説明

R−非ステロイド性抗炎症薬エステル及びそれらの使用

【解決手段】本発明は非ステロイド性抗炎症薬のR-鏡像体のエステルに関し、これはS-鏡像体を実質的に含まない。本発明の化合物は哺乳類における疾病又は病気の処置において用いることができる。このために、上述の化合物か、又は塩の形成が起こる際の薬学的に許容できるその塩を含有する組成物を、哺乳類に対して、化学的防止効果又は化学的保護効果又は治療上の効果又は予防的効果を引き出すのに十分な量において投与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
本発明は、様々なR-NSAID(非ステロイド性抗炎症薬)エステル及び病気及び疾病の処置におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
新生物性の疾病は、細胞の異常な増殖が新生物又は腫瘍と称される組織の塊をもたらす状態のものである。新生物は、構造及び挙動において様々な異常レベルを持つ。いくつかの新生物は、他が悪性又は癌性である一方で、良性である。新生物性の疾病の有効な処置は、癌の予防的な又は治療的な手法のための探索への貴重な貢献と考えられる。
【0003】
消化管は、直腸及び結腸を含み、高い増殖速度を持つ上皮細胞で囲まれる。結腸の内膜は、特に、上皮細胞の円柱状の列からなり、一連の陥凹又は陰窩により特徴付けられる。陰窩の底部分領域における上皮細胞は増殖し、及び陰窩の頂部分に向かって上向きに移動する。正常な結腸では、大腸の増殖領域は、普通、陰窩の基底部分か、又はより一層深い4分の3を占める。陰窩の上側領域への細胞増殖帯域の拡張と結腸癌との間で、関係が観察される。M. Lipkin(リプキン)、“Biomarkers of Increased Susceptibility to Gastrointestinal Cancer(胃腸癌への高められた感受性の生物マーカー):New Application to Studies of Cancer Prevention in Human Subjects(ヒト対象における癌防止の検討への新しい適用)”、Cancer Research(キャンサー・リサーチ)、Vol. 48(第48巻)、pp 235-245(第235〜245頁)(1988年1月15日)参照。
【0004】
結腸の癌は、西洋世界で普通に見られ、罹病率及び死亡率の重要な原因であり、米国の人口において約5%の発生率を持っている。他の種類の癌と同じように、消化管の癌は、結腸癌を含め、消化管での細胞増殖及び分化の異常な発達により特徴付けられる。
【0005】
結腸癌及び他の胃腸癌について危険性があるすべての個体、特に45齢にわたる個体についての化学的防止剤のための徹底的な探索が行なわれている。1種のクラスの潜在的に治療上有用な化合物は、非-ステロイド性の抗-炎症薬(“NSAIDs”)である。NSAID’sは、目下、抗炎症剤として、及び鎮痛剤として普通に用いられ、新形成の化学的防止、及び他の抗-新生物性の利点を持つことが知られている。生理学的に、NSAID’sは、プロスタグランジンの生合成を、シクロオキシゲナーゼ酵素の阻害によって抑制することが知られており、この酵素は哺乳類組織において遍在する。Buckley(バックリー)等の、Drug(ドラッグ)、39(1): 86-109(1990年)参照。結腸直腸の癌の防止におけるNSAID’sの役割がHeath(ヒース)等、“Nonsteroidal Antiinflammatory Drugs and Human Cancer(非ステロイド性抗炎症薬及びヒト癌)”、Cancer(キャンサー)、Vol. 74、No. 10(第10号)、pp. 2885-2888(1994年11月15日)において論議されている。
【0006】
しかし、結腸癌防止におけるNSAID’sの使用は、深刻な望ましくない副作用と関連しており、それらには、胃腸、腎臓及び肝臓の毒性、並びに血小板機能の破壊(例えば、血小板減少症)による出血時間の増加、及び子宮効果による妊娠の延長が包含される。一定のNSAID’sの使用と関連付けられるもう一つの重大な副作用は、白血球減少症(血中での減少した白血球計数)、及び結果的な顆粒球減少症である。
【0007】
顆粒球減少症は、極めて急速に発達し、及び定期的な白血球計数でさえ検出し難い重篤な状態である。白血球減少症/顆粒球減少症症候群は、インドメタシン、ケトプロフェン、及びイブプロフェンのような種々のNSAID’sについて記述されている。実際、かかるNSAID’sは、患者の免疫系が、HIV感染、化学療法、イオン化照射、副腎皮質ステロイド、免疫抑制剤、等によってか、又は気腫、気管支拡張症、糖尿病(真性糖尿病)、白血病、火傷及び同種のもののような条件によって危うくされる患者において禁忌である。近年のNSAID’sの有害効果の評論は、Borda(ボルダ)等の“NSAIDs: A Profile of Adverse Effects(有害効果のプロファイル)”、Hanley and Belfus, Inc.(ハンリー・アンド・ベルフス社)、フィラデルヒィア、Pa.(米国ペンシルベニア州)、1992年である。
【0008】
アスピリン及びNSAID’sの双方が結腸癌に対する保護を与えることを示す、つい最近の疫学的サーベイは、Peleg(ペレグ)等の、“Aspirin and Nonsteroidal Anti-inflammatory Drug Use and the Risk of Subsequent Colorectal Cancer(アスピリン及び非ステロイド性抗炎症薬の使用及び結果的な結腸直腸癌の危険性)”、Arch. Intern. Med.(アチーブ・オブ・インターナル・メディシン)、Vol. 154、pp. 394-400(1994年2月28日)である。この参考文献は、インドメタシン、スリンダク及びピロキシカム(peroxicam, piroxicam)のようなNSAID’sの使用と、大きな腸(大腸)及び直腸の癌の防止との間の因果関係を識別する。しかし、リスク便益分析が、深刻な潜在的な胃腸及び腎臓の副作用により、特に年配者において示唆される。
【0009】
結腸癌についての標準的な処置は、目下、既知の抗癌剤、5-フルオロウラシルを駆虫剤のレバミソールと併用した投与からなる。5-フルオロウラシルを単独で投与するとき、結腸癌患者間の生存率の改善は示されなかった。レバミソールの添加は、免疫系を刺激し、及びT-細胞計数を増加させることが知られており、これらの患者間の優れた生存率を示した。Mortel(モルテル)等の、“Levamisole and Fluorouracil for Adjuvant Therapy of Resected Colon Carcinoma(切除された結腸癌腫のアジュバント療法のためのレバミソール及びフルオロウラシル)”、N Engl J Med(ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン)、1990年; 322: 352-358参照。
【0010】
多くのNSAID’sは分子キラリティを見せ、及び従って、R-及びS-の鏡像体を持つ。かかる化合物は、典型的に、ラセミ混合物として生産され、次いで、それを個々の鏡像体に分離させることができる。
【0011】
いくつかの2-アリールプロピオン酸NSAID’sの鏡像体は、Yamaguchi(ヤマグチ)等の、Nippo Yakurigaku Zasshi(日本薬理学雑誌)、90: 295-302(1987年)において論議されている。Yamaguchi等は、2-アリールプロピオン酸のS-鏡像体が、ラットにおいて、R-鏡像体よりも15〜300倍高いプロスタグランジン合成酵素抑制活性を持つことを述べている。
【0012】
Caldwell(カルドウェル)等の、Biochem. Pharmacol.(バイオケミカル・ファルマコロジ) 37: 105-114(1988年)は、ラセミ薬剤が投与されるとき、“せいぜい、2-アリールプロピオン酸のR-異性体が、治療上活性なS-形態のためのプロドラッグとしての役目を果たす”ことを主張し、及び従って、活性なS-鏡像体の治療上の効果及び毒性効果の双方を加える。Caldwell等は、更に、“最悪の場合でも、R-鏡像体が活性な薬物における望ましくない不純物である”ことを強く主張し、非-立体選択的な毒性のための困難さを引き起こす。それらの著者は、S-異性体の単独での使用がこのクラスの薬物のより一層安全で、及びより一層有効な使用を提供するべきであることを示す。
【0013】
同様に、これらの2-アリールプロピオン酸の鏡像体の薬物動態が、少なくとも部分的には、R-鏡像体の単方向性の代謝性のS-鏡像体への転化により異なることは、一般化されている。しかしながら、この相互変換が、それが投与される特定の化合物及び特定の種に左右されることが見出された。Jamali(ジャマリ)、Eur. J. Drug Metabolism Pharmaco.(ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・ドラッグ・メタボリズム・アンド・ファーマコキネティックス) 13: 1-9(1988年)。
【0014】
以前に記述された毒性及び副作用のために、多くのNSAID’sはヒトの薬剤において鎮痛剤としてもはや使用されない。これらのNSAID'sのいくつかには、チアプロフェン酸、スプロフェン、カルプロフェン、ピルプロフェン及びインドプロフェンが包含される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
必要性が、結腸直腸の及び他の癌を含む新生物性の疾病を処置するのに有効であり、及び胃腸毒性に関してより一層容認できるNSAID’sの新しい調剤物のために識別された。したがって、新形成及び結腸直腸癌の防止のためのものであるが、前述の欠点のない組成物及び方法を提供することが特に好ましい。
【0016】
有効な処置が必要な別の疾病は嚢胞性線維症である。嚢胞性線維症(CF)は常染色体性劣性パターンの伝送に続く遺伝性の疾病である。それは米国における最も一般的な致死的な遺伝病である。白人のおよその頻度は2000に1である。嚢胞性線維症は異常な外分泌の及び外分泌腺の機能によって特徴付けられる。特に、粘液腺は、慢性の肺疾病、不十分な膵臓及び消化の機能及び異常に濃縮された汗を導く粘稠(ちょう)性分泌を生産する。
【0017】
CFの病因学の最も顕著な理論は、外分泌性の分泌の生理化学的な特性、外分泌腺の分泌の規制、電解物の輸送及び血清における異常性における変化に焦点を合わせている。典型的な症状(presentations)には、風邪のような早発性の呼吸徴候、及び後年になっての反復性の呼吸器感染が含まれる。CFの患者は時間と共に肺機能を低下させ、及びそれらの痰培養物がS. aureus(黄色ブドウ球菌)、P. aeruginosa(緑膿菌)及びP. capacia(シュードモナス・セパシア)を提示することが多い。
【0018】
