説明

はんだ粉末付着装置および電子回路基板に対するはんだ粉末の付着方法

【課題】電子回路基板に、精細にはんだ粉末を付着させるためのはんだ粉末付着装置および電子回路基板に対するはんだ粉末の付着方法を提供する。
【解決手段】本発明のはんだ粉末付着装置は、電子回路基板およびはんだ粉末を収容する容器と、前記容器内に備え付けられ、前記電子回路基板をその基板面がほぼ上下方向を向くように保持する基板保持部と、前記容器の初期位置を第一の方向に傾動させた傾斜位置とし、前記初期位置から前記第一の方向と反対の第二の方向に前記容器を傾動させてから、前記容器を前記第一の方向に再び傾動させる傾動機構と、回転軸を回転させることにより前記容器の底部に振動を与える、前記底部の中心に設けられた偏芯モーターと、前記偏芯モーターの前記回転軸を前記容器の傾動方向と同じ方向に設定する制御手段からなる振動機構と、を具備してなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子回路基板に、精細にはんだ粉末を付着させるためのはんだ粉末付着装置および電子回路基板に対するはんだ粉末の付着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子回路基板、プラスチック基板(フィルムも含む)、セラミック基板、あるいはプラスチック等をコートした金属基板等の絶縁性基板上に、電子回路パターンを形成した電子回路基板が開発されている。また、それに伴い、それらの回路パターン上にIC素子、半導体チップ、抵抗、コンデンサ等の電子部品をはんだ接合することで電子回路を形成する手段が広く採用されている。
【0003】
このような手段により電子回路を形成する場合は、電子部品のリード端子を、回路パターンの所定の導電性回路電極表面部分に予め接合させる必要がある。その一般的な方法としては、電子回路基板上の導電性回路電極表面に予めはんだ薄層を形成したのち、はんだペーストまたはフラックスを印刷する手法が知られている。この後、所定の電子部品への位置決め載置とリフローを行うことにより、リード端子は導電性回路電極表面部分にはんだ接合される。
【0004】
また、近年では電子製品の小型化に伴い、電子回路のファインピッチ化が要求されている。このようなものではたとえば、小面積内にファインピッチの部品として、0.3mmピッチのQFP(Quad Flat Package)タイプのLSIや、CSP(Chip Size Package)、0.15mmピッチのFC(Flip Chip)などが搭載されたものが知られている。そのため、電子回路基板にはファインピッチに対応可能な、精細なはんだ回路パターンが要求されている。
【0005】
従来、電子回路基板に、はんだ膜からなるはんだ回路を形成する方法としては、たとえば、メッキ法、HAL(ホット・エアー・レベラ)法、はんだ粉末のペーストを印刷した後にリフローする方法などが知られている。しかし、メッキ法によるはんだ回路の製造方法は、はんだ層を必要な厚さに形成するのが困難である。また、HAL法、はんだペーストの印刷による方法は、ファインピッチパターンへの対応が困難である。
【0006】
これら従来の方法に対し、ファインピッチパターンへの対応が可能なはんだ回路形成方法としては、粘着性付与化合物を用いるものが知られている(特許文献1)。これは、電子回路基板に粘着性付与化合物を反応させることにより、導電性回路電極表面に粘着性を付与するものである。これにより導電性回路電極表面にのみ、はんだ粉末を付着させることができる。その後、電子回路基板を加熱することにより、微細なはんだ回路を形成することができる。この方法によれば、回路パターンの位置合わせ等の面倒な操作を必要とせず、かつ、微細なはんだ回路を形成することができる。
【0007】
このように、粘着性付与化合物を用いる方法としては、回転・振動機構を備えるタンク内に、はんだ粉末と電子回路基板を入れて回転させるものが知られている。
この方法によれば、タンクの中心部に備え付けられた回転軸によりタンクを回転させることにより、電子回路基板ははんだ粉末内に埋没される。また、タンクの回転軸を電子回路基板表面とほぼ平行とすることにより、はんだ粉末は電子回路基板同士の間に流入し、各電子回路基板はまんべんなく埋没される。その後、回転軸によりタンクを振動させることで、電子回路基板の粘着部にはんだ粉末が付着する(特許文献2)。
【0008】
また、その他には、容器内に電子回路基板とはんだ粉末またははんだ懸濁液を入れて傾動させることにより、粘着部にはんだ粉末を付着させる方法が知られている。この方法においては、電子回路基板を、はんだ粉末またははんだ懸濁液が流れる方向と平行になるように設置するとともに、傾動の際に容器を振動させる。これにより、電子回路基板の粘着部にはんだ粉末が付着される(特許文献3)。
【0009】
また、電子回路基板の粘着部にはんだ粉末を付着させた後に、振動を付与した液体中に浸漬する方法も知られている(特許文献4)。これにより、不要な箇所に付着したはんだ粉末を除去することができる。そのため、隣接する回路パターン間での短絡を防ぐことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平07-007244号公報
【特許文献2】特開2003-332375号公報
【特許文献3】特開2006-278650号公報
【特許文献4】特開2007-149818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、近年では、ファインピッチパターンの微細化に伴い、はんだ粉末の粒径も小さくなっている。それに伴い、従来の方法では粘着部への付着が困難となっている。
たとえば、粒径10μm程度のはんだ粉末の付着を行うと、はんだ粉末同士が静電気により凝集しやすい。そのため、容器を傾動もしくは回転させても、はんだ粉末は凝集しながら移動し、電子回路基板への付着が不十分となる。また、はんだ粉末同士が凝集するため、微細部まで均一に行き渡らず、電子回路基板裏面の粘着部への付着が不十分となる。
また、湿式ではんだ粉末の付着を行うと、粉末の粒粒径が小さすぎるために粒子同士の摩擦力が大きくなる。そのため、はんだ懸濁液が固形化しやすくなり、容器を傾動もしくは回転させても移動が十分に行われない。また、固形化した状態のまま電子回路基板表面を移動するので、粘着部へのはんだ粉末の付着が不十分となる。
【0012】
また、ファインピッチパターンの微細化に伴い、はんだ粉末が電子回路基板の不要な箇所に付着しやすくなっている。また、微細なはんだ粉末が凝集しやすくなるため、余分なはんだ粉末が電子回路基板に付着しやすくなる。これらにより、リフローの際に、隣接する回路パターン間ではんだが溶解するため、短絡が生じやすくなる。
また、このような余分なはんだ粉末を除去するためには、従来の方法ではその除去が不十分、もしくは別の工程が必要でとなる。そのため、短絡を効率的に防ぐことが困難であった。
