説明

RARγレチノイド受容体アンタゴニスト活性を有する二置換カルコンオキシム

式の化合物(式中、変数は明細書中に記載された値を有する)は、RARγレチノイド受容体のアンタゴニストである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2003年12月26日に出願された米国仮出願第60/532,835号の恩恵を主張する。上記出願の全教示は、参照によって本明細書中に援用される。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
レチノイド様活性を有する化合物は当該分野で周知であり、数多くの米国および他の特許ならびに科学の刊行物に記載されている。レチノイド様活性は、数多くの疾患および病気の症状および状態の治癒または緩和のための、ヒトを含む哺乳類種の動物の処置に有用であることが、当該分野で一般的に知られ、認められている。従来技術によって、レチノイド様生物活性を有する多数の化合物が開発されており、多くの特許および科学の文献が、かかる化合物を記載している。
【0003】
不運にも、レチノイド様活性を有する化合物(レチノイド)はまた、治療用の用量レベルで、頭痛、奇形発生、粘膜皮膚毒性、筋骨格毒性、異脂肪血症、皮膚過敏、頭痛および肝毒性を含むいくつかの望ましくない副作用を引き起こす。これらの副作用は、疾患の治療へのレチノイドの許容性および有用性を制限する。
【0004】
現在、哺乳動物(および他の生物)には2つの主要な型のレチノイド受容体があることは、当該分野において一般的な知識となっている。受容体の2つの主要な型またはファミリーは、それぞれRARおよびRXRと呼ばれる。各型にはサブタイプがある;RARファミリーでは、サブタイプはRARα、RARβおよびRARγと呼ばれ、RXRではサブタイプは:RXRα、RXRβおよびRXRγである。2つの主要なレチノイド受容体の型およびいくつかのサブタイプの分布は哺乳類の生物の種々の組織および器官において均一でないこともまた、当該分野で確立されている。さらに、多くの所望されていないレチノイドの副作用が、1つ以上のRAR受容体サブタイプによって媒介されていることが、当該分野で一般的に認められている。したがって、レチノイド受容体に対してアゴニスト様活性を有する化合物の中で、主要な型またはファミリーの1つに対する特異性または選択性、およびさらには受容体のファミリーの1つ以上のサブタイプに対する特異性または選択性が、望ましい薬理学的特性とされている。
【0005】
レチノイド受容体の一般的な総説については、Spornら編、The Retinoids、Raven Press, Ltd., New York 中の Mangelsdorfら(1994) The Retinoid Receptors p 319-349、を参照。別の一般的な総説については、Dawson およびWilliam H. Okamura、Chemistry and Biology of Synthetic Retinoids、CRC Press Inc.発行, 1990, 324-356ページを参照。
【0006】
RAR受容体のアゴニストによって引き起こされる1つまたは複数の応答を引き起こすことなくRAR受容体に結合する化合物もまた、当該分野において開発されてきた。「レチノイド」応答を引き起こすことなくRAR受容体に結合する化合物または薬剤は、そのため、生物学的アッセイおよび系において、RARアゴニストの活性を(より低い、またはより高い程度に)ブロッキングすることができる。かかる化合物は、例えば、米国特許第5,877,207号;第5,952,345号および第5,958,954号に記載されている。この分野のさらなる文献としては、公開PCT出願WO 94/14777が挙げられ、これはRARレチノイド受容体に結合するある複素環式カルボン酸誘導体を記載しており、該出願中で、ざ瘡、乾癬、慢性関節リウマチおよびウイルス感染等の、ある疾患または状態の治療に有用であるといわれている。同様の開示が、Yoshimuraら、J Med. Chem. 38: 3163-3173 (1995)の論文においてなされている。Kanekoら、Med. Chem Res. 1: 220-225 (1991); Apfelら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 7129-7133 Augusty 1992 Cell Biology; Eckhardtら、Toxicology Letters 70: 299-308 (1994); Keidelら、Molecular and Cellular Biology 14: 287-298 (1994); およびEyrollesら、J. Med. Chem. 37: 1508-1517 (1994)は、1つ以上のRARレチノイドサブタイプでアンタゴニスト様活性を有する化合物を記載している。
【0007】
「カルコン部分」または「カルコンリンカー」および「カルコンオキシムリンカー」は、本明細書において、以下に示す構造:
【0008】
【化1】

【0009】
を有し、本発明において2つの芳香族部分または複素環式芳香族部分を共有結合で連結する部分を説明する用語である。式中、星印はそれぞれ芳香環が結合する炭素を示す。
【0010】
以下の参考文献は、二置換「カルコン」化合物であるレチノイド化合物を開示する:米国特許第6,455,701号;第6,469,028号;第6,225,494号;第5,723,666号;第5,739,338号および第5,760,276号。
【0011】
PCT公開公報WO 02/28810 A2は、肺気腫および関連する肺疾患の治療に有用な化合物を開示しており、この開示において提供される一般式は、カルコンオキシム化合物を含む。
【0012】
米国特許第5,723,666号;第5,599,967号;および第5,605,915号は、オキシム部分を含むレチノイド化合物を開示している。
【0013】
レチノイド化合物を用いた療法の望ましくない副作用に加えて、ビタミンサプリメントの過剰な摂取または該ビタミンを高レベルで含有する特定の魚および動物の肝臓の摂取のいずれかに起因するビタミンAまたはビタミンA前駆体の過剰摂取によって引き起こされる、重篤な医学的状態が時折起こる。ビタミンA過剰症候群に見られる慢性または急性の毒性としては、頭痛、皮膚剥脱、骨毒性、異脂肪血症等が挙げられる。近年、ビタミンAアナログ、すなわちレチノイドに見られる毒性は、ビタミンA過剰症候群の毒性を本質的に反復していることが明らかになり、共通の生物学的要因、すなわちRAR活性化が示唆される。いくつかのレチノイドアンタゴニストが当該分野で公知であるものの、上記のレチノイドに起因する毒性は、現在のところ、主に支持的な手段によって、および肝臓、ビタミンサプリメントまたはレチノイドであれ、原因物質へのさらなる曝露を控えることによって、処置されている。毒性の一部は時間とともに解決するが、他のもの(例えば、未成熟な骨端軟骨板閉鎖)は永続する。
【0014】
一般的に、薬理学的な作用因子による中毒の最良の治療は特異的な解毒薬であるが、現存の数千のもののうち、約24の化学物質または化学物質の種類だけが、特異的な公知の解毒薬を有する。特異的な解毒薬は、ビタミンA過剰およびレチノイド毒性の治療に、明らかに価値がある。実際、ますます効力のあるレチノイドが臨床上使用されているため、レチノイド中毒に対する特異的解毒薬は、命を救い得る。さらに、多くの公知のレチノイドは1つ以上のレチノイド受容体サブタイプに選択的であり、異なるレチノイド受容体サブタイプによって様々な生物学的経路が活性化され、さらにまた哺乳動物の器官においてレチノイドサブタイプの分布が変動するため、RARγ受容体に対するアンタゴニストである化合物、および具体的にはRARγ受容体の特異的または選択的アンタゴニストである化合物が、薬理学的に望ましい。本発明は、かかる化合物を提供する。
【0015】
(発明の概要)
本発明は、RARγレチノイド受容体アンタゴニスト活性を有する化合物に関する。より具体的には、本発明は、RARγレチノイド受容体アンタゴニスト活性を有する二置換カルコンオキシムに関する。
【0016】
本発明は、式1
【0017】
【化2】

