説明

MEMSスイッチおよびMEMSスイッチの製造方法

【課題】スイッチにおける損失を低減することができるMEMSスイッチの構造およびその製造方法を提供する。
【解決手段】接点金属薄膜21は、第2の配線3と対向する部分のみに設けられている。これにより、高い周波数の信号がその接点金属薄膜21を通過する距離が短くなるので、MEMSスイッチにおける損失を低減させることができる。すなわち、いわゆる表皮効果により、高周波信号の周波数が高いほど信号が導体の表面を流れるようになり、その表面が抵抗率の高い材料で覆われている場合には覆われていない場合に比べてスイッチの損失が増大する。しかしながら、上述したように第2の配線3と対向する部分のみに接点金属薄膜21を設けたので、高い周波数の信号がその接点金属薄膜21を通過する距離が短くなるので、スイッチの損失が増大するのを防ぐことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術により、電気信号の通過や遮断を制御するMEMSスイッチおよびMEMSスイッチの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機、PDA(Personal Digital Assistant)、PC(Personal Computer)などの無線通信が可能な小型端末装置では、ブロードバンド化やグローバル化の進展に伴って、数GHz帯以上の高周波領域を含む様々な周波数帯を用いた複数の通信方式への対応が求められている。一般に、小型端末装置においては、高周波スイッチで通信に用いるアンテナや送受信回路を切り替えることにより、複数の通信方式への対応を実現している。小型端末装置の特性を踏まえると、その高周波スイッチには、低挿入損失かつ高アイソレーションであり、小型かつ低背であり、低電圧で駆動でき、低消費電力であることが望まれる。また、例えばパワーアンプを切り替えるためのスイッチなど、高周波回路の送信部に適用される場合を踏まえると、その高周波スイッチには、数ワットの大電力信号の通過および遮断を切り替えられることが望まれる。
【0003】
そこで、このような数GHz帯以上の高周波信号のスイッチングに適した高周波スイッチとして、 MEMSスイッチが注目されている。このMEMSスイッチは、機械的に可動とされた接点を有するものであり、高周波領域を含む広い周波数帯での低い挿入損失や高いアイソレーションが期待することができる(例えば、非特許文献1参照)。特に、静電引力で駆動するMEMSスイッチは、消費電力も小さいという特徴もある。
【0004】
このようなMEMSスイッチでは、挿入損失をさらに低下させるために、接点材料に金を用いることが行われている。ところが、金は互いに固着しやすい材料であるので、金を接点材料に用いると接点が接触したときに固着してしまう。この固着しようとする力(以下、固着力という)がMEMSスイッチによるその接点を離れさせるための復元力を上回ると、接点が接触したまま離間することができなくなってしまう。このような状態が生じると、MEMSスイッチとしては、信号通過の状態が継続され、信号を遮断できなくなってしまう。このような故障は、特に接点を大電力が通過するときや多数回の繰り返し動作時に生じやすい。このような場合であっても信号を遮断できるようにするには、MEMSスイッチによる復元力が金の固着力を上回るようにする必要があるが、復元力を大きくしようとすると、駆動させるために必要な電圧も大きくなってしまう。このように、高耐電力や高繰り返し耐性と低電圧駆動とは、トレードオフの関係にあった。
【0005】
このような問題を解決するために、接点材料に、Ru(ルテニウム)、Rh(ロジウム)またはAuCo(金コバルト)を用いることにより、動作特性に関与しない程度にまで接点の固着力を低減する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。また、接点材料の一方を金で構成し、他方をIr、Rh、Os、Ru、Re、Teの中から選ばれた1つの金属、または、TiN、ZrN、HfN、VNの中から選ばれた1つの金属を含む材料から構成することにより、接触抵抗を低く保ち、寿命を長くする技術も提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−266727号公報
【特許文献2】特開2008−053077号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】G.M.Rebeiz and J.B.Muldavin, “RF MEMS switches and switch circuits", IEEE Microwave Magazine, Vol.2, No.4, pp.59-71, Dec.2001.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したような従来のMEMSスイッチでは、接点材料を、この材料を設ける面のほぼ全面に亘って設けている。例えば、特許文献1には、基板上に設けられた固定金属と、基板上方において基板に対して略平行に設けられた梁の下面に設けられた下部電極とを備え、梁が下方に移動することにより固定金属と下部電極とが接触するMEMSスイッチが開示されている。このMEMSスイッチでは、上述したような接点材料からなる下部電極が梁の下面全体に亘って形成されている。また、特許文献2には、基板上に設けられた信号線と、この信号線が離間した部分の上方に設けられた絶縁性部材の下面に設けられた接触電極とを備え、この接触電極が下方に移動して信号線の離間した部分の両縁部に接触することにより、信号線を導通させるマイクロマシンスイッチが開示されている。このマイクロマシンスイッチでは、上述したような接点材料からなる接触金属が絶縁性部材の下面全体に亘って形成されている。
【0009】
このようなMEMSスイッチに周波数の高い信号が流れると、いわゆる表皮効果により、その信号はMEMSスイッチの構成する部材の表面を流れることとなる。このため、上述した従来のMEMSスイッチのように、抵抗率の高い接点材料をこの材料を設ける面のほぼ全面に亘って設けると、高い周波数の信号がその抵抗率の高い接点材料を主に通過することになるので、その信号の損失が増大してしまう。
【0010】
そこで、本発明は、スイッチにおける損失を低減することができるMEMSスイッチの構造およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述したような課題を解決するために、本発明に係るMEMSスイッチは、少なくとも上面が絶縁材料からなる基板と、少なくとも一部が基板の上面に設けられた第1の配線と、この第1の配線と離間し、少なくとも一部が上面に設けられた第2の配線と、外部信号により移動する移動部を備えたMEMS機構と、基板上方に設けられ、一部が第1の配線および第2の配線の少なくとも一方と対向配置され、移動部が移動することにより第1の配線および第2の配線の少なくとも一方と互いに対向する領域を接触させて第1の配線と第2の配線とを導通させる接触部材と、第1の配線および第2の配線と対向する接触部材の一部のみ、ならびに、この一部と対向する第1の配線および第2の配線の少なくとも一方の領域のみのうち少なくとも1つに形成された薄膜とを備え、薄膜は、ロジウム、イリジウム、白金およびルテニウムの中から選ばれた1つ、または、ロジウム、イリジウム、白金、ルテニウム、オスミウム、金、銀、銅、および、パラジウムの中から選ばれた2つ以上の金属を含む材料から構成され、第1の配線、第2の配線および接触部材は、金、銀、銅、および、アルミニウムの中から選ばれた少なくとも1つの金属から構成されることを特徴とするものである。
【0012】
上記MEMSスイッチにおいて、第1の配線および第2の配線と対向する接触部材の一部、または、この一部と対向する第1の配線および第2の配線の少なくとも一方に設けられ、対向配置された第1の配線および第2の配線の少なくとも一方または接触部材の一部に向かって突出した突出部をさらに備えるようにしてもよい。
【0013】
また、上記MEMSスイッチにおいて、薄膜は、厚さが0.1μm以下であるようにしてもよい。
【0014】
また、上記MEMSスイッチにおいて、第1の配線および第2の配線の厚さは、薄膜の厚さより大きいようにしてもよい。
【0015】
