説明

化学物質濃縮方法

ネブライザガスおよび一次イオン発生用ガスを用いることなく、静電噴霧により、簡便かつ効率的に、試料気体中の化学物質を濃縮することを目的とする。
本発明の化学物質濃縮方法で使用する静電噴霧装置は、容器と、注入口と、冷却部と、霧化電極部と、対向電極部化学物質回収部とを備える。そして、本発明の化学物質濃縮方法は、前記試料気体を注入する工程と、前記試料気体を第1凝縮液にする工程と、前記第1凝縮液を第1帯電微粒子にする工程と、前記第1帯電微粒子と前記試料気体を混合して第2帯電微粒子にする工程と、前記第1帯電微粒子と前記第2帯電微粒子を回収する工程を包含する。以上の一連の操作により簡便かつ効率的に試料気体中の化学物質を濃縮できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料気体中に含まれる種々の化学物質を効率的に濃縮する化学物質濃縮方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大気圧イオン化法(API ; Atmospheric pressure ionization)の登場により超微量分析が可能になった。大気圧イオン化法には主に2種類ある。
【0003】
一つはエレクトロスプレー法(ESI; Electrosprayionization)である。エレクトロスプレー法では、まず数kVの高電圧を印加したキャピラリへ試料溶液を導入する。そしてキャピラリの外側にネブライザガスを流すことにより、キャピラリ先端から試料溶液を噴霧する。このとき試料溶液は多数の帯電液滴になる。噴霧された帯電液滴は、溶媒蒸発と分裂を繰り返す。その結果として試料イオンが気相中に放出され、多くの場合ではその試料イオンを質量分析する。
【0004】
もう一つは大気圧化学イオン化法(APCI; Atmospheric pressure chemical ionization)である。大気圧化学イオン化法では、まずヒータ中でネブライザガスにより試料溶液を噴霧する。そして溶媒と試料分子を気化する。次に試料分子はコロナ放電によりイオン化され、反応イオンとなる。この反応イオンと試料分子の間でプロトン授受が起こり、試料分子はプロトン付加あるいはプロトン脱離を起こしイオンとなる。
【0005】
例えば、大気圧イオン化法を用いた質量分析装置として、質量分析装置(APIMS)がある(特許文献1)。図19は特許文献1に開示されている大気圧イオン化質量分析装置を表す。
【0006】
イオン発生部15に一次イオン発生用Arガス1が導入され、針電極19でイオン化されてNOを含まない一次イオンが生成される。一次イオンは一次イオン発生用ガスと共に混合部30に導入され、試料ガス2である乾燥空気と混合される。混合部30で乾燥空気は一次イオンによるイオン−分子反応でイオン化される。イオン化された試料ガス2は質量分析部11に導入され分析される。APIMS10により、大気や呼気に含まれるNOを分析する。
【0007】
従来の大気圧イオン化法は、ネブライザガスや一次イオン発生用ガスを必要とする。そのため、大気圧イオン化装置が大型になり、かつ操作が煩雑であった。そこで、大気圧イオン化装置を小型にし、かつ操作を簡便にするため、ネブライザガスや一次イオン発生用ガスを用いずに、試料分子を大気圧でイオン化する方法が考案された(特許文献2、特許文献3)。
【0008】
ネブライザガスおよび一次イオン発生用ガスを用いない大気圧イオン化装置が、特許文献2において開示されている。この装置は、不揮発性の希薄生体分子溶液を静電噴霧することにより、ミスト中の溶媒を気化するものである。特許文献2では、静電噴霧法により基板上へ生体分子を堆積することで、希薄生体分子溶液の微量濃縮の手段として、この方法を利用できることが開示されている。
【0009】
さらに、ネブライザガスおよび一次イオン発生用ガスを用いない大気圧イオン化装置が、特許文献3において開示されている。放電極と、放電極に対向して位置する対向電極と、放電極に水を供給する供給手段とを備え、放電極と対向電極との間に高電圧を印加することで放電極に保持される水を霧化させる静電霧化装置において、水供給手段を、空気中の水分を基に放電極部分において水を生成させる水生成手段としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平11−273615公報(第8頁、図1)
【特許文献2】特表2002−511792公報(第78頁、図9)
【特許文献3】特開2005−296753公報(第10頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献2および特許文献3に記載の従来装置はいずれも、ネブライザガスおよび一次イオン発生用ガスを用いない大気圧イオン化装置としては優れている。しかし、試料気体中の化学物質の濃縮に従来装置を適用した場合、化学物質によっては十分な濃縮効率が得られないことがあった。特に、揮発性の化学物質において、その現象が顕著であった。
【0012】
本発明は、上記従来技術の課題を解決し、ネブライザガスおよび一次イオン発生用ガスを用いることなく、静電噴霧により、簡便かつ効率的に、試料気体中の化学物質を濃縮する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記従来の課題を解決する本発明は、静電噴霧装置を用いた化学物質濃縮方法であって、前記静電噴霧装置は、容器と、前記容器に連通する試料気体の注入口と、前記容器の一端に設けられた冷却部と、前記冷却部の一端に設けられた霧化電極部と、前記容器の内部に設けられた対向電極部と、前記容器の他端に設けられた化学物質回収部と、前記容器に連通するドーパントの供給口とを備え、前記試料気体は水蒸気と化学物質を含み、前記水蒸気の露点温度以下において、前記化学物質は前記水蒸気とともに凝縮液を形成する物質であって、前記ドーパントは前記凝縮液へ溶解する物質であって、前記ドーパントの電気親和力は水の電子親和力よりも大きく、前記方法は、前記注入口から前記試料気体を前記容器へ注入する注入工程と、前記冷却部により前記霧化電極部を冷却して、前記霧化電極部の外周面において前記試料気体を第1凝縮液にする第1凝縮液生成工程と、前記供給口から前記ドーパントを前記容器へ供給する供給工程と、前記ドーパントを前記霧化電極部の外周面において冷却するドーパント冷却工程と、前記第1凝縮液へ前記ドーパントを溶解する溶解工程と、前記第1凝縮液を帯電微粒子にする帯電微粒子化工程と、前記帯電微粒子を前記化学物質回収部へ回収する回収工程とを包含する。
【0014】
本発明において、前記ドーパントは極性有機化合物であることが好ましい。
【0015】
本発明において、前記ドーパントは有機酸であることが好ましい。
【0016】
本発明において、前記ドーパントは酢酸であることが好ましい。
【0017】
本発明において、前記ドーパントは酸素であることが好ましい。
【0018】
本発明において、前記第1凝縮液中の前記ドーパントの濃度は、前記第1凝縮液中の前記化学物質の濃度よりも高いことが好ましい。
【0019】
本発明において、前記容器には試料気体が衝突する位置に障壁を設けることが好ましい。
【0020】
本発明において、前記試料気体は極性有機溶媒を含むことが好ましい。
【0021】
本発明において、前記化学物質は極性有機化合物であることが好ましい。
【0022】
本発明において、前記化学物質は揮発性有機化合物であることが好ましい。
【0023】
本発明において、前記帯電微粒子を赤外光により加熱することが好ましい。
【0024】
本発明において、前記容器は光導波路を備えることが好ましい。
【0025】
本発明において、前記静電噴霧装置に化学物質検出部を設けることが好ましい。
【0026】
本発明の上記目的、他の目的、特徴および利点は、添付図面参照の下、以下の好適な実施態様の詳細な説明から明らかにされる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の化学物質濃縮方法によれば、従来の大気圧イオン化法において必要不可欠であったネブライザガスおよび一次イオン発生用ガスが不要になる。なぜなら、冷却した霧化電極部の外周面上に試料気体を凝縮させ、その凝縮液を静電噴霧するからである。なぜなら、噴霧された帯電微粒子を一次イオンとして、一次イオンと試料気体を混合することにより、試料気体を二次イオン化するからである。
【0028】
また、一次イオンと二次イオンの両方を化学物質回収部へ回収するので、効率的に化学物質を濃縮できる。さらに、試料気体へドーパントを混合するので、帯電微粒子の生成が促進される。その結果として効率的に化学物質を濃縮できる。したがって、本発明の化学物質濃縮方法によれば、簡便かつ効率的に、静電噴霧装置を用いて化学物質を濃縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、実施の形態1の静電噴霧装置の模式図である。
【図2】図2(a)は、実施の形態1の静電噴霧装置における注入工程を示す説明図であり、図2(b)は、実施の形態1の静電噴霧装置における第1凝縮液生成工程を示す説明図である。
【図3】図3(a)は、実施の形態1の静電噴霧装置における供給工程を示す説明図であり、図3(b)は、実施の形態1の静電噴霧装置におけるドーパント冷却工程を示す説明図である。
【図4】図4(a)は、実施の形態1の静電噴霧装置における溶解工程を示す説明図であり、図4(b)は、実施の形態1の静電噴霧装置における帯電微粒子化工程を示す説明図である。
【図5】図5は、実施の形態1の静電噴霧装置における回収工程を示す説明図である。
【図6】図6は、実施の形態2の静電噴霧装置の模式図である。
【図7】図7(a)は、実施の形態2の静電噴霧装置における注入工程を示す説明図であり、図7(b)は、実施の形態2の静電噴霧装置における第1凝縮液生成工程を示す説明図である。
【図8】図8(a)は、実施の形態2の静電噴霧装置における供給工程を示す説明図であり、図8(b)は、実施の形態2の静電噴霧装置におけるドーパント冷却工程を示す説明図である。
【図9】図9(a)は、実施の形態2の静電噴霧装置における溶解工程を示す説明図であり、図9(b)は、実施の形態2の静電噴霧装置における第1帯電微粒子化工程を示す説明図である。
【図10】図10(a)は、実施の形態2の静電噴霧装置における第2帯電微粒子化工程を示す説明図であり、図10(b)は、実施の形態2の静電噴霧装置における回収工程を示す説明図である。
【図11】図11は、実施の形態3の静電噴霧装置の模式図である。
【図12】図12は、実施の形態4の静電噴霧装置の模式図である。
【図13】図13は、実施例1において霧化電極部の外周面に第1凝縮液が形成された様子を撮影したマイクロスコープ写真である。
【図14】図14(a)は、実施例1において霧化電極部の先端に形成されたテーラーコーンを撮影したマイクロスコープ写真であり、図14(b)は、図14(a)のマイクロスコープ写真をトレースして模式化した図である。
【図15】図15は、実施例1において化学物質回収部の外周面を撮影したマイクロスコープ写真である。
【図16】図16は、実施例1の回収液の分析結果を示す図である。
【図17】図17は、図16の一部を拡大した図である。
【図18】図18は、実施例2の回収液の分析結果を示す図である。
【図19】図19は、従来の大気圧イオン化質量分析装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下本発明の実施の形態について、適宜図面を参照しながら説明する。
【0031】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1の静電噴霧装置の模式図である。
【0032】
なお、本実施の形態において試料気体の静電噴霧方法は、本願と同一の発明者によって出願された特願2008−024667および特願2007−279875に記載の方法とほぼ同様に行なう。
【0033】
特願2008−024667および特願2007−279875に記載の方法と最も異なる点は、凝縮液へドーパントを加えることである。
【0034】
ドーパントは凝縮液の帯電微粒子化を促進するために加えられる。ドーパントを加えることにより試料気体を効率的に濃縮できる。ドーパントの電子親和力は、水の電子親和力よりも大きい。なおここで言う電子親和力とは中性原子あるいは中性分子へ電子を加えた時に放出されるエネルギーである。したがってドーパントは水よりも電子を得やすい。その結果、ドーパントを含む凝縮液は容易に帯電微粒子化される。
【0035】
以下に、凝縮液へドーパントを加える機構を有する静電噴霧装置100の説明をする。なお、静電噴霧装置100の詳細は、特願2008−024667および特願2007−279875に記載されている。
【0036】