【0018】
(式中、Rは式(a)〜(d)で定義されるラジカルからなる群より選択され、
【0019】
【化3】

【0020】
ここで、環にある破線は、結合を表すか、または環にある破線の1つだけが結合を表すという条件で、結合がないことを表し;
*は、環にある炭素でそこにカルコンオキシム基が結合することを示し;
Xは、炭素数1〜6で1つまたは2つの二重結合を有する(R5)r置換アルケニル、炭素数1〜6で1つまたは2つの三重結合を有する(R5)r置換アルキニル、(R5)rフェニル、(R5)rナフチル、またはヘテロアリール基がO、SおよびNからなる群より選択される1〜3個のヘテロ原子を有する(R5)rヘテロアリールであり;
Yは、フェニルもしくはナフチル基、またはピリジル、チエニル、フリル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、チアゾリル、オキサゾリル、イミダゾリル、およびピラゾリルからなる群より選択されるヘテロアリールであり、前記フェニル基およびヘテロアリール基は1個または2個のR4基で任意に置換され;
mは0〜5の値を有する整数であり;
nは0〜3の値を有する整数であり;
pは0〜2の値を有する整数であり;
rは0〜5の値を有する整数であり;
R1は、独立して、炭素数1〜6のアルキル、F、Cl、BrまたはIであり;
R2は、独立して、炭素数1〜6のアルキル、F、Cl、Br、I、OH、SH、1〜6の炭素を有するアルコキシ、1〜6個の炭素を有するアルキルチオ、NH2、C1-6アルキルアミノ、またはジ(C1-6アルキル)アミノであり;
R3は、Hまたは炭素数1〜10のアルキルであり;
R4は、独立して、ハロゲン、炭素数1〜10のアルキル、炭素数1〜6のフルオロ置換アルキル、炭素数1〜10のアルコキシ、または炭素数1〜10のアルキルチオであり;
R5は、独立して、炭素数1〜6のアルキル、F、Cl、Br、I、OH、SH、1〜6個の炭素を有するアルコキシ、1〜6個の炭素を有するアルキルチオ、NH2、C1-6アルキルアミノ、またはジ(C1-6アルキル)アミノであり;
Aは、qが0〜5の(CH2)q、3〜6個の炭素を有する低級分枝鎖アルキル、3〜6個の炭素を有するシクロアルキル、2〜6個の炭素および1つまたは2つの二重結合を有するアルケニル、または2〜6個の炭素および1つまたは2つの三重結合を有するアルキニルであり;
Bは、COOHまたはその薬学的に許容され得る塩、COOR8、CONR9R10、-CH2OH、CH2OR11、CH2OCOR11、CHO、CH(OR12)2、CHOR13O、-COR7、CR7(OR12)2、CR7OR13O、またはトリ低級アルキルシリルであり、ここでR7は炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜5のシクロアルキル、または2〜5個の炭素を含むアルケニル基であり、R8は炭素数1〜10のアルキル基またはアルキル基が1〜10個の炭素を有するトリメチルシリルアルキル、または炭素数5〜10のシクロアルキル基、CH2OCH3またはCH2OCH2OOC1-6アルキルであるか、またはR8はフェニルまたはC1-6アルキルフェニルであり、R9およびR10は、独立して、水素、炭素数1〜10のアルキル基、または炭素数5〜10のシクロアルキル基、またはフェニルまたはC1-6アルキルフェニルであり、R11は、炭素数1〜6のアルキル、フェニル、またはC1-6アルキルフェニルであり、R12は炭素数1〜6のアルキルであり、R13は炭素数2〜5の二価アルキルラジカルである)
の化合物、または該化合物の薬学的に許容され得る塩に関する。
【0021】
本発明はまた、式1の化合物を組み込んだ医薬組成物、ならびにかかる治療を必要とする哺乳動物を、レチノイドアンタゴニストで治療する方法、および具体的には、レチノイド中毒、レチノイドの過剰摂取を予防、治療または改善する、またはレチノイドによるRARγ受容体の活性化が望ましくないか、もしくは最小化されるべき場合のレチノイドに関連した、方法に関する。
【0022】
(発明の詳細な説明)
一般的な態様および合成方法
アルキルという用語は、ノルマルアルキルおよび分枝鎖アルキルとして公知である任意の基および全ての基を示し、これらを包含する。
【0023】
薬学的に許容され得る塩は、塩を形成できる官能基(functionality)、例えば酸官能基を有する本発明の任意の化合物について調製されてもよい。薬学的に許容され得る塩は、親化合物の活性を保持し、かつそれが投与される対象に及びそれが投与されるという関係において有害なまたは望ましくない任意の効果を及ぼさない、任意の塩である。
【0024】
薬学的に許容され得る塩は、有機塩基または無機塩基から誘導されてもよい。塩は、一価または多価イオンであってもよい。特に興味の対象となるのは、無機イオンのナトリウム、カリウム、カルシウムおよびマグネシウムである。有機塩は、アミン、特にモノ-、ジ-、およびトリアルキルアミンまたはエタノールアミンなどのアンモニウム塩で作られてもよい。塩はまた、カフェイン、トロメタミン、および同様な分子で形成されてもよい。
【0025】
本発明の化合物は、少なくとも1つのオレフィン性二重結合を含み、これについてtransおよびcis(EおよびZ)立体異性が存在し得る。本発明の化合物は、それぞれの化合物の名前に示されるとおり、および/または1つもしくは複数の二重結合に関して置換基の向きの構造式を特定して示されるように、1つまたは複数の二重結合に関して置換基の特定した向きがある。
【0026】
本発明の化合物はまた、隣接する炭素に二重結合によって結合したオキシム官能基も含み、これについてsynおよびanti立体異性が存在する。本発明の範囲に、synおよびanti立体配置の両方のオキシムを包含することを意図する。しかしながら、特定の例は、それぞれの化学名に示されるおよび/またはそれぞれの構造式で示される特定の立体配置を有する。
【0027】
発明の化合物はまた、1つ以上のキラル中心を含んでもよく、したがって鏡像異性型およびジアステレオマー型として存在してもよい。化合物のキラル中心に関して、本発明の範囲に、置換基の可能な全ての向きを包含すること、従って純粋な鏡像異性体(光学異性体)、ジアステレオマー、ジアステレオマーの混合物、および鏡像異性体のラセミ混合物を含むことを意図する。
【0028】
一般的に、本発明の化合物は、反応スキーム1に示される合成経路により得ることが可能である。
【0029】
【化4】

【0030】
反応スキーム1の出発化合物は、式2のメチルケトンであり、ここで可変基Rは式1に関連して定義される。メタノールなどの適した極性溶媒中、水酸化ナトリウムなどの強塩基の存在下、式2のメチルケトンを式3のアルデヒドと反応させる。このアルドール縮合反応の結果が式4の化合物であり、ここでR基と置換芳香族もしくはヘテロ芳香族Y基とは、カルコン部分CO=CH=CHにより共有結合で連結されている。次いで、エチルアルコールなどの適切な極性溶媒中、ピリジンの存在下、式4の化合物をヒドロキシルアミンと反応させて本発明の式1のオキシム化合物を提供する。通常、最後の反応でsynおよびanti(またはcisおよびtrans)立体配置の両方のオキシムが形成されるが、必ずしも量が等しいとは限らない。ほとんどの場合、オキシム異性体は、結晶化および/またはクロマトグラフィーによって互いに分離され得る。
【0031】
反応スキーム1に示される合成経路の変更例において、式5に示されるように、式3のA-B基は、ブロモ基で置換される。この変更例では、アルドール縮合反応後、生成物(式6)は、ジメチルホルムアミド(DMF)、トリエチルアミン(TEA)およびエタノールまたは2-(トリメチルシリル)エタノール中、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン(dppp)および酢酸パラジウムの存在下、一酸化炭素との反応により、式7の化合物に変換される。次いで、式7のカルコン化合物は、ピリジンまたは他の塩基の存在下、ヒドロキシルアミンとの反応により、式8のオキシムに変換される。式8の化合物は、本発明の範囲内であり、式1の範囲内である。
【0032】
式2のメチルケトンは、通常、化学特許および/または科学の文献に従って入手可能であるか、または有機化学者が容易に行える範囲の公知の合成法のかかる改変により得ることができる。反応スキーム2および反応スキーム3は、式2のメチルケトンを提供する一般的な合成経路を開示する。
【0033】
【化5】