CFの罹病率の主要な原因は肺の疾病である。CFの患者の98%よりも多くが呼吸不全又は肺の合併症のいずれかで死亡する。抗生物質は生存を高める際のキー要素である。50年代に先立って、現代の抗生物質が利用可能になり始めたとき、患者は典型的に数年間だけ生存した。現在、中央の生存年齢は24である。結果的に、細菌病巣の洗浄の手段としての好中球機能の刺激は、処置の適切な焦点であると考えられるが;しかし、得られる炎症反応は他の合併症をもたらすことがある。
【0019】
嚢胞性線維症の患者における4年の期間にわたるラセミ化合物のイブプロフェンの高い投与量が肺の疾病の進行を遅らせることが報告されている〔M. W. Konstan(コンスタン)等の、New England J. Med. 1995年; 332: 848-854〕。しかし、S(+)-イブプロフェンの存在による胃腸の副作用が、この療法、特に高い投与量での、及びラセミ化合物としての、連用(慢性的な使用)を厳しく制限する〔Wechter(ウェクター), W. J. J. Clin Pharmacol.(ジャーナル・オブ・クリニカル・ファーマコロジ)、1994年; 34: 1036-1042及びWechter等のChirality(キラリティ)、1993年; 5: 492-494参照〕。ラセミ化合物のイブプロフェンの高い投与量が胞状の間隙(alveolar crevice)への好中球の流入を抑制する一方で、低い投与量は好中球の流入を増加させると考えられている。また、Konstanの検討において用いる高い投与量は結膜炎及び鼻出血を引き起こすようである。
【0020】
また、有効な処置が必要なもう一つの病気は、特定の神経細胞の亜集団の広範な損失と関連し、及び激しい精神的な悪化及び最終的な死を次第に導く、記憶、認知、理性、判断及び情動安定性の進行性の損失によって臨床的に特徴付けられる退行性脳障害である、アルツハイマー型の疾病(AD)を含む痴呆(認知症)である。ADは加齢のヒトにおける進行性の精神不全(痴呆)の一般的原因であり、及び米国における死の最も一般的な医学上の原因の四分の一を示すと信じられる。ADは世界的な多様な種及び民族群において観察され、及び主要な現在の及び未来の公衆衛生上の問題を表す。この疾病は、目下、米国単独において4百万までの個体に影響を与えると推定される。今日までに、ADは難病であることが分かり、及び現在、50,000までの死が毎年起っている。
【0021】
ADを患う個体の脳は、アミロイド形成的プラーク、管のアミロイド脈管障害、及び神経原線維変化として様々に称される神経の変性及び特徴的病変を見せる。多数のこれらの病変、特にアミロイド形成的プラーク及び神経原線維変化は、ADを患う患者において、記憶及び認知の機能のために重要なヒトの脳のいくつかの区域において、一般に見出される。より一層限られた解剖的な分布におけるより一層小数のこれらの病変は、臨床的なADを持たないほとんどの加齢したヒト、並びにダウン症候群及びオランダ-タイプのアミロイド症を伴う遺伝性の脳の出血(Hereditary Cerebral Hemorrhage with Amyloidosis)に苦しむ患者において見出される。
【0022】
現在、特定のアミロイド形成的タンパク質、ベータ-アミロイドタンパク質(ベータAP)の進行性の脳の析出が、ADの病因において影響力の大きい役割を担い、及び数年か、又は数十年まで認知の徴候に先行することがあると考えられている。最近、ベータAPが培地中で増殖する神経細胞から放出され、及び正常な個体及びAD患者の双方の脳脊髄液(CSF)において存在することが示された。
【0023】
プラークの病理学への可能な相関は、培養された神経細胞に向かう直接のベータAPの神経毒性を例証するいくつかの群によって開発された。つい最近、直接の神経毒性に加え、ADの脳における炎症性反応が、多分、ベータAPによって引き出され、また、疾病の病理学に寄与する。NSAIDインドメタシンを用いる限られた臨床試験は、アルツハイマー型の痴呆の進行における遅延を見せた〔Rogers(ロジャース)等の、Science(サイエンス)、266: 1719-1720(1993年)〕。
【0024】
ADを処置する以前の方法は、例えば、U. S. Pat.(米国特許)No. 5,576,353〔N-プロパルギル-アミノインダン(aminoindan)化合物の使用〕及びU. S. Pat. No. 5,552,415(ラロキシフェン及び関連化合物の使用)に開示されている。継続的な必要性は、ADを防ぎ、遅らせ、及び処置するための有効な方法について存在する。
【0025】
最近、結腸直腸癌、及び乳癌のような他の新生物性疾病を防ぐのに使用するための組成物が、U. S. Patent(米国特許) Nos. 5,981,592及び5,955,504に開示された。組成物は、鏡像異性的に安定なR-NSAID又はその薬学的に許容可能な塩を、化学的防止効果を誘発するのに有効な量において含有する。組成物はR-NSAIDのS-鏡像体を実質的に含有しない。組成物の治療上の使用には有害な副作用を減少させることを伴う。嚢胞性線維症を処置する方法は、また、前述の組成物を使用して開示される。なお、組成物はアルツハイマー型疾病の処置において有用であることが見出された。
【0026】
継続的な必要性は、新生物性疾病、炎症、嚢胞性線維症、痴呆、及び同種のものの処置において有用である組成物について存在する。組成物は組織への侵入について可能にされるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0027】
(発明の概要)
本発明の1具体例は、化合物であり、それは、S-鏡像体を実質的に含まない非-ステロイド性の抗-炎症性薬物のR-鏡像体のエステルであり、ここでは、エステル化剤は、3〜6個の炭素原子、少なくとも1個のヒドロキシル基、及び随意に、1個又はそれよりも多いカルボキシル基、1〜4個のヒドロキシル基、1個又はそれよりも多いアルデヒド基、ガンマラクトン、デルタラクトン、アミン、イミン、ラクタム及び同種のものから構成される。本発明の化合物は哺乳類における疾病又は病気を処置するのに用いることができる。このため、鏡像異性的に安定な形態の上述の化合物を含む組成物を、哺乳類に対し、化学的保護効果又は治療上の効果又は予防的効果を誘発するのに十分な量において投与する。
【0028】
本発明の別の具体例は、化合物であり、それは、S-鏡像体を実質的に含まない非-ステロイド性の抗-炎症性薬物のR-鏡像体のエステルであり、ここでは、エステル化剤は、非-環状(non-cyclic)であり、及び3〜6個の炭素原子、少なくとも1個のヒドロキシル基、及び随意に、1個又はそれよりも多いカルボキシル基、1〜4個のヒドロキシル基、1個又はそれよりも多いアルデヒド基、及び同種のものから構成される。
【0029】
本発明の別の具体例は、化合物であり、次の式:
{Q-CH(A)-CH(D)-J-Q1}-OC(O)W
式中、-OC(O)Wと無関係なとき、
Aは、OH、H、NH2、保護基、又は所定のレベルの水溶性を与える基であり、
Dは、OH、H、NH2、保護基、又は所定のレベルの溶解性を水に与える基であり、
式中、Jは、C(G)=C(G)、(CH(G))nであり、
nは0、1又は2であり、及び
ここで、-OC(O)Wと無関係なとき、
Gは、無関係に、OH、H、NH2、保護基、又は所定のレベルの水溶性を与える基であり、
式中、炭素が-OC(O)Wと無関係なとき、
Qは、H、CH-OH、CH3、COOH又はCHOであり、
Q1は、H、CH-OH、CH3、COOH又はCHOであり、
式中、Q1がCOOHであるとき、nは1又は2であり、及びA又はDはOHであり、Q1はA又はDと一緒にしてラクトンを形成することができ、及び
式中、A、D、G、Q又はQ1の1種だけが-OC(O)Wを含み、及び
式中、WはS-鏡像体を実質的に含まないR-NSAID類似体である
の化合物である。
【0030】
本発明の別の具体例は、化合物であり、次の式:
{Q-CH(A)-CH(D)-J-Q1}-OC(O)W
式中、-OC(O)Wと無関係なとき、
Aは、OH、H、NH2、保護基、又は所定のレベルの水溶性を与える基であり、
Dは、OH、H、NH2、保護基、又は所定のレベルの溶解性を水に与える基であり、
式中、Jは、C(G)=C(G)、(CH(G))nであり、
nは0、1又は2であり、及び
ここで、-OC(O)Wと無関係なとき、
Gは、無関係に、OH、H、NH2、保護基、又は所定のレベルの水溶性を与える基であり、
式中、炭素が-OC(O)Wと無関係なとき、
Qは、H、CH-OH、CH3、COOH又はCHOであり、
Q1は、H、CH-OH、CH3、COOH又はCHOであり、
式中、A、D、G、Q又はQ1の1種だけが-OC(O)Wを含み、及び
式中、WはS-鏡像体を実質的に含まないR-NSAID類似体である
の化合物である。
【0031】
本発明の別の具体例は、化合物であり、次の式:
{Q-CH(A)-CH(D)-J-Q1}-OC(O)W
式中、-OC(O)Wと無関係なとき、
Aは、OH、H、NH2、保護基、又は所定のレベルの水溶性を与える基であり、
Dは、OH、H、NH2、保護基、又は所定のレベルの溶解性を水に与える基であり、
式中、Jは(CH(G))nであり、
nは0、1又は2であり、及び
Gは、無関係に、OH、H、NH2、保護基、又は所定のレベルの水溶性を与える基であり、
式中、炭素が-OC(O)Wと無関係なとき、
Qは、H、CH-OH、CH3、COOH又はCHOであり、
Q1は、H、CH-OH、CH3、COOH又はCHOであり、
式中、Q又はAの1種だけが-OC(O)Wを含み、及び
式中、WはS-鏡像体を実質的に含まないR-NSAID類似体である
の化合物である。
【0032】
本発明の別の具体例は、化合物であり、S-鏡像体を実質的に含まない非ステロイド性抗炎症薬のR-鏡像体のアスコルビン酸エステルである。本発明の化合物は哺乳類における疾病又は病気を処置するのに用いることができる。このため、鏡像異性的に安定な形態の上述の化合物を含有する組成物を、哺乳類に対して、化学的保護効果又は治療上の効果又は予防的効果を誘発するのに十分な量において投与する。
【0033】
本発明の別の具体例は、化合物であり、式1:
【化1】


式中、Yは、S-鏡像体を実質的に含まないR-NSAID類似体であり、
Xは、H、保護基、又は所定のレベルの水溶性を与える基である
の化合物及びその他である。
【0034】
本発明の別の具体例は、上述の化合物を製造するための方法である。アスコルビン酸の隣接環ヒドロキシ基を保護基と反応させる。得られるアスコルビン酸の末端ヒドロキシ基をR-NSAIDの活性化形態と反応させ、及び保護基を除去して上記化合物を得る。
【0035】
本発明の別の具体例には、疾病-状態を持つ哺乳類に対する投与に適切な組成物が包含され、この組成物は、上記化合物の、治療上有効な量、又は化学的予防性の量を含有する。
【0036】
本発明の別の具体例は、疾病状態を持つ哺乳類の処置用の方法に関し、これには、上記化合物の、治療上有効な量、又は化学的予防性の量を投与する工程が含まれる。
【0037】
本発明の他の局面は、上記式の化合物を、1種又はそれよりも多くの種類の薬学的に許容できる、無毒性担体との混合物において含有する薬学的組成物に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
