説明

QPSKトランシーバの自己校正及び試験の方法並びに回路

【課題】QPSK送信器/受信器集積回路を自己校正、試験する機能を得る。
【解決手段】QPSK送信器/受信器集積回路を自己校正、試験する方法及び回路が提供される。この方法及び回路により、セルラ通信中の最小ビット誤り率に対し、回路及び信号に本質的な利得不整合、オフセット電圧、及び位相誤差のような変数誤差パラメータをディジタル信号プロセッサを用いて測定し、考慮することが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は送信器/受信器の校正に係わる。本発明は、特に、QPSK送信器/受信器集積回路と、その自己校正及び試験を行う方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
セルラ電話機と通信する際に、通信の双方が信号を送信及び受信する。送信の際に、音声信号は変調、送信される。受信器は、その信号を受信し、送信された信号を再生するため復調する。理想的な場合、復調の結果として得られた信号は、送信された信号と一致する。しかし、信号及び回路に本質的な利得不整合、オフセット電圧及び位相誤差のような変数パラメータは、復調された信号を送信された信号から変化させる。
【0003】
一般的にGSMセルラ電話機の場合に、直角位相シフトキーイング(QPSK)変調スキームが使用される。QPSKは、信号に対し、90°ずつ離れた4個のベクトル成分を有する。QPSKは、この点で、180°ずつ離れた(例えば、一方が0°、もう一方が180°である)2個のベクトル成分を有するPSKとは異なる。QPSKの場合に、ベクトル成分は、座標(1,1)の45°と、座標(−1,1)の135°と、座標(−1,−1)の225°と、座標(1,−1)の315°とにあり、ここで、X軸はQチャネル(直角位相)であり、Y軸はIチャネル(同相)である。変数パラメータの計算の目的のため、Qチャネルはコサインで表わされ、Iチャネルがサインで表わされてもよい。
【0004】
理想的な条件下で、QPSKに対する4個のベクトル成分の振幅は、√2である。しかし、回路は理想的に動作しないので、信号を変調し、送信したとき、受信器端で復調された信号は、最初に送信された信号と同一のベクトル座標及び振幅を持たない。従って、受信された信号は同一データを含まない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらの不正確さは、送信及び受信の両方のチャネル及びミキサの誤差により生じる。送信及び受信ミキサの両方の利得不整合及びオフセット電圧は、両方のチャネルに本質的な位相誤差の他に、送信されたベクトル位置とは異なるベクトル位置を生じさせる。
【0006】
従って、上記誤差成分を判定する自己校正技術の機能が得られ、次に、受信器ミキサの復調された出力を数値的に補正するため、それらを元のシステムに加える回路を含むことが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、受信器及び送信器のQPSK変調スキームに最小ビット誤り率を与えるため、ディジタル信号プロセッサを用いて、回路に本質的な利得不整合、オフセット電圧及び位相誤差のようなパラメータを測定し、補償することが可能になる方法及び対応した回路の実装を提供することである。
【0008】
本発明によれば、セルラ電話機の呼の開始の際に判定された誤差を実質的に除去するため、QPSK送信器/受信器集積回路における変数パラメータを決定し、復調された信号を補償する回路及び方法が提供される。
【0009】
従って、本発明の目的は、QPSK変調スキームで動作する送信器/受信器を試験し、自己校正する方法及び装置を提供することである。
【0010】
本発明の他の目的は、QPSK変調スキームで動作する送信器/受信器に存在する誤差を判定する方法及び装置を提供することである。
【0011】
本発明の他の目的は、QPSK送信器/受信器で検出された誤差を補償する方法及び装置を提供することである。
