PLL回路
【課題】ループフィルタの回路面積を削減すると共に、電圧制御発振器の動作の安定化やノイズ感度の低減が可能なPLL回路を提供することである。
【解決手段】本発明のPLL回路は、位相比較器3の出力信号に応じて出力電圧を制御する第1及び第2のチャージポンプ回路4、5と、第1のチャージポンプ回路4の出力に基づく信号から所定の周波数成分が除去された第1の電圧信号を出力する第1のフィルタ6と、第2のチャージポンプ回路5からの電流を入力し、所定の一定電圧を第2の電圧信号として出力する第2のフィルタ7と、第1のフィルタ6からの第1の電圧信号と基準電圧との比較結果に基づき第3の電圧信号を出力する電圧制御部30と、第1及び第2の電圧信号を低ゲイン入力、第3の電圧信号を高ゲイン入力とし、当該第1乃至第3の電圧信号に基づき発振周波数を生成する電圧制御発振器10を備える。
【解決手段】本発明のPLL回路は、位相比較器3の出力信号に応じて出力電圧を制御する第1及び第2のチャージポンプ回路4、5と、第1のチャージポンプ回路4の出力に基づく信号から所定の周波数成分が除去された第1の電圧信号を出力する第1のフィルタ6と、第2のチャージポンプ回路5からの電流を入力し、所定の一定電圧を第2の電圧信号として出力する第2のフィルタ7と、第1のフィルタ6からの第1の電圧信号と基準電圧との比較結果に基づき第3の電圧信号を出力する電圧制御部30と、第1及び第2の電圧信号を低ゲイン入力、第3の電圧信号を高ゲイン入力とし、当該第1乃至第3の電圧信号に基づき発振周波数を生成する電圧制御発振器10を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はPLL回路に関し、特に低ゲイン入力及び高ゲイン入力を有する電圧制御発振器(VCO)を備えたPLL回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置に搭載される発振回路としてPLL(Phase Locked Loop)回路が多く用いられている。PLL回路は、基準信号の位相と出力信号の位相とが同期するように出力信号の発振周波数を制御する回路である。
【0003】
図12は、特許文献1に開示されているPLL回路を示すブロック図である。図12において、PLL回路100は、分周器102、112、位相比較器104、チャージポンプ回路106、ローパスフィルタ108、バッファ114とフィルタ116を備える制御回路130、電圧制御発振器(VCO)110、を有する。
【0004】
位相比較器104は、基準信号(REF)を分周器102で分周した信号と、PLL回路100の出力信号(CLK)を分周器112で分周した信号とを比較し、チャージポンプ回路106を制御する信号を出力する。チャージポンプ回路106は、位相比較器104の出力信号に基づいて、流入方向又は流出方向になるように制御された電流を出力する。ローパスフィルタ108は、チャージポンプ回路からの信号を入力し、当該信号に含まれる高周波ノイズを除去する。高周波ノイズが除去された信号は電圧制御発振器110の低ゲイン入力に出力される。また、この高周波ノイズが除去された信号は、バッファ114とフィルタ116とを備える制御回路130を経由して、電圧制御発振器110の高ゲイン入力に出力される。
【0005】
バッファ114はローパスフィルタ108の出力とMID_VCO信号とを比較し、ローパスフィルタ108の出力がMID_VCO信号と等しくなるように制御される。また、PLL回路100の電圧制御発振器110は低ゲインモードと高ゲインモードで同時に動作可能となっている。
【0006】
図14は、特許文献2に開示されているPLL回路を示すブロック図である。図14に示すように、PLL回路は、分周器210、211、221、位相比較器212、第1のチャージポンプ回路213、積分フィルタ214、第1の電圧電流変換回路215、第2のチャージポンプ回路216、リップルフィルタ217、第2の電圧電流変換回路218、基準電圧生成回路219、電流制御発振器220を有する。
【0007】
図14に示すPLL回路は、基準信号Finを分周器210で分周する。また、出力信号Foutを分周器211で分周する。そして、分周器210の出力と分周器211の出力との位相を位相比較器212で比較する。位相比較器212は、その位相差に基づいて、電圧上昇信号UPと電圧下降信号DNとを生成する。電圧上昇信号UPのパルス幅と電圧下降信号DNのパルス幅との差に基づいて、第1のチャージポンプ回路213及び第2のチャージポンプ回路216は、電流を出力する。
【0008】
第1のチャージポンプ回路213から出力される電流は、積分フィルタ214のコンデンサC1で電圧に変換される。このとき、積分フィルタ214は、第1のチャージポンプ回路213が動作することによって発生する高周波ノイズを除去する。
【0009】
一方、第2のチャージポンプ回路216から出力される電流は、リップルフィルタ217を介して電圧に変換される。リップルフィルタ217は、リップルノイズを低減する。そして、リップルノイズのレベルを低減した電圧が第2の電圧電流変換回路218に入力される。第2の電圧電流変換回路218は、基準電圧生成回路219で生成される基準電圧と、リップルフィルタ217を介して入力される電圧とを比較する。そして、その差電圧に応じた電流を出力する。
【0010】
第1の電圧電流変換回路215の出力と第2の電圧電流変換回路218の出力とは、互いに接続された後に電流制御発振器220に入力される。つまり、電流制御発振器220に入力される電流は、第1の電圧電流変換回路215の出力電流と第2の電圧電流変換回路218の出力電流とを足し合わせたものとなる。このような電圧に応じて生成された電流に基づき、電流制御発振器220は出力信号の発振周波数を制御する。そして、電流制御発振器220の出力信号を分周器221で分周することで出力信号Foutは生成される。また、出力信号Foutは、フィードバックされて、基準信号Finと位相比較される。これによって、出力信号Foutの位相は、基準信号Finの位相と同期されたものとなる。
【0011】
よって、図14にかかるPLL回路では、リップルフィルタ217と積分フィルタ214とを異なる電流で動作させることが可能である。これにより、積分フィルタ214に供給される電流をリップルフィルタ217に供給される電流よりも少なくすることが可能となる。また、積分フィルタ214に供給される電流とリップルフィルタ217に供給される電流との比αに基づいて、積分フィルタ214のコンデンサC1の容量値を小さくすることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第6680632号明細書
【特許文献2】特開2008−48320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、図12に示す特許文献1にかかるPLL回路では、ローパスフィルタ108として、一般的に図13に示すような抵抗Rと容量Cを組み合わせたパッシブフィルタが用いられる。そして、特許文献1にかかるPLL回路では、チャージポンプ回路106で発生するノイズの除去と安定性確保のために、このフィルタ108を構成する容量の値を大きくする必要がある。
【0014】
一方、図14に示す特許文献2にかかるPLL回路では、第1のチャージポンプ回路213と第2のチャージポンプ回路216を設け、リップルフィルタ217と積分フィルタ214とを異なる電流で動作させている。これにより、コンデンサC1の容量値を低減し、回路面積を削減している。しかしながら、特許文献2にかかるPLL回路では、第1のチャージポンプ回路213、積分フィルタ214、第1の電圧電流変換回路215を経由するパスと、第2のチャージポンプ回路216、リップルフィルタ217、第2の電圧電流変換回路218を経由するパスとでは、周波数の変化に対する電圧の振る舞いと回路構成が異なるため、電流制御発振器220の二つのパスのゲインを合わせるのが困難となる。つまり、PLL回路として動作させるためには、両方のパスのゲインを制御しやすいように同一回路構成で実現するのが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明にかかるPLL回路は、位相比較器の出力信号に応じて出力電圧を制御する第1及び第2のチャージポンプ回路と、前記第1のチャージポンプ回路が出力する電流に基づき発生する信号から所定の周波数成分が除去された第1の電圧信号を出力する第1のフィルタと、前記第2のチャージポンプ回路が出力する電流を入力し、所定の一定電圧を第2の電圧信号として出力する第2のフィルタと、前記第1のフィルタから出力された前記第1の電圧信号と基準電圧との比較結果に基づき第3の電圧信号を出力する電圧制御部と、前記第1及び第2の電圧信号を低ゲイン入力、前記第3の電圧信号を高ゲイン入力とし、当該第1乃至第3の電圧信号に基づいて発振周波数を生成する電圧制御発振器と、を備え、前記電圧制御発振器の出力信号を前記位相比較器に帰還させるPLL回路である。
【0016】
このような構成を有する本発明にかかるPLL回路では、ロック時における電圧制御発振器のゲインを小さく抑えることができるため、電圧制御発振器のノイズ感度を低減することが可能となる。また、第1のチャージポンプ回路と第2のチャージポンプ回路を設け、第1のフィルタと第2のフィルタを異なる電流で動作させているので、第1のフィルタを構成するコンデンサの容量値を低減することができ、PLL回路の面積を削減することが可能となる。また、第2のフィルタの出力を所定の一定電圧としているので、電圧制御発振器を安定に動作させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、ループフィルタの回路面積を削減すると共に、電圧制御発振器の動作の安定化やノイズ感度の低減が可能なPLL回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施の形態1にかかるPLL回路を示すブロック図である。
