説明

NIKに対する抗体、その調製および使用

本発明は免疫調節分子に関する。より詳しくは、本発明は、NF−κB誘導型キナーゼ(NIK)/MAP3K14またはその特定の部分に特異的に結合することができる抗体または抗体断片、およびたとえば、NIKの生化学的活性を調節するため、および/またはNIKまたはその特定の部分の検出を可能にするためのその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫調節分子に関する。より詳しくは、本発明は、NF−κB誘導型キナーゼ(NIK)/MAP3K14またはその特定の部分に特異的に結合することができる抗体または抗体断片、およびたとえば、NIKの生化学的活性を調節するため、および/またはNIKまたはその特定の部分の検出を可能にするためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
NF−κB分子の規制の無い(deregulated)活性と関連する非常に多くの致死的および/または高度に衰弱性の疾患(悪性疾患ならびに自己免疫、アレルギー性、炎症性および移植に関連する疾患などの病的免疫応答と関連する疾患など)のための治療は存在しないか、または満足のいく治療が存在しない。
【0003】
NF−κBファミリー分子は、免疫応答の調節、細胞増殖、および生存に必須の真核生物の転写因子複合体であり(Ghosh S.ら,1998. Annu Rev Immunol. 16: 225-60)、これは、ほとんどすべてのTNF/NGF受容体ファミリーの構成員によって誘導可能に活性化される。NF−κB分子は、通常、IκBと称する細胞質アンキリン高含有抑制因子のファミリー(IκBαおよび関連タンパク質を含む)との物理的会合によって細胞質画分内に封鎖(sequestere)されている(Baldwin AS. Jr., 1996. Annu Rev Immunol. 14: 649-83)。サイトカイン、マイトジェンおよびある種のウイルス系遺伝子産物などの多様な刺激に応答し、IκBは、Ser32およびSer36が速やかにリン酸化され、ユビキチン化され、続いて、26Sプロテアソームによって分解される。これにより、放出されたNF−κBが、核に移動し、標的遺伝子のトランス活性化に関与するのが可能になる(Mercurio F.およびManning A. M., 1999. Curr Opin Cell Biol. 11: 226-32;Pahl, H. L., 1999. Oncogene 18: 6853-66)。最近の分子クローニング研究により、NF−κBの抑制因子であるIκBのシグナル誘導型リン酸化を媒介するマルチサブユニットIκBキナーゼ(IKK)複合体が同定された。IKK複合体は、2つの触媒性サブユニットIKKαおよびIKKβ、ならびに調節性サブユニットIKKγ(NEMO)から構成される。IKKαおよびIKKβの両方の触媒性活性は、多数の異なるNF−κBインデューサー(たとえば、腫瘍壊死因子(TNF)およびインターロイキン(IL)−1などの炎症性サイトカイン、T細胞受容体(TCR)ならびにT細胞同時刺激タンパク質CD28など)によって活性化され得る(Karin, M. および Ben-Neriah, Y., 2000. Annu Rev Immunol. 18: 621-63)。
【0004】
NF−κB誘導型キナーゼ(NIK)/MAP3K−14(本発明者らに対する国際公開第9737016A1号パンフレット)は、NF−κBの活性化に必須である。たとえば、NIKの過剰発現は、劇的なNF−κBの活性化をもたらすことが示されており(Wallach D.ら, 2002. Arthritis Res. 4 Suppl 3: S189-96に概説)、触媒的に不活性なNIK変異体の発現は、多様な公知のNF−κBアクチベーター(たとえば、LMP1、TNF受容体(TNFR)−1、TNFR−2、RANK、ヒトToll受容体、CD3/CD28、IL−1受容体(IL−1R)、ヒトT細胞リンパ球ウイルス(HTLV)−1 Taxタンパク質およびリポ多糖(LPS)など)に応答してNF−κB活性化の有効な阻害をもたらすことが示されている(Malinin, N. L.ら, 1997. Nature 385: 540-4;Sylla, B. S.ら, 1998. Proc Natl Acad Sci U S A. 95: 10106-11;Darnay, B. G.ら, 1999. J Biol Chem. 274: 7724-31;Lin, X.ら, 1999. Immunity 10: 271-80;Geleziunas, R.ら, 1998. Mol Cell Biol. 18: 5157-65)。NIK遺伝子の標的化破壊(Yin, L.ら, 2001. Science 291: 2162-5)、およびNIKにおいて天然Gly855Argミスセンス点変異を有する「リンパ組織形成不全症」(aly)のマウス系統の研究(Shinkura, R.ら, 1999. Nat Genet. 22: 74-7)により、NIKは、リンパ球様器官の発達において本質的な役割を有することが明らかにされた。aly/alyおよびNIKノックアウトマウスは、ともに、リンパ節およびパイエル班の全身性欠如、無秩序な(disorganized)脾臓構造および胸腺構造ならびに免疫不全を示し、その最も回復力のある(resilient)特徴は、低血清免疫グロブリンレベルおよび移植片拒絶の欠如である(Shinkura, R.ら, 1999. Nat Genet. 22: 74-7)。これらの異常は、明らかに、多様な受容体による異常型シグナル伝達を反映する。NIK変異型マウスの発育不全は、LT−β受容体(LT−βR)欠損マウスにおいて見られるものと類似し、NIKもまた、この特定の受容体によるシグナル伝達に関与することを示す。aly/alyマウスにおける障害B細胞の増殖能により、LPSおよびCD40リガンドに対するこれらの細胞の不十分な応答との相関を示すことができ(CD40L;Garceau, N.ら, 2000. J Exp Med. 191: 381-6)、マウスの腹腔における過剰量のB1細胞の存在は、二次リンパ球様組織における不十分なケモカイン受容体シグナル伝達の結果としての腸関連リンパ組織(GALT)系への腹膜細胞のホーミングの欠陥に起因し得る(Fagarasan, S.ら, 2000. J Exp Med. 191: 1477-86)。
【0005】
サイトカイン受容体シグナル伝達におけるNIKの重要かつ一般的な役割は、ツーハイブリッド系を用い、IL−2受容体γ鎖またはIL−2、−4、−7、IL−9、−13、−15および−21の受容体のシグナル伝達構成要素である「共通γ鎖」がNIKと特異的に会合することを示した(PCT/IL03/00317)Wallachらが行なった研究において、最近、示された。共通γ鎖の過剰発現はNIKによって媒介されるNF−κB活性化を増強することがわかっており、IL−2またはIL−15刺激を受けると、NIKおよびシグナルソーム(signalosome)成分が、共通γ鎖に結合することがわかった。したがって、これらの結果は、シグナル伝達サブユニットとして共通γ鎖を含有する多種多様なサイトカイン受容体によるシグナル伝達におけるNIKの関与を示す。
【0006】
免疫系の発達および機能の調節に対するこれらおよび他の寄与とは別に、NIKはまた、種々の非免疫機能の調節にも関与する。aly/aly(NIKノックアウトではないが)マウスは、不十分な乳腺発達を示す(Miyawaki, S.ら, 1994. Eur J Immunol. 24: 429-34)。さらに、インビトロ試験では、シグナル伝達においてNIKが、骨格筋細胞分化をもたらすこと(Canicio, J.ら, 2001. J Biol Chem. 276: 20228-33)、およびニューロンの生存および分化をもたらすこと(Foehr, E. D.ら, 2000. J Biol Chem. 275: 34021-4)が示された。
【0007】
NF−κB活性化のメディエーターとしての示唆されるNIKの役割と一致し、aly/alyおよびNIKノックアウトマウス由来の線維芽細胞は、LT−βR活性化に応答してNF−κBを活性化することができない。さらに、NF−κB活性化により生じるVCAM−1のLT−βRアップレギュレーションは、aly/alyマウス胚線維芽細胞(MEF)において異常である(Matsumoto, M.ら, 1999. J Immunol. 163: 1584-91)。IκBの不十分なリン酸化は、aly/aly Bリンパ球のCD40連結への応答においても認められた。対照的に、これらのマウスの樹状細胞では、IκBのCD40誘導型リン酸化は正常のようであった(Garceau, N.ら, 2000. J Exp Med. 191: 381-6)。また、aly/aly腹膜細胞は、ケモカインSLCに応答することもできず、NF−κB活性は増大する(Fagarasan, S.ら, 2000. J Exp Med. 191: 1477-86)。
【0008】
aly/alyマウスのリンパ球様器官における発現されたNF−κB種のパターンの評価により、Relタンパク質(A+p50)およびIκBから構成されるNF−κB複合体(1種またはそれ以上)の調節における役割とは別に、NIKはまた、他のNF−κB種の発現/活性化の制御に関与することが示された。最も注目すべきことは、aly/alyのリンパ球は、p52(不活性前駆体であるp100(NF−κB2)のタンパク質溶解性プロセッシングにより、成熟Bリンパ球において特異的に形成されるNF−κB)が欠損し、これは、p100のp52への変換の欠損を示す(Yamada, T.ら, 2000. J Immunol. 165: 804-12)。実際、NIKは、p100の部位特異的リン酸化に関与することが示されている。両者は、直接、IKKαのリン酸化をもたらし、これが、今度は、p100をリン酸化する。このリン酸化は、p52を形成するためのp100のユビキチン化および活性プロセッシングの分子性誘因としての機能を果たす。このp100プロセッシング活性は、aly変異により除去されることがわかった(Xiao, G.ら, 2001. Mol Cell 7: 401-9;Senftleben, U.ら, 2001. Science 293: 1495-9)。
【0009】
NIKのMAP3Ksに対する構造的相同性に鑑み、NIKのERK、JNKおよびp38カスケード(MAP3Kの関与する3つの他の主要タンパク質キナーゼカスケード)における関与を探索するためのいくつかの試みがなされた(Akiba, H.ら, 1998. J Biol Chem. 273: 13353-8)。NIKは、PC12褐色細胞腫細胞におけるERKカスケードに関与することが示されている(Foehr, E. D.ら, 2000. J Biol Chem. 275: 34021-4)。ある種の細胞において、NIKは、JNKカスケードの下流標的であるJunのリン酸化のためのシグナル伝達に、この特定のカスケードとは独立して関与し得ることを示す証拠がある(Akiba, H.ら, 1998. J Biol Chem. 273: 13353-8;Natoli, G.ら, 1997. J Biol Chem. 272: 26079-82)。全体として、これらの所見は、NIKが、実際、NF−κB活性化のメディエーターとしての機能を果たすが、他の機能も果たし得ること、およびこれらの機能を細胞特異的および受容体特異的に発揮することを示す。
【0010】
他のMAP3Kと同様、NIKは、NIK分子内の「活性化ループ」のリン酸化の結果として活性化され得る。実際、このループ内のリン酸化部位(Thr559)の変異は、NIK過剰発現時のNF−κBの活性化を抑制する(Lin, X.ら, 1999. Immunity 10: 271-80)。また、NIKの活性は、そのキナーゼモチーフの上流および下流の領域が互いに結合できる能力により調節されるようである(Linら Molec. Cell Biol. (18) 10 5899-5907 1998)。NIKのそのキナーゼ部分の下流のC末端領域は、IKKα(Regnier, C. H.ら, 1997. Cell 90: 373-83)ならびにp100(Xiao, G. および Sun, S. C., 2000. J Biol Chem. 275: 21081-5)およびTRAF2(Malinin, N. L.ら, 1997. Nature 385: 540-4)に直接結合できることが示されている。かかる相互作用は、明らかに、NF−κBシグナル伝達におけるNIK機能に必要とされる。NIKのN末端領域は、塩基性(basic)モチーフ(BR)およびプロリンリッチリピートモチーフ(PRR)から構成される負の調節ドメイン(NRD)を含む(Xiao, G.ら, 2001. Mol Cell 7: 401-9)。明らかに、N末端NRDは、NIKのC末端領域とcisで相互作用し、それにより、NIKのその基質(IKKαおよびp100)への結合を阻害する。正常でない位置に発現されたNIKは、各NIK分子におけるN末端領域のC末端領域へのこれらの結合が明らかに破壊されたオリゴマーを自発的に形成するようであり、高レベルの構成活性を示す(Lin, X.ら, 1999. Immunity 10: 271-80)。NIKのC末端領域のTNF受容体結合アダプタータンパク質TRAF2への、および他のTRAFへの結合(Malinin, N. L.ら, 1997. Nature 385: 540-4;Rothe, M.ら, 1994. Cell 78: 681-92;Takeuchi, M.ら, 1996. J Biol Chem. 271: 19935-42)は、おそらく、NIKによるNF−κBの活性化に関与している。
【0011】
NIKは、そのC末端領域のIKKαへの結合により、IKK複合体を活性化できることを示す証拠がある。これは、IKKαの活性化ループにおいてSer176をリン酸化でき、それにより、この分子を活性化することが示されている(Ling, L.ら, 1998. Proc Natl Acad Sci U S A. 95: 3792-7)。かかる活性化様式と一致して、aly/aly MEFSにおけるLT−βRによるNF−κB活性化の欠損を説明する機序に関する研究により、NIK変異は、IKKシグナルソームの活性化およびその結果としてのIκBのリン酸化を除去することが示された(Matsushima, A.ら, 2001. J Exp Med. 193: 631-6)。NIKがp100に直接、そのC末端領域を介して結合し、これをリン酸化する能力は、p100が直接NIKの基質としての機能を果たすことを示す(Xiao, G. および Sun, S. C., 2000. J Biol Chem. 275: 21081-5)。それにもかかわらず、最近の研究では、NIKが、IKKαのリン酸化、したがって活性化(IKKαが、こんどはp100をリン酸化する)を介して間接的にp100リン酸化を媒介することが示された(Senftleben, U.ら, 2001. Science 293: 1495-9)。
【0012】
したがって、NIKによるNF−κB分子の活性化は、NF−κB活性の調節のための必須の制御点を意味する。
【0013】
上記のように、無規制なNF−κB活性は、種々の主要なヒト疾患、たとえば、非常に多くの悪性疾患および病的免疫応答と関連する疾患などの病因と関連する(Yamamoto および Gaynor, 2001. J Clin Invest. 107: 135-142に概説)。たとえば、NF−κB経路の活性化は、喘息および関節リウマチなどの慢性炎症性疾患(Tak および Firestein, 2001. J Clin Invest. 107: 7-11;Karin, M. および Ben-Neriah, Y., 2000. Annu Rev Immunol. 18: 621-63)および炎症性腸疾患の病因と顕著に関与する。また、改変されたNF−κB調節は、炎症性応答が少なくとも部分的に関与する他の疾患、たとえば、動脈硬化(Collins および Cybulsky, 2001. J Clin Invest. 107: 255-64;Leonard, W. J.ら, 1995. Immunol Rev. 148: 97-114)およびアルツハイマー病(Mattson および Camandola, 2001. J Clin Invest. 107: 247-54;Lin, X.ら, 1999. Immunity 10: 271-80)などの病因に関与するようである。
【0014】
サイトカイン遺伝子のNF−κB活性化は、肺における炎症性細胞の浸潤ならびに多くのサイトカインおよびケモカインの無規制さを特徴とする喘息の病因の重要な寄与因子であることを示す証拠が幾通りかある(Ling, L.ら, 1998. Proc Natl Acad Sci U S A. 95: 3792-7)。NF−κBを活性化するTNFなどのサイトカインは、関節リウマチの患者の滑液中において上昇しており、これらの患者の関節において見られる慢性炎症性変化および滑膜過形成に寄与する(Malinin, N. L.ら, 1997. Nature 385: 540-4)。TNF指向抗体またはTNFに結合する切断型TNF受容体の投与は、関節リウマチの患者の症状を著しく改善し得る。
【0015】
また、リンパ球およびマクロファージの両方による前炎症性サイトカインの産生の増加は、クローン病および潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患の病因に関与している(Matsumoto, M.ら, 1999. J Immunol. 163: 1584-91)。NF−κB活性化は、活性クローン病患者および潰瘍性大腸炎患者由来の粘膜生検材料試験片において見られる。炎症性腸疾患を患う患者のステロイド類による治療は、生検材料試験片においてNF−κB活性を減少させ、臨床症状を低減する。これらの結果は、NF−κB経路の刺激が、これらの疾患と関連する炎症性応答の増大に関与することを示す。
【0016】
アテローム性動脈硬化は、損傷された血管壁の内皮および平滑筋に対する非常に多くの傷害により誘発される(Matsushimaら, 2001)。内皮細胞、平滑筋、マクロファージおよびリンパ球から放出される多数の増殖因子、サイトカインおよびケモカインが、この慢性炎症性線維増殖性プロセスに関与する(Matsushima, A.ら, 2001. J Exp Med. 193: 631-6)。炎症性応答および細胞増殖の制御に関与する遺伝子のNF−κB調節は、アテローム性動脈硬化の起始および進行に重要な役割を果たすものとして広く理解されている。
【0017】
上記のように、NF−κB経路の調節における異常は、アルツハイマー病の病因に関与することが示されている。たとえば、NF−κB免疫反応性は、主に、アルツハイマー病の初期老人斑(neuritic plaque)型内およびその周囲に見られるが、成熟斑型は、非常に低下したNF−κB活性を示す(Mercurio F. および Manning A. M., 1999. Curr Opin Cell Biol. 11: 226-32)。したがって、NF−κB活性化は、アルツハイマー病の初期段階の際の老人班およびニューロンアポトーシスの開始にある。これらのデータは、したがって、NF−κB経路の活性化が、その病因に関与する炎症性成分を有するいくつかの疾患において、ある役割を果たすことを示す。
【0018】
無規制な免疫応答と関連する疾患の病因における役割に加え、NF−κB経路の過活性化または構造的活性化もまた、種々のヒト癌の病因に関与している。NF−κB経路の異常に高度なおよび/または構造的活性化は、白血病、リンパ腫および充実性腫瘍などの多様なヒト悪性腫瘍に頻繁に見られる(Miyawaki, S.ら, 1994. Eur J Immunol. 24: 429-34)。これらの異常は、乳癌、卵巣癌、前立腺癌および結腸癌などの多様な腫瘍の核内において、異常におよび/または構造的に高レベルのNF−κBをもたらす。これらの変化の大部分は、おそらく、NF−κB経路の活性化をもたらすシグナル伝達経路を活性化する調節タンパク質の改変によるものである。しかしながら、IκBタンパク質を不活化する変異は、NF−κBファミリー構成員をコードする遺伝子の増幅および再編成に加え、いくつかの腫瘍で見られるNF−κBの核レベルの上昇をもたらし得る(Emmerichら Blood Nov 1;94 (9): 3129-34,1999)。
【0019】
上記のように、NIKはNF−κBの活性化に必須であるため、NF−κBの活性化を調節し、それにより、無規制なNF−κB活性と関連する疾患を治療するための潜在的に有力なストラテジーの一例は、NIKまたはその特定の部分に特異的に結合することができ、それにより、NIKによるNF−κBの活性化を抑制または阻害することができる抗体を同定することを伴う。
【0020】
従来技術のアプローチでは、アミノ酸T559がリン酸化されたNIKに結合することができる抗体を提供することができなかった。T559がリン酸化されたNIKに特異的であると考えられたかかる抗体の一例を、昨年(2002)、Santa Cruzから購入した(SC12957R)。しかしながら、該抗体は、本発明者らの手では適正に機能せず、今年、Santa Cruzは、これをカタログから除いた。
【0021】
現在、リン酸化活性種および非リン酸化種を含むNIKの種々の分子種の検出方法では、エピトープタグ化NIKおよび抗タグ抗体の細胞内での過剰発現を用いる。このリン酸化NIKの検出方法には、多くの制限があり、その1つは、該方法が、内因性の活性化されたNIKを特異的に検出するために使用できないことである。
【0022】
したがって、内在性のリン酸化NIKに結合することができる抗体の必要性、およびこれを有することが非常に好都合であろうことが広く認識されている。
【発明の開示】
【0023】
本発明は、配列番号:5に記載のアミノ酸配列またはその部分であってリン酸化トレオニンを配列番号:5のアミノ酸559位に含有する該アミノ酸配列またはその部分に特異的に結合することができるポリクローナル、モノクローナル、キメラ、ヒト化、ヒトもしくは抗−抗イディオタイプ抗体またはその断片に関する。
【0024】
本発明の一実施形態において、抗体断片は、配列番号:5に記載のアミノ酸配列または配列番号6および3のアミノ酸配列などのその部分であって、リン酸化トレオニンを配列番号:5のアミノ酸559位に含有する該アミノ酸配列またはその部分に特異的に結合することができる単鎖Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2およびCDRからなる群より選択される。
【0025】
別の実施形態において、本発明は、IgG抗体、ポリクローナル、モノクローナル(たとえば、CNCMに番号I−3095で寄託されたハイブリドーマNIK−P4 30.12によって産生される抗体)を提供する。
【0026】
さらなる実施形態において、本発明は、NIKまたはそのムテイン、機能性誘導体、活性断片、円順列変異誘導体もしくは塩に特異的に結合することができるポリクローナル、モノクローナル、キメラ、ヒト化、ヒトまたは抗−抗イディオタイプ抗体またはその断片であって、哺乳動物をアミノ酸配列、または配列番号:5に記載のアミノ酸配列の部分、好ましくは配列番号:3のアミノ酸部分で免疫することによって製造される抗体に関する。
【0027】
本発明の好ましい実施形態において、本発明の抗体は、NIK分子の生化学的活性を調節することができる、および/またはリン酸化NIKまたはその特定の部分を、たとえばウエスタンイムノブロッティング解析、ELISAまたは免疫沈降によって特異的に検出することができる。
【0028】
別の態様において、本発明は、CNCMに番号I−3095で寄託されたハイブリドーマNIK−P4 30.12によって産生されるモノクローナル抗体を提供する。
【0029】
本発明は、薬学的に許容し得る担体および、活性成分として、配列番号:5に記載のアミノ酸配列またはその部分であってリン酸化トレオニンを配列番号:5のアミノ酸559位に含有する該アミノ酸配列またはその部分に特異的に結合することができるポリクローナル、モノクローナル、キメラ、ヒト化、ヒトもしくは抗−抗イディオタイプ抗体またはその断片を含有する医薬組成物に関する。より詳しくは、医薬組成物は、さらに、NIK分子の生化学的活性を調節することができる(たとえば、CD40および/またはCD70のシグナル伝達を阻害することができる)抗体または抗体断片を含有する。
