説明

VOC冷却回収装置

【課題】VOCの冷却回収動作を停止させることなくデフロストを実行可能であり、且つデフロスト用エアの導入のための配管を必要としないVOCの回収装置を提供する。
【解決手段】二元冷凍機32の高温側回路33にはプレクーラー60が設けられ、低温側回路34には、2台のメインクーラー62a,62bが、プレクーラー60から排出されたVOCガスが双方に連続して導入されるように、VOCガスを流通させるメインクーラー接続管94によって直列に接続されて設けられ、プレクーラー60側に配置される一方のメインクーラー62bは導入されるVOCガスによってデフロストするよう冷却停止しており、他方のメインクーラー62aはVOCガスを冷却してVOCを回収するように設けられ、プレクーラー60から導入されるVOCガスを2台のメインクーラー62a,62bのうちいずれに最初に導入するかを切り換え可能に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揮発性有機化合物(VOC)が気体となっている場合において、このVOCガスを液化して回収するための冷却回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
VOCは、揮発性を有しており大気中で気体状となる有機化合物であり、トルエン、キシレン、酢酸エチル、デカン等様々な物質が該当する。
気体状となったVOCを含むVOCガスは、塗装関係の施設、接着剤を乾燥させる施設、印刷関係の施設、化学製品の製造施設、工業用洗浄施設など様々な施設において排出されている。しかしながらVOCは、浮遊粒子状物質(SPM)や、光化学オキシダントの原因物質であり、大気汚染防止の観点から、近年その排出が抑制されるように求められている。
【0003】
そこで、排出されるVOCガスを回収するために、VOCガスを冷却して凝縮液化させるためのガス回収装置が従来より知られている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
以下、図5に基づいて、特許文献1及び特許文献2に示されているようなガス回収装置の構成を説明する。
ガス回収装置10は、密閉容器として構成された冷却装置11と、冷凍機12とを有している。回収すべきガスは流通管13を流通して冷却装置11の内部に導入される。冷却装置11内には第1コイル14及び第2コイル15の2つのコイルが配置されている。
【0004】
冷凍機12には、冷媒が流通する冷媒流通管17に圧縮機16と、凝縮器18とが設けられている。また、凝縮器18と第1のコイル14との間には、膨張器19が設けられており、凝縮器18から延出される冷媒流通管17は、膨張器19の手前で分岐して分岐管21が接続されており、分岐管21には、膨張器20と第2コイル15が設けられている。
第2コイル15の下流側の分岐管21はエジェクタ22の吸引部に接続されており、第2コイル15はエジェクタ22により負圧となり、第1コイル14よりも低温となる。
【0005】
【特許文献1】実開平6−29603号公報(図2等)
【特許文献2】特開平7−260345号公報(図2等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したような従来のガス回収装置では、デフロスト(霜の除去)については特に開示されていない。つまり、ガスを冷却して回収する場合において、ガスには水分も含まれている以上、冷却装置内には霜が付着する。この霜を除去しないと、冷却効率が極端に悪化するため、所定時間運転した後にはデフロストを行う必要があると言う課題がある。
【0007】
デフロストの方法としては、運転を停止して常温で霜を溶かす方法があるが、その間VOCガスの処理ができなくなるので、運転を停止することは好ましくないし、たとえ運転を停止するとしても停止時間をなるべく短くしたいという要望がある。また停止時間を短くするためには、ヒーターデフロストや、ホットガスデフロストなどの方法があるが、これらの方法では爆発の危険性があるため採用は困難である。
【0008】
また、デフロスト用に通常の室温程度のエアをプレクーラー及びメインクーラーに導入する構成も考えられるが、デフロスト用の配管やブロワが必要となってしまい、構造が複雑化するとともに部品点数が増えてしまうという課題もある。
【0009】
