説明

NOxセンサ、排気浄化システムおよびNOx測定方法

【課題】 1つのNOxセンサを用いて、ハンドリング性よく、空間占有部を小さく、精度よく、かつ安価にNO濃度とNO2濃度を求めることができるNOxセンサ、それを用いた排気浄化システムおよびNOx測定方法を提供する。
【解決手段】 1つの固体電解質13と、多孔質の検知電極11および多孔質の参照電極12と、検知電極と参照電極との間に電圧を印加するための可変定電圧発生部15、および電圧を印加した状態で電流を測定するための電流測定部16を含み、可変定電圧発生部に2つ電圧を発生させて、その電圧印加状態における電流測定部の電流値を読み、NO濃度およびNO2濃度を算出するための制御部20と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NOxセンサ、排気浄化システムおよびNOx測定方法に関し、より具体的には、自動車等の排気経路に取り付けられて、1つで精度よくNO濃度とNO2濃度とを測定できるNOxセンサ、それを用いた排気浄化システムおよびNOx測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
化石燃料の高騰などによりディーゼルエンジン搭載の自動車が増加する傾向にあるが、廃ガス規制をクリアする必要があり、ディーゼルエンジンの排出ガスを低減する各種の触媒装置が開発されている。それらの触媒装置のなかで、尿素選択還元システムはNOおよびNO2のNOxを、エンジンスピードが低い低温領域で効率よく窒素と水へと還元浄化するものとして推奨されている(非特許文献1)。これらの排気浄化装置は、自動車エンジンの排気経路に取り付けられ、排気を浄化するが、その排気経路の温度やNOx濃度を精度よく測定して、尿素の排気経路への噴射量の制御が必須となる。しかし、従来のNOxセンサで得られるNOx値は、NO濃度とNO2濃度の割合等は不明のまま、被検ガス中のNOとNO2から得られる指標を表示するものである。しかし、浄化効率を最適化するためには、NO濃度とNO2濃度とを個別に、またはそれらの比を知る必要がある。
【0003】
NO濃度とNO2濃度を求める方法として、次のものが提案されている。たとえば、排気浄化システムに尿素選択還元システムを用い、その後段にNOxセンサを設けることによって得たNOx濃度(NOとNO2のマクロ指標)と、温度センサから得た温度とから、NO濃度とNO2濃度とを化学量論的に個別に割り出し、最適な尿素の噴射量を制御する装置が提案されている(特許文献1)。また、排気経路に、酸化触媒と、その後段に尿素選択還元装置とを配置して、尿素選択還元装置の前段であって、かつ酸化触媒の前後に配置した2つのNOxセンサによって、NO濃度とNO2濃度とを個別に割り出す方法の提案もある(特許文献2)。
【非特許文献1】平田公信ら,「大型車ディーゼルの尿素選択還元システム」,自動車技術,Vol.60,No.9,2006,pp28-33
【特許文献1】特開2004−100699号公報
【特許文献2】特開2007−100508号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の浄化装置のうち、温度とNOxセンサとを用いて化学量論的にNO濃度と、NOx濃度とを求める方法では、NO濃度とNO2濃度を精度よく求めることができない。また酸化触媒の前後にNOxセンサを配置し、2つのNOxセンサでNO濃度とNO2濃度を求める方法では、NOxセンサが2つ必要であり、取り付け場所、配線等が嵩み、またコスト増をもたらす。
本発明は、1つのNOxセンサを用いて、ハンドリング性よく、空間占有部を小さくして、精度よく、かつ安価にNO濃度とNO2濃度を求めることができるNOxセンサ、それを用いた排気浄化システムおよびNOx測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のNOxセンサは、排気経路に取り付けられ、排気中のNOx濃度を測定するために用いられる。このNOxセンサは、1つの固体電解質と、固体電解質を挟むように位置する、多孔質の検知電極および多孔質の参照電極と、検知電極と参照電極との間に電圧を印加するための可変定電圧発生部、および電圧を印加した状態で検知電極と参照電極との間に流れる電流を測定するための電流測定部を含み、可変定電圧発生部に2つの電圧を発生させて前記検知電極と参照電極との間に印加させ、各電圧印加状態における電流測定部の電流値を読み、NO濃度およびNO2濃度の算出を行うための制御部と、を備えることを特徴とする。
【0006】
ここで、NOxとは、NOとNO2という2種類の気体をさす用語である。NOとNO2とは、化学反応などで相互に変換したり、比較的、同様の特性を示すことが多いので、一緒に取り扱ったほうが便利であるため、両方のガス種をまとめてNOxという用い方が普及している。NOxセンサは、NOおよび/またはNO2がセンサの反応部に吸着するなどして変化する電気的指標により、センシングし、その結果が現れるものである。したがって、NOおよびNO2の両方に反応して、その結果、電気的指標を変化させることにより、その割合は不明のままNOおよびNO2の両方の、上記反応部での反応の結果を検知することになる。
