PCa架構における導電性部材の接続構造及び接続方法とそれに用いるPCa部材
【課題】PCa部材に埋設された導電性部材同士の接続作業及び接続状態の目視確認を容易に行えると共に、切欠きに充填する後埋めモルタルの定着性を良くして、切欠きの埋め戻しを容易に行えるようにする。
【解決手段】端部に金属板aが設けられた導電性部材AをPCa部材に、当該PCa部材の軸方向端部側面に形成された切欠きbの内部に前記金属板が露出した状態に打ち込んでおき、これらのPCa部材同士を接続した後、接続目地を挟んで対向位置する切欠きbの内部の金属板aに接続用金属板11を溶接することにより導電性部材A同士を物理的及び電気的に接続し、しかる後、前記切欠きbにモルタル12を充填する。導電性部材Aは、互いに平行に配置された2本の鉄筋1から成る導電体2と、導電体2の両端において2本の鉄筋1に一片を挟んだ状態に溶接したL型鉄板3とで構成する。
【解決手段】端部に金属板aが設けられた導電性部材AをPCa部材に、当該PCa部材の軸方向端部側面に形成された切欠きbの内部に前記金属板が露出した状態に打ち込んでおき、これらのPCa部材同士を接続した後、接続目地を挟んで対向位置する切欠きbの内部の金属板aに接続用金属板11を溶接することにより導電性部材A同士を物理的及び電気的に接続し、しかる後、前記切欠きbにモルタル12を充填する。導電性部材Aは、互いに平行に配置された2本の鉄筋1から成る導電体2と、導電体2の両端において2本の鉄筋1に一片を挟んだ状態に溶接したL型鉄板3とで構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、PCa(プレキャストコンクリート)柱を用いた多層建築物における避雷導体等に好適なPCa架構における導電性部材の接続構造及び接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、PCa柱を用いた多層建築物においては、PCa柱の主筋同士の接合にモルタル等によるグラウト式機械継手が用いられており、機械継手の位置で主筋同士の電気的接続が断たれるので、主筋を圧接する在来工法によるRC造建築物のように、主筋をそのまま落雷時の雷電流を接地する避雷導体として利用する訳にはいかない。
【0003】
そのため、PCa架構とした多層建築物においても、柱用PCa部材の主筋を避雷導体として利用できるようにした柱の接続構造が、特許文献1によって提案されている。この接続構造は、柱用PCa部材の内部に主筋と電気的に接続された導電性金物を柱用PCa部材の上面と下面に露出した状態に埋設しておき、下階側の柱用PCa部材の上に上階側の柱用PCa部材を接続することにより、上下の導電性金物同士が接触して、電気的に接続されるようにしたものである。
【0004】
しかし、これによる場合は、上下の柱用PCa部材の端面間に形成される隙間の内部で導電性金物同士の接触が行われるので、接続状態を目視で確認することができず、施工管理、品質確保が極めて困難である。そのため、特許文献1に記載の発明では、柱用PCa部材の上面と下面に露出させる導電性金物を通電により溶解する金属材料で作製し、上下の柱用PCa部材の接続後、通電により導電性金物を溶解して電気的に接続するといった特殊な工夫がなされている。しかし、このように工夫しても、溶解によって実際に電気的な接続が成されたか否かの確認は困難であり、しかも、接続不良が確認された場合の対応も困難であるなど、問題が多い。
【0005】
そのため、実際のPCa架構を有する建築工事では、次の二つの方法が採用されることが多い。その一つは、図16に示すように、柱用PCa部材の製造段階で、合成樹脂製のさや管(PF管)15を柱用PCa部材に打ち込んでおき、柱用PCa部材を接続する都度、さや管15に軟質導線16を通して、避雷導体を構築する方法である。
【0006】
他の一つは、図17に示すように、柱用PCa部材に接続用軟質導線付き避雷導体(これは2本の鉄筋、軟銅線、軟銅帯、ステンレス鋼板等を組み合わせて構成されている。)17を、上部の接続用軟質導線18aが、柱用PCa部材の上端から柱梁仕口部用PCa部材を迂回し得る長さで突出し、下部の接続用軟質導線18bが、柱用PCa部材の端部側面の切欠きbに露出した状態に打ち込んでおく一方、梁柱仕口部用PCa部材の側面には上下方向全長にわたる縦溝cを形成しておき、上下の接続用軟質導線付き避雷導体17、17同士を切欠きbの内部で接続し、切欠きb及び縦溝cにモルタル12を充填して、接続用軟質導線18a、18bを被覆する方法である。
【0007】
しかしながら、前者による場合、軟質導線16がさや管15に挿入されているため、避雷導体とPCa架構の構造鉄筋とが電気的に接続されておらず、落雷時、避雷導体と構造鉄筋に電位差が生じ、不測な短絡現象が発生する可能性がある上、さや管15に挿通されている軟質導線16が、落雷時に、フレミングの左手の法則によって、さや管15内で暴れるという問題もある。
【0008】
後者による場合、接続用軟質導線付き避雷導体17をPCa部材の主筋周りに埋設されるせん断補強筋に番線で結束することで、避雷導体17とPCa架構の構造鉄筋を電気的に接続し、電位差を無くすことができる。しかし、その反面、避雷導体17が2本の鉄筋、軟銅線、軟銅帯、ステンレス鋼板等を組み合わせた特殊な金物であるため、コストが高く付き、しかも、柱用PCa部材の上端から上部の接続用軟質導線18aが長く突出しているため、高所での柱構築作業の邪魔になり、作業上の危険回避に相当な注意が要求されることになる。また、PCa部材から露出する導電性部材が軟質導線であるため、切欠きbや縦溝cにモルタル12をコテ押さえで充填する際、軟質導線の変形と復元によってモルタル12が浮き上がり、空隙が生じて、後埋めモルタル12の定着が悪いという問題がある。
【0009】
