説明

MEMS装置のためのウェハレベルパッケージプロセス

【課題】低コスト、高信頼性、および小さなセンサを可能とする、ウェハレベルパッケージプロセスを提供する。
【解決手段】下カバーウェハ210および上カバーウェハ230を提供するステップと、基板層上に複数のMEMS装置を含む半導体ウェハを提供するステップと、半導体ウェハを下カバーウェハの第1表面に接合するステップと、上カバーウェハの第2表面を半導体ウェハに接合するステップと、を有する。下カバーウェハの第1表面および上カバーウェハの第2表面は、半導体ウェハに接合されたときに、複数の密封シールされるキャビティ区域を画定し、MEMS装置の各々は、シールされるキャビティ区域の1つの内側に配置される。上カバーが半導体ウェハに接合された後に、上カバーウェハの第1表面から上カバーウェハの第2表面まで延びる複数の穴が形成される。その後、各穴に金属リード層が堆積され、MEMS装置に電気的接続を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MEMS装置のためのウェハレベルパッケージプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
[0001]微小電気機械システム(Micro-electro-mechanical systems;MEMS)装置は、シリコンウェハのような基板の表面上に小さな機械構造を形成するために、典型的には半導体製造技術で形成される。ジャイロスコープや加速度計のようなMEMS装置の製造において、半導体製造技術がしばしば用いられ、入力軸または速度軸を中心とした装置の回転または加速度に応答して変位を検出するための用いられる多数の移動構造を形成する。
【0003】
[0002]高性能MEMSジャイロスコープは、真空中にパッケージされなければならず、MEMS加速度計は、ガス中にパッケージする必要がある。真空中およびガス中の両者の環境は、時間経過にわたり安定でなければならず、これは、全てのシールが密封でなければならないことを意味する。MEMS装置の密封シールは、製造、製造後のハンドリング、および動作中のごみや損傷から装置を保護する。MEMS装置のパッケージは、しばしば、一度にまたは比較的小さなバッチで行われ、パッケージプロセスは高価になる傾向にある。
【0004】
[0003]ウェハレベルパッケージ(wafer level packaging;WLP)は、バッチ製造でパッケージを行うことによりコストを削減し、また、しばしば、単純な安価な使用される最終パッケージを可能にする。これらの理由により、多数のWLPの方法が考案されてきた。それにもかかわらず、要求が厳しく達成が困難であるので、わずかな方法だけが商業的に成功している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
[0004]多くのWLP設計は、MEMS装置上に密封シールされたカバーを提供する。MEMSジャイロスコープおよび加速度計を使用する高性能な装置において、密封シールされたカバーが必要とされるだけでなく、カバーは、「上部検出プレート」として使用するために装置から正確に画定された距離を必要とする。このスペース要求は、カバーを装置に結合するのり利用できる選択を厳しく制限するので、WLPをより困難にする。最も容易な接合技術(たとえば、接着剤、はんだ、フリット等)は、カバーと装置との間に大きな制御できないギャップを生成し、それゆえ好適ではない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[0005]微小電気機械システム(MEMS)装置をパッケージするプロセスは、第1表面および対向する第2表面を備える下カバーウェハを提供することを含み、また、第1表面および対向する第2表面を備える上カバーウェハを提供することを含み、複数のMEMS装置を含む半導体ウェハを基板層上に提供することを含み、下カバーウェハの第1表面に半導体ウェハを接合し、上カバーウェハの第2表面を半導体ウェハに接合する。下カバーウェハの第1表面および上カバーウェハの第2表面は、半導体ウェハに接合されたときに、複数の密封シールされたキャビティ区域を画定し、各MEMS装置がシールされたキャビティ区域の1つの内側に配置される。上カバーウェハが半導体ウェハに接合された後に、上カバーウェハの第1表面から上カバーウェハの第2表面まで延びる複数の穴が形成される。その後、各穴に金属リード層が堆積され、MEMS装置に電気接続が提供される。
【0007】
[0006]本発明の特徴は、図面の参照とともに以下の説明から当業者に明らかになるであろう。図面は典型的な実施形態のみを示し、それゆえ発明の範囲を限定するものではなく、本発明は図面とともに追加的な特定要素および詳細とともに説明される。添付図面は以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1A】1つのアプローチによるMEMSを製造するプロセスを示す図である。
