説明

成膜装置及び成膜方法

【課題】高い解像度を有し、かつ生産性が高い有機EL発光装置等の装置を製造するための成膜装置を提供する。
【解決手段】マスク部材11と、マスク部材11を固定するフレーム12と、からなるマスクユニット10と、マスクユニット(10)1基に対して1組設けられるアライメント機構と、を備え、マスク部材11が、複数組の開孔パターン13aが並列して設けられてなる開孔部13を有し、前記アライメント機構により、複数の成膜領域がマトリクス状に設けられている一枚の基板1に対して複数のマスクユニットが互いに干渉されることなく配置され、成膜時においてマスクユニット10を交換し又は移動することなく、一括して薄膜を成膜することを特徴とする、成膜装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜装置及びこの成膜装置を用いた成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
所定波長の光を選択的に発光させる有機EL発光素子を複数配列してなる平面型の表示装置(有機ELディスプレイ)が現在注目されている。
【0003】
有機ELディスプレイは、通常、真空薄膜成膜技術を用いて形成している。ただし、有機ELディスプレイを作製する際には、透明ガラス等の基板上に複数の有機EL発光素子を縦横かつマトリクス状に配列する必要がある。このことから、有機ELディスプレイを作製するにあたって、特定の発光色を有する有機EL素子を所定の領域に形成する際には微細なパターニングを行うことが必須となる。特に、カラー画像を表示させるための有機ELディスプレイを作製する際には、例えば、赤(R)・緑(G)・青(B)の各色成分に対応したパターニング成膜を行って、各色の有機EL発光素子を決められた領域に選択的に形成する必要がある。
【0004】
しかし、マスクの精度やマスクと基板の位置合わせを行うアライメントの精度は基板やマスクのサイズが大きくなると悪化する傾向にある。
【0005】
さらに、真空薄膜成膜技術の蒸着成膜おいては、基板やマスクのサイズが大きくなると蒸着源の温度による基板やマスクの変形も大きくなる傾向にある。
【0006】
近年、上記課題を解決すべく様々な提案がなされている、例えば、特許文献1のように少なくとも2枚の単位マスクを開孔部が形成されたフレームに固定させてなるマスクを使用し基板全面に薄膜を形成する方法が提案されている。尚、特許文献1にて開示されている単位マスクには、長手方向に少なくとも1つの単位マスキング部(1組のマスク開孔部)が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−217850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし特許文献1にて提案されている方法では、個々の単位マスクをフレームに固定する際の位置精度が基板全面でのパターン配列精度に依存する。このため、単位マスクが多ければ多いほど基板全体でみると必要なマスク精度が得られないことがあるという課題があった。
【0009】
本発明は上述した課題を解決するためになされるものであり、その目的は、高い解像度を有し、かつ生産性が高い有機EL発光装置等の装置を製造するための成膜装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の成膜装置は、マスク部材と、前記マスク部材を固定するフレームと、からなるマスクユニットと、
前記マスクユニット1基に対して1組設けられるアライメント機構と、を備え、
前記マスク部材が、複数組の開孔パターンが並列して設けられてなる開孔部を有し、
前記アライメント機構により、複数の成膜領域がマトリクス状に設けられている一枚の基板に対して複数のマスクユニットが互いに干渉されることなく配置され、
成膜時において前記マスクユニットを交換し又は移動することなく、一括して薄膜を成膜することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高い解像度を有し、かつ生産性が高い有機EL発光装置等の装置を製造するための成膜装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の成膜装置における第一の実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1の成膜装置を構成するマスクユニットの具体例を示す断面模式図である。
【図3】基板に対するマスクユニットの配置態様の具体例を示す平面図であり、(a)は配置態様の全体図であり、(b)は、(a)のX領域における拡大図である。
【図4】基板に対するマスクユニットの配置態様の他の具体例を示す平面図であり、(a)は配置態様の全体図であり、(b)は、(a)のY領域における拡大図である。
