説明

PLL回路

【課題】簡単に暴走状態から正常動作に復帰可能なPLL回路を提供する。
【解決手段】比較部140により制御電圧Vcntlが上限電圧値Vref1を超えたことが検出されると、指示信号切替部150は制御電圧Vcntlを強制的に下降させる他の指示信号(グランド電圧を指示信号Vu2、電源電圧を指示信号Vd2)を制御電圧生成部130に供給し、制御電圧生成部130は制御電圧Vcntlを下降させる。そして、比較部141により制御電圧Vcntlが下限電圧値Vref2を下回ったことが検出されると、指示信号切替部150は制御電圧生成部130への供給を他の指示信号から位相比較器からの指示信号(アップ信号Vu1、ダウン信号Vd1)に切り替え、制御電圧生成部130は指示信号に応じて制御電圧Vcntlを生成する。電圧制御発振回路110は、制御電圧Vcntlに応じて発振周波数を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暴走状態から正常動作に復帰可能なPLL(Phase Locked Loop)回路に関する。
【背景技術】
【0002】
PLL回路は、電圧制御発振回路の発振周波数を変化させることによって位相を調整し、ターゲット周波数でロックするものである。
図4は、従来のPLL回路の構成を示す図である。
【0003】
PLL回路500は、位相比較器501、チャージポンプ502、電圧制御発振回路(VCOと表記している)503、キャパシタ504を有している。
位相比較器501は、RCK端子に入力された基準クロック信号とFB端子に入力されるフィードバック信号の位相を比較して、基準クロック信号よりもフィードバック信号の位相が遅れている場合には、UP端子から出力されるアップ信号を活性化し、基準クロック信号よりもフィードバック信号の位相が進んでいる場合には、DOWN端子から出力されるダウン信号を活性化する。
【0004】
チャージポンプ502は、UP端子から入力されるアップ信号が活性化されている場合には、キャパシタ504に電荷を供給し、DOWN端子から入力されるダウン信号が活性化されている場合には、キャパシタ504の電荷を引き抜く機能を有する。チャージポンプ502は定電流源などによって構成される。
【0005】
電圧制御発振回路503は、キャパシタ504に印加される制御電圧Vcntlを入力し、制御電圧Vcntlに応じて出力信号の発振周波数を変化させる。
しかしながら、何らかの原因で電圧制御発振回路503に入力される制御電圧Vcntlが上昇しすぎて追従限界を超えると、フィードバックパスが、電圧制御発振回路503の発振周波数に追従できなくなる。そして、フィードバック信号が戻ってこなくなると、位相比較器501は、フィードバック信号の位相が遅れていると誤認し、制御電圧Vcntlをさらに上昇させるように、アップ信号を活性化する。これにより、電圧制御発振回路503から出力される出力信号は発振限界に達し、そこで固定されて復帰できなくなってしまう。このときの、制御電圧Vcntlの電圧波形は以下のようになる。
【0006】
図5は、発振限界に達したときの制御電圧Vcntlの電圧波形を示す図である。
横軸は時間t〔μs〕、縦軸は制御電圧Vcnt1〔V〕である。
図のように、制御電圧Vcntlがターゲット電圧から外れ、発振限界に達すると、上限に行き着き固定されてしまう。
【0007】
このような暴走が起こる原因としては、たとえば、PLL動作開始前に、トランジスタのオフリークなどにより制御電圧Vcntlが既に上昇してしまっている場合や、PLL動作中に、逓倍数を切り替えることで一時的にフィードバックが停止し、その間に上昇してしまう場合などがある。このため、通常、リセット端子を設け、動作開始前や逓倍数の切り替え前にリセット信号により制御電圧Vcntlを引き下げる動作が必要であった。
【0008】
このような問題の回避策として、制御電圧Vcntlを監視し、フィードバックパスの追従限界に達する前に上昇を止める技術があった(たとえば、特許文献1参照)。
図6は、従来のPLL回路の他の構成を示す図である。
【0009】
図4と同一の構成要素については同一符号としている。
