説明

NDフィルターおよびその製造方法

【課題】単一のNDフィルターにおいて再現性よく、かつ簡便に段階的、または連続的に光学濃度を変更するNDフィルターおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明のNDフィルターは、厚さ1mmにおける波長380〜780nmにおける光線透過率が85%以上の熱可塑性樹脂(A)と、一次粒子径10〜80nmの可視光領域に吸収をもつ金属酸化物および/または金属窒化物(B)と、赤外線吸収剤(C)とを含有する組成物(X)から形成されるNDフィルターであって、波長400〜700nmにおける光線透過率の平均値T(ave)(400-700)に対して、光線透過率の最小
値T(min)(400-700)と最大値T(max)(400-700)が下記式(1)および式(2)を満たすことを特徴とする。 0.92×T(ave)(400-700)≦T(min)(400-700)・・・(1)1.08×T(ave)(400-700)≧T(max)(400-700)・・・(2)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NDフィルターおよびその製造方法に関する。より詳しくは、本発明は、熱可塑性樹脂と、一次粒子径10〜80nmの可視光領域に吸収をもつ金属酸化物および/または金属窒化物と、赤外線吸収剤とを含有するNDフィルターおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のNDフィルターとしては、透明基板上に光吸収能を有する金属膜および透過・反射能を制御するため金属酸化物等からなる誘電体膜を真空中で蒸着加工した反射吸収型NDフィルター、透明材料に染料、および顔料を均一分散させることにより作製される光吸収型NDフィルターに大別される。
【0003】
しかしながら、前者は真空蒸着による多層コーティングが必須となるためNDフィルターの製造の再現性、フィルター面内の光学特性の均一性を確保するためには、蒸着源からの距離を一定にすべく基板サイズを小型化する必要があった。一方、後者の光吸収型NDフィルターでは、用いる染料または顔料の性質によっては可視光に対する均一な減光効果が得られない場合が多かった。また、昨今のデジタルカメラ、ビデオカメラ等の撮像機器においてはその高機能化、小型化に伴い、単一のNDフィルターにおいて、その光線透過位置を変化させることで減光性能を可変とする面内にて光線透過率を変化させたNDフィルターが強く求められるようになった。
【0004】
これに対して、特許文献1では蒸着法により複数のマスクを用いて、基体表面に光透過率が段階的に異なる領域を形成したNDフィルターが、特許文献2では蒸発源の蒸発飛来方向と直交する平面に対して所定角度傾斜させて基体を固定配置し、更にマスクを基体と蒸着源の間に所定の角度を設けて蒸着することにより、無段階の光学濃度変化を付与するNDフィルターの製造方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−37548号
【特許文献2】特開平11−38206号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来の方法では開口部の大きさが異なるマスクを複数枚重ね合わせて、蒸着厚みを制御するため、それぞれのマスクについて洗浄を十分におこなわないと、マスク同士の重ね合わせ時に以前の蒸着で付着した蒸着物質が剥離し、それが結果的に異物として基体に付着し、画像の質が低下してしまう、または基体およびマスクを傾斜配置するため、NDフィルターの設計変更に容易に対応できず、且つ傾斜角度のわずかな変化により製品の特性がばらつくといったいわゆるバッチ間の再現性に乏しいなどの課題があった。
【0007】
本発明は可視領域の波長全域にわたり均一な透過率特性を有するNDフィルターを提供することを目的とする。さらに、部分的、段階的、または連続的に異なる光学濃度を有するNDフィルター及びその製造方法を提供することを課題としている。また、低ヘイズ値を有し、シェーディング現象の防止や、解像度低下、画像のゴースト、フレアーを防止する反射防止特性を有し、薄肉化、軽量化、成形容易性、耐衝撃性に優れるNDフィルター
及びその製造方法を提供することを課題としている。
【0008】
また、本発明は、真空蒸着における多層成膜の再現性の乏しさ、工程の煩雑さとそれに伴う歩留の低下、およびNDフィルターの形状、光学濃度の設計変更に対する不自由さを解消し、かつ単一のNDフィルターにおいて再現性よく、かつ簡便に段階的、または連続的に光学濃度を変更するNDフィルターおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、特定の光線透過率を有する熱可塑性樹脂(A)と、一次粒子径10〜80nmの可視光領域に吸収をもつ金属酸化物および/または金属窒化物(B)と、赤外線吸収剤(C)とを含有することで、波長平坦性(ここでは波長400〜700nmの波長別光線透過率の平均値がT(ave)(400-700)(%)であった場合、波長400〜70
0nmにおける光線透過率の最大値T(max)(400-700)が1.08×T(ave)(400-700)(%)以下であり、かつ同最小値T(min)(400-700)が0.92×T(ave
(400-700)(%)以上であることを示す)と、加えて成形体の高度な面内厚み制御によ
り、同一基体上において、その透過光の位置を変更することで、任意の減光特性を有するNDフィルターが得られることを見出した。
【0010】
第一の発明は、厚さ1mmにおける波長380〜780nmにおける光線透過率が85%以上の熱可塑性樹脂(A)と、一次粒子径10〜80nmの可視光領域に吸収をもつ金属酸化物および/または金属窒化物(B)と、赤外線吸収剤(C)とを含有する組成物(X)から形成されるNDフィルターであって、波長400〜700nmにおける光線透過率の平均値T(ave)(400-700)に対して、光線透過率の最小値T(min)(400-700)と最大値T(max)(400-700)が下記式(1)および式(2)を満たすことを特徴とす
るNDフィルター。
【0011】
0.92×T(ave)(400-700)≦T(min)(400-700) ・・・(1)
1.08×T(ave)(400-700)≧T(max)(400-700) ・・・(2)
本発明のNDフィルターは前記金属酸化物および/または金属窒化物(B)と、前記赤外線吸収剤(C)とが、前記熱可塑性樹脂(A)に分散または相溶していることが好ましい。
【0012】
本発明に用いられる熱可塑性樹脂(A)は、下記式(I)で表される化合物から導かれる単位を有する環状オレフィン系重合体(A1)を含有することが好ましい。
【0013】
【化1】

【0014】
(式中、R1〜R4は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、1価の炭化水素基または極性基を示し、R1およびR2、またはR3およびR4は、一体化して2価の有機基を形成してもよく、R1またはR2とR3またはR4とは互いに結合して単環構造または多環構造を形成してもよい。mは0または正の整数を示し、pは0または正の整数を示す。)
本発明のNDフィルターは、厚みが均一であってもよい。
【0015】
本発明のNDフィルターは、厚みが部分的、段階的または連続的に変化していてもよい

【0016】
本発明のNDフィルターは、同組成のNDフィルターを積層することにより、厚みが変化していてもよい。
【0017】
本発明のNDフィルターは、ホットスタンプすることにより、厚みが変化していてもよい。
【0018】
本発明のNDフィルターは、射出成形により形成することにより、厚みが変化していてもよい。
【0019】
本発明のNDフィルターは、押出し法により成型し、該成型の際に彫刻を施したロールを押圧することにより、厚みが変化していてもよい。
【0020】
本発明のNDフィルターは、表面または裏面の少なくとも一方に、さらに反射防止処理がされていてもよい。
【0021】
第二の発明は第一の発明のNDフィルターの製造方法に関する。
【0022】
(i)厚さ1mmにおける波長380〜780nmにおける光線透過率が85%以上の熱可塑性樹脂(A)と、一次粒子径10〜80nmの可視光領域に吸収をもつ金属酸化物および/または金属窒化物(B)と、赤外線吸収剤(C)とを含有する組成物(X)から成形体、シートまたはフィルムを形成する工程と、
前記成形体、シートまたはフィルムを積層する工程とを、
有することを特徴とするNDフィルターの製造方法。
【0023】
(ii)厚さ1mmにおける波長380〜780nmにおける光線透過率が85%以上の熱可塑性樹脂(A)と、一次粒子径10〜80nmの可視光領域に吸収をもつ金属酸化物および/または金属窒化物(B)と、赤外線吸収剤(C)とを含有する組成物(X)から成形体、シートまたはフィルムを形成する工程と、
前記成形体、シートまたはフィルムをホットスタンプする工程とを、
有することを特徴とするNDフィルターの製造方法。
【0024】
(iii) 厚さ1mmにおける波長380〜780nmにおける光線透過率が85%以上の熱可塑性樹脂(A)と、一次粒子径10〜80nmの可視光領域に吸収をもつ金属酸化物および/または金属窒化物(B)と、赤外線吸収剤(C)とを含有する組成物(X)を射出成形することを特徴とするNDフィルターの製造方法。
【0025】
(iv)厚さ1mmにおける波長380〜780nmにおける光線透過率が85%以上の熱可塑性樹脂(A)と、一次粒子径10〜80nmの可視光領域に吸収をもつ金属酸化物および/または金属窒化物(B)と、赤外線吸収剤(C)とを含有する組成物(X)を押出し法により成型し、該成型の際に彫刻を施したロールを押圧することを特徴とするNDフィルターの製造方法。
【0026】
(i)〜(iv)の製造方法により製造されたNDフィルターは、波長400〜700nmにおける光線透過率の平均値T(ave)(400-700)に対して、光線透過率の最小値
T(min)(400-700)と最大値T(max)(400-700)が下記式(1)および式(2)を満たすことが好ましい。
【0027】
0.92×T(ave)(400-700)≦T(min)(400-700) ・・・(1)
1.08×T(ave)(400-700)≧T(max)(400-700) ・・・(2)
(i)〜(iv)の製造方法に用いられる熱可塑性樹脂(A)は、下記式(I)で表される化合物から導かれる単位を有する環状オレフィン系重合体(A1)を含有することが好ましい。
【0028】
【化1】

【0029】
(式中、R1〜R4は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、1価の炭化水素基または極性基を示し、R1およびR2、またはR3およびR4は、一体化して2価の有機基を形成してもよく、R1またはR2と、R3またはR4とで互いに結合して単環構造または多環構造を形成してもよい。mは0または正の整数を示し、pは0または正の整数を示す。)
さらに、本発明は、本発明のNDフィルターを用いて、光の透過率を調節する方法に関する。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、可視領域の波長全域にわたり均一な透過率特性を有するNDフィルターを提供することができる。さらに、部分的、段階的、または連続的に異なる光学濃度を有するNDフィルター及びその製造方法を提供することができる。また、低ヘイズ値を有し、シェーディング現象の防止や、解像度低下、画像のゴースト、フレアーを防止する反射防止特性を有し、薄肉化、軽量化、成形容易性、耐衝撃性に優れるNDフィルター及びその製造方法を提供することができる。
【0031】
本発明のNDフィルターの製造方法では、大掛かりな真空装置を使用することなく、高歩留まり率などの高い生産性を有するNDフィルターを製造することができる。該方法により得られるNDフィルターは高精度な減光特性を有し、さらにその厚みを部分的、段階的または連続的に変化させることにより、単一NDフィルター内において、減光性能の面内可変能を与えることができるため、光線透過率を調節することが可能となり、低コストでデジタルカメラ、ビデオカメラといった撮像機器の性能を飛躍的に向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施例1により得られたNDフィルター(1)の波長別透過特性を示す。
【図2】実施例2により得られたNDフィルター(2)の波長別透過特性を示す。