【0034】
反応スキーム2に従って、塩化メチレンなどの適した非プロトン性溶媒中、式9の化合物を塩化アセチルとのフリーデルクラフツ反応に供し、式2のメチルケトンを提供する。反応スキーム3に従って、アルゴンなどの不活性ガスの保護ブランケット(protective blanket)下、テトラヒドロフラン(THF)などの適した非プロトン性溶媒中、パラジウム触媒(PdCl2(PPh3)2)の存在下、式10のブロモ化合物をトリブチル(1-エトキシビニル)スズと反応させ、その後酸と反応させて式2のメチルケトンを提供する。これらの反応の出発物質、すなわち式9および式10の化合物は、化学特許および/または科学の文献に従って入手可能であるか、有機化学者が容易に行える範囲の公知の合成法の改変により得ることができる。式2、式9、および式10の化合物の例が、以下に記載される具体例に関して、可能な場合は現在好適なこれらの化合物の合成法とともに、提供される。
【0035】
可変基Y、R4、A、およびBが式1に関して定義される反応スキーム1の式3および式5の芳香族またはヘテロ芳香族アルデヒド試薬もまた、化学特許および/または科学の文献に従って入手可能であるか、有機化学者が容易に行える範囲の公知の合成法の改変により得ることができる。
【0036】
反応スキーム1で使用可能な式3および式5の芳香族またはヘテロ芳香族アルデヒド試薬の例は、4-ホルミル安息香酸メチル、4-ホルミル-2-フルオロ-安息香酸メチル、4-ブロモ-2-フルオロ-ベンズアルデヒド(benzaladehyde)、4-ブロモベンズアルデヒド、3-ホルミル安息香酸メチル、3-ホルミル-2-フルオロ-安息香酸メチル、3-ブロモ-2-フルオロ-ベンズアルデヒド(benzaladehyde)、3-ブロモベンズアルデヒド、5-ホルミル-ナフトエ酸メチル、6-ホルミル-ナフトエ酸メチル、5-ホルミル-チオフェン-2-カルボン酸メチル、5-ホルミル-チオフェン-3-カルボン酸メチル、5-ホルミル-フラン-2-カルボン酸メチル、5-ホルミル-フラン-3-カルボン酸メチル、6-ホルミル-ピリジン-2-カルボン酸メチル、6-ホルミル-ピリジン-3-カルボン酸メチル、1-ブロモ-5-ホルミル-ナフタレン、1-ブロモ-4-ホルミル-ナフタレン、2-ブロモ-5-ホルミル-チオフェン、3-ブロモ-5-ホルミル-チオフェン、2-ブロモ-5-ホルミル-フラン、3-ブロモ-5-ホルミル-フラン、3-ブロモ-6-ホルミル-ピリジンおよび2-ブロモ-6-ホルミル-ピリジンである。
【0037】
生物学的活性、投与の様式
本発明の化合物を、あるアッセイにおいて、RARおよびRXRレチノイド受容体のアゴニストとしての活性について、ならびにまたそれを活性化せずに該受容体に結合するその能力についても、すなわちRARおよびRXR受容体のアンタゴニストとしてのその活性についても試験した。
【0038】
具体的には、化合物を試験した一つのアッセイは、RARα、RARβ、およびRARγ受容体の亜型に関してアゴニスト様活性について試験する、ならびにFeigner P. L.およびHolm M. (1989) Focus, 112により公開され、米国特許第5,455,265号に詳細に記載された研究に基づく、キメラ受容体トランス活性化アッセイである。米国特許第5,455,265号の明細書は、本明細書中に参照によって明確に援用される。
【0039】
本発明の化合物のアンタゴニスト/アゴニスト様活性、すなわちいくつかのレチノイド受容体の亜型に結合するその能力を測定する汎受容体(holoreceptor)トランス活性化アッセイおよびリガンド結合アッセイは、それぞれ1993年6月24日に公開されたPCT国際公開第WO WO93/11755号パンフレットに(特に30〜33ページおよび37〜41ページに)記載されており、その明細書もまた、本明細書中に参照によって援用される。汎受容体トランス活性化についての詳細な実験手順は、Heymanら Cell 68, 397-406, (1992); Allegrettoら J. Biol. Chem. 268, 26625-26633、およびMangelsdorfらによって記載された。The Retinoids: Biology, Chemistry and Medicine, 319〜349ページ, Raven Press Ltd., New York、これは本明細書中に参照によって明確に援用される。かかるアッセイにおいて得られる結果は、キメラ受容体トランス活性化アッセイにおいても存在するのと同様に、EC50数で表される。1 nMの全トランスレチノイン酸の存在下で行われる他の機能的アッセイ、すなわちPGA-RARアンタゴニストアッセイ(グルココルチコイド−レチノイドキメラ受容体を利用する)は、RARα、RARβ、およびRARγ受容体の亜型に関して化合物をそのアンタゴニスト様活性について試験する改変されたキメラ受容体トランス活性化アッセイである。このアッセイの結果は、普通はIC50数で表される(本明細書中に参照によって援用されるTengら J. Med. Chem. 40, 2445-2452, (1997)参照)。
【0040】
リガンド結合アッセイの結果は、Ki数で表される(本明細書中に参照によって明確に援用されるChengら Biochemical Pharmacology 22巻 3099〜3108ページ参照)。
【0041】
アンタゴニストアッセイにおける阻害率は、1 nMの全トランスレチノイン酸により誘発される相互作用(transaction)活性の最大阻害の百分率として表される。
【0042】
表1は、上に記載したキメラRAR受容体トランス活性化アッセイおよび結合アッセイにおける本発明のある典型的な化合物の活性を開示する。汎受容体トランス活性化アッセイにおいて、化合物はRXRα、RXRβ、およびRXRγ受容体を活性化することに関して本質的に不活性であったため、かかるデータは示していない。
【0043】
【表1】

【0044】

【0045】
表1に示される試験結果から理解され得るように、その中に示される本発明の典型的な化合物は、RARγ受容体亜型のアンタゴニストであるが、RARαまたはRARβ受容体亜型に対して全く親和性を有さないか、またはずっと少ない親和性を有する。かかる性質により、本発明の化合物は、生物学的アッセイにおいて、RARγアゴニストの活性を選択的にまたは特異的に阻止するために用いられ得る。したがって、ヒトを含む哺乳動物において、本発明の化合物はRARアゴニストと同時投与され得、その薬理学的特異性、選択性、または部位特異的送達により、該アゴニストがRARγ受容体に及ぼす望ましくない影響を選択的に妨げ得るかまたは減少させ得る。
【0046】
例えば、本発明の化合物は、ビタミンA補給物の過度の摂取か、または高レベルのビタミンAを含有するある魚および動物の肝臓の摂取のいずれかに起因する急性または慢性のビタミンA過剰摂取を処置するために用いられ得る。なおさらに、本発明の化合物はまた、レチノイド薬により引き起こされる急性または慢性毒性を処置するために用いられ得る。ビタミン過剰症A症候群(頭痛、皮膚剥脱、骨毒性、異常脂質血症)で観察される毒性は、他のレチノイドで観察される毒性と類似するかまたは同一であり、RAR活性化である共通の生物学的原因を示唆していることは、当該分野で公知であった。本発明の化合物はRARγ活性化を阻止するので、前記の毒性を処置するために好適である。
【0047】
本発明の化合物は、本発明の化合物が皮膚に局所的に同時投与される場合、RARγアゴニストのレチノイドにより誘発される皮膚炎症を十分に防ぎ得る。同様に、本発明の化合物は、RARγアゴニストの化合物を全身に投与された患者または動物において、皮膚に局所的に投与され、皮膚炎症を阻止し得る。本発明の化合物は、先在するレチノイド毒性からの回復を加速し得、同時投与されたレチノイドにより引き起こされる高トリグリセリド血症を阻止することに寄与し得、RARアゴニスト(レチノイド)により誘発される骨毒性を阻止することに寄与し得る。
【0048】
一般に、本発明に従った哺乳動物における治療的適用のために、アンタゴニスト化合物は、ビタミンA、ビタミンA前駆体に対する解毒剤として、または過剰摂取もしくは長期曝露に起因するレチノイド毒性に対する解毒剤として、原因要素(ビタミンA前駆体または他のレチノイド)の摂取が中止された後、経腸的に、または局所的に投与され得る。あるいは、レチノイドが治療的利益を提供し、かつ同時投与されたアンタゴニストがレチノイドの一つ以上の望ましくない副作用を軽減するかまたは除く状況において、アンタゴニスト化合物は、本発明に従ってレチノイド薬とともに同時投与される。この種類の適用のために、同時投与されたレチノイドは経腸的に与えられ得るが、例えば局所的に適用されるクリームまたはローションのように、アンタゴニストは部位特異的様式で投与され得る。
【0049】
本発明に従った治療的適用のために、本質的に当該分野で周知である薬学的に許容され得る賦形剤およびビヒクルを用いて、アンタゴニスト化合物は、錠剤、丸薬、カプセル、溶液、懸濁液、クリーム、軟膏、ゲル、膏薬、ローションなどの医薬組成物に組み込まれる。例えば、局所製剤の調整法は、Remington's Pharmaceutical Science, 17版, Mack Publishing Company, Easton, Pennsylvaniaに十分に記載されている。局所適用のために、アンタゴニスト化合物はまた、粉末またはスプレーとして、特にエアロゾル形態で投与され得る。薬物が全身に投与されるべき場合、薬物は経口投与に適した、粉末、丸剤、錠剤などとして、またはシロップもしくはエリキシル剤として調製され得る。静脈内または腹腔内投与のために、アンタゴニスト化合物は、注射によって投与され得る溶液または懸濁液として調製されるであろう。ある場合には、アンタゴニスト化合物を注射により処方することが有用であり得る。ある場合には、アンタゴニスト化合物を坐剤の形態で、または皮下蓄積用長期放出製剤として、もしくは筋肉内注射剤として処方することが有用であり得る。
【0050】
アンタゴニスト化合物は、本発明に従って、治療的に有効な用量で投与されるであろう。治療濃度は、特定の病状(レチノイドもしくはビタミンAにさらされること、またはレチノイド薬の副作用による毒性など)の減少をもたらすか、またはその拡大を遅らせる濃度であろう。本発明に従って、アンタゴニスト化合物を同時投与し、レチノイドに誘発される毒性または副作用を阻止する場合、アンタゴニスト化合物は、予防的様式で用いられ、皮膚炎症などの特定の状態の発症を防ぐことを理解されるべきである。
【0051】
有用な治療濃度または予防濃度は、病状によって変化し、ある場合には、治療される病状の重篤度および治療に対する患者の感受性によって変化し得る。従って、単一の濃度が一様に有用であるのではなく、治療される慢性もしくは急性のレチノイド毒性または関連する状態の特殊性によって改変する必要があろう。そのような濃度には、通常の実験を通じて到達し得る。しかしながら、製剤1ミリリットル当たり0.01〜1.0ミリグラムのアンタゴニスト化合物を含有する製剤が局所適用について、治療的に有効な濃度を構成するであろうことが予想される。全身的に投与される場合、1日あたり体重1kgあたり0.01〜5 mgの量が治療成果をもたらすことが予想されるであろう。
【0052】
本発明の化合物の具体的態様
ここで式1を参照すると、本発明の好ましい化合物において、可変基Rは、置換7,8-ジヒドロナフタレン(dihydronaphtalen)-2-イル基、もしくは置換インド-5,6-エン-2-イル基、置換チオクロメン-7-イル基、または置換1,2-ジヒドロキノリン-7-イル基を表す。
【0053】
本発明の好ましい化合物における可変のR1は、炭素数1〜6のアルキル、より好ましくは炭素数1〜3のアルキル、そして最も好ましくはメチルである。変数mは、好ましくは二(2)であり、本発明の最も好ましい化合物において、7,8-ジヒドロナフタレン母核の8位に、およびインド-5,6-エン母核の7位に、2つの(ジェミナル)メチル基がある。
【0054】
本発明の現在好ましい化合物において、Rと称される部分の芳香族部分は、R2基で置換されていない(nはゼロ)か、または好ましくは炭素数1〜6のアルキル、より好ましくは炭素数1〜3のアルキルである1つまたは2つのR2基で置換されているかのいずれかである。現在、最も好ましくは、縮合環系の芳香族部分は、R2基で置換されていない(nはゼロ)。
【0055】
本発明の好ましい化合物において、Xと称される基はフェニル基である。現在、フェニル基は好ましくは1つのR5基で置換され(rは1)、R5基は現在炭素数1〜6のアルキルとして好ましく、より好ましくは炭素数1〜3のアルキルであり、現在最も好ましくはメチルである。
【0056】
Yで表される芳香族または複素環式芳香族ラジカルは、好ましくはフェニル、ピリジル、チエニル、またはフリルである。さらにより好ましくは、Yはフェニルであり、そしてより好ましくは、フェニル基は、1,4(パラ)位で、カルコンオキシムリンカーおよびA-B基で置換される。Yがピリジルの場合、これは、好ましくは、2,5位で、カルコンオキシムリンカーおよびA-B基で置換される。チエニル基またはフリル基は、好ましくは、2,4位または2,5位で、カルコンオキシムリンカーおよびA-B基で置換される。
【0057】
本発明の好ましい化合物において、R4置換基は存在しないか、またはR4はハロゲンを表すかのいずれかであり、そしてさらにより好ましくはフルオロ基を表す。
【0058】
A-B基は、好ましくは(CH2)q-COOH、(CH2)q-COOR8、または(CH2)q-CONR9R10を表す。より好ましくは、qはゼロ(0)であり、かつBはCOOH、薬学的に許容され得る塩の陽イオンであるか、またはR8は、炭素数1〜3のアルキルもしくはメトキシメチルである。本発明の最も好ましい化合物において、R8はH、または薬学的に許容され得る塩の陽イオンである。
【0059】
現在最も好ましい本発明の化合物の構造を表1に示し、これらの合成の実験手順を以下に記載する。
【0060】
【化6】

