[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンの光学活性体の製造方法
【課題】カラムクロマトグラフィーによる分離を行うことなく簡便な方法によりN−PINAPの光学活性体を提供する。
【解決手段】(R)−または(S)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンの混合物の溶液と、光学活性な有機スルホン酸とを混合して晶析させる、(R,P)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンの光学活性な有機スルホン酸塩または(S,M)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンの光学活性な有機スルホン酸塩の製造方法。
【解決手段】(R)−または(S)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンの混合物の溶液と、光学活性な有機スルホン酸とを混合して晶析させる、(R,P)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンの光学活性な有機スルホン酸塩または(S,M)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンの光学活性な有機スルホン酸塩の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンの光学活性体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミン(以下、N−PINAPと略す)には、(R,P)−N−PINAP、(R,M)−N−PINAP、(S,P)−N−PINAPおよび(S,M)−N−PINAPの4つの光学異性体が存在する。これらの光学異性体の光学活性体を不斉配位子として含有する不斉遷移金属錯体は、不斉付加反応、不斉共役付加反応、不斉ヒドロホウ素化反応等を高選択率かつ高収率で行うことが可能である(非特許文献1)。
【0003】
これらの光学活性体は、ジアステレオ混合物をカラムクロマトグラフィーで分離することにより得られることが知られている。例えば、特許文献1では、(R)−N−PINAPジアステレオ混合物((R,P)−N−PINAPおよび(R,M)−N−PINAPの混合物)を、反応終了後の反応液からカラムクロマトグラフィーにより一旦単離し、これをトルエンとジクロロメタン混合溶媒に溶解後、ヘキサンを加えて(R,M)−N−PINAP((R,Sax)−N−PINAP)を晶析させ、次いで母液からカラムクロマトグラフィーにより(R,P)−N−PINAP((R,Rax)−N−PINAP)を得ている。
しかし、カラムクロマトグラフィーによる分離は光学活性体の工業的生産に問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−347884号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Angew.Chem.Int.Ed.,2004,43,5971
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の点を解決しようとするものであり、カラムクロマトグラフィーによる分離を行うことなく簡便な方法によりN−PINAPの光学活性体を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題に対して鋭意検討した結果、N−PINAPジアステレオ混合物の親水性有機溶媒溶液と水とを混合することにより、一方の光学活性体が優先的に晶析すること、およびN−PINAPジアステレオ混合物の溶液と光学活性な有機スルホン酸とを混合することにより、他方の光学活性体の有機スルホン酸塩が優先的に晶析することを見出し、発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は以下の通りである。
[1]光学活性な[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンの光学活性な有機スルホン酸塩。
[2]光学活性な[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンが、(R,P)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンである、上記[1]記載の塩。
[3]光学活性な有機スルホン酸が、(S)−カンファースルホン酸である、上記[2]記載の塩。
[4](R,P)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンと(R,M)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンの混合物(以下、(R)−N−PINAPジアステレオ混合物ともいう)の溶液と、光学活性な有機スルホン酸とを混合して晶析させることを特徴とする、(R,P)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンの光学活性な有機スルホン酸塩の製造方法。
[5]光学活性な有機スルホン酸の使用量が、混合物1モルに対して0.5〜5モルである、上記[4]記載の製造方法。
[6]光学活性な有機スルホン酸の使用量が、混合物1モルに対して0.8〜2モルである、上記[4]記載の製造方法。
[7]光学活性な有機スルホン酸が、(S)−カンファースルホン酸である、上記[4]記載の製造方法。
[8]混合物の溶液が、エーテル溶液またはケトン溶液である、上記[4]記載の製造方法。
[9](R,P)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンと(R,M)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンの混合物の親水性有機溶媒の溶液と、水とを混合して晶析させることを特徴とする、(R,M)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンの製造方法。
[10]親水性有機溶媒中、遷移金属錯体と3級アミンの存在下、トリフルオロメタンスルホン酸 (R)−1−[4−(1−フェニルエチルアミノ)フタラジン−1−イル]ナフタレン−2−イル エステルをジフェニルホスフィンと反応させ、得られた反応溶液と水とを混合して晶析させることを特徴とする、(R,M)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンの製造方法。
[11]水の使用量が、親水性有機溶媒1重量部に対して0.1〜0.5重量部である、上記[9]または[10]記載の製造方法。
[12]水の使用量が、親水性有機溶媒1重量部に対して0.2〜0.4重量部である、上記[9]または[10]記載の製造方法。
[13]親水性有機溶媒が、親水性非プロトン性極性溶媒から選ばれる、上記[9]または[10]記載の製造方法。
[14]親水性有機溶媒が、N,N−ジメチルホルムアミドである、上記[9]または[10]記載の製造方法。
[15]遷移金属錯体が、ホスフィン類を含む2価ニッケル錯体である、上記[10]記載の製造方法。
[16]遷移金属錯体が、NiCl2(dppe)である、上記[10]記載の製造方法。
[17]3級アミンが1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンである、上記[10]記載の製造方法。
[18]光学活性な[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンが、(S,M)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンである、上記[1]記載の塩。
[19]光学活性な有機スルホン酸が、(R)−カンファースルホン酸である、上記[18]記載の塩。
[20](S,M)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンと(S,P)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンの混合物(以下、(S)−N−PINAPジアステレオ混合物ともいう)の溶液と、光学活性な有機スルホン酸とを混合して晶析させることを特徴とする、(S,M)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンの光学活性な有機スルホン酸塩の製造方法。
[21]光学活性な有機スルホン酸の使用量が、混合物1モルに対して0.5〜5モルである、上記[20]記載の製造方法。
[22]光学活性な有機スルホン酸の使用量が、混合物1モルに対して0.8〜2モルである、上記[20]記載の製造方法。
[23]光学活性な有機スルホン酸が、(R)−カンファースルホン酸である、上記[20]記載の製造方法。
[24]混合物の溶液が、エーテル溶液またはケトン溶液である、上記[20]記載の製造方法。
[25](S,M)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンと(S,P)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンの混合物の親水性有機溶媒の溶液と、水とを混合して晶析させることを特徴とする、(S,P)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンの製造方法。
[26]親水性有機溶媒中、遷移金属錯体と3級アミンの存在下、トリフルオロメタンスルホン酸 (S)−1−[4−(1−フェニルエチルアミノ)フタラジン−1−イル]ナフタレン−2−イル エステルをジフェニルホスフィンと反応させ、得られた反応溶液と水とを混合して晶析させることを特徴とする、(S,P)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンの製造方法。
[27]水の使用量が、親水性有機溶媒1重量部に対して0.1〜0.5重量部である、上記[25]または[26]記載の製造方法。
[28]水の使用量が、親水性有機溶媒1重量部に対して0.2〜0.4重量部である、上記[25]または[26]記載の製造方法。
[29]親水性有機溶媒が、親水性非プロトン性極性溶媒から選ばれる、上記[25]または[26]記載の製造方法。
[30]親水性有機溶媒が、N,N−ジメチルホルムアミドである、上記[25]または[26]記載の製造方法。
[31]遷移金属錯体が、ホスフィン類を含む2価ニッケル錯体である、上記[26]記載の製造方法。
[32]遷移金属錯体が、NiCl2(dppe)である、上記[26]記載の製造方法。
[33]3級アミンが1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンである、上記[26]記載の製造方法。
[34]光学活性な[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンの光学活性な有機スルホン酸塩と塩基とを反応させることを特徴とする、光学活性な[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、カラムクロマトグラフィーによる分離を行うことなく、水との混合あるいは光学活性な有機スルホン酸との混合という簡便な方法により、N−PINAPジアステレオ混合物からN−PINAPの光学活性体を分離することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の製造方法は以下のルートにより行われる。
【0011】
【化1】
【0012】
【化2】
【0013】
本発明で原料として使用されるトリフルオロメタンスルホン酸 (R)−1−[4−(1−フェニルエチルアミノ)フタラジン−1−イル]ナフタレン−2−イル エステル(2−R)(以下、化合物(2−R)という)またはトリフルオロメタンスルホン酸 (S)−1−[4−(1−フェニルエチルアミノ)フタラジン−1−イル]ナフタレン−2−イル エステル(2−S)(以下、化合物(2−S)という)は、例えば、トリフルオロメタンスルホン酸 1−(4−クロロフタラジン−1−イル)ナフタレン−2−イル エステル(1)(以下、化合物(1)という)に(R)−または(S)−1−フェニルエチルアミンを反応させることにより、製造することができる。
【0014】
(R)−または(S)−1−フェニルエチルアミンの使用量は、化合物(1)1モルに対して、好ましくは1〜10モル、より好ましくは2〜5モルである。
当該工程は、無溶媒でまたは溶媒中で行われ、使用できる溶媒としては、反応を阻害しないものであれば特に限定されず、例えば、芳香族炭化水素溶媒(例、キシレン、トルエン)、エーテル溶媒(例、1,4−ジオキサン)等が挙げられ、反応時間の短縮および収率の点から、キシレンが好適である。溶媒の使用量は、化合物(1)1重量部に対して、好ましくは0.5〜50重量部、より好ましくは1〜15重量部である。
【0015】
当該工程の反応温度は、通常80〜200℃、好ましくは100〜150℃である。反応時間は、使用する試薬や反応温度にも依存するが、通常1〜50時間、好ましくは4〜30時間である。
反応終了後、反応溶液を冷却し、水および貧溶媒(例えば、ヘプタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素溶媒)と混合することにより、化合物(2−R)または化合物(2−S)を結晶として得ることができる。
【0016】
前記工程で得られた化合物(2−R)または化合物(2−S)を、有機溶媒中、遷移金属錯体と3級アミンの存在下、ジフェニルホスフィンと反応させることにより、(R)−または(S)−N−PINAPジアステレオ混合物を得る。
【0017】
当該工程の反応混合物をそのまま次の晶析工程に供する場合、晶析工程では水と混合するため、当該工程で使用する有機溶媒は親水性であることが必要である。
当該工程で使用する有機溶媒としては、反応性の点から比較的極性の高い溶媒、特に親水性非プロトン性極性溶媒が好ましく、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド等の親水性アミド溶媒;ジメチルスルホキシド等の親水性スルホキシド溶媒;テトラヒドロフラン等の親水性エーテル溶媒;アセトニトリル等の親水性ニトリル溶媒;それらの混合溶媒等が好適に使用でき、中でも、親水性アミド溶媒、特にN,N−ジメチルホルムアミドが好適に使用できる。
当該有機溶媒の使用量は、化合物(2−R)または化合物(2−S)1重量部に対して、好ましくは0.2〜50重量部、より好ましくは2〜20重量部である。
【0018】
ジフェニルホスフィンの使用量は、反応の完結および経済性の点から、化合物(2−R)または化合物(2−S)1モルに対して、好ましくは1〜10モル、より好ましくは1〜3モルである。
【0019】
