説明

SCN1A遺伝子における変異を検出することによっててんかんを診断および処置するための方法

患者におけるSMEIまたはSMEIに関係する症候群を含むてんかん症候群を診断する方法であって、患者から得られたサンプル中のSCN1A遺伝子における変化を検査し;そしてもし変化が特定されれば、前記変化を表3に示される変化のいずれか1つと比較し、さらに、もし前記変化が表3に示される変化のいずれか1つと同一であれば、SMEIまたはSMEIに関係する症候群を含むてんかん症候群の診断が、表3で規定される相関に従って行なわれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、てんかん(特に、乳児重症ミオクロニーてんかん(SMEI))およびてんかんに関係する症候群の診断および処置に関する。
【背景技術】
【0002】
てんかんは、人口の約3%がその生涯においていつか冒される脳障害の多様な集まりを構成する(Annegers、1996)。てんかん発作は、中枢神経系における様々なニューロン集団の乱れた発火によって引き起こされる行動での一時的な変化として定義することができる。これにより、様々な程度の不随意筋の収縮がもたらされ、そして、多くの場合には意識消失がもたらされる。てんかん症候群は、特徴的な症状、発作のタイプ、原因、発症年齢およびEEGパターンに基づいて40以上の異なったタイプに分類されている(国際抗てんかん連盟分類・用語委員会、1989)。しかしながら、すべての症候群に共通するただ1つの特徴は、発作として時々および予測不能の両方で表されるニューロン興奮性における持続した増大である。
【0003】
てんかんの病因に対する遺伝的寄与が罹患者の約40%に存在することが推定されている(Gardiner、2000)。てんかん性発作は、ニューロンの同期性を最終的には乱す数多くの分子的異常の終点であり得るため、てんかんに対する遺伝的基礎は一様でない可能性がある。てんかんを表現型の一部として含む、200を越えるメンデル疾患が存在する。これらの疾患において、発作は、脳の構造または機能における乱れなどの根本的な神経学的関与の徴候を示す。対照的に、数多くの「純粋な」てんかん症候群もまた存在し、この場合、てんかんは罹患者における唯一の症状発現である。これらは特発性と呼ばれ、全てんかん症例の60%以上を占める。
【0004】
特発性てんかんは部分性サブタイプおよび全身性サブタイプにさらに分けられている。部分性(焦点性または局所性)のてんかん性ひきつけが限局的な皮質放電から生じ、その結果、特定の筋肉群のみが関与し、意識は保持され得る(Sutton、1990)。しかしながら、全身性てんかんでは、EEG放電は、脳のすべての皮質下領域が関与するように、病巣を何ら示さない。全身性てんかんは高頻度に遺伝するという観測結果は理解できるが、遺伝的欠陥(おそらくは脳において構成的に発現していると考えられる)が部分性発作を生じさせる機構はあまり明らかではない。
【0005】
特発性全身性てんかん(IGE)は、遺伝するヒトてんかんの最も一般的な一群であるが、単純な遺伝ではない。現在、IGEの2つの幅広い群が知られている:古典的な特発性全身性てんかん(国際抗てんかん連盟分類・用語委員会、1989)、および、新しく認められた、熱性発作プラスを伴う全身性てんかん(GEFS)の遺伝的症候群(SchefferおよびBerkovic、1997;Singh他、1999)。
【0006】
古典的IGEは、臨床的に認識され得るが、重なる数多くの亜症候群に分けられ、これらには、小児期欠神てんかん、若年性欠神てんかん、若年性ミオクロニーてんかんなどが含まれる(国際抗てんかん連盟分類・用語委員会、1989;Roger他、1992)。これらの亜症候群は発症年齢および発作タイプのパターン(欠神、ミオクローヌスおよび強直間代性)によって特定される。一部の患者(特に、強直間代性発作だけを有する患者)は、具体的に認識されている亜症候群に合わない。これらを別個の症候群(神経生物学的連続の一部であるとはまだ認められていない)と見なすための議論が以前から提示されている(Berkovic他、1987;1994;ReutensおよびBerkovic、1995)。
【0007】
GEFSは、最初は大きな多世代家系を通して認識されていたものであり、様々な亜症候群を含む。熱性発作プラス(FS)は、子供が、3ヶ月〜6歳の年齢範囲から外れた年齢で発生する熱性発作を有するか、または、関連した熱性の強直間代性発作を有する亜症候群である。多くの家族メンバーが、古典的な熱性痙攣症候群から区別できない表現型を有し、一部は、さらなる欠神発作、筋間代性発作、無緊張性発作または複雑部分発作を伴うFSを有する。GEFSスペクトルの重篤な結末には、ミオクロニー失立てんかんが含まれる。
【0008】
GEFS家系において、主要な常染色体優性遺伝子の臨床的証拠を有する希な多世代の大きな家系についての連鎖分析により、染色体19qおよび染色体2qにおける遺伝子座が明らかにされている。19qおよび2qのGEFS遺伝子座の両方が、独立して突き止められた大きな家系において確認されており、また、遺伝的欠陥が同定されている。19qに関連づけられる家系が知られており、ニューロンナトリウムチャネルのβ1サブユニット(SCN1B)に対する遺伝子における変異が同定されている(Wallace他、1998)。この変異はこの調節サブユニットの非常に重要なジスルフィド架橋の喪失をもたらし、インビトロでの機能の喪失を引き起こしている。2qに関連づけられる家系もまた知られており、ニューロンナトリウムチャネルの細孔形成αサブユニット(SCN1A)における変異が同定されている(PCT/AU01/01648;Escayg他、2000)。
【0009】
乳児重症ミオクロニーてんかん(SMEI)は、全身性発作および焦点性(部分性)発作の両方として発現するてんかん性症候群として分類される(国際抗てんかん連盟分類・用語委員会、1989)。SMEIは、生後1年のうちに、長期にわたる熱性および無熱性の半間代性(hemiclonic)発作および全身性発作を伴って始まる。1歳〜4歳の間で、筋間代性発作、欠神発作および無緊張性発作を含む他の発作タイプを発症する。神経学的発達は、乳児期は正常であるが、2年後以降、徐々に遅くなる。てんかんおよび/または熱性発作の家族歴がSMEI患者に見出されることが多く、最近の研究では、家族メンバーが、GEFS+スペクトルと一致するてんかん表現型を有することが示されている(Singh他、2001;Veggiotti、2001)。臨床的観点から、GEFS+およびSMEIは、発熱に関連する発作を伴うため、ナトリウムチャネル遺伝子が、SMEI罹患者における変異に対する標的であり得ると考えられていた。この事実は後に、SMEI患者におけるSCN1A遺伝子での変異が同定されたときに確認された(Claes他、2001;Ohmori他、2002)。これらの変異のそれぞれがデノボであったことは興味深いことであり、これは、著しい数のSMEI症例がGEFS+の家族歴を有するという臨床的経験に基づいて両立させることが難しい事実である。
【0010】
最近、SCN1A遺伝子は、SMEIに関係する症候群であるSMEB(境界性SMEI)及びICEGTG(全身性強直間代性発作を伴う難治性小児期てんかん)において同定されている。SMEBを有する患者は、コアSMEIと同様の臨床特徴を有するサブグループであるが、コアSMEIについて受け入れられた診断基準と必ずしも一致しない(国際抗てんかん連盟分類・用語委員会、1989)。研究によれば、SMEBにおけるSCN1A変異率は、SMEIにおけるよりわずかに低い(Mulley他、2005)。しかし、SMEIと同様、SMEBに関連したSCN1A変異はデノボであるように見える。
【0011】
ICEGTGは、いかなる他の発作タイプの非存在に主に基づいてSMEIから臨床的に区別されている。ICEGTGはSMEBのサブセットとみなされている。しかし、この臨床的区別は明確でない(Mulley他、2005)。
【0012】
SMEIおよびSMEIに関係する症候群の早期診断を助けるための分子的診断検査の開発は重要である。そのような検査は、SMEIおよびSMEIに関係する症候群に罹患する可能性がある患者に対する妥当な処置法を導き、また、ワクチン接種または他の原因により誘導される発熱などの要因の結果としての発作の悪化に対する危険性を予測する。SMEIおよびSMEIに関係する症候群の分子的基礎を明らかにするための臨床的研究は、その結果がこれまで一定しておらず、SMEIおよびSMEIに関係する症候群に対するただ1つの分子的基礎に関しても結論に達していない。これは、特に、SCN1A遺伝子における変化は他のてんかんサブタイプ(例えば乳幼児痙攣およびGEFS+)にも関与しているためである。本発明者らは、SMEIおよびSMEIに関係する症候群におけるそのような予測可能な診断検査の必要性を認識しており、従って、以前の臨床的研究において認められた制限を克服し、かつ、てんかん患者がSMEIまたはSMEIに関係する症候群を有する可能性をSCN1A遺伝子の分子的分析に基づいて決定する方法を確立した。
【発明の開示】
【0013】
本発明の第1の局面において、患者におけるSMEIまたはSMEIに関係する症候群を診断するための方法が提供され、この方法は、SCN1A遺伝子における変化を検出すること、および、その変化が、SMEIもしくはSMEIに関係する症候群に関連することが知られているかまたはSMEIもしくはSMEIに関係する症候群に関連しないことが知られているかどうかを確認すること、あるいは、そのいずれかであることが知られていない場合には、その変化がSMEIまたはSMEIに関係する症候群に関連する変化であるという可能性を決定することを含む。
【0014】
本発明のさらなる局面において、患者におけるSMEI,SMEB,原因不明の部分性てんかん(CP)、徴候性全身性てんかん(SG)、徴候性部分性てんかん(SP)および未知の病因を有する脳炎後のてんかん(postencephalitis)(PE)からなる群から選択されるてんかんの亜症候群を診断する方法が提供され、前記方法は以下のことを含む:
(1)患者から得られたサンプル中のSCN1A遺伝子における変化を検出し;そして
(2)前記変化を表3に示される変化のいずれか1つと比較する。
ここで、もし前記変化が表3に示される変化のいずれか1つと同一であれば、てんかん亜症候群の診断は、表3で規定される相関に従って行なわれる。
【0015】
本発明のなおさらなる局面において、患者におけるSMEIまたはSMEIに関係する症候群を含むてんかん症候群を診断する方法が提供され、前記方法は以下のことを含む:
(1)患者から得られたサンプル中のSCN1A遺伝子における変化を検査し;そして
(2)もし変化が特定されれば、前記変化を表3に示される変化のいずれか1つと比較する。
ここで、もし前記変化が表3に示される変化のいずれか1つと同一であれば、SMEIまたはSMEIに関係する症候群を含むてんかん症候群の診断は、表3で規定される相関に従って行なわれる。
【0016】
この情報は、患者に対する妥当な処置治療法を開始するために重要である。現在の抗てんかん薬(AED)処置は一部のてんかん患者において発作を悪化させることがある。これは、増大した発作頻度、増大した発作重篤度、または新しい発作タイプの出現という形をとることがある。SMEIに関して、カルバマゼピン、ガバペンチン、ラモトリギンおよびビガバトリンが発作を悪化させ得ることが知られており(Bourgeois、2003)、これに対して、バルプロアートはSMEI患者にとって有益であることが示されている(SchefferおよびBerkovic、2003)。従って、本発明の診断方法は、SMEIを有することが疑われる患者における適切な第一次AED選択を導くことに対する重要な情報を提供する。
【0017】
SCN1A遺伝子における変化には、コード領域および非コード領域(例えば、プロモーター、イントロンまたは非翻訳領域など)における欠失、挿入、再配置および点変異を含む、遺伝子突然変異のすべての形態が包含される。欠失は遺伝子全体または遺伝子の一部のみである場合があり、これに対して、点変異は、停止コドン、フレームシフトまたはアミノ酸置換をもたらす場合がある。SCN1Aの調節領域(例えば、プロモーターなど)において生じる点変異はmRNAの発現の喪失または低下をもたらすことがあり、あるいは、適切なmRNAプロセシングを停止させ、これにより、mRNAの安定性または翻訳効率の低下をもたらすことがある。
【0018】
SCN1Aタンパク質に対するより深刻な変化(例えば、短縮タンパク質を生じさせるフレームシフト変異およびナンセンス変異など)を生じさせる患者におけるSCN1A変化の同定は、その患者がSMEIまたはSMEIに関係する症候群を有するという可能性を増大させる。この可能性は、その変化が、患者の親または親類から受け継いでいる変化ではなく、デノボ変化であることが示され得るならば、あるいは、SCN1A遺伝子におけるその変化が、SMEIまたはSMEIに関係する症候群と以前から関連している変化であることが示され得るならば、さらに一層増大する。
【0019】
以下の記述および特許請求の範囲では、用語「SMEIまたは関係する症候群」または「SMEIまたはSMEIに関係する症候群」は相互交換可能なように使用される。SMEIに関係する症候群は、境界性SMEI(SMEB)および全身性強直間代性発作を有する難治性小児期てんかん(ICEGTG)を含む。
【0020】
1つの実施形態において、患者におけるSMEIまたはSMEIに関係する症候群を診断するための方法が提供され、この方法は、SCN1Aの変化の存在について検査し、かつ、その変化の種類を特定するために1つまたは複数のアッセイを行うことを含む。
【0021】
さらなる実施形態において、以下のことを含む、患者におけるSMEIまたはSMEIに関係する症候群を診断するための方法が提供される:
(1)患者のSCN1A遺伝子における変化の存在について検査するために1つまたは複数のアッセイを行い;そして、もし結果がSCN1A遺伝子における変化の存在を示すならば、
(2)そのSCN1A変化の種類を特定するために1つまたは複数のアッセイを行う。
【0022】
SCN1Aの変化の存在について検査するために使用することができる数多くのアッセイシステムが存在し、従って、本発明は、下記に示される実施例によって限定されない。
【0023】
1つの実施形態において、用いられるアッセイシステムは、野生型のSCN1A DNAとの比較における、患者サンプルから得られるSCN1A DNAの分析であり得る。ゲノムDNAを診断分析のために使用することができ、これは身体の細胞(例えば、血液もしくはほおに存在する細胞など)、組織生検、手術標本または剖検材料(これらに限定されない)を含む数多くの供給源から得ることができる。DNAは、診断アッセイのために単離し、そのまま使用することができ、または、分析前にポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって増幅することができる。同様に、RNAまたはcDNAもまた、PCR増幅とともに、またはPCR増幅を伴うことなく使用することができる。また、出生前診断を、胎児細胞、胎盤細胞または羊水を検査することによって行うことができる。
【0024】
