説明

PPAR受容体及びEGF受容体に特異的な化合物及びそれらの塩並びに医療分野におけるそれらの使用

従って、本発明は、特に、一般式(I)の化合物であって、式中、R及びRは、同一でも異なってもよく、−H、−C2n−1、1個から6個の炭素原子を有する直鎖又は分枝アルキル基を含む群から選択されるか、一緒になって5個又は6個の原子の芳香族又は脂肪族環を形成しており;Rは、−CO−CH、−NHOH、−OH、−ORから選択され、ここでRは、1個から6個の炭素原子を有する直鎖又は分枝アルキル基であり;Rは、H、1個から6個の炭素原子を有する直鎖又は分枝アルキル基、フェニル、ベンジル、−CF又は−CFCF、ビニル又はアリルから選択され;R、R、Rは、水素原子であり;或いはRとR、RとR、又はRとRは、N、Oを含む群から独立に選択される1個から2個のヘテロ原子を含む5個又は6個の原子のベンゼン、芳香族又は脂肪族環に縮合した環を一緒に形成している化合物、並びに医療分野におけるそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PPAR受容体及びEGF受容体に特異的な化合物及びそれらの塩並びに医療分野におけるそれらの使用に関する。
【0002】
発明の対象
本発明による化合物及びそれらの塩は、PPARγ受容体(ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体)及びEGF受容体(上皮成長因子受容体)を発現する腫瘍、例えば、食道、胃、膵臓、結腸、前立腺、乳房、子宮及び付属器、腎臓並びに肺の腫瘍などの予防及び治療に対して有利に使用することができる。更に、本発明による化合物及びそれらの塩は、慢性の炎症性疾患、とりわけ、クローン病及び潰瘍性結腸大腸炎などの慢性の腸疾患の治療のために使用することができる。
【背景技術】
【0003】
PPARγ受容体は、脂質代謝の制御、インスリンの合成並びに発癌及び炎症の過程に対して重要な多くの遺伝子の発現を調節する核内受容体(約50個の転写因子の群)である(Bull AW、Arch Pathol Lab Med 2003年;127:1121〜1123頁)(Koeffler HP、Clin Cancer Res 2003年;9:1〜9頁)(Youssef Jら、J Biomed Biotec 2004年;3:156〜166頁)。
【0004】
PPARγ受容体に結合してそれらの立体構造を変化させ、活性化を引き起こす様々な天然及び合成アゴニストが存在する。天然及び合成リガンドは、The Lancet 2002年;360:1410〜1418頁に記載されている。
【0005】
最近の研究によれば、PPARγ受容体のリガンドによる腫瘍細胞の処理は、かかる化合物の発癌現象を阻止するための薬剤としての応用の可能性を示唆する細胞増殖、細胞分化及びアポトーシスの減少を引き起こすことを示している(Osawa Eら、Gastroenterology 2003年;124:361〜367頁)。
【0006】
他の研究によれば、PPARγ受容体のリガンド(例えばトログリタゾン)は、抗炎症作用を有しており、IBDの動物モデルにおける粘膜炎症反応を阻止することが示されている(Tanaka Tら、Cancer Res 2001年;61:2424〜2428頁)。
【0007】
更に、IBD治療の標準である5−ASA(5−アミノサリチル酸、メサラジン)の腸抗炎症活性は、PPARγ受容体の結合、及びその結果として生じる活性化に依存するという証拠がごく最近公開された(Rousseaux Cら、J Exp Med 2005年;201:1205〜1215頁)。
【0008】
チロシンキナーゼEGF活性を有する膜貫通受容体は、様々なタイプの新生物において活性な形で非常に高度に発現する(Mendelsohn J、Endocr Relat Cancer 2001年;8:3〜9頁)(Harari PM、Endocr Relat Cancer 2004年;11:689〜708頁)。
【0009】
受容体の過剰発現は、また、癌性細胞が転移する潜在能力とも関係する。これに関連してEGFは、細胞外基質との相互作用のレベルの病変と関係する様々な種類の細胞の遊走及び侵襲性を促進することが実証されている(Bruntonら、Oncogene 1997年;14:283〜293頁)。
【0010】
実験動物について及びヒトにおいての両方で実施された多数の研究により、EGF受容体阻害薬の腫瘍の増殖及び伝播を制御する有効性が確立された(Mendelsohn J、Endocr Relat Cancer 2001年;8:3〜9)(Harari PM、Endocr Relat Cancer 2004年;11:689〜708頁)。
【0011】
EGF受容体の活性化が引き金となる細胞内シグナルが新生細胞の成長と生存を促進して病態の発達に寄与すること、及びかかるシグナルが腫瘍細胞の、離れた臓器に伝播し、定着する能力を決定する本質的要素であることは疑いの余地がない(Mendelsohn J、Endocr Relat Cancer 2001年;8:3〜9)(Kari Cら、Cancer Res 2003年;63:1〜5)。
【0012】
前述のことと更に生物学的観点から慢性の炎症過程が発癌の一翼を担うことを念頭に置くこととにより、化学物質であって、PPARγ受容体及びEGF受容体の両方に対するそれらの補足的な作用によって、化学的予防に役立ち、抗増殖性であり、抗転移性のタイプの抗炎症性及び制癌作用を発揮することができる新たな化学物質への画期的研究に対する誰もが認める必要性が存在することが明らかとなっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、新規で且つ進歩性のある一連の化合物の医学的及び治療上の使用に関する。これらの化合物が公知でない限りにおいて、本発明は、これらの化合物にも関する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、PPARγ受容体及びEGF受容体等の特定の受容体の調節による癌及び慢性の炎症の予防及び治療に適する新規な種類の化合物を提供する。
【0015】
従って、本発明は、特に、一般式(I)
【化1】


の化合物に関し、
式中、
及びRは、同一でも異なってもよく、−H、−C2n−1、1個から6個の炭素原子を有する直鎖又は分枝アルキル基を含む群から選択されるか、一緒になって5個又は6個の原子の芳香族又は脂肪族環を形成しており;
は、−CO−CH、−NHOH、−OH、−ORから選択され、ここでRは、1個から6個の炭素原子を有する直鎖又は分枝アルキル基であり;
は、H、1個から6個の炭素原子を有する直鎖又は分枝アルキル基、フェニル、ベンジル、−CF又は−CFCF、ビニル又はアリルから選択され;R、R、Rは、水素原子であり;
或いはRとR、RとR、又はRとRは、一緒になってN、Oを含む群から独立に選択される1個から2個のヘテロ原子を含む5個又は6個の原子のベンゼン、芳香族又は脂肪族環に縮合した環を形成している。
【0016】
本発明は、また、一般式(Ia)
【化2】


