2:1混合物中のメチル3−メチル−N−({[(1R,2R)−2−ペンタ−4−エン−1−イルシクロプロピル]オキシ}カルボニル)−L−バリナートの溶液(0.1M)を、LiOH.HO(4当量)で処理し、次いで60℃で4時間加熱した。混合物を冷却し、半分の体積に濃縮し、次にEtOAcで希釈し、そしてHCl水溶液(1N)で酸性化した。有機層を分離し、食塩水で洗浄し、そして乾燥した。揮発性物質を除去して、標題化合物(98%)を油として得た。
MS(ES)m/z284(M+H)
【0080】
中間体C
中間体C1:メチル(4R)−4−[(3−クロロ−7−メトキシキノキサリン−2−イル)オキシ]−L−プロリナート塩酸塩
【0081】
【化10】

【0082】
工程1:6−メトキシキノキサリン−2,3−ジオール
【0083】
【化11】

【0084】
シュウ酸ジエチル(8当量)中の4−メトキシベンゼン−1,2−ジアミン二塩酸塩の懸濁液を、EtN(2当量)で処理し、次に150℃で2時間加熱した。混合物を冷却し、濾過し、そして次に収集された固体をHO及びEtOHで洗浄した。残渣を乾燥させて、標題化合物(69%)を得た。
MS(ES)m/z193(M+H)
【0085】
工程2:3−クロロ−6−メトキシキノキサリン−2−オール
【0086】
【化12】

【0087】
DMF中の6−メトキシキノキサリン−2,3−ジオールの溶液(1.53M)を、SOCl(1当量)で処理し、そして110℃で加熱した。1.5時間後、反応混合物を冷却し、そしてHCl水溶液(1N)に注入した。得られた沈殿を濾過し、HO及びEtOで洗浄した。乾燥した固体は、主として標題化合物を、6−メトキシキノキサリン−2,3−ジオールと2,3−ジクロロ−6−メトキシキノキサリンとの混合物として含有した。この物質を、次の工程に直接使用した。
MS(ES)m/z211(M+H)
【0088】
工程3:1−tert−ブチル2−メチル(2S,4R)−4−[(3−クロロ−7−メトキシキノキサリン−2−イル)オキシ]ピロリジン−1,2−ジカルボキシラート
【0089】
【化13】

【0090】
NMP中の3−クロロ−6−メトキシキノキサリン−2−オールの溶液(0.35M)を、CsCO(1.5当量)及び1−tert−ブチル2−メチル(2S,4S)−4−{[(4−ブロモフェニル)スルホニル]オキシ}ピロリジン−1,2−ジカルボキシラート(1.1当量)で処理した。得られた混合物を、50℃で18時間攪拌し、次に追加分(0.1当量)の1−tert−ブチル2−メチル(2S,4S)−4−{[(4−ブロモフェニル)スルホニル]オキシ}ピロリジン−1,2−ジカルボキシラートを添加した。2時間攪拌した後、混合物を冷却し、そしてHO及びEtOAcで希釈した。有機相を、HCl水溶液(1N)、飽和NaHCO水溶液、及び食塩水で洗浄した。乾燥した有機相を濃縮して残渣とし、これをフラッシュクロマトグラフィー(0−60% EtOAc/石油エーテル)により精製して、標題化合物(2工程で35%)を固体として得た。
MS(ES)m/z438(M+H)
【0091】
工程4:メチル(4R)−4−[(3−クロロ−7−メトキシキノキサリン−2−イル)オキシ]−L−プロリナート塩酸塩
【0092】
【化14】