容器101は隔壁によって外部と仕切られる。隔壁を通じて外部との物質の出入りは行なわれない。容器101の形状は直方体でも良いし、多面体、紡錘形、球形、流路状でも良い。容器101の一部に試料気体が滞留しないことが好ましい。容器101の容積は、10pL以上100mL以下が好ましい。容器101の容積は、1mL以上30mL以下がより好ましい。
【0037】
容器101の材料は吸着ガスや内蔵ガスの少ないものが望ましい。容器101の材料は金属であることが最も好ましい。金属はステンレスであることが好ましいが、アルミ、真ちゅう、黄銅などでも良い。
【0038】
容器101の材料は無機材料でもよい。容器101の材料は、ガラス、シリコン、アルミナ、サファイア、石英ガラス、ホウ珪酸ガラス、窒化シリコン、アルミナ、シリコンカーバイドなどでも良い。容器101の材料は、シリコン基板に二酸化シリコンまたは窒化シリコンまたは酸化タンタルを被覆したものでも良い。
【0039】
容器101の材料は有機材料でも良い。容器101の材料は、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリカーボネート、フッ素樹脂、ポリジメチルシロキサン、PEEK(登録商標)、テフロン(登録商標)などでも良い。容器101の材料に有機材料を用いる場合、容器101の外周面には金属薄膜をコーティングすることがより好ましい。金属薄膜はガスバリア性に優れる材料が好ましい。
【0040】
容器101の材料は、上記材料のうちの1種類でも良いし、複数の種類を組み合わせても良い。
【0041】
容器101は堅固であることが好ましいが、エアーバック、バルーン、フレキシブルチューブ、シリンジなどのように柔軟であっても良い。
【0042】
注入口102は容器101に連通するように設けられている。注入口102は容器101へ試料気体を注入するために用いられる。注入口102は、速やかに容器101へ試料気体を注入できる位置、または均一に容器101へ試料気体を注入できる位置に設けることが好ましい。
【0043】
注入口102は、均一に容器101へ試料気体を注入できる形状であることが好ましい。注入口102は、エアーシャワーのような多数の孔を備えていても良い。なお本発明では、注入口102の寸法、材料は限定されない。注入口102の形状は、図1に示すように直管状であっても良いし、途中に分岐を設けても良い。また、注入口102は一箇所であっても良いし、複数箇所でも良い。
【0044】
排出口103は、容器101の他端に設けられている。排出口103は、容器101を満たした試料気体のうち、余剰な試料気体を排出するために用いられる。排出口103は、容器101を満たした試料気体を、速やかに排出する位置に設けることが好ましい。なお本発明では、排出口103の形状、寸法、材料は限定されない。排出口103の形状は、図1に示すように直管状であっても良いし、途中に分岐を設けても良い。また、排出口103は一箇所であっても良いし、複数箇所でも良い。
【0045】
冷却部104は容器101の一端に設けられている。冷却部104により、水蒸気の露点温度以下まで試料気体を冷却できる。冷却部104は熱電素子であることが最も好ましいが、冷媒を使ったヒートパイプでも良いし、空気熱交換素子でも良いし、冷却ファンでも良い。電極を冷却できれば良いので、冷却部104の面積は小さいことが好ましい。また、消費電力を削減する観点からも、冷却部104の面積は小さいことが好ましい。
【0046】
電極を効率的に冷却するために、冷却部104の表面に凹凸構造を設けることが好ましい。冷却部104の表面に多孔体を設けても良い。冷却部104の位置は、容器101の底部であることが最も好ましいが、側部や天井部でも良いし、これらを組み合わせて複数の冷却部104を設けても良い。
【0047】
熱伝導を抑制するために、冷却部104と容器101の接触面積は小さいことが好ましく、具体的には100μm以上5mm以下であることが好ましい。
【0048】
霧化電極部105は、冷却部104の一端に設けられている。霧化電極部105は冷却部104によって水蒸気の露点温度以下に冷却される。霧化電極部105は冷却部104と直に接触することが好ましいが、熱伝導率の大きい材料を介して接触しても良い。熱伝導率の大きい材料は、熱伝導性シート、熱伝導性樹脂、金属板、グリース、金属ペーストなどが好ましい。
【0049】
霧化電極部105は、容器101の底面にあることが最も好ましいが、容器101の側面、天井または底面中央部にあっても良い。また、霧化電極部105は容器101の側面から10mm以上離れていても良い。霧化電極部105の先端は上方を向いていることが好ましい。
【0050】
霧化電極部105の形状は針状であることが好ましい。針の長さは3mm以上10mm以下であることが好ましい。霧化電極部105は中実でも良いし、中空でも良いし、多孔質でも良い。霧化電極部105の表面に凹凸構造または溝構造を設けても良い。霧化電極部105の先端に球状の突起物を設けても良い。霧化電極部105の全体は、水蒸気の露点温度以下に冷却されることが好ましい。
【0051】
霧化電極部105の材料は良熱伝導材料であることが好ましく、金属であることが最も好ましい。金属は、銅、アルミ、ニッケル、タングステン、モリブデン、チタン、タンタルなどの単体金属であっても良く、単体金属を二種類以上組み合わせた合金や金属間化合物、例えば、ステンレス、銅タングステン、黄銅、真鍮、ハイス、超硬などでも良い。
【0052】
霧化電極部105の材料は無機材料であっても良く、半導体、炭素材料であっても良い。例えば、LaB、SiC、WC、シリコン、ガリウムヒ素、窒化ガリウム、SiC、カーボンナノチューブ、グラフェン、グラファイトなどを使用しうる。霧化電極部105の材料は、上記材料のうちの一種類でも良いし、複数の種類を組み合わせても良い。
【0053】
霧化電極部105の磨耗を抑制するために、霧化電極部105の表面を被覆することが好ましい。霧化電極部105の表面と凝縮液の間で電子の授受を容易にするために、霧化電極部105の表面を被覆することが好ましい。霧化電極部105を被覆する材料は、金属、半導体、無機材料などが好ましい。霧化電極部105を被覆する材料としては、金、白金、アルミ、ニッケル、クロム、半導体、炭素材料、LaB、SiC、WC、シリコン、ガリウムヒ素、窒化ガリウム、SiC、カーボンナノチューブ、グラフェン、グラファイトなどを使用しうる。霧化電極部105を被覆する材料は、上記材料の単層でも良いし、複数の種類を積層しても良い。
【0054】
霧化電極部105は1つでも良いし、複数あっても良い。霧化電極部105を複数個設ける場合には、直線状などのように一次元的に配列しても良いし、円周状、放物線状、楕円周状、正方格子状、斜方格子状、最密充填格子状、放射状、ランダム状などのように二次元的に配列しても良いし、球面状、放物曲面状、楕円曲面状などのように三次元的に配列しても良い。
【0055】
霧化電極部105の表面は、親水性であることが好ましいが、撥水性であっても良い。
【0056】
対向電極部106は、容器101の内部に設けられる。対向電極部106と霧化電極部105の間に高電圧が印加され、凝縮液が噴霧される。対向電極部106の形状は円環状が最も好ましい。対向電極部106が円環状の場合、対向電極部106の外径は、10mm以上30mm以下、対向電極部106の内径は、1mm以上9.8mm以下、対向電極部106の厚みは0.1mm以上5mm以下であることが好ましい。対向電極部106の形状は、長方形、台形など多角形でも良い。
【0057】
対向電極部106の形状は、平面であることが好ましいが、半球面またはドーム状であっても良い。対向電極部106には、化学物質が通過するスリットや貫通孔が形成されることが好ましい。なお本発明では、対向電極部106の形状は上記に限定されない。
【0058】
対向電極部106と霧化電極部105の距離は、3mm以上10mm以下が好ましい。対向電極部106は容器101に対して可動であっても良い。対向電極部106が円環状の場合、対向電極部106の中心を通り、かつ対向電極部106の平面と垂直に交わる直線上に霧化電極部105を設けることが好ましい。
【0059】
対向電極部106は容器101と電気的に絶縁されていることが好ましい。
【0060】
対向電極部106の材料は導体であることが好ましく、金属であることが最も好ましい。金属は、銅、アルミ、ニッケル、タングステン、モリブデン、チタン、タンタルなどの単体金属であることが好ましいが、単体金属を二種類以上組み合わせた合金や金属間化合物、例えば、ステンレス、銅タングステン、黄銅、真鍮、ハイス、超硬などでも良い。
【0061】
対向電極部106の材料は無機材料であっても良く、半導体、炭素材料、絶縁体であっても良い。例えば、LaB、SiC、WC、シリコン、ガリウムヒ素、窒化ガリウム、SiC、カーボンナノチューブ、グラフェン、グラファイト、アルミナ、サファイア、酸化シリコン、セラミックス、ガラス、ポリマーなどを使用しうる。対向電極部106の材料は、上記材料のうちの一種類でも良いし、複数の種類を組み合わせても良い。
【0062】
対向電極部106の材料は、良熱伝導体であることが好ましい。対向電極部106の表面に不要な凝縮液が付着しないように、対向電極部106を加熱することが好ましい。対向電極部106は、水蒸気の露点温度以上に加熱することが好ましい。
【0063】
対向電極部106の磨耗を抑制するために、対向電極部106の表面を被覆することが好ましい。対向電極部106を被覆する材料は、金属、半導体、無機材料などが好ましい。対向電極部106を被覆する材料としては、金、白金、アルミ、ニッケル、クロム、LaB、SiC、WC、シリコン、ガリウムヒ素、窒化ガリウム、カーボンナノチューブ、グラフェン、グラファイトなどを使用しうる。対向電極部106を被覆する材料は、上記材料の単層でも良いし、複数の種類を積層しても良い。
【0064】
対向電極部106の表面は、親水性であることが好ましいが、撥水性であっても良い。
【0065】
対向電極部106は1つでも良いし、複数あっても良い。対向電極部106を複数個設ける場合には、直線状などのように一次元的に配列しても良いし、円周状、放物線状、楕円周状、正方格子状、斜方格子状、最密充填格子状、放射状、ランダム状などのように二次元的に配列しても良いし、球面状、放物曲面状、楕円曲面状などのように三次元的に配列しても良い。
【0066】
化学物質回収部107は、容器101の他端に設けられている。化学物質回収部107は静電噴霧された化学物質を回収するために用いられる。化学物質回収部107は第2冷却部108によって水蒸気の露点温度以下に冷却されることが好ましい。化学物質回収部107は第2冷却部108と直に接触することが好ましいが、熱伝導率の大きい材料を介して接触しても良い。熱伝導率の大きい材料は、熱伝導性シート、熱伝導性樹脂、金属板、グリース、金属ペーストなどが好ましい。
【0067】
化学物質回収部107は、容器101の天井にあることが最も好ましいが、容器101の側面、底面または天井中央部にあっても良い。また、化学物質回収部107は容器101の側面から10mm以上離れていても良い。化学物質回収部107の先端は下を向いていることが好ましい。
【0068】
化学物質回収部107の形状は針状であることが好ましい。針の長さは3mm以上10mm以下であることが好ましい。化学物質回収部107の形状は中実でも良いし、中空でも良いし、多孔質でも良い。化学物質回収部107の表面に凹凸構造または溝構造を設けても良い。化学物質回収部107の先端に球状の突起物を設けても良い。化学物質回収部107の全体は、水蒸気の露点温度以下に冷却されることが好ましい。
【0069】
化学物質回収部107の材料は良熱伝導材料であることが好ましく、金属であることが最も好ましい。金属は、銅、アルミ、ニッケル、タングステン、モリブデン、チタン、タンタルなどの単体金属であることが好ましいが、単体金属を二種類以上組み合わせた合金や金属間化合物であっても良い。例えば、ステンレス、銅タングステン、黄銅、真鍮、ハイス、超硬などでも良い。
【0070】
化学物質回収部107の材料は無機材料であっても良く、半導体、炭素材料であってもよい。例えば、LaB、SiC、WC、シリコン、ガリウムヒ素、窒化ガリウム、SiC、カーボンナノチューブ、グラフェン、グラファイトなどを使用しうる。化学物質回収部107の材料は、上記材料のうちの一種類でも良いし、複数の種類を組み合わせても良い。
【0071】
化学物質回収部107の磨耗を抑制するために、化学物質回収部107の表面を被覆することが好ましい。化学物質回収部107の表面と凝縮液の間で電子の授受を容易にするために、化学物質回収部107の表面を被覆することが好ましい。化学物質回収部107を被覆する材料は、金属、半導体、無機材料、炭素材料などが好ましい。化学物質回収部107を被覆する材料としては、金、白金、アルミ、ニッケル、クロム、LaB、SiC、WC、シリコン、ガリウムヒ素、窒化ガリウム、カーボンナノチューブ、グラフェン、グラファイトなどを使用しうる。化学物質回収部107を被覆する材料は、上記材料の単層でも良いし、複数の種類を積層しても良い。
