PARP活性のインヒビター及びその使用
本発明は、マクロヒストンH2AのC-末端非-ヒストンドメインから得られるアミノ酸配列を含む、核酵素ポリ(アデノシン5'-ジホスホ-リボース)ポリメラーゼである、時には、「PARS」又はポリ(ADP-リボース)シンテターゼと称される、「ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ」又は「PARP」のインヒビターに関する。特に具体的には、本発明は、ネクローシス又はアポトーシスに起因する細胞損傷又は細胞死から起こる組織損傷、虚血及び再潅流傷害から起こる神経組織損傷、神経疾患及び神経変性疾患を治療するための;血管性卒中を予防又は治療するための;心血管疾患を治療又は予防するための;他の症状/又は疾患、例えば加齢による黄斑変性症、AIDS、免疫老化疾患、関節炎、アテローム性動脈硬化症、悪液質、癌、細胞老化に関連する骨格筋の変性疾患、糖尿病、頭部外傷、免疫老化、炎症性疾患、筋ジストロフィー、変形性関節症、骨粗鬆症、慢性及び/又は急性疼痛、腎不全、網膜虚血、敗血性ショック、皮膚加齢を治療するための;細胞寿命及び増殖能力を拡げるために;老化細胞の遺伝子発現を変更するための;あるいは低酸素腫瘍細胞に放射線を増感させるための、PARPインヒビターの使用に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸酵素ポリ(アデノシン5'-ジホスホ-リボース)ポリメラーゼ[すなわち「ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ」又は「PARP」、それらは時には、ポリ(ADP-リボース)シンテターゼとも称される]の新たなインヒビターに関する。より具体的には、本発明は、ネクローシス又はアポトーシスに起因する細胞損傷又は細胞死から起こる組織損傷、虚血及び再潅流傷害から起こる神経組織損傷、神経疾患及び神経変性疾患を予防及び/又は治療するための;血管性卒中を予防又は治療するための;心臓疾患を予防又は治療するための;加齢による黄斑変性症、AIDS及びその他の免疫老化疾患、関節炎、アテローム性動脈硬化症、悪液質、癌、細胞老化に関連する骨格筋の変性疾患、糖尿病、頭部外傷、免疫老化、炎症性腸疾患(例えば、大腸炎及びクローン病)、筋ジストロフィー、変形性関節症、骨粗鬆症、慢性及び急性疼痛(例えば、神経障害性の痛み)、腎不全、網膜虚血、敗血性ショック(内毒素性ショック)、及び皮膚加齢を治療するための;細胞寿命及び増殖能力を拡げるための;老化細胞の遺伝子発現を変更するための;あるいは低酸素腫瘍細胞に放射線を増感させるための、PARPインヒビターの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(「PARP」)は、筋肉、心臓及び脳の細胞を含む様々な臓器の細胞の核に存在する酵素である。PARPは、DNAのストランドの修復に生理的役割を果たしている。損傷されたDNA断片によって一旦活性化されると、例えば、化学療法、イオン化放射線、酸素無しラジカル、又は酸化窒素(NO)への曝露の後では、PARPは、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)からのADP-リボース単位の、核受容体タンパク質への転移を触媒し、タンパク質-結合型直線及び分岐状ホモ-ADP-リボースポリマーの形成の原因である。PARPの活性化は、ヒストン、トポイソメラーゼ、DNA及びRNAポリメラーゼ、DNAリガーゼ、Ca2+-及びMa2+-依存型エンドヌクレアーゼ、及びPARP自体を含む様々な核タンパク質への最大100 ADP-リボースの結合を生じる。PARPの機能の正確な範囲は十分に確立されていないが、この酵素は、DNA修復を亢進し、DNAを完全な状態で維持する点で役割を果たすと考えられる。
【0003】
しかしながら、主な細胞ストレスの間に、PARPの広い活性化は、エネルギー貯蔵の枯渇による細胞損傷又は細胞死を急激にもたらすことができる。ATPの4つの分子は、再生されたNAD(ADP-リボーズのソース)のすべての分子について消費される。従って、NAD、すなわちPARPの基質は、大規模なPARP活性化によって枯渇し、NADを再合成するための取り組みにおいて、ATPも枯渇されることがある。
【0004】
PARP活性化は、当該酵素のインヒビターのようなインヒビターの能力に比例して皮質培養物(ZHANG et al, Science, vol.263, p:687-89, 1994)、及び海馬スライス(WALLIS et at, NeuroReport, vol.5(3), p:245-48, 1993)における毒性を抑制するための、PARPインヒビターの使用によって明らかなように、NMDA-及びNO-誘導神経毒性において重要な役割を果たす、ことが報告されている。よって、神経変性疾患及び頭部外傷の治療におけるPARPインヒビターの潜在的な役割は、知られている。しかしながら、研究は、脳虚血(ENDRES et al, J. Cereb. Blood Flow Metabol, vol.17, p:1143-51, 1997)及び外傷的脳損傷 (WALLIS et al, Brain Res., vol.710, p:169-77, 1996) におけるその有益な効果の正確なメカニズムを正確に指摘し続けている。
【0005】
PARPインヒビターは、加えて、心臓病を治療するために有用である。虚血は、身体の一部分における酸素及びグルコースの欠乏であり、その部位に供給する血管の閉塞、又は大量出血によって起こり得る。2つの重度の形態、すなわち心臓麻痺及び卒中は、先進国世界での主な死因である。細胞死は直接的に生じ、問題の部位が再潅流されたときにも生じる。PARPインヒビターの単回注入は、ウサギの心臓又は骨格筋の虚血及び再潅流によって起こる閉塞サイズを小さくすることが証明されている。これらの研究では、閉塞前の1分又は再潅流前の1分のいずれかのPARPインヒビター、3-アミノ-ベンザミド (10 mg/kg) の単回注入は、心臓の閉塞サイズを同様に減少させた(32〜42%)。別のPARPインヒビター、1,5-ジヒドロキシイソキノリン (1 mg/kg) は、匹敵する程度で閉塞サイズを減少させた(38〜48%; THIEMERMANN et al, Proc. Natl. Acad. Sci USA, vol.94, p:679-83, 1997) 。この発見は、PARPインヒビターが先の虚血心臓又は骨格筋組織を救うことができるかもしれないことを示唆している。現在、PARPインヒビターは、虚血/再潅流損傷を治療するために開発されている(ZHANG, The Prospect for Improved Medicines, Ashley Publications Ltd, 1999)。
【0006】
PARP活性化はまた、卒中、アルツハイマー病及びパーキンソン病のような病的症状に関与する、(NMDA受容体刺激による)グルタミン酸塩、反応性酸素中間体、アミロイドベータ-タンパク質、N-メチル-4-フェニル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン(MPTP)、及びその活性代謝物であるN-メチル-4-フェニルピリジン(MPP+)による神経毒傷害に次いで起こる損傷兆候を提供することが明らかになっている(ZHANG et al, J. Neurochem., vol.65(3), p: 1411-14, 1995)。他の研究は、in vitro及びMPTP神経毒性における小脳顆粒のPARP活性化の役割を研究し続けた(COSI et al, Ann. N. Y. Acad ScL, vol.825, p:366-79, 1997; COSI et al, Brain Res., vol.729, p:264-69, 1996)。
【0007】
卒中及び他の神経変性プロセスに次ぐ神経損傷は、N-メチル-D-アスパラギン酸塩(NMDA)受容体及び他のサブタイプ受容体に対して作用する、刺激的な神経伝達物質グルタミン酸塩の大量放出から起こる結果であると考えられる。グルタミン酸塩は、中枢神経系(CNS)の支配的な刺激的神経伝達物質として働く。神経は、卒中又は心臓麻痺のような虚血脳傷害の間に起こることがある、酸素が欠乏したときに大量にグルタミン酸塩を放出する。次にグルタミン酸塩の過剰な放出は、N-メチル-D-アスパラギン酸塩(NMDA)、AMPA、カイニン酸及びMGR受容体の過剰-刺激(刺激的毒性)を起こす。グルタミン酸塩は、これらの受容体、これらの細胞膜を越えてイオンの流れを可能にする受容体オープンでのイオンチャネル、例えば細胞へのCa2+及びNa+、及び細胞からのK+、に結合する。これのイオンの流れ、特に、Ca2+の流入は、神経の過剰刺激を起こす。過剰-刺激神経は、より多くのグルタミン酸塩を分泌し、プロテアーゼ、リパーゼ及び遊離のラジカルの産生によって最後には細胞損傷又は細胞死を起こす、フィードバックループ又はドミノ効果を生じる。グルタミン酸塩の過剰活性化は、癲癇、卒中、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、ハンチントン病、統合失調症、慢性疼痛、虚血、並びに低酸素症、低血糖症、虚血、外傷及び神経傷害に次ぐ神経喪失を含む様々な神経疾患及び症状に関連している。近年の研究はまた、強迫疾患、特に薬物依存、のためのグルタミン酸作動性根拠を前進させている。グルタミン酸受容体アンタゴニストが血管性卒中に次ぐ神経損傷を遮断するという証拠は、多くの動物種、及びグルタミン酸塩又はNMDAで処理した脳皮質培養物における発見を含む(DAWSON et al, H. Hunt Batjer ed, p:319-25, 1997)。NMDA、AMPA、カイニン酸及びMGR受容体を遮断することによって刺激性毒性を抑制する試みは、各受容体がグルタミン酸塩が結合することがある複数の部位を有するので、困難であることが判明した。受容体を遮断する点で効果的である組成物の多くは、動物に対して毒性でもある。そういうわけで、グルタミン酸異常に対して効果的な治療は知られていない。
【0008】
NMDA受容体の刺激は、次に、酸化窒素(NO)の形成を引き起こし、神経毒性をより直接的に仲介する、酵素神経酸化窒素レダクターゼ(NNOS)を活性化する。NMDA神経毒性に対する保護は、NOSインヒビターを用いる治療に従って起こった(DAWSON et al, Proc. Natl. Acad. Sci USA, vol.88, p:6368-71, 1991; DAWSON et al, J. Neuroscl, vol.l3(6), p:2651-61, 1993)。NMDA神経毒性に対する保護は、NNOSの標的破壊を有するマウス由来の皮質培養物でも生じ得る(DAWSON et al, J. Neuroscl, vol.l6(8), p:2479-87, 1996)。
【0009】
血管卒中に次ぐ神経損傷は、NOSインヒビターで処置された動物又はNNOS遺伝子破壊を有するマウスにおいて顕著に減少することが知られている(IADECOLA, Trends Neuroscl, vol.20(3), p:132-39, 1997; HUANG et al, Science, vol.265, p:1883-85, 1994; BECKMAN et al, Biochem. Soc. Trans., vol.21, p:330-34, 1993)。NO又はペルオキシニトリルのいずれかは、PARPを活性化するDNA損傷を引き起こし得る。このことについての更なる支持は、SZABO等において提供される (Proc. Natl. Acad. Sci USA, vol.93, p: 1753-58, 1996) 。
【0010】
PARPインヒビターはDNA修復に一般的に影響を及ぼすことも知られている。CRISTOVAO等 (Terato., Carcino., and Muta., vol.16, p:219-27, 1996) は、PARPの強力なインヒビターである3-アミノベンズアミドの存在下及び非存在下で、DNA鎖切断に与える過酸化水素及びガンマ-放射線の影響を議論している。CRISTOVAO等は、過酸化水素で処理した白血球におけるDNA鎖切断のPARP-依存的回復を観察した。
【0011】
PARPインヒビターが、炎症性症状、例えば、炎症性腸疾患(SOUTHAN et al, Br. J. Pharm., vol.117, p:619-32, 1996; SZABO et al, J. Biol. Chem., vol.272, p:9030-36, 1997)、又は関節炎(SZABO et al, Portland Press Proc, vol.15, p:280-281, 1998; SZABO, Eur. J. Biochem., vol.350(1), p:1-19, 1998; SZABO et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, vol.95(7), p:3667-72, 1998; SZABO et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, vol.93, p:1753-58, 1996; BAUER et al, Intl. J. Oncol, vol.8, p:239-52, 1996; HUGHES et al, J. Immuno., vol.153, p:3319-25, 1994)を治療するために有用であるという証拠も存在する。従って、SALZMAN等(Japanese J. Pharm., vol.75 (Supp. I), p:15, 1997)は、PARP活性の特定のインヒビターである3-アミノベンズアミドが、炎症性反応を減少させ、ハプテントリニトロベンゼンスルホン酸の50%エタノール溶液の管腔内投与によって引き起こされた大腸炎に罹ったラットの末梢性結腸の形態及びエネルギー性状態を元に戻した、ことを明らかにしている。別の例としては、SZABO等(Japanese J Pharm., vol.75 (Supp. I), p:102, 1997)は、コラーゲン-誘導関節炎を予防又は治療するPARPインヒビターの能力を考察している。
【0012】
更に、PARPインヒビターは、糖尿病を治療するために有用であると考えられ、感受性のある個体においてインシュリン-依存型糖尿病の発症を抑制するために臨床レベルで研究されてきた(SALDEEN et al, Mol Cellular Endocrinol, vol.139, p: 99-107, 1998)。膵臓ランゲルハンス島細胞を崩壊するストレプトゾトシン及びアロキサンのような毒素によって引き起こるI型糖尿病のモデルでは、PARP欠損ノックアウトマウスが細胞破壊及び糖尿病発症に抵抗性であることが明らかになっている(PIEPER et al, Trends Pharmacolog. Sci, vol.20, p:171-181, 1999; BURKART et al, Nature Medicine, vol.5, p:314-319, 1999)。ニコチンアミド、弱PARPインヒビター及びフリーラジカルスキャベンジャーの投与は、自発的な自己免疫糖尿病モデル、非-肥満の糖尿病マウスにおいて糖尿病の発症を抑制する(PIEPER et al, 1999, 前掲)。従って、強力かつ特定のPARPインヒビターは、糖尿病-予防治療法として有用であろう。
【0013】
更になお、PARPインヒビターは、内毒素性ショック又は敗血症性ショックを治療するために有用であることが明らかになっている(ZINGARELLI et al, Shock, vol.5, p:258-64, 1996; CUZZOCREA, Brit. J. Pharm., vol.122, p:493-503, 1997)。ZINGARELLI等は、ポリ(ADPリボース)シンテターゼによって誘発されるDNA修復サイクルの阻害は、内毒素性ショックにおける血管性障害に対して保護効果を有する、ことを示唆している。ZINGARELLI等は、ニコチンアミドが内毒素性ショックにおける遅延型NO-介在性血管性障害を保護することを見出した。ZINGARELLI等はまた、ニコチンアミドの作用が、ポリ(ADP-リボース)シンテターゼによって誘発される、エネルギー-消費DNA修復サイクルのNO-介在活性化の阻害に関連することがある、ことを見出した。
【0014】
PARPインヒビターのために他に知られている使用は、癌を治療することである。事実、この細胞性ADP-リボース転移プロセスは、放射線治療又は化学療法によって起こるDNA損傷に対する反応におけるDNA鎖切断の修復と関連しているので、PARP活性は、様々な種類の癌治療に対して頻繁に発症する抵抗性の原因となり得る。結果的に、PARPの阻害は、細胞内DNA修復を遅らせ、癌治療の抗腫瘍効果を亢進することがある。実際に、in vitro及びin vivoのデータは、多くのPARPインヒビターが、電離放射線(米国特許第5,032,617号明細書; 同第5,215,738号明細書; 同第5,041,653号明細書; 同第5,177,075号明細書)又は細胞毒、例えばアルキル化剤(WELTIN et al, Oncol. Res., vol.6(9), p:399-403, 1994)の効果を可能にすることを示している。従って、PARP酵素のインヒビターは、付加的な癌化学療法剤として有用である。
【0015】
PARPインヒビターのための更に別の使用は、末梢神経損傷、及び神経障害性の痛みとして知られている結果的な病的疼痛症候群の治療である。例えば、一般的な坐骨神経の慢性収縮性損傷(CCI)によって起こるものであり、そこでは、細胞質及び核質の血色素増加によって特徴付けられる脊髄後角の経シナプス変化(いわゆる「ダーク」ニューロン)が起こっている(MAO et al, Pain, vol.72, p:355-366, 1997)。
【0016】
PARPインヒビターはまた、皮膚加齢(米国特許第5,589,483号明細書)、アルツハイマー病、アテローム性動脈硬化症、変形性関節症、骨粗鬆症、筋ジストロフィー、複製老化を含む骨格筋の変性疾患、加齢による黄斑変性症、免疫老化、AIDS及び他の免疫老化疾患のような疾患の治療を含む細胞の寿命及び増殖性能を拡げるために;並びに老化細胞の遺伝子発現を変更するために使用されていきた。
【0017】
膨大なPARPインヒビターが記載されてきた。例えば、BANASIK等 (J Biol. Chem., vol.267(3), p: 1569-75, 1992) は、100超の化合物のPARP-阻害活性を試験し、それらのほとんどは、4-アミノ-1,8-ナフタルイミド、6(5H)-フェナンスリドン、2-ニトロ-6(5H)-フェナンスリドン、及び1,5-ジヒドロキシイソキノリンであった。GRIFFIN等は、あるベンズアミド化合物(Anti-Cancer Drug Design, vol.10, p:507-514, 1995; 米国特許第5,756,510号明細書)、ベンズイミダゾール化合物 (WO 97/04771) 及びキナロジノン化合物 (WO 98/33802) のPARP-阻害活性を報告した。SUTO等は、あるジヒドロイソキノリン化合物によるPARP阻害を報告した(Anti-Cancer Drug Design, vol.7, p: 107-117, 1991)。GRIFFIN等は、キナゾリン類の他のPARPインヒビターを報告している(J Med. Chem., vol.41, p:5247-5256, 1998)。最後に、WO 99/11622、WO 99/11623、WO 99/11624、WO 99/11628、WO 99/11644、WO 99/11645及びWO 99/11649も、様々なPARP-阻害化合物を記載している。
【0018】
しかしながら、上記の方法におけるこれらのPARPインヒビターを用いるアプローチは、効果が限定されていた。例えば、周知のPARPインヒビターの中には副作用が観察されたものもあった(MLAM et al., Science, vol.223, p:589-91, 1984)。特に、PARPインヒビターである3-アミノベンズアミド及びベンズアミドは、PARPの作用を阻害するだけでなく、細胞生存、グルコース代謝及びDNA合成に影響を与えることが明らかとなった。従って、これらのPARPインヒビターの有用性は、更なる代謝的効果を生じることなく酵素を阻害するだろう用量を見つける難しさによって厳しく制限されることがある、と結論付けられた。
【0019】
従って、より特異的にPARP活性を阻害する化合物、これらの化合物を含む組成物、及び当該化合物を利用する方法の必要性、ここで、当該化合物は、PARP活性を阻害し、及び本明細書で考察された疾患及び症状を治療することに関して、より少ない副作用を有するより強力かつ信頼性のある効果を生じる、が依然として存在する。
【0020】
マクロヒストンH2A1及びマクロヒストンH2A2は、H2Aと高い配列相同性を有するN-末端領域を有する特に不可解なヒストンであり、タンパク質(25 kDa)の約3分の2を含む広域の非ヒストンC-末端テールを含む。ヒトゲノムは、マクロヒストンH2Aをコードする2つの遺伝子を含む。マクロH2A1遺伝子は、選択的スプライシングによって作製される2つのサブタイプMACR0H2A1.1及びMACROH2A1.2をコードする。第2の遺伝子は、マクロH2A2をコードする(CHADWICK and WILLARD, Human. Mol. Genet, vol.10, p:1101-1113, 2001)。これらのタンパク質は、雌の哺乳動物における不活性なX染色体(Xi)のようなヘテロクロマチンに豊富に存在し(COSTANZI and PEHRSON5 Nature, vol.393, p:599-601, 1998)、老化及び静止細胞における別個の異質染色質遺伝子座であるようである(ZHANG et al, Dev. Cell, vol.8, p:19-30, 2005; GRIGORYEV et al, J. Cell Sci, vol.117, p:6153-6162, 2004)。マクロH2Aは、Xi及びバー小体と一致し(COSTANZI and PEHRSON, 前掲, 1998)、マクロクロマチン体(MCB)と称される明確な核小体として雌の細胞に高い割合で存在する。マクロH2AのC-末端領域は、「マクロドメイン」と称されるドメインを含み、これは、他に関連しない多数のタンパク質において単独で又は複数のコピーで見出され(PEHRSON and FUJI, Nuc. Acids Res., vol.26, p:2837-2849, 1998)、マクロH2A MCB形成のために重要である(CHADWICK et al, Nuc. Acids Res., vol.29(13), p:2699-2705, 2001)。このマクロドメインは、ADPリボース誘導体に作用するホスホエステラーゼのスーパーファミリーを定義することが示唆されている(ALLEN et al., J. MoI Biol, vol.330, p:503-511, 2003)。近年、KUST ATSCHER等 (Nat. Struct. MoI Biol, vol.12(7), p:624-5, 2005) は、マクロH2A1.1が、モノマー性ADP-リボース及びO-アセチル-ADP-リボース(NAD代謝物)に結合することを明らかにしている。筆者は、O-アセチル-ADP-リボース結合のための重要な残基として、Phe348、Asp203、Gly224及びGly314を定義する。それにもかかわらず、特定のマクロH2A機能は依然として知られていない。
【発明の開示】
【0021】
発明の概要
本発明の核酵素ポリ(アデノシン5'-ジホスホ-リボース)ポリメラーゼであるポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)のインヒビターは、ホスホエステラーゼ活性を有し、場合により、少なくとも1つの非相同配列に融合された及び/又は結合された、マクロヒストンH2AのC-末端非-ヒストンドメインから得られるアミノ酸配列を有する。
【0022】
本明細書で使用される「ホスホエステラーゼ活性」は、ホスホジエステル化合物の2つのエステル結合の1つの加水分解の触媒反応を意味する。
【0023】
別の実施態様では、本発明の組成物は、(i)ホスホエステラーゼ活性を有し、場合により、少なくとも1つの非相同配列に融合された及び/又は結合された、マクロヒストンH2AのC-末端非-ヒストンドメインから得られるアミノ酸配列を含む、核酵素ポリ(アデノシン5'-ジホスホ-リボース)ポリメラーゼであるポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)のインヒビター、それをコードする核酸、又は当該核酸を含むベクター、並びに(ii)薬学的に許容されるビヒクル、を含む。
【0024】
更なる実施態様では、PARP活性化と関連する疾患に罹った対象の予防的又は治療的処置の方法は、以下のステップ:
(i)ホスホエステラーゼ活性を有し、場合により、少なくとも1つの非相同配列に融合された及び/又は結合された、マクロヒストンH2AのC-末端非-ヒストンドメインから得られるアミノ酸配列を含む、核酵素ポリ(アデノシン5'-ジホスホ-リボース)ポリメラーゼであるポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)のインヒビター、それをコードする核酸、又は当該核酸を含むベクター、並びに(ii)薬学的に許容されるビヒクルを含む組成物の有効量を当該対象に投与すること、を含む。
【0025】
詳細な説明
本発明者らは、マクロヒストンH2AがそのC-末端非-ヒストンドメインによってPARP-1に特異的に結合し、その結果、そのマクロドメインのホスホエステラーゼ活性によってPARP-1活性を抑制することができることを発見した。
【0026】
本発明は、核酵素ポリ(アデニン5'-ジホスホ-リボース)ポリメラーゼであるポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)を阻害する新規のツール、及びPARP活性化関連疾患を治療及び/又は抑制するための方法を提供する。
【0027】
従って、1つの局面では、本発明は、ホスホエステラーゼ活性を有し、場合により、少なくとも1つの非相同配列に融合された及び/又は結合された、マクロヒストンH2AのC-末端非-ヒストンドメインから得られるアミノ酸配列を含む、核酵素ポリ(アデノシン5'-ジホスホ-リボース)ポリメラーゼであるポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)のインヒビターに関する。
【0028】
有利なことには、上記インヒビターは、合成又は組換えポリペプチドである。
【0029】
本明細書で用いる用語「マクロヒストンH2A」は、大きなC-末端非-ヒストンドメインを有する珍しいヒストンH2A変異体に関する(レビューとして、PERCHE et al., Med. Set, vol.19(11), p:1137-45, 2003を参照)。実際に、かかるC-末端非-ヒストンドメインを有する3つのヒトマクロヒストンH2Aが同定された:単一遺伝子から選択的スプライシングによって作製されたマクロH2A1.1及びマクロH2A1.2、並びにマクロH2A2。
【0030】
本明細書で用いる用語「C-末端非-ヒストンドメイン」は、ヒストンH2Aと相同性を有しないマクロヒストンH2Aの大きなC-末端部位に関する。当該非-ヒストンドメインは、簡易な配列分析によって当業者により同定され得る。例えば、当該非-ヒストンドメインは、ヒトマクロH2A1.1(配列番号1)の残基121〜369、ヒトマクロH2A1.2(配列番号2)の残基121〜371、及びヒトマクロH2A2(配列番号3)の残基121〜372に相当する。
【0031】
有利なことに、マクロヒストンH2AのC-末端非-ヒストンドメインは、マクロH2A1.1、マクロH2A1.2及びマクロH2A2ヒストンのC-末端非-ヒストンドメインを含む群より選ばれ、好ましくは、ヒトマクロヒストンH2A1.1、マクロヒストンH2A1.2及びマクロヒストンH2A2のC-末端非-ヒストンドメインである。好ましくは、当該C-末端非-ヒストンドメインは、マクロH2A1.1のC-末端非-ヒストンドメインに相当する。
【0032】
本明細書で用いる「非相同配列」は、マクロH2A1.1、マクロH2A1.2及びマクロH2A2のようなマクロヒストンH2A変異体から得られない任意のアミノ酸配列に関する。この非相同配列は、例えば、外側の媒体から細胞内媒体への本発明のインヒビターの浸透を促進し、細胞の核内にかなり特異的に浸透させる、アミノ酸配列からなることができる。かかるアミノ酸配列は、当業者には周知であり、かかるアミノ酸の例は、EP 1512696、WO 02/10201、EP 15226183及びWO 2004/069279に記載されている。この非相同配列は、例えば、細菌からのインヒビターの精製を促進することもできる。かかるアミノ酸配列はまた、当業者に周知であり、かかるアミノ酸配列の例は、Hisタグ、GSTタンパク質、FLAGタグ、及びHAタグを含む。
