説明

X線検査装置

【課題】 測定点間を移動する際の被測定物とX線測定光学系との衝突を予測し、衝突防止を図る。
【解決手段】 X線源11とX線検出器12との間に被測定物Sが位置するように被測定物を載置するためのステージ14と、駆動機構15とを備え、ステージ上に載置された被測定物の複数の測定点についてのX線検査を行うX線検査装置1において、光学カメラ画像に基づいて被測定物の立体形状を抽出する立体形状抽出部36と、測定点に関する位置情報の入力を受ける測定点情報入力部37と、測定点間を最短経路で移動させるときに移動中の被測定物が通過する範囲を抽出する通過範囲抽出部38と、X線測定光学系13と被測定物の通過範囲との位置関係とに基づいて衝突可能性を判定する衝突判定部41と、衝突可能性がある場合に回避ルートを算出する回避ルート算出部42とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体形状を有する工業製品などの被測定物について、透視検査またはCT検査などを行うためのX線検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工業製品などの透視検査を行うX線検査装置では、X線発生装置のX線源に対向するようにして、イメージインテンシファイア(以下、IIと略す)とCCDカメラとを組み合わせたX線検出器が配置してある。最近はII、CCDカメラからなるX線検出器に代えて、フラットパネルX線検出器を使用したX線検査装置も利用されている。
これらのX線検査装置は、X線源とX線検出器との間に、ステージを配置し、この上に被測定物を載置して透視X線像を撮影する。
【0003】
X線検査装置による検査では、通常、位置合わせや測定倍率調整、測定角度調整のために視野移動を行う。視野移動は、マウスやジョイスティックやキーボードなどの入力装置を用いた操作により駆動機構を制御してステージを移動しつつ(傾動機構がある場合は、傾動機構によるアーム移動も行いつつ)被測定物の透視X線動画像を撮影するようにし、これにより被測定物の検査位置を探す。そして、検査位置が見つかると視野移動を停止し、その状態で動画像を観察する。
【0004】
X線検査では、同一形状の多数の被測定物について、それぞれ同じ位置を次々と検査する場合がある。このような場合に、最初の被測定物(位置決めの基準にする被測定物)に含まれる複数の検査位置を、シーケンスとして装置に教示(ティーチング)しておき、そのシーケンスに従ってX線測定光学系の測定視野を次々と変更し、各検査位置のX線画像を順番に表示画面に再現することで効率的に検査を行う、いわゆるティーチング機能を備えた装置が使用されている。
【0005】
ティーチング機能を備えたX線検査装置としては、産業用ロボットのような搬送手段を用いて、予めティーチングした被測定物の任意のポイントを測定視野内に移動させ、測定(観察)することが開示されている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−117214号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
同一形状を有する複数の被測定物を次々とX線検査を行う場合に、上述した従来例のように、被測定物をステージ上に載せ、ティーチング機能により、測定位置(教示ポイント)を指定する。また、回転や傾動を行うときは回転角、傾動角を指定する。
【0007】
しかしながら、被測定物が立体形状である場合は、ティーチングされた測定位置間を移動するときにX線測定光学系(X線源やX線検出器)と衝突する可能性がある。これは一般的に、ティーチング機能により記憶される処理プログラムは、測定点でのステージ位置やX線量や画像処理方法などを情報として記憶するが、ある測定点から次の測定点へ測定点を移すためにステージを移動させる際の被測定物の移動経路については何も考慮されておらず、ステージの駆動機構は単に2点間を直線的に移動させるからである。
【0008】
被測定物とX線測定光学系との衝突が起こると、これらの破壊、損傷につながり、大変危険である。