【0093】
CHCl中の1−tert−ブチル2−メチル(2S,4R)−4−[(3−クロロ−7−メトキシキノキサリン−2−イル)オキシ]ピロリジン−1,2−ジカルボキシラートの溶液(0.62M)を、ジオキサン(5当量)中のHCl溶液(4M)で処理した。混合物を20℃で2時間攪拌し、次いでジオキサン(2当量)中のHCl溶液(4M)で処理した。5時間後、反応の完了を判定し、そして混合物を減圧下で濃縮した。残渣をEtOで粉砕して、標題化合物(95%)を固体として得た。
MS(ES)m/z338(M+H)
【実施例】
【0094】
実施例1:カリウム{[(1R,2S)−1−({[(1aR,5S,8S,10R,22aR)−5−tert−ブチル−14−メトキシ−3,6−ジオキソ−1,1a,3,4,5,6,9,10,18,19,20,21,22,22a−テトラデカヒドロ−8H−7,10−メタノシクロプロパ[18,19][1,10,3,6]ジオキサジアザシクロノナデシノ[11,12−b]キノキサリン−8−イル]カルボニル}アミノ)−2−ビニルシクロプロピル]カルボニル}(シクロプロピルスルホニル)アザニド
【0095】
【化15】

【0096】
工程1:メチル3−メチル−N−({[(1R,2R)−2−ペンタ−4−エン−1−イルシクロプロピル]オキシ}カルボニル)−L−バリル−(4R)−4−[(3−クロロ−7−メトキシキノキサリン−2−イル)オキシ]−L−プロリナート
【0097】
【化16】

【0098】
DMF中のメチル(4R)−4−[(3−クロロ−7−メトキシキノキサリン−2−イル)オキシ]−L−プロリナート塩酸塩の溶液(0.2M)を、3−メチル−N−({[(1R,2R)−2−ペンタ−4−エン−1−イルシクロプロピル]オキシ}カルボニル)−L−バリン(1.1当量)、DIEA(5当量)、及びHATU(1.2当量)で処理した。得られた混合物を20℃で5時間攪拌し、次いでEtOAcで希釈した。有機層を分離し、HCl水溶液(1N)、飽和NaHCO水溶液、及び食塩水で洗浄した。乾燥した有機相を、減圧下で濃縮して、残渣を得て、これをフラッシュクロマトグラフィー(溶出液10−30% EtOAc/石油エーテル)により精製して、標題化合物(96%)を油として得た。
MS(ES)m/z604(M+H)
【0099】
工程2:メチル3−メチル−N−({[(1R,2R)−2−ペンタ−4−エン−1−イルシクロプロピル]オキシ}カルボニル)−L−バリル−(4R)−4−[(7−メトキシ−3−ビニルキノキサリン−2−イル)オキシ]−L−プロリナート
【0100】
【化17】

【0101】
EtOH中のメチル3−メチル−N−({[(1R,2R)−2−ペンタ−4−エン−1−イルシクロプロピル]オキシ}カルボニル)−L−バリル−(4R)−4−[(3−クロロ−7−メトキシキノキサリン−2−イル)オキシ]−L−プロリナートの溶液(0.1M)を、カリウムトリフルオロ(ビニル)ボラート(1.5当量)及びトリエチルアミン(1.5当量)で処理した。得られた混合物を、脱気し、次いでPdCl(dppf)−CHCl付加物(0.1当量)を添加した。混合物を還流下で1時間加熱し、次に室温に冷却し、そしてHO及びEtOAcで希釈した。有機相を分離し、HO及び食塩水で洗浄し、そして乾燥した。揮発性物質を除去し、残渣を得て、これをフラッシュクロマトグラフィー(20−30% EtOAc/石油エーテル)により精製して、標題化合物を黄色の泡沫として得て、これを次の工程で直接使用した。
MS(ES)m/z595(M+H)
【0102】
工程3:メチル(1aR,5S,8S,10R,18E,22aR)−5−tert−ブチル−14−メトキシ−3,6−ジオキソ−1,1a,3,4,5,6,9,10,20,21,22,22a−ドデカヒドロ−8H−7,10−メタノシクロプロパ[18,19][1,10,3,6]ジオキサジアザシクロノナデシノ[11,12−b]キノキサリン−8−カルボキシラート
【0103】
【化18】