尚、後者に類似する方法として、図18に示すように、柱用PCa部材に接続用軟質導線19のみを、その上下両端部がPCa部材の軸方向両端部側面に形成された切欠きbの内部に露出した状態に打ち込んでおき、上下の接続用軟質導線19、19同士を切欠きbの内部においてネジ接続式継手等の端子金物20により接続し、切欠きbにモルタル12を充填して、接続用軟質導線を隠蔽する方法が、特許文献2によって提案されている。この方法は、PCa部材の側面からの作業で接続用軟質導線同士の接続を行える点で、図17の従来例と同様な利点を有しているが、切欠きb内部に軟質導線が露出しているので、切欠きbに充填する後埋めモルタル12の定着が悪い点では、図17の従来例と大同小異である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平7−212949号公報
【特許文献2】特開2000−299918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記の問題点を踏まえて成されたものであって、その目的とするところは、PCa部材に埋設された導電性部材同士の接続作業及び接続状態の目視確認を容易に行えると共に、切欠きに充填する後埋めモルタルの定着性を良くして、切欠きの埋め戻しを容易に行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために本発明が講じた技術的手段は、次のとおりである。即ち、請求項1に記載の発明によるPCa架構における導電性部材の接続構造は、端部に金属板を備えた導電性部材がPCa部材に、当該PCa部材の軸方向端部側面に形成された切欠きの内部に前記金属板を露出させた状態に打ち込まれ、これらのPCa部材同士の接続目地を挟んで対向位置する切欠きの内部において、双方の切欠き内部に露出した金属板とそれに当て付けた接続用金属板とが接合されることにより導電性部材同士が物理的及び電気的に接続され、前記金属板及び接続用金属板が前記切欠きに充填された充填材によって被覆されていることを特徴としている。尚、この発明において、接合の具体的な手段としては、溶接、ロウ付け、ボルト接合の何れであってもよい。充填材としては、モルタルやコンクリートの他、固結性樹脂等のグラウト材の何れであってもよいが、コスト、施工性等の観点からはモルタルを用いることが望ましい。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のPCa架構における導電性部材の接続構造であって、導電性部材がPCa部材に埋設されたせん断補強筋に接触状態に結束されていることを特徴としている。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のPCa架構における導電性部材の接続構造であって、接続用金属板に後埋めモルタル定着強化手段が施されていることを特徴としている。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れかに記載のPCa架構における導電性部材の接続構造であって、導電性部材が互いに平行に配置された2本の鉄筋から成る導電体と、導電体の両端において2本の鉄筋に一片を挟んだ状態に溶接したL型鉄板とで構成されていることを特徴としている。
【0016】
請求項5に記載の発明によるPCa架構における導電性部材の接続方法は、端部に金属板が設けられた導電性部材をPCa部材に、当該PCa部材の軸方向端部側面に形成された切欠きの内部に前記金属板が露出した状態に打ち込んでおき、これらのPCa部材同士を接続した後、接続目地を挟んで対向位置する切欠きの内部の金属板に接続用金属板を溶接することにより導電性部材同士を物理的及び電気的に接続し、しかる後、前記切欠きに充填材を充填することを特徴としている。
【0017】
請求項6に記載の発明によるPCa部材は、請求項5に記載のPCa架構における導電性部材の接続方法に用いるPCa部材であって、両端部に金属板を備えた導電性部材がPCa部材に、当該PCa部材の軸方向両端部側面に形成された切欠きの内部に前記金属板を露出させた状態に打ち込まれていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載の発明によれば、PCa部材の側面からの作業で導電性部材同士の接続を行うことになるので、導電性部材同士の接続作業が容易である。しかも、導電性部材同士の接続を、PCa部材側面の切欠き内部に露出した金属板とそれに当て付けた接続用金属板を、例えば、隅肉溶接するという建築工事における通常の溶接作業によって行えるので、電気工事専門の施工者でなくても容易に導電性部材同士の接続を行うことができ、接続状態の目視確認も、通常の溶接箇所の点検と同じ作業で行うことができ、接続状態の目視確認が容易である。
【0019】
殊に、PCa部材側面の切欠き内部に露出する部材が金属板であり、軟銅線や軟銅帯等の軟質導体が切欠き内部に存在しないので、溶接による導電性部材同士の接続後、切欠きに充填材の一例であるモルタルをコテ押さえで充填する際、軟質導線の変形と復元によりモルタルが浮き上がって、空隙が生じるといった不都合がなく、後埋めモルタルの定着が良好であるため、切欠きの埋め戻しを容易に行える効果がある。
【0020】
請求項2に記載の発明によれば、導電性部材がPCa部材に埋設されたフープ筋やスターラップ筋などのせん断補強筋に接触状態に結束されているので、この発明を落雷時の雷電流を接地する避雷導体に適用することにより、避雷導体とPCa架構の構造鉄筋を電気的に接続して、落雷時における避雷導体とPCa架構の構造鉄筋の電位差を無くすことができる。
【0021】
請求項3に記載の発明によれば、接続用金属板に後埋めモルタル定着強化手段が施されているので、後埋めモルタルの定着力を一層高めることができる。
【0022】
請求項4に記載の発明によれば、PCa部材に打ち込まれる導電性部材が、互いに平行に配置された2本の鉄筋から成る導電体と、導電体の両端において2本の鉄筋に一片を挟んだ状態に溶接したL型鉄板という建築工事における汎用の鉄筋、鉄板で構成されるものとなるので、低コストで実施でき、異種金属接触による電蝕の虞もない。
【0023】
請求項5に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明に係るPCa架構における導電性部材の接続構造を容易に実現できる効果がある。
