説明

N−[ヘテロアリル(ピペリジン−2−イル)メチル]ベンズアミドの誘導体、この調製方法およびこの治療法における使用

本発明は、一般式(I)を有する化合物に関し、


式中:RはH、またはアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、フェニルアルキル、アルケニル、アルキニル基を表し;Rはピリジニル、フラニル、チエニル、チアゾリルまたはオキサゾリル基を表し、前記基は場合によって置換されていてもよく;RはH、ハロゲン原子およびトリフルオロメチル、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、フェニル、シアノ、アセチル、ベンゾイル、チオアルキル、アルキルスルホニル、カルボキシまたはアルコキシカルボニル基の中から選択される1またはそれ以上の置換基、または一般式NRもしくはSONRもしくはCONRを有する基を表し、ここで、RおよびRは各々、Hまたはアルキル基を表すか、これらを有する窒素原子とともに、ピロリジン、ピペリジンまたはモルホリン環を形成し、前記化合物は塩基、酸付加塩、水和物または溶媒和物の形態をとる。また、本発明は治療における化合物の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本発明の化合物は、一般式(I)に対応する。
【0002】
【化2】

式中、
は、水素原子、または、1個またはそれ以上のフッ素原子で場合によって置換されていてもよい直鎖もしくは分岐(C−C)アルキル基、または(C−C)シクロアルキル基、または(C−C)シクロアルキル(C−C)アルキル基、または1個もしくは2個のメトキシ基で場合によって置換されていてもよいフェニル(C−C)アルキル基、または(C−C)アルケニル基、または(C−C)アルキニル基のいずれかを表し;
は、ピリジル、フリル、チエニル、チアゾリルまたはオキサゾリル基を表し、この基は、ハロゲン原子およびトリフルオロメチル基および直鎖もしくは分岐(C−C)アルキル基および(C−C)アルコキシ基から選択される1またはそれ以上の置換基で場合によって置換されていてもよく;
は、水素原子、またはハロゲン原子およびトリフルオロメチル基、直鎖もしくは分岐(C−C)アルキル基、(C−C)シクロアルキル基、(C−C)アルコキシ基、フェニル基、シアノ基、アセチル基、ベンゾイル基、(C−C)チオアルキル基、(C−C)アルキルスルホニル基、カルボキシル基または(C−C)アルコキシカルボニル基から選択される1またはそれ以上の置換基、または、一般式NRもしくはSONRもしくはCONRで表される基のいずれかを表し、ここで、RおよびRは各々独立して水素原子または直鎖もしくは分岐(C−C)アルキルまたは(C−C)シクロアルキル基を表すか、またはRおよびRは、これらを有する窒素原子とともにピロリジン、ピペリジンまたはモルホリン環を形成する。
【0003】
式(I)の化合物は、1個またはそれ以上の不斉炭素原子を含みうる。従って、これらはトレオまたはエリトロ鏡像異性体またはジアステレオ異性体の形態で存在しうる。これらの鏡像異性体およびジアステレオ異性体、ならびにラセミ混合物をはじめとするこの混合物は、本発明の一部を成す。
【0004】
式(I)の化合物は、塩基もしくは酸付加塩の形態で存在しうる。このような付加塩は、本発明の一部を成す。
【0005】
この塩は、医薬的に許容される酸を用いて調製することが有利であるが、例えば、式(I)の化合物を精製または単離するのに有用なこの他の酸の塩も、本発明の一部を成す。
【0006】
また、式(I)の化合物は、水和物または溶媒和物の形態で、すなわち1またはそれ以上の水分子とのまたは溶媒との会合または化合の形態で存在しうる。このような水和物および溶媒和物もまた、本発明の一部を成す。
【0007】
本発明の化合物は、グリシン輸送体glyt1および/またはglyt2の特異的阻害物質として特定の活性を示す。
【0008】
が水素原子以外である、トレオまたはエリトロ配置の一般式(I)の化合物は、以下のスキーム1によって示される方法によって調製できる。
【0009】
【化3】

【0010】
