説明

おが粉乾燥装置

【課題】おが粉乾燥用のビンにおいて堆積したおが粉の抵抗により排出オーガーの走行が停止し排出が停滞することなく、安定した排出を可能とするおが粉乾燥装置を提供する。
【解決手段】多孔通気床面2上にビンの中心aを支点として多孔通気床面2上を周回可能なおが粉排出用オーガー6を載置し、ビン上方の内壁面にはビンの中心aを支点として架台21上を周回走行する駆動装置11を設けていて駆動装置11とおが粉排出用オーガー6はロッド12によって連接しておく。従って駆動装置11を走行させることによりロッド12を介しておが粉排出用オーガー6の車輪台9を下に押さえつける力と進行方向に押す力が同時に作用しておが粉排出用オーガー6がおが粉に乗りあがることなく多孔通気床面2の上面を確実に周回できるようにし滞りなく排出できるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒状のおが粉乾燥用のビンからなるおが粉(大鋸粉)乾燥装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
おが粉は丸太材などの製材に伴って発生するものであるが、従来より堆肥の材料、畜舎の敷料、キノコの栽培床などに利用されており、特に近年においては地球環境保護や化石燃料の代替燃料として広く活用されるようになっている。
【0003】
丸太材の製材工程で発生するおが粉は利用先の各方面に搬送され保管されるが水分を多く含んでいるのでそのままでは腐食してしまうため多くの場合、貯留保管が可能な水分まで乾燥する必要がある。
【0004】
おが粉の乾燥装置としてはおが粉の堆積層に通風して乾燥する方式や攪拌或は循環させながら通風して乾燥する方式のものがあり、円筒状のビンからなるものも種々知られている(特開2001−153561公報、特開平5−187770号公報、特開平8−130975号公報、特開平8−85630号公報、特開平8−67346号公報参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2001−153561公報
【特許文献2】特開平5−187770号公報
【特許文献3】特開平8−130975号公報
【特許文献4】特開平8−85630号公報
【特許文献5】特開平8−67346号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
おが粉を排出する際におが粉排出オーガーの螺旋体を回転させてビンの中央部の排出口へおが粉を搬送しながら通気床面上を周回走行させる場合に、堆積し固まったおが粉が周回走行の抵抗となり、更に螺旋体の回転によっておが粉排出用オーガーが浮上がり勝手になり螺旋体の軸端部にある周回走行用車輪が空回り状態となって周回走行が停止して排出ができなくなるという不都合が指摘されていた。
【0007】
そこで本発明は、ビン上方の内壁に沿って一周する無限軌道を設けてその上を走行する駆動装置の下面とおが粉排出オーガーの背面側に設けた車輪台上面をロッドで連接し、前記駆動装置を無限軌道上を走行させてロッドを介して押すことによっておが粉排出オーガーを多孔通気床面に押付けながら周回方向へ走行させるようにしたおが粉乾燥装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明は請求項1ないし7に係るおが粉乾燥装置を提供する。すなわち、請求項1に係るおが粉乾燥装置は、通気床面により区画して下方を通気室とし上方におが粉貯留室を形成してなるおが粉乾燥用のビンにおいて、多孔通気床面の中心を支点として多孔通気床面上を周回可能に構成したおが粉排出オーガーを備え、ビン上方には内壁に沿って一周する無限軌道上を周回走行し、おが粉排出オーガーをロッドを介して多孔通気床面上に押さえつけながら周回させるための駆動装置を設けていることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の請求項2に係るおが粉乾燥装置は、請求項1に記載のおが粉乾燥装置において、駆動装置の下面の窪みにはロッドの上端を挿入し駆動装置の進行方向に向けて斜め下向きに取付けられ、ロッドの下端はおが粉排出オーガーに設けた車輪台上面の窪みに挿入されていることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の請求項3に係るおが粉乾燥装置は、請求項1又は2に記載のおが粉乾燥装置において、ビンの内壁に沿って一周する無限軌道は、ビンの内壁面に沿ってフープ状に固定された上面が水平な架台上にローラーチェンをビンの中心を支点とする円形のエンドレス状に取り付けたことを特徴とするものである。