【0061】
1-(4-ブロモ-フェニル)-4-メチル-ペント-1-エン-3-オン(化合物1)
3-メチル-ブタン-2-オン(Aldrichより入手可能、4.7g、54.7mmol)の10mLの10% NaOH(aq)溶液および20mLのエタノール溶液に4-ブロモ-ベンズアルデヒド(Aldrichより入手可能、10.0g、54.3mmol)を加えた。室温で3時間撹拌後、反応混合物を水(50ml)で希釈して、ジエチルエーテル(3×20mL)で抽出した。次いで、有機層をブライン(1×5mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、減圧濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(95:5ヘキサン/酢酸エチル)による精製で、表題化合物を淡黄色油状物として得た(7.98g、収率58%):
1H NMR (CDCl3, 300 MHz) δ7.54 (d, J= 16.2 Hz, 1H), 7.53 (d, J= 8.7 Hz, 2H), 7.42 (d, J= 8.7 Hz, 2H), 6.80 (d, J= 16.2 Hz, 2H), 2.93-2.87 (m, 1H), 1.18 (d, J= 6.9 Hz, 6H)。
【0062】
7-ブロモ-1,1-ジメチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-ナフタレン(化合物2)
1-(4-ブロモ-フェニル)-4-メチル-ペント-1-エン-3-オン(化合物2、7.98g、31.7mmol)の20mLのジエチルエーテル溶液に0℃で水素化リチウムアルミニウム(LAH)(1.20g、38.0mmol)をゆっくり加えた。1時間撹拌し、室温まで昇温させた後、氷浴で0℃にして、反応物を2mLの飽和塩化アンモニウム溶液でクエンチし、無水MgSO4で乾燥させた。固体を濾別し、そして濾液を減圧濃縮して粗無色油状物を得た。次いで、5gのポリリン酸(PPA)を粗油状物に加え、混合物を120℃で15分間加熱した。室温まで冷却後、混合物を水(100mL)に入れ、ジエチルエーテル(3×15mL)で抽出し、ブライン(1×15mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、減圧濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン)による精製で、表題化合物を淡黄色油状物として得た(6.70g、収率89%):
1H NMR (CDCl3, 300 MHz) δ7.35 (d, J= 2.1 Hz, 1H), 7.09 (dd, J= 1.8, 8.1 Hz, 1H), 6.83 (d, J= 8.4 Hz, 1H), 2.60 (t, J= 6 Hz, 2H), 1.75-1.59 (m, 2H), 1.56-1.47 (m, 2H), 1.19 (s, 6H)。
【0063】
6-ブロモ-4,4-ジメチル-3,4-ジヒドロ-2H-ナフタレン-1-オン(化合物3)
7-ブロモ-1,1-ジメチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-ナフタレン(化合物2、1.1g、4.62mmol)の10mLのジクロロメタン溶液に酸化クロム(VI)(72mg、0.46mmol)および5mLのtert-ブチル-ヒドロペルオキシド(TBHP)溶液を加えた。室温で8時間撹拌後、混合物を水(20mL)で希釈し、ジエチルエーテル(3×10mL)で抽出し、ブライン(1×10mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、減圧濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(90:10ヘキサン/酢酸エチル)による精製で、表題化合物を白色固体として得た(920mg、収率79%):1H NMR (CDCl3, 300 MHz) δ7.87 (d, J= 8.1 Hz, 1H), 7.54 (d, J= 2.1Hz, 1H), 7.42 (dd, J= 2.1, 8.1 Hz, 1H), 2.70 (dd, J= 6.3, 7.5 Hz, 2H), 2.01 (dd, J= 6.3, 7.5 Hz, 2H), 1.38 (s, 6H)。
【0064】
7-ブロモ-1,1-ジメチル-4-p-トリル-1,2-ジヒドロ-ナフタレン(化合物4)
6-ブロモ-4,4-ジメチル-3,4-ジヒドロ-2H-ナフタレン-1-オン(化合物3、350mg、1.39mmol)の10mLのジエチルエーテル溶液に0℃でp-トリルマグネシウムブロミド(1Mジエチルエーテル溶液、4.2mL、4.17mmol)をゆっくりと加えた。2時間撹拌して室温まで昇温後、混合物を0℃で水でクエンチし、ジエチルエーテル(3×5mL)で抽出し、ブライン(1×5mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、減圧濃縮して、淡黄色油状物を得た。次いで、粗油状物を10mLのジクロロメタンに溶解して、100mgのパラトルエンスルホン酸とともに、室温で2時間撹拌した。次いで、水(10mL)を加え、そして有機層をブライン(1×5mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、減圧濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン)による精製で、表題化合物を無色油状物として得た(295mg、収率65%):
1H NMR (CDCl3, 300 MHz) δ7.49-7.45 (m, 2H), 7.26-7.18(m, 4H), 6.90(d, J= 8.1 Hz, 1H), 5.97 (t, J= 4.8 Hz, 1H), 2.39(s, 3H), 2.30(d,J=4.8Hz, 2H), 1.30 (s, 6H)。
【0065】
1-(8,8-ジメチル-5-p-トリル-7,8-ジヒドロ-ナフタレン-2-イル)-エタノン(化合物5)
7-ブロモ-1,1-ジメチル-4-p-トリル-1,2-ジヒドロ-ナフタレン(化合物4、295mg、0.90mmol)の5mlのTHF溶液にまず、アルゴンを30分間吹き込むことにより脱気した。トリブチル(1-エトキシビニル)スズ(650mg、1.80mmol)およびPdCl2(PPh3)2(63mg、0.09mmol)を加えた。80℃で18時間撹拌後、混合物を室温まで冷却し、3mLの10%HClを加えた。次いで、酢酸エチル(3×10mL)で抽出する前に、混合物をさらに30分間撹拌した。合わせた有機層をブライン(1×10mL)で洗浄し、乾燥(MgSO4)させ、減圧濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(80:20ヘキサン/酢酸エチル)による精製で、表題化合物を無色油状物として得た(248mg、収率95%):
1H NMR (CDCl3, 300 MHz) δ7.97 (d, J= 1.8Hz, 1H), 7.66 (dd, J= 1.8, 8.1 Hz, 1H), 7.21(s, 4H), 7.11 (d, J= 8.1 Hz, 1H), 6.09 (t, J= 4.5 Hz, 1H), 2.61 (s, 3H), 2.58-2.37 (m, 5H), 1.37 (s, 6H)。
【0066】
4-[3-(8,8-ジメチル-5-p-トリル-7,8-ジヒドロ-ナフタレン-2-イル)-3-オキソ-プロペニル]-安息香酸2-トリメチルシラニル-エチル(化合物6)
1-(8,8-ジメチル-5-p-トリル-7,8-ジヒドロ-ナフタレン-2-イル)-エタノン(化合物5、200mg、0.69mmol)の10mLの1N NaOH溶液および20mLのメタノール溶液に4-ホルミル安息香酸メチル(Aldrichより入手可能、113mg、0.69mmol)を加えた。室温で18時間撹拌後、反応混合物を1NHClで酸性化し、酢酸エチル(3×10mL)で抽出した。合わせた有機層をブライン(1×10mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、そして減圧濃縮して、黄色粗固体を得た。次いで、この粗固体を、0℃で10mLのジクロロメタンおよび1mLのトリメチルシリルエタノール中に溶解した。1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDCI)(265mg、1.38mmol)および4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)(6mg、0.07mmol)を加えた。室温で18時間撹拌後、反応物を水(10mL)でクエンチし、ジクロロメタン(3×10mL)で抽出し、ブライン(1×10mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、減圧濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(90:10ヘキサン/酢酸エチル)による精製で、表題化合物を黄色油状物として得た(155mg、収率43 %):
1H NMR (CDCl3, 300 MHz) δ 8.00-7.93 (m, 3H), 7.75-7.42 (m, 5H), 7.17-7.06 (m, 5H), 6.03 (t, J=4.5 Hz, 1H), 4.37-4.32 (m, 2H), 2.31-2.27 (m, 5H), 1.31 (s, 6H) 1.19-1.16 (m, 2H), 0.00 (s, 9H)。
【0067】
手順A E-4-[3-(8,8-ジメチル-5-p-トリル-7,8-ジヒドロ-ナフタレン-2-イル)-3-ヒドロキシイミノ-プロペニル]-安息香酸(化合物7a)およびZ-4-[3-(8,8-ジメチル-5-p-トリル-7,8-ジヒドロ-ナフタレン-2-イル)-3-ヒドロキシイミノ-プロペニル]-安息香酸(化合物7b)
4-[3-(8,8-ジメチル-5-p-トリル-7,8-ジヒドロ-ナフタレン-2-イル)-3-オキソ-プロペニル]-安息香酸2-トリメチルシラニル-エチル(化合物6、226mg、0.43mmol)の5mLのEtOH溶液にヒドロキシルアミン塩酸塩(60mg、0.86mmol)およびピリジン(71mg、0.90mmol)を加えた。次いで、反応混合物を6時間加熱還流した。室温まで冷却後、溶媒を減圧除去して、残渣を水に入れた。水層を1N HClでpH=4〜5に調整し、酢酸エチル(3×10mL)で抽出した。有機層を合わせて、水(2×10mL)およびブライン(1×10mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、減圧濃縮した。E-異性体とZ-異性体の分離は、中圧液体クロマトグラフィー(MPLC)(80:20ヘキサン/酢酸エチル)により、エステル中間体のところで達成した。次いで、各エステルを2mLのジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解させ、そして2当量のテトラエチルアンモニウムフルオリド(TEAF)を加えた。室温で0.5時間撹拌後、混合物を水(10mL)で希釈し、酢酸エチル(3×5mL)で抽出し、ブライン(1×5mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、減圧濃縮した。アセトニトリルを用いた再結晶による精製で、化合物7a(47mg、収率25%)および化合物7b(30mg、収率16%)を白色固体として得た:
化合物7aの1H NMR (アセトン-d6, 300 MHz) δ 7.97 (d, J=8.1 Hz, 2H), 7.77 (d, J=16.5 Hz, 1H), 7.64 (d, J=8.1 Hz, 2H), 7.48 (d, J=1.8 Hz, 1H), 7.20 (dd, J=1.8, 8.1 Hz, 1H), 7.17-6.85 (m, 6H), 5.93 (t, J=4.5 Hz, 1H), 2.30 (d, J=5.1 Hz, 2H), 2.29 (s, 3H), 1.27 (s, 6H);
化合物7bの1H NMR (アセトン-d6, 300 MHz) δ 7.87 (d, J=8.4 Hz, 2H), 7.49 (d, J=8.4 Hz, 2H), 7.24 (d, J=1.5 Hz, 1H), 7.17-7.09 (m, 5H), 6.98 (dd, J=1.5, 6.9 Hz, 1H), 6.46 (d, J=16.2 Hz, 1H), 2.27 (d, J=4.5 Hz, 2H), 2.25 (s, 3H), 1.23 (s, 6H)。
【0068】
4-[3-(8,8-ジメチル-5-p-トリル-7,8-ジヒドロ-ナフタレン-2-イル)-3-ヒドロキシイミノ-プロペニル]-安息香酸(化合物7c)
4-[3-(8,8-ジメチル-5-p-トリル-7,8-ジヒドロ-ナフタレン-2-イル)-3-オキソ-プロペニル]-安息香酸2-トリメチルシラニル-エチル(化合物6、240mg、0.46mmol)の5mLのEtOH溶液にヒドロキシルアミン塩酸塩(64mg、0.92mmol)およびピリジン(77mg、0.97mmol)を加えた。次いで、反応混合物を6時間加熱還流した。室温まで冷却後、溶媒を減圧除去して、残渣を水に入れた。水層を1N HClでpH=4〜5に調整し、酢酸エチル(3×10mL)で抽出した。有機層を合わせて、水(2×10mL)およびブライン(1×10mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、減圧濃縮して、黄色粗油状物を得た。次いで、この粗生成物を2mLのジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解させ、そしてテトラエチルアンモニウムフルオリド(TEAF)(137g, 0.92mmol)を加えた。室温で0.5時間撹拌後、混合物を水(10mL)で希釈し、酢酸エチル(3×5mL)で抽出し、ブライン(1×5mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、減圧濃縮した。アセトニトリルを用いた再結晶による精製で、物質7c(E/Z異性体の混合物、84mg、収率42%)を得た。
【0069】
【化7】