また、上記MEMSスイッチにおいて、MEMS機構は、上面から垂設され、かつ、第2の配線と接続された支持部材と、この支持部材により一端が支持された基板の平面方向に延在するばね部材と、このばね部材の他端に接続され、基板の平面方向に対して垂直な方向に移動可能とされた移動電極と、上面に移動電極と対向配置され、移動電極との間に生じる電位差により移動電極を変位させる制御電極とをさらに備え、接触部材は、移動電極に支持され、ばね部材は、金、銀、銅、および、アルミニウムの中から選ばれた1つ以上の金属から構成されるようにしてもよい。
【0016】
また、本発明に係るMEMSスイッチの製造方法は、少なくとも上面が絶縁材料からなる基板の上面に、金、銀、銅、および、アルミニウムの中から選ばれた少なくとも1つの金属から構成される第1の配線を形成する第1の配線形成ステップと、第1の配線上の一部の領域のみに、ロジウム、イリジウム、白金およびルテニウムの中から選ばれた1つ、または、ロジウム、イリジウム、白金、ルテニウム、オスミウム、金、銀、銅、および、パラジウムの中から選ばれた2つ以上の金属を含む材料からなる薄膜を形成する薄膜形成ステップと、第1の配線を含む基板上に、第1の配線と離間した位置に基板を露出させる開口を有する犠牲膜を形成する犠牲膜形成ステップと、開口および犠牲膜上に金、銀、銅、および、アルミニウムの中から選ばれた少なくとも1つの金属を選択的に配置して、開口から犠牲膜上における薄膜上方の領域に至る構造体を形成する構造体形成ステップと、犠牲膜を除去する犠牲膜除去ステップとを少なくとも有することを特徴とするものである。
【0017】
また、本発明に係る他のMEMSスイッチの製造方法は、少なくとも上面が絶縁材料からなる基板の上面に、金、銀、銅、および、アルミニウムの中から選ばれた少なくとも1つの金属から構成される第1の配線を形成する第1の配線形成ステップと、第1の配線を含む基板上に、第1の配線と離間した位置に基板を露出させる開口を有する犠牲膜を形成する犠牲膜形成ステップと、犠牲膜上における第1の配線上の一部の領域の上方のみに、第1の配線の少なくとも一部の上方に位置する犠牲膜上のみに、ロジウム、イリジウム、白金およびルテニウムの中から選ばれた1つ、または、ロジウム、イリジウム、白金、ルテニウム、オスミウム、金、銀、銅、および、パラジウムの中から選ばれた2つ以上の金属を含む材料からなる薄膜を形成する薄膜形成ステップと、開口および犠牲膜上に金、銀、銅、および、アルミニウムの中から選ばれた少なくとも1つの金属を選択的に配置して、開口から薄膜に至る構造体を形成する構造体形成ステップと、犠牲膜を除去する犠牲膜除去ステップとを少なくとも有することを特徴とするものである。
【0018】
上記MEMSスイッチの製造方法において、薄膜形成ステップは、基板の上面に、薄膜が形成される領域を少なくとも覆う開口部を有するフォトレジスト層を形成する第1のステップと、フォトレジストが形成された基板上に、ロジウム、イリジウム、白金およびルテニウムの中から選ばれた1つ、または、ロジウム、イリジウム、白金、ルテニウム、オスミウム、金、銀、銅、および、パラジウムの中から選ばれた2つ以上の金属を含む材料からなる金属膜を形成する第2のステップと、リフトオフ法により、フォトレジスト層をこの上に形成された金属膜とともに除去する第3のステップとから構成されるようにしてもよい。
【0019】
また、上記MEMSスイッチの製造方法において、第1のステップは、基板上の第1の配線および構造体が形成される領域以外の領域にも開口部が形成されるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、第1の配線および第2の配線と対向する接触部材の一部のみ、ならびに、この一部と対向する第1の配線および第2の配線の少なくとも一方の領域のみのうち少なくとも1つに形成された薄膜を設けることにより、高い周波数の信号がその薄膜を通過する距離が短くなるので、スイッチにおける損失を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明の第1の実施の形態に係るMEMSスイッチの構成を模式的に示す平面図である。
【図2】図2は、図1のI-I線断面図である。
【図3】図3は、本発明の第1の実施の形態に係るMEMSスイッチの動作を模式的に示す図である。
【図4】図4は、接点金属薄膜の材料と固着力の比との関係を示す図である。
【図5】図5は、接点金属薄膜の材料と固さの比との関係を示す図である。
【図6】図6は、本発明の第1の実施の形態に係るMEMSスイッチの変形例を模式的に示す断面図である。
【図7】図7は、本発明の第2の実施の形態に係るMEMSスイッチの構成を模式的に示す断面図である。
【図8】図8は、突出部材を設けないMEMSスイッチの動作例を示す断面図である。
【図9】図9は、本発明の第2の実施の形態に係るMEMSスイッチの動作を説明するための断面図である。
【図10】図10は、本発明の第2の実施の形態に係るMEMSスイッチの変形例を模式的に示す断面図である。
【図11A】図11Aは、図10に示すMEMSスイッチの製造方法における一工程を示す図である。
【図11B】図11Bは、図10に示すMEMSスイッチの製造方法における一工程を示す図である。
【図11C】図11Cは、図10に示すMEMSスイッチの製造方法における一工程を示す図である。
【図11D】図11Dは、図10に示すMEMSスイッチの製造方法における一工程を示す図である。
【図11E】図11Eは、図10に示すMEMSスイッチの製造方法における一工程を示す図である。
【図11F】図11Fは、図10に示すMEMSスイッチの製造方法における一工程を示す図である。
【図11G】図11Gは、図10に示すMEMSスイッチの製造方法における一工程を示す図である。
【図11H】図11Hは、図10に示すMEMSスイッチの製造方法における一工程を示す図である。
【図11I】図11Iは、図10に示すMEMSスイッチの製造方法における一工程を示す図である。
【図11J】図11Jは、図10に示すMEMSスイッチの製造方法における一工程を示す図である。
【図11K】図11Kは、図10に示すMEMSスイッチの製造方法における一工程を示す図である。
【図11L】図11Lは、図11Kの平面図である。
【図11M】図11Mは、図10に示すMEMSスイッチの製造方法における一工程を示す図である。
【図11N】図11Nは、図10に示すMEMSスイッチの製造方法における一工程を示す図である。
【図12】図12は、リフトオフの作用効果を説明するための図である。
【図13】図13は、本発明の第3の実施の形態に係るMEMSスイッチの構成を示す平面図である。
【図14】図14は、図13のII-II線断面図である。
【図15】図15は、図13のIII-III線断面図である。
【図16】図16は、本発明の第3の実施の形態に係るMEMSスイッチの動作を説明するための断面図である。
【図17】図17は、本発明の第3の実施の形態に係るMEMSスイッチの動作を説明するための断面図である。
【図18】図18は、本発明の第4の実施の形態に係るMEMSスイッチの構成を示す平面図である。
【図19】図19は、図18のIV-IV線断面図である。
【図20】図20は、図18のV-V線断面図である。
【図21】図21は、図18のVI-VI線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0023】
[第1の実施の形態]
まず、本発明の第1の実施の形態に係るMEMSスイッチについて説明する。
【0024】
<MEMSスイッチの構成>
図1,図2に示すように、本実施の形態に係るMEMSスイッチは、基板1と、この基板1上に設けられた棒状の第1の配線2と、基板1上において第1の配線2から離間しかつ第1の配線2と同一直線上に設けられた第2の配線3と、第2の配線3の後述する移動電極33の下方に設けられた制御電極4とを備えている。なお、便宜上、第1の配線2の延在方向を「X方向」、基板1の平面内でX方向に垂直な方向を「Y方向」、基板1の平面に対して垂直な方向を「Z方向」と言う。また、X方向において、第1の配線2から第2の配線3に向かう側を正の側とする。同様に、Y方向において、図1の紙面に対して上方を正の側とする。同様に、Z方向において、基板1から離間する側を上側または上方、基板1に近づく側を下側または下方とする。また、図2においては、切断面以外については記載を省略している。
【0025】
基板1は、例えば、基板1の上側の面(以下、「上面」と言う。)にシリコン酸化膜などの絶縁膜が形成されたシリコン基板、アルミナ基板、ガラス基板など、少なくとも上面が絶縁性を有する材料から構成されている。これにより、基板1の上面にそれぞれ離間して設けられた第1の配線2、第2の配線3、および、制御電極4は、互いに絶縁されることとなる。