特定の実施形態において、DNAハイブリダイゼーションアッセイを用いることができる。これらは、SCN1A遺伝子について特異的な、プローブに基づくアッセイからなり得る。1つのそのようなアッセイでは、1つまたは複数の制限酵素で消化されたDNAの一連のサザンブロットを観察することができる。各ブロットは一連の正常者および一連の患者サンプルを含有し得る。SCN1A遺伝子に近い配列またはSCN1A遺伝子を含む配列(SCN1A遺伝子プローブ)でプローブされたとき、正常なDNAとは長さが異なるハイブリダイゼーションフラグメントを示すサンプルはSCN1A変化の可能性を示している。非常に大きい制限フラグメントを生じさせる制限酵素が使用されるならば、パルスフィールド電気泳動(PFGE)を用いることができる。
【0025】
SCN1Aエキソン特異的ハイブリダイゼーションアッセイもまた用いることができる。プローブに基づくこのタイプのアッセイでは、SCN1A遺伝子のエキソンに対してその野生型形態で特異的かつ選択的にハイブリダイゼーションする少なくとも1つのプローブが利用される。従って、核酸プローブを含有する二重鎖核酸ハイブリッドの形成がないことは、SCN1A遺伝子における変化の存在を示している。プローブに基づく検査は特異性が高いため、何らかの陰性の結果はSCN1A変化の存在を非常に示している。しかしながら、さらなる調査アッセイを用いて、変化の種類を特定して、その変化がSMEIまたはSMEIに関係する症候群に関連する変化である可能性を決定しなければならない。
【0026】
SCN1Aエキソン特異的アッセイ法はまた、SMEIまたはSMEIに関係する症候群の原因である以前に明らかにされたSCN1A変化を同定するために適合化することができる。この局面では、その変化した形態でのSCN1A遺伝子と特異的かつ選択的にハイブリダイゼーションするプローブが使用される(対立遺伝子特異的プローブ)。この場合、核酸プローブを含有する二重鎖核酸ハイブリッドの形成はSCN1A遺伝子における変化の存在を示している。エキソン特異的アッセイ法の各変形では、SMEIまたはSMEIに関係する症候群との関連がないSCN1A遺伝子における既知の多型を考慮に入れることは重要である。二次アッセイ(例えば、DNA配列決定など)を、何らかの疑われる変化が既知の多型でないことを確実にするために続いて用いなければならない。
【0027】
上記アッセイのそれぞれのために使用されるSCN1Aエキソン特異的プローブは、(1)各エキソンに隣接するイントロン特異的プライマーを使用するSCN1A遺伝子の各エキソンのPCR増幅、(2)各エキソンについて特異的なcDNAプローブ、または(3)SCN1Aエキソンをまとめて表す一連のオリゴヌクレオチドに由来し得る。
【0028】
さらなる実施形態においては、ヘテロ二重鎖の形成を分析するためのアッセイを用いることができる。変性させた野生型SCN1A DNAを患者由来のDNAサンプルと混合することによって、これら2つのサンプルの間でのSCN1A配列における何らかの配列変化は、ヘテロ二重鎖およびホモ二重鎖の混合集団の形成をDNAの再アニーリングのときにもたらす。この混合集団の分析は、部分的変性温度のもとで行われる高速液体クロマトグラフィー(HPLC)のような技術の使用によって達成することができる。この様式では、ヘテロ二重鎖が、その低下した融解温度のために、ホモ二重鎖よりも早くHPLCカラムから溶出する。
【0029】
さらなる実施形態において、患者サンプルは電気泳動に基づくアッセイに供することができる。例えば、SCN1Aフラグメントの長さの違いを決定する電気泳動アッセイを用いることができる。各患者のゲノムDNAのフラグメントが、SCN1A遺伝子のイントロン特異的プライマーを用いて増幅される。従って、SCN1A遺伝子の増幅された領域は、目的のエキソン、エキソン/イントロンの境界におけるスプライス部位接合、および増幅産物のいずれかの末端におけるイントロンの短い一部分を含む。増幅産物は電気泳動のサイズ分離ゲルにおいて泳動することができ、増幅フラグメントの長さが、挿入変異または欠失変異が患者サンプルにおいて見出されるかどうかを明らかにするために、野生型遺伝子に由来する既知および予測される標準長さと比較される。この手順は「多重化」形式において都合よく使用することができ、この場合、複数のエキソン(一般には2個〜8個)に対するプライマーが同時に増幅され、1つの電気泳動ゲルにおいて同時に評価される。これは、各エキソンに対するプライマーを慎重に選択することによって可能になる。各エキソンに広がる増幅フラグメントは、異なるサイズであるように設計され、従って、電気泳動/サイズ分離ゲルにおいて識別可能である。この技術の使用は、正常型および変異型の両方の対立遺伝子をヘテロ接合個体において検出するという利点を有する。また、多重化の使用により、この技術は非常に費用効果的であり得る。
【0030】
さらなる方法において、SMEIの原因である以前に同定されたSCN1A変化を検出するための診断的電気泳動アッセイでは、SCN1A遺伝子の変化したエキソンに特異的に結合するPCRプライマーを利用することができる。この場合、プライマーのハイブリダイゼーションが生じたときのみ、生成物が電気泳動ゲルにおいて観測される。従って、増幅産物の出現は、変化が存在することを示すものであり、これに対して、増幅産物の長さは、さらなる変化が存在することを示し得る。
【0031】
さらなる電気泳動アッセイを用いることができる。これらには、一本鎖高次構造多型(SSCP)法(Orita他、1989)が含まれ得る。上記で述べられたように、各患者のゲノムDNAのフラグメントが、SCN1A遺伝子のイントロン特異的プライマーを用いてPCR増幅され、その結果、SCN1A遺伝子の個々のエキソンが増幅され、かつ個々に分析され得るようになる。その後、エキソン特異的なPCR産物は非変性ポリアクリルアミドゲルでの電気泳動に供され、その結果、DNAフラグメントが、その配列組成により決定されるようなその立体配座に基づいてゲル中を移動するようになる。野生型のSCN1A配列とは配列が異なるSCN1Aエキソン特異的フラグメントは、異なる二次構造立体配座を有し、従って、ゲル中を異なるように移動する。患者サンプルにおける異常に移動するPCR産物は、SCN1Aエキソンにおける変化の存在を示しており、変化の種類を特定するために、さらには、DNA配列決定などの二次アッセイで分析しなければならない。
【0032】
用いることができるさらなる電気泳動アッセイには、RNase保護アッセイ(Finkelstein他、1990;Kinszler他、1991)および変性勾配ゲル電気泳動(DGGE)(Wartell他、1990;Sheffield他、1989)が含まれる。RNase保護では、変異型ポリヌクレオチドを2つ以上のより小さいフラグメントに切断することが伴い、これに対して、DGGEでは、野生型配列と比較される変異型配列の移動速度の違いが、変性勾配ゲルを使用して検出される。
【0033】
RNase保護アッセイにおいては、ヒト野生型SCN1A遺伝子をコードする配列に対して相補的である標識されたリボプローブが、患者から単離されたmRNAまたはDNAのいずれかとハイブリダイゼーションさせられ、続いて、二重鎖RNA構造におけるいくつかのミスマッチを検出することができる酵素RNaseAで消化される。ミスマッチがRNaseAによって検出される場合、RNaseAはミスマッチの部位において切断する。従って、アニーリングされたRNA調製物が電気泳動ゲルマトリックスで分離されるとき、ミスマッチがRNaseAによって検出されて切断されたならば、リボプローブおよびmRNAまたはDNAについて全長の二重鎖RNAよりも小さいRNA産物が認められる。リボプローブはSCN1AのmRNAまたは遺伝子の全長である必要はなく、いずれかのセグメントであり得る。リボプローブがSCN1AのmRNAまたは遺伝子のセグメントのみを含む場合、数多くのこれらのプローブを使用して、mRNA配列全体をミスマッチについてスクリーニングすることが望ましい。
【0034】
さらなる実施形態において、酵素に基づくアッセイ(TaylorおよびDeeble、1999)を診断適用において使用することができる。そのようなアッセイでは、S1ヌクレアーゼ、リボヌクレアーゼ、T4エンドヌクレアーゼVII、MutS(Modrich、1991)、CleavaseおよびMutYの使用が含まれる。MutSアッセイにおいて、タンパク質は、変異型配列と野生型配列との間におけるヘテロ二重鎖においてヌクレオチドミスマッチを含有する配列に対してのみ結合する。
【0035】
アッセイが、SCN1Aタンパク質に基づくことになる場合、様々な方法が可能である。例えば、診断を、正常なSCN1Aタンパク質および患者サンプルから単離されたSCN1Aタンパク質の電気泳動移動度の差をモニターすることによって達成することができる。そのような方法は、電荷置換が存在する変化、または、挿入、欠失もしくは置換が、生じたタンパク質の電気泳動移動における著しい変化をもたらしている変化を特定する際には特に有用である。あるいは、診断は、正常なタンパク質および変化したタンパク質のタンパク質分解的切断パターンにおける差、または様々なアミノ酸残基のモル比における差に基づくことができ、あるいは、遺伝子産物の変化した機能を明らかにする機能的アッセイによって行うことができる。
【0036】
SCN1Aタンパク質に基づくさらなるアッセイには免疫アッセイが含まれる。SCN1A遺伝子産物に対する免疫アッセイは現在知られていない。しかしながら、免疫アッセイは、特定の遺伝子産物に対する抗体を惹起させるための様々な手順が文献(例えば、米国特許第4172124号および同第4474893号;これらは参考として本明細書中に組み込まれる)に詳しく記載されるため、アッセイの選択に含められる。共通する変異部位から離れている遺伝子産物の一部分に結合し、その結果、同じ抗体が変異型タンパク質および正常なタンパク質の両方に結合するような抗体が通常、惹起される。本発明において使用される好ましい抗体は、その改善された予測性および特異性のためにモノクローナル抗体である。しかしながら、所望する高レベルの特異性を有する本質的には任意の抗体を使用することができること、および、高い感度を達成するための最適化が必要でないことが理解される。
【0037】
SMEIまたはSMEIに関係する症候群に関与するSCN1Aにおける新規な変化の診断的検出のためには、タンパク質のカルボキシ末端に対して惹起された抗体が好ましい。SMEIまたはSMEIに関係する症候群に関与することが以前に同定されているSCN1A変化の診断的検出のためには、欠陥遺伝子産物に対して惹起された抗体が好ましい。抗体は、免疫学的反応が生じ得る条件のもとで患者サンプルの一部に加えられ、その後、サンプルは、そのような反応が生じたかどうかを見るために評価される。この評価を行うための特定の方法は重要ではなく、そのような方法には、米国特許第4016043号(これは参考として本明細書中に組み込まれる)に記載される酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA);蛍光生成性の酵素基質(例えば、4−メチルウンベリフェリル−β−ガラクトシドなど)が発色性基質の代わりに使用されることを除いて、ELISAに類似する蛍光酵素免疫アッセイ(FEIAまたはELFA);および放射免疫アッセイ(RIA)が含まれる。
【0038】
用いることができる最も確定的な診断アッセイはDNA配列決定であり、究極的には、行われることが必要とされる唯一のアッセイであり得る。SCN1A DNAの野生型配列と検査患者のSCN1A配列との比較は高い特異性および高い感度の両方をもたらす。用いられる一般的な方法論では、目的とするDNAフラグメントを患者のDNAから(例えば、PCRを用いて)増幅すること;増幅されたDNAを、増幅プライマーと同じまたは異なり得る配列決定用プライマーと混合すること;通常のヌクレオチド(A、C、GおよびT)、および、取り込まれると、プライマーのさらなる伸長を妨げる鎖停止用ヌクレオチド(例えば、ジデオキシヌクレオチドなど)の存在下で配列決定用プライマーを伸長すること;および、得られた伸長フラグメントの長さについて生成物を分析することを伴う。そのような方法は、Sanger他(1977)によって開示された最初のジデオキシ配列決定法に基づいており、本発明において有用である一方で、最終アッセイはそのような方法に限定されない。例えば、目的とする遺伝子の配列またはその一部分を決定するための他の方法もまた用いることができる。代わりの方法には、MaxamおよびGilbert(1977)によって記載される方法、ならびにジデオキシ法の変法、および鎖停止用ヌクレオチドに全く依らない方法(例えば、米国特許第4971903号(これは参考として本明細書中に組み込まれる)に開示される方法など)が含まれる。野生型SCN1A配列と比較されたとき、検査患者のSCN1Aエキソンにおける(良性の多型とは異なる)何らかの配列の違いは、SMEIまたはSMEIに関係する症候群を潜在的に引き起こす変化を示している。
【0039】
本発明のさらなる局面において、患者におけるSMEIまたはSMEIに関係する症候群を診断する方法が提供され、この方法は、SCN1A変化の存在についての検査を提供するための1つまたは複数のアッセイと、その変化の種類を特定するための検査を提供するための1つまたは複数のアッセイとを含み、その結果、その変化がSMEIまたはSMEIに関係する症候群に関連する変化であるという可能性を決定するようにするアッセイ系を選択する工程を含む。
【0040】
SCN1Aの変化についての分析が決定的でないさらなる局面において、SCN2Aの分析がSCN1Aの分析と同様の態様で行なわれる。
【0041】
本発明のさらなる局面において、哺乳動物の電位依存性ナトリウムチャネルの変化したSCN1Aサブユニットをコードする単離された核酸分子であって、前記変化は表3に示される変化の1つである核酸分子が提供される。
【0042】
本発明のなおさらなる局面において、哺乳動物の電位依存性ナトリウムチャネルの変化したSCN1Aサブユニットである単離されたポリペプチドであって、表3に規定されるアミノ酸変化の1つを有するポリペプチドが提供される。
【0043】
本発明の適用は、SMEIまたはSMEIに関係する症候群であると最初に診断された個体においてSCN1A遺伝子における数多くの変異の同定をもたらしている。このことは、個体がSMEIまたはSMEIに関係する症候群に罹患しているかもしれないという可能性を提供することにおける診断アッセイの有用性を明らかにしている。
【0044】
本発明のさらなる局面によれば、哺乳動物の電位依存性ナトリウムチャネルの変化したSCN1Aサブユニットをコードする単離された核酸分子が提供され、この場合、前記変化はSMEIまたはSMEIに関係する症候群を生じさせ、前記核酸分子は表3に特定されるような変化を含む。
【0045】
本発明のさらなる局面によれば、哺乳動物の電位依存性ナトリウムチャネルの変化したSCN1Aサブユニットをコードする単離された核酸分子が提供され、この場合、前記変化はSMEIまたはSMEIに関係する症候群を生じさせ、前記核酸分子は配列番号1〜配列番号33の1つに規定される配列を有する。
【0046】
本発明のさらなる局面において、哺乳動物の電位依存性ナトリウムチャネルの変化したSCN1Aサブユニットである単離されたポリペプチドが提供され、この場合、前記変化はSMEIまたはSMEIに関係する症候群を生じさせ、前記ポリペプチドは、表3に特定されるような変化を含む。
【0047】
本発明のさらなる局面によれば、哺乳動物の電位依存性ナトリウムチャネルの変化したSCN1Aサブユニットである単離されたポリペプチドが提供され、この場合、前記変化はSMEIまたはSMEIに関係する症候群を生じさせ、前記ポリペプチドは、配列番号42〜配列番号67の1つに規定されるアミノ酸配列を有する。
【0048】
