説明

XYステージ

【課題】プラテン上を2次元移動するスライダの位置を制御するXYステージにおいて、光軸調整に高い精度が要求される反射型センサを用いることなく、スライダの接触・衝突を防止できるようにする。
【解決手段】プラテン上の平面を2次元移動するスライダの位置を制御するXYステージであって、スライダに、他物体が前記平面上の所定の基準距離内に存在していることを検出する超音波センサが配置され、超音波センサが、基準距離内に他物体が存在していることを検出すると、超音波センサが配置されているスライダの移動を停止させる制御部を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラテン上を2次元移動するスライダの位置を制御するXYステージに係り、特に、スライダの接触・衝突防止のための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置等の位置決めに用いられるXYステージは、位置決め対象物が載せられたスライダをプラテン上で2次元移動させて位置を制御する。一般に、スライダの位置検出にはレーザ干渉計が用いられ、レーザ干渉計の測定結果に基づいて精密なフィードバック制御による位置決めが行なわれている。また、XYステージでは、作業効率向上等の観点から、1つのプラテン上で複数のスライダの位置決め制御を行なうものもある。
【0003】
レーザ干渉計は、光路差により発生する干渉縞を捉えることで基準位置からの変位を検出する計器であり、絶対位置検出を行なわない。このため、位置決め制御に際しては、スライダを所定の原点に復帰させてから動作を開始する。その後、レーザ干渉計により原点からの相対位置を検出することで、スライダの位置を演算する。
【0004】
したがって、スライダを初期状態から原点位置に復帰させるまでは、レーザ干渉計でスライダの位置を把握することはできない。また、位置決め制御中においても偶発的にレーザ干渉計のレーザが遮られたり、誤動作が生じる等の異常状態が発生する場合もある。このような状況において、何らかの対策が施されていないと、スライダ同士が接触・衝突したり、スライダがプラテンに備えられた壁に接触・衝突することが起こり得る。
【0005】
従来、スライダの接触・衝突を防止するため、レーザ干渉計とは別に、反射型センサが用いられている。図5は、反射型センサが備えられたプラテンとスライダとを模式的に示す図である。本図の例では、プラテン510上のXY平面を、スライダA520aとスライダB520bの2台のスライダが移動するようになっている。
【0006】
プラテン510のX方向の壁には、反射型センサ530a、反射型センサ530b、反射型センサ530c、反射型センサ530dが配置され、Y方向の壁には、反射型センサ540a、反射型センサ540b、反射型センサ540c、反射型センサ540dが配置されている。反射型センサが配置された反対側の壁は光を反射する加工がされており、各反射型センサは自身が射出する赤外光等の反射光の受光有無を検出することで、図中の各反射型センサに対応した一点鎖線上にスライダ520が存在するかどうかを判断することができるようになっている。
【0007】
これらの反射型センサ530により、スライダ520の精密な位置は把握することができないものの、いずれかのスライダ520が壁に接近したことや、スライダ520同士が接近したことを検知することができる。
【0008】
そして、このようなスライダの接触・衝突のおそれが生じた場合にスライダの移動を停止させる制御を、レーザ干渉計による位置決め制御とは独立して行なうことにより、スライダの接触・衝突を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−203979号公報
【特許文献2】特開2007−163418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、反射型センサは、自身が射出した赤外光等を対面の壁で反射させて受光するため、光軸調整に高い精度が要求される。このため、組立時やメンテナンス時等に多くの工数を要するという問題がある。特に大型のXYステージでは、この問題は顕著である。
【0011】
そこで、本発明は、プラテン上を2次元移動するスライダの位置を制御するXYステージにおいて、光軸調整に高い精度が要求される反射型センサを用いることなく、スライダの接触・衝突を防止できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明によれば、プラテン上の平面を2次元移動するスライダの位置を制御するXYステージであって、前記スライダに、他物体が前記平面上の所定の基準距離内に存在していることを検出する超音波センサが配置されていることを特徴とするXYステージが提供される。
【0013】
本発明では、他物体が前記平面上の所定の基準距離内に存在していることを検出する超音波センサを用いることによって、反射型センサを用いることなく、他物体との近接を検出することができる。これにより、光軸調整に高い精度が要求される反射型センサを用いることなく、スライダの接触・衝突を防止できるようになる。