【0072】
化学物質回収部107は1つでも良いし、複数あっても良い。化学物質回収部107を複数個設ける場合には、直線状などのように一次元的に配列しても良いし、円周状、放物線状、楕円周状、正方格子状、斜方格子状、最密充填格子状、放射状、ランダム状などのように二次元的に配列しても良い。また、球面状、放物曲面状、楕円曲面状などのように三次元的に配列しても良い。
【0073】
化学物質回収部107の表面は、親水性であることが好ましいが、撥水性であっても良い。
【0074】
第2冷却部108は、化学物質回収部107の一端に設けられることが好ましい。第2冷却部108により、試料気体に含まれる水蒸気の露点温度以下まで冷却できる。第2冷却部108は熱電素子であることが最も好ましいが、冷媒を使ったヒートパイプ、空気熱交換素子または冷却ファンであっても良い。電極を冷却できれば良いので、第2冷却部108の面積は小さいことが好ましい。消費電力を削減する観点からも、第2冷却部108の面積は小さいことが好ましい。
【0075】
電極を効率的に冷却するために、第2冷却部108の表面に凹凸構造または多孔体を設けても良い。第2冷却部108の位置は、容器101の天井部であることが最も好ましいが、側部や底部でも良いし、これらを組み合わせて複数の第2冷却部108を設けても良い。
【0076】
熱伝導を抑制するために、第2冷却部108と容器101の接触面積は小さいことが好ましく、具体的には、100μm以上5mm以下であることが好ましい。
【0077】
容器101にはドーパントの供給口109が設けられている。図1では、供給口109は注入口102に連通するように設けられている。供給口109は、速やかに試料気体へドーパントを混合できる位置、または均一に試料気体へドーパントを混合できる位置に、設けることが好ましい。
【0078】
本発明では、供給口109の寸法、材料は限定されないが、供給口109は、均一に試料気体へドーパントを注入できる形状であることが好ましい。供給口109は、エアーシャワーのような多数の孔を備えていても良い。供給口109の形状は、図1に示すように直管状であっても良いし、途中に分岐を設けても良い。供給口109は一箇所であっても良いし、複数箇所でも良い。
【0079】
供給口109にはバルブ110が設けられている。バルブ110はドーパントの注入量、注入速度などを制御するために用いられる。バルブ110はゲートバルブ、ボールバルブ、チャッキバルブ、ストップバルブ、ダイアフラムバルブ、ニードルバルブなどでも良い。
【0080】
供給口109にはミキサー111が設けられている。ミキサー111はドーパントを試料気体へ混合するために用いられる。ミキサー111はステータチューブミキサー、スパイラルミキサー、ディフューザなどのスタティックミキサーでも良く、回転式ミキサー、高周波式ミキサーなどのアクティブミキサーでも良い。
【0081】
本発明では、バルブ112aおよび112bの材料、位置、種類は限定されないが、注入口102および排出口103には、バルブ112aおよびバルブ112bがそれぞれ設けられていることが好ましい。バルブ112aおよび112bにより容器101を閉鎖可能にすることが好ましい。注入口102および排出口103のコンダクタンスが小さければ容器101は閉鎖しているのとほぼ同様の効果が得られるので、その場合にはバルブ112aおよび112bを用いなくても良い。
【0082】
バルブ112aおよびバルブ112bは、試料気体の流れを制御するバルブであっても良い。バルブ112aおよびバルブ112bは逆止弁でも良く、ストップバルブでも良い。
【0083】
図2〜図5は、本発明の実施の形態1における静電噴霧装置の動作を示す説明図である。図2〜図5において、図1と同じ構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。
【0084】
<注入工程>
注入工程では、水蒸気201と化学物質202を含む試料気体203が、注入口103を通じて、容器101へ注入される。図2(a)は注入工程を表す。図2(a)では化学物質202を化学物質202a、202bの2種類のみ記載したが、1種類でも良いし、3種類以上でも良い。試料気体203の相対湿度は50%以上100%以下が好ましく、80%以上100%以下がより好ましい。注入工程では、試料気体203へ水蒸気201を新たに追加しても良い。なお本発明では、化学物質202の種類、濃度は限定されないが、試料気体203は、アセトニトリル、イソプロパノール、ギ酸、酢酸などの極性有機溶媒を含むことが好ましい。
【0085】
試料気体203を容器101の内壁、対向電極部106または化学物質回収部107へ衝突させても良い。
【0086】
容器101へ試料気体203を大流量で注入することが好ましい。試料気体203の注入速度は、10sccm以上1000sccm以下が好ましく、100sccm以上500sccm以下がより好ましい。試料気体203の注入速度は、一定であることが好ましいが、注入速度が変化しても良い。なお、ここでいうsccmとはstandard cc/minを意味する。
【0087】
容器101へ10mL以上3000mL以下の試料気体203を注入することが好ましく、100mL以上1000mL以下の試料気体203を注入することがより好ましい。
【0088】
容器101へ室温の試料気体203を注入しても良く、加温した試料気体203を注入しても良い。試料気体203の温度は、20℃以上100℃以下が好ましく、25℃以上40℃以下がより好ましい。
【0089】
注入口102側を加圧することにより、試料気体203を注入しても良く、排出口103側を減圧することにより、試料気体203を注入しても良い。
【0090】
バルブ112aとバルブ112bを開けることが好ましいが、バルブ112aとバルブ112bを適宜開閉することにより、試料気体203の流入量を調整しても良い。
【0091】
試料気体203を容器101へ注入する前に、容器101の内部を清浄な空気、乾燥窒素、不活性ガス、試料気体203と同程度の相対湿度を有する標準ガスまたは較正用ガスで満たすことが好ましい。
【0092】
余剰な試料気体203は排出口103から排出されることが好ましい。
【0093】
容器101の内部の圧力は大気圧であることが最も好ましいが、容器101を減圧しても良いし、加圧してもよい。本発明では、容器101内の圧力は限定されない。
【0094】
注入工程以降の工程では、試料気体203が結露しないように、容器101および注入口102、排出口103、対向電極部106の温度を水蒸気の露点温度以上に保持することが好ましい。
【0095】
<第1凝縮液生成工程>
次に、第1凝縮液生成工程では、冷却部104により霧化電極部105が水蒸気201の露点温度以下に冷却される。霧化電極部105の外周面において、水蒸気201と化学物質202を含む第1凝縮液204が形成される。図2(b)は第1凝縮液生成工程を表す。第1凝縮液生成工程の初期段階では、霧化電極部105の外周面において、第1凝縮液204が液滴状になる。第1凝縮液生成工程の進行段階では、霧化電極部105の外周面が第1凝縮液204により覆われる。
【0096】
第1凝縮液204の量が過剰にならないよう、冷却部104の温度を制御することが好ましい。霧化電極部105の温度は第1凝縮液204の凝固点以上であることが好ましい。
【0097】
霧化電極部105の温度は0℃以上20℃以下が好ましく、0℃以上15℃以下がより好ましい。
【0098】
試料気体203を継続して注入することが好ましいが、試料気体203の注入を停止しても良い。
【0099】
<供給工程>
供給工程では、ドーパント205を容器101へ供給する。図3(a)は供給工程を表す。ドーパント205は供給口109を通じて容器101へ供給する。ドーパント205は注入口102を通じて容器101へ供給する。
【0100】
ドーパント205は第1凝縮液204へ溶解する物質である。ドーパント205の電子親和力は水の電子親和力よりも大きい。
【0101】
ドーパント205は有機化合物であることが好ましく、極性有機化合物、水溶性有機化合物または生体分子である有機化合物であることがより好ましい。
【0102】
ドーパント205は有機酸であることが好ましい。ドーパント205は酢酸であることがより好ましいが、ギ酸、クエン酸、シュウ酸などであっても良い。
【0103】
ドーパント205は低級アルコールであることが好ましいが、高級アルコールでも良い。低級アルコールとしては、エタノールが最も好ましいが、メタノール、2−プロパノール、ブタノールなどであっても良い。
【0104】
ドーパント205は脂肪族炭化水素であっても良く、芳香族炭化水素であっても良い。ドーパント205としては、アセトン、アセトアルデヒド、クロロホルム、四塩化炭素、ブタジエン、テトラシアノエチレン、ホルムアルデヒド、アズレン、アセトフェノン、アニソール、アニリン、9,10−アントラキノン、o−キシレン、クロロベンゼン、1,2,3,5−テトラメチルベンゼン、トリフェニレン、トルエン、ナフタレン、ビフェニル、ピレン、フェノール、フルオロベンゼン、ヘキサメチルベンゼン、ベンゼン、ベンゾキノン、ペンタセン、無水フタル酸などを使用しうる。
【0105】
ドーパント205は、エステル類、ケトン類、セスキテルペン類、テルペン類、芳香族アルデヒド類、モノテルペン類、ラクトン類などの芳香分子であっても良い。ドーパント205としては、サリチル酸メチル、メントール、スクラレオールが好ましいが、酢酸リナリル、リモネン、リナロールなども使用しうる。
【0106】
ドーパント205は揮発性有機化合物であってもよく、その分子量は16以上300以下が好ましい。
【0107】
ドーパント205は酸素、二酸化窒素、一酸化窒素または二酸化炭素であっても良い。
【0108】
試料気体203におけるドーパント205の濃度は、0.03%以上3%以下が好ましく、0.3%以上1%以下がより好ましい。
【0109】
ドーパント205の温度は、20℃以上100℃以下が好ましく、25℃以上40℃以下がより好ましい。ドーパント205の温度は試料気体203の温度と同じであることが最も好ましいが、試料気体203の温度よりも低くても良く、高くても良い。
【0110】
ドーパント205の供給速度は、0.01sccm以上1000sccm以下が好ましく、0.1sccm以上5sccm以下がより好ましい。ドーパント205の注入速度は、一定であることが好ましいが、注入速度が変化しても良い。
【0111】
<ドーパント冷却工程>
ドーパント冷却工程では、ドーパント205を霧化電極部105の外周面において冷却する。図3(b)はドーパント冷却工程を表す。ドーパント205は霧化電極部105により冷却することが好ましいが、冷却器により冷却しても良い。ドーパント205の温度は0℃以上20℃以下が好ましく、温度は0℃以上15℃以下がより好ましい。ドーパント205は試料気体203と同時に冷却することが好ましい。
【0112】
<溶解工程>
溶解工程では、第1凝縮液204へドーパント205が溶解する。図4(a)は溶解工程を表す。第1凝縮液204へ冷却されたドーパント205が溶解することが好ましい。ドーパント205は水溶性であることが好ましい。第1凝縮液204中のドーパント205の濃度は、第1凝縮液204中の化学物質202の濃度よりも高いことが好ましい。第1凝縮液204中のドーパント205の濃度は、0.1ppm以上3%以下が好ましい。
【0113】
溶解工程では、第1凝縮液204へドーパント205を均一に溶解することが好ましいが、第1凝縮液204へドーパント205を混合しても良い。第1凝縮液204は霧化電極部105の外周面を移動することが好ましい。第1凝縮液204へドーパント205を溶解し易いように、第1凝縮液204の表面積は大きいことが好ましい。第1凝縮液204は液滴状または水膜状であることが好ましい。
【0114】
<帯電微粒子化工程>
次に、帯電微粒子化工程では、第1凝縮液204から多数の第1帯電微粒子206が形成される。図4(b)は帯電微粒子化工程を表す。第1帯電微粒子206は、分子1個〜数十個からなるクラスタであっても良いし、分子数十〜数百個からなる微粒子であっても良いし、数百個以上からなる液滴であっても良い。またはこれらの2種類以上が混在していても良い。
【0115】
第1帯電微粒子206には、電気的に中性な分子、試料気体203に由来するイオンまたはラジカルなどが含まれていても良い。
【0116】
第1帯電微粒子206はマイナスに荷電していることが好ましい。第1帯電微粒子206がマイナスに荷電する場合、化学物質202の電子親和力は水の電子親和力よりも大きいことが好ましい。また、ドーパント205の電子親和力は水および化学物質202の電子親和力よりも大きいことが好ましい。
【0117】