【0026】
第1の配線2は、基板1の略中央部に配置された一端からX方向の負の側に延在し他端が基板1の縁部に位置する棒状の部材から構成される。この第1の配線2の一端には、その上面に接点金属薄膜21が設けられている。この接点金属薄膜21は、後述する第2の配線3の接点部材34とZ方向に対向配置されている。また、第1の配線2の基板1の縁部側の端部は、図示しない配線により外部回路に接続されており、第1の配線2と第2の配線3との間でやりとりする信号が、その配線を介して入力または出力される。このような第1の配線2は、金、銀、銅およびアルミニウムの中から選ばれた少なくとも1つの金属を含む材料から構成される。接点金属薄膜21については、ロジウム、イリジウム、白金、および、ルテニウムの中から選択された1つ、または、ロジウム、イリジウム、白金、ルテニウム、オスミウム、金、銀、銅、および、パラジウムの中から選択された2つ以上の金属を含む材料から構成される。この2つ以上の金属を含む材料は、合金から構成されている。
【0027】
第2の配線3は、基板1上に垂設された柱状の支持部材31と、一端が支持部材31の上端に接続され、この一端からX方向の負の側に延在する棒状のばね部材32と、このばね部材32の他端に接続された平面視略矩形の板状の移動電極33と、この移動電極33のX方向の負の側の端部に設けられ、その負の側に突出した接点部材34とを備えており、これらが一体形成されている。ここで、接点部材34の下方には、第1の配線2の上記一端が位置している。なお、支持部材31は、図示しない配線により外部回路に接続されており、第1の配線2と第2の配線3との間でやりとりする信号が、その配線を介して入力または出力される。また、移動電極33には、図示しない制御装置から駆動電圧が供給される。このような第2の配線3は、金、銀、銅およびアルミニウムの中から選ばれた少なくとも1つの金属を含む材料から構成される。
【0028】
制御電極4は、移動電極33と同等の外形を有し、基板1上において移動電極33の下方に設けられている。この制御電極4は、図示しない制御装置と電気的に接続されており、この制御装置から駆動電圧が供給される。このような制御電極4は、例えば、Au,Al,Cu,Niなど導電性を有する材料から構成されている。
【0029】
このようなMEMSスイッチは、公知のマイクロマシン製造技術を利用して、成膜や選択的エッチング等を行うことによって作製できる。
【0030】
<MEMSスイッチの動作>
次に、本実施の形態に係るMEMSスイッチの動作について説明する。
【0031】
図示しない制御装置から、第2の配線3の移動電極33およびこの移動電極33と対向配置された制御電極4に駆動電圧が印加されると、対向配置された電極間の電位差により静電引力が発生する。この静電引力により、移動電極33が制御電極4の側に引き寄せられ、この移動に伴って第2の配線3の接点部材34も変位する。移動電極33および接点部材34の変位量は、その静電引力と、第2の配線3のばね部材32が備える弾性による復元力とのつりあいにより変化する。移動電極33と制御電極4との電位差を大きくすると、発生する静電引力も大きくなるので、変位量も大きくなる。その電位差が所定の値よりも大きくなると、図3に示すように、第2の配線3の接点部材34の下端が、接点金属薄膜21を介して第1の配線2に接触する。これにより、第1の配線2と第2の配線3とが導通した状態となる。
【0032】
このように第2の配線3の接点部材34が第1の配線2の接点金属薄膜21に接触した状態から、上記電位差を上記所定の値よりも小さくすると、第2の配線3のばね部材32の復元力によって第2の配線3の部材が基板1から遠ざかり、接点部材34が第1の配線2から離間する。これにより、第1の配線2と第2の配線3とが非導通の状態となる。
【0033】
このように、移動電極33と制御電極4との間の電位差を変化させることにより、第1の配線2と第2の配線3との導通および非導通を制御することができる。
【0034】
以上説明したように、本実施の形態では、第2の配線3と対向する部分のみに接点金属薄膜21を設けるようにしている。これにより、高い周波数の信号がその接点金属薄膜21を通過する距離が短くなるので、MEMSスイッチにおける損失を低減させることができる。すなわち、いわゆる表皮効果により、高周波信号の周波数が高いほど信号が導体の表面を流れるようになり、その表面が抵抗率の高い材料で覆われている場合には覆われていない場合に比べてスイッチの損失が増大する。しかしながら、本実施の形態では、第2の配線3と対向する部分のみに接点金属薄膜21を設けたので、高い周波数の信号がその接点金属薄膜21を通過する距離が短くなるので、スイッチの損失が増大するのを防ぐことができる。また、従来のように第1の配線2の上面全体に接点金属薄膜21を設けた場合と比較して、MEMSスイッチの作製プロセス中に表面の接点金属薄膜21が内部まで拡散する量が減少するので、配線の抵抗率が増大を防ぐことが可能となり、結果として、MEMSスイッチの損失が増大するのを防ぐことができる。
【0035】
また、本実施の形態では、ばね部材32に接点金属薄膜21を設けないようにしたので、第2の配線3自体の変形を抑制し、動作電圧の変動を防止することができる。
【0036】
ここで、ばね部材32を構成する材料のヤング率が小さく、発生する復元力が小さいほど、第1の配線2と第2の配線3とを接触させるために必要な駆動電圧を低減することができる。上述したように、本実施の形態では、第2の配線3が金、銀、銅、アルミニウムから選ばれた1つ以上の金属を含む材料から構成されているので、ばね部材32により発生する復元力が小さく、低電圧で第1の配線2と第2の配線3とを接触させることができる。
【0037】
また、本実施の形態では、接点金属薄膜21として、ロジウム、イリジウム、白金、および、ルテニウムの中から選ばれた1つ、または、ロジウム、イリジウム、白金、ルテニウム、オスミウム、金、銀、銅、および、パラジウムの中から選ばれた2つ以上の金属を含む材料からを用いることにより、大電力通過時においても第1の配線1と第2の配線3との接点で生じる固着力を小さくすることができる。
【0038】
一例として、接点金属薄膜21にロジウムを使用した場合の固着力について図4に示す。この図4は、接点金属薄膜21を形成しない場合(図4における「金接点」)、接点金属薄膜21としてロジウムからなる厚さ0.02μmの薄膜を形成した場合(図4における「Rh接点(膜厚0.02μm)」)、および、接点金属薄膜21としてロジウムからなる厚さ0.05μmの薄膜を形成した場合(図4における「Rh接点(膜厚0.05μm)」)において、接点で生じる固着力を同一条件で比較した結果を示すものである。この図16からわかるように、ロジウムからなる接点金属薄膜21を設けると、接点金属薄膜21を設けない場合よりも、接点に生じる固着力を2.5倍程度を低減させることができる。
【0039】
このように接点金属薄膜21を設けることにより接点における固着力を小さくすることができるので、低電圧で駆動可能な復元力の小さなMEMSスイッチにおいても大電力信号のスイッチングが可能となる。このような効果は、接点金属薄膜21の材料固有の耐熱性や低固着性に由来するので、それぞれの原子の単原子膜(厚さ約0.1nm)であっても得られるものと考えられる。
【0040】
また、接点金属薄膜21の厚さを0.1μm以下とすることにより、スイッチの挿入損失を低減することができる。これは、第1の配線2および第2の配線3の材料よりも接点金属薄膜21の材料の方が抵抗率が高い金属であるため、接点金属薄膜21が薄いほど、電気信号が抵抗率の高い部分を通過する距離が短くなるためであると考えられる。さらに、接点金属薄膜21の材料は、第1の配線2および第2の配線3の材料より硬いので、接点金属薄膜21を厚く形成した場合、接点を押付ける力による変形を起こしにくい。このため、接触面積が小さく、接点での損失が大きくなる。一方、接点金属薄膜21を薄く形成すると、下地の第1の配線2または第2の配線3を構成する柔らかい材料の影響が顕著になり、接点を押付ける力による変形を起こしやすくなるので、接触面積が大きくなり、接点での損失が低減したものと考えられる。
【0041】
