説明

SPARC特異的miRNAを使用する、治療、診断、及び拮抗物質発見方法

ヒトSPARCを制御するmiRNA及びそれらの使用方法が記載される。本明細書中に記載される該方法及び組成物における使用のために好適な核酸としては、pri−miRNA、pre−miRNA、ds miRNA、成熟miRNA又は、miRNAの生物活性を保持するそれらの変異体の断片及び、pri−miRNA、pre−miRNA、成熟miRNA、それらの断片若しくは変異体、又はmiRNAの調節エレメントをコードするDNAが挙げられるが、これらに限定されない。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発明の背景
【0002】
酸性であり且つシステインに富んだ分泌タンパク質(オステオネクチン、BM40、又はSPARCとしても知られる)(以下「SPARC」)は、細胞の形の変化を引き起こし、細胞周期の進行を阻害し、そして細胞外マトリクスの合成に影響する、マトリクス結合タンパク質である(Bradshaw et al., Proc. Nat. Acad. Sci. USA 100: 6045-6050 (2003))。マウスSPARC遺伝子は1986年にクローン化され(Mason et al., EMBO J. 5: 1465-1472 (1986))、そして全長ヒトSPARC cDNA(配列番号1)は1987年にクローン化及び配列決定された(Swaroop et al., Genomics 2: 37-47 (1988))。SPARC発現は、発生的に制御されており、正常な発生の過程で又は傷害に応答して再構築を受けている組織において主に発現している。例えば、高レベルのSPARCタンパク質が、発生中の骨及び歯において発現する(例えば、Lane et al., FASEB J., 8, 163 173 (1994); Yan & Sage, J. Histochem. Cytochem. 47:1495-1505 (1999)を参照のこと)。
【0003】
SPARCは、数種の悪性の癌において上方調節されているが、対応する正常な組織(例、膀胱、肝臓、卵巣、腎臓、腸、及び乳房)には存在しない(Porter et al., J. Histochem. Cytochem., 43, 791(1995))。膀胱癌において、例えば、SPARC発現は、進行癌と関連付けられてきた。ステージT2又はより重度の浸潤性膀胱腫瘍は、ステージT1の膀胱腫瘍(又はより軽度の表在性腫瘍)と比較して、より高レベルのSPARCを発現することが示されており、また予後がより不良である(例えば、Yamanaka et al., J. Urology, 166, 2495 2499 (2001)を参照のこと)。髄膜腫において、SPARC発現は、浸潤性腫瘍とのみ関連付けられている(例えば、Rempel et al., Clincal Cancer Res., 5, 237 241 (1999)を参照のこと)。SPARC発現はまた、上皮内浸潤性乳癌病変の74.5%(例えば、Bellahcene, et al., Am. J. Pathol., 146, 95 100 (1995)を参照のこと)、及び浸潤性乳管癌の54.2%(例えば、Kim et al., J. Korean Med. Sci., 13, 652 657 (1998)を参照のこと)において検出されている。SPARC発現は、乳癌における頻繁な微小石灰化にも関連付けられており(例えば、Bellahcene et al.、上記、を参照のこと)、SPARC発現が、乳房転移の骨への親和性に関与し得ることを示唆している。
【0004】
驚くべきことに、SPARCは、正常な表面上皮と比較して、卵巣癌において顕著に下方調節されることも報告されており、卵巣癌において腫瘍抑制因子として働くことが示唆されている(Brown, T. J. et al., Gynecol Oncol. (1999) 75(1):25-33)。従って、SPARCは、いくつかのモデル系において抗腫瘍活性を有することが示されている。SPARCは、細胞をG1中期において停止させる強力な細胞周期阻害剤であり(Yan & Sage, J. Histochem. Cytochem. 47:1495-1505 (1999))、SPARCの誘導性発現が、in vitroモデル系において乳癌細胞増殖を阻害することが示されている(Dhanesuan et al., Breast Cancer Res. Treat. 75:73-85 (2002))。同様に、外因性SPARCは、濃度依存的な様式で、HOSE(ヒト卵巣表面上皮)及び卵巣癌細胞の両方の増殖を減少させることができる。更に、SPARCは、卵巣癌細胞においてアポトーシスを誘導する。卵巣上皮細胞などの細胞上に存在するSPARC受容体についての更なる証拠が報告されている。SPARCのその受容体への結合は、その腫瘍抑制機能を仲介する組織特異的シグナル伝達経路を引き起こす可能性があることが提案されている(Yiu et al., Am. J. Pathol. 159:609-622 (2001))。精製SPARCも、in vivo異種移植モデル系において、血管形成を強く阻害し、神経芽細胞腫腫瘍増殖を顕著に減ずることが報告されている(Chlenski et al., Cancer Res. 62:7357-7363 (2002))。
【0005】
SPARCは、非腫瘍性増殖性疾患においても役割を果たす。メサンギウム細胞増殖は、多くの糸球体疾患の特性であり、多くの場合細胞外マトリクスの拡大及び糸球体硬化症に先立つ。実験的メサンギウム増殖性糸球体腎炎のモデルにおいて、SPARC mRNAは、7日までに5倍に増加し、in situハイブリダイゼーションにより、メサンギウムにおいて同定された。しかしながら、組換えSPARC又は合成SPARCペプチドは、in vitroの血小板由来増殖因子誘導メサンギウム細胞DNA合成を阻害した(Pichler et al., Am. J. Pathol. 148(4):1153-67 (1996))。同様に、過形成、肥大、及び細胞間マトリクスの増加に起因する腎腫大は、ヒトにおける糖尿病の特徴であるが、腎臓SPARC mRNAレベルは糖尿病動物においては低下した。更に、糖尿病関連腎肥大の発症は、SPARC mRNA及びタンパク質の減少と関連付けられる(Gilbert et al., Kidney Int. 48(4):1216-25 (1995))。
【0006】
SPARCは、アテローム性動脈硬化病変の発症と関係しているとされてきた。血漿中SPARCレベルは、冠動脈疾患を有する患者において上昇する(Masahiko et al., Obesity Res. 9:388-393 (2001))。動脈内膜における血管平滑筋細胞の増殖は、アテローム性動脈硬化の発症において中心的な役割を果たす。SPARCは、アテローム性動脈硬化病変に関連する血管平滑筋細胞及びマクロファージにおいて発現する。更に、SPARCは、血管損傷中の血小板由来増殖因子の作用を制御するとの仮説が立てられている(Masahiko et al., Obesity Res. 9:388-393 (2001); Raines et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:1281-1285 (1992))。内皮PAI−1産生に対するSPARCの促進効果が、血管損傷の部位において報告されており(Hasselaar et al., J. Biol. Chem. 266:13178-13184 (1991))、アテローム性動脈硬化を促進すると仮定されている(Masahiko et al., Obesity Res. 9:388-393 (2001))。
【0007】
SPARCは、陽イオン(例、Ca2+、Cu2+、Fe2+)、増殖因子(例、血小板由来増殖因子(PDGF)、及び血管内皮増殖因子(VEGF))、細胞外マトリクス(ECM)タンパク質(例、コラーゲンIV及びコラーゲンIX、ビトロネクチン、並びにトロンボスポンジン1)、内皮細胞、血小板、アルブミン、及びヒドロキシアパタイトを含む、多種多様のリガンドに対して親和性を有する(例えば、Lane et al., FASEB J., 8, 163 173 (1994); Yan & Sage, J. Histochem. Cytochem. 47:1495-1505 (1999)を参照のこと)。SPARCは、アルブミンに結合することも知られている(例えば、Schnitzer, J. Biol. Chem., 269, 6072 (1994))。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、SPARCの過剰発現が予後不良と関連することが示されている及び/又は疾患の原因であることが示されている場合において、SPARCの発現の阻害のための天然に存在するmiRNAを提供することである。本発明は、miRNA翻訳阻害を示すSPARC mRNA翻訳の3’UTR阻害の実証に基づく。
【0009】
本発明の目的は更に、SPARC過少発現に依存する又はそれによって引き起こされる、癌又は増殖性疾患の1以上の症状の治療又は予防のための天然に存在する核酸を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の概要
本発明は、SPARCタンパク質の発現を阻害するための方法であって、生物の細胞において、内因性SPARC RNAに結合し、SAPRCタンパク質発現を阻害する、阻害有効量の1以上のmiRNAを、例えば癌、再狭窄又は他の細胞増殖疾患若しくは状態を患うヒト患者などの生物に投与することを含む方法を提供する。更に、本発明のmiRNAとしては、合成miRNA及び、生物の細胞におけるmiRNAの発現のために遺伝子操作された単離された核酸にコードされ発現するmiRNAが挙げられる。
【0011】
従って、本発明は、癌、再狭窄、他の増殖性疾患の治療又は予防を必要とする患者に投与するための治療組成物であって、SPARC mRNAに結合してSPARCタンパク質の発現を阻害する有効量のmiRNAの、該患者の細胞における発現のための、合成RNA又は単離された核酸を含む治療組成物も提供する。
【0012】
更に、本発明は更に、生物の細胞におけるSPARCタンパク質の発現を増加させるための方法であって、1以上の内因性miRNAに結合し、該内因性miRNAによるSPARCタンパク質発現の阻害を逆行させる、有効量の1以上の拮抗物質が生物に投与されることを含む方法を提供する。
【0013】
本発明は更に、癌、再狭窄、他の増殖性疾患の治療又は予防を必要とする患者に投与するための治療組成物であって、内因性miRNAによるSPARCタンパク質発現の阻害を逆行させるように1以上の内因性miRNAに結合する有効量の1以上の拮抗miRNAの、該患者の細胞における発現のための、合成RNA及び単離された核酸を含む治療組成物を提供する。拮抗物質は、任意の適切な合成核酸であり得、例えば、RNA、DNA、PNA(ペプチド核酸)、LNA(ロックト核酸)又はそれらの誘導体が挙げられる。あるいは、拮抗物質は、単離された核酸によってコードされ、そこから発現し得る。
【0014】
本発明の特に好ましい実施形態において、miRNA標的配列はSPARC(配列番号1)であり、miRNA配列又はそれらの相補配列は、以下からなる群から選択される:hsa-miR-885-5p、hsa-let-7b、hsa-let-7i、hsa-miR-186、hsa-miR-125b、hsa-let-7d、hsa-miR-34c-5p、hsa-miR-139-5p、hsa-miR-100、hsa-miR-34b、hsa-let-7c、hsa-let-7d、hsa-miR-29a、hsa-miR-29b、hsa-mir-29c、hsa-let-7g、hsa-miR-146b-5p、hsa-miR-154、hsa-miR-674、hsa-let-7f、hsa-miR-21、hsa-miR-22、hsa-miR-23a、hsa-miR-98、hsa-let-7a、hsa-miR-199a-3p、hsa-miR-214、hsa-miR-130a、hsa-miR-211、hsa-miR-515-5p、hsa-miR-517a、hsa-miR-517b、hsa-mir-203(それぞれ、配列番号2〜35のそれらのステムループ型で、又は配列番号44〜83の成熟配列で)、並びに配列番号36〜41及び84〜89並びにそれらの組み合わせ。それらの成熟型において、これらのmiRNAは以下の配列を有する:
【0015】
【表1−1】

【0016】
【表1−2】

【0017】
他の実施形態において、本発明は、レポーター遺伝子が作動可能に連結された1以上のin vivo発現制御エレメントを含む単離された核酸であって、前記レポーター遺伝子がSPARC RNAの3’非翻訳領域の全て又は一部の上流にあり、真核細胞への該単離された核酸のトランスフェクションにより、in vivo発現制御エレメントが、SPARC 3’非翻訳領域の上流のレポーターをコードするmRNAの産生をもたらす、単離された核酸を提供する。
【0018】
従って、本発明は、以下を含むSPARC発現モジュレーターの同定用キットをさらに提供する:
【0019】
(a)SPARC 3’非翻訳領域の全て又は一部の上流にクローン化されている第一のレポーター遺伝子に作動可能に連結された1以上のin vivo発現制御エレメントの第一のセットを有する第一の単離された核酸であって、真核細胞への前記第一の単離された核酸のトランスフェクションにより、in vivo発現制御エレメントの第一のセットが、SPARC 3’非翻訳領域の上流の第一のレポーターをコードするmRNAの産生をもたらす、第一の単離された核酸;(b)前記第一のレポーター遺伝子に作動可能に連結された、(a)由来のin vivo発現制御エレメントの前記セットを含む第二の単離された核酸であって、真核細胞への前記第二の単離された核酸のトランスフェクションにより、in vivo発現制御エレメントが、前記第一のレポーター分子をコードするmRNAの転写をもたらす、第二の単離された核酸;及び(c)第二のレポーター遺伝子に作動可能に連結された、1以上のin vivo発現制御エレメントの第二のセットを含む第三の単離された核酸であって、真核細胞への該単離された核酸のトランスフェクションにより、in vivo発現制御エレメントの前記第二のセットが、前記第二のレポーターの発現をもたらす、第三の単離された核酸。
【0020】
従って、本発明は、以下の工程を含むSPARC発現モジュレーターを同定する方法を提供する:(a)SPARC 3’非翻訳領域の全て又は一部の上流にクローン化されているレポーター遺伝子に作動可能に連結された1以上のin vivo発現制御エレメントを含む単離された核酸で、真核細胞をトランスフェクトする工程であって、in vivo発現制御エレメントが、SPARC 3’非翻訳領域の上流のレポーターをコードするmRNAの産生をもたらす工程;及び(b)前記レポーター遺伝子に作動可能に連結された前記1以上のin vivo発現制御エレメントを含む単離された核酸で、他の真核細胞をトランスフェクトする工程であって、該発現制御エレメントが、レポーター分子をコードするmRNAの転写をもたらす工程;(c)(a)及び(b)からのトランスフェクトされた細胞を、候補発現モジュレーターと接触及び偽接触させる工程;並びに(d)(a)及び(b)からのトランスフェクトされた細胞を候補発現モジュレーターと接触させる場合及び接触させない場合の該トランスフェクトされた細胞におけるレポーター遺伝子活性を比較する工程。
【0021】
本発明により提供されるSPARC発現モジュレーターを同定する方法は、(d)において比較されるデータの標準化のための第二のレポーターを発現する第二のレポートコンストラクトを用いた、(a)及び(b)における細胞のコトランスフェクションを更に含み得る。SPARC発現モジュレーターを同定する本方法は、レポーター発現コンストラクト中のSPARC 3’非翻訳領域を変異させる工程、前記変異させたレポーター発現コンストラクトを真核細胞にトランスフェクトする工程、及びトランスフェクトされた細胞を候補発現モジュレーターと接触させる場合及び接触させない場合の、変異させた及び変異させていないレポーター発現コンストラクトの発現からもたらされるレポーター遺伝子活性を比較する工程を更に含み得る。そのようにして同定されるSPARC発現モジュレーターは、例えば、小分子、核酸、ペプチド核酸、miRNA又はポリペプチドであり得る。
【0022】
本発明は、生物の細胞における1以上のタンパク質の発現を阻害する方法であって、前記タンパク質が、クラスタリン、β鎖;クラスタリン、α鎖;N−カドヘリン;セサーニン1(secernin 1);コラーゲン、v型、α鎖;レニン、β鎖;レニン;及びサイトケラチンI、II型からなる群から選択される方法、並びに生物の細胞における1以上のタンパク質の発現を増加させる方法であって、前記タンパク質が、α−アクチン;hsp27;コラーゲン、I型、α−2鎖;ペルオキシレドキシン3;β−5チューブリン;p32、鎖からなる群から選択される方法も提供し、前記方法は、該生物の細胞において結合してSAPRC発現を阻害する、阻害有効量の1以上のmiRNAを該生物に投与することを含む。
【0023】
更に、本発明は、生物の細胞における1以上のタンパク質の発現を調節する方法であって、前記タンパク質が、以下のGenebankアクセション番号:ヒトmRNA:NM_016619、NM_016323、NM_012294、NM_006393、NM_005609、NM_002462、NM_002346、NM_001955、NM_001548、NM_000909、BM930167、BM874773、BI560717、AW511255、AK098543、AI860360、AI760944;以下のマウスmRNAのヒト対応物:NM_133664、NM_011641、NM_010226、NM_008380、BB480262、AW909062;ヒトmiRNA:hsa−miR−542−5p、hsa−miR−186;以下のマウスmiRNAのヒト対応物:rno−miR−377、mmu−mir−377からなる群から選択される核酸配列によりコードされ、該生物の細胞において結合してSAPRC発現を阻害する、有効量の1以上のmiRNAを該生物に投与することを含む方法を提供する。
【0024】
最後に本発明は、増殖性疾患の進行、増殖性疾患の治療への応答、又はそれらの組み合わせのためのバイオマーカーとしてのこれらのmiRNAの使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、トランスフェクション後48時間の、293及びCHOにおける外因性SPARCの発現を検出するウェスタンブロットを示す。
【図2】図2は、トランスフェクション後3週間の、安定にトランスフェクトされた293及びCHO細胞における外因性SPARCの発現を検出するウェスタンブロットを示す。
【図3】図3は、SPARC mRNAを検出するために使用されたプライマーの位置を示す。
【図4】図4は、トランスフェクション後48時間の、CHO及び293細胞におけるSPARCをコードする外因性及び内因性mRNA由来のRT−PCR産物のゲル電気泳動を示す。