【図2】実施の形態1にかかるPLL回路を示すブロック図である。
【図3】実施の形態1にかかるPLL回路のフィルタ1の例を示す図である。
【図4】実施の形態1にかかるPLL回路のフィルタ2の例を示す図である。
【図5】実施の形態1にかかるPLL回路のフィルタ2の例を示す図である。
【図6】実施の形態1にかかるPLL回路のフィルタ3の例を示す図である。
【図7】実施の形態1にかかるPLL回路の動作を説明するための図である。(a)は時間と制御電圧との関係、(b)は時間と周波数との関係、(c)は時間と位相差との関係である。
【図8】実施の形態1にかかるPLL回路の電圧制御発振器(VCO)を説明するための図である。(a)は電圧制御発振器の制御電圧と発振周波数との関係を示す図である。(b)は各フィルタの出力信号の周波数とオープンループゲインの関係を示す図である。
【図9】実施の形態2にかかるPLL回路を示すブロック図である。
【図10】実施の形態2にかかるPLL回路のクロック生成回路の例を示す図である。
【図11】実施の形態3にかかるPLL回路を示すブロック図である。
【図12】背景技術にかかるPLL回路を示すブロック図である。
【図13】背景技術にかかるPLL回路のフィルタを示す図である。
【図14】背景技術にかかるPLL回路を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
実施の形態1
以下、図面を参照して本発明の実施の形態1について説明する。
図1は、本実施の形態にかかるPLL回路を示すブロック図である。図1に示すように、PLL回路は、分周器1、2、位相比較器3、第1のチャージポンプ回路4、第2のチャージポンプ回路5、第1のフィルタ(フィルタ1)6、第2のフィルタ(フィルタ2)7、第3のフィルタ(フィルタ3)8、コンパレータ9、電圧制御発振器(VCO)10、を有する。ここで、コンパレータ9と第3のフィルタ8は電圧制御部30を構成する。
【0020】
分周器1は、基準信号REFを分周した信号を位相比較器3へ出力する。分周器2は電圧制御発振器の出力Foutを分周した信号を位相比較器3へ出力する。位相比較器3は、分周器1の出力信号と分周器2の出力信号との位相差に基づき、電圧上昇信号と電圧下降信号を出力する。電圧上昇信号と電圧下降信号は、例えばパルス信号である。そして、例えば、分周器1の出力信号に対して分周器2の出力信号の位相が遅れている場合は、電圧上昇信号のパルス幅を電圧下降信号のパルス幅よりも長くする。また、例えば、分周器1の出力信号に対して分周器2の出力信号の位相が進んでいる場合は、電圧上昇信号のパルス幅を電圧下降信号のパルス幅よりも短くする。そして、分周器1の出力信号の位相と分周器2の出力信号の位相とが一致している場合は、電圧上昇信号のパルス幅と電圧下降信号のパルス幅を同じ長さにする。
【0021】
第1のチャージポンプ回路4は、電圧上昇信号と電圧下降信号とに基づき出力電流を制御する。例えば、電圧上昇信号のパルス幅が電圧下降信号よりも長い場合、そのパルス幅の差に相当する期間の間、電流を流出させる。また、例えば、電圧上昇信号のパルス幅が電圧下降信号よりも短い場合、そのパルス幅の差に相当する期間の間、電流を流入させる。第1のチャージポンプ回路4の出力は、ノード11を介して第1のフィルタ6へ出力される。
【0022】
第1のフィルタ6は、第1のチャージポンプ回路4が出力する電流に基づき発生する信号から所定の周波数成分(例えば、高周波ノイズ)が除去された第1の電圧信号を出力する。第1のフィルタ6の出力である第1の電圧信号は、ノード15を介してコンパレータ9の一方の入力に出力される。また、第1のフィルタ6の出力である第1の電圧信号は、ノード13を介して電圧制御発振器10の低ゲイン入力に出力される。第1のフィルタ6は、例えば図3に示すように、第1のチャージポンプ回路4の出力(ノード11)と接地電圧(GND)との間にコンデンサを設けることで形成することができる。
【0023】
第2のチャージポンプ回路5は、電圧上昇信号と電圧下降信号とに基づき出力電流を制御する。例えば、電圧上昇信号のパルス幅が電圧下降信号よりも長い場合、そのパルス幅の差に相当する期間の間、電流を流出させる。また、例えば、電圧上昇信号のパルス幅が電圧下降信号よりも短い場合、そのパルス幅の差に相当する期間の間、電流を流入させる。第2のチャージポンプ回路5の出力は、ノード12を介して第2のフィルタ7へ出力される。
【0024】
第2のフィルタ7は、第2のチャージポンプ回路5が出力する電流を入力し、所定の一定電圧を第2の電圧信号として出力する。第2のフィルタ7の出力である第2の電圧信号は、ノード14を介して電圧制御発振器10の低ゲイン入力に出力される。
第2のフィルタ7としては、例えば図4(a)に示すように、ノード12と接地電圧(GND)と接続されたコンデンサ20、ゲートとドレインがノード14と接続され、ソースが接地電圧(GND)と接続されたNチャネルトランジスタ21、ノード14と電源電圧と接続された定電流源22で構成することができる。
【0025】
このとき、Nチャネルトランジスタ21の相互コンダクタンス(gm)を使用することで、ノード14の電圧は所定の一定電圧となる。よって、フィルタ7の出力は、所定の一定電圧となる。第2のフィルタ7を図4(a)に示すように電流源22とダイオード接続されたトランジスタ21を用いて構成することで、差動構成を使用することなく電源電圧変動除去比(PSRR)の劣化の小さいフィルタを構成することができる。
【0026】
また、第2のフィルタ7の他の構成例としては、図4(b)に示すように、ノード12と接地電圧(GND)と接続されたコンデンサ20、ゲートとドレインがノード14と接続され、ソースが電源電圧と接続されたPチャネルトランジスタ24、ノード14と接地電位(GND)と接続された定電流源22で構成することもできる。
【0027】
また、第2のフィルタ7の他の構成例としては、図5(a)に示すように、ノード12と接地電圧(GND)と接続されたコンデンサ20、電源電圧とノード14と接続された抵抗25、ノード14と接地電圧(GND)と接続された抵抗26で構成することもできる。但し、この構成を選択する場合には、電源ノイズ感度が他の構成のフィルタを用いた場合よりも良くないため、当該回路を二つ用意して差動構成にして使用することが望ましい。
【0028】
また、第2のフィルタ7の他の構成例としては、図5(b)に示すように、ノード12と接地電圧(GND)と接続されたコンデンサ20、電源電圧とノード14と接続された定電流源22、ノード14と接地電圧(GND)と接続された抵抗26で構成することもできる。
【0029】
次に、電圧制御部30について説明する。電圧制御部30を構成する第3のフィルタ8は、第1のフィルタ6の第1の電圧信号と基準電圧Vrefとの比較結果に基づき第3の電圧信号を出力する。ここで、第1の電圧信号と基準電圧Vrefは、コンパレータ9を用いて比較され、当該比較結果がノード16を介して第3のフィルタ8に入力される。第3のフィルタの出力は、ノード17を介して電圧制御発振器10の高ゲイン入力に出力される。第3のフィルタ8は、例えば図6に示すように、コンパレータ9の出力(ノード16)と接地電圧(GND)との間にコンデンサを設けることで形成することができる。
【0030】
また、この場合、基準電圧Vrefは第2のフィルタから出力された所定の一定電圧と同一とすることができる。例えば、図2に示すように第2のフィルタ7の出力(一定電圧)を用いてもよい。第2のフィルタ7の出力を基準電圧Vrefとして用いることで、基準電圧Vrefを生成する回路を省略することができ、PLL回路の構成を単純にすることができる。尚、図2に示すPLL回路の符号は図1に示すPLL回路の符号と対応しており、図2に示すPLL回路の構成、動作も図1に示すPLL回路の構成、動作と対応している。
【0031】
また、電圧制御発振器(VCO)10は、第1のフィルタの出力である第1の電圧信号及び第2のフィルタの出力である第2の電圧信号を低ゲイン入力、電圧制御部30の出力である第3の電圧信号を高ゲイン入力とし、当該第1乃至第3の電圧信号に基づいて発振周波数を生成する。そして、本実施の形態にかかるPLL回路では、電圧制御発振器10の出力信号Foutを位相比較器3に帰還させている。
【0032】
次に、本実施の形態にかかるPLL回路の動作について説明する。PLL回路は、基準信号REFを分周器1で分周する。また、出力信号Foutを分周器2で分周する。そして、分周器1の出力と分周器2の出力との位相を位相比較器3で比較する。位相比較器3は、その位相差に基づいて、電圧上昇信号と電圧下降信号とを生成する。電圧上昇信号のパルス幅と電圧下降信号のパルス幅との差に基づいて、第1のチャージポンプ回路4及び第2のチャージポンプ回路5は、電流を出力する。ここで出力される電流は、例えば電圧上昇信号のパルス幅が電圧下降信号のパルス幅よりも長ければ、チャージポンプ回路から流出される方向になる。一方、電圧上昇信号のパルス幅が電圧下降信号のパルス幅よりも短ければ、チャージポンプ回路に流入する方向になる。
【0033】
