説明

V溝形状測定方法および装置

【課題】回転テーブル上の被測定物のV溝形状の特性値を正確かつ確実に測定する。
【解決手段】測定子方向一定制御工程と、回転テーブル半径一定倣い制御工程と、2面接触倣い制御工程とを組み合わせ、被測定物のV溝を構成する2面に、常に倣いプローブ22の測定子24を接触させるV溝回転テーブル倣い制御工程を行い、プローブ22の倣い進行方向を、プローブ22の測定子24の中心位置の軌跡から求めて、倣い制御処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、V溝形状測定方法および装置に関し、特に三次元座標測定機を用いて、ウォームギヤや雄ねじ、ねじ穴等のV溝が螺旋状に形成された被測定物のV溝のピッチ偏差や半径偏差等の特性値を測定する際に用いるのに好適なV溝形状測定方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ワーク等の被測定物の立体的形状を高精度に測定する装置として、三次元座標測定機(以下、「三次元測定機」と呼ぶ。)が知られている。この三次元測定機は、表面が平滑な平面となるように研磨された、例えば斑糲岩等からなる定盤と、この定盤の前後方向(例えば、Y軸方向)へ移動自在に設けられた門形フレームと、この門形フレームの水平ビームに沿って左右方向(例えば、X軸方向)へ移動自在に設けられたスライダとを備えている。
【0003】
また、三次元測定機は、スライダに上下方向(例えば、Z軸方向)へ昇降自在に設けられた昇降軸と、この昇降軸の下端にプローブホルダを介して取り付けられ、先端に測定子が形成された座標測定用のプローブとを備えている。
【0004】
三次元測定機は、このように構成されることにより、定盤上に被測定物であるワークを載置した後に、プローブを三次元方向(X,Y,Z軸方向)へ移動させながらワークの測定部位に測定子を順次当接させ、各当接点においてプローブの各軸方向の座標値を図示しないスケールから読み取ることができる構造となっている。そして、読み取ったこれらの座標値を演算することにより、ワークの寸法や角度等を高精度に測定することが可能である。
【0005】
このような三次元測定機を用いてねじの形状を測定する方法としては、代表的なものとして、例えばねじ穴の中心座標を求める方法が知られている。また、このような三次元測定機を用いて、ワークの形状を測定する際には、座標測定用のプローブを移動させながら、ワークの座標を順次倣い測定する必要がある。
【0006】
このような倣い制御を、例えばコンピュータを用いて自動的に行う方法として、回転テーブルを使用しない場合については、任意平面を基準面とし、この基準面からの高さを一定に保ちつつワークの輪郭に沿って倣う制御方法(以下、「高さ一定倣い制御」と呼ぶ。)と、回転テーブルを使用した場合については、任意の直線とこの直線からの距離(すなわち、半径)の指定で決定される円筒面内をワークの輪郭に沿って倣う制御方法(以下、「半径一定倣い制御」と呼ぶ。)とが実用化されている。
【0007】
また、同様に、回転テーブルを使用した場合について、回転テーブルを使用しない場合のプローブの3軸制御倣いに、回転テーブルによる1軸を追加して、ワークの測定基準線に対するプローブの方向を一定に保ちつつ(以下、「測定子方向一定倣い制御」と呼ぶ。)4軸同時制御による倣いを行うことも知られている。
【0008】
この方法によれば、円筒カムのような回転テーブルを使用しない場合に、ワークとプローブとが干渉するため、一度で測定できないような場合でも、プローブの姿勢(方向)を変更せずに一度でワーク全周の測定が可能となる。また、一度で測定することが不可能なインペラやプロペラの羽根のような場合にも、プローブの姿勢変更回数を減らすことができる。
【0009】
さらに、近年における測定対象の拡大に伴って、例えば下記特許文献1に開示されているように、V字形状の溝(以下、「V溝」と呼ぶ。)が螺旋状に形成されたウォームギヤや一般的な雄ねじ、あるいはワークに形成されたねじ穴等のねじのピッチの偏差(例えば、最大偏差)や、軸方向に重畳したねじ山の平面軌跡の半径方向の偏差(例えば、最大偏差)の測定を行うことができるV溝形状測定方法が知られている。
【0010】
【特許文献1】特許第3433710号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記特許文献1に開示されているV溝形状測定方法では、ワーク座標系のワーク軸心(以下、「ワーク第3軸」と呼ぶ。)ベクトルと、測定子の中心からワーク第3軸へ垂直に下ろしたベクトルの単位ベクトルとの外積によって、倣いプローブの進行方向ベクトルを求めていた。
【0012】
このため、図21に示すように、例えば図中矢印G方向に回転する回転テーブル101の回転軸102に平行な部分L1のワークWのV溝103の形状は、倣いプローブ104の進行方向(図中矢印H方向)がV溝103に直角方向となってしまうために測定できなくなってしまうことがあるという問題があった。
【0013】
また、この回転軸102と平行に近づく部分(例えば、ねじにおいてはリードが大きい場合に相当する。)L2についても、倣いプローブ104の進行方向の倣い速度が遅くなってしまうため、正確に測定できなくなってしまうことがあるという問題があった。