【0012】
本発明の他の目的は、効率的かつ高信頼性で動作するQPSK送信器/受信器集積回路を試験並びに自己校正する方法及び装置を提供することである。
【0013】
本発明の他の目的及び特徴は、本発明の一実施例を開示する添付図面と共に以下の詳細な説明を考慮することにより明らかになる。しかし、図面は例示することだけを目的とし、本発明の限界を定義することを目的としないことに注意する必要がある。
【0014】
添付図面中、幾つかの観点を通じて同じ参照文字は同じ素子を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
上記の如く、QPSK変調を扱うとき、信号に関して4個のベクトル成分がある。図1aは理想的な場合のQPSKに対するベクトル位置を表わす図である。各ベクトルの座標(1,1)、(−1,1)、(−1,−1)及び(1,−1)は、十字の印×により示される。各ベクトルの振幅は、√2である。
【0016】
以下のグラフは、QPSK送信器及び受信器部の種々の誤差が信号のベクトル成分に与える影響の例を表わす。
【0017】
図1bは、変調を行った後の理想的な場合のQPSKに対するベクトル位置を表わす図である。理想的なベクトル座標の場合に際立っていた×は、ランダムな変調の結果として込み合った所に在る。
【0018】
図2は、送信器ミキサのIチャネル及びQチャネルが±0.5dbの利得不整合を有する場合のベクトル位置を表わす。特に、Q側がI側よりも小さくされている。従って、Q軸(x軸)上の全ての点は、内部へ移動し、一方、I軸(y軸)上の点は、実際的に殆ど変化しない。
【0019】
図3は、受信器ミキサのIチャネル及びQチャネルが±0.5dbの利得不整合を有する場合のベクトル位置を表わす。正味又は最終的な結果は、図2に示された結果と同一である点に注意する必要がある。かくして、送信器又は受信器のいずれか一方に利得不整合がある場合、最終的な結果は同一であり、かつ、ベクトル位置は殆どQチャネルに関して変化する。
【0020】
図4は、送信器ミキサに供給される局部発振器信号が正確に90°ではない(即ち、直角ではない)ときに生じる現象を表わす。5°の位相誤差がベクトル位置の影響を示すため取り入れられる。かくして、正確に90°ではない局部発振器信号が得られるならば、理想的なベクトル位置の垂直方向の傾斜を生じさせる。図5は、受信器端における局部発振器信号の不正確さによる同じ影響を表わす。最終的な結果は送信器端の場合と同じである。かくして、誤差が受信器又は送信器の何れにあるかは問題ではなく、偏りの影響は同じであることが分かる。
【0021】
図6は、オフセット、利得誤差、或いは、それ自体が位相シフトを表わす他の誤差の追加による影響を示す図である。上記の誤差の影響は、ベクトルを原点の周りで回転させる。例えば、上記の影響に起因して、20°の位相シフトが生じる場合が考えられる。
【0022】
図7は、受信器のIチャネルとQチャネルに10%の直流オフセット電圧があるときのベクトル位置の影響を表わす図である。このとき、ベクトル位置は、原点に関してではなく、外向きに移動する。かくして、ベクトルは、原点の周りで形が変化するのとは反対に、実際上、原点から移動する。図2乃至6により実証された幾つかの誤差の状況は、ベクトル位置及び形状が変化し、一方、原点は固定されたままであることを示す。しかし、直流オフセット電圧が生じたとき、電圧は形状を変えず、原点から離れる方へ移動させられる。
【0023】
図8は、実際に受信されたQPSK信号の場合、上記の全ての誤差の結合が行われたときにベクトル位置に与えられる影響を示す図である。理想的な場合(×)からの偏差が容易に認められる。上記の誤差がセルラ伝送に与える影響を除去するため、受信された信号を補償すべきであることが容易に分かる。
【0024】
図9は本発明の回路を表わす図である。回路は左側に送信器ブロックTxと、右側に受信器ブロックRxとを有する。ブロックTxとブロックRxとの間に設けられたリーク回路100は、送信信号の減衰を行い、次に、回路を校正するため、送信信号の受信器へのフィードバック(ループバック)を行う。リーク回路100は、受信器の設計の一部として含まれる回路ではないが、送信信号の小さい部分を受信器にフィードバックさせる。