PLL回路600は、基準電圧Vrefを発生する基準電圧発生回路601と、チャージポンプ502と電圧制御発振回路503との間に設けられた選択回路602を有している。
【0010】
選択回路602は、制御電圧Vcntlと基準電圧Vrefを比較し、制御電圧Vcntlが基準電圧Vrefに達すると、基準電圧Vrefを選択し、電圧制御発振回路503の入力が基準電圧Vrefを超えないようにしている。
【特許文献1】特開2003−318728号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、従来のPLL回路では、基準電圧は追従限界の電圧よりも下の電圧を設定する必要があるため、フィードバックパスの追従限界を把握できていなければならない。もし、追従限界の電圧よりも高い基準電圧が設定された場合には、制御電圧は基準電圧で固定され、通常の制御状態に復帰できなくなってしまうからである。
【0012】
ただし、フィードバックパスには、分周器が設けられることが多く、どのような逓倍数にするかは、その都度変わる可能性があり、追従限界も変わってくる。そのため、追従限界を把握して、基準電圧を設定することは困難であった。
【0013】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、簡単に暴走状態から正常動作に復帰可能なPLL回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、制御電圧に応じて発振周波数を制御する電圧制御発振回路と、前記電圧制御発振回路からのフィードバック信号と基準クロック信号との位相差に応じて、前記制御電圧の上昇または下降を指示する指示信号を生成する位相比較器と、前記指示信号に応じて前記制御電圧を生成する制御電圧生成部と、前記制御電圧と上限電圧値とを比較する第1の比較部と、前記制御電圧と下限電圧値とを比較する第2の比較部と、前記第1の比較部により前記制御電圧が前記上限電圧値を超えたことが検出されると、前記指示信号の代わりに前記制御電圧を強制的に下降させる他の指示信号を前記制御電圧生成部に供給し、前記第2の比較部により前記制御電圧が前記下限電圧値を下回ったことが検出されると、前記制御電圧生成部への供給を前記他の信号から前記指示信号に切り替える指示信号切替部と、を有することを特徴とするPLL回路を提案する。
【0015】
上記の構成によれば、第1の比較部により制御電圧が上限電圧値を超えたことが検出されると、指示信号切替部は制御電圧を強制的に下降させる他の指示信号を制御電圧生成部に供給し、制御電圧生成部は制御電圧を下降させる。そして、第2の比較部により制御電圧が下限電圧値を下回ったことが検出されると、指示信号切替部は制御電圧生成部への供給を他の指示信号から位相比較器からの指示信号に切り替え、制御電圧生成部は指示信号に応じて制御電圧を生成する。電圧制御発振回路は、制御電圧に応じて発振周波数を制御する。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、追従限界がわからなくても、発振周波数を決定する制御電圧が上限電圧値を超えた場合に、強制的に制御電圧を下降させ、下限電圧値を下回ったところで、位相比較器からの指示信号による通常の制御に切り替えて制御電圧を生成させることで、簡単に、確実に暴走状態から正常動作に復帰させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施の形態のPLL回路の構成を示す図である。
PLL回路100は、電圧制御発振回路110、位相比較器120、制御電圧生成部130、比較部140,141、指示信号切替部150を有している。
【0018】
電圧制御発振回路110は、IN端子に印加される制御電圧Vcntlに応じてOUT端子から出力される出力信号の発振周波数を制御する。