【0033】
ヒトマクロH2A1.1 (配列番号1のアミノ酸121〜367)、ヒトマクロH2A1.2 (配列番号2のアミノ酸121〜371)、及びヒトマクロH2A2 (配列番号3のアミノ酸121〜372) のC-末端非ヒストンドメインを含む群より選ばれるマクロヒストンH2AのC-末端非ヒストンドメイン「から得られる」アミノ酸配列、又はその「誘導体」は、当該C-末端非-ヒストンドメイン又はその断片と、60%超、例えば、70%超又は80%超、好ましくは85%超、最も好ましくは90%超、及び有利には95%超の同一性を有するアミノ酸配列に関する。
【0034】
上記のC-末端非ヒストンドメインと、本発明のインヒビターのアミノ酸配列との同一性の差は、当該インヒビターのアミノ酸配列におけるアミノ酸置換から起こる。
【0035】
好ましくは、これらのC-末端非-ヒストンドメインの置換アミノ酸(複数)は、当該ドメインのホスホエステラーゼ活性を維持し又は増加させる。かかる置換は、一般的な知識の点で及び/又は簡易な実験によって当業者によって同定され得る。好ましくは、当該置換は、マクロヒストンH2AのC-末端非-ヒストンドメイン中の対応する残基に関連するものと、同一の電荷、疎水性(hydophopathy)、立体障害及び/又は化学的機能を有するアミノ酸残基に対応する。
【0036】
具体的な実施態様によれば、当該アミノ酸配列は、前記マクロH2A C-末端非-ヒストンドメイン又はその断片と100%の同一性を有する。
【0037】
有利なことには、マクロヒストンH2Aの非-ヒストンドメインから得られる前記アミノ酸配列は、350アミノ酸長未満、好ましくは300アミノ酸長未満、例えば、250アミノ酸長未満又は200アミノ酸長未満、及びより好ましくは150アミノ酸長未満である。
【0038】
好ましい実施態様によれば、マクロヒストンH2Aの非-ヒストンドメインから得られる前記アミノ酸配列は、ヒストンH2Aとの相同性を有するマクロヒストンH2Aフォールドドメインを含まず(LUGER et al., Nature, vol.389 (6648), p: 251-260, 1997、本明細書に文献として援用されている)、好ましくは、当該アミノ酸配列は、ヒストンH2Aと相同性を有する配列を含まない。
【0039】
有利なことに、前記アミノ酸配列は、ヒストンフォールドドメインを含まない。
【0040】
有利なことに、マクロヒストンH2Aの非-ヒストンドメインから得られる前記アミノ酸配列は、20アミノ酸長を超え、好ましくは25アミノ酸長を超え、例えば、35アミノ酸長を超え又は50アミノ酸長を超え、及びより好ましくは60アミノ酸長を超える。
【0041】
好ましい実施態様によれば、マクロヒストンH2Aの非-ヒストンドメインから得られる前記アミノ酸配列は、マクロヒストンH2Aのマクロドメインを含む。
【0042】
本明細書で使用する用語「マクロドメイン」は、マクロヒストンH2AのC-末端非-ヒストンドメインに存在する領域に関し、これは、多数の他の関連しないタンパク質において単独又は複数のコピーで見出される(PEHRSON and FUJI, 1998, 前掲 ; ALLEN et al., 2003, 前掲)。当該マクロドメインはまた、簡易な配列分析を用いて当業者により簡便に同定され得る。例えば、当該マクロドメインは、ヒトマクロH2A1.1 (配列番号1)の残基184〜369、好ましくは残基202〜369、ヒトマクロH2A1.2 (配列番号2)の残基183〜371、好ましくは残基201〜371、及びヒトマクロH2A2 (配列番号3)の残基184〜372、好ましくは残基202〜372に相当する。当該マクロドメインは、ホスホエステラーゼ活性の重要な残基を含み、その中には、以下の実施例及びKUSTATSCHER等(2005、上記、本明細書に文献として援用されている)で同定されている。ホスホエステラーゼ活性の潜在的に重要な残基の中には、ALLEN等(2003、前記、本明細書に文献として援用されている)により記載されたAF 1521ファミリーのマクロドメイン中の保存的残基として同定され得るものもある。最後に、当該マクロヒストンH2Aのマクロドメインは、KARRAS等(EAdBO journal, vol.24(11), p: 1911-1920, 2005: 図6A及びB参照)に記載されたADP結合ドメインである可能性がある。
【0043】
第2の局面では、本発明は、上記のインヒビターをコードする核酸に関する。
【0044】
前記核酸は、RNA又はDNA、好ましくはDNAに相当する。
【0045】
具体的な実施態様によれば、インヒビターをコードする核酸は、原核細胞又は真核細胞、好ましくは真核細胞内の核酸の発現を支持する、遺伝子発現配列に作動可能に連結される。「遺伝子発現配列」は、任意の制御ヌクレオチド配列、例えば、プロモーター配列又はプロモーター-エンハンサーの組合せである。それは、インヒビターの効率的な転写及び複製を促進し、核酸が作動可能に連結されている。遺伝子発現配列は、例えば、哺乳動物又はウイルスのプロモーター、例えば構成的又は誘導型プロモーターでよい。構成的な哺乳動物のプロモーターは、以下の遺伝子のプロモーターを含むがこれらに限定されない:ヒポキサンチン・ホスホリボシル・トランスフェラーゼ(HPTR)、アデノシン・デアミナーゼ、ピルビン酸キナーゼ、ベータ-アクチンプロモーター、筋肉クレアチンキナーゼプロモーター、ヒト伸張因子プロモーター、及び他の構成的なプロモーター。真核細胞内で構成的に機能するウイルスプロモーターの例は、例えば、シミアンウイルス(例えば、SV40)、パピローマウイルス、アデノウイルス、ヒト免疫不全症候群ウイルス(HIV)、サイトメガロウイルス(CMV)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、モロニーマウス白血病ウイルスの端末の長い反復配列(LTR)、及び他のレトロウイルス由来のプロモーター、並びにヘルペス単純ウイルスのチミジンキナーゼプロモーターを含む。他の構成的プロモーターは、当業者に知られている。本発明の遺伝子発現配列として有用なプロモーターもまた、誘導型プロモーター、例えばストレス条件下で誘導可能なプロモーターを含む。誘導型プロモーターは、誘導剤の存在下で発現される。例えば、hsp70-1プロモーターは、ヒートショックの後の転写及び翻訳を促進するために誘導される。他の誘導型プロモーターは、当業者に公知である。
【0046】
一般的に、遺伝子発現配列は、必要ならば、それぞれ、転写及び翻訳の開始と関連する5'非-転写配列及び5'非-翻訳配列、例えば、TATAボックス、キャッピング配列、CAAT配列等を含む。特に、このような5'非-転写配列は、作動可能に結合された抗原核酸の転写制御のためのプロモーター配列を含むプロモーターを含むだろう。遺伝子発現配列は、場合により、所望のエンハンサー配列又は上流のアクチベーター配列を含む。好ましくは、遺伝子発現配列は、細胞の核への本発明のインヒビターの転座を促進するために、当該インヒビターをコードする核酸配列に融合された核局在化シグナル(NLS)を含む。NLS配列は、当業者に周知である。
【0047】
本明細書で用いる、インヒビター核酸配列及び遺伝子発現配列は、遺伝子発現配列の影響又は制御下でインヒビターコーディング配列の発現あるいは転写及び/又は翻訳をセットするような方法で共有結合的に連結されるときに、「作動可能に連結される」と言われている。2つのDNA配列は、5'遺伝子発現配列にけるプロモーターの誘導がインヒビター配列の転写を生じる場合、及び2つのDNA配列間の結合の性質が、(1)フレーム-シフト突然変異の導入を起こさず、(2)インヒビター配列の転写を方向付けるプロモーター領域の能力を妨害せず、又は(3)タンパク質に翻訳される対応するRNA転写物の能力を妨害しない場合には、2つのDNA配列は、作動可能に連結されると言われる。従って、遺伝子発現配列が、得られた転写物が所望のタンパク質又はポリペプチドに翻訳されるように当該核酸配列の転写に影響し得る場合には、遺伝子発現配列は、インヒビター核酸配列に作動可能に連結されるだろう。
【0048】
インヒビター核酸は、in vivoで単独で又はベクターと共に送達することができる。
【0049】
第3の局面では、本発明は、先に記載した核酸配列を含むベクターに関連する。
【0050】
その最も広い意味で、「ベクター」は、細胞、好ましくは、核酵素ポリ(アデノシン5'-ジホスホ-リボース)ポリメラーゼ(「ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ」(PARP))を発現する細胞、へのインヒビター核酸の転送を促進することができる任意のビヒクルである。好ましくは、ベクターは、ベクターの非存在下で起こったであろう分解の程度に比べて、減少した分解の程度で核酸細胞を運ぶ。ベクターは、場合により、PARP発現細胞中のインヒビター核酸の発現を亢進するために、上記の遺伝子発現配列を含む。一般的に、本発明において有用なベクターは、プラスミド、ファージミド、ウイルス、インヒビター核酸配列の挿入又は組み込みによって操作されたウイルス又は細菌源から得られる他のビヒクルを含むが、これらに限定されない。ウイルスベクターは、好ましいベクターの種類であり、以下のウイルス:レトロウイルス、例えばモロニネズミ白血病ウイルス、ネズミ肉腫ウイルス、マウス乳ガンウイルス、及びラウス肉腫ウイルスウイルス; アデノウイルス、アデノ-関連ウイルス; SV40-型ウイルス; ポリオーマウイルス; Epstein-Barr viruses; パピローパウイルス; ヘルペスウイルス; ワクシニアウイルス; ポリオウイルス; 及びRNAウイルス、例えばレトロウイルスを含むが、これらに限定されない。命名されていないが当業者に知られている他のベクターを容易に採用することができる。
【0051】
好ましいウイルスベクターは、非-本質的遺伝子が対象の遺伝子と置換された非-細胞変性真核生物ウイルスに基いている。非-細胞変性ウイルスは、レトロウイルス、次に起こる宿主細胞DNAへのプロウイルス集積を有する、ゲノムウイルスRNAのDNAへの逆転写を含むライフサイクルを含む。レトロウイルスは、ヒト遺伝子治療試験のために承認されている。複製-欠損(すなわち、所望のタンパク質の合成を方向付けることができるが、感染性ウイルスを製造することができない)のレトロウイルスは、最も好ましい。かかる遺伝子的に改変されたレトロウイルス発現ベクターは、in vivoでの高効率遺伝子導入の一般的な有用性を有する。複製-欠損レトロウイルス(プラスミドへの外来遺伝材料の導入、プラスミドによるパッケージング細胞株のトランスフェクション、パッケージング細胞株による組換えトレトロウイルスの製造、組織培養培地からのウイルス粒子の回収、及びウイルス粒子による標的細胞の感染、のステップを含む)を製造するための標準的なプロトコールは、KRIEGLER (A Laboratory Manual," W.H. Freeman CO., New York, 1990) 及びMURRY("Methods in Molecular Biology," vol.7, Humana Press, Inc., Cliffton, N. J., 1991)の文献において提供される。
【0052】
ある適用のための好ましいウイルスは、アデノ-ウイルス及びアデノ-関連ウイルスである。これらは、遺伝子療法におけるヒト使用について既に承認された二重鎖DNAウイルスである。アデノ-関連ウイルスは、複製欠損であるように作製することができ、幅広い細胞類及び細胞種を感染することができる。それは、利点、例えば、熱及び脂質溶媒の安定性;造血細胞を含む様々な系統の細胞内での高形質導入頻度;並びにその結果複数のシリーズの形質導入を可能にする重感染阻害の欠如を更に有する。報告によれば、アデノ-関連ウイルスは、部位特異的方法でヒト細胞DNAに集積することができ、それによって、挿入突然変異の可能性、及びレトロウイルス感染の挿入遺伝子発現性の可変性を最小限にする。加えて、野生型アデノ-関連ウイルス感染は、選択的な圧力の存在下に100超の継代について、組織培養中で追跡された。このことは、アデノ-関連ウイルスゲノム集積が比較的安定な事象であることを意味している。アデノ-関連ウイルスもまた、染色体外の方法で機能することができる。
【0053】
他のベクターは、プラスミドベクターを含む。プラスミドベクターは、当該分野でこれまで広く記載されており、当業者に周知である。例えば、SANBROOK等, "Molecular Cloning: A Laboratory Manual," Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989を参照。ここ数年では、プラスミドベクターは、in vivoで細胞に抗原-コーディング遺伝子を送達するためのDNAワクチンとして使用されてきた。ウイルスベクターの多くと同様に安全関心事を有さないので、それらは、このためには特に有利である。しかしながら、薬学的に許容される宿主細胞と適合可能なプロモーターを有するこれらのプラスミドは、プラスミド内で作動可能にコードされた遺伝子からペプチドを発現することができる。いくつかの一般的に使用されるプラスミドは、pBR322、pUC18、pUC19、pRC/CMV、SV40及びpBlueScriptを含む。他のプラスミドは、当業者に周知である。加えて、プラスミドは、DNAの特定の断片を除き付加するために、制限酵素及びライゲーション反応を用いてカスタムデザインされ得る。プラスミドは、様々な非経口的、粘膜的及び局所的な経路によって送達され得る。例えば、DNAプラスミドはまた、筋肉内、皮内、皮下又は他の経路によって注入され得る。鼻腔内スプレイ又は液滴、直腸内座薬及び経口的に投与される。遺伝子銃を用いて表皮又は粘膜表面にも投与される。プラスミドは、液剤で、金粒子上に乾燥されて、又はリポソーム、デンドリマー、コクリート(cochleate)及びマイクロカプセル化を含むがこれらに限定されない他のDNA送達系と共に提供される。
【0054】
核酸ベクターは、細菌及び哺乳動物細胞で活性である選択可能なマーカーを含むことができる。
【0055】
好ましい実施態様によれば、本発明の核酸ベクターは、「ネイキドDNA」、例えばプラスミド、コスミド又はファージミドに対応する。かかるネイキドDNAは、非-脂質カチオン性ポリマー(WU and WU, J Biol. Chem., vol.263, p: 14621-4, 1988) 又はリポソーム (BRIGHMAN et al, Am. J. Med. Sci, vol.298, p: 278-81, 1989) と会合することができ、細胞内取り込みを亢進する複合体を形成する。
【0056】
別の好ましい実施態様によれば、核酸ベクターは、in vivoでの遺伝子療法プロトコールに適合したウイルスベクターである。好適なウイルスベクターの例は、EP 0871459、EP 0386882及びEP 1222300に記載のレトロウイルスベクター、並びにUS 2004/265273及びUS 6,638,502に記載のアデノウイルスベクターを含む。この場合には、ウイルスの内在化が、細胞表面受容体を有するウイルスエンベロプの特定の相互作用によって起こり、次いで、ウイルス/受容体複合体の受容体-介在エンドサイトーシスが起こる。
【0057】
第4の局面に従って、本発明は、組成物、好ましくは、(i)先に記載したインヒビター、それをコードする核酸、又は当該核酸を含むベクター、及び(ii)薬学的に許容されるビヒクルを含む医薬組成物に関する。
【0058】
本発明の組成物は、PARP活性を阻害し、PARP活性化に関連した疾患を予防及び/又は治療するために使用され得る。例えば、本発明の組成物は、ネクローシス又はアポトーシスに起因する細胞損傷又は細胞死から起こる神経組織損傷、例えば、心臓虚血又は再潅流傷害又は神経変性疾患から起こる心血管組織損傷、を治療又は予防するために使用され得る。本発明の組成物は、細胞の寿命又は増殖を延長又は増加させるために、その結果、皮膚加齢、アテローム性動脈硬化症、変形性関節症、骨粗鬆症、筋ジストロフィー、複製老化に関連する骨格筋の変性疾患、加齢による黄斑変性症、免疫老化、AIDS及び細胞老化、及び加齢に関連する他の免疫老化疾患を含む細胞老化に関連する疾患、及び当該細胞老化によって誘導又は悪化される疾患を治療又は予防するために、並びに老化細胞の遺伝子発現を改変するために、使用され得る。本発明の組成物は、癌を治療し、腫瘍細胞を放射線療法に対してより感受性にするために低酸素腫瘍細胞に放射線増感作用を与え、及びおそらくDNA修復を抑制するその能力によって、腫瘍細胞を、放射線治療後のDNAの潜在的な致命的損傷から回復しないようにさせるために、更に使用することができる。
【0059】
薬学的に許容されるビヒクルは、当業者に周知である。薬学的に許容されるビヒクルの例として、組成物は、エマルション、マイクロエマルジョン、水中油型エマルション、無水脂質及び水中油型エマルション、他の種類のエマルションを含むことができる。本発明の組成物は、1以上の添加剤(例えば、希釈物、賦形剤、安定剤、保存料)を含んでもよい。一般的には、Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, 6th Ed.(様々な編集者, 1989-1998, Marcel Dekker);及びPharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems(ANSEL et al., 1994, WILLIAMS & WILKINS)を参照。
【0060】
本発明のインヒビター、それをコードする核酸、又はかかる核酸を含む核酸ベクターは、緩衝液又は水に溶解され得るか、あるいはエマルション及びマイクロエマルジョンに組み込まれ得る。好適な緩衝剤は、Ca++/Mg++を含まないリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、通常の生理食塩水(150 mM NaCl水溶液)、トリス緩衝液及び界面活性剤を含むがこれらに限定されない。
【0061】
加水分解及び変性を含む、ペプチドの不安定又はその分解の多数の原因が存在する。疎水性相互作用は、分子の互いの凝集(すなわち、集合)を起こすことがある。疎水性相互作用は、この結果は、PARPリプレッションの減少を伴うことがある。安定剤は、このような問題を少なくさせ又は抑制するために添加することができる。
【0062】
安定剤は、シクロデキストリン及びその誘導体を含む(米国特許第5,730,969号明細書を参照)。好適な保存料、例えば、スクロース、マンニトール、ソルビトール、トレハロース、デキストラン及びグリセリンは、最終的な調合物を安定化させるために添加することもできる。イオン性及び非イオン性界面活性剤、D-グルコース、D-ガラクトース、D-キシロース、D-ガラクツロン酸、トレハロース、デキストラン、ヒドロキシエチルスターチ、及びそれらの混合物から選ばれる安定剤は、調合物に添加することができる。アルカリ金属塩又は塩化マグネシウムの添加は、ペプチドを安定化することがある。ペプチドは、デキストラン、硫酸化コンドロイチン、スターチ、グリコーゲン、デキストラン及びアルギン酸塩からなる群より選ばれる多糖とペプチドとを接触させることもできる。添加することができる他の糖類は、単糖類、二糖類、糖アルコール、及びそれらの混合物(例えば、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、スクロース、マルトース、ラクトース、マンニトール、キシリトール)を含む。ポリオールは、ペプチドを安定化させることがあり、水-混和性又は水-溶性である。好適なポリオールは、マンニトール、グリセロール(glycrol)、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチルグリコール、ビニルピロリドン、グルコース、フルクトース、アラビノース、マンノース、マルトース、スクロース、及びそれらのポリマーを含む、ポリヒドロキシアルコール、単糖類及び二糖類でよい。様々な賦形剤は、血清アルブミンを含むペプチド、アミノ酸、ヘパリン、脂肪酸及びリン脂質、界面活性剤、金属、ポリオール、還元剤、金属キレート剤、ポリビニルピロリドン、加水分解されたゼラチン、及び硫酸アンモニウムを安定化することもできる。
【0063】
有利なことに、前記組成物は、PARP活性を阻害するために十分な量で、本発明のインヒビター、それをコードする核酸、又は核酸ベクターを含む。
【0064】
例えば、前記組成物は、10-12 Mを超える、好ましくは10-9 Mを超える、例えば、10-8 Mを超える又は10-6 Mを超える、及び最も好ましくは10-3 Mを超える、前記インヒビターの濃度を含むことができる。
【0065】
第5の局面では、本発明は、PARP活性化に関連する疾患に罹患した対象に上記の組成物の有効量を投与するステップを含む、当該対象の予防的又は治療的な処置方法に関する。
【0066】
本明細書で使用する用語「対象」は、哺乳動物、例えば、齧歯動物、ネコ科の動物、イヌ科の動物及び霊長類を意味する。当該対象は、動物であり、例えば、ウシ、ブタ、ウマ、トリ、ネコ、イヌ、及び最も好ましくはヒトである。
【0067】
本発明のインヒビターは、PARP活性を阻害し、そのため、ネクローシス又はアポトーシスに起因する細胞損傷又は細胞死から起こる組織損傷、虚血及び再潅流傷害から起こる神経組織損傷、神経疾患及び神経変性疾患を治療するために有用であり;血管卒中を予防又は治療するために有用であり;心血管疾患を治療又は予防するために有用であり;他の症状及び/又は疾患、例えば、加齢による黄斑変性症、AIDS及び他の免疫老化疾患、関節炎、アテローム性動脈硬化症、悪液質、癌、複製老化を含む骨格筋の変性疾患、糖尿病、頭部外傷、免疫老化、炎症性疾患、例えば炎症性腸疾患、例えば大腸炎及びクローン病、筋ジストロフィー、変形性関節症、骨粗鬆症、慢性及び急性疼痛(例えば、神経障害性の痛み)、腎不全、網膜虚血、敗血性ショック(内毒素性ショック)、及び皮膚加齢を治療するために有用であり;細胞寿命及び増殖能力を拡げるために有用であり;老化細胞の遺伝子発現を変更するために有用であり;あるいは低酸素腫瘍細胞に放射線を増感させるために有用であると考えられる。
【0068】
本発明の方法によって治療することができる神経変性疾患の例は、三叉神経痛; 舌咽神経痛; 顔面神経麻痺; 重症筋無力症; 筋ジストロフィー; 筋萎縮性側索硬化症; 進行性筋萎縮症; 進行性の延髄遺伝性筋萎縮症; 脱出された(herniated)、破裂された又は脱出された(prolapsed)無脊椎動物椎間板症候群; 頸部脊椎症; 叢疾患; 胸郭出口破壊症候群; 末梢神経障害、例えば、鉛、ダプソン、マダニ類、ポリフィリン症、又はギラン・バレー症候群によって起こる障害;アルツハイマー病;ハンチントン病及びパーキンソン病を含むが、これらに限定されない。
【0069】
虚血を起こすか又は心臓の再潅流によって起こる得る心血管疾患の例は、冠動脈疾患、狭心症、心筋梗塞症、心停止によって起こる心血管組織損傷、心臓バイパスによって起こる心血管組織損傷、心臓性ショック、及び心臓もしくは脈管構造の不全又は組織損傷に関連する当業者によって知られている関連症状、特にPARP活性化に関連する組織損傷を含むが、これらに限定されない。
【0070】
例えば、本発明の方法は、癌、例えばACTH-産生腫瘍、急性リンパ性白血病、急性非リンパ性白血病、副腎皮質の癌、膀胱癌、脳腫瘍、乳癌、子宮頸癌、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、結腸直腸癌、皮膚T-細胞リンパ腫、子宮内膜癌螺旋、食道癌、ユーイング肉腫、胆嚢癌、ヘアリー細胞白血病、頭部及び頸部癌、ホジキンズリンパ腫、カポジ肉腫、腎臓癌、肝臓癌、肺癌(小細胞及び又は非-小細胞)、悪性腹水、悪性胸水、黒色腫、中皮腫、多発性骨髄腫、神経芽細胞腫、非-ホジキンズリンパ腫、骨肉腫、卵巣癌、卵巣(胚細胞)癌、前立腺癌、膵臓癌、陰茎癌、網膜芽細胞腫、皮膚癌、柔組織肉腫、扁平上皮過形成、胃癌、睾丸癌、甲状腺癌、絨毛性腫瘍、子宮癌、膣癌、陰門癌、及びWilms腫瘍を治療し、並びに癌の腫瘍細胞に放射線を増感させるために有用である。本発明のインヒビターと共に使用されることがある追加の治療剤の例は、5-フルオロウラシル、ロイコボリン、5'-アミノ-5'デオキシチミジン、酸素、炭素、赤血球注入、パーフルオロカーボン(例えば、Fluosol-DA)、2,3-DPG、BW12C、カルシウムチャンネル拮抗剤、ペントキシフィリン、血管新生抑制化合物、ヒドララジン、L-BSO、アドリアマイシン、カンプトテシン、カーボプラチン、シスプラチン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキソルビシン、インターフェロン(アルファ、ベータ、ガンマ)、インターロイキン2、イリノテカン、パリクタキセル、トポテカン、及び治療上有効なアナログ、並びにその誘導体を含むが、これらに限定されない。
【0071】
医療的使用のために、治療的効果を達成するための本発明のインヒビターの好ましい量は、投与される具体的なインヒビター、投与経路、治療される哺乳動物、及び関連している具体的な障害又は疾患によって変動することになる。本明細書に記載の任意の症状に罹患した哺乳動物、又は罹患している可能性のある哺乳動物のための、本発明のインヒビターの好適な全身性投与量は、典型的には、約0.001 mg/kg〜約50 mg/kgの範囲にある。典型的には、インヒビターの約0.1 mg〜約10,000 mgのオーダーの投薬レベルは、上記の症状の治療に有用であり、好ましいレベルは、約0.1 mg〜約1,000 mgである。任意の特定の患者のための特定の投薬レベルは、使用される特定の化合物の活性;患者の体重、全身的健康、性別、及び食事;投与時間;排泄速度;化合物と他の薬物との任意の組合せ;治療される特定の疾患の重度;並びに投与形態及び投与経路を含む、様々な因子に依拠して変動することになる。典型的には、in vitroでの投薬-効果の結果は、患者の投与用の適正な投薬量についての有用な指針を提供する。動物モデルでの研究も有用であり得る。適正な投薬量レベルを決定するための事項は、当業者に周知である。
【0072】
本発明の方法では、本組成物は、例えば、慣用的な非-毒性の薬学的に許容される担体、アジュバント及びビヒクルを含む投薬製剤で、経口的に、非経口的に、吸入スプレイによって、局所的に、直腸的に、鼻に、口内に、舌下に、膣内に、心室内に、又は移植リザーバを介して投与することができる。
【0073】
本発明の方法で使用される組成物は、単一投与、複数の別個の投与又は連続的な注入によって投与することができる。化合物の送達のタイミング及び順序を調節する任意の投薬レジメは、治療を達成するために必要なだけ使用し、反復することができる。かかるレジメは、予備的処置及び/又は追加の治療剤との同時-投与を含むことがある。
【0074】
組織損傷の保護を最大限にするために、本発明の組成物は、病気に冒された細胞にできるだけ早く投与されるべきである。
【0075】
第6の局面では、本発明は、PARP活性化に関連した疾患に罹患した対象の予防又は治療のための医薬の製造のための、上記のインヒビター、それをコードする核酸、又は当該核酸を含む核酸ベクターの使用に関する。
【0076】
本発明のインヒビターは、PARP活性を阻害し、そのため、ネクローシス又はアポトーシスに起因する細胞損傷又は細胞死から起こる組織損傷、虚血及び再潅流傷害から起こる神経組織損傷、神経疾患及び神経変性疾患を治療するために有用であり;血管卒中を予防又は治療するために有用であり;心血管疾患を治療又は予防するために有用であり;他の症状及び/又は疾患、例えば、加齢による黄斑変性症、AIDS及び他の免疫老化疾患、関節炎、アテローム性動脈硬化症、悪液質、癌、複製老化を含む骨格筋の変性疾患、糖尿病、頭部外傷、免疫老化、炎症性疾患、例えば炎症性腸疾患、例えば大腸炎及びクローン病、筋ジストロフィー、変形性関節症、骨粗鬆症、慢性及び急性疼痛(例えば、神経障害性の痛み)、腎不全、網膜虚血、敗血性ショック(内毒素性ショック)、及び皮膚加齢を治療するために有用であり;細胞寿命及び増殖能力を拡げるために有用であり;老化細胞の遺伝子発現を変更するために有用であり;あるいは低酸素腫瘍細胞に放射線を増感させるために有用であると考えられる。
【0077】
本発明は、出願人によって実行される研究に照らして、達成された実験的研究の記載を読むと、より明確に理解されるだろう。これは、本来限定するものと解釈されるべきではない。
【実施例】
【0078】
1) プラスミド構築
【0079】