(発明の特定の具体例の詳細な記述)
意外にも、例えば、NSAIDsのR-異性体の、S-異性体を実質的に含まない、アスコルビン酸エステルのような、特定の鏡像異性的に安定なエステルが、様々な疾病及び病気の処置において極めて有効であることを見出した。異性体は同じ分子式を持つ異なる化合物である。前述のエステルは、エステルが中枢神経系中への血液脳関門を介する通過で特に容易なため、非エステルの対応物よりも一層有利である。さらに、選定したNSAIDのS-鏡像体を実質的に含まないNSAIDのR-異性体のアスコルビン酸エステルを含有する組成物の投与は、NSAID’sのS-鏡像体又はラセミ化合物の混合物の投与と関連した有害作用における十分な減少を伴う。かかる有害作用には、制限されないが、血小板減少症及び結果としての出血時間における増加;白血球減少症及び顆粒球減少症;妊娠の延長;胃及び腸の潰瘍形成及び侵食のような胃腸毒性;乳頭壊死及び慢性の間質性腎炎のような腎毒性;及び黄疸、急性肝炎及び肝不全のような肝臓毒性が包含される。
【0039】
対象の発明を更に説明する前に、本発明が、後述する発明の特定の具体例に制限されないことを理解すべきであり、その理由は、特定の具体例の変形がもたらされ、及び添付した請求の範囲の範囲内にまだ入るかもしれないからである。また、採用する専門用語は特定の具体例を説明するためのものであり、及び制限することを意図していないと理解されるべきである。代わりに、本発明の範囲は添付した請求の範囲によって確立される。
【0040】
(発明の化合物)
いくつかの具体例において、本発明にかかる組成物は、NSAIDのR-異性体の少なくとも1種の鏡像異性的に安定なエステルを含有する。エステル化剤は、3〜6個の炭素原子、少なくとも1個のヒドロキシル基、及び随意に、1個又はそれよりも多いカルボキシル基、1〜4個のヒドロキシル基、1個又はそれよりも多いアルデヒド基、ガンマラクトン、デルタラクトン、アミン基、イミン基、ラクタム及び同種のものから構成することができる。
【0041】
本明細書で用いる用語“できる”、“随意の”又は“随意に”は、ときには、同義的に、続いて記述される情況が起こるかもしれないか、又は起こらないかもしれないで、結果として、その記述が、その情況が起こる場合及びそれが起こらない場合を包含することを意味する。
【0042】
本発明のいくつかの具体例において、化合物は、S-鏡像体を実質的に含まない非ステロイド性抗炎症薬のR-鏡像体のエステルであり、そこでは、エステル化剤が、非環状であり、及び3〜6個の炭素原子、少なくとも1個のヒドロキシル基、及び随意に、1個又はそれよりも多いカルボキシル基、1〜4個のヒドロキシル基、1個又はそれよりも多いアルデヒド基、及び同種のものを包含する。用語“非環状”は、エステル化剤がリング構造を含まないことを意味する。
【0043】
いくつかの具体例では、エステル化剤は次の式:
Q-CH(A)-CH(D)-J-Q1
式中、Aは、OH、H、NH2、保護基、又は所定のレベルの水溶性を与える基であり、
Dは、OH、H、NH2、保護基、又は所定のレベルの溶解性を水に与える基であり、
式中、Jは、C(G)=C(G)、(CH(G))nであり、
Gは、無関係に、OH、H、NH2、保護基、又は所定のレベルの水溶性を与える基であり、
nは0、1又は2であり、
Qは、CH-OH、CH3、COOH又はCHOであり、
Q1は、H、CH-OH、CH3、COOH又はCHOであり、
式中、Q1がCOOHであるとき、nは1又は2であり、及びA又はDはOHであり、Q1はA又はDと一緒にしてラクトンを形成することができる
を持つ。
【0044】
いくつかの具体例では、エステル化剤は次の式:
Q-CH(A)-CH(D)-J-Q1
式中、Aは、OH、H、NH2、保護基、又は所定のレベルの水溶性を与える基であり、
Dは、OH、H、NH2、保護基、又は所定のレベルの溶解性を水に与える基であり、
式中、Jは、C(G)=C(G)、(CH(G))nであり、
Gは、無関係に、OH、H、NH2、保護基、又は所定のレベルの水溶性を与える基であり、
nは0、1又は2であり、
Qは、CH-OH、CH3、COOH又はCHOであり、
Q1は、H、CH-OH、CH3、COOH又はCHOである
を持つ。
【0045】
いくつかの具体例では、エステル化剤は次の式:
Q-CH(A)-CH(D)-J-Q1
式中、Aは、OH、H、NH2、保護基、又は所定のレベルの水溶性を与える基であり、
Dは、OH、H、NH2、保護基、又は所定のレベルの溶解性を水に与える基であり、
式中、Jは(CH(G))nであり、
Gは、無関係に、OH、H、NH2、保護基、又は所定のレベルの水溶性を与える基であり、
nは0、1又は2であり、
Qは、CH-OH、CH3又はCOOHであり、
Q1は、H、CH-OH、CH3又はCOOHである
を持つ。
【0046】
エステル化剤の例には、グリセロール、プロピレングリコール、ヒドロキシコハク酸、ヒドロキシグルタミン酸、グリセリン酸、酒石酸、キシラル酸、リンゴ酸、乳酸、ヒドロキシ酪酸、アスコルビン酸、及びその他が包含され、及びそれらの誘導体、鏡像体、異性体、及びその他が包含される。エステル形成のための遊離のヒドロキシル基を含まない化合物については、かかる化合物のヒドロキシル誘導体が採用されると理解すべきである。
【0047】
用語“アスコルビン酸”には、L-アスコルビン酸及びその鏡像体、D-エリソルビン酸及びその鏡像体、上述の、エーテル、エステル、ケトン、及びその他を含む1種又はそれよりも多いそれらの遊離のヒドロキシル官能性を含んで形成される誘導体、それらの薬学的に許容できる塩、エステル、アミド、アミン、イミン、及びその他を含む酸官能性の誘導体を包含する誘導体、特に、保護基、所定のレベルの水溶性を与える基、及びその他を含む前述の誘導体が包含される。“所定のレベルの水溶性”の語句により、得られる化合物の水溶性のレベルが、血液脳関門の横断を得るのに十分なレベルの疎水性を化合物が所有するようなものであることを意味する。
【0048】
NSAID’sの化学構造は変えられる。ケトロフェン及びフルルビプロフェンのような、一定のNSAID’sはアリールプロピオン酸であり、1方、他はアリールプロピオン酸、アリール酢酸、チアジンカルボキサミド、等の環化した誘導体である。本発明の化合物のR-NSAID’sは、典型的に、R-アリールプロピオン酸、かかる酸の環化誘導体及びその他であり、それらは、S-鏡像体に容易に生物学転化(bioinvert)しない。“それらのS-鏡像体に容易に転化しない”の語句により、10%未満、5%未満、2%未満のS-鏡像体が本明細書に記載する投与量で生産され、S-鏡像体によるCOX-1(シクロオキシゲナーゼ-1)及びCOX-2(シクロオキシゲナーゼ-2)の抑制と関連する副作用(又は有害作用)が排除されることを意味する。特定のNSAIDの構造に依存して、化合物はキラリティを見せ、すなわち、R-及びS-鏡像体を持つ。典型的な具体例では、請求する組成物及び方法において採用されるNSAIDは、アリールプロピオン酸、特に、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、ナプロキセン、チアプロフェン酸、スプロフェン、カルプロフェン、ピルプロフェン、インドプロフェン、ベノキサプロフェン、イブプロフェン及び同種のものからなる群より選ばれる化合物である。NSAIDは、また、ケトロラックのようなアリールプロピオン酸の環化誘導体、又はエトドラクのようなアリール酢酸であることができる。これらのNSAID’sのすべては、ラセミ化合物として、S-異性体としてのみ商業上入手できるナプロキセンを除き、米国及び/又は欧州にて、ヒト医薬において用いられる。さらに、上記NSAID’sのR-異性体は、一定の疾病の処置における有用性を持つことが示される。U. S. Patent Nos. 6,160,018及び5,955,504を参照。イブプロフェンのR-異性体のような、鏡像異性的に不安定なプロピオン酸誘導体のアスコルビン酸エステルを、疾病及び病気の処置に用いることができるのは、本発明の特に魅力的な特徴である。U. S. Patent No. 6,160,018によれば、かかる鏡像異性的に不安定なプロピオン酸誘導体のR-異性体それ自体は、処置組成物として適していない。
【0049】
特定のNSAID’sの記載は様々な刊行物において見つけることができる。ケトプロフェンは、例えば、U. S. Patent No. 3,641,127に記載されている。フルルビプロフェンの記載はU. S. Patent No. 3,755,427に見つけられる。ケトロラック、別のキラルなNSAIDは、U. S. Patent No. 4,089,969に記載される。本発明に従う多数の有用なNSAID’sは、ラセミ化合物の混合物の形態でか、又は光学的に純粋な鏡像体としてかのいずれかで、商業上入手できる。すべての場合において、ラセミ化合物の混合物は、提供されるNSAIDのR-及びS-異性体の等しい量を含む。例えば、次のラセミ化合物は、Sigma Chemical Co.(シグマ・ケミカル社):ケトプロフェン、フルルビプロフェン、エトドラク、スプロフェン、カルプロフェン、インドプロフェン及びベノキサプロフェンを介して得ることができる。ナプロキセンは、S-異性体だけとして販売され、また、この供給元から入手できる。加えて、多くの商業上の供給元は、多くのNSAID’sの立体特異的なR-異性体のために存在する。R-ケトプロフェン、R-フルルビプロフェン及びR-ケトロラックは、例えば、Sepracor, Inc.(セプラクター社)を介して入手でき;R-ナプロキセンはSigma Chemical Co.を介してナトリウム塩として得ることができ;R-エトドラクはWyeth-Ayerst(ワイエス-エアースト社)から入手でき;R-チアプロフェン酸はRoussel(ルーセル社、フランス、カナダ、スイス、スペイン、デンマーク、イタリア)を介して入手でき;R-スプロフェンはMcNiel Pharmaceuticals (マクニール・ファーマシューティカル社)によって製造され;R-カルプロフェンはRoche(ロシュ社)から入手でき;R-ピルプロフェンはCiba(チバ社、フランス、ベルギー、デンマーク)を介して入手でき;R-インドプロフェンはCarlo Elba(カルロ・エルバ社、イタリア、英国)を介して得ることができ;及びR-ベノキサプロフェンはEli Lilly Co.(イーライ・リリー社)によって製造される。
【0050】
商業上の供給元に加え、本発明に従う有用なNSAID’sのラセミ化合物の混合物は、多数の参考文献及び米国特許において記述される方法によって生産することができる。ケトプロフェンの合成は、例えば、U. S. Patent No. 3,641,127に記述されており、それを参考として本明細書に組み込むが、一方で、ラセミ化合物のケトロラックの合成は、Muchowski(ムチョウスキ)等の、J. Med. Chem.(ジャーナル・オブ・メディカル・ケミストリ)、28(8): 1037-1049(1985年)において開示されている。選定したNSAID’sの光学的に純粋なR-異性体は、次いで、良く知られた方法に従って、ラセミ化合物の混合物の分離によって得ることができる。例えば、U. S. Patent No. 5,331,000(R-ケトプロフェン)及びU. S. Patent No. 5,382,591(R-ケトロラック)を参照し、これらの各々の開示を参考として本明細書に組み込む。