【図1B】1つのアプローチによるMEMSを製造するプロセスを示す図である。
【図1C】1つのアプローチによるMEMSを製造するプロセスを示す図である。
【図1D】1つのアプローチによるMEMSを製造するプロセスを示す図である。
【図1E】1つのアプローチによるMEMSを製造するプロセスを示す図である。
【図1F】1つのアプローチによるMEMSを製造するプロセスを示す図である。
【図2】一実施形態による密封シールされるMEMS装置の断面側面図である。
【図3】一実施形態による密封シールされるMEMS装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[0010]以下の詳細な説明において、当業者が本発明を実施できるように実施形態が十分に詳細に説明される。他の実施形態も本発明の範囲から逸脱することなく利用することができることを理解されたい。以下の詳細な説明は、それゆえ、限定的なものとして解釈されるべきではない。
【0010】
[0011]微小電気機械システム(MEMS)装置のためのウェハレベルパッケージプロセスが提供される。パッケージプロセスは、加速度計およびジャイロスコープのようなMEMS慣性センサに適合的である。パッケージプロセスは、低コスト、高信頼性、および小さなセンサを可能にする。MEMS装置のウェハレベルパッケージの本アプローチは、従来の方法の改良である。
【0011】
[0012]たとえば、1つの従来のアプローチにおいて、MEMS構造を含むシリコンウェハは、下ガラス基板に陽極接合される。MEMS構造は、シリコンウェハのエピタキシャル層内に含まれ、ウェハの残りは、シリコンエッチングにより除去される。エッチングの前に、下ガラス基板内に穴が形成される。穴は、穴の周りに密封シールを維持する導体シリコンパッド上に開口し、下ガラス基板の背面からMEMS装置への電気接続経路を提供し、これは、最終的にはシールされたキャビティ内にされる。穴の形成に続き、シリコン基板は上述のように取り除かれ、下ガラス基板の背面上および穴内に金属が堆積される。最後に、上ガラスウェハがシリコンに陽極接合され、装置をガスを含む(加速度計用)または真空(ジャイロスコープ用)のキャビティ内に装置をシールする。
【0012】
[0013]上述した従来のアプローチにおいて、穴は、上ガラスの接合の前に、下ガラス基板内に形成され、これは、上ガラス基板の陽極接合の間にシリコン特徴への電気接続が必要とされるからである。しかし、このアプローチは、下ガラス基板を有意に弱くするのでウェハを脆くする。基板の除去の後、シリコンMEMS装置は非常に薄く、装置は下ガラス基板内の穴を補うための構造的支持がほとんどまたはまったく追加しない。それゆえ、ガラスは脆く、残りの製造ステップにおいて損傷を生じさせることがあり、ウェハの歩留まりを低下させる。
【0013】
[0014]MEMS装置のウェハレベルパッケージへの本アプローチにおいて、ガラスウェハ内に穴が形成されず、薄くされるときに脆くしない。本技術において、穴は、接合されるウェハが二重の厚さであるプロセスの最後においてのみ形成され、それゆえより剛性でありロバスト性がある。接合されるウェハは、非常に改善された剛性を提供し、プロセスの残りにわずかなハンドリングステップがあるだけであり、接合されるウェハは、MEMSジャイロスコープに必要とされる多数の穴に適合することができる。
【0014】
[0015]図1A−1Fは、本アプローチによる1つ以上のMEMS装置をパッケージするためのプロセスを示している。図1Aに示されるように、ガラスウェハのような下カバーウェハ110が提供される。下カバーウェハ110は、第1表面112および対向する第2表面114を備える。下カバーウェハ110は、エッチングされた壁のような1つ以上の凹部115を含むように形成することができ、また、金属化されたパターンおよびライン、電極等を含むことができる。たとえば、下カバーウェハ110は、短い金属ランナを含むことができ、これは、上カバーウェハ接続(以下で説明される)の間にMEMS装置への電気的接続(「ラップアラウンドコンタクト(wraparound contact)」を介して)を提供するように構成される。
【0015】
[0016] シリコンウェハのような半導体ウェハ120が提供され、これは1つ以上のMEMS装置を基板層上に含む。MEMS装置は、半導体ウェハ120の基板層上のエピタキシャル層に含まれる様々な微小構造を含む。MEMS装置は、1つ以上のジャイロスコープおよび/または1つ以上の加速度計のような1つ以上のMEMS慣性センサを含むことができ、これは、標準的な技術により半導体ウェハ120内に形成される。
【0016】