そこで本発明は上記課題を解決すべくなされ、VOCの冷却回収動作を停止させることなくデフロストを実行可能であり、且つデフロスト用エアの導入を必要としないVOCの回収装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明にかかるVOC冷却回収装置によれば、気体となっているVOCを含むVOCガスから、VOCを液化させて回収するVOC冷却回収装置であって、二元冷凍機の高温側回路の蒸発器を第1の密閉容器内に配置してなり、第1の密閉容器内に導入されたVOCガスを予備冷却するプレクーラーが設けられ、二元冷凍機の低温側回路には、互いに切り換えて動作可能となるように2台の蒸発器が並列に設けられ、各蒸発器を第2の密閉容器及び第3の密閉容器内にそれぞれ配置してなり、プレクーラーから排出されたVOCガスを導入する2台のメインクーラーが設けられ、2台のメインクーラーは、プレクーラーから排出されたVOCガスが両メインクーラーに連続して導入されるように、VOCガスを流通させるメインクーラー接続管によって直列に接続されて設けられ、両メインクーラーのうちプレクーラー側に配置される一方のメインクーラー内の蒸発器には冷媒が流れないようにして、プレクーラーから導入されるVOCガスによってデフロストするように設けられ、他方のメインクーラー内の蒸発器は冷媒を流して、一方のメインクーラーから排出されたVOCガスを冷却するように設けられ、プレクーラーから導入されるVOCガスを2台のメインクーラーのうちいずれに最初に導入するかを切り換え可能に設けられていることを特徴としている。
【0011】
この構成を採用することによる作用は以下の通りである。
すなわち、プレクーラーでは霜が付着しない程度の温度でVOCガスを予備冷却する。予備冷却されたVOCガスは、いずれか一方の冷却されていないメインクーラーに導入され、この一方のメインクーラーをデフロスト可能である。一方のメインクーラーを出たVOCガスは、他方のメインクーラーに導入され、ここで冷却されてVOCが回収される。
所定時間経過し、他方のメインクーラーのデフロストが必要となった場合、予備冷却されたVOCガスを他方のメインクーラーに導入してデフロストを行い、他方のメインクーラーを出たVOCガスが一方のメインクーラーに導入されて冷却されるように切り換えがなされる。
このように、本発明の構成によれば、メインクーラーを交互に運転させ、運転していない側のメインクーラーをデフロストさせることができ、VOCの回収動作を中断しなくともデフロストが実行できるので連続運転が可能となった。また、VOCガスによってデフロストを行うので、デフロスト用のエアを導入しなくともデフロストを行うことができる。
【0012】
また、前記プレクーラーと前記2台のメインクーラーとの間は、プレクーラーに接続された箇所よりもメインクーラー側で第1のガス流通管と第2のガス流通管の2本に分岐されてなるガス流通管が設けられ、第1のガス流通管が2台のうちのいずれか一方のメインクーラーの一端側に接続され、第2のガス流通管が2台のうちのいずれか他方のメインクーラーの一端側に接続され、第1のガス流通管には、第1のガス流通管を開閉する第1のメインクーラー接続バルブが設けられ、第2のガス流通管には、第2のガス流通管を開閉する第2のメインクーラー接続バルブが設けられ、第1のガス流通管には、第1のメインクーラー接続バルブと一方のメインクーラーとの間で分岐してなる第1のガス排出管が設けられ、第2のガス流通管には、第2のメインクーラー接続バルブと他方のメインクーラーとの間で分岐してなる第2のガス排出管が設けられ、第1のガス排出管を開閉する第1の出口バルブが設けられ、第2のガス排出管を開閉する第2の出口バルブが設けられていることを特徴としてもよい。
【0013】
また、前記第1のガス流通管と、前記第2のガス流通管とを近接して配置させ、前記第1のガス流通管と前記第2のガス流通管との間で熱交換させる熱交換器が設けられていることを特徴としてもよい。