【0030】
さらなる態様において、本発明は、NIK分子を配列番号:5に記載のアミノ酸配列またはその部分であってリン酸化トレオニンを配列番号:5のアミノ酸559位に含有する該アミノ酸配列またはその部分に特異的に結合することができるポリクローナル、モノクローナル、キメラ、ヒト化、ヒトもしくは抗−抗イディオタイプ抗体またはその断片と接触させ、それにより、NIK分子の生化学的活性を調節することを含む、NIKの生化学的活性の調節方法に関する。より詳しくは、NIK分子の前記調製物との前記接触は、前記調製物を個体に投与することにより行なわれ得る。
【0031】
一実施形態において、本発明は、標的抗原に特異的に結合することができる抗体または抗体断片を選択的に捕捉するための、配列番号:5に記載のアミノ酸配列またはその部分(たとえば、配列番号:3のもの)であって、リン酸化トレオニンを配列番号:5のアミノ酸559位に含有する該アミノ酸配列またはその部分のペプチドに共有結合したアフィニティークロマトグラフィー充填剤などの基質を含有する物質の組成物に関する。
【0032】
さらなる実施形態において、本発明は、配列番号:5に記載のアミノ酸配列またはその部分であってリン酸化トレオニンを配列番号:5のアミノ酸559位に含有する該アミノ酸配列またはその部分に特異的に結合することができる抗体を、その必要がある個体に投与することを含む、NIKの活性によって引き起こされるか、または悪化する疾患の治療方法に関する。
【0033】
さらなる実施形態において、本発明は、体液、細胞抽出物およびDNA発現ライブラリーなどの試料であって、NIKおよびNIK結合性タンパク質を含有する試料を本発明の抗体と接触させること、NIKおよびNIK結合性タンパク質を免疫共沈降させること、生成した免疫複合体を洗浄すること、およびNIK結合性タンパク質を免疫複合体からNIK由来のペプチドとの競合を用いて回収することを含む、NIK結合性タンパク質の精製方法に関する。
【0034】
さらなる実施形態において、本発明は、ELISAアッセイの開発のための請求項1〜12のいずれかに記載の抗体の使用を提供する。
【0035】
さらなる実施形態において、本発明は、NIKまたはそのムテイン、機能性誘導体、活性断片、円順列変異誘導体もしくは塩の免疫精製のための、本発明による抗体の使用を提供する。
【0036】
また、一実施形態において、本発明は、NIKの活性によって引き起こされるか、または悪化する疾患の治療のための医薬の製造における、配列番号:5に記載のアミノ酸配列またはその部分であってリン酸化トレオニンを配列番号:5のアミノ酸559位に含有する該アミノ酸配列またはその部分に特異的に結合することができる抗体または抗体断片の使用を教示する。
【0037】
本発明の好ましい実施形態において、疾患は、自己免疫、アレルギー性、炎症性および移植に関連するものなどの病的免疫応答と関連し、好ましくは、喘息、関節リウマチ、炎症性腸疾患、アテローム性動脈硬化およびアルツハイマー病である。本発明の別の好ましい実施形態において、疾患は悪性疾患である。
【0038】
また、本発明は、細胞内においてNIK媒介性NFκB活性化を誘導することができるリガンドの同定方法における本発明の抗体または抗体断片の使用を教示する。本発明の一実施形態において、該方法は、抗体または抗体断片を細胞内に導入する工程、該細胞を個々のリガンドとともにインキュベートする工程、NFκB活性化を、好ましくは、標準的な経路を経るNFκB活性化を、たとえば、抗体によるIκBa分解をモニターすることによってモニターする工程、および抗体によるNIKの特異的遮断によってNFκBの活性化に影響するリガンドを選択する工程を含む。好ましい実施形態において、リガンドを同定するための方法における細胞は、Ramos、BJABおよびジャーカット細胞などのリンパ芽球型のものである。
【0039】
また、本発明は、配列番号:6を含むアミノ酸配列またはその部分であってリン酸化トレオニンを配列番号:5のアミノ酸559位に含有する該アミノ酸配列またはその部分で免疫化した哺乳動物由来の脾臓細胞および同型遺伝子または異型遺伝子のリンパ球様細胞を含有するクローン化ハイブリドーマを、液体培地または哺乳動物の腹部内で増殖させ、ハイブリドーマにモノクローナル抗体を製造および蓄積させることを含む、モノクローナル抗体の製造方法を提供する。
【0040】
本発明を、添付の図面を参照しながら、例示のみで本明細書において説明する。ここで、図面に対する詳細な具体的な言及により、示される特定の内容は、例示のためとし、本発明の好ましい実施形態の実例の検討を目的とするにすぎず、最も有用であり、本発明の原理および概念的態様の記載を容易に理解されると考えられることを提供する過程において示されたことを強調する。これに関連し、本発明の構造的詳細を、本発明の基本的な理解に必要とされる以上に詳細に示す試みはしておらず、本記載内容は、図面とともに、本発明のいくつかの形態がどのようにして実際に具現化され得るかが当業者に自明となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
本発明は、残基T559がリン酸化されたNF−κB誘導型キナーゼ(NIK)/MAP3K14(配列番号:5)に特異的に結合することができる抗体または抗体断片、その特定の部分およびその使用に関する。
【0042】
具体的には、本発明の抗体は、NIKの生化学的活性を調節するため、および残基T559がリン酸化されたNIKまたはその特定の部分を特異的に検出するために使用することができる。かかる調節およびかかる検出が可能になるおかげで、該抗体を、それぞれ、NF−κB活性化を調節し、したがって無規制なNF−κB活性と関連する疾患を治療するため、およびNIKまたはその特定の部分を伴う正常/病的な、生物学的/生化学的な、プロセス/状態の様相の特徴付けするためために使用することができる。
【0043】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用において、以下の記載に示されるか、または実施例により例示される詳細事項に限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態が可能であり、または多様な方法で実施または実行され得る。また、本明細書において用いられる語法および専門用語は、説明を目的とし、限定するものとみなされるべきでないことを理解されたい。
【0044】
無規制なNF−κBの活性と関連する非常に多くの致死的および/または高度に衰弱性の疾患のための治療は存在しないか、または満足のいく治療が存在しない。かかる疾患としては、悪性疾患、および自己免疫、アレルギー性、炎症性および移植に関連する疾患などの病的免疫応答と関連する疾患が挙げられる。NIKは、NF−κBの必須のアクチベーターであり、無規制なNF−κB活性と関連する疾患を治療するための潜在的に有力なストラテジーの1つは、リン酸化NIKまたはその特定の部分に特異的に結合することができる抗体を同定すること、およびかかる抗体を、NF−κB活性を治療的に調節するために使用することを伴う。リン酸化NIKまたはその特定の部分の特異的検出が可能になるおかげで、かかる抗体によってまた、NIKまたはその特定の部分を伴う正常/病理学的な、生物学的/生化学的な、プロセス/状態の様相の特徴付けすることが可能であり得る。
【0045】
本発明を実施した際、意外にも、T559がリン酸化されたNIK(配列番号:5)またはその特定の部分(配列番号:3に記載のものなど)に特異的に結合または最適に特異的に結合することができる抗体が作製された。T559がリン酸化されたNIKまたはその特定の部分(配列番号:3に記載の部分など)に特異的に結合できる本発明の抗体の能力は、すべての従来技術の抗体と比べると、特有のものである。
【0046】
したがって、従来技術の抗体とは著しく対照的に、本発明の抗体は、たとえば、NIKまたはその特定の部分のキナーゼ活性などの生化学的活性を最適に調節するため、およびT559がリン酸化されたNIKを最適に検出するため、またはその特定の部分のために使用することができる。本発明の抗体はまた、T559がリン酸化されたNIKに結合する調節性因子を免疫共沈降させ、単離するために使用することができる。
【0047】
本発明のものなどの抗体は、未処理抗体のものと本質的に同一の抗原結合特性を有する1種類以上の型の抗体断片が作製されるように、標準的な方法を用いて、たとえば、本明細書に以下に記載のようにして処理し得ることは、当業者に理解されよう。
【0048】
したがって、本発明の一態様によれば、T559がリン酸化されたNIKまたはその部分(たとえば、配列番号:3に記載のアミノ酸配列など)に特異的に結合することができる抗体または抗体断片が提供される。
【0049】
用語「ペプチドの部分」は、アミノ酸のうちの1つがリン酸化トレオニンであり、N末端およびC末端の隣接アミノ酸が、それぞれグリシンおよびグルタミン酸、すなわちGT(p) Eである活性化ループ内の少なくともトリペプチドと定義する。
【0050】
最後から2番目のアミノ酸としてリン酸化T599を有するリン酸化活性化ループ(配列番号:4)の部分を、以下、「標的抗原」という。T599は、完全なNIKタンパク質(配列番号:5)内のT599位のトレオニン残基であり、また、その誘導化された部分において保存されたトレオニン残基である。たとえば、配列番号:3の11位のトレオニン、配列番号:4の26位のトレオニン、配列番号:6の26位のトレオニン。
【0051】
本明細書に以下に記載のように、該抗体は、NF−κB誘導型キナーゼ(NIK)/MAP3K14の生化学的活性(たとえば、キナーゼ活性など)を最適に調節するために使用することができ、したがって、NF−κBの活性化を最適に調節するために使用することができ、それにより、NF−κB活性の無規制さと関連する疾患を最適に治療するために使用することができる。さらにまた、該抗体は、NIKのリン酸化活性化ループ領域またはその任意の種々の特定の部分を検出するために特有の様式で使用することができ、NIKの活性化ループ領域の任意の種々の特定の部分を最適に検出するために使用することができる。このように、抗体は、T559がリン酸化されたNIKまたはその特定の部分を伴う正常/病理学的な生物学的/生化学的なプロセス/状態の様相を最適に特徴付けするために利用することができる。
【0052】
本明細書において使用する場合、用語「治療する」は、疾患に関する場合、疾患の発症の予防、疾患の軽減、疾患の症状の緩和もしくは解消、疾患の進行の遅延もしくは逆転、または疾患の治癒をいう。
【0053】
本明細書において使用する場合、用語「抗体」は、実質的に完全なまたはインタクトな抗体分子をいう。
【0054】
本明細書において使用する場合、語句「抗体断片」は、抗原、抗原決定基またはエピトープに特異的に結合することができる抗体の部分を含有する分子をいう。
【0055】
実施例の項に、以下に記載するように、
配列番号:3、4および6に記載のアミノ酸配列は、それぞれ、ヒトNIKのアミノ酸残基549〜560、534〜566および534〜560を表し、ヒトNIKの活性化ループ内に位置する。
【0056】
好ましくは、本発明の抗体は、最大の親和性により標的抗原に結合することができる。
【0057】
本発明の抗体、たとえば、本発明による標的抗原に対する結合能力を有する抗体は、T559がリン酸化されたNIKを、ウエスタンイムノブロッティング解析によって特異的かつ効率的に検出することができる。
【0058】
本発明の抗体、たとえば、本発明による標的抗原に対する結合能力を有する抗体は、T559がリン酸化されたNIKをELISAによって特異的かつ効率的に検出することができる。
【0059】
本発明の抗体、たとえば、本発明による標的抗原に対する結合能力を有する抗体は、T559がリン酸化されたNIKを特異的かつ効率的に免疫沈降させることができる。
【0060】
特定の実施形態において、リン酸化NIKに特異的なポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体は、免疫化用ペプチドとして、アミノ酸配列SLLTGDYIPGT(p)Eの549〜560(配列番号:3)(ここで、T(p)はリン酸化トレオニンであり、該配列の最後から2番目のアミノ酸に位置する)を用いて作製した。
【0061】
また、アミノ酸配列DFGHAVCLQPDGLGKSLLTGDYIPGT(p)E(配列番号:6)の活性化ループまたはその部分に由来するさらなるペプチドを、免疫化用ペプチドとして使用することができるが、リン酸化T559は該配列の最後から2番目のアミノ酸に位置するものとする。
【0062】
また、活性化ループアミノ酸配列DFGHAVCLQPDGLGKSLLTGDYIPGT(p)E(配列番号:6)またはその部分を含有するさらなるペプチドを、免疫化用ペプチドとして使用することができるが、リン酸化T55該配列の最後から2番目のアミノ酸に位置するするものとする。
【0063】
あるいはまた、システイン、リジンまたは任意の他のアミノ酸を、免疫化用ペプチドのN末端に化学的に融合させることができる。
【0064】
用語「特異的に結合する」は、本発明によれば、T559がリン酸化されたNIKに結合することができるが、対照的に、非リン酸化NIKに対して低い結合能力を有するか、またはこれにまったく結合しない抗体に関する。本発明の抗体の差別的結合は、種々のアッセイ、たとえば、ELISA、ウエスタンイムノブロッティング解析および免疫沈降によって試験することができる。
【0065】
本発明によるモノクローナル抗体の作製には、さまざまな種の免疫化マウス、好ましくはSJL系統のものを使用することができる。また、免疫化マウスの種々の造血器官を、融合してハイブリドーマ、たとえば脾臓および/またはリンパ節を作製するために使用することができる。
【0066】
本発明によって製造される抗体は、リン酸化状態の完全なNIKタンパク質またはその断片を認識することができる。
【0067】
別の実施形態において、本発明による抗体は、IκBの崩壊を阻害でき、その結果として、CD40またはCD70によって誘導されるが、TNFリガンドによっては誘導されないNF−κBの活性化を阻害できることが示された。これらの結果は、本発明の抗体がNF−κBの特異的な活性化を阻害できることを示す。
【0068】
したがって、本発明による抗体は、CD70およびCD40のシグナル伝達が疾患の病因に関与する疾患および/またはTNF/NGFファミリーリガンドが標準的な経路によってNIK媒介性NFkB活性化を誘導する疾患における治療のため使用することができる。活性化の標準的な経路を示すパラメータは、たとえば、IκBの分解、IκBαリン酸化およびp65転位である。
【0069】
実験からの所見を考慮して、本発明の抗体は、細胞内においてNIK媒介性NFκB活性化を誘導することができるリガンドを同定するための方法において使用することができる。本発明の一実施形態において、かかる方法は、本発明による抗体もしくは抗体断片またはコントロールとして無関係なIgGを細胞内に導入する工程、該細胞を個々のリガンドとともにインキュベートする工程、NFκB活性化を示すパラメータをモニターする工程(好ましくは、IκBの分解、IκBαリン酸化およびp65転位などの標準的な経路活性化を示すパラメータをモニターする工程)、および抗体または断片によるNIKの遮断によってNFκBの活性化が特異的に影響されるリガンドを選択する工程を含む。
【0070】
本発明の抗体、たとえば、NIK−P4 30.12で観察されるNIK活性化の阻害は、NIKに特異的なNIKの活性化ループ領域を除く該キナーゼ内のドメインに結合することができる他の抗体では起こらない。
【0071】
一般に、最大のアフィニティーで標的抗原に結合することができる本発明の抗体は、標的抗原により媒介されるか、またはこれと関連する生化学的活性の最適なダウンレギュレーションを可能にする。同様に、最大のアフィニティーで標的抗原に特異的に結合することができる本発明の抗体は、一般的に、最適な感度で標的抗原の検出を可能にする。
【0072】
本発明の標的抗原に特異的に結合する抗体の前記能力のおかげで、特に、NIKの機能性領域内に位置する本発明の標的抗原に特異的に結合する該抗体の特有の能力のおかげで、該抗体を、NIKの生化学的活性をダウンレギュレーションするために使用することができる。特に、NIKの活性化ループ領域内に位置する本発明の標的抗原に特異的に結合する該抗体の特有の能力のおかげで、該抗体を、NIKの活性を最適にダウンレギュレーションするために使用することができる。上記のように、かかるキナーゼ活性は核因子(NF)−κBの活性化に非常に重要であるため、かかるキナーゼ活性を最適にダウンレギュレーションすることができる本発明の抗体を、NF−κBの活性を最適にダウンレギュレーションするために使用することができることは認識されよう。
【0073】
NF−κBタンパク質は、300アミノ酸のドメインである「Rel相同性ドメイン」を共有するタンパク質のファミリーの1つである。Rel相同性ドメインは、NF−κBタンパク質のDNA結合、二量体化および核輸送を媒介する。Rel相同性ドメインに加え、NF−κBファミリーのいくつかの構成員はまた、トランス活性化ドメイン(たとえば、c−Rel、RelBおよびp65)を含む。NF−κB構成員であるp50およびp52は、それぞれ、不活性前駆体p105およびp100の溶解による活性化の際に産生される。P50およびp52cは、DNA結合性二量体化特性を有するが、強いトランス活性化ドメインは有さない。NF−κB経路を活性化する多様な効果に寄与するのは、これらのタンパク質の差別的生成、異なるファミリー構成員とともにヘテロ二量体化するその能力、およびこれらのタンパク質と転写組織の異なる成分との相互作用である。NIKは、すべてのNF−κB種に影響するわけではなく、特定のNF−κB種にのみ影響し、たとえば、これは、特異的インデューサー、たとえばリンホトキシンに応答してp100の分解およびp52cの生成を誘導する。したがって、たとえば本発明の抗体を用いるNIKのモジュレーションは、病理学的暗示のNF−κB活性化の特定の様相に影響するようである。これは、NF−κBの一般的な非特異的阻害が危険である(たとえば、肝臓において広範なアポトーシスをもたらし得る)ため、利点である。
【0074】
本明細書において使用する場合、語句「ダウンレギュレーションする」は、生化学的活性に関する場合、かかる生化学的活性を抑制、低減または阻害することをいう。
【0075】
NIKの生化学的活性を阻害するために用いられる場合、該抗体は、好ましくは、かかる生化学的活性と関連するNIKの部分内の最大数の標的抗原に特異的に結合することができる。特にNIKのキナーゼ活性を阻害するために用いられる場合、該抗体は、好ましくは、配列番号3および4に記載のNIK活性化ループ領域アミノ酸配列内に位置する最大数の標的抗原に特異的に結合することができる。NIKの機能性領域(たとえば、該活性化ループ領域)内に位置する1つだけの標的抗原に特異的に結合することができる本発明の抗体を、かかる機能性領域と関連するNIKの生化学的機能(たとえば、キナーゼ活性など)を効率的に阻害するために使用し得るが、かかる機能性領域内に位置する最大数の標的抗原に特異的に結合することができる抗体は、機能性領域内の最大数の機能性エピトープを干渉するおかげで、キナーゼ活性をより効果的にダウンレギュレーションする。
【0076】
あるいはまた、NIKのキナーゼ活性を阻害するために、該抗体は、好都合には、配列番号3および4および6に記載のアミノ酸配列内に位置する最大数の標的抗原に特異的に結合することができるものであり得る。
【0077】
本発明の標的抗原に特異的に結合する該抗体の前記能力のおかげで、該抗体を、T559がリン酸化されたNIKを、従来技術の方法と比べて最適な感度で特異的に検出するために使用することができ、T559がリン酸化されたNIKおよびまたは本発明の標的抗原を特異的に検出するために特有の様式で使用することができる。
【0078】
該抗体は、本発明の標的抗原に最適なアフィニティーで結合することができる試薬の恩恵を被る本質的に任意の適用に使用することができる。かかる適用としては、たとえば、アフィニティー精製、したがって、NIKの特異的リガンドの同定および特徴付けが挙げられる。
【0079】
したがって、本発明の抗体は、NIKまたはその部分の免疫精製に使用することができる。好ましい一実施形態において、本発明の抗体は、NIKまたはその部分の精製のための捕捉工程に使用することができる。
【0080】
以下に続く実施例の項で記載および説明するように、配列番号:3、4、5および6に記載のアミノ酸配列を含むリン酸化ポリペプチドに特異的に結合することができる本発明の抗体は、本明細書に示す手引きにしたがって、それぞれ、配列番号:3、4および5および6に記載のアミノ酸配列のリン酸化ペプチドおよびタンパク質を特異的に検出するために使用することができる。
【0081】
好ましくは、本発明の標的抗原に特異的に結合することができる本発明の抗体は、かかる標的抗原で免疫化された動物の血清(以下、「抗血清」という)に由来する。以下の実施例の項で記載および説明するように、配列番号:3に記載のアミノ酸配列特異的に結合することができる本発明の抗血清は、本明細書に示すプロトコルにしたがって哺乳動物を標的抗原で免疫化することによって生成され得る。哺乳動物の免疫化によって調製物を生成するためのさらなる手引きは、本明細書において以下に提供する。
【0082】
標的抗原などのポリペプチドを得るための手引きは、本明細書において以下に提供する。
【0083】
適用および目的に応じて、該調製物は、好都合には未精製抗血清の形態で用いられるのがよく、または使用前に種々の方法で精製してもよい。たとえば、該調製物は、精製された(i)特異的イソタイプまたは一組のイソタイプの抗体調製物;(ii)配列番号:3、4、5および/または6に記載のアミノ酸配列の特異的リン酸化ペプチドに特異的に結合することができる抗体または抗体断片の調製物(ii)所望のアフィニティーで本発明の標的抗原に結合することができる抗体または抗体断片の調製物の形態で使用され得る。
【0084】
未精製抗血清の形態の本発明の調製物は、種々の適用における使用のために簡便かつ満足のいくものであり得る。たとえば、以下の実施例の項で記載および説明するように、本発明の未精製抗血清、特に、配列番号:3に記載のアミノ酸配列で免疫化することによって生成される未精製抗血清は、ELISA解析によってリン酸化NIKを効率的に検出するために使用することができる。一般に、ある範囲のアフィニティー/特異性で本発明の標的抗原に結合することができる本発明の調製物の恩恵を被ることが望ましい適用には、本発明の抗血清などの本発明の未精製抗体は好都合である。かかる未精製調製物は、これに含まれる不均質なポリクローナル抗体または抗体断片混合物が、しばしば、標的抗原に対して充分な結合アフィニティー/特異性を有する1種類以上の抗体または抗体断片を含むため、しばしば、所与の適用に充分であり得る。
【0085】
あるいはまた、本発明の精製された抗体または抗体断片は、好都合には、個体に対する該抗体または抗体断片の投与を伴うもの、および最適な感度を伴う標的抗原の検出が望ましいものなどの適用に用いられ得る。
【0086】
本明細書において使用する場合、用語「個体」は、ヒトをいう。
【0087】
たとえば、本発明のIgG抗体調製物は、好都合には、プロテインGアフィニティー精製を用いて、好ましくは、プロテインG免疫沈降によって、本発明の抗血清から精製され得る。以下に続く実施例の項で記載および説明するように、本明細書に示すプロトコルにしたがって、配列番号:3に記載のアミノ酸配列のリン酸化ペプチドで免疫化した動物に由来し、かつプロテインG免疫沈降によって精製した本発明の抗血清は、最適な感度で、ウエスタンイムノブロッティング解析、免疫沈降およびELISAによって、配列番号:3、4、5および6に記載のアミノ酸配列を有するリン酸化ポリペプチドを検出するために使用することができる。
【0088】