[0017]図1Bに示されるように、半導体ウェハ120は、陽極接合のような標準的な接合技術を用いて下カバーウェハ110の第1表面112に接合される。基板層は、半導体ウェハ120が下カバーウェハ110に接合された後にエッチングにより取り除くことができる。基板層を取り除く例示的なエッチング剤は、水酸化カリウム(KOH)、エチレン混合物、ジアミン、ピロカテコール(EDP)、またはこれらの組み合わせを含む。
【0017】
[0018]図1Cに示されるように、上カバーウェハ130が提供され、これは第1表面132および対向する第2表面134を備える。上カバーウェハ130は、実質的に下カバーウェハ110の鏡像であり(いくつかの特徴を除く)、また、エッチングされた壁のような1つ以上の凹部135を含むように製造することができ、また、金属化パターン、ライン、電極等を含むように製造することができる。最終的な環境が真空となることを意図するなら、TiまたはZrのようなゲッタリング材料を、電極、リード等に使用されない表面の任意の領域上に堆積させることが好ましい。上カバーウェハ130は、図1Dに示されるように第2表面134を半導体ウェハ120に陽極接合することなどにより、下カバーウェハ110上の半導体ウェハ120に接合される。凹部115、135は、上カバーウェハ130が半導体ウェハ120に接合された後に互いに整合し、MEMS装置が、凹部115、135により形成された密封シールキャビティ区域の内側に配置される。
【0018】
[0019]金属ランナが下カバーウェハ110上に存在する場合、金属ランナは、全ての金属およびシリコンの特徴を電気的にショートする。金属ランナが存在しない場合、シリコンウェハ120上の可撓性構造は、接合の間に静電力により引き上げられ、上基板130に接合される。接合の後、金属ランナは、下カバーウェハ110を通してレーザートリミングを使用して切断することができる。図1Dに示される接合ステップは、最終的に望まされる環境からなる環境下でなされなければならない。たとえば、最終的な環境が真空であるならば、接合は真空化でなされなければならない。
【0019】
[0020]図1Eに示されるように、複数の穴140は、上カバー130の第1表面132を通じて形成される。穴140は、上カバー130の一部を通じてサンドブラストにより、その後に、上カバーウェハ130の残りの部分を通じてエッチングにより形成することができる。上カバーウェハ130を通じたエッチングは、フッ化水素酸(HF)のような標準的なエッチング剤で実行することができる。
【0020】
[0021]図1Fに示されるように、金属リード層150が各穴140内に堆積され、半導体ウェハ120内のMEMS装置に電気的接続を提供する。ボンドパッド154が、上カバーウェハ130の第1表面132上の各穴140に隣接して形成される。ボンドパッド154は、金属リード層150に電気的に連結される。
【0021】
[0022]代替アプローチにおいて、上述のプロセスステップは、上カバーウェハ130が半導体ウェハ120に接合された後に、穴が下カバーウェハ110の第2表面114を通じて形成されることを除いて、図1A−1Fで説明したように実行される。
【0022】
[0023]図2は、上述した図1A−1Fのプロセスステップにより製造することができる一実施形態による密封シールされたMEMS装置200の断面側面図である。シールされたMEMS装置200は、下カバープレート210および上カバープレート230を含み、両者はガラスウェハから形成することができる。慣性センサのようなMEMS装置機構220は、上カバープレート210および下カバープレートの間に挟まれる。MEMS装置機構220は、機構基板222の内側部分でパターン化され、これはシリコンウェハ上に成長させたエピタキシャル層とすることができる。下カバープレート210および上カバープレート230は、陽極接合などにより機構基板222に接合される。
【0023】
[0024]下カバープレート210および上カバープレート230は、機構基板222に接合される前に適切な機構支持およびトラフ構造により処理され、カバープレート210、230が互いに組み立てられたときにMEMS装置機構220と協働する。カバープレート210、230が機構基板222に接合されるとき、機構支持およびトラフ構造は複数のシールされたキャビティ区域234を画定する。MEMS装置機構220は、シールされたキャビティ区域234の内側に配置される。カバープレート210、230は、それぞれのシリコンの熱膨張係数と実質的に一致する熱膨張係数を備えるタイプのガラスウェハ内に形成することができる。そのようなガラスウェハの例は、Corning Pyrex(登録商標)、Schott Borofloat 33、Hoya SD2などを含む。
【0024】