【図5】図5は、LH-3-6XHis又はLH-3-6XHis-3'UTRコンストラクトでトランスフェクトされたCHO及び293細胞における外因性SPARCの発現を検出するウェスタンブロットを示す。
【図6】図6は、ルシフェラーゼのコード領域のすぐ下流にクローン化されたSPARC 3’UTRを有するpXL-miRNA1.1の制限地図を示す。
【図7】図7は、ルシフェラーゼのコード領域のすぐ下流にクローン化されたSPARC 3’UTRを有するコンストラクトをトランスフェクトされたCHO及び293細胞からの、標準化されたルシフェラーゼ発現を示す。
【図8】図8は、SK-OV-3、Caov-3、ES-2、PA-1、及びOVCAR-3細胞における、種々のバージョンのSPARCの3’UTRを有さないコンストラクト(pMIR-reporter)又は有するコンストラクト(pXL-mRNA1.1;pXL-mRNA1.2)からのルシフェラーゼ発現を示す。
【図9】図9は、ルシフェラーゼ−SPARC 3’UTRレポーター系を有するpre−miRNAライブラリーをスクリーニングした結果を示す。
【図10】図10は、CHO及び293でmiRNAを比較するマイクロアレイの結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
発明の詳細な説明
【0027】
I.定義
【0028】
本明細書中において使用される場合、用語「SPARCタンパク質」は、プロセシングされていないSPARCポリペプチド(配列番号42)若しくは成熟SPARCポリペプチド(配列番号43)のいずれかと同一の配列を有するポリペプチド、又は配列番号41から生じる天然のスプライス(spice)バリアント、又は配列番号42若しくは43のいずれかと実質的に同一の配列の、成熟SPARCポリペプチドの機能を実質的に保持するポリペプチドを言う。「実質的に同一の配列」とは、配列が、配列番号42又は43のいずれかと少なくとも80%同一、好ましくは少なくとも85%同一、より好ましくは少なくとも90%同一、なおより好ましくは少なくとも95%同一、そして最も好ましくは少なくとも99%同一であることを意味する。「成熟SPARCの機能を実質的に保持する」とは、ポリペプチドが、当業者に公知のSPARCの1以上の生物学的/生化学的活性を有することを意味し、特に病状に影響する(維持する、支持する、誘導する、引き起こす、軽減する、予防する又は阻害する)活性(例えば、血管形成、細胞の形、細胞の運動性、細胞接着、アポトーシス、細胞増殖又は細胞外マトリクスの組成に影響することを含む)を有することを意味する。配列番号42又は43のいずれかと実質的に同一の配列の、成熟SPARCポリペプチドの機能を実質的に保持するポリペプチドの例は、米国特許第7,332,568号に開示されるSPARC Q3変異体である。用語「SPARCタンパク質」に包含される前記ポリペプチドは、約50アミノ酸、好ましくは約40アミノ酸、より好ましくは約30アミノ酸、なおより好ましくは約20アミノ酸、そして最も好ましくは約10アミノ酸が、配列番号42又は43と同一の又は実質的に同一の配列のアミノ末端及び/又はカルボキシル末端に付加されたポリペプチドも含む。
【0029】
本明細書中において使用される場合、用語「内因性SPARC RNA」とは、SPARCタンパク質のコード配列を含むRNA分子を言う。
【0030】
本明細書中において使用される場合、用語「阻害有効(inhibitorily effective)」とは、レベル又は発現を実質的に減少させる結果を言い、例えば、約20%の減少、好ましくは約25%の減少、より好ましくは約33%の減少、なおより好ましくは約50%の減少、なおより好ましくは約67%の減少、なおより好ましくは約80%の減少、なおより好ましくは約90%の減少、なおより好ましくは約95%の減少、なおより好ましくは約99%の減少、なおより好ましくは約50倍の減少、なおより好ましくは約100倍の減少、なおより好ましくは約約1,000倍の減少、なおより好ましくは約10,000倍の減少、そして最も好ましくは完全なサイレンシングが挙げられる。
【0031】
同様に、「有効量」は、アップ又はダウンレギュレーションのいずれか望ましい方向での、「阻害有効量」のものと同じ大きさの変化を生じるであろう量である。
【0032】
本明細書中で使用される場合、用語「レポーター活性を減少させる」とは、発現又は活性のレベルを実質的に減少させる結果を言い、例えば、約20%の減少、好ましくは約25%の減少、より好ましくは約33%の減少、なおより好ましくは約50%の減少、なおより好ましくは約67%の減少、なおより好ましくは約80%の減少、なおより好ましくは約90%の減少、なおより好ましくは約95%の減少、なおより好ましくは約99%の減少、なおより好ましくは約50倍の減少、なおより好ましくは約100倍の減少、なおより好ましくは約約1,000倍の減少、なおより好ましくは約10,000倍の減少、そして最も好ましくは完全なサイレンシングが挙げられる。
【0033】
本明細書中で使用される場合、用語「核酸」は、複数のヌクレオチドを言う(即ち、リン酸基及び、置換ピリミジン(例、シトシン(C)、チミジン(T)又はウラシル(U))又は置換プリン(例、アデニン(A)又はグアニン(G))のいずれかである交換可能な有機塩基に連結された糖(例、リボース又はデオキシリボース)を含む分子。該用語は、ポリヌクレオシド(即ち、リン酸基のないポリヌクレオチド)及び任意の他の有機塩基を含むポリマーも含む。プリン及びピリミジンとしては、アデニン、シトシン、グアニン、チミジン、イノシン、5−メチルシトシン、2−アミノプリン、2−アミノ−6−クロロプリン、2,6−ジアミノプリン、ヒポキサンチン、並びに、置換及び非置換芳香族部分の、他の天然に存在する及び天然に存在しない核酸塩基が挙げられるが、これらに限定されない。他のこのような修飾は当業者に周知である。従って、用語核酸は、塩基及び/又は糖等における、置換又は修飾を有する核酸も包含する。更に、本明細書中で使用される場合、用語「核酸」は、ペプチド核酸を含む。
【0034】
本明細書中で使用される場合、用語「マイクロRNA」は、任意の種類の干渉RNAを言い、内因性マイクロRNA及び人工マイクロRNAが挙げられるがこれらに限定されない。内因性マイクロRNAは、ゲノム中に天然に存在し、mRNAの生産的利用を調節することが可能な低分子RNAである。用語人工マイクロRNAは、内因性マイクロRNA以外の、mRNAの生産的利用を調節することが可能な、任意の種類のRNA配列を含む。
【0035】
本明細書中で使用される場合、「マイクロRNA隣接配列」とは、マイクロRNAプロセシングエレメントを含むヌクレオチド配列を言う。マイクロRNAプロセシングエレメントは、前駆体マイクロRNAからの成熟マイクロRNAの産生に貢献する最小の核酸配列である。pri−miRNAと呼ばれる前駆体miRNAは、核において、約70ヌクレオチドのpre−miRNAへとプロセスされ、それは不完全なステムループ構造へと折り畳まれる。マイクロRNA隣接配列は、天然のマイクロRNA隣接配列又は人工マイクロRNA隣接配列であり得る。天然のマイクロRNA隣接配列は、通常、天然に存在する系においてマイクロRNA配列に付随するヌクレオチド配列であり、即ち、これらの配列は、in vivoの最小のマイクロRNAヘアピンを取り囲むゲノム配列内に見出される。人工マイクロRNA隣接配列は、天然に存在する系においてマイクロRNA配列に隣接することが見出されないヌクレオチド配列である。人工マイクロRNA隣接配列は、他のマイクロRNA配列との関連の中で天然に見出される隣接配列であり得る。あるいは、それらは天然に存在する隣接配列内に見出され、隣接配列として天然に存在しないか又は天然の隣接配列として部分的にのみ存在する他のランダムな核酸配列へと挿入される、最小のマイクロRNAプロセシングエレメントから構成され得る。
【0036】
前駆体マイクロRNA分子内のマイクロRNA隣接配列は、マイクロRNA配列を包含するステムループ構造の片側又は両側に隣接し得る。好ましい構造は、ステムループ構造の両端に隣接配列を有する。隣接配列は、ステムループ構造の一端若しくは両端に直接隣接し得るか、又はリンカー(付加的なヌクレオチド又は他の分子)を介してステムループ構造に結合され得る。
【0037】
本明細書中で使用される場合、「ステムループ構造」とは、主に一本鎖のヌクレオチドの領域(ループ部分)により片側が連結されている、二本鎖を形成することが知られているか又は予測されているヌクレオチドの領域(ステム部分)を含む二次構造を有する核酸を言う。用語「ヘアピン」及び「折り返し」構造も、ステムループ構造を言うために本明細書中で使用される。このような構造及び用語は、当分野において周知である。ステムループ構造内のヌクレオチドの実際の一次構造は、二次構造が存在する限り、重要ではない。当分野において知られているように、二次構造は、正確な塩基対合を必要としない。従って、ステムは、1以上の塩基のミスマッチを含み得る。あるいは、塩基対合は、ミスマッチを全く含まなくてもよい。
【0038】
II.miRNA
【0039】
本明細書中で使用される場合、用語miRNAは、例えば、以下のmiRNAの群を含む:hsa-miR-885-5p、hsa-let-7b、hsa-let-7i、hsa-miR-186、hsa-miR-125b、hsa-let-7d、hsa-miR-34c-5p、hsa-miR-139-5p、hsa-miR-100、hsa-miR-34b、hsa-let-7c、hsa-let-7d、hsa-miR-29a、hsa-let-7g、hsa-miR-146b-5p、hsa-miR-154、hsa-miR-674、hsa-let-7f、hsa-miR-21、hsa-miR-22、hsa-miR-23a、hsa-miR-98、hsa-let-7a、hsa-miR-199a-3p、hsa-miR-214、hsa-miR-130a、hsa-miR-211、hsa-miR-515-5p、hsa-miR-517a、hsa-miR-517b、hsa-mir-29 b、has-mir-29c、hsa-miR-297、hsa-mir-573、hsa-mir-758、hsa-mir-583、hsa-mir-7、hsa-mir-1、及びhsa-mir-203.1。それらのヘアピン型又は成熟型のいずれかで。
【0040】
以下の表は、miRNAを、それらのデータベース番号及び配列番号と共に示す:
【0041】
【表2−1】

【0042】
【表2−2】

【0043】
本発明に従う使用のためのmiRNAの好適な配列変異体としては、以下が挙げられる:置換、挿入又は欠失変異体。挿入としては、5’及び/又は3’末端融合並びに1又は複数の残基の配列内挿入が挙げられる。挿入は、成熟配列内にも導入され得る。しかしながら、これらは、通常、5’又は3’末端におけるものよりも、約1から4残基、好ましくは2残基、最も好ましくは1残基、小さい挿入である。
【0044】
miRNAの挿入配列変異体は、1以上の残基が標的miRNA中の所定の部位へと導入される変異体である。最も一般的な挿入変異体は、miRNAの5’又は3’末端における核酸の融合である。
【0045】
欠失変異体は、miRNA配列からの1以上の残基の除去により特徴付けられる。これらの変異体は通常、miRNAをコードするDNA中のヌクレオチドの部位特異的変異導入により変異体をコードするDNAを製造すること、及びその後組換え細胞培養物においてDNAを発現させることにより、調製される。しかしながら、変異体miRNA断片は、in vitro合成によって都合よく調製され得る。変異体は、典型的には、天然に存在するアナログと同じ質的な生物活性を示すが、変異体は、miRNAの特徴を修飾するためにも選択される。
【0046】
置換変異体は、少なくとも1残基の配列が除去され、その場所に異なる残基が挿入されている変異体である。配列変異を導入する部位は予め定められるが、変異自体は予め定められる必要はない。例えば、所定の部位における変異の実施を最適化するために、ランダム変異導入を標的領域において行い、発現されたmiRNA変異体を、所望の活性の最適な組み合わせについてスクリーニングしてもよい。公知の配列を有するDNA中の所定の部位における置換変異を生じさせる技術は、周知である。
【0047】
ヌクレオチド置換は、典型的には1つの残基である;挿入は、通常約1から10残基である;そして欠失は、約1から30残基の範囲である。欠失又は挿入は、好ましくは、隣接する対で行なわれる;即ち、2残基の欠失又は2残基の挿入。最終のコンストラクトに到達するために、置換、欠失、挿入又はそれらの任意の組み合わせが組み合わせられてもよい。miRNAの活性を増加させる、その生物学的安定性又は半減期を増加させる、などのために、変更がなされてもよい。このようなmiRNAをコードするヌクレオチド配列への全てのこのような修飾が包含される。
【0048】
単離された核酸又はDNAは、3’及び/又は5’隣接領域を有するか又は有さない、化学的に合成されたDNA、cDNA又はゲノムDNAを意味すると理解される。miRNAをコードするDNAは、a)mRNAを含む細胞からcDNAライブラリーを取得すること、b)相同配列を含むcDNAライブラリー中のクローンを検出するためにmiRNA又はその断片をコードする標識DNAを用いてハイブリダイゼーション分析を行なうこと、及びc)全長クローンを同定するために制限酵素分析及び核酸配列決定によりクローンを分析すること、により、他のソースから取得され得る。
【0049】
本明細書中で使用される場合、核酸及び/又は核酸配列は、それらが共通の先祖核酸又は核酸配列から自然に又は人工的に派生した場合、「相同」である。相同性は、一般に、2以上の核酸若しくはタンパク質(又はそれらの配列)の間の配列同一性から推測される。本明細書中で使用される場合、2つの核酸及び/又は核酸配列(miRNAを含む)は、それらが2つの配列中のそれぞれの対応する位置において同じヌクレオチドを有する場合、「同一」であり、ここでこの分析の目的のために、ウラシル及びチミジンは同等に扱われる。2つの配列は、国立生物工学情報センターを通じて公的に入手可能なbl2seq(Tatiana A. Tatusova, Thomas L. Madden (1999), "Blast 2 sequences - a new tool for comparing protein and nucleotide sequences", FEMS Microbiol Lett. 174:247-250)などの適切なアルゴリズムにより配列が整列された場合に、それらが共有する同一のヌクレオチドの数に基づいたパーセント同一性を有する。2つの配列は、それらが全てのヌクレオチドにおいて塩基対合できる場合、「相補的」である。パーセント相補性は、配列が塩基対合のために整列された場合に他の配列と塩基対合できる、各鎖中のヌクレオチドのパーセントに基づく。
【0050】
相同性を定めるのに有用な配列間の同一性の正確なパーセンテージは、問題の核酸及びタンパク質によって異なるが、わずか25%の配列同一性が相同性を定めるために通常使用される。より高いレベルの配列同一性、例えば、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%若しくは99%又はそれ以上も、相同性を定めるために使用され得る。配列類似性パーセンテージを決定するための方法(例、デフォルトパラメーターを使用するBLASTN)が一般的に利用可能である。BLAST分析を行なうためのソフトウェアは、国立生物工学情報センターを通じて公的に入手可能である。
【0051】
マイクロRNA(「miRNA」と言う)は、低分子非コードRNAであり、標的メッセンジャーRNA(mRNA)転写産物上の相補的部位に結合することにより遺伝子発現を制御する、植物及び動物において見出される制御分子のクラスに属す。miRNAは、大きなRNA前駆体(pri−miRNAと呼ばれる)から生み出され、該前駆体は核内でおよそ70ヌクレオチドのpre−miRNAへとプロセスされ、折り畳まれて不完全なステムループ構造となる(Lee, Y., et al., Nature (2003) 425(6956):415-9)。pre−miRNAは、細胞質内で更なるプロセシング工程を経、ここで18〜25ヌクレオチド長の成熟miRNAが、RNase III酵素、Dicerによりpre−miRNAヘアピンの片側から切り取られる(Hutvagner, G., et al., Science (2001) 12:12及びGrishok, A., et al., Cell (2001) 106(1):23-34)。miRNAは、2つの方法で、遺伝子発現を制御することが示されている。第一に、miRNAに正確に相補的なタンパク質コードmRNA配列に結合する該miRNAは、RNA干渉(RNAi)経路を誘導する。メッセンジャーRNA標的は、RISC複合体中のリボヌクレアーゼにより切断される。このmiRNAにより仲介される遺伝子サイレンシングのメカニズムは、植物において頻繁に観察されているが(Hamilton, A. J. and D. C. Baulcombe, Science (1999) 286(5441):950-2及びReinhart, B. J., et al., MicroRNAs in plants. Genes and Dev. (2002) 16:1616-1626)、動物からの一例が知られている(Yekta, S., I. H. Shih, and D. P. Bartel, Science (2004) 304(5670):594-6)。
【0052】
第二のメカニズムにおいて、メッセンジャーRNA転写産物上の不完全な相補的部位に結合するmiRNAは、遺伝子制御を転写後レベルにおいて指揮するが、それらのmRNA標的を切断しない。植物及び動物の両方において同定されたmiRNAは、このメカニズムを使用し、それらの遺伝子標的の翻訳制御を発揮する(Bartel, D. P., Cell (2004) 116(2):281-97)。
【0053】