、RおよびXが前記で定義の通りである(Rは水素原子以外)一般式(II)のジアミンと、Yが活性化OH基または塩素原子を表し、Rが前記で定義の通りである一般式(III)の活性化酸または酸塩化物とのカップリングを、当業者に公知の方法を用いて実施する。
【0011】
一般式(II)のジアミンは、以下のスキーム2によって示される方法によって調製できる。
【0012】
【化4】

【0013】
Bocが1,1−ジメチルエトキシカルボニル基を表す式(IV)のワインレブアミドを、エーテル溶媒、例えばジエチルエーテル中、−90℃から−30℃の間で、Rが前記で定義の通りである一般式(V)のリチウム化複素環と反応させる。一般式(VI)のケトンが得られ、これを、エーテル溶媒、例えばテトラヒドロフラン中、−78℃から室温の間で、還元剤、例えばK−Selectride(登録商標)またはL−Selectride(登録商標)(水素化トリ−s−ブチルホウ素カリウムまたはリチウム)を用いて還元し、一般式(VII)のトレオ配置のアルコールとする。
【0014】
次いで、一般式(VII)のカルバメートを、エーテル溶媒、例えばテトラヒドロフラン中、室温から還流温度の間で、混合水素化物、例えば水素化リチウムアルミニウムの作用によって還元し、一般式(VIII)のトレオN−メチルアミノアルコールとする。次いで、以下の方法で、一般式(VIII)のトレオアルコールを、複素環の性質に応じてトレオ型またはエリトロ−トレオ混合物である、Rがメチル基を表す、一般式(II)の中間体ジアミンへ2段階で変換する:まずアルコール官能基を、塩素系溶剤、例えばジクロロメタン中、および塩基、例えばトリエチルアミンの存在下、0℃から室温で、塩化メタンスルホニルの作用によって、求電子性基、例えばメタンスルホン酸基へ変換し、次いで、この求電子性基を、アルコール、例えばエタノール中、密閉媒体質、例えばオートクレーブ中、−50℃から室温の間で、−50℃の液化アンモニアと反応させる。また、一般式(VII)のカルバメートを、アルコール、例えばメタノール中で、強塩基、例えば水酸化カリウム水溶液を用いて脱保護すると、一般式(IX)のトレオ−アミノアルコールが得られ、続いて、塩基、例えば炭酸カリウムの存在下、極性溶媒、例えばN,N−ジメチルホルムアミド中、室温から100℃の間で、Rが前記で定義の通りであるが、水素原子以外であり、Zがハロゲン原子を表す、式RZのハロゲン化誘導体を用いて、N−アルキル化を実施する。次いで、このようにして得られた一般式(X)のアルコールを、一般式(VIII)のアルコールに関して記載されるように処理する。
【0015】
が水素原子を表す一般式(I)の化合物は、R
−例えば酸化剤またはルイス酸、例えば三臭化ホウ素を用いてピペリジン環の窒素を脱保護することによって、または水素分解によって、場合によって置換されていてもよいフェニルメチル基、
−または、例えばパラジウム 0複合体を用いてピペリジン環の窒素を脱保護することによる、アルケニル基、好ましくはアリル基
のいずれかを表す、一般式(I)の化合物から調製でき、Rが水素原子を表す一般式(I)の化合物が得られる。
【0016】
さらに、種々のエリトロ/トレオジアステレオ異性体の(1R、2R)−(1S、2S)−(1S、2R)および(1R、2S)鏡像異性体に対応する一般式(I)のキラル化合物は、キラルカラムでの高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によるラセミ化合物の分離によって、またはキラル酸、例えば酒石酸、カンファースルホン酸、酒石酸ジベンゾイルまたはN−アセチルロイシンを用いることによる、アルコール系の溶媒中でのジアステレオ異性体の塩の分別再晶出および優先再晶出により、すなわち、一般式(IV)のキラルワインレブアミドを用いるスキーム2に記載のエナンチオ選択的な合成により、一般式(II)のラセミアミンの分割によって得ることができる。
【0017】
式(IV)のラセミまたはキラルワインレブアミドは、Eur.J.Med.Chem.、35、(2000)、979から988頁およびJ.Med.Chem.、41、(1998)、591から601頁に記載されているものと同様の方法によって調製できる。一般式(V)のリチウム化複素環は、当業者に公知の方法およびJ.O.C.、62、(1997)、5484から5496頁およびTetrahedron Letters、35、(1994)、3673から3674頁に記載されているものと同様の方法によって調製できる。
