説明

X線顕微鏡用試料支持部材、試料収容セル、X線顕微鏡、およびX線顕微鏡像の観察方法

【課題】荷電粒子線を高い効率で「水の窓」領域を含む0.6〜6nmの波長領域の軟X線に変換すること及び荷電粒子線の試料内での拡散範囲を狭く抑えて試料へのダメージを抑制すること。
【解決手段】
本発明の試料支持部材(11)は、窒化シリコン膜またはカーボン膜の試料支持膜(11a)の一方主面に、電子線照射により0.6〜6.0nmの波長領域の特性X線を放射する金属膜(11b)が設けられている。これは、電子線の照射を受けた金属膜(11b)から軟X領域の特性X線を高効率(高強度)で放射させるためであり、このような高強度の特性X線を試料(10)に照射させることにより、観察画像のSN比を向上させることができる。また、金属膜(11b)には、試料支持膜(11a)内での電子の拡散範囲を抑制するという効果もあるため、入射電子線の加速電圧を高めることが可能となり、SN比の向上のみならず分解能の向上にも効果がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はX線顕微鏡像の観察技術に関する。より詳細には、X線顕微鏡を用いて試料の形態観察等を行う際に用いられる試料支持部材及び試料収容セルならびにこれらを用いたX線顕微鏡像の観察手法に関する。
【背景技術】
【0002】
生物物質や有機物質等の様々な試料の形態を観察する手法として、近年、X線をプローブとして用いるX線顕微鏡の開発が進められてきている。X線顕微鏡は、従来から広く利用されてきた形態観察手段である光学顕微鏡に比較して、水溶液中の試料を高分解能で観察することが可能であるという大きな特長を有している。
【0003】
特に、2.3〜4.4nmの波長領域(284〜540eVのエネルギ領域に対応)の軟X線は、水を透過し易く、しかも生物試料中に多く含まれる炭素や窒素に良く吸収されるため、水溶液中の生物試料を高コントラストで観察するためのプローブとして極めて有効である。
【0004】
上記の範囲の波長領域は、一般に、「水の窓」と呼ばれるが、「水の窓」領域のX線を用いると、水分を含んだ対象物(生体試料や溶液中の試料)をそのままの状態で観察することが可能となることに加え、波長は可視光よりも短いために光学顕微鏡以上の高分解能観察が可能であることから、当該波長範囲の軟X線を利用したX線顕微鏡の開発が進められてきている(例えば、真島秀明ほか「細胞をX線顕微鏡で見る」Medical Imaging Technology, Vol. 17, No.3 p.211-216 (1999)(非特許文献1)を参照)。また、炭素による吸収が少なく「炭素の窓」と呼ばれる5.0〜4.5nmの波長領域(240〜280eVのエネルギ領域に対応)の軟X線や、より短波長の0.6〜2.3nmの波長領域の軟X線も、生物試料の観察には好都合である。
【0005】
X線顕微鏡は、主として、ゾーンプレート等の集光系を用いてX線ビームを細く絞って試料に照射するタイプ(集光系)と、点光源からのX線ビームを試料に照射するタイプ(点光源系)に分類される。
【0006】
集光系のX線顕微鏡は、照射透過型のものと走査透過型のものとに分類される(例えば、Chris Jacobsen 「Soft x-ray microscopy」 Trend in Cell Biology, Vol. 9, p.44-47 (1999)(非特許文献2)を参照)。集光系X線顕微鏡の分解能はゾーンプレートの加工精度に依存し、理論的限界は10〜15nm程度と予想されている(例えば、W. Chao et al., “Soft X-ray microscopy at a spatial resolution better than 15 nm” Nature, Vol. 453, p.1210-1213 (2005)(非特許文献3)を参照)。
【0007】
一方、点光源を用いる方法は、レーザによりX線を発生させる方法と、電子線でX線を発生させる方法とに分類される。電子線をターゲットに入射させて発生させたX線を用いて試料観察する方法として、試料支持膜に電子線を直接入射させてX線を発生させ、このX線を、電子線を入射させた面とは反対側の表面に付着させた試料に照射させることとして試料の形態を観察するといった手法が開発されてきている(特開平8−43600号公報(特許文献1)や特願2009−18290号明細書(特許文献2)を参照)。
【0008】
このような手法では、非常に細く絞った低加速の電子線を試料支持膜に入射させることとすることで試料内での電子線拡散範囲が狭い領域にとどめることができ、その結果、高い分解能を達成することが可能となる。
【0009】
また、当該手法によれば、試料支持膜の下方(電子線入射面とは反対側)に、X線検出器を様々な角度や位置で複数個配置することにより、それぞれのX線検出器の配置角度に依存した「傾斜画像」を得ることができるため、1回の電子線走査で様々な「傾斜画像」を得ることが可能となる。その結果、1回の電子線走査だけで、観察試料の3次元構造を観察することも可能となる(特許文献2参照)。
【0010】
ところで、軟X線顕微鏡観察用の試料支持膜としては、これまで、窒化シリコン膜が広く用いられている。窒化シリコンの支持膜は高い耐圧性を有するため、2枚の窒化シリコン膜を、隙間を設けて平行に固定し、当該隙間内に水溶液を含む試料を封入して密閉した状態で観察装置内(真空中)に導入して観察を行なうための「X線顕微鏡用試料カプセル」の考案も報告されている(特開平6−180400号公報(特許文献3))。
【0011】
しかし、従来の窒化シリコンからなる試料支持膜に直接、電子線やイオンビームを入射させてX線顕微鏡観察を行なうこととすると、以下のような問題がある。
【0012】
すなわち、窒化シリコンからなる試料支持膜は荷電粒子線からX線への変換効率が比較的低く、その結果、得られる観察画像のSN比は低いものとなる。また、水溶液中の生物試料を観察する場合には、「水の窓」領域の特性X線を発生する材料を試料支持膜に用いる必要があるが、窒化シリコン膜は当該要求を十分には満足し得ていない。さらに、特開平6−180400号公報(特許文献3)に開示されているような試料カプセルは、2枚の試料支持膜を10μm以下の間隔で平行に挟み込んで固定した後に水溶液中の試料を封印する構造であるため、試料封入作業にはかなりの熟練が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平8−43600号公報
【特許文献2】特願2009−18290号明細書
【特許文献3】特開平6−180400号公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】真島秀明ほか「細胞をX線顕微鏡で見る」Medical Imaging Technology, Vol. 17, No.3 p.211-216 (1999)
【非特許文献2】Chris Jacobsen “Soft x-ray microscopy” Trend in Cell Biology, Vol. 9, p.44-47 (1999).