【0007】
上記本発明のNOxセンサでは、1つの固体電解質層を用いて、2つの電圧を印加して対応する電流を求めるので、(検知電極/固体電解質/参照電極)から構成される1つのNOx検知部を2回使用することになる。このため、1つの電圧に1つの感度が得られ、2種類の感度をもつNOx検知部を持つことになる。したがって、1つのNOxセンサを用いて、空間占有を抑制し、配線なども簡単に設けながら、精度よくかつ安価にNO濃度とNO2濃度を求めることができる。第1の電圧印加のときの、NOに対する感度をAmとし、NO2に対する感度Adとする。また、第2の電圧印加のときの、NOに対する感度をBmとし、NO2に対する感度Bdとする。このとき、Am・Bd−Bm・Adがゼロでないこと、すなわちAm・Bd−Bm・Ad≠0を満たせば、NO濃度およびNO2濃度を得ることができる。この両方濃度検知条件Am・Bd−Bm・Ad≠0を満たすことによって、精度よく安価にNO濃度とNO2濃度を求められる。精度について詳しく説明すれば、まったく同じ位置で、ほとんど同じタイミングでサンプリングするので、その位置のNO濃度およびNO2濃度を個別に測定することができる。このため、サンプリングの場所が異なること、およびサンプリングの少しの時間的ずれに起因する測定誤差を気にする必要がなくなり、測定精度を質的に一段向上させることができる。また、本NOxセンサは、温度センサの温度情報を用いることで、測定データの精度または信頼性をさらに高めることができる。
【0008】
排気中のNO濃度とNO2濃度とを所定比率にすることは、たとえば低速走行などの低温域でNOxを抑制する制御を効かす上で、必須であり、このために、NO濃度とNO2濃度を両方とも知ることは、排気浄化上、不可欠となっている。自動車の排気経路のような狭隘で複雑な空間には、上記のように小型化され、簡単に配線可能なNOxセンサは大きな貢献をすることができる。
【0009】
NOまたはNO2に対する感度は、予めたとえば第1または第2の電圧を印加して所定濃度(既知)のNOまたはNO2を含む空気中に、検知電極および固体電解質を露出させたときの電流値の、純粋空気中での同じ条件での電流値に対する変化幅などから求めることができる。なお、上記のNOxセンサは、(検知電極/固体電解質/参照電極)から構成されるNOx検知部、そのNOx検知部の温度を制御する温度制御手段たとえば温度制御装置付きヒータなどを、絶縁基板や、絶縁性配線基板に固定して用いることができる。制御部は、エンジン等の駆動を制御する制御ボード等にまとめられて搭載され、絶縁性配線基板等に配線接続するのがよい。
【0010】
多孔質の検知電極を、CdCr24およびPtを主材料に含ませることができる。これによって、選択的にNOxに対して高い感度を持つことができ、このためNOxを精度よく検知することができる。
【0011】
固体電解質層を安定化ジルコニウムで形成することができる。これによって、耐熱性に優れ、使用実績が豊富な安定化ジルコニウムを用いて、安価なNOxセンサを得ることができる。
【0012】
制御部が、前記可変定電圧発生部および電流測定部とともに、排気経路から離れた位置に配置され、検知電極および参照電極へと配線接続することができる。これによって、高温になる排気経路に可変定電圧発生部や電流測定部を含むマイコン等を配置しないので、安価にNOxセンサ全体の耐久性を高めることができる。
【0013】
固体電解質層の温度を制御する温度制御手段を備えることができる。これによって、NOxに対してより一層感度を高めることができる。
【0014】
本発明の排気浄化システムは、排気経路内の排気に作用してその排気を浄化するための排気浄化装置であって、上記のいずれか一つのNOxセンサを排気経路に備えることを特徴とする。これによって、上記の各NOxセンサの特徴を備えるため、小型化した空間占有や簡単な配線構造で、精度よく安価に、NO濃度およびNO2濃度を得ることができる。
【0015】
排気を浄化するためにアンモニアを還元剤としたSCR(Selective Catalytic Reduction)を用い、NOxセンサを、該SCRの前に位置させることができる。これによって、ディーゼルエンジン等の排気中のNOxを効率よく浄化することができる。
【0016】
本発明のNOx測定方法は、排気経路の排気中のNOxの濃度を測定するための方法である。この測定方法は、(多孔質の検知電極/固体電解質層/多孔質の参照電極)を含むNOx検知部を排気経路に配置する工程と、検知電極と参照電極との間に、第1の電圧を印加して、該検知電極と参照電極間に流れる第1の電流を測定する工程と、検知電極と参照電極との間に、第1の電圧と異なる第2の電圧を印加して、該検知電極と参照電極間に流れる第2の電流を測定する工程とを備える。そして、予め、既知濃度のNOを含む空気および既知濃度のNO2を含む空気を用いて測定した第1および第2の電圧データに基づいて、上記の電流測定工程で得た第1および第2の電流から、NO濃度およびNO2濃度を求めることを特徴とする。