一例として、図5に、金からなる第1の配線2を形成した場合を想定して、金そのものの場合(図5の符号a)と、金の上にロジウム薄膜を0.02μmの厚さで形成した場合(図5の符号b)、金の上にロジウム薄膜を0.05μmの厚さで形成した場合(図5の符号c)、バルクのロジウムの場合(図5の符号d)における固さの測定結果を示す。なお、この図5では、金の固さを基準として正規化したものである。図5に示されるように、ロジウム薄膜の厚さを0.02μmや0.05μmとしたとき、金の固さと同等の値を採ることがわかる。一方、バルクのロジウムの固さは、金の約11倍となっている。このように、ロジウム薄膜は、厚さを0.1μm以下とすることにより、バルクに比べて大幅に軟らかくなることがわかる。これは、ロジウム薄膜の下地の金の硬さの影響が顕著に表れるためであると考えられる。さらに、ロジウム薄膜の厚さが0.02μmの場合と0.05μmの場合とでは、0.02μmの方が柔らかいことが分かる。このように、膜厚が薄いほど、接点の硬さが小さくなるため、接触面積を大きくし、接点での損失を低減することができる。
【0042】
また、第1の配線2および第2の配線3の厚さを、この接点金属薄膜21よりも厚くすることにより、スイッチの挿入損失を低減できる。これは、配線が厚いほど断面積が大きくなり、抵抗が低下するためであると考えられる。
【0043】
また、本実施の形態では、電気信号が通過する第1の配線2、第2の配線3、接点金属薄膜21を、上述したように抵抗率の小さな金属から構成するようにしたので、MEMSスイッチの挿入損失を小さくすることができる。
【0044】
なお、本実施の形態では、接点金属薄膜21を第1の配線2上に設ける場合を例に説明したが、接点金属薄膜21を設ける場所はこれに限定されず、例えば、第2の配線3上に設けるようにしてもよい。また、図6に示すように、第1の配線2および第2の配線3の両方に接点金属薄膜21を設けるようにしてもよい。
【0045】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、本実施の形態は、第1の実施の形態における第2の配線3の接点部材34に突出部材を設けたものであり、その他の構成は第1の実施と同等である。したがって、本実施の形態において、第1の実施の形態と同等の構成要素には同じ名称および符号を付し、適宜説明を省略する。
【0046】
図7に示すように、本実施の形態に係るMEMSスイッチは、基板1と、この基板1上に設けられた棒状の第1の配線2と、基板1上において第1の配線2から離間しかつ第1の配線2と同一直線上に設けられた第2の配線3と、第2の配線3の後述する移動電極33の下方に設けられた制御電極4とを備えている。
【0047】
第2の配線3は、基板1上に垂設された柱状の支持部材31と、一端が支持部材31の上端に接続され、この一端からX方向の負の側に延在する棒状のばね部材32と、このばね部材32の他端に接続された平面視略矩形の板状の移動電極33と、この移動電極33のX方向の負の側の端部に設けられ、その負の側に突出した接点部材34と、この接点部材34からZ方向の負の側に突出した突出部材35とを備えており、これらが一体形成されている。ここで、突出部材35は、接点部材34下面の略中央部から対向配置された第1の配線2の接点金属薄膜21に向かって突出した柱状の形状を有する。
【0048】
ここで、図8に示すように、突出部材35を設けない場合、第2の配線3が傾いて第1の配線1と接触したとき、接点金属薄膜21が形成された領域以外で第1の配線2と第2の配線3とが接触してしまう可能性がある。そこで、本実施の形態のように、突出部材35を設けることにより、図9に示すように、第2の配線3の動作に傾きが生じても、その突出部材35を接点金属薄膜21が形成された領域上に確実に接触させることができる。
【0049】
また、上述した構成を有することにより、上述した第1の実施の形態と同等の作用効果を実現することができることは言うまでもない。
【0050】
<MEMSスイッチの製造方法>
また、突出部材35には、図10に示すように、表面に接点金属薄膜36を設けるようにしてもよい。この場合の製造方法について以下に説明する。
【0051】
まず、図11Aに示すように、例えば表面にシリコン酸化膜やシリコン窒化膜等の絶縁材料の形成された基板1を用意し、この基板1上に第1のシード層101を形成する。この第1のシード層101は、スパッタ法や蒸着法などにより、例えば基板1上にチタンを堆積したのち、このチタンの上に金を堆積することにより形成される。このときのチタンの膜厚は0.1μm程度、金の膜厚は0.1μm程度とすればよい。
【0052】
第1のシード層101が形成されると、この第1のシード層101の上にレジスト材料を塗布してレジスト膜を形成し、このレジスト膜に所望のパタンを備えるマスクを用いて露光してアルカリ現像液で現像することにより、図11Bに示すように、所定の箇所に開口部102a,102bが設けられた第1のレジストパタン102を形成する。また、開口部102a,102bから露出する第1のシード層101上に、めっき法により、金、銀、銅およびアルミニウムの中から選ばれた少なくとも1つの金属を含む材料をめっきすることにより、第1の配線2および制御電極4を形成する。ここで、第1のレジストパタンの厚さは2μm程度とし、第1の配線2および制御電極4の厚さは1μm程度とする。第1の配線2および制御電極4を形成した後、第1のレジストパタン102は除去される。なお、レジスト材料としては、例えば東京応化工業株式会社社製の「PMER P-シリーズ」、アルカリ現像液としては、例えば東京応化工業株式会社社製の「NMDシリーズ」を用いることができる。
【0053】
第1のレジストパタン102が除去されると、図11Cに示すように、第1の配線2および制御電極4をマスクとして第1のシード層102を除去する。この除去は、例えば、第1のシード層101の上層にある金は、ヨウ素、ヨウ化アンモニウム、水、エタノールからなるエッチング液を用いたウェットエッチングにより除去することができる。また、第1のシード層101の下層のチタンは、フッ化水素水溶液を用いたウェットエッチングにより除去することができる。
【0054】
第1のシード層101が除去されると、レジスト材料を塗布してレジスト膜を形成し、所望のパタンを備えるマスクを用いて露光してアルカリ現像液で現像することにより、図11Dに示すように、第1の配線2の一部、制御電極4および第1の配線2からX方向の負の側に離間した基板1上に開口部103a,103b,103cが形成された第2のレジストパタン103を形成する。続いて、この第2のレジストパタン103をマスクとして、例えばスパッタ法や蒸着法やめっき法により、金属膜104を形成する。これにより、開口部103aから露出した第1の配線2の上面、開口部103bから露出した制御電極4の上面、および、開口部103cから露出した基板1の上面には、金属膜104が形成される。このうち、開口部103aから露出した第1の配線2の上面に形成された金属膜104は、接点金属薄膜21となる。このような金属膜104は、ロジウム、イリジウム、白金、ルテニウムの中から選ばれた1つ、または、ロジウム、イリジウム、白金、ルテニウム、オスミウム、金、銀、銅、パラジウムの中から選ばれた2つ以上の金属を含む材料から構成される。また、その厚さは、0.05μm程度に形成される。なお、金属薄膜104の材料のうち、2つ以上の金属を含む材料は合金から構成される。
【0055】
このように、接点金属薄膜21を形成する工程が第1の配線2を形成する工程の直後に行われるようにすると、第1の配線2と接点金属薄膜21との間に異物が混入することを防ぐことができるので、MEMSスイッチの損失を低減することができる。なお、この工程は、第2の配線3のみに接点金属膜を形成する場合には省略される。
【0056】
金属膜104が形成されると、例えば、基板2をアセトンに浸漬し、超音波振動を印加することにより、図11Eに示すように、第2のレジストパタン103をその上に成膜された金属膜104とともに除去する(リフトオフ)。このようないわゆるリフトオフ法を用いて接点金属薄膜21を形成することにより、エッチングが困難な接点材料も、容易に所望の形状に加工することができ、簡便に構造体を作製することができる。また、図11Dに示したように、本実施の形態では、第1の配線2の上面に設けた開口部103a以外にも、第2のレジストパタン102に開口部103b,103cを設けている。これは、リフトオフ法により第2のレジストパタン103を除去する際、エッチングが第2のレジストパタン103から基板1の平面方向に進行してゆくので、図12に示すように開口部103aのみしか形成されていない場合には、第2のレジストパタン103の全てを除去するには長時間が必要となる。そこで、本実施の形態では、3つの開口部103a〜103cを設けているので、第2のレジストパタン103の全てを除去する時間を短縮することができる。
