説明

PARPを阻害するための化合物、方法、および医薬組成物

【課題】本発明は、例えば壊死またはアポトーシスによる細胞損傷または細胞死に由来する、細胞、組織および/または器官の傷害を治療および/または予防するためにPARP活性を阻害する化合物、組成物、および方法を提供する。
【解決手段】本発明は、ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(「PARP」)を阻害する化合物、これらの化合物を含有する組成物、およびこれらのPARP阻害剤を本明細書に記載する状態の作用を治療、予防および/または改善するために使用する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国特許法第119条第(e)項により、2003年5月28日出願の仮出願第60/473,475号に基づく国内優先権、および2004年5月26日出願のPCT/US04/016524の特典を主張するものであり、そのそれぞれのすべての内容を、参照により本明細書に援用する。
本発明は、核酵素、ポリ(アデノシン5'-二リン酸-リボース)ポリメラーゼ[「ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ」または「PARP」、また、ADPRT(NAD:タンパク質(ADP-リボシルトランスフェラーゼ(ポリマー化)))、pADPRT(ポリ(ADP-リボース)トランスフェラーゼ)およびPARS(ポリ(ADP-リボース)シンセターゼ)ともよばれる]を阻害するための、化合物、方法、および医薬組成物を提供する。さらに、本発明は、壊死またはアポトーシスによる細胞損傷または細胞死に起因する組織損傷、虚血および再潅流傷害に起因する神経組織損傷例えば虚血性脳卒中、頭部外傷もしくは脊髄損傷など、神経障害および神経変性疾患例えばパーキンソンもしくはアルツハイマー病および多発性硬化症などを予防および/または治療するために、血管性脳卒中を予防または治療するために、心血管障害例えば心筋梗塞などを治療または予防するために、その他の状態および/または障害例えば加齢性筋変性、AIDSおよびその他の免疫老化疾患、関節炎、アテローム性動脈硬化症、運動失調症、毛細血管拡張症、悪質液、癌、複製老化を伴う骨格筋変性疾患、糖尿病(真正糖尿病など)、炎症性腸疾患(大腸炎およびクローン病など)、急性膵炎、粘膜炎、出血性ショック、内臓動脈閉塞ショック、多臓器機能不全(腎臓、肝臓、腎、肺、網膜、膵臓および/または骨格筋系のいずれかを含むような)、急性自己免疫性甲状腺炎、筋ジストロフィー、変形性関節炎、骨粗しょう症、慢性および急性疼痛(神経障害性疼痛など)、腎機能不全、網膜虚血、敗血症性ショック(エンドトキシンショックなど)、局部および/または遠隔内皮細胞機能不全(内皮依存性弛緩応答および接着分子のアップレギュレーションによって認識されるような)、炎症および皮膚老化などを治療するために、細胞の寿命および増殖能を増大するために、例えばオキシダント生成における全身性メディエータ、炎症誘発性メディエータおよび/またはサイトカイン、および白血球浸潤、カルシウムイオン過負荷、リン脂質酸化、一酸化窒素代謝低下および/またはATP産生低下に関する全身性メディエータとして、老化細胞の遺伝子発現を変えるために、あるいは低酸素腫瘍細胞を放射線増感するために、本発明のPARP阻害剤を使用する方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
本発明方法で使用されるPARP阻害剤および医薬組成物の幾つかは、一般的な合成経路を利用し、標準的な有機合成技術によって容易に調製することができ、その例が、刊行物、Wuら、「The Protective Effect of GPI 18078,a Novel Water Soluble Poly(ADP-Ribose)Polymerase Inhibitor in Myocardial Ischemia-Reprefusion Injury」、Experimental Biology 2003(FASEB),April 11〜15,2003、Wuら、「Myocardial Protection and Anti-Inflammatory Effect of GPI 15427,a Novel Water Soluble Poly(ADP-Ribose)Polymerase Inhibitor:Comparison with GPI 6150」、Experimental Biology 2003(FASEB),April 11〜15,2003、Kalishら、「Design,Synthesis and SAR of PARP-1 Inhibitors」、ISMC Meeting,Barcelona,September 4 2002、Xuら、「Design and Synthesis of Novel Potent Poly(ADP-Ribose)Polymerase(PARP)Inhibitors」、224th ACS National Meeting ,Boston,August 18〜23,2002、Williamsら、「Intravenous Delivery of GPI 15427/C and GPI 16539/C,Potent Water-Soluble PARP Inhibitors,Reduces Infarct Volume Following Permanent and Transient Focal Cerebral Ischemia」、Soceity for Neuroscience,Orlando FL,October 2002、Tentori L.ら、「Systemic administration of the PARP-1 inhib
itor GPI 15427 increases the anti-tumor activity of temozolomide against metastatic melanoma」、Medical Science Monitor,volume 9,supplement 1,p34,2003、およびTentoriら、「Poly(ADP-Ribose)polymerase Inhibitor to Increase Temozolomide Efficacy Against Melanoma,Glioma and Lymphoma」、CNS Site AACR poster,April 2003、US6,348,475、6,545,011、RE36,397、6,380,211、6,235,748、6,121,278、6,197,785、6,380,193、6,346,536、6,514,983、6,306,889、6,387,902、6,201,020、および6,291,425中に記載されており、前記特許、特許出願および刊行物のすべての内容を、あたかも本明細書にすべてが示されたごとく、参照により本明細書に援用する。
【0003】
その他のPARP阻害剤は、商業的供給業者から入手可能であるか、あるいは、当業者が、US6,291,425に開示されている技術のような標準的技術を使用して容易に調製できる。この参考文献のすべての内容を、あたかも本明細書にすべてが示されたごとく、参照により本明細書に援用する。
【0004】
PARS(ポリ(ADP-リボース)シンセターゼの略号)、またはADPRT(NAD:タンパク質(ADP-リボシル)トランスフェラーゼ(ポリマー化)の略号)、またはpADPRT(ポリ(ADP-リボース)トランスフェラーゼの略号)としても知られているPARP(EC 2.4.2.30)は、116kDaの主要核タンパク質である。これは、ほとんどすべての真核生物中に存在する。この酵素は、ポリ(ADP-リボース)、すなわち、NAD由来の200を超えるADP-リボース単位からなることのできる分岐ポリマーを合成する。ポリ(ADP-リボース)のタンパク質受容体は、DNAの完全性を維持するのに直接または間接的に関与している。これらのタンパク質としては、ヒストン、トポイソメラーゼ、DNAおよびRNAポリメラーゼ、DNAリガーゼ、およびCa2+およびMg2+依存性エンドヌクレアーゼが挙げられる。PARPタンパク質は、多くの組織で、最も著しくは免疫系、心臓、脳および生殖系列細胞で高レベルに発現する。通常の生理学的条件下で、PARP活性はごく小さい。しかし、DNAが損傷すると、PARPは直ちに最大500倍まで活性化する。PARPに帰すると考えられる多くの機能の中で、その主要な役割は、ADP-リボシル化およびそれによる幾つかのDNA修復タンパク質の配位によって、DNAの修復を促進することである。PARP活性化の結果として、NADレベルが有意に低下する。多くの内因性および外因性物質が、DNAを損傷し、PARPを活性化することが示されており、一酸化窒素(NO)とスーパーオキシドの組合せで形成されるペルオキシ亜硝酸は、例えばショックまたは炎症の間の生体内に関して報告されている多様な疾患状態の原因となる主要な悪玉であると思われる。
【0005】
PARPが大幅に活性化すると、大規模なDNA損傷を受けている細胞中のNADが大きく枯渇することになる。ポリ(ADP-リボース)は寿命が短いので(半減期<1分)、代謝回転速度が速まる。ポリ(ADP-リボース)は、一度形成されると、ホスホジエステラーゼおよび(ADP-リボース)タンパク質リアーゼと共に構成的に活性なポリ(ADP-リボース)グリコヒドロラーゼ(PARG)によって急速に分解される。PARPおよびPARGは、大量のNADをADP-リボースに変換するサイクルを形成する。1時間に満たない間に、PARPの過剰賦活により、NADおよびATPが通常レベルの20%未満に低下する。このようなシナリオは、酸素欠乏が細胞のエネルギー出力を既に劇的に損なっている虚血の際に特に有害である。再潅流の際に続いて起こるフリーラジカル産生が、組織損傷の主要原因であると思われる。虚血および再潅流の際に多くの器官で典型的であるATPの減少の一部は、ポリ(ADP-リボース)の代謝回転によるNADの枯渇に関連している可能性がある。したがって、PARPまたはPARGを阻害することによって、細胞のエネルギーレベルを保ち、傷害後の虚血組織の生存を強化することが期待される。
【0006】
ポリ(ADP-リボース)の合成は、炎症応答に必須である幾つかの遺伝子の誘導発現にも関連している。PARP阻害剤は、マクロファージ中での誘導型一酸化窒素シンターゼ(iNOS)産生、内皮細胞中でのP型セレクチンおよび細胞間接着分子-1(ICAM-1)の産生を抑制する。このような活性が、PARP阻害剤によって示される強力な抗炎症効果の基である。PARPを阻害すると、好中球の損傷組織への移動および浸潤を予防することによって、壊死を低減することができる。(Zhang,J.、「PARP inhibitation:a novel approach to treat ischaemia/reperfusion and inflammation-related injuries」、Chapter 10 in Emerging Drugs(1999)4:209〜221、Ashley Publications Ltd.、およびその中で引用されている参考文献)。
【0007】
PARPの産生は、損傷を受けたDNA断片によって活性化され、PARPは、いったん活性化されると、ヒストンおよびPARPそれ自体を含む各種核タンパク質に対する100個のADP-リボース単位までの付着を触媒する。大きな細胞ストレスの間には、PARPの大幅な活性化が、エネルギー貯蔵の枯渇を介して細胞損傷または細胞死を急速に導く可能性がある。再生されるNAD(ADP-リボースの供給源およびPARPの基質)1分子当り4個のATP分子が消費されるので、NADは、大規模なPARP活性化によって枯渇し、NADを再合成しようとする取り組みの中で、ATPもまた枯渇する可能性がある。
【0008】
PARPの活性化が、NMDAおよびNO誘導神経毒性において重要な役割を演じることが報告されている。このことは、毒性の予防がPARP阻害の用量効力に直接的に対応している皮質培養物においておよび海馬切片において明らかにされている(Zhangら、「Nitric Oxide Activation of Poly(ADP-Ribose)Synthetase in Neurotoxicity」、Science,263:687〜89(1994)、およびWallisら、「Neuroprotection Against Nitric Oxide Injury with Inhibitors of ADP-Robosylation」、NeuroReport,5:3,245〜48(1993))。したがって、正確な作用機序は未だ解明されていないが、神経変性疾患および頭部外傷の治療におけるPARP阻害剤の潜在的役割が認められている(Endresら、「Ischemic Brain Injury is Mediated by the Activation of Poly(ADP-Ribose)Polymerase」、J.Cereb.Blood Flow Metabol.,17:1143〜51(1997)、およびWallisら、「Traumatic Neuroprotection with Inhibitors of Nitric Oxide and ADP-Ribosylation」、Brain Res.,710:169〜77(1996))。
【0009】
同様に、PARP阻害剤の単回注射が、ウサギの心筋または骨格筋の虚血および再潅流に起因する梗塞の大きさを縮小することが明らかにされている。これらの研究において、閉塞の1分前または再潅流の1分前に3-アミノ-ベンズアミド(10mg/kg)を単回注射すると、心臓の梗塞の大きさが同様に縮小(32〜42%)し、一方、別のPARP阻害剤、1,5-ジヒドロキシイソキノリン(1mg/kg)も、同程度(38〜48%)まで梗塞の大きさを縮小させる。Thiemermannら、「Inhibition of the Activity of Poly(ADP Ribose)Synthetase Reduces Ischemia-Reperfusion Injury in the Heart and Skeletal Muscle」、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,94:679〜83(1997)。これらの結果から、PARP阻害剤が虚血心臓または骨格筋組織を前もって救う可能性があると推測することは、妥当である。
【0010】
PARPの活性化は、卒中、アルツハイマー病およびパーキンソン病などの病理学的状態に関係する、グルタミン酸(NMDA受容体の刺激を経由して)、反応性酸素中間体、アミロイド∃-タンパク質、N-メチル-4-フェニル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン(MPTP)またはその活性代謝産物N-メチル-4-フェニルピリジン(MPP+)のいずれかに対する過剰曝露に続く、神経毒性損傷後の傷害の尺度として使用することもできる。Zhangら、「Poly(ADP-Ribose)Synthetase Activation:An Early Indicator of Neurotoxic DNA Damage」、J.Neurochem.,65:3,1411〜14(1995)。in vitroでの小脳顆粒細胞での、およびMPTP神経毒性におけるPARP活性化の役割を探求するために、他にも研究が続いている。Cosiら、「Poly(ADP-Ribose)Polymerase(PARP)Revisited.A New Role for an Old Enzyme:PARP Involvement in Neurodegeneration and PARP Inhibitors as Possible Neuroprotective Agents」、Ann.N.Y.Acad.Sci.,825:366〜79(1997)、およびCosiら、「Poly(ADP-Ribose)Polymerase Inhibitors Protect Against MPTP-induced Depletions of Striatal Dopamine and Cortical Noradrenaline in C57B1/6 Mice」、Brain Res.,729:264〜69(1996)。有力な中枢神経系神経伝達物質として働き、かつN-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体およびその他のサブタイプの受容体に作用するグルタミン酸に対する過度の神経曝露は、卒中またはその他の神経変性過程の結果として、極めて高頻度で起こる。酸素を奪われたニューロンは、卒中または心臓発作の際などの虚血性脳傷害に際してグルタミン酸を大量に放出する。このグルタミン酸の過剰放出が、今度はN-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)、AMPA、カイニン酸およびMGR受容体の過剰刺激(興奮毒性)を引き起こし、それがイオンチャネルを開き、制御されないイオン流(例えば、Ca2+およびNa+が細胞内へ、K+が細胞外へ)を可能とし、ニューロンが過剰刺激される。過剰に刺激されたニューロンは、より多くのグルタミン酸を分泌し、プロテアーゼ、リパーゼおよびフリーラジカルの産生を介して最終的に細胞損傷または細胞死に帰着するフィードバックループまたはドミノ効果を生み出す。グルタミン酸受容体の過剰活性化は、癲癇、脳卒中、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、ハンチントン病、精神分裂病、慢性疼痛、低酸素症、低血糖症、虚血、外傷および神経傷害に続く虚血および神経欠損を含む、種々の神経学的疾患および状態に関わっている。グルタミン酸曝露と刺激は、脅迫性障害、特に薬物依存に対する基礎としても関わっている。その証拠としては、多くの動物種、およびグルタミン酸またはNMDAで処理した脳皮質培養物において、グルタミン酸受容体アンタゴニスト(すなわち、グルタミン酸のその受容体への結合をまたは受容体の活性化を遮断する化合物)が、血管性脳卒中に続く神経傷害を遮断するという発見が挙げられる。Dawsonら、「Protection of the Brain from Ischemia」、Cerebrovascular Disease,319〜25(H.Hunt Batjer編、1997)。NMDA、AMPA、カイニン酸およびMGR受容体を遮断することによって興奮毒性を予防する試みは、各受容体にはグルタミン酸の結合できる部位が複数あるので、困難であることが判っており、そのため、グルタミン酸がすべての受容体に結合するのを予防し、この理論の検証を可能にするための、アンタゴニスト混合系または万能アンタゴニストを見出すことは、困難であった。さらに、受容体を遮断するのに有効である組成物の多くは、動物に対して有毒でもある。かくして、現在のところ、グルタミン酸異常に対する有効な治療は知られていない。
【0011】
グルタミン酸によるNMDA受容体の刺激は、例えば、酵素、ニューロンの一酸化窒素シンターゼ(nNOS)を活性化し、神経毒性を仲介もする一酸化窒素(NO)の形成に繋がる。NMDA神経毒性は、一酸化窒素シンターゼ(NOS)阻害剤を用いる治療、またはin vitroでのnNOSの標的化遺伝子破壊により予防できる。Dawsonら、「Nitric Oxide Mediates Glutamate Neurotoxicity in Primary Cortical Cultures」、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88:6368〜71(1991)、およびDawsonら、「Mechanisms of Nitric Oxide-mediated Neurotoxicity in Primary Brain Cultures」、J.Neurosci.,13:6,2651〜61(1993)、Dawsonら、「Resistance to Neurotoxicity in Cortical Cultures from Neuronal Nitric Oxide Synthase-Deficient Mice」、J.Neurosci.,16:8,2479〜87(1996)、Iadecola、「Bright and Dark Sides of Nitric Oxide in Ischemic Brain Injury」、Trends Neurosci.,20:3,132〜39(1997)、Huangら、「Effect of Cerebral Ischemia in Mice Deficient in Neuronal Nitric Oxide Synthase」、Sciencs,265:1883〜85(1994)、Beckmanら、「Pathological Implications of Nitric Oxide,Superoxide and Peroxynitrite Formation」、Biochem.Soc.Tans.,21:330〜34(1993)、およびSzaboら、「DNA Strand Breakage,Activation of Poly(ADP-Ribose)Synthetase,and Cellular Energy Depletion are Invo
lved in Cytotoxicity in Macrophages and Smooth Muscle Cells Exposed to Peroxynitrite」、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,93:1753〜58(1996)。
【0012】
3-アミノベンズアミドなどのPARP阻害剤が、例えば過酸化水素またはガンマ線に一般的に応答してDNA修復に影響を及ぼすことが知られている。Cristovaoら、「Effect of a Poly(ADP-Ribose)Polymerase Inhibitor on DNA Breakage and Cytotoxicity Induced by Hydrogen Peroxide and γ-Radiation」、Terato.,Carcino.,and Muta.,16:219〜27(1996)。特に、Cristovaoらは、過酸化水素で処理された白血球中でのDNA鎖破壊のPARP依存性修復を観察した。
【0013】
PARP阻害剤は、多分DNA修復を阻止するそれら阻害剤の能力によって、低酸素腫瘍細胞を放射線増感することにおいて効果的であること、および放射線治療後に腫瘍細胞が致命的な可能性のあるDNAの損傷から回復するのを阻止することにおいて効果的であることが報告されている。米国特許第5,032,617号、同5,215,738号、および同5,041,653号。
【0014】
また、PARP阻害剤が、大腸炎などの炎症性腸疾患を治療するのに有用である証拠が存在する。Salzmanら、「Role of Peroxynitrite and Poly(ADP-Ribose)Synthase Activation Experimental Colitis」、Japanese J.Pharm.,75,Supp.I:15(1997)。特に、ハプテン、トリニトロベンゼンスルホン酸の50%エタノール溶液の管腔内投与によってラットで大腸炎が誘発された。処理ラットに、PARP活性の特異的阻害剤である3-アミノベンズアミドを投与した。PARP活性の阻害により、炎症応答が低下し、遠位結腸の形態およびエネルギー状態が回復した。Southanら、「Spontaneous Rearrangement of Aminoalkylthioureas into Mercaptoalkylguanidines,a Novel Class of Nitric Oxide Synthase Inhibitors with Selectivity Towards the Inducible Isoform」、Br.J.Pharm.,117:619〜32(1996)、およびSzaboら、「Mercaptoethylguanidine and Guanidine Inhibitors of Nitric Oxide Synthase React with Peroxynitrite and Protect Against Peroxynitrite-induced Oxidative Damage」、J.Biol.Chem.,272:9030〜36(1997)も参照されたい。
【0015】
また、PARP阻害剤が、関節炎を治療するのに有用である証拠が存在する。Szaboら、「Protective Effects of an Inhibitor of Poly(ADP-Ribose)Synthetase in Collagen-Induced Arthritis」、Japanese J.Pharm.,75,Supp.I:102(1997)、Szaboら、「DNA Strand Breakage,Activation of Poly(ADP-Ribose)Synthetase,and Cellular Energy Depletion are Involved in the Cytotoxicity in Macrophages and Smooth Muscle Cells Exposed to Peroxynitrite」、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,93:1753〜58(March 1996)、およびBauerら、「Modification of Growth Related Enzymatic Pathways and Apparent Loss of Tumorigenicity of a ras-transformed Bovine Endothelial Cell Line by Treatment with 5-Iodo-6-amino-1,2-benzopyrone(INH2BP)」、Intl.J.Oncol.,8:239〜52(1996)、およびHughesら、「Induction of T Helper Cell Hyporesponsiveness in an Experimental Model of Autoimmunity by Using Nonmitogenic Anti-CD3 Monoclonal Antibody」、J.Immuno.,153:3319〜25(1994)。
【0016】
さらに、PARP阻害剤は、糖尿病の治療に有用であると思われる。Hellerら、「Inactivation of the Poly(ADP-Ribose)Polymerase Gene Affects Oxygen Radical and Nitric Oxide Toxicity in Islet Cells」、J.Biol.Chem.,270:19,11176〜80(May 1995)。Hellerらは、不活性化PARP遺伝子を有するマウスからの細胞を使用し、これらの突然変異細胞が、DNA傷害性ラジカル曝露後にNAD+の枯渇を示さないことを見出した。これらの突然変異細胞は、NOの毒性に対し、より耐性であることが見出された。
【0017】
PARP阻害剤は、エンドトキシンショックまたは敗血症性ショックを治療するのに有用であることが示されている。Zingarelliらは、「Protective Effects of Nicotinamide Against Nitric Oxide-Mediated Delayed Vascular Failure in Endotoxic Shock:Potential Involvement of PolyADP Ribosyl Synthetase」、Shock,5:258〜64(1996)で、ポリ(ADP-リボース)シンセターゼでトリガーされるDNA修復サイクルの阻害が、エンドトキシンショックにおける血管機能不全対して保護効果を有することを示唆している。Zingarelliらは、ニコチンアミドが、エンドトキシンショックにおける遅延性NO-介在血管機能不全を防ぐことを見出した。Zingarelliらは、また、ニコチンアミドの作用が、ポリ(ADP-リボース)シンセターゼでトリガーされるエネルギーを消費するDNA修復サイクルのNO-介在活性化を阻害することと関連している可能性があることを見出した。Cuzzocrea、「Role of Peroxynitrite and Activation of Poly(ADP-Ribose)Synthetase in the Vascular Failure Induced by Zymosan-activated Plasma」、Brit.J.Pharm.,122:493〜503(1997)。
【0018】
PARP阻害剤は、癌を治療するのに使用されている。Sutoら、「Dihydroisoquinolinones:The Design and Synthesis of a New Series of Potent Inhibitors of Poly(ADP-Ribose)Polymerase」、Anticancer Drug Des.,7:107〜17(1991)。さらに、Sutoらは、米国特許5,177,075号で、腫瘍細胞に対する電離性放射線または化学療法剤の致死効果を増強するために使用される幾つかのイソキノリン類について考察している。Weltinらは、「Effect of 6(5H)-Phenanthridinone an Inhibitor of Poly(ADP-Ribose)Polymerase ,on Cultured Tumor Cells」、Oncol.Res.,6:9,399〜403(1994)で、PARP活性の阻害、腫瘍細胞増殖の低減、および腫瘍細胞をアルキル化薬で併用治療した場合の著しい相乗効果について考察している。
【0019】
PARP阻害剤のさらに別の用途は、末梢神経損傷、およびその結果として生ずる、細胞質および核質(いわゆる「ダーク」ニューロン)の過クロマチン症によって特徴付けられる脊髄後角の経シナプス変性が発現する、総坐骨神経の慢性狭窄損傷(CCI)よって誘発される疼痛などの神経障害性疼痛として知られる病理学的疼痛症候群である。Maoら、Pain,72:355〜366(1997)。
【0020】
また、PARP阻害剤は、皮膚老化、アルツハイマー病、アテローム性動脈硬化症、変形性関節症、骨粗しょう症、筋ジストロフィー、複製老化を伴う骨格筋の変性疾患、加齢性筋変性、免疫老化、AIDS、およびその他の免疫老化疾患のような疾患の治療を含む、細胞の寿命および増殖を拡大するために使用されている。WO98/27975。
【0021】
多数の公知のPARP阻害剤が、Banasikら、「Specific Inhibitors of Poly(ADP-Ribose)Synthetase and Mono(ADP-Ribosyl)-Transferase」、J.Biol.Chem.,267:3,1569〜75(1992)、およびBanasikら、「Inhibitors and Activators of ADP-Ribosylation Reactions」、Molec.Cell.Biochem.,138:185〜97(1994)に記載されている。しかし、上記で考察された方法では、望ましくない副作用が同時に生じることによって、これらのPARP阻害剤を効果的に使用することが制限されている(Milamら、「Inhibitors of Poly(Adenosine Diphosphate-Ribose)Synthesis:Effect on Other Metabolic Processes」、Science,223:589〜91(1984))。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】米国仮出願第60/473,475号
【特許文献2】PCT/US04/01654
【特許文献3】US6,348,475
【特許文献4】US6,545,011
【特許文献5】USRE36,397
【特許文献6】US6,380,211
【特許文献7】US6,235,748
【特許文献8】US6,121,278
【特許文献9】US6,197,785
【特許文献10】US6,380,193
【特許文献11】US6,346,536
【特許文献12】US6,514,983
【特許文献13】US6,306,889
【特許文献14】US6,387,902
【特許文献15】US6,201,020
【特許文献16】US6,291,425
【特許文献17】US5,032,617
【特許文献18】US5,215,738
【特許文献19】US5,041,653
【特許文献20】WO98/27975
【特許文献21】PCT公開No. 96/13610
【特許文献22】WO 99/11645
【非特許文献】
【0023】
【非特許文献1】Wuら、「The Protective Effect of GPI 18078,a Novel Water Soluble Poly(ADP-Ribose)Polymerase Inhibitor in Myocardial Ischemia-Reprefusion Injury」、Experimental Biology 2003(FASEB),April 11〜15,2003
【非特許文献2】Wuら、「Myocardial Protection and Anti-Inflammatory Effect of GPI 15427,a Novel Water Soluble Poly(ADP-Ribose)Polymerase Inhibitor:Comparison with GPI 6150」、Experimental Biology 2003(FASEB),April 11〜15,2003
【非特許文献3】Kalishら、「Design,Synthesis and SAR of PARP-1 Inhibitors」、ISMC Meeting,Barcelona,September 4 2002
【非特許文献4】Xuら、「Design and Synthesis of Novel Potent Poly(ADP-Ribose)Polymerase (PARP)Inhibitors」、224th ACS National Meeting ,Boston,August 18〜23,2002
【非特許文献5】Williamsら、「Intravenous Delivery of GPI 15427/C and GPI 16539/C,Potent Water-Soluble PARP Inhibitors,Reduces Infarct Volume Following Permanent and Transient Focal Cerebral Ischemia」、Soceity for Neuroscience,Orlando FL,October 2002
【非特許文献6】Tentori L.ら、「Systemic administration of the PARP-1 inhibitor GPI 15427 increases the anti-tumor activity of temozolomide against metastatic melanoma」、Medical Science Monitor,volume 9,supplement 1,p34,2003
【非特許文献7】Tentoriら、「Poly(ADP-Ribose)polymerase Inhibitor to Increase Temozolomide Efficacy Against Melanoma,Glioma and Lymphoma」、CNS Site AACR poster,April 2003、
【非特許文献8】Zhang,J.「PARP Iinhibitation:a novel approach to treat ischaemia/reperfusion and inflammation-related injuries」、Chapter 10 in Emerging Drugs(1999)4:209〜221、Ashley Publications Ltd
【非特許文献9】Zhangら、「Nitric Oxide Activation of Poly(ADP-Ribose)Synthetase in Neurotoxicity」、Science,263:687〜89(1994)
【非特許文献10】Wallisら、「Neuroprotection Against Nitric Oxide Injury with Inhibitors of ADP-Robosylation」、NeuroReport,5:3,245〜48(1993)
【非特許文献11】Endresら、「Ischemic Brain Injury is Mediated by the Activation of Poly(ADP-Ribose)Polymerase」、J.Cereb.Blood Flow Metabol.,17:1143〜51(1997)
【非特許文献12】Wallisら、「Traumatic Neuroprotection with Inhibitors of Nitric Oxide and ADP-Ribosylation」、Brain Res.,710:169〜77(1996)
【非特許文献13】Thiemermannら、「Inhibition of the Activity of Poly(ADP Ribose)Synthetase Reduces Ischemia-Reperfusion Injury in the Heart and Skeletal Muscle」、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,94:679〜83(1997)
【非特許文献14】Zhangら、「Poly(ADP-Ribose)Synthetase Activation:An Early Indicator of Neurotoxic DNA Damage」、J.Neurochem.,65:3,1411〜14(1995)
【非特許文献15】Cosiら、「Poly(ADP-Ribose)Polymerase(PARP)Revisited.A New Role for an Old Enzyme:PARP Involvement in Neurodegeneration and PARP Inhibitors as Possible Neuroprotective Agents」、Ann.N.Y.Acad.Sci.,825:366〜79(1997)
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【非特許文献45】West、Arch.Derm. 130: 87〜95頁(1994)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
生じる副作用が最小であり、有効かつ強力なPARP阻害剤に対する必要性が引き続き存在する。本発明は、例えば壊死またはアポトーシスによる細胞損傷または細胞死に由来する、細胞、組織および/または器官の傷害を治療および/または予防するためにPARP活性を阻害する化合物、組成物、および方法を提供する。本発明の化合物および組成物は、後続する限局性虚血および再潅流傷害を含む、神経組織または細胞の障害を改善、治療および/または予防するのに特に有用である。一般に、PARP活性を阻害することは、エネルギー損失から細胞を救い、ニューロンの非可逆的脱分極を予防し、そのことによって神経を保護する。なんらかの機序理論によって拘束されることを望むものではないが、本発明の化合物、組成物および方法を使用することによるPARP活性の阻害が、反応性フリーラジカルおよび一酸化窒素の悪影響を防ぐことによって細胞、組織および器官を保護すると考えられる。したがって、本発明は、反応性フリーラジカルおよび/または一酸化窒素で誘発される障害または損傷から細胞、組織および/または器官を治療および/または予防する方法も提供する。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明は、ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(「PARP」)を阻害する化合物、これらの化合物を含有する組成物、および本明細書に記載の状態の影響を治療、予防および/又は改善するためにこれらPARP阻害剤を使用する方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】一時的3VO MCAOのIV前後の40mg/kg静注での化合物43の効果(全梗塞および局所梗塞)の図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
一実施形態において、本発明は、下記式Iの化合物、または医薬として許容される塩、プロドラッグ、代謝産物、あるいは水和物を提供する。
【0028】
【化1】