【0014】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、ウォームギヤや一般的な雄ねじ、ねじ穴などのV溝形状の特性値を正確かつ確実に測定することができるV溝形状測定方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係るV溝形状測定方法は、V溝が螺旋状に形成された被測定物を回転テーブルに固定して、この回転テーブルにより前記被測定物を回転させながら三次元測定機の位置測定用の倣いプローブを用いて前記被測定物の前記V溝を倣い測定するV溝形状測定方法であって、前記三次元測定機のマシン座標系から見て、前記被測定物の原点から前記倣いプローブの測定子までの方向ベクトルを前記回転テーブルのテーブル面に投影してなるベクトルを一定に保つように制御する測定子方向一定制御工程と、前記回転テーブルの軸心と、この軸心からの距離である半径の指定で決定される円筒面内を、前記被測定物の輪郭に沿って倣うように制御する回転テーブル半径一定倣い制御工程と、前記被測定物の前記V溝を構成する2面に、前記倣いプローブの前記測定子を接触させるように制御する2面接触倣い制御工程とを組み合わせることにより、前記被測定物の前記V溝の前記2面に、常時前記倣いプローブの前記測定子を接触させるように制御するV溝回転テーブル倣い制御を含み、前記V溝回転テーブル倣い制御工程を、前記倣いプローブの位置ベクトル、前記位置ベクトルの変位量、および前記回転テーブルの回転角をサンプリングして前記測定子の中心位置の軌跡を記憶する第1ステップと、前記回転角に基づいて、前記被測定物の軸心に垂直な方向のアプローチ逆方向ベクトルを算出する第2ステップと、前記回転テーブルが前記回転角で静止しているときの前記倣いプローブの速度ベクトルを算出する第3ステップと、前記第1ステップにて記憶した前記倣いプローブの前記測定子の中心位置の軌跡に基づいて、前記倣いプローブの倣い進行方向を示す倣い進行方向ベクトルを決定する第4ステップと、前記被測定物の軸心から見た前記倣いプローブの前記速度ベクトルによる前記回転テーブルの角速度を算出する第5ステップと、前記回転角と前記位置ベクトルとの位置関係から、制御誤差による前記回転角の目標値からの進みや遅れを調整して補正角速度を決定し、この補正角速度により前記角速度を補正する第6ステップと、前記位置ベクトルおよび前記回転角によって、前記補正角速度の動きに追従する追従速度ベクトルを算出する第7ステップと、前記追従速度ベクトルと前記速度ベクトルのベクトル和を前記倣いプローブの速度指令とするとともに、前記角速度を前記補正角速度によって補正した値を前記回転テーブルの速度指令とし、前記倣い進行方向ベクトルにより示される倣い進行方向に倣って前記倣いプローブを移動する第8ステップとにより行うことを特徴とする。
【0016】
前記第1ステップでは、例えば前記測定子の中心位置の軌跡を、所定のサンプリング時間およびサンプルピッチにおける前記測定子の1点目の中心位置からN点目の中心位置までの中心位置の軌跡のまとまりからなる中心位置軌跡群として複数個記憶する。
【0017】
また、前記第1ステップでは、例えば前記倣いプローブの倣い速度が、前記測定子の前記サンプリング時間あたりの移動量が前記サンプルピッチ未満となる速度である場合は、前記移動量が前記サンプルピッチを超えた時点で前記測定子の中心位置を記憶する。
【0018】
さらに、前記第1ステップでは、例えば前記倣いプローブの倣い速度が、前記測定子の前記サンプリング時間あたりの移動量が前記サンプルピッチ以上となる速度である場合は、前記サンプリング時間ごとに前記測定子の中心位置を記憶する。
【0019】
また、前記第4ステップでは、例えば前記第1ステップにて記憶された複数個の前記中心位置軌跡群のうち、前記測定子の現在位置の直前の中心位置軌跡群における前記測定子の1点目の中心位置からN点目の中心位置に向かう直線の方向を前記倣い進行方向ベクトルとして決定する。
【0020】
また、前記第4ステップでは、例えば前記第1ステップにて記憶された複数個の前記中心位置軌跡群のうち、前記測定子の現在位置の直前の中心位置軌跡群における前記測定子の1点目からN点目のすべての中心位置から3次曲線による近似を行い、前記N点目における前記3次曲線の接線の方向を前記倣い進行方向ベクトルとして決定する。
【0021】
前記V溝回転テーブル倣い制御工程を行うに先立って、例えば前記倣いプローブの仮倣い進行方向の指定を受け付ける仮倣い進行方向指定受付工程をさらに含み、前記V溝回転テーブル倣い制御工程は、例えば前記仮倣い進行方向指定受付工程にて前記仮倣い進行方向の指定が受け付けられてから所定時間経過後に行われる。
【0022】
前記V溝回転テーブル倣い制御工程を開始する前に、例えば前記被測定物の前記V溝の前記2面に、前記倣いプローブの前記測定子を接触させるためのアプローチ処理工程を行う。
【0023】
また、前記アプローチ処理工程を、例えば前記倣いプローブの変位を一定に保つための変位補正ベクトルと、前記測定子を前記V溝の前記2面に接触させるための2面接触ベクトルとの和により求めた相対速度ベクトルによって、前記被測定物と前記倣いプローブを相対移動させ、前記倣いプローブの前記被測定物に対するアプローチ方向と逆方向のアプローチ逆方向ベクトルと前記被測定物の軸心に対するベクトルとで作られる平面に、プローブ法線ベクトルを投影したベクトルと、前記アプローチ逆方向ベクトルとのなす角度が所定値以内となったときに、前記2面が接触したと判定して前記倣いプローブを停止することにより行うようにした。
【0024】
また、例えば前記アプローチ処理工程時における前記倣いプローブの前記アプローチ方向の処理と、前記V溝回転テーブル倣い制御工程時における前記倣いプローブのアプローチ方向の処理とを共通としてもよい。
【0025】
本発明に係るV溝形状測定装置は、V溝が螺旋状に形成された被測定物が固定される回転テーブルと、前記被測定物の表面と係合する測定子を有する倣いプローブと、この倣いプローブを前記被測定物の表面に沿って移動させるための駆動機構と、前記倣いプローブの位置を検出するための位置検出手段と、前記いずれかの方法によって、前記倣いプローブの移動速度および進行方向、ならびに前記回転テーブルの回転状態を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0026】
前記倣いプローブは、例えば径の異なる複数の測定子を備え、前記V溝の大きさに合わせて各測定子が選択可能に設けられている。
【0027】