【0025】
例えば、2台のセルラ電話機が相互に通信している場合を考える。一方の電話機は送信中であり、他方の電話機は受信中である。上記回路は、同じ電話機の受信器と送信器との間で補正を行う。従って、一方の電話機が送信中のとき、同じ電話機は送信中の信号を受信するので、同一の電話機の送信器ブロックと受信器ブロックの両方で補正を行うことが可能である。
【0026】
送信器及び受信器のミキサの利得は、Iチャネルに対し、夫々、T及びRにより表わされ、Qチャネルに対し、夫々、T及びRにより表わされる。理想的には90°である局部発振器入力信号は、Cos(ωt)及びSin(ωt)により示されるが、これらは正確ではないので、約5°の位相誤差変数αを導入する。このようにして、局部発振器入力は、Cos(ωt+α)の如く表わされる。
【0027】
検出器102、104及び106のグループが回路に含まれる。上記検出器は、ダイオード及びキャパシタとして表わされ、送信器ミキサの信号は、上記キャパシタで検出される。かくして、検出器はピーク検出器として動作する。
【0028】
送信器(Tx)ブロックは、ITxIn及びITxInXのピン3及びピン4と、QTxIn及びQTxInXのピン9及びピン10とに入力を有する。I及びQはベクトル位置であるため、I及びQの各チャネルに対し入力として座標を有する。受信器出力は、ピン15及びピン16でIRxOut及びIRxOutXと示され、ピン21及びピン22でQRxOut及びQRxOutXとして示される。信号及び回路の誤差を判定するための測定が行われるのは、上記の出力ピン15、16、21及び22である。
【0029】
検出器102、104及び106は、夫々、出力信号POUTN、POUTP及びPOUTBを与える。一定電圧Vccが検出器106に供給される。更に、リーク回路100の入力側に信号MOUTP及びMOUTNが示され、信号IFRxIn及びIFRxInXはリーク回路100の出力側にある。
【0030】
図10aはリーク回路100の一実施例を表わす図である。リーク回路100の入力は送信器ブロック(Tx)の出力であり、リーク回路の出力は受信器ブロック(Rx)の入力である。リーク回路100は、ちょうど、送信信号の出力を取り、それを非常に小さくさせて、受信器にフィードバックするため十分な減衰を与えるRC回路網である。
【0031】
入力信号MOUTP及び出力信号IFRxInの各信号を有するRC回路網は、抵抗XRPK10、XRPK12、XRPK13、XRPK14、XRPK15、XRPK16及びXRPK17と、キャパシタCPK5、CPK8及びCPK9とからなり、各抵抗及びキャパシタの値が与えられている。同様に入力信号MOUTN及び出力信号IFRxInXの各信号を有するRC回路網は、抵抗XRPK18、XRPK19、XRPK20、XRPK21、XRPK22、XRPK23及びXRPK24と、キャパシタCPK10、CPK12及びCPK13とからなる。
【0032】
図10bは、エンベロープ検出器102、104及び106の例を表わす図である。検出器104は入力MOUTPを有し、その入力は信号がVBEずつ降下するダイオードを通過し、次に、回路の中を流れ、必要なアイソレーション及び要求されたバッファリングを与えるバッファ(NMOSデバイス)を通り、これにより、出力POUTPを生じる。これは、Iチャネル検出器の一例である。回路102は回路104と同一であり、かつ、Qチャネル用の回路である。残りの検出器106は、入力がVccである点を除いて他の検出器と同じである。
【0033】
検出器106の目的は、対応する出力の部分に関し測定を行う基準ポイントを与えることである。図9のピン15、16、21及び22の出力は差動的であるため、ピン15の出力をピン16の出力に関して測定し、ピン21の出力をピン22の出力に関して測定する。かくして、ピン16及びピン22の出力は、測定用の基準ポイント又は共通ポイントになる。従って、検出器106は、変数信号ではなく、むしろこの例の場合には一定のVccである要求された直流基準をピン16及び22に供給する。
