PLL回路
【課題】従来のPLL回路は、位相オフセットが発生する問題があった。
【解決手段】本発明にかかるPLL回路は、基準クロック信号と帰還クロック信号との位相差に基づきアップ信号及びダウン信号を出力する位相比較回路10と、アップ信号及びダウン信号のパルス幅を補正して補正アップ信号及び補正ダウン信号を出力するオフセット補正回路11と、補正アップ信号及び補正ダウン信号に基づいて出力電圧を上昇又は下降させる第1のチャージポンプ回路12と、当該出力電圧の電圧値に応じて発振周波数が制御される出力クロック信号を出力する電圧制御発振回路14とを有し、オフセット補正回路11は、基準クロック信号と帰還クロック信号との位相が揃っているときにチャージポンプ出力電圧が略一定の値となるように補正アップ信号及び補正ダウン信号のうち少なくとも一方のパルス幅を設定することを特徴とするものである。
【解決手段】本発明にかかるPLL回路は、基準クロック信号と帰還クロック信号との位相差に基づきアップ信号及びダウン信号を出力する位相比較回路10と、アップ信号及びダウン信号のパルス幅を補正して補正アップ信号及び補正ダウン信号を出力するオフセット補正回路11と、補正アップ信号及び補正ダウン信号に基づいて出力電圧を上昇又は下降させる第1のチャージポンプ回路12と、当該出力電圧の電圧値に応じて発振周波数が制御される出力クロック信号を出力する電圧制御発振回路14とを有し、オフセット補正回路11は、基準クロック信号と帰還クロック信号との位相が揃っているときにチャージポンプ出力電圧が略一定の値となるように補正アップ信号及び補正ダウン信号のうち少なくとも一方のパルス幅を設定することを特徴とするものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はPLL回路に関し、特に基準クロック信号と帰還クロック信号との間に発生する位相オフセットを補正するオフセット補正回路を有するPLL回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置に搭載される発振回路としてPLL(Phase Locked Loop)回路が多く用いられている。PLL回路は、基準クロック信号の位相と出力クロック信号の位相とが同期するように出力信号の発振周波数を制御する。
【0003】
従来例1として、一般的なPLL回路100のブロック図を図13に示す。図13に示すように、PLL回路100は、位相比較回路111、チャージポンプ回路112、ループフィルタ113、電圧制御発振回路114を有している。
【0004】
位相比較回路111は、基準クロック信号Frと、PLL回路100の出力クロック信号Foを帰還させた帰還クロック信号Fdとを比較し、チャージポンプ回路112を制御するアップ信号とダウン信号とを出力する。チャージポンプ回路112は、アップ信号とダウン信号とのパルス幅の差に基づいて電流を出力し、出力した電流の電流量に応じたチャージポンプ出力電圧を出力する。この電流は、アップ信号とダウン信号とのパルス幅の差に基づいて流入方向又は流出方向になるように制御される。ループフィルタ113は、チャージポンプ回路112が出力する電流に基づいてコンデンサに電荷を蓄積する。そして、蓄積した電荷に基づいて電圧を生成する。この電圧は、チャージポンプ回路112が出力する電圧となる。また、ループフィルタ113は、チャージポンプ出力電圧に重畳される高周波ノイズ及びリップルノイズを除去する。電圧制御発振回路114は、ループフィルタ113を介して出力されるチャージポンプ出力電圧に応じた周波数を有する出力クロック信号Foを出力する。また、この出力クロック信号Foは、帰還クロック信号Fdとして位相比較回路111に入力される。
【0005】
このPLL回路100は、理想的には基準クロック信号Frと帰還クロック信号Fd(あるいは出力クロック信号Fo)の位相が同じ場合にチャージポンプ回路112が出力する電流の流出量と流入量とが同じになる。しかしながら、チャージポンプ回路112の回路構成、あるいは、トランジスタのばらつき等により、基準クロック信号Frと帰還クロック信号Fdとの位相が同じ場合であっても、チャージポンプ回路112が出力する電流の流出量と流入量とに差が生じる。このような場合、基準クロック信号Frと帰還クロック信号Fdとは、位相がずれた状態で安定する。このずれを位相オフセットと称する。
【0006】
このような位相オフセットを補正する技術が特許文献1(従来例2)に開示されている。従来例2のPLL回路200のブロック図を図14に示す。図14に示すように、PLL回路200は、遅延回路211、位相比較回路212、チャージポンプ回路213、ループフィルタ214、電圧制御発振回路215、位相補正回路216、増幅器220を有している。
【0007】
遅延回路211は、基準クロック信号Frと帰還クロック信号Fdとが入力され、基準クロック信号Frと帰還クロック信号Fdとをそれぞれ遅延させて遅延基準クロック信号DLY1と遅延帰還クロック信号DLY2とを出力する。そして、位相比較回路212、チャージポンプ回路213、ループフィルタ214、電圧制御発振回路215は、この遅延基準クロック信号DLY1と遅延期間クロック信号DLY2とに基づいてチャージポンプ回路213が出力する電流の流入量と流出量とが略同じとなることで動作が安定する。
【0008】
また、遅延回路211の遅延量は、位相補正回路216及び増幅器220によって設定される。位相補正回路216は、遅延回路211、位相比較回路212、チャージポンプ回路213と実質的に同じ回路を有する遅延回路217、位相比較回路218、チャージポンプ回路219を有している。ここで、遅延回路217には基準クロック信号Frのみが入力されている。そして、チャージポンプ回路219の出力電圧を平滑化するコンデンサCDMによって、チャージポンプ回路219の出力電流に応じた電圧(例えば、疑似チャージポンプ出力電圧VCDM)を出力する。つまり、この疑似チャージポンプ出力電圧は、基準クロック信号Frと帰還クロック信号Fdとの位相が一致している場合にチャージポンプ回路213が出力する電圧を疑似的に再現したものである。
【0009】
増幅器220は、疑似チャージポンプ出力電圧VCDMとチャージポンプ回路213のモニタ電圧VCとの差電圧に基づき遅延回路211と遅延回路217とに制御信号Vcontを出力する。遅延回路211と遅延回路217は、この制御信号Vcontの電圧値に応じて遅延量を設定する。
【0010】
つまり、PLL回路200は、チャージポンプ回路213のモニタ電圧VCと疑似チャージポンプ出力電圧VCDMとに基づき、基準クロック信号Frと帰還クロック信号Fdとを同位相とする遅延回路211の遅延量を設定する。そして、遅延回路211で基準クロック信号Frと帰還クロック信号Fdとに加える遅延量によって、基準クロック信号Frと帰還クロック信号Fdとの位相オフセットを補正する。
【特許文献1】特開2005−123944号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、従来例2のPLL回路200では、本来のPLL回路に接続される位相比較回路212に加え、疑似チャージポンプ出力電圧VCDMを生成する位相補正回路216に位相比較回路212が必要となる。そのため、PLL回路200では、回路規模が増大する問題があった。また、位相比較回路が動作することで電源ノイズを発生させる。つまり、位相比較回路の数が増えると、この電源ノイズが大きくなる問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明にかかるPLL回路は、基準クロック信号と帰還クロック信号との位相差に基づきパルス幅が設定されるアップ信号及びダウン信号を出力する位相比較回路と、前記アップ信号及び前記ダウン信号のうち少なくとも一方の信号のパルス幅を補正し、補正アップ信号及び補正ダウン信号を出力するオフセット補正回路と、前記補正アップ信号及び前記補正ダウン信号に基づいて出力するチャージポンプ出力電圧を上昇又は下降させる第1のチャージポンプ回路と、前記チャージポンプ出力電圧のノイズを除去し、フィルタ電圧を出力するループフィルタと、前記フィルタ電圧の電圧値に応じて発振周波数が制御され、出力クロック信号を出力する電圧制御発振回路とを有し、前記オフセット補正回路は、前記基準クロック信号と前記帰還クロック信号との位相が揃っているときに前記チャージポンプ出力電圧が略一定の値となるように前記補正アップ信号及び前記補正ダウン信号のうち少なくとも一方のパルス幅を設定することを特徴とするものである。
【0013】
本発明にかかるPLL回路によれば、位相比較回路が出力するアップ信号及びダウン信号に基づき基準クロック信号Frと帰還クロック信号Fdとが同位相となる状態を再現するオフセット補正回路によって、アップ信号とダウン信号とのパルス幅の補正量を設定する。これによって、位相比較回路が1つであっても位相オフセットの補正が可能となる。また、位相比較回路が1つであることから、位相比較回路の動作によって生じる電源ノイズの増大を抑制することが可能である。
【発明の効果】
【0014】
本発明にかかるPLL回路によれば、小さな回路規模で位相オフセットの補正が可能である。
【0015】
実施の形態1
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1に実施の形態1にかかるPLL回路1のブロック図を示す。図1に示すように、PLL回路1は、位相比較回路10、オフセット補正回路11、第1のチャージポンプ回路12、ループフィルタ13、電圧制御発振回路14を有している。
【0016】
位相比較回路10は、基準クロック信号Frと、PLL回路1の出力クロック信号Foを帰還させた帰還クロック信号Fdとの位相を比較する。そして、その位相差に応じたパルス幅を有するアップ信号UP及びダウン信号DNを生成する。このアップ信号UP及びダウン信号DNは、例えば基準クロック信号Frの位相が帰還クロック信号Fdの位相よりも進んでいた場合、アップ信号UPのパルス幅は、ダウン信号DNのパルス幅よりも大きくなる。一方、基準クロック信号Frの位相が帰還クロック信号Fdの位相よりも遅れていた場合、アップ信号UPのパルス幅は、ダウン信号DNのパルス幅よりも小さくなる。
【0017】
オフセット補正回路11は、アップ信号UP及びダウン信号DNに基づきアップ信号UP及びダウン信号DNのパルス幅の補正量を設定する。そして、設定した補正量に基づきパルス幅を補正した補正アップ信号UPMOD及び補正ダウン信号DNMODを出力する。このとき、オフセット補正回路11は、アップ信号UP及びダウン信号DNに基づき基準クロック信号と帰還クロック信号とが同位相となる状態を疑似的に再現し、再現された同位相状態に基づきチャージポンプ回路の出力電圧が略一定の値となるようにパルス幅の補正量を設定する。なお、本実施の形態においては、アップ信号UP及びダウン信号DNとに対してパルス幅の補正を行うが、アップ信号UP及びダウン信号DNのうちいずれか一方の信号に対してのみ補正を行うとしても良い。このオフセット補正回路11の詳細については後述する。
【0018】