標的抗原に特異的に結合することができる本発明の精製抗体または抗体断片は、好都合には、最適な特異性を伴って、標的抗原と関連するNIKの生化学的活性を調節するため、および最適な特異性を伴って標的抗原を検出するために使用することができる。特に、配列番号:3、4、5および6に記載のアミノ酸配列内に含有される本発明の標的抗原に特異的に結合することができる本発明の精製抗体または抗体断片は、好都合には、最適な特異性を伴ってNIKのキナーゼ活性を調節するために使用することができる。一般に、最適な再現性、標準化または精密化の恩恵を被る適用には、標的抗原に特異的に結合することができる本発明の精製された抗体または抗体断片は、本発明の未精製調製物と比べ、一般的に最適である。
【0089】
標的抗原に特異的に結合することができる抗体または抗体断片の精製は、たとえば、本発明の未精製抗血清などの本発明の調製物を、標的抗原に共有結合した基質を用いるアフィニティークロマトグラフィーによって精製することによりなされ得る。かかる基質結合標的抗原は、標的抗原に特異的に結合することができる抗体または抗体断片を選択的に捕捉するために、標準的なアフィニティークロマトグラフィー方法論にしたがって使用することができる。
【0090】
該基質は、好ましくは、アフィニティークロマトグラフィー充填剤である。アフィニティークロマトグラフィー充填剤は、アフィニティークロマトグラフィーを行なうのに最適化された基質であり、好都合には、最適なアフィニティー精製を達成するために用いられ得る。
【0091】
種々の構造的および化学的特徴を有する基質が、精製を行なうために使用され得る。
【0092】
好ましくは、基質は、炭水化物またはその誘導体を含む。好ましくは、炭水化物は、アガロース、セファロースまたはセルロースである。
【0093】
好ましくは、基質は、ビーズ、樹脂またはプラスチック表面である。
【0094】
アガロース、セファロースまたはセルロースなどの炭水化物を含有するビーズ、樹脂またはプラスチック表面などの基質は、当該技術分野においてアフィニティークロマトグラフィーを行なうために常套的に使用されている。
【0095】
アフィニティークロマトグラフィー(かかる基質を用いるものなどの)を行なうための充分な手引きは、当該技術分野の文献(たとえば、Wilchek M.および Chaiken I., 2000. Methods Mol Biol. 147: 1-6;Jack GW. Immunoaffinity chromatography. Mol Biotechnol 1,59-86;Narayanan SR., 1994. Journal of Chromatography A 658: 237-258;Nisnevitch M.および Firer MA., 2001. J Biochem Biophys Methods 49: 467-80;Janson JC. & Kristiansen T.の“Packings and Stationary Phases in Chromatography Techniques” (Unger, KK.編) pp.747 (Marcel Dekker, New York, 1990);Clonis, Y. D.の“HPLC of Macromolecules: A Practical Approach”, pp.157 (IRL Press, Oxford, 1989);Nilsson J.ら, 1997. Protein Expr Purif. 11: 1-16を参照)に提供されている。
【0096】
あるいはまた、本発明の調製物は、多様な標準的なタンパク質精製手法、たとえば、限定されないが、イオン交換クロマトグラフィー、濾過、電気泳動、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、コナカバリンAクロマトグラフィー、クロマトフォーカシングおよび差別的可溶化を用いて精製することができる。
【0097】
本発明の標的抗原に所望のアフィニティーで特異的に結合することができる本発明の抗体または抗体断片は、好都合には、標的抗原と関連するNIKの生化学的活性の所望のレベルの調節を達成するために使用することができ、好都合には、標的抗原を所望の感度で検出するために使用することができる。特に、最大のアフィニティーでNIKのキナーゼ領域に含まれる本発明の標的抗原に特異的に結合することができる本発明の抗体または抗体断片は、好都合には、NIKのキナーゼ活性を最適にダウンレギュレーションするために使用することができる。同様に、最大のアフィニティーで標的抗原に特異的に結合することができる本発明の抗体または抗体断片は、好都合には、標的抗原を最適な感度で検出するために使用することができる。
【0098】
本発明の未精製抗血清などの本発明の調製物からの、標的抗原に所望のアフィニティーで結合することができる抗体または抗体断片の精製は、たとえば、標的抗原をアフィニティーリガンドとして使用することにより、未精製の、またはより好ましくはプロテインG精製された本発明の抗血清のアフィニティークロマトグラフィー精製によって、および制御されたストリンジェントな条件下(たとえば、制御されたpHおよび/または塩濃度の条件下)での基質結合抗体または抗体断片の選択的溶出によって達成され得る。特に、最大のアフィニティーで標的抗原に結合することができる本発明の抗体または抗体断片は、効果的に最大のストリンジェントな条件下(たとえば、効果的に最大または最小のpHおよび/または最大の塩濃度の条件下)での溶出によって簡便に得られ得る。典型的には、抗体または抗体断片は、基質に結合したそのコグネイト抗原に生理学的pHおよび塩濃度の条件下で結合し得、かかる抗体または抗体断片は、典型的には、pHを2.5以下に低下させるか、またはpHを11以上に上げることによって基質から溶出され得る。
【0099】
コグネイト抗原に対して10-12までの解離定数を特徴とするアフィニティーを有する抗体または抗体断片は、一般的な当該技術分野の手法を用いて得られ得ることは、当業者に認識されよう。
【0100】
本明細書において上記のように、該調製物は、好都合には、任意の種々の型の検出可能な分子に結合した抗体または抗体断片を含有し得る。
【0101】
検出可能な分子に結合した抗体または抗体断片を含有する本発明の調製物は、該抗体または抗体断片により特異的に結合される標的抗原を検出するために使用することができる。
【0102】
該調製物は、適用および目的に応じて、任意の非常に多くの型の検出可能な分子に結合した抗体または抗体断片を含有し得る。
【0103】
たとえば、適用および目的に応じて、検出可能な分子は、好都合には、フルオロフォア、酵素、発光分子または放射性同位体であり得る。
【0104】
好ましくは、検出可能な分子は酵素である。
【0105】
酵素は、好都合には、任意の種々の酵素に基づく検出方法により標的抗原の検出を可能にするために利用され得る。かかる方法の例としては、限定されないが、固相酵素免疫検定法(ELISA;たとえば、溶液中の標的抗原を検出するため)、固相酵素化学発光分析(たとえば、電気泳動によって分離されたタンパク質混合物中の複合体を検出するため)、および固相酵素組織化学的アッセイ(たとえば、固定組織中の複合体を検出するため)が挙げられる。
【0106】
以下の実施例の項で記載および説明するように、酵素に結合した抗体を含有する本発明の調製物は、NIKをウエスタンイムノブロッティング解析またはELISAによって効率的に検出するために使用することができる。
【0107】
非常に多くの種類の酵素が、適用および目的に応じて、標的抗原を検出するために用いられ得る。
【0108】
好適な酵素の例としては、限定されないが、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HPR)、β−ガラクトシダーゼおよびアルカリホスファターゼ(AP)が挙げられる。
【0109】
酵素に基づく分子検出方法を行なうための充分な手引きは、当該技術分野の文献(たとえば、Khatkhatay MI.およびDesai M., 1999. J Immunoassay 20:151-83;Wisdom GB., 1994. Methods Mol Biol. 32: 433-40;Ishikawa E.ら, 1983. J Immunoassay 4:209-327;Oellerich M.,1980.J Clin Chem Clin Biochem. 18:197-208;Schuurs AH.および van Weemen BK., 1980. J Immunoassay 1: 229-49を参照のこと)に提供されている。
【0110】
フルオロフォアに結合した抗体または抗体断片を含有する本発明の調製物は、好都合には、任意の非常に多くの蛍光性分子検出方法によって標的抗原を検出するために用いられ得る。適用および目的に応じて、かかる方法の例としては、限定されないが、蛍光活性化フローサイトメトリー(FACS;たとえば、懸濁細胞集団中での標的抗原の発現またはディスプレイを特徴付けするため)、蛍光共焦点顕微鏡検査(たとえば、三次元の死細胞もしくは死組織または生細胞もしくは生組織内での分子を検出するため)、蛍光インサイチューハイブリダイゼーション(FISH)、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET;たとえば、標的抗原を伴う特異的分子間会合を検出するため)、蛍光組織化学的検査(たとえば、固定された組織学的試料内で分子を検出するため)などが挙げられる。
【0111】
種々の型のフルオロフォアが、適用および目的に応じて、標的抗原を検出するために用いられ得る。
【0112】
好適なフルオロフォアの例としては、限定されないが、フィコエリトリン、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、Cy−クロム、ローダミン、緑色蛍光タンパク質(GFP)、青色蛍光タンパク質(BFP)、テキサスレッドなどが挙げられる。
【0113】
フルオロフォア選択、種々の型の分子(たとえば、本発明の抗体または抗体断片など)へのフルオロフォアの連結方法、および分子を検出するためのかかる蛍光免疫複合体の使用方法に関する充分な手引きは、当該技術分野の文献において得られ得る[たとえば、Richard P. Haugland,“Molecular Probes: Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals 1992~1994”, 第5版, Molecular Probes, Inc. (1994);Oncoimmunin Inc.の米国特許第6,037,137号明細書;Hermanson,“Bioconjugate Techniques”, Academic Press New York, N. Y. (1995);Kay M.ら, 1995. Biochemistry 34:293;Stubbsら, 1996. Biochemistry 35:937; “Receptors:A Practical Approach”第2版, Stanford C.および Horton R.(編), Oxford University Press, UK. (2001)のGakamsky D.ら,“Evaluating Receptor Stoichiometry by Fluorescence Resonance Energy Transfer”;Targesome, Inc.の米国特許第6,350,466号明細書を参照のこと]。
【0114】
好適な発光分子の例としては、ルミノールが挙げられる。
【0115】
好適な放射性同位体の例としては、[125]ヨウ素、[35]イオウ、[3]水素、[32]リンなどが挙げられる。
【0116】
検出可能な分子は、抗体または抗体断片に、適用および目的に応じて、および関与する分子の性状に応じて種々の方法で結合され得る。検出可能な分子を抗体または抗体断片に結合させるための充分な手引きは、当該技術分野の文献に提供されている[たとえば、“Using Antibodies: A Laboratory Manual”, Ed Harlow, David Lane (編), Cold Spring Harbor Laboratory Press (1999)を参照のこと;また、The American Chemical Societyにより、たとえば、http://www. chemistry. org/portal/Chemistry で提供される広範な手引きを参照のこと]。化学者などの当業者は、かかる化学的合成手法を好適に実施するために必要とされる専門知識を有する。
【0117】
したがって、検出可能な分子に結合した抗体または抗体断片を含有する本発明の調製物は、本質的に任意の状況において、効率的にかつ特有の様式で標的抗原を検出するために使用することができる。
【0118】
適用および目的に応じて、該調製物は、好都合には、任意の種々の型の抗体断片の調製物であり得る。
【0119】
抗体断片は、好ましくは、単鎖Fv(scFv)、またはより好ましくは、Fab、Fab’、F(ab’)2またはCDRである。
【0120】
抗体断片は、これが、親抗体と実質的に同一の標的抗原結合特異性または結合特異性と結合親和性の両方を維持したまま由来する親抗体よりも小さいという利点を有する。したがって、抗体断片は、親抗体よりも小さいおかげで、それにより、一般的に、後者よりも卓越した生体分散性および拡散性(たとえば、全身性でインビボ、または単離された組織内)を有する。Fc領域(たとえば、単鎖Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2またはCDRなど)を実質的に欠く抗体断片は、かかるFc領域に特異的に結合することができる分子に該調製物を曝露することを伴い、かつかかる結合が望ましくない適用に好都合である。典型的には、これは、コグネイトFc受容体またはFc結合性相補成分(たとえば、血清中に存在する相補成分Clq)に曝露されたFc領域への所望されない結合を伴い得る。Fc受容体は、非常に多くの免疫細胞型(樹状細胞などのプロフェッショナルAPC;Bリンパ球;ならびに好中球、好塩基球、好酸球、単球、マクロファージおよびマスト細胞などの顆粒球が挙げられる)の表面上にディスプレイされる。したがって、抗体断片でのFc領域の非存在は、特に、該調製物をインビボで個体に投与する場合、所望されないのFc受容体媒介性免疫細胞活性化または相補成分媒介性相補カスケードを回避するために特に好都合であり得る。
【0121】
F(ab’)2は、抗体分子の二価抗原結合性部分を含有する抗体分子の断片である。
【0122】
本発明のF(ab’)2調製物は、標準的な当該技術分野の方法を用い、本発明の抗血清などの本発明の調製物を酵素ペプシンで処理することにより、簡便に得られ得る。得られるF(ab’)2生成物は5S粒子である。
【0123】
FabまたはFab’は、抗体の一価の抗原結合性部分を含有する抗体分子の断片である。
【0124】
CDRは、たとえば、EP0585939に記載のようにして、または Strandbergら (Protein Eng. 2001 Jan;14 (1):67-74) に記載のようにして作製され得る。本発明によるCDRは、NIKのモジュレーションに対して増大した効果を有する修飾CDRであり得る。活性ペプチドの修飾方法の一例は、Sawaら1999 (J. Med. Chem. 42,3289-3299) に記載されたものである。
【0125】
本発明のFab’調製物は、標準的な当該技術分野の方法を用い、本発明の抗血清などの本発明の調製物を酵素ペプシンで処理した後、得られたF(ab’)2を縮小することにより、簡便に得られ得る。かかる縮小は、チオール還元剤を使用し、任意に、ジスルフィド結合の切断により生じるスルフヒドリル基の保護基を使用することにより行ない得る。かかる処理により、2つの一価の3.5S Fab’のFc断片が生成する。
【0126】
Fab調製物は、標準的な当該技術分野の方法を用い、本発明の抗血清などの本発明の調製物を酵素パパインで処理してインタクトな軽鎖および可変とCH1ドメインから構成される重鎖の部分を得ることにより、簡便に得られ得る。
【0127】
抗体の酵素的処理により抗体断片を作製するための充分な手引きは、当該技術分野の文献に提供されている(たとえば、Goldenbergの米国特許第4,036,945号および同第4,331,647号;Porter RR., 1959. Biochem J. 73: 119-126を参照のこと)。
【0128】
単鎖Fv(当該技術分野において「scFv」とも呼ばれる)は、適当なポリペプチドリンカーによって連結された軽鎖の可変領域と重鎖可変領域を含む単鎖分子である。
【0129】
本発明のF(ab’)2、Fab’、Fabもしくは単鎖FvまたはCDRの調製物は、組換え技術を用いて得られ得る。
【0130】
好ましくは、組換え抗体断片を得ることは、標的抗原で免疫化した動物のBリンパ球のmRNAを単離し、mRNAからRT−PCRによりcDNAを作製し、該cDNAを用いて抗体断片ファージディスプレーライブラリーを構築することにより行なわれる。Bリンパ球は、脾臓から、あるいはまた、免疫化した動物の血液、骨髄もしくはリンパ節から簡便に単離することができる。
【0131】
所望の標的抗原結合特性を有する抗体断片をディスプレイする組換えファージは、かかる結合特性を有するファージを大過剰の非結合クローンから逐次富化することによるライブラリーから選択され得る。この選択は、任意の種々の技術(固定された標的抗原上でのパニング;特異的溶出を用いるパニング;ビオチン化抗原の使用;カラム上でのアフィニティー精製;または細胞上での直接パニングが挙げられる)を用いてなされ得る。選択後、非特異的抗体断片をディスプレイするファージを洗浄により除去し得、所望の標的抗原結合特性を示scFvを有する結合したファージを溶出し、大腸菌の感染により増幅させる。所望の標的抗原結合特性を有する抗体断片ディスプレイする組換えファージがいったん単離したら、該抗体断片の可変領域をコードするポリヌクレオチド配列をファージディスプレイパッケージから回収することができ、標準的な方法論[たとえば、“Current Protocols in Molecular Cloning”, Ausubelら(編), Greene Publishing and Wiley Interscience, New York, N. Y. (1989);Sambrookら、下記および関連する参考文献を参照のこと]を用い、組換え原核生物または真核生物発現ベクター内にクローン化することができる。かる原核生物発現ベクターは、精製組換え抗体断片を大腸菌内で作製するために使用することができる(たとえば、Studierら, 1990. Methods in Enzymol. 185: 60-89を参照のこと)。かかる真核生物発現ベクターは、組換え抗体断片の発現のために真核生物細胞を遺伝子工学的に形質転換するために使用することができる。
【0132】
Bリンパ球mRNAから抗体断片ファージディスプレイライブラリーを得るため、および利用するための充分な手引きは、当該技術分野の文献に提供されている[たとえば、Hoogenboomら, 1998. Immunotechnology 4: 1-20;Kandら, 1991. Proc Natl Acad Sci U S A. 88: 4363;Barbasら 1991. Proc Natl Acad Sci U S A. 88: 7978;Garrardら, 1991. Biotechnology 9: 1373-1377;Hoogenboomら, 1991. Nucleic Acids Res. 19: 4133-4137;Sharonら, 2000. Combinational Chemistry and High Throughput Screening 3: 185-196;米国特許第5,698,426号、同第5,658,727号、同第5,223,409号、同第5,403,484号、同第5,580,717号、同第5,427,908号、同第5,750,753号、同第5,821,047号、同第5,571,698号、同第5,427,908号、同第5,516,637号、同第5,780,225号、同第5,658,727号、同第5,733,743号および同第5,969,108号;PCT出願番号PCT/GB91/01134;PCT公開公報WO 90/02809、WO 91/10737、WO 92/01047、WO 92/18619、WO 93/11236、WO 95/15982およびWO 95/20401;Brinkmanら, 1995. J. Immunol. Methods 182: 41-50;Amesら, 1995. J. Immunol. Methods 184: 177-186;Kettleboroughら, 1994. Eur. J. Immunol. 24: 952-958;Persicら, 1997. Gene 187 9-18;ならびに Burtonら, 1994. Advances in Immunology 57: 191-280;Pluckthun :“The Pharmacology of Monoclonal Antibodies”, 第113巻, Rosenburg および Moors (編), Springer-Verlag, New York, pp.269-315 (1994);Hoogenboomら, 1998. Immunotechnology 4: 1-20を参照のこと]。
【0133】
前記方法論は、本質的に任意の所望の標的抗原結合親和性および/または特異性を有する本発明のモノクローナル抗体断片調製物を得るために使用することができることは認識されよう。かかる調製物は、かかる規定の標的抗原結合特性を有する標的抗原に結合することができる試薬の恩恵を被る種々の適用において利用され得る。
【0134】
本発明は、配列番号:6を含むアミノ酸配列またはその部分(たとえば、配列番号:3に記載のもの)であって、リン酸化トレオニンを配列番号:5のアミノ酸559位に含有する該アミノ酸配列またはその部分で免疫化した哺乳動物由来の脾臓細胞および同型遺伝子または異型遺伝子のリンパ球様細胞を含有するクローン化ハイブリドーマを、液体培地または哺乳動物の腹部内で成長させ、ハイブリドーマを作製してモノクローナル抗体を蓄積させることを含む、モノクローナル抗体の調製方法を提供する。
【0135】
モノクローナル抗体の調製物に使用されるハイブリドーマの一例は、CNCMに番号I−3095で寄託されたハイブリドーマクローンNik−P4 30.12である。
【0136】
Fab’は構造的においてFabと本質的に類似するため、Fab’を含有する本発明の調製物は、Fabを含有するものと、本質的に互換的に用いられ得、この場合、かかるFab’およびFabは、本質的に同じ重鎖および軽鎖の可変領域を含有する。標的抗原に最大の親和性を伴って結合することができる抗体断片を含有する本発明の調製物の恩恵を被る適用では、よくあることだが、本発明のF(ab’)2調製物は、かかる一価の抗体断片の一価の結合に対してF(ab’)2は標的抗原に対して二価の結合であるため、本発明のFab、Fab’またはscFv調製物よりも卓越したものであり得る。
【0137】
前記のように、適用および目的に応じて、抗体または抗体断片の調製物は、任意の種々の哺乳動物種を起源とし得る。
【0138】
所望の種を起源とする本発明の抗体または抗体断片調製物は、標的抗原で免疫化されたかかる種の動物の血清に由来し得る。
【0139】
好ましくは、抗体または抗体断片はマウス起源のものである。
【0140】
かかる抗体は、一価、二価または多価であり得、架橋活性を有していても有しなくてもよい。本発明にしたがって使用される抗体は、ポリクローナル(ウサギにおいて産生される抗体など)またはモノクローナル抗体であり得る。
【0141】
好ましくは、本発明は、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、ヒト化、ヒトもしくは抗−抗イディオタイプ抗体またはその断片からなる群より選択される抗体調製物の使用に関する。好ましくは、抗体または抗体断片はマウス 起源のものである。
【0142】
用語「モノクローナル抗体」(mAb)は、可溶性または結合形態で標識され得るモノクローナル抗体、キメラ、ヒト化抗体、ヒト抗体、抗イディオタイプ抗体に対する抗体(抗−抗Id抗体)および任意の公知の手法(たとえば、限定されないが、酵素的切断、ペプチド合成または組換え技術)により得られるその断片を含むことを意図する。