【図5】本発明の成膜装置における第二の実施形態の例を示す斜視図である。
【図6】基板に対するマスクユニットの配置態様の他の具体例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の成膜装置は、マスクユニットと、アライメント機構と、を備えている。本発明の成膜装置において、マスクユニットは、マスク部材と、このマスク部材を固定するフレームと、からなる部材である。また本発明の成膜装置において、アライメント機構は、マスクユニット1基に対して1組設けられる。このように、本発明の成膜装置は、マスクユニット毎にアライメントが可能であるので、特許文献1等の従来技術と比較して所望のパターン形状を有する薄膜を精度の高い状態で成膜することができる。
【0014】
本発明において、上記マスク部材は、複数組の開孔パターンが並列して設けられてなる開孔部を有している。本発明において、開孔部を構成し一定の方向で並列している開孔パターンの列(フレームに固定されていないスク部材の辺に対して垂直の方向の配列)の数は、薄膜を成膜する基板に含まれる成膜領域の列の数(基板の長尺に配列された成膜領域の数)未満であれば特に限定されない。その中でも、精細度を上げるという観点より、当該列の数は少ない方が好ましい。開孔パターンの列の数が1である場合が最も好ましい。
【0015】
本発明の成膜装置は、上記アライメント機構により、複数の成膜領域がマトリクス状に設けられている一枚の基板に対して複数のマスクユニットが互いに干渉されることなく配置されている。
【0016】
そして本発明の成膜装置は、成膜時においてマスクユニットを交換したり移動させたりすることなく、一括して薄膜を成膜する装置である。
【0017】
本発明の成膜装置は、上述した構成を有することにより、従来の真空薄膜成膜方法、特に、蒸着成膜方法を用いた高精細高精度パターニングと比較して、1枚の基板について1層の薄膜を成膜する回数を1回で済ますことができる。また本発明の成膜装置を利用することで、材料の使用効率が2倍以上向上すると共に、生産性も2倍以上向上させることができる。
【0018】
尚、本発明ではマスクユニットが有するフレームは、マスク部材を固定するマスク部材固定部を少なくとも二つ有していると共に、このマスク部材固定部を支持する支持部と、を有し、この支持部が、基板を隔てて蒸着源とは反対側に設けられているのが好ましい。このようにフレームを、基板を隔てて蒸着源とは反対側に設けることで、マスクユニットをより細密に配列させることが可能になる。
【0019】
また本発明は、好ましくは、フレームに固定されていないマスク部材の辺に対して垂直の方向において、このマスク部材の端部と前記開孔部との距離は、隣接するマスクユニット間にそれぞれ設けられ、かつ互いに隣接する二組の成膜領域の間隔の半分以下である。
【0020】
以下、適宜図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。尚、以下の説明において参照される図面は、説明の都合上、全部又は一部が実際とは異なる縮尺で描かれていることがある。また以下の説明はあくまでも本発明の実施形態の1つを説明するものであって、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0021】
図1は、本発明の成膜装置における第一の実施形態を示す斜視図である。図1の成膜装置には、基板1の成膜面に所望の形状の薄膜を成膜するための装置であって、マスクユニット10と、蒸着源20と、アライメント機構(不図示)と、を有している。
【0022】
図1の成膜装置の構成部材であるマスクユニット10は、マスク部材11と、このマスク部材11を固定するためのフレーム12と、からなる部材である。
【0023】
ここでマスクユニット10に含まれるマスク部材11は、短冊状の金属薄膜からなる部材であって、複数組の開孔パターン13aが並列して設けられてなる開孔部13を有している。尚、開孔パターン13aが設けられている領域は、基板1上にマトリクス状に設けられている成膜領域2のうち特定の行に配列されている成膜領域に対応する。
【0024】
マスク部材11の構成材料は、開孔部13の形成方法によって適宜選択することができる。
【0025】
開孔部13の形成方法としては、例えば、電鋳による加工方法があり、この加工方法を用いれば開孔部13の加工精度を高めることができる。ここで電鋳によって開孔部13を形成する場合、マスク部材11の材質としては、Cr、Ni等の金属材料がある。
【0026】
またエッチングによる加工によっても開孔部13を形成することができる。エッチングによって開孔部13を形成する場合、マスク部材11の材質としては、熱膨張率の小さな金属、例えばインバーやスーパーインバーを用いることができる。しかし、開孔部13の形成方法はこれらに限定されることはない。