また、前記回転テーブルは、例えば三次元測定機に組み込まれており、前記三次元測定機に備えられた座標測定用プローブが、前記倣いプローブである。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、螺旋状に形成された被測定物のV溝のピッチや半径の偏差などの特性値を正確かつ確実に測定することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、添付の図面を参照して、本発明に係るV溝形状測定方法および装置の好適な実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るV溝形状測定方法を実現する三次元測定機の例を示す正面図、図2は同三次元測定機を示す平面図、図3は図2のA−A’断面図である。
【0030】
図1〜図3に示すように、本実施形態に係る三次元測定機10は、座標測定用のプローブ22を備え、定盤12に形成された凹部12Aの中に回転テーブル30を設置してなる。また、この三次元測定機10は、定盤12の前後方向へ移動自在に設けられた門形フレーム14と、この門形フレーム14の水平ビーム15に沿って左右方向へ移動自在に設けられたスライダ16と、このスライダ16に上下方向へ昇降自在に設けられた昇降軸18とを備える。
【0031】
そして、先端に測定子24が形成されたプローブ22は、この昇降軸18の下端にプローブホルダ20を介して取り付けられている。したがって、この三次元測定機10は、この回転テーブル30のチャック32にワーク(例えば、ウォームギヤ)Wを固定して、この回転テーブル30によりワークWを回転させながら、上述した座標測定用のプローブ22を用いて測定子24をワークWのV溝に接触させ、回転するワークWのV溝を倣い測定する際に用いられる。
【0032】
なお、図1および図2において、マスタボールMは、プローブ22に設けられた測定子24の直径の違いを校正するために、定盤12の隅に立設されたポールP上に固定された正確な直径の真球からなる。また、制御装置40(図1参照)は、本発明に係るV溝形状測定方法のV溝回転テーブル(以下、「RT」と呼ぶ。)倣い制御処理を行うとともに、これによって得られるワーク(例えば、ねじ)WのV溝の軌跡のデータ(三次元データ)を測定値データとして取り込み、この測定値データの解析処理を行って、ワークWのピッチ偏差や半径偏差等の特性値を求める装置である。
【0033】
この制御装置40は、例えば制御装置40全体の制御を司る中央処理ユニット40Aと、制御装置40にて扱うデータなどの情報を記憶する記憶装置40Bと、プローブ22を操作するためのオペレータの操作入力を受け付けるジョイスティック40Cと、測定値データや記憶装置40Bに記憶された情報に基づく画像等を表示するモニタ40Dと、数値データや画像等を印刷するプリンタ40Eとからなる。そして、本実施形態に係る各種の処理を行うための各種プログラムは、上述した記憶装置40Bにあらかじめ格納されている。
【0034】
なお、この三次元測定機10の回転テーブル30の回転中心や、その直下の定盤12(必要な場合のみ)には、図3に示すように、穴30Aが開けられている。これにより、本実施形態の三次元測定機10は、例えば長尺のワークWの下端をこの穴30Aに挿入固定することによって、例えば図4に示すように、ワークWの上方にのみねじが切られているようなワークWのねじ山の有効測定範囲Lを、三次元測定機10のプローブ22の可動範囲内に確保することができる。
【0035】
これに対して、従来の三次元測定機では、定盤上の寸法如何によって、回転テーブルに穴を開けることなく、その上にワークWを固定した場合には、測定範囲がワークWの上半分であるような被測定物であっても、プローブ22の上下可動範囲の半分しか使うことができずに、ねじ山を完全に測定し切れない場合があった。
【0036】
上述したプローブ22は、図5に示すように、例えば上方から見て略H状に形成されたホルダ20の片側側面に3個並設され、例えばその先端の測定子24の直径を、0.3mm、0.6mm、1mmのように変えることによって、測定対象のV溝の大きさに合わせて適切なサイズの測定子24を選択できる構造となっている。
【0037】
ここで、ワークWの測定に使用する座標系の関係を図6に示す。図6に示すように、第1座標系(Xs,Ys,Zs)は、三次元測定機10に設けられたスケール(図示せず)の絶対原点Osを原点とする三次元測定機10のスケール座標系であり、第2座標系(Xm,Ym,Zm)は、このスケール座標系をマスタボールMの中心に平行移動したマシン座標系である。
【0038】
また、第3座標系(Xt,Yt,Zt)は、三次元測定機10の回転テーブル30の回転角θが0のときの回転テーブル30のT座標系であり、第4座標系(Xtθ,Ytθ,Ztθ)は、このT座標系を回転テーブル30の回転角θだけ回転させたテーブル座標系である。
【0039】
さらに、第5座標系(Xw,Yw,Zw)は、ワークWのワーク座標系である。なお、上記スケール座標系とマシン座標系は厳密には異なる座標系であるが、マシン座標系はスケール座標系を平行移動しただけの座標系であるので、以下の説明においては、両者をともにマシン座標系と呼ぶこととする。本実施形態に係る三次元測定機10では、基本的にT座標系で速度データを算出し、算出した速度データをマシン座標系に戻して制御を行うようにしている。
【0040】
次に、図7を参照して、本実施形態に係る三次元測定機10における被測定物の測定処理手順について詳細に説明する。図7は、本発明の一実施形態に係るV溝形状測定方法の全体的な測定処理手順の例を示すフローチャートである。なお、以降において、三次元測定機10の具体的な制御や処理については、特に明記しない限り制御装置40により行われることとする。また、本発明に特に関連する部分以外は、説明を省略する場合があることとし、数値やデータの演算方法や数式等については、上述した特許文献1に開示されている公知の演算方法や数式等を利用することが可能であるため、説明が冗長になるのを避けるべく、省略することとする。
【0041】
