説明

ICカードおよびその製造方法

【課題】本発明の解決しようとする課題は、品質的に問題がなく、環境変化に対しても変形や反りの発生しにくい、バルカナイズドファイバー板を用いたICカードを提供するものである。
【解決手段】外部接続端子を有するICモジュールを備えたICカードであって、表基材層、コア基材層、裏基材層を有し、該表基材層および裏基材層はバルカナイズドファイバー板からなり、その厚さは前記ICモジュールの外部接続端子基板の厚さにほぼ等しいことを特徴とするICカードである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレジットカードやキャッシュカードとして使用するICカードに関し、特にバルカナイズドファイバー基材を用いたICカードおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バルカナイズドファイバー板は、木材パルプ、綿繊維等の天然素材を原料とし、これを塩化亜鉛溶液によって改質して製造される硬くて強靱なシート状材料である。バルカナイズドファイバー板は、天然繊維質材料としては最も機械的強度に優れ、切削、打抜き、折曲げ等の加工が可能であり、耐熱性、難燃性、耐衝撃性、耐摩耗性、耐油性、電気絶縁性にも優れた材料である。バルカナイズドファイバー板は、古くからある材料であるが、従来は電気絶縁板など限られた用途にしか使用されていなかった。しかし、近年環境意識の高まりにより、天然素材ゆえの独特の風合いを持ったバルカナイズドファイバー板が見直されてきており、さまざまな用途が模索されている。
【0003】
バルカナイズドファイバー板は、ICカード用の基材としても極めて有用な諸特性を持っているため、バルカナイズドファイバー板をICカードに使用する試みも提案されている。特許文献1に記載されたICカードは、特許請求の範囲の記載によれば、厚さ0.1〜1mmのバルカナイズド・ファイバーが3層以上、相接しあう層の繊維配向方向が互いに直角をなして固着した、厚さ0.5〜2mmの積層板を基板とし、該基板の表面に形成された凹部にチップを埋設・固着したことを特徴とするICカードである。
【0004】
特許文献1に記載されたICカードは、バルカナイズドファイバー板が積層されたカード基板に切削によってチップ(ICモジュール)を埋設するための凹部を形成し、その凹部にホットメルト接着剤等を用いてICモジュールを固着したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10-109483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されたような、ICカード基材に切削加工によって凹部を形成し、この凹部にICモジュールを埋設する方法は、通常のプラスチック製のICカードの製造方法として一般的に知られた方法である。
【0007】
しかし、プラスチック製のカード基材に外部接続端子を有するICモジュールを埋設するための凹状の嵌合穴をフライス切削によって形成する従来の方法を用いてバルカナイズドファイバー材料を用いたカード基材に同様の嵌合穴を形成すると、フライス切削用の刃が膨潤膠化したセルロース繊維を十分切断できず、特に凹状の嵌合穴の上部端面部分にバリが発生し、品質上の不具合を生じる場合があることが分かった。
【0008】
このため、発生したバリの除去の為の新たなコストが発生するばかりでなく、バリ除去後の凹状の嵌合穴の上部端面部分の縁の劣化などがさらに発生し、カードの品質を低下させるという問題があった。また従来のカード基材に凹状の嵌合穴を切削する構成では、ICカードに加工する工程あるいは、ICカードとした後の環境変化、特に湿度環境変化によりカードが変形したり、反りが発生しやすいという問題もあった。
【0009】
本発明の解決しようとする課題は、従来のバルカナイズドファイバー板を用いたICカードにおける上記の問題点を解消し、品質的に問題がなく、環境変化に対しても変形や反りの発生しにくい、バルカナイズドファイバー板を用いたICカードを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、外部接続端子を有するICモジュールを備えたICカードであって、表基材層、コア基材層、裏基材層を有し、該表基材層および裏基材層はバルカナイズドファイバー板からなり、その厚さは前記ICモジュールの外部接続端子基板の厚さにほぼ等しいことを特徴とするICカードである。
【0011】