そこで、本発明は、ティーチング機能等での測定点間の移動の際に、被測定物とX線測定光学系とが衝突することなく、安全に測定することができるX線検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためになされた本発明のX線検査装置は、透視用X線を照射するX線源と被測定物の透視X線像を撮影するX線検出器とからなるX線測定光学系と、X線源とX線検出器との間に被測定物が位置するように被測定物を載置するためのステージと、少なくともステージを並進駆動する駆動機構とを備え、ステージに対する被測定物の位置関係が定まるようにしてステージ上に載置された被測定物の複数の測定点についてのX線検査を行うX線検査装置において、光学カメラにより撮影した光学カメラ画像に基づいて被測定物の外観を形成する立体形状または外観を包含する立体形状を抽出する立体形状抽出部と、測定点に関する位置情報の入力を受ける測定点情報入力部と、測定点間を最短経路で移動させるときに抽出した立体形状に基づいて移動中の被測定物が通過する範囲を抽出する通過範囲抽出部と、X線測定光学系と被測定物の通過範囲との位置関係とに基づいて衝突可能性を判定する衝突判定部と、衝突可能性がある場合に回避ルートを算出する回避ルート算出部とを備えるようにしている。
【0010】
この発明によれば、ステージ上に載置された被測定物の複数の測定点についてX線検査を行う際に、ステージに対する被測定物の位置関係が定まるようにして被測定物を載置しておく。
具体的には、例えば、ステージを原点位置(ステージの初期位置で、この初期位置からステージを移動することによりその後のステージの位置や座標が常に把握できるようにするための基準となる位置)に位置決めした状態で、ステージ上に被測定物を載置することにより、ステージに対する被測定物の位置関係が定まる。
ステージが原点位置にあるときには、X線測定光学系に対するステージの位置関係も一定である。したがってステージ上の座標を指定することにより、原点からその指定した位置を撮影するためのステージの移動量、移動方向が一意的に定まるようになっている(なお、X線測定光学系に傾動機構を備えているときは傾動機構で動かされるアームについても予め定められた原点に復帰してあるものとする)。
立体形状抽出部が光学カメラによる撮影した光学カメラ画像に基づいて被測定物の外観を形成する立体形状または外観を包含する立体形状を抽出する。すなわち、ここで抽出する立体形状は外観形状そのままであってもよいし、外観を包含する立体形状(例えば外観を覆い包む円柱、球、回転楕円体など)であってもよい。抽出は、例えばステージを回転駆動できるときは回転させることにより、又は2箇所に備えた光学カメラを用いることにより、2方向から光学カメラ画像を撮影してパターン認識や二値化等の画像処理により立体形状を表す画像を抽出することにより立体形状を抽出できる。また、ステージを回転できるときはCT画像のように全方位から撮影して立体画像を抽出してもよい。
測定点情報入力部が、測定点に関する位置情報の入力を受けてティーチングが行われると、通過範囲抽出部は、移動が行われる2つの測定点間を最短経路で移動させるときに、抽出した立体形状に基づいて移動中の被測定物が通過する範囲を抽出する。すなわち、立体形状抽出部で求めた立体形状(外観形状自体の立体形状あるいは外観形状を包含する立体形状)が通過する軌跡を算出することにより、通過範囲を特定する。
衝突判定部は、求めた被測定物の通過範囲と、原点復帰状態にてステージに対する位置関係が決定されているX線測定光学系との位置関係とに基づいて衝突可能性を判定する。
そして、衝突可能性があると判定された場合に、回避ルート算出部は、最短経路以外の回避ルートを算出する。
回避ルートの決め方は、特に限定されないが、例えば、被測定物が通過する範囲とX線測定光学系との交差する領域を特定し、この領域を迂回するように2段階、あるいは3段階の直線移動による移動経路を定めるようにすることで回避ルートを決定することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、測定点間の移動経路中での被測定物とX線測定光学系との衝突判定を行い、衝突可能性がある場合に回避ルートでステージを移動させるようにしたので、ティーチング機能等で被測定物の測定点間を移動させる際に、衝突のない安全な移動を実現することができる。
【0012】
(その他の課題を解決するための手段および効果)
上記発明において、駆動機構は、さらに、ステージを回転駆動するように構成され、測定点情報入力部は測定点に関する位置情報とともに回転角度情報の入力を受け、通過範囲抽出部は測定点間が回転移動される場合の被測定物の通過範囲を抽出するようにしてもよい。