この構成を採用することによって、プレクーラーから出てきた比較的温度の高いVOCガスと、メインクーラーから出てきた非常に低温のガス(メインクーラでVOCが分離されている)とで熱交換され、メインクーラーから出てきて排気されるガスの温度が多少上昇する。このため、極めて低温で排気されるとガス排出管の出口バルブが凍結してしまうおそれもあるが、排気出口から排気されるガスの温度が若干上昇するので、出口バルブの凍結を防止することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明にかかるVOC冷却回収装置によれば、VOCの回収動作を中断しなくともデフロストを実行できる。しかもデフロスト用のエアを導入しなくともデフロストを行うことができるので、低コストで小型化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1及び図2には、本発明のVOC冷却回収装置における動作原理を示すための説明図を示している。
図1に示すように、VOC冷却回収装置30は、二元冷凍機32の高温側回路33にプレクーラー60を配置し、低温側回路34に2台のメインクーラー62a,62bを配置している。プレクーラー60ではVOCガスを0℃程度に予備冷却している。予備冷却されたVOCガスはメインクーラー62a,62bに導入される。
【0016】
プレクーラー60で予備冷却したVOCガスは、直列に接続された2台のメインクーラーのうち、まず他方のメインクーラー62bに導入し、メインクーラー62b内をデフロストする。
メインインクーラー62bを出たVOCガスは、一方のメインクーラー62aに導入され−55〜−65℃程度の極めて低温に冷却されてVOCが液化凝縮されて回収される。VOCが分離された残りのガスは排気される。
【0017】
図1に示す動作を所定時間実行すると、一方のメインクーラー62a内に霜が付着するのでメインクーラー62aのデフロストを行う必要がある。
そこで、図2に示すように、プレクーラー60から排出されたVOCガスの導入先をメインクーラー62aに切り換えるとともに、メインクーラー62aの冷却動作を停止し、メインクーラー62bの冷却を開始させる。すると、いままで冷却動作を行っていたメインクーラー62aが比較的温度の高いVOCガスでデフロストされ、いままでデフロストされていて霜が付着していないメインクーラー62bが冷却動作を実行する。
【0018】
このようにメインクーラーを直列に接続して、プレクーラー側に存するメインクーラーは冷却動作をしないようにし、プレクーラー側に存しないメインクーラーを冷却するようにし、所定時間おきにメインクーラーの接続順を逆にすることによって、交互にデフロストとVOCの回収を実行できる。このため、二元冷凍機を連続運転しつつ、且つデフロスト用エアを導入しなくともデフロスト可能となった。
【0019】
(第1の実施形態)
図3に、本発明のVOC冷却回収装置の具体的な第1の実施形態の全体構成を示す。
本実施形態のVOC冷却回収装置30は、二元冷凍機32を用いており、VOCガスを二元冷凍機32の高温側回路33で予備冷却したのちにさらに低温側回路34で冷却させる。
【0020】
まず、二元冷凍機32の構成について説明する。
二元冷凍機32は、高温側回路33と低温側回路34とがカスケードコンデンサ36によって熱的に接続されることにより構成されている。
高温側回路33は、高温側圧縮機(コンプレッサー)38と、高温側凝縮器40と、高温側減圧弁43と、カスケードコンデンサを構成する第1の高温側蒸発器44とを備えており、これらの各機器は高温側冷媒が流通する冷媒流通管45によって直列に接続されている。
【0021】
高温側回路33の高温側凝縮器40の下流側には、冷媒ドライヤ50が設けられており、冷媒中の水分の除去を図っている。
また、高温側減圧弁43と第1の高温側蒸発器44との間には、冷媒流通管45を流通する冷媒の流量を調節する制御バルブ37が設けられている。
【0022】
また、高温側回路33は、第1の高温側蒸発器44と並列となるように第2の高温側蒸発器46を設けている。第1の高温側蒸発器44と第2の高温側蒸発器46は、高温側圧縮機38及び高温側凝縮器40を共通に用いるようにしており、第2の高温側蒸発器46は、冷媒流通管45の高温側圧縮機38に接続している部位と、冷媒流通管45の高温側凝縮器40に接続している部位との間で分岐する分岐管49に設けられている。
分岐管49には第2の高温側減圧弁43が設けられている。分岐管49の高温側減圧弁43と第2の高温側蒸発器46の間には、分岐管49を流通する冷媒の流量を調節する制御バルブ39が設けられている。
【0023】