の化合物の特定のサブグループにも関し、
式中、
及びRは、同一でも異なってもよく、−H、−CO−CH、−C2n−1、1個から6個の炭素原子を有する直鎖又は分枝アルキル基を含む群から選択されるか、一緒になって5個又は6個の原子の芳香族又は脂肪族環を形成しており;
は、−NHOH、−OH、−ORから選択され、ここでRは、1個から6個の炭素原子を有する直鎖又は分枝アルキル基であり;
は、−H、1個から6個の炭素原子を有する直鎖又は分枝アルキル基であり;
、R、Rは、水素原子であり;
或いは
とR、RとR、又はRとRは、一緒になってN、Oを含む群から独立に選択される1個から2個のヘテロ原子を含む5個又は6個の原子のベンゼン、芳香族又は脂肪族環に縮合した環を形成している。
【0017】
1個から6個の炭素原子を有する式(I)又は(IIa)の上記の直鎖又は分枝アルキル基は、−CH、−C、イソプロピル、プロピル、−C2n−1から選択することができる。
【0018】
本発明は、また、R=−COCHの場合が見込めないこと以外は式(I)及び(Ia)中で挙げた化合物に関する。いくつかのアセチル誘導体、例えばR=−COCHのときの少なくともいくつかのものは、N−アセチル化が芳香族アミンに対する代謝的解毒系であるために不活性であり得るという論理的可能性が存在する。この論理的可能性は、5−ASAの不活性な代謝産物がN−アセチル5−ASAであるという観察結果に起因している。
【0019】
本発明の式(I)及び(Ia)の両方のいくつかの実施形態において、R及びRは環を形成しなくてもよい。従って、RとR又はRとRが、一緒になってN、Oを含む群から独立に選択される1個から2個のヘテロ原子を含む5個又は6個の原子のベンゼン、芳香族又は脂肪族環に縮合した環を形成することができる。いくつかの実施形態において化合物29、36及び37は除外される。本発明の式(I)及び(Ia)の両方のいくつかの実施形態において、R及びRは、RがCHであるときを除いて環を形成しなくてもよい。本発明の式(I)及び(Ia)の両方のいくつかの実施形態において、R及びRは、RがHから選択されるとき環を形成しなくてもよい。実施形態によっては、本発明は、本発明によって提供されるケトレン(ketolene)に関する。実施形態によっては、化合物29は除外される。
【0020】
実施形態によっては、化合物5、6、7、8、9、12、16、18、19、24、25、27、30及び41からなる群から選択される1つ又は複数の化合物は除外される。
【0021】
本発明の式(I)及び(Ia)の両方のいくつかの実施形態において、R及びRは環を形成しなくてもよい。従って、同じであるか異なることができるR及びRは、−H、−C2n−1、1個から6個の炭素原子を有する直鎖又は分枝アルキル基を含む群から選択することができる。実施形態によっては、化合物41は除外される。
【0022】
本発明の式(I)及び(Ia)の両方のいくつかの実施形態において、Rは分枝していなくてもよい。従って、Rは、H、1個から6個の炭素原子を有する直鎖アルキル基から選択することができ;R、R、Rは水素原子である。かかる実施形態においては、化合物30及び31は除外される。実施形態によっては、アミノ基がフェニル環の4’位にあるとき、Rは分枝していなくてもよい。かかる実施形態においては、化合物30は除外される。実施形態によっては、直鎖アルキル基は、1個のみの炭素原子を有することができる(即ち、CH)。
【0023】
本発明の式(I)及び(Ia)の両方のいくつかの実施形態において、R及びRは−Hである。実施形態によっては、化合物6、9、24、27、38及び41は除外される。
【0024】
本発明の式(I)及び(Ia)の両方のいくつかの実施形態において、RはRと異ならなくてもよい。
【0025】
本発明の式(I)及び(Ia)の両方のいくつかの実施形態において、Rが−OHであるとき、Rは、−H、1個から6個の炭素原子を有する分枝アルキル基からなる群から選択されるか、又はRとRとが、一緒になってN、Oを含む群から独立に選択される1個から2個のヘテロ原子を含む5個又は6個の原子のベンゼン、芳香族又は脂肪族環に縮合した環を形成している。実施形態によっては、分枝アルキル基は、−CH(CHであり得る。実施形態によっては、分枝アルキル基は、R位が−CH(CHであり得る。実施形態によっては、RとRは、単一のO原子を有する5員の脂肪族環を形成する。実施形態によっては(例えばこのパラグラフに記載されているもの)、化合物7、8、18、19、42は除外される。
【0026】
本発明の式(I)及び(Ia)の両方のいくつかの実施形態において、Rが−OHであり、Rが−Hであるとき、基NRは、4’位にあることはできない(そしてR又はRになくてはならない)。実施形態によって、これは特にR及びRが−CHである場合であり得る。実施形態によっては、化合物24は、除外される。
【0027】
本発明の式(I)及び(Ia)の両方のいくつかの実施形態において、R及びRは同じものである。実施形態によっては、化合物9及び12は除外される。
【0028】
本発明の式(I)及び(Ia)の両方のいくつかの実施形態において、Rが−OHであり、Rが−Hであるとき、基−NRは、Rにあることはできない(そしてR位になくてはならない)。実施形態によっては、これはR及びRが−Hである場合であり得る。実施形態によっては、化合物6は除外される。
【0029】
本発明の式(I)及び(Ia)の両方のいくつかの実施形態において、Rが−NHOHであるとき、Rは1個から6個の炭素原子を有する直鎖又は分枝アルキル基、(或いは、式(I)の場合はフェニル、ベンジル、−CF又は−CFCF、ビニル又はアリル)であり、RとRは、一緒になってN、Oを含む群から独立に選択される1個から2個のヘテロ原子を含む5個又は6個の原子のベンゼン、芳香族又は脂肪族環に縮合した環を形成している。実施形態によっては、化合物7は除外される。
【0030】
本発明の式(I)及び(Ia)の両方のいくつかの実施形態において、Rが−NHOHであり、Rが2個からの炭素原子を有する直鎖又は分枝アルキル基であるとき、基−NRは、4’位にあることはできずR位であることができる。実施形態によっては、化合物25は除外される。
【0031】
本発明の式(I)及び(Ia)の両方のいくつかの実施形態において、Rが−NHOHであり、Rが−Hであるとき、基−NRは、R位であることはできず、4’位のはずである。実施形態によっては、化合物5は除外される。
【0032】
一実施形態によれば、式(I)及び(Ia)の化合物のR及びRは、次式(II)
【化3】


と一致する環を形成することができ、
一方R、R、R、R及びRは、上で定義されている。
【0033】
別の実施形態によれば、式(I)及び(Ia)の化合物のR及びRは、次式(III)
【化4】


と一致する環を形成することができ、
一方R、R、R、R及びRは、上で定義されている。
【0034】
更なる実施形態によれば、式(I)及び(Ia)の化合物のR及びRは、次式(IV)又は(V)
【化5】


と一致する環を形成することができ、
一方R、R、R、R及びRは、上で定義されている。
【0035】
特に、本発明による式(I)及び(Ia)の化合物は、
4−アミノ−N−ヒドロキシ−2−メトキシベンズアミド(化合物13)
5−アミノ−N−ヒドロキシ−2−メトキシベンズアミド(化合物14)
5−アミノ−2,3−ジヒドロベンゾフラン−7−カルボン酸(化合物17)
5−アミノ−2−エトキシ−N−ヒドロキシベンズアミド(化合物26)
6−アミノ−2,2−ジメチル−4H−ベンゾ[1,3]ジオキシン−4−オン(化合物28)
1,2,3,4−テトラヒドロ−6−ヒドロキシキノリン−5−カルボン酸(化合物29)
5−アミノ−2−イソプロポキシ安息香酸(化合物31)
6−メトキシキノリン−5−カルボン酸(化合物36)
6−メトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−5−カルボン酸(化合物37)
5−ジイソプロピルアミノサリチル酸(化合物38)
4−ジイソプロピルアミノサリチル酸(化合物42)
を含む群から選択することができる。
【0036】
本発明は、また、R及びRが、−H及び−CH(CHからなる群から選択される化合物も提供する。R及びRは、両方とも同じであり得る。実施形態によっては、R及びRは、−CH(CHであり得る。
【0037】
1つの例は、次の構造(化合物38)を含む:
【化6】

【0038】
本発明の他の実施形態において、R及びRは、両方とも−Hである。
【0039】
本発明は、また、Rが、−NHOH及び−OHからなる群から選択される化合物も提供する。実施形態によっては、Rは、−NHOHであり得る。1つの例は、次の構造(化合物13)を含む:
【化7】

【0040】
更なる例は、次の構造(化合物14)を含む:
【化8】

【0041】
更なる例は、次の構造(化合物26)を含む:
【化9】

【0042】
本発明のいくつかの実施形態においては、Rは、−OHであり得る。
【0043】
適当な例は、次の構造(化合物17)を含む:
【化10】

【0044】
更なる例は次の構造(化合物31)を含む:
【化11】

【0045】
本発明のいくつかの実施形態においては、Rは、−Hであり得る。本発明のいくつかの実施形態においては、Rは、CHであり得る。本発明のいくつかの実施形態においては、Rは、−CHCHであり得る。本発明のいくつかの実施形態においては、Rは、−CH(CHであり得る。
【0046】
更なる例は、次の構造(化合物28)を含む:
【化12】