【0024】
請求項6に記載の発明によれば、両端部に金属板を備えた導電性部材がPCa部材に、当該PCa部材の軸方向両端部側面に形成された切欠きの内部に前記金属板を露出させた状態に打ち込まれているので、請求項5に記載の発明に係るPCa架構における導電性部材の接続方法を容易に実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に用いる導電性部材の一例を示す斜視図である。
【図2】本発明に用いる柱用のPCa部材の斜視図である。
【図3】本発明に用いる柱梁仕口部用のPCa部材の斜視図である。
【図4】柱用のPCa部材の横断平面図である。
【図5】柱梁仕口部用のPCa部材の横断平面図である。
【図6】本発明に係るPCa架構における導電性部材の接続構造及び接続方法を説明する縦断側面図である。
【図7】要部の縦断側面図である。
【図8】要部の横断平面図である。
【図9】要部の斜視図である。
【図10】要部の側面図である。
【図11】図10の工程に続く要部の側面図である。
【図12】本発明の他の実施形態を示す要部の斜視図である。
【図13】本発明の他の実施形態を示す要部の斜視図である。
【図14】本発明の他の実施形態を示す要部の縦断側面図である。
【図15】モルタル充填前の状態における要部の正面図である。
【図16】従来例を説明する縦断側面図である。
【図17】従来例を説明する縦断側面図である。
【図18】従来例を説明する縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1の(A)、(B)は、避雷導体として構成された導電性部材Aの一例を示す。この導電性部材Aは、両端に金属板a、aを備えており、具体的には、図1の(A)、(B)に示すように、互いに平行に配置された2本の鉄筋1、1から成る導電体2と、導電体2の両端において2本の鉄筋1、1に一片を挟んだ状態に溶接した一対のL型鉄板3、3とで構成されている。鉄筋1としては、例えばD16の異形鉄筋が用いられ、L型鉄板3としては例えば75×75×6の山形鋼が用いられる。
【0027】
導電性部材Aの長さは、導電性部材Aを打ち込むPCa部材の軸長に対応して設定されるものである。例えば、図6に示すように、軸長の長い柱用のPCa部材4と軸長の短い柱梁仕口部用のPCa部材5を組み合わせてPCa柱を構築する場合、導電性部材Aとしては、図1の(A)に示すように、柱用のPCa部材4に打ち込まれる長尺物と、図1の(B)に示すように、柱梁仕口部用のPCa部材5に打ち込まれる短尺物が製造されるが、両者は、導電体2の長さが異なる以外、同じ構成である。
【0028】
図2、図4に示すように、柱用のPCa部材4には、図1の(A)に示した導電性部材Aが、当該PCa部材4の軸方向両端部側面に形成された切欠きb、bの内部に前記金属板a、a(L型鉄板3、3における鉄筋1、1に溶接した方とは反対側の一片)を露出させた状態に打ち込まれ、図3、図5に示すように、柱梁仕口部用のPCa部材5には、図1の(B)に示した導電性部材Aが、当該PCa部材5の軸方向両端部側面に形成された
切欠きb、bの内部に前記金属板(L型鉄板3、3における前記一片)a、aを露出させた状態に打ち込まれている。尚、図2、図4に示す6は柱用の主筋、図3、図5に示す7は主筋挿通用の金属製のシース管である。
【0029】
図4、図5に示すように、導電性部材Aは、主筋群周囲に配筋されるせん断補強筋(図示の実施形態では、PCa柱を対象としているので、フープ筋であるが、PCa梁を対象とする場合は、スターラップ筋となる。)8に接触状態に番線(図示せず)で結束してある。
【0030】
図6〜図11は、上述した柱用のPCa部材4及び柱梁仕口部用のPCa部材5を用いて構築されたPCa架構における導電性部材Aの接続構造及び接続方法を示す。この接続構造及び接続方法を具体的に説明すると次の通りである。
【0031】
先ず、図6に示すように、下階の柱用のPCa部材4の上に柱梁仕口部用のPCa部材5を積み重ね、柱用のPCa部材4の上端から突出させてある主筋6を前記柱梁仕口部用のPCa部材5のシース管7に挿通して上方へ突出させる。そして、レベル調整後、目地モルタル9で両PCa部材4、5を接続する。しかる後、前記柱梁仕口部用のPCa部材5の上に上階の柱用のPCa部材4を積み重ね、同様に、レベル調整、目地モルタル9による両PCa部材4、5の接続を行った後、柱用のPCa部材4の下端側に設けられているグラウト式機械継手10によって下階の柱用のPCa部材4の主筋6と上階の柱用のPCa部材4の主筋6とを接合し、以下、同様な工程の繰り返しによりPCa柱を構築して行く。
【0032】
そして、図6〜図8に示すように、PCa部材4、5同士の接続目地を挟んで対向位置する切欠きb、bの内部において、双方の切欠きb、b内部に露出した金属板(L型鉄板3、3)a、aとそれに当て付けた接続用金属板11とを溶接Wすることにより導電性部材A、A同士を物理的及び電気的に接続し、しかる後、前記切欠きb、bに、充填材の一例であるモルタル12を充填して、前記金属板a、a及び接続用金属板11を被覆してある。
【0033】
上記の構成によれば、PCa部材4、5の側面からの作業で導電性部材A、A同士の接続を行うことになるので、導電性部材A、A同士の接続作業が容易である。
【0034】
殊に、導電性部材A、A同士の接続を、PCa部材4、5側面の切欠きb、b内部に露出した金属板a、aとそれに当て付けた接続用金属板11を隅肉溶接するという建築工事における通常の溶接作業によって行えるので、電気工事専門の施工者でなくても容易に導電性部材同士の接続を行うことができ、接続状態の目視確認も、通常の溶接箇所の点検と同じ作業で行うことができ、接続状態の目視確認が容易である。
【0035】