【図3】実施例3により得られた積層型NDフィルター(ND1)の概略図を示す。
【図4】実施例3により得られた積層型NDフィルター(ND1)の(a)部の波長別透過特性を示す。
【図5】実施例3により得られた積層型NDフィルター(ND1)の(b)部の波長別透過特性を示す。
【図6】実施例3により得られた積層型NDフィルター(ND1)の(c)部の波長別透過特性を示す。
【図7】実施例3により得られた積層型NDフィルター(ND2)の概略図を示す。
【図8】実施例3により得られた積層型NDフィルター(ND2)の(d)部の波長別透過特性を示す。
【図9】実施例3により得られた積層型NDフィルター(ND2)の(e)部の波長別透過特性を示す。
【図10】実施例3により得られた積層型NDフィルター(ND2)の(f)部の波長別透過特性を示す。
【図11】実施例4により得られた蒸着法による反射防止層付NDフィルター(ND3)の波長別透過特性を示す。
【図12】実施例5により得られた射出成形型NDフィルター(ND4)の概略図を示す。
【図13】実施例5により得られた射出成形型NDフィルター(ND4)の(g)部の波長別透過特性を示す。
【図14】実施例5により得られた射出成形型NDフィルター(ND4)の(h)部の波長別透過特性を示す。
【図15】実施例5により得られた射出成形型NDフィルター(ND4)の(i)部の波長別透過特性を示す。
【図16】実施例6により得られたホットスタンプ型NDフィルター(ND5)の(i−a)部の波長別透過特性をしめす。
【図17】実施例6により得られたホットスタンプ型NDフィルター(ND5)の(i−b)部の波長別透過特性をしめす。
【図18】実施例6により得られたホットスタンプ型NDフィルター(ND5)の(i−c)部の波長別透過特性をしめす。
【図19】実施例7により得られたロール押圧型NDフィルター(ND6)の概略図を示す。
【図20】実施例7により得られたロール押圧型NDフィルター(ND6)の(j)部の波長別透過特性を示す。
【図21】実施例7により得られたロール押圧型NDフィルター(ND6)の(k)部の波長別透過特性を示す。
【図22】実施例7により得られたロール押圧型NDフィルター(ND6)の(l)部の波長別透過特性を示す。
【図23】実施例8により得られた射出成形型NDフィルター(ND4)の反射防止処理後のSEM写真を示す。
【図24】射出成形型NDフィルター(ND4)の反射防止処理前後の反射率を示す。
【図25】射出成形型NDフィルター(ND4)の表面フッ素化処理前後の反射率を示す。
【図26】比較例1により得られたNDフィルター(A)の波長別透過特性を示す。
【図27】実施例10により得られたNDフィルター(ND7)の概略図を示す。
【図28】実施例10により得られたNDフィルター(ND7)の(m)部の波長別透過特性を示す。
【図29】実施例10により得られたNDフィルター(ND7)の(n)部の波長別透過特性を示す。
【図30】実施例10により得られた透明成形体貼着射出成形型NDフィルター(ND8)の概略図を示す。
【図31】実施例10により得られたNDフィルター(ND8)の(o)部の波長別透過特性を示す。
【図32】実施例10により得られたNDフィルター(ND8)の(p)部の波長別透過特性を示す。
【図33】透明成形体貼着射出成形型NDフィルター(ND8)の反射防止処理後の反射率を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明について具体的に説明する。
【0034】
<NDフィルター形成用組成物(組成物X)>
本発明のNDフィルター形成用組成物(組成物X)は、厚さ1mmにおける波長380〜780nmにおける光線透過率が85%以上である熱可塑性樹脂(A)(以下、熱可塑性樹脂(A)ともいう)と、一次粒子径10〜80nmの可視光領域に吸収をもつ金属酸化物および/または金属窒化物(B)(以下、可視光領域に吸収をもつ金属酸化物および/または金属窒化物(B)ともいう)と、赤外線吸収剤(C)とを含有する。
【0035】
〔熱可塑性樹脂(A)〕
本発明に用いられる熱可塑性樹脂は、厚さ1mmにおける波長380〜780nmにおける光線透過率が85%以上である限り特に限定されないが、ポリカーボネート、(メタ)アクリル酸樹脂、ポリエステル、環状オレフィン系重合体等から選ぶことができる。これらは一種類で用いても、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。一方、光学部品として複屈折が小さいこと、環境変化による特性の安定(温度、湿度)といった観点から、環状オレフィン系重合体が好ましい。環状オレフィン系重合体は、下記式(I)で表される化合物から導かれる単位を有する環状オレフィン系重合体(A1)であることがより好ましい。この環状オレフィン系重合体(A1)は、環状オレフィン化合物(I)を重合して得られる。
【0036】
【化1】

【0037】
(式中、R1〜R4は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、1価の炭化水素基または極性基を示し、R1およびR2、またはR3およびR4は、一体化して2価の有機基を形成してもよく、R1またはR2とR3またはR4とは互いに結合して単環構造または多環構造を形成してもよい。mは0または正の整数を示し、pは0または正の整数を示す。)
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子が挙げられる。
【0038】
上記炭化水素基としては、炭素数1〜10の炭化水素基が好ましく、たとえば、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基等のアルケニル基などが挙げられる。これらの基の中でも、メチル基、エチル基が耐熱安定性の点で好ましい。
【0039】
上記極性基としては、例えば、水酸基;メトキシ基、エトキシ基等の炭素原子数1〜10のアルコキシル基;アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等のカルボニルオキシ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;フェノキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基、フルオレニルオキシカルボニル基、ビフェニリルオキシカルボニル基等のアリーロキシカルボニル基;シアノ基;アミド基;イミド基;トリメチルシロキシ基、トリエチルシロキシ基等のトリオルガノシロキシ基;トリメチルシリル基、トリエチルシリル基等のトリオルガノシリル基;トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基等のアルコキシシリル基;アミノ基;アシル基;スルホニル基;カルボキシル基など挙げられる。
【0040】
また、R1およびR2、またはR3およびR4は、一体化して2価の有機基を形成してもよく、R1またはR2と、R3またはR4とは互いに結合して単環構造または多環構造を形成し
てもよい。
【0041】
mは0または正の整数を示し、好ましくは0〜3の整数を示す。pは0または正の整数を示し、好ましくは0〜3の整数を示す。また、より好ましくはm+pが0〜4の整数、特に好ましくはm+pが0〜2の整数である。最も好ましくはm=1、p=0である。m=1、p=0である環状オレフィン化合物(I)を用いると、ガラス転移温度が高く、かつ機械的強度にも優れた重合体が得られるため好ましい。
【0042】
本発明で用いられる環状オレフィン系重合体(A1)は、環状オレフィン化合物(I)から導かれる単位(共)重合して得られる。環状オレフィン系化合物(I)は1種単独でも、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0043】
環状オレフィン化合物(I)としては、具体的には、
ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
トリシクロ[4.3.0.12,5]−3−デセン、
トリシクロ[4.4.0.12,5]−3−ウンデセン、
テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]−4−ペンタデセン、
5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−エチリデンビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
8−エチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
5−フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
8−フェニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
5−フルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−フルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−ペンタフルオロエチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5−ジフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メチル−5−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6−トリフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6−トリス(フルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6,6−テトラフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6,6−テトラキス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5−ジフルオロ−6,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジフルオロ−5,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6−トリフルオロ−5−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−フルオロ−5−ペンタフルオロエチル−6,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジフルオロ−5−ヘプタフルオロ−iso−プロピル−6−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−クロロ−5,6,6−トリフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジクロロ−5,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト
−2−エン、
5,5,6−トリフルオロ−6−トリフルオロメトキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6−トリフルオロ−6−ヘプタフルオロプロポキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
8−フルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−フルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−ジフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−ペンタフルオロエチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン

8,8−ジフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,9−ジフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,8−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3
−ドデセン、