驚くべきことに、本発明者らは、SPARC mRNA 3’UTRが、6つの異なる卵巣腫瘍株を含む種々の腫瘍細胞において、その翻訳を阻害することにより、SPARC遺伝子発現を阻害するための標的となり得ることを示した。miRNAプロファイリングは、CHO(チャイニーズハムスター卵巣細胞)において上方調節され、293細胞において下方調節されるmiRNAの群があることを実証した。これらは、hsa-miR-885-5p、hsa-let-7b、hsa-let-7i、hsa-miR-186、hsa-miR-125b、hsa-let-7d、hsa-miR-34c-5p、hsa-miR-139-5p、hsa-miR-100、hsa-miR-34b、hsa-let-7c、hsa-let-7d、hsa-miR-29a、hsa-let-7g、hsa-miR-146b-5p、hsa-miR-154、hsa-miR-674、hsa-let-7f、hsa-miR-21、hsa-miR-22、hsa-miR-23a、hsa-miR-98、hsa-let-7a、hsa-miR-199a-3p、hsa-miR-214、及びhsa-miR-130aを含み、293(ヒト胎児腎臓細胞)に対してCHOにおいて10倍を超える示差的発現を示した。推定miRNA相互作用部位についての調査は、SPARC制御に関与する可能性のあるmiRNAとして、以下を明らかにした:hsa-miR-211、hsa-miR-515-5p、hsa-miR-517a、hsa-miR-517b、hsa-mir-29、及びhsa-mir-203.1。更に、pre−miRNAライブラリーのスクリーニングは、SPARC発現を阻害することが可能な一連のmiRNAを明らかにした;これらは、has-mir29a、has-mir-29b、has-mir-29c、miR-297、miR-573、let-7g、let-7f、miR-98、miR-758、let-7i、miR-34b、miR-583、miR-7、及びmiR-1を含む。従って、これらの特定のマイクロRNAを上方調節すること又は外因的に類似の医薬化合物を提供することは、これらの癌遺伝子の活性化又は過剰発現から生じる腫瘍のための効果的な癌治療となるはずである。pri−miRNA、pre−miRNA、ds miRNA、成熟miRNA又は、成熟miRNAの生物活性を保持するそれらの変異体の断片及び、pri−miRNA、pre−miRNA、成熟miRNA、それらの断片若しくは変異体、又はmiRNAの調節エレメントをコードするDNAを含むmiRNA核酸(特に指定のない限り、合せて「miRNA」と言う)が記載される。一実施形態において、miRNAの大きさの範囲は、10ヌクレオチドから170ヌクレオチドであり得るが、2000ヌクレオチドまでのmiRNAが利用され得る。好ましい実施形態において、miRNAの大きさの範囲は、約70から170ヌクレオチド長である。別の好ましい実施形態において、約10から約50、より好ましくは約21から約25ヌクレオチド長の成熟miRNAが使用され得る。
【0054】
RNA誘導サイレンシング複合体、又はRISC、は、dsRNA(例えば、入ってくるウイルスの)を切断し、次いで相補鎖を結合することができる短いアンチセンスRNA鎖を結合する、多タンパク質siRNA複合体である。これは、相補鎖を見つけると、RNase活性を活性化し、RNAを切断する。この過程は、miRNAによる遺伝子制御及び、多くの場合二本鎖RNAを感染性ベクターとして使用するウイルス感染に対する防御の両方において重要である。
【0055】
miRNAは、診断剤として、及び治療剤として有用である。組成物は、癌/増殖性疾患の少なくとも1つの症状又は兆候(疾患は症状がなくても発症/進行し得るため)の治療又は予防を必要とする患者に投与される。一実施形態において、組成物は、SPARCの発現を阻害するために有効量で投与される。有効で安全な用量は、当業者に周知の方法により、モデル生物及び臨床試験において実験的に決定され得る。組成物は、単独で又は、手術、化学療法、放射線治療、温熱療法、免疫療法、ホルモン療法及びレーザー療法などの補助的癌治療と組み合わせて投与され得、薬効を提供し得る(例、腫瘍の大きさを減少させる、腫瘍の細胞増殖を減少させる、血管形成を阻害する、転移を阻害する、又は疾患の少なくとも1つの症状若しくは兆候を別な方法で改善する)。
【0056】
本明細書中に開示されるmiRNAは、診断剤としても有用である。RT−PCR、miRNAマイクロアレイ、及び他の通常の核酸検出システムによる方法などの、これらのmiRNAの任意の適切な検出方法が使用され得る。例えば、miRNA配列の集団が確立され得、それは例えばアブラキサンを含む化学療法への応答を予測するか、又は疾患の進行を観察し得る。
【0057】
いくつかの腫瘍型において、SPARCの過剰発現ではなく過少発現が、反応不良に関連する。これらの患者としては、卵巣癌患者及び膵臓癌患者が挙げられる。従って、これらの患者のためには、SPARCの誘導が必要である。また、SPARCの過剰発現は、nab結合薬物の腫瘍への蓄積の改善及び癌細胞のアポトーシス死と関連するであろう。
【0058】
SPARCは、その3’UTRにおいてmiRNAにより翻訳段階で制御されることが示されている。従って、これらの特定のマイクロRNAを上方調節すること又は外因的に類似の医薬化合物を提供することは、SPARC発現の阻害及び、SPARC発現の増加と関連する癌又は増殖性疾患の治療のために有効なはずである。
【0059】
好ましい実施形態において、miRNA製剤は、SPARCを過剰発現した癌を有する個体に投与される。
【0060】
ヒト癌遺伝子を制御する天然に存在するマイクロRNA、pri−miRNA、pre−miRNA、ds miRNA、成熟miRNA又は、成熟miRNAの生物活性を保持するそれらの変異体の断片及び、pri−miRNA、pre−miRNA、成熟miRNA、それらの断片若しくは変異体、又はmiRNAの調節エレメントをコードするDNAが同定されている。miRNAの大きさは、典型的には約11ヌクレオチドから約170ヌクレオチドであるが、約2000ヌクレオチドまでのヌクレオチドが利用され得る。好ましい実施形態において、pre−miRNAの大きさの範囲は、約70から約170ヌクレオチド長であり、成熟miRNAは、約10から約50、より好ましくは約21から約25ヌクレオチド長である。
【0061】
miRNAは、弱いSPARC発現を示す卵巣株において上方調節され、強いSPARC発現を有することが示されている非卵巣株において下方調節されることが示されている、miRNAの群から選択される。これらは、例えば、hsa-miR-885-5p、hsa-let-7b、hsa-let-7i、hsa-miR-186、hsa-miR-125b、hsa-let-7d、hsa-miR-34c-5p、hsa-miR-139-5p、hsa-miR-100、hsa-miR-34b、hsa-let-7c、hsa-let-7d、hsa-miR-29a、hsa-let-7g、hsa-miR-146b-5p、hsa-miR-154、hsa-miR-674、hsa-let-7f、hsa-miR-21、hsa-miR-22、hsa-miR-23a、hsa-miR-98、hsa-let-7a、hsa-miR-199a-3p、hsa-miR-214、hsa-miR-130a、hsa-miR-211、hsa-miR-515-5p、hsa-miR-517a、hsa-miR-517b、hsa-mir-29、及びhsa-mir-203.1を含む。コンピュータ分析により同定されたmiRNA:hsa-miR-211、hsa-miR-515-5p、hsa-miR-517a、hsa-miR-517b、hsa-mir-29、及びhsa-mir-203.1。pre−miRNAライブラリーに対するスクリーニングにより同定されたmiRNA:has-mir29a、has-mir-29b、has-mir-29c、has-miR-297、has-miR-573、has-let-7g、has-let-7f、hsa-miR-98、hsa-miR-758、hsa-let-7i、hsa-miR-34b、hsa-miR-583、hsa-miR-7、及びhas-miR-1。
【0062】
IV.核酸方法
【0063】
A.一般的技術
【0064】
分子生物学的技術を記載する一般的教科書としては、Sambrook, Molecular Cloning: a Laboratory Manual (2.sup.nd ed.), Vols. 1-3, Cold Spring Harbor Laboratory, (1989);Current Protocols in Molecular Biology, Ausubel, ed. John Wiley & Sons, Inc., New York (1997);Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology: Hybridization With Nucleic Acid Probes, Part I. Theory and Nucleic Acid Preparation, P. Tijssen, ed. Elsevier, N.Y. (1993);Berger and Kimmel, Guide to Molecular Cloning Techniques Methods in Enzymology volume 152 Academic Press, Inc., San Diego, Califが挙げられる。これらの教科書は、変異導入、ベクターの使用、プロモーター並びに、例えばlet-7又は任意の他のmiRNA活性をコードする遺伝子の作製及び発現に関する、多くの他の関連する題目を記載する。核酸、遺伝子の単離、精製及び操作のための技術(例えばライブラリーの作製、発現ベクターへのサブクローニング、プローブの標識、及びDNAハイブリダイゼーションなど)も、上記教科書に記載されており、当業者に周知である。
【0065】
miRNA、DNA、cDNA、若しくはゲノムDNA、又はそれらの変異体のいずれであれ、核酸は、種々のソースから単離され得、又はin vitroで合成され得る。本明細書中に記載される核酸は、形質転換細胞ライセート中で、又は部分精製された若しくは実質的に純粋な形態で、ヒト、トランスジェニック動物、形質転換細胞に投与され得、又はそこで発現し得る。
【0066】
核酸は、当業者に周知の多数の一般的手段のいずれかに従って検出及び定量される。これらは、例えば、分析的生化学的方法(例えば分光光度法、ラジオグラフィー、電気泳動、キャピラリー電気泳動、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、薄層クロマトグラフィー(TLC)、及び高拡散(hyperdiffusion)クロマトグラフィーなど)、種々の免疫学的方法(例えば流体沈降反応又はゲル内沈降反応、免疫拡散(単純又は二重)、免疫電気泳動、ラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素結合免疫吸着測定(ELISA)、免疫蛍光アッセイなど)、サザン解析、ノーザン解析、ドットブロット解析、ゲル電気泳動、RT−PCR、定量PCR、他の核酸又は標識又はシグナル増幅方法、放射性同位元素標識、シンチレーション測定、及びアフィニティークロマトグラフィーを含む。
【0067】
種々の種類の変異導入が、例えばmiRNA活性を有する遺伝子をコードする核酸を改変するために使用され得る。それら変異導入としては、部位指定変異導入、ランダム点変異導入、相同組換え(DNAシャフリング)、ウラシルを含む鋳型を使用する変異導入、オリゴヌクレオチド指定変異導入、ホスホロチオエート修飾DNA変異導入、及びギャップ(gapped)二本鎖DNAなどを使用する変異導入が挙げられるが、これらに限定されない。更なる好適な方法としては、点ミスマッチ修復、修復欠損宿主株を使用する変異導入、制限−選択(restriction-selection)及び制限−精製(restriction-purification)、欠失変異導入、全遺伝子合成による変異導入、二本鎖切断修復などが挙げられる。例えばキメラコンストラクトに関する変異導入も、本発明に含まれる。一実施形態において、変異導入は、天然に存在する分子又は改変された若しくは変異した天然に存在する分子の公知の情報(例、配列、配列比較、物理的特性、結晶構造など)によって導かれ得る。miRNAの活性を増加させる、その生物学的安定性又は半減期を増加させる、などのために、変更がなされてもよい。
【0068】
比較ハイブリダイゼーションは、核酸の保存的変異を含む、let-7又は他のmiRNA活性を有する遺伝子をコードする核酸を同定するために、使用され得る。
【0069】
核酸は、それらが、典型的には溶液中で会合する場合、「ハイブリダイズする」。核酸は、種々の十分に特徴付けられた物理化学的力(例えば水素結合、溶媒排除、塩基スタッキングなど)に起因して、ハイブリダイズする。核酸のハイブリダイゼーションの広範な指針は、Tijssen (1993) Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology-Hybridization with Nucleic Acid Probes part 1 chapter 2, "Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid probe assays," (Elsevier, N.Y.)、及びAusubel(上記)に見出される。Hames and Higgins (1995) Gene Probes 1 IRL Press at Oxford University Press, Oxford, England, (Hames and Higgins 1)及びHames and Higgins (1995) Gene Probes 2 IRL Press at Oxford University Press, Oxford, England (Hames and Higgins 2)は、オリゴヌクレオチドを含むDNA及びRNAの合成、標識、検出並びに定量の詳細を提供する。
【0070】
用語「ストリンジェントなハイブリダイゼーションの条件」とは、核酸が、典型的には核酸の複合混合物中でその標的サブ配列とハイブリダイズするが、他の配列とはしない条件を言うことが意図されている。ストリンジェントな条件は、配列依存的であり、状況により異なる。より長い配列は、より高い温度において特異的にハイブリダイズする。一般的には、ストリンジェントな条件は、規定のイオン強度pHにおける特定の配列についての融点(thermal melting point)(T)よりも約5〜10℃低くなるように選択される。Tは、(規定のイオン強度、pH、及び核酸濃度(nucleic concentration)下で)標的に相補的なプローブの50%が、平衡状態で標的配列にハイブリダイズする温度である(標的配列は過剰に存在するので、Tにおいては、プローブの50%が平衡状態において占有される)。ストリンジェントな条件は、塩濃度が、pH7.0から8.3において、約1.0M未満のナトリウムイオン、典型的には約0.01から1.0Mのナトリウムイオン濃度(又は他の塩)であり、温度が、短いプローブ(例えば、10から50ヌクレオチド)については少なくとも約30℃、長いプローブ(例えば、50ヌクレオチドより長い)については少なくとも約60℃である条件である。ストリンジェントな条件は、ホルムアミドなどの不安定化剤の添加によっても達成され得る。選択的又は特異的ハイブリダイゼーションのために、陽性シグナルは少なくともバックグラウンドハイブリダイゼーションの2倍、好ましくはバックグラウンドハイブリダイゼーションの10倍である。典型的なストリンジェントなハイブリダイゼーションの条件は、以下のようであり得る:50%ホルムアミド、5倍SSC、及び1%SDS、42℃でインキュベーションするか、又は5倍SSC、1%SDS、65℃でインキュベートし、0.2×SSC及び0.1%SDS中65℃で洗浄する。
【0071】
ストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズしない核酸はそれでも、それらがコードするポリペプチドが実質的に同一であれば、実質的に同一である。これは、例えば、核酸のコピーが、遺伝子コードにより許容される最大のコドン縮重を使用して作り出される場合に起こる。
【0072】
B.miRNAの形態
【0073】
本明細書中に記載される方法において使用される好適な核酸としては、pri−miRNA、pre−miRNA、ds miRNA、成熟miRNA又は、miRNAの生物活性を保持するそれらの変異体の断片及び、pri−miRNA、pre−miRNA、成熟miRNA、それらの断片若しくは変異体をコードするDNA、又はmiRNAの調節エレメントをコードするDNAが挙げられるが、これらに限定されない。
【0074】
miRNAは、例えば、ホスホロチオエート、ボラノホスフェート、2’−O−メチル、2’−フルオロ、PEG、末端逆方向dT塩基、2’tBDMS、又は2’−TOM若しくはt’−ACE、LNA、及びそれらの組み合わせを含む任意の適切な化学的部分を用いて、本発明に従って修飾され得る。
【0075】
C.ベクター
【0076】
一実施形態において、miRNA分子をコードする核酸は、ベクター上にあり、miRNAのソースとして使用される。これらのベクターは、成熟又はヘアピン(pri−miRNA、pre−miRNA、ds miRNA)miRNAコードする配列及びin vivo発現エレメントをを含む。好ましい実施形態において、これらのベクターは、pre−miRNAが発現し、成熟miRNAへとin vivoでプロセスされるように、pre−miRNAをコードする配列とin vivo発現エレメントとを含む。別の実施形態において、これらのベクターは、pre−miRNA遺伝子をコードする配列とin vivo発現エレメントとを含む。この実施形態において、一次転写産物は、まずステムループ前駆体miRNA分子を生成するようプロセスされる。次いでステムループ前駆体は、成熟マイクロRNAを生成するようプロセスされる。
【0077】
ベクターとしては、プラスミド、コスミド、ファージミド、ウイルス、マイクロRNAの生成のための核酸配列の挿入又は組み込みにより操作されているウイルスソース又は細菌ソース由来の他の媒体、及びこれらの核酸配列に付加され得る遊離の核酸断片が挙げられるが、これらに限定されない。ウイルスベクター及びレトロウイルスベクターは、好ましい種類のベクターであり、以下のウイルス由来の核酸配列が挙げられるが、これらに限定されない:レトロウイルス(例えばモロニーマウス白血病ウイルス;マウス幹細胞ウイルス;ハーベイマウス肉腫ウイルス;マウス乳癌ウイルス;ラウス肉腫ウイルスなど;アデノウイルス;アデノ随伴ウイルス;SV40型ウイルス;ポリオーマウイルス;エプスタイン・バーウイルス;パピローマウイルス;ヘルペスウイルス;ワクシニアウイルス;ポリオウイルス);及びRNAウイルス(例えば任意のレトロウイルスなど)。当業者は、当分野において知られる他のベクターを容易に用いることができる。
【0078】
ウイルスベクターは一般に、非必須遺伝子が目的の核酸配列で置換されている、非細胞変性の真核生物ウイルスに基づく。非細胞変性のウイルスとしては、レトロウイルスが挙げられ、そのライフサイクルは、ゲノムウイルスRNAのDNAへの逆転写と、その後の宿主細胞DNAへのプロウイルスの組み込みを伴う。レトロウイルスは、ヒト遺伝子治療試験に承認されている。遺伝子操作されたレトロウイルス発現ベクターは、in vivoにおける核酸の高効率の形質導入のために、一般的な有用性がある。複製欠損レトロウイルスの製造のための標準的プロトコール(プラスミドへの外因性遺伝物質の組み込み、プラスミドでのパッケージング細胞株(lined)の形質導入、パッケージング細胞株による組換えレトロウイルスの産生、組織培養培地からのウイルス粒子の回収、及びウイルス粒子での標的細胞の感染の工程を含む)は、Kriegler, M., "Gene Transfer and Expression, A Laboratory Manual," W.H. Freeman Co., New York (1990)及びMurry, E. J. Ed. "Methods in Molecular Biology," vol. 7, Humana Press, Inc., Cliffton, N.J. (1991)において提供される。