【0104】
DCE中のメチル3−メチル−N−({[(1R,2R)−2−ペンタ−4−エン−1−イルシクロプロピル]オキシ}カルボニル)−L−バリル−(4R)−4−[(7−メトキシ−3−ビニルキノキサリン−2−イル)オキシ]−L−プロリナートの溶液(0.02M)を、80℃に加熱し、次にチャン(Zhan)1触媒(0.15当量)で処理した。得られた混合物を、80℃で1時間攪拌し、次いで室温に冷却し、そして減圧下で濃縮した。残渣を、フラッシュクロマトグラフィー(20−50% EtOAc/石油エーテル)により精製して、標題化合物(2工程で25%)を泡沫として得た。
MS(ES)m/z567(M+H)
【0105】
工程4:メチル(1aR,5S,8S,10R,22aR)−5−tert−ブチル−14−メトキシ−3,6−ジオキソ−1,1a,3,4,5,6,9,10,18,19,20,21,22,22a−テトラデカヒドロ−8H−7,10−メタノシクロプロパ[18,19][1,10,3,6]ジオキサジアザシクロノナデシノ[11,12−b]キノキサリン−8−カルボキシラート
【0106】
【化19】

【0107】
MeOH/ジオキサン(1:1の比)中のメチル(1aR,5S,8S,10R,18E,22aR)−5−tert−ブチル−14−メトキシ−3,6−ジオキソ−1,1a,3,4,5,6,9,10,20,21,22,22a−ドデカヒドロ−8H−7,10−メタノシクロプロパ[18,19][1,10,3,6]ジオキサジアザシクロノナデシノ[11,12−b]キノキサリン−8−カルボキシラートの溶液(0.05M)を、Pd/C(8重量%)で処理した。得られた混合物を、水素の雰囲気下で4時間攪拌した。触媒を濾去し、濾液を減圧下で濃縮して、標題化合物(98%)を固体として得た。
MS(ES)m/z569(M+H)
【0108】
工程5:(1aR,5S,8S,10R,22aR)−5−tert−ブチル−14−メトキシ−3,6−ジオキソ−1,1a,3,4,5,6,9,10,18,19,20,21,22,22a−テトラデカヒドロ−8H−7,10−メタノシクロプロパ[18,19][1,10,3,6]ジオキサジアザシクロノナデシノ[11,12−b]キノキサリン−8−カルボン酸
【0109】
【化20】

【0110】
O/THFの1:1混合物中のメチル(1aR,5S,8S,10R,22aR)−5−tert−ブチル−14−メトキシ−3,6−ジオキソ−1,1a,3,4,5,6,9,10,18,19,20,21,22,22a−テトラデカヒドロ−8H−7,10−メタノシクロプロパ[18,19][1,10,3,6]ジオキサジアザシクロノナデシノ[11,12−b]キノキサリン−8−カルボキシラートの溶液(0.1M)を、LiOH.HO(3当量)で処理した。得られた混合物を、20℃で18時間攪拌し、HCl水溶液(0.2M)で酸性化し、そしてEtOAcで希釈した。有機相を分離し、HCl水溶液(0.2M)及び食塩水で洗浄し、次いで乾燥した。揮発性物質を除去して、標題化合物(98%)を、固体として得た。
MS(ES)m/z555(M+H)
【0111】
工程6:(1aR,5S,8S,10R,22aR)−5−tert−ブチル−N−((1R、2S)−1−{[(シクロプロピルスルホニル)アミノ]カルボニル}−2−ビニルシクロプロピル)−14−メトキシ−3,6−ジオキソ−1,1a,3,4,5,6,9,10,18,19,20,21,22,22a−テトラデカヒドロ−8H−7,10−メタノシクロプロパ[18,19][1,10,3,6]ジオキサジアザシクロノナデシノ[11,12−b]キノキサリン−8−カルボキサミド
【0112】
【化21】