これによれば、ステージの回転移動を含むティーチングを行う場合に、測定点情報入力部が、位置情報とともに回転角度情報の入力を受け付ける。通過範囲抽出部は、回転移動される場合の被測定物の通過範囲を抽出する。そして、衝突判定部が求めた被測定物の通過範囲とX線測定光学系との位置関係とに基づいて衝突可能性を判定する。衝突可能性があると判定された場合に回避ルート算出部は、回避ルートを算出する。
回避ルートの決め方は、例えば、回転方向を逆にして(例えば右周り回転を左回り回転に変更する)衝突が回避できる場合はそのようにしてもよい。また、抽出した立体形状が通過する範囲とX線測定光学系との交差する領域を特定し、回転動作の前に、この領域を迂回するように一時的に並進移動を行った後、回転動作を実行し、その後、再び元に戻す並進動作を実行するようにして衝突回避ルートを定めることができる。
【0013】
上記発明において、X線測定光学系を一体に支持するアームおよびアームを傾動する傾動機構と、傾動角に関する情報の入力を受ける傾動角情報入力部と、アームを傾動するときのX線測定光学系が通過する範囲を抽出するX線測定光学系通過範囲抽出部とをさらに備え、衝突判定部はX線測定光学系が通過する範囲と被測定物の位置との位置関係に基づいて衝突可能性を判定するようにしてもよい。
【0014】
これによれば、X線測定光学系を一体に支持するアームおよびアームを傾動する傾動機構を備えているX線検査装置において傾動のティーチングを行う場合に、傾動角情報入力部が位置情報とともに傾動角情報の入力を受け付ける。X線測定光学系通過範囲抽出部は、アームを傾動するときのX線測定光学系が通過する範囲を抽出する。そして、衝突判定部が求めた被測定物の通過範囲とX線測定光学系の通過範囲との位置関係とに基づいて衝突可能性を判定する。回避ルート算出部は、衝突可能性があると判定された場合に回避ルートを算出する。
回避ルートの決め方は、例えば、X線測定光学系が通過する範囲と被測定物の通過範囲との交差する領域を特定し、傾動動作の前に、この領域を迂回するように一時的にステージの並進移動を行った後、傾動動作を実行し、その後、再びステージを元に戻す並進動作を実行するようにして衝突回避ルートを定めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明は、以下に説明するような実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の態様が含まれることはいうまでもない。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態であるX線検査装置の構成を示すブロック図である。このX線検査装置1は、X線発生装置11とX線検出器12とで構成されるX線測定光学系13と、被測定物Sを載置するステージ14と、ステージ14をXYZ方向(ステージ面をXY面とする)に並進駆動およびZ軸に沿って回転駆動するための駆動機構15と、X線検出器12に隣接して取り付けられステージに載置した被測定物Sの全体像を可視光により撮影するための光学カメラ16と、X線発生装置11とX線検出器12とを傾動できるように一体に支持するCアーム17と、Cアーム17を傾動駆動する傾動機構18と、装置全体の制御を行う制御系20とにより構成される。
【0017】
制御系20は汎用のコンピュータ装置により構成されるが、そのハードウェアをさらにブロック化して説明すると、CPU21と、キーボード22およびマウス23からなる入力装置と、液晶パネルなどの表示装置24と、メモリ25とにより構成される。
また、CPU21が処理する機能をブロック化して説明すると、X線画像作成部31、X線画像表示制御部32、光学カメラ画像作成部33、光学カメラ画像表示制御部34、駆動信号発生部35、立体形状抽出部36、測定点情報入力部37、通過範囲抽出部38、傾動角情報入力部39、X線測定光学系通過範囲抽出部40、衝突判定部41、回避ルート算出部42、移動ルート決定部43に分けられる。
【0018】
また、メモリ25について、記憶内容ごとにブロック化して説明すると、光学カメラ画像データ記憶領域51、立体形状データ記憶領域52、測定点情報記憶領域53、傾動角情報記憶領域54、通過範囲記憶領域55、移動ルート記憶領域56とに分けられる。
【0019】