第1のチャージポンプ回路12(以降、単にチャージポンプ回路12と称す)は、補正アップ信号UPMOD及び補正ダウン信号DNMODのパルス幅の差に基づいて電流を出力し、その電流の電流量に応じたチャージポンプ出力電圧を出力する。この電流は、補正アップ信号UPMODと補正ダウン信号DNMODとのパルス幅の差に基づいて流入方向又は流出方向になるように制御される。このチャージポンプ回路12の回路の一例を図2に示す。
【0019】
図2に示すように、NMOSトランジスタN1〜N4、PMOSトランジスタP1〜P3、インバータINVを有している。NMOSトランジスタN1はソースが接地電位VSSに接続されており、ドレインが基準電流入力端子Iinに接続されている。また、NMOSトランジスタN1のゲートとドレインとは互いに接続されている。また、NMOSトランジスタN1のゲートは、NMOSトランジスタN2、N3のゲートと共通に接続されている。NMOSトランジスタN2のソースは、接地電位VSSに接続され、ドレインはPMOSトランジスタP1のドレインと接続されている。NMOSトランジスタN3のソースは接地電位VSSに接続されており、ドレインはNMOSトランジスタN4のソースに接続されている。PMOSトランジスタP1のソースは電源電位VDDに接続されている。また、PMOSトランジスタP1のゲートとドレインとは互いに接続されている。そして、PMOSトランジスタP1のゲートとPMOSトランジスタP2のゲートとは共通に接続される。PMOSトランジスタP2のソースは電源電位VDDに接続され、ドレインはPMOSトランジスタP3のソースに接続されている。NMOSトランジスタN4のドレインとPMOSトランジスタP3のドレインとは互いに接続されている。そして、NMOSトランジスタN4とPMOSトランジスタP3との接続点が出力端子Ioutに接続されている。また、NMOSトランジスタN4のゲートには補正ダウン信号DNMODが入力されている。PMOSトランジスタP3のゲートにはインバータINVを介して補正アップ信号UPMODが入力されている。
【0020】
つまり、チャージポンプ回路12は、基準電流入力端子Iinから入力される基準電流IrefをNMOSトランジスタN1〜N3で構成されるカレントミラー及びPMOSトランジスタP1、P2で構成されるカレントミラーで折り返すことで出力端子Ioutから出力される電流Ip、Inを設定する。このとき、PMOSトランジスタP3及びNMOSトランジスタN4は、出力端子Ioutに電流Ip、Inを出力するか否かを決定するスイッチとして動作する。PMOSトランジスタP3及びNMOSトランジスタN4は、補正アップ信号UPMOD及び補正ダウン信号DNMODがハイレベルである場合に導通状態となり、出力端子Ioutから電流Ip、Inを出力する。一方、補正アップ信号UPMOD及び補正ダウン信号DNMODがローレベルである場合、PMOSトランジスタP3及びNMOSトランジスタN4は遮断状態状態となり、出力端子Ioutから電流Ip、Inが出力されるのを停止する。
【0021】
ループフィルタ13は、チャージポンプ回路12が出力する電流に基づいてコンデンサに電荷を蓄積する。そして、蓄積した電荷に基づいて電圧を生成する。この電圧は、チャージポンプ回路12が出力する電圧となる。また、ループフィルタ13は、チャージポンプ出力電圧に重畳される高周波ノイズ及びリップルノイズを除去する。なお、本実施の形態においては、ループフィルタ13は、2つの電圧信号を出力する。一方の電圧信号は、チャージポンプ回路12の出力端子の電圧となるチャージポンプ出力電圧VFであって、他方の電圧信号は、チャージポンプ出力電圧信号の変動に応じて変動する電圧であって、チャージポンプ出力電圧信号とは異なるモニタ電圧VCである。ここで、ループフィルタ13の回路の一例を図3に示す。
【0022】
図3に示すように、ループフィルタ13は、抵抗R1、コンデンサC1、C2を有している。抵抗R1は、一端がチャージポンプ回路12の出力端子と電圧制御発振回路14の電圧入力端子を接続する配線(例えば、第1のチャージポンプ出力配線)に接続され、他端がコンデンサC1の一端に接続されている。コンデンサC1の他端は、接地電位VSSに接続されている。そして、抵抗R1とコンデンサC1との接続点の電圧がモニタ電圧VCとして出力される。一方、コンデンサC2は、第1のチャージポンプ出力配線と接地電位VSSとの間に接続されている。なお、第1のチャージポンプ出力配線の電圧は、コンデンサC1、C2に蓄積された電荷量と抵抗R1に流れる電流とによって発生する。この第1のチャージポンプ出力配線の電圧は、チャージポンプ出力電圧VFとなる。つまり、モニタ電圧VCとチャージポンプ出力電圧VFとは、チャージポンプ回路12から出力される電流の流入量と流出量とが略同じ場合には抵抗R1に電流が流れないため、略同じ電圧として扱うことが可能である。なお、本実施の形態においては、チャージポンプ出力電圧VFとモニタ電圧VCとを異なるノードから出力するが、これは同じノードから出力される電圧であっても構わない。
【0023】
電圧制御発振回路14は、ループフィルタ13を介して出力されるチャージポンプ出力電圧VFに応じた周波数を有する出力クロック信号Foを出力する。また、この出力クロック信号Foは、帰還クロック信号Fdとして位相比較回路10に入力される。
【0024】
ここで、オフセット補正回路11について詳細に説明する。図1に示すように、オフセット補正回路11は、AND回路21、第1のパルス幅制御回路22、第2のパルス幅制御回路23、第2のチャージポンプ回路24、疑似フィルタ25、パルス幅制御信号生成回路26を有している。
【0025】
AND回路21の一方の入力端子には位相比較回路10が出力するアップ信号UPが入力され、他方の入力端子には位相比較回路10が出力するダウン信号DNが入力されている。そして、AND回路21は、アップ信号UPとダウン信号DNの論理積を疑似同期信号UPDNとして出力する。本実施の形態においては、AND回路21から出力される1つの疑似同期信号UPDNを接続先に応じて疑似アップ信号あるいは疑似ダウン信号と称す。図1においては、第2のパルス幅制御回路23の"P"で示されるバッファ(例えば、ポジティブバッファ)に入力される信号を疑似アップ信号と称し、"N"で示されるバッファ(例えば、ネガティブバッファ)に入力される信号を疑似ダウン信号と称す。
【0026】
第1のパルス幅制御回路22は、アップ信号UPが入力され、このアップ信号UPのパルス幅を修正した補正アップ信号UPMODを出力するポジティブバッファと、ダウン信号DNが入力され、このダウン信号DNのパルス幅を修正した補正ダウン信号DNMODを出力するネガティブバッファと、を有している。第1のパルス幅制御回路22で補正されるパルス幅の補正量はパルス幅制御信号PWcontの値に基づき設定される。
【0027】
第2のパルス幅制御回路23は、疑似アップ信号が入力され、この疑似アップ信号のパルス幅を修正した補正疑似アップ信号UPDMを出力するポジティブバッファと、疑似ダウン信号が入力され、この疑似ダウン信号のパルス幅を修正した補正疑似ダウン信号DNDMを出力するネガティブバッファと、を有している。第2のパルス幅制御回路23で補正されるパルス幅の補正量はパルス幅制御信号PWcontの値に基づき設定される。なお、第1のパルス幅制御回路22と第2のパルス幅制御回路23とは実質的に同じ回路で構成されている。第1のパルス幅制御回路22及び第2のパルス幅制御回路23の詳細については後述する。
【0028】
第2のチャージポンプ回路24(以降、単にチャージポンプ回路24と称す)は、チャージポンプ回路12と実質的に同じ回路である。そして、チャージポンプ回路24は、補正疑似アップ信号UPDMと補正疑似ダウン信号DNDMとのパルス幅の差に基づいて出力電流を制御する。疑似フィルタ25は、チャージポンプ回路24の出力電流に応じて電荷を蓄積し、蓄積した電荷量に応じた電圧を出力する。この電圧は、チャージポンプ回路24が出力する疑似チャージポンプ出力電圧VCDMとなる。また、疑似フィルタ25は、チャージポンプ回路24の出力電圧を平滑化する。
【0029】
本実施の形態における疑似フィルタ25は、チャージポンプ回路24の出力端子とパルス幅制御信号生成回路26の第2の入力端子とを接続する配線(例えば、第2のチャージポンプ出力配線)と接地電位VSSとの間にコンデンサCDMが接続される。このコンデンサCDMは、例えばループフィルタ13のコンデンサC1と同じ容量値を有している。なお、モニタ電圧VCをループフィルタ13の第1のチャージポンプ出力配線から取得する場合、疑似フィルタ25は、ループフィルタ13と同じ構成とすることが好ましい。
【0030】
パルス幅制御信号生成回路26は、モニタ電圧VCと疑似チャージポンプ出力電圧VCDMとの電圧差に基づいてパルス幅制御信号PWcontの電圧値を設定する。例えば、モニタ電圧VCが疑似チャージポンプ出力電圧VCDMよりも低ければパルス幅制御信号PWcontの電圧値を上昇させる。一方、モニタ電圧VCが疑似チャージポンプ出力電圧VCDMよりも高ければパルス幅制御信号PWcontの電圧値を下降させる。本実施の形態においては、パルス幅制御信号生成回路26は、差動増幅器で構成される。そして、差動増幅器の正転入力端子に疑似チャージポンプ出力電圧VCDMが入力され、反転入力端子にはモニタ電圧VCが入力される。このように生成されたパルス幅制御信号PWcontは、第1のパルス幅制御回路22及び第2のパルス幅制御回路23に入力される。そして、第1のパルス幅制御回路22及び第2のパルス幅制御回路23は、パルス幅制御信号PWcontの電圧値に基づいて出力する信号のパルス幅を調整する。
【0031】
ここで、第1のパルス幅制御回路22及び第2のパルス幅制御回路23につてより詳細に説明する。なお、第1のパルス幅制御回路22及び第2のパルス幅制御回路23は、実質的に同じ回路であるため、一例として第1のパルス幅制御回路22の回路についてのみ説明を行う。第1のパルス幅制御回路22の回路図を図4に示す。図4に示すように、第1のパルス幅制御回路22は、電流制御回路30、NMOSトランジスタN12〜N15、PMOSトランジスタP14、P15を有している。電流制御回路30は、パルス幅制御信号PWcontの電圧値に応じて、電流源Isで生成される電流を電流Isaと電流Isbとに振り分ける。電流Isaは、電流制御回路30の第1の出力端子から出力される電流であって、電流Isbは、電流制御回路30の第2の出力端子から出力される電流である。
【0032】
電流制御回路30は、NMOSトランジスタN10、N11、PMOSトランジスタN10〜N13を有している。NMOSトランジスタN10、N11は、差動対を構成している。そして、電流源Isは、この差動対に電流を供給する。また、NMOSトランジスタN10のゲート端子にはパルス幅制御信号PWcontが入力され、NMOSトランジスタN11のゲート端子には定電圧Vconstが入力される。NMOSトランジスタN10のドレイン端子にはPMOSトランジスタP10のドレイン端子が接続される。NMOSトランジスタN11のドレイン端子にはPMOSトランジスタP11のドレイン端子が接続される。PMOSトランジスタP10のソースは電源電位VDDに接続されている。PMOSトランジスタP10のゲートは、ドレインと互いに接続され、さらにPMOSトランジスタP12のゲートと共通に接続される。そして、PMOSトランジスタP12のソースは電源電位VDDに接続され、ドレインが電流制御回路30の第1の出力端子となっている。PMOSトランジスタP11のソースは電源電位VDDに接続されている。PMOSトランジスタP11のゲートは、ドレインと互いに接続され、さらにPMOSトランジスタP13のゲートと共通に接続される。そして、PMOSトランジスタP13のソースは電源電位VDDに接続され、ドレインが電流制御回路30の第2の出力端子となっている。つまり、電流制御回路30は、定電圧Vconstとパルス幅制御信号PWcontとの電圧値を比較し、その比較結果に応じて電流Isaと電流Isbとの大きさの比を設定する。