また、請求項2に記載の発明は、前記コア基材層が、バルカナイズドファイバー板、または熱可塑性樹脂板から選択される1層以上の層からなり、中心より各層が対称に配置されており、厚さが前記ICモジュールの樹脂封止部の高さと等しいか、それよりも厚いことを特徴とする請求項1に記載のICカードである。
【0012】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のICカードの製造方法であって、表基材層のICモジュール配置位置にプレス金型またはトムソン型により嵌合孔を形成する工程、コア基材層のICモジュール配置位置にプレス金型またはトムソン型により嵌合孔を形成する工程、裏基材層、嵌合孔の形成されたコア基材層、嵌合孔の形成された表基材層を位置合せして重ね合わせ、接着層を介して積層接合する工程、前記嵌合孔にICモジュールを埋設する工程、所定のカード形状に打抜く工程を少なくとも有することを特徴とするICカードの製造方法である。
【0013】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1または2に記載のICカードの製造方法であって、表基材層のICモジュール配置位置にプレス金型またはトムソン型により嵌合孔を形成する工程、コア基材層のICモジュール配置位置にプレス金型またはトムソン型により嵌合孔を形成する工程、裏基材層、嵌合孔の形成されたコア基材層、嵌合孔の形成された表基材層を位置合せして重ね合わせ、該嵌合孔にICモジュールを挿入し、接着層を介して同時に一体に積層接合する工程、所定のカード形状に打抜く工程を少なくとも有することを特徴とするICカードの製造方法である。
【0014】
また、請求項5に記載の発明は、前記接着層が、接着剤層であり、印刷法によって表裏基材層および/またはコア基材層両面に形成することを特徴とする請求項3または4に記載のICカードの製造方法である。
【0015】
また、請求項6に記載の発明は、前記接着層が、接着剤を含む接着シートであることを特徴とする請求項3または4に記載のICカードの製造方法である。
【0016】
また、請求項7に記載の発明は、前記表裏基材層、コア基材層、接着層が、多面付シートであることを特徴とする請求項3〜6のいずれか1項に記載のICカードの製造方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るICカードは、表基材層および裏基材層がバルカナイズドファイバー板からなるため、バルカナイズドファイバー板の特徴である優れた機械的強度や高い耐熱性、さらには高い密度や剛性から生じる独特の硬質感や重量感を伴ったICカードとなる。またバルカナイズドファイバー板は、天然素材を主原料としているので、環境的にも好適な材料である。
【0018】
また本発明に係るICカードは、表裏基材層を同じ厚さのバルカナイズドファイバー板としたので、反りや変形に対して安定した挙動を示す。また表裏基材層の厚さをICモジュールの外部接続端子基板の厚さにほぼ等しくしたので、表基材層に形成するICモジュールを挿入するための嵌合穴をフライス切削によるざぐり加工によらず金型やトムソン型による打抜き加工で形成することができる。このためバリの発生のないきれいな貫通孔を形成することができ、不具合のないICカードを安定して得ることができる。
【0019】
また、コア基材層が、バルカナイズドファイバー板、または熱可塑性樹脂板から選択される1層以上の層からなり、中心より各層が対称に配置されており、厚さが前記ICモジュールの樹脂封止部の高さと等しいか、それよりも厚いものとした場合には、ICモジュールを埋設するための凹部を形成するにあたり、コア基材層全体を打抜き加工で穿孔することによって形成することが可能となる。このため、コア基材層にバルカナイズドファイバー板を用いた場合であっても従来のフライス切削において生じたようなバリの発生もなく、きれいな貫通孔を得ることができるため、不具合のないICカードを安定して得ることができる。
【0020】
またコア基材層を、バルカナイズドファイバー板、または熱可塑性樹脂板から選択される1層以上の層からなり、中心より各層が対称に配置されるようにしたので、カードの反りや変形を最小限に留めることができる。
【0021】
また、請求項3に記載のICカードの製造方法によれば、ICモジュールを埋設するための凹部を形成するに当たり、表基材層およびコア基材層のICモジュール配置位置にプレス金型またはトムソン型により嵌合孔を形成し、裏基材層、嵌合孔の形成されたコア基材層、嵌合孔の形成された表基材層を位置合せして重ね合わせ、接着層を介して積層接合することによって形成したので、刃物による切削加工を必要とせず、従って切削加工において生じやすいバリの発生を防止することができる。