位相比較器120は、電圧制御発振回路110からのフィードバック信号をFB端子に入力し、RCK端子に入力される基準クロック信号との位相差に応じて制御電圧Vcntlの上昇または下降を指示する指示信号を生成する。以下では、制御電圧Vcntlを上昇させる指示信号Vu1をアップ信号Vu1、制御電圧Vcntlを下降させる指示信号Vd1をダウン信号Vd1と呼ぶことにする。位相比較器120は、基準クロック信号よりもフィードバック信号の位相が遅れている場合には、UP端子から出力されるアップ信号Vu1を活性化し、基準クロック信号よりもフィードバック信号の位相が進んでいる場合には、DOWN端子から出力されるダウン信号Vd1を活性化する。
【0019】
制御電圧生成部130は、チャージポンプ131とキャパシタ132を有しており、指示信号Vu2,Vd2に応じて、電圧制御発振回路110に入力する制御電圧Vcntlを生成する。チャージポンプ131の出力端子と電圧制御発振回路110のIN端子は、信号線で接続され、キャパシタ132は、その信号線に一端を接続し、他端を接地した構成となっている。
【0020】
比較部140は、制御電圧Vcntlと上限電圧値Vref1とを比較して、制御電圧Vcntlが上限電圧値Vref1を超えた場合には、出力信号Vc1を活性化(H(High)レベル)する。比較部140の正入力端子は、チャージポンプ131と、電圧制御発振回路110との間の信号線に接続され、制御電圧Vcntlが入力される。負入力端子には、上限電圧値Vref1が入力される。
【0021】
比較部141は、制御電圧Vcntlと下限電圧値Vref2とを比較して、制御電圧Vcntlが下限電圧値Vref2を下回った場合には、出力信号Vc2を活性化(Hレベル)する。比較部141の正入力端子には、下限電圧値Vref2が入力され、負入力端子は、チャージポンプ131と、電圧制御発振回路110との間の信号線に接続され、制御電圧Vcntlが入力される。
【0022】
なお、上限電圧値Vref1は、明らかに大きい電圧値であり、追従限界よりも大きい電圧値が設定可能である。ただし、発振限界となる電圧値よりは小さくする必要がある。下限電圧値Vref2は、明らかに小さい電圧値であり、目標電圧値よりも小さい電圧値が設定される。上限電圧値Vref1や、下限電圧値Vref2は、図示しないレジスタなどに予め格納される。また、外部から設定可能なようにしてもよい。
【0023】
指示信号切替部150は、比較部140で、制御電圧Vcntlが上限電圧値Vref1を超えたことが検出されると、位相比較器120からのアップ信号Vu1やダウン信号Vd1の代わりに、制御電圧Vcntlを強制的に下降させる指示信号を指示信号Vu2,Vd2として制御電圧生成部130に供給する。また、比較部141で、制御電圧Vcntlが下限電圧値Vref2を下回ったことが検出されると、制御電圧生成部130への供給を位相比較器120からのアップ信号Vu1やダウン信号Vd1に切り替える。
【0024】
指示信号切替部150は、具体的には、フリップフロップ151、選択回路152,153を有している。
フリップフロップ151は、たとえば、S(set)−R(reset)フリップフロップであり、R端子がHレベル、S端子がL(Low)レベルの場合には、Q端子からの出力信号(以下選択信号という)VsはLレベルになる。R端子がLレベル、S端子がHレベルの場合には、選択信号VsはHレベルになる。R端子、S端子ともLレベルの場合には保持状態であり、直前の選択信号Vsの電位レベルを維持する。
【0025】
選択回路152は、選択信号Vsに応じて、位相比較器120からのアップ信号Vu1か、グランド電圧(Lレベルの信号)の何れかを選択して指示信号Vu2として出力する。以下では、選択信号VsがHレベルの場合には、アップ信号Vu1を選択し、選択信号VsがLレベルの場合には、グランド電圧を選択するとして説明する。
【0026】
選択回路153は、選択信号Vsに応じて、位相比較器120からのダウン信号Vd1か、電源電圧(Hレベルの信号)のいずれかを選択して指示信号Vd2として出力する。以下では、選択信号VsがHレベルの場合には、ダウン信号Vd1を選択し、選択信号VsがLレベルの場合には、電源電圧を選択するとして説明する。
【0027】
以下、本実施の形態のPLL回路100の動作を説明する。
まず、正常動作の場合について説明する。