切欠きb、b内部へのモルタル12の充填はコテ押えによって行われるが、切欠きb、b内部に露出する部材が金属板a、aであり、軟銅線や軟銅帯等の軟質導体が切欠きb、b内部に存在しないので、切欠きb、bにモルタル12をコテ押さえで充填する際、軟質導線の変形と復元によりモルタルが浮き上がって、空隙が生じるといった不都合がなく、後埋めモルタル12の定着が良好である。そのため、切欠きb、bの埋め戻しを容易に行うことができる。
【0036】
接続用金属板11としては、平坦な矩形状の鉄板であってもよいが、図示の実施形態では、モルタル12の定着力を高めるために、接続用金属板11の表面に後埋めモルタル定着強化手段13を施してある。具体的には、図9〜図11に示すように、金属板a、aと接続用金属板11を溶接Wした後、接続用金属板11の表面に後埋めモルタル定着強化手
段13としての金網(エキスパンドメタル)を点溶接によって取り付けてある。このように、金網(エキスパンドメタル)を接続用金属板11に後付けする場合、金網(エキスパンドメタル)として、横幅が接続用金属板11の横幅より広いものを用いても、接続用金属板11の各辺を容易に隅肉溶接できる利点がある。
【0037】
尚、金属板(L型鉄板)a、aの表面には、図9に示すように、PCa部材4、5の製造時点から接続用金属板11を当て付ける直前まで粘着テープ14を貼っておき、コンクリートやモルタルが付着しないように養生することが望ましい。
【0038】
図12は、本発明の他の実施形態を示す。この実施形態は、接続用金属板11として、表面に予め後埋めモルタル定着強化手段13としての金網(エキスパンドメタル)が溶接されている金網付き接続用金属板11を用いることによって、現場での溶接作業を低減した点に特徴がある。この場合、金網(エキスパンドメタル)としては、接続用金属板11からはみ出さない横幅とすることが、接続用金属板11の各辺の隅肉溶接を容易に行える点で望ましい。その他の構成、作用は、図1〜図11の実施形態と同じであるため、説明を省略する。
【0039】
図13は、本発明の他の実施形態を示す。この実施例は、接続用金属板11として、後埋めモルタル定着強化手段13としての貫通孔が設けられた孔開き鉄板(パンチングメタル)を用いることによって、モルタル12の定着力を高めた点に特徴がある。その他の構成、作用は、図1〜図12の実施形態と同じであるため、説明を省略する。
【0040】
図14、図15は、本発明の他の実施形態を示す。この実施例は、PCa部材4、5同士の接続目地を挟んで対向位置する切欠きb、bの内部において、双方の切欠きb、b内部に露出した金属板(L型鉄板3、3)a、aとそれに当て付けた接続用金属板11とをボルト接合した点に特徴がある。3aはL型鉄板3に予め溶接されたボルト、3bはそれにねじ込まれたナットである。接続用金属板11に形成するボルト挿通孔はルーズホールとすることが望ましい。その他の構成、作用は、図1〜図13の実施形態と同じであるため、説明を省略する。
【0041】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態にのみ限定されるべきものではない。例えば、上述した実施形態では、何れも、PCa柱の内部に避雷導体を構築しているが、PCa梁の内部を経て接地する避雷導体を構築する場合についても、本発明は適用可能である。この場合、前述した避雷導体(導電性部材A)は梁用のPCa部材に水平に打ち込まれることになる。そして、導電性部材Aは、梁主筋群の周囲に配筋されるせん断補強筋(スターラップ筋)に接触状態に番線で結束されることになる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
PCa柱やPCa梁の内部を経て接地する避雷導体の他、建物内部に設置される電気設備や電気製品からの電流を接地するアース用導体としても利用できる。
【符号の説明】
【0043】
A 導電性部材
W 溶接
a 金属板
b 切欠き
c 縦溝
1 鉄筋
2 導電体
3 L型鉄板
3a ボルト
3b ナット
4 柱用のPCa部材
5 柱梁仕口部用のPCa部材
6 主筋
7 シース管
8 せん断補強筋
9 目地モルタル
10 グラウト式機械継手
11 接続用金属板
12 充填材(モルタル)
13 後埋めモルタル定着強化手段(金網、貫通孔)
14 粘着テープ
15 さや管
16 軟質導線
17 避雷導体
18a 上部の接続用軟質導線
18b 下部の接続用軟質導線
19 接続用軟質導線
20 端子金物
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、PCa(プレキャストコンクリート)柱を用いた多層建築物における避雷導体等に好適なPCa架構における導電性部材の接続構造及び接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、PCa柱を用いた多層建築物においては、PCa柱の主筋同士の接合にモルタル等によるグラウト式機械継手が用いられており、機械継手の位置で主筋同士の電気的接続が断たれるので、主筋を圧接する在来工法によるRC造建築物のように、主筋をそのまま落雷時の雷電流を接地する避雷導体として利用する訳にはいかない。
【0003】
そのため、PCa架構とした多層建築物においても、柱用PCa部材の主筋を避雷導体として利用できるようにした柱の接続構造が、特許文献1によって提案されている。この接続構造は、柱用PCa部材の内部に主筋と電気的に接続された導電性金物を柱用PCa部材の上面と下面に露出した状態に埋設しておき、下階側の柱用PCa部材の上に上階側の柱用PCa部材を接続することにより、上下の導電性金物同士が接触して、電気的に接続されるようにしたものである。
【0004】
しかし、これによる場合は、上下の柱用PCa部材の端面間に形成される隙間の内部で導電性金物同士の接触が行われるので、接続状態を目視で確認することができず、施工管理、品質確保が極めて困難である。そのため、特許文献1に記載の発明では、柱用PCa部材の上面と下面に露出させる導電性金物を通電により溶解する金属材料で作製し、上下の柱用PCa部材の接続後、通電により導電性金物を溶解して電気的に接続するといった特殊な工夫がなされている。しかし、このように工夫しても、溶解によって実際に電気的な接続が成されたか否かの確認は困難であり、しかも、接続不良が確認された場合の対応も困難であるなど、問題が多い。
