説明

はんだ付け方法、装置、及びワーク処理装置

【課題】装置の大型化、複雑化、コストアップを抑制できる、フラックスフリーはんだを用いたはんだ付け方法を提供する。
【解決手段】ワークWのはんだ被着面Waに対してはんだ部材を溶融接着させるに際し、先ず被着面Waを含む領域に対してプラズマ発生ノズル20からプラズマ化されたガスであるプルームPを照射して被着面Waの表面改質を行う。次いで、表面改質された被着面Waに固相状態のフラックスフリーの線状はんだ部材Hを供給する。そして、プルームPが保有している熱により、線状はんだ部材Hを溶融させ、被着面Waにはんだ部材Hを溶融接着させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板等のワークに対してフラックスフリーのはんだを溶融接着させるはんだ付け方法、装置、及びワーク処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属部品の接合等の用途に汎用されているはんだ合金(Pu−Sn系合金)には、被着面の酸化物遊離、濡れ性改善等のために有機レジンであるフラックスが使用されている。そして、はんだ付けに当たっては、はんだコテの当接、熱風照射、レーザー照射等によりはんだ合金を加熱溶融させ、被着面に溶融接着させている。しかし、フラックスを使用すると、はんだ付け後にフロン等を用いた基板洗浄が必要となる場合があり、工程の増加を招来するばかりでなく、環境破壊の観点からも好ましくない。なお、洗浄を必要としない無洗浄フラックスも存在するが、概して高価であるため、汎用性に欠けるという問題がある。そもそも、フラックスとして利用される有機レジン自体も、その使用が規制させる趨勢にあり、可及的にフラックスを用いないフラックスフリーはんだの使用が望まれているところである。
【0003】
ところで、はんだ付けが行われる被着面に対してプラズマを照射し、被着面の清浄化乃至は表面改質を行う技術が知られている。例えば特許文献1には、はんだ付け前にプラズマにより基板表面の不純物を除去することが開示されている。また、特許文献2には、はんだ付け前に高周波プラズマによって被処理物の表面を活性化処理し、フラックスフリーはんだにてはんだ付けを行う技術が開示されている。さらに、特許文献3には、フラックスフリーはんだによりはんだ接合する2つの部材に大気圧低温プラズマを照射して表面を清浄化すると共に、溶融はんだを供給して両者をはんだ付けする技術が開示されている。
【特許文献1】特開平3−174972号公報
【特許文献2】特開平8−281423号公報
【特許文献3】特開平9−235686号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のはんだ付け方法乃至は装置にあっては、プラズマを、はんだ被着面の清浄化、表面改質に用いるのみであり、プラズマ処理工程とはんだ付け工程とは別ステージのものとして取り扱われている。上記特許文献2では、真空装置内でプラズマ処理を行った後、後段に配置された噴流式はんだ付け装置にてはんだ付けを行う旨が開示されている。また特許文献3では、プラズマ処理の後、その清浄化された部位に溶融はんだを供給するか、非溶融はんだを供給して溶融させる旨が開示されている。このため、被着面の清浄化乃至は表面改質を行うプラズマ発生装置と、はんだを溶融させて部材接合を行わせるための装置が別々に必要となり、装置の大型化、複雑化、コストアップを招く結果となっていた。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、装置の大型化、複雑化、コストアップを抑制できる、フラックスフリーはんだを用いたはんだ付け方法、装置、及びワーク処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に係るはんだ付け方法は、所定の被着面に対してはんだ部材を溶融接着させるはんだ付け方法であって、前記被着面を含む領域に対してプラズマ化されたガスを照射して当該被着面の表面改質を行う第1の工程と、前記第1の工程により表面改質された部位に固相状態のフラックスフリーのはんだ部材を供給すると共に、前記はんだ部材の融点よりも高い温度を有するプラズマ化されたガスを前記はんだ部材に照射して、前記被着面にはんだ部材を溶融接着させる第2の工程とを具備することを特徴とする。