【0051】
上述のように、R-NSAID’sのアスコルビン酸エステルは鏡像異性的に安定である。本明細書で用いるように、用語“鏡像異性的に安定”は、定常状態で、循環するNSAIDがそのS-鏡像体として約20%以下、及び典型的には10%以下存在する(すなわち、90%のR、10%のS)ことを意味する。この比率の適切な尺度は、血漿又は尿中の2種の鏡像体の相対的濃度対時間の評価によって得られる。血漿中の鏡像体濃度の変化率は、例えば、体全体の中の薬物濃度における変化を量的に反映すると仮定される。この比率は一次速度式によって近似することができる。Gibaldi(ギバルディ)等の、Pharmacokinetics(ファーマコキネティックス)、(1982年) Chapter 1(第1章)、pp. 1-5を参照し、それを参考として本明細書に組み込む。
【0052】
多くのNSAID’sについての現状の知識の薬物動態データ及び説明は、Jamaliの“Pharmacokinetics of Enantiomers of Chiral Non-steroidal Anti-inflammatory Drugs(キラルな非ステロイド性抗炎症薬の鏡像体の薬物動態学)”、Eur. J Drug Metab Pharmacokin. (1988年)、Vol. 13、No. 1、pp. 1-9において提示されており、それを参考として本明細書に組み込む。
【0053】
S-異性体の“実質的に含まれない”の用語は、NSAIDのS-異性体の量が、組成物中に、もし存在するならば、組成物を投与される患者において有害作用を引き起こすのに不十分であるか、又はせいぜい患者に耐えられる有害作用を引き起し、及び、有利な効果又は作用によって上回られることを示す。通例、創意に富む組成物には、組成物中に存在するNSAIDの総量に基づき、対応するS-異性体を、約10重量%を超えて含まない。典型的に、本発明での組成物は、NSAIDの対応するS-異性体を、約5重量%を超えて含んでいない。より一層典型的には、本発明での組成物は、NSAIDの対応するS-異性体を、約1重量%を超えて含んでいない。
【0054】
本発明のいくつかの具体例では、化合物は、次の式:
{Q-CH(A)-CH(D)-J-Q1}-OC(O)W
式中、-OC(O)Wと無関係なとき、
Aは、OH、H、NH2、保護基、又は所定のレベルの水溶性を与える基であり、
Dは、OH、H、NH2、保護基、又は所定のレベルの溶解性を水に与える基であり、
式中、Jは、C(G)=C(G)、(CH(G))nであり、
nは0、1又は2であり、及び
ここで、-OC(O)Wと無関係なとき、
Gは、無関係に、OH、H、NH2、保護基、又は所定のレベルの水溶性を与える基であり、
式中、炭素が-OC(O)Wと無関係なとき、
Qは、H、CH-OH、CH3、COOH又はCHOであり、
Q1は、H、CH-OH、CH3、COOH又はCHOであり、
式中、Q1がCOOHであるとき、nは1又は2であり、及びA又はDはOHであり、Q1はA又はDと一緒にしてラクトンを形成することができ、及び
式中、A、D、G、Q又はQ1の1種だけが-OC(O)Wを含み、及び
式中、WはS-鏡像体を実質的に含まないR-NSAID類似体である
を持つ。
【0055】
本発明のいくつかの具体例では、化合物は、次の式:
{Q-CH(A)-CH(D)-J-Q1}-OC(O)W
式中、-OC(O)Wと無関係なとき、
Aは、OH、H、NH2、保護基、又は所定のレベルの水溶性を与える基であり、
Dは、OH、H、NH2、保護基、又は所定のレベルの溶解性を水に与える基であり、
式中、Jは、C(G)=C(G)、(CH(G))nであり、
nは0、1又は2であり、及び
ここで、-OC(O)Wと無関係なとき、
Gは、無関係に、OH、H、NH2、保護基、又は所定のレベルの水溶性を与える基であり、
式中、炭素が-OC(O)Wと無関係なとき、
Qは、H、CH-OH、CH3、COOH又はCHOであり、
Q1は、H、CH-OH、CH3、COOH又はCHOであり、
式中、A、D、G、Q又はQ1の1種だけが-OC(O)Wを含み、及び
式中、WはS-鏡像体を実質的に含まないR-NSAID類似体である
を持つ。
【0056】
本発明のいくつかの具体例では、化合物は、次の式:
{Q-CH(A)-CH(D)-J-Q1}-OC(O)W
式中、-OC(O)Wと無関係なとき、
Aは、OH、H、NH2、保護基、又は所定のレベルの水溶性を与える基であり、
Dは、OH、H、NH2、保護基、又は所定のレベルの溶解性を水に与える基であり、
式中、Jは(CH(G))nであり、
nは0、1又は2であり、及び
Gは、無関係に、OH、H、NH2、保護基、又は所定のレベルの水溶性を与える基であり、
Q1は、H、CH-OH、CH3、COOHであり、
式中、炭素が-OC(O)Wと無関係なとき、
Qは、H、C-OC(O)W、CH-OH、CH3又はCOOHであり、
式中、Q又はAの1種だけが-OC(O)Wを含み、及び
式中、WはS-鏡像体を実質的に含まないR-NSAID類似体である
を持つ。
【0057】
本発明に従う化合物のいくつかの具体例は、次の式(式1):
【化2】


式中、Yは、S-鏡像体を実質的に含まないR-NSAID類似体であり、
Xは、H、以下に更に十分に説明するような保護基、水溶性を与える基及びその他である
を持つ。
【0058】
水溶性を与える基は、親水性の機能性であり、それは水による固体の湿潤性及びそれが結合する化合物の水における溶解性を高める。かかる官能基又は機能性は、1〜50個又はそれよりも多くの原子を持つ置換基であることができ、及びスルホン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、アミジン、ホスホン酸塩、カルボン酸塩、ヒドロキシル、特にポリグリコールエーテルアルコールのようなポリオール、ポリアミンのようなアミン、エーテル、アミド、及び同種のものを持つ基を含むことができる。実例となる官能基は、カルボキシアルキル、スルホンオキシアルキル(sulfonoxyalkyl)、CONHOCH2COOH、CO-(グルコサミン)、糖、デキストラン、シクロデキストリン、SO2NHCH2COOH、SO3H、CONHCH2CH2SO3H、PO3H2、OPO3H2、ヒドロキシル、カルボキシル、ケトン及びそれらの組合せである。また、例えば、リン酸の塩、スルホン酸の塩、及び同種のもののような塩の形成を可能にする任意の上記基の薬学的に許容できる塩も本発明の範囲内に包含される。また、NSAID及び/又はエステル化剤の性質が塩の形成を可能にする場合、NSAIDのR-異性体のエステルの薬学的に許容できる塩も本発明の化合物の範囲内に包含される。例えば、エトドラク、カルプロフェン、ケトロラック、ピルプロフェン(piprofen, pirprofen)、インドプロフェン及びベノキサプロフェンは、すべて窒素原子を含み、それらは薬学的に許容できる塩を形成する。薬学的に許容できる塩をそれらの塩と称するが、それらは元の分子の生物的有効性及び特性を保ち、及び生物学的にか、又はその他で望ましくないものではない。窒素原子を含むNSAID’sについて、それらの塩は、通例、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸及び同種のもののような無機酸、及び酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、リンゴ酸酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸及び同種のもののような有機酸とで形成される酸付加塩である。例えば、コハク酸、グルタミン酸、酒石酸、リンゴ酸酸、アスコルビン酸、及びその他のようなカルボキシル基を含むエステル化剤について、それらの塩は、通例、トリメチルアンモニウム、ナトリウム、カリウム、等である。
【0059】
(化合物の調製、分離及び精製の方法)
(調製)
概して、本発明の化合物は、R-NSAIDのカルボン酸基と縮合するヒドロキシル基以外のエステル化剤上のヒドロキシル(又はアルコール)基を保護することによって調製して、それらのエステルを形成することができる。エステルは、概して、この技術で既知のような縮合剤の存在下に形成される。合成の模範的な具体例を図3に示す。図3に関して、R-NSAID(T-COOH)は、エステル化剤(T'-OH)と、通例、例えば、N, N-ジシクロヘキシルカルボイミド(DCC)及び同種のもののような活性化剤を含み、例えば、芳香族アミン、例えば、ピリジン、N,N-ジメチルアミノピリジン、等及びその他のような適切な溶媒において、「エステル化条件」の下で組み合わせられる。活性化剤は重合体に結合することができる。例えば、Bull. Chem. Soc. Japan(ブレティン・オブ・ザ・ケミカル・ソサエティ・オブ・ジャパン)、54, 631(1981年)参照。上記のより一層詳細な議論を以下に述べる。
【0060】
本発明に従う化合物の調製の特定の具体例を図4において描写する。R-NSAIDフルルビプロフェンのグリセロールエステルを形成する。R-フルルビプロフェンを、アリルグリセロール(グリセロールの商業上入手できる保護された形態)と、N,N-ジメチルアミノピリジンにおいて重合体結合DCCの存在下に、組み合わせ、エステル誘導体を形成する。得られる化合物を、希釈酢酸(5%AcOH)を用いて処理し、アリル保護基を除去し、及びR-フルルビプロフェンのグリセロールエステルを与える。
【0061】