【0014】
より具体的には、前記超音波センサが、前記基準距離内に他物体が存在していることを検出すると、前記超音波センサが配置されているスライダの移動を停止させる制御部を備えることにより、光軸調整に高い精度が要求される反射型センサを用いることなく、スライダの接触・衝突を防止できるようになる。
【0015】
このとき、前記制御部は、前記スライダの移動を停止させる制御を、前記スライダの位置制御とは独立して行なうようにする。また、前記プラテン上において複数のスライダが位置制御され、前記他物体は、他のスライダあるいは前記プラテンに備えられた壁とするようにしてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、プラテン上を2次元移動するスライダの位置を制御するXYステージにおいて、光軸調整に高い精度が要求される反射型センサを用いることなく、スライダの接触・衝突を防止できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態に係るXYステージの構成を示すブロック図である。
【図2】超音波センサが備えられたスライダとプラテンとを模式的に示す図である。
【図3】超音波センサが、他物体の存在を検出した様子を示す図である。
【図4】超音波センサの指向性と配置位置の例を示す図である。
【図5】反射型センサが備えられたプラテンとスライダとを模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係るXYステージの構成を示すブロック図である。本図に示すように、XYステージ10は、機構部100と制御部200とを備えて構成される。
【0019】
機構部100は、XYステージ10の本体部分であり、プラテン110、スライドユニット120、駆動機構130、レーザ干渉計140、原点センサ150を備えている。スライドユニット120は、位置決め対象物を載せて、プラテン110上のXY平面を移動するユニットであり、本実施形態では2台用いられているものとする。
【0020】
本実施形態では、スライドユニット120は、スライダ121と、スライダ121に搭載される超音波センサ122を含んでいる。スライダ121に搭載された超音波センサ122により、スライダ121周辺の所定の基準距離内の他物体を検出することができるようになる。そして、スライダ121周辺の基準距離内に他物体を検出した場合にスライダ121を停止させるようにすることで、光軸調整に高い精度が要求される反射型センサを用いることなく、スライダ121の接触・衝突を防止することができるようになる。
【0021】
駆動機構130は、スライダ121を2次元移動させるための機構である。本実施形態では駆動方式は限定されず、リニアモータ方式、回転モータ方式等種々の駆動方式を用いることができる。また、駆動機構130は、プラテン110側に設けるようにしてもよいし、スライドユニット120側に設けるようにしてもよい。
【0022】
レーザ干渉計140は、スライダ121の位置検出を行なう。レーザ干渉計140は絶対位置検出を行なわないため、機構部100は、スライダ121の基準位置を定める原点センサ150を備えている。原点センサ150は、光学センサを用いたり、ガイド部材等を用いることができる。
【0023】
制御部200は、CPU、メモリ、操作受付部等を備えた情報処理装置を用いて構成することができ、位置算出部210、移動制御部220、衝突防止処理部230を備えている。
【0024】
位置算出部210は、レーザ干渉計140の検出結果に基づいて、スライダ121の位置を算出する。すなわち、原点復帰後のスライダ121について原点を基準とした移動量をレーザ干渉計140によって計測することで、スライダ121の位置を演算する。
【0025】
移動制御部220は、位置算出部210が算出したスライダ121の位置と目標位置とに基づくフィードバック制御による位置決め処理を行なう。また、スライダ121の原点復帰のための移動制御も行なう。
【0026】
衝突防止処理部230は、スライダ121に備えられた超音波センサ122の検出結果に基づいて、スライダ121の接触・衝突を防止する。具体的には、スライダ121周辺の所定の基準距離内に他物体が検出されるとスライダ121を停止させる。ここで、他物体は、他のスライダ121、プラテン110に備えられた壁等とすることができる。衝突防止処理部230の接触・防止処理は、レーザ干渉計140の検出結果に基づくスライダ121の位置算出や移動制御部220の位置決め制御とは独立して行なうようにする。
【0027】
図2は、超音波センサ122が備えられたスライダ121とプラテン110とを模式的に示す図であり、図2(a)は平面図、図2(b)は側面図、図3(c)は正面図を示している。本図に示すようにプラテン110上で、スライダA121aとスライダB121bとがそれぞれ独立に位置決め制御される。また、プラテン110の4辺には、超音波を反射するための壁が形成されている。なお、制御対象となるスライダ121は、2台に限られない。