H2A (NMJ38609; 配列番号4の核酸186〜1295)、マクロヒストンH2A1.1 (NM_004893; 配列番号5の核酸174〜1289) 及びマクロヒストンH2A1.2 (NM_018649; 配列番号6の核酸214〜1332) 由来の完全なコーディング配列に対応するcDNAクローンは、制限酵素認識部位を取り込んだプライマーを用いてINVITROGEN製のイメージクローンからPCR-増幅した。ついで、増福されたPCRフラグメントは、製造者の教示に従って、pREV-HTFレトロウイルスベクター又はpGEX-5X.1ベクター(AMERSHAM)のXho I-Not I部位にサブクローニングした。コンストラクトは配列完全性を確実にするためにシークエンスした。
【0080】
2) マクロH2A1.1の発現及び局在化
マクロヒストンH2A1.1及びH2Aは、それぞれ、標準的なプロトコールに従うレトロウイルス形質導入によって、HeLa細胞中に、N-末端二重HA及び二重フラッグエピトープタグ (e-MH1.1及びe-H2A) を有する融合タンパク質として安定的に発現した。免疫蛍光実験は、製造者の教示に従って、二次抗体として、ラット抗-HA抗体(ロシュ、1:300希釈)及びAlexa Fluor 488(MOLECULAR PROBES, 1:400希釈)に結合されたヤギ抗-ラットIgGを用いて、安定的にトランスフェクトされた細胞で行った。クロマチンの局在化は、DAPI呈色で、同一細胞中で評価した。
【0081】
結果は、タグ付きヒストンがクロマチンと同じ場所に位置することを明らかにした(図1参照)。これは、タグエピトープの存在がその沈着を妨害しないことを示す。核での広い染色を示すタグ付きH2Aヒストン(e-H2A)とは反対に、タグ付きマクロヒストンH2A1.1(e-MH1.1)は、主に凝縮クロマチンに限定された局在化した染色を示す。我々は、これらのデータから、タグ付きマクロヒストンH2A1.1 (e-MH1.1)及びタグ付きヒストンH2A(e-H2A)がいずれもin vivoでヌクレオソームに機能的に沈着されると結論する。
【0082】
3) マクロH2A1.1会合ヌクレオソームの精製
N-末端二重-HA及び二重-フラッグエピトープタグ(e-H2A/e-MH1.1)と融合されたH2A及びマクロH2A1.1タンパク質を発現する上記のHeLa細胞から調製された核ペレットは、ミクロコッカル・ヌクレアーゼで消化し、SOLLNER-WEBB及びFELSENFELDに記載されているように(Biochemistry, vol.l4(3), p: 2915-20, 1975)主にモノヌクレオソームを与えた。e-H2A又はe-MH1.1を含むモノヌクレオソームは、抗-フラッグ抗体-複合アガロース(SIGMA)に対する免疫沈降によって得られた物質から精製した。結合されたヌクレオソームは、フラッグペプチド(DYKDDDDK; 配列番号7)で溶出し、抗-HA抗体-複合アガロース(SIGMA)によって更にアフィニティー精製し、HAペプチド(YPYDVPDYA; 配列番号8)で溶出した。精製された複合体の小分画は、SDS-PAGEゲル上で抗体-フラッグ抗体(ロシュ)で分析して、タグ付きマクロヒストンH2A1.1及びH2Aにおけるその濃縮を評価した。
【0083】
抗-フラッグ抗体によりイムノブロッティングは、タグ付きマクロヒストンH2A1.1又はH2Aについて予想されたサイズの1つの特定のバンドを示した(図2参照)。生化学的分画は、マクロヒストンH2A1.1の小分画のみが核抽出物中の溶解性タンパク質として存在することが見出されたことを明らかにし、そして、ほとんどのタンパク質は、クロマチンに密接に会合された核ペレット中に存在することが見出されたことを明らかにした。我々は、タグ付きマクロヒストンH2A1.1が、ミクロコッカル・ヌクレアーゼの制御された量でクロマチンを消化することによって、モノヌクレオソームと共に十分に溶解することができることを見出した。
【0084】
次いで、タグ付きマクロヒストンH2A1.1又はH2Aを含む精製された複合体は、製造者の教示に従ってSilverQuest(登録商標)キット(INVITROGEN)を用いて銀染色された、12%変性ポリアクリルアミドゲル上で展開した。最後に、様々なゲル分離ポリペプチドは、質量分析法により同定した。対照として、我々は、非形質導入されたHeLa細胞上で同一の精製を行った。
【0085】
多数のポリペプチドは、e-mH2A1.1及びe-H2Aヌクレオソームと会合することが見出された(図3)。
【0086】
質量分析法は、e-mH2A1.1及びe-H2A複合体における共通の成分として、ヒストンH3、H4、H2A、H2B、mH2A1.1 Ku 80、KU 70、Hsp70、HDAC1、H1の2つのサブタイプ (HL1.1及びH1.2)、Hp1α、Hp1β及びポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼI (PARP-I) を同定した(図3)。同定されたタンパク質の包括的なリストは、そのアクセッション番号と共に、以下の表に示される。
【0087】
【表1】
【0088】
2つの複合体はPARP-1を含むことが見出されたが、e-mH2A1.1複合体のみがかなりの量のPARP-1を有した。
【0089】
精製された複合体の一部分は、15〜35%のグリセロールグラディエントを行った。グラディエントは、分画し、異なった分画を4〜12%SDS-PAGE上にロードした。コアヒストン、e-mH2A1.1及びPARP-1の位置は、図14の左部分に示した。
【0090】
最後に、該複合体中に存在するPARP-1の量は、e-mH2A1.1及びヒストンH4の量に比例することが見出された(図3及び14)。これは、mH2A1.1とPARP-1との直接的な相互作用を示唆している。対照的に、H2A複合体は、約10倍未満のPARP-1を含んだ(PARP-1とヒストンH4との比は、0.1に近いことが分かった、図3、右パネル)。非形質導入されたHeLa細胞の見せかけの精製由来の銀染色によって、ポリペプチドは検出されなかった(データ非表示)。これは、これらの複合体中のすべての検出可能なポリペプチドがマクロヒストンH2A1.1又はH2Aに特異的であることを示している。
【0091】
4) マクロH2A1.1は、そのC-末端非-ヒストン領域によってPARP-1と相互作用する
マクロヒストンH2A1.1とPARP-1との相互作用を確認するために、我々は、ベイト(bait)として組換えマクロH2A1.1を用いてGST-プルダウン実験を行った。ヒストンH2A及びGSTは、対照として使用した。GST融合ヒストンは、25℃で生育するBL21 (pLysS) E. Coli株中で発現した。溶解性タンパク質は、製造者の教示に従って、グルタチオン・セファロース4Bビーズ(AMERSHAM)上で精製した。ヒト組換えPARP-1(ALEXIS)は、100 mM KCl及び 0.02 % NP40 (SIGMA) を含むPBS中で緩やかに攪拌しながら、H2Aヒストン (GST-H2A)、マクロヒストンH2A1.1 (GST-マクロH2A1.1)、又はマクロH2A1.1の非ヒストン領域(NHR;配列番号1のアミノ酸121〜369)(GST-NHR)と融合、あるいは融合されていない組換えGSTと、30℃で、1時間インキュベートした。洗浄ステップの後、結合されたタンパク質をLAEMMLIバッファーで溶出し、12% SDS-PAGEプロテインゲル上で分画し、ブロットし、ヒト抗-PARP-1抗体(ALEXIS)によって明らかにした。
【0092】
この結果は、組換えマクロヒストンH2A1.1がその非ヒストン領域(NHR)によってPARP-1と特異的に相互作用し、この相互作用はDNAの存在に依拠しなかった、ことを示す(図4参照)。C-末端非-ヒストン領域マクロH2A1.1は、他のタンパク質(残基121〜201)及びマクロドメインとの相同性を有さないC-末端領域を含む。従って、これらの結果は、このC-末端領域が、それがマクロH2A1.1特異的である場合には、PARP-1結合領域としての優れた候補であることを示唆する。
【0093】
5) マクロH2A1.1標的遺伝子の同定
多くの研究が、ヘテロクロマチンの構築又は維持におけるマクロヒストンH2Aの一般的な関係を示唆する。これらのデータは、転写リプレッションにおけるマクロヒストンH2Aの関係を強力に支持するが、このリプレッションが行われるメカニズムは知られていない。これらの研究は、免疫蛍光法を主に使用し、特定のマクロヒストンH2A標的遺伝子を同定できなかった。この問題を解決するために、我々は、マクロH2A1.1ヌクレオソームに会合された特定の標的DNA配列を同定するためのタンデム-アフィニティー精製法を使用する、高特異的クロマチン免疫沈降アッセイを開発した。我々は、「タンデムアフィニティー精製及びクロマチン免疫沈降アッセイ」を「Tap-Chip」(図5参照)と呼んだ。我々の方法は、人工産物という固有のリスクを有する、ホルムアルデヒド架橋又はPCR増福を使用しなかった。
【0094】
我々は、標準的な方法に従って、タグ付きマクロヒストンH2A1.1を安定的に発現するHeLa細胞株から核を精製した。精製された核は、ミクロコッカル・ヌクレアーゼの制御された量で消化して、モノ-及びジ-ヌクレオソームを主に与えた(データ非表示)。消化されたクロマチンは、かなりの量のタグ付きマクロヒストンH2A1.1を含むことが見出された(データ非表示)。マクロH2A1.1モノ-及びジ-ヌクレオソームは、(i) 抗-フラッグ抗体、次いで、(ii) 上記の抗-HA抗体で免疫精製した。精製されたモノ-及びジ-ヌクレオソームの小分画をSDS-PAGEゲル上で分析し、タグ付きヒストンH2A1.1におけるその濃縮を評価した(データ非表示)。対照として、我々は、非-タグ付きHeLa細胞株から見せかけの精製を行い、銀染色によってポリペプチドは検出されなかった(データ非表示)。
【0095】
免疫精製されたマクロH2A1.1モノ-及びジ-ヌクレオソームは、プロテインキナーゼK、及び標準的な方法に従って抽出されたフェノールで消化した。精製されたDNAは、T4 DNAキナーゼ (BIOLABS) で処理し、3'A-オーバーハングをTaq DNAポリメラーゼ(AMERSHAM)を用いて加えた。マクロH2A1.1モノ-及びジ-ヌクレオソームに対応するDNA断片を、TAクローニング技術(ESTVITROGEN)を用いてpcDNA3.1-Topoベクターにクローニングした。形質転換されたクローンは、インサートをチェックし、ベクター-特異的プライマーを用いてシークエンスした。得られた配列は、次いで、ヒトゲノムデータベースのBlast検索によって同定した(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)。
【0096】
文献でのその結果は、マクロH2Aが、遺伝子リプレッションに関連し、それがXを不活性化する場合に、不活性なX-染色体に本質的に局在化することを示している。興味深いことに、我々の結果は、マクロH2AがX-染色体に限定されず、ゲノム中に広く分布していることを示している。60個の同定された遺伝子の45%は酵素であり、他のものは、異なった生物学的経路に関連する。更に、これらの同定されたゲノム配列の分析は、マクロヒストンH2A1.1が数個の高度に制御された遺伝子のプロモーター領域と主に結びつき、そして誘導可能な又は初期の応答遺伝子の一般的な制御に関連している、ことを明らかにした。
【0097】
同定されたゲノム配列の内の1つは、hsp70-1プロモーター遺伝子に対応する。Hsp70-1 (又はhsp70i) は、少なくとも11の遺伝子を包含するhsp70ファミリーの最も主なかつ特徴的なメンバーであり、高度に関連したタンパク質群をコードする(TAVARIA et al, 1996)。Hsp70-1は、ヒートショック及び化学的ストレスに対する反応において誘導的であり、本明細書で使用されるプローブは、当該遺伝子を特異的に選択する。
【0098】
6) マクロH2A1.1は、hsp70プロモーターを特異的に標的化する
マクロヒストンH2A1.1と遺伝子プロモーターとの関係を確認するために、我々は、半-定量的及びリアルタイムPCRを用いて、hsp70-1遺伝子座上のその分布を分析した。タグ付きマクロヒストンH2A1.1(e-MH1.1)を発現するHeLa細胞由来のクロマチンは、抗-フラッグ及び抗-HA抗体で、以下のように沈降した。クロマチンは、37℃で10分間、ホルムアルデヒド溶液で架橋し、次いで、超音波処理して300〜800 bpの平均長のDNA断片を得た。
抽出物は、非-変性ゲル電気泳動によって標準化し、各試料は、以下のプライマーを用いて半-定量的PCRにより個々に分析した:
-hsp70-1プロモーター(フォワード): 5'-GGCGAAACCCCTGGAATATTCCCGA-3' (配列番号9);
-hsp70-1プロモーター(リバース): 5'-AGCCTTGGGACAACGGGAG-3' (配列番号10);
-hsp70-1コーディング領域(フォワード): 5'-CAGGTGATCAACGACGGAGACA-3' (配列番号11);
-hsp70-1コーディング領域(リバース): 5'-GTCGATCGTCAGGATGGACACG-3' (配列番号12)。
【0099】
半-定量的PCRは、下記のオリゴヌクレオチド対を用いて、hsp70.1プロモーター及びコーディング領域の下に、Taq DNAポリメラーゼ(PROMEGA)により行った。試料は、25サイクル(93℃で30秒間、58℃で30秒間、及び72℃で1分間)増福し、2%アガロースゲル上で展開し、エチジウムブロミドで視覚化し、デンシトメトリーで定量化した。
【0100】
この結果は、hsp70-1プロモーター (P, 191 bp) の長さのDNA断片が濃縮されたが、コーディング領域(C, 363 bp)に位置する断片は、濃縮されなかったことを示している(図6A参照)。これらの結果は、マクロH2A1.1がhsp70-1プロモーターに存在することを証明している。
【0101】
次いで、我々は、LightCycler (ROCHE DIAGNOSTICS) を用いてプロモーター領域におけるマクロヒストンH2A1.1の相対的な濃縮を定量するためにリアルタイムPCCRを用いた。各試料の2つの異なった希釈は、標準化のために、前記のプライマー及びGAPDHプライマーを用いるQ-PCRによって個々に分析した(GAPDH (フォワード): 5'-GGA CCT GAC CTG CCG TCT AGA A-3' (配列番号13); GAPDH (リバース): 5'-GGTG TCG CTG TTG AAG TCA GAG-3' (配列番号14))。コピー数は、FERREIRA et al (2001) に記載のように計算し、Q-PCRからの結果は、Hsp70 mRNA対GAPDH mRNAとの比として表した。最後に、PCRの値は、非-トランスフェクトされた細胞由来のクロマチンで得られた値に対して標準化した。
【0102】
この結果は、マクロH2A1.1が、コーディング領域と比べてhsp70-1遺伝子のプロモーター領域において450倍濃縮されていることが見出されたことを示している(図6B参照)。
【0103】
次いで、我々は、異所的に発現されたマクロヒストンH2A1.1がゲノムに渡って天然型タンパク質の分布を十分に反映し、それ故に、我々のTAP-ChIP法によって同定された標的遺伝子が実際にマクロヒストンH2A1.1の真のin vivo標的であるかどうかについて検討した。hsp70-1プロモーターがマクロH2A1.1の真正な標的であるか否かを決定するために、我々は、非-トランスフェクトされたHeLa細胞株を用いて、hsp70-1プロモーター上の内因性のマクロヒストンH2A1.1のin vivo分布を試験した。In vivoクロマチン免疫沈降(ChIP)アッセイは、マクロヒストンH2A1.1の非-ヒストン領域に対するポリクローナル抗体を用いて、先に記載のようにして行った。抽出物は、非-変性ゲル電気泳動によって標準化し、各試料は、先に記載の半-定量的PCRによって個々に分析した。
【0104】
その結果は、hsp70-1プロモーター(P)の長さのDNA断片が、3つの各々のChIPアッセイにおいて、マクロH2A1.1特異的抗体によるクロマチンの共免疫沈降の後に濃縮されたが、コーディング領域(C)に位置する断片は濃縮されなかった、ことを示している(図6C参照)。これらの結果は、マクロH2A1.1が、hsp70-1プロモーターにおいてin vivoでは天然に存在することを証明している。
【0105】
次いで、我々は、mH2A1.1が、Hsp70ファミリーの他の誘導可能な遺伝子のプロモーター、及び構成的に発現されたHsp70遺伝子のプロモーターに会合しているかどうか検討した。我々は、ヒートショック-誘導可能なHsp70.2、及び構成的に発現されたHsp70.8(Hsc710)遺伝子に焦点を当てる候補アプローチを使用した(Dworniczak and Mirault 1987)。
【0106】
抗-フラッグ及び抗-HA抗体を用いるChIPアッセイは、先に記載のe-mH2A1.1を安定的に発現するHeLa細胞株から単離されたホルムアルデヒド架橋クロマチンで行った。
【0107】
最後に、リアル-タイムPCR定量は、各々のプロモーターに特異的な以下に示すプライマーを用いて先に記載のようにして行った:
-Hsp70.2プロモーター (フォワード) : 5'-GGCCGAGAGTCAGGGAGGAACC-3 ' (配列番号:24);
-Hsp70.2プロモーター (リバース): 5'-ACTCTTCCAGCTCCACCACAG-3' (配列番号25);
-Hsp70.8プロモーター (フォワード): 5'-TGTGGCTTCCTTCGTTATTGGA-3' (配列番号26);
-Hsp70.8プロモーター (リバース): 5'-AAATACCGCTGCCATCCCACCG-3' (配列番号27)。
【0108】
その結果は、Hsp70.2遺伝子のプロモーター領域が、Hsp70.1遺伝子のプロモーター領域と同程度にe-mH2A1.1が豊富であるが、e-mH2A1.1の存在は、Hsp70.8遺伝子のプロモーターをわずかに検出できた、ことを明確に示している(図13)。これらのデータは、mH2A1.1は、一般的に、好ましくは、誘導可能なヒートショック遺伝子と会合することがあることを示唆している。
【0109】
7) ヒートショックは、hsp70-1プロモーターからマクロH2A1.1及びPARP-1置換を誘導した
遺伝子制御におけるマクロH2A1.1の機能及びPARP-1とのその関係を包括的に記載することを目的として、我々は、ヒートショック依存性転写活性化の間にhsp70-1プロモーターで起こる事象のオーダーを試験した。マクロヒストン-H2A1.1、H2A、H3又はH3.3のフラッグ-HAタグ付き変異体を発現する異なったHeLa細胞株を樹立した。陰性対照として、非-タグ付きHeLa細胞株を使用した。hsp70-1遺伝子の発現を42℃、30分間、ヒートショックHeLa細胞で誘導し、通常、10倍誘導を観察した(データ非表示)。細胞を30分間回収するために放置し、直ちに、ホルムアルデヒドで処理して、タンパク質-タンパク質複合体及びタンパク質-DNA複合体を架橋した。次いで、マクロヒストン-H2A1.1、H2A、H3又はH3.3に対する抗-フラッグ抗体を用いて、先に記載のようにして剪断されたクロマチンを沈殿させた。並行して、我々はまた、ヒストン修飾酵素PARP-1 (ALEXIS)、ADP-リボースポリマー (ALEXIS) 及び全-アセチル化ヒストンH4 (ALEXIS) の存在を特定の抗体で試験した。対照として、クロマチンは、特定の抗体の非存在下で免疫沈降した。リアルタイムPCRを用いて各実験において、免疫沈降についてのクロマチンインプットの標準化を評価した。構成的に発現されるGAPDHのレベルもまた、陰性対照として評価し、予想されたように、配列は、免疫沈降物中にほとんど検出されないことが見出された。免疫沈降物中のhsp70-1プロモーターは、先に記載のようにリアルタイムPCRを用いて定量した。
【0110】
その結果は、マクロH2A1.1及びPARP-1が、活性化の前にhsp70-1プロモーターに存在し、当該プロモーターからのその置換をヒートショックが誘導した、ことを示している(図7A参照)。マクロ-H2A1.1とhsp70-1プロモーターとの関係は、90%低下したが、標準的なH2Aヒストンは、わずかに影響されたのみであった(30%未満の低下)。興味深いことに、高レベルのポリ(ADP-リボース)ポリマーが活性化の時点で見られたので(図8A参照)、PARP-1は、ヒートショックの後にhsp70-1プロモーターではほとんど検出されなかった(図7A参照)。最近の発見と一致して、H3.3ヒストンは、転写的に活性なhsp70-1プロモーター中のH3ヒストンを置換することが見出された(図7B参照)。対照的に、我々は、全体的なH4ヒストンアセチル化に何の変化も見出さなかった(図8B参照)。これらの観察は、PARP-1 ADP-リボシル化活性が阻害されるが、プロモーター上でマクロ-H2A1.1により隔離される、ことを示唆している。PARP-1は、プロモーターから放出されるときに活性になり、部分的なタンパク質を修飾し、ADP-リボース部分の集積を導く。
【0111】
ADP-リボシル化は、クロマチン結合タンパク質の放出に本質的であるので(最近のレビューを参照(Kim et al. 2005))、我々は、マクロH2A1及びPARP-1の両方がADP-リボシル化され得ることを仮定した。
【0112】
ヒートショックの存在下で、ポリマーとe-mH2A1.1ヌクレオソーム複合体のタンパク質との関係を明確にするために、我々は、安定なHeLa細胞株からe-mH2A1.1複合体を単離し、SDSを含む12% PAGE上で分離し、銀染色した(図15、左パネル)。次いで、ゲルをブロットし、抗-ADPリボース抗体によって明らかにした(図15、右パネル)。
【0113】
ウェスタンブロットは、PARP-1及びe-mH2A1.1、並びにコアヒストンH3及びH2Bが、ADP-リボシル化されたことを示した(図15、右パネル)。これは、文献(Abbott et al., 2005)と一致した結果である。これらの結果は、ヒートショック活性化の際に、mH2A1.1及びPARP-1のみならず、コアヒストンが、高度にリボシル化されるはずであり、そして結果的に、ADP-リボシル化依存的な方法でHsp70.1プロモーターから放出された、ことを示唆した。
【0114】
8) マクロH2A1.1又はPARP-1のダウンレギュレーションがヒートショック反応を遅らせる
hsp70-1遺伝子制御におけるマクロH2A1.1及びPARP-1の役割をより厳密に解決するために、我々は、それらの特定のmRNA配列に対応する2つのsiRNAを設計した。マクロH2A1に対するsiRNAは、マクロドメインに存在し、マクロ-H2A1の2つのアイソフォーム、すなわちマクロ-H2A1.1及びマクロ-H2A1.2によって共有されている。PARP-1に対するsiRNAは、PARAP-1の触媒的ドメインに存在する (KAMEOKA et al, 2004) 。陰性対照(対照siRNA)として、組換え配列を使用した。配列ライブラリーの検索は、我々のマクロ-H2A1及びPARP-1 siRNAは、それぞれ、マクロ-H2A1及びPARP-1に限定され、そして、対照siRNA配列が全く存在しない、ことを示した。これらのsiRNAの配列は以下のとおりである:
-マクロH2A1 siRNA (MH1 siRNA、配列番号15; 5' AAGCAGGGUGAAGUCAGUAA 3');
-PARP1 siRNA (PARP-1 siRNA、配列番号16; AAGCCUCCGCUCCUGAACAAU) ;
-組換え対照siRNA (組換えsiRNA、配列番号17; 5'-CAUGUCAUGUUCACAUCUCTT-3')。
【0115】
siRNAトランスフェクションのために、HeLa細胞を対数増加的に6-ウエルプレート上に播種し、DMEM/10% FBS (INVITROGEN) 中で、37℃で終夜、増殖させた。HeLa細胞は、製造者の教示に従ってリポフェクタミン(登録商標)(INVITROGEN)と、前記の各siRNAの1 μgと又はsiRNAなしでトランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後、細胞を42℃で60分間、ヒートショックさせ、37℃で10、20又は30分間回収するために放置した。次いで、細胞を採取し、RT-PCRによってhsp70.1発現についてアッセイした。対照として、細胞はまた、イムノブロッティングによってマクロ-H2A1及びPARP-1サイレンシングについてアッセイした。
【0116】
その結果は、(マクロH2A1及びPARP-1に対する特定の抗体を用いてウェスタンブロットによって明らかにされたように、図9参照)、内因性のマクロH2A1及びPARP-1の発現が、ほとんど完全に阻害されたことを示している。その結果はまた、特定のsiRNAによるマクロ-H2A1.1又はPARP-1のダウンレギュレーションが、ヒートショック反応をそれぞれ、3倍、10倍遅らせたことを明らかにした(図10A参照)。同時に、組換えsiRNAでトランスフェクトしたHeLa細胞は、対照として働き、hsp70-1活性化における遅延を示さなかった。
【0117】
この結果を確認するために、我々は、マクロH2A1 siRNAの存在下で、hsp70-1活性化の速度論的分析を行った。マクロH2A1 siRNAでトランスフェクトされたHeLa細胞又はトランスフェクトされなかったHeLa細胞は、42℃で30分間、ヒートショックし、hsp70-1の発現は、先に記載したように10、20及び30分回収後にリアルタイムRT-PCRによってモニターした。
【0118】
結果は、特定のsiRNでのマクロH2A1.1のダウンレギュレーションが、3倍のファクターで遅延したヒートショック応答を生じる、ことを明確に示している(図10B参照)。mH2A1は、PARP-1とHsp70.1プロモーターとの関係に関連しているようであるので、次いでヒートショック応答を妨害することになるsiRNAによるmH2A1の欠乏は、Hsp70.1プロモーター会合PARP-1の量を大幅に減じただろうと予測しただろう。ChIPデータ (図24) は、mH2A1の欠乏が、予想したように、Hsp70.1プロモーターを妨害するPARP-1の量を大幅に減少させた、ことを証明した。
【0119】
我々の結果と一致して、PARP-1は、ショウジョウバエの幼虫においてヒートショック-誘導パフィング(puffing)及びhsp70発現のために必要であることが見出された (TULIN and SPRADLING, Science, vol. 299(5606), p:560-2, 2003)。結局、我々の結果は、hsp70-1プロモーターとのマクロH2Aの関係がその不活性な状態に明確に関連していることを示している。PARP-1との関係は、この見解を支持しており、そして、ホルモン、サイトカイン又はヒートショックに迅速に応答する必要がある誘導可能な遺伝子のレギュレーションにおけるマクロH2Aの役割を示唆している。マクロH2A1.1によって潜在的にレギュレートされた非常に多数の遺伝子の同定は、マクロH2A1.1が多種多様の細胞プロセスを抑制するセントラルレギュレーターであるという概念を支持している。
【0120】
9) マクロH2A1.1は、PARP-1酵素活性をレギュレーションする
マクロ-H2A1.1とPARP-1との実際の関係、及びヒートショック誘導活性化の後のhsp70-1プロモーターからのその協調された放出は、我々に、マクロ-H2A1.1によるPARP-1の酵素活性の可能なレギュレーションを試験させた。PARP-1は、自己-ADP-リボシレートそれ自体で知られ、この自己-修飾を制御するメカニズムは知られていない。
【0121】
我々の結果は、マクロH2AがPARP-1活性レギュレーションに関連していることを示唆している。このレギュレーションプロセスを解明するために、我々は、マクロH2A配列を、マクロドメインを有するタンパク質と、より具体的にはホスホエステラーゼと比較した。事実、ALLEN et al, (2003, 前掲) は、マクロドメインが、ADPリボース誘導体に作用するホスホジエステラーゼのスーパーファミリーを定義することを示唆している。
【0122】
我々の分析は、マクロH2A1.1、マクロH2A1.2、及びマクロH2A2が、公知のホスホジエステラーゼの触媒的ドメインと重要な相同性を共有することを示している(図11参照)。
更に、マクロH2A1.1及びマクロH2A2は、ホスホジエステラーゼ活性に関連する系統的に不変異体HXTXモチーフであってヒスチジン残基が活性に重要であるモチーフを共有している(NASR and FILIPO WICZ, Nucleic Acids Res., vol.28(8), p: 1676-83, 2000; HOFMAN et al, EMBO J, vol.l9(22), p:6207-17, 2000)。マクロH2A1.2における対応する残基は、アスパラギン(N)である。