【0047】
本発明のいくつかの実施形態において、RとRは、一緒になって1個のヘテロ原子O(酸素)を含む5個又は6個の原子のベンゼンに縮合した脂肪族環を形成することができる。
【0048】
本発明による化合物は、医療分野において有利に使用することができる。
【0049】
それ故、本発明は、更に、有効成分として本発明による1つ又は複数の化合物を1つ又は複数の薬学的に許容できる賦形剤又は補助剤と組合せて含む薬剤組成物に関する。
【0050】
更に、本発明は、PPARγ受容体及びEGF受容体を発現する腫瘍、例えば、食道、胃、膵臓、結腸、前立腺、乳房の腫瘍、子宮及び付属器の腫瘍、腎臓の腫瘍並びに肺の腫瘍等の予防及び治療のための医薬品を調製するための本発明による化合物の使用に関する。
【0051】
加えて、本発明は、慢性炎症性疾患、例えばクローン病及び潰瘍性結腸大腸炎等の治療のための医薬品を調製するための本発明による化合物の使用に関する。本発明は、また、ヒト及び/又は動物(げっ歯類、家畜、家庭内ペット、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、ヒツジ、乳牛、ウマを含む)の治療の方法にも関する。
【0052】
特に、上記の特定の化合物は別として、次の化合物を上記の用途のために使用することができる:
5−アミノサリチロ−ヒドロキサム酸(化合物5)
3−ジメチルアミノサリチル酸(化合物6)
2−メトキシ−4−アミノ安息香酸(化合物7)
2−メトキシ−5−アミノ安息香酸(化合物8)
5−メチルアミノサリチル酸(化合物9)
4−メチルアミノサリチル酸(化合物12)
4−アセチルアミノサリチル酸(化合物16)
2−エトキシ−4−アミノ安息香酸(化合物18)
2−エトキシ−5−アミノ安息香酸(化合物19)
4−ジメチルアミノサリチル酸(化合物24)
2−エトキシ−4−アミノベンゾイルヒドロキサム酸(化合物25)
6−ヒドロキシキノリン−5−カルボン酸(化合物27)
2−(2−プロピル)オキシ−4−アミノ安息香酸(化合物30)
4−(1−ピペラジニル)サリチル酸(化合物41)。
【0053】
本発明の分子は、メサラジンを根拠として使用する分子モデリング作業から誘導し、すべての化学的に実現可能な異形を最善の成績(受容体の親和性及び活性化)を得るためにコンピューターをドッキングした実験で評価した。その結果、メサラジンに相当する機能及び/又は活性を示す本発明の化合物は、類似した生物学的経路を経ることによるものと考えられる。本発明の分子に内在するメサラジンと類似した特徴が、EGF経路に関する類似の活性をこれらの分子に与えているものと考えられる。
【0054】
本明細書で提供する実験は、既に論じた化合物類の様々な医療分野における使用の予測用として良好なモデルである。使用したモデルは、作用の機序には関わりなく、重要な結果を提供する。
【0055】
上記の化合物に加えて、本発明は次の化合物の使用を提供する(化合物番号が接頭文字「2_」に続く):
【化13】

【発明を実施するための最良の形態】
【0056】
本発明を、ここで、それを限定するのではなく説明することを目的として、その好ましい実施形態に従い、添付の図面中のダイアグラムを特に参照して記述する。
【実施例】
【0057】
(実施例1)
4−アミノ−N−ヒドロキシ−2−メトキシベンズアミド(化合物13)を調製する方法
【化14】


2−メトキシ−4−アミノ安息香酸メチル(10g、55.25ミリモル)及びヒドロキシルアミン塩酸塩(15.36g、221ミリモル)を、MeOH(80ml)中に取り、MeOH(55ml)中のKOH(15.4g、275ミリモル)の溶液を注意深く加えた。得られた混合物を36時間還流させながら撹拌した。揮発性物質を真空中で除去した。その残留物を1MのNaOH(50ml)中に取り、酢酸エチル(EtOAc、50ml)で洗浄した。濃HClを固体が沈殿するまで(pHは10)ゆっくり加えた。その固体を濾別し、HO、次いでメチル−t−ブチルエーテル(MTBE)で洗浄し、真空下で乾燥した。H NMRは、その固体が約1/3モル当量の酢酸エチルを含有することを示した。その固体を1MのNaOH(100ml)に取り、EtOAcを真空中で除去した。濃HClを固体が沈殿するまで(pHは8)注意深く加えた。その固体を濾過して集め、HO、次にMTBEで洗浄し、真空下で乾燥し、4.67g(47%)の表題化合物を暗赤色固体として生じさせた。
【化15】

【0058】
(実施例2)
5−アミノ−N−ヒドロキシ−2−メトキシベンズアミド(化合物14)を調製する方法
【化16】


2−メトキシ−5−ニトロ安息香酸メチル(10g、47.39ミリモル)及びヒドロキシルアミン塩酸塩(13.17g、189.56ミリモル)を、MeOH(100ml)中に取り、KOH(13.27g、236.95ミリモル)のMeOH(55ml)中の溶液を注意深く加えた。注−発熱反応が観察され、固体が最初に溶解し、次いで固体が溶液から析出した。酸で洗浄したアリコートのTLC(EtOAc中で行った)は、痕跡量の出発物質の安息香酸エステル及び新規生成物を示した。HO(100ml)を加え、溶解していない固体を濾別して集め、イソプロピルアルコール(IPA)で洗浄し、真空中で乾燥して、10.23g(>100%)のN−ヒドロキシ−2−メトキシ−5−ニトロベンズアミドを白色固体として生じさせた。
【化17】

【0059】
N−ヒドロキシ−2−メトキシ−5−ニトロベンズアミド(約47.39ミリモル)を、IMS(500ml)中に取り、10%パラジウム炭素(50%湿体)(1g)を加えた。その混合物を50psiで1.5時間水素化し、次いでセライトを通して濾過し、そのセライトを2MのNaOH(200ml)で洗浄した。MeOHを真空中で除去し、得られた水性の残留物をMTBE(100ml)で洗浄した。水層のpHを濃HClの注意深い添加によって7に下げ、得られた沈殿固体を濾過して集め、HOで、次にMTBEで洗浄し、高真空下で一晩乾燥して、5.33gの表題化合物(62%)を淡褐色の固体として生じさせた。
【化18】

【0060】
(実施例3)
5−アミノ−2,3−ジヒドロベンゾ[b]フラン−7−カルボン酸(化合物17)を調製する方法
【化19】


硝酸(9ml)を、2,3−ジヒドロベンゾ[b]フラン−7−カルボン酸(5.1g、31ミリモル)のトリフルオロ酢酸(45ml)中の冷却した(氷欲)溶液に加えた。4時間後、その混合物を氷水(150ml)中に入れて急冷し、その混合物を濾過して5−ニトロ−2,3−ジヒドロベンゾ[b]フラン−7−カルボン酸を生じさせ、それを水で洗浄し、粗製物(湿体)を次の段階で使用した。
【化20】

【0061】
粗製の5−ニトロ−2,3−ジヒドロベンゾ[b]フラン−7−カルボン酸を最小量のメタノール(1.3L)中に溶解し、窒素をその溶液中に20分間吹き込んだ。5%パラジウム木炭(1.0g)の水(20ml)中の混合物を加え、その混合物を2Lのオートクレーブに仕込んだ。排気−Nパージを2回続けた後、その容器に5バールのHを充填し、4日間撹拌した。その混合物を窒素でフラッシングし、セライトを通して濾過し、濃縮して、5−アミノ−2,3−ジヒドロベンゾ[b]フラン−7−カルボン酸を生じさせた(3.5g、19.5ミリモル、2段階で63%)。
【化21】

【0062】
(実施例4)
5−アミノ−2−エトキシ−N−ヒドロキシベンズアミド(化合物26)を調製する方法
【化22】


ステップ1
2−ヒドロキシ−5−ニトロ安息香酸メチル(11.82g、60ミリモル)トリフェニルホスフィン(17.29g、66ミリモル)及びEtOH(3.03g、3.85ml、66ミリモル)をTHF(150ml)中に取り、氷で冷却した。アゾジカルボン酸ジイソプロピル(8.31g、10ml、66ミリモル)を注意して加え、その反応物を室温で1時間撹拌した。その反応物を真空中で濃縮し、残留物をEtOAc(50ml)と共にすりつぶした。このようにして形成された固体を濾過して集め、MTBEで洗浄し、真空中で乾燥して、12.2gの粗製の2−エトキシ−5−ニトロ安息香酸メチルを生じさせた。濾液を真空中で蒸発させ、得られた残留物をEtOAc(25ml)と共にすりつぶした。得られた固体を濾過して集め、MTBEで洗浄し、真空中で乾燥して、6.31gの粗製の2−エトキシ−5−ニトロ安息香酸メチルの2回目の収穫を与えた。2−エトキシ−5−ニトロ安息香酸メチルの合体した部分を、熱いIPA(50ml)中に取り、室温まで冷却した。得られた固体を濾過して集め、MTBEで洗浄し、真空中で乾燥して、純粋な2−エトキシ−5−ニトロ安息香酸メチル(5.49g、40.5%)を黄色固体として生じさせた。
【化23】