第1のチャージポンプ回路4から出力される電流は、第1のフィルタ6で電圧に変換される。このとき、第1のフィルタ6は、第1のチャージポンプ回路4が動作することにより発生する高周波ノイズを除去する。また、第1のフィルタ6によって変換された電圧値は、第1のチャージポンプ回路4の出力電流が流出方向である場合に上昇し、流入方向である場合に下降する。そして、第1のフィルタ6によって変換された電圧値は、電圧制御発振器10の低ゲイン入力に出力される。
【0034】
また、第1のフィルタ6によって変換された電圧値は、コンパレータ9において基準電圧Vrefと比較される。そして、第1のフィルタ6からの電圧が、基準電圧Vref以上である場合、コンパレータ9から信号が出力され、当該信号に基づき第3のフィルタ8は電圧制御発振器10の高ゲイン入力に電圧信号(第3の電圧信号)を出力する。
【0035】
一方、第2のチャージポンプ回路5から出力される電流は、第2のフィルタ7を介して電圧に変換される。そして、第2のフィルタ7は所定の一定電圧を電圧制御発振器10の低ゲイン入力へ出力する。
【0036】
図7は、本実施の形態にかかるPLL回路の電圧制御発振器10の、時間と制御電圧との関係、時間と周波数との関係、時間と位相差との関係を示す図である。ここで、第1のフィルタ(フィルタ1)6からは第1の電圧信号が制御電圧として出力され、第2のフィルタ(フィルタ2)7からは第2の電圧信号が制御電圧として出力され、第3のフィルタ(フィルタ3)8(すなわち、電圧制御部30)からは第3の電圧信号が制御電圧として出力されている。
【0037】
本実施の形態にかかるPLL回路では、図7(b)に示すように、PLL回路がロックされた状態における周波数をFpllとする。また、図7(a)に示すように、PLL回路がロックされた状態であるT5のタイミング以降では、フィルタ1からの制御電圧とフィルタ2からの制御電圧は共に基準電圧であるVrefとなる。また、フィルタ3からの制御電圧は、所定の一定電圧となる。
【0038】
図7(a)に示すように、PLL回路の起動時、フィルタ2からの制御電圧が徐々に上昇し、T1のタイミングでフィルタ2の出力電圧として予め設定された電圧Vrefに到達する。このとき、PLL回路の発振周波数は、PLL回路のロック時の周波数Fpllよりも低い周波数で徐々に上昇していく。
【0039】
また、PLL回路の起動時、フィルタ1からの制御電圧が徐々に上昇し、T3のタイミングで電源電圧近くまで到達し、一定となる。このとき、PLL回路の発振周波数は、PLL回路のロック時の周波数Fpllよりも低い周波数領域で徐々に上昇していく。PLL回路の発振周波数は、T3のタイミングにおいてFpllに到達しているが、このタイミングでは、正規のPLLロック状態ではないため、例えば位相差が大きい状態であり、PLL回路が正常にロックされた状態ではない。なお、T3のタイミングでFpllに到達しないように回路を設計しておき、PLL回路を明確なアンロック状態にしておいても良い。
【0040】
フィルタ1からの制御電圧は、図1で示したコンパレータ9を用いて基準電圧Vrefと比較されており、フィルタ1からの制御電圧が基準電圧Vref以上になるT2のタイミングで、フィルタ3からの制御電圧が徐々に上昇し、電圧制御発振器の高ゲインパスが動作しはじめる。つまり、PLL回路の電圧制御発振器は、T2までは低ゲインパスのみで動作していたが、T2以降では低ゲインパスと高ゲインパスの両方で動作している。
【0041】
そして、T2以降、フィルタ3は、フィルタ1からの制御電圧がPLLロック時における制御電圧である基準電圧Vrefと等しくなるように、電圧制御発振器の高ゲイン入力へ制御電圧を出力する。一方、フィルタ1とフィルタ2は、PLL回路の位相差が0になるように電圧制御発振器の低ゲイン入力へ制御電圧を出力する。
【0042】
このときの動作について図8(a)を用いて説明する。図8(a)は、電圧制御発振器の制御電圧と発振周波数との関係を示す図である。図8(a)に示すように、低ゲインパスでは制御電圧の変化に対して電圧制御発振器の発振周波数の変化が小さい(つまり、グラフの傾きが小さい)。一方、高ゲインパスでは制御電圧の変化に対して電圧制御発振器の発振周波数の変化が大きい(つまり、グラフの傾きが大きい)。よって、電圧制御発振器を用いて発振周波数を変化させる場合は、高ゲインパスを用いた方がより迅速に発振周波数を目標の周波数(Fpll)に合わせることができる。
【0043】
本実施の形態にかかるPLL回路では、電圧制御発振器から出力される発振周波数が目標の周波数(Fpll)になるように、フィルタ3から電圧制御発振器の高ゲインパスへ制御電圧を出力している。また、同時に、フィルタ1とフィルタ2は、PLL回路の位相差が0になるように電圧制御発振器の低ゲインパスへ制御電圧を出力している。
【0044】
このとき、電圧制御発振器の高ゲインパスにおける動作と低ゲインパスにおける動作はそれぞれ独立であり、前者は電圧を合わせて、後者はPLLとしての位相を合わせる。しかし、フィルタ1、フィルタ2、フィルタ3のそれぞれの制御電圧に基づき供給される電圧制御発振器内の総電流値は一定であることから、電圧制御発振器内部では低ゲイン動作の電流値と高ゲイン動作の電流値の配分が変更されている。
【0045】
そして、T4のタイミングでフィルタ1からの制御電圧が基準電圧Vrefに近づくように減少しはじめ、T5のタイミングで基準電圧Vrefと等しくなる。このとき、図7(c)に示すように、電圧制御発振器からの出力Foutと分周器1へ入力されるREFの位相差が減少し、T5のタイミングで位相差が0になる。T5のタイミング以降、PLL回路はロックされた状態となり、フィルタ1からの制御電圧とフィルタ2からの制御電圧は共に基準電圧Vrefで一定となる。また、フィルタ3からの制御電圧は所定電圧で一定となる。
【0046】
T5のタイミング以降においても、電圧制御発振器は低ゲインパスと高ゲインパスの両方で動作している。しかし、本実施の形態にかかるPLL回路では、フィルタ1の電圧が基準電圧Vrefに近づくと低ゲインパスが支配的となり、高ゲインパスの影響を受けなくなる。よって、ロック時におけるPLL回路は低ゲインパスで動作する回路となっている。このとき、高ゲインパスは固定のオフセット周波数を生成する役目をしている。
【0047】
図8(b)は、本実施の形態にかかるPLL回路の電圧制御発振器における、各フィルタの出力信号の周波数とオープンループゲインの関係を示す図である。図8(b)に示すように、本実施の形態にかかるPLL回路の電圧制御発振器では、フィルタ3の帯域を、フィルタ1及びフィルタ2の帯域よりも小さく設定している。さらには各々のDCゲインも最適な値に調整することにより、ロックアップ過程における電圧制御発振器の高ゲインパス、低ゲインパスの電流配分を調整する際に発生するサイクルスリップを防止することができる。また、PLL回路がロックされた状態において、高ゲインパス(フィルタ3のパス)を無視することができる。
【0048】
したがって、本実施の形態にかかるPLL回路ではロック時における電圧制御発振器のゲインを小さく抑えることができるため、制御電圧に対する感度を小さくすることができる。これにより、PLL回路のロック時における電圧制御発振器のノイズ感度を低減することが可能となる。更に、本実施の形態にかかるPLL回路では、第1のチャージポンプ回路と第2のチャージポンプ回路を設け、第1のフィルタと第2のフィルタを異なる電流で動作させている。これにより、第1のフィルタを構成するコンデンサの容量値を低減することができるので、PLL回路の面積を削減することができる。なお、本実施の形態にかかるPLL回路では、異なる電流で容量低減を実現するだけでなく、異なるゲインで容量低減を実現しても良いし、電流とゲインを組み合わせても良い。
【0049】
また、図14に示す特許文献2にかかるPLL回路では、第1のチャージポンプ回路213、積分フィルタ214、第1の電圧電流変換回路215を経由するパスと、第2のチャージポンプ回路216、リップルフィルタ217、第2の電圧電流変換回路218を経由するパスを設けており、各々のパスのゲインを合わせこむのは困難であった。しかし、本実施の形態にかかるPLL回路では、ロック時において第1のフィルタと第2のフィルタの出力電圧を同一としている。これにより、制御電圧が固定された電圧制御発振器(VCO)を実現することが可能となり、電圧制御発振器を安定に動作させることができる。
【0050】
実施の形態2
次に、本発明の実施の形態2について説明する。図9は本実施の形態にかかるPLL回路の回路構成を示すブロック図である。図9に示すように、本実施の形態にかかるPLL回路では、電圧制御発振器(VCO)10の高ゲイン入力に供給される第3の電圧信号を生成する電圧制御部30の構成が実施の形態1の場合と異なる。それ以外の部分は、実施の形態1の場合と同様であるので重複した説明は省略する。
【0051】
本実施の形態にかかるPLL回路の電圧制御部30は、コンパレータ9と、カウンタ31と、クロック生成回路32と、演算回路33と、デジタルアナログ変換器(以下、DACという)34とを有する。
【0052】
コンパレータ9は基準電圧Vrefと第1のフィルタ6からノード15を介して供給される第1の電圧信号とを比較し、この比較結果をノード16を介してカウンタ31に出力する。コンパレータ9は、例えば第1の電圧信号が基準電圧Vref以上の場合は「1」を出力し、第1の電圧信号が基準電圧Vrefよりも小さい場合は「0」を出力する。
【0053】