【0013】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、微細なファインピッチパターンを有する電子回路基板において、精細にはんだ粉末の付着させるためのはんだ粉末付着装置および電子回路基板に対するはんだ粉末の付着方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
〔1〕 電子回路基板およびはんだ粉末を収容する容器と、前記容器内に備え付けられ、前記電子回路基板をその基板面がほぼ上下方向を向くように保持する基板保持部と、前記容器の初期位置を第一の方向に傾動させた傾斜位置とし、前記初期位置から前記第一の方向と反対の第二の方向に前記容器を傾動させてから、前記容器を前記第一の方向に再び傾動させる傾動機構と、回転軸を回転させることにより前記容器の底部に振動を与える、前記底部の中心に設けられた偏芯モーターと、前記偏芯モーターの前記回転軸を前記容器の傾動方向と同じ方向に設定する制御手段からなる振動機構と、を具備してなることを特徴とするはんだ粉末付着装置。
〔2〕 前記振動機構が、前記傾動機構が前記容器を傾動させる際に前記容器を振動させる機能を有することを特徴とする〔1〕に記載のはんだ粉末付着装置。
〔3〕 前記傾動機構が、傾動の角度を任意の値に制御するものであることを特徴とする〔1〕または〔2〕に記載のはんだ粉末付着装置。
〔4〕 前記制御手段が、前記偏芯モーターの振幅および周波数を任意の値に制御するものであることを特徴とする〔1〕乃至〔3〕のいずれか一項に記載のはんだ粉末付着装置。
〔5〕 前記周波数が0.5Hz〜100kHzの範囲であることを特徴とする〔4〕に記載のはんだ粉末付着装置。
〔6〕 前記偏芯モーターが複数設けられ、全てが同じ方向に回転することを特徴とする〔1〕乃至〔5〕のいずれか一項に記載のはんだ粉末付着装置。
〔7〕 前記基板保持部が、複数の前記電子回路基板を保持する構成であることを特徴とする〔1〕乃至〔6〕のいずれか一項に記載のはんだ粉末付着装置。
〔8〕 前記支持部が弾性体からなることを特徴とする〔1〕乃至〔7〕のいずれか一項に記載のはんだ粉末付着装置。
〔9〕 前記容器に蓋が設けられ、前記容器内側に密閉空間を有することを特徴とする〔1〕乃至〔8〕のいずれか一項に記載のはんだ粉末付着装置。
〔10〕 電子回路基板の粘着部にはんだ粉末を付着させるはんだ粉末の付着方法において、容器内部の一方側にはんだ粉末を配置するとともに、前記容器内部の基板保持部に前記電子回路基板をその基板面がほぼ上下方向を向くように保持する準備工程と、前記容器の初期位置を第一の方向に傾動させた傾斜位置とし、傾動機構により前記初期位置から前記第一の方向と反対の第二の方向に、前記容器を傾動させる第一工程と、前記容器を前記第一の方向に再び傾動させる第二工程と、を具備することを特徴とするはんだ粉末の付着方法。
〔11〕 前記第二工程において、前記第二の方向への傾動よりも大きい傾斜角度で、前記第一の方向への傾動を行うことを特徴とする、〔10〕に記載のはんだ粉末の付着方法。
〔12〕 前記第一工程と第二工程において、前記偏芯モーターを複数用い、かつ、それらを全て同じ方向に回転させることを特徴とする〔10〕または〔11〕に記載のはんだ粉末の付着方法。
〔13〕 前記第一工程と第二工程において、前記傾動機構により、傾動の角度を任意の値に制御することを特徴とする〔10〕乃至〔12〕のいずれか一項に記載のはんだ粉末の付着方法。
〔14〕 前記第一工程と第二工程において、前記偏芯モーターの振幅および周波数を、制御手段により任意の値に制御することを特徴とする、〔10〕乃至〔13〕のいずれか一項に記載のはんだ粉末の付着方法。
〔15〕 前記周波数を0.5Hz〜100kHzの範囲とすることを特徴とする〔14〕に記載のはんだ粉末の付着方法。
〔16〕 前記準備工程において、前記容器に蓋を設けるとともに、前記容器内側の密閉空間に不活性ガスを充填することを特徴とする〔10〕乃至〔14〕のいずれか一項に記載のはんだ粉末の付着方法。
〔17〕 前記はんだ粉末の粒径が4μm〜20μmの範囲であることを特徴とする〔10〕乃至〔16〕のいずれか一項に記載のはんだ粉末の付着方法。
〔18〕 前記はんだ粉末の粒径が5μm〜10μmの範囲であることを特徴とする〔17〕に記載のはんだ粉末の付着方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明のはんだ粉末付着装置および電子回路基板に対するはんだ粉末の付着方法によれば、はんだ粉末と電子回路基板を入れた容器を任意の傾斜角度で傾動させることができる。また、偏芯モーターの制御手段が傾動機構と連動していることにより、偏芯モーターの回転軸の回転方向を容器の傾動方向と同じ方向とすることができる。これにより、容器の傾動に応じて、その底部に対し垂直の角度で振動を与えることができる。
これにより、微細なはんだ粉末であっても、その凝集や固形化が防がれ、はんだ粉末を容器の傾動に合わせて流動させることができる。そのため、はんだ粉末は微細部まで均一に行き渡り、電子回路基板の、容器の底部との間の面にも十分付着させることができる。
【0016】
また、本発明によれば、偏芯モーターで電子回路基板の直下に垂直の角度で振動を与えることができる。そのため、はんだ粉末は下から上に突き上げられ、跳ね上がるように挙動する。これにより、はんだ粉末は電子回路基板に垂直の角度で衝突し、粘着部に効果的に付着する。
また、第一の方向から第二の方向に傾動させてはんだ粉末を付着させた後に、第二の方向への傾動よりも大きい傾斜角度で第一の方向の方向に傾動させることにより、余計な箇所に付着したはんだ粉末や、余分なはんだ粉末を効率的に除去することができる。
【0017】
これらにより、微細なファインピッチパターンを有する電子回路基板を効率的に製造することができる。また、隣接する回路パターン間において、溶融はんだによる短絡を効果的に防ぐことができる。そのため、電子回路基板の信頼性を向上させることができるとともに、電子回路基板の小型化を実現することが可能となる。これにより、優れた特性の電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明のはんだ粉末の付着方法の製造工程の一例を説明するための工程断面図である。
【図2】本発明のはんだ粉末の付着方法の製造工程の一例を説明するための工程断面図である。
【図3】実施例のはんだ粉末の付着方法の製造工程の一例を説明するための工程断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
まず、はんだ粉末付着装置100の構成について、図1(a)を用いて詳細に説明する。なお、以下の説明において参照する図面は、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際と同じであるとは限らない。また、以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
