説明

IPパケット配信システム、受信機切り替え方法、受信機切り替えプログラムおよびプログラム記録媒体

【課題】受信したIPパケットを復号する受信機の稼動状態の異常を検出した際に、ユニキャスト配信の場合でも、迅速に、予備側の受信機に切り替えてIPパケットを正常に復号するIPパケット配信システムを提供する。
【解決手段】、経路制御を行うレイヤ3スイッチ2,4を介してユニキャスト配信されてくるIPパケットを復号するための現用側と予備側とのデコーダ51,5Zを備えた受信局5側に、デコーダ51,5Zの稼動状態をあらかじめ定めた周期で監視・制御する監視制御端末6を備え、現用側のデコーダ51の異常動作を検出した際に、直ちに、予備デコーダ5Zに切り替え、かつ、入力側に位置するレイヤ3スイッチ4に通知して、IPパケットの入力経路を予備デコーダ5Zに切り替えさせるとともに、現用側と予備側とのデコーダ51,5Zの出力側に備えたマトリクススイッチ7を制御して、予備デコーダ5Zからの復号情報を出力するように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IPパケット配信システム、受信機切り替え方法、受信機切り替えプログラムおよびプログラム記録媒体に関し、特に、IP(Internet Protocol)パケットとしてコンテンツ情報の映像信号を配信する映像IPパケット配信システムにおいて、指定された単一の送信先のみにIPパケットを配信するというユニキャスト配信方式であっても、該IPパケットを受信して復号する受信機(デコーダ)の切り替えを迅速に行うことが可能なIPパケット配信システム、受信機切り替え方法、受信機切り替えプログラムおよびプログラム記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、映像のストリーム配信のように、広帯域の情報を含むIPパケットを、リアルタイムに、かつ、安定して配信することを可能とするIPパケット配信システムに対する需要が急増している。つまり、IPパケット配信システムにおいて、IPパケットの配信に支障が発生した場合には、当該支障を排除する動作を迅速に実施し、正常なIPパケットの配信動作を継続的に実施することが強く望まれるようになってきている。
【0003】
かかる背景から、例えば、特許文献1の特開2005−26902号公報「ネットワーク中継装置におけるネットワーク障害監視方法およびこれを適用した中継装置」のように、IPパケットの経路制御を行うルータ等のネットワーク中継装置の間におけるARP(Address Resolution Protocol)更新処理を利用して、相手側のネットワーク中継装置の正常性を確認し合い、相手側のネットワーク中継装置に障害が発生したことを検出した場合に、IPパケットを迂回させるように制御する技術が提案されている。
【0004】
また、特許文献2の特開2006−174299号公報「データ配信方法、受信装置、コンピュータプログラムおよびこのコンピュータプログラムを記録した記録媒体」においては、複数の受信装置に対して同一のIPパケットを配信するマルチキャスト配信を行う場合に、各通信路におけるIPパケット消失率を基にして、各受信装置側において、各通信路で消失したIPパケットを冗長符号化方式を利用して修復するために必要とする冗長パケット数を算出して、それぞれの受信装置側で算出された冗長パケット数のうち最大の冗長パケット数を送信装置からマルチキャスト配信する技術を提案している。さらには、特許文献3の特開2008−22393号公報「IP放送受信システムおよびIP放送受信端末装置」には、マルチキャスト配信を行う場合に、配信パケットの異常を検出した際に、同一パケットを配信している正常なチャンネルとジョイン(join)させることによって、正常な経路に迅速に切り替える技術を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−26902号公報(第5−7頁)
【特許文献2】特開2006−174299号公報(第6−9頁)
【特許文献3】特開2008−22393号公報(第7−10頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献1や特許文献2のような従来の技術は、いずれも、送信装置から通信ネットワークを経由して受信装置に達するまでの間の経路上におけるIPレイヤにおける監視結果を用いて、障害の有無を検出する仕組みであり、IPレイヤ以外の異常例えばIPパケットの復号を行うデコーダの異常をも含めて検出することができる技術ではなく、IPレイヤの異常を検出していない状態であっても、受信装置において配信されてくる情報を正常に画面表示したり利用したりすることができない場合が生じてしまうという問題がある。
【0007】
また、前記特許文献3のようなマルチキャスト配信動作を行うIPパケット配信システムの場合には、例えば、障害が検出された際に、障害が発生したチャンネルと同一のIPパケットを配信しているチャンネルにジョイン(Join)させるような手法を用いて、迅速に、正常な経路に切り替えることも可能であったが、一つの受信機(デコーダ)に対してのみ配信するユニキャスト配信方式の場合には、迅速に切り替えることができないという問題もある。
【0008】
(本発明の目的)
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、IPパケットをユニキャスト配信する場合であっても、受信したIPパケットを復号する受信機(デコーダ)の稼動状態の異常を検出した際に、迅速に、予備側の受信機(デコーダ)に切り替えてIPパケットの復号動作が継続的に実施可能なIPパケット配信システム、受信機切り替え方法、受信機切り替えプログラムおよびプログラム記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述の課題を解決するため、本発明によるIPパケット配信システムは、次のような特徴的な構成を採用している。
【0010】
(1)コンテンツ情報をIPパケット化してネットワークを介して配信するIPパケット配信システムにおいて、配信されてくるIPパケットを受信して元のコンテンツ情報に復号して出力する受信機として現用側の受信機と予備側の受信機とを有する受信局を備え、さらに、前記受信局の前記現用側の受信機と前記予備側の受信機との稼動状態を監視して、動作の異常を検出した際に、前記現用側の受信機と前記予備側の受信機のうち、以降の前記IPパケットを受信すべき受信機への切り替えを制御するとともに、以降の前記IPパケットを受信すべき当該受信機を制御して、前記受信局へのIPパケットの経路制御を行うネットワーク側の中継装置であるレイヤ3スイッチに対して、アドレス解決のための情報として前記IPパケットを受信すべき当該受信機に関するアドレス情報を少なくとも含むARP(Address Resolution Protocol)通知情報を送信させる機能を少なくとも有する監視制御端末を備えているIPパケット配信システム。