上に示すように、本発明の化合物の調製には、末端又は1次のヒドロキシル基並びにエステルの形成に係るヒドロキシル基以外のエステル化剤上の他の任意のヒドロキシル基を保護する工程を包含することができる。保護は、通常の材料及びこの技術の技能内及び/又は多数の特許、及び例えば、Greene(グリーン)等の、Protective Groups in Organic Synthesis(有機合成における保護基)、2nd Ed、ニューヨーク、John Wiley & Sons(ジョンワイリー・アンド・サン社)(1991年)について述べることができる:技術文献における論文において詳述されている技術を用いる化学的な保護基の付加に関連する。保護基は、遂行されるべき化学反応において、それらを付着させる部位が関与するのを防ぐ。選ばれる特定の保護基は、遂行されるべき反応の性質及び、かかる反応の、温度、pH及びその他のような条件に依存する。かかる保護基の例は、1例として及び制限されないが、トリメチルシリル-、2-メトキシエトキシメチル-、クロロギ酸4-クロロフェニル(ピリジンにおいて)、ブロモベンジルオキシ、カルバミル、ホルミル、アリル、t-ブトキシカルボミル(t-Boc)、フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)、アセトアミノメチル(Acm)、トリフェニルメチル(Trt)、ベンジルオキシカルボニル、ビフェニルイソプロピルオキシカルボニル、1-アミルオキシカルボニル、イソボルニルカルボニル、アルファ-ジメチル-3,5-ジメトキシベンキシルオキシカルボニル(dimethoxybenxyloxycarbonyl)、o-ニトロフェニルスルフェニル、2-シアノ-1,1-ジメチル-エトキシカルボニル、及び同種のものである。反応は、通例、基本的な条件の下で緩衝化された媒体中で遂行される。反応は約0℃から50℃まで、典型的に、0℃から30℃までの温度で、約0.1から約24時間までの期間、典型的には、0.3から10時間までの間、通例、窒素、アルゴン及び同種のもののような不活性ガスの下で遂行される。媒体は、ピリジン、エーテル、例えば、THF、等、及び同種のもののような有機溶剤でよい。反応は、例えば、金属水素化物、例えば、水素化ナトリウム、アルキルアミン、例えば、エチルアミン、等、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、及び同種のものののような適切な炭酸塩のような基本的な(塩基性)条件を必要とすることがある。基本的な条件を提供するために、上記試薬の1種を、かかる条件が望まれる場合に、反応媒体中に含めることができる。
【0062】
1種又はそれよりも多いヒドロキシル基は、他のヒドロキシル基とは異なる別の保護基で保護することができる。このようにして、1又はそれよりも多いヒドロキシ基、特に末端又は1次ヒドロキシル基上の保護基を、他の保護基を除去することなく、除去することができる。末端ヒドロキシル基のための適切な保護基にはトリメチルシリル及び同種のものが包含される。保護されたエステル化剤は、末端又は1次ヒドロキシル基上で、及び他の保護基でない保護基を除去する条件下に処理される。かかる条件は、保護基の性質によって主として定められ、及びこの技術における熟練のものに知られている。例えば、トリメチルシリル保護基を採用する場合、得られる十分に保護された分子を、フッ化物、例えば、フッ化テトラブチルアミンを用い、エーテル溶媒、例えば、THFにおいて、約0℃から50℃まで、典型的に、0℃から30℃までの温度で、約30分から約2時間までの期間の間、処理することができる。
【0063】
次に、結果として生じるエステル化剤の遊離のヒドロキシ基を、活性化形態のR-NSAIDと反応させる。このため、カルボン酸を、保護されたアスコルビン酸の末端ヒドロキシ基とその後に反応し得る活性化形態に転化させるために、R-NSAIDを処理する。1種の取り組みにおいて、R-NSAIDの活性化させたカルボン酸基と保護されたアスコルビン酸の末端ヒドロキシの間のアシル化反応を可能にするために、カルボン酸の機能性を活性化させる。R-NSAIDのカルボン酸の機能性は、酸塩化物、酸臭化物及びその他のような酸ハロゲン化物に転化させることができる。“ハロゲン化物”は、フッ化物、塩化物、臭化物、又はヨウ素化物を表示する。かかる転化はこの技術においてよく知られている。例えば、R. Nakao(ナカオ)等の、Bull. Chem. Soc. Jpn.、54, 1267(1981年)を参照。
【0064】
加えて、カルボキシル基を持つ化合物は、N-ヒドロキシスクシニミド又はそのスルホン基の類似体とのエステル、又はカルビトールのクロロギ酸塩又はt-ブチルクロロギ酸塩との反応を介する混合された無水物に対するエステルを形成するために活性化されるか、又はEDACのようなカルボジイミドを用いて直接結合することができる。反応条件は活性化及びその他の性質に左右される。反応は、約0℃から50℃まで、典型的に、約10℃から約30℃までの温度で、約15分から約120時間まで、典型的に、約30分から約100時間までの期間の間、通例、窒素、アルゴン及び同種のもののような不活性ガスの下で遂行される。媒体は、ピリジン、ジメチルアミノピリジン、エーテル、例えば、THF、等、及び同種のもののような有機溶媒でよい。
【0065】
エステルの形成の後、望ましい化合物を得るために保護基を除去する。保護基の除去は保護基の性質に依存する。適切な手法はこの技術においてよく知られている。例えば、Greene等の、Protective Groups in Organic Synthesis、2ndEd、ニューヨーク、John Wiley & Sons(1991年)を参照。
【0066】
上記の合成手法において採用される溶媒は、通例、不活性の溶媒、すなわち、それに関連して記述される反応の条件の下で不活性な溶媒であり、例えば、ベンゼン、トルエン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン(“THF”)、ジメチルホルムアミド(“DMF”)、クロロホルム(“CHCl3”)、塩化メチレン(又はジクロロメタン又は“CH2Cl2”)、ジエチルエーテル、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、ジオキサン、ピリジン、置換されたピリジン及び同種のものが包含される。
【0067】
NSAIDのR-異性体の活性化エステルの模範的な合成を、実例として及び制限しないで、図1で描写する。アスコルビン酸10の隣接するヒドロキシ基は、保護基Xと反応し、化合物11を与える。化合物11でのNSAIDの活性化R-異性体とのそれに続く反応は、酸塩化物を形成するために、活性化されたNSAIDのカルボン酸基を持ち、化合物12をもたらす。化合物13、即ち、NSAIDのR-異性体のアスコルビン酸エステルを与えるために、保護基を除去する。
【0068】
(化合物の分離及び精製)
本明細書に記載する化合物及び中間体の分離及び精製は、所望の場合、例えば、ろ過、抽出、結晶化、カラムクロマトグラフィ、薄層クロマトグラフィ、厚層クロマトグラフィ、調製用低性能又は高性能液体クロマトグラフィ又はこれらの組み合わせのような任意の適切な分離又は精製手法によってもたらすことができる。適切な分離及び単離の手法の特定の実例は、以下の例への参照によって行なうことができる。しかし、他の等価の分離又は単離の手法を、もちろん、また、用いることができる。
【0069】
(有用性、試験及び投与)
(有用性)
式1の化合物及び薬学的に許容できるそれらの酸付加塩は、有益な薬理学的な特性を所有することが見出される。本発明の化合物は、哺乳類、例えば、ヒトにおける疾病又は病気の処置において用いることができる。このため、上述の化合物の鏡像異性的に安定な形態からなる組成物を、哺乳類の治療をもたらすのに十分な量において哺乳類に投与する。かかる処置には、化学的保護効果又は治療上の効果又は予防的効果を引き出すことが包含される。
【0070】
これに従う化合物での処置によって軽減される疾病状態には、実例として及び制限しないが、炎症、嚢胞性線維症、痴呆、新生物性疾病、歯周病、及びその他が包含される。痴呆には、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、及びその他が包含される。新生物性疾病には、例えば、腺癌、例として、結腸癌が含まれる胃腸癌、直腸癌、乳癌、及び同種のもののような癌が包含される。
【0071】
治療上の効果を引き出すのに有効なとは、疾病状態又は病気状態における全面的な改善が達成されることを意味し、及び疾病又は病気を救済すること、すなわち、疾病又は病気の退行をもたらすことが包含される。治療上有効な量は、上記に定めたように、かかる処置が必要な哺乳類に投与するとき、治療をもたらすのに十分なその量を言及する。治療上の有効な量は、対象及び処置される疾病状態又は病気状態、罹患の重症度及び投与の様式に依存して変わり、及びこの技術における通常の熟練のものによって日常的に定めることができる。概して、ヒトの投与量は、投与される70キログラムの体重当り約1から2000mgで1日に1回又は2回でよい。理想的には、投与量は、他の医学的事象の活性及び欠如と関連する最も低い投与量である。
【0072】
化学的防止効果を引き出すのに有効なとは、異常な細胞増殖を減少させることを意味する。動物における細胞増殖の測定方法は、Labeling Index(標識指数)である。遠位の結腸の上皮細胞は増殖性細胞の組織学的生物マーカーを用して染色される。顕微鏡検査は陰窩における増殖性細胞の割合の定量化を可能にする。増殖性細胞又はLI、特に、陰窩の上側部分での高い割合は、異常な細胞増殖の指標である。少なくとも10から50%まで、典型的に、少なくとも30%のLIにおける減少は、異常な細胞増殖の減少と関連付けられる。もちろん、用いる特定のR-NSAIDは、試験される動物種において鏡像異性的に安定でなければならない。
【0073】
人類及び動物における化学的防止は、また、ポリープ症の傾向がある動物において、腸のポリープの新生物性又は癌性の集団への転換の抑制によって測定することができる。また、min/+のマウスモデルを、化学的防止効果を測定するのに用いることができる。R-NSAIDの投与がmin/+のマウスにおける腸の腫瘍の自発的生産を遅延させる場合、化学的防止がこのモデルにおいて達成される。化学的防止の別の試験は発癌物質処理したマウス又はラットにおける誘導された腫瘍の防止によって例示される。
【0074】
予防的効果を引き出すのに有効なことには、疾病又は病気が、疾病に罹り易くされることがあるが、未だにそれを持つと診断されていない対象において、発生するのを防止すること、疾病の初期、例えば、上皮性癌の形成異常の段階、前立腺癌における高いPIN、乳癌の防止についての女性におけるBRACA 1及び2変異、結腸癌における結腸ポリープ、MRI又はPET検出された病変又は潜在的な痴呆を患う患者の血液又はCSFにおける高いA-ベータタンパク質において、疾病又は病気を抑制すること、すなわち、その発達を阻止することが包含される。代わりに、この処置を、これは細胞分裂抑制性であるが、通例、外科的にか通常の癌療法による新生物性疾病の細胞数減少療法の後、“2次的な化学的防止”のために用いることができる。
化学的保護剤は抗癌性薬物の毒性作用から健康な組織を保護する。
【0075】
(試験)
比活性についての潜在的能力は、本発明の化合物を用いて、この技術において既知の、例えば、血液又はCSFにおけるA-ベータタンパク質の比率のような方法によって、インビトロ及びインビボで定めることができる。
【0076】
(投与)
本発明での薬学的組成物は、活性成分としてのNSAIDのR-異性体の、例えば、グリセロールエステル、プロピレングリコールエステル、アスコルビン酸エステル、及び同種のもののようなエステルを含有し、及びまた、薬学的に許容できる担体、及び随意に、他の治療上の成分を含むことができる。活性成分は、NSAIDの性質が塩形成を可能にする場合にはNSAIDのR-異性体のアスコルビン酸エステルの薬学的に許容できる塩であってよい。
【0077】
“随意の”又は“随意に”は、続いて記述される事象又は情況が起こるかもしれないか、又は起こらないかもしれないこと、及びその記述が、前記事象又は情況が起こる場合及びそれが起こらない場合を包含することを意味する。例えば、“随意に、他の治療上の薬剤”は、別の治療上の薬剤が組成物において存在てもよいし、又は存在しないでもよいことを意味する。