【0113】
CHCl中の(1aR,5S,8S,10R,22aR)−5−tert−ブチル−14−メトキシ−3,6−ジオキソ−1,1a,3,4,5,6,9,10,18,19,20,21,22,22a−テトラデカヒドロ−8H−7,10−メタノシクロプロパ[18,19][1,10,3,6]ジオキサジアザシクロノナデシノ[11,12−b]キノキサリン−8−カルボン酸の溶液(0.1M)を、(1R,2S)−1−{[(シクロプロピルスルホニル)アミノ]カルボニル}−2−ビニルシクロプロパンアミニウムクロリド(1.3当量)、DIEA(3当量)、DMAP(1.5当量)、及びTBTU(1.45当量)で処理した。得られた混合物を、20℃で18時間攪拌し、そして次にEtOAcで希釈した。溶液をHCl水溶液(0.2M)、飽和NaHCO水溶液、及び食塩水で洗浄した。有機相を乾燥し、濃縮して残渣を得て、これをフラッシュクロマトグラフィー(溶出液2.5% MeOH/CHCl)により精製して、標題化合物(89%)を固体として得た。
13C NMR(100MHz,DMSO−d)δ 172.32、170.63、169.04、159.86、156.95、154.74、148.10、140.41、133.55(2シグナル)、128.94、118.21、117.58、105.89、74.88、59.75、58.71、55.68、54.13、54.01、40.13、34.49、34.04、33.76、32.68、30.71、30.43、28.55、27.69、27.28、26.38、21.98、18.49、10.67、5.69、5.46;MS(ES)m/z767(M+H)
【0114】
工程7:カリウム{[(1R,2S)−1−({[(1aR,5S,8S,10R,22aR)−5−tert−ブチル−14−メトキシ−3,6−ジオキソ−1,1a,3,4,5,6,9,10,18,19,20,21,22,22a−テトラデカヒドロ−8H−7,10−メタノシクロプロパ[18,19][1,10,3,6]ジオキサジアザシクロノナデシノ[11,12−b]キノキサリン−8−イル]カルボニル}アミノ)−2−ビニルシクロプロピル]カルボニル}(シクロプロピルスルホニル)アザニド
【0115】
【化22】

【0116】
上記の物質を、EtOH中に取り、得られた溶液(0.025M)を、0℃に冷却した。EtOH中のtert−BuOK(1.5当量)の溶液(0.02M)を添加して、沈殿の生成を導いた。混合物を20℃で18時間攪拌し、次に固体を濾過により収集した。この物質を、EtOHで洗浄し、乾燥させて、標題化合物(93%)を、白色の結晶性固体として得た。
MS(ES)m/z767(M+H)
【0117】
実施例2:種々の化合物の比較
実施例1の化合物を、WO2008/057209の実施例110及び118の化合物と比較した。結果を、以下の表1及び2に示す。表及び結果の議論に例示したように、式(I)の化合物は、WO2008/057209実施例118化合物及びWO2008/057209実施例110化合物の双方に比較して、いくつかの有利な特性をもつ。
【0118】
【表1】

【0119】
WO2008/057209実施例110に比較した式(I)の化合物
WO2008/057209実施例110化合物に対する式(I)の化合物の有利な特性は、以下の通りである:
1)物理的性質(式(I)の化合物については、塩の不均化なし);
2)カリウム塩の投与後の、ラットにおける薬物動態プロファイル;及び
3)肝臓(標的臓器)暴露。
【0120】
特性における差異は、WO2008/057209実施例110化合物に比較して、式(I)の化合物の製剤及び投与に関し、特に有利である。式(I)の化合物に塩の不均化がないことで、実施例1の化合物のK+塩型 1.8mg/mlを、水中に溶解することが可能となる。WO2008/057209実施例110化合物のK+塩型は、改善された水溶性をもつが(9.7mg/mL)、そのように溶解された該化合物は、不均化して、低い水溶性(<0.009mg/ml)をもつ結晶性の両性イオン型を生じる。実施例1の化合物について、この挙動がないことは、その薬剤投与用の製剤に予想外の利点を与え、かつ結果として、表1に報告されたような改善した薬物動態特性(ラット及びイヌについての、血漿AUC及び肝臓暴露)をもたらす。前臨床化学種(preclinical species)における、高い血漿及び肝臓暴露は、患者の治療において使用するための、安全かつ有効な用量の選択に有利である。
【0121】
WO2008/057209実施例118に比較した式(I)の化合物
WO2008/057209実施例118に比較して観察された、式(I)の化合物の利点は、種々の変異型酵素に対するその抵抗性のプロファイルである。類縁クラス由来の抗ウイルス剤(例えば、HIVプロテアーゼ阻害剤)を用いた臨床研究からの、またHCV NS3プロテアーゼ阻害剤(例えば、VX−950、テラプレビル)を用いた研究からのデータに一致して、本化合物による治療に応答して、ウイルス抵抗性が発生してもよいことが予想される。実施例1の化合物は、HCV NS3プロテアーゼ阻害剤に対する抵抗性を与えることが知られている種々の変異型酵素に対し、改善された酵素親和性(Ki)を示した。表2は、様々な変異型酵素に対する活性を要約したものである。したがって、化合物1の利点は、患者に投与された場合に、抵抗性ウイルスの発生に対するバリアを増大することであってよい。それはまた、化合物1がこの抵抗性ウイルスを阻害し得ることから、抵抗性の発生が原因で他の療法に失敗した患者を治療するという、潜在的な利点も提供する。
【0122】
【表2】