8,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3
−ドデセン、
8−メチル−8−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3
−ドデセン、
8,8,9−トリフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン

8,8,9−トリス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10
]−3−ドデセン、
8,8,9,9−テトラフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ド
デセン、
8,8,9,9−テトラキス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5
.17,10]−3−ドデセン、
8,8−ジフルオロ−9,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,9−ジフルオロ−8,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,8,9−トリフルオロ−9−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5
.17,10]−3−ドデセン、
8,8,9−トリフルオロ−9−トリフルオロメトキシテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,8,9−トリフルオロ−9−ペンタフルオロプロポキシテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−フルオロ−8−ペンタフルオロエチル−9,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,9−ジフルオロ−8−ヘプタフルオロiso−プロピル−9−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−クロロ−8,9,9−トリフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−
3−ドデセン、
8,9−ジクロロ−8,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
【0044】
本発明に用いられる環状オレフィン化合物(I)において、R1〜R4のうち少なくとも一つは極性基を有する環状オレフィン化合物(I)(以下、環状オレフィン化合物(II)ともいう)を少なくとも1種用いることが可視光領域に吸収をもつ金属酸化物および/または金属窒化物(B)並びに赤外線吸収剤の分散性または相溶性向上、更なる表面加工(
例えば蒸着製膜、ウェットコーティング)における密着性向上の点で好ましい。
【0045】
上記極性基は、下記式(III)で表される極性基であることが好ましい。
【0046】
−(CH2nCOOR (III)
上記式中、Rは炭素数1〜12の炭化水素基を示し、nは0〜5の整数を示す。
【0047】
上記式(III)において、Rは好ましくは炭素数1〜4、さらに好ましくは1または2
の炭化水素基である。ここで、炭化水素基としては、アルキル基が好ましい。また、nは通常0〜5であり、nの値が小さい極性基を有する環状オレフィン化合物(II)ほど、ガラス転移温度が高い重合体が得られるため好ましく、nが0である環状オレフィン(−COOR)は合成も容易であるため特に好ましい。
【0048】
好ましい環状オレフィン化合物(II)としては、上記式(I)において、R1および
3がそれぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜10、より好ましくは1〜4、特に好
ましくは1もしくは2の炭化水素基であり;R2およびR4のうちの一方が水素原子であり、他方が極性基である化合物が挙げられる。この場合、R1またはR3で表される炭化水素基としては、アルキル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。さらに、R2およびR4のうちの一方が、上記式(III)で表される極性基であることが好ましい。
【0049】
また、環状オレフィン化合物(II)のうち、吸湿性の低い重合体が得られる観点から、R1がアルキル基であり、R2が上記式(III)で表される極性基であり、R3およびR4
が水素原子である化合物がより好ましい。
【0050】
上記式(III)で表される極性基を有する環状オレフィン化合物(II)としては、具
体的には、
5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メチル−5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−エトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−n−プロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデ
セン、
8−イソプロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデ
セン、
8−n−ブトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセ
ン、
8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3
−ドデセン、
8−メチル−8−エトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3
−ドデセン、
8−メチル−8−n−プロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10
]−3−ドデセン、
8−メチル−8−イソプロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10
]−3−ドデセン、
8−メチル−8−n−ブトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10
−3−ドデセン、
8−(2,2,2−トリフルオロエトキシカルボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−(2,2,2−トリフルオロエトキシカルボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
などを挙げることができる。なお、これらの化合物に限定されるものではない。
【0051】
環状オレフィン系重合体(A1)が環状オレフィン化合物(II)から導かれる単位を有する場合は、環状オレフィン系重合体(A1)を構成する単位を100重量%としたときに通常環状オレフィン化合物(II)は通常10〜100重量%用いて、他の成分とを共重合することが好ましい。
【0052】
本発明で用いられる環状オレフィン系重合体(A1)としては、具体的には、
(a)環状オレフィン化合物の開環重合体(以下、開環重合体(a)ともいう)
(b)環状オレフィン化合物と共重合性単量体との開環共重合体(以下、開環共重合体(b)ともいう)
(c)上記(a)または(b)の開環(共)重合体の水素添加(共)重合体(以下、水素添加(共)重合体(c)ともいう)
(d)上記(a)または(b)の開環(共)重合体をフリーデルクラフト反応により環化したのち、水素添加した(共)重合体(以下、水素添加(共)重合体(d)ともいう)
(e)環状オレフィン化合物と不飽和二重結合含有化合物との飽和共重合体(以下、飽和共重合体(e)ともいう)
(f)環状オレフィン化合物と、ビニル系環状炭化水素系単量体およびシクロペンタジエン系単量体から選ばれる1種以上の単量体との付加型(共)重合体およびその水素添加(共)重合体(以下、付加型(共)重合体(f)およびその水素添加(共)重合体ともいう)
(g)環状オレフィン化合物とアクリレートとの交互共重合体(以下、交互共重合体(g)ともいう)が挙げられる。これらの中でも、水素添加(共)重合体(c)が特に好ましく用いられる。以下に上記重合体の製造方法について詳述する。
【0053】
(a)開環重合体および(b)開環共重合体
開環重合体(a)および開環共重合体(b)は、メタセシス触媒の存在下で、環状オレフィン化合物(環状オレフィン化合物(I)または環状オレフィン化合物(I)および(II))を開環重合させるか、または環状オレフィン化合物と共重合性単量体とを開環共重合させて得られる。
【0054】
(共重合性単量体)
上記共重合性単量体としては、シクロオレフィンが挙げられ、炭素数が好ましくは4〜20、より好ましくは5〜12のシクロオレフィンが望ましい。より具体的には、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘプテン、シクロオクテン、ジシクロペンタジエンなどを挙げることができる。これらのシクロオレフィンは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0055】
環状オレフィン化合物と上記共重合性単量体との使用割合は、重量比(環状オレフィン化合物/共重合性単量体)で100/0〜50/50が好ましく、100/0〜60/40がより好ましい。なお、「環状オレフィン化合物/共重合性単量体=100/0」は、環状オレフィン化合物を単独重合する場合を意味し、この場合は開環重合体(a)が得られる。
【0056】
(開環重合用触媒)
開環(共)重合反応において用いられるメタセシス触媒は、公知のものを用いることができ、好ましくは、下記の化合物(α)と化合物(β)との組合せからなる触媒である。(α)W、MoおよびReから選ばれる少なくとも1つの元素を含む化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物。
(β)デミングの周期律表IA族元素(例えば、Li、Na、Kなど)、IIA族元素(
例えば、Mg、Caなど)、IIB族元素(例えば、Zn、Cd、Hgなど)、IIIA族元素(例えば、B、Alなど)、IVA族元素(例えば、Si、Sn、Pbなど)およびIVB族元素(例えば、Ti、Zrなど)から選ばれる少なくとも1つの元素を含む化合物であって、上記元素と炭素との結合、または上記元素と水素との結合を少なくとも1つ有する化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物。
【0057】
また、上記メタセシス触媒は、その活性を高めるために、後述の添加剤(γ)を含んでいてもよい。
【0058】
上記化合物(α)の具体例としては、WCl6、MoCl6、ReOCl3など、特開平
1−132626号公報の第8頁左下欄第6行〜第8頁右上欄第17行に記載の化合物を挙げることができる。
【0059】
上記化合物(β)の具体例としては、n−C49Li、(C253Al、(C252AlCl、(C251.5AlCl1.5、(C25)AlCl2、メチルアルモキサン、L
iHなど、特開平1−132626号公報の第8頁右上欄第18行〜第8頁右下欄第3行に記載の化合物を挙げることができる。
【0060】
上記添加剤(γ)としては、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、アミン類などを好適に用いることができ、さらに特開平1−132626号公報の第8頁右下欄第16行〜第9頁左上欄第17行に記載の化合物を使用することもできる。
【0061】
(重合反応用溶媒)
開環(共)重合反応において、溶媒は、後述する分子量調節剤溶液を構成する溶媒や、環状オレフィンおよび/またはメタセシス触媒の溶媒として使用される。このような溶媒としては、たとえば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカンなどのアルカン類;シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、デカリン、ノルボルナンなどのシクロアルカン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメンなどの芳香族炭化水素;クロロブタン、ブロモヘキサン、塩化メチレン、ジクロロエタン、ヘキサメチレンジブロミド、クロロホルム、テトラクロロエチレンなどのハロゲン化アルカン;クロロベンゼンなどのハロゲン化アリール;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸iso−ブチル、プロピオン酸メチル、ジメトキシエタンなどの飽和カルボン酸エステル類;ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタンなどのエーテル類などを挙げることができる。これらの溶媒は単独であるいは混合して用いることができる。これらのうち、芳香族炭化水素が好ましい。