【0063】
ステップ2
2−エトキシ−5−ニトロ安息香酸メチル(6.099g、26.99ミリモル)及び50重量/容量%の水性ヒドロキシルアミン(40ml)を、MeOH(100ml)中に取り、室温で一晩撹拌した。その結果沈殿した黄色の固体を濾過して集め、IPAで洗浄し、真空中で乾燥した。その濾液を真空中で蒸発させ、残留物をIPA(25ml)と共にすりつぶした。溶解しなかった固体を濾別し、最小量のIPAで洗浄し真空中で乾燥した。2番目の固体の収穫をHO(300ml)中に懸濁させ、pHを、濃HClを注意深く加えることによって2まで下げた。その固体を濾別し、MTBEで洗浄し、真空中で乾燥して、3.9gの粗製の2−エトキシ−5−ニトロ−N−ヒドロキシベンズアミドを生じさせた。上からのIPAの母液を粗製の2−エトキシ−5−ニトロ−N−ヒドロキシベンズアミドと合体し、真空中で蒸発させた。その残留物をCHCl(25ml)と共にすりつぶし、その固体を濾別し、真空中で乾燥させて、2−エトキシ−5−ニトロ−N−ヒドロキシベンズアミド(2.39g、39%)を黄色固体として生じさせた。
【化24】

【0064】
ステップ3
2−エトキシ−5−ニトロ−N−ヒドロキシベンズアミド(2.39g、1.06ミリモル)をEtOH(50ml)中に懸濁させ、10%Pd炭素(湿体基準)(240mg)を加えた。その混合物を50psiで1.5時間水素化した。MeOH(50ml)を加え、その混合物を、セライトを通して濾過した。揮発性物質を真空中で除去し、その残留物をIPA(50ml)中に取った。その混合物を60℃で0.5時間加熱し、次いで室温で一晩放置した。沈殿した固体を濾過して集め、MTBEで洗浄し、真空中で乾燥して、1.51gの5−アミノ−2−エトキシ−N−ヒドロキシベンズアミド(73%)をオフホワイトの固体として生じさせた。
【化25】

【0065】
(実施例5)
6−アミノ−2,2−ジメチル−4H−ベンゾ[1,3]ジオキシン−4−オン(化合物28)を調製する方法
【化26】


ステップ1
5−ニトロサリチル酸(25g、136.6ミリモル)を、アセトン(20ml)中に取り、トリフルオロ酢酸(150ml)及び無水トリフルオロ酢酸(50ml)を加えた。その混合物を還流温度で加熱した。1時間後、更なるアセトン(30ml)を加え、反応物を還流温度で48時間加熱した。その反応物を室温まで冷却し、揮発性物質を真空中で除去した。得られた褐色の油状物をCHCl(400ml)中に溶解し、1:1のHO/飽和NaHCO(400ml)で洗浄した。その水層をCHClで抽出し(2×200ml)、合体した有機層を乾燥(MgSO)し、真空中で蒸発させた。固体の残留物をペンタン(150ml)と共にすりつぶし、濾過して集め、ペンタンで完全に洗浄し、真空中で乾燥して、6−ニトロ−2,2−ジメチル−4H−ベンゾ[1,3]ジオキシン−4−オン(27.84g、91%)を、暗黄色固体として生じさせた。
【化27】

【0066】
ステップ2
6−ニトロ−2,2−ジメチル−4H−ベンゾ[1,3]ジオキシン−4−オン(5g、22.42ミリモル)を、EtOH(35ml)中に取り、10%パラジウム炭素(湿体基準)(2.37g)を加えた。その混合物を、50psiで1時間水素化した。その混合物を、セライトを通して濾過し、揮発性物質を真空中で除去した。IPA(50ml)を加え、その混合物を60℃で5分間加熱し、次いでそのまま室温まで冷却した。得られた固体を濾別し、MTBEで洗浄し、真空中で乾燥して、2.93gの6−アミノ−2,2−ジメチル−4H−ベンゾ[1,3]ジオキシン−4−オン(68%)を黄色固体として生じさせた。
【化28】

【0067】
(実施例6)
5−アミノ−2−イソプロポキシ安息香酸(化合物31)を調製する方法
【化29】


2−ヒドロキシ−5−ニトロ安息香酸メチル(11.82g、60ミリモル)、トリフェニルホスフィン(17.29g、66ミリモル)及びイソプロパノール(3.96g、5ml、66ミリモル)を、THF(150ml)中に取り、氷で冷却した。アゾジカルボン酸ジイソプロピル(8.31g、10ml、66ミリモル)を注意して加え、その反応物を室温で一晩撹拌した。揮発性物質を真空中で除去し、残留物をEtOAc(50ml)で処理した。溶解しなかった固体を濾過して除去し、濾液を真空中で乾燥するまで蒸発させた。その残留物をカラムクロマトグラフィーによって精製して、2−イソプロピル−5−ニトロ安息香酸メチル(6.92g、48.5%)を黄色油状物として生じさせた。
【0068】
2−イソプロピル−5−ニトロ安息香酸メチル(6.92g、28.95ミリモル)を、THF/HO(各35ml)中に取り、LiOH(1.39g、57.9ミリモル)を加えた。その混合物を室温で一晩撹拌し、次いでpHを濃HClの添加によって1まで下げ、生成物を酢酸エチル(50ml)中に抽出した。有機層を乾燥(MgSO)し、蒸発させて、2−イソプロポキシ−5−ニトロ安息香酸(6.02g、92.5%)を黄色固体として生じさせた。
【化30】

【0069】
2−イソプロポキシ−5−ニトロ安息香酸(6.02g、26.75ミリモル)を、EtOH(100ml)中に懸濁させ、10%パラジウム炭素(湿体基準)(600mg)を加えた。その混合物を50psiで2時間水素化した。その混合物を、セライトを通して濾過し、揮発性物質を真空中で除去した。その残留物をIPAと共にすりつぶし、得られた固体を濾別し、MTBEで洗浄し、真空中で乾燥して、4.15gの5−アミノ−2−イソプロポキシ安息香酸(79.5%)を黄白色固体として生じさせた。
【化31】

【0070】
(実施例7)
4−ジイソプロピルアミノサリチル酸(化合物38)を調製する方法
【化32】


5−アミノサリチル酸(3.3g、21.6ミリモル)、2−ヨードプロパン(9.1g、53.9ミリモル)及び炭酸カリウム(7.4g、54ミリモル)の混合物を、IMS(300ml)及び水(100ml)中、50℃で4日間撹拌した。加熱を止め、その混合物を濃縮して固体とし、それを100mlのCHClで洗浄した。洗液を廃棄し、固体をIMS(200ml)中で、40℃で30分間加熱した。加熱を止めたとき、硫酸マグネシウムを加え、撹拌を25分間続けた。濾過して無機固体を除去した後、溶液を濃縮し、シリカクロマトグラフィー(溶離液10〜20%メタノール/CHCl)によって精製した。これにより、0.51gの4−ジイソプロピルアミノサリチル酸が生じた。
【化33】