【0007】
この方法によれば、第1の工程におけるプラズマ化されたガスの照射により、被着面の清浄化を含めた表面改質が行われる。続いて、第2の工程におけるプラズマ化されたガスの照射により、フラックスフリーのはんだ部材が溶融され、被着面にはんだ部材が溶融接着される。すなわち、プラズマ化されたガスの照射によって、被着面の清浄化乃至は表面改質だけでなく、はんだ部材の溶融接着までもが実行されるものである。
【0008】
本発明の請求項2に係るはんだ付け装置は、電力エネルギーを発生するエネルギー発生手段と、前記電力エネルギーに基づきプラズマ化したガスを生成して放出するプラズマ発生ノズルと、所定の処理ガスを前記プラズマ発生ノズルに対して供給するガス供給手段と、所定のターゲット位置に対して前記プラズマ化したガスを照射可能なように、前記プラズマ発生ノズルの位置調整を行う位置調整手段と、前記ターゲット位置に対してフラックスフリーのはんだ部材を供給するはんだ供給手段とを具備することを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、所定のターゲット位置に対して前記プラズマ化したガスを照射可能であると共に、そのターゲット位置に対してフラックスフリーのはんだ部材が供給される。従って、前記ターゲット位置にはんだ部材の被着面を位置させるようにすれば、プラズマ化されたガスの照射によって、その被着面の表面改質を行えると共に、はんだ部材の溶融接着も行えるようになる。
【0010】
上記はんだ付け装置において、前記エネルギー発生手段が、マイクロ波を発生するマイクロ波発生手段からなる構成とすることができる(請求項3)。この構成によれば、上記プラズマ化したガスは、マイクロ波エネルギーに基づき生成されるようになる。
【0011】
上記構成において、前記位置調整手段が、前記プラズマ発生ノズルを搭載すると共に、該前記プラズマ発生ノズルを二次元方向若しくは三次元方向に移動させることが可能なロボットハンドからなることが望ましい(請求項4)。この構成によれば、プラズマ発生ノズルがロボットハンドにより二次元方向若しくは三次元方向に移動可能となるので、プラズマ化されたガスを基板等のワークの各所へ自在に照射できるようになる。
【0012】
この場合、前記エネルギー発生手段から発生される電力エネルギーを、前記ロボットハンドに搭載された前記プラズマ発生ノズルに給電する給電ケーブルを備える構成とすることができる(請求項5)。或いは、前記エネルギー発生手段が前記ロボットハンドに搭載され、当該エネルギー発生手段から前記プラズマ発生ノズルに直接電力エネルギーが供給される構成とすることができる(請求項6)。
【0013】
本発明の請求項7に係るワーク処理装置は、請求項2〜6のいずれかに記載のはんだ付け装置と、前記ターゲット位置に対して、はんだ部材の被着面を有する所定のワークを連続供給するワーク供給手段とを具備することを特徴とする。この構成によれば、ワーク供給手段により、はんだ部材の被着面を有する所定のワークがターゲット位置に搬送され、当該位置におけるプラズマ化されたガスの照射によって、その被着面の表面改質、はんだ部材の溶融接着が行われるようになる。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係るはんだ付け方法によれば、プラズマ化されたガスの照射によって、被着面の清浄化乃至は表面改質だけでなく、はんだ部材の溶融接着も行われるので、はんだ部材を溶融接着させるための工程を、表面改質のための工程に連続して実行させることができる。従って、フラックスフリーはんだを用いたはんだ付け方法の簡素化、高速化を図ることが出来る。
【0015】
請求項2に係るはんだ付け装置、並びに請求項7に係るワーク処理装置によれば、ターゲット位置にはんだ部材の被着面を位置させてプラズマ発生ノズルからプラズマ化したガスを照射することによって、前記被着面の表面改質を行えると共に、はんだ部材の溶融接着も行える。従って、フラックスフリーはんだを用いたはんだ付け方法の簡素化、高速化を図ることが出来る。