第1帯電微粒子206はプラスに荷電していても良い。第1帯電微粒子206がプラスに荷電する場合、化学物質202のイオン化エネルギーは水のイオン化エネルギーよりも小さいことが好ましい。また、ドーパント205のイオン化エネルギーは水および化学物質202のイオン化エネルギーよりも小さいことが好ましい。
【0118】
第1凝縮液204を帯電微粒子化する方法は、静電噴霧が最も好ましい。静電噴霧の原理は次のとおりである。霧化電極部105と対向電極部106の間に印加された電圧によって霧化電極部105の先端へ第1凝縮液204が搬送される。クーロン引力により第1凝縮液204の液面が対向電極部106方向へ円錐状に盛り上がる。さらに霧化電極部105の外周面で凝縮が進むと、円錐状の第1凝縮液204が成長する。その後、第1凝縮液204の先端に電荷が集中してクーロン力が増大する。このクーロン力が水の表面張力を超えると第1凝縮液204が分裂、飛散して、第1帯電微粒子206を形成する。
【0119】
第1帯電微粒子206の安定性の観点から、第1帯電微粒子206の直径は、1nm以上30nm以下が好ましい。
【0120】
第1帯電微粒子206に付加される帯電量は、微粒子1個あたり電荷素量(1.6x10−19C)と同量以上10倍以下であることが好ましい。
【0121】
第1帯電微粒子206中の水蒸気201に対する化学物質202の比率は、試料気体203中の水蒸気201に対する化学物質202の比率よりも高いことが好ましい。第1帯電微粒子206中の水蒸気201に対する化学物質202の比率は、化学物質回収部107へ向かうまでに変化しても良いが、化学物質回収部107へ向かうまでに高くなることが好ましい。
【0122】
霧化電極部105と対向電極部106の間に直流電圧を印加する、すなわち霧化電極部105と対向電極部106の間に電位差を設けることが最も好ましい。霧化電極部105と対向電極部106の間には、コロナ放電が発生しない電圧を印加することが好ましく、具体的には、4kV以上6kV以下の直流電圧を印加することが好ましい。
【0123】
帯電微粒子化工程では、対向電極部106に対して霧化電極部105へ負電圧を印加することが最も好ましいが、正電圧を印加してもよい。対向電極部106はGND電極であることが最も好ましい。帯電微粒子化工程では、霧化電極部105と対向電極部106の間に交流電圧を印加しても良い。また、霧化電極部105と対向電極部106の間にパルス電圧を印加しても良い。
【0124】
霧化電極部105と対向電極部106の間に印加する直流電圧は、固定値であっても良いし、可変値でも良い。可変値は帯電微粒子化の状況に応じて制御されることが好ましい。帯電微粒子化の状況は、霧化電極部105と対向電極部106の間を流れる電流値をモニターしても良く、専用の電極対を設けて電流値をモニターしても良い。
【0125】
<回収工程>
回収工程では、第1帯電微粒子206を化学物質回収部107へ回収する。図5は回収工程を表す。回収工程では、化学物質回収部107へ直接試料気体203を回収しても良い。化学物質回収部107へ直接回収される試料気体203の量は少ないことが好ましい。また、回収工程中は、注入工程を停止することが好ましい。
【0126】
第1帯電微粒子206は、電磁気力または静電気力により回収することが好ましい。回収工程では、対向電極部106に対して化学物質回収部107へ直流電圧を印加する、すなわち、対向電極部106と化学物質回収部107との間に電位差を設けることが好ましい。直流電圧は0.01kV以上6kV以下であることが好ましく、0.01kV以上0.6kV以下であることがより好ましい。
【0127】
第1帯電微粒子206がマイナスの電荷を持つ場合、対向電極部106に対して化学物質回収部107へ正電圧を印加することが好ましい。一方、第1帯電微粒子206がプラスの電荷を持つ場合、対向電極部106に対して化学物質回収部107へ負電圧を印加することが好ましい。電圧印加は連続的であることが好ましいが、パルス的でも良い。
【0128】
対向電極部106はGND電極にすることが最も好ましい。化学物質回収部107と対向電極部106の間には交流電圧を印加することが好ましいが、パルス電圧を印加しても良い。
【0129】
化学物質回収部107は、水蒸気201の露点温度以下に冷却することが好ましい。化学物質回収部107の外周面において、第1帯電微粒子206を回収液207にすることが好ましい。回収工程の初期段階では、化学物質回収部107の外周面において、回収液207が液滴状になることが好ましい。回収工程の進行段階では、化学物質回収部107の外周面が回収液207により覆われることが好ましい。化学物質回収部107は針状であることが好ましく、回収液207は化学物質回収部107の先端に回収することが好ましい。化学物質回収部107の外周面は親水性であることが好ましいが、撥水性であっても良い。
【0130】
化学物質回収部107は、下方に向いていることが好ましい。図5に示すように、重力により回収液207を化学物質回収部107の先端に回収することが好ましい。
【0131】
図5に示すように、静電気力により回収液207を化学物質回収部107の先端に回収することも好ましい。化学物質回収部107の先端は、電界が集中する形状であることが好ましく、針状であることが最も好ましい。化学物質回収部107の外周面において、回収液207は静電気力により化学物質回収部107の先端へ移動することが好ましい。回収液207には極性有機化合物または水が含まれていることが好ましい。
【0132】
化学物質回収部107は除電されることが好ましい。化学物質回収部107の除電は常時行なっても良いし、適宜行なっても良い。化学物質回収部107の除電は接地することにより行っても良く、イオナイザーを用いて行っても良い。
【0133】
対向電極部106に対して化学物質回収部107へ電圧を印加した後、化学物質回収部107を冷却することが最も好ましい。対向電極部106に対して化学物質回収部107へ電圧を印加すると同時に、化学物質回収部107を冷却しても良い。また、化学物質回収部107において試料気体203を直接凝縮してもよい。
【0134】
回収液207に含まれる水蒸気201や検出対象物質以外の妨害物質を除去しても良い。回収液207から妨害物質を除去するために、フィルタまたは吸着材を用いても良いし、その他の除去方法を用いても良い。
【0135】
本実施の形態において、上述の注入工程から回収工程までの少なくとも2つ以上の工程は同時に行なわれてもよい。すなわち、例えば注入工程と第1凝縮液生成工程が同時に行なわれても良い。またはそれぞれの工程を順序立てて行なっても良い。
【0136】
(実施の形態2)
図6は、本発明の実施の形態2における静電噴霧装置の模式図である。図6において、図1と同じ構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。
【0137】
本実施の形態と実施の形態1の最も異なる点は、容器101自身にミキサー111の機能を付加することである。すなわち、容器101の内部で試料気体203とドーパント205を混合することである。そのために、供給口109が容器101に直接接続されている。容器101において試料気体203とドーパント205が混合される。
【0138】
本実施の形態において、静電噴霧装置100は以下の構成からなる。
【0139】
容器101は堅固であることが好ましいが、エアーバック、バルーン、フレキシブルチューブ、シリンジなどのように柔軟であっても良い。メンテナンスの観点から、容器101は蝶番301により開閉可能であることが好ましいが、その他の方法で開閉可能であっても良い。
【0140】
容器101の内部には、試料気体が乱流や螺旋流や渦流などを生じるように、障壁302を供給部109の近傍に設けることが好ましい。容器101の内部には、試料気体が乱流や螺旋流や渦流などを生じるように、迷路を設けることも好ましい。
【0141】
注入口102は容器101に連通するように設けられている。注入口102は容器101へ試料気体を注入するために用いられる。注入口102は、速やかに容器101へ試料気体を注入できる位置および/または均一に容器101へ試料気体を注入できる位置に、設けることが好ましい。試料気体が乱流や螺旋流や渦流などを発生する位置に、注入口102を設けることが好ましい。例えば、容器101が直方体の場合には、注入口102は隅に設けることが好ましい。
【0142】
本発明では、注入口102の寸法、材料は限定されないが、均一に容器101へ試料気体を注入できる形状であることが好ましい。注入口102は、エアーシャワーのような多数の孔を備えていても良い。容器101の内部において試料気体が螺旋流を発生するように、注入口102の先端の方向を容器101の壁面に対して傾斜させても良い。試料気体が螺旋流を発生させるように、注入口102の先端を細くして、ベンチュリー効果を利用しても良い。注入口102の形状は、図6に示すように直管状であっても良いし、途中に分岐を設けても良い。注入口102は一箇所であっても良いし、複数箇所でも良い。
【0143】
排出口103は、容器101の他端に設けられている。排出口103は、容器101を満たした試料気体のうち、余剰な試料気体を排出するために用いられる。排出口103は、容器101を満たした試料気体を、速やかに排出する位置に設けることが好ましい。排出口103は、試料気体が乱流や螺旋流や渦流などを発生する位置に設けても良く、図6に示すように、注入口102と排出口103を異なる高さに設けても良い。注入口103と排出口104は、容器101の対角に設けることが好ましい。
【0144】
なお本発明では、排出口103の形状、寸法、材料は限定されない。排出口103の形状は、図6に示すように直管状であっても良いし、途中に分岐を設けても良い。排出口103は一箇所であっても良いし、複数箇所でも良い。
【0145】
冷却部104には放熱部303を設けることが好ましい。冷却部104として熱電素子を用いる場合、冷却面の裏は発熱面である。放熱部303は発熱面から熱を逃すために用いられる。発熱面から熱を逃すことにより、熱電素子を効率的に動作できる。放熱部303はフィンであることが好ましく、フィンに冷却ファンを付属させることがより好ましい。また、放熱部303は水冷機構でも良い。放熱部303は熱伝導性の大きい材料で形成されることが好ましい。放熱部303の材料は金属、半導体などであることが好ましい。
【0146】
冷却部104には断熱部304を設けることが好ましい。断熱部304を設けることにより、霧化電極部105以外の部位は冷却されない。断熱部304は熱伝導率の小さい材料が好ましい。断熱部304の材料は、ゴム、セラミックス、ガラスなどが好ましいが、エアーギャップでも良い。エアーギャップの内容物は空気、窒素などであることが好ましい。断熱部304は不導体であることが好ましい。
【0147】
熱伝導を抑制する観点から、霧化電極部105と断熱部304との接触面積は小さいことが好ましく、具体的には、10μm以上10mm以下であることが好ましい。
【0148】
霧化電極部105には絶縁部305を設けることが好ましい。絶縁部305は霧化電極部105と容器101を電気的に絶縁する。絶縁部305の材料はテフロン(登録商標)、デルリン(登録商標)、PEEK(登録商標)などの絶縁体であることが好ましい。余剰な凝縮液を留めておくために、絶縁部305に貯留部を設けることが好ましい。貯留部は溝構造、凹凸構造、吸収体などであることが好ましい。なお本発明では、絶縁部305の形状、材質、位置は限定されない。
【0149】
熱伝導を抑制する観点から、霧化電極部105と絶縁部305との接触面積は小さいことが好ましく、具体的には、10μm以上10mm以下であることが好ましい。水蒸気の結露を抑制するために、絶縁部305には熱伝導率の小さい材料を用いたり、熱伝導を抑制する構造を備えることが好ましい。
【0150】
対向電極部106は、試料気体203とドーパント205を混合する位置に設けることが好ましい。対向電極部106は、注入口102と供給口109の近傍にあることが好ましい。
【0151】
化学物質回収部107は、試料気体203とドーパント205の直接的な凝縮を抑制する位置に設けられることが好ましい。注入口102と化学物質回収部107の距離は、注入口102と霧化電極部105の距離よりも大きいことが好ましい。供給口109と化学物質回収部107の距離は、供給口109と霧化電極部105の距離よりも大きいことが好ましい。
【0152】
化学物質回収部107には第2絶縁部306を設けることが好ましい。第2絶縁部306は化学物質回収部107と容器101を電気的に絶縁する。第2絶縁部306の材料はテフロン(登録商標)、デルリン(登録商標)、PEEK(登録商標)などの絶縁体であることが好ましい。余剰な凝縮液を留めておくために、第2絶縁部306に貯留部を設けることが好ましい。貯留部は溝構造、凹凸構造、吸収体などであることが好ましい。なお本発明では、第2絶縁部306の形状、材質、位置は限定されない。