カウンタ31は、クロック生成回路32から供給されるクロックに基づきカウント値を生成する。カウンタ31は、例えば、コンパレータ9の出力が「1」である場合は、クロック生成回路32からのクロックの立ち上がりのタイミングで「1」を出力する。ここで、「1」はカウントアップ(UP)を意味する。一方、カウンタ31は、コンパレータ9の出力が「0」である場合は、クロック生成回路32からのクロックの立ち上がりのタイミングで「0」を出力する。ここで、「0」はカウントダウン(DN)を意味する。カウンタ31からの出力は、演算回路33に供給される。
【0054】
クロック生成回路32は、例えば図10(a)に示すように、インバータ41_1〜41_3を奇数段(図10(a)の場合は3段)接続したリングオシレータで構成することができる。また、クロック生成回路32は、例えば図10(b)に示すように、インバータ41_1〜41_3を奇数段(図10(b)の場合は3段)接続し、その後段に分周回路42を設けた構成としてもよい。
【0055】
演算回路33は、カウンタ31から供給されるカウント値に基づきDAC34へ供給する制御コードを演算する。つまり、演算回路33は、カウンタ31からの出力が「1」である場合は加算し、カウンタ31からの出力が「0」である場合は減算する。
【0056】
DAC34は、演算回路33からの制御コードに基づき第3の電圧信号を生成する。そして、生成された第3の電圧信号は、ノード17を介して電圧制御発振器10の高ゲイン入力に供給される。
【0057】
本発明にかかるPLL回路では、高ゲインパス(電圧制御部)は低ゲインパスよりも低帯域になるように設計する必要があるため、電圧制御部30を非常に低い帯域のローパスフィルタで構成する必要がある。実施の形態1のように、コンパレータ9や第3のフィルタ8でアナログ的に低帯域にすることも可能であるが、アナログ的に回路を構成すると回路面積が増加し、特性をダイナミックに変えることは容易ではない。つまり、実施の形態1にかかるPLL回路の電圧制御部30では、第3のフィルタ8として例えば容量を用いているので、低帯域を実現するためにはコンパレータ9のゲインを下げ(つまり、出力電流を減らし)、第3のフィルタ8に用いられる容量を大きくする必要がある。このため、リーク電流の影響を受けやすく、また回路面積も増加する。
【0058】
本実施の形態にかかるPLL回路では、電圧制御部30を上記構成とすることでこのような問題を解決することができる。つまり、本実施の形態にかかるPLL回路の電圧制御部30ではコンパレータ9の出力電流を大きくすることが可能であり、また、DAC34の出力電流もリーク電流を無視できる程度に設定可能であるため、リーク電流の影響を低減することができる。
【0059】
また、本実施の形態にかかるPLL回路の電圧制御部30では、コンパレータ9の出力結果をモニタするデジタル回路のカウント値等で帯域を制御できるため、コンパレータ9のゲインや第3のフィルタ8の容量を変えることなく帯域を制御することができる。よって、電圧制御部30の回路面積を増加することなく、より低帯域化することが可能である。
【0060】
また、本実施の形態にかかるPLL回路の電圧制御部30では、デジタル回路を用いて帯域を制御しているため、カウント値等を変えることで帯域をダイナミックに変化させることができる。また、本実施の形態にかかるPLL回路の電圧制御部30は、カウンタ31を用いてクロックをカウントしているため時間情報も有している。このため、電圧制御部30は、第3の電圧信号の値を自由に設定することができる。よって、例えばPLL回路の起動時は高速でロックし、PLL回路のロック後は低速で動作させることもできる。
【0061】
実施の形態3
次に、本発明の実施の形態3について説明する。図11は本実施の形態にかかるPLL回路の回路構成を示すブロック図である。図11に示すように、本実施の形態にかかるPLL回路では、電圧制御部30のカウンタ31に入力されるクロックとして、分周器1に入力されるクロックREF(つまり、位相比較器に入力されるクロック)を用いている点が実施の形態2と異なる。また、本実施の形態にかかるPLL回路では、分周器1に入力されるクロックREFを分周制御回路35で制御することで、カウンタ31に入力されるクロックの周波数を調整することができる。それ以外の部分は、実施の形態2の場合と同様であるので重複した説明は省略する。
【0062】
実施の形態2では、図10に示したリングオシレータなどを用いてクロックを生成しているが、この場合、発信周波数がプロセスに依存するため外部からの制御が困難となる場合があった。しかし、本実施の形態にかかるPLL回路の電圧制御部30では、カウンタ31に入力されるクロックとして、分周器1に入力されるクロックREFを用いている。このため、分周器1に入力されるクロックREFの周波数は既知であるため、電圧制御部30において時間間隔の把握が容易になる。よって、クロックREFに連動して、電圧制御部30の周波数特性を容易に自動で制御することができる。
【0063】
また、実施の形態2のように別途クロック生成回路を設ける必要がないので、回路面積を小さくでき消費電力も低減することができる。
【0064】
以上、本発明を上記実施形態に即して説明したが、上記実施形態の構成にのみ限定されるものではなく、本願特許請求の範囲の請求項の発明の範囲内で当業者であればなし得る各種変形、修正、組み合わせを含むことは勿論である。
【符号の説明】
【0065】
1、2 分周器
3 位相比較器
4 第1のチャージポンプ回路
5 第2のチャージポンプ回路
6 第1のフィルタ(フィルタ1)
7 第2のフィルタ(フィルタ2)
8 第3のフィルタ(フィルタ3)
9 コンパレータ
10 電圧制御発振器(VCO)
20 コンデンサ
21 Nチャネルトランジスタ
22 定電流源
24 Pチャネルトランジスタ
25、26 抵抗
30 電圧制御部
31 カウンタ
32 クロック生成回路
33 演算回路
34 DAC
35 分周制御回路
【技術分野】
【0001】
本発明はPLL回路に関し、特に低ゲイン入力及び高ゲイン入力を有する電圧制御発振器(VCO)を備えたPLL回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置に搭載される発振回路としてPLL(Phase Locked Loop)回路が多く用いられている。PLL回路は、基準信号の位相と出力信号の位相とが同期するように出力信号の発振周波数を制御する回路である。
【0003】
図12は、特許文献1に開示されているPLL回路を示すブロック図である。図12において、PLL回路100は、分周器102、112、位相比較器104、チャージポンプ回路106、ローパスフィルタ108、バッファ114とフィルタ116を備える制御回路130、電圧制御発振器(VCO)110、を有する。
【0004】
位相比較器104は、基準信号(REF)を分周器102で分周した信号と、PLL回路100の出力信号(CLK)を分周器112で分周した信号とを比較し、チャージポンプ回路106を制御する信号を出力する。チャージポンプ回路106は、位相比較器104の出力信号に基づいて、流入方向又は流出方向になるように制御された電流を出力する。ローパスフィルタ108は、チャージポンプ回路からの信号を入力し、当該信号に含まれる高周波ノイズを除去する。高周波ノイズが除去された信号は電圧制御発振器110の低ゲイン入力に出力される。また、この高周波ノイズが除去された信号は、バッファ114とフィルタ116とを備える制御回路130を経由して、電圧制御発振器110の高ゲイン入力に出力される。
【0005】
バッファ114はローパスフィルタ108の出力とMID_VCO信号とを比較し、ローパスフィルタ108の出力がMID_VCO信号と等しくなるように制御される。また、PLL回路100の電圧制御発振器110は低ゲインモードと高ゲインモードで同時に動作可能となっている。
【0006】
図14は、特許文献2に開示されているPLL回路を示すブロック図である。図14に示すように、PLL回路は、分周器210、211、221、位相比較器212、第1のチャージポンプ回路213、積分フィルタ214、第1の電圧電流変換回路215、第2のチャージポンプ回路216、リップルフィルタ217、第2の電圧電流変換回路218、基準電圧生成回路219、電流制御発振器220を有する。
【0007】
図14に示すPLL回路は、基準信号Finを分周器210で分周する。また、出力信号Foutを分周器211で分周する。そして、分周器210の出力と分周器211の出力との位相を位相比較器212で比較する。位相比較器212は、その位相差に基づいて、電圧上昇信号UPと電圧下降信号DNとを生成する。電圧上昇信号UPのパルス幅と電圧下降信号DNのパルス幅との差に基づいて、第1のチャージポンプ回路213及び第2のチャージポンプ回路216は、電流を出力する。
【0008】
第1のチャージポンプ回路213から出力される電流は、積分フィルタ214のコンデンサC1で電圧に変換される。このとき、積分フィルタ214は、第1のチャージポンプ回路213が動作することによって発生する高周波ノイズを除去する。
【0009】
一方、第2のチャージポンプ回路216から出力される電流は、リップルフィルタ217を介して電圧に変換される。リップルフィルタ217は、リップルノイズを低減する。そして、リップルノイズのレベルを低減した電圧が第2の電圧電流変換回路218に入力される。第2の電圧電流変換回路218は、基準電圧生成回路219で生成される基準電圧と、リップルフィルタ217を介して入力される電圧とを比較する。そして、その差電圧に応じた電流を出力する。
【0010】