【0034】
検出器106は、QPK4と、npnデバイスと、QPK5とからなる電流ミラーと、ダイオードコネクタとを含む。直流電流PKCUR(直流バイアス電流)は、このポイントで回路に入れられ、QPK4及びQPK5の電流ミラーは、測定を行うための差又は基準になる出力POUTBに直流電圧を発生する。そこで、出力POUTNと、例えば、Qチャネル用のPOUTBとの間で測定が行われ、或いは、Iチャネルの場合には、測定は、POUTPとPOUTBとの間で行われる。
【0035】
検出器106は、抵抗XRPK5、XRPK6、XRPK7、XRPK8及びXRPK9と、キャパシタCPK3及びCPK4と、トランジスタQPK2、MPK4、MPK5及びMPK6とを更に有するエンベロープ検出器である。リセット信号PRSTと、抵抗及びキャパシタの値と、トランジスタの型番とが図示される。検出器102及び104は、検出器106と同様の構成をなすエンベロープ検出器である。検出器104は、抵抗XRPK1、XRPK2、XRPK3及びXRPK4と、キャパシタCPK1及びCPK2と、トランジスタQPK1、QPK3、MPK1、MPK2及びMPK3とからなる。検出器102は、抵抗XRPK25、XRPK26、XRPK27及びXRPK28と、キャパシタCPK14及びCPK15と、トランジスタQPK6、QPK8、MPK8、MPK9及びMPK10とからなる。
【0036】
送信器ミキサは、一致しない利得(T及びT)を有し、送信器入力にオフセット電圧(Vfi及びVfq)を含む。夫々の局部発振器(LO)信号は、変数αにより示される如く、直角から数度外れている。通信チャネルは、βにより示された別の未知の位相シフトを発生し、受信器ミキサは一致しない利得(Ri及びRq)を有する。更に、受信器は、Qチャネル及びIチャネルに対し、夫々、総オフセット電圧Voffq及びVoffiを生じる(図9)。
【0037】
上記の変数の結果として、上記変数パラメータが求められる測定の組を見つけることができた。この解析の目的のため、入力信号はI及びQであり、ループバック後の出力信号は、I及びQで表わすことにする。更に、送信器利得不整合をD=T/Tにより定義し、受信器利得不整合をDR=Ri/Rqにより定義する。従って、ローパスフィルタ処理の前に受信器ブロック(Rx)から生じる信号は、以下の式、
[(I+Vfi)TiCos(ωt+α+β)+(Q+Vfq)TqSin(ωt+β)]・RqSin(ωt)+Voffq (1)
[(I+Vfi)TiCos(ωt+α+β)+(Q+Vfq)TqSin(ωt+β)]・RiCos(ωt)+Voffi (2)
で表わされる。上記式の拡張により、2ωtの倍数成分が得られる。したがって、かかる信号をローパスフィルタに通したとき、2ωtの成分は相殺され、I出力及びQ出力に得られる信号は、
Io=0.5[(I+Vfi)TiRiCos(β)+(Q+Vfq)TqRiSin(β-α)]+Voffi (3)
Qo=0.5[(I+Vfi)TiRq(-Sin(α+β))+(Q+Vfq)TqRqCos(β)]+Voffq (4)
と表わされる。上記の式(1)乃至(4)には、10個の未知数がある。4個の可能な入力があるので、(I及びQの所定の4個のベクトル位置)変数の中の2個に関して適当な仮定を立てることにより、全ての未知数は残りの8個の式の組を解くことにより計算することが可能である。しかし、残念ながら、得られる式は独立ではない。従って、変数パラメータを解くためには更なるデータが必要である。
【0038】
送信器回路内のIチャネル側及びQチャネル側の一方だけをターンオフする可能性があると仮定するならば、より多数の式が得られる。かくして、Q側をターンオフし、I側を動作的な状態に保つならば、以下の二つの出力
[(I+Vfi)TiCos(ωt+α+β)]・RiCos(ωt)+Voffi (5)