当該工程で使用する遷移金属錯体としては、例えば、NiCl2(dppe)、NiCl2(dppp)、NiCl2(dppb)などのホスフィン類を含む2価ニッケル錯体;PdCl2(dppe)、PdCl2(dppp)、PdCl2(dppb)などのホスフィン類を含む2価パラジウム錯体等が挙げられる。ここで、dppeは1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、dpppは1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、dppbは1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタンを示す。中でも、反応速度および経済性の点から、ホスフィン類を含む2価ニッケル錯体が好ましく、NiCl2(dppe)がより好適に使用される。
当該遷移金属錯体の使用量は、反応速度および経済性の点から、化合物(2−R)または化合物(2−S)1モルに対して、好ましくは0.001〜1モル、より好ましくは0.01〜0.2モルである。
【0020】
当該工程で使用する3級アミンは、副生するトリフルオロメタンスルホン酸をトラップする目的で使用され、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン等が挙げられ、中でも、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンが好適に使用される。
当該3級アミンの使用量は、副生成物の抑制および経済性の点から、化合物(2−R)または化合物(2−S)1モルに対して、好ましくは1〜30モル、より好ましくは2〜10モルである。
【0021】
化合物(2−R)または化合物(2−S)、ジフェニルホスフィン、遷移金属錯体および3級アミンの添加順序は特に限定はなく、例えば、ジフェニルホスフィンおよび遷移金属錯体の混合物に、化合物(2−R)または化合物(2−S)および3級アミンの混合物を添加してもよく、あるいは、化合物(2−R)または化合物(2−S)および3級アミンの混合物にジフェニルホスフィンおよび遷移金属錯体の混合物を添加してもよい。
【0022】
当該工程の反応温度は、通常60℃〜180℃、好ましくは80℃〜140℃である。反応時間は、使用する試薬や反応温度にも依存するが、通常10分〜40時間、好ましくは30分〜24時間である。
【0023】
反応終了後、反応溶液を通常の後処理(例えば、溶媒抽出)を行うことにより、(R)−または(S)−N−PINAPジアステレオ混合物を得る。
【0024】
このように得られた(R)−または(S)−N−PINAPジアステレオ混合物は、各光学活性体に分離精製することが必要である。光学活性体に分離精製は以下の方法により行われる。
【0025】
(1)(R)−N−PINAPジアステレオ混合物から(R,P)−N−PINAPを分離する方法、または(S)−N−PINAPジアステレオ混合物から(S,M)−N−PINAPを分離する方法
【0026】
(R)−N−PINAPジアステレオ混合物の溶液と光学活性な有機スルホン酸とを混合することにより、(R,P)−N−PINAPの光学活性な有機スルホン酸塩が優先的に晶析する。あるいは(S)−N−PINAPジアステレオ混合物の溶液と光学活性な有機スルホン酸とを混合することにより、(S,M)−N−PINAPの光学活性な有機スルホン酸塩が優先的に晶析する。
当該晶析で使用する光学活性な有機スルホン酸としては、例えば(S)−または(R)−カンファースルホン酸[(1S)−(+)−または(1R)−(−)−10−カンファースルホン酸]、(+)−3−ブロモカンファー−8−スルホン酸、(+)−3−ブロモカンファー−10−スルホン酸、(−)−3−ブロモカンファー−8−スルホン酸、(−)−3−ブロモカンファー−10−スルホン酸等の光学活性なカンファースルホン酸またはそれらのアンモニウム塩、(S)−または(R)−1−フェニルエタンスルホン酸、(S)−または(R)−1−フェニルプロパンスルホン酸またはそれらのアンモニウム塩等が挙げられる。例えば、光学活性なカンファースルホン酸を使用する場合、(R)−N−PINAPジアステレオ混合物の溶液と(S)−カンファースルホン酸とを混合することにより、(R,P)−N−PINAP(S)−カンファースルホン酸塩が優先的に晶析する。あるいは(S)−N−PINAPジアステレオ混合物の溶液と(R)−カンファースルホン酸とを混合することにより、(S,M)−N−PINAP(R)−カンファースルホン酸塩が優先的に晶析する。
【0027】
当該光学活性な有機スルホン酸の使用量は、(R)−または(S)−N−PINAPジアステレオ混合物中の異性体比にもよるが、当該混合物1モルに対して、好ましくは0.5〜5モル、より好ましくは0.8〜2モルである。光学活性な有機スルホン酸は、固体のまま用いても、溶液に調製してから用いてもよいが、(S)−または(R)−カンファースルホン酸を使用する場合は、後者で行うことが好ましい。
【0028】
当該工程で使用する溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン等のエーテル溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン溶媒等が挙げられ、中でも、収率の点から、エーテル溶媒、特にテトラヒドロフランが好適に使用される。
溶媒の使用量は、(R)−または(S)−N−PINAPジアステレオ混合物1重量部に対して、好ましくは5〜50重量部、より好ましくは10〜40重量部である。
【0029】
上記混合は、(R)−または(S)−N−PINAPジアステレオ混合物の溶液に光学活性な有機スルホン酸を添加(好ましくは滴下)することにより行うことが好ましい。
【0030】
混合温度は、通常30〜65℃、好ましくは35〜60℃である。
混合後、通常5分〜24時間、好ましくは30分〜10時間攪拌し、次いで、通常0〜55℃、好ましくは5〜35℃に温度調節して熟成する。析出した結晶を、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の溶媒(好ましくはテトラヒドロフラン)で洗浄して、(R,P)−N−PINAPの光学活性な有機スルホン酸塩または(S,M)−N−PINAPの光学活性な有機スルホン酸塩を得る。
【0031】
原料である(R)−または(S)−N−PINAPジアステレオ混合物は、各光学活性体がどのような割合で含まれていてもよく、例えば、後掲の(2)において述べる、(R)−N−PINAPジアステレオ混合物の反応溶液と水との混合により晶析した(R,M)−N−PINAPを濾過した後の濾液、または(S)−N−PINAPジアステレオ混合物の反応溶液と水との混合により晶析した(S,P)−N−PINAPを濾過した後の濾液を使用してもよい。
【0032】
この場合、まず、濾液(反応溶媒である親水性有機溶媒と水を含む)に有機溶媒を加えて分液する。溶媒としては、例えば、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、酢酸エチル等が挙げられ、中でも、CPME、酢酸エチル、MIBKが好ましい。
当該溶媒の使用量は、(R)−または(S)−N−PINAPジアステレオ混合物1重量部に対して、好ましくは5〜100重量部、より好ましくは10〜80重量部である。
【0033】
分液(抽出)した有機層を濃縮した後、上記した光学活性な有機スルホン酸との混合使用する溶媒(好ましくはテトラヒドロフラン)に残渣を溶解する。当該溶媒の使用量は上記と同様である。そして、この溶液と、上記の光学活性な有機スルホン酸とを混合する。
【0034】
得られた(R,P)−N−PINAPの光学活性な有機スルホン酸塩または(S,M)−N−PINAPの光学活性な有機スルホン酸塩は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩等の塩基で処理することにより、光学活性を保持したまま、遊離の(R,P)−または(S,M)−N−PINAPに変換することができる。
具体的には、(R,P)−N−PINAPの光学活性な有機スルホン酸塩または(S,M)−N−PINAPの光学活性な有機スルホン酸塩を、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロルベンゼン等の芳香族溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素溶媒、ジエチルエーテル、メチルt−ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル溶媒中、上記塩基の水溶液で処理後、有機層を減圧濃縮して貧溶媒(ヘプタン、ヘキサン等)を加える、あるいは、減圧濃縮してメチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン等に溶解し、そこへ貧溶媒(ヘプタン、ヘキサン等)を加えて結晶化することにより、遊離の(R,P)−または(S,M)−N−PINAPの結晶を得る。
さらに、アセトニトリル、メチルエチルケトン、酢酸エチル、トルエン、THF等の溶媒から再結晶することにより、より高純度の(R,P)−または(S,M)−N−PINAPの結晶を得ることができる。
このようにして得られた(R,P)−または(S,M)−N−PINAPは、(R,P)/(R,M)または(S,M)/(S,P)として、95/5以上、特に98/2以上の純度を有する。
【0035】
(2)(R)−N−PINAPジアステレオ混合物から(R,M)−N−PINAPを分離する方法、または(S)−N−PINAPジアステレオ混合物から(S,P)−N−PINAPを分離する方法
【0036】
(R)−N−PINAPジアステレオ混合物の親水性有機溶媒溶液と水とを混合することにより、(R,M)−N−PINAPが優先的に晶析する。あるいは、(S)−N−PINAPジアステレオ混合物の親水性有機溶媒溶液と水とを混合することにより、(S,P)−N−PINAPが優先的に晶析する。
【0037】
当該工程で使用する親水性有機溶媒としては、水と混合する点から比較的極性の高い溶媒、特に親水性非プロトン性極性溶媒が好ましく、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド等の親水性アミド溶媒;ジメチルスルホキシド等の親水性スルホキシド溶媒;テトラヒドロフラン等の親水性エーテル溶媒;アセトニトリル等の親水性ニトリル溶媒;それらの混合溶媒等が好適に使用でき、中でも、親水性アミド溶媒、特にN,N−ジメチルホルムアミドが好適に使用できる。
当該親水性有機溶媒の使用量は、(R)−または(S)−N−PINAPジアステレオ混合物1重量部に対して、操作性と経済性の点から、好ましくは0.2〜50重量部、より好ましくは2〜20重量部である。
【0038】
水の使用量は、親水性有機溶媒1重量部に対して、精製効果と収率の点から、好ましくは0.1〜0.5重量部、より好ましくは0.2〜0.4重量部である。
【0039】
上記混合は、(R)または(S)−N−PINAPジアステレオ混合物の親水性有機溶媒溶液に水を添加(好ましくは滴下)することにより行うことが好ましい。
【0040】
混合温度は、通常0〜100℃、好ましくは60〜95℃である。
混合後、通常5分〜24時間、好ましくは30分〜5時間攪拌し、次いで、通常0〜50℃、好ましくは5〜35℃に温度調整して熟成する。析出した結晶を、親水性有機溶媒と水との混合溶媒、または2−プロパノール等の低級アルコール溶媒(好ましくは2−プロパノール)で洗浄して、(R,M)−または(S,P)−N−PINAPの結晶を得る。
【0041】
濾液に、濾液中の親水性有機溶媒に対して0.1〜1倍容量の水を加えることにより2次結晶が得られ、再結晶等の精製により、1次結晶と同等の純度の(R,M)−または(S,P)−N−PINAPの結晶を得ることができる。
【0042】
このようにして得られた(R,M)−または(S,P)−N−PINAPは、(R,M)/(R,P)または(S,P)/(S,M)として、95/5以上、特に98/2以上の純度を有する。
【0043】
(R)−または(S)−N−PINAPジアステレオ混合物の親水性有機溶媒溶液は、上記の(R)−または(S)−N−PINAPジアステレオ混合物の反応溶液をそのまま使用し、水を直接当該反応溶液と混合して(好ましくは当該反応溶液中の親水性有機溶媒1重量部に対して、0.1〜0.5重量部、より好ましくは0.2〜0.4重量部)もよい。この方法によれば、(R)−または(S)−N−PINAPジアステレオ混合物を単離する必要がないので特に簡便である。
【実施例】
【0044】
以下、本発明を参考例および実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0045】
以下の参考例1〜参考例3および実施例1〜10について、HPLCによる分析は以下の条件で行った。
カラム:カプセルパックC8DD 4.6mm×150mm
移動相:アセトニトリル−水(グラジエント)
検出波長:220nm
【0046】
参考例1 トリフルオロメタンスルホン酸 1−(4−クロロフタラジン−1−イル)ナフタレン−2−イル エステル
1−(4−クロロフタラジン−1−イル)−ナフタレン−2−オール(4.00kg、13.0mol)およびピリジン(3.10kg、39.2mol)のキシレン(34.4kg)溶液に、15〜25℃でトリフルオロメタンスルホン酸無水物(4.24kg、15.0mol)を30分で滴下し、同温度で28.5時間攪拌した。HPLCで反応の終了を確認した後、炭酸カリウム(2.00kg)を水(18.00kg)に溶解した溶液を10〜20℃で滴下し、攪拌、静置した後、分液した。有機層を水20.00kgで洗浄し、減圧下60℃で濃縮し、残渣にキシレン(5.16kg)を加えて溶解した。この溶液をHPLCで分析した結果、トリフルオロメタンスルホン酸 1−(4−クロロフタラジン−1−イル)ナフタレン−2−イル エステルが5.72kg相当(13.0mol)含まれていた。
【0047】
参考例2 トリフルオロメタンスルホン酸 (R)−1−[4−(1−フェニルエチルアミノ)フタラジン−1−イル]ナフタレン−2−イル エステル
参考例1で得られたトリフルオロメタンスルホン酸 1−(4−クロロフタラジン−1−イル)ナフタレン−2−イル エステルのキシレン溶液(5.72kg相当、13.0mol)に(R)−1−フェニルエチルアミン(4.75kg、39.2mol)を添加し、135〜140℃で23時間攪拌した。60℃まで冷却し、水(16.0kg)を滴下した。50〜60℃でヘプタン(27.40kg)を滴下し、同温で30分攪拌し、18℃まで冷却した。析出結晶を濾過し、キシレン(9.84kg)とヘプタン(7.82kg)の混合溶媒で洗浄し、乾燥して、トリフルオロメタンスルホン酸 (R)−1−[
4−(1−フェニルエチルアミノ)フタラジン−1−イル]ナフタレン−2−イル エステル(5.45kg)を得た。
【0048】
1H-NMR(300MHz, CDCl3) δ: 1.79(t, J =6.7Hz, 6H), 5.49(d, J=7.0Hz, 2H), 5.88(quint, J=6.8Hz, 2H), 7.13-7.65(m, 22H), 7.73-7.82(m, 2H), 7.85-7.90(m, 2H), 7.94-8.00(m, 2H), 8.08(d, J=9.1Hz, 2H).