なお、初期状態ではフリップフロップ151の出力である選択信号VsはHレベルとする。
【0028】
位相比較器120は、基準クロック信号とフィードバック信号との位相差を検出する。そして、基準クロック信号よりもフィードバック信号の位相が遅れている場合には、UP端子から出力されるアップ信号Vu1を活性化し、基準クロック信号よりもフィードバック信号の位相が進んでいる場合には、DOWN端子から出力されるダウン信号Vd1を活性化する。
【0029】
比較部140は、制御電圧Vcntlと上限電圧値Vref1とを比較し、制御電圧Vcntlが上限電圧値Vref1を超えていない場合には出力信号Vc1を非活性化(Lレベル)しておく。また、比較部141は、制御電圧Vcntlと下限電圧値Vref2とを比較し、制御電圧Vcntlが、下限電圧値Vref2を下回っていない場合には、出力信号Vc2を非活性化しておく。
【0030】
R端子及びS端子に入力される比較部140,141からの出力信号Vc1,Vc2がともにLレベルの場合は、保持動作を行うから選択信号VsはHレベルのままである。このとき、選択回路152,153は、ともに位相比較器120からのアップ信号Vu1とダウン信号Vd1とを、指示信号Vu2,Vd2として選択してチャージポンプ131に供給する。
【0031】
制御電圧生成部130のチャージポンプ131は、UP端子やDOWN端子に入力される指示信号Vu2,Vd2に応じて、キャパシタ132へ電荷を供給したり、電荷を引き抜いたりする。この制御によって、制御電圧Vcntlが決定される。制御電圧Vcntlは、電圧制御発振回路110に入力され、制御電圧Vcntlに応じた発振周波数を持つ出力信号がOUT端子から出力される。
【0032】
出力信号は、フィードバック信号として、位相比較器120のFB端子に入力され、以下同様の処理を繰り返し、出力信号の周波数が、目標とする周波数(図1の場合は、基準クロック信号の周波数)となるように制御される。
【0033】
次に、PLL動作開始前に、トランジスタのオフリークなどにより制御電圧Vcntlが既に上昇してしまっている場合や、PLL動作中に、逓倍数を切り替えることで一時的にフィードバックが停止し、その間に上昇している場合の動作を説明する。
【0034】
制御電圧Vcntlが上昇して追従限界を超えると、制御不能状態になり、制御電圧Vcntlは、さらに上昇を続ける。このとき、本実施の形態のPLL回路100において、比較部140は、制御電圧Vcntlが、上限電圧値Vref1を超えると、出力信号Vc1を活性化(Hレベル)する。比較部141の出力信号Vc2は、Lレベルのままである。
【0035】
これにより、指示信号切替部150のフリップフロップ151から出力される選択信号Vsは、Lレベルとなり、選択回路152は、指示信号Vu2としてグランド電圧を選択し、選択回路153は、指示信号Vd2として電源電圧を選択する。このとき制御電圧生成部130のチャージポンプ131は、DOWN端子に入力される指示信号Vd2がHレベルとなっていることから、キャパシタ132から電荷を引き抜く動作を行い、制御電圧Vcntlを下降させる。
【0036】
比較部140では、制御電圧Vcntlが下降して、上限電圧値Vref1を下回ると、出力信号Vc1をLレベルとするが、フリップフロップ151のR端子、S端子がともにLレベルの場合には、保持動作となるので選択信号VsはLレベルのままである。つまり、選択回路152は指示信号Vu2としてグランド電圧を、選択回路153は、指示信号Vd2として電源電圧を選択し続け、チャージポンプ131は、制御電圧Vcntlを下降させ続ける。そして、制御電圧Vcntlが下限電圧値Vref2を下回ると、比較部141は、出力信号Vc2をHレベルにする。フリップフロップ151のR端子はLレベル、S端子はHレベルになり、出力される選択信号Vsは、Hレベルとなる。
【0037】