【0079】
D.プロモーター
【0080】
「in vivo発現エレメント」は、プロモーター配列又はプロモーターとエンハンサーとの組み合わせなどの任意の制御ヌクレオチド配列であり、マイクロRNAを産生するために効率的な核酸の発現を促進する。in vivo発現エレメントは、例えば、構成的若しくは誘導性プロモーター又は組織特異的プロモーターなどの、哺乳動物プロモーター又はウイルスプロモーターであり得る。その例は、当業者に周知である。構成的哺乳動物プロモーターとしては、ポリメラーゼプロモーター及び以下の遺伝子のプロモーターが挙げられるが、これらに限定されない:ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPTR)、アデノシンデアミナーゼ、ピルビン酸キナーゼ、及びβ−アクチン。真核細胞において構成的に機能する典型的なウイルスプロモーターとしては、シミアンウイルス、パピローマウイルス、アデノウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ラウス肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス由来のプロモーター、モロニー白血病ウイルス及び他のレトロウイルスの長い末端反復配列(LTR)、及び単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼプロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。他の構成的プロモーターは、当業者に公知である。誘導性プロモーターは、誘導剤の存在下で発現し、金属誘導性プロモーター及びステロイド制御の(steroid-regulated)プロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、メタロチオネインプロモーターは、特定の金属イオンの存在下で、誘導され、転写を促進する。他の誘導性プロモーターは、当業者に公知である。特に好ましいプロモーターとしては、RNAポリメラーゼIIによる転写を活性化するプロモーターが挙げられる。
【0081】
組織特異的プロモーターの例としては、クレアチンキナーゼのプロモーター(筋肉及び心臓組織において発現を指示するために使用されている)並びに、B細胞における発現のための免疫グロブリン重鎖又は軽鎖プロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。他の組織特異的プロモーターとしては、ヒト平滑筋α−アクチンプロモーターが挙げられる。
【0082】
肝臓についての典型的な組織特異的発現エレメントとしては、HMG−COAレダクターゼプロモーター、ステロール調節エレメント1、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(PEPCK)プロモーター、ヒトC反応性タンパク質(CRP)プロモーター、ヒトグルコキナーゼプロモーター、コレステロール7−αヒドロキシラーゼ(hydroylase)(CYP−7)プロモーター、β−ガラクトシダーゼα−2,6シアリルトランスフェラーゼプロモーター、インスリン様成長因子結合タンパク質(IGFBP−1)プロモーター、アルドラーゼBプロモーター、ヒトトランスフェリンプロモーター、及びコラーゲンI型プロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。
【0083】
前立腺についての典型的な組織特異的発現エレメントとしては、前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)プロモーター、94の前立腺分泌タンパク質(PSP 94)プロモーター、前立腺特異的抗原複合体プロモーター、及びヒト腺性カリクレイン遺伝子プロモーター(hgt−1)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0084】
胃組織についての典型的な組織特異的発現エレメントとしては、ヒトH+/K+−ATPaseαサブユニットプロモーターが挙げられるが、これに限定されない。
【0085】
膵臓についての典型的な組織特異的発現エレメントとしては、膵炎関連タンパク質プロモーター(PAP)、エラスターゼ1転写エンハンサー、膵臓特異的アミラーゼ及びエラスターゼエンハンサープロモーター、並びに膵臓コレステロールエステラーゼ遺伝子プロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。
【0086】
子宮内膜についての典型的な組織特異的発現エレメントとしては、ウテログロビンプロモーターが挙げられるが、これに限定されない。
【0087】
副腎細胞についての典型的な組織特異的発現エレメントとしては、コレステロール側鎖切断(SCC)プロモーターが挙げられるが、これに限定されない。
【0088】
全般的神経系についての典型的な組織特異的発現エレメントとしては、γ−γエノラーゼ(ニューロン特異的エノラーゼ、NSE)プロモーターが挙げられるが、これに限定されない。
【0089】
脳についての典型的な組織特異的発現エレメントとしては、ニューロフィラメント重鎖(NF−H)プロモーターが挙げられるが、これに限定されない。
【0090】
リンパ球についての典型的な組織特異的発現エレメントとしては、ヒトCGL−1/グランザイムBプロモーター、末端デオキシトランスフェラーゼ(TdT)、λ5、VpreB、及びlck(リンパ球特異的チロシンタンパク質キナーゼp56lck)プロモーター、ヒトCD2プロモーター及びその3’転写エンハンサー、並びにヒトNK及びT細胞特異的活性化(NKG5)プロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。
【0091】
結腸についての典型的な組織特異的発現エレメントとしては、pp60c−srcチロシンキナーゼプロモーター、器官特異的ネオ抗原(OSN)プロモーター、及び結腸特異的抗原−Pプロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。
【0092】
乳房細胞についての典型的な組織特異的発現エレメントとしては、ヒトα−ラクトアルブミンプロモーターが挙げられるが、これに限定されない。
【0093】
肺についての典型的な組織特異的発現エレメントとしては、嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)遺伝子プロモーターが挙げられるが、これに限定されない。
【0094】
目的の組織における発現の特異性を促進する他のエレメントとしては、分泌リーダー配列、エンハンサー、核局在化シグナル、エンドソーム溶解(endosmolytic)ペプチドなどが挙げられ得る。好ましくは、これらのエレメントは、目的の組織由来であり、特異性を促進する。
【0095】
一般に、in vivo発現エレメントは、必要に応じて、転写の開始と関連する、5’非転写配列及び5’非翻訳配列を含む。それらは随意にエンハンサー配列又は上流活性化配列を含む。
【0096】
E.miRNAの製造のための方法及び材料
【0097】
miRNAは、当業者に周知の種々の技術により、細胞又は組織から単離され得、組換えにより製造され得、又はin vitroで合成され得る。
【0098】
一実施形態において、miRNAは、細胞又は組織から単離される。細胞又は組織からmiRNAを単離するための技術は、当業者に周知である。例えば、miRNAは、Ambion, Inc.製のmirVana miRNA単離キットを使用して、全RNAから単離され得る。別の技術は、小さな核酸のPAGE精製のために、flashPAGE.TM. Fractionator System(Ambion, Inc.)を利用する。
【0099】
miRNAは、その組換え型を調製することにより(即ち、遺伝子工学の技術を使用して、組換え核酸(その後当業者に周知の技術により単離又は精製される)を製造することにより)、取得され得る。この実施形態は、適切な培養培地中で宿主細胞の培養物を増殖させる工程、及びその細胞又はその細胞が増殖する培養物からmiRNAを精製する工程を含む。例えば、該方法は、miRNAをコードする核酸を含む適切な発現ベクターを含む宿主細胞が、コードされたmiRNAの発現を可能にする条件下で培養される、miRNAを製造するためのプロセスを含む。好ましい実施形態において、核酸はlet-7をコードする。miRNAは、培養物から、培養培地から、又は宿主細胞から調製されるライセートから、回収され得、そして更に精製され得る。宿主細胞は、哺乳動物細胞などの高等真核宿主細胞、酵母細胞などの下等真核宿主細胞であり得、又は宿主細胞は、細菌細胞などの原核細胞であり得る。miRNAをコードする核酸を含むベクターの宿主細胞への導入は、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE、デキストラン媒介性トランスフェクション、又はエレクトロポーレーション(Davis, L. et al., Basic Methods in Molecular Biology (1986))により行なわれ得る。
【0100】
任意の適切な宿主/ベクター系が、1以上のmiRNAを発現させるために使用され得る。これらとしては、HeLa細胞及び酵母などの真核生物宿主、並びにE.coli及びB.subtilisなどの原核生物宿主が挙げられるが、これらに限定されない。miRNAは、miRNA遺伝子が適切なプロモーターの制御下にある、哺乳動物細胞、酵母、細菌、又は他の細胞において発現され得る。原核生物宿主及び真核生物宿主との使用のための適切なクローニングベクター及び発現ベクターは、Sambrook, et al., in Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor, N.Y. (1989)により記載される。好ましい実施形態において、miRNAは、哺乳動物細胞において発現される。哺乳動物発現系の例としては、C127、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒト腎臓293細胞、ヒト上皮A431細胞、ヒトColo205細胞、3T3細胞、CV−1細胞、他の形質転換された霊長類細胞株、正常二倍体細胞、一次組織、初代移植片のin vitro培養由来の細胞株、HeLa細胞、マウスL細胞、BHK、HL−60、U937、HaK又はJurkat細胞が挙げられる。哺乳動物発現ベクターは、複製起点、適切なプロモーター、ポリアデニル化部位、転写終結配列、及び5’隣接非転写配列を含む。SV40ウイルスゲノム由来のDNA配列(例えば、SV40オリジン、初期プロモーター、エンハンサー、スプライス部位、及びポリアデニル化部位)が使用され得、必要な非転写遺伝因子を提供する。好適である可能性のある酵母株としては、Saccharomyces cerevisiae、Schizosaccharomyces pombe、Kluyveromyces株、Candida、又はmiRNAを発現することが可能な任意の酵母株が挙げられる。好適である可能性のある細菌株としては、Escherichia coli、Bacillus subtilis、Salmonella typhimurium、又はmiRNAを発現することが可能な任意の細菌株が挙げられる。
【0101】
好ましい実施形態において、miRNAのリスト(hsa-miR-885-5p、hsa-let-7b、hsa-let-7i、hsa-miR-186、hsa-miR-125b、hsa-let-7d、hsa-miR-34c-5p、hsa-miR-139-5p、hsa-miR-100、hsa-miR-34b、hsa-let-7c、hsa-miR-29a、hsa-miR-29a*、hsa-mir-29b-1、hsa-mir-29b-2、hsa-mir-29c、hsa-let-7g、hsa-miR-146b-5p、hsa-miR-154、hsa-miR-674(mmu-miR-674)、hsa-let-7f、hsa-miR-21、hsa-miR-22、hsa-miR-23a、hsa-miR-98、hsa-let-7a、hsa-miR-199a-3p、hsa-miR-214、hsa-miR-130a、hsa-miR-211、hsa-miR-515-5p、hsa-miR-517a、hsa-miR-517b、hsa-mir-203、hsa-miR-297、hsa-mir-573、hsa-mir-758、hsa-mir-583、hsa-mir-7、hsa-mir-1)から選択されるmiRNAをコードするゲノムDNAが単離され、このmiRNAが哺乳動物発現系において発現され、RNAが、患者への投与のために、必要に応じて、精製及び修飾される。好ましい実施形態において、miRNAはpre−miRNAの形態であり、所望に応じて(即ち安定性の増加又は細胞への取り込みの増大のために)修飾され得る。
【0102】
miRNAのDNA配列の知識は、内因性miRNAの発現を許容する又は増加させるための細胞の改変を可能にする。細胞は、天然に存在するプロモーターを全体的に又は部分的に、異種プロモーターの全体又は一部で置換することにより、miRNA発現の増加を提供するために、(例えば相同組換えにより)改変され得、その結果細胞はmiRNAをより高いレベルで発現する。異種プロモーターは、それが所望のmiRNAをコードする配列に作動可能に連結されるような様式で、挿入される。例えば、Transkaryotic Therapies, Inc.によるPCT国際公開番号WO 94/12650、Cell Genesys, Inc.によるPCT国際公開番号WO 92/20808、及びApplied Research SystemsによるPCT国際公開番号WO 91/09955を参照されたい。細胞はまた、誘導性調節エレメントの制御下で、miRNAを含む内因性遺伝子を発現するように操作され得、その場合内因性遺伝子の調節配列は、相同組換えにより置換され得る。遺伝子活性化技術は、Chappelへの米国特許第5,272,071号;Sherwinらへの米国特許第5,578,461号;SeldenらによるPCT/US92/09627(WO93/09222);及びSkoultchiらによるPCT/US90/06436(WO91/06667)に記載される。
【0103】
miRNAは、miRNAを発現するのに適した培養条件下で、形質転換された宿主細胞を培養することにより調製され得る。次いで、結果として生じる発現したmiRNAは、ゲル濾過及びイオン交換クロマトグラフィーなどの公知の精製プロセスを使用して、このような培養物から(即ち、培養培地又は細胞抽出物から)精製され得る。miRNAの精製は、タンパク質に結合する薬剤を含むアフィニティーカラム;コンカナバリンA−アガロース、ヘパリン−トヨパールTM又はCibacrom blue 3GAセファロースTMなどのアフィニティー樹脂に対する1以上のカラム工程;フェニルエーテル、ブチルエーテル、又はプロピルエーテルなどの樹脂を使用する疎水性相互作用クロマトグラフィーを含む1以上の工程;イムノアフィニティークロマトグラフィー、又は相補的cDNAアフィニティークロマトグラフィーも含み得る。
【0104】
miRNAは、トランスジェニック動物(miRNAをコードするヌクレオチド配列を含む体細胞又は生殖細胞によって特徴付けられる)の生成物としても発現され得る。miRNAをコードするDNA及び適切な調節エレメントを含むベクターは、miRNAを発現するように、相同組換えを使用して動物の生殖細胞系列へと挿入され得る(Capecchi, Science 244:1288-1292 (1989))。トランスジェニック動物、好ましくは非ヒト哺乳動物は、Robinsonらへの米国特許第5,489,743号、及びOntario Cancer InstituteによるPCT公開第WO94/28122号に記載される方法を使用して製造される。miRNAは、上記で論じたようなトランスジェニック動物から単離される細胞又は組織から単離され得る。
【0105】
好ましい実施形態において、miRNAは、例えば、当業者に公知の任意の合成方法により核酸を化学的に合成することにより、合成的に取得され得る。次いで、合成されたmiRNAは、当業者に公知の任意の方法により精製され得る。核酸の化学合成のための方法としては、ホスホトリエステル、ホスフェート若しくはホスホラミダイト化学及び固相技術を使用するin vitro化学合成、又はデオキシヌクレオシド(deosynucleoside)H−ホスホネート中間体を介したin vitro化学合成が挙げられるが、これらに限定されない(Bhongleへの米国特許第5,705,629号を参照のこと)。
【0106】
いくつかの状況において、例えば、増大したヌクレアーゼ安定性が望ましい場合、核酸アナログ及び/又は修飾されたヌクレオシド間結合を有する核酸が好まれ得る。修飾されたヌクレオシド間結合を含む核酸はまた、当業者に周知の試薬及び方法を使用して合成され得る。例えば、ホスホネートホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホラミデート(phosphoramidate)メトキシエチルホスホラミデート、ホルムアセタール、チオホルムアセタール、ジイソプロピルシリル、アセトアミデート(acetamidate)、カルバメート、ジメチレン−スルフィド(--CH2--S--CH2)、ジメチレン(diinethylene)−スルホキシド(--CH2--SO-CH2)、ジメチレン−スルホン(--CH2-SO2-CH2)、2’−O−アルキル、及び2’−デオキシ−2’−フルオロホスホロチオエートのヌクレオシド間結合を含む核酸を合成する方法が、当分野において周知である(Uhlmann et al., 1990, Chem. Rev. 90:543-584;Schneider et al., 1990, Tetrahedron Lett. 31:335及びそれらの中の引用文献を参照のこと)。Cookらへの米国特許第5,614,617号及び第5,223,618号、Acevedoらへの米国特許第5,714,606号、Cookらへの米国特許第5,378,825号、Buhrらへの米国特許第5,672,697号及び第5,466,786号、Cookらへの米国特許第5,777,092号、De Mesmaekerらへの米国特許第5,602,240号、Cookらへの米国特許第5,610,289号及びWangへの米国特許第5,858,988号も、ヌクレアーゼ安定性及び細胞への取り込みの促進のための核酸アナログを記載する。
【0107】
V.製剤
【0108】
組成物は、癌/増殖性疾患の少なくとも1つの症状又は兆候(疾患は症状がなくても発症/進行し得るため)の治療又は予防を必要とする患者に投与される。癌遺伝子の異常な発現は、癌の顕著な特徴である。好ましい実施形態において、癌は肺癌である。一実施形態において、組成物は、1以上の癌遺伝子の遺伝子発現を阻害するために有効量で投与される。好ましい実施形態において、組成物は、SPARCの発現を阻害するために有効量で投与される。
【0109】