SCN1A遺伝子におけるさらなる変化が本研究の期間中に同定された。これらの変化は、臨床的診断に基づいてSMEIまたはSMEIに関係する症候群に罹患していることが疑われていない個体において同定された。
【0049】
従って、本発明のさらなる局面において、哺乳動物の電位依存性ナトリウムチャネルの変化したSCN1Aサブユニットをコードする単離された核酸分子が提供され、この場合、前記変化はSMEIではないかまたはSMEIに関係する症候群ではないてんかん表現型を生じさせ、前記核酸分子は表3に規定されるような変化を含む。
【0050】
本発明のさらなる局面によれば、哺乳動物の電位依存性ナトリウムチャネルの変化したSCN1Aサブユニットをコードする単離された核酸分子が提供され、この場合、前記変化はSMEIではないかまたはSMEIに関係する症候群ではないてんかん表現型を生じさせ、前記核酸分子は配列番号34〜配列番号41の1つに規定される配列を有する。
【0051】
本発明の別の局面において、配列番号1〜配列番号41のいずれか1つに規定されるヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子が提供される。
【0052】
本発明の別の局面において、配列番号1〜配列番号41のいずれか1つに規定されるヌクレオチド配列からなる単離された核酸分子が提供される。
【0053】
本発明のなおさらなる局面において、哺乳動物の電位依存性ナトリウムチャネルの変化したSCN1Aサブユニットである単離されたポリペプチドが提供され、この場合、前記変化はSMEIではないかまたはSMEIに関係する症候群ではないてんかんの表現型を生じさせ、前記ポリペプチドは、表3に規定されるような変化を含む。
【0054】
本発明のさらなる局面によれば、哺乳動物の電位依存性ナトリウムチャネルの変化したSCN1Aサブユニットである単離されたポリペプチドが提供され、この場合、前記変化はSMEIではないかまたはSMEIに関係する症候群ではないてんかんの表現型を生じさせ、前記ポリペプチドは、配列番号68〜配列番号74の1つに規定されるアミノ酸配列を有する。
【0055】
本発明の別の局面において、配列番号42〜配列番号74のいずれか1つに規定されるアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチドが提供される。
【0056】
本発明の別の局面において、配列番号42〜配列番号74のいずれか1つに規定されるアミノ酸配列からなる単離されたポリペプチドが提供される。
【0057】
本発明のヌクレオチド配列は、様々な目的のために、この分野で受け入れられている方法を使用して操作することができる。これらには、遺伝子産物のクローニング、プロセシングおよび/または発現の改変が含まれるが、これらに限定されない。遺伝子フラグメントのPCR再組み立ておよび合成オリゴヌクレオチドの使用は本発明のヌクレオチド配列の操作を可能にする。例えば、オリゴヌクレオチド媒介による部位特異的変異誘発は、新しい制限部位を生じさせるさらなる変異、発現パターンを変化させるさらなる変異、およびスプライス変化体を産生させるさらなる変異などを導入することができる。
【0058】
遺伝暗号の縮重性の結果として、数多くのポリヌクレオチド配列(いくつかが、何らかの知られている天然に存在する遺伝子のポリヌクレオチド配列との最小の類似性を有し得る)がもたらされ得る。従って、本発明は、可能なコドン選択に基づいて組合せを選択することによって作製され得るポリヌクレオチド配列の可能なあらゆる変化体を包含する。これらの組合せは、本発明のポリヌクレオチド配列に適用されるような標準的なトリプレット遺伝暗号に従って作製され、すべてのそのような変化が、具体的に開示されていると見なされなければならない。
【0059】
本発明の核酸分子は、典型的にはDNA分子であり、センス鎖およびアンチセンス鎖の両方で、cDNA、ゲノムDNA、合成された形態、および混合ポリマーを包含し、そして、当業者によって理解されるように、化学的または生化学的に修飾することができ、あるいは、非天然または誘導体化されたヌクレオチド塩基を含有することができる。そのような修飾には、標識、メチル化、インターカレーター、アルキル化体、および修飾された連結が含まれる。場合により、本発明のポリヌクレオチド配列のコドン使用とは実質的に異なるコドン使用を有するヌクレオチド配列を作製することが好都合であり得る。例えば、コドンは、特定のコドンがその宿主によって利用される頻度と一致する特定の原核生物宿主または真核生物宿主におけるペプチドの発現速度を増大させるために選択することができる。ヌクレオチド配列を、コードされるアミノ酸配列を変化させることなく変化させる他の理由には、天然に存在する変異した配列から産生される転写物よりも望ましい性質(例えば、そのような転写物よりも大きい半減期など)を有するRNA転写物を産生させることが含まれる。
【0060】
本発明はまた、全体が合成化学による本発明の核酸配列の作製を包含する。合成配列は、挿入されたコード配列の好適な宿主における転写制御および翻訳制御のための必要なエレメントを含有する発現ベクターおよび細胞システムに挿入することができる。これらのエレメントには、本発明のポリペプチドをコードする配列のより効率的な翻訳を可能にする調節配列、プロモーター、5’および3’の非翻訳領域、ならびに特異的な開始シグナル(例えば、ATG開始コドンおよびKozakコンセンサス配列など)が含まれ得る。完全なコード配列(これは開始コドンおよび上流の調節領域を含む)が適切な発現ベクターに挿入される場合、さらなる制御シグナルを必要としないことがある。しかしながら、コード配列のみ、またはそのフラグメントが挿入される場合、上記に記載されるような外因性の翻訳制御シグナルがベクターによって提供されなければならない。そのようなシグナルは、天然および合成の両方で、様々な起源に由来し得る。発現効率は、使用される特定の宿主細胞システムについて適切なエンハンサーを含めることによって高めることができる(Scharf他、1994)。
【0061】
本発明はまた、本明細書中に記載される配列の相補体である核酸分子を包含する。
【0062】
本発明は、本発明のポリヌクレオチドまたはその変化体に由来する精製されたポリペプチドまたはタンパク質の調製を可能にする。これを行うために、宿主細胞を、上記に記載されるような新規な核酸分子で形質転換することができる。典型的には、前記宿主細胞は、本発明によるDNA分子を含む発現ベクターでトランスフェクションされる。様々な発現ベクター/宿主システムを、本発明のポリペプチドをコードする配列を含有および発現するために利用することができる。これらには、微生物、例えば、プラスミドもしくはコスミドのDNA発現ベクターで形質転換された細菌など;酵母発現ベクターで形質転換された酵母;ウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)を感染させた昆虫細胞システム;または、マウスもしくは他の動物もしくはヒトの組織細胞システムが含まれるが、これらに限定されない。哺乳動物細胞もまた、ワクシニアウイルス発現システムを使用してタンパク質を発現させるために使用することができる。本発明は、用いられる宿主細胞またはベクターによって限定されない。
【0063】
本発明のポリヌクレオチド配列またはその変化体は、哺乳動物システムにおける組換えタンパク質の長期間にわたる産生を可能にするための細胞株において安定的に発現させることができる。本発明のポリペプチドをコードする配列は、ウイルスの複製起点および/または内因性の発現エレメント、および、同じベクターもしくは別個のベクターにおける選択マーカー遺伝子を含有し得る発現ベクターを使用して細胞株に形質転換することができる。選択マーカーは選択因子に対する抵抗性を付与し、従って、その存在は、導入された配列を首尾良く発現する細胞の成長および回収を可能にする。安定的に形質転換された細胞の抵抗性クローンは、細胞タイプに対して適切な組織培養技術を使用して拡大培養することができる。
【0064】
形質転換された細胞により産生されるタンパク質は、使用される配列および/またはベクターに依存して、分泌され得るか、または細胞内に保持され得る。当業者によって理解されるように、タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有する発現ベクターは、原核生物または真核生物の細胞膜を通過するタンパク質の分泌を行わせるシグナル配列を含有するように設計することができる。
【0065】
加えて、宿主細胞系統は、挿入された配列の発現を調節するその能力、または、所望される様式で発現タンパク質をプロセシングするその能力のために選ぶことができる。ポリペプチドのそのような修飾には、アセチル化、グリコシル化、リン酸化およびアシル化が含まれるが、これらに限定されない。タンパク質の「プレプロ」形態の翻訳後切断もまた、タンパク質の標的化、折り畳みおよび/または活性を規定するために使用することができる。翻訳後活性のための特定の細胞装置および特徴的な機構を有する異なる宿主細胞(例えば、CHO細胞またはHeLa細胞)を、American Type Culture Collection(ATCC)から入手することができ、また、外来タンパク質の正しい修飾およびプロセシングを確実にするために選ぶことができる。
【0066】
遺伝子の多量のタンパク質産物が、例えば、抗体製造などのために必要とされる場合、このタンパク質の高レベルの発現を行わせるベクターを使用することができる(例えば、T5またはT7の誘導可能なバクテリオファージプロモーターを含有するベクターなど)。本発明はまた、タンパク質の重要な機能的ドメインを含有する融合タンパク質を作製および単離することにおける、上記に記載される発現システムの使用を包含する。これらの融合タンパク質は、適切な抗体の作製のためだけでなく、結合研究、構造的および機能的な研究のために使用される。
【0067】
タンパク質を融合タンパク質として発現および精製するために、適切なcDNA配列が、別のペプチド(例えば、グルタチオンスクシニルトランスフェラーゼ)をコードするヌクレオチド配列を含有するベクターに挿入される。融合タンパク質は原核生物細胞または真核生物細胞から発現および回収される。その後、融合タンパク質を、融合ベクター配列に基づくアフィニティークロマトグラフィーによって精製することができる。その後、所望するタンパク質が融合タンパク質の酵素切断によって得られる。
【0068】
本発明のポリペプチドのフラグメントはまた、固相技術を使用する直接的なペプチド合成によって製造することができる。自動化された合成を、ABI431Aペプチド合成機(Perkin−Elmer)を使用することによって達成することができる。このタンパク質の様々なフラグメントを別々に合成し、その後、全長の分子を製造するために組み合わせることができる。
【0069】
本発明のさらに別の局面によれば、上記で記載されるような変化したSCN1Aタンパク質を取り込む哺乳動物の電位依存性ナトリウムチャネルが提供される。
【0070】
本発明のさらに別の局面によれば、上記で記載されるような核酸分子を含む発現ベクターが提供される。
【0071】
本発明のさらに別の局面によれば、上記で記載されるような核酸分子を含む細胞が提供される。
【0072】
本発明のさらに別の局面によれば、哺乳動物の電位依存性ナトリウムチャネルの変化したSCN1Aタンパク質であるポリペプチドを調製する方法が提供され、この方法は、
(1)上記で記載されるような細胞を、ポリペプチド産生のために効果的な条件のもとで培養する工程、および
(2)ポリペプチドを集める工程
を含む。
【0073】
変異型SCN1Aタンパク質は、細胞によって同時発現されるナトリウムチャンネルの他のサブユニット(例えば、SCN1Bタンパク質など)とともに組み立てることができ、それにより、組み立てられた変化したナトリウムチャネルが集められる。
【0074】
本発明のさらに別の局面によれば、上記で記載されたプロセスの生成物であるポリペプチドが提供される。
【0075】
実質的に精製されたタンパク質またはそのフラグメントは、その後、二次構造および三次構造を明らかにするためのさらなる生化学的分析において使用することができる。そのような方法論はこの分野では知られており、これには、本タンパク質、または本タンパク質を取り込む組み立てられたイオンチャネルの結晶のX線結晶学、核磁気共鳴(NMR)による方法が含まれるが、これらに限定されない。構造の決定は、変化したナトリウムチャネルと、全体として、またはチャネルの変化したSCN1Aタンパク質との相互作用を介して相互作用するか(下記の薬物スクリーニングを参照のこと)、あるいは、ナトリウムチャネルタンパク質の全体的な荷電配置または他のタンパク質との電荷相互作用を変化させるか、あるいは、細胞におけるその機能を変化させるための医薬品の合理的設計を可能にする。
【0076】
SMEIおよびSMEIに関係する症候群を含むてんかんの原因であるSCN1A遺伝子における新規な変化を同定することにより、変化したSCN1Aタンパク質は、SMEIおよびSMEIに関係する症候群を含むてんかんを処置するための治療的方法を可能にすることが理解される。
【0077】
(治療的適用)
本発明のさらに別の局面によれば、対象におけるSMEIまたはSMEIに関係する症候群を含むてんかんを処置する方法が提供され、この方法は、上記に記載されるようなSCN1Aポリペプチドの選択的なアンタゴニストまたはアゴニストまたは調節剤を、対象に投与することを含む。
【0078】
本発明のさらに別の局面によれば、SMEIまたはSMEIに関係する症候群を含むてんかんを処置するための医薬品を製造における、上記に記載されるようなSCN1Aポリペプチドの選択的なアンタゴニストまたはアゴニストまたは調節剤の使用方法が提供される。
【0079】
1つの局面において、好適なアンタゴニストまたはアゴニストまたは調節剤は、本発明の一部を形成するSCN1A変化を含有するナトリウムチャネルに野生型の機能を回復させるか、または、変化した受容体が細胞機能に対して有する影響を無効にする。
【0080】
この分野で広く知られている様々な方法を使用して、SMEIおよびSMEIに関係する症候群を含むてんかんの原因となっている変化したナトリウムチャネルまたはチャネルのSCN1Aタンパク質は、変化したチャネルまたはチャネルのSCN1Aタンパク質に対して特異的な抗体を作製するために、あるいは、薬学的薬剤のライブラリーをスクリーニングして、変化したチャネルまたはチャネルのSCN1Aタンパク質と結合する薬剤を同定するために使用することができる。
【0081】
1つの局面において、本発明の変化したナトリウムチャネルまたは変化したSCN1Aタンパク質に特異的に結合する抗体は、アゴニストまたはアンタゴニストまたは調節剤として直接、使用することができ、あるいは、変化したチャネルを発現する細胞または組織に薬学的薬剤を運ぶための標的化機構または送達機構として間接的に使用することができる。
【0082】
本発明のさらにさらなる局面において、上記に記載されるようなポリペプチドとの免疫学的反応性を有するが、野生型のSCN1AチャネルまたはそのSCN1Aタンパク質との免疫学的反応性を有しない抗体が提供される。
【0083】
具体的には、上記に記載されるようなポリペプチドに特異的に結合する抗体、またはSMEIまたはSMEIに関係する症候群を含むてんかんの原因となっている、チャネルの一部を形成するSCN1Aタンパク質に変化を含有する組み立てられたナトリウムチャネルに対して特異的に結合する抗体が提供される。そのような抗体には、当業者によって理解されるように、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体および単鎖抗体が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0084】