【0027】
またマスクユニット10に含まれるフレーム12は、マスク部材11と接合している2個のマスク部材固定部14と、このマスク部材固定部14を支持する2個の支持部15と、からなる。図1の成膜装置において、マスク部材固定部14は、2箇所ある短冊状のマスク部材11の短辺側の縁部と1個ずつ接合している。またマスク部材固定部14は、2本の支持部15によってそれぞれ固定されている。ここで図1中のフレーム12は、2本の支持部15によってフレームとしての剛性を有している。
【0028】
ところで図1の成膜装置では、マスクユニット10を構成するマスク部材11は、蒸着源20と基板1との間に位置している。一方、マスクユニット10を構成するフレーム12は、基板1を基準として見たときに蒸着源20とは反対側に位置している。
【0029】
マスクユニット10の成膜精度を向上させる為には、フレーム12の剛性はある程度必要となる。一方で、本発明の成膜装置は、複数のマスクユニット10を使用して、1枚の基板1にマトリクス状に設けられている成膜領域2について一括して成膜を行う。このため、マスクユニット10の数の分だけフレーム12も複数組必要となる。そこで、マスクユニット10を構成するフレーム12を、薄膜の成膜に支障をきたさない構成にするのが好ましい。例えば、図1に示すように、フレーム12を、基板1を挟んで蒸着源20とは反対側に設ける構成にすると、フレーム12が成膜の妨げとならないので、好ましい。
【0030】
尚、フレーム12を構成するマスク部材固定部14の幅は、隣接する2基のマスクユニットが互いに干渉しなければ特に限定されるものではない。その中でも、マスク部材11の短辺よりも短い方がマスクユニット10同士の設置間隔を狭めることができるので好ましい。
【0031】
図2は、図1の成膜装置を構成するマスクユニットの具体例を示す断面模式図である。マスクユニット10を構成し、マスク部材11と接合するマスク部材固定部14の断面形状は、例えば、図2(a)に示される断面I字型構造、図2(b)及び(c)に示される断面L字型構造等が挙げられる。ただしマスク部材固定部14によってマスク部材11が固定できるのであれば、マスク部材固定部14の断面形状は特に限定されるものではない。ここでマスク部材固定部14の断面形状が、図2(a)に示される断面I字型構造である場合、マスク部材11はマスク部材固定部14の底面と接合する。一方で、マスク部材固定部14の断面形状が、図2(b)、(c)に示される断面L字型構造である場合、マスク部材11は、図2(b)で示されるマスク部材固定部14の軒部又は図2(c)で示されるマスク部材固定部14の底面で接合する。
【0032】
図2(a)乃至(c)において、マスク部材固定部14にマスク部材11を固定する方法は、一般的に、スポット溶接が用いられるがこれに限定されるものではない。また、固定強度が必要な場合は、例えば、図2(c)に示されるように、スポット溶接後マスク部材固定部14にマスク部材11側から添え板16を当ててボルト17で留めてもよい。
【0033】
マスク部材固定部14と支持部15とを有するフレーム12の材質は、SUSやアルミ等の金属材料を用いることができるが、熱膨張率の小さな金属を用いれば、熱安定性が向上し、高精度なパターニングが可能であるので好ましい。例えば、インバーやスーパーインバー等を用いることができる。
【0034】
尚、図2に示されるように、フレーム12を、基板1を隔てて蒸着源20とは反対側に設けると、マスクユニットをより細密に配列させることが可能になるので、好ましい。
【0035】
ところで、図1の成膜装置は、1枚の基板1に対して2基のマスクユニット10が使用されているが、本発明の成膜装置において使用されるマスクユニット10の数はこれに限定されるものではない。一般的に、m行n列の表示領域が設けられている基板について複数組の開孔パターンが1行並列しているマスク部材を有するマスクユニットを使用して所望のパターンを有する薄膜を形成する場合は、表示領域の行の数(m)の分だけマスクユニットを配置する。尚、この場合において、マスク部材が有する開孔パターンの数は、表示領域の列の数でもあるn(個)である。
【0036】
本発明の成膜装置は、マスクユニット1基に対して1組のアライメント機構(不図示)を有している。このため、成膜の際に使用される複数のマスクユニットは、それぞれ個別に基板に対してアライメントを行うことができる。このように、本発明の成膜装置は、マスクユニット毎に個別にアライメントが可能であるので、所望のパターン形状を有する薄膜を精度の高い状態で成膜することができる。ここでマスクユニットのアライメントを行う場合は、使用されるマスクユニットがお互いに干渉しないようにすることが必要である。尚、ここでいう「干渉」とは、隣接するマスクユニットが互いに接触しないことをいう。