【0018】
式RZのハロゲン化誘導体は市販されている。
【0019】
一般式(III)の特定の酸および酸塩化物は市販されているか、またはこれらが新規のものである場合には、特許EP−0556672およびUS−3801636ならびにJ.Chem.Soc.、(1927)、25、Chem.Pharm.Bull.、(1992)、1789から1792頁、Aust.J.Chem.、(1984)、1938から1950頁およびJ.O.C.、(1980)、527頁に記載されているものと同様の方法によって得ることができる。
【0020】
以下の実施例は、本発明のいくつかの化合物の調製を例示する。微量元素分析、IRおよびNMRスペクトルならびにキラルカラムでのHPLCにより構造を確認し、化合物のエナンチオマー純度を得る。
【0021】
実施例の表題中の括弧内に示した数字は、後で示す表の最初の列の数字に対応する。化合物名中、ハイフン「−」はこの語句の一部を成し、下線記号「_」は単に改行を示すのに役立つ;この時点で改行が起こらない場合は削除されなくてはならず、通常のハイフンまたはスペースで置き換えてはならない。
【実施例1】
【0022】
(化合物2)
2−クロロ−N−[(1−メチル−2−ピペリジル)−3−チエニルメチル]−3−トリフルオロメチルベンズアミドヒドロクロリド1:1
【0023】
1.1. 1,1−ジメチルエチル2−(3−チエニルカルボニル)ピペリジン−1−カルボキシレート
無水ジエチルエーテル20mlに溶解した1.8g(10.8mmol)の3−ブロモチオフェンを、アルゴン雰囲気下、100ml丸底フラスコに入れ、これを40℃に冷却する。次いで、シクロヘキサン中、2.5Mブチルリチウム溶液4.8ml(12mmol)を徐々に加え、混合物をこの温度で2時間放置する。
【0024】
トランスファーニードルを用い、リチウム化した複素環を、−20℃に冷却した無水ジエチルエーテル50mlに溶かした1.5g(5.5mmol)の1,1−ジメチルエチル2−(N−メトキシ−N−メチルカルバモイル)ピペリジン−1−カルボキシレートの溶液へ加え、この混合物を撹拌しながら2時間かけて室温に戻させる。
【0025】
飽和塩化アンモニウム水溶液を用いて加水分解した後、水相を分離し、酢酸エチルで抽出する。合わせた有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮し、残渣を、酢酸エチルとシクロヘキサンの混合物で溶出するシリカゲルでのカラムクロマトグラフィーにより精製する。
【0026】
1.2gの化合物が無色の油状物質の形態で得られ、この生成物をさらなる精製を行わずに以下の工程に使用する。
【0027】
1.2. 1,1−ジメチルエチルトレオ[ヒドロキシ−(3−チエニル)メチル]ピペリジン−1−カルボキシレート
1.2g(4mmol)の1,1−ジメチルエチル2−(3−チエニルカルボニル)ピペリジン−1−カルボキシレートを、アルゴン雰囲気下、250ml丸底フラスコに入れた無水テトラヒドロフラン40mlに入れ、この溶液を−78℃に冷却し、テトラヒドロフランに溶かしたL−Selectride(登録商標)(水素化トリ−s−ブチルホウ素リチウム)の1M溶液12ml(12mmol)を滴下し、混合物を−78℃で5時間撹拌する。
【0028】
この混合物を、冷条件下で水7mlおよび35%過酸化水素水溶液7mlで徐々に加水分解し、これを撹拌しながら2時間かけて室温に戻させる。
【0029】
得られた混合物を水および酢酸エチルで希釈し、相を分離し、水相を酢酸エチルで抽出する。合わせた有機相を洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、蒸発させた後、残渣を、酢酸エチルとシクロヘキサンの混合物で溶出するシリカゲルでのカラムクロマトグラフィーにより精製する。
【0030】
1gの生成物が無色の油状物質の形態で得られ、これをさらなる精製を行わずに以下の工程に使用する。
【0031】
1.3. トレオ−(1−メチル−2−ピペリジル)(3−チエニル)メタノール