第1の電圧電流変換回路215の出力と第2の電圧電流変換回路218の出力とは、互いに接続された後に電流制御発振器220に入力される。つまり、電流制御発振器220に入力される電流は、第1の電圧電流変換回路215の出力電流と第2の電圧電流変換回路218の出力電流とを足し合わせたものとなる。このような電圧に応じて生成された電流に基づき、電流制御発振器220は出力信号の発振周波数を制御する。そして、電流制御発振器220の出力信号を分周器221で分周することで出力信号Foutは生成される。また、出力信号Foutは、フィードバックされて、基準信号Finと位相比較される。これによって、出力信号Foutの位相は、基準信号Finの位相と同期されたものとなる。
【0011】
よって、図14にかかるPLL回路では、リップルフィルタ217と積分フィルタ214とを異なる電流で動作させることが可能である。これにより、積分フィルタ214に供給される電流をリップルフィルタ217に供給される電流よりも少なくすることが可能となる。また、積分フィルタ214に供給される電流とリップルフィルタ217に供給される電流との比αに基づいて、積分フィルタ214のコンデンサC1の容量値を小さくすることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第6680632号明細書
【特許文献2】特開2008−48320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、図12に示す特許文献1にかかるPLL回路では、ローパスフィルタ108として、一般的に図13に示すような抵抗Rと容量Cを組み合わせたパッシブフィルタが用いられる。そして、特許文献1にかかるPLL回路では、チャージポンプ回路106で発生するノイズの除去と安定性確保のために、このフィルタ108を構成する容量の値を大きくする必要がある。
【0014】
一方、図14に示す特許文献2にかかるPLL回路では、第1のチャージポンプ回路213と第2のチャージポンプ回路216を設け、リップルフィルタ217と積分フィルタ214とを異なる電流で動作させている。これにより、コンデンサC1の容量値を低減し、回路面積を削減している。しかしながら、特許文献2にかかるPLL回路では、第1のチャージポンプ回路213、積分フィルタ214、第1の電圧電流変換回路215を経由するパスと、第2のチャージポンプ回路216、リップルフィルタ217、第2の電圧電流変換回路218を経由するパスとでは、周波数の変化に対する電圧の振る舞いと回路構成が異なるため、電流制御発振器220の二つのパスのゲインを合わせるのが困難となる。つまり、PLL回路として動作させるためには、両方のパスのゲインを制御しやすいように同一回路構成で実現するのが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明にかかるPLL回路は、位相比較器の出力信号に応じて出力電圧を制御する第1及び第2のチャージポンプ回路と、前記第1のチャージポンプ回路が出力する電流に基づき発生する信号から所定の周波数成分が除去された第1の電圧信号を出力する第1のフィルタと、前記第2のチャージポンプ回路が出力する電流を入力し、所定の一定電圧を第2の電圧信号として出力する第2のフィルタと、前記第1のフィルタから出力された前記第1の電圧信号と基準電圧との比較結果に基づき第3の電圧信号を出力する電圧制御部と、前記第1及び第2の電圧信号を低ゲイン入力、前記第3の電圧信号を高ゲイン入力とし、当該第1乃至第3の電圧信号に基づいて発振周波数を生成する電圧制御発振器と、を備え、前記電圧制御発振器の出力信号を前記位相比較器に帰還させるPLL回路である。
【0016】
このような構成を有する本発明にかかるPLL回路では、ロック時における電圧制御発振器のゲインを小さく抑えることができるため、電圧制御発振器のノイズ感度を低減することが可能となる。また、第1のチャージポンプ回路と第2のチャージポンプ回路を設け、第1のフィルタと第2のフィルタを異なる電流で動作させているので、第1のフィルタを構成するコンデンサの容量値を低減することができ、PLL回路の面積を削減することが可能となる。また、第2のフィルタの出力を所定の一定電圧としているので、電圧制御発振器を安定に動作させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、ループフィルタの回路面積を削減すると共に、電圧制御発振器の動作の安定化やノイズ感度の低減が可能なPLL回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施の形態1にかかるPLL回路を示すブロック図である。
【図2】実施の形態1にかかるPLL回路を示すブロック図である。
【図3】実施の形態1にかかるPLL回路のフィルタ1の例を示す図である。
【図4】実施の形態1にかかるPLL回路のフィルタ2の例を示す図である。
【図5】実施の形態1にかかるPLL回路のフィルタ2の例を示す図である。
【図6】実施の形態1にかかるPLL回路のフィルタ3の例を示す図である。
【図7】実施の形態1にかかるPLL回路の動作を説明するための図である。(a)は時間と制御電圧との関係、(b)は時間と周波数との関係、(c)は時間と位相差との関係である。
【図8】実施の形態1にかかるPLL回路の電圧制御発振器(VCO)を説明するための図である。(a)は電圧制御発振器の制御電圧と発振周波数との関係を示す図である。(b)は各フィルタの出力信号の周波数とオープンループゲインの関係を示す図である。
【図9】実施の形態2にかかるPLL回路を示すブロック図である。
【図10】実施の形態2にかかるPLL回路のクロック生成回路の例を示す図である。
【図11】実施の形態3にかかるPLL回路を示すブロック図である。
【図12】背景技術にかかるPLL回路を示すブロック図である。
【図13】背景技術にかかるPLL回路のフィルタを示す図である。
【図14】背景技術にかかるPLL回路を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
実施の形態1
以下、図面を参照して本発明の実施の形態1について説明する。
図1は、本実施の形態にかかるPLL回路を示すブロック図である。図1に示すように、PLL回路は、分周器1、2、位相比較器3、第1のチャージポンプ回路4、第2のチャージポンプ回路5、第1のフィルタ(フィルタ1)6、第2のフィルタ(フィルタ2)7、第3のフィルタ(フィルタ3)8、コンパレータ9、電圧制御発振器(VCO)10、を有する。ここで、コンパレータ9と第3のフィルタ8は電圧制御部30を構成する。
【0020】
分周器1は、基準信号REFを分周した信号を位相比較器3へ出力する。分周器2は電圧制御発振器の出力Foutを分周した信号を位相比較器3へ出力する。位相比較器3は、分周器1の出力信号と分周器2の出力信号との位相差に基づき、電圧上昇信号と電圧下降信号を出力する。電圧上昇信号と電圧下降信号は、例えばパルス信号である。そして、例えば、分周器1の出力信号に対して分周器2の出力信号の位相が遅れている場合は、電圧上昇信号のパルス幅を電圧下降信号のパルス幅よりも長くする。また、例えば、分周器1の出力信号に対して分周器2の出力信号の位相が進んでいる場合は、電圧上昇信号のパルス幅を電圧下降信号のパルス幅よりも短くする。そして、分周器1の出力信号の位相と分周器2の出力信号の位相とが一致している場合は、電圧上昇信号のパルス幅と電圧下降信号のパルス幅を同じ長さにする。
【0021】
第1のチャージポンプ回路4は、電圧上昇信号と電圧下降信号とに基づき出力電流を制御する。例えば、電圧上昇信号のパルス幅が電圧下降信号よりも長い場合、そのパルス幅の差に相当する期間の間、電流を流出させる。また、例えば、電圧上昇信号のパルス幅が電圧下降信号よりも短い場合、そのパルス幅の差に相当する期間の間、電流を流入させる。第1のチャージポンプ回路4の出力は、ノード11を介して第1のフィルタ6へ出力される。
【0022】
第1のフィルタ6は、第1のチャージポンプ回路4が出力する電流に基づき発生する信号から所定の周波数成分(例えば、高周波ノイズ)が除去された第1の電圧信号を出力する。第1のフィルタ6の出力である第1の電圧信号は、ノード15を介してコンパレータ9の一方の入力に出力される。また、第1のフィルタ6の出力である第1の電圧信号は、ノード13を介して電圧制御発振器10の低ゲイン入力に出力される。第1のフィルタ6は、例えば図3に示すように、第1のチャージポンプ回路4の出力(ノード11)と接地電圧(GND)との間にコンデンサを設けることで形成することができる。
【0023】
第2のチャージポンプ回路5は、電圧上昇信号と電圧下降信号とに基づき出力電流を制御する。例えば、電圧上昇信号のパルス幅が電圧下降信号よりも長い場合、そのパルス幅の差に相当する期間の間、電流を流出させる。また、例えば、電圧上昇信号のパルス幅が電圧下降信号よりも短い場合、そのパルス幅の差に相当する期間の間、電流を流入させる。第2のチャージポンプ回路5の出力は、ノード12を介して第2のフィルタ7へ出力される。
【0024】
第2のフィルタ7は、第2のチャージポンプ回路5が出力する電流を入力し、所定の一定電圧を第2の電圧信号として出力する。第2のフィルタ7の出力である第2の電圧信号は、ノード14を介して電圧制御発振器10の低ゲイン入力に出力される。
第2のフィルタ7としては、例えば図4(a)に示すように、ノード12と接地電圧(GND)と接続されたコンデンサ20、ゲートとドレインがノード14と接続され、ソースが接地電圧(GND)と接続されたNチャネルトランジスタ21、ノード14と電源電圧と接続された定電流源22で構成することができる。