【非特許文献3】W. Chao et al., “Soft X-ray microscopy at a spatial resolution better than 15 nm” Nature, Vol. 453, p.1210-1213 (2005).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、電子線やイオンビーム等の荷電粒子線を高い効率で「水の窓」領域を含む0.6〜6nmの波長領域の軟X線に変換すること及び荷電粒子線の試料内での拡散範囲を狭く抑えて荷電粒子線照射に起因する試料へのダメージを抑制することを可能とするX線顕微鏡用試料支持部材、対象観察試料が水溶液試料であってもその観察装置内への導入処理を容易且つ簡便に行ない得る構成のX線顕微鏡用試料収容セル、および、汎用のSEM等の装置を改造等することなく簡便且つ安価な手法で高いSN比の高分解能X線顕微鏡像を得ることを可能とする技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述の課題を解決するために、本発明のX線顕微鏡用試料支持部材は、試料を保持する支持膜の一方主面に、荷電粒子の照射により特性X線を放射する金属膜が設けられている。
【0017】
好ましくは、前記金属膜は、荷電粒子の照射により0.6〜6nmの波長領域の特性X線を放射する。
【0018】
前記金属膜は、例えば、アルミ、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、コバルト、ニッケル、銅の何れかを主成分として含む膜である。
【0019】
好ましくは、前記金属膜の膜厚は200nm以下である。
【0020】
本発明の試料支持部材は、前記支持膜と前記金属膜との間に、低い荷電粒子透過率と高いX線透過率を有する第2の金属膜が設けられている態様としてもよい。
【0021】
前記第2の金属膜は、例えば、金、プラチナ、パラジウム、オスミウム、クロム、ニッケル、タングステン、鉛の何れかを主成分として含む膜である。
【0022】
また、前記支持膜は、例えば、窒化シリコン膜、カーボン膜、またはポリイミド膜の何れかである。
【0023】
本発明の試料収容セルは、上述した試料支持部材を有するセル上部と該セル上部の試料支持膜側の面に対向するセル下部がシール部材を介して所定の間隔の隙間を有するように配置されており、前記セル上部には試料を前記隙間内に注入させる注入孔と空気孔と観察窓が形成されている。
【0024】
この試料収容セルは、前記試料支持膜面の他方主面側に試料吸着材が設けられている態様としてもよい。
【0025】
また、この試料収容セルは、前記注入孔と前記空気孔を気密する密閉手段を備えた態様としてもよい。
【0026】
さらに、この試料収容セルは、前記セル内を所定の圧力に調整する圧力調整手段を備えた態様としてもよい。
【0027】
本発明のX線顕微鏡は、試料を保持する支持膜の一方主面に荷電粒子の照射により特性X線を放射する金属膜が設けられている試料支持部材を保持するホルダと、前記試料支持部材に支持された観察試料に荷電粒子を照射する荷電粒子線発生部と、前記荷電粒子を前記観察試料上で走査可能とする荷電粒子走査手段と、前記試料支持部材の支持膜面側に配置され、前記荷電粒子の照射により発生したX線を電子に変換する光電変換手段と、該光電変換手段により光電変換された電子を検知する電子線検出器と、該電子線検出器により検知された電子線検出信号を処理してX線画像を形成する演算部を備えている。
【0028】
本発明のX線顕微鏡は、前記観察試料と前記光電変換手段との間に荷電粒子を遮蔽するX線透過フィルタを備えた態様としてもよい。
【0029】
また、本発明のX線顕微鏡は、前記観察試料と前記光電変換手段との間に該光電変換手段への荷電粒子の入射を阻止する電場又は磁場の発生手段を備えた態様としてもよい。
【0030】
本発明のX線顕微鏡像の第1の観察方法は、上述した本発明の試料支持部材の他方主面側に観察試料を支持し、前記金属膜面側から収束させた荷電粒子線を走査させて入射して該試料支持部材からX線を発生させ、該X線を前記試料支持部材の試料支持膜面側に配置されたX線検出器により検知してX線画像を形成する。
【0031】
このX線顕微鏡像の観察方法は、前記X線検出器を前記試料支持部材に支持された観察試料を異なる方向から望む複数の位置のそれぞれに配置して前記X線を検知するようにしてもよい。
【0032】
さらに、このX線顕微鏡像の観察方法は、前記複数のX線検出器により検知されたX線検出信号を演算処理して3次元のX線画像を形成するようにしてもよい。
【0033】
本発明のX線顕微鏡像の第2の観察方法は、上述した本発明の試料支持部材の他方主面側に観察試料を支持し、前記金属膜面側から収束させた荷電粒子線を走査させて入射して該試料支持部材からX線を発生させ、前記試料支持部材の試料支持膜面側に配置された光電変換手段により前記X線を電子に変換し、該電子を電子線検出器により検知してX線画像を形成する。
【0034】
このX線顕微鏡像の観察方法は、前記観察試料と前記光電変換手段との間に荷電粒子を遮蔽するX線透過フィルタを設けるようにしてもよい。