図7に示すように、測定に際して、まず、ワークWを回転テーブル30上に載せ、チャック32に載せられたワークWを固定する(ステップS100)。次に、オペレータがジョイスティック40Cを操作することによりプローブ22を移動して、測定に使用する測定子24でマスタボールMを両側から測定することによって測定子24の直径を算出し、複数の測定子24間の差を調整する(ステップS101)。
【0042】
そして、ジョイスティック40Cを操作してプローブ22を移動し、図8に示すように、例えばチャック32に固定されたワークWの上下3点ずつ、合計6点の座標を測定して、仮のワーク座標系Zw1を設定する(ステップS102)。
【0043】
ここで、仮のワーク座標系におけるX軸Xw1とY軸Yw1は、任意方向とすることができる。この仮のワーク座標系は、本発明に係るV溝形状測定方法における制御を実施する際に、あらかじめプローブ22の測定子24をワークWの表面近傍に近付けるためのものであり、多少の誤差を含んでいてもよい。
【0044】
次いで、設定した仮のワーク座標系Zw1に対して、三次元測定機10のV溝ポイント測定機能で、図9〜図11に示すように、測定子24をワークWに対してアプローチさせて、ワークWのV溝の上下2面に測定子24を正確に接触させるアプローチ処理(その1)を行い、例えばワークWのV溝を上下6点測定して円筒処理演算を行って、正確なワーク座標系Zwを確立する(ステップS103)。
【0045】
このステップS103にて行われるアプローチ処理(その1)は、プローブ22がワークWにアプローチしたときに、測定子24がV溝の上下2面に接するとは限らないために行うものであり、このアプローチ処理(その1)に際して、例えば回転テーブル30は回転しないように制御する。
【0046】
なお、例えば上述したマシン座標系の一軸(例えば、X軸)方向にプローブ22をアプローチする場合は、プローブ22の他の軸(例えば、Y軸)方向をクランプすることによって摩擦の影響を排除することができ、半径方向成分の測定精度を高めることが可能となる。
【0047】
ステップS103でのアプローチ処理(その1)の後、確立した正確なワーク座標系Zwに対して、上記ステップS103での処理と同様に、図9〜図11に示したように、測定子24をワークWに対してアプローチさせて、ワークWのV溝の上下2面に正確に接触させる(ステップS104)。
【0048】
このステップS104でのアプローチ処理(その2)終了後、プローブ22の軌跡が未完成であるため、プローブ22の倣い進行方向を仮に指定するための仮倣い進行方向の指定を受け付け(ステップS105)、所定時間(例えば、0.5秒)が経過するまで待って(ステップS106のN)、所定時間が経過したら(ステップS106のY)、図12に示すように、V溝RT倣い制御処理を行いつつ測定を行う(ステップS107)。
【0049】
そして、このステップS107でのV溝RT倣い制御処理を行っている際に、制御装置40の中央処理ユニット40Aは、測定値データに基づき、測定子24が測定終了位置に到達したか否かを判断する(ステップS108)。測定子24が測定終了位置に到達していないと判断した場合(ステップS108のN)は、上記ステップS107でのV溝RT倣い制御処理を続行する。
【0050】
一方、測定子24が、例えば図13に示すように、測定終了位置(図13においては、高さZ=Zhの位置)に到達したと判断した場合(ステップS108のY)は、測定終了位置に到達した時点でプローブ22を後退させる(ステップS109)。
【0051】
こうして、上記ステップS107でのV溝RT倣い制御処理にて測定したV溝の軌跡のデータ(三次元データ)を測定値データとして取り込んだ後に、制御装置40にてこの測定値データに対するデータ解析を行うことによって、ワークWのピッチ偏差や半径偏差等の特性値を求め(ステップS110)、本フローチャートによる一連の測定処理を終了する。
【0052】
なお、上記ステップS104におけるアプローチ処理(その2)は、具体的には、図14に示すような手順に従って行われる。図14は、本発明の一実施形態に係るV溝形状測定方法のアプローチ処理手順の例を示すフローチャートである。
【0053】
すなわち、図14に示すように、まず、制御装置40によって、ワークWが固定された回転テーブル30の現在の回転角θを読み込む(ステップS200)。そして、ワーク座標系で与えられたアプローチ方向ベクトルQ1をT座標系の値に変換し(回転角θ≠0でも可)、さらにワーク座標系のワーク軸心(以下、「第3軸」と呼ぶ。)に垂直となるアプローチ逆方向ベクトルQu(例えば、図9参照)を求める(ステップS201)。ここで、回転テーブル30の回転軸とワーク座標系の第3軸が傾いていてもよい。
【0054】
具体的には、まず、ワーク座標系で与えられたアプローチ方向ベクトルQ1に、回転テーブル30の回転角がθのときに、テーブル座標系をT座標系に変換するための座標変換マトリックスMを乗ずることによって、ベクトルQ2を求める。そして、求めたベクトルQ2とT座標系でのワーク第3軸ベクトルgθとの外積であるベクトルQ3を求める。
【0055】
次に、求めたベクトルQ3からワーク第3軸ベクトルgθと直角なベクトルQを求め、このベクトルQを単位ベクトル化して、アプローチ逆方向ベクトルQuとする。
【0056】
このベクトルQuをアプローチ逆方向とすることにより、ワーク軸と回転テーブル30の回転軸が傾いていても、あるいは回転テーブル30が基準値(例えば、回転角θ=0°)以外の角度から回転を開始しても、いずれの場合でもワークWへのアプローチ処理とV溝RT倣い処理が可能となる。
【0057】
なお、アプローチ処理に際しては、上記ステップS201にてベクトルQ=ベクトルQ2とし、アプローチ逆方向ベクトルQuを求めるようにしてもよい。
【0058】
次いで、図9に示したように、プローブ22を現在位置からアプローチ方向Qa(=−Qu)へ移動させ(ステップS202)、図10に示したように、プローブ22の測定子24がワークWに接触した後に、その変位量が基準値(例えば1mm)を超えた時点でプローブ22を停止させる(ステップS203)。