【0057】
第2のレジストパタン103が除去されると、図11Fに示すように、接点金属薄膜21を備えた第1の配線2などが形成された基板1上に、第2の配線3の支持部材31が設けられる位置に開口部105aが形成された例えば有機樹脂からなる第1の犠牲層105を形成する。具体的には、例えばPBO(ポリベンゾオキサゾール)により構成された感光性を有する有機樹脂を基板1塗布して塗布膜を形成し、形成した塗布膜を公知のリソグラフィ技術によりパタニングすることにより、所定の箇所に開口部105aが形成された第1の犠牲層105を生成することができる。この第1の犠牲層105の厚さは、2μm程度に形成される。また、第1の犠牲層105に用いる有機樹脂としては、例えば、住友ベークライト社製の「CRC8300」を用いることができる。この「CRC8300」を用いた犠牲層のパタニング処理では、前処理として、塗布膜に対して120℃のプリベーク処理が4分程度行われる。また、パタニングした後には、310℃程度の加熱処理を行われることにより、硬化される。
【0058】
第1の犠牲層105が形成されると、図11Gに示すように、第1の配線2の接点金属薄膜21に対向する位置、および、第2の配線3の支持部材31が形成される位置に開口106a,106bを備えた、例えば有機樹脂からなる第2の犠牲層106を形成する。ここで、第2の犠牲層106は、上述した第1の犠牲層105と同等の方法により形成される。また、第2の犠牲層の厚さは、1μm程度に形成される。
【0059】
第2の犠牲層106が形成されると、この第2の犠牲層106上にレジスト材料を塗布してレジスト膜を形成し、所望のパタンを備えるマスクを用いて露光した後、アルカリ現像液で現像することにより、図11Hに示すように、接点金属薄膜21と対向する位置、すなわち、開口部106aと連続する開口部107aを備えた第3のレジストパタン107を形成する。また、この第3のレジストパタン107上に、例えばスパッタ法、蒸着法、めっき法により、金属膜108を形成する。これにより、第1の犠牲層105の上面および第2の犠牲層106の開口部106aから構成される空間の周囲には、金属膜108が形成される。この金属膜108は、ロジウム、イリジウム、白金、ルテニウムの中から選ばれた1つ、または、ロジウム、イリジウム、白金、ルテニウム、オスミウム、金、銀、銅、パラジウムの中から選ばれた2つ以上の金属を含む材料からなる。ここで、金属薄膜104の材料のうち、2つ以上の金属を含む材料は合金から構成される。また、金属膜108の厚さは、0.05μm程度に形成される。なお、この金属膜108を形成する工程は、接点金属薄膜21のみを形成する、すなわち、接点金属薄膜36を設けない場合には省略される。
【0060】
金属膜108が形成されると、図11Iに示すように、例えば基板1をアセトンに浸漬した後、超音波振動を印加することにより、第3のレジストパタン107をその上に成膜された金属膜108ごと除去する。これにより、第2の犠牲層106の開口部106aには、接点金属薄膜36となる金属膜108が残されることとなる。
【0061】
第3のレジストパタン107が除去されると、図11Jに示すように、第2の犠牲層106上に第2のシード層109を形成する。この第2のシード層109は、上述した第1のシード層101と同等の方法により形成される。
【0062】
第2のシード層109が形成されると、この第2のシード層109上にレジスト材料を塗布してレジスト膜を形成し、所定のパタンを備えるマスクを用いて露光した後、アルカリ現像液で現像することにより、図11Kおよび図11Kの平面図である図11Lに示すように、所定の箇所に開口部110aを備えた第4のレジストパタン110を形成する。また、第4のレジストパタン110の開口部110aから露出する第2のシード層109上に、めっき法により、金、銀、銅およびアルミニウムの中から選ばれた少なくとも1つの金属を含む材料をめっきすることにより、第2の配線3を形成する。ここで、第4のレジストパタン110の厚さは2μm程度、第2の配線3のめっき厚さは1μm程度に形成される。図11Lに示すように、開口部110aの平面形状は、第2の配線3の支持部材31、ばね部材32、移動電極33および接点部材34に対応する形状に形成されている。このような開口部110aにめっきを施すことにより、第2の配線3が所定の形状に形成されることとなる。第2の配線3が形成されると、第4のレジストパタン110は除去される。
【0063】
このように、第2の配線3を形成する工程を接点金属薄膜36を形成する工程の直後に行うことにより、第2の配線3と接点金属薄膜36との間に異物が混入することを防止することができ、結果として、MEMSスイッチの損失を低減することができる。
【0064】
第4のレジストパタン110が除去されると、図11Mに示すように、第2の配線3をマスクとして第2のシード層109を上述した第1のシード層101と同様のエッチングにより除去する。
【0065】
第2のシード層109が除去されると、例えば酸素プラズマやオゾン雰囲気を用いたアッシングにより第1の犠牲層105および第2の犠牲層106を除去し、図11Nに示すように、本実施の形態に係るMEMSスイッチが形成される。
【0066】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。なお、本実施の形態において、上述した第1,第2の実施の形態と同等の構成要素については、同じ名称および符号を付して適宜説明を省略する。また、「’」が付されているものの符号の数字が同じ部材については、形状について若干の変更があるものの、同等の材料から構成されるとともに同等の機能を有することを意味している。
【0067】
図13〜図15に示すように、本実施の形態に係るMEMSスイッチは、基板1と、この基板上に設けられた棒状の第1の配線2と、この第1の配線2から離間しかつ第1の配線2と同一直線上に設けられた棒状の第2の配線3’と、基板1上において第1の配線2および第2の配線3’を結ぶ直線に対して離間するとともに線対称に設けられた互いに同等の形状を有する第1の移動機構5および第2の移動機構6と、第1の移動機構5の後述する第1の移動電極53の下方に設けられた第1の制御電極7と、第2の移動機構6の後述する第2の移動電極63の下方に設けられた第2の制御電極8と、第1の移動機構5および第2の移動機構6を連結する棒状の絶縁連結部材9と、この絶縁連結部材9により吊設された接触部材10とを備えている。
【0068】
第1の配線2は、基板1の略中央部に配置された一端からX方向の負の側に延在し他端が基板1の縁部に位置する棒状の部材から構成される。
【0069】
第2の配線3’は、基板1の略中央部に配置された一端からX方向の正の側に延在し他端が基板1の縁部に位置する棒状の部材から構成される。
【0070】
なお、第1の配線2および第2の配線3’において、一方が信号の入力側で他方が信号の出力側であるならば、何れを入力側または出力側とするかは適宜自由に設定することができる。
【0071】
第1の移動機構5は、基板1上に垂設された柱状の第1のベース部材51と、一端が第1のベース部材51の上端に接続され、この一端からY方向の正の側に延在する棒状の第1のばね部材52と、この第1のばね部材52の他端に接続された平面視略矩形の板状の第1の移動電極53とを備えており、これらが一体形成されている。ここで、第1のばね部材52の幅、すなわちX方向の長さは、第1のばね部材52が少なくともZ方向に弾性変形が可能となるよう、第1の移動電極53の幅よりも短く形成されている。また、第1の移動電極53は、その辺がX方向またはY方向に沿うように配設されており、第2の移動機構6に対向配置されたX方向に沿った辺の略中央部に第1のばね部材52の他端が接続され、この第1のばね部材52によりZ方向に移動可能に支持されている。また、第1の移動電極53は、第1の制御電極7と対向配置されている。さらに、第1のベース部材51は、図示しない制御装置と電気的に接続されており、この制御装置から印加される駆動電圧が第1の移動電極53に供給される。このような第1の移動機構5は、第1の制御電極7とともにMEMS機構として機能し、第1の移動電極53が移動部として機能する。
【0072】