抗体を作製するために、ウサギ、ラット、ヤギ、マウスおよびヒトなど含む様々な宿主を、上記に記載されるようなポリペプチドによる注射によって、あるいは、免疫原的性質を有するその任意のフラグメントまたはオリゴペプチドによる注射によって免疫化することができる。様々なアジュバントを、免疫学的応答を増大させるために使用することができ、これには、フロイントの鉱物ゲル(例えば、水酸化アルミニウムなど)および界面活性物質(例えば、リゾレシチンなど)が含まれるが、これらに限定されない。ヒトにおいて使用されるアジュバントには、BCG(カルメット・ゲラン菌)およびコリネバクテリウム・パルブムが含まれる。
【0085】
変化したナトリウムチャネルまたはその変化したSCN1Aタンパク質に対する抗体を誘導するために使用されるオリゴペプチド、ペプチドまたはフラグメントは、少なくとも5個のアミノ酸(より好ましくは少なくとも10個のアミノ酸)からなるアミノ酸配列を有することが好ましい。これらのオリゴペプチド、ペプチドまたはフラグメントは、天然タンパク質のアミノ酸配列の一部と同一であり、かつ、天然に存在する小分子のアミノ酸配列全体を含有することもまた好ましい。SCN1Aアミノ酸の短い領域を別のタンパク質(例えば、KLHなど)の領域と融合することができ、そのようなキメラ分子に対する抗体を作製することができる。
【0086】
変化したナトリウムチャネルまたはその変化したSCN1Aタンパク質に対するモノクローナル抗体を、培養での連続した細胞株による抗体分子の製造を規定する任意の技術を使用して調製することができる。これらには、ハイブリドーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術およびEBVハイブリドーマ技術が含まれるが、これらに限定されない(例えば、Kohler他(1975);Kozbor他(1985);Cote他(1983);Cole他(1984)を参照のこと)。
【0087】
作製されたモノクローナル抗体には、マウス由来の抗体、ヒト化抗体、および完全なヒト抗体が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0088】
抗体はまた、リンパ球集団におけるインビボ産生を誘導することによって、または、免疫グロブリンライブラリー、もしくは、文献に開示されるような非常に特異的な結合性試薬のパネルをスクリーニングすることによって作製することができる(例えば、Orlandi他(1989);WinterおよびMilstein(1991)を参照のこと)。
【0089】
変化したナトリウムチャネルまたはその変化したSCN1Aタンパク質に対する特異的な結合部位を含有する抗体フラグメントもまた作製することができる。例えば、そのようなフラグメントには、抗体分子のペプシン消化によって作製されるF(ab’)2フラグメント、および、F(ab’)2フラグメントのジスルフィド架橋を還元することによって作製されるFabフラグメントが含まれる。あるいは、Fab発現ライブラリーを、所望する特異性を有するモノクローナルFabフラグメントの迅速かつ容易な同定を可能にするために構築することができる(例えば、Huse他(1989)を参照のこと)。
【0090】
様々な免疫アッセイを、所望する特異性を有する抗体を同定するためのスクリーニングのために使用することができる。明らかにされた特異性を有するポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体のいずれかを使用する競合的結合アッセイまたは免疫放射アッセイのための無数のプロトコルがこの分野では広く知られている。そのような免疫アッセイは、典型的には、イオンチャネルとその特異的な抗体との間での複合体形成の測定を伴う。妨害しない2つのナトリウムチャネルエピトープに対して反応し得る抗体を利用する二部位モノクローナル型免疫アッセイが好ましいが、競合的結合アッセイもまた用いることができる。
【0091】
本発明のさらなる局面において、対象におけるSMEIまたはSMEIに関係する症候群を含むてんかんを処置する方法が提供され、この方法は、上記に記載される核酸分子のいずれか1つの相補体(アンチセンス)であり、かつ、本発明の変化したSCN1AをコードするmRNAとハイブリダイゼーションするRNA分子をコードする単離された核酸分子を対象に投与することを含む。
【0092】
本発明のさらにさらなる局面において、本発明の核酸分子の相補体(アンチセンス)であり、かつ、本発明の変化したSCN1AをコードするmRNAとハイブリダイゼーションするRNA分子をコードする単離された核酸分子の使用方法であって、SMEIまたはSMEIに関係する症候群を含むてんかんを処置するための医薬品の製造における使用方法が提供される。
【0093】
典型的には、本発明のポリヌクレオチドの相補体(アンチセンス)を発現するベクターを、そのような処置を必要としている対象に投与することができる。ベクターを細胞または組織に導入するための多くの方法を利用することができ、これらは、インビボ、インビトロおよびエクスビボでの使用のために等しく適している。エクスビボ治療の場合、ベクターを、患者から採取された幹細胞に導入し、自家移植のためにクローン拡大し、その同じ患者に戻すことができる。トランスフェクションによる送達、リポソーム注入による送達、またはポリカチオン性アミノポリマーによる送達を、この分野で広く知られている方法を使用して達成することができる(例えば、Goldman他(1997)を参照のこと)。
【0094】
さらなるアンチセンス法または遺伝子標的化サイレンシング法は、アンチセンスオリゴヌクレオチドの使用、アンチセンスRNAの注入、アンチセンスRNA発現ベクターのトランスフェクション、および、RNA干渉(RNAi)または短い干渉RNA(siRNA)の使用(これらに限定されない)を含むことができる。なおさらには、触媒作用を有する核酸分子(例えば、DNAザイムおよびリボザイムなど)を遺伝子サイレンシングのために使用することができる(BreakerおよびJoyce、1994;HaseloffおよびGerlach、1988)。これらの分子は、従来のアンチセンス法の場合のようにそれらの標的mRNA分子に単に結合するのではなく、それらの標的mRNA分子を切断することによって機能する。
【0095】
さらなる局面において、好適なアゴニストまたはアンタゴニストまたは調節剤には、上記に記載されるような受容体のSCN1Aタンパク質における変化を含有するナトリウムチャネルの野生型活性を回復させることができるペプチド、リン酸化ペプチド、または小さい有機化合物もしくは無機化合物が含まれ得る。
【0096】
治療的適用のために好適なペプチド、リン酸化ペプチド、または小さい有機化合物もしくは無機化合物は、下記に記載されるような薬物スクリーニング適用において本発明の核酸およびペプチドを使用して同定することができる。これらのスクリーニングから同定された分子はまた、その分子が、これらの変化および本発明の変化により負わされる共通する根本的な機能的欠陥を修正することができるならば、他のナトリウムチャネル変化を有する罹患者、または、ナトリウムチャネルを含む遺伝子とは異なる遺伝子に変化を有する罹患者における治療的適用が可能である。
【0097】
従って、SMEIまたはSMEIに関係する症候群を含むてんかんを処置する方法が提供され、この方法は、ナトリウムチャネルの好適なアゴニストまたはアンタゴニストまたは調節剤であり、かつ、本発明の変化したSCN1Aを使用して同定された化合物を投与することを含む。
【0098】
場合により、適切な処置法は混合治療であり得る。これは、その機能的効果を阻害するための、本発明の変化したナトリウムチャネルまたはその変化したSCN1Aタンパク質に対する抗体、アゴニスト、アンタゴニストもしくは調節剤、または相補体(アンチセンス)を、野生型ナトリウムチャネルの形成レベルを正常なレベルに回復することができる野生型SCN1Aの投与との組合せで投与することを伴うことができる。野生型SCN1Aは、相補体の投与について上記で記載されたように、遺伝子治療法を使用して投与することができる。
【0099】
従って、本発明の変化したナトリウムチャネルまたはその変化したSCN1Aタンパク質に対する抗体、アゴニストもしくはアンタゴニストもしくは調節剤、または相補体を、野生型SCN1Aの投与との組合せで対象に投与することを含む、前記対象におけるSMEIまたはSMEIに関係する症候群を含むてんかんを処置する方法が提供される。
【0100】
本発明のさらに別の局面において、本発明の変化したナトリウムチャネルまたはその変化したSCN1Aタンパク質に対する抗体、アゴニストもしくはアンタゴニストもしくは調節剤、または相補体の、野生型SCN1Aの使用との組合せでの使用方法であって、SMEIまたはSMEIに関係する症候群を含むてんかんを処置するための医薬品の製造における使用方法が提供される。
【0101】
さらなる実施形態において、本発明のアゴニスト、アンタゴニスト、調節剤、抗体、相補的配列またはベクターはどれも、単独で投与することができ、または、他の適切な治療剤との組合せで投与することができる。適切な薬剤の選択は従来の薬学的原理に従って当業者によって行うことができる。治療剤の組合せは、上記に記載される様々な障害の処置または防止を達成するために相乗的に作用し得る。この方法を使用した場合、それぞれの薬剤のより低い投薬量による治療効力が可能となる場合があり、従って、有害な副作用に対する潜在的可能性を低下させることができる。
【0102】
上記の治療的方法はどれも、例えば、哺乳動物(例えば、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ウサギ、サル、および、最も好ましくは、ヒト)を含む、そのような治療を必要としている任意の対象に適用することができる。
【0103】
(薬物スクリーニング)
本発明のさらに別の局面によれば、本発明の核酸分子、同様に本発明のペプチド(特に、精製された変化したSCN1Aタンパク質)、およびこれらを発現する細胞は、SMEIまたはSMEIに関係する症候群を含むてんかんを処置するための候補医薬品化合物をスクリーニングするために有用である。
【0104】
なおさらに、本発明は、候補医薬品化合物をスクリーニングするための、変化したナトリウムチャネルポリペプチドの複合体の使用方法を提供する。
【0105】
なおさらに、本発明は、ハイスループットスクリーニング技術が用いられる使用方法を提供する。
【0106】
本発明に従ってスクリーニングすることができる化合物には、ペプチド(例えば、可溶性ペプチドなど)、リン酸化ペプチド、および小さい有機分子または無機分子(例えば、天然物または合成された化学ライブラリーおよびペプチド模倣体など)が含まれるが、これらに限定されない。
【0107】
1つの実施形態において、スクリーニングアッセイは、本発明のポリペプチドまたはフラグメントを発現する組換え分子で安定的に形質転換されている真核生物宿主細胞または原核生物宿主細胞を競合的結合アッセイにおいて利用する細胞に基づくアッセイを含むことができる。結合アッセイでは、変化したナトリウムチャネルまたはその変化したSCN1Aタンパク質と、試験されている化合物との間における複合体の形成が測定されるか、あるいは、試験されている化合物が、変化したナトリウムチャネルまたはその変化したSCN1Aタンパク質とその相互作用因子またはリガンドとの間における複合体の形成を阻害または回復する程度が測定される。
【0108】
本発明は、形質転換された細胞、トランスフェクションもしくは注入された卵母細胞、または変化したSCN1Aを有する動物モデル(例えば、遺伝子組換え動物または遺伝子標的化(ノックイン)動物(形質転換された宿主を参照のこと)など)において本発明のポリペプチドを使用することによって化合物をスクリーニングするために特に有用である。薬物候補を、変化したSCN1Aタンパク質を発現する培養された細胞(適切な野生型ナトリウムチャネルサブユニット(例えば、SCN1Bなど)もまた受容体組立てのために発現させなければならない)に加えることができ、あるいは、変化したSCN1Aタンパク質によるトランスフェクションまたは注入が行われた卵母細胞(適切な野生型ナトリウムチャネルサブユニット(例えば、SCN1Bなど)もまた受容体組立てのために注入されなければならない)に加えることができ、あるいは、変化したSCN1Aタンパク質を発現する動物モデルに投与することができる。変化したナトリウムチャネルの活性を調節する試験化合物の能力を測定することは、この分野で知られている数多くの技術によって達成することができる。これらには、例えば、野生型のナトリウムチャネルを含有する細胞または動物の電流と比較されるようなチャネルの電流に対する影響を測定することが含まれる。
【0109】
細胞における電流は、パッチクランプ技術(Hamill他(1981)に記載される方法)を含む数多くの方法によって、または、この分野で知られているような蛍光に基づくアッセイ(Gonzalez他(1999)を参照のこと)を使用することによって測定することができる。電流をより正常なレベルに変化させる薬物候補は、SMEIを含むてんかんを処置または防止するために有用である。
【0110】
細胞に基づかないアッセイもまた、本発明の変化したナトリウムチャネルまたはその変化したSCN1Aタンパク質とその相互作用因子との間での結合を阻害または回復することができる化合物を同定するために使用することができる。様々なそのようなアッセイがこの分野では知られており、これらには、例えば、AlphaScreen技術(PerkinElmer Life Sciences、MA、米国)が含まれる。この適用は、それぞれの相互作用パートナーが抗体を介して別個のビーズに結合するようにビーズを使用することに依拠する。各パートナーの相互作用はビーズを近寄らせ、その結果、レーザー励起により、多数の化学反応が開始され、最終的には、光シグナルを放射する蛍光団がもたらされる。変化したナトリウムチャネルまたはその変化したSCN1Aタンパク質とその相互作用因子との結合を阻害する候補化合物は光放射の喪失をもたらし、一方、変化したナトリウムチャネルまたはその変化したSCN1Aタンパク質とその相互作用因子との結合を回復する候補化合物は正の光放射をもたらす。これらのアッセイは、最終的には候補化合物の同定および単離を可能にする。
【0111】
ハイスループット薬物スクリーニング技術ではまた、国際特許出願公開WO84/03564に記載されるような方法を用いることができる。固体基板上で合成された小さいペプチド試験化合物を、変化したSCN1Aタンパク質または変化したナトリウムチャネルの結合についてアッセイすることができる。その場合、結合した変化したナトリウムチャネルまたは変化したSCN1Aポリペプチドが、この分野で広く知られている方法によって検出される。この技術の変法において、本発明の精製されたポリペプチドを、相互作用する試験化合物を同定するために、プレートに直接コーティングすることができる。
【0112】
本発明ではまた、変化したナトリウムチャネルと特異的に結合することができる中和抗体がそれに対する結合について試験化合物と競合する競合薬物スクリーニングアッセイの使用が意図される。この様式では、抗体を、変化した受容体の1つまたは複数の抗原決定基を共有する何らかのペプチドの存在を検出するために使用することができる。