【0062】
溶媒の使用量は、溶媒と環状オレフィン化合物との重量比(溶媒:環状オレフィン化合物)が、通常1:1〜10:1、好ましくは1:1〜5:1となる量が望ましい。
【0063】
(分子量調節剤)
得られる開環(共)重合体の分子量は、重合温度、触媒の種類、溶媒の種類によって調節することも可能であるが、分子量調節剤を共存させることによっても調節できる。
【0064】
好適な分子量調節剤としては、たとえば、エチレン、プロペン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンなどのα−オレフィン類およびスチレンを挙げることができ、これらのうち、1−ブテン、1−ヘキセンが特に好ましい。また、これらの分子量調節剤は、単独であるいは2種以上を混合して用いることができる。
【0065】
分子量調節剤の使用量は、開環重合反応に供される環状オレフィン化合物1モルに対し
て、通常0.005〜0.6モル、好ましくは0.01〜0.5モルである。
【0066】
上記開環共重合体(b)は、環状オレフィン化合物と共重合性単量体とを開環共重合させて得ることができるが、さらに、ポリブタジエン、ポリイソプレンなどの共役ジエン化合物、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−非共役ジエン共重合体、ポリノルボルネンなどの主鎖に炭素−炭素間二重結合を2つ以上含む不飽和炭化水素系ポリマーなどの存在下で環状オレフィン化合物を開環共重合させてもよい。
【0067】
(c)水素添加(共)重合体
上記開環(共)重合体(a)または(b)は、そのままでも用いることができるが、さらにこれに水素添加して得られる水素添加(共)重合体(c)は、耐衝撃性に優れた樹脂として有用である。
【0068】
水素添加反応は、通常の方法、すなわち開環(共)重合体(a)または(b)を含む溶液に水素添加触媒を添加し、これに常圧〜300気圧、好ましくは3〜200気圧の水素ガスを0〜200℃、好ましくは20〜180℃で作用させて行うことができる。
【0069】
(水素添加触媒)
上記水素添加触媒としては、通常のオレフィン性化合物の水素添加反応に用いられる触媒を使用することができる。この水素添加触媒としては、不均一系触媒および均一系触媒が挙げられる。
【0070】
不均一系触媒としては、パラジウム、白金、ニッケル、ロジウム、ルテニウムなどの貴金属触媒物質を、カーボン、シリカ、アルミナ、チタニアなどの担体に担持させた固体触媒を挙げることができる。均一系触媒としては、ナフテン酸ニッケル/トリエチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセトナート/トリエチルアルミニウム、オクテン酸コバルト/n−ブチルリチウム、チタノセンジクロリド/ジエチルアルミニウムモノクロリド、酢酸ロジウム、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロヒドロカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジクロロカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウムなどを挙げることができる。これらの触媒の形態は、粉末でも粒状でもよい。
【0071】
これらの水素添加触媒は、開環(共)重合体(a)または(b)と水素添加触媒との重量比(開環(共)重合体:水素添加触媒)が、1:1×10-6〜1:2となる割合で使用することが好ましい。
【0072】
上記水素添加(共)重合体(c)は、優れた熱安定性を有し、成形加工時や製品として使用する際の加熱によっても、その特性が劣化することはない。
【0073】
水素添加(共)重合体(c)の水素添加率は、1H−NMRにより500MHzの条件
で測定した値が、通常50%以上、好ましく70%以上、より好ましくは90%以上、特に好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上である。水素添加率が高いほど、熱や光に対する安定性が優れ、長期にわたって安定した特性を有する導光体などの成形体を得ることができる。
【0074】
また、上記水素添加(共)重合体(c)は、ゲル含有量が5重量%以下であることが好ましく、特に1重量%以下であることが好ましい。
【0075】
(d)水素添加(共)重合体
水素添加(共)重合体(d)は、上記開環(共)重合体(a)または(b)をフリーデ
ルクラフト反応により環化したのち、水素添加することにより得られる。
【0076】
上記開環(共)重合体をフリーデルクラフト反応により環化する方法は、特に限定されず、たとえば、特開昭50−154399号公報に記載の酸性化合物を用いた公知の方法が採用できる。
【0077】
上記酸性化合物として具体的には、AlCl3、BF3、FeCl3、Al23、HCl
、CH3ClCOOH、ゼオライト、活性白土などのルイス酸、ブレンステッド酸が挙げ
られる。
【0078】
環化された開環(共)重合体は、上記(c)水素添加(共)重合体に記載された水素添加反応と同様にして、水素添加することができる。
【0079】
(e)飽和共重合体
飽和共重合体(e)は、付加重合触媒の存在下で、環状オレフィン化合物(I)を含む環状オレフィン化合物に不飽和二重結合含有化合物を付加重合させることにより得られる。付加重合法は従来公知の方法を適用できる。
【0080】
(不飽和二重結合含有化合物)
不飽和二重結合含有化合物としては、たとえば、エチレン、プロピレン、ブテンなどのオレフィン系化合物を挙げることができ、これらのうち、炭素数が好ましくは2〜12、さらに好ましくは2〜8のオレフィン系化合物が望ましい。
【0081】
不飽和二重結合含有化合物の使用量は、環状オレフィン化合物と不飽和二重結合含有化合物との重量比(環状オレフィン化合物/不飽和二重結合含有化合物)で、90/10〜40/60が好ましく、85/15〜50/50がより好ましい。ただし、環状オレフィン化合物と不飽和二重結合含有化合物との合計重量を100とする。
【0082】
(付加重合触媒)
付加重合触媒としては、公知のものを用いることができ、チタン化合物、ジルコニウム化合物およびバナジウム化合物から選ばれる少なくとも一種の化合物と、助触媒としての有機アルミニウム化合物との組合せが挙げられる。
【0083】
上記付加重合反応において用いられる溶媒としては、上記(a)または(b)の開環(共)重合体の重合反応溶媒において例示した溶媒を挙げることができる。
【0084】
また、飽和共重合体(e)の分子量の調節は、通常、水素を用いて行うことができる。
【0085】
(f)付加型(共)重合体およびその水素添加(共)重合体
付加型(共)重合体(f)は、上記環状オレフィン化合物に、ビニル系環状炭化水素系単量体およびシクロペンタジエン系単量体から選ばれる1種以上の単量体を付加重合させることにより得られる。
【0086】
(ビニル系環状炭化水素系単量体)
上記ビニル系環状炭化水素系単量体としては、たとえば、4−ビニルシクロペンテン、2−メチル−4−イソプロペニルシクロペンテンなどのビニルシクロペンテン系単量体;4−ビニルシクロペンタン、4−イソプロペニルシクロペンタン等のビニルシクロペンタン系単量体などのビニル化5員環炭化水素系単量体;4−ビニルシクロヘキセン、4−イソプロペニルシクロヘキセン、1−メチル−4−イソプロペニルシクロヘキセン、2−メチル−4−ビニルシクロヘキセン、2−メチル−4−イソプロペニルシクロヘキセンなど
のビニルシクロヘキセン系単量体;4−ビニルシクロヘキサン、2−メチル−4−イソプロペニルシクロヘキサンなどのビニルシクロヘキサン系単量体;スチレン、α―メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、4−フェニルスチレン、p−メトキシスチレンなどのスチレン系単量体;d−テルペン、1−テルペン、ジテルペン、d−リモネン、1−リモネン、ジペンテンなどのテルペン系単量体;4−ビニルシクロヘプテン、4−イソプロペニルシクロヘプテンなどのビニルシクロヘプテン系単量体;4−ビニルシクロヘプタン、4−イソプロペニルシクロヘプタン等のビニルシクロヘプタン系単量体などが挙げられる。これらの単量体のうち、スチレン、α−メチルスチレンが好ましい。また、これらの単量体は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0087】
(シクロペンタジエン系単量体)
上記シクロペンタジエン系単量体としては、たとえば、シクロペンタジエン、1−メチルシクロペンタジエン、2−メチルシクロペンタジエン、2−エチルシクロペンタジエン、5−メチルシクロペンタジエン、5,5−メチルシクロペンタジエンなどが挙げられる。これらの単量体のうち、シクロペンタジエンが好ましい。また、これらの単量体は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0088】
上記付加重合反応は、上記(e)における付加重合反応と同様にして実施することができる。
【0089】
上記付加型(共)重合体(f)の水素添加(共)重合体は、上記付加型(共)重合体(f)を、上記(c)水素添加(共)重合体に記載の方法と同様の方法により水素添加することにより得ることができる。
【0090】
(g)交互共重合体
交互共重合体(g)は、ルイス酸等の存在下で環状オレフィン化合物とアクリレートとをラジカル重合させることにより得られる。
【0091】
(アクリレート)
上記アクリレートとしては、たとえば、メチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレートなどの炭素数1〜20の直鎖状、分岐状または環状アルキルアクリレート;グリシジルアクリレート、2−テトラヒドロフルフリルアクリレートなどの炭素原子数2〜20の複素環基含有アクリレート;ベンジルアクリレートなどの炭素原子数6〜20の芳香族環基含有アクリレート;イソボロニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレートなどの炭素数7〜30の多環構造を有するアクリレートが挙げられる。
【0092】
上記環状オレフィン化合物とアクリレートとの割合は、これらの合計を100モルとして、通常、環状オレフィン化合物が30〜70モル、アクリレートが70〜30モルであり、好ましくは、環状オレフィン化合物が40〜60モル、アクリレートが60〜40モルであり、特に好ましくは、環状オレフィン化合物が45〜55モル、アクリレートが55〜45モルである。
【0093】
上記ルイス酸の使用量は、アクリレート100モルに対して0.001〜1モルが好ましい。上記ルイス酸としては、例えば、三フッ化ホウ素とエーテル、アミン、フェノールなどとの錯体、三フッ化アルミニウムのエーテル、アミン、フェノールなどの錯体、トリス(ペンタフロロフェニル)ボラン、トリス〔3,5−ビス(トリフロロメチル)フェニル〕ボラン、などのホウ素化合物、三塩化アルミニウム、三臭化アルミニウム、エチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、ジエチルアルミニウム
フロライド、トリ(ペンタフロロフェニル)アルミニウムなどのアルミニウム化合物、ヘキサフロロアセトン、ヘキサクロロアセトン、クロラニル、ヘキサフロロメチルエチルケトンなどのルイス酸性を示す有機ハロゲン化合物、その他、四塩化チタン、ペンタフロロアンチモンなどのルイス酸性を示す化合物などが挙げられる。
【0094】
また、フリーラジカルを発生する公知の有機過酸化物またはアゾビス系のラジカル重合開始剤を用いることもできる。
【0095】
重合反応温度は、通常−20℃〜80℃、好ましくは5℃〜60℃である。また、重合反応用溶媒としては、上記(a)または(b)の開環(共)重合体の重合反応溶媒において例示した溶媒を挙げることができる。
【0096】
なお、本発明における「交互共重合体」とは、環状オレフィン化合物に由来する構造単位同士が隣接しない共重合体、すなわち、環状オレフィン化合物に由来する構造単位の隣には必ずアクリレートに由来する構造単位が結合している共重合体を意味する。ただし、アクリレート由来の構造単位同士は隣接して存在していてもよい。