本実施形態における高温側凝縮器40にはファン35が設けられており、ファンによって導入された外気によって冷媒が冷却されて凝縮されるように設けられている。
このような構成を有する高温側回路33では、高温における特性が優れた冷媒を使用している。
【0024】
次に、低温側回路34の構成について説明する。
低温側回路34は、低温側圧縮機(コンプレッサー)51と、カスケードコンデンサ36を構成する低温側凝縮器52と、低温側減圧弁54と、2台の低温側蒸発器56a,56bとを備えており、これらの各機器は低温側冷媒が流通する冷媒流通管55によって接続されている。また、2台の低温側蒸発器56a,56bのうち、低温側蒸発器56bは冷媒流通管55から分岐した分岐管69に設けられており、2台の低温側蒸発器56a,56bは、低温側凝縮器52に対して並列に接続されている。
【0025】
また、低温側回路34の低温側凝縮器52の下流側には、冷媒ドライヤ57が設けられており、冷媒中の水分の除去を図っている。
さらに、低温側圧縮機51と低温側凝縮器52の間には、オイルセパレータ59が設けられている。オイルセパレータ59は、低温側圧縮機51から生じたオイルが他の機器へ流入しないように、オイルを分離して低温側圧縮機51に戻すようにしている。
【0026】
カスケードコンデンサ36内には、カスケードコンデンサ36内の温度を検出する温度センサ53が設けられている。
温度センサ53には、制御部58が接続されている。制御部58は、高温側圧縮機38及び低温側圧縮機51の動作を制御可能に設けられており、検出したカスケードコンデンサ36内の温度が、予め設定しておいた所定の温度になるように制御する。
【0027】
低温側蒸発器56aに接続されている冷媒流通管55には冷媒流通管55を流通する冷媒の流量を調整する制御バルブ54aが設けられており、低温側蒸発器56bに接続されている分岐管69には分岐管69を流通する冷媒の流量を調整する制御バルブ54bが設けられている。
これら制御バルブ54a,54bの開閉を切り換えることによって、蒸発器56a,または蒸発器56bのいずれを動作状態とするかを切り換え可能である。
【0028】
続いてVOCガスの流通経路について説明する。
まず、高温側回路33の第1の高温側蒸発器46は、密閉容器内に配置され、VOCガスを予備冷却するプレクーラー60を構成する。
本発明におけるプレクーラー60の温度は0℃程度とする。この0℃程度の温度では、プレクーラー60内ではVOCガス中に含まれる水分を霜として付着させることはできない。
一方、低温側回路34の低温側蒸発器56a,56bも、それぞれ密閉容器内に配置され、それぞれがVOCを液化させるメインクーラー62a,62bを構成する。メインクーラー62内の温度は、−55〜−65℃程度となるように制御される。
なお、メインクーラー62a,62bを構成する密閉容器としては円筒状であって、円筒の軸線方向に沿って一方側、他方側としている。
【0029】
回収すべきVOCは、VOCの発生源(図示せず)に接続されているガス導入管64内を流通して、VOC冷却回収装置30内に導入されるように設けられる。ガス導入管64には、ブロワ(図示せず)と制御バルブ68が設けられており、ブロワ(図示せず)によってVOCガスをガス導入管64内に送り込むようにしている。ガス導入管64に送り込まれたVOCガスは、プレクーラー60内に導入され、予備冷却される。
【0030】
プレクーラー60とメインクーラー62との間には、ガス流通管67が配設され、プレクーラー60で予備冷却されたVOCガスが、ガス流通管67を通って2台のメインクーラー62a,62b内へ導入される。
プレクーラー60から出たガス流通管67は、中途部で2本に分岐され、一方が第1のガス流通管67a、他方が第2のガス流通管67bとなる。本実施形態では、第1のガス流通管67aがメインクーラー62aの一方側に接続され、第2のガス流通管67bがメインクーラー62bの一方側に接続される。
【0031】
第1のガス流通管67aには、第1のガス流通管67aを開閉する第1のメインクーラー接続バルブ90aが設けられており、第2のガス流通管67bには、第2のガス流通管67bを開閉する第2のメインクーラー接続バルブ90bが設けられている。