【0025】
このとき、Nチャネルトランジスタ21の相互コンダクタンス(gm)を使用することで、ノード14の電圧は所定の一定電圧となる。よって、フィルタ7の出力は、所定の一定電圧となる。第2のフィルタ7を図4(a)に示すように電流源22とダイオード接続されたトランジスタ21を用いて構成することで、差動構成を使用することなく電源電圧変動除去比(PSRR)の劣化の小さいフィルタを構成することができる。
【0026】
また、第2のフィルタ7の他の構成例としては、図4(b)に示すように、ノード12と接地電圧(GND)と接続されたコンデンサ20、ゲートとドレインがノード14と接続され、ソースが電源電圧と接続されたPチャネルトランジスタ24、ノード14と接地電位(GND)と接続された定電流源22で構成することもできる。
【0027】
また、第2のフィルタ7の他の構成例としては、図5(a)に示すように、ノード12と接地電圧(GND)と接続されたコンデンサ20、電源電圧とノード14と接続された抵抗25、ノード14と接地電圧(GND)と接続された抵抗26で構成することもできる。但し、この構成を選択する場合には、電源ノイズ感度が他の構成のフィルタを用いた場合よりも良くないため、当該回路を二つ用意して差動構成にして使用することが望ましい。
【0028】
また、第2のフィルタ7の他の構成例としては、図5(b)に示すように、ノード12と接地電圧(GND)と接続されたコンデンサ20、電源電圧とノード14と接続された定電流源22、ノード14と接地電圧(GND)と接続された抵抗26で構成することもできる。
【0029】
次に、電圧制御部30について説明する。電圧制御部30を構成する第3のフィルタ8は、第1のフィルタ6の第1の電圧信号と基準電圧Vrefとの比較結果に基づき第3の電圧信号を出力する。ここで、第1の電圧信号と基準電圧Vrefは、コンパレータ9を用いて比較され、当該比較結果がノード16を介して第3のフィルタ8に入力される。第3のフィルタの出力は、ノード17を介して電圧制御発振器10の高ゲイン入力に出力される。第3のフィルタ8は、例えば図6に示すように、コンパレータ9の出力(ノード16)と接地電圧(GND)との間にコンデンサを設けることで形成することができる。
【0030】
また、この場合、基準電圧Vrefは第2のフィルタから出力された所定の一定電圧と同一とすることができる。例えば、図2に示すように第2のフィルタ7の出力(一定電圧)を用いてもよい。第2のフィルタ7の出力を基準電圧Vrefとして用いることで、基準電圧Vrefを生成する回路を省略することができ、PLL回路の構成を単純にすることができる。尚、図2に示すPLL回路の符号は図1に示すPLL回路の符号と対応しており、図2に示すPLL回路の構成、動作も図1に示すPLL回路の構成、動作と対応している。
【0031】
また、電圧制御発振器(VCO)10は、第1のフィルタの出力である第1の電圧信号及び第2のフィルタの出力である第2の電圧信号を低ゲイン入力、電圧制御部30の出力である第3の電圧信号を高ゲイン入力とし、当該第1乃至第3の電圧信号に基づいて発振周波数を生成する。そして、本実施の形態にかかるPLL回路では、電圧制御発振器10の出力信号Foutを位相比較器3に帰還させている。
【0032】
次に、本実施の形態にかかるPLL回路の動作について説明する。PLL回路は、基準信号REFを分周器1で分周する。また、出力信号Foutを分周器2で分周する。そして、分周器1の出力と分周器2の出力との位相を位相比較器3で比較する。位相比較器3は、その位相差に基づいて、電圧上昇信号と電圧下降信号とを生成する。電圧上昇信号のパルス幅と電圧下降信号のパルス幅との差に基づいて、第1のチャージポンプ回路4及び第2のチャージポンプ回路5は、電流を出力する。ここで出力される電流は、例えば電圧上昇信号のパルス幅が電圧下降信号のパルス幅よりも長ければ、チャージポンプ回路から流出される方向になる。一方、電圧上昇信号のパルス幅が電圧下降信号のパルス幅よりも短ければ、チャージポンプ回路に流入する方向になる。
【0033】
第1のチャージポンプ回路4から出力される電流は、第1のフィルタ6で電圧に変換される。このとき、第1のフィルタ6は、第1のチャージポンプ回路4が動作することにより発生する高周波ノイズを除去する。また、第1のフィルタ6によって変換された電圧値は、第1のチャージポンプ回路4の出力電流が流出方向である場合に上昇し、流入方向である場合に下降する。そして、第1のフィルタ6によって変換された電圧値は、電圧制御発振器10の低ゲイン入力に出力される。
【0034】
また、第1のフィルタ6によって変換された電圧値は、コンパレータ9において基準電圧Vrefと比較される。そして、第1のフィルタ6からの電圧が、基準電圧Vref以上である場合、コンパレータ9から信号が出力され、当該信号に基づき第3のフィルタ8は電圧制御発振器10の高ゲイン入力に電圧信号(第3の電圧信号)を出力する。
【0035】
一方、第2のチャージポンプ回路5から出力される電流は、第2のフィルタ7を介して電圧に変換される。そして、第2のフィルタ7は所定の一定電圧を電圧制御発振器10の低ゲイン入力へ出力する。
【0036】
図7は、本実施の形態にかかるPLL回路の電圧制御発振器10の、時間と制御電圧との関係、時間と周波数との関係、時間と位相差との関係を示す図である。ここで、第1のフィルタ(フィルタ1)6からは第1の電圧信号が制御電圧として出力され、第2のフィルタ(フィルタ2)7からは第2の電圧信号が制御電圧として出力され、第3のフィルタ(フィルタ3)8(すなわち、電圧制御部30)からは第3の電圧信号が制御電圧として出力されている。
【0037】
本実施の形態にかかるPLL回路では、図7(b)に示すように、PLL回路がロックされた状態における周波数をFpllとする。また、図7(a)に示すように、PLL回路がロックされた状態であるT5のタイミング以降では、フィルタ1からの制御電圧とフィルタ2からの制御電圧は共に基準電圧であるVrefとなる。また、フィルタ3からの制御電圧は、所定の一定電圧となる。
【0038】
図7(a)に示すように、PLL回路の起動時、フィルタ2からの制御電圧が徐々に上昇し、T1のタイミングでフィルタ2の出力電圧として予め設定された電圧Vrefに到達する。このとき、PLL回路の発振周波数は、PLL回路のロック時の周波数Fpllよりも低い周波数で徐々に上昇していく。
【0039】
また、PLL回路の起動時、フィルタ1からの制御電圧が徐々に上昇し、T3のタイミングで電源電圧近くまで到達し、一定となる。このとき、PLL回路の発振周波数は、PLL回路のロック時の周波数Fpllよりも低い周波数領域で徐々に上昇していく。PLL回路の発振周波数は、T3のタイミングにおいてFpllに到達しているが、このタイミングでは、正規のPLLロック状態ではないため、例えば位相差が大きい状態であり、PLL回路が正常にロックされた状態ではない。なお、T3のタイミングでFpllに到達しないように回路を設計しておき、PLL回路を明確なアンロック状態にしておいても良い。
【0040】
フィルタ1からの制御電圧は、図1で示したコンパレータ9を用いて基準電圧Vrefと比較されており、フィルタ1からの制御電圧が基準電圧Vref以上になるT2のタイミングで、フィルタ3からの制御電圧が徐々に上昇し、電圧制御発振器の高ゲインパスが動作しはじめる。つまり、PLL回路の電圧制御発振器は、T2までは低ゲインパスのみで動作していたが、T2以降では低ゲインパスと高ゲインパスの両方で動作している。
【0041】
そして、T2以降、フィルタ3は、フィルタ1からの制御電圧がPLLロック時における制御電圧である基準電圧Vrefと等しくなるように、電圧制御発振器の高ゲイン入力へ制御電圧を出力する。一方、フィルタ1とフィルタ2は、PLL回路の位相差が0になるように電圧制御発振器の低ゲイン入力へ制御電圧を出力する。
【0042】
このときの動作について図8(a)を用いて説明する。図8(a)は、電圧制御発振器の制御電圧と発振周波数との関係を示す図である。図8(a)に示すように、低ゲインパスでは制御電圧の変化に対して電圧制御発振器の発振周波数の変化が小さい(つまり、グラフの傾きが小さい)。一方、高ゲインパスでは制御電圧の変化に対して電圧制御発振器の発振周波数の変化が大きい(つまり、グラフの傾きが大きい)。よって、電圧制御発振器を用いて発振周波数を変化させる場合は、高ゲインパスを用いた方がより迅速に発振周波数を目標の周波数(Fpll)に合わせることができる。
【0043】
本実施の形態にかかるPLL回路では、電圧制御発振器から出力される発振周波数が目標の周波数(Fpll)になるように、フィルタ3から電圧制御発振器の高ゲインパスへ制御電圧を出力している。また、同時に、フィルタ1とフィルタ2は、PLL回路の位相差が0になるように電圧制御発振器の低ゲインパスへ制御電圧を出力している。
【0044】
このとき、電圧制御発振器の高ゲインパスにおける動作と低ゲインパスにおける動作はそれぞれ独立であり、前者は電圧を合わせて、後者はPLLとしての位相を合わせる。しかし、フィルタ1、フィルタ2、フィルタ3のそれぞれの制御電圧に基づき供給される電圧制御発振器内の総電流値は一定であることから、電圧制御発振器内部では低ゲイン動作の電流値と高ゲイン動作の電流値の配分が変更されている。
【0045】