【0016】
請求項3に係るはんだ付け装置によれば、プラズマ化したガスをマイクロ波エネルギーに基づき生成するので、エネルギーソースとしてマグネトロンのような汎用品を用いて装置を構成することができる。
【0017】
請求項4に係るはんだ付け装置によれば、ロボットハンドによりプラズマ発生ノズルの位置決めを二次元的、或いは三次元的に自在に行えることから、はんだ付け装置の機能性を一層向上させることができる。
【0018】
請求項5に係るはんだ付け装置によれば、ロボットハンドに搭載されたプラズマ発生ノズルに給電ケーブルを通して電力エネルギーを供給するので、ロボットハンドを軽量化でき、機動性を向上させることができる。
【0019】
請求項6に係るはんだ付け装置によれば、ロボットハンドにエネルギー発生手段を搭載してプラズマ発生ノズルに直接電力エネルギーを供給するので、導波管や給電ケーブル等の導波部材の使用を省けると共に、エネルギーの伝送ロスを最小限に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明に係るはんだ付け方法を実施するためのはんだ付け装置S1の一例を示す構成図、図2ははんだ付け装置S1の要部拡大断面図である。このはんだ付け装置S1は、基台100の上に載置されるロボットハンド10(位置調整手段)、このロボットハンド10に搭載されプラズマ化したガスを生成して放出するプラズマ発生ノズル20、プラズマ発生ノズル20の先端部位に対してフラックスフリーの線状はんだ部材Hを供給するはんだ供給機構30(はんだ供給手段)、マイクロ波エネルギー(電力エネルギーの一種)を発生するマイクロ波発生装置40(エネルギー発生手段)、プラズマ発生ノズル20に対して所定の処理ガスを供給する処理ガス供給装置50(ガス供給手段)、当該はんだ付け装置S1の動作制御を行う制御部60、及びはんだ部材の被着面を有する回路基板等のワークWを搬送するワークキャリー101を備えて構成されている。
【0021】
ロボットハンド10は、基台100上に載置固定されるロボット基体部11と、このロボット基体部11に取り付けられる5自由度を有する多関節アームとからなる。前記多関節アームは、ロボット基体部11から順に、回転アーム12、第1傾動アーム13、第2傾動アーム14及び回転傾動アーム15が連結されて構成されている。
【0022】
回転アーム12は、ロボット基体部11に対し、図中に示すa軸回りに旋回可能に取り付けられている。第1傾動アーム13の基端は、回転アーム12の先端に、図中矢印cで示す方向に回動するように取り付けられている。第2傾動アーム14の基端は、第1傾動アーム13の先端に、図中矢印dで示す方向に回動するように取り付けられている。回転傾動アーム15は、その基端部が第1傾動アーム13の先端に、図中矢印eで示す方向に回動するように取り付けられていると共に、自身が図中に示すb軸回りに旋回可能な機構を備えている。また、回転傾動アーム15の先端(下端面側)には、プラズマ発生ノズル20が取り付けられている。このような多関節アームは、ロボット制御部61の制御下において屈曲及び旋回駆動され、プラズマ発生ノズル20の三次元的な位置決め、つまり所定のターゲット位置への位置決めを可能とするものである。
【0023】
プラズマ発生ノズル20は、マイクロ波発生装置40により発生されるマイクロ波エネルギーに基づきプラズマ化されたガスを生成して放出するためのものである。プラズマ化されたガスは、ワークWにおけるはんだ部材の被着面(ターゲット位置)の表面改質を行うため(第1の工程)、並びに第1の工程により表面改質された部位に供給されたフラックスフリーのはんだ部材を溶融させ前記被着面に接着させるため(第2の工程)に放射される。つまり、プラズマ発生ノズル20は、被着面の表面改質のためにプラズマを照射させる機能と、はんだ部材を溶融接着させるはんだコテの機能とを担うものである。
【0024】
図2に示すように、プラズマ発生ノズル20は、中心導電体21、ノズルホルダ22、ノズル本体23、保護管24及び絶縁保持部材25を含んで構成されている。なお、前記中心導電体21及びノズル本体23は、同心で配置され互いに絶縁された内部導体及び外部導体の関係とされている。