本実施形態のはんだ粉末付着装置100は、容器1と、電子回路基板10を保持するための図示しない基板保持部と、振動機構3と、傾動機構4と、から概略構成されている。以下、それぞれの構成について説明する。
【0020】
(容器1)
図1(a)に示すように、容器1の上部には蓋1bが備えられており、これらを嵌合することにより、容器1と蓋1bの内側に密閉空間が構成される。また、蓋1bは開閉できる構成となっており、その開口部より、容器1の内部に、はんだ粉末20を収容することができる。また、容器1は、その内部に後述する基板保持部が配置されており、電子回路基板10を収容できる構成となっている。また、容器1の外側の底部1a中央に対応する位置には、後述する偏芯モーター3aが設けられている。
【0021】
(基板保持部)
基板保持部は容器1内に設けられており、複数の電子回路基板10を、その基板面がほぼ上下方向を向くように保持できる構成のものであれば、既存のものを用いても構わない。また、容器1の底部1aから間隔を空けて保持する構成であれば、なお好ましい。このようなものとしてはたとえば、電子回路基板10部分に対応する部分が打ち抜かれた電子回路基板10の保持板と、電子回路基板10の挿入具と電子回路基板10の抑え部からなるものを用いることができる。なお、このような基板保持部においては、その抑え部は電子回路基板10を挿入する際に大きな障害とならないような突起、ピンなど、小型のものを用いることが好ましい。
【0022】
図1(a)に、容器1の蓋1b側に上側の基板面(一面側10a)を向け、底部1a側に他面側10bを向けた電子回路基板10を示す。ここで示すように、電子回路基板10は、その他面側10bと容器1の底部1aとの間に間隔を保って保持される。また、電子回路基板10は、その下側の基板面(他面側10b)が、容器1の底部1aと並行となるように配置される。
また、このような基板保持部に複数の電子回路基板10を保持する際は、電子回路基板10同士は並行に並び、かつ、互いに一定の間隔を保って配置されることが好ましい。
【0023】
(電子回路基板10)
本発明の対象となる電子回路基板10はたとえば短冊状の構成であり、また、その材料としては、プラスチック基板、プラスチックフィルム基板、ガラス布基板、紙基質エポキシ樹脂基板、セラミックス基板等に金属板を積層した基板、あるいは金属基材にプラスチックあるいはセラミックス等を被覆した絶縁基板上に、金属等の導電性物質を用いて回路パターンを形成した片面回路基板、両面回路基板、多層回路基板あるいはフレキシブル回路基板等を用いることができる。また、その他に、IC基板、コンデンサ、抵抗、コイル、バリスタ、ベアチップ、ウェーハ等の適用も可能である。
【0024】
また、電子回路基板10の表面(一面側10a、他面側10b)には、たとえば銅、または銅合金からなる図示しない回路パターンが形成されている。回路パターンを形成する導電性物質としては、これらに限定されず、後述する粘着性付与物質により表面に粘着性が得られる導電性の物質であれば他のものを用いても構わない。このような導電性の物質としては、例えば、Ni、Sn、Ni−Au、フラッシュ金、Pd、Agはんだ合金等を含む物質等を挙げることができる。
【0025】
また、この回路パターンの表面には、はんだ粉末20を付着させるための図示しない粘着部が形成されている。この粘着部は、回路パターン部分に後述する粘着性付与化合物を反応させて形成したものである。
このような粘着性付与化合物としては、ナフトトリアゾール系誘導体、べンゾトリアゾール系誘導体、イミダゾール系誘導体、べンゾイミダゾール系誘導体、メルカプトべンゾチアゾール系誘導体およびべンゾチアゾールチオ脂肪酸等を用いることができる。これらの粘着性付与化合物は特に銅に対しての効果が強いが、他の導電性物質にも粘着性を付与することができる。
【0026】
(振動機構3)
振動機構3は偏芯モーター3aと制御手段3bから構成されている。
偏芯モーター3aは容器1の外側で、かつ、底部1a中央に対応する位置に設けられている。また、この偏芯モーター3aの回転軸は、後述する制御手段3bにより、その回転方向と振幅および周波数を制御されている。本実施形態においては、制御手段3bにより、偏芯モーター3aの回転軸は容器1の傾動方向と同じ方向に回転するように制御され、また、容器1の傾動方向に応じてその回転方向も変更される。
【0027】
また、偏芯モーター3aは容器1の外側で、かつ、底部1a中央に対応する位置に一つが設けられていればよいが、複数の偏芯モーター3aが設けられていても構わない。この場合は、偏芯モーター3aは全て同じ方向に回転するように制御手段3bにより制御されていることが好ましい。また、複数の偏芯モーター3aは、基板保持部の直下に対応する位置で、かつ、互いに等間隔で配置されていることが好ましい。これらにより、複数の偏芯モーター3aは均等に、かつ、底部1aに対し垂直の角度で振動を与えることができる。
【0028】
制御手段3bは偏芯モーター3aの回転方向と振幅および周波数を制御する手段である。また、制御手段3bは後述する傾動機構4と連動しており、容器1の傾動に応じて偏芯モーター3aの回転軸の回転方向を制御する。これにより、偏芯モーター3aの回転軸は容器1の傾動方向と同じ方向に回転するように制御される。これらにより、偏芯モーター3aは容器1の底部1aに対し垂直の角度で振動を与える構成となる。
【0029】
また、偏芯モーター3aの回転軸の振幅および周波数は、はんだ粉末20の状態に応じて任意に設定できる構成となっており、設定可能な周波数は50Hz〜60Hzの範囲であれば構わないが、0.5Hz〜100kHzの範囲であることが好ましい。周波数が0.5Hz未満であると振動の効果が得られず、100kHzを超えると振幅が小さくなるためにはんだ粉末20の移動が困難となり、好ましくない。
【0030】
(傾動機構4)
図1(a)に示すように、傾動機構4は容器1の外側に設けられている。傾動機構4はたとえば傾動軸4aと傾動手段4bと傾動板4cから構成されており、このうち傾動板4cは後述する支持部2によって容器1と連結した構成となっている。なお、傾動機構4の構成はここに示すものに限られず、容器1を傾動可能なものであれば他の構成でもかまわない。
【0031】
ここに示す傾動機構4は、容器1の外側かつ下部に設けられており、後述する支持部2を介して、容器1と連結した構成となっている。傾動手段4bは、例えば図示しない駆動モーターを備え、傾動軸4aを回転させる構成となっている。傾動軸4aと傾動板4cは連結しているため、傾動軸4aの回転により、傾動板4cは傾動する。これにより、傾動板4cは、傾動手段4bで設定した任意の傾斜角度で、第一の方向Aまたは第二の方向Bへ傾動する。また、傾動板4cは支持部2を介して容器1と連結している。そのため、容器1は傾動板4cの傾動に連動する構成となっている。
【0032】
ここで、支持部2は、たとえばバネなどの弾性体により構成されることが好ましい。弾性体からなる支持部2は、容器1が傾動した際の重量を受けて伸縮することができる。そのため、傾動過程における、はんだ粉末20の流動、および、はんだ粉末20の容器1内への衝突を緩和することができる。また、支持部2はバネに限られず、容器1の重量を支えることができ、かつ、弾性体であれば他のものから構成されていても構わない。