【0097】
本発明に用いられる環状オレフィン系重合体(A1)の固有粘度〔ηinh〕は、0.2
〜5dl/gが好ましく、0.3〜3dl/gがさらに好ましく、0.4〜1.5dl/gが特に好ましい。また、テトラヒドロフランを溶媒として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、カラム:東ソー(株)製TSKgel G7000HXL×1、TSKgel GMHXL×2およびTSKgel G2000HXL×1の4本を直列に接続した。)で測定されるポリスチレン換算の分子量は、数平均分子量(Mn)が好ましくは8,000〜100,000、さらに好ましくは10,000〜80,000、特に好ましくは12,000〜50,000であり、重量平均分子量(Mw)が好ましくは20,000〜300,000、さらに好ましくは30,000〜250,000、特に好ましくは40,000〜200,000である。
【0098】
固有粘度〔ηinh〕、数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)が上記範囲
にある環状オレフィン系重合体(A1)は、成形加工性に優れ、この樹脂によれば、耐熱性、耐水性、耐薬品性および機械的特性に優れたNDフィルターが得られる。
【0099】
また、環状オレフィン系重合体(A1)のガラス転移温度(Tg)は、通常120℃以上、好ましくは120〜350℃、さらに好ましくは120〜250℃、特に好ましくは130〜200℃である。Tgが上記範囲にある環状オレフィン系重合体は、高温条件下での使用や、コーティングおよび印刷などの加熱を伴う二次加工においても変形しにくく、また、成形加工性に優れ、成形加工時の熱による劣化も起こりにくい。
【0100】
環状オレフィン系重合体(A1)の市販品としては、アートン(JSR社製)が挙げられる。
【0101】
[(B)一次粒子径10〜80nmの可視光領域に吸収をもつ金属酸化物および/または金属窒化物]
本発明に用いることができる可視光領域に吸収をもつ金属酸化物および/または金属窒化物(B)は、いずれの金属の酸化物および/または窒化物でもよいが、黒色度の観点から、元素周期表の第4周期の3〜11族に属する金属の酸化物および/または窒化物により構成されているのが好ましい。元素周期表の第4周期の3〜11族には、スカンジウム(Sc)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)及び銅(Cu)が属しており、これらの中では、Ti、Mn、Fe及びCuが好ましい。金属酸化物における金属の組成比は特に
限定されない。また、金属窒化物は金属酸化物と組み合わせて用いるのが好ましい。
【0102】
さらに金属酸化物は2種以上の金属により構成された複合酸化物が好ましく、特にその少なくとも1種、好ましくは2種以上が前期元素周期表の第4周期の3〜11族に属する金属であるのが好ましい。特に銅、鉄、マンガンより構成される金属複合酸化物が好ましい。これら銅、鉄、マンガンより構成される金属複合酸化物の組成比は特に限定されないが、銅、鉄、マンガンより構成される金属複合酸化物を100重量%としたときに、銅酸化物は5〜30重量%、鉄酸化物は25〜70重量%、マンガン酸化物は 25〜70重量%となる組成比を有する金属複合酸化物が好ましい。
【0103】
上記のような組成比の、銅、鉄、マンガンの酸化物より構成される金属複合酸化物の可視光領域における分光透過率曲線は、平坦性を有するため、上記のような組成比の、銅、鉄、マンガンの酸化物より構成される金属複合酸化物を用いたNDフィルターは、可視光領域において、平坦な分光透過率曲線を示すことになり、好ましい。なお、銅、鉄、マンガンより構成される金属複合酸化物を上記硬化性組成物中に均一分散させるために、該金属複合酸化物と分散剤および/または溶剤をあらかじめ予備分散することが好ましい。
【0104】
分散剤としては特に制限はないが、高分子量タイプの分散剤を好適に用いることができる。具体的には市販品であるDisperBYK−161、162、163、164、167、2163、2164(いずれもビックケミー社製)を好適に用いることができる。
【0105】
溶剤としては特に制限はないが、硬化性組成物の溶解性に優れるメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、イソプロパノール等のアルコール系溶剤、染料併用の際に染料の溶解性に優れる、ピロリドン系溶剤を好適に用いることができる。
【0106】
上記金属酸化物および/または金属窒化物の一次粒子径は10〜80nm,好ましくは10〜60nm、より好ましくは10〜50nmである。一次粒子径をこの範囲とすることにより、散乱光を抑制する効果がある。
【0107】
本発明において好適な金属酸化物及び金属窒化物の市販品としては、チタンブラック12S(以上ジェムコ社製)、ダイピロキサイドTMブラック#3550(以上大日精化社製)が挙げられる。
[(C)赤外線吸収剤]
本発明に用いることができる赤外線吸収剤は、赤外線領域に吸収をもついずれの染料及び顔料でもよい。赤外線吸収領域に吸収をもつ染料及び顔料としてはフタロシアニン系、チオール金属錯体系、アゾ系、ポリメチン系、ジフェニルメタン系、トリフェニルメタン系、キノン系、アントラキノン系又はジイモニウム塩系等の色素化合物がある。上記赤外線吸収剤が顔料である場合、一次粒子径は10〜80nm,好ましくは10〜60nm、より好ましくは10〜50nmである。一次粒子径をこの範囲とすることにより、散乱光を抑制する効果がある。
【0108】
本発明において好適な赤外線吸収染料の市販品としては、SDA4137、SDA4428、SDA9800、SDA9811,SDB3535、(以上SANDS社製)、KAYASORBシリーズ、(以上日本化薬社製)が挙げられる。
【0109】
〔その他の成分〕
本発明に用いられる可視光領域に吸収をもつ金属酸化物および/または金属窒化物(B)に加えて、黒色着色剤として染料及び顔料を添加することができる。有機物からなる染料及び顔料を用いる場合は、その化学構造に起因する特定波長の吸収を有するため、可視域において均一な減光特性を得るためには複数種の染料及び顔料を適当な割合で混合する
ことが好ましい。そのような黒色着色剤としては、一次粒子径が50nm以下のカーボンブラックなどをあげることができる。カーボンブラックとしては、一次粒子径が小さく、且つ分散処理等によりストラクチャーの単位まで均一分散することが拡散透過光による像のボケを抑制する上で好ましい。
【0110】
また、本発明の目的を損なわない範囲において、NDフィルター形成用組成物(組成物X)にさらに、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の添加剤を添加することができる。
【0111】
上記酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,2’−ジオキシ−3,3’−ジ−t−ブチル−5,5’−ジメチルジフェニルメタン、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等が挙げられる。
【0112】
上記紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等が挙げられる。また、後述する溶液キャスティング法によりNDフィルターを製造する場合には、レベリング剤や消泡剤を添加することにより、その製造を容易にすることができる。
【0113】
なお、これら添加剤は、NDフィルターを製造する際に、NDフィルター形成用組成物(組成物X)とともに混合してもよいし、NDフィルター形成用組成物(組成物X)を製造する際に添加することで予め配合されていてもよい。また、添加量は、所望の特性に応じて適宜選択されるものであるが、NDフィルター形成用組成物(組成物X)100重量部に対して、通常0.01〜5.0重量部、好ましくは0.05〜2.0重量部であることが望ましい。
【0114】
〔NDフィルター形成用組成物(組成物X)〕
NDフィルター形成用組成物(組成物X)は、熱可塑性樹脂(A)と、可視光領域に吸収をもつ金属酸化物および/または金属窒化物(B)と、赤外線吸収剤(C)とを含み、熱可塑性樹脂(A)に、可視光領域に吸収をもつ金属酸化物および/または金属窒化物(B)と、赤外線吸収剤(C)とが分散または相溶しているものが好ましい。分散させる方法としては、大きく分けて、各成分に溶剤と必要に応じて分散剤を調合した上で、ピコミル、ペイントシェイカー、またはボールミル等を用いて湿式分散させる方法と熱可塑性樹脂を加温し、溶融させた状態で、可視光領域に吸収をもつ金属酸化物および/または金属窒化物(B)並びに赤外線吸収剤(C)を分散させる乾式分散による方法のいずれの方法を用いてもよい。また、赤外線吸収剤(C)は、熱可塑性樹脂(A)に相溶する場合もあり、相溶させる方法としては、大きく分けて、各成分に溶剤と熱可塑性樹脂とを調合し相溶させる方法と、熱可塑性樹脂(A)を加温し、溶融させた状態で、赤外線吸収剤(C)を相溶させる方法のいずれの方法を用いてもよい。
【0115】
湿式分散等溶媒を用いる方法においては、NDフィルター形成用組成物(組成物X)は、熱可塑性樹脂(A)ならびに可視光領域に吸収をもつ金属酸化物および/または金属窒化物(B)ならびに赤外線吸収剤(C)を任意の溶媒中で混合し、取り扱い性などの観点から粘度を調節したものを用いることができる。
【0116】
前記溶媒としては、熱可塑性樹脂(A)が溶解し、可視光領域に吸収をもつ金属酸化物および/または金属窒化物(B)ならびに赤外線吸収剤(C)が良好に分散または相溶する限り特に制限されないが、芳香族系炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤をあげることができる。トルエン、シクロヘキサノン、3−メトキシブチルアセテートが熱可塑性樹脂の溶解性、可視光領域に吸収をもつ金属酸化物および/または金属窒化物(B)ならびに赤外線吸収剤(C)の分散性の点で好ましい。
【0117】
乾式分散による方法においては、熱可塑性樹脂(A)あるいは熱可塑性樹脂(A)と、可視光領域に吸収をもつ金属酸化物および/または金属窒化物(B)と、赤外線吸収剤(C)との双方をあらかじめ公知の方法で乾燥したものを混合する。乾燥方法としては、熱風乾燥、除湿乾燥、真空乾燥、窒素乾燥など公知の方法を用いることが可能である。また、押出し機のホッパー、投入口、ベント口、ダイス面などを窒素あるいはアルゴンなどの不活性ガスでシールすることも好ましい方法である。これら乾燥した固体を使用する場合は、公知のタンブラー式、回転式などのブレンダーや、ヘンシェルミキサー、プラネタリーミキサーなどの混合機を用いてあらかじめ固体の状態で混合することも可能である。また、複数のフィーダーを用いて共有することも可能であり、可視光領域に吸収をもつ金属酸化物および/または金属窒化物(B)、赤外線吸収剤(C)を押出し機の途中からフィードすることも可能である。
【0118】
熱可塑性樹脂(A)を溶融した上での乾式分散では公知の単軸、二軸の押出機を用いることが可能である。押出機のシリンダー径は、通常、10〜100mmである。スクリューは公知のものが用いられ、例えば単軸の場合、フルフライト、サブフライトを組み合わせたもの、ダルメージを組み込んだもの、スクリューピッチあるいは溝深さがが同一スクリュー中で変わるものが挙げられる。二軸の場合、2条あるいは3条のスクリュー、異方向あるいは同方向回転、スクリューパーツが自由に組み合わされる方式の場合、スクリューパーツの形状を、スクリュー式、逆送りスクリュー、パドル式スクリュー、ヘリカルパドル式スクリューなどより自由に選択し組み込むことが可能である。
【0119】
押出機は1台で運転することも可能であるが、押出機を2台以上連結させたもの、連続式およびバッチ式のニーダーと組み合わせたものを使用しても構わない。
【0120】
可視光領域に吸収をもつ金属酸化物および/または金属窒化物(B)の含有割合は、熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して通常0.01〜10質量部、好ましくは0.1〜5質量部、特に好ましくは0.1〜1質量部である。金属酸化物および/または金属窒化物(B)の含有割合が上記範囲にあると光学濃度の制御を成形体厚みで制御しやすい、また可視光領域に吸収をもつ金属酸化物および/または金属窒化物配合量の再現性の点で好ましい。