【0025】
中心導電体21は、良導電性の金属から構成された棒状部材からなり、その上端部211がノズルホルダ22の内部空間221にまで突出している一方で、下端部212がノズル本体23の下端縁23Bと略面一になるように、上下方向に配置されている。この中心導電体21の上端部211には、同軸ケーブル41(給電ケーブル)を介してマイクロ波発生装置40からマイクロ波エネルギー(マイクロ波電力;高周波エネルギー(高周波電力)であっても良い)が与えられるようになっている。当該中心導電体21は、上端部211の付近で絶縁保持部材25により保持されている。
【0026】
ノズルホルダ22は、ノズル本体23を保持するもので、良導電性の金属から構成されている。ノズルホルダ22は、その基端部がロボットハンド10(回転傾動アーム15)に絶縁支持される筒体部220と、この筒体部220の内部に形成されノズル本体23及び絶縁保持部材25を収容・保持する筒状の内部空間221と、筒体部220を貫通して形成され同軸ケーブル41の終端部が接続されるコネクタ部222とを備えている。
【0027】
ノズル本体23は、同様に良導電性の金属から構成され、中心導電体21を収納する筒状空間231を有する筒状体である。中心導電体21は、所定の環状空間(絶縁間隔)が周囲に確保された状態で、この筒状空間231の中心軸上に配置されている。ノズル本体23は、上下方向の略中央付近に穿孔されたガス供給孔232と、中央からやや上方の位置に突設されたフランジ部233とを備える。ガス供給孔232には、所定の処理ガスを供給する処理ガス供給装置50から延出されるガス供給管51の終端部を接続するための管継手等が取り付けられる。
【0028】
ノズル本体23は、その上端側がノズルホルダ22の内部空間221へ入り込み、フランジ部233の上端面がノズルホルダ22の下端縁と接触するようにノズルホルダ22に嵌合されている。なお、ノズル本体23は、例えばプランジャやセットビス等(図略)を用いて、ノズルホルダ22に対して着脱自在な固定構造で装着されている。また、ノズル本体23の上端側付近の外周上には凹溝234が刻設され、該凹溝234にガス漏れを抑止するためのガスシールリング235が介在されている。
【0029】
保護管24は、所定長さの石英ガラスパイプ等からなり、ノズル本体23の筒状空間231の内径に略等しい外径を有する。この保護管24は、ノズル本体23の下端縁23Bでの異常放電(アーキング)を防止して後述するプルームPを正常に放射させる機能を有しており、その一部がノズル本体23の下端縁23Bから突出するように、前記筒状空間231に内挿されている。なお、保護管24は、その先端部が前記下端縁23Bと一致するように、或いは下端縁23Bよりも内側へ入り込むように、その全体が筒状空間231に収納されていても良い。
【0030】
絶縁保持部材25は、テフロン(登録商標)等の耐熱性樹脂材料やセラミック等からなり、中心導電体21を貫通させて固定的に保持する円板状の絶縁部材からなる。絶縁保持部材25は、その下端縁がノズル本体23の上端縁と当接して支持される態様で、ノズルホルダ22の内部空間221内において支持されている。
【0031】
同軸ケーブル41は、内部導体411の上に順次、発泡絶縁層412、外部導体413及び外部絶縁ジャケット414が形成されてなる。そして、同軸ケーブル41の一端は前記コネクタ部222に接続され、内部導体411が中心導電体21の上端部211と電気的に接続され、外部導体413がノズルホルダ22に対して電気的に接続される。なお、図2では、詳細な接続機構については図示省略している。一方、同軸ケーブル41の他端は、マイクロ波発生装置40に接続されている。これにより中心導電体21には、同軸ケーブル41を介して、マイクロ波発生装置40により発生されるマイクロ波エネルギーが供給されるものである。なお、ノズル本体23及びノズルホルダ22は、アース電位とされる。
【0032】
プラズマ発生ノズル20は上記のように構成されている結果、中心導電体21に同軸ケーブル41を介してマイクロ波電力が給電されると、絶縁保持部材25で支持されている中心導電体21と、アース電位とされているノズル本体23との間に電位差が生じるようになる。そして、中心導電体21の下端部212及びノズル本体23の下端縁23Bの近傍に電界集中部が形成されるようになる。
