説明

ITO焼結体、ITOスパッタリングターゲット及びその製造方法

【課題】高い強度を有するITO燒結体、スパッタリングターゲット及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明のITO焼結体は、酸化スズを8〜12重量%、並びに元素の周期表の2a族及び4a族元素のうちの少なくとも1種の元素の酸化物を0.001〜0.1重量%含み、残部が酸化インジウムからなる。このITO燒結体からなるターゲット。これらの酸化物を上記量で配合し、成形した後焼成してITOスパッタリングターゲットを得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ITO燒結体、ITOスパッタリングターゲット及びその製造方法、特に高い強度を有するITO燒結体、この燒結体を用いたスパッタリングターゲット及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置等の表示装置や透明電極等の技術分野で、ITO透明導電膜が広く使用されている。このITO透明導電膜は、操作が簡便であるという点から、スパッタリング法により形成されることが多くなっている。ITOスパッタリングターゲットを用いて得られたITO透明導電性膜は、その透明性と導電性とに優れていることから、半導体技術分野で注目されている。
【0003】
この場合、ITO燒結体からなるスパッタリングターゲット材を銅材料等からなるバッキングプレート部材へ接合することにより、スパッタリングプロセスで用いるスパッタリングターゲットが作製されるが、このターゲット材の強度が弱いと接合時やスパッタプロセス中に割れてしまうという問題が生じる。
【0004】
そのため、例えば、ターゲットの割れの防止等を意図したものとして、燒結密度90%以上100%以下、燒結粒径1μm以上20μm以下である高密度ITO燒結体からなるスパッタリングターゲットが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この場合、酸化インジウムと酸化スズとの混合粉末を特定の燒結温度で燒結することにより、目的とする燒結密度及び燒結粒径を有するITO燒結体を得ており、実際に得られている燒結体の抗析力は17〜23kg/mmである。
【0005】
また、Snが固溶した酸化インジウム粉末を、真空中で熱処理したのち粉末とし、この粉末を成形後燒結してITOスパッタリングターゲットを得ることが提案されている(例えば、特許文献2参照)。この場合、得られたターゲットの抗折力は15〜18kg/mmである。しかし、この程度の抗折力では、必ずしも接合時やスパッタプロセス中の割れを防止できないことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−311428号公報(特許請求の範囲、段落番号:0033及び表1)
【特許文献2】特開平6−2124号公報(特許請求の範囲、段落番号:0005、表2及び表3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、上述の従来技術の問題点を解決し、高い強度を有するITO燒結体、ITOスパッタリングターゲット及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のITO燒結体は、酸化スズと酸化インジウムとを含むITO燒結体において、酸化スズを8〜12重量%、並びに元素の周期表の2a族及び4a族元素のうちの少なくとも1種の元素の酸化物を0.001〜0.1重量%含み、残部が酸化インジウムであることを特徴とする。
【0009】
本発明のITO燒結体はまた、酸化スズと酸化インジウムとを含むITO燒結体において、酸化スズを8〜12重量%、並びに元素の周期表の2a族及び4a族元素のうちの少なくとも1種の元素の酸化物を0.01〜0.1重量%含み、残部が酸化インジウムであることを特徴とする。
【0010】
2a族及び4a族元素の酸化物は、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、Zr及びHfの酸化物であることが好ましい。
【0011】
2a族及び4a族元素の酸化物は、燒結体の結晶粒界に分散して存在している。
【0012】
本発明のITOスパッタリングターゲットは、上記ITO燒結体からなることを特徴とする。
【0013】