【0033】
また、電流制御回路30の第1の出力端子と接地電位VSSとの間にはNMOSトランジスタN12が接続される。NMOSトランジスタN12は、第1のパルス幅制御回路22の第1のバッファ回路(例えば、ポジティブバッファ)の入力回路に相当する。つまり、NMOSトランジスタN12は、ゲート端子にはアップ信号UPが入力され、ドレイン端子からアップ信号UPの反転信号を出力する。このとき、ドレイン端子から出力される中間信号Umの立ち上がり速度は、電流制御回路30の第1の出力端子から出力される電流Isaの大きさに基づき設定される。また、この中間信号Umは、PMOSトランジスタP14とNMOSトランジスタN14とで構成される出力回路(例えば、インバータ)によって反転され、補正アップ信号UPMODとして出力される。
【0034】
一方、電流制御回路30の第2の出力端子と接地電位VSSとの間にはNMOSトランジスタN13が接続される。NMOSトランジスタN13は、第1のパルス幅制御回路22の第2のバッファ回路(例えば、ネガティブバッファ)の入力回路に相当する。つまり、NMOSトランジスタN13は、ゲート端子にはダウン信号DNが入力され、ドレイン端子からダウン信号DNの反転信号を出力する。このとき、ドレイン端子から出力される中間信号Dmの立ち上がり速度は、電流制御回路30の第2の出力端子から出力される電流Isbの大きさに基づき設定される。また、この中間信号Dmは、PMOSトランジスタP15とNMOSトランジスタN15とで構成される出力回路(例えば、インバータ)によって反転され、補正ダウン信号DNMODとして出力される。
【0035】
ここで、第1のパルス幅制御回路22の動作について説明する。図5に第1のパルス幅制御回路22の動作のタイミングチャートを示す。図5に示すタイミングチャートは、上段3つのタイミングチャートがポジティブバッファ側の信号に関するものであり、下側3つのタイミングチャートがネガティブバッファ側の信号に関するものである。
【0036】
まず、ポジティブバッファ側の信号について説明する。タイミングt0でアップ信号UPが立ち上がると、それに応じて中間信号Umは立ち下がり、補正アップ信号UPMODは立ち上がる。そして、タイミングt1でアップ信号UPが立ち下がると、それに応じて中間信号Umは立ち上がり、補正アップ信号UPMODは立ち下がる。このときパルス幅制御信号PWcontの電圧値によって、中間信号Umは立ち上がりと、補正アップ信号UPMODは立ち下がりのタイミングが変化する。本実施の形態においては、パルス幅制御信号PWcontが小さくなるにつれて中間信号Umの立ち上がりが緩やかになる。そして、補正アップ信号UPMODの立ち上がりタイミングの遅延が大きくなる。つまり、パルス幅制御信号PWcontが小さくなるにつれて補正アップ信号UPMODのパルス幅が大きくなる。
【0037】
次に、ネガティブバッファ側の信号について説明する。タイミングt0でダウン信号DNが立ち上がると、それに応じて中間信号Dmは立ち下がり、補正ダウン信号DNMODは立ち上がる。そして、タイミングt1でダウン信号DNが立ち下がると、それに応じて中間信号Dmは立ち上がり、補正ダウン信号DNMODは立ち下がる。このときパルス幅制御信号PWcontの電圧値によって、中間信号Dmは立ち上がりと、補正ダウン信号DNMODは立ち下がりのタイミングが変化する。本実施の形態においては、パルス幅制御信号PWcontが小さくなるにつれて中間信号Umの立ち上がりが急峻になる。そして、補正ダウン信号DNMODの立ち上がりタイミングの遅延が小さくなる。つまり、パルス幅制御信号PWcontが小さくなるにつれて補正ダウン信号DNMODのパルス幅が小さくなる。
【0038】
図6にパルス幅制御信号PWcontの電圧値と第1のパルス幅制御回路22の入出力信号間のパルス幅の変化量との関係のグラフを示す。図6のグラフより、補正アップ信号UPMODのパルス幅の変化量は、パルス幅制御信号PWcontの値が大きくなるにつれて小さくなることが分かる。一方、補正ダウン信号DNMODのパルス幅の変化量は、パルス幅制御信号PWcontの値が大きくなるにつれて大きくなる。そして、所定のパルス幅制御信号PWcontの値にて、補正アップ信号UPMODの変化量と補正ダウン信号DNMODの変化量とが同程度となる。
【0039】
また、図7に補正アップ信号UPMODのパルス幅と補正ダウン信号DNMODのパルス幅との差分量とパルス幅制御信号PWcontの値との関係のグラフを示す。図7のグラフより、パルス幅制御信号PWcontの値が小さい領域では、補正アップ信号UPMODのパルス幅が補正ダウン信号DNMODのパルス幅よりも大きくことが分かる。一方、パルス幅制御信号PWcontの値が大きい領域では、補正アップ信号UPMODのパルス幅が補正ダウン信号DNMODのパルス幅よりも小さいことが分かる。
【0040】
本実施の形態にかかるPLL回路1の動作について説明する。PLL回路1は、トランジスタばらつき等によるチャージポンプ回路の出力電流Ip、Inのバランスによって動作が異なる。従って、チャージポンプ回路の出力電流Ip、Inの違いに応じて動作を説明する。なお、以下の説明では、特に、基準クロック信号Frと帰還クロック信号Fdの同期が取れ、ロックしているときの動作について説明する。
【0041】
まず、第1の条件として単位時間中に出力される電流Ipと電流Inの電流量が等しい場合について説明する。この第1の条件では、補正アップ信号UPMODと補正ダウン信号DNMODのパルス幅が等しければ第1のチャージポンプ出力電圧の電圧値が安定し、基準クロック信号Frと帰還クロック信号Fdとの位相が同位相となる。このとき、補正疑似アップ信号UPDMのパルス幅と補正疑似ダウン信号DNDMのパルス幅は、略同一である。第1の条件における基準クロック信号Fr、帰還クロック信号Fd、補正アップ信号UPMOD、補正ダウン信号DNMOD、補正疑似アップ信号UPDM、補正疑似ダウン信号DNDMの波形を図8に示す。
【0042】
次に、第2の条件として単位時間中に出力される電流Ipの電流量が単位時間中に出力される電流Inの電流量よりも小さな場合について説明する。この第2の条件では、アップ信号UP及びダウン信号DNのパルス幅を補正しない場合、帰還クロック信号Fdの位相が基準クロック信号Frに比べ遅れた状態で安定した状態になる。すなわち、位相オフセットが存在することになる。このとき、パルス幅補正前においては、チャージポンプ回路24に入力される補正疑似アップ信号UPDMと補正疑似ダウン信号DNDMとは等しいパルス幅となるため、疑似チャージポンプ出力電圧VCDMは減少して、モニタ電圧VCより小さくなる。従って、パルス幅制御信号PWcontは小さくなり、オフセット補正回路11は、補正アップ信号UPMODのパルス幅を補正ダウン信号DNMODのパルス幅よりも大きくする。このとき、補正アップ信号UPMODのパルス幅は長くなる方向に補正され、補正ダウン信号DNMODのパルス幅は短くなる方に補正される。これによって、第1及び第2のチャージポンプ出力電圧を略一定に保つために不足していた電流Ipの電流量が補われ、第1のチャージポンプ出力電圧により生成されるモニタ電圧VCと第2のチャージポンプ電圧出力VCDMとが略等しく一定となるように帰還制御が行われる。これによって、基準クロック信号Frと帰還クロック信号Fdとは、同位相状態となる。
【0043】
第2の条件における基準クロック信号Fr、帰還クロック信号Fd、補正アップ信号UPMOD、補正ダウン信号DNMOD、補正疑似アップ信号UPDM、補正疑似ダウン信号DNDMの波形を図9に示す。破線で示す波形はパルス幅補正をしないと仮定した場合の波形である。ここで、パルス幅補正前のUPMOD信号とDNMOD信号とのパルス幅の差dw1と、パルス幅補正後のUPMOD信号とDNMOD信号とのパルス幅の差(及びUPDM信号とDNDM信号とのパルス幅の差)dw2とが等しくなる。すなわち、パルス幅補正をしない場合とした場合で結果としてパルス幅の差は等しくなるが、パルス幅補正を行うことにより、チャージポンプ回路の出力電流IpとInとがアンバランスな場合でも、基準クロック信号Frと帰還クロック信号Fdとの位相が実質的に同位相となり、出力電流のアンバランスによる位相オフセットを解消することができる。
【0044】
続いて、第3の条件として単位時間中に出力される電流Ipの電流量が単位時間中に出力される電流Inの電流量よりも大きな場合について説明する。この第3の条件では、アップ信号UP及びダウン信号DNのパルス幅を補正しない場合、帰還クロック信号Fdの位相が基準クロック信号Frに比べ進んだ状態で安定した状態になる。すなわち、位相オフセットが存在することになる。このとき、パルス幅補正前においては、チャージポンプ回路24に入力される補正疑似アップ信号UPDMと補正疑似ダウン信号DNDMとは等しいパルス幅となるため、疑似チャージポンプ出力電圧VCDMは増加して、モニタ電圧VCより大きくなる。従って、パルス幅制御信号PWcontは大きくなり、オフセット補正回路11は、補正アップ信号UPMODのパルス幅を補正ダウン信号DNMODのパルス幅よりも小さくする。このとき、補正アップ信号UPMODのパルス幅は短くなる方向に補正され、補正ダウン信号DNMODのパルス幅は長くなる方に補正される。これによって、第1及び第2のチャージポンプ出力電圧を略一定に保つために不足していた電流Inの電流量が補われ、第1のチャージポンプ出力電圧により生成されるモニタ電圧VCと第2のチャージポンプ電圧出力VCDMとが略等しく一定となるように帰還制御が行われる。が安定する。これによって、基準クロック信号Frと帰還クロック信号Fdとは、同位相状態となる。
【0045】
第3の条件における基準クロック信号Fr、帰還クロック信号Fd、補正アップ信号UPMOD、補正ダウン信号DNMOD、補正疑似アップ信号UPDM、補正疑似ダウン信号DNDMの波形を図10に示す。破線で示す波形はパルス幅補正をしないと仮定した場合の波形である。ここで、パルス幅補正前のUPMOD信号とDNMOD信号とのパルス幅の差dw3と、パルス幅補正後のUPMOD信号とDNMOD信号とのパルス幅の差(及びUPDM信号とDNDM信号とのパルス幅の差)dw4とが等しくなる。すなわち、パルス幅補正の有無によって結果としてパルス幅の差は等しいが、パルス幅補正を行うことにより、出力電流のアンバランスによる位相オフセットを解消することができる。
【0046】