【0059】
そして、停止させたプローブ22の先端に設けられた測定子24の位置ベクトルX、およびその位置ベクトルXの変位量ΔXをサンプリングして記憶装置40Bに記憶する(ステップS204)。また、図10および図11に矢印で示したように、測定子24がワークWのV溝の斜面に沿って倣うように、プローブ22の変位補正ベクトルVeに2面接触ベクトルVhを加えてプローブ22の速度ベクトルVを算出し、速度出力を行う(ステップS205)。
【0060】
ここで、プローブ22の変位を一定に保つための変位補正ベクトルVe(T座標系)は、次のようにして計算する。まず、定常状態における摩擦等のオフセットを打ち消すための値Iを求め、この値Iを用いて、変位補正ベクトルVeを求める。
【0061】
また、2面接触ベクトルVhは、ワークWのV溝の2面に接触するためのT座標系のベクトルであり、次のようにして求める。すなわち、まず、プローブ22の法線ベクトルEuとアプローチ逆方向ベクトルQuのズレを補正するためのズレ補正ベクトルhを求める。
【0062】
そして、求めたズレ補正ベクトルhを用いて、ワーク第3軸方向ベクトルhsを求める。このワーク第3軸方向ベクトルhsを用いて、2面接触ベクトルVhを求める。
【0063】
その後、プローブ22の速度ベクトルVを算出すると同時に、アプローチ逆方向ベクトルQuとワーク第3軸で作る平面内で、アプローチ逆方向ベクトルQuとプローブ法線ベクトルEuのなす角度αを算出する(ステップS206)。
【0064】
そして、上記角度αが所定値、すなわち例えば0.5°以内となったか否かを判定する(ステップS207)。角度αが所定値以内ではないと判定した場合(ステップS207のN)は、上記ステップS204に移行して、プローブ22の移動を続ける。
【0065】
一方、角度αが所定値以内であると判定した場合(ステップS207のY)は、図15に示すように、具体的には、例えば一面接触時において、ねじ山の角度と同じ60°である角度αが2面接触により0.5°以内(以下)になったと判断されるときには、2面接触と判定してプローブ22を停止し(ステップS208)、V溝ポイント出力を発生して、本フローチャートによる一連のアプローチ処理(その2)を終了する。
【0066】
また、このアプローチ処理(その2)に続く、図7のステップS107のV溝RT倣い処理は、例えば図16に示すような手順にしたがって行われる。図16は、本発明の一実施形態に係るV溝形状測定方法のV溝RT倣い制御処理手順の例を示すフローチャートである。
【0067】
すなわち、図16に示すように、まず、プローブ22(測定子24)の位置ベクトルX、その変位量ΔX、および回転テーブル30の回転角θをサンプリングして、測定子24の中心位置の軌跡を記憶する(ステップS300)。
【0068】
ここでは、例えばあらかじめ設定された2ミリ秒のサンプリング時間で0.01mmのサンプルピッチ、およびサンプルピッチをサンプリング時間で除して設定された5mm/秒のプローブ22の倣い速度により、図17に示すように、測定子24の1点目の中心位置Q1からN点目の中心位置QNまでの中心位置の軌跡のまとまりからなる中心位置軌跡群を複数個記憶することによって、測定子24の中心位置の軌跡を記憶する。
【0069】
なお、上記ステップS300では、例えばプローブ22の倣い速度が、測定子24のサンプリング時間あたりの移動量がサンプルピッチ未満となる速度である場合は、この移動量がサンプルピッチを超えた時点で測定子24の中心位置を記憶する。この場合、上述したように倣い速度が5mm/秒であるため、サンプリング時間あたりにプローブ22が移動する移動量をサンプルピッチとする。
【0070】
このようにすれば、倣い速度が低速のとき(例えば、5mm/秒未満)でも、測定子24の中心位置の軌跡の長さとして、最低限0.2mmを確保することができる。また、この軌跡の長さは、各中心位置の個々のサンプルピッチで決定するため、最小軌跡長さを確保することができる。そして、算出される軌跡の長さは、中心位置Q1と中心位置QNの最短距離ではなく、折れ線のように繋がった各サンプルピッチの総和となる。
【0071】
また、上記ステップS300では、例えばプローブ22の倣い速度が、測定子24のサンプリング時間あたりの移動量がサンプルピッチ以上となる速度である場合は、サンプリング時間ごとに測定子24の中心位置を記憶する。
【0072】
次に、図14のステップS201で説明したのと同様な方法で、回転テーブル30の回転角θより、ワーク第3軸Zwに垂直なアプローチ逆方向ベクトルQuを算出する(ステップS301)。
【0073】
そして、基本速度ベクトルVO、変位補正ベクトルVe、半径補正ベクトルVr、および2面接触ベクトルVhを加算して、回転テーブル30が回転角θで静止しているときのプローブ22の速度ベクトルVを算出する(ステップS302)。
【0074】
次に、上記ステップS300にて記憶した測定子24の中心位置の軌跡に基づいて、プローブ22の倣い進行方向を示す倣い進行方向ベクトルPを決定する(ステップS303)。このステップS303では、例えばステップS300にて記憶した複数個の中心位置軌跡群のうち、測定子24の現在位置の直前の中心位置軌跡群における測定子24の1点目の中心位置Q1からN点目の中心位置QNへと向かう直線の方向を倣い進行方向ベクトルPと決定する。この場合、測定子24の中心位置Q1は、サンプリングして記憶したN個の中心位置の中で最も古い中心位置を指す。
【0075】
また、このステップS303においては、上記ステップS300にて記憶した複数個の中心位置軌跡群のうち、測定子24の現在位置の直前の中心位置軌跡群における測定子24の1点目からN点目のすべての中心位置(Q1〜QN)から3次曲線による近似を行い、N点目における3次曲線(例えば、3次スプラインなど)の接線の方向を倣い進行方向ベクトルPと決定するようにしてもよい。
【0076】