【0029】
上記式中、
R1は、H、ハロゲン、アルコキシ、または低級アルキルであり、
R2は、H、ハロゲン、アルコキシ、または低級アルキルであり、
R3は、独立に、H、アミノ、ヒドロキシ、-N-N、ハロゲン置換アミノ、-O-アルキル、-O-アリール、または置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、-COR8(R8は、H、-OH、置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールである)、または-OR6もしくは-NR6R7(R6およびR7は、それぞれ独立に、水素、または置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールである)であり、
R4は、独立に、H、アミノ、ヒドロキシ、-N-N、-CO-N-N、ハロゲン置換アミノ、-O-アルキル、-O-アリール、または置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、-COR8(R8は、H、-OH、置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールである)、または-OR6もしくは-NR6R7(R6およびR7は、それぞれ独立に、水素、または置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールである)であり、
R5は、独立に、H、アミノ、ヒドロキシ、-N-N、-CO-N-N、ハロゲン置換アミノ、-O-アルキル、-O-アリール、または置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、-COR8(R8は、H、-OH、置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールである)、または-OR6もしくは-NR6R7(R6およびR7は、それぞれ独立に、水素、または置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールである)である。
【0030】
また、本発明は、上記式中、
R1が、H、F、Cl、メトキシ、またはメチルであり、
R2が、H、F、Cl、メトキシ、またはメチルであり、
R3が、独立に、H、アミノ、ヒドロキシ、-N-N、ハロゲン置換アミノ、-O-アルキル、-O-アリール、または置換されていてもよいアルキル、アルケニル、-COR8(R8は、H、-OH、置換されていてもよいアルキル、アルケニルである)、または-OR6もしくは-NR6R7(R6およびR7は、それぞれ独立に、水素、または置換されていてもよいアルキル、アルケニルである)であり、
R4が、独立に、H、アミノ、ヒドロキシ、-N-N、-CO-N-N、ハロゲン置換アミノ、-O-アルキル、-O-アリール、または置換されていてもよいアルキル、アルケニル、-COR8(R8は、H、-OH、置換されていてもよいアルキル、またはアルケニルである)、または-OR6もしくは-NR6R7(R6およびR7は、それぞれ独立に、水素、または置換されていてもよいアルキル、またはアルケニルである)であり、
R5が、独立に、H、アミノ、ヒドロキシ、-N-N、-CO-N-N、ハロゲン置換アミノ、-O-アルキル、-O-アリール、または置換されていてもよいアルキル、アルケニル、-COR8(R8は、H、-OH、置換されていてもよいアルキル、またはアルケニルである)、または-OR6もしくは-NR6R7(R6およびR7は、それぞれ独立に、水素、または置換されていてもよいアルキル、またはアルケニルである)である、化合物を提供する。
【0031】
また、本発明は、以下の化合物を提供する。
【0032】
【化2】

【0033】
別の実施形態において、本発明は下記式IIの化合物を提供する。
【0034】
【化3】

【0035】
式中、
R1は、H、ハロゲン、アルコキシ、または低級アルキルであり、
R2は、H、ハロゲン、アルコキシ、または低級アルキルであり、
R3は、独立に、H、アミノ、ヒドロキシ、-NH-NH2、ハロゲン置換アミノ、-O-アルキル、-O-アリール、または置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、-COR8(R8は、H、-OH、置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールである)、または-OR6もしくは-NR6R7(R6およびR7は、それぞれ独立に、水素、または置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールである)であり、
R4は、独立に、H、アミノ、ヒドロキシ、-NH-NH2、-CO-NH-NH2、ハロゲン置換アミノ、-O-アルキル、-O-アリール、または置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、-COR8(R8は、H、-OH、置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールである)、または-OR6もしくは-NR6R7(R6およびR7は、それぞれ独立に、水素、または置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールである)である。
【0036】
別の実施形態において、本発明は、上記式中、
R1が、H、F、Cl、メトキシ、またはメチルであり、
R2が、H、F、Cl、メトキシ、またはメチルであり、
R3が、独立に、H、アミノ、ヒドロキシ、-NH-NH2、ハロゲン置換アミノ、-O-アルキル、-O-アリール、または置換されていてもよいアルキル、アルケニル、-COR8(R8は、H、-OH、置換されていてもよいアルキル、アルケニルである)、または-OR6もしくは-NR6R7(R6およびR7は、それぞれ独立に、水素、または置換されていてもよいアルキル、アルケニルである)であり、
R4が、独立に、H、アミノ、ヒドロキシ、-NH-NH2、-CO-NH-NH2、ハロゲン置換アミノ、-O-アルキル、-O-アリール、または置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、-COR8(R8は、H、-OH、置換されていてもよいアルキル、またはアルケニルである)、または-OR6もしくは-NR6R7(R6およびR7は、それぞれ独立に、水素、または置換されていてもよいアルキル、またはアルケニルである)である、化合物を提供する。
【0037】
別の実施形態において、本発明は以下の化合物を提供する。
【0038】
【化4A】