第1のメインクーラー接続バルブ90aと第2のメインクーラー接続バルブ90bについては、どちらか一方が開いているときは他方が閉じられており、2台のメインクーラー62a,62bに同時にVOCガスが導入されることがないように制御される。
【0032】
メインクーラー62aの他端側と、メインクーラー62bの他端側との間は、VOCガスをメインクーラー62a,62b間で流通させるメインクーラー接続管94が配置されている。
【0033】
なお、メインクーラー62aの第1のガス流通管67aには、メインクーラー62aの他方側からVOCガスが導入されたのち、メインクーラー62aでVOCが冷却回収された残りのガスを排気するための第1のガス排出管71aが分岐されて設けられている。第1のガス排出管71aは、第1のガス流通管67aの第1のメインクーラー接続バルブ90aとメインクーラー62aの間に設けられている。
また、同様にメインクーラー62bの第2のガス流通管67bには、メインクーラー62bの他方側からVOCガスが導入されたのち、メインクーラー62bでVOCが冷却回収された残りのガスを排気するための第2のガス排出管71bが分岐されて設けられている。第2のガス排出管71bは、第2のガス流通管67bの第2のメインクーラー接続バルブ90bとメインクーラー62bの間に設けられている。
【0034】
各ガス排出管71a,71bの端部には、排気出口110a,110bが設けられている。さらに、各ガス排出管71a,71bには、各排気出口110a,110bを開閉するための出口バルブ70a,70bが設けられている。
【0035】
ガス流通管67、第1のガス流通管67a、第2のガス流通管67b、メインクーラー接続管94、第1のガス排出管71aおよび第2のガス排出管71bの周囲には、周囲の温度を遮断して、流通するVOCガスの低温状態を維持できるように、断熱部材91が設けられている。
【0036】
また、ガス排出管71a,71bから排出されるガスは、メインクーラー62a,62bで極低温に冷却されたものであるため、出口バルブ70a,70bの凍結を招くおそれがある。そこで、出口バルブ70a,70bの凍結を防止するための凍結防止手段を設けるとよい。
本実施形態における凍結防止手段の一例としては、第1のガス流通管67aと第2のガス流通管67bとの間で熱交換を行う熱交換器96が該当する。
【0037】
熱交換器96は、断熱構造の本体97内に、第1のガス流通管67aと第2のガス流通管67bとが近接して配置されるように設けられている。また、断熱部材91は、第1のガス流通管67aと第2のガス流通管67bで熱交換が可能となるように、熱交換器96内には配置されない。
【0038】
プレクーラー60及び2台のメインクーラー62a,62bのそれぞれの下部には、ドレンポート72,74a,74bが設けられている。
ドレンポート72は、ドレン制御バルブ81が設けられたドレン回収管76に接続されており、ドレン回収管76は回収槽に78に接続されている。また、ドレンポート74a,74bは、ドレン制御バルブ83a,83bが設けられたドレン回収管77a,77bに接続されており、ドレン回収管77a,77bは回収槽78に接続されている。
【0039】
このように、プレクーラー60、メインクーラー62aまたはメインクーラー62bでVOCが凝縮して液化すると、液化したVOCがドレン回収管76、ドレン回収管77a,77bを経由して回収槽78に貯留される。回収槽78には、回収槽78内の空気を排気する排気管79が設けられており、排気管79には排気フィルター80が取り付けられている。排気フィルター80は、VOCを分解する触媒等が用いられている。
【0040】
以下、本実施形態におけるVOC冷却回収装置30の動作について説明する。
まず、VOC冷却回収装置30の動作前は、ガス導入管64の制御バルブ68は閉塞させておき、VOCガスがガス導入管64には流入しないようにしておく。
それから、VOC冷却回収装置30の動作前は、制御バルブ37も閉塞させておき、最初はプレクーラー60が運転しないように設けておく。
【0041】
また、低温側回路34の冷媒流通管55a、分岐管55bのいずれか一方の制御バルブを開き、他方を閉じておく。このため低温側回路34では、いずれか一方のメインクーラーのみが動作する。なお、以下では最初にメインクーラー62aが動作するように制御される。