13C-NMR(100MHz, CDCl3) δ: 21.9, 22.0, 50.7, 50.7, 117.8, 117.8, 118.0(q, JCF=320), 118.7(q, JCF=320), 119.4, 119.5, 120.8, 126.1, 126.1, 126.4, 126.5, 126.7, 126.7, 127.1, 127.2, 127.2, 127.4, 127.5, 127.5, 127.7, 128.1, 128.2, 128.5, 128.6, 131.3, 131.3, 131.4, 131.4, 131.4, 131.5, 132.5, 132.5, 133.6, 133.6, 144.0, 144.3, 145.5, 145.6, 146.5, 146.5, 152.7, 152.8.
HRMS (MALDI) calcd. for C27H21F3N3O3S [M+H]+ 524.1250, found 524.1258.
Anal. Calcd for C27H20F3N3O3S: C, 61.94; H, 3.85; N, 8.03. Found: C, 62.15; H, 3.99; N, 7.79.
【0049】
実施例1 (R,M)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミン
N,N−ジメチルホルムアミド(11mL)にNiCl2(dppe)(0.10g、0.19mmol)とジフェニルホスフィン(1.4g、7.5mmol)を添加した。この溶液に、参考例2で得られたトリフルオロメタンスルホン酸 (R)−1−[4−(1−フェニルエチルアミノ)フタラジン−1−イル]ナフタレン−2−イル エステル(2.0g、3.8mmol)および1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(1.7g,15mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(11mL)溶液を130℃で添加し、130℃で2時間撹拌した。約70℃で水(6.1mL)を滴下し、20℃まで冷却して30分攪拌した。析出結晶を濾過し、イソプロパノール(6.8mL)で洗浄し、乾燥して、(R,M)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミン(0.66g)を得た。HPLCで分析した結果、純度は95%、(R,M)/(R,P)は100/0であった。
【0050】
mp: > 210 ℃
[α]D29= -162.0 (c=0.54, CHCl3).
1H-NMR (400MHz, CDCl3) δ: 1.68(d, J=6.8Hz, 3H), 5.34(d, J=7.2Hz, 1H), 5.81(quint, J=6.9Hz, 1H), 7.01(d, J =8.1Hz, 1H), 7.11-7.18(m, 5H), 7.18-7.24(m, 8H), 7.28-7.33(m, 3H), 7.36-7.43(m, 2H), 7.50-7.53(m, 2H), 7.55-7.59(m, 1H), 7.70(d, J=8.3Hz, 1H), 7.79-7.84(m, 2H).
13C-NMR(100 MHz)δ: 22.2(CH3), 50.4(CH), 117.7(C), 120.3(CH), 126.5(CH), 126.7(CH), 126.8(CH), 126.8(CH), 126.9(CH), 126.9(CH), 127.2(CH), 127.8(CH), 128.0(CH), 128.2(CH), 128.2(CH), 128.2(CH), 128.3(CH), 128.3(C), 128.3(C), 128.4(CH), 128.6(CH), 128.8(CH), 130.1(CH), 130.7(CH), 130.8(CH), 133.1(CH), 133.2(C), 133.3(CH), 133.3(C), 133.6(C), 133.7(CH), 133.9(CH), 135.8(C), 136.0(C), 137.3(C), 137.4(C), 137.7(C), 137.8(C), 141.8(C), 142.1(C), 144.6(C), 152.2(C), 152.5(C), 152.6(C).
31P-NMR(121 MHz, CDCl3) δ: -13.18.
FTIR(thin film, cm-1): 3351(br, s), 1654(w), 1559(w), 1508(s), 1420(w), 1361(w), 1217(w), 820(w), 772(s), 698(m).
HRMS(MALDI) calcd. for C38H31N3P+[M+H]+560.2250. found 560.2257.
Anal. Calcd for C38H30N3P: C, 81.55; H, 5.40; N, 7.51; P, 5.53. Found: C, 81.44; H, 5.52; N, 7.39; P, 5.67.
【0051】
実施例2 (R,P)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミン (S)−カンファースルホン酸塩
実施例1の濾液と結晶洗浄液を合一し、メチルイソブチルケトン(14mL)と水(13mL)を加えて攪拌し、静置後、分液した。有機層を水(8.0mL)で洗浄し、減圧下30〜60℃で濃縮した。残渣にテトラヒドロフラン(15mL)を加えて溶解した。この溶液をHPLCで分析した結果、(R)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミン(ジアステレオ混合物、(R,M)/(R,P)=40/60)が0.70g相当(1.3mmol
)含まれていた。このテトラヒドロフラン溶液に約50℃で(S)−カンファースルホン酸((1S)−(+)−10−カンファースルホン酸)(0.35g、1.5mmol)を添加した。同温で1時間攪拌した後、28℃に冷却し、1時間攪拌した。析出結晶を濾過し、テトラヒドロフラン(8.0mL)で洗浄し、乾燥して、(R,P)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミン (S)−カンファースルホン酸塩(0.78g)を得た。HPLCで分析した結果、(R,M)/(R,P)は0/100であった。
【0052】
mp: 213℃
1H-NMR (400MHz, DMSO-d6) δ: 0.73(s, 3H), 1.05(s, 3H), 1.22-1.31(m, 2H), 1.73-1.81(m, 5H), 1.92(t, J=4.4Hz, 1H), 2.23(dt, J=18.1, 3.9Hz, 1H), 2.39(d, J=14.6Hz, 1H), 2.69-2.75(m, 1H), 2.87-2.91(m, 1H), 5.51(dt, J=6.9Hz, 1H), 7.01(dd, J=7.6Hz, 2H), 7.11(dd, J=7.8Hz, 2H), 7.21-7. 40(m, 10H), 7.46-7.50(m, 4H), 7.58-7.60(m, 2H), 7.66(dt, J=8.3, 3.9Hz, 1H), 7.95(dd, J=7.6Hz, 1H), 8.09(d, J=8.3Hz, 1H), 8.15-8.20(m, 2H), 9.07(d, J=8.3Hz, 1H), 10.02(br, 1H).
【0053】
実施例3 (R,P)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミン (S)−カンファースルホン酸塩
実施例1と同様の操作により得られた濾液と結晶洗浄液を合一し、メチルイソブチルケトン(225mL)と水(100mL)を加えて攪拌し、静置後、分液した。有機層を水(100mL)で洗浄した。得られた溶液をHPLCで分析した結果、(R)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミン(ジアステレオ混合物、(R,M)/(R,P)=25/75)が8.5g相当(15mmol)含まれていた。このメチルイソブチルケトン溶液に約50℃で(S)−カンファースルホン酸(4.2g、18mmol)を添加した。同温で1時間攪拌した後、23℃に冷却し、2時間攪拌した。析出した結晶を濾過し、メチルイソブチルケトン(25mL)で洗浄し、乾燥して、(R,P)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミン (S)−カンファースルホン酸塩(6.8g)を得た。HPLCで分析した結果、(R,M)/(R,P)は0/100であった。
【0054】
実施例4 (R,P)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミン
トルエン(30mL)に、実施例3で得られた(R,P)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミン (S)−カンファースルホン酸塩(2.33g)を加え、水酸化ナトリウム(0.13g)を水(26.4g)に溶解した溶液を滴下した。24℃で1.5時間攪拌し、静置し、分液した。有機層を水(10g)で洗浄し、使用したトルエンの78〜80%相当量を減圧下30〜60℃で留去した(留去量23.5mL)。約50℃でヘプタン(1.5mL)を滴下し、25℃で1時間攪拌した。結晶を濾過し、トルエン(4.3mL)とヘプタン(1.0mL)の混合溶媒で洗浄し、乾燥して、(R,P)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミン(1.33g)を得た。HPLCで分析した結果、(R,M)/(R,P)は0/100であった。
【0055】
mp: 185-188 ℃
[α]D26= +127.3 (c=0.39, CHCl3).
1H-NMR (300MHz, CDCl3) δ: 1.78(d, J=6.7Hz, 3H), 5.41(d, J=6.9Hz, 1H), 5.85(quint, J=6.7Hz, 1H), 7.09(d, J =8.1Hz, 1H), 7.13-7.52(m, 18H), 7.56-7.67(m, 3H), 7.80(d, J=8.3Hz, 1H), 7.86-7.91(m, 2H).
13C-NMR(75 MHz)δ: 21.9(CH3), 50.6(CH), 117.5(C), 120.2(CH), 126.3(CH), 126.5(CH), 126.6(CH), 127.1(CH), 127.7(CH), 127.9(CH), 128.0(CH), 128.0(CH), 128.0(CH), 128.1(CH), 128.5(CH), 128.6(CH), 129.9(CH), 130.6(CH), 130.6(CH), 133.1(CH), 133.1(CH), 133.3(CH), 133.4(CH), 133.4(C), 133.7(CH), 135.9(C), 136.1(C), 136.9(C), 137.0(C), 137.4(C), 137.6(C), 141.3(C), 141.7(C), 144.2(C), 152.1(C), 152.3(C), 152.3(C).
31P-NMR(121 MHz, CDCl3) δ: -12.77.
FTIR(thin film, cm-1): 3347(br, s), 3056(m), 1615(w), 1558(w), 1508(s), 1434(w), 1366(w), 1215(w), 817(s), 744(m), 696(s).
HRMS(MALDI) calcd. for C38H31N3P+[M+H]+ 560.2250. found 560.2249.
Anal. Calcd for C38H30N3P: C, 81.55; H, 5.40; N, 7.51; P, 5.53.
Found: C, 81.44; H, 5.41; N, 7.39.
【0056】
上記と同様の方法で得られた(R,P)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンの結晶(36.2g、純度92%)をアセトニトリル(290mL)に加熱溶解し、19℃まで冷却して得られた結晶を濾過し、40℃で減圧乾燥することにより、(R,P)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンの結晶(21.7g、純度99.7%)を得た。
【0057】
実施例5 (R,M)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミン
NiCl2(dppe)(100mg、0.189mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(10mL)溶液にジフェニルホスフィン(1.45g、7.79mmol)を23℃で添加し、118〜122℃で0.5時間撹拌した。次いで、参考例2で得られたトリフルオロメタンスルホン酸 (R)−1−[4−(1−フェニルエチルアミノ)フタラジン−1−イル]ナフタレン−2−イル エステル(2.00g、3.82mmol)および1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(1.73g、15.4mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(10mL)溶液を添加した。この溶液を118〜122℃で5時間撹拌した。85℃で水(4mL)を滴下し、28℃まで冷却して1時間攪拌した。析出結晶を濾過し、一次結晶(0.68g)を得た。濾液に水(5mL)を添加し、二次結晶(0.38g)を得た。HPLCで分析した結果、一次結晶の純度は95%、(R,M)/(R,P)は99/1であり、また、二次結晶の純度は83%、(R,M)/(R,P)は87/13であった。
【0058】
実施例6 (R,P)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミン (S)−カンファースルホン酸塩
(R)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミン(ジアステレオ混合物、2.51g、4.48mmol、(R,M)/(R,P)=約50/50))をテトラヒドロフラン(30mL)に加熱溶解し、50℃で(S)−カンファースルホン酸(1.04g、4.48mmol)を添加し、40〜50℃で攪拌した。析出結晶を濾過し、テトラヒドロフラン(7.5mL)で洗浄して、結晶(1.56g)を得た。HPLCで分析した結果、(R,P)/(R,M)は96/4であった。
【0059】
参考例3 トリフルオロメタンスルホン酸 (S)−1−[4−(1−フェニルエチルアミノ)フタラジン−1−イル]ナフタレン−2−イル エステル
参考例1で得られたトリフルオロメタンスルホン酸 1−(4−クロロフタラジン−1−イル)ナフタレン−2−イル エステルのキシレン溶液(388.50g、43.1g相当、98.2mmol)に(S)−1−フェニルエチルアミン(35.6g、294mmol)を添加し、135〜140℃で16時間攪拌した。60℃まで冷却し、水(120mL)を滴下した。50℃でヘプタン(150mL)を滴下し、22℃まで冷却した。析出結晶を濾過し、キシレン(40mL)とヘプタン(40mL)の混合溶媒で洗浄した後、水(120mL)で洗浄し、乾燥して、トリフルオロメタンスルホン酸 (S)−1
−[4−(1−フェニルエチルアミノ)フタラジン−1−イル]ナフタレン−2−イル エステル(32.1g)を得た(収率62%)。
【0060】
mp: 200 ℃
1H-NMR(400MHz, CDCl3) δ: 1.72(t, J =6.7Hz, 6H), 5.68(d, J=7.0Hz, 2H), 5.83(quint, J=6.8Hz, 2H), 7.06-7.58(m, 22H), 7.72-7.74(m, 2H), 7.90-7.95(m, 4H), 8.05(d, J=8.8Hz, 2H).