【0011】
本発明の請求項4に係るおが粉乾燥装置は、請求項1、2又は3に記載のおが粉乾燥装置において、無限軌道上の駆動装置はビン中心を支点として周回可能なように壁面に向けて水平に延設された梁材の先端に固定され、駆動装置の走行によりビンの中心を支点として周回することを特徴とするものである。
【0012】
本発明の請求項5に係るおが粉乾燥装置は、請求項1、2、3、又は4に記載のおが粉乾燥装置において、ロッドはその上端を駆動装置の下面にある穴から窪みに挿入して抜け止めを施し、下端はおが粉排出オーガーの端部近傍の車輪台上にある穴から窪みに挿入しておくことを特徴とするものである。
【0013】
本発明の請求項6に係るおが粉乾燥装置は、請求項1、2、3、4又は5に記載のおが粉乾燥装置において、おが粉排出オーガーの先端部近傍の背面には車輪台を備え、複数の車輪を周回方向に一列または複数列に配列して排出オーガーを支えるとともに、車輪台の上面の後端(最後輪の略上方)にロッドの下端を挿入するための穴と窪みを設けてあることを特徴とするものである。
【0014】
本発明の請求項7に係るおが粉乾燥装置は、請求項1、2、3、4、5又は6に記載のおが粉乾燥装置において、おが粉排出オーガーを周回させるための駆動装置は走行と停止を間歇的に繰り返す様に、即ち断続運転をする様に制御できることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ビン上方の内壁に沿って一周する無限軌道を設けてその上を走行する駆動装置の下面とおが粉排出オーガーの背面側に設けた車輪台上面をロッドで連接し、前記駆動装置を無限軌道上を走行させてロッドを介して押すことによっておが粉排出オーガーを多孔通気床面に押付けながら周回方向へ走行させるとともに前記駆動装置を断続運転しおが粉排出オーガーの走行を一時停止することによって走行抵抗が無い状態とし、更に前方に堆積したおが粉の層の崩れた分を回転螺旋体が床面中央の排出口へ搬送し終えた時点で再びおが粉排出オーガーの走行が開始されるため、駆動装置の過負荷によるトラブルを防ぐことができ、安定したおが粉の排出を継続できる。尚、駆動装置の走行と停止は時間の設定によるが、回転螺旋体の負荷電流を検知して駆動装置の走行と停止を制御することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は本発明の実施の形態に係るビン内部の構成を示す概略図、図2は本発明の実施の形態に係るおが粉乾燥装置の断面図、図3はビン内部の部分平面図、図4は要部の側面図、図5は駆動装置の部分断面図である。
【0017】
図1において、多孔通気床面2上にビンの中心aを支点として多孔通気床面2上を周回可能なおが粉排出用オーガー6が載置され、ビン上方の内壁面にはビンの中心aを支点として架台21上を周回走行する駆動装置11が設けられていて駆動装置11とおが粉排出用オーガー6はロッド12によって連接されている。従って、駆動装置11を走行させることによりロッド12を介しておが粉排出用オーガー6の車輪台9を下に押さえつける力と進行方向に押す力が同時に作用しておが粉排出用オーガー6がおが粉bに乗りあがることなく多孔通気床面2の上面を確実に周回できるように構成されている。
【0018】
図2において1はおが粉乾燥ビンであって、多孔通気床面2で上下に区分され上部がおが粉貯留室3、下部が通気室4となっていて、通気室4からの通風により多孔通気床面2上に貯留されたおが粉bが乾燥されるように構成されている。また通気室4にはおが粉bを機外に搬出する搬送機5を備え、多孔通気床面2の上面には多孔通気床面2の中央部に駆動源と周回の支点を持つおが粉排出用オーガー6が設けられていて螺旋体の回転によって多孔通気床面2の略中央部の落し口27に搬送されたおが粉bは搬送機5内に落下して機外に搬出されるように構成されている。
【0019】