【0033】
かかる状態で、ガス供給孔232から例えば酸素ガスや空気のような酸素系の処理ガスがノズル本体23の筒状空間231へ供給されると、前記マイクロ波電力により処理ガスが励起されて中心導電体21の下端部212付近においてプラズマ(電離気体)が発生する。このプラズマは、電子温度が数万度であるものの、ガス温度は外界温度〜数百℃程度の反応性プラズマ(中性分子が示すガス温度に比較して、電子が示す電子温度が極めて高い状態のプラズマ)であって、常圧下で発生するプラズマである。
【0034】
このようにしてプラズマ化された処理ガスは、ガス供給孔232から与えられるガス流によりプルームPとしてノズル本体23の下端縁23B(保護管24の下端縁)から放射される。このプルームPにはラジカルが含まれ、例えば処理ガスとして酸素系ガスを使用すると酸素ラジカルが生成されることとなり、有機物の分解・除去作用、表面粗面化作用等の表面改質性能を有するプルームPとすることができる。このプルームPは、図2に示すように、ワークWの被着面Waに対して照射される。
【0035】
はんだ供給機構30は、前記プルームPの照射位置(ターゲット位置)に対して、フラックスフリーの線状はんだ部材Hを供給するものである。はんだ供給機構30は、はんだ付けの対象となるワークWの被着面Waに向けて線状はんだ部材Hを送り出すガイド部材31と、ガイド部材31を支持する支持部材32と、支持部材32に一端側が固定されると共に他端側がノズルホルダ22の外周に固定されガイド部材31をノズルホルダ22の外周壁を利用して支持させるための支持アーム33と、ボビンなどに巻かれた線状はんだ部材Hをガイド部材31に向けて必要量ずつ繰り出すはんだ供給装置34とを備えて構成されている。
【0036】
図2に示すように、フラックスフリーの線状はんだ部材Hは、このようなはんだ供給機構30により、プルームPの照射エリア(図2において点線で示す領域)に適量が供給され、プルームPが保有する熱により溶融される。一般に、Pu−Sn系のはんだ合金の融点は、220℃〜230℃程度であり、鉛フリーのはんだ合金でも300℃程度である。一方、プルームPは、発生プラズマ量や処理ガスの温度等を制御することで、前記のような温度領域を超えるように高温化(例えば500℃程度)することが可能であり、その熱で線状はんだ部材Hを溶融させることができる。なお、ガイド部材31にヒーターを設け、このヒーターで線状はんだ部材Hを予備加熱するように構成することが望ましい。
【0037】
マイクロ波発生装置40は、プラズマを発生させるためのマイクロ波エネルギーを発生するもので、例えば2.45GHzのマイクロ波を発生するマグネトロン等のマイクロ波発生源と、このマイクロ波発生源にて発生されたマイクロ波の強度を所定の出力強度に調整するアンプとを具備するものを用いることができる。上述の通り、マイクロ波発生装置40にて発生されるマイクロ波エネルギーは、同軸ケーブル41によりプラズマ発生ノズル20へ給電される。なお、このようなマイクロ波発生装置40に代えて、例えば13.65MHzの高周波電力を発生する高周波電源を用いることができる。
【0038】
処理ガス供給装置50は、例えば酸素ガス、窒素ガス、アルゴンガスのような、プラズマ発生ノズル20へ供給する適宜な処理ガスを貯留するガスボンベと、ガス供給量を制御する流量制御弁などを備えてなる。処理ガス供給装置50に備えられている処理ガスは、ガス供給管51を介してノズル本体23のガス供給孔232に向けて供給される。
【0039】
ワークキャリー101(ワーク供給手段)は、はんだ付けを行うワークWを、プラズマ発生ノズル20の作業領域を経由する所定の搬送ルートで順次搬送するものである。なお、ワークキャリー101に代えて、作業ステージを配置し、該作業ステージに他のロボットハンドによりワークWを順次供給させるようにしても良い。
【0040】
制御部60は、はんだ付け装置S1の動作制御を行うもので、ロボット制御部61、全体制御部62及び操作部63を備えて構成されている。