【0022】
また、請求項4に記載のICカードの製造方法によれば、表基材層およびコア基材層のICモジュール配置位置にプレス金型またはトムソン型により嵌合孔を形成し、裏基材層、嵌合孔の形成されたコア基材層、嵌合孔の形成された表基材層を位置合せして重ね合わせ、該嵌合孔にICモジュールを挿入し、接着層を介して同時に一体に積層接合するので、工程が短縮され、能率良くICカードを生産できる。
【0023】
また、請求項5に記載のごとく、接着層を形成するに当たり、接着剤を印刷法によって表裏基材層および/またはコア基材層両面に形成する方法によれば、必要な部分だけに選択的に精度良く接着層を形成することができるため、余分な接着剤のはみ出しや、欠膠を防止することができる。
【0024】
また、請求項6に記載のごとく、接着層を形成するに当たり、接着シートを用いた場合には、予め接着シートを所定の形状に打抜いておくことにより、各層のシートを積み重ねるだけの操作で、能率良く接着層を形成することができる。
【0025】
また、表裏基材層、コア基材層、接着層を、多面付シートとした場合は、1枚づつ生産する場合に較べて、極めて能率良くICカードを生産することが可能となる。本発明の製造方法によれば、従来の切削工程を伴う製造方法に比較して、多面付による生産が容易に実行可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係るICカードの一実施態様を示した平面模式図である。
【図2】図1に示したICカードの個々の基材層を積層する前の断面構成を示した断面説明図である。
【図3】図1に示したICカードの断面模式図である。
【図4】本発明に係るICカードの製造方法の一実施態様を示した断面説明図である。
【図5】本発明に係るICカードの他の実施態様における層構成を示した断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下図面に従って、本発明に係るICカードについて詳細に説明する。
図1は、本発明に係るICカードの一実施態様を示した平面模式図である。本発明に係るICカードは、外部接続端子6を有するICモジュール1を備えたICカードであり、カード本体2にICモジュール1が埋設され、表面に外部接続端子6が露出した構造となっている。
【0028】
カード本体2は、ISO7810規格に規定された巾約85.6mm×高さ約54.0mm×厚さ約0.76mm、四隅の角の丸み約3.18mmの外形を有するものである。外部接続端子6を有するICモジュール1は、カード本体2内に、ISO7816−2規格により規定された所定の位置に埋設されている。本発明に係るICカードには、接触型ICカードと、接触型/非接触型兼用のハイブリッドICカード、さらにこれらに磁気記録層を併用したICカードなどが含まれる。
【0029】
図2は、図1に示したICカードの個々の基材層を積層する前の断面構成を示した断面説明図である。本発明に係るICカードは、表基材層10、コア基材層12、裏基材層13を有し、表基材層10および裏基材層13はバルカナイズドファイバー板からなり、その厚さをICモジュール1の外部接続端子基板3の厚さにほぼ等しくしたことを特徴とする。
【0030】
個々の基材層を積層する前にプレス金型またはトムソン型により、表基材層10にはICモジュール1のICチップ7を担持する外部接続端子基板3の外形と少なくとも概略等しい大きさの貫通孔14を形成し、コア基材層12にはICチップ7を保護する樹脂封止部5の外形と少なくとも概略等しい大きさの貫通孔15を形成する。
【0031】
表基材層10および裏基材層13の内側には、コア基材層12を積層し、固着せしめる薄い接着層11が配置されているが、接着層11は、コア基材層12の表裏両面に配置されても良い。
【0032】
ICモジュール1は、外部接続端子基板3の表面側に外部接続端子6が設けられており、外部接続端子基板3の裏面側には、ICチップ7が樹脂封止部5によって固定された構造となっている。図2の例では、外部接続端子基板3の裏面外周に接着剤層4が設けてある。
【0033】
表基材層10は、ICモジュール1の外部接続端子基板3の厚さにほぼ等しい厚さのバルカナイズドファイバー板からなり、表基材層10には、外部接続端子基板3が嵌合可能な貫通孔14が設けられている。貫通孔14は、プレス金型またはトムソン型を用いて打抜き加工によって形成することができる。表基材層10の下面には、接着層11が設けられている。ここで表基材層10の厚さとICモジュール1の外部接続端子基板3の厚さを略同一にすることにより、各層を積層し、カード本体を形成した後にICモジュール1を所定の位置に埋設したとき、カード表面とICモジュールの表面の段差を最小限にする事ができるので、特に好ましい。