【化4B】

【0039】
また、本発明は、次の化合物群を提供する。
【0040】
【化5A】

【化5B】

【0041】
広くは、本発明の化合物および組成物は、ヒトなどの動物における、壊死もしくはアポトーシス、脳虚血および再潅流傷害による細胞損傷または細胞死、または神経変性疾患を治療または予防するのに使用できる。本発明の化合物および組成物は、細胞の寿命および増殖能を拡大するのに使用することができ、したがって、それと関連した疾患を治療または予防するのに使用することができ、それらは、老化細胞の遺伝子発現を変え、低酸素腫瘍細胞を放射線増感する。好ましくは、本発明の化合物および組成物は、壊死またはアポトーシスによる細胞損傷または細胞死に由来する組織損傷を治療または予防するのに、および/またはNMDA毒性によって介在されまたは介在されないでニューロン活性に影響を与えるのに使用できる。本発明の化合物は、グルタミン酸介在神経毒性および/またはNO介在する生物学的経路を治療するのに有用であることに限定されない。さらに、本発明の化合物は、本明細書に記載するように、PARPの活性化に関連するその他の組織損傷を治療または予防するのに使用できる。
【0042】
本発明は、ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)のポリメラーゼ活性を、in vivoおよび/またはin vitroで阻害する化合物、および開示化合物を含有する組成物を提供する。
【0043】
本発明は、溶液、細胞、組織、器官または器官系中のポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)のポリメラーゼ活性を、in vitroおよび/またはin vivoで阻害、制限および/または調節する方法を提供する。一実施形態において、本発明は、ヒトなどの哺乳動物におけるPARP活性を、局所的にまたは全身的に制限または阻害する方法を提供する。
【0044】
本発明は、PARP産生の増加によって悪化した、または増加を伴う疾患、症候群および/または状態を治療かつ/または予防するための方法を提供する。これらの方法は、このような治療または予防を必要とする人の細胞、組織、器官または器官系に本発明の化合物を適用または投与することを含む。
【0045】
一実施形態において、本発明は、心虚血または再潅流傷害に由来する心血管組織損傷を治療および/または予防するための方法を提供する。再潅流傷害は、例えば、心臓バイパス処置の終末、またはいったん血液の受け入れを止めていた心臓が再潅流を開始する場合の心停止の間に発生し、これらの方法は、再潅流傷害を予防し、治療しまたは低減するように、本発明の化合物または組成物を再潅流に先立って、または再潅流の直後に投与することを含む。本発明は、また、血管性脳卒中、心血管障害を予防および/または治療する方法を提供する。
【0046】
別の実施形態において、本発明は、細胞の寿命および/または増殖能を延長または増加させるためのin vitroまたはin vivoでの方法、したがって、それと関連があり、かつ、皮膚老化を含む細胞老化、アテローム性動脈硬化症、変形性関節症、骨粗しょう症、筋ジストロフィー、複製老化を伴う骨格筋の変性疾患、加齢性筋変性、免疫老化、AIDSおよびその他の免疫老化疾患によって誘発されまたは悪化する疾患、ならびに細胞老化および加齢に関連したその他の疾患を治療および/または予防する方法、さらに、老化細胞の遺伝子発現を変える方法も提供する。
【0047】
別の実施形態において、本発明は、癌の作用を治療または予防または改善する方法、および/または低酸素腫瘍細胞を放射線感受性にして、その腫瘍細胞を放射線治療により感じ易すくし、それによって腫瘍細胞が放射線治療の後にDNAの致命的かもしれない傷害から回復するのを妨げる方法を提供する。この実施形態の方法は、腫瘍細胞を特異的かつ選択的に放射線感受性にし、その腫瘍細胞を非腫瘍細胞よりも放射線療法により感じやすくすることを対象とする。
【0048】
別の実施形態において、本発明は、血管性脳卒中、心血管障害を予防かつ/または治療する方法、加齢性筋変性、AIDSおよびその他の免疫老化疾患、関節炎、アテローム性動脈硬化症、悪質液、癌、複製老化を伴う骨格筋の変性疾患、糖尿病、頭部外傷、脊髄損傷、免疫老化、炎症性腸疾患(大腸炎およびクローン病など)、急性膵炎、粘膜炎、出血性ショック、内臓動脈閉塞ショック、多臓器機能不全(腎臓、肝臓、腎、肺、網膜、膵臓および/または骨格筋系のいずれかを含むような)、急性自己免疫性甲状腺炎、筋ジストロフィー、変形性関節炎、骨粗しょう症、慢性および/または急性疼痛(神経障害性疼痛など)、腎機能不全、網膜虚血、敗血症性ショック(エンドトキシンショックなど)、局部および/または遠隔内皮細胞機能不全(内皮依存性弛緩応答および接着分子のアップレギュレーションによって認識されるような)、炎症および皮膚老化など、その他の状態および/または障害を治療するための方法を提供する。
【0049】
本発明の別の実施形態において、急性網膜虚血または急性血管性脳卒中と診断された人は、非経口的に、間欠的または連続的静脈内投与によって、本発明化合物をその化合物の単回投与または一連の分割投与として直ちに投与される。この初期治療の後、場合によっては、その人の示す神経学的症状に応じて、他の非経口投与の形態で本発明の同一または異なる化合物を、その人に投与できる。本発明の化合物は、その化合物を含有する生体適合性生分解性ポリマーマトリックス送達システムの埋込みにより、あるいはその化合物を脳の梗塞領域に直接的に投与するために挿入された硬膜下ポンプを経由して間欠的または連続的投与によって投与できる。
【0050】
別の実施形態において、本発明は、例えば、本発明の化合物を、オキシダント生成における全身性メディエータとして、炎症誘発性メディエータおよび/またはサイトカインとして、および/または白血球浸潤、カルシウムイオン過負荷、リン脂質過酸化、一酸化窒素代謝低下および/またはATP産生低下の全身性メディエータとして本発明の化合物を使用するなど、細胞の寿命および増殖能を拡大する方法を提供する。
【0051】
本発明の化合物は、壊死またはアポトーシスに起因する細胞損傷または細胞死がもたらす組織損傷を治療または予防することが可能であり、局所的虚血、心筋梗塞および再潅流傷害後のものを含む神経または心血管組織損傷を寛解させることが可能であり、PARP活性により引き起こされ、または悪化させられる様々な疾患および病状を治療することが可能であり、細胞の寿命または増殖能を延長しまたは増大させることが可能であり、老化細胞の遺伝子発現を変えることが可能であり、また、細胞の放射線感受性を増強させることが可能である。一般的に、PARP活性の阻害は、細胞をエネルギー損失から逃れさせ、神経細胞の場合には、不可逆的なニューロンの脱分極を予防するので、神経保護をもたらす。特定の理論には結び付けられていないが、フリーラジカルおよびNOの産生に加えて、多分まだ発見されていないような他の興奮毒性メカニズムでPARP活性化は共通の役割を果たすであろうと考えられる。
【0052】
前述の理由のため、本発明はさらに、壊死またはアポトーシスに起因する細胞損傷または細胞死がもたらす組織損傷を治療または予防するため、NMDA毒性により媒介されないニューロンの活動に影響を与えるため、NMDA毒性により媒介されるニューロンの活動に影響を与えるため、虚血および再潅流傷害、神経疾患および神経変性疾患がもたらす神経組織損傷を治療するため;血管性脳卒中を予防または治療するため;心血管障害を治療または予防するため;その他の病状および/または障害、例えば、加齢に伴う筋変性、AIDSおよびその他の免疫老化疾患、関節炎、アテローム性動脈硬化症、血管拡張性失調症、悪液質、癌、複製老化を伴う骨格筋の変性疾患、糖尿病、頭部外傷、免疫の老化、炎症性腸疾患(例えば、大腸炎およびクローン病)、筋ジストロフィー、骨関節炎、骨粗鬆症、慢性疼痛および/または急性疼痛(例えば、神経因性疼痛)、腎不全、網膜虚血、感染性ショック(例えば、内毒素性ショック)、および皮膚の老化を治療するため;細胞の寿命および増殖能を延ばすため;老化細胞の遺伝子発現を変化させるため;または、低酸素腫瘍細胞を放射線増感させるために、PARP活性を阻害するのに十分な量で、治療的に有効な量の先に特定された化合物を投与する方法に関する。本発明は、治療的に有効な量の先に特定された化合物を動物に投与することを含む動物の疾患および病状を治療する方法にも関する。
【0053】
本発明は、治療的に有効な量の先に特定された化合物を動物に投与することを含む動物の神経疾患を治療、予防または抑制する方法に関する。別の実施態様では、神経疾患は、物理的損傷または病状により生じる末梢神経疾患、外傷性脳障害、脊髄への物理的損傷、脳障害に関係する脳卒中、局所的虚血、広範囲の虚血、再潅流傷害、脱髄疾患および神経変性に関連する神経疾患からなる群より選択される。別の実施形態は、再潅流傷害が血管性脳卒中である場合である。さらなる別の実施態様は、末梢神経疾患がギラン-バレー症候群により引き起こされる場合である。さらなる別の実施態様は、脱髄疾患および神経疾患が神経変性に関連する場合である。別の実施態様は、再潅流傷害が血管性脳卒中である場合である。さらなる別の好ましい実施態様は、脱髄疾患が多発性硬化症である場合である。別の実施態様は、神経変性に関連する神経疾患がアルツハイマー病、パーキンソン病、および筋萎縮性側索硬化症からなる群より選択される場合である。
【0054】
別の実施態様は、治療的に有効な量の先に特定された本発明の化合物を動物に投与することにより、狭心症、心筋梗塞、心血管の虚血、およびPARP活性化に関連する心血管組織損傷などの動物の心血管疾患を治療、予防または抑制する方法である。
【0055】
本発明は、PARP活性を阻害するための、壊死またはアポトーシスに起因する細胞損傷または細胞死がもたらす組織損傷を治療、予防または抑制するための、動物の神経疾患を治療、予防または抑制するための、本発明の化合物の使用も意図している。
【0056】
別の実施態様では、神経疾患は物理的損傷または病状により引き起こされる末梢神経疾患、外傷性脳障害、脊髄への物理的損傷、脳障害に関係する脳卒中、局所的虚血、広範囲の虚血、再潅流傷害、脱髄疾患および神経変性に関連する神経疾患からなる群より選択される。
【0057】
別の実施態様は、再潅流傷害が血管性脳卒中である場合である。さらなる別の実施態様は、末梢神経疾患がギラン-バレー症候群により引き起こされる場合である。 さらなる別の実施態様は、脱髄疾患が多発性硬化症である場合である。別の実施態様は、神経変性に関連する神経疾患がアルツハイマー病、パーキンソン病、および筋萎縮性側索硬化症からなる群より選択される場合である。
【0058】
本発明は、本明細書に記載される動物の疾患および障害の治療用の薬物の調製における、本発明の化合物の使用も意図する。
【0059】
別の実施態様では、疾患または障害が神経疾患である。
【0060】
別の実施態様では、神経疾患は物理的損傷または病状により引き起こされる末梢神経疾患、外傷性脳障害、脊髄への物理的損傷、脳障害に関係する脳卒中、局所的虚血、広範囲の虚血、再潅流傷害、脱髄疾患および神経変性に関連する神経疾患からなる群より選択される。別の実施態様は、再潅流傷害が血管性脳卒中である場合である。さらに別の実施態様は、末梢神経疾患がギラン-バレー症候群により引き起こされる場合である。
【0061】
さらなる別の実施態様は、脱髄疾患が多発性硬化症の場合である。別の実施態様は、神経変性に関連する神経疾患はアルツハイマー病、パーキンソン病、および筋萎縮性側索硬化症からなる群より選択される場合である。
【0062】
さらに、本発明の方法は癌を治療し、腫瘍細胞の放射線感受性を増強させるために用いることが可能である。「癌」という用語は、広く解釈される。本発明の化合物は「抗癌剤」となることが可能であり、この用語は「抗腫瘍細胞剤」および「抗腫瘍薬」も包含する。たとえば、本発明の方法は、ACTH産生腫瘍、急性リンパ性白血病、急性非リンパ性白血病、副腎皮質癌、膀胱癌、脳腫瘍、乳癌、子宮頸癌、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、結腸直腸癌、皮膚T細胞性リンパ腫、子宮内膜癌、食道癌、ユーイング肉腫、胆嚢癌、有毛細胞白血病、頭頸部癌、ホジキンリンパ腫、カポジ肉腫、腎臓癌、肝臓癌、肺癌(小細胞および/または非小細胞)、悪性腹水、悪性胸水、黒色腫、中皮腫、多発性骨髄腫、神経芽細胞種、非ホジキンリンパ腫、骨肉種、卵巣癌、卵巣(胚細胞)癌、前立腺癌、膵臓癌、陰茎癌、網膜芽細胞腫、皮膚癌、軟部肉腫、扁平上皮癌、胃癌、睾丸癌、甲状腺癌、絨毛性腫瘍、子宮癌、膣癌、外陰癌およびウィルムス腫瘍などの癌の治療および癌の腫瘍細胞の放射線感受性を増強させるのに有用である。
【0063】
本発明の方法は、有効量のテモゾルイミド(temozolimide)および本発明の化合物で哺乳類の癌を治療することも可能である。癌は、黒色腫、リンパ腫、および多形神経膠芽腫であってもよい。
【0064】
放射線増感剤は、電磁放射線の毒性作用に対する癌細胞の感受性を増大させることが知られている。以下を含めて、放射線増感剤の作用形態のいくつかのメカニズムが文献に提案されてきた。低酸素細胞放射線増感剤(例えば、2-ニトロイミダゾール化合物、およびベンゾトリアジンジオキシド化合物)は、低酸素組織の再酸素化を促進し、かつ/または傷害性の酸素ラジカルの生成を触媒する。非低酸素細胞放射線増感剤は(例えば、ハロゲン化ピリミジン類)DNA塩基のアナログであってもよく、選択的に癌細胞のDNAに組み込まれ、それにより放射線により誘導されるDNA分子の破壊を促進し、かつ/または正常なDNA修復機構を阻害する。また、疾患の治療における放射線増感剤に関して、様々な他の潜在的作用メカニズムが仮定されてきた。
【0065】
現在、多くの癌治療プロトコルが電磁放射線であるX線により活性化される放射線増感剤を採用している。X線で活性化された放射線増感剤の例としては、限定するものではないが、メトロニダゾール、ミソニダゾール、デスメチルミソニダゾール、ピモニダゾール、エタニダゾール、ニモラゾール、マイトマイシンC、RSU1069、SR4233、EO9、RB6145、ニコチンアミド、5-ブロモデオキシウリジン(BUdR)、5-ヨードデオキシウリジン(IUdR)、ブロモデオキシシチジン、フルオロデオキシウリジン(FudR)、ヒドロキシ尿素、シスプラチン、および治療的に有効なアナログおよびこれらの誘導体が挙げられる。
【0066】
癌の光線力学療法(PDT)は、増感剤の放射線活性化因子として可視光を採用する。光線力学的放射線増感剤の例としては、限定するものではないが、ヘマトポルフィリン誘導体、フォトフリン、ベンゾポルフィリン誘導体、NPe6、スズエチオポルフィリンSnET2、フェオボルバイド-a、バクテリオクロロフィル-a、ナフタロシアニン類、フタロシアニン類、亜鉛フタロシアニン、並びにこれらの治療的に有効なアナログおよび誘導体が挙げられる。
【0067】
放射線増感剤は、治療的に有効な量の1つまたは複数の他の化合物と併用して投与してもよく、限定するものではないが、放射線増感剤の標的細胞への取り込みを促進する化合物;治療用物質、栄養物、および/または酸素の標的細胞への流れを制御する化合物;さらなる放射の有無に関わらず腫瘍に作用する化学療法剤;または癌若しくは他の疾患を治療するためのその他の治療的に有効な化合物が挙げられる。放射線増感剤と併用して用いてもよいさらなる治療薬の例としては、限定するものではないが、5-フルオロウラシル、ロイコボリン、5'-アミノ-5'デオキシチミジン、酸素、カルボゲン、赤血球輸液、パーフルオロカーボン(例えば、Fluosol-DA)、2,3-DPG、BW12C、カルシウムチャンネルブロッカー、ペントキシフィリン、抗血管形成化合物、ヒドララジン、およびLBSOが挙げられる。放射線増感剤と併用して用いてもよい化学療法薬の例としては、限定するものではないが、アドリアマイシン、カンプトテシン、カルボプラチン、シスプラチン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキソルビシン、インターフェロン(アルファ、ベータ、ガンマ)、インターロイキン2、イリノテカン、パクリタキセル、トポテカン、並びにこれらの治療的に有効なアナログおよび誘導体が挙げられる。
【0068】
本発明は、(i)治療的に有効な量の本発明の化合物および(ii)医薬として許容される担体を含む医薬組成物にも関する。
【0069】
好ましい実施態様の有用性および本発明の化合物の投与に関する上記議論は、本発明の医薬組成物にも適用される。
【0070】
本明細書で使用される「医薬として許容される担体」なる用語は、任意の担体、希釈剤、賦形剤、懸濁剤、潤滑剤、アジュバント、媒体、送達システム、乳化剤、錠剤分解物質、吸収剤、保存剤、界面活性剤、着色剤、香料、または甘味料を意味する。
【0071】
これらの目的のために、本発明の組成物は、経口、非経口、吸入スプレーにより、吸着、吸収、局所、経直腸、経鼻、口腔(bucally)、経膣、脳室内、従来の医薬として許容される無毒性担体を含む投薬形態で埋め込み式リザーバーを介して、または他の任意の投与形態により投与してもよい。本明細書で用いられる非経口なる用語は、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、鞘内、脳室内、胸骨下、および頭蓋内注射または注入技術を含む。
【0072】
非経口投与する場合、組成物は通常、単位投与用の無菌注射剤型(溶液、懸濁液、またはエマルジョン)であり、これは好ましくは医薬として許容される担体を用いて受容者の血液と等張である。このような無菌注射剤型の例は、無菌注射用の水性または油性懸濁液である。これらの懸濁液は、適当な分散または潤滑剤および懸濁剤を用い、当業者にとって公知の技術に従って処方することが可能である。無菌注射型は、例えば、1,3-ブタンジオールの溶液のような、無毒性の非経口用に許容される希釈剤または溶媒中の無菌注射用溶液または懸濁液であってもよい。使用可能な、許容される媒体および溶媒としては、水、食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、等張塩化ナトリウム溶液、およびハンクス液がある。さらに、無菌の固定油は従来より溶媒または懸濁媒体として用いられている。この目的のために、合成のモノ-またはジ-グリセリド、トウモロコシ油、綿実油、ピーナッツ油およびゴマ油を含む任意の無菌性固定油を用いてもよい。オリーブオイルおよびひまし油、特にそれらのポリオキシエチル化されたものを含む、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、ならびに、オレイン酸およびそのグリセリド誘導体などの脂肪酸は、注射剤の調製に有用である。これらの油剤または懸濁液は、長鎖アルコール希釈剤または分散剤を含んでもよい。
【0073】
無菌食塩水は好ましい担体であり、予測されるあらゆる必要性に応じて溶液として調製するために、本化合物は多くの場合十分に水溶性である。担体は、溶解性、等張性、および化学的安定性を高める物質、例えば、酸化防止剤、緩衝液および保存剤などの添加剤を少量含んでもよい。
【0074】
経鼻または口腔投与(自己推進性粉末調剤処方など)に適した処方は、約0.1%から約5%w/w、例えば1%w/wの有効成分を含有してもよい。本発明のヒト医療用処方は、医薬として許容される担体と共に有効成分、ひいては任意に他の治療用成分を含む。
【0075】
経口投与の場合、組成物は通常、当分野で公知の技術および従来の装置を用いて、錠剤、カシェ剤、粉末、顆粒、ビーズ、チュアブルロゼンジ、カプセル、液体、水性懸濁液若しくは溶液、または類似の投与形態などの単位投与形態に処方される。このような処方は、典型的には、固体、半固体、または液体担体を含む。典型的な担体としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アラビアゴム、リン酸カルシウム、鉱油、カカオバター、カカオ脂、アルギン酸塩、トラガカント、ゼラチン、シロップ、メチルセルロース、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウムなどが挙げられる。
【0076】
本発明の組成物は、単回または分割投与量の阻害剤を含むカプセルまたは錠剤として投与することが可能である。本組成物は、単回または分割投与量の無菌溶液、懸濁液またはエマルジョンとして投与されてもよい。錠剤は、ラクトースおよびコーンスターチなどの担体、および/またはステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤を含んでもよい。カプセルは、ラクトースおよび乾燥コーンスターチを含む希釈剤を含有していてもよい。
【0077】
錠剤は、有効成分を、任意に1つまたは複数の副成分と共に圧縮または成型することにより製造可能である。圧縮錠剤は、粉末または顆粒などの自由流動形態の有効成分を、バインダー、潤滑剤、不活性希釈剤、界面活性剤、または分散剤と任意に混合して、適当な機械で圧縮することにより調製することができる。成型錠剤は、粉末状の有効成分および不活性な液状の希釈剤で湿らせた適当な担体の混合物を、適当な機械で成型することにより製造することが可能である。
【0078】
本発明の化合物は、座薬形式で直腸投与してもよい。これらの組成物は、薬剤を、室温では固体であるが直腸温度では液体であるため、直腸で融解して薬剤を放出する適当な非刺激性の賦形剤と混合することにより調製することが可能である。このような材料としては、カカオバター、蜜ろう、およびポリエチレングリコールが挙げられる。
【0079】
本発明の組成物および方法は、放出制御技術を利用してもよい。したがって、例えば、本発明の化合物は、数日間にわたって放出を制御するために、疎水性ポリマーマトリックス中に導入してもよい。本発明の組成物は、さらに有効濃度のPARP阻害剤を長時間に亘り頻繁に再投与することなく提供するのに適した固体インプラント、または外用パッチに成型してもよい。このような放出制御フィルムは、この分野でよく知られている。その別の実施態様は、経皮的送達システムである。本発明で用いることができる、この目的のために一般的に使用されるその他のポリマーの例としては、外用しても内用してもよい、分解性乳酸-グリコール酸コポリマー、非分解性エチレン-酢酸ビニルコポリマーが挙げられる。ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)またはポリ(ビニルアルコール)などのある種のヒドロゲルも有用であるが、上述したような他のポリマー放出システムより放出サイクルが短い。
【0080】
別の実施態様では、担体は、適当な徐放特性および放出速度を有する、固体の生分解性ポリマーまたは生分解性ポリマーの混合物である。さらに、本発明の組成物は、有効濃度の本発明の化合物を長時間に亘って頻繁に再投与することなく提供するのに適した固体インプラントに形成してもよい。本発明の組成物は、当業者に既知の任意の適当な方法で生分解性ポリマーまたはポリマー混合物に導入することが可能であり、生分解性ポリマーと均質なマトリックスを形成してもよく、あるいは、ポリマー内に何らかの方法でカプセル化してもよく、あるいは、固体インプラントに成型してもよい。
【0081】
一実施形態では、生分解性ポリマーまたはポリマーマトリックスは、本発明の医薬組成物を含む軟質の「デポー」を形成するのに用いられ、このデポーは例えば注射により流動性のある液体として投与可能であるが、医薬組成物を注入部位周辺の局所領域に維持するために十分な粘性を有する。こうして形成されたデポーの分解時間は、選択するポリマーおよびその分子量によって、数日から数年とさまざまとなり得る。注射剤型のポリマー組成物を用いることにより、切開の必要さえなくなることもあり得る。いずれにしても、可撓性または流動性を有する送達「デポー」は、周囲の組織に対する外傷が最小になるように、身体内でそれが占める空間の形状に適合する。本発明の医薬組成物は、治療に有効な量で用いられ、所望の放出プロファイル、感作効果に必要な医薬組成物の濃度、および治療のために医薬組成物が放出されるべき時間に依存するであろう。
【0082】
PARP阻害剤は、治療に有効な量で組成物で用いられる。組成物は無菌化されてもよく、かつ/または保存剤、安定化剤、湿潤剤、または乳化剤、溶解促進剤、浸透圧を調整する塩、および/または緩衝液などのアジュバントを含んでいてもよい。さらに、これらは他の治療的に価値のある物質を含有してもよい。本組成物は従来の混合、顆粒、または被覆方法に従って調製され、約0.1から75重量%、好ましくは約1から50重量%の有効成分を含有する。
【0083】
中枢神経系が標的の場合に治療的に有効であるためには、本発明の化合物は、末梢投与する場合には血液脳関門を容易に通過しなければならない。血液脳関門を通過できない化合物は脳室内経路または脳に投与するのに適した他の適当な送達システムにより効果的に投与し得る。
【0084】
化合物の用量は、有効量の活性化合物を含む製薬的投与単位を含む。有効量とは、1つまたは複数の製薬的投与単位の投与によりPARPを阻害し、その薬効を得るのに十分な量を意味する。また、用量は、血管性脳卒中または他の神経変性疾患の作用を阻害または低減するのに十分な量である。
【0085】
医療用途では、治療効果を達成するのに必要とされる有効成分の量は、特定の化合物、投与経路、治療を受ける哺乳類、および治療される特定の障害または疾患によって変化する。前述した任意の病気に罹患した、または罹患しそうな哺乳類に対する、本発明の化合物のまたは医薬として許容されるこれらの塩の好適な全身性用量は、約0.1mg/kgから約100mg/kgの範囲の有効成分の化合物であり、さらにこの用量は約1から約10mg/kgである。
【0086】
しかし、任意の特定の患者に対する特定の用量レベルが使用する特定の化合物、年齢、体重、全般的健康状態、性別、食事、投与時間、排出速度、薬物の組み合わせ、および治療する特定疾患の重症度、および投与形態を含む様々な要因に依存するであろうことが理解される。
【0087】
当業者である医師または獣医が、治療が施される病気の予防または治療上の処置のために有効な化合物の量を容易に決定し、処方するであろうことが理解される。このような処置において、医師または獣医は静脈内ボーラス、次いで静脈内注射、および非経口または経口の反復投与を適当とみなされる場合には使用し得るであろう。有効成分単独で投与することも可能であるが、製剤として提供することが好ましい。
【0088】
本発明の組成物を取り入れた投与形態を調製する場合、本化合物はゼラチン、アルファ化でんぷんなどを含むバインダーなどの従来の賦形剤;硬化植物油、ステアリン酸などの潤滑剤;ラクトース、マンノース、スクロースなどの希釈剤;カルボキシメチルセルロースおよびデンプングリコール酸ナトリウムなどの錠剤分解物質;ポビドン、ポリビニルアルコールなどの懸濁剤;二酸化ケイ素などの吸収剤;メチルパラベン、プロピルパラベン、および安息香酸ナトリウムなどの保存剤;ラウリル硫酸ナトリウム、ポリソルベート80などの界面活性剤;F.D.&C.染料およびレーキなどの着色剤;香料;および甘味料と混合してもよい。
【0089】
本発明は、本明細書に記載の動物の任意の疾患または障害の治療のための薬物の調製における本発明の化合物の使用に関するものである。
【0090】
本明細書で用いる場合、「アルキル」は所定数の炭素原子を含む分枝または非分枝飽和炭化水素鎖を意味する。例えば、C1〜C6直鎖状または分枝状アルキル炭化水素鎖は1から6の炭素原子を含み、限定するものではないが、特に指示しない限り、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシルなどの置換基を含む。
【0091】
「アルケニル」は、所定数の炭素原子を含む分枝または非分枝不飽和炭化水素鎖を意味する。例えば、C2〜C6直鎖状または分枝状アルケニル炭化水素鎖は2から6の炭素原子を含み、限定するものではないが、特に指示しない限り、エテニル、プロペニル、イソプロペニル、ブテニル、イソブテニル、tert-ブテニル、n-ペンテニル、n-ヘキセニルなどの置換基を含む。
【0092】
「アルコキシ」は、-OR基を意味し、Rはここで定義されているアルキルである。Rは、1から6個の炭素原子を含む分枝または非分枝飽和炭化水素鎖であってもよい。
【0093】
「シクロ」は、本明細書では接頭語として用いられ、閉環により特徴付けられる構造を意味する。
【0094】
「ハロ」は、特に指示しない限り、少なくとも1つのフルオロ、クロロ、ブロモ、またはヨード基を意味する。
【0095】
「アミノ」化合物は、アミン(NH2)並びに置換アミノ基を包含する。
【0096】
「Ar」、「アリール」または「ヘテロアリール」は、置換または非置換、特に環または縮合環である部位を意味し、単環系、二環系、または三環系の炭素環または複素環を含み、ここで環は1から5位がハロ、ハロアルキル、ヒドロキシル、ニトロ、トリフルオロメチル、C1〜C6直鎖状または分枝鎖状アルキル、C2〜C6直鎖状または分枝鎖状アルケニル、C1〜C6アルコキシ、C2〜C6アルケニルオキシ、フェノキシ、ベンジルオキシ、アミノ、チオカルボニル、エステル、チオエステル、シアノ、イミノ、アルキルアミノ、アミノアルキル、スルフヒドリル、チオアルキル、およびスルホニルで置換されていないか、置換されているかの何れかであり;ここで個々の環のサイズは5〜8員であり;ここで複素環は、O、N、またはSからなる群より選ばれる1〜4個のヘテロ原子を含み;ここで芳香族または第三級アルキルアミンは任意に対応するN-オキシドに酸化されている。ヘテロアリールは、環のヘテロ原子および/または炭素原子を介して他の環に結合されていてもよく、または置換されていてもよい。アリールまたはヘテロアリール部位は、限定するものではないが、フェニル、ベンジル、ナフチル、ピロリル、ピロリジニル、ピリジニル、ピリミジニル、プリニル、キノリニル、イソキノリニル、フリル、チオフェニル、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、ピラゾリルおよびチエニルを含む。
【0097】
「フェニル」は、あらゆる可能なフェニル異性体の基を含み、アミノ、トリフルオロメチル、C1〜C6直鎖状または分枝鎖状アルキル、C2〜C6直鎖状または分枝鎖状アルケニル、カルボニル、チオカルボニル、エステル、チオエステル、アルコキシ、アルケノキシ、シアノ、ニトロ、イミノ、アルキルアミノ、アミノアルキル、スルフヒドリル、チオアルキル、スルホニル、ヒドロキシ、ハロ、ハロアルキル、NR2[R2は水素、(C1〜C6)直鎖状または分枝鎖状アルキル、(C3〜C6)直鎖状または分枝鎖状アルケニルまたはアルキニル、および(C1〜C4)架橋アルキルからなる群から選択される]からなる群から選択される置換基で任意に一置換または多置換されており、前記架橋アルキルは、NR1の窒素から始まり前記アルキルまたはアルケニル鎖の炭素原子の一つで終わる複素環を形成し、前記複素環は任意にアリール基と縮合している。
【0098】
少なくとも1つのヘテロ原子を任意選択で含むシクロアルキルは、C5またはC6環などの飽和C3〜C8環を含み、ここでO、N、またはSから選ばれる1〜4個のヘテロ原子は、この環の炭素原子と任意に置換していてもよい。上述のように、少なくとも1つのヘテロ原子を任意に含むシクロアルキルは、少なくとも1つの5または6員のアリールまたはヘテロアリールで置換されているか、またはこれと縮合していてもよい。ヘテロ原子を含む他のシクロアルキルは、ピロリジニル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリノ及びチオモルホリノを含む。
【0099】
本発明の化合物は、1つまたは複数の不斉中心を有するので、立体異性体の混合物(ラセミおよび非ラセミ)として、または個別のエナンチオマー若しくはジアステレオマーとして製造可能である。個別の立体異性体は光学活性な出発物質によるか、合成のある適当な段階のラセミ若しくは非ラセミ混合物の中間体を分離することによるか、または本発明の化合物の分離により得ることが可能である。個別の立体異性体並びに立体異性体の混合物(ラセミおよび非ラセミ)は本発明の範囲に包含されると解される。
【0100】
「異性体」は、同じ分子式を有する異なる化合物であり、(イソ)インドールおよびその他の環状部位の異性体などの環状異性体を含む。「立体異性体」は、原子の空間での配置の仕方のみが異なる異性体である。「エナンチオマー」は互いに重ね合わせることができない鏡像である立体異性体の対である。「ジアステレオマー」は、互いに鏡像ではない立体異性体である。「ラセミ混合物」は、各エナンチオマーを等量ずつ含む混合物を意味する。「非ラセミ混合物」は、各エナンチオマーまたは立体異性体を等量でなく含んでいる混合物である。
【0101】
本発明の化合物は遊離塩基の形態、医薬として許容される塩の形態、医薬として許容される水和物、医薬として許容されるエステル、医薬として許容される溶媒和物、医薬として許容されるプロドラッグ、医薬として許容される代謝物、および医薬として許容される立体異性体の形態で有用である。これらの形態は全て本発明の範囲内である。実際には、これらの形態の使用は、中性化合物の使用となる。
【0102】
「医薬として許容される塩」、「水和物」、「エステル」または「溶媒和物」は、本発明の化合物の塩、水和物、エステルまたは溶媒和物を意味し、これは所望の薬理活性を有し、生物学的にまたはそれ以外で望まれないもののいずれでもない。有機酸を用いて、アセテート、アジペート、アルギネート、アスパルテート、ベンゾエート、ベンゼンスルホネート、p-トルエンスルホネート、ビスルフェート、スルファメート、サルフェート、ナフチレート、ブチレート、シトレート、カンホレート、カンホルスルホネート、シクロペンタン-プロピオネート、ジグルコネート、ドデシルサルフェート、エタンスルホネート、フマレート、グルコヘプタノエート、グリセロホスフェート、ヘミサルフェート、ヘプタノエート、ヘキサノエート、2-ヒドロキシエタンスルホネート、ラクテート、マレエート、メタンスルホネート、2-ナフタレンスルホネート、ニコチネート、オキサレート、トシレート、およびウンデカノエートなどの、塩、水和物、エステル、または溶媒和物を製造してもよい。無機酸を用いて、ヒドロクロリド、ヒドロブロミド、ヒドロヨーダイド、チオシアネートなどの、塩、水和物、エステル、または溶媒和物を製造してもよい。
【0103】
好適な塩基性塩、水和物、エステル、または溶媒和物の例には、アンモニアの水酸化物、炭酸塩、および重炭酸塩、ナトリウム、リチウムおよびカリウム塩などのアルカリ金属の塩、カルシウムおよびマグネシウム塩などのアルカリ土類金属の塩、アルミニウム塩、並びに亜鉛塩が含まれる。
【0104】
塩、水和物、エステル、または溶媒和物は、有機塩基を用いて形成してもよい。本発明の化合物の、医薬として許容される塩基付加塩、水和物、エステル、または溶媒和物の形成に適した有機塩基には、無毒性で、かつ、このような塩、水和物、エステル、または溶媒和物を形成するのに十分強いものが含まれる。説明した目的のためには、このような有機塩基の分類には、モノ、ジ、およびトリアルキルアミン、例えばメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、およびジシクロヘキシルアミン;モノ-、ジ-、またはトリヒドロキシアルキルアミン、例えばモノ、ジ、およびトリエタノールアミン;アミノ酸、例えばアルギニンおよびリジン;グアニジン;N-メチル-グルコサミン;N-メチル-グルカミン;L-グルタミン;N-メチル-ピペラジン;モルホリン;エチレンジアミン;N-ベンジル-フェネチルアミン;(トリヒドロキシ-メチル)アミノエタン;などが含まれてもよい。例えば、「Pharmaceutical Salts」、J. Pharm. Sci.、66:1、1〜19頁(1977)を参照されたい。すなわち、塩基性窒素含有基は、低級アルキルハライド、例えばメチル、エチル、プロピル、およびブチルの塩化物、臭化物およびヨウ化物;硫酸ジアルキル、例えば硫酸ジメチル、ジエチル、ジブチルおよびジアミル;長鎖ハライド、例えばデシル、ラウリル、ミリスチルおよびステアリルの塩化物、臭化物およびヨウ化物;並びにアラルキルハライド、例えば臭化ベンジルおよび臭化フェネチルを含む試薬を用いて四級化してもよい。
【0105】
塩基性化合物の酸付加塩、水和物、エステル、または溶媒和物は、PARP阻害剤の遊離塩基を適当な酸または塩基を含む、水溶液若しくはアルコール水溶液またはその他の好適な溶媒に溶解し、溶液を蒸発させて塩を単離することにより調製することが可能である。或いは、本発明のPARP阻害剤の遊離塩基は酸と反応させることが可能であり、同様に、酸性基を有するPARP阻害剤を塩基と反応させることが可能であるので、反応を有機溶媒中で行えば、塩が直接分離し、または溶液を濃縮して塩が得られる。
【0106】
「医薬として許容されるプロドラッグ」は、本発明の化合物の誘導体を意味し、生体内変換を受けて、その後その薬理作用を発揮する。このプロドラッグは、化学的安定性の改善、患者の受容性およびコンプライアンスの改善、生物学的利用能の改善、作用の長期持続、器官選択性の改善、製剤性の改善(例えば、水溶性の増加)、および/または副作用の低減(例えば、毒性)を目的として調製する。プロドラッグは、Burger’s Medicinal Chemistry and Drug Chemistry、第5版、1巻、172〜178頁、949〜982頁(1995年)に記載されているように、当分野で公知の方法を用いて、本発明の化合物より容易に調製し得る。例えば、1つまたは複数のヒドロキシまたはカルボキシ基をエステルに変換することにより、本発明の化合物をプロドラッグに変換することが可能である。
【0107】
「医薬として許容される代謝物」は代謝的変換を受けた薬物をいう。身体に入った後、大半の薬物はその物理的特性および生物学的効果を変化させ得る化学反応の基質となる。これらの代謝変換は、通常、化合物の極性に影響を与え、薬物が身体に分散され、かつ身体から排出される方式を変える。しかし、場合によっては、薬物代謝が治療効果に必要とされる。例えば、代謝拮抗物質クラスの抗癌剤は、癌細胞に輸送された後、活性型に変換される必要がある。大半の薬物はある種の代謝変換を受けるので、薬物の代謝に関与する生物化学反応は多数かつ多様であろう。薬物代謝の主な部位は肝臓であるが、他の組織も関与し得る。
【0108】
「神経変性疾患」なる用語には、限定するものではないが、アルツハイマー病、パーキンソン病およびハンチントン病が含まれる。
【0109】
「神経損傷」なる用語は、神経組織へのあらゆる損傷およびそれらに起因するあらゆる障害または死を表す。神経損傷の原因は、代謝性、毒性、神経毒性、医原性、熱性または化学性であってもよく、限定するものではないが、虚血、低酸素症、脳血管障害、外傷、手術、圧力、質量効果、出血、放射線、血管攣縮、神経変性疾患、感染、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、骨髄形成/脱髄過程、癲癇、認識力障害、グルタミン酸異常およびそれらの二次的効果が含まれる。
【0110】
「神経保護」なる用語は、神経損傷を低減し、阻止し、または寛解し、また、神経損傷を受けた神経組織を保護し、蘇生し、回復させる作用をいう。
【0111】
「神経変性の予防」なる用語は、神経変性疾患を予防し、或いは、神経変性疾患にすでに罹っているか、またはその徴候を有する患者のさらなる神経変性を予防する能力を含む。
【0112】
「治療」なる用語は、(i)疾患、障害および/または病状に罹りやすい可能性はあるが、それを有するとは診断されていない動物で発生する疾患、障害または病状を予防し、(ii)疾患、障害または病状を抑制、すなわち、その進行を阻止し、また、(iii)疾患、障害、または病状を軽減、すなわち、疾患、障害および/または病状の回復を生じさせることを表す。
【0113】
「虚血および再潅流傷害および神経変性疾患に起因する神経組織損傷」なる用語には、血管性脳卒中並びに広範囲および局所的虚血でみられるような神経毒性による損傷が含まれる。
【0114】
「虚血」なる用語は、動脈血の流入の閉塞による局所組織の貧血に関連する。広範囲の虚血は、心停止に起因するであろうような、ある時間、脳全体への血流が止まる状態下で生じる。局所的虚血は、例えば脳血管、頭部外傷、浮腫、および脳腫瘍の血栓塞栓性閉塞に起因するような、脳の一部からその正常な血液供給を欠乏させる条件下で生じる。
【0115】
「心血管疾患」なる用語は、心臓または脈管構造の機能不全または組織損傷、また特に、限定するものではないが、PARP活性に関連する組織損傷を伴う、当業者に既知であるような心筋梗塞、狭心症、血管虚血若しくは心筋虚血、および関連する病状に関連する。
【0116】
「放射線増感剤」なる用語は、本明細書で用いる場合には、治療的に有効な量で動物に投与され、細胞の感受性を増大させ、電磁放射線に対し放射線感受性とし、かつ/または電磁放射線で治療可能な疾患の治療を促進させる分子、例えば低分子量の分子として定義される。電磁放射線で治療可能な疾患には、腫瘍性疾患、良性および悪性腫瘍ならびに癌細胞が含まれる。本明細書に記載していない他の疾患の電磁放射線治療も、本発明で意図される。「電磁放射線」および「放射線」なる用語は、本明細書で用いる場合には、限定するものではないが、10-20から100メートルの波長を有する放射線を含む。本発明の好ましい実施態様では、ガンマ放射線(10-20から10-13m)、X線照射(10-11から10-9m)、紫外光(10nmから400nm)、可視光(400nmから700nm)、赤外線放射(700nmから1.0mm)またはマイクロ波放射(1mmから30cm)の電磁放射線を用いる。
【0117】
PARP阻害剤の多くは、公知の出発物質から公知の方法により合成することが可能であり、商業的に入手してもよく、または文献の対応する化合物を調製するのに使用される方法で調製してもよい。例えば、Suto他、「Dihydroiso-quinolinones: The Design and Synthesis of a New Series of Potent Inhibitors of Poly (ADP-ribose) Polymerase」、Anticancer Drug Des.、6:107〜17頁(1991年)を参照されたい。この文献では、多くの異なるPARP阻害剤を合成する方法が開示されている。
【0118】
本発明のキナゾリン-オンおよびフタラジン-オン誘導体は、前に定義した式IおよびIIで示される。例としては、本発明の誘導体は、以下のスキーム1〜8に図示した従来の方法で調製することが可能である。キナゾリン-オンおよびフタラジン-オン誘導体の環は、一般的に、式IおよびIIで前述したように置換してもよい。このような出発誘導体は化学文献で公知であり、当業者に公知の方法で利用可能である。
【0119】
本発明のジアゾベンゾ[de]アントラセン-3-オン誘導体は、以下のスキーム9〜11に図示した従来の方法で調製し得る。
【0120】
【化6】