またおが粉排出用オーガー6のカバープレート7のビン壁面寄りには後方に向けて車輪台9が取付けられ、車輪台9には複数の車輪10が2列(複列)で並列に備えられていておが粉排出用オーガー6の端部を支えている。
【0020】
また図3に示すように、ビン内壁面8の上方にはビンの中心を支点として壁面に沿って設けられた架台21上に固定されたチェン18による無限軌道上をスプロケット16によって周回走行する駆動装置11を備えていて、この駆動装置11と前記車輪台9とをロッド12で連接し、前記駆動装置11が周回走行することによってロッド12を介しておが粉排出用オーガー6を後方より押しながら周回させるように構成されている。
【0021】
また図4に示すように、駆動装置11の下面にはロッド12の上端cを挿入するための穴13と窪み14を備え、またおが粉排出用オーガー6の車輪台9の後端寄りの上面にはロッド12の下端dを挿入するための穴13´と窪み14´を備えていて、穴13、13´の大きさにはロッド12の上端c及び下端dの太さに対して隙間を設けてゆとりを持たせてあり、おが粉排出運転中にロッド12にブレが生じてもロッド12の上端c及び下端dが移動して追随できるように配慮されている。またスプロケット16の進行方向の直近にはチェン18に接するようにブラシ17を設けてチェン18に堆積したおが粉や埃を除去するように構成されている。尚、本発明の実施例ではロッド12の取付け角度は水平に対して略45度であるが被乾燥材料の状況により角度の変更が可能なように構成されている(図示せず)。
【0022】
またロッド12の上端cは駆動装置11の下面の穴13から窪み14に挿入しロッド12の上端面を座板15に当接して、穴13から抜け落ちないように窪み14の中でロッド12にピン19を取付け、ロッド12の下端dはおが粉排出用オーガー6の車輪台9の後端上面にある穴13´から窪み14´に挿入してロッド12の下端面を座板15´に当接しておくことにより駆動装置11とおが粉排出用オーガー6の車輪台9が連接されている。尚、おが粉排出運転中においてロッド12を介して車輪台9に向かって押す力のみが作用するため車輪台9からロッド12が脱落することが無いようになっている。
【0023】
また、図2に示すようにビン上方で中心aを支点として回動可能なように水平に延設された梁25の先端は無限軌道上を走行する駆動装置11と接続されていて、駆動装置11の走行によりビンの中心aを支点として駆動装置11とともに回動するように構成されている。尚梁25の回動の中心部はビン壁面の略最上部に設けられた固定梁26に懸架されている。
【0024】
図5に示すように駆動装置11はモーターベース22上に固定したモ−ター23の軸に取付けたスプロケット16がビンの上方内壁面全周に渡って複数のブラケット20で固定された架台21上に設けたローラーチェン18からなる無限軌道に載置され、更にモーターベース22の側面に沿って備えた複数のローラー24の上面が架台21の下面直近になるように配置し、おが粉排出用オーガー6の周回の抵抗によって下からロッド12で押された場合でも前記ローラー24が架台21の下面に当るためスプロケット16が浮き上がって空回りしたり脱輪することなく確実に走行できるものである。
【0025】
尚、従来はオーガーの巻き方向、回転方向が限定されていたが本発明のおが粉乾燥装置1においては従来のオーガー軸の端末に設けられた周回用車輪を廃止しておが粉排出用オーガー6の後部をビンの斜め上方からロッド12で押して周回させるようにしたため限定する必要がない。即ち左巻きであれば軸端から見て時計方向、右巻きであれば反時計方向に回転させることが可能である。
【0026】
本発明の実施の形態に係るおが粉乾燥装置1において、おが粉排出用オーガー6の後部をビンの斜め上方の駆動装置11からロッド12で押して周回走行させるようにし、また駆動装置11を間歇走行させて、おが粉排出用オーガー6を断続的に周回させることによって過負荷やスリップによるトラブルの発生を防ぎ、おが粉の層の切り崩しと搬送を滞りなく繰返すことができるため排出の停止などの不具合を解消することができた。
【産業上の利用可能性】
【0027】