【0123】
mH2A1.1のフォールディングの混乱がPARP-1活性に影響を与え、他のmH2A1.1ヌクレオソーム会合PARP-1の放出を促進することがあるかどうかを試験するために、我々は、位置213〜216の保存的HXTXモチーフをアラニン(AAAA)に変換するmH2A1.1遺伝子の点突然変異を作製した。これは、以下、MH1.1mutと称する(図16)。実際に、このHXTXモチーフは、ADP-リボシル化基質に対する触媒的活性を有する他のマクロ-ドメインに存在する(図16、及びAllen et al. 2003) 。酵母ホスホエステラーゼのアナログモチーフの突然変異がその酵素活性を取り除くことが従来明らかになっている (NASR and FILIPOWICZ, 2000, 前掲; HOFMAN et al, 2000, 前掲) 。このモチーフはまた、mH2A1.1ポケットに非常に近く (Allen et al. 2003; Chakravarthy et al. 2005)、モチーフの突然変異が結合に影響すると予想できるように、ADPリボース(及び可能なモノ-ADP-リボシル化PARP-1)及びその誘導体であるO-アセチル-ADPリボースに結合する (Karras et al. 2005; Kustatscher et al. 2005) 。
【0124】
上記の突然変異がモノ-ADP-リボースの結合に影響を与えるかどうかについて試験するために、組換え野生型(WT)及び突然変異型(Mut)mH2A1.1マクロドメインの増加量を精製して均一にし、32P-ADP-リボースでインキュベートし、PVDF膜上に(2点で)ブロットし、標識されたタンパク質を検出した(図17、上パネル)。2つの膜は、等しいローディングのための対照としてクマシー染色した(図17、下パネル)。得られた結果は、WT e-mH2A1.1の結合に比べて、突然変異型emH2A1.1のモノ-ADP-リボースの弱い結合を確認した(図17、上パネル)。このことは、ADP-リボースに結合するe-mH2A1.1ポケットの構造 (Karras et al. 2005; Kustatscher et al. 2005) が突然変異型タンパク質では混乱したという証拠を与える。
【0125】
mH2A1.1のフォールディングがe-mH2A1.1ヌクレオソーム複合体内のPARP-1結合のアフィニティーに重要であるならば、e-mH2A1.1のフォールディングの変化はPARP-1結合に影響を与えるべきである。このことを解決するために、我々は、異なったストリンジェント条件下、すなわち150 mM (図18、左パネル) 及び300 mM NaCl (図18、中央パネル)で、野生型(WT)及び突然変異型(Mut)emH2A1.1複合体を精製した。
【0126】
その結果は、目立って、150 mM NaClで単離されたWT及びMut複合体に会合したPARP-1の量が若干異なったことを示している(図18での定量を参照、右パネル)。しかしながら、図は、300 mM NaClで単離された複合体とは完全に異なった(図18、中央のパネル及び定量)。この例では、突然変異型e-mH2A1.1ヌクレオソーム複合体と会合して存在するPARP-1の量は、WT emH2A1.1ヌクレオソーム複合体に会合するPARP-1量の8〜10%を超えなかった(図18、定量)。そのため、300 mM NaClは、ヌクレオソーム複合体内の突然変異型e-mH2A1.1へのPARP-1の結合を強力に混乱させることができた。これは、PARP-1と突然変異型emH2A1.1との弱い相互作用を主張している。このことは、Hsp70.1プロモーターでのin vivoでは、突然変異型e-mH2A1.1と会合するPARP-1の量は、WT e-mH2A1.1と会合するPARP-1の量と比べて小さかっただろうことを示唆している。我々は、これが実際にそのケースであることを見出した(図19)。すなわち、我々は、WT又は突然変異型e-mH2A1.1を安定的に発現するHeLa細胞株から単離されたクロマチンを用いて、抗-PARP-1によるChIP実験、及びQ-PCRを行い、PARP-1-会合Hsp70.1プロモーターの量を定量した。定量は、WTタンパク質を発現する細胞中で見出されたPARP-1に比べて、Hsp70.1プロモーターの15%以下が、突然変異型e-mH2A1.1を発現する細胞中でPARP-1に会合された、ことを示した。総合すると、上記のすべてのデータは、in vitro及びin vivoにおいて、mH2A1.1のフォールディングがPARP-1のクロマチンへの結合に重要であることを証明している。
【0127】
我々は、次いで、突然変異型及び野生型e-mH2A1.1ヌクレオソーム複合体と会合されたPARP-1の自己-ADPリボシル化活性を測定した。2つの複合体は、100 mM NaClを含む緩衝液中で、二重免疫アフィニティー精製によって同一の条件下で単離した(図20)。これらの条件下で、H2A1.1-mut複合体に会合されたPARP-1の相対的な量は、野生型mH2A1.1複合体と会合されたPARP-1量と同一であった(図20)。
【0128】
PARP-1の自己-ADPリボシル化活性を測定するために、会合されたPARP-1の同一量を含む野生型及び突然変異型の複合体は、モノヌクレオソーム及び32P-α-NAD+の存在下でインキュベートした。ポリ(ADP-リボシル)化は、20 mM Tris-HCl、pH 7.8、50 mM NaCl、3mM MgC12、0.5 mM DTT、10 μM {32P}NAD (10 μCi/nmol) (AMERSHAM)、DUBAND-GOULET et al. (Methods, vol.33(1), p:12-7, 2004) に記載にようにして調製した100 ng モノヌクレオソーム、及び100 ng組換えPARP-1 (ALEXIS)、PARP-1と会合された天然型マクロH2A1.1、又はPARP-1と会合された天然のマクロ-H2A1.1突然変異体を含む20 μl反応混合物中でin vitroで行った。ADPリボシル化反応は、37℃で1〜30分間インキュベートし、1% SDSで停止し、直接、12% SDS-PAGEゲルにロードした。
【0129】
その結果は、32P-NAD+存在下でのモノヌクレオソームとの野生型マクロ-H2A1.1複合体のインキュベーションが、PARP-1の非常に低い標識を生じ(図12参照)、我々は、30分のインキュベーション後に標識をほとんど確認できなかった。組換えPARP-1(50 ng)及びモノヌクレオソームの同一量を含む対照は、1分間のインキュベーションの後にPARP-1の非常に強い標識を示した。このことは、マクロ-H2A1.1がPARP-1自己-ADP-リボシル化活性を妨害することを示唆している。マクロH2A1.1突然変異体複合体で行った同一の実験は、32P-NAD+での1分間のインキュベーション後にPARP-1の検出可能な標識を生じ(図12参照)、この標識は、すべての32P-NAD+がADP-リボースポリマーに変換されるまで直線的に増加する。
【0130】
加えて、最初の1分間でのPARP-1標識の程度は、野生型e-mH2A1.1ヌクレオソームと会合されたPARP-1標識の少なくとも37倍であった(図21、定量)。
【0131】
これらの結果は、mH2A1.1とPARP-1との相互作用がPARP-1自己-ADP-リボシル化活性を妨害することを強く示唆している。実際に、突然変異型mH2A1.1のフォールディングが混乱すると(図17及び18)、このことは、突然変異型mH2A1.1とPARP-1との特定の相互作用の混乱を生じることになり(図18)、これは、次に、より高い酵素活性を有する、溶液中に酵素がないものに近い構造をPARP-1に採用させる。組換えPARP-1の自己ADP-リボシル化に関するデータは、このことと一致する。なぜならば、組換えPARP-1の自己-ADPリボシル化の速度論及びその程度はいずれも、突然変異型emH2A1.1と会合されたPARP-1と同様であった(図12、中央のパネルと右パネルとを比較されたい)。最後に、本明細書で使用されるNAD濃度は、生理学的濃度に近く、高度に分岐したPARP-1の形成を許容しない(データ非表示)。
【0132】
e-mH2A1.1モノヌクレオソーム複合体は、PARP-1に加えて、多数の他のタンパク質を含むので、これらのタンパク質の中には、e-mH2A1.1としてPARP-1と相互作用し、その酵素活性を妨害するものもある、という可能性を完全に排除するのは難しい。これを除外するために、我々は、emH2A1.1オクタマー及び会合されたPARP-1を精製し、高度に精製された成分からe-mH2A1.1ヌクオレオソーム-PARP-1を再構成し、会合されたe-mH2A1.1ヌクレオソーム-PARP-1の酵素活性を測定しようとした。これまで、我々は、3つのタグ付きmH2A1.1変異体を安定的に発現する新しいHeLa細胞株を作製した (フラッグ-HA-HIS) 。これは、emH2A1.1ヌクレオソーム複合体からe-mH2A1.1ヒストンオクタマー及びPARP-1の精製を可能にした。すなわち、フラッグ-HA精製モノヌクレオソームは、ヒドロキシアパタイトカラムに吸着させ、0.65 M NaClで洗浄した。0.65 M NaClでのカラムの洗浄は、PARP-1を除いて、結合されたタンパク質のすべてを放出した(図22、レーン3、データ非表示)。これは、PARP-1のe-mH2A1.1ヌクレオソームへの非常に強い結合の証拠である(カラム上の残渣、e-mH2A1.1及びPARP-1は、おおよそ化学量論的な量であり、これは、ヌクレオソームのemH2A1.1の1分子はPARP-1の1分子と複合化され得ることを示唆している、ことに留意されたい)。
【0133】
e-mH2A1.1オクタマー及びPARP-1は、2M NaClを含む緩衝液でカラムから放出し(図22、レーン3)、emH2A 1.1-PARP-1ヌクレオソーム複合体の再構成のために使用した。次いで、再構成されたe-mH2A1.1ヌクレオソームと会合されたPARP-1の自己-ADPリボシル化活性を試験した(図23)。慣用的なヌクレオソーム及び天然のPARP-1を含む溶液(ヒドロキシアパタイトカラム固定化e-mH2A1.1ヌクレオソーム複合体の2M NaClの溶出液から精製した、(図22、レーン4)))は、陽性対照として使用した(図23)。反応は、所定の時間に及び2% SDS-PAGEゲル上にロードされた試料で追跡した。電気泳動の完了後に、自己-ADP-リボシル化PARP-1はオートラジオグラフィーで視覚化した(図23)。32P-α-NAD+の存在下で、in vitroにて再構成されたemH2A1.1ヌクレオソームのPARP-1によるインキュベーションは、その酵素活性の完全な不活性をもたらしたが(図23、レーン2〜5)、一方、慣用的なモノヌクレオソームでインキュベーションしたときには同一のPARP-1は、時間と共に増加し、10〜20分以内に完了した、強いADP-リボシル化活性を示した(図23、レーン6〜9)。更に、100倍超の慣用的ヌクレオソームの存在下で、PARP-1を含むin vitroで再構成されたヌクレオソームのインキュベーションは、PARP-1を再活性化しなかった(データ非表示)。これは、PARP-1とmH2A1.1との特定の相互作用が当該酵素の「不活性化」を決定することを更に確認する。
【0134】
10) マクロH2A1.1のC-末端非ヒストン領域におけるPARP-1結合領域の同定
PARP-1と特異的に相互作用するマクロH2A1.1のドメインを同定するために、我々は、ベイトとして異なった欠損を有する組換えマクロH2A1.1非-ヒストン領域を用いて、GST-プルダウン実験を行った。実験は、先に記載のようにして行った。対照実験として、我々は、ADPリボースの結合を取り除く、G224Eを有する組換えマクロH2A1.1非-ヒストン領域(KUSTATSCHER et al, 2005, 前掲)、及びベイトとしてYBR022w(S. Cerivisiae由来; NP_009578)の組換えマクロドメインを使用した。
【0135】
マクロH2A1.2及びマクロH2A2における対応する結合領域を同定するために、我々はまた、ベイトとして異なった欠損を有する組換えマクロH2A1.2又はマクロH2A2非-ヒストン領域を用いてGST-プルダウン実験を行った。
【0136】
11) PARP-1活性の組換えインヒビター
PARP-1活性の新規インヒビターを同定するために、我々は、マクロH2A1.2、マクロH2A2又はYBR022w (S. Cerivisiae由来; NP_009578) のマクロドメインに融合されたPARP-1に対するマクロH2A1.1結合領域を含むGST融合タンパク質をコードする様々な構築物を作製した。
【0137】
組換えタンパク質は、先に記載のようにして製造し、標準的なプロトコールに従って精製した。
【0138】
我々は、組換えPARP-1(ALEXIS)の存在下に、PARP-1へのマクロH2A1.1結合部位を含む異なったGST融合タンパク質と共に、又は当該タンパク質なしで、ポリ(ADP-リボシル)化アッセイを行った。
【図面の簡単な説明】
【0139】
【図1】図1は、クロマチン局在化(DAPI)に比べて、タグ付きマクロヒストン-H2A1.1(e-MH1.1)及びH2A(e-H2A)を安定的に発現するHeLa細胞、又は発現しないHeLa細胞(対照)で、抗-HA抗体(抗-HA)により得られた免疫蛍光染色を示す。
【図2】図2は、タグ付きH2A(e-H2A)及びマクロヒストンH2A1.1(e-MH1.1)を発現するHeLa細胞由来の精製された核複合体のイムノブロッティング後に、抗-フラッグ抗体により得られたシグナルを示す。
【図3】図3は、タグ付きH2A (H2A com) 及びマクロヒストンH2A1.1 (MH1.1 com)をそれぞれ発現するHeLa細胞の核抽出物から抗-FLAG/HA免疫沈降のポリアクリルアミドゲルを分離する銀染色を示す。質量分析によって同定されたポリペプチドを示す。Mは、M12タンパク質分子量マーカー (INVITROGEN) に対応する。
【図4】図4は、組換えGST (GST)、GST-H2A (H2A)、GST-マクロH2A1.1 (MH1.1) 又はGST-NHR (非ヒストン領域) タンパク質に対する結合(B)フラクション及び結合((U)フラクション中のヒト組換えPARP-1タンパク質を示す。
【図5】図5は、Tap-Chip法の様々なステップを記載する。精製されたクロマチンは、ミクロコッカル・ヌクレアーゼ(Mnase)で消化した。次いで、タグ付きマクロヒストン-H2A1.1を含むヌクレオソームを抗-HA及び抗-FLAG抗体を用いる免疫沈降により精製した。次いで、DNAを精製し、T4 DNAキナーゼでリン酸化した。Taqポリメラーゼを有する断片の3'位置にアデノシンヌクレオチドを加え、得られた断片を最後に更なるシークエンシングのためにプラスミドにクローニングした。
【図6】図6のAは、hsp70-1プロモーター(P)、及びタグ付きマクロヒストン-H2A1.1を安定的に発現するHeLa細胞から免疫沈降クロマチンの1つの抽出物由来のコーディング(C)を用いて得られたPCR増福産物を示す。対照の増幅は、免疫沈降の前にHeLa細胞由来のクロマチンで同一のプライマーを用いて行った(インプット)。レーンMは、分子ラダーに対応する(1,000 pbラダー, INVITROGEN) 。 図6のBは、HeLa細胞におけるhsp70-1遺伝子のプロモーター領域(グレイ色)対コーディング領域(斜線)での、マクロヒストンH2A1.1の相対的な濃縮を示す。 図6のCは、非-トランスフェクトHeLa細胞由来のマクロヒストンH2A1.1免疫沈降クロマチンの1つの抽出物から、hsp70-1プロモーター(p)及びコーディング(C)領域プライマーを用いて得られたPCR増福産物を示す。レーンMは、分子ラダーに相当する(1,000 pbラダー, INVITROGEN)。
【図7】図7のAは、H2A又はマクロヒストンH2A1.1の量、あるいはヒートショック(HS、+)の後の、又はヒートショックなし(-)のHeLa細胞中の、hsp70-1プロモーター対GAPDHプロモーターでのPARP-1の量を示す。各結果は、3つの各々の実験の平均に相当する。 図7のBは、H3又はH3.3ヒストンの量、あるいはヒートショック(HS、+)の後の、又はヒートショックなし(-)のHeLa細胞中の、hsp70-1プロモーター対GAPDHプロモーターでのPARP-1の量を示す。各結果は、3つの各々の実験の平均に相当する。
【図8】図8のAは、ヒートショック(HS、+)の後の、又はヒートショックなし(-)のHeLa細胞におけるhsp70-1プロモーター対GAPDHプロモーターでのADP-リボースの量を示す。各結果は、3つの各々の実験の平均に相当する。 図8のBは、ヒートショック(HS、+)の後の、又はヒートショックなし(-)のHeLa細胞中の、hsp70-1プロモーター対GAPDHプロモーターでのアセチル化H4ヒストンの量を示す。各結果は、3つの各々の実験の平均に相当する。
【図9】図9は、ヒートショック(HS、+)後数分間の、又はヒートショックなし(-)のHeLa細胞中の、及びPARP-1特異的siRNA又は会合しないsiRNA(Scr)にトランスフェクトされたあるいはトランスフェクトされないHeLa細胞中の、PARP-1 30の相対的発現;並びに、マクロH2A1特異的siRNA又は会合しないsiRNA(Scr)でトランスフェクトされたあるいはトランスフェクトされない細胞中のマクロH2A1の相対的発現を示す。
【図10】図10のAは、ヒートショック(HS、+)の後の、又はヒートショックなし(-)のHeLa細胞中での30分間の、リアルタイムPCRによるhsp70-1 mRNA対GAPDH mRNAの相対的発現を示す。当該細胞は、会合しないsiRNA(組換え)、PARP-1特異的siRNA(PARP-1)及びマクロH2A1特異的siRNA(マクロH2A1)でトランスフェクトされたか又はトランスフェクトされなかった。 図の10Bは、マクロH2A1特異的siRNAでトランスフェクトされた(+siRNAマクロ-H2A1)又はsiRNAでトランスフェクトされない(-siRNAマクロ-H2A1)HeLa細胞中のhsp70-1発現対GAPDH発現のリアルタイムPCRによる速度論的分析を示す。当該アッセイは、ヒートショック(HS、+)の10、20又は30分後、又はヒートショック非存在下(-)で、トランスフェクトされた細胞で行った。結果は、3つの各々の実験の平均である。
【図11】図11は、マクロH2A1.1 (NP_613075)、マクロH2A1.2 (NP_004884) 及びマクロH2A2 (NP_061119) マクロドメインと、非-ヒストンタンパク質のマクロドメインから選ばれるドメインとの配列アラインメントを示す。マクロドメインで維持された残基を赤で示す。マクロH2A1遺伝子の代わりのスプライシングによって変更された残基を強調する。この変更された領域は、リン酸基に結合し、ADP-リボース(GDITコンセンサスモチーフ)を加水分解すると予測される。AF 1521は、マクロH2Aのマクロドメインと相同性を有する超高熱硫酸還元古細菌由来のタンパク質である。AF1521は結晶化されている。NP_598908.1は、マウス由来のAF 1521オルソログである。YBR022WPは、もっぱらマクロドメインを有するサッカロマイセス・セレビシエのタンパク質である。 YBR022WPは、1"-ホスホ-ADP-リボースの1"-ホスフェート(phosphat)基をプロセスすることが報告された。
【図12】図12は、32P-NAD+の存在下での、組換えPARP-1、精製マクロH2A1.1複合体(MH1.1)又は精製マクロH2A1.1突然変異体複合体(MH1.1-mut.com)のPARP-1自己-ADP-リボシル化活性の速度論的分析を示す。
【図13】図13は、インプットDNAの割合の関数として、Hsp70.1、Hsp70.2又はHsp70.8プロモーターのプローブでDNA免疫-沈降された量を示す。
【図14】図14は、15〜35%グルセロールグラディエント上での、PARP-1と前記複合体の単離後のe-mH2A1.1複合体との安定的な結合、当該グラディエントの分画、及び4〜12% SDS PAGEでのフラクション(1〜9)のローディングを示す。コアヒストン、e-mH2A1.1及びPARP-1の位置を、図の左部分に示した。Mは分子量マーカーである。
【図15】図15は、12% PAGE及び銀染色での分離後の単離されたe-mH2A1.1複合体(com)(左パネル)、並びに抗-ADPリボース抗体によって明らかにされた複合体のウェスタンブロット(右パネル)を示す。Mは、左に示した分子量を有する分子マーカーである。
【図16】図16は、マクロH2Aと公知のホスホエステラーゼとの配列アラインメントを示す。S.セレビシエ(P53314, 第1列)、シロイヌナズナ(Y11650、第2列)及びヒト(BC006392.1、第3列)ホスホエステラーゼにおける2つの保存的テトラペプチド表記を、ヒトmH2A1.1 (第4列)、ヒトmH2A1.2 (第5列)及びヒトmH2A2 (第6列)と共に示し、配列した。これらのアラインメントは、活性部位に位置するHXTXコンセンサスモチーフ(第8列)の重要性を強調する。このモチーフは、mH21.1(mH2A1.1-mut、第7列)のアラニン(AAAA)に変異した。
【図17】図17は、モノ-ADP-リボースの突然変異型mH2A1.1への変更された結合を示す。組換え野生型(WT)又は突然変異型(Mut)mH2A1.1は、精製して均一にした。両タンパク質の増加量をフィルター上に(2点で)ロードした。次いで、1つのフィルターを32P-ADP-リボースでインキュベートし(上パネル)、他のフィルターは、等しいローディング用の対照としてクマシーブルーで染色した(下パネル)。
【図18】図18は、イオン強度の増加は、ヌクレオソーム複合体から突然変異体を放出したが、WT e-mH2A1.1タンパク質を放出しなかったことを示す。野生型 (WT) 及び突然変異型mH2A1.1ヌクレオソーム複合体は、150 mM NaCl (左パネル) 又は300 mM NaCl (右パネル) を用いて、WT又は突然変異型e-mH2A1.1を安定的に発現する細胞株を単離した。複合体は、SDSを含む4〜12% PAGEグラディエントに付し、次いで銀染色した。emH2A1.1及びPARP-1の位置を示す。Mは、タンパク質分子量マーカーである。右パネルは、それぞれ150 mM及び300 mM NaClで単離されたWT及び突然変異型emH2A1.1複合体内の(ヒストンH1に対する)PARP-1の定量を示す。300 mM NaClで単離された突然変異型mH2A1.1複合体内のPARP-1の量が劇的に減少したことに留意されたい。
【図19】図19は、野生型(WT)又は突然変異型e-mH2A1.1 (mH2A1.1-Mut) を発現する、ヒートショックなし(HS:-)の又はヒートショック(42℃で30分間;HS:+)された安定細胞株中でのHsp70.1プロモーターとin vivoで結合したPARP-1の量を示す。細胞株は、ホルムアルデヒドで処理してタンパク質をDNAに架橋させ、抗-PARP-1抗体を用いてChIPを行った。リアルタイムPCRで増幅されたHsp70.1プロモーターDNA断片の量は、インプットDNAの割合を表す。
【図20】図20は、PARP-1酵素活性の測定のための、精製された野生型マクロH2A1.1 (e- mH2A1.1) 及び突然変異体 (e-mH2A1.1-mut) ヌクレオソームの銀染色を示す。複合体は、100 mM NaClを用いて単離した。PARP-1、e-mH2A1.1及び慣用的コアヒストンに対応するバンドを示す。Mは、タンパク質分子量マーカーである。
【図21】図21は、図12で示したデータの定量化を示す。
【図22】図22は、精製されたe-mH2A1.1オクタマー及び結合されたPARP-1の12% SDS-PAGEを示す。e-mH2A1.1ヌクレオソーム複合体は、ヒドロキシアパタイトカラムにロードし、0.65 M NaClで洗浄後に、残りのタンパク質を2MのNaCl緩衝液で溶出した。ヒストンオクタマーからPARP-1を精製するために、2M NaCl溶出液を1 M尿素で補足し、アガロース-ニッケルカラムを通過させた。レーン3は、2M NaCl溶出液のタンパク質組成物である。レーン4は、精製されたPARP-1である。レーン1及び2は、対照としての、分子量マーカー及び慣用的なヒストンオクタマーである。
【図23】図23は、精製されたe-mH2A1.1コアヒストン(レーン6〜9)又は慣用的なコアヒストン(レーン2〜5)を含むin vitroで再構成されたヌクレオソームと会合されたPARP-1の速度論的分析を示す。試料を32P-NAD+でインキュベートし、SDSを含む12% PAGEに付した。レーン1は、32P-NAD+のみを含む。
【図24】図24は、siRNAによるmH2A1の発現のサプレッションが、Hsp70.1プロモーターと会合されたPARP-1の量をダウンレギュレートすることを示す。対照非-処理(-siRNA-mH2A1)及びsiRNA-処理 (+siRNA-mH2A1) HeLa細胞は、ホルムアルデヒドで架橋し、抗-PARP-1抗体を用いてChIP用に使用した。DNAを2つのChIP試料から単離し、Hsp70.1プロモーターに特異的なプライマーを用いて、リアルタイムPCR増幅に供した。
【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸酵素ポリ(アデノシン5'-ジホスホ-リボース)ポリメラーゼ[すなわち「ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ」又は「PARP」、それらは時には、ポリ(ADP-リボース)シンテターゼとも称される]の新たなインヒビターに関する。より具体的には、本発明は、ネクローシス又はアポトーシスに起因する細胞損傷又は細胞死から起こる組織損傷、虚血及び再潅流傷害から起こる神経組織損傷、神経疾患及び神経変性疾患を予防及び/又は治療するための;血管性卒中を予防又は治療するための;心臓疾患を予防又は治療するための;加齢による黄斑変性症、AIDS及びその他の免疫老化疾患、関節炎、アテローム性動脈硬化症、悪液質、癌、細胞老化に関連する骨格筋の変性疾患、糖尿病、頭部外傷、免疫老化、炎症性腸疾患(例えば、大腸炎及びクローン病)、筋ジストロフィー、変形性関節症、骨粗鬆症、慢性及び急性疼痛(例えば、神経障害性の痛み)、腎不全、網膜虚血、敗血性ショック(内毒素性ショック)、及び皮膚加齢を治療するための;細胞寿命及び増殖能力を拡げるための;老化細胞の遺伝子発現を変更するための;あるいは低酸素腫瘍細胞に放射線を増感させるための、PARPインヒビターの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(「PARP」)は、筋肉、心臓及び脳の細胞を含む様々な臓器の細胞の核に存在する酵素である。PARPは、DNAのストランドの修復に生理的役割を果たしている。損傷されたDNA断片によって一旦活性化されると、例えば、化学療法、イオン化放射線、酸素無しラジカル、又は酸化窒素(NO)への曝露の後では、PARPは、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)からのADP-リボース単位の、核受容体タンパク質への転移を触媒し、タンパク質-結合型直線及び分岐状ホモ-ADP-リボースポリマーの形成の原因である。PARPの活性化は、ヒストン、トポイソメラーゼ、DNA及びRNAポリメラーゼ、DNAリガーゼ、Ca2+-及びMa2+-依存型エンドヌクレアーゼ、及びPARP自体を含む様々な核タンパク質への最大100 ADP-リボースの結合を生じる。PARPの機能の正確な範囲は十分に確立されていないが、この酵素は、DNA修復を亢進し、DNAを完全な状態で維持する点で役割を果たすと考えられる。
【0003】
しかしながら、主な細胞ストレスの間に、PARPの広い活性化は、エネルギー貯蔵の枯渇による細胞損傷又は細胞死を急激にもたらすことができる。ATPの4つの分子は、再生されたNAD(ADP-リボーズのソース)のすべての分子について消費される。従って、NAD、すなわちPARPの基質は、大規模なPARP活性化によって枯渇し、NADを再合成するための取り組みにおいて、ATPも枯渇されることがある。
【0004】
PARP活性化は、当該酵素のインヒビターのようなインヒビターの能力に比例して皮質培養物(ZHANG et al, Science, vol.263, p:687-89, 1994)、及び海馬スライス(WALLIS et at, NeuroReport, vol.5(3), p:245-48, 1993)における毒性を抑制するための、PARPインヒビターの使用によって明らかなように、NMDA-及びNO-誘導神経毒性において重要な役割を果たす、ことが報告されている。よって、神経変性疾患及び頭部外傷の治療におけるPARPインヒビターの潜在的な役割は、知られている。しかしながら、研究は、脳虚血(ENDRES et al, J. Cereb. Blood Flow Metabol, vol.17, p:1143-51, 1997)及び外傷的脳損傷 (WALLIS et al, Brain Res., vol.710, p:169-77, 1996) におけるその有益な効果の正確なメカニズムを正確に指摘し続けている。