【0005】
そのため、実際のPCa架構を有する建築工事では、次の二つの方法が採用されることが多い。その一つは、図16に示すように、柱用PCa部材の製造段階で、合成樹脂製のさや管(PF管)15を柱用PCa部材に打ち込んでおき、柱用PCa部材を接続する都度、さや管15に軟質導線16を通して、避雷導体を構築する方法である。
【0006】
他の一つは、図17に示すように、柱用PCa部材に接続用軟質導線付き避雷導体(これは2本の鉄筋、軟銅線、軟銅帯、ステンレス鋼板等を組み合わせて構成されている。)17を、上部の接続用軟質導線18aが、柱用PCa部材の上端から柱梁仕口部用PCa部材を迂回し得る長さで突出し、下部の接続用軟質導線18bが、柱用PCa部材の端部側面の切欠きbに露出した状態に打ち込んでおく一方、梁柱仕口部用PCa部材の側面には上下方向全長にわたる縦溝cを形成しておき、上下の接続用軟質導線付き避雷導体17、17同士を切欠きbの内部で接続し、切欠きb及び縦溝cにモルタル12を充填して、接続用軟質導線18a、18bを被覆する方法である。
【0007】
しかしながら、前者による場合、軟質導線16がさや管15に挿入されているため、避雷導体とPCa架構の構造鉄筋とが電気的に接続されておらず、落雷時、避雷導体と構造鉄筋に電位差が生じ、不測な短絡現象が発生する可能性がある上、さや管15に挿通されている軟質導線16が、落雷時に、フレミングの左手の法則によって、さや管15内で暴れるという問題もある。
【0008】
後者による場合、接続用軟質導線付き避雷導体17をPCa部材の主筋周りに埋設されるせん断補強筋に番線で結束することで、避雷導体17とPCa架構の構造鉄筋を電気的に接続し、電位差を無くすことができる。しかし、その反面、避雷導体17が2本の鉄筋、軟銅線、軟銅帯、ステンレス鋼板等を組み合わせた特殊な金物であるため、コストが高く付き、しかも、柱用PCa部材の上端から上部の接続用軟質導線18aが長く突出しているため、高所での柱構築作業の邪魔になり、作業上の危険回避に相当な注意が要求されることになる。また、PCa部材から露出する導電性部材が軟質導線であるため、切欠きbや縦溝cにモルタル12をコテ押さえで充填する際、軟質導線の変形と復元によってモルタル12が浮き上がり、空隙が生じて、後埋めモルタル12の定着が悪いという問題がある。
【0009】
尚、後者に類似する方法として、図18に示すように、柱用PCa部材に接続用軟質導線19のみを、その上下両端部がPCa部材の軸方向両端部側面に形成された切欠きbの内部に露出した状態に打ち込んでおき、上下の接続用軟質導線19、19同士を切欠きbの内部においてネジ接続式継手等の端子金物20により接続し、切欠きbにモルタル12を充填して、接続用軟質導線を隠蔽する方法が、特許文献2によって提案されている。この方法は、PCa部材の側面からの作業で接続用軟質導線同士の接続を行える点で、図17の従来例と同様な利点を有しているが、切欠きb内部に軟質導線が露出しているので、切欠きbに充填する後埋めモルタル12の定着が悪い点では、図17の従来例と大同小異である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平7−212949号公報
【特許文献2】特開2000−299918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記の問題点を踏まえて成されたものであって、その目的とするところは、PCa部材に埋設された導電性部材同士の接続作業及び接続状態の目視確認を容易に行えると共に、切欠きに充填する後埋めモルタルの定着性を良くして、切欠きの埋め戻しを容易に行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために本発明が講じた技術的手段は、次のとおりである。即ち、請求項1に記載の発明によるPCa架構における導電性部材の接続構造は、端部に金属板を備えた導電性部材がPCa部材に、当該PCa部材の軸方向端部側面に形成された切欠きの内部に前記金属板を露出させた状態に打ち込まれ、これらのPCa部材同士の接続目地を挟んで対向位置する切欠きの内部において、双方の切欠き内部に露出した金属板とそれに当て付けた接続用金属板とが接合されることにより導電性部材同士が物理的及び電気的に接続され、前記金属板及び接続用金属板が前記切欠きに充填された充填材によって被覆されていることを特徴としている。尚、この発明において、接合の具体的な手段としては、溶接、ロウ付け、ボルト接合の何れであってもよい。充填材としては、モルタルやコンクリートの他、固結性樹脂等のグラウト材の何れであってもよいが、コスト、施工性等の観点からはモルタルを用いることが望ましい。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のPCa架構における導電性部材の接続構造であって、導電性部材がPCa部材に埋設されたせん断補強筋に接触状態に結束されていることを特徴としている。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のPCa架構における導電性部材の接続構造であって、接続用金属板に後埋めモルタル定着強化手段が施されていることを特徴としている。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れかに記載のPCa架構における導電性部材の接続構造であって、導電性部材が互いに平行に配置された2本の鉄筋から成る導電体と、導電体の両端において2本の鉄筋に一片を挟んだ状態に溶接したL型鉄板とで構成されていることを特徴としている。
【0016】
請求項5に記載の発明によるPCa架構における導電性部材の接続方法は、端部に金属板が設けられた導電性部材をPCa部材に、当該PCa部材の軸方向端部側面に形成された切欠きの内部に前記金属板が露出した状態に打ち込んでおき、これらのPCa部材同士を接続した後、接続目地を挟んで対向位置する切欠きの内部の金属板に接続用金属板を溶接することにより導電性部材同士を物理的及び電気的に接続し、しかる後、前記切欠きに充填材を充填することを特徴としている。