癌の少なくとも1つの症状若しくは兆候の治療又は予防のための方法も記載され、該方法は、少なくとも1つの症状を軽減するため、又は少なくとも1つの兆候を減少させるために、核酸分子を含む有効量の組成物を投与することからなる。好ましい実施形態において、癌は肺癌である。本明細書中に記載される組成物は、単独で又は補助的癌治療(例えば手術、化学療法、放射線治療、温熱療法、免疫療法、ホルモン療法及びレーザー療法など)と組み合わせて、有効量で投与され得、薬効(例、腫瘍の大きさを減少させること、腫瘍の細胞増殖を減少させること、血管形成を阻害すること、転移を阻害すること、又は疾患の少なくとも1つの症状若しくは兆候を別な方法で改善すること)を提供し得る。
【0110】
上記核酸は、好ましくは、適切な医薬担体と組み合わせて治療用途に用いられる。このような組成物は、有効量の化合物、及び医薬上許容される担体又は賦形剤を含む。製剤は、投与の様式に適合するよう作製される。医薬上許容される担体は、投与される特定の組成物により、及び組成物を投与するために使用される特定の方法により、部分的に決定される。従って、核酸(そのいくつかが本明細書中に記載される)を含む医薬組成物の、多種多様の適切な製剤が存在する。
【0111】
in vivoで投与された核酸が取り込まれ、そして細胞及び組織に分布することは、当業者によって理解される(Huang, et al., FEBS Lett. 558(1-3):69-73 (2004))。例えば、Nyceらは、アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)が、吸入されると、内因性界面活性剤(肺細胞により産生される脂質)に結合し、更なるキャリア脂質を必要とせずに肺細胞によって取り込まれることを示した(Nyce and Metzger, Nature, 385:721-725 (1997))。小さな核酸は、T24膀胱癌組織培養細胞へと容易に取り込まれる(Ma, et al., Antisense Nucleic Acid Drug Dev. 8:415-426 (1998))。siRNAは、全身投与による内因性遺伝子の治療的サイレンシングのために使用されている(Soutschek, et al., Nature 432, 173-178 (2004))。
【0112】
上記核酸は、適切な医薬担体中で、局所的(topically)、局所的(locally)又は全身的な投与のための製剤中にあり得る。E. W. MartinによるRemington's Pharmaceutical Sciences、第15版(Mark Publishing Company, 1975)は、典型的な担体及び調製方法を開示する。核酸はまた、生分解性若しくは非生分解性のポリマー又はタンパク質から形成される、適切な生体適合性マイクロカプセル、微粒子又はマイクロスフェア中に、或いは細胞へと標的化するためのリポソーム中に、封入され得る。このような系は、当業者に周知であり、適切な核酸と共に使用するために最適化され得る。
【0113】
核酸送達のための種々の方法が、例えばSambrookら、1989、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New York;及びAusubelら、1994、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New Yorkに記載される。このような核酸送達系は、例えば、「ネイキッド」核酸として「ネイキッド」形態か、又は、陽イオン性分子若しくはリポソームを形成する脂質との複合体中などの送達に適したビヒクル中に製剤化されるかのいずれかで、或いはベクターの構成成分又は医薬組成物の構成成分として、所望の核酸を含むが、これらに限定されない。核酸送達系は、直接的に(それを細胞と接触させることによるなど)、又は間接的に(任意の生物学的プロセスの作用を通じてなど)、細胞に提供され得る。例として、核酸送達系は、エンドサイトーシス、受容体標的化、天然若しくは合成の細胞膜断片との結合、エレクトロポーレーションなどの物理的手段、ポリマー性担体(例えば制御放出フィルム又はナノ粒子若しくは微粒子)と核酸送達系の組み合わせ、ベクターの使用、細胞を取り囲む組織又は流体への核酸送達系の注入、細胞膜を横切る核酸送達系の単純拡散、或いは細胞膜を横切る任意の能動又は受動輸送メカニズムにより、細胞へと提供され得るが、これらに限定されない。更に、核酸送達系は、ウイルスベクターの、抗体関連の標的化及び抗体を介した固定化などの技術を使用して、細胞に提供され得る。
【0114】
局所的投与のための製剤としては、軟膏、ローション、クリーム、ジェル、ドロップ、坐薬、スプレー、液体及び粉末が挙げられ得る。通常の医薬担体、水性、粉末又は油性基剤、増粘剤等が、所望に応じて使用され得る。
【0115】
非経口投与(例えば、関節内(関節における)、静脈内、筋肉内、皮内、腹腔内、及び皮下経路による投与など)に適した製剤としては、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、及び製剤を対象患者の血液と等張にする溶質を含み得る水性及び非水性の等張無菌注射液並びに、懸濁剤、溶解剤、増粘剤、分散剤、安定剤、及び保存剤を含み得る水性及び非水性の無菌懸濁液、溶液又は乳剤が挙げられる。注射用製剤は、添加される保存剤と共に、例えばアンプル中で、又は多用量容器内で、単位用量形態で提供され得る。組成物は、このような形態をとり得る。
【0116】
調製物としては、無菌の水性又は非水性の溶液、懸濁液及び乳剤が挙げられ、それらは特定の実施形態における対象の血液と等張であり得る。非水性溶媒の例は、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油(オリーブ油、ゴマ油、ココナッツ油、ラッカセイ油、ピーナッツ油など)、鉱油、オレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステル、又は合成モノグリセリド若しくはジグリセリドを含む不揮発性油である。水性担体としては、水、アルコール性/水性溶液、乳剤又は懸濁液が挙げられ、生理食塩水及び緩衝媒体を含む。非経口ビヒクルとしては、塩化ナトリウム溶液、1,3−ブタンジオール、リンガーデキストロース、デキストロース及び塩化ナトリウム、乳酸化リンガー液(Ringer's)又は不揮発性油が挙げられる。静脈内ビヒクルとしては、流体及び栄養補充液、電解質補充液(リンガーデキストロースに基づくものなど)などが挙げられる。保存剤及び他の添加剤(例えば、抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤及び不活性ガスなど)も存在し得る。更に、無菌の不揮発性油は、溶媒又は懸濁媒体として従来通りに用いられる。この目的のために、合成モノグリセリド又はジグリセリドを含む任意の無刺激性不揮発性油が用いられ得る。更に、オレイン酸などの脂肪酸が、注射剤の調製において使用され得る。担体の製剤は、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Easton, Pa中に見出され得る。当業者は、過度の実験をすることなく、組成物の調製及び製剤化のための種々のパラメーターを容易に決定し得る。
【0117】
単独の、又は他の適切な構成成分と組み合わせた核酸は、エアロゾル製剤にもされ得(即ち、それらは「噴霧」され得る)、吸入によって投与され得る。エアロゾル製剤は、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素などの、加圧された受容可能な噴霧剤中に置かれ得る。吸入による投与のために、核酸は、適切な噴霧剤の使用により、加圧されたパック又は噴霧器からのエアロゾルスプレー提示の形態で都合よく送達される。
【0118】
いくつかの実施形態において、上記核酸は、塩、担体、緩衝剤、乳化剤、希釈剤、賦形剤、キレート剤、増量剤、乾燥剤、抗酸化剤、抗菌剤、保存剤、結合剤、バルク剤(bulking agents)、シリカ、溶解剤、又は安定剤などの製剤成分と共に医薬上許容される担体を含み得る。一実施形態において、核酸は、細胞への取り込みを改善するために、コレステロール並びにC32官能基を有するラウリン酸誘導体及びリトコール酸誘導体のような親油基に結合される。例えば、コレステロールは、siRNAの取り込み及び血清中安定性を、in vitro(Lorenz, et al., Bioorg. Med. Chem. Lett. 14(19):4975-4977 (2004))及びin vivo(Soutschek, et al., Nature 432(7014):173-178 (2004))で、促進することが実証されている。更に、LDL、HDL、VLDL、又はキロミクロンなどの、血流中の様々なリポタンパク質へのステロイド結合オリゴヌクレオチドの結合が、完全性を保護し、生体内分布を促進することが示されている(Rump, et al., Biochem. Pharmacol. 59(11):1407-1416 (2000))。上記核酸に付着又は結合し得、細胞への取り込み増加させ得る他の群としては、アクリジン誘導体;架橋剤(例えば、ソラレン誘導体、アジドフェナシル、プロフラビン、及びアジドプロフラビンなど);人工エンドヌクレアーゼ;金属錯体(例えば、EDTA−Fe(II)及びポルフィリン−Fe(II)など);アルキル化部分;ヌクレアーゼ(例えば、アルカリホスファターゼなど);末端トランスフェラーゼ;アブザイム;コレステリル部分;親油性担体;ペプチド結合体;長鎖アルコール;リン酸エステル;放射性マーカー;非放射性マーカー;炭水化物;及びポリリジン又は他のポリアミンが挙げられるが、これらに限定されない。Levyらへの米国特許第6,919,208号も、核酸分子の送達の増強のための方法を記載した。
【0119】
これらの医薬製剤は、自体公知の様式で、例えば、通常の混合プロセス、溶解プロセス、造粒プロセス、粉末化プロセス、乳化プロセス、封入(encapsulating)プロセス、封入(entrapping)プロセス又は凍結乾燥プロセスにより、製造され得る。
【0120】
本明細書中に記載される核酸の製剤は、核酸の融合又は核酸の修飾を包含し、ここで核酸は、別の部分若しくは部分(複数)(例、標的化部分)又は別の治療剤へと融合される。このようなアナログは、活性及び/又は安定性などの特性の改善を示し得る。核酸に結合されても又はされなくてもよい部分の例としては、特定の細胞への核酸の送達をもたらす標的化部分(例、膵臓細胞、免疫細胞、肺細胞又は任意の他の好ましい細胞型に対する抗体、並びに好ましい細胞型上に発現する受容体及びリガンド)が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、該部分は、癌又は腫瘍細胞を標的化する。例えば、癌細胞は、グルコースの消費が増加しているため、核酸はグルコース分子に結合され得る。癌又は腫瘍細胞を標的化するモノクローナルヒト化抗体が、好ましい部分であり、核酸に結合されても又はされなくてもよい。癌治療の場合、標的抗原は、典型的には、腫瘍細胞に特有且つ/又は必須のタンパク質である(例、受容体タンパク質HER−2)。
【0121】
VI.治療方法
【0122】
A.投与方法
【0123】
一般に、核酸を投与する方法は、当分野において周知である。特に、現在使用中の製剤と共に、既に核酸治療用に使用されている投与経路は、上記核酸のための好ましい投与経路及び製剤を提供する。
【0124】
核酸組成物は、多数の経路によって投与され得、経口手段、静脈内手段、腹腔内手段、筋肉内手段、経皮手段、皮下手段、局所手段、舌下手段、又は直腸手段が挙げられるが、これらに限定されない。核酸は、リポソームによっても投与され得る。このような投与経路及び適切な製剤は、当業者に一般に知られている。
【0125】
本明細書中に記載の製剤の投与は、miRNA又はmiRNAをコードする核酸がその標的に到達することを可能にする任意の許容可能な方法により、達成され得る。選択される特定の様式は、当然、特定の製剤、治療されている対象の状態の深刻さ、及び治療効果に必要な用量などの因子に依存する。本明細書中で一般的に使用される場合、核酸の「有効量」は、製剤が投与される対象において、化合物若しくは治療剤を投与されていない対応する対象と比較して、癌若しくは関連疾患の1以上の症状を治療することができるか、癌若しくは関連疾患の1以上の症状を逆転できるか、癌若しくは関連疾患の1以上の症状の進行を止めることができるか、又は癌若しくは関連疾患の1以上の症状の発生を予防することができる、その量である。薬物の実際の有効量は、利用されている特定の薬物又はそれらの組み合わせ、製剤化される特定の組成物、投与の様式、並びに、患者の年齢、体重、状態、及び治療されている症状又は状態の深刻さに応じて異なり得る。
【0126】
当業者に公知の任意の許容可能な方法が、対象に製剤を投与するために使用され得る。投与は、治療されている状態に応じて、局所的(即ち、特定の領域、生理的系、組織、器官、又は細胞型に)、又は全身的であり得る。
【0127】
注射は、例えば、静脈内、皮内、皮下、筋肉内、又は腹腔内であり得る。組成物は、例えば、癌の治療又は予防のために、皮内注射され得る。いくつかの実施形態において、注射は、複数の場所に打たれ得る。移植は、移植可能な薬物送達システム(例、マイクロスフェア、ヒドロゲル、高分子リザーバー、コレステロールマトリクス、ポリマーシステム(例、マトリクス侵食及び/又は拡散系)及び非ポリマーシステム(例、圧縮された、融合された、又は部分的に融合されたペレット))を挿入することを含む。吸入は、組成物を、単独か、又は吸収され得る担体に付着させるかのいずれかで、吸入器中のエアロゾルを用いて投与することを含む。全身投与のために、組成物がリポソーム中に封入されることが好ましくあり得る。
【0128】
好ましくは、薬剤及び/又は核酸送達システムは、薬剤及び/又は核酸送達システムの組織特異的取り込みを可能にする様式で、提供される。技術としては、創傷包帯若しくは経皮送達システムなどの組織局在化装置又は器官局在化装置を使用すること、血管カテーテル又は尿路カテーテルなどの侵襲的装置を使用すること、及び薬物送達能力を有し、且つ膨張性装置又はステントグラフトとして形成されたステントなどの介入装置を使用することが挙げられる。
【0129】
製剤は、生体内分解性インプラントを使用して、拡散により、又は高分子マトリクスの分解により、送達され得る。特定の実施形態において、製剤の投与は、一定期間、例えば、数時間、数日、数週間、数ヶ月又は数年にわたる、miRNAへの連続的曝露をもたらすように、設計され得る。これは、例えば、製剤の反復投与により、又はmiRNAが反復投与なしで長期にわたって送達される持続放出送達システム若しくは制御放出送達システムにより、達成され得る。このような送達システムを使用する製剤の投与は、例えば、経口剤形、ボーラス注入、経皮パッチ又は皮下インプラントによるものであり得る。組成物の実質的に一定の濃度を維持することが、いくつかの場合において好ましくあり得る。
【0130】
他の好適な送達システムとしては、持続放出(time-release)、遅延放出、持続放出、又は制御放出送達システムが挙げられるが、これらに限定されない。このようなシステムは、多くの場合、反復投与を回避し得、対象及び医師にとっての利便性を増大させる。多くの種類の放出送達システムが利用可能であり、当業者に公知である。それらとしては、例えば、ポリ乳酸及び/若しくはポリグリコール酸、ポリ酸無水物、ポリカプロラクトン、コポリオキサレート(copolyoxalates)、ポリエステルアミド、ポリオルトエステル、ポリヒドロキシ酪酸、並びに/又はこれらの組み合わせなどのポリマーベースのシステムが挙げられる。核酸を含む前述のポリマーのマイクロカプセルは、例えば、米国特許第5,075,109号に記載されている。他の例としては、ステロール(例えばコレステロール、コレステロールエステルなど)及び脂肪酸又は中性脂肪(例えばモノグリセリド、ジグリセリド及びトリグリセリドなど)を含む脂質ベースである非ポリマーシステム;ヒドロゲル放出システム;リポソームベースのシステム;リン脂質ベースのシステム;シラスティックシステム;ペプチドベースのシステム;ワックスコーティング;通常の結合剤及び賦形剤を使用する圧縮錠;又は部分的に融合したインプラントが挙げられる。特定の例としては、miRNAがマトリックス内で製剤中に含まれる侵食システム(例えば、米国特許第4,452,775号、第4,675,189号、第5,736,152号、第4,667,013号、第4,748,034号及び第5,239,660号に記載されるような)、又は活性成分が放出速度を制御する拡散システム(例えば、米国特許第3,832,253号、第3,854,480号、第5,133,974号、及び第5,407,686号に記載されるような)が挙げられるが、これらに限定されない。製剤は、例えば、マイクロスフェア、ヒドロゲル、高分子リザーバー、コレステロールマトリクス、又はポリマーシステムとしてあり得る。いくつかの実施形態において、該システムは、例えば、miRNAを含む製剤の拡散又は浸食/分解速度の制御を介して、組成物の持続放出若しくは制御放出を起こさせ得る。更に、ポンプベースのハードウェア送達システムは、1以上の実施形態を実施するために使用され得る。
【0131】
放出が一気に起こるシステムの例としては、例えば、組成物がポリマーマトリクス内に封入されたリポソーム内に封入され、該リポソームが特定の刺激(例、温度、pH、光又は分解酵素)に感受性であるシステム、及び組成物がマイクロカプセルコア分解酵素を用いてイオン的に被覆されたマイクロカプセルにより封入されるシステムが挙げられる。インヒビターの放出が漸進的且つ継続的であるシステムの例としては、例えば、組成物がマトリックス内にある形態で含まれる侵食システム、及び組成物が、例えば、ポリマーを通じて、制御された速度で浸透する浸出システムが挙げられる。このような持続放出システムは、例えば、ペレット、又はカプセルの形態であり得る。
【0132】
長期放出インプラントの使用は、いくつかの実施形態において特に適切であり得る。本明細書中で使用される場合、「長期放出」は、組成物を含むインプラントが、少なくとも30日間若しくは45日間、及び好ましくは少なくとも60日間若しくは90日間、又はいくつかの場合においては更に長く、治療有効レベルの組成物を送達するように構築及び準備されることを意味する。長期放出インプラントは、当業者に周知であり、上記放出システムのいくつかが挙げられる。
【0133】
特定の患者に対する用量は、通常の考慮事項を使用して(例えば、適切な、通常の薬理学的プロトコルにより)、当業者によって決定され得る。医師は、例えば、最初に比較的低用量を処方し、次いで適切な応答が得られるまで用量を増加させ得る。患者に投与される用量は、施用に応じて、経時的に患者において有益な治療反応をもたらす(又は、例えば、症状を減少させる)、或いは他の適切な活性をもたらすのに十分である。用量は、特定の製剤の有効性、及び用いられるmiRNAの活性、安定性又は血清中半減期、及び患者の状態、並びに処置される患者の体重又は表面積によって決定される。用量の大きさは、特定の患者における、特定のベクター、製剤などの投与に伴う任意の有害な副作用の存在、性質及び程度によっても決定される。
【0134】