0.63g(16.6mmol)の水素化リチウムアルミニウムを、窒素雰囲気下、50ml二口フラスコに入れた無水テトラヒドロフラン10mlに入れ、混合物を還流に加熱し、テトラヒドロフラン35mlに溶かした1g(3.3mmol)の1,1−ジメチルエチルトレオ−[ヒドロキシ(3−チエニル)メチル]−ピペリジン−1−カルボキシレートの溶液を加え、この混合物を2時間還流する。
【0032】
混合物を冷却し、0.1M酒石酸カリウムナトリウム溶液で徐々に加水分解し、一晩撹拌する。
【0033】
得られた混合物を濾過し、沈殿をテトラヒドロフランですすぎ、次いで、濾液を減圧下で濃縮する。0.6gの無色の油状生成物が得られる。
【0034】
1.4. (1−メチル−2−ピペリジル)(3−チエニル)メタンアミン
0.6g(2.8mmol)のトレオ−(1−メチル−2−ピペリジル)(3−チエニル)メタノールおよび0.4ml(2.8mmol)のトリエチルアミンを、窒素雰囲気下、50ml丸底フラスコに入れた無水ジクロロメタン10mlに入れ、これを0℃に冷却し、0.22ml(2.8mmol)の塩化メタンスルホニルを加え、混合物を1時間かけてゆっくりと室温に戻らせ、減圧下で濃縮する。液化アンモニアを、マグネチックスターラーを備えたオートクレーブに入れ、−50℃に冷却し、無水エタノール30mlに溶解した、前記で調製した粗メタンスルホン酸塩溶液を加え、オートクレーブを閉じて混合物を48時間撹拌する。
【0035】
この混合物を丸底フラスコへ移し、濃縮乾固し、残渣を水およびジクロロメタンで希釈し、相を分離し、水相をジクロロメタンで抽出する。合わせた有機相を洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、溶媒を蒸発除去した後、0.5gのアミンが油状化合物の形態で単離され、これをさらなる精製を行わずに以下の工程に用いる。
【0036】
1.5 2−クロロ−N−[(1−メチル−2−ピペリジル)(3−チエニル)−メチル]−3−トリフルオロメチルベンズアミドヒドロクロリド1:1
0.25g(1.17mmol)の(1−メチル−2−ピペリジル)(3−チエニル)メタンアミンおよび0℃のジクロロメタン20mlに溶解した0.26ml(1.4mmol)のトリエチルアミンを50ml丸底フラスコに入れる。次いで、ジクロロメタン10mlに溶かした0.34g(1.4mmol)の2−クロロ−3−トリフルオロ−メチルベンゾイルクロリドの溶液を加え、この混合物を撹拌しながら2時間かけて室温に戻させる。
【0037】
この混合物を水で処理し、ジクロロメタンで数回抽出する。有機相を水で、この後1N水酸化ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、溶媒を減圧下で蒸発除去した後、残渣を、ジクロロメタンとメタノールの混合物で溶出するシリカゲルでのカラムクロマトグラフィーにより精製する。0.23gの油状生成物が得られ、これを2−プロパノール中0.1Nの塩化水素溶液を用いて塩酸塩の形態で単離する。
【0038】
0.11gの塩酸塩が、83/17比のトレオ/エリトロジアステレオ異性体の混合物からなる白色固体の形態で最終的に単離される。
【0039】
融点:124から126℃。
【実施例2】
【0040】
(化合物6)
トレオ−2−クロロ−3−メチル−N−[(1−アリル−2−ピペリジル)−3−ピリジルメチル]ベンズアミドヒドロクロリド1:1
【0041】
2.1. 1,1−ジメチルエチル2−(3−ピリジルカルボニル)ピペリジン−1−カルボキシレート
無水ジエチルエーテル100mlに溶解した14.5g(91.8mmol)の3−ブロモピリジンを、アルゴン雰囲気下、500ml丸底フラスコに入れ、これを78℃に冷却する。次いで、シクロヘキサン中ブチルリチウム2.5M溶液40.4ml(100.9mmol)を徐々に加え、混合物をこの温度で0.5時間放置する。
【0042】
−78℃に冷却した無水ジエチルエーテル50mlに溶かした10g(36.7mmol)の1,1−ジメチルエチル2−(N−メトキシ−N−メチルカルバモイル)ピペリジン−1−カルボキシレートの溶液を加え、混合物をこの温度で2時間撹拌しながら放置し、次いで、室温で12時間放置する。
【0043】