【発明の効果】
【0011】
本発明のIPパケット配信システム、受信機切り替え方法、受信機切り替えプログラムおよびプログラム記録媒体によれば、経路制御を行うルータ等のレイヤ3スイッチを介してユニキャスト配信されてくるIPパケットを復号するための現用側と予備側との受信機(デコーダ)を備えた受信局側に、該受信機(デコーダ)の稼動状態をあらかじめ定めた周期で監視・制御する監視制御端末を備え、現用側の受信機(デコーダ)の異常動作を検出した際に、直ちに、予備側の受信機(デコーダ)に切り替え、かつ、入力側に位置するルータ等のネットワーク中継装置すなわちレイヤ3スイッチを制御して、IPパケットの入力経路を予備側の受信機(デコーダ)に切り替えるとともに、現用側と予備側との受信機(デコーダ)の出力側に備えたマトリクススイッチを制御して、予備側の受信機(デコーダ)からの復号情報を出力するように制御しているので、以下のような効果を奏することができる。
【0012】
第1に、配信するIPパケットのIPレイヤレベルにおける異常のみならず、受信局に収納されている現用側の受信機(デコーダ)の動作が異常になった時には、監視制御端末の制御により、瞬時に、異常な動作に陥った受信機(デコーダ)を正常な予備側の受信機(デコーダ)に切り替えて、受信IPパケットを元のコンテンツ情報例えば映像信号に正しく復号して、該映像信号に基づく映像をモニタに画面表示することができる。
【0013】
第2に、受信したIPパケットを復号する受信機(デコーダ)を現用側の受信機(デコーダ)から予備側の受信機(デコーダ)に切り替える際に、予備側の受信機(デコーダ)に設定したIPアドレス(つまり現用側の受信機(デコーダ)に割り付けられているIPアドレス)と予備側の受信機(デコーダ)のMACアドレスとを、IPパケットの経路制御を行うネットワーク中継装置すなわちレイヤ3スイッチに通知しているので、ユニキャスト配信方式の場合であっても、単純に、故障した現用側のデコーダ(受信機)と同じIPアドレスだけを予備側の受信機(デコーダ)に設定した場合においては、IPパケットの経路制御を行うレイヤ3スイッチにおいて、予備側の受信機(デコーダ)への経路選択用のアドレス解決を行う必要があるために時間がかかってしまうという問題を解決することができる。
【0014】
第3に、受信局に収納されている現用側のデコーダ、予備デコーダの稼動状況を常時監視して、使用すべきデコーダの現用側と予備側との切り替えを制御する監視制御端末を備えているので、現用側のデコーダ、予備デコーダのデコーダ同士で互いの状態監視を行う場合と比較して、迅速な切り替え制御を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る映像IPパケット配信システムの構成例を示すブロック構成図である。
【図2】図1の映像IPパケット配信システムの動作の一例を説明するためのシーケンスチャートである。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る映像IPパケット配信システムの構成例を示すブロック構成図である。
【図4】図3の映像IPパケット配信システムの動作の一例を説明するためのシーケンスチャートである。
【図5】本発明の第3の実施形態に係る映像IPパケット配信システムの構成例を示すブロック構成図である。
【図6】図5の映像IPパケット配信システムの動作の一例を説明するためのシーケンスチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明によるIPパケット配信システム、受信機切り替え方法、受信機切り替えプログラムおよびプログラム記録媒体の好適な実施形態について、映像IPパケットを配信する映像IPパケット配信システムを例にとって、添付図を参照して説明する。なお、以下の説明においては、本発明によるIPパケット配信システムおよびIPパケットの復号を行う受信機(デコーダ)の切り替え方法について説明するが、かかる受信機切り替え方法をコンピュータにより実行可能な受信機切り替えプログラムとして実施するようにしても良いし、あるいは、受信機切り替えプログラムをコンピュータにより読み取り可能な記録媒体に記録するようにしても良いことは言うまでもない。また、以下の説明は、本発明に係るIPパケット配信システムの一例として、映像IPパケット配信システムを例にとって、その実施形態の説明を行うが、本発明は、かかる映像IPパケット配信システムのみに限るのもではなく、IPパケットを用いて情報を配信する如何なるシステムであっても、全く同様に適用することができる。
【0017】
(本発明の特徴)
本発明の実施形態の説明に先立って、本発明の特徴についてその概要をまず説明する。本発明は、IPパケット配信システムにおいて、配信するIPパケットのIPレイヤレベルにおける異常のみならず、IPパケットを復号する受信機(デコーダ)の動作が異常になったときに、予備側の受信機(デコーダ)へ迅速かつスムーズに切り替える仕組みを、ユニキャスト配信においても可能としていることを、特徴としている。
【0018】
(第1の実施形態の構成)
まず、本発明の第1の実施形態に係る映像IPパケット配信システムの構成例について、図1を用いて説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係る映像IPパケット配信システムの構成例を示すブロック構成図である。
【0019】
図1に示す映像IPパケット配信システム100は、コンテンツ配信サーバ1、受信局5、監視制御端末6、マトリクススイッチ7、モニタ8を少なくとも含んで構成されている。また、コンテンツ配信サーバ1には、コンテンツ情報例えば映像信号をIPパケット化するエンコーダ11が、受信局5には、IPパケットを元のコンテンツ情報例えば映像信号に復号して出力する受信機(デコーダ)としてデコーダ51と予備デコーダ5Zとが収納されている。なお、ここでは、受信局5に収納している受信機のことをデコーダと表現している。そして、コンテンツ配信サーバ1と受信局5との間は、それぞれ、レイヤ3スイッチ(L3−SW)2とレイヤ3スイッチ(L3−SW)4とを経由して、インターネット等のネットワーク3を介して、相互に接続されている。
【0020】
コンテンツ配信サーバ1に収納されているエンコーダ11は、コンテンツ情報の映像信号を圧縮・非圧縮したか否かに限らず、該映像信号をIPパケット化して、受信局5へ向けて、送出する装置である。ここで、エンコーダ11は、必要に応じて、各番組の映像素材をコンテンツ配信サーバ1から、ユニキャスト配信する。
