説明

はんだ粉末及び該粉末を用いたはんだペースト

【課題】印刷時のマスク除去後の形状保持性に優れ、且つ、その後の加熱時を含めたダレ防止性に優れた、はんだ粉末及び該粉末を用いたはんだペーストを提供する。
【解決手段】本発明のはんだ粉末は、粉末形状が球形とは異なる、少なくとも1面以上の平面を有する多面体形状、特に、4面体形状や6面体形状、8面体形状、12面体形状であることを特徴とする。また、体積累積中位径(Median径;D50)は5μm未満が好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体積累積中位径(Median径;D50)が5μm未満であり、ファインピッチ用はんだ粉末及び該粉末を用いたはんだペーストに関する。更に詳しくは、印刷時のマスク除去後の形状保持性に優れ、且つ、その後の加熱時を含めたダレ防止性に優れたはんだ粉末及び該粉末を用いたはんだペーストに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子部品の微小化・微細化とともに接合部の電極面積と電極間距離の微小化・微細化が進み、より微細なはんだ粉末を用い、且つ、より高い印刷性を兼ね備えたはんだペーストの技術改良が進められている。
【0003】
例えば、プラズマ法により平均粒径0.4〜2μm、最大粒径5μm以下の球状金属錫粉末を作製することが開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、液体金属に圧力を加え、多孔質膜に接している液体連続相中に液体金属粒子を分散させ、粒度分布の体積累積中位径(Median径;D50)が10μm以下のはんだ金属球状粒子を作製することが開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−241549号公報(請求項1,2)
【特許文献2】特許第3744519号公報(請求項1,3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1や特許文献2に示されたような、その形状が球状のはんだ粉末では、印刷時のマスク除去後に印刷形状が崩れることに起因するダレの発生や加熱時に印刷形状が崩れることに起因するダレの発生を完全には防ぐことができず、電極間の距離が短いファインピッチ用基板では結果として、このような粉末形状のハンダ用ペーストを印刷した後に加熱すると、ブリッジと呼ばれる、隣り合う電極間がはんだによってショートするような現象が発生してしまう不具合を生じる問題があった。
【0007】
本発明の目的は、印刷時のマスク除去後の形状保持性に優れ、且つ、その後の加熱時を含めたダレ防止性に優れた、はんだ粉末及び該粉末を用いたはんだペーストを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の観点は、粉末形状が球形とは異なる、少なくとも1面以上の平面を有する多面体形状であることを特徴とするはんだ粉末である。
【0009】
本発明の第2の観点は、第1の観点に基づく発明であって、更に体積累積中位径D50が5μm未満であることを特徴とする。
【0010】
本発明の第3の観点は、第1の観点に基づく発明であって、更に比表面積が0.4m2/g以上であることを特徴とする。
【0011】
本発明の第4の観点は、第1の観点に基づく発明であって、更に粉末形状が4面体形状であることを特徴とする。
【0012】
本発明の第5の観点は、第1の観点に基づく発明であって、更に粉末形状が6面体形状であることを特徴とする。
【0013】
本発明の第6の観点は、第1の観点に基づく発明であって、更に粉末形状が8面体形状であることを特徴とする。
【0014】
本発明の第7の観点は、第1の観点に基づく発明であって、更に粉末形状が12面体形状であることを特徴とする。
【0015】
本発明の第8の観点は、第1ないし第7の観点に基づくはんだ粉末とはんだ用フラックスを混合しペースト化することを特徴とするはんだペーストである。
【0016】
本発明の第9の観点は、第8の観点に基づく発明であって、更に電子部品の実装に用いることを特徴とする。
【0017】
本発明の第10の観点は、第8又は第9の観点に基づくはんだペーストを用いて製造されたことを特徴とする電子部品である。
【発明の効果】
【0018】
本発明のはんだ粉末は、少なくとも1面以上の平面を有する多面体形状であり、このような形状のはんだ粉末を用いたはんだペーストでは、印刷時に隣り合う平面を有する多面体形状のはんだ粉末の平面同士が接触するように充填されるため、印刷時のマスク除去後の形状保持性が良くダレ難い上、加熱時のダレ発生を大幅に改善することができる。従って、このような形状のはんだ粉末を用いたはんだペーストでは、電極間の距離が短く、少しのダレ発生でも容易にブリッジと呼ばれる現象が発生してしまうファインピッチ用基板では特に良好な印刷特性を示すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に本発明を実施するための形態を説明する。
【0020】