【0061】
実施例7 (S,P)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミン
N,N−ジメチルホルムアミド(18mL)にNiCl2(dppe)(0.18g、0.34mmol)とジフェニルホスフィン(2.6g、14mmol)を添加した。この溶液に、参考例3で得られたトリフルオロメタンスルホン酸 (S)−1−[4−(1−フェニルエチルアミノ)フタラジン−1−イル]ナフタレン−2−イル エステル(3.5g、6.7mmol)および1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(3.0g、27mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(19mL)溶液を128〜134℃で添加し、132℃で3時間撹拌した。この溶液をHPLCで分析した結果、(S,M)/(S,P)=46/54であった。約60℃で水(10mL)を滴下し、23℃まで冷却して13時間攪拌した。析出結晶を濾過し、2−プロパノール(12mL)で洗浄し、乾燥して、(S,P)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミン(1.01g)を得た(収率27%)。HPLCで分析した純度は92%で、(S,M)/(S,P)は1/99であった。
【0062】
mp: 210 ℃以上
1H-NMR (400MHz, CDCl3) δ: 1.74(d, J=6.8Hz, 3H), 5.42(d, J=7.2Hz, 1H), 5.84(quint, J=6.9Hz, 1H), 7.06(d, J=8.3Hz, 1H), 7.17-7.22(m, 5H), 7.26-7.30(m, 8H), 7.35-7.39(m, 3H), 7.40-7.48(m, 2H), 7.56-7.58(m, 2H), 7.62-7.66(m, 1H), 7.84(d, J=8.3Hz, 1H), 7.85-7.89(m, 2H).
【0063】
実施例8 (S,P)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミン
N,N−ジメチルホルムアミド(100mL)にNiCl2(dppe)(1.01g、1.91mmol)とジフェニルホスフィン(14.3g、76.8mmol)を添加した。この溶液に、参考例3で得られたトリフルオロメタンスルホン酸 (S)−1−[4−(1−フェニルエチルアミノ)フタラジン−1−イル]ナフタレン−2−イル エステル(20.0g、38.2mmol)および1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(17.1g、152mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(110mL)溶液を124℃で添加し、124℃で3.5時間撹拌した。この溶液をHPLCで分析した結果、(S,M)/(S,P)=41/59であった。約60℃で水(81mL)を滴下し、22℃まで冷却して1時間攪拌した。析出結晶を濾過し、2−プロパノール(136mL)で洗浄し、乾燥して、(S,P)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミン(6.46g)を得た(収率30%)。HPLCで分析した純度は94%で、(S,M)/(S,P)は1/99であった。
【0064】
実施例9 (S,M)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミン (R)−カンファースルホン酸塩
実施例8の濾液と結晶洗浄液を合一し、メチルイソブチルケトン(240mL)と水(180mL)を加え、攪拌し、静置後、分液した。有機層を水(190mL)で洗浄し、減圧下30〜60℃で濃縮した。残渣にテトラヒドロフラン(100mL)を加えて溶解した。この溶液をHPLCで分析した結果、(S)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミン(ジアステレオ混合物、(S,M)/(S,P)=86/14)が3.2g相当(5.7mmol)含まれていた。このテトラヒドロフラン溶液に、約50℃で(R)−カンファースルホン酸((1R)−(−)−10−カンファースルホン酸)(2.0g、8.6mmol)を添加した。同温で3時間攪拌した後、23℃に冷却し、1時間攪拌した。析出結晶を濾過し、テトラヒドロフラン(40mL)で洗浄し、乾燥して、(S,M)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミン (R)−カンファースルホン酸塩(3.5g)を得た。HPLCで分析したところ(S,M)/(S,P)は99.9/0.1であった。
【0065】
1H-NMR (400MHz, DMSO-d6) δ: 0.73(s, 3H), 1.05(s, 3H), 1.22-1.32(m, 2H), 1.74-1.83(m, 5H), 1.92(t, J=4.4Hz, 1H), 2.23(dt, J=18.1, 3.9Hz, 1H), 2.39(d, J=14.6Hz, 1H), 2.69-2.75(m, 1H), 2.87-2.91(m, 1H), 5.52(dt, J=6.9Hz, 1H), 7.01(dd, J=7.8Hz, 2H), 7.11(dd, J=7.8Hz, 2H), 7.21-7. 40(m, 10H), 7.46-7.50(m, 4H), 7.58-7.60(m, 2H), 7.66(dt, J=8.3, 3.9Hz, 1H), 7.95(dd, J=7.6Hz, 1H), 8.09(d, J=8.3Hz, 1H), 8.15-8.20(m, 2H), 9.07(d, J=8.3Hz, 1H), 10.02(br, 1H).
【0066】
実施例10 (S,M)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミン
トルエン(40mL)に、実施例9で得られた(S,M)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミン (R)−カンファースルホン酸塩(3.3g)を加え、水酸化ナトリウム(0.18g)を水(35mL)に溶解した溶液を滴下した。24℃で1.5時間攪拌し、静置し、分液した。有機層を水(15mL)で洗浄し、減圧下30〜60℃でトルエンを留去した。約50℃で2−ブタノン(メチルエチルケトン)(8.5mL)とヘプタン(2.5mL)を滴下し、25℃で1時間攪拌した。結晶を濾過し、トルエン(3.5mL)とヘプタン(1.0mL)の混合溶媒で結晶を洗浄し、乾燥して、(S,M)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミン(1.4g)を得た。HPLCで分析した純度は97%で、(S,M)/(S,P)は100/0であった。
【0067】
mp: 210 ℃以上
1H-NMR (400MHz, CDCl3) δ: 1.76(d, J=6.7Hz, 3H), 5.37(d, J=6.7Hz, 1H), 5.82(quint, J=6.7Hz, 1H), 7.08(d, J=8.3Hz, 1H), 7.12-7.49(m, 18H), 7.56-7.65(m, 3H), 7.78(d, J=8.3Hz, 1H), 7.86-7.88(m, 2H).
【産業上の利用可能性】
【0068】
本願発明によれば、カラムクロマトグラフィーによる分離を行うことなく、水との混合、あるいは光学活性な有機スルホン酸との混合という簡便な方法により、N−PINAPジアステレオ混合物からN−PINAPの光学活性体を分離することができる。当該光学活性体を不斉配位子として含有する不斉遷移金属錯体は、BINAP等の従来の不斉配位子を用いた触媒では適用困難であった不斉付加反応、不斉共役付加反応、不斉ヒドロホウ素化反応等を高選択率かつ高収率で行うことが可能であるので、本願発明の製造方法は、非常に有用なものである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンの光学活性体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミン(以下、N−PINAPと略す)には、(R,P)−N−PINAP、(R,M)−N−PINAP、(S,P)−N−PINAPおよび(S,M)−N−PINAPの4つの光学異性体が存在する。これらの光学異性体の光学活性体を不斉配位子として含有する不斉遷移金属錯体は、不斉付加反応、不斉共役付加反応、不斉ヒドロホウ素化反応等を高選択率かつ高収率で行うことが可能である(非特許文献1)。
【0003】
これらの光学活性体は、ジアステレオ混合物をカラムクロマトグラフィーで分離することにより得られることが知られている。例えば、特許文献1では、(R)−N−PINAPジアステレオ混合物((R,P)−N−PINAPおよび(R,M)−N−PINAPの混合物)を、反応終了後の反応液からカラムクロマトグラフィーにより一旦単離し、これをトルエンとジクロロメタン混合溶媒に溶解後、ヘキサンを加えて(R,M)−N−PINAP((R,Sax)−N−PINAP)を晶析させ、次いで母液からカラムクロマトグラフィーにより(R,P)−N−PINAP((R,Rax)−N−PINAP)を得ている。
しかし、カラムクロマトグラフィーによる分離は光学活性体の工業的生産に問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−347884号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Angew.Chem.Int.Ed.,2004,43,5971
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の点を解決しようとするものであり、カラムクロマトグラフィーによる分離を行うことなく簡便な方法によりN−PINAPの光学活性体を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題に対して鋭意検討した結果、N−PINAPジアステレオ混合物の親水性有機溶媒溶液と水とを混合することにより、一方の光学活性体が優先的に晶析すること、およびN−PINAPジアステレオ混合物の溶液と光学活性な有機スルホン酸とを混合することにより、他方の光学活性体の有機スルホン酸塩が優先的に晶析することを見出し、発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は以下の通りである。
[1]光学活性な[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンの光学活性な有機スルホン酸塩。
[2]光学活性な[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンが、(R,P)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンである、上記[1]記載の塩。
[3]光学活性な有機スルホン酸が、(S)−カンファースルホン酸である、上記[2]記載の塩。
[4](R,P)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンと(R,M)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンの混合物(以下、(R)−N−PINAPジアステレオ混合物ともいう)の溶液と、光学活性な有機スルホン酸とを混合して晶析させることを特徴とする、(R,P)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンの光学活性な有機スルホン酸塩の製造方法。
[5]光学活性な有機スルホン酸の使用量が、混合物1モルに対して0.5〜5モルである、上記[4]記載の製造方法。
[6]光学活性な有機スルホン酸の使用量が、混合物1モルに対して0.8〜2モルである、上記[4]記載の製造方法。
[7]光学活性な有機スルホン酸が、(S)−カンファースルホン酸である、上記[4]記載の製造方法。
[8]混合物の溶液が、エーテル溶液またはケトン溶液である、上記[4]記載の製造方法。
[9](R,P)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンと(R,M)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンの混合物の親水性有機溶媒の溶液と、水とを混合して晶析させることを特徴とする、(R,M)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンの製造方法。
[10]親水性有機溶媒中、遷移金属錯体と3級アミンの存在下、トリフルオロメタンスルホン酸 (R)−1−[4−(1−フェニルエチルアミノ)フタラジン−1−イル]ナフタレン−2−イル エステルをジフェニルホスフィンと反応させ、得られた反応溶液と水とを混合して晶析させることを特徴とする、(R,M)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンの製造方法。
[11]水の使用量が、親水性有機溶媒1重量部に対して0.1〜0.5重量部である、上記[9]または[10]記載の製造方法。
[12]水の使用量が、親水性有機溶媒1重量部に対して0.2〜0.4重量部である、上記[9]または[10]記載の製造方法。
[13]親水性有機溶媒が、親水性非プロトン性極性溶媒から選ばれる、上記[9]または[10]記載の製造方法。
[14]親水性有機溶媒が、N,N−ジメチルホルムアミドである、上記[9]または[10]記載の製造方法。
[15]遷移金属錯体が、ホスフィン類を含む2価ニッケル錯体である、上記[10]記載の製造方法。
[16]遷移金属錯体が、NiCl2(dppe)である、上記[10]記載の製造方法。
[17]3級アミンが1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンである、上記[10]記載の製造方法。
[18]光学活性な[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンが、(S,M)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンである、上記[1]記載の塩。
[19]光学活性な有機スルホン酸が、(R)−カンファースルホン酸である、上記[18]記載の塩。