X線測定光学系13を構成するX線発生装置11は、透視X線照射用のX線管を備えている。X線検出器12は、X線管に対向するように配置されるIIと、このIIの後側に一体的に取り付けられたCCDカメラとからなり、IIが透視X線を検出することにより形成した蛍光像をCCDカメラで撮影することにより、透視X線像の映像信号が出力されるようにしてある。
【0020】
ステージ14は、ステージ面方向であるXY方向とステージ面に垂直なZ方向との3次元方向にスライドすることが可能な下部ステージと、下部ステージに対しZ軸方向の回転軸により回転可能に支持される上部ステージとにより構成され、被測定物Sは上部ステージに載置されるようにしてある。
駆動機構15は、モータが搭載され、駆動信号発生部35からの駆動信号に基づいて回転駆動したり並進駆動したりする。
【0021】
光学カメラ16は、X線測定光学系13による透視X線像測定に支障をきたさないようX線の視野から離れた位置で、被測定物Sの外観形状を撮影できる位置に取り付けてあり、ステージ14に載置された被測定物Sを撮影する。撮影した映像信号は、デジタル化処理されてCPU21に送信される。
【0022】
Cアーム17は、X線発生装置11とX線検出器12とを対向させつつ一体で傾動移動ができるように支持する。
傾動機構18は、Cアーム17を駆動信号発生部35からの駆動信号により傾動駆動する。
【0023】
次に、CPU21の各機能ブロックについて説明する。
X線画像作成部31は、X線検出器12から送られてきた透視X線像の映像信号を、次々とデジタル画像に変換し、X線コマ画像データを作成する制御を行う。
X線画像表示制御部32は、作成されたX線コマ画像データを表示装置24に順次送信してモニタ画面に透視X線画像を表示する。このX線画像は、被測定物観察用の画像である。
【0024】
光学カメラ画像作成部33は、光学カメラ16から送られてきた被測定物Sの可視光映像信号をデジタル画像に変換し、被測定物Sの光学カメラ画像データとしてメモリ25の光学カメラ画像データ蓄積領域51に蓄積する制御を行う。この光学カメラ画像データは、X線測定を始める前に、被測定物Sの少なくとも直交する2方向から取得する。例えば2方向のうち1つは、アーム17およびステージ15が初期状態(原点復帰状態)、すなわち傾動角が0度、回転角が0度の状態で撮影し、被測定物Sの正面方向を撮影する。他の1つは、ステージ14を90度回転することにより傾動角が0度、回転角が90度の状態で撮影し、被測定物Sの右側面方向を撮影する。このようにして取得された2方向の光学カメラ画像データが、正面方向(XZ面)の光学カメラ画像データ51a、右側面方向(YZ面)の光学カメラ画像データ51bとして、光学カメラ画像データ蓄積領域51に蓄積される。
この光学カメラ画像データをモニタ画面に表示した画像には、被測定物の全体像が含まれるので、測定位置を指定する際の測定点の位置指定に利用される。なお、光学カメラ画像上で測定点を指定する場合において、被測定物を多方向から測定する場合は、上記2方向の光学カメラ画像データだけでは指定できない場合もあるので、その場合は必要な方向の光学カメラ画像データ(全方位の光学カメラ画像データでもよい)が蓄積される。
光学カメラ画像表示制御部34は、ティーチングなどで光学カメラ画像の表示が必要なときに表示指示によりモニタ画面に必要な光学カメラ画像データを表示する制御を行う。設定により、常時表示させておいてもよい。
【0025】
駆動信号発生部35は、キーボード22、マウス23などの操作により、あるいは、自動運転中のシーケンス制御に基づいて、駆動機構15や傾動機構18に駆動制御信号を発生する。
【0026】
立体形状抽出部36は、光学カメラ画像データ蓄積領域51に蓄積されている光学カメラ画像データ51a、光学カメラ画像データ51bに基づいて、被測定物Sの外観形状を完全に包含する立体形状(例えば円柱、球)を抽出する。すなわち、立体形状の外側には被測定物Sが存在しないような立体形状を抽出する。これにより、衝突回避のための安全率を高くするとともに、後述する軌跡の演算処理を簡単にする。なお、安全率を高めたり、演算処理を簡単にしたりする必要ない場合は、外観形状そのものを立体形状として抽出すればよい。抽出は、例えば、光学カメラ画像を二値化し、背景画像と被測定物とを識別して抽出する。抽出した立体形状データは、立体形状データ記憶領域52に蓄積される。
【0027】