【0123】
WO2008/057209実施例110化合物に対する式(I)の化合物の、さらに期待される有利な特性は、以下を包含する:
1)低いインビボでの共有結合;及び
2)高い血漿及び肝臓暴露。
【0124】
式(I)の化合物は、非常に良好な共有結合性のインビボ特性と、薬物動態特性とを有することが判明した。実施例1の化合物、及びWO2008/057209実施例118化合物について、観察されたインビボでの共有結合及び薬物動態特性に基づけば、式(I)の化合物は、著しく良好なインビボの共有結合特性及び薬物動態特性を有する。
【0125】
タンパク質に共有結合する化合物、又は、後にタンパク質に共有結合することになる代謝産物を生成する化合物は、患者において、薬物−タンパク質コンジュゲートに対する抗体応答により媒介される免疫毒性、及び他の特異体質性毒性といった、副作用を生じる可能性がある(「Chem.Res.Toxicol.」、2004年、第17巻、p.3−16参照)。
【0126】
実施例1の化合物は、ラットに対する20mg/kgの1回量の経口投与の後、血漿タンパク質に対しては、検出不能な結合を示した(表1参照)。類似の条件下で、WO2008/057209実施例118化合物は、ラット肝タンパク質に対し検出可能な結合を示しており(表1参照)、それ故、ヒト患者への投与には、式(I)の化合物よりも不利化合物であると考えてよい。
【0127】
表3は、実施例118に取入れられた、(R,R)−トランス−2−アルキルシクロペンタノール基を含有する、WO2008/057209からの関連化合物について観察された、いくつかの追加のインビボ共有結合データを提供する。
【0128】
【表3】