【0078】
上記の条件の処置に対する本発明の化合物の適用において、本明細書に記載の活性化合物及び塩の投与は、経口、静脈内、直腸の、非経口的(皮下、筋肉内、静脈内)、及び同様の形態の投与、くも膜下腔内、経皮的及び他の全身的経路の形態の投与、及びその他を含む、類似の薬学的組成物のための受け入れられる任意のモードの投与を用いて行なうことができる。典型的に、正確な用量の単一の投与に適切な単位剤形においてか、又は予め定められる率での化合物の延長される投与のための持続性(徐放)又は放出制御の剤形において、例えば、錠剤、トローチ、座剤、丸剤、カプセル、粉体、液体、分散物、懸濁物、溶液、エリキシル剤、アエロゾル、パッチ及び同種のもののような、固体、半固体又は液体の剤形を含め、任意の薬学的に許容できるモードの投与を用いることができる。くも膜下腔内以外の投与のモード及び経路が、化合物を、それが必要な個体に投与する際に有効であることは、本発明にとって注目に値する。
【0079】
上記に示した普通の形態に加え、本発明の化合物は、また、U. S. Patent Nos. 3,845,770; 3,916,899; 3,536,809; 3,598,123;及び4,008,719において記述されるもののような放出制御手段及び/又は送達装置によって投与することができ、これらの開示を参考としてそれらの全体において本明細書に組込む。
【0080】
投与される活性化合物の量は、もちろん、処置される対象、罹患の重症度、投与の様式及び処方する医師の判断に依存する。概して、投与される化合物の量は、望ましい治療上の効果又は化学的保護効果又は予防的効果をもたらすのに十分なものである。有効な用量は、通例、1日に付き1又はそれよりも多い投与量において、1日に1回又は2回約1.0mgから約2000mgまでの範囲内である。1種の取り組みにおいて、組成物は、1日に1回又は2回約10mgから約800mgまでの量において投与された。
【0081】
経口投与のために適切な本発明での薬学的組成物は、カプセル、カシェー、又は錠剤、又はアエロゾル噴霧剤のような、各々が所定の量の活性成分を、粉体又は顆粒として、又は水性液体、非水性液体、水中油型乳剤、又は油中水液体乳剤における溶液又は懸濁物として含む、分離した単位として与えることができる。かかる組成物は、任意の薬学の通常の方法によって調製することができるが、すべての方法には、活性成分を担体と関連させる工程が含まれ、それは1種又はそれよりも多い必要な成分を構成する。
【0082】
組成物は、典型的に、通常の薬学的担体又は賦形剤及び本発明の活性化合物又はその薬学的に許容できる塩を含み、及び加えて、他の薬用薬剤、薬学的薬剤、担体、アジュバント、等を含むことができる。澱粉、糖、微結晶性セルロース、希釈剤、顆粒化剤、潤滑剤、結合剤、崩解剤、及び同種のもののような担体を、経口固体調製物の場合に用いることができる。経口固体調製物(粉体、カプセル、及び錠剤のようなもの)は経口液体調製物よりも好ましい。最も好ましい経口固体調製物は錠剤である。所望の場合、錠剤は標準的な水性又は非水性技術によって被覆することができる。
【0083】
概して、組成物は、活性成分を、液体の担体又は微粉化した固体の担体又は双方と均一に及び完全に混ぜること、及び次に、必要な場合、製品を望ましい提示に形付けることによって調製する。例えば、錠剤は、圧縮又は成形によって、随意に、1種又はそれよりも多い副成分と共に調製することができる。圧縮される錠剤は、適切な機械において、粉体又は顆粒のような自由流動性の形態における有効成分を圧縮することによって、随意に、結合剤、潤滑剤、不活性な希釈剤、表面活性剤又は分散剤と混合して調製することができる。成形される錠剤は、適切な機械において、不活性な液体希釈剤で湿めらされる粉末の化合物の混合物を成形することによって作製することができる。望ましくは、各錠剤は、約1mgから約1000mgまでの活性成分を含み、及び各カシェー又はカプセルは、約1mgから約600mgまでの活性成分を含む。最も典型的には、錠剤、カシェー又はカプセルは、4種の用量、約1mg、約50mg、約100mg及び約200mgの活性成分のいずれか1種を含む。
【0084】
固体組成物について、通常の無毒な固体担体には、例えば、薬学的等級のマンニトール、ラクトース、澱粉、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルカム、セルロース、クロスカルメロースナトリウム、グルコース、スクロース、炭酸マグネシウム、及び同種のものが包含される。上記で規定するような活性化合物は、例えば、ポリアルキレングリコール、例えば、プロピレングリコールを担体として用いて、座剤として調剤することができる。液体の薬学的に投与可能な組成物は、例えば、上記で規定されるような活性化合物、及び例えば、水、塩類溶液、水性ブドウ糖、グリセロール、エタノール、及び同種のもののような担体における随意の薬学的アジュバントを、溶解、分散、等することによって調製することができ、それによって、溶液又は懸濁物が形成される。所望の場合、投与すべき薬学的組成物は、また、湿潤剤又は乳化剤、pH緩衝剤及び同種のもの、例えば、酢酸ナトリウム、モノラウリン酸ソルビタン、トリエタノールアミン酢酸ナトリウム、オレイン酸トリエタノールアミン、等のような無毒な補助的な物質の小量を含むことができる。かかる剤形を調製する実際の方法は、知られているか、又はこの技術における熟練のものにとって明らかであり;例えば、「Remington's Pharmaceutical Sciences(レミントンの薬科学)」、Mack Publishing Company(マック・パブリッシング社)、Easton(イーストン)、ペンシルベニア州、第16版、1980年を参照。投与するべき組成物又は調剤物は、いずれにしても、処置される対象の症状又はそれらの発病を軽減するのに有効な量において多量の活性化合物(化合物群)を含む。
【0085】
NSAIDのR-異性体のアスコルビン酸エステル(又は許される場合は塩)である活性成分を0.025から95%までの範囲において無毒の担体からなるバランスと共に含有する、剤形又は組成物を調製することができる。
【0086】
経口投与のために、薬学的に許容できる無毒な組成物を、例えば、薬学的等級のマンニトール、ラクトース、澱粉、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルカム、セルロース、クロスカルメロースナトリウム、グルコース、スクロース、マグネシウム、炭酸塩、及び同種のもののような、普通に採用される任意の賦形剤を組み込むことによって形成する。かかる組成物は、溶液、懸濁物、錠剤、カプセル、粉体、持続性放出の調剤物及び同種のものの形態を取る。かかる組成物は、0.1%〜95%、典型的に、0.5〜80%の有効成分を含むことができる。
【0087】
非経口的な投与は、概して、注入、皮下、筋肉内又は静脈内のいずれかにより特徴付けられる。注射剤は、通常の形態、液体の溶液又は懸濁物、注入に先立つ液体における溶液又は懸濁物として適切な固体の形態としてのいずれか、又は乳剤として調製することができる。適切な賦形剤は、例えば、水、塩類溶液、ブドウ糖、グリセロール、エタノール又は同種のものである。加えて、所望の場合、投与されるべき薬学的組成物はまた、例えば、酢酸ナトリウム、モノラウリン酸ソルビタン、オレイン酸トリエタノールアミン、等のような、湿潤剤又は乳化剤、pH緩衝剤及び同種のもののような、無毒な補助的な物質の小量を含むことができる。
【0088】
非経口的な投与のために、つい最近案出された取り組みは、一定レベルの用量を維持するような、徐放又は持続放出系の埋め込みを採用する。例えば、U. S. Patent No. 3,710,795を参照するが、それを参考として本明細書に組み込む。
【0089】
かかる親の組成物において含有される活性化合物の割合は、その特定の性質、並びに化合物の活性及び対象の必要性に著しく依存する。しかし、溶液における0.01%から10%までの有効成分の割合を採用することができ、及び組成物が固体であり、それが次に上記割合にまで希釈される場合、より一層高い。典型的に、組成物は溶液において0.02〜8%の活性成分を含む。
【0090】
座剤を介する全身的投与のため、伝統的な結合剤及び担体には、例を挙げると、ポリアルキレングリコール又はトリグリセリドが包含される。かかる座剤は0.05%〜10%、典型的に0.1〜2%の範囲における有効成分を含有する混合物から形成することができる。
【0091】
毎日の用量要求性を伴う患者の服薬率を助けるために、NSAID’sのR-異性体のアスコルビン酸エステルを、また、歯磨き粉においてそれらを調剤することによって投与することができる。薬物をエチルアルコール溶液において溶解し、及び活性成分の終濃度が本発明の組成物を基礎とする重量で約0.01から約1%までであるように磨き粉に添加する。
【0092】
本発明の組成物は、また、哺乳類における使用のために適合する他の局所的な組成物から類推して、任意の都合の良い手段における投与のために調剤することができる。これらの組成物は、任意の多種多様な薬学的担体又は運搬体の援助を用いる通常の様式における使用のために提示することができる。かかる局所的投与のために、薬学的に許容できる無毒な調剤物は、例えば、ゲル、クリーム、ローション、溶液、懸濁物、軟膏、粉体、又は同種のもののような、半固体、液体、又は固体の形態を取ることができる。例として、活性成分を、ゲル中に、エタノール、プロピレングリコール、炭酸プロピレン、ポリエチレングリコール、アジピン酸ジイソプロピル、グリセロール、水、等を用いて、Carbomers(カルボマーズ)、Klucels(クルーセルズ)、等のような適切なゲル化剤と共に調剤することができる。所望の場合、調剤物は、また、防腐剤、酸化防止剤、pH緩衝剤、表面活性剤、及び同種のもののような、無毒な補助的物質の小量を含むことができる。かかる剤形を調製する実際の方法は、知られているか、又はこの技術の熟練のものに明白である;例えば、「Remington's Pharmaceutical Sciences」、Mack Publishing Company、Easton、ペンシルバニア州、第16版、1980年を参照。
【0093】
(特定の有用性)
癌又は新生物性疾病の急性又は慢性の管理におけるNSAIDのR-異性体のアスコルビン酸エステルの予防的な又は治療上の投与量の大きさは、特定のNSAID、処置されるべき条件の重症度、及び投与の経路によって変わる。投与量及び/又は投与量頻度は、また、個々の患者の年齢、体重、及び反応に従って変わる。
【0094】
概して、及び上述のように、本発明の化合物のための合計の毎日の投与量の範囲は、本明細書に記述されている条件について、単一か又は分けられた投与量において、体重の70キログラムにつき約1mgから約2000mgまでである。典型的に、癌の防止のための毎日の投与量の範囲は、単一か又は分けられた投与量において、約1から約500mgまでの間であるべきである。新生物性疾病の処置のための典型的な毎日の投与量は、単一か又は分けられた投与量において、約1.0mgから約2000mgまでであるべきである。