本発明のはんだ粉末は、粉末形状が球形とは異なる、少なくとも1面以上の平面を有する多面体形状であることを特徴とする。
【0021】
通常用いられる球形状のはんだ粉末では、はんだ粉末間の接触面積が小さいために印刷時のマスク除去後に印刷形状が崩れてダレが発生、または加熱時に印刷形状が崩れてダレが発生するが、本発明の少なくとも1面以上の平面を有する多面体形状のはんだ粉末を用いることで、隣り合う平面を有する多面体形状のはんだ粉末の平面同士が接触するように充填されるため、印刷時のマスク除去後の形状保持性が良くダレ難い上、加熱時のダレ発生を大幅に改善することができる。
【0022】
粉末形状は、少なくとも1面以上の平面を有する多面体形状であれば、本発明の効果を達成することができるが、4面体形状や6面体形状、8面体形状、12面体形状と使用用途によって使い分けてもよい。
【0023】
はんだ粉末組成としては、Pb−Sn、Sn−Cu、Sn−Ag−Cu、Sn−Agなどが挙げられる。
【0024】
また、本発明のはんだ粉末は、体積累積中位径(Median径;D50)が5μm未満のものを使用することが好適である。体積累積中位径(Median径;D50)を5μm未満としたのは、5μm未満の多面体形状のはんだ粉末を用いたはんだペーストでは、粉末が微細で且つ粉末周辺がフラックスで覆われているため、剪断による抵抗が小さく、スキージによる印圧が加わった状態でもペーストのローリング性に支障がなく、また、マスク開口部への充填性も良好であるためである。
【0025】
一方、5μm以上の多面体形状のはんだ粉末を用いたはんだペーストでは、ペースト印刷時のスキージによる印圧がペーストに印加されたときに、たとえ粉末の周りがフラックスで覆われていたとしても、剪断による抵抗が大きいため、ローリング性が悪く、マスク開口部への充填性が悪くなる不具合を生じる。
【0026】
その形状が球形状のはんだ粉末では、比表面積が0.4m2/g未満であるが、本発明のはんだ粉末は、比表面積が0.4m2/g以上である。
【0027】
本発明のはんだペーストは、前述したはんだ粉末とはんだ用フラックスを混合しペースト化したものである。はんだ用フラックスは、市販されているRAやRMAタイプのフラックスを使用することができる。フラックス比率は10〜20質量%の割合が好ましい。はんだ粉末とはんだ用フラックスとの混合物は、万能混練機などで解砕、混練が行われ、はんだペーストが作製される。得られたはんだペーストは電子部品の実装に用いられる。
【0028】
また、本発明のはんだペーストは、電子部品の製造に好適に用いることができる。
【実施例】
【0029】
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
【0030】
<実施例1>
レーザー回折散乱法(堀場製作所製;Partica LA−950)で測定した体積累積中位径D50が3.2μm、BET測定値(QUANTACHROME社製 AUTOSORB−1 MP、3点測定)が0.53m2/gであり、その形状が少なくとも1面以上の平面を有する多面体形状からなるSn−3.5質量%Ag組成のはんだ粉末を用意した。
【0031】
このはんだ粉末に対し、市販のRAフラックスをはんだ粉末が87.5質量%及びフラックスが12.5質量%の割合となるように添加混合し、その混合物を万能混練機にて混練を行い、はんだペーストを作製した。
【0032】
<実施例2>
レーザー回折散乱法(堀場製作所製;Partica LA−950)で測定した体積累積中位径D50が3.1μmであり、BET測定値(QUANTACHROME社製 AUTOSORB−1 MP、3点測定)が0.45m2/gであり、その形状が少なくとも1面以上の平面を有する多面体形状からなるSn−3.0質量%Ag−0.5質量%Cu組成のはんだ粉末を用意した。
【0033】
このはんだ粉末に対し、市販のRMAフラックスをはんだ粉末が86.5質量%及びフラックスが13.5質量%の割合となるように添加混合し、その混合物を万能混練機にて解砕、混練を行い、はんだペーストを作製した。
【0034】
<実施例3>
レーザー回折散乱法(堀場製作所製;Partica LA−950)で測定した体積累積中位径D50が2.2μmであり、BET測定値(QUANTACHROME社製 AUTOSORB−1 MP、3点測定)が0.62m2/gであり、その形状が6面体形状からなるSn−0.7質量%Cu組成のはんだ粉末を用意した。
【0035】
このはんだ粉末に対し、市販のRAフラックスをはんだ粉末が86質量%及びフラックスが14質量%の割合となるように添加混合し、その混合物を万能混練機にて解砕、混練を行い、はんだペーストを作製した。
【0036】
<実施例4>
レーザー回折散乱法(堀場製作所製;Partica LA−950)で測定した体積累積中位径D50が3.8μmであり、BET測定値(QUANTACHROME社製 AUTOSORB−1 MP、3点測定)が0.45m2/gであり、その形状が8面体形状からなるSn−0.7質量%Cu組成のはんだ粉末を用意した。
【0037】