【0035】
さらに、このX線顕微鏡像の観察方法は、前記観察試料と前記光電変換手段との間に電場又は磁場の発生手段を設けて前記光電変換手段への荷電粒子の入射を阻止するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0036】
本発明のX線顕微鏡用試料支持部材には、荷電粒子線の照射により特性X線を放射する金属膜が設けられているため、電子線やイオンビーム等の荷電粒子線を高い効率で「水の窓」領域を含む0.6〜6nmの波長領域の軟X線に変換することが可能となる。
【0037】
これにより、荷電粒子線の試料内での拡散範囲を狭く抑えて荷電粒子線照射に起因する試料へのダメージを抑制することが可能となるとともに、SN比の高い画像を得ることも可能となる。
【0038】
また、本発明のX線顕微鏡用試料収容セルは、試料収容セル内への液体試料の導入を観測窓周辺に設けられた注入孔からの滴下により行ない、空気孔を設けたことにより表面張力により容易に観測窓まで導入することができる構成としたため、対象観察試料が水溶液試料であってもその観察装置内への導入処理を容易且つ簡便に行ない得る。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る試料支持部材を用いてX線顕微鏡観察を行う際の装置系の構成例の概要を説明するためのブロック図である。
【図2】X線フォトダイオードにより検知されたX線の検出信号の様子を概念的に説明するための図である。
【図3】X線検出器であるX線フォトダイオードを複数備えた走査型X線顕微鏡の構成例を説明するための図である。
【図4】図3に示した構成例の走査型X線顕微鏡に設けられている3つのX線フォトダイオードで検知された信号に基づいてそれぞれの角度補正後の画像データを求め、これらの画像データに基づいて対象試料の3次元構造を求めるプロセスを概念的に説明するための図である。
【図5】観察対象試料を透過したX線を光電変換手段により電子に変換させて、SEM内の2次電子検出器によりX線画像を観察する構成例を示した図である。
【図6】図5に示した光電変換手段に荷電粒子(電子)を遮蔽してX線を透過するフィルタを備えた構成例を示した図である。
【図7】図5に示した光電変換手段に磁石を設けて荷電粒子(電子)を遮蔽してX線を透過させるようにした構成例を示した図である。
【図8】金属膜を設けたことによる試料への電子線ダメージの低減効果を確認した結果を説明するための図である。
【図9】チタン膜を一方主面に形成した窒化シリコン膜の他方主面に観察対象試料としての酵母を付着させ、X線顕微鏡観察して得た像である。
【図10】第2の金属膜を設けたことによる、試料への電子線ダメージの更なる低減効果を確認した結果を説明するための図である。
【図11】アルミニウム薄膜下部に金薄膜を設けたことによる、試料への電子線ダメージの更なる低減効果を確認した結果を説明するための図である。
【図12】アルミニウム薄膜と金薄膜を一方主面に形成した窒化シリコン膜の他方主面に観察対象試料としての酵母を付着させ、X線顕微鏡観察して得た像である。
【図13】溶液中の試料をX線顕微鏡観察する際に用いるための試料収容セルの構成例を示す図である。
【図14】より簡便な液体試料の封入を可能とする構造の試料収容セル例を示す図である。
【図15】観測窓近傍の試料支持膜に試料吸着材を薄く塗布した構成の試料収容セル例を示す図である。
【図16】簡便な液体試料の封入を可能とする構造の試料収容セルに溶液内圧力の調整機構を備えた構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下に、図面を参照して、本発明のX線顕微鏡用試料支持部材、試料収容セル、ならびにこれらを用いたX線顕微鏡像の観察方法および装置の構成について説明する。
【0041】
図1は、本発明に係る試料支持部材を用いてX線顕微鏡観察を行う際の装置系の構成例の概要を説明するためのブロック図で、この図では、走査型電子顕微鏡(SEM)内にX線検出器を設けた例を図示している。したがって、この走査型X線顕微鏡は、SEM機能も併せもつことが可能である。
【0042】
図1に示した例では、観察試料(10)が試料支持部材(11)によって支持され、当該試料支持部材(11)は試料ホルダ(12)によって保持されている。X線顕微鏡観察装置系は、試料支持膜(11)に電子線を収束させて入射する電子銃(13)と、電子銃(13)から出射する電子線を走査させる信号(走査信号)を生成する回路部(14)と、当該回路部(14)からの走査信号に基づいて電子線を走査させるための偏向コイル(15)と、入射電子線によって試料支持膜(11)内で発生するX線を検知するX線フォトダイオード(16)と、X線フォトダイオード(16)の検出信号を増幅する増幅器(17)と、該X線の検出信号に基づいてX線画像を形成するX線画像処理PC(18)により構成されている。
【0043】
観察試料(10)は試料支持部材(11)を構成する試料支持膜(11a)により支持され、試料支持面の反対側の主面には金属膜(11b)が設けられている。観察試料(10)は生体試料であってよい。