【0095】
患者の管理において、療法はより一層低い投与量で、多分約1mgから約100mgまでで開始し、及び患者の全体的な反応によって約1000mg又はそれよりも高くまで増加されるべきである。さらに、幼児、子供、65齢を超える患者、及び腎臓又は肝臓機能を損なったものは、最初に低い投与量を受け取ることが、及びそれらを個々の反応(反応群)及び血液レベル(レベル群)に基づいて漸増されるのが推奨される。
【0096】
この技術における熟練のものに明白なように、いくつかの場合に、これらの範囲の外の用量を用いることが必要であるかもしれない。さらに、通常の熟練した臨床医又は処置する医師が、どのように、及びいつ、個々の患者の反応を考慮して、療法を中断するか、調節するか又は終えるかを知っていることに注目される。
【0097】
直腸結腸癌の処置の本発明にかかる方法は、5-フルオロウラシル及び同種のもののような既知の化学療法剤に対するアジェバントとして、NSAIDのR-異性体のアスコルビン酸エステルを用いることによって高められる。
【0098】
本発明の化合物は、減少した胃腸毒性と共に働き、それは、本発明の特定の化合物の投与が、ヒト又は他の哺乳類の消化管に対し、対応するラセミ化合物又はNSAIDのS-異性体に比べ、潰瘍発生性をより一層少なくすることを意味する。潰瘍発生活性の1種の尺度として、小腸潰瘍スコアがある。ラットを30日間NSAIDのR-異性体のアスコルビン酸エステルの経口投与を介して毎日処置する。30日の終わりに、ラットを犠牲にして、及び腸を除去する。粘膜における十分な寸法の病変を測定する。測定される潰瘍の直径の合計に匹敵する累積スコアを、潰瘍のスコアとして報告する。潰瘍スコアは対照ラットのものと本質的に等しく、又は少なくとも50から90%まで、典型的には、少なくとも80%までの潰瘍スコアの減少があり、対応するS-NSAID又はラセミ化合物と比べて、胃腸毒性における減少と考えられる。
【0099】
本発明によれば、嚢胞性線維症の患者を、NSAIDのR-異性体のアスコルビン酸エステルを高い投与量、すなわち、嚢胞性線維症の治療上有効な量で用いて処置する。本明細書に用いるように、“嚢胞性線維症の治療上有効な量”は、CFの症状を軽減する量であり、それは、増進された肺機能によって測定することができる。とりわけ、嚢胞性線維症の治療上有効な量は、体重のキログラムにつき、本発明の化合物の約200から2000mgまでの範囲内で、特定の化合物の血漿半減期に基づく分けられた投与量において典型的に投与される量である。
【0100】
その上、NSAIDのR-異性体のアスコルビン酸エステルの投与は、付随のCOX-媒介毒性を伴わず、アルツハイマー病の発病を防ぐか、又は遅らせると思われる。したがって、本発明に従い、アルツハイマー病を発現する患者である危険性がある患者を、高い投与量の、即ち、アルツハイマー病の予防に有効な量で、NSAIDのR-異性体のアスコルビン酸エステルを用いて処置する。本明細書において用いるように、“アルツハイマー病の予防に有効な量”は、少なくとも6か月まで、ADの症状の発生を遅らせる量である。とりわけ、有効なADの予防的量は、1日につき約50から2000mgまでの範囲内の選定したR-NSAIDであり、特定のR-NSAIDの血漿半減期に基づき分けられた投与量において、典型的に再度投与される。
【0101】
(本発明に従う化合物の特定の具体例)
1連の本発明に従う化合物には、式2によって示される化合物が包含される。
【化3】


式中、YはS-鏡像体を実質的に含まないR-NSAID類似体であり、ここで、R-NSAID類似体はCOOH基を伴わないR-NSAIDであり、及びR-NSAIDは図2で描写される化合物からなる群より選ばれる。
【0102】
本発明のいくつかの組成物の調製、並びにそれらの有用性を説明する次の例を参照し、本発明を例示する。多くの修飾で、双方の材料及び方法へのものを、この発明の目的及び関心から逸脱することなく、実行することができることは、この技術の熟練のものにとって明白である。
【実施例】
【0103】
(例)
本発明を、更に、次の例示的な例によって例証する。部及び割合は、他に特に定める場合を除き、重量による。温度は、別に特定する場合を除き、セルシウス度におけるものである。次の調製物及び例は、本発明を例示するものであるが、その範囲を制限することを意図していない。
【0104】
(例1)
(本発明の化合物の調製)
アスコルビン酸の末端又は1次のヒドロキシル基を、まず、トリメチルシリルエーテルとして保護する。それに応じて、アスコルビン酸を、塩化トリメチルシリルと、溶媒としてのテトラヒドロフランにおけるトリエチルアミンの存在下に、8時間の期間、25℃の温度で反応させる。アスコルビン酸上の3つの残存するヒドロキシルを、2-メトキシエトキシメチルエーテル(MEM)を用いて保護する。このため、上記からのトリメチルシリル生産物をMEM Clを用い、テトラヒドロフランにおける水素化ナトリウムの存在下に、1時間の期間、0℃の温度で処理する。トリメチルシリルエーテル基を除去して、テトラヒドロフラン中のフッ化テトラ-ブチルアンモニウムとの1時間の期間の25℃の温度での処理によって遊離の1次ヒドロキシル基を与える。遊離の1次ヒドロキシル基をR-NSAIDのカルボン酸基と反応させ、MEM保護されるアスコルビン酸R-NSAIDエステルを形成する。上記からの遊離の1次ヒドロキシル基を有する生産物を、R-NSAIDと、トリエチルアミンの存在下のメチルテトラヒドロフランにおいて100時間までの期間、25℃の温度で組み合わせる。残存する保護基(MEM)を、上記生産物を塩化メチレン中の四塩化チタンを用いて、20分の期間、25℃の温度で処理することによって除去して、アスコルビン酸のR-NSAIDエステルを与える。
【0105】
(例2)
(経口投与のための組成物)
組成物が含むもの: % 重量/重量
活性成分 20%
ラクトース 79.5%
ステアリン酸マグネシウム 0.5%

2種の成分を混合し、及びカプセル中に分配してそれぞれを100mg含有させる;1つのカプセルを総1日投与量に近付ける。
【0106】
(例3)
(経口投与のための組成物)
組成物が含むもの: % 重量/重量
活性成分 20.0%
ステアリン酸マグネシウム 0.5%
クロスカルメロースナトリウム 2.0%
ラクトース 76.5%
PVP(ポリビニルピロリジン) 1.0%

上記成分を組み合わせ、及び溶媒としてアルコールを用いて造粒する。次いで、調剤物を乾燥させ、及び適切なタブレット成形機を用い、錠剤中に成形する(20mgの活性化合物を含む)。
【0107】
(例4)
(非経口的な調剤物(IV))
組成物が含むもの: % 重量/重量
活性成分 0.25g
塩化ナトリウム 等張性を作製するのに十分な量(qs)
それへの注入のための水 100mL

活性成分を、注入にための水の1部分において溶解させる。次いで、十分な量の塩化ナトリウムを撹拌しながら添加して、等張溶液を作製する。溶液を、注入のための水の残りを伴う重量まで作製し、0.2ミクロン(μm)の膜フィルタを介してろ過し、及び無菌条件の下で包装する。
【0108】
(例5)
(座剤調剤物)
組成物が含むもの: % 重量/重量
活性成分 1.0%
ポリエチレングリコール1000 74.5%
ポリエチレングリコール4000 24.5%

成分を一緒に水蒸気浴上で溶融し、及び混合し、及び型に注ぎ、2.5gの総重量を含ませる。
【0109】
(例6)
(局所調剤物)
(成分) (グラム)
活性化合物 0.2-2
スパン60 2
トゥイーン60 2
ミネラルオイル 5
ワセリン(ペトロラタム) 10
メチルパラベン(paraben) 0.15
プロピルパラベン 0.05
BHA(ブチル化ヒドロキシアニソール) 0.01
水 十分量100

すべての上記成分を、水を除き、組み合わせ、及び撹拌しながら60℃に加熱する。次いで、60℃で十分な量の水を激しく撹拌しながら添加し、成分を乳化させ、及び次いで水を十分量100g添加する。
【0110】
(例7)
(歯磨き粉調剤物)
(成分) (% 重量/重量)
活性化合物 1
70%ソルビトール 30
水 25
グリセリン 18
歯科用シリカ 23
カルボキシメチルセルロース(CMC) 0.9
ラウリル硫酸ナトリウム(SLS) 0.75
香料 0.5
二酸化チタン 0.4
サッカリンナトリウム 0.25
安息香酸ナトリウム 0.1
染料 0.003

活性成分をグリセリンの1部分と混合し、CMCをグリセリンの1部分と混合し、SLSをソルビトールの1部分と混合する。これらを順次に、香料を除き、すべての他の成分の混合物に添加し、及び各添加後に混合する。香料を添加し、及び混合する。混合物をスクイーズチューブ中に充填する。
【0111】
この明細書及び添付の請求の範囲において、原文の単数形“a”、“an”及び“the”が表すものには、文中で他にはっきり定められない限り、複数形の参照が包含される。
値の範囲が提供される場合、文中で他にはっきり定められない限り、各介在値で、下限の10分の1の単位まで、その範囲の上限及び下限の間、及び任意の他の記述又は記述される範囲における介在値が、本発明の範囲内に包含されることが理解される。これらのより一層小さい範囲の上限及び下限は、無関係に、より一層小さい範囲に含まれ、及びまた、本発明の範囲内に包含され、記述された範囲において任意に特に除かれた限界に左右される。記述された範囲が限界の1種又は双方を含んでいる場合、限界に含まれるそれらのどちらかか、又は双方を除く範囲は、また、本発明において含まれる。
【0112】
他で定められない限り、本明細書で用いるすべての技術的及び科学的な用語は、この発明が属する技術における通常の熟練のものに一般に理解されるのと同じ意味を持つ。
この出願において載せたすべての特許及び他の参考文献は、この出願中に参考として組み込むが、但し、それらが本出願のものと矛盾しない限りにおいてである(その場合、本出願が優先する)。
【0113】
上述の発明は、例示及び例により、明快な理解を目的として少し詳しく説明したが、この技術の通常の熟練のものにとって、本発明の教示に照らし、添付する請求の範囲の精神及び範囲から逸脱することなく一定の変化及び修飾がそれに対して行なわれることは、ためらいなく明らかである。また、上述の説明は、説明の目的のために、特定の命名法を用いて、本発明の完全な理解を提供する。しかし、この技術における熟練のものにとって、本発明を実行するために特定の細部が要求されないことは明らかである。したがって、本発明の特定の具体例の上述の記述は、例示及び説明のために示され;それらが網羅的であるとか、又は本発明を開示した精密な形態に制限することを意図していない。多くの修飾及び変形が上述の教示を考慮して可能である。具体例は、本発明の原理及びその実用化を説明するために選定し、及び説明したものであり、更にそれにより、この技術における他の熟練のものが本発明を利用できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】本発明に従う化合物を調製するための1例の反応スキームを描く図表である。