[0025]複数の穴240は、上カバープレート230を通って機構基板222の複数の接続部分224のそれぞれに延びる。穴240は、カバープレート230の外部表面236から接続部224まで内側にテーパーが付けられている。接続部分224は、穴240をキャビティ区域234から完全にシールするサイズである。金のトレースのような複数の金属ランナ242は、下カバープレート210内に位置する。金属ランナ242は、機構基板222に接合する前に、下カバープレート210の内側表面上に形成される浅いトラフ内に部分的に沈めるようにすることができる。
【0025】
[0026]金のトレースのような複数の金属リード層250は、各穴240内を通り、接続部224を通じてMEMS装置機構220に電気的接続を提供する。複数の接続ポッド254は、上カバープレート230の外部表面236上の各穴240に隣接して配置される。接続ポッド254は、金属リード層250に電気的に連結され、シールされたMEMS装置200内および外にルーチン信号を提供する。
【0026】
[0027]図3は、図1A−1Fに関して上述したプロセスステップにより製造することができる一実施形態による密封シールされるMEMS装置300の平面図である。MEMS装置300は、シリコンウェハから形成されるジャイロスコープ機構のような装置機構310を含み、これは、図2のMEMS装置のように図示されているように、上ガラスプレート304と下ガラスプレート(図示せず)との間に挟まれる。また、MEMS装置300は、MEMS装置300の外周を囲むシリコンフレームのような支持フレームを含む。ガラスプレートは、それぞれ対向するフレーム314および装置機構310の側部に陽極接合などにより接合され、MEMS装置300に密封シールを提供する。
【0027】
[0028]複数の穴320は、それぞれ上ガラスプレート304を通って複数の接続部分324に延びる。穴320は内側にテーパーが付され、直径がガラスプレート304において大きくなり、穴320が接続部324に接する場所で小さくなる。複数の金属リード層322は、各穴320内に延び、接続部分324を通して装置機構310に電気的接続を提供する。複数のボンドパッド328は、ガラスプレート304の外部表面上の穴320に隣接して、また支持フレーム314内に配置される。これは、支持フレーム314の内側から装置機構310への全ての電気的接続が形成されることを可能にする。
【0028】
[0029]本発明は、その本質的な特徴から逸脱することなく他の具体的な形態で実施することができる。説明された実施形態は、すべて単に説明的なものであり限定的なものではない。それゆえ本発明の範囲は、上述の説明ではなく、添付の特許請求の範囲の請求項により示される。請求項の意味および均等の範囲内から生じるあらゆる変形は本発明の範囲内にあるとされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微小電気機械システム(MEMS)装置をパキングするためのプロセスであって、前記プロセスは、
第1表面および対向する第2表面を備える下カバーウェハを提供するステップと、
第1表面および対向する第2表面を備える上カバーウェハを提供するステップと、
基板層上に複数のMEMS装置を含む半導体ウェハを提供するステップと、
前記半導体ウェハを前記下カバーウェハの前記第1表面に接合するステップと、
前記上カバーウェハの前記第2表面を前記半導体ウェハに接合するステップと、を有し、前記下カバーウェハの前記第1表面および前記上カバーウェハの前記第2表面は、前記半導体ウェハに接合されるときに、複数の密封シールされるキャビティ区域を画定し、各MEMS装置が前記シールされたキャビティ区域の1つの内側に配置され、
前記プロセスはさらに、前記上カバーウェハが前記半導体ウェハに接合された後に、前記上カバーウェハの前記第1表面から前記上カバーウェハの前記第2表面まで延びる複数の穴を形成するステップと、
前記穴の各々内に金属リード層を堆積させて、前記MEMS装置に電気的接続を提供するステップと、を有する、プロセス。
【請求項2】
請求項1に記載のプロセスであって、前記密封シールされるキャビティ区域の各々は、真空または予め決定された圧力の減衰ガスを含む、プロセス。
【請求項3】
請求項2に記載のプロセスであって、前記MEMS装置は、
前記密封シールされたキャビティ区域が真空である場合はMEMSジャイロスコープを有し、または、
前記密封シールされたキャビティ区域が予め決定された圧力の減衰ガスを含む場合はMEMS加速度計を有する、プロセス。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図1F】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−122996(P2012−122996A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−262228(P2011−262228)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】