【0034】
接着層11は、フェノール樹脂系、メラミン樹脂系、エポキシ樹脂系、ポリエステル樹脂系、ポリウレタン樹脂系、塩化ビニル樹脂系、酢酸ビニル樹脂系、アクリル樹脂系、ポリアミド樹脂系、ポリオレフィン樹脂系、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂系、シリコ−ン樹脂系または合成ゴム系等の接着剤を、印刷法によって貫通孔14を打抜き加工済みの表基材層10の裏面に塗布して形成することができる。また接着層11は、上記の接着剤を含む接着シートを表基材層10の裏面全面に貼り合わせた後に、貫通孔14を打抜くことによって形成してもよい。特にフェノール樹脂系、メラミン樹脂系、エポキシ樹脂系等の熱硬化性接着シートを用いて熱圧プレスにより硬化固着せしめる方法は、各層の剥離強度を向上させる上で好ましい。
【0035】
ここで接着層11を印刷法によって形成する方法についてさらに説明する。これにはいくつかの方法があり、その一つはスクリーン印刷法による方法である。接着層を設けるべき部分を画線部として製版したスクリーン版を用いて、接着剤を印刷する。また他の方法として、グラビアオフセット印刷法を用いた方法がある。これも接着層を設けるべき部分を画線部として製版したグラビア版を用いて、接着剤を印刷する。このとき被印刷基材の厚さと打抜き部分のサイズによっては、グラビア版がべた版であっても、打抜き部分の圧胴を汚染することなく、表面に接着剤を塗布することも可能である。
【0036】
コア基材層12としては、バルカナイズドファイバー板または、非結晶性ポリエステル樹脂(PETG)板、ポリエチレンテレフタレート樹脂板、ポリ塩化ビニル樹脂板、ABS樹脂板等の熱可塑性樹脂板から選択される材料からなることが好ましい。またコア基材層12は、上記の材料から選択される1層とするか、あるいは2層以上とする場合には、厚さ方向の中心より各層が対称に配置されていることが好ましい。またコア基材層12の厚さは、前記ICモジュール1の樹脂封止部5の高さと等しいか、それよりも厚いことが好ましい。
【0037】
コア基材層12が複数の異なる材質の層から構成される場合には、通常、各層の間に接着層が必要となる。この場合の接着層の材質としては、前記接着層4に使用した材質の接着剤が使用できる。
【0038】
コア基材層12には、ICモジュール1のICチップ7を保護する樹脂封止部5の外形と少なくとも概略等しい大きさの貫通孔15を形成する。この貫通孔15も表基材層10に設けた貫通孔14と同様、プレス金型またはトムソン型を用いて打抜き加工によって形成することができる。
【0039】
裏基材層13は、表基材層10と同じ材質で同じ厚さのバルカナイズドファイバー板とすることが望ましい。このようにすることにより、カードの積層バランスがとれ、カードの反りや捩れを防止することができる。裏基材層13の内側には、接着層11を設ける。接着層11の材質や形成方法については、表基材層10の場合と同様であるが、裏基材層13に設ける接着層11の場合には、裏基材層全面に設ければよいので、広義の印刷法であるロールコーター等を用いた塗工方法でも対応することができる。
【0040】
本発明に使用するバルカナイズドファイバー板としては、JIS C2315(バルカナイズドファイバ板)に規定されたB種またはC種のバルカナイズドファイバー板が使用可能であり、その厚さは、表裏基材層に使用する場合であれば0.1〜0.2mm、コア基材に単体で使用する場合であれば0.4〜0.65mm、コア基材に他のプラスチック基材と複合して使用する場合であれば0.1〜0.4mm程度の厚さのシートを使用することができる。
【0041】
図3は、図1に示したICカードの断面模式図であり、図2に示した各層を1層に積層
した後、ICモジュールを埋設してICカードとした状態を示したものである。このように、外部接続端子6を有するICモジュール1の封止樹脂部5と、コア基材層12に形成された貫通孔15(図示せず)の間に生じた空隙に、充填封止材16を充填してもよい。充填封止材16としては、エポキシ系樹脂、可塑性ポリマーを添加したエポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂等の充填封止材料が使用できる。
【0042】