なお、上述したT座標系の変位補正ベクトルVeおよび2面接触ベクトルVhは、図14のステップS205で説明したものと同じ方法で計算される。また、変位補正ベクトルVeの計算に際しては、値I=0として計算を簡略化することもできる。
【0077】
さらに、T座標系の半径補正ベクトルVrは、次のようにして計算する。まず、ワークWに対するプローブ22のV溝の2面接触終了までの処理は、上述したアプローチ処理と同様である。そして、制御装置40が、上記ステップS208でのプローブ法線ベクトルEuとアプローチ逆方向ベクトルQuの角度αが0.5°以下となったときの測定子24の位置Pt(プローブ22の中心ベクトルPt)を取り込み、同時に位置PtとZ軸の距離であるV溝RT倣い時の半径rを求めてT座標系値へ変換し、このV溝RT倣い時の半径rを用いて、半径補正ベクトルVrを求める。
【0078】
このように、プローブ22の速度ベクトルVを求める際に半径補正ベクトルVrを加えれば、半径偏差が減少し高精度な測定が可能である。なお、プローブ22の速度ベクトルVを求める際に上記半径補正ベクトルVrを省略し、基本速度ベクトルVOと変位補正ベクトルVeと2面接触ベクトルVhとの三者の和により求めることも可能である。
【0079】
こうして上記ステップS302にて速度ベクトルVを算出し、上記ステップS303にて倣い進行方向ベクトルPを決定した後、ワーク軸心から見た、速度ベクトルVによる回転テーブル30の角速度(以下、「ワーク角速度」と呼ぶ。)ωwを算出し、回転角θと位置ベクトルXによる位置関係から回転角θの進みや遅れを調整して、補正角速度Δωを決定する(ステップS304)。
【0080】
具体的には、アプローチ処理で2面接触したときのT座標系のプローブ22の中心ベクトルPtを使用して、RT倣い開始前に、図18に示すような接線方向ベクトルCを決定しておく。すなわち、まず、T座標系でのワーク第3軸ベクトルgθと、原点ベクトルOwθと、この原点ベクトルOwθとより、プローブ22の中心ベクトルPtへ向かうベクトルAを求める。
【0081】
次に、測定子24中心よりワーク第3軸へ垂直に下ろしたベクトルCrを求める。こうして求めたこのベクトルCrをXt−Yt面に投影してベクトルCtを求め、さらにπ/2回転させてベクトルCを求め、その単位ベクトルCuを求める。
【0082】
そして、V=rωの関係より、ワークWとプローブ22との相対速度VによるワークWの角速度ωwを求め、図19に示すような関係から、ワークWとプローブ22との位置関係を保つための補正角速度Δωを算出する。この図19において、ベクトルCrt=0は、アプローチ処理後に求めたプローブ22の中心からワーク第3軸Zwに下ろした垂線ベクトルであり、ベクトルCは、ベクトルCrt=0をπ/2進ませたベクトルである。
【0083】
また、ベクトルCrは、サンプリングごとに求まるプローブ22の中心からワーク第3軸に下ろした垂線ベクトルであり、これらは、いずれもXt−Yt面内のベクトルである。さらに、aは、プローブ22の中心からワーク第3軸に下ろした垂線と第3軸との交点である。
【0084】
補正角速度Δωの計算に際しては、まず、基準方向Cに対してプローブ22の方向Crが常に90°になるように制御する。このため、CrとCrt=0の差(Δθ)分の角度を回転して補正する。具体的には、図19に示した関係から、このΔθを計算する。そして、このΔθの計算式は、Δθがほぼ0であるときに近似できる。したがって、ベクトルCuとベクトルCruから、cosψを求めることができ、ω=dθ(t)/dtであるので、このΔθにRT角度補償係数Sを乗して、補正角速度Δωを求めることができる。
【0085】
補正角速度Δωを求めた後、回転テーブル30が角速度ωtで回転したときに追従する速度ベクトル(以下、「追従速度ベクトル」と呼ぶ。)Vωを算出する(ステップS305)。まず、回転テーブル30に与える角速度ωtは、ωt=−ωw+Δωの式により求まり、この角速度ωtによる点Xでの線速度である追従速度ベクトルVωは、図20に示すような関係から求まる。
【0086】
次に、ワークWとプローブ22との相対速度ベクトルVで、回転テーブル30に角速度ωtを与えたときにプローブ22に与える速度Vtを計算する。まず、プローブ22の速度ベクトルVtを求める。次に、アプローチ処理のステップS206と同様にして、アプローチ逆方向ベクトルQuとプローブ法線ベクトルEuのなす角度αを算出し、この角度αが例えば10°以下に維持されているか否かによって2面接触中であるか否かを判定する(ステップS307)。
【0087】
2面接触中であると判定した場合(ステップS307のY)は、倣い終了条件、すなわち、例えばワーク(ねじ)Wの下方から上方に向けて測定を開始した場合のときには、図13に示したように、測定終了位置である所定高さZhまで到達したか否かを判定し(ステップS308)、測定終了位置に到達していないと判定した場合(ステップS308のN)には、上記ステップS300に移行して処理を継続する。
【0088】
一方、2面接触中ではないと判定した場合(ステップS307のN)で、2面接触が維持されなくなったときには、例えば音声出力や文字表示などによってエラーの発生を報知する(ステップS309)。なお、測定終了位置に到達したと判定した場合(ステップS308のY)で、倣い終了条件を満足したと判断されたとき、あるいは上記ステップS309にてエラーの発生を報知したときには、プローブ22をワークWからあらかじめ設定された指定距離だけ離脱して停止し(ステップS310)、測定を中断(エラー発生時)したり、処理を終了(倣い終了条件満足時)したりして、本フローチャートによる一連のV溝倣い制御処理を終了する。
【0089】
本実施形態においては、三次元測定機10に回転テーブル30を埋め込み、その座標測定用のプローブ22を用いてワークWのV溝の形状を測定するようにしている。このため、例えば既存の三次元測定機を利用して、測定範囲を有効利用しつつねじなどのワークWの測定を行うことができる。
【0090】