【0037】
図3は、基板に対するマスクユニットの配置態様の具体例を示す平面図あり、(a)は配置態様の全体図であり、(b)は、(a)のX領域における拡大図である。尚、図3において配置されているマスクユニットは、図1にて示されるマスクユニットと同様である。
【0038】
複数用意されたマスクユニット10は、それぞれアライメント機構(不図示)によって、例えば、図3(a)に示されるように行方向に配置される。ここでマスクユニット10を配置する際には、例えば、マスク部材11が有するアライメントマーク18と、基板1が有するアライメントマーク(不図示)と、が合致するようにアライメント機構を操作して位置あわせを行う。尚、マスク部材11が有するアライメントマーク18は、マスク部材11とフレーム12とが接合している領域、例えば、図1にて示される短冊状のマスク部材10の長手方向の両端部あるいは当該両端から一定の距離を置いたところに設けられる。
【0039】
またマスクユニット10を配置する際には、列方向(フレームに固定されていないスク部材の辺に対して垂直の方向)において互いに隣接する成膜領域2の間隔の半分d1と、列方向における開孔部13の端部とマスク部材11の端部との距離d2と、を適宜設定するのが好ましい。具体的には、d1≧d2であることが好ましい。これにより、隣接するマスクユニット10がそれぞれ有するマスク部材11同士の干渉を防ぐことができる。
【0040】
さらに図3(a)に示されるようにマスクユニット10を配置することにより、一枚の基板1に対して複数のマスクユニット10が一体化して接することになるので、マスクユニット10自体を交換させることなく、一括して成膜を行うことができる。
【0041】
図4は、基板に対するマスクユニットの配置態様の他の具体例を示す平面図あり、(a)は配置態様の全体図であり、(b)は、(a)のY領域における拡大図である。尚、図4は、隣接する2基のマスクユニット10間に遮光部材30が設けられていることを除けば図3と同様の態様である。
【0042】
ところで、隣接する2枚のマスク部材間には隙間があるので、この隙間から蒸着材料が流入し薄膜が成膜されることがある。ただ隣接する2枚のマスク部材間は切断領域等の不要部分であり、特に問題にはならないが、開孔部13を遮蔽しない程度にリボン状の遮蔽部材30を用いて隣接するマスク部材間に生じる隙間を遮蔽してもよい。また基板1の両短辺部も同様に遮蔽板31を用いて成膜汚れを防止してもよい。
【0043】
マスクユニット10を設置した後、所望のパターン形状の薄膜を基板1上に成膜する場合、薄膜の成膜方法として、例えば、蒸着法が採用される。ここで蒸着法を採用して薄膜を形成する場合、具体的に蒸着方法においては、膜厚の均一性と材料使用効率や生産性を考慮して、いろいろな方法が提案されている。特に、限定されることはないが、例えば、図1に示されるように、ポイント蒸着源(蒸着源20)を2つ用いて、蒸着源を移動させるパラレルショット方式を用いてもよい。これにより、膜厚が均一な薄膜を成膜することができる。
【0044】
図5は、本発明の成膜装置における第二の実施形態の例を示す斜視図である。図5の成膜装置に備えられるマスクユニット10aは、図1の成膜装置に備えられるマスクユニット10と比較して、マスク部材11とフレーム12との配置関係が異なっている。具体的には、開孔部13を有するフレーム12上にマスク部材11が、マスク部材11の短辺側縁部をフレーム12に接合する形式で固定されている。図5の成膜装置も、図1の成膜装置と同様に、基板1をマスク部材11上に載置させて成膜を行うため、図5の成膜装置に含まれるマスクユニットを構成するフレーム12は、基板1に対して、蒸着源と同じ側に配置されることになる。
【0045】
ここで図5の成膜装置に含まれるマスクユニット10aは、図6に示されるように、1枚の基板1に対して複数基のマスクユニット10aが配列される。ここでマスクユニット10aを配列する際には、マスク部材11の所定の位置に設けられるアライメントマーク18と、基板10の所定の位置に設けられるアライメントマーク(不図示)と、を合わせて位置合わせを行う。マスク部材11が有するアライメントマーク18が設けられている位置は、例えば、図6に示されるように、マスク部材11とフレーム12とが接合している領域から一定の距離を置いたところに設けられる。例えば、図6にて示される短冊状のマスク部材10の長手方向の両端部あるいは当該両端から一定の距離を置いたところに設けられる。
【0046】
ただし図6に示される態様は、あくまでも具体例の1つであって、本発明はこの態様に限定されるものではない。