【0017】
請求項6に記載の発明によるPCa部材は、請求項5に記載のPCa架構における導電性部材の接続方法に用いるPCa部材であって、両端部に金属板を備えた導電性部材がPCa部材に、当該PCa部材の軸方向両端部側面に形成された切欠きの内部に前記金属板を露出させた状態に打ち込まれていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載の発明によれば、PCa部材の側面からの作業で導電性部材同士の接続を行うことになるので、導電性部材同士の接続作業が容易である。しかも、導電性部材同士の接続を、PCa部材側面の切欠き内部に露出した金属板とそれに当て付けた接続用金属板を、例えば、隅肉溶接するという建築工事における通常の溶接作業によって行えるので、電気工事専門の施工者でなくても容易に導電性部材同士の接続を行うことができ、接続状態の目視確認も、通常の溶接箇所の点検と同じ作業で行うことができ、接続状態の目視確認が容易である。
【0019】
殊に、PCa部材側面の切欠き内部に露出する部材が金属板であり、軟銅線や軟銅帯等の軟質導体が切欠き内部に存在しないので、溶接による導電性部材同士の接続後、切欠きに充填材の一例であるモルタルをコテ押さえで充填する際、軟質導線の変形と復元によりモルタルが浮き上がって、空隙が生じるといった不都合がなく、後埋めモルタルの定着が良好であるため、切欠きの埋め戻しを容易に行える効果がある。
【0020】
請求項2に記載の発明によれば、導電性部材がPCa部材に埋設されたフープ筋やスターラップ筋などのせん断補強筋に接触状態に結束されているので、この発明を落雷時の雷電流を接地する避雷導体に適用することにより、避雷導体とPCa架構の構造鉄筋を電気的に接続して、落雷時における避雷導体とPCa架構の構造鉄筋の電位差を無くすことができる。
【0021】
請求項3に記載の発明によれば、接続用金属板に後埋めモルタル定着強化手段が施されているので、後埋めモルタルの定着力を一層高めることができる。
【0022】
請求項4に記載の発明によれば、PCa部材に打ち込まれる導電性部材が、互いに平行に配置された2本の鉄筋から成る導電体と、導電体の両端において2本の鉄筋に一片を挟んだ状態に溶接したL型鉄板という建築工事における汎用の鉄筋、鉄板で構成されるものとなるので、低コストで実施でき、異種金属接触による電蝕の虞もない。
【0023】
請求項5に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明に係るPCa架構における導電性部材の接続構造を容易に実現できる効果がある。
【0024】
請求項6に記載の発明によれば、両端部に金属板を備えた導電性部材がPCa部材に、当該PCa部材の軸方向両端部側面に形成された切欠きの内部に前記金属板を露出させた状態に打ち込まれているので、請求項5に記載の発明に係るPCa架構における導電性部材の接続方法を容易に実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に用いる導電性部材の一例を示す斜視図である。
【図2】本発明に用いる柱用のPCa部材の斜視図である。
【図3】本発明に用いる柱梁仕口部用のPCa部材の斜視図である。
【図4】柱用のPCa部材の横断平面図である。
【図5】柱梁仕口部用のPCa部材の横断平面図である。
【図6】本発明に係るPCa架構における導電性部材の接続構造及び接続方法を説明する縦断側面図である。
【図7】要部の縦断側面図である。
【図8】要部の横断平面図である。
【図9】要部の斜視図である。
【図10】要部の側面図である。
【図11】図10の工程に続く要部の側面図である。
【図12】本発明の他の実施形態を示す要部の斜視図である。
【図13】本発明の他の実施形態を示す要部の斜視図である。
【図14】本発明の他の実施形態を示す要部の縦断側面図である。
【図15】モルタル充填前の状態における要部の正面図である。
【図16】従来例を説明する縦断側面図である。
【図17】従来例を説明する縦断側面図である。
【図18】従来例を説明する縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1の(A)、(B)は、避雷導体として構成された導電性部材Aの一例を示す。この導電性部材Aは、両端に金属板a、aを備えており、具体的には、図1の(A)、(B)に示すように、互いに平行に配置された2本の鉄筋1、1から成る導電体2と、導電体2の両端において2本の鉄筋1、1に一片を挟んだ状態に溶接した一対のL型鉄板3、3とで構成されている。鉄筋1としては、例えばD16の異形鉄筋が用いられ、L型鉄板3としては例えば75×75×6の山形鋼が用いられる。
【0027】
導電性部材Aの長さは、導電性部材Aを打ち込むPCa部材の軸長に対応して設定されるものである。例えば、図6に示すように、軸長の長い柱用のPCa部材4と軸長の短い柱梁仕口部用のPCa部材5を組み合わせてPCa柱を構築する場合、導電性部材Aとしては、図1の(A)に示すように、柱用のPCa部材4に打ち込まれる長尺物と、図1の(B)に示すように、柱梁仕口部用のPCa部材5に打ち込まれる短尺物が製造されるが、両者は、導電体2の長さが異なる以外、同じ構成である。
【0028】
図2、図4に示すように、柱用のPCa部材4には、図1の(A)に示した導電性部材Aが、当該PCa部材4の軸方向両端部側面に形成された切欠きb、bの内部に前記金属板a、a(L型鉄板3、3における鉄筋1、1に溶接した方とは反対側の一片)を露出させた状態に打ち込まれ、図3、図5に示すように、柱梁仕口部用のPCa部材5には、図1の(B)に示した導電性部材Aが、当該PCa部材5の軸方向両端部側面に形成された
切欠きb、bの内部に前記金属板(L型鉄板3、3における前記一片)a、aを露出させた状態に打ち込まれている。尚、図2、図4に示す6は柱用の主筋、図3、図5に示す7は主筋挿通用の金属製のシース管である。