第2の移動機構6は、基板1上に垂設された柱状の第2のベース部材61と、一端が第2のベース部材61の上端に接続された一端からY方向の負の側に延在する棒状の第2のばね部材62と、この第2のばね部材62の他端が接続された平面視略矩形の板状の第2の移動電極63とを備えており、これらが一体形成されている。ここで、第2のばね部材62の幅、すなわちX方向の長さは、第2のばね部材62が少なくともZ方向に弾性変形が可能となるよう、第2の移動電極63の幅よりも短く形成されている。また、第2の移動電極63は、その辺がX方向またはY方向に沿うように配設されており、第1の移動機構5に対向配置されたX方向に沿った辺の略中央部に第2のばね部材62の他端が接続され、この第2のばね部材62によりZ方向に移動可能に支持されている。また、第2の移動電極63は、第2の制御電極8と対向配置されている。さらに、第2のベース部材61は、図示しない制御装置と電気的に接続されており、この制御装置から印加される駆動電圧が第2の移動電極63に供給される。このような第2の移動機構6は、第2の制御電極8とともにMEMS機構として機能し、第2の移動電極63が移動部として機能する。
【0073】
第1の制御電極7は、第1の移動電極53と同等の外形を有し、基板1上において第1の移動電極53の下方に設けられている。この第1の制御電極7は、図示しない制御装置と電気的に接続されており、この制御装置から駆動電圧が供給される。
【0074】
第2の制御電極8は、第2の移動電極63と同等の外形を有し、基板1上において第2の移動電極63の下方に設けられている。この第2の制御電極8は、図示しない制御装置と電気的に接続されており、この制御装置から駆動電圧が供給される。
【0075】
絶縁連結部材9は、一端が第1の移動電極53の上面、他端が第2の移動電極63の上面に接続された、Y方向に延在する棒状の部材から構成されている。また、絶縁連結部材9の中央部下面は、接触部材10の上面と接続されている。このような絶縁連結部材9は、シリコン酸化物やシリコン窒化物などの絶縁材料からなる剛体から構成されている。
【0076】
接触部材10は、一端が第1の配線2におけるX方向の正の側の端部、他端が第2の配線3’におけるX方向の負の側の端部と対向配置され、上面の略中央部が絶縁連結部材9に接続された、X方向に延在する棒状の部材から構成されている。ここで、接触部材10の下面には、第1の配線2と対向する位置に接点金属薄膜11、第2の配線3’と対向する位置に接点金属薄膜12が形成されている。このような接触部材10は、金、銀、銅およびアルミニウムの中から選ばれた少なくとも1つの金属を含む材料から構成される。また、接点金属薄膜11,12については、ロジウム、イリジウム、白金、および、ルテニウムの中から選択された1つ、または、ロジウム、イリジウム、白金、ルテニウム、オスミウム、金、銀、銅、および、パラジウムの中から選択された2つ以上の金属を含む材料から構成される。この2つ以上の金属を含む材料は、合金から構成される。また、接点金属薄膜11,12は、その厚さが0.1μm以下であり、かつ、第1の配線2および第2の配線3’の厚さよりも小さく形成されている。
【0077】
このようなMEMSスイッチは、よく知られているマイクロマシン製造技術を用いて、成膜や選択的エッチングを行うことにより、作製することができる。
【0078】
<MEMSスイッチの動作>
次に、本実施の形態に係るMEMSスイッチの動作について説明する。
【0079】
図示しない制御装置から、第1の移動機構5の第1の移動電極53およびこの第1の移動電極53に対向配置された第1の制御電極7、ならびに、第2の移動機構6の第2の移動電極63およびこの第2の移動電極に対向配置された第2の制御電極8のそれぞれに駆動電圧が印加されると、対向配置された電極間の電位差により生じる静電引力により、第1の移動電極53が第1の制御電極7の側に、第2の移動電極63が第2の制御電極8の側にそれぞれ引き寄せられる。このとき、接触部材10は、その上面が絶縁連結部材9により第1の移動電極53および第2の移動電極63と機械的に接続されているので、第1の移動電極53および第2の移動電極63の移動に伴って共に移動することとなる。この移動における変位量は、上記静電引力と、第1の移動機構5の第1のばね部材52および第2の移動機構6の第2のばね部材62が備える弾性による復元力とのつりあいにより変化する。すなわち、上記電位差により生じる静電引力と、変位により生じる復元力とが等しくなるように接触部材10が第1の制御電極7および第2の制御電極8が設けられた基板1の側に変位することになり、さらにその電位差が大きくなって静電引力が大きくなるに連れて上記変位量も大きくなる。したがって、その電位差が所定の値よりも大きくなると、図16,図17に示すように、接触部材10が、接点金属薄膜11,12を介して、第1の配線2および第2の配線3’に接触する。これにより、第1の配線2と第2の配線3’とが導通した状態となる。
【0080】
このように接触部材10が、第1の配線2と第2の配線3’に接触した状態から、上記電位差を上記所定の値よりも小さくすると、第1の移動機構5の第1のばね部材52および第2の移動機構6の第2のばね部材62の復元力によってこれらの部材が基板1から遠ざかり、接触部材10が第1の配線2および第2の配線3’から離間する。これにより、第1の配線2と第2の配線3’とが非導通の状態となる。
【0081】
このように、第1の移動機構5の第1の移動電極53およびこの第1の移動電極53に対向配置された第1の制御電極7、ならびに、第2の移動機構6の第2の移動電極63およびこの第2の移動電極に対向配置された第2の制御電極8のそれぞれの間の電位差を変化させることにより、第1の配線2、第2の配線3’および接触部材10の導通および非導通を制御することができる。
【0082】
上述した構成を有することにより、上述した第1,2の実施の形態と同等の作用効果を実現することができることは言うまでもない。
【0083】
また、本実施の形態によれば、第1の配線2と第2の配線3’とが非導通状態において、これらの配線が少なくとも2箇所で切断されるので、アイソレーション性能を向上させることができる。
【0084】
[第4の実施の形態]
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。なお、本実施の形態において、上述した第1〜第3の実施の形態と同等の構成要素については、同じ名称および符号を付して適宜説明を省略する。また、「’」や「”」が付されているものの符号の数字が同じ部材については、形状について若干の変更があるものの、同等の材料から構成されるとともに同等の機能を有することを意味している。
【0085】
図18〜図21に示すように、本実施の形態に係るMEMSスイッチは、基板1と、この基板上に設けられた第1の配線2’と、この第1の配線2’から離間しかつ第1の配線2’と同一直線上に設けられた第2の配線3”と、基板1上において第1の配線2’および第2の配線3”を結ぶ直線に対して離間するとともに線対称に設けられた互いに同等の形状を有する第1の移動機構5および第2の移動機構6と、第1の移動機構5の後述する第1の移動電極53の上方に後述する第1の制御電極部材73を備えた第1の制御電極7’と、第2の移動機構6の後述する第2の移動電極63の上方に後述する第2の制御電極部材83を備えた第2の制御電極8’と、第1の移動機構5および第2の移動機構6を連結する棒状の絶縁連結部材9と、この絶縁連結部材9上に設けられた接触部材10’とを備えている。
【0086】
第1の配線2’は、基板1のX方向の負の側の縁部に垂設された柱状の第1のベース部材25と、一端が第1のベース部材26の上端に接続され、この一端から基板1の略中央部に向かってX方向の正の側に延在する棒状の第1の梁部材27とを備えており、これらが一体形成されている。
【0087】
第1の配線3”は、基板1のX方向の正の側の縁部に垂設された柱状の第2のベース部材36と、一端が第2のベース部材36の上端に接続され、この一端から基板1の略中央部に向かってX方向の負の側に延在する棒状の第2の梁部材37とを備えており、これらが一体形成されている。
【0088】
なお、第1の配線2’および第2の配線3”において、一方が信号の入力側で他方が信号の出力側であるならば、何れを入力側または出力側とするかは適宜自由に設定することができる。
【0089】