【0047】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0048】
(1)基板
まず大きさが第4世代のガラス基板の1/4サイズであるガラス基板内にTFTが形成されたTFT基板(基板1)を作製した。尚、作製したTFT基板には、326ppiで3.5インチのパネルとなる表示領域が、縦に6行、横に4列の合計24面配置されており、TFT回路はこれら表示領域に対してそれぞれ1組設けられている。
【0049】
(2)有機EL素子の形成工程
次に、用意したTFT基板(基板1)上に、以下に説明する方法赤緑青(RGB)の三色の有機EL素子を形成した。
【0050】
まず全ての有機EL素子において共通する層である正孔輸送層(HTL)を、開孔の大きさが表示領域1つに相当する蒸着マスクを用いて形成した。
【0051】
次に、図5に示される成膜装置を使用してR発光層(R−EML)を形成した。尚、本実施例では、図6に示されるように、6組の開孔パターンを1列にて並列配列させたマスク部材11を有するマスクユニット10aを4基使用し、それぞれ基板1のアライメントマークに対して各マスクユニットのアライメントマークを重ねた。これにより表示領域2の列方向に合わせるようにして4基のマスクユニット10aを設置した。このとき、各マスクユニット10aが有するスリット開孔(開孔部13)は、矩形状の発光領域の短辺と平行になる。また本実施例で使用したマスクユニット10aは、マスク部材11として、厚さ40μmの熱安定性の良いインバー薄板を使用した。さらに本実施例で使用したマスクユニット10aは、フレーム12の短手方向の長さを成膜領域の長辺ピッチ以下にして、マスクユニット10a同士がアライメント時及び成膜時に干渉しないようにした。これにより、マスクユニット10aを配列するときに隣接するマスクユニット同士が重なり合うことがない。また隣接するマスクユニット間は一定の幅で隙間があるため、基板1には不要な膜(材料)が付着するが表示領域2ごとに基板1を切断する際に基板とともに除去される。
【0052】
以上のようにしてマスクユニット10aを設置し、4基のマスクユニット10a上にTFT基板(基板1)を載せた後、一括蒸着でR発光層を成膜した。
【0053】
次に、G発光層(G−EML)の形成領域に開孔部を有するマスクユニットを使用し、R発光層と同様の方法でG発光層を形成した。次に、B発光層(B−EML)の形成領域に開孔部を有するマスクユニットを使用し、R発光層と同様の方法でB発光層を形成した。
【0054】
三種類の発光層(R発光層、G発光層、B発光層)を形成した後、全ての有機EL素子において共通する層である電子輸送層(ETL)と電子注入層とをこの順で形成した。次に、スパッタ成膜法により、イリジウム亜鉛酸化物を成膜しカソードとなる薄膜を形成した。
【0055】
最後にCVD成膜法を用いて、SiN膜の封止膜を形成し、表示領域ごとに基板1を切断することにより有機発光装置を得た。
【0056】
尚、本実施例では、従来のステップ蒸着による材料の使用量の半分で成膜することができた。
【実施例2】
【0057】
(1)基板
まず大きさが第4世代のガラス基板の1/4サイズであるガラス基板内にTFTが形成されたTFT基板(基板1)を作製した。尚、作製したTFT基板には、326ppiで3.5インチのパネルとなる表示領域が、縦に5行、横に6列の合計30面配置されており、TFT回路はこれら表示領域に対してそれぞれ1組設けられている。
【0058】
(2)有機EL素子の形成工程
次に、用意したTFT基板(基板1)上に、以下に説明する方法により赤緑青(RGB)の三色の有機EL素子を形成した。
【0059】
まず全ての有機EL素子において共通する層である正孔輸送層(HTL)を、開孔の大きさが表示領域1つに相当する蒸着マスクを用いて形成した。
【0060】
次に、図1に示される成膜装置を使用してR発光層(R−EML)を形成した。尚、本実施例では、図4に示されるように、6組の開孔部を1列にて並列配列させたマスク部材11を有するマスクユニット10を5基使用し、それぞれ基板1のアライメントマークに対して各マスクユニットのアライメントマークを重ねた。これにより表示領域2の列方向に合わせるようにして5基のマスクユニット10を設置した。このとき、各マスクユニット10が有するスリット開孔(開孔部13)は、矩形状の発光領域の短辺と平行になる。また、本実施例で使用したマスクユニット10は、マスク部材11として、厚さ40μmの熱安定性の良いインバー薄板を使用し、このマスク部材11を、基板1を挟んで蒸着源20とは反対側に設けられているフレーム12にて固定した。より具体的には、マスク部材11は、フレーム12を構成するマスク部材固定部14と接合している形で固定されている。ここで本実施例ではフレーム12の短手方向の長さを成膜領域の長辺ピッチ以下にして、マスクユニット10同士がアライメント時及び成膜時に干渉しないようにした。これにより、マスクユニット10を配列するときに隣接するマスクユニット同士が重なり合うことがない。また隣接するマスクユニット間は一定の幅で隙間があるため、本実施例では、この隙間から蒸着材料が進入しないように、図4に示されるように遮蔽部材30及び遮蔽板31を設置した。