【0121】
【化7】

【0122】
【化8】

【0123】
【化9】

【0124】
【化10】

【0125】
【化11】

【0126】
【化12】

【0127】
【化13】

【0128】
【化14】

【0129】
【化15】

【0130】
【化16】

【0131】
本発明の化合物を調製するその他の方法、変形または手順は、当業者に容易に明らかであろう。
【0132】
本発明の化合物は、遊離塩基形態、可能であれば塩基性塩の形態、および付加塩の形態、並びに遊離酸の形態で有用であろう。これらの全形態は、本発明の範囲内である。実際は、結果的に塩形態の使用は塩基形態の使用に等しい。本発明の範囲内である医薬として許容される塩は、無機酸、例えば塩酸および硫酸;および有機酸、例えばエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸などから誘導されるものであり、塩酸塩、硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩などをそれぞれ与え、あるいは好適な有機塩基および無機塩基から誘導されるものである。本発明の化合物を用いた医薬として許容される塩基付加塩の例としては、無毒性かつこのような塩を形成するのに十分なほど強い有機塩基を含む。これらの有機塩基およびそれらの使用は当業者により容易に理解される。説明する目的にすぎないが、このような有機塩基は、モノ、ジ、およびトリアルキルアミン、例えばメチルアミン、ジエチルアミンおよびトリエチルアミン;モノ-、ジ-、またはトリヒドロキシアルキルアミン、例えばモノ、ジ、およびトリエタノールアミン;アミノ酸、例えばアルギニンおよびリジン;グアニジン;N-メチルグルコサミン;N-メチルグルカミン;L-グルタミン;N-メチルピペラジン;モルホリン;エチレンジアナン;N-ベンジルフェネチルアミン;トリス(ヒドロキシメチル)アミノエタン;などを含んでもよい。
【0133】
塩基性化合物の酸付加塩は、本発明の化合物の遊離塩基を、適当な酸または塩基を含む、水溶液若しくはアルコール水溶液、またはその他の好適な溶媒に溶解し、溶液を蒸発させて単離することにより調製してもよく、或いは、本発明の化合物の遊離塩基を酸と反応させ、同様に酸性基を有する本発明の化合物を塩基と反応させ、この反応を有機溶媒中で行えば、塩が直接分離され、または溶液を濃縮させることで塩が得られ、これにより調製することが可能である。
【0134】
本発明の化合物は、1つまたは複数の不斉炭素原子を含む。したがって、本発明は個別の立体異性体およびそれらの混合物、並びにラセミ化合物を含む。個々の異性体は、この分野で公知の方法により調製し、または単離することが可能である。
【0135】
本発明の化合物は薬理活性を示し、したがって、薬剤として有用である。さらに、本化合物は中枢神経および心臓の小胞系活性(cardiac vesicular system activity)を示す。
【0136】
PARPアッセイ
IC50
PARP阻害化合物のIC50を決定するための便利な方法は、以下のような、Trevigan(Gaithersburg、MD)からの精製した組換えヒトPARPを用いたPARPアッセイである。PARP酵素アッセイは、100mM Tris-HCl(pH8.0)、1mM MgCl2、28mM KCl、28mM NaCl、0.1mg/mlのDNase Iで活性化したherring sperm DNA(Sigma、MO)、3.0マイクロモルの[3H]ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(470mci/mmol)、7マイクログラム/ml PARP酵素、および様々な濃度の供試化合物からなる100マイクロリットルの体積で氷上で始める。反応は、25℃で混合物をインキュベートすることにより開始する。15分のインキュベーション後、反応を500マイクロリットルの氷冷20%(w/v)トリクロロ酢酸を加えることにより終了する。形成した沈殿をガラス繊維ろ紙(Packard Unifilter-GF/B)上に移し、エタノールで3回洗浄する。このろ紙を乾燥後、放射能をシンチレーション計測により決定した。本発明の化合物が、この阻害アッセイにおいて、数nMから20μMのIC50の範囲で強力な酵素活性を有することを発見した。
【0137】
EC50
我々は、H2O2により誘導される細胞死アッセイを用いてPARP阻害剤の細胞保護作用を決定した。マウスマクロファージ様腫瘍由来のP388D1細胞(CCL-46、ATCC)を、10%ウマ血清および2mM L-グルタミンを有するDulbeco変法Eagle培地(DMEM)中で維持した。 細胞毒性アッセイを、96-ウェルプレートで始める。各ウェルに、190μlの細胞を2×106/mlの密度で蒔いた。EC50、すなわち細胞死の50%減を達成するのに必要とされる化合物の濃度を決定するために、用量反応実験を行った。PARP阻害剤を培地に加えて、最終濃度を0.01、0.03、0.1、0.3、1、3、10、30μMとした。PARP阻害剤と共に15分間インキュベーションした後、5μlの新たに調製したH2O2を細胞に加え、最終濃度2mMとした。細胞を37℃のインキュベーターに入れて4時間回復させた。インキュベーションの終わりに、25μlの上清を細胞培地から試料採取し、死んだ細胞から放出される乳酸脱水素酵素(LDH)のレベルを決定した。LDH活性を、340nmでのNADHの吸光度の減少速度を観測することにより決定した。薬物処置をしない群を用いてH2O2処置による全細胞死を計算した。各データの得点は4つの実験の平均であった。EC50は、用量反応曲線から決定した。
【0138】
上述したPARPアッセイを用いて、以下の化合物の概略のIC50およびEC50値を得た。
【0139】
【表1】