第1の移動機構5は、基板1上に垂設された柱状の第1のベース部材51と、一端が第1のベース部材51の上端に接続され、この一端からY方向の正の側に延在する棒状の第1のばね部材52と、この第1のばね部材52の他端に接続された平面視略矩形の板状の第1の移動電極53とを備えており、これらが一体形成されている。ここで、第1のばね部材52の幅、すなわちX方向の長さは、第1のばね部材52が少なくともZ方向に弾性変形が可能となるよう、第1の移動電極53の幅よりも短く形成されている。また、第1の移動電極53は、その辺がX方向またはY方向に沿うように配設されており、第2の移動機構6に対向配置されたX方向に沿った辺の略中央部に第1のばね部材52の他端が接続され、この第1のばね部材52によりZ方向に移動可能に支持されている。また、第1の移動電極53は、この上方に設けられた第1の制御電極7’の第1の制御電極部材73と対向配置されている。さらに、第1のベース部材51は、図示しない制御装置と電気的に接続されており、この制御装置から印加される駆動電圧が第1の移動電極53に供給される。このような第1の移動機構5は、第1の制御電極7’とともにMEMS機構として機能し、第1の移動電極53が移動部として機能する。
【0090】
第2の移動機構6は、基板1上に垂設された柱状の第2のベース部材61と、一端が第2のベース部材61の上端に接続された一端からY方向の負の側に延在する棒状の第2のばね部材62と、この第2のばね部材62の他端が接続された平面視略矩形の板状の第2の移動電極63とを備えており、これらが一体形成されている。ここで、第2のばね部材62の幅、すなわちX方向の長さは、第2のばね部材62が少なくともZ方向に弾性変形が可能となるよう、第2の移動電極63の幅よりも短く形成されている。また、第2の移動電極63は、その辺がX方向またはY方向に沿うように配設されており、第1の移動機構5に対向配置されたX方向に沿った辺の略中央部に第2のばね部材62の他端が接続され、この第2のばね部材62によりZ方向に移動可能に支持されている。また、第2の移動電極63は、この上方に設けられた第2の制御電極8’の第2の制御電極部材83と対向配置されている。さらに、第2のベース部材61は、図示しない制御装置と電気的に接続されており、この制御装置から印加される駆動電圧が第2の移動電極63に供給される。このような第2の移動機構6は、第2の制御電極8’とともにMEMS機構として機能し、第2の移動電極63が移動部として機能する。
【0091】
第1の制御電極7’は、基板1のX方向の負の側の縁部に垂設された板状の第1のベース部材71と、基板1のX方向の正の側に垂設された板状の第2のベース部材72と、一端が第1のベース部材71の上端、他端が第2のベース部材72の上端に接続され、X方向に沿って延在する板状の第1の制御電極部材73とを備えており、これらが一体形成されている。このような第1の制御電極7’は、第1の移動電極53におけるX方向の両側面および上面を取り囲むように形成されている。また、第1の制御電極部材73は、下方に配設された第1の移動電極53と対向配置されている。この第1の制御電極7’は、図示しない制御装置と電気的に接続されており、この制御装置から駆動電圧が供給される。
【0092】
第2の制御電極8’は、基板1のX方向の負の側の縁部に垂設された板状の第1のベース部材81と、基板1のX方向の正の側に垂設された板状の第2のベース部材82と、一端が第1のベース部材81の上端、他端が第2のベース部材82の上端に接続され、X方向に沿って延在する板状の第2の制御電極部材83とを備えており、これらが一体形成されている。このような第2の制御電極8’は、第2の移動電極63におけるX方向の両側面および上面を取り囲むように形成されている。また、第2の制御電極部材83は、下方に配設された第2の移動電極63と対向配置されている。この第2の制御電極8’は、図示しない制御装置と電気的に接続されており、この制御装置から駆動電圧が供給される。
【0093】
絶縁連結部材9は、一端が第1の移動電極53の下面、他端が第2の移動電極63の下面に接続され、第1の移動電極53および第2の移動電極63により吊設された、Y方向に延在する棒状の部材から構成されている。また、絶縁連結部材9の中央部上面には、接触部材10’が設けられている。このような絶縁連結部材9は、シリコン酸化物やシリコン窒化物などの絶縁材料からなる剛体から構成されている。
【0094】
接触部材10’は、一端が第1の配線2’における第1の梁部材27のX方向の正の側の端部下面、他端が第2の配線3”における第2の梁部材37のX方向の負の側の端部下面と対向配置され、絶縁連結部材9の上面に設けられた、X方向に延在する棒状の部材から構成されている。ここで、接触部材10’の上面には、第1の配線2’と対向する位置に接点金属薄膜13、第2の配線3”と対向する位置に接点金属薄膜14が形成されている。このような接触部材10’は、金、銀、銅およびアルミニウムの中から選ばれた少なくとも1つの金属を含む材料から構成される。また、接点金属薄膜13,14については、ロジウム、イリジウム、白金、および、ルテニウムの中から選択された1つ、または、ロジウム、イリジウム、白金、ルテニウム、オスミウム、金、銀、銅、および、パラジウムの中から選択された2つ以上の金属を含む材料から構成される。この2つ以上の金属を含む材料は、合金から構成される。また、接点金属薄膜13,14は、その厚さが0.1μm以下であり、かつ、第1の配線2’および第2の配線3”の厚さよりも小さく形成されている。
【0095】
このようなMEMSスイッチは、よく知られているマイクロマシン製造技術を用いて、成膜や選択的エッチングを行うことにより、作製することができる。
【0096】
<MEMSスイッチの動作>
次に、本実施の形態に係るMEMSスイッチの動作について説明する。
【0097】
図示しない制御装置から、第1の移動機構5の第1の移動電極53および第1の制御電極7’、ならびに、第2の移動機構6の第2の移動電極63および第2の制御電極8’のそれぞれに駆動電圧が印加されると、対向配置された電極間の電位差により生じる静電引力により、第1の移動電極53が第1の制御電極7’の第1の制御電極部材73の側に、第2の移動電極63が第2の制御電極8’の第2の制御電極部材83の側にそれぞれ引き寄せられる。このとき、接触部材10’は、その下面が絶縁連結部材9により第1の移動電極53および第2の移動電極63と機械的に接続されているので、第1の移動電極53および第2の移動電極63の移動に伴って共に移動することとなる。この移動における変位量は、上記静電引力と、第1の移動機構5の第1のばね部材52および第2の移動機構6の第2のばね部材62が備える弾性による復元力とのつりあいにより変化する。すなわち、上記電位差により生じる静電引力と、変位により生じる復元力とが等しくなるように接触部材10’が第1の制御電極部材73および第2の制御電極部材83が設けられたZ方向の正の側、すなわち鉛直上方に変位することになり、さらにその電位差が大きくなって静電引力が大きくなるに連れて上記変位量も大きくなる。したがって、その電位差が所定の値よりも大きくなると、接触部材10’が、接点金属薄膜13,14を介して、第1の配線2’および第2の配線3”に接触する。これにより、第1の配線2’と第2の配線3”とが導通した状態となる。
【0098】
このように接触部材10’が、第1の配線2’と第2の配線3”に接触した状態から、上記電位差を上記所定の値よりも小さくすると、第1の移動機構5の第1のばね部材52および第2の移動機構6の第2のばね部材62の復元力によってこれらの部材が基板1から遠ざかり、接触部材10’が第1の配線2’および第2の配線3”から離間する。これにより、第1の配線2’と第2の配線3”とが非導通の状態となる。
【0099】
このように、第1の移動機構5の第1の移動電極53およびこの第1の移動電極53に対向配置された第1の制御電極7’、ならびに、第2の移動機構6の第2の移動電極63およびこの第2の移動電極に対向配置された第2の制御電極8’のそれぞれの間の電位差を変化させることにより、第1の配線2’、第2の配線3”および接触部材10’の導通および非導通を制御することができる。
【0100】
上述した構成を有することにより、上述した第1〜3の実施の形態と同等の作用効果を実現することができることは言うまでもない。
【0101】
また、本実施の形態によれば、第1の配線2’と第2の配線3”とが非導通状態において、これらの配線が少なくとも2箇所で切断されるので、アイソレーション性能を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明は、MEMSスイッチなど、MEMS技術等により製造される各種微細構造体に適用することができる。
【符号の説明】
【0103】