【0129】
潜在的な薬物候補は、望ましくない毒性を誘発しないことを効果的に証明するために、前臨床化学種では、高い血漿及び肝臓暴露をもつことが有利である。また、動物において高い肝臓及び血漿暴露をもつ化合物は、そうではないものに比べて、同一の挙動を人において示すことがより確実だろう。かかる化合物については、ヒトにおける所望の有効な暴露を、薬物製造のコスト及び容易さの双方に有利な、低い用量で達成し得るが、また副作用の恐れを低下させる可能性もある。多数の前臨床化学種における標的臓器暴露は、高い標的臓器暴露が、当該化合物について患者において達成し得ることの根拠を提供しており、かつラット及びイヌの双方における高い肝臓暴露が、前臨床毒性についての確信ある評価を可能にしている。高い肝臓暴露は、HCVについては、これが当該薬剤の標的臓器であることから、特に有利である。
【0130】
実施例1の化合物は、非常に良好なラット血漿及び肝臓暴露を示した。観察されたラット肝臓の暴露は、WO2008/057209化合物118及び化合物110についてのものよりも、高いレベルにあった(表1参照)。これらの結果と、ラット(25mpk)及びイヌ(5mpk)の双方への経口投与による、WO2008/057209からのいくつかの異なる化合物の試験とに基づき、式(I)の化合物はまた、WO2008/057209化合物118及び化合物110よりも高いイヌ肝臓暴露を有することも期待される。
方法
【0131】
NS 3/4A 阻害活性(Ki):NS 3/4A 阻害活性は、セクションIV.化合物の評価(上記)、及びマオ(Mao)ら、「Anal.Biochem.」、2008年、第373巻、p.1−8に記載のように測定した。
【0132】
レプリコン活性 EC50:レプリコン活性は、キャロル(Carroll)ら、「J.Biol.Chem.」、2003年、第278巻、p.11979−11984及びオルセン(Olsen)ら、「Anti Microb.Agents」、2004年、第48巻、p.3944−3953に記載の方法を使用して測定した。
【0133】
ラット血漿AUC@25mpk経口(per os):試験化合物を、静脈内投与用(例えば、20%:60%:20% DMSO:PEG400:水)又は経口投与用(例えば、10% ポリソルベート80(POLYSORBATE):90% 水、又は100% PEG400)の、適当な投薬ビヒクル中に溶解した。動物には、非げっ歯類用の交差試験デザインを使用して投与した(n=3)。血漿試料は、2分ないし24時間の間のタイムポイントにおいて収集し、化合物レベルは、RP−HPLCにより測定した。肝臓試料は、ラットでは死後に、そしてイヌでは麻酔後(生検の0.5時間前)に収集した。肝臓試料は、秤量し、ホモジナイズし、当業者に既知の技術を使用して希釈し、そして化合物レベルをRP−HPLCにより測定した。
【0134】
薬物動態パラメーターは、非区画分析(例えば、WATSON(登録商標)、WINNOLIN(登録商標)を使用)に基づき計算した。定量の限界未満(BLQ)であった投与前濃度に、0値を割り当てた。経口用のAUC推定用には、末端相における最初のBLQ値に、最低定量限界の1/2に等しい値を与え、末端相での後続の値には、0値を割り当てた。標準的な薬物動態パラメーターCLp、Vdss、半減期(IVについてのみ)、%F、Cmax、Tmax、AUC0−最後、AUC0−無限を計算した。AUC値は、上昇濃度については線形台形法を、下降濃度については対数台形法を使用して計算した。
【0135】
インビボの共有結合:試験化合物を、適宜放射標識し(3H)、25ないし75mCi/ラット(純度>98.5%)の放射能を含有する20mg/kgの1回量を、未標識化合物と、濃縮された放射性トレーサーのストック溶液とを組合せることにより調製した。この混合物を、経口投与に適した投薬ビヒクル(上記参照)中に溶解し、次いで経口的にラットに投与した(2時間、6時間、24時間のタイムポイントにつき、n=3)。血漿及び肝臓を収集し、急速冷凍/−80℃で貯蔵の後に分析した。
【0136】
血漿試料のカウンティング:アリコート200μLを、20mLのシンチレーションバイアルに入れる。ソルバブル(SOLVABLE)(登録商標)500μLを添加して、55℃で振盪しながら1時間インキュベートする。取り出し、冷ましてから、シンチレーションカクテル15mLを添加し、そしてカウントする。血漿試料(200μLアリコート)を、次に、肝臓タンパク質について以下に記載したように加工した。
【0137】
組織ホモジナイゼーション:秤量した肝臓試料を、2体積の100mMリン酸緩衝液(pH7.4)で希釈し、そして氷上でホモジナイズした。
【0138】
肝臓ホモジェネートのカウンティング:アリコートを、20mLのシンチレーションバイアルに入れ、SOLVABLE(登録商標)1mLで希釈し、そして55℃で振盪しながら1時間インキュベートした。インキュベーターから取り出して冷却した後、シンチレーションカクテル15mL及び30% Hを添加し、そして放射能をカウントした。
【0139】
タンパク質沈殿法:アリコート500μLを取り、1:8 ホモジェネート:アセトニトリルを添加し(化合物が、アセトニトリル中では溶解性が低いことが疑われる場合、別の溶媒を選択してもよい)、ボルテックス処理し、そして遠心分離する(3500rcfで20分間)。上清を捨てる。
【0140】
タンパク質沈殿の再懸濁:ペレットが、80%MeOH:20%水中で崩壊するまで、超音波処理(最小強度、<5秒間)及びボルテックス処理する。
【0141】