【0113】
本発明のポリペプチドはまた、コンビナトリアルライブラリー技術の結果として開発された化合物をスクリーニングするために使用することができる。これは、ポリペプチドの活性を調節する能力について非常に多数の異なる物質を試験するための方法を提供する。ポリペプチド機能の調節剤として同定された物質は、現実には、ペプチドまたは非ペプチドであり得る。非ペプチドの「小分子」が、多くの場合、多くのインビボ医薬適用のためには好ましい。また、そのような物質の模擬体または模倣体を薬学的使用のために設計することができる。既知の薬学的に活性な化合物(「リード」化合物)に基づく模倣体の設計は、新規な医薬品を開発するための一般的な方法である。これは、その最初の活性な化合物が合成困難であるか、または合成に費用がかかる場合、あるいは、その最初の活性な化合物が不適当な投与方法を提供する場合、望ましいことが多い。模倣体の設計では、標的の性質を決定することにおいて重要であるその最初の活性な化合物の特定の部分が特定される。化合物の活性な領域を構成するこれらの部分または残基はそのファーマコフォアとして知られている。ファーマコフォアが見出されると、ファーマコフォアの構造が、X線回折データおよびNMRを含む様々な供給源からのデータを使用して、その物理的性質に従ってモデル化される。その後、ファーマコフォアを模擬する化学基が付加され得るテンプレート分子が選択される。その選択は、模倣体が容易に合成され、薬理学的に許容され得ることが考えられ、インビボで分解せず、かつ、リード化合物の生物学的活性を保持するように行うことができる。さらなる最適化または修飾を、インビボまたは臨床検査のために有用である1つまたは複数の最終的な模倣体を選択するために行うことができる。
【0114】
標的特異的な抗体を単離し、その後、その結晶構造を解明することもまた可能である。原理的には、この方法は、その後の薬物設計が上記のように基づき得るファーマコフォアをもたらす。機能的かつ薬理学的に活性な抗体に対する抗イディオタイプ抗体(抗id)を作製することによってタンパク質の結晶学を完全に回避することが可能となる場合がある。鏡像の鏡像として、抗idの結合部位は元の受容体のアナログであることが予想される。その後、抗idは、化学的または生物学的に作製されたペプチドバンクからペプチドを単離するために使用することができる。
【0115】
薬物スクリーニングのための別の代わりの方法は、構造に基づく合理的薬物設計に依拠する。本発明のポリペプチドの三次元構造の決定、または、これらのポリペプチドを取り込むGABA−B受容体の三次元構造の決定は、生物学的に活性なリード化合物を同定するための、構造に基づく薬物設計を可能にする。
【0116】
三次元構造モデルは、数多くの適用(それらのいくつかはX線結晶学およびNMRなどの実験的モデルを含む)によって、かつ/または、構造データベース(例えば、Protein Databank(PDB)など)のインシリコ研究から作製することができる。また、三次元構造モデルは、ポリペプチドの一次配列に基づく数多くの知られているタンパク質構造予測技術(例えば、SYBYL−Tripos Associated、St.Louis、MO)、デノボタンパク質構造設計プログラム(例えば、MODELER−MSI Inc.(San Diego、CA)、またはMOE−Chemical Computing Group(Montreal、カナダ))、またはアブイニシオ法(これは、例えば、米国特許第5331573号および同第5579250号(これらの内容は参考として本明細書中に組み込まれる)に記載される)を使用して決定することができる。
【0117】
ポリペプチドまたはポリペプチド複合体の三次元構造が決定されると、構造に基づく薬物発見技術を、これらの三次元構造に基づく生物学的に活性な化合物を設計するために用いることができる。そのような技術がこの分野では知られており、これらには、DOCK(カリフォルニア大学、San Francisco)またはAUTODOCK(Scripps Research Institutes、La Jolla、California)などの例が含まれる。コンピュータ計算によるドッキングプロトコルでは、予測されたタンパク質モデルに基づいてタンパク質活性のために重要であると考えられる1つまたは複数の活性な部位が特定される。その後、分子データベース(例えば、Available Chemicals Directory(ACD)など)が、タンパク質モデルを補足する分子についてスクリーニングされる。
【0118】
これらの方法などの方法を使用して、潜在的な臨床的薬物候補を同定することができ、かつ、典型的な「ウェットラボ」薬物スクリーニング方法論に関連する時間および費用を削減するために、コンピュータ計算によりランク付けすることができる。
【0119】
上記に記載され、かつ、本発明の変化した核酸およびポリペプチドの使用に基づくスクリーニング手法によって同定された化合物はまた、他のSCN1A変化を含む罹患者における他の遺伝子変化によって負わされた機能的欠陥を修正することに対するその効果について試験することができる。
【0120】
そのような化合物は、これらおよび薬学的に受容可能なキャリアを含有する医薬組成物がそうであるように本発明の一部を形成する。
【0121】
(医薬調製物)
スクリーニングアッセイから同定され、かつ、ナトリウムチャネルの野生型活性を回復することが示される化合物を、上記に記載されるように、SMEIを含むてんかんを処置または改善するために治療効果的な用量で患者に投与することができる。治療効果的な用量は、障害の症状の改善を生じさせるために十分な化合物のそのような量を示す。
【0122】
そのような化合物の毒性および治療効力を細胞培養または実験動物における標準的な薬学的手法によって明らかにすることができる。これらの研究から得られたデータは、その後、ヒトにおける使用のための投薬量範囲の制定において使用することができる。
【0123】
本発明に従って使用される医薬組成物は、広く知られている1つまたは複数の生理学的に受容可能なキャリア、賦形剤または安定化剤を使用して従来の様式で配合することができる。受容可能なキャリア、賦形剤または安定化剤は、用いられる投薬量および濃度において非毒性であり、これらには、緩衝剤、例えば、リン酸塩、クエン酸塩および他の有機酸など;アスコルビン酸を含む抗酸化剤;低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリンなど;結合性薬剤、これには、親水性ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドンなど)が含まれる;アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンまたはリシンなど;単糖、二糖および他の炭水化物、これにはグルコース、マンノースまたはデキストリンが含まれる;キレート化剤、例えば、EDTAなど;糖アルコール、例えば、マンニトールまたはソルビトールなど;塩形成対イオン、例えば、ナトリウムなど;および/または非イオン性界面活性剤、例えば、Tween、Pluronicsまたはポリエチレングリコール(PEG)などが含まれる。
【0124】
本発明に従って使用される医薬組成物の配合は、提案された投与経路に基づく。投与経路には、吸入投与、吹き込み投与(口または鼻のいずれかを介して)、経口投与、口内投与、直腸投与または非経口投与が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0125】
(マイクロアレイ)
さらなる実施形態において、本明細書中に記載されるSCN1Aポリヌクレオチド配列のいずれかに由来する完全なcDNA、オリゴヌクレオチドまたはより長いフラグメントはマイクロアレイにおけるプローブとして使用することができる。マイクロアレイは、本発明のSCN1A変化の同定により、SMEIを含むてんかんを診断するために、または、てんかんの遺伝的基礎を理解するために使用することができ、あるいは、治療剤を開発し、その活性をモニターするために使用することができる。
【0126】
本発明のさらなる局面によれば、本発明の特定のSCN1Aヒト変化の同定の結果として作製された動物モデル(下記参照)から得られた組織材料をマイクロアレイ実験において使用することができる。これらの実験は、正常なコントロール組織と比較されるような疾患組織において、SCN1Aの発現レベル、または、全組織ライブラリーに由来する任意のcDNAクローンの発現レベルを同定するために行うことができる。これら2つの組織の間での、SCN1Aを含む遺伝子の発現レベルの変化は、動物モデルに存在する元のSCN1A変化の原因または結果としての疾患プロセスにおけるそれらの可能な関与を示している。これらの実験はまた、遺伝子機能を決定するために、てんかんの遺伝的基礎を理解するために、てんかんを診断するために、また、治療剤を開発し、その活性をモニターするために使用することができる。マイクロアレイは、この分野で知られている方法を使用して調製し、使用し、かつ分析することができる(例えば、Schena他(1996);Heller他(1997)を参照のこと)。
【0127】
(形質転換された宿主)
本発明はまた、本発明の核酸分子を含む遺伝子改変(ノックアウト、ノックインおよび遺伝子組換え)された非ヒト動物モデルを提供する。これらの動物は、ナトリウムチャネルの機能の研究のために、ナトリウムチャネルに関連づけられるようなてんかんの機構を研究するために、候補医薬化合物をスクリーニングするために、変化したナトリウムチャネルを発現する外植された哺乳動物細胞培養物を作製するために、また、潜在的な治療的介入を評価するために有用である。
【0128】
本発明の動物モデルにおける使用のために好適である動物種には、ラット、マウス、ハムスター、モルモット、ウサギ、イヌ、ネコ、ヤギ、ヒツジ、ブタおよび非ヒト霊長類(例えば、サルおよびチンパンジーなど)が含まれるが、これらに限定されない。最初の研究のためには、遺伝子改変されたマウスおよびラットが、これらの動物のノックイン、ノックアウトまたは遺伝子組換え体を作製することが比較的容易であること、それらの管理の容易さ、およびそれらのより短い寿命のために、非常に望ましい。特定の研究のためには、遺伝子組換えされた酵母または無脊椎動物が、それらは迅速なスクリーニングを可能にし、かつ、はるかにより容易な取り扱いを提供するため、好適かつ好ましい場合がある。より長い期間の研究のためには、非ヒト霊長類が、ヒトとのそれらの類似性のために所望されることがある。
【0129】
本発明の変化したナトリウムチャネルについての動物モデルを作製するために、いくつかの方法を用いることができる。これらには、相同的な動物遺伝子における特定の変化の作製、相同組換えによる野生型ヒト遺伝子および/またはヒト化動物遺伝子の挿入、野生型または変化型または人工的なプロモーターエレメントを使用するゲノムまたはミニ遺伝子のcDNA構築物としての変化したヒト遺伝子の挿入、あるいは、相同組換えによる内因性遺伝子の人為的に改変されたフラグメントの挿入が含まれるが、これらに限定されない。これらの改変には、変異型停止コドンの挿入、DNA配列の欠失、または、Creリコンビナーゼなどの酵素によって認識される組換えエレメント(lox p部位)の含有が含まれる。
【0130】
遺伝子機能の獲得をインビボで研究するための遺伝子組換えマウスを作製するために、本発明のSCN1A変化を、卵母細胞顕微注入などの標準的な技術を使用してマウスの生殖系列に挿入することができる。遺伝子機能の獲得は、遺伝子およびそのタンパク質産物の過剰発現、または、調べられている遺伝子の変異の遺伝的相補を意味することができる。卵母細胞注入のために、1コピーまたは数コピーの変異型遺伝子を受精直後のマウス卵母細胞の前核に挿入することができる。その後、この卵母細胞は偽妊娠里親に再移植される。生きて生まれたマウスは、その後、関連するヒトSCN1A遺伝子配列の存在についての尾DNAの分析を使用して、組み込み体についてスクリーニングすることができる。導入遺伝子は、YAC、BAC、PACまたは他の染色体DNAフラグメントとして注入された完全なゲノム配列、あるいは、天然のプロモーターまたは異種のプロモーターのいずれかを有するcDNA、あるいは、コード領域と、最適な発現のために必要であることが見出されている他のエレメントのすべてとを含有するミニ遺伝子のいずれかであり得る。
【0131】
ノックアウトマウスまたはノックインマウスを作製するために、マウスの胚性幹細胞(ES細胞)における相同組換えによる遺伝子標的化を適用することができる。ノックアウトマウスは、遺伝子機能の喪失をインビボで研究するために作製され、一方、ノックインマウス(この方が好まれる)は機能の獲得の研究を可能にするか、または、特定の遺伝子変異の影響を研究することを可能にする。ノックインマウスは遺伝子組換えマウスに類似しており、しかしながら、組み込み部位およびコピー数が前者では規定される。
【0132】
ノックアウトマウスの作製のために、遺伝子標的化ベクターを、マウスゲノムにおけるSCN1A遺伝子のタンパク質コード領域が欠失(ノックアウト)されるように設計することができる。対照的に、ノックインマウスは、関連する変化したSCN1A遺伝子を含有する遺伝子標的化ベクターがマウスゲノムにおける規定された遺伝的遺伝子座に組み込まれ得ることによって作製することができる。両方の適用のために、相同組換えが、相同的なDNA配列を認識し、それらを二重交差により交換する特異的なDNA修復酵素によって触媒される。
【0133】
遺伝子標的化ベクターは通常、エレクトロポレーションを使用してES細胞に導入される。その後、ES細胞の組み込み体が、標的化ベクター上に存在する抗生物質耐性遺伝子によって単離され、続いて、検討中の遺伝子が目的の遺伝子座に組み込まれているそのようなES細胞クローンを同定するために遺伝子型決定される。その後、適切なES細胞が、新規なマウス系統を作製するために生殖系列を介して伝達される。
【0134】
遺伝子除去が早期の胚致死性をもたらす場合、条件的遺伝子標的化を用いることができる。これは、遺伝子を時間的および空間的に制御された様式で欠失することを可能にする。上記のように、適切なES細胞が、新規なマウス系統を作製するために生殖系列を介して伝達されるが、遺伝子の実際の欠失は、組織特異的な様式または時間制御された様式で成体マウスにおいて行われる。条件的遺伝子標的化は、最も一般的には、cre/lox系の使用によって達成される。酵素creは34塩基対のloxP配列を認識することができ、その結果、loxP隣接(またはフロクス(floxed))DNAがcreによって認識および切り出されるようになる。遺伝子組換えマウスにおける組織特異的なcre発現は、遺伝子標的化されたフロクスマウスをcre遺伝子組換えマウスと交配することによって組織特異的なノックアウトマウスの作製を可能にする。ノックアウトを、「欠失体」マウスを使用して、または、誘導可能なcre遺伝子を有する遺伝子組換えマウス(例えば、テトラサイクリン誘導可能なcre遺伝子を有する遺伝子組換えマウスなど)を使用してどの組織でも行うことができる(Schwenk他、1995)。あるいは、ノックアウトを、例えば、CD19−creマウスの使用によって組織特異的にすることができる(Rickert他、1997)。
【0135】
本発明のさらに別の局面によれば、候補医薬化合物のスクリーニング(上記の薬物スクリーニングを参照のこと)のための、上記に記載されるような遺伝子改変された非ヒト動物の使用方法が提供される。これらの動物はまた、SMEIまたはSMEIに関係する症候群を含むてんかんの処置のための、上記に記載されるような本発明から同定される化合物を含む候補医薬化合物の評価(例えば、治療効力、毒性、代謝)のために有用である。