このとき、選択回路152は、指示信号Vu2として位相比較器120からのアップ信号Vu1を選択し、選択回路153は、指示信号Vd2として位相比較器120からのダウン信号Vd1を選択し、チャージポンプ131に供給する。出力信号の発振周波数は、電圧下降の影響で下がっているため、位相比較器120では、アップ信号Vu1が活性化される。チャージポンプ131は、制御電圧Vcntlを上昇させ、電圧制御発振回路110は、出力信号の発振周波数を上昇する。以降は、位相比較器120からのアップ信号Vu1やダウン信号Vd1に応じて、制御電圧Vcntlが制御され、出力信号の発振周波数が、目標の周波数となるように制御される。
【0038】
図2は、PLL回路の動作シミュレーション結果を示す図である。
縦軸が、制御電圧Vcntl、横軸が時間tである。
このシミュレーションでは、強制的にフィードバックパスを停止して、制御電圧Vcntlが上昇する状態を生成している。
【0039】
この結果のように、制御電圧Vcntlが大幅に上昇しても、発振状態で固定されることなく、正常制御に復帰させることができる。
以下、タイミングチャートを用いて、暴走発生時の本実施の形態のPLL回路100の動作を説明する。
【0040】
図3は、暴走発生時のPLL回路の制御電圧波形と、動作タイミングを示すタイミングチャートの模式図である。
制御電圧波形においては、縦軸が制御電圧Vcntl、横軸が時間tである。タイミングチャートでは、制御電圧Vcntlの状態に応じた、図1のPLL回路100における、比較部140,141の出力信号Vc1,Vc2、フリップフロップ151の出力である選択信号Vs、位相比較器120からのアップ信号Vu1及びダウン信号Vd1、選択回路152,153から出力される指示信号Vu2,Vd2の各時刻での信号レベルを示している。
【0041】
制御電圧Vcntlが上昇して、上限電圧値Vref1を超えると(時刻t1)、比較部140の出力信号Vc1がHレベルに立ち上がる。このとき選択信号VsはLレベルに立ち下がり、アップ信号Vu1及びダウン信号Vd1にかかわらず、チャージポンプ131に入力される指示信号Vu2は強制的にLレベルとなり、指示信号Vd2は強制的にHレベルとなる。これによって、制御電圧Vcntlが下降し始める。
【0042】
制御電圧Vcntlが上限電圧値Vref1を下回ると(時刻t2)、比較部140の出力信号Vc1は、Lレベルになるが、フリップフロップ151の保持動作のため、選択信号Vsは、Lレベルのままである。
【0043】
時刻t3では、位相比較器120のアップ信号Vu1がLレベル、ダウン信号Vd1がHレベルに遷移している。これは、制御電圧Vcntlが追従限界電圧値Vlimまで下降し、電圧制御発振回路110にて追従限界以下の発振周波数の出力信号が生成され、フィードバック信号としてFB端子に入力されてきたからである。この場合、目標電圧値Vtaよりも制御電圧Vcntlが大きいため、ダウン信号Vd1をHレベルにして、制御電圧Vcntlを下げようとしている。ただし、選択信号Vsによって、選択回路152,153からはグランド電圧、電源電圧が選択されているため、このアップ信号Vu1、ダウン信号Vd1の変化は、チャージポンプ131に入力される指示信号Vu2,Vd2には影響を与えない。
【0044】
制御電圧Vcntlがさらに下降し、目標電圧値Vta以下になると(時刻t4)、位相比較器120のアップ信号Vu1がHレベル、ダウン信号Vd1がLレベルに遷移し、制御電圧Vcntlを上げようとする。ただし、選択信号VsはLレベルのままなので、指示信号Vu2,Vd2には影響を与えず、制御電圧Vcntlは下降し続ける。
【0045】
制御電圧Vcntlが下限電圧値Vref2を下回ると(時刻t5)、比較部141の出力信号Vc2がHレベルに立ち上がる。このとき選択信号VsはHレベルに立ち上がり、選択回路152は位相比較器120のHレベルのアップ信号Vu1を指示信号Vu2として出力し、選択回路153は位相比較器120のLレベルのダウン信号Vd1を指示信号Vd2として出力する。これにより、制御電圧Vcntlは上昇したのち、目標電圧値Vtaになるように、位相比較器120からのアップ信号Vu1、ダウン信号Vd1が細かく遷移することによって制御される。
【0046】