測定点情報入力部37は、キーボード22やマウス23による操作に基づいて、被測定物における測定点を指定する処理を行う。測定点の指定は、モニタ画面に表示した光学カメラ画像上で指定することもでき、あるいはモニタ画面に表示したX線画像上で指定することもできる。
さらに、ステージ上の座標を直接キーボード22から入力することによっても指定することができる。なお、回転移動を行う場合場合は、回転角を含めて指定する。指定された各測定点の測定点情報は、測定点情報記憶領域53に蓄積される。蓄積された情報は、測定点についてのティーチング情報となる。
【0028】
通過範囲抽出部38は、抽出された立体形状データおよび測定点情報に基づいて、ステージ駆動により測定視野内の測定点を移動させるときの、立体形状の移動経路を算出する演算を行い、被測定物の移動軌跡を抽出する処理を行う。
移動経路は、並進移動のみで回転移動を行わないときは、移動前と移動先との測定点間を直線的に移動するときの通過範囲を算出する。回転移動を行うときは、指定された回転角の情報に基づいて移動前の測定点から移動先の測定点への回転移動時の通過範囲を算出する。算出された通過範囲は通過範囲記憶領域55に蓄積される。
【0029】
傾動角情報入力部39は、傾動を行うときに必要な傾動角が指定される場合に、この入力を受け付ける。入力操作は、キーボード22の矢印キー、マウス23による図示しない入力画面での操作、あるいは直接キーボードからの数値入力による。傾動角は傾動角情報記憶領域54に蓄積される。
【0030】
X線測定光学系通過範囲抽出部40は、傾動動作を行う場合に、指定された傾動角、Cアーム17、X線発生装置11、X線検出器12の形状に基づいて、傾動移動するときのX線測定光学系13の通過範囲を算出する演算を行う。
【0031】
衝突判定部41は、立体形状の通過範囲(直線移動時の通過範囲、回転移動時の通過範囲)とX線測定光学系13の位置とに基づいて、これらが交差するかにより衝突の可能性を算出する演算を行い、また、傾動の場合はX線測定光学系の傾動移動経路と立体形状の位置とに基づいて同様に衝突の可能性を算出する演算を行う。
【0032】
回避ルート算出部42は、衝突判定で衝突の可能性があると判定された場合に、衝突回避のための回避ルートを算出する演算を行う。
移動ルート決定部43は、衝突の可能性がない場合の通常の最短経路(通常ルート)での移動、衝突の可能性がある場合の回避ルートでの移動のいずれかを決定して移動ルートを確定する。
【0033】
次に、このX線検査装置1によるティーチング動作について、図2のフローチャートを用いて説明する。
先ず、X線測定光学系13、ステージ14を原点復帰した状態する(S101)。これによりステージ座標に対するX線測定光学系13、光学カメラ16の位置関係が一意的に定まる。以後、ステージ14上に被測定物を載置したときにX線画像上、光学カメラ画像上でのマウス23の操作による位置指定、キーボード22によるステージ座標の入力により、任意の位置が指定できることになる。
【0034】
続いて、被測定物Sをステージ14上に載置し、光学カメラ16により撮影し、撮影した光学カメラ画像から外観形状を包含する立体形状の抽出を行う(S102)。ここでは、被測定物Sは星型の立体物(図3のS1参照)であるとする。なお、この星型立体物を包含する円柱立体物として演算することもできるが、ここでは星型立体物の外観形状をそのまま被測定物の立体形状として採用することとする。
【0035】
続いて、X線画像とともに、モニタ画面に光学カメラ画像(2方向あるいは全方位からの光学カメラ画像)を表示し、測定しようとする順に、マウス23により被測定物Sの各測定点を指定するティーチングを行う(S103)。
測定点の指定が終わると、移動前の測定点と移動先の測定点間の最短経路を抽出し、さらにその経路でステージ14を移動させたときの被測定物の軌跡である通過範囲を抽出する(S104)。
続いて、最短距離で移動させたときの衝突の可能性について判定し(S105)、判定の結果、衝突可能性がある場合は回避ルートの算出を行う(S106)。
【0036】
図3は、ステージ並進移動に伴って、被測定物が衝突する状態を説明する模式図である。測定点として図3(a)に示すように、星型の先端部分A1とA2の2点をこの順で指定し、A1測定後にA2が測定されるように設定する。その結果、最短移動経路は直線であるため、ステージ14がB1からB2へ併進移動し、これと連動してステージ上の被測定物Sは第一位置(S1)から第二位置(S2)に移動させられるものとする。このときの軌跡が通過範囲となる。