飽和塩化アンモニウム水溶液で加水分解した後、水相を分離し、酢酸エチルで抽出する。合わせた有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮し、残渣を、酢酸エチルとシクロヘキサンの混合物で溶出するシリカゲルでのカラムクロマトグラフィーにより精製する。
【0044】
5.5gの化合物が無色の油状物質の形態で得られ、これをさらなる精製を行わずに以下の工程に使用する。
【0045】
2.2. 1,1−ジメチルエチルトレオ[ヒドロキシ(3−ピリジル)メチル]ピペリジン−1−カルボキシレート
5.4g(18.6mmol)の1,1−ジメチルエチル2−(3−ピリジル−カルボニル)ピペリジン−1−カルボキシレートを、アルゴン雰囲気下、500ml丸底フラスコに入れた無水テトラヒドロフラン220mlに入れ、溶液を−78℃に冷却し、テトラヒドロフランに溶かしたL−Selectride(登録商標)(水素化トリ−s−ブチルホウ素リチウム)の1M溶液55.8ml(55.8mmol)を滴下し、混合物を−78℃で3時間撹拌する。
【0046】
この混合物を、冷条件下で水67mlおよび35%過酸化水素水溶液67mlで徐々に加水分解し、撹拌しながら2時間かけて室温に戻させる。
【0047】
この混合物を水および酢酸エチルで希釈し、相を分離し、水相を酢酸エチルで抽出する。合わせた有機相を洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、蒸発させた後、残渣を、酢酸エチルとシクロヘキサンの混合物で溶出するシリカゲルでのカラムクロマトグラフィーにより精製する。
【0048】
4.13gの生成物が無色の油状物質の形態で得られ、これをさらなる精製を行わずに以下の工程に使用する。
【0049】
2.3.トレオ−3−ピリジル(2−ピペリド−2−イル)メタノール
エタノール6mlに溶かした0.5g(1.71mmol)の1,1−ジメチルエチルトレオ−[ヒドロキシ(3−ピリジル)メチル]ピペリジン−1−カルボキシレートの溶液を50ml丸底フラスコ内に入れ、0.5gの水酸化カリウムペレットおよび3mlの水から調製した水酸化カリウム水溶液を加え、混合物を2時間還流する。
【0050】
この混合物を冷却し、溶媒を減圧下で蒸発除去し、水を加え、混合物をジクロロメタンで数回抽出する。合わせた有機相を洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、溶媒を減圧下で蒸発除去した後、0.3gの白色固体が得られ、これをさらなる精製を行わずに以下の工程に使用する。
【0051】
2.4.トレオ−1−アリル−2−ピペリジル(3−ピリジル)メタノール
0.3g(1.56mmol)のトレオ−3−ピリジル(2−ピペリド−2−イル)メタノールおよび10mlのアセトニトリルを、マグネチックスターラーを備え、アルゴンを循環させた50ml丸底フラスコに入れる。次いで、0.32gの炭酸カリウムおよび0.17ml(1.2等量)の臭化アリルを、得られた懸濁液へ加える。懸濁液を25℃で6時間撹拌する。10mlの水および10mlの酢酸エチルを加え、沈降により相を分離し、水相を10mlの酢酸エチルで3回抽出し、合わせた有機相を、50mlの水、次いで、500mlの飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄する。得られた溶液を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、溶媒を減圧下で除去する。0.22gの黄色の油状物質が得られ、これをシリカゲルでのクロマトグラフィーにより精製する(120gカラムおよび30分かけてジクロロメタン中2%から10%メタノールという溶出勾配)。0.10gが黄色の油状物質の形態で単離される。
【0052】
2.5. トレオ−(1−アリル−2−ピペリジル)(3−ピリジル)メチルアミン
0.71g(3.05mmol)のトレオ−1−アリル−2−ピペリジル(3−ピリジル)メタノールおよび0.43ml(3.05mmol)のトリエチルアミンを、窒素雰囲気下、50ml丸底フラスコに入れた無水ジクロロメタン15mlに入れ、これを0℃に冷却し、0.23ml(3.05mmol)の塩化メタンスルホニルを加え、混合物を1時間かけてゆっくりと室温に戻させ、減圧下で濃縮する。