上記説明より、本実施の形態にかかるPLL回路1によれば、オフセット補正回路11によって、基準クロック信号Frと帰還クロック信号Fdとが同位相となった場合のチャージポンプ出力電圧を疑似チャージポンプ出力電圧として再現する。そして、再現したチャージポンプ出力電圧が一定電圧を保つようにアップ信号UP及びダウン信号DNのパルス幅を補正する。この補正アップ信号UPMOD及び補正ダウン信号DNMODに基づいてチャージポンプ回路12を動作させることで、基準クロック信号Frと帰還クロック信号Fdの位相が揃ったときのチャージポンプ出力電圧は安定したものになる。つまり、オフセット補正回路11によって生成される補正量に基づきアップ信号UP及びダウン信号DNを補正し、この補正されたアップ信号及びダウン信号に基づき帰還クロック信号Fdを生成することで、ロックしたときの基準クロック信号Frと帰還クロック信号Fdとの位相は同位相状態となる。
【0047】
つまり、本実施の形態では、チャージポンプ回路の出力電流IpとInとがアンバランスな場合であっても、オフセット補正回路により、アンバランスな出力電流を補うようにチャージポンプ回路に与えるアップ信号、ダウン信号のパルス幅を補正し、基準クロック信号と帰還クロック信号との位相が揃った状態で同期を取ることができる。
【0048】
また、本実施の形態にかかるオフセット補正回路11は、1つの位相比較回路10から出力されるアップ信号UPとダウン信号DNとに基づきパルス幅の補正量の算出とパルス幅の補正を行う。つまり、従来例2のように2つの位相比較回路が必要ない。従って、本実施の形態にかかるオフセット補正回路11によれば、より小さな回路面積で位相オフセットを補正した出力クロック信号Foを生成することが可能である。
【0049】
さらに、位相比較回路が1つで良いために、位相比較回路が動作することで発生する電源ノイズを従来例2のPLL回路に比べて削減することが可能である。つまり、電源ノイズが小さいために、電源ノイズによってPLL回路1の動作が不安定になるのを抑制することが可能である。例えば、電源ノイズによって出力クロック信号Foにジッタ等が発生する場合があるが、電源ノイズが小さければこのジッタを低減することが可能である。
【0050】
実施の形態2
実施の形態1にかかるPLL回路1では、第1のチャージポンプ回路12とオフセット補正回路中の第2のチャージポンプ回路24とを異なる電流源に基づき動作させていた。これに対して、実施の形態2にかかるPLL回路2では、第1のチャージポンプ回路12とオフセット補正回路中の第2のチャージポンプ回路24とを共通の電流源に基づき動作させる。実施の形態2にかかるPLL回路2のブロック図を図11に示す。
【0051】
図11に示すように、PLL回路2は、第1のチャージポンプ回路12と第2のチャージポンプ回路24とを共通の電流源で実現したチャージポンプ回路40を有している。このチャージポンプ回路40の回路図を図12に示す。図12に示すように、チャージポンプ回路40は、電流源部41、第1のチャージポンプ回路12、第2のチャージポンプ回路24を有している。第1のチャージポンプ回路12の出力電流Ip及び第2のチャージポンプ回路24の出力電流Ipは、NMOSトランジスタN1、N2で構成されるカレントミラー及びPMOSトランジスタP1、P2、P4で構成されるカレントミラーよって基準電流Irefを折り返した電流として供給される。一方、第1のチャージポンプ回路12の出力電流In及び第2のチャージポンプ回路24の出力電流Inは、NMOSトランジスタN1、N3、N5で構成されるカレントミラーよって基準電流Irefを折り返した電流として供給される。
【0052】
つまり、第1のチャージポンプ回路12及び第2のチャージポンプ回路24の出力電流は、カレントミラーを介して同じ電流源から供給される。これによって、第1のチャージポンプ回路12の出力電流と第2のチャージポンプ回路24の出力電流とは、電流源の電流量がばらついたとしても、そのばらつき量に対して同じ割合で変化する。つまり、電流源にばらつきが生じた場合であっても、第1のチャージポンプ回路12の出力電流と第2のチャージポンプ回路24の出力電流の相対的な関係は変化しない。従って、実施の形態2にかかるPLL回路2によれば、電流源のばらつきによらず、精度の高いパルス幅の補正が可能である。換言すれば、実施の形態2にかかるオフセット補正回路11は、第1のチャージポンプ回路12に対して精度の高い補正量の算出が可能である。
【0053】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、アップ信号及びダウン信号に対する補正は、少なくとも一方の信号に対して行えば良く、必ずしもアップ信号及びダウン信号の両方に対して補正を加える必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】実施の形態1にかかるPLL回路のブロック図である。
【図2】実施の形態1にかかるチャージポンプ回路の回路図である。
【図3】実施の形態1にかかるループフィルタの回路図である。
【図4】実施の形態1にかかるパルス幅制御回路の回路図である。
【図5】実施の形態1にかかるパルス幅制御回路の入出力信号のタイミングチャートである。
【図6】実施の形態1にかかるパルス幅制御回路における出力信号のパルス幅とパルス幅制御信号の電圧値との関係を示すグラフである。
【図7】実施の形態1にかかるパルス幅制御回路における出力信号間のパルス幅の差とパルス幅制御信号の電圧値との関係を示すグラフである。
【図8】実施の形態1にかかるPLL回路の第1の条件にける基準クロック信号、帰還クロック信号、補正アップ信号、補正ダウン信号の波形を示す図である。
【図9】実施の形態1にかかるPLL回路の第2の条件にける基準クロック信号、帰還クロック信号、補正アップ信号、補正ダウン信号の波形を示す図である。
【図10】実施の形態1にかかるPLL回路の第3の条件にける基準クロック信号、帰還クロック信号、補正アップ信号、補正ダウン信号の波形を示す図である。
【図11】実施の形態2にかかるPLL回路のブロック図である。
【図12】実施の形態2にかかるチャージポンプ回路の回路図である。
【図13】従来例1にかかるPLL回路のブロック図である。
【図14】従来例2にかかるPLL回路のブロック図である。
【符号の説明】
【0055】
1、2 PLL回路
10 位相比較回路
11 オフセット補正回路
12、24、40 チャージポンプ回路
13 ループフィルタ
14 電圧制御発振回路
21 AND回路
22、23 パルス幅制御回路
25 疑似フィルタ
26 パルス幅制御信号生成回路
30 電流制御回路
41 電流源部
C1、C2、CDM コンデンサ
R1 抵抗
【技術分野】
【0001】
本発明はPLL回路に関し、特に基準クロック信号と帰還クロック信号との間に発生する位相オフセットを補正するオフセット補正回路を有するPLL回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置に搭載される発振回路としてPLL(Phase Locked Loop)回路が多く用いられている。PLL回路は、基準クロック信号の位相と出力クロック信号の位相とが同期するように出力信号の発振周波数を制御する。
【0003】
従来例1として、一般的なPLL回路100のブロック図を図13に示す。図13に示すように、PLL回路100は、位相比較回路111、チャージポンプ回路112、ループフィルタ113、電圧制御発振回路114を有している。
【0004】
位相比較回路111は、基準クロック信号Frと、PLL回路100の出力クロック信号Foを帰還させた帰還クロック信号Fdとを比較し、チャージポンプ回路112を制御するアップ信号とダウン信号とを出力する。チャージポンプ回路112は、アップ信号とダウン信号とのパルス幅の差に基づいて電流を出力し、出力した電流の電流量に応じたチャージポンプ出力電圧を出力する。この電流は、アップ信号とダウン信号とのパルス幅の差に基づいて流入方向又は流出方向になるように制御される。ループフィルタ113は、チャージポンプ回路112が出力する電流に基づいてコンデンサに電荷を蓄積する。そして、蓄積した電荷に基づいて電圧を生成する。この電圧は、チャージポンプ回路112が出力する電圧となる。また、ループフィルタ113は、チャージポンプ出力電圧に重畳される高周波ノイズ及びリップルノイズを除去する。電圧制御発振回路114は、ループフィルタ113を介して出力されるチャージポンプ出力電圧に応じた周波数を有する出力クロック信号Foを出力する。また、この出力クロック信号Foは、帰還クロック信号Fdとして位相比較回路111に入力される。
【0005】
このPLL回路100は、理想的には基準クロック信号Frと帰還クロック信号Fd(あるいは出力クロック信号Fo)の位相が同じ場合にチャージポンプ回路112が出力する電流の流出量と流入量とが同じになる。しかしながら、チャージポンプ回路112の回路構成、あるいは、トランジスタのばらつき等により、基準クロック信号Frと帰還クロック信号Fdとの位相が同じ場合であっても、チャージポンプ回路112が出力する電流の流出量と流入量とに差が生じる。このような場合、基準クロック信号Frと帰還クロック信号Fdとは、位相がずれた状態で安定する。このずれを位相オフセットと称する。
【0006】
このような位相オフセットを補正する技術が特許文献1(従来例2)に開示されている。従来例2のPLL回路200のブロック図を図14に示す。図14に示すように、PLL回路200は、遅延回路211、位相比較回路212、チャージポンプ回路213、ループフィルタ214、電圧制御発振回路215、位相補正回路216、増幅器220を有している。
【0007】
遅延回路211は、基準クロック信号Frと帰還クロック信号Fdとが入力され、基準クロック信号Frと帰還クロック信号Fdとをそれぞれ遅延させて遅延基準クロック信号DLY1と遅延帰還クロック信号DLY2とを出力する。そして、位相比較回路212、チャージポンプ回路213、ループフィルタ214、電圧制御発振回路215は、この遅延基準クロック信号DLY1と遅延期間クロック信号DLY2とに基づいてチャージポンプ回路213が出力する電流の流入量と流出量とが略同じとなることで動作が安定する。
【0008】
また、遅延回路211の遅延量は、位相補正回路216及び増幅器220によって設定される。位相補正回路216は、遅延回路211、位相比較回路212、チャージポンプ回路213と実質的に同じ回路を有する遅延回路217、位相比較回路218、チャージポンプ回路219を有している。ここで、遅延回路217には基準クロック信号Frのみが入力されている。そして、チャージポンプ回路219の出力電圧を平滑化するコンデンサCDMによって、チャージポンプ回路219の出力電流に応じた電圧(例えば、疑似チャージポンプ出力電圧VCDM)を出力する。つまり、この疑似チャージポンプ出力電圧は、基準クロック信号Frと帰還クロック信号Fdとの位相が一致している場合にチャージポンプ回路213が出力する電圧を疑似的に再現したものである。
【0009】
増幅器220は、疑似チャージポンプ出力電圧VCDMとチャージポンプ回路213のモニタ電圧VCとの差電圧に基づき遅延回路211と遅延回路217とに制御信号Vcontを出力する。遅延回路211と遅延回路217は、この制御信号Vcontの電圧値に応じて遅延量を設定する。