なお、三次元測定機10の定盤12を削ることなく回転テーブル30を定盤12上に載置したり、あるいは三次元測定機10を利用することなく、上述したV溝形状測定方法を用いて専用のねじ測定装置を構成することも可能である。三次元測定機10も、門形フレーム14を持つものに限定されず、O形フレームやC形フレームを持つものでもよい。
【0091】
また、本実施形態においては、図5に示したように、例えば直径の異なる複数の測定子24を単一のプローブホルダ20に装着していたので、ワークWのV溝の大きさに合う測定子24を簡単に選択して使用することができる。なお、測定子24を一つのみとすることもできる。
【0092】
さらに、上述した実施形態においては、ワークWとしてウォームギヤのピッチ偏差および半径偏差の測定に本発明が適用されていたが、本発明の適用対象はこれに限定されず、回転テーブル30上に立てて固定した一般的な雄ねじや、図示は省略するが、例示したプローブ22よりも小さなプローブを用いて、回転テーブル30上に置かれたワークWのねじ穴などの特性値の測定も可能である。
【0093】
また、ねじやねじ穴の方向も鉛直方向に限定されず、回転軸の方向を変えることにより、水平方向など、他の方向でもよい。さらに、ねじ面の形状にもよるが、いわゆるボールねじの測定も可能である。また、上述した実施形態では、制御装置40の中央処理ユニット40Aにて制御回路とデータの処理回路が一体化されており、構成が簡略であるが、両者を別体化してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明の一実施形態に係るV溝形状測定方法を実現する三次元測定機の例を示す正面図である。
【図2】同三次元測定機の例を示す平面図である。
【図3】図2のA−A’断面図である。
【図4】同三次元測定機の回転テーブルのチャックに長尺のワークを固定した状態を示す要部断面図である。
【図5】同三次元測定機のプローブの形状を示す斜視図である。
【図6】同三次元測定機のワークの測定に使用する座標系の関係を示す斜視図である。
【図7】本発明の一実施形態に係るV溝形状測定方法の全体的な測定処理手順の例を示すフローチャートである。
【図8】同三次元測定機において、測定開始前に仮のワーク座標系を設定している状態を示す斜視図である。
【図9】同三次元測定機において、プローブをワークに接近させている状態を示す斜視図である。
【図10】同三次元測定機において、アプローチ処理を行っている状態を示す斜視図である。
【図11】同三次元測定機において、アプローチ処理を行っている状態を示す要部拡大図である。
【図12】同三次元測定機において、V溝RT倣い制御を行っている状態を示す斜視図である。
【図13】同三次元測定機において、V溝RT倣い制御が終了した状態を示す斜視図である。
【図14】本発明の一実施形態に係るV溝形状測定方法のアプローチ処理手順の例を示すフローチャートである。
【図15】同アプローチ処理における2面接触の判定方法を説明するための要部正面図である。
【図16】本発明の一実施形態に係るV溝形状測定方法のV溝RT倣い制御処理手順の例を示すフローチャートである。
【図17】同V溝RT倣い制御処理における制御方向の関係を示す斜視図である。
【図18】同V溝RT倣い制御処理における接線方向の決定状態を示す線図である。
【図19】同V溝RT倣い制御処理における補正角速度を決定するためのベクトルの関係を示す線図である。
【図20】同V溝RT倣い制御処理における追従速度ベクトルを決定する際の線速度を示す線図である。
【図21】従来の三次元測定機の回転テーブル上にてワークのV溝を測定している状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0095】
10…三次元(座標)測定機
12…定盤
14…門形フレーム
16…スライダ
18…昇降軸
20…プローブホルダ
22…プローブ
24…測定子
30…回転テーブル
30A…穴
32…チャック
40…制御装置
40A…中央処理ユニット
40B…記憶装置
40C…ジョイスティック
40D…モニタ
40E…プリンタ
W…ワーク
θ…回転角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
V溝が螺旋状に形成された被測定物を回転テーブルに固定して、この回転テーブルにより前記被測定物を回転させながら三次元測定機の位置測定用の倣いプローブを用いて前記被測定物の前記V溝を倣い測定するV溝形状測定方法であって、
前記三次元測定機のマシン座標系から見て、前記被測定物の原点から前記倣いプローブの測定子までの方向ベクトルを前記回転テーブルのテーブル面に投影してなるベクトルを一定に保つように制御する測定子方向一定制御工程と、
前記回転テーブルの軸心と、この軸心からの距離である半径の指定で決定される円筒面内を、前記被測定物の輪郭に沿って倣うように制御する回転テーブル半径一定倣い制御工程と、
前記被測定物の前記V溝を構成する2面に、前記倣いプローブの前記測定子を接触させるように制御する2面接触倣い制御工程とを組み合わせることにより、
前記被測定物の前記V溝の前記2面に、常時前記倣いプローブの前記測定子を接触させるように制御するV溝回転テーブル倣い制御工程を含み、
前記V溝回転テーブル倣い制御工程を、
前記倣いプローブの位置ベクトル、前記位置ベクトルの変位量、および前記回転テーブルの回転角をサンプリングして前記測定子の中心位置の軌跡を記憶する第1ステップと、
前記回転角に基づいて、前記被測定物の軸心に垂直な方向のアプローチ逆方向ベクトルを算出する第2ステップと、
前記回転テーブルが前記回転角で静止しているときの前記倣いプローブの速度ベクトルを算出する第3ステップと、
前記第1ステップにて記憶した前記倣いプローブの前記測定子の中心位置の軌跡に基づいて、前記倣いプローブの倣い進行方向を示す倣い進行方向ベクトルを決定する第4ステップと、
前記被測定物の軸心から見た前記倣いプローブの前記速度ベクトルによる前記回転テーブルの角速度を算出する第5ステップと、