【0136】
本明細書および請求項の全体を通して、単語「含む」(「comprise」、「comprises」および「comprising」)は、文脈が別途要求する場合を除いて、非排他的意味で使用される。
【0137】
本発明は、明解性および理解のためにある程度詳しく記載されている一方で、本明細書中に記載される実施形態および方法に対する様々な改変および変化が、本明細書中に開示される発明概念の範囲から逸脱することなく行われ得ることが当業者には明らかである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0138】
上記に記載されるアッセイシステムの任意の組合せを、SMEIまたはSMEIに関係する症候群の潜在的な原因となっているSCN1A変異の同定のために用いることができる。下記には、用いることができるアッセイの例が示される。
【実施例】
【0139】
実施例1:患者DNAの収集
図1におけるフローチャートは、SCN1A遺伝子における変化がSMEIの原因であるという可能性を明らかにするために使用することができる方針を図示する。選ばれたアッセイ組合せは、試験される患者集団を選択し、サンプル集団からDNAを得ることによって進められる。サンプル集団は、てんかんを有する任意の個体を包含し得るが、おそらくは、熱性発作を有する子供、ならびに、筋間代性(ミオクロニー)てんかんを有することが疑われる他の患者に集中すると考えられる。本研究の場合、選ばれた患者集団は、臨床的分析からSMEIと診断されていたか、または、重篤な脳障害が生後12ヶ月の期間中に生じていた個体を含んだ。
【0140】
検査患者由来のDNAを数多くの方法で得ることができる。最も一般的な方法は、患者から採取された血液サンプルからDNAを得ることである。しかしながら、DNAはまた、あまり侵襲的でない方法を使用して、例えば、ほお細胞スワブ採取物などから得ることができる。
【0141】
本研究の場合、DNAを、QIAamp DNA Blood Maxiキット(Qiagen)を製造者の説明書に従って使用して、または、WymanおよびWhite(1980)から改造された手法によって、集められた血液から抽出した。QIAampキットを使用して得られたDNAサンプルについては、最後のエタノール沈殿工程を用い、DNAペレットを滅菌水に再懸濁した。ストックDNAサンプルを200ng/uLの濃度で保存し、100ng/uLの希釈物をその後のPCR反応のために調製した。
【0142】
実施例2:dHPLCアッセイ
DNAが患者から得られると、SCN1A遺伝子の個々のエキソンのPCR増幅を高速液体クロマトグラフィー(dHPLC)による分析の前に用いた。SCN1A遺伝子は26個のエキソンを有しており、それらに対するプライマーを設計して、33個のアンプリコンを増幅した。各エキソンは、2つのアンプリコンでそれぞれ増幅されるエキソン11、エキソン15およびエキソン16、そして、5個のアンプリコンが、エキソン全体を増幅するために使用されたエキソン26を除き、1つのアンプリコンによって増幅された。表1には、SCN1A遺伝子の各エキソンを分析するために設計されたプライマーのリストが示される。
【0143】
PCR増幅反応を20uLの体積で行い、96ウエルプレートにおいて調製した。大部分のアンプリコンについて、PCR反応液は、1X PCR緩衝液(Invitrogen)、200uMの各dNTP、300ngの各プライマー、1.5mMのMgCl、100ngのDNA、および0.5ユニットのTaq DNAポリメラーゼ(Invitrogen)からなった。上記条件を、1ユニットのTaq DNAポリメラーゼが使用されたエキソン5およびエキソン26(1)を除くすべてのアンプリコンについて使用した。
【0144】
PCR増幅のために用いられた熱サイクル処理条件は各エキソンに従って変化した。エキソン1〜4、エキソン6〜9、エキソン11(1)、エキソン11(2)、エキソン12、エキソン14、エキソン15(1)、エキソン15(2)、エキソン16(2)、エキソン19およびエキソン22〜24については、PCR反応を、94℃で2分間の1サイクル、その後、60℃で30秒間、72℃で30秒間および94℃で30秒間の10サイクル、その後、55℃で30秒間、72℃で30秒間および94℃で30秒間の25サイクルを使用して行った。55℃で30秒間の最後のアニーリング反応、それに続く72℃で10分間の伸長反応により、これらのアンプリコンに対するサイクル処理条件を完了した。
【0145】
エキソン5については、アニーリング温度が10サイクルについては62℃であり、次いで25サイクルについては58℃であったことを除いて、上記と同じ条件を用いた。
【0146】
エキソン10、エキソン16(1)、エキソン21、エキソン25、エキソン26(1)、エキソン26(2)、エキソン26(3)、エキソン26(4)およびエキソン26(5)については、PCR反応を、94℃で2分間の1サイクル、その後、60℃で1.5分間、72℃で1.5分間および94℃で1.5分間の10サイクル、その後、55℃で1.5分間、72℃で1.5分間および94℃で1.5分間の25サイクルを使用して行った。55℃で1.5分間の最後のアニーリング反応、それに続く72℃で10分間の伸長反応により、これらのアンプリコンに対するサイクル処理条件を完了した。
【0147】
エキソン17、エキソン18およびエキソン20については、PCR反応を、94℃で2分間の1サイクル、その後、50℃で30秒間、72℃で30秒間および94℃で30秒間の35サイクルを使用して行った。50℃で30秒間の最後のアニーリング反応、それに続く72℃で10分間の伸長反応により、これらのアンプリコンに対するサイクル処理条件を完了した。
【0148】
エキソン13については、PCR反応を、94℃で2分間の1サイクル、その後、94℃で1分間、64℃で1.5分間および72℃で1.5分間の10サイクル、その後、94℃で1分間、60℃で1.5分間および72℃で1.5分間の25サイクルを使用して行った。この後、72℃で10分間の最後の伸長反応を行って、このアンプリコンに対するサイクル処理条件を完了した。
【0149】
dHPLC分析の前に、PCR産物を95℃に5分間加熱し、その後、(25℃に到達するまで)1.5分について−3℃の増分でゆっくり冷却した。これにより、PCR産物のヌクレオチド構成に依存するヘテロ二重鎖およびホモ二重鎖の形成が可能になるはずである。
【0150】
様々なdHPLCシステムをヘテロ二重鎖分析および変異検出のために使用することができる。本研究では、Transgenomic WAVE(登録商標)システムおよびそのシステムとともに提供された方法論を使用した。変異をdHPLCで検出するために、それぞれの生成物は部分的変性条件のもとで処理される必要があった。SCN1A遺伝子の各アンプリコンは異なる配列を有するため、それぞれの生成物が部分的に変性する温度を計算する必要があった。dHPLCシステムとともに提供されるTransgenomicソフトウエアを使用して、アンプリコンのそれぞれに対する要求される温度を求めた。その温度が表2に示される。
【0151】
アンプリコンを製造者の条件に従ってdHPLCカラムに供給し、コンピュータにより作成されたクロマトグラムを患者サンプルと野生型サンプルとの間で比較する。分析は、クロマトグラムを視覚的に調べることによって、そして同様に、HPLCとともに提供される変異検出のTransgenomicソフトウエアを使用して行われる。野生型に対して異なるピークパターンを示す患者サンプルは、検討中のSCN1Aアンプリコンにおける変化を含有すると見なされる。そのような個体に由来するDNAは、SCN1A変化の種類を明らかにするために、また、その変化がSMEIまたはSMEIに関係する症候群の原因である可能性を予測するために、さらなるアッセイ(すなわち、DNA配列決定)に供された(下記の実施例3を参照のこと)。
【0152】
実施例3:DNA配列決定アッセイ
野生型に対して異なるピークパターンを示したdHPLC分析からのPCR産物を、変化の種類を特定するために、DNA配列決定などの二次アッセイに供することができる。本研究ではDNA配列決定を用いた。これは最初に、関連する個体に由来する変化したdHPLCクロマトグラムを示すアンプリコンの再増幅、その後、QiaQuick PCRプレップ(Qiagen)を製造者の手法に基づいて使用する、配列決定のためのPCR増幅されたテンプレートの精製を伴った。精製されたアンプリコンを配列決定するために使用されたプライマーは、最初の増幅工程のために使用されたプライマーと同一であった。それぞれの配列決定反応のために、25ngのプライマーおよび100ngの精製されたPCRテンプレートを使用した。BigDye配列決定キット(ABI)を製造者の説明書に従ってすべての配列決定反応のために使用した。生成物をABI377シーケンサーで処理し、EditViewプログラムを使用して分析した。
【0153】
その後、患者サンプルから得られたDNA配列の比較を、dHPLCにより検出された変化を生じさせたDNA変化の種類を特定するために、野生型SCN1A配列のDNA配列に対して直接行った。
【0154】
SCN1A遺伝子の33個のアンプリコンのスクリーニングの結果が表3に示される。合計で269人の患者を分析したが、それらの臨床的てんかん表現型は分析時には隠されていた。合計で91サンプルがSCN1A遺伝子において変化を有することが示され、これらのうち、61サンプルが、臨床的分析に基づく明らかなSMEI表現型を有しており、38サンプルが臨床的分析に基づくSMEB表現型を有していた。従って、SCN1A変化が患者に見出されるならば、その患者は、SMEIを有する可能性が82%(50/63)であり、SMEBを有する可能性が63%(24/38)であり、SMEIまたはSMEBを有する可能性が75%(74/99)であると決定することができる。
【0155】
この可能性は、特定された変化が以前にSMEI、SMEBまたはこれらに関係する症候群と関連している変化であったならば増大する。また、現在の見解(Mulley他、2003)に基づけば、可能性は、その変化が罹患者の親または親類に見られないならば(すなわち、デノボ変化であるならば)、さらに増大し、また、その変化がタンパク質に対する大きな妨害(例えば、短縮化変化)を生じさせることが見出されるならば、さらに一層増大する。SMEIまたはSMEIに関係する症候群の診断に関してこの確実性レベルを提供することができることは、患者のための治療法、ならびに、ワクチン接種および他の原因に関連する発熱のような要因により誘導される発作悪化を回避するための治療法を検討するときに有益である。
【0156】
実施例4:さらなるアッセイ−SSCPアッセイ
上記のアッセイに加えて、他のアッセイを、SMEIに関連するSCN1A遺伝子における変化の存在について検査するために用いることができる。1つのそのようなアッセイが一本鎖高次構造多型(SSCP)分析である。この技術では、患者から得られたDNAが最初に、SCN1A遺伝子の個々のエキソンについてPCR増幅される。dHPLC分析のために用いられるプライマー(表1を参照のこと)はまた、SSCP分析のために使用することができる。
【0157】
場合により、SSCP分析のために使用されるプライマーは、例えば、GelScan2000システム(Corbett Research、オーストラリア)において使用されるような蛍光に基づく検出法のためにその5’末端がHEXで標識される。SSCPのPCR反応およびサイクル処理条件を、dHPLC分析について上記に記載されるように行うことができる。しかしながら、増幅が検討中のアンプリコンに対して特異的な異なる生成物のみをもたらすならば、任意のPCR反応およびサイクル処理条件を用いることができる。
【0158】
代わりのPCR反応条件の一例が、67mMのTris−HCl(pH8.8);16.5mMの(NHSO;6.5μMのEDTA;1.5mMのMgCl;200μMの各dNTP;10%のDMSO;0.17mg/mLのBSA;10mMのβ−メルカプトエタノール;5μg/mLの各プライマーおよび100U/mLのTaq DNAポリメラーゼを含有する10μLの総体積において反応が行われる場合である。PCRサイクル処理条件は、94℃で30秒間、60℃で30秒間および72℃で30秒間の10サイクル、その後、94℃で30秒間、55℃で30秒間および72℃で30秒間の25サイクルを使用することができる。72℃で10分間の最後の伸長反応をその後に行わなければならない。
【0159】
その後、50%(v/v)のホルムアミド、12.5mMのEDTAおよび0.02%(w/v)のブロモフェノールブルーを含む20μLの負荷用色素を完了した反応液に加え、続いて、反応液を、35:1(アクリルアミド:ビスアクリルアミド)の架橋比を有し、2%のグリセロールを含有する非変性の4%ポリアクリルアミドゲルで泳動する。GelScan2000システムを使用してPCRアンプリコンを分析する場合、典型的に用いられるゲル厚さは100μmであり、幅が168mmで、長さが160mmである。ゲルは、通常、1200ボルトおよび約20mAにおいて22℃で泳動され、GelScan2000システムを製造者の説明書に従って使用して分析される。SCN1A配列における変化を含有するアンプリコンは、その変化した一本鎖立体配座のために野生型アンプリコンとは異なるようにゲル中を移動する。その後、さらなるアッセイ(例えば、DNA配列決定など)を、アンプリコンにおけるSCN1A変化の種類を明らかにするために用いることができる(上記の実施例3を参照のこと)。
【0160】
実施例5:SCN1A変異による生後1年のうちに始まるてんかん性脳障害の完全なスペクトルの調査
導入
乳児重症ミオクロニーてんかん(SMEI,Dravet症候群)におけるSCN1A(ナトリウムチャネルのアルファ1サブユニットをコードする遺伝子)の変異の明らかになった役割は、最近の4年間にわたるてんかんの遺伝的研究の最前線であった。分子的研究は、SMEIの古典的な臨床像を有する子供の35〜100%がSCN1Aの変異を有することを示す(Fukuma他、2004;Sugawara他、2002;Nabbout他、2003;Claes他、2003;Claes他、2001;Ohmori他、2002;Wallace他、2003;Fujiwara他、2003;Ohmori他、2003;Kanai他、2004;Mulley他、2005;Gennaro他、2003)。これらの変異の90%以上はデノボで生じ、残りは起源において家族性である。これらの変異は、遺伝子全体に位置される短縮化変異であることが最も多い。しかし、ミスセンス変異もイオンチャネル孔領域(S5,S6及びリンカー)及びC末端(Kanai他、2004;Mulley他、2005)についてしばしば生じる。
【0161】
境界性乳児重症ミオクロニーてんかん(SMEB)の関係する症候群は、全身性スパイク波活性または筋間代性発作の如きSMEIの重要な特徴のいくつかを欠く子供の群を記述する(Fukuma他、2004)。SMEB患者の約25%はSCN1A変異を有する(Fukuma他、2004)。SMEBのサブセットは強直間代性発作を有する難治性小児期てんかん(ICEGTC)及び全身性強直間代性発作を有する乳児重症特発性全身性てんかんとして日本及びドイツの著者によって記述されている。そこでは、罹患した乳児はいつか全身性強直間代性発作を有するだけであるが、SMEIを有する子供と同様の経過をたどる(Fujiwara他、2003;Fujiwara他、1992;Doose他、1998)。これらの患者の70%がSCN1Aのミスセンス変異を有する(Fujiwara他、2003)。ここで本発明者らは、生後1年のうちにてんかんが発症した179人の患者を調査することによってSCN1Aに関連する表現型の変異性を研究する。この研究の目的は、SCN1A変異によるてんかん性脳障害の完全なスペクトルを調査することであった。