【0029】
図4、図5に示すように、導電性部材Aは、主筋群周囲に配筋されるせん断補強筋(図示の実施形態では、PCa柱を対象としているので、フープ筋であるが、PCa梁を対象とする場合は、スターラップ筋となる。)8に接触状態に番線(図示せず)で結束してある。
【0030】
図6〜図11は、上述した柱用のPCa部材4及び柱梁仕口部用のPCa部材5を用いて構築されたPCa架構における導電性部材Aの接続構造及び接続方法を示す。この接続構造及び接続方法を具体的に説明すると次の通りである。
【0031】
先ず、図6に示すように、下階の柱用のPCa部材4の上に柱梁仕口部用のPCa部材5を積み重ね、柱用のPCa部材4の上端から突出させてある主筋6を前記柱梁仕口部用のPCa部材5のシース管7に挿通して上方へ突出させる。そして、レベル調整後、目地モルタル9で両PCa部材4、5を接続する。しかる後、前記柱梁仕口部用のPCa部材5の上に上階の柱用のPCa部材4を積み重ね、同様に、レベル調整、目地モルタル9による両PCa部材4、5の接続を行った後、柱用のPCa部材4の下端側に設けられているグラウト式機械継手10によって下階の柱用のPCa部材4の主筋6と上階の柱用のPCa部材4の主筋6とを接合し、以下、同様な工程の繰り返しによりPCa柱を構築して行く。
【0032】
そして、図6〜図8に示すように、PCa部材4、5同士の接続目地を挟んで対向位置する切欠きb、bの内部において、双方の切欠きb、b内部に露出した金属板(L型鉄板3、3)a、aとそれに当て付けた接続用金属板11とを溶接Wすることにより導電性部材A、A同士を物理的及び電気的に接続し、しかる後、前記切欠きb、bに、充填材の一例であるモルタル12を充填して、前記金属板a、a及び接続用金属板11を被覆してある。
【0033】
上記の構成によれば、PCa部材4、5の側面からの作業で導電性部材A、A同士の接続を行うことになるので、導電性部材A、A同士の接続作業が容易である。
【0034】
殊に、導電性部材A、A同士の接続を、PCa部材4、5側面の切欠きb、b内部に露出した金属板a、aとそれに当て付けた接続用金属板11を隅肉溶接するという建築工事における通常の溶接作業によって行えるので、電気工事専門の施工者でなくても容易に導電性部材同士の接続を行うことができ、接続状態の目視確認も、通常の溶接箇所の点検と同じ作業で行うことができ、接続状態の目視確認が容易である。
【0035】
切欠きb、b内部へのモルタル12の充填はコテ押えによって行われるが、切欠きb、b内部に露出する部材が金属板a、aであり、軟銅線や軟銅帯等の軟質導体が切欠きb、b内部に存在しないので、切欠きb、bにモルタル12をコテ押さえで充填する際、軟質導線の変形と復元によりモルタルが浮き上がって、空隙が生じるといった不都合がなく、後埋めモルタル12の定着が良好である。そのため、切欠きb、bの埋め戻しを容易に行うことができる。
【0036】
接続用金属板11としては、平坦な矩形状の鉄板であってもよいが、図示の実施形態では、モルタル12の定着力を高めるために、接続用金属板11の表面に後埋めモルタル定着強化手段13を施してある。具体的には、図9〜図11に示すように、金属板a、aと接続用金属板11を溶接Wした後、接続用金属板11の表面に後埋めモルタル定着強化手
段13としての金網(エキスパンドメタル)を点溶接によって取り付けてある。このように、金網(エキスパンドメタル)を接続用金属板11に後付けする場合、金網(エキスパンドメタル)として、横幅が接続用金属板11の横幅より広いものを用いても、接続用金属板11の各辺を容易に隅肉溶接できる利点がある。
【0037】
尚、金属板(L型鉄板)a、aの表面には、図9に示すように、PCa部材4、5の製造時点から接続用金属板11を当て付ける直前まで粘着テープ14を貼っておき、コンクリートやモルタルが付着しないように養生することが望ましい。
【0038】
図12は、本発明の他の実施形態を示す。この実施形態は、接続用金属板11として、表面に予め後埋めモルタル定着強化手段13としての金網(エキスパンドメタル)が溶接されている金網付き接続用金属板11を用いることによって、現場での溶接作業を低減した点に特徴がある。この場合、金網(エキスパンドメタル)としては、接続用金属板11からはみ出さない横幅とすることが、接続用金属板11の各辺の隅肉溶接を容易に行える点で望ましい。その他の構成、作用は、図1〜図11の実施形態と同じであるため、説明を省略する。
【0039】
図13は、本発明の他の実施形態を示す。この実施例は、接続用金属板11として、後埋めモルタル定着強化手段13としての貫通孔が設けられた孔開き鉄板(パンチングメタル)を用いることによって、モルタル12の定着力を高めた点に特徴がある。その他の構成、作用は、図1〜図12の実施形態と同じであるため、説明を省略する。
【0040】
図14、図15は、本発明の他の実施形態を示す。この実施例は、PCa部材4、5同士の接続目地を挟んで対向位置する切欠きb、bの内部において、双方の切欠きb、b内部に露出した金属板(L型鉄板3、3)a、aとそれに当て付けた接続用金属板11とをボルト接合した点に特徴がある。3aはL型鉄板3に予め溶接されたボルト、3bはそれにねじ込まれたナットである。接続用金属板11に形成するボルト挿通孔はルーズホールとすることが望ましい。その他の構成、作用は、図1〜図13の実施形態と同じであるため、説明を省略する。
【0041】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態にのみ限定されるべきものではない。例えば、上述した実施形態では、何れも、PCa柱の内部に避雷導体を構築しているが、PCa梁の内部を経て接地する避雷導体を構築する場合についても、本発明は適用可能である。この場合、前述した避雷導体(導電性部材A)は梁用のPCa部材に水平に打ち込まれることになる。そして、導電性部材Aは、梁主筋群の周囲に配筋されるせん断補強筋(スターラップ筋)に接触状態に番線で結束されることになる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