【0021】
コンテンツ配信サーバ1から送出されるIPパケットは、レイヤ3スイッチ2、レイヤ3スイッチ4とネットワーク3とを介して、受信局5で受信される。ネットワーク3は、公衆回線、専用回線のいずれであっても構わなく、IPパケットを転送するためのIPプロトコルに準拠したネットワーク通信網のことである。
【0022】
レイヤ3スイッチ2、レイヤ3スイッチ4は、いずれも、ネットワーク中継機器であり、IPアドレスによる経路制御を行うものであり、受け取ったIPパケットを目的のIPアドレスに対応する出力ポートへ転送する機能を備えている。また、レイヤ3スイッチ2、レイヤ3スイッチ4は、レイヤ3プロトコルを処理する装置であり、ルータなどの装置もこの類に含まれている。
【0023】
受信局5に収納されているデコーダ51は、エンコーダ11から受信したIPパケットをデパケタイズ化(デアセンブル化)した後、元のコンテンツ情報例えば映像信号として、マトリクススイッチ7へ出力する。デコーダ51から出力された映像信号は、マトリクススイッチ7を介して、モニタ8へ入力され、モニタ8において、入力されてきた該映像信号による映像が画面表示される。
【0024】
監視制御端末6は、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置であり、受信局5側に設置されている監視用の端末である。監視制御端末6は、常に、デコーダ51と予備デコーダ5Zとにアクセスすることによって、受信局5の稼動状況を監視することができ、そして、受信局5を制御する機能を備えている。また、監視制御端末6は、デコーダ51、予備デコーダ5Zの出力を切り替えて、後段装置のモニタ8に入力するための切り替え手段であるマトリクススイッチ7を制御する機能も備えており、デコーダ51と予備デコーダ5Zとのいずれかの出力先をモニタ8へ接続する制御を行う。
【0025】
(第1の実施形態の動作の説明)
次に、図1に示す映像IPパケット配信システム100の動作の一例を、図2のシーケンスチャートを参照して詳細に説明する。図2は、図1の映像IPパケット配信システム100の動作の一例を説明するためのシーケンスチャートであり、図1のレイヤ3スイッチ(L3−SW)4、受信局5に収納されているデコーダ51、予備デコーダ5Z、監視制御端末6、マトリクススイッチ7の動作について示している。
【0026】
図2のシーケンスチャートにおいては、コンテンツ配信サーバ1のエンコーダ11から送出されたIPパケットが、ユニキャスト配信として、レイヤ3スイッチ(L3−SW)2、ネットワーク3、レイヤ3スイッチ(L3−SW)4を介して、受信局5のデコーダ51で受信されている状態にある。また、監視制御端末6は、受信局5の監視制御を行うために、あらかじめ定めた周期で、常時、デコーダ51と予備デコーダ5Zとに対して、アクセスを行っている(シーケンスA1、A3)。
【0027】
そして、監視制御端末6からのアクセスに応答するデコーダ51と予備デコーダ5Zとは、監視制御端末6に対して、それぞれの稼働状況を返信し、監視制御端末6は、それぞれの稼働状況を受信することができる(シーケンスA2、A4)。さらに、現用側のデコーダ51は、あらかじめ定めた周期であるいはIPパケットの復号処理を行う都度、自発的に、監視制御端末6に対して、その稼働状況を送信することも可能である(シーケンスA5)。デコーダ51、予備デコーダ5Zの稼働状況として監視制御端末6に送信される情報は、それぞれの装置アラーム/装置ステータスや、設定パラメータ情報などである。
【0028】
監視制御端末6は、受信した稼動状況の解析結果として、故障などにより、現用側のデコーダ51が、IPパケットを映像信号に復号して、モニタ8に対して出力することが不能であると判断すると(シーケンスA6)、直ちに、予備デコーダ5Zに対して、故障したデコーダ51と同じ設定パラメータを設定する(シーケンスA7)。この時、現用側のデコーダ51に割り付けられていたIPアドレスなどのネットワークパラメータも予備デコーダ5Zへ設定している。
【0029】
さらに、監視制御端末6は、マトリクススイッチ7を制御して、モニタ8への映像信号の入力を、動作が異常な現用側のデコーダ51から予備デコーダ5Zからの出力に切り替える(シーケンスA8)。
【0030】
しかる後、デコーダ51の設定パラメータを引き継いだ予備デコーダ5Zは、監視制御端末6からIPパケット受信動作開始を指示する制御信号を受け取ると(シーケンスA9)、IPパケットの経路制御を行うレイヤ3スイッチ4に対して、自予備デコーダ5ZのIPアドレス(現用側のデコーダ51に割り付けられていたIPアドレス)と自予備デコーダ5ZのMACアドレスとを少なくとも含むARP(Address Resolution Protocol)通知情報を送信する(シーケンスA10)。
【0031】
該ARP通知情報を受け取ったレイヤ3スイッチ4は、内部に有しているARPテーブル上のデータの中で、デコーダ51のIPアドレスに対応するMACアドレスと転送ポートとを予備デコーダ5ZのMACアドレスと転送ポートとに書き替える(シーケンスA11)。これにより、レイヤ3スイッチ4において、本来はデコーダ51へ転送されるIPパケットが、予備デコーダ5Zのポートへ転送される状態に切り替えられる(シーケンスA12)。
【0032】
而して、受信局5内の現用側のデコーダ51の動作が異常になった場合には、エンコーダ11から送出されたIPパケットは、動作が異常になったデコーダ51の代わりに、正常な動作が可能な予備デコーダ5Zにて受信される状態に迅速に切り替わって、映像信号に正しくデコードされて、予備デコーダ5Z側に出力が切り替えられているマトリクススイッチ7を介して、対応するモニタ8に出力され、該映像信号による映像がモニタ8に継続して画面表示されることになる。
【0033】
(第1の実施形態の効果の説明)
以上に詳細に説明したように、本第1の実施形態によれば、配信するIPパケットのIPレイヤレベルにおける異常のみならず、受信局5に収納されている現用側のデコーダ51の動作が異常になった時には、監視制御端末6の制御により、瞬時に、異常な動作に陥ったデコーダ51を正常な予備デコーダ5Zに切り替えて、受信IPパケットを元の映像信号に正しく復号して、該映像信号に基づく映像をモニタ8に画面表示することができる。
【0034】
また、受信したIPパケットを復号するデコーダを現用側のデコーダ51から予備デコーダ5Zに切り替える際に、予備デコーダ5Zに設定したIPアドレス(つまり現用側のデコーダ51に割り付けられているIPアドレス)と予備デコーダ5ZのMACアドレスとを、IPパケットの経路制御を行うネットワーク3側の中継装置すなわちレイヤ3スイッチ4に通知しているので、ユニキャスト配信方式の場合であっても、単純に、故障した現用側のデコーダ51(現用側の受信機)と同じIPアドレスだけを予備デコーダ5Z(予備側の受信機)に設定した場合においては、IPパケットの経路制御を行うレイヤ3スイッチにおいて、予備デコーダ5Z(予備側の受信機)への経路選択用のアドレス解決を行う必要があるために時間がかかってしまうという問題を解決することができる。