[(I+Vfi)TiCos(ωt+α+β)]・RqSin(ωt)+Voffq (6)
に達する。ここで、再度、上記式を拡張し、かつ、2ωt成分を除去するためローパスフィルタを通すことにより、I出力及びQ出力に得られる信号は、
Ioi=0.5[(I+Vfi)TiRiCos(β)]+Voffi (7)
Qoi=0.5[(I+Vfi)TiRq(-Sin(α+β))]+Voffq (8)
のように表わされる。
【0039】
次に、送信器のI側をターンオフし、Q側を動作的な状態に保つならば、以下の式
[(Q+Vfq)TqSin(ωt+β)]・RiCos(ωt+α)+Voffi (9)
[(Q+Vfq)TqSin(ωt+β)]・RqSin(ωt)+Voffq (10)
が得られる。再度、上記式を拡張し、かつ、2ωt成分を除去するためローパスフィルタを通すことにより、I出力及びQ出力に得られる信号は、
Ioq=0.5[(Q+Vfq)TqRiSin(β-α)]+Voffi (11)
Qoq=0.5[(Q+Vfq)TqRqCos(β)]+Voffq (12)
である。上記の式を用いて、未知数の計算を開始する。
受信器オフセット電圧
送信器部のI及びQパスを互いに独立にさせることにより、Iチ及びQチャネルに対し、受信器オフセット電圧Voffi及びVoffqを以下の通り判定することが可能である。
【0040】
offi=Io−Ioq−Ioi (13)
offq=Qo−Qoq−Qoi (14)
送信器利得不整合
この場合、送信器から入来する信号レベルを検出するため、エンベロープ検出器102、104及び106(図9)を使用する。従って、EdiをIチャネル信号レベル、EdqをQチャネル信号レベル、及び,EVccを基準信号として定義する。
【0041】
di=Vcc−VBE−VGS+(ITipeak (15)
dq=Vcc−VBE−VGS+(QTqpeak (16)
上記の式から、送信器利得比は、
Vcc=Vcc−VBE−VGS (17)
T=ζ(Edi−EVcc)/ζ(Edq−EVcc) (18)
として表わされ、式中関数ζは信号の交流成分に比例する直流成分を取り出す。
【0042】
送信器入力電圧が、BG&0(ケース1)及び0&BG(ケース2)であるならば、同じ信号を計算する第2の方法は、次式、
DT=(Edi1+Edi2-2EVcc)/(Edq1+Edq2-2EVcc) (19)
を使用することである。この例の場合に、送信器入力は、動的な入力ベクトルが必要とされた前の例とは反対に、静的な小さい又は大きい信号により駆動される。
【0043】
送信器オフセット電圧
送信器入力電圧が、BG&0(ケース1)及び0&BG(ケース2)である場合を想定するならば、オフセット電圧は以下の式、
Vfi=VBG(Edi1-Edi2)/(Edi1+Edi2-2EVcc) (20)
Vfq=VBG(Edq1-Edq2)/(Edq1+Edq2-2EVcc) (21)
から計算される。
【0044】
位相誤差α及びβの計算
各ベースバンド入力信号I及びQは、H及びLと称される二つの値が割り当てられる。このようにして、以下の式が得られる。
【0045】
IoiH-IoiL=0.5[(H-L)TiRiCos(β)] (22)
IoqH-IoqL=0.5[(H-L)TqRiSin(β-α)] (23)
QoiH-QoiL=0.5[(H-L)TiRq(-Sin(α+β))] (24)
QoqH-QoiL=0.5[(H-L)TqRqCos(β)] (25)
(IoqH-IoqL)/(IoiH-IoiL)=(Tq/Ti)(Sin(β-α)/Cos(β)) (26)
(QoiH-QoiL)/(QoqH-QoqL)=(Ti/Tq)(-Sin(α+β)/Cos(β)) (27)
更に2個の補助変数を
(IoqH-IoqL)/(IoiH-IoiL)=(Tq/Ti)Y (28)
(QoiH-QoiL)/(QoqH-QoqL)=(Ti/Tq)(-X) (29)
Y=Sin(β-α)/Cos(β) (30)
X=Sin(α+β)/Cos(β) (31)