通常のプラスチック材料からなるカード本体に、ICモジュールを埋設するための嵌合穴をフライス切削によって形成する従来の方法によると、高速で回転するエンドミルから発生する摩擦熱の影響で嵌合穴底面側が熱変形を起こしやすく、その裏面側である裏基材層にも影響が及び、品質上の欠点となる場合があるが、本発明に係るICカードのように、裏基材層にバルカナイズドファイバー板を用いた場合、バルカナイズドファイバー板は、剛性が高く、耐熱性も高いので、ICモジュール配置位置の裏基材層面が変形することがなく、裏面側品質の良いICカードが得られるという利点がある。
【0043】
図3に示したICカードを製造する方法としては、請求項3に記載したように、表基材層10のICモジュール配置位置にプレス金型またはトムソン型により嵌合孔(貫通孔14)を形成する工程、コア基材層12のICモジュール配置位置にプレス金型またはトムソン型により嵌合孔(貫通孔15)を形成する工程、裏基材層13、嵌合孔の形成されたコア基材層12、嵌合孔の形成された表基材層10を位置合せして重ね合わせ、接着層11を介して積層接合する工程、前記嵌合孔にICモジュール1を埋設する工程、所定のカード形状に打抜く工程を少なくとも有するものである。これらの工程の順番は、特にこの順番に限定されない。またICカードを単体で製造する場合と、多面付で製造する場合とで、その順番が異なる場合が生じる。
【0044】
実際のICカードを製造するためには、上記以外にも、表裏面の印刷工程やオーバープリント工程、ICチップの初期化、コーディング、固有データの入力、機能検査、外観検査等の工程が必要となる。
【0045】
図4は、本発明に係るICカードの製造方法の一実施態様を示した断面説明図であり、請求項4に記載の製造方法に対応したものである。図4における表基材層10、裏基材層13、およびコア基材層12については、図2の場合と同一である。本実施態様においては、さらに適切に貫通孔26があけられた熱硬化性接着シート層21と熱硬化性接着シート層23とが配置される。各々の層は、カード本体から離れた位置に配置された、例えば位置決め用の孔と、コール板24に設けた位置決めピン29等による位置決め機構を用いて正確に位置決めを行ないながら積層し、次いでICモジュール1を所定の位置に導入し、全体を熱プレスによって圧締加熱して熱硬化性接着シート層21、23を溶融、硬化させ、各層およびICモジュール1を同時に一体に固着せしめることを特徴とする。
【0046】
この方法によれば、ICモジュール1は、熱硬化性接着シート層21によって固着されるので、図2、図3に示したような接着剤層4を配置するための工程を省くことができるという利点がある。但し、接着剤層4を設けることも可能である。
【0047】
剛性や耐熱性の高いバルカナイズドファイバー板を表基材層10に用いた場合には、通常のプラスチック基材を用いた場合と異なり、折角正確に位置決めして導入したICモジュールが熱プレス時の基材の熱変形や流動によって移動してしまい、不具合となるという問題が生じることがない。このため、各シートを多面付シートとして、1回の熱プレスによって多数の外部接続端子を有するICモジュールを備えた接触型ICカードを極めて効率的に製造することも可能となる。
【0048】
図5は、本発明に係るICカードの他の実施態様における層構成を示した断面説明図で
ある。この実施態様においては、外部接続端子106と非接触端子108、109を有する接触・非接触両機能を備えたデュアルICモジュール101を使用したことを特徴とする。
【0049】
本実施態様に用いたデュアルICモジュール101は、外部接続端子基板103に設けられた外部接続端子106に加えて、非接触端子108、109を具えており、アンテナ端子110、111を介してアンテナ基板32上に設けられたコイル112と接続されている。非接触端子とアンテナ端子は、導電性接着剤、はんだ、溶接などの手法を用いて予め接続されアンテナ基板層を形成している。接触型ICカードと非接触型ICカードの両方の機能を備えたICチップ107と、端子間の配線は樹脂封止部105によって保護されている。コイル112としては、アンテナ基板32上にエッチング方式によって形成した薄膜状のコイルや、被覆導線をアンテナ基板上に敷設したコイルなど、非接触通信機能が可能であれば、どのようなものでも良い。
【0050】
図5に示した実施態様においては、図4の実施態様に加えて、アンテナ基板32と熱硬化性接着シート層31が追加された形になっている。すなわち上から順に、予め貫通孔37を設けた表基材層30、予め貫通孔38を設けた熱硬化性接着シート層31、デュアルICモジュール101を実装したアンテナ基板32、予め貫通孔39を設けた熱硬化性接着シート層33、予め貫通孔40を設けたコア基材層34、予め貫通孔41を設けた熱硬化性接着シート層35、および裏基材層36である。