[20](S,M)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンと(S,P)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンの混合物(以下、(S)−N−PINAPジアステレオ混合物ともいう)の溶液と、光学活性な有機スルホン酸とを混合して晶析させることを特徴とする、(S,M)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンの光学活性な有機スルホン酸塩の製造方法。
[21]光学活性な有機スルホン酸の使用量が、混合物1モルに対して0.5〜5モルである、上記[20]記載の製造方法。
[22]光学活性な有機スルホン酸の使用量が、混合物1モルに対して0.8〜2モルである、上記[20]記載の製造方法。
[23]光学活性な有機スルホン酸が、(R)−カンファースルホン酸である、上記[20]記載の製造方法。
[24]混合物の溶液が、エーテル溶液またはケトン溶液である、上記[20]記載の製造方法。
[25](S,M)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンと(S,P)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンの混合物の親水性有機溶媒の溶液と、水とを混合して晶析させることを特徴とする、(S,P)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンの製造方法。
[26]親水性有機溶媒中、遷移金属錯体と3級アミンの存在下、トリフルオロメタンスルホン酸 (S)−1−[4−(1−フェニルエチルアミノ)フタラジン−1−イル]ナフタレン−2−イル エステルをジフェニルホスフィンと反応させ、得られた反応溶液と水とを混合して晶析させることを特徴とする、(S,P)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンの製造方法。
[27]水の使用量が、親水性有機溶媒1重量部に対して0.1〜0.5重量部である、上記[25]または[26]記載の製造方法。
[28]水の使用量が、親水性有機溶媒1重量部に対して0.2〜0.4重量部である、上記[25]または[26]記載の製造方法。
[29]親水性有機溶媒が、親水性非プロトン性極性溶媒から選ばれる、上記[25]または[26]記載の製造方法。
[30]親水性有機溶媒が、N,N−ジメチルホルムアミドである、上記[25]または[26]記載の製造方法。
[31]遷移金属錯体が、ホスフィン類を含む2価ニッケル錯体である、上記[26]記載の製造方法。
[32]遷移金属錯体が、NiCl2(dppe)である、上記[26]記載の製造方法。
[33]3級アミンが1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンである、上記[26]記載の製造方法。
[34]光学活性な[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンの光学活性な有機スルホン酸塩と塩基とを反応させることを特徴とする、光学活性な[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、カラムクロマトグラフィーによる分離を行うことなく、水との混合あるいは光学活性な有機スルホン酸との混合という簡便な方法により、N−PINAPジアステレオ混合物からN−PINAPの光学活性体を分離することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の製造方法は以下のルートにより行われる。
【0011】
【化1】
【0012】
【化2】
【0013】
本発明で原料として使用されるトリフルオロメタンスルホン酸 (R)−1−[4−(1−フェニルエチルアミノ)フタラジン−1−イル]ナフタレン−2−イル エステル(2−R)(以下、化合物(2−R)という)またはトリフルオロメタンスルホン酸 (S)−1−[4−(1−フェニルエチルアミノ)フタラジン−1−イル]ナフタレン−2−イル エステル(2−S)(以下、化合物(2−S)という)は、例えば、トリフルオロメタンスルホン酸 1−(4−クロロフタラジン−1−イル)ナフタレン−2−イル エステル(1)(以下、化合物(1)という)に(R)−または(S)−1−フェニルエチルアミンを反応させることにより、製造することができる。
【0014】
(R)−または(S)−1−フェニルエチルアミンの使用量は、化合物(1)1モルに対して、好ましくは1〜10モル、より好ましくは2〜5モルである。
当該工程は、無溶媒でまたは溶媒中で行われ、使用できる溶媒としては、反応を阻害しないものであれば特に限定されず、例えば、芳香族炭化水素溶媒(例、キシレン、トルエン)、エーテル溶媒(例、1,4−ジオキサン)等が挙げられ、反応時間の短縮および収率の点から、キシレンが好適である。溶媒の使用量は、化合物(1)1重量部に対して、好ましくは0.5〜50重量部、より好ましくは1〜15重量部である。
【0015】
当該工程の反応温度は、通常80〜200℃、好ましくは100〜150℃である。反応時間は、使用する試薬や反応温度にも依存するが、通常1〜50時間、好ましくは4〜30時間である。
反応終了後、反応溶液を冷却し、水および貧溶媒(例えば、ヘプタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素溶媒)と混合することにより、化合物(2−R)または化合物(2−S)を結晶として得ることができる。
【0016】
前記工程で得られた化合物(2−R)または化合物(2−S)を、有機溶媒中、遷移金属錯体と3級アミンの存在下、ジフェニルホスフィンと反応させることにより、(R)−または(S)−N−PINAPジアステレオ混合物を得る。
【0017】
当該工程の反応混合物をそのまま次の晶析工程に供する場合、晶析工程では水と混合するため、当該工程で使用する有機溶媒は親水性であることが必要である。
当該工程で使用する有機溶媒としては、反応性の点から比較的極性の高い溶媒、特に親水性非プロトン性極性溶媒が好ましく、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド等の親水性アミド溶媒;ジメチルスルホキシド等の親水性スルホキシド溶媒;テトラヒドロフラン等の親水性エーテル溶媒;アセトニトリル等の親水性ニトリル溶媒;それらの混合溶媒等が好適に使用でき、中でも、親水性アミド溶媒、特にN,N−ジメチルホルムアミドが好適に使用できる。
当該有機溶媒の使用量は、化合物(2−R)または化合物(2−S)1重量部に対して、好ましくは0.2〜50重量部、より好ましくは2〜20重量部である。
【0018】
ジフェニルホスフィンの使用量は、反応の完結および経済性の点から、化合物(2−R)または化合物(2−S)1モルに対して、好ましくは1〜10モル、より好ましくは1〜3モルである。
【0019】
当該工程で使用する遷移金属錯体としては、例えば、NiCl2(dppe)、NiCl2(dppp)、NiCl2(dppb)などのホスフィン類を含む2価ニッケル錯体;PdCl2(dppe)、PdCl2(dppp)、PdCl2(dppb)などのホスフィン類を含む2価パラジウム錯体等が挙げられる。ここで、dppeは1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、dpppは1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、dppbは1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタンを示す。中でも、反応速度および経済性の点から、ホスフィン類を含む2価ニッケル錯体が好ましく、NiCl2(dppe)がより好適に使用される。
当該遷移金属錯体の使用量は、反応速度および経済性の点から、化合物(2−R)または化合物(2−S)1モルに対して、好ましくは0.001〜1モル、より好ましくは0.01〜0.2モルである。
【0020】
当該工程で使用する3級アミンは、副生するトリフルオロメタンスルホン酸をトラップする目的で使用され、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン等が挙げられ、中でも、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンが好適に使用される。
当該3級アミンの使用量は、副生成物の抑制および経済性の点から、化合物(2−R)または化合物(2−S)1モルに対して、好ましくは1〜30モル、より好ましくは2〜10モルである。
【0021】
化合物(2−R)または化合物(2−S)、ジフェニルホスフィン、遷移金属錯体および3級アミンの添加順序は特に限定はなく、例えば、ジフェニルホスフィンおよび遷移金属錯体の混合物に、化合物(2−R)または化合物(2−S)および3級アミンの混合物を添加してもよく、あるいは、化合物(2−R)または化合物(2−S)および3級アミンの混合物にジフェニルホスフィンおよび遷移金属錯体の混合物を添加してもよい。
【0022】
当該工程の反応温度は、通常60℃〜180℃、好ましくは80℃〜140℃である。反応時間は、使用する試薬や反応温度にも依存するが、通常10分〜40時間、好ましくは30分〜24時間である。
【0023】
反応終了後、反応溶液を通常の後処理(例えば、溶媒抽出)を行うことにより、(R)−または(S)−N−PINAPジアステレオ混合物を得る。
【0024】
このように得られた(R)−または(S)−N−PINAPジアステレオ混合物は、各光学活性体に分離精製することが必要である。光学活性体に分離精製は以下の方法により行われる。
【0025】
(1)(R)−N−PINAPジアステレオ混合物から(R,P)−N−PINAPを分離する方法、または(S)−N−PINAPジアステレオ混合物から(S,M)−N−PINAPを分離する方法
【0026】
(R)−N−PINAPジアステレオ混合物の溶液と光学活性な有機スルホン酸とを混合することにより、(R,P)−N−PINAPの光学活性な有機スルホン酸塩が優先的に晶析する。あるいは(S)−N−PINAPジアステレオ混合物の溶液と光学活性な有機スルホン酸とを混合することにより、(S,M)−N−PINAPの光学活性な有機スルホン酸塩が優先的に晶析する。
当該晶析で使用する光学活性な有機スルホン酸としては、例えば(S)−または(R)−カンファースルホン酸[(1S)−(+)−または(1R)−(−)−10−カンファースルホン酸]、(+)−3−ブロモカンファー−8−スルホン酸、(+)−3−ブロモカンファー−10−スルホン酸、(−)−3−ブロモカンファー−8−スルホン酸、(−)−3−ブロモカンファー−10−スルホン酸等の光学活性なカンファースルホン酸またはそれらのアンモニウム塩、(S)−または(R)−1−フェニルエタンスルホン酸、(S)−または(R)−1−フェニルプロパンスルホン酸またはそれらのアンモニウム塩等が挙げられる。例えば、光学活性なカンファースルホン酸を使用する場合、(R)−N−PINAPジアステレオ混合物の溶液と(S)−カンファースルホン酸とを混合することにより、(R,P)−N−PINAP(S)−カンファースルホン酸塩が優先的に晶析する。あるいは(S)−N−PINAPジアステレオ混合物の溶液と(R)−カンファースルホン酸とを混合することにより、(S,M)−N−PINAP(R)−カンファースルホン酸塩が優先的に晶析する。
【0027】
当該光学活性な有機スルホン酸の使用量は、(R)−または(S)−N−PINAPジアステレオ混合物中の異性体比にもよるが、当該混合物1モルに対して、好ましくは0.5〜5モル、より好ましくは0.8〜2モルである。光学活性な有機スルホン酸は、固体のまま用いても、溶液に調製してから用いてもよいが、(S)−または(R)−カンファースルホン酸を使用する場合は、後者で行うことが好ましい。
【0028】
当該工程で使用する溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン等のエーテル溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン溶媒等が挙げられ、中でも、収率の点から、エーテル溶媒、特にテトラヒドロフランが好適に使用される。
溶媒の使用量は、(R)−または(S)−N−PINAPジアステレオ混合物1重量部に対して、好ましくは5〜50重量部、より好ましくは10〜40重量部である。
【0029】
上記混合は、(R)−または(S)−N−PINAPジアステレオ混合物の溶液に光学活性な有機スルホン酸を添加(好ましくは滴下)することにより行うことが好ましい。
【0030】
混合温度は、通常30〜65℃、好ましくは35〜60℃である。
混合後、通常5分〜24時間、好ましくは30分〜10時間攪拌し、次いで、通常0〜55℃、好ましくは5〜35℃に温度調節して熟成する。析出した結晶を、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の溶媒(好ましくはテトラヒドロフラン)で洗浄して、(R,P)−N−PINAPの光学活性な有機スルホン酸塩または(S,M)−N−PINAPの光学活性な有機スルホン酸塩を得る。
【0031】
原料である(R)−または(S)−N−PINAPジアステレオ混合物は、各光学活性体がどのような割合で含まれていてもよく、例えば、後掲の(2)において述べる、(R)−N−PINAPジアステレオ混合物の反応溶液と水との混合により晶析した(R,M)−N−PINAPを濾過した後の濾液、または(S)−N−PINAPジアステレオ混合物の反応溶液と水との混合により晶析した(S,P)−N−PINAPを濾過した後の濾液を使用してもよい。
【0032】
この場合、まず、濾液(反応溶媒である親水性有機溶媒と水を含む)に有機溶媒を加えて分液する。溶媒としては、例えば、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、酢酸エチル等が挙げられ、中でも、CPME、酢酸エチル、MIBKが好ましい。
当該溶媒の使用量は、(R)−または(S)−N−PINAPジアステレオ混合物1重量部に対して、好ましくは5〜100重量部、より好ましくは10〜80重量部である。
【0033】
分液(抽出)した有機層を濃縮した後、上記した光学活性な有機スルホン酸との混合使用する溶媒(好ましくはテトラヒドロフラン)に残渣を溶解する。当該溶媒の使用量は上記と同様である。そして、この溶液と、上記の光学活性な有機スルホン酸とを混合する。
【0034】
得られた(R,P)−N−PINAPの光学活性な有機スルホン酸塩または(S,M)−N−PINAPの光学活性な有機スルホン酸塩は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩等の塩基で処理することにより、光学活性を保持したまま、遊離の(R,P)−または(S,M)−N−PINAPに変換することができる。