さらに、VOCガスの導入を、最初に動作する一方のメインクーラー62aには流さないように、つまり動作していないメインクーラー62bに最初にVOCガスを導入するように第1のガス流通管67aを閉塞すべく第1のメインクーラー接続バルブ90aを閉じ、第2のガス流通管67bを開くべく第2のメインクーラー接続バルブ90bを開く。
なお、第1のガス排出管71aの出口バルブ70aは開け、第2のガス排出管71bの出口バルブ70bは閉じておく。
【0042】
最初に、高温側圧縮機38の電源を投入する。
高温側圧縮機38が動作すると、高温側回路33の冷媒が圧縮されて高温側凝縮器40に送り込まれ、高温側凝縮器40で圧力一定で冷媒が冷却されるとともに液化される。液化された冷媒は、高温側減圧弁43で膨張させられて沸点を下げ、カスケードコンデンサ36内の第1の高温側蒸発器44において、低温側回路34の低温側凝縮器52の熱を奪って蒸発する。
【0043】
次いで、高温側圧縮機38の電源を投入してから所定時間経過後に、低温側回路34において低温側圧縮機51の電源を投入する。
すると、低温側回路34の冷媒が圧縮されて低温側凝縮器52に送り込まれ、高温側蒸発器44との間で熱交換されて圧力一定で冷媒が冷却されるとともに液化される。
液化された冷媒は、低温側減圧弁54で膨張させられて沸点を下げる。低温側蒸発器56においては、冷媒がメインクーラー62a内の熱を奪って蒸発する。そして、蒸発して気化した冷媒は低温側圧縮機51内に流入する。
【0044】
カスケードコンデンサ36内の温度が0℃になったことを制御部58が検出した場合には、制御部58は制御バルブ37を開いてプレクーラー60の分岐管49に冷媒を流す。液化された冷媒は、分岐管49の高温側減圧弁43で膨張させられて沸点を下げ、第2の高温側蒸発器46において、プレクーラー60内の熱を奪って蒸発する。
【0045】
これとともに制御部58は、制御バルブ39の開度を調整して、カスケードコンデンサ36内の温度が一定になるよう、冷媒がプレクーラー60側へ流れる量と、冷媒がカスケードコンデンサ36へ流れる量を配分する。
【0046】
次いで、制御バルブ68を開き、且つ図示しないブロワの運転を開始することにより、VOCガスはガス導入管64を経てプレクーラー60内に流入する。
プレクーラー60内にVOCガスが流入すると、プレクーラー60内の第2の高温側蒸発器46では、高温側減圧弁43によって膨張させられて沸点を下げた冷媒が、ガス導入管64から導入されたVOCガスの熱を奪って蒸発する。
このとき、プレクーラー60内の温度は0℃程度であり、プレクーラー60内では霜が付着しない。
【0047】
プレクーラー60で予備冷却されたVOCガスは、第2のガス流通管67bを通ってメインクーラー62bへ導入される。
メインクーラー62bでは、蒸発器56bに冷媒が流れておらず冷却はされない。VOCガスはそのままメインクーラー62bを通過し、メインクーラー接続管94内に流入する。
メインクーラー接続管94内を流通したVOCガスは、蒸発器56aに冷媒が流れて冷却が実行されているメインクーラー62a内に流入する。
【0048】
メインクーラー62a内にVOCガスが流入すると、メインクーラー62a内の低温側蒸発器56aでは、低温側減圧弁54によって膨張させられて沸点を下げた冷媒が、導入されたVOCガスの熱を奪って蒸発する。
なお、このとき、メインクーラー62内の温度は、−55〜−65℃程度である。
【0049】
このようにして、VOCガスはプレクーラー60とメインクーラー62a内で冷却され、凝縮して液化される。液化したVOCは、プレクーラー60内部及びメインクーラー62a内部の下部に溜まる。プレクーラー60とメインクーラー62aの下部にはドレンポート72,74aが設けられているので、液化したVOCはドレンポート72,74aからドレン回収管76、77aを通って回収槽78内に流れ出て、回収される。
【0050】
また、VOCが除去された残りのガスは、第1のガス排出管71aを通って排気出口110から排気される。
このとき、排出されるガスの温度は、熱交換器96内の第2のガス流通管67b内を流通するVOCガスによって上昇させられる。これにより、出口バルブ70aの凍結防止を図ることができる。
【0051】
なお、VOC冷却回収動作を連続して実行していると、メインクーラー62a内に付着した霜を除去するデフロストを行う必要が生じる。冷却効率を上げるには、およそ8時間おきにデフロストを行う必要がある。