【0121】
赤外線吸収剤(C)の含有割合は、熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して通常0.01〜10質量部、好ましくは0.1〜5質量部、特に好ましくは0.1〜1質量部である。赤外線吸収剤(C)の含有割合が上記範囲にあると光学濃度の制御を成形体厚みで制御しやすい、また赤外線吸収剤配合量の再現性の点で好ましい。
【0122】
〔NDフィルターの製造方法〕
厚みの均一な成形体、シートまたはフィルムの形状のNDフィルターは、上記のNDフィルター形成用組成物(組成物X)を用いてキャスト法、押出し成形法等の任意の方法で成形することができる。ここで、厚みとは、NDフィルターの表面(入射面)と裏面の間の距離をいう。
【0123】
さらに、NDフィルターは、単一NDフィルター内で光学濃度を変えるために、材料の濃度を一定にしたまま、成形体の厚みを入射面内で部分的、段階的、または連続的に変化させることが好ましい。このようなNDフィルターおよびその製造方法としては、下記(i)〜(iv)をあげることができる。
【0124】
(i)積層部分を有するNDフィルター
前記NDフィルター形成用組成物(組成物X)を用いて作成した厚みの均一な成形体、
シートまたはフィルム上の任意の場所に、任意の面積で同組成物を用いて作成した厚みの均一な成形体、シートまたはフィルムを1つ以上積層することにより、光学濃度の異なる部位を部分的または段階的に有するNDフィルターを製造する。
【0125】
(ii)射出成形により形成されるNDフィルター
前記NDフィルター形成用組成物(組成物X)を、厚みの異なる部位を任意の場所に、任意の面積で有する形状に合わせた金型を用いて、射出成形により、光学濃度の異なる部位を部分的または連続的に有するNDフィルターを製造する。
【0126】
(iii)ホットスタンプ法により形成されるNDフィルター
前記NDフィルター形成用組成物(組成物X)を用いて作成した均一な厚みの成形体、シートまたはフィルムをホットスタンプ等の方法にて、任意の光学濃度が得られるよう厚みを制御した後、公知の打ち抜きの方法により光学濃度の異なる部位を部分的、段階的または連続的に有するNDフィルターを製造する。
【0127】
(iv)ロール押圧法により形成されるNDフィルター
前記NDフィルター形成用組成物(組成物X)を押出し機を用いて押出し成型をする際に、彫刻を施したロールを押圧することにより、任意の光学濃度が得られるよう厚みを制御した後、公知の打ち抜きの方法により光学濃度の異なる部位を部分的、段階的または連続的に有するNDフィルターを製造する。
【0128】
特に、金型を準備し、所定の形状を得る前記製造方法(ii)が、生産量の調整、NDフィルターのデザイン変更等への順応性が高く、かつ工程数が少ないため、生産性、歩留を向上させる点からも特に好ましい。
【0129】
〔反射防止能の付与〕
迷光・ゴーストを防ぐため、該NDフィルターの表面または裏面の少なくとも一方に反射防止処理をすることもより好ましい。具体的には公知の真空蒸着法による誘電体多層膜による方法に加え、ホットスタンプによるナノインプリントにて可視域の反射防止性能を付与することや、該成形体の表層から0.1マイクロメートルをフッ素ガス中でフッ素化反応させる方法、さらには蒸着にて形成する誘電体多層膜に変わり、ウェットコーティングによりフッ素化合物または中空シリカ等からなる単一の反射防止層、更には屈折率の異なる複数の層からなる反射防止層を積層し反射防止性能を付与することが好ましく用いられる。
【0130】
該成形物を打ち抜き加工等によりチップ化して撮像機器等に組み込む際には、カット時に発生する、切粉の発生が大きな問題となる場合も多い。上述の反射防止性能を付与する手段としては、真空蒸着以外の方法を用いることで、切粉の発生を低減することが可能である。更に生産性を考慮した場合には該成形体の表裏を同時処理が可能な表層フッ素化法、または、再現性に優れ、かつ加工速度の速い、ウェットコートによる単層からなる反射防止層による処理がより好ましい。
【0131】
〔段差および非垂直面での反射光の処理〕
NDフィルターにて非連続的に厚みに変化をつけて面内での減光特性を変化させる場合、その境界は段差を有することとなってしまうため、場合によってはこの段差の部分が受光素子へ影響を与える場合があるため、適宜、この段差部位に撮像機器への影響を少なくするための処理を施すことも好ましい。
【0132】
具体的には、段差の部分の断面が単純な直角形状以外の形状を付与すること、段差の部分を直上からみた場合に直線以外の例えば曲線からなる波型、あるいはノコ刃様の形状を
与えること、さらには段差部分の形状変化を連続的にする方法がある。あるいは段差を無くするために、可視域で透明な樹脂を用いて段差を含むNDフィルター全面をコーティングし、段差のエッジ部分に透明樹脂を充填すること、更にはコーティング量をより増やして、機械的な段差を全く無くしてしまう方法がある。
【0133】
更には、該NDフィルターの段差形状と対をなす形状からなる透明な成形体を別途準備し、段差が全く無くなるよう、段差のある面同士を貼り合わせることが好ましく用いられる。
【0134】
これらの手法については撮像機器の受光素子への像への影響を実際に確認した上で、必要に応じて、単一の方法、もしくはこれら方法を2種以上の組合せて用いることが好ましい。
【0135】
また、NDフィルターの厚みを入射面内で連続的に変化させ、且つ該NDフィルターの位置を入射光に対して、直交方向に移動させることにより、減光特性を連続的に変化させることができる。
【0136】
しかし、上記の場合、NDフィルターは、該NDフィルターの入射面のうち、少なくとも光の入射軸に対して垂直とはなりえない(この面を以下、非垂直面という)部分を有する。
【0137】
空気中を通って、該NDフィルターの非垂直面に達した光は、透過光は屈折を受け、また反射光は入射光とは異なる方向に反射されることとなり、それぞれ光軸のズレと、反射による迷光を発生させる問題が生じてくる。
【0138】
そこで、解決策として、非垂直面に前述の熱可塑性樹脂(A)などの透明樹脂を成形加工したものを貼り合わせ、且つその透明樹脂の形状を適宜調整することにより、透明樹脂を貼り合わせた後のNDフィルターの入射面および出射面を、共に入射光に対して垂直とすることができる。
【0139】
前述の貼り合わせによって、NDフィルター部位と透明樹脂部位に境界が生じるが、透明樹脂部分とNDフィルター部分の屈折率差が極めて小さいため、NDフィルターと透明樹脂の貼り合わせを接着、圧着等の方法にて、空気を介さないように一体化させることで、屈折、および反射は実質的に問題とならないようにすることができる。
【0140】
〔NDフィルターの光線透過率〕
このようにして得られた厚みの均一なNDフィルターおよび厚みが部分的、段階的または連続的に変化するNDフィルターは、波長400〜700nmの光線の透過率の平均値T(ave)(400-700)(%)に対して、波長400〜700nmの波長範囲における光
線透過率の最小値T(min)(400-700)(%)と最大値T(max)(400-700)(%)が下記式(1)および式(2)を満たす。
【0141】
0.92×T(ave)(400-700)(%)≦T(min)(400-700)(%)・・・(1)
1.08×T(ave)(400-700)(%)≧T(max)(400-700)(%)・・・(2)
反射防止能を付与したNDフィルターおよび段差処理をしたNDフィルターにおいても、同様に上記式を満たす。
【0142】
波長400〜700nmにおける光線透過率の最小値T(min)(400-700)(%)は
T(ave)(400-700)(%)の0.92倍以上であり、0.94倍以上が好ましい。
【0143】
波長400〜700nmにおける光線透過率の最大値T(max)(400-700)(%)が
T(ave)(400-700)(%)の1.08倍以下であり、1.06倍以下が好ましい。
【0144】
NDフィルターの波長400〜700nmにおける光線透過率の最小値、最大値が上記範囲内にあると、NDフィルターが、厚さが均一である場合、光線透過率が波長400〜700nmにおいてほぼ均一、つまり、分光透過率曲線が平坦性を有し、可視光領域の各波長において均一な減光性能を得る。
【0145】
このような均一な減光性能、すなわち分光透過率曲線の平坦性は、前記光線透過率を満たす熱可塑性樹脂(A)中に、前記可視光領域に吸収をもつ金属酸化物および/または金属窒化物(B)を上記のように分散させることによって達成することができる。具体的には、前記可視光領域に吸収をもつ金属酸化物および/または金属窒化物(B)が可視光領域に吸収を有することによって達成することができる。
【0146】
前記熱可塑性樹脂(A)中に、前記可視光領域に吸収をもつ金属酸化物および/または金属窒化物(B)を含有することによって、NDフィルターの分光透過率曲線が所望の平坦さに至らない場合には、可視光領域における光線透過率の最大値T(max)付近の波長領域に吸収を持つ特定の染料および/または顔料をともに用いることによって、NDフィルターの分光透過率曲線を平坦にすることができる。
【0147】
また、前記熱可塑性樹脂(A)中に、前記可視光領域に吸収をもつ金属酸化物および/または金属窒化物(B)、さらには可視光領域における光線透過率の最大値T(max)付近の波長領域に吸収を持つ特定の染料および/または顔料を含有してもなお、NDフィルターの分光透過率曲線が平坦にならない場合には、可視光領域における光線透過率の最小値T(min)付近の波長領域での反射率が低くなるようにNDフィルターの少なくとも一方の面を反射防止処理することで、NDフィルターの分光透過率曲線を平坦にすることもできる。
【0148】
ここで上記式は、NDフィルターの任意の測定点において光線透過率を測定した際に成立する式である。NDフィルターの任意の測定点において、波長400〜700nmにおける光線透過率の平均値T(ave)(400-700)(%)、最小値T(min)(400-700)(%)および最大値T(max)(400-700)(%)は、NDフィルターの厚みにより、それ
ぞれ様々な値をとるが、上記式は満たしている。つまり、厚みが部分的、段階的または連続的に変化するNDフィルターを用いると、上記式を満たすことにより1つのNDフィルター内で広い波長域において均一な減光性能を保ちながら、厚みの変化により光線透過率を変化させることができ、調節することができる。
【0149】
[光の透過率を調節する方法]
本発明の光の透過率を調節する方法としては、特に制限はないが、光学濃度の異なる単一のNDフィルターを入射光に対して、直交方向に移動させることにより、NDフィルターを透過した光の透過率を調節すること、または円の形状を有し円周方向に光学濃度を変化させたNDフィルターをその中心を軸として回転させることにより、NDフィルターを透過した光の透過率を調節することができる。
【0150】
さらに、本発明のNDフィルターを、デジタルカメラ、デジタルスチルカメラといった撮像機器に用いると、本発明のNDフィルターは、単一のNDフィルター内において異なる光学濃度を有するため、減光性能の面内可変能を与えることができ、光線透過率を調節することが可能である。そのため、低コストでデジタルカメラ、デジタルスチルカメラといった撮像機器の性能を飛躍的に向上させることが可能である。
[実施例]
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0151】
<キャストフィルムの残留トルエン量>
真空乾燥後のトルエン含量は予め検量線を作成しておいたパーソナルガスクロマトグラフィーC-8A(検出機;FID 島津製作所社製)にて測定した。
【0152】
<波長別透過特性>
波長400〜700nmの範囲の波長別の光線透過率を日立分光光度計U−3310(日立製作所社製)を用いて測定した。
【0153】
<波長別反射特性>
上記の日立分光光度計U−3310に反射率測定ユニットを組み込んで、波長400〜700nmの波長別の反射率を、アルミ蒸着ミラーを100%とした5度正反射における相対反射率として測定した。
【0154】
<全光線透過率>
ヘイズメーターHM−150(村上色彩技術研究所社製)を用いてJIS K7361に準拠した測定をおこなった。
【0155】
<ヘイズ値>
ヘイズメーターHM−150(村上色彩技術研究所社製)を用いてJIS K7136に準拠した測定をおこなった。
【0156】
<リタデーション(透過光の位相差)>
王子計測機器(株)製の「KOBRA−21ADH」を用い、波長550nmにて測定した。
【0157】