1以上の核酸を含む治療組成物は、当分野において周知の方法に従って、有効性、組織代謝を確認するため、及び用量を見積もるために、疾患の1以上の適切なin vitro及び/又はin vivo動物モデルにおいて、随意に試験される。特に、用量は、関連するアッセイにおいて、治療対無治療の活性、安定性又は他の適切な基準によって(例えば、治療された細胞又は動物モデル対治療されない細胞又は動物モデルの比較)、最初に決定され得る。製剤は、例えば、患者の重量及び健康全般に適合するように、関連する製剤のLD50、及び/又は、種々の濃度における核酸の任意の副作用の観察によって決定される速度で投与される。投与は、単一用量又は分割用量によって達成され得る。
【0135】
潜在的な癌治療としての核酸の有効量を決定するために、in vitroモデルが使用され得る。適切なin vitroモデルとしては、培養した腫瘍細胞の増殖アッセイ、軟寒天における培養した腫瘍細胞の増殖(Freshney, (1987) Culture of Animal Cells: A Manual of Basic Technique, Wily-Liss, New York, N.Y. Ch 18及びCh 21を参照のこと)、Giovanellaら、J. Natl. Can. Inst., 52: 921-30 (1974)に記載されるようなヌードマウスにおける腫瘍系、Pilkingtonら、Anticancer Res., 17: 4107-9 (1997)に記載されるようなボイデンチャンバーアッセイにおける腫瘍細胞の運動性及び侵襲性、並びに、Ribattaら、Intl. J. Dev. Biol., 40: 1189-97 (1999)及びLiら、Clin. Exp. Metastasis, 17:423-9 (1999)にそれぞれ記載されるような、ヒヨコ絨毛尿膜の血管新生の誘導又は血管内皮細胞遊走の誘導などの血管形成アッセイが挙げられるが、これらに限定されない。適切な腫瘍細胞株は、例えば、American Type Tissue Culture Collectionカタログから入手可能である。
【0136】
in vivoモデルは、潜在的な癌治療としての上記核酸の有効量を決定するために好ましいモデルである。適切なin vivoモデルとしては、National Cancer Institute (NCI) Frederick Mouse Repositoryから入手可能な、KRAS癌遺伝子に変異を有するマウス(Lox-Stop-Lox K-Ras.sup.G12D変異体、Kras2.sup.tm4TYj)が挙げられるが、これに限定されない。当該分野において公知であり、且つ利用可能な他のマウスモデルとしては、胃腸癌、造血器癌、肺癌、乳腺癌、神経系の癌、卵巣癌、前立腺癌、皮膚癌、子宮頸癌、口腔癌、及び肉腫の癌についてのモデルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0137】
疾患の治療又は予防において投与されるmiRNAの有効量の決定において、医師は、循環血漿中レベル、製剤毒性、及び疾患の進行を評価する。
【0138】
70キログラムの患者に投与される用量は、典型的には、現在使用されている治療的アンチセンスオリゴヌクレオチド(例えば、サイトメガロウイルスRNAの治療についてFDAによって認可され、関連する組成物の活性又は血清中半減期の改変のために調節された、Vitravene.RTM.(ホミビルセンナトリウム注射)など)の用量と同等の範囲内である。
【0139】
本明細書中に記載される製剤は、任意の公知の通常の治療による治療状態を補い得、該治療としては、抗体投与、ワクチン投与、細胞傷害性薬剤、天然アミノ酸ポリペプチド、核酸、ヌクレオチドアナログ、及び生物学的反応修飾物質の投与が挙げられるが、これらに限定されない。2以上の併用される化合物は、一緒に又は逐次的に使用され得る。例えば、核酸はまた、抗癌カクテルの一部として治療有効量で投与され得る。抗癌カクテルは、送達のための医薬上許容される担体に加えて、1以上の抗癌薬と、オリゴヌクレオチド又はモジュレーターとの混合物である。癌治療としての抗癌カクテルの使用は、ありふれたものである。当該分野において周知であり、且つ本明細書中に記載される核酸と組み合わせた治療として使用され得る抗癌薬としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:アクチノマイシンD、アミノグルテチミド、アスパラギナーゼ、ブレオマイシン、ブスルファン、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン(cis−DDP)、シクロホスファミド、シタラビンHCl(シトシンアラビノシド)、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシンHCl、ドキソルビシンHCl、エストラムスチンリン酸ナトリウム、エトポシド(V16−213)、フロクスウリジン、5−フルオロウラシル(5−Fu)、フルタミド、ヒドロキシウレア(ヒドロキシカルバミド)、イホスファミド、インターフェロンアルファ−2a、インターフェロンアルファ−2b、酢酸ロイプロリド(LHRH−放出因子アナログ)、ロムスチン、メクロレタミンHCl(ナイトロジェンマスタード)、メルファラン、メルカプトプリン、メスナ、メトトレキサート(MTX)、マイトマイシン、ミトキサントロンHCl、オクトレオチド、プリカマイシン、プロカルバジンHCl、ストレプトゾシン、クエン酸タモキシフェン、チオグアニン、チオテパ、硫酸ビンブラスチン、硫酸ビンクリスチン、アムサクリン、アザシチジン、ヘキサメチルメラミン、インターロイキン−2、ミトグアゾン、ペントスタチン、セムスチン、テニポシド、及び硫酸ビンデシン。
【0140】
B.本発明を用いて治療される疾患
【0141】
例えば、肥厚性瘢痕及びケロイド、増殖性糖尿病性網膜症、関節リウマチ、動静脈奇形、動脈硬化性プラーク、創傷治癒の遅れ、血友病関節、癒着不能骨折、オスラー−ウィーバー症候群、乾癬、化膿性肉芽腫、強皮症、トラコーマ、月経過多、血管癒着並びに再狭窄からなる群からの増殖性疾患。
【0142】
癌治療は、腫瘍細胞増殖を阻害することにより、血管形成(腫瘍増殖を支持するために必要な新たな血管の増殖)を阻害することにより、及び/又は腫瘍細胞の運動性又は侵襲性を低減させることにより転移を妨げることにより、腫瘍退縮を促進する。本明細書中に記載される治療製剤は、以下におけるものを含む、成人及び小児の腫瘍学において有効であり得る:固形腫瘍/悪性腫瘍、局所進行腫瘍、ヒト軟部組織肉腫、転移性癌(リンパ行性転移を含む)、血液細胞の悪性腫瘍(多発性骨髄腫、急性及び慢性白血病、並びにリンパ腫を含む)、頭頸部癌(口腔癌、喉頭癌及び甲状腺癌を含む)、肺癌(小細胞癌及び非小細胞癌を含む)、乳癌(小細胞癌及び腺管癌を含む)、胃腸癌(食道癌、胃癌、結腸癌、結腸直腸癌及び結腸直腸の新生物と関連するポリープを含む)、膵臓癌、肝臓癌、泌尿器癌(膀胱癌及び前立腺癌を含む)、女性生殖管の悪性腫瘍(卵巣癌、子宮癌(子宮内膜癌を含む)、及び卵胞における固形腫瘍を含む)、腎臓癌(腎細胞癌を含む)、脳の癌(内因性の脳腫瘍を含む)、神経芽細胞腫、星状細胞の脳腫瘍、神経膠腫、中枢神経系における転移性腫瘍細胞の浸潤、骨癌(骨腫を含む)、皮膚癌(悪性黒色腫、ヒト皮膚ケラチノサイトの腫瘍進行、扁平上皮細胞癌、基底細胞癌、血管周囲細胞腫及びカポジ肉腫を含む)。治療製剤は、単独で又は補助的癌治療(例えば手術、化学療法、放射線治療、温熱療法、免疫療法、ホルモン療法及びレーザー療法など)と組み合わせて、治療有効用量で投与され得、薬効(例、腫瘍の大きさを減少させること、腫瘍増殖の速度を低下させること、腫瘍の細胞増殖を減少させること、癌の細胞死を促進すること、血管形成を阻害すること、転移を阻害すること、又は別な方法で、癌を必ずしも根絶せずに、全般的な臨床状態を改善すること)を提供し得る。
【0143】
癌としては、例えば、以下が挙げられる:胆道癌;膀胱癌;乳癌;脳の癌(膠芽細胞腫及び髄芽細胞腫を含む);子宮頚癌;絨毛癌;結腸癌(結腸直腸癌を含む);子宮内膜癌;食道癌;胃癌;頭頸部癌;血液腫瘍(急性リンパ性及び骨髄性白血病、多発性骨髄腫、AIDS関連白血病並びに成人T細胞白血病リンパ腫を含む);上皮内新生物(ボーエン病及びパジェット病を含む);肝臓癌;肺癌(小細胞肺癌及び非小細胞肺癌を含む);リンパ腫(ホジキン病及びリンパ球性リンパ腫を含む);神経芽細胞腫;口腔癌(扁平上皮細胞癌を含む);骨肉腫;卵巣癌(上皮細胞、間質細胞、生殖細胞及び間葉細胞から生じる癌を含む);膵臓癌;前立腺癌;直腸癌;肉腫(平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、脂肪肉腫、線維肉腫、滑膜肉腫及び骨肉腫を含む);皮膚癌(黒色腫、カポジ肉腫、基底細胞の癌、及び扁平上皮癌を含む);精巣癌(胚の腫瘍(例えば、セミノーマ、非セミノーマ(奇形腫、絨毛癌)、間質の腫瘍、及び生殖細胞の腫瘍)を含む);甲状腺癌(甲状腺癌(thyroid adenocarcinoma)及び髄様癌(medullar carcinoma)を含む);移行性癌及び腎臓癌(腺癌及びウィルムス腫瘍を含む)。好ましい実施形態において、製剤は、肺癌の治療又は予防のために投与される。
【0144】
更に、治療的核酸は、癌の予防的治療のために使用され得る。個体に癌を発症させやすくする、当該分野において公知の遺伝性の状態及び/又は環境状況(例、発癌物質への曝露)が存在する。これらの状況下では、癌を発症する危険を低減させるために、治療有効用量の核酸を用いてこれらの個体を処置することが、有益であり得る。一実施形態において、適切な製剤中の核酸は、癌の家族歴を有する対象に、又は癌の遺伝的素因を有する対象に、投与され得る。他の実施形態において、適切な製剤中の核酸は、特定の年齢に達している対象に、又は癌になる可能性がより高い対象に、投与される。更に他の実施形態において、適切な製剤中の核酸は、癌(例えば、初期又は進行した)の症状を示す対象に投与される。なお他の実施形態において、適切な製剤中の核酸は、予防手段として対象に投与され得る。いくつかの実施形態において、適切な製剤中の核酸は、人口統計若しくは疫学的研究に基づいて対象に、又は特定の分野若しくは職業にある対象に投与され得る。
【0145】
以下の実施例は、本発明を更に説明するが、当然のことながら、いかなる意味においてもその範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【実施例】
【0146】
実施例1
本実施例は、様々な細胞株における外因性SPARC遺伝子の示差的発現を実証する。
【0147】
SPARCについてのクローン化した全長cDNA(Q3変異を含む、米国特許第7,332,568号として発行された、米国特許出願公開第20070117133号を参照のこと)を、発現プラスミド(pVT1000Q3)中に、CMVプロモーターの後ろに、サブクローニングした。6ヒスチジン残基を有するエピトープタグを、プライマー指令変異導入により、タンパク質のカルボキシル末端へと操作して、「SPARC−6His」を得た。SPARC−6Hisプラスミドを、CHO細胞及び293細胞へとトランスフェクトした。細胞及び馴化培養液を、SDS−PAGE上で分離し、ニトロセルロース膜に移し、そしてモノクローナル抗Hisタグ抗体(Qiagen, CA, USA)及びアルカリホスファターゼ結合二次抗体(Pierce Biotechnology Inc, IL, USA)を使用してイムノブロットすることにより、SPARC発現について評価した。バンドは、1-step NBT/BCIP kit(Pierce Biotechnology Inc, IL, USA)により、現像した。
【0148】
図1及び2に示すように、それぞれトランスフェクションの48時間後及び3週間後において、293トランスフェクタントは、該コンストラクトが能力がある(competent)ことを実証したが、CHO細胞においてはSPARC−6Hisの発現はなかった。
【0149】
3’UTRがCHO細胞における発現の阻害に関与するか否かを検討するために、2つのコンストラクトを作製した:1)SPARC cDNAのコード領域及びその5’UTRのみを有するLH−3−6XHis、並びに2)全長cDNA及び、従って、3’UTRを有するLH−3−6XHis−3’UTR。これらのコンストラクトの図を、図3に示す。両コンストラクトはCMVプロモーターにより駆動される。プラスミドを、Lipofectamine 2000(Invitrogen, CA, USA)を使用して、CHO細胞又は293細胞へとトランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後において、細胞を回収し、全RNAを、RNeasy Mini kit(Qiagen, CA, USA)を用いて単離した。RT−PCRを行い、内因性及び外因性のSPARC mRNAの存在を確認した;これらのプライマーの場所を図3に示す。内因性SPARC mRNA発現レベルは、2つのプライマー(EX2A: 5’-GGGTGAAGAAGATCCATGAG-3’)及び(EN2B: 5’-GGAGTGGATTTAGATCACAAG-3’)を用いて検出した。外因性SPARC mRNA発現レベルは2つのプライマー(EX2A: 5’-GGGTGAAGAAGATCCATGAG’-3’)及び(EX2B: 5’-GTGATGGTGATGATG GATCAC-3’)を用いて検出した。図4に示すように、内因性(染色体SPARC遺伝子に由来する)及び外因性(トランスフェクトしたプラスミドに由来する)SPARC mRNAの両方が、48時間において、CHO及び293において検出された。更に、トランスフェクションの48時間後において、馴化培地(condition medium)をウェスタンブロット分析に供した(図5)。(タンパク質を可視化するために、試料を10X濃縮し、濃縮していない1X材料と一緒に泳動した)。驚くべきことに、図5に示すように、SPARCタンパク質は、LH−3−6XHisコンストラクトを用いて形質転換したCHO細胞からは検出されたが、LH−3−6XHis−3’UTRを用いて形質転換したCHO細胞からは検出されなかった。対照的に、293細胞をトランスフェクトした場合、どちらのコンストラクトによってコードされる発現タンパク質も検出された。これらの結果は、3’UTRがCHOにおけるSPARC発現の翻訳阻害に関与すること、並びにCHO細胞及び293細胞において異なる発現環境が存在することと、矛盾しない。
【0150】
実施例2
本実施例は、ルシフェラーゼレポート遺伝子を使用する、SPARC 3’UTRが関与する翻訳抑制を容易に確認する方法を実証する。
【0151】
SPARCの3’UTRをコードする領域を、pMIRレポータープラスミド(Ambion, TX)中で、ルシフェラーゼコード領域の後ろに移動させ、pXL−miRNA1.1を生じさせた。該プラスミドの物理地図を図6に示す。20,000〜30,000個の細胞を96ウェルプレートに播種し、Lipofectamine 2000(Invitrogen, CA)を使用して、170ngのpMIR-reporter又はpXL-miRNA1.1及び30ngのpMIR-reporter-β-galコントロールベクター(Ambion, TX)を用いてトランスフェクトした。細胞ライセートを回収し、トランスフェクションの24時間後又は48時間後にアッセイした。ホタル及びβ−ガラクトシダーゼ活性を、Dual-Light Luciferase and β-Galactosidase Reporter Gene Assay System(Applied Biosystems, CA)を使用して製造者のプロトコールに従って測定した。ルシフェラーゼ活性は、β−ガラクトシダーゼ活性で標準化した。相対ルシフェラーゼ活性は、3’UTRありの標準化ルシフェラーゼ活性の、3’UTRなしの標準化ルシフェラーゼ活性に対する比率として表現した。
【0152】
図7に示すように、SPARC 3’UTRの存在は、CHO細胞においてルシフェラーゼ発現を顕著に抑制した。この抑制は、293細胞においては観察されなかった。これは、SPARCについて実施例1で示したデータと矛盾しない。従って、SPARC 3’UTRは、CHO細胞において翻訳抑制を引き起こす因子(複数可)を含む。該活性は、miRNAによってもたらされるものと矛盾しない。
【0153】
SPARCの3’UTR翻訳阻害がCHOに特有という訳ではないことを確認するために、本発明者らは、pMIR- reporter、pXL-miRNA1.1及びpXL-miRNA1.2を用いて、ルシフェラーゼトランスフェクション実験を行なった。2つのプラスミドpXL-miRNA1.1及びpXL-miRNA1.2はいずれも、ルシフェラーゼのコード領域の後ろにSPARCの3’UTRを有し、そしてpXL-miRNA1.1中のコード領域3’UTR連結部における小さな14bpの欠失により互いに異なる。
【0154】
卵巣細胞株へのトランスフェクションは、SPARCの3’UTR翻訳阻害がこれらの細胞株全ての間で有効であったことを示した。図8は、SK−OV−3細胞、Caov−3細胞、ES−2細胞、PA−1細胞、及びOVCAR−3細胞における、pXL-miRNA1.1コンストラクト又はpXL-miRNA1.2コンストラクトのいずれか由来のSPARCの3’UTRによるルシフェラーゼ翻訳の阻害を示す。
【0155】
pre−miRNAライブラリー(Ambion, Austin, TX)を、293細胞におけるルシフェラーゼ−SPARC 3’UTRレポーターシステムを使用してスクリーニングした。これによりルシフェラーゼを阻害する4つのmiRNAを同定した:hsa-mir-29a、hsa-mir-29b、hsa-mir-29c、hsa-miR-297、hsa-mir-573、hsa-mir-758、hsa-mir-583、hsa-mir-7、hsa-mir-1(図9外れ値)。
【0156】
実施例3
本実施例は、CHO(miRNAを介したSPARC発現の抑制を示す)及び293(miRNAを介したSPARC発現の抑制を示さない)における、示差的に発現する内因性miRNAの存在を実証する。
【0157】
CHO細胞におけるSPARCの抑制に関与するmiRNA(複数可)を同定するために、CHO細胞及び293細胞からmiRNAを精製し、それらをそれぞれCy3及びCy5で標識した。標識したmiRNAを、マイクロアレイ形式で、miRNA相補配列の集団に、同時にハイブリダイズさせた。データを図10に示す。
【0158】
定量分析は、CHOにおいて上方調節され且つ293細胞において存在しないか又は低レベルである(比率は10よりも高い)、一連の(s series of)ヒトmiRNAが同定されたことを明らかにした。同定されたCHO miRNAは、SPARC抑制miRNAとしての使用のための第一の候補であり、以下を含む:hsa-miR-885-5p、hsa-let-7b、hsa-let-7i、hsa-miR-186、hsa-miR-125b、hsa-let-7d、hsa-miR-34c-5p、hsa-miR-139-5p、hsa-miR-100、hsa-miR-34b、hsa-let-7c、hsa-let-7d、hsa-miR-29a、hsa-let-7g、hsa-miR-146b-5p、hsa-miR-154、hsa-miR-674、hsa-let-7f、hsa-miR-21、hsa-miR-22、hsa-miR-23a、hsa-miR-98、hsa-let-7a、hsa-miR-199a-3p、hsa-miR-214、及びhsa-miR-130a。