【0035】
さらに、受信局5に収納されている現用側のデコーダ51、予備デコーダ5Zの稼動状況を常時監視して、使用すべきデコーダの現用側と予備側との切り替えを制御する監視制御端末6を備えているので、現用側のデコーダ、予備デコーダのデコーダ同士で互いの状態監視を行う場合と比較して、迅速な切り替え制御を行うことが可能になる。
【0036】
(第2の実施形態の構成)
次に、本発明の第2の実施形態に係る映像IPパケット配信システムの構成例について、図3を用いて説明する。図3は、本発明の第2の実施形態に係る映像IPパケット配信システムの構成例を示すブロック構成図である。図3に示す映像IPパケット配信システム100Aは、図1に示したIP配信システム100とは異なり、コンテンツ配信サーバ1Aから複数のコンテンツ情報例えば映像信号をそれぞれのIPパレットとして配信し、受信局5A内にそれぞれに対応して収納されている複数台のデコーダ51、…、デコーダ5Nにより、複数の映像信号に復号した後、それぞれの映像信号に基づく映像を、複数台のモニタ81、…、モニタ8Nに画面表示する例を説明するものであり、受信局5A内には、複数台のデコーダ51、…、デコーダ5Nに共通の予備用として使用することが可能な予備デコーダ5Zを収納する(N+1)予備方式の構成を採用している場合を示している。
【0037】
つまり、図3に示す映像IPパケット配信システム100Aは、コンテンツ配信サーバ1A、受信局5A、監視制御端末6A、マトリクススイッチ7A、モニタ群8Aを少なくとも含んで構成されている。また、コンテンツ配信サーバ1Aには、N個(N:正整数)のコンテンツ情報例えば映像信号それぞれをIPパケット化するN台のエンコーダ11、…、エンコーダ1Nが、また、受信局5Aには、それぞれのIPパケットを元のコンテンツ情報例えば映像信号に復号して出力する受信機(デコーダ)としてN台の現用側のデコーダ51、…、デコーダ5Nと予備デコーダ5Zとが、また、モニタ群8Aには、N台のモニタ81、…、モニタ8Nが収納されている。なお、ここでは、受信局5Aに収納している受信機のことをデコーダと表現している。そして、コンテンツ配信サーバ1Aと受信局5Aとの間は、それぞれ、レイヤ3スイッチ(L3−SW)2Aとレイヤ3スイッチ(L3−SW)4Aとを経由して、インターネット等のネットワーク3を介して、相互に接続されている。
【0038】
コンテンツ配信サーバ1Aに収納されているN台のエンコーダ11、…、エンコーダ1Nは、いずれも、コンテンツ情報の映像信号を圧縮・非圧縮したか否かに限らず、それぞれの映像信号をIPパケット化して、受信局5Aへ向けて、送出する装置である。ここで、エンコーダ11、…、エンコーダ1Nは、必要に応じて、各番組の映像素材をコンテンツ配信サーバ1Aから、ユニキャスト配信する。
【0039】
コンテンツ配信サーバ1Aから送出されるIPパケットは、レイヤ3スイッチ2A、レイヤ3スイッチ4Aとネットワーク3とを介して、受信局5Aで受信される。ネットワーク3は、公衆回線、専用回線のいずれであっても構わなく、IPパケットを転送するためのIPプロトコルに準拠したネットワーク通信網のことである。
【0040】
レイヤ3スイッチ2A、レイヤ3スイッチ4Aは、いずれも、ネットワーク中継機器であり、IPアドレスによる経路制御を行うものであり、受け取ったIPパケットを目的のIPアドレスに対応する出力ポートへ転送する機能を備えている。また、レイヤ3スイッチ2A、レイヤ3スイッチ4Aは、レイヤ3プロトコルを処理する装置であり、ルータなどの装置もこの類に含まれている。
【0041】
受信局5Aに収納されているN台の現用側のデコーダ51、…、デコーダ5Nは、いずれも、対向するエンコーダ11、…、エンコーダ1Nから受信したIPパケットをデパケタイズ化(デアセンブル化)した後、元のコンテンツ情報例えば映像信号として、マトリクススイッチ7Aへ出力する。デコーダ51、…、デコーダ5Nから出力されたそれぞれの映像信号は、マトリクススイッチ7Aを介して、デコーダ51、…、デコーダ5Nそれぞれに対向してモニタ群8Aに収納されているN台のモニタ81、…、モニタ8Nへ入力され、N台のモニタ81、…、モニタ8Nそれぞれにおいて、入力されてきた該映像信号による映像が画面表示される。
【0042】
また、受信局5Aに収納されている予備デコーダ5Zは、N台の現用側のデコーダ51、…、デコーダ5Nのいずれが故障した場合であっても、故障したデコーダに代わって、受信したIPパケットをデパケタイズ化(デアセンブル化)した後、映像信号として出力することが可能な、現用側の各デコーダに共通の予備装置であり、受信局5Aに収納されているデコーダ群は(N+1)予備構成とされている。
【0043】
監視制御端末6Aは、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置であり、受信局5A側に設置されている監視用の端末である。監視制御端末6Aは、常に、N台の現用側のデコーダ51、…、デコーダ5Nと予備デコーダ5Zとにアクセスすることによって、受信局5Aの稼動状況を監視することができ、そして、受信局5Aを制御する機能を備えている。また、監視制御端末6Aは、デコーダ51、…、デコーダ5N、予備デコーダ5Zの出力を切り替えて、後段装置のモニタ群8Aに入力するための切り替え手段であるマトリクススイッチ7Aを制御する機能も備えており、N台の現用側のデコーダ51、…、デコーダ5Nそれぞれの出力先、または、デコーダ51、…、デコーダ5Nのいずれかを予備デコーダ5Zに切り替えた際の予備デコーダ5Zの出力先を、モニタ群8Aに収納されているN台のモニタ81、…、モニタ8Nへ接続する制御を行う。
【0044】
(第2の実施形態の動作の説明)
次に、図3に示す映像IPパケット配信システム100Aの動作の一例を、図4のシーケンスチャートを参照して詳細に説明する。図4は、図3の映像IPパケット配信システム100Aの動作の一例を説明するためのシーケンスチャートであり、図1のレイヤ3スイッチ(L3−SW)4A、受信局5Aに収納されているN台の現用側のデコーダ51、…、デコーダ5Nのうちの任意のデコーダ5i(1≦i≦N)、予備デコーダ5Z、監視制御端末6A、マトリクススイッチ7Aの動作について示している。
【0045】