【0017】
これによって、1つのNOx検知部を用いて、簡単にNO濃度およびNO2濃度を精度よく求めることができる。このときのサンプリング位置は同じ位置であり、またサンプリング時期も実質的に同じといえる。このため、サンプリング位置およびサンプリング時期のずれに起因する誤差を除くことができる。また、検知部が1つなので、排気経路という複雑で狭隘な場所における占有体積を小さくすることができる。また、排気浄化システムの部品として、ハンドリング性に優れる。小型化の利点としては、さらに、車両のポンピングロスを少なくすることができ、エンジンの出力損失を小さくすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、1つのNOx検知部で構成される1つのNOxセンサを用いて、ハンドリング性よく、空間占有部を小さく、精度よく、かつ安価にNO濃度とNO2濃度を求めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1におけるNOxセンサ30を示す図である。図1を参照して、このNOxセンサ30は、1つのNOx検知部10を備え、可変定電圧部15および電流測定部16に制御指令を発する制御部20がそのNOx検知部10に接続されている。制御部20では、指令を受けた可変定電圧部15がNOx検知部10に、少なくとも2つの電圧、第1の電圧および第2の電圧を印加し、電流測定部16では、そのときNOx検知部10に流れる電流値を出力する。制御部20は、自動車エンジンの駆動を制御する主制御部(制御ボード等)にまとめて搭載するのが好ましい。NOx検知部10は排気経路に設けられるが、次の積層体から構成される。
NOx検知部10:(多孔質の検知電極(PtおよびCdCr24で構成)11/安定化ジルコニア(YSZ:ZrO2)13/参照電極12)
CdCr24とPtとで検知電極11を形成するのは、分極によってNOとNO2への選択的な感度を有するためである。上記のNOx検知部10は1つであるが、NO濃度およびNO2濃度の両方を求めることができる。このため、小型化、部品ハンドリングの容易性または配線の簡単化などが実現できるので、自動車の排気経路のような狭隘で複雑な空間に配置するのに、非常に便利である。上述のように、小型化することにより、車両のポンピングロスを少なくすることができ、エンジンの出力損失を小さくすることができる。
【0020】
一般に、NOxセンサは、排気経路内が常温を大きく超える高温になるため、温度を一定にする目的で、またはセンサの感度を高めるため、温度制御のためにヒータを配置するが、本発明の実施の形態においても、図示しないヒータを配置するのがよい。ヒータには、温度センサ、温度制御装置等が含まれる。温度制御装置は、上述のように制御ボード等にまとめて搭載され、温度センサから、NOxセンサ10の温度情報を読み出す。
【0021】
固体電解質13に外部から電圧を印加すると披検ガスの電解が起こり、電流が流れる。この電流値はガス濃度のほぼ比例するので、これよりガス濃度を検知することができる。図2は、検知部10をPtおよびCdCr24で構成した検知電極11を、(純粋)空気、NO含有空気、NO2含有空気に露出したときの電圧−電流曲線を示す図である。NO含有空気におけるNO濃度は200ppmであり、NO2含有空気のNO2濃度は200ppmである。また、このときのNOx検知部10の温度は、500℃である。
【0022】
図2に示す電圧−電流曲線がある場合、本発明の実施の形態におけるNOxセンサ30を用いて、NO濃度およびNO2濃度を求める方法を図3に示す。第1の電圧として、たとえば150mVを検知電極11と参照電極12との間に印加した状態の電流値から、NOx検知部10の、NOに対する感度Am算定用データ、およびNO2に対する感度Ad算定用データを得ることができる。そして、同じ電圧での純粋空気の電流値I1を用いて、電圧150mV印加状態における、NOに対する感度AmおよびNO2に対する感度Adを得ることができる。また、第2の電圧として−250mVを検知電極11と参照電極12との間に印加した状態の電流値から、NOx検知部10の、NOに対する感度Bm算定用データ、およびNO2に対する感度Bd算定用データを得ることができ、同様にして、電圧−250mV印加状態における純粋空気の電流値I2を用いて、NOに対する感度BmおよびNO2に対する感度Bdを得ることができる。
【0023】
(150mV印加時):NOに対する感度Am
NO2に対する感度Ad
(−250mV印加時):NOに対する感度Bm
NO2に対する感度Bd