【0037】
最短経路である直線移動による通過範囲を算出すると、明らかに星型の一部がX線検出器12に衝突することになる。
このとき、衝突を回避するために、例えば図3(b)に示すような回避ルートが算出される。すなわち、最短経路と直角方向に衝突を回避できる距離だけ移動(第一段階の移動)し、そこから最短距離と平行な方向に移動し(第二段階の移動)、本来の移動先に戻すように最短経路と直角方向に第一段階の移動と同じ距離だけ移動する(第三段階の移動)。なお、移動前と移動先との位置関係によっては、このような三段階移動に代えて、互いに直交する2段階の直線移動で衝突を回避させた移動を行わせることができる場合がある。
なお、S105の判定で、衝突可能性がない場合には、回避ルートをとる必要がないので、S106はスキップされ、S107に進む。
【0038】
続いて、直線ルートまたは回避ルートによる移動ルートを決定し(S107)、ティーチングを行うすべての測定点について指定を完了したかを判定する(S108)。そしてすべての測定点のティーチングが完了していない場合はS103に戻り、処理を繰り返す。すべての測定点のティーチングが完了したときは、ティーチング動作を終了する。
【0039】
以上は、ステージの並進移動の場合について説明したが、ステージ14を回転移動する場合も同様である。図4は、ステージ回転移動に伴って、被測定物Sが衝突する状態を説明する模式図である。測定点として図4(a)に示すように、星型の先端部分A1とA2の2点をこの順で指定し、A1測定後に回転移動によりA2が測定されるように設定する。図4(a)の状態でステージを回転すると、X線検出器12と衝突してしまうので、回避ルートの算出を行う。この場合は、例えば図4(b)に示すように、ステージ14を並進移動(第一段階の移動)する。続いて、図4(c)に示すように、ステージ14の回転移動を行い(第二段階の移動)被測定物Sも回転させる。さらに、図4(d)に示すように、第一移動と反対方向に並進移動(第3の移動)を行うことにより、衝突することなく、被測定物Sを回転移動させることができる。
【0040】
次に、傾動を行う場合について説明する。図5は、X線検査装置1による傾動のティーチング動作を説明するフローチャートである。ここでは、本来ならば、Cアーム17の傾動角と被測定物Sの測定点との両方を指定して測定することができるが、説明を簡単にするため、便宜上、Cアーム17だけを傾動移動して測定を行うものとする。
まず、X線測定光学系13、ステージ14を原点復帰した状態する(S201)。これにより、図2とフローチャートと同様に、ステージ座標に対するX線測定光学系13、光学カメラ16の位置関係が一意的に定めることができる。
【0041】
続いて、被測定物Sをステージ14上に載置し、光学カメラ16により全体像を撮影し、撮影した光学カメラ画像から外観形状を包含する立体形状の抽出を行う(S202)。ここでは被測定物Sは、図6に示すような縦長円筒状物体の上部に横長円筒状の顎部分が形成された複合形状の立体物(複合立体物という)であるとする。なお、この複合立体物を包含する円柱立体物として演算することもできるが、ここでは複合立体物の外観形状をそのまま被測定物の立体形状として採用することとする。
【0042】
続いて、測定順に、傾動角の入力を行う(S203)。測定しようとする順に、マウス23により図示しない傾動角入力画面を用いて、Cアーム17の方位を指定するティーチングを行う(S203)。
【0043】
続いて、傾動中のX線測定光学系13の通過範囲を抽出する(S204)。そして衝突の可能性について判定し(S205)、判定の結果、衝突可能性がある場合は回避ルートの算出を行う(S206)。
【0044】
例えば、図6(a)に示す場合のように、傾動によりCアーム17の通過する弧状の軌跡に被測定物Sが重なるために衝突するとする。この場合は、回避ルートとして図6(b)に示すようにステージ14をS3からS4の位置まで並進移動し(第1段階の移動)、続いて傾動を行い(第二段階の移動)、続いて図6(c)に示すようにステージをS4からS3の位置まで戻す並進移動を行う(第三段階の移動)ルートが算出される。
なお、S205の判定で、衝突可能性がない場合には、回避ルートをとる必要がないので、S206はスキップされる。