【0153】
熱伝導を抑制する観点から、化学物質回収部107と第2絶縁部306との接触面積は小さいことが好ましく、具体的には、10μm以上10mm以下であることが好ましい。
【0154】
第2冷却部108には第2放熱部307を設けることが好ましい。第2冷却部108として熱電素子を用いる場合、冷却面の裏は発熱面である。第2放熱部307は発熱面から熱を逃すために用いられる。発熱面から熱を逃すことにより、熱電素子を効率的に動作できる。第2放熱部307はフィンであることが好ましく、フィンには冷却ファンを付属させることがより好ましい。第2放熱部307は水冷機構でも良い。第2放熱部307は熱伝導性の大きい材料で形成されることが好ましい。第2放熱部307の材料は金属、半導体などであることが好ましい。
【0155】
第2冷却部307には第2断熱部308を設けることが好ましい。第2断熱部308を設けることにより、化学物質回収部107以外の部位は冷却されない。第2断熱部308はゴム、セラミックス、ガラスなどの熱伝導率の小さい材料が好ましい。第2断熱部308はエアーギャップでも良い。エアーギャップの内容物は空気、窒素などであることが好ましい。
【0156】
熱伝導を抑制する観点から、化学物質回収部107と第2断熱部308との接触面積は小さいことが好ましく、具体的には、10μm以上10mm以下であることが好ましい。
【0157】
化学物質回収部107の近傍には化学物質搬送部309と化学物質検出部310を設けることが好ましい。化学物質搬送部309は化学物質回収部107で回収された化学物質を化学物質検出部310へ搬送するために用いられる。化学物質搬送部309は、シリンジ、キャピラリ、チューブ、多孔質体などでも良く、ポンプを備えていても良い。化学物質回収部107に高電圧を印加するので、化学物質搬送部309は化学物質回収部107と電気的に絶縁することが好ましい。
【0158】
化学物質搬送部309は可動であることが好ましく、X方向、Y方向、Z方向の少なくとも一方向へ可動することが好ましい。なお、ここで言うX方向とは図6の化学物質搬送部309の長手方向を意味する。Y方向、Z方向はそれぞれX方向と直交する。化学物質搬送部309はθ方向へ可動することが好ましい。なお、ここで言うθ方向とは、化学物質搬送部309を容器101に固定する箇所を支点として、化学物質搬送部309を上下方向へ回転する方向である。なお、化学物質搬送部309を容器101に固定する箇所を支点として、水平方向へ回転しても良い。
【0159】
化学物質搬送部309は容器101の内部にあっても良く、化学物質回収部107の一端にあっても良く、容器101の外部にあっても良い。
【0160】
化学物質検出部310は、化学センサ、生物センサなどが好ましいが、MOSFET(金属―酸化物―半導体電界効果トランジスタ)、ISFET(イオン感応型電界効果トランジスタ),バイポーラトランジスタ、有機薄膜トランジスタ、オプトード、金属酸化物半導体センサ、水晶マイクロバランス(QCM)、表面弾性波(SAW)素子、固体電解質ガスセンサ、電気化学電池センサ、表面波プラズモン共鳴(SPR)、ラングミュアブロジェット膜(LB膜)センサ、AFM、DNAセンサ、プロテインセンサ、免疫センサ、微生物センサなどでも良い。また、化学物質検出部310は、ガスクロマトグラフ(GC)、GC−MS、GC−TOF/MS,高速液体クロマトグラフ(LC)、HPLC、HPLC/IC、LC−TOF/MS、MALDI、核磁気共鳴装置(NMR)、SIMS、ICP質量分析装置などでも良い。化学物質検出部310は図6に示すように1箇所でも良いし、複数箇所でも良い。複数の化学物質検出部310を設ける場合、同一種類でも良いし、複数種類でも良い。
【0161】
化学物質検出部310は容器101の外部にあっても良く、容器101の内部にあっても良く、化学物質回収部107の一端にあっても良い。
【0162】
図7〜図10は、実施の形態2の静電噴霧装置の動作を示す説明図である。図7〜図10において、図6と同じ構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。
【0163】
<注入工程>
注入工程では、水蒸気201と化学物質202を含む試料気体203が、注入口102を通じて、容器101へ注入される。図7(a)は注入工程を表す。図7(a)では化学物質202を化学物質202a、202bの2種類のみ記載したが、1種類でも良いし、3種類以上でも良い。試料気体203での相対湿度は50%以上が好ましく、80%以上がより好ましい。注入工程では、試料気体203へ水蒸気201を追加しても良い。なお本発明では、化学物質202の種類、濃度は限定されない。試料気体203は、極性有機溶媒を含むことが好ましい。なお本発明では、極性有機溶媒の種類、濃度は限定されない。
【0164】
試料気体203は、容器101の内壁、対向電極部106または化学物質回収部107へ衝突させても良い。また、容器101の内部に設けた障壁302や迷路などへ、試料気体203を衝突させても良い。
【0165】
容器101の内部が試料気体203によって満たされたことを判別するために、化学物質検出部310を用いても良く、化学物質検出部310とは別の化学物質検出部を用いても良い。また、化学物質検出部310は一つでも良いし、複数でも良い。
【0166】
<第1凝縮液生成工程>
次に、第1凝縮液生成工程では、冷却部104により霧化電極部105が水蒸気201の露点温度以下に冷却される。霧化電極部105の外周面において、水蒸気201と化学物質202を含む第1凝縮液204が形成される。図7(b)は第1凝縮液生成工程を表す。
【0167】
<供給工程>
供給工程では、ドーパント205を容器101へ供給する。図8(a)は供給工程を表す。ドーパント205は供給口109を通じて容器101へ供給する。ドーパント205は障壁302へ衝突させることが好ましい。
【0168】
<ドーパント冷却工程>
ドーパント冷却工程では、ドーパント205を霧化電極部105の外周面において冷却する。図8(b)はドーパント冷却工程を表す。
【0169】
<溶解工程>
溶解工程では、第1凝縮液204へドーパント205が溶解する。図9(a)は溶解工程を表す。
【0170】
<第1帯電微粒子化工程>
次に、第1帯電微粒子化工程では、第1凝縮液204から多数の第1帯電微粒子206を形成する。図9(b)は第1帯電微粒子化工程を表す。第1帯電微粒子206は、分子1個〜数十個からなるクラスタであっても良いし、分子数十〜数百個からなる微粒子であっても良いし、数百個以上からなる液滴であっても良い。またはこれらの2種類以上が混在していても良い。
【0171】
第1帯電微粒子化工程では、第1帯電微粒子206に、電気的に中性な分子、試料気体203に由来するイオンまたはラジカルが含まれていても良い。
【0172】
第1帯電微粒子化工程では、第1帯電微粒子206はマイナスに荷電していることが好ましい。第1帯電微粒子206がマイナスに荷電する場合、化学物質202の電子親和力は水の電子親和力よりも大きいことが好ましい。第1帯電微粒子206がマイナスに荷電する場合、ドーパント205の電子親和力は水および化学物質202の電子親和力よりも大きいことが好ましい。
【0173】
第1帯電微粒子化工程では、第1帯電微粒子206はプラスに荷電していても良い。第1帯電微粒子206がプラスに荷電する場合、化学物質202のイオン化エネルギーは水のイオン化エネルギーよりも小さいことが好ましい。第1帯電微粒子206がプラスに荷電する場合、ドーパント205のイオン化エネルギーは水および化学物質202のイオン化エネルギーよりも小さいことが好ましい。
【0174】
第1凝縮液204を帯電微粒子化する方法は、静電噴霧が最も好ましい。静電噴霧の原理は次のとおりである。霧化電極部105と対向電極部106の間に印加された電圧によって霧化電極部105の先端へ第1凝縮液204が搬送される。クーロン引力により第1凝縮液204の液面が対向電極部106方向へ円錐状に盛り上がる。さらに霧化電極部105の外周面で凝縮が進むと、円錐状の第1凝縮液204が成長する。その後、第1凝縮液204の先端に電荷が集中してクーロン力が増大する。このクーロン力が水の表面張力を超えると第1凝縮液204が分裂、飛散して、第1帯電微粒子206を形成する。
【0175】
第1帯電微粒子化工程では、霧化電極部105と対向電極部106の間に直流電圧を印加することが最も好ましい。コロナ放電が発生しない電圧を印加することが好ましく、具体的には4kV以上6kV以下の直流電圧であることが好ましい。対向電極部106に対して霧化電極部105へ負電圧を印加することが最も好ましいが、正電圧を印加してもよい。対向電極部106はGND電極にすることが最も好ましい。
【0176】
霧化電極部105と対向電極部106の間に交流電圧を印加しても良く、パルス電圧を印加しても良い。
【0177】
<第2帯電微粒子化工程>
次に、第2帯電微粒子化工程では、容器101において、第1帯電微粒子206と試料気体203を混合して第2帯電微粒子311にしても良い。図10(a)は第2帯電微粒子化工程を表す。第1帯電微粒子206と試料気体203を混合することにより、試料気体203を帯電できる。第1帯電微粒子206と試料気体203の混合を効率的に行なうため、試料気体203が乱流、螺旋流、渦流などを生じることが好ましい。第1帯電微粒子206の流れ方向と試料気体203の流れ方向は直交させても良く、カウンター流としても良い。容器101は十字流路またはT字流路であることが好ましい。第2帯電微粒子311を試料気体203と混合して第3帯電微粒子としても良い。
【0178】
<第2帯電微粒子化工程>
第2帯電微粒子化工程では、第1帯電微粒子206の大部分は、霧化電極部105から対向電極部106を経由して化学物質回収部107へ移動する。したがって、霧化電極部105と化学物質回収部107の間に向かって試料気体203を注入する位置に、注入口102を設けることが好ましい。霧化電極部105と対向電極部106の間に向かって試料気体203を注入する位置に、注入口102を設けることが好ましいが、対向電極部106と化学物質回収部107の間に向かって試料気体203を注入する位置に、注入口102を設けることもできる。試料気体203は第1帯電微粒子206の経路にフォーカスしても良い。
【0179】
第2帯電微粒子311の直径は、第1帯電微粒子206の直径よりも大きいことが好ましい。第2帯電微粒子311の安定性の観点から、第2帯電微粒子311の直径は、1nm以上30nm以下が好ましい。第2帯電微粒子311は、分子1個〜数十個からなるクラスタであっても良いし、分子数十〜数百個からなる微粒子であっても良いし、数百個以上からなる液滴であっても良い。またはこれらの2種類以上が混在していても良い。
【0180】
第2帯電微粒子311に、電気的に中性な分子、イオン、ラジカルなどが含まれていても良い。第2帯電微粒子化工程では、第1帯電微粒子206と第2帯電微粒子311の電荷の符号は同じであることが好ましいが、第2帯電微粒子311はマイナスに荷電していても良く、プラスに荷電していても良い。
【0181】
第2帯電微粒子311の帯電量は、第1帯電微粒子206と同じであることが好ましい。第2帯電微粒子311の帯電量は、微粒子1個あたり電荷素量(1.6×10−19C)と同量以上10倍以下であることが好ましい。
【0182】
<回収工程>
最後に、回収工程では、第1帯電微粒子206と第2帯電微粒子311を化学物質回収部107へ回収する。図10(b)は回収工程を表す。回収工程では、第1帯電微粒子206と第2帯電微粒子311を同時に化学物質回収部107へ回収することが好ましい。なお本発明では、化学物質回収部107へ回収される、第1帯電微粒子206と第2帯電微粒子311の比率は限定されない。回収工程では、化学物質回収部107へ直接試料気体203を回収しても良い。化学物質回収部107へ直接回収される試料気体203の量は少ないことが好ましい。回収工程中は、注入工程を停止することが好ましい。
【0183】
回収工程では、第1帯電微粒子206と第2帯電微粒子311を電磁気力により回収することが好ましいが、静電気力により回収しても良い。対向電極部106に対して化学物質回収部107へ直流電圧を印加することが好ましい。直流電圧は0.01kV以上6kV以下であることが好ましく、0.01kV以上0.5kV以下であることがより好ましい。
【0184】
第1帯電微粒子206と第2帯電微粒子311が負の電荷を持つ場合、対向電極部106に対して化学物質回収部107へ正電圧を印加することが最も好ましい。第1帯電微粒子206と第2帯電微粒子311が正の電荷を持つ場合、対向電極部106に対して化学物質回収部107へ負電圧を印加することが好ましい。電圧印加は連続的であることが好ましいが、パルス的でも良い。対向電極部106はGND電極にすることが最も好ましい。化学物質回収部107と対向電極部106の間に交流電圧を印加することが好ましいが、パルス電圧を印加しても良い。