[実施例1]NDフィルター(1)の製造
黒色系顔料分散液(シーアイ化成社製、固形分濃度15%、銅・鉄・マンガンの複合酸化物、一次粒子径50nm)100重量部に対して、赤外線吸収染料(SANDS社製、SDB3535)30重量部、環状オレフィン系重合体(JSR社製、商品名アートン、1mm厚での380〜780nmにおける光線透過率:93%)の20%塩化メチレン溶液2500重量部を添加した後、溶液が目視で均一になるまで攪拌し、 NDフィルター形成用組成物としてキャスト用ドープ液(1)を作成した。
【0158】
このキャスト用ドープ液(1)を液膜300マイクロメートルとなるようにPETフィルム(コスモシャインA4300 東洋紡社製)上にアプリケータを用いて塗布し、そのまま50℃の強制攪拌式オーブンに投入し、10分間放置し、塩化メチレンを揮発させた後、黒色環状オレフィン系重合体フィルム(厚み35μm)を得た。このフィルムを50℃に温度調節した真空乾燥機にて10時間乾燥させて、塩化メチレン含量が0.1%未満のNDフィルター(1)を得た。得られたNDフィルター(1)の波長別透過特性を図1に、全光線透過率、ヘイズ値、リタデーション、波長別透過特性を測定した結果を表1に示した。可視域における透過光強度の波長依存の極めて小さく、かつ拡散透過光がほとんどない良好な減光性能を示すNDフィルター(1)が得られた。
【0159】
[実施例2]NDフィルター(2)の製造
環状オレフィン系重合体(JSR社製、商品名アートン、1mm厚での380〜780nmにおける光線透過率:93%)はあらかじめ100℃×4時間の条件で真空乾燥を行った。その後タンブラーブレンダーで所定量の環状オレフィン系重合体、銅・鉄・マンガ
ンの複合酸化物(大日精化社製、ダイピロキサイドTMブラック#3550、一次粒子径50nm)および赤外線吸収染料(SANDS社製、SDB3535)と予備混合を行った。なお環状オレフィン重合体と銅・鉄・マンガンの複合酸化物と赤外線吸収染料の混合比は重量比で100:0.15:0.3とした。
【0160】
二軸押出機(TEM−37BS,東芝機械社製)を所定温度である290〜300℃に加熱し、ホッパーとシリンダー内を窒素で充満させた。温度が安定した後、スクリューを100rpmで回転させ、ホッパー部へ窒素を流しながら、20kg/hrの速度で上記環状オレフィン重合体と銅・鉄・マンガンの複合酸化物と赤外線吸収染料の予備混合物の溶融混合を行い、NDフィルター形成用組成物として、光吸収性の黒色環状オレフィン系重合体組成物(1)を得た。
【0161】
更にこの黒色環状オレフィン系重合体組成物(1)は100℃×4時間の条件で真空乾燥を行い、窒素でシールしたアルミ袋中に保管した。
【0162】
更に十分に清掃した650mm幅のTダイを50mmφ押出機に取り付けた。ダイスおよび押出機の昇温を始める前にダイスリップ部にとりつけたアルミニウム製のカバーから、純度99.99%の窒素を0.6m3/hrの流速で流すことにより封止し、Tダイと
押出機の昇温を始めた。
【0163】
昇温開始から5時間かけ十分に昇温した後、窒素循環式除湿乾燥機(日水加工社製、SD−200)にて100℃で3時間除湿乾燥をおこなった黒色環状オレフィン系重合体組
成物(1)を、押出機のホッパーに移送した。
【0164】
押出機としてジーエムエンジニアリング株式会社製90mm押出機(GM−90)を用いて、押出温度280〜300℃で吐出量5kg/hrで黒色環状オレフィン系重合体組成物(1)を溶融し、ギアポンプで定量供給し、コートハンガー型マニホールドを有する700mm幅のTダイを用いて、樹脂を膜状に引き伸ばし、ステンレスベルト(表面粗さ0.1s)とつや付きロール(表面粗さ0.1s)を用いて、3.2m/minの速度で、フィルムを引き取り、樹脂フィルムの両面に鏡面の状態を転写・剥離して、500mm幅、厚み50μmのシートを作製した。冷却キャストドラムの温度設定はTg−5〜20℃に設定して成形を行いNDフィルター(2)を得た。
得られたNDフィルター(2)の波長別透過特性を図2に、全光線透過率、ヘイズ値、リタデーション、波長別透過特性を測定した結果を表1に示した。
【0165】
[実施例3]積層法によるNDフィルター(ND1)および(ND2)の製造
実施例1で得られたNDフィルター(1)を20mm×10mm、15mm×10mm
、および10mm×10mmで打ち抜きをおこなったところ、端面のきれいな3種類のサイズからなるNDフィルターが得られた。ここで、それぞれの10mm辺の片方を基準とする10mm辺とする。この20mm×10mmのNDフィルター上にマイクロディスペンサーを用いて、基準とする10mm辺から距離7.5mmとなる中央部位にメチルアミルケトンを1マイクロリットル滴下し、その2秒後に先に打ち抜いた15mm×10mmのNDフィルターを基準とする10mm辺がちょうど重なるように、重ね合わせた。
【0166】
更にこの15mm×10mmのNDフィルター上にマイクロディスペンサーを用いて、先の基準辺から距離5mmとなる中央部にメチルアミルケトンを1マイクロリットル滴下し、2秒後に先に打ち抜いた10mm×10mmのNDフィルターを基準とする10mm辺がちょうど重なるように、重ね合わせた。
【0167】
上記の3枚のNDフィルターを重ね合わせた後、10Nの荷重で10秒間ホールドした
後、18mm×8mmサイズの打ち抜き刃で重ね合わせたNDフィルターの中央部を打ち抜くことにより、積層型NDフィルター(ND1)を得た。積層型NDフィルター(ND1)の出来上がりの概略図を図3に示した。
【0168】
1〜3枚重ね合わせ部分、図3に示した(a)〜(c)部分の波長別光線透過率の結果を図4〜6に、全光線透過率、ヘイズ値、リタデーション、波長別透過特性を測定した結果を表1に示した。
【0169】
同様にして、実施例2で得た混練押出タイプのNDフィルター(2)を用いて積層型NDフィルター(ND2)を得た。積層型NDフィルター(ND2)の概略図についても図7に示した。積層型NDフィルター(ND2)についても、図7に示した(d)〜(f)部分の波長別光線透過率の結果を図8〜10に、全光線透過率、ヘイズ値、リタデーション、波長別透過特性を測定した結果を表1に示した。
【0170】
[実施例4]真空蒸着法による反射防止層付NDフィルター(ND3)の製造
NDフィルター(2)を205mm×110mmにカットしたサンプルの両面に以下の構成となるように、二酸化チタンと二酸化ケイ素からなる積層体の真空蒸着をおこなって反射防止層を有することを特徴とするNDフィルター(ND3)を得た。蒸着終了後に測定した波長別光線透過率を図11に、全光線透過率、ヘイズ値、リタデーション、波長別透過特性を測定した結果を表1に示した。
【0171】
反射防止層の積層構成と条件
NDフィルター(2)の表側から順に二酸化チタン14ナノメートル、二酸化ケイ素30ナノメートル、二酸化チタン106ナノメートル、さらにもっとも空気に近い層として、二酸化ケイ素が80ナノメートルとなるよう、抵抗加熱法にて蒸着源を気化させ蒸着を行った。また、NDフィルター(2)の裏側から順に二酸化チタン13ナノメートル、二酸化ケイ素55ナノメートル、二酸化チタン92ナノメートル、さらにもっとも空気に近い層として、二酸化ケイ素が111ナノメートルとなるよう、抵抗加熱法にて蒸着源を気化させ蒸着を行った。
【0172】
[実施例5]射出成形法によるNDフィルター(ND4)の製造
段差を有する成形品からなるNDフィルターを得るための金型を作成し、実施例2で作製した黒色環状オレフィン系重合体組成物(1)を成形機SG75M−S(シリンダー径28mm、型締め75ton、住友重機社製)を用いて射出成形して射出成形型NDフィルター(ND4)を得た。射出成形型NDフィルター(ND4)の概略図を図12に示した。射出成形型NDフィルター(ND4)についても、図12に示した(g)〜(i)部分の波長別光線透過率の結果を図13〜15に、全光線透過率、ヘイズ値、リタデーション、波長別透過特性を測定した結果を表1に示した。
【0173】
射出成形条件
成形速度;100mm/sec
シリンダー温度;樹脂Tgの+140〜160℃
金型温度;樹脂Tgの−10〜−20℃
【0174】
[実施例6]ホットスタンプ法によるNDフィルター(ND5)の製造
NDフィルター(2)を200mm×200mmにカットし、段差加工及び離型処理をした金型(基準面より段差44μm掘り込んだ長さ5mm、幅10mmの溝、その溝に隣接して更に43μm掘り込み、合計で基準面から87μm掘り込んだ長さが5mm、幅10mmの溝からなる段差)と離型処理をした平面の金型に挟み、280℃に加熱した熱プレス機で140MPaの圧力で成型し、厚み44〜131μmの不連続な厚みを有するフ
ィルムを作製した。ホットスタンプ法によるNDフィルター(ND5)についても、表1に示す厚みの(i-a)〜(i-c)部分の波長別光線透過率の結果を図16〜18に、全光
線透過率、ヘイズ値、リタデーション、波長別透過特性を測定した結果を表1に示した。
【0175】
[実施例7]ロール押圧法によるNDフィルター(ND6)の製造
環状オレフィン系重合体アートン(JSR社製、1mm厚での380〜780nmにおける光線透過率:93%)はあらかじめ100℃×4時間の条件で真空乾燥を行った。その後タンブラーブレンダーで所定量の環状オレフィン系重合体、銅・鉄・マンガンの複合酸化物(大日精化社製、ダイピロキサイドTMブラック#3550、一次粒子径50nm)と赤外線吸収染料(SANDS社製、SDB3535)と予備混合を行った。なお環状オレフィン重合体とダイピロキサイドTMブラック#3550と赤外線吸収染料の混合比は重量比で100:0.15:0.3とした。
【0176】
二軸押出機(TEM−37BS,東芝機械社製)を所定温度である290〜300℃に加熱し、ホッパーとシリンダー内を窒素で充満させた。温度が安定した後、スクリューを100rpmで回転させ、ホッパー部へ窒素を流しながら、20kg/hrの速度で上記環状オレフィン系重合体と銅・鉄・マンガンの複合酸化物と赤外線吸収染料の予備混合物の溶融混合を行い、光吸収性の黒色環状オレフィン系重合体組成物(1)を得た。
【0177】
更にこの黒色環状オレフィン系重合体組成物(1)は100℃×4時間の条件で真空乾燥を行い、窒素でシールしたアルミ袋中に保管した。
【0178】
更に十分に清掃した650mm幅のTダイを50mmφ押出機に取り付けた。ダイスおよび押出機の昇温を始める前にダイスリップ部にとりつけたアルミニウム製のカバーから、純度99.99%の窒素を0.6m3/hrの流速で流すことにより封止し、Tダイと
押出機の昇温を始めた。
【0179】
昇温開始から5時間かけ十分に昇温した後、窒素循環式除湿乾燥機(日水加工社製、SD−200)にて100℃で3時間除湿乾燥をおこなった黒色環状オレフィン系重合体組
成物(1)を、押出機のホッパーに移送した。
【0180】
押出機としてジーエムエンジニアリング株式会社製90mm押出機(GM−90)を用いて、押出温度280〜300℃で吐出量10kg/hrで黒色環状オレフィン系重合体組成物(1)を溶融し、ギアポンプで定量供給し、コートハンガー型マニホールドを有する700mm幅のTダイを用いて、樹脂を膜状に引き伸ばし、ステンレスベルト(表面粗さ0.1s)と段差ロール(基準円周面より段差44μm掘り込んだ円周方向の長さ5mmの溝、その溝に隣接して更に43μm掘り込み、合計で基準面から87μm掘り込んだ円周方向の長さが5mmの溝、その溝に隣接して基準となる円周面が円周方向に長さ10mm続いた後、再び前記の2種の深さの溝(基準円周面から44μm掘り込んだ溝と87μm掘り込んだ溝)と基準円周面を繰り返し有する)を用いて、3.2m/minの速度で、フィルムを引き取り、樹脂フィルムの両面に鏡面の状態を転写・剥離して、500mm幅、厚み44〜131nmの不連続な厚みを有するフィルムを作製した。
【0181】
冷却キャストドラムの温度設定はTg−5〜20℃に設定して成形を行った。更に該成形フィルムを18mm×10mmの打ち抜き刃を用いて厚み44μmの部分4mm×8mm、厚み87μmの部分が5mm×8mm、厚み131μmからなる部分が10mm×8mmであるNDフィルター(ND6)を得た。
ロール押圧法によるNDフィルター(ND6)の概略図を図19に示した。ロール押出法によるNDフィルター(ND6)についても図19に示した(j)〜(l)部分の波長別光線透過率の結果を図20〜22に、全光線透過率、ヘイズ値、リタデーション、波長
別透過特性を測定した結果を表1に示した。
【0182】
[実施例8]射出成形型NDフィルター(ND4)の反射防止処理