また、支持部2の配置は特に限定されないが、少なくとも容器1の底部1aの両端を支持するとともに、互いが等間隔で配置されていることが好ましい。
これらの構成により、傾動機構4は任意の傾斜角度で容器1を傾動させることができる。また、傾動方向に応じて、その傾斜角度を任意に設定することも可能である。
【0033】
本実施形態のはんだ粉末付着装置100は、はんだ粉末20と電子回路基板10を入れた容器1を任意の傾斜角度で傾動させることができる。また、偏芯モーター3aの制御手段3bが傾動機構4と連動していることにより、偏芯モーター3aの回転方向を、容器1の傾動方向と同じ方向とすることができる。
これにより、容器1の傾動に応じて、その底部1aに対し垂直の角度で振動を与えることができる。
【0034】
よって、本実施形態のはんだ粉末付着装置100を用いることにより、微細なはんだ粉末20であっても、電子回路基板10への乾式の付着の際の凝集を防ぐことができる。また、湿式の付着の際には、はんだ粉末20の懸濁液(はんだ懸濁液)の固形化が防がれる。つまり、本実施形態のはんだ粉末付着装置100を用いることにより、はんだ粉末20は容器1の傾動に合わせて容器1内を流動することができる。これにより、はんだ粉末20は微細部まで均一に行き渡り、電子回路基板10の他面側10bと、容器1の底部1aとの間にも行き渡る。そのため、はんだ粉末20を、他面側10bの粘着部にも十分付着させることができる。
【0035】
また、本実施形態の偏芯モーター3aは、電子回路基板10の直下に垂直の角度で振動を与える構成となっている。そのため、はんだ粉末20は下から上に突き上げられ、跳ね上がるように挙動する。これにより、はんだ粉末20は電子回路基板10に垂直の角度で衝突し、粘着部に効果的に付着する。
また、はんだ粉末20を付着させた後に、はんだ粉末20を付着させる際よりも大きい傾斜角度で反対の方向に傾動させるとともに、偏芯モーター3aを反転させて振動を加えることにより、余計な箇所に付着したはんだ粉末20や、余分なはんだ粉末20を効率的に除去することができる。
【0036】
以上により、本実施形態のはんだ粉末付着装置100を用いることにより、微細なはんだ粉末20であっても、流動化させやすくするとともに、電子回路基板10の粘着部に均一に付着させることができる。また、はんだ粉末20を除去するための別の工程が不要となるのみならず、傾斜の回数を少なくすることができる。この方法によれば、はんだ粉末20が容器1内を少なくとも一往復すればよく、従来の方法よりも工程を簡略化させることができる。また、本実施形態のはんだ粉末付着装置100は水平配置が可能なため、工程を自動化することができる。
【0037】
これらにより、微細なファインピッチパターンを有する電子回路基板10を効率的に製造することができる。また、隣接する回路パターン間において、溶融はんだによる短絡を効果的に防ぐことができる。そのため、電子回路基板10の信頼性を向上させることができるとともに、電子回路基板10の小型化を実現することができる。そのため、優れた特性の電子機器を提供することが可能となる。
【0038】
次いで、電子回路基板10に対するはんだ粉末20の付着方法について図1(a)〜図1(d)および図2(a)〜図2(c)を用いて説明する。
本実施形態の電子回路基板10に対するはんだ粉末20の付着方法は、電子回路基板10上の端子の表面に粘着性付与化合物を塗布して粘着層を形成する工程と、容器1内部の一方側にはんだ粉末20を配置する工程と、容器1内部のはんだ粉末20に対向する位置の基板保持部に電子回路基板10をその基板面がほぼ上下方向を向くように保持させる工程(準備工程)と、容器1の初期位置を第一の方向Aに傾動させた傾斜位置とし、はんだ粉末20を容器1内部の第一の方向Aから第二の方向Bへ移動させる第一工程と、はんだ粉末20を容器1内部の第二の方向Bから第一の方向Aへ移動させる第二工程と、から概略構成されている。なお、以下の説明において例示される構成は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0039】
<準備工程>
準備工程はさらに、電子回路基板10上の端子の表面に粘着性付与化合物を塗布して粘着層を形成する工程と、容器1内部の所定位置にはんだ粉末20を配置する工程と、容器1内部のはんだ粉末20に対向する位置の基板保持部に電子回路基板10を保持させる工程から概略構成されている。以下それぞれの構成についてその詳細を説明する。
【0040】
(粘着層を形成する工程)
まず、はじめに、電子回路基板10の図示しない導電性回路電極の表面を粘着性付与化合物で処理する。
はじめに、電子回路基板10を準備する。本発明の対象となる電子回路基板10はたとえば短冊状の構成であり、また、その材料としては、プラスチック基板、プラスチックフィルム基板、ガラス布基板、紙基質エポキシ樹脂基板、セラミックス基板等に金属板を積層した基板、あるいは金属基材にプラスチックあるいはセラミックス等を被覆した絶縁基板上に、金属等の導電性物質を用いて回路パターンを形成した片面回路基板、両面回路基板、多層回路基板あるいはフレキシブル回路基板等を用いることができる。また、その他に、IC基板、コンデンサ、抵抗、コイル、バリスタ、ベアチップ、ウェーハ等の適用も可能である。
【0041】
また、電子回路基板10の表面(一面側10a、他面側10b)には、たとえば銅、または銅合金からなる、図示しない回路パターンが形成されている。また、回路パターンを形成する導電性物質としては、これらに限定されず、後述する粘着性付与物質により表面に粘着性が得られる導電性の物質であれば他のものを用いても構わない。これらの金属としては、例えば、Ni、Sn、Ni−Au、フラッシュ金、Pd、Agはんだ合金等を含む物質等を挙げることができる。
【0042】
次いで、電子回路基板10の図示しない導電性回路電極の表面に粘着層を形成する。まず、水または酸性水に、以下に示す粘着性付与化合物のうち少なくとも1種または2種以上を溶解し、微酸性に調整した粘着性溶液を作成する。このとき、粘着性溶液の水素イオン濃度指数は、pH3〜4程度とすることが好ましい。
次いで、粘着性溶液に電子回路基板10を浸漬するか、または電子回路基板10に粘着性溶液を塗布する。これにより、電子回路基板10の回路パターンに粘着層が形成される。
【0043】
このとき、粘着性付与化合物としては、ナフトトリアゾール系誘導体、べンゾトリアゾール系誘導体、イミダゾール系誘導体、べンゾイミダゾール系誘導体、メルカプトべンゾチアゾール系誘導体及びべンゾチアゾールチオ脂肪酸等を用いることができる。これらの粘着性付与化合物は特に銅に対しての効果が強いが、他の導電性物質にも粘着性を付与することができる。