【0071】
(実施例8)
本発明による新規化合物のPPARγ活性化/発現及び細胞増殖及びアポトーシスの制御に対する効果についての検討
材料及び方法
化合物
5−ASAは、Sigma−Aldrich(商標)(フランス、St Quentin Fallavier)で購入した。ロシグリタゾンは、Spi Bio(商標)(フランス、Massy)で入手した。新規分子13、14、17、26、31、38(図1A)は、Giuliani SpA(商標)(イタリア、ミラノ)により提供され、SFAC Pharma(商標)(英国、マンチェスター)によって合成された。
【0072】
細胞系
結腸癌細胞系HT−29STD(ATCC HTB−38)を10%加熱FCS(heat−FCS)及び抗体を補充したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)中でルーチン的に増殖した。細胞は、単層中で増殖し、5%CO及び95%相対湿度中37℃でインキュベートした。
【0073】
PPARγによる一過性形質移入及び細胞の刺激
HT−29STD細胞を、メーカーの指示に従い、Effectene(商標)形質移入試薬(Qiagen(商標))を用いて一時的に形質移入した。PPARγ活性を試験するため、本発明者らは、チトクロームp450 4A(2×CYP)(1)から得たPPREの2つのコピーを含む500ngの最小量のプロモーターコンストラクトにより形質移入を実施した。ウミシイタケルシフェラーゼプラスミド(0.1μg/ウェル)もまた形質移入効率を監視するための内部標準として、及び蛍ルシフェラーゼ活性を正常化するために形質移入した。形質移入した細胞は、37℃で48時間インキュベートした。細胞のインキュベーション後、刺激を、化合物13、14、17、26、31、38について30mMの濃度で3−6−9−12−15−18−24時間の間行い、陽性対照として使用した2つのPPARγ合成リガンド、5−ASA30mM(2)及びロシグリタゾン10−5M(2)、と比較した。薬剤溶液のpHは、NaOHにより7.4に調整した。全体の細胞抽出液は、Passive Lysis Buffer(Promega(商標)、ウィスコンシン州マディソン)を用いて調製した。ルシフェラーゼ活性は、メーカーの手順書に従ってPromega(商標)の二重ルシフェラーゼアッセイシステムを用いて20μlの抽出液中で検定した。形質移入は、少なくとも3回の別々の実験において3通りに検定した。そのルシフェラーゼ活性は、無刺激細胞からのルシフェラーゼ活性が分割する異なる分子によって処理された細胞中で得られた活性の重なりとして表した。
【0074】
ウエスタンブロット分析によるPPARγ及びβ−作用の評価
総タンパク質量は、2%Triton(商標)によるPBS、フェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)100mM及び古典的プロテアーゼ阻害剤カクテル(2)からなる抽出緩衝液中での細胞均質化によって得た。その総タンパク質量を、次にポリアクリルアミドゲル電気泳動法によって分離し、電気ブロットした。ポリビニリデンジフルオリド(PVDF)膜をPPARγに対するウサギポリクローナル一次抗体(希釈1/500、TEBU、フランス、Le Perray en Yveline)と共に一晩インキュベートした。β−作用は、1/10,000で希釈したウサギポリクローナル一次抗体(Sigma)を用いて検出した。ペルオキシダーゼ接合二次抗体(1/1000、Dako(商標)、フランス、Trappes)による免疫検出及び化学発光は、メーカーの手順書(ECL(商標)、Amersham Pharmacia Biotech(商標)、フランス、Orsay)に従って実施した。PPARγの光学濃度値は、同じ試料(2)の内部標準のβ−作用の量に見合う各条件に対して与えた。
【0075】
Ki−67免疫染色による細胞増殖の分析
培養の24時間後、HT−29STD細胞を、新規分子13、14、17、26、及び31により30mMで24時間処理した。5−ASA(30mM)及びロシグリタゾン(10−5M)を陽性対照として使用した。分子38(実施例7)は、その溶解性が劣るためにこの実験には含めなかった。薬物溶液のpHは、NaOHにより7.4に調整した。細胞は、PFA4%中で固定し、0.1%のTriton X−100(商標)を含有するPBS中4℃で透過性にし、次いでヤギの正常血清及び抗体の非特異的吸着を最小にするためのブロッキング緩衝液(PBS中の1%BSA)と共にインキュベートした。
【0076】
細胞増殖は、Ki−67に対するマウスモノクローナル一次抗体(希釈1:50一夜;ZYMED(商標)、Clinisciences(商標)、フランス、モントルージュ)を用いるKi−67核染色法によって評価した。一次抗体は、アクリジンレッド蛍光色素に接合したAlexa594ロバ抗マウスIgG(希釈1:100、Molecular Probes(商標)、Invitrogen(商標)、フランス、Cergy Pontoise)により明らかにした。核は、Hoescht33342溶液(0.125mg/mL)(Sigma−Aldrich(商標)により染色し、蛍光顕微鏡(Leica(商標)、ドイツ、ベンスハイム)のもとで視覚化した。陰性対照は、特異抗体の代わりに非特異性マウス血清により染色することで構成した。1実験において少なくとも500細胞/試料の計数を盲目的に系統的に行った。結果は、平均±染色細胞の数のSEMとして表した。
【0077】
アポトーシスの検出
培養の24時間後、HT−29STD細胞を、新規分子13、14、17、26、及び31により30mMの濃度で24時間処理した。5−ASA(30mM)及びロシグリタゾン(10−5M)を陽性対照として使用した。分子17及び38(実施例3、7)は、その溶解性が劣るためにこの実験には含めなかった。薬物溶液のpHは、NaOHにより7.4に調整した。アポトーシスを受ける細胞は、ターミナルトランスフェラーゼdUTPニックエンドラベリングアッセイ(TUNELアッセイ、Roche Diagnostics(商標)、フランス、メラン)を用いるDNA鎖の酵素標識化によって特定した。1実験において少なくとも500細胞/試料の計数を盲目的に系統的に行った。結果は、平均±染色細胞の数のSEMとして表した。
【0078】
結果
新規分子17(実施例3)及び31(実施例6)は、PPARγの活性化を引き起こすことが観察された。化合物26(実施例4)もPPARγを誘発するが、程度は少ない。PPARγの活性化は、ペルオキシソーム増殖因子応答エレメント(PPRE)と称される特定のDNA配列因子への結合にいたる次々と起こる反応をもたらす(7〜9)。
【0079】
本発明者らは、PPARγ転写活性を、ウミシイタケルシフェラーゼPPREプラスミドを含む上皮細胞の一過性形質移入によって調査した。細胞は、24時間にわたり異なる分子により刺激を与えた。形質移入したHT−29細胞におけるPPARγ活性の分析により、新規分子17(実施例3)及び31(実施例6)は、30mMの濃度においてレポーター遺伝子活性を2倍に増大し、それによって5−ASA及びロシグリタゾンに似た活性を示すことが示された(図1B)。分子13、14及び38(実施例1、2、7)は、30mMの濃度において、上皮細胞に対して迅速な細胞毒性効果を発揮し、6時間後のPPARγ活性化の調査を制限した(図1B)。
【0080】
新規分子17、26及び31は、PPARγ発現を誘導する。新規分子のHT−29細胞系におけるPPARγのタンパク質レベルでの発現を誘導する能力。ウエスタンブロット法によって定量化した平均2倍のPPARγタンパク質レベルの誘導が、分子17、26及び31で24時間にわたって処理した細胞において観察された(図2)。
【0081】
新規分子17及び31(実施例3及び6)は、上皮細胞増殖を阻害する。本発明者らは、HT−29STD細胞系において新規分子の細胞増殖の制御における役割を審査した(図3)。細胞増殖は、Ki−67の存在が細胞増殖を維持するために必要である細胞増殖で発現される核タンパク質Ki−67染色によって評価した(10)。未処理の細胞と比較して、HT−29細胞の分子17及び31(30mM)と一緒の24時間のインキュベーションにより、細胞増殖の67%から75%の阻害がもたらされた(図3)。化合物26の細胞増殖効果は、それがPPARγ活性剤としての効果がより小さいために試験しなかった。
【0082】
同様の結果が、ロシグリタゾン(10−5M)及び5−ASA(30mM)をそれらの最適な濃度で使用した2つの陽性対照によって得られた。分子13、14及び26(実施例1、2、4)の潜在的な抗分裂促進効果の証明は、この濃度におけるそれらの上皮細胞に対する迅速な細胞毒性効果によって制限された(データは示されていない)。
【0083】
新規分子31(実施例6)は、PPARγを介する上皮細胞のアポトーシスを誘発する。ロシグリタゾン及び5−ASAと同様に、分子31は、ターミナルトランスフェラーゼdUTPニックエンドラベリング(TUNEL)を用いてDNA鎖切断を標識化することによって確認された上皮細胞の80%におけるアポトーシスを示した(図4)。前の実験と同様に、分子13、14及び26は、30mMにおいて、細胞アポトーシス分析を妨げる迅速な細胞毒性効果を引き起こした。
【0084】
(実施例9)
新規化合物のPPARγ活性化に対する効果の検討
材料及び方法
化合物
5−ASAは、Sigma−Aldrich(商標)(フランス、St Quentin Fallavier)で購入した。新規分子13、14、17、26、28、31、38(図1A)は、実施例1〜7に記載されているようにして合成した。
【0085】
細胞系
結腸癌細胞系HT−29STD(ATCC HTB−38)を10%加熱ウシ胎児血清(heat−FCS)及び抗体を補充したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)中でルーチン的に増殖した。細胞は、単層中で増殖し、5%CO及び95%相対湿度中37℃で培養した。