【0159】
SPARCの3’UTRのコンピューター分析も、SPARC 3’UTRを標的とするであろう、一連の可能性のあるmiRNAを明らかにした。これらのmiRNAは、hsa-miR-211、hsa-miR-515-5p、hsa-miR-517a、hsa-miR-517b、hsa-mir-29、及びhsa-mir-203.1である。
【0160】
実施例4
本実施例は、強制SPARC発現の、マウス遺伝子及びヒト遺伝子の両方の遺伝子発現を変える能力を実証する。強制発現は、内因性SPARC阻害性miRNAの効果を相殺するための外因性miRNAの使用に相当する。本実施例に開示するシステムにおいて、トランスフェクトしない細胞の発現パターンは、SPARC阻害性miRNAの投与又は発現により引き起こされる結果に相当する。
【0161】
2つの細胞株、PC3(ヒト前立腺癌)及びHT29(ヒト結腸癌)を、外因性SPARCを発現するよう操作した。SPARC発現腫瘍細胞を、ヒト−マウス異種移植モデル系において研究した。マイクロアレイ分析を使用して、腫瘍細胞及び間質細胞の両方における、SPARCの発現又は阻害により誘導される遺伝子発現における変化を検出した。異種移植の結果を、トランスフェクトしていないHT29細胞又はPC3細胞からの対照異種移植と比較した。
【0162】
以下の表は、両モデルにおいて、SPARC発現により調節された転写産物についての、Genbankアクセッション番号及びmiRNaアクセッション番号を記載する:
【0163】
【表3】

【0164】
HT29系において、SPARCの発現により2倍以上上方調節されたヒト遺伝子は、以下であった:
変化(倍) 遺伝子
3.71 神経ペプチドY受容体Y1(neuropeptide Y receptor Y1)
2.54 ホスホリラーゼ、グリコーゲン;筋肉(マッカードル症候群、V型糖原病)(phosphorylase, glycogen; muscle (McArdle syndrome, glycogen storage disease type V))
2.13 リンパ球抗原6複合体、E遺伝子座(lymphocyte antigen 6 complex, locus E)
2.47 テトラトリコペプチド反復配列1を有するインターフェロン誘導タンパク質(interferon-induced protein with tetratricopeptide repeats 1)
2.55 ヘクトドメイン及びRLD 5(hect domain and RLD 5)
2.11 胎盤特異的8(placenta-specific 8)
2.08 ミクソウイルス(インフルエンザウイルス)抵抗性1、インターフェロン誘導タンパク質p78(マウス)(myxovirus (influenza virus) resistance 1, interferon-inducible protein p78 (mouse))
2.10 ATPアーゼ、H+輸送、リソソーム56/58kDa、V1サブユニットB、アイソフォーム2(ATPase, H+ transporting, lysosomal 56/58kDa, V1 subunit B, isoform 2)
【0165】
HT29系において、SPARCの発現により2倍以上下方調節されたヒト遺伝子は、以下であった:
変化(倍) 遺伝子
0.47 エンドセリン1(endothelin 1)
0.48 トロポミオシン1(アルファ)(Tropomyosin 1 (alpha))
0.46 ネブレット(nebulette)
0.49 Rapグアニンヌクレオチド交換因子(GEF)5(Rap guanine nucleotide exchange factor (GEF) 5)
0.34 CG14853−PBに類似(Similar to CG14853-PB)
0.43 微小管結合モノオキシゲナーゼ、カルポニン及びLIMドメイン含有(Microtubule associated monoxygenase, calponin and LIM domain containing)
0.22 転写される遺伝子座、XP_517655.1 PREDICTEDにわずかに類似:KIAA0825タンパク質[Pan troglodytes]に類似(Transcribed locus, weakly similar to XP_517655.1 PREDICTED: similar to KIAA0825 protein [Pan troglodytes])
0.27 フォークヘッドボックスP1(Forkhead box P1)
0.27 ホスホジエステラーゼ10A(Phosphodiesterase 10A)
【0166】
PC3系において、SPARCの発現により2倍以上上方調節されたヒト遺伝子は、以下であった:
変化(倍) 遺伝子
3.71 神経ペプチドY受容体Y1
5.32 補体因子B(Complement factor B)
4.49 スタスミン1/オンコプロテイン18(Stathmin 1/oncoprotein 18)
2.67 ミクソウイルス(インフルエンザウイルス)抵抗性1、インターフェロン誘導タンパク質p78(マウス)
2.55 ヘクトドメイン及びRLD 5
2.90 インターロイキン1受容体関連キナーゼ4(Interleukin-1 receptor-associated kinase 4)
2.69 ロイシンリッチリピート含有25(Leucine rich repeat containing 25)
2.12 ATPアーゼ、H+輸送、リソソーム56/58kDa、V1サブユニットB2(ATPase, H+ transporting, lysosomal 56/58kDa, V1 subunit B2)
【0167】
PC3系において、SPARCの発現により2倍以上下方調節されたヒト遺伝子は、以下であった:
変化(倍) 遺伝子
0.36 エンドセリン1
0.32 トロポミオシン1(アルファ)
0.28 凝固因子V(プロアクセレリン、不安定因子)(Coagulation factor V (proaccelerin, labile factor))
0.24 Rapグアニンヌクレオチド交換因子(GEF)5
0.36 CG14853−PBに類似
0.25 一過性受容体電位カチオンチャネル、サブファミリーM、メンバー2(Transient receptor potential cation channel, subfamily M, member 2)
0.42 RGMドメインファミリー、メンバーB(RGM domain family, member B)
0.31 フォークヘッドボックスP1
0.26 Kelchドメイン含有5(Kelch domain containing 5)
【0168】
HT29系において、SPARCの発現による2倍以上の上方又は下方調節を示すマウス遺伝子は、以下であった:
変化(倍) 遺伝子
4.33 形質転換関連タンパク質63(transformation related protein 63)
2.81 PREDICTED:機能未知タンパク質XP_143616[Mus musculus]、mRNA配列(PREDICTED: hypothetical protein XP_143616 [Mus musculus], mRNA sequence)
配列
2.60 PREDICTED:DEPドメイン含有2アイソフォームa[Mus musculus]に類似、mRNA配列(PREDICTED: similar to DEP domain containing 2 isoform a [Mus musculus], mRNA sequence)
2.26 ラジニン(ladinin)
0.40 フォークヘッド様18(Drosophila)(forkhead-like 18 (Drosophila))
0.27 インヒビンβ−A(inhibin beta-A)
【0169】
PC3系において、SPARCの発現による2倍以上の上方又は下方調節を示すマウス遺伝子は、以下であった:
変化(倍) 遺伝子
3.30 形質転換関連タンパク質63
2.36 PREDICTED:機能未知タンパク質XP_143616[Mus musculus]、mRNA配列
2.21 PREDICTED:DEPドメイン含有2アイソフォームa[Mus musculus]に類似、mRNA配列
2.42 ラジニン
0.50 フォークヘッド様18(Drosophila)
0.46 インヒビンβ−A
【0170】
本明細書中に引用された全ての参考文献(刊行物、特許出願、及び特許を含む)は、各参考文献が参照により組み込まれることが個々にかつ具体的に示され、またその全体が本明細書中で説明されたのと同程度まで、参照により組み込まれる。
【0171】
本発明(特に添付の特許請求の範囲に関して)を記載することに関して、用語「a」及び「an」及び「the」並びに同様の指示対象の使用は、本明細書中に別途示されない限り、又は文脈により明らかに矛盾しない限り、単数及び複数の両方を含むと解釈されるべきである。用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」、及び「含む(containing)」は、別途言及されない限り、制限のない(open-ended)用語(すなわち、「含むが、それに限定されない」を意味する)と解釈されるべきである。本明細書中の値の範囲の列挙は、本明細書中に別途示されない限り、この範囲内に入る各個別の値に個々に言及することの省略方法として機能することを意図するに過ぎず、各個別の値は、それが本明細書中に個々に列挙されたかのように、本明細書中に組み込まれる。本明細書中に記載される全ての方法は、本明細書中に別途示されない限り、又はさもなくば文脈により明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施されうる。本明細書中に提供されるあらゆる全ての例、又は例示的語句(例えば、「など(such as)」)の使用は、本発明をより明確にすることを意図するに過ぎず、別途主張されない限り、本発明の範囲を限定しない。本明細書中のいかなる語句も、主張されていない任意の要素を本発明の実施に必須なものとして示していると解釈されるべきではない。
【0172】
本発明の好ましい実施形態が本明細書中に記載されており、本発明を実施するための、本発明者らが知る最良の形態を含む。これらの好ましい実施形態のバリエーションは、前述の記載を読めば、当業者に明らかになり得る。本発明者らは、当業者が必要に応じてこのようなバリエーションを使用することを予期し、また本発明者らは、本明細書中に具体的に記載されたもの以外の方法で、本発明が実施されることを意図する。従って、本発明は、適用法により許容されるように、本明細書に添付された特許請求の範囲に列挙された対象の全ての改変物及び均等物を含む。更に、上記要素の全ての可能なバリエーションでの上記要素の任意の組み合わせが、本明細書中に別途示されない限り、又はさもなくば文脈により明らかに矛盾しない限り、本発明により包含される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物の細胞におけるSPARCタンパク質の発現を阻害するための方法であって、該生物の細胞において、内因性SPARC RNAに結合し、SAPRCタンパク質発現を阻害する、阻害有効量の1以上のmiRNAを該生物に投与することを含む方法。
【請求項2】
miRNAが、pri−miRNA、pre−miRNA、ds miRNA、成熟miRNA、及びそれらの断片又は変異体からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
miRNAが、10ヌクレオチドから170ヌクレオチドの長さであり、且つSPARC mRNA3’非翻訳領域に融合されたレポーターの転写産物をコードするコンストラクトから発現されるレポーター活性を減少させる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
miRNAが、10から50ヌクレオチドの長さである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
miRNA標的配列が、SPARCであり、且つmiRNAが、配列番号1〜41及び44〜83からなる群から選択される任意の1以上の配列の相補的配列に、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
miRNA標的配列が、SPARCであり、且つmiRNAが、配列番号1〜41及び44〜83の1以上に少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
miRNAが、合成RNAであるか、又は単離された核酸によりコードされる、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
単離された核酸がベクターを更に含む、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
ベクターが、プラスミド、コスミド、ファージミド、ウイルス、及び人工染色体からなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ベクターが、1以上のin vivo発現制御エレメントを更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
in vivo発現制御エレメントが、プロモーター、エンハンサー、RNAスプライシングシグナル、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
単離された核酸が、生物の細胞内にトランスフェクトされる、請求項7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
miRNAが、合成されたものであり、ネイキッドRNAとして投与される、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
miRNAが、合成されたものであり、化学修飾RNAとして投与される、請求項7に記載の方法。
【請求項15】
合成miRNAが、ホスホロチオエート、ボラノホスフェート、2’−O−メチル、2’−フルオロ、PEG、末端逆方向dT塩基、2’tBDMS、2’−TOM、t’−ACE、LNA(ロックト核酸)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される化学的部分で修飾されている、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
miRNAが、合成されたものであり、リポソーム、ポリマーベースのナノ粒子、コレステロール結合体、シクロデキストラン複合体、ポリエチレンイミンポリマー若しくはタンパク質複合体中で、又はネイキッドmiRNA、ネイキッドDNA、ネイキッドLNAとして若しくはRISCとの複合体として、投与される、請求項7に記載の方法。
【請求項17】
miRNAが、合成されたものであり、病変組織に直接投与、静脈内投与、皮下投与、筋肉内投与、経鼻投与、腹腔内投与、経膣投与、肛門投与、経口投与、眼内投与又は髄腔内投与される、請求項7に記載の方法。
【請求項18】
miRNAが、癌、再狭窄、他の増殖性疾患、骨粗しょう症又は創傷治癒を患っている生物に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
(a)癌が、上皮内癌、異型過形成、癌種、肉腫、癌肉腫、肺癌、膵臓癌、皮膚癌、血液腫瘍、乳癌、脳腫瘍、結腸癌、膀胱癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、食道癌、胃癌、頭頸部癌、多発性骨髄腫、肝臓癌、白血病、リンパ腫、口腔癌、骨肉腫、卵巣癌、前立腺癌、精巣癌、及び甲状腺癌からなる群から選択され、
(b)再狭窄が、冠動脈再狭窄、大脳動脈再狭窄、頸動脈再狭窄、腎動脈再狭窄、大腿動脈再狭窄、末梢動脈再狭窄、又はそれらの組み合わせからなる群から選択され、そして
(c)他の増殖性疾患が、過形成、子宮内膜症、肥厚性瘢痕及びケロイド、増殖性糖尿病性網膜症、糸球体腎炎、増殖性、肺高血圧症、関節リウマチ、動静脈奇形、動脈硬化性プラーク、冠動脈疾患、創傷治癒の遅れ、血友病関節、癒着不能骨折、オスラー−ウィーバー症候群、乾癬、化膿性肉芽腫、強皮症、トラコーマ、月経過多、血管癒着、並びに乳頭腫からなる群から選択される、
請求項18に記載の方法。
【請求項20】
生物が、手術、化学療法、放射線治療、温熱療法、免疫療法、ホルモン療法及びレーザー療法からなる群から選択される1以上の癌治療を受けているヒトである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
生物が、手術、化学療法、放射線治療、温熱療法、免疫療法、ホルモン療法、レーザー療法、又はステント留置からなる1以上の抗増殖治療を受けているヒトである、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
生物がヒトである、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
生物の細胞における1以上のタンパク質の発現を阻害する方法であって、タンパク質が、クラスタリン、β鎖;クラスタリン、α鎖;N−カドヘリン;セサーニン1;コラーゲン、v型、α鎖;レニン、β鎖;レニン;及びサイトケラチンI、II型からなる群から選択され、且つ該方法が、該生物の細胞において結合してSAPRC発現を阻害する、阻害有効量の1以上のmiRNAを該生物に投与することを含む、方法。
【請求項24】
生物の細胞における1以上のタンパク質の発現を増加させる方法であって、タンパク質が、α−アクチン;hsp27;コラーゲン、I型、α−2鎖;ペルオキシレドキシン3;β−5チューブリン;p32、鎖からなる群から選択され、且つ該方法が、該生物の細胞において結合してSAPRC発現を阻害する、阻害有効量の1以上のmiRNAを該生物に投与することを含む、方法。
【請求項25】
生物の細胞における1以上のタンパク質の発現を調節する方法であって、タンパク質が
(a)以下のGenebankアクセション番号:NM_016619、NM_016323、NM_012294、NM_006393、NM_005609、NM_002462、NM_002346、NM_001955、NM_001548、NM_000909、BM930167、BM874773、BI560717、AW511255、AK098543、AI860360、AI760944;
(b)以下のマウスmRNAのヒト対応物:NM_133664、NM_011641、NM_010226、NM_008380、BB480262、AW909062;
(c)ヒトmiRNA:hsa−miR−542−5p、hsa−miR−186;及び