具体的には、(R,P)−N−PINAPの光学活性な有機スルホン酸塩または(S,M)−N−PINAPの光学活性な有機スルホン酸塩を、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロルベンゼン等の芳香族溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素溶媒、ジエチルエーテル、メチルt−ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル溶媒中、上記塩基の水溶液で処理後、有機層を減圧濃縮して貧溶媒(ヘプタン、ヘキサン等)を加える、あるいは、減圧濃縮してメチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン等に溶解し、そこへ貧溶媒(ヘプタン、ヘキサン等)を加えて結晶化することにより、遊離の(R,P)−または(S,M)−N−PINAPの結晶を得る。
さらに、アセトニトリル、メチルエチルケトン、酢酸エチル、トルエン、THF等の溶媒から再結晶することにより、より高純度の(R,P)−または(S,M)−N−PINAPの結晶を得ることができる。
このようにして得られた(R,P)−または(S,M)−N−PINAPは、(R,P)/(R,M)または(S,M)/(S,P)として、95/5以上、特に98/2以上の純度を有する。
【0035】
(2)(R)−N−PINAPジアステレオ混合物から(R,M)−N−PINAPを分離する方法、または(S)−N−PINAPジアステレオ混合物から(S,P)−N−PINAPを分離する方法
【0036】
(R)−N−PINAPジアステレオ混合物の親水性有機溶媒溶液と水とを混合することにより、(R,M)−N−PINAPが優先的に晶析する。あるいは、(S)−N−PINAPジアステレオ混合物の親水性有機溶媒溶液と水とを混合することにより、(S,P)−N−PINAPが優先的に晶析する。
【0037】
当該工程で使用する親水性有機溶媒としては、水と混合する点から比較的極性の高い溶媒、特に親水性非プロトン性極性溶媒が好ましく、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド等の親水性アミド溶媒;ジメチルスルホキシド等の親水性スルホキシド溶媒;テトラヒドロフラン等の親水性エーテル溶媒;アセトニトリル等の親水性ニトリル溶媒;それらの混合溶媒等が好適に使用でき、中でも、親水性アミド溶媒、特にN,N−ジメチルホルムアミドが好適に使用できる。
当該親水性有機溶媒の使用量は、(R)−または(S)−N−PINAPジアステレオ混合物1重量部に対して、操作性と経済性の点から、好ましくは0.2〜50重量部、より好ましくは2〜20重量部である。
【0038】
水の使用量は、親水性有機溶媒1重量部に対して、精製効果と収率の点から、好ましくは0.1〜0.5重量部、より好ましくは0.2〜0.4重量部である。
【0039】
上記混合は、(R)または(S)−N−PINAPジアステレオ混合物の親水性有機溶媒溶液に水を添加(好ましくは滴下)することにより行うことが好ましい。
【0040】
混合温度は、通常0〜100℃、好ましくは60〜95℃である。
混合後、通常5分〜24時間、好ましくは30分〜5時間攪拌し、次いで、通常0〜50℃、好ましくは5〜35℃に温度調整して熟成する。析出した結晶を、親水性有機溶媒と水との混合溶媒、または2−プロパノール等の低級アルコール溶媒(好ましくは2−プロパノール)で洗浄して、(R,M)−または(S,P)−N−PINAPの結晶を得る。
【0041】
濾液に、濾液中の親水性有機溶媒に対して0.1〜1倍容量の水を加えることにより2次結晶が得られ、再結晶等の精製により、1次結晶と同等の純度の(R,M)−または(S,P)−N−PINAPの結晶を得ることができる。
【0042】
このようにして得られた(R,M)−または(S,P)−N−PINAPは、(R,M)/(R,P)または(S,P)/(S,M)として、95/5以上、特に98/2以上の純度を有する。
【0043】
(R)−または(S)−N−PINAPジアステレオ混合物の親水性有機溶媒溶液は、上記の(R)−または(S)−N−PINAPジアステレオ混合物の反応溶液をそのまま使用し、水を直接当該反応溶液と混合して(好ましくは当該反応溶液中の親水性有機溶媒1重量部に対して、0.1〜0.5重量部、より好ましくは0.2〜0.4重量部)もよい。この方法によれば、(R)−または(S)−N−PINAPジアステレオ混合物を単離する必要がないので特に簡便である。
【実施例】
【0044】
以下、本発明を参考例および実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0045】
以下の参考例1〜参考例3および実施例1〜10について、HPLCによる分析は以下の条件で行った。
カラム:カプセルパックC8DD 4.6mm×150mm
移動相:アセトニトリル−水(グラジエント)
検出波長:220nm
【0046】
参考例1 トリフルオロメタンスルホン酸 1−(4−クロロフタラジン−1−イル)ナフタレン−2−イル エステル
1−(4−クロロフタラジン−1−イル)−ナフタレン−2−オール(4.00kg、13.0mol)およびピリジン(3.10kg、39.2mol)のキシレン(34.4kg)溶液に、15〜25℃でトリフルオロメタンスルホン酸無水物(4.24kg、15.0mol)を30分で滴下し、同温度で28.5時間攪拌した。HPLCで反応の終了を確認した後、炭酸カリウム(2.00kg)を水(18.00kg)に溶解した溶液を10〜20℃で滴下し、攪拌、静置した後、分液した。有機層を水20.00kgで洗浄し、減圧下60℃で濃縮し、残渣にキシレン(5.16kg)を加えて溶解した。この溶液をHPLCで分析した結果、トリフルオロメタンスルホン酸 1−(4−クロロフタラジン−1−イル)ナフタレン−2−イル エステルが5.72kg相当(13.0mol)含まれていた。
【0047】
参考例2 トリフルオロメタンスルホン酸 (R)−1−[4−(1−フェニルエチルアミノ)フタラジン−1−イル]ナフタレン−2−イル エステル
参考例1で得られたトリフルオロメタンスルホン酸 1−(4−クロロフタラジン−1−イル)ナフタレン−2−イル エステルのキシレン溶液(5.72kg相当、13.0mol)に(R)−1−フェニルエチルアミン(4.75kg、39.2mol)を添加し、135〜140℃で23時間攪拌した。60℃まで冷却し、水(16.0kg)を滴下した。50〜60℃でヘプタン(27.40kg)を滴下し、同温で30分攪拌し、18℃まで冷却した。析出結晶を濾過し、キシレン(9.84kg)とヘプタン(7.82kg)の混合溶媒で洗浄し、乾燥して、トリフルオロメタンスルホン酸 (R)−1−[
4−(1−フェニルエチルアミノ)フタラジン−1−イル]ナフタレン−2−イル エステル(5.45kg)を得た。
【0048】
1H-NMR(300MHz, CDCl3) δ: 1.79(t, J =6.7Hz, 6H), 5.49(d, J=7.0Hz, 2H), 5.88(quint, J=6.8Hz, 2H), 7.13-7.65(m, 22H), 7.73-7.82(m, 2H), 7.85-7.90(m, 2H), 7.94-8.00(m, 2H), 8.08(d, J=9.1Hz, 2H).
13C-NMR(100MHz, CDCl3) δ: 21.9, 22.0, 50.7, 50.7, 117.8, 117.8, 118.0(q, JCF=320), 118.7(q, JCF=320), 119.4, 119.5, 120.8, 126.1, 126.1, 126.4, 126.5, 126.7, 126.7, 127.1, 127.2, 127.2, 127.4, 127.5, 127.5, 127.7, 128.1, 128.2, 128.5, 128.6, 131.3, 131.3, 131.4, 131.4, 131.4, 131.5, 132.5, 132.5, 133.6, 133.6, 144.0, 144.3, 145.5, 145.6, 146.5, 146.5, 152.7, 152.8.
HRMS (MALDI) calcd. for C27H21F3N3O3S [M+H]+ 524.1250, found 524.1258.
Anal. Calcd for C27H20F3N3O3S: C, 61.94; H, 3.85; N, 8.03. Found: C, 62.15; H, 3.99; N, 7.79.
【0049】
実施例1 (R,M)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミン
N,N−ジメチルホルムアミド(11mL)にNiCl2(dppe)(0.10g、0.19mmol)とジフェニルホスフィン(1.4g、7.5mmol)を添加した。この溶液に、参考例2で得られたトリフルオロメタンスルホン酸 (R)−1−[4−(1−フェニルエチルアミノ)フタラジン−1−イル]ナフタレン−2−イル エステル(2.0g、3.8mmol)および1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(1.7g,15mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(11mL)溶液を130℃で添加し、130℃で2時間撹拌した。約70℃で水(6.1mL)を滴下し、20℃まで冷却して30分攪拌した。析出結晶を濾過し、イソプロパノール(6.8mL)で洗浄し、乾燥して、(R,M)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミン(0.66g)を得た。HPLCで分析した結果、純度は95%、(R,M)/(R,P)は100/0であった。
【0050】
mp: > 210 ℃
[α]D29= -162.0 (c=0.54, CHCl3).
1H-NMR (400MHz, CDCl3) δ: 1.68(d, J=6.8Hz, 3H), 5.34(d, J=7.2Hz, 1H), 5.81(quint, J=6.9Hz, 1H), 7.01(d, J =8.1Hz, 1H), 7.11-7.18(m, 5H), 7.18-7.24(m, 8H), 7.28-7.33(m, 3H), 7.36-7.43(m, 2H), 7.50-7.53(m, 2H), 7.55-7.59(m, 1H), 7.70(d, J=8.3Hz, 1H), 7.79-7.84(m, 2H).
13C-NMR(100 MHz)δ: 22.2(CH3), 50.4(CH), 117.7(C), 120.3(CH), 126.5(CH), 126.7(CH), 126.8(CH), 126.8(CH), 126.9(CH), 126.9(CH), 127.2(CH), 127.8(CH), 128.0(CH), 128.2(CH), 128.2(CH), 128.2(CH), 128.3(CH), 128.3(C), 128.3(C), 128.4(CH), 128.6(CH), 128.8(CH), 130.1(CH), 130.7(CH), 130.8(CH), 133.1(CH), 133.2(C), 133.3(CH), 133.3(C), 133.6(C), 133.7(CH), 133.9(CH), 135.8(C), 136.0(C), 137.3(C), 137.4(C), 137.7(C), 137.8(C), 141.8(C), 142.1(C), 144.6(C), 152.2(C), 152.5(C), 152.6(C).
31P-NMR(121 MHz, CDCl3) δ: -13.18.
FTIR(thin film, cm-1): 3351(br, s), 1654(w), 1559(w), 1508(s), 1420(w), 1361(w), 1217(w), 820(w), 772(s), 698(m).
HRMS(MALDI) calcd. for C38H31N3P+[M+H]+560.2250. found 560.2257.
Anal. Calcd for C38H30N3P: C, 81.55; H, 5.40; N, 7.51; P, 5.53. Found: C, 81.44; H, 5.52; N, 7.39; P, 5.67.
【0051】
実施例2 (R,P)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミン (S)−カンファースルホン酸塩
実施例1の濾液と結晶洗浄液を合一し、メチルイソブチルケトン(14mL)と水(13mL)を加えて攪拌し、静置後、分液した。有機層を水(8.0mL)で洗浄し、減圧下30〜60℃で濃縮した。残渣にテトラヒドロフラン(15mL)を加えて溶解した。この溶液をHPLCで分析した結果、(R)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミン(ジアステレオ混合物、(R,M)/(R,P)=40/60)が0.70g相当(1.3mmol
)含まれていた。このテトラヒドロフラン溶液に約50℃で(S)−カンファースルホン酸((1S)−(+)−10−カンファースルホン酸)(0.35g、1.5mmol)を添加した。同温で1時間攪拌した後、28℃に冷却し、1時間攪拌した。析出結晶を濾過し、テトラヒドロフラン(8.0mL)で洗浄し、乾燥して、(R,P)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミン (S)−カンファースルホン酸塩(0.78g)を得た。HPLCで分析した結果、(R,M)/(R,P)は0/100であった。
【0052】
mp: 213℃
1H-NMR (400MHz, DMSO-d6) δ: 0.73(s, 3H), 1.05(s, 3H), 1.22-1.31(m, 2H), 1.73-1.81(m, 5H), 1.92(t, J=4.4Hz, 1H), 2.23(dt, J=18.1, 3.9Hz, 1H), 2.39(d, J=14.6Hz, 1H), 2.69-2.75(m, 1H), 2.87-2.91(m, 1H), 5.51(dt, J=6.9Hz, 1H), 7.01(dd, J=7.6Hz, 2H), 7.11(dd, J=7.8Hz, 2H), 7.21-7. 40(m, 10H), 7.46-7.50(m, 4H), 7.58-7.60(m, 2H), 7.66(dt, J=8.3, 3.9Hz, 1H), 7.95(dd, J=7.6Hz, 1H), 8.09(d, J=8.3Hz, 1H), 8.15-8.20(m, 2H), 9.07(d, J=8.3Hz, 1H), 10.02(br, 1H).