YCos(β)=Cos(α)Sin(β)-Cos(β)Sin(α) (32)
XCos(β)=Cos(α)Sin(β)+Cos(β)Sin(α) (33)
のように定めるならば、α及びβの値は容易に計算され、
α=Sin-1[(X-Y)/2] (34)
β=tg-1[(X+Y)/(2Cos(α))] (35)
が得られる。
【0046】
受信器利得不整合
上記の如く得られた式から、受信器利得不整合DRは、以下の式
RT=(IoiH−IoiL)/(QoqH−QoqL) (36)
から得られ、式中、DT及びDRは、
T=Ti/Tq及び DR=Ri/Rq
となるように予め定義されている。
【0047】
上記の計算を実行し、未知数を決定するため、受信器部の作動及び作動解除が可能であるだけではなく、Iチャネル及びQチャネルを独立に制御し得ることが必要である。この制御は、論理制御信号TC5、TC6、TC7、TC10及びTC11により与えられる(図9)。上記論理信号は、回路の異なるパスを実際に許可状態及び禁止状態にさせるので、より多くの測定値を得ることが可能になる。
【0048】
論理制御信号は、呼の開始の際にセルラ電話機内のマイクロプロセッサ又は他のインテリジェンスから与えられる。開始の際に、上記制御信号は入力の一部となり、チャネル及び回路にいかなる誤差があるかを判定するため測定が行われる。上記の誤差判定は、例えば、温度、場所等の現時の状況に基づいて行われる。測定が行われ、校正が終了した後、論理信号の要求が満たされる。
【0049】
制御信号TC5は、送信器信号の一部分の受信器へのループバック(フィードバック)を作動し、これにより、校正測定が行えるようにする。ハイのTC5信号は、送信信号のループバックを許可する。校正が終了した後、TC5信号はローに変わり、ループバック条件を禁止する。信号TC6及びTC7は、送信器部ブロックのI及びQチャネルのターンオン及びターンオフを互いに独立に制御する。上記の如く、これにより付加的な式(5)乃至(14)の決定と、引き続く誤差成分の計算とが可能になる。制御信号TC6及びTC7に対する信号定義は、以下の通りである。
【0050】
TC6 TC7
ロー ハイ 送信I及びQチャネルパワーアップ
ロー ハイ 送信Iチャネルパワーアップ、Qチャネル
パワーダウン
ハイ ハイ 送信Qチャネルパワーアップ,Iチャネル
パワーダウン
ハイ ハイ 送信I及びQチャネルパワーアップ
制御信号TC10は、ピーク検出器102、104及び106内のキャパシタの放電を許可する。新しい呼が開始されると共に、新しい測定値の組を得ることが必要であり、ピーク検出器102、104及び106内のキャパシタは、その中に蓄えられた前の測定値からの情報が未だ残っているので、放電させる必要がある。かくして、呼の開始の際に、制御信号TC10は、上記キャパシタを短絡するだけで上記キャパシタを放電する。TC10がローであるならば、検出器はオープンのままにされ、TC10がハイであるならば、検出器キャパシタは短絡される。
【0051】
制御信号TC11は、送信器部において必要な測定量を得るため、受信器部Rxの作動解除を許可する。かくして、TC11がローであるとき、受信器部はパワーアップされ、TC11がハイであるとき、受信器部はパワーダウンされる。
【0052】
制御信号TC5、TC6、TC7、TC10及びTC11は、プログラムされたマイクロコントローラ(詳細に図示しない)により発生され、上記のパワーアップ又はダウン、ループ許可又は禁止、或いは、キャパシタの短絡が行われるように送信器又は受信器部の関連部に供給される。図9に示されたマイクロコントローラ制御形スイッチSW1、SW2、SW3及びSW4は、上記の機能が行われるように、出力信号POUTP、POUTN及びPOUTBを送信器又は受信器部の関連部に結合する。
【0053】
本発明の一実施例を図示、説明したが、請求の範囲に記載されているように、本発明の精神及び範囲を逸脱することなく、多数の変形及び置換を行い得ることを理解する必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1a】QPSKの4個の理想的なベクトル位置を表わすグラフである。