【0044】
金属膜(11b)は、電子線やイオンビームなどの荷電粒子線の照射を受けて、例えば0.6〜6.0nmの波長領域の特性X線を放射する。このような金属膜(11b)の材料としては、アルミ、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、コバルト、ニッケル、銅を例示することができ、これらの金属の何れかを主成分として含む膜を金属膜(11b)として用いることができる。高効率で特性X線を発生させるためには、金属膜(11b)の膜厚は200nm以下であることが好ましい。
【0045】
なお、この試料支持膜(11a)には、薄いカーボン膜や窒化シリコン膜あるいはポリイミド膜を用いることができる。また、試料支持部材(11)を保持する試料ホルダ(12)は、走査機構部(不図示)により、XY平面内での移動が可能である。
【0046】
試料支持部材(11)の上面(金属膜面)からは、荷電粒子線が照射される。図1に示した例では、荷電粒子線は電子線である。入射電子は試料支持部材(11)の内部で拡散しながら広がり、試料支持部材(11)の下面(試料支持膜面)付近に到達する。このときの電子線の加速電圧は、試料支持部材(11)に入射した電子が該試料支持部材(11)をほとんど透過せず、且つ、試料支持部材(11)の下面に到達する程度の低加速電圧に調整されている。
【0047】
このような加速電圧とした場合には、試料支持部材(11)の下面からは、試料支持部材(11)内で発生したX線及び低エネルギの2次電子のみが放出され、入射電子線(1次電子)の試料支持部材(11)外への放出はほとんどなくなる。このため、試料支持部材(11)の下面に付着している試料(10)に対して1次電子がダメージを与えることを回避することができる。
【0048】
試料支持部材(11)の下面から放出されたX線及び2次電子は、試料(10)が付着している部位では少なくともその一部が吸収される一方、その他の部位ではそのまま透過することとなる。
【0049】
図2は、X線フォトダイオード(16)により検知されたX線の検出信号の様子を概念的に説明するための図である。試料支持部材(11)の下方に配置されているX線フォトダイオード(16)は透過してきたX線を検知し、増幅器(17)で増幅されたX線の検知信号は、走査回路部(14)から走査信号を受信するデータレコーダ(19)に送られて記録され、この検知信号(および走査信号)に基づいてX線画像処理PC(18)によりX線画像が形成される。
【0050】
上述したとおり、電子銃(13)から出射する電子線は、偏向コイル(15)により試料支持膜(11)上の所望の範囲を走査可能であるから、X線フォトダイオード(16)で検知されるX線の強度は、試料(10)の付着領域では相対的に弱く、その他の領域では相対的に強くなり、X線画像処理PC(18)により形成されるX線画像には、試料(10)の形状や構造等の情報を含む「コントラスト」が生じることとなる。
【0051】
図1に示した構成例では、試料支持部材(11)の下横方向に、2次電子を集電させるための金属製メッシュ(20)を設け、これにプラスの電圧(+V)を加えている。これは、試料支持膜(11)下面から放出される2次電子がX線フォトダイオード(16)によって検知されてノイズとなることがないように横方向に集電するため、及び、2次電子検出器(21)への集電を容易にするためのものである。
【0052】
2次電子検出器(21)により検知された信号は信号処理部でもあるコントロールPC(22)に送られ、この信号に基づいて、間接2次電子コントラスト(ISEC)画像(2次電子線画像)を形成することができる。
【0053】
なお、上記構成例では、X線検出器としてX線フォトダイオードを例示したが、X線に対する感度を有する他の検出器も使用可能である。
【0054】
図1および図2に例示したように、本発明の試料支持部材(11)は、窒化シリコン膜またはカーボン膜、或いはポリイミド膜の試料支持膜(11a)の一方主面に、電子線照射により0.6〜6.0nmの波長領域の特性X線を放射する金属膜(11b)が設けられている。これは、電子線の照射を受けた金属膜(11b)から軟X領域の特性X線を高効率(高強度)で放射させるためであり、このような高強度の特性X線を試料(10)に照射させることにより、観察画像のSN比を向上させることができる。
【0055】
また、金属膜(11b)には、試料支持膜(11a)内での電子の拡散範囲を抑制するという効果もあるため、入射電子線の加速電圧を高めることが可能となり、SN比の向上のみならず分解能の向上にも効果がある。
【0056】
このような金属膜(11b)の好ましい材料としては、アルミ、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、ニッケル、銅を例示することができる。これは、表1に示したように、上記金属材料に電子線照射した際に励起される特性X線の波長(エネルギ)が軟X線領域にあるため、高効率で軟X線領域の特性X線を放射させ得るからである。
【0057】
【表1】

【0058】