【0005】
PARPインヒビターは、加えて、心臓病を治療するために有用である。虚血は、身体の一部分における酸素及びグルコースの欠乏であり、その部位に供給する血管の閉塞、又は大量出血によって起こり得る。2つの重度の形態、すなわち心臓麻痺及び卒中は、先進国世界での主な死因である。細胞死は直接的に生じ、問題の部位が再潅流されたときにも生じる。PARPインヒビターの単回注入は、ウサギの心臓又は骨格筋の虚血及び再潅流によって起こる閉塞サイズを小さくすることが証明されている。これらの研究では、閉塞前の1分又は再潅流前の1分のいずれかのPARPインヒビター、3-アミノ-ベンザミド (10 mg/kg) の単回注入は、心臓の閉塞サイズを同様に減少させた(32〜42%)。別のPARPインヒビター、1,5-ジヒドロキシイソキノリン (1 mg/kg) は、匹敵する程度で閉塞サイズを減少させた(38〜48%; THIEMERMANN et al, Proc. Natl. Acad. Sci USA, vol.94, p:679-83, 1997) 。この発見は、PARPインヒビターが先の虚血心臓又は骨格筋組織を救うことができるかもしれないことを示唆している。現在、PARPインヒビターは、虚血/再潅流損傷を治療するために開発されている(ZHANG, The Prospect for Improved Medicines, Ashley Publications Ltd, 1999)。
【0006】
PARP活性化はまた、卒中、アルツハイマー病及びパーキンソン病のような病的症状に関与する、(NMDA受容体刺激による)グルタミン酸塩、反応性酸素中間体、アミロイドベータ-タンパク質、N-メチル-4-フェニル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン(MPTP)、及びその活性代謝物であるN-メチル-4-フェニルピリジン(MPP+)による神経毒傷害に次いで起こる損傷兆候を提供することが明らかになっている(ZHANG et al, J. Neurochem., vol.65(3), p: 1411-14, 1995)。他の研究は、in vitro及びMPTP神経毒性における小脳顆粒のPARP活性化の役割を研究し続けた(COSI et al, Ann. N. Y. Acad ScL, vol.825, p:366-79, 1997; COSI et al, Brain Res., vol.729, p:264-69, 1996)。
【0007】
卒中及び他の神経変性プロセスに次ぐ神経損傷は、N-メチル-D-アスパラギン酸塩(NMDA)受容体及び他のサブタイプ受容体に対して作用する、刺激的な神経伝達物質グルタミン酸塩の大量放出から起こる結果であると考えられる。グルタミン酸塩は、中枢神経系(CNS)の支配的な刺激的神経伝達物質として働く。神経は、卒中又は心臓麻痺のような虚血脳傷害の間に起こることがある、酸素が欠乏したときに大量にグルタミン酸塩を放出する。次にグルタミン酸塩の過剰な放出は、N-メチル-D-アスパラギン酸塩(NMDA)、AMPA、カイニン酸及びMGR受容体の過剰-刺激(刺激的毒性)を起こす。グルタミン酸塩は、これらの受容体、これらの細胞膜を越えてイオンの流れを可能にする受容体オープンでのイオンチャネル、例えば細胞へのCa2+及びNa+、及び細胞からのK+、に結合する。これのイオンの流れ、特に、Ca2+の流入は、神経の過剰刺激を起こす。過剰-刺激神経は、より多くのグルタミン酸塩を分泌し、プロテアーゼ、リパーゼ及び遊離のラジカルの産生によって最後には細胞損傷又は細胞死を起こす、フィードバックループ又はドミノ効果を生じる。グルタミン酸塩の過剰活性化は、癲癇、卒中、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、ハンチントン病、統合失調症、慢性疼痛、虚血、並びに低酸素症、低血糖症、虚血、外傷及び神経傷害に次ぐ神経喪失を含む様々な神経疾患及び症状に関連している。近年の研究はまた、強迫疾患、特に薬物依存、のためのグルタミン酸作動性根拠を前進させている。グルタミン酸受容体アンタゴニストが血管性卒中に次ぐ神経損傷を遮断するという証拠は、多くの動物種、及びグルタミン酸塩又はNMDAで処理した脳皮質培養物における発見を含む(DAWSON et al, H. Hunt Batjer ed, p:319-25, 1997)。NMDA、AMPA、カイニン酸及びMGR受容体を遮断することによって刺激性毒性を抑制する試みは、各受容体がグルタミン酸塩が結合することがある複数の部位を有するので、困難であることが判明した。受容体を遮断する点で効果的である組成物の多くは、動物に対して毒性でもある。そういうわけで、グルタミン酸異常に対して効果的な治療は知られていない。
【0008】
NMDA受容体の刺激は、次に、酸化窒素(NO)の形成を引き起こし、神経毒性をより直接的に仲介する、酵素神経酸化窒素レダクターゼ(NNOS)を活性化する。NMDA神経毒性に対する保護は、NOSインヒビターを用いる治療に従って起こった(DAWSON et al, Proc. Natl. Acad. Sci USA, vol.88, p:6368-71, 1991; DAWSON et al, J. Neuroscl, vol.l3(6), p:2651-61, 1993)。NMDA神経毒性に対する保護は、NNOSの標的破壊を有するマウス由来の皮質培養物でも生じ得る(DAWSON et al, J. Neuroscl, vol.l6(8), p:2479-87, 1996)。
【0009】
血管卒中に次ぐ神経損傷は、NOSインヒビターで処置された動物又はNNOS遺伝子破壊を有するマウスにおいて顕著に減少することが知られている(IADECOLA, Trends Neuroscl, vol.20(3), p:132-39, 1997; HUANG et al, Science, vol.265, p:1883-85, 1994; BECKMAN et al, Biochem. Soc. Trans., vol.21, p:330-34, 1993)。NO又はペルオキシニトリルのいずれかは、PARPを活性化するDNA損傷を引き起こし得る。このことについての更なる支持は、SZABO等において提供される (Proc. Natl. Acad. Sci USA, vol.93, p: 1753-58, 1996) 。
【0010】
PARPインヒビターはDNA修復に一般的に影響を及ぼすことも知られている。CRISTOVAO等 (Terato., Carcino., and Muta., vol.16, p:219-27, 1996) は、PARPの強力なインヒビターである3-アミノベンズアミドの存在下及び非存在下で、DNA鎖切断に与える過酸化水素及びガンマ-放射線の影響を議論している。CRISTOVAO等は、過酸化水素で処理した白血球におけるDNA鎖切断のPARP-依存的回復を観察した。
【0011】
PARPインヒビターが、炎症性症状、例えば、炎症性腸疾患(SOUTHAN et al, Br. J. Pharm., vol.117, p:619-32, 1996; SZABO et al, J. Biol. Chem., vol.272, p:9030-36, 1997)、又は関節炎(SZABO et al, Portland Press Proc, vol.15, p:280-281, 1998; SZABO, Eur. J. Biochem., vol.350(1), p:1-19, 1998; SZABO et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, vol.95(7), p:3667-72, 1998; SZABO et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, vol.93, p:1753-58, 1996; BAUER et al, Intl. J. Oncol, vol.8, p:239-52, 1996; HUGHES et al, J. Immuno., vol.153, p:3319-25, 1994)を治療するために有用であるという証拠も存在する。従って、SALZMAN等(Japanese J. Pharm., vol.75 (Supp. I), p:15, 1997)は、PARP活性の特定のインヒビターである3-アミノベンズアミドが、炎症性反応を減少させ、ハプテントリニトロベンゼンスルホン酸の50%エタノール溶液の管腔内投与によって引き起こされた大腸炎に罹ったラットの末梢性結腸の形態及びエネルギー性状態を元に戻した、ことを明らかにしている。別の例としては、SZABO等(Japanese J Pharm., vol.75 (Supp. I), p:102, 1997)は、コラーゲン-誘導関節炎を予防又は治療するPARPインヒビターの能力を考察している。
【0012】
更に、PARPインヒビターは、糖尿病を治療するために有用であると考えられ、感受性のある個体においてインシュリン-依存型糖尿病の発症を抑制するために臨床レベルで研究されてきた(SALDEEN et al, Mol Cellular Endocrinol, vol.139, p: 99-107, 1998)。膵臓ランゲルハンス島細胞を崩壊するストレプトゾトシン及びアロキサンのような毒素によって引き起こるI型糖尿病のモデルでは、PARP欠損ノックアウトマウスが細胞破壊及び糖尿病発症に抵抗性であることが明らかになっている(PIEPER et al, Trends Pharmacolog. Sci, vol.20, p:171-181, 1999; BURKART et al, Nature Medicine, vol.5, p:314-319, 1999)。ニコチンアミド、弱PARPインヒビター及びフリーラジカルスキャベンジャーの投与は、自発的な自己免疫糖尿病モデル、非-肥満の糖尿病マウスにおいて糖尿病の発症を抑制する(PIEPER et al, 1999, 前掲)。従って、強力かつ特定のPARPインヒビターは、糖尿病-予防治療法として有用であろう。
【0013】
更になお、PARPインヒビターは、内毒素性ショック又は敗血症性ショックを治療するために有用であることが明らかになっている(ZINGARELLI et al, Shock, vol.5, p:258-64, 1996; CUZZOCREA, Brit. J. Pharm., vol.122, p:493-503, 1997)。ZINGARELLI等は、ポリ(ADPリボース)シンテターゼによって誘発されるDNA修復サイクルの阻害は、内毒素性ショックにおける血管性障害に対して保護効果を有する、ことを示唆している。ZINGARELLI等は、ニコチンアミドが内毒素性ショックにおける遅延型NO-介在性血管性障害を保護することを見出した。ZINGARELLI等はまた、ニコチンアミドの作用が、ポリ(ADP-リボース)シンテターゼによって誘発される、エネルギー-消費DNA修復サイクルのNO-介在活性化の阻害に関連することがある、ことを見出した。
【0014】
PARPインヒビターのために他に知られている使用は、癌を治療することである。事実、この細胞性ADP-リボース転移プロセスは、放射線治療又は化学療法によって起こるDNA損傷に対する反応におけるDNA鎖切断の修復と関連しているので、PARP活性は、様々な種類の癌治療に対して頻繁に発症する抵抗性の原因となり得る。結果的に、PARPの阻害は、細胞内DNA修復を遅らせ、癌治療の抗腫瘍効果を亢進することがある。実際に、in vitro及びin vivoのデータは、多くのPARPインヒビターが、電離放射線(米国特許第5,032,617号明細書; 同第5,215,738号明細書; 同第5,041,653号明細書; 同第5,177,075号明細書)又は細胞毒、例えばアルキル化剤(WELTIN et al, Oncol. Res., vol.6(9), p:399-403, 1994)の効果を可能にすることを示している。従って、PARP酵素のインヒビターは、付加的な癌化学療法剤として有用である。
【0015】
PARPインヒビターのための更に別の使用は、末梢神経損傷、及び神経障害性の痛みとして知られている結果的な病的疼痛症候群の治療である。例えば、一般的な坐骨神経の慢性収縮性損傷(CCI)によって起こるものであり、そこでは、細胞質及び核質の血色素増加によって特徴付けられる脊髄後角の経シナプス変化(いわゆる「ダーク」ニューロン)が起こっている(MAO et al, Pain, vol.72, p:355-366, 1997)。
【0016】
PARPインヒビターはまた、皮膚加齢(米国特許第5,589,483号明細書)、アルツハイマー病、アテローム性動脈硬化症、変形性関節症、骨粗鬆症、筋ジストロフィー、複製老化を含む骨格筋の変性疾患、加齢による黄斑変性症、免疫老化、AIDS及び他の免疫老化疾患のような疾患の治療を含む細胞の寿命及び増殖性能を拡げるために;並びに老化細胞の遺伝子発現を変更するために使用されていきた。
【0017】
膨大なPARPインヒビターが記載されてきた。例えば、BANASIK等 (J Biol. Chem., vol.267(3), p: 1569-75, 1992) は、100超の化合物のPARP-阻害活性を試験し、それらのほとんどは、4-アミノ-1,8-ナフタルイミド、6(5H)-フェナンスリドン、2-ニトロ-6(5H)-フェナンスリドン、及び1,5-ジヒドロキシイソキノリンであった。GRIFFIN等は、あるベンズアミド化合物(Anti-Cancer Drug Design, vol.10, p:507-514, 1995; 米国特許第5,756,510号明細書)、ベンズイミダゾール化合物 (WO 97/04771) 及びキナロジノン化合物 (WO 98/33802) のPARP-阻害活性を報告した。SUTO等は、あるジヒドロイソキノリン化合物によるPARP阻害を報告した(Anti-Cancer Drug Design, vol.7, p: 107-117, 1991)。GRIFFIN等は、キナゾリン類の他のPARPインヒビターを報告している(J Med. Chem., vol.41, p:5247-5256, 1998)。最後に、WO 99/11622、WO 99/11623、WO 99/11624、WO 99/11628、WO 99/11644、WO 99/11645及びWO 99/11649も、様々なPARP-阻害化合物を記載している。
【0018】
しかしながら、上記の方法におけるこれらのPARPインヒビターを用いるアプローチは、効果が限定されていた。例えば、周知のPARPインヒビターの中には副作用が観察されたものもあった(MLAM et al., Science, vol.223, p:589-91, 1984)。特に、PARPインヒビターである3-アミノベンズアミド及びベンズアミドは、PARPの作用を阻害するだけでなく、細胞生存、グルコース代謝及びDNA合成に影響を与えることが明らかとなった。従って、これらのPARPインヒビターの有用性は、更なる代謝的効果を生じることなく酵素を阻害するだろう用量を見つける難しさによって厳しく制限されることがある、と結論付けられた。
【0019】
従って、より特異的にPARP活性を阻害する化合物、これらの化合物を含む組成物、及び当該化合物を利用する方法の必要性、ここで、当該化合物は、PARP活性を阻害し、及び本明細書で考察された疾患及び症状を治療することに関して、より少ない副作用を有するより強力かつ信頼性のある効果を生じる、が依然として存在する。
【0020】
マクロヒストンH2A1及びマクロヒストンH2A2は、H2Aと高い配列相同性を有するN-末端領域を有する特に不可解なヒストンであり、タンパク質(25 kDa)の約3分の2を含む広域の非ヒストンC-末端テールを含む。ヒトゲノムは、マクロヒストンH2Aをコードする2つの遺伝子を含む。マクロH2A1遺伝子は、選択的スプライシングによって作製される2つのサブタイプMACR0H2A1.1及びMACROH2A1.2をコードする。第2の遺伝子は、マクロH2A2をコードする(CHADWICK and WILLARD, Human. Mol. Genet, vol.10, p:1101-1113, 2001)。これらのタンパク質は、雌の哺乳動物における不活性なX染色体(Xi)のようなヘテロクロマチンに豊富に存在し(COSTANZI and PEHRSON5 Nature, vol.393, p:599-601, 1998)、老化及び静止細胞における別個の異質染色質遺伝子座であるようである(ZHANG et al, Dev. Cell, vol.8, p:19-30, 2005; GRIGORYEV et al, J. Cell Sci, vol.117, p:6153-6162, 2004)。マクロH2Aは、Xi及びバー小体と一致し(COSTANZI and PEHRSON, 前掲, 1998)、マクロクロマチン体(MCB)と称される明確な核小体として雌の細胞に高い割合で存在する。マクロH2AのC-末端領域は、「マクロドメイン」と称されるドメインを含み、これは、他に関連しない多数のタンパク質において単独で又は複数のコピーで見出され(PEHRSON and FUJI, Nuc. Acids Res., vol.26, p:2837-2849, 1998)、マクロH2A MCB形成のために重要である(CHADWICK et al, Nuc. Acids Res., vol.29(13), p:2699-2705, 2001)。このマクロドメインは、ADPリボース誘導体に作用するホスホエステラーゼのスーパーファミリーを定義することが示唆されている(ALLEN et al., J. MoI Biol, vol.330, p:503-511, 2003)。近年、KUST ATSCHER等 (Nat. Struct. MoI Biol, vol.12(7), p:624-5, 2005) は、マクロH2A1.1が、モノマー性ADP-リボース及びO-アセチル-ADP-リボース(NAD代謝物)に結合することを明らかにしている。筆者は、O-アセチル-ADP-リボース結合のための重要な残基として、Phe348、Asp203、Gly224及びGly314を定義する。それにもかかわらず、特定のマクロH2A機能は依然として知られていない。
【発明の開示】
【0021】
発明の概要
本発明の核酵素ポリ(アデノシン5'-ジホスホ-リボース)ポリメラーゼであるポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)のインヒビターは、ホスホエステラーゼ活性を有し、場合により、少なくとも1つの非相同配列に融合された及び/又は結合された、マクロヒストンH2AのC-末端非-ヒストンドメインから得られるアミノ酸配列を有する。
【0022】
本明細書で使用される「ホスホエステラーゼ活性」は、ホスホジエステル化合物の2つのエステル結合の1つの加水分解の触媒反応を意味する。
【0023】
別の実施態様では、本発明の組成物は、(i)ホスホエステラーゼ活性を有し、場合により、少なくとも1つの非相同配列に融合された及び/又は結合された、マクロヒストンH2AのC-末端非-ヒストンドメインから得られるアミノ酸配列を含む、核酵素ポリ(アデノシン5'-ジホスホ-リボース)ポリメラーゼであるポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)のインヒビター、それをコードする核酸、又は当該核酸を含むベクター、並びに(ii)薬学的に許容されるビヒクル、を含む。
【0024】
更なる実施態様では、PARP活性化と関連する疾患に罹った対象の予防的又は治療的処置の方法は、以下のステップ:
(i)ホスホエステラーゼ活性を有し、場合により、少なくとも1つの非相同配列に融合された及び/又は結合された、マクロヒストンH2AのC-末端非-ヒストンドメインから得られるアミノ酸配列を含む、核酵素ポリ(アデノシン5'-ジホスホ-リボース)ポリメラーゼであるポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)のインヒビター、それをコードする核酸、又は当該核酸を含むベクター、並びに(ii)薬学的に許容されるビヒクルを含む組成物の有効量を当該対象に投与すること、を含む。
【0025】
詳細な説明
本発明者らは、マクロヒストンH2AがそのC-末端非-ヒストンドメインによってPARP-1に特異的に結合し、その結果、そのマクロドメインのホスホエステラーゼ活性によってPARP-1活性を抑制することができることを発見した。
【0026】
本発明は、核酵素ポリ(アデニン5'-ジホスホ-リボース)ポリメラーゼであるポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)を阻害する新規のツール、及びPARP活性化関連疾患を治療及び/又は抑制するための方法を提供する。
【0027】
従って、1つの局面では、本発明は、ホスホエステラーゼ活性を有し、場合により、少なくとも1つの非相同配列に融合された及び/又は結合された、マクロヒストンH2AのC-末端非-ヒストンドメインから得られるアミノ酸配列を含む、核酵素ポリ(アデノシン5'-ジホスホ-リボース)ポリメラーゼであるポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)のインヒビターに関する。
【0028】
有利なことには、上記インヒビターは、合成又は組換えポリペプチドである。
【0029】
本明細書で用いる用語「マクロヒストンH2A」は、大きなC-末端非-ヒストンドメインを有する珍しいヒストンH2A変異体に関する(レビューとして、PERCHE et al., Med. Set, vol.19(11), p:1137-45, 2003を参照)。実際に、かかるC-末端非-ヒストンドメインを有する3つのヒトマクロヒストンH2Aが同定された:単一遺伝子から選択的スプライシングによって作製されたマクロH2A1.1及びマクロH2A1.2、並びにマクロH2A2。
【0030】
本明細書で用いる用語「C-末端非-ヒストンドメイン」は、ヒストンH2Aと相同性を有しないマクロヒストンH2Aの大きなC-末端部位に関する。当該非-ヒストンドメインは、簡易な配列分析によって当業者により同定され得る。例えば、当該非-ヒストンドメインは、ヒトマクロH2A1.1(配列番号1)の残基121〜369、ヒトマクロH2A1.2(配列番号2)の残基121〜371、及びヒトマクロH2A2(配列番号3)の残基121〜372に相当する。
【0031】
有利なことに、マクロヒストンH2AのC-末端非-ヒストンドメインは、マクロH2A1.1、マクロH2A1.2及びマクロH2A2ヒストンのC-末端非-ヒストンドメインを含む群より選ばれ、好ましくは、ヒトマクロヒストンH2A1.1、マクロヒストンH2A1.2及びマクロヒストンH2A2のC-末端非-ヒストンドメインである。好ましくは、当該C-末端非-ヒストンドメインは、マクロH2A1.1のC-末端非-ヒストンドメインに相当する。
【0032】
本明細書で用いる「非相同配列」は、マクロH2A1.1、マクロH2A1.2及びマクロH2A2のようなマクロヒストンH2A変異体から得られない任意のアミノ酸配列に関する。この非相同配列は、例えば、外側の媒体から細胞内媒体への本発明のインヒビターの浸透を促進し、細胞の核内にかなり特異的に浸透させる、アミノ酸配列からなることができる。かかるアミノ酸配列は、当業者には周知であり、かかるアミノ酸の例は、EP 1512696、WO 02/10201、EP 15226183及びWO 2004/069279に記載されている。この非相同配列は、例えば、細菌からのインヒビターの精製を促進することもできる。かかるアミノ酸配列はまた、当業者に周知であり、かかるアミノ酸配列の例は、Hisタグ、GSTタンパク質、FLAGタグ、及びHAタグを含む。
【0033】
ヒトマクロH2A1.1 (配列番号1のアミノ酸121〜367)、ヒトマクロH2A1.2 (配列番号2のアミノ酸121〜371)、及びヒトマクロH2A2 (配列番号3のアミノ酸121〜372) のC-末端非ヒストンドメインを含む群より選ばれるマクロヒストンH2AのC-末端非ヒストンドメイン「から得られる」アミノ酸配列、又はその「誘導体」は、当該C-末端非-ヒストンドメイン又はその断片と、60%超、例えば、70%超又は80%超、好ましくは85%超、最も好ましくは90%超、及び有利には95%超の同一性を有するアミノ酸配列に関する。
【0034】
上記のC-末端非ヒストンドメインと、本発明のインヒビターのアミノ酸配列との同一性の差は、当該インヒビターのアミノ酸配列におけるアミノ酸置換から起こる。
【0035】
好ましくは、これらのC-末端非-ヒストンドメインの置換アミノ酸(複数)は、当該ドメインのホスホエステラーゼ活性を維持し又は増加させる。かかる置換は、一般的な知識の点で及び/又は簡易な実験によって当業者によって同定され得る。好ましくは、当該置換は、マクロヒストンH2AのC-末端非-ヒストンドメイン中の対応する残基に関連するものと、同一の電荷、疎水性(hydophopathy)、立体障害及び/又は化学的機能を有するアミノ酸残基に対応する。
【0036】
具体的な実施態様によれば、当該アミノ酸配列は、前記マクロH2A C-末端非-ヒストンドメイン又はその断片と100%の同一性を有する。
【0037】
有利なことには、マクロヒストンH2Aの非-ヒストンドメインから得られる前記アミノ酸配列は、350アミノ酸長未満、好ましくは300アミノ酸長未満、例えば、250アミノ酸長未満又は200アミノ酸長未満、及びより好ましくは150アミノ酸長未満である。
【0038】
好ましい実施態様によれば、マクロヒストンH2Aの非-ヒストンドメインから得られる前記アミノ酸配列は、ヒストンH2Aとの相同性を有するマクロヒストンH2Aフォールドドメインを含まず(LUGER et al., Nature, vol.389 (6648), p: 251-260, 1997、本明細書に文献として援用されている)、好ましくは、当該アミノ酸配列は、ヒストンH2Aと相同性を有する配列を含まない。
【0039】
有利なことに、前記アミノ酸配列は、ヒストンフォールドドメインを含まない。
【0040】
有利なことに、マクロヒストンH2Aの非-ヒストンドメインから得られる前記アミノ酸配列は、20アミノ酸長を超え、好ましくは25アミノ酸長を超え、例えば、35アミノ酸長を超え又は50アミノ酸長を超え、及びより好ましくは60アミノ酸長を超える。
【0041】
好ましい実施態様によれば、マクロヒストンH2Aの非-ヒストンドメインから得られる前記アミノ酸配列は、マクロヒストンH2Aのマクロドメインを含む。
【0042】
本明細書で使用する用語「マクロドメイン」は、マクロヒストンH2AのC-末端非-ヒストンドメインに存在する領域に関し、これは、多数の他の関連しないタンパク質において単独又は複数のコピーで見出される(PEHRSON and FUJI, 1998, 前掲 ; ALLEN et al., 2003, 前掲)。当該マクロドメインはまた、簡易な配列分析を用いて当業者により簡便に同定され得る。例えば、当該マクロドメインは、ヒトマクロH2A1.1 (配列番号1)の残基184〜369、好ましくは残基202〜369、ヒトマクロH2A1.2 (配列番号2)の残基183〜371、好ましくは残基201〜371、及びヒトマクロH2A2 (配列番号3)の残基184〜372、好ましくは残基202〜372に相当する。当該マクロドメインは、ホスホエステラーゼ活性の重要な残基を含み、その中には、以下の実施例及びKUSTATSCHER等(2005、上記、本明細書に文献として援用されている)で同定されている。ホスホエステラーゼ活性の潜在的に重要な残基の中には、ALLEN等(2003、前記、本明細書に文献として援用されている)により記載されたAF 1521ファミリーのマクロドメイン中の保存的残基として同定され得るものもある。最後に、当該マクロヒストンH2Aのマクロドメインは、KARRAS等(EAdBO journal, vol.24(11), p: 1911-1920, 2005: 図6A及びB参照)に記載されたADP結合ドメインである可能性がある。
【0043】
第2の局面では、本発明は、上記のインヒビターをコードする核酸に関する。
【0044】
前記核酸は、RNA又はDNA、好ましくはDNAに相当する。
【0045】