以上のように、本実施の形態のPLL回路100によれば、追従限界がわからなくても、上限電圧値Vref1を制御電圧Vcntlが超えた場合に、強制的に制御電圧Vcntlを下降させ、目標電圧値より低い下限電圧値Vref2を下回ったところで、位相比較器120のアップ信号Vu1及びダウン信号Vd1による通常の制御に切り替えることで、確実に簡単に正常制御に復帰させることができる。
【0047】
以上、本発明を実施例に基づいて説明したが、本発明は上記に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の範囲内で様々な変形が可能である。
たとえば、図1のフィードバックパスに分周器などを挿入するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本実施の形態のPLL回路の構成を示す図である。
【図2】PLL回路の動作シミュレーション結果を示す図である。
【図3】暴走発生時のPLL回路の制御電圧波形と、動作タイミングを示すタイミングチャートの模式図である。
【図4】従来のPLL回路の構成を示す図である。
【図5】発振限界に達したときの制御電圧Vcntlの電圧波形を示す図である。
【図6】従来のPLL回路の他の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0049】
100 PLL回路
110 電圧制御発振回路
120 位相比較器
130 制御電圧生成部
131 チャージポンプ
132 キャパシタ
140,141 比較部
150 指示信号切替部
151 フリップフロップ
152,153 選択回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御電圧に応じて発振周波数を制御する電圧制御発振回路と、
前記電圧制御発振回路からのフィードバック信号と基準クロック信号との位相差に応じて、前記制御電圧の上昇または下降を指示する指示信号を生成する位相比較器と、
前記指示信号に応じて前記制御電圧を生成する制御電圧生成部と、
前記制御電圧と上限電圧値とを比較する第1の比較部と、
前記制御電圧と下限電圧値とを比較する第2の比較部と、
前記第1の比較部により前記制御電圧が前記上限電圧値を超えたことが検出されると、前記指示信号の代わりに前記制御電圧を強制的に下降させる他の指示信号を前記制御電圧生成部に供給し、前記第2の比較部により前記制御電圧が前記下限電圧値を下回ったことが検出されると、前記制御電圧生成部への供給を前記他の信号から前記指示信号に切り替える指示信号切替部と、
を有することを特徴とするPLL回路。
【請求項2】
前記指示信号切替部は、前記第1及び前記第2の比較部の出力信号に応じて、前記指示信号を選択するか前記他の指示信号を選択するか指定する選択信号を出力するフリップフロップと、前記選択信号に応じて、前記指示信号か前記他の指示信号のいずれかを出力する選択回路を有していることを特徴とする請求項1記載のPLL回路。
【請求項3】
前記制御電圧生成部は、前記指示信号または前記他の指示信号に応じて、チャージポンプによって、キャパシタに電荷を供給またはキャパシタから電荷を引き抜くことで前記制御電圧を生成することを特徴とする請求項1または2記載のPLL回路。
【請求項4】
前記他の指示信号は、グランド電圧または電源電圧であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載のPLL回路。
【請求項5】
前記上限電圧値は、発振限界となる電圧値よりも小さい値であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載のPLL回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−100258(P2009−100258A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−269835(P2007−269835)
【出願日】平成19年10月17日(2007.10.17)
【出願人】(308014341)富士通マイクロエレクトロニクス株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】