【0143】
モノクローナル抗体は、抗原に対して特異的な抗体の実質的に均一な集団を含み、該集団は、実質的に類似したエピトープ結合性部位を含む。mAbは、当業者に既知の方法により得られ得る。たとえば、Kohler および Milstein, Nature, 256: 495-497 (1975);米国特許第を参照のこと。
【0144】
モノクローナル抗体は、これが、分子と特異的に反応することができ、それにより、該分子が抗体に結合する場合、分子「結合することができる」といえる。
【0145】
用語「エピトープ」は、任意の分子の抗体によって結合され得、また該抗体によって認識され得る部分を指すことを意図する。エピトープまたは「抗原決定基」は、通常、化学的に活性な表面分子集団(たとえば、アミノ酸または糖側鎖など)、からなり、特異的な三次元の構造的特徴および特異的な帯電特性を有する。
【0146】
「抗原」は、抗体によって結合され得る分子または分子の部分であり、加えて、該抗原は、動物に、該抗原のエピトープに結合することができる抗体の産生を誘導することができる。抗原は、1つまたは1つより多いエピトープ有し得る。上記の特異的反応は、抗原が、その対応する抗体上のエピトープと高度に選択的な様式で反応するが、他の抗原によって誘発され得る多数の他の抗体とは反応しないことを示すものとする。
【0147】
4,376,110号;Ausubelら編, Harlow および Lane ANTIBODIES: A LABORATORY MANUAL, Cold Spring Harbor Laboratory (1988);および Colliganら編, Current Protocols in Immunology, Greene Publishing Assoc. and Wiley Interscience N. Y., (1992-1996)。かかる抗体は、任意の免疫グロブリンクラス(IgG、IgMが挙げられる)のものであり得る。
【0148】
抗−イディオタイプ(抗−id)抗体は、一般的に抗体の抗原結合性部位と関連する特有の決定基を認識する抗体である。Id抗体は、それに対する抗Idが調製されるmAbの供給源と同じ種および遺伝子型(たとえば、マウス系統)の動物を免疫化することによって調製され得る。
【0149】
免疫化された動物は、免疫化抗体のイディオタイプ決定基を認識し、これらのイディオタイプ決定基に対する抗体(抗Id抗体)を産生することにより、これに応答する。たとえば、米国特許第4,699,880号を参照のこと。
【0150】
また、抗Id抗体は、さらに別の動物において免疫応答を誘導し、いわゆる抗−抗Id抗体を産生させるための「免疫原」として使用され得る。抗−抗Idは、抗−idを誘導した元のmAbとエピトープが同一であり得る。したがって、MAbのイディオタイプ決定基に対する抗体を使用することにより、同一の特異性の抗体を発現する他のクローンを同定することが可能である。
【0151】
したがって、NIK断片に対して生成されるmAbは、抗Id抗体をBALB/cマウスなどの適当な動物内で誘導するために使用され得る。かかる免疫化マウス由来の脾臓細胞を用い、抗IdmABを分泌する抗Idハイブリドーマを作製する。さらに、抗−idmAbは、スカシガイのヘモシアニン(KLH)などの担体に結合させ、さらなるBALB/cマウスを免疫化するために使用され得る。これらのマウス由来の血清は、NIKのエピトープまたは断片に特異的な元のmAbの結合特性を有する抗−抗Id抗体を含む。
【0152】
抗IdmAbは、このように、その独自のイディオタイプエピトープ、または評価対象のエピトープと構造的に類似した「イディオトープ」を有する。
【0153】
ヒト抗体もしくはヒト化抗体または抗体断片の本発明の調製物は、該調製物の個体への投与を伴う適用に好ましいものであり得る。たとえば、ヒト抗体もしくはヒト化抗体または抗体断片は、一般的に、免疫学的に最適に耐容性である傾向にあり、したがって、ヒトにおいてインビボで最適な半減期が示され、それにより、最適な有効性が示される。ヒト抗体またはヒト化抗体の作製および利用に関するさらなる手引きは、以下に提供する。
【0154】
本発明において有用な抗体(抗体の断片を含む)は、試料中のNIKまたはそのムテイン、機能性誘導体、活性断片、円順列変異誘導体、塩もしくは部分を定量的または定性的に検出するため、またはNIKまたはそのムテイン、機能性誘導体、活性断片、円順列変異誘導体、塩もしくは部分を発現する細胞の存在を検出するために使用され得る。
【0155】
これは、蛍光顕微鏡使用により結合させた蛍光標識抗体を用いる免疫蛍光手法、フローサイトメトリーによる検出または蛍光分析による検出によってなされ得る。
【0156】
本発明の抗体(またはその断片)は、本発明のNIKまたはその部分のインサイチュ(in situ)検出のために、免疫蛍光または免疫電子顕微鏡検査の場合のように、組織学的に用いられ得る。インサイチュ検出は、患者から組織学的試験片を取り出し、かかる試験片に対して本発明の標識抗体を提供するによりなされ得る。抗体(または断片)は、好ましくは、標識抗体(または断片)を生物学的試料に適用することにより、またはこの上に重層することにより提供される。かかる手順に使用により、NIKまたはその部分の存在だけでなく、試験した組織上での分布もまた調べることが可能である。本発明を用い、当業者には、かかるインサイチュ検出を達成するために、任意の多種多様な組織学的方法(染色手順など)を変形し得ることが容易にわかるだろう。
【0157】
生物学的試料は、固相支持体もしくは担体(たとえば、ニトロセルロースなど)または
細胞、細胞粒子もしくは可溶性タンパク質を固定化することができる他の固体支持体もしくは担体に結合させ得る。該支持体または担体を、次いで、適当なバッファーで洗浄した後、上記のようにして、本発明による標識抗体で処理し得る。固相支持体または担体を、次いで、該バッファーでの2回目の洗浄を行ない、未結合抗体を除去する。次いで、前記固体支持体または担体上の結合標識の量を、慣用的な手段により検出し得る。
【0158】
「固相支持体」、「固相担体」、「固体支持体」、「固体担体」、「支持体」または「担体」は、抗原または抗体結合することができる任意の支持体または担体を意図する。周知の支持体または担体としては、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロンアミラーゼ、天然および改質セルロース、ポリアクリルアミド、斑レイ岩ならびにマグネタイトが挙げられる。担体の性状は、本発明の目的のために、ある程度可溶性のあるもの、または不溶性であり得る。支持体材料は、結合された分子が抗原または抗体結合することができるものであれば、事実上任意の可能な構造的構成有し得る。したがって、支持体または担体の構成は、ビーズのような球状、テストチューブの内側表面または棒状物の外側表面のような円柱であり得る。あるいはまた、表面は、シート、試験細片などの平坦なものであってもよい。好ましい支持体または担体としては、ポリスチレンビーズが挙げられる。
【0159】
当業者には、抗体または抗原に結合させるための他の好適な担体がわかるだろうし、または常套的な実験法の使用により、これを確認することができるだろう。
【0160】
本発明の所与の多くの抗体の結合活性は、上記のように、周知の方法にしたがって測定され得る。当業者は、常套的な実験法を用いることによる各測定のための作業条件および最適なアッセイ条件を決定することができよう。
【0161】
通例、または特定の状況に必要であるように、洗浄、攪拌、振とう、濾過など他の工程をアッセイに追加してもよい。
【0162】
本発明による抗体が標識され得る方法の1つは、これを酵素に連結することによるものであり、酵素イムノアッセイ(EIA)において使用され得る。この酵素は、今度は、後に適切な基質に曝露した場合、たとえば分光測光的手段、蛍光分析的手段により、または可視化手段により検出可能な化学的部分を生じるような様式で基質と反応する。抗体検出可能に標識するために使用することができる酵素としては、限定されないが、マレエートデヒドロゲナーゼ、ブドウ球菌のヌクレアーゼ、δ−5−ステロイドイソメラーゼ、酵母アルコールデヒドロゲナーゼ、α−グリセロリン酸デヒドロゲナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、アスパラギナーゼ、グルコースオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、グルコアミラーゼ(glucoamylase)およびアセチルコリンエステラーゼが挙げられる。検出は、酵素用の発色性基質を用いる比色分析方法によってなされ得る。検出はまた、同様に調製された標準品との比較した基質の酵素的反応の程度の視覚による比較によってもなされ得る。
【0163】
検出は、任意の多様な他のイムノアッセイを用いてなされ得る。たとえば、抗体または抗体断片を放射能で標識することにより、ラジオイムノアッセイ(RIA)の使用によってR−PTPアーゼを検出することが可能である。RIAの充分な記載は、Laboratory Techniques and Biochemistry in Molecular Biology,(Work, T. S.らによる), North Holland Publishing Company, NY (1978)(具体的な記載は、Chard, T.による表題“An Introduction to Radioimmne Assay and Related Techniques”の章になされている)に見出され得、引用により本明細書に組み込まれる。放射性同位体は、gカウンターもしくはシンチレーションカウンターの使用などの手段によって、またはオートラジオグラフィーによって検出することができる。
【0164】
本発明による抗体を蛍光化合物で標識することも可能である。蛍光により標識された抗体を適切な波長の光に曝露すると、その存在が、蛍光によって検出され得る。
【0165】
中でも、最も一般的に使用される蛍光標識化合物は、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、フィコエリトリン、ピコシアニン、アロピコシアニン、o−フタルアルデヒドおよびフルオレサミンである。
【0166】
該抗体はまた、152Eなどの蛍光発光性金属、またはランタノイド系の他のものを用いて検出可能に標識することもできる。これらの金属は、ジエチレントリアミン五酢酸(ETPA)などの金属キレート化基を用いて抗体に結合させることができる。
【0167】
該抗体はまた、化学発光化合物に結合させることによって検出可能に標識することもできる。次いで、化学発光タグ化抗体の存在を、化学的反応の過程で生じる発光の存在を検出することによって調べる。特に有用な化学発光標識化合物の例は、ルミノール、イソルミノール、セロマティックアクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩およびシュウ酸エステルである。
【0168】
同様に、生物発光化合物も、本発明の抗体を標識するために使用され得る。生物発光は、触媒性タンパク質が化学発光反応の効率を増大させる生物学的な系において見られる化学発光の1種である。生物発光タンパク質の存在は、発光の存在を検出することによって調べる。標識の目的に重要な生物発光化合物は、ルシフェリン、ルシフェラーゼおよびエクオリンである。
【0169】
本発明の抗体調製物は、イムノメトリックアッセイ(「2部位」または「サンドイッチ」アッセイとしても知られる)における利用に適合したものであり得る。典型的なイムノメトリックアッセイにおいて、ある量の非標識抗体(または抗体の断片)を固体支持体または担体に結合させ、ある量の検出可能に標識された可溶性抗体を添加し、固相抗体、抗原および標識抗体間で形成される三元複合体の検出および/または定量を可能にする。
【0170】
典型的かつ好ましいイムノメトリックアッセイとしては、「フォワード」アッセイ(これは、固相に結合した抗体をまず試験対象試料と接触させ、抗原を試料から二元固相抗体−抗原複合体の形成によって抽出する)が挙げられる。適当なインキュベーション期間の後、固体支持体または担体を洗浄し、未反応抗原(あれば)を含む試料液の残余を除去し、次いで、未知量の標識抗体(これは「レポーター分子」としての機能を果たす)を含む溶液と接触される。標識抗体が、非標識抗体により固体支持体または担体に結合した抗原と複合体形成するのを可能にするための第2のインキュベーション期間後、固体支持体または担体に2回目の洗浄を行ない、未反応標識抗体を除去する。
【0171】
別の型の「サンドイッチ」アッセイ(これもまた本発明の抗原について有用であり得る)において、いわゆる「同時」および「逆」アッセイが使用される。同時アッセイは、固体支持体または担体に結合した抗体および標識抗体の両方が試験対象試料に同時に添加されるため、単一のインキュベーション工程を伴う。インキュベーションが完了した後、固体支持体または担体を洗浄し、試料液の残余および非複合体化標識抗体を除去する。
【0172】
次いで、固体支持体または担体に結合した標識抗体の存在を、慣用的な「フォワード」サンドイッチアッセイのようにして、調べる。
【0173】
「逆」アッセイでは、まず標識抗体の溶液のへの試料液へ、続いて、適当なインキュベーション期間後での固体支持体または担体に結合した非標識抗体の添加の段階的添加を用いる。第2のインキュベーション後、固相を慣用的な様式で洗浄し、試験対象試料の残余および未反応標識抗体溶液を除く。次いで、固体支持体または担体に結合した標識抗体の測定を、「同時」および「フォワード」アッセイのようにして調べる。
【0174】
該調製物は、それ自体を使用してもよく、または医薬組成物中の活性成分として配合することができる。
【0175】
したがって、本発明により、薬学的に許容し得る担体および、活性成分として本発明の抗体または抗体断片を含有する医薬組成物が提供される。
【0176】
本発明の抗体または抗体断片を活性成分として医薬組成物中に配合する方法およびかかる医薬組成物の利用方法は、本明細書に以下に記載のとおりである。
【0177】
本明細書において上記のように、NIKの機能性領域などの領域に特異的に結合する能力のおかげで、本発明の抗体または抗体断片は、かかる機能性領域と関連するNIK分子の生化学的活性調節するために使用することができる。
【0178】
したがって、本発明のさらに別の態様によれば、NIK分子の生化学的活性の調節方法が提供される。該方法は、NIK分子を本発明の抗体または抗体断片と接触させることにより行なわれる。
【0179】
好ましくは、該方法は、ヒトNIK分子において該生化学的活性を調節するために使用される。
【0180】
本明細書において上記のように、本発明の抗体または抗体断片は、NIKキナーゼ活性をダウンレギュレーションするようにリン酸化NIKに特異的に結合することができるため、およびかかる活性がNF−κBの活性化に必要とされるため(前記「発明の分野および背景」の項に広範に詳細に示した)、該方法を、NF−κB活性を最適にダウンレギュレーションするために使用することができる。
【0181】
したがって、NF−κB活性の最適なダウンレギュレーションが可能なおかげで、該方法を、個体において、無規制なNF−κB活性、特に過剰または構造的NF−κB活性と関連する疾患を最適に治療するために使用することができる。
【0182】
個体において該疾患を治療するために本発明のこの態様にしたがって該方法を使用する場合、NIK分子を抗体または抗体断片と接触させることは、好都合には、抗体または抗体断片を個体に投与することによって行なわれ得る。
【0183】
好ましくは、抗体または抗体断片の投与は、本発明の抗体または抗体断片活性成分として含有する本発明の医薬組成物の投与により行なわれる。
【0184】
抗体または抗体断片は、好ましくは、生化学的活性の所望の調節が達成されるように、充分なレベルの抗体断片の標的抗原への結合が達成されるように投与される。
【0185】
医師(より好ましくは、該疾患の専門医)などの当業者は、本発明の教示にしたがって効果的に該疾患を治療するために、好適な治療プロトコル(好適な投与経路および抗体または抗体断片の好適な用量が挙げられる)を決定するために必要とされる専門知識を有する。
【0186】
NIKは、通常、細胞内分子であり、したがって、抗体または抗体断片をNIK分子と細胞(たとえば、無規制なNF−κB活性を特徴とする細胞)内において最適に接触させるため、該方法は、好ましくは、細胞内での抗体または抗体断片のNIK分子との接触を容易にするような方法で実施する。
【0187】
かかる細胞内接触は、適用および目的に応じて、種々の方法で容易にし得る。
【0188】
たとえば、かかる細胞内接触は、細胞を、抗体または抗体断片に、抗体または抗体断片の細胞の内部への浸透を容易にすることができる脂質系担体の補助を伴って接触させることによって行なわれ得る。
【0189】
あるいはまた、かかる細胞内接触は、細胞を、本発明の抗体断片細胞内で発現することができる発現ベクターで遺伝子工学的に形質転換することによって行なわれ得る。
【0190】
抗体または抗体断片の細胞内への進入を容易にするための脂質担体の好適な類型としては、リポソームおよびイムノリポソームが挙げられる。イムノリポソームは、分子の細胞型特異的送達を可能にするおかげで、好都合には、抗体または抗体断片を、疾患に罹患した細胞内に選択的に送達するために用いられ得、ここで、かかる細胞は、特徴的な表面抗原、たとえば、病的免疫応答を示す細胞内の炎症のマーカー(たとえば、活性化されたTリンパ球におけるCD25またはCD69)、または悪性細胞における腫瘍関連抗原(たとえば、腺癌細胞におけるHER−2、黒色腫細胞におけるMAGE−1など)を発現する。
【0191】
かかる脂質系担体を、治療用分子(たとえば、本発明の抗体または抗体断片など)の疾患細胞への細胞内送達に使用するための充分な手引きは、当該技術分野の文献に提供されている(たとえば、Abra RM.ら, 2002. J Liposome Res. 12: 1-3;Park JW., 2002. Breast Cancer Res.;4 (3): 95-9;Bendas G., 2001. BioDrugs 15: 215-24;Maruyama K., 2000. Biol Pharm Bull. 23: 791-9;Hong K.ら, 1999. Ann N Y Acad Sci. 886: 293-6;Margalit R., 1995. Crit Rev Ther Drug Carrier Syst. 12: 233-61;Storm G. および Crommelin DJ., 1997. Hybridoma 16: 119-25;Park JW.ら, 1997. Adv Pharmacol. 40: 399-435を参照のこと)。
【0192】
組換え抗体断片(たとえば、本発明の組換え抗体断片)を細胞内で産生させることは、当該技術分野において常套的に行なわれている。細胞内で発現された組換え抗体断片は、当該技術分野において「イントラボディ」とよばれることがある。生体分子に特異的に結合することができる組換え抗体断片の細胞内発現を、細胞内の生体分子の生化学的活性(たとえば、酵素活性など)を調節するために使用するための充分な手引きは、当該技術分野の文献に提供されている(たとえば、Mhashilkar AM.ら, 2002. Gene Ther. 9: 307-19;Arafat W.ら, 2000. Cancer Gene Ther. 7: 1250-6;Cohen PA.ら, 1998. Oncogene 17: 2445-56;Hassanzadeh Gh G.ら, 1998. FEBS Lett. 437: 81-6;Richardson JH.ら, 1998. Gene Ther. 5: 635-44を参照のこと;組換え抗体断片を細胞内において発現させるための一般的な手引きについては、たとえば、der Maur AA.ら, 2002. J Biol Chem. 277: 45075-85;Zhu Q.ら, 1999. J Immunol Methods. 231: 207-22;Wirtz P. および Steipe B., 1999. Protein Sci. 8: 2245-50;Ohage E. および Steipe B., 1999. J Mol Biol. 291: 1119-28を参照のこと)。
【0193】
哺乳動物細胞を発現ベクターで遺伝子工学的に形質転換することは、任意の種々の一般的に行なわれている当該技術分野の方法(たとえば、安定または一過性トランスフェクション、リポフェクション、エレクトロポレーションおよび組換えウイルス系ベクターによる感染など)を用いて行なわれる。かかる方法を行なうための充分な手引きは、当該技術分野の文献に提供されている[たとえば、Sambrookら、下記および関連する参考文献;“Somatic Gene Therapy”のChangら, CRC Press, Ann Arbor, MI (1995);“Gene Targeting”のVegaら, CRC Press, Ann Arbor MI. (1995);Vectors, A Survey of Molecular Cloning Vectors and Their Uses, Butterworths, Boston MA (1988);Gilboaら, 1986. Biotechniques 4: 504-512を参照のこと;中枢神経系に関連するベクターについては、たとえば、米国特許第4,866,042号を参照のこと;相同組換えを誘導するための陽性/陰性選択方法については、たとえば、米国特許第5,464,764号および同第5,487,992号を参照のこと]。
【0194】
本発明の抗体断片を細胞内で発現させるための発現ベクターの作製および利用に関するさらなる手引きは、以下に提供する。
【0195】
本明細書において上記のように、本発明のこの態様による方法は、無規制なNF−κB活性と関連する疾患を最適に治療するために使用することができる。NF−κB活性は、一般的に、非常に広範な免疫応答(リンパ球抗原受容体、リンパ球共刺激受容体、TNF受容体、インターロイキン受容体、LMP1、RANK、ヒトToll受容体およびリポ多糖(LPS)により惹起されるものが挙げられる)の活性化に関与する。かかる受容体は、非常に広範な型の免疫応答の媒介に関与するため、本発明のこの態様による方法は、その病因がかかる免疫応答と関連する非常に多くの疾患を治療するため使用することができる。
【0196】
かかる疾患としては、自己免疫疾患、炎症性疾患、移植関連疾患およびアレルギー性疾患が挙げられる。たとえば、NF−κBは、アレルギー性疾患(たとえば、喘息)、自己免疫疾患(たとえば、関節リウマチ)、炎症性疾患(たとえば、炎症性腸疾患)、アテローム性動脈硬化およびアルツハイマー病、ならびに移植に関連する疾患(たとえば、移植片拒絶)などの疾患の多様な例の病因に関与することが示されている。さらにまた、無規制なNF−κBシグナル伝達は、種々の悪性疾患と関連することが示されている。
【0197】
したがって、本発明のこの態様による方法は、自己免疫疾患、炎症性疾患、移植関連疾患、アレルギー性疾患および悪性疾患などの疾患を効果的に治療するために使用することができる。
【0198】
本発明のこの態様にしたがって治療され得る疾患の具体例は、以下に列挙する。
【0199】
本明細書において上記のように、ポリペプチドである標的抗原は、種々の方法で得られ得る。
【0200】
好ましくは、標的抗原は、標準的な化学的合成方法論によって得られる。
【0201】
あるいはまた、標的抗原は、天然で発現されたNIKのタンパク質溶解性切断により得られ得るか、またはインビトロ発現系(たとえば、Sambrookら、下記および関連する参考文献を参照のこと)を用いる標準的な組換え技術により得られ得る。
【0202】
標的抗原は、たとえば、標準的な固相技術を用いて化学的に合成され得る。かかる技術としては、排他的固相合成、部分固相合成方法、断片縮合、古典的溶液合成が挙げられる。固相ポリペプチド合成手順は、当該技術分野において周知である[たとえば、“Solid Phase Peptide Synthesis”, 第2版, Pierce Chemical Company, (1984)のStewartらを参照のこと]。
【0203】