【0053】
液化アンモニアを、マグネチックスターラーを備えたオートクレーブに入れ、−50℃に冷却し、無水エタノール30mlに溶解した、前記で調製した粗メタンスルホン酸塩溶液を加え、オートクレーブを閉じて混合物を48時間撹拌する。
【0054】
この混合物を丸底フラスコへ移し、濃縮乾固し、残渣を水およびジクロロメタンで希釈し、相を分離し、水相をジクロロメタンで抽出する。合わせた有機相を洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、蒸発させた後、0.57gのアミンが油状化合物の形態で単離され、これをさらなる精製を行わずに以下の工程で用いる。
【0055】
2.6.トレオ−2−クロロ−3−メチル−N−[(1−アリル−2−ピペリジル)−3−ピリジルメチル]ベンズアミド1:1
0.22g(1.28mmol)の2,3−ジクロロ安息香酸、0.25g(1.29mmol)の1−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−3−エチル−カルボジイミドヒドロクロリドおよび0.17g(1.29mmol)のヒドロキシベンゾトリアゾールを、50ml丸底フラスコに入れたジクロロメタン10mlに逐次入れ、この混合物を室温で1時間撹拌する。
【0056】
ジクロロメタン4mlに溶解した0.3g(1.29mmol)のトレオ−(1−アリル−2−ピペリジル)(3−ピリジル)メチルアミンを加え、撹拌を15時間継続する。この混合物を水で処理し、ジクロロメタンで数回抽出する。有機相を水で、この後1N水酸化ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、溶媒を減圧下で蒸発除去した後、残渣を、ジクロロメタンとメタノールの混合物で溶出するシリカゲルでのカラムクロマトグラフィーにより精製する。0.15gの油状生成物が得られ、これを2−プロパノール中、塩化水素の0.1N溶液を用いて塩酸塩の形態で単離する。
【0057】
0.10gの塩酸塩が白色固体の形態で最終的に単離される。
【0058】
融点:149から151℃。
【0059】
以下表は、いくつかの本発明の化合物の化学構造および物理特性を説明する。
【0060】
「塩」の欄の「−」は塩基の形態の化合物を表し、「HCl」は塩酸塩を表す。
【0061】
【表1】


【0062】
本発明の化合物を一連の薬理学的試験に付し、これによって治療上有効な物質としてのこれらの価値が実証された。
【0063】
天然のヒト輸送体glyt1を発現するSK−N−MC細胞におけるグリシン輸送の研究
天然のヒト輸送体glyt1を発現するSK−N−MC細胞(ヒト神経上皮細胞)における[14C]グリシンの取り込みを、試験化合物の存在下または不在下で取り込まれた放射能を測定することにより調べる。細胞を、0.02%フィブロネクチンで前処理したプレートで48時間単層として培養する。実験の当日、培地を除去し、細胞をKrebs−HEPESバッファー([4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸)pH7.4で洗浄する。バッファー(対照バッチ)または種々の濃度の試験化合物のいずれかの存在下または10mMグリシン(非特異的取り込みの測定)の存在下、37℃で10分間のプレインキュベーションの後、次いで、10μMの[14C]グリシン(比放射能112mCi/mmol)を加える。インキュベーションを37℃で10分間継続し、pH7.4 Krebs−HEPESバッファーで2回洗浄して反応をクエンチする。次いで、液体シンチラント100μlを添加し、1時間攪拌した後、細胞によって取り込まれた放射能を推定する。計数はMicrobeta Tri−Lux(商標)カウンターで実施する。化合物の有効性は、対照バッチと10mMのグリシンを入れたバッチによって取り込まれた放射能の差によって定まるグリシンの特異的取り込みを50%減少させる化合物の濃度であるIC50によって決定する。
【0064】
この試験において最も活性のある本発明の化合物のIC50は、約0.001から1μMである。
【0065】
マウス脊髄ホモジネートにおけるグリシン輸送の研究