また、図2中に符号11cで示したように、試料支持膜(11a)と金属膜(11b)との間に、荷電粒子透過率(ここでは電子線透過率)が低い第2の金属膜を設けるようにしてもよい。
【0059】
このような低電子透過率を有する第2の金属膜を設けることにより、高加速電圧の入射電子線であっても試料支持膜(11a)側へは透過し難くなるため、試料に対する電子線によるダメージを有効に抑制することが可能となる。また、高加速電圧の電子線入射が可能となることは、金属膜(11b)からの特性X線の放射効率を高めることを可能とし、さらには電子の拡散範囲を小さくすることにより鮮明な画像を得ることを可能とする。
【0060】
このような第2の金属膜としては、電子線透過率の低い金属元素である金、プラチナ、パラジウム、オスミウム、クロム、ニッケル、タングステン、鉛の何れかを主成分として含む膜を例示することができる。また、その厚みは5〜100nm程度が好ましい。
【0061】
図1および図2に示した例では、X線検出器は1つだけ設けられているが、X線検出器を複数備えることとし、これら複数のX線検出器を、試料支持膜に支持された観察試料を異なる方向から望む位置に配置するようにしてもよい。
【0062】
図3は、X線検出器であるX線フォトダイオードを複数備えた走査型X線顕微鏡の構成例を説明するための図で、X線フォトダイオード(XPD)を3つ設けた(16a〜c)ことに対応して、増幅器(AMP)も3つ設けられ(17a〜c)、これら増幅器(17a〜c)からの検知信号をA/D変換器(23)およびデータレコーダ(19)を介して、X線画像処理PC(18:ここでは3次元画像処理用PC)に送る構成となっている。これ以外の基本的構成は、図1に示したものと同じである。
【0063】
試料支持膜(11a)内からのX線は様々な方向に放出されるが、X線検出器を複数設け、これらを試料支持膜(11a)に支持された観察試料(10)を異なる方向から望む位置に配置することとすれば、試料を望む角度に依存した複数のX線画像(傾斜画像)を得ることができる。つまり、1回の電子線走査で検出器数と同数の傾斜画像が得られることとなり、これらの傾斜画像から、観察対象である試料の3次元構造を求めることが可能となり、しかも、試料に対するダメージは極めて軽微なものとなる。
【0064】
なお、図3では、X線検出器数が3の例を示したが、当然のことながら、例えば数十個あるいはそれ以上のX線検出器を配置するようにして多数の傾斜画像を取得し、高精度の3次元構造を求めるようにすることも可能である。
【0065】
図4は、図3に示した構成例の走査型X線顕微鏡に設けられている3つのX線フォトダイオード(16a〜c)で検知された信号に基づいてそれぞれの角度補正後の画像データを求め、これらの画像データに基づいて対象試料の3次元構造を求めるプロセスを概念的に説明するための図である。
【0066】
図1〜4では、観察試料(10)を透過してきたX線を直接X線フォトダイオードで検知して、これをもとに画像データを得る態様を示したが、光電効果を利用してX線を電子に変換し、この電子の強度(分布)に基づいて画像データを得る態様とすることも可能である。
【0067】
図5は、このような場合の光電変換の態様を例示する図で、試料支持部材(11)の下部にステージ(26)が設けられ、当該ステージ(26)の斜面部に設けられた光電変換面(27)にX線が照射されるように設計されている。なお、試料支持部材(11)を透過してくる1次電子は、ステージ(26)に設けられた絞り(26a)に正電位を印加しておく等してこの絞り(26a)で遮蔽し、光電変換面(27)には入射しないようにすることができる。
【0068】
つまり、試料(10)を透過したX線は、光電変換面(27)により電子へと変換され、この電子が、SEM装置内の2次電子検出器(21)により検出される。そして、この2次電子検出器(21)により検知された電子線検出信号が演算部により処理されて、X線画像が形成される。
【0069】
このような構成では、汎用のSEM装置内に改めてX線検出器やアンプを設けるなどの装置改造を必要としないため、簡便かつ安価なX線画像観察が可能となる。
【0070】
また、光電変換面(27)は金を薄くコートするなどにより得ることができるため、ステージの作製も簡便かつ安価であり小型化も容易である。小型のステージであれば、汎用のSEM装置の試料ステージ上に載置して用いることに支障がない。
【0071】
図6は、光電変換部を設けた他の態様を示す図で、この態様では、観察試料(10)と光電変換面(27)との間に位置する絞り(26a)領域に、荷電粒子(ここでは電子)を遮蔽しX線を透過するX線透過フィルタ(28)を設けている。このようなX線フィルタ(28)により、透過電子(1次電子)を完全に遮蔽することができるから、透過電子によるコントラストの低下を防ぐことができる。
【0072】
なお、このX線フィルタ(28)として、耐圧性の高い窒化シリコン膜等を用いることとすれば、ステージ(26)の上部に形成された空間内部(29)を大気圧下に保つこともできるから、当該内部に水溶液サンプル等をセットしての観察も可能となる。
【0073】