合成ポリペプチドは、Creighton T. [Proteins, structures and molecular principles, W. H. Freeman and Co. N. Y. (1983)]に記載のものなどの分取高速液体クロマトグラフィー手順によって精製することができ、そのアミノ酸配列は、標準的なアミノ酸配列決定手順により確認し得る。
【0204】
本明細書において上記のように、該調製物は、好ましくは、哺乳動物を標的抗原で免疫化することにより誘導される。
【0205】
該調製物のインビボでの作製は、好都合には、血清中で抗体の産生を刺激する計画にしたがい、アジュバントの存在下での標的抗原の哺乳動物への反復注射により行なわれ得る。標的抗原が、充分な免疫原性応答を惹起するには小さすぎる場合(当該技術分野において「ハプテン」という)、このハプテンを、スカシガイのヘモシアニン(KLH)または血清アルブミンなどの抗原性的に中性の担体に結合させ得る[たとえば、ウシ血清アルブミン(BSA)]担体(たとえば、米国特許第5,189,178号および同第5,239,078号を参照のこと)。ハプテンの担体への結合は、当該技術分野において周知の種々の方法を用いて行い得る。たとえば、アミノ基への直接結合を行ない、任意に、その後、形成されたイミノ結合の還元を行ない得る。あるいはまた、担体を、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは他のカルボジイミド脱水剤などの縮合剤を用いて結合させ得る。また、リンカー化合物を、該結合を行なうために使用することができる。ホモ二機能性およびヘテロ二機能性リンカーは、ともに、Pierce Chemical Company, Rockford, Illから入手可能である。得られた免疫原性複合体を、次いで、好適な哺乳動物被験体(たとえば、マウス、ウサギなど)に注射し得る。抗体のインビノ作製後、宿主哺乳動物におけるその血清価は、当該技術分野において周知のイムノアッセイ手順を用いて容易に測定され得る。
【0206】
本明細書において上記のように、該調製物は、好都合には、ヒト化抗体または抗体断片を含有し得る。
【0207】
キメラ抗体およびその作製方法は当該技術分野において公知である(Cabilly ら, 欧州特許出願第125023号(1984年11月14日に公開);Taniguchiら, 欧州特許出願第171496号(1985年2月19日に公開);Morrisonら, 欧州特許出願第173494号(1986年3月5日に公開);Neubergerら, PCT出願WO 8601533(1986年3月13日に公開);Kudoら, 欧州特許出願第184187号(1986年6月11日に公開);Robinsonら, 国際特許出願番号W08702671(1987年5月7日に公開);Riechmannら、ならびにHarlow および Lane, ANTIBODIES: A LABORATORY MANUAL(前出)。
【0208】
「ヒト抗体」は、ヒト免疫グロブリンの可変および定常領域の両方を含有する分子である。完全なヒト抗体は、抗イディオタイプ免疫原性が有意に低減されているか、または理想的には存在しないはずであるため、治療用途に特に好適である。完全なヒト抗体の調製のための方法の1つは、ヒト免疫グロブリン(Ig)遺伝子座を、内在性Ig遺伝子が不活化されているマウスに導入することによるマウス体液性免疫系の「ヒト化」、すなわちヒトIgを産生することができるマウス系統(ゼノマウス)の作製からなる。Ig遺伝子座は、物理的構造と、最終的に広い免疫応答を生じるのに必要とされる遺伝子再編成および発現プロセスとの両方の点で、きわめて複雑である抗体の多様性は、主に、Ig遺伝子座内に存在する異なるV、DおよびJ遺伝子間の再編成の組み合わせにより生じる。これらの遺伝子座はまた、抗体発現、対立遺伝子排除、クラススイッチおよび親和性成熟を制御する散在性調節性エレメントを含む。非再編成ヒトIg導入遺伝子のマウスへの導入により、このマウス組換え機構は、ヒト遺伝子に適合性があることが示されている。さらにまた、種々のイソタイプの抗原特異的hu−mAbを分泌するハイブリドーマは、該抗原でのゼノマウス免疫化によって得られ得る。
【0209】
完全なヒト抗体およびその作製方法は、当該技術分野において公知である(Mendezら (1997);Buggemannら (1991);Tomizukaら, (2000) 特許 国際公開第98/24893号パンフレット)。
【0210】
本明細書において使用する場合、用語「ムテイン」は、得られる生成物の活性を元のNIKと比べて大幅に変化させることなく、NIKの天然に存在する成分のアミノ酸残基の1個以上が異なるアミノ酸残基で置き換わっているか、もしくは欠損しているか、または1個以上のアミノ酸残基がNIKの元の配列に付加されているNIKのアナログをいう。これらのムテインは、公知の合成により、および/または部位特異的突然変異誘発技術、あるいは、これに適当な任意の他の公知の手法により調製される。
【0211】
本発明によるムテインとしては、NIKをコードする本発明によるDNAまたはRNAにストリンジェント条件下でハイブリダイズする核酸(DNAまたはRNAなど)にコードされるタンパク質が挙げられる。用語「ストリンジェント条件」は、当業者が慣用的に「ストリンジェント」とよぶハイブリダイゼーションおよびその後の洗浄条件をいう。Ausubelら, Current Protocols in Molecular Biology(前出), Interscience, N. Y., §§6.3 および 6.4 (1987,1992), ならびに Sambrookら (Sambrook, J. C., Fritsch, E. F., および Maniatis, T. (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY)を参照のこと。
【0212】
限定されないが、ストリンジェント条件の例としては、研究対象のハイブリッドの計算値Tmより12〜20℃低く、たとえば、2×SSCおよび0.5%SDSを5分間、2×SSCおよび0.1%SDSを15分間;0.1×SSCおよび0.5%SDSを37℃で30〜60分間、次いで、0.1×SSCおよび0.5%SDSを68℃で30〜60分間における洗浄条件が挙げられる。当業者は、ストリンジェンシー条件がまた、DNA配列、オリゴヌクレオチドプローブ(10〜40塩基など)または混合オリゴヌクレオチドプローブの長さに依存することを理解している。混合プローブを使用する場合、SSCの代わりにテトラメチルアンモニウムクロリド(TMAC)を使用することが好ましい。Ausubel(前出)を参照のこと。
【0213】
任意のかかるムテインは、好ましくは、NIKに実質的に類似またはより良好でさえある活性を有するように、NIKのものと充分に重複性のアミノ酸の配列を有する。
【0214】
好ましい実施形態において、任意のかかるムテインは、NIKのアミノ酸配列と少なくとも40%の同一性または相同性を有する。より好ましくは、該配列と、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または最も好ましくは、少なくとも90%の同一性または相同性を有する。
【0215】
同一性は、配列の比較により調べる2つ以上のポリペプチド配列または2つ以上のポリヌクレオチド配列間の関係を反映する。一般に、同一性は、比較対象の配列の長さに関して、それぞれ、2つのポリヌクレオチドまたは2つのポリペプチド配列の正確なヌクレオチド対ヌクレオチドまたはアミノ酸対アミノ酸の一致をいう。
【0216】
正確な一致がない配列の場合、「同一性の割合」を決定し得る。一般に、比較対象の2つの配列をアラインメントし、配列間の最大相関関係を得る。これは、配列のいずれか一方または両方に「ギャップ」を挿入し、アラインメントの程度を向上させることを含み得る。同一性の割合は、比較対象の配列の各々の完全な長さに関して(いわゆる全体アラインメント)(同じまたは非常に類似した長さの配列に特に好適である)、またはより短い規定の長さに関して(いわゆる局所アラインメント)(長さが同じでない配列により適する)決定し得る。
【0217】
2つ以上の配列の同一性および相同性を比較するための方法は、当該技術分野において周知である。このため、たとえば、Wisconsin Sequence Analysis Package, version 9.1(Devereux Jら 1984, Nucleic 酸 Res. 1984 Jan 11;12 (1 Pt 1): 387-95.)で入手可能なプログラム、たとえば、プログラム BESTFIT and GAP が、2つのポリヌクレオチド間の同一性%ならびに2つのポリペプチド配列間の同一性%および相同性%を決定するために使用され得る。BESTFITは、Smith and Waterman(J Theor Biol. 1981 Jul 21;91 (2): 379-80 and J Mol Biol. 1981 Mar 25;147 (1):195-7. 1981)の「局所相同性」アルゴリズムを使用し、2つの配列間の類似性の最大の単一の領域を見出す。配列間の同一性および/または類似性を決定するための他のプログラムもまた当該技術分野において公知である(たとえば、BLAST ファミリーのプログラム(Altschul S F ら, 1990 J Mol Biol. 1990 Oct 5;215 (3): 403-10, Proc Natl Acad Sci U S A. 1990 Ju1;87 (14): 5509-13, Altschul S Fら, Nucleic Acids Res. 1997 Sep 1;25 (17): 3389-402, NCBIのホームページからwww.ncbi.nlm.nih.Govでアクセス可能)および FASTA (Pearson W R, Methods Enzymol. 1990;183: 63-98. Pearson J Mol Biol. 1998 Feb 13;276 (1):71-84))。
【0218】
本発明にしたがって使用され得るNIKのムテイン、またはこれをコードする核酸としては、本明細書に記載の教示および手引きに基づき、必要以上の実験をせずに、当業者により常套的に得られ得る置換ペプチまたはポリヌクレオチドに実質的に対応する有限な一群の配列が挙げられる。
【0219】
本発明によるムテインに対する好ましい変化は、「保存的」置換として知られるものである。NIKの保存的アミノ酸置換には、充分に類似した物理化学的特性を有し、群の構成員間での置換は分子の生物学的機能を保存している一群内の同義アミノ酸が含まれ得る。特に、挿入または欠失が数個のアミノ酸(たとえば30個未満、好ましくは10個未満)のみを伴い、かつ機能的コンホメーションに必須のアミノ酸(たとえば、システイン残基)を除去または置換されない場合、アミノ酸の挿入および欠失もまた、その機能を改変することなく前記規定配列において行なわれ得ることは明白である。かかる欠失および/または挿入によって生じるタンパク質およびムテインは、本発明の範囲に含まれる。
【0220】
好ましくは、同義アミノ酸群は表Aに規定されるものである。より好ましくは、同義アミノ酸群は表Bに規定されるものであり、最も好ましくは、同義アミノ酸群は表Cに規定されるものである。
【0221】
【表1】

【0222】
【表2】

【0223】
【表3】

【0224】
本発明における使用のために、NIKのムテインを得るために使用され得るタンパク質におけるアミノ酸置換の生成の例としては、任意の公知の方法の工程(たとえば、Markらに対する米国特許第4,959,314号、同第4,588,585号および同第4,737,462号;Kothsらに対する同第5,116,943号、Namenらに対する同第4,965,195号;Chongらに対する同第4,879,111号;およびLeeらに対する同第5,017,691号に示されるものなど)ならびに米国特許第4,904,584号(Shawら)に示されたリシン置換タンパク質が挙げられる。
【0225】
「機能性誘導体」は、本明細書で使用する場合、残基の側鎖として存在するか、または当該技術分野において公知の手段によりNまたはC末端基に付加された機能性基から調製され得るNIKの誘導体およびそのムテインを包含し、薬学的に許容し得る状態を維持する(すなわち、NIKの活性に実質的に類似したタンパク質の活性を破壊せず、かつこれを含有する組成物に対して毒性を付与しない)限り限り、本発明に含まれる。
【0226】
本発明による「活性断片」は、たとえば、NIKの断片であり得る。断片という用語は、分子の任意の亜集団、すなわち、所望の生物学的活性を維持したより短いペプチドをいう。断片は、NIK分子のいずれかの末端からアミノ酸を除去し、得られた断片をその活性について試験することにより容易に調製され得る。ポリペプチドのN末端またはC末端のいずれかから1度に1個のアミノ酸を除去するためのプロテアーゼは公知であり、所望の生物学的活性を維持している断片の測定は、常套的な実験法を伴うに過ぎない。
【0227】
NIKの活性断片、そのムテインおよび融合タンパク質として本発明は、タンパク質分子のポリペプチド鎖の任意の断片または前駆体(単独のもの、または分子と会合したもの、または残基(たとえば、糖残基またはリン酸残基)に結合したもの)またはタンパク質分子同士または糖残基との凝集体をさらに包含する。ただし、前記断片はNIKと実質的に類似活性を有するものとする。
【0228】
本明細書において、用語「塩」は、NIK分子またはそのアナログのカルボキシル基の塩およびアミノ基の酸付加塩の両方をいう。カルボキシル基の塩は、当該技術分野において公知の手段により形成され得、無機塩(たとえば、ナトリウム、カルシウム、アンモニウム、鉄または亜鉛の塩など)、および有機塩基との塩(たとえば、トリエタノールアミンなどのアミン、アルギニンまたはリシン、ピペラジン、プロパインなどと形成されるものなど)が挙げられる。酸付加塩としては、たとえば、無機酸(たとえば、たとえば、塩酸酸または硫酸など)との塩および有機酸(たとえば、たとえば、酢酸またはシュウ酸など)との塩が挙げられる。もちろん、任意のかかる塩は、NIKの生物学的活性を維持していなければならない。
【0229】
用語「円順列変異」は、本明細書で使用する場合、末端同士を直接またはリンカーを介してのいずれかで互いに結合して環状分子を作製し、次いで該環状分子を別の位置で開裂して末端が元の分子の末端と異なる新たな線状分子が作製された線状分子をいう。円順列変異としては、その構造が、環化した後開裂された分子に相当する分子が挙げられる。したがって、円順列変異させた分子は、線状分子として最初から合成され、環化工程および開裂工程を経ないものであってもよい。分子の特定の円順列変異は、両者間のペプチド結合が除かれたアミノ酸残基を含む区画によりにより指定される。円周方向に並べ替えた分子(DNA、RNAおよびタンパク質を含み得る)は、正常な末端同士の融合を有し(しばしば、リンカーにより)、別の新たな末端を含む単鎖分子である。Goldenberg,ら J. Mol. Biol., 165: 407-413 (1983) および Panら Gene 125: 111-114 (1993)(ともに、引用により本明細書に具体的に組み込まれる)を参照のこと。円周方向の並べ替えは、ある直線鎖分子を採用し、末端を融合して環状分子を形成し、次いで、環状分子を異なる位置で切断して異なる末端を有する新たな直線鎖分子を形成することと機能的に等価である。円周方向に並べ替えたものは、したがって、異なる位置に新たな末端を生成しつつ、タンパク質のアミノ酸の配列および同一性を本質的に保存する効果を有する。
【0230】
ヒト化抗体または抗体断片は、非ヒト抗体由来の(好ましくは、最初限の)部分を有する遺伝子操作されたキメラ抗体または抗体断片である。ヒト化抗体としては、ヒト抗体(レシピエント抗体)の相補性決定領域が、所望の機能性を有する非ヒト種(たとえば、マウス、ラットまたはウサギなど)(ドナー抗体)の相補性決定領域由来の残基と置き換えられた抗体が挙げられる。場合によっては、ヒト抗体のFvフレームワーク残基が、対応する非ヒト残基と置き換えられる。ヒト化抗体はまた、レシピエント抗体においても外来性(imported)相補性決定領域またはフレームワーク配列においても見られない残基を含有し得る。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的にすべてを含有し、ここで、相補性決定領域のすべてまたは実質的にすべてが非ヒト抗体のものに対応し、フレームワーク領域のすべてまたは実質的にすべてが関連するヒトコンセンサス配列のものに対応する。また、ヒト化抗体は、最適には、典型的にはヒト抗体由来の抗体定常領域の少なくともの一部分、たとえば、Fc領域などを含む(たとえば、Jonesら, 1986. Nature 321: 522-525;Riechmannら, 1988. Nature 332: 323-329;および Presta, 1992. Curr. Op. Struct. Biol. 2: 593-596を参照のこと)。非ヒト抗体または抗体断片のヒト化のための方法は、当該技術分野において周知である。一般的に、ヒト化抗体は、非ヒトである供給源から導入された1個以上のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、しばしば、外来性残基とよばれ、典型的には、外来性可変ドメインから採用される。本質的に、ヒト化は、記載(たとえば、Jonesら, 1986. Nature 321: 522-525;Riechmannら, 1988. Nature 332: 323-327;Verhoeyenら, 1988. Science 239: 1534-1536;米国特許第4,816,567号を参照のこと)のようにして、ヒト相補性決定領域を対応する齧歯類の相補性決定領域で置き換えることにより行なわれ得る。したがって、かかるヒト化抗体はキメラ抗体であり、インタクトなものより実質的に短いヒト可変ドメインが、非ヒト種由来の対応する配列で置き換えられている。実際面では、ヒト化抗体は、典型的には、いくつかの相補性決定領域残基(あるいはいくつかのフレームワーク残基)が、齧歯類抗体内の類似部位由来の残基で置き換えられたヒト抗体であり得る。ヒト抗体または抗体断片はまた、ファージディスプレイライブラリーなどの当該技術分野において公知の種々の手法を用いて作製することができる[たとえば、Hoogenboom および Winter, 1991. J. Mol. Biol. 227: 381;Marksら, 1991. J. Mol. Biol. 222: 581;Coleら,“Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy”, Alan R. Liss, pp. 77 (1985);Boernerら, 1991. J. Immunol. 147: 86-95を参照のこと)。ヒト化抗体はまた、ヒト免疫グロブリン遺伝子座をコードする配列を、内在性免疫グロブリン遺伝子が部分的にまたは完全に不活化されているトランスジェニック動物(たとえば、マウス)に導入することにより作製することができる。抗原によりチャレンジされると、ヒト抗体産生がかかる動物において観察され、これは、ヒトにおいて見られるものと、すべての点(遺伝子再編成、鎖合成および抗体レパートリーなど)において非常に類似する。かかるアプローチを行なうための充分な手引きは、当該技術分野の文献に提供されている(たとえば、米国特許第5,545,807号、同第5,545,806号、同第5,569,825号、同第5,625,126号、同第5,633,425号および同第5,661,016号;Marksら, 1992. Bio/Technology 10: 779-783;Lonbergら, 1994. Nature 368: 856-859;Morrison, 1994. Nature 368: 812-13;Fishwildら, 1996. Nature Biotechnology 14: 845-51;Neuberger, 1996. Nature Biotechnology 14: 826;Lonberg and Huszar, 1995. Intern. Rev. Immunol. 13: 65-93を参照のこと)。
【0231】
本明細書において上記のように、本発明の抗体断片は、好都合には、発現ベクターを用いて細胞内で発現され得る。
【0232】
発現ベクターにより個体の細胞を遺伝子工学的に改変するための好ましいアプローチは、ウイルス系ベクターを使用することである。ウイルス系ベクターは、高効率の形質転換、および特定の細胞型への標的化、および特定の細胞型内での増殖などのいくつかの利点をもたらす。ウイルス系ベクターはまた、特異的細胞受容体(たとえば、癌細胞受容体など)を介する標的特異性を改変するため、特異的受容体またはリガンドで修飾し得る。かかる標的化能力は、無規制なNF−κB活性を特徴とする細胞内に本発明の抗体または抗体断片の発現を指向するために使用することができる。
【0233】
レトロウイルス系ベクターは、本発明での使用に好適なベクターの類型の1つを示す。欠損レトロウイルスは、哺乳動物細胞(たとえば、上皮細胞、内皮細胞、リンパ球、筋芽細胞、肝細胞および骨髄細胞など)を遺伝子工学的に改変し、組換えタンパク質を発現させるためのベクターとして常套的に使用されている。レトロウイルス系ゲノムの一部分を除去してレトロウイルスを複製欠損とし、該複製欠損レトロウイルスを、次いで、ビリオン内にパッケージングし得、これを、ヘルパーウイルスの使用により、標準的な技術を用いて標的細胞を感染させるために使用することができる。組換えタンパク質を哺乳動物細胞内で発現させることができるレトロウイルス系ベクターを作製するための充分な手引きは、当該技術分野の文献に提供されている(たとえば、Miller, A. D., 1990. Blood 76: 271;Sambrookら、下記および関連する参考文献を参照のこと)。
【0234】
別の好適な発現ベクターは、アデノウイルス系ベクターであり得る。アデノウイルス系ベクターは、広く研究されており、常套的に使用されている遺伝子導入ベクターである。アデノウイルス系ベクターの重要な利点としては、分裂細胞および休止細胞の比較的高形質導入効率、広範な上皮組織への天然向性および高力価の容易な生成が挙げられる。アデノウイルスDNAは、核に輸送されるが、これに組み込まれない。したがって、アデノウイルス系ベクターによる突然変異誘発のリスクは最小限である。疾患を治療するためのアデノウイルス系ベクターの作製および利用のための充分な手引きは、当該技術分野の文献に提供されている[たとえば、Russel, W. C., 2000. J. Gen. Virol. 81: 57-63を参照のこと;癌治療でのアデノウイルス系ベクターの使用に関する手引きについては、たとえば、P. Seth (編) Adenoviruses: Basic biology to Gene Therapy, Landes, Austin, TX, pp. 103-120 (1999)のSethら, Adenoviral vectors for cancer gene therapy.を参照のこと]。
【0235】
好適なアデノウイルス系ベクターの具体例は、アデノウイルス由来ベクターAd−TKである。このベクターは、陽性または陰性いずれかの選択のためにヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(TK)遺伝子を発現し、所望の組換え配列のための発現カセットを含む。このベクターは、ほとんどの上皮起源の癌を含むアデノウイルス受容体を有する細胞感染させるために使用することができる(Sandmairら, 2000. Hum. Gene. Ther. 11: 2197-2205)。
【0236】
また、好適なウイルス系発現ベクターは、レトロウイルス系成分およびアデノウイルス系成分を兼ね備えたキメラ アデノウイルス/レトロウイルスベクターであり得、これは、伝統的な発現ベクターよりも効率がよいことが示されている。かかるベクターの作製および利用のための充分な手引きは、当該技術分野の文献に提供されている(たとえば、Panら, 2002. Cancer Letters 184: 179-188を参照のこと)。
【0237】