また、本発明においては、一般式(1)で表されるべンゾトリアゾール系誘導体を好適に用いることができる。但し、式(1)中のR1〜R4は、独立に水素原子、炭素数が1〜16(好ましくは5〜16)のアルキル基、アルコキシ基、F、Br、Cl、I、シアノ基、アミノ基またはOH基となる。
【0044】
【化1】

【0045】
また、本発明においては、一般式(2)で表されるナフトトリアゾール系誘導体を好適に用いることができる。但し、式(2)中のR5〜R10は、独立に水素原子、炭素数が1〜16(好ましくは5〜16)のアルキル基、アルコキシ基、F、Br、Cl、I、シアノ基、アミノ基またはOH基となる。
【0046】
【化2】

【0047】
また、本発明においては、一般式(3)で表されるイミダゾール系誘導体を好適に用いることができる。但し、式(3)中のR11、R12は、独立に水素原子、炭素数が1〜16(好ましくは5〜16)のアルキル基、アルコキシ基、F、Br、Cl、I、シアノ基、アミノ基またはOH基となる。
【0048】
【化3】

【0049】
また、本発明においては、一般式(4)で表されるべンゾイミダゾール系誘導体を好適に用いることができる。但し、式(4)中のR13〜R17は、独立に水素原子、炭素数が1〜16(好ましくは5〜16)のアルキル基、アルコキシ基、F、Br、Cl、I、シアノ基、アミノ基またはOH基となる。
【0050】
【化4】

【0051】
また、本発明においては、一般式(5)で表されるメルカプトべンゾチアゾール系誘導体を好適に用いることができる。但し、式(5)中のR18〜R21は、独立に水素原子、炭素数が1〜16(好ましくは5〜16)のアルキル基、アルコキシ基、F、Br、Cl、I、シアノ基、アミノ基またはOH基となる。
【0052】
【化5】

【0053】
また、本発明においては、一般式(6)で表されるべンゾチアゾールチオ脂肪酸系誘導体を好適に用いることができる。但し、式(4)中のR22〜R26は、独立に水素原子、炭素数が1〜16(好ましくは1または2)のアルキル基、アルコキシ基、F、Br、Cl、I、シアノ基、アミノ基またはOH基となる。
【0054】
【化6】

【0055】
これらの化合物のうち、一般式(1)で示されるべンゾトリアゾール系誘導体においては、一般には、R1〜R4の炭素数が多いほど粘着性が強くなる。
また、一般式(3)及び一般式(4)で示されるイミダゾール系誘導体及びべンゾイミダゾール系誘導体においても、一般には、R11〜R17の炭素数が多いほど粘着性が強くなる。
また、一般式(6)で示されるべンゾチアゾールチオ脂肪酸系誘導体においては、R22〜R26の炭素数は、1または2であることが好ましい。
【0056】
また、粘着性溶液のpH調整に用いる物質としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸等をあげることができる。また有機酸としては、蟻酸、乳酸、酢酸、プロピオン酸、リンゴ酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、酒石酸等を用いることができる。ここで、粘着性溶液における粘着性付与化合物の濃度は特に限定されず、溶解性、使用状況に応じて適宜調整して用いればよい。このとき、粘着性付与化合物の濃度としては全体として0.05質量%〜20質量%の範囲内の濃度であることが好ましい。また、0.05質量%より低濃度にすると、粘着性付与化合物は十分な粘着性を付与できなくなるため好ましくない。
【0057】
また、粘着性溶液を導電性回路電極に付着させる際の処理温度については、室温より若干高めにすることが好ましい。これにより、粘着層の形成速度、形成量が十分な値となるためである。また、この処理温度は、粘着性付与化合物の濃度や導電性回路電極を構成する金属の種類などに応じてその最適値は変化するが、一般的には30℃〜60℃位の範囲が好適である。また、この粘着性溶液への浸漬時間は5秒〜5分間位の範囲であることが好ましい。そのため、浸漬時間がこの範囲内となるように他の条件を調整することが好ましい。
【0058】
また、粘着性溶液中には、銅イオンを50〜1000ppm共存させることが好ましい。銅イオンを共存させることにより、粘着層の形成速度、形成量などの形成効率が高まるためである。
【0059】
(容器1内部にはんだ粉末20を配置する工程)
次いで、容器1を第一の方向A側に傾けて蓋1bを開放し、図1(a)に示すようにはんだ粉末20を配置する。ここで、はんだ粉末20の金属組成としては、例えばSn−Pb系、Sn−Pb−Ag系、Sn−Pb−Bi系、Sn−Pb−Bi−Ag系、Sn−Pb−Cd系が挙げられる。また、最近の産業廃棄物におけるPb排除の観点から、Pbを含まないSn−In系、Sn−Bi系、In−Ag系、In−Bi系、Sn−Zn系、Sn−Ag系、Sn−Cu系、Sn−Sb系、Sn−Au系、Sn−Bi−Ag−Cu系、Sn−Ge系、Sn−Bi−Cu系、Sn−Cu−Sb−Ag系、Sn−Ag−Zn系、Sn−Cu−Ag系、Sn−Bi−Sb系、Sn−Bi−Sb−Zn系、Sn−Bi−Cu−Zn系、Sn−Ag−Sb系、Sn−Ag−Sb−Zn系、Sn−Ag−Cu−Zn系、Sn−Zn−Bi系を用いることが特に好ましい。
【0060】
また、上記金属組成の具体例としては、Snが63質量%、Pbが37質量%の共晶ハンダ(以下63Sn/37Pbと表す。)を中心として、62Sn/36Pb/2Ag、62.6Sn/37Pb/0.4Ag、60Sn/40Pb、50Sn/50Pb、30Sn/70Pb、25Sn/75Pb、10Sn/88Pb/2Ag、46Sn/8Bi/46Pb、57Sn/3Bi/40Pb、42Sn/42Pb/14Bi/2Ag、45Sn/40Pb/15Bi、50Sn/32Pb/18Cd、48Sn/52In、43Sn/57Bi、97In/3Ag、58Sn/42In、95In/5Bi、60Sn/40Bi、91Sn/9Zn、96.5Sn/3.5Ag、99.3Sn/0.7Cu、95Sn/5Sb、20Sn/80Au、90Sn/10Ag、90Sn/7.5Bi/2Ag/0.5Cu、97Sn/3Cu、99Sn/1Ge、92Sn/7.5Bi/0.5Cu、97Sn/2Cu/0.8Sb/0.2Ag、95.5Sn/3.5Ag/1Zn、95.5Sn/4Cu/0.5Ag、52Sn/45Bi/3Sb、51Sn/45Bi/3Sb/1Zn、85Sn/10Bi/5Sb、84Sn/10Bi/5Sb/1Zn、88.2Sn/10Bi/0.8Cu/1Zn、89Sn/4Ag/7Sb、88Sn/4Ag/7Sb/1Zn、98Sn/1Ag/1Sb、97Sn/1Ag/1Sb/1Zn、91.2Sn/2Ag/0.8Cu/6Zn、89Sn/8Zn/3Bi、86Sn/8Zn/6Bi、89.1Sn/2Ag/0.9Cu/8Znなどが挙げられる。また本発明に用いるはんだ粉末20としては、異なる組成のはんだ粉末を2種類以上混合させたものを用いてもよい。
【0061】
また、はんだ粉末20の粒径は4μm〜20μmの範囲であることが好ましく、5μm〜10μmの範囲であることが特に好ましい。はんだ粉末20の粒径は特にこの値に制限されず、これより大きいものであってもかまわない。