そして、T4のタイミングでフィルタ1からの制御電圧が基準電圧Vrefに近づくように減少しはじめ、T5のタイミングで基準電圧Vrefと等しくなる。このとき、図7(c)に示すように、電圧制御発振器からの出力Foutと分周器1へ入力されるREFの位相差が減少し、T5のタイミングで位相差が0になる。T5のタイミング以降、PLL回路はロックされた状態となり、フィルタ1からの制御電圧とフィルタ2からの制御電圧は共に基準電圧Vrefで一定となる。また、フィルタ3からの制御電圧は所定電圧で一定となる。
【0046】
T5のタイミング以降においても、電圧制御発振器は低ゲインパスと高ゲインパスの両方で動作している。しかし、本実施の形態にかかるPLL回路では、フィルタ1の電圧が基準電圧Vrefに近づくと低ゲインパスが支配的となり、高ゲインパスの影響を受けなくなる。よって、ロック時におけるPLL回路は低ゲインパスで動作する回路となっている。このとき、高ゲインパスは固定のオフセット周波数を生成する役目をしている。
【0047】
図8(b)は、本実施の形態にかかるPLL回路の電圧制御発振器における、各フィルタの出力信号の周波数とオープンループゲインの関係を示す図である。図8(b)に示すように、本実施の形態にかかるPLL回路の電圧制御発振器では、フィルタ3の帯域を、フィルタ1及びフィルタ2の帯域よりも小さく設定している。さらには各々のDCゲインも最適な値に調整することにより、ロックアップ過程における電圧制御発振器の高ゲインパス、低ゲインパスの電流配分を調整する際に発生するサイクルスリップを防止することができる。また、PLL回路がロックされた状態において、高ゲインパス(フィルタ3のパス)を無視することができる。
【0048】
したがって、本実施の形態にかかるPLL回路ではロック時における電圧制御発振器のゲインを小さく抑えることができるため、制御電圧に対する感度を小さくすることができる。これにより、PLL回路のロック時における電圧制御発振器のノイズ感度を低減することが可能となる。更に、本実施の形態にかかるPLL回路では、第1のチャージポンプ回路と第2のチャージポンプ回路を設け、第1のフィルタと第2のフィルタを異なる電流で動作させている。これにより、第1のフィルタを構成するコンデンサの容量値を低減することができるので、PLL回路の面積を削減することができる。なお、本実施の形態にかかるPLL回路では、異なる電流で容量低減を実現するだけでなく、異なるゲインで容量低減を実現しても良いし、電流とゲインを組み合わせても良い。
【0049】
また、図14に示す特許文献2にかかるPLL回路では、第1のチャージポンプ回路213、積分フィルタ214、第1の電圧電流変換回路215を経由するパスと、第2のチャージポンプ回路216、リップルフィルタ217、第2の電圧電流変換回路218を経由するパスを設けており、各々のパスのゲインを合わせこむのは困難であった。しかし、本実施の形態にかかるPLL回路では、ロック時において第1のフィルタと第2のフィルタの出力電圧を同一としている。これにより、制御電圧が固定された電圧制御発振器(VCO)を実現することが可能となり、電圧制御発振器を安定に動作させることができる。
【0050】
実施の形態2
次に、本発明の実施の形態2について説明する。図9は本実施の形態にかかるPLL回路の回路構成を示すブロック図である。図9に示すように、本実施の形態にかかるPLL回路では、電圧制御発振器(VCO)10の高ゲイン入力に供給される第3の電圧信号を生成する電圧制御部30の構成が実施の形態1の場合と異なる。それ以外の部分は、実施の形態1の場合と同様であるので重複した説明は省略する。
【0051】
本実施の形態にかかるPLL回路の電圧制御部30は、コンパレータ9と、カウンタ31と、クロック生成回路32と、演算回路33と、デジタルアナログ変換器(以下、DACという)34とを有する。
【0052】
コンパレータ9は基準電圧Vrefと第1のフィルタ6からノード15を介して供給される第1の電圧信号とを比較し、この比較結果をノード16を介してカウンタ31に出力する。コンパレータ9は、例えば第1の電圧信号が基準電圧Vref以上の場合は「1」を出力し、第1の電圧信号が基準電圧Vrefよりも小さい場合は「0」を出力する。
【0053】
カウンタ31は、クロック生成回路32から供給されるクロックに基づきカウント値を生成する。カウンタ31は、例えば、コンパレータ9の出力が「1」である場合は、クロック生成回路32からのクロックの立ち上がりのタイミングで「1」を出力する。ここで、「1」はカウントアップ(UP)を意味する。一方、カウンタ31は、コンパレータ9の出力が「0」である場合は、クロック生成回路32からのクロックの立ち上がりのタイミングで「0」を出力する。ここで、「0」はカウントダウン(DN)を意味する。カウンタ31からの出力は、演算回路33に供給される。
【0054】
クロック生成回路32は、例えば図10(a)に示すように、インバータ41_1〜41_3を奇数段(図10(a)の場合は3段)接続したリングオシレータで構成することができる。また、クロック生成回路32は、例えば図10(b)に示すように、インバータ41_1〜41_3を奇数段(図10(b)の場合は3段)接続し、その後段に分周回路42を設けた構成としてもよい。
【0055】
演算回路33は、カウンタ31から供給されるカウント値に基づきDAC34へ供給する制御コードを演算する。つまり、演算回路33は、カウンタ31からの出力が「1」である場合は加算し、カウンタ31からの出力が「0」である場合は減算する。
【0056】
DAC34は、演算回路33からの制御コードに基づき第3の電圧信号を生成する。そして、生成された第3の電圧信号は、ノード17を介して電圧制御発振器10の高ゲイン入力に供給される。
【0057】
本発明にかかるPLL回路では、高ゲインパス(電圧制御部)は低ゲインパスよりも低帯域になるように設計する必要があるため、電圧制御部30を非常に低い帯域のローパスフィルタで構成する必要がある。実施の形態1のように、コンパレータ9や第3のフィルタ8でアナログ的に低帯域にすることも可能であるが、アナログ的に回路を構成すると回路面積が増加し、特性をダイナミックに変えることは容易ではない。つまり、実施の形態1にかかるPLL回路の電圧制御部30では、第3のフィルタ8として例えば容量を用いているので、低帯域を実現するためにはコンパレータ9のゲインを下げ(つまり、出力電流を減らし)、第3のフィルタ8に用いられる容量を大きくする必要がある。このため、リーク電流の影響を受けやすく、また回路面積も増加する。
【0058】
本実施の形態にかかるPLL回路では、電圧制御部30を上記構成とすることでこのような問題を解決することができる。つまり、本実施の形態にかかるPLL回路の電圧制御部30ではコンパレータ9の出力電流を大きくすることが可能であり、また、DAC34の出力電流もリーク電流を無視できる程度に設定可能であるため、リーク電流の影響を低減することができる。
【0059】
また、本実施の形態にかかるPLL回路の電圧制御部30では、コンパレータ9の出力結果をモニタするデジタル回路のカウント値等で帯域を制御できるため、コンパレータ9のゲインや第3のフィルタ8の容量を変えることなく帯域を制御することができる。よって、電圧制御部30の回路面積を増加することなく、より低帯域化することが可能である。
【0060】
また、本実施の形態にかかるPLL回路の電圧制御部30では、デジタル回路を用いて帯域を制御しているため、カウント値等を変えることで帯域をダイナミックに変化させることができる。また、本実施の形態にかかるPLL回路の電圧制御部30は、カウンタ31を用いてクロックをカウントしているため時間情報も有している。このため、電圧制御部30は、第3の電圧信号の値を自由に設定することができる。よって、例えばPLL回路の起動時は高速でロックし、PLL回路のロック後は低速で動作させることもできる。
【0061】
実施の形態3
次に、本発明の実施の形態3について説明する。図11は本実施の形態にかかるPLL回路の回路構成を示すブロック図である。図11に示すように、本実施の形態にかかるPLL回路では、電圧制御部30のカウンタ31に入力されるクロックとして、分周器1に入力されるクロックREF(つまり、位相比較器に入力されるクロック)を用いている点が実施の形態2と異なる。また、本実施の形態にかかるPLL回路では、分周器1に入力されるクロックREFを分周制御回路35で制御することで、カウンタ31に入力されるクロックの周波数を調整することができる。それ以外の部分は、実施の形態2の場合と同様であるので重複した説明は省略する。
【0062】
実施の形態2では、図10に示したリングオシレータなどを用いてクロックを生成しているが、この場合、発信周波数がプロセスに依存するため外部からの制御が困難となる場合があった。しかし、本実施の形態にかかるPLL回路の電圧制御部30では、カウンタ31に入力されるクロックとして、分周器1に入力されるクロックREFを用いている。このため、分周器1に入力されるクロックREFの周波数は既知であるため、電圧制御部30において時間間隔の把握が容易になる。よって、クロックREFに連動して、電圧制御部30の周波数特性を容易に自動で制御することができる。
【0063】
また、実施の形態2のように別途クロック生成回路を設ける必要がないので、回路面積を小さくでき消費電力も低減することができる。
【0064】
以上、本発明を上記実施形態に即して説明したが、上記実施形態の構成にのみ限定されるものではなく、本願特許請求の範囲の請求項の発明の範囲内で当業者であればなし得る各種変形、修正、組み合わせを含むことは勿論である。
【符号の説明】
【0065】
1、2 分周器
3 位相比較器
4 第1のチャージポンプ回路
5 第2のチャージポンプ回路
6 第1のフィルタ(フィルタ1)
7 第2のフィルタ(フィルタ2)