【0070】
4-[3-(8,8-ジメチル-5-p-トリル-7,8-ジヒドロ-ナフタレン-2-イル)-3-オキソ-プロペニル]-3-フルオロ-安息香酸2-トリメチルシラニル-エチル(化合物8)
1-(8,8-ジメチル-5-p-トリル-7,8-ジヒドロ-ナフタレン-2-イル)-エタノン(化合物5、217mg、0.75mmol)の10mLの1N NaOH溶液および20mLのメタノール溶液に4-ブロモ-2-フルオロ-ベンズアルデヒド(Aldrichより入手可能、151mg、0.75mmol)を加えた。室温で18時間撹拌後、反応混合物を酢酸エチル(3×10mL)で抽出した。合わせた有機層をブライン(1×10mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、減圧濃縮して粗白色固体を得た。次いで、この固体を、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン(33mg、0.08mmol)および20mLのジメチルホルムアミド(DMF)中の酢酸パラジウム(18mg、0.08mmol)、5mLのトリエチルアミン(TEA)、および2mlのトリメチルシリルエタノールを含有する密閉管に移した。溶液に一酸化炭素を20分間吹き込んだ後、管を密閉して85℃で48時間加熱した。次いで、反応混合物を室温まで冷却して、溶媒を減圧除去した。残渣を30mLのジクロロメタンに溶解させ、1N HCl(2×20mL)およびブライン(2×20mL)で洗浄した。次いで、有機層を乾燥させ(MgSO4)、減圧濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(90:10ヘキサン/酢酸エチル)による精製で、表題化合物を無色油状物として得た(168mg、収率41%):
1H NMR (CDCl3, 300 MHz) δ 8.05 (d, J=1.5 Hz, 1H), 7.85-7.62 (m, 6H), 7.21 (s, 4H), 7.19 (d, J=8.1 Hz, 1H), 6.18 (t, J=4.8 Hz, 1H), 4.44-4.40 (m, 2H), 2.40 (s, 3H), 2.39 (d, J=4.5 Hz, 2H), 1.40 (s, 6H), 1.20-1.17 (m, 2H), 0.00 (s, 9H)。
【0071】
E-4-[3-(8,8-ジメチル-5-p-トリル-7,8-ジヒドロ-ナフタレン-2-イル)-3-ヒドロキシイミノ-プロペニル]-3-フルオロ-安息香酸(化合物9a)
およびZ-4-[3-(8,8-ジメチル-5-p-トリル-7,8-ジヒドロ-ナフタレン-2-イル)-3-ヒドロキシイミノ-プロペニル]-3-フルオロ-安息香酸(化合物9b)
4-[3-(8,8-ジメチル-5-p-トリル-7,8-ジヒドロ-ナフタレン-2-イル)-3-オキソ-プロペニル]-3-フルオロ-安息香酸2-トリメチルシラニル-エチル(化合物8, 168mg, 0.31mmol)を出発物質として用い、手順Aに従って、化合物9a(34mg、収率24%)および化合物9b(20mg、収率14%)を白色固体として得た:
化合物9aの1H NMR(アセトン-d6,300MHz) δ 7.85-7.78 (m, 3H), 7.63 (dd, J=1.5, 11.4 Hz, 1H), 7.48 (d, J=1.8 Hz, 1H), 7.20 (dd, J=1.8, 8.1 Hz, 1H), 7.17 (s, 4H), 7.00-6.95 (m, 2H), 5.92 (t, J=4.8 Hz, 1H), 2.29 (d, J=4.8 Hz, 2H), 2.27 (s, 3H), 1.26 (s, 6H);
化合物9bの1H NMR(アセトン-d6,300MHz) δ 7.89-7.84 (m, 2H), 7.68 (d, J=11.1 Hz, 1H), 7.39-7.07 (m, 9H), 6.70 (d, J=16.5 Hz, 1H), 2.38 (d, J=4.8 Hz, 2H), 2.37 (s, 3H), 1.36 (s, 6H)。
【0072】
【化8】