図4のシーケンスチャートにおいては、コンテンツ配信サーバ1Aのエンコーダ11、…、エンコーダ1Nそれぞれから送出されたIPパケットが、ユニキャスト配信として、レイヤ3スイッチ(L3−SW)2A、ネットワーク3、レイヤ3スイッチ(L3−SW)4Aを介して、受信局5Aのデコーダ5iで受信されている状態にある。また、監視制御端末6Aは、受信局5Aの監視制御を行うために、あらかじめ定めた周期で、常時、あらかじめ定めた順番に、N台の現用側のデコーダ5i(デコーダ51、…、デコーダ5N)と予備デコーダ5Zとに対して、アクセスを行っている(シーケンスB1、B3)。
【0046】
そして、監視制御端末6Aからのアクセスに応答する現用側のデコーダ5i(デコーダ51、…、デコーダ5N)と予備デコーダ5Zとは、監視制御端末6Aに対して、それぞれの稼働状況を返信し、監視制御端末6Aは、あらかじめ定めた順番に、それぞれの稼働状況を受信することができる(シーケンスB2、B4)。さらに、現用側の5i(デコーダ51、…、デコーダ5N)は、あらかじめ定めた周期であるいはIPパケットの復号処理を行う都度、自発的に、監視制御端末6Aに対して、その稼働状況を送信することも可能である(シーケンスB5)。デコーダ5i(デコーダ51、…、デコーダ5N)、予備デコーダ5Zの稼働状況として監視制御端末6Aに送信される情報は、それぞれの装置アラーム/装置ステータスや、設定パラメータ情報などである。
【0047】
監視制御端末6Aは、受信した稼動状況の解析結果として、故障などにより、N台の現用側のデコーダ51、…、デコーダ5Nのいずれか例えば現用側のデコーダ5iが、IPパケットを映像信号に復号して、対応するモニタ8iに対して出力することが不能であると判断すると(シーケンスB6)、直ちに、予備デコーダ5Zに対して、故障したデコーダ5iと同じ設定パラメータを設定する(シーケンスB7)。この時、現用側のデコーダ5iに割り付けられていたIPアドレスなどのネットワークパラメータも予備デコーダ5Zへ設定している。
【0048】
さらに、監視制御端末6Aは、マトリクススイッチ7Aを制御して、対応するモニタ8iへの映像信号の入力を、動作が異常な現用側のデコーダ5iから予備デコーダ5Zからの出力に切り替える(シーケンスB8)。
【0049】
しかる後、デコーダ5iの設定パラメータを引き継いだ予備デコーダ5Zは、監視制御端末6AからIPパケット受信動作開始を指示する制御信号を受け取ると(シーケンスB9)、IPパケットの経路制御を行うレイヤ3スイッチ4Aに対して、自予備デコーダ5ZのIPアドレス(現用側のデコーダ5iに割り付けられていたIPアドレス)と自予備デコーダ5ZのMACアドレスとを少なくとも含むARP(Address Resolution Protocol)通知情報を送信する(シーケンスB10)。
【0050】
該ARP通知情報を受け取ったレイヤ3スイッチ4Aは、内部に有しているARPテーブル上のデータの中で、デコーダ5iのIPアドレスに対応するMACアドレスと転送ポートとを予備デコーダ5ZのMACアドレスと転送ポートとに書き替える(シーケンスB11)。これにより、レイヤ3スイッチ4Aにおいて、本来はデコーダ5iへ転送されるIPパケットが、予備デコーダ5Zのポートへ転送される状態に切り替えられる(シーケンスB12)。
【0051】
而して、受信局5A内の現用側のデコーダ5iの動作が異常になった場合には、エンコーダ1iから送出されたIPパケットは、動作が異常になったデコーダ5iの代わりに、正常な動作が可能な予備デコーダ5Zにて受信される状態に迅速に切り替わって、映像信号に正しくデコードされて、予備デコーダ5Z側に出力が切り替えられているマトリクススイッチ7Aを介して、対応するモニタ8iに出力され、該映像信号による映像がモニタ8iに継続して画面表示されることになる。
【0052】
(第2の実施形態の効果の説明)
本第2の実施形態によれば、以上に詳細に説明したように、複数個のコンテンツ情報例えば映像信号をエンコードした複数個のIPパケットを受信する受信局5Aが、複数台の現用側のデコーダ51、…、デコーダ5Nに関して、予備用として共通に利用することができる1台の予備デコーダ5Zを備えた(N+1)予備冗長システムを構成している場合であっても、配信するIPパケットのIPレイヤレベルにおける異常のみならず、複数台の現用側のデコーダ51、…、デコーダ5Nを収納している受信局5Aにおいて、いずれかの現用側のデコーダ5i(1≦i≦N)の動作が異常になった時には、監視制御端末6Aの制御により、瞬時に、異常な動作に陥ったデコーダ5iを正常な予備デコーダ5Zに切り替えて、受信IPパケットを元のコンテンツ情報例えば映像信号に正しく復号して、該映像信号に基づく映像を対応するモニタ8iに画面表示することができる。
【0053】
また、第1の実施形態の場合と同様に、受信したIPパケットを復号するデコーダを現用側のデコーダ5i(1≦i≦N)から予備デコーダ5Zに切り替える際に、予備デコーダ5Zに設定したIPアドレス(つまり現用側のデコーダ5iに割り付けられているIPアドレス)と予備デコーダ5ZのMACアドレスとを、IPパケットの経路制御を行うネットワーク3側の中継装置すなわちレイヤ3スイッチ4Aに通知しているので、ユニキャスト配信方式の場合であっても、単純に、故障した現用側のデコーダ5i(現用側の受信機)と同じIPアドレスだけを予備デコーダ5Z(予備側の受信機)に設定した場合においては、IPパケットの経路制御を行うレイヤ3スイッチにおいて、予備デコーダ5Zへの経路選択用のアドレス解決を行う必要があるために時間がかかってしまうという問題を解決することができる。
【0054】
さらに、受信局5Aに収納されている複数台の現用側のデコーダ51、…、デコーダ5Nと予備デコーダ5Zとの稼動状況を順番に監視して、使用すべきデコーダの現用側と予備側との切り替えを制御する監視制御端末6Aを備えているので、第1の実施形態の場合と同様、現用側のデコーダ、予備デコーダのデコーダ同士で互いの状態監視を行う場合と比較して、迅速な切り替え制御を行うことが可能になる。
【0055】
(第3の実施形態の構成)
次に、本発明の第3の実施形態に係る映像IPパケット配信システムの構成例について、図5を用いて説明する。図5は、本発明の第3の実施形態に係る映像IPパケット配信システムの構成例を示すブロック構成図である。図5に示す映像IPパケット配信システム100Bは、図1に示したIP配信システム100と同様、コンテンツ配信サーバ1からコンテンツ情報例えば映像信号をIPパレットとして配信し、受信局5B内に収納されているデコーダ51により、映像信号に復号した後、該映像信号に基づく映像をモニタ8に画面表示する。しかし、図5に示す映像IPパケット配信システム100Bは、図1に示したIP配信システム100とは異なり、受信局5Bの現用側のデコーダ51が故障した場合に、予備側の予備デコーダ5Zから、IPパケットの経路制御を行うレイヤ3スイッチ(L3−SW)4Bに対して、ARP通知情報を送信する代わりに、レイヤ3スイッチ(L3−SW)4B内のルーティングテーブルの書き替えを指示するルーティング情報書き替え制御情報を、監視制御端末6Bから、経路制御を行うレイヤ3スイッチ(L3−SW)4Bに対して、直接送信する場合を示している。