【図2】本発明に従うアスコルビン酸エステルを形成させるのに採用される模範的なR-NSAID化合物を描く。
【図3】本発明のエステルを調製するための一般的なスキームである。
【図4】R-NSAIDのグリセロールエステルを合成するためのスキームである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物であって、S‐鏡像体を実質的に含まない非ステロイド性抗炎症薬のR‐鏡像体のエステルであり、前記エステルが、3〜6個の炭素原子、少なくとも1個のヒドロキシル基、及び随意に1個又はそれよりも多いカルボキシル基、1〜4個のヒドロキシル基、1個又はそれよりも多いアルデヒド基、ガンマラクトン、デルタラクトン、アミン、イミン又はラクタムから構成されるエステル化剤からのものである化合物。
【請求項2】
前記エステル化剤が、次の式:
Q‐CH(A)‐CH(D)‐J‐Q
式中、Aは、OH、H、NH、保護基、又は所定のレベルの水溶性を与える基であり、
Dは、OH、H、NH、保護基、又は所定のレベルの溶解性を水に与える基であり、
式中、Jは、C(G)=C(G)、(CH(G))であり、
Gは、無関係に、OH、H、NH、保護基、又は所定のレベルの水溶性を与える基であり、
nは0、1又は2であり、
Qは、CH‐OH、CH、COOH又はCHOであり、
は、H、CH‐OH、CH、COOH又はCHOであり、
式中、QがCOOHであるとき、nは1又は2であり、及びA又はDはOHであり、QはA又はDと一緒にしてラクトンを形成することができる
を持つ、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
前記エステル化剤が、次の式:
Q‐CH(A)‐CH(D)‐J‐Q
式中、Aは、OH、H、NH、保護基、又は所定のレベルの水溶性を与える基であり、
Dは、OH、H、NH、保護基、又は所定のレベルの溶解性を水に与える基であり、
式中、Jは、C(G)=C(G)、(CH(G))であり、
Gは、無関係に、OH、H、NH、保護基、又は所定のレベルの水溶性を与える基であり、
nは0、1又は2であり、
Qは、CH‐OH、CH、COOH又はCHOであり、
は、H、CH‐OH、CH、COOH又はCHOである
を持つ、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
前記エステル化剤が、次の式:
Q‐CH(A)‐CH(D)‐J‐Q
式中、Aは、OH、H、NH、保護基、又は所定のレベルの水溶性を与える基であり、
Dは、OH、H、NH、保護基、又は所定のレベルの溶解性を水に与える基であり、
式中、Jは(CH(G))であり、
Gは、無関係に、OH、H、NH、保護基、又は所定のレベルの水溶性を与える基であり、
nは0、1又は2であり、
Qは、CH‐OH、CH又はCOOHであり、
は、H、CH‐OH、CH又はCOOHである
を持つ、請求項1記載の化合物。
【請求項5】
前記エステル化剤が、アスコルビン酸、グリセロール、プロピレングリコール、ヒドロキシコハク酸、ヒドロキシグルタミン酸、グリセリン酸、酒石酸、キシラル酸、リンゴ酸、乳酸及びヒドロキシ酪酸からなる群より選ばれる、請求項1記載の化合物。
【請求項6】
前記非ステロイド性抗炎症薬が、ナプロキセン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、エトドラク、ケトプロフェン、ケトロラック、チアプロフェン酸、スプロフェン、カルプロフェン、ピルプロフェン、インドプロフェン、及びベノキサプロフェンからなる群より選ばれる、請求項1記載の化合物。
【請求項7】
化合物であって、S‐鏡像体を実質的に含まない非ステロイド性抗炎症薬のR‐鏡像体のエステルであり、前記エステルがエステル化剤からのものであり、エステル化剤が、非環状であり、及び3〜6個の炭素原子、少なくとも1個のヒドロキシル基及び随意に1個又はそれよりも多いカルボキシル基及び1〜4個のヒドロキシル基から構成される、化合物。
【請求項8】
前記エステル化剤が、グリセロール、プロピレングリコール、ヒドロキシコハク酸、ヒドロキシグルタミン酸、グリセリン酸、酒石酸、キシラル酸、リンゴ酸、乳酸及びヒドロキシ酪酸からなる群より選ばれる、請求項7記載の化合物。
【請求項9】
前記非ステロイド性抗炎症薬が、ナプロキセン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、エトドラク、ケトプロフェン、ケトロラック、チアプロフェン酸、スプロフェン、カルプロフェン、ピルプロフェン、インドプロフェン、及びベノキサプロフェンからなる群より選ばれる、請求項7記載の化合物。
【請求項10】
化合物であって、次の式:
{Q‐CH(A)‐CH(D)‐J‐Q}‐OC(O)W
式中、‐OC(O)Wと無関係なとき、
Aは、OH、H、NH、保護基、又は所定のレベルの水溶性を与える基であり、
Dは、OH、H、NH、保護基、又は所定のレベルの溶解性を水に与える基であり、
式中、Jは、C(G)=C(G)、(CH(G))であり、
nは0、1又は2であり、及び
ここで、‐OC(O)Wと無関係なとき、
Gは、無関係に、OH、H、NH、保護基、又は所定のレベルの水溶性を与える基であり、
式中、炭素が‐OC(O)Wと無関係なとき、
Qは、H、CH‐OH、CH、COOH又はCHOであり、
は、H、CH‐OH、CH、COOH又はCHOであり、
式中、QがCOOHであるとき、nは1又は2であり、及びA又はDはOHであり、QはA又はDと一緒にしてラクトンを形成することができ、及び
式中、A、D、G、Q又はQの1種だけが‐OC(O)Wを含み、及び
式中、WはS‐鏡像体を実質的に含まないR‐NSAID(R‐非ステロイド性抗炎症薬)類似体である
の化合物。
【請求項11】
前記非ステロイド性抗炎症薬が、ナプロキセン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、エトドラク、ケトプロフェン、ケトロラック、チアプロフェン酸、スプロフェン、カルプロフェン、ピルプロフェン、インドプロフェン、及びベノキサプロフェンからなる群より選ばれる、請求項10記載の化合物。
【請求項12】
化合物であって、S−鏡像体を実質的に含まない非ステロイド性抗炎症薬のR‐鏡像体のアスコルビン酸エステルであるか、又はその薬学的に許容できる塩である、化合物。
【請求項13】
前記非ステロイド性抗炎症薬が、ナプロキセン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、エトドラク、ケトプロフェン、ケトロラック、チアプロフェン酸、スプロフェン、カルプロフェン、ピルプロフェン、インドプロフェン、及びベノキサプロフェンからなる群より選ばれる、請求項12記載の化合物。
【請求項14】
前記アスコルビン酸が、L‐アスコルビン酸及びその鏡像体及びD‐エリソルビン酸及びその鏡像体からなる群より選ばれる請求項13記載の化合物。
【請求項15】
哺乳類における疾病又は病気を処置するための方法であって、前記方法が、鏡像異性的に安定な形態の請求項1記載の化合物を含有する組成物を、化学的防止効果又は治療上の効果又は予防的効果又は化学的保護効果を引き出すのに有効な量において、前記哺乳類に投与する工程を含む、方法。
【請求項16】
前記疾病又は病気が、炎症、嚢胞性線維症、認知症(痴呆症)、又は新生物性疾病である請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記哺乳類がヒトである請求項15記載の方法。
【請求項18】
前記組成物を、経口的に、経皮的に、静脈内に投与するか、又は座剤により投与する請求項15記載の方法。
【請求項19】
前記組成物を、1日当り約1.0mgから約2000mgまでの量において1回又はそれよりも多い回数の投与量において投与する請求項15記載の方法。
【請求項20】
前記組成物を、約10mgから約800mgまでの量において1日に1回又は2回投与する請求項15記載の方法。
【請求項21】
前記組成物が薬学的に許容できる担体を含む請求項15記載の方法。
【請求項22】
化合物であって、次の式:
【化1】


式中、Yは、S‐鏡像体を実質的に含まないR‐NSAID類似体であり、
Xは、H、保護基、又は所定のレベルの水溶性を与える基である
か、又はその薬学的に許容できる塩
の化合物。
【請求項23】
前記R‐NSAID類似体が、R‐ナプロキセン、R‐フルルビプロフェン、R‐イブプロフェン、R‐エトドラク、R‐ケトプロフェン、R‐ケトロラック、R‐チアプロフェン酸、R‐スプロフェン、R‐カルプロフェン、R‐ピルプロフェン、R‐インドプロフェン、及びR‐ベノキサプロフェンの類似体からなる群より選ばれる、請求項22記載の化合物。
【請求項24】
哺乳類における疾病又は病気を処置するための方法であって、前記方法が、鏡像異性的に安定な形態の請求項22記載の化合物を含有する組成物を、化学的保護効果又は治療上の効果を引き出すのに有効な量において、前記哺乳類に投与する工程を含む、方法。
【請求項25】
前記疾病又は病気が、炎症、嚢胞性線維症、アルツハイマー病、又は新生物性疾病である請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記哺乳類がヒトである請求項24記載の方法。
【請求項27】
前記組成物を、経口的に、経皮的に、静脈内に又はくも膜下腔内に投与する請求項21記載の方法。
【請求項28】
前記組成物を、1日当り約1.0mgから約2000mgまでの量において1回又はそれよりも多い回数の投与量において投与する請求項24記載の方法。
【請求項29】
前記組成物を約10mgから約800mgまでの量において1日に1回又は2回投与する請求項24記載の方法。
【請求項30】
前記組成物が薬学的に許容できる担体を含む請求項24記載の方法。
【請求項31】
請求項12記載の化合物を製造する方法であって、前記方法が:
(a)前記アスコルビン酸の隣接環ヒドロキシ基を保護基と反応させる工程、
(b)前記アスコルビン酸の末端ヒドロキシ基を活性化形態の前記R‐NSAIDと反応させる工程及び
(c)前記保護基を除去する工程
を含む方法。
【請求項32】
前記R‐NSAIDが窒素原子を含み、及び前記方法が更にその酸付加塩を調製する工程を含む請求項31記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2006−510603(P2006−510603A)
【公表日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−543347(P2004−543347)
【出願日】平成15年10月3日(2003.10.3)
【国際出願番号】PCT/US2003/031500
【国際公開番号】WO2004/032845
【国際公開日】平成16年4月22日(2004.4.22)
【出願人】(505129356)アンコール ファーマスーティカルズ インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】