具体的な実施態様によれば、インヒビターをコードする核酸は、原核細胞又は真核細胞、好ましくは真核細胞内の核酸の発現を支持する、遺伝子発現配列に作動可能に連結される。「遺伝子発現配列」は、任意の制御ヌクレオチド配列、例えば、プロモーター配列又はプロモーター-エンハンサーの組合せである。それは、インヒビターの効率的な転写及び複製を促進し、核酸が作動可能に連結されている。遺伝子発現配列は、例えば、哺乳動物又はウイルスのプロモーター、例えば構成的又は誘導型プロモーターでよい。構成的な哺乳動物のプロモーターは、以下の遺伝子のプロモーターを含むがこれらに限定されない:ヒポキサンチン・ホスホリボシル・トランスフェラーゼ(HPTR)、アデノシン・デアミナーゼ、ピルビン酸キナーゼ、ベータ-アクチンプロモーター、筋肉クレアチンキナーゼプロモーター、ヒト伸張因子プロモーター、及び他の構成的なプロモーター。真核細胞内で構成的に機能するウイルスプロモーターの例は、例えば、シミアンウイルス(例えば、SV40)、パピローマウイルス、アデノウイルス、ヒト免疫不全症候群ウイルス(HIV)、サイトメガロウイルス(CMV)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、モロニーマウス白血病ウイルスの端末の長い反復配列(LTR)、及び他のレトロウイルス由来のプロモーター、並びにヘルペス単純ウイルスのチミジンキナーゼプロモーターを含む。他の構成的プロモーターは、当業者に知られている。本発明の遺伝子発現配列として有用なプロモーターもまた、誘導型プロモーター、例えばストレス条件下で誘導可能なプロモーターを含む。誘導型プロモーターは、誘導剤の存在下で発現される。例えば、hsp70-1プロモーターは、ヒートショックの後の転写及び翻訳を促進するために誘導される。他の誘導型プロモーターは、当業者に公知である。
【0046】
一般的に、遺伝子発現配列は、必要ならば、それぞれ、転写及び翻訳の開始と関連する5'非-転写配列及び5'非-翻訳配列、例えば、TATAボックス、キャッピング配列、CAAT配列等を含む。特に、このような5'非-転写配列は、作動可能に結合された抗原核酸の転写制御のためのプロモーター配列を含むプロモーターを含むだろう。遺伝子発現配列は、場合により、所望のエンハンサー配列又は上流のアクチベーター配列を含む。好ましくは、遺伝子発現配列は、細胞の核への本発明のインヒビターの転座を促進するために、当該インヒビターをコードする核酸配列に融合された核局在化シグナル(NLS)を含む。NLS配列は、当業者に周知である。
【0047】
本明細書で用いる、インヒビター核酸配列及び遺伝子発現配列は、遺伝子発現配列の影響又は制御下でインヒビターコーディング配列の発現あるいは転写及び/又は翻訳をセットするような方法で共有結合的に連結されるときに、「作動可能に連結される」と言われている。2つのDNA配列は、5'遺伝子発現配列にけるプロモーターの誘導がインヒビター配列の転写を生じる場合、及び2つのDNA配列間の結合の性質が、(1)フレーム-シフト突然変異の導入を起こさず、(2)インヒビター配列の転写を方向付けるプロモーター領域の能力を妨害せず、又は(3)タンパク質に翻訳される対応するRNA転写物の能力を妨害しない場合には、2つのDNA配列は、作動可能に連結されると言われる。従って、遺伝子発現配列が、得られた転写物が所望のタンパク質又はポリペプチドに翻訳されるように当該核酸配列の転写に影響し得る場合には、遺伝子発現配列は、インヒビター核酸配列に作動可能に連結されるだろう。
【0048】
インヒビター核酸は、in vivoで単独で又はベクターと共に送達することができる。
【0049】
第3の局面では、本発明は、先に記載した核酸配列を含むベクターに関連する。
【0050】
その最も広い意味で、「ベクター」は、細胞、好ましくは、核酵素ポリ(アデノシン5'-ジホスホ-リボース)ポリメラーゼ(「ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ」(PARP))を発現する細胞、へのインヒビター核酸の転送を促進することができる任意のビヒクルである。好ましくは、ベクターは、ベクターの非存在下で起こったであろう分解の程度に比べて、減少した分解の程度で核酸細胞を運ぶ。ベクターは、場合により、PARP発現細胞中のインヒビター核酸の発現を亢進するために、上記の遺伝子発現配列を含む。一般的に、本発明において有用なベクターは、プラスミド、ファージミド、ウイルス、インヒビター核酸配列の挿入又は組み込みによって操作されたウイルス又は細菌源から得られる他のビヒクルを含むが、これらに限定されない。ウイルスベクターは、好ましいベクターの種類であり、以下のウイルス:レトロウイルス、例えばモロニネズミ白血病ウイルス、ネズミ肉腫ウイルス、マウス乳ガンウイルス、及びラウス肉腫ウイルスウイルス; アデノウイルス、アデノ-関連ウイルス; SV40-型ウイルス; ポリオーマウイルス; Epstein-Barr viruses; パピローパウイルス; ヘルペスウイルス; ワクシニアウイルス; ポリオウイルス; 及びRNAウイルス、例えばレトロウイルスを含むが、これらに限定されない。命名されていないが当業者に知られている他のベクターを容易に採用することができる。
【0051】
好ましいウイルスベクターは、非-本質的遺伝子が対象の遺伝子と置換された非-細胞変性真核生物ウイルスに基いている。非-細胞変性ウイルスは、レトロウイルス、次に起こる宿主細胞DNAへのプロウイルス集積を有する、ゲノムウイルスRNAのDNAへの逆転写を含むライフサイクルを含む。レトロウイルスは、ヒト遺伝子治療試験のために承認されている。複製-欠損(すなわち、所望のタンパク質の合成を方向付けることができるが、感染性ウイルスを製造することができない)のレトロウイルスは、最も好ましい。かかる遺伝子的に改変されたレトロウイルス発現ベクターは、in vivoでの高効率遺伝子導入の一般的な有用性を有する。複製-欠損レトロウイルス(プラスミドへの外来遺伝材料の導入、プラスミドによるパッケージング細胞株のトランスフェクション、パッケージング細胞株による組換えトレトロウイルスの製造、組織培養培地からのウイルス粒子の回収、及びウイルス粒子による標的細胞の感染、のステップを含む)を製造するための標準的なプロトコールは、KRIEGLER (A Laboratory Manual," W.H. Freeman CO., New York, 1990) 及びMURRY("Methods in Molecular Biology," vol.7, Humana Press, Inc., Cliffton, N. J., 1991)の文献において提供される。
【0052】
ある適用のための好ましいウイルスは、アデノ-ウイルス及びアデノ-関連ウイルスである。これらは、遺伝子療法におけるヒト使用について既に承認された二重鎖DNAウイルスである。アデノ-関連ウイルスは、複製欠損であるように作製することができ、幅広い細胞類及び細胞種を感染することができる。それは、利点、例えば、熱及び脂質溶媒の安定性;造血細胞を含む様々な系統の細胞内での高形質導入頻度;並びにその結果複数のシリーズの形質導入を可能にする重感染阻害の欠如を更に有する。報告によれば、アデノ-関連ウイルスは、部位特異的方法でヒト細胞DNAに集積することができ、それによって、挿入突然変異の可能性、及びレトロウイルス感染の挿入遺伝子発現性の可変性を最小限にする。加えて、野生型アデノ-関連ウイルス感染は、選択的な圧力の存在下に100超の継代について、組織培養中で追跡された。このことは、アデノ-関連ウイルスゲノム集積が比較的安定な事象であることを意味している。アデノ-関連ウイルスもまた、染色体外の方法で機能することができる。
【0053】
他のベクターは、プラスミドベクターを含む。プラスミドベクターは、当該分野でこれまで広く記載されており、当業者に周知である。例えば、SANBROOK等, "Molecular Cloning: A Laboratory Manual," Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989を参照。ここ数年では、プラスミドベクターは、in vivoで細胞に抗原-コーディング遺伝子を送達するためのDNAワクチンとして使用されてきた。ウイルスベクターの多くと同様に安全関心事を有さないので、それらは、このためには特に有利である。しかしながら、薬学的に許容される宿主細胞と適合可能なプロモーターを有するこれらのプラスミドは、プラスミド内で作動可能にコードされた遺伝子からペプチドを発現することができる。いくつかの一般的に使用されるプラスミドは、pBR322、pUC18、pUC19、pRC/CMV、SV40及びpBlueScriptを含む。他のプラスミドは、当業者に周知である。加えて、プラスミドは、DNAの特定の断片を除き付加するために、制限酵素及びライゲーション反応を用いてカスタムデザインされ得る。プラスミドは、様々な非経口的、粘膜的及び局所的な経路によって送達され得る。例えば、DNAプラスミドはまた、筋肉内、皮内、皮下又は他の経路によって注入され得る。鼻腔内スプレイ又は液滴、直腸内座薬及び経口的に投与される。遺伝子銃を用いて表皮又は粘膜表面にも投与される。プラスミドは、液剤で、金粒子上に乾燥されて、又はリポソーム、デンドリマー、コクリート(cochleate)及びマイクロカプセル化を含むがこれらに限定されない他のDNA送達系と共に提供される。
【0054】
核酸ベクターは、細菌及び哺乳動物細胞で活性である選択可能なマーカーを含むことができる。
【0055】
好ましい実施態様によれば、本発明の核酸ベクターは、「ネイキドDNA」、例えばプラスミド、コスミド又はファージミドに対応する。かかるネイキドDNAは、非-脂質カチオン性ポリマー(WU and WU, J Biol. Chem., vol.263, p: 14621-4, 1988) 又はリポソーム (BRIGHMAN et al, Am. J. Med. Sci, vol.298, p: 278-81, 1989) と会合することができ、細胞内取り込みを亢進する複合体を形成する。
【0056】
別の好ましい実施態様によれば、核酸ベクターは、in vivoでの遺伝子療法プロトコールに適合したウイルスベクターである。好適なウイルスベクターの例は、EP 0871459、EP 0386882及びEP 1222300に記載のレトロウイルスベクター、並びにUS 2004/265273及びUS 6,638,502に記載のアデノウイルスベクターを含む。この場合には、ウイルスの内在化が、細胞表面受容体を有するウイルスエンベロプの特定の相互作用によって起こり、次いで、ウイルス/受容体複合体の受容体-介在エンドサイトーシスが起こる。
【0057】
第4の局面に従って、本発明は、組成物、好ましくは、(i)先に記載したインヒビター、それをコードする核酸、又は当該核酸を含むベクター、及び(ii)薬学的に許容されるビヒクルを含む医薬組成物に関する。
【0058】
本発明の組成物は、PARP活性を阻害し、PARP活性化に関連した疾患を予防及び/又は治療するために使用され得る。例えば、本発明の組成物は、ネクローシス又はアポトーシスに起因する細胞損傷又は細胞死から起こる神経組織損傷、例えば、心臓虚血又は再潅流傷害又は神経変性疾患から起こる心血管組織損傷、を治療又は予防するために使用され得る。本発明の組成物は、細胞の寿命又は増殖を延長又は増加させるために、その結果、皮膚加齢、アテローム性動脈硬化症、変形性関節症、骨粗鬆症、筋ジストロフィー、複製老化に関連する骨格筋の変性疾患、加齢による黄斑変性症、免疫老化、AIDS及び細胞老化、及び加齢に関連する他の免疫老化疾患を含む細胞老化に関連する疾患、及び当該細胞老化によって誘導又は悪化される疾患を治療又は予防するために、並びに老化細胞の遺伝子発現を改変するために、使用され得る。本発明の組成物は、癌を治療し、腫瘍細胞を放射線療法に対してより感受性にするために低酸素腫瘍細胞に放射線増感作用を与え、及びおそらくDNA修復を抑制するその能力によって、腫瘍細胞を、放射線治療後のDNAの潜在的な致命的損傷から回復しないようにさせるために、更に使用することができる。
【0059】
薬学的に許容されるビヒクルは、当業者に周知である。薬学的に許容されるビヒクルの例として、組成物は、エマルション、マイクロエマルジョン、水中油型エマルション、無水脂質及び水中油型エマルション、他の種類のエマルションを含むことができる。本発明の組成物は、1以上の添加剤(例えば、希釈物、賦形剤、安定剤、保存料)を含んでもよい。一般的には、Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, 6th Ed.(様々な編集者, 1989-1998, Marcel Dekker);及びPharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems(ANSEL et al., 1994, WILLIAMS & WILKINS)を参照。
【0060】
本発明のインヒビター、それをコードする核酸、又はかかる核酸を含む核酸ベクターは、緩衝液又は水に溶解され得るか、あるいはエマルション及びマイクロエマルジョンに組み込まれ得る。好適な緩衝剤は、Ca++/Mg++を含まないリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、通常の生理食塩水(150 mM NaCl水溶液)、トリス緩衝液及び界面活性剤を含むがこれらに限定されない。
【0061】
加水分解及び変性を含む、ペプチドの不安定又はその分解の多数の原因が存在する。疎水性相互作用は、分子の互いの凝集(すなわち、集合)を起こすことがある。疎水性相互作用は、この結果は、PARPリプレッションの減少を伴うことがある。安定剤は、このような問題を少なくさせ又は抑制するために添加することができる。
【0062】
安定剤は、シクロデキストリン及びその誘導体を含む(米国特許第5,730,969号明細書を参照)。好適な保存料、例えば、スクロース、マンニトール、ソルビトール、トレハロース、デキストラン及びグリセリンは、最終的な調合物を安定化させるために添加することもできる。イオン性及び非イオン性界面活性剤、D-グルコース、D-ガラクトース、D-キシロース、D-ガラクツロン酸、トレハロース、デキストラン、ヒドロキシエチルスターチ、及びそれらの混合物から選ばれる安定剤は、調合物に添加することができる。アルカリ金属塩又は塩化マグネシウムの添加は、ペプチドを安定化することがある。ペプチドは、デキストラン、硫酸化コンドロイチン、スターチ、グリコーゲン、デキストラン及びアルギン酸塩からなる群より選ばれる多糖とペプチドとを接触させることもできる。添加することができる他の糖類は、単糖類、二糖類、糖アルコール、及びそれらの混合物(例えば、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、スクロース、マルトース、ラクトース、マンニトール、キシリトール)を含む。ポリオールは、ペプチドを安定化させることがあり、水-混和性又は水-溶性である。好適なポリオールは、マンニトール、グリセロール(glycrol)、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチルグリコール、ビニルピロリドン、グルコース、フルクトース、アラビノース、マンノース、マルトース、スクロース、及びそれらのポリマーを含む、ポリヒドロキシアルコール、単糖類及び二糖類でよい。様々な賦形剤は、血清アルブミンを含むペプチド、アミノ酸、ヘパリン、脂肪酸及びリン脂質、界面活性剤、金属、ポリオール、還元剤、金属キレート剤、ポリビニルピロリドン、加水分解されたゼラチン、及び硫酸アンモニウムを安定化することもできる。
【0063】
有利なことに、前記組成物は、PARP活性を阻害するために十分な量で、本発明のインヒビター、それをコードする核酸、又は核酸ベクターを含む。
【0064】
例えば、前記組成物は、10-12 Mを超える、好ましくは10-9 Mを超える、例えば、10-8 Mを超える又は10-6 Mを超える、及び最も好ましくは10-3 Mを超える、前記インヒビターの濃度を含むことができる。
【0065】
第5の局面では、本発明は、PARP活性化に関連する疾患に罹患した対象に上記の組成物の有効量を投与するステップを含む、当該対象の予防的又は治療的な処置方法に関する。
【0066】
本明細書で使用する用語「対象」は、哺乳動物、例えば、齧歯動物、ネコ科の動物、イヌ科の動物及び霊長類を意味する。当該対象は、動物であり、例えば、ウシ、ブタ、ウマ、トリ、ネコ、イヌ、及び最も好ましくはヒトである。
【0067】
本発明のインヒビターは、PARP活性を阻害し、そのため、ネクローシス又はアポトーシスに起因する細胞損傷又は細胞死から起こる組織損傷、虚血及び再潅流傷害から起こる神経組織損傷、神経疾患及び神経変性疾患を治療するために有用であり;血管卒中を予防又は治療するために有用であり;心血管疾患を治療又は予防するために有用であり;他の症状及び/又は疾患、例えば、加齢による黄斑変性症、AIDS及び他の免疫老化疾患、関節炎、アテローム性動脈硬化症、悪液質、癌、複製老化を含む骨格筋の変性疾患、糖尿病、頭部外傷、免疫老化、炎症性疾患、例えば炎症性腸疾患、例えば大腸炎及びクローン病、筋ジストロフィー、変形性関節症、骨粗鬆症、慢性及び急性疼痛(例えば、神経障害性の痛み)、腎不全、網膜虚血、敗血性ショック(内毒素性ショック)、及び皮膚加齢を治療するために有用であり;細胞寿命及び増殖能力を拡げるために有用であり;老化細胞の遺伝子発現を変更するために有用であり;あるいは低酸素腫瘍細胞に放射線を増感させるために有用であると考えられる。
【0068】
本発明の方法によって治療することができる神経変性疾患の例は、三叉神経痛; 舌咽神経痛; 顔面神経麻痺; 重症筋無力症; 筋ジストロフィー; 筋萎縮性側索硬化症; 進行性筋萎縮症; 進行性の延髄遺伝性筋萎縮症; 脱出された(herniated)、破裂された又は脱出された(prolapsed)無脊椎動物椎間板症候群; 頸部脊椎症; 叢疾患; 胸郭出口破壊症候群; 末梢神経障害、例えば、鉛、ダプソン、マダニ類、ポリフィリン症、又はギラン・バレー症候群によって起こる障害;アルツハイマー病;ハンチントン病及びパーキンソン病を含むが、これらに限定されない。
【0069】
虚血を起こすか又は心臓の再潅流によって起こる得る心血管疾患の例は、冠動脈疾患、狭心症、心筋梗塞症、心停止によって起こる心血管組織損傷、心臓バイパスによって起こる心血管組織損傷、心臓性ショック、及び心臓もしくは脈管構造の不全又は組織損傷に関連する当業者によって知られている関連症状、特にPARP活性化に関連する組織損傷を含むが、これらに限定されない。
【0070】
例えば、本発明の方法は、癌、例えばACTH-産生腫瘍、急性リンパ性白血病、急性非リンパ性白血病、副腎皮質の癌、膀胱癌、脳腫瘍、乳癌、子宮頸癌、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、結腸直腸癌、皮膚T-細胞リンパ腫、子宮内膜癌螺旋、食道癌、ユーイング肉腫、胆嚢癌、ヘアリー細胞白血病、頭部及び頸部癌、ホジキンズリンパ腫、カポジ肉腫、腎臓癌、肝臓癌、肺癌(小細胞及び又は非-小細胞)、悪性腹水、悪性胸水、黒色腫、中皮腫、多発性骨髄腫、神経芽細胞腫、非-ホジキンズリンパ腫、骨肉腫、卵巣癌、卵巣(胚細胞)癌、前立腺癌、膵臓癌、陰茎癌、網膜芽細胞腫、皮膚癌、柔組織肉腫、扁平上皮過形成、胃癌、睾丸癌、甲状腺癌、絨毛性腫瘍、子宮癌、膣癌、陰門癌、及びWilms腫瘍を治療し、並びに癌の腫瘍細胞に放射線を増感させるために有用である。本発明のインヒビターと共に使用されることがある追加の治療剤の例は、5-フルオロウラシル、ロイコボリン、5'-アミノ-5'デオキシチミジン、酸素、炭素、赤血球注入、パーフルオロカーボン(例えば、Fluosol-DA)、2,3-DPG、BW12C、カルシウムチャンネル拮抗剤、ペントキシフィリン、血管新生抑制化合物、ヒドララジン、L-BSO、アドリアマイシン、カンプトテシン、カーボプラチン、シスプラチン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキソルビシン、インターフェロン(アルファ、ベータ、ガンマ)、インターロイキン2、イリノテカン、パリクタキセル、トポテカン、及び治療上有効なアナログ、並びにその誘導体を含むが、これらに限定されない。
【0071】
医療的使用のために、治療的効果を達成するための本発明のインヒビターの好ましい量は、投与される具体的なインヒビター、投与経路、治療される哺乳動物、及び関連している具体的な障害又は疾患によって変動することになる。本明細書に記載の任意の症状に罹患した哺乳動物、又は罹患している可能性のある哺乳動物のための、本発明のインヒビターの好適な全身性投与量は、典型的には、約0.001 mg/kg〜約50 mg/kgの範囲にある。典型的には、インヒビターの約0.1 mg〜約10,000 mgのオーダーの投薬レベルは、上記の症状の治療に有用であり、好ましいレベルは、約0.1 mg〜約1,000 mgである。任意の特定の患者のための特定の投薬レベルは、使用される特定の化合物の活性;患者の体重、全身的健康、性別、及び食事;投与時間;排泄速度;化合物と他の薬物との任意の組合せ;治療される特定の疾患の重度;並びに投与形態及び投与経路を含む、様々な因子に依拠して変動することになる。典型的には、in vitroでの投薬-効果の結果は、患者の投与用の適正な投薬量についての有用な指針を提供する。動物モデルでの研究も有用であり得る。適正な投薬量レベルを決定するための事項は、当業者に周知である。
【0072】
本発明の方法では、本組成物は、例えば、慣用的な非-毒性の薬学的に許容される担体、アジュバント及びビヒクルを含む投薬製剤で、経口的に、非経口的に、吸入スプレイによって、局所的に、直腸的に、鼻に、口内に、舌下に、膣内に、心室内に、又は移植リザーバを介して投与することができる。
【0073】
本発明の方法で使用される組成物は、単一投与、複数の別個の投与又は連続的な注入によって投与することができる。化合物の送達のタイミング及び順序を調節する任意の投薬レジメは、治療を達成するために必要なだけ使用し、反復することができる。かかるレジメは、予備的処置及び/又は追加の治療剤との同時-投与を含むことがある。
【0074】
組織損傷の保護を最大限にするために、本発明の組成物は、病気に冒された細胞にできるだけ早く投与されるべきである。
【0075】
第6の局面では、本発明は、PARP活性化に関連した疾患に罹患した対象の予防又は治療のための医薬の製造のための、上記のインヒビター、それをコードする核酸、又は当該核酸を含む核酸ベクターの使用に関する。
【0076】
本発明のインヒビターは、PARP活性を阻害し、そのため、ネクローシス又はアポトーシスに起因する細胞損傷又は細胞死から起こる組織損傷、虚血及び再潅流傷害から起こる神経組織損傷、神経疾患及び神経変性疾患を治療するために有用であり;血管卒中を予防又は治療するために有用であり;心血管疾患を治療又は予防するために有用であり;他の症状及び/又は疾患、例えば、加齢による黄斑変性症、AIDS及び他の免疫老化疾患、関節炎、アテローム性動脈硬化症、悪液質、癌、複製老化を含む骨格筋の変性疾患、糖尿病、頭部外傷、免疫老化、炎症性疾患、例えば炎症性腸疾患、例えば大腸炎及びクローン病、筋ジストロフィー、変形性関節症、骨粗鬆症、慢性及び急性疼痛(例えば、神経障害性の痛み)、腎不全、網膜虚血、敗血性ショック(内毒素性ショック)、及び皮膚加齢を治療するために有用であり;細胞寿命及び増殖能力を拡げるために有用であり;老化細胞の遺伝子発現を変更するために有用であり;あるいは低酸素腫瘍細胞に放射線を増感させるために有用であると考えられる。
【0077】
本発明は、出願人によって実行される研究に照らして、達成された実験的研究の記載を読むと、より明確に理解されるだろう。これは、本来限定するものと解釈されるべきではない。
【実施例】
【0078】
1) プラスミド構築
【0079】
H2A (NMJ38609; 配列番号4の核酸186〜1295)、マクロヒストンH2A1.1 (NM_004893; 配列番号5の核酸174〜1289) 及びマクロヒストンH2A1.2 (NM_018649; 配列番号6の核酸214〜1332) 由来の完全なコーディング配列に対応するcDNAクローンは、制限酵素認識部位を取り込んだプライマーを用いてINVITROGEN製のイメージクローンからPCR-増幅した。ついで、増福されたPCRフラグメントは、製造者の教示に従って、pREV-HTFレトロウイルスベクター又はpGEX-5X.1ベクター(AMERSHAM)のXho I-Not I部位にサブクローニングした。コンストラクトは配列完全性を確実にするためにシークエンスした。
【0080】
2) マクロH2A1.1の発現及び局在化
マクロヒストンH2A1.1及びH2Aは、それぞれ、標準的なプロトコールに従うレトロウイルス形質導入によって、HeLa細胞中に、N-末端二重HA及び二重フラッグエピトープタグ (e-MH1.1及びe-H2A) を有する融合タンパク質として安定的に発現した。免疫蛍光実験は、製造者の教示に従って、二次抗体として、ラット抗-HA抗体(ロシュ、1:300希釈)及びAlexa Fluor 488(MOLECULAR PROBES, 1:400希釈)に結合されたヤギ抗-ラットIgGを用いて、安定的にトランスフェクトされた細胞で行った。クロマチンの局在化は、DAPI呈色で、同一細胞中で評価した。
【0081】
結果は、タグ付きヒストンがクロマチンと同じ場所に位置することを明らかにした(図1参照)。これは、タグエピトープの存在がその沈着を妨害しないことを示す。核での広い染色を示すタグ付きH2Aヒストン(e-H2A)とは反対に、タグ付きマクロヒストンH2A1.1(e-MH1.1)は、主に凝縮クロマチンに限定された局在化した染色を示す。我々は、これらのデータから、タグ付きマクロヒストンH2A1.1 (e-MH1.1)及びタグ付きヒストンH2A(e-H2A)がいずれもin vivoでヌクレオソームに機能的に沈着されると結論する。
【0082】
3) マクロH2A1.1会合ヌクレオソームの精製
N-末端二重-HA及び二重-フラッグエピトープタグ(e-H2A/e-MH1.1)と融合されたH2A及びマクロH2A1.1タンパク質を発現する上記のHeLa細胞から調製された核ペレットは、ミクロコッカル・ヌクレアーゼで消化し、SOLLNER-WEBB及びFELSENFELDに記載されているように(Biochemistry, vol.l4(3), p: 2915-20, 1975)主にモノヌクレオソームを与えた。e-H2A又はe-MH1.1を含むモノヌクレオソームは、抗-フラッグ抗体-複合アガロース(SIGMA)に対する免疫沈降によって得られた物質から精製した。結合されたヌクレオソームは、フラッグペプチド(DYKDDDDK; 配列番号7)で溶出し、抗-HA抗体-複合アガロース(SIGMA)によって更にアフィニティー精製し、HAペプチド(YPYDVPDYA; 配列番号8)で溶出した。精製された複合体の小分画は、SDS-PAGEゲル上で抗体-フラッグ抗体(ロシュ)で分析して、タグ付きマクロヒストンH2A1.1及びH2Aにおけるその濃縮を評価した。
【0083】
抗-フラッグ抗体によりイムノブロッティングは、タグ付きマクロヒストンH2A1.1又はH2Aについて予想されたサイズの1つの特定のバンドを示した(図2参照)。生化学的分画は、マクロヒストンH2A1.1の小分画のみが核抽出物中の溶解性タンパク質として存在することが見出されたことを明らかにし、そして、ほとんどのタンパク質は、クロマチンに密接に会合された核ペレット中に存在することが見出されたことを明らかにした。我々は、タグ付きマクロヒストンH2A1.1が、ミクロコッカル・ヌクレアーゼの制御された量でクロマチンを消化することによって、モノヌクレオソームと共に十分に溶解することができることを見出した。
【0084】
次いで、タグ付きマクロヒストンH2A1.1又はH2Aを含む精製された複合体は、製造者の教示に従ってSilverQuest(登録商標)キット(INVITROGEN)を用いて銀染色された、12%変性ポリアクリルアミドゲル上で展開した。最後に、様々なゲル分離ポリペプチドは、質量分析法により同定した。対照として、我々は、非形質導入されたHeLa細胞上で同一の精製を行った。
【0085】
多数のポリペプチドは、e-mH2A1.1及びe-H2Aヌクレオソームと会合することが見出された(図3)。
【0086】
質量分析法は、e-mH2A1.1及びe-H2A複合体における共通の成分として、ヒストンH3、H4、H2A、H2B、mH2A1.1 Ku 80、KU 70、Hsp70、HDAC1、H1の2つのサブタイプ (HL1.1及びH1.2)、Hp1α、Hp1β及びポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼI (PARP-I) を同定した(図3)。同定されたタンパク質の包括的なリストは、そのアクセッション番号と共に、以下の表に示される。
【0087】
【表1】
【0088】