【0041】
ロボット制御部61は、汎用ロボットコントローラ等からなり、全体制御部62の制御下で、ロボットハンド10の旋回、屈曲動作を制御することで、プラズマ発生ノズル20の位置調整を行う。すなわちロボット制御部61は、ロボットハンド10を駆動させることで、その先端に装着されているプラズマ発生ノズル20から放出されるプルームPが、ワークWの被着面Waに対して所定の間隔を置いて照射されるよう、プラズマ発生ノズル20の位置調整を行う制御をする。また、ロボット制御部61は、はんだ供給装置34の駆動を制御して、線状はんだ部材Hをガイド部材31に向けて必要量ずつ繰り出させる制御も行う。
【0042】
全体制御部62は、CPU(Central Processing Unit)、制御プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)、CPUの作業領域として使用されるRAM(Random Access Memory)等から構成され、前記CPUが制御プログラムを実行することにより、はんだ付け装置S1の全体的な動作制御を行う。すなわち、全体制御部62は、操作部63より与えられるユーザの指示信号に応じて、ロボット制御部61、マイクロ波発生装置40、処理ガス供給装置50及びワークキャリー101を制御して、プラズマ発生ノズル20からプルームPを放出させ、ワークWの被着面Waに対する表面改質、並びにはんだ付けを行わせるものである。
【0043】
以上の通り構成されたはんだ付け装置S1(ワーク処理装置)により実行される回路基板(ワークW)に対するはんだ付け方法の一例について、図3に基づいて説明する。先ず全体制御部62は、ワークWが搭載されたワークキャリー101を移動させ、ロボットハンド10の処理ステージ上にワークWを位置決めさせる(図3(a))。
【0044】
次に全体制御部62は、ロボット制御部61を介してロボットハンド10を動作させ、プラズマ発生ノズル20をワークWのはんだ被着面に対向する所定位置に位置決めさせる(図3(b))。続いて全体制御部62は、マイクロ波発生装置40及び処理ガス供給装置50を動作させ、図3(c)に示すように、プラズマ発生ノズル20からプルームPを放出させる(第1の工程)。
【0045】
図4(a)は、プルームPによるワークWの表面改質状況を説明するための模式図である。回路基板のようなワークWは、一般に絶縁基材71上に回路パターンを構成する銅パターン層72、この銅パターン層72の表面を覆う金メッキ層73を有してなる。はんだ部材は、金メッキ層73の表面(被着面Wa)に溶着されるのであるが、金メッキ層73の表面に酸化膜層74が存在したり、有機物からなる異物が付着していたりする場合がある。この場合に形成されるはんだ溶着層Hoは、図4(b)に一点鎖線で示すような球状となり、はんだの濡れ性、広がり係数が悪くなり、強固な溶着は望めない。
【0046】
しかし、このような被着面WaにプルームPが照射されることで、前記酸化膜層74や有機物は分解される。さらに、金メッキ層73の表面が微細に粗面化されることも相俟って、はんだ部材がフラックスフリーのものであっても、十分な濡れ性、広がり角を得ることが可能となる。すなわち図4(b)に実線で示すように、プルームPが照射により金メッキ層73の表面改質が行われる結果、この場合のはんだ溶着層Hcは小さい濡れ角となり、広がり係数も良好となる。従って、被着面Waに対して良好な接着性を有する。
【0047】
その後、全体制御部62は、はんだ供給装置34を動作させて線状はんだ部材Hを必要量だけ繰り出させる。これにより、先の工程により表面改質され、プルームPが照射された状態にある被着面Waに向けて、固相状態のフラックスフリーの線状はんだ部材Hが供給される(図3(d))。そして、プルームPの熱が線状はんだ部材Hに与えられ、この熱により線状はんだ部材Hが溶融される。この結果として、ワークWの表面にはんだ溶着層Hcが形成される(図3(e);第2の工程)。しかる後、全体制御部62はワークキャリー101を処理ステージ外へ移動させ、はんだ付け済みのワークWが取り出されるものである(図3(f))。
【0048】