8 第3のフィルタ(フィルタ3)
9 コンパレータ
10 電圧制御発振器(VCO)
20 コンデンサ
21 Nチャネルトランジスタ
22 定電流源
24 Pチャネルトランジスタ
25、26 抵抗
30 電圧制御部
31 カウンタ
32 クロック生成回路
33 演算回路
34 DAC
35 分周制御回路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
位相比較器の出力信号に応じて出力電圧を制御する第1及び第2のチャージポンプ回路と、
前記第1のチャージポンプ回路が出力する電流に基づき発生する信号から所定の周波数成分が除去された第1の電圧信号を出力する第1のフィルタと、
前記第2のチャージポンプ回路が出力する電流を入力し、所定の一定電圧を第2の電圧信号として出力する第2のフィルタと、
前記第1のフィルタから出力された前記第1の電圧信号と基準電圧との比較結果に基づき第3の電圧信号を出力する電圧制御部と、
前記第1及び第2の電圧信号を低ゲイン入力、前記第3の電圧信号を高ゲイン入力とし、当該第1乃至第3の電圧信号に基づいて発振周波数を生成する電圧制御発振器と、を備え、
前記電圧制御発振器の出力信号を前記位相比較器に帰還させるPLL回路。
【請求項2】
前記第1の電圧信号と比較される前記基準電圧は、前記第2のフィルタから出力された前記所定の一定電圧と同一である、請求項1に記載のPLL回路。
【請求項3】
前記第2のフィルタは、前記第2のチャージポンプ回路と接続される入力端子と接地電圧との間に設けられたコンデンサと、前記電圧制御発振器への出力端子とゲートとドレインが接続され、ソースが接地電圧と接続されたNチャネルトランジスタと、を有する請求項1または2に記載のPLL回路。
【請求項4】
前記PLL回路の発振周波数は、前記第2の電圧信号により決定される、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のPLL回路。
【請求項5】
前記第1の電圧信号の電圧と前記第2の電圧信号の電圧との比較結果に基づき、前記電圧制御発振器の高ゲインパスが動作する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のPLL回路。
【請求項6】
前記第1の電圧信号の電圧が前記第2の電圧信号の電圧以上である場合、前記電圧制御発振器の高ゲインパスが動作する、請求項5に記載のPLL回路。
【請求項7】
前記第3の電圧信号は、前記電圧制御発振器から出力される発振周波数が目標の周波数となるような電圧信号である、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のPLL回路。
【請求項8】
前記第1及び第2の電圧信号は、前記位相比較器で比較される基準信号の位相と前記電圧制御発振器の出力信号の位相との差がゼロとなるような電圧信号である、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のPLL回路。
【請求項9】
前記PLL回路がロック状態の時、前記第1の電圧信号の電圧と前記第2の電圧信号の電圧が前記基準電圧となる、請求項1乃至8のいずれか一項に記載のPLL回路。
【請求項10】
前記PLL回路がロック状態の時、前記電圧制御発振器の低ゲインパスが支配的となる、請求項1乃至9のいずれか一項に記載のPLL回路。
【請求項11】
前記電圧制御部は、前記第1のフィルタから出力された前記第1の電圧信号と基準電圧とを比較するコンパレータと、当該コンパレータの出力に基づき前記第3の電圧信号を生成する第3のフィルタとを備える、請求項1乃至10のいずれか一項に記載のPLL回路。
【請求項12】
前記電圧制御部は、前記第1のフィルタから出力された前記第1の電圧信号と基準電圧とを比較するコンパレータと、当該コンパレータの比較結果をクロックに基づき出力するカウンタと、当該カウンタの出力を演算する演算回路と、当該演算回路の演算結果に基づき前記第3の電圧信号を生成するデジタルアナログ変換器と、を備える、請求項1乃至10のいずれか一項に記載のPLL回路。
【請求項13】
前記カウンタに入力されるクロックを生成するクロック生成回路を備える、請求項12に記載のPLL回路。
【請求項14】
前記カウンタに入力されるクロックは、前記位相比較器に入力されるクロックを用いて生成される、請求項12に記載のPLL回路。
【請求項15】
前記位相比較器に入力されるクロックを入力し、当該クロックの周波数を調整する分周制御回路を更に有し、前記カウンタは当該分周制御回路で調整されたクロックを入力する、請求項14に記載のPLL回路。
【請求項1】
位相比較器の出力信号に応じて出力電圧を制御する第1及び第2のチャージポンプ回路と、
前記第1のチャージポンプ回路が出力する電流に基づき発生する信号から所定の周波数成分が除去された第1の電圧信号を出力する第1のフィルタと、
前記第2のチャージポンプ回路が出力する電流を入力し、所定の一定電圧を第2の電圧信号として出力する第2のフィルタと、
前記第1のフィルタから出力された前記第1の電圧信号と基準電圧との比較結果に基づき第3の電圧信号を出力する電圧制御部と、
前記第1及び第2の電圧信号を低ゲイン入力、前記第3の電圧信号を高ゲイン入力とし、当該第1乃至第3の電圧信号に基づいて発振周波数を生成する電圧制御発振器と、を備え、
前記電圧制御発振器の出力信号を前記位相比較器に帰還させるPLL回路。
【請求項2】
前記第1の電圧信号と比較される前記基準電圧は、前記第2のフィルタから出力された前記所定の一定電圧と同一である、請求項1に記載のPLL回路。
【請求項3】
前記第2のフィルタは、前記第2のチャージポンプ回路と接続される入力端子と接地電圧との間に設けられたコンデンサと、前記電圧制御発振器への出力端子とゲートとドレインが接続され、ソースが接地電圧と接続されたNチャネルトランジスタと、を有する請求項1または2に記載のPLL回路。
【請求項4】
前記PLL回路の発振周波数は、前記第2の電圧信号により決定される、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のPLL回路。
【請求項5】
前記第1の電圧信号の電圧と前記第2の電圧信号の電圧との比較結果に基づき、前記電圧制御発振器の高ゲインパスが動作する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のPLL回路。
【請求項6】
前記第1の電圧信号の電圧が前記第2の電圧信号の電圧以上である場合、前記電圧制御発振器の高ゲインパスが動作する、請求項5に記載のPLL回路。
【請求項7】
前記第3の電圧信号は、前記電圧制御発振器から出力される発振周波数が目標の周波数となるような電圧信号である、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のPLL回路。
【請求項8】
前記第1及び第2の電圧信号は、前記位相比較器で比較される基準信号の位相と前記電圧制御発振器の出力信号の位相との差がゼロとなるような電圧信号である、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のPLL回路。
【請求項9】
前記PLL回路がロック状態の時、前記第1の電圧信号の電圧と前記第2の電圧信号の電圧が前記基準電圧となる、請求項1乃至8のいずれか一項に記載のPLL回路。
【請求項10】
前記PLL回路がロック状態の時、前記電圧制御発振器の低ゲインパスが支配的となる、請求項1乃至9のいずれか一項に記載のPLL回路。
【請求項11】
前記電圧制御部は、前記第1のフィルタから出力された前記第1の電圧信号と基準電圧とを比較するコンパレータと、当該コンパレータの出力に基づき前記第3の電圧信号を生成する第3のフィルタとを備える、請求項1乃至10のいずれか一項に記載のPLL回路。
【請求項12】
前記電圧制御部は、前記第1のフィルタから出力された前記第1の電圧信号と基準電圧とを比較するコンパレータと、当該コンパレータの比較結果をクロックに基づき出力するカウンタと、当該カウンタの出力を演算する演算回路と、当該演算回路の演算結果に基づき前記第3の電圧信号を生成するデジタルアナログ変換器と、を備える、請求項1乃至10のいずれか一項に記載のPLL回路。
【請求項13】
前記カウンタに入力されるクロックを生成するクロック生成回路を備える、請求項12に記載のPLL回路。
【請求項14】
前記カウンタに入力されるクロックは、前記位相比較器に入力されるクロックを用いて生成される、請求項12に記載のPLL回路。
【請求項15】
前記位相比較器に入力されるクロックを入力し、当該クロックの周波数を調整する分周制御回路を更に有し、前記カウンタは当該分周制御回路で調整されたクロックを入力する、請求項14に記載のPLL回路。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−273320(P2010−273320A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−10054(P2010−10054)
【出願日】平成22年1月20日(2010.1.20)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月20日(2010.1.20)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】
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