デフロストの際には、いままで冷却に使用してきたメインクーラー62a内にプレクーラー60から排出されたVOCガスを導入してデフロストを行い、メインクーラー62b内を冷却してメインクーラー62bでVOCの回収を行う。
【0052】
すなわち、デフロスト時には第1のメインクーラー接続バルブ90aを開き、第2のメインクーラー接続バルブ90bを閉じ、出口バルブ70aを閉じ、出口バルブ70bを開くようにする。
また、低温側回路34の制御バルブ54aを閉じ、制御バルブ54bを開くことにより、メインクーラー62aの冷却を停止し、メインクーラー62bを冷却させる。
このため、プレクーラー60から排出されたVOCガスは第1のガス流通管67aを通ってメインクーラー62a内に導入され、約0℃のVOCガスによってデフロストされる。メインクーラー62aを通過したVOCガスは、メインクーラー接続管94を通ってメインクーラー62b内に導入され、VOCの液化回収が行われる。
VOCが分離された残りのガスは第2のガス排出管71bを通って排気出口110bから排出される。
このようにしてデフロストを実行すると、メインクーラー62a内の霜が溶けて水分が液化するが、この液化した水分がドレン回収管76aを通って回収槽78内に回収される。
【0053】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について、図4に基づいて説明する。
なお、上述した第1の実施形態と同一の構成要素については同一の符号を付し、説明を省略する場合もある。
第2の実施形態は、第1の実施形態とは異なる出口バルブの凍結防止手段を設けたものである。
【0054】
すなわち、出口バルブの凍結防止手段としては、2台のメインクーラー62a,62bからの各ガス排出管71a,71bと、VOCガスをプレクーラー60へ導入するガス導入管64とを内部に配置させて、ガス排出管71a,71b内を流通するガスと、ガス導入管64内を流通するVOCガスとの間で熱交換させる熱交換器100が設けられている。
【0055】
熱交換器100は、断熱構造の本体101内に、2本のガス排出管71a,71bとガス導入管64とが近接して配置されるように設けられている。また、各ガス排出管71a,71bに設けられていた断熱部材91は、各ガス排出管71a,71bとガス導入管64との間で熱交換が可能となるように、熱交換器100内には配置されない。
【0056】
メインクーラー62a,62b内ではVOCガスは−55〜−65℃に冷却されるが、ガス導入管64内を流通するVOCガスは50℃程度の温度である。このため、排出すべきガスはバルブが凍結しない程度にまで温度上昇させることができる。一方、導入されるVOCガスはプレクーラー60へ導入される前段階で温度が低下するので、冷却効率を上げることができる。
【0057】
なお、図4では、ガス排出管71a,71bとガス導入管64を内蔵する熱交換器100に加え、第1の実施形態で示したようなガス流通管76a,76bを内蔵する熱交換器96を設けたところを示した。
しかし、凍結防止手段としては、第1の実施形態で示したようなガス流通管76a,76bを内蔵する熱交換器96を設けずに、ガス排出管71a,71bとガス導入管64を内蔵する熱交換器100のみを設ける構成としてもよい。
【0058】
なお、上述してきたような各制御バルブの切り換え動作は、人手により行ってもよいし、制御部58が各制御バルブに制御信号を出力して自動的に制御するようにしてもよい。
【0059】
以上本発明につき好適な実施形態を挙げて種々説明したが、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、発明の精神を逸脱しない範囲内で多くの改変を施し得るのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明のVOC冷却回収装置の概略構成を示す説明図である。
【図2】図1の概略構成においてメインクーラーの接続を切り換えたところを示す説明図である。
【図3】本発明のVOC冷却回収装置の第1の実施形態の全体構成を示す説明図である。
【図4】本発明のVOC冷却回収装置の第2の実施形態の全体構成を示す説明図である。
【図5】従来のガス回収装置を示す説明図である。
【符号の説明】
【0061】