タンパク質ペレットの洗浄:2ないし5mLの、80:20 MeOH:水。必要であれば、上清1.0mLを除去し、シンチレーションカクテル15mLを添加し、そしてカウントする。上清の放射能が<200DPMとなるまで、又は、DPMが連続的な洗浄において200より多く減少するのが止まるまで、タンパク質ペレットの洗浄を継続する。
【0142】
最終ペレットの溶解:1N NaOH又はSOLVABLE(登録商標) 1mL、50℃で一晩、又は完全に溶解するまでインキュベートする。
【0143】
最終ペレットのカウンティング:溶解したペレット1mL、シンチレーションカクテル15mL(ULTRA GOLD(登録商標)以外の別のシンチレーションカクテルを使用する場合、1N HClを使用してペレットを中和することが必要な場合がある)、そしてカウントする。
【0144】
最終ペレットのタンパク質濃度:BCA又はBIO−RADキット、BSAを標準として使用。
【0145】
ブランク試料のカウンティング:シンチレーションカクテル15mL、デュプリケートで。
【0146】
投薬溶液のカウンティング:既知の体積の投薬溶液を、トリプリケートにカウントする。
【0147】
データ分析:投薬溶液の放射能カウント(DPM)を平均し、投薬溶液の比活性を、μCi/molで計算する。ブランク試料の放射能カウントを平均する。肝臓及び血漿の各ペレットから得たカウントから、平均ブランク試料のカウントを引く。肝臓及び血漿の各ペレットについて、単位体積(L)当たりの放射能の量(μCi)を計算する。得られた上記の値(μCi/L)を、比活性(μCi/mol)で割ることにより、血漿及び肝臓の各ペレットにおける放射能の濃度を計算する。タンパク質に共有結合した放射能の量を、pmol/mgタンパク質で計算する。
【0148】
ブランク試料のカウンティング:シンチレーションカクテル15mL、デュプリケートで。
【0149】
投薬溶液のカウンティング:既知の体積の投薬溶液を、トリプリケートにカウントする。
【0150】
物理的特性:結晶性の試験化合物(カリウム塩、約5mg)を、ガラスバイアル中に秤量し、水又は水性緩衝液(100μL)を添加した。得られたスラリーを、室温で24時間攪拌した。遠心分離後、上清を逆相HPLCにより分析し、検量線との比較により、平衡溶解度を測定した。固形物質は、一部をXRPDプレート上に移し、乾燥させ、次にX線粉末回折により分析した。XRPDパターンを、結晶性K+塩のポジティブコントロール、試験化合物の、結晶性両性イオン(又は酸性)型、及びアモルファス型と比較した。塩型についてのさらなる測定は、固形物質の第二の部分から得られ、これは、DMSO−d中での溶解後に、400MHz NMR(ブルカー(Bruker))により分析した。1H−NMRスペクトルを、上記記載のポジティブコントロールに比較した。
【0151】
本出願全体を通して記載された参考文献は、いずれも、クレームされた本発明に対する先行技術として認められない。
【0152】
他の実施態様は、以下のクレームの範囲内である。いくつかの実施態様を示しかつ記載してきたが、本発明の精神及び範囲から離れることなく、様々な変更が行なわれてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
請求項1に記載の化合物の有効量と、薬学的に許容される担体とを含んでなる医薬組成物。
【請求項3】
HCVプロテアーゼ阻害剤及びHCV NS5Bポリメラーゼ阻害剤からなる群より選択される、第2の治療剤をさらに含んでなる、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
医薬における使用のための、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
HCV感染症の予防又は治療における使用のための、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
HCV NS3プロテアーゼ活性を、そのことを必要とする患者において阻害するための、医薬の調製における、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の化合物又は組成物の使用。
【請求項7】
HCVによる感染症を、そのことを必要とする患者において予防又は治療するための、医薬の調製における、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の化合物又は組成物の使用。
【請求項8】
HCVに感染した患者を治療する方法であって、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の化合物又は組成物の有効量を、前記患者に投与する工程を含んでなる該方法。

【公表番号】特表2011−528713(P2011−528713A)
【公表日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−520110(P2011−520110)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【国際出願番号】PCT/US2009/050915
【国際公開番号】WO2010/011566
【国際公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(390023526)メルク・シャープ・エンド・ドーム・コーポレイション (924)
【出願人】(501209427)イステイチユート・デイ・リチエルケ・デイ・ビオロジア・モレコラーレ・ピ・アンジエレツテイ・エツセ・ピー・アー (90)
【Fターム(参考)】