【0086】
PPARγによる一過性形質移入及び細胞の刺激
HT−29STD細胞を、メーカーの指示に従い、Effectene(商標)形質移入試薬(Qiagen(商標))を用いて一時的に形質移入した。PPARγ活性を試験するため、本発明者らは、チトクロームp450 4A(2×CYP)(1)から得たPPREの2つのコピーを含む500ngの最小量のプロモーターコンストラクトにより形質移入を実施した。ウミシイタケルシフェラーゼプラスミド(0.1μg/ウェル)もまた形質移入効率を監視するための内部標準として、及び蛍ルシフェラーゼ活性を正常化するために形質移入した。形質移入した細胞は、37℃で24時間インキュベートした。細胞のインキュベーション後、刺激を、化合物13、14、17、26、28、31、38について1mMの濃度で18時間の間行い、陽性対照として使用した2つのPPARγ合成リガンド、5−ASA30mM(2)と比較した。薬剤溶液のpHは、NaOHにより7.4に調整した。全体の細胞抽出液は、Passive Lysis Buffer(Promega(商標)、ウィスコンシン州マディソン)を用いて調製した。ルシフェラーゼ活性は、メーカーの手順書に従ってPromega(商標)の二重ルシフェラーゼアッセイシステムを用いて20μlの抽出液中で検定した。形質移入は、少なくとも3回の別々の実験において3通りに検定した。そのルシフェラーゼ活性は、無刺激細胞からのルシフェラーゼ活性が分割する異なる分子によって処理された細胞中で得られた活性の重なりとして表した。
【0087】
結果
PPARγの活性化は、ペルオキシソーム増殖因子応答エレメント(PPRE)と称される特定のDNA配列因子への結合につながる次々と起こる反応をもたらす(7〜9)。
【0088】
本発明者らは、PPARγ転写活性を、ウミシイタケルシフェラーゼPPREプラスミドによる上皮細胞の一過性形質移入によって調査した。新規分子がPPARγの活性化を刺激するのに5−ASAより更に効果を有するかどうかを評価するために、本発明者らは、これらの分子を1mMの濃度で試験した。1mMの濃度における新規分子の効果を、陽性対照として最適濃度の30mMで使用した5−ASAと比較した。細胞は、異なる分子により24時間刺激した。形質移入したHT−29細胞中のPPARγ活性の分析により、新規分子は、レポーター遺伝子活性を増すことが示され、それによって5−ASAと同等以上の活性を示した。(新規分子の濃度は、30倍少なかった−図6参照)。
【0089】
(実施例10)
結腸癌細胞増殖に対する化合物の効果についての検討
次の物質13、14、17、26、28、31及び38を、結腸癌細胞増殖を調節するそれらの能力について試験した。化合物28についてはこの物質が培地に溶解しなかったため実験を行わなかった。
【0090】
このために、3つのヒト結腸癌細胞系(即ち、HT−29、HT−115及びDLD−1)を使用した。これらの細胞種類は、シクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)発現に基づいて選択した。実際に、HT−115細胞は、生物学的に活性なCOX−2を発現し、HT−29細胞は、機能しないCOX−2イソ型を発現し、DLD−1は、COX−2が欠ける細胞である。
【0091】
HT−29及びDLD−1は、10%ウシ胎児血清(FBS)、1%ペニシリン/ストレプトマイシン(P/S)及び50μg/mlのゲンタマイシンを補充したMcCoy及びRPMI1640媒体中でそれぞれ培養した。HT−115は、15%FBS及び1%P/Sを補充したDMEM媒体中で培養した。細胞は、5%CO存在下の加湿した37℃のインキュベーター中に保存した。
【0092】
細胞増殖アッセイのために、単個細胞浮遊液を、0.5%のFBSを含有する媒体中の96ウェルの培養皿に、2×10個の細胞/ウェル(HT115については4×10個の細胞/ウェル)で蒔き、そのまま接着させた。接着しない細胞を次に除去し、0.5%のFBSを含有する新鮮な媒体を各ウェルに追加した。細胞は、特定物質の存在下又は非存在下で培養した。各物質は、0.5%のFBSを含有する培地中に25mMの原液として溶解し、各原液のpHを7.4に、必要ならNaOHによって調整した。物質は、0.5mMから10mMに及ぶ最終濃度で使用した。細胞増殖は、市販されている細胞増殖キット(Roche Diagnostics、イタリア、モンツァ)を用いて5−ブロモ−2’−デオキシウリジン(BrdU)のDNA中への組み込みを計量することにより測定した。BrdUをインキュベーションの最後の6時間の間細胞培養に加え、48時間の培養の後、BrdU陽性細胞の濃度を酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)により測定した。
【0093】
光学濃度(OD)を、ELISA読取機を用いて450nmで測定した。実験は3通り行い、その結果は、平均±標準偏差(SD)として記録する。
【0094】
化合物14の結腸上皮細胞増殖に対する効果を更に検定するために、血清不足のDLD−1細胞を、0.2μMのカルボキシフルオレセインジアセテートスクシンイミジルエステル(CFSE)(Invitrogen(商標)、イタリア、ミラノ)中、37℃で30分間インキュベートし、次いで十分に洗浄し、化合物を添加するか又は添加しないで培養した。2日間の培養の後、CFSE蛍光発光を評価し、分裂を受けた細胞の割合を決定し、かくして前駆体発生頻度及び増殖指数の両方の計算を可能にした。
【0095】
化合物14の結腸上皮細胞死に対する効果も又検定した。このために、細胞を上で示したように2日間培養し、次いでアネキシンV(AV)及び/又はヨウ化プロピジウム(PI)陽性細胞の割合を、市販のキット(Beckmann Coulter(商標)、イタリア、ミラノ)を用いて評価した。化合物14の結腸上皮細胞死に対する効果がカスパーゼ活性に依存するかどうかを判断するため、化合物14(1.5mM)を添加する前に、汎カスパーゼ阻害剤のz−VAD−fmk(40μM)と共に1時間プレインキュベートした。AV及びPI陽性細胞の割合を、上で示したように48時間の媒養後に測定した。
【0096】
結果
化合物は、結腸癌細胞増殖を阻害するそれらの能力に違いがあった。結果を図7及び8に示す。表は、特定の化合物によるDLD−1細胞の増殖の阻害の百分率を示す。物質13、14、17、26、及び38は、際立った抗増殖効果を示す。これらの物質の中で、化合物13及び14は、試験した3つの細胞系のそれぞれにおいて、用量依存性の様式で細胞増殖を著しく減少させた(図7A及び7B)。化合物が最終濃度の10mMで使用されたとき、90%を超える細胞増殖阻害が見られた。化合物17、26及び38の抗分裂促進効果は、2.5mM以上の濃度においてのみ見られた(図8A、8C、7D)。
【0097】
化合物31は、高い用量(10mM)で使用したとき、細胞増殖を著しく阻害した(図7C)。
【0098】
全体的に上のデータは、物質13、14、及び38が結腸癌細胞増殖の最も強力な抑制因子であることを示している。然しながら、物質13及び38の存在下で行った細胞培養においては沈殿が発生した。その後、これら化合物の抗増殖効果がそれらの抗分裂促進作用によるものか毒性効果によるものかを判断するのが困難となる大量の細胞死が続いた。これらの調査結果に基づいて、その後の実験は化合物14の使用に集中した。
【0099】
最初に、化合物14のDLD−1細胞の増殖に対する阻害効果を、フローサイトメトリーによって確認した。細胞増殖を追跡するため、細胞をCFSEにより標識化した。BrdUアッセイデータに沿って、化合物14は、DLD−1細胞の増殖を阻害した(図9)。重要なことには、48時間の処理後、増殖細胞の割合は、未処理培養物における90±4%から、0.5、1及び2.5mMで処理した細胞培養物における48±7%、21±11%及び11±6%へと減少した。
【0100】
化合物14が、結腸癌細胞の生存も制御するかどうかを試験するために、DLD−1細胞を上記化合物の存在下又は非存在下で48時間培養し、次いでアネキシンV及び/又はPI−陽性細胞の百分率をフローサイトメトリーによって評価した。図10Aに示されているように、化合物14は、最終濃度の1.5又は3mMで使用したとき、細胞死の割合を著しく高めた。14が媒介したDLD−1細胞死におけるカスパーゼの関与を調査するため、細胞を汎カスパーゼ阻害薬Z−VADと共にプレインキュベートし、次いで14により処理した。図10Bの代表的実験で示されているように、細胞のZ−VADによる処理は、AV/PI−陽性細胞の百分率を大幅に減少させた。
【0101】
特定の化合物の段階的用量(0.5〜10mM)によるDLD−1細胞阻害の百分率は、表1の中にある。細胞は、化合物の存在下又は非存在下で培養し、次に細胞増殖を、48時間培養した後に、比色(BrdU)分析によって検定した。
【0102】
(実施例11)
分子モデリング