【0010】
つまり、PLL回路200は、チャージポンプ回路213のモニタ電圧VCと疑似チャージポンプ出力電圧VCDMとに基づき、基準クロック信号Frと帰還クロック信号Fdとを同位相とする遅延回路211の遅延量を設定する。そして、遅延回路211で基準クロック信号Frと帰還クロック信号Fdとに加える遅延量によって、基準クロック信号Frと帰還クロック信号Fdとの位相オフセットを補正する。
【特許文献1】特開2005−123944号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、従来例2のPLL回路200では、本来のPLL回路に接続される位相比較回路212に加え、疑似チャージポンプ出力電圧VCDMを生成する位相補正回路216に位相比較回路212が必要となる。そのため、PLL回路200では、回路規模が増大する問題があった。また、位相比較回路が動作することで電源ノイズを発生させる。つまり、位相比較回路の数が増えると、この電源ノイズが大きくなる問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明にかかるPLL回路は、基準クロック信号と帰還クロック信号との位相差に基づきパルス幅が設定されるアップ信号及びダウン信号を出力する位相比較回路と、前記アップ信号及び前記ダウン信号のうち少なくとも一方の信号のパルス幅を補正し、補正アップ信号及び補正ダウン信号を出力するオフセット補正回路と、前記補正アップ信号及び前記補正ダウン信号に基づいて出力するチャージポンプ出力電圧を上昇又は下降させる第1のチャージポンプ回路と、前記チャージポンプ出力電圧のノイズを除去し、フィルタ電圧を出力するループフィルタと、前記フィルタ電圧の電圧値に応じて発振周波数が制御され、出力クロック信号を出力する電圧制御発振回路とを有し、前記オフセット補正回路は、前記基準クロック信号と前記帰還クロック信号との位相が揃っているときに前記チャージポンプ出力電圧が略一定の値となるように前記補正アップ信号及び前記補正ダウン信号のうち少なくとも一方のパルス幅を設定することを特徴とするものである。
【0013】
本発明にかかるPLL回路によれば、位相比較回路が出力するアップ信号及びダウン信号に基づき基準クロック信号Frと帰還クロック信号Fdとが同位相となる状態を再現するオフセット補正回路によって、アップ信号とダウン信号とのパルス幅の補正量を設定する。これによって、位相比較回路が1つであっても位相オフセットの補正が可能となる。また、位相比較回路が1つであることから、位相比較回路の動作によって生じる電源ノイズの増大を抑制することが可能である。
【発明の効果】
【0014】
本発明にかかるPLL回路によれば、小さな回路規模で位相オフセットの補正が可能である。
【0015】
実施の形態1
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1に実施の形態1にかかるPLL回路1のブロック図を示す。図1に示すように、PLL回路1は、位相比較回路10、オフセット補正回路11、第1のチャージポンプ回路12、ループフィルタ13、電圧制御発振回路14を有している。
【0016】
位相比較回路10は、基準クロック信号Frと、PLL回路1の出力クロック信号Foを帰還させた帰還クロック信号Fdとの位相を比較する。そして、その位相差に応じたパルス幅を有するアップ信号UP及びダウン信号DNを生成する。このアップ信号UP及びダウン信号DNは、例えば基準クロック信号Frの位相が帰還クロック信号Fdの位相よりも進んでいた場合、アップ信号UPのパルス幅は、ダウン信号DNのパルス幅よりも大きくなる。一方、基準クロック信号Frの位相が帰還クロック信号Fdの位相よりも遅れていた場合、アップ信号UPのパルス幅は、ダウン信号DNのパルス幅よりも小さくなる。
【0017】
オフセット補正回路11は、アップ信号UP及びダウン信号DNに基づきアップ信号UP及びダウン信号DNのパルス幅の補正量を設定する。そして、設定した補正量に基づきパルス幅を補正した補正アップ信号UPMOD及び補正ダウン信号DNMODを出力する。このとき、オフセット補正回路11は、アップ信号UP及びダウン信号DNに基づき基準クロック信号と帰還クロック信号とが同位相となる状態を疑似的に再現し、再現された同位相状態に基づきチャージポンプ回路の出力電圧が略一定の値となるようにパルス幅の補正量を設定する。なお、本実施の形態においては、アップ信号UP及びダウン信号DNとに対してパルス幅の補正を行うが、アップ信号UP及びダウン信号DNのうちいずれか一方の信号に対してのみ補正を行うとしても良い。このオフセット補正回路11の詳細については後述する。
【0018】
第1のチャージポンプ回路12(以降、単にチャージポンプ回路12と称す)は、補正アップ信号UPMOD及び補正ダウン信号DNMODのパルス幅の差に基づいて電流を出力し、その電流の電流量に応じたチャージポンプ出力電圧を出力する。この電流は、補正アップ信号UPMODと補正ダウン信号DNMODとのパルス幅の差に基づいて流入方向又は流出方向になるように制御される。このチャージポンプ回路12の回路の一例を図2に示す。
【0019】
図2に示すように、NMOSトランジスタN1〜N4、PMOSトランジスタP1〜P3、インバータINVを有している。NMOSトランジスタN1はソースが接地電位VSSに接続されており、ドレインが基準電流入力端子Iinに接続されている。また、NMOSトランジスタN1のゲートとドレインとは互いに接続されている。また、NMOSトランジスタN1のゲートは、NMOSトランジスタN2、N3のゲートと共通に接続されている。NMOSトランジスタN2のソースは、接地電位VSSに接続され、ドレインはPMOSトランジスタP1のドレインと接続されている。NMOSトランジスタN3のソースは接地電位VSSに接続されており、ドレインはNMOSトランジスタN4のソースに接続されている。PMOSトランジスタP1のソースは電源電位VDDに接続されている。また、PMOSトランジスタP1のゲートとドレインとは互いに接続されている。そして、PMOSトランジスタP1のゲートとPMOSトランジスタP2のゲートとは共通に接続される。PMOSトランジスタP2のソースは電源電位VDDに接続され、ドレインはPMOSトランジスタP3のソースに接続されている。NMOSトランジスタN4のドレインとPMOSトランジスタP3のドレインとは互いに接続されている。そして、NMOSトランジスタN4とPMOSトランジスタP3との接続点が出力端子Ioutに接続されている。また、NMOSトランジスタN4のゲートには補正ダウン信号DNMODが入力されている。PMOSトランジスタP3のゲートにはインバータINVを介して補正アップ信号UPMODが入力されている。
【0020】
つまり、チャージポンプ回路12は、基準電流入力端子Iinから入力される基準電流IrefをNMOSトランジスタN1〜N3で構成されるカレントミラー及びPMOSトランジスタP1、P2で構成されるカレントミラーで折り返すことで出力端子Ioutから出力される電流Ip、Inを設定する。このとき、PMOSトランジスタP3及びNMOSトランジスタN4は、出力端子Ioutに電流Ip、Inを出力するか否かを決定するスイッチとして動作する。PMOSトランジスタP3及びNMOSトランジスタN4は、補正アップ信号UPMOD及び補正ダウン信号DNMODがハイレベルである場合に導通状態となり、出力端子Ioutから電流Ip、Inを出力する。一方、補正アップ信号UPMOD及び補正ダウン信号DNMODがローレベルである場合、PMOSトランジスタP3及びNMOSトランジスタN4は遮断状態状態となり、出力端子Ioutから電流Ip、Inが出力されるのを停止する。
【0021】
ループフィルタ13は、チャージポンプ回路12が出力する電流に基づいてコンデンサに電荷を蓄積する。そして、蓄積した電荷に基づいて電圧を生成する。この電圧は、チャージポンプ回路12が出力する電圧となる。また、ループフィルタ13は、チャージポンプ出力電圧に重畳される高周波ノイズ及びリップルノイズを除去する。なお、本実施の形態においては、ループフィルタ13は、2つの電圧信号を出力する。一方の電圧信号は、チャージポンプ回路12の出力端子の電圧となるチャージポンプ出力電圧VFであって、他方の電圧信号は、チャージポンプ出力電圧信号の変動に応じて変動する電圧であって、チャージポンプ出力電圧信号とは異なるモニタ電圧VCである。ここで、ループフィルタ13の回路の一例を図3に示す。
【0022】
図3に示すように、ループフィルタ13は、抵抗R1、コンデンサC1、C2を有している。抵抗R1は、一端がチャージポンプ回路12の出力端子と電圧制御発振回路14の電圧入力端子を接続する配線(例えば、第1のチャージポンプ出力配線)に接続され、他端がコンデンサC1の一端に接続されている。コンデンサC1の他端は、接地電位VSSに接続されている。そして、抵抗R1とコンデンサC1との接続点の電圧がモニタ電圧VCとして出力される。一方、コンデンサC2は、第1のチャージポンプ出力配線と接地電位VSSとの間に接続されている。なお、第1のチャージポンプ出力配線の電圧は、コンデンサC1、C2に蓄積された電荷量と抵抗R1に流れる電流とによって発生する。この第1のチャージポンプ出力配線の電圧は、チャージポンプ出力電圧VFとなる。つまり、モニタ電圧VCとチャージポンプ出力電圧VFとは、チャージポンプ回路12から出力される電流の流入量と流出量とが略同じ場合には抵抗R1に電流が流れないため、略同じ電圧として扱うことが可能である。なお、本実施の形態においては、チャージポンプ出力電圧VFとモニタ電圧VCとを異なるノードから出力するが、これは同じノードから出力される電圧であっても構わない。
【0023】
電圧制御発振回路14は、ループフィルタ13を介して出力されるチャージポンプ出力電圧VFに応じた周波数を有する出力クロック信号Foを出力する。また、この出力クロック信号Foは、帰還クロック信号Fdとして位相比較回路10に入力される。
【0024】
ここで、オフセット補正回路11について詳細に説明する。図1に示すように、オフセット補正回路11は、AND回路21、第1のパルス幅制御回路22、第2のパルス幅制御回路23、第2のチャージポンプ回路24、疑似フィルタ25、パルス幅制御信号生成回路26を有している。
【0025】
AND回路21の一方の入力端子には位相比較回路10が出力するアップ信号UPが入力され、他方の入力端子には位相比較回路10が出力するダウン信号DNが入力されている。そして、AND回路21は、アップ信号UPとダウン信号DNの論理積を疑似同期信号UPDNとして出力する。本実施の形態においては、AND回路21から出力される1つの疑似同期信号UPDNを接続先に応じて疑似アップ信号あるいは疑似ダウン信号と称す。図1においては、第2のパルス幅制御回路23の"P"で示されるバッファ(例えば、ポジティブバッファ)に入力される信号を疑似アップ信号と称し、"N"で示されるバッファ(例えば、ネガティブバッファ)に入力される信号を疑似ダウン信号と称す。
【0026】