【0061】
以上のようにしてマスクユニット10を設置し、5基のマスクユニット10上にTFT基板(基板1)を載せた後、一括蒸着でR発光層を成膜した。
【0062】
次に、G発光層(G−EML)の形成領域に開孔部を有するマスクユニットを使用し、R発光層と同様の方法でG発光層を形成した。次に、B発光層(B−EML)の形成領域に開孔部を有するマスクユニットを使用し、R発光層と同様の方法でB発光層を形成した。
【0063】
三種類の発光層(R発光層、G発光層、B発光層)を形成した後、全ての有機EL素子において共通する層である電子輸送層(ETL)と電子注入層とをこの順で形成した。次に、スパッタ成膜法により、イリジウム亜鉛酸化物を成膜しカソードとなる薄膜を形成した。
【0064】
最後にCVD成膜法を用いて、SiN膜の封止膜を形成し、表示領域ごとに基板1を切断することにより有機発光装置を得た。
【0065】
尚、本実施例では、実施例1と比較して生産効率が25%向上した。
【符号の説明】
【0066】
1:基板、2:成膜領域、10(10a):マスクユニット、11:マスク部材、12:フレーム、13:開孔部、14:マスク部材固定部、15:支持部、18:アライメントマーク、20:蒸着源、30:遮光部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスク部材と、前記マスク部材を固定するフレームと、からなるマスクユニットと、
前記マスクユニット1基に対して1組設けられるアライメント機構と、を備え、
前記マスク部材が、複数組の開孔パターンが並列して設けられてなる開孔部を有し、
前記アライメント機構により、複数の成膜領域がマトリクス状に設けられている一枚の基板に対して複数のマスクユニットが互いに干渉されることなく配置され、
成膜時において前記マスクユニットを交換し又は移動することなく、一括して薄膜を成膜することを特徴とする、成膜装置。
【請求項2】
前記フレームが、前記マスク部材を固定する少なくとも二つのマスク部材固定部と、前記マスク部材固定部を支持する支持部と、を有し、
前記マスク部材が、前記マスク部材固定部に固定され、
前記支持部が、前記基板を隔てて蒸着源とは反対側に設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記フレームに固定されていない前記マスク部材の辺に対して垂直の方向において、前記マスク部材の端部と前記開孔部との距離が、隣接するマスクユニット間にそれぞれ設けられ、かつ互いに隣接する二組の成膜領域の間隔の半分以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の成膜装置。
【請求項4】
複数組の開孔パターンが並列して設けられてなる開孔部を有するマスク部材と、前記マスク部材を固定するフレームと、からなるマスクユニットを複数用意し、
前記マスクユニット1基に対して1組設けられるアライメント機構によって、複数の成膜領域がマトリクス状に設けられている一枚の基板に対して複数の前記マスクユニットをそれぞれ互いに干渉されることなく配置させ、
成膜時において前記マスクユニットを交換し又は移動することなく、一括して薄膜を成膜することを特徴とする、成膜方法。
【請求項5】
前記フレームが、前記マスク部材を固定する少なくとも二つのマスク部材固定部と、前記マスク部材固定部を支持する支持部と、を有し、
前記マスク部材が、前記マスク部材固定部に固定され、
前記支持部が、前記基板を隔てて蒸着源とは反対側に設けられていることを特徴とする、請求項4に記載の成膜装置。
【請求項6】
前記フレームに固定されていない前記マスク部材の辺に対して垂直の方向において、前記マスク部材の端部と前記開孔部との距離が、隣接するマスクユニット間にそれぞれ設けられ、かつ互いに隣接する二組の成膜領域の間隔の半分以下であることを特徴とする、請求項4又は5に記載の成膜装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−112854(P2013−112854A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260416(P2011−260416)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】