(d)以下のマウスmiRNAのヒト対応物:rno−miR−377、mmu−mir−377;
からなる群から選択され、
前記方法が、該生物の細胞において結合してSAPRC発現を阻害する、阻害有効量の1以上のmiRNAを該生物に投与することを含む、方法。
【請求項26】
癌、再狭窄、他の増殖性疾患、骨粗しょう症又は創傷治癒のための治療を必要とする患者に投与するための治療組成物であって、SPARC mRNAに結合してSPARCタンパク質の発現を阻害する有効量のmiRNAの該患者の細胞における発現のための単離された核酸を含む、治療組成物。
【請求項27】
miRNAが、pri−miRNA、pre−miRNA、ds miRNA、成熟miRNA、及びそれらの断片又は変異体からなる群から選択される、請求項26に記載の治療組成物。
【請求項28】
単離された核酸が、プラスミド、コスミド、ファージミド、ウイルス、及び人工染色体からなる群から選択されるベクターである、請求項27に記載の治療組成物。
【請求項29】
単離された核酸が、プロモーター、エンハンサー、RNAスプライシングシグナル、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される1以上のin vivo発現制御エレメントを更に含む、請求項28に記載の治療組成物。
【請求項30】
miRNAが、合成されたものであり、ネイキッドRNAとして投与される、請求項26に記載の治療組成物。
【請求項31】
miRNAが、合成されたものであり、化学修飾RNAとして投与される、請求項26に記載の治療組成物。
【請求項32】
合成miRNAが、ホスホロチオエート、ボラノホスフェート、2’−O−メチル、2’−フルオロ、末端逆方向dT塩基、PEG、2’tBDMS、2’−TOM、t’−ACE、LNA、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される化学的部分で修飾されている、請求項31に記載の治療組成物。
【請求項33】
miRNAが、合成されたものであり、リポソーム、ポリマーベースのナノ粒子、コレステロール結合体、シクロデキストラン複合体、ポリエチレンイミンポリマー若しくはタンパク質複合体中で、又はネイキッドmiRNAとして若しくはRISCとの複合体として、投与される、請求項26に記載の治療組成物。
【請求項34】
miRNAが、合成されたものであり、病変組織に直接投与、静脈内投与、皮下投与、筋肉内投与、経鼻投与、腹腔内投与、経膣投与、肛門投与、経口投与、眼内投与又は髄腔内投与される、請求項26に記載の治療組成物。
【請求項35】
miRNAが、10ヌクレオチドから170ヌクレオチドの長さであり、且つSPARC mRNA3’非翻訳領域に融合されたレポーターの転写産物をコードするコンストラクトから発現されるレポーター活性を減少させる、請求項34に記載の治療組成物。
【請求項36】
miRNAが、10から50ヌクレオチドの長さである、請求項35に記載の治療組成物。
【請求項37】
miRNA標的配列が、SPARCであり、且つmiRNAが、配列番号1〜41及び44〜83からなる群から選択される任意の1以上の配列の相補的配列に、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする、請求項26に記載の治療組成物。
【請求項38】
miRNAが、配列番号1〜41及び44〜83からなる群中の1以上の配列に少なくとも90%の同一性を有する、請求項26に記載の治療組成物。
【請求項39】
(a)癌が、上皮内癌、異型過形成、癌種、肉腫、癌肉腫、肺癌、膵臓癌、皮膚癌、血液腫瘍、乳癌、脳腫瘍、結腸癌、膀胱癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、食道癌、胃癌、頭頸部癌、多発性骨髄腫、肝臓癌、白血病、リンパ腫、口腔癌、骨肉腫、卵巣癌、前立腺癌、精巣癌、及び甲状腺癌からなる群から選択され、
(b)再狭窄が、冠動脈再狭窄、大脳動脈再狭窄、頸動脈再狭窄、腎動脈再狭窄、大腿動脈再狭窄、末梢動脈再狭窄、又はそれらの組み合わせからなる群から選択され、そして
(c)増殖性疾患が、過形成、子宮内膜症、肥厚性瘢痕及びケロイド、増殖性糖尿病性網膜症、糸球体腎炎、増殖性、肺高血圧症、関節リウマチ、動静脈奇形、動脈硬化性プラーク、冠動脈疾患、創傷治癒の遅れ、血友病関節、癒着不能骨折、オスラー−ウィーバー症候群、乾癬、化膿性肉芽腫、強皮症、トラコーマ、月経過多、血管癒着、並びに乳頭腫からなる群から選択される、
請求項26に記載の治療組成物。
【請求項40】
生物の細胞におけるSPARCタンパク質の発現を増加させるための方法であって、1以上の内因性miRNAに結合し、該内因性miRNAにより引き起こされるSPARCタンパク質発現の阻害を逆行させる、有効量の1以上の拮抗miRNAが生物に投与されることを含む方法。
【請求項41】
拮抗miRNAが、10ヌクレオチドから170ヌクレオチドの長さであり、且つSPARC mRNA3’非翻訳領域に融合されたレポーターの転写産物をコードするコンストラクトから発現されるレポーター活性を誘導する、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
拮抗miRNAが、10から50ヌクレオチドの長さである、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
拮抗miRNAが、配列番号1〜41及び44〜83並びにそれらの組み合わせからなる群由来の配列に少なくとも90%相補的である核酸配列[ここで、チミジン及びウラシルは、同じヌクレオチドとして扱われる]を有する、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
拮抗miRNAが、合成核酸であるか、又は単離された核酸によりコードされる、請求項41に記載の方法。
【請求項45】
単離された核酸がベクターを含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
ベクターが、プラスミド、コスミド、ファージミド、ウイルス、及び人工染色体からなる群から選択される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
ベクターが、1以上のin vivo発現制御エレメントを更に含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
in vivo発現制御エレメントが、プロモーター、エンハンサー、RNAスプライシングシグナル、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
単離された核酸が、生物の細胞内にトランスフェクトされる、請求項44に記載の方法。
【請求項50】
拮抗miRNAが、合成されたものであり、ネイキッド核酸として投与される、請求項44に記載の方法。
【請求項51】
拮抗miRNAが、合成されたものであり、化学修飾核酸として投与される、請求項44に記載の方法。
【請求項52】
合成拮抗miRNAが、ホスホロチオエート、ボラノホスフェート、2’−O−メチル、2’−フルオロ、末端逆方向dT塩基、PEG、2’tBDMS、又は2’−TOM、t’−ACE、LNA、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される化学的部分で修飾されている、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
拮抗miRNAが、合成されたものであり、リポタンパク質複合体、リポソーム、ポリマーベースのナノ粒子、コレステロール結合体、シクロデキストラン複合体、ポリエチレンイミンポリマー若しくはタンパク質複合体中で、又はネイキッドDNA、ネイキッドRNA若しくはLNAとして、投与される、請求項44に記載の方法。
【請求項54】
拮抗miRNAが、合成されたものであり、生物中の病変組織に、静脈内投与、皮下投与、筋肉内投与、経鼻投与、腹腔内投与、経膣投与、肛門投与、経口投与、眼内投与又は髄腔内投与される、請求項44に記載の方法。
【請求項55】
生物がヒト患者であり、拮抗物質が、癌、再狭窄、又は他の増殖性疾患、骨粗しょう症又は過剰な創傷治癒の治療又は予防のために患者に投与される、請求項44に記載の方法。
【請求項56】
(a)癌が、上皮内癌、異型過形成、癌種、肉腫、癌肉腫、肺癌、膵臓癌、皮膚癌、血液腫瘍、乳癌、脳腫瘍、結腸癌、膀胱癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、食道癌、胃癌、頭頸部癌、多発性骨髄腫、肝臓癌、白血病、リンパ腫、口腔癌、骨肉腫、卵巣癌、前立腺癌、精巣癌、及び甲状腺癌からなる群から選択され、
(b)再狭窄が、冠動脈再狭窄、大脳動脈再狭窄、頸動脈再狭窄、腎動脈再狭窄、大腿動脈再狭窄、末梢動脈再狭窄、又はそれらの組み合わせからなる群から選択され、そして
(c)他の増殖性疾患が、過形成、子宮内膜症、肥厚性瘢痕及びケロイド、増殖性糖尿病性網膜症、糸球体腎炎、増殖性、肺高血圧症、関節リウマチ、動静脈奇形、動脈硬化性プラーク、冠動脈疾患、創傷治癒の遅れ、血友病関節、癒着不能骨折、オスラー−ウィーバー症候群、乾癬、化膿性肉芽腫、強皮症、トラコーマ、月経過多、血管癒着、並びに乳頭腫からなる群から選択される、
請求項55に記載の方法。
【請求項57】
生物がヒト患者であり、手術、化学療法、放射線治療、温熱療法、免疫療法、ホルモン療法及びレーザー療法からなる群から選択される1以上の癌治療を受けている、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
生物がヒト患者であり、手術、化学療法、放射線治療、温熱療法、免疫療法、ホルモン療法、レーザー療法、又はステント留置からなる1以上の抗増殖治療を受けている、請求項56に記載の方法。
【請求項59】
生物がヒトである、請求項56に記載の方法。
【請求項60】
生物の細胞における1以上のタンパク質の発現を増加させる方法であって、タンパク質が、クラスタリン、β鎖;クラスタリン、α鎖;N−カドヘリン;セサーニン1;コラーゲン、v型、α鎖;レニン、β鎖;レニン;及びサイトケラチンI、II型からなる群から選択され、内因性miRNAによるSPARCタンパク質発現の阻害を逆行させるように1以上の内因性miRNAに結合する有効量の1以上の拮抗miRNAを該生物に投与することを含む、方法。
【請求項61】
生物の細胞における1以上のタンパク質の発現を減少させる方法であって、タンパク質が、α−アクチン;hsp27;コラーゲン、I型、α−2鎖;ペルオキシレドキシン3;β−5チューブリン;p32鎖からなる群から選択され、内因性miRNAによるSPARCタンパク質発現の阻害を逆行させるように1以上の内因性miRNAに結合する有効量の1以上の拮抗miRNAを該生物に投与することを含む、方法。
【請求項62】
癌、再狭窄、他の増殖性疾患、骨粗しょう症又は創傷治癒を患っている生物の予防又は治療のための治療組成物であって、内因性miRNAにより引き起こされるSPARCタンパク質発現の阻害を逆行させる、有効量の1以上の拮抗miRNAの、該生物の細胞における発現のための単離された核酸を含む治療組成物。
【請求項63】
拮抗miRNAが、合成核酸であるか、又は単離された核酸によりコードされる、請求項62に記載の治療組成物。
【請求項64】
単離された核酸が、プラスミド、コスミド、ファージミド、ウイルス、及び人工染色体からなる群から選択されるベクターである、請求項63に記載の治療組成物。
【請求項65】
単離された核酸が、プロモーター、エンハンサー、RNAスプライシングシグナル、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される1以上のin vivo発現制御エレメントを更に含む、請求項64に記載の治療組成物。
【請求項66】
拮抗miRNAが、10ヌクレオチドから170ヌクレオチドの長さであり、且つSPARC mRNA3’非翻訳領域に融合されたレポーターの転写産物をコードするコンストラクトから発現されるレポーター活性を増加させる、請求項64に記載の治療組成物。
【請求項67】
拮抗miRNAが、10から50ヌクレオチドの長さである、請求項62に記載の治療組成物。
【請求項68】
拮抗miRNAが、配列番号1〜41及び44〜83並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される1以上の配列に少なくとも90%相補的である、請求項66に記載の治療組成物。
【請求項69】
(a)癌が、上皮内癌、異型過形成、癌種、肉腫、癌肉腫、肺癌、膵臓癌、皮膚癌、血液腫瘍、乳癌、脳腫瘍、結腸癌、膀胱癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、食道癌、胃癌、頭頸部癌、多発性骨髄腫、肝臓癌、白血病、リンパ腫、口腔癌、骨肉腫、卵巣癌、前立腺癌、精巣癌、及び甲状腺癌からなる群から選択され、
(b)再狭窄が、冠動脈再狭窄、大脳動脈再狭窄、頸動脈再狭窄、腎動脈再狭窄、大腿動脈再狭窄、末梢動脈再狭窄、又はそれらの組み合わせからなる群から選択され、そして
(c)増殖性疾患が、過形成、子宮内膜症、肥厚性瘢痕及びケロイド、増殖性糖尿病性網膜症、糸球体腎炎、増殖性、肺高血圧症、関節リウマチ、動静脈奇形、動脈硬化性プラーク、冠動脈疾患、創傷治癒の遅れ、血友病関節、癒着不能骨折、オスラー−ウィーバー症候群、乾癬、化膿性肉芽腫、強皮症、トラコーマ、月経過多、血管癒着、並びに乳頭腫からなる群から選択される、
請求項66に記載の治療組成物。
【請求項70】
レポーター遺伝子が作動可能に連結された1以上のin vivo発現制御エレメントを含む単離された核酸であって、前記レポーター遺伝子がSPARC 3’非翻訳領域の全て又は一部の上流にあり、真核細胞への該単離された核酸のトランスフェクションにより、in vivo発現制御エレメントが、SPARC 3’非翻訳領域の上流のレポーターをコードするmRNAの産生をもたらす、単離された核酸。
【請求項71】
単離された核酸が、プラスミド、コスミド、ファージミド、ウイルス、及び人工染色体からなる群から選択されるベクターである、請求項70に記載の単離された核酸。
【請求項72】
1以上のin vivo発現制御エレメントが、プロモーター、エンハンサー、RNAスプライシングシグナル、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項71に記載の単離された核酸。
【請求項73】
レポーター遺伝子がルシフェラーゼタンパク質をコードする、請求項70に記載の単離された核酸。
【請求項74】
以下を含むSPARC発現モジュレーターの同定用キット:
(a)SPARC 3’非翻訳領域の全て又は一部の上流にクローン化されている第一のレポーター遺伝子に作動可能に連結された1以上のin vivo発現制御エレメントの第一のセットを有する第一の単離された核酸であって、真核細胞への前記第一の単離された核酸のトランスフェクションにより、in vivo発現制御エレメントの第一のセットが、SPARC 3’非翻訳領域の上流の第一のレポーターをコードするmRNAの産生をもたらす、第一の単離された核酸;
(b)前記第一のレポーター遺伝子に作動可能に連結された、(a)由来のin vivo発現制御エレメントの前記セットを含む第二の単離された核酸であって、真核細胞への前記第二の単離された核酸のトランスフェクションにより、in vivo発現制御エレメントが、前記第一のレポーター分子をコードするmRNAの転写をもたらす、第二の単離された核酸;及び
(c)第二のレポーター遺伝子に作動可能に連結された、1以上のin vivo発現制御エレメントの第二のセットを含む第三の単離された核酸であって、真核細胞への該単離された核酸のトランスフェクションにより、in vivo発現制御エレメントの前記第二のセットが、前記第二のレポーターの発現をもたらす、第三の単離された核酸。
【請求項75】
以下の工程を含むSPARC発現モジュレーターを同定する方法:
(a)SPARC 3’非翻訳領域の全て又は一部の上流にクローン化されているレポーター遺伝子に作動可能に連結された1以上のin vivo発現制御エレメントを含む単離された核酸で、真核細胞をトランスフェクトする工程であって、in vivo発現制御エレメントが、SPARC 3’非翻訳領域の上流のレポーターをコードするmRNAの産生をもたらす工程;及び
(b)前記レポーター遺伝子に作動可能に連結された前記1以上のin vivo発現制御エレメントを含む単離された核酸で、他の真核細胞をトランスフェクトする工程であって、該発現制御エレメントが、レポーター分子をコードするmRNAの転写をもたらす工程;
(c)(a)及び(b)からのトランスフェクトされた細胞を、候補発現モジュレーターと接触及び偽接触させる工程;並びに
(d)(a)及び(b)からのトランスフェクトされた細胞を候補発現モジュレーターと接触させる場合及び接触させない場合の該トランスフェクトされた細胞におけるレポーター遺伝子活性を比較する工程。
【請求項76】
(d)において比較されるデータの標準化のための第二のレポーターを発現する第二のレポートコンストラクトを用いた、(a)及び(b)における細胞のコトランスフェクションを更に含む、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
レポーター発現コンストラクト中のSPARC 3’非翻訳領域を変異させる工程、前記変異させたレポーター発現コンストラクトを真核細胞にトランスフェクトする工程、及びトランスフェクトされた細胞を候補発現モジュレーターと接触させる場合及び接触させない場合の、変異させた及び変異させていないレポーター発現コンストラクトの発現からもたらされるレポーター遺伝子活性を比較する工程を更に含む、請求項75に記載の方法。
【請求項78】
請求項75に記載の方法により同定されたSPARC発現モジュレーター。
【請求項79】
前記SPARC発現モジュレーターが、小分子、LNA、核酸、ペプチド核酸、miRNA又はポリペプチドである、請求項78に記載のSPARC発現モジュレーター。
【請求項80】
増殖性疾患の進行、増殖性疾患の治療への応答、又はそれらの組み合わせのためのバイオマーカーとしてのmiRNAの使用。
【請求項81】
miRNAが、RT−PCR、マイクロアレイ、非PCR核酸検出アッセイ又は質量分析により検出される、請求項80に記載の方法。

【図7】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2011−515078(P2011−515078A)
【公表日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−549777(P2010−549777)
【出願日】平成21年3月2日(2009.3.2)
【国際出願番号】PCT/US2009/035660
【国際公開番号】WO2009/111375
【国際公開日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【出願人】(508235494)アブラクシス バイオサイエンス リミテッド ライアビリティー カンパニー (22)
【Fターム(参考)】