本発明のITOスパッタリングターゲットの製造方法は、酸化インジウム、酸化スズ、並びに元素の周期表の2a族及び4a族元素のうちの少なくとも1種の元素の酸化物を、酸化スズ8〜12重量%、元素の周期表の2a族及び4a族元素のうちの少なくとも1種の元素の酸化物0.001〜0.1重量%、並びに酸化インジウム残部の割合で配合して混練した後、乾燥造粒し、この造粒粉を静水圧プレスし、次いで大気中で焼成することを特徴とする。この2a族及び4a族元素の酸化物は、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、Zr及びHfの酸化物であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、高い強度を有するITO燒結体及びITOスパッタリングターゲットを提供できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のITOスパッタリングターゲットの結晶構造を模式的に示す構造図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明によれば、酸化インジウム及び酸化スズに対して特定の元素の酸化物を特定量配合することにより、高い強度を有するITO燒結体及びこの燒結体からなるITOスパッタリングターゲットを提供できる。すなわち、酸化スズ及び酸化インジウムを含むITO燒結体において、酸化スズを5〜15重量%、好ましくは8〜12重量%、並びに周期表の2a族及び4a族元素のうちの少なくとも1種の元素の酸化物を0.001〜0.1重量%、好ましくは0.01〜0.1重量%含み、残部が酸化インジウムである高強度燒結体及びこの燒結体からなるITOスパッタリングターゲットを提供できる。ここで、2a族及び4a族元素のうちの少なくとも1種の元素の酸化物とは、2a族及び4a族元素のいずれか一方の少なくとも1種の元素の酸化物、又は2a族及び4a族元素のそれぞれの少なくとも1種の元素の酸化物(この場合、少なくとも2種の元素の酸化物となる)を意味する。すなわち、2a族元素だけの場合も4a族元素だけの場合も、両方の場合も含まれる。
【0017】
本発明によれば、酸化スズ含量を8〜12重量%の範囲とすることが好ましいが、酸化スズ含量が7重量%以下及び13重量%以上であるITOスパッタリングターゲットを用いてスパッタリングすると、得られるITO膜の膜抵抗が高くなる傾向がある。
【0018】
2a族元素の酸化物は、Mg、Ca、Sr及びBaの酸化物であり、また、4a族元素の酸化物は、Ti、Zr及びHfの酸化物である。
【0019】
本発明で使用する酸化インジウムとしては、BET比表面積が5〜15m/gである粉末を使用することが好ましく、酸化スズとしては、BET比表面積が5〜15m/gである粉末を使用することが好ましく、また、2a族及び4a族元素の酸化物としては、BET比表面積が5〜10m/gである粉末を使用すること好ましい。これらのBET比表面積の範囲内の酸化物粉末を使用すれば、均一な燒結体が得られる。
【0020】
上記酸化物粉末を適宜選択して、それぞれを所定量配合し、大気(空気)雰囲気中又は空気と酸素との混合雰囲気中で1500〜1600℃で焼成すれば、高い強度を有するITO燒結体を得ることができ、この燒結体からITOスパッタリングターゲットを得ることができる。
【0021】
かくして得られた燒結体は、EPMA(Electron Probe Micro Analyzer)によって観測したところ、その母相(酸化インジウム及び酸化ジルコニウム)のITO燒結粒子の結晶粒界に2a族元素の酸化物及び/又は4a族元素の酸化物が分散して存在していることが分かる。図1にその結晶構造を模式的に示す。燒結体をバッキングプレートへ接合する時の燒結体の割れ又はスパッタリングプロセス中のターゲットの割れは、クラックの起点から粒界を通じてその割れが拡がって生じるが、本発明のITO燒結体及びこの燒結体から得られたITOスパッタリングターゲットの場合は強度が非常に高いためか、その割れは結晶粒界に存在する分散粒子が抑えているものと考えられる。一般的に強度が高いと割れ難くなることは知られている。
【0022】
次に、本発明を実施例及び比較例に基づいて説明する。
【実施例1】
【0023】
BET比表面積10m/gの酸化スズ10wt%、酸化ジルコニウム0.01wt%、酸化マグネシウム0.01wt%、及びBET比表面積15m/gの酸化インジウム残部を配合し、この配合物に、分散剤としての界面活性剤を0.5wt%、バインダーとしてのPVAを1wt%、所定量の水を加えて、スラリー濃度が75wt%になるようにし、これをボールミル中で混練した。得られたスラリーをスプレードライヤーにて乾燥造粒し、造粒粉を得た。この造粒粉をゴム型へ投入し、静水圧プレス(2t/cm)でプレスして成形体を得た。この成形体を1600℃大気雰囲気中で焼成し燒結体を得、かくして得られた燒結体から3×4×40mmの試験片を切り出してJIS R1601に従って4点曲げ試験を実施した。また、燒結体のバルク抵抗値を公知の4探針法にて測定した。
【実施例2】
【0024】