【0062】
また、このときの容器1の傾斜角度は、はんだ粉末20の量や、後述する第一工程における傾斜角度に応じて適宜設定すればよい。
次いで、容器1内部の第一の方向A側に、はんだ粉末20を配置する。このとき、はんだ粉末20は、基板保持部に接触しないようにすることが好ましい。この蓋1bは、電子回路基板10へはんだ粉末20を付着させる処理を行うたびに開放し、そこからはんだ粉末20および電子回路基板10を容器1内に出し入れする。
【0063】
また、湿式ではんだ粉末20の付着を行う場合は、容器1を傾けて水等の分散液を容器1内に入れた後に、はんだ粉末20を添加する。これにより、はんだ粉末20は分散液中に分散してはんだ懸濁液となる。
また、本実施形態においては、はんだ粉末20を電子回路基板10よりも先に容器1内部に入れておくことが好ましい。これにより、後述する基板保持部に電子回路基板10を保持させる工程において蓋1bを開閉しても、はんだ粉末20の飛散が抑制されるためである。
【0064】
(基板保持部に電子回路基板10を保持させる工程)
次いで、図示しない基板保持部に電子回路基板10を保持させる。この基板保持部は容器1内に設けられており、複数の電子回路基板10を容器1の底部1aから間隔を空けるとともに、その基板面をほぼ上下方向を向くように保持できる構成であれば、既存のものを用いても構わない。また、このような基板保持部においては、その抑え部は電子回路基板10を挿入する際に大きな障害とならないような突起、ピンなど、小型のものを用いることが好ましい。
このような基板保持部に電子回路基板10を保持させることにより、電子回路基板10の他面側10bは、容器1の底部1aと並行に、かつ、底部1aとの間で間隔を保って保持される。
【0065】
このとき、電子回路基板10の蓋1b側の基板面を一面側10a、底部1a側の基板面を他面側10bとする。また、このような基板保持部に複数の電子回路基板10を保持する際は、電子回路基板10同士を並行に、かつ、互いに一定の間隔を保って配置することが好ましい。これにより、電子回路基板10は、後述する偏芯モーター3aの直上に配置された構成となる。以上により、電子回路基板10は底部1aに対して並行に取り付けられる。
【0066】
ここで、電子回路基板10を容器1内部に出し入れする際、はんだ粉末20は容器1の下部に貯蔵され、蓋1bから離間した配置となる。このため、蓋1bが開閉される際、はんだ粉末20の外部への飛散は抑制される。
この後、蓋1bを閉じて、容器1内部の密閉空間にたとえばNなどの不活性ガスを充填させる。また、この後の工程において電子回路基板10を取り出すまで、蓋1bは閉じたままとする。容器1内部を不活性ガスで充填させたままにすることで、はんだ粉末20の酸化を防止するためである。
【0067】
<第一工程>
次いで、図1(a)〜図1(d)に示すように、はんだ粉末20を容器1内部の第一の方向A側から第二の方向B側へ移動させる。
図1(a)は、容器1内部にはんだ粉末20もしくははんだ懸濁液と電子回路基板10を配置した状態である。容器1の外側には、偏芯モーター3aと制御手段3bからなる振動機構3が設けられており、このうち少なくとも偏芯モーター3aは底部1a中央に対応する位置に設けられている。
【0068】
また、偏芯モーター3aの回転軸は制御手段3bにより、その回転方向と振幅および周波数を制御されている。本実施形態においては、偏芯モーター3aの回転軸は容器1の傾動方向と同じ方向に回転するように制御され、傾動方向の変更に応じてその回転方向も変更される。
また、容器1の外側には、傾動軸4aと傾動手段4bと傾動板4cからなる傾動機構4が設けられており、後述する支持部2を介して容器1を傾動させる構成となっている。また、その傾動手段4bは、傾斜角度を任意に設定可能である。
【0069】
まず、容器1を第一の方向A側から第二の方向B側へ水平状態からたとえば5°の角度で傾動させる。はじめに、傾動手段4bの例えば図示しない駆動モーターにより傾動軸4aを回転させる。これにより、傾動軸4aに接合された傾動板4cはら第二の方向B側へ傾動する。このとき傾動板4cは、傾動手段4bで設定した任意の傾斜角度で傾動させることができる。
ここで、容器1はたとえばバネなどの弾性体からなる支持部2により傾動板4cと連結している。これにより、容器1は傾動板4cに連動して傾動する。また、支持部2はバネに限られず、容器1の重量を支えることができ、かつ、弾性体であれば他のものから構成されていても構わない。また、支持部2の配置は特に限定されないが、少なくとも容器1の底部1aの両端を支持するとともに、互いが等間隔で配置されていることが好ましい。
【0070】
また、容器1の傾動に伴い、偏芯モーター3aと制御手段3bからなる振動機構3は、容器1の底部1aを振動させる。制御手段3bは後述する傾動機構4と連動しており、容器1の傾動に応じて偏芯モーター3aの回転軸の回転方向を制御する構成となっている。また、偏芯モーター3aの回転軸は制御手段3bにより、容器1の傾動方向と同じ方向に回転するように制御されている。これにより、偏芯モーター3aの回転軸は容器1の傾動方向に応じてその回転方向を変化させ、底部1aに対し常に垂直の角度で振動を与える。
【0071】
この振動により、はんだ粉末20は下から上に突き上げられ、跳ね上がるように挙動する。これにより、はんだ粉末20の凝集は防がれ、容器1の傾動に伴って移動することができる。また、これにより、はんだ粉末20は微細部まで均一に行き渡るため、電子回路基板10の他面側10bと、容器1の底部1aとの間にも行き渡る。そのため、はんだ粉末20を、他面側10bの粘着部にも十分付着させることができる。
また、はんだ粉末20は下から上に突き上げられ、跳ね上がるように挙動するため、電子回路基板10に垂直の角度で衝突し、粘着部に効果的に付着する。
【0072】
また、はんだ懸濁液を用いる際は、はんだ粉末20は下から上に突き上げられ、跳ね上がるように挙動するため、はんだ懸濁液の固形化は防がれる。そのため、はんだ懸濁液は液状化し、容器1の傾動に伴って微細部にまで流動する。また、はんだ粉末20は電子回路基板10に垂直の角度で衝突するため、粘着部に効果的に付着する。
【0073】
このとき、偏芯モーター3aの回転軸の振幅および周波数は、はんだ粉末20の状態に応じて任意に設定すればよい。周波数は50Hz〜60Hzの範囲で設定できれば構わないが、0.5Hz〜100kHzの範囲で設定できれることが特に好ましい。周波数を0.5Hz未満とすると振動の効果が得られず、また、100kHzを超えるとはんだ粉末20の移動が困難となるため、好ましくない。
【0074】
以上により、図1(b)〜図1(c)に示すように、はんだ粉末20は電子回路基板10の表面に接しながら移動し、その粘着部に付着する。なお、偏芯モーター3aの振幅および周波数は、はんだ粉末20の移動状態や跳ね上がりの状態に応じて任意に設定すればよい。ここでは周波数については、たとえば交流周波数50Hzで設定する。