図7は、光電変換部を設けた他の態様を示す図で、この態様では、試料(10)を透過した電子を遮蔽する機構として、電場又は磁場の発生手段である磁石(30)を設置し、当該磁石(30)が発生する磁場により透過電子を偏向させて遮蔽している。この構成では、X線は100%透過させることが可能となるから、コントラストの高いX線画像を得ることができる。また、電場を形成することで電子を偏向させて遮蔽する構成とすることも可能である。
【実施例1】
【0074】
図8(A)および図8(B)は、上述の金属膜(11b)を設けたことによる、試料への電子線ダメージの低減効果を確認した結果を説明するための図で、これらは、膜厚50nmの窒化シリコン膜のみに電子線(加速電圧2.6kV)を入射させた際の当該窒化シリコン膜内での電子の拡散範囲(図8(A))および膜厚50nmの窒化シリコン膜の一方主面に膜厚20nmのチタン膜を設けて当該チタン膜側から電子線(加速電圧2.6kV)を入射させた際の窒化シリコン膜内での電子の拡散範囲(図8(B))をモンテカルロシミュレーションにより求めた結果である。
【0075】
チタン膜を設けていない場合(図8(A))には、上記の加速電圧(2.6kV)条件の下では、ほとんどの電子が窒化シリコン膜(試料支持膜)を透過しており、このような透過電子線は観察対象である試料に対してダメージを与えてしまう。
【0076】
一方、膜厚20nmのチタン膜を窒化シリコン膜の上面に形成した場合(図8(B))には、窒化シリコン膜の下面に到達する電子線の量は顕著に低くなっており、試料に対するダメージを抑制することができる。
【0077】
また、上述したように、電子線照射されたチタン膜からは453eVのエネルギをもつ特性X線が高強度で放射されるため、得られる観察画像のSN比やコントラストが向上する。
【0078】
図9は、図8(B)で説明したような、チタン膜を一方主面に形成した窒化シリコン膜の他方主面に観察対象試料としての酵母を付着させ、X線顕微鏡観察して得た像である。この図から、2.6kVの加速電圧の電子線照射条件において、酵母の形状が極めて鮮明に観察できる。なお、当該条件で複数回観察を繰り返した後でも、電子線によるダメージは確認されなかった。
【実施例2】
【0079】
図10(A)および図10(B)は、上述の第2の金属膜(11c)を設けたことによる、試料への電子線ダメージの更なる低減効果を確認した結果を説明するための図で、これらは、膜厚50nmの窒化シリコン膜の一方主面に膜厚20nmのチタン膜を設けたもの(図10(A))および膜厚50nmの窒化シリコン膜の一方主面に膜厚6nmのプラチナ膜を介して膜厚20nmのチタン膜を設けたもの(図10(B))に、チタン膜側から電子線(加速電圧3.0kV)を入射させた際の窒化シリコン膜内での電子の拡散範囲をモンテカルロシミュレーションにより求めた結果である。
【0080】
これらの結果を対比すると明らかなように、チタン膜の下部により重い金属元素の第2の金属膜を設けることにより、透過電子を更に減少させることができる。つまり、入射電子の多くが第2の金属膜であるプラチナ膜で吸収され、試料支持膜である窒化シリコン膜の下面に到達する電子を大幅に減少させている。
【0081】
図11(A)および図11(B)は、第1の金属膜としてアルミを100nm形成し、第2の金属膜として金を100nm形成させたことによる透過電子線の状態を示した図である。これらは、膜厚100nmの窒化シリコン膜の一方主面に形成されており、金薄膜層が無い場合は、加速電圧10kVの電子線はほぼ全て透過する(図11(A))。一方、金薄膜層を設けた場合は、電子線が金薄膜層で散乱吸収され透過電子は数%まで大幅に減少する(11(B))。つまり、金薄膜層を設けることにより、窒化シリコン膜下面の電子線ダメージは大幅に低下させることができる。
【0082】
図12は図11(B)で説明したような、アルミ薄膜と金薄膜を一方主面に形成した窒化シリコン膜の他方主面に観察対象試料としての酵母を付着させ、その反対面に第2の窒化シリコン膜で酵母を挟み、内部を大気圧の状態で密閉した後にX線顕微鏡観察して得た像である。X線は、図5で図示した様に、試料下部の光電変換機構により電子へと変換させて、SEM装置内の2次電子検出器により観察した。
【0083】
電子線の加速電圧が10kVで倍率を2000倍とした場合(図12(A))では、多数の酵母が観察でき、その酵母内部に粒子状の構造が確認できる。図12(B)は、図12(A)中の矢印で示した酵母を1万倍で観察したX線画像である。この図から、酵母内部の核や小胞などの細胞内器官が高分解能で観察でき、明らかに光学顕微鏡を超える分解能を達成している。
【実施例3】
【0084】
図13は、本実施例の、溶液中の試料をX線顕微鏡観察する際に用いるための試料収容セル(24)の構成例を示す図で、上述した試料支持部材(11)に対向させてもう一つの試料支持部材(11’)を設け、これら2つの試料支持部材の間に溶液と一緒に試料(10)を挟み込んで支持した様子を示す図である。
【0085】