【0053】
実施例3 (R,P)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミン (S)−カンファースルホン酸塩
実施例1と同様の操作により得られた濾液と結晶洗浄液を合一し、メチルイソブチルケトン(225mL)と水(100mL)を加えて攪拌し、静置後、分液した。有機層を水(100mL)で洗浄した。得られた溶液をHPLCで分析した結果、(R)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミン(ジアステレオ混合物、(R,M)/(R,P)=25/75)が8.5g相当(15mmol)含まれていた。このメチルイソブチルケトン溶液に約50℃で(S)−カンファースルホン酸(4.2g、18mmol)を添加した。同温で1時間攪拌した後、23℃に冷却し、2時間攪拌した。析出した結晶を濾過し、メチルイソブチルケトン(25mL)で洗浄し、乾燥して、(R,P)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミン (S)−カンファースルホン酸塩(6.8g)を得た。HPLCで分析した結果、(R,M)/(R,P)は0/100であった。
【0054】
実施例4 (R,P)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミン
トルエン(30mL)に、実施例3で得られた(R,P)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミン (S)−カンファースルホン酸塩(2.33g)を加え、水酸化ナトリウム(0.13g)を水(26.4g)に溶解した溶液を滴下した。24℃で1.5時間攪拌し、静置し、分液した。有機層を水(10g)で洗浄し、使用したトルエンの78〜80%相当量を減圧下30〜60℃で留去した(留去量23.5mL)。約50℃でヘプタン(1.5mL)を滴下し、25℃で1時間攪拌した。結晶を濾過し、トルエン(4.3mL)とヘプタン(1.0mL)の混合溶媒で洗浄し、乾燥して、(R,P)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミン(1.33g)を得た。HPLCで分析した結果、(R,M)/(R,P)は0/100であった。
【0055】
mp: 185-188 ℃
[α]D26= +127.3 (c=0.39, CHCl3).
1H-NMR (300MHz, CDCl3) δ: 1.78(d, J=6.7Hz, 3H), 5.41(d, J=6.9Hz, 1H), 5.85(quint, J=6.7Hz, 1H), 7.09(d, J =8.1Hz, 1H), 7.13-7.52(m, 18H), 7.56-7.67(m, 3H), 7.80(d, J=8.3Hz, 1H), 7.86-7.91(m, 2H).
13C-NMR(75 MHz)δ: 21.9(CH3), 50.6(CH), 117.5(C), 120.2(CH), 126.3(CH), 126.5(CH), 126.6(CH), 127.1(CH), 127.7(CH), 127.9(CH), 128.0(CH), 128.0(CH), 128.0(CH), 128.1(CH), 128.5(CH), 128.6(CH), 129.9(CH), 130.6(CH), 130.6(CH), 133.1(CH), 133.1(CH), 133.3(CH), 133.4(CH), 133.4(C), 133.7(CH), 135.9(C), 136.1(C), 136.9(C), 137.0(C), 137.4(C), 137.6(C), 141.3(C), 141.7(C), 144.2(C), 152.1(C), 152.3(C), 152.3(C).
31P-NMR(121 MHz, CDCl3) δ: -12.77.
FTIR(thin film, cm-1): 3347(br, s), 3056(m), 1615(w), 1558(w), 1508(s), 1434(w), 1366(w), 1215(w), 817(s), 744(m), 696(s).
HRMS(MALDI) calcd. for C38H31N3P+[M+H]+ 560.2250. found 560.2249.
Anal. Calcd for C38H30N3P: C, 81.55; H, 5.40; N, 7.51; P, 5.53.
Found: C, 81.44; H, 5.41; N, 7.39.
【0056】
上記と同様の方法で得られた(R,P)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンの結晶(36.2g、純度92%)をアセトニトリル(290mL)に加熱溶解し、19℃まで冷却して得られた結晶を濾過し、40℃で減圧乾燥することにより、(R,P)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンの結晶(21.7g、純度99.7%)を得た。
【0057】
実施例5 (R,M)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミン
NiCl2(dppe)(100mg、0.189mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(10mL)溶液にジフェニルホスフィン(1.45g、7.79mmol)を23℃で添加し、118〜122℃で0.5時間撹拌した。次いで、参考例2で得られたトリフルオロメタンスルホン酸 (R)−1−[4−(1−フェニルエチルアミノ)フタラジン−1−イル]ナフタレン−2−イル エステル(2.00g、3.82mmol)および1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(1.73g、15.4mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(10mL)溶液を添加した。この溶液を118〜122℃で5時間撹拌した。85℃で水(4mL)を滴下し、28℃まで冷却して1時間攪拌した。析出結晶を濾過し、一次結晶(0.68g)を得た。濾液に水(5mL)を添加し、二次結晶(0.38g)を得た。HPLCで分析した結果、一次結晶の純度は95%、(R,M)/(R,P)は99/1であり、また、二次結晶の純度は83%、(R,M)/(R,P)は87/13であった。
【0058】
実施例6 (R,P)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミン (S)−カンファースルホン酸塩
(R)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミン(ジアステレオ混合物、2.51g、4.48mmol、(R,M)/(R,P)=約50/50))をテトラヒドロフラン(30mL)に加熱溶解し、50℃で(S)−カンファースルホン酸(1.04g、4.48mmol)を添加し、40〜50℃で攪拌した。析出結晶を濾過し、テトラヒドロフラン(7.5mL)で洗浄して、結晶(1.56g)を得た。HPLCで分析した結果、(R,P)/(R,M)は96/4であった。
【0059】
参考例3 トリフルオロメタンスルホン酸 (S)−1−[4−(1−フェニルエチルアミノ)フタラジン−1−イル]ナフタレン−2−イル エステル
参考例1で得られたトリフルオロメタンスルホン酸 1−(4−クロロフタラジン−1−イル)ナフタレン−2−イル エステルのキシレン溶液(388.50g、43.1g相当、98.2mmol)に(S)−1−フェニルエチルアミン(35.6g、294mmol)を添加し、135〜140℃で16時間攪拌した。60℃まで冷却し、水(120mL)を滴下した。50℃でヘプタン(150mL)を滴下し、22℃まで冷却した。析出結晶を濾過し、キシレン(40mL)とヘプタン(40mL)の混合溶媒で洗浄した後、水(120mL)で洗浄し、乾燥して、トリフルオロメタンスルホン酸 (S)−1
−[4−(1−フェニルエチルアミノ)フタラジン−1−イル]ナフタレン−2−イル エステル(32.1g)を得た(収率62%)。
【0060】
mp: 200 ℃
1H-NMR(400MHz, CDCl3) δ: 1.72(t, J =6.7Hz, 6H), 5.68(d, J=7.0Hz, 2H), 5.83(quint, J=6.8Hz, 2H), 7.06-7.58(m, 22H), 7.72-7.74(m, 2H), 7.90-7.95(m, 4H), 8.05(d, J=8.8Hz, 2H).
【0061】
実施例7 (S,P)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミン
N,N−ジメチルホルムアミド(18mL)にNiCl2(dppe)(0.18g、0.34mmol)とジフェニルホスフィン(2.6g、14mmol)を添加した。この溶液に、参考例3で得られたトリフルオロメタンスルホン酸 (S)−1−[4−(1−フェニルエチルアミノ)フタラジン−1−イル]ナフタレン−2−イル エステル(3.5g、6.7mmol)および1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(3.0g、27mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(19mL)溶液を128〜134℃で添加し、132℃で3時間撹拌した。この溶液をHPLCで分析した結果、(S,M)/(S,P)=46/54であった。約60℃で水(10mL)を滴下し、23℃まで冷却して13時間攪拌した。析出結晶を濾過し、2−プロパノール(12mL)で洗浄し、乾燥して、(S,P)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミン(1.01g)を得た(収率27%)。HPLCで分析した純度は92%で、(S,M)/(S,P)は1/99であった。
【0062】
mp: 210 ℃以上
1H-NMR (400MHz, CDCl3) δ: 1.74(d, J=6.8Hz, 3H), 5.42(d, J=7.2Hz, 1H), 5.84(quint, J=6.9Hz, 1H), 7.06(d, J=8.3Hz, 1H), 7.17-7.22(m, 5H), 7.26-7.30(m, 8H), 7.35-7.39(m, 3H), 7.40-7.48(m, 2H), 7.56-7.58(m, 2H), 7.62-7.66(m, 1H), 7.84(d, J=8.3Hz, 1H), 7.85-7.89(m, 2H).
【0063】
実施例8 (S,P)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミン
N,N−ジメチルホルムアミド(100mL)にNiCl2(dppe)(1.01g、1.91mmol)とジフェニルホスフィン(14.3g、76.8mmol)を添加した。この溶液に、参考例3で得られたトリフルオロメタンスルホン酸 (S)−1−[4−(1−フェニルエチルアミノ)フタラジン−1−イル]ナフタレン−2−イル エステル(20.0g、38.2mmol)および1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(17.1g、152mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(110mL)溶液を124℃で添加し、124℃で3.5時間撹拌した。この溶液をHPLCで分析した結果、(S,M)/(S,P)=41/59であった。約60℃で水(81mL)を滴下し、22℃まで冷却して1時間攪拌した。析出結晶を濾過し、2−プロパノール(136mL)で洗浄し、乾燥して、(S,P)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミン(6.46g)を得た(収率30%)。HPLCで分析した純度は94%で、(S,M)/(S,P)は1/99であった。
【0064】
実施例9 (S,M)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミン (R)−カンファースルホン酸塩
実施例8の濾液と結晶洗浄液を合一し、メチルイソブチルケトン(240mL)と水(180mL)を加え、攪拌し、静置後、分液した。有機層を水(190mL)で洗浄し、減圧下30〜60℃で濃縮した。残渣にテトラヒドロフラン(100mL)を加えて溶解した。この溶液をHPLCで分析した結果、(S)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミン(ジアステレオ混合物、(S,M)/(S,P)=86/14)が3.2g相当(5.7mmol)含まれていた。このテトラヒドロフラン溶液に、約50℃で(R)−カンファースルホン酸((1R)−(−)−10−カンファースルホン酸)(2.0g、8.6mmol)を添加した。同温で3時間攪拌した後、23℃に冷却し、1時間攪拌した。析出結晶を濾過し、テトラヒドロフラン(40mL)で洗浄し、乾燥して、(S,M)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミン (R)−カンファースルホン酸塩(3.5g)を得た。HPLCで分析したところ(S,M)/(S,P)は99.9/0.1であった。
【0065】
1H-NMR (400MHz, DMSO-d6) δ: 0.73(s, 3H), 1.05(s, 3H), 1.22-1.32(m, 2H), 1.74-1.83(m, 5H), 1.92(t, J=4.4Hz, 1H), 2.23(dt, J=18.1, 3.9Hz, 1H), 2.39(d, J=14.6Hz, 1H), 2.69-2.75(m, 1H), 2.87-2.91(m, 1H), 5.52(dt, J=6.9Hz, 1H), 7.01(dd, J=7.8Hz, 2H), 7.11(dd, J=7.8Hz, 2H), 7.21-7. 40(m, 10H), 7.46-7.50(m, 4H), 7.58-7.60(m, 2H), 7.66(dt, J=8.3, 3.9Hz, 1H), 7.95(dd, J=7.6Hz, 1H), 8.09(d, J=8.3Hz, 1H), 8.15-8.20(m, 2H), 9.07(d, J=8.3Hz, 1H), 10.02(br, 1H).