【0075】
また、偏芯モーター3aは容器1の外側で、かつ、底部1a中央に対応する位置に一つが設けられていればよいが、複数の偏芯モーター3aが設けられた構成であっても構わない。この場合は、制御手段3bにより、偏芯モーター3aを全て同じ方向に回転させるように制御することが好ましい。また、複数の偏芯モーター3aは、基板保持部の直下に対応する位置で、かつ、互いに等間隔で配置されていることが好ましい。これらにより、複数の偏芯モーター3aは均等に、かつ、底部1aに対し垂直の角度で振動を与えることができるためである。
【0076】
この後、図1(d)に示すように、はんだ粉末20は容器1の第二の方向Bの側の側壁に当たり、その移動を終了する。このとき、支持部2は容器1が傾動した際の重量を受けて伸縮するため、はんだ粉末20の流動、および、はんだ粉末20の容器1内への衝突を緩和することができる。
【0077】
<第二工程>
次いで、図2(a)〜図2(c)に示すように、はんだ粉末20を容器1内部の第二の方向Bから第一の方向Aへ移動させる。図2(a)は、第一工程の後の状態であり、容器1内部の第二の方向Bの側に、はんだ粉末20もしくははんだ懸濁液と電子回路基板10が配置された状態である。
まず、容器1を水平状態からたとえば30°の角度で第一の方向Aの側へ傾動させる。この傾動は、第一工程での傾動とは逆の方向である。また、この傾動は、第一工程での第二の方向Bへの傾動よりも大きい傾斜角度で行うことが好ましい。
【0078】
また、容器1の傾動に伴い、振動機構3により容器1の底部1aを振動させる。偏芯モーター3aの回転軸は制御手段3bにより、容器1の第二の方と同じ方向へ回転する。このとき、第一の方向Aは、第二の方向Bとは反対の向きとなる。これにより、偏芯モーター3aは底部1aに対し垂直の角度で振動を与える。
【0079】
これにより、はんだ粉末20は跳ね上がるように挙動し、図2(b)に示すように容器1の傾動に伴って移動する。
このとき、容器1の傾動は、第一工程での容器1の傾動よりも大きい傾斜角度で行うことが好ましい。それにより、余計な箇所に付着したはんだ粉末20や、余分なはんだ粉末20は振動により跳ね上がるとともに、容器1内を第一の方向Aの方向へ移動する。これにより、粘着部以外の箇所に付着したはんだ粉末20を効果的に除去することができる。
【0080】
以上により、はんだ粉末20を電子回路基板10の粘着部に効果的に付着させることができるとともに、余計な箇所に付着したはんだ粉末20を除去することができる。この第一工程、第二工程は少なくとも1回行えばよいが、その付着状況に応じて適宜その回数を調整すればよい。
また、偏芯モーター3aの振幅および周波数は、はんだ粉末20の移動状態や跳ね上がりの状態に応じて任意に設定すればよい。また、偏芯モーター3aが複数設けられている場合は、偏芯モーター3aは全て同じ方向に回転するように制御手段3bにより制御することが好ましい。
この後、図2(c)に示すように、はんだ粉末20は容器1の第一の方向Aの側壁に当たり、その移動を終了する。
【0081】
この後、容器1から電子回路基板10を取り出す工程と、電子回路基板10に有機酸塩基のハロゲン化水素酸塩を含む活性剤を塗布する工程と、電子回路基板10を、はんだの融点以下で加熱して、はんだ粉末20を定着させる工程と、電子回路基板10ににフラックスを塗布する工程と、電子回路基板10にを加熱して、はんだ粉末20を溶融する工程を行うことにより、電子回路基板10が製造される。
【0082】
本実施形態の電子回路基板10に対するはんだ粉末20の付着方法によれば、はんだ粉末20と電子回路基板10を入れた容器1を任意の傾斜角度で傾動させることができる。また、偏芯モーター3aを、容器1の傾動方向と同じ方向で回転させることができる。これにより、容器1の傾動に応じて、その底部1aに対し垂直の角度で振動を与えることができる。
【0083】
これによりはんだ粉末20は跳ね上がるように挙動する。そのため、微細なはんだ粉末20であっても、その凝集が防がれる。また、はんだ粉末20の懸濁液であっても、その固形化が防がれる。そのため、本実施形態によれば、はんだ粉末20を容器1の傾動に合わせて容器1内を均一に行き渡らせることができるとともに、電子回路基板10の粘着部に垂直に衝突させることができる。そのため、第一工程において、電子回路基板10の他面側10bをはじめ、粘着部の微細な部分にもはんだ粉末20を十分付着させることができる。
また、第二工程において、第一工程よりも大きい傾斜角度で容器1を傾動させることにより、余計な箇所に付着したはんだ粉末20や、余分なはんだ粉末20を効率的に除去することが可能となる。
【0084】
以上により、微細なはんだ粉末20であっても、電子回路基板10の粘着部に均一に付着させることができる。また、はんだ粉末20を除去するための別の工程が不要となるのみならず、傾斜の回数を少なくすることができる。この方法によれば、はんだ粉末20は容器1内を少なくとも一往復すればよく、従来の方法よりも工程を簡略化させることができる。また、本実施形態のはんだ粉末付着装置100は水平配置が可能なため、それによる工程を自動化することができる。
【0085】
これらにより、微細なファインピッチパターンを有する電子回路基板10を効率的に製造することができる。また、隣接する回路パターン間において、溶融はんだによる短絡を効果的に防ぐことができる。そのため、電子回路基板10の信頼性を向上させることができるとともに、電子回路基板10の小型化を実現することができる。これにより、優れた特性の電子機器を提供することが可能となる。
【実施例】
【0086】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(実施例1)
まず、幅50mm、縦200mm、厚さ0.4mmの大きさの短冊状の電子回路基板10を準備した。なお、電子回路基板10の電極の最小幅は20μmであり、電極間の最小間隔は20μmであった。
次いで、塩酸水により電子回路基板10の前処理を行った。次いで、粘着性付与化合物を含む粘着性溶液として一般式(3)のR12のアルキル基がC1123、R11が水素原子であるイミダゾール系化合物の2質量%水溶液を準備し、酢酸によりそのpHを約4に調整した。次いで、この粘着性溶液を40℃に加温し、電子回路基板10を3分間浸漬した。これにより、電子回路基板10の一面側10aおよび他面側10bの電子回路に粘着層が形成された。
【0087】
次いで、内寸法が縦200mm、横120mm、高さ150mmの大きさの容器1を第一の方向Aの側に傾けて蓋1bを開放した。次いで、蓋1bの開口部より、組成が96.5Sn/3.5Ag、粒径が5μmのはんだ粉末20を、容器1内の第一の方向Aの側に約400g配置した。このとき、はんだ粉末20は、図示しない基板保持部に接触しないようにした。次いで、容器1内に水1600mlを投入し、はんだ粉末20のはんだ懸濁液を形成した。