【0056】
つまり、図5に示す映像IPパケット配信システム100Bは、図1に示した映像IPパケット配信システム100の構成と略同様であり、コンテンツ配信サーバ1、受信局5B、監視制御端末6B、マトリクススイッチ7、モニタ8を少なくとも含んで構成されている。また、コンテンツ配信サーバ1には、コンテンツ情報例えば映像信号をIPパケット化するエンコーダ11が、受信局5Bには、IPパケットを元のコンテンツ情報例えば映像信号に復号して出力する受信機(デコーダ)として現用側のデコーダ51と予備デコーダ5Zとが収納されている。なお、ここでは、受信局5Bに収納している受信機のことをデコーダと表現している。そして、コンテンツ配信サーバ1と受信局5Bとの間は、それぞれ、レイヤ3スイッチ(L3−SW)2Bとレイヤ3スイッチ(L3−SW)4Bとを経由して、インターネット等のネットワーク3を介して、相互に接続されている。
【0057】
コンテンツ配信サーバ1に収納されているエンコーダ11は、コンテンツ情報の映像信号を圧縮・非圧縮したか否かに限らず、該映像信号をIPパケット化して、受信局5Bへ向けて、送出する装置である。ここで、エンコーダ11は、必要に応じて、各番組の映像素材をコンテンツ配信サーバ1から、ユニキャスト配信する。
【0058】
コンテンツ配信サーバ1から送出されるIPパケットは、レイヤ3スイッチ2B、レイヤ3スイッチ4Bとネットワーク3とを介して、受信局5Bで受信される。ネットワーク3は、公衆回線、専用回線のいずれであっても構わなく、IPパケットを転送するためのIPプロトコルに準拠したネットワーク通信網のことである。
【0059】
レイヤ3スイッチ2B、レイヤ3スイッチ4Bは、いずれも、ネットワーク中継機器であり、IPアドレスによる経路制御を行うものであり、受け取ったIPパケットを目的のIPアドレスに対応する出力ポートへ転送する機能を備えている。また、レイヤ3スイッチ2B、レイヤ3スイッチ4Bは、レイヤ3プロトコルを処理する装置であり、ルータなどの装置もこの類に含まれている。
【0060】
受信局5Bに収納されているデコーダ51は、エンコーダ11から受信したIPパケットをデパケタイズ化(デアセンブル化)した後、元のコンテンツ情報例えば映像信号として、マトリクススイッチ7へ出力する。デコーダ51から出力された映像信号は、マトリクススイッチ7を介して、モニタ8へ入力され、モニタ8において、入力されてきた該映像信号による映像が画面表示される。
【0061】
監視制御端末6Bは、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置であり、受信局5B側に設置されている監視用の端末である。監視制御端末6Bは、常に、デコーダ51と予備デコーダ5Zとにアクセスすることによって、受信局5Bの稼動状況を監視することができ、そして、受信局5Bを制御する機能を備えている。また、監視制御端末6Bは、デコーダ51、予備デコーダ5Zの出力を切り替えて、後段装置のモニタ8に入力するための切り替え手段であるマトリクススイッチ7を制御する機能も備えており、デコーダ51と予備デコーダ5Zとのいずれかの出力先をモニタ8へ接続する制御を行う。さらに、監視制御端末6Bは、必要に応じて、IPパケットの経路制御を行うレイヤ3スイッチ4Bに対して、レイヤ3スイッチ4B内のルーティングテーブルの書き替えを指示するルーティング情報書き替え制御情報を送信する機能を備えており、受信局5B内の現用側のデコーダ51の故障を検出した際に、IPパケットの転送先を現用側のデコーダ51から予備デコーダ5Zに切り替えることを指示するルーティング情報書き替え制御情報をレイヤ3スイッチ4Bに直接送信して、レイヤ3スイッチ4B内のルーティングテーブルを書き替える制御を行う。
【0062】
(第3の実施形態の動作の説明)
次に、図5に示す映像IPパケット配信システム100Bの動作の一例を、図6のシーケンスチャートを参照して詳細に説明する。図6は、図5の映像IPパケット配信システム100Bの動作の一例を説明するためのシーケンスチャートであり、図5のレイヤ3スイッチ(L3−SW)4B、受信局5Bに収納されているデコーダ51、予備デコーダ5Z、監視制御端末6B、マトリクススイッチ7の動作について示している。
【0063】
図6のシーケンスチャートにおいては、第1の実施形態の場合と同様に、コンテンツ配信サーバ1のエンコーダ11から送出されたIPパケットが、ユニキャスト配信として、レイヤ3スイッチ(L3−SW)2B、ネットワーク3、レイヤ3スイッチ(L3−SW)4Bを介して、受信局5Bのデコーダ51で受信されている状態にある。また、監視制御端末6Bは、第1の実施形態の場合と同様に、受信局5Bの監視制御を行うために、あらかじめ定めた周期で、常時、デコーダ51と予備デコーダ5Zとに対して、アクセスを行っている(シーケンスC1、C3)。
【0064】
そして、監視制御端末6Bからのアクセスに応答する現用側のデコーダ51と予備デコーダ5Zとは、監視制御端末6Bに対して、それぞれの稼働状況を返信し、監視制御端末6Bは、第1の実施形態の場合と同様に、それぞれの稼働状況を受信することができる(シーケンスC2、C4)。さらに、現用側の51は、あらかじめ定めた周期であるいはIPパケットの復号処理を行う都度、自発的に、監視制御端末6Bに対して、その稼働状況を送信することも可能である(シーケンスC5)。デコーダ51、予備デコーダ5Zの稼働状況として監視制御端末6Bに送信される情報は、それぞれの装置アラーム/装置ステータスや、設定パラメータ情報などである。
【0065】
監視制御端末6Bは、受信した稼動状況の解析結果として、故障などにより、N台の現用側のデコーダ51が、IPパケットを映像信号に復号して、モニタ8に対して出力することが不能であると判断すると(シーケンスC6)、第1の実施形態の場合と同様に、直ちに、予備デコーダ5Zに対して、故障したデコーダ51と同じ設定パラメータを設定する(シーケンスC7)。この時、現用側のデコーダ51に割り付けられていたIPアドレスなどのネットワークパラメータも予備デコーダ5Zへ設定している。
【0066】
さらに、監視制御端末6Bは、マトリクススイッチ7を制御して、モニタ8への映像信号の入力を、動作が異常な現用側のデコーダ51から予備デコーダ5Zからの出力に切り替える(シーケンスC8)。
【0067】