BET比表面積10m/gの酸化スズ10wt%、酸化ジルコニウム0.01wt%、酸化カルシウム0.01wt%、及びBET比表面積15m/gの酸化インジウム残部を配合し、この配合物に、分散剤としての界面活性剤を0.5wt%、バインダーとしてのPVAを1wt%、所定量の水を加えて、スラリー濃度が75wt%になるようにし、これをボールミル中で混練した。得られたスラリーをスプレードライヤーにて乾燥造粒し、造粒粉を得た。この造粒粉をゴム型へ投入し、静水圧プレス(2t/cm)でプレスして成形体を得た。この成形体を1600℃大気雰囲気中で焼成し燒結体を得、かくして得られた燒結体から3×4×40mmの試験片を切り出してJIS R1601に従って4点曲げ試験を実施した。また、燒結体のバルク抵抗値を公知の4探針法にて測定した。
【実施例3】
【0025】
BET比表面積10m/gの酸化スズ10wt%、酸化ジルコニウム0.05wt%、酸化カルシウム0.05wt%、及びBET比表面積15m/gの酸化インジウム残部を配合し、この配合物に、分散剤としての界面活性剤を0.5wt%、バインダーとしてのPVAを1wt%、所定量の水を加えて、スラリー濃度が75wt%になるようにし、これをボールミル中で混練した。得られたスラリーをスプレードライヤーにて乾燥造粒し、造粒粉を得た。この造粒粉をゴム型へ投入し、静水圧プレス(2t/cm)でプレスして成形体を得た。この成形体を1600℃大気雰囲気中で焼成し燒結体を得、かくして得られた燒結体から3×4×40mmの試験片を切り出してJIS R1601に従って4点曲げ試験を実施した。また、燒結体のバルク抵抗値を公知の4探針法にて測定した。
【実施例4】
【0026】
BET比表面積10m/gの酸化スズ10wt%、酸化ジルコニウム0.05wt%、酸化ハフニウム0.02wt%、及びBET比表面積15m/gの酸化インジウム残部を配合し、この配合物に、分散剤としての界面活性剤を0.5wt%、バインダーとしてのPVAを1wt%、所定量の水を加えて、スラリー濃度が75wt%になるようにし、これをボールミル中で混練した。得られたスラリーをスプレードライヤーにて乾燥造粒し、造粒粉を得た。この造粒粉をゴム型へ投入し、静水圧プレス(2t/cm)でプレスして成形体を得た。この成形体を1600℃大気雰囲気中で焼成し燒結体を得、かくして得られた燒結体から3×4×40mmの試験片を切り出してJIS R1601に従って4点曲げ試験を実施した。また、燒結体のバルク抵抗値を公知の4探針法にて測定した。
【実施例5】
【0027】
BET比表面積10m/gの酸化スズ10wt%、酸化ジルコニウム0.002wt%、酸化マグネシウム0.002wt%、及びBET比表面積15m/gの酸化インジウム残部を配合し、この配合物に、分散剤としての界面活性剤を0.5wt%、バインダーとしてのPVAを1wt%、所定量の水を加えて、スラリー濃度が75wt%になるようにし、これをボールミル中で混練した。得られたスラリーをスプレードライヤーにて乾燥造粒し、造粒粉を得た。この造粒粉をゴム型へ投入し、静水圧プレス(2t/cm)でプレスして成形体を得た。この成形体を1600℃大気雰囲気中で焼成し燒結体を得、かくして得られた燒結体から3×4×40mmの試験片を切り出してJIS R1601に従って4点曲げ試験を実施した。また、燒結体のバルク抵抗値を公知の4探針法にて測定した。
【実施例6】
【0028】
BET比表面積10m/gの酸化スズ10wt%、酸化ジルコニウム0.001wt%、酸化マグネシウム0.001wt%、及びBET比表面積15m/gの酸化インジウム残部を配合し、この配合物に、分散剤としての界面活性剤を0.5wt%、バインダーとしてのPVAを1wt%、所定量の水を加えて、スラリー濃度が75wt%になるようにし、これをボールミル中で混練した。得られたスラリーをスプレードライヤーにて乾燥造粒し、造粒粉を得た。この造粒粉をゴム型へ投入し、静水圧プレス(2t/cm)でプレスして成形体を得た。この成形体を1600℃大気雰囲気中で焼成し燒結体を得、かくして得られた燒結体から3×4×40mmの試験片を切り出してJIS R1601に従って4点曲げ試験を実施した。また、燒結体のバルク抵抗値を公知の4探針法にて測定した。
【実施例7】
【0029】
BET比表面積10m/gの酸化スズ10wt%、酸化ジルコニウム0.001wt%、及びBET比表面積15m/gの酸化インジウム残部を配合し、この配合物に、分散剤としての界面活性剤を0.5wt%、バインダーとしてのPVAを1wt%、所定量の水を加えて、スラリー濃度が75wt%になるようにし、これをボールミル中で混練した。得られたスラリーをスプレードライヤーにて乾燥造粒し、造粒粉を得た。この造粒粉をゴム型へ投入し、静水圧プレス(2t/cm)でプレスして成形体を得た。この成形体を1600℃大気雰囲気中で焼成し燒結体を得、かくして得られた燒結体から3×4×40mmの試験片を切り出してJIS R1601に従って4点曲げ試験を実施した。また、燒結体のバルク抵抗値を公知の4探針法にて測定した。