上記のことが既知であるとき、150mVを印加して被検ガスのNOx検知部10を暴露したときの電流値がX1であり、−250mVを印加したときの同様の電流値がX2であったとする。このとき、被検ガスの中のNO濃度をMとし、NO2濃度をDとすると、以下の連立方程式が成り立つ。
X1-I1=AmM+AdD・・・・・(1)式
X2−I2=BmM+BdD・・・・・(2)式
【0024】
上記の連立方程式において、X1、X2、I1、およびI2は、実測値である。また、Am、Ad、Bm、Bdは、予めNO濃度およびNO2濃度が知れた空気を用いて得ておくことができ、既知である。したがって、上記の二元連立方程式は簡単に解くことができる。また、電圧は任意のほかの電圧であってもよく、たとえば第1の電圧として100mVを選んだ場合、NO2を含む空気の電流はゼロであり感度がなく(Ad=0)、NOを含む空気に対して感度があるので、このNOxセンサは、電圧100mV印加時は、NO濃度計として作動し、ただちにNO濃度を得ることができる。このNO濃度を、上記(2)式に代入してNO2濃度を得ることができる。Ad=0であっても、両方濃度検知条件Am・Bd−Bm・Ad≠0は満たされる。上記のように、同種材料によるNOx検知部であっても、両NOx検知部の温度を変えることで両方濃度検知条件Am・Bd−Bm・Ad≠0が成り立ち、NO濃度MおよびNO2濃度Dを個別に求めることが可能になる。
【0025】
図1に示すNOxセンサは、安定化ジルコニアYSZ13を、揮発性粘着剤などを用いてドクターブレード法などによって膜を形成し、次いで適切な雰囲気で加熱して焼結して焼結体として形成する。次いで、スパッタリングによって、その安定化ジルコニアの焼結体13上に検知電極11を、白金およびCdCr24で成膜する。スパッタリングによって検知電極11の厚みを薄く形成することによって、多孔質性は満たされる。このとき、レーザーアブレーション法で厚みを薄くすることによって形成してもよく、多孔質性は確保される。参照電極12についても、スパッタリング法によって厚みを薄く形成することによって多孔質性を確保することができる。可変定電圧発生装置、電流計、NO濃度およびNO2濃度演算部などは、高温への暴露を避けるために、自動車エンジンなどのより広い範囲を制御する制御ボード等にまとめて搭載するのがよい。温度制御に関連する温度センサの信号読み出し部、ヒータ制御部なども、上記制御ボードのマイコンに組み込むのがよい。
【0026】
本実施の形態におけるNOxセンサ30は、一つで、誤差要因となる異なる箇所ではなく、同じ位置で同時にサンプリングして、NO濃度およびNO2濃度を精度よく測定しながら、小型化し、ハンドリング性を大きく向上することができる。このため、とくに自動車、なかでもディーゼルエンジン搭載車の排気経路に配置することによって、排気浄化装置の制御部に正確なNO濃度およびNO2濃度を入力でき、適正な排気浄化の促進に資することができる。
【0027】
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態3における排気浄化装置50を説明するための図である。この排気浄化装置は、尿素を用いて排気中のNOxを窒素ガス等に還元する尿素選択還元触媒装置(尿素SCR装置)である。図4において、エンジン71は、たとえばディーゼルエンジンである。このディーゼルエンジン71は、排気ガス再循環装置(EGR)73が設けられ、また燃料噴射の制御のために制御装置(ECU)72が配置されている。制御装置(ECU)72は、尿素供給制御装置(ECU)75と共通化してもよい。ディーゼルエンジン71からの排気経路において、ディーゼルエンジン71に近い上流に酸化触媒(DOC)74を配置する。この酸化触媒74は、NOをNO2に酸化する上で有効である。酸化触媒74の下流に尿素選択還元触媒(SCR)78を設け、さらにその後段に、尿素から反応生成したアンモニアのスリップを防止するための酸化触媒79が配置される。
【0028】
尿素選択還元触媒78の入口には、NOxセンサ30と温度センサ41とを配置し、NOxセンサ30の2つのNOx検知部からの電流変化率は制御装置75に読み出され、温度センサ41からの温度データを下に、予め入力されている感度に基づいて、NO濃度とNO2濃度とが算出される。このNO濃度およびNO2濃度に基づいて、尿素添加装置76が作動して、尿素選択還元触媒の入口に位置する尿素噴射口からの尿素噴射量を制御する。尿素は、尿素タンク77に貯留されている。
【0029】
本実施の形態における排気浄化装置の尿素選択還元装置50では、狭隘な箇所に2つの異なる材料のNOx検知部をもつので、その狭隘な場所におけるNO濃度およびNO2濃度を同時に、個別に得ることができる。このため、正確なNO濃度およびNO2濃度に基づき、適切な尿素噴射制御や燃料噴射制御を行うことができ、排気浄化および燃費向上を改善することができる。
【0030】