【0185】
化学物質回収部107は水蒸気201の露点温度以下に冷却することが好ましい。化学物質回収部107の外周面において、第1帯電微粒子206と第2帯電微粒子311を回収液207にすることが好ましい。回収工程の初期段階では、化学物質回収部107の外周面において、回収液207が液滴状になることが好ましい。回収工程の進行段階では、化学物質回収部107の外周面が回収液207により覆われることが好ましい。化学物質回収部107は針状であることが好ましく、回収液207は化学物質回収部107の先端に回収することが好ましい。化学物質回収部107の外周面は親水性であることが好ましいが、撥水性であっても良い。
【0186】
化学物質回収部107は第2冷却部108により冷却されることが好ましい。第2冷却部108により、水蒸気の露点温度以下まで化学物質回収部107を冷却できる。回収工程では、回収液207の量が過剰にならないよう、第2冷却部108の温度を制御することが好ましい。化学物質回収部107の温度は、回収液207の凝固点以上であっても良く、回収液207の凝固点以下であっても良い。
【0187】
化学物質回収部107は、下方に向いていることが好ましい。図6に示すように、重力により回収液207を化学物質回収部107の先端に回収することが好ましい。
【0188】
回収工程では、図10(b)に示すように、静電気力により回収液207を化学物質回収部107の先端に回収することが好ましい。化学物質回収部107の先端は、電界が集中する形状であることが好ましい。化学物質回収部107は、針状であることが最も好ましい。化学物質回収部107の外周面において、回収液207は静電気力により化学物質回収部107の先端へ移動することが好ましい。回収液207には極性有機化合物および/または水が含まれていることが好ましい。
【0189】
回収工程では、化学物質搬送部309により回収液207を化学物質検出部310へ搬送することが好ましい。回収液207の搬送するために、シリンジ、キャピラリ、チューブ、多孔質体などを用いても良い。回収液207の搬送の駆動には、ポンプ、毛細管力などを用いても良い。化学物質搬送部309の温度は室温であることが好ましいが、水蒸気の露点温度以下に冷却しても良い。
【0190】
対向電極部106に対して化学物質回収部107へ電圧を印加する間、化学物質搬送部309は化学物質回収部107から分離されていることが好ましく、物理的に分離されていることが最も好ましい。化学物質回収部107から化学物質搬送部309を分離するために、化学物質搬送部309を可動にすることが好ましい。回収工程では、対向電極部106に対して化学物質回収部107へ電圧を印加する間、化学物質搬送部309は化学物質回収部107から電気的に分離されていても良い。
【0191】
回収液207に含まれる化学物質202は、化学物質検出部310により検出することが好ましい。検出する化学物質202は1種類でも良いし、2種類以上でも良い。化学物質202は、ケトン類、アミン類、アルコール類、芳香族炭化水素類、アルデヒド類、エステル類、有機酸、硫化水素、メチルメルカプタン、ジスルフィドなどが好ましく、アルカン、アルケン、アルキン、ジエン、脂環式炭化水素、アレン、エーテル、カルボニル、カルバニオ、タンパク、多核芳香族、複素環、有機誘導体、核酸、リボ核酸、抗体、生物分子、代謝物、イソプレン、イソプレノイドおよびその誘導体なども好ましい。回収工程では、化学物質検出部310により化学物質202の定量を行なうことが好ましいが、化学物質202の存在のみを検出しても良い。
【0192】
回収液207に含まれる水蒸気201や検出対象物質以外の妨害物質を除去しても良い。回収液207から妨害物質を除去するために、フィルタまたは吸着材を用いても良いし、そのほかの除去方法を用いても良い。
【0193】
本実施の形態において、上述の注入工程から回収工程までの少なくとも2つ以上の工程は同時に行なわれてもよい。すなわち、例えば注入工程と第1凝縮液生成工程が同時に行なわれても良い。またはそれぞれの工程を順序立てて行なっても良い。
【0194】
本実施の形態において、第1帯電微粒子206および第2帯電微粒子311を加熱しても良い。第1帯電微粒子206および第2帯電微粒子311を加熱することにより、化学物質202の濃度を高めても良い。第1帯電微粒子206および第2帯電微粒子311を加熱するために、赤外光を用いることが好ましい。第1帯電微粒子206および第2帯電微粒子311を赤外光により加熱する場合、水の吸収ピークの波長を用いることが好ましい。第1帯電微粒子206および第2帯電微粒子311を加熱するための赤外光は、霧化電極部105および化学物質回収部107へ照射しないことが好ましい。第1帯電微粒子206および第2帯電微粒子311を加熱するための赤外光は、フォーカスすることが好ましい。
【0195】
第1帯電微粒子206および第2帯電微粒子311を加熱するための赤外光は、容器101内を導波することも好ましく、その場合には、容器101に光導波路を設けることが好ましい。容器101の一部に赤外光の窓を設けることも好ましい。第1帯電微粒子206および第2帯電微粒子311を加熱するためにヒータを用いても良い。
【0196】
化学物質回収部107、化学物質搬送部309または化学物質検出部310は、容器101から分離可能であることが好ましい。化学物質回収部107、化学物質搬送部309または化学物質検出部310は洗浄可能であることが好ましいが、ディスポーザブルであっても良い。
【0197】
第1帯電微粒子化工程および/または第2帯電微粒子化工程ではコロナ放電を用いても良いが、静電噴霧を用いることが最も好ましい。しかし、試料気体203中の相対湿度が低い場合や、霧化電極部105の外周面に十分な第1凝縮液204が生成されていない場合は、静電噴霧にコロナ放電を伴う場合もある。したがって本発明では、第1帯電微粒子化工程および/または第2帯電微粒子化工程は静電噴霧に限定されない。
【0198】
第1帯電微粒子化工程および/または第2帯電微粒子化工程では、霧化電極部105と対向電極部106の間を流れる電流に応じて、霧化電極部105と対向電極部106との間の電圧印加を制御することが好ましい。霧化電極部105と対向電極部106の間に閾値以上の電流が流れる時、霧化電極部105と対向電極部106との間の電圧印加を中断することが好ましいが、印加電圧を小さくしても良い。また、霧化電極部105と対向電極部106の間に流れる電流が閾値以下になった時、電圧印加を再開しても良い。
【0199】
霧化電極部105から水蒸気201、化学物質202またはドーパント205を除去するために、霧化電極部105を加熱することが好ましい。霧化電極部105を加熱する時、容器101の中へ清浄ガスを注入することが好ましい。清浄ガスは水蒸気201、化学物質202、ドーパント205を含まないことが好ましい。
【0200】
霧化電極部105を加熱することにより、水蒸気201、化学物質202またはドーパント205を除去するには、熱電素子を用いることも好ましい。熱電素子は冷却部104が好ましい。熱電素子を使えば冷却面と加熱面を容易に反転できるので便利である。また、凝縮工程と水蒸気201除去、化学物質202除去またはドーパント205除去のために同一の熱電素子を使えば、分析装置の小型化にも寄与できる。水蒸気201、化学物質202またはドーパント205が除去されたことを検出するには、化学物質検出部310を用いることが好ましいが、化学物質検出部310とは別の化学物質検出部を用いても良い。
【0201】
対向電極部106から水蒸気201、化学物質202、ドーパント205を除去するために、対向電極部106を加熱することも好ましい。対向電極部106を加熱する時、容器101の中へ清浄ガスを注入することが好ましい。清浄ガスは水蒸気201、化学物質202、ドーパント205を含まないことが好ましい。
【0202】
対向電極部106を加熱することにより水蒸気201、化学物質202またはドーパント205を除去するには、熱電素子を用いることが好ましい。熱電素子を使えば冷却面と加熱面を容易に反転できるので便利である。水蒸気201、化学物質202またはドーパント205が除去されたことを検出するには、化学物質検出部310を用いることが好ましいが、化学物質検出部310とは別の化学物質検出部を用いても良い。
【0203】
化学物質回収部107から水蒸気201、化学物質202またはドーパント205を除去するために、化学物質回収部107を加熱することも好ましい。化学物質回収部107を加熱する時、容器101の中へ清浄ガスを注入することが好ましい。清浄ガスは水蒸気201、化学物質202、ドーパント205を含まないことが好ましい。
【0204】
化学物質回収部107を加熱することにより水蒸気201、化学物質202、ドーパント205を除去するには、熱電素子を用いることが好ましい。熱電素子は第2冷却部108であることが好ましい。熱電素子を使えば冷却面と加熱面を容易に反転できるので便利である。また、回収工程と水蒸気201除去、化学物質202除去またはドーパント205除去のために同一の熱電素子を使えば、分析装置の小型化にも寄与できる。水蒸気201、化学物質202またはドーパント205が除去されたことを検出するには、化学物質検出部117を用いることが好ましいが、化学物質検出部310とは別の化学物質検出部を用いても良い。
【0205】
(実施の形態3)
図11は、本発明の実施の形態3における静電噴霧装置の模式図である。図11において、図1と同じ構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。
【0206】
本実施の形態が実施の形態1と相違する点は、霧化電極部105の近傍に供給口109を設けることである。供給口109から、第1凝縮液204へドーパント205を直接的に添加しても良い。液状のドーパント205を第1凝縮液204へ供給しても良い。冷却されたドーパント205を供給しても良い。
【0207】
(実施の形態4)
図12は、本発明の実施の形態4における静電噴霧装置の模式図である。図12において、図1と同じ構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。
【0208】
本実施の形態が実施の形態1と相違する点は、試料気体発生部312に供給口109を設けることである。ドーパント205は、試料気体発生部312の上流側から供給される。ドーパント205は試料気体203とともに容器101へ注入される。試料気体発生部312はバブラーでも良いし、サンプルバッグでも良いし、生体の呼吸器や循環器などでも良い。
【0209】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、以下の実施例は例示の目的にのみ用いられ、本発明を限定するために用いられてはならない。
【0210】
[実施例1]
容器101は、切削加工により厚み4mmのアルミ板を用いて作製した。容器101は38mm×38mm×18mmの直方体とした。容器101の一部は、アクリル樹脂板で置き換え可能にした。容器の一部を透明材料とすることにより、凝縮液の形成過程などが観察できるためより好ましい。容器101の内壁は平滑に研磨し、ガス吸着を抑制するようにした。
【0211】
容器101は、蝶番301で開閉可能にした。
【0212】
注入口102を容器101に連通するように設けた。注入口102は外径1/8インチ、長さ50mmのステンレス管を用いた。注入口102は容器101の底面から10mmの位置に、容器101の底面に対して水平に設けた。
【0213】
排出口103を容器101の他端に設けた。排出口103は外径1/8インチ、長さ50mmのステンレス管を用いた。排出口103は容器101の底面から4mmの位置に、容器101の底面に対して水平に設けた。
【0214】
冷却部104として熱電素子を容器101の一端に設けた。冷却部104を容器101に一箇所設けた。冷却部104の大きさは14mm×14mm×1mmであった。冷却部104の最大吸熱は0.9W、最大温度差は69℃であった。冷却部104の冷却面は、セラミックス材で被覆した。セラミックス材はその表面に微細な凹凸や多孔体構造を有するため、接触する物体を効率的に冷却することができる。
【0215】
冷却部104には放熱部303として放熱フィンを設けた。放熱部303の放熱フィンは切削加工によりアルミで作製し、フィンの枚数は6枚、フィンの大きさは16mm×15mm×1mmであった。放熱部303の近傍に、放熱を促すための冷却ファン(KD1208PTB2−6,SUNON)を設けた。
【0216】
冷却部104と容器101の間に断熱部304を設けた。断熱部304として、厚み1mmのラバーフィルムを用いた。ラバーフィルムの一部には霧化電極部105を貫通させるための孔を設けた。孔の直径は1mmであった。