【実施例8】
【0030】
BET比表面積10m/gの酸化スズ10wt%、酸化ジルコニウム0.1wt%、及びBET比表面積15m/gの酸化インジウム残部を配合し、この配合物に、分散剤としての界面活性剤を0.5wt%、バインダーとしてのPVAを1wt%、所定量の水を加えて、スラリー濃度が75wt%になるようにし、これをボールミル中で混練した。得られたスラリーをスプレードライヤーにて乾燥造粒し、造粒粉を得た。この造粒粉をゴム型へ投入し、静水圧プレス(2t/cm)でプレスして成形体を得た。この成形体を1600℃大気雰囲気中で焼成し燒結体を得、かくして得られた燒結体から3×4×40mmの試験片を切り出してJIS R1601従って4点曲げ試験を実施した。また、燒結体のバルク抵抗値を公知の4探針法にて測定した。
【実施例9】
【0031】
BET比表面積10m/gの酸化スズ10wt%、酸化カルシウム0.001wt%、及びBET比表面積15m/gの酸化インジウム残部を配合し、この配合物に、分散剤としての界面活性剤を0.5wt%、バインダーとしてのPVAを1wt%、所定量の水を加えて、スラリー濃度が75wt%になるようにし、これをボールミル中で混練した。得られたスラリーをスプレードライヤーにて乾燥造粒し、造粒粉を得た。この造粒粉をゴム型へ投入し、静水圧プレス(2t/cm)でプレスして成形体を得た。この成形体を1600℃大気雰囲気中で焼成し燒結体を得、かくして得られた燒結体から3×4×40mmの試験片を切り出してJIS R1601に従って4点曲げ試験を実施した。また、燒結体のバルク抵抗値を公知の4探針法にて測定した。
【実施例10】
【0032】
BET比表面積10m/gの酸化スズ10wt%、酸化カルシウム0.01wt%、及びBET比表面積15m/gの酸化インジウム残部を配合し、この配合物に、分散剤としての界面活性剤を0.5wt%、バインダーとしてのPVAを1wt%、所定量の水を加えて、スラリー濃度が75wt%になるようにし、これをボールミル中で混練した。得られたスラリーをスプレードライヤーにて乾燥造粒し、造粒粉を得た。この造粒粉をゴム型へ投入し、静水圧プレス(2t/cm)でプレスして成形体を得た。この成形体を1600℃大気雰囲気中で焼成し燒結体を得、かくして得られた燒結体から3×4×40mmの試験片を切り出してJIS R1601に従って4点曲げ試験を実施した。また、燒結体のバルク抵抗値を公知の4探針法にて測定した。
【実施例11】
【0033】
BET比表面積10m/gの酸化スズ10wt%、酸化カルシウム0.1wt%、及びBET比表面積15m/gの酸化インジウム残部を配合し、この配合物に、分散剤としての界面活性剤を0.5wt%、バインダーとしてのPVAを1wt%、所定量の水を加えて、スラリー濃度が75wt%になるようにし、これをボールミル中で混練した。得られたスラリーをスプレードライヤーにて乾燥造粒し、造粒粉を得た。この造粒粉をゴム型へ投入し、静水圧プレス(2t/cm)でプレスして成形体を得た。この成形体を1600℃大気雰囲気中で焼成し燒結体を得、かくして得られた燒結体から3×4×40mmの試験片を切り出してJIS R1601に従って4点曲げ試験を実施した。また、燒結体のバルク抵抗値を公知の4探針法にて測定した。
(比較例1)
【0034】
BET比表面積10m/gの酸化スズ10wt%、酸化ジルコニウム0.5wt%、及びBET比表面積15m/gの酸化インジウム残部を配合し、この配合物に、分散剤としての界面活性剤を0.5wt%、バインダーとしてのPVAを1wt%、所定量の水を加えて、スラリー濃度が75wt%になるようにし、これをボールミル中で混練した。得られたスラリーをスプレードライヤーにて乾燥造粒し、造粒粉を得た。この造粒粉をゴム型へ投入し、静水圧プレス(2t/cm)でプレスして成形体を得た。この成形体を1600℃大気雰囲気中で焼成し燒結体を得、かくして得られた燒結体から3×4×40mmの試験片を切り出してJIS R1601に従って4点曲げ試験を実施した。また、燒結体のバルク抵抗値を公知の4探針法にて測定した。
(比較例2)
【0035】
BET比表面積10m/gの酸化スズ10wt%、酸化ジルコニウム0.0005wt%、及びBET比表面積15m/gの酸化インジウム残部を配合し、この配合物に、分散剤としての界面活性剤を0.5wt%、バインダーとしてのPVAを1wt%、所定量の水を加えて、スラリー濃度が75wt%になるようにし、これをボールミル中で混練した。得られたスラリーをスプレードライヤーにて乾燥造粒し、造粒粉を得た。この造粒粉をゴム型へ投入し、静水圧プレス(2t/cm)でプレスして成形体を得た。この成形体を1600℃大気雰囲気中で焼成し燒結体を得、かくして得られた燒結体から3×4×40mmの試験片を切り出してJIS R1601に従って4点曲げ試験を実施した。また、燒結体のバルク抵抗値を公知の4探針法にて測定した。