【0162】
対象及び方法
対象は、オーストラリア(135人)、カナダ(27人)、イギリス(26人)、ニュージーランド(22人)、イスラエル(4人)、アメリカ(4人)及びデンマーク(1人)を含む世界中から募集された。患者(n=179)の主要なコーホート(グループA)は、もし彼らが生後1年のうちに発症したてんかん性脳障害を有するなら研究に登録された。てんかん性脳障害は、発達遅延を伴う難治性発作障害であると定義された。グループB(n=40)は、生後1年より後で発症したてんかん性脳障害であってその病因が特定されておらずかつ磁気共鳴画像が正常であるか又は明確な原因を示さないてんかん性脳障害を有する個体を含んでいた。
【0163】
発症年齢、てんかん状態の出現、発熱感受性の存在、臨床的光感受性及び他の発作タイプの展開を含む初期発作歴に特別な強調をおいてすべての患者について電子的臨床データが得られた。詳細な初期発達歴は、画期的事件の取得、発達のプラトー又は退縮の時機及び現在の機能に注意をおいて得られた。他の重症な詳細な、神経学的調査、発作障害の家族歴、及びEEG、映像EEGモニタリング及び神経画像研究の結果を含んでいた。染色体分析の如き他の利用可能な調査の結果も得られた。
【0164】
SMEIは、以下の基準に従って定義された:半間代性又は全身性の痙攣発作の生後1年のうちの発症−これは、筋間代性発作及び他のタイプの発作(部分性発作、欠神発作、無緊張性発作、強直性発作を含みうる)の展開を伴う;生後1年の正常な発達及び続く遅延(これはプラトー化又は退縮を含む);全身性スパイク波活性及び正常なMRI又は非特異的な発見。
【0165】
SMEBは、SMEIの診断のキーとしてみなされている特異的特徴の非存在又は存在に基づいてサブグループに分割された。例えば、SMEB−Mは、患者が筋間代性発作を有さないがそれ以外はSMEIの基準を満たすなら使用された。同様に、SMEB−GSWは、SMEIの基準をすべて有するがEEG記録に対して全身性スパイク波活性を今だかつて有さない患者を定義した。SMEB−Nは、SMEIの典型的な初期歴を有する子供であって発達は比較的遅い時期があったかもしれないが正常な限界内であった子供に言及した。SMEB−Lは、SMEIの典型的な経過を有するが発作の発症が12月齢より後に生じた一つの事例で使用された。SMEBは、SMEIと一致しない一つ以上の特徴を有する患者に言及していた;例えば、患者が筋間代性発作を有したことがなく、初期発達が正常でないがそれ以外の点では病歴がSMEIと一致する場合にSMEBとした。
【0166】
徴候性全身性てんかん(SG)は、多数の発作タイプ、全身性の鋭く遅い活性、及び知的障害を有する個体に言及していた。
【0167】
レノックス−ガストート症候群(LGS)は、強直性発作及び遅い全身性スパイク波活性及び異常な発達を有する患者に対して使用された(Beaumanoir他、2002)。
【0168】
さらなるサブグループが原因不明の部分性てんかん(CP)と称され、そこでは個体は焦点性発作及び単又は多焦点EEGてんかんパターン及び正常な神経像を有していた。これらの個体の多くは知的障害を有しており、彼らが公知の原因を有さない徴候性部分性てんかん(SP)として分類されるべきかどうかについては議論可能である。
【0169】
Austin Health Human Research Ethics Committeeはこの研究を承認した。インフォームドコンセントが全ての年少者の患者又は保護者から及び正常な知能を有する成人の対象から得られた。知的障害を有する成人の場合、法的コンセントが適切な政府機関から得られた。
【0170】
分子的分析
臨床的分類の後、分子的分析は、実施例1で説明された方法を使用して患者の静脈血サンプルから抽出されたゲノムDNAに対して行なわれた。SCN1Aの26個のエクソンすべてが隣接イントロンプライマー(表1参照)及び実施例2に説明される標準的PCR条件を使用してPCR増幅された。PCR断片は、実施例2に説明されるようにTransgenomic WAVE 3500HT装置上での変性高性能液体クロマトグラフィ(dHPLC)によって分析された。正常なコントロールDNAと比べて変化したdHPLCクロマトグラムパターンを示すアンプリコンは、ABI3700シークエンサーで両方向に独立したPCR産物から配列決定された。使用された方法は実施例3に記述されている。
【0171】
各変位の番号付けは、全長SCN1Aアイソフォーム配列(Genbankアクセッション番号AB093548)の開始コドンATGからとられた。変異が検出された場合、親のDNA(もし入手可能なら)は直接配列決定によって変異について調査された。
【0172】
結果
本発明者らは、生後1年のうちに発症する発作障害を有する179人の患者(グループA)及びその後に発症する発作障害を有する40人の患者(グループB)を募集した。グループAでは、発症の平均及びメジアン年齢は5.5ヶ月(0.03〜12ヶ月にわたる)であった。グループBでは、発症の平均年齢は46.9ヶ月であり、メジアン年齢は30ヶ月(13〜264ヶ月にわたる)であった。グループA及びBで表された表現型の範囲は表4に示される。
【0173】
SMEIを有する61人の患者のうち75%(46/61)はSCN1A変異を有することが見出された。SMEIを有する個体のうち、41/61(67%)は半間代性発作を有していた。半間代性発作を有する41人の個体のうち、35/41(85%)はSCN1A変異を有し、6/41(15%)は半間代性発作を有するが変異を有さなかった。
【0174】
SMEBのすべてのサブタイプを有する42人の患者のうち、64%(27/42)はSCN1A変異を有していた。SMEBのサブカテゴリーにおいて、SCN1A変異の存在は次の通りであった:SMEB−SWは73%(11/15),SMEB−Mは100%(3/3),SMEB−Lは0%(0/1),SMEB−Nは100%(2/2),SMEBは61%(11/18)、及びICEGTCは33%(1/3)。
【0175】
SCN1A変異は、筋間代性の不安定なてんかんを有する1人の患者でも見出され、認識された熱性発作プラススペクトルを有する全身性てんかん(GEFS+)の外側の表現型を有する11人の患者でも見出された。これらの患者の臨床的特徴が表5に示されている。これらの11人の患者のうち3人が、徴候性多焦点てんかん(SMFE)を有するグループを表した。SMFEを有する患者のグループは7人の患者を含んでいた。このうち43%(3/7)はSCN1A変異を有しており、すべてが生後1年のうちに発症していた。12人のLGS患者のいずれもSCN1A変異を有していなかった。
【0176】
議論
SCN1Aの変異は、乳児期及び幼児期に示されるてんかん性脳障害の重要な原因である。本研究は、SMEI及びSMEB及びそのICEGTCのサブセットの現在認識されているスペクトルを越えてSCN1A欠陥の表現型スペクトルを拡張させる(Fukuma他、2004;Sugawara他、2002;Nabbout他、2003;Claes他、2003;Claes他、2001;Ohmori他、2002;Wallace他、2003;Fujiwara他、2003;Ohmori他、2003;Kanai他、2004;Mulley他、2005)。
【0177】
本発明者らの結果は、SCN1Aの表現型スペクトルが徴候性全身性てんかんを有する患者も含んでいたが、興味深いことにレノックス−ガストート症候群を有する12人の患者のいずれも含んでいなかったことを示す。
【0178】
原因不明の部分性てんかんとして分類されたグループ内で、本発明者らが徴候性多焦点てんかん(SMFE)と名付けた好奇心をそそるサブグループが出現した。SMFEは認識傷害及び難治性発作を有する重症のてんかん性脳障害である。多数のタイプの発作が生じ、そのうち最も目立つものは焦点性発作であり、典型的には変化する症候を有する。焦点性筋間代(ミオクロヌス)が生じるかもしれず、又は筋間代を悪化させることが知られる特定の抗てんかん薬によってもたらされることすらある。患者は、痙攣性又は非痙攣性のてんかん状態、部分性の特徴を有する強直性発作及び強直性間代性発作を有するかもしれない。発作間EEGは豊富な多焦点てんかん型放電を示す。これらの個体は遅い全身性スパイク波活性をEEGに有さない。それらのMRI脳スキャンは正常であるか又は特定の特徴を示さない。彼らは通常、正常な初期発達を有し、次に難治性発作障害を伴う認識低下を有し、知的障害で最高潮に達する。運動失調及び痙攣の如き焦点性神経学的徴候が発展することがある。2週間〜40ヶ月で発作障害を発症したSMFEを有する7人の患者がこの研究に入れられた。
【0179】
SMFEは、てんかん症候群の国際分類(国際抗てんかん連盟分類・用語委員会、1989)では認識されていなかったが、多くの著者によって論文に記述された障害に含まれる(Blume,1978;Burnstine他、1991;Markand,1977;Malik他、1989;Noriega−Sanchez他、1976;Ohtahara他、1995;Ohtsuka他、1990;Ohtsuka他、2000;Yamatogi他、2003)。臨床医の中には、この表現型を「燃えつき」SGEの後期発展であるとみなすものもある。しかし、これらの患者は、全身性スパイク波活性のEEG特徴を決して有さない。日本人の著者は、SMFEを「多重独立スパイク焦点を有する重度てんかん(MISF)」の彼らの分類内に含めるだろう。彼らはMISFを部分性発作と全身性発作とにさらに亜分類する(Yamatogi他、2003)。MISFの大きなグループは、結節状硬化症、仮死出生の如き原因の不均一なアレーを含む。対照的に、SFMEは、遺伝的要因を除く公知の原因を有さない患者を包含する。SMFEは、現在のところ分類するのが困難なひどいてんかん性脳障害を有する患者の重要なグループである。彼らの障害の根拠としてのSCN1A変異の発見は、他の原因についての潜在的に侵襲的な調査を回避し、治療の標的化を助ける。例えば、ビガバトリン及びチアガビンの如き筋間代性発作を悪化させる抗てんかん薬の回避、及びSMEIにおける発作を増大させることがあるラモトリギンの注意深い使用である(Guerrini他、1998)。
【0180】
本研究は、SMEIを有する61人の患者の75%がSCN1A変異を有するという以前の発見を確認する。本研究はまた、半間代性発作がSCN1Aに関係するSMEIの表れであるというNabbout及び彼の共同研究者の発見を確認する(Nabbout他、2003)。これは絶対的でない。なぜなら、半間代性発作を有する我々のSMEI事例の15%はSCN1Aネガティブであったからである。我々の以前の研究で、我々は一本鎖高次構造分析(SSCA)の技術を主に使用してSMEIを有する24人の事例のうち8人にSCN1A変異を見出した(Wallace他、2003)。ここで、我々はDHPLCを使用してこれらの事例の14人を再テストし、SCN1A変異を有する6人をさらに同定した。従って、SSCAは、我々の元の論文で推定された80%の検出率よりかなり低い検出率を有しており、全変異率を14/24(58%)にする(Wallace他、2003)。我々の現在の発見は、61%(Fukuma他、2004)から、77%(Sugawara他、2002),83%(Ohmori他、2002),92%(Fujiwara他、2003),100%(Claes他、2003;Claes他、2001)までにわたるSMEIコーホートの研究の大部分で見出されたSCN1A変異率と一層一致する。主な例外は、DHPLC及び配列決定に基づくNabboutの研究において見出された35%の変異率であった(Nabbout他、2003)。
【0181】
我々の研究は、SMEBにおけるSCN1A変異率を調査した他のグループとも一致する。我々は、すべてのSMEBの64%が変異を有することを見出した。この値は、Fukuma及び彼の共同研究者によって見出された26%より高い(Fukuma他、2004)。Fujiwara及び彼の共同研究者によって研究された7/10患者(Fujiwara他、2003)と比べて、ICEGTCを有する3人の患者のうち1人のみが変異を有していた。
【0182】
筋間代性発作がSMEI表現型の本質的要素であるかどうかという問題が議論されてきた。我々のデータは、筋間代性発作は必須でないということを示唆する。なぜなら、筋間代性発作のみを欠くSMEI表現型(SMEB−M)を有する我々の患者の3人すべてがSCN1A変異を有していたからである。同様に、全身性スパイク波活性はSMEIのEEG証明であると考えられるが、我々は、スパイク波活性を有さないSMEI(SMEB−SW)を有する我々の患者の11/15(73%)が変異を有していたことを見出した。
【0183】
SMEIの知的結果は一般的に貧しいと見なされており、すべての患者が認識障害を有する(Dravet他、2002)。我々の患者のうち2人は、認識障害を除くすべての特徴を有するSMEIの古典的な経歴を有しており、人生の後期では正常な知性を有していた(SMEI−N)。両方の患者はSCN1A変異を有していた。これらのデータは重要である。なぜなら、それは何人かの患者についての結果は一般的に考えられているものより良好であるかもしれないということを意味するからである。
【0184】
これは、生後1年のうちに並びに後の幼児期に始まるひどい発作障害におけるSCN1Aの役割の最大の研究である。我々の発見が表現型スペクトルを拡大させたのは驚くべきことではない。障害は、本質的特徴の特異的グループを有する「純粋なコーホート」でまず同定される。分子的根拠が決定されるにつれ、表現型−遺伝子型の相関が、穏やかな事例又は一見無関係にみえる障害を含むように表現型を拡張させる。これは、てんかん学において可能となったばかりである。なぜなら、SCN1Aは、原因不明であると以前はみなされていたてんかんにおいて役割を有することが示された最初の遺伝子であるからである。重要な発見は、正常なMRIの設定において多焦点特徴を有するてんかん性脳障害の後期発症を有する子供は、SGEを有する子供がそうであるかもしれないようにSCN1A変異を有するかもしれないということである。従って、我々は、SCN1Aは徴候性てんかんにも関係していると決定し、分子的根拠が正常な構造的画像を有するすべてのてんかん性脳障害で考慮されるべきであるということを示唆する。





【0185】




【図面の簡単な説明】
【0186】
【図1】図1におけるフローチャートは、SCN1A遺伝子における変化がSMEIの原因であるという可能性を明らかにするために使用することができる方針を図示する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のことを含む、患者におけるSMEIまたはSMEIに関係する症候群を含むてんかん症候群を診断する方法:
(1)患者から得られたサンプル中のSCN1A遺伝子における変化を検査し;そして
(2)もし変化が特定されれば、前記変化を表3に示される変化のいずれか1つと比較し、さらに、もし前記変化が表3に示される変化のいずれか1つと同一であれば、前記患者におけるSMEIまたはSMEIに関係する症候群を含むてんかん症候群の診断が、表3で規定される相関に従って行なわれる。