第1のパルス幅制御回路22は、アップ信号UPが入力され、このアップ信号UPのパルス幅を修正した補正アップ信号UPMODを出力するポジティブバッファと、ダウン信号DNが入力され、このダウン信号DNのパルス幅を修正した補正ダウン信号DNMODを出力するネガティブバッファと、を有している。第1のパルス幅制御回路22で補正されるパルス幅の補正量はパルス幅制御信号PWcontの値に基づき設定される。
【0027】
第2のパルス幅制御回路23は、疑似アップ信号が入力され、この疑似アップ信号のパルス幅を修正した補正疑似アップ信号UPDMを出力するポジティブバッファと、疑似ダウン信号が入力され、この疑似ダウン信号のパルス幅を修正した補正疑似ダウン信号DNDMを出力するネガティブバッファと、を有している。第2のパルス幅制御回路23で補正されるパルス幅の補正量はパルス幅制御信号PWcontの値に基づき設定される。なお、第1のパルス幅制御回路22と第2のパルス幅制御回路23とは実質的に同じ回路で構成されている。第1のパルス幅制御回路22及び第2のパルス幅制御回路23の詳細については後述する。
【0028】
第2のチャージポンプ回路24(以降、単にチャージポンプ回路24と称す)は、チャージポンプ回路12と実質的に同じ回路である。そして、チャージポンプ回路24は、補正疑似アップ信号UPDMと補正疑似ダウン信号DNDMとのパルス幅の差に基づいて出力電流を制御する。疑似フィルタ25は、チャージポンプ回路24の出力電流に応じて電荷を蓄積し、蓄積した電荷量に応じた電圧を出力する。この電圧は、チャージポンプ回路24が出力する疑似チャージポンプ出力電圧VCDMとなる。また、疑似フィルタ25は、チャージポンプ回路24の出力電圧を平滑化する。
【0029】
本実施の形態における疑似フィルタ25は、チャージポンプ回路24の出力端子とパルス幅制御信号生成回路26の第2の入力端子とを接続する配線(例えば、第2のチャージポンプ出力配線)と接地電位VSSとの間にコンデンサCDMが接続される。このコンデンサCDMは、例えばループフィルタ13のコンデンサC1と同じ容量値を有している。なお、モニタ電圧VCをループフィルタ13の第1のチャージポンプ出力配線から取得する場合、疑似フィルタ25は、ループフィルタ13と同じ構成とすることが好ましい。
【0030】
パルス幅制御信号生成回路26は、モニタ電圧VCと疑似チャージポンプ出力電圧VCDMとの電圧差に基づいてパルス幅制御信号PWcontの電圧値を設定する。例えば、モニタ電圧VCが疑似チャージポンプ出力電圧VCDMよりも低ければパルス幅制御信号PWcontの電圧値を上昇させる。一方、モニタ電圧VCが疑似チャージポンプ出力電圧VCDMよりも高ければパルス幅制御信号PWcontの電圧値を下降させる。本実施の形態においては、パルス幅制御信号生成回路26は、差動増幅器で構成される。そして、差動増幅器の正転入力端子に疑似チャージポンプ出力電圧VCDMが入力され、反転入力端子にはモニタ電圧VCが入力される。このように生成されたパルス幅制御信号PWcontは、第1のパルス幅制御回路22及び第2のパルス幅制御回路23に入力される。そして、第1のパルス幅制御回路22及び第2のパルス幅制御回路23は、パルス幅制御信号PWcontの電圧値に基づいて出力する信号のパルス幅を調整する。
【0031】
ここで、第1のパルス幅制御回路22及び第2のパルス幅制御回路23につてより詳細に説明する。なお、第1のパルス幅制御回路22及び第2のパルス幅制御回路23は、実質的に同じ回路であるため、一例として第1のパルス幅制御回路22の回路についてのみ説明を行う。第1のパルス幅制御回路22の回路図を図4に示す。図4に示すように、第1のパルス幅制御回路22は、電流制御回路30、NMOSトランジスタN12〜N15、PMOSトランジスタP14、P15を有している。電流制御回路30は、パルス幅制御信号PWcontの電圧値に応じて、電流源Isで生成される電流を電流Isaと電流Isbとに振り分ける。電流Isaは、電流制御回路30の第1の出力端子から出力される電流であって、電流Isbは、電流制御回路30の第2の出力端子から出力される電流である。
【0032】
電流制御回路30は、NMOSトランジスタN10、N11、PMOSトランジスタN10〜N13を有している。NMOSトランジスタN10、N11は、差動対を構成している。そして、電流源Isは、この差動対に電流を供給する。また、NMOSトランジスタN10のゲート端子にはパルス幅制御信号PWcontが入力され、NMOSトランジスタN11のゲート端子には定電圧Vconstが入力される。NMOSトランジスタN10のドレイン端子にはPMOSトランジスタP10のドレイン端子が接続される。NMOSトランジスタN11のドレイン端子にはPMOSトランジスタP11のドレイン端子が接続される。PMOSトランジスタP10のソースは電源電位VDDに接続されている。PMOSトランジスタP10のゲートは、ドレインと互いに接続され、さらにPMOSトランジスタP12のゲートと共通に接続される。そして、PMOSトランジスタP12のソースは電源電位VDDに接続され、ドレインが電流制御回路30の第1の出力端子となっている。PMOSトランジスタP11のソースは電源電位VDDに接続されている。PMOSトランジスタP11のゲートは、ドレインと互いに接続され、さらにPMOSトランジスタP13のゲートと共通に接続される。そして、PMOSトランジスタP13のソースは電源電位VDDに接続され、ドレインが電流制御回路30の第2の出力端子となっている。つまり、電流制御回路30は、定電圧Vconstとパルス幅制御信号PWcontとの電圧値を比較し、その比較結果に応じて電流Isaと電流Isbとの大きさの比を設定する。
【0033】
また、電流制御回路30の第1の出力端子と接地電位VSSとの間にはNMOSトランジスタN12が接続される。NMOSトランジスタN12は、第1のパルス幅制御回路22の第1のバッファ回路(例えば、ポジティブバッファ)の入力回路に相当する。つまり、NMOSトランジスタN12は、ゲート端子にはアップ信号UPが入力され、ドレイン端子からアップ信号UPの反転信号を出力する。このとき、ドレイン端子から出力される中間信号Umの立ち上がり速度は、電流制御回路30の第1の出力端子から出力される電流Isaの大きさに基づき設定される。また、この中間信号Umは、PMOSトランジスタP14とNMOSトランジスタN14とで構成される出力回路(例えば、インバータ)によって反転され、補正アップ信号UPMODとして出力される。
【0034】
一方、電流制御回路30の第2の出力端子と接地電位VSSとの間にはNMOSトランジスタN13が接続される。NMOSトランジスタN13は、第1のパルス幅制御回路22の第2のバッファ回路(例えば、ネガティブバッファ)の入力回路に相当する。つまり、NMOSトランジスタN13は、ゲート端子にはダウン信号DNが入力され、ドレイン端子からダウン信号DNの反転信号を出力する。このとき、ドレイン端子から出力される中間信号Dmの立ち上がり速度は、電流制御回路30の第2の出力端子から出力される電流Isbの大きさに基づき設定される。また、この中間信号Dmは、PMOSトランジスタP15とNMOSトランジスタN15とで構成される出力回路(例えば、インバータ)によって反転され、補正ダウン信号DNMODとして出力される。
【0035】
ここで、第1のパルス幅制御回路22の動作について説明する。図5に第1のパルス幅制御回路22の動作のタイミングチャートを示す。図5に示すタイミングチャートは、上段3つのタイミングチャートがポジティブバッファ側の信号に関するものであり、下側3つのタイミングチャートがネガティブバッファ側の信号に関するものである。
【0036】
まず、ポジティブバッファ側の信号について説明する。タイミングt0でアップ信号UPが立ち上がると、それに応じて中間信号Umは立ち下がり、補正アップ信号UPMODは立ち上がる。そして、タイミングt1でアップ信号UPが立ち下がると、それに応じて中間信号Umは立ち上がり、補正アップ信号UPMODは立ち下がる。このときパルス幅制御信号PWcontの電圧値によって、中間信号Umは立ち上がりと、補正アップ信号UPMODは立ち下がりのタイミングが変化する。本実施の形態においては、パルス幅制御信号PWcontが小さくなるにつれて中間信号Umの立ち上がりが緩やかになる。そして、補正アップ信号UPMODの立ち上がりタイミングの遅延が大きくなる。つまり、パルス幅制御信号PWcontが小さくなるにつれて補正アップ信号UPMODのパルス幅が大きくなる。
【0037】
次に、ネガティブバッファ側の信号について説明する。タイミングt0でダウン信号DNが立ち上がると、それに応じて中間信号Dmは立ち下がり、補正ダウン信号DNMODは立ち上がる。そして、タイミングt1でダウン信号DNが立ち下がると、それに応じて中間信号Dmは立ち上がり、補正ダウン信号DNMODは立ち下がる。このときパルス幅制御信号PWcontの電圧値によって、中間信号Dmは立ち上がりと、補正ダウン信号DNMODは立ち下がりのタイミングが変化する。本実施の形態においては、パルス幅制御信号PWcontが小さくなるにつれて中間信号Umの立ち上がりが急峻になる。そして、補正ダウン信号DNMODの立ち上がりタイミングの遅延が小さくなる。つまり、パルス幅制御信号PWcontが小さくなるにつれて補正ダウン信号DNMODのパルス幅が小さくなる。
【0038】
図6にパルス幅制御信号PWcontの電圧値と第1のパルス幅制御回路22の入出力信号間のパルス幅の変化量との関係のグラフを示す。図6のグラフより、補正アップ信号UPMODのパルス幅の変化量は、パルス幅制御信号PWcontの値が大きくなるにつれて小さくなることが分かる。一方、補正ダウン信号DNMODのパルス幅の変化量は、パルス幅制御信号PWcontの値が大きくなるにつれて大きくなる。そして、所定のパルス幅制御信号PWcontの値にて、補正アップ信号UPMODの変化量と補正ダウン信号DNMODの変化量とが同程度となる。
【0039】
また、図7に補正アップ信号UPMODのパルス幅と補正ダウン信号DNMODのパルス幅との差分量とパルス幅制御信号PWcontの値との関係のグラフを示す。図7のグラフより、パルス幅制御信号PWcontの値が小さい領域では、補正アップ信号UPMODのパルス幅が補正ダウン信号DNMODのパルス幅よりも大きくことが分かる。一方、パルス幅制御信号PWcontの値が大きい領域では、補正アップ信号UPMODのパルス幅が補正ダウン信号DNMODのパルス幅よりも小さいことが分かる。
【0040】
本実施の形態にかかるPLL回路1の動作について説明する。PLL回路1は、トランジスタばらつき等によるチャージポンプ回路の出力電流Ip、Inのバランスによって動作が異なる。従って、チャージポンプ回路の出力電流Ip、Inの違いに応じて動作を説明する。なお、以下の説明では、特に、基準クロック信号Frと帰還クロック信号Fdの同期が取れ、ロックしているときの動作について説明する。
【0041】
まず、第1の条件として単位時間中に出力される電流Ipと電流Inの電流量が等しい場合について説明する。この第1の条件では、補正アップ信号UPMODと補正ダウン信号DNMODのパルス幅が等しければ第1のチャージポンプ出力電圧の電圧値が安定し、基準クロック信号Frと帰還クロック信号Fdとの位相が同位相となる。このとき、補正疑似アップ信号UPDMのパルス幅と補正疑似ダウン信号DNDMのパルス幅は、略同一である。第1の条件における基準クロック信号Fr、帰還クロック信号Fd、補正アップ信号UPMOD、補正ダウン信号DNMOD、補正疑似アップ信号UPDM、補正疑似ダウン信号DNDMの波形を図8に示す。