2つの複合体はPARP-1を含むことが見出されたが、e-mH2A1.1複合体のみがかなりの量のPARP-1を有した。
【0089】
精製された複合体の一部分は、15〜35%のグリセロールグラディエントを行った。グラディエントは、分画し、異なった分画を4〜12%SDS-PAGE上にロードした。コアヒストン、e-mH2A1.1及びPARP-1の位置は、図14の左部分に示した。
【0090】
最後に、該複合体中に存在するPARP-1の量は、e-mH2A1.1及びヒストンH4の量に比例することが見出された(図3及び14)。これは、mH2A1.1とPARP-1との直接的な相互作用を示唆している。対照的に、H2A複合体は、約10倍未満のPARP-1を含んだ(PARP-1とヒストンH4との比は、0.1に近いことが分かった、図3、右パネル)。非形質導入されたHeLa細胞の見せかけの精製由来の銀染色によって、ポリペプチドは検出されなかった(データ非表示)。これは、これらの複合体中のすべての検出可能なポリペプチドがマクロヒストンH2A1.1又はH2Aに特異的であることを示している。
【0091】
4) マクロH2A1.1は、そのC-末端非-ヒストン領域によってPARP-1と相互作用する
マクロヒストンH2A1.1とPARP-1との相互作用を確認するために、我々は、ベイト(bait)として組換えマクロH2A1.1を用いてGST-プルダウン実験を行った。ヒストンH2A及びGSTは、対照として使用した。GST融合ヒストンは、25℃で生育するBL21 (pLysS) E. Coli株中で発現した。溶解性タンパク質は、製造者の教示に従って、グルタチオン・セファロース4Bビーズ(AMERSHAM)上で精製した。ヒト組換えPARP-1(ALEXIS)は、100 mM KCl及び 0.02 % NP40 (SIGMA) を含むPBS中で緩やかに攪拌しながら、H2Aヒストン (GST-H2A)、マクロヒストンH2A1.1 (GST-マクロH2A1.1)、又はマクロH2A1.1の非ヒストン領域(NHR;配列番号1のアミノ酸121〜369)(GST-NHR)と融合、あるいは融合されていない組換えGSTと、30℃で、1時間インキュベートした。洗浄ステップの後、結合されたタンパク質をLAEMMLIバッファーで溶出し、12% SDS-PAGEプロテインゲル上で分画し、ブロットし、ヒト抗-PARP-1抗体(ALEXIS)によって明らかにした。
【0092】
この結果は、組換えマクロヒストンH2A1.1がその非ヒストン領域(NHR)によってPARP-1と特異的に相互作用し、この相互作用はDNAの存在に依拠しなかった、ことを示す(図4参照)。C-末端非-ヒストン領域マクロH2A1.1は、他のタンパク質(残基121〜201)及びマクロドメインとの相同性を有さないC-末端領域を含む。従って、これらの結果は、このC-末端領域が、それがマクロH2A1.1特異的である場合には、PARP-1結合領域としての優れた候補であることを示唆する。
【0093】
5) マクロH2A1.1標的遺伝子の同定
多くの研究が、ヘテロクロマチンの構築又は維持におけるマクロヒストンH2Aの一般的な関係を示唆する。これらのデータは、転写リプレッションにおけるマクロヒストンH2Aの関係を強力に支持するが、このリプレッションが行われるメカニズムは知られていない。これらの研究は、免疫蛍光法を主に使用し、特定のマクロヒストンH2A標的遺伝子を同定できなかった。この問題を解決するために、我々は、マクロH2A1.1ヌクレオソームに会合された特定の標的DNA配列を同定するためのタンデム-アフィニティー精製法を使用する、高特異的クロマチン免疫沈降アッセイを開発した。我々は、「タンデムアフィニティー精製及びクロマチン免疫沈降アッセイ」を「Tap-Chip」(図5参照)と呼んだ。我々の方法は、人工産物という固有のリスクを有する、ホルムアルデヒド架橋又はPCR増福を使用しなかった。
【0094】
我々は、標準的な方法に従って、タグ付きマクロヒストンH2A1.1を安定的に発現するHeLa細胞株から核を精製した。精製された核は、ミクロコッカル・ヌクレアーゼの制御された量で消化して、モノ-及びジ-ヌクレオソームを主に与えた(データ非表示)。消化されたクロマチンは、かなりの量のタグ付きマクロヒストンH2A1.1を含むことが見出された(データ非表示)。マクロH2A1.1モノ-及びジ-ヌクレオソームは、(i) 抗-フラッグ抗体、次いで、(ii) 上記の抗-HA抗体で免疫精製した。精製されたモノ-及びジ-ヌクレオソームの小分画をSDS-PAGEゲル上で分析し、タグ付きヒストンH2A1.1におけるその濃縮を評価した(データ非表示)。対照として、我々は、非-タグ付きHeLa細胞株から見せかけの精製を行い、銀染色によってポリペプチドは検出されなかった(データ非表示)。
【0095】
免疫精製されたマクロH2A1.1モノ-及びジ-ヌクレオソームは、プロテインキナーゼK、及び標準的な方法に従って抽出されたフェノールで消化した。精製されたDNAは、T4 DNAキナーゼ (BIOLABS) で処理し、3'A-オーバーハングをTaq DNAポリメラーゼ(AMERSHAM)を用いて加えた。マクロH2A1.1モノ-及びジ-ヌクレオソームに対応するDNA断片を、TAクローニング技術(ESTVITROGEN)を用いてpcDNA3.1-Topoベクターにクローニングした。形質転換されたクローンは、インサートをチェックし、ベクター-特異的プライマーを用いてシークエンスした。得られた配列は、次いで、ヒトゲノムデータベースのBlast検索によって同定した(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)。
【0096】
文献でのその結果は、マクロH2Aが、遺伝子リプレッションに関連し、それがXを不活性化する場合に、不活性なX-染色体に本質的に局在化することを示している。興味深いことに、我々の結果は、マクロH2AがX-染色体に限定されず、ゲノム中に広く分布していることを示している。60個の同定された遺伝子の45%は酵素であり、他のものは、異なった生物学的経路に関連する。更に、これらの同定されたゲノム配列の分析は、マクロヒストンH2A1.1が数個の高度に制御された遺伝子のプロモーター領域と主に結びつき、そして誘導可能な又は初期の応答遺伝子の一般的な制御に関連している、ことを明らかにした。
【0097】
同定されたゲノム配列の内の1つは、hsp70-1プロモーター遺伝子に対応する。Hsp70-1 (又はhsp70i) は、少なくとも11の遺伝子を包含するhsp70ファミリーの最も主なかつ特徴的なメンバーであり、高度に関連したタンパク質群をコードする(TAVARIA et al, 1996)。Hsp70-1は、ヒートショック及び化学的ストレスに対する反応において誘導的であり、本明細書で使用されるプローブは、当該遺伝子を特異的に選択する。
【0098】
6) マクロH2A1.1は、hsp70プロモーターを特異的に標的化する
マクロヒストンH2A1.1と遺伝子プロモーターとの関係を確認するために、我々は、半-定量的及びリアルタイムPCRを用いて、hsp70-1遺伝子座上のその分布を分析した。タグ付きマクロヒストンH2A1.1(e-MH1.1)を発現するHeLa細胞由来のクロマチンは、抗-フラッグ及び抗-HA抗体で、以下のように沈降した。クロマチンは、37℃で10分間、ホルムアルデヒド溶液で架橋し、次いで、超音波処理して300〜800 bpの平均長のDNA断片を得た。
抽出物は、非-変性ゲル電気泳動によって標準化し、各試料は、以下のプライマーを用いて半-定量的PCRにより個々に分析した:
-hsp70-1プロモーター(フォワード): 5'-GGCGAAACCCCTGGAATATTCCCGA-3' (配列番号9);
-hsp70-1プロモーター(リバース): 5'-AGCCTTGGGACAACGGGAG-3' (配列番号10);
-hsp70-1コーディング領域(フォワード): 5'-CAGGTGATCAACGACGGAGACA-3' (配列番号11);
-hsp70-1コーディング領域(リバース): 5'-GTCGATCGTCAGGATGGACACG-3' (配列番号12)。
【0099】
半-定量的PCRは、下記のオリゴヌクレオチド対を用いて、hsp70.1プロモーター及びコーディング領域の下に、Taq DNAポリメラーゼ(PROMEGA)により行った。試料は、25サイクル(93℃で30秒間、58℃で30秒間、及び72℃で1分間)増福し、2%アガロースゲル上で展開し、エチジウムブロミドで視覚化し、デンシトメトリーで定量化した。
【0100】
この結果は、hsp70-1プロモーター (P, 191 bp) の長さのDNA断片が濃縮されたが、コーディング領域(C, 363 bp)に位置する断片は、濃縮されなかったことを示している(図6A参照)。これらの結果は、マクロH2A1.1がhsp70-1プロモーターに存在することを証明している。
【0101】
次いで、我々は、LightCycler (ROCHE DIAGNOSTICS) を用いてプロモーター領域におけるマクロヒストンH2A1.1の相対的な濃縮を定量するためにリアルタイムPCCRを用いた。各試料の2つの異なった希釈は、標準化のために、前記のプライマー及びGAPDHプライマーを用いるQ-PCRによって個々に分析した(GAPDH (フォワード): 5'-GGA CCT GAC CTG CCG TCT AGA A-3' (配列番号13); GAPDH (リバース): 5'-GGTG TCG CTG TTG AAG TCA GAG-3' (配列番号14))。コピー数は、FERREIRA et al (2001) に記載のように計算し、Q-PCRからの結果は、Hsp70 mRNA対GAPDH mRNAとの比として表した。最後に、PCRの値は、非-トランスフェクトされた細胞由来のクロマチンで得られた値に対して標準化した。
【0102】
この結果は、マクロH2A1.1が、コーディング領域と比べてhsp70-1遺伝子のプロモーター領域において450倍濃縮されていることが見出されたことを示している(図6B参照)。
【0103】
次いで、我々は、異所的に発現されたマクロヒストンH2A1.1がゲノムに渡って天然型タンパク質の分布を十分に反映し、それ故に、我々のTAP-ChIP法によって同定された標的遺伝子が実際にマクロヒストンH2A1.1の真のin vivo標的であるかどうかについて検討した。hsp70-1プロモーターがマクロH2A1.1の真正な標的であるか否かを決定するために、我々は、非-トランスフェクトされたHeLa細胞株を用いて、hsp70-1プロモーター上の内因性のマクロヒストンH2A1.1のin vivo分布を試験した。In vivoクロマチン免疫沈降(ChIP)アッセイは、マクロヒストンH2A1.1の非-ヒストン領域に対するポリクローナル抗体を用いて、先に記載のようにして行った。抽出物は、非-変性ゲル電気泳動によって標準化し、各試料は、先に記載の半-定量的PCRによって個々に分析した。
【0104】
その結果は、hsp70-1プロモーター(P)の長さのDNA断片が、3つの各々のChIPアッセイにおいて、マクロH2A1.1特異的抗体によるクロマチンの共免疫沈降の後に濃縮されたが、コーディング領域(C)に位置する断片は濃縮されなかった、ことを示している(図6C参照)。これらの結果は、マクロH2A1.1が、hsp70-1プロモーターにおいてin vivoでは天然に存在することを証明している。
【0105】
次いで、我々は、mH2A1.1が、Hsp70ファミリーの他の誘導可能な遺伝子のプロモーター、及び構成的に発現されたHsp70遺伝子のプロモーターに会合しているかどうか検討した。我々は、ヒートショック-誘導可能なHsp70.2、及び構成的に発現されたHsp70.8(Hsc710)遺伝子に焦点を当てる候補アプローチを使用した(Dworniczak and Mirault 1987)。
【0106】
抗-フラッグ及び抗-HA抗体を用いるChIPアッセイは、先に記載のe-mH2A1.1を安定的に発現するHeLa細胞株から単離されたホルムアルデヒド架橋クロマチンで行った。
【0107】
最後に、リアル-タイムPCR定量は、各々のプロモーターに特異的な以下に示すプライマーを用いて先に記載のようにして行った:
-Hsp70.2プロモーター (フォワード) : 5'-GGCCGAGAGTCAGGGAGGAACC-3 ' (配列番号:24);
-Hsp70.2プロモーター (リバース): 5'-ACTCTTCCAGCTCCACCACAG-3' (配列番号25);
-Hsp70.8プロモーター (フォワード): 5'-TGTGGCTTCCTTCGTTATTGGA-3' (配列番号26);
-Hsp70.8プロモーター (リバース): 5'-AAATACCGCTGCCATCCCACCG-3' (配列番号27)。
【0108】
その結果は、Hsp70.2遺伝子のプロモーター領域が、Hsp70.1遺伝子のプロモーター領域と同程度にe-mH2A1.1が豊富であるが、e-mH2A1.1の存在は、Hsp70.8遺伝子のプロモーターをわずかに検出できた、ことを明確に示している(図13)。これらのデータは、mH2A1.1は、一般的に、好ましくは、誘導可能なヒートショック遺伝子と会合することがあることを示唆している。
【0109】
7) ヒートショックは、hsp70-1プロモーターからマクロH2A1.1及びPARP-1置換を誘導した
遺伝子制御におけるマクロH2A1.1の機能及びPARP-1とのその関係を包括的に記載することを目的として、我々は、ヒートショック依存性転写活性化の間にhsp70-1プロモーターで起こる事象のオーダーを試験した。マクロヒストン-H2A1.1、H2A、H3又はH3.3のフラッグ-HAタグ付き変異体を発現する異なったHeLa細胞株を樹立した。陰性対照として、非-タグ付きHeLa細胞株を使用した。hsp70-1遺伝子の発現を42℃、30分間、ヒートショックHeLa細胞で誘導し、通常、10倍誘導を観察した(データ非表示)。細胞を30分間回収するために放置し、直ちに、ホルムアルデヒドで処理して、タンパク質-タンパク質複合体及びタンパク質-DNA複合体を架橋した。次いで、マクロヒストン-H2A1.1、H2A、H3又はH3.3に対する抗-フラッグ抗体を用いて、先に記載のようにして剪断されたクロマチンを沈殿させた。並行して、我々はまた、ヒストン修飾酵素PARP-1 (ALEXIS)、ADP-リボースポリマー (ALEXIS) 及び全-アセチル化ヒストンH4 (ALEXIS) の存在を特定の抗体で試験した。対照として、クロマチンは、特定の抗体の非存在下で免疫沈降した。リアルタイムPCRを用いて各実験において、免疫沈降についてのクロマチンインプットの標準化を評価した。構成的に発現されるGAPDHのレベルもまた、陰性対照として評価し、予想されたように、配列は、免疫沈降物中にほとんど検出されないことが見出された。免疫沈降物中のhsp70-1プロモーターは、先に記載のようにリアルタイムPCRを用いて定量した。
【0110】
その結果は、マクロH2A1.1及びPARP-1が、活性化の前にhsp70-1プロモーターに存在し、当該プロモーターからのその置換をヒートショックが誘導した、ことを示している(図7A参照)。マクロ-H2A1.1とhsp70-1プロモーターとの関係は、90%低下したが、標準的なH2Aヒストンは、わずかに影響されたのみであった(30%未満の低下)。興味深いことに、高レベルのポリ(ADP-リボース)ポリマーが活性化の時点で見られたので(図8A参照)、PARP-1は、ヒートショックの後にhsp70-1プロモーターではほとんど検出されなかった(図7A参照)。最近の発見と一致して、H3.3ヒストンは、転写的に活性なhsp70-1プロモーター中のH3ヒストンを置換することが見出された(図7B参照)。対照的に、我々は、全体的なH4ヒストンアセチル化に何の変化も見出さなかった(図8B参照)。これらの観察は、PARP-1 ADP-リボシル化活性が阻害されるが、プロモーター上でマクロ-H2A1.1により隔離される、ことを示唆している。PARP-1は、プロモーターから放出されるときに活性になり、部分的なタンパク質を修飾し、ADP-リボース部分の集積を導く。
【0111】
ADP-リボシル化は、クロマチン結合タンパク質の放出に本質的であるので(最近のレビューを参照(Kim et al. 2005))、我々は、マクロH2A1及びPARP-1の両方がADP-リボシル化され得ることを仮定した。
【0112】
ヒートショックの存在下で、ポリマーとe-mH2A1.1ヌクレオソーム複合体のタンパク質との関係を明確にするために、我々は、安定なHeLa細胞株からe-mH2A1.1複合体を単離し、SDSを含む12% PAGE上で分離し、銀染色した(図15、左パネル)。次いで、ゲルをブロットし、抗-ADPリボース抗体によって明らかにした(図15、右パネル)。
【0113】
ウェスタンブロットは、PARP-1及びe-mH2A1.1、並びにコアヒストンH3及びH2Bが、ADP-リボシル化されたことを示した(図15、右パネル)。これは、文献(Abbott et al., 2005)と一致した結果である。これらの結果は、ヒートショック活性化の際に、mH2A1.1及びPARP-1のみならず、コアヒストンが、高度にリボシル化されるはずであり、そして結果的に、ADP-リボシル化依存的な方法でHsp70.1プロモーターから放出された、ことを示唆した。
【0114】
8) マクロH2A1.1又はPARP-1のダウンレギュレーションがヒートショック反応を遅らせる
hsp70-1遺伝子制御におけるマクロH2A1.1及びPARP-1の役割をより厳密に解決するために、我々は、それらの特定のmRNA配列に対応する2つのsiRNAを設計した。マクロH2A1に対するsiRNAは、マクロドメインに存在し、マクロ-H2A1の2つのアイソフォーム、すなわちマクロ-H2A1.1及びマクロ-H2A1.2によって共有されている。PARP-1に対するsiRNAは、PARAP-1の触媒的ドメインに存在する (KAMEOKA et al, 2004) 。陰性対照(対照siRNA)として、組換え配列を使用した。配列ライブラリーの検索は、我々のマクロ-H2A1及びPARP-1 siRNAは、それぞれ、マクロ-H2A1及びPARP-1に限定され、そして、対照siRNA配列が全く存在しない、ことを示した。これらのsiRNAの配列は以下のとおりである:
-マクロH2A1 siRNA (MH1 siRNA、配列番号15; 5' AAGCAGGGUGAAGUCAGUAA 3');
-PARP1 siRNA (PARP-1 siRNA、配列番号16; AAGCCUCCGCUCCUGAACAAU) ;
-組換え対照siRNA (組換えsiRNA、配列番号17; 5'-CAUGUCAUGUUCACAUCUCTT-3')。
【0115】
siRNAトランスフェクションのために、HeLa細胞を対数増加的に6-ウエルプレート上に播種し、DMEM/10% FBS (INVITROGEN) 中で、37℃で終夜、増殖させた。HeLa細胞は、製造者の教示に従ってリポフェクタミン(登録商標)(INVITROGEN)と、前記の各siRNAの1 μgと又はsiRNAなしでトランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後、細胞を42℃で60分間、ヒートショックさせ、37℃で10、20又は30分間回収するために放置した。次いで、細胞を採取し、RT-PCRによってhsp70.1発現についてアッセイした。対照として、細胞はまた、イムノブロッティングによってマクロ-H2A1及びPARP-1サイレンシングについてアッセイした。
【0116】
その結果は、(マクロH2A1及びPARP-1に対する特定の抗体を用いてウェスタンブロットによって明らかにされたように、図9参照)、内因性のマクロH2A1及びPARP-1の発現が、ほとんど完全に阻害されたことを示している。その結果はまた、特定のsiRNAによるマクロ-H2A1.1又はPARP-1のダウンレギュレーションが、ヒートショック反応をそれぞれ、3倍、10倍遅らせたことを明らかにした(図10A参照)。同時に、組換えsiRNAでトランスフェクトしたHeLa細胞は、対照として働き、hsp70-1活性化における遅延を示さなかった。
【0117】
この結果を確認するために、我々は、マクロH2A1 siRNAの存在下で、hsp70-1活性化の速度論的分析を行った。マクロH2A1 siRNAでトランスフェクトされたHeLa細胞又はトランスフェクトされなかったHeLa細胞は、42℃で30分間、ヒートショックし、hsp70-1の発現は、先に記載したように10、20及び30分回収後にリアルタイムRT-PCRによってモニターした。
【0118】
結果は、特定のsiRNでのマクロH2A1.1のダウンレギュレーションが、3倍のファクターで遅延したヒートショック応答を生じる、ことを明確に示している(図10B参照)。mH2A1は、PARP-1とHsp70.1プロモーターとの関係に関連しているようであるので、次いでヒートショック応答を妨害することになるsiRNAによるmH2A1の欠乏は、Hsp70.1プロモーター会合PARP-1の量を大幅に減じただろうと予測しただろう。ChIPデータ (図24) は、mH2A1の欠乏が、予想したように、Hsp70.1プロモーターを妨害するPARP-1の量を大幅に減少させた、ことを証明した。
【0119】
我々の結果と一致して、PARP-1は、ショウジョウバエの幼虫においてヒートショック-誘導パフィング(puffing)及びhsp70発現のために必要であることが見出された (TULIN and SPRADLING, Science, vol. 299(5606), p:560-2, 2003)。結局、我々の結果は、hsp70-1プロモーターとのマクロH2Aの関係がその不活性な状態に明確に関連していることを示している。PARP-1との関係は、この見解を支持しており、そして、ホルモン、サイトカイン又はヒートショックに迅速に応答する必要がある誘導可能な遺伝子のレギュレーションにおけるマクロH2Aの役割を示唆している。マクロH2A1.1によって潜在的にレギュレートされた非常に多数の遺伝子の同定は、マクロH2A1.1が多種多様の細胞プロセスを抑制するセントラルレギュレーターであるという概念を支持している。
【0120】
9) マクロH2A1.1は、PARP-1酵素活性をレギュレーションする
マクロ-H2A1.1とPARP-1との実際の関係、及びヒートショック誘導活性化の後のhsp70-1プロモーターからのその協調された放出は、我々に、マクロ-H2A1.1によるPARP-1の酵素活性の可能なレギュレーションを試験させた。PARP-1は、自己-ADP-リボシレートそれ自体で知られ、この自己-修飾を制御するメカニズムは知られていない。
【0121】
我々の結果は、マクロH2AがPARP-1活性レギュレーションに関連していることを示唆している。このレギュレーションプロセスを解明するために、我々は、マクロH2A配列を、マクロドメインを有するタンパク質と、より具体的にはホスホエステラーゼと比較した。事実、ALLEN et al, (2003, 前掲) は、マクロドメインが、ADPリボース誘導体に作用するホスホジエステラーゼのスーパーファミリーを定義することを示唆している。
【0122】
我々の分析は、マクロH2A1.1、マクロH2A1.2、及びマクロH2A2が、公知のホスホジエステラーゼの触媒的ドメインと重要な相同性を共有することを示している(図11参照)。
更に、マクロH2A1.1及びマクロH2A2は、ホスホジエステラーゼ活性に関連する系統的に不変異体HXTXモチーフであってヒスチジン残基が活性に重要であるモチーフを共有している(NASR and FILIPO WICZ, Nucleic Acids Res., vol.28(8), p: 1676-83, 2000; HOFMAN et al, EMBO J, vol.l9(22), p:6207-17, 2000)。マクロH2A1.2における対応する残基は、アスパラギン(N)である。
【0123】
mH2A1.1のフォールディングの混乱がPARP-1活性に影響を与え、他のmH2A1.1ヌクレオソーム会合PARP-1の放出を促進することがあるかどうかを試験するために、我々は、位置213〜216の保存的HXTXモチーフをアラニン(AAAA)に変換するmH2A1.1遺伝子の点突然変異を作製した。これは、以下、MH1.1mutと称する(図16)。実際に、このHXTXモチーフは、ADP-リボシル化基質に対する触媒的活性を有する他のマクロ-ドメインに存在する(図16、及びAllen et al. 2003) 。酵母ホスホエステラーゼのアナログモチーフの突然変異がその酵素活性を取り除くことが従来明らかになっている (NASR and FILIPOWICZ, 2000, 前掲; HOFMAN et al, 2000, 前掲) 。このモチーフはまた、mH2A1.1ポケットに非常に近く (Allen et al. 2003; Chakravarthy et al. 2005)、モチーフの突然変異が結合に影響すると予想できるように、ADPリボース(及び可能なモノ-ADP-リボシル化PARP-1)及びその誘導体であるO-アセチル-ADPリボースに結合する (Karras et al. 2005; Kustatscher et al. 2005) 。
【0124】
上記の突然変異がモノ-ADP-リボースの結合に影響を与えるかどうかについて試験するために、組換え野生型(WT)及び突然変異型(Mut)mH2A1.1マクロドメインの増加量を精製して均一にし、32P-ADP-リボースでインキュベートし、PVDF膜上に(2点で)ブロットし、標識されたタンパク質を検出した(図17、上パネル)。2つの膜は、等しいローディングのための対照としてクマシー染色した(図17、下パネル)。得られた結果は、WT e-mH2A1.1の結合に比べて、突然変異型emH2A1.1のモノ-ADP-リボースの弱い結合を確認した(図17、上パネル)。このことは、ADP-リボースに結合するe-mH2A1.1ポケットの構造 (Karras et al. 2005; Kustatscher et al. 2005) が突然変異型タンパク質では混乱したという証拠を与える。
【0125】
mH2A1.1のフォールディングがe-mH2A1.1ヌクレオソーム複合体内のPARP-1結合のアフィニティーに重要であるならば、e-mH2A1.1のフォールディングの変化はPARP-1結合に影響を与えるべきである。このことを解決するために、我々は、異なったストリンジェント条件下、すなわち150 mM (図18、左パネル) 及び300 mM NaCl (図18、中央パネル)で、野生型(WT)及び突然変異型(Mut)emH2A1.1複合体を精製した。
【0126】
その結果は、目立って、150 mM NaClで単離されたWT及びMut複合体に会合したPARP-1の量が若干異なったことを示している(図18での定量を参照、右パネル)。しかしながら、図は、300 mM NaClで単離された複合体とは完全に異なった(図18、中央のパネル及び定量)。この例では、突然変異型e-mH2A1.1ヌクレオソーム複合体と会合して存在するPARP-1の量は、WT emH2A1.1ヌクレオソーム複合体に会合するPARP-1量の8〜10%を超えなかった(図18、定量)。そのため、300 mM NaClは、ヌクレオソーム複合体内の突然変異型e-mH2A1.1へのPARP-1の結合を強力に混乱させることができた。これは、PARP-1と突然変異型emH2A1.1との弱い相互作用を主張している。このことは、Hsp70.1プロモーターでのin vivoでは、突然変異型e-mH2A1.1と会合するPARP-1の量は、WT e-mH2A1.1と会合するPARP-1の量と比べて小さかっただろうことを示唆している。我々は、これが実際にそのケースであることを見出した(図19)。すなわち、我々は、WT又は突然変異型e-mH2A1.1を安定的に発現するHeLa細胞株から単離されたクロマチンを用いて、抗-PARP-1によるChIP実験、及びQ-PCRを行い、PARP-1-会合Hsp70.1プロモーターの量を定量した。定量は、WTタンパク質を発現する細胞中で見出されたPARP-1に比べて、Hsp70.1プロモーターの15%以下が、突然変異型e-mH2A1.1を発現する細胞中でPARP-1に会合された、ことを示した。総合すると、上記のすべてのデータは、in vitro及びin vivoにおいて、mH2A1.1のフォールディングがPARP-1のクロマチンへの結合に重要であることを証明している。
【0127】
我々は、次いで、突然変異型及び野生型e-mH2A1.1ヌクレオソーム複合体と会合されたPARP-1の自己-ADPリボシル化活性を測定した。2つの複合体は、100 mM NaClを含む緩衝液中で、二重免疫アフィニティー精製によって同一の条件下で単離した(図20)。これらの条件下で、H2A1.1-mut複合体に会合されたPARP-1の相対的な量は、野生型mH2A1.1複合体と会合されたPARP-1量と同一であった(図20)。