上記において、本発明の実施の形態について説明を行ったが、上記に開示された本発明の実施の形態は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれら発明の実施の形態に限定されない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明によれば、一つのNOxセンサで、誤差をもたらす異なる箇所でのサンプリングをすることなく、同じ位置で、同じ時刻にサンプリングして、NO濃度およびNO2濃度を精度よく測定しながら、小型化し、ハンドリング性を大きく向上することができる。このため、とくに自動車、なかでもディーゼルエンジン搭載車の排気経路に配置することによって、排気浄化装置の制御部に正確なNO濃度およびNO2濃度を入力でき、適正な排気浄化の制御に資することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施の形態1におけるNOxセンサを説明するための図である。
【図2】図1に示すNOx検知部の電圧−電流曲線を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態1のNOxセンサを用いてNO濃度およびNO2濃度を求める方法を説明するための図である。
【図4】本発明の実施の形態2における排気浄化装置を説明するための図である。
【符号の説明】
【0033】
1 絶縁性基板、10 NOx検知部、11 検知電極、12参照電極,13 固体電解質層(CdCr24+Pt)、15 可変定電圧発生部、16 電流測定部、20 制御部、30 NOxセンサ、41 温度センサ、50 排気浄化装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気経路に取り付けられ、排気中のNOx濃度を測定するために用いられるNOxセンサであって、
1つの固体電解質と、
前記固体電解質を挟むように位置する、多孔質の検知電極および多孔質の参照電極と、
前記検知電極と参照電極との間に電圧を印加するための可変定電圧発生部、および前記電圧を印加した状態で前記検知電極と参照電極との間に流れる電流を測定するための電流測定部を含み、前記可変定電圧発生部に2つの電圧を発生させて前記検知電極と参照電極との間に印加させ、各電圧印加状態における電流測定部の電流値を読み、NO濃度およびNO2濃度の算出を行うための制御部と、を備えることを特徴とする、NOxセンサ。
【請求項2】
前記多孔質の検知電極が、CdCr24およびPtを主材料に含むことを特徴とする、請求項1に記載のNOxセンサ。
【請求項3】
前記固体電解質が安定化ジルコニウムであることを特徴とする、請求項1または2に記載のNOxセンサ。
【請求項4】
前記制御部が、前記可変定電圧発生部および電流測定部とともに、前記排気経路から離れた位置に配置され、前記検知電極および参照電極へと配線接続されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一つに記載のNOxセンサ。
【請求項5】
前記固体電解質の温度を制御する温度制御手段を備えることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一つに記載のNOxセンサ。
【請求項6】
排気経路内の排気に作用してその排気を浄化するための排気浄化装置であって、請求項1〜5のいずれか一つに記載のNOxセンサを前記排気経路に備えることを特徴とする、排気浄化システム。
【請求項7】
前記排気を浄化するためにアンモニアを還元剤としたSCR(Selective Catalytic Reduction)を用い、前記NOxセンサが、該SCRの前に位置することを特徴とする、請求項6に記載の排気浄化システム。
【請求項8】
排気経路の排気中のNOxの濃度を測定するための方法であって、
(多孔質の検知電極/固体電解質層/多孔質の参照電極)を含むNOx検知部を前記排気経路に配置する工程と、
前記検知電極と参照電極との間に、第1の電圧を印加して、該検知電極と参照電極間に流れる第1の電流を測定する工程と、
前記検知電極と参照電極との間に、前記第1の電圧と異なる第2の電圧を印加して、該検知電極と参照電極間に流れる第2の電流を測定する工程と、
予め、既知濃度のNOを含む空気および既知濃度のNO2を含む空気を用いて測定した前記第1および第2の電圧印加時の電流データに基づいて、前記電流測定工程で得た第1および第2の電流から、NO濃度およびNO2濃度を求めることを特徴とする、NOx測定方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−210299(P2009−210299A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−51195(P2008−51195)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】