【0042】
次に、第2の条件として単位時間中に出力される電流Ipの電流量が単位時間中に出力される電流Inの電流量よりも小さな場合について説明する。この第2の条件では、アップ信号UP及びダウン信号DNのパルス幅を補正しない場合、帰還クロック信号Fdの位相が基準クロック信号Frに比べ遅れた状態で安定した状態になる。すなわち、位相オフセットが存在することになる。このとき、パルス幅補正前においては、チャージポンプ回路24に入力される補正疑似アップ信号UPDMと補正疑似ダウン信号DNDMとは等しいパルス幅となるため、疑似チャージポンプ出力電圧VCDMは減少して、モニタ電圧VCより小さくなる。従って、パルス幅制御信号PWcontは小さくなり、オフセット補正回路11は、補正アップ信号UPMODのパルス幅を補正ダウン信号DNMODのパルス幅よりも大きくする。このとき、補正アップ信号UPMODのパルス幅は長くなる方向に補正され、補正ダウン信号DNMODのパルス幅は短くなる方に補正される。これによって、第1及び第2のチャージポンプ出力電圧を略一定に保つために不足していた電流Ipの電流量が補われ、第1のチャージポンプ出力電圧により生成されるモニタ電圧VCと第2のチャージポンプ電圧出力VCDMとが略等しく一定となるように帰還制御が行われる。これによって、基準クロック信号Frと帰還クロック信号Fdとは、同位相状態となる。
【0043】
第2の条件における基準クロック信号Fr、帰還クロック信号Fd、補正アップ信号UPMOD、補正ダウン信号DNMOD、補正疑似アップ信号UPDM、補正疑似ダウン信号DNDMの波形を図9に示す。破線で示す波形はパルス幅補正をしないと仮定した場合の波形である。ここで、パルス幅補正前のUPMOD信号とDNMOD信号とのパルス幅の差dw1と、パルス幅補正後のUPMOD信号とDNMOD信号とのパルス幅の差(及びUPDM信号とDNDM信号とのパルス幅の差)dw2とが等しくなる。すなわち、パルス幅補正をしない場合とした場合で結果としてパルス幅の差は等しくなるが、パルス幅補正を行うことにより、チャージポンプ回路の出力電流IpとInとがアンバランスな場合でも、基準クロック信号Frと帰還クロック信号Fdとの位相が実質的に同位相となり、出力電流のアンバランスによる位相オフセットを解消することができる。
【0044】
続いて、第3の条件として単位時間中に出力される電流Ipの電流量が単位時間中に出力される電流Inの電流量よりも大きな場合について説明する。この第3の条件では、アップ信号UP及びダウン信号DNのパルス幅を補正しない場合、帰還クロック信号Fdの位相が基準クロック信号Frに比べ進んだ状態で安定した状態になる。すなわち、位相オフセットが存在することになる。このとき、パルス幅補正前においては、チャージポンプ回路24に入力される補正疑似アップ信号UPDMと補正疑似ダウン信号DNDMとは等しいパルス幅となるため、疑似チャージポンプ出力電圧VCDMは増加して、モニタ電圧VCより大きくなる。従って、パルス幅制御信号PWcontは大きくなり、オフセット補正回路11は、補正アップ信号UPMODのパルス幅を補正ダウン信号DNMODのパルス幅よりも小さくする。このとき、補正アップ信号UPMODのパルス幅は短くなる方向に補正され、補正ダウン信号DNMODのパルス幅は長くなる方に補正される。これによって、第1及び第2のチャージポンプ出力電圧を略一定に保つために不足していた電流Inの電流量が補われ、第1のチャージポンプ出力電圧により生成されるモニタ電圧VCと第2のチャージポンプ電圧出力VCDMとが略等しく一定となるように帰還制御が行われる。が安定する。これによって、基準クロック信号Frと帰還クロック信号Fdとは、同位相状態となる。
【0045】
第3の条件における基準クロック信号Fr、帰還クロック信号Fd、補正アップ信号UPMOD、補正ダウン信号DNMOD、補正疑似アップ信号UPDM、補正疑似ダウン信号DNDMの波形を図10に示す。破線で示す波形はパルス幅補正をしないと仮定した場合の波形である。ここで、パルス幅補正前のUPMOD信号とDNMOD信号とのパルス幅の差dw3と、パルス幅補正後のUPMOD信号とDNMOD信号とのパルス幅の差(及びUPDM信号とDNDM信号とのパルス幅の差)dw4とが等しくなる。すなわち、パルス幅補正の有無によって結果としてパルス幅の差は等しいが、パルス幅補正を行うことにより、出力電流のアンバランスによる位相オフセットを解消することができる。
【0046】
上記説明より、本実施の形態にかかるPLL回路1によれば、オフセット補正回路11によって、基準クロック信号Frと帰還クロック信号Fdとが同位相となった場合のチャージポンプ出力電圧を疑似チャージポンプ出力電圧として再現する。そして、再現したチャージポンプ出力電圧が一定電圧を保つようにアップ信号UP及びダウン信号DNのパルス幅を補正する。この補正アップ信号UPMOD及び補正ダウン信号DNMODに基づいてチャージポンプ回路12を動作させることで、基準クロック信号Frと帰還クロック信号Fdの位相が揃ったときのチャージポンプ出力電圧は安定したものになる。つまり、オフセット補正回路11によって生成される補正量に基づきアップ信号UP及びダウン信号DNを補正し、この補正されたアップ信号及びダウン信号に基づき帰還クロック信号Fdを生成することで、ロックしたときの基準クロック信号Frと帰還クロック信号Fdとの位相は同位相状態となる。
【0047】
つまり、本実施の形態では、チャージポンプ回路の出力電流IpとInとがアンバランスな場合であっても、オフセット補正回路により、アンバランスな出力電流を補うようにチャージポンプ回路に与えるアップ信号、ダウン信号のパルス幅を補正し、基準クロック信号と帰還クロック信号との位相が揃った状態で同期を取ることができる。
【0048】
また、本実施の形態にかかるオフセット補正回路11は、1つの位相比較回路10から出力されるアップ信号UPとダウン信号DNとに基づきパルス幅の補正量の算出とパルス幅の補正を行う。つまり、従来例2のように2つの位相比較回路が必要ない。従って、本実施の形態にかかるオフセット補正回路11によれば、より小さな回路面積で位相オフセットを補正した出力クロック信号Foを生成することが可能である。
【0049】
さらに、位相比較回路が1つで良いために、位相比較回路が動作することで発生する電源ノイズを従来例2のPLL回路に比べて削減することが可能である。つまり、電源ノイズが小さいために、電源ノイズによってPLL回路1の動作が不安定になるのを抑制することが可能である。例えば、電源ノイズによって出力クロック信号Foにジッタ等が発生する場合があるが、電源ノイズが小さければこのジッタを低減することが可能である。
【0050】
実施の形態2
実施の形態1にかかるPLL回路1では、第1のチャージポンプ回路12とオフセット補正回路中の第2のチャージポンプ回路24とを異なる電流源に基づき動作させていた。これに対して、実施の形態2にかかるPLL回路2では、第1のチャージポンプ回路12とオフセット補正回路中の第2のチャージポンプ回路24とを共通の電流源に基づき動作させる。実施の形態2にかかるPLL回路2のブロック図を図11に示す。
【0051】
図11に示すように、PLL回路2は、第1のチャージポンプ回路12と第2のチャージポンプ回路24とを共通の電流源で実現したチャージポンプ回路40を有している。このチャージポンプ回路40の回路図を図12に示す。図12に示すように、チャージポンプ回路40は、電流源部41、第1のチャージポンプ回路12、第2のチャージポンプ回路24を有している。第1のチャージポンプ回路12の出力電流Ip及び第2のチャージポンプ回路24の出力電流Ipは、NMOSトランジスタN1、N2で構成されるカレントミラー及びPMOSトランジスタP1、P2、P4で構成されるカレントミラーよって基準電流Irefを折り返した電流として供給される。一方、第1のチャージポンプ回路12の出力電流In及び第2のチャージポンプ回路24の出力電流Inは、NMOSトランジスタN1、N3、N5で構成されるカレントミラーよって基準電流Irefを折り返した電流として供給される。
【0052】
つまり、第1のチャージポンプ回路12及び第2のチャージポンプ回路24の出力電流は、カレントミラーを介して同じ電流源から供給される。これによって、第1のチャージポンプ回路12の出力電流と第2のチャージポンプ回路24の出力電流とは、電流源の電流量がばらついたとしても、そのばらつき量に対して同じ割合で変化する。つまり、電流源にばらつきが生じた場合であっても、第1のチャージポンプ回路12の出力電流と第2のチャージポンプ回路24の出力電流の相対的な関係は変化しない。従って、実施の形態2にかかるPLL回路2によれば、電流源のばらつきによらず、精度の高いパルス幅の補正が可能である。換言すれば、実施の形態2にかかるオフセット補正回路11は、第1のチャージポンプ回路12に対して精度の高い補正量の算出が可能である。
【0053】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、アップ信号及びダウン信号に対する補正は、少なくとも一方の信号に対して行えば良く、必ずしもアップ信号及びダウン信号の両方に対して補正を加える必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】実施の形態1にかかるPLL回路のブロック図である。
【図2】実施の形態1にかかるチャージポンプ回路の回路図である。
【図3】実施の形態1にかかるループフィルタの回路図である。
【図4】実施の形態1にかかるパルス幅制御回路の回路図である。
【図5】実施の形態1にかかるパルス幅制御回路の入出力信号のタイミングチャートである。
【図6】実施の形態1にかかるパルス幅制御回路における出力信号のパルス幅とパルス幅制御信号の電圧値との関係を示すグラフである。
【図7】実施の形態1にかかるパルス幅制御回路における出力信号間のパルス幅の差とパルス幅制御信号の電圧値との関係を示すグラフである。
【図8】実施の形態1にかかるPLL回路の第1の条件にける基準クロック信号、帰還クロック信号、補正アップ信号、補正ダウン信号の波形を示す図である。
【図9】実施の形態1にかかるPLL回路の第2の条件にける基準クロック信号、帰還クロック信号、補正アップ信号、補正ダウン信号の波形を示す図である。
【図10】実施の形態1にかかるPLL回路の第3の条件にける基準クロック信号、帰還クロック信号、補正アップ信号、補正ダウン信号の波形を示す図である。
【図11】実施の形態2にかかるPLL回路のブロック図である。
【図12】実施の形態2にかかるチャージポンプ回路の回路図である。
【図13】従来例1にかかるPLL回路のブロック図である。
【図14】従来例2にかかるPLL回路のブロック図である。
【符号の説明】
【0055】
1、2 PLL回路
10 位相比較回路
11 オフセット補正回路
12、24、40 チャージポンプ回路