【0073】
6-ブロモ-インダン-1-オン(化合物10)
100mLのジクロロメタン中、室温で3-(4-ブロモ-フェニル)-プロピオン酸(Transworld Chemicalsより入手可能、10.0g、43.7mmol)の溶液に、塩化チオニル(15.6g、131.1mmol)をゆっくりと加えた。次いで、混合物を14時間加熱還流した。室温まで冷却後、溶媒および過剰の塩化チオニルを減圧除去して、黄色粗油状物を得た。次いで、粗生成物を、100mlのジクロロメタンに溶解し、室温で塩化アルミニウム(17.5g, 131.1mmol)を少しずつ加えた。5時間の加熱還流後、次いで、混合物を氷水にゆっくり注ぎ入れ、ジクロロメタン(3×50mL)で抽出し、ブライン(1×5mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、減圧濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(95:5ヘキサン/酢酸エチル)による精製で、表題化合物を淡黄色固体として得た(8.94g、収率97%):
1H NMR (CDCl3, 300 MHz) δ 7.88 (d, J=2.1 Hz, 1H), 7.68 (dd, J=2.1, 8.1 Hz, 1H), 7.36 (d, J=8.1 Hz, 1H), 3.12-3.08 (m, 2H), 2.75-2.71 (m, 2H)。
【0074】
6-ブロモ-1,1-ジメチル-インダン(化合物11)
20mLのジクロロメタン中の24.6mLの1M塩化チタン(24.6mmol)に、-40℃でトルエン(35.1mmol)中の17.6mLの2Mジメチル亜鉛をゆっくり加えた。-40℃で20分間攪拌後、混合物を、6-ブロモ-インダン-1-オン(化合物10, 2.46g, 11.7mmol)の20mLのジクロロメタン溶液に、カニューレで加えた。次いで、反応物を、18時間ゆっくりと室温まで昇温させた。0℃におけるメタノールでのクエンチの後、混合物をジクロロメタン(3×10mL)で抽出した。合わせた有機層をブライン(1×5mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、減圧濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン)による精製で、表題組成物を無色油状物として得た(2.45g、収率94%);
1H NMR (CDCl3, 300 MHz) δ 7.25-7.22 (m, 2H), 7.04 (d, J=8.1 Hz, 1H), 2.82 (t, J=6.9 Hz, 2H), 1.92 (t, J=6.9 Hz, 2H), 1.24 (s, 6H)。
【0075】
5-ブロモ-3,3-ジメチル-インダン-1-オン(化合物12)
6-ブロモ-1,1-ジメチル-インダン(化合物11, 2.45g, 10.9mmol)を出発物質として用い、6-ブロモ-4,4-ジメチル-3,4-ジヒドロ-2H-ナフタレン-1-オン(化合物3)を調製する手順と類似した手順に従って、表題化合物(1.95g、収率75%)を白色固体として得た:
1H NMR (CDCl3, 300 MHz) δ 7.66 (d, J=1.5 Hz, 1H), 7.55 (d, J=8.4 Hz, 1H), 7.51 (dd, J=1.5, 8.4 Hz, 1H), 2.59 (s, 2H), 1.43 (s, 6H)。
【0076】
6-ブロモ-1,1-ジメチル-3-p-トリル-1H-インデン(化合物13)
5-ブロモ-3,3-ジメチル-インダン-1-オン(化合物12, 1.00g, 4.2mmol)を出発物質として用い、7-ブロモ-1,1-ジメチル-4-p-トリル-1,2-ジヒドロ-ナフタレン(化合物4)を調製する手順と類似した手順に従って、表題化合物(981mg、収率75%)を無色油状物として得た:
1H NMR (CDCl3, 300 MHz) δ 7.49-7.23 (m, 7H), 6.35 (s, 1H), 2.40 (s, 3H), 1.38 (s, 6H)。
【0077】
1-(3,3-ジメチル-1-p-トリル-3H-インデン-5-イル)-エタノン(化合物14)
6-ブロモ-1,1-ジメチル-3-p-トリル-1H-インデン(化合物13、980mg、3.14mmol)を出発物質として用い、1-(8,8-ジメチル-5-p-トリル-7,8-ジヒドロ-ナフタレン-2-イル)-エタノン(化合物5)を調製する手順と類似した手順に従って、表題化合物(678mg、収率78%)を黄色固体として得た:
1H NMR (CDCl3, 300 MHz) δ 7.99 (d, J=1.5 Hz, 1H), 7.89 (dd, J=1.5, 8.4 Hz, 1H), 7.54 (d, J=8.4 Hz, 1H), 7.47 (d, J=8.4 Hz, 2H), 7.27 (d, J=8.4 Hz, 2H), 6.57 (s, 1H), 2.64 (s, 3H), 2.42 (s, 3H), 1.42 (s, 6H)。
【0078】
4-[3-(3,3-ジメチル-1-p-トリル-3H-インデン-5-イル)-3-オキソ-プロペニル]-安息香酸2-トリメチルシラニル-エチル(化合物15)
1-(3,3-ジメチル-1-p-トリル-3H-インデン-5-イル)-エタノン(化合物14、200mg、0.72mmol)を出発物質として用い、4-[3-(8,8-ジメチル-5-p-トリル-7,8-ジヒドロ-ナフタレン-2-イル)-3-オキソ-プロペニル]-安息香酸2-トリメチルシラニル-エチル(化合物6)を調製する手順と類似した手順に従って、表題化合物(93mg、収率25%)を黄色固体として得た:
1H NMR (CDCl3, 300 MHz) δ 8.05-8.01 (m, 4H), 7.93 (dd, J=1.8, 8.4 Hz, 1H), 7.77-7.43 (m, 5H), 7.24-7.20 (m, 3H), 6.54 (s, 1H), 4.43-4.37 (m, 2H), 2.37 (s, 3H), 1.41 (s, 6H), 1.13-1.11 (m, 2H), 0.00 (s, 9H)。
【0079】
E-4-[3-(3,3-ジメチル-1-p-トリル-3H-インデン-5-イル)-3-ヒドロキシイミノ-プロペニル]-3-フルオロ-安息香酸(化合物16a)およびZ-4-[3-(3,3-ジメチル-1-p-トリル-3H-インデン-5-イル)-3-ヒドロキシイミノ-プロペニル]-3-フルオロ-安息香酸(化合物16b)
4-[3-(3,3-ジメチル-1-p-トリル-3H-インデン-5-イル)-3-オキソ-プロペニル]-安息香酸2-トリメチル-シラニル-エチル(化合物15, 93mg, 0.18mmol)を出発物質として用い、手順Aに従って、化合物16a(19mg、収率26%)および化合物16b(12mg、収率16%)を白色固体として得た:
化合物16aの1H NMR (アセトン-d6, 300 MHz) δ 8.05 (d, J=8.4 Hz, 2H), 7.89 (d, J=16.5 Hz, 1H), 7.72 (d, J=8.4 Hz, 2H), 7.63 (d, J=1.5 Hz, 1H), 7.56-7.46 (m, 4H), 7.30 (d, J=8.4 Hz, 2H), 6.95 (d, J=16.5 Hz, 1H), 6.56 (s, 1H), 2.38 (s, 3H), 1.42 (s, 6H);
化合物16bの1H NMR (アセトン-d6, 300 MHz) δ 8.02 (d, J=8.4 Hz, 2H), 7.62-7.54 (m, 5H), 7.46-7.24 (m, 5H), 6.60 (d, J=16.5 Hz, 1H), 6.56 (s, 1H), 2.39 (s, 3H), 1.43 (s, 6H)。
【0080】
【化9】