発現ベクターは、種々の方法で投与され得る。ウイルス系ベクターを用いる場合、手順は、その標的特異性を利用することができ、その結果として、かかるベクターは、疾患に罹患した解剖学的部位に局所的に投与する必要がないことがある。しかしながら、局所投与は、より速くより効果的な治療をもたらし得る。また、ウイルス系ベクターの投与は、たとえば、個体への静脈内または皮下注射により行なわれ得る。注射後、ウイルス系ベクターは、感染のための適切な標的特異性を有する宿主細胞を認識するまで循環する。
【0238】
本明細書において上記のように、本発明は、本発明の抗体または抗体断片活性成分として含有する医薬組成物を提供する。
【0239】
本明細書において使用する場合、語句「医薬組成物」は、本明細書に記載の1種類以上の活性成分の他の化学的成分(たとえば、生理学的に好適な担体および賦形剤など)との調製物をいう。医薬組成物の目的は、活性成分の生物体への投与を容易にすることである。
【0240】
本明細書において、用語「活性成分」は、生物学的効果を担い得る本発明の抗体または抗体断片をいう。
【0241】
以下、語句「生理学的に許容され得る担体」および「薬学的に許容し得る担体」は、互換的に使用され得、生物体に対して有意な刺激を引き起こさず、かつ投与された活性成分の生物学的活性および特性を無効にしない担体または希釈剤をいう。アジュバントは、これらの語句に含まれる。
【0242】
本明細書において、用語「賦形剤」は、活性成分の投与をさらに容易にするために医薬組成物に添加される不活性な物質をいう。賦形剤の限定されない例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、種々の類型の糖類およびデンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油およびポリエチレングリコールが挙げられる。
【0243】
薬物の製剤化および投与のための手法は、“Remington's Pharmaceutical Sciences”, Mack Publishing Co., Easton, PA, 最新版(引用により本明細書に具体的に組み込まれる)に見られ得る。
【0244】
医薬組成物の投与の好適な経路としては、たとえば、経口、経直腸、経粘膜、特に経皮、腸または非経口送達(筋肉内、皮下および髄内注射など)ならびに鞘内、直接脳質内、静脈内、腹腔内、鼻腔内または眼球内注射が挙げられ得る。
【0245】
あるいはまた、医薬組成物は、全身性様式でなく局所において、たとえば、個体の組織領域内への直接の医薬組成物の注射によって投与され得る。
【0246】
本発明の医薬組成物は、当該技術分野において周知の方法によって、たとえば、慣用的な混合、溶解、造粒、糖衣錠作製、微粒化、乳化、カプセル封入、内包または凍結乾燥方法によって製造され得る。
【0247】
したがって、本発明にしたがう使用のための医薬組成物は、慣用的な様式で、1種類以上の生理学的に許容され得る担体(活性成分の薬学的に許容し得る調製物内への囲う処理を容易にする賦形剤および補助剤)を用いて製剤化され得る。適切な製剤は、選択される投与経路に依存する。
【0248】
注射のためには、医薬組成物の活性成分は、水溶液中、好ましくは生理学的に適合性のある緩衝液(たとえば、ハンクス溶液、リンゲル溶液または生理食塩緩衝液)中に製剤化され得る。経粘膜投与のためには、障壁を透過するのに適当な浸透剤を製剤中に使用する。かかる浸透剤は、一般的に、当該技術分野において公知である。
【0249】
経口投与のためには、医薬組成物は、活性成分を当該技術分野において周知の薬学的に許容し得る担体と組み合わせることによって容易に製剤化され得る。かかる担体は、医薬組成物が、患者による経口摂取のための錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル、液剤、ゲル剤、シロップ、スラリー剤、懸濁などに製剤化されるのを可能にする。経口使用のための薬理学的調製物は、固体賦形剤を用い、任意に、得られた混合物を磨砕し、所望により適当な補助剤を添加した後、顆粒混合物に加工処理して錠剤または糖衣錠コアを得ることにより作製され得る。好適な賦形剤は、特に、充填剤(たとえば、ラクトース、スクロース、マンニトールまたはソルビトールなどの糖類など);セルロース調製物(たとえば、トウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、イモデンプン、ゼラチン、トラガカントガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウムカルボメチルセルロースなど);および/または生理学的に許容され得るポリマー(たとえば、ポリビニルピロリドン(PVP)など)である。所望により、たとえば、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはその塩(たとえば、アルギン酸など)などの崩壊剤を添加してもよい。
【0250】
糖衣錠コアには適当なコーティングが施される。この目的のため、任意にアラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールジェル、ポリエチレングリコール、二酸化チタン、ラッカー溶液および適当な有機溶媒または溶媒混合物を含に得る濃縮糖溶液が使用され得る。異なる組み合わせの活性成分投薬量を識別または特徴付けるため、染料または顔料を錠剤または糖衣錠コーティングに添加してもよい。
【0251】
経口で使用することができる医薬組成物としては、ゼラチン製の押し込み型カプセルならびにゼラチンおよび可塑剤(たとえば、グリセロールまたはソルビトールなど)で作製された軟質密封カプセルが挙げられる。押し込み型カプセルは、活性成分を、充填剤(たとえば、ラクトース、結合剤(たとえば、デンプンなど)、滑剤(たとえば、タルクまたはステアリン酸マグネシウムなど)および任意に可塑剤など)と混合した状態でを含み得る。軟質カプセルでは、活性成分を、適当な液体(たとえば、脂肪油、液状パラフィンまたは液状ポリエチレングリコールなど)中に溶解または懸濁させ得る。また、可塑剤を添加してもよい。経口投与のためのすべての製剤は、選択した投与経路に適した用量であるべきである。
【0252】
口内投与のためには、組成物は、慣用的な様式で製剤化される錠剤またはトローチ剤の形態をとり得る。
【0253】
鼻腔吸入による投与のためには、本発明による使用のための活性成分は、加圧パックからのエーロゾル噴霧提示または好適なプロペラント(たとえば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタンまたは二酸化炭素)の使用を伴うネブライザーの形態で簡便に送達される。加圧エーロゾルの場合、投薬単位は、定量を到達するためのバルブを設けることにより決定され得る。ディスペンサーにおける使用のため、活性成分の粉末ミックスおよび適当な粉末基剤(たとえば、ラクトースまたはデンプンなど)を含む、たとえばゼラチン製のカプセルおよびカートリッジを製剤化し得る。
【0254】
本明細書に記載の医薬組成物は、たとえば、ボーラス注射または連続輸液により、非経口投与用に製剤化され得る。注射用の製剤は、単位投薬形態で、たとえば、任意に保存料を添加したアンプルまたは反復投与容器にて提示され得る。該組成物は、油性または水性ビヒクル中の懸濁剤、液剤またはエマルジョンであり得、懸濁剤、安定剤および/または分散剤などの製剤用剤を含み得る。
【0255】
非経口投与用の医薬組成物としては、水溶性形態の活性調製物の水溶液が挙げられる。加えて、活性成分の懸濁液は、適切な油性または水系注射懸濁剤として調製され得る。好適な親油性の溶媒またはビヒクルとしては、ゴマ油などの脂肪油、または合成脂肪酸エステル(たとえば、オレイン酸エチル、トリグリセリドもしくはリポソームなど)が挙げられる。
【0256】
水性注射用懸濁剤は、該懸濁剤の粘度を増加させる物質、たとえば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトールまたはデキストランなどを含み得る。任意に、懸濁剤はまた、好適な可塑剤、または高度に濃縮された溶液の調製を可能にするために活性成分の溶解度を増加させる薬剤を含み得る。
【0257】
あるいはまた、活性成分は、使用前に、好適なビヒクル(たとえば、発熱物質無含有の滅菌水系溶液)で構築するための粉末形態であり得る。
【0258】
本発明の医薬組成物また、たとえば、慣用的な座剤用基剤(たとえば、ココアバターまたは他のグリセリドなど)を用い、経直腸組成物(たとえば、座剤または停留浣腸など)に製剤化され得る。
【0259】
本発明の状況における使用のために好適な医薬組成物としては、活性成分が意図した目的を達成するのに有効な量で含まれる組成物が挙げられる。より詳細には、治療有効量は、疾患の症状を予防、緩和もしくは改善することができるか、または治療対象の個体の生存を延長することができる活性成分(本発明の抗体または抗体断片)の量を意味する。
【0260】
治療有効量の決定は、特に、本明細書に提供された詳細な開示内容を考慮すると、充分、当業者の範囲内である。
【0261】
本発明の方法において使用される任意の調製物について、治療有効量または治療投薬量は、まず、インビトロ細胞培養アッセイからから概算され得る。たとえば、所望の濃度または力価を達成する投薬量が動物モデルにおいて策定され得る。かかる情報を用い、ヒトにおいて有用な投薬量をより正確に決定することができる。
【0262】
本明細書に記載の活性成分の毒性または治療的効能は、標準的なインビトロ製薬手順により、細胞培養物または実験動物において測定され得る。これらのインビトロ細胞培養アッセイおよび動物試験から得れらたデータを、ヒトにおける使用のための用量範囲を策定するために使用することができる。該用量は、使用した投薬形態および用いた投与経路に応じて異なり得る。正確な製剤、投与経路および用量は、患者の状態を考慮して個々の医師によって選択され得る(たとえば、“The Pharmacological Basis of Therapeutics”, 第1章 p.1のFinglら, 1975 を参照のこと)。
【0263】
投薬の量および間隔は、所望の治療効果(最小有効濃度MEC)を奏するのに充分な活性成分の血漿レベルまたは脳レベルをもたらすために個々に調整し得る。MECは、各調製物で異なるが、インビトロデータから概算し得る。MECを達成するのに必要な用量は、個体の特徴および投与経路に依存する。血漿濃度を測定するために、検出アッセイを使用することができる。
【0264】
治療対象の状態の重篤度および応答性に応じて、投薬は、1回、または数日間から数週間持続する治療過程をともなって、または治癒するまで、もしくは疾患状態の減退が達成されるまでの複数回の投与であり得る。
【0265】
投与される組成物の量は、もちろん、治療対象の個体、苦痛の重篤度、投与様式、処方する医師の判断などに依存性である。
【0266】
本発明の組成物は、所望により、活性成分を含有する単位投薬形態を1つ以上含み得るパックまたはディスペンサーデバイス(たとえば、FDA承認など)にて提示され得る。パックは、たとえば、金属またはプラスチックのホイル(たとえば、ブリスターパック)を含有し得る。パックまたはディスペンサーデバイスには、投与のための指示書が添付されてもよい。パックまたはディスペンサーにはまた、政府機関による医薬品の製造、使用または販売規制により指示された形態の容器に関連する通知が添付されてもよく、該通知は、組成物の形態またはヒト用もしくは獣医用投与の該機関による承認を反映する。かかる通知は、たとえば、処方薬について米国食品医薬品局により承認されたラベル表示、または承認製品挿入物であり得る。適合性のある医薬用担体内に製剤化された本発明の抗体または抗体断片を含有する組成物はまた、適切な容器内で調製および配置され、先にさらに詳述したように、適応症状の治療のためにラベル表示される。
【0267】
本明細書において上記のように、本発明は、病的免疫応答と関連する疾患を治療するために使用され得る。
【0268】
かかる疾患の例としては、I型(即時型またはIgE媒介性)過敏症と関連する疾患、II型(抗体媒介性)過敏症と関連する疾患、IV型(Tリンパ球媒介性)過敏症と関連する疾患、遅延型過敏症(DTH)と関連する疾患、自己免疫疾患および移植片の移植と関連する疾患が挙げられる。
【0269】
過敏症と関連する疾患のさらなる例としては、たとえば、III型(免疫複合体媒介性)過敏症と関連する疾患、炎症と関連する疾患、感染と関連する疾患および特発性過敏症と関連する疾患が挙げられる。
【0270】
I型過敏症の例としては、限定されないが、喘息、蕁麻疹性丘疹、蕁麻疹、花粉アレルギー、チリダニアレルギー、毒液アレルギー、化粧品アレルギー、ラテックスアレルギー、化学物質アレルギー、薬物アレルギー、虫刺されアレルギー、動物鱗屑アレルギー、刺棘植物アレルギー、ツタウルシアレルギーおよび食物アレルギーなどのアレルギー性疾患が挙げられる。
【0271】
II型過敏症の例としては、限定されないが、以下のものが挙げられる:リウマチ様疾患、リウマチ様自己免疫疾患、関節リウマチ(Krenn V.ら, 2000. Histol Histopathol. 15: 791)、脊椎炎、強直性脊椎炎(Jan Voswinkelら, 2001. Arthritis Res. 3: 189)、全身性疾患、全身性自己免疫疾患、全身エリテマトーデス(Erikson J.ら, 1998. Immunol Res. 17: 49)、硬化症、全身硬化症(Renaudineau Y.ら, 1999. Clin Diagn Lab Immunol. 6: 156);Chan OT.ら, 1999. Immunol Rev. 169: 107)、腺疾患、腺自己免疫疾患、膵臓自己免疫疾患、糖尿病、I型糖尿病(Zimmet P. 1996. Diabetes Res Clin Pract. 34 Suppl: S125)、甲状腺疾患、自己免疫性甲状腺疾患、グレーヴス疾患(Orgiazzi J. 2000. Endocrinol Metab Clin North Am. 29: 339)、甲状腺炎、自発性(spontaneous)自己免疫性甲状腺炎(Braley-Mullen H. および Yu S. 2000. J Immunol. 165 (12): 7262)、橋本甲状腺炎(Toyoda N.ら, Nippon Rinsho 1999.57 (8): 1810)、粘液水腫、特発性粘液水腫(Mitsuma T. Nippon Rinsho. 1999.57 (8): 1759);自己免疫性生殖器疾患、卵巣疾患、卵巣自己免疫(Garza KM.ら J Reprod Immunol. 1998. 37 (2): 87)、自己免疫性抗精子不妊(Diekman AB.ら, Am J Reprod Immunol. 2000.43 (3): 134)、反復性流産(fetal loss)(Tincani A.ら, Lupus 1998.7 Suppl 2: S107-9)、神経変性疾患、神経系疾患、神経系自己免疫疾患、多発性硬化症(Cross AH.ら, J Neuroimmunol. 2001. 112 (1-2): 1)、アルツハイマー病(Oron L.ら, J Neural Transm Suppl. 1997.49:77)、重症筋無力症(Infante AJ. および Kraig E. Int Rev Immunol. 1999.18 (1-2): 83)、運動神経障害(Komberg AJ. J Clin Neurosci. 2000.7 (3): 191)、ギラン・バレー症候群、神経障害および自己免疫性神経障害(Kusunoki S. Am J Med Sci. 2000.319 (4): 234)、無筋力症疾患、ランバート・イートン無筋力症候群(Takamori M. Am J Med Sci. 2000.319 (4): 204)、腫瘍随伴性神経系疾患、小脳萎縮、腫瘍随伴性小脳萎縮、非腫瘍随伴性スティフマン症候群、小脳萎縮症、進行性小脳萎縮症、脳炎、ラスムッセン脳炎、筋萎縮性側索硬化症硬化症、シドナム舞踏病、ジル・ド・ラ・ツレット症候群、多発性内分泌腺症、自己免疫性多発性内分泌腺症(Antoine JC. および Hoimorat J. Rev Neurol (Paris) 2000.156 (1):23);神経障害、免疫異常神経障害(dysimmune neuropathy) (Nobile-Orazio E.ら, Electroencephalogr Clin Neurophysiol Suppl. 1999.50:419);神経性筋緊張症(neuromyotonia)、後天性神経性筋緊張症、先天性多発性関節拘縮症(Vincent A.ら, Ann N Y Acad Sci. 1998.841:482)、心臓血管疾患、心臓血管自己免疫疾患、アテローム性動脈硬化(Matsuura E.ら, Lupus. 1998.7 Suppl 2: S135)、心筋梗塞(Vaarala O. Lupus. 1998.7 Suppl 2: S132)、血栓症(Tincani A.ら, Lupus 1998.7 Suppl 2: S107-9)、肉芽腫症、ヴェグナー肉芽腫症、動脈炎、高安動脈炎および川崎病(Praprotnik S.ら Wien Klin Wochenschr 2000.112 (15-16): 660);抗第VIII因子自己免疫疾患(Lacroix-Desmazes S.ら, Semin Tliromb Hemost. 2000.26 (2): 157);脈管炎(vasculitusis),壊死性小管(small vessel)脈管炎、顕微鏡的多発脈管炎、チャーグ−ストラウス症候群、糸球体腎炎、少免疫焦点性(pauci-immunofocal)壊死性糸球体腎炎、半月形糸球体腎炎(Noel LH. Ann Med Interne (Paris). 2000.151 (3): 178);抗リン脂質症候群(Flamholz R.ら, JClinApheresis 1999.14 (4): 171);心不全、心不全におけるアゴニスト様β−アデノレセプター抗体(Wallukat G.ら, Am J Cardio. 1999.83 (12A): 75H)、特発性血小板減少性紫斑病(Moccia F. Ann Ital Med Int. 1999.14 (2): 114);溶血性貧血、自己免疫溶血性貧血(Efremov DG.ら, Leuk Lymphoma 1998. 28 (3-4): 285)、胃腸疾患、胃腸管の自己免疫疾患、腸疾患、慢性炎症性腸疾患(Garcia Herola A.ら Gastroenterol Hepatol. 2000 Jan;23 (1):16)、セリアック病(Landau YE. および Shoenfeld Y. Harefuah 2000.138 (2): 122)、筋系の自己免疫疾患、筋炎、自己免疫筋炎、シェーグレン症候群(Feist E.ら, Int Arch Allergy Immunol. 2000.123 (1):92);平滑筋自己免疫疾患(Zauli D.ら, Biomed Pharmacother. 1999.53 (5-6): 234)、肝臓疾患、肝臓自己免疫疾患、自己免疫肝炎(Manns MP. J Hepatol. 2000.33 (2): 326)および原発性胆汁性肝硬変(Strassburg CP.ら., Eur J Gastroenterol Hepatol. 1999.11 (6): 595)。
【0272】
III型過敏症の例としては、限定されないが、Fc受容体(たとえば、Fcγ受容体)によりたとえば免疫複合体活性化された免疫エフェクター細胞(好中球またはマクロファージなど)により媒介される疾患が挙げられる。
【0273】
IV型過敏症の例としては、限定されないが、リウマチ様疾患、関節リウマチ(Tisch R and McDevitt HO. Proc Natl Acad Sci U S A 1994.91 (2): 437)、全身疾患、全身自己免疫疾患、全身エリテマトーデス(Datta SK., Lupus 1998. 7 (9): 591)、腺疾患、腺自己免疫疾患、膵臓疾患、膵臓自己免疫疾患、I型糖尿病(Castano L. および Eisenbarth GS. Ann. Rev. Immunol. 8: 647);甲状腺疾患、自己免疫性甲状腺疾患、グレーヴス疾患(Sakata S.ら, Mol Cell Endocrinol. 1993.92 (1):77);卵巣疾患(Garza KM.ら, J Reprod Immunol. 1998.37 (2): 87)、前立腺炎、自己免疫前立腺炎(Alexander RB.ら, Urology 1997.50 (6): 893)、多発腺症候群、自己免疫多発腺症候群、I型自己免疫多発腺症候群(Hara T.ら, Blood 1991.77 (5): 1127)、神経系疾患、自己免疫神経系疾患、多発性硬化症、神経炎、視神経炎(Soderstrom M.ら, J Neurol Neurosurg Psychiatry 1994.57 (5): 544)、重症筋無力症(Oshima M.ら Eur J Immunol. 1990.20 (12): 2563)、スティッフマン症候群(Hiemstra HS.ら, Proc Natl Acad Sci U S A 2001.98 (7): 3988)、心臓血管疾患、シャーガス病における心臓自己免疫(Cunha-Neto E.ら, J Clin Invest. 1996.98 (8): 1709)、自己免疫特発性血小板減少性紫斑病(Semple JW.ら, Blood 1996.87 (10): 4245)、抗ヘルパーTリンパ球自己免疫(Caporossi AP.ら, Viral Immunol. 1998.11 (1):9)、溶血性貧血(Sallah S.ら, Ami Hematol. 1997.74 (3): 139)、肝臓疾患、肝臓自己免疫疾患、肝炎、慢性活性肝炎(Franco A.ら, Clin Immunol Immunopathol. 1990. 54 (3): 382)、胆汁性肝硬変、原発性胆汁性肝硬変(Jones DE. Clin Sci (Colch) 1996.91 (5): 551)、腎臓疾患、腎臓自己免疫疾患、腎炎、間質性腎炎(Kelly CJ. J Am Soc Nephrol. 1990.1 (2): 140)、結合組織疾患、耳の疾患、自己免疫結合組織疾患、自己免疫性の耳の疾患(Yoo TJ.ら, Cell Immunol. 1994.157 (1):249)、内耳の疾患(Gloddek B.ら, Ann N Y Acad Sci. 1997.830:266)、皮膚病、皮膚疾患、真皮疾患、水疱型皮膚疾患、尋常性天疱瘡、水疱型天疱瘡様および落葉状天疱瘡が挙げられる。
【0274】
遅延型過敏症と関連する疾患の例としては、限定されないが、接触皮膚炎および薬疹が挙げられる。
【0275】
自己免疫疾患の例としては、限定されないが、心臓血管疾患、リウマチ様疾患、腺疾患、胃腸疾患、皮膚疾患、肝臓疾患、神経系疾患、筋疾患、腎臓疾患、生殖に関連する疾患、結合組織疾患および全身疾患が挙げられる。
【0276】
自己免疫心臓血管疾患の例としては、限定されないが、アテローム性動脈硬化(Matsuura E.ら, Lupus. 1998 7 Suppl 2: S135)、心筋梗塞(Vaarala O. Lupus. 1998.7 Suppl 2: S132)、血栓症(Tincani A.ら, Lupus 1998.7 Suppl 2: S107-9)、ヴェグナー肉芽腫症、高安動脈炎、川崎病(Praprotnik S.ら, Wien Klin Wochenschr. 2000.112 (15-16): 660)、抗第VIII因子自己免疫疾患(Lacroix-Desmazes S.ら, Semin Tliromb Hemost. 2000.26 (2): 157)、壊死性小管脈管炎、顕微鏡的多発脈管炎、チャーグ−ストラウス症候群、少免疫焦点性壊死性および半月形糸球体腎炎(Noel LH. Ann Med Interne (Paris). 2000.151 (3): 178)、抗リン脂質症候群(Flamholz R.ら, J Clin Apheresis 1999.14 (4): 171)、抗体誘導型心不全(Wallukat G.ら, (1999) Am J Cardiol. 83 (12A): 75H)、特発性血小板減少性紫斑病(Moccia F. Ann Ital Med Int. 1999. 14 (2): 114;Semple JW.ら, Blood 1996.87 (10): 4245)、自己免疫溶血性貧血(Efremov DG.ら Leuk Lymphoma 1998 28 (3-4):285;Sallah S.ら, Ann Hematol. 1997.74 (3): 139)、シャーガス病における心臓自己免疫(Cunha-Neto E.ら, J Clin Invest. 1996.98 (8): 1709)および抗ヘルパーTリンパ球自己免疫(CaporossiAP.ら, ViralImmunol. 1998.11 (1):9)が挙げられる。