試料(10)は水溶液中にあり、例えば10μm以下の間隔で平行に配置された2枚の部材(11、11’)に挟み込まれて支持されている。この状態の2枚の部材はサンプルホルダ(24)内に大気圧下で収納され、O−リング(25)によってSEM装置内の真空と分離されている。従って、試料収容セル(24)を真空中に設置しても、水溶液の蒸発を防ぐことができる。
【0086】
このような試料の支持を行なう際に用いる部材(11a、11´)としては、窒化シリコンやポリイミド膜が好ましい。これは、窒化シリコンやポリイミドの膜は比較的機械的強度(耐圧性)が高いため、図13に図示したような、装置内の真空と分離した状態でのX線画像の撮影が容易なためである。
【0087】
図14(A)乃至(C)は、より簡便な液体試料の封入を可能とする構造の試料収容セルの例を図示したもので、図14(A)は斜視図、図14(B)は上面図、そして図14(C)は当該試料収容セルの断面概略図である。
【0088】
この試料収容セル(24)は、上部(24a)と下部(24b)がシール材(24c)を介して一体化され、上部(24a)と下部(24b)との間に形成された所定の間隔内に、液体試料が注入されるようになっている。
【0089】
試料収容セル(24)の上部(24a)は、上側試料ホルダ(12)の下面に試料支持膜としての窒化シリコン膜(11a)が形成されており、注入孔(24s)と空気孔(24h)および観察窓(24w)が形成されている。そして、観察窓(24w)が形成されている領域には、試料支持膜としての窒化シリコン膜(11a)の一方主面上に、第2の金属膜であるプラチナ膜(11c)を介してチタン膜(11b)が形成されている。
【0090】
試料収容セル(24)内への液体試料の導入は観測窓(24w)周辺に設けられた注入孔(24s)からの滴下により行なう。注入孔(24s)から滴下された液体試料は、空気孔(24h)が反対側に設けられているために、表面張力により容易に観測窓(24w)まで導入することができる。なお、試料を導入した後は、注入孔(24s)および空気孔(24h)を密封部材や気密テープ等で塞ぎ、観察装置内にセットする。
【0091】
なお、図15(A)および図15(B)に図示したように、観測窓近傍の試料支持膜(11a)に試料吸着材(11d)を薄く塗布するなどして、観察窓(24w)に試料(10)が確実に付着・固定され、観察時の試料移動を防ぐようにしてもよい。
【0092】
例えば、溶液中の細胞やバクテリアをこの試料収容セル(24)内へ導入する場合、試料吸着材(11d)としてフィブロネクチンやポリエチレングリコール、コンカナバリンA等を用いることで、細胞を確実に付着・固定することができる。当然のことながら、これ以外の吸着物質に関しても使用することが可能である。
【0093】
このような試料収容セルを用いると、図15(B)に示したように、観察試料(10)がちょうど観測窓(24w)に付着するため、X線顕微鏡観察が容易になる。なお、試料(10)を導入した後に、注入孔(24s)および空気孔(24h)を密封部材(24d)や気密テープ等で塞ぎ、観察装置内にセットする。
【0094】
さらに、図16に示したように、圧力調整弁(31)と調整ダンパ(32)等で、試料収容セル内部の圧力を調整可能な構成とすることで、様々な圧力条件下で試料(10)を観察することが可能となる。例えば、内部圧力を大気圧よりも低くすることで、試料(10)からの水分の蒸発過程の観察等が容易に行える。また、内部圧力を低下させることで試料支持膜へ加わる圧力を低減させることも可能となり、より薄く観察面の広い支持膜を使用することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0095】
以上説明したように、本発明は、電子線やイオンビーム等の荷電粒子線を高い効率で「水の窓」領域を含む0.6〜6nmの波長領域の軟X線に変換すること及び荷電粒子線の試料内での拡散範囲を狭く抑えて荷電粒子線照射に起因する試料へのダメージを抑制することを可能とするX線顕微鏡用試料支持部材、対象観察試料が水溶液試料であってもその観察装置内への導入処理を容易且つ簡便に行ない得る構成のX線顕微鏡用試料収容セル、および、汎用のSEM等の装置を改造等することなく簡便且つ安価な手法で高いSN比の高分解能X線顕微鏡像を得ることを可能とする技術を提供する。
【0096】
本発明は、細胞やバクテリア、ウィルス、タンパク質複合体等の生物試料や有機素材の試料、さらには水溶液中の試料の観察に、特に有効である。
【符号の説明】
【0097】
10 観察対象試料
11 試料支持部材
11a 試料支持膜
11b 金属膜
11c 第2の金属膜
11d 試料吸着材
12 試料ホルダ
13 電子銃
14 走査信号を生成する回路部
15 偏向コイル
16 X線フォトダイオード
17 増幅器
18 X線画像処理PC
19 データレコーダ
20 金属製メッシュ
21 2次電子検出器
22 コントロールPC
23 A/D変換器
24 試料収容セル
24a 上部
24b 下部
24c シール材
24d 密封部材
24s 注入孔
24w 観察窓
24h 空気孔
25 O−リング
26 ステージ
26a 絞り
27 光電変換面
28 X線透過フィルタ
29 ステージ上部に形成された空間内部
30 磁石
31 圧力調整弁