【0140】
【表2】

【0141】
【表3】

【0142】
【表4】

【0143】
【表5】

【0144】
【表6】

【0145】
【表7】

【0146】
【表8】

【0147】
(実施例1)
キナゾリン誘導体(5a、5b、5c、および6)の調製(スキーム1)
ジメチル3-アミノフタレート(1)
ジメチル3-ニトロフタレート(12g、50mmol)のEtOAc(200mL)の溶液に、10%Pd/C(3g)を加えた。得られた混合物を、H2(50psi)下、Parr水素添加装置で、室温で一晩水素化した。触媒をセライトパッドでろ別し、ろ液を真空下で濃縮して黄色油状物質を得た(1、10.5g、100%)。1H NMR (CDCl3, 400MHz) δ7.16 (t, J = 7.4, 8.2Hz, 1H)、6.82 (dd, J = 1.0, 7.4Hz, 1H)、6.70 (dd, J = 1.1, 8.4Hz, 1H)、5.14 (br s, 2H)、3.78 (s, 3H)、3.76 (s, 3H)。
【0148】
2-エチル5-メチル4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-2,5-ジカルボキシレート(2)
酢酸(10mL)中の1(2.1g、10mmol)、シアノギ酸エチル(1.0g、10mmol)、および1N HClの酢酸(10.5mL)の混合物を120℃に加熱し、2.5時間攪拌した。反応混合物を濃縮し、粗残渣をフラッシュクロマトグラフィー(0.5%MeOHのCH2Cl2溶液から1%MeOHのCH2Cl2溶液)により精製し、白色固体を得た(2、2.35g、85%)。1H NMR (DMSO-d6, 400MHz) δ7.91 (d, J = 4.2Hz, 2H)、7.59 (t, J = 4.2Hz, 1H)、4.38 (q, J = 7.1, 7.3, 14Hz, 2H)、3.83 (s, 3H)、1.35 (t, J = 7.3, 7.1Hz, 3H)。
【0149】
5-メチル2-ヒドロキシメチル-4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-5-カルボキシレート(3)
2(2.0g、7.25mmol)のEtOH(100mL)溶液に、NaBH4(0.55g、大過剰)を0℃で加えた。得られた混合物を室温に温め、6時間攪拌した。溶媒を除去し、EtOAc(50mL)およびH2O(20mL)を加えた。水層をEtOAcおよびCH2Cl2で抽出した。合わせた有機層を乾燥し(MgSO4)、真空下で濃縮した。粗残渣をフラッシュクロマトグラフィー(1%MeOHのCH2Cl2溶液から5%MeOHのCH2Cl2溶液)により精製し、白色固体を得た(3、1.0g、59%)。1H NMR (CD3OD, 400MHz) δ7.72 (t, J = 7.4, 8.2Hz, 1H)、7.64 (d, J = 8.4Hz, 1H)、7.32 (d, J = 7.1Hz, 1H)、4.46 (s, 2H)、3.82 (s, 3H)。
【0150】
5-メチル3,4-ジヒドロ-4-オキソ-2-(ジメチルアミノ)メチル-5-キナゾリン-カルボキシレート(4a)
3(130mg、0.55mmol)のCH2Cl2(5mL)懸濁液に、室温で、塩化メタンスルホニル(47μL、0.61mmol)をN2下で加えた。反応混合物を一晩攪拌し、次いで、ジメチルアミン塩酸塩(68mg、0.83mmol)およびEt3N(168mg、1.67mmol)を室温で加えた。得られた混合物を一晩攪拌した。反応混合物を真空下で濃縮し、フラッシュクロマトグラフィー(1%MeOHのCH2Cl2溶液から2.5%MeOHのCH2Cl2溶液)により精製して、白色固体を得た(4a、70mg、48%)。1H NMR (CDCl3, 400MHz) δ7.63〜7.75 (m, 2H)、7.36 (dd, J = 1.9, 6.5Hz, 1H)、3.94 (s, 3H)、3.46 (s, 2H)、2.31 (s, 3H)。
【0151】
5-メチル3,4-ジヒドロ-4-オキソ-2-(1-ピペリジニルメチル)-5-キナゾリンカルボキシレート(4b)
3(125mg、0.53mmol)のCH2Cl2(8mL)溶液に、Et3N(81mg、0.80mmol)および塩化p-トルエンスルホニル(826mg、0.59mmol)を0℃で加えた。反応混合物を室温に温め、2時間攪拌した。溶媒を真空下で除去した。得られた油状物に、EtOH(5mL)およびピペリジン (54mg、0.64mmol)を室温で加えた。反応混合物を50℃に1.5時間加熱し、次いで室温に冷却した。溶媒を真空下で除去した。EtOAc(40mL)およびH2O(25mL)を加え、水層をEtOAc(2×40mL)で洗浄した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、ろ過し、真空で濃縮した。粗残渣をフラッシュクロマトグラフィー(10%MeOHのCH2Cl2溶液)により精製し、明黄色油状物を得た(4b、50mg、31%)。1H NMR (CDCl3, 400MHz) δ7.74〜7.65 (m, 2H)、7.43 (dd, J = 1.8, 6.8Hz, 1H)、5.28 (s, 2H)、3.95 (s, 3H)、1.58〜1.41 (m, 10H); MS (ES+): 302.03。
【0152】
5-メチル3,4-ジヒドロ-4-オキソ-2-(1-ピロリジニルメチル)-5-キナゾリンカルボキシレート(4c)
3(125mg、0.53mmol)のCH2Cl2(8mL)溶液に、Et3N(81 mg、0.80mmol)および塩化p-トルエンスルホニル(826mg、0.59mmol)を0℃で加えた。反応混合物を室温に温め、2時間攪拌した。溶媒を真空で除去した。得られた油状物に、EtOH(5mL)およびピロリジン(55mg、0.77mmol)を室温で加えた。反応混合物を50℃で1.5時間加熱し、次いで、室温に冷却した。溶媒を真空下で除去した。EtOAc(40mL)およびH2O(25mL)を加え、水層をEtOAc(2×40mL)で洗浄した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、ろ過し、真空下で濃縮した。粗残渣をフラッシュクロマトグラフィー(10%MeOHのCH2Cl2溶液)により精製し、明黄色油状物を得て(4c、40mg、26%)、これを直接次のステップに用いた。
【0153】
2,9-ジヒドロ-8-[(ジメチルアミノ)メチル]-3H-ピリダジノ[3,4,5-de]キナゾリン-3-オン(5a)
4a(70mg、0.27mmol)のEtOH(4mL)溶液に、NH2NH2(2mL)を室温で加えた。得られた混合物を100℃に加熱し、一晩攪拌した。反応混合物を真空下で濃縮し、フラッシュクロマトグラフィー(0.5%NH4OHを含む2%MeOHのCH2Cl2溶液から0.5%NH4OHを含む4%MeOHのCH2Cl2溶液)により精製し、黄色固体を得た(5a、30mg、45%)。Mp>240℃(分解)。1H NMR (CDCl3, 400MHz) δ11.9 (br s, 1H)、7.78 (dd, J = 0.76, 7.6Hz, 1H)、7.67 (t, J = 7.8Hz, 1H)、7.48 (d, J = 7.4Hz, 1H)、3.42 (s, 2H)、2.43 (s, 6H); MS (ES-): 242.14; 元素分析: C12H13N5O(0.25H2O)の計算値: C, 58.17; H, 5.49; N, 28.27。実測値: C, 57.91; H, 5.46; N, 28.55。
【0154】
2,9-ジヒドロ-8-[(1-ピペリジニルメチル)-3H-ピリダジノ[3,4,5-de]キナゾリン-3-オン(5b)
4b(50mg、0.17mmol)のEtOH(3mL)溶液に、ヒドラジン(2.5mL)を加えた。反応混合物を120℃で18時間攪拌し、次いで室温に冷却した。EtOAc(20mL)およびH2O(20mL)を加えた。水層をEtOAcで洗浄した。合わせた有機層をブライン(10mL)で洗浄し、乾燥し(Na2SO4)た。粗残渣をフラッシュクロマトグラフィー(10%MeOHのCH2Cl2溶液)により精製し、白色固体を得た(5b、23.6mg、49%)。Mp:250〜252℃。1H NMR (CDCl3, 400MHz) δ10.01 (s, 1H)、7.80 (d, J = 7.87Hz, 1H)、7.50 (t, J = 7.73, 1H)、7.45 (s, 1H)、3.45 (s, 2H)、2.40〜2.60 (m, 4H)、1.50〜1.45 (m, 6H); MS (ES+): 284; 元素分析: C15H17N5O1・(0.5H2O)の計算値: C, 61.63; H, 6.21; N, 23.96。実測値: C, 61.53; H, 6.21; N, 23.81。
【0155】
2,9-ジヒドロ-8-[(1-ピロリジニルメチル)-3H-ピリダジノ[3,4,5-de]キナゾリン-3-オン(5c)
4c(40 mg、0.14mmol)のEtOH(5mL)溶液に、ヒドラジン(2.5mL)を加えた。反応混合物を、120℃で18時間攪拌し、次いで、室温に冷却した。EtOAc(20mL)およびH2O(20mL)を加えた。水層をEtOAcで洗浄した。合わせた有機層をブライン(10mL)で洗浄し、乾燥した(Na2SO4)。粗残渣をフラッシュクロマトグラフィー(10%MeOHのCH2Cl2溶液)により精製し、白色固体を得た(5c、15mg、40%)。Mp:230〜232℃。1H NMR (CDCl3, 400MHz) δ10.70 (s, 1H)、8.25 (d, J = 7.63Hz, 1H)、8.10 (t, J = 7.82Hz, 1H)、7.75〜7.80 (m, 1H)、3.80 (s, 2H)、3.0 (s, 4H)、2.30 (s, 4H); MS (ES+): 270.07; 元素分析: C14H15N5O1・(0.23H2O)の計算値: C, 59.17; H, 5.39; N, 24.25。実測値: C, 59.16; H, 5.51; N, 24.39。
【0156】
3-オキソ-2,9-ジヒドロ-3H-ピリダジノ[3,4,5-de]キナゾリン-8-カルボン酸ヒドラジド(6)
2(200mg、0.72mmol)とNH2NH2(3mL)の混合液を一晩還流した。反応混合物を室温に冷却し、過剰のNH2NH2を真空下で除去した。粗残渣をMeOHおよびCH2Cl2で洗浄し、黄色固体を得た(6、100 mg、56%)。Mp>300℃。1H NMR (DMSO-d6, 400MHz) δ11.93 (s, 1H)、9.94 (br s, 1H)、7.76 (t, J = 7.8Hz, 1H)、7.64 (dd, J = 0.94, 7.8Hz, 1H)、7.59 (dd, J = 0.94, 7.8Hz, 1H)、4.68 (br s, 2H); MS (ES+): 245.34; 元素分析: C10H8N6O2・(0.8H2O)の計算値: C, 46.44; H, 3.74; N, 32.5。実測値: C, 45.99; H, 3.89; N, 32.89。
【0157】
(実施例2)
8-アミノ-2,9-ジヒドロ-3H-ピリダジノ[3,4,5-de]キナゾリン-3-オン(9)の調製(スキーム2)
クロロホルムアミジン塩酸塩(7)
シアナミド(1g、23.78mmol)のEt2O(20mL)溶液に、沈殿が形成されなくなるまでHClガスを通してバブリングさせた。沈殿をろ過し、真空でKOH上で乾燥させ、白色固体を得て(7、2.5g、93%)、これを直接次のステップに使用した。MS(ES+):116.12。
【0158】
5-メチル2-アミノ-4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-5-カルボキシレート(8)
1(2.75g、13mmol)のDowtherm A(25mL)溶液に、7(1.5g、13mmol)およびMe2SO2(7.96g、84.5mmol)を室温で加えた。反応混合物を165℃に加熱し、2時間攪拌した。反応混合物を室温に冷却し、フラッシュクロマトグラフィー(5%MeOHのCH2Cl2溶液から10%MeOHのCH2Cl2溶液)により精製して白色固体を得た(8、2.5g、88%)。1H NMR (DMSO-d6, 400MHz) δ11.05 (br s, 1H)、7.56 (dd, J = 7.5, 8.2Hz, 1H)、7.25 (dd, J = 0.95, 8.2Hz, 1H)、6.98 (d, J = 7.2Hz, 1H)、6.50 (br s, 2H)、3.76 (s, 3H)。
【0159】
8-アミノ-2,9-ジヒドロ-3H-ピリダジノ[3,4,5-de]キナゾリン-3-オン(9)
8(200mg、0.91mmol)のEtOH/NH2NH2(1:1、10mL)の混合液を100℃に加熱し、一晩攪拌した。反応混合物を室温に冷却した。得られた沈殿をろ過し、EtOHで洗浄して黄色固体を得た(9、176mg、87%)。Mp>300℃。1H NMR (DMSO-d6, 400MHz) δ11.40 (br s, 1H)、7.61 (t, J = 7.8, 8.0Hz, 1H)、7.44 (dd, J = 0.95, 8.0Hz, 1H)、7.15 (dd, J = 0.95, 7.8Hz, 1H)、6.33 (s, 2H); MS (ES+): 202.18; 元素分析: C9H7N5O(1N2H4)の計算値: C, 46.35; H, 4.75; N, 42.04。実測値: C, 46.2; H, 4.83; N, 41.76。
【0160】
(実施例3)
2,9-ジヒドロ-3H-ピリダジノ[3, 4, 5-de]キナゾリン-3-オン(13)の調製(スキーム3)
5-メチル4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-5-カルボキシレート(12)
1(2.0g、9.57mmol)の2-メトキシエタノール(30mL)溶液に、酢酸ホルムアミジン(2.5g、24.0mmol)を室温で加えた。反応混合物を135℃で2時間還流した。反応混合物を室温に冷却した。溶媒を除去し、水を加えた。得られた沈殿をろ過し、H2Oで洗浄し、真空で乾燥した。得られた灰白色固体(12、1g、50%)を直接次のステップに用いた。1H NMR (CD3OD, 400MHz) δ8.01 (s, 1H)、7.72〜7.80 (m, 1H)、7.68 (dd, J = 1.3, 1.1, 8.4, 8.2Hz, 1H)、7,37 (dd, J = 1.1, 1.3, 7.1, 7.2Hz, 1H)、3.83 (s, 3H)。
【0161】
2,9-ジヒドロ-3H-ピリダジノ[3,4,5-de]キナゾリン-3-オン(13)
12(1.0g、5.0mmol)とEtOH/ NH2NH2(1:1、20mL)の混合液を140℃で4時間還流した。反応混合物を室温に冷却した。溶媒をある程度除去し、得られた沈殿をろ過し、EtOHで洗浄して黄色固体(13、400mg、43%)を得た。Mp>300℃。1H NMR (DMSO-d6, 400MHz) δ11.74 (br s, 1H)、7.77 (s, 1H)、7.74 (t, J = 7.8, 8.0Hz, 1H)、7.62 (dd, J = 0.96, 1.1, 7.8, 8.0Hz, 1H)、7.33 (dd, J = 0.96, 7.8Hz, 1H); MS (ES+): 187; 元素分析: C9H6N4Oの計算値: C, 58.06; H, 3.25; N, 30.09。実測値: C, 57.77; H, 3.32; N, 30.29。
【0162】
(実施例4)
9-[ヒドロジノオキシカルボニル]-2,7-ジヒドロ-6-メトキシ3H-ピリド-[4,3,2- de]フタラジン-3-オン(16)の調製(スキーム4)
ジエチル[[[2-メトキシ-5-(メトキシカルボニル)フェニル]アミノ]メチレン]プロパンジオエート(14)
メチル3-アミノ-4-メトキシベンゾエート(2.0g、11mmol)およびジエチルエトキシメチレンマロネート(5mL)の混合物を室温で5時間攪拌した。水を加え、沈殿をろ過し、H2OおよびEt2Oで洗浄し、真空で乾燥して、黄色固体(14、3.9g、100%)を得た。1H NMR (DMSO-d6, 400MHz) δ11.98 (d, J = 14Hz, 1H)、8.51 (d, J = 14Hz, 1H)、7.89 (s, 1H)、7.75 (dd, J = 1.7, 8.6Hz, 1H)、7.25 (d, J = 8.6Hz, 1H)、4.20 (q, J = 7.1, 14Hz, 2H)、4.14 (q, J = 7.1, 14Hz, 2H)、3.98 (s, 3H)、3.84 (s, 3H)、1.20〜1.29 (m, 6H)。
【0163】
3-エチル5-メチル1,4-ジヒドロ-8-メトキシ-4-オキソ-3,5-キノリンジオエート(15)
14(1.0g、2.85mmol)のDowtherm A(10mL)中の懸濁液を300〜360℃に1時間加熱した。反応混合物を室温に冷却した。得られた沈澱をろ過し、Et2Oで洗浄し、真空で乾燥して、黄色固体(15、1.3g、46%)を得た。1H NMR (DMSO-d6, 400MHz) δ12.09 (br s, 1H)、8.35 (s, 1H)、7.29 (q, J = 8.2, 20Hz, 2H)、4.20 (q, J = 7.2, 14, 7.1Hz, 2H)、4.02 (s, 3H)、3.77 (s, 3H)、1.25 (t, J = 7.1, 7.2Hz, 3H)。
【0164】
9-[ヒドロジノオキシカルボニル]-2,7-ジヒドロ-6-メトキシ3H-ピリド-[4,3,2-de]フタラジン-3-オン(16)
15(400mg、1.31mmol)とEtOH/NH2NH2(1:1、10mL)の混合液を140℃で3時間還流した。反応混合物を室温に冷却した。得られた沈澱をろ過し、Et2Oで洗浄し、黄色固体を得た(16、80mg、22%)。Mp>300℃。1H NMR (DMSO-d6, 300MHz) 11.83 (s, 1H)、10.24 (s, 1H)、10.07 (s, 1H)、7.97 (s, 1H)、7.73 (d, J = 8.5Hz, 1H)、7.55 (d, J = 8.4Hz, 1H)、4.57 (d, J = 3.8Hz, 2H)、4.04 (s, 3H); 元素分析: C12H11N5O3・(1H2O)の計算値: C, 49.48; H, 4.5; N, 24.04。実測値: C, 49.44; H, 4.53; N, 24.17。
【0165】
(実施例5)
9-[ヒドロジノオキシカルボニル]-2,7-ジヒドロ-3H-ピリド-[4,3,2-de]フタラジン-3-オン(21)の調製(スキーム5)
メチル4-クロロ-3-アミノベンゾエート(17)
メチル4-クロロ-3-ニトロベンゾエート(3.0g、13.9mmol)のEtOAc(50mL)溶液に、10%Pd/C(0.64g)を加えた。得られた混合物をH2(50psi)下、Parr水素添加装置で、室温で1時間水素化した。触媒をセライトパッドでろ別し、ろ液を真空下で濃縮して暗色油状物を得た(17、2.0g、77%)。1H NMR (DMSO-d6, 300MHz) δ7.40 (d, J = 2.1Hz, 1H)、7.30 (d, J = 8.2Hz, 1H)、7.08 (dd, J = 2.1, 8.4Hz, 1H)、3.79 (s, 3H)。
【0166】
ジエチル[[[2-クロロ-5-(メトキシカルボニル)フェニル]アミノ]メチレン]プロパンジオエート(18)
17(2.0g、10.7mmol)およびジエチルエトキシメチレン-マロネート(5mL)の混合物を、室温で一晩攪拌した。水を加え、得られた沈澱をろ過し、H2OおよびEt2Oで洗浄し、真空下で乾燥して黄色固体を得た(18、3.0g、79%)。1H NMR (DMSO-d6, 300MHz) δ11.20 (d, J = 13Hz, 1H)、8.54 (d, J = 8.4Hz, 1H)、8.05 (d, J = 1.3Hz, 1H)、7.73 (d, J = 8.2Hz, 1H)、7.69 (dd, J = 1.7, 8.4Hz, 1H)、4.22 (q, J = 7.1, 14Hz, 2H)、4.16 (q, J = 7.1, 14Hz, 2H)、3.88 (s, 3H)、1.25 (t, J = 7.1Hz, 3H)、1.25 (t, J = 7.1Hz, 3H)。
【0167】
9-[ヒドロジノオキシカルボニル]-2,7-ジヒドロ-6-クロロ-3H-ピリド-[4,3,2-de]フタラジン-3-オン(20)
14(1.0g、2.81mmol)のDowtherm A(10mL)懸濁液を300〜330℃で45分間加熱した。反応混合物を室温に冷却した。大半の溶媒を真空下で除去した。この溶液を直接次のステップに用いた。
【0168】
上記溶液にEtOH/NH2NH2(1:1、10mL)を室温で加え、反応混合物を140℃で一晩還流した。反応後、反応混合物を室温に冷却した。得られた沈澱をろ過し、Et2Oで洗浄して黄色固体を得た(20、220mg、28%)。Mp>300℃。1H NMR (CDCl3, 300MHz) δ10.05 (s, 1H)、8.12 (s, 1H)、7.86 (d, J = 8.4Hz, 1H)、7.58 (d, J = 8.2Hz, 1H)、4.55 (s, 2H); 元素分析: C11H8ClN5O2の計算値: C, 46.09; H, 3.16; N, 24.43; Cl, 12.37。実測値: C, 45.79; H, 3.35; N, 24.88; Cl, 12.25。
【0169】
9-[ヒドロジノオキシカルボニル]-2,7-ジヒドロ-3H-ピリド-[4,3,2-de]フタラジン-3-オン(21)
20(110mg、0.40mmol)のDMF(50mL)懸濁液に、10%Pd/C(100mg)を加えた。得られた混合物をH2(40 psi)下、Parr水素添加装置で、室温で一晩水素化した。触媒をセライトパッドでろ別し、Et2Oで洗浄した。ろ液を真空で濃縮して黄色固体を得た(21、20mg、21%)。Mp>300℃。1H NMR (DMSO-d6, 300MHz) δ12.17 (s, 1H)、11.77 (d, J = 5.7Hz, 1H)、10.54 (s, 1H)、8.17 (d, J = 6.3Hz, 1H)、7.82 (t, J = 7.8Hz, 1H)、7.73 (d, J = 7.6Hz, 1H)、7.55 (d, J = 8.2Hz, 1H); 元素分析: C11H9N5O2・(1.7H2O)の計算値: C, 48.25; H, 4.56; N, 25.57。実測値: C, 48.44; H, 4.06; N, 25.12。
【0170】
(実施例6)
フタラジン誘導体(27、28、および30)の調製(スキーム6)
メチル4-クロロ-3-アミノ-ベンゾエート(22)
4-クロロ-3-アミノ-安息香酸(10.0g、58.3mmol)のメタノール(50mL)溶液に、塩化アセチル(13.0mL)を室温で滴下して加えた。添加後、反応混合物を70℃で3時間加熱し、次いで、室温に冷却した。溶媒を減圧下で除去し、水(100mL)を加えた。得られた溶液をNaHCO3で中和し、次いでEtOAc(3×100mL)で抽出した。合わせた有機層を乾燥し(MgSO4)、真空下で濃縮して黄色油状物を得た(22、10.5g、97%)。1H NMR (DMSO-d6, 300MHz) δ7.41 (d, J = 2.1Hz, 1H)、7.31 (d, J = 8.4Hz, 1H)、7.09 (dd, J = 2.1, 8.4Hz, 1H)、5.66 (br s, 2H)、3.80 (s, 3H)。
【0171】
2-[2-クロロ-5-(メトキシカルボニル)フェニルアミノ]-2-ブテン二酸ジエチルエステル(23)
22(5.00g、26.9mmol)のエタノール(50 mL)溶液に、ブタ-2-イン二酸ジエチルエステル(5.02g、29.5mmol)を室温で加えた。反応混合物を90℃で18時間加熱し、次いで室温に冷却した。溶媒を減圧下で除去した。粗残渣を1:1ヘキサン/ジエチルエーテル(100mL)の溶液で洗浄し、白色固体を得た(23、9.08g、95.1%)。1H NMR (DMSO-d6, 300MHz) δ?9.80 (s, 1H)、7.65〜7.66 (m, 2H)、7.38 (s, 1H)、5.54 (s, 1H)、4.13〜4.22 (m, 4H)、3.83 (s, 3H)、1.22 (t, J = 7.1Hz, 3H)、1.11 (t, J = 7.1Hz, 3H)。
【0172】
8-クロロ-4-オキソ-1,4-ジヒドロ-2,5-キノリンジカルボン酸2-エチル5-メチルエステル(24)
23(9.00g、25.4mmol)のビフェニルエーテル(100mL)懸濁液を250℃に加熱し、3時間攪拌した。次いで、反応混合物を室温に冷却し、フラッシュクロマトグラフィー(ヘキサンからEtOAc)により精製して無色油状物を得た(24、3.88g、49.4%)。1H NMR (CDCl3, 300MHz) δ9.39 (br s, 1H)、7.75 (d, J = 8.0Hz, 1H)、7.24 (d, J = 8.0Hz, 1H)、6.96 (s, 1H)、4.54 (q, J = 7.0Hz, 2H)、4.00 (s, 3H)、1.46 (t, J = 7.0Hz, 3H)。
【0173】
8-クロロ-4-オキソ-1,4-ジヒドロ-2,5-キノリンジカルボン酸(25)
24(10.0g、32.3mmol)のエタノール(100mL)溶液に、10% KOH水溶液(100mL)を室温で加えた。反応混合物を100℃で24時間加熱し、次いで室温に冷却した。反応混合物を真空で濃縮した。得られた水溶液を2N HClでpH=6.5に酸性化したところ、固体が沈澱し、ろ過により回収した。この固体をH2O(100mL)およびEt2O(100mL)で洗浄し、真空下で、60℃で乾燥し、灰白色固体を得た(25、8.00g、92.9%)。1H NMR (DMSO-d6, 300MHz) δ?7.97 (d, J = 7.8Hz, 1H)、7.39 (d, J = 7.8Hz, 1H)、6.90 (s, 1H)。
【0174】
4-オキソ-1,4-ジヒドロ-2, 5-キノリンジカルボン酸(26)
25(7.90g、29.5mmol)の10%KOH(100mL)水溶液に、10%Pd/C(0.500g)を加えた。反応混合物をParr水素添加装置で、室温で4時間水素化した(50 psi)。触媒をセライトパッドでろ別し、ろ液を2N HClでpH=6.5に酸性化したところ、固体が沈澱し、これをろ過により回収した。この固体をH2O(100mL)およびEt2O(100mL)で洗浄し、真空中で60℃で乾燥し、灰白色固体(26、6.79g、98.6%)を得た。1H NMR (DMSO-d6, 300MHz) δ8.12 (d, J = 8.2Hz, 1H)、7.76 (t, J = 8.2Hz, 1H)、7.48 (d, J = 8.2Hz, 1H)、6.74 (s, 1H)。
【0175】
3-オキソ-2,7-ジヒドロ-3H-ピリド[4,3,2-de]フタラジン-8-カルボン酸(27)
140℃に加熱した26(23.1g、99.1mmol)のエチレングリコール(300 mL)溶液に、ヒドラジン水和物(4.75g、95.0mmol)を注意しながら滴下して加えた。反応混合物を150℃に加熱し、44時間攪拌した。真空下で90%のエチレングリコールを除去することにより沈殿を得て、これをメタノール(100mL)およびジエチルエーテル(100mL)で洗浄して黄色固体を得た(27、16.5g、72.7%)。1H NMR (DMSO-d6, 300MHz) δ11.85 (s, 1H)、10.43 (s, 1H)、7.61〜7.63 (m, 2H)、7.43〜7.46 (m, 1H)、6.49 (s, 1H)。
【0176】
3-オキソ-2,7-ジヒドロ-3H-ピリド[4,3,2-de] フタラジン-8-カルボン酸ナトリウム塩(28)
NaOH(1g)の水(100mL)溶液に、27(1.00g、4.36mmol)を加え、反応混合物を1時間攪拌した。不溶性物質を全て微細なフリットガラス漏斗でろ別し、水層を真空下で濃縮して黄色固体を得た(28、0.898g、82.1%)。1H NMR (D2O, 300MHz) δ7.23 (t, J = 7.8Hz, 1H)、6.97 (d, J = 7.8Hz, 1H)、6.88 (d, J = 7.8Hz, 1H)、5.91 (s, 1H)。元素分析: C11H6N3O4Na (1.0H2Oおよび2.45NaOH)の計算値: C, 35.98; H, 2.87; N, 11.44。実測値: C, 35.76; H, 2.86; N, 11.82。
【0177】
4-オキソ-1,4-ジヒドロ-2, 5-キノリンジカルボン酸2-エチル5-メチルエステル(29)
24(4.50g、14.5mmol)のEtOAc(100mL)懸濁液に、Et3N(50mL)を加えた。反応混合物を50℃に加熱して、透明な溶液を生じた。10%Pd/C(0.500g)を注意深く加えた。反応混合物をParr水素添加装置で、室温で4時間水素化した(50psi)。次いで、触媒をセライトパッドでろ別し、ろ液を水(100mL)で洗浄した。水層をEtOAc(100mL)で抽出し、合わせた有機層を乾燥し(MgSO4)、ろ過し、濃縮した。粗残渣をEt2O(100mL)で洗浄して灰白色固体を得た(29、3.46g、99.1%)。1H NMR (DMSO-d6, 300MHz) δ8.05 (d, J = 8.6Hz, 1H)、7.75 (t, J = 8.6Hz, 1H)、7.29 (d, J = 8.6Hz, 1H)、6.63 (s, 1H)、4.44 (q, J = 7.3Hz, 2H)、3.80 (s, 3H)、1.37 (t, J = 7.3Hz, 3H)。
【0178】
3-オキソ-2,7-ジヒドロ-3H-ピリド[4,3,2-de]フタラジン-8-カルボン酸ヒドラジド(30)
29(1.38g、5.02mmol)のエチレングリコール(25mL)溶液に、ヒドラジン水和物(1.00g、20.0mmol)を加えた。反応混合物を180℃に加熱し、18時間攪拌した。室温に冷却後、得られた黄色沈殿をEt2O(100mL)で洗浄し、真空中で、90℃で6 時間乾燥して黄色固体を得た(30、1.10g、90.2%)。1H NMR (DMSO-d6, 300MHz) δ11.89 (s, 1H)、10.51 (s, 1H)、10.09 (s, 1H)、7.62〜7.68 (m, 2H)、7.46〜7.49 (m, 1H)、6.57 (s, 1H)、4.60 (br s, 2H); 元素分析: C11H9N5O2の計算値: C, 54.32; H, 3.73; N, 28.79。実測値: C, 54.42; H, 3.72; N, 28.86。
【0179】
(実施例7)
6-フルオロ-3-オキソ-2,7-ジヒドロ-3H-ピリド[4,3,2-de]フタラジン-8-カルボン酸(36)の調製(スキーム7)
メチル4-フルオロ-3-ニトロベンゾエート(31)
4-フルオロ-3-ニトロ安息香酸(15.0g、81.1mmol)のMeOH(500mL)溶液に、H2SO4(1 mL)を加え、反応混合物を70℃で72時間攪拌し、次いで室温に冷却した。反応溶液をNaHCO3でpH=7.0に中和し、次いで真空下で濃縮した。H2O(300mL)を加え、EtOAc(3×300mL)で洗浄した。合わせた有機層を乾燥し(MgSO4)、真空下で濃縮して黄色油状物を得た(31、16.0g、99.0%)。1H NMR (CDCl3, 300MHz) δ8.76 (dd, J = 2.3, 7.3Hz, 1H) 8.30〜8.34 (m, 1H)、7.39 (t, J = 10.1Hz, 1H)、3.98 (s, 3H)。
【0180】
メチル4-フルオロ-3-アミノベンゾエート(32)
31(16.0g、80.3mmol)のMeOH(250mL)溶液に、10%Pd/C(0.500g)を加えた。反応混合物をParr水素添加装置で、室温で4時間水素化した(50psi)。触媒をセライトパッドでろ別し、ろ液を真空下で濃縮して無色油状物を得た(32、12.2g、90.0%)。1H NMR (CDCl3, 300MHz) δ7.48 (dd, J = 2.1, 8.6Hz, 1H)、7.39〜7.43 (m, 1H)、7.02 (dd, J = 8.6, 10.7Hz, 1H)、3.88 (s, 3H)、3.84 (br s, 2H)。
【0181】
2-[2-フルオロ-5-(メトキシカルボニル)フェニルアミノ]-2-ブテン二酸ジエチルエステル(33)
32(5.00g、29.6mmol)のエタノール(200mL)溶液に、ブタ-2-イン二酸ジエチルエステル(6.29g、37.0mmol)を加え、反応混合物を室温で24時間攪拌した。次いで、溶媒を減圧下で除去し、残渣をフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサンから25%EtOAcのヘキサン溶液)により精製して黄色油状物を得た(33、7.63g、76.5%)。1H NMR (CDCl3, 300MHz) δ9.64 (br s, 1H)、7.72〜7.78 (m, 1H)、7.62 (dd, J = 7.8, 1.9Hz, 1H)、7.12 (t, J = 10.3Hz, 1H)、5.61 (s, 1H)、4.19〜4.27 (m, 4H)、3.89 (s, 3H)、1.31 (t, J = 7.0, 3H)、1.20 (t, J = 7.0, 3H)。
【0182】
8-フルオロ-4-オキソ-1,4-ジヒドロ-2,5-キノリンジカルボン酸2-エチル5-メチルエステル(34)
33(25.0g、73.7mmol)のDowtherm A(200mL)懸濁液を30分にわたって300℃に加熱し、次いで300℃で1時間攪拌した。反応溶液を室温に冷却し、フラッシュクロマトグラフィー(ヘキサンからEtOAc)により精製して白色固体を得た(34、12.1g、56.1%)。1H NMR (CDCl3, 300MHz) δ9.19 (br s, 1H)、7.42 (t, J = 8.2, 1H)、7.21〜7.25 (m, 1H)、6.92 (s, 1H)、4.51 (q, J = 7.1, 2H)、3.99 (s, 3H)、1.46 (t, J = 7.1, 3H)。
【0183】
8-フルオロ-4-オキソ-1,4-ジヒドロ-2,5-キノリンジカルボン酸(35)
2N HCl水溶液(200mL)に、34(10.0g、34.1mmol)を加えた。反応混合物を100℃に18時間加熱し、次いで室温に冷却した。得られた沈殿をろ過し、真空下、60℃で18時間乾燥して灰白色固体を得た(35、8.11g、94.7%)。1H NMR (DMSO-d6, 300MHz) δ7.65 (t, J = 8.2, 1H)、7.39〜7.43 (m, 1H)、6.93 (s, 1H)。
【0184】
6-フルオロ-3-オキソ-2,7-ジヒドロ-3H-ピリド[4,3,2-de]フタラジン-8-カルボン酸(36)
35(0.600g、2.39mmol)のEtOH(5mL)溶液に、ヒドラジン(0.0840g、2.63mmol)を加えた。得られた混合物を90℃に24時間加熱し、次いで室温に冷却した。得られた沈殿をろ過し、Et2O(25mL)で洗浄し、真空中で、60℃で6時間乾燥して白色固体を得た(36、0.484g、74.5%)。1H NMR (DMSO-d6, 300MHz) δ8.25〜8.30 (m, 1H)、7.51〜7.57 (m, 1H)、7.06 (s, 1H); 元素分析: C11H6N3O3F (2H2O)の計算値: C, 46.65; H 3.56; N 14.84。実測値: C, 46.80; H, 3.59; N, 14.86。
【0185】
(実施例8)
6-メトキシ-3-オキソ-2,7-ジヒドロ-3H-ピリド[4,3,2-de]フタラジン-8-カルボン酸ヒドラジド(hydrozide)(39)の調製(スキーム8)
2-[2-メトキシ-5-(メトキシカルボニル)フェニルアミノ]-2-ブテン二酸ジメチルエステル(37)
メチル3-アミノ-4-メトキシベンゾエート(5.0g、27.6mmol)のMeOH(60mL)溶液に、ジメチルアセチレンジカルボキシレート(4.31g、30.36mmol)を室温で加えた。反応混合物を20分間還流し、室温に冷却した。溶媒を除去した。粗残渣をエーテルで粉砕し、黄色固体を得た(37、4.35g、49%)。1H NMR (DMSO-d4, 400MHz) δ9.8 (s, 1H)、7.90 (dd, J = 1.9Hz, 8.6Hz, 1H)、7.50〜7.60 (m, 1H)、7.35 (d, J = 8.59Hz, 1H)、5.50 (s, 1H)、4.08 (s, 3H)、4.0 (s, 3H)、3.90 (s, 3H)、3.85 (s, 3H)。
【0186】
8-メトキシ-4-オキソ-1,4-ジヒドロ2,5-キノリンジカルボン酸ジメチルエステル(38)
TLCで観察しながら、37(4.20g、12.99mmol)のDowtherm A(30mL)懸濁液を300℃で35分間加熱し、次いで0℃に冷却した。得られた沈殿をろ過し、Et2Oで洗浄して白色固体(37、2.0g、53%)を得た。1H NMR (DMSO-d6, 400MHz) δ10.0 (s, 1H)、7.34 (d, J = 7.84Hz, 1H)、7.30 (d, J = 8.09Hz, 1H)、6.60 (s, 1H)、4.05 (s, 3H)、3.96 (s, 3H)、3.77 (s, 3H)。
【0187】
6-メトキシ-3-オキソ-2,7-ジヒドロ-3H-ピリド[4,3,2-de]フタラジン-8-カルボン酸ヒドラジド (39)
38(0.45g、1.54mmol)のEtOH(20mL)懸濁液に、ヒドラジン(1mL)を室温で加えた。反応混合物を68℃で1.5時間加熱し、次いで室温に冷却した。得られた沈殿をろ過し、Et2Oで洗浄して白色固体を得た(39、0.31g、74%)。1H NMR (DMSO-d6, 300MHz) δ10.5 (br s, 1H)、9.0 (br s, 1H)、7.15〜7.25 (m, 2H)、7.1 (br s, 1H)、6.8 (br s, 1H)、4.90 (br s, 2H)、4.03 (s, 3H). Mp: 305〜307℃; 元素分析: C12H11N5O3・(0.75H2O)の計算値: C, 50.26; H, 4.39; N, 24.42。実測値: C, 50.33; H, 4.46; N, 22.04。
【0188】
(実施例9)
ジアザベンゾ[de]アントラセン-3-オン誘導体43〜48の調製(スキーム9)
7-ブロモメチル-9-オキソキサンテン-1-カルボン酸メチルエステル(41)
N-ブロモスクシンイミド、臭素、ピリジニウムブロミドなどの錯形成した臭素などを含む臭素化剤を、7-メチル-9-オキソキサンテン-1-カルボン酸メチルエステル40を7-ブロモメチル-9-オキソキサンテン-1-カルボン酸メチルエステル41に変換するのに用いることが可能である。溶媒としては、塩素化炭化水素、二極性極性非プロトン溶媒、および様々なエーテルが挙げられる。温度は、0〜100℃の範囲で変えられる。例えば、7-メチル-9-オキソキサンテン-1-カルボン酸メチルエステル(0.1mol)、N-ブロモスクシンイミド(0.12Mol)および過酸化ベンゾイル(10mg)の乾燥四塩化炭素(300mL)懸濁液を60℃で6時間攪拌する。この混合物をろ過し、固体を少量のクロロホルム、水およびエーテルで順次洗浄し、次いで乾燥すると、所望の生成物を白色固体として残る。例えば、化合物40(1.97g、7.4mmol)の四塩化炭素(400mL)溶液に、N-ブロモスクシンイミド(1.44g、8.1mmol)および触媒量の過酸化ベンゾイル(45mg、3%)を加えた。反応混合物を6時間加熱還流し、室温に冷却した。白色沈殿をろ別した。溶媒を除去し、残渣をEtOAcおよびヘキサンから再結晶した。粗生成物(2.05g)を得て、さらに再結晶することにより純粋な白色固体生成物41を得た(1.15g、45%)。2の1H NMR (400MHz, CDCl3): 8.27 (d, J = 2.5Hz, 1H)、7.80〜7.72 (m, 2H)、7.57 (dd, J = 8.5および1.1Hz, 1H)、7.48 (d, J = 8.5Hz, 1H)、7.33 (dd, J = 7.0および1.1Hz, 1H)、4.57 (s, 2H)、4.00 (s, 3H)。
【0189】
化合物41の臭素基を、一般的手順Aを用い、アミンなどの求核剤で置換することにより、化合物42は得られる。ケトエステル42を一般的手順Bを用いてヒドラジンで環化することにより所望の最終生成物が得られる。化合物43〜48。
【0190】
一般的手順A
ブロモ化合物(41、10mmol)の乾燥DMF(100mL)溶液に、炭酸カリウム(100mmol)および第二級アミン(10mmol)を加える。反応混合物を70℃に6時間加熱し、室温に冷却する。水(100mL)、次いで酢酸エチル(200 mL)を反応混合物に加える。有機層を回収し、水、ブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥する。溶媒を真空下で除去する。残渣を酢酸エチル/ヘキサンを溶離液として用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製すると、生成物42が50〜90%の収率で得られる。例えば、化合物43を合成するための中間体を製造する手順:化合物41(1.53g、4.4mmol)のCH3CN(50mL)溶液に、K2CO3(1.2g、8.7mmol)および1-メチルピペラジン(0.51mL、4.6mmol)を加えた。反応混合物を一晩加熱還流して、室温に冷却した。固体をろ過し、溶媒を蒸発させた。残渣を通常の手順で酢酸エチルおよび水により後処理した。カラムクロマトグラフィーまたは酸性/塩基性抽出(残渣に150mLの1N HClおよび150mLのEtOAcを加える)をする。水層を分離し、100mLのEtOAcで洗浄した。次いで、水層に6N NaOHをpH>9になるまで加えた。この溶液を100mLのEtOAcにより2回抽出した。有機層を合わせて、水およびブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥した。溶媒を蒸発させて油状物42aを得た(0.95g、59%)。42aの1H NMR (400MHz, CDCl3)/42a: 8.18 (d, J = 2.5Hz, 1H)、7.75〜7.71 (m, 2H)、7.56 (dd, J = 8.5および1.1Hz, 1H)、7.45 (d, J = 8.5Hz, 1H)、7.32 (dd, J = 7.0および1.1Hz, 1H)、4.04 (s, 3H)、3.58 (s, 2H)、2.45 (br, 8H)、2.27 (s, 3H)。
【0191】
一般的手順B
ベンゾピラノ[4,3,2-de]フタラジン環は、ケトンエステルのヒドラジンとの縮合により形成し得る。ケトンエステル42(5mmol)の無水エタノール(10mL)溶液に、無水ヒドラジンのエタノール(1mL)溶液を室温で滴下して加える。この溶液を一晩還流し、室温に冷却する。氷冷水(100mL)を加え、白色固体を分離する。固体を吸引ろ過により回収し、水および少量のメタノールで洗浄することにより白色固体生成物が40〜85 %の収率で得られる。
【0192】
10-(4-メチル-ピペラジン-1-イルメチル)-2H-7-オキサ-1,2-ジアザベンゾ[de]アントラセン-3-オン(43)
化合物42a(0.91g、2.5mmol)のEtOH(15mL)溶液に、還流しながら、ヒドラジン一水和物(2mL、41mmol)を加えた。反応混合物を5時間攪拌し、冷却した。溶媒を除去し、水を加えた。沈殿をろ別し、15%EtOHで洗浄し、回収して白色固体43を得た(0.85g、98%)。MS(ES+):349; 1H NMR (400MHz, DMSO-d6): 12.61 (s, 1H)、7.99 (d, J = 2.0Hz, 1H)、7.92〜7.85 (m, 2H)、7.68 (dd, J = 7.5および2.0Hz, 1H)、7.45 (dd, J = 8.5および2.0Hz, 1H)、7.35 (d, J = 8.5Hz, 1H)、3.52 (s, 2H)、2.40 (bs, 8H)、2.18 (s, 3H)。元素分析: C20H20N4O2の計算値: C, 68.95; H, 5.79; N, 16.08。実測値: C, 69.04; H, 5.75; N, 16.2。
【0193】
10-(4-エチル-ピペラジン-1-イルメチル)-2H-7-オキサ-1,2-ジアザベンゾ[de]アントラセン-3-オン(44)
一般的手順AおよびBに従って化合物41および1-エチルピペラジンから調製する。エタノール中で結晶化することにより化合物を精製すると、白色固体生成物44が得られる。MS(ES+):363。1H-NMR (DMSO-d6, 400MHz): 12.62 (s, 1H)、8.01 (s, 1H)、7.93〜7.86 (m, 2H)、7.70 (dd, J = 7.0および2.0Hz, 1H)、7.47 (dd, J = 8.5および2.0Hz, 1H)、7.37 (d, J = 8.5Hz, 1H)、3.55 (s, 2H)、2.52〜2.30 (b, 10H)、1.04 (m, 3H)。元素分析: C21H22N4O2・(0.3H2O)の計算値: C, 68.57; H, 6.19; N, 15.23。実測値: C, 68.21; H, 6.19; N, 15.38
【0194】
10-[4-(2-ヒドロキシ-エチル)-ピペラジン-1-イルメチル]-2H-7-オキサ-1,2-ジアザベンゾ[de]アントラセン-3-オン(45)
一般的手順AおよびBに従って化合物41およびN-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジンから調製する。エタノール中で結晶化することにより化合物を精製すると、白色固体生成物45が得られる。MS(ES+):379。1H-NMR (DMSO-d6, 400MHz): 12.62 (s, 1H)、8.00 (s, 1H)、7.92〜7.85 (m, 2H)、7.69 (d, J = 7.0Hz, 1H)、7.42 (d, J = 8.5Hz, 1H)、7.31(d, J = 8.6Hz, 1H)、3.53〜3.48 (m, 4H)、2.50〜2.35 (m, 10H)。元素分析: C21H22N4O3の計算値: C, 66.65; H, 5.86; N, 14.81。実測値: C, 66.39; H, 5.80; N, 14.94。
【0195】
10-{4-[2-(2-ヒドロキシ-エトキシ)-エチル]-ピペラジン-1-イルメチル}-2H-7-オキサ-1,2-ジアザベンゾ[de]アントラセン-3-オン(46)
一般的手順AおよびBに従って化合物41および1-ヒドロキシエチルエトキシピペラジンから調製する。エタノール中で結晶化することにより化合物を精製すると、白色固体生成物7が得られる。MS(ES+):423。1H-NMR (DMSO-d6, 400MHz): 12.62 (s, 1H)、8.01 (s, 1H)、7.93〜7.95 (m, 2H)、7.69 (dd, J = 7.0および2.0Hz, 1H)、7.47 (dd, J = 8.5および2.0Hz, 1H)、7.37 (d, J = 8.5Hz, 1H)、3.57〜3.50 (m, 4H)、3.47 (m, 2H)、3.39 (m, 2H)、2.49〜37 (m, 10H)。元素分析: C23H26N4O4・(0.15H2O)の計算値: C, 64.97; H, 6.23; N, 13.18。実測値: C, 64.95; H, 6.21; N, 13.24。
【0196】
10-{[Bis-(2-ヒドロキシ-エチル)-アミノ]-メチル}-2H-7-オキサ-1,2-ジアザベンゾ[de]アントラセン-3-オン(47)