【0217】
霧化電極部105を冷却部104の一端に設けた。容器101の内部に、霧化電極部105としてステンレス製針を設けた。ステンレス製針の長さは3mm、直径は最も太い部分で0.79mm、最も細い部分で0.5mmであった。またステンレス製針の先端には直径0.72mmの球を設け、安定して第1帯電微粒子化工程を行なえるようにした。霧化電極部105と冷却部104の間には熱伝導グリース(SCH−20、サンハヤト)を塗布した。
【0218】
霧化電極部105には、絶縁部305として、直径10mm、厚み3mmのテフロン(登録商標)製の円板を設けた。絶縁部305の中心部には、直径4mm、深さ1mmの凹構造を設けた。
【0219】
対向電極部106は、霧化電極部105の先端から3mm離れたところに設けた。対向電極部106として、外径12mm、内径8mm、厚さ0.5mmの円環状のステンレス板を用いた。
【0220】
化学物質回収部107を容器101の他端に設けた。容器101の内部に、化学物質回収部107としてステンレス製針を設けた。ステンレス製針の長さは3mm、直径は最も太い部分で0.79mm、最も細い部分で0.5mmであった。またステンレス製針の先端を先鋭に研磨して、化学物質の回収を効率的に行なえるようにした。
【0221】
化学物質回収部107には第2絶縁部306として、直径10mm、厚み3mmのテフロン(登録商標)製の円板を設けた。第2絶縁部306の中心部には、直径4mm、深さ1mmの凹構造を設けた。
【0222】
化学物質回収部107の一端には第2冷却部108を設けた。第2冷却部108の大きさは14mm×14mm×1mmであった。第2冷却部108の最大吸熱は0.9W、最大温度差は69℃であった。第2冷却部108の冷却面は、セラミックス材で被覆した。セラミックス材はその表面に微細な凹凸や多孔体構造を有するため、接触する物体を効率的に冷却することができる。
【0223】
第2冷却部108には第2放熱部307として放熱フィンを設けた。第2放熱部307の放熱フィンは切削加工によりアルミで作製し、フィンの枚数は6枚、フィンの大きさは16mm×15mm×1mmであった。第2放熱部114の近傍に、放熱を促すために、冷却ファン(KD1208PTB2−6,SUNON)を設けた。
【0224】
第2冷却部108と容器101の間に、第2断熱部308として厚み1mmのラバーフィルムを設けた。ラバーフィルムの一部には霧化電極部105を貫通させるための孔を設けた。孔の直径は1mmであった。
【0225】
化学物質回収部107と第2冷却部108の間には熱伝導グリース(SCH−20、サンハヤト)を塗布した。
【0226】
なお、注入口102および排出口103には、それぞれバルブ112aおよびバルブ112bを設けた。
【0227】
次に静電噴霧装置100の操作手順を説明する。
【0228】
注入工程では、試料気体203を注入口102から容器101へ注入した。試料気体203として、マウス尿からの揮発性成分を含む窒素ガスを用いた。試料気体203の調製方法は以下の通りである。
【0229】
まず、マウス尿0.2mLを1mLのガラス製バイアル瓶に充填する。そしてバイアル瓶には窒素ガス導入口と排出口を設けた。窒素ガス導入口から窒素ガス(純度99.99%)を導入し、マウス尿へ吹き付けた。窒素ガスは純水100mLのバブラーを通過したものを用いた。マウス尿中の揮発性成分を含んだ窒素ガスを排出口から取り出し、試料気体203とした。ドーパント205として、0.3%酢酸(特級、Cat−No.017−00256、和光純薬)をマウス尿へ混合した。
【0230】
試料気体203の容器101への注入速度は500sccmであった。試料気体203の温度は室温(22℃)であった。
【0231】
注入工程において試料気体203を容器101へ注入する前には、容器101の内部には乾燥窒素ガスを満たしておいた。
【0232】
注入工程において、余剰な試料気体203は排出口103を通じて排出した。
【0233】
注入工程において、容器101の内部は大気圧とした。
【0234】
第1凝縮液生成工程では、熱電素子により霧化電極部105を15℃に冷却した。
【0235】
霧化電極部105の外周面には、熱電素子を動作した5秒後に、第1凝縮液204が形成された。第1凝縮液204の形成初期段階では直径10μm以下の液滴であった。時間の経過とともに液滴は成長し、第1凝縮液204により霧化電極部105の全面が覆われた。霧化電極部105の外周面における第1凝縮液204の形成は、マイクロスコープ(KEYENCE社製、VH−6300)を用いて観察した。図13は霧化電極部105の外周面に、第1凝縮液204が形成された様子を示す写真である。第1凝縮液生成工程において、図13に示すように、霧化電極部105の外周面に第1凝縮液の液滴401が形成された。
【0236】
次に、第1帯電微粒子化工程では、第1凝縮液204を多数の第1帯電微粒子206にした。第1帯電微粒子化工程は静電噴霧により行なった。なお、前述の実施の形態1でも述べたように、静電噴霧の初期段階でコロナ放電が発生するが、本発明の第1帯電微粒子化工程にはこれも含めても良い。
【0237】
第1帯電微粒子206の直径は、帯電微粒子の安定性の観点から、2nm以上30nm以下であることが好ましい。第1帯電微粒子206は1個ずつ単独で存在することが好ましいが、複数個が結合していても良い。なお本発明では、第1帯電微粒子206の形状は限定されない。球形であっても良いし、扁平形であっても良いし、紡錘形であっても良い。
【0238】
霧化電極部105と対向電極部106の間にはDC5kVを印加した。霧化電極部105を陰極、対向電極部106をGND電極とした。霧化電極部105を陽極、対向電極部106をGND電極としても同様の効果が得られるが、この場合には第1帯電微粒子化工程は比較的不安定であった。
【0239】
第1帯電微粒子化工程では、霧化電極部105の先端にテーラーコーンと呼ばれる円錐形の水柱が形成された。テーラーコーンの先端から、化学物質202を含む多数の第1帯電微粒子206が放出された。図14は、テーラーコーン402および第1帯電微粒子206の生成を説明する図である。第1凝縮液204は、霧化電極部105の先端方向へと順次搬送された。図14(a)に示すように、テーラーコーン402は霧化電極部105の先端に形成された。図14(b)は、図14(a)のマイクロスコープ写真をトレースしたものである。テーラーコーン402の最先端すなわち電界が集中する場所から第1帯電微粒子206が放出された。本実施例では試料気体203を注入し始めてから7秒後にはテーラーコーン402が形成された。
【0240】
第1帯電微粒子化工程では、霧化電極部105と対向電極部106の間に流れる電流をモニターした。過剰な電流が流れた場合には、霧化電極部105と対向電極部106との間の電圧印加を中断または印加電圧を減少させた。
【0241】
第2帯電微粒子化工程では、第1帯電微粒子206と試料気体203を混合した。第2帯電微粒子化工程を行なうために、対向電極部106および容器101の内壁に向けて、試料気体203を衝突させた。対向電極部106および容器101の内壁へ試料気体203を衝突させることにより、第1帯電微粒子206と試料気体203を効率的に混合できる。試料気体203の容器101への注入速度は500sccmであった。
【0242】
回収工程では、化学物質回収部107へ、第1帯電微粒子206および第2帯電微粒子311を静電気力により回収した。対向電極部106に対して化学物質回収部107へ、+500Vの電圧を印加した。回収工程は、注入工程、第1凝縮液生成工程、第1帯電微粒子化工程、第2帯電微粒子化工程と並行して行なった。第1帯電微粒子206および第2帯電微粒子311の寿命の観点から、第1帯電微粒子化工程と第2帯電微粒子化工程を開始後、遅くとも10分以内に回収工程を行なうことが好ましい。
【0243】
回収工程では、化学物質回収部107において、第1帯電微粒子206および第2帯電微粒子311を冷却凝縮した。化学物質回収部107の温度は15℃であった。注入工程を開始後6分後には、化学物質回収部107において1.5μLの回収液207を得た。なお、回収した帯電微粒子は、液状にすることが最も好ましいが、霧状のままでもよい。第1帯電微粒子206と第2帯電微粒子311は、水溶液やゲルに溶解しても良い。
【0244】
図15は、化学物質回収部107における回収液207のマイクロスコープ写真である。化学物質回収部107の外周面に、回収液207の液滴を観察できた。
【0245】
回収工程では、得られた回収液207をハミルトンシリンジ(802N 25μL HAMILTON)により1μL採取した。採取した回収液207をガスクロマトグラフィ装置へ導入し、化学物質202の分析を行なった。
【0246】
ガスクロマトグラフィ装置はGC−4000(ジーエルサイエンス)を用いた。分析カラムにはキャピラリカラム(Inert Cap Pure WAX)を用いた。キャピラリカラムの内径は0.25mm、長さは30m、dfは0.25μmであった。キャリアガスはヘリウムであった。オーブン温度は開始温度40℃、昇温速度4℃/分、最終温度200℃とした。インジェクション温度および水素炎イオン化検出器(FID)温度はそれぞれ250℃とした。
【0247】
図16は、回収液207を分析した結果を示す。図16において、濃縮前と記載されたクロマトグラムは、25μLの試料気体203を分析した結果である。図16において、濃縮後(ドーパントなし)と記載されたクロマトグラムは、ドーパント205を試料気体203に混合せずに、静電噴霧装置100を動作させて得た1μLの回収液207を分析した結果である。図16において、濃縮後(ドーパントあり)と記載されたクロマトグラムは、ドーパント205を試料気体203へ混合して、静電噴霧装置100を動作させて得た1μLの回収液207を分析した結果である。図16において、濃縮前のクロマトグラムのピークよりも濃縮後(ドーパントなし)のクロマトグラムのピークの方が大きい場合があった。この結果は、試料気体203に含まれる化学物質202が濃縮されていることを表している。図16において、濃縮前のクロマトグラムのピークよりも濃縮後(ドーパントなし)のクロマトグラムのピークの方が大きかった。この結果は、試料気体203に含まれる化学物質202が濃縮されていることを表している。図16において、濃縮前のクロマトグラムのピークよりも濃縮後(ドーパントあり)のクロマトグラムのピークの方が大きかった。この結果は、試料気体203に含まれる化学物質202が濃縮されていることを表している。試料気体203へドーパント205を加えた場合は、試料気体203へドーパント205を加えない場合に比べて、より濃縮される化学物質202があった。
【0248】
また、図17は図16の分析結果の一部を拡大した図である。図17には、ドーパント205のクロマトグラムをリファレンスとして記載した。静電噴霧装置100により、試料気体203中の化学物質202を濃縮した。試料気体203へドーパント205を混合することにより、試料気体203中の化学物質202をより効率的に濃縮した。試料気体203へドーパント205を混合した場合、試料気体203の化学物質202を1250倍に濃縮した。
【0249】
回収工程では、化学物質回収部107を容器101から取り外した。取り外した化学物質回収部107をメタノールで洗浄した。
【0250】
回収工程では、化学物質202を除去するために、霧化電極部105を加熱した。霧化電極部105の加熱には、熱電素子を用いた。なお、この熱電素子は第1凝縮液生成工程において霧化電極部105を冷却した時と同一のものを用いた。霧化電極部105を加熱する時、熱電素子に加える電圧の極性は、霧化電極部105を冷却した時と反転した。
【0251】
回収工程では、化学物質202を除去するために、霧化電極部105は乾燥窒素ガスの気流下で行った。これにより迅速に霧化電極部105から化学物質202の除去を行なうことができた。乾燥窒素ガスは注入口103から導入した。
【0252】
回収工程では、化学物質回収部107の除電を行なった。除電は化学物質回収部107を接地することで行なった。
【0253】
第1帯電微粒子化工程および第2帯電微粒子化工程において、霧化電極部105と対向電極部106の間に流れる電流をモニターした。過剰な電流が流れた時には、霧化電極部105と対向電極部106の間の電圧印加を中断した。
【0254】
なお、容器101を設けた場合と、容器101を設けない場合を比較したところ、容器101を設けた方がより効率的に試料気体203を濃縮できた。
【0255】
本実施例に示すように、ネブライザガスおよび一次イオン発生用ガスを用いずとも、静電噴霧装置により、簡便かつ効率的に化学物質を濃縮できた。
【0256】
(実施例2)
本実施例では、実施例1と同じ構成要素については説明を省略する。
【0257】