しかる後、デコーダ51の設定パラメータを引き継いだ予備デコーダ5Zは、監視制御端末6BからIPパケット受信動作開始を指示する制御信号を受け取ると(シーケンスC9)、第1の実施形態の場合とは異なり、IPパケットの経路制御を行うレイヤ3スイッチ4Bに対してARP(Address Resolution Protocol)通知情報を送信する代わりに、レイヤ3スイッチ4BからのIPパケットの受信待ち状態に移行する(シーケンスC10)。
【0068】
一方、監視制御端末6Bは、レイヤ3スイッチ4Bに対して、当該レイヤ3スイッチ4B内に有しているルーティングテーブルを、現用側のデコーダ51へのルーティング情報から予備デコーダ5Zへのルーティング情報に切り替えることを指示するルーティング情報書き替え制御情報を送信する(シーケンスC11)。
【0069】
該ルーティング情報書き替え制御情報を受け取ったレイヤ3スイッチ4Bは、内部に有しているルーティングテーブル上のデータの中で、デコーダ51のIPアドレスに対応していた転送ポートを予備デコーダ5Zの転送ポートへ書き替える(シーケンスC12)。これにより、レイヤ3スイッチ4Bにおいて、本来はデコーダ51へ転送されるIPパケットが、予備デコーダ5Zのポートへ転送される状態に切り替えられる(シーケンスC13)。
【0070】
而して、受信局5B内の現用側のデコーダ51の動作が異常になった場合には、エンコーダ11から送出されたIPパケットは、動作が異常になったデコーダ51の代わりに、正常な動作が可能な予備デコーダ5Zにて受信される状態に迅速に切り替わって、映像信号に正しくデコードされて、予備デコーダ5Z側に出力が切り替えられているマトリクススイッチ7を介して、モニタ8に出力され、該映像信号による映像がモニタ8に継続して画面表示されることになる。
【0071】
(第3の実施形態の効果の説明)
本第3の実施形態によれば、以上に詳細に説明したように、第1の実施形態の場合と同様の効果が得られるのみならず、さらに、IPパケットの経路制御を行うレイヤ3スイッチ4Bのルーティング制御を、受信局5Bの予備デコーダ5Zが行うのではなく、監視制御端末6Bが直接行う仕組みを採用しているので、受信局5Bの予備デコーダ5Zは、レイヤ3スイッチ4Bに対してアドレス情報の変更通知を行うARP通知機能を特別に実装させる必要がなくなり、受信局5Bの簡素化を図ることができる。
【0072】
以上、本発明の好適実施例の構成を説明した。しかし、斯かる実施例は、本発明の単なる例示に過ぎず、何ら本発明を限定するものではないことに留意されたい。本発明の要旨を逸脱することなく、特定用途に応じて種々の変形変更が可能であることが、当業者には容易に理解できよう。例えば、本発明の実施態様は、課題を解決するための手段における構成(1)に加えて、次のような構成として表現できる。
(2)前記監視制御端末は、前記受信局の前記現用側の受信機と前記予備側の受信機との稼動状態を監視して、動作の異常を検出した際に、以降の前記IPパケットを受信すべき当該受信機を制御して、前記レイヤ3スイッチに対して、前記ARP通知情報を送信させる代わりに、前記レイヤ3スイッチ内に有するルーティングテーブルの書き替えを指示するルーティング情報書き替え制御情報を、前記レイヤ3スイッチに対して、当該監視制御端末から直接送信する上記(1)のIPパケット配信システム。
(3)前記受信局は、前記現用側の受信機として、配信されてくる複数個のIPパケットそれぞれを受信して、それぞれの元のコンテンツ情報に復号して出力する複数台の現用側の受信機を備え、前記予備側の受信機は、複数台の前記現用側の受信機それぞれに関して、予備用として共通に利用することができる上記(1)または(2)のIPパケット配信システム。
(4)前記受信局の前記現用側の受信機と前記予備側の受信機との出力を切り替えて、後段の装置に入力するための切り替え手段をさらに備え、前記監視制御端末は、前記受信局の前記現用側の受信機と前記予備側の受信機との稼動状態を監視して、動作の異常を検出した際に、前記切り替え手段を制御して、以降の前記IPパケットを受信すべき前記受信機からの出力を、後段の前記装置に入力させるように制御する上記(1)ないし(3)のいずれかのIPパケット配信システム。
(5)コンテンツ情報をIPパケット化してネットワークを介して配信するIPパケット配信システムにおいて、配信されてくるIPパケットを受信して元のコンテンツ情報に復号して出力する受信機を切り替える受信機切り替え方法であって、前記受信機として現用側の受信機と予備側の受信機とを備え、さらに、前記現用側の受信機と前記予備側の受信機との稼動状態を監視して制御する監視制御端末を備え、前記監視制御端末が、前記受信機の動作の異常を検出した際に、前記現用側の受信機と前記予備側の受信機のうち、以降の前記IPパケットを受信すべき受信機への切り替えを制御するとともに、前記IPパケットを受信すべき当該受信機を制御して、前記受信局へのIPパケットの経路制御を行うネットワーク側の中継装置であるレイヤ3スイッチに対して、アドレス解決のための情報として前記IPパケットを受信すべき当該受信機に関するアドレス情報を少なくとも含むARP(Address Resolution Protocol)通知情報を送信させる受信機切り替え方法。
(6)前記監視制御端末は、前記受信局の前記現用側の受信機と前記予備側の受信機との稼動状態を監視して、動作の異常を検出した際に、以降の前記IPパケットを受信すべき当該受信機を制御して、前記レイヤ3スイッチに対して、前記ARP通知情報を送信させる代わりに、前記レイヤ3スイッチ内に有するルーティングテーブルの書き替えを指示するルーティング情報書き替え制御情報を、前記レイヤ3スイッチに対して、当該監視制御端末から直接送信する上記(5)の受信機切り替え方法。
(7)前記現用側の受信機として、配信されてくる複数個のIPパケットそれぞれを受信して、それぞれの元のコンテンツ情報に復号して出力する複数台の現用側の受信機を備え、前記予備側の受信機は、複数台の前記現用側の受信機それぞれに関して、予備用として共通に利用することができる上記(5)または(6)の受信機切り替え方法。
(8)前記現用側の受信機と前記予備側の受信機との出力を切り替えて、後段の装置に入力するための切り替え手段をさらに備え、前記監視制御端末は、前記受信局の前記現用側の受信機と前記予備側の受信機との稼動状態を監視して、動作の異常を検出した際に、前記切り替え手段を制御して、以降の前記IPパケットを受信すべき前記受信機からの出力を、後段の前記装置に入力させるように制御する上記(5)ないし(7)のいずれかに記載の受信機切り替え方法。
(9)上記(5)ないし(8)のいずれかの受信機切り替え方法を、コンピュータによって実行可能なプログラムとして実施している受信機切り替えプログラム。
(10)上記(9)の受信機切り替えプログラムを、コンピュータによって読み取り可能な記録媒体に記録しているプログラム記録媒体。
【符号の説明】
【0073】