一般的手順AおよびBに従って化合物41およびジエタノールアミンから調製する。エタノール中で結晶化することにより化合物を精製すると、白色固体生成物47が得られる。MS(ES+):354。Mp222〜225℃。1H-NMR (DMSO-d6, 400MHz): 12.59 (s, 1H)、8.00 (s, 1H)、7.91〜7.84 (m, 2H)、7.67 (dd, J = 7.0および2.0Hz, 1H)、7.52 (dd, J = 8.5および2.0Hz, 1H)、7.34 (d, J = 8.5Hz, 1H)、3.70 (s, 2H)、3.47 (t, J = 6.4Hz, 4H)、2.56 (t, J = 6.4Hz, 4H)。元素分析: C19H19N3O4の計算値: C, 64.58; H, 5.42; N, 11.89。実測値: C, 64.32; H, 5.44; N, 11.90。
【0197】
10-(4-ピロリジン-1-イル-ピペリジン-1-イルメチル)-2H-7-オキサ-1,2-ジアザベンゾ[de]アントラセン-3-オン(48)
一般的手順AおよびBに従って化合物41および4-(1-ピロリジニル)ピペリジンから調製する。エタノール中で結晶化することにより化合物を精製すると、白色固体生成物48が得られる。MS(ES+):403。Mp258〜264℃。1H-NMR (CDCl3, 400MHz): 9.93 (s, 1H)、8.06 (m, 2H)、7.81 (t, J = 8.0Hz, 1H)、7.55 (dd, J = 8.0, 1. 0Hz, 1H)、7.50 (dd, J = 8.0, 2.5Hz, 1H)、7.26 (d, J = 8.0Hz, 1H)、3.55 (s, 2H)、2.90 (m, 2H)、2.61 (m, 4H)、2.06 (m, 2H)、1.87〜1.62 (m, 9H)。元素分析: C24H26N4O2・0.5H2O)の計算値: C, 70.05; H, 6.61; N, 13.62。実測値: C, 70.25; H, 6.42; N, 13.59。
【0198】
(実施例10)
ジアザベンゾ[de]アントラセン-3-オン誘導体49〜55の調製(スキーム10)
10-アミノメチル-2H-7-オキサ-1,2-ジアザベンゾ[de]アントラセン-3-オン(49)
7-ブロモメチル-9-オキソキサンテン-1-カルボン酸メチルエステル41(0.70g、2.0mmol)の無水DMF(10mL)溶液に、カリウムフタルイミド(0.44g、2.4mmol)を加えた。反応混合物を還流下で3時間攪拌し、次いで冷却し、溶媒を真空下で除去した。残渣に100mLの酢酸エチルを加え、水およびブラインで洗浄し、次いでMgSO4で乾燥した。溶媒を真空下で除去して白色固体(0.53g、63%)を得た。白色固体(0.53g)をヒドラジン(5mL)およびエタノール(10mL)溶液に溶解した。反応混合物を還流下で3時間攪拌した。溶液を真空下で濃縮した。濃縮した溶液に水を加えた。白色沈殿が形成され、ろ過した。白色固体を乾燥し、化合物49(0.30g、87%)を得た。MS(FAB(M+1)):266。1H-NMR (DMSO-d6, 400MHz): 12.60 (sb, 1H)、8.04 (d, J = 2.0Hz, 1H)、7.92〜7.80 (m, 2H)、7.68 (dd, J = 7.5および2.0Hz, 1H)、7.50 (dd, J = 8.5および2.0Hz, 1H)、7.34 (d, J = 8.5Hz, 1H)、3.76 (s, 2H); 元素分析: C15H11N3O2の計算値: C, 67.92; H, 4.18; N, 15.84。実測値: C, 67.67; H, 4.20; N, 15.64。
【0199】
N-(3-オキソ-2,3-ジヒドロ-7-オキサ-1,2-ジアザベンゾ[de]アントラセン-10-イルメチル)-グアニジン(50)
49(0.10g、0.38mmol)のDMF(5mL)溶液に、ジイソプロピルエチルアミン(0.83mmol)および1H-ピラゾールカルボキサミジン塩酸塩(0.12g、0.81mmol)を加えた。反応混合物を室温で一晩攪拌した。ジエチルエーテルを加えて白色沈殿を形成した。沈殿を回収し、EtOAc中で再結晶し、白色固体50を得た(0.11g、83%、HCl塩)。MS(ES-):306。1H-NMR (DMSO-d6, 400MHz): 12.62 (s, 1H)、8.04 (d, J = 2.0Hz, 1H)、7.92〜7.84 (m, 2H)、7.71 (dd, J = 7.5および2.0Hz, 1H)、7.50 (dd, J = 8.5および2.0Hz, 1H)、7.45 (d, J = 8.5Hz, 1H)、4.47 (s, 2H); 元素分析: C16H13N5O2・1ClHの計算値: C, 55.58; H, 4.27; N, 19.76; Cl, 10.38。実測値: C, 55.94; H, 4.17; N, 19.32; Cl, 10.12。
【0200】
一般的手順C
化合物49を有機溶媒(例えば、DMF、ジオキサン)に溶かした溶液に、酸無水物または酸塩化物を加えた。反応混合物を様々な温度で攪拌した。溶媒を真空下で除去し、生成物を再結晶により精製した。
【0201】
2,3-ジアセトキシ-N-(3-オキソ-2,3-ジヒドロ-7-オキサ-1,2-ジアザベンゾ[de]アントラセン-10-イルメチル)-スクシンアミド酸(51)
化合物49(0.20g、0.76mmol)のジオキサン(20mL)溶液に、ジアセチル酒石酸無水物(0.17g、0.80mmol)を加えた。反応混合物を室温で一晩攪拌した。溶媒を真空下で除去した。残渣をCH2Cl2中で再結晶させた。白色固体51を95%の収率で得た。MS:(ES+):482。1H-NMR (DMSO-d6, 400MHz): 12.66 (s, 1H)、8.86 (d, J = 6.2Hz, 1H)、7.99 (s, 1H)、7.92〜7.86 (m, 2H)、7.70 (dd, J = 7.5および2.0Hz, 1H)、7.40〜7.36 (m, 2H)、5.56 (d, J = 2.5Hz, 1H)、5.51 (d, J = 2.5Hz, 1H)、4.45 (dd, J = 15.0および6.3Hz, 1H)、4.29 (dd, J = 15.0および6.3Hz, 1H)、2.14 (s, 3H)、1.98 (s, 3H); 元素分析: C23H19N3O9・(1.2H2O)の計算値: C, 54.92; H, 4.29; N, 8.35。実測値: C, 54.89; H, 3.82; N, 8.39。
【0202】
2,3-ジヒドロキシ-N-(3-オキソ-2,3-ジヒドロ-7-オキサ-1,2-ジアザベンゾ[de]アントラセン-10-イルメチル)-スクシンアミド酸(52)
化合物51を、NaOH(2.5当量)のH2O/ジオキサン溶液に溶解した。反応混合物を40℃で一晩攪拌し、次いでpH=3に酸性化した。水層を酢酸エチルで抽出した。有機層をMgSO4で乾燥した。溶媒を真空下で除去して白色固体52を25%の収率で得た。MS:(ES+):398。Mp:181〜185℃。1H-NMR (DMSO-d6, 400MHz): 12.54 (s, 1H)、8.32 (t, J = 6.2Hz, 1H)、7.93 (d, J = 2.0Hz, 1H)、7.90〜7.80 (m, 2H)、7.62 (dd, J = 7.5および2.0Hz, 1H)、7.40 (dd, J = 8.5および2.0Hz, 1H)、7.25 (d, J = 8.5Hz, 1H)、4.30〜4.19 (m, 4H); 元素分析: C19H15N3O7・(3H2O)の計算値: C, 50.56; H, 4.69; N, 9.31。実測値: C, 50.59; H, 4.07; N, 9.28。
【0203】
ピロリジン-2-カルボン酸(3-オキソ-2,3-ジヒドロ-7-オキサ-1,2-ジアザベンゾ[de]アントラセン-10-イルメチル)-アミド(53)
化合物49(0.5mmol)のDMF溶液に、トリエチルアミン(0.6mmol)およびFmoc-L-プロリンクロリド(0.6mmol)をゆっくり加えた。反応混合物を室温で3時間攪拌した。水を反応混合物に注いだ。白色沈殿が形成され、ろ過により回収した。この白色固体を再結晶して白色固体を65 %の収率で得た。
【0204】
この白色固体を20%ピペリジンのDMF溶液に溶かした。この溶液を室温で2時間攪拌した。溶液に水を加えた。水層を酢酸エチルで抽出した。有機層を回収し、ブラインで洗浄し、乾燥した。溶媒を除去して白色固体53を54%の収率で得た。MS(ES+):363。1H-NMR (DMSO-d6, 400MHz): 12.64 (s, 1H)、8.59 (t, J = 5.8Hz, 1H)、7.98 (d, J = 2.0Hz, 1H)、7.90〜7.82 (m, 2H)、7.72 (dd, J = 7.5および2.0Hz, 1H)、7.43 (dd, J = 8.5および2.0Hz, 1H)、7.36 (d, J = 8.5Hz, 1H)、4.35 (d, J = 3.8Hz, 2H)、3.62 (m, 1H)、2.98 (t, J = 5.2Hz, 1H)、2.87 (m, 1H)、1.99 (m, 1H)、1.73 (m, 1H)、1.64 (m, 2H); 元素分析: C20H18N4O3・(1.2H2O)の計算値: C, 62.56; H, 5.35; N, 14.59。実測値: C, 62.75; H, 5.34; N, 14.52。
【0205】
(3-オキソ-2,3-ジヒドロ-7-オキサ-1,2-ジアザベンゾ[de]アントラセン-10-イルメチル)-ホスホルアミド酸ジエチルエステル(54)
化合物49(0.5mmol)の無水DMF(20mL)溶液に、クロロリン酸ジエチル(1.5mmol)を加えた。3時間後、溶液を真空下で濃縮し、50mLの水を加えた。水層を30mLのEtOAcで2回抽出した。有機層を合わせて、30mLのブラインで洗浄した。有機層をMgSO4で乾燥した。溶媒を除去して白色固体を得て、これを10%EtOAcのヘキサン溶液中で再結晶して、白色固体54を50%の収率で得た。MS(ES-):400。Mp:222.3〜224.5℃。1H-NMR (CDCl3, 400MHz): 10.21 (s, 1H)、8.10 (d, J = 2.5Hz, 1H)、8.03 (d, J = 7.5Hz, 1H)、7.79 (t, J = 8.0Hz, 1H)、7.52 (d, J = 8.0Hz, 1H)、7.47 (dd, J = 8.5および2.0Hz, 1H)、7.22 (d, J = 8.5Hz, 1H)、4.12 (m, 6H)、1.32 (t, J = 6.5Hz, 6H); 元素分析: C19H20N3O5P・(0.3H2O)の計算値: C, 56.10; H, 5.10; N, 10.33。実測値: C, 56.00; H, 5.03; N, 10.13。
【0206】
4-(4-ジメチルアミノ-フェニルアゾ)-N-(3-オキソ-2,3-ジヒドロ-7-オキサ-1,2-ジアザベンゾ[de]アントラセン-10-イルメチル)-ベンゼンスルホンアミド(55)
化合物49(0.5mmol)の無水DMF(20mL)溶液に、4-ジメチルアミノアゾベンゼン-4'-スルホニルクロリド(0.5mmol)を加えた。この混合物を室温で3時間攪拌した。反応混合物を真空下で濃縮し、50mLの50%EtOAcのヘキサン溶液を加えた。沈殿が形成され、ろ過により回収した。粗生成物を50%エタノール中で再結晶させ、橙黄色固体55を59%の収率で得た。MS(ES+):553。Mp:>300℃。1H-NMR (DMSO-d6, 400MHz): 12.63 (s, 1H)、7.90 (d, J = 2.0Hz, 1H)、7.86〜7.74 (m, 6H)、7.67 (d, J = 9.0Hz, 2H)、7.62 (dd, J = 6.6および2.5Hz, 1H)、7.44 (dd, J = 8.5および2.0Hz, 1H)、7.30 (d, J = 8.5Hz, 1H)、6.81 (d, J = 9.0Hz, 2H)、4.15 (s, 2H)、3.09 (s, 6H); 元素分析: C29H24N6O4S・(1.3H2O)の計算値: C, 60.47; H, 4.65; N, 14.59; S, 5.57。実測値: C, 60.72; H, 4.93; N, 15.39; S, 4.93。
【0207】
(実施例11)
ジアザベンゾ[de]アントラセン-3-オン誘導体56〜61の調製(スキーム11)
10-アミノオキシメチル-2H-7-オキサ-1,2-ジアザ-ベンゾ[de]アントラセン-3-オン(56) ヒドロキシフタルイミド(3.6mmol)の無水DMF溶液に、鉱油中の無水ナトリウム(sodium anhydride)60%(3.6ml)を加えた。この溶液を20分間室温で攪拌した。この溶液に、化合物41(3.0mmol)を加えた。反応混合物を室温で2時間攪拌し、溶媒を真空下で除去した。残渣に100mLの酢酸エチルを加えた。有機層を水およびブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥した。酢酸エチルを真空で除去した。白色固体を70%の収率で得た。白色固体をヒドラジンおよびエチルアルコールの混合物に加えた。この混合物を還流下で2時間攪拌した。溶液を真空で濃縮して減らした。濃縮した溶液に水を加えた。白色沈殿が形成され、ろ別し、過剰の水で洗浄した。白色固体を回収し、乾燥して白色固体生成物56を85%の収率で得た。MS(ES+):282。Mp:294〜296℃。1H-NMR (DMSO-d6, 400MHz): 12.64 (s, 1H)、8.04 (d, J = 2.0Hz, 1H)、7.92〜7.86 (m, 2H)、7.73 (dd, J = 7.5および2.0Hz, 1H)、7.50 (dd, J = 8.5および2.0Hz, 1H)、7.41 (d, J = 8.5Hz, 1H)、4.64 (s, 2H); MS: (ES+): 282; 元素分析: C15H11N3O3の計算値: C, 64.05; H, 3.94; N, 14.94。実測値: C, 64.24; H, 4.00; N, 14.97。
【0208】
10-ヒドロキシメチル-2H-7-オキサ-1,2-ジアザベンゾ[de]アントラセン-3-オン(57) 20mLの水および20mLのアセトン中に化合物41(4.2mmol)を含む溶液に、硝酸銀を加えた(8.4mmol)。反応混合物を50℃で2時間攪拌した。黒色沈殿をろ別した。ろ液を真空下で濃縮した。残渣に100mLの酢酸エチルを加えた。有機層を水およびブラインで洗浄し、次いでMgSO4で乾燥した。溶媒を真空下で除去して白色固体を86%の収率で得た。白色固体をヒドラジンおよびエチルアルコールの混合物に加えた。混合物を還流下で2時間攪拌した。溶液を真空下で濃縮した。濃縮した溶液に、水を加えた。白色沈殿が形成され、ろ別し、過剰の水で洗浄した。白色固体を回収し、乾燥して白色固体生成物57を95%の収率で得た。MS(ES+):267。1H-NMR (DMSO-d6, 400MHz): 12.56 (s, 1H)、7.99 (d, J = 2.0Hz, 1H)、7.91〜7.81 (m, 2H)、7.63 (dd, J = 7.5および2.0Hz, 1H)、7.43 (dd, J = 8.5および2.0Hz, 1H)、7.30 (d, J = 8.5Hz, 1H)、4.50 (d, J = 6.0Hz, 2H); 元素分析: C15H10N2O3・(0.08ヒドラジン)の計算値: C, 67.02; H, 3.87; N, 11.25。実測値: C, 67.29; H, 3.82; N, 11.51。
【0209】
一般的手順D
化合物57を有機溶媒(例えば、DMF、ジオキサン)に溶かした溶液に、酸無水物または酸塩化物を加えた。反応混合物を様々な温度で攪拌した。溶媒を真空で除去し、生成物を再結晶することにより精製した。
【0210】
[2-(3-オキソ-2,3-ジヒドロ-7-オキサ-1,2-ジアザベンゾ[de]アントラセン-10-イルメトキシ)-エチル]-ホスホン酸ジベンジルエステル(58)
10mLのTHF中に亜リン酸ジベンジル(2.6mmol)を含む溶液に、アクリル酸エチル(3.0mmol)、K2CO3(16mmol)、および0.3mLの(Bn4NH)2SO4 50%w/wを加えた。反応混合物を45℃で一晩攪拌した。水を加えた。水層を酢酸エチルで抽出した。有機層を回収し、MgSO4で乾燥した。溶媒を除去して無色油状の3-ビス(ベンジルオキシ)ホスホリルプロピオン酸を90%の収率で得た。1H-NMR (CDCl3, 400MHz): 7.33 (m, 10H)、4.90〜5.10 (m, 4H)、3.61 (s, 3H)、2.50〜2.60 (m, 2H)、2.00〜2.15 (m, 2H)。
【0211】
化合物57(0.5mmol)の無水DMF溶液に、3-ビス(ベンジルオキシ)ホスホリルプロピオン酸(0.75mmol)およびEDC(0.75 mmol)およびDMAP(触媒量)を加えた。反応混合物を室温で一晩攪拌した。溶媒を真空下で除去した。残渣に、酢酸エチル100mLを加えた。有機層を水で洗浄し、MgSO4で乾燥した。溶媒を除去して無色油状物を得て、これをEtOAc/ヘキサン中で再結晶し、白色固体58を40%の収率で得た。MS(ES-):581。Mp:173〜175℃。1H-NMR (CDCl3, 400MHz): 10.01 (s, 1H)、8.11 (d, J = 2.0Hz, 1H)、8.07 (d, J = 7.5Hz, 1H)、7.82 (t, J = 8.5Hz, 1H)、7.54 (d, J = 8.0Hz, 1H)、7.40 (dd, J = 8.5および2.0Hz, 1H)、7.35〜7.22 (m, 11H)、5.09 (s, 2H)、4.98 (m, 4H)、2.62 (m, 2H)、2.12 (m, 2H); 元素分析: C32H27N2O7Pの計算値: C, 65.98; H, 4.67; N, 4.81。実測値: C, 65.69; H, 4.82; N, 5.09。
【0212】
ジメチルアミノ酢酸3-オキソ-2,3-ジヒドロ-7-オキサ-1,2-ジアザベンゾ[de]アントラセン-10-イルメチルエステル(59)
化合物57(0.5mmol)の無水DMF溶液に、ジメチルグリシン(0.75mmol)およびEDC(0.75mmol)およびDMAP(触媒量)を加えた。反応混合物を室温で一晩攪拌した。溶媒を真空下で除去した。残渣に、100mLの酢酸エチルを加えた。有機層を水、およびブラインで洗浄し、次いでMgSO4で乾燥した。溶媒を除去して無色油状物を得て、これをEtOAc/ヘキサン中で再結晶し、灰白色固体59を30%の収率で得た。MS(ES+):352。MP:227〜230℃。1H-NMR (CDCl3, 400MHz): 10.15 (s, 1H)、8.14 (d, J = 2.0Hz, 1H)、8.06 (dd, J = 8.0および1.0Hz, 1H)、7.80 (t, J = 8.0Hz, 1H)、7.53 (dd, J = 8.0および1.0Hz, 1H)、7.47 (dd, J = 8.5および2.0Hz, 1H)、7.22 (d, J = 8.5Hz, 1H)、5.21 (s, 2H)、3.26 (s, 2H)、2.37 (s, 6H); 元素分析: C19H17N3O4の計算値: C, 64.95; H, 4.86; N, 11.96。実測値: C, 64.95; H, 4.78; N, 12.14。
【0213】
リン酸ジベンジルエステル3-オキソ-2,3-ジヒドロ-7-オキサ-1,2-ジアザベンゾ[de]アントラセン-10-イルメチルエステル(60)
化合物57(0.25mmol)の無水DMF溶液に、リン酸ジベンジル(0.80mmol)およびトリフェニルホスフィン(0.80mmol)を加えた。反応混合物を、ジイソプロピルアゾジカルボキシレートをゆっくり加えながら攪拌した。反応混合物を室温で3時間攪拌した。溶媒を真空で除去した。残渣に、100mLの酢酸エチルを加えた。有機層を水およびブラインで洗浄し、次いでMgSO4で乾燥した。溶媒を除去して黄色油状物を得た。油状物をEtOAc/ヘキサン中で再結晶し、灰白色固体60を40%の収率で得た。MS(ES+):527。Mp:223〜225℃。1H-NMR (CDCl3, 400MHz): 9.91 (s, 1H)、8.13 (d, J = 2.0Hz, 1H)、8.11 (dd, J = 8.0および1.0Hz, 1H)、7.85 (t, J = 8.0Hz, 1H)、7.59 (dd, J = 8.0および1.0Hz, 1H)、7.45 (dd, J = 8.5および1.0Hz, 1H)、7.36〜7.26 (m, 11H)、5.08 (m, 6H)。元素分析: C29H23N2O6P・(0.15ヒドラジン)の計算値: C, 65.56; H, 4.48; N, 6.06。実測値: C, 65.55; H, 4.33; N, 6.09。
【0214】
リン酸モノ-(3-オキソ-2,3-ジヒドロ-7-オキサ-1,2-ジアザベンゾ[de]アントラセン-10-イルメチル)エステル(61)
化合物57(0.25mmol)の無水DMF溶液に、1H-テトラゾール(2.5mmol)およびジ-tert-ブチルN,N-ジエチルホスホルアミダイト(1.25mmol)を加えた。反応混合物を室温で2時間攪拌した。この溶液に、t-ブチルヒドロペルオキシドを加えた。反応混合物をさらに1時間攪拌した。反応混合物を0℃に冷却し、15mlの15%NaHSO3水溶液を反応混合物に加えた。混合物をさらに15分間攪拌した。この混合物をpH=8.5になるまで中和し、酢酸エチルで抽出した。有機層を回収し、ブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥した。溶媒を真空で除去して灰白色固体を得て、これをEtOAc/ヘキサン中で再結晶し、中間体を78%の収率で得た。
【0215】
この灰白色固体を10mLのCH2Cl2に溶解し、この溶液に4mLのTFAを加えた。反応混合物を室温で3時間攪拌した。溶媒を真空で除去した。残渣を酢酸エチル中で再結晶させて、黄色固体61を60%の収率で得た。MS(ES+):347。Mp:246〜252℃。1H-NMR (DMSO-d6, 400MHz): 12.64 (s, 1H)、8.09 (s, 1H)、7.93〜7.85 (m, 2H)、7.67 (dd, J = 7.0および2.0Hz, 1H)、7.53 (dd, J = 8.5および2.0Hz, 1H)、7.41 (d, J = 8.0Hz, 1H)、4.95 (d, J = 7.5Hz, 2H); 元素分析: C15H11N2O6Pの計算値: C, 52.04; H, 3.2; N, 8.09。実測値: C, 51.76; H, 3.38; N, 8.21。
【0216】
(実施例12)
10-(4-メチル-ピペラジン-1-イルメチル)-2H-7-オキサ-1,2-ジアザベンゾ[de]アントラセン-3-オン(43)の局所脳虚血作用
ラットは、手術まで水およびラットの餌(Wayne、Chicago、IL)に自由に接近できるようにする。飼育法および麻酔は実験動物研究委員会(institutional Animal Studies Committee)により確立されたガイドラインに同意し、実験動物の飼育および使用に関するPHSガイド(PHS Guide for the Care and Use of Laboratory Animals)、USDAの規制、およびアメリカ獣医学会安楽死処置検討委員会(AVMA Panel on Euthanasia)のガイドラインに従っている。
【0217】
動物は、イソフルオラン(isofluoran)(導入、3%;維持、O2中1.25%)によりフェイスマスクを介して麻酔する。短い手術の間、動物は電気毛布上で温かさを保った。薬物を投与するため、静脈カテーテルを左大腿静脈に挿入する。次いで、右中大脳動脈(MCA)を右目と耳との中間を垂直皮膚切開して曝し、覆っている頭蓋骨を歯科用ドリルで除く。一時的に閉塞させるために、Codman社のマイクロクリップを下大脳静脈のレベルで動脈に適用する。MCAの永久閉塞のために、両極性焼灼器(Valleylab NS2000、Boulder、CO)を用いて動脈を下大脳静脈のレベルで凝固させ、切断して自発的な再潅流を防止する。事前に単離し、軟部組織および神経を除いた両方の総頸動脈(CCA)をその後、非外傷性動脈瘤クリップを用いて連結する。手術用クリップで傷を閉じた後、動物を麻酔から回復させ、27℃に温めた部屋のケージに戻した。
【0218】
前後の投与方法としては、薬物をMCAOの30分前、ivボーラスとして最初に投与し、次いで、再潅流の30分前、すなわち、MCAOの1時間後に投与する。MCAOの90分後に、動物にイソフルオランで再麻酔し、頚動脈のクリップを除く。動物を一晩暖かい部屋に戻す。
【0219】
一時的または永久MCAOの24時間後に、動物をCO2で殺し、頭部をギロチンで切除する。脳を取り除き、氷冷生理食塩水で冷却し、ラット用脳マトリクス(matrice)(Harvard Bioscience、South Natick、MA)を用いて2mmの冠状切片にスライスする。この脳スライスを2%TTCを含むリン酸緩衝食塩水(pH7.4)中で37℃(EC)で10分間インキュベートし、その後、10%中性緩衝ホルマリンに保存する。各脳スライスごとのTTC-で染色されていない領域の断面積を画像解析機(MetaMorph、Universal Imaging Corp.、West Chester、PA)を用いて決定する。右半球での梗塞の全容量を直接的なもの(TTC-陰性)の総和により計算する。媒体および薬物処置群(n=8)の梗塞の容量をunpaired Student-t検定を用いて統計的有意差に関して試験する(図(Figure)1)。
【0220】
(実施例13)
10-(4-メチル-ピペラジン-l-イルメチル)-2H-7-オキサ-1,2-ジアザベンゾ[de]アントラセン-3-オン(43)の心筋の保護
この研究では、我々は局所的心臓虚血再潅流モデルにおける43の影響について調査した。局所的心臓虚血モデルでは、チオペンタールナトリウムにより麻酔されたオスSDラットを30分間、LAD冠動脈を閉塞させ、次いで2時間再潅流させた。梗塞サイズをTTC染色法により定量し、危険性のある領域の割合として表した。10から40mg/kgの範囲の投薬量で、虚血前に43のivボーラス投与に加えてさらに虚血後にivボーラス投与することにより有意な心臓保護を示す。
【0221】
フリーラジカルにより引き起こされる再潅流傷害は、脳虚血に限定されない。それは心臓および骨格筋を含むその他の臓器の損傷にも著しく寄与する。PARP阻害剤がウサギで、心臓および骨格筋の虚血および再潅流により引き起こされる梗塞のサイズを減少させることが実証されている。脳および心筋の虚血に関する再潅流傷害は両傷害がフリーラジカルによるDNA損傷の結果としてのPARP活性化によるものであるという共通のメカニズムを有している可能性があることを証拠は示唆している。PARP活性の一時的阻害は、心臓の虚血-再潅流傷害の治療における新たなアプローチである。
【0222】
Sprague-Dawleyラットの左冠動脈前下行枝を30分間閉塞した。この後、90〜120分の血液再流を続けた。PARP阻害化合物は、虚血開始の60分前に腹腔内(ip)に、または虚血開始の15若しくは5分前および25分後に静脈内(iv)に投与された。梗塞サイズをTTC染色法により決定し、危険領域を青色色素の注入により決定した。PARP阻害剤は、このモデルの梗塞サイズで有意な減少を示した。すなわち、梗塞の容量を36%、p = 0.001の間で減少させた。
【0223】
(実施例14)
10-(4-メチル-ピペラジン-l-イルメチル)-2H-7-オキサ-1,2-ジアザ-ベンゾ[de]アントラセン-3-オン(43)は、黒色腫、リンパ腫および多形神経膠芽腫細胞系のTMZに対するin vitroでの感受性を向上させる。
【0224】
細胞系
C57BL/6J(H-2b/H-2b)由来のマウス黒色腫細胞系B16およびDBA/2(H-2d/H-2d)由来のリンパ腫細胞系L5178Y(ATCC、Manassas、VA)を10%ウシ胎児血清(Invitrogen、Milan、Italy)、2mM L-グルタミン、100unit/mlペニシリンおよび100μg/mlストレプトマイシン(Flow Laboratories、Mc Lean、VA)を含むRPMI-1640で37℃、5%CO2の加湿雰囲気下で培養した。ヒト多形神経膠芽腫細胞系SJGBM2を、10%ウシ胎児血清、2mM L-グルタミン、および抗生物質を補ったDMEM(Invitrogen)で培養した。SJGBM2細胞系は親切にもDr. Peter J. Houghton(St. Jude Children's Research Hospital、Memphis、TN、USA)からの寄贈であった。
【0225】
薬物
TMZはSchering-Plough Research Institute (Kenilworth、NJ、USA)より提供された。薬物ストック溶液は、TMZをジメチルスルホキシドおよび43のカリウムを含まない70mM PBS溶液に溶かすことにより調製した。
【0226】
In vitro研究
細胞を43(0.1〜20μM)またはTMZ(1〜250μM)で処置した。TMZにより誘導される腫瘍成長阻害に対する43の増強効果を評価することを目的とした実験では、43を無毒性でかつPARP活性を抑制可能な濃度で使用して15分後に、メチル化試薬を細胞培養液に加えた。ジメチルスルホキシドの最終濃度は常に0.1%(v/v)未満であり、毒性を与えなかった(データは示さず)。
【0227】
細胞を3日間培養し、アポトーシスまたは細胞周期分析を、前述のDNA含量のフローサイトメトリー分析により毎日評価した(Tentori 1997)。概説すると、細胞をPBSで洗浄し、70%エタノール中で-20℃で18時間固定化した。遠心したペレットをヨウ化プロピジウム(50μg/ml)、0.1%クエン酸ナトリウム、0.1% Triton-X、およびRNase(10μg/ml)を含む1mlの低張液に再懸濁し、暗所で、37℃で15分間インキュベートした。データ回収は前方散乱光および側方散乱光を利用して調節され、壊死細胞片および凝集物を排除した。ヨウ化プロピジウムの蛍光を、均等目盛でFACSscan flow cytometer(Becton and Dickinson、San Jose、CA、USA)を用いて測定した。全データはCell Quest softwareを用いて記録し、分析した。細胞周期分析では、Mod-fit softwareを用いた(Becton and Dickinson)。
【0228】
長期生存は、コロニー形成法により解析した。指数関数的に成長する黒色腫および膠芽腫細胞を6-ウェルプレートに2×102/ウェルの密度で蒔き、18時間付着させたままにした。その後、細胞を研究対象の化合物で処置し、培養してコロニー形成させた。10日後、コロニー(>50細胞のクラスターとして定義)を固定し、ローダミンBベイシックバイオレット10(ICN Biomedicals Inc.、Aurora、OH、USA)で染色した。未処置または処置したリンパ腫細胞を1細胞/ウェルで96-ウェルプレート(平底)に蒔き、培養した。10日後、コロニーを計数し、光学顕微鏡(Tentori 2001b)を用いてクローニング効率を決定した。
【0229】
TMZ、43または薬剤の組み合せに対する細胞系の化学的感受性をIC50、すなわち、コロニー形成能力を50%阻害し得る、μMで表される薬物濃度の点から評価した。IC50は、コロニー数を薬物濃度に対してプロットした回帰直線で計算した。
【0230】
In vivo研究
頭蓋内移植手順を、先に記載したように(Tentori 2002b)行った。細胞(0.03mlのRPMI-1640中104)を、0.1mlのガラスマイクロシリンジおよび使い捨て27-ゲージ針を用いて2mmの深さに前頭骨の中央(center-middle)領域を通して頭蓋内(ic)に注射した。
【0231】
マウス黒色腫B16またはリンパ腫L5178Y細胞(104)をオスB6D2F1(C57BL/6 x DBA/2)マウスにic注射した。ヒト多形神経膠芽腫SJGBM2細胞(106)を胸腺欠損のオスBALB/cマウス(nu/nu遺伝子型)にic注射した。腫瘍誘発前に、動物をケタミン(100mg/kg)およびキシラジン(5mg/kg)の0.9%NaCl溶液(10 ml/kg/ip)で麻酔した。
【0232】
治療のタイミングを選ぶために、脳における腫瘍成長の組織学的評価を腫瘍誘発の1〜5日後に行った。脳を10%リン酸緩衝ホルムアルデヒドで固定し、軸平面に沿って決断し、パラフィンに包埋した。組織学的切片(5μm厚)をヘマトキシリン-エオシンで染色し、光学顕微鏡で解析した。
【0233】
薬物毒性は、無処置マウス(5/group)に研究対象の化合物を試薬単独または組み合わせて処置することにより評価した。対照群は、媒体単独で処置した。体重を週に3回測定し、最終処置の3週間後に生き残りを記録した。毒性は、明らかに薬物に関連する死および正味の体重減少[すなわち、(最初の重量-最低重量/最初の重量)×100%]に基づいて評価した。死は、最終処置後7日以内に発生した場合には薬物に関連すると考えた。43はカリウムを含まない70mM PBSに溶かし、最大耐量を設定するために、異なる投与量(40〜200mg/kg)で静脈内(iv)に注射した。
【0234】
TMZは、ジメチル-スルホキシド(40mg/ml)に溶かし、生理食塩水(5mg/ml)で希釈し、in vivo 前臨床試験で通常用いられる投与量でip投与した(Friedman 1995; Middleton 2000;Kokkinakis 2001)。実験は、異なる投与量およびスケジュールのTMZ + 43を用いて行い、混合薬の最大耐量を決定した。43は、TMZ 投与の15分前に投与した。対照マウスは、常に薬物媒体を注射した。
【0235】
担癌マウスでは、周囲の脳組織への腫瘍の浸潤は組織学的に明らかであった誘発後2日目に処置を開始した。TMZおよびPARP阻害剤の抗癌活性は処置を分割様式にすることにより改善し得るので(Tentori 2002b)、混合薬物の最大耐量を、100mg/kg TMZ + 40 mg/kg 43の3日間の連日投与に分割した。
【0236】
マウスの死亡率を90日間観測した。メディアン生存時間(MST)を決定し、寿命の増加率(ILS)を以下のように計算した。{[処置マウスのMST(日)/対照マウスのMST(日)]-1}×100。処置群と対照群の生存曲線を比較することにより処置の有効性を評価した。
【0237】
腫瘍成長を抑制する異なる処置の能力を評価するために、脳の組織学的検査を追加の動物を用いて行い、生存分析は検討しなかった。マウスは、未処置腫瘍担癌動物のMST範囲内で選択される腫瘍誘発後の異なる時点で屠殺した。
【0238】
TMZ±43処置の有効性を、皮下(sc)に成長する黒色腫でも評価した。この目的のためにB16細胞(2.5×105)を動物の脇腹にsc接種した。
【0239】
腫瘍をカリパスで測定し、容積を以下の式に従って計算した。[(幅)2×長さ]/2。処置は、腫瘍小結節が100〜150mm3に達した誘発の6日後に開始した。黒色腫成長を、3週間3日ごとに腫瘍小結節を測定することにより観測した。
【0240】
人為的転移の発生の研究対象である薬物の影響を評価するために、B16細胞(0.02ml中2.5×105)をB6D2F1マウスの尾静脈に注射した。動物を、研究対象の薬物により、3日のスケジュールで処置した(上記参照)。腫瘍誘発の2週間後、動物を屠殺し、肺を除去し、腫瘍小結節と肺組織を区別するためにブアン溶液で固定した。転移の数を、解剖顕微鏡を用いて決定した。
【0241】
マウスに関する全手順および飼育は、国および国際的ガイドライン(European Economy Community Council Directive 86/109、OLJ318、Dec. 1, 1987およびNIH Guide for care and use of laboratory animals、1985)に従って行った。
【0242】
統計分析
生存曲線は、カプラン-マイヤー積極限推定量(Kaplan-Meier product-limit estimate)により作成し、様々な群の間の統計的差異をログランク検定により評価した(software Primer of Biostatistics、McGraw-Hill、New York、NY)。腫瘍成長または転移数の統計分析において、実験群間の有意差をt検定により評価した。Pは、両側である(software Microsoft(登録商標) excel(登録商標))。
【0243】
最初に、B16、SJGBM2およびL5178Y細胞を単独試薬として1〜25μMの43に暴露した。細胞成長を、コロニー形成法により解析し、結果は、43は多少内在性成長阻害を示し、B16黒色腫は、SJGBM2およびL5178Y細胞系と比べ、43により誘導される増殖抑制作用に対してより影響されやすかったことを示した。
【0244】
各細胞系に関し、毒性効果を持たない43の濃度(0.3〜1.2μM)を、TMZにより誘導される成長阻害を増強する能力を試験した。全腫瘍細胞系で、PARP阻害剤はTMZにより誘導される成長阻害を増大させた。B16細胞系の場合では、TMZにより誘導される成長阻害の最大増強は、0.6μMの濃度(10倍)で達成された。B16細胞では、1.2μMの濃度の43により対照に対し18±3%の成長阻害が誘導されたが、TMZを用いた複合研究は検討しなかった。SJGBM2およびL5178Y細胞系では、TMZ成長阻害作用の最大増加が1.2μM 43で観察された(各々SJGBM2で〜4倍、L5178Yで〜10倍)。SJGBM2およびL5178Y細胞系では、2.5μM 43で内在性成長阻害効果を示したため、この濃度ではTMZと関連して試験しなかった。
【0245】
B16およびSJGBM2細胞では、TMZ+43はアポトーシスを誘発することなく、主に細胞性塞栓を誘発したが、L5178Yリンパ腫細胞では、この混合薬物はアポトーシスも誘発した(データは示さず)。
【0246】
(実施例14)
10-(4-メチル-ピペラジン-1-イルメチル)-2H-7-オキサ-1,2-ジアザベンゾ[de]アントラセン-3-オン(43) + TMZの全身投与は、CNS部位に黒色腫、リンパ腫または多形神経膠芽腫を有するマウスの生存を向上させる。
【0247】
組み合わせ薬物の抗腫瘍活性を、最大耐量(TMZ 100 mg/kg/日 ip + 43 40mg/kg/day iv、3日間) で、B6D2F1マウスで皮下成長するB16黒色腫で最初に試験し、単独試薬として用いたTMZまたは43により誘発される作用と比較した。結果は、43はTMZの抗腫瘍作用を著しく向上させたが(P < 0.0001)、43単独による処置は腫瘍成長に影響を与えなかった。
【0248】
同じ薬物スケジュールを用いて血液脳関門を通過し得る43の全身投与がCNS部位で成長するB16黒色腫に対してもTMZの有効性を上昇させるか否かを調査した。脳組織の腫瘍浸潤が組織切片で明らかとされた、腫瘍誘発の2日後に薬剤処置を開始した。結果は43 + TMZの組合せにより誘導される生存時間の増加は、単独試薬としてのTMZにより誘導されるものよりも顕著に高かった(P < 0.0001)ことを示している。組み合わせ薬物で処置した群で検出された生存の上昇は、顕著な腫瘍成長の減少を伴っていた。組織学的研究により対照または43処置マウスの脳では明白かつ広範な腫瘍の浸潤が、TMZ処置マウスでは限定されているが多発性の浸潤が明らかとなったが、43 + TMZ処置動物では浸潤している黒色腫細胞はわずかしかなかった。
【0249】
PARP阻害剤である43は、B16黒色腫に対するTMZの抗転移活性も上昇させた。実際には、43 + TMZによる処置後に観察された肺転移の数は、TMZを単独試薬として用いて処置したマウスで検出されるものに比べ、著しく低かった(P =0.004)。
【0250】
43 + TMZの全身投与は、脳で成長するL5178Yリンパ腫を有するB6D2F1マウスの生存を著しく増大させた。組み合わせ薬物により誘導されるメディアン生存時間の伸びは、TMZを単独試薬として用いて誘導されるものよりも著しく高かった。
【0251】
次いで、薬物治療効果を、ヒト多形神経膠芽腫異種移植の同所モデルを用いてヌードマウスで調査した。結果は、43 + TMZの全身投与により、対象群または単独試薬で処置した動物に比べて、担癌マウスの生存を著しく長期化したことを示している。この腫瘍モデルでは、TMZは完全に効果がなかったことに留意すべきである。
【0252】
SJGBM2を注入された対照動物の顕微鏡検査により、多発的な脳への浸潤を明らかに示した。43 + TMZによる処置により、腫瘍浸潤部位の数が減少した。対照群では、全ての動物が、注射部位と離れた少なくとも2箇所の脳領域で腫瘍浸潤を示したが、混合薬物処置群では、わずかに2/7のマウスがこのパターンを示しただけであった(腫瘍細胞により浸潤された全脳領域:対照、24;43 + TMZ: 13; P= 0.0007)。さらに、対照マウスの脳は、注射部位および脳室の周囲の実質の両方で大きな腫瘤を示した。これに対し、43 + TMZ処置動物は最小の腫瘍浸潤を示した。
【0253】
(実施例16)
老化細胞mRNAの遺伝子発現の変化の測定
Population Doubling (PDL) 94で、通常の増殖培地(増殖培地)に蒔き、次いでLinskens他、Nucleic Acids Res. 23: 16: 3244〜3251頁(1995)に記載の生理条件を反映させた低血清培地に取り替えたヒト繊維芽細胞であるBJ細胞を用いて、遺伝子発現の変化を測定した。0.5%仔ウシ血清(仔ウシ血清)を補充したDMEM/199培地を用いる。細胞を13日間毎日処置する。対照細胞は、PARP阻害剤を投与するのに溶媒を用いて及び用いないで処置する。未処置の古いおよび若い対照細胞を対照用に試験する。RNAをPCT公開No. 96/13610に記載の技術に従って処置および対照細胞から調製し、ノーザンブロット法を行う。老化関連遺伝子に特異的なプローブを分析し、処置および対照細胞を比較する。結果を分析する際、比較の基礎として提供するために、遺伝子発現の最低レベルを任意に1と設定する。皮膚の年齢に関する変化に特に関連する3つの遺伝子は、コラーゲン、コラゲナーゼおよびエラスチンである。West、Arch.Derm. 130: 87〜95頁(1994)。PARP阻害剤で処置した細胞のエラスチンの発現は、対照細胞と比較して著しく増加すると予想される。エラスチン発現は、老化細胞に比較して幼若細胞では著しく高くなるはずであり、したがって、PARP阻害剤による処置は、老化細胞でエラスチン発現レベルを生じ、多くの幼若細胞で見られるものと同様のレベルに変化させるはずである。同様に、PARP阻害剤による処置により、コラゲナーゼおよびコラーゲン発現で有利な効果が見られるはずである。
【0254】
(実施例17)
老化細胞におけるタンパク質の遺伝子発現変化の測定
遺伝子発現の変化を、蒔いて、15cmのシャーレで成長させた約105 BJ細胞を用い、PDL 95〜100で測定した。増殖培地は、10%仔ウシ血清を補充したDMEM/199である。細胞は(100μg/1mLの培地)のPARP阻害剤を用いて毎日24時間処置する。WO 99/11645。細胞をリン酸緩衝溶液(PBS)で洗浄し、次いで4%パラホルムアルデヒドで5分間透過処理し(permeablized)、次いで、PBSで洗浄し、100%冷メタノールで10分間処置する。メタノールを除去し、細胞をPBSで洗浄し、次いで、10%血清で処置して非特異的抗体結合を阻止する。約1mLの適当な市販の抗体溶液(1:500希釈。Vector)を細胞に加え、混合物を1時間インキュベートする。細胞をすすぎ、PBSで3回洗浄する。二次抗体として、ビオチン標識を有するヤギ抗マウスIgG(1mL)をアルカリホスファターゼと結合したストレプトアビジンを含む1mLの溶液および1mLのNBT試薬(Vector)と共に加える。細胞を洗浄し、遺伝子発現の変化を比色分析により記録する。PARP阻害剤で処置した老化細胞中の4つの老化特異的遺伝子、すなわち、コラーゲンI、コラーゲンIII、コラゲナーゼ、およびインターフェロンガンマを観測し、結果は他の3つの遺伝子の発現レベルでは観察可能な変化はなく、インターフェロンガンマの発現の減少を示し、PARP阻害剤は老化特異的遺伝子の発現を変化させ得ることを示している。
【0255】
(実施例18)
細胞の増殖能および寿命の伸張または増加
細胞の増殖能および寿命を伸張することに関する本方法の有効性を実証するために、ヒト繊維芽細胞系(Population Doubling (PDL) 23でのW138またはPDL 71でのBJ細胞のいずれか)を解凍し、T75フラスコに蒔き、正常培地(10%仔ウシ血清添加DMEM/M199)で約1週間成長させ、その際に細胞は集密であり、したがって培養液を再分割できる。再分割時に、培地を吸引し、細胞をリン酸緩衝食塩水(PBS)ですすぎ、次いで、トリプシン処理する。細胞をCoulterカウンターで計数し、105細胞/ cm2の密度で6-ウェル組織培養プレートの10%仔ウシ血清および様々な量(0.10μM、および1mM:100Xストック溶液を含むDMEM/M199 培地から)のPARP阻害剤を添加したDMEM/199培地に蒔く。この工程を細胞が分裂を止めるようになるまで7日間毎に繰り返す。培養の約40日後には、未処置(対照)細胞は老化に達し、分裂を止める。10μM 3-ABによる細胞の処置は、細胞の寿命を伸ばすように思われる100μM 3-ABによる処置や細胞の寿命および増殖能を劇的に増大させる1mM 3-ABによる処置と比較して、ほとんど或いは全く効果をもたないように思われる。1mM 3-ABで処置した細胞は、培養60日後にもまだ分裂するであろう。
【0256】
(実施例19)
ラットにおけるPARP阻害剤の絞扼神経損傷(CCI)に対する神経保護効果
成体オスSprague-Dawleyラット、300〜350gを腹腔内50mg/kgペントバルビタールナトリウムで麻酔する。神経部分結紮は、ラットの坐骨神経の片側を曝し、5〜7mm長の神経切片を解剖し、1.0〜1.5mmで4つの緩い結紮を用いて閉じ、次いで髄腔内カテーテルを埋め込み、くも膜下槽での切開により硫酸ゲンタマイシンをフラッシュしたポリエチレン(PE-10)チューブをくも膜下腔に挿入することにより実施する。カテーテルの尾方端を穏やかに腰膨大に通し、吻端を歯科用セメントで頭蓋に埋め込まれたねじに固定し、皮膚創傷を創傷クリップで閉じる。
【0257】
放射熱に対する温熱性痛覚過敏を足引込め試験(paw-withdrawal)試験を用いて評価する。ラットの後肢の足底面の直下に置いた映写用電球からの放射熱源を備えた3mm厚のガラス板上のプラスチック製シリンダーにラットを入れる。paw-withdrawal反応時間は、放射熱刺激の開始からラットが後肢を引っ込めるまでの経過時間として定義する。
【0258】
機械誘発性知覚過敏(mechanical hyperalgesia)は、多数の四角い小孔を有する穿孔処理した金属シート製の底部を備えたケージにラットを入れることにより評価する。ケージの底から挿入した安全ピンの先でラットの後肢の足底面中央を刺した後に、足引込め(paw-withdrawal)の持続時間を記録する。
【0259】
機械誘発性異痛(Mechano-allodynia)は、ラットを前記の試験と同様のケージに入れ、ラットの後肢の足底面中央に0.07から76gの範囲にわたる曲げ力を上昇順にvon Freyフィラメントを用いて適用することにより評価する。von Freyフィラメントは、皮膚に垂直に適用し、それが曲がるまでゆっくり押圧する。応答の限界耐力は、5回の適用のうち少なくとも一つの明確なpaw-withdrawalを誘起する一連の最初のフィラメントとして定義する。
【0260】
一側性坐骨神経結紮の8日後のラットの脊髄後角内、特に、薄膜I〜IIで、偽手術ラットと比較して、両側でダークニューロン(dark neuron)が観察される。様々な投与量のPARP阻害剤をこのモデルで試験すると、CCIラットでダークニューロンおよび神経因性疼痛行動の発生率の両方を低減させることが示される。
【0261】
本発明はこのように記載されているが、本発明を様々に変化させることが可能であることは明らかであろう。このような変形は、本発明の意図および範囲から逸脱しているとは考えられず、このような変更の全てが以下の特許請求の範囲内に含まれることを意図するものである。本明細書で引用した参考文献は全て、本明細書に参照することにより援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式の化合物、または医薬として許容される塩、または水和物。
【化1】