【0066】
実施例10 (S,M)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミン
トルエン(40mL)に、実施例9で得られた(S,M)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミン (R)−カンファースルホン酸塩(3.3g)を加え、水酸化ナトリウム(0.18g)を水(35mL)に溶解した溶液を滴下した。24℃で1.5時間攪拌し、静置し、分液した。有機層を水(15mL)で洗浄し、減圧下30〜60℃でトルエンを留去した。約50℃で2−ブタノン(メチルエチルケトン)(8.5mL)とヘプタン(2.5mL)を滴下し、25℃で1時間攪拌した。結晶を濾過し、トルエン(3.5mL)とヘプタン(1.0mL)の混合溶媒で結晶を洗浄し、乾燥して、(S,M)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミン(1.4g)を得た。HPLCで分析した純度は97%で、(S,M)/(S,P)は100/0であった。
【0067】
mp: 210 ℃以上
1H-NMR (400MHz, CDCl3) δ: 1.76(d, J=6.7Hz, 3H), 5.37(d, J=6.7Hz, 1H), 5.82(quint, J=6.7Hz, 1H), 7.08(d, J=8.3Hz, 1H), 7.12-7.49(m, 18H), 7.56-7.65(m, 3H), 7.78(d, J=8.3Hz, 1H), 7.86-7.88(m, 2H).
【産業上の利用可能性】
【0068】
本願発明によれば、カラムクロマトグラフィーによる分離を行うことなく、水との混合、あるいは光学活性な有機スルホン酸との混合という簡便な方法により、N−PINAPジアステレオ混合物からN−PINAPの光学活性体を分離することができる。当該光学活性体を不斉配位子として含有する不斉遷移金属錯体は、BINAP等の従来の不斉配位子を用いた触媒では適用困難であった不斉付加反応、不斉共役付加反応、不斉ヒドロホウ素化反応等を高選択率かつ高収率で行うことが可能であるので、本願発明の製造方法は、非常に有用なものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学活性な[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンの光学活性な有機スルホン酸塩。
【請求項2】
光学活性な[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンが、(R,P)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンである、請求項1記載の塩。
【請求項3】
光学活性な有機スルホン酸が、(S)−カンファースルホン酸である、請求項2記載の塩。
【請求項4】
(R,P)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンと(R,M)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンの混合物の溶液と、光学活性な有機スルホン酸とを混合して晶析させることを特徴とする、(R,P)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンの光学活性な有機スルホン酸塩の製造方法。
【請求項5】
光学活性な有機スルホン酸の使用量が、混合物1モルに対して0.5〜5モルである、請求項4記載の製造方法。
【請求項6】
光学活性な有機スルホン酸の使用量が、混合物1モルに対して0.8〜2モルである、請求項4記載の製造方法。
【請求項7】
光学活性な有機スルホン酸が、(S)−カンファースルホン酸である、請求項4記載の製造方法。
【請求項8】
混合物の溶液が、エーテル溶液またはケトン溶液である、請求項4記載の製造方法。
【請求項9】
(R,P)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンと(R,M)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンの混合物の親水性有機溶媒の溶液と、水とを混合して晶析させることを特徴とする、(R,M)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンの製造方法。
【請求項10】
親水性有機溶媒中、遷移金属錯体と3級アミンの存在下、トリフルオロメタンスルホン酸 (R)−1−[4−(1−フェニルエチルアミノ)フタラジン−1−イル]ナフタレン−2−イル エステルをジフェニルホスフィンと反応させ、得られた反応溶液と水とを混合して晶析させることを特徴とする、(R,M)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンの製造方法。
【請求項11】
水の使用量が、親水性有機溶媒1重量部に対して0.1〜0.5重量部である、請求項9または10記載の製造方法。
【請求項12】
水の使用量が、親水性有機溶媒1重量部に対して0.2〜0.4重量部である、請求項9または10記載の製造方法。
【請求項13】
親水性有機溶媒が、親水性非プロトン性極性溶媒から選ばれる、請求項9または10記載の製造方法。
【請求項14】
親水性有機溶媒が、N,N−ジメチルホルムアミドである、請求項9または10記載の製造方法。
【請求項15】
遷移金属錯体が、ホスフィン類を含む2価ニッケル錯体である、請求項10記載の製造方法。
【請求項16】
遷移金属錯体が、NiCl2(dppe)である、請求項10記載の製造方法。
【請求項17】
3級アミンが1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンである、請求項10記載の製造方法。
【請求項18】
光学活性な[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンが、(S,M)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンである、請求項1記載の塩。
【請求項19】
光学活性な有機スルホン酸が、(R)−カンファースルホン酸である、請求項18記載の塩。
【請求項20】
(S,M)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンと(S,P)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンの混合物の溶液と、光学活性な有機スルホン酸とを混合して晶析させることを特徴とする、(S,M)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンの光学活性な有機スルホン酸塩の製造方法。
【請求項21】
光学活性な有機スルホン酸の使用量が、混合物1モルに対して0.5〜5モルである、請求項20記載の製造方法。
【請求項22】
光学活性な有機スルホン酸の使用量が、混合物1モルに対して0.8〜2モルである、請求項20記載の製造方法。
【請求項23】
光学活性な有機スルホン酸が、(R)−カンファースルホン酸である、請求項20記載の製造方法。
【請求項24】
混合物の溶液が、エーテル溶液またはケトン溶液である、請求項20記載の製造方法。
【請求項25】
(S,M)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンと(S,P)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンの混合物の親水性有機溶媒の溶液と、水とを混合して晶析させることを特徴とする、(S,P)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンの製造方法。
【請求項26】
親水性有機溶媒中、遷移金属錯体と3級アミンの存在下、トリフルオロメタンスルホン酸 (S)−1−[4−(1−フェニルエチルアミノ)フタラジン−1−イル]ナフタレン−2−イル エステルをジフェニルホスフィンと反応させ、得られた反応溶液と水とを混合して晶析させることを特徴とする、(S,P)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンの製造方法。
【請求項27】
水の使用量が、親水性有機溶媒1重量部に対して0.1〜0.5重量部である、請求項25または26記載の製造方法。
【請求項28】
水の使用量が、親水性有機溶媒1重量部に対して0.2〜0.4重量部である、請求項25または26記載の製造方法。
【請求項29】
親水性有機溶媒が、親水性非プロトン性極性溶媒から選ばれる、請求項25または26記載の製造方法。
【請求項30】
親水性有機溶媒が、N,N−ジメチルホルムアミドである、請求項25または26記載の製造方法。
【請求項31】
遷移金属錯体が、ホスフィン類を含む2価ニッケル錯体である、請求項26記載の製造方法。
【請求項32】
遷移金属錯体が、NiCl2(dppe)である、請求項26記載の製造方法。
【請求項33】
3級アミンが1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンである、請求項26記載の製造方法。
【請求項34】
光学活性な[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンの光学活性な有機スルホン酸塩と塩基とを反応させることを特徴とする、光学活性な[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンの製造方法。
【請求項1】
光学活性な[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンの光学活性な有機スルホン酸塩。
【請求項2】
光学活性な[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンが、(R,P)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンである、請求項1記載の塩。
【請求項3】
光学活性な有機スルホン酸が、(S)−カンファースルホン酸である、請求項2記載の塩。
【請求項4】
(R,P)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンと(R,M)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンの混合物の溶液と、光学活性な有機スルホン酸とを混合して晶析させることを特徴とする、(R,P)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンの光学活性な有機スルホン酸塩の製造方法。
【請求項5】
光学活性な有機スルホン酸の使用量が、混合物1モルに対して0.5〜5モルである、請求項4記載の製造方法。
【請求項6】
光学活性な有機スルホン酸の使用量が、混合物1モルに対して0.8〜2モルである、請求項4記載の製造方法。
【請求項7】
光学活性な有機スルホン酸が、(S)−カンファースルホン酸である、請求項4記載の製造方法。
【請求項8】
混合物の溶液が、エーテル溶液またはケトン溶液である、請求項4記載の製造方法。
【請求項9】
(R,P)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンと(R,M)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンの混合物の親水性有機溶媒の溶液と、水とを混合して晶析させることを特徴とする、(R,M)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンの製造方法。
【請求項10】
親水性有機溶媒中、遷移金属錯体と3級アミンの存在下、トリフルオロメタンスルホン酸 (R)−1−[4−(1−フェニルエチルアミノ)フタラジン−1−イル]ナフタレン−2−イル エステルをジフェニルホスフィンと反応させ、得られた反応溶液と水とを混合して晶析させることを特徴とする、(R,M)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンの製造方法。
【請求項11】
水の使用量が、親水性有機溶媒1重量部に対して0.1〜0.5重量部である、請求項9または10記載の製造方法。
【請求項12】
水の使用量が、親水性有機溶媒1重量部に対して0.2〜0.4重量部である、請求項9または10記載の製造方法。
【請求項13】
親水性有機溶媒が、親水性非プロトン性極性溶媒から選ばれる、請求項9または10記載の製造方法。
【請求項14】
親水性有機溶媒が、N,N−ジメチルホルムアミドである、請求項9または10記載の製造方法。
【請求項15】
遷移金属錯体が、ホスフィン類を含む2価ニッケル錯体である、請求項10記載の製造方法。
【請求項16】
遷移金属錯体が、NiCl2(dppe)である、請求項10記載の製造方法。
【請求項17】
3級アミンが1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンである、請求項10記載の製造方法。
【請求項18】
光学活性な[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンが、(S,M)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンである、請求項1記載の塩。
【請求項19】
光学活性な有機スルホン酸が、(R)−カンファースルホン酸である、請求項18記載の塩。
【請求項20】
(S,M)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンと(S,P)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンの混合物の溶液と、光学活性な有機スルホン酸とを混合して晶析させることを特徴とする、(S,M)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンの光学活性な有機スルホン酸塩の製造方法。
【請求項21】
光学活性な有機スルホン酸の使用量が、混合物1モルに対して0.5〜5モルである、請求項20記載の製造方法。
【請求項22】
光学活性な有機スルホン酸の使用量が、混合物1モルに対して0.8〜2モルである、請求項20記載の製造方法。
【請求項23】
光学活性な有機スルホン酸が、(R)−カンファースルホン酸である、請求項20記載の製造方法。
【請求項24】
混合物の溶液が、エーテル溶液またはケトン溶液である、請求項20記載の製造方法。
【請求項25】
(S,M)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンと(S,P)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンの混合物の親水性有機溶媒の溶液と、水とを混合して晶析させることを特徴とする、(S,P)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンの製造方法。
【請求項26】
親水性有機溶媒中、遷移金属錯体と3級アミンの存在下、トリフルオロメタンスルホン酸 (S)−1−[4−(1−フェニルエチルアミノ)フタラジン−1−イル]ナフタレン−2−イル エステルをジフェニルホスフィンと反応させ、得られた反応溶液と水とを混合して晶析させることを特徴とする、(S,P)−[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンの製造方法。
【請求項27】
水の使用量が、親水性有機溶媒1重量部に対して0.1〜0.5重量部である、請求項25または26記載の製造方法。
【請求項28】
水の使用量が、親水性有機溶媒1重量部に対して0.2〜0.4重量部である、請求項25または26記載の製造方法。
【請求項29】
親水性有機溶媒が、親水性非プロトン性極性溶媒から選ばれる、請求項25または26記載の製造方法。
【請求項30】
親水性有機溶媒が、N,N−ジメチルホルムアミドである、請求項25または26記載の製造方法。
【請求項31】
遷移金属錯体が、ホスフィン類を含む2価ニッケル錯体である、請求項26記載の製造方法。
【請求項32】
遷移金属錯体が、NiCl2(dppe)である、請求項26記載の製造方法。
【請求項33】
3級アミンが1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンである、請求項26記載の製造方法。
【請求項34】
光学活性な[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンの光学活性な有機スルホン酸塩と塩基とを反応させることを特徴とする、光学活性な[4−(2−ジフェニルホスファニルナフタレン−1−イル)フタラジン−1−イル]−(1−フェニルエチル)アミンの製造方法。
【公開番号】特開2009−191063(P2009−191063A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−5902(P2009−5902)
【出願日】平成21年1月14日(2009.1.14)
【出願人】(502079801)
【氏名又は名称原語表記】ERICK M. CARREIRA
【住所又は居所原語表記】LABORATORY OF ORGANIC CHEMISTRY ETH HOENGGERBERG, ZUERICH, SWITZERLAND
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月14日(2009.1.14)
【出願人】(502079801)
【氏名又は名称原語表記】ERICK M. CARREIRA
【住所又は居所原語表記】LABORATORY OF ORGANIC CHEMISTRY ETH HOENGGERBERG, ZUERICH, SWITZERLAND
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]