【図1b】復調後の理想的な場合に対するランダムなベクトルシーケンスを表わすグラフである。
【図2】送信器ミキサが±0.5dbの利得不整合を有する場合のベクトル位置を表わすグラフである。
【図3】受信器ミキサが±0.5dbの利得不整合を有する場合のベクトル位置を表わすグラフである。
【図4】送信器局部発振器信号が正確には直交しないときのベクトル位置を表わすグラフである。
【図5】受信器局部発振器信号が正確には直交しないときのベクトル位置を表わすグラフである。
【図6】通信チャネル及びフィルタに起因して、送信器信号と受信器信号との間に遅延がある場合のベクトル位置を表わすグラフである。
【図7】受信器のIチャネルとQチャネルに10%の直流オフセット電圧がある場合のベクトル位置を表わすグラフである。
【図8】図2乃至7の全ての誤差が結合された場合のベクトル位置を表わすグラフである。
【図9】本発明による回路の概略構成図である。
【図10a】図9のリーク回路の一実施例の概略構成図である。
【図10b】図9のピーク検出器回路の一実施例の概略構成図である。
【符号の説明】
【0055】
3、4、9、10 入力ピン
15、16、21、22 出力ピン
102、104、106 エンベロープ検出器
100 リーク回路
Tx 送信機ブロック
Rx 受信機ブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
IチャンネルとQチャンネルとを有するトランシーバにおけるQPSK送信器/受信機回路の自己較正及び試験する方法であって、
送信開始時に、上記QPSK送信器/受信器回路及び信号に在る誤差を判定する段階と、
上記Iチャンネル及びQチャンネルを制御する制御信号を生成する段階と、
送信器ブロックで生成された混合送信信号をリーク回路に送信する段階と、
上記リーク回路に結合した受信器ブロックに出力送信信号の小さい部分をフィードバックする段階と、
上記判定された誤差を補償して、上記QPSK送信機/受信器回路の間に実質的に誤差の無い接続を設ける段階と、を有する方法であって、
上記QPSK送信器/受信機に在る誤差を判定する段階は、
上記送信器ブロックに結合した検出器手段において上記混合送信信号を検出する段階と、
上記検出器手段の出力において、上記混合出力送信信号のピークを表す出力信号と基準源出力信号とを生成する段階と、
上記基準源出力信号と上記受信機ブロックの出力を用いて、与えられた送信信号と回路全体に含まれる誤差を判定するために上記回路にその回路動作を測定させる段階であって、上記出力信号は上記回路動作を測定するために使用される上記混合出力送信信号のピークを表すところの段階と、をさらに含み、
上記回路と信号にある誤差を判定する段階は、
前記判定された誤差を表す変数を有する1組の数学式を生成する段階と、
前記判定された誤差を表す前記変数の数値を計算する段階と、
をさらに有することを特徴とする方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10a】
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【図10b】
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【公開番号】特開2007−116711(P2007−116711A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−285341(P2006−285341)
【出願日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【分割の表示】特願平9−514870の分割
【原出願日】平成8年10月3日(1996.10.3)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】