前記回転角と前記位置ベクトルとの位置関係から、制御誤差による前記回転角の目標値からの進みや遅れを調整して補正角速度を決定し、この補正角速度により前記角速度を補正する第6ステップと、
前記位置ベクトルおよび前記回転角によって、前記補正角速度の動きに追従する追従速度ベクトルを算出する第7ステップと、
前記追従速度ベクトルと前記速度ベクトルのベクトル和を前記倣いプローブの速度指令とするとともに、前記角速度を前記補正角速度によって補正した値を前記回転テーブルの速度指令とし、前記倣い進行方向ベクトルにより示される倣い進行方向に倣って前記倣いプローブを移動する第8ステップとにより行う
ことを特徴とするV溝形状測定方法。
【請求項2】
前記第1ステップでは、前記測定子の中心位置の軌跡を、所定のサンプリング時間およびサンプルピッチにおける前記測定子の1点目の中心位置からN点目の中心位置までの中心位置の軌跡のまとまりからなる中心位置軌跡群として複数個記憶することを特徴とする請求項1記載のV溝形状測定方法。
【請求項3】
前記第1ステップでは、前記倣いプローブの倣い速度が、前記測定子の前記サンプリング時間あたりの移動量が前記サンプルピッチ未満となる速度である場合は、前記移動量が前記サンプルピッチを超えた時点で前記測定子の中心位置を記憶することを特徴とする請求項1または2記載のV溝形状測定方法。
【請求項4】
前記第1ステップでは、前記倣いプローブの倣い速度が、前記測定子の前記サンプリング時間あたりの移動量が前記サンプルピッチ以上となる速度である場合は、前記サンプリング時間ごとに前記測定子の中心位置を記憶することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のV溝形状測定方法。
【請求項5】
前記第4ステップでは、前記第1ステップにて記憶された複数個の前記中心位置軌跡群のうち、前記測定子の現在位置の直前の中心位置軌跡群における前記測定子の1点目の中心位置からN点目の中心位置に向かう直線の方向を前記倣い進行方向ベクトルとして決定することを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項記載のV溝形状測定方法。
【請求項6】
前記第4ステップでは、前記第1ステップにて記憶された複数個の前記中心位置軌跡群のうち、前記測定子の現在位置の直前の中心位置軌跡群における前記測定子の1点目からN点目のすべての中心位置から3次曲線による近似を行い、前記N点目における前記3次曲線の接線の方向を前記倣い進行方向ベクトルとして決定することを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項記載のV溝形状測定方法。
【請求項7】
前記V溝回転テーブル倣い制御工程を行うに先立って、前記倣いプローブの仮倣い進行方向の指定を受け付ける仮倣い進行方向指定受付工程をさらに含み、
前記V溝回転テーブル倣い制御工程は、前記仮倣い進行方向指定受付工程にて前記仮倣い進行方向の指定が受け付けられてから所定時間経過後に行われることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載のV溝形状測定方法。
【請求項8】
前記V溝回転テーブル倣い制御工程を開始する前に、前記被測定物の前記V溝の前記2面に、前記倣いプローブの前記測定子を接触させるためのアプローチ処理工程を行うことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載のV溝形状測定方法。
【請求項9】
前記アプローチ処理工程を、
前記倣いプローブの変位を一定に保つための変位補正ベクトルと、前記測定子を前記V溝の前記2面に接触させるための2面接触ベクトルとの和により求めた相対速度ベクトルによって、前記被測定物と前記倣いプローブを相対移動させ、
前記倣いプローブの前記被測定物に対するアプローチ方向と逆方向のアプローチ逆方向ベクトルと前記被測定物の軸心に対応するベクトルとで作られる平面に、プローブ法線ベクトルを投影したベクトルと、前記アプローチ逆方向ベクトルとのなす角度が所定値以内となったときに、前記2面が接触したと判定して前記倣いプローブを停止することにより行うようにしたことを特徴とする請求項8記載のV溝形状測定方法。
【請求項10】
前記アプローチ処理工程時における前記倣いプローブの前記アプローチ方向の処理と、前記V溝回転テーブル倣い制御工程時における前記倣いプローブのアプローチ方向の処理とを共通としたことを特徴とする請求項9記載のV溝形状測定方法。
【請求項11】
V溝が螺旋状に形成された被測定物が固定される回転テーブルと、
前記被測定物の表面と係合する測定子を有する倣いプローブと、
この倣いプローブを前記被測定物の表面に沿って移動させるための駆動機構と、
前記倣いプローブの位置を検出するための位置検出手段と、
請求項1〜10のいずれか1項記載の方法によって、前記倣いプローブの移動速度および進行方向、ならびに前記回転テーブルの回転状態を制御する制御手段と
を備えたことを特徴とするV溝形状測定装置。
【請求項12】
前記倣いプローブは、並設された径の異なる複数の測定子を備え、前記V溝の大きさに合わせて各測定子が選択可能に設けられていることを特徴とする請求項11記載のV溝形状測定装置。
【請求項13】
前記回転テーブルは、三次元座標測定機に組み込まれており、前記三次元座標測定機に備えられた座標測定用プローブが、前記倣いプローブであることを特徴とする請求項11または12記載のV溝形状測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2010−14638(P2010−14638A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−176498(P2008−176498)
【出願日】平成20年7月7日(2008.7.7)
【出願人】(000137694)株式会社ミツトヨ (979)
【Fターム(参考)】