30 冷却回収装置
32 二元冷凍機
33 高温側回路
34 低温側回路
35 ファン
36 カスケードコンデンサ
37 制御バルブ
38 高温側圧縮機
39 制御バルブ
40 高温側凝縮器
43 高温側減圧弁
44 第1の高温側蒸発器
45 冷媒流通管
46 第2の高温側蒸発器
49 分岐管
50 冷媒ドライヤ
51 低温側圧縮機
52 低温側凝縮器
53 温度センサ
54 制御バルブ
54 低温側減圧弁
55 冷媒流通管
56 低温側蒸発器
57 冷媒ドライヤ
58 制御部
59 オイルセパレータ
60 プレクーラー
62 メインクーラー
64 ガス導入管
67 ガス流通管
68 制御バルブ
69 分岐管
70 出口バルブ
71 ガス排出管
72,74 ドレンポート
76,77 ドレン回収管
78 回収槽
79 排気管
80 排気フィルター
81,83 ドレン制御バルブ
90 メインクーラー接続バルブ
91 断熱部材
94 メインクーラー接続管
96 熱交換器
97 熱交換器本体
100 熱交換器
101 熱交換器本体
110 排気出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体となっているVOCを含むVOCガスから、VOCを液化させて回収するVOC冷却回収装置であって、
二元冷凍機の高温側回路の蒸発器を第1の密閉容器内に配置してなり、第1の密閉容器内に導入されたVOCガスを予備冷却するプレクーラーが設けられ、
二元冷凍機の低温側回路には、互いに切り換えて動作可能となるように2台の蒸発器が並列に設けられ、各蒸発器を第2の密閉容器及び第3の密閉容器内にそれぞれ配置してなり、プレクーラーから排出されたVOCガスを導入する2台のメインクーラーが設けられ、
2台のメインクーラーは、プレクーラーから排出されたVOCガスが両メインクーラーに連続して導入されるように、VOCガスを流通させるメインクーラー接続管によって直列に接続されて設けられ、
両メインクーラーのうちプレクーラー側に配置される一方のメインクーラー内の蒸発器には冷媒が流れないようにして、プレクーラーから導入されるVOCガスによってデフロストするように設けられ、
他方のメインクーラー内の蒸発器は冷媒を流して、一方のメインクーラーから排出されたVOCガスを冷却するように設けられ、
プレクーラーから導入されるVOCガスを2台のメインクーラーのうちいずれに最初に導入するかを切り換え可能に設けられていることを特徴とするVOC冷却回収装置。
【請求項2】
前記プレクーラーと前記2台のメインクーラーとの間は、プレクーラーに接続された箇所よりもメインクーラー側で第1のガス流通管と第2のガス流通管の2本に分岐されてなるガス流通管が設けられ、
第1のガス流通管が2台のうちのいずれか一方のメインクーラーの一端側に接続され、
第2のガス流通管が2台のうちのいずれか他方のメインクーラーの一端側に接続され、
第1のガス流通管には、第1のガス流通管を開閉する第1のメインクーラー接続バルブが設けられ、
第2のガス流通管には、第2のガス流通管を開閉する第2のメインクーラー接続バルブが設けられ、
第1のガス流通管には、第1のメインクーラー接続バルブと一方のメインクーラーとの間で分岐してなる第1のガス排出管が設けられ、
第2のガス流通管には、第2のメインクーラー接続バルブと他方のメインクーラーとの間で分岐してなる第2のガス排出管が設けられ、
第1のガス排出管を開閉する第1の出口バルブが設けられ、
第2のガス排出管を開閉する第2の出口バルブが設けられていることを特徴とする請求項1記載のVOC冷却回収装置。
【請求項3】
前記第1のガス流通管と、前記第2のガス流通管とを近接して配置させ、前記第1のガス流通管と前記第2のガス流通管との間で熱交換させる熱交換器が設けられていることを特徴とする請求項2記載のVOC冷却回収装置。

【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−279380(P2008−279380A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−126512(P2007−126512)
【出願日】平成19年5月11日(2007.5.11)
【出願人】(000103921)オリオン機械株式会社 (450)
【Fターム(参考)】