1 コンテンツ配信サーバ
1A コンテンツ配信サーバ
2 レイヤ3スイッチ(L3−SW)
2A レイヤ3スイッチ(L3−SW)
2B レイヤ3スイッチ(L3−SW)
3 ネットワーク
4 レイヤ3スイッチ(L3−SW)
4A レイヤ3スイッチ(L3−SW)
4B レイヤ3スイッチ(L3−SW)
5 受信局
5A 受信局
5B 受信局
6 監視制御端末
6A 監視制御端末
6B 監視制御端末
7 マトリクススイッチ
7A マトリクススイッチ
8 モニタ
8A モニタ群
11 エンコーダ
1N エンコーダ
51 デコーダ
5N デコーダ
5Z 予備デコーダ
81 モニタ
8N モニタ
100 映像IPパケット配信システム
100A 映像IPパケット配信システム
100B 映像IPパケット配信システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンテンツ情報をIPパケット化してネットワークを介して配信するIPパケット配信システムにおいて、配信されてくるIPパケットを受信して元のコンテンツ情報に復号して出力する受信機として現用側の受信機と予備側の受信機とを有する受信局を備え、さらに、前記受信局の前記現用側の受信機と前記予備側の受信機との稼動状態を監視して、動作の異常を検出した際に、前記現用側の受信機と前記予備側の受信機のうち、以降の前記IPパケットを受信すべき受信機への切り替えを制御するとともに、以降の前記IPパケットを受信すべき当該受信機を制御して、前記受信局へのIPパケットの経路制御を行うネットワーク側の中継装置であるレイヤ3スイッチに対して、アドレス解決のための情報として前記IPパケットを受信すべき当該受信機に関するアドレス情報を少なくとも含むARP(Address Resolution Protocol)通知情報を送信させる機能を少なくとも有する監視制御端末を備えていることを特徴とするIPパケット配信システム。
【請求項2】
前記監視制御端末は、前記受信局の前記現用側の受信機と前記予備側の受信機との稼動状態を監視して、動作の異常を検出した際に、以降の前記IPパケットを受信すべき当該受信機を制御して、前記レイヤ3スイッチに対して、前記ARP通知情報を送信させる代わりに、前記レイヤ3スイッチ内に有するルーティングテーブルの書き替えを指示するルーティング情報書き替え制御情報を、前記レイヤ3スイッチに対して、当該監視制御端末から直接送信することを特徴とする請求項1に記載のIPパケット配信システム。
【請求項3】
前記受信局は、前記現用側の受信機として、配信されてくる複数個のIPパケットそれぞれを受信して、それぞれの元のコンテンツ情報に復号して出力する複数台の現用側の受信機を備え、前記予備側の受信機は、複数台の前記現用側の受信機それぞれに関して、予備用として共通に利用することができることを特徴とする請求項1または2に記載のIPパケット配信システム。
【請求項4】
前記受信局の前記現用側の受信機と前記予備側の受信機との出力を切り替えて、後段の装置に入力するための切り替え手段をさらに備え、前記監視制御端末は、前記受信局の前記現用側の受信機と前記予備側の受信機との稼動状態を監視して、動作の異常を検出した際に、前記切り替え手段を制御して、以降の前記IPパケットを受信すべき前記受信機からの出力を、後段の前記装置に入力させるように制御することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のIPパケット配信システム。
【請求項5】
コンテンツ情報をIPパケット化してネットワークを介して配信するIPパケット配信システムにおいて、配信されてくるIPパケットを受信して元のコンテンツ情報に復号して出力する受信機を切り替える受信機切り替え方法であって、前記受信機として現用側の受信機と予備側の受信機とを備え、さらに、前記現用側の受信機と前記予備側の受信機との稼動状態を監視して制御する監視制御端末を備え、前記監視制御端末が、前記受信機の動作の異常を検出した際に、前記現用側の受信機と前記予備側の受信機のうち、以降の前記IPパケットを受信すべき受信機への切り替えを制御するとともに、前記IPパケットを受信すべき当該受信機を制御して、前記受信局へのIPパケットの経路制御を行うネットワーク側の中継装置であるレイヤ3スイッチに対して、アドレス解決のための情報として前記IPパケットを受信すべき当該受信機に関するアドレス情報を少なくとも含むARP(Address Resolution Protocol)通知情報を送信させることを特徴とする受信機切り替え方法。
【請求項6】
前記監視制御端末は、前記受信局の前記現用側の受信機と前記予備側の受信機との稼動状態を監視して、動作の異常を検出した際に、以降の前記IPパケットを受信すべき当該受信機を制御して、前記レイヤ3スイッチに対して、前記ARP通知情報を送信させる代わりに、前記レイヤ3スイッチ内に有するルーティングテーブルの書き替えを指示するルーティング情報書き替え制御情報を、前記レイヤ3スイッチに対して、当該監視制御端末から直接送信することを特徴とする請求項5に記載の受信機切り替え方法。
【請求項7】
前記現用側の受信機として、配信されてくる複数個のIPパケットそれぞれを受信して、それぞれの元のコンテンツ情報に復号して出力する複数台の現用側の受信機を備え、前記予備側の受信機は、複数台の前記現用側の受信機それぞれに関して、予備用として共通に利用することができることを特徴とする請求項5または6に記載の受信機切り替え方法。
【請求項8】
前記現用側の受信機と前記予備側の受信機との出力を切り替えて、後段の装置に入力するための切り替え手段をさらに備え、前記監視制御端末は、前記受信局の前記現用側の受信機と前記予備側の受信機との稼動状態を監視して、動作の異常を検出した際に、前記切り替え手段を制御して、以降の前記IPパケットを受信すべき前記受信機からの出力を、後段の前記装置に入力させるように制御することを特徴とする請求項5ないし7のいずれかに記載の受信機切り替え方法。
【請求項9】
請求項5ないし8のいずれかに記載の受信機切り替え方法を、コンピュータによって実行可能なプログラムとして実施していることを特徴とする受信機切り替えプログラム。
【請求項10】
請求項9に記載の受信機切り替えプログラムを、コンピュータによって読み取り可能な記録媒体に記録していることを特徴とするプログラム記録媒体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−188010(P2011−188010A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−47821(P2010−47821)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】