分子モデリングの検討を、Silicon Graphics(商標)のワークステーションで動くSYBYLソフトウェアのバージョン6.9.1(Tripos Associates Inc(商標)、ミズーリ州セントルイス)を用いて行った。5−ASAの両性イオン型の三次元モデルを標準フラグメントライブラリーから構築し、その幾何学的配置を、その後Tripos力場(3)を用いて最適化した。化合物のpKが未だ知られていないため、生理的pH(7.4)において起こる種を決定するためにはスパーク(SPARC)オンライン計算機を使用した(http://ibmlc2.chem.uga.edu/sparc/index.cfm)。イオン化化合物の三次元モデルは、標準フラグメントライブラリーから構築し、それらの幾何学的配置は、その後Gasteiger及びHuckelの原子電荷から計算した静電項を含むTripos力場(3)を用いて最適化した。Maximin2手順において利用できるPowellの方法を、勾配値が0.001kcal/mol.Åより小さくなるまでエネルギー最小化のために使用した。ヒトPPARyリガンド結合領域の構造は、RCSBタンパク質データバンク(1l7l)において入手できるテサグリタザル(tesaglitazar)(AZ242)によるその複合X線結晶構造から得た(4、5)。受容体活性部位中への化合物のフレキシブルドッキングは、GOLDソフトウェアを用いて行った(6)。最も安定なドッキングモデルは、GoldScore(6)及び機能を採点するX−Score(7)により予測したベストスコアの立体構造に従って選択した。複合体は、Tripos力場及び勾配値が0.01kcal/mol.Åに到達するまでの4.0の誘電率によるMaximin2手順において利用できるPowell法を用いてエネルギーを最小化した。アニール機能を用いてリガンドの周囲の関心部分(10Å)を限定した。
【0103】
ドッキングの検討
すべての新規分子は、分子認識及びPPARγ活性化に対して必要な主要な決定要因と考えられるHis−323、His−449、Tyr−473及びSer−289との水素結合を介したPPARγ−LBDの相互作用によりしっかり適合している(11〜12)(図5A、5C、5D)。5−ASAに対するドッキングは、図5Bに示されている。
【0104】
結論
5−ASAの抗炎症性効果が、結腸中で上皮細胞によって主に発現されるPPARγによって媒介されることは既に示されている(2)。ドッキング分析に基づく最初の6個の新たな最適化5−ASA分子の合理的な開発により、30mMの濃度で使用された2つの分子31及び17は、PPARγを活性化し、腸上皮細胞によるその発現を誘発することを明らかにした。これら2つの新規な分子は、また、上皮細胞増殖を阻害し、アポトーシスを誘発するが、これらは結腸癌の発達に関与する2つの重要な機構であり、PPARγ活性化がその原因である。4つのその他の分子(13、14、26、38)に関しては、それらの殆どが30mMの濃度において上皮細胞に対する直接的な細胞毒性効果を有しており、PPARγ活性化、細胞増殖及びアポトーシスの制御及び評価の分析を妨害する。
【0105】
本発明のこの最初の組の例(実施例8)は、2つの最適化した分子31及び17がPPARγの発現及び活性化を刺激し、上皮細胞の増殖及びアポトーシスを制御する能力を示している。化合物13、14及び26の30mMにおける上皮細胞に対する細胞毒性効果は、多くの様々な酵素に対して大きな親和性を示すことが知られている高度に反応性のヒドロキサム酸基のそれら構造中の存在と関係している可能性がある。
【0106】
本発明の第2の組の例(実施例9)は、他の試験もであるが、分子が、5−ASAのそれより30倍少ない作業濃度で、24時間にわたって、5−ASAと同等以上の活性を示すことを示している。
【0107】
本発明の最後の組の例(実施例10)は、化合物が結腸癌細胞系、HT−29、HT−115及びDLD−1の増殖の阻害に様々な程度で影響し、化合物13、14及び38が最高の効果を示すことを示している。細胞死の本質を明らかにするために、化合物14を、更に調査し、フローサイトメトリーによって、増大する濃度により、時間が経つと、DLD−1結腸癌細胞の増殖を阻害することを確認した。
【0108】
これらの分子は、また、COX−2を発現しない細胞に対しても活性であり、従って、本発明の分子は、腫瘍の治療及び本明細書に記載されているその他の用途のためにCOX−2を発現しない細胞において使用することができる。
【0109】
総体的結論
モデリング調査により示唆され、合成された最高位の化合物は、すべてメサラジンのそれと同等以上の活性を示す。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1−1】(表1)段階的用量(0.5〜10mM)の特定の化合物によるDLD−1細胞阻害の百分率の表である。細胞は、化合物の存在下又は非存在下で培養し、次に細胞増殖を、48時間培養した後に比色(BrdU)分析によって評価した。
【図1−2】(図1A)化合物13、14、17、26、31及び38の構造を示す図である。
【図1−3】(図1B)5−ASA及びロシグリタゾンで処理した細胞と比較した分子17及び31によるPPARγ受容体の活性化を示す図である。PPARγに対する応答エレメントを形質移入し(2×CPY)、分子17及び31(30mM)により処理したHT−29STD細胞は、レポーター遺伝子の約2倍の活性の誘導を示し、5−ASA並びに新規化合物17及び31がPPARγの活性を引き出す能力を示しており、その結果は未処理の細胞と比較した活性化の増加の因数として表されている。化合物13、14、26及び38についての活性化も示されている。
【図2】化合物17、26及び31により誘発された上皮細胞によるPPARγタンパク質の発現の増加を示す図であり、PPARγタンパク質の発現のレベルは、未処理のHT−29細胞(対照)においてと、新規化合物又は陽性対照として使用した5−ASA(30mM)若しくはロシグリタゾン(10−5M)による24時間の処理後にウエスタンブロット法によって評価した。PPARγの光学密度の値は、各条件について、同一試料中のβ−作用内部標準の量と対比して計算した。
【図3】化合物17及び31による上皮細胞の増殖の阻害を示す図であり、5−ASA(30mM)及びロシグリタゾン(10−5M)と同様に、化合物17及び31は、培地のみ(対照)によりインキュベートした細胞と比較して、Ki−67により核を染色(薄灰色)することによって試験すると、HT−29STD細胞の増殖を阻害する。核はHoechst33342溶液により青に染色し(図では暗い灰色)、結果は1つの実験で数えられた細胞の平均数として表されている。
【図4】化合物31による上皮細胞のアポトーシスの誘導を示す図であり、5−ASA(30mM)及びロシグリタゾン(10−5M)と同様に、化合物31は、HT−29STD細胞におけるTUNELアッセイにおいて確認されるアポトーシスを誘導した。未処理のHT−29細胞において3%の自然発生のアポトーシスが観察された。結果は1つの実験で数えられた細胞の平均数として表されている。
【図5A】様々な化合物のPPARγへの結合の様式のドッキングシミュレーションを、PPARγのX線結晶構造において白い表面によって表されているリガンド結合領域(LBD)中の原子の種類により染色されている新規化合物(13から38まで)の相互作用を比較して示す図であり、新規分子類とPPARγの間の主要な水素結合による相互作用を説明している。
【図5B】メサラジンのPPARγ受容体への結合様式の詳細なドッキングシミュレーションを示す図である。
【図5C】化合物17のPPARγ受容体への結合様式のより詳細なドッキングシミュレーションを示す図である。
【図5D】化合物31のPPARγ受容体への結合様式のより詳細なドッキングシミュレーションを示す図である。
【図6】化合物13、14、17、26、28、31及び38の形質移入したHT−29細胞中のPPARγ活性の分析を示す図である。これは、新規分子がレポーター遺伝子活性を増し、それによって5−ASAと同等以上の活性を見せることを示している。
【図7−1】3つの異なるヒト結腸癌細胞系(即ち、HT29、HT115及びDLD1)の増殖に対する特定物質の効果を示す図である。細胞を、増加する濃度の物質(0.5〜10mM)により48時間処理し、増殖は、BrdU取り込みを測るための比色分析を用いることによって測定した。光学密度(OD)は、ELISA読取り機を用いて450nmで測定した。データは、3つの別々の実験の平均±SDを示す。
【図7−2】3つの異なるヒト結腸癌細胞系(即ち、HT29、HT115及びDLD1)の増殖に対する特定物質の効果を示す図である。細胞を、増加する濃度の物質(0.5〜10mM)により48時間処理し、増殖は、BrdU取り込みを測るための比色分析を用いることによって測定した。光学密度(OD)は、ELISA読取り機を用いて450nmで測定した。データは、3つの別々の実験の平均±SDを示す。
【図8】3つの異なるヒト結腸癌細胞系(即ち、HT29、HT115及びDLD1)の増殖に対する特定物質の効果を示す図である。細胞を、増加する濃度の物質(0.5〜10mM)により48時間処理し、増殖は、BrdU取り込みを測るための比色分析を用いることによって測定した。光学密度(OD)は、ELISA読取り機を用いて450nmで測定した。データは、3つの別々の実験の平均±SDを示す。
【図9】化合物14のDLD−1細胞についての増殖に対する阻害効果のフローサイトメリー分析を示す図である。同様の結果が得られた3つの典型的な実験の1つを示す。細胞を、CFSEにより標識化し、それらの増殖割合を48時間の培養後フローサイトメトリーによって計算した。
【図10】(図10A)化合物14が1.5mM(p<0.01)及び3mM(p<0.001)の濃度でDLD1細胞死を著しく高めることを示す図である。DLD1は、無刺激(Unst)のままか、化合物14により48時間処理したかのいずれかである。データは、3つの別々の実験の平均±SDを表し、AV及び/又はPI−陽性細胞のFACS分析によって評価した細胞死の百分率を示している。 (図10B)汎カスパーゼ阻害剤のZ−VADが化合物14のDLD−1細胞死に対する効果を逆転させることを示す図である。結果は、生存細胞、無傷膜を有するアポトーシスを起こした細胞及び二次的な壊死を受ける細胞の間を識別することを可能にするアネキシンV−FITC及びPI蛍光発光の2つのパラメータを持つヒストグラム(biparametric histograms)として示されている。同様の結果が得られた3つの典型的な実験の1つが示されている。
【0111】
(参考文献)