【0277】
自己免疫リウマチ様疾患の例としては、限定されないが、関節リウマチ(Krenn V.ら, (2000) Histol Histopathol. 15 (3): 791;Tisch R, McDevitt HO. (1994) Proc Natl Acad Sci U S A. 91 (2): 437)および強直性脊椎炎(Jan Voswinkelら, (2001) Arthritis Res. 3 (3): 189)が挙げられる。
【0278】
自己免疫腺疾患の例としては、限定されないが、膵臓疾患、I型糖尿病、甲状腺疾患、グレーヴス疾患、甲状腺炎、自発性自己免疫性甲状腺炎、橋本甲状腺炎、特発性粘液水腫、卵巣自己免疫、自己免疫抗精子不妊、自己免疫前立腺炎およびI型自己免疫多発腺症候群疾患、膵臓の自己免疫疾患、I型糖尿病(Castano L. および Eisenbarth GS. 1990. Ann. Rev. Immunol. 8: 647;Zimmet P. Diabetes Res Clin Pract. 1996.34 Suppl:S125)、自己免疫性甲状腺疾患、グレーヴス疾患(Orgiazzi J. Endocrinol Metab Clin North Am. 2000.29 (2): 339;Sakata S.ら, Mol Cell Endocrinol. 1993. 92 (1):77)、自発性自己免疫性甲状腺炎(Braley-Mullen H. および Yu S, J Immunol. 2000.165 (12): 7262)、橋本甲状腺炎(Toyoda N.ら Nippon Rinsho 1999.57 (8): 1810)、特発性粘液水腫(Mitsuma T. Nippon Rinsho. 1999. 57 (8): 1759)、卵巣自己免疫(Garza KM.ら, J Reprod Immunol. 1998. 37 (2): 87)、自己免疫抗精子不妊(Diekman AB.ら, Am J Reprod Immunol. 2000.43 (3): 134)、自己免疫前立腺炎(Alexander RB.ら, Urology 1997,50 (6): 893)およびI型自己免疫多発腺症候群(Hara T.ら, Blood. 1991.77 (5): 1127)が挙げられる。
【0279】
自己免疫胃腸疾患の例としては、限定されないが、慢性炎症性腸疾患(Garcia Herola A.ら, Gastroenterol Hepatol. 2000.23 (1):16)、セリアック病(Landau YE. および Shoenfeld Y. Harefuah 2000. 138 (2): 122)、大腸炎、回腸炎およびクローン病が挙げられる。
【0280】
自己免疫皮膚疾患の例としては、限定されないが、自己免疫水疱型皮膚疾患(たとえば、限定されないが、尋常性天疱瘡、水疱型天疱瘡様および落葉状天疱瘡など)が挙げられる。
【0281】
自己免疫肝臓疾患の例としては、限定されないが、肝炎、自己免疫慢性活性肝炎(Franco A.ら, Clin Immunol Immunopathol. 1990.54 (3): 382)、原発性胆汁性肝硬変(Jones DE. Clin Sci (Colch) 1996.91 (5): 551;Strassburg CP.ら, Eur J Gastroenterol Hepatol. 1999.11 (6):595) および自己免疫肝炎(Manns MP. J Hepatol. 2000.33 (2): 326)が挙げられる。
【0282】
自己免疫神経系疾患の例としては、限定されないが、多発性硬化症(Cross AH.ら, J Neuroimmunol. 2001.112 (1-2): 1)、アルツハイマー病(Oron L.ら, J Neural Transm Suppl. 1997.49:77)、重症筋無力症(Infante AJ. and Kraig E, Int Rev Immunol. 1999.18 (1-2): 83;Oshima M.ら Eur J Immunol. 1990.20:2563)、神経障害、運動神経障害(motor neuropathies)(Kornberg AJ. J Clin Neurosci. 2000.7:191);ギラン・バレー症候群および自己免疫性神経障害(Kusunoki S. Am J Med Sci. 2000.319 (4): 234)、筋無力症、ランバート・イートン無筋力症候群(Takamori M. Am J Med Sci. 2000.319 (4): 204);腫瘍随伴性神経系疾患、小脳萎縮、腫瘍随伴性小脳萎縮およびスティッフマン症候群(Hiemstra HS.ら, Proc Natl Acad Sci U S A 2001.98 (7): 3988);非腫瘍随伴性スティッフマン症候群、進行性小脳萎縮症、脳炎、ラスムッセン脳炎、筋萎縮性側索硬化症硬化症、シドナム舞踏病、ジル・ド・ラ・ツレット症候群および自己免疫性多発性内分泌腺症(Antoine JC. and Honnorat J. Rev Neurol. (Paris) 2000.156 (1):23);免疫異常神経障害(Nobile-Orazio E.ら, Electroencephalogr Clin Neurophysiol Suppl. 1999.50:419);後天性神経性筋緊張症、先天性多発性関節拘縮症(Vincent A.ら, Ann N Y Acad Sci. 1998.841:482)、神経炎、視神経炎(Soderstrom M.ら, J Neurol Neurosurg Psychiatry 1994.57 (5): 544)および神経変性疾患が挙げられる。
【0283】
自己免疫筋疾患の例としては、限定されないが、筋炎、自己免疫筋炎および原発性シェーグレン症候群(Feist E.ら, Int Arch Allergy Immunol. 2000.123 (1):92)および平滑筋自己免疫疾患(Zauli D.ら, Biomed Pharmacother. 1999.53 (5-6): 234)が挙げられる。
【0284】
自己免疫腎臓疾患の例としては、限定されないが、腎炎および自己免疫間質性腎炎(Kelly CJ. J Am Soc Nephrol. 1990. 1 (2): 140)が挙げられる。
【0285】
生殖に関連する自己免疫疾患の例としては、限定されないが、反復性流産(Tincani A.ら, Lupus 1998.7 Suppl 2: S107-9)が挙げられる。
【0286】
自己免疫結合組織疾患の例としては、限定されないが、耳の疾患、自己免疫性の耳の疾患(Yoo TJ.ら, Cell Immunol. 1994. 157 (1):249)および内耳の自己免疫疾患(Gloddek B.ら, Ann N Y Acad Sci. 1997.830:266)が挙げられる。
【0287】
自己免疫全身疾患の例としては、限定されないが、全身エリテマトーデス(Erikson J.ら, Immunol Res. 1998.17 (1-2): 49)および全身硬化症(Renaudineau Y.ら, Clin Diagn Lab Immunol. 1999.6 (2): 156);Chan OT.ら, Immunol Rev. 1999.16:107)が挙げられる。
【0288】
感染性疾患の例としては、限定されないが、慢性感染性疾患、亜急性感染性疾患、急性感染性疾患、ウイルス系疾患、細菌性疾患、原生動物疾患、寄生虫性疾患、真菌性疾患、マイコプラズマ疾患およびプリオン疾患が挙げられる。
【0289】
移植に関連する疾患の例としては、限定されないが、移植片拒絶、慢性移植片拒絶、亜急性移植片拒絶、超急性移植片拒絶、急性移植片拒絶および移植片対宿主病が挙げられる。
【0290】
移植片の例としては、同系移植片、同種移植片、異種移植片、細胞性移植片、組織移植片、器官移植片および付属器移植片が挙げられる。
【0291】
細胞性移植片の例としては、限定されないが、幹細胞移植片、前駆細胞移植片、造血細胞移植片、胚細胞移植片および神経細胞移植片が挙げられる。
【0292】
組織移植片の例としては、限定されないが、皮膚移植片、骨移植片、神経移植片、腸移植片、角膜移植片、軟骨移植片、心臓組織移植片、心臓弁移植片、歯科用移植片、毛包移植片および筋肉移植片が挙げられる。
【0293】
器官移植片の例としては、限定されないが、腎臓移植片、心臓移植片、皮膚移植片、肝臓移植片、膵臓移植片、肺移植片および腸移植片が挙げられる。
【0294】
付属器移植片の例としては、限定されないが、腕移植片、脚移植片、手移植片、足移植片、指移植片、足指移植片および生殖器移植片が挙げられる。
【0295】
炎症性疾患の例としては、限定されないが、創傷、神経変性疾患、潰瘍、人工装具インプラントと関連する炎症、月経、敗血症ショック、アナフィラキシーショック、毒素性ショック症候群、悪液質、壊死、壊疽、筋骨格炎症および特発性炎症が挙げられる。
【0296】
人工装具インプラントの例としては、限定されないが、乳房インプラント、シリコーンインプラント、歯科用インプラント、陰茎インプラント、心臓インプラント、人工関節、骨折修復装置、骨置換インプラント、薬物送達インプラント、カテーテル、ペースメーカー、呼吸器用チューブ(respirator tube)およびステントが挙げられる。
【0297】
潰瘍の例としては、限定されないが、皮膚潰瘍、床擦れ、胃潰瘍、消化性潰瘍、口内の潰瘍、鼻咽頭の潰瘍、食道の潰瘍、十二指腸潰瘍、潰瘍性大腸炎および胃腸の潰瘍が挙げられる。
【0298】
創傷の例としては、限定されないが、擦過傷、打撲傷、切り傷、刺し傷、裂傷、衝撃による創傷(impact wound)、振とう症、挫傷、熱傷、凍傷、化学的熱傷、日焼け、乾燥(dessication)、放射線熱傷、放射能熱傷、気道熱傷(smoke inhalation)、筋肉裂傷、筋肉内障(pulled)、腱裂傷、腱内障、靭帯内障、靭帯裂傷、過伸展、軟骨裂傷、骨折、ピンチナーブ(pinched nerve)および射創が挙げられる。
【0299】
筋骨格炎症の例としては、限定されないが、筋肉炎症、筋炎、腱炎症、腱炎、靭帯炎症、軟骨炎症、関節炎症、滑膜炎症、手根管症候群および骨炎症が挙げられる。
【0300】
本明細書において使用する場合、用語「約」は±10パーセントをいう。
【0301】
本特許の存続期間において、多くの関連する医学的診断技術が開発されることが予測されるが、用語「検出する」の範囲は、標的抗原に関する場合、演繹的に(a priori)かかる新規な技術をすべて含むことを意図する。
【0302】
本発明のさらなる目的、利点および新規特徴は、以下の限定を意図しない実施例の試験時に当業者に自明となろう。加えて、上記に示し、かつ以下の特許請求の範囲に請求した本発明の種々の実施形態および態様の各々について、以下の実施例において、実験的裏づけが見出されよう。
【実施例】
【0303】
次に、上記の記載とともに非限定的に本発明を説明する以下の実施例について、言及する。
【0304】
一般的に、本明細書において使用される命名法および本発明において用いられる実験手順は、分子的、生化学的、微生物学的および組換えDNA技術を含む。かかる技術は、文献に充分に説明されている。たとえば、“Molecular Cloning: A laboratory Manual” Sambrookら, (1989); “Current Protocols in Molecular Biology” 第I~III巻 Ausubel, R. M.編 (1994);Ausubelら, “Current Protocols in Molecular Biology”, John Wiley and Sons, Baltimore, Maryland (1989);Perbal, “A Practical Guide to Molecular Cloning”, John Wiley & Sons, New York (1988);Watsonら, “Recombinant DNA”, Scientific American Books, New York;Birrenら, (編) “Genome Analysis: A Laboratory Manual Series”, 1〜4巻, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York (1998);米国特許第4,666,828号;同第4,683,202号;同第4,801,531号;同第5,192,659号および同第5,272,057号に記載の方法論; “Cell Biology: A Laboratory Handbook”, I〜III巻 Cellis, J. E.編 (1994); “Current Protocols in Immunology” I〜III巻 Coligan J. E.編 (1994);Stitesら, (編), “Basic and Clinical Immunology” (第8版), Appleton & Lange, Norwalk, CT (1994);Mishell および Shiigi (編), “Selected Methods in Cellular Immunology”, W. H. Freeman and Co., New York (1980) を参照のこと;利用可能なイムノアッセイは特許および科学文献にさらに記載されている。たとえば、米国特許第3,791,932号;同第3,839,153号;同第3,850,752号;同第3,850,578号;同第3,853,987号;同第3,867,517号;同第3,879,262号;同第3,901,654号;同第3,935,074号;同第3,984,533号;同第3,996,345号;同第4,034,074号;同第4,098,876号;同第4,879,219号;同第5,011,771号;および同第5,281,521号; “Oligonucleotide Synthesis” Gait, M. J.編 (1984); “Nucleic Acid Hybridization” Hames, B. D., および Higgins S. J.編 (1985); “Transcription and Translation” Hames, B. D.および Higgins S. J.編 (1984);“Animal Cell Culture” Freshney, R. I.編 (1986); “Immobilized Cells and Enzymes” IRL Press, (1986); “A Practical Guide to Molecular Cloning” Perbal, B., (1984) および “Methods in Enzymology” 1-317巻, Academic Press ; “PCR Protocols: A Guide To Methods And Applications”, Academic Press, San Diego, CA (1990);Marshakら, “Strategies for Protein Purification and Characterization - A Laboratory Course Manual” CSHL Press (1996)を参照のこと;これらのすべては、引用により、本明細書に完全に記載されたかのように本明細書に具体的に組み込まれる。他の一般的な参考文献は、本明細書全体に提供されている。本明細書の手順は、当該技術分野において周知であると考え、読み手の便益のために提供する。
【0305】
特に記載のない限り、本明細書において使用されるすべての技術的および科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般的に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似または等価な方法および材料を本発明の実施および試験において使用することができるが、好適な方法および材料は以下に記載するものである。
【0306】
実施例1
アミノ酸T559がリン酸化されたNIKに結合することができる抗体の作製
上記のように、無規制なNF−κB活性と関連する非常に多くの疾患(悪性疾患および病的免疫応答と関連する疾患(たとえば、自己免疫、アレルギー性、炎症性、移植に関連する疾患など)など)について、治療は存在しないか、または満足のいく治療はない。NIKは、NF−κBの必須のアクチベーターであるため、かかる疾患を治療するための潜在的に有力なストラテジーの一例は、NIKに特異的に結合することができ、それにより、NIKによるNF−κBの活性化を阻害することができる抗体を同定することを伴う。かかる抗体はまた、NIKを伴う生物学的および生化学的なプロセスの正常な様相および病理学的様相の特徴付けを可能にする検出試薬としての有用性を有し得る。しかしながら、従来技術では、かかる目的に好適な、または最適に好適な抗体を提供することができなかった。NIKの活性化ループ内に位置するアミノ酸T559のリン酸化は、その活性に重要であることが報告されている。かかる特異性を有する好適な抗体は報告されていない。
【0307】
したがって、NIKの阻害のための候補抗体は、アミノ酸残基T559がリン酸化されたNIKまたはその断片を認識するものである。
【0308】
リン酸化NIKに特異的なクローナル抗体を作製するため、表1に示す重複する組のNIK−活性化ループ由来ペプチド(すべて、559位にホスホトレオニンを含有する(図1))の各々を、複数群のウサギを免疫化するために使用した。
【0309】
【表4】

【0310】
ホスホおよび非ホスホペプチドコートマイクロタイタープレートを用いたELISA (実施例3)によって、試験した3種類の活性化ループ由来ペプチドのうち配列番号:3に記載のリン酸化ペプチド(配列番号:3に記載のペプチドは、リン酸化トレオニンが最後から2番目のアミノ酸である)が、リン酸化型のペプチドに対して特異的な抗体を惹起する唯一の有効なペプチドであることが観察された。
【0311】
ポリクローナル抗体を用いて得られた結果に鑑みて、Balb/Cマウスの免疫化のためのモノクローナル抗体を、配列番号:3(549〜560)に記載のリン酸化ペプチドを用いて調製した。3回の融合を、Balb/C免疫化マウスの脾臓およびリンパ節を用いて行なったが、得られた抗体は、非特異的であるか、または低い力価を有するものであった(ELISAによって試験)。
【0312】
Balb/Cマウスの代わりに、融合にSJL免疫化マウスを用いた場合、T(p) 559 NIKペプチドに高度に特異的な抗体を産生する約24個のクローンが作製された(ELISAまたはウエスタンイムノブロッティング解析によって試験)。
【0313】
実施例2
免疫沈降による抗体の特異性のモニタリング
549〜560リン酸化ペプチドに対して調製された抗体が、完全なNIKタンパク質を認識することができるか否か、およびこれらが該タンパク質のリン酸化状態を識別することができるか否かを確認するため、さらなる実験を行なった。使用した実験環境は、mycタグ化NIK(実施例11)または293T細胞内の55位のトレオニンをアラニンに置換したamycタグ化NIK変異体の過剰発現を含む。NIK過剰発現後、該細胞を溶解し、リン酸化できなくなったNIKまたはNIK変異体を、リン酸化549〜560ペプチドを用いて調製したモノクローナル抗体のクローン869、815、521、254、91、62、32、30または3で免疫沈降させた(IP)。免疫沈降したNIKを、抗myc抗体を用いたウエスタンイムノブロッティング解析において検出した。
【0314】
より詳細には、NIKの過剰発現には、3×106 293T細胞を15cmプレートに播種し、細胞をpCS3MTNIKまたはpCS3MTNIKT559Aで一過的にトランスフェクトした。24時間後、細胞を回収し、2mlの1%NP−40バッファー中で溶解した。100ulのライセートを各IPに使用した。IPは、細胞ライセートを、それぞれの抗体を吸着させた30ulのプロテインGビーズと接触させることによって、4時間4℃にて行なった。
【0315】
IPのためのウエスタンイムノブロッティング解析および陽性コントロールは、抗myc抗体を用いて行なった。
【0316】
抗myc抗体は、前記の抗体により免疫沈降したNIKのリン酸化および非リン酸化形態の両方を検出した。図4に示す結果は、試験した抗体すべてが、NIKを免疫沈降させることができたことを示す。クローン869、815、521、254、91、62、32、30および3は、NIKのリン酸化形態に特異的であることがわかった。したがって、結果は、用いた手順の結果として、NIKのリン酸化種に特異的な抗体を作製すること可能がであったことを示す。
【0317】
実施例3
ELISAにるNIK−P4 30.12抗体のモニタリング
コントロール非リン酸化549〜560ペプチドまたはリン酸化型(濃度l0ug/ml)を用いて、マイクロタイタープレートのウェルをコートした。クローンNIK−P4 30.12の未希釈ハイブリドーマ培養上清みを、コートしたウェルの各々に1時間37℃で負荷した。1:10K希釈の抗マウスHRP(Jackson)を二次抗体として用い、O.D.405を、ABTS基質を用いて測定した。
【0318】
観察された結果(図5)は、ELISAによって、抗体NIK−P4 30.12が該ペプチドのリン酸化形態のみを認識することを示す。
【0319】
実施例4
CD40およびCD70によるシグナル伝達におけるNIKの活性−P4 30.12抗体の阻害活性の実証
TNF受容体CD70、CD40のリガンドおよびTNFは、IκB分解を誘導し、その結果として、NF−κB活性化を誘導する。NIK−P4 30.12が、NIKの活性を阻害できるか否かを確認するため、NIK−P4 30.12抗体のIκBのリガンド誘導型分解に対する作用を試験した。
【0320】
約0.5×106 Ramos細胞を6ウェルプレート内にプレーティングし、NIK−P4 30.12(α−pNIK)またはコントロールの非関連IgG(実施例12のタンパク質トランスフェクションを参照)でトランスフェクトし、トランスフェクション後、1:4希釈のCD70またはCD40リガンド含有培地(実施例13のリガンド含有培地の調製を参照))でそれぞれ、20分間および30分間、または50ng/mlの濃度で使用したTNFで20分間誘導したか、または非処理のままとした。リガンドでの誘導後、細胞を45μlの1%NP40バッファー+15μlの試料負荷バッファー中で溶解し、30μlのライセートを、10%SDS−PAGE中に負荷し、IκBのために抗IκB抗体(Transduction laboratoriesから購入)を用いたウエスタンイムノブロッティング解析に供した。
【0321】
非処理細胞(コントロール)では、IκBは、IgGまたは抗−pNIKででトランスフェクトした細胞の両方に存在した。しかしながら、すべてのリガンド処理細胞では、IκBは、NF−κBの活性化を示す分解状態となったことが観察された(図6)。IκB分解、その結果としてのNF−κB活性化は、NIK−P4 30.12抗体でトランスフェクトした細胞において、用いたリガンドがTNFである場合以外は起こらない。この結果は、残基T559がリン酸化されたNIKが、CD70およびCD40によるNF−κBの活性化に重要であり、したがって、NIK−P4 30.12抗体を、CD70およびCD40シグナル伝達が該疾患の病因に関与する疾患における治療のため使用することができることを示す。
【0322】
実施例5
抗ホスホThr559−NIK抗体は、CD40誘導型IκB分解を阻止する