13 ループフィルタ
14 電圧制御発振回路
21 AND回路
22、23 パルス幅制御回路
25 疑似フィルタ
26 パルス幅制御信号生成回路
30 電流制御回路
41 電流源部
C1、C2、CDM コンデンサ
R1 抵抗
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準クロック信号と帰還クロック信号との位相差に基づきパルス幅が設定されるアップ信号及びダウン信号を出力する位相比較回路と、
前記アップ信号及び前記ダウン信号のうち少なくとも一方の信号のパルス幅を補正し、補正アップ信号及び補正ダウン信号を出力するオフセット補正回路と、
前記補正アップ信号及び前記補正ダウン信号に基づいて出力するチャージポンプ出力電圧を上昇又は下降させる第1のチャージポンプ回路と、
前記チャージポンプ出力電圧のノイズを除去し、フィルタ電圧を出力するループフィルタと、
前記フィルタ電圧の電圧値に応じて発振周波数が制御され、出力クロック信号を出力する電圧制御発振回路とを有し、
前記オフセット補正回路は、前記基準クロック信号と前記帰還クロック信号との位相が揃っているときに前記チャージポンプ出力電圧が略一定の値となるように前記補正アップ信号及び前記補正ダウン信号のうち少なくとも一方のパルス幅を設定することを特徴とするPLL回路。
【請求項2】
前記オフセット補正回路は、
入力される前記アップ信号及び前記ダウン信号に対する補正量をパルス幅制御信号に基づき設定し、設定された補正量に基づきパルス幅が設定された前記補正アップ信号及びダウン信号を前記第1のチャージポンプに対して出力する第1のパルス幅制御回路と、
同位相の前記基準クロック信号と前記帰還クロック信号とによって生成される前記アップ信号及び前記ダウン信号を疑似的に再現した前記疑似アップ信号及び前記疑似ダウン信号を生成する疑似信号生成回路と、
前記パルス幅制御信号に基づき前記第1のパルス幅制御回路と同じ補正を前記疑似アップ信号及び疑似ダウン信号に加えた補正疑似アップ信号及び補正疑似ダウン信号を出力する第2のパルス幅制御回路と、
前記補正疑似アップ信号及び補正疑似ダウン信号に基づいて出力する疑似チャージポンプ出力電圧を上昇又は下降させる第2のチャージポンプ回路と、
前記疑似チャージポンプ出力電圧のノイズを除去し、疑似フィルタ電圧を生成する疑似フィルタと、
前記フィルタ電圧と前記疑似フィルタ電圧との電圧差に応じて前記パルス幅制御信号を生成するパルス幅制御信号生成回路とを有することを特徴とする請求項1に記載のPLL回路。
【請求項3】
前記疑似信号生成回路は、前記アップ信号と前記ダウン信号との論理積に基づき前記疑似アップ信号及び疑似ダウン信号を生成することを特徴とする請求項2に記載のPLL回路。
【請求項4】
前記第1、第2のパルス幅制御回路は、前記パルス幅制御信号の値に応じて第1、第2の電流の電流量の比を変更する電流制御回路と、前記第1の電流の電流量に基づき出力信号の立ち上がり又は立ち下がりのうちいずれか一方のタイミングを変化させる第1のバッファ回路と、前記第2の電流の電流量に基づき出力信号の立ち上がり又は立ち下がりのうちいずれか一方のタイミングを変化させる第2のバッファ回路とを有することを特徴とする請求項2に記載のPLL回路。
【請求項5】
前記パルス幅制御信号生成回路は、前記チャージポンプ出力電圧と前記疑似チャージポンプ出力電圧との電圧差を増幅する増幅回路であることを特徴とする請求項2に記載のPLL回路。
【請求項6】
前記第1及び第2のチャージポンプ回路は、同一の電流源から供給される電流に基づき出力電流の電流量を設定することを特徴とする請求項1又は2に記載のPLL回路。
【請求項7】
前記ループフィルタは、前記第1のチャージポンプの出力端子に一端が接続される抵抗と、前記抵抗と一端が接続され、他端が接地電位に接続されるコンデンサとを有し、前記抵抗の一端から前記電圧制御発振回路に供給される第1のフィルタ電圧を生成し、前記抵抗と前記コンデンサとの接続点から前記パルス幅制御信号生成回路に供給する第2のフィルタ電圧を生成することを特徴とする請求項2に記載のPLL回路。
【請求項8】
基準クロック信号と帰還クロック信号との位相差に基づきパルス幅が設定されるアップ信号及びダウン信号を出力する位相比較回路と、
前記アップ信号及び前記ダウン信号のうち少なくとも一方の信号のパルス幅を補正し、補正アップ信号及び補正ダウン信号を出力するオフセット補正回路と、
前記補正アップ信号及び前記補正ダウン信号に基づいて出力するチャージポンプ出力電圧を上昇又は下降させる第1のチャージポンプ回路と、
前記チャージポンプ出力電圧のノイズを除去し、フィルタ電圧を出力するループフィルタと、
前記フィルタ電圧の電圧値に応じて発振周波数が制御され、出力クロック信号を出力する電圧制御発振回路とを有し、
前記オフセット補正回路は、疑似的に前記基準クロック信号と前記帰還クロック信号とが同位相となる状態を再現し、再現された同位相状態に基づき前記チャージポンプ出力電圧が略一定の値となるパルス幅の補正量を設定し、前記補正量に基づき前記補正アップ信号及び前記補正ダウン信号のうち少なくとも一方の信号のパルス幅を設定することを特徴とするPLL回路。
【請求項1】
基準クロック信号と帰還クロック信号との位相差に基づきパルス幅が設定されるアップ信号及びダウン信号を出力する位相比較回路と、
前記アップ信号及び前記ダウン信号のうち少なくとも一方の信号のパルス幅を補正し、補正アップ信号及び補正ダウン信号を出力するオフセット補正回路と、
前記補正アップ信号及び前記補正ダウン信号に基づいて出力するチャージポンプ出力電圧を上昇又は下降させる第1のチャージポンプ回路と、
前記チャージポンプ出力電圧のノイズを除去し、フィルタ電圧を出力するループフィルタと、
前記フィルタ電圧の電圧値に応じて発振周波数が制御され、出力クロック信号を出力する電圧制御発振回路とを有し、
前記オフセット補正回路は、前記基準クロック信号と前記帰還クロック信号との位相が揃っているときに前記チャージポンプ出力電圧が略一定の値となるように前記補正アップ信号及び前記補正ダウン信号のうち少なくとも一方のパルス幅を設定することを特徴とするPLL回路。
【請求項2】
前記オフセット補正回路は、
入力される前記アップ信号及び前記ダウン信号に対する補正量をパルス幅制御信号に基づき設定し、設定された補正量に基づきパルス幅が設定された前記補正アップ信号及びダウン信号を前記第1のチャージポンプに対して出力する第1のパルス幅制御回路と、
同位相の前記基準クロック信号と前記帰還クロック信号とによって生成される前記アップ信号及び前記ダウン信号を疑似的に再現した前記疑似アップ信号及び前記疑似ダウン信号を生成する疑似信号生成回路と、
前記パルス幅制御信号に基づき前記第1のパルス幅制御回路と同じ補正を前記疑似アップ信号及び疑似ダウン信号に加えた補正疑似アップ信号及び補正疑似ダウン信号を出力する第2のパルス幅制御回路と、
前記補正疑似アップ信号及び補正疑似ダウン信号に基づいて出力する疑似チャージポンプ出力電圧を上昇又は下降させる第2のチャージポンプ回路と、
前記疑似チャージポンプ出力電圧のノイズを除去し、疑似フィルタ電圧を生成する疑似フィルタと、
前記フィルタ電圧と前記疑似フィルタ電圧との電圧差に応じて前記パルス幅制御信号を生成するパルス幅制御信号生成回路とを有することを特徴とする請求項1に記載のPLL回路。
【請求項3】
前記疑似信号生成回路は、前記アップ信号と前記ダウン信号との論理積に基づき前記疑似アップ信号及び疑似ダウン信号を生成することを特徴とする請求項2に記載のPLL回路。
【請求項4】
前記第1、第2のパルス幅制御回路は、前記パルス幅制御信号の値に応じて第1、第2の電流の電流量の比を変更する電流制御回路と、前記第1の電流の電流量に基づき出力信号の立ち上がり又は立ち下がりのうちいずれか一方のタイミングを変化させる第1のバッファ回路と、前記第2の電流の電流量に基づき出力信号の立ち上がり又は立ち下がりのうちいずれか一方のタイミングを変化させる第2のバッファ回路とを有することを特徴とする請求項2に記載のPLL回路。
【請求項5】
前記パルス幅制御信号生成回路は、前記チャージポンプ出力電圧と前記疑似チャージポンプ出力電圧との電圧差を増幅する増幅回路であることを特徴とする請求項2に記載のPLL回路。
【請求項6】
前記第1及び第2のチャージポンプ回路は、同一の電流源から供給される電流に基づき出力電流の電流量を設定することを特徴とする請求項1又は2に記載のPLL回路。
【請求項7】
前記ループフィルタは、前記第1のチャージポンプの出力端子に一端が接続される抵抗と、前記抵抗と一端が接続され、他端が接地電位に接続されるコンデンサとを有し、前記抵抗の一端から前記電圧制御発振回路に供給される第1のフィルタ電圧を生成し、前記抵抗と前記コンデンサとの接続点から前記パルス幅制御信号生成回路に供給する第2のフィルタ電圧を生成することを特徴とする請求項2に記載のPLL回路。
【請求項8】
基準クロック信号と帰還クロック信号との位相差に基づきパルス幅が設定されるアップ信号及びダウン信号を出力する位相比較回路と、
前記アップ信号及び前記ダウン信号のうち少なくとも一方の信号のパルス幅を補正し、補正アップ信号及び補正ダウン信号を出力するオフセット補正回路と、
前記補正アップ信号及び前記補正ダウン信号に基づいて出力するチャージポンプ出力電圧を上昇又は下降させる第1のチャージポンプ回路と、
前記チャージポンプ出力電圧のノイズを除去し、フィルタ電圧を出力するループフィルタと、
前記フィルタ電圧の電圧値に応じて発振周波数が制御され、出力クロック信号を出力する電圧制御発振回路とを有し、
前記オフセット補正回路は、疑似的に前記基準クロック信号と前記帰還クロック信号とが同位相となる状態を再現し、再現された同位相状態に基づき前記チャージポンプ出力電圧が略一定の値となるパルス幅の補正量を設定し、前記補正量に基づき前記補正アップ信号及び前記補正ダウン信号のうち少なくとも一方の信号のパルス幅を設定することを特徴とするPLL回路。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
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【図11】
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【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−72469(P2008−72469A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−249520(P2006−249520)
【出願日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【出願人】(302062931)NECエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【出願人】(302062931)NECエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】
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