【0028】
本図の例では、それぞれのスライダ121は、超音波センサ122を各角に2個ずつ合計8個搭載し、プラテン110上の平面の8方向の基準距離内に他物体が存在していることを検出できるようになっている。すなわち、スライダ121の各辺についてムラなく他物体の存在を検出できるようになっている。
【0029】
ここで、超音波センサ122は、送波器と受波器とがセットになったセンサであり、送波器により超音波を対象物に向け発信し、その反射波を受波器で受信することにより、他物体の有無や他物体までの距離を検出する。具体的には、超音波の発信から受信までに要した時間と音速との関係を演算することでセンサから他物体までの距離を算出する。本実施形態では、図3に示すように、所定の基準距離内に他物体が存在するか否かを判定できれば足りる。本図の例は、超音波センサ122が、他物体300の存在を検出した様子を示している。
【0030】
なお、基準距離は、スライダ121同士が接近移動している場合に、互いに検出後、衝突することなく停止できる距離を少なくとも確保しておくようにする。ただし、他物体との距離の時間的変化を算出し、他物体との相対速度に応じて基準距離を変化させるようにしてもよい。あるいは、自身の速度と他物体との相対速度から、他物体が他のスライダ121であるか壁であるかを判断して、停止制御を異ならせるようにしてもよい。すなわち、他物体が他のスライダ121の場合には、停止判断の基準距離を長くし、他物体が壁の場合には、停止判断の基準距離を短くすることができる。
【0031】
また、距離測定精度の高い超音波センサ122を用いた場合には、超音波センサ122の測定結果に基づいてスライダ121の絶対位置を検出することができる。この場合は、超音波センサ122の測定結果を用いて、接触・衝突防止制御に加え、スライダ121の位置決め制御を行なうようにしてもよい。
【0032】
図2に示した例では、それぞれのスライダ121に、超音波センサ122を各角に2個ずつ合計8個搭載して他物体の存在を検出するようにしていた。しかしながら、超音波センサ122の指向性の広さによっては、超音波センサ122の数を減らすようにしてもよい。
【0033】
例えば、図4(a)は、指向性の広い4つの超音波センサをスライダの4辺に配置して4方向を検出対象とし、図4(b)は、指向性の広い4つの超音波センサをスライダの4角に配置して4方向を検出対象としている例である。さらに、図4(c)は、指向性のさらに広い2つの超音波センサをスライダの中央付近に配置して2方向を検出対象とし、図4(d)は、指向性の極めて広い1つの超音波センサをスライダの中央に配置して周辺全体検出対象としている例である。いずれの場合も、超音波センサを用いて、基準距離内の他物体の存在を検出することができる。
【0034】
以上説明したように、本実施形態によれば、超音波センサ122を用いて基準距離内の他物体の存在を検出するようにしているため、プラテン110上を2次元移動するスライダ121の位置を制御するXYステージ10において、光軸調整に高い精度が要求される反射型センサを用いることなく、スライダの接触・衝突を防止できるようになる。
【符号の説明】
【0035】
10…XYステージ
100…機構部
110…プラテン
120…スライドユニット
121…スライダ
122…超音波センサ
130…駆動機構
140…レーザ干渉計
150…原点センサ
200…制御部
210…位置算出部
220…移動制御部
230…衝突防止処理部
300…他物体
510…プラテン
520…スライダ
530…反射型センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラテン上の平面を2次元移動するスライダの位置を制御するXYステージであって、
前記スライダに、他物体が前記平面上の所定の基準距離内に存在していることを検出する超音波センサが配置されていることを特徴とするXYステージ。
【請求項2】
請求項1に記載のXYステージであって、
前記超音波センサが、前記基準距離内に他物体が存在していることを検出すると、前記超音波センサが配置されているスライダの移動を停止させる制御部を備えていることを特徴とするXYステージ。
【請求項3】
請求項2に記載のXYステージであって、
前記制御部は、前記スライダの移動を停止させる制御を、前記スライダの位置制御とは独立して行なうことを特徴とするXYステージ。
【請求項4】
請求項1に記載のXYステージであって、
前記プラテン上において複数のスライダが位置制御され、
前記他物体は、他のスライダあるいは前記プラテンに備えられた壁であることを特徴とするXYステージ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−281672(P2010−281672A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−134958(P2009−134958)
【出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】