【0081】
4-[3-(3,3-ジメチル-1-p-トリル-3H-インデン-5-イル)-3-オキソ-プロペニル]-3-フルオロ-安息香酸2-トリメチルシラニル-エチル(化合物17)
1-(3,3-ジメチル-1-p-トリル-3H-インデン-5-イル)-エタノン(化合物14, 200mg, 0.72mmol)を出発物質として用い、4-[3-(8,8-ジメチル-5-p-トリル-7,8-ジヒドロ-ナフタレン-2-イル)-3-オキソ-プロペニル]-3-フルオロ-安息香酸2-トリメチルシラニル-エチル(化合物8)を調製する手順と類似した手順に従って、表題化合物(145mg、収率38%)を黄色固体として得た:
1H NMR (CDCl3, 300 MHz) δ 8.01 (d, J=1.5 Hz, 1H), 7.95-7.68 (m, 5H), 7.54 (d, J=8.1 Hz, 1H), 7.45-7.42 (m, 3H), 7.21 (d, J=8.1 Hz, 2H), 6.54 (s, 1H), 4.42-4.36 (m, 2H), 2.36 (s, 3H), 1.40 (s, 6H), 1.13-1.07 (m, 2H), 0.00 (s, 9H)。
【0082】
E-4-[3-(3,3-ジメチル-1-p-トリル-3H-インデン-5-イル)-3-ヒドロキシイミノ-プロペニル]-3-フルオロ-安息香酸(化合物18a)およびZ-4-[3-(3,3-ジメチル-1-p-トリル-3H-インデン-5-イル)-3-ヒドロキシイミノ-プロペニル]-3-フルオロ-安息香酸(化合物18b)
4-[3-(3,3-ジメチル-1-p-トリル-3H-インデン-5-イル)-3-オキソ-プロペニル]-3-フルオロ-安息香酸2-トリメチル-シラニル-エチル(化合物17, 145mg, 0.28mmol)を出発物質として用い、手順Aに従って、化合物18a(39mg、収率32%)および化合物18b(14mg、収率12%)を白色固体として得た:
化合物18aの1H NMR (アセトン-d6, 300 MHz) δ 7.99-7.88 (m, 3H), 7.74-7.45 (m, 6H), 7.30 (d, J=8.1 Hz, 2H), 7.06 (d, J=17.1 Hz, 1H), 6.56 (s, 1H), 2.38 (s, 3H), 1.42 (s, 6H);
化合物18bの1H NMR (アセトン-d6, 300 MHz) δ 7.87-7.85 (m, 3H), 7.70-7.29 (m, 8H), 6.73 (d, J=16.5 Hz, 1H), 6.57 (s, 1H), 2.40 (s, 3H), 1.44 (s, 6H)。
【0083】
【化10】

【0084】
反応スキーム8は、チオクロメン誘導体である本発明の化合物の調製例を提供し、これは式1の可変基Rが式(d)で表される場合のものである。表示を簡単にするため、スキームは、可変基Yがフェニル基を表わし、Xがチオクロメン核の非芳香族部分の4位炭素と置換したアリール基Ar(例えば、フェニルまたはトリル基)を表している本発明の化合物の合成を示す。
【0085】
かくして、反応スキーム8に従って、5-ブロモチオフェノール(Aldrichより入手可能)を試薬Triton B(水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム、Alrichより入手可能)と反応させて、その後酸性酸(acidic acid)によって還流し、その後濃硫酸で処理して、7-ブロモ-チオクロマン-4-オン(化合物19)を生じる。その後、化合物19を式ArMgX(式中Arは、式1に関する可変基Xの定義内に適合する型のアリールまたはヘテロアリール基の型を表わす)のグリニャール試薬と反応させる。塩化フェニルマグネシウムおよび塩化パラ-トリマグネシウムは、グリニャール試薬ArMgXに対する例となる。化合物19とグリニャール試薬との反応は、酸(例えば、パラ-トルエンスルホン酸、TsOH)と反応する第三級アルコール(スキーム中に示さず)を生じ、式11の4-アリール-7-ブロモ-チオクロメン化合物を提供する。次いで、式11の化合物は、パラジウム触媒(PdCl2(PPh3)2)の存在下で、トリブチル(1-エトキシビニル)スズとビニルニトリル中で反応し、その後、酸と反応して式12のメチルケトンを提供する。式12の化合物を、適する試薬(メタ-クロロ過安息香酸等)でスルホキシドおよびスルホンレベルまで酸化し、それぞれ式13および14の化合物をそれぞれ生じ得る。式12、13および14を有するそれぞれのメチルケトンを作製して、式3の試薬によるアルドール縮合を経得る(反応スキーム1に示されるように)。しかしながら、4-ホルミル安息香酸メチルが式3の試薬の好ましい例であるので、簡単にするために、この反応スキームにおいて、4-ホルミル安息香酸メチルとの式12、13および14化合物の反応を示す。4-ホルミル安息香酸メチルによるアルドール縮合の後、得られた中間体生成物のエステル化を行い、式15、16および17のカルコン化合物をそれぞれ提供する。これらは、ヒドロキシルアミンによってカルコンオキシム化合物に変わり、フッ化テトラエチルアンモニウム(TEAF)による処理によって脱エステル化し、それぞれ、式18a、18b、19a、19b、20aおよび20bを有する本発明のカルコンオキシム化合物を得る。
【0086】
【化11】

【0087】
本発明のジヒドロキノリン誘導体を合成するための出発化合物は、式21のN-アルキル-7-ブロモ-1,2-ジヒドロキノリン-4-オン化合物であり、ここでR3基は式1に関連して規定される。式21の化合物は、欧州特許第EP024982号(参照として本明細書中で明白に援用される)の開示に従って得られうる。反応スキーム9に従って、式21の化合物は式ArMgXのグリニャール試薬(式中、Arは反応スキーム8に関連して規定される)と反応する。式25aおよび式25bで示される、本発明の化合物を導く残った反応物は、反応スキーム8に関連して記載される反応に類似する(ここでは繰り返す必要がない)。