以上の通り構成されたはんだ付け装置S1によれば、ワークWの被着面をターゲット位置に位置させてプラズマ発生ノズル20からプルームPを照射することによって、被着面の清浄化乃至は表面改質を行えると共に、線状はんだ部材Hの溶融接着も行うことができる。従って、フラックスフリーはんだを用いたはんだ付け方法の簡素化、高速化を図ることが出来る。また、プラズマ化したガスをマイクロ波エネルギーに基づき生成するので、エネルギーソース(マイクロ波発生装置)としてマグネトロンのような汎用品を用いて装置を構成することができる。
【0049】
さらに、ロボットハンド10によりプラズマ発生ノズル20の位置決めを三次元的に自在に行えることから、はんだ付け装置S1の機能性を一層向上させることができる。また、ロボットハンド10に搭載されたプラズマ発生ノズル20に同軸ケーブル41を通してマイクロ波エネルギーを供給するので、ロボットハンド10を軽量化でき、機動性を向上させることができるという利点もある。
【0050】
以上、本発明の一実施形態に係るはんだ付け装置S1について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば下記(1)〜(3)の変形実施形態を取ることができる。
【0051】
(1)上記実施形態では、ロボットハンド10にプラズマ発生ノズル20を搭載した例を示したが、ロボットハンド10以外の各種位置調整手段を本発明に適用することができる。また、同軸ケーブル41を用いてマイクロ波エネルギーを伝送させる例を示したが、このような給電ケーブルの使用を省略するようにしても良い。図5は、これらの点に鑑みた、変形実施形態に係るはんだ付け装置S2を示す正面図である。
【0052】
このはんだ付け装置S2は、プラズマ発生ノズル200を二次元的に移動させるようにしたもので、基台フレーム81と、この基台フレーム81の上に立設された左右一対の縦フレーム82と、縦フレーム82間を上部において橋絡する横フレーム83と、横フレーム83に設けられたガイド溝を摺動する移動ヘッド84とを備えて構成されている。横フレーム83は、縦フレーム82間において図中矢印hで示す上下方向に移動可能とされている。また移動ヘッド84は、図中矢印gで示す左右方向に移動可能とされている。
【0053】
移動ヘッド84には、プラズマ発生ノズル200とはんだ供給機構300とが搭載されている。先の実施形態と同様に、プラズマ発生ノズル200はプラズマ化されたガスを発生するもので、図略の内部導電体、ノズルホルダ202、ノズル本体203及び保護管204を備える。また、はんだ供給機構300は、はんだ部材のガイド部材301とはんだ供給装置304などを備える。さらに移動ヘッド84には、マグネトロン42と、このマグネトロンのための電源装置43とが搭載されている。
【0054】
このようなはんだ付け装置S2によれば、ワークキャリー801に搭載されたワークWに対して、縦フレーム82を利用してプラズマ発生ノズル200の高さ位置の調整を、横フレーム83を利用して左右方向の位置調整を行うことができる。従って、ワークキャリー801でワークWを移送しつつ、ワークWの所定の部位に対してプラズマ発生ノズル200からプルームPを照射させることができ、上記はんだ付け装置S1と同様なはんだ付け処理を行うことができる。また、マグネトロン42及びその電源装置43を移動ヘッド84に搭載してプラズマ発生ノズル200に直接マイクロ波エネルギーを供給するので、同軸ケーブル等の使用を省けると共に、エネルギーの伝送ロスを最小限に抑制することができる。
【0055】
(2)上記実施形態では、プラズマ発生ノズル20を一つだけロボットハンド10に搭載した例を示したが、2以上のプラズマ発生ノズルを搭載させるようにしても良い。また、保護管24の先端形状を絞ってプルームPの照射領域を狭くしたり、或いは先端を二股状にしたりしても良い。
【0056】
(3)マイクロ波出力の検出センサ、処理ガスの流量センサを適所に取り付け、マイクロ波エネルギーの出力(若しくは高周波電力の出力)及び/又は処理ガスの流量を制御して、プラズマの発生量やプラズマ化されたガスの温度を全体制御部62にて制御するように構成することが望ましい。かかる構成とすれば、使用するはんだ部材の融点、はんだ付けされる被着面の材質、はんだ付け面積等に応じて、最適なプルームPを発生させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明に係るはんだ付け方法を実施するためのはんだ付け装置S1の一例を示す構成図である。