次いではんだ粉末付着装置100を準備し、図示しない基板保持部に、三枚の電子回路基板10の一面側10aを上方(容器1の蓋1b側)に向け、かつ、底部1aとの間で間隔を保つ構成で保持させた。この状態を図1(a)に示す。
【0088】
次いで、傾動手段4bの例えば図示しない駆動モーターにより傾動軸4aを駆動させた。これにより容器1は第二の方向Bの側へ、水平状態から5°の傾斜角度で傾動した。また、これに伴い、偏芯モーター3aを容器1の傾動方向と同じ方向で回転させた。これにより、底部1aはその外側から垂直の角度で振動を与えられた。また、このときの偏芯モーター3aの周波数は、交流周波数50Hzとした。
【0089】
次いで、容器1を第一の方向Aの側へ、水平状態から5°の傾斜角度で傾動させた。また、これに伴い、偏芯モーター3aを容器1の傾動方向で回転させた。
この第一の方向Aへの傾動と第二の方向Bの方向への傾動は一回ずつ行った。また、これら傾動の周期はそれぞれ10秒とした。
【0090】
この後、容器1から電子回路基板10を取り出して純水で軽く洗浄した後、乾燥させた。
次いで、電子回路基板10の一面側10aと他面側10bの両面に活性剤を塗布した。次いで電子回路基板10を空気中で乾燥させ、240℃に加熱したオーブンに入れて空気中で1分加熱し、はんだ粉末20を融解させた。この後、電子回路基板10の電子回路の確認を行ったが、短絡や脱落は見られなかった。
【0091】
(比較例1)
偏芯モーター3aを回転させない以外は、実施例1と同じ方法を採用したが、図3に示すように、容器1を傾動させても、はんだ粉末20は十分に拡散しなかった。また、この後、電子回路基板10を製造したのちに電子回路の確認を行ったところ、短絡や脱落が観察された。
【符号の説明】
【0092】
1…容器、1a…底部、1b…蓋、2…支持部、3…振動機構、3a…偏芯モーター、3b…制御手段、4…傾動機構、4a…傾動軸、4b…傾動手段、4c…傾動板、10…電子回路基板、20…はんだ粉末、100…はんだ粉末付着装置、A…第一の方向、B…第二の方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子回路基板およびはんだ粉末を収容する容器と、
前記容器内に備え付けられ、前記電子回路基板をその基板面がほぼ上下方向を向くように保持する基板保持部と、
前記容器の初期位置を第一の方向に傾動させた傾斜位置とし、前記初期位置から前記第一の方向と反対の第二の方向に前記容器を傾動させてから、前記容器を前記第一の方向に再び傾動させる傾動機構と、
回転軸を回転させることにより前記容器の底部に振動を与える、前記底部の中心に設けられた偏芯モーターと、前記偏芯モーターの前記回転軸を前記容器の傾動方向と同じ方向に設定する制御手段からなる振動機構と、を具備してなることを特徴とするはんだ粉末付着装置。
【請求項2】
前記振動機構が、前記傾動機構が前記容器を傾動させる際に前記容器を振動させる機能を有することを特徴とする請求項1に記載のはんだ粉末付着装置。
【請求項3】
前記傾動機構が、傾動の角度を任意の値に制御するものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のはんだ粉末付着装置。
【請求項4】
前記制御手段が、前記偏芯モーターの振幅および周波数を任意の値に制御するものであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のはんだ粉末付着装置。
【請求項5】
前記周波数が0.5Hz〜100kHzの範囲であることを特徴とする請求項4に記載のはんだ粉末付着装置。
【請求項6】
前記偏芯モーターが複数設けられ、全てが同じ方向に回転することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のはんだ粉末付着装置。
【請求項7】
前記基板保持部が、複数の前記電子回路基板を保持する構成であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載のはんだ粉末付着装置。
【請求項8】
前記支持部が弾性体からなることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載のはんだ粉末付着装置。
【請求項9】
前記容器に蓋が設けられ、前記容器内側に密閉空間を有することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載のはんだ粉末付着装置。
【請求項10】
電子回路基板の粘着部にはんだ粉末を付着させるはんだ粉末の付着方法において、
容器内部の一方側にはんだ粉末を配置するとともに、前記容器内部の基板保持部に前記電子回路基板をその基板面がほぼ上下方向を向くように保持する準備工程と、
前記容器の初期位置を第一の方向に傾動させた傾斜位置とし、傾動機構により前記初期位置から前記第一の方向と反対の第二の方向に、前記容器を傾動させる第一工程と、
前記容器を前記第一の方向に再び傾動させる第二工程と、を具備することを特徴とするはんだ粉末の付着方法。
【請求項11】
前記第二工程において、前記第二の方向への傾動よりも大きい傾斜角度で、前記第一の方向への傾動を行うことを特徴とする、請求項10に記載のはんだ粉末の付着方法。
【請求項12】
前記第一工程と第二工程において、前記偏芯モーターを複数用い、かつ、それらを全て同じ方向に回転させることを特徴とする請求項10または請求項11に記載のはんだ粉末の付着方法。
【請求項13】
前記第一工程と第二工程において、前記傾動機構により、傾動の角度を任意の値に制御することを特徴とする、請求項10乃至12のいずれか一項に記載のはんだ粉末の付着方法。
【請求項14】
前記第一工程と第二工程において、前記偏芯モーターの振幅および周波数を、制御手段により任意の値に制御することを特徴とする、請求項10乃至13のいずれか一項に記載のはんだ粉末の付着方法。
【請求項15】
前記周波数を0.5Hz〜100kHzの範囲とすることを特徴とする請求項14に記載のはんだ粉末の付着方法。
【請求項16】
前記準備工程において、前記容器に蓋を設けるとともに、前記容器内側の密閉空間に不活性ガスを充填することを特徴とする請求項10乃至14のいずれか一項に記載のはんだ粉末の付着方法。
【請求項17】
前記はんだ粉末の粒径が4μm〜20μmの範囲であることを特徴とする請求項10乃至16のいずれか一項に記載のはんだ粉末の付着方法。
【請求項18】
前記はんだ粉末の粒径が5μm〜10μmの範囲であることを特徴とする請求項17に記載のはんだ粉末の付着方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−151140(P2011−151140A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−10270(P2010−10270)
【出願日】平成22年1月20日(2010.1.20)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】