輸送体glyt2による[14C]グリシンの取り込みを、マウス脊髄ホモジネートにおいて試験化合物の存在下または不在下で取り込まれる放射能を測定することにより調べる。
【0066】
動物(実験当日の体重20から25gの雄OF1 Iffa Credoマウス)を安楽死させた後、各動物の脊髄を迅速に採取し、計量し、氷上で保存する。サンプルを25ml/組織1gの割合のpH7.4 Krebs−HEPESバッファー([4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸)中でホモジナイズする。
【0067】
50μlのホモジネートを、pH7.4 Krebs−HEPESバッファーと種々の濃度の試験化合物の存在下、または非特異的取り込みを測定するためグリシン10mMの存在下、25℃で10分間プレインキュベートする。次いで、[14C]グリシン(比放射能=112mCi/mmol)を25℃で10分かけて添加して最終濃度を10μMとする。真空濾過により反応をクエンチし、放射能を、Microbeta Tri−lux(商標)カウンターで計数することによって固体シンチレーションにより推定する。化合物の有効性は、対照バッチと10mMのグリシンを入れたバッチによって取り込まれた放射能の差によって定まるグリシンの特異的取り込みを50%減少させることが可能な濃度であるIC50によって決定する。
【0068】
この試験において最も活性のある本発明の化合物のIC50は、1μM未満である。
【0069】
従って、本発明の化合物はグリシン輸送体glyt1および/またはglyt2の特異的阻害物質であることが明らかである。
【0070】
従って、本発明の化合物を医薬、詳しくは、グリシン輸送体glyt1および/またはglyt2を阻害する医薬を調製するために使用できる。
【0071】
従って、この別の側面によれば、本発明の主題は式(I)の化合物、または医薬的に許容される酸を含むこの付加塩、または式(I)の化合物の水和物または溶媒和物を含む医薬である。
【0072】
本発明の化合物は、特に、認知症、精神病、詳しくは、統合失調症(欠損型および生産型)および神経抑制薬により誘発される急性または慢性錐体外路症状に関連する行動障害を治療するため、多様な形態の不安神経症、パニック発作、恐怖症、強迫性障害を治療するため、心因性鬱病をはじめとする、多様な形態の鬱病を治療するため、アルコール中毒もしくはアルコールを断つことに起因する障害、性行動障害、摂食障害を治療するため、また偏頭痛を治療するために使用できる。
【0073】
これらはまた、リウマチおよび急性の脊髄症状における有痛性筋拘縮を治療するため、髄質性または大脳性の痙性拘縮を治療するため、軽度から中程度の急性および亜急性疼痛の対症療法のため、激痛および/または慢性疼痛、神経性疼痛および難治性疼痛を治療するため、パーキンソン病および神経変性が原因のまたは神経抑制薬によって誘発されるパーキンソン病様症状を治療するため、原発性部分癲癇および続発性全般癲癇の単純症状または複合症状、混合型およびこの他の癲癇症候群を別の抗癲癇薬治療に加えて、または単独療法において治療するため、睡眠時無呼吸の治療のため、ならびに神経保護のために使用できる。
【0074】
また、塩基または医薬的に許容される塩もしくは溶媒和物の形態で、および必要に応じて適した賦形剤を含む混合物としての本発明の少なくとも1種の化合物の有効用量を含む薬剤組成物も本発明の主題である。
【0075】
このような賦形剤は、製薬形態および所望の投与様式に従って選択する。
【0076】
従って、本発明の薬剤組成物は、経口、舌下、皮下、筋肉内、静脈内、局所、気管内、鼻腔内、経皮、直腸または眼内投与を対象とできる。
【0077】
単位投与形は、例えば、錠剤、ゲルカプセル剤、顆粒剤、散剤、経口または注射用溶液または懸濁液、経皮パッチまたは坐剤であり得る。局所投与にはポマード、ローション剤および点眼剤を想定してもよい。
【0078】
例として、本発明の化合物の錠剤の形態での投与単位形には以下の成分を含めることができる:
本発明の化合物 50.0mg
マンニトール 223.75mg
クロスカラメロース(croscaramellose)ナトリウム 6.0mg
コーンスターチ 15.0mg