【0051】
これらの各層を積層し、図4に示した実施態様と同様に、全体を熱プレスによって圧締することにより、熱硬化性接着シート層を溶融、硬化させ、各層およびデュアルICモジュールを同時に一体に固着せしめることができる。
【0052】
以上説明してきたように、外部接続端子を具えたICモジュールを搭載した接触型ICカードにおいて、少なくとも表裏基材層に剛性や耐熱性の高いバルカナイズドファイバー板を用いることにより、予めICモジュールを設置すべき場所に嵌合孔を設けた基材同士を重ね合わせて積層することが可能となり、このため多面付による成型が可能となり、従来のプラスチック板を用いた場合のように、各層を積層して個々のカードに打抜いてから嵌合穴を切削する方法に比較してはるかに効率的にICカードを製造することが可能となった。
【符号の説明】
【0053】
1・・・ICモジュール
2・・・カード本体
3、103・・・外部接続端子基板
4・・・接着剤層
5、105・・・樹脂封止部
6、106・・・外部接続端子
7、107・・・ICチップ
10、30・・・表基材層
11・・・接着層
12、34・・・コア基材層
13、36・・・裏基材層
14、15、25、26、27、28、37、38、39、40、41・・・貫通孔
16・・・充填封止材
21、23、31、33、35・・・熱硬化性接着シート層
24・・・コール板
29・・・位置決めピン
32・・・アンテナ基板
101・・・デュアルICモジュール
108、109・・・非接触端子
110、111・・・アンテナ端子
112・・・コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部接続端子を有するICモジュールを備えたICカードであって、表基材層、コア基材層、裏基材層を有し、該表基材層および裏基材層はバルカナイズドファイバー板からなり、その厚さは前記ICモジュールの外部接続端子基板の厚さにほぼ等しいことを特徴とするICカード。
【請求項2】
前記コア基材層は、バルカナイズドファイバー板、または熱可塑性樹脂板から選択される1層以上の層からなり、中心より各層が対称に配置されており、厚さが前記ICモジュールの樹脂封止部の高さと等しいか、それよりも厚いことを特徴とする請求項1に記載のICカード。
【請求項3】
請求項1または2に記載のICカードの製造方法であって、表基材層のICモジュール配置位置にプレス金型またはトムソン型により嵌合孔を形成する工程、コア基材層のICモジュール配置位置にプレス金型またはトムソン型により嵌合孔を形成する工程、裏基材層、嵌合孔の形成されたコア基材層、嵌合孔の形成された表基材層を位置合せして重ね合わせ、接着層を介して積層接合する工程、前記嵌合孔にICモジュールを埋設する工程、所定のカード形状に打抜く工程を少なくとも有することを特徴とするICカードの製造方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載のICカードの製造方法であって、表基材層のICモジュール配置位置にプレス金型またはトムソン型により嵌合孔を形成する工程、コア基材層のICモジュール配置位置にプレス金型またはトムソン型により嵌合孔を形成する工程、裏基材層、嵌合孔の形成されたコア基材層、嵌合孔の形成された表基材層を位置合せして重ね合わせ、該嵌合孔にICモジュールを挿入し、接着層を介して同時に一体に積層接合する工程、所定のカード形状に打抜く工程を少なくとも有することを特徴とするICカードの製造方法。
【請求項5】
前記接着層は、接着剤層であり、印刷法によって表裏基材層および/またはコア基材層両面に形成することを特徴とする請求項3または4に記載のICカードの製造方法。
【請求項6】
前記接着層は、接着剤を含む接着シートであることを特徴とする請求項3または4に記載のICカードの製造方法。
【請求項7】
前記表裏基材層、コア基材層、接着層は、多面付シートであることを特徴とする請求項3〜6のいずれか1項に記載のICカードの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−108002(P2011−108002A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−262608(P2009−262608)
【出願日】平成21年11月18日(2009.11.18)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】