【請求項2】
SCN1A変化の存在について検査して変化の種類を特定するための1つまたは複数のアッセイを行なうことを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
DNA配列決定が行なわれる請求項2に記載の方法。
【請求項4】
以下のことを含む、請求項1に記載の方法:
(1)患者のSCN1A遺伝子における変化の存在について検査するために1つまたは複数のアッセイを行い;そして、もし結果がSCN1A遺伝子における変化の存在を示すならば、
(2)そのSCN1A変化の種類を特定するために1つまたは複数のアッセイを行う。
【請求項5】
SCN1A遺伝子における変化の存在について検査するためにdHPLCまたはSSCPが行なわれる請求項4に記載の方法。
【請求項6】
もし変化が検出されたら、変化の種類を特定するためにDNA配列決定が行なわれる請求項5に記載の方法。
【請求項7】
以下のことを含む、患者におけるSMEI,SMEB,原因不明の部分性てんかん(CP)、徴候性全身性てんかん(SG)、徴候性部分性てんかん(SP)および未知の病因を有する脳炎後のてんかん(PE)からなる群から選択されるてんかんの亜症候群を診断する方法:
(1)患者から得られたサンプル中のSCN1A遺伝子における変化を検出し;そして
(2)前記変化を表3に示される変化のいずれか1つと比較し、さらに、もし前記変化が表3に示される変化のいずれか1つと同一であれば、てんかん亜症候群の診断が、表3で規定される相関に従って行なわれる。
【請求項8】
SCN1A変化の存在について検査して変化の種類を特定するための1つまたは複数のアッセイを行なうことを含む請求項7に記載の方法。
【請求項9】
DNA配列決定が行なわれる請求項8に記載の方法。
【請求項10】
以下のことを含む、請求項7に記載の方法:
(1)患者のSCN1A遺伝子における変化の存在について検査するために1つまたは複数のアッセイを行い;そして、もし結果がSCN1A遺伝子における変化の存在を示すならば、
(2)そのSCN1A変化の種類を特定するために1つまたは複数のアッセイを行う。
【請求項11】
SCN1A遺伝子における変化の存在について検査するためにdHPLCまたはSSCPが行なわれる請求項10に記載の方法。
【請求項12】
もし変化が検出されたら、変化の種類を特定するためにDNA配列決定が行なわれる請求項11に記載の方法。
【請求項13】
以下のことを含む、患者におけるSMEIまたはSMEIに関係する症候群を診断するための方法:
(1)患者サンプル中のSCN1A遺伝子における変化を検出し;そして
(2)その変化が、SMEIもしくはSMEIに関係する症候群に関連することが知られているかまたはSMEIもしくはSMEIに関係する症候群に関連しないことが知られているかどうかを確認し、あるいは、そのいずれかであることが知られていない場合には、その変化がSMEIまたはSMEIに関係する症候群に関連する変化であるという可能性を決定し、
SMEIもしくはSMEIに関係する症候群に関連することが知られている変化、またはSMEIもしくはSMEIに関係する症候群に関連しないことが知られている変化は、表3でなされる相関に従って表3に示される変化のいずれか1つから選択される。
【請求項14】
変化がSMEIまたはSMEIに関係する症候群に関連することが知られている場合にはSMEIまたはSMEIに関係する症候群の蓋然性が高いとする診断を確立することをさらに含む請求項13に記載の方法。
【請求項15】
変化がSMEIまたはSMEIに関係する症候群に関連しないことが知られている場合にはSMEIまたはSMEIに関係する症候群の蓋然性が低いとする診断を確立することをさらに含む請求項13に記載の方法。
【請求項16】
変化がSMEIまたはSMEIに関係する症候群に関連する変化である可能性が以下のことによって確立される請求項13に記載の方法:
(1)親および/または親類についての遺伝的データを考慮し;そして
(2)変化がデノボ変化であるかまたは遺伝性のものかどうかを確立する。
【請求項17】
変化がSCN1Aタンパク質に対する大きな妨害を生ずるかどうかを確立することをさらに含む請求項16に記載の方法。
【請求項18】
変化が短縮突然変異である請求項17に記載の方法。
【請求項19】
遺伝的突然変異の場合にはSMEIまたはSMEIに関係する症候群の蓋然性が低いとし、デノボ突然変異の場合にはSMEIまたはSMEIに関係する症候群の蓋然性が高いとし、デノボ突然変異がSCN1Aタンパク質に対する大きな妨害を生ずる場合にはSMEIまたはSMEIに関係する症候群の蓋然性が極めて高いとする診断を確立することを含む請求項13に記載の方法。
【請求項20】
SCN1Aの変化の存在について検査し、かつ、その変化の種類を特定するために1つまたは複数のアッセイを行うことを含む請求項13〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
以下のことを含む、請求項13〜19のいずれか一項に記載の方法:
(1)患者のSCN1A遺伝子における変化の存在について検査するために1つまたは複数のアッセイを行い;そして、結果がSCN1A遺伝子における変化の存在を示すならば、
(2)そのSCN1A変化の種類を特定するために1つまたは複数のアッセイを行う。
【請求項22】
SCN1A遺伝子における変化の存在について検査するためにdHPLCまたはSSCPが行なわれる請求項21に記載の方法。
【請求項23】
もし変化が検出されたら、変化の種類を特定するためにDNA配列決定が行なわれる請求項22に記載の方法。
【請求項24】
以下のことを含む、SMEIまたはSMEIに関係する症候群を有する疑いがある患者のための適切な処置を決定する方法:
(1)請求項1〜23のいずれか一項に記載の方法の一つ以上を行い;そして
(2)達成された診断を、SMEIまたはSMEIに関係する症候群を有する患者についての既知の徴候および逆の徴候と相関させる。
【請求項25】
以下のことを含む、薬物処置およびワクチン摂種を含むSMEIまたはSMEIに関係する症候群を有する疑いがある患者の処置から逆の結果が生ずる可能性を決定する方法:
(1)請求項1〜23のいずれか一項に記載の方法の一つ以上を行い;そして
(2)達成された診断を、SMEIまたはSMEIに関係する症候群を有する患者についての既知の徴候および逆の徴候と相関させる。
【請求項26】
哺乳動物の電位依存性ナトリウムチャネルの変化したSCN1Aサブユニットをコードする単離された核酸分子であって、前記変化はSMEIまたはSMEIに関係する症候群の表現型を生じさせ、前記核酸分子は表3に規定されるような変化を含む単離された核酸分子。
【請求項27】
前記核酸分子は配列番号1〜配列番号33のいずれか1つに規定される配列を有する請求項26に記載の単離された核酸分子。
【請求項28】
哺乳動物の電位依存性ナトリウムチャネルの変化したSCN1Aサブユニットをコードする単離された核酸分子であって、前記変化はSMEIではないかまたはSMEIに関係する症候群ではないてんかん表現型を生じさせ、前記核酸分子は表3に規定されるような変化を含む単離された核酸分子。
【請求項29】
前記核酸分子は配列番号34〜配列番号41のいずれか1つに規定される配列を有する請求項28に記載の単離された核酸分子。
【請求項30】
配列番号1〜配列番号41のいずれか1つに規定されるヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子。
【請求項31】
配列番号1〜配列番号41のいずれか1つに規定されるヌクレオチド配列からなる単離された核酸分子。
【請求項32】
請求項26〜31のいずれか一項に記載の核酸分子を含む発現ベクター。
【請求項33】
請求項26〜31のいずれか一項に記載の核酸分子を含む細胞。
【請求項34】
請求項26〜31のいずれか一項に記載の核酸分子を含む遺伝的に改変された非ヒト動物。
【請求項35】
動物が、ラット、マウス、ハムスター、モルモット、ウサギ、イヌ、ネコ、ヤギ、ヒツジ、ブタ並びにサルおよびチンパンジーの如き非ヒト霊長類からなる群から選択される請求項34に記載の遺伝的に改変された非ヒト動物。
【請求項36】
哺乳動物の電位依存性ナトリウムチャネルの変化したSCN1Aサブユニットである単離されたポリペプチドであって、前記変化はSMEIまたはSMEIに関係する症候群の表現型を生じさせ、前記ポリペプチドは表3に規定されるような変化を含む単離されたポリペプチド。
【請求項37】
前記ポリペプチドは、配列番号42〜配列番号67のいずれか1つに規定される配列を有する請求項36に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項38】
哺乳動物の電位依存性ナトリウムチャネルの変化したSCN1Aサブユニットである単離されたポリペプチドであって、前記変化はSMEIではないかまたはSMEIに関係する症候群ではないてんかんの表現型を生じさせ、前記ポリペプチドは表3に規定されるような変化を含む単離されたポリペプチド。
【請求項39】
前記ポリペプチドは配列番号68〜配列番号74のいずれか1つに規定される配列を有する請求項38に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項40】
配列番号42〜配列番号74のいずれか1つに規定されるアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチド。
【請求項41】
配列番号42〜配列番号74のいずれかに1つに規定されるアミノ酸配列からなる単離されたポリペプチド。
【請求項42】
請求項36〜41のいずれか一項に記載のSCN1Aサブユニットを組み入れるナトリウムチャネル。
【請求項43】
以下のことを含むポリペプチドの調製方法:
(1)請求項33に記載の細胞をポリペプチド産生のために効果的な条件下で培養し;そして
(2)ポリペプチドを集める。
【請求項44】
請求項43の方法によって調製されるポリペプチド。
【請求項45】
請求項36〜41または44のいずれか一項に記載のポリペプチドと、または請求項42に記載のナトリウムチャネルと特異的に結合するが、野生型ナトリウムチャネルとは特異的に結合しない抗体。
【請求項46】
モノクローナル抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体またはFabフラグメント、(Fab′)2フラグメント、Fvフラグメント、単鎖抗体及び単一ドメイン抗体を含む抗体フラグメントからなる群から選択される請求項45に記載の抗体。
【請求項47】
SMEIまたはSMEIに関係する症候群を含むてんかんの症候群を診断するための請求項26〜31のいずれか一項に記載の核酸分子の使用方法。
【請求項48】
SMEIまたはSMEIに関係する症候群を含むてんかんの症候群を診断するための請求項36〜41または44のいずれか一項に記載のポリペプチドの使用方法。
【請求項49】
SMEIまたはSMEIに関係する症候群を含むてんかんの症候群を診断するための請求項45または46に記載の抗体の使用方法。
【請求項50】
候補医薬品化合物をスクリーニングするための請求項26〜31のいずれか一項に記載の核酸分子の使用方法。
【請求項51】
候補医薬品化合物をスクリーニングするための請求項36〜41または44のいずれか一項に記載のポリペプチド、請求項42に記載のナトリウムチャネル、または請求項45もしくは46に記載の抗体の使用方法。
【請求項52】
候補医薬品化合物をスクリーニングするための請求項34もしくは35に記載の遺伝的に改変された非ヒト動物または請求項33に記載の細胞の使用方法。
【請求項53】
患者におけるSMEIまたはSMEIに関係する症候群を含むてんかんを処置する方法であって、請求項36〜41もしくは44のいずれか一項に記載のポリペプチドまたは請求項42に記載のナトリウムチャネルの選択的なアンタゴニスト、アゴニストもしくは調節剤を前記患者に投与することを含む方法。
【請求項54】
SMEIまたはSMEIに関係する症候群を含むてんかんの処置のための医薬の製造における請求項36〜41もしくは44のいずれか一項に記載のポリペプチドまたは請求項42に記載のナトリウムチャネルの選択的なアンタゴニスト、アゴニストもしくは調節剤の使用方法。
【請求項55】
患者におけるSMEIまたはSMEIに関係する症候群を含むてんかんを処置する方法であって、請求項26〜31のいずれか一項に記載された核酸分子の相補体(アンチセンス)である単離された核酸分子であってかつ変化されたSCN1Aタンパク質をコードするmRNAとハイブリダイズするRNA分子をコードする単離された核酸分子を前記患者に投与することを含む方法。
【請求項56】
SMEIまたはSMEIに関係する症候群を含むてんかんの処置のための医薬の製造における、請求項26〜31のいずれか一項に記載された核酸分子の相補体(アンチセンス)である単離された核酸分子であってかつ変化されたSCN1AポリペプチドをコードするmRNAとハイブリダイズするRNA分子をコードする単離された核酸分子の使用方法。
【請求項57】
請求項45または46に記載の抗体を投与することを含む、SMEIまたはSMEIに関係する症候群を含むてんかんを処置する方法。
【請求項58】
SMEIまたはSMEIに関係する症候群を含むてんかんの処置のための医薬の製造における請求項45または46に記載の抗体の使用方法。
【請求項59】
患者におけるSMEIまたはSMEIに関係する症候群を含むてんかんを処置する方法であって、請求項45もしくは46に記載の抗体を投与すること、請求項36〜41もしくは44のいずれか一項に記載のポリペプチドまたは請求項42に記載のナトリウムチャネルのアゴニスト、アンダゴニストまたは調節剤を投与すること、または請求項26〜31のいずれか一項に記載の核酸分子の相補体であるDNA分子であってかつ変化されたSCN1Aタンパク質をコードするmRNAとハイブリダイズするRNA分子をコードするDNA分子を投与することを、野生型SCN1Aの投与と組み合わせて、前記患者に対して行なうことを含む方法。
【請求項60】
SMEIまたはSMEIに関係する症候群を含むてんかんの処置のための医薬の製造における、請求項45もしくは46に記載の抗体、請求項36〜41もしくは44のいずれか一項に記載のポリペプチドまたは請求項42に記載のナトリウムチャネルのアゴニスト、アンダゴニストまたは調節剤、または請求項26〜31のいずれか一項に記載の核酸分子の相補体であるDNA分子であってかつ変化されたSCN1Aタンパク質をコードするmRNAとハイブリダイズするRNA分子をコードするDNA分子の、野生型SCN1Aの使用と組み合わせた使用方法。

【図1】
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【公表番号】特表2008−546376(P2008−546376A)
【公表日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−516076(P2008−516076)
【出願日】平成18年6月16日(2006.6.16)
【国際出願番号】PCT/AU2006/000841
【国際公開番号】WO2006/133508
【国際公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(502386053)バイオノミックス リミテッド (13)
【Fターム(参考)】