【0128】
PARP-1の自己-ADPリボシル化活性を測定するために、会合されたPARP-1の同一量を含む野生型及び突然変異型の複合体は、モノヌクレオソーム及び32P-α-NAD+の存在下でインキュベートした。ポリ(ADP-リボシル)化は、20 mM Tris-HCl、pH 7.8、50 mM NaCl、3mM MgC12、0.5 mM DTT、10 μM {32P}NAD (10 μCi/nmol) (AMERSHAM)、DUBAND-GOULET et al. (Methods, vol.33(1), p:12-7, 2004) に記載にようにして調製した100 ng モノヌクレオソーム、及び100 ng組換えPARP-1 (ALEXIS)、PARP-1と会合された天然型マクロH2A1.1、又はPARP-1と会合された天然のマクロ-H2A1.1突然変異体を含む20 μl反応混合物中でin vitroで行った。ADPリボシル化反応は、37℃で1〜30分間インキュベートし、1% SDSで停止し、直接、12% SDS-PAGEゲルにロードした。
【0129】
その結果は、32P-NAD+存在下でのモノヌクレオソームとの野生型マクロ-H2A1.1複合体のインキュベーションが、PARP-1の非常に低い標識を生じ(図12参照)、我々は、30分のインキュベーション後に標識をほとんど確認できなかった。組換えPARP-1(50 ng)及びモノヌクレオソームの同一量を含む対照は、1分間のインキュベーションの後にPARP-1の非常に強い標識を示した。このことは、マクロ-H2A1.1がPARP-1自己-ADP-リボシル化活性を妨害することを示唆している。マクロH2A1.1突然変異体複合体で行った同一の実験は、32P-NAD+での1分間のインキュベーション後にPARP-1の検出可能な標識を生じ(図12参照)、この標識は、すべての32P-NAD+がADP-リボースポリマーに変換されるまで直線的に増加する。
【0130】
加えて、最初の1分間でのPARP-1標識の程度は、野生型e-mH2A1.1ヌクレオソームと会合されたPARP-1標識の少なくとも37倍であった(図21、定量)。
【0131】
これらの結果は、mH2A1.1とPARP-1との相互作用がPARP-1自己-ADP-リボシル化活性を妨害することを強く示唆している。実際に、突然変異型mH2A1.1のフォールディングが混乱すると(図17及び18)、このことは、突然変異型mH2A1.1とPARP-1との特定の相互作用の混乱を生じることになり(図18)、これは、次に、より高い酵素活性を有する、溶液中に酵素がないものに近い構造をPARP-1に採用させる。組換えPARP-1の自己ADP-リボシル化に関するデータは、このことと一致する。なぜならば、組換えPARP-1の自己-ADPリボシル化の速度論及びその程度はいずれも、突然変異型emH2A1.1と会合されたPARP-1と同様であった(図12、中央のパネルと右パネルとを比較されたい)。最後に、本明細書で使用されるNAD濃度は、生理学的濃度に近く、高度に分岐したPARP-1の形成を許容しない(データ非表示)。
【0132】
e-mH2A1.1モノヌクレオソーム複合体は、PARP-1に加えて、多数の他のタンパク質を含むので、これらのタンパク質の中には、e-mH2A1.1としてPARP-1と相互作用し、その酵素活性を妨害するものもある、という可能性を完全に排除するのは難しい。これを除外するために、我々は、emH2A1.1オクタマー及び会合されたPARP-1を精製し、高度に精製された成分からe-mH2A1.1ヌクオレオソーム-PARP-1を再構成し、会合されたe-mH2A1.1ヌクレオソーム-PARP-1の酵素活性を測定しようとした。これまで、我々は、3つのタグ付きmH2A1.1変異体を安定的に発現する新しいHeLa細胞株を作製した (フラッグ-HA-HIS) 。これは、emH2A1.1ヌクレオソーム複合体からe-mH2A1.1ヒストンオクタマー及びPARP-1の精製を可能にした。すなわち、フラッグ-HA精製モノヌクレオソームは、ヒドロキシアパタイトカラムに吸着させ、0.65 M NaClで洗浄した。0.65 M NaClでのカラムの洗浄は、PARP-1を除いて、結合されたタンパク質のすべてを放出した(図22、レーン3、データ非表示)。これは、PARP-1のe-mH2A1.1ヌクレオソームへの非常に強い結合の証拠である(カラム上の残渣、e-mH2A1.1及びPARP-1は、おおよそ化学量論的な量であり、これは、ヌクレオソームのemH2A1.1の1分子はPARP-1の1分子と複合化され得ることを示唆している、ことに留意されたい)。
【0133】
e-mH2A1.1オクタマー及びPARP-1は、2M NaClを含む緩衝液でカラムから放出し(図22、レーン3)、emH2A 1.1-PARP-1ヌクレオソーム複合体の再構成のために使用した。次いで、再構成されたe-mH2A1.1ヌクレオソームと会合されたPARP-1の自己-ADPリボシル化活性を試験した(図23)。慣用的なヌクレオソーム及び天然のPARP-1を含む溶液(ヒドロキシアパタイトカラム固定化e-mH2A1.1ヌクレオソーム複合体の2M NaClの溶出液から精製した、(図22、レーン4)))は、陽性対照として使用した(図23)。反応は、所定の時間に及び2% SDS-PAGEゲル上にロードされた試料で追跡した。電気泳動の完了後に、自己-ADP-リボシル化PARP-1はオートラジオグラフィーで視覚化した(図23)。32P-α-NAD+の存在下で、in vitroにて再構成されたemH2A1.1ヌクレオソームのPARP-1によるインキュベーションは、その酵素活性の完全な不活性をもたらしたが(図23、レーン2〜5)、一方、慣用的なモノヌクレオソームでインキュベーションしたときには同一のPARP-1は、時間と共に増加し、10〜20分以内に完了した、強いADP-リボシル化活性を示した(図23、レーン6〜9)。更に、100倍超の慣用的ヌクレオソームの存在下で、PARP-1を含むin vitroで再構成されたヌクレオソームのインキュベーションは、PARP-1を再活性化しなかった(データ非表示)。これは、PARP-1とmH2A1.1との特定の相互作用が当該酵素の「不活性化」を決定することを更に確認する。
【0134】
10) マクロH2A1.1のC-末端非ヒストン領域におけるPARP-1結合領域の同定
PARP-1と特異的に相互作用するマクロH2A1.1のドメインを同定するために、我々は、ベイトとして異なった欠損を有する組換えマクロH2A1.1非-ヒストン領域を用いて、GST-プルダウン実験を行った。実験は、先に記載のようにして行った。対照実験として、我々は、ADPリボースの結合を取り除く、G224Eを有する組換えマクロH2A1.1非-ヒストン領域(KUSTATSCHER et al, 2005, 前掲)、及びベイトとしてYBR022w(S. Cerivisiae由来; NP_009578)の組換えマクロドメインを使用した。
【0135】
マクロH2A1.2及びマクロH2A2における対応する結合領域を同定するために、我々はまた、ベイトとして異なった欠損を有する組換えマクロH2A1.2又はマクロH2A2非-ヒストン領域を用いてGST-プルダウン実験を行った。
【0136】
11) PARP-1活性の組換えインヒビター
PARP-1活性の新規インヒビターを同定するために、我々は、マクロH2A1.2、マクロH2A2又はYBR022w (S. Cerivisiae由来; NP_009578) のマクロドメインに融合されたPARP-1に対するマクロH2A1.1結合領域を含むGST融合タンパク質をコードする様々な構築物を作製した。
【0137】
組換えタンパク質は、先に記載のようにして製造し、標準的なプロトコールに従って精製した。
【0138】
我々は、組換えPARP-1(ALEXIS)の存在下に、PARP-1へのマクロH2A1.1結合部位を含む異なったGST融合タンパク質と共に、又は当該タンパク質なしで、ポリ(ADP-リボシル)化アッセイを行った。
【図面の簡単な説明】
【0139】
【図1】図1は、クロマチン局在化(DAPI)に比べて、タグ付きマクロヒストン-H2A1.1(e-MH1.1)及びH2A(e-H2A)を安定的に発現するHeLa細胞、又は発現しないHeLa細胞(対照)で、抗-HA抗体(抗-HA)により得られた免疫蛍光染色を示す。
【図2】図2は、タグ付きH2A(e-H2A)及びマクロヒストンH2A1.1(e-MH1.1)を発現するHeLa細胞由来の精製された核複合体のイムノブロッティング後に、抗-フラッグ抗体により得られたシグナルを示す。
【図3】図3は、タグ付きH2A (H2A com) 及びマクロヒストンH2A1.1 (MH1.1 com)をそれぞれ発現するHeLa細胞の核抽出物から抗-FLAG/HA免疫沈降のポリアクリルアミドゲルを分離する銀染色を示す。質量分析によって同定されたポリペプチドを示す。Mは、M12タンパク質分子量マーカー (INVITROGEN) に対応する。
【図4】図4は、組換えGST (GST)、GST-H2A (H2A)、GST-マクロH2A1.1 (MH1.1) 又はGST-NHR (非ヒストン領域) タンパク質に対する結合(B)フラクション及び結合((U)フラクション中のヒト組換えPARP-1タンパク質を示す。
【図5】図5は、Tap-Chip法の様々なステップを記載する。精製されたクロマチンは、ミクロコッカル・ヌクレアーゼ(Mnase)で消化した。次いで、タグ付きマクロヒストン-H2A1.1を含むヌクレオソームを抗-HA及び抗-FLAG抗体を用いる免疫沈降により精製した。次いで、DNAを精製し、T4 DNAキナーゼでリン酸化した。Taqポリメラーゼを有する断片の3'位置にアデノシンヌクレオチドを加え、得られた断片を最後に更なるシークエンシングのためにプラスミドにクローニングした。
【図6】図6のAは、hsp70-1プロモーター(P)、及びタグ付きマクロヒストン-H2A1.1を安定的に発現するHeLa細胞から免疫沈降クロマチンの1つの抽出物由来のコーディング(C)を用いて得られたPCR増福産物を示す。対照の増幅は、免疫沈降の前にHeLa細胞由来のクロマチンで同一のプライマーを用いて行った(インプット)。レーンMは、分子ラダーに対応する(1,000 pbラダー, INVITROGEN) 。 図6のBは、HeLa細胞におけるhsp70-1遺伝子のプロモーター領域(グレイ色)対コーディング領域(斜線)での、マクロヒストンH2A1.1の相対的な濃縮を示す。 図6のCは、非-トランスフェクトHeLa細胞由来のマクロヒストンH2A1.1免疫沈降クロマチンの1つの抽出物から、hsp70-1プロモーター(p)及びコーディング(C)領域プライマーを用いて得られたPCR増福産物を示す。レーンMは、分子ラダーに相当する(1,000 pbラダー, INVITROGEN)。
【図7】図7のAは、H2A又はマクロヒストンH2A1.1の量、あるいはヒートショック(HS、+)の後の、又はヒートショックなし(-)のHeLa細胞中の、hsp70-1プロモーター対GAPDHプロモーターでのPARP-1の量を示す。各結果は、3つの各々の実験の平均に相当する。 図7のBは、H3又はH3.3ヒストンの量、あるいはヒートショック(HS、+)の後の、又はヒートショックなし(-)のHeLa細胞中の、hsp70-1プロモーター対GAPDHプロモーターでのPARP-1の量を示す。各結果は、3つの各々の実験の平均に相当する。
【図8】図8のAは、ヒートショック(HS、+)の後の、又はヒートショックなし(-)のHeLa細胞におけるhsp70-1プロモーター対GAPDHプロモーターでのADP-リボースの量を示す。各結果は、3つの各々の実験の平均に相当する。 図8のBは、ヒートショック(HS、+)の後の、又はヒートショックなし(-)のHeLa細胞中の、hsp70-1プロモーター対GAPDHプロモーターでのアセチル化H4ヒストンの量を示す。各結果は、3つの各々の実験の平均に相当する。
【図9】図9は、ヒートショック(HS、+)後数分間の、又はヒートショックなし(-)のHeLa細胞中の、及びPARP-1特異的siRNA又は会合しないsiRNA(Scr)にトランスフェクトされたあるいはトランスフェクトされないHeLa細胞中の、PARP-1 30の相対的発現;並びに、マクロH2A1特異的siRNA又は会合しないsiRNA(Scr)でトランスフェクトされたあるいはトランスフェクトされない細胞中のマクロH2A1の相対的発現を示す。
【図10】図10のAは、ヒートショック(HS、+)の後の、又はヒートショックなし(-)のHeLa細胞中での30分間の、リアルタイムPCRによるhsp70-1 mRNA対GAPDH mRNAの相対的発現を示す。当該細胞は、会合しないsiRNA(組換え)、PARP-1特異的siRNA(PARP-1)及びマクロH2A1特異的siRNA(マクロH2A1)でトランスフェクトされたか又はトランスフェクトされなかった。 図の10Bは、マクロH2A1特異的siRNAでトランスフェクトされた(+siRNAマクロ-H2A1)又はsiRNAでトランスフェクトされない(-siRNAマクロ-H2A1)HeLa細胞中のhsp70-1発現対GAPDH発現のリアルタイムPCRによる速度論的分析を示す。当該アッセイは、ヒートショック(HS、+)の10、20又は30分後、又はヒートショック非存在下(-)で、トランスフェクトされた細胞で行った。結果は、3つの各々の実験の平均である。
【図11】図11は、マクロH2A1.1 (NP_613075)、マクロH2A1.2 (NP_004884) 及びマクロH2A2 (NP_061119) マクロドメインと、非-ヒストンタンパク質のマクロドメインから選ばれるドメインとの配列アラインメントを示す。マクロドメインで維持された残基を赤で示す。マクロH2A1遺伝子の代わりのスプライシングによって変更された残基を強調する。この変更された領域は、リン酸基に結合し、ADP-リボース(GDITコンセンサスモチーフ)を加水分解すると予測される。AF 1521は、マクロH2Aのマクロドメインと相同性を有する超高熱硫酸還元古細菌由来のタンパク質である。AF1521は結晶化されている。NP_598908.1は、マウス由来のAF 1521オルソログである。YBR022WPは、もっぱらマクロドメインを有するサッカロマイセス・セレビシエのタンパク質である。 YBR022WPは、1"-ホスホ-ADP-リボースの1"-ホスフェート(phosphat)基をプロセスすることが報告された。
【図12】図12は、32P-NAD+の存在下での、組換えPARP-1、精製マクロH2A1.1複合体(MH1.1)又は精製マクロH2A1.1突然変異体複合体(MH1.1-mut.com)のPARP-1自己-ADP-リボシル化活性の速度論的分析を示す。
【図13】図13は、インプットDNAの割合の関数として、Hsp70.1、Hsp70.2又はHsp70.8プロモーターのプローブでDNA免疫-沈降された量を示す。
【図14】図14は、15〜35%グルセロールグラディエント上での、PARP-1と前記複合体の単離後のe-mH2A1.1複合体との安定的な結合、当該グラディエントの分画、及び4〜12% SDS PAGEでのフラクション(1〜9)のローディングを示す。コアヒストン、e-mH2A1.1及びPARP-1の位置を、図の左部分に示した。Mは分子量マーカーである。
【図15】図15は、12% PAGE及び銀染色での分離後の単離されたe-mH2A1.1複合体(com)(左パネル)、並びに抗-ADPリボース抗体によって明らかにされた複合体のウェスタンブロット(右パネル)を示す。Mは、左に示した分子量を有する分子マーカーである。
【図16】図16は、マクロH2Aと公知のホスホエステラーゼとの配列アラインメントを示す。S.セレビシエ(P53314, 第1列)、シロイヌナズナ(Y11650、第2列)及びヒト(BC006392.1、第3列)ホスホエステラーゼにおける2つの保存的テトラペプチド表記を、ヒトmH2A1.1 (第4列)、ヒトmH2A1.2 (第5列)及びヒトmH2A2 (第6列)と共に示し、配列した。これらのアラインメントは、活性部位に位置するHXTXコンセンサスモチーフ(第8列)の重要性を強調する。このモチーフは、mH21.1(mH2A1.1-mut、第7列)のアラニン(AAAA)に変異した。
【図17】図17は、モノ-ADP-リボースの突然変異型mH2A1.1への変更された結合を示す。組換え野生型(WT)又は突然変異型(Mut)mH2A1.1は、精製して均一にした。両タンパク質の増加量をフィルター上に(2点で)ロードした。次いで、1つのフィルターを32P-ADP-リボースでインキュベートし(上パネル)、他のフィルターは、等しいローディング用の対照としてクマシーブルーで染色した(下パネル)。
【図18】図18は、イオン強度の増加は、ヌクレオソーム複合体から突然変異体を放出したが、WT e-mH2A1.1タンパク質を放出しなかったことを示す。野生型 (WT) 及び突然変異型mH2A1.1ヌクレオソーム複合体は、150 mM NaCl (左パネル) 又は300 mM NaCl (右パネル) を用いて、WT又は突然変異型e-mH2A1.1を安定的に発現する細胞株を単離した。複合体は、SDSを含む4〜12% PAGEグラディエントに付し、次いで銀染色した。emH2A1.1及びPARP-1の位置を示す。Mは、タンパク質分子量マーカーである。右パネルは、それぞれ150 mM及び300 mM NaClで単離されたWT及び突然変異型emH2A1.1複合体内の(ヒストンH1に対する)PARP-1の定量を示す。300 mM NaClで単離された突然変異型mH2A1.1複合体内のPARP-1の量が劇的に減少したことに留意されたい。
【図19】図19は、野生型(WT)又は突然変異型e-mH2A1.1 (mH2A1.1-Mut) を発現する、ヒートショックなし(HS:-)の又はヒートショック(42℃で30分間;HS:+)された安定細胞株中でのHsp70.1プロモーターとin vivoで結合したPARP-1の量を示す。細胞株は、ホルムアルデヒドで処理してタンパク質をDNAに架橋させ、抗-PARP-1抗体を用いてChIPを行った。リアルタイムPCRで増幅されたHsp70.1プロモーターDNA断片の量は、インプットDNAの割合を表す。
【図20】図20は、PARP-1酵素活性の測定のための、精製された野生型マクロH2A1.1 (e- mH2A1.1) 及び突然変異体 (e-mH2A1.1-mut) ヌクレオソームの銀染色を示す。複合体は、100 mM NaClを用いて単離した。PARP-1、e-mH2A1.1及び慣用的コアヒストンに対応するバンドを示す。Mは、タンパク質分子量マーカーである。
【図21】図21は、図12で示したデータの定量化を示す。
【図22】図22は、精製されたe-mH2A1.1オクタマー及び結合されたPARP-1の12% SDS-PAGEを示す。e-mH2A1.1ヌクレオソーム複合体は、ヒドロキシアパタイトカラムにロードし、0.65 M NaClで洗浄後に、残りのタンパク質を2MのNaCl緩衝液で溶出した。ヒストンオクタマーからPARP-1を精製するために、2M NaCl溶出液を1 M尿素で補足し、アガロース-ニッケルカラムを通過させた。レーン3は、2M NaCl溶出液のタンパク質組成物である。レーン4は、精製されたPARP-1である。レーン1及び2は、対照としての、分子量マーカー及び慣用的なヒストンオクタマーである。
【図23】図23は、精製されたe-mH2A1.1コアヒストン(レーン6〜9)又は慣用的なコアヒストン(レーン2〜5)を含むin vitroで再構成されたヌクレオソームと会合されたPARP-1の速度論的分析を示す。試料を32P-NAD+でインキュベートし、SDSを含む12% PAGEに付した。レーン1は、32P-NAD+のみを含む。
【図24】図24は、siRNAによるmH2A1の発現のサプレッションが、Hsp70.1プロモーターと会合されたPARP-1の量をダウンレギュレートすることを示す。対照非-処理(-siRNA-mH2A1)及びsiRNA-処理 (+siRNA-mH2A1) HeLa細胞は、ホルムアルデヒドで架橋し、抗-PARP-1抗体を用いてChIP用に使用した。DNAを2つのChIP試料から単離し、Hsp70.1プロモーターに特異的なプライマーを用いて、リアルタイムPCR増幅に供した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホスホエステラーゼ活性を有し、場合により少なくとも1つの非相同配列に融合及び/又は結合された、マクロヒストンH2AのC-末端非-ヒストンドメインから得られるアミノ酸配列を含む、核酵素ポリ(アデノシン5'-ジホスホ-リボース)ポリメラーゼであるポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)のインヒビター。
【請求項2】
前記のマクロヒストンH2AのC-末端非-ヒストンドメインが、ヒトマクロH2A1.1(配列番号1のアミノ酸121〜369)、マクロヒストンH2A1.2(配列番号2のアミノ酸120〜371)及びマクロヒストンH2A2(配列番号3のアミノ酸121〜372)のC-末端非ヒストンドメインを含む群より選択される、請求項1記載のインンヒビター。
【請求項3】
好ましくは、前記のマクロヒストンH2AのC-末端非ヒストンドメインが、マクロH2A1.1のC-末端非ヒストンドメインである、請求項2記載のインヒビター。
【請求項4】
マクロヒストンH2AのC-末端非ヒストンドメインから得られ、350アミノ酸長未満、好ましくは150アミノ酸長未満であるアミノ酸配列を含む、請求項1〜3のいずれか1項記載のインヒビター。
【請求項5】
マクロヒストンH2AのC-末端非ヒストンドメインから得られる前記アミノ酸配列が、ヒストンH2Aとの相同性を有するマクロヒストンH2Aフォールドドメインを含まない、請求項1〜4のいずれか1項記載のインヒビター。
【請求項6】
マクロヒストンH2Aの非ヒストンドメインから得られる前記アミノ酸配列が、マクロヒストンH2Aのマクロドメインを含む、請求項1〜5のいずれか1項記載のインヒビター。
【請求項7】
前記のマクロヒストンH2Aのマクロドメインが、残基184〜369、好ましくはヒトマクロH2A1.1(配列番号1)の残基202〜369、残基183〜371、好ましくはヒトマクロH2A1.2(配列番号2)の残基201〜371、及び残基184〜372、好ましくはヒトマクロH2A2(配列番号3)の残基202〜372を含む群から選ばれる、請求項6記載のインヒビター。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項記載のインヒビターをコードする核酸。
【請求項9】
請求項8記載の核酸を含むベクター。
【請求項10】
(i)請求項1〜7のいずれか1項記載のインヒビター、請求項8記載の核酸、又は請求項9記載のベクター、並びに(ii)薬学的に許容されるビヒクル、を含む組成物。
【請求項11】
PARP活性化に関連する疾患に罹患した患者の予防又は治療のための医薬の製造のための、請求項1〜7のいずれか1項記載のインヒビター、請求項8記載の核酸、又は請求項9記載のベクター、の使用。
【請求項12】
前記のPARP活性化に関連する疾患が、ネクローシス又はアポトーシスに起因する細胞損傷又は細胞死から起こる組織損傷、虚血及び再潅流傷害から起こる神経組織損傷、神経疾患及び神経変性疾患、血管性卒中、心臓疾患、加齢による黄斑変性症、AIDS、免疫老化疾患、関節炎、アテローム性動脈硬化症、悪液質、癌、細胞老化に関連する骨格筋の変性疾患、糖尿病、頭部外傷、免疫老化、炎症性疾患、筋ジストロフィー、変形性関節症、骨粗鬆症、慢性及び/又は急性疼痛、腎不全、網膜虚血、敗血性ショック、皮膚加齢を含む群より選ばれる、請求項11記載の使用。
【請求項1】
ホスホエステラーゼ活性を有し、場合により少なくとも1つの非相同配列に融合及び/又は結合された、マクロヒストンH2AのC-末端非-ヒストンドメインから得られるアミノ酸配列を含む、核酵素ポリ(アデノシン5'-ジホスホ-リボース)ポリメラーゼであるポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)のインヒビター。
【請求項2】
前記のマクロヒストンH2AのC-末端非-ヒストンドメインが、ヒトマクロH2A1.1(配列番号1のアミノ酸121〜369)、マクロヒストンH2A1.2(配列番号2のアミノ酸120〜371)及びマクロヒストンH2A2(配列番号3のアミノ酸121〜372)のC-末端非ヒストンドメインを含む群より選択される、請求項1記載のインンヒビター。
【請求項3】
好ましくは、前記のマクロヒストンH2AのC-末端非ヒストンドメインが、マクロH2A1.1のC-末端非ヒストンドメインである、請求項2記載のインヒビター。
【請求項4】
マクロヒストンH2AのC-末端非ヒストンドメインから得られ、350アミノ酸長未満、好ましくは150アミノ酸長未満であるアミノ酸配列を含む、請求項1〜3のいずれか1項記載のインヒビター。
【請求項5】
マクロヒストンH2AのC-末端非ヒストンドメインから得られる前記アミノ酸配列が、ヒストンH2Aとの相同性を有するマクロヒストンH2Aフォールドドメインを含まない、請求項1〜4のいずれか1項記載のインヒビター。
【請求項6】
マクロヒストンH2Aの非ヒストンドメインから得られる前記アミノ酸配列が、マクロヒストンH2Aのマクロドメインを含む、請求項1〜5のいずれか1項記載のインヒビター。
【請求項7】
前記のマクロヒストンH2Aのマクロドメインが、残基184〜369、好ましくはヒトマクロH2A1.1(配列番号1)の残基202〜369、残基183〜371、好ましくはヒトマクロH2A1.2(配列番号2)の残基201〜371、及び残基184〜372、好ましくはヒトマクロH2A2(配列番号3)の残基202〜372を含む群から選ばれる、請求項6記載のインヒビター。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項記載のインヒビターをコードする核酸。
【請求項9】
請求項8記載の核酸を含むベクター。
【請求項10】
(i)請求項1〜7のいずれか1項記載のインヒビター、請求項8記載の核酸、又は請求項9記載のベクター、並びに(ii)薬学的に許容されるビヒクル、を含む組成物。
【請求項11】
PARP活性化に関連する疾患に罹患した患者の予防又は治療のための医薬の製造のための、請求項1〜7のいずれか1項記載のインヒビター、請求項8記載の核酸、又は請求項9記載のベクター、の使用。
【請求項12】
前記のPARP活性化に関連する疾患が、ネクローシス又はアポトーシスに起因する細胞損傷又は細胞死から起こる組織損傷、虚血及び再潅流傷害から起こる神経組織損傷、神経疾患及び神経変性疾患、血管性卒中、心臓疾患、加齢による黄斑変性症、AIDS、免疫老化疾患、関節炎、アテローム性動脈硬化症、悪液質、癌、細胞老化に関連する骨格筋の変性疾患、糖尿病、頭部外傷、免疫老化、炎症性疾患、筋ジストロフィー、変形性関節症、骨粗鬆症、慢性及び/又は急性疼痛、腎不全、網膜虚血、敗血性ショック、皮膚加齢を含む群より選ばれる、請求項11記載の使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
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【図23】
【図24】
【公表番号】特表2009−519216(P2009−519216A)
【公表日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−539534(P2008−539534)
【出願日】平成18年11月14日(2006.11.14)
【国際出願番号】PCT/IB2006/003224
【国際公開番号】WO2007/054814
【国際公開日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(501089863)サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェサイアンティフィク(セエヌエールエス) (173)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月14日(2006.11.14)
【国際出願番号】PCT/IB2006/003224
【国際公開番号】WO2007/054814
【国際公開日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(501089863)サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェサイアンティフィク(セエヌエールエス) (173)
【Fターム(参考)】
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