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 2.25mg
ステアリン酸マグネシウム 3.0mg
前記単位形は、剤形に従い、体重1kgあたり0.01から20mgの有効成分の毎日投与を可能にするよう投与される。
【0079】
より高用量または低用量が適切である特別な場合もあり得、このような用量も本発明の関連から逸脱しない。常套手段に従って、各患者に対して適切な投与量は、投与様式、体重およびこの患者の応答によって医師が決定する。
【0080】
この別の側面によれば、本発明はまた、患者への、有効量の本発明の化合物、またはこの医薬的に許容される塩または水和物または溶媒和物の投与を含む、前記の病状の治療方法に関する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)に対応する化合物
【化1】

[式中、
は、水素原子、または、1個またはそれ以上のフッ素原子で場合によって置換されていてもよい直鎖もしくは分岐(C−C)アルキル基、または(C−C)シクロアルキル基、または(C−C)シクロアルキル(C−C)アルキル基、または1個もしくは2個のメトキシ基で場合によって置換されていてもよいフェニル(C−C)アルキル基、または(C−C)アルケニル基、または(C−C)アルキニル基のいずれかを表し;
は、ピリジル、フリル、チエニル、チアゾリルまたはオキサゾリル基を表し、この基は、ハロゲン原子およびトリフルオロメチル基および直鎖もしくは分岐(C−C)アルキル基および(C−C)アルコキシ基から選択される1またはそれ以上の置換基で場合によって置換されていてもよく;
は、水素原子、またはハロゲン原子およびトリフルオロメチル基、直鎖もしくは分岐(C−C)アルキル基、(C−C)シクロアルキル基、(C−C)アルコキシ基、フェニル基、シアノ基、アセチル基、ベンゾイル基、(C−C)チオアルキル基、(C−C)アルキルスルホニル基、カルボキシル基または(C−C)アルコキシカルボニル基から選択される1またはそれ以上の置換基、または、一般式NRもしくはSONRもしくはCONRで表される基のいずれかを表し、ここで、RおよびRは各々独立して水素原子または直鎖もしくは分岐(C−C)アルキルまたは(C−C)シクロアルキル基を表すか、またはRおよびRは、これらを有する窒素原子とともにピロリジン、ピペリジンまたはモルホリン環を形成する;]
であって、遊離塩基または酸付加塩、水和物または溶媒和物の形態の化合物。
【請求項2】
請求項1に記載の化合物、または医薬的に許容される酸と該化合物の付加塩、または式(I)の化合物の水和物もしくは溶媒和物を含むことを特徴とする、医薬。
【請求項3】
請求項1に記載の化合物、またはこの化合物の医薬的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物と、少なくとも1種の医薬的に許容される賦形剤とを含むことを特徴とする、薬剤組成物。
【請求項4】
認知症、精神病に関連する行動障害、多様な形の不安神経症、パニック発作、恐怖症、強迫性障害、多様な形の鬱病、アルコール中毒もしくはアルコールを断つことに起因する障害、性行動障害、摂食障害および偏頭痛を治療するための医薬を製造するための、請求項1に記載の式(I)の化合物の使用。
【請求項5】
拘縮、疼痛、パーキンソン病およびパーキンソン病様症状、癲癇、混合型およびこの他の癲癇症候群を別の抗癲癇薬治療に加えてまたは単独療法で、ならびに睡眠時無呼吸を治療するための、また神経保護のための医薬を製造するための、請求項1に記載の式(I)の化合物の使用。

【公表番号】特表2007−508359(P2007−508359A)
【公表日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−534798(P2006−534798)
【出願日】平成16年10月15日(2004.10.15)
【国際出願番号】PCT/FR2004/002641
【国際公開番号】WO2005/037781
【国際公開日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(504456798)サノフイ−アベンテイス (433)
【Fターム(参考)】