NIK−P4 30.12で観察されたNIK活性化の阻害は、該キナーゼの他のドメインに対して生成させた抗体では起こらないことを確認するために、以下の実験を行なった。
【0323】
約0.5×106 BJAB細胞を、非特異的IgG(NIKのキナーゼドメインのN末端領域に特異的な抗体(残基405〜420に特異的)(81)、またはNIK−P4 30.12のいずれかでトランスフェクトした。すべてのトランスフェクト細胞を、CD40Lで先の実施例のようにして30分間処理するか、または非処理のままとした。処置後、細胞を、1% NP40バッファー中で溶解し、細胞内のIκBαを、ウエスタンイムノブロッティング解析により先の実施例のようにしてモニターした。
【0324】
CD40は、CD40処理細胞において、IκBaの分解を誘導することが観察された(図7)。IκBα分解の阻害は、NIK−P4 30.12抗体の開発に用いた領域とは異なるキナーゼドメイン(81)の領域に対して非常に効率的な抗体を用いても観察されなず、IκBαの分解を阻害した唯一の抗体は、NIK−P4 30.12であった。この結果は、NIKの活性化ループ内のリン酸化T559に対して生成させたNIK−P4 30.12抗体が、IκBの分解を阻害し、その結果として、CD40L処理によるNF−κB活性化を阻害することを示す。
【0325】
実施例4および5における所見は、NIKが、リンパ芽球細胞(たとえば、BJABおよびRamosなど)におけるTNFによる標準的な経路の活性化関与しないことを示す。
【0326】
しかしながら、この所見は、NIKの機能が、他のリガンド、たとえば、CD40LおよびCD70などによる標準的な経路の活性化に非常に重要であることを示す。したがって、この所見ははまた、NIK−P4 30.12抗体が、標準的な経路のNIK媒介性活性化を含むリガンドを同定するために使用できることを示す。
【0327】
実施例6
ポリクローナル抗体の調製
特異的クローナル抗体の作製のため、ウサギを、配列番号:1、2または3に記載のペプチドで免疫化した。
【0328】
第1の免疫化は、100μgのペプチド−KLH(1:1で完全フロイントアジュバントに溶解した)で行ない、皮下注射した。第2の免疫化は、3週間後、同量のペプチド−KLHで行い、3週間後、不完全フロイントアジュバントとともに筋肉内注射した。
【0329】
これらの2回の免疫化の後、PBS中に溶解した同量のペプチド−KLHの1回のブースト、および3週間隔での皮下投与を行なった。
【0330】
実施例7
モノクローナル抗体の調製
モノクローナル抗体は、Eshhar Z.の“Hybridoma Technology in the Biosciences and Medicine”,第1章, Springer TA.(編) Timothy A., Plenum Publishing Corp., New York (1985)]に記載のようにして、脾臓およびリンパ節の融合のためのキナーゼNおよびC末端の配列番号:7、11および12のペプチドでチャレンジした陽性SJLマウスの脾臓を用いて調製した。
【0331】
ハイブリドーマの培養上清みを、ウエスタンイムノブロッティング解析により試験し、mycタグ化NIKを検出した。
【0332】
1.5×106 293−T細胞を、10cmプレート上に播種し、24時間後、pCS3MTNIKトランスフェクトした。24時間後、トランスフェクト細胞を回収し、1mlの1% NP40溶解バッファー中で溶解した。40μlのライセートを、コントロール(C)としてのpcDNA3トランスフェクト細胞ライセートに沿ってレーンごとに負荷した。ウエスタンブロットを、それぞれのハイブリドーマ培養上清みでプローブした。
【0333】
実施例8
免疫血清による免疫沈降:
免疫血清を用いたトランスフェクタントタンパク質ライセートからの組換えNIK融合タンパク質の免疫沈降のため、免疫血清を、1.5μlの免疫血清を、25μlのプロテインG結合ビーズおよび50μlのライセートと混合し、容量を、溶解バッファーで750μlに仕上げた。混合物を4℃で2時間インキュベートした。インキュベーション後、ビーズを3回、溶解バッファーで洗浄し、3μlの試料バッファー中で煮沸し、15,000rpmで2分間、マイクロ遠心分離した。上清み(免疫沈降物)を回収し、10%SDS−PAGEによりヒトNIKの存在について解析した。
【0334】
supによるハイブリドーマからの免疫沈降:
mycタグ化NIKタンパク質を提示する293−Tライセートを、モノクローナル抗NIK抗体の免疫沈降能を試験するための基質として使用した。50μlのプロテインGビーズを500μlのハイブリドーマ培養上清みと混合し、約22℃で1時間インキュベートした。ビーズを、1%NP−40溶解バッファーで3回洗浄し、免疫沈降に使用した。
【0335】
免疫沈降(IP)は、2時間、+4℃で行なった。IP後、ビーズを3回洗浄し、50μlのLaemliバッファーで煮沸し、25μlの上清みを10%SDS−PAGE上に負荷した。
【0336】
実施例9
ウエスタンイムノブロッティング解析:
20ウェルスロットブロット(マルチスクリーンBiorad)で、PCS3MTNIK−トランスフェクト293−T細胞由来のライセートの180μlのアリコートを、SDS−PAGE分取用ゲルにより解析した。陽性コントロールとして、抗myc抗体を1:1000希釈で用いた。
【0337】
実施例10
ELISA:
pcHis−NIKトランスフェクト細胞由来のライセートを、結合バッファー中で25倍希釈し、50μl/ウェルを、ELISAプレートウェルのコーティングに使用した。コートされたNIKまたはBSA結合ペプチドの検出を、1:100希釈の抗NIK免疫血清を用いて行い、アッセイは、HRP結合ヒツジ抗マウス抗体を用い、ABTSを酵素基質として開発した。試料のOD405を、20分の反応時間後に測定した。
【0338】
実施例11
組換えヒトNIKの作製:
amyc(myc−NIK)またはポリヒスチジン(His−NIK)アフィニティータグに融合させた組換えヒトNIK融合の発現のため、それぞれ3×106または1.5×106 293−T細胞を、それぞれ、mycタグ化NIK(W09737016のNIKasのヌクレオチド配列)をコードする発現ベクターPCS3MTNIKまたはHisタグ化NIKをコードするpcHis−NIKでトランスフェクトした。細胞を、カルシウムリン酸[Ca3(PO42]法により、10cm直の培養皿内で、20μlまたは10μlの発現ベクターDNAを用いてトランスフェクトした。トランスフェクションの20時間後、PCS3MTNIKまたはpcHis−NIKトランスフェクト細胞を回収し、ペレット化し、それぞれ、1.5mlまたは1mlの1%NP−40タンパク質溶解バッファー中で溶解した。
【0339】
実施例12
細胞内での抗体のトランスフェクション:
細胞内部での抗体の効果を試験するため、抗体を、細胞内に、Pierceの可視化(project)試薬を用い、以下のプロトコルを使用して導入した。
【0340】
2×105細胞を、6ウェルプレート内に播種し、一晩培養して成長させた。
【0341】
10μlのPro−JectTM試薬(250μlのメタノールまたはクロロホルムに溶解)を用い、層流フード下で2時間エバポレートした。5〜10μlのタンパク質、FITC−Abコントロールまたは被験モノクローナル抗体を50〜100μlに希釈した。
【0342】
乾燥したPro−JectTMフィルターを、50〜100μlの希釈タンパク質溶液中で約3〜5回ピペットで上下させることにより脱水し、室温で5分間インキュベートし、数秒間、低〜中速でボルテックスした。最終容量のPro−JectTM試薬/タンパク質混合物を、血清無含有培地で1000μlにした。
【0343】
試験対象の細胞から培地を遠心分離により除去し、血清無含有培地で1回洗浄し、Pro−JectTM試薬/タンパク質混合物を、直接細胞上に移した。
【0344】
実施例13
誘導に使用したCD70またはCD40含有培地の調製:
293T細胞を、Flagタグ化ロイシンジッパーCD40/CD70構築物(Walczakら 1999, Fanslowら 1994)分子でトランスフェクトした。この分子において、リガンドは、既に、これに対するロイシンジッパー融合のおかげで多量体化されている。Flagタグ化ロイシンジッパーリガンドをコードするDNAを、pcDNA哺乳動物発現ベクター(Invitrogen)内にクローン化し、HEK−293細胞内で一過的に発現させた。これらの細胞の上清みを回収し、トランスフェクションの3日後、フィルターを滅菌して使用した。
【0345】
本発明を、その具体的な実施形態とともに記載したが、多くの代替、改良および変形が当業者に自明であることは明白である。したがって、添付の特許請求の範囲の精神および広い範囲内に含まれるすべてのかかる代替、改良および変形を包含することものとする。すべての刊行物、特許および特許出願ならびに受託番号により識別される配列は、個々の刊行物、特許もしくは特許出願または受託番号により識別される配列が、具体的に個々に示されて引用により本明細書に組み込まれたかのように、同程度に、引用によりその全体が本明細書に具体的に組み込まれる。
【0346】
ハイブリドーマクローンNik−P4 30.12は、Collection Nationale de Culture de Microorganismes (CNCM), Institut Pasteur(パリ)に、ブダペスト条約に基づいて寄託され、受託番号I−3095が付与された。このハイブリドーマは、CNCMに2003年10月2日に登録された。
【図面の簡単な説明】
【0347】
【図1】NIK(405〜420)のNIKドメイン、T559、N末端領域、キナーゼ領域およびC末端ドメインなどを示す図を示す。
【図2】ヒトNIK(配列番号:5)のアミノ酸配列を示す配列を示す。免疫化に用いたNIK由来ペプチド配列番号:3に下線を施す。
【図3】NIKの活性化ループのアミノ酸配列(配列番号:4)を示す。
【図4】配列番号:3に記載のリン酸化ペプチドを用いて製造した種々のモノクローナル抗体による免疫沈降(IP)を示す。細胞は、pCS3MTNIK(WT−NIK)または該タンパク質のリン酸化不能体をコードするベクターpCS3MTNIKT559A(NIK−)でトランスフェクトした。トランスフェクト細胞を回収し、2ml 1%NP−40緩衝液中で溶解した。100ulのこの溶解物を各IPに使用した。IPは、表示した抗体を吸着させたGタンパク質ビーズを用いて行なった。IPのためのウエスタンイムノブロッティング解析および陽性コントロールは、抗myc抗体を用いて行なった。
【図5】ELISAによる、配列番号:3のペプチドを用いて製造した抗体の活性化ループ由来リン酸化ペプチドへの差別的結合を示す。コントロールおよび活性化ループペプチド(配列番号:3)由来リン酸化ペプチドを、マイクロタイタープレートに10μg/mlの濃度でコートした。クローンNIK−P4 30.12の未希釈ハイブリドーマ培養上清を、1時間37℃で添加した。1:10K希釈の抗マウスHRPを二次抗体として用い、O.D405を、ABTS基質を用いて測定した。
【図6】CD70、CD40またはTNFにより誘導されるIκB分解に対するNIK−P4 30.12の作用を示す。Ramos細胞を、IgG(陰性コントロール)またはNIK−P4 30.12抗体(α−pNIK)でトランスフェクトした。トランスフェクト細胞は、未処理のままにするか、またはCD70、CD40およびTNFで、それぞれ、20分間および30分間および20分間処理した。リガンド処理後、細胞を、溶解し、抗IκB抗体でプローブするウエスタンイムノブロッティング解析に供した。
【図7】NIK−P4 30.12の、キナーゼドメイン内だが活性化ループの外側に位置するNIKのペプチドに対して生成させた種々の抗体に関して(vis−avis)、CD40により誘導されたIκB分解に対する作用を示す。細胞は、IgG(陰性コントロール)、NIK−P4 30.12抗体(p4)、またはキナーゼドメイン内だが活性化ループの外側に位置するNIKのペプチド(配列番号:7、81)に対して生成させた種々の抗体でトランスフェクトした。トランスフェクト細胞は、未処理のまま(−cd40)にするか、またはCD40で30分間処理(+cd40)した。リガンド処理後、細胞を溶解し、抗IκB抗体でプローブするウエスタンイムノブロッティング解析に供した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号:5に記載のアミノ酸配列またはその部分であってリン酸化トレオニンを配列番号:5のアミノ酸559位に含有する該アミノ酸配列またはその部分に特異的に結合することができるポリクローナル、モノクローナル、キメラ、ヒト化、ヒトもしくは抗−抗イディオタイプ抗体またはその断片。
【請求項2】
該部分が配列番号:6のアミノ酸配列を含む請求項1記載の抗体。
【請求項3】
該部分が配列番号:3のアミノ酸配列を含む請求項1記載の抗体。
【請求項4】
前記抗体がIgG抗体である請求項1記載の抗体。
【請求項5】
前記抗体断片が、単鎖Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2およびCDRからなる群より選択される請求項1記載の抗体。
【請求項6】
前記抗体または抗体断片が、さらに、NIK分子の生化学的活性を調節することができる請求項1記載の抗体。
【請求項7】
前記抗体または抗体断片が、さらに、リン酸化NIKまたはその特定の部分を特異的に検出することができる請求項1〜6のいずれかに記載の抗体。
【請求項8】
ウエスタンイムノブロッティング解析によってリン酸化NIKを特異的に検出することができる請求項7記載の抗体。
【請求項9】
ELISAによってリン酸化NIKを特異的に検出することができる請求項7記載の抗体。
【請求項10】
免疫沈降によってリン酸化NIKを特異的に検出することができる請求項7記載の抗体。
【請求項11】
CNCMに番号I−3095で寄託されたハイブリドーマNIK−P430.12によって産生されるモノクローナル抗体である請求項1記載のモノクローナル抗体。
【請求項12】
NIKまたはそのムテイン、機能性誘導体、活性分画、円順列変異誘導体もしくは塩に特異的に結合することができるポリクローナル、モノクローナル、キメラ、ヒト化、ヒトもしくは抗−抗イディオタイプ抗体またはその断片であって、哺乳動物を、配列番号:5に記載のアミノ酸配列またはアミノ酸配列の部分で免疫化することによって製造される抗体。
【請求項13】
CNCMに番号I−3095で寄託されたハイブリドーマクローン。
【請求項14】
薬学的に許容し得る担体および、活性成分として、配列番号:5に記載のアミノ酸配列またはその部分であってリン酸化トレオニンを配列番号:5のアミノ酸559位に含有する該アミノ酸配列またはその部分に特異的に結合することができるポリクローナル、モノクローナル、キメラ、ヒト化、ヒトもしくは抗−抗イディオタイプ抗体またはその断片を含有してなる医薬組成物。
【請求項15】
該アミノ酸の部分が配列番号:3に記載のアミノ酸配列を含む請求項14記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記抗体がIgG抗体である請求項14記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記抗体または抗体断片がマウス起源に由来する請求項14記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記抗体断片が、単鎖Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2およびCDRからなる群より選択される請求項14記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記抗体が、さらに、NIK分子の生化学的活性を調節することができる請求項14記載の医薬組成物。
【請求項20】
CD40シグナル伝達の阻害のための請求項19記載の医薬組成物。
【請求項21】
CD70シグナル伝達の阻害のための請求項19記載の医薬組成物。
【請求項22】
悪性疾患および病的免疫応答と関連する疾患から選択される疾患の治療のための請求項19記載の医薬組成物。
【請求項23】
該疾患が、自己免疫、アレルギー性、炎症性および移植に関連する疾患から選択される病的免疫応答と関連する請求項22記載の医薬組成物。
【請求項24】
該疾患が、喘息、関節リウマチ、炎症性腸疾患、アテローム性動脈硬化およびアルツハイマー病から選択される請求項23記載の医薬組成物。
【請求項25】
該疾患が悪性疾患である請求項22記載の医薬組成物。
【請求項26】
NIK分子を、配列番号:5に記載のアミノ酸配列またはその部分であってリン酸化トレオニンを配列番号:5のアミノ酸559位に含有する該アミノ酸配列またはその部分に特異的に結合することができるポリクローナル、モノクローナル、キメラ、ヒト化、ヒトもしくは抗−抗イディオタイプ抗体またはその断片と接触させることを含むNIK分子の生化学的活性の調節方法。
【請求項27】
前記NIK分子を前記抗体と接触させることが、前記抗体を個体に投与することにより行なわれる請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記抗体がIgG抗体である請求項26記載の方法。
【請求項29】
前記抗体または抗体断片がマウス起源のものである請求項26記載の方法。
【請求項30】
前記抗体断片が、単鎖Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2およびCDRからなる群より選択される請求項26記載の方法。
【請求項31】
標的抗原に特異的に結合することができる抗体または抗体断片を選択的に捕捉するための、配列番号:5に記載のアミノ酸配列またはその部分であってリン酸化トレオニンを配列番号:5のアミノ酸559位に含有する該アミノ酸配列またはその部分のペプチドに共有結合した基質を含有してなる物質の組成物。
【請求項32】
その部分が配列番号:3に記載のアミノ酸配列を含む請求項31記載の物質の組成物。
【請求項33】
前記基質がアフィニティークロマトグラフィー充填剤である請求項31記載の物質の組成物。
【請求項34】
前記基質が炭水化物または該炭水化物の誘導体を含む請求項31記載の物質の組成物。
【請求項35】
前記炭水化物が、アガロース、セファロースおよびセルロースからなる群より選択される請求項31記載の物質の組成物。
【請求項36】
前記基質が、ビーズ、樹脂またはプラスチック表面からなる群より選択される請求項31記載の物質の組成物。
【請求項37】
NIKの活性によって引き起こされるか、または悪化する疾患の治療のための医薬の製造における、配列番号:5に記載のアミノ酸配列またはその部分であってリン酸化トレオニンを配列番号:5のアミノ酸559位に含有する該アミノ酸配列またはその部分に特異的に結合することができるポリクローナル、モノクローナル、キメラ、ヒト化、ヒトもしくは抗−抗イディオタイプ抗体またはその断片の使用。
【請求項38】
前記抗体がIgG抗体である請求項37記載の使用。
【請求項39】
前記抗体または抗体断片がマウスに由来する請求項37記載の使用。
【請求項40】
前記抗体断片が、単鎖Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2およびCDRからなる群より選択される請求項37記載の使用。
【請求項41】
悪性疾患および病的免疫応答と関連する疾患から選択される疾患における請求項37記載の使用。
【請求項42】
病的免疫応答と関連する疾患が、自己免疫、アレルギー性、炎症性および移植に関連する疾患から選択される請求項41記載の使用。
【請求項43】
該疾患が、喘息、関節リウマチ、炎症性腸疾患、アテローム性動脈硬化およびアルツハイマー病から選択される請求項42記載の使用。
【請求項44】
該疾患が悪性疾患である請求項41記載の使用。
【請求項45】
配列番号:6を含むアミノ酸配列またはその部分であってリン酸化トレオニンを配列番号:5のアミノ酸559位に含有する該アミノ酸配列またはその部分で免疫化した哺乳動物由来の脾臓細胞および同型遺伝子または異型遺伝子のリンパ球様細胞を含有するクローン化ハイブリドーマを、液体培地または哺乳動物の腹部内で増殖させ、ハイブリドーマにモノクローナル抗体を産生および蓄積させることを含むモノクローナル抗体の製造方法。
【請求項46】
その部分が配列番号:3に記載のアミノ酸配列を含む請求項45記載の方法。
【請求項47】
請求項1〜12のいずれかに記載の抗体または抗体断片を細胞内に導入すること、該細胞を個々のリガンドとともにインキュベートすること、NFκB活性化を示すパラメータをモニターすること、およびNFκBの活性化が前記抗体または抗体断片によるNIK活性の特異的遮断により影響されるリガンドを選択することを含む、細胞内においてNIK媒介性NFκB活性化を誘導することができるリガンドの同定方法。
【請求項48】
NFκBの活性化が、NFκBの標準的な経路の活性化を示すパラメータをモニターすることによって測定される請求項47記載の方法。
【請求項49】
NFκBの活性化が、IΚBa分解をモニターすることによって測定される請求項48記載の方法。
【請求項50】
細胞がリンパ芽球型のものである請求項49記載の方法。
【請求項51】
細胞が、Ramos、BJABおよびジャーカット細胞から選択される請求項50記載の方法。
【請求項52】
配列番号:5に記載のアミノ酸配列またはその部分であってリン酸化トレオニンを配列番号:5のアミノ酸559位に含有する該アミノ酸配列またはその部分に特異的に結合することができるポリクローナル、モノクローナル、キメラ、ヒト化、ヒトもしくは抗−抗イディオタイプ抗体またはその断片を、必要とする個体に投与することを含む、NIKの活性によって引き起こされるか、または悪化する疾患の治療方法。
【請求項53】
前記抗体がIgG抗体である請求項52記載の方法。
【請求項54】
前記抗体または抗体断片がマウスに由来する請求項52記載の方法。
【請求項55】
前記抗体断片が、単鎖Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2およびCDRからなる群より選択される請求項52記載の方法。
【請求項56】
該疾患が、悪性疾患および病的免疫応答と関連する疾患から選択される請求項52記載の治療方法。
【請求項57】
病的免疫応答と関連する疾患が、自己免疫、アレルギー性、炎症性および移植に関連する疾患から選択される請求項56記載の治療方法。
【請求項58】
該疾患が、喘息、関節リウマチ、炎症性腸疾患、アテローム性動脈硬化およびアルツハイマー病から選択される請求項57記載の治療方法。
【請求項59】
該疾患が悪性疾患である、請求項56記載の治療方法。
【請求項60】
NIKおよびNIK結合性タンパク質を含有する試料を請求項1〜12のいずれかに記載の抗体を接触させること、NIKおよびNIK結合性タンパク質を免疫共沈降させること、生成した免疫複合体を洗浄すること、およびNIK結合性タンパク質を免疫複合体からNIK由来の競合ペプチドを用いて回収することを含むNIK結合性タンパク質の精製方法。
【請求項61】
試料が、体液、細胞抽出物およびDNA発現ライブラリーから選択される請求項60記載の方法。
【請求項62】
ELISAアッセイの開発のための請求項1〜12のいずれかに記載の抗体の使用。
【請求項63】
NIKまたはそのムテイン、機能性誘導体、活性分画、円順列変異誘導体もしくは塩の免疫精製のための、請求項1〜12のいずれかに記載の抗体の使用。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2007−537708(P2007−537708A)
【公表日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−531016(P2006−531016)
【出願日】平成16年10月5日(2004.10.5)
【国際出願番号】PCT/IL2004/000920
【国際公開番号】WO2005/033145
【国際公開日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【出願人】(500018608)イエダ リサーチ アンド ディベロップメント カンパニー リミテッド (35)
【Fターム(参考)】