【0045】
続いて、算出した回避ルートを傾動時の移動経路として決定し(S207)、ティーチングを行うすべての傾動動作について指定を完了したかを判定する(S208)。そしてすべての傾動処理のティーチングが完了していない場合はS203に戻り、処理を繰り返す。すべての傾動処理のティーチングが完了したときは、ティーチング動作を終了する。
【0046】
本実施形態では、Cアーム17の傾動移動のみを行う場合について説明したが、傾動とともに、測定点を移動するためのステージ14の移動が伴う場合についても、上述した回避処理を組み合わせて算出すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、ティーチング機能を備えたX線検査装置に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施形態であるX線検査装置の構成を示すブロック図。
【図2】図1のX線検査装置による衝突危険領域設定動作を説明するフローチャート。
【図3】衝突回避ルート(併進移動の場合)を説明する図。
【図4】衝突回避ルート(回転移動の場合)を説明する図。
【図5】図1のX線検査装置による傾動動作を行う場合のフローチャート。
【図6】傾動の際の衝突回避ルートを説明する図。
【符号の説明】
【0049】
1: X線検査装置
11: X線源
12: X線検出器
13: X線測定光学系
14: ステージ
15: 駆動機構
16: 光学カメラ
17: Cアーム
18: 傾動機構
20: 制御系
21: CPU
22: キーボード
23: マウス
24: 表示装置
31: X線画像作成部
32: X線画像表示制御部
33: 光学カメラ画像作成部
34: 光学カメラ画像表示制御部
36: 立体形状抽出部
37: 測定点情報入力部
38: 通過範囲抽出部
39: 傾動上方入力部
40: X線測定光学系通過範囲抽出部
41: 衝突判定部
42: 回避ルート算出部
43: 移動ルート決定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透視用X線を照射するX線源と被測定物の透視X線像を撮影するX線検出器とからなるX線測定光学系と、X線源とX線検出器との間に被測定物が位置するように被測定物を載置するためのステージと、少なくともステージを並進駆動する駆動機構とを備え、
ステージに対する被測定物の位置関係が定まるようにしてステージ上に載置された被測定物の複数の測定点についてのX線検査を行うX線検査装置において、
光学カメラにより撮影した光学カメラ画像に基づいて被測定物の外観を形成する立体形状または外観を包含する立体形状を抽出する立体形状抽出部と、
測定点に関する位置情報の入力を受ける測定点情報入力部と、
測定点間を最短経路で移動させるときに抽出した立体形状に基づいて移動中の被測定物が通過する範囲を抽出する通過範囲抽出部と、
X線測定光学系と被測定物の通過範囲との位置関係とに基づいて衝突可能性を判定する衝突判定部と、
衝突可能性がある場合に回避ルートを算出する回避ルート算出部とを備えたことを特徴とするX線検査装置。
【請求項2】
駆動機構は、さらに、ステージを回転駆動するように構成され、測定点情報入力部は測定点に関する位置情報とともに回転角度情報の入力を受け、通過範囲抽出部は測定点間が回転移動される場合の被測定物の通過範囲を抽出することを特徴とする請求項1に記載のX線検査装置。
【請求項3】
X線測定光学系を一体に支持するアームおよびアームを傾動する傾動機構と、傾動角に関する情報の入力を受ける傾動角情報入力部と、アームを傾動するときのX線測定光学系が通過する範囲を抽出するX線測定光学系通過範囲抽出部とをさらに備え、衝突判定部はX線測定光学系が通過する範囲と被測定物の位置との位置関係に基づいて衝突可能性を判定することを特徴とする請求項1に記載のX線検査装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2007−121085(P2007−121085A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−312949(P2005−312949)
【出願日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】