このはんだ粉末に対し、市販のRAフラックスをはんだ粉末が86質量%及びフラックスが14質量%の割合となるように添加混合し、その混合物を万能混練機にて解砕、混練を行い、はんだペーストを作製した。
【0038】
<比較例1>
レーザー回折散乱法(堀場製作所製;Partica LA−950)で測定した体積累積中位径D50が3.4μmであり、BET測定値(QUANTACHROME社製 AUTOSORB−1 MP、3点測定)が0.18m2/gであり、その形状が球形からなるSn−0.7質量%Cu組成のはんだ粉末を用意した。
【0039】
このはんだ粉末に対し、市販のRAフラックスをはんだ粉末が86質量%及びフラックスが14質量%の割合となるように添加混合し、その混合物を万能混練機にて解砕、混練を行い、はんだペーストを作製した。
【0040】
<比較例2>
レーザー回折散乱法(堀場製作所製;Partica LA−950)で測定した体積累積中位径D50が2.8μmであり、BET測定値(QUANTACHROME社製 AUTOSORB−1 MP、3点測定)が0.25m2/gであり、その形状が球形からなるSn−3.0質量%Ag−0.5質量%Cu組成のはんだ粉末を用意した。
【0041】
このはんだ粉末に対し、市販のRMAフラックスをはんだ粉末が86.5質量%及びフラックスが13.5質量%の割合となるように添加混合し、その混合物を万能混練機にて解砕、混練を行い、はんだペーストを作製した。
【0042】
<比較例3>
レーザー回折散乱法(堀場製作所製;Partica LA−950)で測定した体積累積中位径D50が9.2μmであり、BET測定値(QUANTACHROME社製 AUTOSORB−1 MP、3点測定)が0.025m2/gであり、その形状が球形からなるSn−3.0質量%Ag−0.5質量%Cu組成のはんだ粉末を用意した。
【0043】
このはんだ粉末に対し、市販のRMAフラックスをはんだ粉末が88質量%及びフラックスが12質量%の割合となるように添加混合し、その混合物を万能混練機にて解砕、混練を行い、はんだペーストを作製した。
【0044】
<比較試験及び評価>
実施例1〜4及び比較例1〜3で得られたはんだペーストを用いて、ファインピッチ用プリント基板に対し、スクリーン印刷を実施した。なお、スクリーン印刷で用いたマスクのパターンは開口部60μm、隣接する開口部の中心間距離80μmであり、マスク厚さは40μmである。
【0045】
マスク除去後のダレ性評価には、光学顕微鏡を用い、印刷されたはんだ部間(20μm)にペーストがダレて粉末が存在しているかどうかについて100箇所のはんだ部間をそれぞれ測定した。はんだ部間に1粒でも粉末があれば、1箇所としてカウントした。0から25箇所までを評価「A」とし、26から50箇所までを評価「B」とし、51から75箇所までを評価「C」とし、76から100箇所までを評価「D」とした。マスク除去後のダレ性評価結果を表1にそれぞれ示す。
【0046】
また加熱時のダレ性評価は、はんだペースト印刷後のファインピッチ用プリント基板を窒素雰囲気中にて最高温度180℃で3分加熱したものを上記と同様の評価を行った。加熱時のダレ性評価結果を表1にそれぞれ示す。
【0047】
【表1】

表1から明らかなように、マスク除去後のダレ性評価は形状が球形の比較例1が「C」、比較例2が「B」、比較例3が「C」であるのに対して、実施例1〜4では「A」と、その形状が多面体形状のはんだ粉末はマスク除去後のダレ防止性に優れることが確認された。
【0048】
また、加熱時のダレ性評価は形状が球形の比較例1が「C」、比較例2が「C」、比較例3が「D」であり、ダレ性が悪化しているのに対して、実施例1〜4では「A」と、その形状が多面体形状のはんだ粉末は加熱時のダレ防止性に対しても優れることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末形状が球形とは異なる、少なくとも1面以上の平面を有する多面体形状であることを特徴とするはんだ粉末。
【請求項2】
体積累積中位径(Median径;D50)が5μm未満である請求項1記載のはんだ粉末。
【請求項3】
比表面積が0.4m2/g以上である請求項1記載のはんだ粉末。
【請求項4】
粉末形状が4面体形状である請求項1記載のはんだ粉末。
【請求項5】
粉末形状が6面体形状である請求項1記載のはんだ粉末。
【請求項6】
粉末形状が8面体形状である請求項1記載のはんだ粉末。
【請求項7】
粉末形状が12面体形状である請求項1記載のはんだ粉末。
【請求項8】
請求項1ないし7いずれか1項に記載のはんだ粉末とはんだ用フラックスを混合しペースト化することを特徴とするはんだペースト。
【請求項9】
電子部品の実装に用いる請求項8記載のはんだペースト。
【請求項10】
請求項8又は9記載のはんだペーストを用いて製造されたことを特徴とする電子部品。

【公開番号】特開2010−229501(P2010−229501A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−78773(P2009−78773)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】