PCa柱やPCa梁の内部を経て接地する避雷導体の他、建物内部に設置される電気設備や電気製品からの電流を接地するアース用導体としても利用できる。
【符号の説明】
【0043】
A 導電性部材
W 溶接
a 金属板
b 切欠き
c 縦溝
1 鉄筋
2 導電体
3 L型鉄板
3a ボルト
3b ナット
4 柱用のPCa部材
5 柱梁仕口部用のPCa部材
6 主筋
7 シース管
8 せん断補強筋
9 目地モルタル
10 グラウト式機械継手
11 接続用金属板
12 充填材(モルタル)
13 後埋めモルタル定着強化手段(金網、貫通孔)
14 粘着テープ
15 さや管
16 軟質導線
17 避雷導体
18a 上部の接続用軟質導線
18b 下部の接続用軟質導線
19 接続用軟質導線
20 端子金物
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端部に金属板を備えた導電性部材がPCa部材に、当該PCa部材の軸方向端部側面に形成された切欠きの内部に前記金属板を露出させた状態に打ち込まれ、これらのPCa部材同士の接続目地を挟んで対向位置する切欠きの内部において、双方の切欠き内部に露出した金属板とそれに当て付けた接続用金属板とが接合されることにより導電性部材同士が物理的及び電気的に接続され、前記金属板及び接続用金属板が前記切欠きに充填された充填材によって被覆されていることを特徴とするPCa架構における導電性部材の接続構造。
【請求項2】
導電性部材がPCa部材に埋設されたせん断補強筋に接触状態に結束されていることを特徴とする請求項1に記載のPCa架構における導電性部材の接続構造。
【請求項3】
接続用金属板に後埋めモルタル定着強化手段が施されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のPCa架構における導電性部材の接続構造。
【請求項4】
導電性部材が互いに平行に配置された2本の鉄筋から成る導電体と、導電体の両端において2本の鉄筋に一片を挟んだ状態に溶接したL型鉄板とで構成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のPCa架構における導電性部材の接続構造。
【請求項5】
端部に金属板が設けられた導電性部材をPCa部材に、当該PCa部材の軸方向端部側面に形成された切欠きの内部に前記金属板が露出した状態に打ち込んでおき、これらのPCa部材同士を接続した後、接続目地を挟んで対向位置する切欠きの内部の金属板に接続用金属板を溶接することにより導電性部材同士を物理的及び電気的に接続し、しかる後、前記切欠きに充填材を充填することを特徴とするPCa架構における導電性部材の接続方法。
【請求項6】
請求項5に記載のPCa架構における導電性部材の接続方法に用いるPCa部材であって、両端部に金属板を備えた導電性部材がPCa部材に、当該PCa部材の軸方向両端部側面に形成された切欠きの内部に前記金属板を露出させた状態に打ち込まれていることを特徴とするPCa部材。
【請求項1】
端部に金属板を備えた導電性部材がPCa部材に、当該PCa部材の軸方向端部側面に形成された切欠きの内部に前記金属板を露出させた状態に打ち込まれ、これらのPCa部材同士の接続目地を挟んで対向位置する切欠きの内部において、双方の切欠き内部に露出した金属板とそれに当て付けた接続用金属板とが接合されることにより導電性部材同士が物理的及び電気的に接続され、前記金属板及び接続用金属板が前記切欠きに充填された充填材によって被覆されていることを特徴とするPCa架構における導電性部材の接続構造。
【請求項2】
導電性部材がPCa部材に埋設されたせん断補強筋に接触状態に結束されていることを特徴とする請求項1に記載のPCa架構における導電性部材の接続構造。
【請求項3】
接続用金属板に後埋めモルタル定着強化手段が施されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のPCa架構における導電性部材の接続構造。
【請求項4】
導電性部材が互いに平行に配置された2本の鉄筋から成る導電体と、導電体の両端において2本の鉄筋に一片を挟んだ状態に溶接したL型鉄板とで構成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のPCa架構における導電性部材の接続構造。
【請求項5】
端部に金属板が設けられた導電性部材をPCa部材に、当該PCa部材の軸方向端部側面に形成された切欠きの内部に前記金属板が露出した状態に打ち込んでおき、これらのPCa部材同士を接続した後、接続目地を挟んで対向位置する切欠きの内部の金属板に接続用金属板を溶接することにより導電性部材同士を物理的及び電気的に接続し、しかる後、前記切欠きに充填材を充填することを特徴とするPCa架構における導電性部材の接続方法。
【請求項6】
請求項5に記載のPCa架構における導電性部材の接続方法に用いるPCa部材であって、両端部に金属板を備えた導電性部材がPCa部材に、当該PCa部材の軸方向両端部側面に形成された切欠きの内部に前記金属板を露出させた状態に打ち込まれていることを特徴とするPCa部材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2010−174590(P2010−174590A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−21476(P2009−21476)
【出願日】平成21年2月2日(2009.2.2)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月2日(2009.2.2)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】
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