1…基板、2,2’…第1の配線、3,3’,3”…第2の配線、4…制御電極、5…第1の移動機構、6…第2の移動機構、7,7’…第1の制御電極、8,8’…第2の制御電極、9…絶縁連結部材、10,10’…接触部材、11,12,21,36…接点金属薄膜、26…第1のベース部材、27…第1の梁部材、31…支持部材、32…ばね部材、33…移動電極、34…接点部材、35…突出部材、36…第2のベース部材、37…第2の梁部材、41…支持部材、42…梁部材、43…接点部材、51…第1のベース部材、52…第1のばね部材、53…第1の移動電極、61…第2のベース部材、62…第2のばね部材、63…第2の移動電極、71…第1のベース部材、72…第2のベース部材、73…第1の制御電極部材、81…第1のベース部材、82…第2のベース部材、83…第2の制御電極部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも上面が絶縁材料からなる基板と、
少なくとも一部が前記基板の上面に設けられた第1の配線と、
この第1の配線と離間し、少なくとも一部が前記上面に設けられた第2の配線と、
外部信号により移動する移動部を備えたMEMS機構と、
前記基板上方に設けられ、一部が前記第1の配線および第2の配線の少なくとも一方と対向配置され、前記移動部が移動することにより前記第1の配線および前記第2の配線の少なくとも一方と互いに対向する領域を接触させて前記第1の配線と前記第2の配線とを導通させる接触部材と、
前記第1の配線および前記第2の配線と対向する前記接触部材の一部のみ、ならびに、この一部と対向する前記第1の配線および前記第2の配線の少なくとも一方の領域のみのうち少なくとも1つに形成された薄膜と
を備え、
前記薄膜は、ロジウム、イリジウム、白金およびルテニウムの中から選ばれた1つ、または、ロジウム、イリジウム、白金、ルテニウム、オスミウム、金、銀、銅、および、パラジウムの中から選ばれた2つ以上の金属を含む材料から構成され、
前記第1の配線、前記第2の配線および接触部材は、金、銀、銅、および、アルミニウムの中から選ばれた少なくとも1つの金属から構成される
ことを特徴とするMEMSスイッチ。
【請求項2】
請求項1記載のMEMSスイッチにおいて、
前記第1の配線および前記第2の配線と対向する前記接触部材の一部、または、この一部と対向する前記第1の配線および前記第2の配線の少なくとも一方に設けられ、対向配置された第1の配線および第2の配線の少なくとも一方または前記接触部材の一部に向かって突出した突出部をさらに備える
ことを特徴とするMEMSスイッチ。
【請求項3】
請求項1または2記載のMEMSスイッチにおいて、
前記薄膜は、厚さが0.1μm以下である
ことを特徴とするMEMSスイッチ。
【請求項4】
請求項1−3の何れか1項に記載のMEMSスイッチにおいて、
前記第1の配線および前記第2の配線の厚さは、前記薄膜の厚さより大きい
ことを特徴とするMEMSスイッチ。
【請求項5】
請求項1−4の何れか1項に記載のMEMSスイッチにおいて、
前記MEMS機構は、
前記基板の上面から垂設され、かつ、前記第2の配線と接続された支持部材と、
この支持部材により一端が支持された前記基板の平面方向に延在するばね部材と、
このばね部材の他端に接続され、前記基板の平面方向に対して垂直な方向に移動可能とされた移動電極と、
前記基板の上面に前記移動電極と対向配置され、前記移動電極との間に生じる電位差により前記移動電極を変位させる制御電極と
をさらに備え、
前記接触部材は、前記移動電極に支持され、
前記ばね部材は、金、銀、銅、および、アルミニウムの中から選ばれた1つ以上の金属から構成される
ことを特徴とするMEMSスイッチ。
【請求項6】
少なくとも上面が絶縁材料からなる基板の前記上面に、金、銀、銅、および、アルミニウムの中から選ばれた少なくとも1つの金属から構成される第1の配線を形成する第1の配線形成ステップと、
前記第1の配線上の一部の領域のみに、ロジウム、イリジウム、白金およびルテニウムの中から選ばれた1つ、または、ロジウム、イリジウム、白金、ルテニウム、オスミウム、金、銀、銅、および、パラジウムの中から選ばれた2つ以上の金属を含む材料からなる薄膜を形成する薄膜形成ステップと、
前記第1の配線を含む前記基板上に、前記第1の配線と離間した位置に前記基板を露出させる開口を有する犠牲膜を形成する犠牲膜形成ステップと、
前記開口および前記犠牲膜上に金、銀、銅、および、アルミニウムの中から選ばれた少なくとも1つの金属を選択的に配置して、前記開口から前記犠牲膜上における前記薄膜上方の領域に至る構造体を形成する構造体形成ステップと、
前記犠牲膜を除去する犠牲膜除去ステップと
を少なくとも有することを特徴とするMEMSスイッチの製造方法。
【請求項7】
少なくとも上面が絶縁材料からなる基板の前記上面に、金、銀、銅、および、アルミニウムの中から選ばれた少なくとも1つの金属から構成される第1の配線を形成する第1の配線形成ステップと、
前記第1の配線を含む前記基板上に、前記第1の配線と離間した位置に前記基板を露出させる開口を有する犠牲膜を形成する犠牲膜形成ステップと、
前記犠牲膜上における前記第1の配線上の一部の領域の上方のみに、前記第1の配線の少なくとも一部の上方に位置する前記犠牲膜上のみに、ロジウム、イリジウム、白金およびルテニウムの中から選ばれた1つ、または、ロジウム、イリジウム、白金、ルテニウム、オスミウム、金、銀、銅、および、パラジウムの中から選ばれた2つ以上の金属を含む材料からなる薄膜を形成する薄膜形成ステップと、
前記開口および前記犠牲膜上に金、銀、銅、および、アルミニウムの中から選ばれた少なくとも1つの金属を選択的に配置して、前記開口から前記薄膜に至る構造体を形成する構造体形成ステップと、
前記犠牲膜を除去する犠牲膜除去ステップと
を少なくとも有することを特徴とするMEMSスイッチの製造方法。
【請求項8】
請求項6または7に記載のMEMSスイッチの製造方法において、
前記薄膜形成ステップは、
前記基板の上面に、前記薄膜が形成される領域を少なくとも覆う開口部を有するフォトレジスト層を形成する第1のステップと、
前記フォトレジストが形成された前記基板上に、ロジウム、イリジウム、白金およびルテニウムの中から選ばれた1つ、または、ロジウム、イリジウム、白金、ルテニウム、オスミウム、金、銀、銅、および、パラジウムの中から選ばれた2つ以上の金属を含む材料からなる金属膜を形成する第2のステップと、
リフトオフ法により、前記フォトレジスト層をこの上に形成された金属膜とともに除去する第3のステップと
から構成されることを特徴とするMEMSスイッチの製造方法
【請求項9】
請求項8記載のMEMSスイッチの製造方法において、
前記第1のステップは、前記基板上の前記第1の配線および前記構造体が形成される領域以外の領域にも開口部が形成される
ことを特徴とするMEMSスイッチの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図11D】
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【図11E】
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【図11F】
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【図11G】
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【図11H】
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【図11I】
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【図11J】
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【図11K】
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【図11L】
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【図11M】
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【図11N】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−38661(P2012−38661A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−179684(P2010−179684)
【出願日】平成22年8月10日(2010.8.10)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】