(式中、
R1は、H、ハロゲン、アルコキシ、または低級アルキルであり、
R2は、H、ハロゲン、アルコキシ、または低級アルキルであり、
R3は、独立に、H、アミノ、ヒドロキシ、-N-N、ハロゲン置換アミノ、-O-アルキル、-O-アリール、または置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、-COR8(R8は、H、-OH、置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールである)、または-OR6もしくは-NR6R7(R6およびR7は、それぞれ独立に、水素、または置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールである)であり、
R4は、独立に、H、アミノ、ヒドロキシ、-N-N、-CO-N-N、ハロゲン置換アミノ、-O-アルキル、-O-アリール、または置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、-COR8(R8は、H、-OH、置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールである)、または-OR6もしくは-NR6R7(R6およびR7は、それぞれ独立に、水素、または置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールである)であり、
R5は、独立に、H、アミノ、ヒドロキシ、-N-N、-CO-N-N、ハロゲン置換アミノ、-O-アルキル、-O-アリール、または置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、-COR8(R8は、H、-OH、置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールである)、または-OR6もしくは-NR6R7(R6およびR7は、それぞれ独立に、水素、または置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールである)である)。
【請求項2】
式中、
R1が、H、F、Cl、メトキシ、またはメチルであり、
R2が、H、F、Cl、メトキシ、またはメチルであり、
R3が、独立に、H、アミノ、ヒドロキシ、-N-N、ハロゲン置換アミノ、-O-アルキル、-O-アリール、または置換されていてもよいアルキル、アルケニル、-COR8(R8は、H、-OH、置換されていてもよいアルキル、アルケニルである)、または-OR6もしくは-NR6R7(R6およびR7は、それぞれ独立に、水素、または置換されていてもよいアルキル、またはアルケニルである)であり、
R4が、独立に、H、アミノ、ヒドロキシ、-N-N、-CO-N-N、ハロゲン置換アミノ、-O-アルキル、-O-アリール、または置換されていてもよいアルキル、アルケニル、-COR8(R8は、H、-OH、置換されていてもよいアルキル、またはアルケニルである)、または-OR6もしくは-NR6R7(R6およびR7は、それぞれ独立に、水素、または置換されていてもよいアルキル、またはアルケニルである)であり、
R5が、独立に、H、アミノ、ヒドロキシ、-N-N、-CO-N-N、ハロゲン置換アミノ、-O-アルキル、-O-アリール、または置換されていてもよいアルキル、アルケニル、-COR8(R8は、H、-OH、置換されていてもよいアルキル、またはアルケニルである)、または-OR6もしくは-NR6R7(R6およびR7は、それぞれ独立に、水素、または置換されていてもよいアルキル、またはアルケニルである)である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
【化2】