【図2】図1に示すはんだ付け装置S1の要部拡大断面図である。
【図3】はんだ付け装置S1により実行されるワークWに対するはんだ付け方法の一例を示すフロー図である。
【図4】(a)は、プルームPによるワークWの表面改質状況を説明するための模式図、(b)は、はんだ部材の溶着状態を説明するための模式図である。
【図5】変形実施形態に係るはんだ付け装置S2を示す正面図である。
【符号の説明】
【0058】
10 ロボットハンド(位置調整手段)
100 基台
101 ワークキャリー(ワーク供給手段)
20 プラズマ発生ノズル
21 中心導電体
22 ノズルホルダ
23 ノズル本体
24 保護管
25 絶縁保持部材
30 はんだ供給機構(はんだ供給手段)
40 マイクロ波発生装置(エネルギー発生手段)
41 同軸ケーブル(給電ケーブル)
42 マグネトロン
43 電源装置
50 処理ガス供給装置(ガス供給手段)
60 制御部
61 ロボット制御部
62 全体制御部
63 操作部
S1,S2 はんだ付け装置(ワーク処理装置)
W ワーク
Wa 被着面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の被着面に対してはんだ部材を溶融接着させるはんだ付け方法であって、
前記被着面を含む領域に対してプラズマ化されたガスを照射して当該被着面の表面改質を行う第1の工程と、
前記第1の工程により表面改質された部位に固相状態のフラックスフリーのはんだ部材を供給すると共に、前記はんだ部材の融点よりも高い温度を有するプラズマ化されたガスを前記はんだ部材に照射して、前記被着面にはんだ部材を溶融接着させる第2の工程とを具備することを特徴とするはんだ付け方法。
【請求項2】
電力エネルギーを発生するエネルギー発生手段と、
前記電力エネルギーに基づきプラズマ化したガスを生成して放出するプラズマ発生ノズルと、
所定の処理ガスを前記プラズマ発生ノズルに対して供給するガス供給手段と、
所定のターゲット位置に対して前記プラズマ化したガスを照射可能なように、前記プラズマ発生ノズルの位置調整を行う位置調整手段と、
前記ターゲット位置に対してフラックスフリーのはんだ部材を供給するはんだ供給手段とを具備することを特徴とするはんだ付け装置。
【請求項3】
前記エネルギー発生手段が、マイクロ波を発生するマイクロ波発生手段からなることを特徴とする請求項2に記載のはんだ付け装置。
【請求項4】
前記位置調整手段が、前記プラズマ発生ノズルを搭載すると共に、該前記プラズマ発生ノズルを二次元方向若しくは三次元方向に移動させることが可能なロボットハンドからなることを特徴とする請求項2又は3に記載のはんだ付け装置。
【請求項5】
前記エネルギー発生手段から発生される電力エネルギーを、前記ロボットハンドに搭載された前記プラズマ発生ノズルに給電する給電ケーブルを備えることを特徴とする請求項4に記載のはんだ付け装置。
【請求項6】
前記エネルギー発生手段が前記ロボットハンドに搭載され、当該エネルギー発生手段から前記プラズマ発生ノズルに直接電力エネルギーが供給されることを特徴とする請求項4に記載のはんだ付け装置。
【請求項7】
請求項2〜6のいずれかに記載のはんだ付け装置と、
前記ターゲット位置に対して、はんだ部材の被着面を有する所定のワークを連続供給するワーク供給手段とを具備することを特徴とするワーク処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−260706(P2007−260706A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−86865(P2006−86865)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(000135313)ノーリツ鋼機株式会社 (1,824)
【Fターム(参考)】