【特許請求の範囲】
【請求項1】

【化1】

(式中、
Rは式(a)〜(d)で定義されるラジカルからなる群より選択され、
【化2】

ここで、環にある破線は、結合を表すか、または環にある破線の1つだけが結合を表すという条件で、結合がないことを表し;
*は、環にある炭素でそこにカルコンオキシム基が結合することを示し;
Xは、炭素数1〜6で1つまたは2つの二重結合を有する(R5)r置換アルケニル、炭素数1〜6で1つまたは2つの三重結合を有する(R5)r置換アルキニル、(R5)rフェニル、(R5)rナフチル、またはヘテロアリール基がO、SおよびNからなる群より選択される1〜3個のヘテロ原子を有する(R5)rヘテロアリールであり;
Yは、フェニルもしくはナフチル基、またはピリジル、チエニル、フリル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、チアゾリル、オキサゾリル、イミダゾリルおよびピラゾリルからなる群より選択されるヘテロアリールであり、前記フェニル基およびヘテロアリール基は1個または2個のR4基で任意に置換され;
mは0〜5の値を有する整数であり;
nは0〜3の値を有する整数であり;
pは0〜2の値を有する整数であり;
rは0〜5の値を有する整数であり;
R1は、独立して、炭素数1〜6のアルキル、F、Cl、BrまたはIであり;
R2は、独立して、炭素数1〜6のアルキル、F、Cl、Br、I、OH、SH、1〜6個の炭素を有するアルコキシ、1〜6個の炭素を有するアルキルチオ、NH2、C1-6アルキルアミノ、またはジ(C1-6アルキル)アミノであり;
R3は、Hまたは炭素数1〜10のアルキルであり;
R4は、独立して、ハロゲン、炭素数1〜10のアルキル、炭素数1〜6のフルオロ置換アルキル、炭素数1〜10のアルコキシ、または炭素数1〜10のアルキルチオであり;
R5は、独立して、炭素数1〜6のアルキル、F、Cl、Br、I、OH、SH、1〜6の炭素を有するアルコキシ、1〜6個の炭素を有するアルキルチオ、NH2、C1-6アルキルアミノ、またはジ(C1-6アルキル)アミノであり;
Aは、qが0〜5の(CH2)q、3〜6個の炭素を有する低級分枝鎖アルキル、3〜6個の炭素を有するシクロアルキル、2〜6個の炭素および1つまたは2つの二重結合を有するアルケニル、または2〜6個の炭素および1つまたは2つの三重結合を有するアルキニルであり;
Bは、COOHまたはその薬学的に許容され得る塩、COOR8、CONR9R10、-CH2OH、CH2OR11、CH2OCOR11、CHO、CH(OR12)2、CHOR13O、-COR7、CR7(OR12)2、CR7OR13O、またはトリ低級アルキルシリルであり、ここでR7は炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜5のシクロアルキル、または2〜5個の炭素を含むアルケニル基であり、R8は炭素数1〜10のアルキル基、またはアルキル基が1〜10個の炭素を有するトリメチルシリルアルキル、または炭素数5〜10のシクロアルキル基、CH2OCH3またはCH2OCH2OOC1-6アルキルであるか、またはR8はフェニルまたはC1-6アルキルフェニルであり、R9およびR10は、独立して、水素、炭素数1〜10のアルキル基、または炭素数5〜10のシクロアルキル基、またはフェニルまたはC1-6アルキルフェニルであり、R11は、炭素数1〜6のアルキル、フェニル、またはC1-6アルキルフェニルであり、R12は炭素数1〜6のアルキルであり、R13は炭素数2〜5の二価アルキルラジカルである)
の化合物、または該化合物の薬学的に許容され得る塩。
【請求項2】
Yが、フェニル、ピリジル、チエニルおよびフリルからなる群より選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
Yがフェニルである、請求項2記載の化合物。
【請求項4】
Y基がカルコンオキシムで、および1,4(パラ)位でA-B基が置換された、請求項3記載の化合物。
【請求項5】
R基が式(a)で表される、請求項1記載の化合物。
【請求項6】
炭素5と6の間の破線が結合を表す、請求項5記載の化合物。
【請求項7】
Xが(R5)rフェニルである、請求項6記載の化合物。
【請求項8】
(R5)rがメチルである、請求項7記載の化合物。
【請求項9】
R基が式(b)で表される、請求項1記載の化合物。
【請求項10】
炭素5と6の間の破線が結合を表す、請求項9記載の化合物。
【請求項11】
Xが(R5)rフェニルである、請求項10記載の化合物。
【請求項12】
(R5)rがメチルである、請求項11記載の化合物。
【請求項13】

【化3】

(式中、
R1は炭素数1〜6のアルキルであり;
R2は、独立して、炭素数1〜6のアルキル、F、Cl、Br、I、OH、SH、1〜6個の炭素を有するアルコキシ、1〜6個の炭素を有するアルキルチオ、NH2、C1-6アルキルアミノまたはジ(C1-6アルキル)アミノであり;
R4は、独立して、ハロゲン、炭素数1〜10のアルキル、炭素数1〜6のフルオロ置換アルキル、炭素数1〜10のアルコキシ、または炭素数1〜10のアルキルチオであり;
R5は、独立して、炭素数1〜6のアルキル、F、Cl、Br、I、OH、SH、1〜6個の炭素を有するアルコキシ、1〜6個の炭素を有するアルキルチオ、NH2、C1-6アルキルアミノまたはジ(C1-6アルキル)アミノであり;
nは0〜3の値を有する整数であり;
rは0〜5の値を有する整数であり;
Aはqが0〜5である(CH2)q、3〜6個の炭素を有する低級分枝鎖アルキル、3〜6個の炭素を有するシクロアルキル、2〜6個の炭素および1個または2個の二重結合を有するアルケニル、または2〜6個の炭素および1個または2個の三重結合を有するアルキニルであり;
BはCOOHまたはその薬学的に許容され得る塩、COOR8、CONR9R10、-CH2OH、CH2OR11、CH2OCOR11、CHO、CH(OR12)2、CHOR13O、-COR7、CR7(OR12)2、CR7OR13O、またはトリ低級アルキルシリルであり、ここでR7は炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜5のシクロアルキル、または2〜5個の炭素を含むアルケニル基であり、R8は炭素数1〜10のアルキル基、またはアルキル基が1〜10個の炭素を有するトリメチルシリルアルキル、または炭素数5〜10のシクロアルキル基、CH2OCH3またはCH2OCH2OOC1-6アルキルであるか、またはR8はフェニルまたはC1-6アルキルフェニルであり、R9およびR10は、独立して、水素、炭素数1〜10のアルキル基、または炭素数5〜10のシクロアルキル基、またはフェニルまたはC1-6アルキルフェニルであり、R11は炭素数1〜6のアルキル、フェニル、またはC1-6アルキルフェニルであり、R12は炭素数1〜6のアルキルであり、R13は炭素数2〜5の二価アルキルラジカルである)
の化合物、または該化合物の薬学的に許容され得る塩。
【請求項14】

【化4】

(式中、R4はHまたはFであり、R8*はH、炭素数1〜6のアルキル、CH2OCH3またはCH2OCH2OOC1-6アルキルである)
を有する請求項13記載の化合物、または該化合物の薬学的に許容され得る塩。
【請求項15】
R8*がHである請求項14記載の化合物、または該化合物の薬学的に許容され得る塩。
【請求項16】

【化5】

(式中、
R1は炭素数1〜6のアルキルであり;
R2は、独立して、炭素数1〜6のアルキル、F、Cl、Br、I、OH、SH、1〜6個の炭素を有するアルコキシ、1〜6個の炭素を有するアルキルチオ、NH2、C1-6アルキルアミノまたはジ(C1-6アルキル)アミノであり;
R4は、独立して、ハロゲン、炭素数1〜10のアルキル、炭素数1〜6のフルオロ置換アルキル、炭素数1〜10のアルコキシ、または炭素数1〜10のアルキルチオであり;
R5は、独立して、炭素数1〜6のアルキル、F、Cl、Br、I、OH、SH、1〜6個の炭素を有するアルコキシ、1〜6個の炭素を有するアルキルチオ、NH2、C1-6アルキルアミノまたはジ(C1-6アルキル)アミノであり;
nは0〜3の値を有する整数であり;
rは0〜5の値を有する整数であり;
Aは、qが0〜5である(CH2)q、3〜6個の炭素を有する低級分枝鎖アルキル、3〜6個の炭素を有するシクロアルキル、2〜6個の炭素および1個または2個の二重結合を有するアルケニル、または2〜6個の炭素および1個または2個の三重結合を有するアルキニルであり;
BはCOOHまたはその薬学的に許容され得る塩、COOR8、CONR9R10、-CH2OH、CH2OR11、CH2OCOR11、CHO、CH(OR12)2、CHOR13O、-COR7、CR7(OR12)2、CR7OR13Oまたはトリ低級アルキルシリルであり、ここでR7は炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜5のシクロアルキル、または2〜5個の炭素を含むアルケニル基であり、R8は炭素数1〜10のアルキル基、またはアルキル基が1〜10個の炭素を有するトリメチルシリルアルキル、または炭素数5〜10のシクロアルキル基、CH2OCH3またはCH2OCH2OOC1-6アルキルであるか、またはR8はフェニルまたはC1-6アルキルフェニルであり、R9およびR10は、独立して、水素、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数5〜10のシクロアルキル基、またはフェニルまたはC1-6アルキルフェニルであり、R11は炭素数1〜6のアルキル、フェニルまたはC1-6アルキルフェニルであり、R12は炭素数1〜6のアルキルであり、R13は炭素数2〜5の二価アルキルラジカルである)
の化合物、または該化合物の薬学的に許容され得る塩。
【請求項17】

【化6】

(式中、R4はHまたはFであり、R8はH、炭素数1〜6のアルキル、CH2OCH3またはCH2OCH2OOC1-6アルキルである)
を有する請求項16記載の化合物、または該化合物の薬学的に許容され得る塩。
【請求項18】
R8*がHである請求項17記載の化合物、または該化合物の薬学的に許容され得る塩。

【公表番号】特表2007−518719(P2007−518719A)
【公表日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−547254(P2006−547254)
【出願日】平成16年12月21日(2004.12.21)
【国際出願番号】PCT/US2004/042892
【国際公開番号】WO2005/066115
【国際公開日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(390040637)アラーガン インコーポレイテッド (117)
【氏名又は名称原語表記】ALLERGAN,INCORPORATED
【Fターム(参考)】