からなる群から選択される、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
壊死またはアポトーシスによる細胞損傷または細胞死、ニューロン介在組織損傷または疾患に由来する組織損傷、虚血および再潅流傷害、および神経疾患、心血管障害、心臓バイパス手術に由来する神経組織損傷からなる群から選択される疾患または状態を治療する方法、冠状動脈バイパス手術後の神経欠損による鬱病および認知低下、関節炎、糖尿病、運動失調症、毛細血管拡張症、悪質液、複製老化を伴う骨格筋の変性疾患、炎症性腸疾患、炎症、痛風、慢性疼痛、急性疼痛、神経障害性疼痛、神経傷害、末梢神経損傷、腎機能不全、網膜虚血、敗血症性ショック、出血性ショック、多発性硬化症、細胞の寿命または増殖能に関連する疾患または障害、動物の細胞老化によって誘発されるまたは悪化する疾患または疾患状態を治療する方法であって、下記式Iの化合物、または医薬として許容される塩もしくは水和物の有効量を前記動物に投与することを含む方法。
【化3】

(式中、
R1は、H、ハロゲン、または低級アルキルであり、
R2は、H、ハロゲン、または低級アルキルであり、
R3は、独立に、H、アミノ、ヒドロキシ、-N-N、ハロゲン置換アミノ、-O-アルキル、-O-アリール、または置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、-COR8(R8は、H、-OH、置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールである)、または-OR6もしくは-NR6R7(R6およびR7は、それぞれ独立に、水素または置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールである)であり、
R4は、独立に、H、アミノ、ヒドロキシ、-N-N、-CO-N-N、ハロゲン置換アミノ、-O-アルキル、-O-アリール、または置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、-COR8(R8は、H、-OH、置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールである)、または-OR6もしくは-NR6R7(R6およびR7は、それぞれ独立に、水素、または置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールである)であり、
R5は、独立に、H、アミノ、ヒドロキシ、-N-N、-CO-N-N、ハロゲン置換アミノ、-O-アルキル、-O-アリール、または置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、-COR8(R8は、H、-OH、置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールである)、または-OR6もしくは-NR6R7(R6およびR7は、それぞれ独立に、水素、または置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールである)である。)
【請求項5】
前記神経疾患が、物理的な損傷または疾患状態に起因する末梢神経障害、外傷性脳損傷、脊髄に対する物理的障害、卒中、および脱髄疾患からなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記心血管障害が、心血管組織損傷、冠状動脈疾患、心筋梗塞、狭心症、心原性ショック、冠状動脈バイパス手術、心停止および心肺蘇生からなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記細胞老化細胞によって誘発されるまたは悪化する疾患または疾患状態が、皮膚老化、アルツハイマー病、アテローム性動脈硬化症、変形性関節症、骨粗しょう症、筋ジストロフィー、加齢性筋変性、免疫老化、およびAIDSからなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記脳虚血または再潅流傷害が、心停止および心肺蘇生後の脳損傷である、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記敗血症性ショックがエンドトキシンショックである、請求項4に記載の方法。
【請求項10】
前記腸疾患が大腸炎である、請求項4に記載の方法。
【請求項11】
前記腸疾患がクローン病である、請求項4に記載の方法。
【請求項12】
式中、
R1が、H、F、Cl、メトキシ、またはメチルであり、
R2が、H、F、Cl、メトキシ、またはメチルであり、
R3が、独立に、H、アミノ、ヒドロキシ、-N-N、ハロゲン置換アミノ、-O-アルキル、-O-アリール、または置換されていてもよいアルキル、アルケニル、-COR8(R8は、H、-OH、置換されていてもよいアルキル、アルケニルである)、または-OR6もしくは-NR6R7(R6およびR7は、それぞれ独立に、水素または置換されていてもよいアルキル、またはアルケニルである)であり、
R4が、独立に、H、アミノ、ヒドロキシ、-N-N、-CO-N-N、ハロゲン置換アミノ、-O-アルキル、-O-アリール、または置換されていてもよいアルキル、アルケニル、-COR8(R8は、H、-OH、置換されていてもよいアルキル、またはアルケニルである)、または-OR6もしくは-NR6R7(R6およびR7は、それぞれ独立に、水素、または置換されていてもよいアルキル、またはアルケニルである)であり、
R5が、独立に、H、アミノ、ヒドロキシ、-N-N、-CO-N-N、ハロゲン置換アミノ、-O-アルキル、-O-アリール、または置換されていてもよいアルキル、アルケニル、-COR8(R8は、H、-OH、置換されていてもよいアルキル、またはアルケニルである)、または-OR6もしくは-NR6R7(R6およびR7は、それぞれ独立に、水素、または置換されていてもよいアルキル、アルケニルである)である、請求項4に記載の方法。
【請求項13】
前記化合物が
【化4】

からなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項14】
動物の腫瘍細胞を放射線増感する方法であって、下記式Iの化合物、または医薬として許容される塩もしくは水和物の有効量を前記動物に投与することを含む方法。
【化5】

(式中、
R1は、H、ハロゲン、または低級アルキルであり、
R2は、H、ハロゲン、または低級アルキルであり、
R3は、独立に、H、アミノ、ヒドロキシ、-N-N、ハロゲン置換アミノ、-O-アルキル、-O-アリール、または置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、-COR8(R8は、H、-OH、置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールである)、または-OR6もしくは-NR6R7(R6およびR7は、それぞれ独立に、水素、または置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールである)であり、
R4は、独立に、H、アミノ、ヒドロキシ、-N-N、-CO-N-N、ハロゲン置換アミノ、-O-アルキル、-O-アリール、または置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、-COR8(R8は、H、-OH、置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールである)、または-OR6もしくは-NR6R7(R6およびR7は、それぞれ独立に、水素、または置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールである)であり、
R5は、独立に、H、アミノ、ヒドロキシ、-N-N、-CO-N-N、ハロゲン置換アミノ、-O-アルキル、-O-アリール、または置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、-COR8(R8は、H、-OH、置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールである)、または-OR6もしくは-NR6R7(R6およびR7は、それぞれ独立に、水素、または置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールである)である)。
【請求項15】
前記腫瘍細胞が、ACTH-産生腫瘍、急性リンパ球性白血病、急性非リンパ球性白血病、副腎皮質の癌、膀胱癌、脳癌、乳癌、子宮頸部癌、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、大腸癌、皮膚型T-細胞リンパ腫、子宮内膜癌、食道癌、ユーイング肉腫、胆嚢癌、毛様細胞性白血病、頭部および頸部癌、ホジキンリンパ腫、カポジ肉腫、腎臓癌、肝臓癌、肺癌(小細胞および/または非小細胞)、悪性腹膜滲出、悪性胸膜滲出、黒色腫、中皮腫、多発性骨髄腫、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫、骨肉腫、卵巣癌、卵巣(生殖細胞)癌、前立腺癌、膵臓癌、陰茎癌、網膜芽細胞癌、皮膚癌、軟組織肉腫、扁平上皮細胞癌、胃癌、精巣癌、甲状腺癌、栄養膜新生物、子宮癌、膣癌、外陰部癌およびウィルムス腫からなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
式中、
R1が、H、F、Cl、メトキシ、またはメチルであり、
R2が、H、F、Cl、メトキシ、またはメチルであり、
R3が、独立に、H、アミノ、ヒドロキシ、-N-N、ハロゲン置換アミノ、-O-アルキル、-O-アリール、または置換されていてもよいアルキル、アルケニル、-COR8(R8は、H、-OH、置換されていてもよいアルキル、またはアルケニルである)、または-OR6もしくは-NR6R7(R6およびR7は、それぞれ独立に、水素、または置換されていてもよいアルキル、またはアルケニルである)であり、
R4が、独立に、H、アミノ、ヒドロキシ、-N-N、-CO-N-N、ハロゲン置換アミノ、-O-アルキル、-O-アリール、または置換されていてもよいアルキル、アルケニル、-COR8(R8は、H、-OH、置換されていてもよいアルキル、またはアルケニルである)、または-OR6もしくは-NR6R7(R6およびR7は、それぞれ独立に、水素、または置換されていてもよいアルキル、またはアルケニルである)であり、
R5が、独立に、H、アミノ、ヒドロキシ、-N-N、-CO-N-N、ハロゲン置換アミノ、-O-アルキル、-O-アリール、または置換されていてもよいアルキル、アルケニル、-COR8(R8は、H、-OH、置換されていてもよいアルキル、またはアルケニルである)、または-OR6もしくは-NR6R7(R6およびR7は、それぞれ独立に、水素、または置換されていてもよいアルキル、またはアルケニルである)である、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記化合物が
【化6】

からなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
動物における動物器官の生存能力を維持する方法であって、下記式Iの化合物、または医薬として許容される塩もしくは水和物の有効量を前記動物に投与することを含む方法。
【化7】

(式中、
R1は、H、ハロゲン、または低級アルキルであり、
R2は、H、ハロゲン、または低級アルキルであり、
R3は、独立に、H、アミノ、ヒドロキシ、-N-N、ハロゲン置換アミノ、-O-アルキル、-O-アリール、または置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、-COR8(R8は、H、-OH、置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールである)、または-OR6もしくは-NR6R7(R6およびR7は、それぞれ独立に、水素、または置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールである)であり、
R4は、独立に、H、アミノ、ヒドロキシ、-N-N、-CO-N-N、ハロゲン置換アミノ、-O-アルキル、-O-アリール、または置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、-COR8(R8は、H、-OH、置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールである)、または-OR6もしくは-NR6R7(R6およびR7は、それぞれ独立に、水素、または置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールである)であり、
R5は、独立に、H、アミノ、ヒドロキシ、-N-N、-CO-N-N、ハロゲン置換アミノ、-O-アルキル、-O-アリール、または置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、-COR8(R8は、H、-OH、置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールである)、または-OR6もしくは-NR6R7(R6およびR7は、それぞれ独立に、水素、または置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールである)である。)
【請求項19】
前記生存能力が、多臓器機能不全、臓器供与、および移植から選択される群によって損なわれる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
式中、
R1が、H、F、Cl、メトキシ、またはメチルであり、
R2が、H、F、Cl、メトキシ、またはメチルであり、
R3が、独立に、H、アミノ、ヒドロキシ、-N-N、ハロゲン置換アミノ、-O-アルキル、-O-アリール、または置換されていてもよいアルキル、アルケニル、-COR8(R8は、H、-OH、置換されていてもよいアルキル、またはアルケニルである)、または-OR6もしくは-NR6R7(R6およびR7は、それぞれ独立に、水素、または置換されていてもよいアルキル、またはアルケニルである)であり、
R4が、独立に、H、アミノ、ヒドロキシ、-N-N、-CO-N-N、ハロゲン置換アミノ、-O-アルキル、-O-アリール、または置換されていてもよいアルキル、アルケニル、-COR8(R8は、H、-OH、置換されていてもよいアルキル、またはアルケニルである)、または-OR6もしくは-NR6R7(R6およびR7は、それぞれ独立に、水素、または置換されていてもよいアルキル、またはアルケニルである)であり、
R5が、独立に、H、アミノ、ヒドロキシ、-N-N、-CO-N-N、ハロゲン置換アミノ、-O-アルキル、-O-アリール、または置換されていてもよいアルキル、アルケニル、-COR8(R8は、H、-OH、置換されていてもよいアルキル、またはアルケニルである)、または-OR6もしくは-NR6R7(R6およびR7は、それぞれ独立に、水素、または置換されていてもよいアルキル、またはアルケニルである)である、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記化合物が
【化8】

からなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
次式の化合物。
【化9】

(式中、
R1は、H、ハロゲン、または低級アルキルであり、
R2は、H、ハロゲン、または低級アルキルであり、
R3は、独立に、H、アミノ、ヒドロキシ、-N-N、ハロゲン置換アミノ、-O-アルキル、-O-アリール、または置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、-COR8(R8は、H、-OH、置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールである)、または-OR6もしくは-NR6R7(R6およびR7は、それぞれ独立に、水素、または置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールである)であり、
R4は、独立に、H、アミノ、ヒドロキシ、-N-N、-CO-N-N、ハロゲン置換アミノ、-O-アルキル、-O-アリール、または置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、-COR8(R8は、H、-OH、置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールである)、または-OR6もしくは-NR6R7(R6およびR7は、それぞれ独立に、水素、または置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールである)である。)
【請求項23】
式中、
R1が、H、F、Cl、メトキシ、またはメチルであり、
R2が、H、F、Cl、メトキシ、またはメチルであり、
R3が、独立に、H、アミノ、ヒドロキシ、-N-N、ハロゲン置換アミノ、-O-アルキル、-O-アリール、または置換されていてもよいアルキル、アルケニル、-COR8(R8は、H、-OH、置換されていてもよいアルキル、またはアルケニルである)、または-OR6もしくは-NR6R7(R6およびR7は、それぞれ独立に、水素、または置換されていてもよいアルキル、またはアルケニルである)であり、
R4が、独立に、H、アミノ、ヒドロキシ、-N-N、-CO-N-N、ハロゲン置換アミノ、-O-アルキル、-O-アリール、または置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、-COR8(R8は、H、-OH、置換されていてもよいアルキル、またはアルケニルである)、または-OR6もしくは-NR6R7(R6およびR7は、それぞれ独立に、水素、または置換されていてもよいアルキル、アルケニルである)である、請求項22に記載の化合物。
【請求項24】
前記化合物が
【化10】

からなる群から選択される、請求項23に記載の化合物。
【請求項25】
壊死またはアポトーシスによる細胞損傷または細胞死、ニューロン介在組織損傷または疾患に由来する組織損傷、虚血および再潅流傷害、および神経疾患、心血管障害、心臓バイパス手術に由来する神経組織損傷からなる群から選択される疾患または状態を治療する方法、冠状動脈バイパス手術後の神経欠損による鬱病および認知低下、関節炎、糖尿病、運動失調症、毛細血管拡張症、悪質液、複製老化を伴う骨格筋の変性疾患、炎症性腸疾患、炎症、痛風、慢性疼痛、急性疼痛、神経障害性疼痛、神経傷害、末梢神経損傷、腎機能不全、網膜虚血、敗血症性ショック、出血性ショック、多発性硬化症、細胞の寿命または増殖能に関連する疾患または障害、動物の細胞老化によって誘発されるまたは悪化する疾患または疾患状態を治療する方法であって、下記式IIの化合物、の有効量を前記動物に投与することを含む方法。
【化11】

(式中、
R1は、H、ハロゲン、または低級アルキルであり、
R2は、H、ハロゲン、または低級アルキルであり、
R3は、独立に、H、アミノ、ヒドロキシ、-N-N、ハロゲン置換アミノ、-O-アルキル、-O-アリール、または置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、-COR8(R8は、H、-OH、置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールである)、または-OR6もしくは-NR6R7(R6およびR7は、それぞれ独立に、水素、または置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールである)であり、
R4は、独立に、H、アミノ、ヒドロキシ、-N-N、-CO-N-N、ハロゲン置換アミノ、-O-アルキル、-O-アリール、または置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、-COR8(R8は、H、-OH、置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールである)、または-OR6もしくは-NR6R7(R6およびR7は、それぞれ独立に、水素、または置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールである)である。)
【請求項26】
前記神経疾患が、物理的な損傷または疾患状態に起因する末梢神経障害、外傷性脳損傷、脊髄に対する物理的障害、卒中、および脱髄疾患からなる群から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記心血管障害が、心血管組織損傷、冠状動脈疾患、心筋梗塞、狭心症、心原性ショック、冠状動脈バイパス手術、心停止および心肺蘇生からなる群から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
細胞老化細胞によって誘発されるまたは悪化する疾患または疾患状態が、皮膚老化、アルツハイマー病、アテローム性動脈硬化症、変形性関節症、骨粗しょう症、筋ジストロフィー、加齢性筋変性、免疫老化、およびAIDSからなる群から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記脳虚血または再潅流傷害が、心停止および心肺蘇生後の脳損傷である、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記敗血症性ショックがエンドトキシンショックである、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
前記腸疾患が大腸炎である、請求項25に記載の方法。
【請求項32】
前記腸疾患がクローン病である、請求項25に記載の方法。
【請求項33】
式中、
R1が、H、F、Cl、メトキシ、またはメチルであり、
R2が、H、F、Cl、メトキシ、またはメチルであり、
R3が、独立に、H、アミノ、ヒドロキシ、-N-N、ハロゲン置換アミノ、-O-アルキル、-O-アリール、または置換されていてもよいアルキル、アルケニル、-COR8(R8は、H、-OH、置換されていてもよいアルキル、またはアルケニルである)、または-OR6もしくは-NR6R7(R6およびR7は、それぞれ独立に、水素、または置換されていてもよいアルキル、またはアルケニルである)であり、
R4が、独立に、H、アミノ、ヒドロキシ、-N-N、-CO-N-N、ハロゲン置換アミノ、-O-アルキル、-O-アリール、または置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、-COR8(R8は、H、-OH、置換されていてもよいアルキル、またはアルケニルである)、または-OR6もしくは-NR6R7(R6およびR7は、それぞれ独立に、水素、または置換されていてもよいアルキル、またはアルケニルである)である、請求項25に記載の方法。
【請求項34】
前記化合物が
【化12】

からなる群から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項35】
動物の腫瘍細胞を放射線増感する方法であって、下記式IIの化合物の有効量を前記動物に投与することを含む方法。
【化13】

(式中、
R1は、H、ハロゲン、または低級アルキルであり、
R2は、H、ハロゲン、または低級アルキルであり、
R3は、独立に、H、アミノ、ヒドロキシ、-N-N、ハロゲン置換アミノ、-O-アルキル、-O-アリール、または置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、-COR8(R8は、H、-OH、置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールである)、または-OR6もしくは-NR6R7(R6およびR7は、それぞれ独立に、水素、または置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールである)であり、
R4は、独立に、H、アミノ、ヒドロキシ、-N-N、-CO-N-N、ハロゲン置換アミノ、-O-アルキル、-O-アリール、または置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、-COR8(R8は、H、-OH、置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールである)、または-OR6もしくは-NR6R7(R6およびR7は、それぞれ独立に、水素、または置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールである)である。)
【請求項36】
前記腫瘍細胞が、ACTH-産生腫瘍、急性リンパ球性白血病、急性非リンパ球性白血病、副腎皮質の癌、膀胱癌、脳癌、乳癌、子宮頸部癌、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、大腸癌、皮膚型T-細胞リンパ腫、子宮内膜癌、食道癌、ユーイング肉腫、胆嚢癌、毛様細胞性白血病、頭部および頸部癌、ホジキンリンパ腫、カポジ肉腫、腎臓癌、肝臓癌、肺癌(小細胞および/または非小細胞)、悪性腹膜滲出、悪性胸膜滲出、黒色腫、中皮腫、多発性骨髄腫、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫、骨肉腫、卵巣癌、卵巣(生殖細胞)癌、前立腺癌、膵臓癌、陰茎癌、網膜芽細胞癌、皮膚癌、軟組織肉腫、扁平上皮細胞癌、胃癌、精巣癌、甲状腺癌、栄養膜新生物、子宮癌、膣癌、外陰部癌およびウィルムス腫からなる群から選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
式中、
R1が、H、F、Cl、メトキシ、またはメチルであり、
R2が、H、F、Cl、メトキシ、またはメチルであり、
R3が、独立に、H、アミノ、ヒドロキシ、-N-N、ハロゲン置換アミノ、-O-アルキル、-O-アリール、または置換されていてもよいアルキル、アルケニル、-COR8(R8は、H、-OH、置換されていてもよいアルキル、またはアルケニルである)、または-OR6もしくは-NR6R7(R6およびR7は、それぞれ独立に、水素、または置換されていてもよいアルキル、またはアルケニルである)であり、
R4が、独立に、H、アミノ、ヒドロキシ、-N-N、-CO-N-N、ハロゲン置換アミノ、-O-アルキル、-O-アリール、または置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、-COR8(R8は、H、-OH、置換されていてもよいアルキル、またはアルケニルである)、または-OR6もしくは-NR6R7(R6およびR7は、それぞれ独立に、水素、または置換されていてもよいアルキル、またはアルケニルである)である、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記化合物が
【化14】

からなる群から選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
動物における動物器官の生存能力を維持する方法であって、下記式IIの化合物の有効量を前記動物に投与することを含む方法。
【化15】

(式中、
R1は、H、ハロゲン、または低級アルキルであり、
R2は、H、ハロゲン、または低級アルキルであり、
R3は、独立に、H、アミノ、ヒドロキシ、-N-N、ハロゲン置換アミノ、-O-アルキル、-O-アリール、または置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、-COR8(R8は、H、-OH、置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールである)、または-OR6もしくは-NR6R7(R6およびR7は、それぞれ独立に、水素、または置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールである)であり、
R4は、独立に、H、アミノ、ヒドロキシ、-N-N、-CO-N-N、ハロゲン置換アミノ、-O-アルキル、-O-アリール、または置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、-COR8(R8は、H、-OH、置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールである)、または-OR6もしくは-NR6R7(R6およびR7は、それぞれ独立に、水素、または置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールである)である。)
【請求項40】
前記生存能力が、多臓器機能不全、臓器供与、および移植から選択される群によって損なわれる、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
式中、
R1が、H、F、Cl、メトキシ、またはメチルであり、
R2が、H、F、Cl、メトキシ、またはメチルであり、
R3が、独立に、H、アミノ、ヒドロキシ、-N-N、ハロゲン置換アミノ、-O-アルキル、-O-アリール、または置換されていてもよいアルキル、アルケニル、-COR8(R8は、H、-OH、置換されていてもよいアルキル、またはアルケニルである)、または-OR6もしくは-NR6R7(R6およびR7は、それぞれ独立に、水素、または置換されていてもよいアルキル、またはアルケニルである)であり、
R4が、独立に、H、アミノ、ヒドロキシ、-N-N、-CO-N-N、ハロゲン置換アミノ、-O-アルキル、-O-アリール、または置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、-COR8(R8は、H、-OH、置換されていてもよいアルキル、またはアルケニルである)、または-OR6もしくは-NR6R7(R6およびR7は、それぞれ独立に、水素、または置換されていてもよいアルキル、またはアルケニルである)である、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記化合物が
【化16】

からなる群から選択される、請求項39に記載の方法。
【請求項43】
次の化合物
【化17A】

【化17B】

からなる群から選択される化合物。
【請求項44】
壊死またはアポトーシスによる細胞損傷または細胞死、ニューロン介在組織損傷または疾患に由来する組織損傷、虚血および再潅流傷害、および神経疾患、心血管障害、心臓バイパス手術に由来する神経組織損傷からなる群から選択される疾患または状態を治療する方法、冠状動脈バイパス手術後の神経欠損による鬱病および認知低下、関節炎、糖尿病、運動失調症、毛細血管拡張症、悪質液、複製老化を伴う骨格筋の変性疾患、炎症性腸疾患、炎症、痛風、慢性疼痛、急性疼痛、神経障害性疼痛、神経傷害、末梢神経損傷、腎機能不全、網膜虚血、敗血症性ショック、出血性ショック、多発性硬化症、細胞の寿命または増殖能に関連する疾患または障害、動物の細胞老化によって誘発されるまたは悪化する疾患または疾患状態を治療する方法であって、請求項43に記載の化合物の有効量を前記動物に投与することを含む方法。
【請求項45】
前記神経疾患が、物理的な損傷または疾患状態に起因する末梢神経障害、外傷性脳損傷、脊髄に対する物理的障害、卒中、および脱髄疾患からなる群から選択される、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記心血管障害が、心血管組織損傷、冠状動脈疾患、心筋梗塞、狭心症、心原性ショック、冠状動脈バイパス手術、心停止および心肺蘇生からなる群から選択される、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
前記細胞老化細胞によって誘発されるまたは悪化する疾患または疾患状態が、皮膚老化、アルツハイマー病、アテローム性動脈硬化症、変形性関節症、骨粗しょう症、筋ジストロフィー、加齢性筋変性、免疫老化、およびAIDSからなる群から選択される、請求項44に記載の方法。
【請求項48】
前記脳虚血または再潅流傷害が、心停止および心肺蘇生後の脳損傷である、請求項44に記載の方法。
【請求項49】
前記敗血症性ショックがエンドトキシンショックである、請求項44に記載の方法。
【請求項50】
前記腸疾患が大腸炎である、請求項44に記載の方法。
【請求項51】
前記腸疾患がクローン病である、請求項44に記載の方法。
【請求項52】
動物の腫瘍細胞を放射線増感する方法であって、請求項43に記載の化合物の有効量を前記動物に投与することを含む方法。
【請求項53】
前記腫瘍細胞が、ACTH-産生腫瘍、急性リンパ球性白血病、急性非リンパ球性白血病、副腎皮質の癌、膀胱癌、脳癌、乳癌、子宮頸部癌、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、大腸癌、皮膚型T-細胞リンパ腫、子宮内膜癌、食道癌、ユーイング肉腫、胆嚢癌、毛様細胞性白血病、頭部および頸部癌、ホジキンリンパ腫、カポジ肉腫、腎臓癌、肝臓癌、肺癌(小細胞および/または非小細胞)、悪性腹膜滲出、悪性胸膜滲出、黒色腫、中皮腫、多発性骨髄腫、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫、骨肉腫、卵巣癌、卵巣(生殖細胞)癌、前立腺癌、膵臓癌、陰茎癌、網膜芽細胞癌、皮膚癌、軟組織肉腫、扁平上皮細胞癌、胃癌、精巣癌、甲状腺癌、栄養膜新生物、子宮癌、膣癌、外陰部癌およびウィルムス腫からなる群から選択される、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
動物における動物器官の生存能力を維持する方法であって、請求項43に記載の化合物の有効量を前記動物に投与することを含む方法。
【請求項55】
前記生存能力が、多臓器機能不全、臓器供与、および移植から選択される群によって損なわれる、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
哺乳動物の癌を治療する方法であって、前記哺乳動物にテモゾルイミドおよび本発明化合物の有効量を投与することを含む方法。
【請求項57】
前記癌が、黒色腫、リンパ腫、および多形性神経膠芽細胞腫からなる群から選択される、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
治療上有効な量の本発明化合物、および医薬として許容される担体を含む医薬組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2011−26347(P2011−26347A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−248858(P2010−248858)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【分割の表示】特願2006−533422(P2006−533422)の分割
【原出願日】平成16年5月26日(2004.5.26)
【出願人】(509306269)エーザイ インコーポレーテッド (3)
【Fターム(参考)】