(比較例3)
【0036】
BET比表面積10m/gの酸化スズ10wt%、酸化カルシウム0.5wt%、及びBET比表面積15m/gの酸化インジウム残部を配合し、この配合物に、分散剤としての界面活性剤を0.5wt%、バインダーとしてのPVAを1wt%、所定量の水を加えて、スラリー濃度が75wt%になるようにし、これをボールミル中で混練した。得られたスラリーをスプレードライヤーにて乾燥造粒し、造粒粉を得た。この造粒粉をゴム型へ投入し、静水圧プレス(2t/cm)でプレスして成形体を得た。この成形体を1600℃大気雰囲気中で焼成し燒結体を得、かくして得られた燒結体から3×4×40mmの試験片を切り出してJIS R1601従って4点曲げ試験を実施した。また、燒結体のバルク表面抵抗値を公知の4探針法にて測定した。
【0037】
上記した実施例1〜11及び比較例1〜3で得られたITO燒結体の試験片に対して測定した曲げ強度(MPa)及びバルクの表面抵抗値(mΩ)を以下の表1に纏めて示す。なお、表1中では、2a族及び4a族元素の酸化物及びその添加量(wt%)についても纏めて示す。
【0038】
(表1)

上記表1から、酸化スズと酸化インジウムとを含むITO燒結体において、元素の周期表の2a族及び4a族元素のうちの少なくとも1種の元素の酸化物を0.001〜0.1重量%、好ましくは0.01〜0.1重量%含んでなるITO燒結体の強度は高く、また、そのバルクの表面抵抗は低いことが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明によれば、高い強度を有するITO燒結体、この燒結体からなるITOスパッタリングターゲットを提供できるので、このターゲットを用いてスパッタリング法で形成されるITO透明導電膜を適用する技術分野、例えば、液晶表示装置等の表示装置や透明電極等の技術分野で広く利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化スズと酸化インジウムとを含むITO燒結体において、酸化スズを8〜12重量%、並びに元素の周期表の2a族及び4a族元素のうちの少なくとも1種の元素の酸化物を0.001〜0.1重量%含み、残部が酸化インジウムであることを特徴とするITO燒結体。
【請求項2】
酸化スズと酸化インジウムとを含むITO燒結体において、酸化スズを8〜12重量%、並びに元素の周期表の2a族及び4a族元素のうちの少なくとも1種の元素の酸化物を0.01〜0.1重量%含み、残部が酸化インジウムであることを特徴とするITO燒結体。
【請求項3】
前記2a族及び4a族元素の酸化物が、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、Zr及びHfの酸化物であることを特徴とする請求項1又は2記載のITO燒結体。
【請求項4】
前記2a族及び4a族元素の酸化物が、燒結体の結晶粒界に分散して存在していることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のITO燒結体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のITO燒結体からなることを特徴とするITOスパッタリングターゲット。
【請求項6】
酸化インジウム、酸化スズ、並びに元素の周期表の2a族及び4a族元素のうちの少なくとも1種の元素の酸化物を、酸化スズ8〜12重量%、元素の周期表の2a族及び4a族元素のうちの少なくとも1種の元素の酸化物0.001〜0.1重量%、並びに酸化インジウム残部の割合で配合して混練した後、乾燥造粒し、この造粒粉を静水圧プレスし、次いで大気中で焼成することを特徴とするITOスパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項7】
前記2a族及び4a族元素の酸化物が、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、Zr及びHfの酸化物であることを特徴とする請求項6記載のITOスパッタリングターゲットの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−162440(P2011−162440A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109394(P2011−109394)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【分割の表示】特願2007−30272(P2007−30272)の分割
【原出願日】平成19年2月9日(2007.2.9)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】