実施例5で得た射出成形型NDフィルター(ND4)について、ナノインプリント金型で温度230℃でφ150ナノメートル、深さ0.1マイクロメートルの細孔を1μm角の面積中に23個、ハニカム構造をとるように空けた。処理後のSEM写真を図23に示した。可視光サイズより十分に小さなナノサイズの細孔を空けることで実質的に反射防止処理がなされ、片面あたりの反射率は処理前の片面4%から、1%以下まで低下した。反射率測定の結果を図24に示した。
【0183】
[実施例9]射出成形型NDフィルター(ND4)の表面フッ素化処理
実施例5で得た射出成形型NDフィルター(ND4)について、フッ素ガスおよび窒素ガスをそれぞれ任意の割合で混合したガスをボックスに導入し、40℃にて5分間反応させたところ、表面からおよそ0.1μmの深さにおいてマトリックスである環状オレフィン系重合体のフッ素化がなされた。フッ素化の深さについてはSIMSにより確認したところ、約0.1マイクロメートルであった。フッ素化処理後の反射率は処理前の片面4%から約2%まで低下していた。反射率測定の結果を図25に示した。
【0184】
[実施例10] 楔形の形状を有する射出成形型NDフィルター(ND7)および透明成
形体貼着射出成形型NDフィルター(ND8)
楔形の形状を有するNDフィルターを得るための金型を作成し、前記黒色環状オレフィン系重合体組成物(2)を成形機SG75M−S(シリンダー径28mm、型締め75ton、住友重機社製)を用いて射出成形してNDフィルター(ND7)を得た。NDフィルター(ND7)の概略図を図27に示した。NDフィルター(ND7)の(m)および(n)部分の波長別光線透過率の結果を図28および図29に、全光線透過率、ヘイズ値、リタデーション、波長別透過特性を測定した結果を表1に示した。環状オレフィン系重合体アートンを用いてこのNDフィルター(ND7)と同様の楔形の形状を有する透明成形体をNDフィルター(ND7)と同様の成形条件にて作成した。この透明成形体の斜面とNDフィルター(ND7)の斜面を、実施例3と同様にしてメチルアミルケトンで貼り合わせ透明成形体貼着射出成形型NDフィルター(ND8)を得た。貼り合わせ後の透明成形体貼着射出成形型NDフィルター(ND8)の概略図を図30に示した。NDフィルター(ND8)の(o)および(p)部分の波長別光線透過率の結果を図31および図32に、全光線透過率、ヘイズ値、リタデーション、波長別透過特性を測定した結果を表1に示した。
【0185】
[実施例11] 透明成形体貼着射出成形型NDフィルター(ND8)の反射防止処理
透明成形体貼着射出成形型NDフィルター(ND8)の両面の反射防止処理を下記の蒸着条件で真空蒸着にておこない、片面反射率がおよそ1%程度の反射防止能を付与したNDフィルター(ND9)を得た。真空蒸着の条件を下記に示した。NDフィルター(ND9)の反射率測定結果を図33に示した。なお、図33は透明成形体側からの測定結果であり、その反対面からの測定結果も同等であった。
【0186】
(蒸着条件)
NDフィルターに接する側より順次TiO2、SiO2、TiO2、SiO2を下記の膜厚で積層するように、抵抗加熱法にて蒸着源を気化させ蒸着を行った。なお、蒸着材料およびその蒸着条件は表面および裏面の両面ともに同等とした。
【0187】
TiO2;11nm
SiO2;50nm
TiO2;16nm
SiO2;107nm
[比較例1]黒色染料を用いた場合
銅・鉄・マンガンの複合酸化物と赤外線吸収染料の代わりに、黒色の染料であるFBK80S(日本ピグメント社製)を0.5質量部使用した以外は実施例2と同様にしてNDフィルター(A)を作製した。得られたNDフィルター(A)の波長別透過特性を図26に示した。可視域における透過光強度の波長依存性が大きくなってしまった。
【0188】
[比較例2]粒子径が大きいタイプ
ダイピロキサイドTMブラック#3550の代わりに、一次粒子径が大きな可視光領域に吸収をもつ金属窒化物及び金属酸化物であるチタンブラック13M(ジェムコ社製:一次粒子径97nm)を0.5質量部用いた以外は実施例2と同様にしてNDフィルター(B)を作製した。得られたNDフィルター(B)は透過光に占める散乱光の割合が多くなってしまった。
【0189】
[比較例3] 接着剤による貼り合わせタイプ
実施例3でメチルアミルケトンに代わりUV接着剤であるGL−1001(有限会社グルーラボ社製)を用い、高圧水銀灯を照射することにより(500mJ/cm2)、ND
フィルター(2)を貼り合わせた以外は、実施例3と同様にしてNDフィルター(ND10)を作製したが、接着剤が貼りあわせのエッジから一部、はみだし、また一部は接着剤が充填できず、NDフィルター(2)の間に隙間ができてしまったため、この隙間部分では反射光が目視で確認したところ明らかに発生しており、貼りあわせ面内で均一な透過特性を得ることができなかった。
【0190】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ1mmにおける波長380〜780nmにおける光線透過率が85%以上の熱可塑性樹脂(A)と、一次粒子径10〜80nmの可視光領域に吸収をもつ金属酸化物および/または金属窒化物(B)と、赤外線吸収剤(C)とを含有する組成物(X)から形成されるNDフィルターであって、波長400〜700nmにおける光線透過率の平均値T(ave)(400-700)に対して、光線透過率の最小値T(min)(400-700)と最大値T(max)(400-700)が下記式(1)および式(2)を満たすことを特徴とするNDフィルタ
ー。
0.92×T(ave)(400-700)≦T(min)(400-700) ・・・(1)
1.08×T(ave)(400-700)≧T(max)(400-700) ・・・(2)
【請求項2】
前記可視光領域に吸収をもつ金属酸化物および/または金属窒化物(B)と、前記赤外線吸収剤(C)とが、前記熱可塑性樹脂(A)に分散または相溶していることを特徴とする請求項1に記載のNDフィルター。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂(A)が、下式(I)で表される化合物から導かれる単位を有する環状オレフィン系重合体(A1)を含有することを特徴とする請求項1または2に記載のNDフィルター。
【化1】

(式中、R1〜R4は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、1価の炭化水素基または極性基を示し、R1およびR2、またはR3およびR4は、一体化して2価の有機基を形成してもよく、R1またはR2とR3またはR4とは互いに結合して単環構造または多環構造を形成してもよい。mは0または正の整数を示し、pは0または正の整数を示す。)
【請求項4】
厚みが均一である請求項1から3のいずれかに記載のNDフィルター。
【請求項5】
厚みが部分的、段階的または連続的に変化していることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のNDフィルター。
【請求項6】
同組成のNDフィルターを積層することにより、厚みが変化していることを特徴とする請求項5に記載のNDフィルター。
【請求項7】
ホットスタンプすることにより、厚みが変化していることを特徴とする請求項5に記載のNDフィルター。
【請求項8】
射出成形により形成することにより、厚みが変化していることを特徴とする請求項5に記載のNDフィルター。
【請求項9】
押出し法により成型し、該成型の際に彫刻を施したロールを押圧することにより、厚みが変化していることを特徴とする請求項5に記載のNDフィルター。
【請求項10】
前記NDフィルターの表面または裏面の少なくとも一方に、さらに反射防止処理がされていることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のNDフィルター。
【請求項11】
厚さ1mmにおける波長380〜780nmにおける光線透過率が85%以上の熱可塑性樹脂(A)と、一次粒子径10〜80nmの可視光領域に吸収をもつ金属酸化物および/または金属窒化物(B)と、赤外線吸収剤(C)とを含有する組成物(X)から成形体、シートまたはフィルムを形成する工程と、
前記成形体、シートまたはフィルムを積層する工程とを、
有することを特徴とするNDフィルターの製造方法。
【請求項12】
厚さ1mmにおける波長380〜780nmにおける光線透過率が85%以上の熱可塑性樹脂(A)と、一次粒子径10〜80nmの可視光領域に吸収をもつ金属酸化物および/または金属窒化物(B)と、赤外線吸収剤(C)とを含有する組成物(X)から成形体、シートまたはフィルムを形成する工程と、
前記成形体、シートまたはフィルムをホットスタンプする工程とを、
有することを特徴とするNDフィルターの製造方法。
【請求項13】
厚さ1mmにおける波長380〜780nmにおける光線透過率が85%以上の熱可塑性樹脂(A)と、一次粒子径10〜80nmの可視光領域に吸収をもつ金属酸化物および/または金属窒化物(B)と、赤外線吸収剤(C)とを含有する組成物(X)を射出成形することを特徴とするNDフィルターの製造方法。
【請求項14】
厚さ1mmにおける波長380〜780nmにおける光線透過率が85%以上の熱可塑性樹脂(A)と、一次粒子径10〜80nmの可視光領域に吸収をもつ金属酸化物および/または金属窒化物(B)と、赤外線吸収剤(C)とを含有する組成物(X)を押出し法により成型し、該成型の際に彫刻を施したロールを押圧することを特徴とするNDフィルターの製造方法。
【請求項15】
前記NDフィルターが、波長400〜700nmにおける光線透過率の平均値T(ave)(400-700)に対して、光線透過率の最小値T(min)(400-700)と最大値T(max)(400-700)が下記式(1)および式(2)を満たすことを特徴とする請求項11から1
4のいずれかに記載のNDフィルターの製造方法。
0.92×T(ave)(400-700)≦T(min)(400-700) ・・・(1)
1.08×T(ave)(400-700)≧T(max)(400-700) ・・・(2)
【請求項16】
前記熱可塑性樹脂(A)が、下記式(I)で表される化合物から導かれる単位を有する環状オレフィン系重合体(A1)を含有することを特徴とする請求項11から15のいずれかに記載のNDフィルター製造方法。
【化1】

(式中、R1〜R4は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、1価の炭化水素基または極性基を示し、R1およびR2、またはR3およびR4は、一体化して2価の有機基を形成してもよく、R1またはR2と、R3またはR4とで互いに結合して単環構造または多環構造を形成してもよい。mは0または正の整数を示し、pは0または正の整数を示す。)
【請求項17】
請求項5から10のいずれかに記載のNDフィルターを用いて、光の透過率を調節する方法。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図28】
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【図29】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図3】
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【図7】
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【図12】
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【図19】
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【図23】
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【図27】
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【図30】
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【公開番号】特開2010−122673(P2010−122673A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−244300(P2009−244300)
【出願日】平成21年10月23日(2009.10.23)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】