近年、バイオ燃料の必要性が高まっており、所定の水分に乾燥されたおが粉は乾燥装置から搬出されて次工程でペレット等に加工されるシステムが増えつつあり、加工施設の安定的な稼動が重要であり、本発明の実施の形態に係るおが粉乾燥装置は乾燥したおが粉を安定的な排出を可能にしたため、作業が計画的にでき、極めて有効に活用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施の形態に係るビン内部の構成を示す概略図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るおが粉乾燥装置の断面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るビン内部の部分平面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る要部の側面図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る駆動装置の部分断面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 おが粉乾燥装置
2 多孔通気床面
3 おが粉貯留室
4 通気室
5 搬送機
6 おが粉排出用オーガー
7 カバープレート
8 ビン内壁面
9 車輪台
10 車輪
11 駆動装置
12 ロッド
13 穴
13´ 穴
14 窪み
14´ 窪み
15 座板
15´ 座板
16 スプロケット
17 ブラシ
18 ローラーチェン
19 ピン
20 ブラケット
21 架台
22 モーターベース
23 モーター
24 ローラー
25 梁
26 固定梁
27 落し口
28 多極集電器



【特許請求の範囲】
【請求項1】
通気床面により区画して下方を通気室とし上方におが粉貯留室を形成してなるおが粉乾燥用のビンにおいて、
多孔通気床面の中心を支点として多孔通気床面上を周回可能に構成したおが粉排出オーガーを備え、
ビン上方には内壁に沿って一周する無限軌道上を周回走行し、おが粉排出オーガーをロッドを介して多孔通気床面上に押さえつけながら周回させるための駆動装置を設けていることを特徴とするおが粉乾燥装置。
【請求項2】
駆動装置の下面の窪みにはロッドの上端を挿入し駆動装置の進行方向に向けて斜め下向きに取付けられ、ロッドの下端はおが粉排出オーガーに設けた車輪台上面の窪みに挿入されていることを特徴とする請求項1に記載のおが粉乾燥装置。
【請求項3】
ビンの内壁に沿って一周する無限軌道は、ビンの内壁面に沿ってフープ状に固定された上面が水平な架台上にローラーチェンをビンの中心を支点とする円形のエンドレス状に取り付けたことを特徴とする請求項1又は2に記載のおが粉乾燥装置。
【請求項4】
無限軌道上の駆動装置はビンの中心を支点として周回可能なように壁面に向けて水平に延設された梁材の先端に固定され、駆動装置の走行によりビンの中心を支点として周回することを特徴とする請求項1、2又は3のいずれかに記載のおが粉乾燥装置。
【請求項5】
ロッドはその上端を駆動装置の下面にある穴から窪みに挿入して抜け止めを施し、下端はおが粉排出オーガーの端部近傍の車輪台上にある穴から窪みに挿入しておくことを特徴とする請求項1、2、3又は4のいずれかに記載のおが粉乾燥装置。
【請求項6】
おが粉排出オーガーの先端部近傍の背面には車輪台を備え、複数の車輪を周回方向に沿って一列または複数列に配列して排出オーガーを支えるとともに、車輪台の上面の後端(最後輪の略上方)にロッドの下端を挿入するための穴と窪みを設けてあることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5のいずれかに記載のおが粉乾燥装置。
【請求項7】
おが粉排出オーガーを周回させるための駆動装置は走行と停止を間歇的に繰り返す様に、即ち断続運転をする様に制御できることを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6のいずれかに記載のおが粉乾燥装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−30748(P2010−30748A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−195616(P2008−195616)
【出願日】平成20年7月30日(2008.7.30)
【出願人】(308020892)金子農機株式会社 (21)
【Fターム(参考)】