本実施例において実施例1と相違する点は、ドーパント205の種類が異なる点である。本実施例において、酢酸よりも電子親和力が大きいとされる酸素をドーパント205として用いた。また、本実施例において実施例1と相違する点は、試料気体203へのドーパント205の混合方法である。試料気体203へドーパント205を混合するために、ドーパント容器を用いた。
【0258】
次に静電噴霧装置100の操作手順を説明する。
【0259】
注入工程では、試料気体203を注入口102から容器101へ注入した。試料気体203として、マウス尿からの揮発性成分を含む窒素ガスを用いた。試料気体203の調製方法は以下の通りである。まず、マウス尿0.2mLを1mLのガラス製バイアル瓶に充填する。そしてバイアル瓶には窒素ガス導入口と排出口を設けた。窒素ガス導入口から窒素ガス(純度99.99%)を導入し、マウス尿へ吹き付けた。窒素ガスは純水100mLのバブラーを通過したものを用いた。窒素ガスの流速は495sccmであった。マウス尿中の揮発性成分を含んだ窒素ガスを排出口から取り出し、試料気体203とした。
【0260】
ドーパント容器により酸素ガスを試料気体203へ混合した。酸素ガスの流量は5sccmであった。
【0261】
試料気体203およびドーパント205の温度は室温(22℃)であった。
【0262】
注入工程において試料気体203を容器101へ注入する前には、容器101の内部には乾燥窒素ガスを満たしておいた。
【0263】
注入工程において、余剰な試料気体203は排出口103を通じて排出した。
【0264】
注入工程において、容器101の内部は大気圧とした。
【0265】
第1凝縮液生成工程では、熱電素子により霧化電極部105を15℃に冷却した。
【0266】
霧化電極部105の外周面には、熱電素子を動作した5秒後に、第1凝縮液204が形成された。第1凝縮液204の形成初期段階では直径10μm以下の液滴であった。時間の経過とともに液滴は成長し、第1凝縮液204により霧化電極部105の全面が覆われた。
【0267】
次に、第1帯電微粒子化工程では、第1凝縮液204を多数の第1帯電微粒子206にした。第1帯電微粒子化工程は静電噴霧により行なった。なお、前述の実施の形態1でも述べたように、静電噴霧の初期段階で、コロナ放電が発生するが、本発明の第1帯電微粒子化工程にはこれも含めても良い。
【0268】
第1帯電微粒子206の直径は、帯電微粒子の安定性の観点から、2nm以上30nm以下であることが好ましい。第1帯電微粒子206は1個ずつ単独で存在することが好ましいが、複数個が結合していても良い。なお本発明では、第1帯電微粒子206の形状を限定しない。球形であっても良いし、扁平形であっても良いし、紡錘形であっても良い。
【0269】
霧化電極部105と対向電極部106の間にはDC5kVを印加した。霧化電極部105を陰極、対向電極部106をGND電極とした。霧化電極部105を陽極、対向電極部106をGND電極としても同様の効果が得られるが、この場合には第1帯電微粒子化工程は比較的不安定であった。
【0270】
第1帯電微粒子化工程では、霧化電極部105の先端にテーラーコーンと呼ばれる円錐形の水柱が形成された。テーラーコーンの先端から、化学物質202を含む多数の第1帯電微粒子206が放出された。テーラーコーン402の最先端すなわち電界が集中する場所から第1帯電微粒子206が放出された。本実施例では試料気体203を注入し始めてから7秒後にはテーラーコーン402が形成された。
【0271】
第1帯電微粒子化工程では、霧化電極部105と対向電極部106の間に流れる電流をモニターした。過剰な電流が流れた場合には、霧化電極部105と対向電極部106との間の電圧印加を中断または印加電圧を減少させた。
【0272】
第2帯電微粒子化工程では、第1帯電微粒子206と試料気体203を混合した。第2帯電微粒子化工程を行なうために、対向電極部106および容器101の内壁に向けて、試料気体203を衝突させた。対向電極部106および容器101の内壁へ試料気体203を衝突させることにより、第1帯電微粒子206と試料気体203を効率的に混合できる。試料気体203の容器101への注入速度は500sccmであった。
【0273】
回収工程では、化学物質回収部107へ、第1帯電微粒子206および第2帯電微粒子311を静電気力により回収した。対向電極部106に対して化学物質回収部107へ+500Vの電圧を印加した。回収工程は、注入工程、第1凝縮液生成工程、第1帯電微粒子化工程、第2帯電微粒子化工程と並行して行なった。第1帯電微粒子206および第2帯電微粒子311の寿命の観点から、第1帯電微粒子化工程と第2帯電微粒子化工程を開始後、遅くとも10分以内に回収工程を行なうことが好ましい。
【0274】
回収工程では、化学物質回収部107において、第1帯電微粒子206および第2帯電微粒子311を冷却凝縮した。化学物質回収部107の温度は15℃であった。注入工程を開始後6分後には、化学物質回収部107において1.5μLの回収液207を得た。なお、回収した帯電微粒子は、液状にすることが最も好ましいが、霧状のままでもよい。液体状にするには、帯電微粒子を冷却凝縮しても良いし、水溶液やゲルに溶解しても良い。
【0275】
回収工程では、得られた回収液207をハミルトンシリンジ(802N 25μL HAMILTON)により1μL採取した。採取した回収液207をガスクロマトグラフィ装置へ導入し、化学物質202の分析を行なった。
【0276】
ガスクロマトグラフィ装置はGC−4000(ジーエルサイエンス)を用いた。分析カラムにはキャピラリカラム(Inert Cap Pure WAX)を用いた。キャピラリカラムの内径は0.25mm、長さは30m、dfは0.25μmであった。キャリアガスはヘリウムであった。オーブン温度は開始温度40℃、昇温速度4℃/分、最終温度200℃とした。インジェクション温度および水素炎イオン化検出器(FID)温度はそれぞれ250℃とした。
【0277】
回収液207を分析した結果を図18に示す。図18において、濃縮前と記載されたクロマトグラムは、25μLの試料気体203を分析した結果であり、濃縮後(窒素100%)と記載されたクロマトグラムは、ドーパント205を試料気体203に混合せずに、静電噴霧装置100を動作させて得た1μLの回収液207を分析した結果である。また、図18において、濃縮後(窒素:酸素=99:1)と記載されたクロマトグラムは、ドーパント205を試料気体203へ混合して、静電噴霧装置100を動作させて得た1μLの回収液207を分析した結果である。
【0278】
図18において、濃縮前のクロマトグラムのピークよりも濃縮後(窒素100%)のクロマトグラムのピークの方が大きい場合があった。この結果は、試料気体203に含まれる化学物質202が濃縮されていることを表している。濃縮前のクロマトグラムのピークよりも濃縮後(窒素100%)のクロマトグラムのピークの方が大きかったが、この結果は、試料気体203に含まれる化学物質202が濃縮されていることを表している。また、濃縮前のクロマトグラムのピークよりも濃縮後(窒素:酸素=99:1)のクロマトグラムのピークの方が大きかったが、この結果は、試料気体203に含まれる化学物質202が濃縮されていることを表している。
【0279】
試料気体203へドーパント205を加えた場合は、試料気体203へドーパント205を加えない場合に比べて、より濃縮される化学物質202があった。試料気体203へドーパント205を混合した場合、試料気体203の化学物質202を1700倍に濃縮した。
【0280】
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施の形態が明らかである。したがって、上記説明は例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造および/または機能の詳細を実質的に変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0281】
本発明にかかる試料気体濃縮方法は、簡便で効率的な極微量分析が可能な質量分析装置へ適用可能である。生体分子分析装置、大気汚染物質分析装置など環境、食品、住宅、自動車、警備分野などへ利用することができる。呼気診断装置、ストレス計測器などの医療分野、ヘルスケア分野などへ利用することができる。
【符号の説明】
【0282】
1 一次イオン発生用Arガス
2 試料ガス
10 APIMS
11 質量分析部
15 イオン発生部
19 針電極
30 混合部
100 静電噴霧装置
101 容器
102 注入口
103 排出口
104 冷却部
105 霧化電極部
106 対向電極部
107 化学物質回収部
108 第2冷却部
109 供給部
110 バルブ
111 ミキサー
112a、112b バルブ
201 水蒸気
202、202a、202b 化学物質
203 試料気体
204 第1凝縮液
205 ドーパント
206 第1帯電微粒子
207 回収液
301 蝶番
302 障壁
303 放熱部
304 断熱部
305 絶縁部
306 第2絶縁部
307 第2放熱部
308 第2断熱部
309 化学物質搬送部
310 化学物質検出部
311 第2帯電微粒子
312 試料気体発生部
401 液滴
402 テーラーコーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電噴霧装置を用いた化学物質濃縮方法であって、
前記静電噴霧装置は、
容器と、
前記容器に連通する試料気体の注入口と、
前記容器の一端に設けられた冷却部と、
前記冷却部の一端に設けられた霧化電極部と、
前記容器の内部に設けられた対向電極部と、
前記容器の他端に設けられた化学物質回収部と、
前記容器に連通するドーパントの供給口とを備え、
前記試料気体は水蒸気と化学物質を含み、
前記水蒸気の露点温度以下において、前記化学物質は前記水蒸気とともに凝縮液を形成する物質であって、
前記ドーパントは前記凝縮液へ溶解する物質であって、
前記ドーパントの電気親和力は水の電子親和力よりも大きく、
前記方法は、
前記注入口から前記試料気体を前記容器へ注入する注入工程と、
前記冷却部により前記霧化電極部を冷却して、前記霧化電極部の外周面において前記試料気体を第1凝縮液にする第1凝縮液生成工程と、
前記供給口から前記ドーパントを前記容器へ供給する供給工程と、
前記ドーパントを前記霧化電極部の外周面において冷却するドーパント冷却工程と、
前記第1凝縮液へ前記ドーパントを溶解する溶解工程と、
前記霧化電極部と前記対向電極部との間に電圧を印加して、前記第1凝縮液を帯電微粒子にする帯電微粒子化工程と、
前記対向電極部と前記化学物質回収部との間に電圧を印加して、前記帯電微粒子を前記化学物質回収部へ回収する回収工程と
を包含する化学物質濃縮方法。
【請求項2】
前記ドーパントは極性有機化合物であることを特徴とする請求項1に記載の化学物質濃縮方法。
【請求項3】
前記ドーパントは有機酸であることを特徴とする請求項1に記載の化学物質濃縮方法。
【請求項4】
前記ドーパントは酢酸であることを特徴とする請求項1に記載の化学物質濃縮方法。
【請求項5】
前記ドーパントは酸素であることを特徴とする請求項1に記載の化学物質濃縮方法。
【請求項6】
前記第1凝縮液中の前記ドーパントの濃度は、前記第1凝縮液中の前記化学物質の濃度よりも高いことを特徴とする請求項1に記載の化学物質濃縮方法。
【請求項7】
前記容器は試料気体が衝突する位置に障壁を備えることを特徴とする請求項1に記載の化学物質濃縮方法。
【請求項8】
前記試料気体は極性有機溶媒を含むことを特徴とする請求項1に記載の化学物質濃縮方法。
【請求項9】
前記化学物質は極性有機化合物であることを特徴とする請求項1に記載の化学物質濃縮方法。
【請求項10】
前記化学物質は揮発性有機化合物であることを特徴とする請求項1に記載の化学物質濃縮方法。
【請求項11】
前記帯電微粒子を赤外光により加熱することを特徴とする請求項1に記載の化学物質濃縮方法。
【請求項12】
前記容器は光導波路を備えることを特徴とする請求項1に記載の化学物質濃縮方法。
【請求項13】
前記静電噴霧装置に化学物質検出部を設けることを特徴とする請求項1に記載の化学物質濃縮方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2012−516991(P2012−516991A)
【公表日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−547393(P2009−547393)
【出願日】平成21年9月8日(2009.9.8)
【国際出願番号】PCT/JP2009/065985
【国際公開番号】WO2010/095298
【国際公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】