32 調整ダンパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を保持する支持膜の一方主面に、荷電粒子の照射により特性X線を放射する金属膜が設けられているX線顕微鏡用試料支持部材。
【請求項2】
前記金属膜は、荷電粒子の照射により0.6〜6nmの波長領域の特性X線を放射するX線顕微鏡用試料支持部材。
【請求項3】
前記金属膜は、アルミ、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、コバルト、ニッケル、銅の何れかを主成分として含む膜である請求項1又は2に記載のX線顕微鏡用試料支持部材。
【請求項4】
前記金属膜の膜厚は200nm以下である請求項1乃至3の何れか1項に記載のX線顕微鏡用試料支持部材。
【請求項5】
前記支持膜と前記金属膜との間に、低い荷電粒子透過率と高いX線透過率を有する第2の金属膜が設けられている請求項1乃至4の何れか1項に記載のX線顕微鏡用試料支持部材。
【請求項6】
前記第2の金属膜は、金、プラチナ、パラジウム、オスミウム、クロム、ニッケル、タングステン、鉛の何れかを主成分として含む膜である請求項1乃至5の何れか1項に記載のX線顕微鏡用試料支持部材。
【請求項7】
前記支持膜は、窒化シリコン膜、カーボン膜、またはポリイミド膜の何れかである請求項1乃至6の何れか1項に記載のX線顕微鏡用試料支持部材。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れかに記載の試料支持部材を有するセル上部と該セル上部の試料支持膜側の面に対向するセル下部がシール部材を介して所定の間隔の隙間を有するように配置されており、前記セル上部には試料を前記隙間内に注入させる注入孔と空気孔と観察窓が形成されているX線顕微鏡用試料収容セル。
【請求項9】
前記試料支持膜面の他方主面側に試料吸着材が設けられている請求項8に記載のX線顕微鏡用試料収容セル。
【請求項10】
前記注入孔と前記空気孔を気密する密閉手段を備えた請求項8又は9に記載のX線顕微鏡用試料収容セル。
【請求項11】
前記セル内を所定の圧力に調整する圧力調整手段を備えた請求項8乃至10の何れか1項に記載のX線顕微鏡用試料収容セル。
【請求項12】
請求項1乃至7の何れか1項に記載の前記試料支持部材の他方主面側に観察試料を支持し、前記金属膜面側から収束させた荷電粒子線を走査させて入射して該試料支持部材からX線を発生させ、該X線を前記試料支持部材の試料支持膜面側に配置されたX線検出器により検知してX線画像を形成するX線顕微鏡像の観察方法。
【請求項13】
前記X線検出器を前記試料支持部材に支持された観察試料を異なる方向から望む複数の位置のそれぞれに配置して前記X線を検知する請求項12に記載のX線顕微鏡像の観察方法。
【請求項14】
前記複数のX線検出器により検知されたX線検出信号を演算処理して3次元のX線画像を形成する請求項13に記載のX線顕微鏡像の観察方法。
【請求項15】
試料を保持する支持膜の一方主面に荷電粒子の照射により特性X線を放射する金属膜が設けられている試料支持部材を保持するホルダと、
前記試料支持部材に支持された観察試料に荷電粒子を照射する荷電粒子線発生部と、
前記荷電粒子を前記観察試料上で走査可能とする荷電粒子走査手段と、
前記試料支持部材の支持膜面側に配置され、前記荷電粒子の照射により発生したX線を電子に変換する光電変換手段と、
該光電変換手段により光電変換された電子を検知する電子線検出器と、
該電子線検出器により検知された電子線検出信号を処理してX線画像を形成する演算部を備えているX線顕微鏡。
【請求項16】
前記観察試料と前記光電変換手段との間に荷電粒子を遮蔽するX線透過フィルタを備えた請求項15に記載のX線顕微鏡。
【請求項17】
前記観察試料と前記光電変換手段との間に該光電変換手段への荷電粒子の入射を阻止する電場又は磁場の発生手段を備えた請求項15に記載のX線顕微鏡。
【請求項18】
請求項1乃至7の何れか1項に記載の前記試料支持部材の他方主面側に観察試料を支持し、前記金属膜面側から収束させた荷電粒子線を走査させて入射して該試料支持部材からX線を発生させ、前記試料支持部材の試料支持膜面側に配置された光電変換手段により前記X線を電子に変換し、該電子を電子線検出器により検知してX線画像を形成するX線顕微鏡像の観察方法。
【請求項19】
前記観察試料と前記光電変換手段との間に荷電粒子を遮蔽するX線透過フィルタを設ける請求項18に記載のX線顕微鏡像の観察方法。
【請求項20】
前記観察試料と前記光電変換手段との間に電場又は磁場の発生手段を設けて前記光電変換手段への荷電粒子の入射を阻止する請求項18に記載のX線顕微鏡像の観察方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−7766(P2011−7766A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−190871(P2009−190871)
【出願日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】