【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)の化合物
【化1】


[式中、
及びRは、同一でも異なってもよく、−H、−C2n−1、1個から6個の炭素原子を有する直鎖又は分枝アルキル基を含む群から選択されるか、一緒になって5個又は6個の原子の芳香族又は脂肪族環を形成しており;
は、−CO−CH、−NHOH、−OH、−ORから選択され、ここでRは、1個から6個の炭素原子を有する直鎖又は分枝アルキル基であり;
は、H、1個から6個の炭素原子を有する直鎖又は分枝アルキル基、フェニル、ベンジル、−CF又は−CFCF、ビニル又はアリルから選択され;R、R、Rは、水素原子であり;
或いは
とR、RとR、又はRとRは、一緒になってN、Oを含む群から独立に選択される1個から2個のヘテロ原子を含む5個又は6個の原子のベンゼン、芳香族又は脂肪族環に縮合した環を形成している]。
【請求項2】
1個から6個の炭素原子を有する直鎖又は分枝アルキル基が、−CH、−C、イソプロピル、プロピル、−C2n−1から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
とRとが次式(II)による環を形成する、請求項1に記載の化合物。
【化2】

【請求項4】
とRとが次式(III)による環を形成する、請求項1に記載の化合物。
【化3】

【請求項5】
とRとが次式(IV)又は(V)による環を形成する、請求項1に記載の化合物。
【化4】

【請求項6】
4−アミノ−N−ヒドロキシ−2−メトキシベンズアミド
5−アミノ−N−ヒドロキシ−2−メトキシベンズアミド
5−アミノ−2,3−ジヒドロベンゾフラン−7−カルボン酸
5−アミノ−2−エトキシ−N−ヒドロキシベンズアミド
6−アミノ−2,2−ジメチル−4H−ベンゾ[1,3]ジオキシン−4−オン
1,2,3,4−テトラヒドロ−6−ヒドロキシキノリン−5−カルボン酸
5−アミノ−2−イソプロポキシ安息香酸
6−メトキシキノリン−5−カルボン酸
6−メトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−5−カルボン酸
5−ジイソプロピルアミノサリチル酸
4−ジイソプロピルアミノサリチル酸
を含む群から選択される、請求項1から5までのいずれか一項に記載の式(I)の化合物。
【請求項7】
とRが、共に−CH(CHである、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
次の構造を含む、請求項7に記載の化合物。
【化5】

【請求項9】
とRが、共に−Hである、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
が−NHOHである、請求項1又は請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
次の構造を含む、請求項10に記載の化合物。
【化6】

【請求項12】
次の構造を含む、請求項10に記載の化合物。
【化7】

【請求項13】
次の構造を含む、請求項10に記載の化合物。
【化8】

【請求項14】
が−OHである、請求項9に記載の化合物。
【請求項15】
次の構造を含む、請求項14に記載の化合物。
【化9】

【請求項16】
次の構造を含む、請求項14に記載の化合物。
【化10】

【請求項17】
次の構造を含む、請求項3に記載の化合物。
【化11】

【請求項18】
有効成分として請求項1から17までのいずれか一項に記載の1つ又は複数の化合物を1つ又は複数の薬学的に許容できる賦形剤又は補助剤と組合せて含む薬剤組成物。
【請求項19】
医療分野において使用するための請求項1から17までのいずれか一項に記載の化合物又は請求項18に記載の薬剤組成物の使用。
【請求項20】
PPARγ受容体及びEGF受容体を発現する腫瘍の予防及び治療のための医薬品を調製するための請求項1から17までのいずれか一項に記載の化合物又は請求項18に記載の薬剤組成物の使用。
【請求項21】
腫瘍が、食道の腫瘍、胃の腫瘍、膵臓の腫瘍、結腸の腫瘍、前立腺の腫瘍、乳房の腫瘍、子宮及び付属器の腫瘍、腎臓の腫瘍並びに肺の腫瘍を含む群から選択されることを特徴とする、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
慢性炎症性疾患治療用の医薬品を調製するための請求項1から17までのいずれか一項に記載の化合物又は請求項18に記載の薬剤組成物の使用。
【請求項23】
慢性炎症性疾患が、クローン病及び潰瘍性結腸大腸炎を含む群から選択されることを特徴とする、請求項2に記載の使用。
【請求項24】
慢性炎症性疾患治療用の医薬品を調製するための請求項1から17までのいずれか一項に記載の化合物又は請求項18に記載の薬剤組成物の使用。
【請求項25】
化合物が、
5−アミノサリチロ−ヒドロキサム酸
3−ジメチルアミノサリチル酸
2−メトキシ−4−アミノ安息香酸
2−メトキシ−5−アミノ安息香酸
5−メチルアミノサリチル酸
4−メチルアミノサリチル酸
4−アセチルアミノサリチル酸
2−エトキシ−4−アミノ安息香酸
2−エトキシ−5−アミノ安息香酸
4−ジメチルアミノサリチル酸
2−エトキシ−4−アミノベンゾイルヒドロキサム酸
6−ヒドロキシキノリン−5−カルボン酸
2−(2−プロピル)オキシ−4−アミノ安息香酸
4−(1−ピペラジニル)サリチル酸
を含む群から選択されることを特徴とする、請求項19から24までのいずれか一項に記載の使用。
【請求項26】
化合物が、化合物5、化合物6、化合物7、化合物8、化合物9、化合物12、化合物15、化合物16、化合物18、化合物19、化合物24、化合物25、化合物27、化合物29、化合物36、化合物37、化合物41、及び化合物42を含む群から選択されることを特徴とする、請求項19から24までのいずれか一項に記載の使用。
【請求項27】
請求項1から17までのいずれか一項に記載の1つ又は複数の化合物、請求項18に記載の薬剤組成物又は請求項19から26までのいずれか一項に記載の使用によってヒト又は動物を治療することを含むヒト又は動物の治療の方法。
【請求項28】
添付の図及び表を参照して本明細書で実質的に記載されている化合物。
【請求項29】
添付の図及び表を参照して本明細書で実質的に記載されている使用。
【請求項30】
添付の図及び表を参照して本明細書で実質上記載されている薬剤組成物。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図1−3】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図6】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2009−502775(P2009−502775A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−522168(P2008−522168)
【出願日】平成18年7月24日(2006.7.24)
【国際出願番号】PCT/IE2006/000076
【国際公開番号】WO2007/010514
【国際公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(505367017)ジュリアーニ インターナショナル リミテッド (9)
【Fターム(参考)】